―コンビニ―
店長「またこんなしょうもないミスをして! もっとしっかりしてくれないと!」
ゆとり「はぁ」
店長「なんだ、その返事は!」
ゆとり「はぁ……」
店長「やる気があるのかね!?」
ゆとり「あるわけないでしょ? たかがコンビニのバイトなんて」
店長「~~~~!」
元スレ
ゆとり「たまには世の中の役に立ちたい!」老害「ワシも!」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1480510808/
―道ばた―
ドンッ!
通行人「あ、すみません」
老害「なにがすみません、じゃ! チンタラ歩きおって!」
通行人「え……」
老害「もしワシがこけてたらどうするつもりじゃ! 年寄りはもっといたわらんかい!」
通行人「なんだよ、謝ってるのに……頭おかしいんじゃねえの……」スタスタ
老害「話は終わってないぞ! 待てーっ!」
―コンビニ―
ウイーン…
老害「近頃の若いもんは……」ブツブツ…
ゆとり「しゃーせー」
老害(たまにはコーヒーでも飲んでみるかのう)
老害「店員さん、このマシーンでコーヒーを飲みたいんじゃが」
ゆとり「はぁ」
老害「む、なんじゃその態度は! 客が質問しておるというのに!」
ゆとり「はぁ……?」
ゆとり「レジで注文してカップ受け取ったら、あとは説明書きのとおりやりゃいいんすよ」
老害「そうじゃない。お前さんの態度が気に食わないっていったんじゃ」
ゆとり「はぁ……」
老害「ほらまた! なんじゃ、その態度は!?」
老害「ワシが若い頃にはもっとこう……店の人とお客の間には、目に見えない絆のようなものが……」
ゆとり「はぁ、めんどくせえ……老害かよ」
老害「!」カチン
老害「自分の接客の不備を棚にあげて、なにが老害じゃ!」
ゆとり「不備って、ちゃんと説明したじゃないすか」
老害「説明すりゃいいってもんじゃないじゃろ! ワシが若い頃は……」
ゆとり「はぁ……」
老害「またその気の抜けた返事をしおって!」
老害「どうせアレじゃろ? お前さん……ゆとりってやつなんじゃろ?」
ゆとり「!」カチン
ゆとり「誰がゆとりだ! この老害!」
老害「なんじゃと! このゆとり!」
ゆとり「あんたみたいなジジイどもがのさばってるから、俺らみたいな若者は苦労すんだよ!」
老害「ふん、人間若い頃に苦労して、老いたらゆったりする、そういうもんじゃ!」
老害「お前さんこそ、若いんじゃからもっと牛馬のように働かんかい!」
ゆとり「なんだと~!?」
老害「やるか~!?」
ギャーギャー! ワーワーッ!
店長「!?」ギョッ
―町―
ゆとり(はぁ……さっきはあの老害ジジイのせいでひどい目にあった)
ゆとり(店長にはこっぴどく叱られるし……あのジジイが10:0で悪いのに)
ゆとり(ああいうクソジジイは保健所で殺処分するべきだって、マジで)
ゆとり(俺が総理大臣だったら、絶対そういう法律作ってやるのに)
ゆとり(こんな日は……喫茶店でコーヒー飲みながら、今日発売のゲームやるとするか)
―喫茶店―
ウェイトレス「いらっしゃいませ。何名様ですか?」
ゆとり「一人です」
ウェイトレス「只今大変混み合っておりまして、相席になってしまうのですが……」
ゆとり「別にいいすよ」
ウェイトレス「こちらへどうぞ」
ゆとり(どうせゲームやるんだし、誰かと一緒でも関係ないしな)
ウェイトレス「こちらです」
ゆとり「……!」ハッ
老害「……!」ハッ
ウェイトレス「いかがなされました?」
ゆとり「……いえ」
ゆとり「さっきはどーも」ドスッ
老害「ふん」
ゴゴゴゴゴ……!
ウェイトレス(すごい殺気だわ……! 相席にしたのはまずかったかも……!)
ゆとり「いっとくけど、俺ゲームやるんで、集中したいんで、話しかけてくんなよな」
老害「ワシとて読書をしておる。誰が話しかけるかい」
ゆとり「……」
老害「……」
ゆとり「……」カチッカチッ
老害「……」ペラ…
ゆとり「……」カチカチカチッ
ゆとり「!」ボーンッ
ゆとり「うわ、つまんね。これクソゲーだわ。もう飽きた」ポイッ
老害「早くね!?」
老害「まだ遊び始めて10分も経ってないじゃろ!?」
ゆとり「俺、むずいゲーム嫌いなんだよ。たかがゲームでストレス溜めたくないし」
ゆとり「ま、いいや。どうせチート使ってクリアするから」
老害「なんというゆとり……」
ゆとり「ほっといてくれ」
ゆとり「ジイさんこそ、さっきから全然ページ進んでなくね?」
老害「ワシは老眼じゃから、細かい字は見づらいんじゃよ」
老害「あとでこの出版社に抗議の投書をしてやる! 今の三倍ぐらい字をでかくしろと!」
ゆとり「なんという老害……」
老害「やるか!?」
ゆとり「やるのか!?」
老害「いや待て……今ここで派手に争うのはマズイ」
ゆとり「そりゃそうだな。さすがの俺でも分かる」
老害「今は大人しく席に座っていよう。呉越同舟という言葉もあるしのう」
ゆとり「嗚咽どうしよう?」
老害「全然ちがう!」
老害「お前さんはコンビニで働いてたが、いわゆる正社員というやつなのか?」
ゆとり「まさか」
ゆとり「あれはただのバイトだよ。つまりフリーターってやつ」
老害「フリーのターか。将来が不安にならんのか?」
ゆとり「別に……下手に責任負いたくないし、今の方が気楽でいいね」
老害「もっともらしいことをいっとるようじゃが、よくできた逃げ口上のようにも聞こえるのう」
ゆとり「う……!」
ゆとり「ジイさんこそ、なんかやってるのかよ」
老害「ワシはとっくに定年を迎えてな。今は年金暮らしじゃ」
ゆとり「へえ、気楽なもんだ」
老害「気楽なもんかい」
老害「家族にゃお荷物扱いされ、やることもないからこんなとこで時間潰しとるんじゃ」
ゆとり「で、そうやって溜まったイライラを、若者を怒鳴り散らして発散してるってわけだ」
老害「ぐ……!」
ゆとり「はぁ~……」
老害「はぁ~……」
ゆとり「ま、しょうがない」
ゆとり「結局、世の中ってのは俺らみたいなあぶれた人間のためにできてないんだ」
老害「そうじゃな」
老害「ワシらみたいなもんは、世の中の隅っこで他人からうっとうしがられながら」
老害「みじめに生きてくしかないんじゃ……」
ゆとり「ハハハ……」
老害「ハハハ……」
ゆとり「……」
老害「……」
ゆとり「だけどさ俺……」
老害「ん?」
ゆとり「あんたみたいなジイさんだから、本音いっちゃうけど――」
ゆとり「本当の本当は――」
ゆとり「……」グッ
ゆとり「たまには世の中の役に立ちたい!」
老害「ワシも!」
ゆとり「よし、だったら俺たち二人でなにか世の役に立つことをしよう!」
老害「そうじゃな!」
ゆとり「といっても、なにすればいいと思う? ジイさん」
老害「まあ、やっぱり……なんらかの社会問題を解決するってのがいいんじゃないかのう?」
ゆとり「社会問題といえば……歩きスマホ、とか?」
老害「それじゃ! 歩き端末いじり!」
老害「ワシらの手で、歩き端末いじりを取り締まるんじゃ!」
ゆとり「いいねえ!」
次の日……
―町―
ピピーッ!
学生「え?」
老害「コラーッ、歩きながらスマホンをしちゃいかんだろうが!」ピピーッ
ゆとり「危ないだろ!」ピピーッ
学生「なんだよ、警察でもないのに……」
老害「お、あっちにもいるぞ! 神風のように突撃じゃ!」
ゆとり「よっしゃ、突撃!」タタタッ
警官「……あなたたち」
ゆとり「なんです、おまわりさん?」
老害「警視総監賞なら間に合っとるぞ」
警官「んなもん渡しませんよ」
警官「通行の邪魔だと、大勢の方から苦情が出ています」
警官「ただちに取り締まりごっこをやめて下さい」
ゆとり&老害「……はい」
老害「ダメじゃったか……」
ゆとり「しゃーない。だったら困ってそうな人を探そう」
子供「……」ウロウロ
老害「お、あんなところで子供が一人で歩いておるぞ」
ゆとり「きっと迷子だ!」
老害「どうしたんじゃ、坊や?」
ゆとり「お兄さんたちが助けてあげよう」
母「なにやってるの、あなたたち!」
母「私の可愛い子供を誘拐するつもりね!」
ゆとり「えええええ!?」
老害「いや、違うんじゃよ。誤解じゃよ。話せば分かるんじゃよ」
母「問答無用! ほざくな下郎! すぐ110番に電話してくれるわ!」
ゆとり「ま、まずいぞジイさん!」
老害「撤退じゃ!」
老害「あ、あそこにどことなく困ってそうな女性がおるぞ」
ゆとり「ホントだ」
女「キャーッ! 痴漢よーっ!」
ゆとり&老害「見ただけで!?」
ゆとり「ハァ、ハァ、ハァ……」
老害「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ……」
ゆとり「ジイさん、やっぱり俺らには無理だよ」
ゆとり「俺らは世の中の役に立てない運命になってるんだよ。社会のゴミなんだよ」
老害「ったく、相変わらず諦めが早いのう」
ゆとり「引き際がいい、といってもらいたいね」
老害「まだじゃ……まだワシは諦めておらん」
ゆとり「といっても、どうするわけ? 今のところやってること全てが裏目なんだけど」
老害「“困ってそうな人”ではなく“確実に困ってる人”を探すんじゃ」
老害「そうすれば、ワシらの行動が裏目に出ることはあるまい」
ゆとり「確実に困ってる人、ねえ……」
ゆとり「あ、そうだ」
老害「なんじゃ?」
ゆとり「先週、隣の県で局地的な大きめの地震が起きたじゃん」
老害「あったっけ?」
ゆとり「あったんだよ! こっちだって結構揺れただろ! ったくボケてんじゃねーのか」
ゆとり「でさ、死人や怪我人は出なかったけど、家の塀なんかが派手に壊れた地域があって」
ゆとり「それの後片付けに苦労してる……みたいなニュースをやってた」
ゆとり「被害も軽くて大して報道されなかったから、人手も集まらない……って」
老害「それじゃ!」
老害「ワシらで被災した人達を助けに行くんじゃよ!」
老害「被害は軽くとも困ってるのは確実なんじゃから、少なくとも裏目には出ることはないじゃろ?」
老害「ガレキの片付けをしてやれば、たちまちノーベル平和賞じゃわい」
ゆとり「まあ……たしかに」
ゆとり「で、なにで行くわけ? 電車?」
老害「ワシをナメてもらっては困る……マイカーじゃ!」
ゆとり「マイカー!?」
―車―
ブロロロロ……
ゆとり「まさか、本当に行くことになるとは……しかもジイさんと二人でドライブて」
老害「善は急げ、というじゃろ。一時間半もあれば到着するじゃろうて」
ゆとり「千羽鶴ならぬ十羽鶴なんて折らされるし」
老害「本当は千羽にしたかったんじゃが、時間がないのでな。まあ心の癒やしにはなるじゃろ」
ゆとり「なるかなぁ……」
ゆとり「ところでジイさん、運転は大丈夫なの?」
老害「たまにアクセルとブレーキを踏み間違えそうになるが、大丈夫じゃ」
ゆとり「大丈夫じゃねえだろ、それ! 免許返納しろよ!」
老害「なぁに、間違えそうになるだけで、間違ったことは一度もない!」キリッ
ゆとり「いやいやいや、十分やべえだろ! 降ろしてくれぇぇぇぇぇっ!」
ブロロロロ……
―被災地―
ゆとり(どうにか事故らずたどり着けた……)ホッ
老害「これ……ワシとこいつで作った十羽鶴です」
地元民「ど、どうも」
老害「う~む、あまり喜ばれてない気がする」
ゆとり「そりゃそうだろう……絶対明日にはゴミ箱に捨てられてるよ」
ボランティア「大丈夫かい? おばあちゃん」
老婆「ありがとうねえ。本当に助かるよ」
ボランティア「困ったことがあったらなんでもいってね」ニッコリ
老婆「そういえば、さっき財布をなくしてしまって……」
ボランティア「それはいけないな。オレが一緒に探してあげるよ」
老害「お、お前さんと同じぐらいの青年が、積極的にボランティアしとるぞ。偉いのう~」
ゆとり「ちぇっ、どうせ俺は自分から動かないよ」
老害「どれ、ワシらもガレキを運ぶとするか――」グッ
老害「お、重い……!」ヨロヨロ…
ゆとり「だらしないな、ジイさん」グッ
ゆとり「お、重い……!」ヨロヨロ…
地元民「おいおい、あんたたち危ないよ! やめた方がいい!」
ボランティア「オレが運びますから、あなたたちは休んでて下さい!」
ゆとり&老害「はい……」
老害「はぁ~……」
ゆとり「はぁ~……」
老害「結局ワシらは迷惑かけに来ただけじゃったな」
ゆとり「うん……」
老害「やっぱり……ワシらが社会の役に立つのは無理なのかのう」
ゆとり「無理なんだよ」
ゆとり「豚はおだてりゃ木に登るし、バカでさえ使いようだけど」
ゆとり「ゆとりと老害のタッグなんてどうしようもないんだよ。なんもしない方がマシなんだよ」
老害「……帰るか」
ゆとり「帰ろう。あと、帰りは俺が運転するよ(怖いし)」
老害「――ん?」
ボランティア「……」コソコソ
老害「さっきのボランティアの若者じゃ。あんなところでなにをコソコソしとるんじゃ?」
ゆとり「あの雰囲気……見覚えがある」
老害「へ? お前さんの知り合い?」
ゆとり「いや、そうじゃなくて」
ゆとり「コンビニってさ、万引きが結構多いんだよね。めんどいから見つけても放っておくけど」
ゆとり「でさ、万引きやる奴と……今のあいつ、すっげえ似てるんだ」
老害「……なに!?」
老害「ど、どうするのじゃ?」
ゆとり「……どうするって、放っておくしかないだろ。なにかやったって確証もないし」
老害「そりゃそうじゃが……」
ゆとり(どうせ、裏目に出るに決まってるけど……)
老害(どうせ、裏目に出るに決まっとるが……)
ゆとり「とりあえず、ちょっと声かけてみる?」
老害「そうじゃな」
ゆとり「あのー、ボランティアさん」
ボランティア「!」ビクッ
ボランティア「なんですか?」
ゆとり(こっからどうしよ……まさか“なんか盗んだだろ”って聞くわけにもいかないし――)
老害「泥棒ッ!!!」
ボランティア「!!!」ビクッ ボトッ
ゆとり「財布!(明らかに年寄りが持つようなやつだ! 多分さっきのばあちゃんのやつ!)」
ゆとり「やっぱりあんた……ボランティアをよそおった泥棒だったのか!」
ボランティア「ちいっ!」
ドゴォッ!
ゆとり「ぐほっ……!」
ボランティア「あばよ!」タタタッ
ゆとり「げほっ、げほっ……! 親にもぶたれたことないのに……!」
老害「大丈夫か!?」
ゆとり「あいつ、車で逃げようとしてる……多分、他にもいっぱい盗んでる……」
ゆとり「追おう!」
老害「よっしゃ!」
―車―
ブロロロロ……
老害「よーし、絶対逃がさんぞ!」
ゆとり「頼むぞ、ジイさん!」
老害「だけど、あの車のナンバーは覚えたし、無理に追う必要はないんじゃないか?」
ゆとり「あの車自体、盗品の可能性がある。だとしたらナンバー覚えても無意味だろ」
老害「そりゃそうじゃな。というかナンバーもう忘れちゃった」
ブロロロロ……
ブロロロロ……
ボランティア「ちっ、しつこくついてきやがる! うざってえ!」
ボランティア「だったら――」
ブロロロロ……
老害「どんどん人気のない方向に走っていくぞ」
ゆとり「俺らに追われたせいで、道に迷ったのかな?」
老害「だとしたら敵は混乱しとるということか! チャンスじゃな!」
ゆとり「お、どうやらあいつ、森の中に車を止めるつもりだ! 俺らも止めよう」
―森林―
老害「こんな森の中にやってきて、どうするつもりじゃろ?」
ゆとり「さあ……」
ボランティア「こんなとこまでノコノコついてきてくれてありがとよ」
ゆとり&老害「!」
ボランティア「ここでなら、てめえらをブッ殺しちまっても、どうとでも処理できる」
ボランティア「さあ、まとめてかかってきな」パキポキ…
ゆとり「なるほど、こういうことか……ジイさん、腕っぷしに自信は?」
老害「力道山に憧れて、空手チョップの練習は腐るほどしたぞ」
ゆとり「力道山? なにそれ?」
老害「知らんのか! あのプロレス王を! これだからゆとりは……」
ゆとり「うっせえ老害!」
老害「とにかくゆくぞ! キエエエエエッ!」タタタッ
ゆとり「うおおおおおおおおっ!」タタタッ
ドカッ! バキッ! グシャッ!
老害「うう……」ピクピク…
ゆとり「つ、強い……」ピクピク…
ボランティア「ザコどもが……追っかけてこず、サツにでも通報してた方がよかったのにな」
ボランティア「察しの通り、オレは火事場泥棒よ」
ボランティア「災害あるところにオレあり……今までにパクッた金品の総額はおそらく億を超える」
ボランティア「オレの正体を知らず、オレを神様でも崇めるように感謝するバカどもの財産をかすめとる!」
ボランティア「これがヤミツキになっちまうんだぁ~、ハハハハハッ!」
ボランティア「ま、今回の地震はチンケだったから、収穫もチンケだったけどよォ~」
老害「なんという外道じゃ……」
老害「だが、ワシらでは勝てん! ここはワシに任せて、お前さんは逃げ――」
シーン…
老害「――いない!? あいつ、一人で逃げやがった!」
ボランティア「ちっ、あのヘタレは逃げちまったか。まあいい、あのケガじゃ遠くにゃ行けないだろう」
ボランティア「まずはジジイ、てめえからあの世に送ってやるぜ!」
ボランティア「これで高齢化社会が少しは解消されるってもんだ!」
老害(力道山よ、ワシに力を!)
老害「か、空手チョップ!」ペチッ
ボランティア「痛くもかゆくもねえよ! くたばれ、老害!」ガシッ
老害「無念じゃ……!」
ブロロロロ……!
ボランティア「うわっ!?」サッ
ボランティア「な、なんだ、車が突っ込んできやがった!」
ゆとり「ちっ、外したか」ブロロロ… キキッ
老害「おおっ!」
老害(あいつ、逃げたと思ったら、ワシの車を運転しに戻っておったのか!)
ゆとり「次は外さねえ、アクセル踏み込んでハネ飛ばしてやる」ブロロロ…
ボランティア「お前、なに考えてんだ!」
ボランティア「こっちは車から降りて勝負してやってるのに……きたねえぞ!」
ゆとり「悪いな……俺、ゆとりだから、俺TUEEEしたいから」
ゆとり「すぐチートとかに頼っちゃうんだよね~」グンッ
ブロロロロロ……!!
ボランティア「わっ、わわっ!(避けきれねえっ!)」
ブロロロロロロ……!!!
ボランティア「うわあああああああああああああっ!!!」
――キキキィッ!!!
ボランティア「あ、ああ、あ……」ジョボボボ…
ゆとり「ふうっ……(あっぶねえ、急ブレーキが間に合った……)」
ボランティア「……」ピクピク…
老害「こいつめ、失神しとるわ。ざまあじゃな」
ゆとり「まあ、もし俺らが同じ目にあってたら多分ショック死してるだろうけど」
老害「ハハハ、いえとる」
ゆとり「……ジイさん、俺たちでもやれたな」ニヤッ
老害「やったのう」ニカッ
ゆとり「イエーイ」パシッ
老害「いえーい」パシッ
―被災地―
地元警官「悪質な窃盗犯逮捕に、ご協力ありがとうございました!」
地元民「いやー、まさか彼が泥棒だったとは……しかも常習犯とは……」
老婆「おかげで財布が戻ってきました……ありがとう……」
ゆとり「いえいえ、俺たちなんかが役に立ててよかったです!」
老害「これからは、ああいう善人になりすました悪党に気をつけて下され」
ゆとり「じゃ、帰ろうか」
老害「そうじゃな」
―車―
ブロロロロ……
ゆとり「いやー……色々あった二日間だった」
老害「うむ、この年になってこんなめまぐるしい経験をするとは思わんかった」
ゆとり「……っと、すみません。今からはちゃんと敬語使います」
老害「へ? いらんよ、今さら。気持ち悪い」
ゆとり「気持ち悪いとはなんだ! 老害!」
老害「やかましいわ、ゆとり!」
ゆとり「ハハハ」
老害「ハハハ」
ゆとり「ジイさん、俺、明日からはもうちょっとシャキッと生きてみるよ」
老害「ワシもじゃ……もうちょっと寛容に生きてみようと思う」
ゆとり「とかなんとかいって、この熱い決意も寝て起きたら消えてたりして!」
老害「ありえる! ワシら、しょせん老害とゆとりじゃしな!」
ゆとり「でも、ま……なんかこれからは俺の人生、もうちょっとマシになるような気がするよ」
老害「ワシもじゃ」
ゆとり「ジイさんは残り少ないけどなー」
老害「ほっとけ!」
ゆとり&老害「ハッハッハッハッハ……」
ブロロロロ……
―おわり―
地域の教育力向上がゆとり教育の第一目標なんだが、つまりゆとり教育を批判=自分は教育能力がありませんってブーメランがぶっささるんだよな