老婆「ほーれほれ」パッパッ
野良猫「ニャ~ン」
男(あのババア、また野良猫に餌やってやがる)
男(ムカつくなぁ……)
元スレ
男「野良猫に餌やってんじゃねえよ、ババア!」老婆「うるさいねえ……」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1499874306/
老婆「ほーれほれ」パッパッ
野良猫「ニャンニャン」
男(また今日も……!)イラッ
男(ええい、文句いってやる!)
男「おい!」
老婆「なんだい?」
男「いい加減にしろよ……野良猫に餌やってんじゃねえよ、ババア!」
老婆「うるさいねえ……」
男「うるさくいわなきゃ、やめねえだろ!」
老婆「なんでやめなきゃならないんだい?」
男「んなもん決まってんだろ!」
男「野良猫じゃなく、俺に餌くれよ!」
老婆「やっぱりそういうことだったかい……」
老婆「なんで餌を欲しいんだい?」
男「俺、今無職なんだよ!」
男「貯金も尽きちゃって、もう三日もまともに食べてねえんだ! 助けてくれぇ……!」
老婆「食いたいんなら、ハロワ行きな」
男「イヤだ!」
男「働かずに食うメシはうまいからな!」
老婆「やれやれ、どうしようもない奴だねえ」
老婆「だったら、こうしようじゃないか」
老婆「あたしの餌を欲しけりゃ、自力で取ってみせるんだねえ」
男「よーし!」
男「勝負だ、野良猫っ!」
野良猫「ニャーン!」
老婆「ルールは無し。とにかく食った方が勝ちとするよ」
老婆「ほれっ!」パパッ
野良猫「ニャンッ!」パクッ
男「くっ!」
老婆「ほれいっ!」パパッ
野良猫「ニャーンッ!」パクッ
男「くそーっ!」
老婆「全然取れないじゃないか。そんなんじゃ餓死しちまうよ」
男「ちくしょう……もう一丁!」
老婆「ほれい!」パパッ
野良猫「ニャンッ!」パクッ
男「このドラ猫が! こうなりゃ力ずくで!」ガシッ
野良猫「フギャギャーッ!」バリバリバリ
男「ぐおおおっ……!」
老婆「こりゃ、まだまだ食べられそうにないねえ」
老婆「さあ、次の餌だよ! ほれいっ!」パパッ
月日は流れ――
老婆「ほれいっ!」パパッ
男「うおおおおおおっ!」シュバババッ
野良猫「ニャーッ!」シュバババッ
パシッ
男「取ったーっ!」
野良猫「ニャゴ……」
男「いただきます!」モグッ
男「――こ、これは!?」
男「……プロテインじゃねえか!」
老婆「ほう! よく分かったねえ」
男「どうして、猫にプロテインなんか与えてるんだ?」
老婆「あたしが与えてるというより、この子が望んでるからさ」
男「へ……?」
老婆「この子はね……鍛えてるのさ」
野良猫「ニャン……」
男「!?」
男「なんで!? どうして猫が鍛える必要がある?」
男「天下一猫武道会でもあるのか?」
老婆「それについて話すには、少々長くなるけどいいかい?」
男「いいとも!」
老婆「≪闇の保健所≫……って知ってるかい?」
男「……ああ、聞いたことある!」
老婆「知ったかぶりは男らしくないよ」
男「すいません」
老婆「闇の保健所とは――」
老婆「近年設立された、動物駆除に特化した保健所のことさ」
老婆「害獣や害虫を、面倒な手続きなしに捕獲・駆除するために設立されたのさ」
男「へえ~、闇ってわりにまともな施設っぽいけど」
老婆「しかし、実態は罪なき動物たちを手当たり次第に捕えまくってるという」
男「なんだって!?」
男「なんでそんな施設が野放しになってるんだよ?」
老婆「所長がやり手らしくてね……。事実を巧妙に隠ぺいしてるらしいんだよ」
男「……闇の保健所の正体は分かった。で、野良猫が鍛える理由は?」
老婆「それはシンプルさ」
老婆「なんと、あの子の恋人だった猫が、捕えられちまったらしいんだよ。≪闇の保健所≫にね」
男「なにい!?」
野良猫「ニャ~ン」
男「そうか……お前、恋人を救うために、体を鍛えてたのか……」
男「その心意気、気に入った!」
野良猫「ニャン!?」
男「俺にも手伝わせてくれ! 餌の奪い合いでだいぶ鍛えられたからな!」
老婆「これはこれは……頼もしい仲間が増えたねえ」
ザッ!
所員A「そうはさせん!」
所員B「所長の命令で、貴様らを始末しにきた!」
男「あいつらは!?」
老婆「あの黒いスーツは、闇の保健所のエージェントだねえ」
老婆「気をつけなよ、奴らは≪殺しのLICENSE≫を持っている! 殺戮のプロさ!」
男「≪殺しのLICENSE≫……!」
所員A「死ねいっ!」ブオンッ
野良猫「ニャン!」ヒョイッ
所員A「かわした!?」
野良猫「ニャアアッ!」バリバリバリッ
所員A「うぎゃあっ……!」
男「すげえ!」
老婆「生半可な人間じゃ、あの子にゃ勝てないよ」
男「俺も!」ダッ
所員B「シェイッ!」ビュオッ
男「とうっ!」ピョンッ
所員B「なにっ!? 猫のようなしなやかなフットワーク……!」
老婆(どうやら、餌の取り合いで想像以上に鍛えられたようだねえ……)
男「どおりゃあっ!」
バキィッ!
所員B「ぐおおっ!」ドサッ
男「ハァ、ハァ、ハァ……や、やった……!」
老婆「見事だよ」
老婆「≪殺しのLICENSE≫を持つ所員を倒しちまうなんて」
男「これで俺も闇の保健所とやらを敵にまわしちまったわけだ」ニヤッ
老婆「そういうわけだねえ」ニタァ…
老婆「怖いかい?」
男「いいや全然、むしろ血が騒いできたさ!」
野良猫「ニャーン!」
老婆「時は満ちた! このまま闇の保健所に乗り込むよ!」
ゴゴゴゴゴ……!
男「あれが闇の保健所……!」
男「なんてどす黒い気配を発してやがる……!」
野良猫「ニャァ……!」
老婆「ここまできてケツまくったんじゃ、しまらないよ! さあ、行くよ!」
男「おう!」
野良猫「ニャンッ!」
野良猫「ニャーッ!」
バリバリバリッ
「うぎゃぁぁぁぁぁっ!」
男「オラァッ!」
ドゴォッ!
「ぐほぉっ!」
タタタタタッ…
「侵入者だ!」 「逃がすなぁっ!」 「数で追い詰めろ!」
野良猫「ニャッ!」
男「まだあんなにいるのか! ちくしょう、キリがねえや!」
老婆「まきびし!」パラパラ…
「グギャアアアッ!」 「いでぇぇぇ!」 「足に刺さったァ!」
男「ババア、やるじゃねえか!」
老婆「これでも伊賀の末裔なのさ」
男「ヒューッ!」
野良猫「ニャーッ!」
男(保健所侵入から三時間、俺たちはようやくアジト中枢に入り込んでいた)
タタタタタッ!
男「あの、ダイヤとルビーとサファイアが敷き詰められた扉……!」
野良猫「ニャーッ!」
老婆「間違いない、あれが所長室に違いないよ!」
男「突撃ィィィィィ!!!」
バァンッ!!!
男「――お、お前はッ!?」
メス猫「ミャア……」
男「猫が……所長!?」
老婆「どういうことだい!?」
野良猫「ニャーッ!」
メス猫「ミャーッ!」
男(そんな……!)
男(闇の保健所の所長は、野良猫の恋猫だったなんて……!)
男(こんな残酷な出会いがあるだろうか!? ……いや、ない!)
男「なぜだ!? なぜ闇の保健所を作った!? なぜ罪なき動物たちを捕える!?」
メス猫「ミャミャミャッ! ミャーッ! ミャミャッ!」
男「ふむふむ……」
メス猫「ミャーン! ミャミャミャ! ミャーゴ! ミャァァァァ!」
男「なるほどね」
メス猫「ミャアン! ミャオミャオ! ミャミャーミャー!」
男「そういうことか……」
※男は野良猫と餌の取り合いをしたので、ネコ語が分かるのだ!
男「たしかに君の主張は正論すぎる……君に反論できる人間はいないだろう」
男「だが、それでも! 俺は君を止めねばならないッ!」
男「ゆくぞ、メス猫!」ギュンッ
メス猫「ミャーッ!」ギュンッ
ザシュッ!!!
メス猫「ミャア……!」ドサッ…
男「ふぅ……紙一重の勝負だった……」
野良猫「ニャーン!」
メス猫「ミャア……」
野良猫「ニャーニャーニャー!」
メス猫「ミャア……ミャーン……」
野良猫「ニャーニャー! ニャニャニャニャン! ニャーンッ! ニャーッ!」
メス猫「ミャーミャ、ミャンミャン! ミャミャミャーミャッ!」
野良猫「ニャンニャン」
メス猫「ミャア……」
老婆「どうやら所長は改心したようだねえ」
男「うん……これにて一件落着!」
こうして、闇の保健所は封鎖され、捕らわれていた動物たちは解放された。
老婆「さて、どうすんだい? これからも無職でい続けるのかい?」
男「いや……もう無職は飽きちまった」
男「これからは、そうだな……せっかくネコ語を操れるようになったし」
男「猫カフェでも開こうかな!」
野良猫「ニャーッ!」
メス猫「ミャーッ!」
男「お前たちも協力してくれるか、ありがとよ!」
――猫カフェ――
客A「おい! このコーヒー猫の毛が入ってるぞ!」
男「猫カフェなんだから当然だろが!」
客A「あ、そっか!」
野良猫「ニャーン」ゴロゴロ…
メス猫「ミャーン」ゴロゴロ…
客B「か、可愛い……」
老婆「メイドの格好してみたよ」ヒラヒラ
客C「し、死にたい……」
老婆「ひっひっひ、今日も大繁盛だったねえ」
男「ああ」
男(猫二匹の可愛さと、メイドババアの怖い物見たさで、客がどんどん来るようになった)
老婆「じゃあ、二人と二匹でメシとしようかい」
男「おう!」
男「やっぱり働いて食うメシはうまいぜ!」
― 完 ―