『サタニキア喜怒哀楽全集』
私がこの図鑑を作ろうと思ったのは
……そう、彼女と出会ってすぐの頃でした
元スレ
ラフィ「泣き顔、怒り顔、そして…」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1494379794/
初めて彼女と出会った時、私はこう思いました
……なんて素敵な人なんでしょう
彼女のリアクション、表情は本当に豊かで見るものを幸せにさせます
その時から私は彼女の表情に惹かれ始めていたのです
……いわゆる一目惚れってやつですかね
コロコロと変わる彼女の表情
ある時は笑い、ある時は悲しみ
彼女は、その時の気持ちを、豊富な表情で目いっぱいに表現します
……もっと彼女の色々な表情が見たい
そう思ったのが、その図鑑の始まりでした
そして、次の日から彼女の表情収集が始まりました
…………………………………………………
一体今日は彼女はどんな表情を見せてくれるのでしょうか
「勝負よガヴリール!なーはっはっは!」
あら、いきなり笑顔ゲットです!パシャッ
「……どう?ガヴリール!この悪魔的戦略……あなたに突破できるかしら?」
ドヤ顔ゲット!パシャッ
「……負けた……」
泣き顔ゲット!パシャッ
今日だけで喜怒哀楽の怒以外をゲットできました!
いい幸先です!
それにしてもサターニャさんは本当にコロコロと表情が変わりますね
本当に、本当に良い人を見つけました
この巡り合いに感謝しなければですね!
次の日も彼女は色々な表情を見せてくれました
ガヴちゃんに勝負を挑んで笑い顔
少しでも優位に立てばドヤ顔
最終的には負けて泣き顔
……そういえば彼女の怒り顔をあまり見たことが……
……見たいですね
そう思った瞬間、私の願いは叶いました
「待ちなさい!犬!!」
彼女のお昼ご飯のメロンパンが犬に取られた時、一瞬だけ怒り顔を拝むことが出来たのです!パシャリ
彼女には悪いですが、犬に感謝しなくてはなりませんね
……あとでメロンパン奢ってあげますからね、サターニャさん!
そうして、彼女の表情を集めながら毎日を過ごしていました
撮った写真を見返すと、ほとんどが笑顔とドヤ顔と泣き顔
単に笑顔と言っても、そのバリュエーションは豊富
……ですが
しかし、私の収集欲は膨れ上がっていきます
たまには本気の笑い顔、泣き顔、さらには怒り顔も見てみたい
彼女についてもっと深く知りたい
本当に怒った時、本当に嬉しい時、本当に悲しい時、彼女は一体どんな表情を見せてくれるのでしょうか
まずは、最高の笑顔を撮影しましょう
……どうすれば彼女はとびきりの笑顔を見せてくれるのでしょうか
楽しい思い出ができれば彼女は笑ってくれるでしょうか
……今度遊園地にでも誘ってみましょう
……果たして彼女は楽しんでくれますかね
「サターニャさーん」
「あら?ラフィエル、どうしたの?」
「今度の日曜日、2人で遊園地にいきませんか?」
「えっ……2人で?怪しいわね……」
「そっ、そんな……」
「……まあいいわ!行ってあげる!しかたないわね!」
「あ、ありがとうございます!」
【当日】
集合時間の一時間前だというのに、集合場所に着いてしまいました
……チケットも持った、カメラも持った、財布も持った、よし、忘れ物はないですね
はやくサターニャさん来ないかなぁ
なんて思ってるうちに、彼女は来ました
彼女も予定時間より早い、集合時間の50分前に到着
「おまたせ!待ったかしら?」
「いえ、私も今来たところです!」
「それにしてもあんた早すぎでしょ~、どんだけ楽しみにしてたのよ」
「そりゃあサターニャさんと2人きりなんですから楽しみですよ♪」
「なっ……そ、その手には乗らないわよ!」カァァァ
「はい?」
「なんだかんだサターニャさんも早いですよね」
「ひ、暇だったからね!他意はないわ!」
彼女の顔が真っ赤に
……とりあえず!パシャリ
「あっ、あんた何写真撮ってんのよ!」
「大切なお も い で ですっ♡」
「……そう」
「まずはアレに乗りましょう!」
彼女が指さしたのはメリーゴーラウンド
「いいですね~、では勝負をしませんか?どちらが早くゴールできるかで」
「いいわね!」
彼女は、俗に言うおバカ
「私これにするわ!この馬、黒くてカッコイイし速そうだし負けるわけないわ!」
私はその馬より前を走る少し小ぶりの馬を選びました
「私はこれにします」
「なーはっはっは!そんなちっちゃい馬で勝てるとおもってるのかしら!?」
もちろん私の勝ち
「なんなのこの馬!めちゃくちゃ遅いじゃない!」
「私の勝ちですサターニャさん!」
「……」
「では!罰ゲームは……」
「……あっ!次はアレにしましょう!」
「えっ……ま、いいでしょう」
今日は彼女を導きに来たわけじゃないですし、ね
次に乗ったのはコーヒーカップ
やはり彼女はおバカ
……だがそこが彼女の可愛さ
コーヒーカップをグルグル回して自滅する彼女はとても可愛かったです!パシャリ
「ちょっと……うっぷ、あんた何撮ってんのよ……」
「思い出……ですけど、ちょっと休憩します?」
「……いや、大丈夫、じゃあ次はアレ乗るわよ」
次はジェットコースター
やはり遊園地では定番
ですが、今の彼女が乗って大丈夫なんでしょうか
……まあ大丈夫でしょう
やはり止めておけば良かった
彼女の具合はさらに悪化したようです
「だ、大丈夫ですか!?」
「……全然平気よ、これくらい……うぷっ」
「……でも」
「私が平気って言ったら、平気なの!だから心配しなくていいのよ?」
私には彼女は平気だとは思えない
……でも、それは彼女の優しさ
私に心配をかけまいとする……
……本当におバカ
私は彼女のそういうおバカなところが……
「……じゃあ、ちょっとベンチに座ってお話でもしましょうか」
「……それならアレに乗りたいわ」
「……アレですか?アレなら大丈夫でしょう」
彼女が指さしたのは、観覧車
これならゆっくりと話せる上に、気分が悪くなることもないでしょう
私たちは2人きりの個室にしばらくの間閉じ込められます
2人きりなんて、まるでカップルみたい……
「あんた、なんか顔が赤いわよ?大丈夫?」
えっ!……私、顔を真っ赤にしてました?
「……え、えぇ、大丈夫です、そんな事よりサターニャさんは?」
「だいぶマシになってきたわ!」
「……それなら良かったです」
私としたことが表情に出てしまうなんて……
私はそこまで彼女のことを……
「……」
「……」
沈黙が続く
恥ずかしくて、私は何も言えません
その沈黙を、彼女が破る
「ラフィエル」
「は、はい!なんでしょう!」
「正直、最初あんたに2人きりで誘われた時、嬉しかった。でも同時にあんたのこと疑ってたの」
「今度はどんなふうにイタズラしてくるのか……って」
「……」
日頃の行いってやつ、ですか
「……でも、待ち合わせ場所で楽しそうに待ってるアンタを見て……私も楽しまなきゃって」
「……それで、今日1日あんたと過ごして、正直すっごく楽しかった」
「……途中気分悪くなって残念だったけど……」
「本当に今日はありがとう!」
「また来ましょうね!」
「次はもっと楽しむわよ!」ニコッ
……なんて眩しい笑顔なんでしょう
その時の彼女の笑顔は、私が見た中で一番の、とびっきりの笑顔でした
写真には残せなかったけど
あまり後悔はない
……だって
大切な人と2人きりの思い出が出来たから
大切な人のとびきりの笑顔が見れたから
もう、隠さない
自分に嘘をつかない
……やはり、私は彼女のことが
……好き
好きだからこそ、もっと彼女を知りたい
好きな人の事は全て知りたくなるのが人情というもの
彼女のとびきりの笑顔は見ることが出来た
では、彼女が本当に悲しい時、怒った時はどんな表情をしてくれるのだろう
……気になる
彼女は、優しい
それ故に、滅多に怒らない
……だから、彼女が本気で怒ったところを私は見たことがない
どうすれば、彼女は怒ってくれるのでしょうか
この前本で見たアレを試してみましょう
「ねぇ、ラフィエル」
「ねぇ、ラフィエル」ニコッ
「……あんた何私の真似してんのよ」
「あんた何私の真似してんのよ」
「どういうつもり?」
「どういうつもり?」
「……そっちがそのつもりなら」
「そっちがそのつもりなら」
「親愛なる我らが魔神よ」
「しっ、親愛なる我らが……ま、じんよ」
「汝のもつ漆黒の力を……」
「……神足通」シュイン
「……なんだったのかしら」
この作戦は上手くいくと思ったのですが
まさか彼女に頭で負けるなんて……
屈辱です
……こうなったら
「サターニャさん♪」
「……なにかしら?」
「それっ!コチョコチョ!」コチョコチョ
「あっ!ちょ、やめ……あひゃひゃひゃ!」
「コチョコチョ~」
「ちょっ!やめな……さいって!」バッ
「……悪魔的走法!」バビューン
「……逃げられちゃいました」
無限こちょばしも駄目
ある日は彼女のチョコチップメロンパンのチョコを全部食べた
ある日は彼女が飲んでるジュースのストローを差し込み口の奥まで差し込んだ
しかし、彼女は全く怒る素振りを見せない
こうなったら最終手段です
……これだけはしたくなかったんですが
サターニャさんの怒り顔を拝むためです
我慢しましょう
【翌日】
「ねぇ、ラフィエル」
「……なんですか、私今忙しんで話しかけないでもらえます?」
「えっ……あぁ、ごめん」
「ねぇ、ラフィエル……」
「何ですか、話しかけないで下さいって言ってるじゃないですか、日本語分かります?」
「……」プルプル
「では、さようなら」スタスタ
「……ラフィエル」
「……」スタスタ
「……」
……ごめんなさい、サターニャさん
終わったあとに、メロンパンいっぱい奢ってあげますからね
「……ラフィエル」
「……」
「ラフィエル!」
「……だから私は忙しいと」
「……」プルプル
「……話があるの」
おっと、以外と早かったみたいです
一体彼女はどんな怒り顔を……
「な、何であんた私を避けるのよ!」ブワァ
えっ
「せっかく!せっかく2人で遊園地にいげでもっと仲良くなれたとおもっでだのにぃ!」
「なんで!どうして!私を無視するのよぉ…………」ボロボロ
最初は怒らせる予定でしたが
……でも、これが私の見たかった彼女が本気で悲しい時の表情
……ですが
なんでしょう、この気持ち
……彼女のこんな顔は見たくない
「あっ、あの、すいませんサターニャさん」
「じっ、実はサターニャさんの怒り顔を見たかっただけで……」
「……その」
「わ、私の、怒り顔……?」
「……そうです」
「じゃあ、私のことを嫌いになったわけじゃないの?」
「……はい、もちろんです。私がサターニャさんを嫌いになるわけないじゃないですか」
「本当に……すいませ……」
「……よ、よかっだぁぁぁぁ」
「……えっ」
泣きながらも垣間見得る、彼女の最高の笑顔
その時、私は気付いた
……私が本当に見たかったのは、彼女の怒り顔でも、泣き顔でもない
私が見たかったのは……
……彼女の最高の……
…………………………………………………
……………………………………………………
「ちょっと!ラフィエル起きなさい!」ユサユサ
おっと、考え事をしながら寝ていたようです
「……もう、それにしても珍しいわね、こんな所で寝るなんて」
私はあの時、『サタニキア喜怒哀楽全集』を破棄することにしました
……そして
「……またこの図鑑見てたの?恥ずかしいからやめてって言ってるのに……」
「なにが『サターニャさんの笑顔』よ……」
そう、『サターニャさんの笑顔』という図鑑を作ろうと決意しました
……だって私はサターニャさんの笑顔以外何もいりませんから
「はい、サターニャさんの笑顔は、私の『大切な宝物』ですから」
「な、なに恥ずかしいこと言ってくれちゃってるのよ!」
「うふふ~」
これ以上、彼女につらい思いをさせないように
彼女の笑顔を絶やさないように
私は彼女を絶対に幸せにすると、あの時誓いました
だから
……ずっと私の隣で見せていてくださいね
あなたの……
――――――――――――最高の笑顔を
おわり
47 : 以下、\... - 2017/05/10 10:58:17.062 HMZ3YlBJ0.net 44/44綺麗なサタラフィを書きたかったんです
ありがとうございました!