関連
【ガルパン】西「四号対空戦車?」【1】
【みほたちが去ってから】
西「………」
西(………)
~~
~~~~~
~~~~~~~~
「まぁ、高校生相手じゃ所詮この程度でしょうね」
「なんの考えもなしに真正面から来てくれたから探す手間が省けたわ」
「もっと戦術はしっかり練ったほうが良いわよ?」
「統制の取れないチームはその時点で負け。戦う前から勝敗は決まってた」
みほ「………」
西「………」
みほ「…あなたのせいだ………」
西「うっ…」
みほ「あなたが指示を無視して好き放題やったから作戦も台無しになって、味方もみんなやられて負けた…」
西「も、申し訳ありませんでしたっ!!」
ダージリン「呆れたわ。大洗の命運がかかった試合だと言うのに」
アンチョビ「助けに来たと言うより、バカ騒ぎしに来たって感じだったな」
西「うっ…」
ミカ「対岸の火事だと思えば気楽だろうね」
ケイ「自由には責任が伴うってのを自覚すべきよ」
西「………」
カチューシャ「あなたの部下は全員八甲田山でも送ったほうがいいわ。もちろんあなたもね」
まほ「部下の暴走を止められないようでは隊長として失格だ」
みほ「あなたのせいで…」
「あなたのせいで…」
~~~~~~~~
~~~~~
~~
西(あれは…"夢"…だよね………?)
【同日 昼】
西「………まじぃ」モソモソ
ナース「ガマンしなさい。あれだけ馬鹿騒ぎしてても、一応入院患者なんだから」
西「わ、私は健康体そのものですぞっ!どこにも異常はありませんっ!」モソモソ
ナース「異常だらけよ。腕も足も使えないのだから」
西「ぐぅ…」
ナース「それに、他の患者さんも同じもの食べてるのよ?」
ナース「中には食事が摂れずに点滴で栄養補給している人もいるけど」
西「ぬぅ…食の大切さが痛いほどわかるのであります。知波単学園の食事が恋しい」ゲッソリ
ナース「あら。学校では何を食べてたの?」
西「そうですね、銀舎利あるいは握り飯、あと味噌汁ですね」
西「それで、たまに焼き魚やお漬物がついたりします。なかなか美味いんですよ~コレが!」
ナース「…」
西「…あれ? 看護婦さん?」
ナース「それより昨夜は遅くまで騒いでたみたいだけど」
西「あぁ、うるさくしてすみません…」
ナース「一体何をしてたのかしら?」ニヤ
西「へ? …雑談してそのまま寝ただけですが?」キョトン
ナース「それだけ?」
西「ええ、そうですが?」
ナース「そっか」
西「??」モグモグ
ナース「いや、ね? あんだけ激しくはしゃいでたのだから」
ナース「エッチでもしてるのかなって」フフッ
西「んグゥッ!!?」
ナース「ふふっ、冗談よ。ほらお水」
西「ゲホッゲホッ!! …そ、その冗談はキツ過ぎますぞっ!」
ナース「あはは! ゴメンゴメン!」
西「…まったく。何を仰るかと思えば…」
ナース「あはは。今時の若い子は早いからねぇ~」
西「またおば様みたいなことを仰る」
ナース「あら失礼ね。まだ20代よ?」
西「そうなんですか」
ナース「あ、でもね」
西「?」ゴクゴク...
ナース「エッチするときはちゃんと避妊しなきゃダメよ?」
西「」ブフォォッ!!
看護婦「わっ汚い!!」ヤダモー
西(ふぅ、食べた食べた)ポンポン
西(…でもやっぱり知波単の食事が恋しいなぁ)
西(何故か看護婦さんは唖然としてたけど、やっぱり我が家の食事が一番だ)
西(…というかあの看護婦さん、やたら変な話ばかりしてきたけど何だったんだ?)
西(よくわかんないけど、きっとああいうのを"助平"っていうのだろう)フム
西(それはそうと、入院生活というのは退屈だなぁ…もう何度思ったかわからないけど)
西(ダージリン入院しないなぁ。紅茶の飲み過ぎとかで。…流石に不謹慎か)
西(………ちょっと外に出てみようかな?)
西「いよっと」E:車いす
西「よし、吶喊!とーつーげーきー!」キコキコ
ゴンッ!
ゴッ!
西「…操縦はヘタクソだから練習しなくちゃ」
【病院 エントランス】
西(ん~! 今日はいい天気だなぁ)ノビー
西(部屋でゴロゴロするのもいいけど、やっぱり動物たるもの陽の光を浴びてた方が健康的だ)
西(そういえばこの先に駄菓子屋があったはず。ちょいと覗いてみるか!)
西(久々に水飴食べてみたいなー。あ、あとラムネもここ最近飲んでないな。小銭あるかな?)チャリチャリ
?「………」
?「………」
【駄菓子屋さん】
西「お、ヤンヤンつけボーだ。懐かしいなぁ」
西「おおっ!! ベーゴマもあるぞ!!」キラキラ
爺さん「お嬢ちゃんなかなか詳しいねぇ」カッカッカ
西「ははは。私の地元にもこんな感じの駄菓子屋がありまして!」
西「そんなことよりおじさん! このベーゴマ、ちょいとやらせて下さいな!」
爺さん「お!いっちょやるか!」ゴトッ
― 西絹代、ベーゴマに没頭中
?「………」
?「………」
西「いやぁ~楽しかった!」ハッハッハ
爺さん「お嬢ちゃんなかなかやるじゃないか! 若いのに珍しいねぇ!」カッカッカ
西「はっはっは! 実はこう見えて地元のお爺さん達としょっちゅうベーゴマをやっていたのですよ!」
西「勝ったら相手のベーゴマを貰えるってルールがあったから、たくさん集めてました!」
爺さん「あったなぁそんなルール…」ウンウン
西「…でも母が全部ゴミの日に捨ててしまって」ズーン
爺さん「…ぅっ…」ジワッ
― その後、一通りベーゴマを堪能して駄菓子屋さんを後にした
本当はもっと長居したかったけど、長時間病室を空けていると看護婦さんに怒られてしまう。
西(あの駄菓子屋はいいな。また今度行こう)ポリポリ
西(次はメンコもやってみようかな~)
西(知波単にもこういった駄菓子屋さんがあればいいのに。駄菓子屋はいいぞ!)
?「………」
?「………」
西「隠れてるのはわかるぞ?」
西「玉田と…細見か」
玉田「!? ど、どうしてわかったのでありますか?!」
細見「勘付かれぬよう慎重に行動していたはずなのに…!」
西「はっはっは! 私はベーゴマだけじゃなく隠れんぼも得意だぞ! 隠れるのも探すのもなっ!」キリッ
細見「さすが西殿でありますっ!」
西「…で、戻って来たという事は何かあったのだろう?」
玉田・細見「ええ」
西(…この様子だと"ワケあり"かなぁ…)
玉田「実を申しましと、隊長殿が不在の間、我が知波単学園ではちょっとした意見の対立が起きておりまして…」
西「意見の対立…?」
玉田「はい、先日学長殿が」
学長『我が校も戦車道をもっと盛んに行うべきだ』
学長『だから、戦車道に費やす予算を増やすことにしたよ』
玉田「…と、申しておりまして」
西「おお! それは朗報ではないか!」
玉田「その通りです! だから戦車を追加すべきと進言した次第であります!」
西「ふむふむ」
西(安直に『無人機を増やすべき!』と言わないところは褒めるべきだ)
玉田・細見「そこで隊長殿!!!」ジリッ
西「う、うむ(近い近い!)」
玉田「今ここで我々に下知を下して頂きたい!!」
西「げ、下知??」
玉田「私は知波単学園の伝統文化、誇りを継承するべく、従来の戦車を拡充すべきと提言しますっ!」
細見「西殿! 玉田の戯言に耳を傾ける必要は皆無ッ! 大艦巨砲主義の如く、強靭な装甲と強力な砲を搭載した戦車を導入すべきです!!」
玉田「貴様ぁ!! 知波単の伝統を忘れたのかッ!!」
細見「貴殿こそ過去の栄光にいつまでも縋り付いているっ!! 我々は新たな道を模索すべきぞ!!」
西「お、おい、お前たちケンカは…」
玉田「いえ隊長殿! こいつは弛んでおります! 今日こそはギャフンと言わせてやります!!」
細見「望むところよ!! 貴殿のヒン曲がった根性いますぐ叩き直してやるっ!!!!」
パチン!!
玉田「貴様! このォ!!!」
バチ-ン!!
細見「こいつッ!!!!」
パシィィィィィン!!
西(将棋やり始めた…)
玉田「王手っ!!」パチン
細見「ぐっ…!」
玉田「うははは参ったか! これぞ私の実力なり!!」
西(おいおい…。一つだけ進め過ぎてないか。それじゃ…)
細見「」パチン
玉田「ああーっ!? 私の飛車がぁ!!」
細見「はっはっは! 油断大敵だ! いかなる時も真剣勝負!!」
西(こちらはまた随分と守りが堅いな…)
西(ふむふむ…)
「………ニシタイチョウドノ…」
西「うぉあっ!!?」ビクッ
福田「…先ホド振リデアリマス…」ドヨーン
西「び、びっくりしたぁ!福田、お前かくれんぼの才能あるぞ…!」ドキドキ
福田「……光栄デアリマス……」ドンヨリ
西「…で、福田は福田で何をそうドンヨリしているんだ…?」
福田「実を申し上げますと…」
福田「隊長殿がご不在の間に知波単が真っ二つに分裂してしまったのであります……」
西「なっ!?」
西「それは先程聞いた戦車の導入についてか?」
福田「それも含め、知波単学園が今後すべき戦術について揉めているのであります…」
福田「従来通り、知波単の伝統を重んじ"突撃すべき"という玉田殿と」
福田「先日の聖ぐろ戦や大洗戦の戦訓より"新たな戦術を模索すべき"という細見殿」
西「…」
福田「お二方の考はそれぞれ一定の賛同者を得ており、知波単学園は見事に真っ二つであります…」
福田「そしてその"玉田派"と"細見派"の二大勢力による縄張り争い的な事がしばしば起きておりまして…」
西「おい! それは笑えん話だぞ!!」
福田「ええ…」
福田「対立が起きるたび将棋だの相撲だの竹馬といったもので雌雄を決するようになったのであります……」
西「なにッ!?」
西「………ん?」
福田「わっ、わたくしは鳥頭ゆえに将棋は苦手でありますし、このチンマリとした身体では相撲も黒星なので立つ瀬がありません!!」クッ
福田「そうしている間にも皆一同戦車そっちのけで抗争を…」
西「待て、待たんか!色々おかしいぞっ!?」
福田「?」
西「いや『?』じゃないだろう! 戦車の訓練はちゃんとやってるのか?!」
福田「いえ! 全くやってないのでありますっ!!」キッパリ
西「」
福田「昨日は"おはじき"で勝敗を競っておりましたっ!!」ビシッ
西「」
福田「…あれ? 西隊長殿???」
玉田「ふははは! どうした細見。降参するなら今のうちだぞ?」
細見「馬鹿を抜かすな! 私は一歩たりとも後ろには下がらぬ!」
西「お、おい、お前たち。戦車の訓練は…?」オソルオソル
玉田「西殿、今暫くお待ち下さいませ。今まさに此奴めを追い詰めている所であります故に」
細見「そんなことはありませんぞ隊長殿! ここから私の逆転劇をお見せしませう!」
西「おっ、そうだな」
パチン!
パチン!
西「じゃなくて聞けやお前らぁぁぁぁぁ!!!」ガァァァッ
細見・玉田「ひぃぃぃっ!!?」
西「戦術について意見が対立するのはまだ良い」
西「それを将棋や相撲で解決を図るのも平和的で結構だ」
西「だが肝心の戦車道そっちのけは本末転倒だろーがっ!!」
玉田「おお! そう言われてみればすっかりこんこん忘れておりました!」ハッハッハ
細見「そこに気付くとはさぁすが西殿! 目の付け所がシャープですなぁ!」ハッハッハ
西「じゃかましいわ!!!」ガァァッ
西「お前たちは知波単学園の何だ!?」
玉田「はっ! 知波単学園の玉田! 戦車乗りであります!」
細見「同じく知波単学園の戦車乗り、細見ですっ!」
福田「更に同じく知波単学園の戦車乗り見習いの福田でありますっ!!」
西「で、昨日やった訓練は!?」
玉田・細見・福田「「「おはじきですっ!!!」」」
西「」クラッ...
― 砲弾の代わりにこのバカタレ共を詰め込んで射撃したろか。…と、本気で思った西絹代でした。
西「…ひとまずだな」
西「まず私がいなくても真面目に戦車の練習はすること!」
玉田「あの…」
西「どうした玉田?」
玉田「先日より戦車道を希望する者が増えた為、戦車の数が足りないのであります」
西(えっ? そんなに履修者増えたの?! 結構あったはずなのに…)
西「な、ならば順番に乗れば良い」
玉田「なるほど!」
細見「それで訓練なのですが、私は先日の西殿の戦術を提案します」
玉田「何を言う!今までのように知波単一同火の玉として突撃あるのみ!!」
細見「貴殿はまだ懲りぬか! 往生際が悪い!」ドン!!!
玉田「それは私の台詞だ! このうつけ者が!!」ジャラジャラ
福田「け、ケンカは良くないのでありますっ!」カン!!
西「おいこらサンマすな! というかその台どっから持って来た!?」
西「まずお前たちは根本的に間違ってる」
細見「そう言われると仰る通りです!」
西(ようやく気づいたか…)ハァ
細見「西殿がいるのに"サンマ"はおかしいですな!」
玉田「あっ! こ、これは失礼いたしましたっ!!」
福田「申し訳ございません! 福田気付かなかったのであります!」
西「ちがぁぁぁぁぁぁぁぁう!!!」
西「いいか、耳の穴かっぽじってよ~く聞け」
西「確かに我々知波単学園は長年突撃を伝統として敢行してきた」
玉田「その通りです!さすが隊長殿!」
細見「そんな…」ジワッ
西「しかし!!」
玉田・細見「!」
西「一方で戦術を見直すべきという考えも胸中にある!」
細見「!」パァァ
西「私も入院中ただプラモデルを作っていたわけではないぞ。今後の知波単のあり方についても色々考えていた」
玉田・細見(ぷらもでる???)
西「そこで考えたのだが…まず、」
西「私の下に玉田・細見の両名を副隊長として任命する!!」
玉田・細見「!!!」
福田「すごいであります! 知波単学園の副隊長が二人も!!」
西「知波単学園の伝統は確かに真正面から正々堂々対峙することにある」
西「そしてそに突撃戦術により、過去にはベスト4入りという成果も出ている」
西「…しかし、ここ最近の戦績を鑑みるに、それだけで強豪校を相手に勝てるほど戦車道は甘くはないと思ったのだ」
玉田「うっ…!」
西「そこで!!」
西「玉田にはこれまで戦術を主軸に、その機動力・突破能力を最大の武器とし、敵戦車体の懐に潜り込む戦術を任せる」
西「素早く敵戦車の弱点を叩くことが可能な位置へ立ち回り、敵戦車の行動を封じる」
西「同時に敵の連携を乱し、包囲する。砲ではなく足で相手を切り伏せる忍者の如く、変幻自在の戦い方が求められる」
西「一方でこれらは行動のタイミングを見誤ると戦隊が崩れ、大敗北に直結する!!」
西「やることは多いが、出来るか? 玉田」
玉田「やってみるのであります!!」ビシッ
福田「………」メモメモ
西「次に!」
西「細見には攻守に長けた戦車を指揮し、敵の切り札を叩く役目を任せよう」
細見「了解でありますっ!!」
西「今の知波単所有の戦車では叩けない戦車が数多く存在する。先日の大洗女子のポルシェティーガーがまさにそうだ」
西「それら重戦車は我々の戦車では叩けないどころか、逆に遠方から我々の戦車を悠々と撃破する火力を持つ」
西「そういった戦車に対抗するための部隊だ。わかるな?」
細見「はい!」
西「装甲が厚く火力が高い…ともなれば当然機動力が落ちる」
西「ゆえに移動・目標の捕捉、そして攻撃。これら一連の動作に無駄があってはただの木偶の坊だ」
細見「…」
西「どこに配置するか、どの戦車を狙うか、戦車のどこを狙うか、目標撃破後はどうするか」
西「その1つ1つの判断に智将としての手腕が問われる!」
西「当然ながらこちらもまた一筋縄ではいかない」
西「これが私の考える"もう一つの"知波単戦術だ。どう思う?細見」
細見「諸手を挙げて賛成致します!!」
西「この戦術が上手く実を結べば非常に強力なものとなり、強豪校を相手に引けを取らぬ戦いが出来るだろう」
玉田・細見・福田「おおおお!!」
西「ただし!」
玉田・細見・福田「!」
西「この戦術はたった1つの条件を満すだけで」
西「150% "惨敗"する」
玉田「ええっ?!」
細見「その1つの条件とは何ですか?!」
西「連携の崩壊だ」
細見・玉田・福田「!」
西「本戦術において真に重要なのは機動力でも火力でもない」
西「適切な情報を、適切な場所へ、適切なタイミングで伝達する力」
西「すなわち玉田隊、細見隊の連携、そこに全てがかかっている」
細見・玉田「…!」
西「まず玉田隊の迅速な進軍により、敵より優位な位置を確保」
西「そして多方向から奇襲をかけることで敵の連携・統制を乱し、作戦の実行を遅らせる」
西「その間に細見隊は敵戦車を撃破できる場所へ配備」
西「そして攻撃、敵戦車を確実に仕留める」
西「こちらは正確な連携を固め、相手の連携は乱すというのが本質だ」
西「………以上が私の考える新たな知波単学園の戦法だ!」
玉田「…」
細見「…」
福田「…」
西(あ、あれ? …みんな黙り込んじゃったぞ? ちょっと無理があったかなぁ…)
玉田「さすがです隊長殿!!」
福田「非の打ち所がありません! 完璧であります!!」
細見「素敵であります西殿ぉ…!」
西「そ、そうか。気に入ってもらえて何よりだ!」
細見「はい! 質問であります!」
西「うむ、聞こう」
細見「その、"攻守に長けた戦車"というのは如何なるものでしょうか?」
西「四式中戦車、五式中戦車・(試製)五式砲戦車一型ないし二型を中心に導入を検討したい」
西「ただ、このあたりの車両は使用可否が不明瞭なものもある。特に五式砲戦車は怪しい。連盟の返答待ちだ」
西「そして、敵の重戦車を叩くために、切り札となる車両を出す」
細見「その切り札とは?」
西「大型イ号車だ」
細見「大型イ号車?」
玉田「初耳です」
西「ドイツの超重戦車に触発された日本が開発した戦車だ」
西「大雑把に言えば日本版マウスといったところだろうか」
西「重量は諸説あるが150トン、主砲は15糎砲、副砲も47粍が2つと超強力な戦車だ」
細見・玉田・福田「!!」
西「ただ、この車両も先述の新規増設車輌同様に、一部不明瞭な点がある」
西「そのため連盟の認定待ちとなるが、配備されたら間違いなく強力な味方となるだろう」
西「また、玉田隊にも新規に2つ戦車を増やそうと思う」
玉田「! それはどんな戦車でしょうか!?」
西「まずひとつが三式中戦車」
玉田「おおっ!大洗のアリクイ殿が乗っておられるやつですな!」
西「うむ。そしてもう1つが」
西「特三式内火艇だ」
玉田「…ん? ちょっと聞きそびれてしまったであります」
西「もう一度言うぞ。特三式内火艇だ」
玉田・細見・福田「………」
玉田「………なにゆえ…そのようなものを…?」
西「玉田、お前の隊には機動力により、なによりも素早く敵地に到達し、相手を撹乱し、状況を後続部隊に伝達しなければならない」
西「そのためには陸地だけでなく時に川や池を潜ることも必要とされる」
玉田「あっ!」
西「大会の会場によっては川や湖によって迂回を余儀なくされる場合もある」
西「しかし、それは我々には関係のないものだ!!」
西「川があれば流れに逆らい、湖があれば横断するまで!」
西「そのための戦車だ」
玉田「なるほど…!」
西「玉田隊に走れない場所など無いと心得よ!!」
玉田「はいっっ!!!」
玉田「それでは早速知波単に戻って訓練をしましょうぞ!」
細見「同意であります!私辛抱たまらんのであります!!」
福田「同じく!」
西(巡航戦車と歩兵戦車)
西(ダージリンがいなかったらこんな運用方法、思いつかなかっただろうなぁ)
西(…ただ、問題は絶対に起きる。むしろ起きないわけがない)
西(この2つの戦術と2つの組織の選出こそが、かつて経験した"失敗"なのだから)
西(だから、私は今度こそ成功へと…!)
西「よし、それで今後の訓練について私から幾つか提案がある」
玉田「何でございましょう!」
西「基本は玉田隊と細見隊の紅白戦を主軸にするが」
西「3日に1度、誰がどの車両のどの座席に就くかを完全ランダムにする」
細見「何故ですか?」
西「全てのメンバーが全ての戦術を学び、"穴"を無くすためだ」
西「たとえば欠員が出たり、試合において予想に反する結果になった際に総崩れでは困るわけだ」
西「そういった予想外な事態が発生した時に、それらを補うための柔軟性もまた必要だ」
福田「なるほどであります!」
西「それに、同じ編成で同じ試合ばかりではつまらないだろう?」
西「色々試してみるのも戦車道の楽しみの一つだよ」
西「私がいない間、知波単学園を頼んだぞ。玉田、細見、そして福田!」
玉田・細見・福田「了解!!!」
【病院 エントランス】
西「ほっせほっせ…」キコキコ
西「はぁ…はぁ…」キコキコ
西「やっと…着いた………」フゥ...
西(歩けばすぐだけど車椅子だと結構だったなぁ…)キコキコ
西(…にしても)
西(しつこいなぁ…!)
「あら、車椅子でリハビリでもしてるのかしら?」
西「えっと…初めましてですかな?」
カチューシャ「この間のエキシビション戦と大学選抜戦で会ったじゃないの!」
西「あぁ! カチューシャさんでしたか!お久しぶりであります」ビシッ
ノンナ「привет там」
西「そしてモンナさんもお久しぶりです」フカブカ
ノンナ「モではなくノです。ノンナです」
西「あ…失礼しました」
西「…と、言うことはお二方はお見舞いに来て下さったのですか?」
カチューシャ「そうよ。このカチューシャ様がお見舞いに来たんだから感謝なさい!」
西「はるばる来てくださって有難うございます」フカブカ
カチューシャ「…にしても、あなたのことだからまだ眠りこけているかと思ったけど、意外に早いお目覚めね」
西「あはは。とはいっても1週間くらい寝ていましたけど」
カチューシャ「それだけ寝たら元気になるわよ」
西「ええ。寝る子は育つと言いますからね。少し背も伸びたような気がします」
カチューシャ「それは本当なの?!」ガタッ
西「あとで看護婦さんにお願いして測ってもらおうと思います」
カチューシャ「ノンナ! 明日からお昼寝の時間を増やすわよ!!」
ノンナ「寝過ぎれば良いというものではありませんよ同志カチューシャ」
西「あれ? そういえば試合の方は?」
カチューシャ「もちろん勝ったわよ。だから次の相手が決まるまで少しだけ皆を休ませてるの」
カチューシャ「このカチューシャのご厚意に感謝することね!」
西「そうでありましたか!」
カチューシャ「特に無人機は色々大変だから人も機会もしっかり休ませたげるのよ! 偉いでしょ!」エヘン
西「確かに。戦車とは勝手が違うので大変な思いをしました」
カチューシャ「しっかし理不尽なルールよねぇ。使う側が言うのも何だけど」
ノンナ「同意です。高校間の"格差"を広げる改悪に過ぎません」
西「やはり皆さんもそうお考えですよね」
カチューシャ「ということは、あなたもなの?」
西「ええ。無人機でこっ酷い目にあった一人です」
西(…まぁあれは私の浅はかさが原因だけど)
西「無人機といえば、つい先程、西住さんたちがいらっしゃいました」
カチューシャ「ミホーシャが?」
西「ええ。次はサンダースと対戦するとのことです」
カチューシャ「ミホーシャも気の毒ね。立て続けに強豪校とブチ当たるんだから」
西「そうですね…。それでも、大洗の皆さんが"また"無人機を落としてくれる事に期待しています」
ノンナ「…」
カチューシャ「…無理よ」
西「な、何故ですか?!」
カチューシャ「あなたはサンダースが何持ってるか知ってて言ってるの?」
西「お恥ずかしながら、よく存じ上げないのであります…」
カチューシャ「高度1万メートルを飛ぶ大空の要塞よ」
西「!」
ノンナ「残念ですが、大洗女子学園が所有する対空戦車では、高度1万メートルの無人機を撃墜するのは困難かと思われます」
西「…」
カチューシャ「カチューシャたちの無人機ですらそこまで行くのは大変なんだからね」
カチューシャ「だから、ミホーシャたちもここまでよ。残念だけど」
ノンナ「…」
西「果たしてどうでしょう」
カチューシャ「なによ。勝算でもあるのキヌーシャ?」
西「今まで色んな苦悩を乗り越えてきた西住さんです」
西「西住さんなら、たとえ高度1万メートルを飛行する無人機の対抗策もきっと編み出すでしょう」
カチューシャ「無理よ。絶対に無理なんだから!」
西「1万メートルを飛ぼうが大気圏を飛ぼうが…」チラッ
ノンナ「?」
西「何とかしてくれますよね?」
ノンナ「えっ…?」
カチューシャ「出来るのノンナ?!」
ノンナ「いえ…さすがn
西「カチューシャさんがお願いすれば出来ます」
ノンナ「え」
カチューシャ「ノンナ…出来るの…?」
ノンナ「Да」
カチューシャ「凄いじゃない! さすがノンナだわ!!」
ノンナ「…」←褒められて嬉しい
西(振っといて言うのも何だけど、ノンナさんがちょっと心配になってきた)
西(しかし…)
ノンナ「…」
西「気になりますか?ノンナさん」
ノンナ「はい?」
西「どうも駄菓子屋からここへ戻ってくる間、ずっとこんな感じでして」
ノンナ「…何がでしょう?」
西「私も"あれら"が何を知りたいのか存じませんが、ずっと付けられていますね」
ノンナ「………」
ノンナ「では、気付いてたのですか?」
西「ええ。幼いころからよく隠れんぼをやっていましたので、こういうのには敏感だったりします」
ノンナ(隠れんぼ…?)
カチューシャ「ちょっとノンナ! キヌーシャ! このカチューシャを仲間外れにしないでよねっ!」
ノンナ「」ボソボソ
カチューシャ「えっ!ていさモゴゴゴゴ...」
ノンナ「シーッ」
西「…」
西(このお二方の所からではなさそう…かな?)
西(…ふむ。ここはひとつ)
西「ノンナさん、カチューシャさん」
カチューシャ「今度は何よ?」
ノンナ「はい」
西「…」ジッ
ノンナ「!」ピクッ
ノンナ「…どうされましたか?」
西「実は私はこう見えて」
西「けっこうアホなんです!」デーン!
ノンナ「…」
カチューシャ「…」
西「…」
カチューシャ「…知ってるわよそんなもん」シレッ
西(…そう返ってくるのは分かってたけど、やっぱり辛いものがある)
西「そんな私ですが、ついこの間は聖グロリアーナ相手に "完 全 勝 利" をしました!」
ノンナ「その試合については私達もよく知っています」
カチューシャ「そうね。あなたにしてはホント良くやったと思うわ」
西「自他共に認めるアホな私ですが、あの強豪校である聖グロに勝ったのには」
西「秘密兵器を使ったからです!!」
ノンナ「何ですって!?」ガタッ
カチューシャ「ちょっと!それどういうことよ!!」
西(ノンナさん演技上手いなぁ。カチューシャさんは素だけど)
西「」キョロキョロ
西「…誰にも見られていませんね?」
カチューシャ「大丈夫よ」
ノンナ「…大丈夫です。気配は感じません」
西「…わかりました。その秘密兵器というのが………コレです」
ノンナ「これは一体…?!」
カチューシャ「キヌーシャ! 勿体ぶらないで教えなさい!!」
西「これは…」
ノンナ・カチューシャ「…」ゴクリ
西「(さっきの駄菓子屋さんで買った)"水飴"ですっ!!!」バーン!
カチューシャ「………は?」
西「"水飴"には脳の働きを活性化させる成分が入っております」
西「それによってヒトの力を 最 大 限 発揮できるようになるのです!」
西(甘いものは脳を活性化させるんだ。間違ったことは言ってない…はず)
西「私はコレのおかげで、対・聖グロ戦で 圧 倒 的 勝 利 を実現することが出来たのですっ!!」
ノンナ「…」
カチューシャ「…あんた、カチューシャを馬鹿にしてんの?」
カチューシャ「そんなモン食べて試合に勝てるんならみ~んな食べてるわよっ!!」
カチューシャ「ノンナも黙ってないで何か言ってやりなさい!!」
ノンナ「…」アゼン
カチューシャ「ノンナ…?」
ノンナ「………」
カチューシャ「ちょっとノンナ!!」
ノンナ「…そう…ですか………」
カチューシャ「ふぇっ?!」
ノンナ「西さんも、気付いてしまったのですね…」
カチューシャ「ノンナ…?」
ノンナ「同志カチューシャ、ここでの話は他言無用です…!」
カチューシャ「えっ、えっ?!」オロオロ
ノンナ「に、西さん…これはかなり危険な話です。…その、あまり深追いはしないように…!」アセアセ
西「…えぇ。心得ております」
西(ノンナさんにこんな真剣な顔されたら何を言われても信じちゃいそうだ。…昔演劇でもやってたのかな?)
カチューシャ「き、キヌーシャ! その"水飴"ってのはそんなに凄い効果なのっ!?」オロオロ
西「えぇ…それはもう…」
西「疲れたときに食べれば元気になります」
カチューシャ「それじゃ今すぐニーナたちにも食べさせるべきよ!!」
ノンナ「ええ。是非とも(クラーラが喜びそうですね)」
西「ただし!!」クワッ
ノンナ・カチューシャ「!!」ビクッ
西「"水飴"(の糖分)は脳を活性化させますが、食べ過ぎると逆に脳の動きを低下させてしまう"副作用"もあります」
カチューシャ「そ、そうなの?!」
西(おやつ程度にしておかないとね。食べ過ぎはダメ)
ぐれも摂取し過ぎないように注意してください…!」
カチューシャ「…わかったわ」
西「また、"水飴"の中には身体を侵食する成分も含まれております…!」
西「ですので、摂取したあとは必ず身を清めてください…!」
西「さもないと………」
カチューシャ「さもないと…?」オロオロ
西「鋭利な刃物でその身を削ることとなるでしょう」
カチューシャ「ひぃっ!!?」ガクガク
ノンナ「お、恐ろしい…」
西(いわゆる"虫歯"ってやつだ)
カチューシャ「で、でもでも…! 身を清めるって何をどうすればいいのよっ!!」ガタガタ
ノンナ「毎日お風呂に入り、歯を磨くことです」
西「…あと」
カチューシャ「ま、まだあるのっ?!」
西「えぇ。絶大な効果がある反面、その副作用もまた………!!」
カチューシャ「っ…!!」
西「巷では"水飴"の効果を盲信した者がバタバタと倒れているそうです…!」
カチューシャ「ひぇっ…!」ビクビク
西「それだけ、身体に大きな負担をかけるのです…!」
カチューシャ「そ、そんなのどうしろって言うのよっ!!」カタカタ
西「負担を軽減するためには、様々な成分を併用して摂取しなければなりません」
西「そして、その成分は野菜、魚、肉などから抽出されます」
西「つまり、これらの成分によって"劇薬"の副作用を抑え、利点だけをもたらすよう調整するのです…!」
カチューシャ「そ、そうなのねっ?!」
西(食事は好き嫌いせずバランス良く食べよう)
西「プラウダ高校のナンバー2であるノンナさんは、他校にもその実力が知れ渡るほど優れた方です」
カチューシャ「え、えぇ! ノンナはすごいのよ!!」エッヘン
ノンナ「凄いのです」
西「元から並外れた才能・センスをお持ちなのはもちろん、"水飴"によってその力を最大限に発揮してきたからです」
カチューシャ「それ本当なのノンナ!?」
ノンナ「えぇ。私はこれらをバランス良く摂取しております」
ノンナ「今のポテンシャルが保てるのもそのおかげでしょう」
西(本当にノンナさんは良いポテンシャルしております。何がとは言わんが)
西「最後に」
カチューシャ「…」ゴクリ
西「"水飴"による身体へのダメージを少しでも緩和するためには」
西「長時間の稼働をしないことです」
カチューシャ「…そうなの?」
西「えぇ。疲労が蓄積された状態では最大限の力を発揮できません」
西「無理は厳禁。そして適度な休養を」
西(良い子は早く寝よう)
カチューシャ「て、適度ってどれくらいなのよ!?」
ノンナ「7時までに布団に入ればギリギリ大丈夫です」
ノンナ「…しかし、驚きました」
西「…」
ノンナ「この事を知っているのは、私だけだと思っていました」
ノンナ「それが完全なる自惚れだったと…!」ギリッ...
西「私もこの事を知ったときは、人体実験をしてるかのような心境でした」
西「自分は極めて危険な道へ足を踏み込んだと…!」
ノンナ「………」
西「………」
ノンナ「行ってしまわれましたね」
西「えぇ、芝居に付き合って下さってありがとうございました」フカブカ
西(コソコソと私たちの会話を盗み聞きしてた助平らが何をしたいのかはわからない)
西(しかし、この"芝居"に引っかかったら、連中が誰なのかわかるかもしれない)
西(‥それにしてもノンナさんの迫真の演技には驚いたなぁ)
西(カチューシャさんは見事に乗せられたし、そうでない人もあんな顔されたら信じちゃうに違いない)
西(…あとは偵察してた連中がどうなるか)
― その後、"水飴"の素晴らしさを知ったカチューシャさんは、ノンナさんと共に大急ぎでプラウダ高校へ戻りました。
カチューシャさんには悪いことをしたけれど、ノンナさん曰く、
『ここ最近は夜更かしに好き嫌いと不健康な生活をしており、それらが改善出来たので感謝しています』
…とのことなので、まぁ大丈夫だろう。
昔は公園とかでおじさんが紙芝居をやってくれたのだが、残念なことに最近ではそういうのは"不審者"として扱われる。
世知辛い世の中になったものだなぁ…。
なお、その後プラウダ高校では空前の"水飴"ブームが到来しているらしい。
特に留学に来ていたロシア人の方が大喜びとのことで、
『この素晴らしいメズアメをお父様にも教えましょう!』
と、嬉しそうに"水飴"を買い占めて、特殊部隊出身のお父様がいるロシアの実家へ大量に郵送したそうです。
ついでにカチューシャさんの無茶振りも無くなって"同志"の皆さんも喜んでるとのこと。
人生どこで何が起きるかわからないものだ。
そんな思いを胸に私は今日も水飴を練っている。あま~い。
【またとある日 西の病室】
西「zzzz」スースー
コンコン
西「…とっかん……ムニャ…」zzzzz
コンコン
西「……やった…ゆうしょぅ…」スピー
ガチャ
「ごきげんよう絹代さん。…って、まだ寝てたのね」
西「…ンー……」zzzz
ダージリン「やれやれね」
西「…フシュー…フシュー…」zzzz
ダージリン「あなたは食べる時と寝る時は静かね」クスッ
ツンツン
西「………フニュ…」zzz
ムニュ
西「…フミ……」zzz
ダージリン「ふふっ」ツンツン
西「………ぅ……ぁ…」ウーン...
ダージリン「…あら?」
西「…だ……じりん…」
ダージリン「えっ…?」
西「………だめ…」
ダージリン「!」
西「…ぃかな…ぃ…で………」
ダージリン「…」
ダージリン「…大丈夫よ」クスッ
ダージリン「私は何処にも行かないわよ」ナデナデ
西「………そっち……こえだめ…」zzzz
ダージリン「」ブチッ
ダージリン「さっさと起きなさいっ!!!」バサッ!
西「もがぁっ!!?」
ダージリン「おはよう。絹代さん」
西「………オハヨウゴザイマス」ジトー
ダージリン「なによ」
西「…嫌な夢を見ました」ジトー
ダージリン「どうやらそのようね」シレッ
西「肥溜めに落ちr
ダージリン「言わなくていいわよ」
西(むぅ。助けてやったのに。…一緒に落ちたけど)
西「…で、どうしてここに?」ジトー
ダージリン「あら? 私がここに来てはいけなかったかしら?」
西「いえ、そういうわけでは…」
西「いらっしゃるならご一報頂ければと」
ダージリン「御免なさいね。あなたの連絡先を知らないもので」
西「だから寝込みを襲ったと…?」
ダージリン「…殴るわよ?」
西「やめてくださいしんでしまいます」
ダージリン「そんなことより早く準備なさい」
西「はい?」
ダージリン「準備よ準備」
西「何の準備ですか?」キョトン
ダージリン「あなた今日が何の日か知らないの?」
西「燃えないゴミの日ですか?」
ダージリン「違うわよ」
西「えぇ…。何だったかなぁ…」ウムム
ダージリン「大洗とサンダースの試合」
西「あ…!」
ダージリン「わかったなら早く準備なさい」
西「…その……」
ダージリン「今度は何よ…」
西「…着替えるので………」モジモジ
ダージリン「…はいはいわかりました。着替えたら呼んで頂戴」
ダージリン「あなたもこういう時だけは恥じらうのね」フゥ
スタスタ
西「………ダージリンのすけべー」ボソッ
スタスタスタ
パチコーン!
イッデェェェ!!!
【病院 エントランス】
ローズヒップ「ダージリン様ぁ! おっ待ちしておりましたでございますのぉ~!」
ダージリン「落ち着きなさいローズヒップ」
西「おはようございます。えーと…」
ローズヒップ「ローズヒップと申しますのよ」
西「ローズヒップさんですね。私は西絹代と申します」フカブカ
ローズヒップ「よろしくお願いしますっ!」
西(ほうほう。知波単の皆に負けないくらい元気だな)ウムウム
ローズヒップ「ではでは行っきますわよ~!!」
ダージリン「くれぐれも安全運転でお願いするわ、ローズヒップ」
ローズヒップ「はいっ! おまかせ下さいまし!」
ダージリン「さぁ、乗って頂戴」ガチャ
西「お邪魔します」
【車内にて】
ピー!!
プップー!!
ピピー!!
ローズヒップ「全っ然進まないですわ…!」イライライライライラ
ダージリン「落ち着きなさいローズヒップ」
西「この時間帯は出勤ラッシュ直撃ですからね…」
ダージリン「だから早く準備しなさいと言ったのよ」
西(何の事前連絡も無しに朝5時に叩き起こしといてそりゃないだろう!)
ダージリン「まぁ、試合には間に合うから安心なさいな」ズズ
ローズヒップ「」イライライライライラ
西「試合はともかく、ローズヒップさんが…」
ダージリン「ローズヒップ。今日はいつものは持ってきてないのかしら?」
ローズヒップ「もっちろんありますわよ!」イライライライライラ
ダージリン「だったらそれでも食べて気を紛らわせなさい」
ローズヒップ「わかりましたの」ゴソゴソ
西「いつもの?」
ダージリン「よほど気に入ったのか気付いたら食べてるのよ」フフッ
ローズヒップ「♪」ネリネリ
ダージリン「"水飴"をね」
西(あんたらかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!)
ダージリン「何でも、うちのアッサムが『"水飴"には凄いヒミツがありますのよ!』って」
西(私はアッサムさんのヒミツを知ったよ…。"コロッと騙されやすい"っていう…)ハァ..
西(まぁ、あの場には"役者"のノンナさんがいたし、私がアッサムさんの立場だったら騙されるかもしれないけど…いや、ないか…あるか?…うーん…)
ダージリン「どこから仕入れてきた情報なのかわからないけれど、」
アッサム『私が独自入手した情報によると、水飴には脳を活性化させ、並外れた力を発揮する』キリッ
ダージリン「…って」
西「ヘーソウナンデスカー」シレッ
ダージリン「それでアッサムがこの子にあげたらとても気に入ったと」クスクス
西(自分で試さずローズヒップさんで実験するところが何とも…)
ダージリン「あなたも食べたほうが利口になれてるから良いわよ?」
西「大きなお世話です。そういうダージリンは食べないのです?」
ダージリン「私はベタベタしたものはあまり好きじゃないわ」
西「性格はベタベタどころかドロッドロのギットギトのクセに…」ボソッ
ゲシッ!!
西「いだっ!!」
ダージリン「口を慎みなさい」
西「ダージリンは絶対食べたほうが良い! 暴力的なのは脳が正しく機能していない証拠ですぞっ!!」ヒリヒリ
ダージリン「その原因はあなたにあるのよ?」
西「あー言えばこー言 <ゲシッ!!> いでぇぇぇ!!」
ダージリン「それはコッチのセリフでしてよ」フン
ローズヒップ「~♪」ペロペロ
【試合会場】
ガチャ
ローズヒップ「到着でございますわよ~!」
オレンジペコ「お疲れ様です。ダージリン様、西さん」
西「おはようございます、ペコさん」フカブカ
ダージリン「ご苦労様。ペコ」
ローズヒップ「ダージリン様! 私も! 私もですの!」
ダージリン「ええ。ご苦労様ねローズヒップ」
ローズヒップ「はいでございますの!」エヘヘ
ブロロロロロロロ!
ダージリン「…おや?」
「ヘイハニー!グッモーニンっ!!」
ダージリン「あらケイ。こんなところでアブラを売って大丈夫なのかしら?」
ケイ「あははっ! 折角ダージリン達が観に来てくれたんだから挨拶しないとねっ!」
西「ケイさんお久しぶりでございます!」ビシッ
ケイ「おっキヌ! 元気になったんだ!!」
西「えぇ、お陰様でこの通り! ピンピンしておりますぞ!」ハッハッハ
ケイ「あっはっは! オーケイオーケイ! それでこそキヌよっ!!」ワッハッハ
ダージリン「ケイ。こんな言葉がありましてよ」
ケイ「ん?」
ダージリン「"バカは風邪引かない"」
ケイ「へ?」
西「む…」
ダージリン「この子は無駄に頑丈だから心配する必要なんてないわ」
ダージリン「ねぇ、絹代さん?」ニヤリ
西「…」
西(ダージリン真似)「こんな格言を知ってるかしら?」
西(ダージリン真似)「"貪欲であれ、愚かであれ"」
オレンジペコ「スティーブ・ジョブズの言葉ですn…ええっ!!?」
ケイ「うわっはっははははっ! めっ、メチャクチャ…クヒッ…似てるじゃない…!!」アハハハハハ
西(ダージリン真似)「人生、おバカな方が刺激があって面白いのよ?」ニコッ
ケイ「あははははひゃはははひゃひぃ…やめてぇぇ…笑い死ぬぅぅ……!」ゲホッゲホッ!オェェッ!!
ダージリン「………」イライラ
西(ダージリン真似)「あなたもそう思うd <ドゴッ!!> グフォォォォォッ!!?」
ダージリン「人を馬鹿にするのも大概になさい!」
オレンジペコ「み…見事なボディーブローです…」オロオロ
西「ンぐぬぉぉぉ………(自分だって馬鹿にしたクセにっ!)」
オレンジペコ「お、恐ろしいほどソックリでした…」
ダージリン「似てないわこんな猿真似」
ケイ「あひっ…ひぃひっあひ……」ハァハァ
ダージリン「あなたもいつまでもゲテゲテ笑わない!」
ケイ「アヒヒッ…ヒッヒッ…い…息が…ヒィ…フヒィ…」コヒューコヒュー....
オレンジペコ「そ、相当ツボに入ったみたいですね…」
【数分後】
ケイ「へぇー。そんなに色んな人が来てたんだ」←復旧した
西「えぇ。お陰で入院生活もなかなか充実してましたよ」
ダージリン「そのままニートにならないか心配だわ」ヤレヤレ
西「に、ニートぉ!?」ガーン
ダージリン「あんな快適な所にずっといたら元に戻れなくなってしまうわよ?」
西(なんか前にも言われたなぁ…)
ケイ「へぇー、そんな快適なんだ。ちょっと行ってみたいなぁ~」
ダージリン「やめておきなさい。サンダースの隊長がニートだなんて示しがつかないわ」
ケイ「No problem!そん時ゃアリサにでも養ってもらうよ」アハハハ
アリサ「あ、アタシがですかぁ!?」バッ
西「うぉっ、びっくりした!」
ケイ「おっ、アリサお帰りー」
アリサ「だ、ダメですからね! ニートになったらダメですからね隊長っ!?」
ケイ「あはははーどーしよっかなぁ~?」
ダージリン「ほら、年下の子をいじめないの」
ケイ「はーい」アハハハ
西(…人のこと言えるのだろうか?)
ダージリン「なによ」
西「何でもないです」プイッ
ナオミ「隊長、準備完了だ」
ケイ「サンキューナオミ。それじゃ行こっか!」
アリサ「Yes mam. 今度こそ大洗に勝ちましょう!」
西(ケイ真似)「負けたら反省会だからね?」ボソッ
アリサ「ひぃぃっ!!?」ビクッ
ナオミ(似てる…)
ダージリン「っぐ…!」プルプル
ケイ「こらっキヌ! うちのアリサにまで手を出すなーっ!」
西「あははっ。お気をつけて」ケイレイ
アリサ「何よぉ…何なのよもう…!」
ナオミ「ほらアリサ。行くぞ」ポンポン
アリサ「ひぃーん…」
西「サンダースもなかなか個性的な方が多いですな」
西「ダージリンもそう思いません?」
西「…あれ?ダージリン?」
ダージリン「っふ…あはははっ!くふっ…ヒィ…!」プルプル
西「」
オレンジペコ「ダージリン様も一度ツボに入るとこうなっちゃうんです…」
西「そ、そうなんですか…」
オレンジペコ「えぇ…」アハハ...
西「まぁ、笑う門には福来ると言いますし、良い事だと思います」
オレンジペコ「あはは…」
ダージリン「あぁ…。笑いましたわ…」フゥ
西「お、ようやく戻ってきた」
ダージリン「まったく。あなたは下らない事に関しては超一流ね」ハァー
西「む、失礼な…」
ダージリン「本当のことですわ。入院生活が退屈だからってこんな猿真似を極めるくらいですもの」
西(猿真似だなんて失礼な!)
西「…でも結構似てると思いません?」
ダージリン「似てないわよ。特に私のは」フン
西「えぇ…」
ダージリン「あなたごときが私の真似なんて出来る筈がないわ」フフン
西「」ムカッ
西(ダージリン真似)「ペコ。あなたはどう思うかしら?」キリッ
オレンジペコ「そ、そっくりです…。まるでダージリン様が二人いるような…!」
ダージリン「ちょっとペコっ!?」
西(ダージリン真似)「ふふっ。そうよね」ニコッ
オレンジペコ「は、はぃ…///」ドキッ
西(ペコさん可愛いなぁ。知波単専属の家政婦さんになってくれないかなぁ)
ダージリン「まったく。"誰かの真似をするくらいなら、一番素晴らしい自分でいればいい"のに」
オレンジペコ「じ、ジュディー・ガーランドですね」アセアセ
西(ダージリン真似)「"あまり強い言葉を遣うなよ 弱く見えるぞ"」
オレンジペコ「それは…護廷十三隊五番隊隊長の藍染惣右介の言葉ですね」オロオロ
ダージリン「何を言ってるのかしら。"他人のものはもちろん、たとえ自分の仕事でも、なぞってはだめ"よ?」
オレンジペコ「お、岡本太郎です…」ヒヤヒヤ
西(ダージリン真似)「そんなこと無くてよ。"お前のものは俺のもの、俺のものは俺のもの"ですの」
オレンジペコ「ミュージシャンの剛田武ですね」アハハ
ダージリン「"一番になりたければ、他の人がやらないことをやりなさい。"」
オレンジペコ「えっと、流 音弥ですか…?」
西(ダージリン真似)「"アンタ達はいつ己を捨てた?"」
オレンジペコ「5代目風影の我愛羅ですね」
ダージリン「…」
西「…」
オレンジペコ「…」
西ダジ「「おやりになるわね…」」
ダージリン「」ムカッ
ツネェェッ!!
西「いいい痛い痛い痛いいだぁぁぁぁぁぁい!!!」ジタバタ
オレンジペコ「あわわわ…」オロオロ
ダージリン「ペコ。この子は長い入院生活のせいでだいぶ頭がおかしくなってるから真に受けては駄目よ?」
オレンジペコ「えっ、ええ……?」
西「ほ、ほら! ペコさん困ってるじゃないですかっ!」ヒリヒリ
ダージリン「そんな事はないわ。とてつもなくお馬鹿なあなたと違ってペコはお利口さんですもの」
西「」ムカッ
西(ペコ真似)「ダージリン様のお小言にはこりごりです…」
オレンジペコ「ええっ?!」ビクッ
ダージリン「…あらペコぉ?そんな事思ってたの?」ニッコリ
オレンジペコ「ち、違います違います!!」オロオロ
オレンジペコ「に、西さんっ…」アセアセ
西「あはは。ペコさんは聖グロで一番ですから、その様な事は言いませんよ」
オレンジペコ「い、一番…えへへ///」テレテレ
ダージリン「知ってるわよ。一番かどうかはさておきね」
オレンジペコ「むぅ…」
西(ペコさんは小動物的な可愛さがあるな)ウンウンン
― しばらくして
ワシャワシャ
西(なんかダージリンが私の髪で遊びだした…)
ワシャワシャ
西「ダージリン、髪で遊ばないでください」
ダージリン「遊んでないわよ。良いからじっとしてなさいな」シュルシュル
西「…一体何をなさるおつもりで?」
ダージリン「大丈夫よ。取って食べたりはしないわ」クイッ
西「本当ですかねぇ…」ジトー
ダージリン「ええ」クリンクリン
ダージリン「ホラ、出来たわ」フフッ
西「?」
オレンジペコ「わぁ~!」
ダージリン「これであなたも少しは上品に見えるはずよ」
西「…一体何をなさったんですか?」ジトー
ダージリン「ふふっ」
オレンジペコ「こんな風になってます」つ[鏡]
西絹代(ギブソンタックver)
西「な、なんと…」
ダージリン「なかなか似合ってるわよ」
西「そ、そうですか…?」
オレンジペコ「はい。よく似合ってます」
西(ちょっと後頭部に違和感あるけど…まぁいっか)
西「…ところで何ゆえこの様なことを?」
ダージリン「こうやって私達と肩を並べているのだから、あなたにもこの髪型の良さを知ってもらおうと思ってね」
西「なるほど。郷に入れば郷に従えですな」
ダージリン「ええ。そいいうことよ」フフッ
西「ならばダージリン達が知波単へ参られた時は是非とも吶k
ダージリン「それは遠慮するわ」シレッ
西「………ケチ」ボソッ
ダージリン「何か言った?」
西「いいえ何でもありません。私はペコさんと仲良く突貫しますから」シレッ
オレンジペコ「え、私がですか?」
西「ええ!一緒に"ダージリンのバカヤロー!"って叫びなg <ツネッ> あいでででで!!!」ジタバタ
ダージリン「バカヤローは絹代さんだけで十分」
西「むぅ…」ヒリヒリ
オレンジペコ「あはは…」
オレンジペコ「あ…試合、始まるみたいですよ」
西「ではでは。ゆっくり観戦させていただきましょう」
ダージリン「ふふ。楽しみですわね」
~~~
オレンジペコ「どうやら大洗が無人機を発見したみたいです…!」
ダージリン「ずいぶん高いところを飛んでいるわね」
西「あれはB-29ですね」
オレンジペコ「えっ? B-29は爆撃機ですよね? 搭載弾数が限られている以上は不要の長物なのでは?」
ダージリン「恐らくケイはB-29の飛行高度を選んだのよ」
オレンジペコ「高度ですか?」
西「B-29は上空10,000mを飛行する"大空の要塞"です」
西「大洗の既存の対空戦車では攻撃が届きません」
オレンジペコ「!!」
ダージリン「私達の無人機でも、あの高度にたどり着くには時間がかかるわ」
西「あそこまで高く飛べない無人機も多いですしね」
オレンジペコ「で、では大洗側の対抗手段は…」
西「現状では皆無です」
オレンジペコ「そんな…!」
西「このまま大戦末期の大日本帝国のように為す術もなくやられるか」
西「あるいは、何かしらの対策を見出すか」
西「どちらかですね」
ダージリン「ケイも随分大人げないことをするわね」
オレンジペコ「あっ!攻撃が始まりました!」
ダージリン「…」
西「…」
オレンジペコ「そんなぁ………」
西「案の定、対空攻撃が全然届いていないです」
オレンジペコ「ど、どうすればいいのでしょうか…」ソワソワ
西「あとは西住さん次第ですね」
~~~~~~
アナウンス『サンダース大付属高校 B-29・飛行不能!』
オレンジペコ「お、大洗がB-29を落としました!!!」パァァ
ダージリン「Amazing、ですわね」フフッ
西「………」
ダージリン「どうしたの絹代さん?驚いたあまり言葉も出ないのかしら?」フフッ
西「いえ」
ダージリン「…」
西(さすがです西住さん…)
西("あそこ"から活路を見出すなんて!!)
ダージリン「絹代さん」
西「へっ?」
ダージリン「あなた、何かみほさんに言ったの?」
西「いいえ? お見舞いに来てくれたときに雑談に花を咲かせたくらいです。ボコというぬいぐるみですね。あはは」
ダージリン「そう………(嘘ついてるわね)」
オレンジペコ「あぁっ!!!」
西ダジ「!」
オレンジペコ「B-29の破片がIV号戦車に…」
西「なっ!? あの中には西住さん達が!!!」
ダージリン「落ち着きなさい。車内はカーボンで保護されているわ」
西「っ…」
オレンジペコ「でも司令官である西住さんを失ったのは大きな痛手です…!」
西「やっとの思いでB-29を攻略したというのに…!」
ダージリン「勝負は時の運とも言うわ。まだわからないわよ」
西「…」
アナウンス『サンダース大付属高校 M4A1シャーマン 走行不能!』
アナウンス『フラッグ車走行不能により、勝者・大洗女子学園!』
オレンジペコ「か、勝ちましたぁ…!」
西「流石です西住さん、そして大洗女子学園…!」
ダージリン「本当にお見事ですわ」
オレンジペコ「B-29を撃破してからの展開は凄かったです…!」
ダージリン「えぇ。対空戦車ではなく普通の戦車で無人機を撃破するなんて、普通の考えからは生まれませんもの」
西(知波単の戦車が聖グロの無人機を撃ち落としたけど、黙っておこう)
オレンジペコ「何度も"お見事です"って言いたくなる素晴らしい作戦でした。これは勉強になりますっ!」
オレンジペコ「あ、ケイさんに抱きつかれてますよ西住さん」アハハ
ダージリン「ケイの抱きつき癖は相変わらずね」
西「抱きつきというよりあれはプロレス技に近いのでは…」
オレンジペコ「確かに。こっちにまでミシミシと音が聞こえて来そうです」
ダージリン「言うことを聞かない誰かさんに打って付けな躾かもしれないわね」
西「聖グロの隊長がそんな下品なことして良いんですか?」ジトー
ダージリン「こんな格言を知ってる?"あたらしい門出をする者には新しい道がひらける
"」ミシミシ
西「いだだだだだだだ!! ギブギブ!!」パンパン
オレンジペコ「相田みつをですね」ハハハ...
ダージリン「さて。お暇しましょうかね」
西「え? ケイさんに会われないんです?」
ダージリン「ケイは大洗の皆とパーティーよ。邪魔するのも野暮よ」
西「そうですか(パーティーって参加したこと無いんだよなぁ。ちょっと羨ましい)」
オレンジペコ「ダージリン様、片付けが終わりました」
ダージリン「ありがとう。ペコ」
西「お手伝いできず申し訳ありません」
オレンジペコ「いえいえ」
西「」ブルッ
ダージリン「どうしたの?」
西「あの…トイレ…」モジモジ
ダージリン「ハァー。紅茶の飲みすぎよ」
西「む。ダージリンだってしこたま飲んでたじゃないですか」
ダージリン「私は嗜む程度よ。あなたみたいにジャバジャバ飲んでないわ」
西(嘘つけ! 絶対私の倍は飲んでた!)
ダージリン「ほら。一人じゃまだおトイレ出来ないのだから行くわよ」
西「むっ。ちょっと引っかかる言い方です…」
ダージリン「あら? だったら絹代さんは一人でおトイレ行けるのね?」フフッ
西「ぐぅ。…いいもん。ペコさんに連れてってもらいますから!」
オレンジペコ「えっ!?……ま、まぁ良いですけど」
ダージリン「悪いわねペコ。そこらへんの草むらで良いわよ」
西「なっ!!」
オレンジペコ「大丈夫ですよ。ちゃんとお手洗いまで行きますから」アハハ
西「ダージリンは行かなくても平気なんです?」
ダージリン「行くわよ。後で」
西(自分だって結局行くじゃないか…)
ダージリン「なにか?」
西「…そこで漏らせばいいのに」ボソッ
ダージリン「ペコ。肥溜めがあったらその子を放り投げてやりなさい」
西「なっ! またその話ですか!」
ダージリン「えぇ。何しろ私を夢に呼び出して肥溜めに放り投げるんですもの」
西「違う! あれは勝手にダージリンが!!」
オレンジペコ「はいはい。行きますよ」
西「むぅ…」
【試合会場 お手洗いまでの道】
西(ということで、ペコさんに車椅子を押してもらってます)
西「それにしても、大洗女子の皆さんの敢闘はお見事でしたね」
オレンジペコ「はい。まさか戦車を対空砲として運用するだなんて思いませんでした」
西「あの咄嗟の判断はさすが西住さんです。我々知波単も見習わねば」
オレンジペコ「ですが、西住さん達のIV号戦車は…」
西「ええ。派手に大破してしまったようです」
西「幸い、乗員の皆さんは全員無事とのことでしたが」
西「IV号戦車は次の試合までに修理が間に合うかどうかは…」
オレンジペコ「! それでは次の試合は…」
西「…もしかしたら、IV号戦車無しで臨むことになるやもしれません」
オレンジペコ「そんな!?」
西「…」
西(あくまでそれは最悪の場合だ。恐らく、何かしら手は打つはず…)
西(………私の方で何か、力になれないだろうか)
オレンジペコ「どうして…」
西「ん?」
オレンジペコ「どうして、頑張ってる人ばかり辛い思いをするのかな………」
西「!!」
オレンジペコ「大洗女子はいつも頑張ってるのに、いつもピンチで…」
オレンジペコ「だけど、もっと頑張って乗り越えて」
オレンジペコ「そしたらまたピンチになって…」
西「…」
オレンジペコ「一体何のために頑張ってるのかわからなくなりそうです………」
西「そんなの決まってるじゃないですか」キッパリ
オレンジペコ「えっ…?」
西「自分たちが大事にしてきたものを奪われないようにするためですよ」
オレンジペコ「西さん…?」
西「人間、不思議なもので、普段はグータラなのに」
西「自分やその周りの人を守りたいって思った時にものすごい力を発揮出来るんですよね」
西「火事場の馬鹿力ってやつでしょうか」
オレンジペコ「…」
西「全ての人に出来るというわけではありませんし、無理はして欲しくないですが」
西「少なくとも西住さんや大洗の皆さんはその火事場の馬鹿力でこの苦境を乗り越えると私は思います」
西「先程の無人機を撃墜した時のように」
オレンジペコ「………」
西(現に西住さんはこうやって絶望的な状況をひっくり返して"完勝"した)
西(だから、たとえ戦車が使えなくなろうと、必ず次の手を見つけて勝利を掴み取るはず…)
西(それでもダメというなら………)
オレンジペコ「…そうですよね」フフ
西「おっ、ペコさんが笑った!」
オレンジペコ「えっ…?」
西「やっぱりペコさんはしょぼくれた顔よりもニコニコ顔がお似合いですな!」ウンウン
オレンジペコ「むぅ…。またそうやって人をからかうんですから…」
西「別にからかってなんかいませんよ。本心です」
オレンジペコ「はいはい。そういうことにしておきますよー」
西「む。ダージリンといいペコさんといい、どうして聖グロの人は素直じゃないんですか」
オレンジペコ「はいぃ? 捻くれてるのはダージリン様だけですから」キッパリ
西「えー」
オレンジペコ「私はダージリン様とは違いますもの」フフン
西「そうなんですか?」
オレンジペコ「はい」ニコッ
西「"同じ穴の狢"って言ったら怒ります?」
オレンジペコ「怒ります」
西「えー」
オレンジペコ「私はダージリン様みたいにしたり顔で格言を言ったり、回りくどいことを言ったりしません」
西「お、言いましたな? これはダージリンに報告せねば!」ニヤリ
オレンジペコ「あ、ちょっと?!」
西「ダージリンがどんな顔するか見てみたいのであります」ニシシ
オレンジペコ「だっ、だめです! 許しませんからね!?」
西「くひひ。下克上ならぬペ克上ですなー」
オレンジペコ「むっ。その辺にしないともう紅茶淹れてあげませんよ?」ジトー
西「え゛っ!? それは困りますっ!!」
オレンジペコ「そうですよね。何しろあれだけたくさん飲んでたのですから」
西「あはは。とても美味しかったのでついつい」エヘヘ
西「あんな美味しいお茶なら何杯でも飲めちゃいますよ」」
オレンジペコ「…そうですか?」←ちょっと嬉しい
西「ええ」
オレンジペコ「ダージリン様の淹れた紅茶とどっちが美味しかったですか?」
西「む。なかなか難しい質問ですな…」
オレンジペコ「どっちです?」
西「うーん…」
オレンジペコ「どっちですか?」
西(や、やけに食いついてくるな?!)
西(でも、実際どちらの紅茶も美味だったしなぁ。こりゃ順位なんて付けられんぞ)
西(うん。どっちも美味しい。毎日飲みたい!!)
西「どっちも美味しかったです」(`・ω・)V
オレンジペコ「む…」
西「どちらの紅茶も真心込めて淹れて下さったのです」
西「それに優劣をつけろなど私には不可能であります」
オレンジペコ「…ふふっ」
西「ん?」
オレンジペコ「西さんらしい回答ですね」クスッ
西「ふぇ? そうですか?」
オレンジペコ「ええ」
西「あははは」
西「もしも私が聖グロ生だったら、恐らく毎日紅茶を浴びるように飲んでますな!」
オレンジペコ「ダージリン様とどっちが多いでしょうね」フフッ
西「あ、やっぱりペコさんもダージリンの飲む量は多いと思いますよね?」
オレンジペコ「えぇ。本当に血液まで紅茶で出来ているんじゃないかと思うほどです」
西「あははっ! それダージリンも言ってましたよ」
オレンジペコ「まったく…ダージリン様は」アハハ..
西「そういえば、ダージリンにたくさん紅茶を飲んでいるのに試合中トイレ大丈夫なのかと聞いてみたんですよ」
オレンジペコ「そしたらダージリン様は何と?」
西「"助平"」
オレンジペコ「…でしょうね」
西「不埒なのは重々承知ですが、利尿作用のある紅茶を大量摂取して催さないのは聖グロ七不思議の一つだと思います」
オレンジペコ「七不思議だなんて大げさな…」
西「それくらい不可解なことですからね」
西「あ、ちなみに七不思議の1つに"ペコさんがダージリンの格言に対し的確に出典を言い当てる"ってのもありますよ」
オレンジペコ「えぇー…」
西「ダージリンがしたり顔で格言を言う横で、その格言が誰のものかを解説する」
オレンジペコ「それほど大したことでは…」
西(ダージリン真似)「ペコ。こんな言葉を知っているかしら。"余は常に諸氏の先頭にあり"」
オレンジペコ「栗林忠道中将ですね…って何やらせてるんですかっ!///」カァァ
西「あはは。やっぱり的確に答えてくれます」
オレンジペコ「むぅ…」プクー
西「他にも"戦闘中の戦車内で紅茶をこぼさず保ち続ける"とかも々ありますけどね」
西「ガタガタ揺れる戦車の中で湯呑みに入った液体を保ち続けるのは至難の業です」
オレンジペコ「こぼす時はありますよ?」
西「え」
オレンジペコ「昔ダージリン様の紅茶を頭から派手に被ったことがありまして…アッサム様が」
西「…なかなか苦労人なんですねアッサムさん」
オレンジペコ「それで車内で大喧嘩したことがありまして…」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ガクン!
バシャッ!
アッサム「あづぅぅぅ!!?」ジタバタッ
ダージリン「あ…ごめんあそばせ…」
アッサム「"ごめんあそばせ"ではありませんのよダージリン!!」ポタポタ
ダージリン「ま、まぁ落ち着きなさいアッサム。"人の世に失敗ちゅうことは、ありゃせんぞ"」
オレンジペコ「さ、坂本龍馬ですね…」オロオロ
アッサム「ほぉ…? これが失敗じゃないと仰るのですね?」
ピタッ ジュッ
ダージリン「熱っ!!?」
アッサム「あらごめんあそばせ。足にカップが当たってしまいましたわ」オホホホ
ダージリン「ちょっとアッサム! "目には目をという考え方では、世界中の目をつぶしてしまうことになる"わよ!」
オレンジペコ「ガンジーですね…」ヒヤヒヤ
アッサム「上等ですわ! 表へ出なさい! あなたのそのヒン曲がった性格を矯正してさしあげますわ!!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
オレンジペコ「…ということがあったんです」
西「…なんというか…個性的ですね……」ハハ...
オレンジペコ「ダージリン様とアッサム様は昔は結構仲が悪かったみたいでして…」
西「え? そうなんですか?」
オレンジペコ「ええ。他の先輩によると入ったばかりの頃は色んな事で競ってたとのことです」
西「意外ですね。良いコンビに見えるのに」
オレンジペコ「今となっては良きパートナーですが、昔は良きライバルだったんでしょうね」
西「ほほう。雨降って地固まるってやつですな」
オレンジペコ「徹夜でチェスしたり、料理で対決したりと…まぁ、色々とやってたそうで」
西(いや戦車道しましょうよ。人のこと言えないけど)
【試合会場 トイレ】
オレンジペコ「さて、着きましたよ」
西「ありがとうございます」
ガチャ バタン
オレンジペコ「早くしないと置いてっちゃいますからねー」
西『なっ! 待ってくださいよ!』
オレンジペコ「ふふ。冗談ですよ」クスッ
西『むぅ。今日のペコさん辛口ですぞ。スパイシーペコさんです』
オレンジペコ「何ですかそれ。微妙に語呂が良いですし…」
西『あはは。ペコさんのニックネームって何気に汎用性高いんですよ』
オレンジペコ「そうなんですか…」
西『他にもアレンジペコとかハレンチペコとかもありますよ』ニシシ
オレンジペコ「なっ! アレンジはともかくハレンチはイヤですっ!!」
西『そうですね。ハレンチなのはダージリン一人で十分です』ゴソゴソ
「あら? ダージリンはハレンチなのかしら?」
オレンジペコ「」
西『えぇ。今日なんて寝ているところ襲われましたし』フゥ…
オレンジペコ(寝てるところ襲われたんですか?!///)
「それはそれは。災難でしたわねぇ…」
オレンジペコ「わわわ…」オロオロ
西『ええ。全くですよ』フキフキ
西『…ん、この声って』ジャー
「それで? 絹代さん」
西『げえっダージリン?! どうしてここに!?』
ダージリン「あなた達の帰りが遅いから心配して見に来たのよ」
ダージリン「なにしろ絹代さんは助平ですもの」
ダージリン「うちのペコをトイレに連れて行って淫らな事をしてないか心配で心配で」
西『なっ! 失礼にも程がありますぞ!! 人を獣みたいに言いやがってからに!!!』
オレンジペコ「そ、そんな事するつもりだったのですか?!////」
西『違 い ま す!!』
西『こらダージリン!! ペコさんに変な誤解与えたじゃないですか!! 責任取って下さい!!』
オレンジペコ「せ…責任…!/////」プシュー
西『こらぁぁぁぁ! 絶対わかって言ってるでしょ!!』ガァァァァァァ!!!
オレンジペコ「はて、何の事でしょう?」キョトン
西『………ハレンチペコ』ボソッ
オレンジペコ「はぁいぃ?! もう西さんなんて知りませんっ!」
西『あ、ちょっと! ハレンチは撤回するからお助けを!!』
オレンジペコ「しぃーらない」プイッ
西『む! さっき言ったことダージリンにバラしますよ!?』
オレンジペコ「あっ! ダメだって言ったじゃないですか!!」
ダージリン「あらペコぉ? "さっき"は何て言ったのかしら?」フフフ
西(オレンジペコ真似)「私はダージリン様みたいにしたり顔で格言を言ったり、回りくどいことを言ったり、人をツネったりしません」
オレンジペコ「ちょっと! 最後は言ってませんよ!!」
ダージリン「つまり最後以外は言ったと?」ニコッ
オレンジペコ「あ゛っ!!」
ダージリン「ペコの処遇は追々考えるとして、絹代さん」
ダージリン「最期に言い残すことはあるかしら?」ニッコリ
西『あの、執行猶予はつきますか?』
ダージリン「つかないわよ?」
西『で、では不服申立てによる控訴は…?』
ダージリン「無いわよ?」
西『…釈放は?』
ダージリン「極刑よ?」
西『酷い! 横暴だ! こんなの絶対認めない!!』
ダージリン「良いからさっさと出てきなさい」
西『やだやだ絶対やだ!!出たらダージリンまたツネるんだもん!!』
ダージリン「そう。ならばずっとそこにいなさいな」
西『え』
ダージリン「あなたは陽の当たる快適な部屋よりも暗くてきったないそこがお似合いよ」
西『それどういう意味ですかーっ!!?』
ダージリン「嫌なら早く出てきなさい」
西『ペコさん! いますよね!? 聖グロの興廃はあなたに掛かっていますっ!!』
西『ダージリンの暴走を止めてくださーい!!』ウワーン
オレンジペコ「知りません」シュン
西『そんなぁ………』ガーン
ダージリン「日が暮れるから早く出てきなさい」
西『ツネらない?』
ダージリン「出てきなさい」
西『ツネらない?』
ダージリン「早く」
西『ツネらない?』
ダージリン「…」
西『…』
ダージリン「…ハァ」
ダージリン「わかったから早く出てきなさいな」
西『!!』パァァ
カチャン
― このあと滅茶苦茶デコピンされた。
ちなみにペコさんは罰としてダージリンの肩揉みをやらされることになりました。
【お仕置き後】
西「だーじりんきらい」シクシク ヒリヒリ
ダージリン「自業自得でしてよ?」
西「どこが!!」
オレンジペコ「あはは…」モミモミ
西「"ツネらない?"と聞いて、"わかったから出てこい"と言って出たらデコピンするんですよ?!」
ダージリン「勘違いしないで頂戴。"わかった"と言っただけで"イエス"とは言ってませんわ」
西「捻くれ者め」
ダージリン「今度はどこがいいかしら?」ワキワキ
西「や、やめてください!! たた助けてペコさん!」
オレンジペコ「えーどうしましょう」アハハ モミモミ
ダージリン「ペコ、もっと右…そう、そこ…」ホヘー
西「む。さてはペコさん、笑顔で人を地獄に叩き落とすタイプですな? きゃーこわい」
オレンジペコ「むかっ。そんなわけないじゃないですか!」
西(オレンジペコ真似)「えへっ! ダージリン様の紅茶にワサビ入れちゃった♪」テヘペコ
西「とか」
オレンジペコ「そ、そんなことしませんよ!!」
ダージリン「年下の子をいじめない」ツネッ
西「いでぇぇぇ!! ど、どの口が言うかっ!!!」バタバタ
ダージリン「ペコ、もっと首の近くもお願い」
オレンジペコ「はーい」モミモミ
西「ペコさん、そのまま首をキュッとやっても大丈夫ですよ。ニワトリみたいに」
ダージリン「ペコ、やるならそこの助平にやってあげなさい」
オレンジペコ「は…はぁ…」モミモミ
西「スケベスケベ言うなっ!」
トボトボ....
西「あれ…ケイさん?」
ダージリン「わかっているじゃない。危機管理という"計算"が出来ないから減らず口を叩けると」
西「違います。ほら後ろに」
オレンジペコ「本当だ。ケイさんです」
ダージリン「えっ?」クルッ
ケイ「………」
西「おーい! ケイさーん!!」ブンブン
ケイ「ふぇっ?! き、キヌ!?」
ダージリン「あらケイ。てっきりパーティーに参加していると思いましたの」
ケイ「ははは…ちょっとはしゃぎ疲れたから休憩よ」
西「ケイさんが休むから休ケイですな」
ダージリン「…面白くないわよ」
ケイ「ははは…ハァ…」
ダージリン「浮かない顔ですわね? どうかしまして?」
ケイ「いや…ね」
ダージリン「試合でコロリとやられたからですの?」
オレンジペコ「だ、ダージリン様」オロオロ
ケイ「んー。確かに負けたのは少しヘコんだけどさ…」
ケイ「でもミホのあの快進撃見れてすごい満足だったよ?」
ダージリン「でしたらどうしてそんな顔を?」
ケイ「そりゃあ…」
西「IV号戦車でしょうか?」
オレンジペコ「!」
ケイ「…ザッツライト」ハァ..
ダージリン「あれは事故ですの。無人機を使う以上あのような事が起きるのも想定内」
ケイ「…そうだけどさ。よりによってミホたちの戦車に当って」
ケイ「しかも損傷が激しいってメカニックに言われてさ」
ダージリン「メカニック?」
西「整備を担当しておられるレオポンさんですね」
ケイ「決勝戦には修理間に合わないって…」
西・ダージリン・オレンジペコ「!!」
オレンジペコ「それじゃ、やっぱり…!」
ケイ「アンジーは気にするなって言ってくれたけどさ」
ケイ「IV号って大洗の指揮車両でしょう?」
ケイ「しかも大洗にとって主力級の戦車」
西「かなりの痛手ですね…」
ダージリン「言い方は悪いかもしれないけれど、大洗は」
ダージリン「戦術で勝って、戦略で負けたのかもしれないわね」
西「っ…!」
ケイ「そうなのよ…」
ケイ「ミホはまだこれから戦わないといけないってのに…!」
ダージリン「あなたのところから戦車を差し上げてはいかがですの?」
西「…」
ケイ「そ、そうよね!やっぱりウチの戦車貸してあげるべきだよね!?」
ダージリン「ええ」
ケイ「ウチのファイアフライだったら火力でも申し分ないわ!」
ダージリン「何なら全ての車輌を寄付しても良いですのよ?」フフッ
ケイ「えー! そしたらウチらの戦車無くなっちゃうじゃない!」
フフッ
アハハハハハ
西「…」
オレンジペコ「西さん…?」
西「あの、水を差すようで恐縮なのですが…」
ケイ「なーに?」
西「大洗のあんこうチームは5名でしたよね?」
ダージリン「それが何か?」
オレンジペコ「…あっ!」
ケイ「jesus」
西「ええ。シャーマン・ファイアフライは4人乗りなので定員オーバーであります」
西「それに、無人機の対策もしなければいけませんし…」
オレンジペコ「確かに…」
ダージリン「あら、随分と冷淡ね?」
西「…」
ダージリン「あなたなら"ならばどうぞ我が校の戦車を使ってやってください!!"とでも言うかと思ったけれど」
西「残念ながら、黒森峰やプラウダを相手にするとなれば、知波単の既存戦力では太刀打ちできませんので…」
ケイ「…」
ダージリン「…」
西「プラウダのT-34、黒森峰のティーガー、これら戦車の装甲を知波単の戦車で貫くのは極めて困難です」
西「一方で、相手の主力戦車はこちらの戦車の射程外から撃破可能」
西「…それらを鑑みると、残念ながら我々の戦車では大した戦力にならないのです」
ダージリン「なかなか冷静な分析ね。珍しい」
西「なので、そういったことを鑑みてこのたび新しい戦車を導入することにしました」
ケイ「ワーオ! それ本当?!」
オレンジペコ「羨ましいです」
ダージリン「ッ…!」
西「ええ。ただ今回の試合には間に合わないので、お貸しすることは出来ませんけどね」
オレンジペコ「そうなると私達にとって知波単学園がもっと脅威になるわけですね…」
オレンジペコ「喜んで良いのか悪いのか…」アハハ
ダージリン「…………」
西「あはは。聖グロだって"クロムウェル"を導入したじゃないですか」
オレンジペコ「確かにそうですけど…」
西「王室を倒し、共和制を敷いた大将の名を持つ"勝利の戦車"です」
ダージリン「…!」
西「それは聖グロにとって大きな意味を持つ戦車でしょうな」
オレンジペコ「そうなんですか??」
西「ええ」
ダージリン「…」フフッ
― 彼女もまた、聖グロの隊長としての"宿命"を背負っているの
― ええ。ダージリンもOG会に縛られているわ…
― そんな中、OGたちを押し切って新しい戦車を導入したとすれば?
― "大したものだ"と言うべきですわね
西(ダージリンの苦労は誰も知らない…)
ダージリン「それで、みほさんの戦車の件は?」
西「ええ。これは私の考えなのですが」
西「まずは、大洗の皆さんに任せてみませんか?」
ケイ「Why?!」
西「言わずもがな私も手を差し伸べたい気持ちで一杯です」
西「でも、まずは大洗の"やり方"を尊重しようと思うのです」
ダージリン「つまり静観していろと?」
西「ええ。恐らく大洗の皆さんも動くでしょうから」
西「なので外野から彼是いうのは、彼女たちの努力に水を差す行為になってしまうのです」
ケイ「んー、確かにねぇ…」
西「それで、駄目だった時に改めて私達が助けの声をかければ良いのです」
ダージリン「なるほど…」
西「それに…」
ケイ・ダジ・ペコ「?」
西「此処から先は"戦車だけ"、"対空戦車だけ"では厳しくなるかと思うのですよ」
ダージリン「どういう意味かしら?」
西「つい先日、西住さんからお話を伺ったのですが、以前にプラウダ高校と練習試合をしたそうです」
西「その時にプラウダ側は3機の無人機を投入したとのことですが」
西「その結果、大洗は開始10分で全滅したそうです」
ケイ・ダジ・ペコ「!!!」
西「今年の優勝校であり、私達を率いて大学選抜チームを相手に勝利した西住さん達大洗女子ですら」
西「無人機が相手では絶対的な力の差が出てしまうのです」
ケイ「確かにね。今回の試合もミホの奇策がなければ対抗手段は無かったわけだし」
西「その上、プラウダも黒森峰も装甲・砲ともに優れた戦車を保有しています」
西「その戦力差は天と地ほどの差と言っても過言ではありません」
西「なので、4号戦車、あるいは4号対空戦車が復活しましたでは駄目なんです」
オレンジペコ「で、ではどうすれば良いんですか!?」
西「戦車も無人機も叩ける戦車が理想ですね…」
ダージリン「そんな戦車あるわけないでしょう」
西「ええ」
西「だから、大洗の皆さんに任せるのです」
オレンジペコ「それは一体どういう
ブロロロロロロロ!!
ダージリン「あら。お迎えが来たわね」
ローズヒップ「ダージリン様ぁ!おっ待たせしましたのぉー!」
ダージリン「丁度良かったわローズヒップ。また送って頂戴」
ローズヒップ「喜んでですの!さぁさぁ絹代様も乗ってくださいまし!」
西「これはこれは恐れ入ります」ガチャ
オレンジペコ「私はお先に学園艦へ戻りますね」
ダージリン「あら? 何か用事でも?」
オレンジペコ「実はアッサム様からお言い付けがありまして…」
西「…"水飴"ですか?」ボソッ
オレンジペコ「ええ…」
西「…ご愁傷さまです」
オレンジペコ「あはは…」
西(プラウダでは良い方向に話が進んだみたいだけど、此方ではそうでもないみたいだ…)
西「アッサムさんに"おデコに塗りたくると効果抜群ですよ"とでもお伝えください」シレッ
オレンジペコ「あはは。わかりました」
ダージリン「?」
【帰りの車内】
ローズヒップ「かっ飛ばしますわよ~♪」オッホホホホ
西「行きと違って帰りは道が空いているので快適ですな」ハッハッハ
ローズヒップ「快適すぎてご機嫌ですのよ~!」
西「あははは。突撃をしているみたいですよ」
ダージリン「制限速度と交通ルールはちゃんと守るのよローズヒップ」
ローズヒップ「もっちろんでございますのよ~!」
西「…」チラッ
ダージリン「………」
西(ダージリン…何か悩んでることでもあるのかな…?)
ダージリン「……えっ?」
西「ん?」
ダージリン「いま何か言ったかしら?」
西「いいえ」
ダージリン「そう…?」
西「…あー、ダージリン?」
ダージリン「何かしら?」
西「次の試合で大洗、西住さん達はどうなるでしょうか」
ダージリン「…」
ダージリン「やはり、みほさん達のIV号が破損されたのが致命的ね…」
西「ですね…」
西「でも、おそらく大洗は次の試合までに代替となる戦車を探すでしょう」
ダージリン「そうね。"戦車がなくて試合に出ません"は有り得ないもの」
西「そこで入手する戦車が、既存の戦車なのか…それとも」
西「我々の知らないトンデモな戦車なのか」
ダージリン「トンデモって何よ…」
西「先程言った"戦車も無人機も叩ける戦車"です」
ダージリン「さっきも言ったでしょう? そんな戦車あるわけ無いと」
西「ええ。その通り」
ダージリン「人の話はしっかり聞きなさいな。そんな都合の良いものは新しく作りでもしない限…っ!!」
西「…そうなんです」
ダージリン「そんなの不可能よ。まずレギュレーションが通らない」
西「そこを上手く掻い潜る方法が見つかったとすれば…?」
ダージリン「………あなた、何か心当たりがあるの?」
西「ありません。ただ…」
西「大洗ならそんな修羅場もきっとくぐり抜けるだろうなぁ…と」
ダージリン「………」
ピー!!
プップップー!!
ピピー!!!
ローズヒップ「全っ然進まないですの…!」イライライライライラ
西「あははは…」
西(見事に帰宅ラッシュにめり込んでしまったな)
ローズヒップ「行きはともかく帰りも渋滞だなんてどーなっていますのっ!?」イライライラ
西「はは…。他の運転手も皆おなじ面持ちでしょうな」
ローズヒップ「ぐぬぬ…」ブツブツ
西「まま。ここは"水飴"でも食べて気分転換されてはいかがでしょう?」
ローズヒップ「残念ながら"水飴"は1日3個までですの」
西「へ? そうなんですか?」
ローズヒップ「アッサム様から言われていますの」
ローズヒップ「"水飴は脳を活性化させるけれど、食べ過ぎると逆に脳の動きを低下させてしまいます"って!」
西「………ソウナンデスネ」
ローズヒップ「だからガ マ ンですのっ」イライライラ
西「あれ? ローズヒップさんご存知ではないのですか?」
ローズヒップ「…何がですの?」ジロッ
西「(早くも噛み付かれた) "水飴"の食べ過ぎは確かに脳の動きを低下させます」
西「しかし、ずっとイライラした状態だとそれ以上に脳の動きを低下させてしまうと」
ローズヒップ「そうなんですの?」
西「ええ。イライラはダメなんです」
西(間違ったことは言ってない。ストレスは脳にも体にも毒である)
西「はい。ですので、今みたいなイライラを払拭するための"水飴"の使用は別段問題ないと」
ローズヒップ「そうなんでございますのっ!?」パァァ
西「ええ」ニコッ
ローズヒップ「では! では! 良いんですわね!?」パァァ
西「ええ。どうぞ」ニシッ
ローズヒップ「いやっほーいですのっ♪」
西(ペコ太郎といいローズヒップさんといい、聖グロは愛くるしい方が多いですな)
西(ダージリンさんもさぞ後輩を可愛がり甲斐があるだろう)
西(もちろん知波単にも可愛い後輩はいるぞ!福田は可愛い!)
西(…ところでダージリンは?やけに静かだな?)
ダージリン「…」スヤァ
西「あはは。お疲れのようですね」
ローズヒップ「おーっほっほっほー♪」ネリネリ
西「おっと、ローズヒップさん、ダージリンがご就寝のようです。お声の音量を落として頂けますか?」
ローズヒップ「これは失礼しましたのー」ボソボソ
西「ご協力感謝致します」フカブカ
ヘクチョン!!
西「ん?」
ダージリン「クチュン!!」
ダージリン「…」ブルブル
西(ああ。屋根のない車だから風がまともに当たってしまうか…)
西(風邪をひかれても困るしな)パサッ
ダージリン E:浴衣の羽織
西(…これで良しっと)
ダージリン「……エヘヘ…」zzzz
西(ダージリンも"えへへ"って笑うことがあるんだなぁ)シンミリ
西(まぁ、何だかんだ言ったってダージリンも女の子だしね)ウンウン
西(ただ…)
西絹代 E:浴衣
西「さもい…」ブルブル
コテン
西「ん?」
ダージリン「…」ムギュッ
西(おっと、枕にされてしまったぞ)
ダージリン「…フスー…フスー」zzz
西「あはは。有難うございます。とっても暖かいです」ホッコリ
ダージリン「…フフ……」zzzz
【病院 エントランス】
キキーッ
ローズヒップ「到着で御座いますのー(小声)」
シーン
ローズヒップ「あれ?」キョトン
西「…」zzz
ダージリン「…」zzz
ローズヒップ「ふむ…」
ローズヒップ「!」ピコーン
ローズヒップ「少々お待ちくださいましー(小声)」スタタタタッ
看護婦「はいはい?」タッタッタッ
ローズヒップ「お部屋までお願いしますのー」タッタッタ
ローズヒップ E:担架
看護婦「………そういうことね」ニヤ
ローズヒップ「そういうことでございますのよー!」ヨッコイショ
(数分後)
ローズヒップ「ではでは、お休みなさいませですの~」ペコッ
ブロロロロ....
【同日夜 西絹代の病室】
西「ん……」パチッ
西「あれ…ここは…?」
西「………病室?」
ダージリン「スースー…」zzzz
西「っ?!」ビクッ
西(えーと…)
西(確か私達は大洗とサンダースの試合を観戦して)
西(そのままローズヒップさんに送ってもらって…)
西(そこから記憶がない)
西「ふむ………」
西「まぁいっか」パタン
西「お休みなさいダージリン」
ダージリン「…ムニャ」zzz
西「私は寝込みは襲いませんからね」
ダージリン「…ムゥ……」zzz
西「ふふっ」ナデナデ
ダージリン「…エヘヘ……」zzz
― よほど居心地がいいのか、ベッドの寝心地がいいのか
ダージリンはぐっすりと眠っている。
私がかつて眠りたくても眠れなかった時期はあったことを思うと、ダージリンにも眠れない日があったのかもしれない。
そう考えると、今の私に出来るダージリンへの恩返しは…
嫌な事を忘れる事ができる、居心地のいい空間を提供することなのかもしれない。
この頃からか、私はダージリンに特別な感情を抱いていた。
ダージリンが嬉しそうにしていれば私も嬉しいし
ダージリンが悲しいと私も悲しい。
お世話になった方々や、知波単の皆とは違う感情。
でも、私はこの事について特に深く追求することはなかった。
ダージリン「んぅ…?」パチッ
西「あ、おはようございます。…といっても夜ですけど」
ダージリン「………ここどこ?」
西「あはは…私の病室です」
ダージリン「そう…」
西「ええ」
ダージリン「…」
西「…」
ダージリン「何で病室にいるのよっ!!?」ガバッ
西「わっ!」
ダージリン「…ローズヒップに送ってもらったところまでは覚えているわよ」
西「ええ」
ダージリン「そして途中で寝てしまって」
西「はい」
ダージリン「気づいたらここ」
西「うん」
ダージリン「どういうことなの…」
西「さぁ?」
ダージリン「…」
西「…」
ダージリン「今、何時?」
西「ちょうど10時ですね(まだ10時かぁ。もう深夜だと思ってたのに)」
ダージリン「ハァ…またこんなところに来る羽目になるなんて…」ズーン
西(その"こんなところ"でとてもとても幸せそうに寝ておられたわけですがね…)ジトー
ダージリン「…何よ」
西「何でもございません」
西「きっとローズヒップさんが気を利かせてここまで連れてってくれたのでしょう」
ダージリン「どうやって…」
西「"水飴"の食べ過ぎで脳が超常現象起こして空間移動能力使えるようになったとか?」
西(ローズヒップ真似)「おーっほっほっほ! マネジメントですのっ!」
西「…って」
ダージリン「バカなの?」
西「…もうバカで結構です」ムスッ
ダージリン「そうね」
西(ダージリンは寝起きの機嫌が悪い。…低血圧なのかな?)
ブーブー
ブーブー
ダージリン「ほら電話。鳴ってるわよ」
西「はーい。…おっ、ペコさんからだ」
ダージリン「ペコ?」
西「大方ダージリンのこと心配されておるのでしょう。良い後輩ですな」シミジミ
ダージリン「それは申し訳ないことをしたわね」
西「まったくです」ピッ
オレンジペコ『夜分遅くにすみません。西様のお電話でしょうか』
西(みほ真似)「いえ…西さんではなく西住ですけど、オレンジペコさん…?」
ダージリン「何してるのよ…」
オレンジペコ『えっ?確かこの番号で合ってた…あ、いえ、ごめんなさい間違え
西「ははは。合ってますよペコさん」
オレンジペコ『え?』
西「私ですよ。知波単の西絹代でございます」ハッハッハ
オレンジペコ『もうっ! ビックリしたじゃないですか!!』プンスカ
西「あはは。失礼しました」
オレンジペコ『あの、それでダージリン様のことなんですが…』
西「あぁ、ダージリンなら私の横でぐっすり寝てますよ」
ダージリン「起きてるわよ…」ハァ
オレンジペコ『えぇっ!? もうそんなことを?///』カァァァ
西「ん? そんな事とは??」
オレンジペコ『そ、それは…あの…アレですよ…/////』モジモジ
西「アレ…?」キョトン
オレンジペコ『………………ぇっちぃことです…/////////』ボソッ
西「…」
オレンジペコ『…/////』カァァァ
西「………は?」(゚д゚;)
西(この小娘は何を宣っとるのだ…???)
オレンジペコ『…え?』
西「あの………ただ単にご就寝されてただけですが…?」
オレンジペコ『』
西「…」
オレンジペコ『うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!////////』ジタバタ
西「わっ!?」キーン
ダージリン「さっきから何してるのよ…」
西「何かペコさん、ご乱心のようですよ…?」
ダージリン「ご乱心?」
オレンジペコ『に、西さんなんか大っ嫌いですっ! うわぁぁぁぁぁぁぁん!!』バタバタ
西「ちょっと待って下さいよ! 私なにか悪い事としましたか!?」
オレンジペコ『悪いことも悪いことですっ! 西さんが助平だからいけないんですっ!!』
西「なっ失礼な!? 私は決して助平なんかじゃありませんぞ!!」
ダージリン「あなたは十分助平だからご心配なさらずとも」
オレンジペコ『西さんが"私の隣で寝てる"って言うからいけないんですよっ!!』
西「はい裁判長! 冤罪であります! 私は見たままを述べただけでありますっ!」
オレンジペコ『被告人の要求を棄却します! 死刑です!!』
西「そんなぁ…あ、ちょっと!」
パッ
ダージリン「御機嫌ようペコ。私よ」
オレンジペコ『ダージリン様ぁ…西さんがいじめますぅ…』
ダージリン「絹代さんにはあとでキツ~い罰を与えておくからご安心なさい」
オレンジペコ『…絶対ですからね?』
西「ち、ちょっと待って下さい! なんで私が罰を受けにゃならんのですかっ!?」
ダージリン「はいはい。それで、ご用件は?」
オレンジペコ『あっ、ごめんなさい。その、ダージリン様への伝言だったんですが…』
ダージリン「ええ。私が直接承るわ」
オレンジペコ『先程ローズヒップさんから事情を聞いたのですが』
オレンジペコ『曰く"お病院にお運びしましたわよー!"とのことでして…』
ダージリン「ええ。どうやらそのようね。起きたら入院患者になってましたわ」
オレンジペコ『あはは…。それで、夜も遅いですから、また病院で泊めて頂けないかと』
ダージリン「…良いかしら絹代さん?」チラッ
西「キツ~い罰を取り止めて下さるのなら」シレッ
ダージリン「仕方ないわね」
西(なぁにが"仕方ないわね"だ全く…)ヤレヤレ
ダージリン「絹代さんが"泊まって下さいお願いします"って言うから、仕方な~くまた一泊するわ」
西(こんにゃろ好き放題言いやがってからに…!)グギギ
オレンジペコ『なんか…それはそれで心配です…何しろ西さんですので』
西「おいこらハレンチペコ。そりゃどういうこった」
オレンジペコ『聞こえてますよ!ハレンチって言わないで下さい!』プンスコ
西「事実ですしお寿司」シレッ
オレンジペコ『事実じゃありませんっ!!』
ダージリン「ちょっと。私を挟んで傷の舐め合いをしないで下さる?」
西「ペコ太郎があまりに面白くてついつい」
オレンジペコ『ぺ、ペコ太郎…』
西「あはは。他にもラーメンペコとかペコ煎餅とかペコ饅頭とかクールペコとか」
ダージリン「ラーメンペコ…美味しそうね」フフッ
オレンジペコ『ダージリン様も悪ノリしないで下さいまし!』ムスッ
西「あはは。ペコさんのあだ名は色々浮かび上がるので、また面白いの出来上がったら発表しますぞ」
オレンジペコ『結構です。西さんが名前を悪用するなら私も悪用しますもんね』ムスッ
西「あはは。どんなのが出来るか楽しみですなぁ。"絹おねーちゃん"とか大歓迎ですぞ!」
オレンジペコ『呼 び ま せ ん』キッパリ
ダージリン「あら?お姉様って呼んでくれても良いのよペコ?」ウフフッ
西「気持ち悪っ」ボソッ
ガンッ!
西「いでぇっ!!!」
オレンジペコ『ダージリン様まで…』ヤレヤレ
西「私のあだ名かぁ…楽しみだなぁ」
オレンジペコ『とんでもないの付けますからね?後悔しても知りませんよ?』ムスッ
西「わくわく」
オレンジペコ『まぁでも…今は思い浮かばないので絹代様のあだ名は思いついた時にでも』
西「あはは楽しみです」
西「ん?」
オレンジペコ『えっ?』
ダージリン「"絹代様"?」
オレンジペコ『あ…』
西「ほほう絹代様かぁ…これは斬新ですなぁ」
ダージリン「別に普通じゃない」
西「そりゃダージリンは常に"ダージリン様"って呼ばれてるからですよ」
西「それにしても絹代様かぁ…」フムフム
ダージリン『い、今のはですねっ!』アセアセ
ダージリン「ペコ、こんな子に"様"なんてつけては駄目よ。呼び捨てでも良いくらいですの」
西「あ、ペコ太郎、ダージリンはこれから"ダージリ貧"で良いですよ。私が許可いひゃいいひゃいほっへひっはははいへ!!!」
ダージリン「誰がジリ貧ですって?」ビローン
西「はーひひんへふほ!!!」ジタバタ
ダージリン「ほぉ?」Wビローン
西「いひゃぁい!ひょうへははんほふへふっ!!!」バタバタ
ダージリン「両手だけじゃ足りないわ」
西「いいはらははっふははひへ!!」ジタバタ
ダージリン「何言ってるかわからないわよ」パッ
オレンジペコ(普通に会話してるじゃないですか…)
西「フニュー…ダージリン酷いです」ホッペサスサス
ダージリン「口は災いのもと。自業自得でしてよ」
ダージリン「どうせ喋るのなら有益なことを喋りなさいな。私のように」フフッ
西「…妖怪口から糞出す大便ジリンめ」ボソッ
ツネッ ミシッ!
西「ひぎゃぁぁぁぁぁぁぁいだぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!!!」ジタバタバンバン
ダージリン「あんたは品を良くしなさいって言ってるでしょうがッ!!!」
オレンジペコ(あはは…絹代様も懲りないですね……)
西「ところでペコ太郎は今何されてるんです」ヒリヒリ
オレンジペコ『結局ペコ太郎なんですか…』
西「気に入ったんですよね"ペコ太郎"って響きが」ニシシ
オレンジペコ『そうですか…。というか私が何してるかなんて知りたいんですか?』
西「んー、何となく聞いてみただけです」
オレンジペコ『何となくで女の私生活覗きたがるなんて、やっぱり絹代様は助平です』
西「まーた助平言う…」
ダージリン「助平よ」
オレンジペコ『助平です』
西「どいつもこいつも助平助平ってちきしょう…」ワナワナ
オレンジペコ『日頃の行いですね』
西(オレンジペコ真似)「ぇ…ぇっちぃことも日頃の行いですか?(モジモジ」ボソッ
オレンジペコ『なっ!? あれは!!!/////』カァァァ...
西「私が助平だったらペコ太郎も助平でダージリンはその百万倍助平です」
ゴンッ!
西「いでっ!!」
ダージリン「助平はあなただけで十分」
西「むっ…」
オレンジペコ『まぁ…今は電話してますけど、先程まではルクリリ様とニルギリ様のお相手をしていました』
西「ほぉ…(誰?)」
ダージリン「ニルギリもルクリリもうちの車長よ」
西「なるほど」
オレンジペコ『それで、"面白いゲーム手に入れたからやるぞペコ!"って』アハハ
西「ん? 聖グロもゲームやるんですか?」
ダージリン「やる子はやるんじゃないかしら? 私はやった事がないけれど」
西「"やる相手がいない"の間違いでは?」
げ ん
こ つ
ダージリン「ゲームをするのも良いけど、程々にね?」
ダージリン「そうでないと隣にいるお馬鹿さんみたいになってしまうわ」
西「」ヒリヒリ
オレンジペコ『はい…。(絹代様、入院延びちゃうんじゃないかな…)』
西「ちなみにどのようなゲームです?」ヒリヒリ
オレンジペコ『スーパーマジノブラザーズです』
西「…はい?」
『ペコ? 誰と電話してるの?』
ペコ『あ、お帰りなさいルクリリ様。知波単学園の隊長さんとお話してました』
西(この声…どこかで聞いたことがあるような…)
ルクリリ『知波単学園…』
西「この声…」
西・ルクリリ「『あーーーっ!』」
ダージリン「あら? 面識あったかしら?」
ルクリリ『あ、あんたはエキシビジョンの時に私をハメやがった…!』
西「そういうあなたは!!」
西「…どちら様?」
電話『』<ガタンッ!!
オレンジペコ『…ルクリリ様?』
ルクリリ『いててて…覚えていないのかよ…。エキシビジョンマッチの時に戦った相手じゃないかぁ…』
西「あー…ウチの福田が言ってた"二度も騙されたか!!"の方ですな?」
ルクリリ『"騙されるか"だ! というかその覚え方はおかしいっ!!』
西「あはは。あの時はお世話になりましたよ」
ルクリリ『ん…、こちらこそ』
西「で、どちら様?」
電話『』<ガタガシャーン!!!
ダージリン「さっき言ってた"ルクリリ"よ。ウチのマチルダIIの車長」
西「ほうほうルリリさんですか」
ルクリリ『し、知らなかったのか!? っていうかルリリじゃない! ル・ク・リ・リ!』
西「あら、失礼しました」
ダージリン「ルクリリ」
ルクリリ『え…今の声誰?』
西「あぁ。私の友人ですよ」
ルクリリ『友人? でも私の名前をいま…』
ダージリン「…」チラッ
西(なんで私を目で見るんです……ってそういうことか)
西「あはは。あれだけ大きな声で叫べば聞こえますよ」
ルクリリ『…そっか』
ダージリン「」コクリ
西(ダージリンもなかなかイタズラっ子だなぁ…)
ダージリン「自己紹介が遅れたましたわ」
ルクリリ『あ、うん。初めまして』
ダージリン「絹代さんの友人を"してやってる"者ですの」
西(し、してやってる!?)ガーン
ルクリリ『私はルクリリ。聖グロで戦車長をやっているわ』
ダージリン「これはこれはご丁寧に。同じく聖グロの隊長をやっている者でございますの」
ルクリリ『はぁ?』
ダージリン「あら、どうかしまして?」
ルクリリ『いや。なかなか面白いジョークだなって』ハハハ
オレンジペコ『…』オロオロ
ダージリン「ほう?」
西(ルクリリさん、電話の相手がダージリンだって気付いてないな…)
ルクリリ『ウチの隊長はダージリンって言うちょっと変だけど面白い隊長なのよ』
西(ちょっと?)
ダージリン「」ギロッ
西「ナンデモナイデス」
ダージリン「それはそれは。さぞかし優秀な隊長ですのね?」
ルクリリ『そうだね。変だけど』アハハッ
ダージリン「…変?」
ルクリリ『ええ。後輩にしょっちゅう格言とかジョークをドヤ顔で語ったりするの』クスクス
ルクリリ『そうでしょうペコ?』
オレンジペコ『…え…ええ…?』オロオロ
ルクリリ『それがあまりに滑稽で、巷じゃ"喋るだけで面白い女"とか言われてるらしいの』アハハハ
ダージリン「ふふふっ。それは面白いわね」
ルクリリ『でしょでしょ! あっはっははは!』
ダージリン「ところでルクリリ」
ルクリリ『あはは。なぁに~?』ケタケタ
ダージリン「こんなジョークを知ってる?」
ルクリリ『え』
西(ご愁傷様です)
ダージリン「アメリカ大統領が自慢したそうよ。"我が国には何でもある"って」
ルクリリ『え゛っ?!』
ダージリン「そうしたら、外国の記者が質問したんですって」
ルクリリ『あ、あの…もしかして…』オロオロ
ダージリン「"地獄のホットラインもですか?"って」
オレンジペコ『お国柄ジョークですね』
ルクリリ『』
ダージリン「それはそうと、"喋るだけで面白い女"のお話、もっと聞かせてくださる?」
ダージリン「ル ク リ リ」ニコッ
ルクリリ『ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁごめんなさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!』ウワーーン
西(ルクリリさん、地獄のホットラインの方がずっとマシですぞ)
西(何しろ私なんかすぐ真横に"地獄"がいるわけですから)
ダージリン「まず相手が誰かを確認してからモノを言うことね」ズズ...
ルクリリ『ももも申し訳ありませんでしたっ!!』
ルクリリ『まさか電話の先にダージリン様がいらっしゃるなんて知らなかったもので!!』ヒィィ
ダージリン「あら、電話の先が私でなければ"喋るだけで面白い女"のお話の続きをしていたと?」
ルクリリ『あっ、いえ…それはその…』オロオロ
ダージリン「何かしら?」
ルクリリ『ひぃぃっ!』ガタガタ
西「まま、ダージリン、その辺でご勘弁を」
ダージリン「…そうね。絹代さんに免じてこの辺にしておくわ」
西(私に免じて?)
ルクリリ『あ、ありがとうございますぅ絹代様ぁ…!』パァァ
西「なんだか今日はやたら"絹代様"って言われるなぁ…」
ダージリン「そういうわけだから、ペコ、ルクリリ。あまり遅くまで遊んでいては駄目よ?」
ルクリリ『はいっ!』
オレンジペコ『かしこまりました』
ダージリン「それと私はこちらで過ごすから、明日はお願いね?」
オレンジペコ『はい。絹代様にも宜しくお伝え下さい』
ダージリン「ペコが宜しくですって」
西「すぐ横にいるんだから直接言ってくださいよ」
オレンジペコ『絹代様、ダージリン様をお願いします。くれぐれもフラチなことをなさいませぬよう』
西「ふ、不埒ぃ?!」
オレンジペコ『ええ』ニコッ
西(ペコ太郎め…だんだんダージリン化してきおる…)グヌヌ
西(………そうだ!)ペコーン
西「ルクリリさん、後輩の指導がなってないようですが?」
ルクリリ『え? あ! こらペコッ! 絹代様に向かってその口の聞き方は何だっ!』
オレンジペコ『えぇぇっ?!』
西「ふははは」
ダージリン「ルクリリ。程々にね?」
ルクリリ『心得ております』
ダージリン「それではお休み」
ルクリリ『お休みなさいませ!』
オレンジペコ『お休みなさい。ダージリン様、絹代様』
プツッ
西「…」
ダージリン「…」
西「…あははっ」
ダージリン「なによ」
西「いやぁ、聖グロの皆さんは楽しいなぁと思いまして」ハハハ
ダージリン「良くも悪くも個性的な子が多いからね」ズズ
西(その個性的な聖グロ生のなかでも群を抜いて個性的なのがダージリンなんですけどね)
ダージリン「グー」
西「ま、まだ何も言ってないじゃないですか!」
ダージリン「どうせ良からぬことを考えているのでしょう」ズズ
西「そんなことないです。…というかダージリンだけ紅茶ずるいです。私にも下さいな」クレクレ
ダージリン「どうぞ」 つ[ティーカップ]
西「え。それダージリンが飲んでたやつじゃ?」
ティーカップ(空)
西「」
西「ダージリンっ!!」ガァァァ!!
ダージリン「もう、騒がしいわね」
西「いくら何でも飲み干したティーカップ差し出すこたぁ無いでしょうに!」
ダージリン「冗談よ。今あげるから大人しく待ってなさい」コポコポ...
西「むぅ…」
ダージリン「…でも、さすがに紅茶だけだと少し寂しいわね」
西「確かに。そういえば晩御飯も食べておりません………あ!」
ダージリン「なに?」
西「冷蔵庫の中に色々入ってたと思うので、良かったらそれをどうぞ」
ダージリン「良いの?」
西「ええ。私一人じゃさすがに食べきれないですし、折角の差し入れを腐らせては申し訳無いので」
ダージリン「そう。ならお言葉に甘えて」ガチャ
冷蔵庫ちゃん<ビッシリ
ダージリン「…」
西「どうされました?」
ダージリン「色んなものが入っているから驚いたのよ…」
西「地元の人や学校関係者など色々な方が来て下さったので」
西「お陰でお見舞の品が増えて感謝感激雨あられであります」アッハッハ
ダージリン「お見舞というよりお葬式に近いわね。この量」
西「勝手に殺さないで下さい」
ダージリン「…それじゃあ、これを頂くわね?」
西「どうぞどうぞー。…ってそれ結構な量ですが、お一人で…?」
ダージリン「あなたは食べないの?」
西「良いのですか?」
ダージリン「あなたのお見舞品なのよ?」
西「あ、そうでしたね。では少しだけ」
西「ところでこれは所謂"けぇき"というものでしょうか?」
ダージリン「ケーキじゃないわ。ミートパイよ」
西「みーとぱい?」
ダージリン「ええ。イギリスの伝統料理で、パイ生地の中にひき肉を入れて焼き上げるのよ」
西「ほうほう」
ダージリン「ただね。ミートパイの起源はイギリスではなくフランスだって主張する人もいるのよ」
西「よくわかりませんが、ダージリンが好きそうな料理ですな」
ダージリン「ええ」フフッ
西(お、当たりかな?)
ダージリン「でも冷たいままだとちょっと…」
西「あ、電子レンジは冷蔵庫の隣にありますよ」
ダージリン「何でもあるのね…」
西「ここでなら一人暮らし出来そうですぞ!」
ダージリン「死ぬまで出られなくなりそうね」
西「それ笑えないです…」
チーン
ホッカホカ
ダージリン「ふふっ。良い香り」
西「美味しそうです」
ダージリン「うふっ♪」
西「随分とご機嫌ですね。そんなにこのパイとやらがお好きなのですか?」
ダージリン「ええ。ミートパイは格別よ」
西「あはは。それは良かった。冷めないうちに頂きましょう」
ダージリン「ええ♪」
西(ダージリン、本当にこのパイが好きなんだなぁ)フムフム
西「これはこれは、なかなか美味ですね」モグモグ
ダージリン「ふふっ。先輩方に作って頂いたミートパイの味を思い出すわ」シンミリ
西「先輩? アールグレイさんですか?」
ダージリン「アールグレイ様もだけど、色んな方に茶請けのお菓子や料理を振る舞って頂いたのよ」フフッ
西「そうなんですか」
ダージリン「思えば、学問、料理、戦車…色んなことを教えて頂いたわね…」シミジミ
西「…」
ダージリン「…また変なこと考えてるのかしら?」ジトッ
西「いえ、ダージリンが1年生の頃ってどんなだったのかなぁ…って」
ダージリン「何を言うかと思えばそんなこと」
西「そりゃ気になりますもん。ダージリンの過去」
ダージリン「…」
西「話によると、アッサムさんとは昔はライバル同士だったとか」
ダージリン「…またペコね」ハァ...
西「あ、ペコ太郎は悪くないですよ。私が聞いただけですので」
ダージリン「…今もよ」
西「ん?」
ダージリン「アッサムとは今もライバルよ」
西「そうなのですか?」
ダージリン「ええ。砲手をやってるけど、彼女の洞察力、行動力は隊長として十分すぎるものよ」
ダージリン「油断していたらすぐに追い抜かれてしまうわ」
西「!」
ダージリン「それに、アッサムは戦車道では砲手を務めているけれど」
ダージリン「彼女はGI6のトップも兼任しているわ」
西「GI6…?」
ダージリン「正式名称は"聖グロリアーナ女学院・情報処理学部第6課"」
ダージリン「我が校の"情報処理学部"の一つよ」
西「ほうほう?」
ダージリン「主に他校の情報収集をお願いしているわ」
西「なんだかスパイ映画みたいですな!」
ダージリン「他にも課によって地図の作成、プログラミング、コード(暗号)の作成…など、様々なことをやっているの」
西「ふむふむ…」
ダージリン「それら情報処理学部のトップがアッサムなの」
西「なるほど…」
西(そんな人が"水飴"に引っかかるのかなぁ…)
ダージリン「アッサムは言ってみれば聖グロリアーナの頭脳」
ダージリン「戦車道の技術はもちろん、ありとあらゆる情報を駆使して有利に事をすすめる」
ダージリン「味方ながら恐ろしいほど頭の切れる女よ」
西「一つ、宜しいですか?」
ダージリン「何かしら?」
西「失礼な言い方になるかもしれませんが…」
ダージリン「あなたが失礼なのは今に始まったことじゃないわ」
西「む…」
ダージリン「良いから言ってみなさいな」
西「そんな凄いアッサムさんがいるのに、どうしてダージリンが隊長なのでしょう?」
ダージリン「…」
西「…」
ダージリン「勝ったからよ」
西「勝った?」
ダージリン「ええ」
ダージリン「あれは私達が一年の頃の話…」
~~~
~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~
●聖グロリアーナ女学院 入学式
ダージリン(一年)「何から何まで噂通りのお嬢様学校ね…」
「ちょっと退きなさいな。邪魔よ」
ダージリン「えっ?」
アッサム(一年)「何処のご令嬢かは存じませんけど」
アッサム「私が通る道を塞がないで頂けますこと?」
ダージリン「あら、ごめんなs」
アッサム「随分と庶民的な立ち振舞いですわね」
ダージリン「っ…!」
アッサム「てっきり他校の生徒かと思ったほどですの」
ダージリン「た、他校ですって?!」
アッサム「ここは名門校の聖グロリアーナ女学院でしてよ?」
アッサム「貴女のような庶民派が来る場所ではありません」フフッ
ダージリン「」イラッ
アッサム「せいぜい学園の品を損ねないことです」スタスタ
ダージリン(何よあの女! 感じ悪い!!)ギリッ
~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~
~~~
ダージリン「元々聖グロはお嬢様学校だけども、その中でもアッサムは典型的なお嬢様だった…」
西「…」
ダージリン「第一印象は最悪だったわ。クシャクシャにしてゴミ処理場に放り投げてやりたいと思うほどに」
西「しかし、それが今では良き相棒というのですから不思議です」
ダージリン「…そうね」
西「?」
~~~
~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~
『勝者 ----!!』
隊長「見事ね」
アッサム「この程度、私の手にかかれば造作もありません」フフッ
副隊長「早くも隊長候補が決まったわね」
3年A「これで私達が抜けても聖グロは安泰ですの」
アッサム「ご安心下さい。私が聖グロリアーナを変えてみせます」
副隊長「ふふっ。期待しているわよ」
アッサム「ほら。アナタたち。何をモタモタしていますの? 早く整備なさい」
ダージリン「…」
アッサム「あら? 何かご不満でも?」
ダージリン「整備は下級生の役目じゃなかったかしら? あなたも下級生ならやりなさい」
ダージリン「それとも、下級生を装った留年生かしら?」
アッサム「…フン。整備などあなたたち格下の仕事です」
ダージリン「整備を知らずに戦車の事を知ることができるのかしら?」
アッサム「整備を知ったところであなたが私に敵うとでも?」
~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~
~~~
ダージリン「アッサムは上から戦車道を見ていた。態度だけでなく実力も」
ダージリン「一方で私は下から彼女を見上げるだけ」
西「同じお嬢様なのに考え方も異なるのですね」
ダージリン「アッサムは良家の生まれよ。本当の意味で貴族出身。だから頭一つ置いて高飛車だったわね」
ダージリン「そして態度だけでなく実力も相当で、"自分より上は存在しない"…と」
ダージリン「あの時のアッサムは本気でそう思っていた」
西「そうですか…」
~~~
~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~
アッサム「はぁ? 試合? この私と?」
ダージリン「ええ。お手合わせ願えるかしら?」
アッサム「ッフ…」
ダージリン「…」
アッサム「あはははははっ!」
ダージリン「…っ」
アッサム「何を言うかと思えば"手合わせしたい"ですって? 随分なジョークですわ!」
ダージリン「…」
アッサム「自分の立場を弁えては如何です? 貴女のような凡人が私に敵うわけがない!」
ダージリン「やってみなければわからないじゃない」
アッサム「お気の毒ですが、あなたの勝率は限りなく0%ですわ」
ダージリン「…」
~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~
~~~
西「それで、お手合わせの結果は…?」
ダージリン「"完敗"よ」
西「えっ?!」
ダージリン「私はアッサムに撃たれて、見るも無残に敗れてしまったわ」
西「でも先程は勝ったと…」
ダージリン「ええ、最終的には…ね」
西「??」
~~~
~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~
『A車 走行不能!』
『よって勝者、B車!』
隊長「やはりあの子が一番ね」
3年A「ええ。あの状況で完璧に相手の戦車を捕捉していましたわね。ケチのつけようがありませんわ」
副隊長「一方で相手の子は全然ね」クスクス
隊長「まだ入りたてだから仕方無いわ。あの子が凄すぎるだけで」
ダージリン「………」
~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~
~~~
西「正直言うと、信じられないです」
西「どうしてもダージリンがアッサムさんに負けるという図が想像できません」
ダージリン「それでも事実ですの。私はあの時アッサムに負けた」
西「それで、アッサムさんは?」
ダージリン「不思議なことに何も言わなかったわ」
西「えっ、あの高飛車なアッサムさんが…?」
ダージリン「ええ。私も未だにそれが不思議なの…」
西「そのことを聞いてみてはいかがでしょう?」
ダージリン「私がその話をしようとすると嫌がるのよ」
西「えっ」
~~~
~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~
「あら。随分丹念に戦車を整備してくれるのね?」
ダージリン「…!」ゴシゴシ
「でも、戦車の汚れは涙や鼻水じゃ落ちないわよ」フフッ
ダージリン「…何か…ご用ですの………」ズビッ
「聖グロに似つかわしくない"煤けたお嬢さん"がいるから、気になってね」フフッ
ダージリン「………」
「こんな格言を知っているかしら?」
「"天才とは努力する凡才のことである"」
ダージリン「…知りません」
「確かに彼女は天才かもしれないわ。聖グロでも十年に一度来るか来ないかの"逸材"」
ダージリン「…」
「…でもね」
「あなたや他の人が思ってるような"天才"って、案外脆いのよ?」
ダージリン「…」
「そして天才が…」
「努力に勝る日が来ることは無い」
ダージリン「!」
「もしアッサムが生まれ持った天才ならば」
「あなたは"努力の天才"になりなさいな」フフッ
ダージリン「……私に努力なんて…」
「簡単なことよ?」
ダージリン「えっ…」
「誰にでも出来ることをやれば良いのよ?」
「別段難しいことをやれというものでは無いわ」クスクス
ダージリン「だったら誰だって…!」
「その代わり、やるなら徹 底 的 にやれ」
ダージリン「!!」
「"何だ、そんなことか"と思うことを、誰よりもやりなさいな」
「そして、五感全てに染み込ませなさい」
「寝ぼけ眼(まなこ)でも完璧に再現できるほど体に浸透させなさい」
「…それが努力よ」
ダージリン「っ…!」
「精神論や根性論を語るつもりはないけれど」
「結局のところ、人を分けるのは誰でも出来ることを誰よりもやって来たか、そうでないかの違いなのよ?」
ダージリン「…そう…ですの?」
「ええ。…そうね。面白いことを教えてあげるわ」
「私、天才ちゃんに勝ってしまったわ」ニコッ
ダージリン「ええっ!!?」
「確かに素晴らしい才能とセンスの持ち主だった」
「そしてあの子の戦術には隙間の無いように見えた」
「でもね、私には彼女の"隙間"が見えたの」
ダージリン「隙間ですって…?!」
「だから、そこを突いたら案の定アッサリと崩れた」
ダージリン「信じられません…。あの人に隙間があるだなんて…!」
「普通の人じゃまず見つけられないでしょうね」フフッ
ダージリン「そ、その隙間とは一体何ですの!?」
「ヒントはおしまい。あとは自分で探しなさい」フフッ
ダージリン「うっ…」
「まぁ…でも、もう1つ」
ダージリン「?」
「あなたが彼女の隙間を見つけたとき」
「彼女が天才ではないことを理解するでしょうね」
ダージリン「えっ…?」
「整備もほどほどに。適当なところで切り上げるのよ?」フフッ
ダージリン「あ、あのっ…!」
「何かしら?」
ダージリン「お名前、教えて頂けませんか?」
「アールグレイよ」
~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~
~~~
ダージリン「今思うと、あのやり取りが無かったら聖グロの隊長は私ではなかった」
ダージリン「それどころか、聖グロに居続けたかどうかも怪しい…」
西「…」
ダージリン「そして、そこから私の戦車道が本格的に始まった」
西「…」
ダージリン「お嬢様学校の生徒らしからぬ泥臭さだった…」シミジミ
西「…」
ダージリン「聞いてるの?」
西「ええ。ちゃんと聞いてますよ」
ダージリン「そう。静かだからてっきりお馬鹿な事を考えてるのか寝てしまったのかと思ったわ」
西「失礼な…」
― 馬鹿なことを考えたり、うたた寝をしたり
そんなこと出来るわけがない。
ダージリンが歩いて来た道は、私が今歩いている道なのだから。
~~~
~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~
副隊長「………」
隊長「驚いたわね。あの子が"天才"に勝つなんて…!」
3年A「まだ入学して1年も経過していないのに、追いついちゃうなんて信じられない…」
3年B「なにかイカサマでもしたのでは?」
3年C「そうに違いありません! きっとあの小娘が!!」
アールグレイ「ご心配なさらず」
隊長「アールグレイ…?」
副隊長「あなたも見たでしょう? あの"天才が負けた"のよ?!」
アールグレイ「ええ。"彼女は見事に天才に勝利"しましたわ」
3年A「前の試合じゃ全く歯が立たなかった子がですのよ? こんなのおかしいわ!」
アールグレイ「彼女は"隙間"を見つけたから勝てたのです」
副隊長「そんな馬鹿なことがあってたまるものですか! あの子は聖グロの…!」
アールグレイ「先輩方はこの私の目が節穴とでも仰るおつもりで?」
3年「………」
隊長「あなたがそこまで言うのだから、彼女の実力は確かなのでしょう」
アールグレイ「間違いありませんわ。私の戦車道生命に懸けてお誓い致します」
隊長「そう…」
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ダージリン「アールグレイ様の言う通り、アッサムの戦術には"隙間"があった」
ダージリン「その隙間を見つけ出して、そこを突いたら本当にあっさりと崩れた」
ダージリン「そして私はアッサムに勝った…」
ダージリン「10年に1度の逸材と言われたアッサムに………」
西「アッサムさんの"隙間"とは一体?」
ダージリン「それは教えない」
西「む…」
ダージリン「あの時は私にとっての"突破口"だったけれど」
ダージリン「今はそれが聖グロの"弱点"の一つですもの」
西「えっ、ということは…?」
ダージリン「今もなおアッサムはあの弱点を克服できてない」
西「あのアッサムさんが?!」
ダージリン「ええ」
西(一体どんな弱点なんだろう…)
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ダージリン「何処へ行くのよ」
アッサム「………」
ダージリン「私の質問に答えてくれるかしら」
アッサム「………もうここに用はありませんの」
ダージリン「はい?」
アッサム「今までこんなことはなかった」
アッサム「誰にも負けなかったのに…」
ダージリン「負けを知るのも教訓の一つよ。良い機会じゃない」
アッサム「あなたに何がわかるというの!!」
ダージリン「…」
アッサム「多くの人に期待されるということがどういうことなのか!!」
ダージリン「100%期待に応えることなんて誰にも無理よ」
アッサム「それでも! 私は応えなければいけなかった!!」
アッサム「だから…ずっと……」
ダージリン「?」
アッサム「ずっと………」
アッサム「頑張ってきたのに………」
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ダージリン「アッサムは"天才"だと思っていた。けれど違った」
ダージリン「名家のご令嬢を装う裏では常に多くの人からの期待という重圧に苦しんできた」
ダージリン「彼女もまた私と同じ、努力家だったの…」
― 彼女が天才ではないことを理解するでしょうね
西「アールグレイさんは既にアッサムさんの事を気付いておられたのですね」
ダージリン「ええ。そしてアッサムの本当の顔を知ったと同時に」
ダージリン「私は彼女の積み重ねてきたものを壊してしまったことに気付いた」
西「ッ!!!」
ダージリン「誰にも気づかれない場所で誰よりも苦労を重ねてきたのよ…アッサムは」
西「…」
ダージリン「彼女は名家の娘だから、常に色んな人の目につくと…」
ダージリン「だから、少しでも粗相を起こせば、それは家の看板に傷をつける事だと何よりも恐れた」
ダージリン「あの高飛車な態度は、それを、弱みを見せないための仮の姿だったって………」
西「それでもアッサムさんは聖グロを出て行こうとしたのですよね?」
ダージリン「引っ叩いて引きずり戻したわ」
西「え」
ダージリン「冗談よ。勝った理由を教えたら納得してくれたのよ」
ダージリン「そしたら」
アッサム『一度勝っただけで良い気にならないことですわ』
アッサム『あなた程度の"努力"など一晩でひっくり返して差し上げますの』
ダージリン「…ってね」
西「なるほど。どことなくアッサムさんらしいですね」
ダージリン「ええ。私はなんとかアッサムの戦う術と場を取り戻すことに成功した…」
西「…」
ダージリン「そこから色んなことで競い合うようになったわね。学問、スポーツ、お料理、早食い」
西「は、早食い?!」
ダージリン「どうして早食いが出てきたのかはよくわからないけれども」
ダージリン「もう二度とやりたくないわね…」
西「まさか聖グロで"早食い"という単語が出てくるとは思わなかったです」
ダージリン「…私もよ」ゲンナリ
西(相当厭な勝負だったみたいだ…)
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アッサム「ここまで30勝30敗」
ダージリン「ええ」
アッサム「次の勝負で私は貴女を負かしてみせます」
後輩「では次は早食いで勝負してみてはいかがでしょう?」
ダージリン・アッサム「早食い!?」
後輩「ええ。ちょうどランチの余りが大量にありまして」
後輩「このままでは廃棄処分になってしまう、それをお二方に…」
アッサム「…」
ダージリン「…」
アッサム「…ダージリン、まさか逃げるつもりで?」
ダージリン「何ですって…?」
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西「…」
ダージリン「…賛成したアッサムがいけないのよ」
西「…」
ダージリン「私は嫌だったのに」
西「…」
ダージリン「…何よ」
西「…で、結果は?」ジトッ
ダージリン「二人ともお腹を壊して病院送り」
西「」
ダージリン「後ほど先輩方にこっ酷く叱られましたわ」
西「馬鹿なんですか?」
ダージリン「私はイヤだと言った。馬鹿はアッサムでしてよ」
西(あなたも十二分馬鹿である)
ダージリン「何よ」ギロッ
西「いえ…聖グロ史上最高に意味のない勝負だなぁと…」
ダージリン「…そういえば、アッサムに勝った直後だった」
西「何がです?」
ダージリン「私達がそれぞれ"ダージリン"と"アッサム"というニックネームを授かったこと」
西「ほうほう」
ダージリン「あの勝負で、私やアッサムが改めて評価された」
西「一年生ながら天才として台頭したアッサムさんと、それを打ち破ったダージリンですから」
西「その時に先輩方から評価されるのはごくごく順当かと思われます」
ダージリン「そうね」
西「聖グロの皆さんはニックネームの方ばかりですよね」
ダージリン「ええ。幹部クラスには紅茶に因んだニックネームがついているわ」
ダージリン「チャーチルの操縦手の"ルフナ"、マチルダ車長の"ルクリリ"」
ダージリン「そしてクロムウェル車長の"ニルギリ"」
ダージリン「これらの名前はアールグレイ様が付けて下さったわね」
西「ではペコ太郎やローズヒップさんはダージリンが?」
ダージリン「ええそうよ。ローズヒップはクルセイダー部隊のリーダーで、その下にもジャスミン、クランベリー、バニラって子がいるわ」
西「なるほどなるほど」
西(………)
ダージリン「…ネーミングの異論は受けないわよ?」
西「ち、違いますよ!」
ダージリン「じゃぁ何かしら?」
西「いやぁ…あははは…」
ダージリン「言いなさい」
西「別に大したことじゃないですよ?」
ダージリン「良いから」
西「むぅ」
西「もしも、もしもですよ? 私が聖グロの生徒だとしたら、どの様な名前を頂けるのだろうかと思っただけです」
ダージリン「そうね。紅茶に因んで」
ダージリン「"茶番"なんてどうかしら?」
西「………」
ダージリン「冗談よ。そんな顔しないでちょうだい」クスクス
西「何でか知りませんが妙にグサッと来ました…」
ダージリン「そんな大げさなこと言わないで頂戴」
西「衝撃的すぎたので明日から"聖グロリアーナの茶番"と名乗ります」
ダージリン「悪かったわ。許して頂戴」フフッ
西「ダージリンのばか」プクー
ダージリン「はいはい」
西「む」
ダージリン「そうね。あなただったら―――」
― 知らなかった。聖グロやダージリンたちにそんな過去があったなんて。
この事を知っているのはアールグレイさんはじめ当時の先輩方、アッサムさん、
そして私だけらしい。
西住さんやカチューシャさんといった他校の皆さんには勿論、ルクリリさんやペコ太郎にすらこの事は話していないそうだ。
ダージリンは何故、ペコ太郎や他の後輩よりも先に私にこの事を話したのだろう…?
そして、その過去を知った今、ダージリンが更に親しく感じた。
いや、"親しく"じゃない
ダージリンの幸せが私の幸せであり
ダージリンの苦痛が私の苦痛である。
ダージリンと過ごしたことによって
ダージリンの気持ちが私の気持ちのように分かるようになってきた。
…そんな感情だった。
それから数日後、私は退院した。
腕や足のギプスは取れ、歩けるようになり、酷使さえしなければリハビリも出来るようになった。
【知波単学園】
西「おはよう諸君! 久しぶりだなっ!!」
玉田「西隊長殿ぉご無事で!!」
細見「おおおお西殿!!良くぞ戻って参られました!!」
福田「おかえりなさいでありますっ!!」
「ケガの方はもう大丈夫でありますか?」
「また突撃が出来るであります!!」
「是非とも突貫しましょうぞ!!」
「知波単学園、万歳!!」
「いえす!いえす!」
バンザーーーーイ!!!
ワーワーワー!!
ワイワイガヤガヤ
西「心配かけてすまなかった!私は復活したからま…た……!?」
ワイワイガヤガヤ
ゾロゾロゾロゾロゾロ
西「おおおい!? どうなってんだこりゃあ!?」
玉田「ご説明しましょう! 隊長殿の知波単魂は知波単学園全土に響き渡り」
玉田「その後"我こそは!!"と勇敢にも知波単戦車道の門を叩く者が殺到し、現在に至りますっ!」
西「そ…そうか…」
私の居ない間にえらいことになっていた。
軽く見積もっても入院前の3倍はいる。そういえば学長さんもそんなようなことを言ってたな。
…戦車足りんぞこりゃ。
でも戦車道に興味を持ってくれる人が増えるのは嬉しい。
せっかくだし戦車だけでなくリハビリも兼ねて体力トレーニングをまたやるか!
西「諸君ッ!!」
西「まずは戦車道を選んでくれたこと感謝するぞ!!」
西「そして、日頃の訓練を経て、より強靭な体と心をもつ真の知波単生となり」
西「その名を全国に轟かせようぞ!!」
ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!
バンザァァァァァァァァァァァイイ!!!!!
西「玉田ァ! 知波単の伝統とは何だ!!!」
玉田「はッ! 勇猛果敢に突撃し、敵の猛攻を掻い潜り、懐へ潜り込み、これを攪乱させることにあります!!」
西「細身ィ!! これからの知波単はどう動く!!」
細身「はいッ!! 突撃部隊と緊密なる協同の下に敵主力部隊を打破、我がチームを勝利に導くことにあります!!」
西「その通り!! 知波単学園は今まで背負ってきた伝統と」
西「新たな戦術を巧みに織り交ぜ」
西「新たな強豪校として、我ら一丸となりて全国の頂点を目指そうぞ!!!」
ウォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!
チハタンバンザァァァァァァァァァイ!!!!!!
知波単学園は生まれ変わった。
突撃は伝統だけど、それだけが全てじゃない。
あらゆる状況に応じて柔軟な戦術を模索する。
知波単学園は生まれ変わった。
強豪校を目指して、全国優勝を目指す新たな仲間を迎える事ができた。
知波単学園は生まれ変わった。
入院生活は退屈かなと思ったけれど、色んな人が来てくれたお陰で充実した日々だった。
さすがに布団に寝転がってずっと過ごすのは嫌だけど、ダージリンや皆と楽しく過ごせたのはとても幸せなことだったと思う。
私は変わることが出来たかな?
◆1 入院生活 おしまい
続き
【ガルパン】西「四号対空戦車?」【3】
…ふぅ