60 : VIPに... - 2014/08/02 00:31:33.65 LcaJ0aHm0 1/307

ベジータ編の前に注意事項。

ドラゴンボールからのキャラは、基本的に原作準拠の設定です。

原作にない部分は、私が思う変では無い範囲で補強します。(一人称がなかったキャラの一人称等)


アニメやゲームや自分の思っているドラゴンボールの設定と違うというクレームは無しでお願いします。

(この様な注意事項は書きたくないのですが、以前ドラゴンボールのSSを書いた時に原作を無視したクレームが多数きて、嫌な気分となり、適当に終わらせてしまったので一応書かせてもらいました。それが許容できない人は文句を書きたくなる前に読まずに退散してください。お互い嫌な思いをしないで済みます。)



関連SS
「惑星ベジータ出身!サイヤ人の王子ベジータだ!」ハルヒ「」【ハルヒ編】
http://ayamevip.com/archives/49233247.html

元スレ
「惑星ベジータ出身!サイヤ人の王子ベジータだ!」ハルヒ「」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1406739076/
ベジータ「ハルヒ達と孤島に夏合宿することになった」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1441135180/

61 : VIPに... - 2014/08/02 00:33:05.12 LcaJ0aHm0 2/307

きっかけは些細な事だった。

「ちょっと、ベジータ!近所の人に挨拶くらいしてよね!」

トレーニングを終えて一息入れているオレにブルマが怒鳴ってきた。

「どうした?」

オレは高たんぱく飲料を飲みながらブルマに聞いた。

「どうしたもこうしたもないわよ!」

ブルマは何故か怒っており、まくし立てる。

「働かないし、近所の人にも挨拶はしないし常識がなさすぎるのよ!」

「………」

「高校生の子供を持つ親でしょ!少しは社会常識を身につけてよ!」

「だが……」

「だがもヘチマもないの!少しはトランクスのことも考えてあげてよ!」

「トランクスのこと?」

「外で父親の話にすごく気まずくなってるのよ!いっそのこと片親の方がいいくらいにね!」

「………トランクスに迷惑をかけてたのか」

「そうよ!だから少しはまともに生活してくれないと家族として迷惑なの!」

「そうか……気を付けよう」

「そ、そう?解ってくれればいいのよ」

「ところで、社会常識とやらはどこでトレーニングすればいいんだ?」

62 : VIPに... - 2014/08/02 00:34:19.13 LcaJ0aHm0 3/307

ブルマの出した結論は、オレを学校で集団生活をさせるということであった。

ブルマが選んだ学校はホイポイカプセルすら出回ってない田舎の学校だった。

「流石にベジータが学校に通ってることはあんまり知られたくないものね」

俺も知られたくはない。その結果、他の地域と交流がほとんどない田舎になったのだ。

63 : VIPに... - 2014/08/02 00:35:27.94 LcaJ0aHm0 4/307

学校に通うのにあたって、ブルマとした約束は三つだ。

一つ、むやみに飛んだりスーパーサイヤ人になったりしない。
変に目立つと常識を勉強できなくなるからだそうだ。
周りの奴らが飛べばいいんだ!クソッたれ!

二つ、毎日電話でその日一日の出来事を報告すること。
オレが普通だと思っていても非常識な事をしてるかもしれないからその確認らしい。
オレの上司にでもなったつもりか!クソッたれ!

三つ、オレがサイヤ人であることなどは極力伏せること。
宇宙人は非常識らしく、それを自称するだけで白い目で見られるらしい。
サイヤ人の誇りを奪うつもりなのか?クソッたれ!

飛べないし、フライヤーもないから、基本的にはこっちで生活することとなる。

住居やトレーニング施設はブルマが用意していた。

ブラが可愛い盛りなのに辛いぜ!クソッたれ!

そんなことを考えながら、俺が通うこととなった学校に至る坂道を登った。

66 : VIPに... - 2014/08/02 01:02:43.92 LcaJ0aHm0 5/307

入学式とかいう意味が解らんことを長々とやってたから途中で抜け出した。

オレが割り当てられたクラスとやらの部屋の、オレの出席番号の席で寝ているとガヤガヤと人がやってきた。

どうやら入学式が終わったようだ。

67 : VIPに... - 2014/08/02 01:04:34.66 LcaJ0aHm0 6/307

トランクスと歳があまり変わらないガキどもに紛れてると妙な感覚になる。

そんな事を考えていると担任とかいう奴が入ってきた。

トランクスの学校関連は全部ブルマに任せてたから担任とかが何のことか解らん。

その担任は、オレ達に自己紹介をしろと言ってきた。

出席番号順に次々と立っていき、出身中学や名前、趣味等を紹介している。

オレの番だ。面倒だったので座ったまま、

「ベジータだ」

と紹介してやった。十分だろう。

担任が、「彼は、サイヤ・ベジータ君って言うんだ」と言っていた。

この地方は名字があるのが一般的と聞いていたが、ブルマが俺の名字をサイヤにしてやがった。

悪ふざけが過ぎるぞ!

68 : VIPに... - 2014/08/02 01:05:19.08 LcaJ0aHm0 7/307

俺は次の奴の自己紹介を聞いた時に度肝を抜かれた。

「東中学出身、涼宮ハルヒ」

ここまでは普通だった。

「ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい。以上」

ブルマが嘘をついていたようだ。何が『宇宙人は非常識』だ。

普通にセルだかトランクス、さらにバビディやら界王神やらダーブラやらを募集してるじゃねぇか。

71 : VIPに... - 2014/08/02 03:03:26.77 LcaJ0aHm0 8/307

その夜、

「宇宙人、未来人、異世界人、超能力者を募集してる奴がいたぞ」

とブルマに電話。

ブルマは、

「ああ、中学生くらいならクラスに一人くらい居るわよ。妄想だから気にしないで」

と言われた。そうだったのか。

72 : VIPに... - 2014/08/02 03:04:01.44 LcaJ0aHm0 9/307

数日経ったある日、後ろの席の少女。

例の宇宙人とかを募集してた子がオレに声をかけてきた。

「ねぇ?あんた、まさかそのなりで十五歳とか言わないでしょうね?」

「もっと上だが?」

「そう。なんで高校生なの?」

「勉強をしなくてはいけなくなってな」

「ふ~ん。大人も色々と大変なのね」

そこで話は途切れた。

73 : VIPに... - 2014/08/02 03:04:34.64 LcaJ0aHm0 10/307

また別の日の会話。

「髪の毛を切ってよ」

「なんでだ?」

「無駄に逆立ってて黒板が見えないのよ」

「不気味に髪型を変えたりせん」

「ふ~ん。まぁ、黒板に面白いことが書いてあるわけじゃないし別にいいけど」

この日の会話は終わった。

74 : VIPに... - 2014/08/02 03:05:04.59 LcaJ0aHm0 11/307

その後も度々、

「筋肉が凄いけど何かスポーツでもやってるの?」

等とくだらないことを聞いてきた。

75 : VIPに... - 2014/08/02 03:05:32.04 LcaJ0aHm0 12/307

そうこうしているうちに、ゴールデンウィークとやらの連休がやってきた。

土日しか帰れなかった懐かしの自宅に帰る。

ブラはやっぱり可愛い。娘を持つと父親は変わるものだと実感してしまった。

そして、連休も終わり、オレは仕方がなく学校へ通う日々に戻った。

76 : VIPに... - 2014/08/02 03:06:03.76 LcaJ0aHm0 13/307

連休が明けて暫くしたら、例のハルヒとやらが声をかけてきた。

「全部の部活に仮入部してみたんだけど、あんたはどこにも入部してないのね」

「くだらん。興味がない。」

「あんたの筋肉は本当に無駄ね」

失礼な奴だと思い無視をする。

「でも、くだらないと言うのには同意するわ。本当に碌な部活がなかったんだもの」

「フン!そんなに部活をやりたければ自分で作ればいいだろう。頭を使いやがれ」

「言い方は気に入らないけど、あんたも良いことを言うわね!!そうよ!作ればいいのよね!」

77 : VIPに... - 2014/08/02 03:06:34.51 LcaJ0aHm0 14/307

その日の休み時間のことだ。

突然ハルヒが俺の腕にしがみついた。

そして、顔を真っ赤にして精一杯オレを引っ張り始めた。

「なんの真似だ?」

オレの問いにハルヒは、

「いいからきなさいよ!」

どうやらオレをどこかに連れて行きたいらしい。

「どこに行くんだ?」

オレはハルヒに構わずパンを一口。

「どこでもいいでしょ!兎に角、話があるのよ!」

ハルヒはまだ諦めていないのか、まだ引っ張る。

「ここだとダメなのか?」

新たなパンの袋を開ける。

ハルヒは堪忍したのか、

「もうここでいいわ!協力しなさい」

二袋目のパンを処理して、俺は答える。

「何にだ?」

「あたしの新クラブ作りよ」

「くだらん。興味がないな」

オレはそれだけ答えて、横で未だにわめいているハルヒを無視した。

82 : VIPに... - 2014/08/02 18:38:58.78 LcaJ0aHm0 15/307

終業のチャイムが鳴るや否や再びハルヒがオレの腕を掴んだ。

そして、顔を真っ赤にして精一杯オレを引っ張り始めた。

昼休みにも見た光景だ。

「なんの真似だ?」

オレの問いにハルヒは、

「部室っ」

オレはそれを無視して、腕にしがみつくハルヒを引きづりながら玄関に向かった。

玄関まで来たら諦めたのか手を離した。

涙目で悔しそうに睨んでいた。娘を持つ身としては可哀想な気もしたが、オレもトレーニングをしたい。

同世代の子と遊ぶがいい。

83 : VIPに... - 2014/08/02 18:40:08.64 LcaJ0aHm0 16/307

その夜、ブルマに怒られた。

『そういう部活とかで社会常識を学んでいくのよ!』

「しかし話が合うとは思えんし、トレーニングの時間がだな………」

『このままだとトランクスだけじゃなく、ブラにも迷惑がかかるわよ』

「なに!?ブラにもだと!」

『そうよ。ブラに恋人ができたとして、ベジータみたいな非常識な父親を見たらみんな逃げちゃうわよ』

「ブラに恋人だと!?誰だそいつは!ぶっ殺してやる!」

『………仮の話よ』

「そ、そうか。だが、それなら今のままの方が都合がいいな」

『友達もできないでしょうね~。ベジータの所為で』

「なんだと!?………くそっ!部活に入ればいいんだな」

『そうよ』

「わかった………ところで、ブルマは学生時代どんな部活をやっていたんだ?」

『あたし?あたしは部活なんてやってないわよ。その頃には孫くんと冒険してたし』

「………」

84 : VIPに... - 2014/08/02 18:41:20.79 LcaJ0aHm0 17/307

翌日朝のHR前、ハルヒの方を見る。

解りやすいほどにふくれっ面。頬を膨らませて、口はへの字。腕を組んでそっぽを向いている。

「おい!」

「………」

無視してやがる。

「昨日の部活の話だが入ってやってもいいぞ」

「ホント!?…じゃなかった、入れて下さい。お願いします。でしょ?」

組んでた腕をほどき、手を机の上において前のめりになって聞いてきた。

舐めやがって、クソッたれ!

だが、ブラの為に我慢して頭を下げることにした。

「入ってやるって言ってるんだ!有難く思いやがれ」

「それが人に物を頼む態度かしら!」

ハルヒはそう言って腕を組み、再びそっぽを向いた。

89 : VIPに... - 2014/08/04 01:28:49.14 hSp70qJX0 18/307

放課後、ハルヒはオレの横に立った。

勝ち誇ったような笑みを浮かべて、

「あんたがどうしてもって言うから入れてあげる」

そう言うとオレの腕を掴み、

「行くわよ!」

と引っ張り始めた。

本心ではオレの入部が嬉しかったのだろう。素直じゃない女だ。

今回は引っ張られるままに付いて行った。

90 : VIPに... - 2014/08/04 01:29:50.18 hSp70qJX0 19/307

古い校舎の一室に連れてこられた。

ハルヒはドアを開ける。

「お待たせ~!」

と挨拶をし、

「どうしても参加したいっていうから連れてきたベジータ君です!」

オレの紹介も終えた。

改めて室内を見渡す。

室内には二人いた。両方とも女生徒だ。

91 : VIPに... - 2014/08/04 01:30:36.10 hSp70qJX0 20/307

一人がオレに挨拶してきた。

「わたしは朝比奈みくるって言います。よろしくお願いします」

続いてもう一人が、視線を本からオレに移して、

「長門有希」

とだけ言って再び本に視線を戻した。

挨拶も碌に出来ねぇのか!親の顔が見てみたいぜ!

オレはブラの教育に気を付けることにした。

用事も済んだので、オレは「フン」と帰りの挨拶をして部室を後にした。

ハルヒがオレにしがみついて、何かを喚いてたが知ったことか。

92 : VIPに... - 2014/08/04 01:48:30.18 hSp70qJX0 21/307

その日の夜はブルマに褒められた。

『あんたもちゃんと人に物を頼めるようになったのね』

「ああ、ブラの為だ」

『ところで、どんな部活なの』

「知らん」

『知らん…ってあんたねぇ……』

「入れって言ったのはブルマだろう」

『そりゃそうだけど…どんな感じの子たちが居るの?』

「オレを誘った元気な女と、窓辺で本を読んでる華奢な女と、乳が大きい女だな」

『他には?』

「それだけだ」

『なによ!女の子ばっかりじゃない!』

「ああ、乳と言ってもカカロットの嫁のことじゃないからな」

『そんな事は言われなくても解るわよ!』

ブルマは一息おいて、

『ベジータ……くれぐれも自分の年齢を考えて、間違いを起こさないでね』

「なんのことだ?」

『………まぁ大丈夫だとは思うけど、一応ね』

もっとも、こんな風に最後は妙な感じで終わってしまった。

93 : VIPに... - 2014/08/04 02:57:27.27 hSp70qJX0 22/307

翌日、朝からハルヒに怒鳴られた。

「昨日、なんで勝手に帰ってたのよ!」

「紹介も終わったし用事は終わってただろう?」

「なんで紹介だけで勝手に終わらせてるのよ!」

わがままな女だ。

「いい?言われなくても放課後は部室に集合。あたしが良いって言うまで帰っちゃダメだからね」

面倒なことになってしまった。

「言うことを聞かなかったら死刑だからね」

「くだらん。お前にオレを殺せるわけがないだろう」

オレの反論を聞くと、ハルヒはむくれた。

94 : VIPに... - 2014/08/04 04:16:49.42 hSp70qJX0 23/307

放課後になり、部室に向かう。

面倒だがオレの所為でブラを苦労させるわけにはいかないからな。

部室には長門とか言うガキが先にきていた。

長門は相変わらず本を読んでいる。

普段から本ばかり読んでいるのだろう。華奢だ。

十倍の重力にすら耐えられないだろうと思っているうちに、いつの間にか親の気持ちとなって心配になっていた。

オレがそう思っていると、部室のドアが元気よく開いた。

ハルヒだった。オレの顔を見るなり、

「お!着てるわね!感心♪感心♪」

と満足げな笑顔を浮かべて頷いた。

そのハルヒだが、両手に紙袋を持ち、後ろには朝比奈を従えていた。

95 : VIPに... - 2014/08/04 04:17:27.95 hSp70qJX0 24/307

ハルヒは部の広報活動とか言って妙な服を取り出した。

そして嫌がる朝比奈を無理やり着替えさせようとし始めた。

この光景を見て、オレは考えた。ブラがこの朝比奈の立場だったら?

「オイ!止めねえか!!」

想像と同時に口が動いていた。

ハルヒは不満げに、

「何よ?文句あるの?」

と言ってきた。

「汚ねぇ花火にするぞ」

「はぁ?なんで花火が出てくるのよ」

オレとハルヒの様子を見てた朝比奈が口を挟んだ。

「止めてください~。わたし、着替えますからぁ~」

「ほら!みくるちゃんもこう言ってるじゃない!」

ハルヒは勝ち誇った様に言ってきた。

「チッ」

オレは舌打ちをして部室を出た。

「まだ!帰っちゃダメだからね!」

部室の中からハルヒの声がした。

96 : VIPに... - 2014/08/04 04:18:01.23 hSp70qJX0 25/307

暫くすると、部室のドアが開いた。

開けたのは奇妙な赤い恰好をした朝比奈だった。

「あの……着替え終わりました。さっきはありがとうございました」

意味の解らない礼を受けて部屋に入った。

ハルヒも朝比奈と色違い----こちらは黒----の妙な格好に着替えていた。

ハルヒは自信満々に、

「どう?バニースーツよ!」

などと言った。どうやらあれはバニースーツと言う恰好らしい。

「知るか」

オレは一言だけ答えた。

「フン!まぁ、いいわ!みくるちゃんビラ配りに行くわよ!」

ハルヒはそう言って紙袋を片手に朝比奈を連れ出した。

97 : VIPに... - 2014/08/04 04:19:33.46 hSp70qJX0 26/307

教室に残っていた長門がオレに近寄ってきた。

無言で本を一冊差し出す。

「………」

「………」

「………」

「………」

「なんの真似だ?」

一言も発しない。仕方がなくオレから聞いた。

「これ」

差し出した本をオレに寄せる。

「貸すから」

「いらん」

コイツは一体何を言ってるんだ?

「読んで」

引き下がらない。

「断る」

「………」

長門は諦めずに本をさらに寄せてきた。

ハルヒ達も出ていったし、今日はもういいだろう。

オレは長門を無視して帰った。

101 : VIPに... - 2014/08/04 23:09:16.01 hSp70qJX0 27/307

その日の夜。

ブルマは、

『バニースーツって何よ!』、『無理やり本を押し付けるとか何よ!』

受話器の向こう側で一人うろたえていた。オレが知るか!

102 : VIPに... - 2014/08/04 23:10:24.89 hSp70qJX0 28/307

翌日、再びハルヒに怒鳴られた。

「なんで昨日も勝手に帰ってるのよ!」

面倒だったので「ふ~ん」、「へ~」等の生返事を適当にしてしておいた。

ここら辺はブルマとの夫婦喧嘩で得た技術だ。

放課後の部室で知ったことだが朝比奈は休んでいたようだ。

部室ではハルヒが何か言っていたが適当に聞き流しておいた。

103 : VIPに... - 2014/08/04 23:11:13.47 hSp70qJX0 29/307

さらに翌日のこと。

ハルヒが一人盛り上がっていた。

「転校生よ!謎の転校生よ!!」と。

104 : VIPに... - 2014/08/04 23:12:08.15 hSp70qJX0 30/307

終業のチャイムが鳴り、部室に行った。

部室には長門と朝比奈が着ていた。ハルヒはまだきていない。

オレを見かけるや長門が近づいてきた。

「これ」

そう言って一昨日の本を再びオレに渡そうとしてきた。

「読まん」

趣味の押し付けは良くない。注意した方がいいのだろうか?

そう言えば、トランクスはトレーニングをサボってないだろうな?少し気になった。

105 : VIPに... - 2014/08/04 23:12:57.52 hSp70qJX0 31/307

オレがそんな事を考えていると、長門は本をめくり一枚の栞を取り出した。

「じゃあ、これ」

そう言って栞を渡してきた。

「必要ない」

さっきから何をしたいんだ?

今度は栞を裏返した。何か書いてある。

「読んで」

朝比奈も何事かとこちらを見ている。

「自分で読め」

オレの返事を聞くと長門は栞をオレの制服のポケットにねじ込んできた。

オレは栞を取り出すと目の前でグシャっと捻じってゴミ箱に放りこんだ。

106 : VIPに... - 2014/08/04 23:13:38.77 hSp70qJX0 32/307

流石の長門も諦めたのかオレから離れた。

と思いきや、鞄からノートを取り出し、マジックで何かを書いている。

書き終わると、

『午後七時。光陽園駅前公園で待つ』

と大書きされたノートをオレの前で広げた。

「みえてる?」

長門が聞いてきた。

「あ、ああ」

オレを近眼だとでも思ったのか?

「信じて」

長門はそれだけ言うと窓際の指定席に戻って行った。

何だったんだ?

107 : VIPに... - 2014/08/05 00:17:48.15 ho1d0eKu0 33/307

長門が席に着くと同時に元気よくドアが開いた。

「へい、お待ち!」

一人のガキの袖をガッチリとキープした涼宮ハルヒが的はずれな挨拶をよこした。

「一年九組に本日やってきた即戦力の転校生、その名も、」

ハルヒがここまで言うと、ガキの方がニヤケながら、

「古泉一樹です。……よろしく」

と挨拶をしてきた。

108 : VIPに... - 2014/08/05 00:19:16.33 ho1d0eKu0 34/307

「ここ、SOS団。わたしが団長の涼宮ハルヒ。そこの三人は団員その一と二と三。
 ちなみにあなたは四番目。みんな、仲良くやりましょう!」

部活はSOS団と言うらしい。ハルヒの言葉で始めて知った。ブルマに教えてやろう。

「入るのは別にいいんですが」

転校生の古泉一樹はニヤケながら言った。

「何をするクラブなんですか?」

ブルマと同じようなことを聞きやがる。

「教えるわ。SOS団の活動内容、それは、」

 大きく息を吸い、そしてハルヒは宣言した。

「宇宙人や未来人や超能力者を探し出して一緒に遊ぶことよ!」

くだらん。戦うというのなら、まだ理解できるがな。

「いいでしょう。入ります。今後とも、どうぞよろしく」

と古泉は答えていた。コイツはオレと同様に部活の内容は何でもよかったようだ。

109 : VIPに... - 2014/08/05 00:21:41.11 ho1d0eKu0 35/307

ハルヒはテンション高く、

「五人揃ったし、明日は市内をくまなく探索!不思議探しよ」

と息巻いている。

そう言えば、今日は金曜だったな。

「おい!」

オレはハルヒに声をかける。

「なによ!」

ハルヒは水を差されたかのように不機嫌に答えた。

「オレは参加しない」

「はぁ!?なに言ってるの?強制参加よ!あんたに拒否権はないんだから!」

「オレはもう帰るぞ」

週末だからブルマ達の待つ家に帰れることを思い出し、自然と笑みがこぼれる。

「ちょっと!一方的に言って、何にやけてるのよ!!」

ハルヒを無視して帰宅の途についた。

ハルヒは校門を出ても、しがみついていた。

坂を下り切ったところでようやく諦めたのか手を離し、

「バカッ!」

と叫び、地面を踏み叩いていた。

111 : VIPに... - 2014/08/05 01:15:55.91 ho1d0eKu0 36/307

家の前まで行くと声をかけられた。

「よう!ベジータ」

カカロットだった。

「カ、カカロット!貴様何しにここへ!?」

「ちょっと用事があってな」

「こんな所に用事だと?」

「まぁ、おめえを迎えに来るついでだったんだけどな」

「なに?」

「ブルマの家に帰えるんだろ?オラが瞬間移動で連れて行ってやるよ」

「そ、そうか……」

「ほへ?」

「貴様の手は借りん…と言うと思ったか?」

「まぁな」

「少しでも早くブラを抱っこしたいからな。貴様の手を借りてやる。感謝しやがれ」

「変われば、変わるもんだなぁ」

「うるさい!貴様も娘を持てば解る!とっとと瞬間移動をしねぇか!」

「あ、あぁ」

オレはカカロットの手を借りてブルマ達の元に帰った。

112 : VIPに... - 2014/08/05 01:16:29.14 ho1d0eKu0 37/307

ブルマはオレとカカロットを見ると、

「あら?お帰り。早かったわね。孫くんもありがとうね」

淡白なものだ。

「そういやベジータよ~」

カカロットがオレに聞いてきた。

「おめぇの腕にぶら下がってた子はなんだったんだ?」

どうやら坂の所から見られていたようだ。

「ちょっと!ベジータ!!」

オレが返事をする前にブルマが返事をした。

「なんだかブルマがブルマが怒ってるし、オラは帰えるな!またな!」

カカロットはそう言って瞬間移動をした。無責任だぞ!

118 : VIPに... - 2014/08/05 22:57:09.53 ho1d0eKu0 38/307

カカロットの所為でブルマが口を聞いてくれなかったり、散々な週末だった。

週が明けた学校でもオレの受難は続く。

オレの後ろから呪詛でも聞こえてきそうなほどの不機嫌なオーラを涼宮ハルヒが漂わせていた。

何が原因か知らんが藪蛇になりかねん。声をかけるのはやめておこう。

ブルマなら声をかけても駄目だし、声をかけなくても駄目な状態だ。

119 : VIPに... - 2014/08/05 22:59:07.72 ho1d0eKu0 39/307

放課後になり、ハルヒを避ける様に部室に向かった。

部室には長門が既に着ていた。

何時もの椅子に腰かける。

目の前の机には、

『ごご7じ。こうようえんえきまえこうえんでまつ。』

とマジックで大きく書かれたノートが広げてあった。

オレは読書をしている長門に、

「これはお前か?」

と聞いた。

長門は本から目を離し、黙って頷いた。


120 : VIPに... - 2014/08/05 22:59:40.42 ho1d0eKu0 40/307

オレはノートを長門の所に持って行ってやった。

近寄ると長門はオレの目を見て、

「読めた?」

と聞いてきた。

オレが「あ、ああ」と言うと、長門はノートを受け取り読書に戻った。

122 : VIPに... - 2014/08/05 23:06:52.15 ho1d0eKu0 41/307

席に戻り、子供のやる事は意味が解らんと考えていた。

そのうち古泉がやってきた。

何だか疲れた表情でオレの方を見ると溜息一つ、

「もう少し涼宮さんに付き合って頂けると僕としては助かるのですが……」

などとほざいていた。

ハルヒの様子からすると土曜日は大変だったのだろう。同情するぜ。

124 : VIPに... - 2014/08/06 00:26:43.20 MotJT5Cx0 42/307

続けて叩きつけるかの様にドアが開いた。

ハルヒだ。

ハルヒはズカズカと進み、一番奥にある席に乱暴に座った。

あの席は偉そうで気に入らない。

ガキのやる事だから見逃してるが、
もしカカロットのヤロウがあそこに座ってたらぶっ殺してるところだ。

125 : VIPに... - 2014/08/06 00:27:30.65 MotJT5Cx0 43/307

ハルヒは座るなり、不機嫌そうに口を尖がらせ、

「みくるちゃんは?」

と誰に対してでも無く言った。

それに答えたの古泉だ。

「掃除当番で遅れるそうです」

126 : VIPに... - 2014/08/06 00:28:21.69 MotJT5Cx0 44/307

「不思議探索をサボる奴がいたり、掃除当番で遅れたり、不思議探索をサボる奴がいたり、だらけてるわね」

ハルヒはオレをジトーっと見てる。言いたいことがあるならハッキリ言いやがれ!

「一つ提案があるのですが」

古泉が不機嫌なハルヒに声をかける。

「ベジータさんは土曜日にこなかったので、今からお二人で不思議探しに行ってはどうでしょうか?
 新たな発見があるかもしれませんよ」

ハルヒは不機嫌そうに腕を組み、口をへの字に曲げて、

「こんな奴に期待できるとは思えないけど……まぁ、いいわ!古泉くんがそう言うなら試してみてあげる」

ハルヒはそう言うと、足早にオレに近づき、腕を掴むと「行くわよ」と言い始めた。

127 : VIPに... - 2014/08/06 00:29:43.00 MotJT5Cx0 45/307

古泉に不機嫌な女を押し付けられた。

厄介に思いつつ、仕方がなくハルヒに付いて行く。

どれほど面倒かと思いきや、存外に楽だった。

週末にブルマを宥めていたのとは比べられる様なものでは無かった。

具体的には、まずファーストフードを奢り、
ハルヒに引っ張られるままに河川敷を散歩し、
ベンチに座ってハルヒの無駄話に合わせて適当に相槌を打って聞き流す。

それだけで上機嫌になった。

途中、警察とか言う奴にハルヒとの関係や身分証の提示を求められた。

「この生年月日は?」

などと聞かれたが、何故かハルヒが怒って追い払っていた。

おかげでサイヤ人は若い時が長いなどと言わなくて済んだ。

128 : VIPに... - 2014/08/06 00:30:12.24 MotJT5Cx0 46/307

その日の夜、ブルマに怒鳴られた。

ブラも大きくなったらオレの手を引いて散歩するのかと思いながら、

今日のハルヒとの散歩を報告したら、

『バカッ!!』

とだけ言われて電話を切られた。

少しは機嫌が直ったかと思っていたが、まだまだの様だ。

129 : VIPに... - 2014/08/06 00:50:26.20 MotJT5Cx0 47/307

朝のHR前のこと。

ブルマと異なり、すっかり上機嫌になったハルヒが声をかけてきた。

「転校生よ!転校生!立て続けに転校生って絶対に何かあるわよ!」

よく解らんがそうらしい。

130 : VIPに... - 2014/08/06 01:07:38.54 MotJT5Cx0 48/307

終業のチャイムが鳴ると、

「先に部室に行ってて」

ハルヒはそう言って教室を出ていった。

言われなくてもそのつもりだ。

オレは部室に行った。

部室にはハルヒ以外の面子が揃っていた。

131 : VIPに... - 2014/08/06 01:08:53.54 MotJT5Cx0 49/307

オレが席に座ると長門がオレの近くにやってきた。

長門はオレの前の机に紙切れを叩きつけるように置いて、指定席に戻って行った。

『gogo7ji.kouyouenkouendematu.』

紙切れにはこう書かれていた。

長門はオレを見ようともせずに聞いてきた。

「読める?」

オレがヘボン式を読めないとでも思ったのか?

132 : VIPに... - 2014/08/06 01:09:19.52 MotJT5Cx0 50/307

オレは紙を丸めながら、

「舐めんなよ」

と応じた。

古泉は何を思ったのか、「まぁ、まぁ」と宥めてきた。

朝比奈は「あわわ、あわわ」と声を出して慌ててる。

こいつらはオレがガキを殴るとでも勘違いしてるのか?

134 : VIPに... - 2014/08/06 01:20:55.04 MotJT5Cx0 51/307

そう思っていたらドアが開いた。

ハルヒが誰かを連れている。

オレはそいつに見覚えがあった。

あの髪型、顔つき、反射的に声が出た

「カ、カカロット!?」

136 : VIPに... - 2014/08/06 02:21:41.84 MotJT5Cx0 52/307

「嫌だなぁ~おとうさんと間違えないでくださいよ。ベジータさん、ボクですよ。」

よく見たら悟天だった。紛らわしい髪型をしやがって!

「あんたたち知り合いなの!?」

ハルヒが口を挟む。

「ベジータさんとボクのおとうさんは友達なんですよ」

「カカロットのヤロウと友達になった憶えはねぇ!!」

悟天の発言を取り消した。

137 : VIPに... - 2014/08/06 02:23:10.61 MotJT5Cx0 53/307

「えっと……孫悟天って言います。よろしくお願いします」

オレを無視して悟天が自己紹介をしてた。

ハルヒの戯言を聞き流していたら、いつの間にか部活が終わっていた。

無事に部活を終えて下校していると悟天が付いてきた。

「おい!どこまで付いてくるんだ」

オレの問いに、

「あれ?ブルマさんから聞いてませんか?ボクも一緒に住むんですよ」

「なんだと!?」

「ブルマさんが心配してて……まぁ、ボクとしてはお小遣いも貰えるし問題ないんですけどね」

ブルマは組み手が出来ないオレを心配したんだろう。流石だ。

138 : VIPに... - 2014/08/06 02:23:48.64 MotJT5Cx0 54/307

「でも、可愛い子が多い部ですね。ブルマさんでも心配になるはずですよ~」

女が気になるとはカカロットはどんな教育をしているんだ?

「ボクを勧誘した元気な子もいいし、あのおっぱいの大きな先輩もいいし、窓際で本を読んでた子もいいですよね」

そこでオレは思い出した。

鞄から丸めた紙を二枚取り出し、悟天に捨てる様に言っておいた。

悟天は渋々それを受け取り、適当なゴミ箱に放り込んでいた。

ちなみに、一通は長門から渡された紙で、もう一通は朝下駄箱に入っていた紙だ。

『放課後誰もいなくなったら、一年五組の教室まで来て』

と書いてあったが、差出人も書いていない失礼なものだった。

用があるならてめえの方から来やがれ。そういうことで無視することにした紙切れだ。

道中、「やっぱり、髪型を変えた方がいいですかねぇ?」なんて言っていたが無視してておいた。

139 : VIPに... - 2014/08/06 02:25:07.34 MotJT5Cx0 55/307

組手相手として期待した悟天だったが、全く役に立たなかった。

カカロットのヤロウはこいつをほとんど鍛えてなかったらしい。

仕方がないので、組手相手半分、雑用係半分にしてやった。

下級戦士の息子にはお似合いだ。

「酷いですよ~」などと言っていたが生まれと自分の弱さを呪うんだな。

144 : VIPに... - 2014/08/06 15:58:18.14 MotJT5Cx0 56/307

朝食の後片付けを悟天に任せて、オレは一足先に学校に着いた。

下駄箱を開けると何かが二つ入っていた。

一枚は昨日と同じ紙切れで、

『今日こそ放課後誰もいなくなったら、一年五組の教室まで来て』

昨日と同じく差出人の名前はない。

もう一つは封筒。裏には『朝比奈みくる』こちらには差出人の名前が書いてある。

どうでもいいが、こいつらはオレの下駄箱を郵便箱と勘違いしてるんじゃないのか?

145 : VIPに... - 2014/08/06 15:59:26.78 MotJT5Cx0 57/307

朝比奈からの封筒を開けてみる。

『昼休み、部室で待ってます みくる』

言いたいことがあるなら自分から来やがれ。

オレはこれらを適当に丸めてゴミ箱に放り込んでおいた。

146 : VIPに... - 2014/08/06 16:00:03.76 MotJT5Cx0 58/307

朝のHR前にハルヒがオレと悟天との関係を聞いてきたが、

「説明するのもめんどくせぇ!てめぇで考えやがれ!」

と注意しておいた。プライベートを聞き出そうとするのはあまりよくないことだからな。

147 : VIPに... - 2014/08/06 16:00:32.63 MotJT5Cx0 59/307

昼休みは学食で悟天に飯を奢ってやった。

余り飯を置いてなかったようで悟天と軽く食べたら、売り切れと言われてしまった。

ハルヒも居たようで、

「あんたたち大食いでテレビに出られるわよ!」

などと目をキラキラさせて声をかけてきた。

オレは面倒で無視していたが、悟天は愛想よく応じていた。

148 : VIPに... - 2014/08/06 16:02:45.33 MotJT5Cx0 60/307

放課後になり一人部室に向かった。

部室には例によって長門が読書をしていた。

オレが部室に入るなり、

「おそらく涼宮ハルヒには自分の都合の良いように周囲の環境情報を操作する力がある」

突然何かを言い出した。

「わたしは涼宮ハルヒを観察してる宇宙人。それが、わたしがここにいる理由。あなたがここにいる理由」

オレは社会常識を学びにきた宇宙人だがな。

「あなたは涼宮ハルヒにとっての鍵。危機が迫るとしたらまずあなた」

フリーザの襲来や人造人間はカカロットのヤロウだったが、ついにオレの時代ってことだな。

「信じて」

長門は見たこともないほど真摯な顔をしていた。

心配するな。信じるわけがないだろう。これもブルマが言ってた、中学生くらいの子の妄想だ。

「ああ、そうだな」

子供を傷つけないように話を合わせておいた。ブラが生まれてからどうも甘くなってしまった。

特に女の子に対しては守らないといけないと思ってしまう。

長門はオレの言葉を聞いて満足したのか読書に戻った。

161 : VIPに... - 2014/08/07 04:44:03.49 zViweRCv0 61/307

それから暫くすると朝比奈がやってきた。

朝比奈から手紙を貰っていたことを思い出し、

「オレに何か用があったのか?」

と聞いたらキョトンとしていた。

こいつは痴呆症なのか?

162 : VIPに... - 2014/08/07 04:45:13.34 zViweRCv0 62/307

古泉、悟天と連続してやってきて、最後にハルヒがやってきた。

ハルヒはオレを見るなり、

「なんで先に部室にきてるのよ!あたしの掃除が終わるまで待ちなさいよ!」

と言ってきた。

知るか。

こうして部活も終わった。

163 : VIPに... - 2014/08/07 04:45:56.59 zViweRCv0 63/307

帰り道に悟天が、

「涼宮さんって絶対に気がありますよ!」

とほざいていた。

どう感じたらハルヒが人造人間に見えるんだ?

カカロットの息子がここまでボンクラとは思わなかったぜ!

164 : VIPに... - 2014/08/07 04:54:02.23 zViweRCv0 64/307

家に帰り着き、悟天と組手をしていたら呼び鈴が鳴った。

悟天が出る。

「ベジータさんと同じクラスの朝倉って女の子みたいです」

朝倉は確か委員長をやってる奴だと思い、

「居間に案内しておけ!オレは着替えたら行く。案内が終わったら茶菓子でも用意しておくんだな!」

悟天に指図を終えたオレは軽くシャワーを浴びに行った。

172 : VIPに... - 2014/08/07 21:25:12.37 zViweRCv0 65/307

シャワーを浴び終えたオレは、新たなアンダースーツに着替え居間に向かった。

朝倉は居間の椅子に座っていた。

テーブルの前にはお茶が出ていない。

悟天のヤロウは何をグズグズしてやがるんだ?

居間のドアを開けてそう考えていると朝倉が声をかけてきた。

173 : VIPに... - 2014/08/07 21:26:41.63 zViweRCv0 66/307

「遅いよ」

汗臭いままだと失礼だと思いシャワーを浴びたが待たせてしまったようだ。

悟天が相手をしてると思ったのだが失敗だった。

「シャワーを浴びてたからな」

オレはそう言って居間に入った。

朝倉は椅子から立ち上がり、

「教室に呼び出してもきてくれないから押しかけちゃった」

朝倉は悪戯をした子供の様に笑った。

例の紙切れは朝倉の仕業だったらしい。

「何の用だ?」

「用があることは確かなんだけどね。ちょっと訊きたいことがあるの」

朝倉はオレの真ん前にまで着ていた。

174 : VIPに... - 2014/08/07 21:28:02.17 zViweRCv0 67/307

「人間はさあ、
 よく『やらなくて後悔するよりも、やって後悔するほうがいい』って言うよね。
 これ、どう思う?」

「やらない方がいいな」

オレは即答した。
フリーザを無駄に変身させたこと、
ゲロの人造人間と戦いたくて開発前にどうにかしようとしたブルマを制止したこと、
セルの完全体を見たくて18号を吸収させたこと、
トランクスが殺されたことに激情してセルを攻撃したこと、
カカロットと互角に戦いたくてバビディの術を受け入れたこと、
一人で戦ってみたくてポタラを握りつぶしたこと、

やってしまった様々なことを思い出した。

その所為で、
死期を早めたこと、
人造人間に敵わずにあわや人類が危機に陥りかねなかったこと、
セルに全く敵わないだけでなくカカロットが死んでしまったこと、
オレを庇った悟飯が怪我してセルに負けそうになったこと、
ブウが復活してしまったこと、
ブウに負けそうになったこと、

後悔したり、後悔じゃ済まない事態になりそうだったとしみじみと思った。

176 : VIPに... - 2014/08/07 22:15:55.27 zViweRCv0 68/307

朝倉は心底意外そうな顔をして、

「あら?あなたって意外と保守的なのね」

朝倉は一息おいて、

「でも、あたしはもう我慢できないの。死んで」

後ろ手に隠していたつもりであろう朝倉の右手が一閃、オレの首めがけてナイフを薙いできた。

オレが教室に行かなかったり、ここで待たされたのが我慢できなかったのだろう。

短気な女だ。

177 : VIPに... - 2014/08/07 22:40:03.96 zViweRCv0 69/307

オレは朝倉の右手首を掴みナイフを取り上げると、目の前でへし折った。

「!」

右手を解放された朝倉はいきなり五メートルくらい後ろにジャンプした。

「やるわね。でも、この空間は、わたしの情報制御下にある。誰も出入りできないし----」

その時。

壁をぶち破るような音とともに間抜けな声がした。

178 : VIPに... - 2014/08/07 23:16:02.77 zViweRCv0 70/307

「ベジータさ~ん」

泣きそうな声を出してるのはお盆の上に茶と洋館を乗せてる悟天だ。

「てめぇ!壁を壊して入るとはなんだ!!」

カカロットのヤロウはどんな教育をしてやがるんだ!?

「そんなことを言っても、ここ建て付け悪すぎますよ~」

「なんだと!?」

「お茶を淹れてたら台所に閉じ込められたし、居間への入り口もなくなってたんですよ」

チッ!後でブルマに文句を言おう。とりあえず悟天の粗相を朝倉に謝らないといけないな。

オレがそう思っていたら、朝倉が先に口を開いた。

179 : VIPに... - 2014/08/07 23:16:35.64 zViweRCv0 71/307

「邪魔する気?」

「おい!悟天を許してやれ」

オレは朝倉に対して言った。

「いやだと言ったら?」

「そこまで怒ることじゃないだろう」

「二対一なら勝てると思う?ここでは、わたしのほうが有利よ。この家はわたしの情報制御空間」

180 : VIPに... - 2014/08/07 23:17:23.23 zViweRCv0 72/307

空間が凝縮し槍状となりオレと悟天を襲う。

朝倉の周囲の空間も歪んでいる。

どうやっているのかわからない。

ただ、攻撃の主は朝倉だということは瞬時に判断できた。

悟天の粗相が気に入らなかったから暴れているのだろう。

短気にも程がある。

………昔のオレの様で少々羨ましくもあるがな。

181 : VIPに... - 2014/08/07 23:17:49.41 zViweRCv0 73/307

兎に角、他人の家で暴れすぎだ。

どんな家庭で育ったらこんな風に育つんだ?親の顔が見てみたいぜ。

オレは親に変わって朝倉を注意するために一気に朝倉に近づいた。

「!?」

オレの接近を受けて朝倉は驚愕の表情を浮かべた。

構わず左腕で朝倉の腰を抱え上げた。

オレの正面を向いている形となった朝倉の尻に平手打ちをした。

「いた~~~い!!」

朝倉が叫んだ。

「当り前だ!痛くなるように叩いてるんだからな!」

「べ、ベジータさん!あ、相手は女の子なんですし………」

悟天が心配そうな声を出す。

こいつはオレが思いっきり叩くとでも思っているのか?

184 : VIPに... - 2014/08/07 23:29:19.50 zViweRCv0 74/307

三発も叩き、やりすぎたかな?と思っていたら、

「情報結合の解除さえできればあなたなんか」

と泣きながら言ってきた。

オレは朝倉を解放し、

「ほう?その情報結合の解除とやらが出来ればオレに勝てると言いたいのか?」

「そうよ!あなたたち有機生命体なんて一瞬で情報の断片になっちゃうんだから」

「面白い。いいだろう。やってみろ」

「あ、あの~やめておいた方いいんじゃ………」

悟天が心配そうに声をかけてくる。

これだから純粋なサイヤ人じゃない奴は……なぁ?カカロット。心の中で呼びかけた。

「どうした?『やらなくて後悔するよりも、やって後悔するほうがいい』んだろ?」

「いいわ。やらせて後悔しなさい。情報結合の解除を申請したわ」

189 : VIPに... - 2014/08/07 23:47:16.32 zViweRCv0 75/307

「………」

「………」

「………」

「どうした?なにも起きんぞ?」

「ちょっと待ってよ!許可制なんだから!」

「そ、そうか」

「あ!許可が出たわ!」

「よし!こい!」

「………」

「………」

「………」

「どうした?まだか?」

「ちょっと待ってよ!解析と演算をしないといけないんだから!」

「……そうか。面倒なんだな」

「大体なんでこんなにエネルギー量が多いのよ。
 しかも情報制御空間にもう一つ高エネルギー体があるから干渉するし」

朝倉がブツブツ言っている。

191 : VIPに... - 2014/08/08 00:00:33.81 3l2kPnMu0 76/307

「あ!湯呑とかお茶菓子に埃が被っちゃったんで新しいのを持ってきます」

悟天が思い出したかのように言い出した。

「お茶かコーヒーどっちがいいですか?」

「コーヒーの方がいいわね」

「オレも同じでいい」

悟天は「わかりました~」と言って台所に向かった。

オレは一つ言い忘れたことがあるから首を台所の方に向けて、

「ミルクと砂糖はたっぷり----」
「あっ!」

朝倉が突然叫んだ。

「どうした?」

「もう!勝手に動かないでよ!あなたの場合は動くとエネルギーの位置情報が大きく変わるんだから!」

朝倉が怒っている。

「演算のやり直しじゃない!」

「す、すまん」

つい謝ってしまった。ブルマとの生活で女に怒られると反射的に謝ってしまう癖がついていたようだ。

192 : VIPに... - 2014/08/08 00:12:05.73 3l2kPnMu0 77/307

悟天がコーヒーとクッキーを持って居間に戻ってきた。

コーヒーカップが三客あるところを見ると悟天もここで飲むつもりらしい。

悟天はお盆をテーブルの上に置き、

「コーヒーを持ってきました。ベジータさんも座ったらどうですか?」

などと言ってきた。

オレは動けないんだ!くそったれ!

朝倉がオレの懊悩に気が付いたのか、

「ここからゆっくりと真っ直ぐに進んで座るくらいなら大丈夫よ」

と動きを示唆した、

「そうか」

「さっきみたいに不規則に動かれると困るけど、コーヒーを飲むくらいなら問題もないし」

朝倉からお墨付きをもらったオレはテーブルに着いた。

暫し三人で談笑した。

もっともオレは無駄話が苦手だし、朝倉も上の空で、悟天が一人で喋ってた感じだったがな。

193 : VIPに... - 2014/08/08 00:18:42.09 3l2kPnMu0 78/307

コーヒーを飲み終える頃になって、

「やった!終わったわ!」

朝倉が歓喜の声をあげた。

「あなたももう自由に動いていいわよ!まぁ、すぐに終わっちゃうでしょうけど」

朝倉は勝ちを確信したかのような口調。

オレが椅子から立とうとしたら、

「情報連結解除、開始」

いきなりだ。

朝倉の宣言と共にオレの指先が結晶化していき、キラキラした砂となって崩れ落ちはじめた。

196 : VIPに... - 2014/08/08 01:07:41.20 3l2kPnMu0 79/307

期待していなかったがこれは予想外だ。

オレはスーパーサイヤ人になった。

さて戦おう!そう思った時、

「あーーーっ!!ひっどーーーい!!」

朝倉が悲痛な叫びをあげた。

「なっ!?どうした?」

「変身するなら先に言ってよ!!情報が全部書き換わって情報連結解除が無効になったじゃない!!」

「わ、悪かった。すまん」

あまりのリアクションに思わず謝ってしまった。

朝倉は泣きそうな顔でジトーッとオレを見てる。

「よ、よし!こうしよう!このままでいるからもう一度チャレンジするのはどうだろう?」

「全然違うから一から解析のしなおしだし、エネルギー量も段違いに増えて時間がかかるからもういいわ!」

朝倉はお冠だ。難し年頃だ。ブラもこうなるのだろうか?一抹の不安がよぎる。

197 : VIPに... - 2014/08/08 01:18:29.46 3l2kPnMu0 80/307

「わたしはもう帰るから。じゃあね」

朝倉は帰ろうとする。

「待ちやがれ!」

オレは朝倉を引き留めた。このまま帰すわけにはいかない。

「時間が時間だ。親御さんに電話をしろ。心配してるだろうからな」

「まだ六時半ですよ!?」

悟天が口を挟む。

息子と娘じゃ門限が違うに決まってるだろうが、このくそったれめ!!

205 : VIPに... - 2014/08/08 21:45:41.32 3l2kPnMu0 81/307

「わたしに電話をかけるような親は居ないわ」

朝倉は平然と答えた。

「ふざけるな!子供、ましてや娘をを心配しない親などいるものか!」

「わたしの……そうね、あなたたちの言うところの親は心配しないのよ」

「オレが説教してやる。電話をかけやがれ!」

「居ないわ」

「なに!?」

「わたしに電話をかけるような親は居ないと言ったのよ」

こいつには両親が居ないと言うのか?

オレはなんて酷いこと言ってしまったんだ!

こいつはあの世の親が心配しないようにと胸を張って生きてるんだな。

「……悪かった。すまんな」

自分の軽率さを後悔した。これがブルマの言っていた社会常識って奴だったのか。

206 : VIPに... - 2014/08/08 21:46:31.86 3l2kPnMu0 82/307

「だが、お前の世話を見ている同居人が居るんだろう?」

「居ないわ」

朝倉は平然と答える。

「まさか一人で暮らしてるのか!?」

「そうよ?何か変かしら?」

「もしかして飯とかも一人なのか?」

「もちろん♪」

朝倉は笑顔で答える。

こいつは弱ってるところや寂しい所を見せたくないプライドの塊なんだな。

「帰りは悟天に送らせる。飯を食っていけ」

「え!?でも……」

「ゴチャゴチャ言うんじゃねぇ!!オレ様がお好み焼きを焼いてやるんだ!!大人しく食いやがれ!」

プライドが邪魔してるであろう朝倉を一喝した。こうでもしないと食って行かないだろう。

オレがそうだからな。

207 : VIPに... - 2014/08/08 21:59:58.67 3l2kPnMu0 83/307

朝倉を悟天に任せオレは買出しに行った。

まずはキャベツ、次はニンジン、ブタ肉はいいツヤをしてる新鮮な奴だ。

山芋も籠に入れる。

後は、小麦粉、卵、天かす、きざみショウガを籠に入れる。

残るは、ソース、青のり、おかか………おっと!大事なマヨネーズを忘れてた。

こうして買出しを終えたオレは家に帰った。

209 : VIPに... - 2014/08/08 22:13:52.38 3l2kPnMu0 84/307

家に帰ったオレはお好み焼きの準備に取り掛かる。

朝倉が「何か手伝おうか?」と言ってきた。

料理を手伝う機会もあまりないのだろう。

オレは朝倉にお好み焼きの生地を溶かさせた。

刃物を持たせるわけにはいかないからな。

指でも怪我をされたら大事だ。

そういえば、悟天が壊した居間の壁や壊したと言ってた台所の壁が直っていた。

オレが買い物に行ってる間に朝倉が直したらしい。

早技もそうだが、依然と全く変わらない補修がなされていたことに驚いた。

こいつには大工の才能があるのかもしれんな。

210 : VIPに... - 2014/08/08 22:19:19.44 3l2kPnMu0 85/307

準備も整い、居間のホットプレートの電源を入れる。

朝倉の相手は悟天に任せた。

意外と重宝するなと感心しているうちにプレートが温まる。

豚肉を焼き、そこに生地を垂らし数分。

天井をぶち破るような音とともに瓦礫の山が降ってきた。

213 : VIPに... - 2014/08/08 23:26:09.02 3l2kPnMu0 86/307

オレは朝倉を左脇に抱え瓦礫の飛ばない場所に避難させた。

悟天に声をかける。

「大丈夫か!」

「はい!テーブルごと部屋の外に運べました!」

それでこそサイヤ人だ!お好み焼きは無事だ。

しかし、悟天も建て付けが悪いと言っていたがここは欠陥住宅なのか?

215 : VIPに... - 2014/08/08 23:46:35.97 3l2kPnMu0 87/307

そう思っていると、

「一つ一つのプログラムが甘い」

長門は瓦礫の山に立ち平素と変わらない無感動な声を出している。

オレは長門が犯人だと断定した。

「天井部分の空間----」
「長門ーーーーーーー!!!」

「なに?」

「これはお前がやったのか?」

「そう」

オレは長門に近づく。

「あなたは動かないでいい」

長門の言葉を無視して近くに立った。

そして比較的綺麗な床を指さし、

「そこに正座しやがれ!!」

と命じた。

「なんで?」

長門は小首を傾げる。それでも大人しく従い正座をした。

「なんで天井から入ったんだ?」

「入りやすかった」

入りやすいから天井からだと!?コイツはどんな教育を受けてるんだ?

216 : VIPに... - 2014/08/08 23:52:22.11 3l2kPnMu0 88/307

オレは親を呼び出して説教することにした。

「おい!親に電話をしやがれ!」

「居ない」

しまった!こいつもなのか?

「す、すまん。保護者とかは?」

「最初から、わたししかいない」

こいつは孤児だったようだ。可哀想なこと聞いてしまった。

219 : VIPに... - 2014/08/09 00:16:13.99 Ubh6yusc0 89/307

「……聞き難いんだが、養護施設とかで生活しているのか?」

「違う」

「一人暮らしか?」

「そう」

「何時からだ?」

「三年間、わたしはずっとそうやって過ごしてきた」

道理でコミュニケーション能力が低いと思ったぜ。

親が居ない子供たちがこんなに居るとは……知らない間に目頭が熱くなってた。

220 : VIPに... - 2014/08/09 00:16:57.85 Ubh6yusc0 90/307

オレは長門を不問にした。

長門と朝倉は、

「独断専行は許されて無い」

とか

「もうしないわ」

と話し合っていた。

長門が天井を元に戻すとか言っていたが、

「気にしなくていい」

と答えておいた。孤児に修理代を出させるわけにはいかないからな。

221 : VIPに... - 2014/08/09 00:17:54.21 Ubh6yusc0 91/307

長門は「そう」と言って帰ろうとしたが呼び止めた。

「お前も帰ったら一人なんだろう?」

長門は黙って頷く。

「お好み焼きを焼くから食って行け」

長門はもう一度頷く。

庭でお好み焼きを焼くことにした。

225 : VIPに... - 2014/08/09 00:45:37.65 Ubh6yusc0 92/307

庭にてお好み焼きを焼くの再開した。

「ふはははは!どうだ!うまいか?」

長門は無表情のままパクパク食べている。

「おいしい」

表情から窺えないが、あの速度は満足している証拠だろう。

「そうか!朝倉も遠慮するなよ!どんどん焼くからな!」

「は~い」

朝倉も笑顔で食べている。

二人とも満足そうでなによりだ。

ただ、長門が思ったよりも食べたから悟天の分が減ってしまった。

大した問題ではないがな。

226 : VIPに... - 2014/08/09 00:46:09.99 Ubh6yusc0 93/307

食事も終わり二人を送ることとなった。

二人とも同じマンションに住んでいるらしく、見送りは悟天に任せることとなった。

オレは玄関まで付いて行き、

「飯くらいならいつでも用意する。気が向いたら来い。今度はたこ焼きを焼いてやるからな」

そう言って見送った。

二人が食器の片づけを手伝ってくれたのである事を考えるのに専念できる。

その事、ブルマに天井の説明をどうするか考えながら居間に入った。

すると居間の天井が直っていた。

おそらく朝倉の大工技術によるものだろう。

もはやあいつは匠の域だ。大したもんだぜ。

229 : VIPに... - 2014/08/09 04:11:58.15 Ubh6yusc0 94/307

翌日となり、ハルヒももしやと朝のHR前に思い聞いてみた。

「おい!両親はいるのか?」

「突然何よ?」

ハルヒは怪訝な顔をした。

「答えたくないなら別に構わんが………」

「そうね…親父は野球が好き。
 母親が味オンチで料理下手なのに、お弁当を作りたがる事を除けば普通の家庭だと思ってるわ」

「そうか……例え料理が下手でもお弁当を作ってもらえ。味わえる機会はそう多くないんだからな」

朝倉と長門を思い浮かべる。何故か目頭が熱くなってしまった。

ハルヒは、

「なによ偉そうに!」

と言って口をへの字に曲げてそっぽを向いてしまった。

231 : VIPに... - 2014/08/09 12:49:59.50 Ubh6yusc0 95/307

ハルヒの両親が健在で何よりと思っていたら放課後になっていた。

オレは部室に向かう。

部室には長門と朝比奈が着ていた。

朝比奈ももしやと思い聞いてみた。

「おい!両親はいるのか?」

「ふぇ?あ、あたしですか!?」

朝比奈は不自然な程に慌てた。

「そうだ」

「あの……それは[禁則事項です]」

「それは言いたくないってことだな?」

「ま、まぁそんなところです」

どうやらこいつも両親が居ないらしい。世の中腐ってやがる!くそったれ!

「今日の六時半、うちにこい!」

「え!?何か用ですか?」

「一人で飯を食うのも寂しいだろう。オレ様が作ってやる!」

「は。はぁ……」

朝比奈はキョトンとしていた。

232 : VIPに... - 2014/08/09 15:29:46.21 Ubh6yusc0 96/307

それから古泉と悟天が一緒に部室に入ってきた。

古泉は部室にハルヒが居ないのを確認するとオレに対して、

「涼宮さんの事で話があるのですがいいですか?」

と言ってきた。

「くだらん。どうせ涼宮が好きとかそういう話だろう?」

普段のこいつの言動を見ていれば解る。

「ええ~!!そうだったんですかぁ~!!」

朝比奈が嬉しそうな声をあげる。

部活の内容はどうでも良く、
普段からこいつは涼宮の機嫌を損ねない様な言動を心がけているからな。

立ち位置や動きもすぐにフォローできるように動いている。ガキでも解るぜ。

「あ、いえ……涼宮さんはとても魅力的な女性だとは思いますが----」
「悪いがオレは恋愛ごとには疎いんでな。他の奴に相談しな」

「いえ!ですから僕は----」
「頑張れよ」

オレは腕を組んだまま指だけを立てて古泉を激励した。

まさかオレが恋愛相談を受けるとは思ってもなかったぜ!

234 : VIPに... - 2014/08/09 15:35:09.72 Ubh6yusc0 97/307

古泉も両親が居ないかも知れないが男だし一人でもなんとかするだろう。

下級戦士なら赤ん坊の頃から他の惑星に送り込まれるんだしな。

地球人でも古泉くらいの年なら一人で惑星の一つか二つ滅ぼしていてもいいくらいだ。

朝比奈に詮索されている古泉を見ながらそう考えていたら、ドアが乱暴に開けられた。

239 : VIPに... - 2014/08/09 16:34:20.37 Ubh6yusc0 98/307

「バカベジータ!昨日も言ったでしょ!あたしの掃除が終わるまで待ちなさいよ!」

ハルヒが部室に入るなり怒鳴ってきた。知るか。

こうして今日も恙なく部活が終わった。

帰り道で悟天が「三角関係かぁ~難しいなぁ」などと独り言を言っていた。

それを言うなら三角関数だろう。下級戦士の息子は勉強が苦手らしい。

やっぱり血筋は大事だな。

オレは途中でタコ焼きの材料を買いに行った。

悟天には帰ってたこ焼き器を準備しておくように命じた。

240 : VIPに... - 2014/08/09 16:35:32.93 Ubh6yusc0 99/307

明石の天然物のタコを三杯ほど買った。

その他メリケン粉等も買って準備は万端だ。

良いタコが手に入り上機嫌だったオレを出迎えたのは古泉だった。

家の前で待ち構えていた古泉は、

「こんにちは」

笑顔で挨拶をしてきた。

「少しばかりお時間を借りていいでしょうか。案内したいところがあるんですよ」

笑顔のままで古泉は聞いてきた。

「ダメだ」

オレの持っているタコが見えないのか?

244 : VIPに... - 2014/08/09 18:07:04.02 Ubh6yusc0 100/307

「せめて話だけでもお願いします」

古泉が懇願してきた。

「料理を手伝え。話ならそこで聞いてやろう」

「ありがとうございます」

古泉はそう言うと、オレの後ろについて家に入ってきた。

245 : VIPに... - 2014/08/09 18:07:44.92 Ubh6yusc0 101/307

タコを茹でながら話を聞いた。

悟天は「ボクは居ない方がいいと思いますから居間にいますね」と出ていった。

なんのことなんだ?

古泉がタイミングを見計らい、オレに声をかけてきた。

「涼宮さんには願望を実現する能力があります」

長門もそんなことを言っていたな。例の中学生くらいの子の妄想って奴だ。

246 : VIPに... - 2014/08/09 18:08:29.24 Ubh6yusc0 102/307

「涼宮さんが特別であることは、長門さんや朝比奈さんから聞いていると思います」

朝比奈は言ってないぞ。まぁ、妄想だからな。

「ですから時間がないのでその辺は省きますが、
 我々は世界は三年前に作られたのかもしれないと考えています」

省き過ぎて言っている意味が解らんぞ。

「一番の謎はあなたです」

サイヤ人は常識では測れないからな。

「あなたはあのブルマ博士の内縁の夫ですが、経歴が全く解りません。
 それこそ二十二年前に突然空から降って湧いたとしか考えられないのです」

二十二年前と言えばナメック星から飛ばされた頃だな……と昔を懐かしんだ。

「我々はあなたは涼宮さんに作られた存在だと考えています」

ハルヒは生まれてないだろう。妄想でも少しは考えやがれ。

「涼宮さんが生まれる前に力を行使できるわけがないので、三年前に世界は作られた。そう考えているのです」

ほぅ?一応は考えていたんだな。

「三年前にそれまでもあったかのように作られた世界なのに、あなたの記録は欠落しています」

それまで地球に居なかったんだ。仕方がないだろう。ゲロの野郎はその前の戦闘も観察してたがな。

「そして今、あなたは涼宮さんの近くにいます。
 ひょっとしたらあなたが世界の命運を握っているということも考えられます。
 これは我々からのお願いです。どうか涼宮さんがこの世界に絶望してしまわないように注意して下さい」

古泉の妄想を聞き流していたら呼び鈴が鳴った。

249 : VIPに... - 2014/08/09 21:39:17.60 Ubh6yusc0 103/307

朝比奈が来るにはまだ早いと思いながらタコを湯から上げて、居間に行った。

居間には悟天の他に二人の女学生が居た。

朝倉と長門だ。

朝倉が椅子から立ち上がり、

「お言葉に甘えて今日もお邪魔しに来ました」

そう言ってお辞儀をした。

「ああ、今日はたこ焼きだ遠慮せずに食いやがれ」

「実は長門さんからそう聞いてたんだ」

と笑顔で応じていた。

「それとこれ」

朝倉は寸胴を指す。

「なんだそれは?」

「おでんです。こういうのも皆で食べた方が美味しいでしょ?だから、持ってきちゃった」

初夏におでんと言うチョイスもなんだが寸胴を持ってここまで来たらしい。

色々な意味で凄い女だ。

「温めたいのでお台所をお借りしますね」

オレの返事を待たず、朝倉は寸胴を持って台所に向かって行った。

250 : VIPに... - 2014/08/09 21:40:04.16 Ubh6yusc0 104/307

長門は長門で缶詰でピラミッドを立てていた。

「これ」

土産らしい。

「なんだそれは?」

「カレー」

普段から缶詰食品で暮らしているのだろう。

世の中間違ってやがるぜ!くそったれ!

「……温めるなら台所を使え」

「そう」

長門は缶詰を持って台所に向かって行った。

オレは長門が去ったのを確認して悟天に声をかけた。

「おい」

「え!?なんでしょう?」

「米を炊いておけ」

「はぁ?」

悟天は渋々台所に向かった。

251 : VIPに... - 2014/08/09 22:27:39.18 Ubh6yusc0 105/307

古泉が居間にきて、賑やかになってきましたしそれではこれでと去ろうとする。

「飯ぐらい食っていけ」

古泉は一瞬逡巡した後に、

「それではお言葉に甘えます」

と家に留まることにしたようだ。

252 : VIPに... - 2014/08/09 22:28:11.42 Ubh6yusc0 106/307

タコをぶつ切りにし、たこ焼きの生地も出来た。

たこ焼き器も温め終っている。

おでんも温め終わった。

カレーの缶詰は湯煎が終わり何時でも食べられる。

飯も炊き終わった。

時刻は六時半。

後は朝比奈がくるのを待つだけだ。

そして呼び鈴が鳴った。

253 : VIPに... - 2014/08/09 22:29:56.72 Ubh6yusc0 107/307

悟天を玄関にやり朝比奈を居間に迎えた。

朝比奈は開口一番、

「ふぇぇ~!!なんですかここ?我慢比べ大会でもやってるんですか!?」

意味不明な事を言った。

「ようやく感覚を共有できる人が着てくれて嬉しいです」

古泉は汗だくになりながらも笑顔で話している。

何を言ってるんだと思ったら悟天が仮説を提示した。

「もしかして暑いんじゃないですかね?」

「そうなのか?」

オレは朝倉に聞いてみた?

「さぁ?わたしには解らないわ」

「現在の室温は摂氏四十三度。湿度八十パーセント」

長門が朝倉に続いて答えた。

「それは暑いのか?」

「一般的には熱中症のリスクがある」

オレの問いに長門が答えた。

「エアコンをつけますね」

悟天が冷房を入れた。

254 : VIPに... - 2014/08/09 22:49:02.50 Ubh6yusc0 108/307

そんな感じで夕食会が始まった。

朝比奈は「カレーだけで五人前はありませんか?」などと言っていた。

かなり食が細いのだろう。一人につき一缶。適正に決まっているだろう。

食べ始めて暫くしたら悟天の携帯電話が鳴った。

悟天は電話に出る。

「今、ベジータさん達と晩御飯を食べています」

食事中だからな。早々に切り上げるだろう。

「他にはですって?朝比奈さんと古泉くん、長門さんと朝倉さんです」

何を説明してやがる。

「長門さんがカレーを持ってきて、ええ、朝倉さんはおでんです」

チッ!マナーが出来てねぇイライラさせやがるぜ!

「朝倉さんは居るのに、なんで呼ばれなかったなんてボクはしりませんよ」

これだから下級戦士のガキは!

「え?今からでもいい?ちょっとベジータさんに代わりますね」

悟天はオレを見て、

「ベジータさ~ん!涼宮さんも今から参加したいそうですけど、いいですよね?」

「貸しやがれ!」

オレは悟天から携帯電話を奪い取った。

「てめぇはパパやママと一家団欒をしてやがれ!!」

オレはそう言うと携帯電話を握りつぶした。

「ああ!!ボクの携帯が!!」

悟天が泣きそうな声で何かを言ってやがる。下級戦士は情けねぇぜ!

258 : VIPに... - 2014/08/09 23:04:33.09 Ubh6yusc0 109/307

心なしか青ざめた顔の古泉が、

「なんであんなことを言ったんですか?」

「一家団欒の食卓の方が良いに決まってるだろう」

オレはブルマやブラ、ついでにトランクスと普通に飯を食ってた日々を懐かしむ。

古泉が携帯電話を取り出す。

「すみません。どうしても外せないバイトが入ったんで失礼します。ご飯美味しかったです」

古泉はそれだけ言うとフラフラと出ていった。

260 : VIPに... - 2014/08/09 23:26:41.00 Ubh6yusc0 110/307

朝比奈は『あわわ』とでも言いそうなほどに慌てている。

朝倉は普段の笑顔とは違う、どこか興奮を抑えきれないかのような笑顔になっている。

長門は無表情だが何時もとは少し違う、どこか考え込んでるかのような表情だ。

悟天も何かを察したのか、

「あ!別に携帯電話は別に良いんで、気を取り直して食事を再開しましょう?」

と呼びかけた。

「あ!わたし急用ができちゃいました!本当にごめんなさい」

朝比奈は急に大きな声を出し、深々とお辞儀をすると出て行った。

オレは悟天に声をかける。

「おい!家まで送ってやれ」

悟天は「はい!」と言って急いで出て行った。

262 : VIPに... - 2014/08/09 23:41:44.14 Ubh6yusc0 111/307

オレがテーブルに着くと悟天が戻ってきた。

「てめぇ、ちゃんと送らねぇか!!」

悟天は慌てて答えた。

「いえ!どこにも居なかったんですよ!気を探ってもここら辺にいませんし……」

朝比奈が戦闘力を0にまでコントロールできるとは思えないが確かにこの付近には居ない。

「電話をかけてみやがれ!」

心配だ。悟天に催促する。

「ベジータさんがさっき壊しちゃったじゃないですか!」

くそったれ!こんな事なら携帯電話の一つでも持っておくんだったぜ!

必要なら界王から連絡が着ていたし、カカロットの瞬間移動もあったからな。

だが、そもそも朝比奈の電話番号を知らん!

適当に飛びながら探そうかと思っていたら、朝倉が声をかけてきた。

「彼女なら無事よ」

自信満々だ。

所謂、女同士で分かり合えるって奴だろう。信じることにした。

263 : VIPに... - 2014/08/09 23:43:02.45 Ubh6yusc0 112/307

なんだか妙な感じで食事会は終わった。

後片付けを早々に済ませ、悟天に二人を送らせた。

電話でブルマに『そんな言い方ないじゃない!後、悟天くんに謝りなさい!』と怒られた。

悟天には兎に角、ハルヒには悪いことをしてしまったようだ。

そう思いながら、その日は悟天と組手をしてから眠りについた。

264 : VIPに... - 2014/08/10 00:02:40.16 k/7Sr9Ka0 113/307

突如、違和感を感じた。

周りの気配を探りながら目を開ける。

辺りに一人居る。

ハルヒが寝ていた。

そして場所も変だ。

一見学校の様だが、明らかに違う。

とりあえずハルヒを起こす。

265 : VIPに... - 2014/08/10 00:15:54.93 k/7Sr9Ka0 114/307

「おい!起きやがれ!」

「う……うん…!?」

ようやく目を覚ました。異常事態なんだ。自分で気が付いて起きやがれ。

「な!なんであんたがあたしの部屋に居るのよ!?」

「ほぅ?随分変わった部屋だな」

オレに言われて気が付いたのかハルヒは、

「ここどこ!?」

などと慌てはじめた。

266 : VIPに... - 2014/08/10 00:32:22.78 k/7Sr9Ka0 115/307

違和感の正体を探る。

ハルヒは「ここは学校かしら?なんで制服なの?」などと言っている。

そして気が付いた。生き物の気配が全くしない。

精神と時の部屋の様な空間なんだろうか?

だが、それよりもハルヒが目の前に居るんだ。

オレは夕飯のことを謝ろうと思い口を開いた。

267 : VIPに... - 2014/08/10 00:33:18.36 k/7Sr9Ka0 116/307

「おい!」

「なによ!」

「今日のことなんだがな」

「なに?」

「オレ、実は一家団欒はとても大事だと思っているんだ」

「なによ……」

「たが友達付き合いも大事なんだよな?」

「バカじゃないの?」

268 : VIPに... - 2014/08/10 00:35:47.26 k/7Sr9Ka0 117/307

「今度はお前も----」

オレがそこまで言った時、気配を感じた。

「よう!ベジータ!」

カカロットだ。後ろには悟天とトランクスも居る。

瞬間移動で来たのだろう。

294 : VIPに... - 2014/08/11 02:57:18.61 5MrdsW660 118/307

カカロットに頼るようで気に入らんが、これでハルヒを無事に帰せる。そう思った。

そのカカロットだがハルヒをマジマジと見て、

「へぇ~……こいつかぁ~」

などと言っている。なんだと言うのだ?

ハルヒはハルヒで、

「どこから来たの?」とか「何をジロジロ見てるのよ!」等と言っている。

295 : VIPに... - 2014/08/11 02:58:57.47 5MrdsW660 119/307

カカロットに「さっさと帰るぞ」と催促しようと思ったら、カカロットの方から話しかけてきた。

「いやぁ~、ベジータが駆け落ちしたって聞いたから焦ったぞ!」

な、何を言ってるんだ!?

「悟天から駆け落ちしたって聞いても信じられねぇと思ったけどさ、
 実際に妙な場所で二人っきりだろ?」

カカロットは意味が解らないことを言いながら周囲を見渡す。

「それにしてもここはどこなんだ?」

「知らん」

オレの返答に対して、

「そりゃ言いたくないよな!それじゃあオラは他の連中も連れてくる。考え直してくれよな!」

カカロットは一方的に喋ると瞬間移動で目の前から消えた。

296 : VIPに... - 2014/08/11 03:00:09.01 5MrdsW660 120/307

オレは悟天を詰問した。

「おい!どうなってやがる!!」

悟天が怯えながら答えた。

「突然いなったから、ブルマさん達とか三角関係が嫌になって駆け落ちしたのかと……」

「ふざけるな!!」

オレが悟天を怒鳴りつけているとトランクスが青い顔をして話しかけてきた。

「父さん!考え直してください!!どうしてもと言うのならオレを倒して行ってください!」

「てめぇがオレに勝てると思ってるのか?」

「………父さん…そこまで……」

違う!オレは何を言ってるんだ?つい反射で答えてしまった!

298 : VIPに... - 2014/08/11 03:03:08.16 5MrdsW660 121/307

ハルヒが空気を読まずにオレの腕を掴んで話しかけてきた。

「巨人よ!巨人!光る巨人だわ!!」

「父さんから離れろ!!」

トランクスがハルヒを怒鳴りつける。

「おい!そんな言い方はないだろう!」

女を怒鳴りつける様な育て方をしてしまっていたらしい。失敗だぜ!

オレはハルヒに向かって、

「てめぇも少しは黙ってやがれ!!ぶっ殺すぞ!」

軽く注意をした。

ハルヒはつまらなそうに口をへの字に曲げて、

「あっそ!あたしは一人で見てくるわ」

と言ってオレから離れて校舎の方に走って行った。

ようやくトランクスと話し合えると思ったら、トランクスは下を向いて悔しそうに泣いていやがる。

こんな女々しい奴に育てた覚えはないぞ!くそったれ!!

306 : VIPに... - 2014/08/11 21:40:36.43 5MrdsW660 122/307

どうしたものかと考えていたらカカロットが続々と人を連れてきた。

悟飯「ベジータさん考え直してください!!」

ビーデル「そうですよ!パパだって高校一年生に手をつけませんよ!まして奥さんもいるんだし…」

悟飯「パンも何か言ってあげて」

パン「あたち、さんちゃ~い!」

悟飯・ビーデル「よく言えましたね~」

二人はパンの頭を撫でてる。

オレも早くブラの頭を撫でに帰りたいぜ!

307 : VIPに... - 2014/08/11 21:41:52.42 5MrdsW660 123/307

チチ「ブルマさんが可哀想だべ!トランクスくんやブラちゃんも!考え直した方がいいべ」

牛魔王「んだ!んだ!」

ミスターブウ「おまえ悪い奴だったみたいだな」

ミスターサタン「ベジータさんお気を悪くしないでください!でも流石に……」

な、なんなんだ?

308 : VIPに... - 2014/08/11 21:42:26.76 5MrdsW660 124/307

ウパ「あの……初めまして。そう言うのはよくないと思います」

ボラ「ああ!武道家気取りの様だが風上にも置けないな。カリン塔には登らせん!」

ウパの嫁「事情はよく解りませんが、奥さんの所に戻ってください!!女として許せません!」

こいつらは誰だ?

309 : VIPに... - 2014/08/11 21:43:24.36 5MrdsW660 125/307

クリリン「ベジータ!見損なったぜ!!早くブルマさんの所に戻ってくれ!!見なかったことにするからさ!」

18号「最低だな」

マロン「………」

亀仙人「いやぁ~ピチピチギャルなんじゃろ?うらやましいのぅ。他の人を泣かすのは感心せんが」

ウミガメ「亀仙人様、事態を考えましょうよ~」

いったいどうなってやがる!

310 : VIPに... - 2014/08/11 21:44:27.39 5MrdsW660 126/307

天津飯「ベジータの生き方は尊敬していたんだが……オレの目でも貴様の本質は見抜けなかったか」

餃子「ブルマは置いてきたとか言わないでください。置いて行かれた側は……」

誰か説明しやがれ!

311 : VIPに... - 2014/08/11 21:45:13.87 5MrdsW660 127/307

ヤムチャ「おい!どういうつもりだ!!返事次第じゃ許さんぞ!!……悟飯がな」

プーアル「そうだ!そうだ!ブルマさんをヤムチャ様に返せー!!」

ウーロン「そりゃ今のブルマよりもピチピチギャルの方がいいだろうけどさ………」

くそったれ!!意味が解らんぞ!!

312 : VIPに... - 2014/08/11 21:46:04.69 5MrdsW660 128/307

スノ「女の敵!」

ハッちゃん「そういうのはよくない」

桃白白「前の女が邪魔なら代わりに殺してきてやろうか?安くするぞ」

鶴仙人「どうでもいいが変態だな」

てめえらは誰だ!!

313 : VIPに... - 2014/08/11 21:46:40.88 5MrdsW660 129/307

占いババ「おぬしが駆け落ちとは……このワシでも占えなかったぞ」

カリン「わしにも解らんかった」

ヤジロベー「流石ベジータさん!おモテになるようで……」

ピッコロ「ベジータ……」

デンデ「僕らはその色恋沙汰って言うのが解りませんが、ブルマさん達を裏切るのはどうかと……」

ポポ「不倫よくない。既婚者の駆け落ちはもっとダメ」

老界王神「ピチピチだからのぅ」

界王神「事情は知りませんが、非難されるようなことはやめておいた方が良いと思います」

そこの人外連中!!オレ様に事態を説明しやがれ!!!!

314 : VIPに... - 2014/08/11 21:47:16.70 5MrdsW660 130/307

ブリーフ「ベジータくんも若い娘の方が良いみたいじゃなぁ」

ブルマ母「あらあら、ブルマちゃん可哀想に!でも、あたしは応援するわよ!ベジータちゃんおめでと~!」

ブリーフ「ベジータくんも若い娘さんに負けない様に頑張らんといかんなぁ」

ブルマ母「ベジータちゃんなら大丈夫よ!!鍛えてるし!ねぇ?」

何でオレに聞くんだ?

318 : VIPに... - 2014/08/12 00:25:37.82 6bC8jC2s0 131/307

悟空「オラ飽きてきちまった!あの巨人と戦ってくる!!」

突然カカロットはそう言うと飛んだ。

「界王様にも協力して貰ってっからさ!考え直してくれよ!」

オレに向かってそう言うと飛び去った。

「あ!ボクも行きます」

と悟飯や悟天、その他何人かも付いて行った。

319 : VIPに... - 2014/08/12 00:27:58.69 6bC8jC2s0 132/307

嫌な予感がしていると突然に心に呼びかけられた。

界王『わしじゃよ。界王じゃ』

言わなくても解るぜ!くそったれめ!

界王『悟空に頼まれてな。悟空がそこに行った時から全宇宙におぬしの会話を流しておるんじゃ』

な、なんだと!?なんてことをしやがるくそったれーーー!!

320 : VIPに... - 2014/08/12 00:28:56.80 6bC8jC2s0 133/307

界王『じゃが、心配しなくてもいいぞ。ブルマとやらにだけは聞けない様にしておる』

それは不幸中の幸い……ってなんでこんな目に………

界王『離婚回避のためらしいが、悟空も気が回るようになったのう』

閻魔大王『界王様!話は聞きました!私からも良いですかな?』

界王『おお!なんじゃ?』

くそっ!こんな感じで会話を聞かれてたのか!

321 : VIPに... - 2014/08/12 00:29:30.35 6bC8jC2s0 134/307

閻魔大王『私やあの世からも世間の風当たりと言う奴を伝えたいのですが……』

界王『わしが責任を持って伝えるから存分に言うがよい!』

ふざけるなぁーーーー!!!

322 : VIPに... - 2014/08/12 00:30:02.19 6bC8jC2s0 135/307

閻魔大王『では、私から………その様な事をさせる為に体を残しておいたわけではないのに残念だ』

フリーザ『サイヤ人は本当に盛りのついた猿だね』

ベジータ王『サイヤ人は少なくなったそうだが、女好きとは変わったサイヤ人だったな。頑張れよ』

ナッパ『女に現を抜かすとはどっちがサイヤ人の面汚しだったんだか』

ラディッツ『よう!女好きベジータ』

ザーボン『サイヤ人には詳しいつもりだったが駆け落ちは初耳だな』

ツーノ『こんな奴に村が滅ぼされたとは無念じゃ』

ゲロ『サイヤ人は常識では測れなかったな』

セル『よう!超ロリータ!盛れよロリータ』

バビディ『どうりでボクの術にかかるはずだよ』

くそっ!!!こいつらはもう一回ぶっ殺してやる!!

323 : VIPに... - 2014/08/12 00:33:17.38 6bC8jC2s0 136/307

界王『地球の様子も聞かせてやろう』

必要ない!!

『めがっさ恥ずかしい会話が聞こえてくるにょろ!悪い奴もいるもんだねっ!』

『だから話しを聞いて欲しかったのですが……アダムとイヴですよ。産めや増やせよとしてください』

『あなたは人の話を聞かない。今は話を聞いてもらえない。ユニーク』

『銀河全域で会話が観測出来てるわよ。機会があったらやり方を教えてね。それまで、涼宮さんとお幸せに。じゃあね』

『あわわわ!禁則事項が禁則事項で禁則事項なんですぅ~~!!』

『wawawa~自分の子供くらいの奴と駆け落ちかよ!こちとら彼女すら居ないっていうのにさ!』

『くっくっ!悪い大人もいるもんだね』

『待て待て、なんで会話が聞こえる。俺は病気か? ホワイ、なぜ?』

『………パパ…ママとブラとお兄ちゃんを捨てちゃうの?』

!?まさか…最後のは………

341 : VIPに... - 2014/08/17 23:03:32.80 Z0K5Q2JH0 137/307

オレが呆然自失としているとカカロットの声が聞こえた。

「あいつらでけぇだけで全然よえぇから帰ってきたぞ!
 ってベジータ……おめぇ泣いてんのか!?」

泣いてる!?オレがか?そんな馬鹿な!!その時オレの頬が濡れていることに気が付いた。

「おめぇよりもブルマやトランクス、ブラ達の方が泣きてぇんだぞ?」

オレがブルマ達に何をしたって言うんだ!!くそったれ!!!

「ちょいと会話を宇宙中にばらまくのを止めてくれんか?」

老界王神だ。なんでもっと早くに止めやがらねぇ!!間に合わなかったぞーーー!!

345 : VIPに... - 2014/08/18 22:22:01.29 3yn1NXoz0 138/307

『は、はい!!』

界王がビビったような声を出しながら返事をした。

俺たちには聞こえるようだ。本当に中止したんだろうな?

「悟空よ。もう十分じゃ。そろそろ説明してやったらどうじゃ?」

老界王神がカカロットに説明を促す。なにか企んでやがったのか?

348 : VIPに... - 2014/08/19 13:04:28.37 4pzgXVGD0 139/307

「ああ!オラはベジータに世間の目って奴でベジータを正気に戻そうと思ったんだ!」

「オレは初めから正気だ!!」

「ブルマ達を捨てて女と逃げようとしてた時点で異常だって!」

「ふざけなるぁーーーー!!!オレがそんな真似をするはずないだろうが!!」

「いっ!?」

カカロットが絶句した。こいつはオレをなんだと思ってたんだ?

349 : VIPに... - 2014/08/19 13:05:05.10 4pzgXVGD0 140/307

「でもよぉ~実際に二人で変な場所にいたしさぁ~」

「……ベジータの言っていることに間違いはないぞい」

老界王神が口を挟んだ。

「貴様!!知ってオレ様を批難してたのか!!!」

「わしは批難なんてしとらんぞい。
 ピチピチだから若気の至りで仕方がないと思っておっただけじゃ」

このジジイ……知っていたのに仕方がないと思って参加してたのか!?

だが、今はカカロットだ!!

350 : VIPに... - 2014/08/19 13:05:44.05 4pzgXVGD0 141/307

「おい!カカロット!!!」

「え!?いや~わりぃ、わりぃ!オラちょっと早とちりしちまったみてぇだな」

「この落とし前はどうつけるつもりなんだ!!」

「そんなに怒んなよ~。オラも少しは責任を感じて謝ってるんだしさ~」

「少しは……ってほとんど貴様が焚きつけて回ったせいだろうが!!」

「まぁ、誤解は解けたんだからいいじゃねぇか」

「いいわけあるか!!ここからが本当の地獄だ…」

351 : VIPに... - 2014/08/19 13:06:58.33 4pzgXVGD0 142/307

「なんでだ?」

「宇宙中に聞こえる様にしてたせいでオレは兎に角、ブルマやブラの立場がないんだよ!!」

「ベジータは結構世間体を気にするんだよなぁ~」

「てめえも少しは家族のことを考えられるようになりやがれ!」

「あ!じゃあこうしようぜ!ドラゴンボールで忘れてもらうとかさ」

359 : VIPに... - 2014/09/02 05:13:46.84 tGlQJB860 143/307

「その件でしたらムーリ長老が既に準備してくれているはずです」

デンデだ。この口ぶりだとコイツも知ってやがったな!

「おい!ナメック星で村を潰したことをまだ根に持ってやがったな!」

デンデを問い詰める。

「我々ナメック星人の心はそこまで狭くない。…ツーノ長老安らかに」

デンデの代わりにピッコロが答えた。そのピッコロに対してデンデが驚いたように声をかける。

「なんでピッコロさんがツーノ長老のことを!?やっぱり、あなたはネイルさんと!」

なんだコイツら?まとめてぶっ殺してやろうか?

360 : VIPに... - 2014/09/02 05:22:36.16 tGlQJB860 144/307

「おぬしらベジータをからかうのはそれくらいにしておけ」

また老界王神だ。

「さっきからなんなんだ!さっさと知っていることを言いやがれ!!」

「ここはおぬしと一緒にいた娘の作った空間じゃよ。連れてきたのもあの娘じゃ」

「全部ハルヒの仕業って言うのか!」

「まぁそうなるかのぅ。ついでに言えばおぬしの孤立を望んだのもあの娘じゃ」

くそっ!あの女!!ぶっ殺してやる!!!

361 : VIPに... - 2014/09/02 05:24:19.89 tGlQJB860 145/307

オレはふと冷静になった。

「おい、待て!!なんで望んだからと言ってなんなんだ?」

「そういう能力を持っているのじゃよ」

「なに!?」

「悟空やそこのナメック星人達はとぼけておるが、
 能力が発動する前に疑似的な望んだ状況を聞かせ、満足させて発動を回避したのじゃよ」

老界王神の説明を聞きカカロットの方を見る。

「え!?そうなんか?」

カカロットの野郎はまだとぼけてやがる!!くそっ!たいしたヤロウだぜ!

362 : VIPに... - 2014/09/02 05:24:57.58 tGlQJB860 146/307

「と、とにかくじゃな、おぬしに仲間外れにされて同じ思いをさせたくなったようじゃ。
 幼稚じゃがピチピチな若い娘だし仕方あるまい」

老界王神が説明を続ける。

「仲間外れ?」

そんな事をした憶えがなかったので聞き返す。

「そうじゃ。夕飯を一人泣きながら食べておったぞ」

「なんだと!?あいつには家族がいたはずだぞ?」

「そんな事は知らん。千里眼で見た事実だけを言っただけじゃ」

「ふん!界王神とあろう者が地球の女学生の覗きとは暇なことだな」

気に入らないから悪態をついてやった。

「ブウの居る惑星じゃしな。妙な刺激がないか監視するのは当然じゃろうて」

363 : VIPに... - 2014/09/02 05:26:41.98 tGlQJB860 147/307

老界王神が一息ついて、

「そろそろあの娘がこちらにやってきおる。
 おぬしが仲直りすればこの空間も消滅するぞ」

「くそっ!面倒なガキだぜ!!」

老界王神はオレを無視して、

「わしらを見られると厄介じゃ。悟空、みんなをここから出してくれんか?」

「お?任せてくれ!!」

悟空は一同を連れて瞬間移動をした。

無駄にうるさかったのに、いざ誰も居なくなると夏が終わったかのように寂しくなるな、
と連中をセミに見立ててガラにも無い事を思った。

364 : VIPに... - 2014/09/02 05:27:32.03 tGlQJB860 148/307

オレが感傷に浸っていると校舎の方からハルヒが歩いてきた。

ハルヒはオレを見かけると、

「ちょっと!さっきまでの会話はなんなのよ!」

と怒鳴りつけてきた。

365 : VIPに... - 2014/09/02 05:28:06.33 tGlQJB860 149/307

「説明するものめんどくせぇ。てめぇで考えやがれ」

オレはハルヒに考える機会を与えてやった。

「初めはね、ちょっと気分よく思ってたんだけど、
 朝倉みたいな声が急にあたしの名前を出すからから驚いて戻ってきちゃったわ」

そんな事よりもコイツに聞くことがあったな。

366 : VIPに... - 2014/09/02 05:28:36.06 tGlQJB860 150/307

「おい!一人で夕飯とはどういうことだ!!」

「ちょっと!!なんであんたがそんな事を知ってるのよ!」

「うるせえ!!とっとと答えやがれ!!」

「うるさいわね!うちは共働きなんだし、そんな日もあるわよ!」

「なんだと!?」

ブルマの家を地球人の一般的な家庭だと思っていたが違うのか!?くそったれ!!

367 : VIPに... - 2014/09/02 05:29:19.49 tGlQJB860 151/307

「そうだったのか……今度一人で飯を食う時には家に来るといい」

「あんたがどうしてもっていうなら行ってあげてもいいけど……」

「てめぇがどうしても言うのなら、オレ様がお前の家に行ってやってもいいぞ」

「なんで上から目線なのよ」

「うるせぇ!!兎に角、一人で寂しく飯を食うのが嫌なら家にきやがれ!」

「寂しくなんかないもん!!」

そういえば界王神が言うには泣きながら飯を食っていたらしいな。

「そうか。まぁ、オレのお好み焼きを食いたくなったらくるといい」

「そこまで言うのなら、今度行ってあげるわ。感謝しなさい!」

368 : VIPに... - 2014/09/02 05:29:51.30 tGlQJB860 152/307

目が覚めたらベッドの上だった。

あれは夢だったのか?とんだ夢だったぜ!!

369 : VIPに... - 2014/09/02 05:30:21.88 tGlQJB860 153/307

その日は流石に気怠い気持ちで登校した。

そして何時もと変わらない様子の教室に入る。

そしていつも通りの席に着く。

ハルヒの様子も変わらないようで何よりだ。

370 : VIPに... - 2014/09/02 05:31:28.36 tGlQJB860 154/307

そして昼休み、ハルヒが珍しく弁当を持ってきていた。

食堂に行こうかと立ち上がったオレにハルヒが声をかける。

「ちょっと待ちなさいよ!」

「なんだ?」

「あんたが母親に弁当を作って貰えって言うから作って貰った結果がこれよ」

ハルヒが弁当箱を開けて、オレに見せる。

371 : VIPに... - 2014/09/02 05:32:06.82 tGlQJB860 155/307

「別段変わった所は見つからないが?」

「試しにこの卵焼きを食べてみなさいよ」

上手に黒い部分が入っているのり巻き卵焼きを一つつまみ口に放り込んだ。

海苔と思っていた部分は単なる焦げだった。

「苦いな」

オレは正直な感想を言った。

「でしょ?次はこのから揚げを食べてみて?」

言われるままにつまむ。

「ほぅ?こっちの方は中々だな。弁当なのに大したものだ」

少し大げさに褒めておいた。

「でしょ?今度あんたの家で食事会を開く時には覚悟しておきなさいよ!
 揚げたてを食べさせてやるんだから!」

母親も連れてくる気なのか?変わった奴だ。

372 : VIPに... - 2014/09/02 05:33:18.91 tGlQJB860 156/307

「ふん!貴様こそサイヤ人の食欲を見くびらないことだな」

「サイヤ人ってなによ?」

「説明するのもめんどくせぇ!てめぇで考えやがれ!」

危うくブルマとの約束を破るところだった。

オレはハルヒの追及を避ける為に、逃げる様に食堂に行った。

373 : VIPに... - 2014/09/02 05:35:32.67 tGlQJB860 157/307

余談だが、この日の放課後はハルヒの掃除が終わるまで待っててやった。

「団長を待つのは当然よ!」

などと言っていたが、とても嬉しそうだった。

ひねくれている様でとても素直な娘なのかも知れないなと思いつつ、
ハルヒに手を引っ張られながら部活に向かった。



ベジータの憂鬱 (了)




392 : VIPに... - 2014/10/13 23:14:38.95 9ag3grhO0 159/307

中間試験も終わりその結果も返りつつあった、六月のことだった。

部室に入るや、ハルヒが「野球大会に出るわよ!」などと言い始めた。

なんでもこの学校がある市の主催する野球大会らしい。

全くもってくだらん話だ。

………ところで野球ってなんだ?

393 : VIPに... - 2014/10/13 23:16:24.26 9ag3grhO0 160/307

「その野球大会とやらは何時あるんだ?」

オレにとっては週末か否かが重要だ。それにハルヒが答える。

「二日後。日曜日。準決勝と決勝は来週の日曜日ね」

週末はブルマ達の所に帰るので、オレは当然参加できない。

「くだらん。俺は行かんぞ」

簡潔に不参加を表明してやった。

「おいおい。折角の野球大会に参加しないなんてもったいねぇだろ~」

カカロットの声だ。いつの間にか瞬間移動で部室にきていたようだ。

394 : VIPに... - 2014/10/13 23:17:24.10 9ag3grhO0 161/307

「え!?だれ?悟天くんの…お兄さん?っていうかいつの間にいたのよ」

ハルヒが驚いている。見た目は悟天とそっくりだからな。

「あ!紹介します。父です」

悟天はボケたのか?チチではなくてカカロットだろ!
母親と父親の見分けもつかなくなったのか?

「随分と若いわね」

ハルヒは怪訝そうな顔を顔をしているが、カカロットのヤロウは気にせずにしゃべり始めた。

「オッス!オラ悟空!チチに言われて悟天の学校での様子を見にきたんだ。」

「え!?お母さんが!?」

悟天が驚き、ハルヒはその悟天に「父なのか母なのかハッキリしてよ」なんて聞いている。

395 : VIPに... - 2014/10/13 23:18:22.18 9ag3grhO0 162/307

「それよりもオラもその野球大会って奴に参加させてくれねぇか?
 昔、悟飯から話を聞いたことがあるんだけど、どんなのか解んなくてさ~。な、いいだろ?」

そんな二人に構わず悟空が懇願している。

「え、まぁ、悟天くんのお父さんならいいけど……」

いきなり現れて野球大会とやら参加させろと言われたハルヒは困惑しながらも了承した。

だが、問題はそこじゃない。カカロットのヤロウが参加するだって!?

「待て。オレも参加することにしたぞ」

「当り前じゃない!あんたは団員なんだから拒否権なんてないのよ!」

ハルヒが何か言っているが無視した。
それよりもオレはカカロットのヤロウに言わないといけないことがある。

396 : VIPに... - 2014/10/13 23:19:27.71 9ag3grhO0 163/307

「おい!カカロット!お前を倒すのはこのオレ様だからな!」

「オラもベジータしかいねぇと思ってる」

野球が何か知らないが、決勝とかがあるということは勝ち上がればカカロットのヤロウと戦えるのは間違いない。楽しくなってきたぜ!

「じゃあ、オラは悟飯に野球がなんなのか聞いてくる」

「当日は悟飯も連れてこい」

「ああ、じゃあ二日後な!」

カカロットはそう言うと瞬間移動で立ち去った。

「え!?今消えなかった?」

ハルヒが驚いている。

「あれはトリックですよ。ミスターサタンがセルを退治した時に使っている人が居ました」

古泉が笑顔をたたえてハルヒに解説した。

397 : VIPに... - 2014/10/13 23:20:02.64 9ag3grhO0 164/307

その後、野球とやらの特訓をハルヒが開いていたが訳がわからん。

人を立たせて、ハルヒがそこをめがけて鉄の棒で球を叩き飛ばす。

悟天はそれを余裕で受け止め、時として走ってでも受け止めに行っていた。

古泉は滑り込んでまで球を受け止める。

朝比奈はしゃがみこんで球を取ろうとしないし、
ハルヒもそれに構わず尻などにボールをぶつける。

長門は一歩も動かず、手の届く範囲の球を捕えている。

これはなにをすればいいんだ?

オレの番が回ってきたがらしいが意味が解らないので帰ることにした。

例によってハルヒの罵声が飛んでいるが知ったことか。

その後、大会までの二日をかけて悟天から野球の説明を受けたがよく解らなかった。
バットとやらでボールを飛ばして何が面白いんだ?さらにはそれを捕るだと?

398 : VIPに... - 2014/10/13 23:21:43.77 9ag3grhO0 165/307

大会当日。市民球場の前には、オレの他にカカロット、悟天、ハルヒ、古泉、長門、朝比奈、朝倉、悟飯、それと悟飯が嫁と娘を連れてきていた。

ちなみに朝倉はオレが悟天に呼ばせた。休日に一人じゃ寂しいだろうからな。

悟飯一家が一通り挨拶を終えるとハルヒがオーダーとやらを発表すると言い始めた。

「オーダー?なんだそれは?」

「あんたね、オーダーも知らないの?
 一番、ピッチャーはあたしで後はクジで決めるから関係ないけど」

ハルヒが非常識なことを言っている。

「ふざけるな!!オレがナンバーワンだ!!」

オレはその非常識を正してやった。

「な!?」

ハルヒはビックリした様な声を出した後に続けた。

「ま、まぁ、あんたがど~~~しても一番をやりたいって言うならやらしてあげる」

「フン」

当然のことなのになんでこの女は偉そうなんだ?

そしてオーダーとやらは、

一番、ファースト、オレ。二番、どこか、朝比奈みくる。三番、どこか、長門有希。四番、ピッチャー、ハルヒ。五番、どこか、悟天。六番、どこか、古泉一樹。七番、どこか、朝倉。八番、どこか、悟飯。九番、どこか、カカロット。

カカロットが九番なのは気に入らん。そもそもこの番号はなんなんだ?
あと、ピッチャーというのはハルヒが連呼をしていたので憶えたし、ファーストはオレが主張してとった。
なにをすればいいのかは知らんがな。

399 : VIPに... - 2014/10/13 23:22:21.62 9ag3grhO0 166/307

「おい!オレはいつカカロットと戦えるんだ?」

一番と九番だからまさか決勝とか言うんじゃないだろうな?
オレの当然の質問に朝比奈がビックリしたような声をあげた。

「え!?カカロットって誰ですか!?」

「ベジータさんの知り合いの方も出るのですか?」

古泉が笑顔をたたえたまま答える。

「チッ」

おとぼけに腹が立ち舌打ちをすると悟飯が耳元で囁いてきた。

「ベジータさんとお父さんは同じチームなんで戦えないんですよ」

なんだと!?くそったれーーーーー!!!!

オレの心中を察したのか悟飯が続ける。

「やっぱり勘違いしてたんですね。お父さんもがっかりしてました」

悟飯はそれだけ言うとさっさと球場の中に入って行った。

400 : VIPに... - 2014/10/13 23:23:45.84 9ag3grhO0 167/307

整列とやらが終わり、オレの打順がやってきた。

「ベジータさん!手加減してくださいね」

バットを手に向かうオレに悟飯が声をかけてきた。

「ふざけるな!!てめぇこそ手抜きをしたら許さんからな!!」

不真面目な悟飯を一喝した。ちなみにこの試合は悟飯の嫁が撮影中だ。
後でブルマとブラにオレの雄姿を見せたいからな。

一球目。まだヤムチャが投げた方がマシと思える様なヘロヘロ球が飛んできた。

今は無きナメック星に届けと言わんばかりの勢いでバットを振った。
球はバットの下を掠め地面にぶつかった。
地面にぶつかった球は、爆音とともに大量の土を巻き上げる。
グランドに大穴を空けてしまった。

球を投げるのは得意なのだが、棒で球を叩くのは初めてだった。
思ったよりも難しいものだ。

401 : VIPに... - 2014/10/13 23:24:14.38 9ag3grhO0 168/307

そこでふと我に返る。

おっと、塁に進まないとな。確か右に進むんだ。

オレは急ぎ一塁方向に走る。そしておそらくはカカロット達でしか捉えられない超スピードで二塁、三塁と踏み、ホームに戻ろした。

その時異変に気が付いた。

本塁が吹き飛んでるではないか!!
これでは点数が入らんぞ!!クソッたれーーーー!!!

402 : VIPに... - 2014/10/13 23:25:36.58 9ag3grhO0 169/307

俺が呆然と立ちすくんでいると審判とその前に座っていた男を両脇に抱えた悟飯が近づいてきた。

「これは試合どころじゃありませんよ。この二人だけじゃなくて、内野の選手もベジータさんの一振りで吹き飛んでしまいましたし……」

ベンチの方に目をやる。ベンチ相手の方のベンチは風圧と土でボロボロだが、オレたちの方は不自然な程に無傷だった。
朝倉の匠の技で修理をしたのだろうか?

なにはともあれ試合自体が流れてしまったようだ。

ベンチでは古泉が「きっと不発弾ですよ」などとハルヒに説明をしていた。

相変わらずハルヒにマメな男だ。

当のハルヒも
「野球は思ったより面白くなかったけど、それよりも面白いものが見れたし満足だったわ!」
と、満更でもなさそうだった。

おそらく、あれが青春って奴なのだろう。

403 : VIPに... - 2014/10/13 23:26:15.57 9ag3grhO0 170/307

野球大会も終わり、一同でファミレスとやらにやってきた。

「次はなにかしら?サッカー?ラグビーもいいわね」

などとハルヒが言っているのを横目にカカロットと戦えないわ、週末に帰れなかったわ、ブルマ達に雄姿を見せられなかったわで散々な週末を過ごしたものだと考えていた。

「あんたたちで大食い大会に出るのも良さそうね」

ハルヒが不敵に笑っていたが今度は付き合わん。

404 : VIPに... - 2014/10/13 23:27:25.68 9ag3grhO0 171/307

ファミレスとやらの食糧を食い尽くし、会計の段となった時に悟飯がガックリしていた。

「ぼ、僕が払うんですか!?」

この中で働いているのは貴様だけなんだから当り前だろう。

もっとも最終的には悟飯の嫁が、

「あ、悟飯くん!あたしが払うから大丈夫よ!」

と、「働かない癖に…」とぶつくさ言いながら支払うブルマとは大違いな悟飯の嫁が支払った訳だが。

まぁ、悟飯もようやくサイヤ人の自覚が出来たのだろう。
研究者などという意味が解らんことをせずに、
ああすることこそがサイヤ人の正しい姿だろうからな。


その日の夜、一応送った動画を見たブルマから電話がかかってきた。

もの凄い剣幕で「やりすぎよ!!」と言われた。
いったいなんのことだったのか意味が解らなかったが抵抗するだけ無駄だろうから適当に応じておいた。

納得いかん。


退屈(了)




408 : VIPに... - 2014/10/15 00:09:37.61 eIklVwLK0 173/307

この地方では七月七日に笹に願い事を書いた短冊という紙を吊るす習慣があるらしい。

昨日ハルヒが明日は七夕で……等と話しかけてきていたがよく解らなかった。

なんで今日になってそれが解ったかというと、
ハルヒが部室に笹のを持ってきて、
「さあ、願い事を書きなさい」
などと言ってきたからだ。

ハルヒは続けた。

409 : VIPに... - 2014/10/15 00:11:11.79 eIklVwLK0 174/307

「ただし条件があるわ」

「何だ」

「ベジータ、あんた、七夕に願い事を叶えてくれるのって誰か知ってる?」

「ナメック野郎か?」

「誰よそれ!」

「てめぇで考えやがれ!」

「ベガとアルタイルでしょう」

古泉が即答した。

「そう! 八十五点! まさしくその星よ!
 つまり短冊の願い事はその二つの星に向かって吊るさないといけないの。解る?」

ナメック野郎どもの他にも不思議な力を持った奴らが居るようだ。
フリーザが死んでて幸いだったな。

410 : VIPに... - 2014/10/15 00:12:01.35 eIklVwLK0 175/307

えっへん、とハルヒはなぜか偉そうに、

「説明するわ。まず光の速さを超えてどっかにいくことはできません。特殊相対性理論によるとそうなっています」

たかだか光速すら越えられないとは情けない奴らめ。

オレがそう思っていると、ハルヒはスカートのポケットからノートの切れ端を取り出して、ちらちらとメモを見ながら、

「ちなみに地球からベガとアルタイルまでの距離は、それぞれ約二十五光年と十六光年です。てぇことは、地球から発した情報がどっちかの星に辿り着くまでには二十五年ないし十六年かかるのは当然----よね?」

地球は思った以上に技術が遅れているようだ。
フリーザの高速宇宙船なら途中にあるであろうブラックホールの重力圏や隕石ベルトを考慮しても精々数週間の距離だし、カカロットに至っては一瞬だ。
もっともカカロットの瞬間移動は例外的な技だがな。

「さ、みんな。話は解ったでしょ。短冊は二種類書くのよ。ベガ宛とアルタイル宛のね。
 で、二十五年後と十六年後に叶えて欲しい願い事をしなさい」

実にくだらん。今日だろうが明日だろうが十年後だろうが百年後だろうがオレの願いは決まっている。

411 : VIPに... - 2014/10/15 00:12:48.79 eIklVwLK0 176/307

「ねえ、書けた?」

ハルヒの声に振り返る。奴の手前のテーブルには次のように書かれた短冊がある。

『世界があたしを中心に回るようにせよ』

『地球の自転を逆回転にして欲しい』

朝比奈は丁寧な文字で、

『お裁縫がうまくなりますように』

『お料理が上手になりますように』

長門は『調和』『変革』

古泉は『世界平和』『家内安全』

悟天は『楽して強くなっていたい』『左団扇』

などとそれぞれ書いていた。

オレはもちろん、

『カカロットと闘いたい』『カカロットに勝ちたい』

の二つだ。

412 : VIPに... - 2014/10/15 00:13:47.14 eIklVwLK0 177/307

「カカロットって誰なの?」

俺のぶら下げた短冊を見てハルヒがコメントした。

「オレの目標だ。カカロットに勝ってオレはナンバーワンになるんだ」

「でも、兄ちゃんとか吸収ができるブウさんが………」

悟天が余計な口を挟んできた。

「うるせぇ!!あんな醜い風船ヤロウや悟飯みたいな油断だらけなヤロウはオレの敵じゃねぇ!」

オレは悟天を怒鳴りつけた。

ハルヒはオレの剣幕に驚いたのか、

「ま、まぁ、あんたにとっては掛買のないライバルってことだけは解ったわ」

などと話をまとめた。驚かせたようで少々悪いことをしてしまった。

そんな感じでその日の部活は終わった。

413 : VIPに... - 2014/10/15 00:14:38.59 eIklVwLK0 178/307

帰宅直後に朝比奈が家を訪ねてきた。

制服から着替える前に呼び鈴が鳴ったのだ。

応対した悟天によれば朝比奈だといい、実際に朝比奈だった。

朝比奈は悟天に席を外すように頼み、その通りに悟天が席を外すとオレに言ってきた。

「短冊に部室に残って貰えるように書いておいたのですが、
 気が付かなかったようなので家に来ちゃいました」

さらに続けて、

「これから私と一緒に三年前に行って欲しいのです」

「ほう?タイムマシンか。いいだろう」

「…随分と簡単に信じるんですね………」

当り前だろう。目の前で自分の息子がタイムマシンで未来に帰って行くのを見たのだから。

414 : VIPに... - 2014/10/15 00:15:50.91 eIklVwLK0 179/307

「えっと……じゃあ、椅子に座って目を瞑ってください」

朝比奈は妙な注文をしてきた。

「なんだ?タイムマシンを出して一緒に乗ればいいのではないのか?」

「あ、あの見られたくないので……お願いします!」

この子にはこの子なりの理由があるのだろう。
仕方がなしにオレは従った。

「ベジータさん、ごめんなさい」

その刹那、意識を失いそうになった。おそらく朝比奈が何らかの薬品を使ったのだろう。

「てめぇ……」

気を失わなかったオレは椅子から立ち上がり朝比奈と対峙した。

朝比奈は薬品が効かなかったからかオレの殺気に気が付いたのか解らないがオロオロしながら、

「ふぇぇぇぇえ!!本当にごめんなさい!転送は[禁則事項です]で見られてはいけないんですぅ」

などと弁解をし、最後の方は泣いていた。

「タイムマシンなら目の前で見たこともある。他言はしないからさっさと移動しやがれ!」

こんな年端もいかないガキに泣かれてはこれ以上追及する気が起きん。

オレは朝比奈に次の行動に移すように促した。

415 : VIPに... - 2014/10/15 00:17:06.11 eIklVwLK0 180/307

「うぅ………本当に[禁則事項です]で[禁則事項です]なんで他言無用でお願いしますぅ…」

と言いながら朝比奈は[禁則事項です]な手段でオレを三年前に移動させたようだ。

飛んだ先は夜の公園のベンチの上だった。

「オレが知っている方法とは随分と違うな」

オレが朝比奈に声をかけると彼女は寝息を立てていた。

「ちゃんと寝ていますか?」

背後の植え込みに潜んでいた野郎が声をかけてきた。

「あ、キョンくん、今晩…って誰ぇええええ!!!」

植え込みから出てきた朝比奈に似た女は俺を見るなり素っ頓狂な悲鳴を上げた。

416 : VIPに... - 2014/10/15 00:18:46.24 eIklVwLK0 181/307

その白いブラウスに茶色いスカート姿の朝比奈に似た女に声をかけた。

「おい!朝比奈を眠らせたのはてめぇだな?なんのためにしやがった!
 とっとと答えねぇとぶっ殺すぞ!」

もっとも返答次第では即答してもぶっ殺す予定なのだが。

「え!?あ、あの、あたしが誰か解りませんか?」

「知らねぇな」

オレはビッグバンアタックの構えをとる。

「え!あ、あのあたしは、朝比奈みくるです!」

今の朝比奈よりも豊満な胸の持ち主は強弁している。

「嘘をつくんじゃねぇ!ここは三年前だろうが!!
 明らかにこいつより年を取ってやがるぞ!」

「も、もっと未来から来たんです!」

自称朝比奈みくるは手を胸の前で組み必死な声を上げた。

まじまじと観察する。確かに似ている。
胸が大きいだけではなく全体的に大人びているというべきだろう。

信じるかどうかは別として話は聞いてみることにした。

417 : VIPに... - 2014/10/15 00:20:14.24 eIklVwLK0 182/307

「で、その自称朝比奈みくるが何の用だ」

オレはビッグバンアタックの構えを解いた。

「詳しくは説明できません。理由は禁則だから。なのでぇ、わたしはお願いするだけです」

そして自称朝比奈みくるは続ける。

「彼女は眠らせました。わたしの姿を見られるわけにはいかないので」

「なぜだ?」

「だって、わたしが今のこの子の立場だったときに、わたしはわたしに会ってないもの。
 っていうより、キョンくん………」

自称朝比奈みくるが悲しそうな顔をした。

「さっきから言ってやがるキョンって言うのはなんなんだ」

「あ、いえ!気にしないでください!
 おそらくそちらの時間平面だとそれが必然だったのでしょう。
 わたしの頼みというのは、そこにある線路沿いに南に下ると学校があります。
 公立の中学校ね。その校門前にいる人に協力してあげてください。
 すぐ行ってあげてくれますか? 
 そっちのわたしは、ゴメンですがオンブして行ってください。
 あまり重くはないと思うけど」

「ふざけるな!なんでオレがそんな真似をしないといけないんだ!」

「と、とにかく!お願いますぅ~」

それだけ言うと自称朝比奈は闇の中に走り去った。

418 : VIPに... - 2014/10/15 00:20:54.90 eIklVwLK0 183/307

あの妙な奴の言うままに動くのは癪だが、
朝比奈をこんな場所においておくわけにも行くまい。
女の子だ、なにかあったら困る。

起きるまで行くあてもないので仕方がなしに、朝比奈を抱きかかえながら、
線路沿いに南に下って行った。

オレだからどっちが南か解るが、あの女どちらが南かを言わずに立ち去ったな。

そう思っていると、言われたとおりに中学校があり、
一人の子供がその鉄製の門によじ登ろうとしていた。

あいつを手伝うのか?その前にいうことがある。

419 : VIPに... - 2014/10/15 00:21:52.15 eIklVwLK0 184/307

「おい!てめぇ!!」

オレはやさしく声をかけた。

「なによっ」

門を登ろうとしていた奴は少女だった。

「なに、あんた? 変態? 誘拐犯? 怪しいわね」

少女に立て続けて言われた。

警戒感を持つことは良いことだ。世の中にはヘンタイヤロウがいるからな。

「こんな時間にガキ、それも女のガキが出歩くのは危ねぇだろ!とっとと帰りやがれ!」

「あたしは学校に侵入してやることがあるのよ!」

「なんだ?忘れ物か?」

「そんな訳ないじゃない!あんた暇ならあたしを手伝いなさいよね」

このガキはその用事とやらが終わるまで帰らないだろう。
仕方がなしに手伝うこととした。

420 : VIPに... - 2014/10/15 00:23:26.56 eIklVwLK0 185/307

ガキは門を乗り越え、内側から鍵を開け、門をスライドさせた。
オレはガキが開けたその門からその学校に侵入した。

ガキは運動場の隅っこまで真っ直ぐ前進すると、倉庫の裏へオレを連れて行く。
錆だらけのリアカーに車輪付きが付いた何だかよく解らん赤い小さな箱、何かの袋が数個転がっていた。

「夕方に倉庫から出して隠しておいたのよ。いいアイデアでしょ」

ガキは自慢げに言ってきた。

「それで何をするんだ?」

「あたしの言うとおりに線引いて。あんたが。
 あたしは少し離れたところから正しく引けてるか監督しないといけないから。」

どうやらあれは線を引く道具らしい。

「くだらん。地上にお絵かきでもする気なのか?」

「お絵かきってなによ!」

ガキは精一杯反発する。可愛いものだ。

「まぁ、いい。手伝ってやろう」

オレはそう言うと、朝比奈を倉庫の壁に寄りかからせ、ガキを脇に抱きかかえた。

421 : VIPに... - 2014/10/15 00:24:29.06 eIklVwLK0 186/307

「な、なにをするのよ!大声を出すわよ!」

ガキが暴れる。

オレはそれに構わず空を飛んだ。

「え!?なにこれ?空を飛んでるの!?」

ガキは一転興奮しながら喜びの声をあげた。
ガキなんてチョロイもんだぜ!!

「少々暗いな」

絵を描くのに支障が出るだろうからオレはスーパーサイヤ人となり明るくした。

「え!?なんであんた光ってるのよ!!」

「選ばれた戦士だからな」

飛んだりするのはブルマに禁じられていたが、三年前だし、未来から来たトランクスによれば過去での行動は元の世界へは影響がないらしいから別に構わないだろう。

「選ばれた戦士ってなんなの?」

「穏やかな心の持ち主が激しい怒りによって目覚めた究極の戦士だ」

トランクス達がガキの頃になれていたことから怪しい説ではあるのだがな。

422 : VIPに... - 2014/10/15 00:25:55.70 eIklVwLK0 187/307

「それよりも絵を描くんだろう?」

オレはガキを抱えていない方の手からベジットの時と同様に固形状にしたエネルギーを出し、それを地面に突き立てた。

「てめぇの好きな様に動かしやがれ!」

「え…あ、う、うん」

ガキは恐る恐るオレの腕を掴んで地面に何かを書き始めた。

「それは何を書いているんだ?」

オレの質問に対して、ガキは地面に絵を描きながら応じた。

「宇宙人でも呼ぼうと思ってね。ほら、今日って七夕でしょ?
 ベガとアルタイルに対するメッセージなの」

「オレが知っている共通性の高い宇宙語とは違うな」

423 : VIPに... - 2014/10/15 00:27:26.05 eIklVwLK0 188/307

「………さっきから気になってたんだけど、もしかしなくてもあんたって宇宙人?」

「なんでそう思ったんだ?」

「だって、空を飛んだり、手から変なのを出したり、宇宙語とやらを知ってたり」

「そんなのはトレーニングさえすれば誰でもできる」

「そうなの!?」

「そうだ」

「じゃあ、あたしも頑張ればあんたみたいに光れる?」

「それはできん。これはオレ達しかなれないからな」

「そう……やっぱりあんたは宇宙人?」

「そうだ。宇宙最強の戦闘民族。そしてオレはそこの王子だ」

「え!?あんたって偉い人だったの?」

「ああ。何と言っても王子だからな。そこいらの下級戦士とは出来が違う」

「そんなに偉い人ならあたしをあんたの星に招待してよ!」

ガキは目を輝かしている。

「悪いがオレの星は滅んでいるのでな。
 純粋血もオレを含めて二人しか残っていないんだ」

「そう……」

ガキの目は失望に彩られた。
夢を壊してしまったようだ。悪いことを言ったのかもしれん。

424 : VIPに... - 2014/10/15 00:28:18.40 eIklVwLK0 189/307

「それで学生の恰好をしているの?」

「地球の常識とか言うのを学ばないといけないからな」

「宇宙人も大変なんだね」

悲しみとも同情ともうかがえる表情を浮かべたガキが続ける。

「おじさんは仲間もほとんど死んじゃって寂しい?」

「……今の環境、この星も悪くない…いや、気に入らんがむしろ好きなんだろう」

ライバルであるカカロットや家族のことを思い浮かべる。オレも丸くなったもんだ。

見ず知らずのガキを脇に抱えて落書きを手伝うなんてフリーザの所に居た頃の俺からは想像もできない。

オレが苦笑いをしているとガキが声をかけてきた。

「気に入らないけど好きなんだ。
 …ふーん。おじさんの性格がなんとなくわかっちゃった」

ガキは何かを察したような不敵な笑みを浮かべている。気に入らん。

425 : VIPに... - 2014/10/15 00:29:08.09 eIklVwLK0 190/307

「おい!落書きはもういいのか?手が止まっているぞ」

「うん。もういいわ。だって宇宙人に会えたんだもん」

「そうか。じゃあ、ガキは帰る時間だな。送って行ってやろう」

「えーっ!!あたし、あんたと遊びたい!」

「ダメだ!ガキは帰る時間だ!!親が心配するだろう!」

ガキは解りやすい程にほっぺたを膨らませて、

「それならせめて飛んで送りなさいよ!」

まぁ、それくらいならいいだろう。その方が安全だしな。

「わかった。だが、少し待ってろ」

オレは一旦降り立ち、朝比奈を抱えた。

両脇に少女を抱えた、オレは再び飛び立ち、

「お前の家はどこだ?」

とガキに聞いた。

ガキは「あっち」と指さし、オレはそこ目指して飛んだ。

時間にして十五秒。ガキどもの負担を考えればこれくらいが速度の限界だろう。

ガキが「あの家」というのでそこで降り立った。

426 : VIPに... - 2014/10/15 00:29:51.02 eIklVwLK0 191/307

「あーあ、もう着いちゃった。つまんないの」

『涼宮』と書かれた表札が掲げられた家の前でガキがつまらなそうに小石を蹴る。

うん!?涼宮………もしかしてこのガキはハルヒなのか?

過去と未来が連続していないとはいえ、足跡を残さない方が良い感じがした。

こうなると早い段階からスーパーサイヤ人になっておいてよかったぜ。

「ねぇ、あたし、またあんたに会えるかな?」

「ふん。望めば会えるかもな」

これ以上は長居しない方が良さそうとなんとなく感じたオレは言葉短に答えあと、朝比奈を抱えて再び学校に飛び去った。

途中、ハルヒに見つからない様にスーパーサイヤ人を解き発光を終わらせたのはもちろんのことだ。

427 : VIPに... - 2014/10/15 00:31:11.41 eIklVwLK0 192/307

学校に着いたオレは朝比奈を起こすことにした。

自称朝比奈の言う通りならばオレの役割は終わったはずだ。

全く持って意味が解らなかったが。

「おい!いい加減に起きやがれ!永遠に眠らせるぞ!!」

優しく声をかけてやった。

「みゅう……。ふぁ。へっ? ……なん」

目を開けた朝比奈は、ひとしきりキョロキョロしたのち、

「ふぇふっ!」

とか言いながら立ち上がった。

「なななな……なんですかココ、何がどうして今はいつですかっ!」

「自称朝比奈みくるが指図した学校で三年前だろうが!!」

オレの答えを聞いているの聞いていないのかはっきりしない朝比奈は「あっ」と叫んでよろめいた。
暗い中でも白い顔がますます青ざめるのが見て取れる。

朝比奈は身体中を両手で探りながら、

「TPDDが……ありません。ないよう」

朝比奈は泣きそうな顔になって、まもなく本当に泣き出した。

「なんだそれは?」

「ここに着た時に使った[禁則事項です]です。あれがないと元の時間に帰れないぃ……」

「チッ」

オレの舌打ちに一瞬ビクッと体を揺らせた朝比奈はワンワンと泣きはじめた。

428 : VIPに... - 2014/10/15 00:32:05.60 eIklVwLK0 193/307

「仕方がねぇ。今度はてめぇが目を瞑ってやがれ!見られたくない[禁則事項です]って奴だ」

「え!?ベジータさんにも[禁則事項です]があるんですか?」

「うるせぇ!とっとと目を閉じねぇか!」

「は、はぃぃい」

朝比奈は急いで目を閉じた。

「風を感じるかもしれんが絶対に目を開けるなよ」

オレはそう言うと朝比奈を小脇に抱え飛んだ。

同じ時間に帰るこいつには飛んでいる所は見せられない。
ブルマとの約束があるからな。

朝比奈を抱えて飛んだ先は西の都。そう、オレの家へと飛んで帰ったのだ。

429 : VIPに... - 2014/10/15 00:33:02.42 eIklVwLK0 194/307

家に着いたオレは、

「もう目を開けていいぞ」

と朝比奈に声をかけた。

だが、当の朝比奈は、「ふぇぇええ~~」と目を回している。少々速く飛び過ぎたか?

ようやくにも落ち着いた朝比奈は周囲を見るなり、
「こ、ここどこですか!?どうやって着たんですか!?」
と再び慌てはじめた。

「オレの家だ。どうやって着たかはてめぇで考えやがれ」

オレは鍵を取り出し、玄関のドアを開ける。

「付いて来い」と朝比奈を家に招き入れた。

廊下を歩く俺についてきながら、朝比奈が声をかけてきた。

「あの~……すごく大きな家ですね」

「てめぇ一人を住ますくらいは出来るだろうな」

それどころか大量のナメック星人が住んでいたんだがな。

「うぅ……やっぱり帰れないんですかね」

朝比奈が泣きそうな声を出している。

そんな朝比奈に構わず、オレはたどり着いた先にあるドアを開けた。

「邪魔するぞ」

開けた先にはブルマがいた。ここはブルマの研究室なのだ。

430 : VIPに... - 2014/10/15 00:34:10.80 eIklVwLK0 195/307

「あら?ベジータ?さっきトレーニングを始めたばっかりじゃないの?
 って、なによその恰好!」

実験台の上で行っていた作業を中断したブルマはオレを見るなり大爆笑をした。

「笑ってないでさっさとTPDDを作りやがれ!!」

「藪から棒になによ!だいたいTPDDってなによ!」

ここでブルマは朝比奈に気が付いたのか、

「あれ?その子誰?トランクスの友達?」

と聞いてきた。

「あ、あたし朝---」
「……オレの同級生だ」

「はぁ?さっきからあんたは何を言ってるのよ」

普段のオレなら「めんどくせぇ!てめぇで考えろ」と突き放すところなのだが、
今回はTPDDとやらを作って貰わないといけないから説明してやった。

431 : VIPに... - 2014/10/15 00:34:50.61 eIklVwLK0 196/307

「……するとなに。あんたとその子は三年後の未来からやってきたの?」

「ああ」

「で、TPDDとか言うタイムマシーンを無くしたから帰れなくなったと?」

「ああ」

「あんたが学生服を着ているのは常識を学ばせるためにあたしが入学させたと?」

「ああ」

ブルマが大爆笑を始めた。
「ベジータが学生」とか言いながら床に突っ伏しドンドンと叩いている。

笑い過ぎて涙を浮かべたブルマはヨロヨロと立ち上がりながら、涙を拭いている。

「いやぁ、流石あたし。天才だわ。学校で常識を学ぶねぇ……」

「てめぇ……いい加減にしやがれ………」

笑い過ぎているブルマを注意しようとしたオレを無視して、ブルマは朝比奈に話しかける。

432 : VIPに... - 2014/10/15 00:37:35.24 eIklVwLK0 197/307

「まぁいいわ!TPDDが何か知らないけど、未来に帰れればいいんでしょ?」

「あ、はい……TPDDがなんなのかは[禁則事項です]だからお教えできないんですけど…」

朝比奈は不安気に答える。

「じゃあ、ちょっと待ってて」

ブルマはそれだけ言うと引き出しを引っ掻き回し始めた。

五分程経っただろうか?
ブルマは「あったわ!」と声をあげてホイポイカプセルを一つ取り出した。

「あ、あの……それは何ですか?」

朝比奈が不安気に聞いている。

「なに…って、未来に帰るんだからタイムマシーンに決まってるじゃない」

ブルマはさも当然といった感じに答える。

「えっ……」

朝比奈が絶句する。

「三年間コールドスリープしてる方がいい?
 タイムマシーンを持ってたあなたはどうか知らないけど、
 この世界のベジータが二人になっちゃうわね」

絶句する朝比奈を他所に、
「それじゃあ、裏庭にレッツゴー!」とブルマは張り切って歩き出した。

道中、朝比奈はなおも不安そうに、
「あ、あのこの時代にタイムマシーンがあるとは考えられないのですけど」
などと言っていた。

433 : VIPに... - 2014/10/15 00:38:38.19 eIklVwLK0 198/307

裏庭に出るとブルマはホイポイカプセルを投げた。

タイムマシーンが出てきた。ブルマはそのタイムマシーンに近寄った。

そのままタイムマシーン内に身を乗り出し、時間等を設定している。

このタイムマシーンは、セルが乗ってきたタイムマシーンのデータを元に改良した奴だ。

元々は研究者になった悟飯への学者になったお祝いだかで「過去とか未来に行けた方が研究が捗るわよね?」などと言ってブルマが作り直していた奴だ。

もっとも作っている途中で悟飯がサタンの娘と結婚した為に、新婚旅行仕様と称して二人乗りに作り直したわけだが。

それが何故ここにあるかというと、サタンとブウがこれを使って悪戯をするらしく、
悟飯の嫁が返しにきたからだ。

もっともそれがなくても悟飯は返したかっただろう。

あいつもサイヤ人の端くれだから結果よりも純粋に経過を楽しめる野郎だかな。

さて、そんな返品されてきたタイムマシーンを朝比奈がポカーンと眺めている。

434 : VIPに... - 2014/10/15 00:39:59.25 eIklVwLK0 199/307

「さて、設定が終わったわよ!」

ブルマが声をかけてきた。

オレは実物を見ても半信半疑な朝比奈と共にそれに乗り込んだ。

そしてブルマに言われたスイッチを押す。

視界が歪み、万華鏡のような風景になる。

そして徐々に風景が整っていく。着いた場所は北高のグラウンドだった。

「えっ? うそ……! えっ? ほんとうに?」

朝比奈は腕時計を見ながら驚きの声をあげた。

「よかった。帰って来れました。わたしたちが出発した七月七日……の午後九時半過ぎです。
 本当によかった……はふ」

あの腕時計がTPDDなのだろうか?

435 : VIPに... - 2014/10/15 00:40:57.85 eIklVwLK0 200/307

「そうか。夜も遅いし送って行ってやろう。案内しやがれ!」

タイムマシーンをカプセルに戻しながら声をかけた。流石に夜道は危ないからな。

「え!?家は[禁則事項です]大丈夫です」

朝比奈が拒否しやがった。

「なにかあったらどうするんだ!!くそったれーー!!」

オレの剣幕に驚いた朝比奈だが、

「それでも家は[禁則事項です]ぅ~」

と、泣きそうな声で応じるだけだ。

もしかして、オレを警戒しているのか?

「解った。タクシー代を出すから駅前のタクシー乗り場まで送ろう。」

「ああ。それなら大丈夫です!」

朝比奈は笑顔になり答えた。

オレは不安感を与えない様に極力人通りが多い道を選びながら駅まで朝比奈を送ることとなった。

436 : VIPに... - 2014/10/15 00:42:14.52 eIklVwLK0 201/307

「でも、未だに信じられません。この時代にタイムマシーンがあるなんて」

道中、オレの横を歩きながら朝比奈が呟いた。

「フン!ブルマはカカロットとは違う意味でだが天才だからな」

軽く嫁の自慢をした。

「え!?ブルマって、あの人があのブルマ博士だったんですか!?」

「あのかどうかは知らんがブルマだな」

「父親はブリーフ博士の?」

「ああ、ブルマの親父はブリーフだったな」

朝比奈は「あわわわゎ」と小さく言っている。

サタンほどではないが有名人らしいからな。今になって驚いているのだろう。

駅に着き、朝比奈にタクシー代として若干の金銭を持たせたオレは、タクシーに乗り込むところまで見届けて家路に着いた。

437 : VIPに... - 2014/10/15 00:42:56.24 eIklVwLK0 202/307

一人夜道を歩きながら、子供時代のハルヒが言っていた
「仲間もほとんど死んじゃって寂しい?」
と言う言葉を反芻した。

手元にあるタイムマシーンを使えばナッパたちも死ななくて済むのかもな………

そんな柄にも無い事を考えたが、すぐに「くだらん」とその考えを投げ捨てた。



ナッパラプソディ(了)




446 : VIPに... - 2014/10/22 03:57:54.97 Lmv1r6Nw0 204/307

くだらねぇ期末試験とやらの最終日のことだった。

一人遅れてやってきた朝比奈が喜緑江美里とか言うメスガキを連れてきやがった。

このガキは自分の男が居なくなったから探せとか妙な事を言ってきた。

「警察とやらに行けばいいだろう」

オレは至極当然な助言を与えた。

「待ちなさいよ!なんであんたが勝手に仕切ってるのよ!」

ハルヒが文句を言ってきた。

自分で言うのもなんだが、割と常識が付いてきたと思ってきていた。
それでもやはり何か間違えていたのだろうか?

447 : VIPに... - 2014/10/22 03:58:43.42 Lmv1r6Nw0 205/307

「彼女は我がSOS団に、行方不明中の彼氏を捜して欲しいと言ってるのよ!」

意味が解らん。オレがそう思っていると古泉が小声で話しかけてきた。

「涼宮さんは僕に悩み相談受付けのポスターを貼らせてたんですよ」

ようするにこれは部活動の一環ということらしい。
常識を学ぶためだ。くだらんことだが暫く付き合おう。

ハルヒは喜緑江美里の話を聞き取ると捜索を引き受けることとしたようだ。

448 : VIPに... - 2014/10/22 04:00:01.91 Lmv1r6Nw0 206/307

「きっと二ヶ月遅れの五月病で引きこもっているんだわ。
 部屋に乗り込んで二、三発ぶん殴って引きずり出せばいいだけの話よ。すんごく簡単」

という話だ。腕がなるぜ!

オレ達はその男が住んでいるという集合住宅に行った。

三階建ての建物でその三階に住んでいるという。

その男は一人暮らしという話だ。
もしかしたら、朝倉や長門、朝比奈と同じような境遇なのかもしれない。

男なら一人で星の一つくらいなら滅ぼせるだろうし、大した問題ではないのだが。

三階に上がり、ハルヒ一つのドアをガチャガチャと開けようとしている。

どうやらここに住んでいるようだ。

ゲロの家と同じくビッグバンアタックでドアを吹き飛ばしてもいいのだが、ブルマに怒られそうだから止めておこう。

オレが報告しなくても悟天が密告する様だしな。

449 : VIPに... - 2014/10/22 04:00:41.29 Lmv1r6Nw0 207/307

「何とか開けられないかしらね」

ハルヒはまだやっている。

仕方がないので、こっそりと裏からベランダに回り、
ガラスをブチ破って内側から鍵を開けてやった。

そして急いでハルヒ達ばれない様に再び合流した。

「なんだか知らないけど急にドアが開いたわ!!」

ハルヒが喜んでいた。喜んでもらえたようで何よりだ。

450 : VIPに... - 2014/10/22 04:01:53.59 Lmv1r6Nw0 208/307

「さあ上がりましょ。
 きっとベッドの下とかに隠れてるから、みんなで引っ張り出して捕獲するの。
 抵抗が激しければ最悪、息の根を止めていいわ。
 依頼人には蜜蝋に漬けた首を届けましょう」

それなら話は簡単だ。それに隠れている場所もさっきの侵入で予想がついている。

「ガラスが割られてるわ!事件の匂いがするわ!」

ハルヒはオレが破ったガラスを見て興奮している。

「異常がないか二手に別れて探すわよ!悟天くんとみくるちゃんはあたしと台所方面!
 ベジータと有希と古泉くんはパソコンとかベッドの下とかを探して!」

中々目の付け所が良い。実はパソコンの周りに次元の境目があるのだ。

精神と時の部屋の出来損ないのような奴だ。

451 : VIPに... - 2014/10/22 04:02:34.43 Lmv1r6Nw0 209/307

ハルヒ達が台所に行くのを見送ったオレはその境目に向かって気合を送る。

「ハァッ!!!」

裂け目が広がり部屋全体を飲み込んだ。

そして一面が砂漠の様な世界に変わった。

そしてオレはここで気が付いたのだ。

長門と古泉も連れてきてしまった!!

「こ、ここはどこだ!?」

精一杯うろたえてみせた。飛んだりするのはこいつらにみせられないからな。

452 : VIPに... - 2014/10/22 04:04:30.77 Lmv1r6Nw0 210/307

それに対して、長門も古泉も平然としている。気に入らねぇぜ!

「これは長門さんの仕業ですか?」

古泉が長門に聞く。長門に出来る訳がねぇだろ!
だが、良いチャンスだ。長門の所為にしておこう。

「ほぅ?こんなことが出来るのか」

「………」

長門はオレをじーっとオレを見ている。

「……出番」

長門がぼそりと小さな声で呟いたが、聞こえなかったのか古泉は構わずに続ける。

「涼宮さんの閉鎖空間ではないようですが」

「似て非なるもの。
 ただし空間データの一部に涼宮ハルヒが発信源らしいジャンク情報が混在している」

「どの程度です?」

「無視できるレベル。彼女はトリガーとなっただけ」

「なるほど。そういうことですか」

二人が何か話している。いわゆる中学生くらいの子の妄想した設定話だろう。

453 : VIPに... - 2014/10/22 04:05:07.35 Lmv1r6Nw0 211/307

話しが終わる頃、ずっとここにあった気配の持ち主が姿を現した。

巨大な虫の姿をしていた。やる気のようだが話にならん。古泉に任せよう。

あの程度の雑魚ならヤムチャ----要するに一般的な地球人----でも倒せるだろうからな。

「おや。不完全ながら僕の力もここでは有効化されるようですね」

古泉はそう言うと左手から赤い球状のエネルギー体を出した。

………まさか…あれは!?

そして古泉はオレが思った通り、それを右手で叩き飛ばし、巨大な虫にぶつけて倒した。

454 : VIPに... - 2014/10/22 04:06:14.31 Lmv1r6Nw0 212/307

「ほぅ…」

オレが感心して声を出すと、

「余り驚かれないのですね。僕のはトリックじゃありませんよ」

と古泉が声をかけてきた。

「クラッシャーボールか………まさか地球人に使い手がいるとは思っていなかったぞ」

古泉の弁とは違い、俺はジースの必殺技を見せられてかなり驚いていた。

もっとも威力は足元にも及んでいなかった。

「クラッシャー……ボール…ですか?」

古泉が不思議そうに聞いてきたころには虫が消滅し、空間も元の部屋に戻った。

そして部屋では例の捜索対象らしき男が椅子からずり落ちたみたいな格好で目を閉じている。

生きてはいるようだ。これなら依頼人の元に届けるのも楽だろう。

455 : VIPに... - 2014/10/22 04:06:49.43 Lmv1r6Nw0 213/307

「あれ!そこにいるじゃない!!」

わらび餅を片手に戻ってきたハルヒが男を見つけて声をあげた。

「見つかったようだな。オレは帰るぞ」

「あ、ちょっと!待ちなさいよ!!」

例によってハルヒが騒いでいるが部活動の目的は果たしたんだ、長居する必要はないだろう。

「あ、待ってください!ボクも帰ります!!」

部屋を出たオレを悟天が急いで追いかけてきた。

帰り道、夕飯の買出しを悟天に任せて、
なんとなく喫茶店によりチョコレートパフェを食べた。


スペシャルファイティングサイン(了)




456 : VIPに... - 2014/10/22 04:07:55.82 Lmv1r6Nw0 215/307

夏休みも目前に迫り、ようやくブルマやブラと過ごせると考えていたある日の夜のことだった。

電話が鳴った。当然、いつもの様に悟天が応対に出る。

「ベジータさん、ヤムチャさんからです~」

ヤムチャから電話だと!?いぶかしみながら悟天と交代した。

457 : VIPに... - 2014/10/22 04:08:24.93 Lmv1r6Nw0 216/307

「……何の用だ」

『ベジータか……久しぶりだなぁ。調子はどうだ?』

「てめぇと無駄話する気はねぇ!用があるならとっとと言いやがれ!」

『そ、そんなに怒鳴るなよ。えっとだな、この前ブルマにお前や悟空が出たって言う野球大会を見せてもらったんだ』

「チッ、ブルマの奴め余計なことを。用はそれだけか?」

『ま、待てよ!ここからが重要なんだってば!』

愚図愚図する野郎だ。用があるならとっとと言いやがれ!

458 : VIPに... - 2014/10/22 04:09:03.92 Lmv1r6Nw0 217/307

『あれにショートカットで眼鏡をかけていた子が出てただろ?』

眼鏡って言う奴はスカウターを二つ繋げたような奴だ。
親切なオレ様は読んでいる連中の為の説明を終え、該当する奴を思い浮かべる。

確か悟飯の奴が最近眼鏡をかけていたな。それにショートカット、短髪だ。

「悟飯か?」

『違う!たぶんベジータとか悟天と同じ学校の華奢な子だ』

全員華奢だから中々に難しい。だが、悟飯以外で眼鏡をかけているのは長門だけだ。

459 : VIPに... - 2014/10/22 04:11:25.23 Lmv1r6Nw0 218/307

「長門だな」

『へぇ~あの子長門って言うのか』

「………」

『………』

「用は終わったみたいだな。切るぞ」

オレは受話器を置いた。

460 : VIPに... - 2014/10/22 04:12:31.34 Lmv1r6Nw0 219/307

すぐにもう一度電話がかかってきた。

「おい悟天!電話だぞ!さっさと出ねぇか!!」

「目の前にあるんだから出てくださいよ~」

悟天は急いでトイレから出てきて、廊下を走って電話に出た。

「また、ヤムチャさんからです~」

「チッ」

オレは悟天から受話器を受け取り、

「用があるなら一回で済まさねぇか!」

と至極当然な注意をした。

461 : VIPに... - 2014/10/22 04:13:27.12 Lmv1r6Nw0 220/307

『い、いや!用事を終わらせる前に-----』

「うるせぇ!とっとと用事を言わねぇか!!」

『あ、ああ。悪かったから腹を立てないでくれ。
 俺の用時…っていうか頼み事----』

「ドラゴンボールでも集めるんだな」

『ま、待て!話を聞いてくれ』

「なんだ?イライラさせる野郎だ」

『俺にあの子を紹介してくれないか?』

「長門を?いったい何のために?」

462 : VIPに... - 2014/10/22 04:14:01.74 Lmv1r6Nw0 221/307

『いや、非常に恥ずかしい話なんだが一目惚れをしてしまってな。それであの子もそろそろ夏休みだろ?それなら今のうちに告白、いや、友達になっておけば遊べる機会が多いと思ってさ』

「………」

『………』

「………」

『………』

「………」

『おい?聞いているのか?俺にとっては人生に影響を与えかねない大事なことなんだぞ?』

開いた口がふさがらないとはこの事だろう。

463 : VIPに... - 2014/10/22 04:14:46.35 Lmv1r6Nw0 222/307

ようやくにも言葉を発せられるようになったオレは、

「バカヤロウ!!」

と怒鳴ってやった。

『バ、バカとはなんだバカとは!恥を忍んで頼むくらい真剣なんだぞ!』

「てめぇの年を考えやがれ!!親子以上に年が離れてるじゃねぇか!!」

『い、いや!年は離れているかも知れないが本気なんだ!』

「あいつは十五歳か十六歳だぞ!しかもその年齢にしても未成熟な体つきをしてるんだ!!」

『そうかぁ~彼女十五、六なのかぁ~』

「ああそうだ。解ったか、この変態ロリコン野郎」

464 : VIPに... - 2014/10/22 04:16:15.41 Lmv1r6Nw0 223/307

『い、いや、待ってくれ!俺は変態でもロリコンでもないんだ』

「てめぇがどう思っていようが世間ではてめぇみたいな野郎はそう呼ばれるんだよ!いいか、ウロチョロし始めてたら変態でロリコンなストーカーヤロウに相応しい最後を迎えさせてやるぞ!!全部忘れろ!解ったか!!」

『お、俺の話も----』

「解ったかと聞いているんだーーー!!!」

『ひぃぃぃい!!解りました!!一切合財忘れます!!』

変態野郎はそう言うと急いで電話を切った。

ブラがあんなおっさんに付きまとわれたらと想像したら気が気でなかった。

長門はブラと守ってやれる親が居ないんだ。少しくらいは守ってやらないといけない。

もっとも、ブラにも変な虫が付かない様に気を付けなくてはならないと思った夜だった。




ヒトメボレヤムチャー(了)




2 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2015/09/02 04:21:11.73 QcoJ3gSV0 225/307

夏休みとなった。ようやくブルマ達と過ごせる日々がやってきたのだ。

古泉から習ったオセロとやらでブラと遊んでいたオレにブルマが声をかけてきた。

「ねぇ、そういえばそろそろ合宿じゃないの?」

「が、合宿?いったいなんのことだ?」

実は学期末にハルヒが古泉の用意した島で三泊四日の合宿をすると言っていたのだ。

家族との団らんを重視しているオレは、もちろんそんなくだらん行事は無視することに決めていた。

「部活動の合宿よ!悟天くんから聞いたのよ。まさか忘れていたんじゃないでしょうね?」

くそっ!悟天のヤロウ余計な真似をしやがって!!

「それでいつなの?旅行鞄とか持ってないんだし、そろそろ買わないと………」

「……今日だ」

「え!?なにが?」

「だから今日がその合宿の日なんだ」

「ちょっと!今からじゃ間に合わないじゃない!!」

「ああ、そうだな。仕方がないから今回の合宿は諦めて家で過ごすことにするぞ」

「諦めるなんてねえだろベジータ!!」

「カ、カカロット!!」

いつの間にかカカロットのヤロウがいやがった。

3 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2015/09/02 04:22:38.27 QcoJ3gSV0 226/307

「あら、孫くんじゃない何か用?」

「よう、ブルマ!悟天の奴がさ、『ベジータさんが着ていないから様子を見てきてください』って言うもんだからよ」

くそっ!!またしても悟天か!!

「ベジータなら飛べばすぐ着くだろ?」

カカロットが平然と言ってきた。

「ふん!残念だったな!ブルマにあいつらの近くで飛ぶのは禁止させられてるんでな」

「……事情が事情だけに今回は飛んでもいいわよ。ただし、あんまり見られないでよね」

「だってよ!よかったなベジータ!」

「だ、だが着替えも何も用意していないぞ!!」

「でぇじょうぶだ!!それはオラが後で届ける!」

「良かったわね、ベジータ!持つべきものは友達よね」

「うるせぇ!!カカロットのヤロウと友達になった憶えはねえ!!」

「パパ、喧嘩してるの?」

ブラが心配そうに声をかけてきた。

「い、いや!そんなことはないぞ!!パパたちは仲良しだからな!」

「じゃあ、仲良しのお友達を信頼して行ってらっしゃい」

「くっ!!」

ブルマに強引に送り出されてしまった。

ブラを抱きしめたのち、待ち合わせの港のフェリー乗り場に向かってオレは飛び去った。

4 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2015/09/02 04:23:18.93 QcoJ3gSV0 227/307

フェリー乗り場は流石に人が多いので、適当な場所に降り立ち歩いて合流した。

他の連中は既にきていた。

「ベジータ遅い!!遅刻!!」

ハルヒはオレを見るなり声をかけてきた。

「ああ、サボる気だったからな」

「ちょっと!何を堂々と言ってるのよ!!」

ハルヒはそこまで言ってオレが手ぶらできていることに気が付いたのか、

「あんた着替えとかは?」

と、心配そうに聞いてきた。

「うるせぇ!説明するのも面倒だ。てめぇで考えやがれ」

「……ってあんたねぇ!!」

「あの船に乗るんだろう?愚図愚図してたら出てしまうぞ」

「ちょっと!!あんたが遅刻してきたから時間がギリギリなんでしょ!!なんで一番に乗り込もうとするのよ!!」

オレは喚くハルヒを無視して船に乗り込んだ。

5 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2015/09/02 04:24:05.32 QcoJ3gSV0 228/307

船中、オレは気になったことがあったので悟天に聞いてみた。

「おい!その鞄の中の奴は誰だ?」

「へ!?嫌だなぁ、着替えとか歯ブラシとかそんなのですよ」

悟天は妙なことを言われたといった表情をしたのち、まさかといった表情となり鞄を開ける。

「ばぁ!」

悟飯の娘であるパンが出てきた。

「す、すいません!!!」

悟天が謝っている。

「来たがっていたのを断ったのですが……いつの間にか…」

そんな手があったとは!オレもブラを連れてくれば良かったと激しく後悔した。

6 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2015/09/02 04:24:35.01 QcoJ3gSV0 229/307

ハルヒ達とパンが仲良く遊んでいるのを眺めているうちにフェリーは目的地に到着した。

フェリーを降りると新川という執事と森というメイドが出迎えた。

二人はオレ達に挨拶を済ますと「こちらです」と新たな船に案内する。

飛べばすぐに済むのにめんどくせぇ連中だぜ。

もっとも、朝比奈やハルヒ達は喜んではしゃいでいるようだからまだいい。

この様な移動にも意味があるのだろう。

7 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2015/09/02 04:25:11.64 QcoJ3gSV0 230/307

船が進むと一軒の洋館が見えてきた。

「別荘でございます」

はしゃぐハルヒに新川とか名乗ったジジイが説明している。

船が波止場に着くとこの館の主人である多丸圭一とその弟の裕が出迎えた。

古泉と親しげに話し、古泉がオレ達の紹介をしていた。

めんどくせぇ野郎どもだ。

8 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2015/09/02 04:26:03.90 QcoJ3gSV0 231/307

館の部屋割りは決まっていた。

オレは悟天と同室らしい。

「おい。この部屋割りは何なんだ」

「何か問題がありますか?」

古泉が不思議そうに聞いてくる。

王子であるオレが下級戦士であるカカロットの息子と同室とか、コイツは嘗めてやがる。

「オレは個室だ」

「そう言われましても……」

もう一つの事に気が付く。

「それとパンは悟天と同じ部屋にしやがれ」

パンが変な事を言ってしまっては台無しだからな。

「いえ、ですから……」

「それではオレは寝てくる。飯が出来たら呼びに来い」

愚図愚図言ってる古泉を無視してオレは部屋に向かった。

後ろでハルヒが「ちょっと!!海で遊ぶ予定なのにどうするのよ!」なんて叫んでいるが知ったことでは無い。

9 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2015/09/02 04:26:34.21 QcoJ3gSV0 232/307

夜となり、メイドがオレを呼びに来た。

「あの……晩御飯ができましたが」

「………」

オレは無言で部屋を出た。

晩御飯は驚くほど少なかった。成長期のガキどもが多いのにここの主人は何を考えてやがるんだ?

まして、ガキどもに酒まで出してやがった。ぶっ殺しておくべきなのか悩んだ。

10 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2015/09/02 04:27:06.19 QcoJ3gSV0 233/307

そして深夜、ドアの向こうに気配を感じた。

「悟天か?」

「あ、はい。ちょっといいですか?」

用事の予想はつくがドアを開ける。

「あの……パンが愚図っちゃって………」

悟天はパンの手を引きながら困り果てた様子だった。

11 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2015/09/02 04:27:32.87 QcoJ3gSV0 234/307

「飯が少なかったからな。大方、空腹で眠れないんだろう」

「やっぱり、少なかったですよねー。僕もお腹が空いちゃって」

「……ついて来い」

オレは悟天たちを先導して厨房に向かった。

12 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2015/09/02 04:28:37.76 QcoJ3gSV0 235/307

「好きなだけ喰え」

厨房に着いたオレは悟天達に飯を勧めた。

「えっ!?いいんですか?」

「腹が減ってるんだろう?」

「ええ……まぁ、そうですけど」

「こういうところの食い物は勝手に補充されるんだ」

「そうなんですか?」

「ああ。少なくともブルマの家はそうだ。オレが何時冷蔵庫を覗いても満載だからな」

この星は妙な部分の技術が異様に発達していると毎度のことながら感心するぜ。

「そういうことなら、遠慮なく食べちゃいますね」

冷蔵庫を漁る悟天とパンを見ながら、オレは台所に置いてあったパンを食べた。

もちろん、食物的な意味でだ。

13 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2015/09/02 04:30:05.66 QcoJ3gSV0 236/307

「よう!ベジータ」

オレがハムの塊を齧っているとカカロットの野郎がやってきた。

「随分と遅かったな」

「いや、わりぃ、わりぃ。パンが居なくなったとかで大騒ぎになっててよー」

そのパンはというとカカロットに会えて嬉しいのか抱きついていた。オレも早くブラに抱きつかれたいぜ!

「そうか。小さな子が急に居なくなったら騒ぎにもなるな」

勤めて平静にオレはそう言って悟天のケツを蹴り上げた。

「痛っ!!なにをするんですか!!」

「てめぇがパンを無断で連れ出したから騒ぎになったんだ」

「連れ出したんじゃなく、勝手に……」

「うるせぇ!ぶっ殺されてぇのか!」

「まぁまぁ。そんなに怒んなって。騒いでたのはほとんどがミスターサタンなんだしさ」

カカロットは冷蔵庫にあった鳥のモモ肉を咀嚼していた。

勝手に食うとは非常識なヤロウだぜ。やはり下級戦士は躾が出来ていない。

14 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2015/09/02 04:32:19.28 QcoJ3gSV0 237/307

突然に窓が破られた音がした。

「お!ここに居たのか」

「なんだ。ブウじゃねぇか」

音の原因はブウのヤロウだった。

「サタンに言われてパンを探しに来た」

「サタンも心配性だなぁ」

カカロットのヤロウは娘を持ったことがないから、オレやサタンの気持ちはわからないのだろう。

「パンは悟天が連れてけぇるってサタンに伝えといてくれよ」

「わかった」

「ブウも食って行けよ」

カカロットのヤロウが勝手にブウを誘う。相変わらず勝手なヤロウだ。

「おう。そうするぞ」

ブウもそう返事をすると遠慮なくケーキを一気に飲み込んだ。

ふざけるな!!あれはオレが目を着けていたんだぞ!!クソッたれ!

15 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2015/09/02 04:33:02.89 QcoJ3gSV0 238/307

「ふぃー食った、食った」

カカロットは満足気に腹を擦る。かく言うオレも満腹だ。

「お腹が一杯になったのかパンも眠そうです」

悟天はパンに膝枕をして頭を撫でていた。

「それじゃあ、オラとブウはもう帰るな」

悟空はブウと共に瞬間移動で立ち去った。

そこでオレはあることに気が付いた。

カカロットのヤロウ、荷物まで持ち帰りやがった!!

16 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2015/09/02 04:34:02.56 QcoJ3gSV0 239/307

翌朝、ハルヒの怒鳴り声が館内に響いた。

「事件よ!事件よ!」

そう大声を出しながらドアを叩く。

「なんだ?フリーザでも復活したか?」

「そうよ!フリーザーが荒らされたのよ」

「フリーザが荒らされた?」

「ううん。フリーザーだけじゃないの厨房にあった食べ物が全部なくなってるの」

よくわからないままに、厨房に連れて行かれた。

17 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2015/09/02 04:34:39.16 QcoJ3gSV0 240/307

「これは……どうなってやがる………」

オレが目にした厨房は窓は破られ、冷蔵庫は解き放たれているだけでなく、そこらに食い物の残骸が転がっている有様だった。

「アルコールの類を残してほとんどの食糧が失われてしまっています」

古泉にしては珍しく深刻な顔だ。

「あたし思うんだけど、窓が破られてるから、狐とか狸が食べていったんだと思うのよ」

ハルヒが腕を組み、自慢げな推理をしている。

だが、そんなことはどうでもいい。

「くだらねぇことを言ってねぇで、さっさと朝飯を用意しやがれ!」

オレは連中を一喝してやった。

18 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2015/09/02 04:35:10.76 QcoJ3gSV0 241/307

「ですから食料がなくて朝食を用意できないのです」

古泉が心底困り果てた様に返答してきた。

「ふみゅ~……朝ご飯はなしですかぁ~」

朝比奈が寂しそうに呟く。

育ちざかりのガキに朝食抜きはキツイだろう。まして、昨日の夕飯も少なかったんだ。

「おい!ここの主はどこだ‼」

補充を怠った責任者を追及しようと古泉に問い質す。

「え!?田丸氏ですか?二階の奥の部屋ですが……」

「オレ様に任せろ」

オレは胸に親指を当てて宣言した。

19 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2015/09/02 04:36:10.21 QcoJ3gSV0 242/307

「ちょっと!!あたしを差し置いて勝手に行くな!!」

「べ、ベジータさん!ちょっと落ち着きましょうよ」

ハルヒは文句を言うし、悟天は何故かオロオロとしているが、そんな事は知ったことか。

二階に上がると悟天が俺の前を行き、先にドアの所に行った。

「あ!ドアの鍵がかかってるみたいです。起きてくるまで待ちましょうよ。そうしたら少しは頭も冷えますし……」

悟天は何故かオレを宥めるかのように言ってくる。

そんな悟天に構わず、隣の部屋のドアを蹴破った。

「ちょっと!あんた何をしてんのよ!」

オレはハルヒの抗議に構わずに部屋に入ると、当のハルヒもついてきた。

そしてパンチ一撃、壁をブチ破った。

「凄い!!今のって壁ドンよね!あたし、ちょっとドキッっとしたわよ!!」

ハルヒが興奮気味に後ろで喚いているが、構わずに壊れた壁の向こうに呆然と立っていた屋敷の主の胸ぐらを掴んだ。

「おい!さっさと食い物を補充しねぇか!」

「く、食い物って…君は一体何を言ってるんだい?」

と、ドアが破られた。

20 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2015/09/02 04:37:15.35 QcoJ3gSV0 243/307

「ベ、ベジータさん!!乱暴は止めましょうよ」

ドアを破壊して侵入してきた悟天がオレにそう言う。

朝倉が家に来ていた時もドアを破壊して部屋に入ってきていたし、カカロットのヤロウはこいつにドアの開け方を教えてないのか?

オレが呆れていると悟天と共に入ってきた古泉がオレが掴んでるヤロウに説明を始めた。

「実は厨房が荒らされまして、ほとんど食べ物が無いのです」

「そんな!君たちが来るし、嵐も近づいているとかで一か月分以上の食料は置いていたはずだよ!?」

「うるせぇ!!そんなことはどうでもいいんだ!!さっさと食料を補充しやがれ!」

言い訳を続ける田丸とかいうヤロウを一喝してやった。

21 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2015/09/02 04:38:13.07 QcoJ3gSV0 244/307

「申し訳ございません。嵐が近づいている所為で船を出せないのです」

新川とかいう執事が謝ってきた。

「それがなんの関係があるんだ?」

「ですから、船が出せないので、食料の補充が出来ないのです」

「な……まさか………」

オレが恐怖していると悟天が失望の声をあげた。

「ええ~!?じゃあ朝食は抜きですか~?お腹がペコペコなのに……」

能天気な悟天に呆れる。

「本当の地獄はこれからだ……」

悟天に現実を教えてやる事にした。

「……いいか。嵐が止むまで飯が無いってことだぞ」

「ええーー!!まさか今日一日中とか!?」

「下手をすれば明日もだ……」

オレの考えを聞き、悟天の顔が恐怖に彩られる。

22 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2015/09/02 04:38:53.26 QcoJ3gSV0 245/307

「あの~なにを深刻な顔をしてるんですか?」

朝比奈みくるが何かを食べながら、話しかけてきた。

「食い物が無い話だ……」

「それでしたら災害時用の保存食がありますのでご安心を」

朝比奈と一緒にやってきたメイドが冷静に答える。

「そ、そうか」

一安心したオレだったが、見せられた食い物の量はとてもじゃないが一食分にも満たなかった。

23 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2015/09/02 04:39:39.51 QcoJ3gSV0 246/307

「これだけあれば、この人数でも二日か三日なら持つと思いますのでご安心ください」

メイドが微笑みとともに安心させようとする。

足りないのは誰の目にも明らかだろうに。

「そうね!これだけあれば問題なさそうね。遭難したみたいで面白そうじゃない」

ハルヒもメイドに続く。コイツは部長らしいから他の連中を安心させようとしているのだろう。

普段は好き勝手しているようだが健気だ。ブラにもこう育って欲しいものだ。

24 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2015/09/02 04:40:16.74 QcoJ3gSV0 247/307

「でも、どうして食べ物が無くなったのかしら?動物かと思ったけど、毛とかも落ちてないし……泥棒?」

ハルヒが不安を抱かせない様に話題を逸らす。

「いえ、ここは孤島ですし、それは無いと思います。仮に侵入者がいたとしても一人、二人では持ち出すのは不可能です。それに食べ物だけを盗むというのも納得できません」

古泉がハルヒに説明する。確かに不可解だ。オレ達が食べた後に補充された食料を食ったヤロウは誰なんだ?ぶっ殺してやる。

25 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2015/09/02 04:40:57.42 QcoJ3gSV0 248/307

「それじゃあ、やっぱり動物なのかしら?」

「でも、椅子を使った後がありますよ?」

「それじゃあ、人間ね。もしくは宇宙人」

堂々巡りを朝比奈に阻止されたハルヒは新たな考えを発表した。

「うん。そうよ!宇宙人に違いないわ!食べ物に困った宇宙人がここに来て食事して帰ったのよ。そして余った分はお土産に持ち帰った!それに決まってるわ」

奇遇にもオレの結論はハルヒと同じだった。

26 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2015/09/02 04:41:39.28 QcoJ3gSV0 249/307

「悟天!ちょっと来い」

「えっ!?あ、はい!」

「あの、朝ご飯はいらないのですか?」

保存食の乾パンを咥えた朝比奈がオレ達に聞いてくる。

「ちょっと、食べ物を調達してくる。オレ達の分は……長門、お前が食っていいぞ」

長門が意外に大喰らいだったことを思い出した。

「……感謝」

長門の礼を受けながらパンにも声をかける。

「……パンも来い」

「は~~い」

「ちょっと!嵐の中に子供連れ出してどうするのよ」

ハルヒの抗議を背に受けて館の外に出た。

27 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2015/09/02 04:43:28.78 QcoJ3gSV0 250/307

「あの、どうしたんです?」

外に出るなり、朝食にありつけずに不満げな悟天が聞いてきた。

「今から街に行って買い物をしてくるぞ」

「ええっ!?この人たちの近くじゃ飛んじゃダメって言われてませんでした?」

「今回は特別に飛んでいいらしい」

「そうなんですか?よかった~。あの量じゃ足りないし、どうしようかと思ってたんです」

「事情が事情だけにな」

そしてパンの頭を撫でて、

「カカロットから聞いてるぞ。鍛えてるらしいな、ついて来い。荷物持ちだ」

女でも鍛えなければならない下級戦士の境遇に同情しつつ、オレ達は飛んで行った。

28 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2015/09/02 04:43:59.10 QcoJ3gSV0 251/307

「しかし、変な話ですね」

道中、悟天が聞いてきた。

「ベジータさんの話だと、食べ物は自動で補充されるんでしょ?」

「ふん。こんな簡単な話もわからないのか?」

「ベジータさんにはわかったんですか!?」

下級戦士の息子が驚いていやがる。

「あれだけの量の食糧をオレ達に気づかれずに食えたり、持ち出せると思うか?」

「それは無理ですよ~」

「ああ、無理だろうな。……普通の地球人なら」

「それってまさか………」

「オレ達にはあの量の食糧を食いきれる連中に心当たりがある」

「それって……」

「ああ。サイヤ人だ。サイヤ人の胃袋に常識は通用しないからな」

29 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2015/09/02 04:44:45.50 QcoJ3gSV0 252/307

「で、ですけど……サイヤ人って言っても僕もベジータさんもお父さんもパンもあの場にいたじゃないですか」

悟天が狼狽える。

「ふん。要するにアリバイって奴だな。勿論、オレ達にはあの後に補充された食い物を食べることなんかできないし、食う気もなかっただろう」

「え、ええ。結構お腹が一杯でしたし」

「だが、他にもサイヤ人は居るだろ?」

「まさか……」

「ああ。悟飯にトランクス、……それにブラだ」

30 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2015/09/02 04:45:50.28 QcoJ3gSV0 253/307

「いったい、なんのために………」

驚き、戸惑っている悟天にネタばらしをしてやった。

「偶然にもサイヤ人が一堂に会することがあると思うか?」

「ちょっと、考えられません」

「ブルマだ。もしかしたらカカロットのヤロウも一枚噛んでいるかもしれんがな」

「ブルマさんとお父さんが!?」

「カカロットの瞬間移動でブルマ達を連れてくるだろ」

「はい」

「そして食事会だ。悔しいがカカロットのヤロウはナンバーワンだ。あと後も食べれたかもしれない。それでも残ればブルマがホイポイカプセルとやらで持ち帰ればいい」

「確かにそれなら消えた食料の説明ができますね」

「その後は補充出来ない無いようブルマが細工する。帰りはカカロットの瞬間移動」

「なるほど!それなら補充が無かったことも、僕たちが気が付かなかったことも説明できます。流石はベジータさんです」

「下級戦士の息子とはいえ、てめぇももう少し頭を使いやがれ!」

31 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2015/09/02 04:50:06.39 QcoJ3gSV0 254/307

「そ、それよりもブルマさんは何の為にそんなことを……」

「そもそも、今回は飛んでいいと言った時点で仕込んでいたんだ。飛べば食料が調達できるからな。大方、食い物がなくなってもオレが怒らないか試したんだろう。今のオレ様はその程度の事で心は揺らがないがな。おい、街が見えたぞ」


そして食料以外にもオレの着替え等を買い終えた後に、仙豆も調達した。

荷物が多すぎると流石に不自然だから、俺達は仙豆を一粒食べて島での空腹に備えることにしたのだ。

食い物を持って帰ったオレ達にハルヒが「どうやって調達したのよ!」なんて喚くものだから、「説明するのも面倒くせぇ!てめぇで考えやがれ!」と自分の頭で考え、推理する楽しみを教えてやった。

もっとも、悟天のヤロウが「えっと……泳いで」等と嘘をいうものだから、「あんたたちオリンピックに出れるわよ!」などと台無しになっていたが。

ともあれ、合宿は無事に終わり、オレはブルマやブラ、トランクス達の待つ家へと変えることが出来た。

孤島にサイヤ人襲来症候群(了)




35 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2015/09/02 20:30:46.59 QcoJ3gSV0 256/307

夏休みとなり、オレは充実した毎日を過ごしている。

重力室でトレーニングをし、トランクスに稽古をつけてやり、ブラと遊び、ブルマと過ごす。

しかし、その完璧な日々も終わりが近づいてきていた。

八月が終わる。そう夏休みが終わってしまうのだ。

延々と八月を繰り返せれば、どれほど素晴らしい事だろうか。

オレがそんな風に悩んでいると、メイドロボットがオレを呼びに来た。

「ベジータサマ。オキャクサマデス」

「客?誰だ?」

「ドウキュウセイトオッシャッテイマス」

ハルヒ達だろうか?とりあえず、表に出てみる。


36 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2015/09/02 20:31:16.89 QcoJ3gSV0 257/307

「こんにちは。ご無沙汰しております」

笑顔で挨拶してきたのは古泉だ。朝比奈と長門もいる。

「何の用だ?」

「一日でいいので涼宮さんと遊んで頂けないでしょうか?」 

「ふざけるな!何でオレが家族との時間を犠牲にしてハルヒと遊ばなければならないんだ」

外に出て正解だった。こんな会話をブルマに聞かれたら、「折角なんだから行きなさいよ。あんたが遊びに誘われることなんて滅多にないんだから」とでも言われただろう。

「一万五千四百九十七回」

オレが家の中に戻ろうと背を向けると、長門が抑揚のない声で呟いた。

「それだけのシークエンスが行われた」

長門は何を言っているんだ?

「あの、一万五千四百九十八回目の今回でようやくベジータさんに行きついたんです。お願いします。涼宮さんと遊んであげてください」

朝比奈が涙目になりながら訴え出る。

「ベジータさんと夏休み中に一回くらい遊びたいと涼宮さんが思っているのです」

古泉はそう言うが、合宿に行ったし、それが一万五千回とやらとどう関係があるんだ?

「涼宮さんを満足させないと、このループから抜けられないのです。そして、次回もベジータさんにまで到達できるかもわかりません」

三人の表情は真剣そのものだった。

なんで、こんなくだらない妄想を垂れ流すんだ?

そして気が付いた。こいつらはハルヒをダシにしているだけだ。当のハルヒがここに居ないのが何よりの証拠だ。

長門も朝比奈も孤児だ。オレを父親と見做して、夏休みの家族の思い出って奴が欲しいのだろう。

クソッ!オレは自分の家族の事ばかり考えていた。

「そこまで言うのならいいだろう。付き合ってやる」

「ホントですか!」

朝比奈みくるが目を輝かす。やはりオレの予想は当たっていたのだろう。

「ただ、一個条件がある」

「条件ですか?」

古泉が表情を崩さずに聞いてくる。

「ああ、朝倉も呼んでやれ」

あいつも親がいないしな。

「了解した。朝倉涼子へは私の方から連絡をしておく」

長門が事務的に返事した。


古泉のジェットでハルヒの元へ向かった俺達は、夏祭りという奴に行った。

ハルヒ達は金魚掬いとかいう下らねぇ遊びを嬉々としてやっていた。


そして九月となり夏休みが終わった。さらば我が家族との日々。



エンドレスじゃないエイト(了)




39 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2015/09/06 01:45:25.58 t8FLeGco0 259/307

ある日のことだった。

家で悟天を鍛えてやってると、奴の携帯電話が鳴った。

「てめぇ!!携帯の電源ぐらい切っておきやがれ!」

「す、すいません!!謝ってから直ぐに切ります」

悟天は慌てて携帯電話に応じる。

「ご、ごめんなさ……」

チッ!黙って切りやがれ!オレが悟天のヤロウを苦々しく思っていると悟天の顔色が一気に変わった。

「た、大変です!朝比奈さんが誘拐されたそうです!」

「なっ……」

オレは悟天から携帯電話を奪い取る電話口に向かって怒鳴った。

「おい!どうなってやがる!」

『ちょっと!急に代わって怒鳴らないでよ!』

電話をかけてきたのはハルヒだったようだ。

「うるせぇ!さっさと説明しやがれ!」

『こっちが聞きたいくらいよ。ワンボックスカーが停まったと思ったら、みくるちゃんが車にいきなり連れ込まれちゃったんだから』

「チッ、役に立たないヤロウだ!」

オレはそう言って悟天の携帯電話を握りつぶした。

40 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2015/09/06 01:49:14.29 t8FLeGco0 260/307

「ああ~僕の携帯……ようやく買い直したのに………」

「おい!何をメソメソしてやがる!さっさと行くぞ」

携帯電話の残骸を前に膝をついている悟天に発破をかける。

「へっ!?行くって?」

「朝比奈の所に決まってるだろ」

「あ!朝比奈さんの気を見つけなきゃ!気が小さくて探しにくいんですよね~」

こんなに狭い範囲ですら探さないといけないとは所詮は下級戦士の息子だな。

「……すでに見つけてある。ついて来い」

「もう見つけたんですか?流石はベジータさんだなぁ」

「飛んでいる所を見られても良い様にスーパーサイヤ人になっておけ」

オレは悟天のおべっかを無視して指示を出すと一路朝比奈の気配がする場所に飛んで行った。

41 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2015/09/06 01:49:58.36 t8FLeGco0 261/307

朝比奈の気配は走行中の車からした。

「あのワンボックスカーですね」

横を飛ぶ悟天が確認してきた。

「ああ。オレがドアを引きはがすから、お前は朝比奈を助け出せ」

「わかりました」

「後はオレが連中を倒すから、朝比奈達への言い訳はお前が考えろ」

「言い訳ですか?」

「俺達が飛べることもサイヤ人であることも知られてはダメなのだからな」

「ええ~~!!それってベジータさんの方が絶対楽じゃないですか!」

「うるせぇ!金色の戦士が助け出したとか適当に説明しやがれ!とっとと助けるぞ!」

喚く悟天を無視して、車の後部ドアを引きはがした。

と、同時に悟天が侵入する。

間を置かずに悟天が朝比奈を抱きかかえて車から脱出するのを確認すると、オレは車のスライドドアを蹴り上げて、近くの山中に誘拐犯諸共追いやった。

42 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2015/09/06 01:50:31.65 t8FLeGco0 262/307

「これで一件落着ですね」

スーパーサイヤ人を解いていた悟天が着地すると共に気楽な事を言っている。

「まだだ」

そんな悟天の相手もほどほどにオレは落下地点に向かった。

連中はなぜ、朝比奈を誘拐したのだろう。

あいつは孤児でそんなに金があるとも思えない。

もしかしたら、多額の遺産を受け取っているかも知れないが、こんな田舎の地味な学校にいることから考えるとそれは少し考えにくい。

なにせ靴下の布代を節約して丈が短いのを履くくらい貧乏なのだからな。

そして、無差別に誘拐をするならもっと小さな子供の方が手間もかからない。

要するに金銭目的ではなく、朝比奈みくるそのものが目的だったのだろう。

朝比奈みくるに用事とは?

そう、乱暴目的に違いない!

オレは軽く歯ぎしりをすると誘拐犯の元に急いだ。

43 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2015/09/06 01:50:59.80 t8FLeGco0 263/307

山中では、朝比奈とそう年齢が変わらない男女二人が這う這うの体で車から脱出している所だった。

女まで乱暴に加わるとはふざけた世の中だぜ!

「おい!ヘンタイども!!」

オレは上空から連中に声をかけた。

オレに気が付いた二人は驚愕の表情を浮かべる。

二人とも見た目は悪くない。別に乱暴などしなくても相手には困らないはずだ。

おそらく、こいつらは乱暴でないと興奮できない性癖を持つヘンタイカップルなのだろう。

こいつらは以前から繰り返してきただろうし、ここで見逃しても同じことを繰り返すに違いない。

その被害者は未来のブラのなのかも知れない。

「……少し話を聞いてくれ」

男の方が何か言っている。

「ビッグバンアターーーック!!」

無視してビッグバンアタックを叩きこんでおいた。

44 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2015/09/06 01:51:28.32 t8FLeGco0 264/307

エピローグ

家に帰ると悟天がテレビを見ていた。

「おかえりなさ~い」

そんな悟天がオレに気が付き挨拶をしてくる。

「朝比奈さんですけど、あの後涼宮さんに電話をして、『わたしを友達と見間違えて誘拐ドッキリを仕掛けちゃったそうです。すぐに解放されました安心してください』なんて説明してましたよ。なんで嘘を言ったんですかねぇ?まぁ、僕としては助かりましたけど」

悟天は間抜けな笑顔を浮かべながら後頭部を掻いている。

乱暴されそうだったなんて言いたがる奴なんていないだろう。

「それよりも……これってベジータさんですか?」

悟天がテレビ画面に目をやる。

そこでは山が消滅したとか言っていた。あの程度でもニュースになるのか!?

「おい!ブルマには言うなよ!」

「これだけ騒ぎになっていると、もうブルマさんの耳に入っているんじゃ……」

そして電話が鳴った。くそったれーーーー!!

電話の主は案の定ブルマで、なんだかとても怒られた。

世の中は難しいぜ!!

誰かの陰謀(了)




48 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2015/09/08 03:27:14.04 y6y5Hjce0 266/307

最近ハルヒ達がパソコンに向かって、カチャカチャと何かやっている。

「おい。何をやってるんだ?」

「なに言ってるのよ!来るべきコンピ研との決戦に向けての練習に決まってるじゃない!」

ハルヒが怒鳴る。それはそれとして、戦いと聞いては黙ってはいられない。腕が鳴るぜ!

「この前、このゲームで決着をつけるってミーティングで言ったじゃない!まさか聞いてなかったの!?」

そのまさかだ。しかしゲームとはくだらん。がっかりだぜ。

「勝手にやってろ。オレは先に帰るぞ」

「ちょっとベジータ待ちなさい!あんたサボる気じゃないでしょうね!」

ガキども遊びに付き合っていられないオレはさっさと家に帰ってトレーニングをした。

49 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2015/09/08 03:29:49.72 y6y5Hjce0 267/307

それから数日経ってもハルヒ達はゲームで遊んでやがった。

「おい!いつまでくだらねぇゲームなんてしてやがるんだ!!」

オレの注意にガキどもが一斉に顔を上げる。

「ご心配なさらずとも今日までです。今がその決戦の最中ですから」

古泉が笑顔で答える。

「チッ」

最終日くらいは付き合ってやろうと、壁に寄りかかりながら悟天のパソコン画面を覗いた。

「ちょっと!暇してるんなら役に立ってないみくるちゃんと交代してあんたが操作しなさいよ!!」

「ふぇぇ~~ごめんなさい~」

ハルヒが意味の解らないことを喚いているが無視しておいた。

悟天の画面を覗いておおよそ理解した。中心部の光点が自分達で……戦争をイメージしているのだろう。

だが不可解な点がある。相手の動きがおかしい。

どうにもカカロットの様な瞬間移動をしているとしか思えないし、スカウターか気配を探る術を得ていて場所が解っているとしか思えない動きをしているのだ。

だが、ゲームでそんな事が出来るとは思えないが……

いや、瞬間移動や気配を探る術を知っていてゲームに加えたのかもしれない。

あるいは、優れた戦術眼で相手の動きの予測ができるか……どっちにしても期待できそうな連中だ。

50 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2015/09/08 03:32:03.03 y6y5Hjce0 268/307

「おい!対戦相手はどこに居るんだ」

「藪から棒になによ!」

散々に無視された所為かハルヒがむくれている。

「二件隣のコンピューター研究部」

代わりに長門が抑揚のない返答を寄越してきた。

51 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2015/09/08 03:32:36.58 y6y5Hjce0 269/307

そして今、オレはその教室の前に居る。

「なんだこれは?」

ドアの前に椅子や机が積まれ、出入りしにくくなっていたのだ。

オレは気にせず、それらをまとめてドアごと蹴破った。

青っ白い連中が一斉にオレの方を見てる。

「おい!今ゲームで対決連中はどいつだ!」

オレは優しく呼びかけた。

「えっと……とりあえず、僕が部長で………」

一人のガキが震えながらオレの前にやってきた。

オレはガキの首を掴み持ち上げた。

「チートの件は謝ります!僕らの負けなんで乱暴は止めてください!!」

周りのガキどもが口々に騒ぐ。チート?なんだそれは?そんなのには興味はない。

「おい!てめぇ!なかなか見込みがあるぞ!だが、ゲームなんてしてても強くはなれん!いいか鍛えるんだぞ!」

部長とやらが首を小さく縦に振る。

「わかったか!!」

オレがもう一度確認すると、慌てた様に何度も首を縦に振っていた。

前途ある若者を正しい方向に導けたオレは気分よく家に帰った。

52 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2015/09/08 03:33:12.24 y6y5Hjce0 270/307

家でトレーニングを終えたオレを出迎えた悟天が感心したように言ってきた。

「あの後、対戦相手の人達がインチキしてごめんなさいってきたんですよ。ベジータさんが怒鳴り込んだんですって?」

そんな憶えはないのだが、感心されるのは気分が良いので放っておこう。

「でも、良くわかりましたねー。僕なんて説明されるまで気づきませんでしたよ」

感心している悟天を尻目に、連中への認識が変わっていた。

連中はインチキ----合体するだけ強くなれるナメック星人の様な連中----だったらしい。

感心と共に期待して損したぜ。


ナメック星の日(了)




56 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2015/09/12 01:12:24.03 sBsgwwhB0 272/307

「文化祭よ文化祭。違う言葉で言えば学園祭。公立の学校はあんまり学園と言わないような気がするげど、それはいいわ。文化祭と言えば、一年間で最も重要なスーパーイベントじゃないの!」

後ろの席のハルヒがいつになく、ハイテンションではしゃいでいた。

文化祭という以上は、地球の文化を見せ合う祭りなのだろう。

この惑星の文明は高いのか低いのか未だに解らない。

良い機会だ。今回は傍観者立場で観察してやるぜ!

57 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2015/09/12 01:24:00.48 sBsgwwhB0 273/307

この文化祭。どうやらクラスや部活で出し物をやるようだ。

クラスの方は朝倉がなにやら取りまとめていた。

こっちはあいつに任せておけばいいだろう。

問題は部活の方だ。

ハルヒのヤロウが何をするのか他の連中に相談してる様子もない。

ハルヒは幼稚だから見てるこっちがヒヤヒヤしてくる。

傍観者のつもりが親になった気持ちで見ていた。

ついでだから、温かく自主性を尊重して見守ってやろうじゃねぇか!

58 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2015/09/12 01:27:18.97 sBsgwwhB0 274/307

そして放課後、ハルヒは部活で宣言した。

「あたしたちSOS団は、映画の上映会をおこないます!」

一瞬、この惑星の文化である映画を放映するのかと思ったが、どうやら自分達で撮影するつもりらしい。


59 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2015/09/12 01:30:48.39 sBsgwwhB0 275/307

翌日、ハルヒはキャスティングを発表した。

・製作著作……SOS団
・総指揮/総監督/演出/脚本……涼宮ハルヒ
・主演女優……朝比奈みくる
・主演男優……古泉一樹
・脇役……長門有希
・助監督/撮影/編集/荷物運び/小間使い/パシリ/ご用聞き/その他雑用……ベジータ、孫悟天

このキャストをみてオレが思うことは一つだ。

「おい」

「なによ。文句でもあるの?」

「オレが主役だ」

「はぁ?あんたなに言ってるの?」

ハルヒにアドバイスしてやったオレは部室を後にした。


ようやくオレが主役……ナンバー1の時代が来たようだ。


60 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2015/09/12 01:46:18.86 sBsgwwhB0 276/307

その夜のことだが悟天によれば、

「あの後、涼宮さんが暴れて大変だったんですよ。
 古泉くんが『彼がやる気になるのは珍しいですし、ここは主役にしてみましょう』
 って説得してくれて収まりましたけど」

という出来事があったらしい。

何が原因で揉めたのか言わない悟天は所詮は下級戦士の息子だ。

61 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2015/09/12 01:49:51.23 sBsgwwhB0 277/307

それからというもの、ハルヒ達は商店街の協力取り付けなどに奮闘したらしい。

ハルヒがオレに「あんたも手伝いなさいよ!」などと文句を言ってきたことがあったが、

「うるせぇ!」

と一言で物の道理をわからせてやった。

あんなのは主役の仕事じゃない。お前は根回しなんかしたことはないよな?カカロット。

それに今回のオレは主に傍観するつもりだしな。

62 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2015/09/12 02:01:04.79 sBsgwwhB0 278/307

やがて下準備が終わったのか、ハルヒが作品に関する具体的なキャストを発表した。

『戦うウェイトレス朝比奈ミクルの冒険(仮)』
☆登場人物
・朝比奈ミクル……未来から来た戦うウェイトレス。
・べじーた……超能力少年改め、超能力中年。
・長門ユキ……悪い宇宙人。
・エキストラの人たち……通りすがり。

オレは一瞬で理解した。
・朝比奈ミクル……未来から来たトランクス
・長門ユキ……フリーザ

……オレはグルド役なのか?いや、このキャストはフリーザが地球にやってきた時のだろう。

・エキストラの人たち……フリーザの迎撃に集まったオレ以外の雑魚ども----ナメック野郎やヤムチャといった有象無象----とトランクスに一蹴されたコルドや手下達

そうすると主役のオレはカカロットか?

確かに瞬間移動を使えたり、頭に手を当てると考えてることが解ったり、夢の中で現在起きてることを把握してたりしてたからな。

オレがカカロット役というのは気に食わんが、カカロットのヤロウがナンバー1だったのは事実だし仕方がないだろう。

しかし、まさか……事実を元にしたノンフィクション映画を撮るとは思ってなかったぜ!

「なに?また文句でもあるんじゃないでしょうね」

考え込むオレにハルヒが居丈高に聞いてくるがオレは軽く、微笑み「フン」とエールを送っておいた。

64 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2015/10/11 23:26:13.67 aISDK3ct0 279/307

いざ撮影が始まると、ハルヒのヤロウはトランクス役の朝比奈にヒラヒラの妙なミニスカートの服なんかを着せようとしやがる。

トランクスはそんな服は着ん。怒鳴ろうと思ったがギリギリのところで我慢した。俺も丸くなったものだ。

さらには長門を魔法使い役にするなどと言い始めた。

すなわち、ノンフィクションからトランクス対バビディの仮想戦にしようというのだ。無計画にも程がある。

だが、学生のやることだ。目くじらを立てずに見守ってやろうではないか。

65 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2015/10/11 23:50:28.85 aISDK3ct0 280/307

そして撮影は続き、今は近くの山の中に来ている。

コンタクトレンズとやらで左目だけが青くなった朝比奈みくると黒い衣装に身を包んだ長門の戦闘シーンを撮るらしい。

トランクス対バビディってことだ。くだらん。ダーブラがいない以上トランクスの圧勝だろう。

「ちょっとベジータ!いい加減に手伝いなさいよ!」

「うるせぇ!」

俺に手伝えと怒鳴るハルヒを一喝しておいた。今回のオレ様は見守るのがメインだからな。

66 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2015/10/11 23:55:47.09 aISDK3ct0 281/307

朝比奈が銃の様な物を長門に放つ。トランクスが剣を振り回していたパロディだろう。なかなか考えてやがるぜ!

長門はそれを棒で叩き落とす。バビディでもその程度なら出来るはずだ。

続いてハルヒの指示で、長門の魔法で朝比奈が苦しみ座り込む。

トランクスに悪の心などあるはずがないのに納得のいかない展開だ。

ここは経験者として監修するべきだろうか?

67 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2015/10/12 00:00:16.18 6G6LSsum0 282/307

俺が注意しようとしたら、ハルヒが休憩と言い始めた。

そして昼食も終わり、再び撮影に戻ると、

「やっぱ銃はやめにするわ。もっと凄い弾が出ると思ってたのに、ハデな炎も音もないし臨場感がないもの。あんまり効いてる気がしないのよ。レプリカだとダメね」

と、先ほどの分は使わないことにしたようだ。

なるほど、ハルヒもトランクスがバビディの魔法で苦しむ展開は無理があると思ったのだろう。

68 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2015/10/12 00:11:59.15 6G6LSsum0 283/307

「だからね、みくるちゃん。目からビームくらい出しなさい!」

ハルヒが朝比奈に指示を出す。

ふざけるな!トランクスはそんなフリーザの様な真似などせん!

怒鳴ろうかと思ったが我慢した。もしかしたら、朝比奈が使える数少ない技なのかも知れんしな。

「無理ですっ!」

朝比奈が否定する。使えないらしい。

「その色違いの左目はこのためのものなのよ。無意味に青くしてるんじゃないのよ。凄い力を秘めているっていう設定なの。つまりそれがビームなの。ミクルビームよ。それを出すの」

目からビームはそれほど凄い力とも思えんが、子供達の言う事だ。いちいち突っ込む必要はないだろう。

「で、出ませんっ!」

「気合いで出せ!」

ああ、エネルギー波で重要なのは気合いだ。ハルヒのヤロウもわかってるではないか。

もっとも、まともな奴は目からビームなど出さん。俺が知っている限りでも、フリーザ、ナメック野郎、人造人間。
やはりまともな奴はいない。

72 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2015/10/20 03:59:31.92 uaHSsLiG0 284/307

「みっ……ミクルビーム」
ハルヒと散々練習していた朝比奈本番になり実行している。いい気合だ。

そして目からエネルギー波が出る。まぁ、当然だな。

問題はエネルギー波の向かった先だ。古泉がカメラを片手に立っていた。

「馬鹿が!」

俺はカメラの前に立ち、エネルギー波を片手で握りつぶした。

あのままではカメラが壊れたではないか。この古泉はヤムチャの様なボンクラなのか?

73 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2015/10/20 04:14:20.00 uaHSsLiG0 285/307

「ちょっと!なに撮影のじゃまをしてるのよ!」

ハルヒの罵声が飛ぶ。あのままだとカメラが壊れて撮影どころじゃなかったんだぞ、くそったれ!

そして朝比奈が視線を横にずらす、光線はそのまま悟天に向かう。

あわやレフ版を両断されかかるが、悟天はなんなくそれをかわす。ああ、普通はそうだ。

古泉のボンクラ具合に反吐が出そうになる。

74 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2015/10/20 04:24:55.11 uaHSsLiG0 286/307

しかし無差別に目からのエネルギー波をばらまくとは迷惑な奴だ。

トランクスはそんな人造人間の様な真似はせん。

いくら演出とはいえやり過ぎではないか?

オレの想いを代弁するかのように長門が朝比奈に躍りかかった。

長門が朝比奈の顔を掴むとそのまま足をかけて倒す。

75 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2015/10/20 04:28:36.69 uaHSsLiG0 287/307

バビディがトランクス相手に優勢に戦う?

そんな事があってたまるか!

もしかしたら、長門は朝比奈がカメラを壊しかけた事に怒っているのかもしれない。

だが、あれは反応が出来なかった古泉が悪いだけだろう。

なんにせよやりすぎだ。

「おい!テメェ!トランクスにこれ以上やるなら、このオレが相手だ!」

長門を引きはがすと宣言してやった。

ついに主役の登場である。

82 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2016/01/25 15:19:15.50 KSOObQ7I0 288/307

「ちょっと、ベジータ!なにやってんのよ!」

やる気になったオレに罵声が一つ。ハルヒのヤロウが妨害してきやがった。

「ここはみくるちゃんと有希っていう美少女二人の戦いだから盛り上がるのよ!おっさんは画面から消えなさい!」

ハルヒの口撃は止まらない。

「だいたいトランクスって何よ!あんたの下着なんて聞いても誰も喜ばないわよ!」

さらにハルヒが喚いているが、女がこうなると手が付けられないのは、ブルマで嫌というほど体験している。仕方がなしにオレは引き下がった。

83 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2016/01/25 15:20:02.14 KSOObQ7I0 289/307

「それじゃあ、気を取り直して行くわよ!」

俺にひとしきり喚いて満足したのか、ハルヒは朝比奈と暫し相談した後、再び撮影を開始した。

「さあみくるちゃん、そのミラクルミクルアイRから何でもいいわ、不思議なものを出して攻撃しなさいっ!」

ハルヒが朝比奈に指示を飛ばす。他にも技を持っているのか?なかなかに楽しい奴だ。

朝比奈が構えた瞬間----

「悟天よけろーーーっ‼」

悟天の馬鹿は間抜けな事に朝比奈の技を手で弾こうとしていたのだ。

オレの声に驚き、悟天が一テンポ遅れて動く、同時に持っていたレフ版が両断された。

「あの馬鹿め……どんな技かも見切れなんのか」

この程度で悟天の体が傷つくとも思えんが、万が一怪我でもされてチチに怒鳴り込まれたら面倒だからな。それに一応は悟天を預かっている身だ、注意はしないといけない。

長門というと、朝比奈に飛びかかっていた。長門----バビディ----が優勢で気に入らんが、朝比奈はやりすぎた。少し痛い目に遭った方がいいだろう。

ハルヒも同意見だったようで、二人の戦いを見守っていた。

84 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2016/01/25 15:20:42.85 KSOObQ7I0 290/307

翌日の撮影は朝比奈の友人の家を使ったものだった。

「はーい、到着っ。これ、あたしん家」

その少女は古臭い一軒家に俺達を案内する。

「いい部屋ね。ここでロケができそうなくらいよ。そうだ、ベジータの部屋だってことにしましょう。みくるちゃんとのツーショットシーンをここで撮るのよ」

ハルヒが嬉しそうに構想を語る。そして朝比奈の友人と何やら話し合い始めた。

「くふっ! あ、それ面白いねっ! ちょっと待ってて!」

少女は朗らかかつ高らかに笑い声を上げると、そっから部屋を出て行った。

待つこと数分、少女は朝比奈と一緒に戻って来た。

85 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2016/01/25 15:21:23.29 KSOObQ7I0 291/307

そして始まるツーショットシーン。そして俺は気が付いた、朝比奈が酒臭い! ガキの癖に酒を飲むなんて、何を考えてやがる!

「おい、テメェ! 酒を飲んでやがるな!」

「うー……。べじーたさん、あたしなんだかあたまがおもいのねす……ふ」

ガキが酒を飲むからだ。自業自得だな。

「ごっめーんっ。みくるのジュースにテキーラ混ぜといたの。アルコールが入ったほうが演技に幅が出るかもっていわれてさっ」

朝比奈の友人の少女が謝り始めた。

「おい、テメェ!ぶっ殺すぞ!」

もしブラが友人に騙されてアルコールを飲まされたら……と、かなりの苛立ちを憶える。

「いいじゃん。今のみくるちゃん、すごく色っぽいわよ。画面映えするわ」とハルヒ。

やって良い事と悪い事が解らないのか?

「ベジータ、いいからキスしなさい。もちろんマウストゥマウスで!」

「てめぇ……」

続けるハルヒに言葉を失った。

「ベジータさん!駄目ですって!」

悟天の言葉に正気を取り戻す。気が付けばビッグバンアタックの構えをハルヒにとっていたのだ。

「何よっ……!」

ハルヒがオレを睨みつけながら続ける。

「変な構えをして、怖い顔をしたって全然怖くないんだからね!あんたは監督であるあたしの指示に従ってればいいのよ!」

駄目だ話にならんな。

「悟天、帰るぞ」

喚くハルヒを無視して、俺は悟天と家路についた。

年頃の娘の相手は大変だ。男ならぶん殴れば済むのだが……。

もしブラがあんな風に育ったらオレはどうすればいいのだろうか。

自然と溜息が漏れていた。

86 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2016/01/25 15:21:58.39 KSOObQ7I0 292/307

その後の撮影にはオレは参加しなかったが、悟天は参加してなんとか終わらせたらしい。

「文化祭で上映するんですって」

などと悟天が言っていたが、俺には関係ない。なにせ、その期間はブルマ達と家で過ごすのだからな。


ベジータの溜息(了)




88 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2016/01/31 01:01:15.33 Pxl2oZKv0 294/307

悟天を鍛えてやってるある日のことだった。

「涼宮さん達が幽霊探しをやってるそうですよ」

組手をしながら、悟天がくだらないことを言って来た。

「死んだら閻魔のヤロウの所に行くだけだ」

二度死んだオレが言ってるんだ。間違いないはずだ。もっともナメック野郎みたいな不思議な連中に殺されたら閻魔の所に行かないとかがあるかも知れんがな。

「死んだ状態でこの世に戻れるのは一日だけだ。お前も知ってるだろ?」

「お父さんの場合はスーパーサイヤ人3になったんでそれよりも短かったですけど……」

「不毛な事をしてないで鍛えろと教えてやれ」

「あ、でも今はクラスメイトが飼ってる犬の調子が悪いとかでそっちの方が気になってるみたいですよ」

「気にしたところでどうしようもあるまい」

「あのー……。仙豆とかじゃダメですかね?」

悟天が間抜けな事を言って来た。

「仙豆では病気を治せん。カカロットが心臓病で死んだ歴史もあるしな」

「はぁ……そうですか……」

悟天が落ち込むが……確かにハルヒは兎に角、朝比奈達も落ち込むと思うと寝覚めが悪いな。

「用事が出来た。トレーニングはここまでだ」

オレはそれだけ言って重力室を後にした。

89 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2016/01/31 01:02:00.12 Pxl2oZKv0 295/307

そして今、オレは空を飛んでいる。

ナメック星人のガキなら病気を治せそうだと思ったのが発端だった。

もっとも、あのガキに頼むのは気に入らないのでオレが向かっているのは別の場所だ。

「あ、これはベジータさん! お久ぶり----」

「おい、ブウはどこだ?」

目的地に着いたオレは開口一番サタンに質問を出した。

「ヘッ?ブウさんですか?中庭でベエと遊んでますが……」

「フン」

「あ!ベジータさん、どこに行くんですか?」

オレはサタンに礼を言うと中庭に進んだ。

90 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2016/01/31 01:02:26.92 Pxl2oZKv0 296/307

「おい、ブウ!」

サタンの家で犬とじゃれてた醜い風船ヤロウに優しく声をかけてやった。

「おう、なんだ。オレは今忙しいぞ」

「病気の犬がいるらしい。治してやれ」

「ヤダ」

一々癪に障るヤロウだ。

「お前が今遊んでいる奴の仲間だ。それとも流石の魔人ブウも病気は治せないかな?」

「ベエの仲間か。いいぞ、治してやる。死んでなかったら治せるからな」

「そうか、ついて来い」

「おう」

91 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2016/01/31 16:02:07.79 Pxl2oZKv0 297/307

「ベジータさん、お帰りなさい」

帰宅したオレを悟天が出迎えた。

「ブウさん、ご無沙汰しています」

そしてブウにも挨拶。

「おい、犬のところに案内しやがれ」

「ああ、ブウさんに治してもらうんですね」

そして悟天が続ける。

「涼宮さん達にも連絡しますね。きっと喜ぶだろうなぁ」

そう言って携帯電話取り出す悟天。あの携帯も何時か握りつぶしてやるぜ!

92 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2016/01/31 16:03:07.42 Pxl2oZKv0 298/307

犬の飼い主である何とかとかと言うメスガキの家で集合したのだが……。

「なんなのよ、急に呼び出して!」

開口一番喚き散らすハルヒ。めんどくせぇ奴をわざわざ呼びやがって。

「あのベジータさんが犬…ルソーを治してくれる人を連れてきてくれたんですよ」

そしてブウを紹介する悟天。一瞬動きが止まったハルヒがオレに近づいて来た。

「ちょっと、随分と顔色がおかしい人だけど大丈夫なの?それに服装も変だし……」

そして確信したかの様に続ける。

「うん。あんな恰好の獣医なんているわけないわ!あれね、呪術師の類ね。あんたも幽霊の仕業だと思ったのね!だけど、あからさまに妖しいし、二、三職務質問をしなきゃ!『ヘンタイですか?』とか!」

張り切るハルヒの袖を引く影が一つ。

「なによ有希。文句でもある訳?」

「刺激してはいけない」

長門が平坦な声で続ける。

「下手をすると宇宙の危機。信じて」

「随分と大袈裟ね。でも、有希が変な事を言うとは考えられないし……」

暫し考え込むハルヒ。

「そうね。初対面の人にあんまり失礼な事をいう訳にもいかないし、ここは有希に免じて穏便に済ましてあげるわ」

偉そうに頷くハルヒ。一々めんどくせぇガキだ。

「おい、終わったぞ」

ハルヒが納得している間にブウは治していたようだ。

「え、もう⁉」

「変なのが居たからやっつけておいたぞ」

「変なの?変なのって幽霊なの?」

ブウにかぶりつくハルヒ。

「うるせぇ!幽霊なんて居るか!てめぇはそのワンコロと遊んでやがれ!」

現実と向き合わせるように優しく諭してやった。オレも人の親になったものだ。

「なによ!」

反論しようとするハルヒの足元に犬が縋りつく。

「こ、今回はルソーに免じて許してあげるけど、今度あたしに舐めた口を聞いたら許さないわよ!」

「勝手にしやがれ」

こうして俺達は家路につくのであった。



ワンダリングブウ(了)




93 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2016/01/31 18:24:35.37 Pxl2oZKv0 300/307

ある冬の日だった。

いつの間にか疫病が蔓延していたようで、そこかしこで咳の音が聞こえていた。

鍛え方が足りねぇんだ、クソッたれ!カカロットも病気には勝てなかったんだ、オレも気を付けなければな。

そんな昼下がりに教室のドアが開いた。

「大丈夫なの?」

「熱も下がったし、家に居ても暇だから着ちゃった」

重役登校の朝倉とそれを取り囲む女生徒たち。

朝倉は一人ぼっちなんだ。家にも居ても暇という言葉の重みが違うのにいい気なもんだぜ、クソッたれ。

94 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2016/01/31 18:26:10.94 Pxl2oZKv0 301/307

朝倉は何を思ったのか、俺の後ろ、ハルヒの席に座る。

そういえば、ハルヒも休みの様だし、空いている席なんだ、勝ってに座らせておいてやった。

毎日同じ席だと飽きるからな。

95 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2016/01/31 23:40:47.56 Pxl2oZKv0 302/307

そして放課後、何時もの様に部室に向かう。

途中、朝比奈を見かけたが、別に声をかけるほどの事はないだろう。

そして部室に到着した。

室内には長門だけ。長門が本から顔を上げてオレを見る。

そして再び読書開始。部室はというと、ハルヒが拾って来たゴミが無くなっており、随分とスッキリしていた。

やることがないから、壁に寄りかかり、暫し目を瞑る。

「……」

「……」

「……」

「……」

長門が本のページを捲る音だけが室内に響く。

「スイマセン!遅れましたー!」

悟天がやかましく入って来た。

「あれ? 他の皆は?」

「ハルヒは休みだ」

「朝比奈は見かけたが、まだ来ないという事はサボりだろう」

「え~……。朝比奈さんはそういうタイプに見えないんですけど……」

「フン。女には色んな日があるんだ。そんな気分だったんだろう」

ブラにもお赤飯を炊く日が来るのかと思うと少々憂鬱になるぜ。

「ハルヒ達も来ないようだから帰るぞ」

「待って」

オレが悟天と帰ろうとしたら長門が声をかけてきた。

「これ」

二枚の紙をオレ達の方へ寄越す。

「いらん」

どうせ大したものではないのだろう。口があるんだ。用事があるなら自分で言いやがれ。

こうして俺達は家路に着いた。古泉?知らん。

96 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2016/01/31 23:42:50.88 Pxl2oZKv0 303/307

そして翌日。当然の様にオレの後ろに座る朝倉。

オレが気にすることでもないので放置しておいた。

97 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2016/01/31 23:55:10.41 Pxl2oZKv0 304/307

放課後となり、部室に向かう。

ハルヒは休みだが、一応は顔だけでも出しておこう。オレも優しくなったもんだ。

当の部室では長門が何時もの様に本を読んでいた。

トランクスと同世代の少女が何を熱心に読んでいるのか気になり、本棚を見て回った。

ふと、一冊の本が目に着いた。長門が熱心に読ませようとしていた奴だ。

手に取って、パラパラと捲る。一枚のしおりが落ちた。そう言えばしおりも読ませようとしていたな。年頃の子供がやることは意味がわからん。

「こんにちはー」

その時、悟天が能天気な声をあげながら部室にやって来た。

「あれ?ベジータさん、しおりが落ちてますよ」

「知るか、テメェで拾いやがれ」

「ええっ⁉ボクがですかぁ~?」

しぶしぶとしおりを拾い上げる悟天。下級戦士という立場が理解できてないようだ。

「あれっ?これ、何か書いてありますよ?」

悟天がしおりをマジマジと見て読み上げる。

「『プログラム起動条件・鍵をそろえよ。最終期限・二日後』なんですかね、これ?」

なるほど、オレは直ぐに理解した。下級戦士とは頭の出来が違うのだ。

「ハルヒの悪戯だろう。鍵をそろえよだから、複数の何かを集めて……プログラムだから、そこのパソコンを動かせってことなんだろうよ」

「へぇ~!流石はベジータさんですね」

「構って欲しいからって面倒な奴だ。ちょっと、鍵を集めて来るぞ」

「鍵が何かわかったんですか!?」

「フン」

馬鹿な下級戦士を鼻で笑った俺は部室を後にした。

98 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2016/02/01 00:01:26.99 SKZ6X//T0 305/307

「おい、ブルマ!とっとと出てきやがれ!」

そして今、オレは懐かしの我が家に居る。

「あれ、ベジータ?学校はどうしたのよ」

「うるせぇ!とっととドラゴンレーダーを寄越しやがれ!」

「藪から棒に怒鳴り散らさないでよ!」

「チッ」

仕方がないので愚鈍なブルマに事のあらましを教えてやった。

「するとなに?そのハルヒって子が不登校だからドラゴンボールを使うってこと?」

なんだか違う気もするが面倒だからそれでいいだろう。

「クラスメートを心配するなんてベジータも良い所あるじゃない」

「フン」

「ただ、ちゃんと原因も解決してあげるのよ」

ブルマはそう言って俺にドラゴンレーダーを掴ませた。

99 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2016/02/01 00:16:38.23 SKZ6X//T0 306/307

ドラゴンボール集めは一日で終わった。

そして翌日の放課後、部室において、ドラゴンボールを脇に置いてパソコンを起動した。

変化なし。

「やっぱりドラゴンボールじゃないんじゃ……」

悟天が慰める様に言ってきやがった。腹が立つぜ。

「ふざける!鍵と言えば、ドラゴンボール以外にある訳がないだろ!」

「は、はぁ……」

力なく答える悟天に苛立ちが募る。

「いいか、見てやがれ」

オレはドラゴンボールを窓から校庭にまき散らすと、こう言った。

「出でよ神龍!オレの願いを叶えやがれ!」

「ちょ、ちょっと、ベジータさん⁉」

空が暗くなり、神龍が現れた。

「どんな願いも可能な限り三つ叶えよう」

お決まりの台詞を吐くドラゴンにオレは願いを言う。

「ハルヒ達が学校に来れる様に元の健全な状態に戻しやがれ」

「たやすい願いだ。男子生徒はサービスだ」

男子生徒?こいつは何を言ってるんだ?

「次の願いはなんだ?」

ふと不安気な表情を浮かべる長門が目についた。

「長門や朝倉、朝比奈達に優しくて頼りになる親をつけやがれ!」

「いいだろう。願いは叶えたぞ。最後の願いはなんだ?」

「もう用事は……」

そこまで言ってオレはあることを思いついた。

「オレを卒業させやがれ!」

「いいだろう。願いは叶えた。さらばだ」

ドラゴンボールは飛び散り、空が明るくなる。

……そして、その空から一枚の紙切れが落ちて来た。

『卒業証書』

その紙には確かにそう書かれている。

「もうここには用事はないな。さらばだ」

「ベジータさん⁉ボクは⁉」

「てめぇはのんびりと三年間通うんだな!ハハハハ!」

オレは学び舎やから飛び去った。

100 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします - 2016/02/01 00:45:57.74 SKZ6X//T0 307/307

「すると何?あんたはドラゴンボールを使って卒業してきたの?」

「ああ」

何が面白くないのか、ブルマは仏頂面で溜息をついた。

「常識外の連中に常識を学ばせようとしてたあたしがバカだったわ」

ブルマは脱力したように肘をつく。

「それよりもブラはどこだ?」

無言で隣室を指さすブルマ。

背後でブルマの溜息を聞きながら、俺はブラに声をかけた。

「ありがたく思え!明日からは毎日に一緒に居てやるぞ!」

ああ、毎日が日曜日って素晴らしい。


ベジータの消失(了)


チラ裏SS オチマイ

付き合って頂いた皆様においては、お疲れ様でした。

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