関連
食蜂「本っ当に退屈ね、この街は」【1】
食蜂「本っ当に退屈ね、この街は」【2】

236 : SS寄稿... - 2011/12/30 08:32:15.07 BMIoR+No0 225/490

指示通り三沢塾に入った上条と、ニットセーターにジーンズの五和ペアを待ち受けていた者は、

「ようやく君をぶちのめす事が出来そうだよ」

「魔術対科学の戦争で『聖人崩し』を喰らったリベンジです」

真っ赤な髪に、右目の下にはバーコードというトンデモ神父ステイル=マグヌスと、
長い髪をポニーテールに括り、Tシャツに片方の裾を根元までぶった切ったジーンズ、
腰のウエスタンベルトには七天七刀という格好の神裂火織だった。

五和「プリエステスに……ステイルさんですか。おそらく、幻覚か何かでしょうね」

上条「そうかもしれないけど、もう1つ可能性がある」

五和「え?」

上条「目の前に居る2人が、それっぽい恰好をしただけの能力者だって可能性だ」

五和「ど、どう言う事でしょうか?」

上条「さっき五和を助けた時、俺の目の前には建宮がいた。でもそれっておかしいんだ。
   『竜王』の力を解放した俺の瞳は、幻術の類を見抜く。だから幻術で建宮に見えるってことは、まず無いんだ」

五和「つまり、髪型をクワガタのようにして、フランベルジェを持った能力者が建宮さんのように振る舞っていただけと言う事ですか?」

上条「そう言う事。体格さえ合えば、顔は特殊メイク、髪は染めれば、よく見ない限り見分けはつかないしな」

五和「なるほど」

上条「つっても、2mの男と180cmの女なんてそうはいない。
   『竜王』の力はまだ解放してないから、目の前に居るこいつらは幻術なのかもしれないけど」

五和「しかし、200万に大人の分の+αがいるわけですし、成りすまし説もあり得ますね」

上条「どの道、俺らがやる事に変わりはないけどな」

ステイル「不毛な会話はすんだかい?」

神裂「空気を読んで待っていましたが、そろそろ行きますよ」

ステイルは掌から炎を出し、神裂は七天七刀を模した太刀をゆっくりと引き抜いた。

上条「俺はステイル。五和は神裂だ。いくぞ!」

五和「はい!」

237 : SS寄稿... - 2011/12/30 08:34:09.32 BMIoR+No0 226/490

御坂は自動車関連学校の為に用意された実験用サーキットに来ていた。典型的な『騒音の出る施設』である。

御坂(なるほどね)

もう先が読める。どう考えたってキャパシティダウンを流すつもりだ。御坂の予感は的中する。

キィィィン!と高レベルの能力者にとっては、あまりに不快な音が響いた。

御坂「うぐ……ああ!」

御坂は両手で頭を抑え、その場に蹲ってしまう。と、ズドン!と地面が揺れた。

「あっはっは!無様だねぇ。『超電磁砲』」

「このFIVE_Over.Modelcase_”RAILGUN”(ファイブオーバーモデルケースレールガン)がどこまで通用するか楽しみだよ」

5メートル前後の巨体を誇る2体の『カマキリ』が御坂の後ろに立った。
パイロットはテレスティーナ=木原=ライフライン、シルバークロース=アルファだ。

御坂「どこまで通用するかって言っといて……これはないんじゃないの?」

必死に声を絞り出し、問いかける。

シルバークロース「この女がうるさいからさ。本当は純粋な力比べをしたいのに」

テレスティーナ「この程度であっさりやられるなら、所詮その程度ってことさ」

シルバークロース「……と一点張りでね。まあ同意できる面もあるから、仕方なくさ」

テレスティーナ「さて、3秒後に発射するわよ。3」

カウントが始まったが、御坂は未だ動けない。

テレスティーナ「2」

2秒前。それでも御坂は動けない。

テレスティーナ「1」

シルバークロース「やはり駄目か」

テレスティーナ「0」

カウントが0になったと同時、束ねられた3つの銃身が回転し、
一発一発が戦車を貫き、壁に直径1メートルほどの風穴を空ける威力を持つ、分間4000発もの金属砲弾が撃ち放たれた。

238 : SS寄稿... - 2011/12/30 08:36:22.46 BMIoR+No0 227/490

一方通行は、第23学区の上条らとオリアナが激突した場所に来ていた。
彼の目の前には、よく見知っている1人の男と少女の大群。

「久しぶりだなぁ一方通行。お前をボコれるこの日をどれだけ待ち望んだことか」

「ここで会ったが100年目です。とミサカ達は喧嘩を売ります」

一方通行には精神系能力すら効かない。
よって、顔面に刺青で研究服の木原数多や、常盤台の冬服に身を包んだ大量の妹達がこの目に映るのは、心を操られてとかではない。

一方通行(可能性はいくつかあるが、まァどォでもいい事だ)

誰が相手だろうとやる事は変わらないのだから。

木原「いくぜ!マゾ太君!」

木原数多が駆けだした。

239 : SS寄稿... - 2011/12/30 08:38:57.08 BMIoR+No0 228/490

絹旗と佐天は第19学区の更地に来ていた。

佐天「何にもないですね」

絹旗「そうですね。ですが、超気を緩めてはいけませんよ」

佐天「はい」

2人は気を緩めずに周囲を見回す。誰も居ないし何もない。
一体何だと、2人が疑問を抱き始めたところで、

突如、2人の視界が真っ暗になった。

佐天「え?え?」

絹旗「超大丈夫ですか佐天さん!」

佐天「大丈夫じゃないです!真っ暗です!どうして!何で!」

佐天はパニくり、とにかく叫ぶ。

絹旗「超落ち着いてください!敵の能力ですよ!大丈夫です。私に触れれば、佐天さんも窒素に包みこめますから」

佐天「でも、どこに居るの絹旗さん!」

絹旗「横です!落ち着いて耳を澄ませれば大丈夫ですから!」

佐天「わ、分かりました!」

佐天は言われた通り耳を澄ます。確かに絹旗の声が聞こえる。
大分近いところに居る。それはそうだ。だってさっきまで隣同士だったんだから。手を伸ばせば、きっと握り返してくれる。

佐天「絹旗さん!」

絹旗「はい!」

2人の手が触れ合った。瞬間。

佐天(え?)

絹旗の手が消えた。

佐天「絹旗さん!絹旗さん!」

返事はない。まさか、テレポートされた?

佐天「嘘、でしょ?」

レベル5の仲間を唐突に失い、途端に不安が爆発する。

佐天(う、うわあああああああ!ど、どどど、どうしよう!?)

佐天は、私も戦いたいとのたまった自分を後悔しつつ、情けないと思った。

「佐天さん……佐天さん」

泣きそうになっている佐天の耳に、聞いた事のある声が届いた。

佐天「この声は……重福さん?」

重福「そうだよ。佐天さんの友達、重福省帆だよ」

佐天「な、んで……」

重福「佐天さん達の相手は、私なの……」

240 : SS寄稿... - 2011/12/30 08:39:49.28 BMIoR+No0 229/490

垣根は木原研究所の前に来ていた。
彼の目の前には、いくつもの自律型駆動鎧(パワードスーツ)が並んでいる。

垣根「ただのからくりとは、俺もなめられたもんだなぁ」

垣根はゆっくりと両手を広げる。どこからでもかかってこいと言わんばかりに。
その動作に応えるように、パワードスーツ達の腕から大量のミサイルが発射された。

241 : SS寄稿... - 2011/12/30 08:41:07.03 BMIoR+No0 230/490

吹寄と姫神は、かつて一方通行と上条が争った、そして御坂と上条が戦い荒れ地になった操車場に来ていた。

吹寄「あなたが相手ね?」

吹寄は目の前の、黒髪ストレートロングで霧ヶ丘女学院の制服を着ている女性に尋ねた。

「常識的に考えれば、質問しなくても分かると思うけど」

吹寄の質問に無愛想な回答をした彼女は、柊奈美(ひいらぎなみ)と言う。

吹寄「じゃあ遠慮なくいかせてもらおうじゃない!」

吹寄の脚に風が集まる。

「見た感じ、レベル3ってところね」

吹寄「『烈風迅脚』(エアロソニック)で申請しているんだけどね。
   まあそんな事はどうでもいいとして、姫神さん、準備は良い?」

姫神「いつでも。いける」

そう答えた姫神の右手には扇子があり、左の掌からは炎が灯っていた。

吹寄「いくわよ!」

姫神「うん!」

242 : SS寄稿... - 2011/12/30 08:42:25.51 BMIoR+No0 231/490

削板は再び第1学区の大きな通りにいた。
相手も先程と同じシルビア。ただし、7人ほど人間を引き連れていた。

シルビア「私には見えるよ。君が無様に地面に這いつくばっている未来が」

削板「はぁ?意味不明だぞ。頭大丈夫か?」

シルビア「頭大丈夫かはこっちの台詞よ。『予知能力』も知らないの?」

削板「ふーん。そんなのあるんだ?」

シルビア「学園都市に住んでいる癖に、分からない能力があるって恥ずかしくないの?」

削板「別に。気にしたことねぇしなぁ」

もっとも、学園都市に存在する多種多様な能力を全て言える人間の方が少ないが。

シルビア「ふーん。じゃあ親切なお姉さんが教えてあげよっか?私の能力がどういうことなのかを」

削板「いらん。いいからやろうぜ」

シルビア「まあ聞きなって。聞いといて損はないからさ」

削板「そうか?じゃあ聞くか」

単純である。

243 : SS寄稿... - 2011/12/30 08:47:49.87 BMIoR+No0 232/490

シルビア「いい?私の能力は読んで字のごとく、予知する能力。
     時系列的に見て、その時点では発生していない事柄について予め知ること」

削板「んんー?もうよく分からないぞ」

シルビア「これ以上は説明のしようがないんだけど。まあいいわ。それでね。
     私の能力の凄いところは、予め知るだけでなく、その光景を見る事が出来るの」

削板「どう凄いのか分からん」

シルビア「……まともな説明は理解できないようね。いいわ。比較して説明しましょう」

削板「助かる!……かもしれん」

シルビア「たとえば心理系能力者なら、敵の心を読んで行動を先読みするわよね。
     一見凄い事のように見えるけど、実際はいくつか弱点があるのよね」

削板「ほう」

シルビア「何でちょっと偉そうなのよ。まあいいわ。まず1つ。急な心変わりに対応できない。
     2つ。どれだけ行動を先読み出来ても、体がそれについていかない」

削板「ん?どう言う意味だ?」

シルビア「これ以上どう説明しろって言うのよ……」

削板「だからさー、早くやろうぜ」

シルビア「いやちょっと待って。説明するから」

削板「じゃあ早くしてくれよ」

何故か偉そうな削板に、シルビアはちょっといら立つ。

シルビア「だから、君は殴るつもりで敵に向かって駆け出したとします。
     で、心理系能力者は当然拳が飛んでくると思う訳だけど、
     君が攻撃の直前で、やっぱ足技にしようと蹴りを出す事に変更しました。
     そうすると心理系能力者はどうなると思う?」

削板「何とか反応して、受け止めたり、受け流したり、避けたりする」

シルビア「……超人的反応は除く」

削板「拳が来ると思っていたのに、蹴りが来たら不意打ちだよなぁ」

シルビア「つまり?」

削板「蹴られる?」

シルビア「正解(はぁー、疲れる)。じゃあ次の説明だけど」

削板「もういいよ!早くやろうぜ!」

シルビア「ああーもう分かったわよ!端折りまくるけど、私の予知はそれら心理系能力者の弱点を克服している!
     つまり君に勝ち目はないから、大人しく殺されてくれないかな!?」

削板「はぁ?それっておかしくねぇか?」

シルビア「おかしくないわよ!だって不毛な戦いじゃない!
     私には見えるわよ。このまま戦えば、君は苦しんで死ぬことになる。
     でも大人しく殺されるなら、痛みすら感じさせずに殺してあげるし、私達も楽だし、一石二鳥じゃない!」

削板「え!?予知していようが、超人的な動きには対応できなくね!?」

シルビア「2つ目の弱点について分かってたんかい!」

削板「どうなんだよ!」

シルビア「そうだけど、ただの心理系能力者と違って、色々な未来が見えるし、私には超人的動きも通用しない!」

削板「回答になってねーし、それ結局お前だからじゃねーか!」

シルビア「うっさいわね!お望み通りやってやろうじゃない!」

キレたシルビアが柄しかない剣を振るう。それが戦いの合図だった。

244 : SS寄稿... - 2011/12/30 08:49:15.56 BMIoR+No0 233/490

結標は、あすなろ園の前で立ち尽くしていた。
目の前にかつての仲間たちと、何人かの男児と、青い髪に耳にピアスをしている少年がいるからだ。

青ピ「どうしたんや淡希」

結標「どうしたじゃないわよ……殴られる覚悟は出来ているのでしょうね?」

青ピ「何で僕が殴られなきゃいけないん?」

結標「自分のやったこと、よーく思い出してみなさいよ」

青ピ「うーん、心当たりないな~」

結標「よし。殴るわ」

言うが早いか、結標は青髪の前にテレポートする。そして固く握り締められた拳を放った。

245 : SS寄稿... - 2011/12/30 08:51:00.47 BMIoR+No0 234/490

フィアンマとヴェントは、第9学区の植物園に来ていた。
彼らの目の前には、ピンク色のミディアムヘアに桃色のパーティドレスと言うとんでもない恰好の、
おそらくは高校生くらいの少女がいた。

フィアンマ「これから一戦交える奴の恰好とは思えんな」

「はぁ?誰に向かって口聞いているの?」

一言聞いただけで、高飛車お嬢様な感じが伝わってくる。

ヴェント「この場には私達とアンタしかいないんだから、アンタ以外有り得ないでしょーが」

「アンタじゃない。妃雛菊。妃お嬢様とでも呼びなさい」

フィアンマ「お前、ひょっとして操られていないのか……?」

あまりにも生意気だったので、なんとなくそう思ったフィアンマは尋ねる。

「あら?愚民のくせによく分かったじゃない?そうよ。私は操祈の案に乗って、自分の意思でこの場に居る」

ヴェント「世界滅亡よ?なんでそれに賛成しているの?」

「この世界は、穢れている」

急に真面目な顔つきになって、彼女は語りだす。

「操祈はね、一口に世界滅亡と謳っているけど、それには並々ならぬ理由があるの」

フィアンマ「どんな理由があろうと、世界滅亡はぶっ飛びすぎだろう。イカれているとしか思えん」

「皆そう言うけどね、操祈の話を聞いたら、きっと共感できるわ」

ヴェント「じゃあそれを世界中に聞かせれば良いんじゃないの?そうすれば皆共感して、自殺するかもよ?」

冗談を言うヴェントだったが、意外な答えが返ってきた。

「それは無理よ。自殺なんかする訳ないでしょ」

フィアンマ「じゃあやっぱり、世界滅亡はあまりにも突飛な話と言う事じゃないか」

「違う。あなた達、私の言いたい事が本気で分からないの?この世界は美しくない。滅ぶべきなのよ」

ヴェント「分かるわかないでしょ。そんなふざけた思想」

「分かったわ。そこまで言うなら、私が美しく滅ぼしてあげるわよ」

妃が両手をゆっくりと広げる。戦いが、始まる。

246 : SS寄稿... - 2011/12/30 08:53:41.50 BMIoR+No0 235/490

ガッ!キン!と刀と槍をぶつけあいながら、神裂は五和に語りかける。

神裂「五和、その槍は何ですか?」

その問いに対し、五和も律儀に答える。

五和「すみませんプリエステス。
   これはもともと七天七刀だったんですが、フィアンマさんが熱して溶かして槍にしてくれたモノです。
   それより、プリエステスの持っている“それ”こそ、ただの鈍ですよね?」

神裂「もちろん本物の七天七刀ではありませんが、だからと言って鈍ではありませんよ」

五和「へぇ」

ガキィン!となおも刀と槍の打ち合いは続く。

一方で、ステイルと上条は、

ステイル「『魔女狩りの王』(イノケンティウス)!」

ステイルが叫ぶと同時、三沢塾のロビーの床から、彼を守るように炎の巨人が現れる。

上条「ま、レベル5の『発火能力者』なら、これぐらいの芸当出来て当然だよな」

上条は炎の巨人を殴りつける。すると独特の甲高い音が響き、炎の巨人は虚空に消えた。

ステイル「『竜王』とやらの力は解放しなくていいのかい?」

上条「『竜王』の力じゃ洗脳は解けないし、お前程度ならな!」

そして上条の右拳が、ステイルの顔面を通り抜けた。

上条「何かって言ったら蜃気楼ばっかり……馬鹿の一つ覚えかよ!」

ステイル「それに毎回騙されているのは、どこの誰だろうね」

言いながら上条の数m後ろに居たステイルは、両手に持っている拳銃の引き金を引く。
しかし上条は、顔面や心臓狙って放たれた2、3発の弾丸を、上半身を軽く振って避ける。

上条「その程度『竜王』の力なんてなくとも、素で避けられるんだよ!」

ステイル「なるほど」

肉迫する上条に、ステイルは後退しながらさらに拳銃の引き金を引く。今度は脚を狙って。

上条「いっ!」

と、弾丸が直撃して痛む様子を見せる上条だったが、その勢い自体は止まらない。

ステイル「何!?」

上条「終わりだ」

ステイルがうろたえている間に、上条はあっさりと彼の頭に触れた。
独特の甲高い音が響き、彼の体が地面に向かって倒れていく。上条はそれを受け止めた。そして五和に問いかける。

上条「こっちは終わったぞ。そっちは大丈夫か?」

五和「大丈夫です。こっちも速攻で終わらせます」

はっきりと、言い切った。

247 : SS寄稿... - 2011/12/30 08:55:46.04 BMIoR+No0 236/490

そんな上条と五和のやりとりを聞いていた神裂は、

神裂「私を馬鹿にしているのですか?七閃!」

神裂の手が一瞬だけぶれる。瞬間、変幻自在の7本のワイヤーが五和に襲い掛かる。

五和「――七教七刃!」

五和も負けじと7本のワイヤーで対抗する。弾丸よりも速い速度でワイヤーとワイヤーがぶつかって、擦れた。

五和「そこです!」

間髪入れずに槍を投擲する。それはワイヤーの隙間をすり抜け、一直線に神裂に向かう。

神裂「その程度で私を穿てるとでも!」

七天七刀を突き出し、槍を迎え撃った。
そして激突の衝撃で刀と槍、双方とも粉々に砕け散った。

神裂(馬鹿な――!いやしかし、武器がないのは五和も同じ事!)

そんな神裂の思惑は外れる。こちらに迫ってくる五和の右手には、メイスが握られている。

神裂「なぜ!?」

五和「ふっ!」

短く息を吐き、メイスを左から右に薙ぎ払う。
武器がない神裂は為す術なくメイスの一撃をまともに受け、数m先の壁に叩きつけられ、力なく地面に崩れ落ちて行った。

五和「回収します」

そんな神裂をあっさり回収して、上条の方を向き直し、言う。

五和「終わりました!」

248 : SS寄稿... - 2011/12/30 09:03:03.40 BMIoR+No0 237/490

テレスティーナとシルバークロースの2人は、多少黒焦げになって地面に転がっていた。
そうなったのは、御坂にやられたからにほかならない。

テレスティーナ「糞が……」

ぼやきながら、つい1分前ほどに自分の身に起こった事を反芻する。

ガトリングレールガンの連射が始まって5秒ほど経過したところで、
背後から御坂の電撃を受けカマキリを破壊され、おまけに直接電撃を喰らったのだ。

もちろん電撃対策はしてあったが、レベル5級の電撃をまともに受け切れるほどではなかった。ここで疑問が浮上する。
御坂美琴はキャパシティダウンで弱っていたのではないか?

テレスティーナだって、シルバークロースだってそう思っていた。
にもかかわらず、御坂は背後に回り、全力の電撃を放ってきた。
つまり、彼女にはキャパシティダウンが効いていなかったのだ。

テレスティーナ「どう言う事だよ?『超電磁砲』」

うつ伏せになりながら、荒々しい口調で御坂に尋ねる。

御坂「どう言う事って?キャパシティダウンが効かなかったこと?」

テレスティーナ「それ以外に何があるのよ?」

御坂「はいはい。何で騒音が効かなかったのか。その答えは、これ」

言いながら御坂は、ジャージのポケットから耳栓を取りだした。

御坂「騒音を耳栓で防ぐ。単純な話でしょ?」

テレスティーナ「そんなふざけた方法で……」

御坂「騒音に頼り過ぎなのよ」

そうして御坂は、テレスティーナの頭を触る。そこで違和感。彼女の脳波に乱れがないのだ。

御坂「アンタ、ひょっとして操られていない?」

テレスティーナ「今更気付いたの?」

御坂「何で……食蜂の野望を知らないの?」

テレスティーナ「ああ知らないね。私は、お前に復讐できればそれで良かった。でも負けた」

御坂「そう……まあ何となく危険な感じがしたから、電撃ぶち当てて動けなくしたんだけどね。
   その予感は的中したってことか」

テレスティーナ「私とこの男を倒した位で調子に乗らないほうがいいわよ。これからはもっと強力な刺客がお前を襲う」

御坂「あら、心配してくれているの?」

テレスティーナ「違うわよ。お前はこの私が殺す。だからそれまで死ぬなって言っているのよ」

その言葉を残して、彼女は気絶した。
御坂は久々に白星をあげ、多少の自信を取り戻し、いくつか確信したことがあった。
これからの戦い、勝機はある。

御坂「……よし!」

屈んでいた御坂は立ちあがり、気合を入れる。その時だった。

「次の相手は、この私だよ」

249 : SS寄稿... - 2011/12/30 09:06:36.41 BMIoR+No0 238/490

一方通行はこの戦いが始まる前に、垣根と修行をした。
修行と言っても、無理をしない程度に、能力アリの殴り合いをしただけだが。
だがそれは確実にお互いを成長させた。
よくモヤシとバカにされる一方通行だったが、今の彼の体術は不良程度なら余裕。
ジャッジメントやアンチスキルなど訓練を積んでいるような人間相手でも、1人までなら倒せるほどになった。

しかしながら、所詮はそこまで。たかだか数日の修行で武術の達人になれるはずもない。
よって相手が相当の体術の使い手だった場合、勝てない。

そしておそらく、一方通行に迫る木原数多は勿論本物ではないが、木原数多の技術を刷り込まれている。
もっと言えば、一方通行の対策法を叩きこまれている格闘のプロである可能性が高い。

しかし、いくら格闘のプロだろうと、木原神拳は一朝一夕で習得できるものではない。
おそらくは、一方通行にダメージを与える事が出来たとしても、攻撃した側もダメージを受けるだろう。

とここまでの話は、わざわざ接近戦を挑んだ場合だ。
近距離戦に強い相手に、近距離で挑まなけらばいけないルールなどない。
だから一方通行は素直に距離を取り、遠距離から攻撃することにした。
もっとも、風は対処されるだろうし、小石を蹴った攻撃程度なら避けられるだろう。

一方通行(これならどうだァ)

一方通行の軸足が、2回地面を踏んだ。
1度目の足踏みで地面に規則的な亀裂が入り、2度目の踏み付けでその亀裂をなぞって、
幅1m四方のアスファルトの立方体が、彼の前に3個浮き上がった。
そしてその3個のアスファルトを蹴る。ただし手加減はしてある。
直撃しても死にはしないはずだ。それがまずかった。

木原「なんだその腑抜けた攻撃は!」

手加減してあるとはつまり、スピードが抑えられているという事。
あろうことか木原数多は、それらを3mのジャンプで悠々と超え、一方通行に飛び蹴りをかました。

一方通行(ちっ……もしかして、肉体強化なのか?)

地面を数m転がった一方通行だったが、すぐに起き上がり木原を凝視する。
木原の右足からは血が出ていた。やはり完璧には木原神拳を使いこなせていないようだ。

250 : SS寄稿... - 2011/12/30 09:09:09.85 BMIoR+No0 239/490

木原「よーく見とけよ一方通行。これが俺の能力だ」

直後、木原の足がみるみるうちに元通りになっていく。

一方通行「『肉体再生』(オートリバース)か」

木原「御名答。これで俺は、不完全でも木原神拳を存分に使えるって訳だ。
   それだけじゃねぇ。脳のリミッターを意図的に外してもいる。つまり、今の俺は火事場の馬鹿力状態だ。
   これが何を意味するか、お前なら分かるよな?」

一方通行「火事場の馬鹿力って言うのは、肉体的負担が半端ねェ。
     だが『肉体再生』だから、それも気にせず戦える……って言いてェのか?」

木原「そう言う事。俺を倒すには、圧倒的な一撃で殺すしかない。
   だがお前は俺を救うために戦っている。殺せない。
   と言う事は、お前に勝ち目はないって事だ。分かってくれたかな?」

一方通行「チッ」

木原「つーわけでさー、大人しく死んでくれねーかなー?」

一方通行「断る」

木原「じゃあ殺すっきゃねーか!」

ドン!と地面を蹴り、弾丸のような速度で一方通行に肉迫する。

一方通行「面倒くせェ!」

一方通行は再び地面を2回踏んだ。
彼の目の前のアスファルトが細かい砂利と化し、ゴバッ!と木原に向かう。
上条当麻と戦った時には思い切り屈まれて回避されたが、屈んでも回避できないように砂利を飛ばした。

木原「甘いねぇ」

木原は回避行動どころか、防御姿勢も取らなかった。
数いる妹達の何人かが、一方通行と木原の間に割って入り砂利の盾になったからだ。
妹達は赤い液体を撒き散らしながら倒れて行く。

一方通行「な――」

木原「おらよ!」

動揺する一方通行の顔面に、木原の渾身の拳がクリーンヒットした。
その一撃で数m地面を転がる一方通行の下へ、木原は追撃のかかと落としを繰り出す為に脚を上げていた。

それを視界の隅に捉えた一方通行は自ら地面を転がり、かかと落としを回避して起き上がる。と同時、

――世界が、真っ白に塗りつぶされた。

251 : SS寄稿... - 2011/12/30 09:11:32.83 BMIoR+No0 240/490

一方通行「あァァァ!」

両目を抑え悶絶する一方通行の腹部に、木原の膝蹴りが叩きこまれた。
蹴られた彼の口からは血があふれ、その場で蹲る。

修行を通して耐久力が増さなかった訳ではないが、もともと貧弱な体の彼には今の木原の一撃は厳しかった。

木原は蹲る一方通行の頭を容赦なく踏みつけながら、嬉々として語りだす。

木原「テメェの能力には致命的な弱点がある。生きていく上でどうしても反射出来ないものがあるということだ。
   酸素然り、光然り、音然り」

一方通行「うるせェ!」

地に両手をつき、思い切り体を起こす。突然の出来事に木原はバランスを崩し、後退する。

木原「力で俺の足を押し返すとは、やるじゃねーか」

一方通行「チクショウが……」

未だに明滅する視界の中、一方通行は距離をとって木原を見据える。
木原はいつのまにかゴーグルを着けていた。

木原「テメェはもう勝てねーよ。さっきの一連の攻防で分かっただろ?
   俺の能力、妹達の捨て身の盾、そして妹達の出す電撃での目眩まし。
   俺は無駄に疲労したくねーんだわ。もう一度聞くぞ。大人しく殺されてくれねーかな!?」

一方通行「あァ。そうだな」

木原の言う通り、このままじゃ勝てない。
拳銃などの武器はあるが、レベル5の『肉体再生』には即回復される。
それ以前に妹達の壁に、目眩ましの強烈な光もある。
そして刺激的な光を受け続ければ、光過敏性発作で体調を崩すことにもなる。
だからと言って目を閉じて戦うのも無理がある。

木原「物分かり良いじゃねーか。じゃ、死んでもらおうか!」

木原が迫ってくる。あと3秒もあれば、一方通行の顔面に拳を叩きこめるだろう。

一方通行「確かに“今のまま”じゃ勝てねェ。だから――」

一方通行の背中から、白い翼が顕現した。頭上には、同色の輪が浮いている。

木原「その姿は――」

一方通行「あンまり使いたくなかったンだけどな」

ズバァ!と光の雨が全妹達に降り注いだ。圧倒的な光の雨の前に、全妹達は為すすべなく蒸発した。

252 : SS寄稿... - 2011/12/30 09:13:04.63 BMIoR+No0 241/490

木原「テメェ、よくもまああっさりと……」

一方通行「はァ?何殊勝な事言ってやがるンですかァ?
     オマエも俺も、今更人殺した位でゴチャゴチャ言うことねェだろ」

その間にも一方通行は羽ばたく。
それは突風とかまいたちとなり、木原数多に切り傷を加え、吹き飛ばした。

木原「ちっくしょうが……」

ベクトルによって操られた風ならば対処できるが、純粋に力によって変えられた空気の流れである風は防ぎようがない。

しかしながら『肉体再生』の前では、それすらも結局は無意味。
脳や心臓などの重要な器官を潰すか、先程の光の雨や、マグマの海に突き落とすなど、
色々方法はあるが、とにかく一気に殺すか。そうでなければ木原数多は殺せない。
そんな事は一方通行も分かっているはずなのに。

木原(なぜ決定的な一撃を放たなかった?)

ようやく傷が再生しきって立ち上がった木原の頭に、一方通行の右手が触れた。

一方通行「終わりだ」

決着はあまりにもあっさりと。一方通行が2秒で洗脳を解いたことでついた。

253 : SS寄稿... - 2011/12/30 09:14:07.41 BMIoR+No0 242/490

強烈な光は妹達が出した電撃ではなく、妹達が投げた超強力な閃光玉によるものだった。
では妹達とは何だったのか。ただ木原の盾になる為だけにいたのか。
あるいは一方通行の精神を揺さぶる為か。またはその両方か。ただ、一方通行は1つだけ確信した事があった。

蒸発した妹達は、人間じゃない。

では何か。それは一方通行にも未だに分からない。でも人間ではなかったと言い切れる。
なぜなら木原の壁になって赤い液体を撒き散らしながら吹っ飛んだ時、その赤い液体が血には見えなかったから。

一方通行(何かある……)

ここでただただ悩んでいても仕方がない。今自分がやるべき事は。

254 : SS寄稿... - 2011/12/30 09:16:25.70 BMIoR+No0 243/490

佐天「じゃあ今真っ暗闇なのは、重福さんの仕業なの……?」

重福「そうだよ。私の能力『五感支配』(センスコントロール)で、佐天さんと絹旗さんの五感を支配しているの」

佐天「『視覚阻害』(ダミーチェック)がレベル5になると、そんなことになるのか……」

重福「そうみたいだね。だから、佐天さん達に勝ち目はないよ」

確かに、重福の言う通りだろう。
五感を支配される事がどれだけ不利なことか、素人の佐天でも分かる。
絹旗はおそらく『窒素装甲』があるから、見えない、聞こえないからと言って、どうってことはないだろうが佐天は違う。
この無音と暗闇の状態で、殴る蹴るなどの暴行をされればアウトだ。
そしていくら温厚な重福だろうと、それぐらいはできる。
絹旗も肉体的には無事でも、感覚的に支配されている以上、助けに入る事は出来ない。

重福「だからさ、もう一度私達のところに戻ってきてよ」

佐天「な、なんで?食蜂って人は、世界滅亡を企んでいるんでしょ?そんなの、いけないことじゃない!」

こんな事言ったって、洗脳されている重福には意味ないかもしれない。
それでも佐天は、言わずにはいられなかった。

重福「それでも、仕方ないかなって思う。だって、食蜂さんの言い分も分かるもの」

佐天「え?食蜂って人が、何で世界滅亡を企んでいるか分かるの?」

重福「分かるよ。佐天さんの脳にも残ってない?食蜂さんの考えが」

佐天「あ……」

言われた瞬間、眠っていた洗脳中の記憶が呼び覚まされた。

255 : SS寄稿... - 2011/12/30 09:20:55.69 BMIoR+No0 244/490

佐天「そうか。だから食蜂は、こんなことを……」

重福「そうだよ。私は、どうせ世界が滅亡するなら、それまでの間、佐天さんと一緒に居たい」

佐天「重福さん……もしかして操られていないの?」

重福「うん」

佐天「そっか」

佐天は呼び覚まされた記憶で、食蜂がなぜこんな馬鹿な事をやっているのかが分かった。
そして食蜂の考えに同意できる部分もある。だけど。

佐天「私は、食蜂の考えに完全には同意できない」

重福「……私だって、そう思うよ。でも、食蜂さんに反逆したって勝てっこない!
   だったら、少しの間でも佐天さんと一緒に居たいよ!」

悲痛な叫びだった。重福も食蜂の意見がおかしいと思っているところがあるのだ。
でも勝ち目はないから、どうせ世界が終わるのなら、という逃げの考え。
それは利口な考えかもしれない。けれども。

佐天「本当にそれでいいの?世界が滅亡しちゃったら、皆と私とも会えなくなるんだよ?私は嫌だよ?
   御坂さんとも、白井さんとも、初春とも、絹旗さんとも、アケミにむーちゃんにマコちんとも、
   そして重福さんと会えなくなるなんて」

重福「……私だって、嫌だよ。出来る事なら、老衰するまで佐天さんと友達でいたいよ!
   もっと遊びたいよ!泣いたり笑ったり怒ったりしたいよ!」

佐天「だったら!反抗してみようよ!私だけじゃない!皆いる!きっと出来るから!重福さんも戻ってきてよー!」

重福「――」

今の佐天の発言は、この戦いの状況をある程度把握している重福にとってみれば、滑稽と言っても良かった。
何せ2人いるレベル6はそれなりのダメージを受け、レベル5の2人に至っては2度敗北していて、まともに戦えているのは、
上条と削板、魔術師2人だけなのだから。加えて食蜂の軍は、まだ1万分の1も減っていない。どう考えたって佐天達の方が不利だ。
頭ではそう分かっていた。

重福「……うん」

しかし重福は、佐天達と共にする事を選んだ。だってそうだ。
佐天は頑固な人間で、自分がいくら食蜂の下に引き戻そうとしたって、首を縦に振るわけがない。
でも佐天とは一緒に居たい。

だったら、自分が佐天の仲間になればいい。
佐天側についたら不利なのは分かっているし、最悪殺されるかもしれない。
けれどそれは、食蜂側に居たって同じだ。最終的には死ぬ。
どうせ死ぬのなら、敵としてではなく、仲間として死にたい。
いや、万が一ではあるが、ひょっとしたら食蜂達に勝てるかもしれない。

重福にはもう、迷いはなかった。

重福「ゴメンね佐天さん。今、能力を解くから」

256 : SS寄稿... - 2011/12/30 09:22:55.16 BMIoR+No0 245/490

そして佐天の視界と聴力は元に戻った。
同時、関所中学の冬服に身を包んだ、太くて個性的な眉毛が特徴的な重福が佐天に抱きついた。

佐天「分かって、くれたんだね?」

重福「うん。本当にごめんなさい」

重福は佐天の胸に顔を埋め、今までの行為を詫びた。

佐天「別に大丈夫だよ。こうして無傷だしね」

重福「私、もう佐天さんから一生離れませんから!」

佐天「そ、それは困るかな~」

なんてやりとりをしながら、佐天は気付く。絹旗の声が聞こえない。

佐天「あれ?」

佐天は思わず周囲を見回す。すると絹旗は数m先で顔を伏せて突っ立っていた。

佐天「ちょっと。何突っ立っているんですか絹旗さーん」

呼びかけるが、絹旗から一切の反応が返って来ない。

佐天「あれ?ねぇ重福さん、絹旗さんの分の能力はちゃんと解除した?」

そう問いかけたが、重福からの反応もない。と、ずしりと重福の重さが増した。

佐天「え?」

佐天は力の抜けた重福の体を支える。彼女は気絶しているのだ。

佐天「なん、で……」

絹旗「それはねぇ。超私の仕業だったりするのよねぇ☆」

突如、絹旗が喋り出した。しかし彼女の発言には違和感がある。

初春から聞いて、実際に会っても実感したが、絹旗最愛と言う少女は相手が誰であっても、基本的には敬語である。

それが今は、ギャルみたいな間延びしたような喋り方だった。
ただし、会話の中で用いる単語に『超』とつける口調は健在している。

佐天「どういうこと……?」

絹旗「さぁて、超ゲームを楽しみましょう☆」

257 : SS寄稿... - 2011/12/30 09:25:21.71 BMIoR+No0 246/490

垣根「他愛ねぇ」

自律型パワードスーツなど、垣根の敵ではなかった。
吐き捨てた彼の傍らには、パワードスーツの残骸が散らばっている。

「ふむ。やはりこの程度では傷一つつける事は出来ないか」

木原研究所の中から『Equ.DarkMatter』のようなスーツを着用した木原幻生が現れた。

垣根「まさかクソジジイ、テメェ自身が戦うつもりか?」

幻生「まあね。那由他でもパワードスーツでも駄目なら、私が出るしかないだろう?」

垣根「那由他がああなったのは、やはりテメェのせいか」

幻生「何を憤っている?君には何の関係もないだろう?
   それに私は、実験を強制した覚えはない。力が欲しいとあの子から言ってきたから、協力してあげただけだよ」

垣根「ふざけんな。どうせお前らが、幼い時の那由他に力が欲しいと言わせるように仕向けたんだろ」

幻生「だったら何だと言うんだ?最終的に判断したのは那由他自身だよ」

垣根「ふっざけんな! 那由他は『木原一族』なんて狂った家系に生まれてこなければ!
   もっと普通の女の子として、幸せな人生を歩めたんだぞ!」

幻生「本当にどうしたと言うのだ?たとえそうだとして、君に何の関係がある?何をそんなに憤っている?」

垣根「……キャラじゃないこと位、自覚している。自分でも何でこんなにキレているのか分かんねぇ。
   だが、1つだけ分かった事がある。――テメェみたいな外道は、ここで殺すべきだってな」

幻生「酷い言われようだな……」

垣根「テメェ、操られてないだろ。寧ろ、貴重なデータが手に入るとかで食蜂に手を貸しているんだろ?」

幻生「ふむ。確かに貴重なデータが手に入るとは思っているが、進んで食蜂に手を貸している訳ではないよ。
   私は私のやりたいように勝手にやっているのだよ」

垣根「そっか。まあいいや。じゃあそろそろ死ね」

『未元物質』の翼を伸ばす。
それは一直線に木原幻生のもとへ向かい、直撃した。しかし。

幻生「ふふふ」

木原幻生は無傷だった。

258 : SS寄稿... - 2011/12/30 09:27:41.81 BMIoR+No0 247/490

垣根「あ?」

微笑んでいる幻生をよく見ると、黒いスーツが白に変わっていた。
厳密に言うと、黒いスーツの上を白い物質が包み込んでいた。より正確に言うと『未元物質』が、だ。

垣根「まーた小細工か」

幻生「さあ、かかってきなさい。こないならこっちから行くがね」

垣根「言われなくても『未元物質』を少しばかり使役できる程度の相手にビビる俺じゃねぇんだよ!」

翼をはためかせ、ロケットのように幻生へ突っ込んだ垣根だったが、見事に受け止められた。

幻生「何故この俺が止められた?って顔だな」

幻生の背中から『未元物質』の翼が生える。そしてそれは、垣根を包み込んだ。

幻生「その答えは『未元物質』だからだよ」

垣根「はぁ?」

幻生「簡単な道理の話さ。炎に炎をぶつけたって、元の炎は消えないだろう?
   水に水を加えたって、水の量が増えるだけで打ち消し合うわけじゃない。
   それと同じさ。『未元物質』に『未元物質』は効果がないのだよ」

垣根「俺は今日、既に『未元物質』を使う仮面20人をぶっ倒しているぜ」

幻生「あれはレベル5の時の『未元物質』を参考にした未完成のゴミだよ。
   今私が纏っているモノは、レベル6になった『未元物質』を参考にした完成形なのだよ。
   そしてだ。このまま君を取り込ませてもらうよ。その能力も、若い体も、かっこいい顔もね」

幻生の言っている事は、嘘ではないかもしれない。現に幻生の『未元物質』は、体に喰い込んできている。
痛みはないが、徐々に蝕まれていくのが分かる。その状況で垣根は、

垣根「馬鹿だなぁ、ジジイ」

あくまで余裕と言った調子で、そう呟いた。

259 : SS寄稿... - 2011/12/30 09:29:48.86 BMIoR+No0 248/490

幻生「何がだね?」

垣根「そもそも『未元物質』に『未元物質』が通じないと言う前提が間違っている。
   だってそうだろ?仮面の男には通じたんだから」

幻生「だから言っているだろう?仮面のやつらは未完成だったんだ。
   レベル5の『未元物質』とレベル6の『未元物質』は別物だよ。そりゃあ攻撃は通じるさ」

垣根「そうか。そこまで分かっていて、俺に勝てないってことは分からないんだな?」

幻生「世迷言を。君の攻撃を受け止め、あまつさえこうして取り込んでいるのだよ。
   どう考えたって君の方が圧倒的に不利じゃないか」

垣根「じゃあ説明してやっか。俺のとテメェの『未元物質』は全くの別物だ。だから俺には勝てねぇ」

幻生「何を言っている?確かに完全に同質とまでは言わないが、現に攻撃を止め、取り込み始めることができた時点で」

垣根「そこから違うんだよ。俺の2回の攻撃は本気じゃなかった」

幻生「本気じゃないだと?殺す気マンマンだったではないか」

垣根「ああ。殺す気はバリバリあったよ。だから殺す攻撃はした。
   だが本気の攻撃はしちゃいねぇ。最初っから全力を出さないで油断する。俺の悪い癖だ。改めなきゃな」

幻生「意味が分からん。殺す攻撃と本気の攻撃、どう違うと言うのだ?」

垣根「言わなきゃ分からねぇのか。まあ説明してやるけどよ。
   とりあえずこのままだと、いくら別物とはいえ取り込まれちまいそうだから抜けるわ」

軽い調子で呟いた垣根は、強引に自身の翼を広げて幻生の包み込んでいた翼をこじ開け、後退して距離を取った。

260 : SS寄稿... - 2011/12/30 09:31:46.20 BMIoR+No0 249/490

垣根「クソジジイはよぉ、人間殺すとき、どうやって殺す?」

何が言いたいのかよく分からない幻生だったが、とりあえず答える。

幻生「そりゃあいろいろあるだろうが、拳銃で、かな」

垣根「だよな。人間殺すには、拳銃の弾丸一発、ナイフのひと突きで十分だ。
   日本刀で何回も斬りつける、核兵器ぶち込む、なんてことしなくてもな」

幻生「なるほどそういうわけか」

幻生はようやく垣根の言いたい事が分かった。
垣根が今まで行ってきた攻撃は、所詮は拳銃の弾丸のような攻撃にすぎなかったのだ。
その気になれば、もっと強力な攻撃、オーバーキルが出来ると言外ににおわせている。

幻生「だが、先程の攻撃は完璧に受けとめたのだぞ。
   それより強力な攻撃が出来るからと言って、私を殺せるとは限らんぞ?」

垣根「なら試してみるか?一撃で沈めてやるよ」

幻生「出来るものならやってきなさい!」

垣根「じゃ、遠慮なく」

垣根がはばたいた。幻生がそう認識した時には、垣根は既に幻生の懐に入っていた。

幻生「――!」

ぐしゃり、と生々しい音が木霊した。

垣根「無様だなクソジジイ」

上半身だけになって転がっている幻生を見下ろしながら言った。

幻生「う……あ……」

垣根「『未元物質』に『未元物質』が効かないとか、そんな戯言を言っている時点で、テメェの負けだったんだよ」

しかし幻生に言い返す気力は当然なく、多少呻いた後に事切れた。

垣根「さて、お次はどうするべきかね」

261 : SS寄稿... - 2011/12/30 09:34:36.36 BMIoR+No0 250/490

吹寄「喰らいなさいっ!」

脚に風を集めた吹寄は2秒で柊の手前まで迫り、脇腹狙って蹴りを放った。
レベル5が当たり前の戦いでレベル3なんて、と思われるかもしれないが、何の対策もしていなければ十分致命傷となるレベルだ。

対し柊は、冷静に数歩後退することで蹴りを回避。そして自身の能力で生み出した氷の爪を飛ばす。

姫神「制理!」

吹寄「うん!」

姫神に返事をしながら、ギリギリで氷の爪を回避し後退する。
そして吹寄と入れ替わるように、人間を包む込む事が出来るほどの大きさの炎が柊に直撃した。

吹寄「やった……わけないよね」

姫神「当然。そうだろうね」

2人の予感は的中する。柊を包み込んでいた炎は消え、彼女は超然と立っていた。
その手を包み込んでいるのは氷の爪。手首から肘の間の腕には氷の刃があった。

吹寄「氷の能力?」

姫神「みたいだね」

「『氷刃無爪』(アイシクルクロウ)。氷の爪や刃で相手を切り裂く」

姫神「私の。能力紹介がまだだったね。私は」

「いらない。どうせ『発火能力者』でしょ?」

姫神「そうだけど。私は『緋色朱雀』(スカーレットヴァミリオン)で。申請している。
   ちなみに。『異能力者』(レベル2)」

「レベル2?さっきの炎はレベル2の大きさではなかったけど。
  ……なるほどその扇子ね。それで擬似的に風を巻き起こし、炎を大きくしているのか」

吹寄「凄い分析力ね」

姫神「そっか。制理。この勝負。勝てるよ」

吹寄「それは当たり前でしょ?この勝負、絶対に負けるわけにはいかないんだから」

「御託は良いから、やりましょ」

262 : SS寄稿... - 2011/12/30 09:36:57.15 BMIoR+No0 251/490

柊の疾走が始まった。その様は美しく、思わず見惚れるほどだった。

吹寄「姫神さん!」

姫神「真正面からとは。馬鹿にしすぎ!」

姫神は学園都市製の扇子を振るい、突風を生み出す。
さらにそこへ自身の炎をぶつけ、超小規模の火災旋風を正面から来る柊狙って巻き起こす。

「ふっ」

しかし柊は、鼻で笑って炎の中へ飛び込んだ。

姫神「え?」

目の前で起きた出来事に、鳩が豆鉄砲を食ったようになった姫神の顔が、直後に苦悶に歪んだ。

柊が伸ばした氷の爪の一本が、姫神の胸部に直撃したからだ。

しかしながら氷の爪は、あくまで直撃しただけであり、貫くどころか、刺さりすらしなかった。

だから柊は、炎を通り抜け姫神に止めを刺そうと氷の刃を振るおうとして、

吹寄「させない!」

たった今抜けてきたばかりの炎が渦巻いている真後ろから声。
柊は反射的に振り返り、氷の刃をクロスして吹寄の炎の両足飛び蹴りと拮抗した。

吹寄「おおおおおおおおおおお!」

(風に乗せて炎を纏う事も出来る……か!)

柊は少々力を込めて、吹寄を弾いた。と同時。

姫神「喰らえっ!」

喰らえ。この言葉が発せられた瞬間、柊は思考した。まず間違いなく、何らかの攻撃が来るだろう。
十中八九炎による攻撃だとは思うが、拳銃や爆弾などの可能性も捨てきれない。
もしも拳銃や爆弾なら、横へ跳んで回避すればいいだけの話だ。炎もレベル2なら一直線にしか出せないだろう。
ただ姫神には扇子がある。その扇子を使って炎を拡散出来るやもしれない。
よって氷の鎧を展開して横に跳べば、ノーダメージで切り抜けられる。

と一瞬の内にそう判断し、実行に移したのだが。

(なに!?)

一切の攻撃がないどころか、姫神は微動だにすらしなかった。

263 : SS寄稿... - 2011/12/30 09:39:11.66 BMIoR+No0 252/490

(何だ?ただのブラフだったのか?)

だとしても、何の意味が?一瞬ではあるが動揺した柊の下へ、吹寄が特攻する。

吹寄「おおおおおおおお!」

弾かれただけで、脚に纏っている炎が消えた訳じゃない。
吹寄は渾身の両足飛び蹴りをかますが、またしても柊にあっさりと弾かれた。

吹寄「それなら!」

弾かれ空中を舞っている吹寄は脚を振るった。
吹寄の脚に纏われていた、炎が乗った風が柊目がけて飛んでいく。

「ふん」

ザン!と、柊は至って冷静に氷の刃で炎を斬った。斬られた炎が、ちりちりと虚空へ消えて行く。

吹寄「まだまだ行くわよ!姫神さん、炎を頂戴!」

姫神「うん」

左手から炎を出し、吹寄に向かって放つ。吹寄はそれを脚で受け止め、纏った。

「またそれか。芸がないわね」

吹寄「あなただって、氷の爪と刃の一辺倒じゃない?」

「なら、見せてあげるわよ」

不敵に微笑んだ柊は、両手を地につけた。
瞬間、吹寄達を貫くべく、柊の方の地面から氷の針が連続で飛び出した。

吹寄「くっ!」

地上に居ては貫かれるだけ。吹寄は面食らいながらも、何とか後退し姫神を抱えて空中へ避難した。

264 : SS寄稿... - 2011/12/30 09:41:51.15 BMIoR+No0 253/490

「降りてきなさい」

吹寄「そう言われて、はいそうですかって言う馬鹿いると思う?」

「なら死ね」

言いながら柊は両手を振るった。
その軌道からいくつもの氷の礫が生み出され、吹寄達の下へ向かう。

吹寄「しっかり掴まっていてよ姫神さん!」

姫神「うん!」

姫神の力強い返事と同時、吹寄が空中を駆けだす。
なおも連続で放たれる氷の礫を、吹寄達は紙一重で避けていく。

「埒が明かないな……」

これ以上は能力の無駄だと悟った柊は、両腕を大きく振るった。
両腕の氷の刃がブーメランとなって発射される。

吹寄「そんなに大きいなら、わざわざ避けるまでもないわね!」

ゴッ!と、氷のブーメランを蹴り返す。
しかしながら、柊は跳ね返されたブーメランをいとも簡単に避け、両腕を大きく2回振るう。
すなわち、4枚の氷のブーメランが発射されたと言う事。

吹寄(負けてたまるか!)

吹寄は2枚のブーメランを避け、2枚を蹴り返す。当然、柊はそれを避ける。

姫神「制理!後ろ!」

吹寄「え?」

姫神が注意を喚起し、吹寄が後ろを振り返った時はもう遅かった。
2枚のブーメランが彼女らに直撃した。その一撃で昏倒しかけた吹寄と姫神は、地面へ落下していく。

「終わりだ」

両手を地につける。吹寄らの落下地点に氷の針山を生み出す。

吹寄「な、めるなーーーーー!」

針山まであと数cmと言うところで、吹寄が気合で持ち直し姫神と共に再び上昇した。

265 : SS寄稿... - 2011/12/30 09:45:25.50 BMIoR+No0 254/490

吹寄「はぁ、はぁ」

(粘るな……そもそも、ブーメランで切り裂かれていないこと自体おかしい。
  あの地味なほうの女の胸に一撃与えた時もそうだ。本来ならば貫かれていなければおかしい。
  これらから導き出せる答えは、あの女達はジャージの下に、丈夫な学園都市製のジャケットを着込んでいる)

だが決してノーダメージではない。手はいくらでもある。さて、次はどうしようかと、柊は思案し始める。
一方、姫神達はと言えば、

姫神「制理。このままじゃ。ジリ貧。ここらで一気に。攻勢に出るべき」

吹寄「そうしたいのは山々だけど。もう“いける”の?」

姫神「まだだけど。さっきの一撃で分かったはず。このままじゃ。やられる」

吹寄「そんな事言ったって、地上には氷の針山がある。私はともかく、姫神さんはどうしようも……」

姫神「大丈夫。考えならある。私をあの女のところに。投げて」

吹寄「何をする気なの?」

姫神「打ち合う。あの女の近くなら。針山攻撃は出来ない。なぜなら。あの女自身も傷つくから」

吹寄「それはそうかもしれないけど……姫神さんにあの人とまともに打ち合う事は出来ないわよ」

姫神「出来る出来ないじゃないよ。やらなきゃ。やらなきゃやられる」

吹寄「冷静になって姫神さん。そんな事ないわよ。
   主に地上戦が得意そうな相手に、無理に地上で戦わなくてもいいじゃない。
   私達が空中に居る限りは、相手だって決定打を与える事は出来ないわよ」

姫神「でも。さっきも言った通り。このままでは。ジリ貧。決定打はなくとも。
   徐々に追い詰められ。最終的には。やられる」

吹寄「でも、たとえその通りだとしても、何も無茶する事は――」

姫神「無茶せずに……無茶せずに勝てる相手じゃないよ」

吹寄の言葉を遮って、切実な調子で姫神は言った。

吹寄「でも……」

姫神「大丈夫だよ。あの女も。薄々気づいていると思うけど。私達は。かなり丈夫な。ジャケットを着ている。
   ちょっとやそっと切り裂かれた位では。死にはしない」

まあ大ダメージは。避けられないと思うけど。と姫神は真剣な調子で続ける。

姫神「だから。私を信じて」

吹寄「……分かったわ。私も、出来るだけのサポートをする」

姫神「うん」

266 : SS寄稿... - 2011/12/30 09:46:48.46 BMIoR+No0 255/490

吹寄「おおおおお!」

先にアクションを起こしたのは吹寄ら。空中から姫神を柊へ投げ飛ばす。

(何を考えているかは知らないけど、得意の接近戦をしてくれるのなら、こっちとしても好都合!)

左の氷の刃が、姫神の首目がけ振るわれた。それで終わる筈だった。

ガキィン!と姫神の扇子が氷の刃を受け止めなければ。

「へぇ。その扇子、丈夫さも兼ね備えているんだ」

姫神「正々堂々。一騎討ち!」

姫神は右手に持った扇子を振るう、振るいまくる。
柊はそれを爪と刃で払う、払いきる。

(わざわざ接近戦を挑みにきたから、実は相当な体術を心得ているのかと思えば、闇雲に扇子を振るうだけ。ヤケクソか!)

刃を思い切り振るって、扇子を払いのけた。それで姫神は大きく仰け反り、胴体がガラ空きとなる。

「死ね!」

そして首目がけて、刃を振るう。ヒュオッ!と刃は空を切った。

(ド素人に私の攻撃が避けられた?)

驚きで目を見開く柊をよそに、姫神は薄く微笑んで、

姫神「首狙いが。分かりやすすぎる。いくら素人の私でも。そこまであからさまだと。避けられるよ」

挑発した。

267 : SS寄稿... - 2011/12/30 09:49:06.16 BMIoR+No0 256/490

「なめるなよド素人が!」

柊の目の色が変わった。今まであしらうような防御姿勢だったが、一転攻撃態勢に移行。
怒涛の攻撃で、着実にダメージを与えていく。しかし姫神は、その中でも意外と冷静に分析を行っていた。

姫神(確かに。一撃一撃の。重みは増した。だけど)

攻撃はそれに比例するように大振りになり、粗も出始めていた。
そして柊が一段と大振りになったその時、

姫神(そこ!)

左手の炎の掌底が、柊の大きめな胸の中心に叩きこまれた。
だが所詮はレベル2の一撃。とてもじゃないが致命傷には程遠い。

「そんな攻撃、無意味なのよ!」

ドゴォ!と、姫神の鳩尾に蹴りが叩きこまれた。思わず屈みこむ姫神の頭上で、柊は右手を振り上げる。
首を刎ねるのではなく、脳天から真っ二つに引き裂く為に。

吹寄「私も居るっつーの!」

その柊の頭上にかかと落としを叩きこむべく、吹寄が右脚を振り下ろした。
それは柊がサイドステップをして距離を取ったことで虚しく空を切ったが、その後も吹寄は果敢に柊に挑んでいく。

「雑魚のくせに……しつこい!」

柊は右脚を軸に、わずかではあるが駒のように回転して、吹寄を弾き飛ばした。

吹寄「くっ……これはどうだ!」

めげない吹寄は一度空中に跳んで、足のつまさきを先端としてドリルのように回転し始めた。

吹寄「おおおおおおおおお!」

回転は激しさを増して、柊へと向かって行く。

(毎回毎回奇声を発しながら突っ込んでくるの、気持ち悪いのよ!)

心の中で毒づきながらも、柊は吹寄に対して背を向けて逃げ出す。

(受けて立つ必要性はない……)

ドリルのように横回転している吹寄が、逃げ回る自分を方向転換しながら追いかければ酔うのは明らか。
無理に迎え撃たなくても、すぐに砂利だらけの地面に転がって、勝手に擦り傷だらけになってくれる。

(無様に自滅してしまえ!)

しかし吹寄は柊の予想を超えた。吹寄の回転は衰えず、追跡も終わらない。

(くそっ……かれこれ3分ぐらいは粘っているぞ……)

もう受け止めてしまおうか、という考えが一瞬頭に過ぎるが、

(いや、ここまできたら意地だ。逃げ切って、後でゆっくりぶち殺す)

268 : SS寄稿... - 2011/12/30 09:51:51.41 BMIoR+No0 257/490

それから2分が経過した。さすがの吹寄も酔いが回り、いよいよ軌道がフラつき地面に落下し、転がった。

吹寄「おえぇ!」

ビチャビチャ!と、吹寄は耳を抑えながら蹲まって吐瀉物を撒き散らした。その背後には、既に柊が立っていた。

「よく粘ったわね。でも、ここまでね」

そうして氷の刃を振り下ろそうとした時、吹寄のジャージのポケットから、スタングレネードが零れおちた。

「な――」

柊が氷の刃を振り下ろす前に、それは轟音と刺激的な光を撒き散らして、彼女の目と耳を潰した。

「うぐあああああ!」

吹寄(もらった!)

横からではなく突くような蹴りを、柊の腹部目がけて繰り出す。

(負けるかっ!)

目と耳を潰された柊には、吹寄の蹴りは見えないし、音も聞こえない。
でも彼女達にとってみればこの絶好のチャンス、攻撃しないわけがない。
だから柊は、棘だらけの氷の鎧を即席で纏った。

ガキャリ!と案の定やってきた蹴りを受け切った。
だがそこに違和感。蹴りとは普通、薙ぎ払うように横から来るものではないか?
真正面から来る蹴りが、奇策と言うほどおかしい事でもないが。
と、思考していた柊だったが、答えは直後に身を持って知る。

直撃した吹寄の足の裏から、槍のような風が発射され、柊は20mほど地面を転がった。

269 : SS寄稿... - 2011/12/30 09:54:23.36 BMIoR+No0 258/490

(くそっ……)

氷の鎧を纏っていたし、一点集中とは言え疲れきっていての一撃だったので致命傷にはならなかった。
だがそんなことは当然彼女達も分かっているはず。何らかの追撃があるに違いない。

わずかではあるが戻った視力で、砂利を飛ばす為に左脚を振るっている吹寄を捉えた。

(その程度で……仕留められると思うな!)

両腕を振るって氷の礫を飛ばす。ドドドドド!と礫と砂利は相殺した。

(まずはあの巨乳から!)

氷の刃をブーメランのように放つ。
酔いが回って擦り傷だらけで満身創痍の吹寄には、避けられるほどの体力は残っていないはずだ。

そんな柊の予想通り、吹寄は避ける素振りを見せなかった。直撃まであと1m。

(勝った!)

と、柊は純粋に思ったのだが、スパン!と氷のブーメランが切り裂かれた。
そして潰れているはずの耳には、しっかりと届いていた。

姫神「ありがとう制理。もう大丈夫だよ」

力強い、姫神の声が。

「な、にが……」

姫神「これで。終わり」

再び姫神の声が耳に届いた。
と同時、ゴバァ!と柊の体を竜巻が包み込んだ。

「がああ!(こ、これは)」

小規模ではあるが、竜巻に飲み込まれた柊は、そこから抜け出せない。
この状況で炎を喰らえば、いくらレベル5の氷とはいえ溶かされ致命傷は避けられない。

(くっ……そ)

思えば、姫神の行動にはおかしいところがいくつかあった。
最初の方の2回の攻撃以外、頑なに扇子を振るわなかった。
わざわざ弱弱しい炎で攻撃するし、接近戦を挑んだときだってそうだ。
あの近距離で扇子を振るえば、多少なりともダメージになったはずだ。
にもかかわらず、振るわなかった。

これだけ不自然な点があったのに、なぜ自分は気付かなかったのだろう。
扇子には色々な機能があって“風を溜める事が出来る”という可能性に、気付く事が出来なかったのだろう。
だが後悔したところでもう遅い。

姫神「能力を全力で使用すれば。多分。死にはしない」

姫神の左手から、人間の顔3つ分ほどの大きさの炎が放たれる。

「うがあああああああああああああ!」

柊が断末魔の叫びをあげたと同時、竜巻に炎が加えられた。
それは高さ30mほどの火柱となって、柊の体を炙った。

270 : SS寄稿... - 2011/12/30 09:56:06.42 BMIoR+No0 259/490

姫神「大丈夫?」

吹寄を抱えながら、尋ねる。

吹寄「大丈夫に決まっているじゃない。姫神さんが助けてくれたんだし。姫神さんこそ、大丈夫?」

姫神「うん。制理が頑張ってくれたからね」

吹寄「ふふふ」

姫神「あはは」

思わず笑みがこぼれる2人の耳に、シュウウウウウウ!と水が蒸発するような音が届いた。その音源は火柱からだ。

吹寄「まさか……」

姫神「死にはしないけど。もう戦えませんっていうのが。ベストだったんだけど」

火柱は既に鎮火されていた。2人の目に映るのは、火傷や血だらけになっていながらも、仁王立ちしている柊だった。

「よくも……やってくれたな……」

一歩、また一歩と柊が近付いてくる。

姫神「仕方ない。もう少しだけ。痛い目を見てもらおう」

立ち上がり、柊の顔面狙いの左手から炎を放つ。ボッ!と炎はあっさりと直撃した。

「殺す……」

しかし柊は止まるどころか、歩調を早めた。右腕を氷柱型の氷が包み込んでいる。

姫神(これは。まずいかも)

そうして二撃目の炎を放とうとしたところで、

「……死ね!」

急に駆けだした柊の右腕の氷の槍が、姫神向かって放たれた。

姫神「くっ」

不意打ちの一撃を、扇子で何とか受け止める。
が、直後にピキピキと扇子が凍りだし、挙句破壊され、胸の中心を穿たれた。

271 : SS寄稿... - 2011/12/30 09:58:07.02 BMIoR+No0 260/490

姫神(あ……ふ……凍らせて。砕いたのか……)

まだそこまでの繊細な演算が出来るとは恐れ入る。
だがここまできて、ただでやられるわけにはいかない。

姫神「お願い。辛いと思うけど。制理!」

柊を逃がさない為に、氷の槍を掴む。掌から炎を出し続ければ、凍らされる事はないはずだから。

吹寄「あああああああ!」

吹寄だって満身創痍だ。戦うどころか立ち上がるのすら辛いはずだ。それでも応えてくれた。

吹寄のわずかに風を纏った右脚が、柊の左脇腹狙って放たれる。
対し柊は、わずかに氷で覆われた左手でそれを迎え撃つ。

ゴキャリ!と右脚と左手、双方から嫌な音が鳴った。

吹寄「く、おおおおおお!」

「っ、あああああああ!」

吹寄は使い物にならなくなった右脚を引っ込め、左脚を繰り出そうとしたが、右足で踏みつけられて妨げられた。

「終わりだ!」

脛の辺りに氷の刃を生やした柊の左脚が、吹寄の右脇腹目がけ放たれる。
右足で踏みつけている以上、かわすことはできない。

グシャア!と吹寄の右脇腹に柊の左脚がクリーンヒットした。
しかし吹寄は揺るがず、しっかりと両手で左脚を掴んだ。

「くっ、放せっ!」

柊は体を揺らして抵抗するが、右手の槍を姫神に掴まれ、左手は潰れ、左脚を掴まれ、
そんな状態で吹寄から抜け出せない。

姫神「決めちゃって。制理」

吹寄「もちろん」

(決めちゃって、だと……)

もうなんか、2人とも悟ったように薄く微笑んでいた。
自分が追い込まれているのは事実であるが、それは彼女達にも当てはまる。
この状況からどう決めると言うのか。と、そんな事を思考していたら、グイッ!と左脚を引っ張られ、前につんのめり、

吹寄「両手両足使えなくなったら、これしかないでしょ」

ゴガァ!と吹寄の広めの額が柊の額にクリーンヒットした。
その痛烈な一撃で、柊は白目をむいて地面に崩れ落ちた。

272 : SS寄稿... - 2011/12/30 09:59:26.25 BMIoR+No0 261/490

姫神「やったね。制理」

吹寄「本当、やればできるものね」

と、吹寄はドサリと尻餅をついた。

吹寄「それにしても、あの火柱をどうやって耐えたのかしらね」

姫神「それは多分。耐火性のジャケットか何かを。着こんでいたんだと思う。
   それにレベル5の氷が合わされば。耐えられるのも。不思議ではない。
   もともと。ギリギリ殺さないように。ほんの少しだけど。手加減もしていたしね」

吹寄「……姫神さんって、意外と頭いいわよね」

姫神「……意外と?」

吹寄「あ、いや、そんなつもりで言ったんじゃ」

姫神「冗談だよ。冗談。それより制理。そろそろ私の事を。名前で呼んでくれても。いいのではないでしょうか」

吹寄「何で敬語?……そうね。改めてよろしく、秋沙」

姫神「うん」

「そんな呑気にしていていいんですかね」

強敵を倒して生まれた楽観的ムードを引き裂く様に、彼女達の前に新たなる刺客が現れた。

273 : SS寄稿... - 2011/12/30 10:00:52.27 BMIoR+No0 262/490

削板「『二重魔法陣の衝撃』(ダブルスペルインパクト)!」

魔法陣2枚分の衝撃波が、シルビアの衝撃波など軽々と食い破り、逆に彼女に襲い掛かる。

シルビア「それじゃあ、届かないわよ」

シルビアの前に中学生くらいの少年が躍り出る。彼女の盾になるように。

プシュウウウウウ!と削板の衝撃波が拡散された。

削板「お?」

シルビア「『衝撃拡散』で衝撃波を拡散しただけだよ。分かる?もう衝撃波攻撃、いや物理攻撃は効かないんだよ」

削板「何だそう言うことか。だったら、拡散しきれない衝撃波をぶつければ良いだけじゃねぇか」

シルビア「そう思うなら、やってみればいいじゃない?」

削板「言われなくてもいくぜ!『六重魔法陣の衝撃』(ヘキサスペルインパクト)!」

魔法陣6枚分の衝撃。単純に考えて先程の3倍の威力。

シルビア「ふふ」

余裕の笑みを崩さないシルビアの前に、今度は中学生くらいの少女が2人、彼女の前に躍り出る。
ズドゴォォ!と魔法陣の衝撃波が跳ね返された。

削板「おお?」

疑問を露にしながらも、跳ね返された衝撃波はきっちりと避けた。

274 : SS寄稿... - 2011/12/30 10:02:11.77 BMIoR+No0 263/490

シルビア「ま、魔法陣の衝撃波攻撃は直線的だものね。かわすのは比較的難しいことじゃない」

削板「仕方ねぇ。もっともっと強力な、根性ある一撃を放つっきゃねぇか」

シルビア「待って。不毛な戦いは止めましょう。これ以上は疲れるだけだよ?」

削板「俺はスタミナと根性には自信あるんだが?」

シルビア「あのさぁ、今衝撃波跳ね返されたばっかじゃん。それで分かんないの?君の衝撃波対策は万全なんだよ?」

削板「いーや、俺の衝撃波が足りなかっただけだね」

シルビア「あのね、君が魔法陣を最大8枚まで並べて顕現させる事が出来ることは分かっているんだよ?
     それを見越したうえで、準備万端だって言っているの。
     さっきオッレルスを倒した時のやつは、避けられない為の広範囲攻撃だから、一点に固まって冷静に防御すれば問題ないしね」

削板「おいおい。超能力者か?」

シルビア「超能力が当たり前の学園都市で何言っているの。私の『予知能力』のすごさ、分かったでしょ?」

削板「分かったけど、俺が退く理由にはならねぇなぁ」

シルビア「そうね。もう私の能力の凄さを説いても意味ない気がする。だから、彼らの素晴らしさを説くことにするわ」

275 : SS寄稿... - 2011/12/30 10:04:51.89 BMIoR+No0 264/490

削板「いや、必要ないん」

シルビア「まずね。あなたの攻撃を拡散させる『衝撃拡散』が3人。この人達は衝撃を増幅させる事も出来るの」

削板の言葉を遮って、シルビアは続ける。

シルビア「でね、さっきの反射した2人が『衝撃反射』(ショックリフレクト)。言葉通り、あらゆる衝撃を反射するのね」

削板「そうか。んじゃあ」

シルビア「で、極めつけは残りの2人。『衝撃吸収』(ショックドレイン)って言って、衝撃を吸収するの。
     吸収するだけじゃなくて、吸収した衝撃を放出する事も出来るの」

削板「もう分かったから、それじゃあ」

シルビア「てことはね。
     衝撃を増幅させる事も出来る『衝撃拡散』が『衝撃吸収』に攻撃して、衝撃を吸収させる事が出来る訳よ。
     つまり、永久機関の完成。そして防御は『衝撃拡散』と『衝撃反射』がやってくれる。
     この完璧な布陣、崩せるかしら?」

削板「うーん、よく分からねぇけど、根性出しきるだけだな」

シルビア「はぁ。これだけ説明しても分からないの?簡潔に、たった1つの答えを教えてあげる。
     “今の君”じゃ、どうやったって勝てやしないよ。物理攻撃は効かないからね。
     炎とか電撃とか、エネルギーでしか私達は倒せない」

削板「関係ねぇよ。根性で何とかする」

シルビア「この分からず屋が。もういい。やっちゃいなさい」

シルビアがそう命令すると高校生ぐらいの少年、『衝撃吸収』の2人が彼女の前に躍り出て、両手を前に突き出した。
同時、

ゴバッ!と壮絶な衝撃波が発射された。

削板(避け――られねぇなぁ!)

避けられる一撃を、あえて真正面から受け止めたくなったとかではない。
超強力かつ超広範囲の衝撃波が迫ってきている。迎え撃つしかない。
目の前に8枚の魔法陣を並べて顕現させ、それを殴り飛ばす。

削板「『八重魔法陣の衝撃』(オクタスペルインパクト)!」

魔法陣が壊れ、衝撃波が放たれる。魔法陣8枚分の衝撃は、一点集中型の攻撃の中では削板の最強技。
つまり、これが破られれば削板の攻撃は全て通じない事になる。

最強の衝撃波と究極の衝撃波がぶつかり3秒ほど拮抗するが、最終的には『衝撃吸収』の衝撃波が食い破り削板に向かう。

削板「ちっ!」

舌打ちをしながら、自身の身長と同じくらいの魔法陣を目の前に3枚ほど顕現させる。ガードの為だ。

しかし衝撃波はそれすらも簡単に食い破り、削板にぶつかった。

削板「ぐおっ!」

喰らった衝撃波により数十mは吹き飛ばされるが、地面をスライドする事によって倒れる事はなかった。

276 : SS寄稿... - 2011/12/30 10:05:58.41 BMIoR+No0 265/490

削板「ふぅ」

溜息をついて背中から地面に倒れ、大の字で仰向けになった。

削板(参ったなオイ。攻撃は悉く通用しねぇし、もう疲れたし)

諦めた訳じゃない。諦めた訳じゃないが、どうしても勝つ方法が分からない。
一旦退くか?いや、そんな根性のない事は出来ない。

削板「……俺1人じゃどうしようもねぇな」

一方、倒れている削板の様子を見ていたシルビア達は、

シルビア「どうやらようやく諦めたようね。最後の引導は私が渡してくる」

柄しかない剣を地面に向けて、風を放つ。
シルビアはロケットのように浮かび上がった。削板を真上から刺す為に。

削板は数十m真上にシルビアを見た。柄しかない剣は下に向けられている。このまま倒れていたら殺される。

シルビア「さようなら」

大気を放出から、刃の形へ変更。シルビアの自由落下が始まり、隕石の如く削板へ突っ込んでいく。

ゴドン!と風の刃が地面に直撃し、莫大な煙が発生した。

277 : SS寄稿... - 2011/12/30 10:11:42.90 BMIoR+No0 266/490

シルビア「……避けられた」

今のを喰らっていれば楽に死ねたのに。八方塞がりな事に変わりはないのだから、諦めてさっさと死ねよ。
そんな事を思っているシルビアの数m横で、

削板「もしもし、ちょっと根性あるアドバイスが欲しい」

呑気に携帯で電話をかけていた。

雲川『何だ?今の私は、軍覇達の行動を把握しきれていないのだけど』

削板「んーとなぁ、俺の攻撃が全て通用しない。どうやったら勝てる?」

説明もへったくれもなかった。
今の発言を聞いて常人なら「もうちょっとくわしく……」とか「逃げるしかないんじゃね?」とか、
とにかくまともなアドバイスは出来ないだろう。
しかしながら雲川芹亜という少女は、削板と幼馴染であり、恋人であり、彼を理解している彼女は、
まともな説明は期待していなかった。そして論理的な説明をしたって理解してくれないのも分かっている。
だから彼女は、簡潔に言った。

雲川『攻撃が通用しないとはつまり“今の軍覇”ではどうやったって勝てない訳だ。
   なら話は簡単だけど。強くなればいい。この戦いで進化して、新技を編み出す。
   たったそれだけのお話さ。簡単だろう?』

こんなアドバイス、常人なら「ふざけんな」となっているだろう。しかし削板軍覇という少年は、常人ではない。

削板「……そっか。ありがとう芹亜。おかげで勝てそうだ」

雲川『当たり前だけど。軍覇には私とイチャイチャして、結婚して、子供を授かって、幸せな家庭を築き、
   私と子供と孫に看取られて大往生するという義務がある。死ぬのはもちろん、負けることすら許さないけど』

削板「もちろんだ。けど、俺の方が長生きする。俺がお前を看取る。最愛の人を失う悲しみを、お前には味あわせない」

雲川『……バカ。私だって、軍覇に失う悲しみを味あわせたくない。先に死ぬのはお前だ!』

削板「いーや俺の方が根性で長生きするね。200歳まで生きるもんね!」

雲川『だ、だったら私は300歳だけど!絶対絶対ぜーったい私の方が長生きしてやるし!』

削板「いーや俺が――」

シルビア「おーまえらあー!」

通話の内容がわずかながらに聞こえていたシルビアがぶちぎれた。
理由はいろいろある。戦闘中に電話をかけていたり、呑気に会話していたり、挙句の果ての惚気。
そして進化して勝つなど、もう発言のすべてがムカつく。

シルビア「行くぞ皆!このムカつく馬鹿どもをぶちのめす!」

削板「なんかキレているみたいだから切るわ」

雲川『うん。愛している』

通話が終わり、戦いは最終局面へ。

278 : SS寄稿... - 2011/12/30 10:15:53.34 BMIoR+No0 267/490

シルビア「『衝撃拡散』は『衝撃吸収』に攻撃しまくって衝撃を溜めろ!次で確実にぶちのめす。
     『衝撃反射』と余りの『衝撃拡散』は私の周りにつけ。最大まで大気をチャージする。
     それまでお前らは防御だ」

シルビア達はあえて動かず究極の一撃の為のチャージの段階に入った。
それが意味する事は、ジタバタしなくても勝てる。というシルビアの宣戦布告。

削板(あの女を狙っても、衝撃を溜めているところを狙っても、どうしようもないか)

やはりこの状況、セオリー通りなら逃げるか、ジタバタせずに体力回復を図るか。
どの道闇雲に攻撃をする事だけは有り得ない。さすがの削板にもそれは分かる。
だからと言って、逃げる気も更々ないが。

削板(あの女も芹亜も“今の俺”じゃあ勝てないと断言している。
   勝つには進化して新技を編み出すしかない……)

無い頭を振り絞って、削板は考える。

削板(……待てよ。あの女、確か炎や電撃などのエネルギーでしか倒せない。と言っていたな)

つまり裏を返せば、炎や電撃などのエネルギーならば、倒せると言う事。

削板(だが今の俺では、そんな技は出来やしない……けど、過去の俺は)

『念動砲弾』という、まあ端的に言えば衝撃波攻撃とか、殴るなどの物理攻撃。
過去の自分も今の状況では勝てない。と思ったが、よくよく思い出してみると、

削板(あれ?確か俺、爆発も起こしてなかったっけ?)

そうだ。事あるごとに背中に七色の爆発を起こしていた。それも衝撃と言えば衝撃だが、火力も伴っている。

削板(つまり、それが起こせりゃあ――)

この勝負、勝てる!

削板(――けど、あの時は漠然と力使っていたからなぁ。まあ今もだけど)

削板はある意味天才的な人間だ。IQと言う意味では点で駄目だが、戦闘センスがずば抜けている。
故に戦闘に関しては、あまり考えた事がない。どうすれば勝てるとか、どうすれば攻撃を避ける事が出来るとか。

削板(なんとなくでは、駄目なのか)

考えるときに来ているのかもしれない。とは言えそんなに時間もない。せいぜいあと2分ぐらいではないか。

削板(そう言えばアイツら、大事なのはイメージって言っていたな)

魔術を教わったフィアンマとヴェントを思い浮かべながら、彼らに言われた事を思い出していた。
例えばフィアンマなら、炎を出すとき、頭の中で炎をイメージしていると言う。

削板(イメージか……考える余地もなく、やるっきゃねぇよなぁ)

かつて爆発を起こしていた。という事で炎をイメージしてみる。せっかくだからシルビアが言っていた電撃も。

279 : SS寄稿... - 2011/12/30 10:19:20.19 BMIoR+No0 268/490

シルビア(さっきから仁王立ちしているが、結局諦めたと言う事で良いのか?)

もうあと10秒もすれば、チャージは完了する。『衝撃吸収』の方も、もう充分だろう。

シルビア「皆、10秒後発射するからね!」

削板(10秒か……)

10、9、とシルビアのカウントが始まるが、どうせ超広範囲攻撃が来るだろうからジタバタしない事に決めた。
だからと言って正面から受け止めるのも芸がない。

削板(イメージしろ……)

魔術とは『才能の無い人間がそれでも才能ある人間と対等になる為の技術』である。
それを使役するのには、色々な手順を踏まなければいけない。
イメージする事は確かに重要ではあるが、今までできなかった(もしくはしなかった)ことを、
イメージすればいきなり出来るようになるほど、魔術は甘くない。
そんな事は、さすがの削板も理解している。だがそれでも。

削板(――やるしかない。大丈夫だ。絶対に出来る!)

削板が、頭の中にあるイメージを浮かべた、その時だった。

シルビア「3、2、1、発射ぁ!」

カウントが終わり、シルビアの柄しかない剣から膨大な風が吹き荒れ、『衝撃吸収』の両手から衝撃波が放たれ、合わさった。
超広範囲、超強力なその衝撃波は喰らえば即死だ。おそらく欠片も残らない。
先程のは自身の衝撃波とガードで大分弱っていたから耐えられたが。

削板「俺も行くぜ!空に!」

ドッゴォン!と削板の足下から爆発が起きた。その勢いで彼は100mほど真上に跳び上がる。

シルビア「えええええ!」

シルビア達の衝撃波は扇状に広がり高さは30mほどだ。到底避けられるものでも、受け止められるものでもないはずなのに。

削板「今度はこっちの番だっー!」

削板の両腕を青い炎が覆う。そしてジャブを打つように連続で突き出す。
ボボボボボ!と覆われていた青い炎の一部が連続で放たれ、流星群のようにシルビア達に降り注ぐ!

シルビア「……終わった」

たった今書き換えられた未来を予知したシルビアは悟った。
この勝負、勝てない。それどころか、逃げることすら叶わないと。

降り注ぐ青い炎が地面に直撃した煽りで、所詮は衝撃に対抗できるだけで特に動けもしない7人の男女は倒れた。
シルビアだけは足掻きで煽りを避けるが、

削板「終わりだぁぁぁ!」

いつの間にかシルビアの後ろに立っていた削板は、電撃を纏わせた右拳を繰り出した。
一応反撃は出来たが、どうせやられると分かっていたシルビアは、甘んじてその拳を喰らった。
その一撃でシルビアはノックアウト。勝負は決した。

280 : SS寄稿... - 2011/12/30 10:20:00.04 BMIoR+No0 269/490

削板「ふぅー」

滅茶苦茶疲れた。今すぐにでも休みたいところだが、そうも言っていられない。
まずは8人を回収して増援に行かないと。

削板は魔道書を持って、シルビアにかざそうとしたところで、魔道書が震えている事に気付いた。

削板「ん?……まあ、いいか」

構わず魔道書をかざす。と同時、

削板「おわぁ!」

魔道書から黒い影が飛びだした。

281 : SS寄稿... - 2011/12/30 10:21:31.03 BMIoR+No0 270/490

所詮は少女の拳。結標が放ったそれは、青髪の掌にあっさりと受け止められた。

結標「くっ!」

結標はすぐにテレポートして体勢を立て直して、もう一度アタックを仕掛けようとして、

青ピ「させへんよ」

青髪が彼女の体を引き寄せ、抱きしめた。

結標「あふ……」

恋焦がれている彼氏に抱きしめられた嬉しさで、頭が空白になった。組み上げた計算式が吹っ飛んだ。
しかしすぐさま切り替え、テレポートしようとした時には遅かった。

体が『洗脳操作』に支配され、動かせない。

結標「下衆な真似をしてくれるわね……!」

嬉しさで頭が真っ白になったその一瞬。
その一瞬で『洗脳操作』が結標の体を支配したのだ。これでテレポートもできない。
厳密に言えば使えない訳ではないのだが、使うのは得策ではない。
たとえば『窒素装甲』なら、体が動こうが動かなかろうが、窒素を纏って害はない。
しかしテレポーターには弊害が発生する。
体が動かなければ、たとえば上にテレポートすれば通常なら着地できるところを、受け身も取れずに地面に落下することになる。
他には、基本的にテレポーターは自由度の高すぎる能力に基準をつけるため、使用する際に何らかの動作をする事が多い。
結標なら、現在は行っていないが軍用懐中電灯を軽く振るっていた。
白井黒子は金属矢をテレポートする時腕を振るう。その方がイメージしやすいからだ。

青ピ「すまんな淡希。手荒な真似はしたくないから、こうするしかないんや」

結標「何が手荒な真似はしたくないよ。4月8日、私の水筒に薬を仕込んだのはどこの誰だったかしら?
   ……いつまで抱きしめているつもり?さっさとその汚い体を離しなさいよ」

思っている事と正反対の言葉で、しかも追い詰められているにもかかわらず強気で口汚く青髪を罵る結標。

青ピ「本当に悪いと思っている。これには理由があるんや」

言いながらも、青髪は結標の言う事に素直に従って、彼女から少し離れた。

結標「理由がある?理由があったら彼女を傷つけて良いと思っているの?世界を滅亡させていいと思っているの?」

ここぞとばかりにたたみ掛ける結標だったが、その返答は意外なものだった。

青ピ「いいわけ……あらへんよ」

自身にも食蜂にも否定的な返答。

結標「え?」

青ピ「だから、理由がある言うてるやろ。それを聞いてほしい」

282 : SS寄稿... - 2011/12/30 10:24:01.35 BMIoR+No0 271/490

青ピ「せやなぁ。まず僕の返事で分かったと思うけど、僕は操られていないんや」

結標「……そう」

青ピ「意外と驚ろかへんねんな」

結標「だって、洗脳されていないと初めから思っていたもの。だからこそ、食蜂に協力しているあなたに憤っていたのよ」

青ピ「その割には、僕の返答に少し困惑していたやないか」

結標「演技を続けるかと思っていたから、素直な返答に戸惑っただけよ。
   状況を打破する考えが浮かぶまでの、時間稼ぎのつもりだったのだけどね」

青ピ「どうやって、いつ気付いたん?」

結標「初めからって言っているでしょ。
   自分が洗脳されていたという事実を知覚した、つまり洗脳が解けた瞬間から。どうやっては、騙されたからよ」

青ピ「騙された?薬のことかいな?」

結標「そうよ。4月8日の朝、あなたは男子禁制の女子寮まで来て、お弁当を作ってくれた。
   でもね、かつて仮にも暗部に身を置いていた私は、一般人よりは勘が優れているつもりだし、
   人間が洗脳されているかどうかぐらい分かる。
   けれど、あなたにはそういう異常が見当たらなかった。
   だからこそ、弁当と水筒に不信感を持たず、まんまと騙された」

青ピ「つっちーから連絡来なかったん?」

結標「来なかったわよ。なぜかは知らないけど、おそらく、私を心配してなのでしょうね。
   あなたは洗脳されている。という事実を私が知れば、錯乱するとでも思ったんじゃないかしら」

青ピ「ふーん。つっちーなら、もっといい選択が出来たと思うけどなぁ」

結標「アイツだって動揺していたんでしょ。そんな事より、その理由とやらを聞かせなさいよ。
   良い訳ないと分かっていながらも、彼女を傷つけ、食蜂に協力するだけの理由を」

青ピ「言葉責めにも程があるやろ……そうやな。
   間違っていると分かっていながらも食蜂に協力する理由、
   それは、彼女の考えに同意できる部分があるのと、僕の恩人だからや」

283 : SS寄稿... - 2011/12/30 10:27:48.05 BMIoR+No0 272/490

結標「恩……人?」

青ピ「そう。恩人や。彼女のおかげで、僕は救われた」

結標「どういう……意味?」

青ピ「それを説明するには、僕の過去を紐解く必要がある。
   僕はね、実を言うと『置き去り』で5歳のころから学園都市に身を置き、
   様々な実験のたらい回しにされ、小学4年生の時点でレベル5となった」

結標「……」

青ピ「それで、僕は酷く寂しがりやでな。どうしても友達が欲しかった。
   だから能力使って研究者達と真っ向から対立した。僕を研究したかったら、学校に通わせろってね」

何となく、この時点でこの話の結末が分かった。
高位能力者なら高確率で歩む道が、容易に想像できる。

青ピ「でな。あっさりと通学の許可は下りた。そして意気揚々と登校した。
   ここまでは良かった。いざ学校生活が始まると、レベル5の僕に友達なんて1人として出来なかった。
   高位能力者の淡希なら、少しは経験したんじゃないかと思う。力があるがゆえに起こる弊害。
   僕は強力な能力によって妬まれ、疎まれ、畏れられ、避けられ、媚びられた」

そうだ。全員とは言わないが、高位能力者の大概はそうなる。
レベル4だった結標ですら、友達はなかなかできなかった。それがレベル5なら、尚更だろう。

青ピ「それだけやない。妬みが、実行に移された。つまり、いじめや。
   僕はいじめられた。でも、やり返す事は出来なかった。皆を傷つけたくなかったから」

結標「いじ、め……」

さすがの自分でも、いじめはなかった。やさぐれて刺々しかった態度を取っていた為、報復を恐れたのかもしれない。
だが彼は違ったのだろう。皆と友達になりたいがために、必要以上に優しく下手に出たのだろう。
そのせいでなめられたのだろう。レベル5が反撃すれば相手を傷つけるどころか殺してしまうかもしれない。
つまり反撃できない事をいいことに、いじめが起こったのだろう。

青ピ「それでも僕は考えたよ。でも、どうしても解決する手段は思い浮かばなかった。
   僕は、僕をこの学園都市に捨てた親と、こんな能力を生み出させた研究者と、
   何よりこんな能力を扱えるようになってしまった僕自身を恨んだ」

結標「そんな、あなたは何も悪くないじゃない……」

思わず同情してしまっていた。

青ピ「それでも諦めずに学校に通い続けたけど、結局友達は出来ず卒業した。
   僕はもう絶望していた。こんな僕には、友達は一生出来ないんやろな。って。
   レベル4ぐらいまでなら、名門中学に行けば力の差はあまりなく妬みとかも少ないはずやけど、
   奇しくも僕は、当時7人しかいないレベル5。もう、あの時は自暴自棄やった」

そう言えばと、結標は思いだす。自分も中学の頃は小学校より楽しかった記憶がある。
きっと彼の言う背景があったからだろう。

284 : SS寄稿... - 2011/12/30 10:31:43.63 BMIoR+No0 273/490

青ピ「そんな時、僕は食蜂に出会った。
   『心理掌握』の彼女は、一目見ただけで僕の気持ちを汲み取り、親身になって話まで聞いてくれた。
   同じ穴の狢だったからかもしれない。そして1つの提案が出された。嘘をつけばいい。ってな」

結標「なるほど。でも『身体検査』(システムスキャン)は誤魔化せないじゃない?」

青ピ「ところが、そうでもない。システムスキャンは大きく分けて、2つあるやろ。
   実技と機械の検査。実技に関しては、わざと手を抜けばいい。
   誰だって全力を出すシステムスキャンで、まさか手を抜いているとは思わないやろ?」

結標「それはそうかもしれないけど、機械の方はどうするのよ?」

青ピ「あれなぁ。実は拒否する事が出来る。それも、特別な理由とかは無しでなぁ」

結標「えぇ!?」

衝撃の事実に、驚きを隠せない。

青ピ「まあでも、拒否するバカはいない。誰だって今の実力を知りたいしな。
   だからこそ、頭がおかしいとは思われるけど、断る事自体は出来る。
   でも結果オーライやったで。僕には念願の友達が出来た。カミやんとつっちーも、その時友達になった」

結標「よかった……」

感情移入してしまい、思わず呟いていた。

青ピ「もうめちゃくちゃ嬉しかったね。毎日が楽しかった。
   途中カミやんがグレたりしたけども、更生できたし、寧ろその一件でカミやんとつっちーとは親友になった」

そこまで言われて、結標は多少冷静になって、

結標「……その親友を、あなたは裏切っているのよ。
   最っ低の親友を持って、彼らもあなたのことを軽蔑しているでしょうね。勿論私もだけど」

青ピ「唐突に毒舌復活やな。けれど、最後まで話は聞いてほしい。
   結局嘘をつき続けて、今までうまくやってきた。
   これができたのは、紛れもなく食蜂と出会い、アドバイスしてもらったからや。
   まあ12月の学園都市の危機には、今までひた隠しにしていたレベル5を明かしてしまったけどな。
   知っているのは一部の人間だけやし、まだ大丈夫や」

結標「何が大丈夫なのよ?あなたはこの街を守りたくて、12月わざわざ出てきたんでしょ?
   それなのに、世界滅亡の加担をしていいの?」

青ピ「よくないけども、恩人やし、考えに賛同できる部分もある言うてるやろ。
   淡希の脳にも残っているはずやで。食蜂の考えが」

結標「そんな事分かっているわよ。それでも世界滅亡なんて間違っているでしょ。
   あなただってそれが分かっているから、反対なのでしょう?だったらどうして反抗しないの!?」

青ピ「無理に決まっているやろ。200万の脳を統べる食蜂に勝てるわけないし、何度も言うけど、恩人で」

結標「恩人恩人って、嘘つくように言っただけでしょうが!あなただってその内気付く事が出来たはずよ!」

青ピ「いや、それはおそらく有り得へん。
   確かに実技の手を抜く位は思いついたかもしれんかったけど、機械検査を拒否できる事までは、案外想像できひん。
   それにや。実は万が一僕がレベル5と知れた時には、その人の記憶を消してあげるとまで言われている。
   淡希達にはその必要がないから頼まへんかったけど、姫やんとか一部の例外を除き、クラスメイトにバレたら頼むつもりや」

結標「はぁ?意味が分からないわ。記憶を消すとかどうとか、世界の滅亡と天秤にかける事じゃないわ!
   そこまでしてレベル5が露見する事が嫌なの!?」

青ピ「嫌や」

即答だった。

285 : SS寄稿... - 2011/12/30 10:36:14.22 BMIoR+No0 274/490

結標「……私を馬鹿にしているの?私も今やレベル5。私という彼女と同列な事がそんなに嫌かしら?」

青ピ「嫌やね。絶対嫌や」

結標「見損なった。本当に見損なった。あなたと同じ息すら吸いたくない」

青ピ「なら、この際言わせてもらうけど、淡希友達いないやろ?」

結標「っ!それがどうしたって言うのよ!」

青ピ「分かっているんやろ?淡希は綺麗やし、巨乳やし、実は優しい人や。
   なのに友達が出来ない理由は、たった1つ。レベルの高さや。レベル5になって、妬みとかが加速した結果や」

結標「そうかもしれないけど、そこまでしてレベル5が知れるのを恐れるのは間違っているわ!」

青ピ「それは淡希が、レベル5になって日が浅いからや。それに今となっては、ある風潮が薄れてきたからな」

結標「ある風潮?」

青ピ「レベル5は人格破綻者の集まり、ってやつや。最近はレベル5の面子も一新して、この風潮は薄れてきたけどな。
   少し前までは、わりと有名な風潮やった」

結標「それにカテゴリーされるのが嫌だから、って言いたいの?」

青ピ「そりゃそうやろ。人格破綻者言われて喜ぶ奴なんて、よっぽどのマゾくらいや」

結標「でも所詮は噂みたいなものでしょう?噂なんて関係ないじゃない。ちゃんとしていれば、皆理解してくれるはずよ」

青ピ「それはないな。
   レベル5の中で1番まともと思われる御坂美琴ですら、人の輪の中心に立つ事は出来ても、人の輪に入る事は出来ない。
   これって別に、彼女の性格とかは関係ない。レベル5だから。それだけでや」

結標「そんなの……違うでしょ……何で言い切れるのよ」

青ピ「僕だってレベル5だからや。淡希もその内実感すると思うで。
   レベル5であることの弊害を。妬みや媚びなどはレベル4の比ではないよ。
   周囲からの過剰な期待もあるし、一歩間違えればノイローゼになる。
   レベル5の皆はね、初めは普通の人間だった。それが実験や周囲の反応で狂っていった。
   僕はレベル5であることを知られるのはどうしても嫌や。トラウマなんや」

結標「そう……」

理屈は分かる。理屈は分かるが、納得は出来ない。
だって、だとしても、そんなのはおかしい。

結標「結局のところあなたは、理由を並べるだけ並べて自分の行動を正当化している愚図なのね。
   心底見損なった。もう無理。あなたがこの世に存在していることが許せなくなったわ」

辛辣な言葉に、平静を決め込んで来た青髪もさすがに声を荒げる。

青ピ「淡希はレベル5の辛さを分かっていない!強すぎるが故の孤独!嫉妬と羨望の眼差し!
   そして暗部には利用されるだけ利用されて!僕の気持ち分かるやろ!」

結標「分からないわ。あなたみたいなチキン野郎の気持ちなんて分からない。
   私は逃げなかった。負け犬にだけはならなかった」

青ピ「何やと……」

結標「レベル5だから友達が出来ない?そんなものは自分の体たらくの言い訳でしょうが!」

確かに、高位能力者が様々な背景で友達が出来にくいのは事実だ。だが、

結標「美琴は、彼女を心から尊敬している後輩がいるし、友達も居る。   
   一方通行は、今まで散々もがき苦しみながらも、彼なりの平和を築いている。垣根帝督だって、今や彼女がいる。
   元ナンバーセブン削板軍覇にも彼女がいるし、絹旗最愛にも友達がいる」

今言った事も事実だ。

286 : SS寄稿... - 2011/12/30 10:37:57.97 BMIoR+No0 275/490

結標「そして私にだって、大切な仲間達がいる。人の理解を得るのは困難だけど、不可能じゃない。
   それをレベル5だからという理由で理解を得られないと言うのは、あなたの甘えでしかない!」

かつて年下のテレポーターに言われた事を思い出す。

結標「危険な能力を持っていれば、危険に思われると本気で信じているの?
   私や美琴、レベル5の皆が楽な方法でこの場所に立っていると思っているの?
   皆努力して、頑張って、自分の持てる力で何が出来るかを必死に考えて行動して、
   それを認めてもらってようやく居場所を作れているのよ!?」

青ピ「っ……」

結標「結局あなたの言い草は、見下し精神丸出しの汚い逃げでしかないわ!そんな腐った性根、私が叩き直してやる!」

その時、結標の力強い意志が奇跡を起こした。
『洗脳操作』の支配を一時的に破り、繰り出した拳が青髪の顔面を捉えた。

青ピ「が……」

結標「目は覚めた?……まだよね。いいわ。もう一発ぶん殴って――」

しかし、結標の言葉はそこで途切れた。男児の1人が、彼女の脇腹を拳銃で撃ち抜いたからだ。

青ピ「な……何やっとるんや!彼女に手荒な真似はするなと言うたやろ!」

どうやら青髪の意思ではないらしい。そりゃそうだ。
今更になって撃ち抜く位なら『洗脳操作』で体を止めるなんて言う回りくどい事はせず、初めから撃っているだろう。
つまりこれは、男児の独断。

結標「く……そ……」

奇しくも、かつて年下のテレポーターを追い詰めた文明の利器にやられた形になった。

青ピ「くっそ!」

青髪は水流を生み出し、男児どころか結標を除く全ての人間を水流で飲み込んだ。そして結標を抱きかかえる。

青ピ「大丈夫か淡希!?」

結標「触ら……ないで。吐き気が……する」

青ピ「僕が嫌いなのは分かる。けど今はそんなこと言っている場合や――」

青髪の言葉も、最後まで続かなかった。一陣の風が吹いたかと思えば、一方通行が青髪の後ろに立っていた。
既に右手を伸ばしている。

青ピ「――くっ!」

右手が頭に触れる直前で、青髪は結標を抱えながら距離を取った。

287 : SS寄稿... - 2011/12/30 10:39:37.52 BMIoR+No0 276/490

結標「待っ、て……彼は……洗脳されて……いないの……」

一方通行「はァ?じゃあ何か。目の前に居るコイツは、自らの意思で食蜂に協力してンのか。
     まァそうか。じゃなきゃオマエを抱える理由がねェもンなァ。
     あァ?違うか。オマエもまた洗脳されてンのか結標。テレポーターは利用価値高いからなァ。
     待てよ。食蜂は一度」

結標「変な勘繰り……しないで……私はもう正常だし……彼も洗脳はされていない。
   食蜂に加担する……とてつもないアホだけど……」

青ピ「一方通行君なら分かるやろ?僕の苦しみ――」

青髪は、一方通行に簡潔に説明をした。意外にも一方通行は大人しく聞いていた。
そして聞き終わって、開口一番、

一方通行「成程ねェ。つまり、オマエは自分可愛さに彼女や親友、世界をも捨てられる、とンでもねェ薄情者って訳だ」

止めの一言を告げた。

一方通行「なァ、薄情者に抱きかかえられている結標さンよォ、もうコイツのこと軽蔑してンだろ?
     殺しはしねェけどよォ、手足バッキバキに折るぐらいはいいンだよなァ?」

結標「そうね……お願い……」

青ピ「ちょ、ちょい待てや!僕の気持ちも――」

一方通行「黙れよクソ野郎。オマエを見ているとムカつくンだよ。かつてのバカな俺を見ているようでなァ!」

ドゴン!と一方通行が地面を蹴って駆け出した。

288 : SS寄稿... - 2011/12/30 10:41:21.50 BMIoR+No0 277/490

「狂い咲け」

植物園の植物が蠢きだし、蔦がフィアンマ達に向かう。

ヴェント(蔦……嫌な感じ……)

かつて『神の神秘』(ラジエル)という植物を操る天使と戦い殺されかけた為、蔦や蔓などには軽いトラウマがあった。

フィアンマ(焼き払うのは簡単だが……)

ここで植物を燃焼させれば相手はもちろん、ヴェントすら巻き込んでしまう。
それにいくら洗脳されていないとはいえ、殺す訳にはいかない。

よってフィアンマは、若干足が竦んでいるヴェントを抱え、植物園から抜け出した。

「あらら。無様に逃げるなんて、なんて情けない……」

彼女もあっさりと植物園から抜け出し、フィアンマ達の前に立つ。

フィアンマ「操れる植物がなくなってしまったぞ。いいのか?」

「何を言っているのかしらあなたは。
  私の『百花繚乱』(ブルームランブル)は、植物を操るなんて事、数ある能力の1つにすぎないわ」

フィアンマ「そうか」

ヴェント「どうするフィアンマ?」

フィアンマ「どうするもこうするもな。能力の全容を把握しきれない以上は何とも言えんだろう」

「ねぇ。考え直さない?あなた達では私には勝てないわ。
  吸いつくされて、カラッカラに干からびて死ぬだけよ?」

フィアンマ「愚問だな。俺様達は死ぬつもりもないしな」

「あなたもかつては、世界を救おうとしたのでしょ?なら分かるはずよ。この世界が、どれだけ穢れているか」

フィアンマ「ああ。俺様もかつてはそう思っていた。でも、世界はちゃんと機能している。
      悪意も蔓延っているが、それ以上に善意で満ちている。
      世界に目を向けたこともないくせに滅亡滅亡と言っているのは、いささか滑稽だぞ」

「待ってよ。世界に目を向けた事もない?馬鹿言わないで。
  操祈も私も、世界を見た上で言っているのよ。操祈は人の深層心理すら覗ける。
  覗いたうえで、この世界を滅ぼそうと言っているの」

ヴェント「もういいよフィアンマ。結局は決裂。戦うしかない」

フィアンマ「やむを得ないな」

「調子に乗らないでよ愚民ども」

289 : SS寄稿... - 2011/12/30 10:43:37.59 BMIoR+No0 278/490

「饗宴のお時間よ」

両手を広げて、天を仰ぐ。
同時、彼女の周囲の虚空からいくつもの真っ白な花が咲き乱れる。

フィアンマ「あれは何だ」

ヴェント「まずいんじゃない」

ヴェントが危機を感じた時、真っ白な花から光線が放たれた。ズバァ!と光線はフィアンマ達の下に向かい駆け抜けた。

フィアンマ「危ないなぁ」

光線を避け妃の後ろに回り込んでいたフィアンマは、炎を纏った右拳を放つ。

「甘いわね愚民」

拳が来る程度、問題ないと言った調子だった。
妃の後ろの空間から咲いた赤い花が、フィアンマの拳を受け止めた。さらに纏っていた炎が吸収されていく。

フィアンマ(何だこれは?)

ズボと右手を抜き、後退して距離を取る。
それに入れ替わるようにヴェントがハンマーを振るい、風の杭を飛ばす。

「だからー、甘いって」

銀色の花が妃の体を包み込む。風の杭は直撃こそしたが、全く傷ついていなかった。

「今度はこっちの番ね」

フィアンマとヴェントの周囲に白い花が咲く。多角的に彼らを撃ち抜く為に。ズバァ!と光線が放たれる。

フィアンマ「ぐおっ!?」

ヴェント「いっ!?」

2人は無理に体を捻り光線を避けた。その為わずかに隙が生まれ、

「ほい!」

いつの間にかピンク色の傘を持ち、フィアンマに肉迫していた妃は、その傘を思い切り振るい彼の顔面を殴り飛ばした。

フィアンマ「がは!」

「まだよ」

パチン!と妃が指を鳴らす。するとフィアンマの胸の辺りに赤い花が咲き、爆発した。

フィアンマ「ぐおっ!」

いくら炎に耐性があるとはいえ、さすがに今の一撃はきつかった。

「まだよ」

ヴェント「させるか!」

2度目の追撃を阻むために、ヴェントが妃に突っ込んでいく。
その時フィアンマは、クス、と妃が微笑んだのを見逃さなかった。

フィアンマ「引っ込め!」

ヴェント「え?」

「飛んで火に入る夏の虫とは、まさにこのことね」

突っ込んでくるヴェントの目の前の空間に、彼女を包み込むぐらいの黄色い花が咲く。
それなりの速度を出していた彼女は、方向転換も出来ず黄色い花に飲み込まれた。

ヴェント「な――」

「ビリビリ拷問のお時間です」

ビリビリィ!と黄色い花から電撃が流れ、ヴェントを焦がした。
10秒後、花が開いて地面に落ちたヴェントは、死んではいないようだが、戦うのは無理そうだった。

290 : SS寄稿... - 2011/12/30 10:46:20.61 BMIoR+No0 279/490

フィアンマ「ヴェントぉぉぉ!」

叫びながら炎を纏った拳で妃を殴り飛ばそうとするが、やはり赤い花に阻まれる。それどころか、

「ぶっ、飛べっー!」

黒い花から噴き出した衝撃波が、フィアンマを襲った。

フィアンマ「くっそ」

吹き飛ばされ倒れているフィアンマの下に、青い花からウォーターカッターのような鋭い水流が放たれるが、
とび起きて避ける。

すると間髪いれずに、今度は水の鞭が飛んできた。
右腕を振るう事で軽く蒸発させ、水蒸気が発生したところで、

彼の体を、雷撃の槍が射貫いた。

フィアンマ「か……は……」

「まだよ」

そう言った時には、妃はフィアンマの目の前まで近づいていて、ドゴォ!と、傘の先端を彼の喉仏に食い込ませた。

それだけで終わらず、緑色の花を咲かせ、そこから蔦を出しフィアンマの体をぐるぐる巻きにして拘束した。

「さて、私の下僕になると言うのなら、解放してもよくってよ」

フィアンマ「喉を……潰しておいて……何を……言っている……」

かすれた声で、言葉を絞り出す。

「でもそうやって喋れない事はないでしょう?それに返事は、首を縦に振ればいい。私の下僕になるわよね?」

フィアンマは、何か諦めたように微笑んで、首を横に振った。

「はぁ?何でよ!?何でなのよ!?」

ゴッガッバキ!と、傘でフィアンマを何度も殴りつける。そんな中で彼は、漠然と考えていた。

今目の前に居る少女は、今まで戦ってきた人間の中では間違いなく最強だ。
今までのレベル5とは格が、次元が違いすぎる。
正直言って、このままでは勝てない。“救うための戦い”では、勝てない。

フィアンマ(あまり使いたくはなかったが……)

ヴェントも立ち上がっているのが見えた。その顔には覚悟の色が窺える。

フィアンマ(やるしか、ないな……)

フィアンマはまたしても笑った。

「何で……この状況で、笑っていられるのよ!」

両手で振り上げた傘を、思い切り振り下ろす。
が、力技で蔦から抜け出したフィアンマはそれを右手でキャッチした。
そして2秒もしない内に、傘を灰にした。

「な……」

フィアンマ「すまないな。少しだけ本気を出させてもらうぞ。死ぬなよ」

「何を……言って……」

妃が狼狽している間に、フィアンマの背中から赤いテレズマが翼のように噴出した。
ヴェントも同様に、背中から黄色いテレズマを噴出する。

フィアンマ「終わりだ」

291 : SS寄稿... - 2011/12/30 10:47:21.09 BMIoR+No0 280/490

そこからの戦いは1分もしないうちに決着した。
妃はありとあらゆる手段で攻撃防御を実行したが、大天使の力の一部を使役するフィアンマとヴェントには手も足も出なかった。
それでも生き永らえただけ称賛に値するだろう。

フィアンマ「何とか生き延びてくれたな」

ヴェント「ええ」

フィアンマ「傷は大丈夫かヴェント」

ヴェント「何とかね。多少は自己回復したし。フィアンマこそ大丈夫?」

フィアンマ「ああ。俺様は丈夫だからな。なら、もう気付いていると思うが、まだ戦えるんだな?」

ヴェント「というか、戦うしかないでしょ。さすがのあなたでも1人じゃ無理よ」

フィアンマ「そう言ってもらえて助かる。覚悟は良いか?」

ヴェント「もちろん」

295 : SS寄稿... - 2011/12/30 18:39:21.11 BMIoR+No0 281/490

三沢塾の2階廊下で上条達の前に立ち塞がったのは、緑に染めたオールバックに黄金の甲冑を着こんだアウレオルス=イザードだった。

アウレオルス「死ね」

右手に持っていたの拳銃の銃口を上条達に向け、引き金を引く。
弾丸が常人では反応出来ない速度で上条の額に向かう。

五和「させません!」

ガキィン!と、上条の前に躍り出た五和のメイスによってあっさりと弾かれた。

上条「別に避けられたのに。けどありがとう」

五和「いえいえ」

アウレオルス「愕然。まさか拳銃程度では殺せないのか?」

アウレオルスはわずかに動揺する。すると上条達は、

上条「五和、逃げるぞ」

五和「え?でも」

上条「いいから」

五和の手を引き、階段を駆け下りて行く。

アウレオルス「まさか、気付いたのか?」

アウレオルスはまたしても驚愕した。
だが自分も悠長にここに留まっていられない。早く脱出しなければ。

アウレオルスは廊下の窓から飛び降りた。

296 : SS寄稿... - 2011/12/30 18:41:09.13 BMIoR+No0 282/490

三沢塾から脱出した2人の前には、手入れを怠って荒れた金色の髪に褐色の肌、
擦り切れたゴシックロリータを着用しているシェリークロムウェルに、
背中までの赤毛を鉛筆くらいの太さの細かい三つ編みに分けているアニェーゼ=サンクティス、
三つ編みそばかすのアンジェレネ、猫目のルチア、金髪で胸の豊かなオルソラ=アクィナスだった。
4人は真っ黒な修道服を着ている。さらに彼女達の周囲には、鷲などの猛禽類、狼などの猛獣がいた。

五和「こ、これは……」

目の前に広がる光景について言及したかったが、まずは一番の疑問を上条にぶつける。

五和「な、なんで逃げたんですか?」

上条「いるんだよ。能力者がもう一人」

上条がそう言った直後だった。
ドバァ!と、三沢塾の中から大量の水が溢れだした。

五和「ひゃあ!?」

上条「『水流操作』だろうな。中に留まっていたら洗い流されていた」

五和「じゃあ、あの甲冑の人も……」

上条「アウレオルスも当然グルだろう。つまり、俺達は合計7人の能力者と戦わなければいけないってことだ」

そう言った上条の空気が変わる。『幻想殺し』を解除して『竜王』の力を纏ったのだ。

上条「目の前に居る5人は俺がやる。五和はまだこっちに来ていないアウレオルスと『水流操作』を頼む。
   おそらくは、サーシャだろうがな」

五和「は、はい!」

297 : SS寄稿... - 2011/12/30 18:42:53.79 BMIoR+No0 283/490

上条「先手必勝!」

駆けだした上条がまず狙うのはシェリーだ。

アニェーゼ「シスタールチア!」

ルチア「はい!」

シュルルルと、ルチアの体に巻きついていた包帯が、修道服の腕の部分から射出される。
とはいえたかが包帯。そんな紙切れ当たったって痛くないじゃん。と思うかもしれないが、
これは改良型『発条包帯』で、軽いのに堅いと言う代物だった。ちなみに上条の体にも巻いてあり、
ステイルからの弾丸を耐えられたのもコレのおかげである。

上条「ちっ!」

舌打ちしながらも、それを左手で冷静にキャッチし引っ張って引き寄せる。
引き寄せたルチアの顔面に、右ストレートを叩きこんでぶっ飛ばした。

アニェーゼ「何やってんですかシスターアンジェレネ!
      あなたのフォローが遅いから、シスタールチアがやられちまったじゃねぇですか!」

アンジェレネ「ひいぃ!?ご、ごめんなさいぃ!?」

キレ気味のアニェーゼが『蓮の杖』(ロータスワンド)の形をした杖を振るい、
謝るアンジェレネの周囲には様々な種類の刃物が浮かび上がった。

シェリー「エリス!」

オルソラ「さあ皆さん、出番でございますよ」

シェリーがオイルパステルを振るい、オルソラが周囲の動物に命令を出す。

五和「あわわわわ……」

いくら上条とて、これはまずいのではと慌て始める五和だったが、彼女も他人の心配をしている場合ではなかった。

緩くウェーブのかかった長い金髪に、ワンピース型の下着にも似たスケスケの素材と黒いベルトで構成された拘束服の上に
赤い外套を羽織って、リード付きの首輪という格好のサーシャ=クロイツェフが、五和の脳天狙って降ってきたからだ。

五和「くっ」

ガキィン!とL字型のバールの一撃をメイスで受け止める。

サーシャ「第一の質問ですが、なぜ私の攻撃を防いだのですか?」

五和「なぜって、怪我したくないからですよ」

サーシャ「第二の質問ですが、それならば避けると言う選択も出来たはずです。なぜ受け止めたのですか?」

五和「……別に関係ないでしょう。どうでもいい会話を繰り広げるつもりはありません!」

少し力を込めて、サーシャを弾く。

298 : SS寄稿... - 2011/12/30 18:44:48.64 BMIoR+No0 284/490

アウレオルス「依然。苦戦しているようだな少女よ」

弾かれたサーシャの傍らに、いつの間にかアウレオルスがいてそんな事を言った。

サーシャ「第一の回答ですが、まだ一撃防がれただけなのに苦戦とは心外です」

アウレオルス「あの少女には武器は通用しない。そうなれば当然、能力で攻めるべきだ」

サーシャ「第二の回答ですが、そう言うあなたの手には、黄金の剣が握られていますが。
     どう見ても武器で攻撃しようとしているようにしか見えませんが」

アウレオルス「私の能力ではこれが限界なのだよ。君のように便利な能力を持ち合わせていない」

サーシャ「私見一。私の能力を使えば、向こうで戦っている人達も流してしまいます」

アウレオルス「愕然。私ごと少女達を流そうとしたのはどこの誰だ?」

サーシャ「第三の回答ですが、あなたを信じての事です」

アウレオルス「ふざけるな」

などと2人は、五和を無視して会話を続ける。

五和「そこの2人のおバカさん!私を無視しないでください!」

言いながら様々な武器が収納してある魔道書から槍を取り出し、メイスを閉まった。
そして水浸しの三沢塾の中へと逃走した。

サーシャ「第三の質問ですが、三沢塾に入って何をするつもりなのでしょうか?
     あと挑発しておいて逃げるとはどういうことでしょうか?」

アウレオルス「釈然。甚だ疑問ではあるが、追いかけてみるしかないだろう」

2人は五和を追いかけ、三沢塾の中へと消えて行った。

299 : SS寄稿... - 2011/12/30 18:45:59.95 BMIoR+No0 285/490

アンジェレネとルチアは『念動使い』(テレキネシスト)だ。
彼女達は触れていようが触れてなかろうが、認識したものを自在に操る事が出来る。
アンジェレネは能力をフルに使い、刀や剣や槍や斧や矛などのあらゆる刃物30本を浮かせて、あらゆる角度から上条を狙う。

上条「邪魔だ」

しかし上条は、それらを素手で叩き割っていき、1分もしないうちにアンジェレネに肉迫して殴り飛ばした。

アニェーゼ「ちぃ!何なんですかアンタは!」

文句を言いながら、杖を上から下に振るう。
その杖の動きに連動して、上条の上から衝撃が襲いかかった。衝撃をモロに喰らって、少しだけ揺らぐ。

アニェーゼ「へへ。どうです――」

だがすぐに上条は持ち直し、一瞬でアニェーゼの目の前まで迫る。

アニェーゼ(そんな、私の『座標衝撃』(ショックポイント)をまともに喰らって――)

ゴギャア!と上条の拳は杖を破壊しアニェーゼの腹部に叩きこまれた。

オルソラ「心優しき貴方様に、この動物達を傷つける事が出来るでございましょうか?」

『精神感応』のオルソラは、鷹や梟や隼、コンドルなどの猛禽類、ライオンやトラなどの猛獣合計30匹を上条に襲わせる。

上条「知ったこっちゃねぇ」

右手に『竜王の顎』を顕現させ、咆哮させる。
それはとてつもない衝撃波となり、動物とオルソラを吹き飛ばす。

シェリー「潰せエリス!」

修道女たちとの攻防の間に、完成したゴーレムが上条に向かって拳を放つ。
それを上条は左手で軽く受け止め、右手の『竜王の顎』を再び咆哮させ、ゴーレムとシェリーを吹き飛ばした。
5対1にもかかわらず、圧倒的な力で上条当麻が勝利した。

300 : SS寄稿... - 2011/12/30 18:47:32.78 BMIoR+No0 286/490

五和「やーいやーい!こっちですよおチビさん!」

水浸しの階段の上から、サーシャを挑発する。

サーシャ「私見二。ものすごくムカつきました。至急迎撃に移ります」

アウレオルス「待て!どう考えても、何か罠があると――」

サーシャはアウレオルスを無視して階段を駆け上がろうとして盛大にコケた。
瞬間、五和は槍を階段に突き刺し後ろに飛び退いた。直後、

バヂィ!とサーシャは感電して気を失い、階段から転げ落ちた。

アウレオルス「何が!?」

アウレオルスは思わずサーシャの下に駆け寄り階段を見た。
すると4段目辺りに、ワイヤーが張ってあった。

アウレオルス(あれで転んだのか……だが感電の理由は……)

そんな事を考えていられたのも束の間、メイスを持って階段から飛び降りる五和が視界に入った。

アウレオルス「ちっ」

サーシャなど放ってアウレオルスは飛び退いた。メイスは空を切り、地面に直撃する。

五和「大人しくやられていればいいのに……」

アウレオルスにとっては滅茶苦茶な事ををぼやきながら、五和はサーシャを回収した。

五和「さて、次はあなたの番です」

メイスを構え直しながら、予告する。

アウレオルス「超然。私もなめられたものだな」

言いながらも床に“手を突っ込んで、黄金の剣を引き抜いた”。

五和「え???」

目の前で起きた現象に、目を点にするしかない五和にアウレオルスは告げる。

アウレオルス「当然。驚くのも無理はないだろうな。私の『黄金錬成』(アルスマグナ)は、能力の中でも最高峰だからな」

五和「説明になっていないですよ……」

アウレオルス「懇切丁寧に説明するとは言っていないし、義理もないが?」

五和「ぐぅの音も出ませんね」

アウレオルス「歴然。力の差を見せてやろう」

301 : SS寄稿... - 2011/12/30 18:49:40.62 BMIoR+No0 287/490

ガンゴンギィン!と三沢塾1階ロビーで、五和とアウレオルスは打ち合っていた。

五和「このっ!」

一際大きく振るわれたメイスの一撃をアウレオルスは軽く受け流し、触れた。
するとメイスは、アウレオルスが触れた箇所から黄金へ変わっていく。

五和「な――」

思わずメイスを手放し、後退する。黄金に変わったメイスは、黄金の槍へと変化した。

アウレオルス「私の『黄金錬成』は、触れたモノを黄金に変え、自在に操る事ができる。無論、それは人体にも適用する」

五和「まさに究極の錬金術って訳ですか……!」

魔道書の中から槍を引き抜きながら呟く。

アウレオルス「そうだ。究極の錬金術。それが我が能力の正体。さらに範囲までもが自由なのだよ」

五和「……どう言う意味ですか?」

アウレオルス「こういうことだ」

答えながら、両手を地につける。
当然、そこの床は黄金に変わったのだが、それが徐々に広がり挙句の果てには三沢塾自体が黄金へと変わった。

五和「これは……」

アウレオルス「美しいだろう?最早この建造物は、私の思いのままさ」

アウレオルスが恍惚の表情を浮かべた直後だった。五和の近くの床から、黄金の針が飛び出し始めた。

五和「くっ――!」

五和もバク転を開始して、連続で飛び出してくる針を回避。
このままバク天を続ければ、出入り口からこの建物を抜け出せる。
しかしこの時、五和は三沢塾全体がアウレオルスの手足であると言う事を正しく認識していなかった。

五和(あれは――)

バク転の途中で見えた。出入り口が黄金で塞がれている。それどころかそこから針が飛びだしている。
そうだ。アウレオルスがその気になれば、三沢塾全体を針山にすることだってできる。
五和には最初から串刺しの運命しかなかった。

五和「――っ!」

それでも五和は抗った。何度目かのバク転の時に、腕に力を込めバネのように跳んだ。
わずかな滞空時間の中、アウレオルスは無慈悲だった。

天井から鎖付きの、巨大な針だらけの黄金球が五和目がけて振られていた。

五和(まだだ!)

もうそこまで迫っている死を前にして、それでも五和は諦めず槍を放った。
ガキン!と槍は弾かれ折れて、腕は痺れて、黄金球があと数cmと言うところで、

上条「五和ぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!」

ゴガァ!と上条が黄金の壁を砕いて、黄金球すら蹴り砕いた。
そのまま空中で五和を抱きかかえ、針山の一角に平然と立って見せた。

302 : SS寄稿... - 2011/12/30 18:50:48.88 BMIoR+No0 288/490

アウレオルス「少年、貴様は人間か……」

驚嘆するアウレオルスを無視して、上条は五和に話しかける。

上条「今から外に投げ飛ばす。しっかり着地しろよ」

五和「そんな、当麻さんは」

上条「大丈夫。軽く捻って終わらせるさ。じゃ、行くぞ」

五和「待――」

有無を言わさず、上条は自分が破壊した壁に向けて五和を投げ飛ばした。
アウレオルスなら塞ぐ事も出来たのだが、動揺していた彼には無理だった。

アウレオルス(焦るな……いくら人間離れしているとはいえ、ここは我が領域である事に変わりはない。必ず勝てる)

自分にそう言い聞かせ地に手をつけ、黄金を甲冑の上からさらに纏った。
今までむき出しだった頭の部分もだ。

アウレオルス(そうだ。負けるはずがない。このフル装備に、この塾の中でなら――)

ここでアウレオルスの意識は途切れることとなる。理由は簡単。
上条のボディーブローに黄金の甲冑を打ち砕かれ、さらにはアッパーを喰らったからだ。

上条「急がないと」

気絶したアウレオルスを抱え、三沢塾を後にする。

303 : SS寄稿... - 2011/12/30 18:52:55.03 BMIoR+No0 289/490


外に出た上条の前には、金髪のカールに爆乳で作業着を着用したオリアナ=トムソンに、
インデックスとは違う種類の白い修道服のリドヴィア=ロレンツェッティ、
重たく引きずりそうな法衣を纏い、首にはメノラー(数十の十字架を取り付けた四本のネックレス)をかけていて、
大剣を持っているビアージオ=ブゾーニ、何か様子がおかしい五和だった。

上条(いつまで続くんだよ。俺が今まで倒してきた敵達のバーゲンセール……)

ここまでの連戦の疲労で、上条は少し辟易していた。
そんな上条の心中など知らないリドヴィアが、五和を指差して口を開く。

リドヴィア「初めに言っておきますが、彼女は既に私の『記憶操作』(マインドハウンド)によって
      記憶が改竄されていますので。一応言っておきますが、洗脳ではなく改竄ですので。つまり――」

上条「そんなことはこの瞳で分かっている。洗脳と改竄の違いもな」

洗脳とはつまり、本人の意思に関係なく無理矢理操る事だ。だが記憶の改竄は違う。
上条当麻という存在を記憶から消して、それどころか悪者と認識させれば、五和は本心から上条を敵だと思いこむ。

ビアージオ「まあこんな小細工などしなくても、貴様のような異教の糞ザル如き、倒せるのだがなあ!」

まずはビアージオが2mほどの大剣を引きずりながら迫り、上条の目の前で振り上げ思い切り振り下ろした。

パシィン!と、上条はあっさりと白刃取りを決めた。

ビアージオ(馬鹿な!?腕を強化した私の大剣を受け止めただと!?)

驚愕するビアージオに追い討ちをかけるように、上条が大剣に力を加え砕き、さらには腹に拳を叩きこんだ。

上条「時間がないんだ」

呟きながらオリアナに一瞬で肉迫し、その顔面を殴り飛ばした。

リドヴィア「まさか、あなたにはオリアナが見えていたのですか?」

上条「当たり前だろ。何言ってんだ」

ドガァ!と、リドヴィアもオリアナと同様に殴り飛ばされた。
しかし五和の様子は変わらない。どうやらリドヴィアか五和の頭を『幻想殺し』で触らなければ戻らないらしい。

五和「うわああああああああ!」

圧倒的な敵を前にして五和は、半狂乱になりながら上条に特攻して行く。
上条はできるだけ五和を傷つけたくなかったが仕方がなかった。
放たれた槍を軽く受け止め引き寄せ、彼女の首筋に手刀を下して気絶させた。

304 : SS寄稿... - 2011/12/30 18:55:31.57 BMIoR+No0 290/490

上条「早くしないと」

一旦『竜王』の力を封印して『幻想殺し』状態になる。そして五和の頭に触れた直後だった。
ゴッ!と上条の体が真横に数m吹っ飛んだ。

上条「ぐあっ!」

一体何が?と周囲を見回す上条はある異変に気付いた。少し前にぶっ飛ばしたはずのオリアナがいない。

上条「そうか……」

オリアナは気絶などしていなかったのだ。おそらくオリアナが見えないのは何らかの能力だろう。
さっきまでは『竜王』の眼で見切っていたから何の気なしに殴り飛ばせたのだ。
透明になる能力か。認識そのものを阻害しているのか。それとも――

オリアナ「動くな!」

オリアナの声で思考が断ち切られる。上条は声がした方を見ると、五和の首筋にナイフを当てているオリアナがいた。

上条「くっそ!」

完全に油断していた。
『竜王』の力で無双して一撃で倒せると高をくくっていたら、実は倒せていなくて挙句の果て人質を取られるとは。
いくら『竜王』の力を解放したところで、自分がオリアナを殴り飛ばすのとオリアナが五和の首筋を掻っ切るのでは、
オリアナの方に軍配が上がるだろう。
吹っ飛ばされて五和から引き離された時点で、その可能性を考慮出来なかった自分が憎い。
20秒ほど前、変に考え込まず五和に駆け寄っていたら、こんなことにはならなかったかもしれない。
らしくないことはするものじゃない。と上条は後悔した。

しかし後悔したところでもう遅い。どうせオリアナは無茶な要求をするだろう。
死ねと命令するかもしれない。従わなければ五和を殺すだろう。
まあ従ったところで、その後普通に五和を殺すかもしれないが。
後者の可能性もある以上、五和を犠牲にしてでも特攻すべきかもしれない。

オリアナ「うふふ。最後の最後で油断したわねボクぅ。この子を殺されたくなかったら、お姉さんと一緒に遊びましょう?」

上条(どう……すれば……)

何かないのか。この状況を打破できる何かが。上条は周囲を見回して、

上条「……何を、すればいい?」

諦めた。特攻する気もなかった。五和を犠牲にすればオリアナには勝てる。
だがそんな勝利に意味はない。目の前の人も守れないで世界を救うなんて事は出来ない。

オリアナ「そうね。どうしようかしら……」

と、上条に何を命令しようか悩んでいるオリアナの後頭部がブレた。
と同時、彼女の腕の中から気絶している五和が解放される。

上条(何か分からねーが、チャンスだ!)

今しかない。と上条は駆け出し五和の頭に触れる。『記憶操作』の能力が無効化される。

オリアナ「ちっ!」

舌打ちと共に、再びオリアナの姿が消えた。

上条「もう好き勝手はさせねーぞ!」

上条も再び『竜王』の力を解放。
一瞬でオリアナの位置を看破した上条は、彼女を殴り飛ばし今度こそ戦闘不能にさせた。

305 : SS寄稿... - 2011/12/30 18:56:30.25 BMIoR+No0 291/490

上条「五和!起きてくれ五和!」

五和「ぅ……ん……」

上条「魔道書で皆を回収してくれ!時間がない!」

五和(時間……?)

ぼんやりする頭で起き上がった五和は、上条の言うことに疑問を持ちながらも、言われた通り能力者を回収して行く。

五和「あ、あの、ひょっとして私、当麻さんに何かしちゃいましたか?
   三沢塾から放り出された後の記憶がないんですが……」

上条「気にするな。この通り無事だから。それよりか、俺の背中に乗ってくれ。出来るだけ早く行かないと……」

五和「行かないとって、どこへですか?」

上条「フィアンマ達のところだよ」

306 : SS寄稿... - 2011/12/30 18:58:08.39 BMIoR+No0 292/490

後ろからの声に、御坂は振り返る。肩より長いボサボサの茶髪に虚ろな目、研究服の木山春生が立っていた。

御坂「また『多才能力』(マルチスキル)ってわけ?」

木山「そうだ。前回の10倍、10万の脳を統べているよ。悪い事は言わない。諦めた方が賢明だと思うよ」

確かに1万の脳相手で電池切れまで追い込まされた。その10倍となると、勝ち目は限りなく低いだろう。
だからと言って、ここで退く訳にはいかない。

御坂「先生は、操られていないのかしら?」

木山「そうだね。私は自分の意思でここに立っている」

御坂「食蜂に加担するほどの理由があるのかしら?」

木山「言ったはずだ。子供達を救うためならば、今後も手段を選ぶつもりはないと」

御坂「世界が滅亡したら、子供を救うもクソもないわよね?」

木山「可能性の話だよ。君達が私達と戦って勝つ可能性と、とりあえずは食蜂に従って他の解決策を見つける可能性。
   どっちが高いだろうか?たとえば、食蜂の気が変わるかもしれない」

御坂「そんな希望的観測が実現できるとは思えないけどなー」

木山「君達が勝利することよりは、よほど現実的だと私は思うがね」

御坂「なら、この戦いで証明してあげるわよ。私達の勝利で終わるってことを」

307 : SS寄稿... - 2011/12/30 18:59:48.73 BMIoR+No0 293/490

御坂の悪い癖。物事を楽観的に考える事だ。

1万の脳で苦戦していたのに、10万の脳に勝てるはずがない。
誰だって普通はそう考える。だが御坂は違う。正直言って今の木山にも勝てると踏んでいた。

もちろんいくら御坂と言えど、全く根拠がない訳ではない。
1万の脳と対決した時には、木山を殺さない為に手加減していた。
『幻想猛獣』(AIMバースト)という人外かつAIM拡散力場の塊が出てきてから本気を出した。
それまで10分の1の力で戦っていた訳ではないが、最初から全力を出せば、あるいはどうにかなると踏んだ。
全力を出し切って、丁度木山も死なないが戦闘不能になるぐらいだろうと踏んだ。

しかし、現実は甘くなかった。

御坂「どりゃあ!」

全力の雷撃の槍が木山に向かって放たれる。喰らえば即死どころか、5回は死ぬレベルの電撃。

木山「無駄だ」

左手を前に出す。それだけ。たったそれだけで雷撃の槍があらぬ方向に弾かれた。

御坂「んな!?」

木山「『気力絶縁』(インシュレーション)。君には天敵の能力さ」

御坂(なら『超電磁砲』で……)

と、ポケットの中からコインを取りだそうとして、

木山「遅いよ」

御坂の真後ろにテレポートした木山が、右手を振るった。ゴバァ!と強烈な風が吹き荒れる。

御坂「ぬうう!」

あまりの風力で、踏ん張り切れずに吹き飛ばされ宙を舞う。
その舞った先に木山が既にいた。右掌のなかには炎が渦巻いている。

御坂(まずい――!)

空中のため、どうにかして踏みとどまることはできない。このままだと焼き尽くされる!

木山「終わりだ」

御坂「――!」

全てを焼き尽くす炎が放たれ、地面に直撃した。

308 : SS寄稿... - 2011/12/30 19:01:33.64 BMIoR+No0 294/490

木山「逃げても無駄だと言うのに……」

木山には見えていた。炎が当たる寸前、ツインテールの少女が割り込んで御坂と共にテレポートを実行したのを。
まあそれは些事にすぎない。今の自分の感知能力なら、学園都市内ならばどこにいようが位置を把握できる。
加えてテレポートで追いつくことも可能だ。

木山「……まあ、抗う気持ちは分からなくもないがな」

呟きながら、テレポートで木山は消えた。

一方でテレポートを連続で実行して、実験用サーキットから数km離れた白井と御坂は、とあるビルの屋上にいた。

御坂「こんなところで何やっているのよ黒子。どうやってこっちにきたの?」

白井「あの魔道書はですね。転送先から逆にこっちに来ることもできますの。
   お姉様の唯一無二のパートナーであるわたくしは、お姉様のためならば例え火の中水の中」

御坂「そんな事を聞いているんじゃないの。ここは危険なのよ。帰って」

白井「ええ帰りますとも。お姉様と共に」

御坂「はぁ?何で私が帰らないといけないの」

白井「これ以上お姉様を危険な目に会わせるわけにはいきませんの。
   大丈夫ですわ。類人猿やアルビノさんが何とかしてくれますの」

御坂「嫌よ。私はまだ、何も果たせていない」

白井「何も果たせていないって、何も果たさなくていいですの!
   黒子はお姉様が心配で心配で。あの木山は、また1万の脳を統べているのでしょう?」

御坂「今回は10万だけどね」

白井「だったら尚更ですの!いくらお姉様と言えど勝てませんわ!」

御坂「けど、やらなきゃ」

白井「なぜ!?一体何がお姉様をそこまで突き動かしますの!?」

御坂「皆を、私の手で守りたいのよ!」

異様に冷静だった御坂が、ここで初めて叫んだ。

309 : SS寄稿... - 2011/12/30 19:03:34.02 BMIoR+No0 295/490

白井「だからそれは、別にお姉様じゃなくとも、類人猿やアルビノさんが」

御坂「アイツらだって、私達と同じ人間なのよ。決して神様なんかじゃなくて、完璧な存在じゃない。
   アイツらは強い。だからと言って、全てを救えるとは限らない」

白井「それはそうかもしれませんが……」

御坂「私、今回の戦いで一方通行には2回、今こうして黒子にも1回助けられた。
   助けられなければ死んでいた。一方通行と黒子が存在していなければ、私は3回も死んでいる計算になる」

白井には御坂の言いたい事がいまいちわからない。

御坂「けど私が死んだって、当麻も垣根さんも順調に勝ち進んでいたと思う。
   そして食蜂を倒すかもしれない。ね?私が死んでも、世界に対して影響はないのよ」

白井「つまり……どういうことなのでしょうか?」

御坂「私がいることで、アイツらでも救えきれない人を救えるかもしれないじゃない。だから私は、ここで退きたくないの」

白井「……そうですの」

まあ理屈も気持ちも分かる。
白井だって学園都市の平和と秩序を守る為、困っている人を助ける為にジャッジメントになったのだから。だが。

白井「納得できませんの。それでお姉様が死んでしまったら、黒子は、黒子は――」

御坂「黒子アンタ、さっきから失礼よ。何で負けて死ぬ事前提で話しているのよ。私は負けないわよ」

白井「申し訳ございませんが、10万の脳を統べる木山に勝てるとは思えませんの。
   現にわたくしに助けられたではありませんか」

御坂「うん。だからもう、一切の甘さを捨てる。自分に対しても相手に対しても鬼になる。今さらだけどね」

白井「鬼になったところで強くなって勝てるなら苦労しませんの。
   そりゃあ戦い方を変える事は出来るかもしれませんが、その程度の工夫でどうにかなるとは思えませんの」

御坂「うん。戦い方を変える気はないわよ。正々堂々進化する」

白井「へ?」

突拍子もない発言をする御坂に、思わず間抜けな声をあげてしまう。

310 : SS寄稿... - 2011/12/30 19:05:52.68 BMIoR+No0 296/490

御坂「ま、そんな感じの反応が来ると思っていたわ。けど、本気よ。今この瞬間から、私は急激に強くなる」

白井「どうやってですの?」

御坂「能力の強さってさ、パーソナルリアリティとか演算能力の高さが重要でしょ。
   じゃあ演算能力を手っ取り早く上げるにはどうすればいいと思う?」

白井「……頭をよくする?
   でも頭が良いから演算能力が高いのではなくて、演算能力が高いから頭が良いと言う気もしますの」

御坂「どっちにしろ、頭の良さと演算能力は比例しているってことよね」

白井「そうなりますわね。ですが、それが何の関係がありますの?」

御坂「結局それは、脳がカギを握っているわけでしょ。木山だって、食蜂だってそう。全てのカギは脳なのよ」

白井「そ、そんな分かり切った事を復習したところで、強くはなりませんわ」

御坂「話は最後まで聞きなさいよ。結局はさ、脳なのよ。私1人分の脳で、10万や200万の脳に勝てるわけないのよね。
   だったら、同じ境地に辿り着くしかないでしょ」

白井「つまり、他人の脳とリンクすると言う事ですか?ですがそんなこと出来る訳も、する人もいませんの」

御坂「そうね。だから私1人で無茶をする」

白井「は?それはどう言う意味ですの?」

御坂「脳って、10%も使いこなせていないじゃない?
   じゃあ100%使いこなせれば、単純に10倍以上強くなれるってことでしょ?」

白井「理屈はそうかもしれませんが、どうやってそんなことできますの!?
   と言うか出来たとしても、脳の負担を考えれば、ただではすみませんの!」

御坂「そりゃそうよ。木山も食蜂もレベル5になってしまった皆も、脳に負担を抱えて戦っているのよ。
   そんな中、私だけ正常な状態で勝てるわけない。そんな段階は通り過ぎている。
   狂った相手に勝つには、狂うしかない」

白井「そんな……よりにもよってお姉様がその役割をせずとも……黒子は、どうすればいいんですの……?」

御坂「信じて、待っていてほしいな。黒子には分かってほしい。脳に負担をかけたら、どんなことになるか分からない。
   パンクして死ぬかもしれないし、死ななくても後遺症が残るかもしれない。
   けれど、それだけのリスクを背負ってでも、護りたいの。黒子を、皆を」

白井「……全然納得はできませんけど、どうやって脳を使いこなしますの?」

御坂「脳のポートを解放する。それで周囲のAIM拡散力場と“接続”しつつ、演算能力自体も高める」

白井「……仰っている意味が分かりませんの。そんなこと出来るとは思えませんが」

御坂「出来る出来ないじゃなくて、やるしかないでしょ。
   まあ100%は間違いなく崩壊するから無理として、50%は使いたいわね」

白井「お姉様、やはり黒子は――」

白井の言葉は最後まで続かなかった。
御坂が彼女の首筋に手を当てて、わずかに電流を流し気絶させたからだ。

御坂「ごめん黒子。でも私は、絶対に死なないから」

決意する御坂美琴は、自分の頭に触れて電流を流す。微弱な電流が脳を刺激して行き――

御坂「あぐっ!」

バッギャアアアアア!と自らの能力の暴走で生まれた電撃の柱に飲み込まれた。

311 : SS寄稿... - 2011/12/30 19:07:26.06 BMIoR+No0 297/490

木山「さっきの電撃の柱は何だったのかな?」

たった今追いついた木山は、目の前に居る御坂に尋ねる。

御坂「答える義理はないわね」

木山(顔つきが変わった?何だあの悟ったような表情は――)

木山の思考はそこで断ち切られた。一瞬で木山に接近した御坂の掌底が、彼女の顎を跳ね上げたからだ。

木山(迅い――)

数m近く跳ねあげられた木山は、直後に空中で回し蹴りを喰らって地上へと落下して行く。

木山「がは……(とりあえず『空気風船』で落下の衝撃を――)」

木山の考えは甘かった。
かなりの速度で落下している最中の木山の腹部に、御坂のドロップキックが叩きこまれ地上に叩きつけられた。

御坂「終わりね」

木山(く――そ――)

このまま頭を触られでもしたら、脳波が断絶されて普通の木山春生に戻ってしまう。
それだけは避けなければいけない。

バゴォ!と周囲の地面から大量の針山を生み出した。
御坂は避けたようだが、とりあえず距離を取る事には成功した。

木山(どうにかして、反撃しないと――)

しかし御坂はそんな余裕すらも与えない。雷撃の槍で、針山ごと木山を射貫いた。

木山(馬鹿な――『気力絶縁』その他諸々で電撃は弾けるはずなのに――)

ドサリ、と木山は倒れた。御坂が一方的に勝利した。

312 : SS寄稿... - 2011/12/30 19:16:23.42 BMIoR+No0 298/490

佐天「きゃあ!」

絹旗によって生み出された窒素の衝撃波に為すすべなく吹き飛ばされる。

佐天「どう……したの……絹旗……さん……」

絹旗「まだ気付いていないのぉ?この子は、この操祈ちゃんに操られているんだよぉ」

佐天「そんな……洗脳って、遠距離からでも出来るものなの?」

絹旗「操祈ちゃんをなめないでほしいなぁ。今の私にはこれぐらい造作もないんだゾ☆」

佐天「でもさっき“超”ってつけていたような……」

絹旗「ちょーっと遊んだだけだよぉ。でも私の語彙力にはそぐわないから、やめたのぉ」

佐天「あなたの喋りかたの方がバカっぽいですけどね」

絹旗「ちょっとアンタ、誰に向かって口聞いてるのぉ?」

声のトーンが一段階下がった。バゴォ!と佐天は絹旗に殴り飛ばされる。

絹旗「レベル、0が、調子に、乗るなっ」

ゴッガッバキッ!と、佐天の体を何度も踏みつける。

重福「やめてぇ!」

レベル5の力を剥奪されて一時的に気絶していた重福が、絹旗に抱きついてとめようとするが、

絹旗「邪魔」

重福「きゃあ」

あっさりと弾かれた。

313 : SS寄稿... - 2011/12/30 19:17:15.94 BMIoR+No0 299/490

踏み飽きたのか、絹旗は佐天の髪を掴んで引っ張り上げる。

絹旗「今謝れば許してあげるけどぉ?」

佐天「世界滅亡……なんかを……企んでいる……人に……謝るつもりは……ありません」

絹旗「痛めつけが足りなかったようねぇ」

ドゴ!と絹旗の蹴りが佐天の腹に叩きこまれる。それでも佐天の目は死んでいなかった。

佐天「確かに……この世界は……理不尽だし……不条理だし……汚れているところも……あります」

ですが、と続けて、

佐天「いいことだって……たくさんあります。それらを全部否定して……世界滅亡なんて……言語道断です!」

絹旗「……世界を知らないあなたに、何が分かるのよぉ!」

キレた絹旗は佐天を叩きつけて、再び踏みつけの連続。
さすがにこれ以上は佐天の命にかかわる。そんな時だった。

削板「止めろこの根性無しがぁぁぁ!」

叫び声と同時、衝撃波が絹旗だけを吹き飛ばした。

314 : SS寄稿... - 2011/12/30 19:18:20.73 BMIoR+No0 300/490

重福「佐天さん!」

削板「大丈夫か嬢ちゃん!」

重福と削板が佐天に駆け寄る。

佐天「へへ……もう無理みたいですね……」

と言い残して、佐天は目を閉じた。

重福「嘘……佐天さん……?佐天さぁぁぁぁぁぁん!」

削板「落ち着け!気絶しただけだ!」

重福「ふぇ?そ、そうなんですか」

削板「そうだ安心しろ。とりあえず君達を安全の確保をしたい。
   そこで大人しくしていてくれ。この魔道書で回収するから」

重福「へ?」

重福がアホな声を上げたところで、魔道書がかざされ彼女達は回収された。

削板「さあやろうか」

絹旗「よくもやってくれたわね。
   ボッコボコにしてやる……と言いたいところだけど、急用が出来ちゃった☆この子は返してあげるわぁ」

削板「は?おい、どういうことだ!」

しかしながら、削板の質問に答える訳もなく、絹旗の体だけが地面に倒れた。

315 : SS寄稿... - 2011/12/30 19:19:43.72 BMIoR+No0 301/490

長い黒髪を先端の方だけ三つ編みにして束ねていて、ラクロスのユニホームのような服装に、青っぽい色のミニスカート、
野暮ったいジャケットのファスナーを首まで上げた格好の少女が吹寄達の前に現れた。
彼女がレッサーと言う少女をモデルにした能力者である事を、吹寄達は知る由もない。

レッサー「早速ですが、終幕です」

レッサーの黒髪が吹寄達へ向かう。満身創痍の彼女達は、為すすべなく髪の毛に掴まった。

吹寄「ぐ……う……」

姫神(どうにか。燃やせないか……)

掌にわずかな炎を灯し、黒髪に当てるが、

レッサー「無駄ですよ。私の髪の毛は丈夫なんです。
     燃やす事も凍らす事も切り裂く事も、よほどの力じゃないかぎりできません。レベル5クラスじゃないと」

垣根「じゃ、俺なら余裕だな」

突如現れた垣根が、レッサーの黒髪を翼で切り裂き、彼女本体も包み込んだ。

316 : SS寄稿... - 2011/12/30 19:21:16.33 BMIoR+No0 302/490

吹寄「ごほ!あなたは、垣根さん……?」

解放された吹寄は、咳き込みながら尋ねる。

垣根「ったく、どっかの誰かさんは、クラスメイトだから守るって言っていたよな。あのクソバカはどこだ?」

無視して垣根は呟く。

姫神「ありがとう。助かった」

垣根「これで分かっただろ。お前らじゃどうにもならないことがよ。
   分かったら、魔道書持ちのところへ行って転送してもらえ」

姫神「……どこにいるか分からないし。行く体力もない」

垣根「……で?」

姫神「そのメルヘンチックな翼で。送り届けてほしい」

吹寄「ちょ、秋沙それは――」

垣根「分かったよ。ただし、本当に大人しく転送されるって約束してくれるならな」

姫神「うん」

吹寄「あれ?案外優しい……?」

垣根「案外って何だ案外って。俺はいつでも紳士的だぜ?」

吹寄「だって病院では、あんなに怒っていた……」

姫神「演技だよ。私達を。諦めさせるために。わざと冷たくしていた」

垣根「分かっていたのか。
   そこまで俺の気持ちを汲み取ってくれていたのに転送されないとか、見た目のおしとやかさとは裏腹に、強情な女だ」

姫神「あなたの不器用さよりは。マシ」

垣根「言うじゃねぇか。ならお前らを諭してみるか」

背中に繭にしたレッサーと柊を、右手に吹寄、左手に姫神を抱えながら垣根は飛ぶ。

姫神「で。どうやって私達を。諦めさせる?」

吹寄「さっき約束した時点で、諦めさせるもへったくれもないと思うんだけど」

垣根「お前らはよく頑張ったよ。そんなにボロボロになるまで戦ってさ。
   お前らは他の人が頑張っているのに、自分だけが楽するのは嫌だと言っていたが、
   お前らを見て楽してたって言う奴はいねぇよ。結果も出したんだしな。だから、後は俺達に任せとけ。でどうだ?」

姫神「うん。それなら。いいかも」

吹寄(カッコつけ……秋沙も秋沙でなんか……)

垣根は飛んでいく。千里眼で見つけた削板のところへ。

317 : SS寄稿... - 2011/12/30 19:23:06.90 BMIoR+No0 303/490

パッ!と青髪だけがテレポートされ、一方通行の掌は空を切った。

一方通行「チッ」

舌打ちしながら、結標を抱え睨みつける。

結標「ち……がうわよ……私じゃ……ない……」

一方通行「じゃあ食蜂側のテレポーターの仕業か」

土御門「そうだにゃー」

聞きなれた声は後方から。青髪と一緒にスーツ姿の土御門がいる。

一方通行「ようやく出番ですかァ、参謀さンよォ」

土御門「悪いが、まだお前の相手は出来ない。緊急事態でな。とりあえずこれを受け取れ」

シュ!と一方通行に向かって何かが投げられた。一方通行は警戒してそれを避ける。

土御門「ま、そうなるか。それが当然だわな。だが信じてほしい。
    結標の応急処置には使えるモノを渡すつもりだ」

一方通行「分っかンねェなァ。なぜオマエらが敵に塩を送るようなマネをする?」

土御門「ここにいる青髪君の彼女なんだ。丁重に扱わなければいけないだろ?」

再び何かが投げられる。一方通行はとりあえずキャッチする。
見てみると、それは折り紙のようだった。

土御門「それを傷口に貼れ。血も止まるし、傷口もふさがる」

一方通行「こンな紙っ切れでか?信用できねェなァ」

土御門「陰陽博士に戻った土御門さんをなめてはいけないぜい。さすがにお前じゃあ無理だが、垣根には勝てるぜい」

一方通行「へェ」

適当に返事をしながら、結標の脇腹に折り紙を貼った。

土御門「結局貼るんだな」

一方通行「何もねェよりはマシだからな」

土御門「それじゃあ俺達はこれで。手土産として、ここにいる青髪以外の能力者はくれてやるよ」

一方通行「テレポーターもか?そうしたらオマエらはどうやって帰る?
     テレポーターがいないと、俺から逃げ切れないンじゃねェの?」

土御門「心配ご無用。俺達はこれで帰るからな」

言いながら出したのは、2枚の折り紙。その内の1枚を青髪に渡して、

土御門「じゃあな」

次の瞬間、その折り紙に彼らは吸い込まれ、折り紙自体も燃えて消えた。
同時に、何人もの能力者達が倒れて行った。

318 : SS寄稿... - 2011/12/30 19:24:13.27 BMIoR+No0 304/490

一方通行「チッ。結標、楽になったか?」

結標「……まあ、少しは」

一方通行「じゃあコイツら、テレポートして病院にでも寝かせといてくれ」

結標「……病み上がりなんですけど」

一方通行「知るかボケ。楽になったって言ったじゃねェか」

結標「じゃあ楽じゃない」

一方通行「ふざけてンですかァ?」

結標「ふざけてないわよ。病み上がりの女の子に何かさせるあなたの方がよっぽどふざけているわ」

一方通行「オマエがオンナノコなンてタマかよ。山姥の間違いだろ」

結標「だからモテないのよあなたは」

一方通行「モテたいって思った事はねェけどな」

結標「強がっちゃって」

一方通行「……結局、オマエはどうしたいンだよ」

結標「風のベクトル操って、良い感じに私達を運べるでしょう。それをやりなさいよ」

一方通行「簡単に言いますけどねェ……まァいいわ。やればいいンだろやれば」

一方通行達も動き出す。どこにいるか分からない、魔道書持ちがいる場所へ。

319 : SS寄稿... - 2011/12/30 19:26:13.34 BMIoR+No0 305/490

フィアンマ達は危機を感じ、学園都市から離れようと数ある出入り口の1つに向かう途中で、
100を超える死体と2人の『聖人』と出会ってしまった。

「待っていたぞ」

そう言ったのは、アレイスター並に長い黒い髪に、2m近い太刀を持ち、真っ黒なロングコートの男。

「あら、イイ男じゃない♡」

フィアンマを見て呟く彼女は、黒いミディアムヘアで、蛇が巻きついたような杖を持ち、
ヴェントの服装を黒くしたものを着用していた。

フィアンマ(これは……近くで見るととてつもない威圧だな……!)

ヴェント「アンタ何よ。フィアンマは渡さないわよ!」

フィアンマ(こういうとき女って、無駄に強気だから困る)

「別、彼とセッ○スをしたいとか、そういうのはないわよ。
 ただ研究対象としては、極上な感じがしてね。細かく切り刻むのは止めてよシルファー」

シルファー「あいつらが強ければ、そんなことにはならない。弱ければ、塵一つ残らないだろうがな」

フィアンマ「初めからテレズマ全開で行くぞヴェント」

ヴェント「うん」

フィアンマは25%、ヴェントは10%のテレズマを全開にする。

シルファー「メデューサ、あいつらは何%のテレズマを使役している?」

メデューサ「今出ているのは、男の方が25%、女の方が10%ね。全開って言っていたし、あれが全力なんじゃないかしら?」

シルファー「そうか……期待していたが、所詮は雑魚か」

ミカエルとウリエルという大天使のテレズマを前に、臆せず言ってのけた。

320 : SS寄稿... - 2011/12/30 19:28:31.35 BMIoR+No0 306/490

上条(まずい……邂逅しちまった……!)

『竜王』の力で感知能力が極限まで高まっている上条は、危機を敏感に感じ取っていた。
尚更急ぐ必要が出てきた上条に、天の声が降りかかる。

食蜂『地上に降りなさい上条当麻。降りないと、能力者達を殺す』

上条「くっそ!」

仕方なく五和と共に地上へ降りる。
そこには緑色の修道服を着ているテッラがいた。

食蜂『大丈夫よぉ。君が危惧している事は、こっちで解決しておくからぁ』

上条「無理だ!レベル5だろうが、200万の脳を統べようが、あいつらには勝てない!」

食蜂『言うわねぇ。けど別に、私が戦うとは言っていないわよぉ』

上条「まさか……」

食蜂『一方通行、垣根帝督、御坂美琴、削板軍覇、彼らをぶつけるの。そういうことだから、じゃあねぇ~』

上条「待てよ!」

天に向かって叫ぶ上条に、

テッラ「余所見している暇あるんですかねー」

テッラが口から紫色の霧を吐いた。

五和「毒霧!?」

上条「ちっ。邪魔なんだよお!」

両腕を振るった風圧で、毒霧を霧散させる。
と同時に、上条はテッラを殴り飛ばすために、既に彼に肉迫していた。

上条「おらぁ!」

テッラ「甘いですねー」

ブニュリと、上条の拳はテッラの前に出現した緑色のスライムのようなモノに受け止められた。

上条「くっ!」

拳を抜いて、一旦後退する。拳はシューシューと音を立てて煙を出していた。

321 : SS寄稿... - 2011/12/30 19:29:33.22 BMIoR+No0 307/490

五和「大丈夫ですか当麻さん!」

上条「『竜王』の鎧がほんの少し溶けただけだ。どうやら、毒を使う能力みたいだな。
   しかもかなりの応用性も備えているっぽいな」

五和「どうすれば……」

上条「気にする事はない。次で決める」

テッラ「おやおや、調子に乗っているにも程がありますねー」

そう言うテッラの両手から、緑と紫の光線が発射された。

上条「んなもん、通用しねーよ!」

右手に顕現させた『竜王の顎』から『竜王の殺息』を出して対抗する。
緑と紫の光線など『竜王の殺息』の前では無に等しく、あっさりと押し負けテッラに直撃して爆発した。

五和「当麻さん!?あれ、大丈夫なんですか!?」

上条「大丈夫どころじゃない。奴はまだ普通に戦える」

五和「え?」

上条の言う通り、煙の中から緑色の触手のようなものが五和に襲い掛かる。
虚を突かれた五和は反応が遅れるものの、上条が『竜王の鉤爪』(ドラゴンクロウ)で切り裂いたことにより事なきを得た。

322 : SS寄稿... - 2011/12/30 19:31:24.35 BMIoR+No0 308/490

テッラ「いやいや、さすがに今のはひやっとしましたねー」

言葉ではそう言うものの、表情やトーンが余裕そうだ。

上条(手加減に手加減を加えた『竜王の殺息』とはいえ、防がれるとはな……)

五和(当麻さん……)

五和は祈ることしかできなかった。さすがにテッラとは相性が悪すぎる。おそらく武器は片っ端から溶かされるだろう。
そんな五和の心情を知ってか知らずか、上条はテッラの方を見たまま、こんな事を言った。

上条「五和、魔道書で自分自身を転送する事って出来ないのか」

五和「え?どうしてですか」

上条「これ以上は危険だ。俺は五和を危険な目にあわせたくない」

五和「……はい。分かりました。やってみます」

今までも、おそらくこれからも足手まといになる。五和は一緒に戦いたい気持ちを押し殺して、自ら魔道書に回収された。
あとには、魔道書だけがぼつりと残った。

テッラ「戦場から女性を逃がすとは、紳士的ですねー。感動しましたよ」

上条「息をするように嘘つくのやめろ。そして次で決める」

ドン!と地面を蹴って駆け出す。右拳を固く握り締めて。

テッラ「拳など、私のスライムの前では無に等しいですよー」

テッラの前のスライムが伸び、盾になるように上条を阻む。

上条「そんなもん、貫いてやるよ!」

ぐちゅり、と上条の炎を纏った拳がスライムに突き刺さり、直後に貫きテッラの腹部を捉えた。
それでテッラを昏倒させるには十分だった。

323 : SS寄稿... - 2011/12/30 19:32:10.91 BMIoR+No0 309/490

土御門「これが噂の魔道書か」

後ろからの声に素早く振り向く上条の目に映ったのは、魔道書を抱えた土御門。

上条「お前……もしかして――」

土御門「おっと。それ以上は禁句だ。だが時期が来れば、俺も参戦するさ」

そう言い残して、一方通行達の時と同じように消えた。

324 : SS寄稿... - 2011/12/30 19:34:34.77 BMIoR+No0 310/490

その代わりに、3人の少女がテレポートされた。
銀髪に、上着は長袖のスポーツ用のシャツで、ミニスカートの下に履いている青いレギンスは
足首まで覆われているベイロープに、色白の金髪碧眼で髪の長さは肩に触る程度、ラクロスのユニホームのような服装で、
スポーツ用のシャツの上からジャケットを羽織っており、ミニスカートの下はスパッツを履いているフロリス、
フロリスと同様の恰好をしたランシスだった。少女たちは全員、『鋼の手袋』(トール)まで持っていた。
おそらくパワードスーツを応用したものだろう。

上条「さっさと終わらせる!」

一瞬でフロリスの目に躍り出た上条は拳を繰り出すが、トールによって跳び上がり避けられた。

ベイロープ「いくわよ」

言葉と同時、周囲が1m先の物すら見えない位の濃霧に包まれた。
自分は眼がある為問題ないが、寧ろ彼女達の方が自分を見つけられないのではないか。

上条(ま、それなら遠慮なく!)

『竜王の翼』を顕現させ飛ぶ。まずはフロリスを殴り飛ばすために彼女に向かっていく。
が、上条の拳は空を切った。

上条(自ら濃霧を生み出して、自分は見えませんでしたってオチになるわけないよな)

このトリックはフロリスの『透視能力』を、ランシスの『精神感応』によって
3人で視界を共用しているためにできる芸当なのだが、上条には知る由もない。

ランシス「私達三位一体、魅せるわよ!」

ベイロープフロリス「「おう!!」」

ランシスの掛け声とともに、彼女達のチームプレイが始まる。

325 : SS寄稿... - 2011/12/30 19:36:12.77 BMIoR+No0 311/490

トールに跨る彼女達はなかなかの速度で、急な旋回が効かない上条は翻弄されていた。

フロリス「まだまだ!」

直接的な攻撃力は持たない彼女達は、科学兵器をフルに使う。
手榴弾だったり、拳銃だったり、スタングレネードだったり、火炎放射機だったり。しかし上条を倒すには至らない。
『竜王』の力は異能にはもちろん、物理にだって相当の耐性がある。
核兵器をぶつけるぐらいではないと、ダメージはほぼ通らない。

概ねそんな感じで、上条もフロリス達の戦いはしばらく続いたが、異変は突如起こった。
フロリスが突然、地面へ落下して行ったのだ。それによりランシスとベイロープは、視界が霧で遮られる。
その隙にしっかり見えている上条は、ランシスを殴り飛ばす。
追い込まれたベイロープは逃げようとするが、謎の一撃で彼女も昏倒して地上へと落ちて行った。

上条「さっきのオリアナも、お前の仕業なんだろ?」

地上へと降りた上条は、目の前の少女に尋ねる。

「はい。ようやく顕現出来ました」

長いストレートヘアから一房だけ束ねられた髪が伸びていて、知的な眼鏡を掛けているが多少ずり落ちている風斬氷華が答えた。

上条「ありがとう。本当に助かったよ」

風斬「いえ……役に立てたようで嬉しいです……」

上条「何だよ風斬。もっと自信を持てって」

風斬「はい……」

「何を言っても、所詮は人間じゃないし」

ところどころに真っ赤なレザーがあしらわれた、ボンテージっぽく見えなくもない深紅のドレスを着用しているキャーリサが、上条達の会話を遮った。

326 : SS寄稿... - 2011/12/30 19:38:41.22 BMIoR+No0 312/490

その声に上条が振り向く前に、ギュルアァァア!と上条達は、自身の影に囚われた。

キャーリサ「ちょっとー、あっちの女のほーは、細切れにするべきだし」

「御意」

上条「ぐっ!」

風斬「ああ!」

影のしめつける威力が増し、風斬氷華は細切れにされ消滅した。

上条「か、ざ、風斬りぃぃぃいいいいいい!」

キャーリサ「そんなに叫ばなくても……一時的に消滅しただけだろうし」

言う通りではあると思うが、そう言う問題ではないと上条は思う。

上条「ちっくしょう!テメェら絶対ぇ許さねー!」

影から力だけで強引に抜け出し、スーツ姿の騎士団長(ナイトリーダー)へ向かう。

騎士団長「調子に乗るなよ少年」

拳が顔面まであと数cmというところで、上条は再び自身の影に囚われた。

騎士団長「死ね」

右手の『フルンティング』を、上条の首を刎ねるために水平に振るう。
さすがの上条も、この一撃を喰らえば呼吸困難は確実だ。

上条「おおお!」

しかしフルンティングは、上条当麻の首を刎ねる事はなかった。
ゴッ!と、真横からオレンジ色の直線がフルンティングを焼きちぎったからだ。

騎士団長「なに――」

上条(今だ!)

影から再び強引に抜け出した上条は、狼狽している騎士団長の顔面に拳を叩きこんだ。

キャーリサ「ちっ。ウィリアム!コイツをやれ!」

「御意である」

青系の長袖シャツを中心にゴルフウェアを連想させるスポーティな格好の人アックアが、
キャーリサの命令を受け、上条の後ろからアスカロンを振り落ろす。
しかしそれもオレンジ色の光線に貫かれ、手から弾かれうろたえている彼の腹部に後ろ蹴りを叩きこんだ。

キャーリサ「さっきから邪魔するこのオレンジ色の光線は何なの?」

御坂「これだけど?」

キャーリサの疑問に答えるように、御坂の声と『超電磁砲』が彼女の真横を駆け抜けた。

327 : SS寄稿... - 2011/12/30 19:41:28.65 BMIoR+No0 313/490

御坂「降参するなら、痛い目見ずに済むけど?」

キャーリサ「誰が降参なんかするか!ブチのめしてやるし!」

上条を放って、御坂の下へ駆けだすキャーリサの手には『カーテナ』が握られている。
もちろんカーテナの形をした鈍だろうが、刃物である事に変わりはない。

上条「御坂!」

御坂「大丈夫よ」

そうこうしている間に、キャーリサが御坂の目の前まで辿り着いてカーテナを振り下ろした。
それでも一向に何のモーションもしない御坂に、上条は焦り、キャーリサは勝利を確信するが、

グギィィィン!と、カーテナは捻り曲がった。

キャーリサ「これは……」

御坂「私に金属は通用しないわ」

上条(御坂の奴……磁力であんな芸当を……?)

キャーリサ「あーそーですか!だったら能力を使うまでだし!」

キャーリサは御坂から距離を取り、指を噛んで血を出す。流れる血は意思を持っているかのように蠢く。

キャーリサ「ブラッディランス!」

指からさらなる血が溢れ、槍の形になって御坂へ向かう。

御坂「しょぼいわね」

前髪から青白い雷撃の槍を放ち、あっさりと相殺する。

キャーリサ「強気なこと言っといて、結局は相殺だし!」

御坂「もちろん、殺す為に戦っている訳じゃないからね」

挑発するようなキャーリサの後ろに居た御坂は、答えながら彼女の頭に触れる。
バチッと、わずかに電流が流され、キャーリサの洗脳は解除された。

328 : SS寄稿... - 2011/12/30 19:42:54.78 BMIoR+No0 314/490

上条「御坂……お前、強くなった?」

御坂「御坂じゃなくて美琴って呼んでよ。まあそうね。強くなったと言えばなったかな」

上条「……そうか。じゃあ行くか。と言いたいところだけど、コイツらをなぁ……」

御坂「それは大丈夫よ。黒子が何とかしてくれるから」

上条「白井が……どうして?」

御坂「私の事を思って、魔道書通ってきてくれたみたい」

上条「そっか。でもまだ洗脳を解いていない奴も居るんだ」

御坂「何だまだやってなかったの?なら私が今やるわよ」

パチン!と指を鳴らすと、彼女の前髪から四方八方にわずかな電流が放たれ、倒れている全員の頭に向かった。

御坂「これで大丈夫だと思う。さあ、行きましょうか」

上条「おう」

上条と御坂が合流した。そして彼らも動き出す。戦場が1つになろうとしている。


続き
食蜂「本っ当に退屈ね、この街は」【4】

記事をツイートする 記事をはてブする