男「夏休みかぁ……暇だなぁ」
友「なんだ男、予定ないのか?」
男「ないね、宿題くらいしかない」
友「じゃあ、魔法少年に興味はないか?」
男「ちょっとよくわからない」
元スレ
友「魔法少年に興味はないか?」
http://hayabusa3.2ch.sc/test/read.cgi/news4viptasu/1497801004/
友「魔法少年って言ってもアレだぞ、魔法使って戦う方の魔法少年だぞ」
男「いや、そっちしかイメージわかないんだが」
友「あの、バスケットボールを体育館の天井にハメる方の魔法少年じゃないからな」
男「ちょっとよくわからない」
男「一から全部説明して欲しいんだけど」
友「おっ興味出てきたか?」
男「とても前向き思考でいい事だと思うんだが、生憎悪い意味での興味しか出てない」
友「魔法少年は魔法使って悪と戦う男の子の事だよ」
男「だから」
男「もうちょっと詳しく説明できないの?」
友「お前がラーメンのスープだとしたら、一般人は麺で、悪のグループは海苔」
男「わからない」
友「俺は器」
男「わからない」
友「だから今世界は悪の組織に狙われてるの!!それを救うには魔法少年になって悪い奴らを倒さなきゃいけないの!!」
男「なんでいきなりキレてんだよ……」
友「俺は人を魔法少年にしか出来ないからお前に頼んでるんだよ」
男「なんで最初からそうやって説明できないの?」
友「お前がコンビニ弁当の白米なら、悪の組織は漬物」
男「それはもういいから」
男「ちょっと現時点ではお前の頭がイカれたようにしか思えないんだけど」
友「じゃあ一回試しに変身してみようよ」
男「そんなお試しノリで変身するわけねぇだろ」
友「じゃあ一回本気で変身してみようよ」
男「言い方の問題じゃなくて」
友「ハッ!今、俺の第六感的な機能で察知した敵の反応が学校から数メートル先まで来てる!」
男「おうおういきなり説明口調だな」
友「男ー!あれを見ろー!」
ドシーンドシーン
男「わぁおっきい」
敵「(「・ω・)「ガオー」
男「どうするのあれ」
友「お前が変身するしか道がないけど」
男「マジかーきついわ」
友「とりあえずあいつだけ倒してみよ?ね?そこから考えよう?」
敵「(「・ω・)「ガオー」
男「ええ……ちなみに魔法少年のビジュアルってどんな感じ?」
友「プリキュアの衣装みたいな」
男「プリキュア」
男「キツみあるよね?立派な高校生でスネ毛ゴリゴリ生えてる脇毛ボーボーの男子がプリキュアとかエグみしかないよね?」
友「でもお前顔はどうにでもなりそうな顔じゃん」
男「褒めてる?貶してる?」
友「毛はある」
男「毛無してるじゃなくて」
敵「(「・ω・)「ガオー」
友「早くしないと学校が!」
男「宿題なくなる?」
友「学校がなくなる」
男「いい事じゃね?」
友「俺達も亡くなる」
男「どうやって変身するので」
友「これもって」ポイッ
男「なにこれ」
友「天羽々斬」
男「ヤマタノオロチ斬ったやつやん」
友「変身するぞ」
男「えっそういう感じなの?」
友「プリズムープリズマートツカノツルギー」
男「おっなんか光って……まぶし!」ペカッ
友「ピカピカぴかりんミルモでポン」
男「おおおお……」シュウウウ
友「うわっスネ毛ゴリゴリ生えてる」
男「そう言ったよ………」
敵「(「・ω・)「ガオー」
友「まぁいいや、じゃああとは頼んだ」
男「そんな投げやりな感じなの?」
敵「(「・ω・)「ガオー」
男「ええー……じゃあとりあえず」
男「アマノハバキリアターック!」ザシュッ
敵「(´・д・`)うわー」
男「アマノハバキリキーック」ドーン
敵「(/´Д`)/わー」
男「アマノハバキリエルボー」ドーン
敵「( ゚∀゚)・∵.ぐはー」
男「必殺……」
男「夏休みの友!」バーン
敵「(҂дキ)やられたー」
友(夏休之友)「呼んだ?」
男「勝てた……」
友「強いだろ?」
男「強いな……これ」シュウウウウ……
男「あっ制服に戻った」
友「どう?やりたくならない?」
男「うーん、暇だったら付き合ってもいいよ」
友「やった、じゃあついでに重大告白していい?」
男「なに?」
友「俺が悪の組織の親玉なの」
男「へぇ」
友「ラーメンで言う海苔のおっきいやつ」
男「ふぅん」
友「だから最終的には俺をどうにかしなきゃいけないわけなんだけど」
男「まぁどうにでもなるでしょ」
友「なるほど」
男「お前がラーメンの話ばっかりするからラーメン食いたくなってきた」
友「啜る?」
男「啜るか」
―ラーヌン屋―
友「ここの店いっつも落書きされてるよな」
男「いつになったらラーヌン屋から脱出できるんだろうな」
友「おっさん、俺醤油海苔無し」
男「俺は醤油海苔ありで」
おっさん「あいよ」ジャッジャッ
友「海苔食うの」
男「食べるよ」
友「でもラーメンで例えると悪の組織だよ」
男「俺はそう思わないからな」
友「マジで」
男「だからお前も好きだよ」
友「マジか」
おっさん「へいおまち」
友「どうも」パキッ
男「ありがとう」パキッ
友「やっぱラーメンは醤油だよな」ズソソソッ
男「……でもさ」ズソソソッ
友「ん?」
男「食べたあと歯に張り付くのは嫌い」モッチャモッチャ
友「違いない」
―男宅―
男「はー、魔法少年かぁ」
男「(やっぱ最後は友と一騎打ちになるのかね)」
男「(でもぶっちゃけどうにでもなる気がするんだよなぁ)」
男「(ラーメンの海苔だって張り付くけど飲み込めるし)」
男「(むしろアレのおかげでスープが捗るところある)」
男「(海苔単体も好きだしな)」
男「(……スネ毛と脇毛剃った方がいいのかな)」
男「(そういえばスネ毛ってなんでスネだけカタカナなんだろうな)」
男「(脛毛とかは書かないよな)」
男「(脇毛は脇毛なのにな)」
男「(…………)」
男「ワキゲ~~~~」
―風呂場―
男「(脇毛………)」ショリショリ
男「(そう言えばなんでわざわざ魔法少年なんだろうか?)」ショリショリ
男「(幼馴染とか女とかいたはずなのに)」ショリショリ
男「(なんでわざわざ男の俺なんだ?)」ショリショリ
男「(というかなんでわざわざ自分を倒すために魔法少年を作り出したのか)」ショリショリ
男「(むしろ倒されたくないから俺なのか)」ショリショリ
男「(…………)」ジャバーッ
男「(いい出来だ)」ツルンツルン
―翌日―
男「てなわけで」
友「はい」
男「全面海苔買ってきた」
友「はい」
男「今日はこれで素敵な料理を作ろうと思う」
友「ちょっとよくわからない」
男「お前が説明の時に自分を全面海苔で例えてたから」
友「うん」
男「お前の中では全面海苔が悪なのかと思って」
友「うん?」
男「全面海苔はこんなにもおいしく生まれ変われるということを伝えたくて」
友「うーん」
男「材料をたくさん用意しました」
餅 塩ウニ ササミ チーズ 卵 その他調味料
友「ちょっとよくわからない」
男「まず餅」
男「これを焼いて」プクーッ
男「海苔を巻いて」クルクル
男「醤油をハケで塗ると」
男「美味しい」
友「美味しい」
男「次に餅」
男「また焼いて」プクー
男「塩ウニ置いて」チョン
男「海苔を巻くと」クルクル
男「美味しい」
友「美味しい」
男「また餅」
男「焼いて」プクー
男「チーズおいて」トロォ
男「味噌塗って」チョン
男「海苔を巻いて」クルクル
男「美味しい」
友「あっ以外と合う」
男「ササミはちょっとめんどくさい」
男「醤油、酒、ほんの少しのみりん、水で作った特製ダレにニンニクの欠片とすりおろしを混ぜる」
男「そのタレに一口大に切ったササミを一晩つける」
友「一晩待つの?」
男「昨日の夜に仕込んだのがこちら」
男「これを取り出し、海苔を巻く」クルクル
男「溶いた卵にくぐらせ、小麦粉とパン粉につける」
男「揚げる」ジュワァ
男「美味しい」
友「美味しい」
男「たまごを解きほぐす」シャカシャカ
男「好きな調味料入れる」
男「2cm×2cmに切ったのりを入れる」パララ
男「あまり混ぜずにフライパンに流す」
男「巻く」
男「美味しい」
友「美味しい」
男「まだ全面海苔余ってる……」
友「これ十枚入りじゃん……」
男「仕方ない」
男「玉ねぎを切る」トントン
男「炒める」ジュワー
男「コンソメと水を入れる」ドバッ
男「電子レンジでおこげご飯を作る」
男「おこげを海苔で挟み、さらに少し温める」
男「スープに入れる」
男「美味しい」
友「寝れない夜に最高」
男「ササミに切り込みを入れて筒にする」
男「味噌醤油に漬けておく」
男「その間にチーズと海苔を重ねる」ペタペタ
男「重ねる時は糊代わりに味噌醤油をつけるといい」チョンチョン
男「それをくるくる巻く」クルクル
男「巻いたやつを半分に切る」スパッ
男「ささみ筒の中にチーズ海苔を入れる」
男「焼く」ジュー
男「旨い」
友「これは夜食として食べたい奴」
男「ちょっと待ってね、確か冷蔵庫に……」
友「まだなにか作るのか」
男「ここに、アスパラとベーコンがある」
友「おう」
男「ベーコンを敷き、その上にアスパラみっつ並べ、さらにチーズ海苔を乗せる」ツミツミ
男「ベーコンを巻いて、三等分に」クルクル スパッ
男「巻き終わりを下にしてオーブンへ」チンッ
男「美味い」
友「美味い」
男「>>36のささみをはんぺんにしても美味しい」
友「ほう」
男「はんぺんにするときはタレに漬けずに、切り込みを入れた中に少し塗る感じで」ペタペタ
男「焼くときも弱火でじっくり、外をちょっとキツネ色にして」ジュゥゥ
男「美味しい」
友「美味しい」
男「ちなみにかまぼこでもOK」
友「まだ八枚くらいある」
男「今度また食べる」シマイシマイ
男「美味しかった?」
友「美味しかった」
男「海苔は悪じゃないだろ」
友「じゃないね」
男「だから友も悪じゃないと思うんだわ」
友「なるほど」
友「でもあくまでそれは喩え話でな?」
友「俺は悪の親玉なんだわ」
男「でも美味しい」
友「美味しくはないな」
男「人に対して言い換えると、優しい」
友「うーん」
男「善の心を持ってる」
友「そんなことないかも知れない」
男「でも俺の知ってる友は」
男「学校がなくなると忠告したり」
男「俺を見殺しにしたりしない」
男「転んで泣きわめいてたガキの俺に絆創膏を差し出してくれる」
男「そんな奴なんだよな」
友「うーん」
男「何があったかは知らないけど」
男「少なくともお前を悪の親玉とは思わないわ」
友「根っからの善人ってのを一周回った感じする眩しさだな」
友「もう直視できない通り越してくっきり見えるわ」
男「一周回ったらまた善人じゃん」
友「善人じゃないの?」
男「善人だったら多分好きな子の縦笛舐めないし」
男「体操着でオ○ニーしないし」
男「休み時間にお前のズボンを下ろしたりしない」
友「あのころの怒りが今更湧いてきた」
男「ピンクの水玉」
友「最悪の日にやりやがって」
男「仮にお前が悪の親玉だとするけど」
男「それってどうにかしなきゃいけないのか?」
友「仮にも何も悪の親玉なんだが」
友「悪の親玉は倒されるのがセオリーじゃないの?」
男「ラーメンの海苔は残されるのがセオリーなのか?」
友「うーん」
男「あっ」
友「ん?」
男「ねぇねぇ思い出した」
友「えっなに」
男「剃ったよ」マクリマクリ
友「うわっツルンツルン」
男「こっちも」ワキバーン
友「ホントだ」
男「ワキゲ~~~」
友「ワキゲ~~~」
男「このあとどうする?」
友「なんか倒しに行く?」
男「そんな遊びに行く感覚で言われても」
友「多分いろんなところで敵が暴れてるよ」
男「人命にかかわるやつある?」
友「特にないと思う」
男「じゃあ散歩しながら解決していこうか」
友「変身してからいく?」
男「そのほうが楽かもな」
友「プリズムープリズマートツカノツルギー」
友「ピカピカぴかりんミルモでポン」
男「その謎の呪文なんなの」シュゥゥゥ
友「変身の呪文」
男「そういうのって俺が唱えるもんじゃないの?」
―外―
男「子供の頃さー」
ヒソヒソ……
男「よくここ走って公園まで行ったよね」
コソコソ………
友「あったなー」
ナニアレ………
友「先に付いたほうがブランコに乗ったりして」
ママープリキュアガイルー
ミチャダメヨッ
友「あとからきた方は背中押したりな」
ウー↑ウー↓
警察「つまり?」
警察「散歩ついでに悪さをしてる奴らを懲らしめようと思って」
警察「家から着替えて来たのはいいけど」
警察「君たちが不審者として通報されたと」
警察「そういうことでいいね?」
友「厳密に言えば変身してきました」
警察「ああハイハイ、変身ね」
男「ホントなんです」
警察「なんでもいいけど、子供の夢を壊す格好はやめなよ」
警察「君高校生でしょ?恥とか持ってないの?」
男「高校生でピンクの水玉パンツ履いてる奴もいるんで恥ずかしくはないです」
友「僕じゃないですよ」
警察「じゃあ、気をつけてね」バタン
ウー↑ウー↓………
男「怒られたな」
友「お前なんでわざわざパンツの柄お巡りさんに報告したの?なんで?」
男「やっぱこの格好まずいのかな?」
友「お前の精神構造のほうがまずいよ?ねえ?」
男「天羽々斬持ってたら余計マズイよね」
友「捕まりたいなら出すよ」
男「悪と戦う時だけにしようよ」
友「そんなこと言ってたらあっちのデパートに人型の敵がー」
男「人型の敵って何するの?」
友「人を誘拐して餌にしたり?」
男「エグい」
男「そこまでだ!」
人型敵「ん?」
男「それ以上の悪事は、このキュアメンズが許さん!」
人型敵「まって」
男「月に変わって制圧だ!」
人型敵「まって」
男「みんな!俺に元気を分けてくれー!」
人型敵「全部違うからまって」
人型敵「キュアメンズって時点でもう汚いんだけど」
人型敵「プリキュア好き舐めてんの?そんな汚いもん見せないで欲しいんだけど」
人型敵「それからセーラームーンは違うから 可愛さが違うから」
人型敵「キュアホワイトの方が億倍可愛いから」
人型敵「悟空に至っては汚さ全開だからやめて」
人型敵「もう言葉だけで汗臭さ全開だから」
男「面白くないこといつまでも一人でペラペラ喋ってんじゃねえキーック」ドーン
人型敵「ぐわー」
男「アマノハバキリエルボー」ドーン
人型敵「ぐえーっくるしい」
男「くらえ!新必殺……!」
男「虫除けスプレー!」
人型敵「うわあああー!」
男「ふっ……またスプレーを無駄使いしてしまったな……」
友「強いなー」
男「アマノハバキリエルボー強いよ」
友「天羽々斬まったく使ってないけどな」
男「なんでお前毎回アメノハバキリっていうの?」
友「え、アメノハバキリが正式だから?」
男「アマノハバキリじゃないの?」
友「どっちでもよくない?マックとマクドの違いだよ」
男「さて、こいつどうしようか」
人型敵「(頭にアヒルぴよぴよ)」
友「捕獲しとけば?」
男「どうやって?」
友「その腰ベルトについてるお化粧のあれっぽいコンパクトなやつ」
男「これ?」
友「それなんかできるはず」
男「ええー?ほんとー?」
男「えー、これどうしたらいいの?」ゴソゴソ
友「なんかやってりゃどうにかなるよ」
……ピロピロピロピロ
男「おっなんか鳴り出した」
ピロピロピロピロ
シュピーン
キューン(人型敵が吸い込まれる的な音)
パシューン
男「おおー、すげぇ」
男「これの容量何GB?」
友「スマホじゃねぇよ」
男「何TB?」
友「そうじゃねぇよ」
男「そういえばこの間のデカイのは?」
友「俺がこっそり仕舞っておいたよ」
男「これに?」
友「これに」
男「アイツ何Gだった?」
友「メモリみたいに言うなよ」
男「例えると?」
友「3MBくらい?」
男「少ねぇ」
男「ところでさ」
友「うん」
男「いつになったらお前と戦うの?」
友「えー、わかんない」
男「わかんないの」
友「四天王あたりを全員倒したらじゃない?」
男「えー、長い」
友「長くはないなー、お前が倒した二匹、四天王のうちの三位と二位だもん」
男「まじかー」
友「俺の手下、四天王しかいないし」
男「のこり三体しかいないのに「いろんなところで」って言ったの?」
友「三箇所あったらいろんなところじゃない?」
男「でも折り返しかー、疲れちゃうなぁ」
友「でも天羽々斬あるじゃん」
男「まぁね……」
男「というかさ」
友「ん?」
男「俺、昨日の毛をそってる時からお前に聞きたいことあったんだけど」
友「随分具体的な時間指定だな」
男「お前、悪の親玉なのになんでわざわざ対抗手段作ってるの?」
友「……だって、ラーメンがないと海苔は悪になれないだろ?」
男「まるでラーメンがすべての元凶とでも言いたげな」
友「そんなつもりはないんだけど、なんというか」
友「やっぱり悪の親玉は倒されるのが運命だから」
男「なるほど」
男「じゃあなんで俺なの?」
男「幼馴染や女でもよかったじゃん」
友「女にやられるってダサいじゃん?」
男「女装した奴にやられるよりはみっともなくないと思うぞ」
友「うーん」
男「倒されたいの?」
友「倒さないと世界滅んじゃうよ?」
男「なんで」
友「なんでって……悪の親玉の定め?」
男「やらんでいい」
友「やらんでいいと来るか」
男「四天王だけ倒すけど、お前はめんどくさいから倒さない」
友「………」
男「……?」
友「…………」
友「俺さぁ……」
友「難癖つけてお前が戦わないことを予想しててさぁ………」
友「色々考えてたんだけどさぁ……」
友「めんどくさいからは、ないわ」
男「ないか」
友「ないわ」
男「でも、お前を倒すって、要は殺すってことだろ?」
友「まぁ、そうだな、そういう宿命だし」
男「お前を殺すって、要は夏休みの宿題移せないってことだろ?」
友「うーん」
男「つまり俺が自分でやらなきゃいけないってことだろ?」
友「うーーーーーん」
男「だから倒さない」
友「たとえ生き残ってもお前に夏休みの宿題は見せない」
男「あと、ほら」
男「俺、海苔は好きだから」
友「うーん、いつになったら俺は海苔じゃないってわかってくれるのか」
男「まるで俺が現実と喩えの違いをわかってない馬鹿みたいじゃないか」
友「現在進行形でそう思ってるんだが」
男「違うわバーカバーカ」
男「正直、世界は滅んでもいいけど」
友「いいんだ」
男「俺は自分の友達を殺したくないなぁ」
友「ちょっと基準がわからない」
男「知らない他人が勝手に死のうがどうでもいいじゃん?」
友「うーん」
男「あとぶっちゃけた話をすると」
友「うん?」
男「俺が本気でお願いすれば、お前世界滅ぼさなさそう」
友「その絶対的自信にコメントし辛い」
男「頼むよ友、長い付き合いだろ」
友「うーん」
男「海苔料理食べさせてあげるから」
友「別に俺海苔自体はそこまで好きでも嫌いでもないからね?」
男「お願いだよ~~~」
友「その話、最終決戦の時じゃダメなの?」
男「別にいいけど」
友「じゃあとりあえず、三人目の四天王倒しに行こうよ」
男「仲間がやられるっていうのにノリノリだな」
友「そこまで仲間意識ないしな」
友「あいつらは、俺が立場上だから従うだけ」
友「俺は、あいつらがザコだから使うだけ」
男「うわークソかよ」
友「天羽々斬あるから今なら買うぞ、その喧嘩」
男「売る気はなかったけど、おいくらで?」
友「手を出すな」
―所変わって―
虫型敵「ぎゃおー」ブンブン
男「うわぁ……」
友「うわぁ……」
男「これはないなぁ……サブイボ立つ……」
虫型敵「ぎゃおー」ブンブン
男「仕方ない、アマノハバキリ使うか……」
男「アマノハバキリスラーッシュ」シュパッ
虫型敵「ぎゃおー」ブンブンカイヒ
男「スラーッシュ」シュンシュンシュンシュン
虫型敵「うぎゃおーハネガー」ブブブッ………ブブ………
男「ひっさーーーーつ」
男「コンパクト閉じ込め!」
……ピロピロピロピロ
ピロピロピロピロ
シュピーン
ピューン(虫型敵が吸い込まれる的な音)
パシューン
男「また無駄な容量を食ってしまった……」
友「順調だねぇ」
男「ギャグネタがそろそろ切れはじめてるから」
友「メタだねぇ」
男「ぶっちゃけ会話文もキツイから」
友「ダメダメだなぁオイ………」
―なんやかんやあって―
男「四天王の最後の敵を倒し、突如現れた謎の集団も撃破、実はそいつらが世界を手に入れる野望を持っていて、その元凶を倒すべく天へ向かい、集団を唆した神を打ち倒す」
男「だがしかし、地上へ戻ってみるとゾンビが横行しており、唯一生き残った奴らと一緒にゾンビが生まれる原因を叩き潰して世界を戻して、夏休み最後の一日となったわけなんだが」
友「宿題やってねぇよ……」
男「顔真っ青だぞ」
友「日記とかどうするんだよ………世界救ってたら夏休み終わったぞ………」
男「お前滅ぼす側なのにな」
友「うるせぇ」
男「さて、夏休みに始まったこの戦い、出来れば夏休み中に終わらせたいんだが」
友「……いいよ、俺のことを殺す?」
男「いや、結構前にも言ったんだが、俺はお前を殺さない」
男「友達を殺すとか、考えたくもない」
男「だから、新しい案を考えた」
友「……言ってみろ」
男「次の世代に、託してみたいんだが」
友「ふむ」
男「…………」
友「……………」
男「………………」
友「…………いや、もうちょっと詳しく」
男「だから、俺の子供にお前を倒すのを託したいわけ」
友「夏休み中に決着付けたいって話は?」
男「今頃ブラックホールに飲まれてる」
友「なるほどぉ……」
友「というかそもそも、お前の子供が出来るまで俺が待ってるとは限らないんだが」
男「うーん、そこはお願いと言うしか」
友「ええー……お前、こんな嫌な宿命子供にまで託すか?」
男「俺が嫌じゃないからいいかなって」
友「昔お前のことを「善人」と褒めた自分を殴りたい」
友「それにお前の子供が成長する頃には俺の力は俺の子供に移ってると思うんだが」
男「それ遺伝なの?」
友「遺伝という言葉が適切かどうかはわからん」
男「でも、それならちょうどいいじゃん」
男「子孫に決着つけてもらおうぜ」
男「俺は少なくとも、お前を殺したくない」
友「………」
―数百年後―
女の子「ママー」
女の人「なぁに?」
女の子「どうしてあのお山には、おうちが二つしかないの?」
女の人「あらぁ……そうねぇ」
女の人「……世界をかけて、子孫へと繋げるためよ」
女の子「???」
友子孫(二十八代目)「おーい男ー」
男子孫(二十八代目)「なんだよ友」
友子孫(二十八代目)「お前、夏休み暇?」
男子孫(二十八代目)「まぁ、宿題くらいしかやることないけど」
友子孫(二十八代目)「じゃあさ……」
「魔法少年に興味はないか?」
完