1 : 以下、\... - 2017/07/13 00:45:06.232 C63OWLu+0.net 1/30

老婆「ほーれほれ」パッパッ

野良猫「ニャ~ン」





(あのババア、また野良猫に餌やってやがる)

(ムカつくなぁ……)

元スレ
男「野良猫に餌やってんじゃねえよ、ババア!」老婆「うるさいねえ……」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1499874306/

7 : 以下、\... - 2017/07/13 00:48:28.634 C63OWLu+0.net 2/30

老婆「ほーれほれ」パッパッ

野良猫「ニャンニャン」





(また今日も……!)イラッ

(ええい、文句いってやる!)

10 : 以下、\... - 2017/07/13 00:51:44.271 C63OWLu+0.net 3/30

「おい!」

老婆「なんだい?」

「いい加減にしろよ……野良猫に餌やってんじゃねえよ、ババア!」

老婆「うるさいねえ……」

「うるさくいわなきゃ、やめねえだろ!」

老婆「なんでやめなきゃならないんだい?」

「んなもん決まってんだろ!」

11 : 以下、\... - 2017/07/13 00:54:05.566 C63OWLu+0.net 4/30

「野良猫じゃなく、俺に餌くれよ!」





老婆「やっぱりそういうことだったかい……」

14 : 以下、\... - 2017/07/13 00:57:13.401 C63OWLu+0.net 5/30

老婆「なんで餌を欲しいんだい?」

「俺、今無職なんだよ!」

「貯金も尽きちゃって、もう三日もまともに食べてねえんだ! 助けてくれぇ……!」

老婆「食いたいんなら、ハロワ行きな」

「イヤだ!」

「働かずに食うメシはうまいからな!」

老婆「やれやれ、どうしようもない奴だねえ」

15 : 以下、\... - 2017/07/13 01:00:33.336 C63OWLu+0.net 6/30

老婆「だったら、こうしようじゃないか」

老婆「あたしの餌を欲しけりゃ、自力で取ってみせるんだねえ」

「よーし!」

「勝負だ、野良猫っ!」

野良猫「ニャーン!」

老婆「ルールは無し。とにかく食った方が勝ちとするよ」

16 : 以下、\... - 2017/07/13 01:04:07.650 C63OWLu+0.net 7/30

老婆「ほれっ!」パパッ

野良猫「ニャンッ!」パクッ

「くっ!」


老婆「ほれいっ!」パパッ

野良猫「ニャーンッ!」パクッ

「くそーっ!」



老婆「全然取れないじゃないか。そんなんじゃ餓死しちまうよ」

「ちくしょう……もう一丁!」

17 : 以下、\... - 2017/07/13 01:06:30.912 C63OWLu+0.net 8/30

老婆「ほれい!」パパッ

野良猫「ニャンッ!」パクッ

「このドラ猫が! こうなりゃ力ずくで!」ガシッ

野良猫「フギャギャーッ!」バリバリバリ

「ぐおおおっ……!」

老婆「こりゃ、まだまだ食べられそうにないねえ」

老婆「さあ、次の餌だよ! ほれいっ!」パパッ

19 : 以下、\... - 2017/07/13 01:09:20.172 C63OWLu+0.net 9/30

月日は流れ――

老婆「ほれいっ!」パパッ

「うおおおおおおっ!」シュバババッ

野良猫「ニャーッ!」シュバババッ

パシッ

「取ったーっ!」

野良猫「ニャゴ……」

「いただきます!」モグッ

「――こ、これは!?」

23 : 以下、\... - 2017/07/13 01:12:35.319 C63OWLu+0.net 10/30

「……プロテインじゃねえか!」

老婆「ほう! よく分かったねえ」

「どうして、猫にプロテインなんか与えてるんだ?」

老婆「あたしが与えてるというより、この子が望んでるからさ」

「へ……?」

老婆「この子はね……鍛えてるのさ」

野良猫「ニャン……」

「!?」

24 : 以下、\... - 2017/07/13 01:16:04.989 C63OWLu+0.net 11/30

「なんで!? どうして猫が鍛える必要がある?」

「天下一猫武道会でもあるのか?」

老婆「それについて話すには、少々長くなるけどいいかい?」

「いいとも!」

老婆「≪闇の保健所≫……って知ってるかい?」

「……ああ、聞いたことある!」

老婆「知ったかぶりは男らしくないよ」

「すいません」

27 : 以下、\... - 2017/07/13 01:19:48.788 C63OWLu+0.net 12/30

老婆「闇の保健所とは――」

老婆「近年設立された、動物駆除に特化した保健所のことさ」

老婆「害獣や害虫を、面倒な手続きなしに捕獲・駆除するために設立されたのさ」

「へえ~、闇ってわりにまともな施設っぽいけど」

老婆「しかし、実態は罪なき動物たちを手当たり次第に捕えまくってるという」

「なんだって!?」

「なんでそんな施設が野放しになってるんだよ?」

老婆「所長がやり手らしくてね……。事実を巧妙に隠ぺいしてるらしいんだよ」

「……闇の保健所の正体は分かった。で、野良猫が鍛える理由は?」

29 : 以下、\... - 2017/07/13 01:23:05.151 C63OWLu+0.net 13/30

老婆「それはシンプルさ」

老婆「なんと、あの子の恋人だった猫が、捕えられちまったらしいんだよ。≪闇の保健所≫にね」

「なにい!?」

野良猫「ニャ~ン」

「そうか……お前、恋人を救うために、体を鍛えてたのか……」

「その心意気、気に入った!」

野良猫「ニャン!?」

「俺にも手伝わせてくれ! 餌の奪い合いでだいぶ鍛えられたからな!」

老婆「これはこれは……頼もしい仲間が増えたねえ」

32 : 以下、\... - 2017/07/13 01:26:22.698 C63OWLu+0.net 14/30

ザッ!

所員A「そうはさせん!」

所員B「所長の命令で、貴様らを始末しにきた!」



「あいつらは!?」

老婆「あの黒いスーツは、闇の保健所のエージェントだねえ」

老婆「気をつけなよ、奴らは≪殺しのLICENSE≫を持っている! 殺戮のプロさ!」

「≪殺しのLICENSE≫……!」

34 : 以下、\... - 2017/07/13 01:29:55.253 C63OWLu+0.net 15/30

所員A「死ねいっ!」ブオンッ

野良猫「ニャン!」ヒョイッ

所員A「かわした!?」

野良猫「ニャアアッ!」バリバリバリッ

所員A「うぎゃあっ……!」



「すげえ!」

老婆「生半可な人間じゃ、あの子にゃ勝てないよ」

36 : 以下、\... - 2017/07/13 01:32:31.013 C63OWLu+0.net 16/30

「俺も!」ダッ

所員B「シェイッ!」ビュオッ

「とうっ!」ピョンッ

所員B「なにっ!? 猫のようなしなやかなフットワーク……!」

老婆(どうやら、餌の取り合いで想像以上に鍛えられたようだねえ……)

「どおりゃあっ!」

バキィッ!

所員B「ぐおおっ!」ドサッ

37 : 以下、\... - 2017/07/13 01:36:00.206 C63OWLu+0.net 17/30

「ハァ、ハァ、ハァ……や、やった……!」

老婆「見事だよ」

老婆「≪殺しのLICENSE≫を持つ所員を倒しちまうなんて」

「これで俺も闇の保健所とやらを敵にまわしちまったわけだ」ニヤッ

老婆「そういうわけだねえ」ニタァ…

老婆「怖いかい?」

「いいや全然、むしろ血が騒いできたさ!」

野良猫「ニャーン!」

老婆「時は満ちた! このまま闇の保健所に乗り込むよ!」

39 : 以下、\... - 2017/07/13 01:39:04.937 C63OWLu+0.net 18/30

ゴゴゴゴゴ……!



「あれが闇の保健所……!」

「なんてどす黒い気配を発してやがる……!」

野良猫「ニャァ……!」

老婆「ここまできてケツまくったんじゃ、しまらないよ! さあ、行くよ!」

「おう!」

野良猫「ニャンッ!」

43 : 以下、\... - 2017/07/13 01:45:33.793 C63OWLu+0.net 19/30

野良猫「ニャーッ!」

バリバリバリッ

「うぎゃぁぁぁぁぁっ!」


「オラァッ!」

ドゴォッ!

「ぐほぉっ!」


タタタタタッ…

「侵入者だ!」 「逃がすなぁっ!」 「数で追い詰めろ!」


野良猫「ニャッ!」

「まだあんなにいるのか! ちくしょう、キリがねえや!」

44 : 以下、\... - 2017/07/13 01:47:05.706 C63OWLu+0.net 20/30

老婆「まきびし!」パラパラ…


「グギャアアアッ!」 「いでぇぇぇ!」 「足に刺さったァ!」


「ババア、やるじゃねえか!」

老婆「これでも伊賀の末裔なのさ」

「ヒューッ!」

野良猫「ニャーッ!」

46 : 以下、\... - 2017/07/13 01:50:50.488 C63OWLu+0.net 21/30

(保健所侵入から三時間、俺たちはようやくアジト中枢に入り込んでいた)



タタタタタッ!

「あの、ダイヤとルビーとサファイアが敷き詰められた扉……!」

野良猫「ニャーッ!」

老婆「間違いない、あれが所長室に違いないよ!」

「突撃ィィィィィ!!!」

47 : 以下、\... - 2017/07/13 01:53:00.242 C63OWLu+0.net 22/30

バァンッ!!!





「――お、お前はッ!?」

48 : 以下、\... - 2017/07/13 01:56:19.967 C63OWLu+0.net 23/30

メス猫「ミャア……」


「猫が……所長!?」

老婆「どういうことだい!?」

野良猫「ニャーッ!」


メス猫「ミャーッ!」



(そんな……!)

(闇の保健所の所長は、野良猫の恋猫だったなんて……!)

(こんな残酷な出会いがあるだろうか!? ……いや、ない!)

49 : 以下、\... - 2017/07/13 01:59:11.513 C63OWLu+0.net 24/30

「なぜだ!? なぜ闇の保健所を作った!? なぜ罪なき動物たちを捕える!?」

メス猫「ミャミャミャッ! ミャーッ! ミャミャッ!」

「ふむふむ……」

メス猫「ミャーン! ミャミャミャ! ミャーゴ! ミャァァァァ!」

「なるほどね」

メス猫「ミャアン! ミャオミャオ! ミャミャーミャー!」

「そういうことか……」





※男は野良猫と餌の取り合いをしたので、ネコ語が分かるのだ!

52 : 以下、\... - 2017/07/13 02:02:21.656 C63OWLu+0.net 25/30

「たしかに君の主張は正論すぎる……君に反論できる人間はいないだろう」

「だが、それでも! 俺は君を止めねばならないッ!」

「ゆくぞ、メス猫!」ギュンッ

メス猫「ミャーッ!」ギュンッ





ザシュッ!!!

54 : 以下、\... - 2017/07/13 02:05:08.352 C63OWLu+0.net 26/30

メス猫「ミャア……!」ドサッ…

「ふぅ……紙一重の勝負だった……」



野良猫「ニャーン!」

メス猫「ミャア……」

野良猫「ニャーニャーニャー!」

メス猫「ミャア……ミャーン……」

55 : 以下、\... - 2017/07/13 02:08:38.993 C63OWLu+0.net 27/30

野良猫「ニャーニャー! ニャニャニャニャン! ニャーンッ! ニャーッ!」

メス猫「ミャーミャ、ミャンミャン! ミャミャミャーミャッ!」

野良猫「ニャンニャン」

メス猫「ミャア……」


老婆「どうやら所長は改心したようだねえ」

「うん……これにて一件落着!」





こうして、闇の保健所は封鎖され、捕らわれていた動物たちは解放された。

58 : 以下、\... - 2017/07/13 02:11:35.642 C63OWLu+0.net 28/30

老婆「さて、どうすんだい? これからも無職でい続けるのかい?」

「いや……もう無職は飽きちまった」

「これからは、そうだな……せっかくネコ語を操れるようになったし」

「猫カフェでも開こうかな!」

野良猫「ニャーッ!」

メス猫「ミャーッ!」

「お前たちも協力してくれるか、ありがとよ!」

61 : 以下、\... - 2017/07/13 02:15:34.404 C63OWLu+0.net 29/30

――猫カフェ――



客A「おい! このコーヒー猫の毛が入ってるぞ!」

「猫カフェなんだから当然だろが!」

客A「あ、そっか!」


野良猫「ニャーン」ゴロゴロ…

メス猫「ミャーン」ゴロゴロ…

客B「か、可愛い……」


老婆「メイドの格好してみたよ」ヒラヒラ

客C「し、死にたい……」

62 : 以下、\... - 2017/07/13 02:18:33.301 C63OWLu+0.net 30/30

老婆「ひっひっひ、今日も大繁盛だったねえ」

「ああ」

(猫二匹の可愛さと、メイドババアの怖い物見たさで、客がどんどん来るようになった)

老婆「じゃあ、二人と二匹でメシとしようかい」

「おう!」

「やっぱり働いて食うメシはうまいぜ!」







― 完 ―

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