1 : 以下、\... - 2017/07/06 15:01:37.463 bH4jpu6y0.net 1/11

※このSSはお菓子作りとちょっとした豆知識のSSです
 家でも作れそうなものを選んで書いていきます
 少し知識はありますが、素人知識な部分もあるので気になった方は申し訳ありません。


 「今日はお菓子を作ろうと思う」

 「急にどうしたの?」

 「たまに無性に作りたくならないか?お菓子」

 「いや、私料理とかしないし…」

 「知ってる。まあ今日はそんな女子力皆無のお前でも作れる簡単なお菓子を教えてやる」

 「裁縫はできるけど?」

 「それ以外は駄目って認めたようなもんじゃね?」

 「否定はしない。それで簡単に作れるお菓子って?」

 「できるようになってくれ。…今日作るのはな『Parfait』だ!!」

 「ぱる…?なんだって?」

 「『パルフェ』と読む。いわばアイスクリームに近い、所謂氷菓というものだ」

 「えるたそ~」

 「その氷菓じゃ、いやその氷菓なんだけど。さっきアイスクリームとは言ったがアイスクリームより昔から作られているものなんだ」

 「氷菓自体がアイスクリームなのでは?」

 「誰もが知っているアイスクリームより歴史が古い、って認識で捉えてくれ」

元スレ
男「お菓子を作るぞ」女「?!」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1499320897/

3 : 以下、\... - 2017/07/06 15:02:15.136 bH4jpu6y0.net 2/11

「あいあい。んで早速作り方は?」

 「急ぐなぁ…。もうちょっと解説させてくれよ」

 「夏だし、早く冷たいもの食べたいの」

 「…じゃあ作りながら解説していこう」

 「まず、材料から。直径16cmのボウル、本当は専用の型もあるんだが家にあるものではないのでボウルで大丈夫だ」

 「これに適した量で教えるぞ。まず卵黄120g、グラニュー糖90g、水を30ml」

 「卵黄だけ量るの?卵白は?」

 「今回使うのは卵黄だけだから卵白は牛乳パックとかタッパーに入れて保存すべし。…あ、消毒はしろよ?」

 「保存する場所がないとかどうするの?あと卵何個割れば120gになるわけ?」

 「保存する場所がない時は後で飾りつけのためなんかに使おう。卵黄は卵の大きさにもよるけど、大体一つ当たり20g前後。だから6個くらいと思ってくれたらいい。…ただしっかり計量はすること。」

 「基本的に料理もそうだけどお菓子作りは化学変化の連続で作るものなんだよ。きっちり理解して作ってる奴は多くないけど、それでいて計量を疎かにする奴は起こる筈の変化が起こらなくて失敗なんてこと多々ある。

 「家で作る分ならいいなんて甘さは食中毒にも繋がるしな。粉の分量が多くて混ざりきらずに焼いてしまい一部が生、食った人間は皆病院なんてこともあるかもしれない」

 「これ以上は公衆衛生の話になるから止めとくけど、きっちり計量はしてくれな」

 「急に説教くさくなったなぁ。けど、食中毒は怖いし計量はちゃんとするようにします」

7 : 以下、\... - 2017/07/06 15:02:41.197 bH4jpu6y0.net 3/11

「熱くなったな、すまん。…さて気を取り直して続きの話だ。どこまで話したっけ」

 「水30mlだねー」

 「まだ水までしか話してなかったのか。それとバニラのさやを一本、生クリームを200ml、グラニュー糖を20g、以上が基本のレシピだ」

 「ふむふむ。ここまではオッケーだよ」

 「じゃあ順番に組み立てていくぞ。まず最初の材料の卵黄以外、水とグラニュー糖を鍋に入れて火にかける」

 「えっ?アイス作るんじゃないの?」

 「まったく火を使わないお菓子なんて一部しかないぞ。今回はまずシロップを作るんだ」

 「シロップ?…あの甘い砂糖水みたいなやつ?」

 「製菓業界でシロップっていったらまあ、大体砂糖水なんだが…」

 「今回使うのは水なんて生易しいもんじゃない。これを120℃まで熱する」

 「?!」

 「今回Parfaitを作るためには必要な工程だ。諦めて手伝え」

 「えっ、いや120℃とかまずどうやって測るの?てか砂糖水がそこまで熱くなる?焦げない?」

 「まず後の二つの質問から答えよう。糖度のある水は温度を上げすぎない限り焦げない。そして温度はしっかりと上がる」

 「そして一つ目の質問だけど、これはシロップの状態で分かる」

 「状態?」

 「そう、シロップは煮詰めた温度によって色んな状態に変化するんだ」

 「今回の120℃なら、親指に乗せて人差し指と間に軽く挟むと丸まる、さすがに押すと潰れるけどな」

8 : 以下、\... - 2017/07/06 15:03:05.060 bH4jpu6y0.net 4/11

 「え、指に乗せたら熱くない?」

 「お、すまんすまん。冷水をあらかじめ準備しておいてそこに一瞬漬けるんだ」

 「そしたらさっきの状態になる。他にも押しても潰れなくなったり硬い板状になったり息を吹いたら気泡ができるなんて状態もあるから全部食うなら色々試してみろ」

 「へぇ…、なんか細かくて面倒臭いね」

 「それも美味いお菓子食ったら報われてる気になるから」

 「さて、シロップが完成したから次の工程にいくぞ」

 「あいあい」

 「一旦、シロップから手を離すから弱火に変えて、温度が上がりすぎたり下がりすぎたりしないようにな」

 「次は卵黄のボウルにバニラのさやの中身をぶちまける。縦に裂くとしっかり全部取り出せるからしっかりしごいて中身を無駄にしないこと」

 「し、しごいて…」ゴクリ

 「やらしいことを想像するな。バニラのさやは他の材料に比べれば割高だから残すともったいないんだよ」

 「さいですか」

 「んで、卵黄をしっかりと泡立て器でかき混ぜる。白っぽくふんわりとしてきたらここからがかき混ぜる本番だ」

 「へ?」

 「さっきのシロップを少しずつ複数回に分けながらここに加えてかき混ぜる。………完全に冷めるまで」

 「?!」

 「今回の量だとちょっとした持久走だ、がんばるぞ」

 「…マジデスカ」

14 : 以下、\... - 2017/07/06 15:04:01.951 bH4jpu6y0.net 5/11

――――――――――――――――――――――――

 「んじゃ完全に冷めたので次の工程にいこうか」

 「…ウス」

 「次は生クリームを作っていくぞー。二重にしたボウルの外側のボウルに氷水、内側のボウルに生クリームとグラニュー糖20gを入れておく」

 「なんで氷水?こっちのレシピ本には氷って書いてあるけど」

 「氷をボウルに敷き詰めてその上にボウルを置けるならいいけど満遍なく全体を冷やさないと生クリームは痛みやすいし温度が高くなるとどれだけ頑張っても不味い」

 「あ、それと生クリームを入れたボウルには絶対水が入らないようにすること。入れば分離して全部パーだ」

 「う、うす」

 「ボウルが濡れてたらさっと吹いて揮発性の高いアルコールを振っておく。生クリームは温度をあげることは無いから菌を殺さないと食中毒になる可能性が高い」

 「言ってもそんな食中毒ってなくない?」

 「…そんなことはないぞ。実際食中毒で営業停止、なんて料理屋は今でも後を絶たないからな。一度食中毒が出れば基本的に店は再起不能だよ。口コミやネットの評判も広がるしな」

 「そ、そうだったんだ…」

 「まあ、大規模なもんじゃなかったら基本的にニュースなんかじゃやらないことも多いから、知らない人も多いんだけどな」

 「さて、生クリームといえば勿論最初は液状だ。これを冷やしながら泡立てることでどんどん固くなっていく。流石に知ってる人も多いと思うけど」

 「み、皆知ってるに決まってるじゃん!!!!!!!!」

 「お、おう。なんだ急にテンション上げて…。それで今回の固さはさっきの卵黄とシロップを混ぜたものと同じ固さにしていく」

23 : 以下、\... - 2017/07/06 15:05:26.306 bH4jpu6y0.net 6/11

「うぇーまた混ぜ混ぜー?」

 「いや今回はほとんど混ぜなくていい。液状の時は泡立て器の先、この一番集まってるところを表面に触れさせて左右に揺らすだけだ」

 「え?揺らすだけでいいの?ガシガシ混ぜないの?」

 「まずガシガシ混ぜればボウルの表面が削れて真っ白の生クリームに灰色が混ざることがあるから原則ダメだ。それと生クリームが泡立つ仕組みは分子と分子のぶつかった後の結合に――」

 「あー、分かった分かった!揺らすだけでいいんだね」

 「まあ、うん…。うん、そんな感じ」

 「なんかめっちゃ女子っぽいことしてるよ私」

 「それしてなくても女子っぽいでしょ」

 「女子っぽいってか女子だよ紛う事無き」

 「それもそうだった。――ん、生クリームの泡立てはそれくらいにして、最後に全体の円を描くみたいにぐるぐるっと3、4回混ぜて」

 「それに何の意味が?」

 「これは全体の混ざり具合を均一にしてるんだよ。ここでムラがあったら後々にも残ってくるから」

 「そうだったのか…」

 「それじゃ、生クリームと卵黄シロップを混ぜ混ぜして…これで生地はできたね」

 「やっと終わったーーーー」

 「ここから卵白使った飾りつけとか、底に敷く生地焼いたりとかあるんだけど」

 「げっ…」

 「まあ今回はちゃんとデザートになるちょっとしたお菓子のつもりで作ってるからその辺はやめとこうか」

 「良かったぁ…。もう私の腕も女子力も限界ですよ」

 「じゃあその辺はまたの機会にして…これを16cmのボウルに流し込んだ後に空気が入らないようにラップします」

27 : 以下、\... - 2017/07/06 15:06:28.886 bH4jpu6y0.net 7/11

「あーい」

 「もうこっち見てすらないし…。んでボウルのまま冷凍庫に入れてしっかり固めておきます」

 「ふへぇ…、あんまり簡単じゃない気がするんだけど…もっと簡単なのなかったの?」

 「夏だし氷菓の方がいいかなぁとか思って。このお菓子ならあんまり失敗する箇所もないし」

 「にしたって結構ややこしかったような」

 「そうか?んじゃちょっとまとめようか」


  材料:卵黄120g
     グラニュー糖90g
     水 30ml
     バニラのさや1本
     生クリーム200ml
     グラニュー糖20g


   1.グラニュー糖と水を鍋へ。120度(丸められるくらい)まで熱する。
   2.卵黄の中にバニラのさやの中身を加え、ふんわり白っぽくなるまで混ぜる。
   3.シロップを卵黄のボウルに少しずつ加えながら完全に冷めるまで混ぜる。
   4.生クリームを同じ固さになるまで泡立てて、先ほどのボウルに加え混ぜる
   5.ラップかけて冷凍庫


 「こんな感じかな。色々注意点も話したから作る時は忘れずに」

 「こうしてみると案外簡単そう…?」

 「作る時苦労した方ができた時の美味しさが格別になるんだけどな」

 「ほえー、そんもんなのか」

 「そんなもんだよ」

 「まあ、今度気が向いたら作ってみようかな」

 「応援してるぞ。頑張れ」

 「んじゃこれ食ったら家帰るわ」

28 : 以下、\... - 2017/07/06 15:07:27.445 KFaKV2fD0.net 8/11

結局アイスとは何が違うの?

36 : 以下、\... - 2017/07/06 15:10:04.056 bH4jpu6y0.net 9/11

>>28
皆が知ってるアイスクリームはシロップを使わずに卵黄と牛乳を熱して作るから口当たりがもっと柔らかい

40 : 以下、\... - 2017/07/06 15:12:38.614 KFaKV2fD0.net 10/11

>>36
なるほどなー
パルフェの方がミルク感が少なくて砂糖の甘さがはっきりわかる感じ?

43 : 以下、\... - 2017/07/06 15:14:33.638 bH4jpu6y0.net 11/11

>>40
基本的にはその認識で間違いない
強いて言うなら砂糖甘さよりバニラと卵黄の風味が味わえるのは断然パルフェ

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