1 : 以下、名... - 2011/03/18(金) 02:38:36.31 tmpNefhU0 1/52

ガチャ

「おーっす……て、梓はまだ来てないか」

「澪たちも遅れてくるしなぁ。来たら来たで勉強だし……」

「はあ……勉強したくねえ……でもしなきゃ、私だけ……」

「……。みんなが来るまでドラム叩いてよっかな」ゴソ

「あれ? うそっ」ゴソゴソ

「くそう、私としたことが。勉強道具より大切なスティックを忘れるとは」

「……倉庫ン中に古いのがあった記憶が……探してみるか」テクテク ガチャ

元スレ
律「眼鏡と」和「カチューシャ」
http://hibari.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1300383516/

3 : 以下、名... - 2011/03/18(金) 02:41:16.05 tmpNefhU0 2/52

「んー……前に片付けてから、また色々物が増えてるな……」

「ったく、誰だよこんなに物を増やすのは……って私もか」

「うーん……上の棚にないかな?」ゴソゴソ

「おっ! 奥のほうにそれらしき物体がっ」

「……くそっ、澪なら簡単に手が届くのに」ググッ

「くっ……もう、ちょい……」グググッ ……グラッ

コンコンガチャ

「お邪魔しま……あら? 誰もいないのかしら」

ドンガラガッシャン!!

「?!」

5 : 以下、名... - 2011/03/18(金) 02:43:30.60 tmpNefhU0 3/52

「何、今の音。倉庫から?」タタタッ

「あっ、律!」

「……」

「ちょっと、大丈夫?」

「……」

「と、とにかく律の上から物をどけないと……っ」ガタンガタン

「……うぅ、」ヨレ…

ポロッ カツン

「律?気が付いた? っしょ……、起き上がれる?」

「んん、和?……」ハラリ

「腕に掴まって。ゆっくりでいいからね」

パキッ

6 : 以下、名... - 2011/03/18(金) 02:46:41.33 tmpNefhU0 4/52

「? 何か踏んで……あっ」

「ん?」

「律、ごめん、カチューシャ壊しちゃった」

「!」

「ごめんね、買って返すから。それより痛いところない?大丈夫?」

「……」

「律?」

「……っ」フルフル

「どうしたの? どこか痛い?」

「……ふ、」フルフルフルフル

「ちょっと、律、震えて……」

「ふ、ふえぇぇ……」ポロポロ

「えっ? 泣い……えっ、ちょ」オロオロ

9 : 以下、名... - 2011/03/18(金) 02:50:16.76 tmpNefhU0 5/52

ガチャッ

「律ー、遅くなってごめ……。あれ、いないのか?」

「ん、倉庫が開いて……泣き声?」タタタッ バッ

「律っ、和も! ふたりともどうした?!」

「あっ、澪! ねえ律の様子が」

「! みおちゃんっ」ダッ

ダキッ

「?! り、律?」

「みおちゃん、みおちゃん」フルフル

(みおちゃん?)

「律、カチューシャどうした?」

「ごめん、床に落ちたところを私が踏んで壊しちゃって」

「……」フルフル

「……そっか」

10 : 以下、名... - 2011/03/18(金) 02:54:47.32 tmpNefhU0 6/52

「だいじょぶ、大丈夫だよ、りっちゃん」ナデナデ

「えっ」

「ふぇぇ……」グスグス

「怖くないからね、大丈夫、大丈夫」ナデナデ

「……」グスン

「……」

「……落ち着いた?」ナデナデ

「……」コクリ

「りっちゃん、椅子に座ろっか」

「……」ギュッ

13 : 以下、名... - 2011/03/18(金) 02:58:27.09 tmpNefhU0 7/52

「まだ離れるの怖い? じゃ隣に座ってあげるから」

「ちょっと澪、律? どういう……」

「……っ」ビクッ

「りっちゃん大丈夫。のどかちゃんだよ」

「……」チラッ

「……」

「ほら、友達ののどかちゃん。ね?」

「……」コクリ

「……澪、」

「ごめん和、落ち着いてから説明する」

「……わかったわ」

14 : 以下、名... - 2011/03/18(金) 03:02:00.96 tmpNefhU0 8/52



ーーーーー


「……別人格?」

「うん。中学生の時に律のお母さんから初めて聞いたんだけど」

「律、私と知り合う前は、私以上の人見知り……いや、」

「家族以外の人と会うのも怖がるくらいだったらしくて」

「……」

「それで、知人の紹介で診てもらったカウンセラーから」

「催眠療法っていうの?そういうのを受けて、」

「一種の暗示なのかな。簡単に言えば、前髪を上げれば性格が変わるみたいな」

「……こう言っちゃアレだけど、胡散臭い話ね」

「私も最初に聞いたときはそう思った。でも、実際に……」チラッ

17 : 以下、名... - 2011/03/18(金) 03:05:55.22 tmpNefhU0 9/52

「……みおちゃ、」ギュッ

「大丈夫だよ、りっちゃん」ナデナデ

「……この律は、治療以前の人格ってこと?」

「多分。私が知り合った時はもう、和も知ってるあの律だったから」

「そうなんだ」

「中学に入る頃には、前髪を下ろしても平気なくらいだったらしいんだけど」

「中3の時に一度、今と同じようになっちゃって」

「その時は、何か原因があったの?」

「はっきりとはしなかったみたいだけど、強いストレスが原因なんじゃないかって」

「ストレス?」

「症状が出たの、高校受験の時期だったんだ」

「……あぁ。じゃあ今回は、」

「うん……。もしかしたら、大学受験のせいかもしれない」

19 : 以下、名... - 2011/03/18(金) 03:09:38.17 tmpNefhU0 10/52

「……」ギュウ

「……ん、」ナデナデ

「みんなが来る前になんとかしないと、急に人数増えたら律が耐えらんないかも」

「前髪を上げておけるものがあればいいのよね。髪留め持ってないの?」

「それが、今日に限って忘れちゃって……他になにかあれば……」

モーユイチャンッタラ エーワタシノセイー? アハハ

「!」ビクッ

「あの声は、ムギと唯ね」

「どうしよう……。あっ! 和、ごめん借りる」ヒョイ

「えっ? あっ、ちょ、」

「りっちゃん、こっち向いて? よ、っと」スチャッ スッ

「!? ……ぁ、」

24 : 以下、名... - 2011/03/18(金) 03:13:31.01 tmpNefhU0 11/52

ガチャッ

「やっほー!」

「おまたせー」

「……」

「……おー、待ったぞー」ニカッ

(ほっ、ぎりぎりセーフ……。ん? 和、なんで長椅子の裏に隠れて……)

「ちょっと澪、眼鏡返して!」ヒソヒソ

「ゴメン、他に方法見つかったらすぐ返すから」ヒソヒソ

「じゃなくて、まずいのよ! 唯がっ」ヒソヒソ

「え、唯が何?」ヒソヒソ

「あれー? りっちゃん、なんで頭に眼鏡乗っけてるの?」

「!」

25 : 以下、名... - 2011/03/18(金) 03:17:17.16 tmpNefhU0 12/52

「ああ、ちょっとカチューシャが壊れちゃって、その代わりに」

「ていうかそれ和ちゃんの眼鏡?! なんでりっちゃんが?」

「あーそれは、えーっと」

「和ちゃん、ここにいるの?」キョロキョロ

「……」

「あっ! 和ちゃんみっけ!」バッ

「!!」ビクッ

「和ちゃん、眼鏡、外してる……」

「……」

「……」ジーッ

「唯?」

「和? どうした?」

27 : 以下、名... - 2011/03/18(金) 03:20:50.96 tmpNefhU0 13/52

「……」フルフル

「……落ち着きなさい、唯」

「のどか、ちゃん……」フルフルフルフル

「お願い、唯、落ち着いて」タラタラ

「唯ちゃん?震えてるけど大丈夫?」

「和?異様に汗かいてるけど、どうした?」

「……がま……できな……」フルフルフルフル

「っ! 待ちなさい唯! 律、眼鏡返しーー」

「のどかちゃんっ!!」ガバッ

「きゃっ」バターン

「!?」

「唯が」

「和を」

「押し倒した……?!」

28 : 以下、名... - 2011/03/18(金) 03:24:20.14 tmpNefhU0 14/52

「のどかちゃん……ちゅーしよう!ちゅー!」ググググ

「止しなさいっ!唯っ、ちょ、離れて……っ」ググググ

「一回だけでいいから、一回だけでいいから」ハァハァ

「どうしてこうなった」

「なにがなんだか」

「唯ちゃんったら……」アラアラ

「ムギ!指の間から見てないで助けて!」ググググ

「ね?のどかちゃん、一回だけでいいからっ」ハァハァ

「澪!お願い、眼鏡……っ」ググググ

「……っ、律ゴメン!」メガネヒョイ

「ちょっ?! ……ぁ……」ハラリ

「……」ヘタリ

29 : 以下、名... - 2011/03/18(金) 03:27:55.64 tmpNefhU0 15/52

「ほら和、眼鏡!」

「澪、ありがーー」

「ダメーッ!」バシッ

「あっ」

ヒューーーーーー……

ガチャ

「遅くなりま……えっ?! わっ」メガネキャッチ

「梓ナイス!!」

「えっ? な、何?眼鏡?」

「のどかちゃん、お願い、一回だけ、ね?一回だけ!」ハァハァ

「やめなさい!唯!やめて、お願い!」ググググ

(えええ唯先輩が和先輩を襲ってる?!)

31 : 以下、名... - 2011/03/18(金) 03:31:40.91 tmpNefhU0 16/52

「梓! その眼鏡を早く和に!」

「えっ、えっ?」アセアセ

「梓ちゃん!」ググググ

「あっ、はい!」タタタッ

「シャーッ!!」

「!?」ビクッ

(威嚇された!唯先輩に威嚇された!!)

「くっ、私が唯を抑えるから、梓はその間にーー」

ガシッ

「?!」

32 : 以下、名... - 2011/03/18(金) 03:35:16.02 tmpNefhU0 17/52

「ふえぇぇっ、みおちゃっ」フルフル

「!!」アラアラマアマア

「みおちゃん、みおちゃん」フルフルフルフル

(しまった、律がいた!これじゃ身動きが……)

「のどかちゃん、一回だけ、一回だけ」ハァハァ

「唯っ、お願いだから冷静になって!」ググググ

「みおちゃ……こわい……」フルフル

(うっ……いま律を引き剥がすわけには……)

「わ、私はどうすれば」オロオロ

「! 梓ちゃん、憂に電話して! 唯がレベルKだって!」ググググ

(レベルKって何?!)

37 : 以下、名... - 2011/03/18(金) 03:39:18.01 tmpNefhU0 18/52

「え、えっと、とにかく憂を呼べばいいんですね」ピポパ

プルル プルル……

『もしもし、梓ちゃん?』

「あっ憂! あのね、今部室なんだけど」

『どうしたの?そんなに慌てて』

「えっと私もよく分からないんだけど、唯先輩がレベルKだって和先輩が」

『!! すぐ行く!』プチッ ツーッツーッ

……チャーン オネーーーチャーーーン

「お姉ちゃん!!!」バタン!

「早ッ!」

39 : 以下、名... - 2011/03/18(金) 03:43:18.13 tmpNefhU0 19/52

「憂……!」ググググ

「和ちゃん!眼鏡はどこ?!」タタタッ

「眼鏡なら私が持って……あっ」バッ

「ノドカチャン、イッカイダケ、イッカイダケ……」ハァハァ

「お姉ちゃん!そんなことしちゃメッでしょ!」メッ!!

「!!」ビクッ

(唯先輩の動きが止まった……?!)

「和ちゃん眼鏡!」サッ

「っ!」スチャッ

「……はっ!」

42 : 以下、名... - 2011/03/18(金) 03:47:18.43 tmpNefhU0 20/52

「……」ゼェゼェ

「……の、和ちゃん……私また……」ヘナヘナ

「あら……」

(正気に戻った……?)

「唯、落ち着いた? じゃあまずは私の上からどいてちょうだい」

「あ、うん……」ヨロ

「和ちゃ……和さん、ごめんなさい……」

「いいのよ、大丈夫」ヨッコラショ

「……和ちゃん……ごべんだざい……」グズグズ

「もういいから、泣かないで唯。ほら憂も」ナデナデ&ナデナデ

44 : 以下、名... - 2011/03/18(金) 03:51:03.81 tmpNefhU0 21/52

「……ええとあの、なんだったんですか、今の」

「これから説明するわ。とりあえずみんな座りましょうか」

「和、その前にこっちも」

「……」フルフルフルフル

「あっ、ごめんなさい、律……えっと、りっちゃん」

(りっちゃん?!)

「……」チラッ

「びっくりさせちゃったね。りっちゃん、大丈夫よ」ニコッ

「……みおちゃ、」ギュッ

「ほらりっちゃん、みんな友達でしょ?怖くないよ?」ナデナデ

「……」フルフル

47 : 以下、名... - 2011/03/18(金) 03:55:08.33 tmpNefhU0 22/52

(律先輩が……)

(澪ちゃんにしがみついて、子犬みたいに震えて)

(可愛い……)

「誰か髪留め用のゴム持ってない?輪ゴムでもいいんだけど」

「あっ、シュシュなら持ってるよ」スッ

「ありがとうムギ。ほら、りっちゃんこっち向いて?前髪結ぶからね」

「……」フルフル

「よっ……と、これでよし」

「……」パイナポー

「……はっ。澪……、私また、」

「気にするな。さ、みんな椅子に座って一旦落ち着こう?」ヨッコラショ

「あっ、じゃあ私、お茶淹れるね」

51 : 以下、名... - 2011/03/18(金) 04:00:24.39 tmpNefhU0 23/52



ーーーーー


「……とまあ、律に関してはそういうことだから、みんな気にしないであげて」

「律先輩にそんな過去が……」

「軽くは言えないけど、りっちゃん、大変だったのね」

「いや、澪が言ったとおり気ぃ使わないで。恥ずかしいから」タハハ……

(パイナップルなりっちゃんも可愛い……)

「それで、さっきの唯はいったいなんだったんだ?」

「……」グスン

「それは」

「和さん、私から説明させて」

「憂、」

「私とお姉ちゃんに原因があることだから」

「……じゃあ、お願い」

「お姉ちゃんがこうなったのは、私たちが中学生の時ーー」

58 : 以下、名... - 2011/03/18(金) 04:04:08.79 tmpNefhU0 24/52



ーーーーー


「……催眠術?」

「うん。昨日TVで催眠術の番組見て、お姉ちゃんが試してみたいって」

「へえ……。それで、どうして私が呼ばれたの?」

「和ちゃんにも協力してもらいたいからです!」フンス

「つまり遊びに付き合えってことね」

「えへへ……そうとも言うかな」ニヘラ

「で、私はどうすればいいの?」

「私がお姉ちゃんに催眠術をかけるから、」

「和ちゃんはお姉ちゃんの前に立ってて?」

「わかった。これでいい?」

「うんっ」

63 : 以下、名... - 2011/03/18(金) 04:07:52.72 tmpNefhU0 25/52

「ういー、私は準備おっけーだよ!」

「じゃあ始めるね? お姉ちゃん、目をつむって」

「んっ」ツムリ

「はい、では心を落ち着けて、深呼吸をして……」

「……」スーハー

「あなたはだんだん眠くなり、くらーい場所にゆっくりと、静かに沈んでいきます……」

「……」

「そこはとても心地よい場所で、あなたの心はだんだんと解放されていきます……」

「……」ユラユラ

(遊びの割には、なんだかふたりとも真剣ね……)

68 : 以下、名... - 2011/03/18(金) 04:11:55.37 tmpNefhU0 26/52

「……私が3つ数えて手を叩いたら、あなたは目を覚まします」

「……」ユラユラ

「目を開けて最初に見た人に……あなたは……」

「……」ユラユラ

「……えっと、あなたは……」モジモジ

(?)

「……キス、したくなります」カァァッ

(えっ?)

「……」ユラユラ

「ちょ、憂?」

「……スリー、ツー、ワン、はいっ」パンッ

70 : 以下、名... - 2011/03/18(金) 04:15:15.95 tmpNefhU0 27/52

「!」パチッ

「!」ビクッ

「……」

「……」

「……」

「……」ジーッ

「……ゆ、ゆい?」

「……のどかちゃん……」フルフル

「……な、何?」

「……ちゅー、してもいい?」フルフル

「!」

「?!」

71 : 以下、名... - 2011/03/18(金) 04:19:44.41 tmpNefhU0 28/52



ーーーーー


「……というわけなんです」

「……」ポカーン

「……」アラアラ

「それからしばらくは大変だったわ。私の顔を見るたびに唯が飛びついてきて」

「ごめんなさい……」シュン

「……ほんとうに申し訳ございません」グスグス

「素顔を見せなければ大丈夫ってことが分かって、それで眼鏡を掛けるようになったの」

「和の眼鏡にそんな秘密があったとは……」

「それなら、さっきも後ろ向くか手で隠して顔を見せなきゃよかったんじゃ」

「慌ててたから、そこまで頭が回らなかったわ」

75 : 以下、名... - 2011/03/18(金) 04:23:24.82 tmpNefhU0 29/52

「じゃあ和先輩のそれって、ダテ眼鏡なんですか?」

「いいえ、どのみち視力はあんまり良くなかったから」

「一石二鳥だね」

「お前が言うな」

「すみません……」ションボリ

「……こう言っちゃアレだけど、胡散臭い話だな」

「その台詞、すごくデジャヴよ。でも実際こうして……ね」チラッ

「……」ションボリ

「まあ、確かに……」

「あ、あの」

「なあに?」

76 : 以下、名... - 2011/03/18(金) 04:27:39.20 tmpNefhU0 30/52

「話の腰を折るようで申し訳ないんですが、さっきの、レベルKってなんですか?」

「レベルKのKはキスのKよ」

「えっ?」

「レベルKのKはキスのKだよ梓ちゃん」

「えっ」

「レベルKのKはキ」

「それはもうわかりました」

「……」ションボリ

「今回みたいなことが起きた時のために、呼び方を決めたの」

「それさえ伝えれば、人づてに説明する手間が省けるからね」

「は、はあ……」

77 : 以下、名... - 2011/03/18(金) 04:31:43.01 tmpNefhU0 31/52

「だけど催眠術をかけたんなら、解く方法もあったんじゃないか?」

「もちろんすぐに試しました。でも、いくらやっても解けなかったんです」

「どうして?」

「それがわからないんです……」シュン

さわ子「自己暗示、じゃないかしらね」キラン

「!?」

「さわちゃんいつの間に。っていうか、自己暗示?」

さわ子「ええ、憶測だけどね。あ、ムギちゃん私にも紅茶お願い」スタスタスタ ストン

「はいっ」イソイソ

「山中先生、自己暗示ってどういうことですか?」

さわ子「んー、それを説明する前に、憂ちゃん?」

「はっ、はいっ」

78 : 以下、名... - 2011/03/18(金) 04:35:53.69 tmpNefhU0 32/52

さわ子「催眠術で、唯ちゃんにキスさせようとしたのはどうして?」

「え、えっと、それは……」チラッ

「……」

「えっと、あの」

「……私がそうしてって憂にお願いしたの」

「えっ」

さわ子「理由、聞いていい?」

「……」

さわ子「言いづらいなら、私が言っちゃおうか?」

「……っ」

79 : 以下、名... - 2011/03/18(金) 04:39:25.44 tmpNefhU0 33/52

「……唯?」

「……自分で、言います」

「お姉ちゃん……」

「……」

「あのね、和ちゃん。私、私……」フルフル

さわ子「……ちょっと待った」ハァ

「!」

「?」

さわ子「さすがに意地悪が過ぎたわ。隣の音楽室に行って二人だけで話してきなさい」

「……」

「……唯、行こっか」ガタ

「うん……」ガタ

キイ バタン

81 : 以下、名... - 2011/03/18(金) 04:43:27.63 tmpNefhU0 34/52

さわ子「私が出しゃばらなくても、あの子達で解決するのが一番いいんだけどね」

「……」

「先生、紅茶どうぞ」スッ

さわ子「ムギちゃんありがとう」ニコッ

さわ子「……」ズズッ

さわ子「ふぅ、おいし……。ところで、りっちゃん?」

「ん、なに?」

さわ子「そのパイナップル頭もいいけど、」

さわ子「さっきの子犬みたいなりっちゃんも、なかなか可愛かったわよ」グッ

「?!」

85 : 以下、名... - 2011/03/18(金) 04:47:22.09 tmpNefhU0 35/52

「さ、さわ子先生!」ガタッ

(どこから見てたんだろうこの人)

「さわちゃん何言って……。あんなの、おかしーし……」

さわ子「あら、おかしくなんかないわよ。あのりっちゃんだってりっちゃんでしょ?」ズズッ

「……っ」

さわ子「器用な性格じゃないからって、何を恥じることがあるの」コトン

「……でも、」

さわ子「んー。じゃあ、澪ちゃんはどう思う?」

「!」

「……」

88 : 以下、名... - 2011/03/18(金) 04:51:25.60 tmpNefhU0 36/52

「……どっちだって、律は律です。それは変わりません」

「!」

「うんそうだ、どっちも律だぞ。な?律」ニコッ

「……ありがと、澪」

さわ子「ふふ。いいわね、幼馴染って」

「あ。あのさ、さわちゃん」

さわ子「んー?なあに?」

「もしかして、”あの”さわちゃんも別人格……」

さわ子「あぁン?!」ギロッ

「!」ビクッ

(お姉ちゃん、大丈夫かな……)ソワソワ

89 : 以下、名... - 2011/03/18(金) 04:55:07.61 tmpNefhU0 37/52



ーーーーー


ガチャ ……バタン

「……」

「……」

「……ほんとに、ごめんね」グスン

「とりあえず、座りましょ?」ストン

「……」ストン

「……今日のは激し過ぎてさすがに焦ったわ」

「っ……ごめ……」グスン

「謝らなくていいって。怒ってるわけじゃないから」

「……」

90 : 以下、名... - 2011/03/18(金) 04:59:09.03 tmpNefhU0 38/52

「そういえば、唯のレベルKが出たのは久し振りね。高校に入って初めてだっけ?」

「……」

「まあ、私が徹底的にガードしてたからだけどね」

「……」

「山中先生が言ってたことは、唯のタイミングで話してくれればいいからね」

「……」コクリ

「……」

「……あっ、あのね、私ね……」

「うん」

「私……。和ちゃんのこと……」

「……」

「……和ちゃんが、好き…………だったの」

「そうなんだ、じゃあ私生徒会行くね」ガタン

「えっ!?」

93 : 以下、名... - 2011/03/18(金) 05:02:45.65 tmpNefhU0 39/52

「ふふ、冗談よ」ストン

「……和ちゃんひどいよ」

「ていうか、過去形?」

「え?」

「好きだった、って」

「あ…………、うん。あのね、私、和ちゃんが初恋の人だったの」

「そうなんだ」

「……気持ち悪くない?」

「ううん。驚きはしたけど」

「その割に表情変わってないあたりが和ちゃんらしいよね」

「そう?」

95 : 以下、名... - 2011/03/18(金) 05:06:07.09 tmpNefhU0 40/52

「えっと、まあそれで、憂にお願いして、あんなことを」

「そういうことね。でも告白じゃなくていきなりキスはどうかと思うわ」

「若気の至りってやつでして……へへへ」テレテレ

「照れるところじゃないわよ」

「はい……すみません」

「じゃあ、山中先生が言ってた自己暗示っていうのは……?」

「んー、難しいことはわかんないけど、私の気持ちが原因ってことなのかなあ」

「っていうと?」

「和ちゃんにキスしたくて、ずっと催眠術に掛かってるって思い込んでた、とか」

「なるほどね……唯ならそれも分かる気がするわ」

「褒められてないことは分かるよ」

96 : 以下、名... - 2011/03/18(金) 05:10:38.21 tmpNefhU0 41/52

「じゃあ、それに気付いた今はもう大丈夫ってこと?」

「あっ、どうなんだろう」

「試してみる?」

「えっ、でも」

「大丈夫よ、危なそうだったらすぐ眼鏡掛けるから」

「……じゃあ、お願いしますっ」フンス

「そんなリキまなくても。……じゃ、外すわよ」スッ

「……」ジーッ

「……」

「…………」フルフルフルフル

「……」スチャッ

「……駄目だったね……」シュン

97 : 以下、名... - 2011/03/18(金) 05:14:00.27 tmpNefhU0 42/52

「うーん、困ったわね。どうすればいいのかしら」

「あっ、ショック療法は?頭ごちーん!って」

「それは記憶喪失の時じゃない?」

「あそっか」

「……でも、ショック療法か……」

「え?」

「唯、ちょっと目をつぶってくれない?」

「え?」

「ほら、早く」

「あ、うん」ツムリ

98 : 以下、名... - 2011/03/18(金) 05:19:04.51 tmpNefhU0 43/52

「……」

「……」

チュ

「!?」パチリ

「どうかしら」

「の、和ちゃん、今ちゅって」

「ほっぺただけどね」

「あ、うん。……えっ、今のがショック療法?」

「そう思ってやってみたんだけど」

「ある意味ショックは受けたけど」

「じゃあもう一回、眼鏡外すね」スッ

「あっ……」

100 : 以下、名... - 2011/03/18(金) 05:22:44.54 tmpNefhU0 44/52

「……」

「……」ジーッ

「……」

「……あれ?」パチクリ

「ん?」

「なんともない」

「あら、じゃあ解けた?」

「……のかな」ポカーン

「半分冗談でやってみたけど、意外と効くわねショック療法」

「なんか、ばかみたいにあっけなかったよ……」

「それも唯らしいわね」クスッ

「うん、今のも褒められてないのは分かるよ」

101 : 以下、名... - 2011/03/18(金) 05:26:12.45 tmpNefhU0 45/52

「じゃあ、戻りましょうか」

「うん。……あっ、和ちゃん」

「なあに?」

「えっと、最後のお願いなんだけど。……ギュッてしていい?」

「……んー、最後って言うならダメね」

「えっ」

「私達、幼馴染じゃない。抱きしめるくらい拒んだりしないわ」

「……和ちゃん……」

「ほら、どうぞ」

「……和ちゃん、だいすき」ギュッ

「はいはい」ナデナデ

103 : 以下、名... - 2011/03/18(金) 05:29:59.18 tmpNefhU0 46/52



ーーーーー


「はぁ……倉庫もやっと片付いた。腰痛ぇ」

「もう勉強も無理だな」

「……練習もやめておきます」

「そういや唯、さわちゃんが言ってた自己暗示って結局なんだったんだ?」

「えっ、その……」

「それはもう解決したわ」ニコッ

「……そっか。じゃいっか」

(解決、したんだ……お姉ちゃん大丈夫かな)

「それじゃ、今日はもう帰ろうか?」

「そうだな」

104 : 以下、名... - 2011/03/18(金) 05:33:44.41 tmpNefhU0 47/52

「あ、律。今からでよければカチューシャ買いに行きたいんだけど」

「へ?あー、いいよいいよ。元々は私が悪いんだし」

「そういうわけにもいかないわ。壊したのは私なんだから」

「んー、和は一度言ったら曲げそうにないからな……わかったよ」

「……」チラッ

「……」コクリ

「唯、今日これから唯の家に行ってもいい?」

「へっ?」

106 : 以下、名... - 2011/03/18(金) 05:38:04.84 tmpNefhU0 48/52

「勉強、分からないところあるって言ってたろ?早めに克服しておいたほうがいいよ」

「……あ、うん……じゃあ、ちょっと見てもらおうかな」

「あっ、じゃあ晩ご飯は澪さんもご一緒ですね!」ニコッ

「いつもありがとう、憂ちゃん」ニコッ

「……ムギ先輩」ヒソヒソ

「なあに?梓ちゃん」ヒソヒソ

「私たち、今日は家に帰ったほうがよさそうですね」ヒソヒソ

「そうね…そうしましょっか」ヒソヒソ

「よーっし、じゃあ帰るぞーっ」

108 : 以下、名... - 2011/03/18(金) 05:42:38.44 tmpNefhU0 49/52



ーーーーー


「今日はほんとごめん。巻き込んだうえにカチューシャまで買ってもらっちゃって」

「いいのよ。おかげで唯のことも解決したし」

「……なあ、なんで澪に唯のこと任せたんだ?」

「あら、気付いてた? そうね……あの子きっと、今夜泣いちゃうから」

「……そっか」

「ねえ律」

「んー?」

「受験のこと、不安?」

「……ん、不安だよやっぱり。勢いでみんなと同じ大学目指すことになったけど」

「私の偏差値じゃ難しいの分かってるし。澪やムギみたいに勉強できるわけじゃないし」

「自分の勉強に澪たちを付き合わせてるのも申し訳ないし、って思ってる?」

「!」

109 : 以下、名... - 2011/03/18(金) 05:46:16.59 tmpNefhU0 50/52

「……図星ね」フゥ

「……」

「私でよければ、一緒に勉強する?」

「えっ?」

「それで、律がちょっとでも楽になるんなら、だけど」

「……でもそれじゃ、和の負担にならない?」

ボカッ

「いたっ?!」

「あんたってほんと……」ハァ

(和にグーで殴られた……)

111 : 以下、名... - 2011/03/18(金) 05:49:59.04 tmpNefhU0 51/52

「それで、どうする?」

「えっ?」

「だから勉強。やる?やらない?」

「……よろしくお願いします」ペコリ

「はい、こちらこそ」クスッ

「……えっと、和あのさ」

「なに?」

「勉強する時……時々、カチューシャ取っていい?」

「えっ?」

「そっちのほうも、ちょっとずつ克服したいなーって……」

「……澪に心配かけたくないから?」

「お前は超能力者か」

112 : 以下、名... - 2011/03/18(金) 05:53:23.63 tmpNefhU0 52/52

「澪とおんなじで、私にも手のかかる幼馴染がいるからね」

「……」

「いいわよ、カチューシャ取った律も可愛いし」

「っ!!」カァァッ

「怖かったらいつでも抱きついていいからね?りっちゃん」

「お、おいこら和っ!りっちゃん言うな!」

「ふふっ。照れない照れない。よろしくね、りっちゃん」






おしまい

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