喪黒「……私の名は、喪黒福造。人呼んで笑ゥせぇるすまん。
ただのセールスマンじゃございません。
私の取り扱う品物は『ココロ』。
人 間 の コ コ ロでございます…。」
喪黒「……この世は老いも若きも、男も女も、ココロの寂しい人ばかり、
そんな皆さんのココロのスキマをお埋めいたします。
いいえ、お金は一銭も戴きません。
お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます…。
さて、今日のお客様は………。
『月乃瀬・ヴィネット・エイプリル 高校生』
ホーーーーーーホッホッホッホ…」
元スレ
ヴィーネ「ココロのスキマ、お埋めします?」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1489957984/
ヴィーネ「ハァ…」
ガヴリール「どうしたんだよ溜息なんて付いて」
ヴィーネ「また、仕送り減らされちゃって」
サターニャ「まったく、悪魔的行為(デビルズアクション)をさぼるからこういう事になるのよ。ちょっとは私を見習いなさいよね」
ガヴリール「お前も人のこと言えた義理じゃないだろう」
ヴィーネ「困ったな次の仕送りまでどうやりくりしよう…」
ガヴリール「いざって時は私も協力するから元気だしなよ」
ヴィーネ「大丈夫、なんとかやりくりするから」
ガヴリール「飢え死にするなよ」
ヴィーネ「そんわけないでしょう」
ガヴ「じゃあ、また明日な」
ヴィーネ「うん、また明日。とは、言ったものの、次の仕送りまであと2週間あるのに家にある食材だけで足りるかしら」
ドン!!
???「あいたたた!!」
ヴィーネ「すみません大丈夫ですか…って血!? あわわどうしよう、救急車呼ばないと!!」
喪黒「ホーホッホッホッ、ご心配は入りません。これはただのトマトジュースです」
ヴィーネ「でも、洋服が汚れちゃったしすみませんクリーニング代は払いますので」
喪黒「いえいえ、お構いなくどうせ安物ですから」
ヴィーネ「でも…」
喪黒「それより、なにやら相当考え込んでいたようですが。よろしければ私にお聞かせいただけないでしょうか?」
ヴィーネ「そんな大したことじゃないんで」
喪黒「申し遅れましたが私こういうものと申します」
名刺を差し出す喪黒
ヴィーネ「ココロのスキマ、お埋めします?」
喪黒「私、せぇるすまんをしておりまして。あなたのようなココロにスキマがある方を救済して差し上げてるのです」
ヴィーネ「ココロのスキマなんて私には」
喪黒「私にはわかりますあなたは今の自分に疑問をもっていらっしゃる」
ヴィーネ(何この怪しいおじさん何かの勧誘かしら?)
ヴィーネ「申し訳ないんですが、夕飯の支度があるんでこの辺で失礼します」
喪黒「そうですか、もしお一人で解決できないお悩みがございましたら遠慮なく。名刺の裏の場所までお越しください。今くらいの時間帯は大体そこにおりますので」
ヴィーネ「なんか不思議な雰囲気の人だったわね」
翌日
サターニャ「また、ガヴリールにやられたわ」
ガヴリール「お前が勝手に自滅しただけだろう」
サターニャ「なんですって! ちょっとヴィネットからもなんか言ってやってよ」
ヴィネット「今の自分への疑問ね…」
サターニャ「ちょっと聞いてるの?ヴィネット!」
ヴィーネ「あ、ごめんちょっと考え事してて」
サターニャ「まったくしっかりしなさいよね」
ガヴリール「また、ブーメランか」
サターニャ「だれがブーメランよ」
ヴィーネ(そうよ、今の生活のどこに不満があるっていうのよ。仕送りだって節約すればなんとかなると思うし)
喪黒『一人で解決できないお悩みがありましたら遠慮なくご相談下さい』
ヴィーネ(なんでだろう気味悪いのになんか気になるのよねあのおじさん…)
ガヴリール「そういえば今日ネトゲのイベントあるんだった早く帰らないと」
サターニャ「悪魔的行為から逃げようたってそうはいかないんだから」
ガヴリール「後にしてくれ」
ラフィエル「どうしたんですか?ヴィーネさん皆さん行っちゃいましたよ」
ヴィーネ「ごめん、私ちょっと用事思い出したから先行ってて」
ラフィエル「あ、ちょっと!行っちゃいましね」
ヴィーネ「ここが魔の巣か…なんだか不気味ね。高校生が入って大丈夫なのかしら? 悪魔だから関係ないか」
カランコロン
喪黒「ホーッホッホッホ…お持ちしておりましたよ」
ヴィーネ「すみません突然押しかけたりして」
喪黒「いえいえ、これが私の仕事みたいなものですから」
ヴィーネ「あの、私お金持ってないんで…」
喪黒「ホーホッホッホッ。昨日も申し上げた通り私はボランティアでやっているのです。お金は一切いただきません、ここのお代も私が払っておきましょう」
ヴィーネ「そんな申し訳ないです、私は水でいいんで」
喪黒「あなたは実に慎ましい方だ。普段もさぞかしお優しいのでしょうね」
ヴィーネ「実は、そのことでちょっと悩んでいて」
喪黒「自分の性格に悩んでいると」
ヴィーネ「自分で言うようなことではないと思うんですけど、私ちょっと人が良すぎると思うんです」
喪黒「ホォ…なるほど」
ヴィーネ「す、すみません自惚れたこと言っちゃって」
喪黒「いえいえここでは謙遜せずに正直に話しちゃいましょう。確かに、人が良すぎるというのも社会で生きていく上では弊害もあるのかもしれませんね」
ヴィーネ「実は私本名が、月乃瀬・ヴィネット・エイプリルと言いまして、この世界の人間ではないんです」
喪黒「と、申しますと?」
ヴィーネ「私がいる世界では悪いことをすればするほど立場が上になるんです。逆に悪いことをしないとどんどん立場が悪くなるんです。おかげで今月分の仕送りも減らされてしまってこれからどうしようかと思って」
喪黒「それで考え事をしていたわけですね」
ヴィーネ「はい、正直なところ私悪い事はしたくないんです…でも」
喪黒「悪いことをしないと立場が危うくなると」
ヴィーネ「最近、どうしたらいいのか分からなくなってきちゃって」
喪黒「わかりました、私がなんとかして差し上げましょう」
ヴィーネ「本当ですか?」
喪黒「ええ、まずは下準備が必要ですので。明日、今日と同じ時間にここにお越しください。月乃瀬さんにピッタリのプランをご用意してお待ちしております」
翌日
ヴィーネ(喪黒さんが言ってたプランってなんなんだろう)
ガヴリール「ヴィーネ宿題写させてくれ。おいヴィーネ聞こえてるか?」
ヴィーネ「あ、ごめんなんだったけ?」
ガヴリール「なんか最近おかしくないか?ぼんやしてるっていうか」
ヴィーネ「そんなことないわよ私はいつも通りよ」
ガヴリール「ならいいけど」
帰り道
サターニャ「さぁー今日こそ勝負よガヴリール」
ガヴ「お前も懲りないな」
ヴィーネ「じゃあ、私はこの辺で」
ガヴリール「あれ?ヴィーネの家はあっちだろう? なんで逆方向に行くんだ?」
ヴィーネ「ちょっと用事があるのよ。それじゃあね」
ガヴリール「なぁ?最近のヴィーネなんかおかしくないか?」
ラフィエル「ガヴちゃんもそう思います?」
サターニャ「ちょっと私の話を聞きなさいよ」
魔の巣
喪黒「ホーッホッホッホ、ようこそお越しいただきました」
ヴィーネ「あの…プランというのは」
喪黒「これです」
ヴィーネにノートを渡す喪黒
ヴィーネ「なんですこれは?」
喪黒「悪魔日記です」
ヴィーネ「悪魔日記!?」
喪黒「これは先代の大悪魔も使ったと言われる由緒あるノートでして。日記帳に自分がやった良いことを書けば実際には悪魔的行為として認識されるという魔法のような日記帳なのです」
ヴィーネ(怪しいわね、最初から胡散臭いとは思ってたけど)
喪黒「まぁまぁ、騙されたと思って使ってみて下さい。もちろん無償で差し上げます」
ヴィーネ「あ、ありがとうございます」
喪黒「いえいえ、ああ言い忘れてましたが。この日記帳は良いことをした後は欠かさずに付けて下さい。さもないと大変なことになりますから」
ヴィーネ「わかりました、約束します」
ヴィーネ「表紙の裏に使用方法が書いてあるわね。良い行いした後10分以内にこのノートに記せば、後にそれが悪魔的行為になる」
翌日
ヴィーネ「今日もいいお天気ね、家の前の掃き掃除でもしようかしら」
ヴィーネ「よし、ゴミも出したし。完璧ね。そうそうちゃんとノートに書いておかないと」
モブ「おかしいなこの辺に落としたはずなんだけどな」
ヴィーネ「どうかされましたか?」
モブ「この辺にお金落ちてませんでしたか?5千円札落としちゃって」
ヴィーネ(まさか、私が掃いたときにゴミと一緒に捨てちゃった!?)
モブ「誰かが交番に届けたのかな?」
ヴィーネ「…」
ヴィーネ「人のお金を捨てるなんてこれってS級悪魔的行為よね。でもわざとじゃないしあくまでも事故よ事故。あの日記帳の効果なのかしら」
学校にて
ガヴリール「ヴィーネ宿題見せてくれ」
ヴィーネ「もう、自分でやらなきゃダメよ」
ガヴリール「今日だけだから」
ヴィーネ「何度目よそれ。しょうがないわね」
ガヴリール「おう、サンキュー」
喪黒『いいですか?良い行いをしたら欠かさずに日記帳に書いて下さい』
ヴィーネ「ガヴには悪いけどお灸を据える意味でも日記帳に書いておくか」
先生「これで帰りのホームルームを終わる。天真は後で職員室まで来るように」
ガヴリール「私なんか悪いことしたっけか?」
先生「天真これはどういうことなんだ?宿題の答えが丸写しじゃないか」
ガヴリール「え?」(なんでバレてるの?)
先生「全て月乃瀬と同じ箇所を間違えてるじゃないか」
ガヴリール「いえ、それは…」
先生「この図形も全く同じものを書いている」
ガヴリール「す、すみません」
先生「二度とこんなことはしないようにな」
ガヴリール「ヴィーネの奴珍しく間違えてるなしかも何か所もとかあり得ないだろう。まぁ、丸写ししてる私も私だけど。ていうか、なんで私だけ怒られるんだ?」
ヴィーネ「ガヴ職員室に呼ばれてたけどどうしたの?」
ガヴリール「いや、大したことじゃない。宿題は自分でやれって」
ヴィーネ「もしかして、先生に宿題写したのばれたとか?」
ガヴリール「まぁ、そんなとこだよ」
ヴィーネ「ごめん、多分私が間違ってたせいだよね? 急いでやったから見直してる暇がなくて」
ガヴリール「いいんだよ、元はといえば丸写しした私が悪いんだから」
ヴィーネ(これもあの日記帳の効果!? 良いことをすればするほど悪魔的行為になるなんて良いのやら悪いのやら)
迷子の子供「うわああん」
ヴィーネ「どうしたの?迷子になっちゃったの? 一緒に探してあげるね」
子供の母「ちょっとあんたうちの子を誘拐でもする気なの!」
ヴィーネ「いえ、私はただ」
子供の母「行きましょう怪しい人に付いていったらダメよ」
ヴィーネ「これってもしかして誘拐未遂になった!?」
ヴィーネ「やっと仕送りが来る日ね。うそー!今月の仕送りが先月の3倍になってる! これもきっとあの日記帳のおかげね。早速、買い物にでも行きますか」
スーパーにて
ヴィーネ「えーと、人参、玉ねぎ…っと」
喪黒「バァー」
ヴィネット「うわーびっくりした。喪黒さんでしたか」
喪黒「ホーッホッホッホ、悪魔日記はお役に立ってるでしょうか?」
ヴィーネ「はい!喪黒さんのおかげで仕送りも増えて今月は苦労しないですみそうです」
喪黒「それは、よかった。くれぐれも欠かさずに付けて下さい、いいですね」
ヴィーネ「はい、もちろんですよ」
喪黒「それならいいのです」
ヴィーネ「とは言ったものの、良かれと思ってやった行動が全て悪魔的行為になるっていうのも意外と辛いものね」
翌朝
ヴィーネ「ほら、起きてガヴ早くしないと遅刻するわよ」
ガヴリール「あと一時間…」
ヴィーネ「何言ってるのよ」
ガヴリール「いつも助かるよ持つべきものはやっぱ友達だな」
ヴィーネ「もう、ガヴったら」
ヴィーネ(これは書かなくてもいいわよね、これ以上ガヴに迷惑掛けるわけにもいかないし)
喪黒「…」
ヴィネット「悪魔的行為なんてほどほどでもいいじゃないの。先月だってなんとかなったし。あの日記帳は喪黒さんに返そう」
ガヴリール「よかったら私がバイトしてる店来るか?」
ラフィエル「いいんですか?お邪魔して」
ガヴリール「マスターがコーヒーとパフェサービスするから。みんなも呼んでぜひ来てくれって」
ヴィーネ「行く行く!」
サターニャ「仕方がないわね私も付き合ってあげ…この前みたいな無礼な接客は無しよ」
ガヴリール「大丈夫今日は接客私じゃないから」
ラフィエル「楽しみですね」
ガヴリール「ここだよ」
ヴィーネ「結構雰囲気いいじゃないの」
サターニャ「まぁ雰囲気だけはね」
???「いらっしゃいませ」
ヴィーネ「も、喪黒さん!?」
喪黒「ホーッホッホッホ、月乃瀬さんあなた私との約束を破りましたね」
ヴィーネ「す、すみません!日記帳は返しますんで」
喪黒「いいえ、ダメです。あなたは悪魔としての責務を果たすのです」
ヴィーネ「ごめんなさい、ごめんなさい」
喪黒「身も心も悪魔になるのです!ドーーーーーーーーーン!!」
ヴィーネ「キャアアアアアアアアアア」
ピンポーン
ピンポーン
ガヴリール「うん?なんだこんな夜中にまさかサターニャか?」
???「来てやったわよガブリール」
ガヴリール「この声はヴィーネか?」
ヴィーネ「そうよ、魔界を揺るがす大悪魔月乃瀬・ヴィネット・エイプリル様がわざわざ起こしにきてやったのよ。ありがたく思いなさい」
ガヴリール「今何時だと思ってるんだ?」
ヴィーネ「アーハッハッハ、ガヴリールを予定より4時間も早く起こしてやったわ。これぞまさに超S級悪魔的行為(スーパーデビルズアクション)よ」
ガヴリール「まさか、サターニャが化けてるんじゃないよな?」
ヴィーネ「この私をあんな低級悪魔と一緒にしてもらっちゃ困るわね」
ガヴリール「おい本当どうしちゃったんだよ…」
喪黒「楽しそうで何よりですな」
喪黒「いつもいい人でいるというのも大変なことです。時には心を鬼…いや悪魔にしてみたらいかがでしょうか彼女のように…ホーッホッホッホ」
おわり