1 : 以下、名... - 2017/03/24 04:00:01.84 kAxwF09OO 1/31

提督は女性
ほっぽちゃんは関係なし
原田美世かわいい好き

元スレ
【艦これ】北方のとある鎮守府の話
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1490295601/

2 : 以下、名... - 2017/03/24 04:01:19.96 kAxwF09OO 2/31

【???】

・・・

??「さて、君がここに呼ばれた理由が、分かるかね?」

・・・

??「・・・そうか。いや、それも致し方の無いことだろう。なにせ、急なことだからね。我々としても、この件に関してはあまり本意ではないのだよ。解ってくれたまえ」

・・・

??「ああ、まあ、そう言わないでくれ。今から説明させてもらう」

・・・

??「そう難しい話ではないさ。君にはね、“提督”になってもらいたいのだよ」

・・・

??「うん?提督とはなにか?ははは、いや、失礼した。そうだった。まずはそこから説明すべきだったか」

・・・

??「いやなに、悪い話ではないと思うのだがね。いいかい、君にやってもらいたいこと。それを今から説明する。よく聞いてくれたまえよ、“新米提督”君」

・・・

・・・

・・・

??「・・・と、いう訳だ。話は以上になるが、なにか質問はあるかね?」

・・・

??「・・・結構。では、早速行きたまえ。願わくば、君と鎮守府の未来に幸多からん事を」

・・・

??「・・・ああ。それから、君のために我々からささやかながら“プレゼント”も用意してある。好きに使うといい。どうせ、他では扱いに困っていた物だからね。君が上手く活かすなら、それで良し、そうでなければ・・・いっそ鉄屑にでも変えてしまうといい」

・・・

??「ではな。健闘を祈っているよ」

3 : 以下、名... - 2017/03/24 04:02:05.14 kAxwF09OO 3/31

【海沿いの道路】

??「はぁ、はぁ、はあ・・・」

??「くっそぉ・・・あのヒゲオヤジめ・・・なにが港から徒歩2時間よ、彼此5時間以上歩いてるわ・・・」

??「うぅ・・・足パンパンだよぉ・・・」

??「んぅ・・・海風吹いててすっごい寒いし、滅茶苦茶遠いし、日も暮れてきたし・・・もう、こんなことなら引き受けるんじゃなかった・・・ま、そんな訳にもいかないんだけど・・・」

??「えーと、地図地図っと・・・んー、あそこに灯台が見えるから・・・今ここで、あっちの方向にしばらく歩いて、右に曲がった先・・・」

??「・・・そこからさらに3キロ歩いて、十字路を左折、2キロ歩いて、さらにさらに・・・」

??「・・・」ギリギリ

??「あーんもう!なんで私提督なのに迎えの一つもないの!?こんなのおかしいよー!!!」

??「あんのジジイどもめぇ・・・今度会ったらタダじゃおかないんだから・・・」

ビュー

??「うわっさむっ!」

??「・・・はぁ・・・」ガタガタ

??「・・・」トボトボ

4 : 以下、名... - 2017/03/24 04:02:53.07 kAxwF09OO 4/31

2時間後

【鎮守府・玄関】

??「・・・」

??「・・・」チラ

??「ふぅ・・・」

??(到着予定時刻から、もう6時間が経ってる)

??(・・・やっぱり、また・・・)

??(・・・)

??「・・・はぁ・・・」

ドン!

??「!」ビクッ

ガチャガチャガチャ!ドンドンドン!

??「あ、あ、開けてー・・・だ、誰かいるなら、開けてー・・・お願いしますー・・・」

??「は、はい。ただいま・・・」ガタッ

タタタッ

??「は、はやく・・・」

??「すぐに開けます・・・」

ガチャ ガラッ

??「おぉ、ありがとお・・・うー、寒い・・・」

??「中へどうぞ。あまり暖かいとは言えないかもしれませんけれど」

??「いやいやお構いなく・・・ふへぇ・・・久々の屋内だあ・・・生き返るなあ・・・」ホクホク

??「それで・・・えっ、と・・・」

??「んー・・・?」

??「あなたは、一体・・・?」

??「・・・あっ。忘れてた」

??「はぁ・・・」

??「私は本日よりこの鎮守府に着任した提督です!よろしくお願いします!」

??「・・・」

提督「・・・あれ?」

??「あなたが・・・提督、ですか?」

提督「あれ、そんなに驚くことなの?」

??「あっ。すみません!ただ、若い女性の方でしたから、てっきり一般の方かと思ってしまいました。申し訳ございません!」

提督「あはは。いいよいいよー。なんでも女の提督って殆どいないらしいし、それに、こんなドレスみたいなの着てる人、提督にはいないもんね?みんなかっこいい、軍服?だっけ?それを着るものだもんね」

??「え、ええ・・・そうですね」

提督「それで、あなたは?」

??「あっ、ご挨拶が遅れてしまい申し訳ございません。私は、この鎮守府に先日配属されました、艦娘の戦艦、大和と申します」

提督「そうなんだ。よろしくね、大和さん」

大和「・・・?」

提督「・・・ん?どうかしたの?」

大和「あっ、いえっ。えっと、その、こちらこそ宜しくお願い致します!」

大和(・・・?)

5 : 以下、名... - 2017/03/24 04:03:56.60 kAxwF09OO 5/31

【鎮守府・執務室】

提督「へー。ここで仕事するんだ」

大和「はい。基本的に提督にはこちらで事務作業や艦隊指揮を行っていただきます」

提督「なるほどね」

大和「・・・」

提督「ん?どうしたの、大和さん?そんな不思議そうにして」

大和「あっ、いえ。大したことではないんですけれど・・・」

提督「なにか気になることがあれば、遠慮なく言ってね。まあ、来たばっかりの私には、言いにくいかもしれないけど・・・」

大和「いえ、そんなことは・・・でも・・・そうですね。では、一つお聞きしてもよろしいでしょうか?」

提督「どんとこい」

大和「提督は提督としての業務の経験はおありですか?」

提督「うーん・・・ないなあ」

大和「・・・では、鎮守府へ赴任されたことは・・・?」

提督「ないよ」

大和「・・・海軍に関するお仕事の経験は」

提督「全く」

大和「・・・納得しました」

提督「でも、大和さんが鎮守府案内してくれて、ついでに詳しく説明までしてくれたから、おかげで大体分かったよ。ありがとう!」

大和「ええと、はい。どういたしまして・・・」

大和(・・・少し大きな平家程度の大きさの鎮守府を見て違和感を感じなかった原因は分かったわ)

大和(・・・それに、私のことも・・・)

大和(でも、大本営はどうしてこの方を・・・まあ、この鎮守府は深海棲艦の脅威も少ないし・・・人材不足は思った以上に深刻なのかしら・・・)

提督「ねえねえ、大和さん」

大和「あっ、はい。なんでしょうか?」

提督「ここの鎮守府には、大和さん以外にどれくらいの艦娘がいるの?」

大和「・・・えっ?」

提督「・・・んん?」

大和「・・・提督。ご存知ないのですか?」

提督「なんのこと?」

大和「・・・この国の最北端に位置し、深海棲艦との戦いから最も離れた地にある、この鎮守府に所属している艦娘は・・・」

提督「うんうん」

大和「・・・私一人です」

提督「へぇ、大和さん一人」

大和「はい」

提督「なるほどねえ」

大和「はい」

提督「・・・」

大和「・・・」

提督「・・・え?」

6 : 以下、名... - 2017/03/24 04:05:15.53 kAxwF09OO 6/31

提督「大和さん、だけ?」

大和「はい。ですので、現状、私たちにできることは殆どありません」

提督「そんな話聞いてないよ!?」

大和「私も驚きました。てっきりご存知のものとばかり思っていましたから」

提督「いやいやいや知っててもどうしようもないよ!?ていうか、どうするのこれ?大和さん一人って・・・大本営に今から連絡して艦娘の手配をするように言ってやらないと・・・!」

ドタドタ

大和(難しいと思うけれど・・・)

7 : 以下、名... - 2017/03/24 04:06:00.07 kAxwF09OO 7/31

ガチャン!

提督「あんのジジイども~!」

大和「・・・やはり、厳しいですか?」

提督「我々も今人員不足で手一杯だ、幸い君の鎮守府は深海棲艦もそうそう現れないだろうし、強力な戦艦が一隻いれば十分だろう、だってさ!ほんとに大丈夫なの!?」

大和「・・・どうでしょう。私もここの鎮守府に来てまだ数日なので、敵の動向については詳しくは分かりません。資料によるとここから遠方の海沿いが敵の古い補給路になっているようです。ただ、この鎮守府が直接大きな被害を受けたという記録はないので・・・当面は問題ないと考えて良いと思われます」

提督「えぇ・・・ほんとに大丈夫なのぉ・・・」

大和「ご安心ください。提督の命は、この私が命に代えてもお守り致します」

提督「いや、そういう問題じゃ・・・まあ、文句言ってもしょうがないか。とりあえず、今日はもう遅いし、明日になってから色々考えよう」

大和「そうですね。それが良いと思います」

提督「そんじゃあ、さっさと風呂に入って寝ますか」

大和「お風呂はあちらから外に出たところにあります。提督からお先にどうぞ、お使いください」

提督「おー悪いねえ。そんじゃ、お先に失礼しますよっと・・・」

8 : 以下、名... - 2017/03/24 04:06:43.03 kAxwF09OO 8/31


【鎮守府・風呂場】

ピュー

提督「・・・」ガタガタ

ドラム缶「」ドーン

提督「えぇ・・・」

大和「提督。薪をお持ちしました・・・提督?」

提督「・・・ううん。なんでもないよ。薪、ありがとね」

大和「あ、はい。マッチはこちらになります。着替えとタオルをお持ちしますので、先にお湯を沸かして入っていてください」

提督「何から何までごめんねー」

大和「いえ、当然のことですから。では」

タタタッ

提督「・・・」

提督「・・・入るか」

カシュ、カシュ

提督「・・・寒くて火つかない・・・」

9 : 以下、名... - 2017/03/24 04:07:34.89 kAxwF09OO 9/31


【鎮守府・玄関】

提督「ふぅ。さっぱりした」

大和「提督。お湯加減は如何でしたか?」

提督「問題ないよ。・・・ただ、吹きさらしだから、鎮守府の中に戻るまでに身体が冷えるのはなんとかならないのかね・・・」

大和「もう少ししっかりとした設備があれば良いのですが・・・申し訳ございません」

提督「いや、大和さんが悪いわけじゃあないから・・・それじゃあ、私は先に休ませてもらおうかな」

大和「はい。寝室は執務室の横の部屋になります。この鎮守府には艦娘の寮はありませんので、私も同じ部屋で寝ることになります」

提督「寮がないって・・・言っちゃなんだけど、ほんとに酷いとこだなあ・・・」

提督「ま、仕方ない。それじゃ、おやすみ。大和さん」

大和「はい。おやすみなさい」

10 : 以下、名... - 2017/03/24 04:08:09.86 kAxwF09OO 10/31

【鎮守府・寝室】

提督「なるほど。二段ベットが二つね」

提督「・・・手入れが行き届いてる。大和さんが綺麗にしておいてくれたのかな」

提督「ふわぁ・・・それにしても、今日は疲れたなあ」ドサッ

提督「明日からは・・・提督として頑張らないと・・・いけないなあ・・・」

提督「んむぅ・・・」

提督「zzz」

11 : 以下、名... - 2017/03/24 04:08:59.29 kAxwF09OO 11/31

【鎮守府・風呂場】

大和「・・・」

大和「・・・きっと、あの人も」

大和「きっと・・・」

大和「・・・」

12 : 以下、名... - 2017/03/24 04:09:43.27 kAxwF09OO 12/31

【鎮守府・執務室】

提督「おはよう。大和さん」

大和「おはようございます。・・・お早いんですね」

提督「いやー。昔から朝日が出ると、自然と目を覚ましちゃうんだよねえ」

提督「ところで大和さん、朝ごはんは食べた?」

大和「いえ。これからです」

提督「私もだよ。良かったら、これから一緒にどう?」

大和「えっ・・・」

提督「あれ?もしかして、嫌だった?」

大和「あっ、いえ。私は、その、構いませんけれど」

提督「んじゃー早速行こう。もうお腹ぺこぺこだよー」フラフラ

大和「・・・」

大和(そう・・・この人は、私を知らないから・・・だから、こんなに・・・)

提督「大和さ~ん?何してるの~?」

大和「あっ、はい。すぐに参ります」タタッ

大和「・・・」

13 : 以下、名... - 2017/03/24 04:10:34.30 kAxwF09OO 13/31

【鎮守府・食堂】

提督「・・・ところで大和さん」

大和「はい?」

提督「・・・食べるものは?」

大和「一応、備え付けの冷蔵庫に保存食が幾らかありました。乾物が中心ですけれど、味は悪くないですよ」ガサガサ

提督「どれどれ・・・うーん、魚の干物が多いね・・・米やパンはないかあ」

大和「深海棲艦との戦いで疲弊していて、あまり余裕があるとは言えませんからね。近年、米やパンはどうしても高値ですし、それにこの辺りは人も少ないようなので、食料があるだけでもありがたいです」

提督「そっかあ・・・そういうことなら、しょうがないね」

14 : 以下、名... - 2017/03/24 04:11:21.57 kAxwF09OO 14/31

食事の後

【鎮守府・執務室】

提督「うーん・・・お腹いっぱい、とは言えないけど、わがまま言ってられない・・・」ショボン

大和「すみません・・・」

提督「大和さんのせいじゃないよ。でも、近いうちに食料事情も改善しないとね」

大和「そうですね」

提督「・・・さて!そんじゃあ、気を取り直して職務に励むとしましょうか!」

大和「はい。よろしくお願いします」

提督「まずは何から始めようか」

大和「そうですね・・・この鎮守府には艦娘の数が足りていないので、出撃や遠征をするのは現状では厳しいですね」

提督「加えて大本営はこちらからの要請を受け付けないか・・・」

提督「・・・んじゃあ、まずやることは一つだね!」

提督「大和さん」

大和「はい。なんなりとお申し付けください」

提督「それじゃあ、とりあえず・・・」

大和「とりあえず?」

提督「外に行くよ。出かける準備、よろしく!」

15 : 以下、名... - 2017/03/24 04:12:05.50 kAxwF09OO 15/31

【鎮守府近郊】

ピュー

提督「うぅ・・・寒いよぉ・・・」ブルブル

大和「もう4月といっても、場所が場所ですからね・・・この辺りは雪はあまり降りませんけれど、海沿いなので夜間は特に冷え込みます」

提督「お、おお」ガタガタ

大和「・・・ところで提督。今日はどちらへ?」

提督「そ、そうだね・・・とりあえず、人がいる場所に行こうと思う」

提督「この辺りのことについて詳しく聞きたいし、何より食べ物を売ってるお店とかがあればいいなーって」

大和「なるほど。わかりました」

提督「大和さんはこの辺りのこととか、どれくらい知ってるの?」

大和「そうですね・・・私は以前、こことは全く異なる場所にいましたので、あまり詳しくはわからないです。知っていることといえば、非常に寒い地域であることと、深海棲艦の被害が少ないこと、あとは人がほとんどいない、といったことくらいでしょうか」

提督「こっちに来てからは、何をしてたの?」

大和「特には、何も。鎮守府の掃除や資料の片付けをしながら、提督が来られるのを待っていました」

提督「こうして外を出歩かなかったの?」

大和「・・・私には必要ありませんから」

提督「・・・ふぅん?」

16 : 以下、名... - 2017/03/24 04:12:36.12 kAxwF09OO 16/31

数時間後

提督「誰もいないねえ・・・」

大和「はい・・・それに、人がいた形跡も見当たりませんね」

提督「うーん・・・弱ったなあ」

大和「日も少しずつ傾いてきましたね・・・」

大和「・・・?」

提督「・・・ん?大和さん?どしたの?」

大和「あっ、いえ。ただ、あそこに誰かいたような気がしまして・・・」

提督「どこどこ?」

大和「あそこです。あの、石段の下辺りに・・・」

提督「ようし!行ってみよー!」

ダダダッ!

大和「あっ、提督!待ってください!」

提督「競争だよ!あそこに先についた方が晩ご飯多めね!」

大和「何言ってるんですか、もう!」

大和(・・・まさか・・・ね)

タタタッ

17 : 以下、名... - 2017/03/24 04:13:28.28 kAxwF09OO 17/31

大和「はぁ、はぁ、はぁ・・・」

提督「大和さん遅いよー」

大和「て、提督が速すぎるんです!そ、それよりも、誰かいましたか?」

提督「うんにゃ。誰も見当たらないねえ」

大和「あれ?でも、そんなはず・・・」

提督「見間違えだったんじゃないかな?」

大和「いえ、そんなはず・・・確かに、誰かが、その石段を下って行くのが見えたんです。曙色の着物を着た、多分、女性の方が・・・」

提督「でも、誰もいないよ?」

大和「おかしいですね・・・」

提督「んー?」

提督「・・・ねえ、大和さん」

大和「はい・・・?」

提督「あれって、なんだろう?」

大和「あれ?」

提督「ほら。そこ。陰になってる・・・」

大和「・・・あっ」

18 : 以下、名... - 2017/03/24 04:14:13.47 kAxwF09OO 18/31

【???】

ガラガラ

??「あら。いらっしゃいませ」

提督「お邪魔しまーす」

大和「失礼します・・・っ!?」

??「・・・外は寒かったことでしょう。お席へどうぞ。今は他に誰もいませんので、お好きなところへお座りください」

大和「えっと・・・私たちはその、お客では・・・」

提督「まーまー大和さん。いいじゃんいいじゃん。折角来たんだしさ」

大和「で、ですが」

提督「それじゃ、お邪魔しまーす」ギシ

??「ふふふっ。はい、どうぞ」

提督「おーおしぼりあったかー」ホカホカ

大和「・・・はぁ」

大和「・・・では、私も。失礼します」ギシ

鳳翔「はい。いらっしゃいませ。ようこそ、居酒屋・鳳翔へ」

19 : 以下、名... - 2017/03/24 04:15:08.51 kAxwF09OO 19/31

提督「」パクパクムシャムシャ

提督「んんんー!おいしいよおー!」

大和「ほんとう・・・とても美味しいです」

鳳翔「うふふ。ありがとうございます」

提督「この優しい味付けのお芋の煮物と程良い塩加減の焼き魚で、ほかほかの白米を食べる・・・もう、最高だよお・・・」

鳳翔「もう、お客様ったら。大袈裟ですよ」

鳳翔「でも、ありがとうございます。そんな風に言ってもらえたのは初めてです」

提督「そりゃあ他の客の見る目がないよ!こんなに美味しいごはん、毎日、いや、毎食でも作ってもらいたいくらいだよ!ねっ、大和さん!」

大和「え、ええ・・・本当に・・・」

鳳翔「ふふっ。遠慮なさらず、たくさん食べてくださいね」

大和「あ、ありがとうございます」

提督「よーし!それじゃあ、いっぱい頼んじゃうぞー!」

大和「・・・」

20 : 書き込めない - 2017/03/24 04:34:51.35 kAxwF09OO 20/31

1時間後

提督「zzz」

大和「もう・・・あんなに沢山食べた上に、お酒も倒れるくらい飲んで・・・」

鳳翔「うふふ。いいじゃないですか。とっても可愛いくて」

大和「・・・鳳翔さんは昔から優しすぎるんです」

鳳翔「あら・・・そんなこと言ってくれるの、貴女くらいのものですよ」

大和「・・・」

鳳翔「・・・数年以来ですね、大和さん」

大和「・・・はい」

鳳翔「・・・少し驚きました。どうしてこんなところに、貴女がいるのかしらって」

大和「・・・」

鳳翔「・・・もしかして、そちらの方は?」

大和「・・・提督です。私が着任した、鎮守府の・・・」

鳳翔「・・・そうですか」

大和「・・・」

鳳翔「・・・」

大和「・・・少し」

鳳翔「・・・?」

大和「・・・日本酒を、少し、頂きます」

鳳翔「・・・お注ぎしますね」

トクトク

大和「・・・ありがとうございます」

グイッ

大和「・・・ふぅ」

鳳翔「・・・」

大和「・・・」

鳳翔「・・・」

21 : 以下、名... - 2017/03/24 04:35:45.07 kAxwF09OO 21/31

大和「・・・お聞きにならないんですか?」

鳳翔「・・・何をですか?」

大和「その・・・私が、ここに・・・どうしているか、とか・・・」

鳳翔「・・・」

大和「すっ、すいません・・・鳳翔さんだって、大変な思いをしてきたのに、こんな・・・」

大和「・・・身勝手で、情けないことを言って・・・」

鳳翔「・・・構いませんよ」

大和「で、でもっ」

鳳翔「大和さん」

大和「!」

大和「・・・はい」

鳳翔「私には貴女の事情を詳しく知る資格も、その権利もありません」

大和「そんなこと・・・」

鳳翔「ない・・・筈がありませんよね?」

大和「・・・」

鳳翔「・・・でも、そうね。もし、今、貴女の中に沢山、吐き出したい気持ちがあるのなら、せめて今は、温かい食事と少しのお酒で呑み込んでしまっても、私は悪くないと思います」

大和「・・・」

鳳翔「人は誰しも、いつも強くいられるわけではないですから・・・時には何かにすがっても、私はいいと思いますよ」

大和「・・・私は」

鳳翔「・・・」

大和「・・・私には」

大和「・・・」

スッ

鳳翔「・・・もう一献、いかがですか?」

大和「・・・頂きます」

トクトク

大和「・・・」

大和「・・・」

大和「・・・」グイッ

22 : 以下、名... - 2017/03/24 04:36:57.29 kAxwF09OO 22/31

数十分後

大和「鳳翔さん、今日はありがとうございました」

鳳翔「うふふ。いえいえ。・・・もうすぐ日も暮れますから、お気をつけてお帰りくださいね」

大和「はい。ありがとうございます」

提督「zzz」

鳳翔「ふふっ。本当に良く眠っていらっしゃるわね」スッ

プニプニ

提督「んゅ・・・」

提督「zzz」

大和「す、すみません。後で私の方から厳しく言っておきますので・・・」

鳳翔「お気になさらないでください。私も久しぶりに、楽しませていただきましたから」

鳳翔「・・・」

鳳翔「大和さん」

大和「・・・はい」

鳳翔「何かあった時は、いつでもここを訪ねてくださっていいんですからね。私では、貴女の助けにはなれないかもしれないけれど・・・」

大和「いえ・・・お気遣い、ありがとうございます。そのお気持ちだけで十分です」

大和「では、失礼します。お休みなさい」スッ

鳳翔「・・・ええ。お休みなさい」

鳳翔「・・・またのお越しを、お待ちしています」

23 : 以下、名... - 2017/03/24 04:37:49.69 kAxwF09OO 23/31

【鎮守府・近郊】

ザッザッザッ

大和「・・・」

提督「zzz」

大和「・・・起きているなら、自分で歩いてもらえますか?」

提督「・・・バレた?」

大和「バレバレですっ。もう・・・」

提督「む、むぅ・・・」

大和「・・・」

提督「・・・」

大和「・・・どこから聞いていたんですか?」

提督「・・・大体全部?」

大和「・・・はぁ」

提督「・・・知り合いなら、そうと言ってくれればよかったのに」

大和「・・・提督には、関係ないことですから」

提督「・・・ふぅん」

大和「・・・」

提督「・・・」

24 : 以下、名... - 2017/03/24 04:39:11.89 kAxwF09OO 24/31

提督「・・・ま、話したくないなら、別に話さなくてもいいし、私も無理には聞かないよ」

大和「・・・」

提督「・・・でもね」

提督「・・・辛い時は、頼ってほしいな」

大和「・・・」

提督「そりゃ、私みたいな新米提督なんて、全然信用できないかもだし、むしろ、私が大和に迷惑ばっかりかけるかもしれないけどさ」

提督「・・・大切な部下で、仲間だもん。嬉しいことも、悲しいことも、みんな分け合っていきたいな、って、思うよ」

大和「・・・仲間」

提督「うん」

大和「・・・」

大和(・・・この人を信じている訳じゃない)

大和(・・・信じられる筈ない)

大和(名前だけの・・・新米提督・・・)

大和(・・・)

大和(・・・でも)

大和「・・・あの・・・」

提督「・・・ん?」

大和「・・・」

大和(・・・彼女を信じたいと)

大和(彼女に縋りたいと、心のどこかで、願ってしまうのは・・・)

大和(・・・)

大和(・・・鳳翔さんが、あんなこと言うから・・・違う・・・)

大和(きっと・・・そう。お酒のせいだ・・・)

大和「・・・」

提督「・・・大和さん?」

大和「・・・き」

提督「き?」

大和「・・・聞いていただきたい話が、あります。・・・あなたに」

25 : 以下、名... - 2017/03/24 04:41:15.89 kAxwF09OO 25/31

【鎮守府・執務室】

大和「私はここに来る以前、ずっと呉の鎮守府にいました」

提督「・・・クレ?」

大和「?・・・呉をご存知ないのですか?」

提督「よく分かんないけど・・・遠いところなんだね!きっと!」ドヤァ

大和「え、ええ。まあ、そうですね・・・」

大和(こ、この人は・・・もうっ・・・)

大和「・・・コホン。それでですね。私は長きに渡って・・・いわゆる国の隠し玉として扱われてきました」

提督「隠し玉?大和さんって、そんなに強いの?」

大和「え、ええと、まあ、はい。一応、そういうことになりますね」

提督「へー」

大和「・・・あの」

提督「どしたの?」

大和「いえ、あの・・・自分でこんな事を言うのもなんですけれど、私、この国の艦娘の中でも、一、二番を争うくらいに強いんですよ・・・?」

提督「うん。凄いね」

大和「・・・戦艦なんですよ?この鎮守府にあるごくわずかな資材では、とても間に合わないくらい、運用が大変なんですよ?」

提督「ありゃ。そうなの?」

大和「そうなんです!」

提督「・・・んー」

提督「ま、なんとかなるよ。きっと」

大和「なっ・・・こっ、根拠はあるんですか!?資材を確保しないと、出撃できないんですよ!?」

提督「ないよ。でも、少なくとも今は大和さんしかいないから、どっちにしろ出撃することは得策じゃないでしょ?それに、他の艦娘の子が派遣される見込みもないし」

大和「だったら・・・!」

提督「うん。それなら、これから一緒に探していけばいいんじゃないかな」

大和「・・・え?」

提督「ね?」

大和「・・・一緒、に?」

提督「そ。だって、大和さんも出撃できなくって、持て余してるんでしょ?だったら、私のお仕事手伝ってもらったり、資材の問題を一緒に解決すればいいかなって」

大和「・・・」

大和(私が、提督と、一緒に・・・?)

大和(・・・この人は・・・)

大和(・・・違う・・・でも、きっと・・・)

大和(だったら、私は・・・大和は・・・)

26 : 以下、名... - 2017/03/24 04:44:34.99 kAxwF09OO 26/31

提督「・・・んー?・・・でも、それならどうして、そんな凄い大和さんが、こんな敵の少ない場所に来ることになったんだろ?」

大和「・・・近年、深海棲艦との戦いは激化し、この国も多大な被害を受けています」

大和「そんな中、鋼材や弾薬が著しく不足していることを受けて、大本営は全面的に私の出撃を制限しました」

提督「・・・なるほどね」

大和「様々な事情もありましたし、私もそのことには納得していました。でも・・・他の艦娘の方達が出撃していく姿を、ただ見ていることしかできなかった・・・」

大和「・・・時には、出撃したまま帰らない子もいて・・・それなのに、私はただ、母港から眺めることしかできなかった・・・」

提督「うん」

大和「・・・そして、整備の方々や上層部の方が口々に言うんです。大和は役立たずだ、木偶の坊だ、って。解体した方が、よっぽど
有意義だって・・・」

提督「・・・そっか」

大和「・・・最初は、我慢できたんです。皆さんにそんな思いをさせて、申し訳ないって。私がもっと・・・もっと強かったら、もっと使いやすければ、皆さんのお役に立てるのにって!」

大和「で、でもっ、そ、そんなこと考えている間にもっ、せ、戦況は、どんどん悪くなって・・・ッ・・・わ、私の、私のことを、い、いらないやつって言う人もっ、いっ、一杯でっ・・・さっ、最後は、て、ていっ・・・提督っまでっ・・・」

提督「・・・分かった」ギュウ

大和「そっ、それでぇ、わ、私っ、い、いらない子なんっ、なんだなって!・・・そ、それで、こ、この前、ひっ、ひ、必要、ない、艦娘を、い、1隻寄越せって、だ、大本営に、命令されて、そ、そ、それ、でぇ・・・!きっ、昨日っ、も、て、提督なんてぇこ、こなくて、やっぱりや、厄介払っいっ、だっ、たのかなあって・・・ひぐっ・・・」

提督「・・・辛かったね」ナデナデ

大和「うぅ・・・」

提督「・・・鳳翔さんには、そのことを?」

大和「いっ、言えないっ、言えない!・・・ほっ、ほう、鳳翔さんっ、わっ、私を、い、いつもっ、庇ってくれたっ、から」

大和「だかっ、ら、ぅ、くうぅ・・・」

27 : 以下、名... - 2017/03/24 04:45:39.96 kAxwF09OO 27/31

提督「・・・ごめんね」

大和「て、提督っ、は、悪く、ない、ですから」

提督「・・・ね。大和さん」

大和「ヒッ・・・ウッ・・・ゥ・・・」

提督「・・・大和さん?」

大和「ていっ、とく」

提督「・・・ん?」

大和「・・・な、名前、よっ、呼び、捨て、で・・・」

提督「呼び捨て?・・・いいの?」

大和「いっ、いいのっ。て、提督なっら、よ、呼んで、ほ、しいっ、から」

提督「・・・そっか。・・・うん。わかった」

提督「・・・大和」

大和「うぅ、てっ、提督ぅぅぅぅぅ・・・」ギュ

提督「もう・・・我慢しなくていいからね」

大和「んぅ・・・う、うんっ・・・!」

大和(もう一度だけ・・・信じてみる・・・ううん、違う・・・私が、信じたい・・・私の・・・提督・・・あなたを)

大和(・・・ありがとう)

大和(ていとく・・・)

28 : 以下、名... - 2017/03/24 04:46:34.03 kAxwF09OO 28/31

翌日・早朝

【鎮守府・執務室】

コンコン・・・

提督「はいはい。どうぞー」

ガチャ

大和「し、失礼します・・・」

提督「おはよう。大和」

大和「あ・・・」

大和「!」ハッ

大和「はっ、はい!おはようございます!提督!」

提督「朝から元気だね」

大和「あっいえっ、その・・・」

大和「・・・昨日は、その、大変ご迷惑をおかけしました・・・」ペコリ

提督「ん?いーよいーよ。私と大和の仲じゃない。気にしないで」

大和「で、ですが・・・」

29 : 以下、名... - 2017/03/24 04:47:20.66 kAxwF09OO 29/31

提督「もうっ!いいって言ってるでしょ。そんなことより、早く朝ごはん食べようよー。もうお腹ぺこぺこなんだよー・・・」フニャフニャ

大和「あっ・・・」

大和「・・・」

大和「ふふふ・・・了解しました!この大和、すぐに提督の朝食を準備しますね!」

提督「急いでー・・・」グゥー

大和「はいっ!」

大和(本当に、ありがとうございます、提督)

大和(それから・・・)

大和(・・・ふふっ)

ヤマトォ~ハヤクゥ~

大和「あっ、はい!もう少々お待ちくださいね!」

タタタッ

大和(これから一緒に頑張りましょうねっ、提督!)



30 : 以下、名... - 2017/03/24 04:48:25.86 kAxwF09OO 30/31

~その日の夜~

【居酒屋・鳳翔】

鳳翔「・・・」

鳳翔「・・・ふぅ」

鳳翔(やっぱり・・・私では・・・)

鳳翔(・・・)ホゥ

鳳翔「大和さん・・・」

ガラガラ
スイマセーン
オジャマシマス

鳳翔「!」

タタッ

鳳翔「・・・!」

鳳翔「・・・ぁ・・・」

鳳翔「・・・」フッ

鳳翔「・・・いらっしゃいませ」

鳳翔「居酒屋・鳳翔へ、ようこそ」


31 : 以下、名... - 2017/03/24 04:49:21.46 kAxwF09OO 31/31

今度こそ終わり
依頼出してくるよ
原田美世かわいいほんと好き

記事をツイートする 記事をはてブする