1 : ◆L0dG93FE2w - 2017/02/14 20:03:42 G/BAAqJc 1/37

「はぁ……魔法使いかー。今度は何のアニメの影響?」

「アニメじゃないですけど?」

「じゃあラノベ?」

「違いますけど?」

「んー、じゃああれか。 ドラマか!」

「ドラマでもないですけど?」

元スレ
幼馴染「どこにでもいるありふれた魔法使いですけど?」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1487070222/

2 : ◆L0dG93FE2w - 2017/02/14 20:11:53 G/BAAqJc 2/37

「わからん、なんだ?魔法って」

「魔法使いっていっても、使える呪文は一つだよ」

「あ、それヨシヒコのヤーツだろ? メレブ的な」

「ヨシヒコは観たけど。メレブじゃないし。むしろムラサキだし」

「ムネ・タイラさんって所?」

「なめんなよ、おう?」

「スミマセン」

3 : ◆L0dG93FE2w - 2017/02/14 20:18:40 G/BAAqJc 3/37

「まぁ、いつ魔法が使えるかは私にもわからないんだけどね」

「そうなんか」

「まぁ、相手次第、気分次第……って感じ?」

「どんな魔法かによるな……」

「世界が変わる魔法だよ」

「世界が!? 地球破壊爆発魔法みたいな?」

「そんな物騒な変化ではない!」

4 : ◆L0dG93FE2w - 2017/02/14 20:34:28 G/BAAqJc 4/37

「なんだろう……世界中の女性が巨乳になる魔法とか?」

「それ誰得?」

「……俺得?」

「ちょっとタイキックしていい?」

「スミマセン」

「まぁ、スカートだからキックとか無理だけど」

5 : ◆L0dG93FE2w - 2017/02/14 20:40:24 G/BAAqJc 5/37

「世界を変える……男女が入れ替わる魔法とか?」

「誰と誰が?」

「え?」

「あの映画みたいに私らと同い年くらいの男女が入れ替わるの?都合よく?」

「世界中が?そんな事に?」

「スミマセン」

6 : ◆L0dG93FE2w - 2017/02/14 20:41:21 G/BAAqJc 6/37

「あ、今日もおばちゃんの駄菓子屋に寄ろう」

「ん、いいですとも」

「今日は奢ってあげよう」

「え?マジで?どうした!?インフルエンザか?熱に浮かされた冬の日の幻か?」

「私が奢る事ってそんなに珍しいかな?」

「……スミマセン 結構奢ってもらってます」

7 : ◆L0dG93FE2w - 2017/02/14 20:46:11 G/BAAqJc 7/37

駄菓子屋

「おばちゃーん、これくださーい」

おばちゃん「はいな。いつもありがとうね、幼ちゃん」

「こちらこそだよ、おばちゃん。いつもお世話になってます」

おばちゃん「あらあら、幼ちゃんからそんな事言われるなんて……」

「幼、そんな事言うもんじゃないぞ?」

「何で?」

おばちゃん「雨が降るかもしれないからね、ほっほっほ」

「普段からありがとうって思ってるよ、おばちゃん!」

おばちゃん「わかってるわよ、幼ちゃん。ほっほっほ」

8 : ◆L0dG93FE2w - 2017/02/14 20:46:56 G/BAAqJc 8/37



「で?」

「ん?」

「魔法とやらはどうしたんだ?」

「んー」

「今日は魔法使えないのか?」

「相手次第って言ったでしょ」

「俺相手には発動しないのか?」

「気分次第とも言ったでしょ?」

9 : ◆L0dG93FE2w - 2017/02/14 20:52:08 G/BAAqJc 9/37

「はぁー……あ!しまったな!?」

「何?」

「俺もおばちゃんとこで何か買えばよかった」

「戻る?」

「……いや、まあいいや。明日の帰りに寄ればいいし」

「あ、そ」

10 : ◆L0dG93FE2w - 2017/02/14 20:53:52 G/BAAqJc 10/37

「幼は?何を買ったんだ?いつものすももあめ?」

「んーん。これ、はい」
スッ

「ん? チロルチョコ? くれるの?」
ペリペリ
モグモグ

「じゃあ質問。今日は何月何日だ?」

「んー、2月14日」

「せーかーい」

「……」

11 : ◆L0dG93FE2w - 2017/02/14 20:56:18 G/BAAqJc 11/37

「え?今の質問何?」

「何事も過ぎるのは良くないよね」

「?」

「ホアチャー!」
ズビシ

「痛っ! 何? 地味なローキック……」

「ハチョー!」
ズビシ

「いったいな!」

12 : ◆L0dG93FE2w - 2017/02/14 20:57:44 G/BAAqJc 12/37

「……今日学校でさ」

「んん?」

「チョコレート貰ってたっしょ」

「あぁ、袋に詰めたクッキーとかチョコとか入ったやつな」

「逆になんで気付かないん? 男、ボケてしまってるん?」

「おいおい、俺はどっちかっていうとツッコミ役だぞ?」

「そういう事を言っちゃう所がボケてるって言うの!」
ズビシ

「スネを蹴るのをやめろ!」

13 : ◆L0dG93FE2w - 2017/02/14 21:04:27 G/BAAqJc 13/37

「今日、クラスで配ってたのはー」

「ん」

「クラスの女子全員が、お金を出し合って買ったお菓子の詰め合わせで」

「んん?」

「貰えなかったらかわいそうっていう、委員長さん主導で行われたー」

「あっ!」

「バレンタインデーのやつです」

「なるほどなぁ……」

14 : ◆L0dG93FE2w - 2017/02/14 21:06:10 G/BAAqJc 14/37

「で、今、男が食べちゃったチロルチョコはー」

「おお」

「私からの義理チョコでした!」

「毎年ありがとな。そんな事ならもっと味わえば良かったか?」

「味はいつもと一緒でしょ。時間かけて食べても、ガリガリかみ砕いても」

「いや、気分的にさ」

「それを誰かに指摘される前に気付けるように頑張って」

「……はい」

15 : ◆L0dG93FE2w - 2017/02/14 21:06:56 G/BAAqJc 15/37

「で?」

「?」

「……そろそろさ」

「そろそろ?」

「本命チョコ欲しいとか思わないの?」

「そりゃ思わなくもないけどさ……」

「思わないけど?」

「そういうのはなんかこう、流れだろ?」

「流れ」

「時間が解決してくれる、的な」

「時間が」

16 : ◆L0dG93FE2w - 2017/02/14 21:07:47 G/BAAqJc 16/37

「……」
ズビシ

「いたっ!」

「…………」
ズビシッ

「おいっ、やめろ!他から見たら暴行事件だぞこれ」

「…………」
ズビシ

17 : ◆L0dG93FE2w - 2017/02/14 21:09:20 G/BAAqJc 17/37



「……気は済みましたか?」

「大体は」

「はぁ……なんでこんな事に」

「それじゃあもう、魔法発動しちゃおうかな」

「唐突だな!?」

「ここに何の変哲もないチロルチョコがあるじゃろ?」
スッ

「うん、俺がさっき食べたヤツと同じヤツだな」

18 : ◆L0dG93FE2w - 2017/02/14 21:09:58 G/BAAqJc 18/37

「はんにゃらほんにゃらぬーん」

「ぬーん!?」

「はいっ!」
サッ

「え?は?」

「急いで!急いで食べて!」

「え?え?」

「間に合わなくなっても知らないよ!?早く!!」

「おう!」
ペリペリ
パク

19 : ◆L0dG93FE2w - 2017/02/14 21:12:37 G/BAAqJc 19/37

「ふぅ……間に合ったね」

「何に?」

「魔法」

「何の魔法?」

「鈍感なのも大概にしなさいよ、マジで」

「またキックか!?」

「キックはもうしないけど」

「しないけど?」

「魔法はもう使ったから、かかるかどうかは、男次第」

20 : ◆L0dG93FE2w - 2017/02/14 21:13:11 G/BAAqJc 20/37

「俺、次第……?」

「私が使える魔法はね……」

「おう……」
モグモグ

「ギリをホンメーに変える事が出来る魔法」

「……ホンメ?」

「……」

「幼、お前一体……」

21 : ◆L0dG93FE2w - 2017/02/14 21:14:02 G/BAAqJc 21/37

「どこにでもいるありふれた魔法使いですけど?」

「ホンメってなんだ?ギリーって?」

「将来は耳鼻科の医者になるのが夢な、ただの魔法使いですけど」

「そろそろ答え教えてくれよ」

「魔法は発動しなかったみたい。また一年後くらいに使うかもね」
タタタ

「おい、なんだ?どうした?」

「今、顔見られたくない……」

「何だ?体調不良か?」

「いいから!先帰るね!」
タタタタッ

22 : ◆L0dG93FE2w - 2017/02/14 21:17:49 G/BAAqJc 22/37

「待てって!」
タタタタッ
ガシッ

「もう!鈍感!」
ズビシ

「ぐわっ……と」

「……手、放してよ」

「答えがまだだし。体調不良なら、おぶっていくし」

「もう!ギリは義理チョコのギリよ!ホンメーは本命チョコの本命よ!」

「義理……本命…………ハッ!?」

「はっ!?じゃないわよ、本当に……もういいから離して」
パシッ

「す、すまん」

23 : ◆L0dG93FE2w - 2017/02/14 21:18:29 G/BAAqJc 23/37

「で?今の反応だと、答え解ったみたいよね?」

「う、あの……その……」

「世界、変わった?」

「……」

「……変わらなかったか」

「そ、そんな事はなかったりあったり」

「なかったりあったり?」

24 : ◆L0dG93FE2w - 2017/02/14 21:19:39 G/BAAqJc 24/37

「幼が使う魔法が、その……そういう魔法だっていうならさ」

「うん?」

「俺、とっくの昔に魔法にかかってるから、世界は変わってないっていうか」

「うんん?」

「幼稚園の時にチョコ貰った時から、俺の世界は変わったっていうか」

「そういう意味では、幼は魔法使いなのかも……」

「って意味で答えに困るんだけど……幼?」

「…………」

25 : ◆L0dG93FE2w - 2017/02/14 21:21:54 G/BAAqJc 25/37

「あのさ」

「何も言わないで」

「でも」

「私が鈍かった。男の鈍さだと思ってたのは私の鈍さだったんだ」

「それは」

「だから物理攻撃系に変更!」

「???」

チュッ

「!?」

26 : ◆L0dG93FE2w - 2017/02/14 21:26:46 G/BAAqJc 26/37

「…………何か言いなさいよ」

「お」

「お?」

「俺のターン!魔法発動!」

「え?なんの……」

「俺と結婚してください!」

「は、はぁ?急に何言って…」

「俺の片思いだと思ってたけど、違うんだよな?」

「片思い?」

27 : ◆L0dG93FE2w - 2017/02/14 21:32:03 G/BAAqJc 27/37

「だって、毎年バレンタインデーはチロルチョコだったじゃねーか」

「そうだけど……」

「義理チョコだと思うだろ?高校2年にもなってチロルチョコ一個って!」

「…………」

「それが!今日!本命に!」

「…………」

「これって両想いって事…」

ズビシ

「痛い!?」

28 : ◆L0dG93FE2w - 2017/02/14 21:32:33 G/BAAqJc 28/37

「あれ?間違ってた?だってちゅーしたじゃん!」

「大声で!いう事じゃないでしょ!バカ!鈍感!」

ズビシ

「やめろ!俺の足がもう限界だぞ!」

「………」
タタタタッ

「幼?」

クルッ
「私が男に、チロルチョコしかあげなかったのは……」

「?」

「小2の時、手作りチョコレートを上げたら、不味いって言われたからよ!」

「え!?」

29 : ◆L0dG93FE2w - 2017/02/14 21:34:24 G/BAAqJc 29/37

「……覚えてないんでしょう」

「いや、克明に覚えてるけど」

「……本当に?」

「カレー風味だったもんな」

「…………それもうチョコが入ったカレールーだもんね」

「でも俺、不味いとは言ってないぞ?」

「え?」

30 : ◆L0dG93FE2w - 2017/02/14 21:36:04 G/BAAqJc 30/37

「俺は『カレーだけどチョコだね』って言っただけで」

「不味いとは言ってないぞ。だって美味しかったしな」

「それ、カレーとしてって事?」

「幼からバレンタインデーに貰った物が、カレーなはずねーだろ」

「ちゃんとチョコとして食べたさ。嬉しかったし」

「……ますます私が鈍感だったって事じゃない」

31 : ◆L0dG93FE2w - 2017/02/14 21:42:39 G/BAAqJc 31/37

「来年はさ」

「?」

「手作りチョコ、くれよ」

「……」

「いや、気持ちこもってれば、チロルでもブラックサンダーでもなんでもいいけど」

「必ずや!」

「う?」

32 : ◆L0dG93FE2w - 2017/02/14 21:47:07 G/BAAqJc 32/37

「必ずや、男が美味しいって言ってくれるチョコを作って渡すから!」

「まずはガーナに飛んで、カカオの原料を手に入れる所から!」

「やり過ぎだろ!それはやめろ!」

「でも……」

「自分で言っただろ、ありふれた魔法使いだって」

「魔法は……」

「幼が使う魔法で、チロルだって本命チョコに大変身だろ?」

「それは……」

「貰う俺がそれが良いって言ってるんだから、いいじゃん」

「…………わかった」

「なら良かった。ガーナとか行くなよ?」

「出来る限りの努力をします……」

33 : ◆L0dG93FE2w - 2017/02/14 21:47:48 G/BAAqJc 33/37

「じゃあ取り合えず」

「?」

「さっきキャンセルされちまったんで、ちょっと弱めの俺の魔法」

「弱め?」

「幼さん!俺と付き合って下さい!」
ペコ

「あわわ、それもう魔法じゃないし。ただの告白だし……」
オロオロ

「幼の気持ち次第で魔法になるヤーツ」
ニヤリ

「くっ……」

34 : ◆L0dG93FE2w - 2017/02/14 22:01:42 G/BAAqJc 34/37

「返事は?」

「……さっきのキスでわかるでしょ!」

「それでも、魔法の言葉が欲しい訳よ。俺としては」

「……私で良ければ、お願いします」
ギュッ

「!?」

「……こうして抱きつくのも久しぶりだよね」

「ちょ、照れる。流石に。道の真ん中では」

「これからも、ずっとぎゅってしていくから」
ぎゅー

「マジ、ちょっと。いくら寒くてもこれは無い」

「嬉しくて恥ずかしさなんかわからん!」
ぎゅーーーー

35 : ◆L0dG93FE2w - 2017/02/14 22:08:42 G/BAAqJc 35/37

「なぁこれからさ」

「んんーー?」
ぎゅうーー

「ずっとこうやって過ごせたらいいよな」

「そうだね、ずっとね」

「でもそろそろな?」

「?」

「そろそろ離れないと、公衆の面前だぞ?」

「私は別に誰に見られてもいいもん!」

36 : ◆L0dG93FE2w - 2017/02/14 22:09:39 G/BAAqJc 36/37

「……じゃあさっきからさ」

「さっきから?」

「道向こうから俺の事、すっげー睨んでるおじさんをさ」

「おじさん?」

「説得する魔法、使えるようになってくれよ?」

「んー、どうだろう。そんな魔法は使えない、ありふれた魔法使いですから」
ぎゅーーー

幼馴染の父「…………」ジーーー


(俺は今夜、死ぬかもしれん)

37 : ◆L0dG93FE2w - 2017/02/14 22:15:16 G/BAAqJc 37/37

おわり

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