天使長「下界に降りてからの、君の成績の下がり具合はもう目を瞑れない」
ガヴ「いや、それは申し訳ないと思いますけど、ヴィーネたちは関係ないじゃないですか」
天使長「私たちはそうは思っていない。君が気付いていなくても、知らず知らずのうちに悪魔の誘惑に乗ってしまっていたという可能性もある」
ガヴ「そんな…ないです、絶対」
天使長「申し訳ないがこれは決定事項だ。君たち天使は、学校を移ってもらう」
ガヴ「ちょ、ちょっと待ってください!」
元スレ
ガヴリール「もう悪魔と関わるな?」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1489482459/
天使長「…これは、君の友人のことを思っても必要な措置なのだ」
ガヴ「……は?」
天使長「将来有望だった天使が悪魔と関わることで堕落…革新派の者達にとって、これほど美味しいネタはないだろう」
ガヴ「………」
天使長「いいかね、天真くん。我々は天使だ。天使として生まれたからには、その自覚を持った行動が求められる」
天使長「意味はわかるね?」
ガヴ「………」コクリ
天使長「これからの天界、下界、及び魔界…この均衡を保ち、平和を続けていくためにも、これは必要なことだ」
ガヴ「……わかりました。このことは、ラフィやタプリスにも…」
天使長「いや、彼女らには手紙で通達した。…事の発端は君だ。だから、わざわざ呼び出して話をしたまでのこと」
ガヴ「っ……」
天使長「…これからは、ちゃんと天使らしく生きなさい。昔の君のように」
ガヴ「……はい」
ガヴ(…なんていうか)
ガヴ(手痛いしっぺ返し食らったな)
ガヴ(……今回の件、悪いのは全部私だ)
ガヴ(駄天使を自覚してから、色々なことがどうでも良くなって)
ガヴ(なるようになれ、って、生きてきたけど…)
ガヴ(…いや、本当にそうやって生きてきてたなら、今こんな思いはしてないな)
ガヴ(なんだかんだ、気に入ってたんだなぁ、あいつらのこと)
ガヴ(その上で、甘えてたんだ)
ラフィ「ガヴちゃん」
ガヴ「……ラフィ」
ラフィ「転校の話、聞きました」
ガヴ「……すまん、私のせいで」
ラフィ「まぁ、否定はしませんけどね…でも、事態を甘く見てた私の責任でもあります」
ラフィ「……後は、会議して寝て食ってるだけの上の御方たち、ですね」
ガヴ「……次の学校は海外だってさ」
ラフィ「これまた遠いところに飛ばされますね」
ガヴ「……本当に、すまん。お前だって、気に入ってたろ、あいつらのこと…」
ラフィ「まぁ、確かにサターニャさんやヴィーネさんと会えなくなるのは辛いですけど…」
ラフィ「下界は広いです。まだまだ面白いことも沢山あるはずです」
ラフィ「…だから、あまりそんな顔はしないでください。正直、私があなたにかけるべき言葉は見つかりませんが…」
ガヴ「………うん、わかってる」
ガヴ「じゃあ、ヴィーネたちに会ってくるよ」
ガヴ「短い間だったけど、ありがとうって、言ってくる」
タプリス「というわけなんです!!」
ヴィーネ「」
ヴィーネ「…え、ちょ、え?」
タプリス「だから、私たち全員転校しなくちゃいけないんです!」
ヴィーネ「は?…え、ちょっと、話が飲み込めないんだけど」
ヴィーネ「サターニャなんて、ほら。口から魂抜けてるじゃない」
サターニャ「」ホエ~
タプリス「私だってわかりませんよ!今日急に天界から通達が来て、海外の学校に転校するよう言われちゃって…」
タプリス「なんか悪魔は天使を堕落させるから関わるなって…」
タプリス「こんなの絶対おかしいですよね!なんとかなりませんか!?」
ヴィーネ「もう、頭の中で整理してから話して!!」
サターニャ「……つまり、ガヴリールの駄天を見過ごせなくなった天界が」
サターニャ「その原因である悪魔と関わらせないために、天使全員を別の学校へ転校させる措置を取った…」
サターニャ「そういうことね!?」
ヴィーネ「話を総括してまとめたらそんな感じになったわね」ペンクルクル
タプリス「はいっ!そういうことなんです…!」
タプリス「天真先輩から話を聞いて、天真先輩の駄天に悪魔が関わってないことは知りました!」
タプリス「だから、こんなのおかしいんです!先輩たちは、何も悪くないのに…
!」
ヴィーネ「タプちゃん…」
サターニャ「ちょっと!それは聞き捨てならないわ!ガヴリールを駄天させたのは私ってことになってるはずでしょ!」
ヴィーネ「サターニャちょっと静かに」
サターニャ「はい」
タプリス「…いやです、私、先輩方と離れたくありません…」
タプリス「月乃瀬先輩は悪魔なのに、天使である私に優しくしてくれました」
タプリス「胡桃沢先輩は…なんだかんだで、悪い人ではなさそうです」
サターニャ「その認識改めなさいよ!?私は魔界を揺るがす大悪魔」
ヴィーネ「サターニャちょっと静かに」
サターニャ「はい」
タプリス「先輩方だって嫌ですよね!?天真先輩や、白羽先輩と別れたくないですよね!?」
ヴィーネ「…そりゃあ、ね。ガヴはあんな感じだし、ムカつくこともあるけど…一緒にいて楽しかった」
サターニャ「…騒々しい奴だけど、ラフィエルがいなくなったら…少し、寂しいかもね」
ヴィーネ「でも、私たちに何が出来るの…?私たち下級悪魔だし、天界はおろか、魔界にすら何の影響も与えられないわよ…」
サターニャ「ククク…ヴィネットはそうかもしれないけれど、私のパイプは広いわよ?私が一声かければ」
ヴィーネ「サターニャちょっと静かに」
サターニャ「さっきから何なのよ!?」
タプリス「…それは、私にもわかりません。でも、恐らく天真先輩も、白羽先輩も、こういう時は天界に逆らえない人です」
タプリス「遠因は天真先輩の駄天ですし…天真先輩たちには、相談できません」
ヴィーネ「だから、私たちを選んだと?」
タプリス「はい」
ヴィーネ「…そういうことなら、頑張って考えるわ。もうガヴたちと会えなくなるなんて…絶対に嫌だもの」
サターニャ「私も協力するわ!天使のいいようにされてたまるものですか!」
タプリス「おふたかた…ありがとうございます!出来る限りのことはやりましょう!」
ピンポン ピンポン
ガヴ「……留守か」
ガヴ「タイミング悪いな…」
ガヴ「…せっかく、覚悟決めてきたのに」
ガヴ「ヴィーネんちも留守だったし、二人でどこか行ってんのかな」
ガヴ「……まぁ、いいや」
ガヴ「まだ、時間あるし」
ガヴ「家帰ろ」
ガヴ(…この家とももうすぐおさらばか)
ガヴ(はは、相変わらずきったねー部屋)
ガヴ(……最後に、ゲームでもするか?)
ガヴ(………いや、ゲームはもうやめよう)
ガヴ「……戻れる、かな」
ガヴ「…戻らないと、ダメ、です、よね」
ガヴ「ラフィに、タプリスに……これ以上、迷惑かけたら…いけませんよね」
ガヴ「………」
ヴィーネ「ガヴリールの駄天の原因が天使じゃないことを示せばいいんじゃない?」
タプリス「どうやって示すんですか?」
サターニャ「ガヴリールに説明させるとか…?」
ヴィーネ「あ、そうだ。ガヴのネットゲームの履歴を見せてあげればいいんじゃない?」
ヴィーネ「そうすれば、悪いのは悪魔じゃなくて、下界の娯楽であると証明出来るわ!」
タプリス「ガヴリールがゲームにハマったのも悪魔のせい、と言われたら?」
ヴィーネ「うう…」
サターニャ「……考え方を根本から変えればいいんじゃないかしら」
ヴィーネ「え?」
サターニャ「ガヴリールたちは天使だから転校しなくちゃいけないんでしょ?ならガヴリールたちが天使じゃなくなればいいのよ!」
タプリス「!!」
ヴィーネ「そ、それよサターニャ!」
サターニャ「!そ、そうでしょ!?いやー、こんなことにも気付かないなんて、大したことないわね!」
ヴィーネ「私たちが天使になればいいんだわ!そうしたらガヴとずっと一緒にいられる!」
サターニャ「はあ!?」
タプリス「悪魔から天使の昇天はほとんど例がありませんが…出来ない話ではないです!」
サターニャ「うそ!?」
ヴィーネ「お願いタプリス!天使になる方法を教えて!」
タプリス「がってんです!」
サターニャ「ちょっと待ちなさいよー!!」
ヴィーネ「いや、サターニャ。さすがに私たちのエゴで、ガヴたちを堕とすわけにはいかないわよ」
タプリス「そんなことになったら今度こそ本当に戦争です…」
サターニャ「いや、それはもういいけど!天使になるって本気で言ってるの!?それは魔界の故郷を捨てるってことなのよ!」
ヴィーネ「……っ」
サターニャ「ガヴリールやラフィエルとは一緒にいられるかもしれない。でも、パパやママ、アレキサンダーや弟とは一生会えなくなっちゃうのよ!?」
ヴィーネ「そ、そうだけど…」
タプリス「……そ、そうですよね。私だって、悪魔になるのはいやです…」
サターニャ「私は…そんなのいやだ。誰も失いたくない。みんな一緒がいい」
ヴィーネ「……うん」
タプリス「…ですよね…」
ラフィ(……タプちゃんに話をしに行こうと思ったら)
ラフィ(とんでもない会話を聞いてしまいましたね)
ラフィ(…聞いたのが私だったから良かったものの、それは天界送還ものですよ、タプちゃん)
ラフィ(天界の決まり事は、天使にとっては絶対です。逆らってはなりません)
ラフィ(ましてや、悪魔に救いを求めるなど…)
ラフィ(このことは、ガヴちゃんに…伝えた方がいいですね。私が導かないと、冷静な判断はできないでしょうし…)
ラフィ(…この子たちにも、牽制しておきますか)
ラフィ「こんにちは~」
タプリス「っ!?し、白羽、先輩…!?」
サターニャ「ら、ラフィエル…」
ヴィーネ「……っ、あの」
ラフィ「転校のことでしたら、『仕方のないこと』とだけ言っておきますよ」
ヴィーネ「……」
タプリス「白羽先輩、これはその」
ラフィ「…わかってますよ、タプちゃん。私だって、あなたと同じ気持ちです」
タプリス「っ……」
ラフィ「でも、こんなことはもうやめてください。…知っていることは話します」
ヴィーネ「……知っていること?」
ラフィ「ええ。…なぜ、下界のことを完全に把握できるわけではない天界が、ガヴちゃんの駄天の原因を悪魔と決めつけ、このような措置を取ったのか…」
ラフィ「それを知れば、皆さんも満足でしょう?」
ヴィーネ「……」
サターニャ(何言ってんのかしらこいつ)
タプリス「…このことをネタに、悪魔との対立を煽る派閥がある、ですか」
ヴィーネ「……ここ最近は平和だと思ってたけど」
ラフィ「残念ですが、不穏因子のない、完全な平和なんてものは存在しないんですよ」
ラフィ「この平和も、誰かの犠牲の上に成り立っているんです」
サターニャ「…結局、ラフィエルは何が言いたいのよ」
ラフィ「……この件には深く関わらないで下さい」
タプリス「っ…」
ラフィ「これは私たちの我儘でどうにかなる問題ではありません。天界の、魔界の、…世界の行く末を決める、そういうスケールの話です」
ヴィーネ「……なによ、それ」
ヴィーネ「私たちは、まだ高校生で…」
ラフィ「天使として、悪魔として生まれた以上、飲み込むしかありません」
ラフィ「…お邪魔しましたね。また改めてお別れの挨拶に来ます。それでは」
サターニャ「…待ちなさいよ、ラフィエル!」
ラフィ「……」
サターニャ「アンタそれでいいの!?天使だから、仕方ないからって、自分の気持ち押し殺して、そんなんでいいと思ってんの!?」
サターニャ「世界が何よ!!派閥が何よ!!私たちの邪魔をするなら、ぶっ倒してやればいいんだわ!!」
サターニャ「私たちならできる!なんたって、こっちには大悪魔である胡桃沢…」
ラフィ「サターニャさん」
サターニャ「っ!?な、なによ…」
ラフィ「ありがとうございます。私たちをそこまで想ってくださって…」
サターニャ「は、はあ!?べ、別にそんなんじゃないし!!」
ラフィ「あら、そうなんですか。…なら、サターニャさんが頑張る必要も、戦う必要もありませんね」クルリ
サターニャ「えっ?あ、ちょ、止まりなさい!まだ話は終わってないんですけど!?」ドタドタドタドタ
ヴィーネ「あっ、サターニャ!?」
タプリス「い、行っちゃいました…」
ヴィーネ「……その、タプちゃん」
タプリス「…なんですか」
ヴィーネ「さっきの話…少し考えさせて」
タプリス「…はい。私も、少し頭を冷やしてから、考え直すことにします」
ヴィーネ「ちなみに、転校はいつ?」
タプリス「…一週間後ですね。それまでに、どんな形にしろ、折り合いは付けたいと…」
ヴィーネ「……わかった。とりあえず、私は魔界に帰るわ」
タプリス「……?」
ヴィーネ「出来る限りのことは、やっておきたいから…」
タプリス「…では、私も」
タプリス「話せるかどうかはわかりませんが…天使長様と、話をしてきます」
ヴィーネ「頑張りましょうね、お互い」
タプリス「…迷惑だけは、かけないように」
サターニャ「待ちなさいよラフィエル!アンタほんとに何考えてんの!?まさか本気で諦めるつもりじゃないでしょうね!」
ラフィ(あの3人を解散させるために少し煽りましたが…すぐ撒けるかと思いきや以外ときついですね)
サターニャ「私は……別に、あんたのことなんかどうでもいいけどっ!ただ、天使の都合に振り回されるのはゴメンよ!」
サターニャ「それに、まだガヴリールに勝ってない…!」
サターニャ「アンタをぎゃふんとも、言わせてない…!」
サターニャ「勝ち逃げなんて、させるものですか!!」
ラフィ「……ふふっ。サターニャさんは、本当に……」
犬「はっはっはっはっ」
サターニャ「げえ!?」
ラフィ「本当に面白いです♪」
サターニャ「て、ここいっつもコイツにパン取られる道…!ら、ラフィエル!謀ったわねぇ…!」
ラフィ「…サターニャさんの気持ちは痛いほど伝わりましたよ。その上で、私はやらねばならないことがあるんです」
サターニャ「くっそぉ、犬!!かかってきなさい!!」
犬「きゃいーーん!」
ラフィ「……諦めるわけ、ないじゃないですか」
ラフィ「ガヴちゃん」
ガヴ「…ラフィ。どうかしましたか」
ラフィ「部屋、だいぶ片付きましたね」
ガヴ「転校は来週からですが、やはり現地には早く着いておいた方がいいと思うので…3日後には、もうここを発とうと思ってるんです」
ラフィ「一週間後なんて、天界もだいぶ焦っていますよね。寮の手配、入学手続き、一通りは終わっているようですが…」
ガヴ「…そうですね」
ラフィ「……これは、けじめのつもりですか?」
ガヴ「……私の責任ですので」
ラフィ「その顔やめてくださいって言ったじゃないですか」
ガヴ「………」
ラフィ「タプちゃんが、ヴィーネとサターニャさんを集めて、私たちの転校を阻止しようと計画を立てていました」
ガヴ「っ……!ちょ、そ、そんなことしたら…!」
ラフィ「大丈夫です。ちゃんと止めました」
ガヴ「…そ、そうか…そう、ですか…」
ラフィ「……ガヴちゃんは、本当にそれでいいんですね?」
ガヴ「え……?」
ラフィ「このままみんなと離れ離れで…本当にそれでいいんですね?」
ガヴ「………」
ラフィ「悔いはありませんね?」
ガヴ「………っく」
ラフィ「…何か言ってくださいよ」
ガヴ「……言えるわけ、ないですよ」
ガヴ「だって、そんなことを言う資格、私には…」
ダンッ!!!
ラフィ「いいから貴方の気持ちを教えてくれと言ってるんですよ」
ガヴ「……ぃ、ひ」
ガヴ「…いや、だよ」
ガヴ「もうヴィーネに世話焼いてもらえないなんてやだ。もうサターニャを弄れないなんてやだ。…上野と田中の料理を食えないなんてやだ。委員長と話せなくなるなんてやだ……」
ラフィ「…よく、言えました」
ラフィ「私も、同じ気持ちです」ニコリ
魔界ーーーーー
ヴィーネ「…帰ってきたはいいものの、何をすればいいのやら…」
ヴィーネ「悪魔学校の先生にでも相談してみようかしら…でもなー。『天使と仲良くしたい』なんて言ったら、問答無用で追い出されそうだし…」
ヴィーネ「行くだけ行ってみるか…」
ザワザワ…ザワザワ…
ヴィーネ「……?何やら騒がしい」
ヴィーネ「どうしたんですか?」
「…ん?ああ、こいつを見てくれ」
ヴィーネ「……?」
『魔界の住民よ。近いうちに、我ら尊き天使を堕とした罪深き貴様らに、正義の鉄槌を下す』
ヴィーネ「…何これ!?脅迫文!?」
「魔界中に広まってんだよ。ったく、どうやってこんなもの魔界に持ち込んだのか…」
ヴィーネ(……これ、かなりヤバくない?)
天界ーーーー
タプリス(天使長への謁見、通りますかね…)ドキドキ
タプリス(普段ならば一学生である私の謁見なんて通るはずもないですけど、一応今回の私は騒動の渦中にいますから…)
「おい、これはどういうことだっ!」
「知るかよ!どうやら過激派の仕業でもないらしい!」
「はあ!?じゃあ誰が、こんな…」
タプリス「……ん?」
タプリス「あの、何かあったんですか?」
「っ、君、学生か…なら、君も無関係ではないかもな」
「天界から魔界に脅迫文が送られたんだ。今頃魔界も大混乱…」
タプリス「きょ、きょうはくぶん!?」
タプリス(まさか……!いえ、さっきこの人たちは『過激派の仕業ではない』と…)
タプリス(……わからないです。一体何が起こってるんですか……)
「千咲さん、OKだそうです。学園長室までどうぞ」
タプリス「あ、はい…」
タプリス(こんなことしてる場合じゃない気がしてきました…)
サターニャ「……うう」ボロ
サターニャ「…ふざけないでよ、ラフィエルぅ……」
サターニャ「なんで、こんなことになっちゃうのよ…」
サターニャ「せっかく、友だち出来たのに…」
サターニャ「どうして、こんな……」
サターニャ「……ちがう、ちがうっ!」
サターニャ「友だちなんかじゃない!」
サターニャ「そして……ガヴリールのせいなんかでもないっ!」
サターニャ「じゃあ、誰が悪いの…」
サターニャ「……わからない、わからないわよぉ…」
天使長「まぁ、かけたまえ」
タプリス「はいっ」
天使長「…大方予想はついている。転校のことについてだろう」
タプリス「あ、はい…そうです。…あの、悪魔さんたちは本当に何も悪くないんです。天真先輩がダメになったのは、全部…」
天使長「…話がそれだけではないということも、もう聞いているのだろう」
タプリス「……う、はい」
天使長「…脅迫文のことは知っているかい?」
タプリス「……下で聞きました。一体誰が、あんなことを…」
天使長「あれが、誰の、どのような目的で送られたのかはまだわかっていない。…しかし、あの文にあてられた過激派の連中が活気づいてきてね」
タプリス「……ぇ、ま、まさか」
天使長「…ああ、近いうちに内乱が起こるよ。こうなれば我々も武力で通すしかない」
タプリス「そんな…」
天使長「これでわかっただろう。天使と悪魔の間にある確執が、未だどんなものであるか…」
タプリス「……」
天使長「だから、もう諦めて―――」
「大変です!!天使長!!」
天使長「何かね。過激派の動きについてなら、もう知っている」
「いえ、違うんですっ…」
「下界に留学中の、天真=ガヴリール=ホワイトなんですが…」
タプリス「…?天真先輩?」
「……彼女からの聖気が、感じ取れなくなりました…」
天使長「……なんだと?」
タプリス「……聖気が、なくなった?」
タプリス(……それは、我々天使の中では)
タプリス(『堕天』を意味する言葉だ)
ヴィーネ「……ありえ、ないわ」
ヴィーネ「だって、だって……」
「送り主を突き止めただって!?」
「ま、こんだけ派手にやれば見つかるだろ普通」
「で、誰なんだ?こんな下らないもんを送りつけできたのは」
「なんでも…天界の白羽家ってとこかららしいぜ」
「…ったく、まーた天使ですか」
「これ上に知れたらやばくね?」
「いや、さすがにこんなもん天界の中で処理してくれるだろ」
ヴィーネ「ラフィが、過激派?」
ヴィーネ「いや、でも」
ヴィーネ(何かがおかしい、何かが…)
天使長「……なんてこった」
「……天使長、我々の見解を話させて頂いても?」
天使長「…言ってみなさい」
「私は全ての黒幕は白羽=ラフィエル=エインズワースだと断言します」
タプリス「……え、ちょっと」
「例の脅迫文の送り主が白羽家であったことはもう話しましたね」
「…家主に問い質してみたところ、そのような事実はないと仰っていました。恐らくは、ラフィエルが下界から指示し、何かしらの理由を付け、白羽家からそれを送らせたのだと思います」
天使長「…目的は」
「過激派を煽ること。…恐らくは、ラフィエル自身も、過激派に近い思想を持っていたのでしょう」
「天真=ガヴリール=ホワイトの堕天は…更に過激派を煽るための餌です」
タプリス「…天真先輩を堕天させたのは、白羽先輩だと……?」
「……そういうことです」
天使長「……ふっ、結局我々は、彼女に踊らされていたというわけか…」
タプリス(……そんな、はずはない)
タプリス(まさか、白羽先輩は)
タプリス(そんな……!!)
ラフィ「……ふふふ」
ラフィ「白羽=ラフィエル=エインズワースの名において…」
ラフィ「開け、ゲートよ」
ギュイン
ラフィ(……さて、仕上げです)
ラフィ(サターニャさん、ありがとうございました)
ラフィ(世界がなんですか。派閥がなんですか。私たちの邪魔をするから、ぶっ倒してやればいいんです)
ラフィ(…私たちの日常は、壊させない)
ラフィ(他の全てを壊しても…です)
サターニャ「ラフィエル!!」
ラフィ「…サターニャさん」
サターニャ「いい加減にしなさいよ!なんでもかんでも1人でやろうとして…!」
ラフィ「説明をしたところで、サターニャさんには理解できないかと思いまして…」
サターニャ「…わかるわよっ!アンタ、堕天なんてしようとしてないでしょうね!!」
ラフィ「……」
サターニャ「ダメよそんなの……何かを失って得たものなんて、そんなの…」
ラフィ「……それは違いますよ、サターニャさん」
サターニャ「……何がよ」
ラフィ「何を犠牲にしても手に入れたいもの、それが本物です」
サターニャ「………」
ラフィ「…私は、この道を選びました」
ラフィ「サターニャさんが受け入れてくれなくても…私は、自分を貫き通します」
ラフィ「…巻き込んでしまった子もいますしね」
サターニャ「……うぅ、わからないわよぉ…!」
サターニャ「なんで、なんでっ…!」
ラフィ「……さよなら、サターニャさん」
ラフィ「また、学校で」
ーーーー
ガヴ「……お前、何言ってんだ?」
ラフィ「……でも、これが一番丸く収まる方法でしょう?」
ラフィ「ガヴちゃんを堕天させたのは私。それは、悪魔がガヴちゃんを駄目にさせたということにして、天界の過激思想を持つ人たちを焚き付け、魔界と戦争を引き起こすため…」
ラフィ「筋は通りますね?」
ガヴ「そういう話じゃない…!!そんなことをしたら、お前が…!」
ラフィ「私はこうしたいんです」
ガヴ「………」
ラフィ「…私のことを気遣う前に、自分のことを考えてください」
ラフィ「ガヴちゃんは私のこの提案を断れない…断る資格がない、と、そう思っているはずです」
ガヴ「っ……!」
ラフィ「…ふふ、わかってますよ。わかってて、道連れにしてやろうと、持ちかけたんです。どうしても天使側の協力者は必要ですからね…」
ガヴ「……私はお前を責められないよ」
ラフィ「だと思いました。…では、覚悟は決まりましたね?」
ガヴ「……最初に私から、私の気持ちを引き出させたのは、お前なりの優しさか」
ラフィ「うふふ♪どうでしょう?」
ガヴ「……ああ、いいさ。私だって、あいつらと離れ離れになんてなりたくない」
ガヴ「…自分を縛らず、ありのままでいれた、この世界を失いたくない」
ラフィ「……では」スッ
ガヴ「……ここに、天真=ガヴリール=ホワイトの背信を宣言する」
ガヴ「神よ、さらば。魔神よ、我を受け入れたまえ」
ーーー
『軍大門=ルシフェル=コバルト主導によって行われたクーデターはあっさりと幕を閉じた』
『この事件で、ルシフェルや、この一連の騒動を引き起こした黒幕と言われる白羽=ラフィエル=エインズワースを始め、多くの天使がその権利を剥奪された』
『ラフィエルは下界に留学中の学生であり、白羽家はこのクーデターには全く関与していないとのこと』
『また、この件に関して白羽家は、「娘の不始末は親の責」と、過激派討伐に大きく貢献してくれた』
『この事件で過激派は更なる劣勢に追い込まれ、暫くこの平和は続きそうだ』
『なお、この騒動の最中ラフィエルが堕天させたという天真=ガヴリール=ホワイトの足取りは未だ追えていない』
ガヴ「………」
ガヴ「…ん、むにゃ……朝か」
ガヴ「ふあ~あ……起きるかぁ」
ガヴ(……そうして、また一日が始まる)
ヴィーネ「おはよう、ガヴ」
ガヴ「おはよ、ヴィーネ」
ヴィーネ「アンタもだいぶ早く起きれるようになったじゃない」
ガヴ「ま、ゲームさえやらなきなこんなもんだよ」
ヴィーネ「そうね」クスクス
サターニャ「ガヴリールうぅうぅっ!!!」
ガヴ「うわ、サターニャ…」
ヴィーネ「相変わらず元気ね…」
サターニャ「今日という今日は、アンタに勝ってやるんだから!!」
ガヴ「勝つもクソも、だから私は…ってそうか。私悪魔になったんだ…」
サターニャ「いいから!今日一日、どれだけ悪いことが出来たか競うのよ!」
ガヴ「めんどくさいよ…てか、私これでも普通に生活してるつもりなんだけど?」
ヴィーネ「ガヴ、ゲームやめた以外はほっとんど変わってないものね…」
ガヴ「ええ~…」
タプリス「おはようございますっ!」
ヴィーネ「あ、タプちゃん。おはよう」
タプリス「おはようございますっ…あの、月乃瀬先輩…」
ヴィーネ「なに?どうかした?」
タプリス「時間があったらでいいんですが…またお勉強見てもらえないかな~って…」
ヴィーネ「ああ、そんなこと?全然いいわよ」
タプリス「ありがとうございます!」
ガヴ(…タプリスの転校は、急遽取り止めになった)
ガヴ(過激派の衰退によって、世論が再び悪魔との共和へ傾いたせいだろう)
ガヴ(……そして)
ラフィ「あらあら~、皆さんお揃いで」
サターニャ「あ、ラフィエル!!」
ヴィーネ「おはよう、ラフィ」
タプリス「おはようございます、白羽先輩!」
ガヴ(…日常は、戻ってきた)
ーーーー
ヴィーネ「…ガヴが、悪魔に!?それに、ラフィの天使の権利が剥奪されたって、どういうこと!?」
サターニャ「………」
ガヴ「…あー、私の堕天は、字面通りのことだ。天使やめて、悪魔になったってこと」
ラフィ「天使の権利の剥奪というのはですね、天使に与えられた特権・使命全てを奪われて、人の身に堕とされることですよ~」
タプリス「そんな……」
タプリス「なんで、なんで2人だけで!?言ってくれれば、私だって…!!」
ガヴ「……お前を巻き込むわけにはいかないだろ。お前は家族を捨てられるような天使じゃない」
タプリス「…そ、それは」
ラフィ「…皆さんも思うところはあるでしょうが、これが私たちの選んだ道です。幸い死人もけが人も出ませんでしたし、堕ちたと言っても、これからの生活に支障があるわけではありません」
ヴィーネ「…今まで通り、学校にも通えるってこと?」
ラフィ「はい。…こんなこともあろうかとへそくりを少々していたので、学費くらいは賄えます」
タプリス「でも、…やっぱり、今まで通りなんて…」
サターニャ「…いいじゃない、それで」
タプリス「え?」
ラフィ「………」
サターニャ「…最初っから、天使も悪魔も関係ないじゃない、私たち」
ヴィーネ「……」
サターニャ「天界も魔界も巻き込んで、これだけの騒動を起こして、得たいものがそれだというなら、私はそれを受け入れるわ」
サターニャ「……なんとなく、それがいいって、思うの」
ラフィ「サターニャさん…」
ヴィーネ「……そう、よね」
ヴィーネ「じゃあ、もう、いいよね」
ガヴ「ん?」
ヴィーネ「うわあああん!ガヴ!ガヴ!」ダキッ
ガヴ「うわっ、ど、どしたヴィーネ!」
ヴィーネ「よかった…!ガヴがいなくならないで、良かった…!」ボロボロ
ガヴ「そ、そんな泣くなよ…」ナデナデ
タプリス「……私は、白羽先輩たちのしたこと」
タプリス「天使として、許すべきではありません」
ラフィ「……」
タプリス「……でも、でも。そんな理屈なんてどうでもいいです」
タプリス「ありがとうございました…!そして、何の力にもなれなくて…本当に、本当に……ごめんなさいっ…!」
ラフィ「…違いますよ。今回はあなたが強かったんです。あなたが正しかったんです」
タプリス「でも、でもっ…!」
ラフィ「あなたは天使として、踏み止まるべき所では踏み止まりました。それは誇っていいと思います」
タプリス「それは、私にそれをするだけの覚悟と力がなかっただけですっ!」
ラフィ「いいえ。…あなたは、覚悟と力があっても、決して私のようにはならなかったと思いますよ」
タプリス「ううっ、ううぅ……」
ガヴ「……色々、あったけどさ」
ヴィーネ「…うん」
ガヴ「結局、この5人で居られるんだよな」
サターニャ「そうね」
ラフィ「ええ…みんな、ずっと一緒ですよ」
タプリス「はい……ずっと、この5人で」
ヴィーネ「この日のことを思い出しながら、みんなでお酒を飲んだり…」
サターニャ「ふっ…そんな未来も、悪くはないわ!」
ラフィ「…皆さん、本当にありがとうございます」
ラフィ「私に居場所をくれて、ありがとう…」
ーーーー
ガヴ(相変わらず、ヴィーネは私の世話を焼く)
ガヴ(相変わらず、サターニャは私に突っかかってくる)
ガヴ(相変わらず、タプリスはそんな私たちの後ろをついてくる)
ガヴ(そして、ラフィは)
ガヴ(そんな私たちを、いつもにこにこと、見守っている)
ラフィ「…ガヴちゃん、おはようございます♪」
ガヴ「……ああ」
ガヴ(そんな幸せを噛み締めながら)
ガヴ(私は今日も生きている)
ガヴ「おはよう」
Happy End
こんなクソ長いもんを最後まで読んでくださってありがとうございました