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食蜂「本っ当に退屈ね、この街は」【1】
食蜂「本っ当に退屈ね、この街は」【2】
食蜂「本っ当に退屈ね、この街は」【3】

343 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/01 23:50:44.20 SNm5wLs00 316/490

フィアンマとヴェントは大天使のテレズマを使いこなす『聖人』以上の魔術師だ。
しかしシルファーとメデューサの2人は『聖人』である上に、
悪魔である『蝿の王』(ベルゼブブ)と『神の毒』(サマエル)と融合した、とんでもない魔術師だった。

フィアンマの爆発する拳も、シルファー相手には素手で受け止められ、逆に太刀で一閃された。
ヴェントもメデューサ相手に風の杭を放つが、弾かれ、反撃の毒霧をわずかに吸いこんで再起不能になってしまった。

シルファー「弱すぎる。これが最高峰の魔術師なのか……」

メデューサ「ツチミカドっていう東洋人の方が強いかもしれないわね」

フィアンマ「く……そ……」

ヴェント「レベルが……違いすぎる……」

メデューサ「あなた達が弱すぎるのよ」

シルファー「使いこなすのではなく、融合していれば、あるいは対抗できたかもしれんがな。さよならだ」

シルファーの太刀が、容赦なく振り下ろされた。

344 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/01 23:52:29.40 SNm5wLs00 317/490

バシュウ!とシルファーは肩を白い光線に撃ち抜かれ太刀を落とした。
光線が放たれた方を見て、

シルファー「なぜ邪魔をする小娘?」

その先に居た食蜂に問いかける。

食蜂「だってぇ、私達の遊びを邪魔するからさぁ、イラッ☆ときちゃって」

メデューサ「私はたった今邪魔されてイラッときているけどね」

音もなく食蜂の後ろに回り込んだメデューサは『アスクレピオス』の杖を振るう。

食蜂「調子に乗らないで」

振るわれたアスクレピオスを軽く受け止め握りつぶす。
それどころか逆に、膨大な空気圧を放ちメデューサを吹き飛ばす。

メデューサ「へぇ。あの黄色い女よりはやるわね」

シルファー「邪魔をするなら、殺すまでだ小娘」

今まで右手で持っていた太刀を左手に持ち替えて、食蜂に振り下ろす。

食蜂「うざい」

グッギィィィン!と太刀は磁力で曲がった。

シルファー「ほぅ」

武器を失ったというのに余裕そうなシルファーの心臓を止めるために、食蜂は電撃の掌底を浴びせた。
が、シルファーは食蜂の手を掴み、

シルファー「その程度か小娘」

ぐしゃり、と食蜂の手を握りつぶした。

345 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/01 23:53:18.37 SNm5wLs00 318/490

食蜂「放せ」

呟きながら、握りつぶされていない左手から炎を出して爆発を起こす。

フィアンマ「あの化け物と……互角に戦っている……?」

ヴェント「食蜂も……大概じゃないわね……」

食蜂「ちょっとぉ、聞こえているんだけどぉ」

倒れているヴェントとフィアンマの傍らにテレポートしてきた食蜂の手は再生していた。

フィアンマ「なぜ、俺達を庇う……?」

食蜂「だからぁ、遊びを邪魔されたからって言っているじゃない?」

ヴェント「そんな理由で……」

食蜂「どうして?誰だって娯楽を邪魔されたら憤るでしょ?」

シルファー「会話をしている暇があるのか?」

一瞬で食蜂の前に躍り出たシルファーは、かかと落としを繰り出そうとして、

「調子のんなクソヤロウ!」

ゴギャア!と突如現れた金髪の男に殴られ、数百m以上吹っ飛んだ。

346 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/01 23:54:46.60 SNm5wLs00 319/490

フィアンマ「誰だ……?」

派手に逆立てた金髪に、この時期には早いTシャツに短パンの大男が食蜂を庇うように立つ。

食蜂「獅子虎玲緒(ししとられお)。私の仲間よ」

獅子虎「おい!あの男と蛇みたいな目をした女はブチのめしていいのか!?」

食蜂「良いって指示出しているでしょ。やっておしまい」

獅子虎「オッケー」

快活な返事をすると、彼の体が2倍以上の大きさになって行く。
手の爪は鋭くなり、歯は牙となる。その威容は百獣の王、ライオンのようだった。

獅子虎「グオオオオオオ!」

雄叫びをあげながら、飛ばされたシルファーの下へ向かって行く。

メデューサ「いい加減にしなさい」

ビュオッ!と、真上から直径2mの紫色の光線が食蜂達を狙って放たれた。

食蜂「いい加減にするのはそっちでしょーが!」

食蜂が右手を挙げる。
するとその真上の空間に黒い花が咲き、光線をすべて吸収し跳ね返しメデューサを返り討ちにした。

ヴェント「これが、能力者200万人分の力……」

食蜂「まだまだこんなもんじゃないわよぉ」

フィアンマ「だが、メデューサもまだ死んでいないみたいだぞ」

食蜂「それも分かっているわぁ。
   だから私はそのメデューサって言うのと集中して戦うから、あの男はあなた達で頑張ってねぇ。
   大丈夫。もうすぐ君達の仲間が来るから」

そう言い残して、食蜂はテレポートで消え去った。

347 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/01 23:56:50.16 SNm5wLs00 320/490

数百m先で轟音が巻き起こった。獅子虎とシルファーの方からだ。
一方でフィアンマ達のところにも、

削板「ようお前ら。ボロボロじゃねぇか」

削板軍覇が辿り着いていた。

フィアンマ「駄目だ……お前じゃあ勝てない……」

削板「何言ってんだ。誰が相手でも俺は勝つぜ」

ヴェント「いいから……逃げなさい……」

削板「あの黒い男をぶっ飛ばせばいいんだな?」

2人の注意を聞き入れる気がない削板は、獅子虎の亡骸を担いで歩いてくるシルファーを指差して尋ねる。

フィアンマ「逃げろと言っているのが……分からんのか……!」

ヴェント「あの力の大きさ……見ただけで分かるでしょーが……!」

削板「ゴチャゴチャうるせぇ!そんなもん分かってるが!逃げると言う根性無しな真似は!死んでも出来ねぇ!」

激しい剣幕で叫ぶ削板に、フィアンマ達は思わず怯む。
そんなやりとりの最中も、シルファーは左手に刀の形をした黒いエネルギーを溜めながら近付いてくる。

削板「あのエネルギー……俺も最大級の技でいくしかないな……!」

両手を突き出す削板の前に、並んだ8枚の魔法陣が2セット顕現した。つまり、合計16枚の魔法陣。

削板「いっくぜぇぇぇぇぇえええええ!『八重魔法陣の双衝撃』(オクタスペルツインインパクト)!」

16枚の魔法陣が殴られた事により壊れ、極限の衝撃波が生み出される!
シルファーも、左手の刀の形をしたエネルギーを上から下に振るった。
フィアンマがかつて振るっていた大剣並の大きさのエネルギーだ。

ズッバァァァアアアアア!と魔法陣の衝撃波と削板は黒いエネルギーに飲み込まれ、余波でフィアンマ達も吹き飛ばされた。

348 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/01 23:58:12.64 SNm5wLs00 321/490

そこから数百m離れたところで、食蜂とメデューサは戦っていた。
メデューサは背中や脇腹から大量の蛇を伸ばし、食蜂は蜂の形をした炎や電撃や水やらを生み出して攻撃していた。

メデューサ「どうやら、魔術師の2人よりはお強い様ね」

食蜂「お褒めにあずかり光栄だけどぉ、そろそろ死んでくれないかなぁ?」

ドドドドド!と光線やら瓦礫やら、ありとあらゆる物量でメデューサを襲うが、

メデューサ「甘いわよ」

巨大な蛇が召喚され、攻撃は飲み込まれ、その硬い皮膚に弾かれ、
とにかくメデューサに致命的なダメージは与えられなかった。

食蜂「ムッカつくわねぇ」

メデューサ「お褒めに預かり光栄ですわ」

食蜂「今のが褒め言葉に聞こえるなら、あなたは相当なアホねぇ」

メデューサ「そのアホに、あなたはこれから殺されるのよ」

なおも激しい攻防は続く。

349 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/01 23:59:27.52 SNm5wLs00 322/490

しかし、その戦いも打ち止めとなる。
白い翼のようなものが巨大な蛇を両断し、彼女達の戦いを遮ったからだ。

食蜂「ようやく来たわねぇ」

メデューサ「アラ、随分とイケメンじゃない♡」

翼の出所を見る2人の視線の先には、6枚の翼を掲げた垣根帝督が君臨していた。

垣根「この状況がよく分からねぇんだけど、とりあえず両方ブチのめせばいいのか?」

食蜂「ちょっと待ってよぉ。私は侵入者を迎撃していただけだよぉ」

メデューサ「聞いてくれるイケメンさん?この小娘がね、一方的に絡んで来たのよ」

垣根「アンタ、何者だ?明らかに異質な何かを感じる」

その疑問に答えたのは、メデューサではなく食蜂だった。

食蜂「彼女はねぇ、魔術師らしいわよぉ。しかも、悪魔と融合したんだってぇ」

垣根「へぇ。じゃあこっちも本気を出さなきゃな」

6枚の翼がさらに大きくなり輝く。その威容は『光を掲げる者』(ルシフェル)のようだった。

メデューサ「イケメンに磨きがかかったわね。それじゃあ私も、全力でお相手差し上げないと」

2割程度の力しか出していなかったメデューサも、100%の力を解放する。
背中には赤い翼が生え、下半身は全長100mにも及ぶ蛇となる。

垣根「せっかく綺麗だったのに、醜くなったな」

メデューサ「勝つためには手段を選んでいられないからね。メルヘンさん?」

垣根「違ぇねぇ」

化け物同士の殺し合いが始まる。

350 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 00:00:36.09 mdUBX5eL0 323/490

「ここから先は、上条さんしか通せません」

オレンジ色のロングヘアに、おっとりとした雰囲気を放つ霧ヶ丘女学院の冬服に身を包んだ女子が
上条達の前に立ち塞がった。

御坂「だってさ。行きなさいよ」

上条「悪ぃ。頼んだ!」

事あるごとに頼ってくれなかった上条に、一発で信頼された事実に御坂は嬉しくなり、顔が綻ぶ。

「随分なアホ面ですが、そんな調子で大丈夫ですか?」

指摘されてムッとしながらも、割と言い返せない。

御坂「で、アンタは私が10万の脳を統べる木山を倒した事を知っていて立ち塞がっているのかしら?」

「倒した事は知っていますよ。どうやって倒したかまでは知りませんが」

御坂「ふーん。やっぱりね」

「会話はもう良いです。この六道望(ろくどうのぞみ)が、引導を渡してあげます」

御坂「へぇ。それは楽しみね」

前髪から、青白い電撃を迸らせる。

351 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 00:02:58.47 mdUBX5eL0 324/490

絹旗「だ、大丈夫ですか!?」

目を覚ました後、削板に置いて行かれた絹旗は、ようやく倒れている彼に追いついた。

削板「嬢ちゃんか……見ての通り……情けない話だが……大丈夫じゃない……」

絹旗「そ、そんなに超強力な能力者が……」

削板「違う……能力者じゃない……」

絹旗「え?」

削板「逃げろ……嬢ちゃんには勝てない相手だ……」

絹旗「……くっ」

悔しいが、削板の言う通りにするしかないと思った。
絹旗は、なんだかんだ言って彼の戦いを直接は見ていないが、今まで大した傷も負わず、
それどころか自分のところにまで来てくれた彼が弱いとは思えない。
まぐれなどではなく本当に強いのだと思っている。
ひょっとしたら、自分以上なのではないかとすら思っている。
そんな彼が、息も絶え絶えになっている。勝てない。今の自分では、勝てない。

絹旗「……分かりました。超逃げましょう。ただし」

絹旗は削板を背負う。

絹旗「あなたも超一緒に、です」

削板「ふっ……肝が据わった嬢ちゃんだ……だが――」

シルファー「逃げ切れると、思っているのか?」

絹旗の目の前に、シルファーが立ち塞がった。

削板「やはりな……」

絹旗「あ、ああ……」

一目見て分かった。この男は尋常じゃない。削板もこの男に負けたのだろうと。
勝てないなんて次元じゃない。死ぬどころではない。この世に一片の肉片すら残らない。

絹旗は恐怖で動けなかった。

シルファー「貴様も、楽しませてはくれないのか……」

シルファーの手が絹旗の頭に伸びる。握りつぶされる。絹旗は思わず目を閉じて、

ゴギャア!とシルファーの体が真横に数百m吹っ飛んだ。

絹旗「ふぇ……?」

壮絶な音に、思わず声を洩らしながら目を開けると、

一方通行「気色悪ィ猫撫で声出してンじゃねェよ」

辛口ながらも、自分を庇うように立っている一方通行がそこにいた。

352 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 00:04:14.28 mdUBX5eL0 325/490

絹旗「あくせられーた……」

一方通行「早くその男抱えて病院まで逃げろ」

絹旗「一方通行は、超どうするんですか……」

分かり切っている事を尋ねる。

一方通行「あのクソヤロウをブチのめす。拾ったフィアンマのヤロウに聞いた。魔術師なンだってなァ」

絹旗「超勝てるんですか……?」

ボロボロまでは行かないが、ダメージは追っている様子の一方通行を見て、正直勝てないのではないかと思い尋ねる。

一方通行「勝てるさ。これからやるのは殺し合いだからな」

ああ、そうか。
今まで彼は――というか自分達は、暗部時代に得意だった殺し合いではなく救う戦いをしてきた。
強力な能力者にとっては、なまじ殺すよりも困難な事だ。
だが初めから殺すつもりなら、100%の力を出し切れるのならどうだろうか。

絹旗「ですが、超殺しちゃっていいんですか……」

一方通行「そりゃあ俺だって、出来れば殺したくはねェよ。
     だがぶっちゃけた話、手加減して勝てる相手じゃねェだろうからな。殺すしかねェ」

絹旗「そうですか……」

一方通行「下らねェ雑談はここまでだ。早くその男と逃げろ」

絹旗「分かりました。では、超頼みましたよ」

一方通行「任せとけ」

一方通行の返事と当時、絹旗は全力で駆けだした。

353 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 00:05:11.07 mdUBX5eL0 326/490

シルファー「女を逃がしたか……」

一方通行「へェ」

拾ったフィアンマ達から話を聞いて、殺すつもりの飛び蹴りをかました。
常人なら蹴られた時点で、肉体が弾け飛ぶほどの蹴りをぶちかましたのに。
シルファーは平然と一方通行の前に立っている。

シルファー「なかなか良い蹴りだった。貴様となら、楽しめるかもしれん」

一方通行「楽しめるだと?殺し合いを楽しむキチガイとやるとか、気が重くて仕方ねェな。殺す事自体、気が重ェのによ」

シルファー「殺される前提か……随分となめられているようだ……」

一方通行「なめてねェよ。本当なら殺さずに戦闘不能にさせてェのを、殺すしかなくしてンだ。寧ろ評価してンだよ」

シルファー「なるほど。確かに強者であればある程、倒すよりは殺す方が楽だな」

一方通行「だからまァ、大人しく故郷に帰ってくンねェかなァ?」

身を低く沈めながら、意味がないと知りながらも提案する。

シルファー「この世の強者をすべて倒したらな。さあ、早くやろうか」

シルファーの背中から、蝿のような羽が生える。戦いが始まる。

354 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 00:07:06.09 mdUBX5eL0 327/490

垣根は翼を一度閉じて思い切り広げた。
ゴッバァ!と風速200mに達する烈風が、真正面からメデューサに叩きつけられる。

メデューサ「その程度、意味ないわよ」

言葉通り、烈風を真正面から突き破って行く。

垣根「おいおい、冗談じゃねぇぜ」

とは言うものの、突っ込んでくるメデューサを冷静に避けて、彼女の尻尾の末端まで飛んでいき、掴み取る。

メデューサ「イヤン♡エッチ♡」

垣根「うっせぇババア!気色悪い声出すんじゃねぇ!」

全長100m級のメデューサを持ちあげ、ビルを倒しながらジャイアントスイングをするかのごとく振りまわす。
そして5回転ほどしたところで、思い切り地面に叩きつけた。

垣根「まだだ」

翼を細かく鋭く無数に分裂させ、メデューサ目がけて放つ。
ズドドドド!と、翼はメデューサの下半身の蛇部分とその周囲の地面に突き刺さった。

垣根「ちっ」

だが垣根の顔には不快しかなかった。
本当は刺し貫くつもりだったのに、わずかに喰い込んだ程度でしかないからだ。
それでもメデューサは動けない。それに変わりはない。

メデューサ「痛いわぁ。レディーになんてことをするの」

しかしメデューサは垣根の常識を軽々と越えてきた。
グパァ、と大きく開かれたメデューサの口からメデューサが出てきた。
後に残ったのは彼女の脱け殻だけ。つまりは脱皮。

垣根「マジか――気持ち悪っ!」

メデューサ「レディーになんて事を言うのかしら!」

凄まじい速度でメデューサは垣根に伸びて行く。
だが垣根帝督という男は、ただ伸びてくるだけでは――その程度ではやられない。

垣根「何がレディーだ。ただの糞蛇女じゃねぇか!」

伸びてきたメデューサをあっさりと避け、翼を振るう。
瞬間、かまいたちによってメデューサの体中に切り傷が走った。

355 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 00:09:10.72 mdUBX5eL0 328/490

メデューサ「器用ねぇ。でも私を仕留めるには遠く及ばないわ」

パリパリ、とメデューサの皮膚が剥がれて行く。そこから新しい皮膚が露になる。

垣根(こいつは参った。一撃で仕留めない限りは、殺せねぇじゃねぇか)

今のところメデューサの攻撃は一撃も喰らっていない。だが脱皮がある限りは、永久に勝てない。
そしてその内、こちらが体力と能力を切らして負ける。ジリ貧だ。
となると、まずは脱皮を攻略しなければいけない。方法としてはいくつかある。

1つは、脱皮すら出来ないほど貫く。だがこれは出来ないだろう。
先程の攻撃で貫けなかったし、かまいたちも切り裂くつもりで放ったのに、切り傷程度で済んでしまっている。
これが意味する事は、彼女の皮膚がよほど頑丈と言う事。

2つ目は、脱皮を限界までさせる事。
脱皮することによって、彼女の体はミリ単位で減っていくはずだ。絶対に限界はある。
もしかしたら回数制限もあるかもしれない。だが理論的には可能なこの方法も、現実的ではない。
こっちの体力が先に尽きるのがオチだろう。

3つ目は、潰す事。彼女の体を押し潰す。
これが一番現実的かつ効率的だろう。もっとも、押し潰す事が出来るとは限らないが。

垣根がパッと思いついたのは、こんなところだった。

垣根(とりあえず、やるっきゃねぇか!)

メデューサの突進を避け、翼を器用に操って彼女の胴体を締め付ける。
潰しても、捻じ切っても、とにかく致命傷を与えられれば何でもいい。
強い思いを込めて、翼に力を込めるが、

垣根(ぬおおおお……!堅ってぇぇぇえええええ……!)

メデューサ「ああん♡激しいのね♡」

わざとらしく身悶えするメデューサに、垣根は嫌悪感しか抱かなかった。

メデューサ「攻守交替。今度はこっちの番よ」

これ以上締め付けるのも意味ないと判断した垣根は、翼を解きながら猛烈な勢いで突進してくるメデューサを避ける。

356 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 00:11:39.47 mdUBX5eL0 329/490

垣根(冷静になれ……奴の攻撃は単調だ……避けられない事はねぇ。絶対に何か攻略法がある筈だ……)

メデューサ「万策尽きたのかしら?そろそろこちらも手練手管で行くわよ」

グパァと、メデューサの口が有り得ないくらい大きく開く。何か来る。垣根は身構えたが、

何も来ない。

垣根(不発……?いや、そんなわけが……)

よく分からないがメデューサの口の一直線上に居るのは、あまり気分が良くない。そう考え横へ飛んだ直後、

1秒前まで居た垣根の座標の後ろのビルが溶けだした。

垣根「な――」

メデューサ「あら、よく避けたわね」

違う。避けた訳じゃない。気分の問題で横へ移動しただけだ。
謎の攻撃を避けられたのは、たまたまでしかない。

垣根(ともあれ、ラッキーだ。今度からはあの女の口の直線上に居なければいいだけの話だ)

メデューサ「小細工は通用しないか。ならば力で行くわよ」

再びメデューサの口が大きく開き、紫色の溶解液らしきものがウォーターカッターの如く噴射された。
と同時に、垣根もスタートを切っていた。

垣根(速え!)

メデューサ(逃がすか!)

超高速で飛び回る垣根を、溶解液を噴射し続けながら追いかけ回す。
周囲にある物は、溶解液が当たった個所から瞬く間に溶けていく。

垣根(一瞬でも気を抜けば溶かされる……だが――)

溶解液にだって限界はある筈。このまま逃げ続ければ反撃の機会は必ずある。
そう安易に考えていた垣根の身に悲劇が起こる。

垣根「がっ……!」

溶解液に気を取られていた垣根は、上から来る尻尾に気付けず叩き落とされた。
衝撃は出来る限り拡散させたが、筋肉は悲鳴を上げ、骨が軋んだ。

攻撃はそれで終わる筈もなく、倒れている垣根に向かって溶解液が噴射される。
垣根は無理して即座に起き上がり、横へ飛ぶが、

またしても振り下ろされた尻尾が、地面を叩いて揺らした。

357 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 00:13:17.46 mdUBX5eL0 330/490

しかしながら同じ手を二度も喰らうほど、彼も愚かではなかった。

メデューサ「よく避けたわね。と褒めておきましょうか」

垣根(クソが……余裕かましやがって……)

状況は一転。垣根は先程までも優勢とは言い難かったが、圧倒的な劣勢状態に陥った。

メデューサ「うふふ。険しい顔しちゃって。可愛いんだから」

垣根(脱皮を攻略するどころか、攻撃を避けることすら怪しくなってきた……どうすりゃいい……?)

悩みに悩んでいるその時だった。ポケットに入っていた携帯が鳴り響いた。
当然、出る余裕はないし必要もないと思っていたのだが、

メデューサ「携帯、出なさいよ。今のうちに遺言でも残しておくといいわ」

垣根(なに?)

額面通りに受け取っていいのか?
実は嘘で携帯に出て隙が出来た時に攻撃を仕掛けてくるのではないか?
だがそんな小細工などしなくとも、目の前の強敵は自分と互角かそれ以上だ。
だとすると、深い意味もなく冥土の土産的な事なのだろうか?

そもそも垣根クラスなら、相手が一方通行などの強敵でなければ、電話をしながら戦うのも不可能な話ではない。
上条のような腕っ節ではなく、翼で戦う彼なら尚更だ。

垣根(たとえ不意打ちだとしても、何とかなるか……)

垣根帝督という人間は、根本的には楽観的だった。
結局携帯に出た彼の耳に届いた声は、

心理定規『帝督……』

この世界で、最も大切な人間の声だった。

358 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 00:15:38.01 mdUBX5eL0 331/490

垣根「何の用だ……」

心理定規『何か……帝督の身に危険が起こっている感じがして……私、心配で心配で』

垣根(マジか……なんて偶然だよおい……)

絶体絶命、万事休すとまでは言わないが、なかなかのピンチであることは確かだ。
そんなときに身を案じる電話がかかってきたのだ。オカルト的な何かを感じざるを得ない。
厳密に言えば木原那由他にも追い込まれたが、彼がここ数時間で追い込まれたのは2回だけだ。
十分偶然と言えるだろう。

垣根「ああ、心配してくれてありがとう。でも大丈夫だ。約束しただろ?『絶対迎えに行く』って」

心理定規『ホントのホントに大丈夫?私、不安で胸が張り裂けそうだよ。
     じっとして待っているだけなんて耐えられないよ……』

垣根「何だよそれ。俺が約束を守れないとでも思うのか?お前は俺を信じて、待っていてくれよ」

心理定規『だって、そんなこと言って、あの時も帰ってきてくれなかったじゃない。
     こんな不安な気持ちになるのなら、帝督とであ――』

垣根「それ以上何も言うな。それ以上何かを言おうものなら、俺はお前を殺す」

心理定規『……ごめん』

垣根「分かってくれたらいいんだよ。……なんか、俺の方こそすまん。
   けど、俺はお前と出会えて、本当に良かったと思っている」

心理定規『帝督……』

垣根「……はっきり言ってさ。俺今ピンチだ。でも、お前の声聞いて少し元気が出た。
   だけど、もうちょい、悲しげな声じゃなくて、もうちょい元気な声聞かせてくれたら、もっと元気出せる気がする。
   だから――」

心理定規『がんばってよ帝督!帰って来なかったら、私が迎えに行ってあげるから!
     そして私に一生尽くすの!帰ってきたら、私が一生尽くすから!だから!』

泣きそうになるのを堪えているのがこちらからでも分かる。
それでも彼女は強がって最後の言葉を言い放つ。

心理定規『絶対に!何が何でも!是が非でも!帰って来ないと承知しないんだからねっ!』

と、そこで通話は終了した。

メデューサ「彼女さん、だったみたいね。随分とバカップルのご様子で」

垣根「盗み聞きかよ。趣味悪ぃな」

メデューサ「人聞きの悪いこと言わないでほしいわね。聞こえてきたのよ」

垣根「ああそう。まあどうでもいいけどよ」

条件反射で適当な軽口を叩いてしまったのはこちらからだが、盗み聞きかどうかなんて心底どうでもいい。

垣根「めっちゃ元気出たぜ。他人に分けてあげたいくらいにな」

メデューサ「元気だけで倒されるほど甘いつもりはないけど?」

垣根「攻略法も見つけちまったんだよ。本当に、何でこんな簡単な事に今まで気付かなかったんだろうって言うぐらいのな」

メデューサ「あら、それは楽しみね」

両者とも笑みを浮かべる。戦いの第二ラウンドが始まった。

359 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 00:18:25.16 mdUBX5eL0 332/490

垣根「おらよ!」

垣根の翼が、メデューサの顔面目がけて伸びて行く。

メデューサ(気付いた言うのは嘘じゃない様ね……)

あらゆる角度から迫る翼を、尻尾で弾き、避け、逆に垣根に肉迫する。

垣根(わざわざ避けたり弾いたりしたってことはやっぱり……)

ある事を確信した垣根は『未元物質』の刀を生み出し、突進してくるメデューサの口を狙って特攻して行く。

メデューサ「真正面からとはいい度胸ね!喰らえ!」

服の袖から大量の蛇を垣根へ伸ばす。一匹一匹が、猛毒を持つ特殊な蛇。

垣根「受けて立ってやろうじゃねぇの!」

伸びて来る蛇の大群を、垣根は自らの体を『未元物質』にして突き抜けて行く。

垣根「おおおおおおおお!」

メデューサ「馬鹿な――!」

ザン!とメデューサの人間と蛇部分の境目が切り裂かれ、上半身の人間部分と下半身の蛇部分に分かれた。
これで終わったと垣根は純粋に思ったが、現実は甘くなかった。

下半身の蛇部分の切断面から蛇が飛び出し、上半身を咥えて合体した。

メデューサ「ふぅ。御明察の通り、私の弱点は上半身の人間部分。
      この部分の強度は『聖人』並の強度しかないから、普通の人間の拳とかならまだしも、
      あなたの翼は十分効果があるわ」

垣根「それを俺に教えちまっていいのか?」

メデューサ「だって、もう確信しているのでしょう?だとしたら、わざわざ隠す必要もないじゃない?
      弱点が知れたところで負けが確定したわけでもないし」

垣根「そうだな。じゃあ、死んでもらおうか」

胴体に近い部分の切断じゃ駄目だ。脳や心臓に近い部分を貫かなければ。
6枚の翼を絡みつけ、ドリル状にしたものをメデューサの口目がけ放つ。

メデューサ「あからさまの弱点狙いの攻撃……避けるのは簡単だけど、癪だから真っ向から潰すわね」

またしてもメデューサの口が大きく開き、大きめの蛇が飛び出す。
それはあっさりと翼のドリルを飲み込み溶かし、逆に垣根本人をも飲み込まんと翼を辿り、迫る。

垣根(くっ――)

蛇が垣根の前で大きく口を開いた。
これに飲み込まれれば一瞬で溶かされるし、避けても牙がかすりでもすれば、それが致命傷となってお陀仏だろう。

だから垣根は、さらなる翼を生やして蛇の口にあてがい、閉じるのを一瞬だけ遅らせて回避した。

360 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 00:21:18.94 mdUBX5eL0 333/490

メデューサ「ふふふ。これで分かったかしら?」

口から出した巨大な蛇を収納してから、メデューサは尋ねる。

垣根「何がだよ?」

メデューサ「あからさまな弱点狙いでは、私を仕留められないってこと」

垣根「ああ、そういうことか。確かに今の攻撃は失敗に終わったが、弱点は分かっているんだ。次で決めるぜ」

メデューサ「かっこつけなくていいのよ?大人しく私のものになりなさいよ」

垣根「勝手にほざけ。それじゃあいくぜ」

そう言って垣根は、メデューサに真正面から飛んで行く。

メデューサ「正面からとは、私も随分となめられたものね!」

ならば流れに逆らわずに、正面から来る男を飲み込んでやろうと口から巨大な蛇を出して反撃するが、

垣根「甘いぜ」

・・・・ ・・・・・・・・・・・・
スゥーと、垣根は蛇の中を通り抜けた。

メデューサ「――!?」
                                  ・・・
目の前の光景に驚嘆した直後、彼女の脳天から心臓にかけて霊体化した翼が通った。

垣根「終わりだ」

宣告した次の瞬間、その翼が実体化し彼女をぶち抜いた。
それだけでは終わらず、貫いている翼を動かす。
ブッシャアアア!と大量の血液と共にメデューサの上半身部分は、内側から四方八方に散らばった。

362 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 00:25:03.78 mdUBX5eL0 334/490

垣根「ふぅ」

地面に降り立ってから、血塗られた翼を消失させたところで、

メデューサ「なるほどね~。霊体化までできるとは思わなかったわ」

上半身部分が健在のメデューサが、超然と君臨していた。

垣根「なん、で……手応えは、確かにあったのに……」

メデューサ「そうね。紛れもなくあなたの一撃は私を貫いたわよ」

垣根「なら、何でテメェは死んでねぇ!?」

メデューサ「私は体の中に1兆匹の蛇を飼っている。その内の100匹の魂を生贄にして、蘇った」

1兆匹の蛇を飼っている?蛇100匹の魂でこの化け物が蘇生?
等価交換どころの騒ぎじゃない。そもそも脳と心臓を失って蘇生ってどう言う事だ?

垣根「ざけやがって……ならテメェは、あと100億回は蘇られるってのか!?」

メデューサ「いいえ、そんなことはないわよ。私が攻撃に出した蛇が殺されても、蛇のストックは減るわ。
      まあ多く見積もって合計したって1万匹も死んでないから、どの道果てしない回数私を殺さなければ、
      私には勝てないけどね」

垣根「クソが……」

メデューサ「1つだけ朗報を。今の死に方だったから魂の生贄は100匹で済んだけど、
      もっと凄惨に、たとえば私の全体の半分が消し飛べば、蘇生に必要な生贄は増えるわよ」

もっとも、と意地悪そうな笑みを浮かべて、

メデューサ「あなたの力では、ちまちま殺す事は出来ても、
      私の蘇生を加速させるような、致命的な大ダメージを与える事は出来ないでしょうけどね」

図星の一言を、言われてしまった。

363 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 00:26:47.31 mdUBX5eL0 335/490

メデューサ「これで私に勝てない事は分かったはず。大人しく研究材料になりなさいな」

垣根(ざけんな……殺せない訳じゃねぇんだ。殺し続ければ――)

メデューサ「ハァ……まだ諦めないのかしら」

垣根から向けられている眼差しは死んでいない。彼にとっては圧倒的な絶望的な状況なのに。

メデューサ「熱い男は嫌いじゃないけど、しつこい男は嫌いなのよね!」

右腕を蛇に変化させ伸ばした。垣根はそれを飛んで避けるが、蛇の追跡は終わらない。

垣根「俺だってしつこい女と蛇は願い下げなんだよぉ!」

殺せるかは分からなかったが、全力の翼を蛇に叩きつけた。
ぐしゃり、と蛇は意外にもあっさりと潰れた。つまり、メデューサの右腕も潰れた事になる。
もっとも、命まで蘇生できるのだから、右腕蘇生など造作もない事だろうが。

メデューサ「ステルススネーク」

ヒュン!と空気を切り裂く音が聞こえた時には、垣根の『未元物質』の翼6枚の内4枚が、透明な蛇によって噛み千切られた。
突然翼の3分の2を失いバランスを崩した垣根は、フラフラとビルの屋上に不時着する。

息つく暇もなく、垣根の不時着したビルが崩れ出した。言うまでもなくメデューサの仕業だ。
直接狙われなかった理由はおそらく――

垣根(――俺を弄んでやがる!)

静かに憤る垣根だったが、少々憤ったところで勝てるなら能力開発は要らない。既に左腕の蛇が伸びてきている。

垣根「クソッタレが!」

蛇を潰すために翼を振るう。が、蛇は突如翼を回避するように分裂した。

垣根「しまっ――」

メデューサ(仕留めた!)

垣根が焦り、メデューサが勝利を確信したその瞬間、

メデューサと伸びてきた蛇の動きが停止した。

364 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 00:28:37.74 mdUBX5eL0 336/490

垣根「何が……」

動揺していたのは、垣根だけではなかった。

メデューサ(体が……動かない……!)

異変はそれだけに留まらず、体が一切の自制を受け付けず勝手にとぐろを巻いて行く。

垣根(何かよくわからねぇが――)

チャンスだ。今のうちに殺せるだけ殺しておこうと垣根は飛んでいくが、

ベギャゴギャゴギン!と、メデューサの体や顔が歪んだ。

垣根「これは――!」

メデューサ「あ……がぁ……い、やぁーーーーーーーーーー!」

驚嘆し空中に留まっていた数秒間で、とぐろを巻いて30mほどの肉塊と化していたメデューサは捻じ曲げ潰され破壊された。
肉片の1つも残らなかった。

この力は、知っている。
垣根は地上に降り立ち、目の前に居る常盤台の冬服に肩ぐらいまであるボサボサの紫色の髪、
身長は推定130cmほどしかない少女に尋ねる。

垣根「何の真似だ?」

折原「食蜂様の命令で侵入者を抹殺したまでです」

垣根(やってくれるじゃねぇか……!)

侵入者を抹殺する為なら何で今まで出てこなかったのか?それとも何か出て来られない理由があったのか?
疑問は多くあるが、今はそれらの事は些事でしかない。
自分があれほどまでに苦戦していた相手をいとも簡単に殺してしまった事。これが問題だ。
いつだったか、自分に勝てると豪語していただけはある。
あの時は勝てないと悟り自ら身を引いたが、今回はそうはいかない。

垣根「お前、操られてないだろ?何で食蜂なんかに協力する?」

折原「教える義理も必要もありませんね」

言いながら、垣根の方へ手をかざす。
それを見た垣根は横へ跳んで、本来は能力者ですら見えない歪曲の渦を回避した。

折原「その眼がある限り、私の攻撃は丸見えのようですね。
   もっとも、見えたところで勝敗まで左右される訳ではないですがね」

折原の目つきが鋭くなる。メデューサとの戦いは唐突に終わりを告げ、新たなる戦いの幕が上がる。

365 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 00:30:03.12 mdUBX5eL0 337/490

御坂「はぁぁ……!」

迸らせた膨大な電撃を巨大な龍の形へ変貌させる。

六道「凄い……」

御坂「これを見てもまだ、ここを通さないと言うの?」

巨大な青白い龍に見惚れていた六道は、慌てふためきながら、

六道「も、もちろんです!ここは通せません!」

御坂「ふーん。アンタさ、操られていないでしょ?脳波に異常は見られないし、今の態度的に考えても。
   何で食蜂なんかに協力しているの?」

この距離で脳波が分かるとは一体どう言う事だ?
内心では動揺しながらも、出来るだけ平静を取り繕って返答する。

六道「知りたいですか?」

御坂「知りたいから聞いているんだけど?不毛な返答は止めてよね」

六道「教える必要性はありませんよね?」

御坂「それがあるのよね。このままだと、私はアンタを黒焦げにしちゃう。
   もしもだけど、やむにやまれぬ事情があるなら、話し合いで解決した方が良いでしょ?」

六道「不愉快ですね。なぜ私の能力も知らずに黒焦げに出来る前提なのでしょうか?
   私の能力は、あなたの能力の5割を無力化できます。油断や慢心をしている場合ではないのでは?」

御坂「油断や慢心なんてしていないわよ。ただ自信があるだけ。
   たとえアンタがどんな能力であろうとも黒焦げに出来る、絶対の自信がね」

大体、と御坂は続けて、

御坂「能力の5割しか無効化できないなら、勝ち目がないのはアンタの方よ。
   私の知人の1人は、私の能力を完全に無効化できるわよ。それに比べたら、5割なんて何の脅威にもならない」

はっきりと言い切る御坂に、六道も強気に返す。

六道「じゃあ攻撃してみれば良いじゃないですか。その龍で。ありとあらゆる手段で」

御坂「ふん」

悪い人ではなさそうだし、出来れば戦いたくなかったが仕方がない。
どんな事情があるかは知らないが、道を譲らないと言うのなら切り拓くまでだ。

御坂「後悔、しないでよね!」

雷撃の龍が、六道の真上から襲い掛かる。

366 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 00:32:06.42 mdUBX5eL0 338/490

対し六道は、緩やかに右腕を挙げた。
そして右手に雷撃の龍が着弾した瞬間、

猛烈な勢いで雷撃の龍が右手へ吸収された。

御坂「あらま」

六道「今度はこっちの番です」

大したリアクションを見せない御坂に左手を向け、白い光線を発射する。
だが所詮は直線的な攻撃。御坂は至って冷静に横に数歩移動しただけでそれを回避する。

六道「と、この通りエネルギーを吸収して別のエネルギーとして放出できる。
   これが『陰陽五行』(コズミックスキル)の力です」

御坂「ふーん。じゃあ物理を伴う『超電磁砲』は吸収できないって訳ね」

六道「他にも、磁力で操られて飛ばされた金属などを吸収する事は出来ません。だから5割と言いました」

しかしながら、と六道は続けて、

六道「防ぐ手段がない訳ではありません。
   たとえば、周囲に磁力フィールドを展開すれば『超電磁砲』を始めとする金属系の攻撃は無意味と化します」

御坂「つまり、残された攻撃手段はガラスの破片などの金属系ではない物理しかない、ってことね」

六道「そ、そういうことです」

なぜだ?電撃や必殺の『超電磁砲』を無力化されるという事実を前にして、なぜ目の前の少女はあんなにも冷静なのだ?
あの異様な静けさは一体何なのだ?

六道「強がっても意味ないですよ。今のうちに降参すれば見逃してあげますよ」

御坂「降参?誰がそんな事するもんですか。食蜂の手下になるのも、死ぬのもごめんよ」

六道「ご自分の状況、理解していますか?」

御坂「ええ。圧倒的に不利なことぐらい、十二分に理解しているわよ。
   それが何?焦ったって、絶望したって事態は変わらないわ。能力だって変わらないし、技術だって変わらない。
   だったら、今持てる力でどうすれば勝てるのか?それを考えているだけよ」

六道「な……」

何だこの少女は?本当に中学3年生か?自分が圧倒的に有利なはずなのに、この圧迫感は何だ?

六道(焦る事はない……考える暇も与えずに倒す!)

決意を胸に、御坂を見据えようと瞬きした直後には、既に彼女の姿はなかった。
逃げた?と周囲をキョロキョロ見ると、視界が青白い光に塗りつぶされた。

367 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 00:35:00.07 mdUBX5eL0 339/490

六道(目眩まし!?)

先程は形式的に右手を挙げて吸収したが、別にアクションを起こさずとも、体に触れた時点でエネルギーは吸収される。
磁力フィールドも既に展開しているし不意打ちは無意味だ。そんなことは説明せずとも御坂だって分かっているはずだ。

ではなぜか?その答えはこうだった。
そもそも御坂が電撃を放ったのは、目眩ましのためではなく、学園都市中の砂鉄を集めるためだった。
つまりは、六道の勘違いにすぎなかった。

彼女がその勘違いに気付いたのは、視界が回復し始め周囲がやたらと暗いと感じた時だった。
暗い理由は太陽の光が遮られているからだ。では何が光を遮っているのか。
六道が見上げたその視界に飛び込んできたものは、

真っ黒な、砂鉄の波だった。

六道「なんて量なの……」

見上げる途中で気付いたのだが、向かいのビルの屋上に御坂がいた。
壁を伝って駆けあがったのだろう。黒い縦の焦跡が残っている。

そうか。
彼女が砂鉄を集めるために放った電撃の光が眩しすぎて、勝手に目眩ましだと勘違いしていただけだったんだ。

六道(やっぱり、10万の脳を統べていた木山さんを退けただけはあります)

攻撃の意思がないアクションですら、こちらに影響を及ぼす。もうレベル5の頃の御坂美琴とは別人と言っていい。
レベル6とまでは言わないが、間違いなくレベル5は超越している。それでも、自分が圧倒的に優位なことには変わりない。

六道(どれだけ大量の砂鉄を用意したって、磁力フィールドの前では無意味!)

そうだ。自分の勝利は揺るがない。能力と磁力フィールドで御坂を完封できる。
どんな電撃だろうと、砂鉄だろうと、『超電磁砲』だろうと弾き、吸収してやる。

意気込む六道は、自分からは何もせず仁王立ちで御坂のアクションを待つ。

368 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 00:36:45.76 mdUBX5eL0 340/490

御坂(何もしてこないとはありがたいわね)

まあそれも1つの選択だろう。話を聞く限り、吸収した分しか能力を放出できない。
攻撃しなくたって勝てると思っているだろうから、あまり無駄撃ちしたくないのだろう。
と御坂は勝手に推測した。

御坂「さて、行きますか!」

ジャージのポケットから、10枚1セットのコインの束を上へ放り投げた。
強力な磁力でコインの束は散らばる事なく、前に降ってきた束をデコピンの要領で弾く。

御坂「光栄に思いなさい。アンタが初披露の技よ!」

ゴバッ!と、弾かれたコインの束が散弾となって六道へ降り注ぐ。
即ち、『散弾超電磁砲』(レールショットガン)!

六道(――そうか!彼女の狙いは――)

10に分かれた『超電磁砲』の内の3つが反発の磁力フィールドに弾かれた。
しかし残りの7つは六道本人ではなく、彼女の周囲の地面に着弾した。
その余波は、それぞれが半径7mの地面を捲りあげ、莫大な煙を発生させた。

六道はその煙の中で、風のエネルギーを展開させて破片や余波を防ぎきっていた。

六道(磁力フィールドをもっと広く展開させておけばよかった……)

結果的にはノーダメージで済んだが、一瞬ヒヤッとした。
やはり待ち受けるだけでは駄目だ。自らがアクションを起こして叩きのめさないと。
決意を新たに、風を巻き起こし煙を払った六道の視界に衝撃的なものが映った。

ビルが失くなり、その代わりに超巨大な黒い直方体が目の前に浮いていた。

御坂「お願いだから死なないでよー!」

敵に向かって死ぬなとはどういうことか?普段の六道なら疑問に感じていたが今は違う。
御坂が何をしようとしているのか。それが分かった六道は黒い直方体に向かって直径30mはある光線を放つ。
同時――

黒い直方体も御坂の手によって『超電磁砲』として放たれた。

0.0000000001秒で光線と『超電磁砲』が激突。
そこから半径1kmに亘る衝撃波を撒き散らして相殺された。

369 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 00:38:48.64 mdUBX5eL0 341/490

六道(なんて人――)

衝撃波に対してもエネルギーを展開して、吹き飛ばされる事はなく六道は無事だった。
しかし御坂は違うだろう。あの衝撃波を喰らって生身の人間は無事な訳がない。勝った。
彼女は純粋にそう思ったが、

御坂「次、行っくわよー!」

六道「え?」

煙のカーテンの向こうから元気そうな声。
もし2発目が来るのならば、磁力フィールドだけでは防げない。
半信半疑ながらも、彼女はオレンジ色のエネルギーの盾を展開する。
その直後だった。

ドッゴォォォオオオ!と超巨大直方体『超電磁砲』が盾に着弾した。

六道(冗……談……!)

『超電磁砲』は死んでない。
熱で溶け切るまで防ぎきらなければ、余波だけでも塵すら残らない事になる。
逆に言えば、熱で溶けきるまで防げばこちらの勝利だ。
バキッビシッゴシャ!と盾にヒビが入るが、
御坂戦前に洗脳された能力者から蓄えたエネルギーを加算して盾を回復させ、硬度も上げる。

六道(なめないでください!)

15秒後、砂鉄で包んだビルを媒体にした『超電磁砲』は完全に溶け、余波をも凌いだ。

六道「はぁ、はぁ」

かなり消耗したが防ぎきった。今度こそ勝利を確信する六道の耳に、

御坂「へばったー!?」

またしても元気そうな御坂の声が届いた。

六道「あ、ああ……」

煙は既に晴れている。
そこで砂鉄に乗って浮いている御坂と、3発目の砂鉄に包まれた超巨大直方体を見て六道は絶望した。

六道(私の……負けだ……)

能力が完全に切れた訳じゃない。だが限界は近い。
今ここでアレを撃たれれば防ぎきれない。六道は両手を挙げた。
降参の合図(サイン)だった。

370 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 00:40:34.92 mdUBX5eL0 342/490

御坂「ふぅ」

賭けに近い戦い方だったが、何とか勝てた。
御坂は浮かせていたビルを落とし、自身も地上へ降り立った。
一応反逆されたないために、念には念を入れて六道を気絶させようかと考えていたところで、

「中3の少女に後れを取るとは情けないな。貴様はもう用済みだ」

御坂「――危ない!」

男の声と同時に、銃声が轟いた。
少し後に、六道の大きめな胸の中心辺りがジワリと赤黒く染まり、倒れた。

御坂「ちょっとアンタ!」

六道に駆け寄り声をかけるが、既に虫の息だ。今すぐ病院に行けなければならないが、カエル顔の医者はいないし、
何より藍色の髪のオールバックに、白いスーツ言う出で立ちの目の前の男がそれを許さないだろう。

御坂「くっそっ!」

御坂は激怒した。能力をかなり消耗して考え事をしていたとはいえ、
人間レーダーと化していたはずの自分がこの男の接近に気付けなかったのと、
おそらくは六道の仲間であるはずの男が、彼女をあっさりと殺した事に。

御坂「アンタ、覚悟は出来ているんでしょうね……!」

大分能力を使用したがまだいける。目の前の男は間違いなく黒焦げにする。
決意の御坂の前髪から、電撃が迸る。垣根と同様、戦いの第二幕が上がる。

371 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 00:43:56.07 mdUBX5eL0 343/490

一方通行「いくぜ」

背中に真っ白な翼を生やし、頭上には同色の輪。
即ち天使化した一方通行は、真正面からシルファーに突っ込んでいく。

シルファー「そんな力があるのか。面白い!」

対してシルファーも真っ直ぐに突っ込んでいく。
ドゴォォオオ!と正面衝突した2人の力は拮抗していた。

一方通行シルファー((この力で五分か……))

バキィン!と2人は同時に後退して、さらなる力を発揮させる。
一方通行の白い翼はさらに大きくなり銀色に変化。
頭上の輪も銀色になると同時少し大きくなり、背中には巨大な歯車が、
目の前には一方通行の動きに連動する巨大な手が顕現した。

一方シルファーの蝿のような羽もさらに巨大になり、目が真っ赤に充血。
ベギャア!と全身気持ちの悪い青い色の筋肉が服を突き破って隆起し、正真正銘の化け物となる。

一方通行「気持ち悪ィな。さっさと死ねェ!」

蝿を潰すように、シルファーを挟むように巨大な手を動かす。
対してシルファーは避けようともせず、それをあっさりと受け止め腐らせた。

一方通行(触れたものを腐らせる事が出来ンのか……)

顕現させた巨大な手は連動するだけであって、完全にシンクロしているわけではないため、
巨大な手に何かあったからと言って一方通行の手に異常が起こる事はない。

一方通行(手が駄目なら、翼も駄目だろうな……)

ならばエネルギーで攻撃するまで。
一方通行は直径1mほどの光線を雨のように降らせる。

しかしシルファーは、驚くベき機敏さでそれらを回避していき、どうしても避けられない一撃を拳で弾いた。
それだけにとどまらず、上空に直径100mはある黒いエネルギー弾を生み出し、隕石のように落下させる。

一方通行(でけェ、が)

背中にある歯車を前に移動し、盾の代わりとして隕石を受け切った。
その間にシルファーは、両手で持っていた剣の形をした超巨大な黒いエネルギーを一方通行の真後ろで振り下ろしていた。

そのことにギリギリ気付いた一方通行は、翼をたたんで自身を包んだ。
それにより決定的なダメージは防ぐものの、翼が破壊された。
と既に、シルファーは次の一撃のエネルギーを両手で持っていた。

一方通行(これ以上好きにさせてたまるか!)

翼を失ったからと言って飛べなくなったわけじゃない。
浮いているシルファーの両手で持っているエネルギーの下へ突っ込んでいく。

両腕が振り下ろされる直前に一方通行はエネルギーに左手で触れた。その一瞬でエネルギーを解析して暴発させた。

シルファー「がああ……!」

一方通行「まだだ!」

暴発の煽りを受け両腕が使い物にならなくなったシルファーの顔面に右拳をめりこませる。
さらにその状態のまま、叩きつけるために地面へ向かう。

一方通行「おらァ!」

ドゴン!とシルファーが叩きつけられた衝撃で地面が揺れた。
しかもそれで終わりではない。まだ一方通行の右拳は突き刺さったままだ。ベクトルの力をさらに加算させていく。
ベギンゴギャン!とシルファーを中心として地面にヒビが広がっていく。

一方通行(これだけベクトルを加えてンのに、バラバラになるどころか死にすらしねェ!)

どうやら力では殺しきれない。ならば技だ。
生体電気や血液、その他全てを解析して内側から暴発させてやる。
そう考え、解析を実行しようとしたところで、

ぽっかりと、シルファーの胸の辺りに直径10cmほどの孔が空き、濃い青色の光線が放たれた。

372 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 00:45:36.66 mdUBX5eL0 344/490

一方通行(チッ!)

去年の10月ごろならともかく、今ならおそらく弾けない事はないのだが、
超至近距離で放たれた光線を思わず避けようと後退してしまった。

そしてあれだけの一撃を喰らっておきながら、シルファーは平然と起き上がり、こちらに向かってくる。

一方通行(クソが!)

轟!と、背中から黒い翼を噴出させる。
それは凄まじい速度でシルファーへ向かい、彼を飲み込んだ。
しかし一方通行の顔色が良くなる事はなかった。

黒い翼すら腐らされ、自らの手で根元から千切る羽目になったからだ。
しかしながらシルファーの両手も千切れていたため、相討ちと言ったところか。

一方通行(いろンな力を使い過ぎた。そろそろ俺の限界も近ェ。何とかしねェと……!)

打撃も効果がない訳ではないようだが、あまりにも頑丈なシルファーには効率が悪い。
よって一方通行は、直径20mほどの高電離気体(プラズマ)を生み出して放った。

シルファーは既に人外と成り果てているが理性は失っていないようで、胸の孔から光線を放ってプラズマを掻き消した。

だがそれも一方通行は織り込み済み。プラズマは囮にすぎなかった。
光線の発射終了直後のシルファーの懐に潜り込み、胸の孔に右手を突き刺す。

一方通行「――終わりだァ!」

生体電気、血液、その他あらゆるベクトルをごちゃごちゃにする。

シルファー「――!」

言葉を発する余裕も暇もなく、シルファーは内側から弾け飛んだ。決着は以外とあっさりなものだった。

373 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 00:46:49.42 mdUBX5eL0 345/490

上条「一方通行!」

対シルファー戦が決着した直後に、上条当麻は一方通行の下へたどり着いた。

一方通行「遅かったじゃねェか」

上条「何言ってんだ。俺が今到着する数秒前まで戦っていたくせに」

一方通行「へェ。何もかもお見通しって訳か」

上条「何もかも分かっていたら、もう少しうまく立ち回っているさ。そんなことより、病院に向かってくれないか?」

一方通行「あン?何で?」

上条「病院の方からフィアンマとヴェントの魔力を感じる」

一方通行「あァ。そりゃあそうだ。あの2人は結標に病院まで運ばせたからな」

上条「違う。そんなこと言っているんじゃない。フィアンマとヴェントが、能力者と交戦している」

一方通行「そンな事まで分かンのか?」

上条「とにかく、詳しく説明している暇はない。俺は他に行くところがあるから」

一方通行「オーケー」

再会は束の間。2人は再び戦の中へと身を投じる。

374 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 00:48:16.50 mdUBX5eL0 346/490

地上の各地で激闘が行われている中、学園都市の地下に潜入していた闇咲逢魔は、
雲川に指示されていた最低限のライン(土御門舞夏とインデックスの回収)を達成し、
いよいよ地上へ脱出しようと試みたところで、

「ようやく見つけたよ。随分と便利な力を持っているではないか」

透魔の弦で姿は見えないはずだが、目の前に居る短く刈り込んだ頭にスーツと薄い色のサングラスを着用している杉谷は、真っ直ぐにこちらを見つめている。

闇咲「バレては仕方がない。衝打の弦!」

もう隠れる必要もない。姿を現して梓弓の弦を引く。今いる場所は一直線の廊下。
発射される空気の塊を横へ跳んで避ける事は出来ない。

杉谷「ふん」

しかし杉谷は、ブリッジをするかのように上半身を思い切り反らして回避。
そしてすぐに元の姿勢に戻り、懐から取り出した拳銃の引き金を引いた。

対して闇咲は、梓弓で風魔の弦を生み出し弾丸を防ぐと同時、
弾丸が当たった事によって破裂した空気の塊の衝撃波で後ろへ大きく跳び、突きあたりを左へ曲がった。

杉谷「逃がさん」

杉谷は追いかけながらも、闇咲を追い詰めるために無線で他の仲間に連絡する。

375 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 00:49:58.45 mdUBX5eL0 347/490

それから約5分。
地下を散々走り回った闇咲は、一般的な高校の教室4つ分ほどの大きさの、何もない部屋に追い詰められていた。

杉谷「チェックメイトだ」

表情を変えずそんな事を言う杉谷の横には、2人の人間がいた。

闇咲(3対1、か……)

全員見るからには大人だ。つまり、能力者ではないということ。
ならばまともに戦っても勝機は十分にある。ただ3対1はさすがに不安だ。ここは力を借りておこう。

闇咲「出でよ!」

左手で魔道書を開く。そこから飛び出したのは、

「ようやく脱出できたのか闇咲の旦那!……って、そうじゃないのか」

「まあ一度も戦闘せずに脱出できる方が難しいですよね。ここは頑張りましょう半蔵様!」

忍装束を現代の衣装に置き換えたような黒い服を身につけ、頭には針金を
メッシュベルト状に編み込んだバンダナに銀色のブーツ、背中には刀を背負っている服部半蔵と、
髪を茶色に染め、ビーズのついたカラフルなかんざしを装備、真っ黄色の太腿大胆露出ヘソ出しミニ浴衣に身を包み、
和装なのに大和撫子的雰囲気ゼロな郭だった。

闇咲「すまない2人とも。力を貸してほしいんだ」

半蔵「勿論だぜ旦那。俺はあの刀と小太刀を携えているグラサンの男とやるよ」

「では私はグラサンの右にいる人とやります。闇咲氏は左にいる人をお願いします」

闇咲「了解した」

杉谷と半蔵が刀を抜き、郭が懐から全長15センチ程度の極めて短い刺突用の矢、世界最小の短槍とも呼ばれる打ち根を取り出す。
忍者の末裔同士の戦いが始まる。

376 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 00:51:30.67 mdUBX5eL0 348/490

闇咲、郭がそれぞれ戦闘を始める中、杉谷は小太刀を抜きながら言う。

杉谷「この小太刀には猛毒が塗ってある。かすっただけでも致命傷だ」

半蔵「そりゃあご親切に……どうも!」

両手で『正宗』を持ちながら、臆せず杉谷に向かって行く。

杉谷「いい度胸だ……!」

杉谷も右手で『村正』左手で小太刀を持って半蔵を迎え撃つ。
ガンゴンギン!と2人は刀で何度か打ち合い、ガリガリガリと鍔迫り合いをする。

半蔵(力はコイツの方が上か……!)

杉谷は決して長身ではないが、筋肉質であるし自分との体格差は10cmほどある。力では勝てない。

半蔵(だったら……)

キィン!という金属音と共に村正を弾いた。
すかさず左の小太刀が襲い掛かるが、それも冷静に弾く。

半蔵(もらった!)

峰打ちの為に正宗を一瞬で持ちかえて縦に振るう。
完全に決まったと半蔵は確信したが、

ガキィン!と杉谷の左手首に受け止められた。

半蔵(小手か――!)

反撃が来る。半蔵は一瞬で切り替えて距離を取る為に後退した。

377 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 00:53:09.66 mdUBX5eL0 349/490

半蔵「おいおい参ったね。どんだけ万全な装備なんだ?」

杉谷「備えあれば憂いなしと言うだろう」

半蔵「違いないな」

両手で持っていた正宗を右手だけで持ちながら、再び杉谷へ向かって行く。

杉谷(両手持ちから片手に……何かするな)

警戒しながらも再び打ち合う。力では勝てないと悟ったのだろう。
決して鍔迫り合いに持ち込むことはせず、頑丈な小手があるのも分かっているためか、大振りもしてこない。

杉谷(慎重だな……だがそれは裏を返せば消極的と言う事。一気に攻めさせてもらう!)

杉谷が一気に攻勢に出る。村正と小太刀を縦に横に振るい、たまに突きを繰り出す。
半蔵も激しくなってきた攻撃に対して、腰につけているポーチからクナイを左手で取り出して、激しい攻撃を何とか凌いでいく。

杉谷「そんなクナイごときで、この村正を防ぎきれるとでも!」

レプリカとはいえ、仮にも妖刀と呼ばれる村正相手にクナイとはなめられたものだ。
一際力を込めて振るった村正の一閃が、クナイなど易々と砕き半蔵の左頬をかすめた。

「半蔵様!」

クナイが砕けた音を聞いて、郭は思わず半蔵の方を見てしまう。

半蔵「大丈夫だ郭!郭は自分の戦いに集中しろ!」

「は、はい!」

と言いつつも、もう半蔵の事が頭から離れない郭は、戦いながらも半蔵をチラ見する。
左頬からわずかながら血が流れているが、どうやらかすめただけのようだ。
とりあえず杉谷から距離を取れたのを見て安心したところで、

どさり、と半蔵が倒れた。

378 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 00:54:53.49 mdUBX5eL0 350/490

「は、半蔵様ー!」

なぜだ?半蔵が喰らった攻撃は村正のかすめた一閃のみだ。
そんなのは一般人ですら致命傷には成り得ないはずなのに。

杉谷「油断していていいのかな?」

ハッ、と郭は自分も戦いの最中である事を思い出した。
が、時すでに遅し。ガン!と後頭部を殴り飛ばされた郭は力なく地面に倒れて行く。
それだけでは終わらない。うつ伏せに倒れた郭に銃口が向けられる。

杉谷(これで2人……)

しかし杉谷の思惑は外れる。
既に自分の敵は倒していた闇咲が、郭を殺そうとしていた人間をぶっとばした。

杉谷「ふん。まあいいか」

残りの2人は自分で仕留めてやろうと、闇咲に向き直し駆けだそうとしたところで、

半蔵「どこを見ている?」

杉谷「――何!?」

後ろからの声に振り向こうとしたが遅かった。
膝の裏に正宗の一閃を喰らい、力が入らなくなり後ろへ倒れて行く。
それでもせめて相討ちにしようと、右手の村正を裏拳気味に振るうが、半蔵は刀を納めクナイで杉谷の右手を刺した。
苦し紛れの追撃の小太刀も冷静に避け、右手と同様左手にもクナイを突き刺した。
これにより杉谷の両手と両足は潰れたことになった。
忍者としてはもちろん、戦うのは愚か、日常生活すら支障が出るだろう。

つまるところ、半蔵の勝利で戦いは決着した。

379 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 00:58:54.96 mdUBX5eL0 351/490

杉谷「なぜだ?」

うつ伏せになりながらも、首だけを見下ろしてくる半蔵へ向け尋ねる。
     
杉谷「なぜ“猛毒が塗ってあった”村正の一閃を受けて無事なんだ?」

質問に対して、半蔵はニヤリと笑い、

半蔵「そりゃあ、喰らってないからさ。あんな三文芝居を真に受けるとは、アンタの目も節穴だなと思ったよ」

杉谷「何だと!?では、村正にも猛毒が塗ってあったのを読んでいたとでも言うのか!?」

半蔵「ああ。そう言うことになるな。もしもあれが本当にただの刀だったら、俺がアホみたいになっていたけどな。
   まあそれはそれで恥をかくだけで、負けるわけではなかったからいいけど」

杉谷「なぜだ?なぜ猛毒が塗ってあるのが分かったー!?」

半蔵「しつこいな。そんなに知りたいなら教えてやるよ。アンタ、最初俺にこう言った。
   『この小太刀には猛毒が塗ってある。かすっただけでも致命傷だ』ってね」

杉谷「それが?」

半蔵「その時俺はこう思った。なぜわざわざその情報を教えたのか?ってね。
   だってそうだろ?そんな事教えて何になる?そこが腑に落ちなかった。
   誰だって真剣相手に、かするだけならセーフだから少々かすってもオーケー。
   なんて気持ちで戦う奴はいない。だから、かすっただけでも致命傷だ。なんてことを言う必要はない」

杉谷「……」

半蔵「じゃあ何で教えたのか?俺は戦いながらも考えた。
   さっきも言った通り、真剣相手にかすってもオーケーなんて戦い方はしない。
   でも心のどこかで、かするだけなら平気だと言う心理はあると思う。
   それを完全に失くし、心理的プレッシャーを与えると言う可能性はある。
   しかも、情報により小太刀に意識を集中させる事も出来る」

杉谷(こいつ……)

半蔵「でもやっぱり、教えるメリットと教えないメリットを照らし合わせた時、教えない方が良いと俺は思った。
   少なくとも俺なら教えない。重要な手の内は隠しておくのが勝負の鉄則だからな。
   すると最初の疑問に戻る。なぜ情報を俺に与えたのか?
   考えた結果俺が導き出した答えは、あえて情報を出すことで肝心な『何か』を隠しているんじゃないか。
   ということだ」

杉谷「それで村正のほうにも何かあると睨んだ訳か。それは分かった。だが一閃を喰らった事は確かなはずだ。
   現に村正の切っ先にはわずかに血が」

半蔵「それは血糊だよ。本当はかすってすらいなかったってわけさ」

言いながら、左手で左頬を拭う。すると切り傷は消えていた。

半蔵「備えあれば憂いなしってね」

杉谷「あの戦いの中で、血糊を村正の切っ先と自分の左頬にそれっぽくつけたというのか……」

半蔵「俺も忍者のはしくれなんでね。それぐらいはできるさ。あと、忍者は裏の裏の裏を読む者だぜ」

けどまあ、と一旦区切って、

半蔵「俺の勝因は忍であったからじゃない。アンタが卑怯者だったから勝てたのさ」

杉谷「完敗だ……」

380 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 01:00:00.42 mdUBX5eL0 352/490

半蔵(決まった……)

と、カッコつけていた半蔵の顎に、

「半蔵様のばかー!」

半蔵「ぐはっ!」

勢いよく飛びこんで来た郭の頭頂部がクリーンヒットした。

「私、本当に半蔵様が死んだと思って悲しかったんですからねー!」

うわぁぁぁぁああん!と胸で泣く郭の頭を撫でつつ、

半蔵「ま、まあ許してくれよ。敵を騙すにはまず味方からって言うじゃん?
   それにお前な、俺がそう簡単に死ぬわけないだろ?つーかお前こそ大丈夫か?」

「……じゃあ、キスしてくれたら許してあげます」

俺の発言無視かよ、と半蔵は思いつつも、

半蔵「それは無理だろ。状況考えろ」

「……じゃあ頭もう10回撫で撫でしてください」

半蔵「……分かったよ」

それぐらいなら仕方ないかと、頭を3回ほど撫でたところで、コホンと、闇咲のわざとらしい咳払いで半蔵の手は止まった。

闇咲「盛り上がっているところ悪いが、まずは脱出が先だ」

半蔵「も、勿論だぜ旦那」

「……帰ったら、撫で撫で100回ですからね!」

倒した大人3人を回収して、半蔵と郭は再び闇咲の魔道書内に待機。地下からの脱出を目指す。

381 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 01:01:29.40 mdUBX5eL0 353/490

一方、病院付近では、

「弱すぎるぜ」

背中まで届くボサボサの銀髪に、番外個体のようなライフセーバーの意匠をした白いスーツを着用している男が、
フィアンマ、ヴェント、結標、白井、絹旗、削板の6人を倒していた。
佐天、重福、吹寄、姫神、他能力者は魔道書で転送したためもういない。

絹旗(私達が……超ここまで……)

何も出来ずに倒されるなんて。

フィアンマ「貴様、彼女達に手を出してみろ。消し炭にするぞ……」

額から血を流し、異形の右腕を失い倒れているフィアンマがそんな事を言っても、味方目線でも説得力がないと感じる。

「うるせーな。弱い奴は粋がんな」

ヴェント「待って!彼に手を出したら絶対に許さないわよ!」

と言う彼女も、水平に広げた両手と束ねられた足を刀でビルに縫い付けられている。
簡単に言うと、ビルの壁に十字架のように磔にされている。これは他の女性陣も同様だ。

削板は背中を真一文字に切り裂かれ気絶している。そもそもあの重傷から戦う事自体無謀だったのに。

なぜ彼らはこんな状態になっているのか。それは今からわずか5分前から始まった。

382 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 01:02:04.33 mdUBX5eL0 354/490

とある病室の一室で、フィアンマ達は魔道書を用いて吹寄達を転送し終えた時だった。

絹旗「え?」

ふと窓の方を見た絹旗が、ビルぐらいの大きさの刀を振り上げている人間に気付いた。

絹旗「み、皆さん!外!超ヤバいです!」

絹旗の切羽詰まった突拍子もない発言に、全員が窓の外を見た時だった。

巨大な刀が振り下ろされ、病院が一撃で崩壊した。

383 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 01:04:08.67 mdUBX5eL0 355/490

「まあ、テレポーターが2人も居るんだから、それぐらい当然だよな」

ガラガラと音を立てて崩落していく病院を見つめながら、銀髪の男は呟く。

フィアンマ「何者だ?」

結標のテレポートで病院から脱出した6人(ただし白井は自分のテレポートで脱出)をフィアンマが代表して尋ねる。

「本来は名乗る必要などないが、知りたいなら教えてやるよ。篠宮嵐(しのみやらん)だ。覚えとけ」

ビル大の刀を振りまわしていたのは目の前の男に違いない。
だが不思議な事に、巨大な刀は忽然と消えていた。

絹旗「『らん』って、超どんな漢字ですか?花の蘭?『乱れる』の乱ですか?」

結標「今そこ聞く必要ある?」

若干呆れつつ、もっともな事を言う結標。しかし篠宮は、そんなどうでもいい問いにも答えた。

篠宮「嵐だよ」

絹旗「嵐で『らん』ですか?とんだDQNネームですね」

言ってから、しまった。と顔を青ざめる絹旗。

篠宮「よく言われる」

だが絹旗の心配は取り越し苦労で、篠宮は特に怒る事はなく、ニヤニヤしていただけだった。

ヴェント「下らない雑談している場合じゃないでしょ。目の前のコイツを――」

絹旗「超待って下さい。まだ聞きたい事があります」

回復魔術で多少は回復したとはいえ、まだまだボロボロのヴェントを絹旗は制止して、

絹旗「あなた、超操られているようには見えませんが、だとしたらなぜ食蜂の肩を持つような真似をしているのでしょうか?」

篠宮「んー、なんで俺が操られていないと決めつけているんだ?まあ確かに操られてはいないけどよ」

絹旗「だったら、超質問に答えてください」

ヴェント「ちょっと、そんな事聞いて何に――」

白井「お黙り下さい。絹旗さんにだって何か考えがあるはずですの」

今度は白井が制止した。

384 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 01:06:21.40 mdUBX5eL0 356/490

ヴェント「分かったわよ……」

ヴェントが渋々納得したところで、篠宮が口を開く。

篠宮「そうだな。何で食蜂に協力しているか。だろ?その答えはこうだ。食蜂の事を尊敬しているから、だよ」

その言葉に6人は驚きを隠せなかったが、絹旗は質問を続ける。

絹旗「何で、あんな超トチ狂った奴を尊敬なんて……」

篠宮「もっともな疑問だが、その答えはこうだ。狂っているから尊敬しているんだよ」

絹旗「……ますます意味が分かりません」

篠宮「言葉どおりの意味だ。俺は食蜂を心から尊敬している。だってよ。
   世界滅亡なんて馬鹿げた事を、15歳の女子高生がやろうとしているんだぜ?
   それってすごくねーか?一体どんな思考をしていたら、そんな結論に辿りつくんだ?ワケ分かんねーよ。
   俺は、そんな馬鹿なアイツが興味深くて仕方ねー」

目を輝かせながら語る彼に、絹旗は疑問と軽蔑の感情を抱く。

絹旗「あなたの発言から推測するに、あなたは食蜂が世界を超滅亡させる理由を知らないんですか?」

篠宮「知っている奴は知っているし、知らない奴は知らない。知らないのはごく少数だが、俺は知らない部類だ。
   一度洗脳された奴は、食蜂の考えも脳に残る筈だから、お前は分かってんじゃねーのか?」

絹旗「ええまあ、分かっているからこそ、理由を知らないくせに協力するあなたの神経を超疑っているんです」

篠宮「オイオイ待ってくれよ。その言い方だと、知っていて協力しているのならオーケーみたいな言い方じゃねーか。
   それは違うだろ。俺は自分が異常である事ぐらい自覚している。
   食蜂が世界を滅亡させる理由を知っていようが知らなかろうが、協力する時点で狂っている。
   知らないのに協力するから軽蔑ってのはおかしな話だ」

絹旗「そこまで自覚していて、なぜ?」

篠宮「何度も言わせんなよ。食蜂を尊敬しているからだ。さっきも言った通り、俺は自分が異常である事は自覚している。
   同感してもらうつもりもねー。ただ誰がどう思い考えようが、俺は俺の気持ちを曲げるつもりはねー」

だから、と篠宮は続けて、

篠宮「さっさとやろうぜ。話し合いなんて妥協案はナシだ」

ボゴォ!と篠宮の周囲の地面が突然凹んだ。と同時に、彼の両手に刀が握られた。

篠宮「もっとも、お前らが食蜂に協力するってーなら、戦う理由は特にねーが」

ヴェント「やるしかないようね」

フィアンマ「だな」

削板「食蜂に協力なんて真似、誰がするか!」

篠宮「交渉決裂だな。じゃあ、戦闘開始だ!」

385 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 01:08:33.45 mdUBX5eL0 357/490

絹旗(くっ……)

出来れば話し合いで解決したかった。だが結局は戦うしかないのか。

フィアンマ、ヴェント、削板の3人は戦闘を開始したが、篠宮は一瞬で削板の背後に回り込み、
その背中を刀で真一文字に切り裂いた。つまり、一瞬で削板が戦闘不能にされた。

絹旗(やっぱり……)

どんな能力かは分からないが、ビルぐらいの超巨大な刀を振るっていたのは間違いなく彼だったのだ。
そんな彼が弱いはずがない。それどころか、今までのレベル5とは次元が違う、一線を画しているだろう。
だから話し合いで解決したかった。
ついつい名前に反応してしまったり、考え方に同意できず生意気な口も聞いてしまったが、彼は意外にも紳士的に返答してくれた。
でも無理だ。穏便に済ませようとしたが、彼は絶対に折れない。

絹旗(倒すしかないんですか……)

そんな事を考えている間にも、フィアンマの右腕が肩口から切り裂かれた。
その光景に悲鳴を上げる絹旗以外の女性陣。
さらにその内の1人ヴェントが、篠宮にビルの壁まで追いやられ、広げた両手と気をつけのように揃った両足に刀を突き立てられた。
つまり、ビルの壁に十字架に磔られた。

篠宮「これで3人」

呟きながら、篠宮の視線は絹旗に向けられる。

結標「ちょっと、何ぼーっとしているのよ!あなた標的(ターゲット)にされて――」

篠宮「テレポートされる前にやっときますか!」

一体どんな能力なのか。篠宮は一瞬で絹旗の背後に回り込み、刀を水平に振るった。
本来なら刀の一撃など窒素の装甲の前には無に等しいが、この男は何か違う。
避けなければならないと本能が謳っているが、刀のスイングがあまりにも速すぎた。

刀の一撃を脇腹に喰らった絹旗は、結標と白井のテレポートでの助けすら間に合わず真横に数十mぶっ飛ばされた。

白井「絹旗さん!」

絹旗「が、ああ……」

痛む脇腹からは、多少ながらも血が流れていた。それは異常なことだ。
ただの刀の一撃程度では吹き飛ばされる事はあっても、喰い込み切り傷になることなどあり得ない。
やはり自分の本能は間違っていなかった。次からは何が何でも避けなければ。

386 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 01:10:10.69 mdUBX5eL0 358/490

篠宮「他人の心配している暇はないと思うぜ?」

吹き飛ばされた絹旗の方を見ていた白井に、篠宮の手に握られていた拳銃の銃口が向けられる。

絹旗(――あれは一体どこから!?)

絹旗の疑問は解決する訳もなく、拳銃の引き金が引かれた。
白井はギリギリでそれに気付いて、テレポートを実行して弾丸を避けるが、

篠宮「おせーよ」

白井「あふっ!」

テレポートが完了した直後には、篠宮に肉迫されて首筋にチョップをお見舞いされ気絶した。
それだけに留まらず、気絶した彼女を手際よくヴェントの隣に、彼女と同様に磔にする。

結標「彼女達を解放しなさい!」

結標の怒号と共に、篠宮の真上に病院の巨大な瓦礫がテレポートされるが、

篠宮「無駄だぜ」

篠宮は何のアクションもしなかったし、モーションもなかった。
にもかかわらず、巨大な瓦礫は跡形もなく消滅した。

結標「な――」

結標が驚愕している間に、篠宮は彼女に向かって鎖を投げつけた。
2人の距離は優に30mはあり、『座標移動』を駆使する結標には本来なら十分すぎる距離だが、
凄まじい速度で飛来するそれは、結標がテレポートを実行する前に彼女の体に巻き付いた。

篠宮「おらよ!」

結標「きゃっ!」

グイッと、篠宮は鎖を思い切り引っ張って磔にされている白井の隣へ叩きつける。
その衝撃で悶える結標の体の鎖を解き、ヴェント、白井と同様に刀で磔にした。

387 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 01:11:49.20 mdUBX5eL0 359/490

篠宮「お前が青葉のお気に入りか。
   なるほど、こうやって改めて見ると確かに別嬪さんではあるが、いかんせん気が強そうな顔しているな」

結標「ジロジロ見ないでよ。虫酸が走るわ」

篠宮「この状況でその台詞が吐けるとはなー。気は『強そう』じゃなくて『強い』んだな。
   まあ、それぐらいのメンタルないとレベル5第1位になんてなれねーよな。
   ましてや、繊細な演算を必要とするテレポーターなら尚更だ」

結標「グチグチうっさいわよ。ていうか『青葉のお気に入り』って何よ?」

篠宮「はあ?お前――」

とそこで篠宮は振り向いて、絹旗の拳を受け止めた。

篠宮「会話の邪魔はするもんじゃねーぜ?お嬢ちゃん?」

結標(やっぱり気付かれた……!)

不快に顔を歪める結標だったが、それ以上に拳を受け止められた絹旗は焦っていた。

絹旗(纏っていた窒素が……解かれた!?)

一体全体どんな能力なのか?
ビル大の刀から、拳銃や鎖をどこからともなく出したかと思えば、気付いた時には消失している。
そして今、纏っていた窒素を解除された。いや、解除とも言い難い感じがするが、解除と言う以外の表現方法が今は思いつかない。
何より異質なのが、テレポーターですら反応出来ないほどの移動速度だ。
とまあ結局は、

絹旗(私じゃ……超勝てない)

最初から力の差は歴然だと思っていたから、今殴りかかったのも捨て身に近かったが、こうも無力だと情けなくなる。

篠宮「これで最後だな」

抵抗する気がない絹旗も、容赦なく3人の女子と同様に結標の隣に磔にされた。纏っていた窒素の装甲を解除されて、だ。

6人の男女は、1人の男に5分で壊滅させられた。

388 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 01:14:27.90 mdUBX5eL0 360/490

そして磔にされてから30秒。篠宮は粋がるフィアンマとヴェントを交互に見て、

篠宮「君達の庇い合いの精神は素晴らしいな。安心しろよ。俺は別に、お前らを殺そうなんて微塵も思っちゃいねーよ」

ただ、と篠宮は絹旗の方を見ながら、

篠宮「俺も溜まっているものは溜まっているんだよねー。ほら、俺高2で思春期バリバリの性欲爆発じゃん?
   だから、お前らで発散しちゃっていいかなー?」

いいかなーって、良いわけねーだろ。つーか何が性欲爆発じゃん?だよ。
100回死ね。と絹旗は心の中で毒づく。
とは言え実際問題、磔にされている絹旗とそれ以外の女子、右腕を失ったフィアンマ、気絶している削板に彼を止める術はない。

絹旗「嫌……超止めてください……」

篠宮「あらら。元暗部の絹旗最愛ちゃんも、しおらしくするとまあ可愛い事。こりゃあもう、やるっきゃねーでしょ」

独自の理論を展開しながら、肌を傷つけないように絹旗のジャージやその下のシャツをナイフで裂いていく。
綺麗な白めの肌が露になっていく。

結標「ちょっと!能力があるでしょ!何されるがままになっているのよ!」

そう言われても、能力はさっきから解いていないのに強制解除されるのだからどうしようもない。

白井(何とか脱出して……絹旗さんを……まだ借りを返していませんの……)

白井はテレポートで脱出を試みようとするが、両手両足を刀で貫かれている。
演算に集中など出来るはずもない。結標も同様だ。

篠宮「へへ……」

絹旗(……)

もうなんか、どうでもよくなった。
絹旗は目の前のケダモノを呆然と眺めながら、諦めた。

6対1とはいえ、相手は万全。
こちら側は魔術師に敗北したと言うボロボロの3人、自分は2度敗北し疲労も蓄積。
白井も今までの疲労と黒夜に殴られたダメージが、結標も脇腹を撃たれたと聞く。
こんな6人が戦う事自体間違っていたのだ。

篠宮「ブラジャーって、胸がどれだけ小さくてもある程度の歳になるとつけるもんなのな」

呟きながら、絹旗のブラジャーを外した。そしてその小ぶりな胸を撫でまわす。

389 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 01:16:00.12 mdUBX5eL0 361/490

結標「ちょっと!止めなさいよ変態!」

白井(絹旗さん……!)

ヴェント「こんの……」

フィアンマ「や……めろ……」

当然、篠宮は手を止める事もなく、絹旗も何の反応も示さない。

篠宮「んだよマグロかよ。演技でもいいから、多少は喘いでくれないと興奮しねーんだけど」

言いながら、手の動きを大きく速くする。時折揉んだりもしながら。

絹旗「……」

それでも無反応かつされるがままの絹旗は、ある事を忘れている。
この戦いは、彼らだけで行われているのではない事を。
そして、とある約束をしてくれた人間がいると言う事を。

篠宮の手の動きが止まった。それだけではない。
彼以外の5人の視線も、あるところに釘づけにされている。

篠宮「ヒーローのご到着ってか」

篠宮は引き裂くような笑みを浮かべながら、ゆっくりと振り向いた。
5人の視線が向かう先、倒れている削板の隣に立っていたのは、

絹旗「あくせられーた……」

一方通行「遅くなって済まなかったなァ」

真っ白で、赤い瞳の少年が降臨した。

390 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 01:18:05.63 mdUBX5eL0 362/490

篠宮「カッコつけて登場した割には、随分とボロボロじゃねーか」

篠宮の言う通り、今の一方通行はボロボロだった。
長点上機の紺碧の制服はところどころ破け、赤いネクタイはどっかにいってしまっている。
何より、制服の左腕部分は完全に消し飛んでいて血まみれだった。おそらく動かすのも辛いだろう。

一方通行「ちょっと強敵とドンパチしたンでな」

フィアンマ「あの化け物相手に勝利したのか……」

一方通行「オマエらは、ドチビの幼児体型に欲情する変態ロリコン1人すら倒せなかったよォだな」

ヴェント「手厳しいわね。彼、意外と強くてね……」

篠宮「ちょっと待ってくれ一方通行さんよ。お前だって、フレメアとかいう幼女と暮らしているだろ。
   お前にロリコン呼ばわりされる筋合いはねーぜ?」

一方通行「俺はオマエと違って幼児体型に欲情しねェ。一緒にすンな変態クソ野郎」

篠宮「じゃあ反論二。俺はまだ高校2年生です。3、4歳年下の女の子に欲情することのどこがいけないのでしょーか?
   おっさんが欲情するのとはわけが違うと思うのですが」

一方通行「決まってンだろ。オマエが気持ち悪ィからだ。そもそも、ドチビだって嫌がってンじゃねェか」

篠宮「にゃーるほど。はは。噂通り、ムカつく野郎だ」

一方通行「よく言われる」

バゴォ!と地面を蹴って最初に動いたのは一方通行。
ベクトルの力が乗った拳を握りしめて篠宮へ特攻して行く。

絹旗(完全に不意を突きました!)

真正面からとは言え、超速度の一方通行は到底避けられも防げもしない。
いくら篠宮が詳細不明の強力な能力者と言えど、これで終わりだ。
絹旗は純粋にそう思ったが、

ヒュン!と空気を切り裂く音だけを残して、篠宮の姿が消えた。

一方通行「!」

絹旗(は――)

テレポートなどではなく、純粋にスピードで一方通行の突進を避けた。
その事実に絹旗はもちろん、一方通行もわずかに目を見開くが、彼の狙いは最初から篠宮ではなかった。

ズブリと、一方通行の右手が絹旗達の磔にされているビルの壁にめりこんだ。
直後に、ピキピキと音を立てて壁数cmが崩れ落ちた。つまり、磔にされている絹旗達の解放。

391 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 01:20:19.79 mdUBX5eL0 363/490

一方通行「どうせオマエらは両手両足を潰された役立たずだ。邪魔だから、魔道書とやらで転送されろ」

ヴェント「……悔しいけど、そうするしかないみたいね」

篠宮「待てよ。野郎はどうでもいいが、女どもは逃がさない」

ストンと、上から落ちてきた刀がヴェントの腰につけていた魔道書を貫いた。貫かれた魔道書は燃えて消えた。

一方通行(どうやって上から!?)

一方通行は一時も篠宮から目を離していない。彼は怪しい動きは一切していなかった。
なのになぜ?

一方通行(考えていても仕方ねェ。どンな能力かは知らねェが倒せばお終いだ!)

ギャン!と凄まじい速度で再び突っ込む一方通行。
対して篠宮は、ロボットの拳のようなものを纏いクロスカウンターの拳を放つ。

バギャア!と、ロボットのような拳は砕け、一方通行は殴り飛ばされた。

絹旗(な!?あの一方通行が……)

篠宮「今のトリックは極めて単純」

驚愕する絹旗をよそに、篠宮が語りだす。

篠宮「木原神拳をやったまでの事。もちろん、これは常人に出来る業じゃない。
   引き戻すタイミングを少しでもミスれば、ダメージを与える事が出来たとしても、こっちもそれ以上のダメージさ」

け・れ・ど、と篠宮は嬉しそうに、

篠宮「それは生身の話。俺みたいに別のモノで代用すれば無問題(モーマンタイ)。
   消耗していくのは一方通行だけって話だ」

一方通行「へェ。何でそれをペラペラ語っちまうのかが、理解不能だがな」

一方通行は何とか立ち上がりながら、もっともな事を言う。

篠宮「いやいや、一方通行さんのことだから、そんなことすぐ看破するでしょ?
   それに、俺は無駄な戦いは嫌いなんだ。今の理論を聞いて、諦めてくれれば万々歳なんだけど」

一方通行「悪ィな。俺ァ意外と諦め悪い方なンだ」

篠宮「俺は何も殺人を犯すわけじゃねーんだ。ちょっと性欲処理したいだけなんだよ。邪魔しないでほしいな」

一方通行「嫌がる女を無理矢理犯すのも、強姦という罪だが?」

篠宮「これからメロメロにするからいいの」

一方通行「残念だが、それは叶わねェと思うぜ」

篠宮「いや、俺のテクを――」

一方通行「そうじゃねェよ。物理的にだ」

篠宮「は?」

とそこで篠宮はようやく気付いた。
フィアンマと削板が持っていた魔道書に、彼女達が回収されて行くのを。

篠宮「させるか!」

一方通行「こっちの台詞だ!」

転がっている魔道書を処理する為に、篠宮は刀を振り下ろす。
どうにかして防ごうとする一方通行は、刀と魔道書の間に割り込み白刃取りを決める。
が、どう言う訳か魔道書は燃えだした。つまり何らかの方法で魔道書が傷つけられ機能を失ったのだ。

392 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 01:21:52.46 mdUBX5eL0 364/490

一方通行「クソが!」

白刃取りしていた刀を潰して右手を伸ばすが、篠宮は後退することで避ける。

篠宮「へっ。何とか2人は残しておけたか」

一方通行「クソが……」

魔道書についていくつか聞いていたことがある。
魔道書はとある場所に繋がっていて、そこに転送されると言う事。
何冊かある魔道書は別の魔道書とリンクしていて、中を自由に行き来できると言う事。
魔道書の中には、武器などを収納する事も出来ると言う事。
魔道書が壊れれば、その時中に入っているモノも壊れると言う事。

しかし、まだ分からない事もたくさんある。
たとえば、回収の最中に何らかの手段で魔道書を破壊されたらどうなるのか。

結標「救いようのない変態ね……」

絹旗「超全くです……」

絹旗と結標の2人の回収がキャンセルされた。

一方通行(まァ、死ななかっただけマシかもしれねェが……)

さすがに2人を庇いながら戦う余裕はない。彼女達でどうにかしてくれないと。

一方通行「結標。意地でもテレポートしてここから離れろ……」

結標「分かっているわよ……けれど、まだ無理みたい……」

篠宮「もう諦めたら?俺もさ、ボロボロの相手痛めつける趣味ないし、寧ろ心苦しいし」

一方通行「じゃあ死ねよ。そしたら心苦しさからも解放されるぜ」

篠宮「極論にも程があるぜ」

鋭い眼光で睨む一方通行に対して、篠宮は余裕を崩さない。

393 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 01:23:05.79 mdUBX5eL0 365/490

一方通行「……」

篠宮「もう限界なんだろ一方通行?そりゃそうだ。元々お前は能力頼りの貧弱なモヤシ。
   ちょっと修行して体術と体力つけたみたいだけど、トライアスロンより過酷なこの戦いを乗り切るには不十分だよなぁ」

篠宮の言う通りだった。所詮一方通行は根本的なところではまだまだ貧弱だ。
活発な部類の上条や御坂ですら辟易しているのだから、なおさらだ。

一方通行(それでも、諦める訳には……)

ここまでどれだけ頑張っても、結果が伴わなければ意味はない。
ここまでは守ることに成功してきたとしても、ここで守り切れなければ意味はない。

篠宮「目が死んでねーな。仕方ねー」

瞬きよりも早い速度で一方通行の懐に潜り込んだ篠宮は、彼の腹部に膝蹴りを叩きこんだ。

一方通行「ごふぁ!」

篠宮「もう分かっただろ。お前じゃ俺には勝てねーんだよ。相性が悪すぎる」

絹旗「一体どんな能力なんですか!」

跪く一方通行を見下ろす篠宮に、絹旗は時間稼ぎの目的で尋ねる。

篠宮「そうだなあ。能力の詳細教えたら諦めてくれるかもしれねーし、教えてやるか」

そうして篠宮が語りだす。

394 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 01:25:22.40 mdUBX5eL0 366/490

篠宮「俺の能力は、生命以外のあらゆる物質を分解、再構成する。簡単に言うと、物質を別の物質に変換させる事が出来る」

絹旗「いまいちピンときません」

篠宮「だろうな。では、今から実演してみようか。俺の足下を見てみな」

言われた通り、絹旗は篠宮の足下を見る。
すると突然、彼の足下の地面がへこみ、代わりに彼の手に刀が握られた。

篠宮「今、地面の一部を分解して刀の形に再構成した。ちなみに、分解しっぱなしって言うのも出来る」

絹旗「それで刀や拳銃や鎖を出したかと思えば、超消失させる事も出来たんですね」

篠宮「そういうこと」

結標「でもそれじゃあ、とんでもない速度で移動していた事の説明はつかない」

篠宮「それは俺が今着ているピッチリスーツによるんなーこれが。
   このスーツはノーリスクで着用している者の運動能力を飛躍的にあげる。
   科学技術の産物じゃなく、俺の能力で作られたモノだ」

結標「あなた、空中で方向転換もしていたわよ?」

篠宮「それは空中で空気を蹴っただけの話。だからまあ、いろいろ多機能なスーツなのよ。俺の最高傑作だからな」

絹旗「そんなことまで……」

にわかに信じがたい話だが、実際に篠宮は瞬速と呼べるほどの速度で移動している。

結標「この世の物理や原理では、有り得ないモノも創造できるってわけ?」

篠宮「まあ、そうだな。俺の妄想をある程度は具現化できるかな。
   もちろん制限はある。たとえば、小石から巨大な斧に変換させる事は不可能だ。
   質量が違いすぎるからな。そこは等価交換ってわけさ」

絹旗「ですが、コンクリートの地面から金属である刀に超変換したじゃないですか。それはどういうことですか?」

篠宮「だから物質を別の物質に変えられるんだから、卑金属を貴金属に換えることぐらいは出来るんだよ。
   いわゆる錬金術と同じだ」

結標「それじゃあ、貴方はどうやって倒すの?」

篠宮「大多数の能力者と同じだよ。能力切れまで粘るとかさ。
   まあ俺はそう簡単にバテねーし、言うならば、この大地全てが俺の能力の源だからな。あと他の方法と言えば――」

篠宮の言葉は最後まで続かなかった。
一方通行が生み出した突風により、数百mほど吹き飛ばされたからだ。

395 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 01:27:10.07 mdUBX5eL0 367/490

篠宮「おいおい、人が話しているところを妨害するかねフツー」

にもかかわらず、篠宮はケロッとして一瞬で一方通行達の前に戻ってきた。

絹旗「超無傷……だと……」

篠宮「このスーツ、強度も半端なかったりするんだなーこれが」

結標「それじゃあ無敵じゃない……」

篠宮「随分と弱気だな。さっきまでのサドっぷりはどこいった?あるじゃねーか。お前のテレポートって言う方法も。
   もちろん、座標攻撃ごときに捉えられるつもりはねーけどな」

結標「くっ……」

歯噛みする結標をよそに、一方通行が口を開く。

一方通行「まだあるだろ。オマエ、エネルギーは変換できねェだろ」

篠宮「御名答。炎とか電気とか、エネルギーの類は変換できない」

絹旗「待って下さい。私の『窒素装甲』が解除されたのは――」

篠宮「だ・か・ら、物質を別の物質に変換できるって言っているだろ。窒素を刀に変換するのなんて訳ねーんだよ」

絹旗「ぐぬぬ……」

一方通行「要するによォ、オマエの能力は垣根帝督君の『未元物質』の下位互換って訳だ」

篠宮「ま、そこは否定しねーよ。だから、下剋上だ」

篠宮の右手に刀が握られた。
と絹旗、結標、一方通行の3人が認識した時は、一方通行の脇腹に切り傷が入っていた。
もっとも、刀も砕けたが。

篠宮「作り直せばいいだけの話なんですけどね」

再び篠宮の手に刀が握られた。このままではまずい。
かと言って、瞬速の篠宮を目で見て反応することはできない。

一方通行(ただ一つ確定している事がある)

それはこちらへ突っ込んでくる事。
ならば話は簡単。地面を思い切り踏みつけて周囲に衝撃波をぶちまける。
そしてそれを実行しようと、右足を少し上げて下ろすが、

ボゴォ!と一方通行の足下の地面が10cmほど消失した。
つまり一方通行の足は空を切り、彼は前のめりになる。

その隙に篠宮は一方通行に斬りかかった。
ベギャア!と刀は粉々に砕けたが、一方通行の左肩にも傷が入った。

396 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 01:28:14.36 mdUBX5eL0 368/490

絹旗「能力を応用して、足下の地面を消失させた……」

篠宮「一気に決めるぜ」

左肩に強力な一撃をもらいフラつく一方通行に、ここぞとばかりにたたみかける。
周囲の大地を刀に変換しては斬りかかり、砕けてもまた変換して斬りかかり、徐々に一方通行にダメージを与えていく。

絹旗「このままじゃ一方通行が……」

死んでしまう。篠宮の速すぎるラッシュに、一方通行は反撃どころか避ける事も防御すらも出来ない。
一方通行を助けるためには。

絹旗「超待ってください!」

絹旗の声に、ぴたりと篠宮の刀を振る手が止まった。

絹旗「私が、超何でも言う事聞きますから……何でもしてあげますから……」

目尻に涙を溜めながら、

絹旗「これ以上一方通行を傷つけないでください!」

悲痛そうな声で、叫んだ。

結標「な、何言っているのよ!あなた、自分が何を言っているか――」

絹旗「分かっていますよ!けれど、一方通行を救うためには超仕方ないじゃないですか!」

一方通行「ふざけンな!俺はまだやれる!」

絹旗に情けをかけられた一方通行は憤慨する。

絹旗「超無理ですよ……だって、現にボロボロじゃないですか……嫌ですよ、私は……」

ポロポロと涙を流しながら、

絹旗「私のせいで……人が死ぬのは超嫌です!」

やっぱり悲痛そうな声だった。

397 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 01:29:38.58 mdUBX5eL0 369/490

篠宮「だとよ一方通行さん?彼女の意思を汲んであげれば?」

結標(私がテレポートできれば……)

絹旗「もういいですよ。一方通行は、私の事を十分守ってくれました。
   だから、もう大丈夫です。別に超死ぬわけではありませんし」

声は相変わらず悲痛そうだが、表情は笑顔だった。
ただし、これ以上にないくらい切なそうな。

篠宮「何でこんなモヤシが絶大な信頼をおかれているのか……つーか、そんなに俺が嫌かねぇ。結構イケメンだと思うんだけど」

結標「心が腐っているのよ、あなたはね」

篠宮「いやはや、異常者である事は分かっていたけど、心が腐っているとは思わなんだ」

結標「あなたに良心が残っているのなら、ここは全員を見逃すことね」

篠宮「それは無理な提案だ。一方通行はどうでもいいがお前ら女を逃す訳にはいかねー」

結標「私はあなたみたいな下衆な男は嫌だけど」

篠宮「何でお前みたいなやつに、青葉は惚れたのかねぇ。逆にお前も、何で青葉なんかに惚れたんだ?」

結標「はぁ?さっきから何を言っているのか――」

結標の言葉は最後まで続かなかった。
最後の力を振り絞った一方通行が、篠宮など目もくれず結標と絹旗を抱きかかえて飛び去ったからだ。

篠宮「逃がすかよ!」

一瞬遅れて篠宮も地面を蹴って跳び、背中にハンググライダーを出現させて飛行する。

絹旗「一方通行……どうして……」

一方通行「どうしてって……今の俺じゃあ勝てねェからな。逃げるしかねェだろ」

絹旗「そっちじゃなくて、私なんか見捨ててしまえば……」

一方通行「ふざけたことぬかしてンじゃねェよ。オマエに不快な思いは絶対にさせねェ。
     オマエに不快な思いさせるぐらいなら、死ンだ方がマシだ」

絹旗「どうして……私なんかのために……」

一方通行「約束したからに決まってンだろォが」

絹旗「だから、一方通行はそれを十分に――」

篠宮「お喋りはそこまでだ」

いつの間にか、ハンググライダーの篠宮が一方通行達に追いつき、手に持っていたバットを振り下ろした。

ゴッ!と一方通行を庇い殴られた絹旗は、地へ落ちていく。

398 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 01:31:14.29 mdUBX5eL0 370/490

篠宮「あーらら」

一方通行「クソが!」

気絶している絹旗は窒素の装甲を纏っていない。このまま落下すれば地面に叩きつけられて死ぬ。
一方通行は結標を抱えながら真下へ落下していく。

篠宮「競争だな!」

ハンググライダーを消失させ、空気を蹴って真下へ落下して行く。
そして一方通行と並ぶ。両者とも絹旗まであと数cm。

一方通行(届けェ!)

一方通行は必死に手を伸ばすが、篠宮の腕の方がわずかに一方通行より長かった。

篠宮「残念。俺の方が少し速かったみてーだな」

パシィ!と絹旗の手を掴んだのは、一方通行でも篠宮でもなく、結標だった。

結標「一方通行!」

一方通行「やるじゃねェか!」

ギャン!と空中で方向転換をして、一方通行は飛んでいく。

篠宮「ああうっぜーなもう!」

大気中の窒素を鎖に変換して、一方通行ではなく絹旗や結標を狙って放つ。篠宮の瞬速の攻撃は衰えていない。
2人の少女を抱え、なおかつボロボロの一方通行にそれを避ける術はなかった。

実にあっさりと、絹旗と結標に鎖が巻きついてしまった。両手が塞がっているため、鎖を引き裂く事は出来ない。
このまま引っ張り合うのは可能だが、そんな事をしては彼女達の体が引き裂かれてしまう。つまり八方塞がり。

一方通行(こうなったら一か八かだが)

彼女達と一緒に敢えて突っ込んでみるしかない。
他にも良策があったかもしれないが、今の一方通行にはそれしか思いつかなかった。

そして鎖に引っ張られると同時に、一方通行が発射された。彼は砲弾のような速度で篠宮へ向かって行く。

篠宮「そう来ると思ったよ。だから!」

鎖を手放し、両手で刀を持って振り下ろす。
バギャア!と刀は砕けるが、一方通行は地上へと落下していった。
反射はまだ死んでいない為、落下の衝撃は大したことなかったが、立ち上がる力はもはや残っていなかった。

399 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 01:33:04.52 mdUBX5eL0 371/490

篠宮「天下の一方通行もこの程度か。万全なコイツと戦いたかったぜ」

絹旗と結標を抱えながら着地した篠宮は、うつ伏せで倒れている一方通行を見下ろす。

一方通行「ここまで様々な刺客差し向けといて、よく言うぜ……」

篠宮「差し向けたのは俺じゃねーし、お前が今まで戦ってきた奴なんてゴミ同然だろ」

一方通行「だがこの戦いの1つ前、黒い長髪の男とやった時には出てこなかったじゃねェか」

篠宮「そりゃあまあ、見た感じ勝ち目なかったからな。なんたって玲緒が一瞬で潰されたんだ。
   誰だって死にたくはねーだろ?」

レオ、と言う聞きなれない単語。おそらく彼の仲間だろうと一方通行ら3人は推測する。

一方通行「ゲスが……」

結標「勝てる相手には徹底的に、勝てない相手には逃げる。本当、都合のいい男ね。反吐が出るわ」

鎖で拘束されている結標は、依然強気な発言をかます。
すると篠宮は、ずんずんと結標に近づいて行き、

篠宮「あのさー、お前調子こき過ぎだろ。だったらお前はどうなんだって話だよ。
   お前は弱者と強者を相手にする時、全く同じ態度で臨めるのか?
   圧倒的な強者相手にも、逃げずに立ち向かえるのか?」

髪の毛を引っ張りながら、若干イラついた様子で尋ねる。

結標「立ち向かうわよ。決まっているじゃない。この毒舌が証拠よ」

篠宮「違うな。お前が今余裕なのは傍観者だからだ。
   俺が手を出そうとした女は絹旗だし、実際に戦闘を行ったのは一方通行だ。
   果たして俺の行動の矛先がお前に向いた時――当事者になった時、お前は同じ態度がとれるかな?」

結標の鎖を分解する。霧ヶ丘の上着を絹旗に貸していた結標はTシャツ1枚にスカートのみ。
それを破く事など、篠宮にとっては造作もなかった。

結標「きゃっ……何するのよ!」

ブラジャーとパンティーだけの状態にされたにもかかわらず、結標は相変わらず強気だった。

篠宮「なるほどね……確かに、態度を変える気はない様だな。だけどそれは勇敢なんじゃなく、馬鹿なだけかな」

そうしてブラジャーに手をかけようとした、その時だった。横から飛来してきた水の竜が篠宮だけを飲み込んだ。

400 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 01:34:14.39 mdUBX5eL0 372/490

結標(これは……)

この攻撃は知っている。結標は竜が飛来してきた方向を見る。

青ピ「オイタがすぎるで。よくも僕の彼女に手出してくれたな」

本名不明の青髪ピアスが立っていた。

結標(そうか……)

考えてみれば当然のことだった。先程自分が脇腹を撃ち抜かれた時も、彼は心配していてくれていた。
彼は完全に食蜂側と言う訳ではないのだ。

篠宮「ようやくきたか青葉君。ところで食蜂の命令でもあったのか?何で仲間である俺を攻撃するのかな?」

水の竜に飲み込まれたはずの篠宮は、ケロリとした様子で青髪の前に戻ってきていた。

青ピ「君の身勝手な行動は迷惑でな。食蜂から命令があったわけではないけど、そろそろ粛清しとこうと思って」

篠宮「へー。じゃあやりますか」

仲間だと言うのに、あっさりと刀を構える篠宮。
青髪も水を周囲に渦巻かせる。とその時だった。

「その戦い、私達も混ぜて~」

「粛清されるのはテメーのほうだよ青葉」

青髪の少し後ろ。
長い緑色の髪の毛を後ろで束ねて、左手にはスケッチブックを持つペンキで汚れたツナギの少女と、
臙脂色の短髪に、真っ赤なライダースーツの男が佇んでいた。

401 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 01:35:56.52 mdUBX5eL0 373/490

青ピ「僕が?何で?」

「だってオイタがすぎるのは、大河君の方じゃない?」

「そーゆーこと。女如きに現を抜かしているオメーの方が目障りだっつーの」

言いながら、少女の方はスケッチブックを開き、男の方は掌から炎を灯らせる。

青ピ「君達2人は、人を好きになった事が無いんかな?大切な人が出来れば、僕の気持ちもわかってくれると思うけどなー」

篠宮「ちょい待ち。お前らなに勝手に話進めすぎ。青葉の相手は俺だ」

「粛清だって言っているでしょう?嵐君の言い分は聞かない方針で」

「そーゆーこと。なんなら、誰が青葉を一番に仕留められるか競争すっか!」

篠宮「黙れ野蛮人。つーかお前ら嘘ついているだろ?
   こんだけ身勝手な俺がお咎めなしなのに、青葉だけが言及されるってのは、おかしな話すぎる」

「バレちゃ仕方ねーな。そうだよ嘘だよ。けれど粛清はする」

篠宮「だからそれは俺の――」

口論はさらに激しさを増していく。
ぽかーんと、置いてきぼりにされる絹旗、結標、一方通行。
とそこで結標はハッとして、痛む足を動かしながら何とかこの戦場から絹旗と共に逃げようとする。

篠宮「あ、待ちやがれ!」

青ピ「させるか!」

「こっちの台詞だ!」

「男って本当野蛮」

結標に鎖を投げる篠宮に、その鎖を断ち切ろうとする青髪の人差し指からのウォターカッター、更にそれを妨害する男の炎。
カオスになってきた戦場と逃げる結標。そこへさらに、

土御門「にゃー。お前ら全員粛清だぜい」

突如結標達の前に土御門が現れ魔道書をかざした。
結局鎖はウォーターカッターに断ち切られ、そのウォーターカッターも炎で蒸発した。
つまり、それらの攻撃は一切結標達に届く事はなく、回収はあっさりと、滞りなく完了した。

402 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 01:37:16.38 mdUBX5eL0 374/490

土御門「さーて、あとは一方通行の回収だけだが」

「何で元春君がここに居るのかしら?」

土御門「全員粛清するって言ったが?」

篠宮「そりゃどう言う意味ですかー?」

土御門「『粛清』とは、厳しく取り締まって、不純・不正なものを除き、整え清めること。
    また不正や反対者を厳しく取り締まることだが?」

「そう言う事聞いているんじゃねーよ。馬鹿ですかオメーは?」

「いや彼の場合、皮肉でそう言っているのよ。馬鹿は君よ煉児君?」

「う、うるせーな!テメーから粛清してやろうか!」

「それは勘弁♡」

「可愛くねーぞ殺されてーのか?」

「勘弁って言っているでしょう。死にたくないわ」

「さいですか」

一方通行「オイ土御門。この奇想天外なバカどもとこの状況、
     何より洗脳されているはずのオマエが正気に見える理由を簡潔に説明しろ」

未だにうつ伏せ状態の一方通行は、偉そうに土御門に説明を要求する。

土御門「えー。これから退場する奴に説明とか面倒くさいんだけどにゃー」

一方通行「良いから説明しろ。あと俺の事を治療しろ。魔術とかで出来ンだろ?」

土御門「まあ反射を解いてくれればできるけど、それじゃあ隙だらけだし、お前には退場してもらう。
    けどまあ役者もまだ揃っていない事だし、説明してやるか」

わずかな笑みを浮かべながら、土御門は語りだす。

403 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 01:38:59.90 mdUBX5eL0 375/490

御坂「いっけぇぇぇえええええ!」

雷撃の龍。一撃で黒焦げにしてやるつもりで放ったそれは、

「温い」

御坂「ぐっ!?」

男が手を上から下に振り下ろした瞬間に、御坂と共に地面に叩きつけられ消滅した。

御坂(お、もい……重力を操る能力者か……?)

御坂の推測は当たっていて、彼女の前に立ち塞がった男――榊弦三郎(さかきげんざぶろう)は、
重力を操作して雷撃の龍を地面に叩きつけ、御坂をもひれ伏せさせたのだ。

「君ほどの頭脳ならこの状況、詰みという事実は既に理解しているね?」

御坂「くっそっ!」

うつ伏せの状態から無理矢理電撃を出すが、当然榊には届かない。

「見苦しいな。そのまま大人しくしていれば、そのまま放置しておこうと思っていたが、気が変わった。苦しめ」

クン、と体が軽くなった。瞬間、

御坂「かはっ!」

御坂は吐血した。理由は単純。体は急激な変化に耐えられない。
重力の負荷から突如解放されれば、体中の空気が膨らみ肺は破裂する。
それだけのお話。御坂はもはや戦うどころか、呼吸すら困難な状況に陥った。

御坂(……こんな)

こんな負け方あるか。激戦の末に力尽きた訳ではなく、一旦押し潰されて解放された。それだけ。
不完全燃焼も良いところだ。大体、自分の脳に未曾有の負荷をかけてまで自らの能力を強化したのに、
ここまで狂ったのに、食蜂以外にも届かない相手がいるというのか。

御坂(ふざけないでよ……)

まだだ。まだやれる。
この身が生命活動を完全に停止するまで、潰されるまで止まるわけにはいかない。

御坂「う、あああああ!」

ほとんど気合いだけで起き上がり、拳を固く握り締めて榊に突っ込む。

「ほう。そんなに死に急ぎたいなら、手向けてあげよう」

押し潰すのは簡単だったが、御坂の意気を認め、重力を集約した拳のクロスカウンターを放つ。

バッゴォン!と拳が顔面を叩いた凄まじい音が周囲に響き渡った。

404 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 01:39:54.84 mdUBX5eL0 376/490

「がはっ!」

殴られてぶっ飛んだのは榊の方だった。しかし殴ったのは御坂ではなく、

上条「大丈夫か御坂!」

戻ってきた上条当麻だった。

御坂「情けない話だけど……大丈夫じゃ……ないわね……」

上条「そっか。なら病院に――」

「私はまだ倒れていないぞ」

言葉通り、榊の重力が上条を襲った。強力な重圧を前に、上条は一旦膝をつくが、

上条(その程度で、抑えられると思ってんじゃねーぞ……!)

ミシリ、と骨が軋む音がするが、上条は構わず前へ突き進む。

「なるほど……!ならば、最大の重圧だ!」

ズシン!と上条にかかっている重圧が10倍増した。
それは常人ならば肉体が跡形もなくなるほどに潰れるほどで、『竜王』の力を纏っている上条ですらうつ伏せにさせられる。

上条「負けるかよ……!ぬ、おおおおおお……!」

それでも上条当麻は折れなかった。最大重圧の重力を撥ね退けて起き上がる!

「馬鹿な!」

上条「今度こそ終わりだ!」

ゴガァ!と上条の右拳が榊の顔面に深く突き刺さった。その一撃で、榊を昏倒させるには十分だった。

405 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 01:41:05.84 mdUBX5eL0 377/490

折原の周囲に紫色のエネルギーが渦巻いているのが視える。
となると、近距離戦は禁物だ。かといって遠距離戦なら良いと言う訳ではない。
おそらく彼女の能力は『歪曲』。硬度に関係なく万物を歪ませ曲げる。座標攻撃も可能だろう。
エネルギーをぶつければ何とか相殺はできるもしれないが、最低でも相殺まで。
こちらが勝る事はあり得ない。これらから導き出せる答えは、自分が不利だと言う事。

垣根「待て待て待ってくれ。お前は何で食蜂に協力しているんだ?それだけ教えろ」

折原「しつこいですね。それを知って何になると言うのですか?」

垣根「いいじゃねぇか答えろよ。お前だって蛇女殺すのに結構能力使っただろ?」

折原「確かに、先程の攻撃で私はだいぶ消耗しました。ですがそれは垣根様も同じ事。
   ここで私が話をして垣根様が回復しては本末転倒です」

垣根「それでもいいだろ。俺に素で勝てる自信があるんだろ?」

折原「……」

沈黙。垣根の頬に冷や汗が流れる。妙な緊張感が全身を駆け巡っている。
我ながら情けない話だが、ここは出来るのならば話し合いで解決したい。
必要とあらば、可能な範囲でこちらが妥協するつもりだ。
つくづく温い選択だとも思うが、食蜂戦が控えている事を考えると、そうも言っていられない。

折原「……いいでしょう。そこまで知りたいと仰るのなら、垣根様にとって益になるとは思えませんが教えます」

相変わらず抑揚のない声で折原は語りだした。

406 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 01:43:07.83 mdUBX5eL0 378/490

折原「私が食蜂様に協力する理由、でしたよね。その理由は、それが食蜂様のお望みだからです」

垣根「……食蜂の望みなら、何でも聞こうと思っているのか?たとえそれが世界の滅亡であろうとも」

折原「はい。食蜂様は私にとっては大切な人ですから」

垣根「大切な人の言う事なら、世界が滅亡しようが知ったこっちゃないってか?思考停止にもほどがあるな」

折原「では逆に聞きますが、垣根様は『心理定規』に『とある男に強姦された。殺してほしい』と頼まれても、
   その男を殺さないと言いきれますか?」

垣根「……殺しはしねぇよ。然るべき手段で痛い目は見てもらうけどな」

折原「若干間がありました。嘘ですね」

垣根「嘘じゃない」

折原「まあいいでしょう。
   もう少しだけ補足しておきますと、私は食蜂様のご命令だから動いていると言うのもありますが、考えにも同感しています」

垣根「イカれてんな」

折原「イカれてなどいませんよ。垣根様は一度たりとも抱いた事がないのですか?憎い、殺したいなどの負の感情を」

垣根「あるけど、世界滅亡なんてはっちゃけたことを考えた事はねぇよ?」

折原「負の感情を抱いたのなら、結局は世界滅亡と言う結論に至りますよ。
   なぜなら地球上に居る物心ついた人間達は、少なからず負の感情を抱くからです」

垣根「つまり、地球上に居る人間全員が憎しみ合うぐらいなら、いっそのこと滅亡しちまった方が良いと、そういうわけか?」

折原「簡単に言ってしまうと、そういうことです」

垣根「トンデモ超理論だな」

折原「簡単に言うと、と言いました。詳しく言うと長くなるので、結構省いています」

垣根「どんなプレゼンされても、俺は揺るがねぇよ」

折原「ですから話しても無駄だと言ったのに。では、やりましょうか」

垣根「いやいや待ってくれ。やっぱおかしいだろ。お前にとって食蜂が大切なのは分かった。俺もだよ。
   俺にも『心理定規』っていう、わりとうざいけど大切な人がいて護りたいと思う、温かい感情がある。
   人間負の感情だけじゃなくて、正の感情だって抱いているんだぞ?お前らに、それを奪う権利があるのか?」

折原「っ……」

折原が黙った。垣根はたたみかけるように言葉を紡ぐ。

垣根「ないだろ?俺はお前のことを感情の無いロボットみたいな奴だと思っていたが、そうじゃないんだろ?
   お前はまだ、そこで悩んでくれる良心ある人間なんだろ?だったら分かる筈だ。
   この世界を滅亡させるなんて事は間違っていることぐらい。今ならまだ間に合う。やり直そうぜ」

我ながらキャラじゃないことをやっているな、と垣根は少し笑えてきた。

407 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 01:45:34.52 mdUBX5eL0 379/490

折原「……無理ですよ」

しかし折原も簡単には折れない。でも見た感じ揺らいでいる。

垣根「無理じゃないさ。俺みたいなクズでもやり直せたんだ。
   お前がやり直せないわけがない。俺も協力するから」

折原「そうですか。では、世界滅亡に協力してください」

垣根「何でそうなるんだよ。世界滅亡させて何になるんだよ」

折原「世界滅亡の先がどうなるかなどどうでもいい事です。滅亡させることが大事なのですから」

垣根「……何たってお前は、そこまで強情なんだよ。どうしたら世界滅亡止めてくれる?」

折原「どうしたってやめませんよ。この世界は、滅亡するべきなのですから……」

垣根「そんなことないって。何度でも言ってやる。俺みたいなクズでもやり直せたんだ。
   この世界は、まだまだ捨てたものじゃ――」

折原「うるさいんですよ!この童貞野郎が!」

いきなり折原の感情が剥き出しになった。

折原「私の苦悩も知らないくせに、ゴチャゴチャ説教なんてしないでください!」

垣根に向かって手をかざす。攻撃の合図。
ただし先程とは違い、垣根だけでなく彼の周囲にも歪曲の渦を展開させる。
つまり、どこに跳ぼうが歪曲の力を受ける。

垣根(情緒不安定かよ……)

だから垣根は、自らの体を霊体化して歪曲の攻撃を通り抜けた。
しかし霊体化は能力を多大に消耗する為、諸刃の剣でもある。

折原「私だって頑張りましたよ!『置き去り』だった私は、実験で研究所をたらい回しにされて、死んだように生きて!」

歪曲のエネルギーを丸鋸状にして放つ。数は2個。

垣根「とりあえず落ち着けって!(あれなら霊体化せずとも普通に避けられるな……)」

霊体化を一旦解除して、丸鋸の歪曲エネルギーを避ける。
しかし避けた数秒後、その歪曲エネルギーが方向転換をして再び垣根に襲い掛かる。

垣根(追尾機能まであるのかよ……)

実は追尾機能はなく、放った攻撃を折原が操っているだけなのだが垣根には知る由もない。
追い討ちをかけるように、折原は歪曲の丸鋸をさらに4個放つ。

垣根(こうなったら――)

6枚の翼で、歪曲の丸鋸を受けて立った。ベギャア!と翼と歪曲は相殺だった。

折原「そんな中、食蜂様だけが私の苦悩を分かってくださった!
   私ごときを、食蜂様は心の中に留まらせてくれた!食蜂様は私に生きる意味を与えてくれた!」

直径30m、長さは100mの超巨大な歪曲の槍を生み出して放つ。

垣根(これは霊体化するしか……)

ゴッシャアアアアア!と歪曲の槍はあらゆるものを破壊したが、垣根だけは殺せなかった。

折原「この世界は食蜂様だけで良いんだよ!クソみたいな科学者達も!
   私を助けてくれなかった住人達も!テメェみてぇな粗チン野郎も!皆死んじまえばいい!」

右手から歪曲の竜巻を放つ。放ちながらそれを動かして、鞭のようにしならせる。

垣根(キャラ崩壊と言い、攻撃方法と言い、冗談だろ!?)

霊体化に頼る以外どうしようもない。ゴギャギャギャギャ!と周囲のもの何もかもを破壊していく。
当然そんな大規模攻撃10秒と持たなかったが、折原を中心に半径1kmを更地と化すのには、十分な時間だった。

408 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 01:49:03.19 mdUBX5eL0 380/490

折原「はぁ、はぁ」

垣根「ふー、ふー」

両者とも肩で息をしていた。同時に能力も切れていた。

垣根「結局は、お前の恨みが本音じゃねぇか……」

折原「うるさいです……」

能力が切れて血が上った頭が少し冷やされたのか、折原の言葉遣いは元に戻りつつあった。

垣根「お前の気持ちはよく分かるよ。
   つーか暗部に堕ちた高位能力者なら、共感できる事だろうな……けどよ、俺らは這いあがったぞ。
   お前は所詮、自分の不幸な境遇に甘えているだけじゃねぇか」

折原「そんな事分かっていますよ。でも仕方ないじゃないですか。私は私なりに頑張りましたもん。
   それでも、私は誰にも認めてもらえなかった。その時、食蜂様が甘えさせてくれた。そして仰ってくれた。
   こんな腐った世の中、滅ぼしてしまおう。と」

大体、と折原は続けて、

折原「垣根様達は私よりちょっと精神が強くて運が良かっただけです。知ったような口を利かないでほしいですね」

垣根「そうかもな……じゃあさ、俺と友達になってくれよ」

折原「は?」

言っている意味が分からない。どういう風に考えていくと、そのような結論に至るのか。

垣根「だってそうだろ?お前は誰からも認めてもらえなかった。それが悔しかったんだろ?だったら、俺が認めてやるよ。
   だから、こんな事はもう止めよう」

垣根はゆっくりと歩き出して、折原に近付いて行く。

折原「……そんな事で、私が今更止まるとでも?」

垣根「そんな事だと?お前はそのそんな事のために、世界を滅ぼそうとしているんだろうが」

折原「くっ……」

折原は言葉を詰まらせる。垣根はなおも歩きながら語り続ける。

垣根「お前の言う通り、俺らは運が良かっただけかもしれない。俺達は団体で行動していたからな。
   仕事仲間にすぎなかったとは言え、人との繋がりはあった。でもお前は何らかの理由でそれすら無かったんだろう。
   たとえば、当時はそこまで強い能力者ではなく使いものにならなかったとか、かな」

折原「まるで私の成長を見守ってきたような言い草ですね」

垣根「当たっていたのか。まあ伊達に闇にいたわけじゃねぇからな。
   それで、食蜂がお前の苦悩にいち早く気付き、地獄の底から拾い上げてくれた。って感じなのかな」

折原「そうですよ仰るとおりですよ。そこまで分かっているのだから、私を止める理由などないでしょう」

垣根「何でそうなるかな。恨むのは勝手だけど、実行に移されたら困るっつーの。お前常盤台の生徒の割には頭悪いな」

折原「頭の良し悪しなど関係ありません。私はこの理不尽な世界を――」

垣根「だから!」

喰い気味に折原の発言を遮ってまで、垣根は続ける。

垣根「俺が友達になって、お前を認める。そして見せてやるよ。この世界には、まだまだ救いがあるってことをな」

折原の前に辿り着いた垣根は、彼女の頭に手を置いて撫でまわした。

409 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 01:50:49.42 mdUBX5eL0 381/490

折原「……どうして?」

垣根「あ?」

折原「どうして私にそんな優しく出来るのですか……酷い事も言ったし、殺そうともしたのに……」

垣根「……友達だからだよ。それでいいだろ」

折原「私は、食蜂様のご命令に……従わなければいけないのに……」

うわぁぁぁぁんと、折原は泣きだした。

きっと折原の頭の中はぐちゃぐちゃだったのだろう。
彼女が食蜂を尊敬しているのも本当だろうし、世界を恨んでいるのも本当だったから野望に加担したが、
心のどこかでそんな事間違っているとも思っていたのだろう。
そうでなければ、自分の発言に一々揺らいだりはしない。それでも心を鬼にして食蜂に従った。
悩むぐらいなら、いっそのこと滅んでしまえばいいとも思ったのかもしれない。

垣根(待てよ……仮に俺の考えている事が正しければ、食蜂は何でコイツを放っておいたんだ?)

食蜂の能力を持ってすれば、表面上は協力の姿勢を見せていても、深層心理では反感を持っている場合も看破できる筈だ。
だとするのなら、反逆の可能性を少しでも摘むために(折原の場合は忠誠心と反感を比べても
忠誠心の方が勝っていたからかもしれないが)完全に洗脳するべきではないか。少なくとも自分ならそうすると思う。

垣根(一体食蜂の奴は何を――)

垣根の思考はそこで途切れた。
ずぅぅぅーん、という重低音が脳内に響いたかと思えば、体から力が抜けた。
垣根と折原は膝をつかざるを得なかった。

410 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 01:55:59.69 mdUBX5eL0 382/490

垣根「これは一体……」

折原「やられました。あのクソアマ……」

と言った途端に、折原は完全に崩れ落ちた。

垣根「お、おい!」

体は相変わらず動かない為に、言葉だけで折原を呼び掛けるが反応は無かった。とその時、

東城「所詮は中学1年生か。豆腐メンタルも良いところね。簡単に諭されちゃって」

垣根の後ろに、東城瑠璃が立っていた。首すら動かない垣根は、そのまま尋ねる。

垣根「お前の仕業か?」

東城「何が?」

垣根「とぼけんな。コイツを昏倒させ、俺の体の自由を奪った事だ」

東城「ああそれね。まあそうね。だって垣根君が、私をないがしろにして綾香ごときに現をぬかしているから」

垣根「お前、その様子だと洗脳されてないな。何で食蜂なんかに協力している?」

東城「うーんと、結果的には協力していることになるのかもだけど、私はただ、自分がしたい事をしているだけだよ?」

垣根「何だと?」

東城「だってさ、一生って一度しかないんだよ?今この瞬間だって一度しかないんだよ?
   だったら、後悔しないように楽しい方を選択して生きて行くべきじゃない?」

垣根「世界滅亡が、楽しくて後悔しない選択をしていると言うのか?」

東城「そうは言ってないよ。さっきも言ったけど、それは結局であって、私は世界滅亡の為に動いている訳じゃなくて、
   自分の欲求に従って動いているだけだもの」

垣根「意味が分からねぇ」

東城「分からない?じゃあ分かりやすい言葉で言ってあげようか?
   私は垣根君の事が好き。この世界で誰よりも。私が今したい事。垣根君を手に入れる事だよ」

垣根「俺を手に入れるだと……」

東城「そうだよ」

垣根「こんな事はあまり言いたくないが、だとしたら何で食蜂サイドにいるんだよ?
   俺達サイドにつけば、好感度だって上がっていたかもしれないだろうが」

東城「それはあるけど、それじゃあ2人きりになれないじゃない?それにほら、操祈といたほうが何かと便利だし~」

何だこの女は。狂っている。食蜂の野望に共感した訳でもなく(そんな奴いるのかは定かではないが)、
折原のように忠誠心でもなく、ただ自分が楽な、楽しそうな方を選択する。どんな事を天秤にかけても、決め手は自分主体。
至極当たり前と言えば当たり前だが、世界滅亡と天秤にかけても自分優先の考え方。

垣根「そんな事の為に……食蜂サイドについたと言うのか……」

東城「そんな事の為?心外な言い方だなぁ。大好きな垣根君を手に入れるためだもの。これぐらいのことはするよ」

垣根「お前、この戦いでどれだけの人達の思いが利用され、傷つけられたと思ってんだ!
   俺を手に入れるなどと訳の分からない事をほざきやがって……」

東城「何を怒っているの?垣根君のキャラじゃないよ?
   それに私はここまで何もしていない、やったことと言えば綾香を気絶させて、垣根君の動きを止めたぐらいだよ?」

駄目だ。この女は本当に会話にならない。ただいくつか疑問がある。

垣根「だったら、俺のピンチ時はどうなんだよ。
   仮面20人とか、女どもとか、木原幻生あたりは雑魚だったが、那由他とか、蛇女とか、コイツとか。何で助けに来なかった?」

東城「それはねぇ、信じていたからだよ。垣根君が言った通り雑魚は雑魚だし、
   蛇女は綾香が仕留めるって言ってくれたし、私は出ずっぱるほどでもないかなー、って思って」

垣根「那由他とコイツの説明がなってないぞ」

東城「だから信じていたって言っているでしょ。あそこからでも那由他に勝てると思っていたし、
   綾香はいざとなったら私が止めるつもりでいたもの。それに結局垣根君は勝利した訳だしね」

垣根(とりあえずこの女が狂っている事は分かった)

だがこの状況、はっきり言ってどうしようもない。何かこの状況を打破する方法はないのか。

411 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 01:57:29.32 mdUBX5eL0 383/490

東城「かーきねくんっ♪」

悩んでいる垣根をよそに、長点上機の冬服を着用した東城が、彼の前に出て視線を合わせるためにしゃがんだ。
彼の前に倒れている折原を、当然のように踏みつけながら。

垣根「おいテメェ……!」

東城「うん?なぁーに?」

垣根「なぁーにじゃねぇよ。その女から足をどきやがれ……!」

東城「あっ、いっけなーい。こんなところに人間いたんだ。
   私ったらドジなんだからーっ。てへっ。障害物は避けないとね」

言うと東城は、一旦立ち上がって折原の脇腹を蹴飛ばした。そして再びしゃがむ。

東城「ほら、私ってさ、1つのモノに夢中になると周り見えなくなるタイプだから」

垣根(この女……)

発言と言い行動と言い、狂っているどころの騒ぎじゃない。イってしまっている。
頭のネジが100本は飛んでしまっている。

東城「これから2人で楽しいコトしようね。まずは接吻から……」

垣根「ふざけんな」

ぺっ、と垣根が吐いた唾は、見事に東城の顔面にヒットした。
これで少しは何かが変わるだろうと垣根は思ったが、東城は彼の予想を超えていく。
東城は顔面についた唾を滑らかな動きの人差し指で拭いとり、舐めながら、

東城「あはっ♡垣根君の唾おいしい♡でも唾液交換なら接吻でも出来るから、そんなことしなくてもいいんだよ?」

垣根(冗談だろ……)

色々ツッコみたいが、あまりの狂気を前に一種の恐怖すら感じる。この女といれば、こちらまで狂ってしまう。

東城「じゃあそろそろ……」

垣根(誰か……助けてくれ……)

我ながら情けない。肉体的でなく精神的に追い詰められてしまうとは。とにもかくにも、このままだとヤバい。
それでもどうしようもないから、垣根は目を閉じた。接吻の為でなく諦めの意味で。
そして2人の唇が重なり合うまであと数cmというところで、

一陣の風が、東城だけを吹き飛ばした。

412 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 01:59:12.58 mdUBX5eL0 384/490

東城「いったーい」

垣根(え?)

訳が分からないが、垣根は目を開けて東城の声のする方を見る。
彼女はお尻を撫でながら、ゆっくりと立ち上がるところだった。

垣根「一体何が……」

東城「人の恋路を邪魔する奴は、どうなるか分かっているのかな?」

何だ?東城は何を言っている?と戸惑う垣根の横に、折原を抱えている霧ヶ丘の冬服を纏った女子が立っていた。

風斬「人の恋路って、この男性は嫌がっているじゃないですか。
   そんな一方通行な気持ちの押し付けを邪魔して何がいけないんですか」

東城「知ったような口を利かないでくれる?これは私と垣根君の問題なの」

垣根「ちょっと待て。話が進んでいるようだけども、お前は誰だ?」

風斬「私は風斬氷華です。あなたの味方ですから安心してください」

突然現れた彼女の詳細を垣根は知らない。
だが事実として折原を抱えてくれているし、状況や東城の発言から鑑みるに、この少女が東城の魔の手から助けてくれたのだろう。
どの道体の自由が利かない垣根は、彼女に頼るしかなかった。

垣根「……そうか。じゃあ、あの女を任せてもいいか?」

風斬「はい。できることはするつもりです」

垣根「分かった。そのチビは俺に任せろ」

風斬「はい」

東城「潰す」

垣根が折原を預かり、復活の風斬が戦闘態勢に入る。
東城もどこからともなく出した神楽笛を唇にあてる。

413 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 02:02:47.49 mdUBX5eL0 385/490

土御門「さて、何から知りたい?」

一方通行「オマエが正気な理由から教えろ」

土御門「俺が正気な理由か。それは簡単。俺の義妹、舞夏が人質に取られた時点で洗脳を解かれたのさ。2日前の話だ」

一方通行「何でだ?別に洗脳は持続していた方が良いンじゃねェのか?
     わざわざ解除する理由は何だ?つーかさっき会った時、何で敵のように振る舞った?」

土御門「詳しい事は分からないが、おそらく性格の問題だろう。
    あえて俺を泳がせているんだよ。裏切るのも想定内でな。
    敵のように振る舞ったつもりはないけどにゃー。あの時はまだ舞夏を回収していなかったから。
    で、回収完了したから、堂々とここにきたわけだ」

相変わらず適当な奴だ、と一方通行は結論付けて次の質問に移る。

一方通行「じゃあこの状況は一体何なンだ。ゴチャゴチャすぎてよくわかんねェが」

土御門「そうだな。途中からこっちに来た一方通行は分からないか。そこに長い銀髪いるだろ?
    篠宮って言うんだけど、そいつが勝手に、フィアンマ、ヴェント、結標、絹旗、削板、白井その他諸々がいる
    この病院を襲撃した事が事の始まり。今挙げた人物は篠宮がどうしようとどうでもよかったのに、
    そこの青髪ピアス君が彼女である結標淡希ちゃんが傷つけられたのに激昂して、ここにきたわけよ」

篠宮「ったく、彼女傷つけられたぐらいで憤るなんて心狭いよな」

全く悪びれる様子がない篠宮を、青髪は無言で睨みつける。

土御門「で、篠宮をぶっ潰そうとやってきた青髪を粛清しようと、そこにいる緑髪の橘絵梨(たちばなえり)ちゃんと、
    真っ赤な髪の毛の不知火煉児(しらぬいれんじ)君がやってきたわけ。そして俺はそんな馬鹿どもを全員粛清しに来たわけ。
    オーケー?」

不知火「オイオイ土御門君よぉ。ぶっ潰されてーんですかぁ!?」

一方通行が返答する前に、ご立腹の不知火が掌から青い炎を灯らせる。

「まあまあ落ち着きなさいよ。元春君には何も出来ないわよ」

確かに、と一方通行は思う。彼は元々レベル0の雑魚だったはず。
敢えて能力を失って魔術師として復活したとのたまっているが、それでもここにいる篠宮、そしてその篠宮を
粛清しようとする青髪、さらにそんな青髪を粛清しようとする不知火、橘に勝てるとは到底思えない。

土御門「そう思うのも無理ないな。俺は魔術師として返り咲いてから一度も戦闘をしていない。
    俺の実力を知らないのは当然だ。だから言っとくぞ。俺は垣根帝督より強い」

その場に居る全員が口裏を合わせている訳でもないのに「はぁ?」と漏らした。
だが土御門の顔は至って真面目だ。ハッタリとは思えないほどに。

不知火「オメーが垣根より上ってありえねーだろ。頭おかしーんじゃねーの?」

土御門「俺は『発火能力者』なのに、不知火、つまり火を知らず、のお前の名字の方がチャンチャラおかしいと思うがね」

不知火「何だと!」

「落ち着きなさいよ」

篠宮「まあそれは土御門の言う通りだな」

不知火「オメーから潰すか篠宮ぁ!」

篠宮「俺は一向に構わないぜ?」

「うまくのせられているんじゃないわよ。私達で争ってどうするの」

不知火「ちっ!」

篠宮「俺は乗せられている事を理解していて、受けて立っても良いって言っているんだけどな」

「煽りはよしなさいって」

もう少しで仲間割れと言うところで、橘がうまく丸めこんだ。

414 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 02:04:51.10 mdUBX5eL0 386/490

篠宮「そもそも、垣根より上かどうかが真実かどうかにかかわらずよー、一方通行より上の俺よりは、どっち道弱いじゃねーか」

青ピ「そうやな。それに4対1じゃいくら垣根君より強いとしても、勝ちの目は無いんやないの?」

不知火「何で4対1なんだよ。3対1対1だろーが」

「私、煉児君、嵐君の連合に、大河君、元春君と言う縮図ね」

青ピ「ああ、そうやな」

土御門「違うな。3対3だ」

不知火「3対3!?何を言ってやがる!?
    もしかして使い物にならない一方通行と敵である青葉を味方に引き込むとかかぁ!?」

土御門「半分は正解で半分は間違いだ。まあ答えはいずれ分かるとして、青髪、一旦仲間になれ。
    断れば、この魔道書を破壊する」

青ピ「それが何になると言うんや?勝手に破壊すれば――」

土御門「本当に良いのか?魔道書を破壊すれば、中の結標も死ぬことになるぞ」

青ピ「――!」

一方通行(そうか。その手があったか)

十中八九ハッタリだろう。
魔道書を破壊すれば中のモノも壊れるのは事実だが、それは収納していた時のみ。
転送が完了していれば、壊れるのは魔道書だけだ。
たとえ自分達の会話を盗聴していて、魔道書の情報を知っていたとしても、
今現在の魔道書の中がどうなっているかを窺い知る事は出来ない。
土御門は元暗部であり、やる時はやる男だ。たとえ元同僚であろうと、親友の彼女であろうと、利用するときは利用する。
それらを加味すると、青髪は土御門に逆らう事は出来ない。

青ピ「分かった……」

土御門「そんな深刻な顔すんなって。お前を粛清しようとするやつらを一緒に倒すだけなんだから」

青ピ「せやな……」

「でもでも、それだと3対2じゃない?
  半分正解っていうのは大河君の事だとして、半分不正解な訳だから、一方通行を使う訳じゃないでしょうし」

土御門「一方通行、反射切っとけよ」

橘などまるで無視して、一方通行に忠告した。

不知火「なんだなんだぁ!?3対2でやっちゃっていいんですかぁ!?」

うるせェなと思いつつ、一方通行は反射を切った。その直後だった。
左手に御坂を抱えた上条当麻が一方通行の隣に着地し、右手で拾い上げて跳び、土御門の隣に着地した。

415 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) - 2012/02/02 02:06:51.72 mdUBX5eL0 387/490

土御門「これで3対3だ」

一方通行「おい待て。何でオマエは当然のように土御門の隣に立つ?」

抱えられている一方通行は、上条に尋ねる。

上条「実はさっき土御門と会っていてさ。その時に洗脳されてない事は看破していたんだけど、土御門が口止めするからさ」

一方通行「どうして看破出来た?」

上条「『竜王』の力。説明は面倒くさいから省く」

一方通行「はァ?そンなンで――」

土御門「はいはい。お前はもう退場だ」

言いながら魔道書を開き、一方通行と御坂を回収した。
そして三馬鹿(デルタフォース)の集結。

土御門「さて、カミやんはあの銀髪を、青髪は不知火を頼む。俺は橘をやる」

上条「オーケー」

青ピ「仕方ないな」

篠宮「悪いけど、こちとらヒーローに花持たせるほど人間出来てないんでね」

「元春君か。退屈しそう」

不知火「順位的には俺の方が下だが、それも今日までだ。潰させてもらうぜ」

不知火が両手に炎を灯らせ、青髪が水を渦巻かせ、橘がスケッチブックをめくり、土御門が背中から紅蓮の翼を生やし、篠宮が刀を握り、上条が構える。
戦いもいよいよ終盤へ。


続き
食蜂「本っ当に退屈ね、この街は」【5】

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