ヴィーネ「今月も仕送り減ってて……」
ヴィーネ「悪魔らしいことって言ってもよくわからないのよ……」
ラフィエル「ふむー」
ヴィーネ「ねえ、何かいい案ない?」
ラフィエル「どうして天使である私に相談するのか、というのはあえて流しましょう」
ラフィエル「そうですね……現実で悪いことをするのに躊躇してしまうのなら夢の中でしてみては如何でしょう?」
元スレ
ヴィーネ「ガヴの夢の中に入ってみたわ」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1497875608/
ヴィーネ「夢?」
ラフィエル「はい。夢魔ってやつです」
ラフィエル「実際に怪我をさせたり社会的に迷惑を掛けたりするわけではないですし」
ラフィエル「トラウマを植え付けるようなことをするわけでもないですしやりやすいのでは?」
ヴィーネ「ふむふむ……いいかも!ありがとう、流石ラフィ!?」
ラフィエル「いえいえ♪」
数日後
ヴィーネ「……というわけで夢の中に入る魔法を覚えたわけだけど」
ヴィーネ「うーんいきなり知らない人の夢の中に入るのもなぁ……」
ヴィーネ「やっぱり知ってる人がいいわよね……」
ヴィーネ「そういえばガヴって普段はどんな夢を見てるんだろう……」
ヴィーネ「気になる……入ってみようかな。ガヴの夢の中に……」
ガヴの夢
ヴィーネ(……で、入ってみたわけだけど。拍子抜けというか……ある意味予想通りだったというか……)
ガヴリール「……おっ、アイテムドロップ♪」カタカタ
ヴィーネ(夢の中でもゲーム……しかも部屋は現実と同じようにぐちゃぐちゃ……)
ヴィーネ(これ夢の中よね?私失敗して未来に来ちゃったとかないわよね?)
ヴィーネ(まったく……しょうがないんだから)
ヴィーネ「ほら、掃除してあげるからちょっとベッドの上に移動してくれる?」
ガヴリール「へいへい」
ヴィーネ(……私何してるんだろ。なんでガヴの夢の中で掃除なんてしてるのかしら)
ガヴリール「ヴィーネ。喉乾いた」カタカタ
ヴィーネ「はいはい……」
ヴィーネ(そもそも私はガヴにちょっとした悪夢を見せるためにここに来たのに)
ヴィーネ(これじゃ普段と変わらないどころか……ガヴにぐーたらできる夢を見せる努力をしてるようなものじゃない)
ヴィーネ(でも……まあ初日だし、今日ぐらいいいか)
ヴィーネ「ふぅ……大分片付いたわね」
ガヴリール「ヴィーネー」カタカタ
ヴィーネ「はいはい、ご飯ね」
ガヴリール「今日はがっつり系がいい」
ヴィーネ「はいはい」
ヴィーネ(それにしても夢の中のガヴは……ちょっと甘えん坊?なんだかついつい言うこと聞いちゃうわね)
ヴィーネ「できたわよ」
ガヴリール「食べさせてー」カタカタ
ヴィーネ「なんでよ」
ガヴリール「えーいいじゃーん」
ヴィーネ「行儀悪いからゲームは一度やめなさい」
ガヴリール「ぶー」
ガヴリール「うん、やっぱりヴィーネさんの料理は絶品ですな」ハフハフ
ヴィーネ「……はいはい」
ガヴリール「おかわり」
ヴィーネ「おかわりするのはいいけど……普段動かないのにいっぱい食べたら太るわよ」
ガヴリール「ヴィーネのご飯で太れるなら本望だよ」
ヴィーネ「何言ってんだか……」
ガヴリール「あー美味かった……さてと、続き続き」カタカタ
ヴィーネ(結局夢の中でもお世話して、悪夢はまったく見せず)
ヴィーネ(私も人のこと言えないわね……)
ガヴリール「お、レアモンスター出現!」カタカタ
ヴィーネ(明日、明日こそちゃんとやろう……)
翌日 学校
ヴィーネ「……」
ラフィエル「その様子だと……失敗したんですか?」
ヴィーネ「夢の中には入れたんだけど……」
ラフィエル「夢の中でも悪いことができなかった……と」
ヴィーネ「うん……」
ラフィエル「夢の中なんですから極端な話殺しちゃってもセーフなんですよ?」
ヴィーネ「悪魔か!!」
ラフィエル「ですが殺されちゃう悪夢とかってたまに見ませんか?」
ヴィーネ「こ、怖い映画とか見たときとか……」
ラフィエル「でも二度と眠れないってほどでもないじゃないですか。案外大丈夫なものですよ?」
ヴィーネ「いや……でも無理でしょ……」
ラフィエル「ちなみに誰の夢に入ったんですか?知ってる人?それとも赤の他人ですか?」
ヴィーネ「……ガヴ」
ラフィエル「なるほど」
ヴィーネ「だって!ガヴのことだからゲームの世界とか、そういう夢を見てると思ったんだもん!」
ヴィーネ「そしたらいつもと同じようにゲームをしてゴロゴロしてだらだらして……」
ラフィエル「それでー……いつもと同じようにお世話を?」
ヴィーネ「……うん」
ラフィエル「なるほどなるほどー……そういうことでしたか」
ヴィーネ「え?」
ラフィエル「いえ、なんでも。では次はあえて知らない人の夢の中に入ってみては?」
ラフィエル「知らない人でしたら遠慮とかもしないでできるかもしれませんよ?」
ガヴの夢
ヴィーネ(……なんて言われたけど、またガヴの夢の中に来ちゃった)
ヴィーネ(だって知らない人って緊張するし……)
ヴィーネ(それにもし失敗してとんでもない夢を見せちゃってもごめんなさいって言えないし……)
ヴィーネ(……それにしても)
ガヴリール「くそ……自動更新ホントうざいな……」
ヴィーネ(相変わらずの夢ね)
ガヴリール「なんか時間掛かるし……しょうがないからヴィーネに構ってやるか」
ヴィーネ「何様よ……今掃除してるから待ってて」
ガヴリール「えー掃除してる間に終わっちゃうって」
ヴィーネ「じゃあその自動更新とやらの間手伝ってくれる?」
ガヴリール「えー……じゃあコンビニ行ってくる」
ヴィーネ「そう……」
ヴィーネ「……ほんと、自分勝手なんだから」
ヴィーネ「夢の中でくらいしっかりして……」
ヴィーネ「……」
ヴィーネ「いや……しっかりしろしっかりしろって言って、元のガヴに戻ったら戻ったでまた駄天してほしくなって……」
ヴィーネ「ほんと、人のこと言えないわね……」
ガヴリール「ただいまー」
ヴィーネ「おかえり」
ガヴリール「お……更新終わってるな。よし……さっそく再開っと」カタカタ
ヴィーネ(最初は悪魔として悪夢を見せるつもりだった。でも実際夢の中に入ったら入ったでそんなことできなくて)
ヴィーネ(それどころか現実と同じようにガヴのお世話をする始末。それが心地良いと感じてる)
ヴィーネ(なにやってんだか……)
翌日 学校
ラフィエル「……で、またガヴちゃんの夢の中に入っていつものようにお世話して来たと」
ヴィーネ「うん……」
サターニャ「なるほどなるほど……だいたい把握したわ」
ヴィーネ「サターニャ!いつの間に」
サターニャ「偶然聞こえたのよ。ヴィネット……私が手助けをしてあげるわ!」
ヴィーネ「……その手に持ってる催眠術の本は?」
サターニャ「察しが良いわね……催眠術でヴィネットに暗示を掛けるのよ!」
ヴィーネ「……」
ラフィエル「……っ」プププ
ヴィーネ「いや、私は」
サターニャ「安心しなさい!人間が書いたものとはわけが違うのよ!」
ラフィエル「また魔界通販ですか?」
サターニャ「そう!」
ヴィーネ「まだあそこで物買ってたんだ……いい加減やめたほうが」
ラフィエル「ですがヴィーネさん。あえて試してみるのもありかもしれませんよ?」
ヴィーネ「ええ……」
ラフィエル「魔界通販の商品は効果自体はあるわけですし」
サターニャ「そうよ!私がヴィネットに悪魔的行為ができるように暗示を掛けてあげる!」
ヴィーネ「……」
サターニャ「えっと……まずは五円玉を……あっ五円玉ない。誰か五円玉持ってない?」
ラフィエル「ないですね~」
ヴィーネ「私もないわ……」
サターニャ「……50円玉でも大丈夫かしら?」
ラフィエル「いえ、呪術は正式な手順で進めないと危険です!サターニャさん!コンビニでお菓子でも買って5円玉を作ってきてください!」
サターニャ「わ、わかったわ!」
サターニャ「買ってきたわ!これに糸を結びつける……糸!糸ない!!」
ヴィーネ「私のあげるわよ」
ラフィエル「糸持ってるんですか?」
ヴィーネ「ソーイングセットをちょうど持ってきてたから」
ラフィエル「なるほど」
サターニャ「助かるわ!これで準備完了よ!」
ヴィーネ「……」
サターニャ「あなたは悪魔的行為ができるようにな~る……悪魔的行為ができるようにな~る……」
ラフィエル「……っ」プルプル
サターニャ「あなたは悪魔的行為ができるようになーる……!できるようになぁああるっ!!」クワッ
ヴィーネ「……いや」
サターニャ「完璧ね!」
ラフィエル「ふふ、そうですね♪」
放課後
ヴィーネ「ガヴーそろそろ帰りましょ?」
ガヴリール「今日寄りたいところあるんだよね」
ヴィーネ「どこ?」
ガヴリール「ヤ○ダ。マウス買いたいんだよね」
ヴィーネ「この前も買ってなかった?」
ガヴリール「苛ついて投げたら壊れたんだよね」
ヴィーネ「なにしてんのよ……」
ヴィーネ(……あの催眠術、ちょっと心配だったけど何ともないじゃない)
ヴィーネ(悪事といっても魔界通販だしね。もしかしたら気づかないレベルの些細な悪事だったのかも)
ヴィーネ(まあ、それはそれで結局悪魔らしいことができないってことになるから素直に喜べないんだけど……)
ガヴリール「用は済んだ。帰るか」
ヴィーネ「ねえ、帰りにパン屋さん寄ってかない?近くに美味しいお店があるの」
ガヴリール「別にいいけど」
ヴィーネ(まあ、いっか)
ガヴの夢
ヴィーネ(さて……そんなわけで今日もガヴの夢の中に来たわけだけど……)
ガヴリール「よし……アイテムドロップ……っと」カタカタ
ヴィーネ(相変わらず……ね。私も相変わらず……)
ヴィーネ「ガヴ、そろそろご飯にするわよ」
ガヴリール「んー……まあ切りいいし……そうするかな」
ヴィーネ(お世話しちゃってる。最近は悪夢を見せるためじゃなくてお世話するために来てるわね……)
ヴィーネ(ガヴの家はすぐに汚くなるけど毎日お世話するわけにはいかないし)
ヴィーネ(そもそも毎日ガヴの家にお邪魔するわけにも……)ズキッ
ヴィーネ(う……頭が痛い……?まさかこれ催眠術の……?今更効果がっ……!)ズキズキッ
ガヴリール「ヴィーネーそろそろお腹空いたー」カタカタ
ヴィーネ「……」ギロッ
ブチッ
ガヴリール「あー!おまっなんてことを……替えのLANケーブルあったかな……」ゴソゴソ
ヴィーネ「駄目。その前に部屋の片付けをしなさい」
ガヴリール「えー……でもお腹空いた」
ヴィーネ「ガヴリール!!」
ガヴリール「っ!」ビクッ
ヴィーネ(う……頭が痛い……!このままじゃ……っ)
ヴィーネ(夢の中とはいえガヴに酷いことをしちゃうかも……っ)
ヴィーネ「……ごめん、ガヴ。今日は帰るわ……」
ガヴリール「え、ちょっ待って」
ヴィーネ「ごめんなさい……っ」
ガヴリール「ま、待って!ヴィーネ!待ってってば!ちゃんと片付けするから!」
ヴィーネ(やっぱり私には酷いことはできない……っ)
…………
……
翌朝
ヴィーネ「……」
ヴィーネ「あー……催眠術なんて手を出すんじゃなかった……」
ヴィーネ「あの後どうなったんだろう?」
ヴィーネ「さてと……」
ヴィーネ「ガヴを迎えに行かないと」
翌朝 ガヴリール宅
ピンポーン
ヴィーネ「ガヴー。そろそろ起きないと遅刻するわよー」
ガチャッ
ヴィーネ「ガヴ――」
ダキッ
ガヴリール「……ヴィーネぇ」ギュゥゥゥゥゥッ
ヴィーネ「え……?が、ガヴ?どうしたの!?」
ヴィーネ(あ、あれ?悪夢見せてないはず……よね?)
ヴィーネ「ね、ねえガヴ」
ガヴリール「ヴィーネは……どこにもいかない……?」
ヴィーネ「……へ?」
ガヴリール「私を一人にしない……?見捨てたりしない……?」
ヴィーネ「なにを言って……」
ヴィーネ(……あっ。もしかして……)
ヴィーネ「……そう、だったんだ」ナデナデ
ヴィーネ(ガヴは震え声で全部話してくれた。最近ずっといい夢を見ていたこと、そして今回は悪夢だったこと)
ヴィーネ(私がでていってからずっと帰って来ない夢。ガヴはあの後ずっと夢の中で私を待ち続けたらしい)
ヴィーネ(ガヴに酷いことをしたくないと思ってたのに、結果としてガヴにとってはとても辛い思いをさせちゃったみたい)
ヴィーネ(あのガヴがずっと抱きついたまま離れない……とっても辛かったんだと思う)
ヴィーネ(私も……ガヴが突然いなくなってずっと帰って来ないなんて絶対に耐えられない……)
ヴィーネ「ごめんね……」ナデナデ
ガヴリール「……」ギュゥッ
ヴィーネ「大丈夫、私は絶対にガヴを見捨てたりなんかしないから」ナデナデ
ガヴリール「ほんと……?」
ヴィーネ「もちろん」ナデナデ
ガヴリール「よかった……」
ヴィーネ「だからガヴも……いなくなったりしないでよね……」ナデナデ
ガヴリール「……うん」ギュゥゥゥッ
ヴィーネ「それはそうとそろそろ準備しないと」
ガヴリール「……もう少しだけ、こうしてたい」ギュゥッ
ヴィーネ「……もう」ナデナデ
ヴィーネ(たまには……遅刻しちゃうのも悪くないかもね……)
ヴィーネ「少しだけだからね」ギュッ
ガヴリール「うん……」ギュッ
学校
サターニャ「珍しいわね。ヴィネットも遅刻するなんて」
ヴィーネ「うん、ちょっとね」
サターニャ「もしかして……昨日のせいだったりする……?」
ヴィーネ「う、うーん……まあ無関係とは言えない……けど……」
サターニャ「悪いことちゃったわね……ごめんなさい……」
ヴィーネ「ううん、大丈夫♪」
ラフィエル「ふふ、遅刻しちゃったのに二人共生き生きしてますね」
ガヴリール「まあね」
ラフィエル「何があったのか気になりますね」
ヴィーネ「それは……二人だけの秘密よね?」
ガヴリール「ああ」
サターニャ「えー気になるじゃない!教えなさいよ!」
ガヴリール「嫌だ」
ラフィエル(最近ガヴちゃんの機嫌が良くなった。それはヴィーネさんがガヴちゃんの夢の中に入り、お世話をしていたから)
ラフィエル(そしてサターニャさんが例の催眠術をした翌日、二人は遅刻した。あの暗示が働いたからでしょう)
ラフィエル(きっとヴィーネさんはガヴちゃんに悪夢を見せたはず、あるいは見せようとしたはず)
ラフィエル(しかし二人は今まで以上に親密な仲になったようです)
ラフィエル(果たして何があったのでしょうか♪)
放課後 ガヴリール宅
ヴィーネ「……」
ガヴリール「汚い部屋だな……片付けるか」
ヴィーネ「片付けするの?」
ガヴリール「うん。ヴィーネと一緒ならやる気出る」
ヴィーネ「……ほんとガヴは私がいないとダメなんだから」
ヴィーネ(……私も人のこと言えないけどね)
END