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アレイスター「さあ、最後の晩餐(ショータイム)だ」【1】
アレイスター「さあ、最後の晩餐(ショータイム)だ」【2】

270 : VIPに... - 2011/08/15 01:13:49.34 itpxcIft0 230/458

ウリエル「shjshfw死fwrfjw?」

一般の人間には、理解し得ない言語を発したウリエル。
今発したのは「何故死んでいない?」というニュアンスの言語だった。

一方通行は確かに消失した。だが死んではいなかった。
ブレスを放った現場の、10mほど先に一方通行はいた。

一方通行「何でテメェらがここにいやがる!」

結標「何を怒っているの?私はあなたの命の恩人なのよ。感謝してほしいぐらいだわ。
   しかもこれで2度目。今度何かお礼頂戴」

結標がブレス直撃寸前に、一方通行をテレポートしたのだ。

一方通行「ふざけンな!テメェらじゃどうにもならねェ!100歩譲って
     助けてくれた事は感謝してやっても良いが、オマエらがここに
     来たところで何も出来やしねェ!今すぐ引き帰しやがれェ!」

結標「あら、あなたが素直に感謝して、しかも物凄い勢いで捲し立てるなんて
   相当危ないのかしら」

一方通行「良いから、早く帰」

御坂「黙りなさい一方通行。アンタ1人でやったってどうにもならないでしょーが。
   それに、アンタがいなくなると、あの子達が悲しむ」

一方通行「お子様が……力の差ってのが分からねェのか!このままだと死ぬぞ。
     妹達の身を案じるなら、オマエが帰れ!」

御坂「駄目よ!アンタがいなくても、私がいなくても駄目なの!一緒に生きて帰るのよ!」

一方通行「クソが……」

麦野「あんま粋がるなよ、第1位。私らが助けてやるっつってんだ。
   つーか今は、お前の方がよっぽど役に立たねぇわ。お前はそこらへんでマスでもかいてな」

一方通行「テメェこそ粋がンな三下が。そこの中2に負けるような雑魚が。帰れ」

絹旗「感謝の一言も超素直に言えないんですか?浜面の方が、数倍マシですね」

一方通行「ドチビが。レベル5ですらねェオマエは論外だ。さっさと帰れ」

絹旗「本当にこのモヤシは……私がボコボコにしましょうか?」

麦野「やめな絹旗。私らはそこのモヤシを倒すために来たんじゃない。助けるために来たんだ」

御坂「アンタは黙って休んでなさい」

結標「ま、作戦もあるし何とかなるでしょ。そう言う事だから、じゃあね~♪」

一方通行「まさか俺を、待ちやが――」

一方通行は何か言いかけたが
パッ!と結標のテレポートにより、一瞬で病院へ転送された。

その一部始終を見ていたウリエルは、標的を4人の少女に定めたようだった。

結標「さて、あちらさんも私達の事睨んでいるっぽいし、いよいよ来るわね。皆準備は良い?」

御坂「もっちろん!」

麦野「当たり前だ」

絹旗「超当然です!」

結標「OK。それじゃあ行くわよ!美琴!沈利!最愛!」

271 : VIPに... - 2011/08/15 01:15:00.65 itpxcIft0 231/458

先手はウリエル。数千もの風の刃が生み出され、一斉に少女たちに向かって行く。

結標「皆!作戦は分かってるわね!それじゃあ行くわよ!」

御坂麦野絹旗「「「おう!!!」」」

パッ!と、結標の能力により、少女たちは全員テレポートされる。

結標自身がテレポートしたのはウリエルの目の前。

結標「喰らいなさい!」

結標は目にあたるであろう部分に、手榴弾をテレポートする。
ボガァァァン!と見事に爆発は決まった。

結標(これで少しは)

そう思っていた結標だが、煙が晴れる前に、風のブレスが飛んできた。

結標「さすがにこれだけで倒せるわけないか!」

文句を言いつつ、冷静にテレポートでブレスを避ける。

結標「ま、まだまだこれからだけどね!」

272 : VIPに... - 2011/08/15 01:15:39.74 itpxcIft0 232/458

御坂と絹旗がテレポートされたのはウリエルの後方わずか50mほどの場所。

絹旗「おりゃあああああああ!」

御坂「だあああああああああ!」

結標がウリエルを引きつけている。その間に絹旗は手近なビルを殴りまくる。
ビルは徐々に崩れ、瓦礫になって積みあがる。それを御坂が、手と足を使って撃ちまくる。
大小様々な『超電磁砲』がウリエルに向かって行く。

しかしウリエルは全方向に広がる、風の波動攻撃を繰り出した。
それにより全ての『超電磁砲』は弾かれ、御坂や絹旗をも吹き飛ばした。

絹旗「くぅぅぅ!」

ドッ!ガッ!ゴッ!と、絹旗は地面に何度も叩きつけられた。
窒素を纏っているとは言え、ノーダメージという訳にはいかない。

御坂「ぐぅぅぅ!」

御坂は電磁力で勢いを殺しながら、何とかビルに貼りついた。

結標「大丈夫だった?」

テレポートしてきた結標が、2人を気遣う。

御坂「もちろん!まだまだ行けるわ!」

絹旗「超余裕です!」

結標「んじゃあ、行くわよ!」

273 : VIPに... - 2011/08/15 01:18:18.26 itpxcIft0 233/458

強制的に病院にテレポートされた一方通行は
窓から戦闘の様子を見ながら愚痴を零していた。

一方通行「あれが作戦!?結標が気を引いている間に、ドチビがビルを崩して
     その瓦礫をオリジナルが撃ちまくる。あンなの無駄だ。天使には効きやしねェ」

滝壺「大丈夫だよ。私の補助もある」

一方通行「この病院から、4人に補助とは褒めてやりてェが
     そンな付け焼刃じゃあどうにもならねェ。根本的に次元が違ェ」

滝壺「違うよ。私が補助しているのは、あくまでむぎのだけ」

一方通行「どっちにしろ関係ねェ。そうだ。つーかその4位の糞ババアはどこ行きやがった?」

冥土帰し「落ち着こうか一方通行。君は少し、人を信じると言う事を覚えた方が良い。
     それに君は休んだ方が良いね?」

一方通行「今戦いを見ているだけのこの状況で、充分休ンでいる事になる。
     今妹達は合計で30人ほど。チョーカーのバッテリーを満タンまで充電したところで
     使える能力はせいぜいレベル2程度」

一方通行「だが天使化、神化にはチョーカーの代理演算は関係ねェ。だからこうやって
     休ンでいるだけでも意味はある。いざという時に助けにも行けるしなァ」

冥土帰し「その必要は無いと思うけどね?」

一方通行「どう見てもその必要しかねェだろうが」

冥土帰し「確かに、彼女達1人1人の力は、君に比べたらちっぽけなものだ。
     でもね、今の彼女たちは個人で戦っているんじゃない。チームで戦っているんだ」

冥土帰し「それは2人だから2倍、4人だから4倍とか、そんな単純ではなくて
     絆が深ければ、その力は何十倍、何百倍にもなる」

一方通行「仮にそうだとしても、さっきも言ったように次元が違ェ。
     何百倍じゃあ、どの道話にならねェ」

冥土帰し「じゃあ実際の戦いを見てみるんだね?」

一方通行は言われた通り、再び窓から戦闘の様子を眺める。
相変わらず、ダメージは碌に与えていないように見えるが……

冥土帰し「確かに、ダメージは限りなく0に近いかもしれない。
     例えるなら、HP10万の敵に、1ずつしかダメージを与えていないような
     そんなものかもしれない」

冥土帰し「けどそれは、逆に言えば10万回攻撃すれば倒せると言う事だね?
     つまり、やられなければ必ず勝利は見えてくる」

確かに理論的にはそれは可能だ。しかし現実的に重大な問題がある。

一方通行「このままだと、体力削り切る前にバテるに決まってンだろ。
     現に、戦っている3人はもうバテているように見えるが?」

冥土帰し「でも凄くないかい?彼女達1人1人なら、とっくにやられていたと思うよ?
     それをここまで粘るなんて。それに僕には、まだまだ行けるように見えるけどね?
     特に結標君はね」

一方通行「……」

冥土帰し「絆の力に関して、さっきは何百倍にもなる。という表現で止めたけど
     僕は何千倍、何億倍、いや無限大になると信じているよ」

一方通行「……あいつらに、絆があるとは思えねェ。それどころか因縁があるくらいだろ」

冥土帰し「この学園都市の危機の前に一致団結したのさ」

一方通行「一体あいつらに何を吹き込ンだ?」

冥土帰し「それはね――」

274 : VIPに... - 2011/08/15 01:19:33.69 itpxcIft0 234/458

――――――――――

―――――――

――――

御坂「ちょ、ちょっと!いよいよ紫の天使まで追い込まれたわよ!ヤバいんじゃないの!?」

結標「うるさいわね。私達がここでいくら焦ったって、事態は変わらないのよ。
   少し落ち着きなさい」

御坂「落ち着きなさい!?落ち着いていられるわけないでしょーが!
   今すぐアンタの力で、私をあそこへテレポートしなさい!」

結標「だから!そうしたってあなたはやられるだけでしょ!あなたこそ頭冷やしなさい!」

御坂「それでも、例えそうだとしても!出来る出来ないの問題じゃなくて!
   やるかやらないか!それが問題でしょ!」

結標「負けると分かっている戦いに挑みに行くなんて、ただの無謀な愚か者よ」

御坂「そうかしら?戦いに挑みもしないで、ただただ殺されるのをガクガク震えて
   待つだけの方が、よっぽど愚か者な気がするけどね」

結標「分かったわ。そこまで言うなら、あなた1人送ってあげるわよ!」

絹旗「ちょ、2人とも超落ち着いてください!滝壺さんも喧嘩止めるの手伝ってくださいよ!」

275 : VIPに... - 2011/08/15 01:20:13.08 itpxcIft0 235/458

2人のいがみ合いがヒートアップしていく中、カツンと2つの足音。

麦野「レベル5の第2位と3位が、くだらないことで争ってんなぁ」

麦野は先の戦いで左腕が吹き飛んだが、冥土帰しによって、新たな義手をつけられていた。

御坂「アンタ……」

結標「うるさいわね。第4位」

冥土帰し「まあまあ、少し落ち着くんだね?」

御坂「落ち着けませんよ!緊急事態だってのに、この臆病者は!」

結標「事態が呑み込めてないのよ。このお子様は」

麦野「私からしたら、どっちもお子様みたいなもんだけどなぁ」

御坂結標「「はぁ!?」」

冥土帰し「こらこら、2人を煽るような事は止めるんだね?」

その時、外から爆音が響いた。

276 : VIPに... - 2011/08/15 01:21:07.55 itpxcIft0 236/458

御坂「なんか凄い爆音が……急がなきゃ!」

冥土帰し「まあ待つんだね?君1人じゃあ勝てないよ」

結標「ほらね」

冥土帰し「ただ、言っている事は御坂君の方が正しい」

結標「んな!?」

冥土帰し「結標君の言う通り、1人じゃ勝てない。けど御坂君の言う通り
     このまま何もしなければ、戦わなくても殺されるだけだろうね?」

冥土帰し「なら、やるべきことは1つだね?」

御坂「な、何ですか?」

冥土帰し「“協力して倒す”だよ」

結標「はぁ!?そんなことしたって勝てるわけ」

冥土帰し「勝てるさ」

結標「根拠は?」

麦野「ぐちぐちうるせぇぞ」

結標「あなたのほうこそ、いちいち癇に障るわ」

冥土帰し「言い争っている場合ではないね?手短に話すよ?
     結標君、御坂君、麦野君、絹旗君の4人で、あの天使を討伐してもらいたい」

結標「4人が協力したところで、あの天使を倒せるとは」

冥土帰し「倒せる」

結標「……っ!」

277 : VIPに... - 2011/08/15 01:22:09.90 itpxcIft0 237/458

冥土帰し「しかし、元々少なくない因縁がある君達が、そう簡単に協力できるとは思えない」

御坂「そこまで知っていて……じゃあ、どうするの?」

冥土帰し「まずは名前で呼び合う。既に親しい関係である絹旗君と麦野君は除いてね」

御坂「確かに、能力名や序列で呼び合うよりは良いと思うけど……そんなんで良いの?」

冥土帰し「もう1つ。『約束』をするんだ。『約束』は時に強い絆を生む。
     内容は『共に生き残り、この街を守り切る』これでどうだね?」

結標「そんなんで、何とかなるの?」

冥土帰し「なると僕は信じている。あとは君達次第だ。さあ、もう時間がない。
     結標君、絹旗君、御坂君、麦野君、そして滝壺君の補助。
     この5人で一方通行を助け、この街を守ってほしい。あとは頼んだよ?」

―――

――――――

―――――――――

一方通行「ふーン。『絆』の力ねェ」

冥土帰し「君は身をもって体験しているだろう?君と打ち止めの間にあるものさ。
     人は、大切な何かを守りたいときに本当に強くなれるんだよ?」

278 : VIPに... - 2011/08/15 01:23:35.20 itpxcIft0 238/458

御坂「最愛!もっとビルを砕いて頂戴!」

絹旗「超分かっています!」

絹旗が砕く。御坂が撃つ。反撃を凌ぎながら、何度それを繰り返したことか。
多分1000発は撃っただろう。それにも関わらずウリエルの勢いは衰えない。

結標も持っていた手榴弾やその辺の瓦礫を、片っ端からウリエルの内側に
テレポートしているのだが、やはり勢いは衰えない。

結標「最愛!あなたは直接攻撃に回って!『超電磁砲』のための瓦礫は私が用意する!」

御坂「分かったわ!」

絹旗「超分かりました!」

2人が返事をした次の瞬間には、絹旗はウリエルの真上にテレポートされていた。

絹旗「行きますよ~」

窒素が螺旋状に回転しながら絹旗の両腕を包み込む。それはつまり、窒素のドリル。
まずは左腕から『神の火』へ落下していく。

ギギギギギ!とウリエルの頭上の輪っかと、窒素のドリルが擦れ合う。
輪っかは割れるどころか傷1つつかない。

絹旗「おりゃあああ!」

窒素の密度と回転速度を上げる。その甲斐あってか、ピシッ!とヒビが入った。
しかし、そこで左腕が弾かれる。

絹旗「こっこだああーっ!」

ヒビ目がけ、今度は右腕を繰り出す。そのヒビに、わずかにドリルがめり込んだ。
窒素の密度と回転速度を限界まで上げる。割る。この輪っかを絶対割って見せる。

10秒経って、その思いが通じたのか、バキィン!と、幅1mはある輪っかの一部が欠けた。
若干悶絶したように見えたがそれだけ。とても致命傷には至らない。
そこでウリエルから、全方向に風の波動が放たれた。

絹旗「ぐぬうううあああ!」

吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる絹旗。
窒素で覆われている絹旗にとって、大きい怪我にはならなかったが
連戦をこなし、今の今まで全力を出してきた絹旗は、もう限界だった。

279 : VIPに... - 2011/08/15 01:24:56.54 itpxcIft0 239/458

結標(よく頑張ったわね。最愛)

結標「美琴ー!」

結標が叫ぶと、御坂の目の前に瓦礫――とは言い難い、操車場のコンテナ1個分ほどの
大きさの塊がテレポートされた。

御坂「行っけー!」

バギュゥゥゥン!と塊が『超電磁砲』となって放たれる。
間髪入れずに、結標は次々と塊をテレポートしていく。
御坂も、目の前にテレポートされていく塊を次々と放っていく。
先程までの、瓦礫でのちまちました攻撃とは違う。
まさに大砲のような一撃が、連続して放たれていく。

さすがのウリエルも、これは効いたのか。若干仰け反ったように見えた。

結標「これで決めましょう!」

御坂「ええ!」

結標が、御坂をウリエルの真上100m程にテレポートする。
同時に、操車場のコンテナ8個分程の大きさの塊も、御坂の目の前にテレポートされていた。

御坂「これで終わり、だああーっ!」

巨大な塊を、思い切り殴って『超電磁砲』として放った。
御坂の全身全霊究極の一撃。
それは輪っかの一部とウリエル本体の一部を縦にくりぬいた。
これには、さすがのウリエルも悶絶したようだった。

結標「(今しかない!)沈利ー!」

直後、結標により、滝壺の補助を受け、遠くで力を極限まで溜めた麦野が
御坂と同じような座標にテレポートされた。

麦野「消し飛びなぁぁぁあああ!」

直径100mの、1つの街を壊せそうなぐらいの『原子崩し』の一撃がウリエルを飲み込んだ。

280 : VIPに... - 2011/08/15 01:27:38.44 itpxcIft0 240/458

結標の能力により、安全に地面までテレポートされた御坂と麦野。
現在、御坂と麦野と絹旗は能力を使い果たしていた。結標も、もう長くは持たない。

麦野「やっ……たの……?」

目の前にはウリエルが倒れている。
御坂と麦野の全力の攻撃により、羽はちぎれていて輪っかも砕けているが、消滅はしていない。

結標「念のため、動きを抑えておきましょうか」

そう言うと、どこからともなく、コンテナ5個分の大きさの塊20個ほどが
次々とウリエルにかぶさるようにテレポートされていった。

結標「はぁ……はぁ……さすがに、これで限界ね」

結標がヘナヘナと地面に座り込む。他の3人も同じ様なものだ。

御坂「やったのね……私達で」

絹旗「ええ」

麦野「ま、私にかかりゃちょろいもんよ」

結標「そうやってすぐ調子に乗る」

御坂「あれ?そう言えば……」

絹旗「超どうしたんですか?」

御坂「淡希の持っているそれ、何なの?」

御坂の言っている“それ”とは、結標の持っている、先端に宝石のようなものがついた
フレイルのことだ。

結標「これね。特注のフレイル。これで目印をつけているのよ」

絹旗「目印?」

結標「そう。本当はあのビルを丸々テレポートできればいいのだけれど
   今の私じゃ、距離は10km、質量は10tまでが限界なのよね」

御坂「自慢を聞きたい訳じゃないんだけど」

口ではそう言いながら、内心では結標のことを素直に感心していた。
後輩の白井黒子が結標と同じテレポーターだからこそ分かる。
距離10km、質量10tは化け者だ。さすが、ここ最近でレベル5第2位までに躍り出ただけはある。

結標「これからの説明に必要なことなの。で、ビルをテレポートできないからって
   ちまちま瓦礫をテレポートするのも効率悪いじゃない?」

絹旗「それは遠回しに私の事を超ディスっているのでしょうか?」

結標「瓦礫より大きいものをテレポートしたい。でもビルは出来ない。
   そんなときにこれを使って、コンクリートを削って線を引くの」

結標「今回の場合は、ビルに線を引いて、区切りをつけた。
   そうすると区切りをつけた部分が、ビルから失くなるのをイメージしやすくなって
   ビルの一部だけをテレポートできるって訳。分かった?」

御坂「うーん。なんとなく?」

結標「あれよ。折り紙をしようとしたとき、正方形の紙がなくて
   長方形の紙しかなかったらどうする?」

御坂「そりゃあ、折り目をつけて、その折り目に沿って、はさみで切るなり
   手で千切るなりで、正方形の紙を作るわ」

結標「それと同じよ。長方形の紙を勘で破いて、正方形の紙を
   生み出すのは難易度高いじゃない?けど折り目をつければ、綺麗に切れるでしょ?」

絹旗「成程。超納得です」

結標「ま、私も先生じゃないから、これ以上上手く説明は出来ないんだけど。
   こんな話は置いといて、帰りましょうか」

281 : VIPに... - 2011/08/15 01:28:56.34 itpxcIft0 241/458

ちょっと雑談を交わした間に、能力が多少戻った結標は
テレポートで病院に帰還しようと立ちあがった、その時だった。

ウリエル「hjbghhjrghsgthfgmhjzsghv!」

ウリエルが雄叫びをあげて、起き上がった。

麦野「まだ……起き上がってくるって言うのか!?」

見たところかなり弱っている。先程までは雄叫びだけで、暴風が吹き荒れ
吹き飛ばされたと言うのに、今は空気がビリビリするくらいだ。
だが4人の少女達はそれ以上に弱っている。戦うのは愚か、立っているのがやっとの状態だ。

結標(どの道、一旦帰るしかないわね……!)

そう思いテレポートしようと演算したその時
かなり小さめではあるが、風の刃が飛んできた。
それは結標の手前の地面に直撃し、彼女を吹き飛ばした。

御坂麦野絹旗「「「淡希!!!」」」

結標「だ……いじょうぶよ」

口ではそう言ったが、弱っている状況で、この一撃はきつかった。
演算が出来ない――!そこへウリエルは次の一撃を放っていた。
もう駄目だ。誰もがそう思った。4人の少女達は反射的に目を瞑っていた。

282 : VIPに... - 2011/08/15 01:30:07.71 itpxcIft0 242/458

結標「……?」

目を瞑ってから10秒ほど経っただろうか。衝撃は、来ない。
結標は、恐る恐る目を開けた。

「ハァーイ、科学の子猫ちゃん達。お姉さんが助けに来てあげたわよー」

楽観的な声をあげて、黄色い女がそこに立っていた。

結標「あなたは……?」

「私はヴェント。魔術師」

結標「てことは、私達の敵!?」

ヴェント「他の奴らはそうかもしれないけど、私は君達を助けに来たんだヨ?
     ま、信じる信じないは君達次第だけど」

御坂「はぁ!?意味が分からないわ!」

ヴェント「悪いけど、これ以上君達と問答している暇はない」

ヴェントがそう言い放った直後ウリエルの風の波動弾が飛んできた。
しかしそれは、ヴェントの肌に触れた瞬間、霧散していった。

ヴェント「私に風の攻撃は効かない」

そう言い放ち、ヴェントはウリエルの真上まで飛んだ。

283 : VIPに... - 2011/08/15 01:32:18.63 itpxcIft0 243/458

ヴェント「喰らえ!」

ヴェントの風のハンマーが振り下ろされた。
しかし、鈍器で殴ったような鈍い音は一切しなかった。
ズブブと、ハンマーがウリエルに飲み込まれている。

ヴェント「ビンゴ!」

一見不発のように見えるが、これがヴェントの狙い。
初めから攻撃するつもりで、ハンマーを振り下ろした訳ではなかった。

ヴェント「吸収!」

元『神の右席』後方のアックアは、かつて自身の属性と適合する天使ガブリエルの
『天使の力』(テレズマ)を、わずかであるが体の中に抑え込んだと言う。
しかし、それは無謀というものだ。莫大なテレズマを吸収すれば、吸収した者は
そのエネルギーに耐えきれず、内側から爆発する。

だが、それは天使が万全状態の話。
今回の場合は違う。ウリエルは既に瀕死だ。今のウリエルなら吸収しきれる。
そして同時にパワーアップも出来る。ヴェントはそう考えていた。

しかし、現実はそうは甘くなかった。ウリエルの総量のわずか5%。
たったそれだけのテレズマを吸収しただけで、ヴェントの体は悲鳴を上げていた。

ヴェント(ここまでの……力を……!)

だからと言って、ここで退く訳にはいかない。今この現場でまともに戦えるのはヴェント1人。
もしリタイアすれば、少女達は殺され、病院は破壊される。

ヴェント「天使ごときが……なめんなァー!」

ヴェントが咆哮する。体からは血が噴き出す。それでも吸収を止めない。
そうして10%を吸収したところだった。

ヴェント「がは!」

先に限界を迎えたのはヴェントだった。血を噴き出し、地面へ真っ逆さまに落ちていく。

結標「くっ!」

結標が力を振り絞り、ヴェントを一気に地面の数cm上まで横にしてテレポートさせた。

284 : VIPに... - 2011/08/15 01:34:10.26 itpxcIft0 244/458

ヴェント「くっそ……」

ヴェントは自分が情けなかった。颯爽と助けに参上して、調子に乗ってこのザマだ。
甘かった。瀕死だからと言って、吸収しきれるという考えが驕りだった。

ウリエルは少女達にボロボロにされ、ヴェントに吸収され、もう残り体力10%を
切っているだろう。しかし、10%もあれば、瀕死の彼女たちを蹂躙し、病院を破壊できる。
終わった。さすがにこれは終わった。誰もがそう思った時だった。

一方通行「演出ご苦労さン!仕上げは俺はやるぜェ!」

御坂「アンタ……!」

いつの間にか一方通行が少女達のところに居た。
そして、超巨大な光の拳が現れ、グシャ!とウリエルを一撃で潰した。
一瞬ではあるが、神化したのだ。

ヴェント「やるじゃない……アンタ……」

一方通行「はァ……はァ……当然だ……」

強がってはいるが、一方通行はかなり疲弊していた。
それは無理もなかった。寧ろよくやったと言うべきだろう。

ヴェント「けどまあその力、もう少し温存しとくべきだったかもね」

一方通行「はァ?どう言う意味だ?」

先程の状況でウリエルを倒せたのは一方通行だけだった。
もし一方通行が助けに入らなければ、事はもっと悪い方向に進んでいただろう。
それを温存しとくべきだったとはどういうことか。
寧ろあれ以上のタイミングがあったとでも言うのか。

ヴェント「『四大天使』。ガブリエル、ウリエル、ラファエルときたら、次に来るのは?」

一方通行「『神の如き者』(ミカエル)か」

そんな会話を繰り広げていた時だった。目の前にミカエルが降臨した。

ヴェント「『四大天使』の中でも別格の強さ。
     アンタの力はコイツにとっといてほしかったのよ」

御坂麦野結標絹旗「「「「嘘でしょ……」」」」

一方通行「こりゃあ、万事休すかもなァ……」

285 : VIPに... - 2011/08/15 01:35:08.72 itpxcIft0 245/458

上条「もしかして……操られているのか……」

ローラ「正解♪その子はもう私の人形だよ♪
    ちなみに、他の大半の魔術師のことも操ったり、弱み握ったりしたんだ♪」

気分が昂ぶっているせいか、いつもの似非古文口調ではなくなっている。

上条「テメェが……諸悪の根源か……」

ローラ「失礼な。私はアレイスターを殺して、世界を平和に導こうとしているのよ」

上条「ふっざけんな!これのどこが、世界平和に繋がるってんだ!
   つーか土御門から、俺の抹殺と学園都市の崩壊も目的だって聞いたぞ!」

ローラ「あら、バレてたの?そんなに興奮すると、血が噴き出しちゃうよ?」

上条「うる、せぇ。テメェみたいなのは、ここでぶん殴ってやる!」

上条はヨロヨロとした動きで立ちあがる。

ローラ「……人の話をちゃんと聞かない人は嫌いなの。もう飽きちゃった。
    レッサー、そいつを消しなさい」

レッサー「……たくないです」

ローラ「え?」

レッサー「やりたく……ないです」

上条「レッサー?」

ローラ「ふーん。私の洗脳に抗うんだ。じゃあもういいや。“弾け飛んで死ね”」

その瞬間、ローラの言葉通り、レッサーは体の内側から弾け飛んだ。

286 : VIPに... - 2011/08/15 01:36:41.27 itpxcIft0 246/458

上条「な……にが……」

ローラ「使える魔術は、何もイギリス清教所属のだけじゃないの」

今のは、錬金術の最高峰『黄金錬成』(アルス=マグナ)。
しかもアウレオルスのように、鍼で緊張を緩める必要もない。
だが今の上条には、最早そんなことは関係なかった。上条は怒りで我を忘れローラに猛進する。

ローラ「窒息死」

上条の体が、ガクンと勢いを失う。
しかしこの技は一度喰らっている。対策は分かっている。
上条は右手の指を喉の奥に滑り込ませる。
バギィン!とガラスが割れるような音と共に、上条の呼吸が元に戻った。

ローラ「感電死」

瞬間、上条の四方八方を青白い電光が取り囲んだ。
上条は右手を突き出す。それが避雷針の役割を果たし、電光がそこに集中する。
結果、電光はあっさりと消し飛んだ。

ローラ「圧死、および轢死」

虚空から1台の車が降ってくる。上条の後方からは、車が突っ込んでくる。
上条はまず、振ってくる車を打ち消した。その後回転し、裏拳気味で後方から来る車を打ち消した。
しかしそれは、少しの間ではあるが、ローラの目の前で背を向けていると言う事。

ローラ「隙だらけだよん♪」

ローラは上条の背中に触れた。そしてローラの掌から、尋常ではない空気圧が放たれる。
上条の体は何十mも吹き飛ばされ、地面を転がった。

上条「ごふぁ!」

背中の傷と口から血が溢れる。もはや動くことすら厳しい。
地面に這いつくばりながらも、首だけはローラを見た。
そこには、銅、銀、金のゴーレムと、ローラのそれぞれの手には剣が握られていた。

287 : VIPに... - 2011/08/15 01:38:46.25 itpxcIft0 247/458

ローラ「さて、どうやって殺してほしい?」

ローラとゴーレムが迫ってくる。だが上条は戦う事は愚か、もう動くことすらままならない。

ローラ「……あなたは今、絶望的な状況にあるのよ。今や学園都市の戦力は
    1体につき『聖人』5人を生贄に捧げた、大天使達に割かれている。
    助けが来る確率もない」

ローラ「なのにその目、諦めてない。この状況でも覆せると信じている目。ムカつくのよね」

上条「テメェみたいな奴には……死んでも負けるわけにはいかねぇからな……」

ローラ「あっそ。じゃあ死になさい」

ローラの右手の剣『カルンウェナン』が振り下ろされる。上条は思わず目を瞑った。
ザシュ!と肉を切り裂いた音が響いた。しかし、それは上条のものではない。

上条(一体……何が……)

上条はおそるおそる目を開いた。
そこには、ホスト風な男の持っている刀のようなものが、ローラの心臓を貫いていた。

「おい、そいつを安全なところに連れてって手当てしてやれ。
  『冥土帰し』からもらった、あの薬を飲ませろ」

誰に話しているんだ。と上条は思ったが、直後に上条の体は抱きかかえられていた。
ドレスを着た、可愛い女の子だ。

ドレス女「本当に良いの?薬は、あなたの為に用意されたものじゃ」

「誰に向かって口聞いてやがる。俺がそんな簡単に傷つく訳ないだろ。いいから早く行け」

ドレス女「分かったわよ。ていうか、もうその女死んだんじゃないの?」

「こいつは偽者だ。どっかで俺達の事をほくそ笑んで見ているんだろう」

ドレス女「じゃあ、安全なところなんてないわね。あなたの側が1番安全ね」

「……分かった。じゃあこの『未元物質』(ダークマター)空間で、おとなしくしていろ」

そう言って、レベル5第1位、垣根帝督は『未元物質』の空間を創り出し上条達を取り囲んだ。

288 : VIPに... - 2011/08/15 01:40:54.49 itpxcIft0 248/458

直後に、偽者のローラは溶け、本物のローラが物陰から現れた。

ローラ「そんな気休めの檻みたいなので、私を止められるとでも思っているの?」

垣根「ふん。随分と余裕だな。俺の能力の全容を把握しきった訳でもねぇだろうに」

ローラ「その台詞、そっくりそのまま返すわ」

垣根「そりゃあアレさ。俺とテメェには、決定的な違いがある」

ローラ「性別が違うとか?」

垣根「まあ、それもあるかな。けれど、もっと違う決定的なモノ。戦う理由さ」

今の垣根は、上条とドレス女、即ち心理定規(メジャーハート)を守るために戦う。
ローラはとある人間を殺すために戦う。かつての垣根のように。
今なら、一方通行がどうしてあんなにも強かったのかが分かる。

ローラ「もしかして精神論?しかも科学の街で」

垣根「そうやって馬鹿にしているがいいさ。そうやって、俺も負けたんだからな」

ローラ「……よく分からないけど、あなたみたいなSっ気が強い人を、圧倒的な力で
    屈服させるの、楽しいのよねぇ♪」

垣根「黙ってりゃ可愛いのに。歪んだ性癖をお持ちのようで」

ローラ「わざわざ邪魔してきたんだから、少しは楽しませてね♡」

垣根「テメェが『もう止めてください』て言うまで、喘がせまくってやるよ」

289 : VIPに... - 2011/08/15 01:42:51.69 itpxcIft0 249/458

心理定規「とりあえず、応急処置は済んだわ。ほら、これを飲んで」

上条は言われた通り、薬らしきものを飲んだ。すると体に活力が戻って来た。
不思議な事に、血も完全に止まって傷もかなり塞がった。

上条「今のは、何だったの?」

心理定規「私もよく分からないわ。あの人が『冥土帰し』から飲むように。
     ってもらったらしいけど」

上条「じゃあ俺が飲んだらヤバかったんじゃ……」

心理定規「かもしれないけど、あの人が良いって言ったんだから良いんじゃない?」

上条「よほど信頼しているんだな。けど、こう言っちゃ悪いけど、多分、あいつじゃ
   ローラには勝てない。いや一方通行でも勝てるかどうか怪しいレベルだ。
   だから、俺も今から一緒に戦う。俺の右手なら、この空間からも出られるはずだ」

心理定規「やっぱり、あなたの右手には特殊な力が宿っているのね」

上条「俺の右手の事を知っているのか?」

心理定規「詳しくは知らないけど、まあ、噂はね。それで、もう薄々分かっていると
     思うけど、あなたにはやってもらうことがあるの。そのために今は休んでいてほしいの」

上条「あの病院に向かっている光を消すことか」

心理定規「そう。どうやらあなたは、この街を救う為のキーパーソンみたいだからね」

上条「じゃあなおさら共闘してローラを早く倒したほうがいいだろ」

心理定規「じゃあ、百歩譲って出るのは良いけど、あなたは構わず病院へ向かって
     こっちはこっちで何とかするから」

上条「いや駄目だ。一緒に戦わないと奴には勝てない。やっぱ俺も一緒に」

心理定規「駄目よ」

心理定規は能力を発動させる。脳に直接作用するため、能力は通じる。
現在の心の距離は、先生と生徒のようなもの。

心理定規「あなたは、ここで大人しくするか、病院へ行くかの2択しかないの。分かった?」

上条「そいつは出来ねぇ相談だ」

心理定規(能力が作用しているのにもかかわらず、抵抗してくる!?)

ならばと、心理定規は再び心の距離を調節。上条にとって最愛の恋人となる。

上条「いくらお前の頼みでも、俺はここから出ないといけない」

心理定規(な……んで……)

簡単な話だった。心理定規の洗脳より、上条の意志が強かった。たったそれだけのお話。
上条は『幻想殺し』で『未元物質』の檻を砕こうとしたその時だった。
突如、外から爆音などが響き渡った。

290 : VIPに... - 2011/08/15 01:44:28.11 itpxcIft0 250/458

上条「そういや、さっきまでめちゃくちゃ静かだったけど」

心理定規「この空間は、外界からの音や光景を全て遮断してしまうからね。
     もちろん、この中で起こった出来事も、外からは把握できない」

上条「じゃあ、その効果が切れたってことは」

心理定規「待って!まだ音は断続的に響いている!きっとあの人が負けた訳じゃない!」

上条「お、落ち着け。とりあえず、俺も加勢する。だからこの檻砕くぞ」

心理定規「駄目なの。あなたはここにいて。じゃないと、私」

上条の腕にしがみついて、涙目になりながら、上目づかいで必死に訴える心理定規。
その姿に、上条は不覚にもときめいてしまった。
それは現在の心の距離を考えると当たり前のことだった。

きっとこの少女は、垣根に何かあったと不安なのだろう。
だから、せめて上条をここから出さないと言う、垣根の言いつけだけは果たそうと必死なのだろう。

だからこそ、上条はこの檻から出なければならない。少女の不安を拭う為に。垣根を助けるために。上条はなんとなく自分が能力に干渉されているのだろうと言う事は分かっていた。
上条は自分の頭を触り、能力を解除した。
いつの間にか外の音が聞こえなくなって、再び静けさだけが漂っている。
右手で檻に触れた。檻が砕けた瞬間に広がった光景は

余裕綽々のローラに、無傷で倒れている垣根だった。
その状況に誰よりも素早く反応したのは心理定規だった。

心理定規「帝督!?帝督!?」

心理定規は垣根を抱え揺さぶるが、何の反応もない。まるで死んだように。

291 : VIPに... - 2011/08/15 01:47:03.23 itpxcIft0 251/458

上条と心理定規が檻に入っていた5分間

垣根「時間がねぇんだ。さっさと決める」

垣根の背中から6本の白い翼が生えた。右手には『未元物質』で出来た白い刀。
その羽をはばたかせ、垣根は一瞬でローラへ肉迫し、その刀を縦に振り下ろしていた。

当然ローラは、右手の『カルンウェナン』と左手の『エクスカリバー』をクロスしてガードする。

しかし、垣根の刀は2本の剣を“すり抜けて”、そのままローラに振り下ろされた。
ガキィン!と金属音が周囲に響いた。

ローラ「くっ!」

ローラは一旦距離を取る。その顔面と、胸のあたりが“割れていた”。

垣根「なんだぁそりゃあ。鎧か?」

ローラは体表を覆うように黄金の鎧を纏っていた。そのため、実質無傷のままである。

ローラ「その刀、すり抜けたり、実体に戻したりすることが出来るのか!?」

垣根「へぇ。この刀のトリックを1発で見破るとはな。案外やるじゃねぇか」

ローラ(攻められるのは分が悪い。こちらから攻める!)

今のローラは、霊装の力や特殊な術式で、霊長類を遥かに超越した運動能力を宿している。
一瞬で垣根に肉迫し、まずは左手の『エクスカリバー』を振り下ろす。

当然、垣根は右手の刀でガードする。すると垣根の左側が開くのは必然。
ローラはそこに右手の『カルンウェナン』を滑り込ませる。

ガキィン!と『カルンウェナン』が垣根の左手の刀にガードされた。

垣根「二刀流は、何もお前だけじゃないんだぜ」

しかもそれだけではない。垣根の翼が何やら蠢いている。ローラは距離を取る。

292 : VIPに... - 2011/08/15 01:48:30.28 itpxcIft0 252/458

垣根「そうだな。あまり俺に近付かない方が賢明かな。この翼も刃に成り得る。
   いわば八刀流かな」

ならばとローラは、先程から手持無沙汰だった、3体のゴーレムを操る。
1体5mほどの巨大なゴーレムだが、時速60kmで垣根に突っ込む。

垣根「そっか。まずはこいつらから消さなきゃな」

垣根の右3本、左3本、それぞれの翼達が巨大な光線状となり銅と銀のゴーレムを飲み込んだ。
残りは金のゴーレムのみ。

垣根「こんなんどうだ?」

垣根の目の前の空間から、いきなり巨大なビームが放たれた。『原子崩し』の応用だ。
それは、一瞬にして金のゴーレムを飲み込んだ。

垣根「もう終わりか?」

ローラ「調子に乗るな」

ローラは垣根の真上に、10tに及ぶ水のハンマーを生み出し、振り下ろした。
しかし垣根は、6枚の翼で自分を包み込みガードしていた。つまりは全くの無傷。

垣根「じゃあ、そろそろ終わらせるか」

垣根が6枚の翼をはためかせ、ローラへ肉迫し、刀を振り下ろした。

ローラ「ゼロにする」

ガードのモーションすらしなかったローラへ、刀が直撃した。
しかし、全く手応えがない。垣根は一旦距離を取る。

293 : VIPに... - 2011/08/15 01:50:17.45 itpxcIft0 253/458

垣根「テメェ、何をした?」

ローラ「ソーロルムの術式。術者が認識した武器による攻撃力を『ゼロにする』というもの。   
    効果時間はおよそ10分。その間対象は『ゼロ』のままとなる。
    もちろん限度はあるけど、貴方程度なら完全に攻撃力をゼロにできる」

ローラ「私が認識したのは『未元物質』。あなたは10分間『未元物質』を使った攻撃では
    私を傷つけることは出来ない。さて、どうする?」

垣根「どうもしねぇよ。何も能力自体が完全に使えなくなった訳でもねぇし
   武器が駄目なら素手もあるし、認識されなけりゃ武器もアリなんだろ?
   そんだけありゃあ、充分だ」

言ったそばから、懐から拳銃を取り出し、ローラへ放った。
再び黄金の鎧を纏っていたローラには、避けるまでもない。カンカン!と弾丸は弾かれていく。

垣根「やっぱ堅いな。じゃあこれはどうよ?」

垣根は素早く弾丸を入れ替え、発砲した。
別にソーロルムの術式で『ゼロにする』ことは可能ではあったが
どうせ鎧は貫けないので、ローラは敢えてそれをしなかった。

ローラの思惑通り、弾丸は鎧を貫く事は無かった。
それでも若干ではあったが、弾丸は喰い込んた。

垣根「弾けろ」

瞬間、喰い込んだ何発もの弾丸は炸裂した。
垣根は追い討ちをかけるように、どこに収納していたのか10個ほどの手榴弾を、ローラへ投下した。
ボガァァァン!と辺りに壮絶な音が響き渡った。

294 : VIPに... - 2011/08/15 01:52:41.48 itpxcIft0 254/458

垣根(出血大サービスで、持っていた武器をほとんど使ったんだけど)

煙の中には平然と立つ1つの影。

垣根(やっぱあの鎧をどうにかしねぇと駄目か)

煙が晴れ、改めて良く見ると、鎧にヒビが入っている。だがそれだけ。
傷を負わせてはいない。しかも鎧は再生していく。

垣根(このままじゃ分が悪いか。結局10分後には、またゼロにされるかもしれねぇが
   ここは一旦逃げて時間を稼ぐか)

垣根は翼をはためかせ、空中に漂う。

ローラ「分かってる?『未元物質』をゼロにしたと言う事は、その防御力もゼロになっている
    と言う事。つまり、そこに匿っている子猫ちゃん達の檻も
    あっさり破壊できるってことだよ?」

垣根(しまった!)

ローラ「灰は灰に、塵は塵に、吸血殺しの紅十字!」

ローラの両手から、3000度の炎が上条達へ向かう。

垣根「させるかよ!」

垣根は炎と上条達の間へ入る。

ローラ「あは♪君が割って入っても、能力で防ぐ事は出来ないんだよ!」

垣根「だから、こうするんだよ!」

垣根は6枚の翼を器用に操り、目の前の地面を捲りあげ、即席で土の壁を創り出した。
結果、壁は砕けるも、垣根も上条達も無事だった。

垣根(やつはどこへ!?)

ローラ「ライトニーングサンダー!」

声は上から。ビリビリ!と言う音と言葉から推察するに、電撃系の攻撃だろう。
ならばと、垣根は10m先程に、先端を尖らせた棒状の導体を生み出した。
結果、それは避雷針の役割を果たし、ローラの出した稲妻はそこへ導かれ
垣根も上条達も無傷だった。

ローラ「やるわね♪ならば直接行くとするわ」

垣根「させねぇ!」

ローラは右手の『カルンウェナン』を上条達の檻へ振り下ろした。
そこへ垣根は割って入り、ローラの右手首を左手で掴む。
黄金の鎧で覆われている以上、握り潰す事は出来ない。
けれども、覆っている鎧ごと捻りあげる事は出来る。
垣根はローラの右手を思い切り捻る。
ローラはたまらず『カルンウェナン』を落とすが、構わず左手の『エクスカリバー』を振り下ろす。
垣根は『カルンウェナン』を拾い上げ応戦する。

ローラ「ゼロにする」

垣根(こいつ、自分の武器にためらわず――!)

ゼロになった『カルンウェナン』を『エクスカリバー』があっさりと砕き
そのまま垣根をも切り裂こうとしたが、ギリギリのところでその凶刃を避けた。

295 : VIPに... - 2011/08/15 01:54:05.99 itpxcIft0 255/458

ローラ「あーあ『カルンウェナン』が砕けちゃったよ。どうしてくれるの?」

垣根「お前がやったことだろ」

ローラ「はぁ……もういいや。なんかこのまま戦い続けても、こっちが損するだけな感じするし。
    なかなか楽しかったけど、もう飽きちゃった。“死んで”」

瞬間、垣根は全身から力が抜け、ゆっくりと仰向けに倒れていった。
傷は無く、出血もなく、病気でもない。ただ、死んでいく。

垣根(ふ……ざけんな……)

こんな理不尽な事があるのだろうか。強い能力を持ってしまったばかりに『暗部』に
入れられ、一方通行に瀕死状態にされ、それでも死ねず脳を三分割されながら生かされ
この学園都市の危機にあたって、利用される為に蘇った。それでも護りたい人がいたから
ここまで垣根は垣根なりに精一杯生きてきた。それは決して誇れる人生ではなかったけど。

垣根(だからって……こんな最期って……ねぇだろ……)

先程までの炎や雷なら防ぎようはあった。
しかし言葉1つで、しかも「死ね」なんてあまりにも抽象的な表現では対策のしようがない。
そうして垣根の体は完全に地面に倒れた。『死』が確定した。

296 : VIPに... - 2011/08/15 01:55:12.01 itpxcIft0 256/458

そうして垣根が倒れてから約30秒。
甲高い音と共に檻が砕かれ、中から上条と心理定規が現れた。

心理定規「帝督!?帝督!?」

垣根を抱えながら必死で叫ぶが、返事は無い。

上条(まさか……)

垣根は見たところ無傷。なのに電池が切れたように動かない。
この状態は知っている。かつて「死ね」と言われた姫神のようだ。

上条「くそ!」

上条は急いで垣根に触れる。しかし、何も起こらない。『死』は既に確定してしまったからだ。

ローラ「ははは!もう遅い!もう死んでるんだよぉ!」

上条「テンメェェェエエエ!」

上条は怒りで我を忘れ、ローラに突っ込む。

ローラ「倒れ伏せ。上条当麻」

瞬間、ズン!と上条は地面に伏せられた。アウレオルスとは段違いの力。
それでも右手を少しずつ動かし、指を噛んでこの状況から逃れようとするが
ローラは右手を踏み、それを阻んだ。

上条「ぐああああ!」

ローラ「お前なんてなぁ!右手がなけりゃ、ただの男子高校生にすぎないんだよぉ!」

垣根に案外苦戦した苛立ちと、上条をコケにしている興奮で
ローラのテンションは最高潮に達していた。

297 : VIPに... - 2011/08/15 01:56:08.98 itpxcIft0 257/458

心理定規「帝督!お願い目を覚まして!私じゃ何も出来ないから!
     無理を言ってるのは分かってる!
     けれど、この状況を変えるには、あなたしかいないの!」

ローラ「あははははは!何言ってるの?そいつはもう死んでるんだよ?
    何言ったって聞こえてるわけなーいじゃーん!」

上条「笑うな……人の死を、笑ってんじゃねぇー!」

その時だった。上条の叫び声に応えるように、バグン!と垣根の体が跳ねた。

心理定規「ふぇ?」

ローラ「なんだ?何が起こった?」

298 : VIPに... - 2011/08/15 01:56:36.86 itpxcIft0 258/458

――うるせぇな、あいつ。人の死を笑うな?誰が死んだって?
何1つ守れちゃいねぇのに、死ねるわけねぇだろ――

――私じゃ何も出来ないから、目を覚まして?当たり前だ。
ハナっからお前に期待なんざしてねぇんだよ。お前は黙って俺に守られてろ――

299 : VIPに... - 2011/08/15 01:57:14.61 itpxcIft0 259/458

心理定規に抱えられながら、垣根はゆっくりと目を開けた。

垣根「よぉ」

心理定規「え?あなた、死んだんじゃ……なかったの?」

垣根「なんだ、その死んでた方が良かったみたいな言い方は」

心理定規「え?いや、あの、そんなつもりは」

垣根「分かってるよ。冗談だ」

などと言いながら、心理定規の頭をワシャワシャと撫でた。

心理定規「ちょ、やめてよ。髪が乱れる」

垣根「お前が泣いてたから、撫でてやってんだろ」

心理定規「誰のせいだと思ってるのよ……」

垣根「悪かったな。でも、もう大丈夫だから」

そう言って垣根は立ちあがった。

300 : VIPに... - 2011/08/15 01:58:15.82 itpxcIft0 260/458

ローラ(馬鹿な!?何があった!?)

能力の不発?いや、それはあり得ない。
現に上条には打ち消されはしたが、ちゃんと能力は効いていた。
今も、倒れ伏せ。という命令が依然続いている。だとしたら、残った可能性は1つしかない。

一度死んで蘇った。もうそれしか考えられない。

ローラ(にわかに信じがたいが)

まあいい。例え奇跡的に生き返ろうが、また殺せば良いだけ。

ローラ「死ね」

再び、容赦なく言葉を放った。
しかし、垣根は平然と立ったままだった。

ローラ「あれ?」

垣根「おいおい、死ねって言われて素直に死ぬ奴がいるかよ。馬鹿じゃねぇの?」

上条「何が起こって……」

ローラ「くっ!死ね!死ね!!死ね!!!」

ローラは何度も同じ言葉を口にするが、垣根は平然としていた。

301 : VIPに... - 2011/08/15 01:59:46.96 itpxcIft0 261/458

垣根「もう諦めろ。どうやら俺はレベル6に進化したみたいだ。誰であっても、今の俺は殺せない」

心理定規「嘘……」

垣根「自分で言うのもなんだが『一度死んだ者が復活した時、奇跡の力を得る』
   歴史上、こう言う例はいくつか存在するらしいぜ。多分、俺もそれなんだろう」

ローラ「進化したからと言って、私の能力が通用しないだと……」

垣根「さて、そろそろその汚い足をどけてもらおうか」

そう言った次の瞬間には『未元物質』で作られた刀で、ローラは切り裂かれていた。
先程までの羽をはばたかせるとか、そういった動作は一切なかった。
故に動きが予測できず、気付いた時には切り裂かれていた状態だった。

ローラ(しかも……鎧ごとあっさりと……!)

そんな事を考えながら、ローラは超高速で距離を取る。しかし、今の垣根はそれをも許さない。

垣根「遅ぇよ」

超高速で逃げようとしたローラに一瞬で肉迫し、ブン!と垣根は右足で蹴りを繰り出した。
ローラは『エクスカリバー』でガードをしたが、バゴォン!と垣根の蹴りは
『エクスカリバー』を易々と砕き、ローラへ直撃し、ノーバウンドで100m先のビルまで
ぶっ飛ばした。

302 : VIPに... - 2011/08/15 02:01:47.34 itpxcIft0 262/458

ローラ(ソーロルムの術式の効果もなくなっているのか?
    とりあえず、砕かれた鎧と傷の回復を……)

そう考えたローラであったが、既に垣根が目の前に居た。

垣根「俺にはもう勝てねぇよ。さっきテメェが『死ね』って言っても死ななかっただろ?
   俺の能力の方が上ってことだ」

言いながら、垣根はローラの腹を踏みつける。
その足の重さは、どう考えても人間のものじゃなかった。
踏まれた事は無いが、インド象よりも重いのではないか。

ローラ「く……足よ……吹き飛べ……!」

必死に言葉を絞り出したローラだったが、垣根の足に全く変化はない。

垣根「テメェのその言葉だけ?で自分の思い通りにするやつ。確かに凄えよ。
   相手にまで干渉出来るんだからな」

垣根「その点、俺が思い通りに出来るのは、自分の身体だけだ。
   けど、逆に言えば今の俺は自分の身体だけなら、最弱にも無敵にもなれる」

垣根「簡単に言うぜ。俺は現在『未元物質』そのもの。
   俺そのものがこの世の法則に当てはまらない。
   俺が思えば、この世界の法則では死ななくすることもできるし
   光より速く動く事も出来るし、ダイヤモンドよりも硬くなれるし、質量だって自由自在だ」

垣根「分かったか?もうお前は俺には勝てない。最後のチャンスだ。
   このままもう何も抵抗せず、大人しくするなら命は見逃す。どうする?」

ローラ「ハイ……ワカリマシタ……モウ……ナニモシマセン……」

垣根「案外物分かり良いんだな。いいだろう。見逃してやる」

垣根は足をどけ、踵を返す。

ローラ(なーんて、馬鹿じゃないの!お前は殺せなくても上条当麻は殺せるんだよぉ!)

ローラ「死ね!上じょ」

しかし、その言葉は最後まで続く事は無かった。
垣根の背中から生えている6枚の翼の内の1つが、ローラの顎をもぎ取ったからだ。

垣根「俺が言えた立場じゃねぇんだけどよぉ。お前性根から腐ってやがるな。
   やっぱ殺すしかないか」

ローラ「……!……!!」

上条「やめろ!垣根!」

垣根「無理」

上条の言葉も聞かず、垣根は6枚の翼でローラを細切れにした。

303 : VIPに... - 2011/08/15 02:02:47.49 itpxcIft0 263/458

上条「垣根ぇ!何もそこまでしなくても!」

上条は垣根のもとへ駆け、その胸倉を掴む。瞬間、垣根はただの人間に戻った。

心理定規「ちょ、ちょっと!帝督はあなたを助けるために殺したのよ!
     あの女は、ああやって諦めたふりをして、あなたを殺す気満々だったのよ!
     殺すしかなかったのよ!」

上条「けど!」

垣根「盛り上がってるとこ悪いが、疲れた。少し眠らせてくれ」

言ったそばから、垣根の体から力が抜けていくのが、胸倉を掴んだ手から伝わってくる。

上条「お、おい!大丈夫か!」

心理定規「帝督!」

心理定規は上条を突き飛ばし、垣根を抱きかかえる。
抱きかかえた垣根から、すーすーと寝息が聞こえる。

心理定規「よかった。あ、ごめんなさいね、突き飛ばしたりしちゃって。
     帝督はもう無理そうだから、あなた1人で行ってくれる?」

上条「……ああ」

垣根の事が若干許せない上条であったが、これ以上時間を割いている余裕もない。
とにかく病院へと駆け出した。

304 : VIPに... - 2011/08/15 02:06:00.86 itpxcIft0 264/458

とりあえずここまで。ローラのキャラ崩壊、ソーロルムの術式と未元物質の明らかに間違った解釈。
分かってるんだけど、垣根を追いこむ為にね。けど垣根滅茶苦茶好きなんだ。

もう言ってる事が支離滅裂だけどね。まあこんな駄文でよければ読んでやって下さい。




318 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) - 2011/08/25 23:11:16.11 3OIa2P4AO 265/458

レッサー忘れてられてる感があるのだが……気のせいか?

320 : VIPに... - 2011/09/06 02:47:43.29 iNh2rC4q0 266/458

レスしてくれてる人ありがとう。久々に>>1です

>>318
>>285の最後の行を読んでください

あとここからの展開は本当の本当にオリジナル要素ばっかです
多分8割ぐらいが独自・オリジナル設定です
まあ今迄のこのSSの内容も5割ほど独自設定で出来ていますが

321 : VIPに... - 2011/09/06 02:50:22.54 iNh2rC4q0 267/458

イギリス清教 第零聖堂区『必要悪の教会』

隻眼の男「ローラの野郎、あれだけ調子こいてた割にはあっさり死んだみたいだな」

それが意味する事は、今まで操られていた魔術サイドの人間達が、正気を取り戻したと言う事。

隻眼の男「つーことは、こいつらの洗脳も解けたと言うことか。ったく、だりぃ」

『こいつら』とは、現在進行形で行われている、インデックスの『自動書記』(ヨハネのペン)の
完全修復と覚醒の儀式を、隻眼の男と一緒に護っている魔術師達の事だ。

傾国の女「私……何を……」

エリザリーナ「く……」

マタイ=リース「ローラの奴め……」

隻眼の男「洗脳が切れたなら、もう邪魔なだけだよな。死ね」

瞬間、3人の魔術師はグシャ!と一瞬で圧死した。辺りに血の海が広がる。

隻眼の男「あーあ、暇だなー。なんか、楽しい事ねぇかなー」

その時だった。結界で守られていた扉が開かれた。そこには男と女。

オッレルス「ギリギリ間に合わなかったか」

322 : VIPに... - 2011/09/06 02:52:46.51 iNh2rC4q0 268/458

隻眼の男「オッレルス……!」

隻眼の男は、胸の高さまで腕を上げ、下ろす。先程3人の魔術師達にやった攻撃と同じだ。
それでオッレルスは潰れるはずだった。

だがオッレルスは右手を上にかざしただけで、3人の魔術師達とは違い潰れる事は無かった。

隻眼の男「……やっぱこの程度の攻撃じゃ死なねぇのか。あの噂は本当だって事か」

オッレルス「あの噂って?」

隻眼の男「テメェは本来、魔神になれるほどの実力を持っているのに、子猫を助けるために
     その機会を棒に振ったって事だ」

オッレルス「本当の事だけど?それは魔神になった君が言うべきセリフではない気がするけどね。
      オティヌス」

オティヌス「何で、子猫如きの為に、1万年に1度あるかないかのチャンスを棒に振った?」

オッレルス「子猫の命の方が、大事だったからに決まっているだろ」

仮にその子猫に100億円の価値があったからとかだったらまだ分かる。
しかしこの男は、たった1匹の小動物の『命』が大事だと言う理由だけで
『魔神』になる権利を捨てた。

オティヌス「余裕かましやがって。ムカつくぜ。最高にムカつく。殺す。ここで殺す!」

先程と同じように、腕を上げ、下ろす。
ただし、威力は先程の比ではないくらいに強く、しかも側に居るシルビアや
その空間ごと押し潰すつもりの攻撃。

対して、オッレルスも先程と同じように右手を上に挙げた。
それだけで、周りの地面はともかく、オッレルスとシルビアが潰されることは無かった。

323 : VIPに... - 2011/09/06 02:54:28.79 iNh2rC4q0 269/458

オッレルス「シルビア、君じゃあオティヌスには勝てない。その辺に隠れていてくれ」

シルビア「……分かったわ」

本当は出来れば共闘したい。だがシルビアには分かっていた。
自分がいても足手まといになるだけだと。

オティヌス「女を気遣うとは、余裕あるじゃねぇか」

オッレルス「今度はこっちの番だ。『禁書目録』は返してもらう」

無視して、オッレルスは左手を突き出す。『北欧王座』の『説明できない力』が前方に放たれる。
それは常人はもちろん、オティヌスですら不可視の攻撃――!

オティヌス「これが噂の『北欧王座』か!」

しかしオティヌスには、可視は出来なくとも何か強力なエネルギーが
放たれている事は分かっていた。腕を上げ、降ろす。
それだけでオティヌスの前方の『説明できない力』は潰れ、地面はへこんだ。

オッレルス「成程。君の重力、実に厄介だ。なら、これはどうかな」

オッレルスは右手を突き出す。
同じく『説明できない力』が放たれる訳だが、先の一撃とは違う。

オティヌス「っ!」

何かを感じたオティヌスは、後方に飛び退く。
すると先程まで居た空間に『説明できない力』が放たれていた。

324 : VIPに... - 2011/09/06 02:55:56.92 iNh2rC4q0 270/458

オティヌス「座標攻撃も出来んのか……!」

これでは重力で潰せない。面倒だ。ならば本人を潰すまで――!

オティヌス「死ねぇ!」

オティヌスの右手から直径30mほどの、触れれば吸いこまれ、圧し潰される重力球が放たれた。

対してオッレルスは右手を突き出し、重力球の中心に『説明できない力』を叩きこんだ。
それだけで重力球は内側から弾け飛んだ。

オティヌス(右手は座標攻撃、左手は普通の攻撃か)

オティヌスがそんな事を考えている内に、オッレルスは左手を突き出す。

オティヌス(普通の攻撃か。それなら――)

そう考え腕を上げ、降ろす。それで前方の『説明できない力』は押し潰された。
だが“それ以外の方向から”とんでもない衝撃。

オティヌス「ごっ、はぁ!」

肉体の表面から芯まで、その全てに均等に浸透するような不自然なダメージ。
しかし何故?オティヌスにはダメージより、疑問の方が大きかった。
そこへ考える暇も与えまいとオッレルスが突っ込んでくる。

325 : VIPに... - 2011/09/06 02:58:56.42 iNh2rC4q0 271/458

オティヌス「一発当てたからって、調子こいてんじゃねぇぞぉ!」

前方に重力の波動を放つ。それでオッレルスは潰れるはずだった。
しかし、オッレルスの姿は突如オティヌスの視界から消え去った。
それはオッレルスが一瞬でオティヌスの後方に周り込んだからに他ならない。

オッレルスは『説明できない力』を纏った右拳を繰り出した。これはもらった!と思ったが
拳が当たる直前に振り向きかけたオティヌスが微笑んでいるのをオッレルスは見逃さなかった。
そして、オティヌスにあと2cmというところで激痛と共にオッレルスは弾かれ
数十m先の壁に激突した。

オッレルス「これは……!」

考える暇もなく、追い討ちをかけるように
今度はオティヌスに向かって体が引き寄せられていく。

オッレルス(まさか、引力と斥力まで使えるのか――)

オティヌスは重力を纏った拳を構えている。上等だ。と
オッレルスも引力の勢いを逆に利用し、突っ込む。
1秒後、2人の拳は交錯し、ゴシャア!と壮絶な音が辺りに木霊した。

326 : VIPに... - 2011/09/06 03:03:40.17 iNh2rC4q0 272/458

オッレルス「がっ!」

拳が直撃したのはオッレルスだけだった。
初めから来ると分かっていてクロスカウンターをかましたオティヌスと
咄嗟の機転で攻撃に回ったオッレルスの差がこれだった。

しかも引力の効果はまだ続いている。
それはつまり、普通なら拳を受けぶっ飛ばされるはずが、まだそこに留まっていると言う事。
即ち、オティヌスがオッレルスを殴り放題だと言う事――!

オティヌス「タコ殴りじゃー!」

オティヌスの追撃の拳が放たれる。しかし、オッレルスはそれをいとも容易く右手で掴んだ。
と同時にオティヌスは気付いた。
殴り放題という至近距離は、オッレルスの手も届くと言う事。
オッレルスは左手をオティヌスの体に添える。

オティヌス「やべ、斥りょ」

オッレルス「遅い」

オッレルスの左手から、超至近距離で『説明できない力』が放たれた。
そのあまりの威力に、オティヌスは一瞬で数十m先の壁に激突した。
もう後退は出来ない。そこへオッレルスが右手を出しているのが見えた。座標攻撃が来る。

オティヌス(どうする――!)

オティヌスは何となく分かっていた。
座標攻撃が自分の居る座標に叩きこまれるのは当然、上にジャンプしようが
左右に移動しようが、敢えて前方に飛び込もうが、その全ての座標に
攻撃がセットされているだろうと。

だからオティヌスは、微妙に斥力を放ちながらジャンプした。
結果、本当にオティヌスの上にセットされていた『説明できない力』は弾かれた。

327 : VIPに... - 2011/09/06 03:07:09.02 iNh2rC4q0 273/458

オッレルス「君、案外冷静なんだね」

オティヌス「テメェこそ、あのタコ殴りにされるって状況で
      俺の拳を1発で掴み。逆に反撃してくるとはな。
      さすが『魔神』に最も近い男だと言われただけはあるぜ」

オティヌス(しかし、長期戦になるとマジでヤベェな。ここは一気に決める!)

オティヌス「喰らいやがれぇ!」

叫びと共に、突如オッレルスの周辺に7つ程の重力球が出現した。
その1つ1つが『聖人』ですら一撃で仕留める威力のをだ。

オティヌス「座標攻撃が出来るのはテメェだけじゃねぇんだぜぇ!」

対してオッレルスは、両手を水平に広げた。
そして全身から『説明できない力』を放ち、重力球を消滅させた。

オッレルス「別に俺の力は、手から出すと決まっている訳じゃないんでね」

オティヌス「くそが!ならこれはどうよ!?」

オティヌスは両手を上げ、下ろした。
重力のほとんどを分散させずに、敢えてオッレルスの真上に集約させ、下ろした。
しかしそれは、少し移動しただけで、重力の範囲からは逃れられると言う事。
オッレルスは攻撃を避けるのも兼ねて、両手を振り下ろして隙だらけのオティヌスに突っ込む。

オティヌス(かかったな!)

しかしこれはオティヌスの計算通り。
こうして突っ込んできたオッレルスを斥力で弾き、隙を作ろうと言う魂胆だった。
そうしてオティヌスは、拳があと2cmというところで、オッレルスに斥力をぶつけた。

だが、オッレルスは弾かれない。

オティヌス(何が!?)

間違いなく斥力の煽りは受けている。証拠にオッレルスの拳や体がビリビリと震えている。
斥力の煽りに弾かれないのではなくて、耐えている。
見れば、何もない後方に左手を突き出している。それが意味する事は、噴射。
左手から『説明できない力』を噴射し続けて、斥力に耐えている――!

328 : VIPに... - 2011/09/06 03:08:02.28 iNh2rC4q0 274/458

オティヌス(くっそがぁ!)

オティヌスも斥力を最大まで強くする。それはもう、ビルすら吹き飛ばすほどの威力。
第零聖堂区『必要悪の教会』でなければ、全てが粉微塵に吹き飛でいただろう。
それでもオッレルスは噴射し続け耐える。

オッレルス「おおおおおおおおおおおお!」

常に冷静なオッレルスが、おそらく人生で初めての咆哮をした。拳があと1cmまで迫る。

オティヌス「おおおおおおおおおおおお!」

負けじとオティヌスも咆哮する。拳の距離が3cmになる。

オッレルスオティヌス「「おおおおおおおおおおおおおお!!」」

2人の咆哮が重なる。そして2人の咆哮以外の全ての音が消え――

329 : VIPに... - 2011/09/06 03:10:00.06 iNh2rC4q0 275/458

ゴギャア!と1つの音。オッレルスの拳が、オティヌスの顔面を捉えた音だった。
それは確かに、顔面しか捉えていないはずなのに『説明できない力』の効果なのか
まるで体中に拳を喰らったようだった。勝敗は決した。

オッレルス「……ふぅ」

シルビア「オッレルス……」

心配だったのか、シルビアは物陰から出てきてすぐにオッレルスに抱きついた。
そんな彼女の頭を撫でながら、倒れているオティヌスに言う。

オッレルス「『禁書目録』を返してもらおうか。
      多分俺も時間をかければ儀式を中断することは出来ると思うが
      時間もないし、出来れば君に頼みたいんだが」

オティヌス「は?何でだよ?」

オッレルス「君の負けだからだよ。負けた奴は勝った奴の言う事を聞くのは当然だろ?」

オティヌス「だから、俺はまだ負けてねぇのに
      何で言う事を聞かなきゃいけないんだって聞いてんだよ」

オッレルス「何を言って――」

瞬間、オティヌスの体がバグン!と跳ね、同時にとんでもない衝撃波が繰り出された。

330 : VIPに... - 2011/09/06 03:11:41.23 iNh2rC4q0 276/458

オッレルス達は、衝撃波が繰り出される直前に何とか飛び退き、直撃を回避した。
一方オティヌスはと言うと、平然と立ちあがっていた。その背中からは黒い翼。
手の爪は異様に伸び、そして黒い尻尾に、頭からは2本の角が生えていた。

オッレルス「君、その姿は――」

しかし、オッレルスの言葉は最後まで続かなかった。
オティヌスが一瞬でオッレルスに肉迫し、その顔面を思い切り殴りつけたからだ。
その一撃は、ぶっ飛ばされたオッレルスが第零聖堂区『必要悪の教会』の壁を易々と破り
イギリスの街を数kmに亘って転がるほどの威力だった。

オッレルス「がは!」

削板に音速の2倍以上の速度で叩きつけられようが、オティヌスの斥力で弾かれようが
平然としていたオッレルスが、ここで明確に悶絶した。

オッレルス(あの姿は……がっ!)

考える暇すらなかった。ぶっ飛ばされてから2秒も経っていないのに、オティヌスは
オッレルスの顔面を蹴り上げ、地面から30mほど浮いた彼を空中でタコ殴りにした。
それでオッレルスの意識は中断され、無残に地面へと落下していった。

331 : VIPに... - 2011/09/06 03:15:10.27 iNh2rC4q0 277/458

オティヌス「はは。案外、呆気ねぇもんだなぁ」

ボロ雑巾のようになっているオッレルスを見下しながらそう言った。
そこへ音速以上の速度で走ってきたシルビアが、オッレルスを介抱した。

シルビア「オッレルス!オッレルス!!」

抱え、呼びかけるが返事は無い。一応呼吸はしているので生きてはいるが。

オティヌス「あーあ。所詮『魔神』に“近い”だけで『魔神』じゃなけりゃ
      『魔神』の領域に達した俺には勝てないってことか。
      それにしても差があり過ぎだろ。もうちょっとは楽しめると思ったのに」

シルビア「アンタ……何をしたの?その体は一体……?」

オティヌス「見たらわかるだろ。今の俺は言葉や形だけじゃなく、本当の意味で
      『魔神』になったんだ」

『魔神』とは『魔術を極めすぎて、神様の領域にまで足を突っ込んでしまった』人間の事である。よって厳密には、まだ不完全な『北欧王座』しか使えないオッレルスも
『魔神』という座だけは冠していても、実際はオッレルスに負けるほどでしかないオティヌスも
『魔神』とは言えない。それなのにオティヌスは“本当の意味で”『魔神』になったと言った。

オティヌス「まあ魔術を極めた訳じゃねぇけど、神に等しい強さの力を取り込んだんだから
      『神』って言う表現は間違いでもねぇよなぁ」

シルビア「どう言う……意味……?」

オティヌス「聖人って言うのは、身体は丈夫でも、頭の方は弱いのかなぁ?」

シルビア「いいから、答えなさいよ……!

オティヌス「……この状況で強気だとは、お前、面白ぇな。
      さっき俺が言った事思い出せ。そしたら分かるだろ」

シルビア「まさか……いや、けど、そんなこと、有り得ない……!」

オティヌス「ま、普通はそう言う反応だわなぁ。
      自慢じゃねぇけど、多分、この世界でこんな事が成功したの俺だけだと思うぜ」

狼狽するシルビアに、オティヌスは笑ってそう言った。

332 : VIPに... - 2011/09/06 03:18:38.31 iNh2rC4q0 278/458

オティヌスが多分世界で初めて成功した事。それは悪魔との融合。

シルビア「冗談でしょ?悪魔との融合なんて、普通の人間なら、死んでもおかしくないのに……」

オティヌス「だよなぁ。我ながら凄ぇと思うもん」

悪魔と融合するためには、まずは悪魔を召喚しなければならないのだが
これについては悪魔に関する魔道書を1冊でも読み、人間を何人か生贄にすれば可能になる。
召喚条件はそこまで難しいものではない。
そしてオティヌスのように融合が成功すれば、莫大な力を得る事が出来る。

ではなぜ世界中の魔術師はそれをしないのか。答えは実に簡単。
人間を生贄にするという、明らかな倫理観の無視と、リスクが大きいからだ。

召喚した悪魔と融合、もしくは力を借りる為には、召喚した悪魔に勝利しなければならない。
それは容易なことではなく、返り討ちにあって殺されるのも珍しくない。
仮に勝利できたとしても、力を取り込んだ瞬間にその莫大なエネルギーに耐えきれず
大抵の人間は死ぬ。今のところ、ここまでなら魔術世界でも数例確認されて来た。

ここからは実際の例がないので何とも言えないが、もし取り込めたとしても
取りこんだ悪魔に乗っ取られる。また精神崩壊や病で死ぬ。というのが予測されている。
要するに『ハイリスクローリターン』と言う事だ(もし成功したら、悪魔の力を使役できるので
ローリターンと言う訳ではないが、リスクと照らし合わせて考えた場合)。

目の前の男は、これだけの条件をすべてクリアしたとでも言うのか。
有り得ない。そんなことは、有り得るはずがない。

シルビア「嘘……嘘よ!そうよ。これは幻なのよ……!」

オティヌス「認めろよ。実際俺の見た目は変わり、オッレルスを圧倒しただろ?それが証拠だ」

それでもまだ信じられなかったシルビアは
自分でもよく分からないまま、思わずこんな質問をしていた。

シルビア「じゃあ、アンタと融合した悪魔は何なの……?」

オティヌス「サタン。悪魔の中でも上位のサタンだよ」

シルビア「悪魔と融合するなんて……アンタの目的は一体何なの……!?」

オティヌス「強くなりたかったから。ただそれだけのことさ」

333 : VIPに... - 2011/09/06 03:20:34.87 iNh2rC4q0 279/458

シルビア「そんな……アンタ、正気じゃない……!」

オティヌス「そーかぁ?もともと魔術なんてのは『才能のない人間が、才能のある人間へ
      追いつくために』存在するんだぜ。『強くなりたい』という俺の願望は
      それに最も近いだろ?」

シルビア「じゃあ聞くけど、そんなに強くなった先に何があるって言うの!?」

オティヌス「そりゃあ、まだ分からねぇよ。とりあえず最強無敵になってから考える」

オティヌス「つーかよぅ、それだったら何でお前らも強くなったんだよ?あ?」

シルビア「それは」

オッレルス「それは、大切な人やモノを守るためさ」

答えたのは、オッレルスだった。

オティヌス「今意識が回復したのか、それともだいぶ前から回復はしていて、
      黙って俺の話を聞いていたのか。ま、どっちでもいいけどよ。
      俺とコイツとの会話を邪魔すんじゃねぇよ」

そう言ってオティヌスは、オッレルスの頭を踏みつぶそうとしたが、
思い切り地面に足を降ろした頃には、既にオッレルスとシルビアの姿は無かった。

オティヌス「逃げたか」

だが今のオティヌスの魔力感知はずば抜けており、イギリス国内程度なら正確に位置を把握できる。追いかけて殺す事など造作もなかったが

オティヌス「ま、この世ともうすぐお別れする事になるんだ。少し待ってやるか」

取り込んだ悪魔に支配されていないからこそ湧き出た感情だった。

334 : VIPに... - 2011/09/06 03:22:36.46 iNh2rC4q0 280/458

オティヌスから数km離れた場所にオッレルスとシルビアはいた。

オッレルス「シルビア、君は逃げるんだ。オティヌスの話が本当なら俺達は絶対に勝てない。
      だからせめて、君だけは逃げてくれ。俺が時間を稼ぐから」

シルビア「っざけんじゃないわよ!」

オッレルス「え?ぶはっ!」

シルビアはオッレルスを思い切りぶった。

シルビア「私だけ逃げる?そんなこと出来る訳ないでしょ!」

オッレルス「何を言っているんだ。分かるだろう?悪魔と融合したあいつは強い。
      はっきり言って俺でも勝てない。だから君だけでも」

シルビア「なら一緒に戦えばいい。
     アンタはこの程度で諦めるような、そんな人間じゃないでしょ!?」

オッレルス「じゃあはっきり言うけど、君なんかじゃ足手まとい以外の何物でもないんだよ!
      君なんかいても仕方ないんだ!」

言い方は酷いが、これはまぎれもない事実。オッレルスはシルビアを愛しているからこそ
諭すのではなく、真実を突きつけることによって、シルビアを諦めさせようとする。

シルビア「そんなこと分かってる。それでも一緒に行くって言ってんの。
     私だけ逃げるくらいなら死んだ方がマシ」

オッレルス「そんなの君の我儘だろ!俺は君に生きていてほしいんだ!」

シルビア「それだって、こっちからしたらアンタの我儘でしかない。
     アンタが私を連れてかないって言うなら、私はここで死ぬ」

オッレルス「意味が分からないよ……」

シルビア「アンタさ、待たされる側の気持ち考えたことある?」

オッレルス「それは」

シルビア「ないでしょ?私がいつもどれだけアンタを心配しているか……
     もう我慢できないの。なんなら私だけでもアイツに挑む」

オッレルス「でも」

その時だった。オッレルスのポケットの中の携帯が震えた。
着信を見ると、オッレルス達が現在住んでいる家からだった。

335 : VIPに... - 2011/09/06 03:24:40.91 iNh2rC4q0 281/458

オッレルス「もしもし」

保護された少女『もしもし、まだ帰ってこないのー?どこで何してるの?
        もしかして、また私達みたいな子達を助けているの?』

オッレルス「いや、そうじゃない。そうじゃないけど……」

言い淀んでいるオッレルスから、シルビアは携帯を強引に奪いとった。

シルビア「もしもし」

少女『あ、シルビアお姉ちゃん。
   あのねー、オッレルスお兄ちゃん元気ないみたいだけど、何かあったの?』

シルビア「お、声だけでオッレルスのテンションが分かるんだ」

少女『えっへへー。私はオッレルスお兄ちゃんの事が大好きだからねー。
   それくらいは当然なんだよー』

シルビア「そう。じゃあさ、頼みがあるんだけど」

少女『なになに?』

シルビア「元気がないオッレルスを励ましてやってくれないか」

少女『そんなことなら、お安い御用だよー』

シルビア「そう。じゃあ代わるわね」

そう言ってシルビアは、オッレルスに携帯を差し出す。オッレルスはそれを無言で受け取る。

オッレルス「もしもし」

少女『もしもし、あのねー。私には、お兄ちゃんが何に悩んでいるかは知らないけどね、
   落ち込んでいるなら、これだけは言っとくよー?』

少女『お兄ちゃんは、絶対に途中で諦める人じゃないよ。
   生きる希望を無くした私達に、お兄ちゃんが生きる希望を与えてくれた。
   今でも、感謝してる』

少女『それと、辛くなったらいつでも相談してねー。私なんかじゃ
   頼りにならないかもしれないけど。お兄ちゃんは1人じゃないんだよ?』

少女『じゃあね、お兄ちゃん。早く帰ってきてねー』

それで、通話は終了した。

336 : VIPに... - 2011/09/06 03:26:01.43 iNh2rC4q0 282/458

オッレルス「……」

シルビア「分かったでしょ?私達には、私達を待ってくれている人がいる。
     もう軽々しく、君だけ逃げろなんて言わないでよね」

オッレルス「君だって、死んだ方がマシ。とか言ってたじゃないか」

シルビア「それぐらい言わないと、アンタ納得しないでしょ」

オッレルス「……」

シルビア「あの子も言ってたけど、アンタは途中で諦める人じゃない。私が1番良く分かってる」

オッレルス「でもやっぱり」

シルビア「まだ、私達は死んでない。ボコボコにされただけで、死んでない。
     だったら、また立ちあがればいい。やられても、立ちあがる。
     何度も、何度でも。死なない限りは」

シルビア「行こうよ。オッレルス。そして勝って、2人で帰ろう」

オッレルス「……もういいよ。分かった。やってやろうじゃないか。
      そもそも悪魔の1匹ぐらい倒せなきゃ『魔神』になる資格もないだろうし」

337 : VIPに... - 2011/09/06 03:26:58.23 iNh2rC4q0 283/458

オティヌス「おいおい、ようやく戻ってきたかと思えば、女連れかよ。
      せっかく逃がす時間を与えてやったてのによ」

オッレルス「余計な御世話だ。君は俺達2人で倒す」

オティヌス「あのさぁ」

瞬間、オティヌスはオッレルスの真横に居たシルビアの顎を蹴りあげていた。

オティヌス「調子乗ってんじゃねぇよ?」

そして蹴りあげられたシルビアを追撃しようと、オティヌスは飛ぼうとするが

オッレルス「それは君の方だ」

オティヌス「おお?」

オッレルスはオティヌスの尻尾を掴み、思い切り投げ飛ばした。
オティヌスはイギリスの街並みを数kmに亘って転がった。

338 : VIPに... - 2011/09/06 03:28:33.27 iNh2rC4q0 284/458

オッレルス(大見得を切ったものの、やはり速い。
      何とか反撃は出来たが、やつの攻撃は全く見えなかった)

オッレルス「大丈夫かシルビア?」

シルビア「ええ。なんとかね」

オッレルス「油断するな。やつはすぐ戻ってくる」

そうやってオッレルスが注意を促した1秒後に、オッレルスはオティヌスの爪で切り裂かれた。
あまりの速度に、オッレルスは半歩しか下がれなかった。

オティヌス「浅かったか」

しかしオッレルスは、切り裂かれながらも咄嗟にオティヌスの手を掴んでいた。
そこへシルビアはオティヌスの後ろから剣を振るった。

オティヌス「甘ぇ!」

後方からの一撃に対して、オティヌスは尻尾で対抗。
結果、その一撃はシルビアを吹き飛ばした。

オティヌス「調子こきやがって」

オッレルス「くっそおおおぉぉぉ!」

叫びながら、オッレルスは左手をオティヌスの体に添え、全力で『説明できない力』を放った。
まともに喰らったオティヌスは、またも数km吹き飛ばされる。

オッレルス(攻撃する暇を与えちゃいけない!叩みかける!)

オッレルスは吹き飛ばされたオティヌスのもとへ駆けだす。

339 : VIPに... - 2011/09/06 03:30:24.07 iNh2rC4q0 285/458

オティヌス「やるじゃねぇか」

オティヌスがそう言って体を起こした時には
既にオッレルスが真上から『説明できない力』を放っていた。

オティヌス「成程。攻撃する隙を与えないってかぁ!」

しかしオティヌスは、翼で自身を包み込みガード。
返す刀で翼を思い切り広げ、莫大な風力をオッレルスにぶつける。

オッレルス「ぐ、おお!」

それに対してオッレルスは左手から力を噴射し、風に耐えきった。
直後に右手から光の剣を出現させ、逆に突っ込む。
ガキィン!と光の剣は、しっかりと受け止められた。

オッレルス「くっ!」

オティヌス「こんな事も出来んのか。器用な奴だ。けど俺はこんな事も出来るぜ」

オッレルス(――っ!)

直後、オティヌスの口が大きく開かれ、ビュオ!と赤い光線が吐き出された。

340 : VIPに... - 2011/09/06 03:33:30.38 iNh2rC4q0 286/458

ズザ!と靴が地面に擦れる音。オッレルスは光線を紙一重で避け後ろへ周りこんでいた。
オティヌスは咄嗟に尻尾を振るう。

オッレルス(待っていたよ!)

後ろからの攻撃に対して、もし何らかの防御策があれば
わざわざ振り向かずに、誰だってそれで防御するだろう。
そして分かっている攻撃なら、いくら速くても対応できる。
オッレルスは尻尾を左手で掴み、右の手刀で尻尾を切り裂いた。

オティヌス「ちぃ!」

思わずオティヌスは裏拳を繰り出す。これもオッレルスの予想通り。
後ろの敵へ即座に反撃すると言ったら、裏拳か後ろ蹴りくらいだ。
しかし後ろ蹴りは、かなりのバランス感覚を求められる上、外せば隙が生じる。
だから大抵は裏拳の場合が多い。
今のオティヌスなら翼もあるが、真後ろと言うのは、風で攻撃するにしても
翼を叩きつけるにしても角度的に難しい。性格上、翼で防御に転じると言う可能性も低かった。

よってオッレルスは、思い切りしゃがみ、裏拳をかわした。
右か左から来るかは分からなかったが、しゃがめば関係ない。
間髪入れずにオティヌスの足を払い、転ばせる。
そこへ、シルビアが空中から剣の切っ先を下へ向けながら
仰向けになったオティヌスの顔面目がけ落下する――!

オティヌス「馬鹿が、返り討ちだ!」

口を開き、そこから光線を発射しようとして――
そこにオッレルスの『説明できない力』が叩きこまれ、吐き気と共に光線は不発に終わる。

オティヌス「くっそがあああああああああああああああああああああああああ!」

断末魔の叫びと共に、グシャア!とオティヌスの顔面は貫かれた。

341 : VIPに... - 2011/09/06 03:37:00.45 iNh2rC4q0 287/458

シルビア「はぁ……はぁ……」

オッレルス「……やったのか?」

シルビア「ええ」

剣が口の中を貫き、地面にまで刺さり、血まみれになっているオティヌスを見てそう言った。
しかしながら、大ダメージには違いないだろうが、まだ死んではいないはず。
そう判断したオッレルスは

オッレルス「念のため、これから封印するぞ。
      時間がもったいないが、放っておくわけにもいかない」

シルビア「分かったわ」

オッレルスはボロボロの体をひきずり、シルビアは跨っていたオティヌスから立ちあがって
封印するための準備をしようとしたところで、バキャア!という鉄が砕けた音が響いた。
瀕死のオティヌスが、剣を噛み砕いた音だった。オティヌスはゆっくり起き上がる。

オッレルスシルビア「な――!」

オティヌス「テメェら……許さねぇよ?」

口の中を貫かれ、声なんて出せるはずないのに、何故か声が聞こえた。

オッレルス(くっ!)

ヤバい、と思った時にはもう手遅れだった。
オティヌスは一瞬で2人に肉迫し、顔面を掴み思い切り地面に叩きつけた。

オティヌス「ぎゃははは!」

オティヌスは気絶したシルビアを無視して、オッレルスを殴ろうとしたが
オッレルスは反撃の頭突きを繰り出した。
それは見事にヒットするが、ダメージを受けたのはオッレルスだけだった。

オティヌスは頭突きによって興醒めし、殴るのを止めオッレルスを真上に放り投げた。
そして赤い光線を吐きだし、オッレルスに直撃させた。ひらひらと紙きれのように
オッレルスは無残に落下する。光線を喰らえば、本来なら消滅してもおかしくないのだが
口の中を貫かれた事によって、威力は大分落ちていた。

オティヌス「あーあ。足りねぇ。足りねぇよ。もっともっと抵抗して来いよぉ!おらぁ!」

しかし既に気絶しているオッレルスとシルビアには聞こえていない。

オティヌス「つまんね。こうなったらイギリスの街を破壊して遊ぶか」

342 : VIPに... - 2011/09/06 03:38:51.69 iNh2rC4q0 288/458

ボガァン!ドゴォン!バガァン!と爆発音のようなもので、シルビアは目を覚ました。

シルビア「……一体、何がどうなって……?」

そうして周りを見渡し、見つけたのはぐったりとしたオッレルスだけだった。

シルビア「オッレルス……!オッレルス!!」

側により、抱き上げ、呼びかけるが返事がない。それどころか、呼吸すらしていない。

シルビア「ちょ、ちょっと!ねぇ!ねぇ!」

思わずオッレルスの体を揺さぶってしまうシルビア。しかしやはり目覚めない。
ふと思い出して、胸に耳を当ててみると、心音も聞こえていなかった。

シルビア「嘘……嘘でしょ!」

言いながらシルビアは心臓マッサージを始めた。
確か心臓や呼吸が止まった人が助かるかどうかを大きく変える境界は10分だったはず。
自分は何分気絶していただろうか。考えながらも、心臓マッサージを続ける。

シルビア「お願い……!目を覚まして!」

343 : VIPに... - 2011/09/06 03:41:17.82 iNh2rC4q0 289/458

そうして心臓マッサージを始めて、3分ほど経っただろうか。オッレルスは、目覚めない。

シルビア「どう……すれば……」

今でも爆発音が響いている。オティヌスがイギリスの街を破壊している音だろう。
しかし、オッレルスは目覚めない。自分も満身創痍。
こんな状態で、悪魔と融合したオティヌスを止める事など――

とそこで、シルビアは自分の思った事を反芻する。

シルビア(悪魔と、融合……)

そこで気付いた。まだ1つだけ方法がある事に。
だがそれは、最良の選択ではあるが、完璧なハッピーエンドには至れない。

シルビア(それでも――!)

344 : VIPに... - 2011/09/06 03:42:50.66 iNh2rC4q0 290/458

それから3分後。
シルビアが描いた魔法陣の中心に倒れたオッレルスと、そこに寄り添うシルビアがいた。

シルビア「ゴメンね。2人で帰ろうって言ったけど、その約束守れそうにない」

そうしてシルビアは、オッレルスの唇に自分の唇を重ねた。

シルビア(あなたを……愛してる)

同時にオッレルスとシルビアは光に包まれた。シルビアが執った手段。
それは自身を生贄にしてテレズマの一部をオッレルスに託す事だった。
その光は徐々に広がり、やがて――

345 : VIPに... - 2011/09/06 03:44:35.78 iNh2rC4q0 291/458

オティヌスは遠くに光を見た。その光は決して大きくない。
けれど弱弱しくもなく、温かい光。

オティヌス「……ありゃあ……」

その光の場所へ、オティヌスは突っ込んでいく。

346 : VIPに... - 2011/09/06 03:45:56.20 iNh2rC4q0 292/458

オティヌスが光の場所へたどり着くまでに30秒もかからなかったが
その間に光はなくなっていた。代わりに、1人の『魔神』が浮遊していた。

オティヌス「面白ぇ。ようやく俺と同じ境地に至った訳か」

オッレルスは答えない。頭上には白い輪っかに、背中からは白い翼。
ただその目からは、一筋の涙が流れていた。

オティヌス「なぁーに、泣いてんですかぁ!」

両手の爪でオッレルスを切り裂こうと突進する。
オッレルスも迎え撃つように突進。0・0000001秒で2人の『魔神』が交差した。
それは本当にただの交差。爪がかすったとか、翼が掠めたとかそんなことは一切なかった。
にもかかわらず、オティヌスの全身に切り傷が走った。

オティヌス(かまいたち……なのか……!?)

オティヌス「なめやがってー!」

振り返り、もう一度突進。オッレルスもやはり突進。2人の『魔神』は2度目の交差をした。
それでオティヌスの黒い翼は根元からちぎれ、頭の角もへし折れ、腕はもぎとられた。
勝敗は、決した。

347 : VIPに... - 2011/09/06 03:47:27.19 iNh2rC4q0 293/458

無残に地面に落下していくオティヌスを見ながら、オッレルスは
オティヌスを倒した喜びとシルビアを失った悲しみに駆られていた。

オッレルス(シルビア……俺、やった。やったけどさ……君がいないんじゃ……)

しかしオッレルスに、感傷に浸っている暇はない。
彼が戦っていた理由は、オティヌスを倒すことではなく、インデックスを救出する事である。

とりあえず、第零聖堂区へ行こうとしたところで、ゾン!と圧倒的な威圧感。
それはもちろん瀕死のオティヌスのものではない。
威圧感の発生源は、まさに今から行こうとしているところからだ。

オッレルス(……急がなきゃ!)

だがその必要はなかった。儀式が完了し、ヨハネのペン状態になったインデックスが
オッレルスの鼻先数cmのところに、いきなり現れたからだ。

オッレルス「――!」

言葉を発する前に、彼の体は光の爆発に飲み込まれた。

348 : VIPに... - 2011/09/06 03:51:02.81 iNh2rC4q0 294/458

10%とは言え、テレズマを吸収したヴェントは『聖人』と同等か、それ以上の強さである。
もちろん、今は力が馴染んでいない為100%の力は発揮できないが、
せめてフィアンマ、もしくは『幻想殺し』の少年が来るまでの時間稼ぎくらいは出来ると
ヴェントは思っていた。

しかし、それは甘い考えだった。
ミカエルがたった一振り、右手に持っていた剣を振り下ろしただけで
学園都市の大地は割れ、ヴェントは愚か、遠くから見守っていた少女達と一方通行を吹き飛ばし
瀕死に追い詰めた。一方通行が一瞬神化して、皆を守らなければ全員死んでいただろう。
レベルが違った。現在意識を保っているのは、ヴェントと一方通行だけである。

一方通行「オマエ……カッコつけて出てきたくせに……さっきから
     何の役にも立ってねェじゃねェか……」

ヴェント「分かってるわよ……私だって……ケドさ……強いわ、やっぱ……」

軽い調子に聞こえなくもないヴェントの返事の仕方に、怒りすら覚えた一方通行だったが
ヴェントに怒ったところで、この事態が変わるわけでもない。彼女だけの責任でもない。
自分があまりにも無力な事もある。だからもう一方通行は、神頼みするしかなかった。

一方通行(誰か……いねェのか……残りのレベル5は何をやってやがる……
     あのヒーローは何をやってやがる……?)

もちろん今挙げた人物のどれか、いや寧ろ総動員したって、この大天使に簡単には勝てないだろう。
それでも一方通行は願った。そんな彼の願いは、届いた。

「なんや、本当に一方通行君が地面に這いつくばってるなんてな。
  これはなかなか拝めへん光景やで~」

世界三大テノールでもびっくるするような野太さで、似非関西弁を話す声が聞こえた。
一方通行はその男を見た。青い髪の毛に、耳にピアス。

一方通行(何だアイツは……いや誰でもいい……この状況を変えられるなら……)

一方通行「頼む……コイツらを……助けてやってくれェ!」

「言われなくても、この青髪ピアスが助けたるで~」

349 : VIPに... - 2011/09/06 03:53:57.91 iNh2rC4q0 295/458

会話はそこまでだった。ミカエルが左手から直径1kmにも及ぶ、莫大な炎の塊を放ったからだ。
その光景に誰もが息をのむ。1人の男を除いて。

青ピ「その程度では、僕を倒す事は出来へんで~」

瞬間、青髪の周囲から莫大な量の水が渦巻いた。
それは炎の塊とぶつかり、蒸発と言う形で相殺された。

一方通行「水流操作(ハイドロハンド)……!」

そのまま字の通り、水を操作する能力。
この量の水を操作できると言う事は、レベル4以上は確実だろう。

青ピ「僕の能力は『蒼竜激流』(ブルーストリーム)って言うんやけどね。
   まあ御坂ちゃんと同じ、カッコつけて違う能力名で申請しただけなんやけどね」

どうでもいい情報を聞かされた一方通行は、しかし青髪に何かを感じた。

青ピ「次はこっちから行くで」

瞬間、先程とは比べものにならない量の水が青髪の周囲から湧き出る。
それは竜の形になった。しかも2匹。1匹につき333tで、大きさはミカエル以上の竜。
2匹合わせれば確実に学園都市を水没にまで追い込めるほどの水量。
それをミカエルにぶつける――!

ミカエル「fghrsdtjwkgktgdjghq!」

ミカエルも右手の剣を振り下ろす。しかしそれは、2匹のうちの1匹の竜に止められた。
その隙にもう1匹の竜が、まさに激流の如くミカエルを飲み込んだ。

一方通行は確信した。この男はレベル5の第6位なのだろうと。
そしてこの強さは、御坂美琴や麦野沈利を越えているだろうと。

学園都市の序列は強さだけで決めるものではない。能力の研究価値の方が重要視される。
だからこの強さで第6位なのだろうと、一方通行は余計なことまで考えていた。
それほどまでに圧倒的だった。

しかしそれ以上の現実が、彼らを待ち受けていた。
333tもの水量をまともに喰らったのに、平然とミカエルが君臨していたことだ。

350 : VIPに... - 2011/09/06 03:55:19.79 iNh2rC4q0 296/458

一方通行(あの一撃でも……無理だってェのか……)

先程の青髪の一撃は、コンテナ8個分の超巨大『超電磁砲』や
極限までチャージ&滝壺の補助あり『原子崩し』よりも上だった。
一方通行も、さすがにこれだけでは終わらないだろうとは思っていたが
ここまで平然としているとは、予想だにしなかった。

青ピ「はぁ……はぁ……簡単にはいかへんと思っていたけども
   こうも余裕で耐えきられるとなあ。さすがにショックや……」

青髪ピアスは辟易していた。当然だ。と一方通行は思った。
あれだけの水量を生み出して攻撃をしたのにもかかわらず、余裕で耐えきられたのだ。
それは彼のプライドを引き裂いた事だろう。精神的なダメージは計り知れない。
加えてあれだけ能力を全開にした攻撃をすれば、疲れるのは当然。
正直立っているだけでも称賛に値する。

青ピ「まだや……まだ終わってへん……!」

再び青髪の周囲に水が渦巻く。先程よりは圧倒的に少ない水量。
それでも、残った持てる力の全てを発揮しようとしたところで

ミカエルの体が突然大きく仰け反った。

351 : VIPに... - 2011/09/06 03:56:33.11 iNh2rC4q0 297/458

青ピ「なんや!?何が起こったんや!?」

驚いているのは青髪ピアスだけではない。一方通行も目の前の光景に呆気に取られていた。
ただ1人、ヴェントだけは笑みを浮かべていた。

ヴェント「全く……遅いんだよ。アイツ」

一方通行「何言ってやがる?」

ヴェント「よく見な。ミカエルの顔面付近」

一方通行は言われた通り、見上げ、目を細めた。すると確かに、ミカエルとは別の赤い何かがいた。

一方通行「ありゃあ何だ?」

ヴェント「ちょっと特殊な右手を持った人間だよ。私のパートナーでもある」

そんなことまでは聞いていなかったのだが、言葉から察するにヴェントの仲間なのであろう。
それもミカエルを仰け反らせるほどの強さを誇るのならば心強い。
そんな事を考えている内に、赤い男がヴェントの前に降り立った。

フィアンマ「大丈夫……じゃないみたいだな。遅れてすまなかった」

ヴェント「本当よ。あと少し遅かったら、皆消炭になっていたところよ」

フィアンマ「その代わりと言っちゃあ何だが、あとは俺様に任せておけ」

一方通行「オマエが強いのは分かる。けど、1人でやれンのかよ?」

フィアンマ「出来る限りはな」

そう言ってフィアンマは、両手から炎を噴射し、ロケットのように飛び立った。

352 : VIPに... - 2011/09/06 03:57:39.08 iNh2rC4q0 298/458

フィアンマは素早くミカエルの顔面前へ移動すると、噴射を左手だけにし
右肩から莫大な炎を噴射しながら右拳を放ち、ミカエルの顔面へ深く突き刺した。
それは比喩ではなく、本当に拳が顔面に喰い込んでいた。

フィアンマ「吸収!」

突き刺さった右手から、自身の属性と適合するミカエルのテレズマを吸収する。
だがミカエルのダメージは、青髪ピアスとフィアンマを合計しても1割ほどでしかない。
万全状態とさして変わらないこの状態から、全部を吸収しきれるはずもない。

フィアンマ(それでも、やれるだけやってやる!)

353 : VIPに... - 2011/09/06 03:59:40.21 iNh2rC4q0 299/458

吸収から3分。実に25%ものテレズマを吸収したところで、フィアンマは限界をむかえた。
フィアンマは何とか地上に着地するも、右手を抑えてうずくまっていた。

一方通行「おいおい、俺が言える立場じゃねェけど、アイツあれで終わりかよ!?」

ヴェント「もう充分でしょ」

一方通行「オマエ、パートナーが頑張ったからって惚気てンのか!?
     過程がどうこうじゃねェ。結果がなきゃ意味ねェって言うのによォ!」

ヴェント「うるさいわね。もう充分だって言ってるでしょ」

だから何が充分なのか。一方通行がキレかけたところで、咆哮が聞こえた。
それは、忘れたくても忘れられない、あの少年の咆哮。

上条「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

右手に『幻想殺し』を宿した少年が、空中からミカエル目がけ落下する。

一方通行「アイツ、空飛ンで……」

浜面「迎えだ……」

いつの間にか重傷の浜面仕上が側にいて、一方通行にそう言った。

一方通行「あァ!?」

浜面「だから、ゴリラで上条を迎えに行った半蔵と郭が、あいつをビルの屋上から
   思い切り投げ飛ばしたりしたんだよ。多分。未だによくわかんねぇけどさ。
   あいつの右手、異能の力なら何でも打ち消せるんだろ?
   それで、あの赤い天使みたいなのが異能の力だと言うのなら
   もうチェックメイトなんじゃないのか?」

そうか。と一方通行は悟った。
ヴェントの充分だと言うのは、上条当麻が来るまでの時間だったのか。と

354 : VIPに... - 2011/09/06 04:02:36.36 iNh2rC4q0 300/458

上条「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

落下してくる上条に対して、ミカエルは右手の剣を突き出した。
上条はそれに臆することなく、己の右手を繰り出す。
そして剣の切っ先と右手が触れた瞬間、キュイーン!とガラスが割れるような
甲高い音と共に、剣の方が先端から崩れていく。

ならばと、ミカエルは左拳を繰り出した。対して、上条はやはり右手を繰り出す。
そして拳と拳が触れ合った瞬間、やはり甲高い音と共にミカエルの左拳は触れた箇所から
消えていく。

剣と左手を失ったミカエルは、フリーになった右手でフックを繰り出す。
真正面から殴るのではなく、横から打つ。

上条「なめんなよぉ!」

上条は空中で180度右回転する。つまり、ミカエルの右フックを裏拳気味で迎え撃った。
結果、ミカエルの右腕は手首から消えていく。

そして上条の右手が、本体まであと10mというところで、ミカエルは炎に包まれた翼で
上条を包みこもうと翼を動かした。つまりは道連れ。

上条「くっそおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

右手に『幻想殺し』しか持たない上条に、空中で方向転換をする術は無い。
仮に上条の右手が本体へ触れ、打ち消しが始まったとしても、数秒は翼が残る。
そして数秒もあれば、その翼の残骸に上条は溶かされる。
万事休すか。上条と、下から見ていた意識を保っている面々はそう思った。
ただ1人の男を除いて。

青ピ「遅すぎるでカミやーん!」

青髪の咆哮と同時に、2匹の水の竜がミカエルの翼目がけ上昇し、噛みついた。
よって、翼の包み込む動作は止められた。

上条「終わりだぁぁぁあああああああああああああああああああああ!」

ついに上条の右手がミカエルの顔面に触れた。
瞬間、バリィィィィィン!と、鼓膜が破れるのではないかというほどの甲高い音が周囲に響いた。
触れた箇所から、ミカエルは徐々に消えていく。
そして上条が地上でヴェントにキャッチされた時には、完全に消滅していた。

355 : VIPに... - 2011/09/06 04:05:11.34 iNh2rC4q0 301/458

一方通行「やりやがった……あの天使を、右手1本で……」

前からとんでもない右手を持っている事は知っていたが、まさかここまでだとは思わなかった。
そんな風に、一方通行ですら尊敬しかけている上条当麻は現在、ヴェントの胸に顔を埋めていた。

ヴェント「ちょっと、早くどけてほしいんだけど」

胸に顔を埋められているヴェントは至って冷静にそう言った。

そもそも何故こんな事になっているかと言うと、上条を安全に着地させようと
ヴェントは魔術を使い上条を風に包みこんだのだが、上条が地上まであと3mの
ところで間違って『幻想殺し』で魔術を解除してしまったので
仕方なくスライディングを決め込み、何とか上条をキャッチしたからである。

そこで上条も早く避ければ良かったものの、たび重なる連戦での疲労の蓄積(回復魔術や
『冥土帰し』の薬などはあったが、あくまで応急処置的なもので疲労の方が圧倒的に大きい)や
ミカエルを倒して緊張の糸が解けせいか、上条は動けず顔を胸に埋めっぱなしだった。

それに黙っていなかったのは2人の男。

青ピ「おいおいカミやん。一体何人の女の子に手出せば気ぃ済むねん。
   僕も結構頑張ったよ?カミやんだけラッキースケベはずるいわ。
   だから、僕にもおっぱい揉ませて下さい」

ヴェント「ツッコむとこそこじゃないでしょ。つーか揉ませねーよ」

フィアンマ「お前は後で殺す。その前にまずは上条当麻から殺すがな」

洒落にならない殺気を放ちながら、フィアンマは上条の制服の襟首を掴み持ちあげる。

上条「ぷはぁー!危ねぇ!呼吸できなくてもう少しで死ぬとこだった!」

フィアンマ「大丈夫だ。すぐに俺様の手で殺してやる」

上条「え、フィアンマさん?何でフィアンマさんがそんなに怒っているんでせうか?」

フィアンマ「俺様の女の胸に顔を埋めたから」

上条「なるほどそう言う訳ですか。いえね、上条さんも早くどく気はあったのですよ?
   ただ体が動かなくてですね、この件に関してはちょっとゆっくり話し合いで
   解決できませんか、できませんね、すいませんでしたーっ!」

いつもの癖で言い訳が謝罪になっている上条は、容赦なく殴られた。
フィアンマではなく、青髪ピアスに。その勢いで上条は地面を転がる。

上条「ちょ、何すんだよ!何でお前が怒ってんだよ!」

青ピ「うっさい!僕の心の痛みを知れ!」

訳の分からない事を言いながら、上条に殴りかかる青髪、対抗する上条。
いつもの下らない話題からの喧嘩になってきたところで

フィアンマ「……馬鹿馬鹿しい。もういい。大丈夫だったか、ヴェント」

ヴェント「うん」

356 : VIPに... - 2011/09/06 04:06:58.15 iNh2rC4q0 302/458

滝壺「あくせられーた、皆を守ってくれてありがとう」

浜面と同じく病院を飛び出した滝壺理后は、少女達を守ってくれたお礼を言った。

一方通行「俺は何もしてねェ。お礼なら、あそこで喧嘩している馬鹿2人と
     あの気持ち悪ィ右腕持ってる人間にでもするべきだ」

滝壺「そんなことないよ。あくせられーたは、黄色い天使を倒したし
   赤い天使の攻撃からも、むぎの達を守ってくれた。感謝してる」

一方通行「あっそォ。なら素直に受け取っとくわ。じゃあよ、情けない話なンだが
     肩かしてくれねェか?俺1人じゃ、立つこともままならねェ」

滝壺「もちろんだよ。恩人だからね」

一方通行は滝壺の力を借りて立ち上がる。立つ事もままならなかった彼はまともに歩けもしない。
よって一方通行は、必然的に滝壺によりかかるわけなのだが

一方通行「助かったわ。ところでよォ、なンつーか、後ろから殺気を感じるンだけどよォ。
     何とかしてくンねェ?オマエの連れだろ?」

一方通行の言っている意味が良く分からなかったが、滝壺はとりあえず振り返る。
そこにいたのは、一方通行×滝壺理后というシチュエーションに耐えきれず
今すぐにでも一方通行へ殴りかかろうとしている浜面仕上だった。

滝壺「は、はまづら……!?違うの。こ、これはね。
   私が出来る精一杯のお礼で、決して浮気なんかじゃ」

滝壺の説得?も虚しく一方通行は浜面に押し倒された。

357 : VIPに... - 2011/09/06 04:08:24.89 iNh2rC4q0 303/458

一方で4人の少女達は自力で目を覚ました。
そこで少女達が見たのは、1人の少年が真っ白な少年を押し倒しているのを必死で止める少女と
青い髪の毛の少年が、ツンツン頭の黒髪の少年と喧嘩している光景だった。
それだけで3人の少女の行動方針は決定した。

絹旗「浜面が超浜面のくせに、第1位を殴って、それを滝壺さんが止めるなんて
   一体何がどうなっているのでしょう?」

麦野「面白そうね。行ってみましょ」

麦野と絹旗は、滝壺達の方へ。

御坂「あ、あの青い髪の毛野郎何なの?今すぐぶちのめしてやる!」

御坂美琴は、上条当麻の方へ。

結標(なんか……私だけ1人ぼっち……)

麦野沈利と絹旗最愛は滝壺理后と『仲間』である。御坂美琴は上条当麻と頻繁に諍いを
起こしており、その様子は仲睦まじく『友達』と言えなくもない。
そんな中、誰ともそこまで親しくない結標淡希は迷った。
一方通行とは元『同僚』であって『仲間』なんて大層なものじゃないし
ましてや『友達』でもない。寧ろ因縁があるくらいだ。

結標(……そうね。どうせならあっちの集団に突っ込む方が面白いかも)

そうして結標は、上条達の集団へ突っ込んでいった。
これが運命の出会いになるとは、この時点ではまだ誰も知る由もなかった。

358 : VIPに... - 2011/09/06 04:10:46.81 iNh2rC4q0 304/458

フィアンマ「なんか……おかしくないか?」

ヴェント「彼ら、戦争が終わったと思って、はしゃいでるんじゃないの?」

フィアンマ「まだ終わっとらんと言うのに。無知とはいいものだな」

ヴェント「どうやったら止まるんだろう?」

フィアンマ「そもそも、俺様やヴェントは戦闘の始終を見ていたから分かるが
      あの女どもは、こうやって詳細をよく知らない俺様がいたり
      天使がいなくなったことに、何の疑問も持たんのか……」

ヴェント「この国で言う『空気を読む』っていうアレなんじゃない?
     上条当麻とかがはしゃいでいるから、それに則って。みたいな」

フィアンマ「ふん。良い風習なのか、悪い風習なのかよく分からんが……
      そろそろ本題に入りたいし、時間もないから、ここで制圧しとくか」

そう言うとフィアンマは地面を殴りつけて、その震動ではしゃいでいる連中を
黙らせようと思い、拳を振り下ろそうとしたところで

ドシィン!と地面が震動した。
はしゃいでいた連中と、フィアンマとヴェントは何だ?と思わず震源の方向を見る。

そこにいたのは何人かの人間を抱えたゴリラだった。
そのゴリラの頭から、2人の人間が出てくる。

半蔵「急患を何人か拾ってきた!何人か運ぶの手伝ってくれ!」

その声に反応したのは浜面、上条、青髪。3人ははしゃぐのをやめゴリラへ近付く。
ゴリラは抱えていた削板、垣根、心理定規と五和を含む天草式の何人かを降ろした。

五和「上条……さん」

意識はあるがフラフラの五和は、上条に寄りかかる。

上条「お、おい!大丈夫か?」

五和「はい……上条さんが支えてくれるので……何とか……」

青ピ「おいおいカミやん。こんな別嬪さんともフラグ立てとんのかい?
   女垂らしなんてレベルじゃねーぞ」

もはや似非関西弁すら忘れている青髪へ、上条が悪口を言われたと思ったのか、五和が言い返す。

五和「上条さんのことを……悪く言わないでください……この人は……
   自分の損得の為ではなく……人の為に動ける人なんです……」

上条「い、いいって五和。こいつはそんなつもりで言ったんじゃないんだ。
   冗談みたいなもんだから」

五和「でも……私……」

上条「とりあえず、病院に運ぶからじっとしててな」

そう言うと上条は、五和をおんぶして病院へ運んだ。

359 : VIPに... - 2011/09/06 04:13:15.31 iNh2rC4q0 305/458

青ピ(僕だけ……悪者みたいになってもうた……)

浜面「あいつモテるんだなー。つーか鈍感ってレベルじゃねーぞ」

青ピ「君もそう思うよな!?」

呟いただけなのに、馴れ馴れしく同意を求めてきた青い髪の毛の少年に、浜面は若干うろたえる。
彼らはあくまで初対面である。

浜面「ま、まあ。とりあえず、俺はこの特攻服みたいな兄ちゃん運びますわ」

なんとなく青髪のノリにはついて行けないと思った浜面は、倒れていた削板をおんぶして病院へ。

青ピ「君、男の人抱えて大丈夫なん?」

心理定規「大丈夫。この人は私が運ぶから。運ぶなら別の人をどうぞ」

そう言って心理定規は垣根をおんぶして、そそくさと病院へ。

青ピ(あの体格差で運ぶなんて無理あるやろ。けど大丈夫ってキッパリ断られたしなぁ)

半蔵「おいあんた、ボーっとしてないで運んでくれよ」

天草式の一員の香焼を運びながら、半蔵は言う。

青ピ「ああ。分かってるで」

青ピ(女の子、女の子を運んで感謝されたい!)

そんな不純な動機をもつ青髪ピアスは、地面に倒れていた人たちの中から
天草式の一員、対馬を発見する。

青ピ(むっふぉー!金髪貧乳美脚お姉さんキタコレ!)

そして対馬を運ぼうと手を伸ばしたその時

「あの、女性は私が運びますんで」

郭が素早い動きで対馬をおんぶして病院へ。

360 : VIPに... - 2011/09/06 04:14:15.47 iNh2rC4q0 306/458

青ピ(しゃあない。もう男で良いから運ぶか)

そうして天草式の牛深でも運ぼうかと思ったその時

ヴェント「別にアンタは運ばなくても良いわよ。あとは私が全員運ぶ」

青ピ「どうやって?」

ヴェント「こうやって」

そう言ってヴェントは指をパチン!と鳴らすと、患者達がフワフワと浮いた。
風の魔術の応用だ。

ヴェント「こういうわけだから、アンタは休んでなさい」

青ピ(あ、なんかもういいや……でも……)

青ピ「天使!あなたは僕の天使やでぇー!」

思わずヴェントに抱きつこうとする青髪を、ヴェントはひょい、っとかわして

ヴェント「触ろうとするな。気持ち悪い」

一言で撃沈した。

361 : VIPに... - 2011/09/06 04:16:35.42 iNh2rC4q0 307/458

御坂「ところでさ」

結標「何?」

上条と青髪がいなくなったので、暇になった彼女達は世間話をしていた。

御坂「なんで、こっちの集団に来たの?」

結標「駄目?」

御坂「駄目じゃないけど……」

結標「大丈夫よ。あなたの大好きなツンツン頭君を狙って。とかじゃないから」

御坂「ぶっ!な、何を言っているのかしら!わ、私は別にあの馬鹿の事なんて何とも」

結標「素直になりなさいな。あなた、バレてないとでも思ったの?」

御坂「……ほんとに?」

結標「何が?」

御坂「ほんとに、あの馬鹿を狙った訳じゃないの?」

結標「ほんとよ。ただあっちの集団に入るのもアレだったから、こっち来ただけ」

御坂「ふぅー。ならよかった」

結標「そうそう。そうやって素直になればイチコロよ。
   ただ、あの馬鹿呼ばわりはよくないと思うけど」

御坂「そ、それは分かってるんだけど……いきなり名前で読んだら変かなって……」

結標「あなた、そんなこと気にするタイプだったんだ。そんなことないわよ。
   名前で呼んじゃいなさいな」

御坂「わ、分かった。今度、というか、あとで、言ってみる……」

そうやってガールズトークが繰り広げられていたところで

フィアンマ「すまんが、まだ戦争は終わっていない。
      急だが、これからすぐ話し合いの場を設けたいのだが」

フィアンマがいきなり割り込んだ。

御坂「ちょ、アンタ一体誰!?」

結標「……」

即座に戦闘モードに入る御坂と結標。

フィアンマ「焦るな小娘ども。俺様は味方だよ。だから、その戦闘態勢を解いてくれ」

と言われても、真っ赤な服に異様な右手を持つ人間の言う事を
御坂と結標はそう簡単に信じることは出来ない。

362 : VIPに... - 2011/09/06 04:17:16.88 iNh2rC4q0 308/458

フィアンマ「……どうすれば信じてもらえるのか……」

膠着状態が続く中、タッタッタッと誰かが走ってくる音がした。
少女達はその足音の方を向く。

上条「おーい、フィアンマー!とりあえず、皆集めたぞ!」

フィアンマ「助かった。最後にこの小娘どもに説明してやってくれ」

上条「また俺が説明役かよ!」

フィアンマ「俺様はこの小娘どもが気絶した後に到着したからな。信じてもらえんのだよ。
      やはり魔術と科学に深くかかわっているお前が説明役に適任だ」

御坂「ちょっと、どう言う事なの?」

上条「それはだな――」

363 : VIPに... - 2011/09/06 04:19:01.58 iNh2rC4q0 309/458

病院1階を占拠して、話し合いは行われていた。

上条「えーっと、俺から言える事は、皆仲良くやってね?」

上条はこう締めくくったが
あまり納得がいっていない様子の、御坂をはじめとする科学サイドの住人達。

御坂「あのさ、なんでこの日本刀女がここに居る訳?」

日本刀女とは様々な戦いを通して『聖人』の8割の力を失った神裂火織のことである。

上条「だからそれについては、このどう見ても神父には見えない神父さんが
   さっき説明してくれただろ?ローラって言う魔術師が倒れたおかげで
   弱みが無くなり、洗脳されていた魔術師も解放されたって」

ステイルを指差しながら、上条は言う。

絹旗「つまり、この魔術師さん達は、超やりたくなかったのに、無理矢理戦わされていた
   ってことですか?」

上条「そうそう、そう言う事!理解力良いねぇ!」

絹旗「それほどでも……ありますかね///」

御坂「ちょっと!それじゃあ私が理解力ないみたいじゃない!」

上条「いえ、決してそう言う訳では」

一方通行「いちいち話の腰を折るなオリジナル」

御坂「うっさい!」

上条「あわわわわわわ、どうすれば」

結標「放っておきましょ。ところで戦争が終わっていないと言うのは?」

上条「それは」

フィアンマ「それは俺様から説明しよう」

364 : VIPに... - 2011/09/06 04:23:30.88 iNh2rC4q0 310/458

とりあえずヒートアップした御坂を落ち着かせて

フィアンマ「まず、戦争が終わっていない事の前に、もう一度だけ説明するぞ」

フィアンマ「この戦争がなぜ起こったか。これはイギリス清教の長
      ローラ=スチュアートが魔術サイドを率いて起こしたものだ」

フィアンマ「イギリス清教の長でしかないローラが、何故魔術サイド全体を率いることが
      できたのか。それは第3次世界大戦で学園都市と共に勝者となったからだ。
      それによってイギリス清教は、魔術サイドのトップも同然になった」

フィアンマ「あとはもうローラの思うままだっただろう。
      このままだと世界は科学サイドの物になってしまう。
      とでも唆して、大半の魔術師を味方につけたのだろう」

フィアンマ「それでも、そこにいるステイル=マグヌス君とかは、最後まで反抗したようだがね。
      結局は反対派も、弱みを握られたり、洗脳されたりで言いなりになるしかなかった
      ようだがな。俺様などの一部の例外を除いて」

フィアンマ「しかし、ローラはもういない。そこの垣根君とやらがやったんだろう?
      いやはや、素直にすごい」

垣根「そりゃ、どーも」

心理定規「ちょっと。もう帝督は疲れているから休ませてほしいんだけど」

フィアンマ「すまんな。もう少しだけ話を聞いてくれ」

フィアンマ「でだ。ローラがいなくなったことにより、反対派の魔術師は解放された訳だ。
      ここにいる魔術師達は味方と思ってもらっていい。
      賛成派の魔術師も、既に学園都市の科学兵器によって大体駆逐されているだろう」

フィアンマ「逆に言えば、その賛成派の魔術師達を迎撃する為に、科学兵器などは
      使い切ってしまっただろうな。まさか能力者とは言え生徒たちを使う訳にもいくまい。
      つまり増援は期待できない」

フィアンマ「だからだ。できれば君達には戦ってほしい。君達はレベル4やレベル5なんだろう?」

この場に居る大体はフィアンマの言った通りなのだが、この条件に当てはまらない
浜面、半蔵、郭はわずかに震えた。とそこで御坂が疑問を呈する。

御坂「いや、力を貸すのは構わないけど、賛成派の魔術師は大体駆逐されて
   反対派の魔術師は解放されたんなら、一体何と戦うって言うの?
   結局戦争が終わってないとはどういうことなの?」

一方通行「だから、いちいち話に水を差すンじゃねェ。
     最後まで聞かないと何とも言えねェだろうが」

御坂「うっさい!」

フィアンマ「そうだな。話は最後まで聞いてほしいな。確かに一般の魔術師は大体倒れた。
      反対派の魔術師は解放された。残ったのは非戦闘員の信徒達ぐらい。
      大天使達も倒した。だがまだいるんだよ。『禁書目録』、通称インデックスが」

その名を聞いて、何人かは反応し、何人かはちんぷんかんぷんだった。

365 : VIPに... - 2011/09/06 04:26:05.52 iNh2rC4q0 311/458

フィアンマ「彼女を倒さなければ、戦争に勝利したことにはならない」

青ピ「インデックスちゃんを倒す?あの女の子を?そもそも戦えるんかいな?」

フィアンマ「(こいつ、インデックスを知っているのか?)戦えるなんてもんじゃない。
      ヨハネのペンが発動した彼女は最強最悪の敵『魔神』いや『神上』といってもいい」

御坂「『かみじょう』って、と、と、とう、コイツの事?」

当麻と言いかけて、結局上条を指差しながらコイツ呼ばわりしてしまった御坂。

フィアンマ「違う違う。『神』に『上』と書いて『神上』だ。
      意味は言葉の通り、神より上の存在と言う事だ」

一方通行「つまり、あの天使達より強いとか言い出すンじゃねェだろうな?」

フィアンマ「強いだろうな」

あっさりとしたフィアンマの言葉に、科学サイドの面々は絶句する。

フィアンマ「だが、希望がない訳じゃない」

青ピ「なんや、その希望って言うのは?」

フィアンマ「上条当麻だよ」

フィアンマの一言に、科学サイドの面々は一斉に上条を見る。

フィアンマ「こいつの能力は『幻想殺し』だが『幻想殺し』なんて
      コイツの“中”にいる化け物を抑える蓋でしかない」

その一言に、またしても上条に注目が集まる。
今度は魔術サイドの面々、シェリーや土御門、エツァリやショチトル、天草式達も上条を見ていた。

366 : VIPに... - 2011/09/06 04:27:34.28 iNh2rC4q0 312/458

絹旗「では、この上条さんを中心に、私達がサポートしていくって感じですか?」

フィアンマ「いや、その必要はない。上条とインデックスの戦いは壮絶なものになる。
      俺様達では手が出せないほどにはな。上条には1対1で戦ってもらう」

その一言に、一方通行は疑問を呈する。

一方通行「じゃあ何で俺達までこのクソだりィ話聞かされたンだ?
     それだったら、オマエらだけで話し合えば良かったじゃねェか」

御坂「話は最後まで聞きなさいよ」

一方通行「うるせェ」

フィアンマ「続けるぞ。それが上条だけで良いと言う訳でもないのだよ。
      魔術師で勘の鋭い奴は気付いていると思うが、ロシアに莫大なテレズマが感じられる。
      つまり、天使達が召喚されている可能性が高い」

それに同意したのはステイルだった。

ステイル「確かに、ヨハネのペンの『禁書目録』なら天使の召喚など容易いだろう」

この天使の召喚にも生贄が必要なのだが、敢えて言わなかった。
生贄に使われた人間はどうしたって戻って来ないし、科学サイドの連中に
躊躇いを持ってもらっては困るからだ。

絹旗「超待って下さい。ということはつまり」

麦野「私達は天使達と戦えってことか」

麦野の一言に科学サイドの面々は凍りつく。

367 : VIPに... - 2011/09/06 04:31:25.42 iNh2rC4q0 313/458

滝壺「ま、またあんな強さのと……」

浜面「滝壺……」

青ざめている滝壺を浜面は優しく抱きしめる。

フィアンマ「いや、さっきまでの天使達は、大天使と言うくらいだ。
      普通の天使達とは比べ物にならないくらい強い。
      逆を言えば、インデックスが引き連れてくるであろう天使達は
      おそらく大天使の4分の1の強さもない」

とはいえ、強いのに変わりはないがな。とフィアンマは付け加える。

フィアンマ「さらに、数も何体いるかは分からない。3体ぐらいしか連れてこないかもしれないし
      10体ほど連れてくるかもしれない」

いくらあの大天使より弱いとはいえ、10体もきたらどうなるのか。
先程まで天使の強さを垣間見たものや、魔術サイドの面々は恐怖に慄いた。
だが何人かは違う反応を見せた。

白井「よく分かりまんけど、今度こそお姉様の力になって見せますの!」

垣根「俺様が、軽く捻ってやるよ」

フィアンマ「その威勢、保っていると良いがな。ま、話をはこんなところかな。
      明日に備えて今晩はゆっくり休んでくれ」

一方通行「おい待て。本当に明日までは大丈夫なンだろうな」

フィアンマ「分からん」

一方通行「はァ?」

フィアンマ「だが多分大丈夫だ。天使の召喚と言ったって、1秒で終わる訳じゃない。
      時間はそれなりにかかる。数が多ければなおさらな」

一方通行「学園都市には、突然現れたじゃねェか。
     それに3体しか召喚しなかった場合は、時間はどうなる?」

フィアンマ「用心深いな。そんなものは違う場所で召喚の儀式が行われ
      召喚は学園都市の座標に合わせただけだ。それと呼び出す天使の種類
      質、数、準備など様々な条件によって時間は変わるが
      いくらインデックスとはいえ、最低10時間はかかるだろう」

一方通行「じゃあインデックスの天使もいきなり学園都市に召喚される心配は」

フィアンマ「その心配はない。この戦争が始まって、学園都市に侵入した魔術師が
      天使を『ここに呼び出す』と言う印をつけた。だがそれは俺様が既に処理した。
      それで遅れたんだよ」

フィアンマ「じゃあ1晩だけだが、ゆっくり休んでくれ。聞いたところによると
      ここには名医がいるそうじゃないか。できれば各自万全な状態にしてもらえ」

368 : VIPに... - 2011/09/06 04:32:59.32 iNh2rC4q0 314/458

時間は午後8時。ベッドが6つある部屋に『アイテム』と半蔵と郭がいた。
フレメアはレベル0の少女だった為、核シェルター級の避難所へ移送された。

半蔵「なあ浜面。さっきの話マジなのかなあ」

病室の窓に寄りかかりながら、半蔵は同じく寄りかかっている浜面に尋ねる。

浜面「嘘をつく理由がない。それに見たろ?あの赤い天使を」

半蔵「俺さ、怖いんだよ。俺だってレベル0なのに、明日化け物と戦う事が……
   そりゃ空気に流された俺も悪いけどさ……やっぱり怖ぇよ……」

言いながら半蔵は泣き始めた。よっぽど怖いらしい。

半蔵「浜面、お前はさ、怖く……ないのかよ……」

浜面「怖えよ。めちゃくちゃ。俺だって泣きだしたいぐらいだ」

けど、と浜面は続けて

浜面「守りたいモノがある。守らなきゃならないモノがある。
   だからさ、怖がっている暇なんてないんだよ」

半蔵「何だってんだよ……何でお前は……そんなに強いんだよ……」

浜面「強くなんかねぇ。ただの意地だ。お前にだってあるだろ?守りたいモノ」

半蔵(守りたいモノ……)

半蔵は病室を見まわし

半蔵(……郭……か?)

その時、狸寝入りを決めていた郭は心の中で

(もしかして半蔵様、今私の事思ってくれている?)

思わずテンションが上がっていた。

369 : VIPに... - 2011/09/06 04:34:11.61 iNh2rC4q0 315/458

同じく、狸寝入りを決めていた『アイテム』の面々は

絹旗(浜面のやつ、超浜面のくせにちょっとかっこよかった……)

滝壺(はまづらは、アイテムの中で1番の重傷で、1番弱いのに……私がサポートしなきゃ……)

麦野(……絶対に皆を死なせはしない)

静かなる闘志を秘め、麦野はゆっくりと目を閉じる。

370 : VIPに... - 2011/09/06 04:35:40.77 iNh2rC4q0 316/458

神裂「まずは謝ります。すいませんでした。建宮の事も」

天草式十字凄教の女教皇である神裂火織は、病院の一室で天草式の仲間たちに頭を下げた。

五和「いえいえ。分かってくれればいいんです。女教皇こそ、お体大丈夫ですか?」

神裂「ええ。それと、明日は壮絶な戦いになると思いますが、ついてきてくれますか?」

五和「もちろんです!」

神裂「感謝します。では、これで」

神裂は、天草式のメンバーが使っている病室を出て
シェリーやアステカの魔術師がいる自室へ戻った。

シェリー「許してもらえたのか」

神裂「おかげさまで」

シェリー「よかったな」

シェリーとの会話はそれで終わった。

神裂「あなたもすみません」

次に神裂は、エツァリに謝罪した。

エツァリ「ええ、とっても痛かったですよ。けどもう良いです」

にこりと優しい笑みを浮かべるエツァリ。

神裂「そう言ってもらえると助かります」

ショチトル「おい。私は許さないからな」

エツァリ「ショチトル。そんな事を言うものではありません」

ショチトル「ふん」

371 : VIPに... - 2011/09/06 04:38:48.02 iNh2rC4q0 317/458

御坂「何なのこの割り当て、おかしくない?」

時間は既に午後9時。ベッドが4つある病室で、御坂美琴は文句を言っていた。

御坂「私と淡希と黒子は分かる」

御坂はそこで、けど、と一拍置いて

御坂「なんでアンタも一緒なのよーっ!」

一方通行「うるせェなァ。いいから早く寝ろよ」

御坂「眠れないわよ!こんな男がいる部屋で!」

一方通行「仕方ねェだろ。こううまい具合人間関係考えて整えると、こうなるしかねェンだよ。
     俺だって不満だわ」

御坂はここでぐぅの音も出なかった。正直彼女にはこれがベストメンバーに近い。
だって残りは、得体のしれない魔術師達に、全く面識のなかった垣根と青い髪の毛の少年
そして『アイテム』だ。
この中から選ぶぐらいなら、因縁があるとはいえ一方通行の方がマシかもしれない。

御坂(男の枠が、あの馬鹿だったら……)

一方通行(ようやく静かになりやがった)

この言い合いの一部始終を聞いていた白井黒子は

白井(お姉様……類人猿の次はアルビノ人間ですの?)

ベッドのシーツを噛みながらそんな事を思っていた。

結標(神経が図太すぎるでしょ……)

結標は白井とも御坂とも一方通行とも因縁がある。それなのにこの3人ときたら、この調子だ。
自分はひょっとしたら存在を認識されていないのかもしれない。

結標(ほんと、頭痛がしてくるわよ。このメンバー……)

372 : VIPに... - 2011/09/06 04:39:35.48 iNh2rC4q0 318/458

ヴェント「ねぇフィアンマ、私達、勝てるかな?」

病院の個室で1つのベッドに横になりながら2人は喋る。

フィアンマ「俺様がいるんだ。負けるはずがないだろう?」

ヴェント「ふふ。あなたはいつもそうだよね。でもさ、オッレルスもシルビアも負けたんだよね」

フィアンマ「まあインデックスが覚醒してしまっていることを考慮すると
      奴らは失敗したことになるな」

ヴェント「あの2人が負けるなんて、私不安で……」

そんなヴェントをフィアンマは強く抱きしめる。

フィアンマ「大丈夫だ。俺様が絶対に守ってやる」

ヴェント「うん///」

373 : VIPに... - 2011/09/06 04:40:08.49 iNh2rC4q0 319/458

同じく病院の個室のベッドで、垣根は物思いに耽っていた。
心理定規は、戦闘系の能力者ではない為避難所に行かせた。
絶対に迎えに行くと約束して。

374 : VIPに... - 2011/09/06 04:43:08.63 iNh2rC4q0 320/458

土御門「カミやん、色々済まなかったな。舞夏はもう無事だ。ほらステイルも謝れ」

4つのベッドがある病室で、ステイルは渋々といった調子で

ステイル「……すまなかった」

上条「もういいよ」

ステイル「そして、もう1つだけ頼みがある。絶対にインデックスを救ってくれ!」

ステイルは珍しく、いろんな意味で敵である上条に頼み込んだ。

上条「はは、お前らしくないな。言われなくてもそうするつもりだよ」

土御門「カミやん、フィアンマの言っていた事、本当か?」

上条「ああ。俺は“中にいる”力を使いこなして、インデックスを救って見せる」

そこへ特攻をかけたのは、話題について行けなくて空気だった青髪ピアスだ。

青ピ「それって、カミやんの『中の人』の力を使うってことやろ?
   それってさ、操り切れなくて暴走とかって言うお決まりの展開になるん?」

上条「それは、させない」

ここで普段の上条をよく知っている土御門と青髪は
何か雰囲気が違う上条に違和感を覚えた。と上条の雰囲気が元に戻る。

上条「つーかさ、お前普通に居るけどなんなの?」

青ピ「カミやん。ミカエルの翼抑えたのは、何を隠そうこの僕やでー。
   実は僕、レベル5の第6位なんや」

上条「マジかよ!?」

土御門(俺ですら詳細を知らない第6位が、まさかこんな身近にいたとはな)

上条「ちょ、じゃあお前、自分で言うのもなんだけど
   なんで俺らと一緒に底辺校通ってるんだよ!?」

青ピ「そんなん簡単やー。小萌先生がいたからやでー」

上条「は?それだけ?」

青ピ「それだけって、人生において、どんな教師に授業を教わったかというのは重要な事やで。
   大体僕はレベル5の器じゃないし、名門校なんてつまらなそうやし。
   カミやんたちとバカやってるの楽しいしな」

上条「青髪……」

上条は素直に感動した。

土御門(なるほどな。ま、レベルなんて高くても闇の世界に堕ちるか
    輪の中心に立つことは出来ても、輪の中に入る事は出来ないなど
    それほど良い事もないからな。こういう生き方もあるってわけか)

375 : VIPに... - 2011/09/06 04:45:40.81 iNh2rC4q0 321/458

青ピ「それよか、文句があるのはこっちやで」

上条「は?お前に何かした覚えねぇけど」

青ピ「僕は、カミやんやツッチーの事を親友やと思ってる」

上条「だから何が言いたいんだよ」

青ピ「あのな、僕もバカやない。詳しくは知らんかったけど、カミやんも土御門君も
   得体のしれない『何か』に関わっていることぐらい前から何となく感じてた」

青ピ「なのに一言の相談もなしやったんやで。親友としてはちょっとなぁ」

上条「親友だから、余計に巻き込みたくなかったんだよ。
   つーか俺はお前の事をレベル5って今日知ったんだからな。一般人を巻き込めるかよ。
   いやもちろん、レベル5と分かっていたとしても、お前を巻き込むつもりはなかったけどな」

青ピ「そんな気遣いいらんよ。寧ろ相談してくれないと疎外感あるやん」

土御門「ま、レベル5である事を隠していたお前が
    グチグチ言う権利は無いんじゃないかにゃー?」

青ピ「今までダンマリ決め込んでいたくせに、こういうときに限って
   ツッコんでくるなんて、ほんまツッチーはいやらしいなぁ」

土御門「まあレベル5隠していたのと“おあいこ”ってことで、今日はもう休もうぜい」

上条「そうだな」

青ピ「そうやな」

こうしてそれぞれの夜は更けていく。

376 : VIPに... - 2011/09/06 04:48:42.24 iNh2rC4q0 322/458

0:00 病院屋上

上条は屋上のフェンスに寄りかかりながら黄昏ていた。
そんな時、バタン!と屋上の扉が閉まる音。一体誰がこんな時間に?と
上条は扉の方へ視線を持っていく。

土御門「ようカミやん。こんな時間に、しかも寒空の下で何やってるのかにゃー?」

上条「そりゃこっちの台詞だ」

土御門「聞きたい事があってな」

言いながら、土御門は上条の隣に来て同じ様にフェンスに寄りかかる。

土御門「無駄な問答は避けたいから初めに言っておくが、俺はカミやんの記憶喪失を知っている。
    いや正確には記憶破壊か」

その時、上条は無言だったが、内心ではかなり驚いていた。
記憶破壊と言う辺り、あてずっぽうでない事は分かる。
そもそも、お前記憶喪失だろ?なんてあてずっぽうでも言わない。
土御門は確かに記憶喪失を認知していると思っていいだろう。

土御門「で、質問て言うのはさ。お前、インデックスの事好きだろう?」

その質問に何の意味が?と上条は思ったが、土御門が真面目に聞いてくるので真面目に回答する。

上条「前の『上条当麻』がどう思っていたかは知らないけどさ。俺は好きだよ。
   ただ最初の方は、恋愛対象としてではなく、家族としてって感じだったけどな。
   なんつーか、妹が出来たみたいだなーって」

土御門「じゃあちょっと辛い事を聞くかもしれんが、聞いてくれ。
    その好きな人と戦うのは、辛くないか?
    俺が舞夏と戦うなんて事になったら、多分俺は発狂する。何でそんなに冷静なんだ?」

上条「こう言うと語弊があるかもしれないけどさ。
   俺にとっては願ったり叶ったりな部分もあるんだよ」

土御門「どう言う意味だ?」

上条「今度こそ、インデックスを救えると思ったからさ。
   前の『上条当麻』が出来なかった事を、出来ると思ったから」

もちろん、前の『上条当麻』が何を思って救ったのかの詳細は知らない。
けれども、インデックスが牙をむくと言う事は、完璧には救えていなかったという事。

377 : VIPに... - 2011/09/06 04:49:57.07 iNh2rC4q0 323/458

土御門「いや、分からん。どう言う意味だ?」

上条「今の俺なら、インデックスの頭の中にある10万3000冊の魔道書を破壊できる。
   インデックスを完璧に救える!」

土御門「どうやって?
    インデックスの頭を開けて、脳細胞を直接破壊するとか言うんじゃないだろうな」

上条「そんなわけないだろ。けど、きっとできる。実際俺が記憶喪失になっているんだからな」

そう。上条の記憶破壊は、何も頭を開けて脳細胞を削ったからではない。異能の力によるものだ。

土御門「それはインデックスの脳細胞ごと魔道書の記憶を破壊すると言うことか?」

上条「いや、10万3000冊の魔道書だけを破壊する」

土御門「そんなことが」

上条「できる」

できるのか?と言おうとした土御門の言葉は遮られた。

土御門「そうか。いろいろ聞いて悪かったな。じゃあな。早く寝ないと風邪ひくぞ」

上条「ああ」

378 : VIPに... - 2011/09/06 04:50:33.53 iNh2rC4q0 324/458

『今更何のようだ?』

『インデックスを救いたい。だから力を貸せ』

『あの時は「引っ込んでろ」とほざいたではないか』

『うるせぇ。状況が状況なんだよ。力を貸さないって言うなら、勝手に借りてくぜ』

『貴様ごときに、我が力を使いこなせるとでも?無理だ』

『まあ我は一向に構わんがな。そのまま貴様の体を乗っ取ってやるだけよ』

『いいぜ、テメェごときが、この俺を支配できるってほざくなら――』

『――まずは、その幻想をぶち殺す』

379 : VIPに... - 2011/09/06 04:53:05.02 iNh2rC4q0 325/458

12月25日 AM9:00 病院前

半蔵「郭、準備は出来てるか?」

「はい!もちろんです!」

半蔵「あのさ、お前はこの戦い、降りても良かったんだぞ?死ぬかもしれないのに」

「私は半蔵様に一生ついて行くって決めましたから。
  それより、半蔵様こそ、何故この戦いを降りなかったのですか?」

郭は昨日の会話を狸寝入りで聞いている。
だから空気に流されてと言う事は知っているのだが、敢えて聞いた。

半蔵「正直言うと、かっこ悪いけど空気に流されてかな。
   だけど、この状況の学園都市や浜面とかを放っておけないと思ったのも事実だよ」

「半蔵様……かっこいいです……惚れ直しました///」

半蔵「戦闘に付き合わせるんだ。絶対お前の事を守ってやるからな」

「半蔵様///私も全力を尽くします!」

380 : VIPに... - 2011/09/06 04:53:32.92 iNh2rC4q0 326/458

ショチトル「エツァリお兄ちゃん、私の事、守ってくれる?」

これから迎える戦いを想像して震えるショチトルを、エツァリは優しく抱きしめる。

エツァリ「もちろんですよ」

381 : VIPに... - 2011/09/06 04:54:12.52 iNh2rC4q0 327/458

神裂「これが最後の戦いです。気を引き締めていきましょう」

天草式「はい!!!!!」

そんな天草式十字凄教を遠目に見ながら、ステイルはルーンを仕込んでいた。
そこへシェリーが近付いてきた。

シェリー「お前1人ぼっちかよ?寂しい奴だな」

ステイル「君に言われたくはないね。そんなことより君の準備は良いのか?」

シェリー「そんなもの必要ないわよ。私の魔法陣を書く速度をなめるなよ」

ステイル「そうですか」

382 : VIPに... - 2011/09/06 04:55:05.17 iNh2rC4q0 328/458

絹旗は浜面の目の前で満面の笑みを浮かべながら

絹旗「浜面、超先に言っときますけどね。
   なんだかんだいって、浜面はかっこよかったです。それだけ!」

浜面「おい、それはお前の死亡フラグなのか?それとも俺の死亡フラグなのか?」

滝壺「大丈夫だよ。はまづらに死亡フラグが立ったとしても、私が守るから」

絹旗「滝壺さん!その言い方だと、私の事は超守ってくれないみたいじゃないですか!」

いつも通り騒がしくなってきた3人に、麦野はこう言った。

麦野「死亡フラグなんてもんあると言うのなら、私はそれをへし折ってやるよ」

383 : VIPに... - 2011/09/06 04:56:02.57 iNh2rC4q0 329/458

御坂「黒子、アンタ本当に大丈夫?あんなに重傷だったのに」

白井「お、お姉様が、黒子を心配して下さるなんて……お姉様こそ、
   あの日本刀女との戦闘の後も、力を使い過ぎたらしいですが……大丈夫ですの?」

御坂「大丈夫よ。駄目になりそうだったら言いなさいよ。私が守ってあげるからね」

白井「お、お姉様ーっ!」

思わず御坂に抱きつく白井。

御坂「ちょ、抱きつくな!あ、これは違うからね!勘違いしないでよね!淡希!」

白井「淡希って……!なんで、お姉様があの露出狂女の事を名前で」

御坂「こら!淡希のことを悪く言わないの!」

ゴチン!と白井はゲンコツをもらう。

白井「あ、あああ、そんな……」

結標(常盤台のお嬢様って……まともなのいないのかしら)

384 : VIPに... - 2011/09/06 04:57:26.32 iNh2rC4q0 330/458

フィアンマ「だいぶ吸収したテレズマが馴染んできたな。お前はどうだヴェント?」

ヴェント「うん。私も良い感じかな?暴走しちゃったら場合は止めてネ♪」

フィアンマ「お前、たまに俺様でも恐怖を抱く様な事を平気で言うよな」

ヴェント「フィアンマの事を信じているから言える事だヨ?」

フィアンマ「あんま嬉しくない信頼だな」

385 : VIPに... - 2011/09/06 04:58:47.09 iNh2rC4q0 331/458

垣根「久しぶりだな。一方通行」

一方通行「何の用ですかァ?」

垣根「挨拶しただけなのに、その反応は酷いんじゃないの?」

一方通行「オマエと話す事なんてねェもン」

垣根「冷たいな。今の俺はレベル6だぜ。俺自身が『未元物質』になれる」

一方通行「その程度で粋がンな。
     俺もレベル6だし、オマエ自身が『未元物質』になろうが、俺はそれを解析する」

垣根「なるほどね。ま、初めての共闘をするわけだから、仲良くしようや」

一方通行「(序列コンプレックスはなくなったみたいだな)足だけは引っ張ンなよ」

386 : VIPに... - 2011/09/06 05:00:19.64 iNh2rC4q0 332/458

青ピ「なあなあツッチー。能力者なのに、魔術って使えるの?」

土御門「なかなか鋭いにゃー。能力者に魔術は使えないぜい。
    めんどいんで詳しくは省くがな。俺は能力の特性上、3回ほど使える。
    逆に言うと、3回でギリギリだから、ほとんどはお前に頼ることになるぜい」

青ピ「ええー。ツッチーの役立たずー」

土御門「お前、昨日は頼れとか言ってたくせに!」

青ピ「共闘は良いけど、守りながら戦うのは勘弁や。女の子ならともかく!」

ふざけんにゃー!と喧嘩が始まる。

削板「おいお前ら!喧嘩は止めろ!」

削板が一喝した。その一言に、土御門と青髪の喧嘩がピタッと止まる。

土御門「つーか大丈夫なの?昨日は重傷すぎて、話も聞いてないんだろ?この状況理解してる?」

削板「うーん、よく分からんがな。とにかく戦って勝てばいいんだろ。任せとけ!」

青ピ(しっかし、一晩丸々休んだとはいえ、あの重傷がここまで回復するもんかいな。
   人間かコイツ……)

とそこで上条が口を開く。

上条「騒ぐのはその辺にしとけよ」

青ピ「なんや、カミやんちょっと冷たいでぇー」

上条「……」

青ピ「ガン無視されたんですけど」

土御門(カミやん……)

上条「フィアンマ」

フィアンマ「何だ?」

上条「これ以上待ってられない。ちょっと先に行って戦ってくる。皆に離れるように言ってくれ」

フィアンマ「どうやって?」

上条「良いから頼む」

その一言に得体の知れない威圧感を感じたフィアンマは指示に従う。

387 : VIPに... - 2011/09/06 05:01:18.93 iNh2rC4q0 333/458

フィアンマ「離れてもらったぞ!」

上条から100mもの距離を取ったフィアンマが大声で上条に呼び掛けた。

上条「オッケー」

上条のその返事と同時に、バリィィィン!とガラスが割れるような音が響いた。

土御門「これは『幻想殺し』が能力を打ち消した時の音と似ている――!」

土御門がそう私見を述べた時には、辺りに暴風が吹き荒れた。
その暴風の源、上条を見ると、その背中から50mもの翡翠色の翼が生えていた。

フィアンマ「あれは『竜王の翼』(ドラゴンウィング)!もしや、やつの中にいるのは――!」

フィアンマがそう叫んだ時には、上条はフィアンマ達の視界から消えていた。

388 : VIPに... - 2011/09/06 05:02:42.32 iNh2rC4q0 334/458

上条は時速10000kmでロシアへ向かっていた。

上条「話によれば、ロシアから来るんだよな?」

ロシアから来るんだから、ロシアへ向かえば激突するんじゃね?という単純な考えで飛行していた。
とそこで、前方に9つの光が見えた。

上条「――!」

上条から光が見えてから、1秒。9つの光と上条は交差した。
それで9つの光の内の2つは、上条の『竜王の翼』に切り裂かれた。

残りの6つの光は、そのまま学園都市の方へ向かい、1つの光はその場に留まった。

禁書「――警告、第二十四章第六節。召喚された天使の迎撃を確認。
   現状、天使を迎撃した謎の力に対しての迎撃を優先します」

上条「よう、インデックス。今度こそ、完璧に救ってやるからな」

『神上』と『神浄』の戦いが始まる――!


続き
アレイスター「さあ、最後の晩餐(ショータイム)だ」【4】

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