ラフィエル「実は白羽家が運営する結婚式関連のお店や式場が下界にあるんですけど」
ラフィエル「ジューンブライドということで広告を出す予定なんですよ」
サターニャ「はあ」
ラフィエル「それでサターニャさんならタキシードが似合うのではないかと思いまして!!」
サターニャ「そもそもそういうのって高校生がやるものじゃないと思うんだけど。それに私女なんだけど」
ラフィエル「う、サターニャさんにしてはごもっとも。ただ私がウエディングドレスを着せられることになってまして」
ラフィエル「タキシード役に友達を抜擢していいって言われてるんですよ」
元スレ
ラフィエル「サターニャさんタキシードを着てみませんか?」 サターニャ「なんでよ」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1496408110/
サターニャ「はあ」
ラフィエル「とはいえ男性の友人はいませんし……かといってガヴちゃんにタキシードはあれですし、ヴィーネさんはどっちかっていうと花嫁やりたそうですし」
サターニャ「はあ」
ラフィエル「そこで!サターニャさんならかっこいいですしタキシードも似合うと思うんです!!」
サターニャ「なんであんたがウエディングドレス着ることになったのよ」
ラフィエル「主に身内のせいです」
サターニャ「ああ……そういう……」
ラフィエル「断ろうと思えば断れるんですけど……親孝行もしたいですし~」
ラフィエル(なによりサターニャさんにタキシードを着せれば……///)
サターニャ「うーん……」
ラフィエル「もしその広告のお陰で白羽グループのタキシードやウエディングドレスの注文が増えたり……式場の利用が増えたら……」
ラフィエル「それはすなわちサターニャさんの魅力によるものと言っても過言ではありません」
ラフィエル「そう、人間を支配したも同然と言えるでしょう!」
サターニャ「……!!」
ラフィエル「今ならおまけでメロンパン1ヶ月分もお付けします……!!」
サターニャ「やる!」
ラフィエル「決まりですね♪では来週の土曜日に駅前に集合ということで♪」」
サターニャ「わかった!」
ラフィエル(ふふふ……♪)
当日
サターニャ「おまたせ」
ラフィエル「こんにちはーではではさっそく行きましょう♪」
ラフィエル(これはサターニャさんと結婚するわけではありません)
ラフィエル(そもそも私とサターニャさんは天使と悪魔、それ以前に女同士。結ばれることのない関係)
ラフィエル(だから……少しくらい夢を見させてください)
サターニャ「どのくらいで着くの?」
ラフィエル「2回ほど乗り継ぎして……1時間ほどかと」
1時間後
マルティエル「お待ちしておりました。お嬢様、サタニキア様」
ラフィエル「出迎えありがとう、マルティエル」
サターニャ「誰?」
ラフィエル「うちの執事ですよ」
サターニャ「へー……この人が」
マルティエル「では早速衣装選びから始めましょう。こちらへどうぞ」
店内
サターニャ「結構種類あるのねー……」
ラフィエル「最近はカジュアルな雰囲気のものも増えてきましたからね」
マルティエル「タキシードはこちらに」
サターニャ「へー……タキシードって黒色だと思ってたけど……」
ラフィエル「グレーやゴールドなんかもありますね。最近は花嫁に合わせて白というのも人気みたいです」
サターニャ「ふーん……」
サターニャ「といっても私はこういうのよくわからないし……」
マルティエル「一先ず着用してみては如何でしょう」
サターニャ「そうね……」
マルティエル「……」ジィ
サターニャ「な、なによ……」
マルティエル「いえ。なんでも……ではまずはオーソドックスに黒色のこちらを着てみては如何でしょう」
ラフィエル「~♪」
ラフィエル「涼しげに青色なものも素敵ですし……温かい黄色もいいですね」
ラフィエル「ですが……やっぱり天使ですし、白でしょうか♪」
ラフィエル「あとは……シルエットが……うーん。迷いますね」
ラフィエル「とりあえず一番人気のものを着用してみましょう」
ラフィエル「すみませーん」
マルティエル「胸のラインを抑えるためにサラシを巻きますね」
サターニャ「わかったわ」
マルティエル「苦しくはないですか?」
サターニャ「大丈夫」
マルティエル「あと髪は少し解かせてもらいます」
サターニャ「ん」
マルティエル「なかなかよい体付き」サワサワ
サターニャ「ちょっどこ触ってんのよ!!」
マルティエル「失礼しました。少々身体のサイズを測っていたもので」
サターニャ(え、手でわかるの?こわっ)
マルティエル「引き締まっていて……とても良い」
サターニャ「ひぇ」
マルティエル「では早速着付けをば」
マルティエル「……」
サターニャ「……」
マルティエル「如何ですか?大変お似合いだと思いますが」
サターニャ「これって男の服なのよね?似合うって言われて素直に喜んでいいのかしら」
マルティエル「いいと思いますよ。私も男性的な服装は好みです」
サターニャ「そう……」
ラフィエル「サターニャさーん」
サターニャ「あ、ラフィエル」
ラフィエル「……素敵ですね♪よーく似合ってますよ♪」
サターニャ「ありがとう。ラフィエルも似合ってるんじゃない?」
マルティエル「大変素敵ですお嬢様早速ですが写真を」
ラフィエル「はい。ただ更衣室に付けられていたこのカメラは処分しまーす」
マルティエル「あぁっ……///」
サターニャ「ラフィエルも苦労してそうね……」
マルティエル「並んでください」
ラフィエル「はいっ」
サターニャ「ん」
ラフィエル(サターニャさんとこの格好でツーショット……///)
マルティエル「……」
マルティエル「では撮ります」
パシャッ
ラフィエル「他のも着用していいですか?」
マルティエル「はい。ご自由に」
ラフィエル「サターニャさんサターニャさん。次はサターニャさんが選んでくれませんか?」
サターニャ「私が?」
ラフィエル「はいっ♪」
サターニャ「んー……これは?」
マルティエル「ビスチェタイプですね」
ラフィエル「結構肌見えてしまいそうな……」
マルティエル「ですがお嬢様のプロポーションを生かすのにはいいデザインだと思います」
ラフィエル「そう……サターニャさんが選んでくれたんですし……では次はこれにしますっ!」
サターニャ「じゃあ私のもラフィエルが選んでくれない?」
ラフィエル「わかりましたっ!」
マルティエル「……」
ラフィエル「マルティエル?どうしました?」
マルティエル「いえ、なんでもありません」
ラフィエル「迷いますね~」
マルティエル「サタニキア様ならどれでも似合うと思いますよ」
ラフィエル「当然ですっ」
サターニャ「やっぱり天使と悪魔だし白と黒で行きたくない?」
ラフィエル「ですね~……これとかどうでしょう。すらっとしてますし」
サターニャ「じゃあ着てみましょ」
ラフィエル「はいっ」
マルティエル「ではお嬢様」
ラフィエル「あなたはサターニャさんの着付けをしてくださーい」
更衣室
マルティエル「……」
サターニャ「……」
マルティエル「お嬢様とは」
サターニャ「え?」
マルティエル「失礼しました。お嬢様とはどのような日々を送っていられるのかと思いまして」
サターニャ「どのようなって……」
マルティエル「少々昔の話をしましょう」
マルティエル「お嬢様がまだ下界に旅立つ前の話です」
マルティエル「お嬢様は白羽家の長女として生まれ周囲の期待に応えるために日々励んでいました」
マルティエル「自分自身のやりたいことよりも、すべきことを優先し……自分を押し殺して生きていました」
サターニャ「……」
マルティエル「お嬢様は天界での暮らしに退屈していたのです」
マルティエル「作り笑いを浮かべ、都合のいいように取捨選択するだけの生活に」
マルティエル「学校では表面上では多くの友人を作っていました。多くの後輩にも慕われました」
マルティエル「ですがそれはあくまで周囲に対するお嬢様へ評価をよくするためにそうしていたに過ぎないのです」
マルティエル「ガヴリール様には若干の興味を抱いていたものの……」
マルティエル「それでも退屈さを解消することはできていませんでした」
サターニャ「……」
マルティエル「だから驚いたのです。お嬢様が初めて帰省したときの豹変に」
サターニャ「豹変……?」
マルティエル「はい。久しぶりに見ましたね。作りものではないお嬢様の笑顔を」
マルティエル「お嬢様は楽しそうに下界での生活について語ってくれました」
マルティエル「そこには……何度もサタニキア様の名前がでてきました」
サターニャ「……」
マルティエル「あれからでしょうか。お嬢様が好きなことをして生きていくと決めたのは」
マルティエル「お嬢様は優秀故によく会食やビジネスのお誘いが来るのですが昔は嫌々ながらも笑顔で了承していたのです」
マルティエル「お嬢様が帰省したときに来たお誘いになんと答えたと思いますか?」
サターニャ「やだ?」
マルティエル「はい。今でも忘れません。つまらなそうなので断っておいてください……と」
サターニャ「ラフィエルらしいわね……」
マルティエル「そうですね。ですが……昔のお嬢様からは考えられないことです」
マルティエル「本来は……いけないんでしょうね。ですが私はその時とても安心しました」
マルティエル「お嬢様は楽しさを求め、周りにそれを訴えるようになった。ようやく……生きる喜びを見出し始めた」
サターニャ「……」
マルティエル「サタニキア様のおかげだと思ってます。本当に……」
サターニャ「そう、だったんだ……」
マルティエル「そうです。なのでお嬢様が下界であなたとどのような生活を送っているのか興味があります」
サターニャ「天使には千里眼?とかいうのがあってそれで見れるんじゃないの?」
マルティエル「……天使なら、ですね」
サターニャ「どういうこと?」
マルティエル「実は私には天使の力はもう無いんですよ」
サターニャ「えっ」
マルティエル「輪っかもないですし羽もありません。なのでお嬢様を観察するのに盗撮は必須。お風呂を覗くにも梯子がなくては話になりません」
サターニャ(もしかしてラフィエルってこいつの影響を受けてるんじゃ……)
サターニャ「でも天使の力がないっていうのは」
マルティエル「私はお嬢様に仕えているのです。神に仕えているわけではありません」
マルティエル「私にとっての主はお嬢様ですから」
サターニャ「……」
マルティエル「私にとってはお嬢様の幸せが全て。ですから……」
ガシッ
サターニャ「っ!?」
マルティエル「お嬢様を……これからもよろしくお願いします」
サターニャ「え……と」
マルティエル「さて、シリアスな雰囲気はこの辺にしておきましょう。そろそろお嬢様の下界でのムフフなお話を聞かせてもらいましょうか」
サターニャ「……わかったわ。えーとまず何から話そうかしら……」
サターニャ「体育の授業中にブラが壊れた事件とか?あと蛙が苦手なこととか」
マルティエル「ぜひ詳しく」
サターニャ「あれはねー……」
……
ラフィエル(……もう。何の話をしてるんですか……)
サターニャ「ラフィエルー着替えたわよー」
マルティエル「着付けに時間が掛かってしまい申し訳ございません」
ラフィエル「いえ、大丈夫ですよ」
サターニャ「……」
ラフィエル「……すごく、お似合いです」
サターニャ「ラフィエルも、ね」
ラフィエル「……///」
マルティエル「では写真を撮りますので並んでください」
マルティエル「……さて、これにしましょうか?それともまだ時間がありますし他のも試してみますか?」
サターニャ「じゃあこの際片っ端から着ていくわよ!」
ラフィエル「わかりましたっ!」
サターニャ「じゃあラフィエルはこれ!」
ラフィエル「ふ、ふりふりですね~……」
マルティエル「可愛らしくて素敵だと思いますよ」
ラフィエル「マルティエルはなんでも褒めるから参考にしませんよ?」
マルティエル「あぁっ……///」
サターニャ「白に染まるのは私の性には合わないわ……」
ラフィエル「ですが白いタキシードも素敵ですっ♪」
……
ラフィエル「これは短すぎませんか……?」
サターニャ「こういうドレスもあるのね」
……
サターニャ「銀はっ……銀はだめっ……」
ラフィエル「純銀というわけではないのに……」
……
サターニャ「私はタキシードを着る予定なんじゃ」
ラフィエル「サターニャさんはウエディングドレスも似合いますね!」
サターニャ「ラフィエルのタキシードも似合ってるわよ」
ラフィエル「そ、そうですか?」テレテレ
…………
……
マルティエル「さて、そろそろ式場に移動しましょうか。どれにするか決めてください」
ラフィエル「……これにします」
サターニャ「……私はこれ」
ラフィエル(サターニャさんが最初に選んでくれたものを……)
サターニャ(ラフィエルが最初に選んでくれたやつを……)
マルティエル「……わかりました。では式場で広告用の写真を撮りますので移動します」
結婚式場
サターニャ「あー……神聖なオーラ強すぎない……?ちょっとキツイ……」
ラフィエル「大悪魔ならこのくらいへっちゃらですよね?」
サターニャ「……ま、まあね。こんなのあれよ、たんすの角に小指ぶつけたくらいの痛みしかないわ」
ラフィエル「……結構辛そうですねぇ」
マルティエル「では写真を撮りますので祭壇へ」
サターニャ「ん」
ラフィエル「はい……///」
ラフィエル(これは結婚式ではありません。ただ広告用の写真を撮るだけ。そのために壇に向かって歩いているにすぎません)
ラフィエル(でも……それでも……サターニャさんとこうしてこのウエディングロードを歩くことができる。それだけで頭が沸騰しそうです……///)
サターニャ「不思議なものね。悪魔の私がここを歩いているなんて……」
ラフィエル「この絨毯は床下に潜む悪魔から花嫁を守るものですしね」
サターニャ「あんたは守らなくても平気そうだけどね」
ラフィエル「失礼ですねっ」
マルティエル「では撮ります」
サターニャ「いつでもOKよ」
ラフィエル「お願いします」
パシャッ
マルティエル「もう1枚撮ります」
パシャッ
マルティエル「次は保存用と観賞用と」
ラフィエル「駄目でーす」
マルティエル「……これで終了です。本日はお疲れ様でした。お嬢様。サタニキア様」
ラフィエル「いえ、私も楽しかったですよ」
サターニャ「まあ、面白かったわ。正直ここの空気めっちゃキツイけど……」
マルティエル「では着替えたら夕食にしましょう。白羽家直属の料亭が近くにありますので」
サターニャ「白羽家ってどんだけ幅広く展開してるの」
ラフィエル「うふふ♪」
ラフィエル「……」
サターニャ「ん、行かないの?」
ラフィエル(ここをでたら……この夢のような一時は終わり、いつもの日常に戻ってしまう)
サターニャ「ラフィエル?」
ラフィエル「あの……サターニャさん。もう一つ……もう一つだけお願いを聞いてもらっていいですか?」
サターニャ「なによ」
ラフィエル(せっかく、せっかくここまで来たんです。なら……)
ラフィエル「誓いのキスを……したいです」
サターニャ「……っ!」
ラフィエル「だめ……ですか?」
サターニャ「……」
サターニャ(こいつにはいつもいつも振り回されて散々な目に遭ってる)
サターニャ(それに……あの時だって……あの時もあの時も……でも)
(お嬢様を……これからもよろしくお願いします)
サターニャ「……」
サターニャ「……わかったわ」
ラフィエル「っ!!」
サターニャ「アンタのほうが背が高いのはちょっと癪だけど……」
ラフィエル「ほ、ほんとに……いいんですか……_」
サターニャ「悪魔に二言はないわ。でも目は閉じて。恥ずかしいから」
ラフィエル「はいっ!!」
マルティエル(ああ……お嬢様。とても、とても素敵な笑顔です)
サターニャ「じゃあ……いくわよ」
マルティエル(私が見た中で……一番の笑顔)
マルティエル(白羽家に仕え、あなたと出会ってから今に至るまで……私はその笑顔を見ることができなかった)
マルティエル(私が……あなたをその笑顔にさせてあげたかった)
マルティエル(……それがあなたの幸せならば、私はそれを支えます)
サターニャ「……ん」
ラフィエル「んっ……」
チュッ
マルティエル(どうか、お幸せに)
パシャッ
数日後
ヴィーネ「ちょっとちょっとちょっとちょっと!!」ドンッ
ガヴリール「どうした」
ヴィーネ「これは……何っ!?」
サターニャ「あーそれは」
ラフィエル「結婚式場の広告ですよ」
ヴィーネ「それはわかるけどっ!なんでラフィとサターニャが!?」
ラフィエル「ここ、白羽家が運営してますので私達がお手伝いをしたんです」
ヴィーネ「でも……これは……まるで……///」
ラフィエル「うふふ……♪」
ガヴリール「ただの広告でしょ?デパートのチラシにたまに浴衣とかの人が載るようなものでしょ」
ヴィーネ「浴衣とこれはまた違うでしょ!!」
ガヴリール「いや別に実際に結婚式をあげたわけじゃあるまいし……」
サターニャ「……///」
ラフィエル「……///」
ガヴリール「え、なんで二人共顔赤らめてんの」
ヴィーネ「……どういうこと!?」
サターニャ「いや、ねえ?ただの広告よ!ね?///」
ラフィエル「はいっ!そ、そうです!///」
ヴィーネ「怪しい……!」ガシッ
ラフィエル「ほ、ほんとですよ~……」
ポロッ
ガヴリール「ん、なんか落ちたぞ」
ラフィエル「え?なんでしょう。写真でしょうか」
ガヴリール「どれ……んんっ!?」
ヴィーネ「どうしたの……ん゛っ!?こっこれはあ!?」
ラフィエル「え」
サターニャ「どうしたのよ」
ヴィーネ「これは……なにっ!?」ドンッ
サターニャ「……!!!」
ラフィエル「なっ……!!」
マルティエル「お嬢様……お土産喜んでもらえたでしょうか」
マルティエル「ふふ、愛する人とのキスショット。喜ばないはずがありませんね」
マルティエル「お部屋を物色している最中に急にお戻りになられたので近くにあった服の中に突っ込んでしまいましたが」
マルティエル「気付かないということはないでしょう」
マルティエル「さて……そろそろ天界に戻りましょうか」
……
サターニャ「ラフィエル!逃げるわよ!」
ラフィエル「はいっ!!」
ガヴリール「逃がすか!」
ヴィーネ「ちゃんと説明しなさい!!」
END