-ラフィエルの家-
ラフィエル「どうやったらもっと天使らしくなれるか、ですか?」
タプリス「はい。わたし、こんな何をやってもダメダメな天使ですから」
タプリス「白羽先輩たちのように、もっと立派な天使になりたいんです!」
ラフィエル「タプちゃんは、もう十分に天使としての役割を果たしていると思いますよ」
タプリス「いえいえ、わたしなんて、ドジばかりで知らないことばかりですし……」
ラフィエル「少しおっちょこちょいなところも、それはそれで愛嬌があって」
ラフィエル「とても親しみやすいという利点がありますし」
ラフィエル「知識については、これから少しずつ蓄えていけば良いんです」
ラフィエル「急いで頭に入れても、使えなかったら意味がありませんしね」
タプリス「たしかに、そうですが……」
タプリス「わたしがもっともっと上を目指す姿を天真先輩が見てくれて」
タプリス「少しでも先輩の更生きっかけになればって、思って……」
ラフィエル「そうですかそうですかぁ」
元スレ
ガヴリール「千咲ちゃん、宇宙になる」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1492430525/
ラフィエル「タプちゃんの気持ち、重々伝わってきました」
タプリス「し、白羽先輩、それじゃあ……」
ラフィエル「それでは私からアドバイスです」
ラフィエル「もっと上を目指すのに、私のおすすめの方法はですね……」
タプリス「……ごくり」
ラフィエル「そのなりたい自分を、まず演じてみることです」
タプリス「えっ、演じるんですか?」
ラフィエル「なんとなくですが、タプちゃんの頭の中にも」
ラフィエル「素晴らしい天使像というものがありますよね?」
タプリス「は、はい」
ラフィエル「それに、自分がなろう、ではなくて」
ラフィエル「それを演劇のように、役を演じる感覚で過ごしてみるんです」
ラフィエル「自分とは違った役を演じているんだと、はっきり認識をして」
ラフィエル「それを毎日続けていきます」
タプリス「ふ、ふむふむ……」
ラフィエル「最初はつらいかもしれませんが」
ラフィエル「これは役、役なんだって強く意識して、ずっと続けていくと」
ラフィエル「いつのまにか、前の自分のことを忘れてしまって」
ラフィエル「その役が自分になっている、という流れですかね」
タプリス「す、すごいです! さすが白羽先輩です!」
ラフィエル「しかし、最初がやはり大変です。タプちゃんはやれますか?」
タプリス「はい、これも天真先輩のため! がんばります!」
ラフィエル「ふふっ、わかりました」
ラフィエル「では私から一つ、タプちゃんにおまじないをかけてあげましょう」
タプリス「本当ですか! ぜひお願いします!」
ラフィエル「では、ちょっと頭を出してくださいね」
タプリス「えっと、こうですか?」
ラフィエル「タプちゃんの理想の天使像を思い浮かべてください」
タプリス「は、はい」
ラフィエル「じゃあいきますよ、せーのっ!」
ゴツンッ
-公園-
女の子「タプリスお姉ちゃん、一緒に遊ぼー」
男の子「違うよ! お姉さんは僕達と遊ぶんだよ!」
タプリス「こらこら喧嘩してはいけませんよ」
タプリス「みんなで仲良く、一緒に遊びましょう?」
子供達「はーい」
タプリス「ふふっ、いい子たちですね」
ガヴリール「……」
ヴィーネ「あれっ、ガヴ?」
ガヴリール「ああ、ヴィーネか」
ヴィーネ「ガヴが外にいるなんて珍しいわね……」
ガヴリール「……ちょっと腰が痛くなったから、気分転換に散歩してるだけ」
ヴィーネ「あら、子供たちと遊んでるのって、タプちゃんじゃない」
ガヴリール「ああ、そうみたいだな」
ヴィーネ「なんかすごく子供たちに好かれてる感じねぇ」
ガヴリール「……精神年齢が近いからじゃないか?」
ヴィーネ「もうそんな酷いこと言って。それで、声かけないの?」
ガヴリール「いいよ、邪魔しちゃ悪いし」
ヴィーネ「そう。じゃあ私もやめておこうかな」
タッタッタッ
女の子「お姉ちゃん、こっちこっちー」
タプリス「あははっ、待ちなさーい」
ガヴリール「……まあ、いいか」
ヴィーネ「ん、何か言った?」
ガヴリール「いや、なんにも」
ヴィーネ「そっか」
-数日後 公民館-
お婆さん「おや、タプリスちゃん、また来てくれたのかい。嬉しいねぇ」
タプリス「こんにちは、お婆ちゃん。腰の具合はどうですか?」
お婆さん「最近はずいぶんと調子がいいよ」
お婆さん「タプリスちゃんがマッサージしてくれたおかげだねぇ」
タプリス「本当ですか、それはよかったです」ニコッ
お爺さん「タプリスちゃん、またあのお話の続き、聞かせてもらえんか」
タプリス「わかりました、ではお部屋お借りして、みなさんも呼びましょうか」
お爺さん「それがええ。タプリスちゃんのお話、楽しみじゃのう」
ガヴリール「……」
委員長「あら、天真さんじゃない。こんな所で会うなんて珍しいわね」
ガヴリール「ああ、委員長か。ちょっと役所手続きでね」
委員長「そうなんだ。あれ、あの子たしか、千咲さんよね」
ガヴリール「え、委員長、タプリスのこと知ってるの?」
委員長「えぇ。最近、私も参加しているボランティア活動でよく会うのよ」
ガヴリール「ボランティアって?」
委員長「町内会のゴミ拾いとか、お年寄りのお世話とか、ね」
委員長「細かな気配りもできて、すごく働き者だから」
委員長「本当に助かっているわ」
ガヴリール「そうなんだ」
委員長「彼女、物腰がとても柔らかで真面目だし、いつもにこにこしていて」
委員長「しかも、それを鼻にかけることなんて一切しないし」
委員長「みんなに好かれる存在、そのものよね」
ガヴリール「えっ、あいつの物腰が……柔らかい?」
委員長「私と会っている時はそうだけど……違うの?」
ガヴリール「い、いや、なんでもない。今のは忘れて」
委員長「そう? それじゃ、私このあと買い物に行かないといけないから」
ガヴリール「ああ、また学校でな」
ガヴリール「……」
ガヴリール「……別にいいか」
-エンジェル珈琲-
マスター「天真くんお疲れさま、今日はもうあがっていいよ」
ガヴリール「うす」
マスター「ああ、ごめん。最後にチラシの整理だけお願いしていいかな」
マスター「捨てるだけでいいから」
ガヴリール「うっす」
ぺらっ
ガヴリール「これは……」
マスター「ああ、それかい。市内の講演会のお知らせみたいだねぇ」
ガヴリール「ふーん……って!?」
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題目:『人生を豊かに生きるために』 15:00-16:00
講演者:千咲=タプリス=シュガーベル
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ガヴリール(同姓同名……なわけないよな)
ガヴリール「な、なんであいつがこんなこと……」
マスター「あれ、天真くん。千咲さんと個人的な付き合いがあるのかい?」
ガヴリール「い、一応、知り合いです……」
マスター「そうなんだ。いや、彼女すごいよねぇ」
マスター「最近、市内のイベントで見ないことがないし」
マスター「まだかなり若そうに見えるのにねぇ」
ガヴリール「そ、そうなんですか……」
マスター「知り合いなら、ぜひ今度、ここにも招待してほしいな」
ガヴリール「う、うす」
ガヴリール「……」
ガヴリール(べ、別にあいつが何をやろうと、あいつの勝手だろ)
ガヴリール(私が、とやかく言うことじゃ……ない)
-数週間後 サターニャの家-
サターニャ「ガヴリールゥ! 今日こそあんたを倒してみせるわ!」
ガヴリール「あれだけ負け続けてんのに……いい加減諦めろよ」
サターニャ「なはっ、今までのは全て様子見。つまり、今回のための布石よ!」
ガヴリール「はいはい……」
テレビ司会者『それでは、本日のゲストである……』
テレビ司会者『千咲=タプリス=シュガーベルさんのご登場です!』
ガヴリール「えっ!?」
サターニャ「なっ!?」
テレビ司会者『今、現代人の疲れた心に染み渡る、優しくて心がほっとするお話と』
テレビ司会者『可憐なお姿のギャップが大好評を博していますが』
テレビ司会者『今のお気持ちを、お聞かせ願いますか?』
タプリス『えぇ、わたしのお話が、少しでも……今を生きている人たちの』
タプリス『支えとなり、助けとなるならば』
タプリス『これ以上の喜びはありません』ニコッ
サターニャ「な、なによこれ。最近見かけないと思ったら」
サターニャ「テレビに出るまでの人気者になってるなんて!」
サターニャ「しかも、これ全国放送じゃない! キィィッ! 悔しい!」
サターニャ「私よりも先に、こんな超有名になるなんて!」
サターニャ「なんてうらやま――じゃなくて生意気なのかしら!」
ガヴリール「……」
サターニャ「どうしたのよ、ガヴリール。黙っちゃって」
サターニャ「ははぁん、わかったわ」
サターニャ「あんたも後輩天使に先を越されて悔しいのね?」
ガヴリール「……そんなんじゃない」
サターニャ「ふふっ、そりゃあそうよね」
サターニャ「天使学校首席のあんたが、後輩に引けを取るだなん――」
ガヴリール「そんなんじゃないって言ってるだろ!!」
サターニャ「っ!? な、なによ、急に大声出したりして」
ガヴリール「……」
サターニャ「……」
ガヴリール「……ごめん、帰るわ」
バタンッ
サターニャ「ったく、なんなのよもう。って、また勝負すっぽかされた!?」
-数週間後 ガヴリールの家-
ガヴリール(なんか最近、ネトゲも飽きてきたな……)
ガヴリール(てきとーに動画でも見るか……ランキングを覗いてっと)
ガヴリール(再生数一位、なんだこれ。再生数100億回だって!?)
ガヴリール(どんだけだよ……って)
ガヴリール(う、嘘……だろ?)
ガヴリール(Tapris Sugarbell Chisaki?)
ガヴリール(まさか、あいつ……なのか?)
ガヴリール(世界中の人からのコメントが付いてる……)
ガヴリール(大絶賛じゃん……)
ガヴリール「なんだよ、これ……」
ガヴリール「もう、わけがわからない……」
ガヴリール「あいつ……どこに行こうとしてるんだよ」
ガヴリール「……」
ガヴリール「……くそっ」
-数ヶ月後 千咲教 総本山-
千咲教信者「教祖様にお会いしたい、と?」
ガヴリール「はい」
千咲教信者「失礼ですが、お約束はされていますか?」
ガヴリール「……いえ、していません」
千咲教信者「教祖様の面会予定は、この先、数年は埋まっておりまして」
千咲教信者「申し訳ありませんが、お引き取りください」
ガヴリール「私はあいつの先輩で、知り合いなんです!」
ガヴリール「私の名前を伝えてもらえれば、絶対会ってくれるはず!」
千咲教信者「そう言われましても……」
ガヴリール「おい! タプリス! いるんだろ!」
ガヴリール「私だ! ガヴリールだ!!」
千咲教信者「あ、あなたねぇ! いい加減にしてください!」
ガヴリール「ちょっ! 離せよ! 離せったら!!」
ガヴリール「おい、タプリス!! 返事をしろ!! タプリスゥゥ!!」
千咲教信者「おいっ! と、取り押さえろ!!」
「おやめなさい!」
タプリス「……」
ガヴリール「タプリス! よかった、出てきてくれたんだな!」
千咲教信者「おいっ! 教祖様になんて口のきき方を!!」
ガヴリール「い、いたっ! 頭を、押さえつけるな!」
タプリス「……おやめなさいと、言っているのです!」
千咲教信者「きょ、教祖様……ははぁ……」
ズサァ
タプリス「……こちらへよろしいですか?」
ガヴリール「あ、あぁ」
-教祖の私室-
ガヴリール「お前が出てきてくれて、助かったよ」
タプリス「申し訳ありませんでした。皆さん、悪気はないのです」
ガヴリール「ああ、別にいいよ」
ガヴリール「それにしても、暫く見ないうちにすごいことになってるな」
ガヴリール「お前がこんなに人気者になるなんて思わなかったよ」
タプリス「お恥ずかしい限りです」
タプリス「ですが……わたしはただ、みなさんの幸せを願っているだけですから」
タプリス「ところで、今日はどういった御用だったでしょうか」
ガヴリール「ああ、えっと……」
タプリス「……」
ガヴリール「なぁタプリス、その……みんなのところに帰ってこないか?」
タプリス「えっ……帰る?」
ガヴリール「お前が本当に立派な事をやってるってのはわかるんだけどさ」
ガヴリール「なんというか、……お前らしくないというか」
ガヴリール「こう……しっくりこないというか」
タプリス「……わたしらしく、とはなんでしょうか」
ガヴリール「それはその……おっちょこちょいでドジも多くて、すぐ泣いて」
ガヴリール「で、いつも私の後ろにくっついてきて」
ガヴリール「……正直、鬱陶しいと思うこともたまにあったけど、さ」
ガヴリール「でも別に嫌とか、そういうわけじゃなくって」
ガヴリール「むしろ嬉しいことの方が多かったというか……」
ガヴリール「つまりだな、その、お前はそういう奴だっただろ……?」
タプリス「……」
ガヴリール「なぁ、タプリ――」
タプリス「……忘れました」
ガヴリール「はっ? 忘れたって……」
タプリス「そんな昔のわたしのことなんて、忘れてしまったんです」
ガヴリール「な、何言ってんだ! それじゃあ、私たちと過ごした時間も」
ガヴリール「忘れてしまったって、言うのかよ!」
タプリス「……」
タプリス「……わたしは今、本当に大勢の人たちの」
タプリス「生きる希望となっているんです」
タプリス「ですからわたしが、そのようなことをするわけにはいきません」
ガヴリール「お前はお前だろ! お前がしたいことをやって何が悪いんだよ!」
ガヴリール「そんな……他の知らない人のことなんて、どうでもいいじゃんか!」
タプリス「なっ……」
ガヴリール「お願いだ、タプリス。私たちともう一度、一緒に……」
タプリス「……お引き取りください」
ガヴリール「えっ、タプリス……?」
タプリス「お引き取りくださいと言ったんです、天真さん」
ガヴリール「お、お前っ……そ、それが答えか」
タプリス「はい」
ガヴリール「……わかったよ」
-数ヶ月後 住宅街-
お婆さん「はぁ、こうやって幸せに長生きできるのも」
お婆さん「タプリス様のおかげですねぇ」
お爺さん「ほんとだわ、ありがたやありがたや」
お爺さん「それじゃ、タプリス様の像へ礼拝に行こうかの」
お母さん「こら! 悪戯すると、タプリス様から見放されてしまうわよ!」
女の子「えぇっ! それは嫌っ!」
お母さん「だったら言うことをききなさい!」
女の子「はぁい……」
ガヴリール(……)
ガヴリール(この世界は異常だ)
ガヴリール(あれから、あの時から……)
ガヴリール(犯罪は激減し、戦争は消え、飢えと貧困もなくなった)
ガヴリール(世界中の誰もが、幸福に暮らせるようになった)
ガヴリール(……あいつの望んでいた、世界になった)
ガヴリール(この世界は異常だ)
ファサッ
ラフィエル「ガヴちゃん!」
ガヴリール「ラフィエルか、どうした」
ラフィエル「タ、タプちゃんの、タプちゃんの反応が……」
ガヴリール「あ、あいつの反応……って、これは」
ラフィエル「ガヴちゃんも感じますか?」
ガヴリール「あぁ、急速にタプリスの生命反応が小さくなって……」
ラフィエル「こ、このままじゃ、タプちゃんは……」
ガヴリール「くそっ、あ、あいつ何をするつもりだ……」
ラフィエル「場所は既に特定してあります、ですが私一人の力では……」
ガヴリール「わかった、協力する」
ラフィエル「私の力を全てお渡しするので、ガヴちゃんが行ってください」
ガヴリール「了解」
ラフィエル「それでは……タプちゃんを頼みましたよ」
ガヴリール「ああ、任せとけ」
ガヴリール「……神足通」
ヒュンッ
-世界の果て-
パァァァァァッ
タプリス「……」
タプリス「……ようやく、ようやくこの時がきました」
シュンッ
ガヴリール「タ、タプリス!? なんだこの光!?」
タプリス「あなたは……」
ガヴリール「ともかく、こんなことはやめろ! お前、死ぬ気か!」
タプリス「いえ、わたしは死にません」
ガヴリール「な、なんだって……?」
タプリス「わたしはこれから、この世界となり、宇宙となることで」
タプリス「この世の中に生きる子らを未来永劫、愛し、見守っていくのです」
ガヴリール「何バカなこと言ってんだ! そんなことしたら……」
ガヴリール「お前は生物の一個体ではなくなってしまって」
ガヴリール「一生死ぬことも許されず、苦しみ続けて」
ガヴリール「私たちとはもう二度と、会えなくなるんだぞ!」
タプリス「わかっています」
ガヴリール「だったら……」
タプリス「それでもわたしは……この世界を」
タプリス「この世界に生きる人たちを、愛していますから」
ガヴリール「タプリス頼む……戻ってきてくれ」
タプリス「それは、できません」
ガヴリール「……私にはさ、お前が……必要なんだよ」
タプリス「……」
ガヴリール「行かないでくれ、お願いだ……頼むよ、ぐすっ……」
ガヴリール「タプリス……お願い、だからぁ……」
タプリス「……ありがとうございます」
タプリス「そのお気持ち、わたしはけっして忘れません」
ガヴリール「おいっ! タプリスッ! 行くなっ!!」
タプリス「あなたの幸せを、ずっとずっと願っていますから」
ガヴリール(ひ、光が……弾けて……)
『天真先輩』
パァァァァァッ
――――――
――――
――
ガヴリール(……タプリスが、いなくなってしまってから)
ガヴリール(この世界は皮肉にも、以前の諸悪が蔓延る世界へと逆戻りした)
ガヴリール(世界中の人々が、幸せを感じることが少なくなっていた)
ガヴリール(あんなにも世界を愛していたあいつのことを……)
ガヴリール(世界中の人たちは忘れてしまった)
ガヴリール(だったら私がすべきことは……ただ一つ)
ガヴリール(あいつが望んだ世界をもう一度……私の手で……)
ラフィエル「ガヴちゃん……本当に良いのですか?」
ガヴリール「ああ、やってくれ」
ラフィエル「じゃあいきますね、せーのっ!」
ゴツンッ
――――――
――――
――
『ガヴリールお姉ちゃん、一緒に遊ぼー』
『いつも掃除ありがとうね、天真さん』
『ガヴリールちゃん、また来てくれたのかい。嬉しいねぇ』
『講演者:天真=ガヴリール=ホワイト』
『ゲストである、天真=ガヴリール=ホワイトさんのご登場です!』
『Gabriel White Tenma 視聴回数:11,827,192,717』
『教祖様! ガヴリール様、ばんざーい!』
『ガヴリール様……はぁ、ありがたやありがたや』
『ガヴ、私は……私はあなたのことを……』
――
――――
――――――
-世界の果て-
ガヴリール「……」
ガヴリール「……ようやく、ようやくこの時がきました」
ガヴリール「タプリス」
ガヴリール「あなたの望んだ世界、やっと取り戻しましたよ」
ガヴリール「……今ならわかります」
ガヴリール「あの時のあなたの、気持ちが」
ガヴリール「本当に、本当に心から、この世界を……愛していたのですね」
ガヴリール「そして……私もまた、あなたと同じように」
ガヴリール「世界と一つに、なりたいと思います」
ガヴリール「それでは、いきましょうか」
ガヴリール「あの子の待つ場所へ――」
パァァァァァッ
タプリス「……」
ガヴリール「……遅くなって悪かったな」
タプリス「……えっ」
ガヴリール「迎えに来たぞ、タプリス」
タプリス「て、天真先輩……? どうしてこんなところに!?」
ガヴリール「言っただろ」
ぎゅぅ
タプリス「あっ……」
ガヴリール「私にはお前が必要だって」
タプリス「先輩っ……ぐすっ……せんぱぁいっ……」
ガヴリール「本当に、お前の泣き虫は……変わらないな」
タプリス「だ、だって……わたし、ここで一人、一人きりで……」
タプリス「ずっとずっと、寂しくて……」
ガヴリール「今までよく頑張ったな、偉いぞタプリス」ナデナデ
タプリス「ぐすっ……ひっくっ……」
ガヴリール「よし。それじゃあ帰るぞ、タプリス」
タプリス「えっ、帰るって……先輩?」
ガヴリール「みんなも心配してるからな」
タプリス「でもここは……何もない、いわゆる概念だけの世界……です」
タプリス「元の世界には……けっして戻ることはできません」
ガヴリール「……私を誰だと思ってるんだ」
タプリス「へっ」
ガヴリール「天使学校首席の、天真=ガヴリール=ホワイトだぞ?」スッ
タプリス「そ、それは……世界の終わりを告げるラッパ!?」
ガヴリール「概念だろうがなんだろうが……」
ガヴリール「お前を縛る、このクソッタレな世界なんて……」
ガヴリール「私がぶっ壊してやる!!」
タプリス「先輩……」
ガヴリール「私から離れるなよ、タプリス! ラッパ吹くぞ!!」
タプリス「わ、わかりました!」
ガヴリール「さあ帰ろう、私たちの世界へ!」
タプリス「はいっ、先輩!」
おしまい