【ガルパン】西住みほ「IV号対空戦車?」【1】
【ガルパン】西住みほ「IV号対空戦車?」【2】

492 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/01/31 22:27:15.79 VN429+8u0 393/670


◆最終章 "天上人"



【戦車倉庫・自動車部】

ナカジマ「………ということなんですよ」

柚子「そんな…じゃぁIV号は」

ナカジマ「えぇ…直せないことはないんですけど…」


ナカジマ「確実に決勝戦には間に合いませんね」


「くッ…」

ホシノ「なにしろ無人機の主翼がモロに直撃して、エンジン周辺やら砲塔旋回に使われる装置やらが全滅でして…」

スズキ「乗員を防護するカーボンコーティングもかなり損傷が激しいですよ」

ツチヤ「不謹慎な言い方になっちゃうけど、よく皆さん無事だったなって思うくらい車体がメチャクチャになってます」

493 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/01/31 22:28:37.68 VN429+8u0 394/670


「そこを何とかならんのか!」

ナカジマ「流石に今回ばかりは……」

ホシノ「パーツがあればまだしも、国内にそういったパーツがあまり流通していないんで、それらを取り寄せるのに時間がかかるんですよね」

スズキ「今までの対空戦車のパーツもドイツとのルートがある隊長のお母さんの手配のおかげで何とかなったけど」

スズキ「これを個々でやれってなれば数ヶ月はかかると思いますよ」

「くそッ!」

「………」


494 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/01/31 22:30:01.06 VN429+8u0 395/670


「こんな時にあんこうチームのIV号戦車が使えなくなるなんて…!」

柚子「どうしよう…。戦車を新しく導入する予算もないし………」

「そもそも原因はサンダースの無人機の落下だろう?ならばサンダースに…」

「いんや、無理だと思うよー?」

「えっ?」

「仮にサンダースに非があって、賠償を支払うとなったとしても、今大会中じゃ間に合わないだろうからさ」

「異議申し立てがあったらまず両校や戦車連盟を交えた検証が行われて、それで改めて判断するって流れだから、決勝戦までには間に合わないねぇ」

柚子「そんなぁ…」

「かといって、戦車を新しく買うお金もないと。いやはや参ったねぇ…」

柚子「…」

「…」


(ほんと、参ったよ)


495 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/01/31 22:32:32.65 VN429+8u0 396/670


【会長室】


「…ということで、IV号が大破したために、決勝戦までの修復が困難になってしまった」

柚子「自動車部にも確認したけれど、無理だって…」


あんこう「えええええーっ!!」


優花里「それじゃ私達は決勝戦どうなるんですか!?」

「それを決めるためにお前達を呼んだ」

沙織「私あの時IV号…じゃなくてクーゲルブリッツに乗ってたけど、あの衝撃はヤバかったよ!」

みほ「あれだけの損傷を受けておいて乗員が全員無事だったのが本当に不幸中の幸いです」

柚子「ええ。皆が無事で本当によかったよね」

「うむ。ただ、これからのことをどうするか。それが問題だ」

麻子「そちらで何か代案はあるのか?」

柚子「他の車両に振り分けるくらいしか…」

「そうですよね…」


496 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/01/31 22:33:16.26 VN429+8u0 397/670


みほ「ところで、会長は?」

「会長は出かけている」

沙織「もーっ!会長ってばいつもこんな時にいないんだからー!」

「まぁまぁ。沙織さん」

麻子「怒ったところで何も変わらん。それよりも解決策を考えるほうが先だ」

優花里「冷泉殿のおっしゃる通りです。こちらでも出来ることを探しましょう」

みほ「そうだね」


497 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/01/31 22:34:31.26 VN429+8u0 398/670


【西住流戦車道家元】


菊代「それでは、家元をお呼びいたしますので、お待ち下さい」ペコリ

「ありがとうございます」

(前にも来たことがあったけど、やっぱり広いお屋敷だなぁ)


ガララッ

「! お久しぶりです。西住さん」

しほ「ええ。お久しぶり。うちの娘は元気にやっているかしら?」

「ええ。私が不甲斐ないばかりに、いつも助けられています」

しほ「そう。良かった」

「ええ」

しほ「…」

「…」

しほ「それで、お話というのは?」


498 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/01/31 22:37:02.61 VN429+8u0 399/670


「実を言いますと、先日のサンダース戦にてみほさん達が乗るIV号戦車が大破してしまいました」

しほ「…」

「幸い乗員は全員無事なので、その点だけは安心して下さい」

しほ「そう」

「…が、IV号戦車の損壊はかなりのもので、修復には時間がかかり決勝戦までに復旧させることが不可能となりました」

「そこで、西住さんの方からIV号戦車の代わりとなる戦車をお借りすることは出来ないかと思いまして…」

しほ「申し訳ないけれど、その要望にはお応えできないわ」

「ですが…!」

しほ「確かにあなた達には様々な機材を提供してきました」

しほ「しかし、"戦車をくれ"となると話は別」

しほ「一戦車道の流派が特定の学校だけに贔屓をするのはタブー」

「そこをなんとか!お願いしますっ!!」フカブカ


しほ「…そうね」


499 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/01/31 22:38:31.29 VN429+8u0 400/670


「…!」

しほ「菊代さん」

菊代「はーい」スタスタ

しほ「車体と砲身が欲しいそうよ」

菊代「かしこまりました。少々お待ちください」スタスタ

「あ、ありがとうございます!!」


しほ「ヒントはあげたわ。あとは貴方の力でそれを形にしなさい」


「え…ヒントですか?」


500 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/01/31 22:41:19.19 VN429+8u0 401/670


菊代「お待たせしました。どうぞお受け取りください」サッ

「…? これは一体?」

しほ「私から出来るのはこれだけ」

「さっきの車体と砲身というのは…?」

しほ「先にも言った通り、"ヒントはあげた"と」

「?」

しほ「あとは全て、あなたが探しなさい」

「はぁ」



しほ「ただし、最高の物を得るには最高の苦痛が必要」



「えっ?どういうことですか?」


501 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/01/31 22:42:30.41 VN429+8u0 402/670


しほ「とある高校の生徒は自分の戦車道を貫き通すために自ら狂いに行った」

しほ「その結果、その生徒がいる高校は瞬く間に強豪校になった」

しほ「代償としてその生徒は壊れてしまったけれども」

「………」

しほ「犠牲なくして、大きな勝利を得ることは出来ない」

しほ「あなたは自分が守りたいと思ったものの為にそこまで出来るのかしら?」










そこから私の仕事は始まった。


502 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/01/31 22:50:15.65 VN429+8u0 403/670


「戦車が壊れたからちょーだい」なんて甘ったれたことが西住流の家元に通じるなんてこれっぽっちも思っていない。

だから門前払いを食らうと思っていた。

しかし、門前払いの代わりに渡されたのは1つの封筒。

私はまずこれが何を意味するのかを調べることから始めることにした。


なんとなく想像はついていた。


503 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/01/31 22:53:24.49 VN429+8u0 404/670


「クルップ、ヘンシェル、ラインメタルねぇ…」



何度でも言うよ。なんとなく想像はついていた。

家元から渡された封筒の中に入っていた用紙には、黒森峰でも投入されているドイツの戦車や高射砲を"当時"製造していた会社の情報が記載されていた。

当時の面影がそのまま残っているとは思えないが、戦車道が盛んに行われるようになったことで、それらの産業も再び息を吹き返したのだろう。

そうでなければ黒森峰がティーガーやマウスなんてものを所有できるはずがない。

黒森峰はドイツと交流があった。だからそのルートを通じて戦車に関するやり取りが出来て、強力な戦車やその運用術を得られたのだろう。

そして私はそのルートを紹介してもらったに過ぎない。

西住ちゃん達あんこうチームが乗る『IV号戦車』を修復する、あるいは代替品を譲ってもらうには現時点ではこれを利用するしかないというのは大体わかった。



………が、何かが引っかかる。


504 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/01/31 22:54:25.10 VN429+8u0 405/670


「んじゃー小山、河嶋。後は頼んだ」



ちょいと出張するからしばらく頼むわー

そう言ったら河嶋も小山もすごい形相で驚いた。お前ら目玉飛び出てるぞ…。

小山はオロオロするし、河嶋に至っては「私も連れてってください~!!」なんて号泣しだす始末。

お前ら、副会長と広報として2年ちょいやって来ただろうが。今さら私がいなくたって問題ないだろうに…。


505 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/01/31 22:56:34.94 VN429+8u0 406/670


ひとまず練習については、西住ちゃんを中心にお願いすることにした。

…といっても肝心の西住ちゃん達あんこうチームの戦車が無いから、それぞれのチームの車両の空いているポジションにあんこうメンバーがローテーション形式で乗るよう提案した。

特にカモ、アリクイ、レオポンは空席は勿論、試合の経験数がほかのチームよりも少ない。それに私が抜けたカメも課題は残っている。

なのでそれらに優秀なあんこうチームの皆が交代で乗ることで、各々が培ったノウハウをそのチームに伝授し、弱点を可視化・改善することが目的だ。

前回の試合のように、自分たちの戦車だけ乗っていれば良いというわけでもなさそうだしね。

…と言う旨を西住ちゃんに話したらスンナリと納得してくれた。


決勝戦はプラウダか黒森峰のどちらか。どっちが勝つにしろウチらにとっちゃ厄介だ。前回までのような幸運は二度と訪れないと思っていい。

ましてや戦車だけでなく、無人機まで出てくるんだから、むしろ貧乏神に惚れられたと言ってもいいくらいだよね。早くあんこうのIV号戦車を用意しなくては。




………ん??



506 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/01/31 23:01:42.02 VN429+8u0 407/670


やはり何かが引っかかるが、今はドイツへ行くための準備をしないと。

のんびりしたいところだが、残された時間はあまりない。

戦車道や生徒会の関係で海外には何度か行ったこともあるけど、それはあくまで「見学」としてだ。今回に限っては何もかも自分で決定しないといけない。

貴重な体験なんだけど、正直面倒くさい。家で干し芋貪りながらゴロゴロしていたい。


念のため西住ちゃんには出張の行き先を教えておいた。行き先だけね。

そしたら昔の友人がいるから紹介すると言ってくれた。

どうやらその子は生まれはドイツらしく、日本に来るまでは向こうで戦車道らしいことをやっていたそうな。

で、その子も近いうちにドイツへ帰国するというから、一緒に行くよう説得したらしい。

西住ちゃん曰く「気難しいけど根はいい子だから」とのことだけど…まぁ現地で通訳をお願いしようかな。英語ならまだしもさすがにドイツ語は無理だ。

………私も通訳も無しによくドイツへ行こうと思ったよなぁ。我ながら無茶をするもんだ。


507 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/01/31 23:09:38.67 VN429+8u0 408/670



「あなたが角谷杏さん?」



西住ちゃんの"お友達"とは空港で対面した。

赤髪のツインテールの彼女は"中須賀エミ"という日独ハーフの子で、小学生時代の西住ちゃんの同級生とのことだ。

簡単に自己紹介したあと、ドイツ行きの飛行機に乗り込んだ。

中須賀ちゃんが何でドイツに?と訪ねるから「西住ちゃんの戦車がB-29に壊された」と色々端折って説明した。

そしたら彼女は『相変わらず無茶をするのねあの子…』という。それについては私も同意する。

だが『無人機相手に戦車で挑もうなんてバカだ』とまで言うもんだから、その西住ちゃんがそのB-29をポルシェティーガーで落としたと言ってやったら今度は物凄く驚いてた。

驚くのはわかる。私だって未だに信じられないくらいだもん。


…でも機内でデカい声で「うええっ!?」はちょいとマズいよ?

他の乗客がすごい顔でこちらを見てっからさ。


508 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/01/31 23:13:53.07 VN429+8u0 409/670


エミ「一体どうやって落としたのよっ!?」


ものすごい形相で詰め寄って来るので、あの時の試合を説明してみた。

そうしたら「ありえない……カリウスでもそんなことしないわ…」と、今度は魂ここにあらず状態。

この子もなかなか個性的な子ではある。ウチの学校に来ていたらさぞ面白かっただろうなぁ。主に西住ちゃんが。


飛行機の窓から外の景色を眺めてみると、陸がずっと下の方に見える。

あんな下の方からこちら目がけて砲弾が飛んできて、爆発して撃墜されると思うとものすごく怖い。

戦車同士の戦いでもそう何キロも離れて撃ち合うわけじゃない。なのに8km以上離れた上空の獲物を撃墜するのだから、もはや戦車道を超えた戦いだ。

そんな正確な射撃能力があれば黒森峰やプラウダの戦車も遠方から撃ち抜くことが出来るよね。



…………。

もうずっと何かが引っかかっている。

重大な何かだ。そいつが喉に刺さった骨みたいに取れそうで取れない。もどかしい。


509 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/01/31 23:17:01.58 VN429+8u0 410/670


エミ「ところでIV号じゃないとダメなの?」

「んー?」

エミ「代わりの戦車。何でIV号なの?」


モヤモヤしていると中須賀ちゃんが訪ねてきた。

何でって…そりゃそうだろう、西住ちゃん達のシンボルの戦車なんだよ?

だから違う戦車だったら…

……ん?






        何でIV号じゃないとダメなんだろ?






510 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/01/31 23:21:31.74 VN429+8u0 411/670


確かに西住ちゃん達あんこうチームが乗っているのはIV号戦車だ。

そのIV号戦車は対無人機戦闘を想定して様々な"IV号対空戦車"としてカスタマイズしてきた。

メーベルワーゲン

ヴィルベルヴィント

オストヴィント

そしてクーゲルブリッツ。

20mm、30mm、37mm…それぞれの対空機関砲は、無人機に当たりさえすればそれなりのダメージは与えられるだろう。…当たりさえすればだが。

…だが、それらのカスタマイズは確かに無人機戦闘での対抗策にはなったが、対戦車戦闘では活躍するのだろうか?


511 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/01/31 23:27:48.37 VN429+8u0 412/670


いかんせん相手は無人機抜いて戦車だけ見ても強豪校のツートップだ。

ここで前回ほとんど役に立たなかったクーゲルブリッツを「直ったから使ってよー」といったところで、それがこの2校のいずれかを相手にした時有利になるのだろうか?

対空戦車として対無人機に限定すれば多少の効果はあるかもしれない。

しかし、その対空戦車の砲撃は戦車の装甲相手だと…


それに西住ちゃんたちあんこうチームは大洗の"切り札"と言っても良い。

もちろん他のみんなも、うちの河嶋も小山も優秀だが、あんこうたちは更にその上を行く。

まさに切り札といえる存在だ。

彼女たちは無人機を相手にしても戦車を相手にしても柔軟な発想と機転によって勝ち上がってきた。




んむっ?!

無人機を相手にしても戦車を相手にしても?!




512 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/01/31 23:30:21.63 VN429+8u0 413/670



「それだぁぁぁぁぁっ!!!」ガタッ!



どーしようもないバカだ私は。こんなことも忘れてたなんて!

無人機が導入されて数ヶ月、私達はずっと無人機の対策しか考えていなかった。

無人機を保有しないウチらにとって相手の無人機の存在が圧倒的に不利だったがために!


しかし、私達が相手にしなければいけなかったのは"戦車"なのだ。

いや、戦車"も"というべきだ。戦車を相手にして、無人機はオマケくらいの認識でなければいけなかった!!

無人機落としてバンザーイで終わる話ではなかった!

なのに…


対戦車戦闘を疎かにして貴重な戦力削って無人機対策に傾倒してしまっていた!!


そしてその役割をあろうことか大洗女子の"切り札"あんこうチームを主体に………!


513 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/01/31 23:31:46.59 VN429+8u0 414/670


エミ「ち、ちょっとどうしたのよ?」

「…そういうことだ!!やっとわかったぞっ!!」

エミ「だから何がよ!!」

CA「お静かに願います」

エミ「あ…すいません…」



おいこら中須賀ちゃん。あんたのせいで怒られただろーが。ンだからはしゃぐなつったろーに…。

え?あたしのせい?………悪かったよ。


514 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/01/31 23:32:54.27 VN429+8u0 415/670


エミ「…で、どうしたのよ?」ヒソヒソ

「よくよく考えたらさ、IV号じゃなくてもいーじゃんって思ったわけよ」ボソ

エミ「ほらね。どうせドイツ行くんならパンターとかティーガーとか持っていけば良いじゃない」

「んなもん簡単に手に入ったら苦労しないよ」

エミ「まぁね」

「…」


そりゃそうだ。

パンターだろうがティーガーだろうが戦車が簡単に手に入るんならあたしゃドイツになんぞ行かぬわ。家でテレビ見ながら干し芋食べてるよ。


515 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/01/31 23:34:18.98 VN429+8u0 416/670


「まぁ、あとで西住ちゃんに相談してみるよ…」

エミ「あ、第二次世界大戦後に出た戦車は試合じゃ使えないからね?厳密には1945年…」

「わぁっとるわいンなこたぁ」

エミ「えぇーホントにぃ?」


こいつめ…あたしゃ腐っても廃校の危機に瀕した学校で、戦車道復活させるためにアレコレやって来たんだぞ?

そんなルールくらいわかってるっちゅーの。

………天蓋付いてない対空戦車つかってたのはアレだけど。


516 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/01/31 23:36:33.31 VN429+8u0 417/670


【空港】

疲れた。

さすがに12時間のフライトはしんどい。ノンビリ寝転がれる無人機が欲しいよ。

おケイ、スーパーギャラクシー貸してくんないかなぁ。操縦手つきで。


エミ「それで、まずは何処から行くの?」

「あん?」

エミ「いや、だって時間ないでしょ」

「決勝戦までまだ時間あるからへーきへーき」


ぶっちゃけると1ヶ月きった。正直ヤバい。


エミ「私来週には日本に戻るよ?」

「ふぁっ!?」ガタッ

エミ「みほから聞いてなかったの?」

「西住ちゃんそんなこと一言も言ってなかったよ!」


517 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/01/31 23:40:01.11 VN429+8u0 418/670


おーい西住ちゃん、こりゃどういうことかなぁー?

「ドイツのお友達が一緒に行く」ってのは聞いたけど、その子の滞在期間が一週間ってのは聞いてないぞ?

…まぁ聞かなかった私も悪いけどさ!


ピリリリリ

ピリリリリ


…っと電話だ。西住ちゃんからだね。


「もしもーし」

みほ『こんばんは。西住です』

「おっ。そっちは夜かぁ?こっち今早朝だよ。ぐーでんもーげん」

みほ『えっ?あ、おはようございます』

「そっち何とかなりそー?」

みほ『ええ。指示通り交代で各車輌に乗ってます』

みほ『そのおかげで各々の改善点も色々見つかりました』


518 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/01/31 23:41:18.10 VN429+8u0 419/670


「おーそりゃ良かった!ところでさ、」

みほ『はい?』

「西住ちゃんたちの戦車なんだけどさ」



「IV号じゃなくてもいい?」



みほ『えっ?!』



そう。これは西住ちゃんに伝えとかないといけない事なんだよね。

次の試合ではIV号戦車が出てこないということ。

そして…








無人機も戦車も破壊できる超強力な戦車が必要だということ。











531 : くっそ。ケイのヤツなんで対空戦車壊したんだよ… ◆MY38Kbh4q6 - 2017/02/18 01:16:16.96 rfo797Wn0 420/670

みほ『………』


案の定西住ちゃんは黙り込んだ。

そりゃそうだ。IV号戦車は彼女たちあんこうチームの「戦車道」を象徴する戦車といって良い。

西住ちゃんたちが最初に乗って今日まで様々な戦いを勝ち抜いて、二度の廃校の危機から救った由緒ある戦車だ。

それを「IV号じゃなくてもいい?」なんて言ってしまうのはあまりにも無礼だ。


…だけど、今のIV号戦車、そしてIV号対空戦車じゃ戦車と無人機を相手に戦い抜くには力不足なんだよね。

532 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/02/18 01:18:27.11 rfo797Wn0 421/670


みほ『そうですよね…私も薄々感じていました』

みほ『ここ最近の私達は無人機にばかり気を取られて、肝心の対戦車対策が疎かになりつつある。と』

みほ『今まではそれでも良かったかもしれませんが、決勝戦となると…』



そうなんだよね。

知波単学園の戦車は装甲が薄いから対空戦車(オストヴィント)の砲弾が通った。

サンダースはクーゲルブリッツの弾がB-29へ届かなくて、西住ちゃんが機転を利かせて入れ替えたポルシェティーガーで五十鈴ちゃんが無人機やエース車とフラッグ車を叩いた。

あのサンダースの試合に関しては「完勝」と言っても良いくらいの成果だった。

だが、決勝戦でそういったものが通じるとは思えない。

黒森峰にしろプラウダにしろ、火力、装甲どちらも強力な戦車ばかりだ。

『対空戦車』では勝ち目がない。

533 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/02/18 01:20:14.55 rfo797Wn0 422/670


戦車の質だけでなく、プラウダにはカチューシャ、黒森峰には西住ちゃんの姉・西住まほといった優秀な指揮官がいる。

戦車良し
指揮良し
兵士良し

そこに更に無人機というオマケがついて、もはや"勝てる要素がない"といった状態なんだよね。

そうなると、「IV号戦車(対空戦車か?)直ったよ~」じゃあまり有利にはならない。


もっと強力な戦車…無人機が来ても重戦車が来ても相手に出来るようなヤツが必要なのよ!


534 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/02/18 01:21:40.64 rfo797Wn0 423/670


みほ『………わかりました』

「!」

みほ『IV号に乗れないのは残念ですが、会長に選定をお任せします』

「おっけーい」

みほ『その…無人機も戦車も相手にできる戦車、楽しみにしてます』クスッ

「あ、今笑ったなこのやろ~」ハハハ

みほ『いえ、笑っていませんよ。フフフ』

「やっぱ笑ってるじゃないかぁ!いいもんね!トビッキリの戦車持ってきて西住ちゃんのアゴ外してやっからさぁ!」

みほ『楽しみにしてます』

「あいよー。そいじゃ」

535 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/02/18 01:23:14.32 rfo797Wn0 424/670


ガッ!

「ちょっ!何すんのさ?!」



いきなり中須賀ちゃんが私の携帯をひったくった。

どうやら西住ちゃんと話がしたいんだろう。

んだが、「ちょっと代わって」くらい言って欲しかったよそこは…。



エミ「久しぶりね。みほ」

みほ『あっ!その声は………』

エミ「…」

みほ『………』

エミ「エミよ!中須賀エミ!!」

みほ『あ、あっ、エミちゃんだぁ!お久しぶりだねぇ!』

エミ「忘れてたでしょ」

みほ『…ごめんなさい』シュン

エミ「まったく…」

536 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/02/18 01:24:40.84 rfo797Wn0 425/670


エミ「…まぁ、相変わらず元気そうで良かったわよ」

みほ『えへへ。試合のルールが変わって振り回されてたかな』

エミ「無人機、ね」

みほ『…うん』

エミ「最初聞いたときは耳を疑ったわ」

みほ『実を言うと私も…』

エミ「戦車で競い合うのが戦車道なのに、そこに航空機が乱入したらもう戦車道でも何でもないじゃないの!って」

みほ『うん…』

エミ「普通の戦車じゃ空からの攻撃への対抗手段なんて無いし、あったとしても無人機相手に不利なのは変わらないし」

みほ『そうだよね…』

537 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/02/18 01:26:11.34 rfo797Wn0 426/670


"無人機"は戦車道を履修する者全員が違和感を抱いている。

中須賀ちゃん、西住ちゃんはもとより、ケイもチョビ子もダージリンもカチューシャも、無人機によって恩恵を受けた西ちゃんも………。

もちろん私もだ。

なぜならそこには無人機を導入できない学校をふるいにかけるという"政治的"な意図が見え隠れするからだ。

だからこそ私達はそういった理不尽に勝たなくちゃいけないんだよねぇ。

学園艦の統廃合を目論む汚い連中に学校を潰されないように。

そして戦車道が汚染されないように。

538 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/02/18 01:27:17.05 rfo797Wn0 427/670


エミ「…で、しかも角谷さんいわく、大洗女子は無人機を持っていないと」

みほ『あはは…実を言うと無人機を導入する予算がないらしくて』

エミ「ハイテクな誘導装置を組み込む分戦車よりも高いからね無人機は」

みほ『会長が干し芋減らせば買えるかも?』アハハ

エミ「どんだけ干し芋にお金使ってんのさ…」



聞こえてんぞ西住ちゃん。

干し芋減らしたカネで無人機が買えるならわざわざドイツにゃ行かん。

…あ、そういえば干し芋がもう無い。近くに売ってないかなぁ?

539 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/02/18 01:29:00.58 rfo797Wn0 428/670


みほ『エミちゃんの学校は持ってるの?』

エミ「持ってないわよ。持ってたとしてもウチのバカタレ共が使えるわけ無いでしょ」

みほ『あはは。瞳ちゃんだったら』

エミ「一番ダメ。あの子10秒で墜落させるから」

みほ『えーヒドい!』



なんだか楽しそうだなぁ二人とも。ちょいと疎外感。

こんなことなら河嶋と小山も連れてくるべきだったかなぁ。

そもそもあいつら二人以外に友達いたっけかな?

まぁケイとはよく話すし、チョビ子も会った時はよろしくやってるし。

でも友達かと言われると、うーむ…


…ダメだ。なんか悲しくなってきた。この話はよそう。


540 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/02/18 01:30:37.88 rfo797Wn0 429/670


エミ「…で、本当に良いのね?」

みほ『え?』

エミ「IV号」

みほ『あっ…うん。今回ばかりは仕方ないよ』

エミ「そう。なら良いけど」

みほ『うん。そっちは何か検討ついてるの?』

エミ「全っ然」キッパリ

みほ『ぅ…』

エミ「まず"代わりの戦車探す"ってだけでいきなりドイツに行くってのがあり得ない」

エミ「仕事辛いからってスキルもコネもなく会社辞めてフリーランスや起業するくらいあり得ない」

みほ『あはは…わかりやすい例えだね』



ムッカつくなぁコイツ!

何がムカつくって?例えが的確ですんげぇ分かりやすいところだよ!!

アタシだって何かする時ゃ事前準備くらいするさ。

色んなことが立て続けに起きるから準備するヒマが無いだけで!!

541 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/02/18 01:31:30.68 rfo797Wn0 430/670


エミ「そもそも戦車も決まってない、予算もない、コネもないで"戦車くれ"が無理」

みほ『うん…』

エミ「あなた以上に無茶なことやってるよコッチは」シレッ

みほ『その…なんというか、うちの会長が迷惑かけてごめんなさい…』

エミ「全くよ」

みほ『会長は色々ぶっ飛んでいるけど、その…悪い人じゃないからよろしくお願いねエミちゃん』

エミ「まぁ通訳と戦車についての知識くらいは提供するわ」




おのれ黙って聞いてりゃ好き放題言いやがって…!

チョビ子といい、ウサギのメガネといい、この小娘といい、どうしてツインテールの女はこうも傍若無人なヤツが多いんだか!

カワイイで許されるのは今のうちだぞマジで。そのうち"お局様"にそのツインテール食いちぎられっからなァ!!

542 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/02/18 01:33:24.79 rfo797Wn0 431/670


エミ「それじゃ、もう一回角谷さんに代わるわね」

みほ『あ、うん』

エミ「はい」

「やぁやぁ。随分楽しそうに話してたねー」

みほ『ええ。何しろ小学生時代からの付き合いですから』

「へー。となれば中須賀ちゃんの事なんでも知ってるわけだよねぇ?」

みほ『うーん…まぁ、多少は…』

「そっかぁ」ニタァ


「中須賀ちゃんにまつわる面白い話とかないの?」ニヤ


エミ「ちょっと!」

みほ『えーと…』



ヘっヘっヘ。さっきのお返しだもんねー!

中須賀ちゃんが横で何か言ってるけど知らんぷりぃ~♪

どんな面白話が聞けるかなぁーうししし。

543 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/02/18 01:34:53.49 rfo797Wn0 432/670


みほ『そういえば、小学生時代にエミちゃんカギ閉めずにトイレに入って』

みほ『知らずに扉開けたらウ●チぶら下げたエミちゃんがいて』

みほ『顔真っ赤にして踏ん張ってる姿が印象的だったり…』

「」

みほ『他にもお昼ごはん食べたあとに猛ダッシュしたせいで、校庭でゲロゲロ吐いてたこともあったり…』

「」

みほ『あとは帰宅途中に我慢できなくなって、近くの雑木林で…』

「」

エミ「何暴露してんのよぉぉ!!!///」ガァァァ



…予想を遥かに超えるドギツイ暴露だよ西住ちゃん。

あたしゃてっきり『寝ぼけて片方だけ髪の毛結ぶの忘れてた』みたいなソフトなのを予想してたよ。

金輪際西住ちゃんに他人の過去話をさせるのはやめよう。被害者が不登校になりかねん。

544 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/02/18 01:36:08.03 rfo797Wn0 433/670


その後は大洗の練習の状況とかを聞いたり、あんこうの戦車について軽く話した。

西住ちゃんもどんな戦車が来るのか(一応)気になっているらしく、

『とても期待していますからね!』

と言うので『無人機も戦車も蹴散らせるヤツ持っていくから任せといて!』と言って電話を切った。

だが…




「………どうしよ…」ズーン




電話じゃ大見得切ってあんな事言ったけど、戦車も無人機も相手に出来る戦車なんぞあたしゃ知らんぞ!

そもそも知ってたところで、その戦車を手に入れる術もない!

ホントどうしよ………。

545 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/02/18 01:38:41.49 rfo797Wn0 434/670


エミ「随分無茶なこと言うのねぇ」

「悔しいけど中須賀ちゃんの言うとおりだよ…」

エミ「ひとまずホテルに行ってチェックインしない?」

「…そだね」


到着したばかりなのに早くもこのザマだよ。先が思いやられるなぁ。

んでも、ウダウダ言ってもしょうがないので、とりあえずホテルに行くことにした。

長旅で疲れていることもあるし、計画ナシであちこち行くのも時間の無駄になる。今日はゆっくり今後の計画について考えることにした。

546 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/02/18 01:40:28.17 rfo797Wn0 435/670



【ホテルの部屋】



ドイツのホテルは日本のホテルとは違っていかにも"西洋"って感じがする。

まぁ西洋だから西洋っぽいのは当たり前だけどね。

ただ、ドイツなのにどこにも干し芋が置いてないのは解せない。あとでアンケート書いとこう。



エミ「まずは『エッセン』へ行ってみたらどうかしら?」

「エッセンねぇ…」

547 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/02/18 01:41:17.12 rfo797Wn0 436/670


地図を広げてエッセンがどこにあるかを確認する。

現在地は『デュッセルドルフ』だから、公共交通機関を使えば30分ほどで行ける距離だ。

ちなみに当初の計画ではフランクフルト行きの飛行機に乗る予定だったが、中須賀ちゃんの要望でデュッセルドルフに変更して現在に至る。

確かに、フランクフルトからエッセンまで結構な距離だし、デュッセルドルフを選んだのは正解だ。土地勘のある中須賀ちゃんが頼もしいねぇ。

んで、件のエッセンに何があるかというと



クルップだ。



548 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/02/18 01:42:20.86 rfo797Wn0 437/670


戦時中はIV号戦車、ティーガー、そしてマウス、列車砲といったドイツを代表する有名な兵器の開発・設計・製造に関わっており、ドイツ戦車を語る上で欠かせない重工企業だ。

また戦車以外にも高射砲で有名な『8.8cm Flak』を作っている。

戦後はティッセン社と合併して"ティッセンクルップ"という名前になり、相変わらず世界一デカい採掘機を作ってたりしていて、巨大なマシン作りに定評のある会社だ。

今回の私達が求める『戦車も無人機も相手にできる戦車』というニーズを満たすモノを作ってくれるに違いない。

そうと決まればささっとクルップに行ってみるかね。通訳については中須賀ちゃんに任せればいいしね。



…あ、「作ってくれるに違いない」ってのは技術的な意味でだよ。ウチらのために協力してくれるかってのは別の話。


549 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/02/18 01:44:00.58 rfo797Wn0 438/670


「…んでもさぁ、いくら戦車作ってた企業だからって、見ず知らずの人間に『戦車作って!強いの!!』って頼まれて『わかりました!』って言うかねぇ?」

エミ「まず無理ね」キッパリ



一切期待してなかったけど、こうも即答されると心に来るものがあるよ…。

そもそも、

IV号の代替となる戦車目当てにドイツに来たのは良い。

欲しい戦車の構想が全然決まってないのもまだ良い。



一番問題なのはそれを"作 っ て も ら う"ことなんだよ!!!



550 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/02/18 01:46:39.52 rfo797Wn0 439/670


普通に考えりゃわかるけど、戦車ってものすーっごいコストかかるわけよ?

そんなモンを何処のウマのホネかもわからん女子高生に「つおい戦車ちょーだい!」って頼まれて快諾するバカが何処にいるの?って話だよ。

それで首を縦に振る人がいるなら"ウラ"があるんじゃないかと逆に不安になる。



エミ「でも、それを何とかしないと来た意味がないでしょう?」

「まぁねー」



『何とかしないと』で何とか出来たら生徒会はいらん。

とは言っても中須賀ちゃんの言う通り、何とかしない事にゃどうにもならない。

…どーしてこうも理不尽な事ばかり起きるかねぇ大洗は。

551 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/02/18 01:47:26.24 rfo797Wn0 440/670


エミ「で、結局どんな戦車作るか決まったの?」

「ティーガーとかマウスみたいなのが貰えれば良いかなぁってくらい?」

エミ「ハァ…」


思いっきり溜め息つかれた。

そもそも"戦車道"については調べまくったけど、肝心の戦車については


ティーガー強ぇぇぇぇ

マウスでけぇぇぇぇぇ


くらいしか知らん。

…あっコイツめ!また溜め息つきやがった!!

552 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/02/18 01:48:43.43 rfo797Wn0 441/670


「んでも戦車も無人機も攻撃するってなりゃそんくらい強力なヤツが必要じゃない?」

エミ「確かにティーガーやマウスの主砲は強力よ。大半の戦車をアウトレンジから撃破出来るくらいにね」

「だろー?」

エミ「でも、無人機はどうするのよ?」

「あえ?」

エミ「ティーガーやマウスの"戦車砲"じゃ対空攻撃は無理よ」

「でも西住ちゃん達アレでB-29落としてたし…」

エミ「あんなもん例外中の例外よ!」



まぁ確かに。あん時はサンダースの"特別ルール"によって助けられたわけで。

黒森峰やプラウダ相手にノンビリ穴掘りやる余裕なんてまず無いわけだ。

戦車の知識が無い自分を呪いたくなる。秋山ちゃん連れて来れば良かった。

553 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/02/18 01:50:40.00 rfo797Wn0 442/670


エミ「ひとまず、車体についてはティーガーやマウス級のものが必要ね」

エミ「さすがにIV号やパンターじゃ大きな砲は搭載出来ないでしょうし」

「ほうほう」

エミ「…で、搭載する砲はアハト・アハトみたいなの」

「アハトアハト?」

エミ「8.8cm Flakの事。ティーガーの主砲のベースにもなった高射砲よ」

「なるほどねぇ」



そういえばサンダース戦の時にも言ってたなソレ。

高射砲だったヤツを敵戦車に向けて撃ったら撃破できたって話。

1つで航空機も戦車も対処できる理想の砲だ。

554 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/02/18 01:51:34.63 rfo797Wn0 443/670


エミ「で、ここで問題になるのが"砲塔"ね」

「え?砲塔?」

エミ「そう。無人機撃墜のための高射砲を搭載するとなれば、当然従来の戦車のような砲塔じゃダメ」

「それは砲を上に向けるから?」

エミ「その通りよ。もし仮にアハトアハトを搭載するとなれば」





エミ「砲塔はオリジナルになるわ」





555 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/02/18 01:56:20.42 rfo797Wn0 444/670


確かに、今までカスタマイズしてきたIV号対空戦車たちも無人機を倒すために砲を空に向けて射撃していた。

メーベルワーゲンやヴィルベルヴィント、オストヴィントはオープントップだったから、そのまま砲身をただ上に向ければ良かった。

しかしこれらのオープントップな対空戦車は後にルール改定によって使用できなくなった。

その代案としてのクーゲルブリッツは、従来の対空戦車と違い密閉型の砲塔になってて、ジャイロコンパスのように砲塔ごと上下左右に動かした。



…しかし、大型の高射砲を搭載した砲塔は、左右はともかくどうやって上下に動かせば良いのさ!?

556 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/02/18 01:57:27.04 rfo797Wn0 445/670


エミ「…一つだけ、心当たりがあるわ」

「どんなの?」

エミ「"ゲラート554"という砲塔があるのよ」

「なにそれ?」

エミ「クーゲルブリッツと合わせて、もう一つの本命となるはずだった対空戦車の砲塔よ」

「!」

エミ「…だけど、その砲塔は結局モックアップしか作られず、試作にすら至らなかった幻の対空戦車よ」

「幻の対空戦車?」


エミ「V号対空戦車 "ケーリアン" ね」



557 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/02/18 01:58:25.86 rfo797Wn0 446/670


V号対空戦車ケーリアン


V号戦車、つまり"パンター"をベースにした対空戦車だ。

対空戦車といえばIV号戦車ばかりを想像しがちだが、IV号よりも車体の大きいパンターでも対空戦車が計画されていたそうだ。

そして、そのパンター対空戦車も様々な種類が検討されていたが、その中でも最も完成に近かったのがこの「ケーリアン」という。

当初このケーリアンには、メーベルワーゲンやオストヴィントに搭載されていたような3.7cm Flak43対空機関砲を2連装にしたものが搭載されるはずだった。

しかし実際は連合軍の空襲により工場が破壊され、ベースとなるパンターの生産すら危うい状況となり、最終的に砲塔のモックアップが作られただけで実現はしなかった。

558 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/02/18 02:00:49.73 rfo797Wn0 447/670


また、実現しなかったもう一つの理由には搭載兵器の変更があったから。

というのも車体に対して武装が貧弱という理由で、搭載兵器を"5.5cm対空機関砲"にするよう計画が変更されたそうだ。

この5.5cm対空機関砲は『ゲラート58』という名称で開発が進められており、試作はされたものの、実用化する前に終戦を迎えた。

ゲラート58の元となった対空機関砲に『5cm Flak41』というものが存在し、こちらは3.7cmと8.8cmの射程のギャップを埋めるために作られたそうで、あのメーベルワーゲンの搭載兵器の候補にもなったらしい。

559 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/02/18 02:01:31.38 rfo797Wn0 448/670


「へぇー中須賀ちゃんって意外に戦車について詳しいんだね」

エミ「意外って何よ。これくらい、"こっち"じゃ普通なんだから」

「こっちって?」

エミ「ドイツのことよ!」



新たにわかったことが2つ。

まず1つは対空戦車はIV号だけでなくV号(パンター)でも計画されていたという点。

そしてもう一つは…







私は、私が思っている以上に無謀なことをしているという点。








560 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/02/18 02:02:45.48 rfo797Wn0 449/670


考えてもみてほしい。

あのV号戦車ケーリアンでさえ試作にすら達しなかったのだ。

ティーガーやマウスをベースにした対空戦車なんてまず存在しないだろう。

しかし、黒森峰やプラウダの戦車を叩き、なおかつ対空攻撃もするという無茶苦茶な条件を満たそうとなれば、ケーリアン以上のものが必要となる。

5.5cmじゃティーガーは叩けない。



エミ「限りなく無理に近い無理ね」

「…あたしもそう思うよ」


もしここで『こういう戦車があるよ!』って言ってくれる人がいるなら今すぐ私のところに来てほしい。

…もっとも来たところで「私が考えた最強の戦車」計画が出来ただけで、その次の「作ってもらう」という壁が立ちはだかるけどさ。

561 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/02/18 02:04:07.18 rfo797Wn0 450/670


さすがに手詰まりだ。どうしようもない。

はるばるドイツにまでやって来て、教えてもらった会社へ交渉をする以前の段階でこんな事になるのだったら日本で悶絶していればよかった。

本当に頭が冴えない。

こういうとき西住ちゃんだったらどうしていただろうか。


エミ「…だったらさ」







エミ「車体と砲だけ既存のものを選んで、砲塔はオリジナルにすれば良くない?」









562 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/02/18 02:05:44.19 rfo797Wn0 451/670


「は?」

エミ「だから、砲塔はオリジナルにするの」

「???」

エミ「要は車体と砲だけ何とかして、あとはそれを搭載するための砲塔を新規設計するのよ」



アンタは何を言っているんだ?

砲塔を新規設計するって?

そんなことしたらレギュレーションに引っかかるじゃないか。

この子ちゃんとルール理解してるのかね?

563 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/02/18 02:07:13.66 rfo797Wn0 452/670



*****************************************

参加可能なのは、1945年8月15日までに設計が完了し、試作に着手していた車輌と、同時期にそれらを搭載される予定だった部材のみを使用した車輌のみとする。

それを満たしていれば、実際には存在しなかった部材同士の組み合わせは認められる。

計画段階車両に関しては、個別に連盟と協議を行うこととする。

但し、部品等が調達不能等の理由により再現が困難な場合は、連盟が認める範囲において改造することが認められる。


3-01 参加車輌 戦車道試合規則(日本戦車道連盟)

****************************************



…ん?


計画段階車両に関しては、個別に連盟と協議を行うこととする???


564 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/02/18 02:08:26.90 rfo797Wn0 453/670


「…中須賀ちゃん」

エミ「なにかしら?」

「例えばさ、戦時中にドイツのお偉いさん達ってさ…」



「ティーガーやマウスをベースにした対空戦車って考えると思う?」




565 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/02/18 02:08:58.43 rfo797Wn0 454/670






エミ「思う」




珍しく中須賀ちゃんが"肯定的に"断言した。






569 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/02/26 21:34:23.53 mQWErSGe0 455/670


エミ「だってIV号だけでは飽き足らず、V号対空戦車なんて作ろうと計画してたのよ?」

エミ「時間とか物資といった事情が許されるのならば、パンターでもマウスでも対空戦車は計画されてもおかしくないわ」

「確かにねぇ」

エミ「ティーガーやマウスをベースにした対空戦車なんだから、搭載する砲もそこそ強力なものになるはず」

エミ「そうなれば私達が考えるように1つの車輌で戦車と航空機を対応できるわけだからね。極端な話」

エミ「場合によっては通常のティーガーやマウスといった"戦車"以上の仕事をする可能性だってあるはずよ」

「なるほど…」

エミ「あとは言わなくてもわかるよね?」



んー。ひとまず理事長さんに聞いてみるか。


570 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/02/26 21:36:40.12 mQWErSGe0 456/670


児玉『お電話代わりました。日本戦車道連盟、児玉です』

「お忙しい中失礼します。私、大洗女子学園の角谷杏と申します」

児玉『おぉ、大洗の角谷君か。先日はどうも』

「先日の件につきましては本当にありがとうございました」

児玉『いえいえ、こちらこそ。久方ぶりに白熱した試合を見ることが出来たよ』

「お陰様で大洗女子は今も元気に戦車道を嗜んでいます。これも理事長や関係者の皆様のおかげです」

児玉『それは良かった。今は丁度大会中で、しかも次が決勝戦ときた。楽しみにしておるよ』

「ありがとうございます。それで、お電話の内容ですが、戦車道のルールに関する相談がありまして」

児玉『相談?』

「はい。戦車道における試合で使用する戦車についての相談です」



私は理事長さんに現在に至るまでの事情を説明した。

先日の試合で我が校のエースが乗る戦車が大破し、次の決勝戦までに修復するのが困難なこと

そのため新しい戦車が必要となり、代替の戦車を求めてドイツにいること

そして、



既存の戦車をベースに、新しい戦車を作ろうとしていること。

571 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/02/26 21:40:56.77 mQWErSGe0 457/670


児玉『………』

「この件について、理事長の考えをお伺いしたいのです」

児玉『なるほどねぇ』

「…」

児玉『そのベースとなる戦車は…少なくとも"試作"開発に着手しているというのは間違いないのだね?』

「はい」

児玉『そして、その戦車に搭載する砲は"戦車砲"ではなく"高射砲"であり、こちらも試作への着手に至ってたものと』

「ええ。おっしゃる通りです」

児玉『ただ、その車輌と砲を結びつける"砲塔"だけが存在せず、再現するには新規に設計する必要があると』

「はい。この砲塔こそが今回の相談となります」

児玉『うーむ………』

「如何でしょう?」









児玉『………難しいねぇ』



572 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/02/26 21:42:41.42 mQWErSGe0 458/670


「!! それはどういう…」

児玉『判断が難しい。という意味だね』

「使用許可を出すのが難しい…という意味ではなく、"可か不可かの判断が難しい"、という意味ですか?」

児玉『うむ…。車体と砲はOKだけれども、砲塔がね…。かなりグレーゾーンなのだよ』

「…」

児玉『ちなみに、その戦車はまだ完成してはおらんのだね?』

「はい。戦車道連盟の許可が降り次第、交渉に入ろうと考えています」

児玉『そうか…。なら』

「?」


児玉『その計画はやめた方が良い』


573 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/02/26 21:44:23.97 mQWErSGe0 459/670


「なっ…」

児玉『君が一生懸命やっているのはわかるよ』

児玉『…ただね?』

児玉『君が提示した案件を、許可すべきか否かを理事会でまず決める』

児玉『通った場合、改めて各方面へ製造を依頼するという流れになると思う』

児玉『…しかし、それでは決勝戦にはまず間に合わない』

「っ…!」

児玉『だから悪いことは言わない。…やめておきなさい』

「ですが…!」

児玉『私だってこのようなことは言いたくない』

児玉『だが、実現不可能なものに時間を浪費するのは得策じゃない』

「………」

574 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/02/26 21:45:15.75 mQWErSGe0 460/670




「この提案に、西住流家元が関わっているとしてもですか?」



575 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/02/26 21:46:27.67 mQWErSGe0 461/670


児玉『…なに?』

「一点、お伝えし忘れた事があります」

「破損した戦車の修復が間に合わないと判断した時、私は西住流家元のもとへ足を運びました」

児玉『…』

「そして相談した結果、残念ながら戦車をお借りすることは出来ませんでした」

児玉『そうだろうね。西住流家元とは言え、一つの学校へ安々と戦車を貸与するとは思えまい』

「…しかし」

児玉『?』


576 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/02/26 21:48:34.45 mQWErSGe0 462/670


「戦車の代わりに、一通の封筒を頂きました」

児玉『封筒?』

「はい。本来なら丁重にお断りされ、手ぶらで帰るところなのですが」

「どういうわけか、西住さんは私に封筒を差し出した」

「かつてドイツの戦車を製造していた企業の情報が記載された一枚の用紙が入った封筒を…」

児玉『…』

「そして、西住流家元は確かにこう言いました」



― ヒントはあげたわ。あとは貴方の力でそれを形にしなさい



577 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/02/26 21:49:45.11 mQWErSGe0 463/670


児玉『………』

「これが何を意味するかはまだわかりません」

「ただ、一つ言えることは」


「西住流家元は首を横には振らなかったということです」


児玉『………そうか』

「…」


児玉『西住さんはそこまでしてくれたんだね』


「…!」


"そこまで"…?

578 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/02/26 21:51:02.91 mQWErSGe0 464/670



児玉『…わかった。私も一肌脱ぎましょう』


「!!」

児玉『ひとまず、その作りたい戦車の"概要"を私のところへ送って来なさい』

児玉『ベース車輌、搭載する砲の種類、そして砲塔について、出来るだけ詳しくまとめたものをね』

「ありがとうございます!!」

児玉『ただし、』

「っ!」

児玉『まだOKを出したわけじゃない』

児玉『あくまで、まず資料を見てから判断。…という流れだよ?』

児玉『だから糠喜びだけはしないで欲しい』

「わかりました」

579 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/02/26 21:51:58.29 mQWErSGe0 465/670


児玉『…しかし、大洗女子は不思議だねぇ』

「えっ?」

児玉『無限の可能性を秘めている』

「…」

児玉『何故、こんな良い学校を廃校にしたがるのか、私は理解に苦しむよ』

児玉『文科省は戦車道世界大会のために優秀な生徒だけに予算を集中させたがっておる』

児玉『だが…』

児玉『本当に、我々年配者が手塩にかけて育てないといけないのは』

児玉『君たち全ての若者達なのだよ』

「………」

580 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/02/26 21:53:27.76 mQWErSGe0 466/670


児玉『縛る必要なんてない。伸び伸びと戦車道を楽しんで欲しいものだ』

児玉『その中で戦車道の概念を理解し、技術を身に着け、少しずつ育ってくれたら良い』

児玉『そうすれば、本当の意味で素晴らしい人物が誕生する』

「……………」

児玉『それが、私が望む戦車道だよ』

「………たとえ」

児玉『うん』

「たとえ何度、廃校を宣告されても、わたし達は撤回のために、全力を尽くします…!」


581 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/02/26 21:54:37.72 mQWErSGe0 467/670


児玉『済まないね。勝手な大人たちのせいで苦労かけてしまって』

「…」

児玉『今の日本には目先のことに囚われ過ぎて、本当に大事なものを見失っている』

児玉『残念ながらお役所の人間はそれが理解できていない』

児玉『だから、君たちが徹甲弾のように硬い頭の彼らに、本当に大切なものを教えてやって欲しい』

「はい」

児玉『頼んだよ…』

「それが私の戦車道です」

582 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/02/26 21:55:37.97 mQWErSGe0 468/670



西住ちゃんのように優れたリーダーシップは発揮できない。

秋山ちゃんのように戦車の知識もロクにない。

だけど私は私なりの方法で、彼女たちが心から愛した"道"を守りたい。

その為だったら何だってしよう。



「あと、もう一つだけ、お願いがあります」


583 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/02/26 21:58:51.43 mQWErSGe0 469/670



「いやぁーお待たせお待たせ」

エミ「ずいぶん遅かったわね?」

「連盟にかけるついでに、ウチの生徒会にもちょっと電話しててねぇ」

エミ「ふーん。で、どうだったの?」

「大漁だったよー」

エミ「やったじゃない」

「ホントだよー。なにしろ」




「ひっさびさのお通じだったからねぇー。いっぱい出たよ」


584 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/02/26 22:00:37.91 mQWErSGe0 470/670


エミ「………は?」

「冗談。まずは"資料"を送ってほしいとのことだよ」

エミ「…そう」


ベースとなる戦車は何にするか

搭載する砲はどうするか

そしてその2つを結ぶための砲塔はどうするか


私と中須賀ちゃんは"設計図"を作った。


そして翌日、朝一番にその設計図を戦車道連盟へ送信した。

その結果、

585 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/02/26 22:03:26.54 mQWErSGe0 471/670



・1945年8月15日までに設計が完了し、試作に着手していた車輌をベースにしている

・1945年8月15日までに設計が完了し、試作に着手していた高射砲を搭載している


この2点が認められ、"砲塔の問題は無事にパスした"という返事が戻ってきた。

私達が提案した戦車の大まかな概要は、


・ティーガーやマウスのような、「重戦車」の車体

・8.8cm Flakのような実在する「高射砲」を搭載する

・「V号対空戦車 ケーリアン」のような砲身を上空へ向けられる旋回式砲塔


この3点だ。

ひょっとしたら完成品は試作設計とはかけ離れたものになるかもしれない。

しかし上記の範囲内であれば連盟はOKだという。


そしてもう一つ、報告を逐一戦車道連盟に必ず入れること…というのが条件だ。

586 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/02/26 22:09:43.43 mQWErSGe0 472/670



これで私達はまず第一の関門を突破したことになる。

しかし、これは序の口にすぎない。

次は、"戦車を作ってもらう"という最大の関門が待ち受けている。


587 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/02/26 22:26:01.25 mQWErSGe0 473/670



●Tips


「I号戦車、II号戦車、III号戦車、そして西住ちゃんたちがのるのがIV号戦車だね」

エミ「そうよ?」

「んで、V号がパンター、VI号がティーガー」

エミ「ええ」

「ってことはマウスはVII号ってわけか」

エミ「違うわよ」

「え?」

エミ「マウスはVIII号」

「それじゃVII号は?」

エミ「"レーヴェ"と呼ばれる70トン級あるいは90トン級の重戦車が計画されてたけど」

エミ「マウスとか他の戦車と平行して開発・生産するのは国家資源の浪費ってことで開発は中止になったのよ」

「ふーん。そうなんだ」



592 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/02 19:22:46.91 GOWn+5pK0 474/670



【翌朝 ホテル レストラン】


朝食なう。

レストランのバイキングにてドイツ料理に舌鼓を打ちながら今日の計画を練る。

特に干し芋が切れてから芋不足に陥ってたので、ポテト料理をひたすら食べた。

中須賀ちゃんから『イモ女』なんて呼ばれたけど気にしない。

なにしろイモだからね。イモはいいぞ!

あ、あとソーセージも美味しかった。河島や小山にも食べさせてやりたいなぁ。

593 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/02 19:24:27.42 GOWn+5pK0 475/670


エミ「…にしても良く食べるわね」

「1つ関門をパスして安心したせいか急にお腹が空いちゃってねぇ~」モグモグ

エミ「それは良いけど。…そんなにイモばっかり食べて飽きないの?」ズズ...

「全っ然?」モグモグ

エミ「…そう」


「ふぅ…。そんで、まずはクルップ社だよねー?」

エミ「ええ。そうよ」

「んー」

エミ「なによ?」

「アポ無しで戦車つくって下さいってどう考えても無理だよなぁ…って」

エミ「そうね」


594 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/02 19:26:03.35 GOWn+5pK0 476/670


わかってる。わかってるよ。

でも、そんなアッサリと否定されるとホント悲しいのよ…。

せめて『やってみなければわかりません!可能性がある限り進みましょう!』って西住ちゃんみたいなこと言って欲しいなぁ…。


エミ「みほも両手あげて降伏するレベルの無理難題に取っかかろうとしてるのよ私達は…」

「ぐぅ…」

エミ「でも、仮に私達の第一要求が通らないとしても、何か他のところで有益な情報が得られるかもしれないわ」

「まぁねぇ…(それもあまり期待しちゃいかん気がするけど)」


結局のところ、当たって砕けろだ。

私達はレストランを後にして、クルップ社のあるエッセンへ向かった。


595 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/02 19:27:30.93 GOWn+5pK0 477/670



【クルップ社 応接室】


………やっぱりな。


行く前から予想はできていた。

見ず知らずの小娘に『お金ないけど超強力な戦車作ってよ』と言われて『無理』以外の回答を期待する方がおかしい。

そんな無茶ぶりが出来るのはヒトラーくらいだ。応対してくれたスタッフさんに鼻で笑われたよ。


あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛どうしよ!!


こんなんじゃ他の会社行っても同じ結果になるだけだし。

そもそもこうなるなんてドイツ行く前からわかってたし!

なんで家元もあんな紙切れ渡したんだよっ!

素直に門前払いされた方が良かったよクルップみたいに!!

596 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/02 19:32:54.18 GOWn+5pK0 478/670


エミ「………」


中須賀ちゃんも呆れてるよ。予想通りな展開だけに。

私が中須賀ちゃんの立場だとしても『行く前からわかってたのに何でわざわざドイツ来たの?バカなの?』ってなるもん…。


「…帰ろう。さすがに無謀だったよ」

エミ「…」

「中須賀ちゃん?」


597 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/02 19:33:59.22 GOWn+5pK0 479/670


エミ「*****,**************?」

「***…*************」

エミ「***!**********,**********」

「*********」

エミ「*****」



え…なに?何の話してるの??

ドイツ語わかんないよ。

え?なんであんたら握手してんの?!


………もしかして、






エミ「車体、何とかなるかもしれない」





598 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/02 19:35:02.63 GOWn+5pK0 480/670


「ちょっ、何とかなるってどういうことよ?!!」

エミ「落ち着きなさい…」

「HAHAHA」


スタッフの人にまた笑われちまったよ…。だけどそんなことはどうでもいい。

誰がどう考えても「無理」しか返って来ないようなお願いしてるのに"何とかなる"ってどういうことさ?!

まさか中須賀ちゃん………





ヒトラーの孫とか?



599 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/02 19:36:48.66 GOWn+5pK0 481/670


エミ「そんなわけないでしょーが!!!」

「あはは。そーだよねー」

「HAHAHAHA」

エミ「まったく…」



ブチ切れ方はそっくりだけど、黙っておこう。

そんなことより、説明してもらおうか中須賀ちゃん



エミ「さすがに戦車を作れってのは無理だけどさ」

「うん」


エミ「戦車道やってるドイツの学校から借りることは可能かもしれないってこと」


「!」

エミ「だから、クルップ社製の戦車を使ってる学校を紹介してもらうのよ」

600 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/02 19:37:28.69 GOWn+5pK0 482/670


その手があったか!!

何度も言うけど、"かつて戦車作ってたから"という理由だけで、一企業にノーマネーで1から戦車作れというのはまず無理。時間的にも(会社が負担する)コスト的にも。

で、作るのがダメなら、既に完成している戦車を借りれば良かったのだ。…どうしてそんな簡単なこと思いつかなかったんだろう。


そしてどーしてそっちを最初に教えてくんなかったんだよあんのクソババア!!!


601 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/02 19:40:33.16 GOWn+5pK0 483/670


エミ「いや、いきなり学校に行っても貸してもらえないわよ?」

「えっ?」

エミ「考えてもみなさいよ。身元の分からない他国の人間が急に『戦車貸して』で『ハイ、どーぞ』なんてなると思う?」

「確かに…」

エミ「仮にも実弾を発射する兵器なんだから、簡単に借りれたら色々マズイわよ」



中須賀ちゃんの言うとおりだ。

何処の馬の骨かもわからん輩にホイホイ戦車を貸してしまうのはあまりに危険だ。

相手が反社会的勢力だったらテロに繋がりかねないし、そうでなくても借りパクされる可能性だってある。

戦車を借りパクって聞いたことないけど、実際されたらかなりヤバいだろう。

なにせドイツ戦車はどれも非常にスペックが高い。先進国ならまだしも途上国では余裕で戦力となりうるのだから。

まぁ戦車をパクられる学校があったらそこの隊長は相当マヌケだけどね。


602 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/02 19:41:51.59 GOWn+5pK0 484/670


…そういった事情から本来なら学校単位で申請するものなんだってさ。納得。


じゃぁ何でウチらがそのやり取り出来るって?そりゃあ私が生徒会長だからだよ。

こう見えて大洗女子や学園艦に関する一定の権限を持ってる。だから今回こーやってあちこち走り回ってるわけよ。

西住ちゃんは元西住流の子だし戦車も詳しいけど、こういった学校単位でするような交渉権の類は一切持ってないからねー(西住ちゃんに限った話じゃないけど)。


ちなみにあたしが死んだら小山と河島が学校や学園艦の運営・管理を引き継ぐことになる(大丈夫かなぁ…)。


603 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/02 19:43:41.33 GOWn+5pK0 485/670


「…ということは、ここに来たのはその学校とウチらを結ぶための何かしらの"コネ"を作るためと?」

エミ「その通り」つ[書類]ドッサリ

「うっわ…なにこれ…」

エミ「借用書みたいなものよ」

「めっちゃ分厚いじゃん…」ゲンナリ

エミ「それだけ厳重なの」


おっかしいなぁ…ドイツに来たのに日本の商社みたいな事やってっぞ?

こーいうのはPCでササッと入力とかじゃダメなのかねぇ…。

え?筆跡鑑定?あーそっか…。


604 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/02 19:45:11.10 GOWn+5pK0 486/670


1時間ほどかけてよーやく書類を全部書き終えた。右腕がプルプル震えてる。

本来こういう書類の作成とかはぜーんぶ小山に丸投げしてたし(もう少し手伝ったほうが良いのかな?)、私が何か作る時はだいたいパソコンだったから手書きで書類を作成するのは久しぶりだよ。


ひとまずこれでクルップ社からの紹介状を入手出来るので幾分スムーズに話が進みそうだ。

…いや、幾分どころではない。一気に話が進んだ。

『作ってもらう』と『貸してもらう』は違うが、『戦車を入手する』という目的は同じだ。

だが、1から作るよりも既に完成しているものを借りた方がコストも時間もかからない。

これは当初の計画よりも早く目的が1つ達成できるかもしれない…!


605 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/02 19:46:47.83 GOWn+5pK0 487/670



さて、どの学校に行くのかと中須賀ちゃんに訪ねたところ、ニーダーザクセン州ノルトハイム郡バート・ガンダースハイム市(長ったらしいなぁ…)にあるヴィルヘルム女学院が良いという。

話によると、そこは戦車道で優勝常連校と言われてる強豪中の強豪なんだそうだ。

日本で言う黒森峰みたいなものだろうか。西住ちゃんに聞いたらわかるかな?

何にせよ強豪校ならば強力な戦車も保有しているだろうし、行ってみる価値は大いにある。


606 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/02 19:48:35.38 GOWn+5pK0 488/670



【ヴィルヘルム女学院】


というわけで学校に到着したよ。

なんというか、豪華だね。さすが優勝常連校だけはある。

聖グロみたいな華やかさと黒森峰の荘厳さ混ぜた何かよくわからない感じだよ。



「」ヘトヘト

エミ「」ヘトヘト


あー…うん。

"というわけで学校に到着したよ"って軽々しく言ってっけどさ、実際のところエッセンからココまで電車で方道3時間近くかかるのよ。

まぁ疲れたわホント…。河島に丸投げしたい。しないけど。

学校の中に仮眠室無いかなぁ。マッサージチェア付きがいいなぁ。



エミ「あるわけないでしょ…」

「だよね…」ショボン


607 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/02 19:50:58.84 GOWn+5pK0 489/670


ひとまず来賓用の入り口から施設へ入り、通りすがりの学校関係者に用件を伝えた。

最初『何言ってんだこいつ』みたいな顔してたけど、クルップからの紹介状を出したら急に表情が明るくなった。クルップパワーすげー。

だけど中須賀ちゃんが『何で最初から(紹介状)出さないのよ』ってジトーっと睨んできた。

いきなり出したって面白くないじゃん?人を散々コケにする相手が急に慌てふためくところ見たら何かスカッとしない?


………悪趣味って言われた。


608 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/02 19:52:36.61 GOWn+5pK0 490/670



【ヴィルヘルム女学院 戦車倉庫】


私たちは学校の戦車倉庫へ案内された。

いや、倉庫というよりはスーパーマーケットだねーこりゃ。

あちこちに世界各国の戦車が"陳列"されている。うらやましい。



「うっひゃー。サンダースの倉庫みたいにいっぱいあるねぇ」

エミ「サンダースどころか黒森峰だって敵わないわよ」

「へぇ。さすがドイツ一の高校だけあるよ」

エミ「何言ってんの?」

「ふぇ?」

エミ「世界一よ」


609 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/02 19:53:42.95 GOWn+5pK0 491/670


「え?」

エミ「世界大会でドイツ代表選手を最も多く輩出している学校なのよ」

「そーなの?」

エミ「そうよ。だからこの学校は実質戦車道において"世界一"なの」

「世界大会ねぇ…ウチらにとっては遠い世界の話だよ」

エミ「でしょうね」

「…」



世界は本当に広い。

私達は目の前の学校の存続の危機のために必死になっている。

なのにこの学校が見ているのは世界だ。

いかに自分たちが小さな枠に押し込まれているかがわかる。


610 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/02 19:56:33.73 GOWn+5pK0 492/670


エミ「これが世界との違いよ」

「…」

エミ「残念ながら日本の戦車道は世界各国から大きく遅れをとっているわ」

エミ「だから、世界選手権大会に出たところで初戦敗退、良くて一回戦勝利が関の山ってとこかしら」

「そりゃ残念だね」

エミ「社会人チームが大学選抜チームに負け、その大学選抜チームが高校生チームに負ける」

エミ「言い方は悪いけど、このザマでは世界を相手に戦えない」

「………」

611 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/02 19:59:07.39 GOWn+5pK0 493/670


エミ「だから、文科省が本腰を入れて選手育成に躍起になっていて」

エミ「その結果、弱小校を"間引く"政策にシフトしつつあると」

エミ「日本代表選手を育成するべく、強豪校に予算を集中させるためにね」

「削られる側としちゃ笑えないねぇ」

エミ「だから生き残りたければ"結果"で示すしかないのよ」

「そだね」


ウチらは二度も結果を出してきた。

にも関わらずまだこんな姑息な手段を使ってまで潰そうとしている。

アンタら文科省が納得する"結果"って一体何なのさ?!

612 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/02 20:01:24.19 GOWn+5pK0 494/670


エミ「日本人は礼儀だの情けだのそういったものを尊重しているわ」

エミ「それは悪いことじゃないけど。世界を相手にした勝負じゃそれは何の役にも立たない」

「…」

エミ「勝つか負けるか。それだけ。それ以外は何も必要ない」


「でもねぇ」

エミ「なに?」

「確かに日本の戦車道はせいぜい日本でしか通用しないレベルだと思うよー」

「んだけどさ、自分たちの中で守りたいモノ、大切にしたいモノの為に一生懸命になる」

「そんな小さな世界が悪いとは思えないんだよねぇ」

エミ「…」

613 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/02 20:02:56.40 GOWn+5pK0 495/670


西住ちゃんが前を向いて最初の号令をかけた。

西ちゃんが涙を流して最期の吶喊をした…

自分や仲間の"道"を守るために先頭に立って。


あんなの見せられたら世界なんてもうどうでもいい。

彼女たちが守りたいものを皆で一緒に守りたいよ。

あの子たちが胸に抱える"情熱"は、血も涙もない灰色の成果主義なんかでかき消して欲しくはないよ…。

614 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/02 20:04:43.14 GOWn+5pK0 496/670


日本人はそういった"情"にもろいせいか、勝負師になれないのかもしれないけどさ。

でもその情が様々な形になって人の心に染み渡るから、極東の小さな島国が弱いながらも愛される国になった。

その場しのぎの対応や慌ててやるような目先の成果主義だけじゃ何もつかめないし何も守れない。

地道に積み重ねてきた静かな歴史こそが、ビクともしない屈強な柱になるんだよ。



エミ「でもウチらがやってることは戦車を貰うという"その場しのぎ"な対応だよね」

「………うるさいな…」



…なんにせよ、今は世界の道よりも私達の道をこじ開けるほうが先だ。


619 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/03 18:46:32.73 LrExecwg0 497/670


しばらく戦車を眺めていたら、この学校の責任者がやってきた。

軽く自己紹介を済ませたら「何がほしいの?」と聞いてきたので、ティーガーやマウスといった強力な戦車が欲しいと言った。…中須賀ちゃん経由で。

すると「ティーガーはともかくマウスはオススメしないよ?」と返事が帰ってきた(通訳:中須賀エミ)


「えっ、マウスダメなの?あんな強い戦車なのに?」

エミ「確かに強力だけど実戦ではまず使えないわね」

「ふぇ?なんで?」

エミ「不要な長物だから」

「えー。確かに車体は大きいけどさ、あんだけの火力と装甲があればどんな戦車にでも勝てるじゃん!」

エミ「重い・ノロい・使えないの3拍子そろった欠陥品よあんなもの」

「えぇ…」

エミ「マウスはね、火力…というより防御力のために全てを犠牲にした一辺倒な戦車なの」

「へー?」

エミ「"ソ連はティーガーやパンターを超える強力な戦車を用意するだろう"というヒトラーの警戒心から生まれた鉄のカタマリよ」


620 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/03 18:48:59.66 LrExecwg0 498/670


エミ「最大速度はたったの20kg。試験走行の段階でエンジンが故障」

エミ「もし仮に戦場に出たとしても同じようなトラブルはおそらく発生するはずよ」

エミ「で、発生したらその超重量が災いして回収も出来ない」

エミ「仮に故障しないとしても、マウスを動かすには大量の燃料が必要となるわ」

エミ「もっともそれ以前にマウスを作るだけで膨大な人員と資材を消費する」

エミ「…後半は私達には関係ないけど、とにかく"史上最大の戦車"ってだけで完全にお荷物でしかないわ」

エミ「だからマウスは論外よ。わかった?」


「おっ、西住ちゃんたちのIV号だ。でもなんか車体の表面デコボコしてんなー?」


エミ「聞けェェェェェ!!!」ガァァァァッ



わかったわかった。要するにマウスは"使いもんにならん"ってことでしょ?

ならば私が「ティガーかマウスか」って言った時にどーしてそれを言わなかったのさ…。

え?固定砲台にするならマウスでも良いって?…それはちょっとねぇ…。

621 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/03 18:51:14.61 LrExecwg0 499/670


「…となるとやっぱティーガー?」

エミ「うーん…」

「おやおや、随分と優柔不断だねぇ?」

エミ「ええ…。仮に8.8cm高射砲を載せるとしたらティーガーじゃ少し小さいから」

「いや、ティーガーが小さいって、ティーガーも8.8cm砲載せてるじゃない?」

エミ「砲塔を上に向けるとなるとまた事情が変わってくるのよ」

「あぁ…そうか」


確かにティーガーは8.8cm高射砲生まれの戦車砲を搭載しているが、それは狭い砲塔内に収められるようアレンジしたものなのだ。

一方で今回はそのまま高射砲を載せる。…いや、砲塔に収まるよう多少は改良はすると思うけど。

しかし、そうなれば砲塔も当然大きくなるだろうし、大きくなった砲塔を支えるために車体もより大きいものが必要となる。


マウスがダメでティーガーもダメ。他に何があるのだろうか…。

622 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/03 18:52:15.79 LrExecwg0 500/670


エミ「**********」

「******」

エミ「**?*******」

「*****…,********」

エミ「*******」



まーたドイツ語で何か喋ってる…。

英語ならまだしもドイツ語なんて一言たりともわかんないよ。"ぐーでんもーげん"くらいしか。

ほら中須賀ちゃん。何話してたのか教えてよ。





エミ「ひとまず車体、決まったわよ」





623 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/03 18:53:55.12 LrExecwg0 501/670


「え゛っ!?ちょっと待ってよ!」

エミ「なによ…」

「なによじゃないよ!どんなのかわからないまま決定は流石に困るって…!」

エミ「心配ないわよ」

「えぇ…」



こうして私の知らんところでベースとなる戦車が決まった。…解せぬ。

ティーガーでもない。マウスでもない。だけど高重量な高射砲を搭載するためにベースとなる戦車の名前は…




『エントビックルングストーペン・フォンダーツ・スーパーシュワール』

624 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/03 18:55:42.55 LrExecwg0 502/670


エミ「…随分カタコトね」

「だってドイツ語わかんないんだもん」

エミ「ワタシ、ニホンゴ、ワカリマセーンって言う外国人レベルよ」

「うっさいなぁ…。んなことよりこの戦車初めて見るんだけど何ていうの?」


エミ「この戦車はね、"E-100"って言うの」


「ほうほう。随分でかいねぇ」

エミ「この戦車もマウスと同じく"超重戦車"カテゴリに含まれる戦車なのよ」

「ってことはやっぱ重たいの?」

エミ「そうね。完成してたら130~140トンになると言われているわ」

「…結局マウスと変わんなくない?」

エミ「そんなことないわよ。30トンも違えば足回りの負担ぜんぜん違うんだから」

エミ「それにE-100は最大時速40キロは出せるしね」

「ほうほう」

625 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/03 18:59:13.25 LrExecwg0 503/670


「そういえばE-100はパンターとかティーガーみたいな動物の名前じゃないんだ?」

エミ「ええ。ひょっとしたら将来的に名前が付けられたのかもしれないけど、そうなる前に戦争が終わったからね」

「そーなんだ」

エミ「他にもE-75とか、E-50とかE-25、E-10といった数パターンあるわ」

エミ「これらの戦車は生産性を高めるために構成部品を共有化し、また重量を標準化するという試みのもと計画された」

「計画ってことは結局作られなかったの?」

エミ「ええ。E-100の車体が試作されただけ」

「なるほどね。試作されたってことは戦車道のルール的にはおっけーなのかねぇ」

エミ「おそらくね。何なら聞いてみたら?」

「あいよー。…って、結局借りるのOKなの?」

エミ「ええ。元々世界各国の戦車道のある学校に貸してたりするからその辺は大丈夫よ」

「そっかそっか。んじゃいっちょ聞いてみますかねぇ」

626 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/03 19:02:07.04 LrExecwg0 504/670


『E-100』か…。そんな戦車があったなんて知らなかったよ。

ひとまず"ハンコ"を押す前に理事長にこの件を相談した。どうやら児玉さんはこの戦車のことを知っているみたいだ。

なんでもマウスと同じ砲を搭載するか、更に大きい15cm砲を搭載する予定だったとか、それよりも大きい17cm戦車砲(こちらは大きすぎるので駆逐戦車のような固定式戦闘室に収める形だったそうだ)まで計画されていたそうだ。


なかなか興味深い話だけど、今はそれよりこのE-100がOKなのかどうかを知りたいのですよ理事長。

627 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/03 19:04:12.50 LrExecwg0 505/670



児玉『おめでとう。車体はOKだよ』


「本当ですか!?」

児玉『あぁ、車体はね。残るは搭載する砲と砲塔だね』

「ええ」

児玉『ただ…時間的に間に合うのかい?』

「それは…やってみなければわかりません」

児玉『そうだね。もし間に合わないのならば、最悪E-100に既存の砲塔を流用して運用するしかない』

「えぇ…」

児玉『わかった。それじゃ引き続き頑張って。何かあったら報告だけはしっかり頼むよ?』

「はい。ありがとうございます」

児玉『あ、そうだ』

628 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/03 19:06:57.20 LrExecwg0 506/670


「はい?」

児玉『いかんいかん。肝心なことを忘れとったよ。年を取るといかんねぇ…』

「何でしょう?」

児玉『今回の車体や、そのあとの戦車関連のものは日本大使館経由で防衛省へ送ってほしい』

「防衛省?」

児玉『うむ。戦車道で使うからとはいえ、モノは戦車でしかも海外から持ってくるとなれば正当な手続きをしないと色々厄介なことになるのだよ』

「そうなのですね…(いわゆる大人の事情ってヤツか)」

児玉『それに特殊カーボンや判定装置なども含め、もう一度チェックしておきたいからね』

「わかりました」

児玉『まぁこのあたりは先方さんに聞いてみたらわかると思う。よろしく頼むよ』

「はい。ありがとうございます」

629 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/03 19:19:04.99 LrExecwg0 507/670


いよっしゃぁぁぁぁぁ!車体オケー!!!!

最初の難関突破したぞー!!

なんだか優勝した時の気分だよ。まだ優勝してないのに。

でも念願の戦車(の車体)ゲットだよ?一気に話が進んだよ!!



エミ「」ペチッ

「あいたっ!何すんのさ!?」

エミ「」ドンッ


[書類の束]


「うげっ!!」

エミ「」つ[ペン]

「…これを全部書けと?」

エミ「」コクリ

「」

630 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/03 19:20:33.55 LrExecwg0 508/670


クルップ社で書いた時よりも書類の量が多いじゃないか…。


曰く戦車をレンタルする件に加え、その戦車をドイツから日本へ送るための手続きに関する書類も含まれているとか。A4用紙1枚で済ませてちょ…。

文句を言っても始まらんので、私は履歴書のような書類をひたすら書き続けた。

一方で中須賀ちゃんは戦車に乗ったり、生徒と会話をしている。うらやましいなぁ…。



エミ「早くしてよ。日が暮れちゃうじゃない」



ちったァ手伝えよゴルァァァァァァ!!!


その後私は日が暮れるまでひたすら書類を書き続けた。なんだか反省文書かされる悪ガキの気分だった。

書類を提出したら担当者曰く責任持って"速達"で日本へ届けるとのこと。任せたよー。

631 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/03 19:22:32.33 LrExecwg0 509/670


「もう今日は右手使わんよ………」プルプル

エミ「どうやってドアの扉あけるのよ?」

「左手使う」

エミ「ご飯は?」

「中須賀ちゃん食べさせて」アーン

エミ「嫌よ」


「今からホテルまでまた電車で3時間かぁ…」ゲンナリ

エミ「あー、そのことなんだけど」

「んー?」

エミ「なんか航空科の人がホテルまで送ってくれるそうよ」

「マジで?!」パァァ

632 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/03 19:32:37.31 LrExecwg0 510/670


バリバリバリバリ

ヒュインヒュインヒュインヒュイン


航空科パイロット「キタデ」グッ


「うおーヘリコプターだ!」キラキラ

エミ「ほら、はしゃいでないで乗るわよ」


バリバリバリバリバリバリ


「すげー!早ぇぇぇぇぇ!!」キラキラ

航空科パイロット「セヤロ」グッ

エミ「わかったから。少し落ち着きなさい…」ハハハ

633 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/03 19:38:39.55 LrExecwg0 511/670



【夜 ホテル前】


航空科パイロット「マタノ」グッ

「ありがとー!」ダンケダンケ

エミ「ははは…」


恐ろしいほどサービス旺盛な学校だった。

片道3時間だったものがヘリだとたったの1時間だ。こりゃぁ良いや~。

ところでさっきのヘリ何ていう名前なんだろ?


エミ「"ティーガー"よ」


ティーガー?!

…あ、なんだ。ティーガーという名前のヘリコプターなのね。びっくりした。

にしてもパッと見た感じ2人乗りっぽいのに3人も乗れたし最近のヘリって技術が進んでるんだなー。

………。

深くは考えないようにしよう。



「…ところで無人機として出たりしないよねアレ?」

エミ「戦後のヘリなんだから出ないわよ」

634 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/03 19:39:37.91 LrExecwg0 512/670



とりあえず今日のノルマ(?)は達成できた。

大収穫と言ってもいい。なにせ、一番の課題である戦車の入手が決まったからだ。

ひとまず西住ちゃんに連絡しとこーっと。


みほ『………もしもし…』

「西住ちゃーん!ぐーでんもーげん!」

みほ『…はぁい…どうもぉ…』

「聞いてよ西住ちゃん!戦車の車体手に入ったよ!!」

みほ『…そうでふか……』

635 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/03 19:40:47.96 LrExecwg0 513/670


…ありゃ?なんか全然興味なさそうだよ?

というか何か声に元気がない…。風邪でも引いちゃったのかな?


…え?時差?日本とドイツって時差どんくらい?

ほうほう。日本のが8時間進んでるとな?

ってことは今こっちがだいたい夜の8時くらいだから………


げぇっ!朝の4時じゃん!!

西住ちゃんゴメンっ!!!

636 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/03 19:42:30.21 LrExecwg0 514/670


みほ『あのぉ…あとでも良いですかぁ…寝ますぅ……』

「う、うん。後でね…」

みほ『ぁぃ…おやうみなひゃ』

ツーツー


その日西住ちゃんは寝坊したらしい。ほんとごめん。後で遅刻ノーカンにしとくから許して。

…でもさぁ、



西住ちゃんの寝起きの声メッチャ可愛かった!!!



いでぇっ?!なっ何すんのさいきなり!!?

637 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/03 19:43:57.64 LrExecwg0 515/670


【ホテル 部屋】


エミ「あー疲れた…」

「同じく。特に右手が」

エミ「でも良かったじゃない」

「だねー。手段は違ったけど、目的は達成できた」

エミ「作るよりも借りる。この方が時間もコストも節約できる」

「うんうん。感謝してるよー中須賀ちゃん」

エミ「布団の上で寝っ転がって言われても説得力無いわよ…」ヤレヤレ

「ごろごろ~」

エミ「こっち来るな!ここは私のエリアよ!」

638 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/03 19:45:49.17 LrExecwg0 516/670



エミ「それで、次は"砲"ね」

「そだねー」

エミ「ともなればやっぱりアハト・アハトかしら」

「そういえばずっとアハアハの一点張りだけどさ、その他に高射砲って無かったの?」

エミ「あることはあるけど…」

「例えば?」

エミ「まず10.5cm Flak38(39)」

「ほほう」

エミ「これは8.8cm Flakの後継種として開発された高射砲ね」

エミ「で、もう一つは12.8cm Flak40」

エミ「こっちはドイツ最大の高射砲なんだけど、重すぎるから移動はほぼ不可能ということで、ドイツの主要都市の高射砲塔に設置したもの」

639 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/03 19:46:41.54 LrExecwg0 517/670


「12.8cmともなればさぞ強力だろうねぇ」

エミ「マウスやヤークトティーガーに搭載されてる12.8cmPak44(KwK44)が連合軍の主力戦車の正面を3,500m離れた場所から貫通できるというからね」

エミ「おそらくそれ以上に強力だと思うわよ」

「え、同じ12.8cmなのに??」

エミ「同じ12.8cmだけど、マウスやヤークトティーガーのは55口径で、Flak40は61口径だから、砲身が長い分威力も上がるのよ」

「へー。だから同じ7.5cmでもIV号とパンターとでは違うんだねぇ」

エミ「そういうこと」

「でもさ…」

エミ「んー」

「それって、E-100に乗せられないんだよね?重たすぎて」

エミ「えぇ…」

640 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/03 19:48:01.48 LrExecwg0 518/670


「…ちなみに10.5cmの方は?」

エミ「厳しいと思うわよ。何しろ8.8cm flakの倍以上の重量なんだから」

「そっかぁ…」

エミ「ただね、8.8cmでも十分よ」

「え?そうなの?」

エミ「ティーガーIIやエレファント、ヤークトパンターに搭載されている71口径8.8cm戦車砲でも」

エミ「55口径 12.8cm戦車砲と同じように3,500m以上離れた場所から連合軍の主力戦車の正面装甲を貫通出来るとされているわ」

「!」

641 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/03 19:52:09.07 LrExecwg0 519/670


エミ「ティーガーIの56口径とティーガーIIの71口径。同じ8.8cmでも188cmも砲身長が違えば威力は全然違うわね」

エミ「しかもティーガーIIは砲身長を伸ばした分、装薬も増やしている」

「へー勉強になるねぇ」シミジミ


エミ「ひとまず、明日はラインメタルへ行ってみましょう」

「そうだね。今回みたいにまた貸してもらえるかもしれないしね」

エミ「………」

「どったの?」

エミ「いや…なんでもないわ」

「?」






エミ(…悔しいけどここまでね……)

642 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/03 20:00:47.92 LrExecwg0 520/670



●Tips


そど子「ちょっと冷泉さん!今日もまた遅刻じゃないの!」

麻子「私は朝は無理だから仕方ない…」フラ...

そど子「そんなの関係ないわよ!このままじゃ本当に留年になるわよ!」

麻子「遅刻日数はリセットしたから問題ない…」ウツラウツラ

そど子「とにかく!ちゃんと早く寝て早く起きれるようにしなさい!生活習慣の乱れは風紀の乱れになるんだから!」

麻子「考えておこう……」

そど子「全く。前の試合で隊長やってたとは思えないわね。あなたも西住さんを見ならないなさい!」


みほ「うわぁぁぁぁぁ遅くなってすみませぇぇぇぇん!!」ヒーン


そど子「」

麻子「西住さんが何だってそど子?」

そど子「…もう…おしまいよ………」ヘナヘナ

麻子「お、おいしっかりしろそど子…!」

麻子(そど子がグレてもらっては困るから明日は早く起きるか…)

644 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/06 19:29:35.64 APG+ppt70 521/670



【デュッセルドルフ ラインメタル社】


昨日と同じように朝食を済ませた私達は、その足でラインメタル社のあるデュッセルドルフへ向かった。

8.8cm高射砲はクルップ社が製造しているのだが、このラインメタル社もまた8.8cm高射砲の前身でもあり、後世の高射砲のモデルとなる『8.8cm Kw Flak』をクルップ社と開発していたそうだ

なお、この頃はまだラインメタルじゃなく『エーアハルト』という社名だったらしい。

そんなラインメタルは現在は44口径の120mm砲を開発・製造し、一部を除き西側諸国の主力戦車の砲身として採用されている。

日本の90式戦車に搭載されているものもラインメタル製をライセンス生産したものだ。

…さすがに戦後の戦車砲はレギュレーション違反だから使えないけどね。

645 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/06 19:30:59.11 APG+ppt70 522/670




エミ「………」

「やっぱり"作ってもらう"は駄目だったね…」

エミ「ええ…」

「正直車体の時と同じように"作ってくれ"には期待してなかったよ」

「だからさ、また紹介してもらおうよ。高射砲を提供している学校を」



エミ「無理よ」



「え?どうしてさ?」

「車体の時みたいに借りればいいじゃん?」

エミ「それが出来たら苦労はしないわ…」

「どういうこと?」



エミ「車体と違って高射砲は砲塔用に再設計しないといけないんだから」



「!!」

646 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/06 19:32:24.25 APG+ppt70 523/670


そうだった…。

高射砲はそのまま搭載するのではなく、砲塔内に収まるようにアレンジを加えないといけないんだった…。

砲塔内に収まるように改造するだけだから、砲身や発射機構に手を加えないのでレギュレーション違反にはならない。


しかし、その改造は"借り物"では出来ないのだ…!

なぜなら、改良した時点でそれはもう借り物ではなくなってしまうのだから………。

647 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/06 19:34:21.34 APG+ppt70 524/670


エミ「残念だけど…これまでよ…」

「ちょっ!まだ他に方法あるかもしんないじゃん!」

エミ「一から作らないといけないのだから、それが無理となったらお手上げなのよ…」

「じ、じゃぁ他の会社当たってお願いすれば!」

エミ「クルップやラインメタルみたいな大手企業ですら『作れ』が無理なのに、」

エミ「それ以外のメーカーが請け負ってくれるとは思えないわ…」

「それじゃぁ…」

エミ「だから言ったじゃない…」


エミ「お手上げ…って」


「!!!」



そんな…私たちここまでやってきたのに…。

車体の件が上手く行ったから次も何とかなると思ってたのに…。

なのに…


ここまで来て手詰まりだなんてあんまりだよ………

648 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/06 19:42:21.42 APG+ppt70 525/670


エミ「角谷さんに謝らないといけないわ…」

「…えっ?」

エミ「私はこうなることを知ってたから…」

「じゃぁどうしてもっと早く言ってくれなかったのさ!!」

エミ「私もそう思うわ…あの時ハッキリと言ってやればよかったと…」

エミ「でも…言えなかった…車体が手に入ってあんなに嬉しそうにしているあなたには…」

「だけど…!」

エミ「あなたからこの話を聞いたとき、車体はまず何とかなるだろうと思った」

エミ「なぜなら、車体だけは借りることができるから」

エミ「そして実際に借りることができ、次のステップに進めた」

「…」


エミ「でも、本当の問題はここからだったの」

エミ「さっきも言った通り、借りれる車体と違って、砲身は原型のままでは搭載出来ないから手を加えないといけない」

エミ「そしてそれは"借りる"ではなく"作る"でないと実現できない」

エミ「高射砲だけじゃない。砲塔も1から作らないといけない」

エミ「そして、それらの実現が不可能となった今、私達の計画は失敗したことになるわ」


エミ「………無謀だった…最初から………」


「ッ!!!」

649 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/06 19:45:11.61 APG+ppt70 526/670


ピリリリリ

ピリリリリ


…また西住ちゃんからだ。恐らく昨夜電話したことについてだろう。

こんな事になってしまった以上どう電話に出ればいいかわからない…。


ピリリリリ

ピリリリリ


エミ「…出なよ」

「出ても何も言えやしないよ…」

サッ

「あっ!」

ピッ

650 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/06 19:46:51.39 APG+ppt70 527/670


みほ『もしもし、西住です』

エミ「みほ…」

みほ『あっ、その声はエミちゃんだね?』

みほ『明け方に戦車確保できたって電話きたけど、それって本当?夢じゃないよね?!』

エミ「えぇ。本当よ」

みほ『凄いよエミちゃん!こんなにも早く戦車を手に入れることができ』

エミ「みほ」

みほ『え、はい?』

エミ「残念だけど………」









エミ「私達の計画は失敗したわ」

651 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/06 19:48:35.99 APG+ppt70 528/670


みほ『ええっ!?ど、どういうこと?!』

エミ「最初から無理だった」

みほ『で、でも車体を手に入れたのだから…!』

エミ「今回は事情が全然違うわ」

みほ『そんな…』

エミ「あなたや角谷さんには悪いけど、今回ばかりはどうしようもない…」

みほ『………』

エミ「………ごめん」

みほ『………』


みほ『ううん、仕方ないよ。…色々お願いしちゃってこっちの方こそゴメンね………』

エミ「それじゃぁ…またね…」

みほ『うん…』

ピッ


652 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/06 19:49:22.48 APG+ppt70 529/670


【ホテルの部屋】


私達はそのまま来た道を引き返した。その間私達が一言も会話を交わすことはなかった。

私も中須賀ちゃんも虚無感に苛まれてもはや何もしようとも思わない。

大はしゃぎしていた昨日の自分がまるでピエロのように見える。

車体は借りれるのだから大してハードルは高くない。車体よりもそこへ搭載する高射砲からが最大の難関だった。

なにしろ戦車内に収容できるよう1から設計しないといけなかったのだから。

そうなると車体のように借りるのではなく、"作る"でないと実現できない。

653 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/06 19:51:08.22 APG+ppt70 530/670


そして、それはラインメタルやクルップですらノーと言うものだ。他の企業がやってくれるとは到底思えない。

更に砲身だけでなく砲塔も同じように1から設計しないといけない。

そうなると高射砲が砲塔に収まるよう入念に調整しなければならず、企業間での連携も必要不可欠だ。

課題が多すぎる…。


私たちは気がついたらホテルに着いて、気がついたらベッドへ倒れ込んで、ただただボーッとしていた。

一気に疲れが出たせいでそこから先のことは覚えていない。

わたしも中須賀ちゃんもそのまま現実から逃げるように眠りについた…。


このまま目が冷めなければいいのに…。

656 : 母さん…どうしてサンダースはIV号壊したの…  ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/12 18:29:19.99 /u2RfdXR0 531/670


ピリリリ ピリリリ ピリリリ


「…ん……」


いま何時…?

夜中の1時か…。こんな時間に誰が電話かけてくるんだよ…。

ディスプレイを見たら非通知になっている。どうせロクな電話じゃない。無視しよう



ピリリリ ピリリリ ピリリリ


エミ「…うるさいから早く出てよ…」

「…切れるのを待つよ」



ピリリリ ピリリリ ピリリリ


エミ「…全然切れないじゃない」

「しつこいなぁ…」

エミ「緊急の電話じゃないの…?」



私はしびれを切らして通話ボタンを押した。

そして電話の相手に「誰さ…」と嫌悪に満ちた声で問いかけた。

657 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/12 18:31:10.56 /u2RfdXR0 532/670


『あっ、やっと出てくれた…もしもし…!』

「いま何時だと思ってるのさ…っていうかどちらさん」

『ご、ごめんなさい…その…西住です』

「んー…西住ちゃん?非通知になってっけど?」

『じ、実は携帯電話の調子が悪くて…』

「あっそう…んで何の用?」

『あの…会長…怒ってます?』

「…怒ってないよ。眠いだけ」

『うぅ…やっぱり怒ってる…』

「…それで、なんかあったの?」

『はい。話によると戦車が見つかったとのことで…』

「戦車は見つかったよ。…だけど、期待しないで」

『え…』

「私が馬鹿だった。車体が見つかっただけで浮かれてた」




眠いけど、面倒なんだけど、それでも西住ちゃんには伝えておかないとダメだから、私は今回の計画が失敗したことを伝えた。

658 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/12 18:32:40.91 /u2RfdXR0 533/670


「…というわけ」

『…』

『えーと…、車体は借りれたので大丈夫だったけれど、砲は砲塔に収めるために加工しないといけないから、借りるのではなく作らないと不可能…と』

『でも、クルップ社もラインメタル社もそれがダメな以上、頼るアテが無くて手詰まり…ということですよね?』

「そのとおりだよ。…私が馬鹿だった」

『…』

「車体を確保する以前から前途多難だってのはわかってた」

「んだけど、やらないことにはどうにもなんないから奔走してみたよ」

「けどさ、やっぱりダメなもんはダメなんだねぇ」

「…ごめんよ」

『あの…その件なんですけど…』

「…何かな?」




『ドイツではなく日本の企業に依頼してみてはいかがでしょう?』

659 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/12 18:34:21.78 /u2RfdXR0 534/670


「………は?」

『あの…ですから、日本の企業に製作を依頼してみてはと…』

「西住ちゃん、今はそういう冗談あまり聞きたくないんだけどさ?」

「ドイツの戦車を作るためにドイツに来て、どーして日本の企業が出てくんの?」

「ふざけてんなら怒るよ?」

『いえ、そういうつもりでは…』

「悪いねぇ西住ちゃん。今は眠いし気が立ってるから冗談を流す余裕は無いんだよ」

『実を言うと…』


『砲や砲塔を作れる会社に幾つか心当たりがありまして』


「…へぇ」

『それはですね…』


西住ちゃんはこう言いたいのだ。

"ドイツの会社がダメなら、日本の会社を使え" と。

そして、西住ちゃんにはそれらの会社に心当たりがあると。

けどさ…、

660 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/12 18:36:27.10 /u2RfdXR0 535/670


『まず…』

「ちょっと待って、メモするから。………うん、良いよ」

『まずシラヌイ重工という会社があります』

「へぇ。どんな会社?」

『ここでは戦車で使われる均質圧延装甲板を作っています。なので砲塔はここで手配しましょう』

「ずいぶん簡単に言ってくれるねぇ…」

『つぎにツクバ製鋼所という会社。高射砲の砲身はここにお願いしてみて下さい』

「(無視かよ…)えーと、次がツクバ製鋼所と」

「ツクバって茨城県の筑波だよね?そんな会社あったかなぁ…」

『10式戦車の砲身を作っている会社といえば納得いただけるかと思います』

「へー。そりゃすごいね」



※ここで紹介する企業は実在しない架空のものです。

661 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/12 18:38:12.04 /u2RfdXR0 536/670


『次にヒトエ技研。高射砲用の砲弾…徹甲弾と対空用の信管付き榴弾、及びそれらの装薬はこの会社なら出来ます』

「ヒトエ技研ね」

『また、高射砲の砲身以外のパーツ。駐退機および復座機、尾栓、砲架などですね。これらはシマキ金属へ』

「うん」

『そして最後になりますが、これらの砲から砲塔まで一連の設計についてはチトセ設計にお願いしてください』

「んーわかった」

『こちらからは以上です』


「あのさ西住ちゃん」

『何でしょう?』

「そーやって企業名を並べてくれるのは良いんだけどね」


「お金も時間もかかる事をタダでやってくれる保証はどこにあんの?」

662 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/12 18:39:53.19 /u2RfdXR0 537/670


『えっ…』

「ウチらはさぁ、現地に行ってダメ元でお願いしてみたよ?」

「だけど結局門前払いだった」

「現地で実際に作ってる会社がダメだったモノをどうして無関係な日本の会社がタダで引き受けてくれるのさ?」

「その辺を私にわかるよう説明して欲しいねぇ」

『…』

「西住ちゃんさ、言うのは誰にでも出来る。んだけど実行するのはまた別の話よ?」

「悪いけどさ、これは無



『可能性がある限り進まないとダメなんです!!』


663 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/12 18:41:23.10 /u2RfdXR0 538/670


「…」

『会長は一生懸命になって車体を確保しました。これは大きすぎる一歩なんです!』

『そしてこの一歩を足掛かりに、とにかく私達はひたすら走るしかないんです!』

『走るのを止めたらそれこそ全部おしまいなんです!血を吐くような想いをしてこなしてきた事も全部無駄になってしまうんです…!』

『だから…!!』

「………」



………そうだねぇ。

西住ちゃん、いっつもウチらの前に立ってピンチを救ってくれたよね。

私がこんなじゃ頑張ってる西住ちゃんや皆にも申し訳ないねぇ。

せっかくここまで来たんだし、1%でも可能性があるんならやってみよう。

664 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/12 18:43:13.11 /u2RfdXR0 539/670


『あ、ありがとうございます!』

「それで、他にウチらの方で何か出来ることはあるかな?」

『あ、それなのですが』

「うんうん」

『もう一度、高射砲や砲塔について情報が欲しいので、ドイツの会社の方へ行って欲しいのです』

「ん?また行くの?」

『ええ。今度は"資料"を貰って来て下さい』

「資料?どんなの?」

『ざっくりいうと、砲塔や高射砲の設計図です』

『砲塔については装甲厚、材質、砲や搭乗員を載せるために必要な寸法』

『そして高射砲を上に向けるための仕組みもお願いします』

「なるほどね」

665 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/12 18:45:12.34 /u2RfdXR0 540/670


『同じように高射砲についても、砲身からその発射機構、そして砲を支える砲架などすべての設計図があると良いです』

『もちろん使用する弾薬の種類、寸法、火薬の種類についても』

『…とにかく読めば誰でも対空戦車が作れるくらい詳しいモノが良いです!』

「あはは。誰でも作れる資料があるなら私が高射砲つくるよ」

『あ…そうですよね…えへへ』

「まったく西住ちゃんらしいねぇ~」

『でも、資料は詳しいに越したことはありませんのでお願い致します』

「なるほどね~。わかった、やってみるよ」

『ありがとうございます!』


やっぱり西住ちゃんだよ。

私が諦めかけた時に助けてくれる。

絶対無理だと思ってたのに、また可能性を見出してくれる。

西住ちゃんが頑張ってる以上、私が何もしないわけにはいかないよね。


エミ「………」

666 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/12 18:47:18.58 /u2RfdXR0 541/670


エミ「ちょっと代わって」

「ん、いいよ。ほい」


エミ「もしもし」

『ふぇっ!?』

エミ「どうしたのよそんなに驚いて…」

『あ、あの…えっと…』

エミ「ちょっと…みほ?」

『ご、ごめんなさい!また次の機会にっ!』プツッ


ツー... ツー... ツー...


エミ「………」

「どったの?」










エミ「今の電話、みほじゃなかった」

「えっ…」

667 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/12 18:48:33.59 /u2RfdXR0 542/670


「い、いや、声も話し方も西住ちゃんだったよ!?」

エミ「確かにソックリだった」

エミ「でも、私が出た瞬間、相手はなぜか取り乱した」

エミ「本物のみほだったら私がいるって知ってるからあんなに驚いたりはしない」

エミ「あの反応…"知らない人"を相手にした時のものよ」

「!! …じゃぁ今の相手は誰なのさ!?」

エミ「私が知るわけないじゃない…」

「…」

エミ「…でも、さっきの話、やってみる価値はありそうよ」

「そうだね。資料だけなら貰えると思う」

エミ「もう一度、まずはラインメタルへ行きましょう」



電話に出たのは確かに西住ちゃんの声だった。

でも、違うとなれば一体誰なんだ…?


そして何故私たちに情報を提供した!?

668 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/12 18:49:24.26 /u2RfdXR0 543/670



【翌朝 ラインメタル社】


私達は再びラインメタルへ訪れた。

担当者からは『また君らか。もう話すことはない。帰ってくれ』と言われた。

しかし、事情を説明するとなんとか話を聞いてくれた。表情からはYESかNOかはわからない。

ただ、設計図とはいえ、扱うものが大砲、すなわち兵器なわけだ。簡単には譲っては貰えないだろう。

そして、返ってきたのは…








大量の書類だ。

669 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/12 18:50:46.80 /u2RfdXR0 544/670


言わなくてもわかる。今までと同じようにこの書類の山を作成して提出すれば良いだけのことだ。

右手が少し疲れるだけで私が欲しいものが手に入る。こんなのお安い御用だよ。


そうしてまた1時間ほどかけて書類の山を書き終えた。

書類を受け取った担当者はそのまま事務所へ行き、10分ほどして戻ってきた。

戻ってきた担当者から私はUSBメモリを1つ受け取った。この中に目当てのモノが入っている。

念のためパソコンを借りてその場で中身をチェックした。

砲身、砲架、砲弾…高射砲の情報が詳しく記載された"設計図"だ。

これだけの情報があれば高射砲は再現することは可能だろう。

670 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/12 19:12:19.52 /u2RfdXR0 545/670

エミ「…Flak41」

「ん?どうしたの」

エミ「私達がイメージするアハトアハトとは少し違うモノが来たわね」

「えっ?」

エミ「"アハトアハト"、"8.8cm 高射砲"といえば大体がクルップ社の『8.8cm Flak18/36/37』を想像するはず」

エミ「最初の型である『Flak18』」

エミ「発射方向の切り替えを電源式にして砲身の交換も容易にした『Flak36』」

エミ「観測点から砲へ射撃諸元を送るためのアナログコンピュータを搭載した『Flak37』」

エミ「だいたいこの3つ」

「ふむふむ」


エミ「でも、この『Flak41』はクルップ社の8.8cmのバリエーションとは別で、従来の8.8cm Flakの後継種としてラインメタルが開発していた高射砲なの」

「ほほう?」

エミ「56口径のFlak18/36.37と違って砲弾とかの互換性は無いけれど、より強力な砲弾を使う74口径という長砲身の高射砲よ」

「74口径ってことは71口径のティーガーIIよりも砲身が長いわけだね」

エミ「ええ。…初期不良や生産遅延が発生してあまり日の目を見なかったけど、このFlak41は、」


エミ「12.8cm Flak40に匹敵する最強クラスの高射砲よ…!」


「!」

エミ「これなら無人機はもちろん、戦車相手でも十分よ」

「良いねぇ良いねぇ!」

エミ(よくよく考えたらクルップじゃなくラインメタルだから自社のFlak41を出すのは当然ね)

671 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/12 19:18:29.02 /u2RfdXR0 546/670


高射砲を作るための設計図を無事に入手することが出来た。


そしてもう一つ『砲塔』の設計図だが、こちらも同じくラインメタルの担当者に相談したところ、『試作レベル』とのことだが1つ資料を提供してくれた。

それはかつてラインメタルが開発を行っていた『ゲラート554』だった。

前に話したけど、ゲラート554はパンターをベースにした対空戦車『ケーリアン』の砲塔だ。

搭載車両も搭載砲も全く違うが、このゲラート554をベースにすれば砲身を上空に向ける砲塔のヒントは得られるはず。

試作レベルと担当者は言うが、設計図は砲塔の構造を詳しく書き記してあり、資材と設備さえあればこの資料をもとにケーリアンの砲塔は十分再現できるであろう。


Flak41とゲラート554。

どちらもラインメタルが開発した機材だ。

初期不良や開発の遅れなど日の目を見なかったこれら2つの機材。

もし私達がこれらを使って成果を挙げられたら当時のエンジニアたちは喜ぶだろうか。


ともあれ、これで高射砲と砲身の資料が手に入った。

あとはこれを西住ちゃん…のソックリさんに教えてもらった会社に提供すればいい。


…ただ、どうやって、誰に依頼すればいいだろうか。

昨夜かかってきた電話は非通知だったから折り返しができない。

なのでひとまず、ここまでの進展も含め、理事長に電話で相談してみるか。

672 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/12 19:19:45.78 /u2RfdXR0 547/670


「…という出来事がありました」

児玉『ふむ…』

「電話の相手が誰かはわかりません」

「ですが、その人の指示に従い、砲塔と高射砲の製作に必要であろう設計図を入手しました」

「可能性がある限りは挑戦しようと思います」

児玉『うん』

「…」

児玉『そうだねぇ………』

「…」













児玉『お疲れ様』

673 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/12 19:21:32.97 /u2RfdXR0 548/670


「えっ………?」

児玉『お疲れ様。と言ったのだよ』

「あの、それはどういう意味でしょうか…?」

児玉『あとはその資料を私のところへ転送したら君の仕事は終わりだよ』

「それって…もしかして…!」


児玉『うむ。君が言った会社には既に話がついている。あとは資料だけだよ』


「!!!」

児玉『よく頑張ったね。見事だ』

「あ…あ…」


「ありがとうございます!!!!」



理事長との電話を終えたあと、すぐにメールで資料を送信した。

暫くしたら連盟いや、理事長から

『受理しました。お疲れ様。気をつけて帰国してください』

という返事が帰ってきた。


これでようやく私たちの役目は終わった………。

674 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/12 19:22:41.33 /u2RfdXR0 549/670


「………」

エミ「泣いてるの?」

「……んなわけないじゃん」

エミ「はいはい」


エミ「………まぁ」

「ん」

エミ「悪くなかったわよ。今回の旅」

「…」


「中須賀ちゃんには色々お世話になったね」

「ありがと」

エミ「勘違いしないでよ?みほがどーーーしてもって電話越しに土下座するから来てやっただけなんだから」

「まぁそういう事にしておいてあげるよ」

エミ「ちょっと、それどういうことよ!」


ピリリリ ピリリリ

675 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/12 19:24:59.33 /u2RfdXR0 550/670


エミ「ほら、電話鳴ってるわよ」

「わかってるよ。…おっ、今度は西住ちゃんだ」

エミ「ちゃんと"本人か"確認してよ?」

「あいよ」

ピッ

みほ『も、もしもし…西住です…?』

「おー西住ちゃん!ぐーでんもーげん!」

みほ『ふぇっ?会長…?』

「あー、ちょっと良い?」

みほ『え、あ、はい?』

「さて問題です。私の横にいる小生意気なツインテの女の子の名前はなーーーんだ?」

エミ「小生意気って何よっ!!」

みほ『え…中須賀エミちゃんですよね?』

「ピンポンピンポ~ン!んじゃ次の問題」

676 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/12 19:26:24.20 /u2RfdXR0 551/670


「河嶋が至近距離で外した時に小山は何て言ったでしょ~?」

みほ『ええっ?!えーと………も、桃ちゃんそこで外すぅ?!』

「おー正解!今の声録音したから後でかぁしまに聴かせてやろう」ニシシ

みほ『だ、ダメですっ!!』

「え~、どうしよっかな~」

みほ『あの…そんなことよりも』

「あはは。ごめんごめん」

みほ『戦車は…やっぱり…?』

「うん。私の仕事は終わったよ」

みほ『そうですか………』


「だから次の試合、ものすごい対空戦車が来るから!」

677 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/12 19:27:53.59 /u2RfdXR0 552/670


みほ『ふぇっ!?』

「いやぁ~頑張った甲斐があったねぇ」

みほ『ほ、本当ですか?!』

「ミンナニハナイショダヨー」

みほ『え…わかりました…?』

「これでウチらの役目は終わったから数日後にはソッチ戻るよ」

みほ『は、はい!お疲れ様です。そしてありがとうございます!』

「どーいたしまして~」

エミ「ほとんどやったの私だけどね…」ヤレヤレ


「それで、そっちは何か変わった事とか無い?」

みほ『特にこれといったことは無いはずです。ただ、』

みほ『決勝戦の相手は黒森峰になりました』

「んーそっか。楽しみだねぇ」

みほ「はい…!」

「わかった。お土産楽しみにしといてよー」

みほ「ええ。楽しみにしていますよ」エヘヘ

「あいよー。そいじゃーねー」

ピッ

678 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/12 19:29:04.52 /u2RfdXR0 553/670


エミ「…」

「…」

エミ「…?」

「…お土産、干し芋でもいいよね?」

エミ「私がみほだったら撃つね」

「えぇ…」


…さて、私たちの役目は終わった。


思い返せば西住流家元から1つの封筒を貰ったことがきっかけでアチコチ走り回ってた。

最初は無理だとわかっていながらも、やらないことには始まらないと強引に突破口をこじ開けた。

車体の製作が無理なら借りればいい。

借りるのが無理なら設計図を提供してもらえばいい。

道は一つじゃない。

よくよく考えれば今まで何度も無理だと思った道を何とか通ってきた。

今に始まったことじゃないんだよね。

679 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/12 19:31:08.81 /u2RfdXR0 554/670


「そういえば中須賀ちゃんさー」

エミ「何かしら?」

「帰国したあとはどうすんのー?」

エミ「そうね…特にコレといった予定はないけれど…また戦車の練習かな」

「そっかー」

エミ「角谷さん達は次が決勝なんでしょ?」

「まぁねー」

エミ「相手は結局どっちなの?」

「さっき西住ちゃんから黒森峰が勝ったってさー」

エミ「そう………」

「…」


「あ、そうだ中須賀ちゃん」

エミ「なに?」

「帰国したらさ、ウチに来ない?」

エミ「"ウチ"?」

「そそ。大洗女子学園」

エミ「別にいいけど…?」

「おっけー」


翌朝私達は日本行きの飛行機に乗り、再び12時間の空の旅を満喫…はしてないか。

いやぁもう疲れたよ。クッタクタ。あちこち走り回ったせいで旅客機のシートが快適すぎるほどだよ。

私も中須賀ちゃんも爆睡してて気がついたら空港に到着してた。

680 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/12 19:33:05.79 /u2RfdXR0 555/670


【大洗女子学園】


空が少しずつ茜色になる頃に我が学園いや楽園に到着した。

ただいま大洗女子学園。愛してる大洗女子学園。


「いやぁ~懐かしいねぇ~大洗女子学園」シミジミ

エミ「ほんの数日前までいたじゃない」


「かかか会長ぉぉぉぉぉぉぉおっぉぉぉぉぉお!!!」

「たっだいまぁ~♪」

柚子「お帰りなさい会長」

「ごくろーさん。私がいない間大丈夫だった?」

柚子「それが…」


学校に入って早々河嶋が号泣しながら抱きついてきた。こらこら鼻水がつくじゃないか。

緊急の電話が無かったから特に何もなかったとは思うが、小山の様子がなにかおかしい。

なんか、嫌な予感がするなぁ…

681 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/12 19:34:39.74 /u2RfdXR0 556/670


【戦車倉庫前】


「やぁー久しぶりだねみんな」

ナカジマ「会長…帰ってたんですね…」ハァ...

典子「…今頃ノコノコ帰ってくるなんて、随分と根性ありますね」ジトッ

「え…?」

「西住隊長たちの戦車が無くてピンチだというのに…今の今までどこに行ってたんですか…!」

「え、え…?!」

カエサル「見損なったぞ会長!これが生徒会のやることなのか!!!」

「」

ワーワー

ガヤガヤ


帰ってきて早々、私は戦車道メンバーから非難轟々罵声の嵐を浴びた。

日頃から顰蹙を買うような事はしてたし、こういった袋叩きにあう覚悟はあったけど…

流石に今回ばかりは何か様子がおかしい。

682 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/12 19:39:45.15 /u2RfdXR0 557/670


みほ「あっ会長、帰ってたのですね!」

「あ、うん…。ただいまだよ西住ちゃん…」

みほ「?」

「あのさ、私に向けられるこの冷たい視線の理由は一体…」

みほ「あれ?会長まだ説明してなかったんですか?」

「へ?」


みほ「戦車探すためドイツに行ってたって」


「…は?」

みほ「いえ、会長が『ミンナニハナイショダヨ』というので…」

「」



アホかああああああああああああああ!!!


私が『ミンナニハナイショダヨ』って言ったのは、ドイツで迷走しまくってる事についてだよ!

戦車探しに行ってること自体を内緒にしろなんて一言も言ってねーし!!!


みほ「うえええええ?!」


こっちがうえええええ?!だよ西住ちゃんっ!!

おかげであたしゃ完全に悪役じゃないか!文科省の役人並にクズだよ今の私!!

つーか河嶋も小山もどーして何も説明しなかったのさ!!


河嶋「知りませんでした…」

小山「出張に行くとしか聞いてなかったので…」オロオロ


ぐぬ…。

とにかく皆に事情を説明して西住ちゃん!お願いだから!

683 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/12 19:43:30.89 /u2RfdXR0 558/670


【数分後】


ナカジマ「なーんだ。そういう事だったんですね」ハハハ

典子「さすが会長です!根性ハンパないですっ!!」

「も、もちろん私は信じてました…!」アセアセ

カエサル「水臭いぞ会長。そういう事なら先に言えば良いものを」


やれやれ。ボロクソに言ってたクセによく言うよあんたら。

でもとりあえず誤解はとけたみたいだから安心したよ。

…これからは行き先と目的はちゃんと伝えておこう



エミ「あのさ、こっちがやれやれなんだけど」


「あれ?」

エミ「あれ?じゃないわよ!いつまで待たせんのよ!!」


すっかり忘れてたわ。中須賀ちゃんがいること。

そうだね。んじゃ、ちょっと生徒会室行こっか。

684 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/12 19:45:28.13 /u2RfdXR0 559/670



【会長室】


小山「どうぞ」コトン

エミ「あ、ありがとう…ございます」

「かーしまぁ。例の件はちゃんとやっといたよね?」

「はっ。問題ありません」

「よしよし」

エミ「それで、話って?」

「うん。そうだね率直に言うとね」






「中須賀ちゃんには大洗に短期転校してもらいたいんだよね」






エミ「はぁ!?」

685 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/12 19:48:47.67 /u2RfdXR0 560/670


そう。対空戦車を探す傍ら進めていた、もう一つの私の仕事。

それは中須賀ちゃんを大洗女子に短期間転校させ、戦力となってもらうこと。

そのため私は戦車道連盟に相談したり、河嶋らに水面下で交渉を任せてた。

彼女を大洗女子へ転校させる理由はさっきも言ったように対黒森峰戦における戦力の増強。

そしてもう一つは



作った対空戦車は彼女にも乗ってほしいからだ。



ハッキリ言うよ。

今回の対空戦車は全て彼女による功績だ。

大まかな設計、車体の選択、各社への交渉…。何から何まで中須賀ちゃんがいたから成功したのだ。

私は横にいたが戦車の知識もない。ドイツ語も喋れない。正直何一つ役に立たなかった。

だから多大なる功績を残してくれた彼女に対し『戦車完成したねバンザイ。それじゃバイバイ』というのは無礼すぎる。

中須賀ちゃんが生み出した戦車だからこそ、中須賀ちゃんに乗って欲しいのだ。

686 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/12 19:57:07.36 /u2RfdXR0 561/670


エミ「………」

「もちろん、強制じゃないよ。中須賀ちゃん次第ね」

エミ「………」


エミ「わかったわ」


「!」

エミ「…恐らく、その対空戦車は6人乗りになるでしょうから」

エミ「私が装填手の一人をやればちょうど6人」

「やってくれるかな。中須賀ちゃん」

エミ「ええ」

「交渉成立だねぃ♪」



中須賀ちゃんが快諾してくれたので、さっそく転校手続きを行った。

書類は2~3枚程度なので私が書いたアレに比べれば随分楽だ。

そして彼女に大洗女子の制服を渡した。うんうん。似合ってるよ。

ようこそ大洗女子学園へ。



エミ「………」

小山「中須賀さん?どうしたの?」

エミ「えっ?あぁ…何でもないです」



エミ(………私はこの時が来るのを待っていた?)

687 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/12 20:09:48.47 /u2RfdXR0 562/670


【再び戦車倉庫】


「というわけで、中須賀ちゃんが短期転校することになったから」

一同「おおおおおおおおおおおお!」

小山「ず、ずいぶんザックリですね…」ハハ...



沙織「久しぶりだねエミりんっ!」

エミ「え、えぇ…(エミりん…)」

みほ「またエミちゃんと一緒に戦車に乗れるなんて嬉しいよ!」

エミ「そうね。何年ぶりかしら」

みほ「IV号に乗ってお姉ちゃんたち相手に戦った時以来かな?」

エミ「時間が立つのは早いわね…」シンミリ

優花里「ぅぅ…西住殿と幼馴染だなんて中須賀殿が羨ましいです…」


沙織「ねぇねぇエミりん、昔のみぽりんってどんな感じだったの?」

麻子「こら。人の過去を詮索するな」

エミ「そうね…今以上にヤンチャで」

みほ「ふぇっ?!」

沙織「ほぉほぉ」キラキラ

エミ「戦車の中で大きな音たててオナラしたり」

「え…」チラッ

沙織「や、やだもぉ…」チラッ

みほ「ち、ちょっとエミちゃん!!!/////」カァァァ

エミ「この間のお返しよ」フフン



あんこうチームはもちろん、皆の反応は良好だ。

歴女チームは歴史上の名コンビに例え、

バレー部は即戦力だと言って勧誘するし、

1年生は勝手に2人をカップリングするという三者三様の反応だ。

あとは中須賀ちゃんが個性的な大洗女子の皆と打ち解けられるかだね。

でも、とりあえず…


これで私の役目は終わった。


あとは西住ちゃんにバトンタッチしよう。

688 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/12 20:13:53.96 /u2RfdXR0 563/670


●Tips


決勝戦の3日前に私達の対空戦車がやってきた。

E-100の車体にマウスのような巨大な砲塔が載っている。

車体前面はマウスと同じ200mm、後面は150mm。

側面は120mmに加え、着脱式の追加装甲が付いている。

砲塔も上面を除いて200mmという極めて堅牢な作りになっている。


そして一番驚いたのは、その砲塔に8.8cm Flak41が2つ搭載されていたことだ。


搭載する砲は1つだけと思っていた。ところが設計が見直され、砲の数を増やしたというのだ。

中須賀ちゃんに教えてもらったようにFlak41は大戦中で最強クラスの高射砲の1つだ。

それは無人機はもちろん、戦車を相手にしても十二分な威力と言っていた。

マウスに匹敵する装甲に、ティーガーIIと同等あるいはそれ以上の砲が2つ。

まさしく最強クラスの対空戦車が大洗女子学園に届いた。


当然その戦車を見た者全員があまりのインパクトに唖然としている。

戦車に詳しい秋山ちゃんやエルヴィンちゃんはもちろん、西住ちゃんもだ。

今回の対空戦車開発に携わった中須賀ちゃんですら開いた口が塞がらないのだ。


なお、この対空戦車は設計から製作まで連盟関係者が立ち会いのもと進められたとのこと。

つまりレギュレーションに関する心配は皆無だ。



E-100 対空戦車。

こいつが大戦中に完成していたら一体どうなっていただろうか…。

689 : ◆MY38Kbh4q6 - 2017/03/12 20:49:27.66 /u2RfdXR0 564/670


― 西住さんのお姉さんのチームの相手が 私の姉のチームだったんだから

― あのとき撃った戦車の車長は あなたですよね


エミ(私はこの時が来るのを待っていた)

エミ(姉さんを打ち負かした相手…西住まほともう一度戦えるから)



― あんなこと言われたら……絶対勝たせてあげないと

― だから…ッ もっかい勝負しなさいよ……っ!!!

― 負けて悔しいって思うことはあっても 寂しいと思うことなかったのに


エミ(私はこの時が来るのを待っていた)

エミ(ベルウォールの皆が勝てなかった相手…黒森峰ともう一度戦えるから)



― お互い自分の"戦車道"を見つけたそのときに…また会お!

― みほ 約束を果たしましょう

― 約束が果たせてよかった また必ずやりましょ

― うん…また"約束"だね


エミ(私はこの時が来るのを待っていた)



エミ(私に戦車道を教えてくれたみほとの約束、もう一度果たせるから)




◆最終章 2 リトルアーミー






【ガルパン】西住みほ「IV号対空戦車?」【4】

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