◇男・1歳
男「あうあうあ」
幼馴染「うーあ、あーー!!」
男「あうー……ばぁ!!」
幼馴染「きゃっきゃっ」
男「ばぁぁっぶ」
◇男・3歳
男「……」ピコピコ
幼馴染「何やってるの?」
男「ポケモン赤。兄ちゃんね、貸してくれた」ピコピコ
幼馴染「やらしてー」
男「ダーメ、これは一人じゃないとムリ」ピコピコ
幼馴染「ぶくぅ」
男「…………」ピコピコ
男「…………」スッ
男「今バトルだから、やっていいよ」
幼馴染「! わーい!」
幼馴染「これでどーするの?」
男「相手はみずだから、コイツならでんきのわざで」
幼馴染「でんきー? 10まんボルト?」
男「強そうだろー」
幼馴染「うん、10まんボルトーー!!」
ドククラゲ「ディディーッ」トルゥゥン
幼馴染「やった、やった!」
男「じゃあ次、僕なー」
母「すいません、遅れてしまってー。いつも遊んでもらってありがとうございます」
幼馴染母「いえいえ、お互い様ですー。男くーん」
母「男ー? 早く来なさい!!」
男「まーだ、次でこのハゲを倒せるんだってー」
母「そんなの家でやればいいでしょ!! ほら!!」
男「あとちょっとーー!!」
幼馴染母「ほら、幼馴染。男くんにバイバイは?」
幼馴染「バイバーイ、またねー!!」
男「お、おう。またなー!!」
男「でんちきれた」
◇男・4歳
男「よーちえん、もうこないのー?」ピコピコ
幼馴染「わかんない。でもおうちはココだよー」ピコピコ
男「んーどゆことー?」ピコピコ
幼馴染「しょーがっこーに入るためだってママが言ってた」カービィッ!!
男「へー、ってそれ僕のカービィ!! んじゃあ」ネスッ!!
トゥートゥトゥトゥトゥトゥートゥトゥトゥトゥトゥッ
ネス「PKファイアッ!! PKファイアッ!!」
カービィ「イーヤ、ヘッ!!」
ネス「PKサンダアアアアァァァァ!!」ドコオオン
カービィ「イヤアアァァ……」キラン
幼馴染「いやああぁぁ!!」ブン
男「おっとあぶね」フッ
◇男・5歳
男「しょーがっこーじゅけん?」
母「そう、お兄ちゃんもそれをやって小学校に入ったの。だから男も公文とスイミングスクールとヤマハと体操教室に行くの。分かった?」
男「んー?」
母「そこに行けば友達もいっぱい増えるわよー? ゲームも買ってあげるわよー?」
男「! いくー!」
男「だまされた」
兄「そう気を落とすな、これでもしようぜ」ジッキョウ、パワフルプロヤキュウ!!
男「うん!」
兄「んじゃあ、俺はジャイアンツで」
男「僕はライオンズー」
兄「先攻後攻いんじゃんほい!」グー
男「やったー、勝った」パー
男「じゃあ後攻でー」
兄「球場は東京ドームでいいな」
男「うん!」
男「ねえ、なんで松坂いないの?」
兄「いろいろあったんだよ」
男「しょうがっこーにごうかくした」
兄「俺はもう小6だから中学受験だ」
男「どこいくのー?」
兄「日本で屈指の進学校だ」
男「兄ちゃんって頭いいんだねー」
兄「塾のテストでずっと3科も4科も1位取ってるから、そうかもな」
男「おー!!」
男「じゃあ、僕もそこに行くー」
兄「来い来い」
男「ポケモンが動いてるのはやっぱ良いな」ピコピコ
母「まだそのゲームやってるの、早く寝なさい」
男「レポート書いてからー」
母「何回同じこと言ってるの、明日も早いでしょ」
男「んー」ティロリン♪
男「ねれない」
男「ん……? リビングから何か聞こえる?」スッ
母「まだまだあなたは勉強しないとダメなの」
母「勉強して私とお父さんよりもっと上の中学や高校、大学に行かないといけないのよ、分かってる?」
兄「……」カリカリ
母「あなたは天才なの、だから勉強して人のためにならないといけないのよ?」
兄「……」カリカリ
男「……」
男「ねよ」
◇男・小1
男「しょうがっこーに入った」
幼馴染「あー、男!」
男「幼馴染も一緒か?」
幼馴染「最近遊んでなかったからー、また遊ぼうねー」
男「……おう」
幼馴染「そーそーポケモンも強くしたよー今日帰ったらやろー?」
男「ほんとにか?」
幼馴染「ばかああぁぁ!!」
男「だってお前でんきタイプしか使わねえじゃん」
◇男・高3
◇新・学校
男「あっという間に高3か……思えば勉強なんてこれっぽっちもしてない気がするな」
男「つーか、特に何をやったかはあんまり覚えてない。マンガ読んでゲームしてテレビ見て寝てくらいか」
男「一番ショックだったのはパワポケが14で終わっちゃったことだな……まあ、あれで良いと思うけど」
幼馴染「男、おっはよー」
男「よお幼馴染。クラスが全然食い合わないな。今年も一緒じゃないし」
男「そういや、最近学校に来てないみたいだけど大丈夫か、単位とか」
幼馴染「んー多分大丈夫、ちゃんと計算してるから」
男「その考え自体が不安なんだが……どこかで見た気がするわ、その設定。妄想が現実になるんだっけ」
幼馴染「その目、だれの目?」
男「うん。って知ってるのかよ、影響受けたりしてるんじゃないだろうな」
幼馴染「大丈夫、昔のFF11の友達が言ってたことだから」
男「昔って……あぁ、今はドラクエ10やってるんだっけか」
幼馴染「新生FF14も出るし、今年は良い年になりそう」
男「……おう」
◇幼馴染の家
男「おじゃましまーす」
幼馴染母「あら男くん、幼馴染が待ってるわよー」
幼馴染「男っ、ゲームやろっ。ゲーム」
男「幼馴染がWiiを持ってるってことで、俺はソフトをいくつか持ってきたぞ」
幼馴染「大乱闘に、マリオカートに、Wii Sports Resort。それからマリオパーティ8ね」
男「まあ隠しキャラとかは本体が違うから出ないけど、別に支障はないだろ。これで朝まで楽しむぞ!!」
幼馴染「おー!!」
男「っしゃあ、スターゲット!! おい、次は幼馴染の番だぞ。幼馴染?」
幼馴染「……」スピースピー
男「そうか、寝ちゃったか。まあぶっ通しで12時間とかやってたからなあ、しかしまだ夜の8時か……」
ガチャ
幼馴染母「二人とも、晩御飯くらいは食べるでしょ……って幼馴染、寝ちゃったの?」
男「はい、この通りぐっすりです」
幼馴染母「そうね……」
幼馴染母「じゃあちょっと話をしましょう」
幼馴染母「男くんってどこの大学受ける?」
男「勉強してないからダメかもしれないですけど、旧帝大の理系ですかね。数学だけは塾に行ってて出来ますから」
幼馴染母「へえ」
男「旧帝大を受けるのは進学校の意地みたいなもんなんですけど、2次のテストは判定Bが取れたんで。センターはEですけどね。ハハハ」
幼馴染母「勉強せずにそれってスゴいわ」
男「ハハハ、スゴくないですよ。昔の経験値だけで問題を解いてる状態なので……」
男「それに、俺は研究をして、人のためになるようなものを作りたいっていう気持ちがありますから」
男「本当は小説家になりたかったんですけど、文才ないですしね」
幼馴染母「そう」
男「それから、幼馴染は学校に来る頻度が次第に下がり、一週間来ないなんて時もあった」
男「ゲームにハマったから学校に来ないんだろうと高をくくっていたが、実際は違っていた」
◇幼馴染の家
幼馴染母「あら、男くん。こんにちは」
男「幼馴染はいますか?」
幼馴染母「幼馴染なら2階でゲームしてるわ」
男「今日も学校に来ずにゲームですか……」
幼馴染母「そんなにあの子を責めないでね。幼馴染は男くんに付いていくだけでも必死だったのに、進学校に入ったでしょ? 成績もクラスで邪険にされるくらい悪くなっちゃったの」
男「……いじめ、ですか」
幼馴染母「悪かった生徒はテストを返す時に先生が点数を言って笑い物にするらしいわよ、酷いわよね」
男(確かにうちのクラスでも言ってた気がする……あの野郎)
幼馴染母「それでバカ呼ばわりされて、ずっとそのキャラで定着しちゃって……耐えられなかったって」
男(もしかして、あいつ。俺と幼馴染母さんの会話を聞いて……)
男「……2階に上がってもいいですか」
男「携帯がガラケーからスマホに代わっても、アイツは変わることなく来ない」
男「それまでのアドレスで、もう使ってないのは全て消してスッキリさせた結果、幼馴染と家族とオタク友達だけに」
男「小学校の頃はあんなにもらってたが、結局ほぼメールをすることなく、ただ登録しかしてなかったし」
男「ただ、メールを送ったところで幼馴染が来るとは思えないが」
男「俺が直接言っても来なかったんだし、もう来ないのだろう」
男「……来ない」
男「卒業式」
男「センターと2次の間に卒業式をやるとはな……あははははは、おほほほほほ」
男「いや、現代文は行けましたよ。でも古漢がボロボロでねえ……」
男「……幼馴染はセンターを受けずに推薦で遠いところの薬科大学に受かったらしい。ちゃんと卒業認定はしてもらったってのはせめてもの救いだ」
男「つまり離れ離れになる」
男「18年、か」
男「……でも、あいつは、幼馴染は、来ない」
◇式典の最中
男(幼馴染、大乱闘も3DSとWiiUの2機種で出るんだよ)
男(マリオカートもWiiU版で出るし、今年もまた忙しくなりそうだね)
男(ポケモンもXYが出たよ、ファイアローのせいでキノガッサが息してないよ。でんきポケモン使いには関係ない話だけど)
男(そういや10まんボルトが弱くなったよ、どんなポケモンにも10まんボルト積んでたからそれはショックでしょ)
男(FF14楽しそうだね、俺も受験が終わったらやってみようかな)
男(DQM2も出たよね、リメイク版の。あれもやるよ、幼馴染)
学校の先生「幼馴染」
男(だからさぁ、幼馴染来てくれよお……)
シーーーーーン
男(そうだよね、物語みたいに現実は甘くない、かぁ)
男(ずっと物語読んでたから、現実の辛さが分かんなくなっちゃったよ)
男(幼馴染……)
学校の先生「男」
男(物語だったら絶対あの曲が流れるような場面だな)
男(悲しみの向こうへとたどり着けるなら、僕はもうこれ以上何も感じなくていい。か)
男(あるわけねえだろクソが、クソが……クソがあああ!!)
男(幼馴染……)
男「……はい」
男(俺は、どうすればよかったんだよ……)
男(そうか、その手があるか)
男(過ぎ去ったことはもう後悔しても遅い。だけど……)
◇2月24日・家
男「ついに明日が国立の入試か……」
男「……勉強しなきゃいけないけど、全然勉強に手がつかないや。これを仕上げないといけないから」
男「どうにかして幼馴染に俺の気持ちを伝える方法はないもんか……メールも見てくれないだろうし……だから」
男「だから俺たちの人生を物語にして、どこかに書けば、幼馴染も気付いてくれるんじゃないか。と思ったんだ」
男「あいつ、暇な時はスマホでスレとかよく見てたからな」
男「まさか無駄に書いてた小説がこんな時に役に立つとは思わなかったわ」カタカタカタカタ
男「今まで見てくれていた人、本当にありがとう」
男「いろいろと端折ったり、誤魔化したところもありましたが、あなた達のおかげで書き切ることが出来ました」
男「男と幼馴染の他愛のない18年間を全て注いだ、渾身の一作だと思ってます」
男「まぁ、ほぼノンフィクションなんで、俺の人生を曝け出しただけですがね……(笑)」
男「最後に、幼馴染。見ているか? 俺だ、ここまで見てたらもう分かるだろ?」
男「お前がおかしいなって思ってることがあるなら、その感覚は正しいから気にするな」
男「いろいろと雑でスマンな。どれだけ書けば気付いてくれるのか分からなかったんだ」
男「一応俺の、『君の知らない物語』これで大体は書けたはずだ。一緒に歌ってたよな、この曲。高2で札幌に修学旅行に行った時も」
男「その後行ったデカいアニメイトでニャル子を大人買いしたのもいい思い出だ」
男「大学は別になるが、死に別れるわけじゃないから寂しくないからな。元気でやれよ」
男「案外俺は浪人しそうだから、もしかしたら遊びに行くかもしれないから、準備しとけ」
男「……何を言っても無駄かもしれない。意味がないかもしれない。でも、俺はお前に言いたいことがある」
男「お前と18年間、一緒に生きてきて楽しかった」
男「本当に、ありがとう!!」
そして俺たちの人生は、これからも続く。
27 : 以下、名... - 2014/02/24(月) 18:49:13.78 gW03dJNE0 24/24
ここまで本当にありがとうございました。
一応、質問があったら受けます。