1 : 以下、\... - 2016/12/21 20:45:08.202 qWFgE+UV0.net 1/47

<会社>

面接官「では……あなたの特技をお答え下さい」

糸使い「はいっ! 私は糸を扱うのが得意です!」

面接官「ふぅ~ん、糸をねえ……」

糸使い(お、好感触!?)

面接官「で、当社で働く上でどういったメリットがありますか?」

糸使い「え……」

元スレ
糸使い「私は糸を扱うのが得意です」面接官「当社で働く上でのメリットは?」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1482320708/

5 : 以下、\... - 2016/12/21 20:48:16.135 qWFgE+UV0.net 2/47

糸使い「あの……その……」

糸使い「たとえば、あやとりで……同僚を楽しませることができます」

面接官「はぁ……」

面接官「もう結構です」

糸使い「え」

面接官「私もあなたのような方を相手しているほど暇じゃないんです」

面接官「そもそもうちの会社はイベント企画や運営が主な業務ですから」

面接官「糸を扱う技能なんか全く必要じゃないしねえ」

面接官「席を立ってお帰り下さい」

糸使い「は、はい……失礼します……」

11 : 以下、\... - 2016/12/21 20:51:19.726 qWFgE+UV0.net 3/47

バタン……

糸使い(またダメだったか……)

「おや、いかがでしたか?」

糸使い「いやー、全然ダメでしたね」

「採用面接なんてのは縁ですよ、縁! すぐに切り替えた方がいいですよ!」

糸使い「ありがとうございます……」

糸使い(この人、俺より前に面接受けてた人だよな。なんでまだいるんだろ)

糸使い(もしかして、採用されたのかな……いいなぁ)

13 : 以下、\... - 2016/12/21 20:54:21.425 qWFgE+UV0.net 4/47

<会社の外>

「お兄ちゃーん!」

蜘蛛「…………」カサカサ

糸使い「おお、我が愛しき妹と愛しきペットよ!」

「面接、どうだった?」

糸使い「いやー……この顔見れば分かるだろ?」

「あらら……」

蜘蛛「ダメダッタノネ」

…………

……

19 : 以下、\... - 2016/12/21 20:57:32.020 qWFgE+UV0.net 5/47

……

「ったく、ダメだなー」

「そういう時はさ、『糸を扱って培った器用さを生かします』とか」

「いくらでも言いようがあるじゃない!」

「そこで詰まっちゃうから、いつまでたっても面接で受からないんだよ」

蜘蛛「ソウソウ」

糸使い「そういうもんか……」

「ったく、いつまでもくよくよしない! あたしのハサミで切っちゃうよ!?」チョキチョキ

糸使い「あぶねっ!」

「お、少し元気出たね。一緒に帰ろ」

糸使い「ああ、ありがとう」

22 : 以下、\... - 2016/12/21 21:00:38.821 qWFgE+UV0.net 6/47

<糸使いの自宅>

テレビ『昨夜、またしても怪盗が現れ……綿密な計画があったものと……』

糸使い「ええい、テレビうるさい!」ピッ

糸使い「あーあ、やべえよ……」

糸使い「お前と二人暮らしするようになって、糸専門店なんて始めたけど、客全然来ないし」

糸使い「なんとか普通の会社に就職しようとしても、糸使いなんて需要がなさすぎる……」

「糸専門店は閑古鳥だけど、もう一つの商売は順調じゃん」

糸使い「俺あれあまりやりたくないんだよ。やっぱり糸って平和的に使うもんだし」

糸使い「はぁ……糸使いなんて時代遅れなのかもな。女にもモテないし」

「まあまあいつまでも愚痴ってないで。一緒に納豆食べよ?」

糸使い「お、納豆あるのか! 食う食う!」

23 : 以下、\... - 2016/12/21 21:03:31.673 qWFgE+UV0.net 7/47

糸使い「やっぱり納豆は500回以上混ぜないとな!」マゼマゼマゼ

蜘蛛「ロサンジンキドリカヨ」

糸使い「うるせえ!」マゼマゼマゼ

糸使い「ほーれ、ネバネバ~」ネバァァァ

糸使い「ネバネバ~」ネバァァァァァ

「……お兄ちゃんが女にモテないのって、糸使いだからじゃなくて、性格の問題だと思う」

蜘蛛「ウン」

糸使い「うるせえよ!」

24 : 以下、\... - 2016/12/21 21:06:27.205 qWFgE+UV0.net 8/47

糸使い「いいよな、お前は彼氏がいるから!」

糸使い「あの……カッターナイフが好きな彼氏! あいつとはどうなんだよ?」

「んー……ボチボチってとこかな」

糸使い「そういやあいつとは一度会ったけど……」


妹彼氏『こんにちは、お兄さん!』

妹彼氏『ボク、カッターナイフの刃をポキッて折る時に最高にエクスタシーを感じちゃうんです!』


糸使い「……なかなかの好青年だった。あいつならお前を任せられる」

「そりゃどうも」

糸使い「さて、納豆食うか!」モグモグ

26 : 以下、\... - 2016/12/21 21:09:20.715 qWFgE+UV0.net 9/47

糸使い「あ~……美味かった」

糸使い「さっそく糸で……」シーハーシーハー

「やだ! あっち向いてやってよ!」

蜘蛛「キタナイナー」

糸使い「ほれ、こんなに歯クソが取れたぞ! すげえだろ!」

「汚いっての!」ビュオンッ

糸使い「あぶねっ! ハサミ振り回すなよ!」

27 : 以下、\... - 2016/12/21 21:13:14.307 qWFgE+UV0.net 10/47

……

糸使い「食後のコーヒーでも飲むか」

糸使い「コーヒー出してくれよ」

「あ、ごめん。切らしたまま買ってないや」

糸使い「マジで!?」

糸使い「仕方ない。近くのコンビニで一杯やってくるか」

「まーたイートイン? お兄ちゃんも好きだねえ」

糸使い「なにしろ俺は糸使いだからな」

蜘蛛「…………」カサカサ

糸使い「お前も来るか?」

蜘蛛「イクイク」

糸使い「よし、ついてこい!」

28 : 以下、\... - 2016/12/21 21:16:20.895 qWFgE+UV0.net 11/47

<コンビニ>

店長「お、糸使い君、いらっしゃい。就職活動はどうだい?」

糸使い「いやー、全然ダメですね」

蜘蛛「…………」カサカサ

店長「ま、気長にやるこった」

糸使い「はい……」

店長「蜘蛛君も、ご主人を支えてあげてな」

蜘蛛「モチロン!」

29 : 以下、\... - 2016/12/21 21:19:30.018 qWFgE+UV0.net 12/47

糸使い「コーヒーうめえ~」グビグビ

蜘蛛「ガムシロウメー」ペロペロ…

糸使い「――ん?」


「…………」


糸使い「あそこで買い物してる女の人……おしとやかそうで、すげえ美人じゃないか!?」

蜘蛛「タシカニ」

糸使い「ちょっと声かけてきてくれよ」

蜘蛛「ナンデヤネン」

糸使い「いいじゃんか、頼むよ~」

蜘蛛「ヤダヨ」

30 : 以下、\... - 2016/12/21 21:23:03.001 qWFgE+UV0.net 13/47

「…………」チラッ


糸使い(ゲ、俺の視線に気づいた!?)

「…………」スタスタ

糸使い(やべえ、こっちに来た! どうしよう!?)

「あのー……」

糸使い「は、はいっ!」

「とても素敵な蜘蛛ちゃんですね」ニコッ

糸使い「あ、はいっ! あ、こいつ、俺のペットでして……アハハ……」

31 : 以下、\... - 2016/12/21 21:26:11.150 qWFgE+UV0.net 14/47

糸使い「女性はこいつ見たら大抵ビビるのに……もしかしてあなた、蜘蛛オタクですか?」

「いえ、そうではなく……」

「私、ファッションデザイナーをしているんです」

糸使い「へえ、そうなんですか!」

「自分で裁縫をして、服を仕立てることもするので、よく糸を扱ったりするんです」

「だから、自分で糸を出す蜘蛛は、怖いというよりむしろ尊敬してるんです」

糸使い「なるほど~(分かるような分からんような)」

32 : 以下、\... - 2016/12/21 21:29:45.652 qWFgE+UV0.net 15/47

「でも、悩みがありまして……」

糸使い「悩み?」

「実は今、大きなファッションショーに出展するためのドレスを作っているんです」

糸使い「すごい! 売れっ子なんですね!」

「ですが、いい布はあるんですけど、いい糸がなくて困ってるんです……」

糸使い「!」

糸使い「あ、あのっ……でしたらっ!」

「はい?」

糸使い「俺、糸専門店を営んでおりまして、品質には自信があるんです!」

糸使い「ぜひ一度ご覧になって下さい!」

「本当ですか? ぜひ!」

蜘蛛「オモワヌチャンス」

35 : 以下、\... - 2016/12/21 21:32:35.592 qWFgE+UV0.net 16/47

<糸使いの自宅>

「お帰りー……ってあれ? お兄ちゃん、その女の人は?」

糸使い「ああ、ついさっき知り合ってね。俺の店の糸を見たいっていうんだ」

「へえ~、珍しいこともあるもんだ」

「あなたが妹さんね? こんばんは」

「こんばんは!」

「お兄ちゃんは糸に関してだけは誰にも負けませんから! 品質は保証しますよ!」

糸使い「あんまハードル上げるなよ」

「ふふっ、期待してます」

糸使い「店はこちらになります。さ、どうぞ!」

37 : 以下、\... - 2016/12/21 21:35:18.823 qWFgE+UV0.net 17/47

<糸使いの店>

糸使い「自宅の一部を改装して開業したんですけど……」

糸使い「今までに来たお客の数は……ほんの数人といったところでして」

糸使い「……いかがです?」

「……すごい」

糸使い「え?」

「一目で分かります! どれもこれもすごい糸ばかりだわ!」

糸使い「ほ、本当ですか!?」

「もちろんです!」

糸使い(うう……長年の苦労がやっと報われた。生きててよかったぁ~)

38 : 以下、\... - 2016/12/21 21:38:29.471 qWFgE+UV0.net 18/47

「ぜひ、こちらの店の糸を、私が今作っているドレスに使わせて下さい!」

糸使い「え、いいんですか!?」

「はい、この店の糸なら……あなたの糸なら、最高のドレスが作れると思います!」

糸使い「ありがとうございます!」



「おお……いい感じだよ」

蜘蛛「ウン」

41 : 以下、\... - 2016/12/21 21:41:33.038 qWFgE+UV0.net 19/47

「ところで……またお会いできませんか?」

糸使い「え……」

「ぜひまた……あなたとお話ししたいので……」

糸使い「え、あ……そりゃもう! もちろんかまいませんとも!」

糸使い「でも俺、携帯電話とか持ってないんですよ」

「あら、そうなんですか」

糸使い「だから、この糸電話を差し上げます!」

糸使い「ものすごく細くて長い糸なんで、どこからでも俺に通話していただけます!」

「本当ですか? ありがとうございます」



「今時携帯電話もスマホも持ってないって、ありえないよねー」

蜘蛛「ネー」

42 : 以下、\... - 2016/12/21 21:44:25.605 qWFgE+UV0.net 20/47

「――あ、お兄ちゃん、服がほつれてるよ」

糸使い「あ、ホントだ」

「あたしが縫ったげる」

「いえいえ、ここは私が」シュバババッ

「できました」

糸使い「え、もう!? ありがとうございます!」

「ふえぇ~……すごい早さ! さっすがファッションデザイナー!」

43 : 以下、\... - 2016/12/21 21:46:18.115 qWFgE+UV0.net 21/47

「じゃあ今夜はこれで……」


糸使い「さようならー!」

「お兄ちゃん、よかったねえ。いい人そうじゃない」

糸使い「ああ、俺にもやっと春が来たんだ!」

蜘蛛「センテンススプリング!」

45 : 以下、\... - 2016/12/21 21:50:39.640 qWFgE+UV0.net 22/47

数日後――

<糸使いの自宅>

糸使い「ふんふ~ん」

「お兄ちゃん、やけにはりきってるね。どうしたの?」

糸使い「実は……明日デートなんだ」

「え、マジ? やったじゃん!」

糸使い「頑張るぜ!」



「ちょっと……いやかなり不安……」

「そっとついていこっか」

蜘蛛「オウ」

46 : 以下、\... - 2016/12/21 21:53:57.058 qWFgE+UV0.net 23/47

翌日――

<駅前>

糸使い「お待ちしておりました!」

糸使い「今日は……俺が寝ずに考えたデートスポットをご案内しますよ!」

「まぁっ、とても楽しみです」



「…………」コソッ

蜘蛛「…………」カサカサ…

「自分から“寝ずに考えた”とかいっちゃうところがもう、センスないよね」ハァ…

蜘蛛「マッタクデスナ」

48 : 以下、\... - 2016/12/21 21:57:07.121 qWFgE+UV0.net 24/47

糸使い「見て下さい、あの電線を! 複雑に交じり合って、とても美しいでしょう?」

「まぁ、とてもステキですね」



糸使い「コーヒーでも飲みましょうか……コンビニのイートインで!」

「ええ、そうしましょう」



糸使い「この店の糸こんにゃくは格別なんですよ!」

「あら、とても楽しみですわ」





「ひどい、ひどすぎるよ……。こんな悲惨なデートコース、あたし見たことないよ……」

蜘蛛「オワッタナ」

49 : 以下、\... - 2016/12/21 22:00:33.299 qWFgE+UV0.net 25/47

デートが終わり――

「今日は楽しかったです。こんなに楽しい一日は久しぶりでした」

糸使い「本当ですか!? ありがとうございます!」



「あのデートが楽しかっただって! ……信じらんない!」

蜘蛛「アリエンナ」

「うん……なんか、あの女の人……ちょっと怪しいかも」

「もしかしたら……結婚詐欺師とか」

(お兄ちゃん……お兄ちゃんはあたしが守るからね! このハサミで!)チョキンッ

50 : 以下、\... - 2016/12/21 22:03:35.036 qWFgE+UV0.net 26/47

デートから一週間後――

<糸使いの自宅>

糸使い「明日はちゃんとした服装しないとな。ジャケットに……ネクタイに……」

「ずいぶんはりきってるけど、どうしたの、お兄ちゃん?」

糸使い「実は明日、高級レストランでデートなんだ」

糸使い「……で、きちんと俺の気持ちをぶつけるつもりだ」

「へぇ~、ちなみにレストランの名前は?」

糸使い「『レストラン○×』だったかな」

「そこってたしか、前にお兄ちゃんが落ちた会社の近くじゃん」

糸使い「あ、そういえばそうだな……。嫌なこと思い出しちまった」

53 : 以下、\... - 2016/12/21 22:06:35.059 qWFgE+UV0.net 27/47

「――で、どうやって告白するつもり?」

糸使い「この赤い糸を、俺の小指と彼女の小指に結び付けて……」

糸使い「俺たち、赤い糸で結ばれてるよね……って」

「ええ……」

蜘蛛「ダサーイ」

糸使い「なんだよ、その反応は!」

「やめた方がいいよ、絶対」

糸使い「いーや、絶対やる! 明日が楽しみだぜ!」

「…………」

54 : 以下、\... - 2016/12/21 22:10:22.178 qWFgE+UV0.net 28/47

次の日の夜――

<レストラン>

「今日はありがとうございます」

「こんな立派なレストランに招待していただいて」

「でも、お金の方は……」

糸使い「あ、大丈夫! 俺の仕事は糸専門店だけじゃないんで」

「あら、そうなんですか」

糸使い「ってわけで、カンパイ!」

「はい!」

カチンッ

55 : 以下、\... - 2016/12/21 22:13:53.645 qWFgE+UV0.net 29/47

<レストランの外>

「お兄ちゃんが心配だから、レストランの近くまで来ちゃうなんて」

「いやー、あたしらも兄想いだねえ」

蜘蛛「ホントホント」カサカサ

「でも、レストランに入るわけにはいかないし、どうしよう……」

「とりあえず、二人が出てくるのを待とうか」

「――ん?」

(あれ? お兄ちゃんが落とされた会社のビルに、怪しい集団が入っていく……)

56 : 以下、\... - 2016/12/21 22:16:59.028 qWFgE+UV0.net 30/47

<レストラン>

糸使い「俺、最近はあやとりに凝ってて……。のび太君は心の師匠ですよ!」

「まぁっ、ステキな趣味ですね」

糸使い「ところで、例のドレスは完成したんですか?」

「ええ、おかげさまで」

「ついさっき、すぐそこにあるファッションショーを運営する会社に、納入したところです」

「これもあなたの糸のおかげです」

糸使い「いやいや、そんなことありませんよ~」

糸使い(そろそろ告白したいけど、なかなかタイミングが掴めないな……)

糸使い(果たして、俺とこの人は、本当に赤い糸で結ばれてるんだろうか……)

58 : 以下、\... - 2016/12/21 22:20:21.806 qWFgE+UV0.net 31/47

<会社>

「気配を殺して、と……」ササッ

「さっきの集団は一体なんだったんだろう……?」

蜘蛛「アッチニダレカイル」カサカサ

「うん……そっと近づこう」



「――あっ!」

59 : 以下、\... - 2016/12/21 22:23:58.947 qWFgE+UV0.net 32/47

怪盗「おやおや、これは素晴らしい!」

怪盗「今をときめくファッションデザイナーの未発表のドレス!」

怪盗「私のコレクションにするに相応しい一品です……!」

部下A「ビルに残っていた社員たちは全員縛り上げました」

怪盗「ご苦労」


社員A「くそっ、ファッションショーはもう間近だというのに!」

社員B「うちのビルのセキュリティが、こうも簡単に解除されるなんて……」

面接官「あれが盗まれたら、うちの会社は終わりだ……!」



「こいつら……今話題になってる怪盗一味だ!」

「ようし……あたしが捕えてやる! あんたはここで待ってて!」

蜘蛛「キヲツケナヨ」

60 : 以下、\... - 2016/12/21 22:27:58.438 qWFgE+UV0.net 33/47

「待ちなさいよ!」

怪盗「おや、あなたは?」

「あたしは『ハサミ使い』よ! あんたらの悪事はあたしがチョキッと切ってやるわ!」チョキチョキ

怪盗「ほう……もしやあなたは“仕事人”ですか?」

「そうよ、よく知ってるわね」

部下A「……なんですか、仕事人というのは?」

怪盗「政府から“独断で犯罪者を退治していい”と強力な特権を与えられた人間のことです」

怪盗「仕事人はそれぞれ『○○使い』というコードネームを持っているのだとか」

部下A「あんな小娘が……?」

怪盗「人は見かけによらない、というものですよ」

部下B「ですが、相手は一人! ここは我々にお任せ下さい!」

「かかってきなさい!」チョキチョキ

61 : 以下、\... - 2016/12/21 22:30:39.983 qWFgE+UV0.net 34/47

「えーいっ!」

ザシュッ! ズバッ! ザクッ!

「ぐわぁっ!」 「ぐぎゃっ!」 「いでぇぇっ!」

「さあさあ、こんなもんなの!?」チョキチョキ



部下A「つ、強い……!」

部下B「我らとて、一人一人が並のボディガード10人分の力があるのに……!」

怪盗「おやおや、なるほどなるほど……さすがですね」

怪盗「これ以上、部下に傷を負わせるわけにはいきません」

怪盗「私自ら相手をして差し上げましょう……このサーベルでね」ジャキッ

(こいつ……メチャクチャ強い!)

62 : 以下、\... - 2016/12/21 22:34:26.551 qWFgE+UV0.net 35/47

<レストラン>

ブチッ!

糸使い「!」

「どうしました?」

糸使い(俺がいつも手首に巻いてる糸が……ひとりでに切れた! 不吉だ……)

糸使い(まさか……妹たちになにかあったんじゃ!?)

「もうすぐメインディッシュですね。楽しみです」

糸使い(だけど、せっかくデートがいいムードだし……ただの偶然かもしれないし……)

糸使い(――いや!)

糸使い「すみません! 俺、ちょっと席をはずします!」ガタッ

「えっ!」

65 : 以下、\... - 2016/12/21 22:37:20.541 qWFgE+UV0.net 36/47

<会社>

「たあああああっ!」

怪盗「はあっ!」

キィンッ! キィンッ! ガキンッ!

ガキィンッ!

「きゃあっ!」ドサッ…

(やっぱり強い! あたしじゃ……勝てない!)

怪盗「おやおや、どうやらここまでのようですね」

66 : 以下、\... - 2016/12/21 22:42:39.001 qWFgE+UV0.net 37/47

怪盗「仕事人の中にはどんな悪党も敵わない、恐るべき使い手が二人いるらしいですが」

怪盗「あなたはその二人のうちのどちらかではなかったようだ」

怪盗「しかし、あなたは将来、私の脅威になるおそれがある」

怪盗「殺しはしません、が……腕の腱を切断して、『ハサミ使い』としては死んでもらいましょう」

怪盗「彼女を押さえておきなさい」

部下A「はい」ガシッ

「は、はなしてっ!」ジタバタ

怪盗「これからは平凡な女子として幸せに生きていくことです」

(お兄ちゃん……っ!)

怪盗「それでは、トドメを――」チャキッ

67 : 以下、\... - 2016/12/21 22:45:01.414 qWFgE+UV0.net 38/47

グルグルッ!

怪盗「!」ビンッ

怪盗(サーベルが、細い糸に絡め取られた!?)

怪盗「――誰だ!?」





糸使い「『糸使い』……参上!」

69 : 以下、\... - 2016/12/21 22:48:32.113 qWFgE+UV0.net 39/47

「お兄ちゃん!? なんでここにいるの!?」

糸使い「嫌な予感がしてレストランを出たら、こいつが糸で道案内してくれてたんだよ」

蜘蛛「キキイッパツ」カサカサ

「そうじゃなくて……デートは!?」

糸使い「すっぽかしちゃった」

「なにやってんの! ったく、本当にバカなんだから……!」

「でも……ありがとう、お兄ちゃん」

糸使い「いいってことよ」

70 : 以下、\... - 2016/12/21 22:52:23.566 qWFgE+UV0.net 40/47

部下A「新手か!」バッ

部下B「始末してやる!」バッ

糸使い「ほれっ」ヒュバッ

ザシュシュッ!

部下AB「ぐはぁ……っ!」ドザザッ



糸使い「さて、残るはお前一人だな」ヒュルルッ

怪盗「ほう……妹さんも強かったが、あなたはそれ以上だ」

糸使い(――って、こいつ、たしかこないだの面接の時に見たツラだな)

糸使い(そうか……あの時は求職者のふりをして、このビルを下見に来てたってわけか)

怪盗「なるほど、仕事人の中でも特に優秀な二人……あなたが“そのうちの一人”というわけですか」

糸使い「あいにく、この仕事はあまり好きじゃないんだけどな」

糸使い「糸は戦うためのもんじゃないと思ってるから」

怪盗「ふっ、あなたほどの使い手に出会えるとは嬉しいですよ! さぁ、勝負です!」

71 : 以下、\... - 2016/12/21 22:56:32.999 qWFgE+UV0.net 41/47

ビンッ!

怪盗「あれ……?」ギシッ…

糸使い「残念だが、もう勝負はついてる」

糸使い「ここに姿を現す前に、お前の全身は糸で縛りつけておいた。手強そうだし」

怪盗「な、なんですとぉ!? くっ……こんなもの、こんなものっ!」グッグッ…

糸使い「無理無理、妹のハサミじゃなきゃ俺の糸は切れねえよ」

怪盗「う、ぐぐ……!」

怪盗「私は……すでに負けていた、ということか……!」



「お兄ちゃん、やったーっ!」

蜘蛛「ヤルジャン」

73 : 以下、\... - 2016/12/21 23:00:11.562 qWFgE+UV0.net 42/47

怪盗「さすがです……『糸使い』……」

怪盗「しかし……ただでは負けませんよ……。手に入らないのならいっそ……」

糸使い「?」

怪盗「部下よ、そのドレスを破り捨ててしまいなさい!」


部下C「はいっ!」タタタッ


「ゲッ、さっきあたしが倒した奴! ――お兄ちゃん!」

糸使い「ちっ!」ヒュルルッ



グササササッ!

75 : 以下、\... - 2016/12/21 23:03:49.582 qWFgE+UV0.net 43/47

部下C「か、体が動かな……!」ドサッ


糸使い(俺の糸より早く、何本もの針があいつに刺さりやがった!)

糸使い(しかも……正確にツボに刺さってやがる! とんでもねえ腕前だ!)

糸使い「――何者だ!?」バッ


「あ、どうも……」ニコッ


糸使い「――え!?」

「なんで!?」

蜘蛛「アンタガココニ」

76 : 以下、\... - 2016/12/21 23:07:43.654 qWFgE+UV0.net 44/47

「ありがとうございました」

「あなたたちがいなければ、私のドレスは盗まれていたでしょう」

糸使い「今の針さばき……あなたもまさか!?」

「はい……副業で仕事人をしております。『針使い』として」


「『針使い』っていえば、仕事人の中でお兄ちゃんに並ぶ凄腕ってウワサの……」

蜘蛛「コリャタマゲタ」


怪盗(まさか、仕事人の最上位二名とばったり出くわすことになろうとは……)

怪盗(やれやれ、私の悪運も尽きたということだな……)

…………

……

77 : 以下、\... - 2016/12/21 23:11:10.861 qWFgE+UV0.net 45/47

怪盗一味は逮捕され――

面接官「あ、あのっ!」

糸使い「なんでしょう?」

面接官「このたびは本当にありがとうございました! 先日はすみませんでした!」

面接官「大変ムシのいい話ですが、是非我が社で……」

糸使い「いえいえ、そういう意図があって、怪盗を捕えたわけじゃありませんから」

糸使い「糸使いだけに」ニヤッ

面接官「…………」


「うわ……さっむ」

蜘蛛「シカモワカリニクイ」

78 : 以下、\... - 2016/12/21 23:14:38.615 qWFgE+UV0.net 46/47

糸使い「それにしても驚きでした。あなたが『針使い』だったとは」

「私も驚きです。あなたが『糸使い』だったなんて」

「やっぱり私たち、お似合いみたいですね!」

糸使い「そうですね!」

糸使い「あ、あの……」

「はい?」

糸使い「…………」シュルルッ

糸使い「俺たち、赤い糸で結ばれてますよね!」ギュッ

「はい……私という針の穴に、あなたという糸を通して下さいませ!」



「あー……あの二人がなんで相性がいいのか、やっと分かったよ」

蜘蛛「ナンデ?」

「二人とも、根本的なところのセンスが同レベルなんだ」

蜘蛛「ナルホド」

80 : 以下、\... - 2016/12/21 23:18:45.924 qWFgE+UV0.net 47/47

「で、晴れて恋人ができたところで、今後どうすんの、お兄ちゃん?」

「就活続けるの? それともコンビで仕事人すんの?」

糸使い「ん~……俺としてはやっぱり糸専門店を頑張りたいんだけど」

「それじゃ全然稼げないじゃん」

「大丈夫ですよ、私がデザイナーの仕事で養ってあげますから。お店に専念して下さい」

糸使い「それはいくらなんでも情けなすぎる……男として」

蜘蛛「ヒモダナ」

「いいんじゃない? ヒモでも。糸使いなんだし、ピッタリじゃん!」

糸使い「おいおい、そいつは勘弁してくれ~!」


アッハッハッハッハ……!





~おわり~

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