1 : ◆nRrk0j/cII - 2017/01/09 22:54:55.66 k5oh5eLS0 1/19


もっと触って

もっと確かめて

私の存在を証明して

それができるのは貴方だけ

それが分かるのは私だけ

ほら雨が降り出した

この雨みたいに混ざり合おう

ずっと一緒に

永遠に



元スレ
女「私さ…」男「そっか」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1483970095/

2 : ◆nRrk0j/cII - 2017/01/09 22:55:48.80 k5oh5eLSo 2/19


「あ、雨だ…やだなぁ」

「どうして?」

「だってさ、つまんないじゃん」

「何が?」

「外に出るのも面倒だし気分も落ち込むじゃん」

「そうかな」

「男はそうじゃないの?」

「僕は好きだよ、雨」

「ふーん…」


私は雨が嫌いだ

何よりも濡れるのが

気分が沈むのが

鬱々とした感情が押し寄せてくるのが

彼はなんで雨が好きなんだろう?



3 : ◆nRrk0j/cII - 2017/01/09 22:56:47.85 k5oh5eLSo 3/19


「ねえ、男はどうして雨が好きなの?」

「どうして、か…。うーん…雨の音かなぁ…ぽつぽつ、ざーざーって感じの」

「どういうこと?」

「雨の音を聞いてると落ち着くんだ。だからかな。あと雨の時に気分が沈むって言ったじゃん?」

「うん」

「僕はそれが心地いいんだよね」

「うーん…よく分かんないや」

「これで分かるなら女も雨が好きだろうしね」

「あ、確かに。で、どうやって帰ろうか?」

「実はここに折りたたみ傘があってね
…?」

「あっずるい!半分入れて!」

「言うと思った…いいよ」

「ありがと」


雨が好きな理由はよく分からなかったけど

一緒に帰れるし何でもいいや なんて思った


4 : ◆nRrk0j/cII - 2017/01/09 22:57:24.63 k5oh5eLSo 4/19


「ありがとね、良かったら寄ってく?少し濡れてるでしょ?」

「あー…でもさ…」

「今日さ、ウチ親いないんだよね」

「もっとダメじゃん。じゃ、また明日ね?」

「うん…また明日……」


私に魅力が無いのかな…

どうしてだろう…

ちょっぴり悲しくなった


「おはよ」

「……ん」

「なんかあったの?」


お前のせいだよバーカ!

って言ってやりたい気持ちもあったとか



5 : ◆nRrk0j/cII - 2017/01/09 22:57:50.67 k5oh5eLSo 5/19


「男…一緒にご飯たべよ…」

「あーちょっと待ってて、パン買ってくるから」


昨日のことは何だったのか

少し聞こうと思ってお昼に誘った


「お待たせ」

「買えた?」

「それがさ、ほとんど売り切れで1個だけ…」

「なにそれ、私のお弁当少し分けてあげるよ」

「いいの?」


「ここの教室は誰もいなくて良いね」

「そうだね」

「っと…はい」


お弁当箱のフタに乗せて男に渡す



6 : ◆nRrk0j/cII - 2017/01/09 22:59:13.11 k5oh5eLSo 6/19


「ありがと…ほんと助かる」

「気にしないで。はい、これ使って」

「あ、ありがと」


「わ…めっちゃ美味いこれ…誰が作ってんの?」

「私だよ」

「すごい…料理が上手いっていいね」


やった褒められた

これだけですごく満たされた気分になった


「ごちそうさまでした」

「お粗末さま」

「って…女は食べてないじゃん」

「お箸が一膳しか無かったから」

「そうだったんだ…ごめんね、ありがと」

「いいよ別に。いただきまーす」

「待ってそれって間接キスじゃん、いいの?」

「男となら良いかなって」

「気にしないの?」

「気にしないよ?」

「ふーん…」

「あ、誰でも良いってわけじゃないからね?」


念のためにね

これはちょっとドキドキした


7 : ◆nRrk0j/cII - 2017/01/09 22:59:50.69 k5oh5eLSo 7/19


「ごちそうさまでした…そうそう、聞こうと思ってたことがあるんだ」

「……なに?」

「昨日さ、ウチに寄っていかないかって言ったじゃん?」

「そうだね」

「なんであれ断ったの?」

「いやそれは…迷惑かなって思ったしそれに…」

「それに?」

「やっぱり上がっちゃいけないかなって思って」

「なにそれ。迷惑ならあんなこと言わないよ」

「そっか…」

「それにね、誘ったのは男だからだよ?誰にでも言うわけじゃないんだからね?」

「え……それって…」

「私にこれ以上言わせるの?」

「あー………ごめん…」

「それでどうなの?」

「ううん…少し考えさせてもらって良い?」

「なにを?」

「返事を」


失敗しちゃったかな

ああつらい

こんなにつらいものなんだ


8 : ◆nRrk0j/cII - 2017/01/09 23:00:25.08 k5oh5eLSo 8/19


「あ、おはよ」

「………ん」

「あのさ、良かったら今日、一緒にお昼食べない?」

「今日はいいや…ありがとね」


なにしてんだろ

せっかく誘われたのに


「あ、女…帰らない?」

「あ……うん」


「なんか今日もすっきりしない天気だね」

「………」

「あはは……」

「………」


こんなはずじゃなかったのに

なんて言い訳がましいな

こんな時でも明るく振る舞えたら良いのになあ



9 : ◆nRrk0j/cII - 2017/01/09 23:00:59.42 k5oh5eLSo 9/19


「あのさ…昨日の返事なんだけど…」

「………たくない…」

「女…?」

「聞きたくない……」


バカみたい

拗ねるなんて


「女が聞きたくなくても僕は言いたいから言うよ」

「っ……!」

「あのさ…考えたんだけ」

「やめて!聞きたくない!!」

「どうして?」

「……だって…私が思ってる答えと違うから…」


なぜか泣きそうになって

それで下を向いていた私の手を

男の手が優しく包んだ



10 : ◆nRrk0j/cII - 2017/01/09 23:01:39.60 k5oh5eLSo 10/19


「………なんのつもりよ…」

「これは女が思ってた答えと違うの?」

「バカ…バカ……違うわけ…ないじゃん……」


涙が一粒 地面に落ちた


「私ね…」

「うん?」

「振られるんじゃないかって思ってたんだ」

「どうして?」

「私が誘っても断られたから…魅力がないのかなって」

「それは昨日も言ったじゃん、良くないって思ったからだよ」

「良くなくない!!私がどれだけ勇気を出したと思ってるの!?」

「そうだね…ごめんね」


11 : ◆nRrk0j/cII - 2017/01/09 23:02:08.99 k5oh5eLSo 11/19


「あ、そうだ。良くないって思ったってどういうこと?」

「付き合ってもなかったからね、お堅いかな」

「堅いと思うけど…その方が好きかな」

「あはは、よかった」


「じゃ、また明日ね」

「うん、また明日」


今日も誘いたかったのだけど

男が用事があるみたいだったから断念した


12 : ◆nRrk0j/cII - 2017/01/09 23:02:34.55 k5oh5eLSo 12/19


「ね、お昼食べよ」

「いいよ、少し待ってて」

「またパン?」


「「いただきまーす」」

「卵焼き…いる?」

「いいの?」

「うん、はいあーん」

「………うん、なんていうか…これは恥ずかしいね」

「うん…美味しい?」

「そりゃもう」

「あのさ…良かったらこれから私がお弁当作ろっか?」

「いやそれはさすがに申し訳ないよ」

「私が作りたいの」

「…そっか、じゃあお願いします」


お弁当を作る、なんて

カップルみたいでワクワクしちゃう


13 : ◆nRrk0j/cII - 2017/01/09 23:03:05.10 k5oh5eLSo 13/19


「あーまだ雨止んでない…どうしようか?」

「傘あるんでしょ?帰ろうよ」

「わかった」

「傘入れてくれる?」

「いいよ」


この前みたいに傘に入る

男の手に私の手を伸ばしてみる


「どうかした?」

「手……つなご」

「うん」


優しく 力強く 私の手を包んでくれた


「私ね…雨、好きになったよ」

「そっか、よかった」

「男さ、ちょっと濡れてない?」

「いやそんなに…あぁいや、濡れてるよ」

「えへへ。ウチ、寄ってく?今日、親いないんだ」

「あー…それじゃお言葉に甘えて」


14 : ◆nRrk0j/cII - 2017/01/09 23:03:32.31 k5oh5eLSo 14/19


「お邪魔しまーす…」

「そんなに気を使わなくてもいいのに。とりあえず部屋行こ?」


部屋に招く

それがこんなにも緊張する行為だって知らなかった


「あぁ…何というか…」

「何というか?」

「やっぱり女の子なんだなって」

「なにそれ、あんま見ないでね?恥ずかしいから」

「それ矛盾してない?」

「まあいいじゃん、タオル持ってくるから少し待ってて?」


タオルを取りに行くついでに水を飲む

深呼吸をして気持ちを落ち着かせる


「はい」

「あ、ありがと」


15 : ◆nRrk0j/cII - 2017/01/09 23:04:00.91 k5oh5eLSo 15/19


「助かったよ。このタオルどうしたらいい?」

「私が持ってくよ。なんか飲み物いる?」

「いいの?」

「いいよ。好きな飲み物とかないの?」

「女が飲みたいのでお願い」

「ん」


ヤカンに水を入れて火にかける

お湯が沸くまでが

長く感じるのは

気のせいだろうか

それとも悪魔のせいだろうか


16 : ◆nRrk0j/cII - 2017/01/09 23:04:43.60 k5oh5eLSo 16/19


「お待たせ、紅茶だよ」

「ありがとね」

「ミルクとかいる?」

「ううん、このままで」

「あ、私と一緒だ」


何となく気まずい

話題がない

どうしよう


「………」

「……あのさ…」

「な、なに?」

「私たちってさ、付き合ってるよね」

「うん」


何を言い出すんだ私の口は


17 : ◆nRrk0j/cII - 2017/01/09 23:05:13.28 k5oh5eLSo 17/19


「じゃあさ…」


ちらっとベッドに目をやる


「あー………」

「ダメ?」

「ダメじゃないけど…」


男の顔が近づいてきた

目を閉じる

心臓が止まっちゃうんじゃないか

それぐらい激しく動いていた


「ん……」

「はっ……」


なにこれ

すごい

こんなに幸せなものが

今までにあっただろうか


18 : ◆nRrk0j/cII - 2017/01/09 23:05:46.66 k5oh5eLSo 18/19


「じゃあさ…」

「うん」





「私ね…雨、好きだよ?」

「そっか。どうして?」

「だってこんなに幸せなんだもん」

「僕も」


そうして2人でそっと笑った



おしまい

19 : ◆nRrk0j/cII - 2017/01/09 23:13:27.18 k5oh5eLSo 19/19

以上です。乙やいいねって言ってくれる方ありがとうございます。返信はしてませんが励みになります。


次の話からは少しテーマが変わって、重め暗めの話になります(該当するところでも警告はしますが念のため)。苦手な方はご注意ください。ではまた。

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