関連
アレイスター「さあ、最後の晩餐(ショータイム)だ」【1】

126 : VIPに... - 2011/07/31 00:09:17.53 s/+bFleT0 111/458

崩落現場から約8kmの地点

絹旗「とりあえず、装甲車は超潰しましたが、これからどうしましょうかねぇ」

あの後絹旗は、装甲車を潰すことには成功したが、高速道路から落ちてしまった。
とは言え『窒素装甲』があったため、20mの高さから落下したが傷一つつかなかった。

絹旗「あーあ、ここからじゃ帰り方が分かりませんし、超だりぃ~」

ぼやきながらトボトボ歩き出す絹旗。その時だった。

黒夜「だるいなら、私が送ってあげようかァ~。天国にィィィ!」

後方から、突如下品な少女の声が聞こえてきた。
黒夜の能力『窒素爆槍』(ボンバーランス)が、絹旗に向かって炸裂した。

ボガァァァン!と『窒素爆槍』が辺りを蹂躙する音が響いた。

絹旗「あなたも超しつこいですねぇ。今までで懲りなかったんですか?」

『窒素装甲』を纏っている絹旗は無傷だった。

黒夜と絹旗はクーデターが起こる少し前、暗部からの『新入生』と『卒業生』として
過去に1度激突している。
その時は、絹旗個人は負けてしまったが『卒業生』としては『新入生』に勝利した。
続くクーデター本番では、どちらも関わってはいたが、直接戦うことは無かった。
結局クーデターも失敗に終わり、絹旗は勝手に死んだものと思っていた。

黒夜「少し負けたぐらいで挫折するぐらいなら、初めからクーデターなンて、起こさねェよォ!」

黒夜の脇腹から無数の『腕』が出てくる。黒夜の能力は『窒素爆槍』。
掌から窒素の槍を生み出す能力だ。つまり掌がたくさんあれば、という発想で
黒夜は自ら改造人間(サイボーグ)になったのだ。

黒夜は地面に『窒素爆槍』を放ち、その爆風で空を飛ぶ。
その後も『窒素爆槍』を微妙に出力し続け浮遊した。

135 : VIPに... - 2011/08/05 09:37:53.92 tiKOg62V0 112/458

黒夜「さァて、空中からの攻撃に耐えられるかなァ!」

黒夜の数千の腕から『窒素爆槍』が放たれる。『窒素爆槍』の雨が、絹旗を襲う!

ズドドドド!と凄まじい音が辺りを蹂躙する。

黒夜「ははははは!呆気ねェなァ、絹旗ちゃンよォ!」

莫大な煙が立ち込める中、黒夜は勝利を確信する。

絹旗「まだ勝負は超終わっていませんよ」

絹旗は無傷で立っていた。

黒夜「へェ。少しはマシになったンだねェ」

絹旗「私は超優等生ですからね。劣等性のあなたとは違うんです」

黒夜(窒素で直径2m程の盾を作って防いだのか)

黒夜「少しぐらい窒素を使えるようになったからって、粋がってンじゃねェぞォ!」

再び『窒素爆槍』の雨を降らせる黒夜。だが絹旗は、またしても平然と立っていた。

黒夜「ちィ!」

絹旗「もう終わりですか?では今度は超こっちの番です」

黒夜「はァ?」

黒夜は、こっちの番も何もただでさえ近距離戦しかできず、遠距離戦が苦手な絹旗に
空を飛んでいる自分に攻撃など当てられるものかと思っていた。

絹旗「ほい!」

掛け声とともに、絹旗はボールを投げるような動作をした。

黒夜「なァーにやってンだァ!絹旗ちゃ」

その言葉は途切れることとなった。黒夜の機械の腕がいきなりちぎれたからだ。

136 : VIPに... - 2011/08/05 09:40:24.98 tiKOg62V0 113/458

黒夜「おォ!?」

何故だ。と黒夜は思った。
その間にも絹旗は、再びボールを投げるようなモーションに入っている。

黒夜(まさか……)

黒夜は『窒素爆槍』を出力し、5m程右へ移動する。
するとさっきまでいた場所から、空気を切るような音が聞こえた。

黒夜「もしや、オマエ……!」

絹旗「超頭が悪い黒夜でも、さすがに気付きましたか?」

絹旗「超そういうことです。掌で窒素の球を作って投げたんですよ」

黒夜(そこまで窒素を使いこなしているって言うのか!?)

絹旗「そして、こんな事も出来ます」

そう言うと絹旗は、両掌を合わせる。それを徐々に離していく。
一般人からすれば、女の子が両掌を合わせて離しただけにしか見えない。だが黒夜には見えていた。
絹旗が掌を離していくのに合わせて、槍のようなものが出来上がっていくのが。

絹旗「それ!」

絹旗は、その窒素の槍を黒夜目掛けて投げた。

黒夜「糞が!なめてンじゃねェぞぉ!」

黒夜は『窒素爆槍』で受けて立つ。ボガァァァン!と槍と槍が激突した。結果は相殺。

137 : VIPに... - 2011/08/05 09:42:03.61 tiKOg62V0 114/458

黒夜「はン!所詮はその程度かァ!」

絹旗を見下しながら、余裕をアピールする。そこである事に気付く。

黒夜「!?」

いつの間に作ったのだろうか。絹旗の周りに、1辺が1m程の窒素で出来た立方体が10個ほど見えた。それらを絹旗は、拳と蹴りで黒夜目掛けて放った。

黒夜「ちィ!」

黒夜は窒素の塊を、相殺や避けるなどして、全てやり過ごす。

黒夜「成程ねェ。認めてやるよ。オマエは以前より大分窒素を使いこなしている」

黒夜「だがなァ、いくら遠距離攻撃が出来ても、そンなチャチな攻撃、相殺する事も
   避ける事も出来るンだよォ!」

絹旗「で、言いたい事は超それだけですか?」

黒夜「あァ!?」

絹旗「私の攻撃を防げるからって、超良い気になっているようですが
   あなたの攻撃も、私には超効かないんですよ?」

黒夜「その心配はいらねェよ。私には、まだ違う攻撃手段がある」

絹旗の真上に移動しながら、黒夜はそう言った。

黒夜「例えば、こう言う風に力を1つに集めて、超巨大な『窒素爆槍』で攻撃するとかなァ!」

『窒素爆槍』が1点に集められる。

138 : VIPに... - 2011/08/05 09:43:39.41 tiKOg62V0 115/458

対して絹旗が執った行動は、両手を高く上にかざしただけだった。

黒夜「まァ賢明な判断だとは思うよ?この大きさの『窒素爆槍』なら
   逃げたって吹き飛ぶだけだろうしね」

黒夜「それならば、受け止めた方が可能性があるって言うのは
   妥当な判断だと思うけど……どの道オマエは終わりだァ!」

黒夜は勝利を確信し、超巨大『窒素爆槍』を放つ。

黒夜「消し飛べェ!」

超巨大『窒素爆槍』が迫る中、絹旗はこう考えていた。

絹旗(私の能力は“窒素”を纏う事。最近はある程度操れるようにもなってきた)

絹旗(ならば敵の攻撃とは言え、窒素である以上、操り、超何とか出来るはず!)

もちろん、確実に操れるなんて保証はない。そのまま押し潰されてしまう可能性も少なくない。
だが逃げたところで、黒夜の言う通り吹き飛ばされるだけだ。
“溜め”が完了する前に攻撃したって、残りの腕で、避けられるか相殺されるだけだろう。
だから受け止め、操る可能性に絹旗は懸けた。

絹旗(自分を超信じるんだ!!)

そして――

超巨大『窒素爆槍』が絹旗に激突した。

139 : VIPに... - 2011/08/05 09:45:12.68 tiKOg62V0 116/458

絹旗(ぐぅぅぅぅ!)

激突した瞬間に押し潰されそうになる絹旗。
そのあまりの圧力に、2秒もたずに片膝をついてしまう。

絹旗(違う……受け止めるのでは……駄目です……纏うんだ……この窒素すらも……!)

以前は、体表面から数cmしか窒素を纏えなかったが、今では20cmは纏える。
だが、少し窒素を吸収し纏ったくらいでは、膨大な窒素で出来た黒夜の槍は受け切れない。

絹旗(纏いきれない……窒素は……発散させる……!)

絹旗「う、あああああああああ!」

この瞬間をもって、絹旗は覚醒し、能力者として一段階成長した。
ついに『窒素爆槍』の受け流しが始まった。

黒夜「何ィ!?」

『窒素爆槍』はどんどん吸収され、発散されていく。

黒夜「糞がァ!」

その様を見て焦った黒夜は、通常の『窒素爆槍』をいくつも放つ。
だがその全ては吸収され、発散された。

黒夜「まだまだァ!」

懲りずに『窒素爆槍』を放ち続けるが、やはり吸収、発散され……

140 : VIPに... - 2011/08/05 09:46:05.57 tiKOg62V0 117/458

1分後

黒夜「はァはァ……」

絹旗「もうこの私に、窒素での攻撃は超効きません」

黒夜「嘘だ、嘘だ、嘘だァ!」

切り札すら防がれたからか、黒夜は錯乱する。

黒夜「ハ、ハハ、そうだよ。いくら私の攻撃が効かないからって
   お前の遠距離攻撃も私には届かないんだよォ!」

絹旗「何だ、超そんなことですか。私だって、攻撃方法は超1つじゃないんですよ?」

そう言うと絹旗はジャンプした。そしてさらに、空中でもう一度ジャンプした。

141 : VIPに... - 2011/08/05 09:47:36.61 tiKOg62V0 118/458

黒夜「何が……起こって……」

絹旗「今みたいに、空気中の窒素を操って足場を作れば、超解決する問題なんですよ!」

絹旗は、何度も空中でジャンプして、黒夜との距離を詰める。

黒夜「うわァァァ!?くるなァァァ!」

黒夜は『窒素爆槍』を放つが、ボシュゥゥ!とあっさり受け流される。

絹旗「だから超効かないと言っているでしょう」

黒夜「くっ!」

黒夜はたまらず逃げる。

絹旗「超どうしたんですか?黒夜ちゃーん?」

黒夜「糞がァ!馬鹿にしやがってェ!」

どこに収納していたのか、黒夜は拳銃を100丁ほど出し撃ちまくる。

絹旗「レベル4の攻撃が超効かないのに、拳銃如きが効くわけないでしょう」

弾丸は悉く弾かれる。これでは埒があかない。

黒夜「これならどうだァ!」

今度は10個のロケットランチャーに、50個の手榴弾を出す。そして全てを一気に絹旗に炸裂させる。
バガァァァン!と辺りにとんでもない爆音が響いた。

142 : VIPに... - 2011/08/05 09:49:16.38 tiKOg62V0 119/458

黒夜「ハハ……これで」

絹旗「これで……超なんですか?」

煙の中から平然と現れる絹旗。

黒夜「化け物……め……」

絹旗「自らの体を改造した、サイボーグにだけは超言われたくないですね!」

黒夜「糞ォォォ!最後の勝負だァ!」

先程の大きさではないとは言え、即席で割と大きい『窒素爆槍』を作り、放った。

黒夜「この距離なら、さすがのオマエも受け流す事も、避ける事も出来ねェだろォ!」

絹旗「その即席で作った槍ですが、力の焦点が合わず超隙だらけですよ。
   どんなに大きい力でも、その隙が『弱所』となり
   その『弱所』を突かれれば、その力の半分も超発揮できません」

絹旗「ぶっちゃけ受け流すのは簡単ですが、超癪なので真っ向から打ち破らせてもらいます!」

絹旗の右掌の上で、窒素が乱回転しながら集まり、球状に圧縮され、そのまま留まる!

絹旗「窒素丸!!!」

絹旗の窒素丸と黒夜の『窒素爆槍』が激突する。力の大きさだけなら、黒夜の方が上だった。
だが絹旗の一点集中し『弱所』を突いた窒素丸と、黒夜のでかいが隙だらけの力。
優劣は明らかだった。

黒夜「この私が……負け……」

絹旗「おおおおお!」

絹旗の窒素丸は『窒素爆槍』を貫き、そのまま黒夜へ直撃する。

黒夜「ごっ、がああああああああああああああ!」

黒夜は、そのまま100m程吹き飛び、地面に叩きつけられた。

143 : VIPに... - 2011/08/05 09:51:01.72 tiKOg62V0 120/458

第7学区 上条の通う高校

ガララッ!と勢い良く扉を開け放つ上条。すると窓のそばに、金髪でグラサンの男が立っていた。

上条「土御門……」

土御門「あの強くなったステイルでも止めらないとはな」

上条「ステイルが、土御門が罠を仕掛けたとか言ってたけど、嘘だよな?」

土御門「それにねーちんも突破したって言うのか。あ、それは『超電磁砲』が相手してるんだっけ」

土御門「ちなみに現在、学園都市には第一級警報(コードレッド)が発令されている。
    皆核シェルター級の避難所に避難しているだろう。風紀委員と警備員は除いてな」

上条の質問を無視し、土御門はそう続けた。

上条「そんなこと聞いてんじゃねぇ!
   お前が俺を罠に嵌めて、ステイルと戦わせたかどうか聞いてんだ!」

土御門「本当だ」

上条「何で……?」

土御門「不覚にも、イギリス清教に舞夏を人質に取られてしまってな」

舞夏とは、土御門の義理の妹である。土御門の最も大切なモノで
彼女の為ならば、世界を敵に回す覚悟があるぐらいだ。

土御門「そして、カミやんを殺せ。と言われた」

土御門「ステイルもねーちんも『禁書目録』を人質に取られた。
    そして同じく、カミやんを殺せと命令された」

土御門「俺はその手助けをしたって訳だ。いやイギリス清教、ひいては魔術サイド全体が
    何らかの弱みを握られたり、操られたりでローラに踊らされている。
    目的はアレイスターと上条当麻の抹殺。ついでに学園都市滅亡らしい」

上条「……」

土御門「すまないなカミやん。そんなお前を助ける事は出来ない。
    寧ろ殺そうとしている。恨んでくれても構わない」

上条「そう言うことだったのか。別に恨みはしないさ。ただ俺を殺すんじゃなくて
   お前の手で舞夏を救い出すと言う選択肢は無かったのかと問いたいけどな」

土御門「……カミやん、世の中は綺麗事だけじゃ済まないんだよ。
    これ以上の会話は無用だ。死んでくれ」

144 : VIPに... - 2011/08/05 09:52:30.96 tiKOg62V0 121/458

土御門は懐から拳銃を取り出し、その引き金を迷わず引いた。
対し上条は、即座に横に転がりこみ、教室の扉から出ていく。

土御門「直線になっている廊下じゃ、逃げ切るのは容易じゃないぞ!」

土御門は即座に上条を追いかけるが、廊下には上条の姿がない。
代わりに窓が開いていた。

土御門(ここは3階……飛び降りればただでは済まないはずだが……)

一応窓から顔を出して確認する。

土御門(なるほど。駐輪場の屋根に落ちた訳か)

上条は屋根から降りて、何か自転車をいじっている。土御門も屋根の上に飛び降りる。

上条「うおおおお!」

土御門が屋根に降り立った瞬間、間髪容れずに上条は自転車を投げつけた。

土御門「ちっ!」

土御門は拳銃をもう1丁取りだし、2つの拳銃で自転車を撃ち抜く。
上条は2台目の自転車を投げつける。

土御門「しつこい!」

2台目の自転車も撃ち抜く。上条は3台目の自転車を投げつける。

土御門(銃弾を無くさせる気か!?)

3台目の自転車を撃ち抜きながら、土御門は考える。上条は4台目の自転車を投げた。

土御門(銃弾なんてまだまだあるが、このままだとキリがないのは事実。ここは)

145 : VIPに... - 2011/08/05 09:54:14.36 tiKOg62V0 122/458

土御門は一旦銃をしまい、ジャンプし、上条が投げた自転車を空中でキャッチする。
そしてそのまま上条に投げ返す。

上条「ぬお!?」

上条は急いで横に転がる。土御門は地面に着地後、すぐ銃を引き抜く。
だが上条は既に起き上がっており、土御門に殴りかかろうとしていた。

土御門(速い――!が――)

充分避けられる、と土御門は思っていた。
だが土御門の体は、足に痛みと共にガクン、と地面に縫い付けられたように傾くだけ。

土御門(この技は……!)

土御門がよくやる反則技、踏み砕きだ。上条は左足で土御門の右足を潰し動きを止めたのだ。
そして動けないまま、上条の強力な拳が飛んでくる。咄嗟に、両手を使って顔と胸を守る。
だが上条の拳は顔でも胸でもなく、腹に直撃した。

土御門「ごはっ!」

上条に殴られた土御門は、そのまま自転車の集団に突っ込んだ。
その衝撃で2丁の拳銃を落としてしまう。上条はその2丁の拳銃をすかさず拾い、遠くへ投げる。

上条「立てよ土御門。義妹を救いにも行かずに俺なんかに現を抜かしている
   馬鹿兄貴の目を覚まさせてやるよ」

土御門「素人が調子に乗るなよ」

土御門はゆっくり起き上がる。

上条「『御使堕し』(エンゼルフォール)の時のリベンジはさせてもらう」

土御門「いいぜカミやん。素人とプロの、格の違いってやつを見せてやるよ」

146 : VIPに... - 2011/08/05 09:55:43.02 tiKOg62V0 123/458

結論から言うと、浜面達は全員無事だった。
麦野の『原子崩し』で落下速度を落として着地したのだ。
完全に無傷のスマートな着地とはいかなかったが。

麦野滝壺浜面「「「痛て……」」」

フレメア「浜面、大体大丈夫?」

フレメアは浜面に抱かれて落ちたため、無傷。忍者の末裔である半蔵と郭も無傷で着地していた。

浜面「さすが、忍者の末裔だけあるな」

半蔵「……つか、そんなに余裕ぶっこいてる状況じゃないみたいだぞ」

「あの金髪の娘が、銃器を持って近付いてきています」

郭の言う通り、フレンダが銃器を持って近付いてきていた。

半蔵「どうする?戦っても良いのか?」

浜面「いや……そいつは……」

浜面はたじろいだ。まだ混乱しているのだ。その時、麦野が口を開いた。

麦野「服部、郭、お前らは何もしなくて良い。浜面と滝壺もだ。私がやる」

麦野が表立つ。

浜面「大丈夫なのか?」

麦野「当たり前だ。あれはフレンダじゃない」

麦野「お前らは知らないだろうが、あの『超電磁砲』にもクローンがいるぐらいだ。
   学園都市の技術は既にそこまでの領域に達している」

浜面「マジかよ……」

麦野「だからあいつもクローンか、精巧なロボットか。はたまた別の何かか。
   どの道あいつはフレンダでもなんでもない。私が2秒で消し炭にする」

麦野「フレンダを侮辱した事、許さない……!」

麦野が攻撃をしようと構えた、その時だった。
3m程の大きさのゴリラの形をした駆動鎧が上空から降ってきた。
それともう1機。5m程の、隼の形をした駆動鎧も飛んできた。

その隼の駆動鎧は、フレンダを乗せ、フレメアを掴みどこかへ飛んでいった。

麦野「待ちやがれ!」

麦野はその駆動鎧が飛んで行った方向へ走っていく。

147 : VIPに... - 2011/08/05 09:56:55.62 tiKOg62V0 124/458

浜面「ちょ、待て麦野!」

ゴリラ『貴様らの相手は、この俺だ』

ゴリラが浜面の前に立ち塞がる。そしてその拳が、浜面目がけて振り下ろされた。
浜面は横に転がり、なんとか拳を回避する。

浜面「くっそ!」

滝壺「はまづら!」

半蔵「郭!」

「はい!」

ゴリラを挟むように、半蔵と郭は同時に走り出す。両者が手に持っているのは鎖鎌。

半蔵「おらっ!」

「はあっ!」

2人は同時に、鎖鎌をゴリラに向けて投げつける。それはゴリラに巻き付いた。

半蔵「引っ張るぞ!」

「はい!」

ゴリラを引き裂こうと、鎖鎌を同時に引っ張る2人。

ゴリラ『その程度の攻撃で、この駆動鎧が潰れるとでも?』

ゴリラは引き裂かれるどころか傷1つつかなかった。
ゴリラは鎖鎌を掴み、そのまま回転する。半蔵と郭を投げ飛ばすためだ。
ヤバい、と思った2人は咄嗟に鎖鎌から手を離す。

148 : VIPに... - 2011/08/05 09:58:26.95 tiKOg62V0 125/458

ゴリラ『邪魔だな貴様ら。仕方ない。自動操作に切り替えるか』

そう言うと、ゴリラの駆動鎧の中から男が出てきた。
その男は駆動鎧から降りると、浜面達の方へ歩み寄る。

半蔵「おらよ!」

半蔵は持っていたクナイを、その男に向かって投げるが、ゴリラがそれを阻んだ。

「貴様ら忍者の相手は、その駆動鎧がやる。そして浜面仕上、貴様の相手はこの俺だ」

浜面「お前、何者だ?」

「俺は鬼塚剛。お前らにやられた『新入生』の残党だ」

浜面「『新入生』の、残党だと!?」

鬼塚「お前の能力は『オートエンハンス』のレベル1。
   能力の詳細は、能力発動後1分はレベル0のまま。1分後にレベル1の『肉体強化』に相当する」

鬼塚「その2分後にレベル2、その3分後にレベル3、その4分後にレベル4相当になる。
   そしてその5分後、能力が切れる」

鬼塚「要するに、10分でレベル4になり、15分でレベル0に戻ってしまうってわけだ」

浜面「こっちの情報は筒抜けか……」

鬼塚「俺の能力を教えてやろう。レベル4の『肉体強化』系(パーツエンハンス)だ」

浜面「『パーツエンハンス』?」

鬼塚「百聞は一見にしかず。どう言う能力か見せてやろう。ぬん!」

掛け声とともに、鬼塚の右腕が3倍程太くなった。

149 : VIPに... - 2011/08/05 10:00:09.03 tiKOg62V0 126/458

鬼塚「こう言う風に、俺は体の部位ごとを強化できる。この腕はレベル2相当だ」

浜面「へぇ……なんでその情報を俺に教えるんだ?」

鬼塚「男と男が喧嘩するのはフェアじゃなきゃな。俺だけ貴様の事を知っていて
   貴様は俺の事知らない、ではアンフェアだろ?ほら貴様も能力を発動しろ」

浜面「じゃあ遠慮なく!はっ!」

鬼塚「発動したみたいだな。ま、今から1分はレベル0のままだろうがな」

鬼塚「では行くぞ」

鬼塚は脚を強化し、凄まじい勢いで浜面に肉迫する。

浜面(速え――!)

ドガァン!と鬼塚の強化された腕の一撃が浜面を襲った。
浜面は咄嗟に両腕でガードしていたとはいえ、数m地面を転がった。

鬼塚「1分どころか、10秒も保たないか」

浜面「ふ……ざけやがって。何がフェアだ。お前はレベル4、俺はレベル1。
   その時点で既にフェアじゃないんだよ」

鬼塚「馬鹿者。今の俺は腕も脚もレベル2相当だし、互いに能力が分かった時点で
   フェアだろう。最終的には貴様もレベル4になるんだしな」

浜面「意味が分からねぇ。けど俺はお前みたいに正攻法ではいかない。何でもやらせてもらう」

浜面は拳銃を取り出した。

鬼塚「拳銃如きで、この俺を撃ち抜けるとでも?」

浜面は無言で2回発砲した。鬼塚はそれを最小限の動きだけでかわす。

鬼塚「おらぁ!」

浜面の手ごと拳銃を蹴り飛ばし、間髪容れずに強化した左腕のラリアットをお見舞いした。

浜面「ごはっ!」

浜面は再び地面を数m転がる。追撃しようと、鬼塚は近付くが

浜面は突然起き上がり、頭突きをかました。

鬼塚「ぬがっ!」

浜面「まだまだぁ!」

そこからさらに拳を2発、鬼塚の顔面に叩きつける。

鬼塚「がっ!」

浜面「まだだっ!」

さらに追撃しようとしたが、鬼塚がそこで一旦距離をとった。

150 : VIPに... - 2011/08/05 10:01:41.15 tiKOg62V0 127/458

鬼塚「どう言う事だ?何故貴様は、レベル1相当になっている?
   まだ能力発動から、30秒も経っていないはずだが……」

浜面「言ったはずだ。勝つ為なら俺は何でもすると」

鬼塚「意味が分からん。質問の答えになっていない」

浜面「簡単な事さ。滝壺の補助で、俺の能力進化までの時間を短くしただけさ」

鬼塚「成程。ではこちらも、さらにレベルを上げていこうか。ぬん!」

先程の距離をとる時に、脚はレベル3相当になっていた。腕もレベル3相当になる。

鬼塚「おおおおおお!」

鬼塚の怒涛の拳の連撃が浜面を襲う。

浜面(滝壺の補助であと20秒も耐えれば、レベル2相当になれるはず……!)

浜面(そこまで耐える……!)

鬼塚の攻撃を、受け止め、いなし、かわすなどして、クリーンヒットを免れる。

鬼塚「ほう。その動き、ただの素人じゃないな」

浜面「元々、武装無能力者集団(スキルアウト)で体は鍛えてあった。
   そして最近、ボクシングもやり始めた」

鬼塚「少しボクシングをかじったところで、俺の拳を避けられるのは腹が立つなぁ!」

鬼塚の攻撃が、より一層激しさを増す。

浜面「攻撃が段々大振りになってるぜ!そんなんじゃ当たるもんも当たらねぇよ!」

151 : VIPに... - 2011/08/05 10:03:50.32 tiKOg62V0 128/458

そして20秒。浜面はレベル2相当になった。

浜面「おおお!」

浜面の渾身の一撃が、鬼塚の顔面に突き刺さった。

鬼塚「ごふぁ!」

鬼塚は数m地面を転がる。

鬼塚「最初の一撃は防げなかった癖に、今の連続攻撃を防ぎきるとはな」

浜面「最初の一撃は不意打ちみたいなものだったからな。
   冷静に対処すればなんてことはない」

鬼塚「どこまでもイラつく奴だ。ならば見せてやろう。レベル4の力を」

浜面「させるか!」

浜面は能力を発動させまいと、鬼塚に殴りかかるが

鬼塚「残念。もう腕はレベル4になった。レベル2程度の攻撃では
   この腕をクロスしてガードしていればノーダメージだ」

それでも浜面は攻撃を止めない。

鬼塚「無駄だと……言っている!」

鬼塚は、両腕をクロスしたまま、浜面へ体当たりをかます。
浜面はノーバウンドで数m吹き飛んだ。

浜面(く……レベル3相当までは、あと2分くらいか……?)

鬼塚「見せてやろう。これがレベル4の真の力だ!ぬん!」

瞬間、鬼塚の体が膨れ上がった。
結果として、半蔵と郭が今も戦っているゴリラの駆動鎧と、大差ない大きさになった。

鬼塚「いくぞぉ!」

3mほどの大きさになった癖に、速さまで増した、鬼塚の怒涛の攻撃に
なんとかクリーンヒットは避けるも、反撃が出来ない。浜面は仕方なく一旦距離を取るが

鬼塚「逃げるのなら、厄介な滝壺理后から始末する」

鬼塚の攻撃の矛先が滝壺へ向く。

浜面「滝壺ぉーっ!」

浜面は滝壺を抱え込むように飛び込む。2人は、鬼塚の攻撃を何とか避けた。

152 : VIPに... - 2011/08/05 10:05:41.79 tiKOg62V0 129/458

浜面「とりあえず、滝壺を安全な場所まで運ばないと……!」

浜面は、滝壺をお姫様抱っこしながら逃げる。

鬼塚「お荷物を抱えながら、俺から逃げられるとでも思っているのか!」

鬼塚は地面を殴り、そこからできた破片を掴み投げる。破片と言っても、1m程の塊をだ。

浜面「お……おお……!」

浜面は、直撃を避けようとジグザグに走る、時折ジャンプするなどして逃げたが
やがて足はもつれ、転んだ。

浜面「滝壺、お前だけでも逃げてくれ!俺の補助は遠くからで良い!」

滝壺「でも、それじゃあはまづらが」

浜面「いいから早く!」

滝壺「……絶対ちゃんと迎えに来てね。迎えに来ないと許さないんだから」

浜面「ああ、分かってるよ」

鬼塚「そんなに余裕で良いのかな?」

鬼塚は既に浜面の真後ろにいた。そしてそのまま拳を振り下ろす。
浜面はそれを何とか避けるも、鬼塚の猛攻撃は続く。

浜面は先程までと同じく、クリーンヒットは避ける。
だが逆に言えば、避けきっているのはクリーンヒットだけ。
鬼塚の拳が地面にぶつかったときに飛び散る破片や、強力な一撃を避けきれず
受け流すときに、受け流しているとは言え、ダメージは溜まっていく。

浜面「くっ!」

浜面は、ついに片膝をついてしまう。

鬼塚(チャンス!)

浜面はガードをするも、鬼塚の右拳の一撃で15mほど地面を転がった。

鬼塚「まだまだぁ!」

鬼塚はその場で10mほどジャンプした。
そのまま倒れている浜面に向かって、空中からかかと落としを炸裂させた。

153 : VIPに... - 2011/08/05 10:06:50.85 tiKOg62V0 130/458

鬼塚「ほう……よく避けたな」

浜面「うおおおお!」

間髪容れずに鬼塚の腹に拳を叩きこむ。

鬼塚「先程よりは威力が高まったな。レベル3相当になったのか。
   だがレベル4の今の俺には、レベル3相当の攻撃もまるで効かん」

浜面「く……!」

再び鬼塚の、鬼のような連撃が浜面を襲った。

浜面(避けられる……!レベル3の今なら、ほぼ完璧に避けきれる!
   今は攻撃が効いてないみたいだが、レベル4になれば攻撃も通用するはず!
   それまで耐える!)

154 : VIPに... - 2011/08/05 10:07:52.99 tiKOg62V0 131/458

鬼塚「ちょこまかちょこまかと、鬱陶しいな」

鬼塚は攻撃を避けられてイライラしていたのか、両手を組み、それを振り下ろしてきた。

浜面(大振りになった……!チャンス!)

浜面は鬼塚の一撃を避け、振り下ろされた腕を駆け上がる。

浜面「喰らいやがれ!」

そして浜面の全力の蹴りの一撃が、鬼塚の顔面に叩きこまれた。

浜面(これで少しは……!)

鬼塚「だから効かんと言っているだろう?」

浜面(やば……!)

鬼塚は浜面を掴み、投げ飛ばす。浜面はノーバウンドで数十m先の高速道路の柱に激突した。

浜面「がはっ!」

鬼塚「まだだ!」

鬼塚は、高速道路にもたれかかっている浜面に迫る。

浜面(なんとか……しねぇと!)

浜面は痛む体に鞭打ち、距離を取ろうと逃げる。

鬼塚「さっきから逃げてばかり……男なら正面から正々堂々戦え!」

浜面「何度も言うけど、俺は勝つためなら何でもする!」

鬼塚「つまらん……つまらんぞぉー!」

155 : VIPに... - 2011/08/05 10:09:55.19 tiKOg62V0 132/458

鬼塚は先程と同じように地面を殴り、その破片を浜面に投げまくる。

浜面(レベル3の今なら……避けきれるはず!)

浜面は投げられてくる破片を全て避ける。

鬼塚「おらぁぁぁ!」

破片攻撃はさらに激しさを増していく。

浜面(攻撃が激しくなってきた……このままじゃ避けきれない……!)

そう考えた浜面は、今まではただ避けていただけだった1m程の破片を、蹴りで軌道を逸らす。

浜面(これで何とか)

鬼塚「おおおおお!」

破片攻撃が終わったと思ったら、今度は鬼塚自身が飛び込んできた。

浜面(また近付かれちまった!)

鬼塚の連撃が浜面を襲うが、クリーンヒットだけは避け続ける。
しかし、徐々にダメージは溜まっていく。

浜面(このままじゃ……ジリ貧だ……!こうなったら1度攻撃を受けて……!)

そう考えた浜面は、鬼塚の拳を敢えて受け止めた。
そしてそのまま、1本背負いで鬼塚を地面に叩きつける。
仰向けに倒れた鬼塚の首辺りに乗っかり、顔面に拳のラッシュを叩きつける。

浜面(攻撃の手を緩めるな!攻撃を続けていれば、いつかは!)

そう信じ、攻撃を続けたが、パシィ!と拳を受け止められた。

鬼塚「何度言ったら分かる?お前の攻撃はもう効かない、と」

鬼塚は浜面を掴み、地面に叩きつける。
その後すかさず、地面に伏している浜面に、拳を2,3,4と振り下ろす。
計10発の拳を振り下ろした後、とどめの肘を喰らわせた。
その威力は浜面を中心に、半径10mの地面にヒビを入れるほどだった。
浜面もガードはしていたが、既に解かれ、白目を向いて気を失っていた。

鬼塚「ふぅ。ようやく終わったか」

滝壺「はまづらぁー!」

滝壺の叫び声が聞こえた。鬼塚には、その声は聞こえるだけで、姿は見えない。
どこに居るかまでは分からない、しかしそう遠くへは行っていないだろうと思う。

鬼塚「滝壺理后ー!次は貴様の番だー!」

鬼塚は大声で叫んだ。そして滝壺を探そうと歩き出した時だった。

156 : VIPに... - 2011/08/05 10:11:10.97 tiKOg62V0 133/458

浜面「……待てよ」

鬼塚「……ほう」

浜面「まだ勝負は……終わってねぇぞ……」

鬼塚「やめておけ。そんな状態では、俺を倒すことは愚か、最早傷をつけることすら不可能だろう」

鬼塚「しかし、まさか先の一撃で死んでないとはな。そうだな。
   せめてもの手向けだ。あとで滝壺理后と、仲良くあの世へ送ってやろう」

浜面「……させねぇよ」

鬼塚「何?」

浜面「させねぇって言ってんだろ!」

瞬間、浜面の拳が鬼塚の顔面に突き刺さった。

鬼塚「ごっふぁ!」

鬼塚は10mほど吹き飛ばされた。

鬼塚「貴……様、その速度と威力、レベル4相当になったと言うのか!?」

浜面「ああ。これから滝壺の補助のおかげで6分間、レベル4相当の力を使える」

浜面「この6分で決める!」

鬼塚「くくく、そうか。ようやく面白くなってきたなぁ!」

鬼塚「この6分間、貴様から逃げ続けて、能力が切れたところをいたぶるのもいいが
   癪だから、真正面から打ち砕いてやるよぉ!」

最後の6分間が、始まった。

157 : VIPに... - 2011/08/05 10:12:50.98 tiKOg62V0 134/458

浜面と鬼塚は、同時に地面を蹴った。
ドガァ!と拳と拳がぶつかる。

鬼塚「この俺と互角の力とはな」

浜面「当たり前だろ。同じレベル4相当なんだから」

その後も拳と拳がぶつかり合う。

浜面(このままじゃ6分経っちまう……!)

もう既に1分ほど殴り合っている浜面は、焦っていた。

浜面(こうなったら……賭けだが、やってみるか!)

浜面は一旦距離をとる。

鬼塚「どうした!?早くしないとレベル4相当の能力が消えるぞ!」

鬼塚が物凄い勢いで迫る。

浜面(集中しろ……!集中しろ……!)

鬼塚は拳を振るった。が、浜面は鬼塚の視界から消え去った。

鬼塚「な!?」

驚く鬼塚。そこへ浜面が、空中からドロップキックを繰り出した。

鬼塚「ぶふぉあ!?」

たまらず後退する鬼塚。浜面は地面着地後、追撃を仕掛けようと左拳に力を込めている。
それを見た鬼塚は、反射的に右拳を繰り出す。
右拳と左拳が激突した。瞬間、ブシャア!と腕は潰れ、血が溢れた。

158 : VIPに... - 2011/08/05 10:14:32.84 tiKOg62V0 135/458

浜面「あぁ~、痛ってぇー」

鬼塚「く……何故だ……?」

鬼塚「何故俺の右腕が潰れ、貴様の左腕が残っている!」

浜面「そのトリックを、教えると思うか?」

鬼塚「くそがぁ!」

鬼塚は闇雲に拳を振るう。

浜面「遅いぜ!」

しかし浜面は既に、鬼塚の後方へ回り込んでいた。そしてそのまま回し蹴りを浴びせる。

鬼塚「ごあっ!な……ぜ……!」

その後も浜面は高速で動きまわり、時には蹴りを繰り出し、鬼塚を翻弄する。

鬼塚「何故そんなに速く動けるー!」

鬼塚は冷静さを失って、その場で両腕を水平に広げ、回転する。

鬼塚「これならどの方向から攻撃されても、問題ないぞぉ!」

浜面「馬鹿かお前?上がカラ空きなんだよ!」

浜面の全力のかかと落としが、鬼塚の頭頂部に炸裂した。

159 : VIPに... - 2011/08/05 10:16:18.76 tiKOg62V0 136/458

鬼塚「ぶるふぁ!?」

浜面(ここだ!)

浜面は、ここぞとばかりに猛ラッシュを仕掛ける。

浜面(反撃する暇を与えるな!息さえさせるな!能力は残り2分もない!チャンスは今しかない!)

さすがの鬼塚も、この猛ラッシュは効いたのか、体のサイズが、元の190cmに戻った。

浜面(これで決める!)

浜面「うおおおおおおおおおおおおお!」

ドガァン!と浜面の渾身の一撃が、鬼塚の腹部に深く突き刺さった。
その拳が突き刺さったまま、浜面は走る。

浜面「おおおおおおおおおおおおおお!」

そして拳ごと、鬼塚を高速道路の柱に叩きつけた。

鬼塚「ごはぁあああああ!」

鬼塚は高速道路の柱に深くめり込んだ。

浜面「これ……で」

終わった。と浜面は思ったが、柱にめり込んだ鬼塚から、ヌッと手が伸びてきた。

浜面「おお!?」

浜面はそれを数歩後退することでやり過ごす。

160 : VIPに... - 2011/08/05 10:18:20.40 tiKOg62V0 137/458

浜面「まだ……動けるのか……?」

鬼塚「はぁ、はぁ、分かったぞ。貴様が突如早く動いたり、拳の威力が増したトリックが」

鬼塚「貴様はレベル4相当の力を、拳や脚に一点集中していたのだな」

『肉体強化』系の能力者というのは、力が身体中に、均等に強化される。
浜面は、それを一点集中する事によって、集中した箇所が、一時的にレベル4を超える力を
発揮できたのだ。

浜面「バレちまったか。まあ俺は、どの道もうすぐ能力が消える。
   お前がまだ立ち上がるのなら、俺は次の一撃に全てを懸けるだけだ」

浜面はレベル4相当の力を、全て右拳に集中する。

鬼塚「能力にこういう使い方があったとはな。ならば俺も、残った力の全てを左腕に集中しよう」

鬼塚も、一度は解けた能力を左腕に集中する。
その結果、左腕の大きさは元の10倍以上になった。

浜面「はは。お前、そんな不安定な状態で、攻撃を繰り出すつもりか?」

鬼塚「どうせ次の一撃で、拳と拳をぶつけ合って、全てが終わる。何か問題でも?」

浜面「そうか」

そして、2人は同時に地面を蹴った。

161 : VIPに... - 2011/08/05 10:19:59.03 tiKOg62V0 138/458

浜面鬼塚「「うおおおおおおおおおおおおおおおお!」」

鬼塚と浜面の拳が激突する!かの様に思われたが、鬼塚の左腕が空を切った。

鬼塚「な……にが」

浜面「そんなもん決まってる」

浜面の声は上から聞こえてきた。

浜面「お前とぶつかる直前に、脚に力を集中して、避けただけだ。
   馬鹿正直に勝負なんてするかよ」

鬼塚「ふ、ざけるなぁー!」

鬼塚は叫んだ。しかし、左腕だけが異様にでかくなって
バランスがうまくとれない鬼塚は動けない。浜面は、再び右拳に力を集中する。

浜面「これで、今度こそ決着だ!」

浜面の究極の一撃が、鬼塚の顔面に突き刺さった。
その一撃は、鬼塚を地面に1mほどめり込ませ、鬼塚を中心に半径30mの地面に
ヒビが入るほどだった。完全に意識を失って聞こえていないであろう鬼塚に向かって
浜面はこう言った。

浜面「『暗部』の人間のくせに、変なところで正々堂々だったのが敗因だったな」

滝壺「はまづらぁー!」

浜面「俺の……勝ち……だね」

滝壺が走ってきたところを見ながら、限界まで力を使い果たした浜面も倒れた。

162 : VIPに... - 2011/08/05 10:21:53.39 tiKOg62V0 139/458

浜面達が激闘を繰り広げた地点から3kmほど行った場所

麦野「はぁはぁ」

麦野は、5mほどの大きさの隼の形をした駆動鎧を追って、走っていた。

麦野(くそ……!どこまで逃げる気だ……!)

麦野がそう考え始めた時に、隼はゆっくり地面に降り立った。
隼の上に乗っていたフレンダが降りた。

フレンダ「麦野」

麦野「軽々しく私の名前を呼ばないでくれる?」

フレンダ「麦野、結局私の事死んだと思っていた訳でしょ?」

麦野「当たり前でしょ。だって私が、この手でフレンダを殺したもの。生きているはずがない」

フレンダ「結局、上半身と下半身がさよならしても、『冥土帰し』にかかれば
     ちょちょいのちょい!って訳よ」

麦野「有り得ないわ。あれで生きているはずがない」

フレンダ「これを見ても、まだ信じられない?」

フレンダは自分の服を捲りあげる。そこには、上半身と下半身を縫合したような跡があった。

フレンダ「大体、麦野も『冥土帰し』の『負の遺産』で、そこまで蘇ったんでしょ?
     『冥土帰し』の凄さは麦野も分かっているはず」

フレンダ「結局、私は本物のフレンダって訳よ」

麦野「……もしかして本当の本当にフレンダなの?」

フレンダ「そうよ。やっと信じてくれたのね麦野!」

フレンダは麦野に向かって走り出す。

麦野「フレンダ!」

フレンダ「麦野!」

抱き合う麦野とフレンダ。

麦野「フレンダ……会いたかった……会いたかったよぉ!」

フレンダ「私も……私もだよぉ!」

163 : VIPに... - 2011/08/05 10:23:22.60 tiKOg62V0 140/458

フレンダ(なーんちゃって。嘘に決まってんじゃん。死ね!)

フレンダは抱き合った状態から、隠し持っていたナイフを取り出し

麦野「なーんて、言ってほしかったかぁ、偽物野郎」

ザシュ!と、フレンダのナイフを持っていた右腕が消し飛んだ。

フレンダ「きゃぁぁぁあああ!」

悶えるフレンダ。

フレンダ「何で……私が本物のフレンダでないと思ったぁー!?」

麦野「いやいや普通に有り得ないでしょ。誤魔化しきれるとでも思ったの?
   傷跡については、特殊メイクでどうとでもなるし、アンタが『暗部』だとしたら
   フレンダの口癖、その他行動パターンをある程度把握していてもおかしくはない」

麦野「それに、もしアンタが本物のフレンダなら、どうしてフレメアを連れて逃げた?
   高速道路を爆破する意味も分からないし。いろいろと杜撰すぎたわね」

フレンダ(適当にフレンダの真似して動揺させれば、レベル0なんかに
     2度も負けるアマちゃんなんて倒せると思ったのに……!)

麦野「さて、消えて頂戴」

フレメア「待ってぇーっ!」

倒れているフレンダと麦野の間に、フレメアが割り込んだ。

164 : VIPに... - 2011/08/05 10:24:21.51 tiKOg62V0 141/458

麦野「どうしたのフレメア?どいて。そいつを殺せない」

フレメア「フレンダお姉ちゃんに、こんな事するなんて、麦野お姉ちゃんは酷いよ!」

麦野「何言っているんだフレメア?こいつはフレンダじゃない。ひょっとして操られているのか?」

しかし、別段操られているようには見えない。

フレメア「おかしいよ……今の麦野お姉ちゃん、怖すぎる……」

麦野「こいつは生きているだけでフレンダを侮辱しているようなものだ。
   まだまだ『お仕置き』が必要なぐらいだよ」

フレンダ「調子に乗るなよぉー!」

フレンダは、今まで庇ってくれていたフレメアを人質に取る。

フレンダ「どうだ。これで」

しかし、その言葉は最後まで続かなかった。
麦野の『原子崩し』がフレンダの左脚を消し飛ばしたからだ。

フレンダ「ぐおおあああ!」

165 : VIPに... - 2011/08/05 10:25:28.35 tiKOg62V0 142/458

麦野「ほら、庇ってくれたフレメアに、こんなことするんだ。まだまだお仕置きが足りない」

フレメア「もう良いよ!もうやめてよ麦野お姉ちゃん!」

麦野「何なのフレメア?あまり邪魔すると、あなたも消すわよ」

フレメア「え?」

麦野「分かったらそこをどきなさい」

そう言って麦野は、フレメアを振り払うように殴り飛ばした。

フレンダ「あんた……外道なんてもんじゃないわね」

麦野「お前にだけは言われたくないわ」

そうして麦野は、とどめを刺そうとする。

フレンダ「く!ファルコーン!」

フレンダが叫ぶと、さっきの隼の駆動鎧が突っ込んできた。

麦野「ふん」

だが麦野は『原子崩し』で、あっさりと隼を消し飛ばした。

フレンダ「あ……ああ……」

左腕だけで必死に這いつくばるように逃げるフレンダ。

麦野「じゃあ今度こそ終わりね」

麦野が最後の攻撃をしようとした、その時だった。

絹旗「麦野!」

麦野「絹旗か」

166 : VIPに... - 2011/08/05 10:26:52.55 tiKOg62V0 143/458

絹旗は状況を確認する。右腕と左脚がないフレンダ。
しかしながら、多分あれは偽者だろう。と絹旗は判断した。

しかし、フレメアが傷ついているのはどう言うことか。
まさかレベル5の麦野が守り切れなかったとでも言うのか。

いや、それにしては偽者相手に、優位に立っているようにしか見えない。
となると、フレンダの容姿をした偽者相手に激情して、その勢いで
フレメアにまで暴力を振るった。と考えるのが妥当なところか。

絹旗には心当たりがいくつかあった。麦野は一度思い込むと一直線のタイプだ。
その手で同胞のフレンダを手にかけ、浜面や滝壺をも手にかけようとした事もある。

絹旗「フレメアちゃんが傷ついているのは、超麦野の仕業ですか?」

麦野「まあね。この偽物野郎を殺すのに邪魔してきやがったから、ちょっと躾をね」

絹旗「もう良いでしょう。その偽者は既にボロボロです。超放っておいても、問題ないはずです」

麦野「駄目よ。こいつはフレンダを侮辱した。まずは残りの四肢を消し飛ばす」

絹旗「麦野!もうそんな無意味なことは超やめましょう!」

麦野「何?ひょっとして絹旗も、躾が必要なのかしら?」

絹旗「ぐぬぬ」

167 : VIPに... - 2011/08/05 10:28:43.31 tiKOg62V0 144/458

絹旗はレベル4だ。しかも黒夜戦を通し、さらなる成長をしている。
既にレベル4以上レベル5未満の力ぐらいはある。

しかし、相手は正真正銘のレベル5。止められる確率は限りなく低い。
麦野は偽者相手にキレているだけだし、ここで止めに入らなくても何も問題は無い。

でも、それでも絹旗は止めなきゃいけないと思った。
偽者とは言え、フレンダを殺してしまったら、それこそ相手の思う壺というか
人間として本当に終わってしまう。そんな気がしたから。

絹旗「もうこんな人間とは思えない超鬼畜の所業はやめましょうよ。
   浜面や滝壺さんのもとに帰りましょうよ」

麦野「分かった。アンタにも躾が必要みたいね」

麦野の意識は絹旗に向きかけていた。

フレンダ(チャンス!)

フレンダは左手で拳銃を引き抜き、発砲しようとしたが
麦野の能力により、左腕までも消されただけだった。

フレンダ「うわあああああ!」

絹旗「麦野!」

麦野「ちょっと待ってよ絹旗ちゃん。今のは正当防衛でしょ?」

そして麦野は、未だに悶絶しているフレンダを見下しながら

麦野「あーあ。なんかもう面倒くさくなっちゃった。消えて」

そうして麦野は、最後の一撃をフレンダに放った。放たれた跡には、塵も残らなかった。

168 : VIPに... - 2011/08/05 10:29:25.13 tiKOg62V0 145/458

絹旗「麦野……」

結局、偽者を麦野に殺させてしまった。でも仕方ないかと思った。
とりあえず、この件はこれで終わり。再び浜面と滝壺を探そうではないか。
そう考えていた時だった。

麦野「さて、今度はお前の躾でも始めようか」

絹旗「超マジですか……万事休す、ですかね……」

麦野の『躾』が始まろうとしていた。

169 : VIPに... - 2011/08/05 10:31:01.58 tiKOg62V0 146/458

滝壺「!」

半蔵「どうした?」

滝壺「……意味が分からないけど、むぎのときぬはたが戦闘を始めてる……」

半蔵「なんだって!?」

滝壺「……ここから約3kmの地点。急いでいかなきゃ!」

半蔵「ちょ、待てよ。この状況で、レベル4とレベル5の間に割って入っても……」

浜面は重傷の上気絶。半蔵と郭も、ゴリラのコックピットを集中的に狙い
なんとか動きを止めたようだがボロボロ。滝壺もレベル4ではあるが戦闘には向いていない。
こんな状況で、戦闘系の能力者の2人を止められるとは思えない。

滝壺「でも、それでもいかなきゃ!」

「まあまあ滝壺氏、焦らないでください。3kmって言うのは結構距離ありますし
  気絶した浜面氏を運ぶのも一苦労なはずです」

滝壺「そんなこと言ったって!いそがなきゃ!」

「だから冷静になって下さいって」

半蔵「お前は少し落ち着きすぎだろ」

「今の状況じゃ、行っても戦いに巻き込まれて犬死にするだけです。
  まずは、私と半蔵様で止めた駆動鎧を動かせるかどうか、試してみましょう。
  もし動かす事が出来たなら、移動も早くなりますし、戦力にもなります」

半蔵「一理あるな……よっしゃ!そうと決まれば動くかどうか試すか!」

172 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします - 2011/08/05 11:04:52.63 rk9QeUoDO 147/458

質問

・弱所ってなんですか?
・覚醒の使い方がおかしいから意味を調べてみて

一方通行がなんらかのイベントで覚醒するのはありえるけど
絹旗は覚醒じゃなくて成長か昇華だと思う


173 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします - 2011/08/05 12:45:54.88 8wwnCbpIO 148/458

絹旗ちゃん…それ螺旋丸や

174 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) - 2011/08/05 12:53:32.49 dyVju4tno 149/458

>>172
大体意味は掴めるしいいじゃないかよ
そんなの気にしてたらSS読めないと思うぞ

175 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします - 2011/08/05 13:46:21.47 rk9QeUoDO 150/458

>>174
いろいろ設定の粗は目立つけと
この話嫌いじゃないから細かい語句の違和感の元を潰せば
もっとよくなると思って

178 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) - 2011/08/05 20:40:27.26 rr6a0blw0 151/458


>>1さすがに螺旋丸はまずいだろ…

179 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) - 2011/08/05 23:30:46.89 UFyyu/IJ0 152/458

>>1乙

>>172
・弱所って言葉は字の通りの意味じゃない?
・絹旗も今まで纏う事しかできない窒素を操作して拡散させたから覚醒でいいと思う
本来は目がさめるとか迷いから覚める等の意味だけど現代では言葉の意味が広がって
劇的成長や強化も覚醒に入ってるしいいんじゃないかしら
日本語は余程おかしくない限り造語も言葉の広義に入れちゃうのも問題ない
(古文が現代文になったように言葉は常に変化し続ける)

浜面の戦闘でちょいと違和感が
・部分瞬間とは言え最大レベル4強の出力が出る浜面がレベル1認定は不自然でせめて3認定はあるはず
鬼塚の資料があるという事はスキャン時に短い時間だから1認定されたとも考えられないし
(結標や査楽みたいな制限ありでも-1評価だし極端な制限があってもせいぜい-2までだと思う)
・鬼塚の能力名がパーツエイハンスで部分強化ができるのに浜面の一点強化に驚くのは不自然

違和感じゃないけど集中強化左腕が元の10倍は
一般人17cm、鍛えこんだ一般人40cm、ドーピングした大型ボディビルダーで70cm
一点集中で直径4m前後の腕を他箇所は通常なら扱いきれなくない?

もう少し演出抑えないと所々矛盾ができそうだけど厨二展開大好物だから応援(´・ω・`)
長文スマソ

183 : VIPに... - 2011/08/08 18:43:28.06 /Y0I2UTx0 153/458

>>172
確かに覚醒よりは、成長の方が的確かもしれない
弱所については、ぶっちゃけ言っちゃうと某漫画の台詞そのままパクっただけなんだよね
だから、弱所って何?と言われても、ニュアンス的に感じ取ってくれとしか言えない
すまない

>>173>>178
まずいかなーと思いつつ、絹旗にも何か必殺技的なのが欲しいなーと思ってやったけど
やっぱ窒素丸は自重するわ

>>179
フォロー&指摘ありがとう

指摘については、返す言葉もありません。
多分1番いろいろ崩壊してる戦いだった。もう少し演出は抑えるよ。

なんだかんだ言って見てくれる、ありがたいです

184 : VIPに... - 2011/08/08 18:50:07.81 /Y0I2UTx0 154/458

第7学区

エツァリ「いきますよ」

エツァリは『ウサギの骨』を素材とした、閃光の弾丸を放った。

神裂「ふん」

神裂は、それを横に2歩動いただけで避ける。めげずにエツァリは続けて3発、閃光の弾丸を放つ。

神裂「そんなものいくらやっても当たりませんよ」

神裂はそれらをすべて冷静に避け、エツァリの後方に回り込んでいた。
容赦ない神裂の一閃が放たれるが――

ガキィン!とその一閃はあっさり受け止められた。

神裂「そのナイフ、案外丈夫なのですね」

エツァリ「これは『トラウィスカルパンテクウトリの槍』と言いましてね。
効果は……まあ、貴方自身で体験して確かめてください」

槍の切っ先が神裂に向けられる。

神裂(これは!)

直感的に横へ数歩ずれる。すると切っ先が向けられた、神裂の遥か後方にあった車が抉られた。

神裂「なかなか危険なものを持っていますね。トリックは、簡単に言えば
   金星の光を反射させ、槍に変貌させ見えない光線として放つ。
   それが直撃したものは抉られる。そんなところでしょうか」

エツァリ「さすがの洞察力ですね。科学には疎くても、魔術には詳しいご様子だ。
     正確には、抉るのではなく『分解』しているんですけどね」

神裂「成程。ではガードでは駄目ですね。まあそれなら避ければ良いだけですが」

エツァリ「そうですね。それにしてもムカつきますね」

エツァリのスーツの懐から、巻き物状の『原典』(オリジン)が広がり、伸びた。
その巻き物の表面は、粉末の嵐となり神裂を襲う。

神裂「その程度で本気なのですか?」

とは言え、これだけ広い範囲かつ強力な攻撃だと、避ける事は出来ない。
しかし、刀を使えば余裕で防げる。と神裂は思っていた。

だが神裂は刀を抜いた瞬間、その刀は自身の意志とは関係なしに、首元へ向かった。

185 : VIPに... - 2011/08/08 18:51:57.97 /Y0I2UTx0 155/458

神裂「な!?」

思わず左手で右手を掴み、止める。その事に気を取られた神裂は、粉末の嵐をモロに喰らった。

神裂「ぐああああ!」

エツァリ「どうです?『暦石』の効力はすごいでしょう?」

神裂「これは……一体どういうことなのでしょうか?」

とりあえず刀を捨てながら、神裂は尋ねた。

エツァリ「『自分の肉を乾燥させて粉末状にしたものを周囲に散布し
     それが付着したものを自在に操る』という事です」

エツァリ「貴方が今、刀を捨てたのは賢明な判断というものでしょう」

神裂「自身の肉まで捧げて……そこまでして勝ちたいのですか?」

エツァリ「勝ちたいんじゃない。貴方を消したいんです」

神裂「刀が無くなった程度で、私を倒せるとは思わない事です」

エツァリは無視して、閃光の弾丸を5発放つ。

神裂「だから、当たらないと言っているでしょう?」

5発の弾丸を軽く避け、エツァリの後方に回り込む神裂。
そして蹴りを繰り出そうとしたが――

エツァリの右手の槍の切っ先は後方を向いていた。
それはつまり、後方に回り込んだ神裂に向いていると言う事。

神裂「くっ!」

神裂は身を捻り、ギリギリ直撃は避けるが、束ねていた髪の一部が『分解』された。
神裂は一旦距離をとる。

186 : VIPに... - 2011/08/08 18:54:36.91 /Y0I2UTx0 156/458

神裂「参りましたね。私の長髪まで『分解』してくれるとは」

エツァリ「髪の毛どころか、全てを『分解』して差し上げますよ」

にこりと冷たい笑みを浮かべながらそう言った。

エツァリ(とは言っても『ウサギの骨』のストックが無くなれば
     閃光の弾丸は放てなくなりますし、この槍も、いつまでもどこでも
     使える訳ではないですがね)

エツァリ(これ以上無駄打ちする訳にもいかないですし……さて、どうしたものでしょうか)

エツァリ(とりあえず、粉末の嵐でも放っときましょうか)

粉末の嵐が神裂に向かって吹き荒れる。

神裂(ジャンプすれば、身動きが取れない空中で、槍の標的にされる事は目に見えている。
   ここはやはり、後退してビルか何かの陰に隠れるのが妥当ですね)

神裂は、凄まじい速度で後退し、ビルの陰に隠れた。
粉末の嵐は過ぎ去ったが、今度は槍の『分解』がビルを抉った。

神裂「く!」

隠れているだけではいけないと思い、ビルの陰から出る。
何より、捨てっぱなしの七天七刀を槍で『分解』されては堪らない。
腰に差すだけなら大丈夫だろうと思い、神裂は高速で動きながら、刀を拾いに行く。

当然エツァリは神裂を狙って攻撃を放つ。
閃光の弾丸には限りがあるので、トラウィスカルパンテクウトリの槍でだ。

しかし、槍での攻撃の照準は元々難しく、まして高速で動く神裂をエツァリの槍は捉えきれない。
だからエツァリは、神裂が刀を拾いに行くことが分かったから、刀の付近に『分解』を放った。

神裂(そう来ましたか!)

だが神裂は、臆することなく刀を拾いに行く。
結果、刀を拾い上げることには成功するが、掠った『分解』は背中の皮膚を多少削いだ事となった。

187 : VIPに... - 2011/08/08 18:56:04.49 /Y0I2UTx0 157/458

神裂(やはり、腰に差すだけならば、問題ないようです)

エツァリ(やはり、粉末の嵐を連発するしかありませんね!)

粉末の嵐が、またしても神裂に向かって吹き荒れる。

神裂(多少賭けですが、やってみますか)

神裂は側にある砂利を拾い上げ、天高くエツァリに向かってジャンプする。
神裂のジャンプ力の前に、さすがの嵐も避けられてしまう。

エツァリ(空中とは言え、身を捻るくらいの事は出来るはず。
     閃光の弾丸は多分当たらない。ここはやはり、この槍で!)

槍の切っ先を神裂へ向ける。同時に見えない光線が発射される。

対し、神裂は持っていた砂利を投げつけた。
結果、槍の『分解』は砂利のいくつかにしか適用されず、奥の神裂には当たらなかった。

188 : VIPに... - 2011/08/08 18:57:31.41 /Y0I2UTx0 158/458

エツァリ「く!」

神裂はエツァリの前に降り立ち、素早い動きで槍を持っている右手に手刀を振り下ろした。
当然エツァリは槍を落とす。神裂はそれを思い切り蹴り飛ばした。
ならばとエツァリは、左手で閃光の弾丸を至近距離で放つが、それすらも避けられ
左手にも手刀をもらい『ウサギの骨』を落とす。

エツァリ「やりますね。しかし肉弾戦になろうと、自分は負けません!」

エツァリは拳を固く握りしめ、神裂に殴りかかる。

神裂「調子に乗らないでください」

ひらり、とエツァリの拳を避け、逆に左拳の一撃を腹に決める。

エツァリ「ごはっ!」

あまりに強力な一撃に、エツァリの体は数cm浮いた。為す術もなく、エツァリは力なく倒れていく。

神裂「やはり『原典』の所持者は、身体も丈夫になっているようですね。
   私の本気の一撃を受けたのに、意識を保てるなんて。普通の人間なら
   意識を失うどころか、内臓までつぶれていたでしょう」

エツァリ「ぐ……!」

エツァリはそれでも神裂に抗おうと、手を伸ばす。

神裂「もう少しだけ、痛めつけておく必要がありますね」

グシャ!という音。神裂の革靴が、エツァリの伸びた手を踏みつけた音だった。

エツァリ「ぐああああ!」

悶えるエツァリに、神裂は鞘で何発か殴った。
10発ぐらい殴ったところだろうか。エツァリの動きが止まった。

189 : VIPに... - 2011/08/08 18:58:45.46 /Y0I2UTx0 159/458

神裂「ようやく大人しくなりましたか。まだ意識はあるようですが」

エツァリ「はぁ……はぁ……」

神裂「あの槍、やはり攻撃は一度に一対象しか出来ないのですね。
   そこに気付かなければ、長期戦になっていましたよ」

その時だった。エツァリの体がドクン!と大きく脈打った。
それは力の覚醒とか、そういうプラスの類ではなかった。
『原典』が、敗北したエツァリを蝕んでいるのだ。

神裂「これは滑稽ですね。最後は『原典』に見捨てられるなんて」

エツァリ(結局……自分はここまでの……人間だったと……言うことですか……情けない……)

ショチトル「エツァリお兄ちゃん!」

エツァリを「お兄ちゃん」と呼び、突然現れた少女はショチトル。
本当の兄弟という訳ではないが、エツァリとは師弟関係で、彼の事を慕っている。

エツァリ「ショチトル……ですか……」

ショチトル「もう喋るな……!」

エツァリ「御坂さんの……ご友人の……白井さんは……ちゃんと運び……ましたか?」

ショチトル「ああ運んだ!運んだから、もう喋るな!」

エツァリ「そう……ですか……それは……良かった」

エツァリはそこで気を失ってしまった。

190 : VIPに... - 2011/08/08 18:59:55.85 /Y0I2UTx0 160/458

ショチトル「貴様、よくも!」

ショチトルは神裂を睨む。

神裂「私を怨むより、早くその方を病院にでも運んだ方がいいですよ。
   私の目的は『上条当麻』なので、それでは」

やれやれ、今度こそ上条当麻を追いかけるか、と思ったその時だった。

建宮「ちょっと待ってほしいのよな。『女教皇』(プリエステス)」

彼は建宮斎字。大剣『フランベルジェ』を操る魔術師だ。

神裂「建宮、一体何の用です?」

建宮「何の用って、わざわざ聞くのよな?我ら天草式十字凄教の理念、覚えているのよな?女教皇」

神裂「『救われるものに救いの手を』ですが、それがどうかしたのですか?」

建宮「どうかしたのですかじゃないのよな!
   これだけの人を傷つけておいて、何故そんな涼しい顔をしていられる!」

神裂「……仕方ないじゃないですか!『禁書目録』を人質に取られているのですから!
   多少の犠牲は仕方ないんです!それに傷つけはしましたが、殺してはいませんし!」

建宮「そういう問題じゃないのよな!女教皇はあの少年に言われた事を忘れたのよな!?」

神裂は、あの少年の言葉を思い出す。

191 : VIPに... - 2011/08/08 19:00:38.71 /Y0I2UTx0 161/458


上条『テメェは力があるから、仕方なく人を守ってんのかよ!?』

上条『そうじゃねぇだろ!履き違えんじゃねぇぞ!
   守りたいモノがあるから、力を手に入れたんだろうが!』

192 : VIPに... - 2011/08/08 19:02:01.59 /Y0I2UTx0 162/458

建宮「女教皇は嬉々として、そのエピソードを教えてくれたのよな。
   アックア戦の時も、励みになったって」

建宮「ならここは!イギリス清教の言いなりになるんじゃなく
   上条当麻と一緒に『禁書目録』を救えば良いだけなのよな!」

神裂「忘れてなんていませんよ……!でも仕方ないんです!
   この『聖人』である私でも、イギリス清教という巨大な組織に比べれば
   ちっぽけなものなんです……」

建宮「そんなの関係ないのよな……!問題なのは、力の差じゃない。気持ちなのよな!
   ……今の女教皇には、こんな事も分からないらしい」

建宮「ならば、我ら天草式十字凄教で女教皇を止めるだけなのよな!」

建宮がそう叫ぶと、五和を始め、天草式の面々がどこからともなく現れた。

五和「女教皇……あなたを止めます!」

神裂「そこまでして私の邪魔をしたいのですか」

五和「間違った上司を止めるのが、部下の役目ですからね」

神裂「良いでしょう。これ以上足止めされては堪りません。
   私の全身全霊を以って、速攻で片をつけます」

神裂の威圧感が、先程までとは段違いに増していく。

神裂「Salvere000!」

ショチトル「なんて奴だ!まだこんな力を隠し持っていたのか」

建宮「女教皇が本気を出したのよな。お前さんは早く逃げた方が良い」

ショチトル「すまない。エツァリを病院に運んだら、私も加勢する」

建宮「その必要はないのよな」

ショチトル「え?」

建宮「それまでには片は付いている。俺達の勝利という形でな」

ショチトル「……そうか」

建宮「病院までの道中何が起こるか分からない。お前さんこそ、気を抜くなよ」

神裂「話は終わったようですね。では、行きます!」

建宮「行くぞ皆!女教皇の目を覚まさせてやるのよな!」

天草式「おおおおお!」

193 : VIPに... - 2011/08/08 19:04:18.03 /Y0I2UTx0 163/458

絹旗「くっ!」

絹旗は、目の前に窒素の盾を展開したり、避けるなどして、麦野の攻撃の直撃は避けてきた。
それでも吹き飛ばされるなどして、ノーダメージではなかった。

絹旗「もうやめましょうよ。こんな超無意味な事」

麦野「反省の態度が見られないわね」

麦野は容赦なく『原子崩し』のビームを連発する。
絹旗は、直撃は避けるも、やはり余波で吹き飛ばされてしまう。

麦野「ねぇ絹旗、私もお前を殺すつもりはないんだ。
   反省している態度を見せてくれればそれでいい」

絹旗は何も間違ったことはしていないのだが、正直かなり疲弊していた。
このまま戦い続けるのは無理があるし、謝れば終わるのか。
考えた絹旗は、とりあえず素直に謝ることにした。

絹旗「超すいませんでした」

麦野「……明らかに上辺だけよね?もう少し躾が必要かしら?」

絹旗「そんな!?謝ったのに超酷いです!」

麦野「だから、上辺だけの謝罪なんていらねぇんだよ。せめて土下座くらいしろ」

絹旗(超仕方ありませんね)

絹旗は素直に土下座をして謝る。

麦野「仕方ない。これで許してやるか」

絹旗(ふぅ。これで)

麦野「って、この程度で済むわけないだろうが」

絹旗「え?」

瞬間、至近距離でビームが放たれた。

絹旗「うっわあああああ!」

絹旗の目の前の地面にビームが直撃した。窒素の鎧を纏っているとは言え
絹旗は数m吹き飛ばされ、額からは一筋の血が流れた。

麦野「なあ絹旗、何でお前は私を止めたんだ?私は何か間違っていたか?
   フレンダの姿を勝手に使った敵を倒した。ただそれだけのことだろ!?」

194 : VIPに... - 2011/08/08 19:05:13.60 /Y0I2UTx0 164/458

絹旗「……そんなの、超間違っているに、決まっています」

麦野「何だと!?」

絹旗「どんな理由があっても、人を殺してはいけません。
   それにフレメアまで傷つけて、これのどこが超正しいって言うんですか!?」

麦野「元『暗部』で、たくさんの人を殺してきた私達が、今更人を殺すのがいけない
   なんて言う資格は無い。それにフレメアには、躾をしただけだ」

絹旗「だからこそ、もう二度と人を殺さないって超誓ったじゃないですか!
   それに麦野がフレメアにした事は、躾でもなんでもなく、ただの暴力です!」

麦野「うるさい!私だって!私だってそんなことは分かっている!」

麦野「う……ぐ……ああああああああ!」

麦野が絶叫した。同時に能力が暴走を始めた。

195 : VIPに... - 2011/08/08 19:07:54.78 /Y0I2UTx0 165/458

絹旗「麦野!」

麦野は力の暴走で、義手である左手が吹き飛んだ。加えて、全方向にビームが発射されている。
絹旗は、近付くどころかガードや避けることで精一杯だった。

絹旗(麦野……!)

その時だった。何かが動く影が見えた。フレンダは消滅した。
となると、考えられるのはフレメアだった。フレメアは麦野に向かって歩き出す。

絹旗「フレメアちゃん!?今の麦野に近付いては、超駄目です!」

絹旗の声が聞こえていないのか、はたまた無視しているのか。
フレメアは、構わず麦野に向かって歩き続ける。そして、麦野の腰辺りに抱きついた。

麦野のちぎれた左腕からは『原子崩し』で出来た腕が伸びており、依然ビームの発射も続いている。

その状況で、零距離のフレメアが無事でいられるのは、奇跡と言っても良かった。
フレメアはそのままの状態で、呟くように言った。

フレメア「本当は……大体分かってた。フレンダお姉ちゃんは、大体前に死んでいて
     死者が生き返る筈もないってことぐらい」

フレメア「でも……どうしても寂しかった!フレンダお姉ちゃんの訳がないって
     大体分かっていても、どうしても殺してほしくなかった!」

呟くような声から、段々大きな声に変わっていく。
絹旗の耳にも、届き始めるくらいに。

フレメア「だから……!私は止めに入った!」

フレメア「でも気付いた!私はもう大体1人じゃない。寂しくなんかないって!
     私には、浜面や滝壺お姉ちゃん、麦野お姉ちゃんや絹旗お姉ちゃんがいるから!」

絹旗「……フレメアちゃん」

フレメア「だから!こんなところでこんなことやってないで
     また皆と一緒に過ごそうよーーーーー!」

麦野「う、わああああああああああ!」

196 : VIPに... - 2011/08/08 19:09:12.94 /Y0I2UTx0 166/458

麦野が絶叫した途端、ビームの発射が終わった。
そして、前のめりになって、うつ伏せに倒れ込んだ。

フレメア「麦野……お姉ちゃん?」

絹旗「麦野!」

絹旗は、麦野を抱えるために側に寄った。

麦野「すまないな。フレメア、絹旗」

絹旗「本当、超大変でしたよ」

麦野「ふっ……ぐ、あああああああ!」

絹旗「超どうしたんですか!?」

麦野「私から……はな……れろ……」

見ると、ちぎれた左腕から能力が漏れ出している。
ここからビームか何かが、発射されてしまいそうだ。
そう判断した絹旗は、麦野の忠告通り、フレメアを抱えて一旦離れる。

麦野「く……もう……駄目……」

麦野の左腕から、ビームが発射された。
けれど、発射されたと言っても、そのビームが飛んでいく方向はランダム。
離れれば、絹旗達にはまず当たる事は無いだろう。と麦野は思っていた。

だが不幸にも、麦野のビームは絹旗達の方向に向かって行った。

絹旗(せめてフレメアちゃんだけは絶対に守る!)

絹旗は、身を挺してフレメアを守ろうと、フレメアの前に立つ。
いくら窒素を纏っているとはいえ、直撃すれば重傷は免れられない。

麦野フレメア「「絹旗!(お姉ちゃん!)」」

197 : VIPに... - 2011/08/08 19:11:11.20 /Y0I2UTx0 167/458

滝壺「むぎの、きぬはたーーーーーーー!」

ゴリラに抱えられてやってきた、滝壺の叫び声。
と同時に、絹旗にあと10cmと言うところで、ビームは滝壺の能力により上へと逸らされた。

滝壺「大丈夫だった?きぬはた、ふれめあ?」

絹旗「ち、超助かりました」

フレメア「大体ありがとう。滝壺お姉ちゃん」

滝壺「……むぎの」

絹旗「あ、あの麦野は超悪くないと言うか……あまり責めないでください」

滝壺「責めるつもりなんてないよ。大方、偽ふれんだを見て逆上して
   能力が暴走しちゃったとか、そんな感じだよね?」

絹旗「え、ええ」

滝壺は麦野の側に寄った。

滝壺「気絶しているみたい」

半蔵「じゃあ、このゴリラで早いとこ病院に行こうぜ」

滝壺「それがいいね」

「じゃあ、行きましょう!」

滝壺一行は病院へと急ぐ。

198 : VIPに... - 2011/08/08 19:12:33.84 /Y0I2UTx0 168/458

第7学区

結論から言うと、天草式は神裂を倒すことには倒した。ただし、建宮も犠牲となってしまった。

天草式の面々は、アックア戦と同様に、一定の規則性を以って動くことにより
お互いの動体視力や運動能力を補強したのだ。

そして中心になったのは『聖人崩し』を使える五和だ。『聖人崩し』と言うのは
「聖人である神裂が『脅威』と思うような問題にさえ立ち向かわなくてはならない」
という理論のもとに生み出された。対聖人専用術式だ。
正直、天草式の連中は『聖人崩し』で何とかなると思っていた。自信はあった。

だが、いや、やはりと言うべきか。神裂火織と言う人間は思ったより強かった。
とても『聖人崩し』など決める余裕はなかった。
だから建宮は、神裂と刺し違え、五和にこう言った。

建宮「俺ごとやれ!五和!」

もちろん最初は無理だと思った。
だが建宮は神裂と刺し違えている時点で、助かる確率は低かった。

そして何より、ここで神裂を止めないと、上条当麻が狙われるのだ。
五和にとっては、世界で1番愛している人を傷つけられてしまう。
それに、これは上条当麻を守る戦いだった。

そう言った葛藤を経て、五和は、建宮ごと神裂に『聖人崩し』を見事に喰らわせた。

結果、建宮だけが死に、神裂は聖人の力を8割方失ったが、戦闘不能になっただけだった。

五和は罪悪感に苛まれていた。
他の天草式の面々も、五和になんと声をかければ良いか分からなかった。
そんな状況の中、天草式の1人である対馬が、五和の側に寄った。

199 : VIPに... - 2011/08/08 19:13:52.89 /Y0I2UTx0 169/458

対馬「五和、貴方の気持ちは分かる。けどさ、こんなところで立ち止まっていても仕方ないよ。
   行こう。上条君のもとへ」

五和「……建宮さんは私が殺したも同然です!こんな私が上条さんを守る資格なんてあるんですか!
   もういっそのこと死んでしまいたい!」

対馬「ふざけんじゃないわよ!」

五和「え?」

対馬「あんたが死んで誰が喜ぶの!?建宮は、そんなことを望んでいたと思うの!?
   建宮は上条君の事を託したのよ!五和に!私達に!」

対馬「本当に、本当に建宮の事を思うなら、死ぬんじゃなくて上条君を守りきることでしょ!?
   ……生きて償うのよ!もちろんあなた1人には背負わせない。皆で背負うから!」

対馬「それでも、まだ不貞腐れるって言うなら、それで良い。私達だけで上条君を助けに行く!
   どうするの!?」

五和「……行きます。行かせてください」

対馬「……よし。じゃあ早速行くよ」

200 : VIPに... - 2011/08/08 19:15:44.41 /Y0I2UTx0 170/458

同じく第7学区 『冥土帰し』の病院

ゴリラを全力疾走させた滝壺一行は、ようやく病院に辿り着いた。
現在、特に重傷である浜面と麦野は、速攻で治療に入った。
絹旗、半蔵、郭も軽傷ではないし、滝壺も能力を行使しすぎていたが
彼女達はとりあえず休んでいるだけだった。
何故なら、風紀委員である白井黒子とか言う少女や、エツァリとか言う少年など
彼女達よりも重症な患者がたくさんいたからだ。

それにしてもこの病院、レベル6である一方通行や、レベル5である結標淡希、
同じくレベル5の御坂美琴までいる凄い病院だ。

絹旗「(滝壺さん、この病院、なんでこんなに超有名人ばかりいるのでしょうか?)」

滝壺「(わからない。医者が凄い人だから、とか?)」

絹旗「(そう言う事を聞いているのではなくてですね。
   御坂美琴は超憔悴していますからともかく、一方通行と結標淡希は超無傷ですよね?
   病院に居る意味が分からないのですが)」

滝壺「(そう言われればそうだね。じゃあ、お見舞いとかかな?)」

絹旗「(いえ、超お見舞いとか、そんな感じではないと思います)」

絹旗「(大体、3mもの大きさのゴリラで、ここまで移動してきたって言うのに
   それまで人とか全く見かけませんでしたよね?なんか学園都市が
   超殺伐としていると言うか……それと何か関係があるんでしょうか?)」

滝壺「(うーん……そう言えば学園都市の様子は、今日の午後位からおかしかったよね。
   でも、もうよくわからない)」

滝壺は病院に着いた安心感と疲れで、思考を止めていた。

絹旗「(そ、そうですか)」

絹旗は、先程まではシリアス全開だったのに
病院に着いた途端に呑気になる滝壺に、少し呆れた。

だがそんな空気をぶち壊す出来事はすぐに起こった。

201 : VIPに... - 2011/08/08 19:17:44.09 /Y0I2UTx0 171/458

御坂「ちょ、ちょっと!何か軍隊のようなものが来てるわよ!」

御坂が窓から外を見下ろしながら、そう叫んだ。
急いで滝壺達も窓をのぞきに行く。

そこには確かに、500人程の群衆がこの病院に向かって歩いているところだった。
そのうちの半分は、修道服を着ている。残りの半分は鎧のようなものを着ていた。
どちらも科学一色の学園都市には不釣り合いだ。

結標「いよいよお出ましってわけね。滝壺理后、絹旗最愛、貴方達も協力して」

絹旗「それは良いですけど……て言うか、あれ何なんですか!?」

結標「『魔術』を使う、魔術師らしいわよ。私もさっきちょっと話を聞いたばかりでね。
   よく分からないんだけど、私達の敵である事だけは確かよ」

絹旗「(……もしかして、あのときの女は……魔術師だったのでしょうか……
   それに学園都市が殺伐としていた理由も……)」

結標「何ブツブツ言っているの?とにかく戦わないと、この病院もろとも、私達は殺されるわよ」

その言葉に反応したのは御坂だった。

御坂「なら私も協力する!」

結標「無理。力を使い果たしてから、そう時間は経ってないあなたがいても、足手まといなだけ」

御坂「……」

その言葉に御坂は反論できなかった。その時、後方から1つの白い影。

一方通行「オマエらは引っ込ンでろ。ここは俺1人でやる」

結標「本当にあなた1人で良いの?」

一方通行「当たり前だ。俺からすれば、オマエら全員邪魔なだけだ」

結標「……私達を傷つけない為に、体を張って護ってくれるのね。惚れちゃいそう」

一方通行「オマエとコントしている暇はねェ。俺を外にテレポートしろ。それだけでいい」

結標「はいはい」

瞬間、一方通行は消え、病院の外へテレポートされた。

202 : VIPに... - 2011/08/08 19:18:41.66 /Y0I2UTx0 172/458

絹旗「ちょ、1人で超大丈夫なんですか?」

結標「大丈夫よ。仮に死んだとしても、私には何の損も無いし」

絹旗「さっき惚れちゃいそう。とか言ってたじゃないですか」

結標「冗談に決まっているでしょ」

絹旗「私なら、超冗談でもそんなこと言わないですが。もしかして本当に好きだったりして」

結標「はあ……だから冗談だって……これだからお子様は」

絹旗「な、なんですかその言い方は!」

そんな会話を聞いて御坂は

御坂「ちょっとアンタら!お喋りしてる場合じゃないでしょ!?あいつ1人にさせて良いの!?」

御坂はそんな事を口走った。もちろん妹達の件を完全に許した訳ではないが
だからと言って、一方通行を1人にして死なせると言うのは間違っている。

結標「あいつの強さは、貴方も良く分かっているでしょ?きっと大丈夫よ」

御坂「そ、そうかもしんないけど」

結標「そんなに心配なら、戦いの様子を見ていればいいじゃない」

御坂「し、心配な訳じゃないけど……」

203 : VIPに... - 2011/08/08 19:19:51.22 /Y0I2UTx0 173/458

一方で、外では

一方通行「はァーい、ようこそ、地獄の入口へ!
     これから地獄への歓迎パーティを、盛大に開いてやるよォ!」

そのあまりの狂気っぷりに、魔術師の集団は怯んだ。

アニェーゼ「怯むこたぁねぇです!一斉にかかっちまってください!」

250人ほどのシスター軍団が、一斉に一方通行に襲い掛かる。

一方通行「消えろ」

その一言の後に、背中から黒い翼が噴射され、シスター軍団を一撃で薙ぎ払った。

アニェーゼ「んな!?」

キャーリサ「ならば行け!騎士軍団!」

今度は騎士の軍団が一方通行を襲う。

一方通行「だァーからァ、無駄だっつーの」

黒い翼が純白に変わる。頭上には小さな輪っかが出現。天使化したのだ。
白い翼は、これまた一撃で騎士達を葬った。

204 : VIPに... - 2011/08/08 19:21:41.30 /Y0I2UTx0 174/458

一方通行「さて、残り7人な訳だが。オマエらは楽しませてくれンのかァ?」

引き裂く様な笑みを浮かべる一方通行。

キャーリサ「怯むな!全員の持てる力全てを、奴に叩きつけよーではないか!」

赤いドレスに身を包んだ、イギリス第2王女キャーリサは、風の『短剣』を掲げる。

リメエア「……」

紫のドレスに身を包んだ、イギリス第1王女リメエアは、火の『杖』を掲げる。

ヴィリアン「……」

エメラルドグリーンのドレスに身を包んだ、イギリス第3王女ヴィリアンは、水の『杯』を掲げる。

リドヴィア「……」

白い擦り切れた修道服に身を包んだ、ローマ正教のシスターだったリドヴィア=ロレンツェッティは土の『円盤』を掲げる。

アニェーゼ「万物照応。五大の元素の元の第五。平和と秩序の象徴『司教杖』を展開!
      偶像の一。神の子と十字架の法則に従い、異なる物と異なる者を接続せよ!」

黒いミニスカートの、おおよそ修道服とは思えない修道服に身を包んだ
アニェーゼ=サンクティスは呪文を唱え、エーテルの『蓮の杖』(ロータスワンド)を掲げた。

キャーリサ「これで終わりだし!」

それら5つの武器から光が現れ、1つに集まる。

キャーリサ「いっけー!」

その光は一方通行へ。

オリアナ「『礎を担いし者(Basis104)!』

オリアナは魔法名を唱えた。

オリアナ「我が見に宿る全ての才能に告げる――」

オリアナ「――その全霊を開放し、眼の前の敵を討て!」

単語帳の全てのページを使った攻撃。上条の時とはまた違う効果を持つ。

ビアージオ「――十字架は悪性の拒絶を示すぅ!」

豪奢な法衣を纏った、元ローマ正教の司教(ビショップ)である
ビアージオ=ブゾーニは持っている全ての十字架を開放した。

それら全ての攻撃が一方通行を襲う。その攻撃は、小さな街なら丸ごと吹き飛ばせるほどだった。
ボガァァァァァン!と、全ての攻撃が一方通行に直撃した。

205 : VIPに... - 2011/08/08 19:29:14.49 /Y0I2UTx0 175/458

キャーリサ「はーはっはっ。案外、呆気ないものだったよーだし」

莫大な煙が立ち込める中、勝利を確信したキャーリサ。
しかし、それはすぐに動揺に変わる事になる。

一方通行「本当に面白ェよな。こンな攻撃で倒せると思ってンだから」

煙の中で、純白の少年は平然と無傷で笑っていたからだ。

キャーリサ「い、今の一撃を受けて無傷だと!?」

アニェーゼ「あ、有り得ねぇです……!」

一方通行「結局、傷をつけることすら敵わなかったみたいだが、まァ、なかなか楽しかったぜェ」

オリアナ「これはまずいわね。緊張で漏れちゃいそう」

ビアージオ「……悪魔が」

一方通行「何言ってンだ、おっさン。どっからどう見ても天使だろうがァ。
     ここまで楽しませてくれた礼だ。特別にさらなる力を見せてやるよ」

オリアナ「まだ上の力が出せるって言うの?」

一方通行「一瞬だからなァ?よく目ェ見開いて拝ンどけ」

そして――

一方通行の純白の翼が、更に大きくなり、銀色へと変化する。
頭上の輪っかも、2回りほど大きくなる。
何より1番大きな変化は、一方通行の後方にも大きな輪っかが出現した事だ。
それはただの円形の輪っかではなく、歯車のように凹凸があった。

アニェーゼ「こ、神々しい……まるで……神様……」

とは言え、魔術師達も神様なんてものは実際に見たことはない。
そもそも本当に居るのかも分からない。
けれど、その神々しさは、神様としか形容のしようがなかった。

キャーリサ「構わないし!もー一発全力でかますぞ!」

ビアージオ「私はもう無理だ。十字架がないからな」

オリアナ「私はまだ行けるわよ」

オリアナは、もう一束単語帳を取り出し、その全ページを千切る。

キャーリサ「行くぞ!」

キャーリサやアニェーゼ達も、一連の動作を繰り返し、5つの力を1つにした攻撃を繰り出す。

一方通行「無意味だっつーの」

一方通行は1歩も動かないどころか、何一つの動作もしなかった。
なのに――魔術師達の全力の一撃は、簡単に弾かれた。

206 : VIPに... - 2011/08/08 19:31:20.43 /Y0I2UTx0 176/458

キャーリサ「な、んで……」

一方通行「終わりだ」

一方通行が、その4文字の言葉を口にした直後、一方通行の背中の輪から大量の光線が飛び出し
光の雨となって魔術師達に降り注いだ。魔術師達は、跡形もなく消滅した。

一方通行「終わったか」

一方通行は神化を解く。一部始終を病院の窓から見ていた御坂の感想は

御坂「これが……レベル6……『神ならぬ身にて天上の意志に辿り着くもの』なの?
   凄すぎる……」

それしか言えなかった。

絹旗「ま、これで超一件落着って感じですね」

結標「……いや、どうやらまだみたいよ」

結標はそう言って、800mほど先の場所を指差す。そこに見たものは。

207 : VIPに... - 2011/08/08 19:33:14.98 /Y0I2UTx0 177/458

同じく第7学区 上条の通う高校の駐輪場

上条「行くぜ!」

最初に仕掛けたのは上条だった。先程と同じく、土御門の踏み砕きを実践するが

土御門「おいおい、そんな俺の真似事、2度も通用すると思うなよ!」

土御門は、上条の左足の踏み砕きを避け、逆にそれを右足で踏み返す。

上条「ぐあ!」

そしてすぐさま、必殺の後頭部攻撃(ブレインシェイカー)を喰らわそうと右手を伸ばす。
が、上条の左手がそれを阻んだ。それどころか、逆に右拳が飛んできた。

土御門(ちっ!)

土御門は、それを左手で受け止める。これで両者とも両手が使えなくなった。
ならば残る手段は――

土御門(これでも喰らえ!)

若干、というか相当無理があったが、土御門は右足で上条の足を踏んだまま
左足で上条の腹辺りに蹴りを放つ。さすがにこれは止められないだろう。
と土御門は思っていたが、上条は左足を踏まれたまま、右脚を挙げ折り畳み、ガードしてきた。

土御門(なっ!)

土御門は驚愕したが、ならばと頭突きを繰り出す。上条も考える事は同じだったようで
頭突きが飛んできた。直後、ゴガァ!と頭突きと頭突きが衝突した。
1秒経って揺らいだのは土御門の方だった。ヨロヨロと後退する土御門に上条は突っ込んだ。
拳でも蹴りでもなく、タックルで。

土御門「ごはっ!」

上条の渾身のタックルが、土御門の腹に直撃した。
攻撃を受けながらも、このままだとマウントポジションを取られる。
そう判断した土御門は、タックルを喰らった勢いのまま、巴投げを繰り出す。

土御門「おらよっ!」

上条「くっ!」

上条は思い切り投げられたが、空中で1回転しながら綺麗に地面に着地した。

208 : VIPに... - 2011/08/08 19:34:15.15 /Y0I2UTx0 178/458

上条「おっかしーなー。さっき思い切り右足踏んだのに、めちゃめちゃ動けるじゃん。
   俺の攻撃が甘かったのか?」

土御門「それはこっちの台詞だぜい。カミやんこそ、なんでそんなに動けるんだ?」

上条「我慢してるからに決まってんだろ」

土御門「俺も、そういうことだぜい」

上条「口が減らねぇなぁ」

土御門「それはカミやんだろ」

今度は2人同時に駆け出す。2人の右拳が交錯し、互いの顔面に突き刺さった。

土御門「くっ!」

ふらついたのは、またしても土御門。上条はそこへ右拳で追撃する。
土御門はそれを左肘でガードした。

土御門(これで――)

肘のガードにより、上条は右拳を痛めたはずだ。だとすると、蹴りは得意ではないはずだし
次は左拳が飛んでくるはず。

上条「な、めんなぁー!」

しかし土御門の予想に反して、上条は痛めた右拳を繰り出した。
土御門は予想外の攻撃にガードする事も出来ず、自転車の群衆までぶっ飛ばされた。

209 : VIPに... - 2011/08/08 19:35:19.58 /Y0I2UTx0 179/458

上条「テメェは、こんなところで俺と殴り合っている場合じゃねぇだろ!
   早く舞夏を助けに行けよ!」

土御門「だから、俺1人抵抗したって無駄なんだよ。お前を殺すしかない」

上条「ふっざけんな!そんなのテメェの勝手な都合だろうが!」

上条「舞夏が俺を、人を殺してまで、救ってほしいと思っているのか!?
   舞夏はずっと、お前の助けを待っているんじゃないのか!?

上条「テメェは一体、何のために力をつけた!?」

土御門「うる、せぇ」

上条「テメェはこんなところで何やってんだよ!」

土御門「うるせぇって言ってんだろ!」

土御門は跳ねるように起き上がり、上条に飛びかかる。

上条「いいぜ、テメェが俺を殺さなきゃ、舞夏を助けられないってほざくなら――」

上条「――まずは、そのふざけた幻想をぶち殺す!」

ドガァ!と上条のクロスカウンターの一撃が、土御門の顔面にクリーンヒットした。
土御門はまたしても自転車の群衆までぶっ飛ばされ、今度こそ気絶した。

上条「テメェが出来ないって言うなら、俺が舞夏を救ってやるよ」

気絶して、既に声が聞こえていないだろう土御門に、上条はそう言った。

210 : VIPに... - 2011/08/08 19:36:57.07 /Y0I2UTx0 180/458

シェリー「そいつは無理だな」

上条(っ!)

姿は見えないが、シェリーの言葉と同時に、上条の下の地面が揺れた。
ゴーレムが現れようとしているのだ。

上条(わざわざ俺の下から出そうとするとか、嘗めてんのか!)

上条は自分の右手を、地面に叩きつける。
それでゴーレムは崩れ去る。この場合は出現前だから何も起こらず、不発に終わる。
筈だったのに、地面は揺れ続けている。何の異変もなくゴーレムが“現れようとしている”。

上条「なんで!?」

とにかく、このままだとゴーレムの上になってしまうので
上条は転がるように前へ走り、駐輪場から脱出する。
その先のグラウンドには“既にゴーレムに乗った”シェリーがいた。

上条「は?」

そして駐輪場を突き破り、ゴーレムが“2体”現れた。

どう言う事だ?ゴーレムは1体までしか出せないんじゃなかったのか?
しかも『幻想殺し』で壊せない。上条は混乱していた。

困惑する上条に、ゴーレム3体のパンチが襲いかかった。

上条「ご、があああああああ!」

上条はパンチの直撃は避けるが、その衝撃の余波と地面の破片だけで
数mは吹き飛び、それなりのダメージを負った。

211 : VIPに... - 2011/08/08 19:38:41.16 /Y0I2UTx0 181/458

シェリー「滑稽だな。冥土の土産に教えてやるよ。
     何故私のゴーレムに『幻想殺し』が効かなかったのかを」

シェリーは勝手に語り出す。

シェリー「お前の『幻想殺し』には弱点がある。あらゆる異能を触れただけで消し飛ばす、
     強力無比な能力だが、反応できず異能に触れなくてアウト、という場合」

シェリー「その他、元を断たない限り再生するタイプの魔術に弱い、
     数が多すぎると迎撃しきれない、軌道が読めなければ触れない、
     有益無益の判断が出来ない、とかな」

よくそこまで調べたなと、上条は思う。

シェリー「今の私のゴーレムは『核』を中心に動いている。その『核』を
     消さない限り、ゴーレムの外殻にいくら触れても意味は無いのよ」

シェリー「ゴーレムが3体いることについては、私がパワーアップしたから。
     じゃあこれでバイバイ、上条当麻」

上条は土御門戦で足を痛めている。そしてなかなかのダメージを負った。
つまり動く元気がない。そこへ容赦なく、ゴーレムの拳が振り下ろされる。
避けられない!と上条は思わず目を瞑った。

212 : VIPに... - 2011/08/08 19:40:19.20 /Y0I2UTx0 182/458

だがいつまで経っても、衝撃は来なかった。上条は恐る恐る目を開ける。

そこには、昭和の(間違った)番長のような男が拳を素手で受け止め、平然と立っていた。

シェリー「な……に……」

「お前が、上条当麻だな」

上条「そ、そうだけど、何故俺の名前を?」

「芹亜から聞いたんだよ」

上条(せり、あ……せりあ……もしかして!)

上条「雲川先輩の事か!」

「そう、それだ。俺は芹亜から、お前を助けるように言われたんだよ」

上条「そ、そうだったのか。で、あんたの名前は?」

「自己紹介がまだだったな。削板軍覇だ。レベル5の第7位でナンバーセブンと呼ばれている。
  よろしくな!」

とここで、ゴーレムのパンチを受け止められて、呆気に取られていたシェリーが
ようやく我を取り戻し、残る2体のゴーレムで攻撃を仕掛ける。

削板「ふん!」

削板は、受け止めていたゴーレムの拳を、掴み、1体の方へ投げた。
そしてもう1体の攻撃は、あっさり避け、顔面に蹴りを叩きこんだ。
その蹴りだけで、ゴーレムの顔面は砕け、へこんだ。

シェリー「ちぃ!ゴーレム!そいつらを叩き潰せぇ!」

ゴーレム3体が、一斉に削板へ襲い掛かる。対し、削板は

削板「超スーパーウルトラボルケーノインフィニットグレートデンジャラス
   インフィニットすごいパーーーーーーーーンチ!」

訳の分からない事を叫びながら、両拳を思い切り前に突き出した。
それだけで、ゴーレム3体は砕け散りながら吹き飛び、シェリーも吹き飛んだ。

213 : VIPに... - 2011/08/08 19:41:36.51 /Y0I2UTx0 183/458

上条(す、すげぇ。ゴーレム3体を一撃で、しかもシェリーごと倒しやがった。
   インフィニットって2回言ってたけど)

削板「大丈夫だったか?」

上条「あ、はい。助かりました」

削板「そうか。じゃあ次は『冥土帰し』の病院に行くぞ」

上条「え?」

削板「お前の傷を治す為なのと、病院自体を守るためだ」

上条「は?病院を守る?」

削板「あっちを見てみろ。病院に向いている巨大な光があるだろ?あれを倒しに行くんだよ」

上条「本当だ!今まで気づかなかった」

削板「気付かないのも無理はない。あの巨大な光が出てきたのは
   ほんの1分前くらいの出来事だからな」

削板「と言う事で、急いでいくぞ上条!」

上条「ちょ、まっ」

そう言うと、削板はものすごい速度で走っていった。

214 : VIPに... - 2011/08/08 19:52:03.90 /Y0I2UTx0 184/458

上条(あら~)

置いてけぼりの上条。
とりあえず上条は、念には念を入れて、シェリーのオイルパステルを破壊しておく。
そう言えば、ステイルのルーンのカードも、片っ端から消しておくべきだったと後悔する。
とそこへ

削板「おいおい何をやっている?早く行くぞ」

削板は、わざわざ上条のところに戻ってきて急かした。

上条「い、いや~、削板が走るの速いから」

削板「何だと!?この程度の速度についてこれないとは、根性が足りんぞ!」

上条「え?ええ~?」

上条は、根性とか、そう言う問題じゃないと思っている。
先程彼が走っていた速度は、音速を超えているようにしか見えなかったからだ。

削板「俺はこれでも全力疾走じゃないぞ。5割程の力でしか走ってないぞ!」

上条「いやそう言われても、ついていけないものはついていけないわけでですね」

削板「ああもう分かった。よし!俺が担いで走ろう!」

上条「い、いや!それは勘弁してほしいです!」

さすがの上条でも、音速なんかで走られると
何か体に重大な負担がかかりそうだと言うことぐらい分かる。

上条「てか、それ以前に、俺はインデックスを助けなきゃ」

削板「ああ、そのインデックスについてだが、あの病院に行けば、事態が動く。
   って芹亜が言ってた」

上条「な、なんで雲川先輩がインデックスの事を?」

削板「さあね。俺はインデックスって言うのがよく分からんし、上条の事情についても
   よく知らない。けど、あいつ物知りだし、芹亜の言う事聞いてれば何とかなるぜ。きっと」

上条「……」

上条が雲川芹亜について知っている事と言えば、名前と頭がとても良いことぐらいだ。

上条「削板、雲川先輩に会わせてくれないか?」

削板「そんなことしなくても、電話で話せよ」

削板は、徐に携帯を取り出し雲川に電話をかけ、上条に渡す。

215 : VIPに... - 2011/08/08 20:03:11.82 /Y0I2UTx0 185/458

区切りが悪いですがここまでと言う事で

エツァリvs神裂について、エツァリの原典の粉末の嵐ですが
これは本来なら、ウサギの骨のカウンターとして放たれたものだと思いますので
本当は出せないと思いますが、そうなるとエツァリの攻撃のバリエーションが少ないなー
と思ったので、粉末の嵐が自ら出せると言う設定にしました。

天草式の戦いカットについては、さすがにもう神裂の戦いはくどいだろうと思ったのと
ぶっちゃけ自分も書くのが辛いなーと思ったからです。
期待してた方はすいません。エツァリの時点でもうくどいと思った人の方が多いかと思いますが。

オリアナの浜面誘拐とは何だったのか。
これは科学サイドの勢力と言っても過言ではない『アイテム』を無力化させるために
浜面達を人質に取ろうと言う魂胆の名残りです。

『アイテム』メンバーは、今までいろいろ忙しかったので、コードレッドが発動されてるとか
魔術サイドとの戦争があると言う事は、病院に着くまで知りませんでした。

御坂はまだ、大量の妹達が死んだ事は知りません。

あとこのSSでは、土御門とオッレルスと雲川とローラは、飛びぬけて物知りと言う設定です。

もう自分で何書いてるか分からなくなってきてるし、こんな補完情報見なきゃ分からないSSなんて
SSとして駄目だと思いますが、今後とも見てくれるとありがたいです。

216 : VIPに... - 2011/08/08 20:06:51.52 /Y0I2UTx0 186/458

書き忘れた。

何故魔術師達は病院を狙ったのか。
これは科学サイドの切り札、一方通行とその他レベル5がいるから
それをまとめて抹殺しようと言う事です。

あとどうでもいい情報として、戦闘不能の御坂をテレポートしたのは結標。
黒子を運んだのはショチトルです。

217 : VIPに... - 2011/08/08 20:12:03.85 /Y0I2UTx0 187/458

最後に1つだけ

結標が魔術について聞いたのは、冥土帰しと一方通行から聞きました。
もちろん、2人とも全容を知っている訳ではないので、ごくごく基本情報をですが。

221 : VIPに... - 2011/08/09 23:34:30.71 baUWBQyL0 188/458

雲川『何だ?』

上条「もしもし、あの、上条ですけど。いきなりで悪いんですが、俺はインデックスを助けに
   行かなきゃいけないんです。何で病院に行かなきゃいけないんですか?」

雲川『お前じゃなきゃ勝てない敵がいるから、だけど。というかお前、インデックスが
   どこにいるかとか、何も知らないだろ?どうせ手掛かりは無いんだ。だったら
   病院へ行って、学園都市を守ることに専念した方が良いだろう?』

上条「いや、よく分からないんですけど」

雲川『良いから黙って私の言う事を聞け。何もしなくても、インデックスはきっとお前の前に
   姿を現す。だから今は病院へ急げ』

雲川『それと、この携帯の持ち主の馬鹿いるだろ?どうせお前を置いて音速で走りだしたり
   しただろうけど。だから「俺のペースに合わせて走って下さい」って頼め。
   私がそう言ったと言えば、言う事を聞くはずだ。それじゃ』

一方的に捲し立てられた上に、電話を切られた。
だが雲川の言う通り、インデックスに関する手掛かりは、今のところ無い。
ここは言う通り病院へ行くしかなさそうだ。

上条「あの、俺のペースに合わせて一緒に走って下さい」

削板「うーん。でも急がなきゃ」

上条「雲川先輩がそう言った」

削板「なに!?そうか。なら仕方ないな」

上条(削板と雲川先輩って、一体どういう関係なんだ?)

とにもかくにも『冥土帰し』の病院へ。

222 : VIPに... - 2011/08/09 23:35:13.44 baUWBQyL0 189/458

第7学区 窓のないビル

アレイスター「いよいよ大天使のお出ましか。ククク、楽しくなってきた」

学園都市統括理事長であり、世界最高最強の魔術師だった、男にも女にも、子供にも老人にも
聖人にも囚人にも見える『人間』は、そう言って、狡猾に笑った。

アレイスター「さあ、最後の晩餐(ショータイム)だ」

223 : VIPに... - 2011/08/09 23:36:30.48 baUWBQyL0 190/458

第7学区 『冥土帰し』の病院前

一方通行「あの光は……」

一方通行が言う『あの光』と言うのは、病院から800mほど先にある光の事だ。
一方通行はその光に、何か感じるものがあった。

一方通行「あの光は……ロシアで戦った……天使と同じような?」

一方通行がロシアで戦った天使、即ち『神の力』(ガブリエル)の事であるが
ガブリエルは、既に上条当麻によって消失した。となると、あの光は何なのだろうか?

そもそも、ガブリエルとは四大天使の1つである。それと同質の光と言う事は――

答えは簡単だった。
同じ四大天使の内の“2体”『神の薬』(ラファエル)と『神の火』(ウリエル)の顕現だった。

ラファエルの大きさは40mほどで、一般的なイメージの天使とは違い
頭上に輪っかこそあるが、土偶のような格好だった。

ウリエルも、頭上に輪っかこそあるが、竜のような形をしており
おおよそ天使とは呼べないものだった。

224 : VIPに... - 2011/08/09 23:37:50.59 baUWBQyL0 191/458

一方通行(明らかにヤベェな。だが)

一方通行は再び神化した。

一方通行「かかってこいやァ!」

天使には人間の言語は理解できない。それでも一方通行の挑発を皮切りに
2体の天使は800mの距離を一瞬にして移動し、一方通行に突っ込んだ。

一方通行は、自身の動きに連動する巨大な手を出現させ、2体の天使を受け止めた。

一方通行「『天使』ごときが『神』に逆らってンじゃねェ!」

受け止めた天使を、思い切り弾き飛ばした。その距離は約3km。
だが今の一方通行や天使にとっては、そんな距離は零距離も同じ。

1秒もかからずに、一方通行と2体の天使は再び激突した。

225 : VIPに... - 2011/08/09 23:39:05.65 baUWBQyL0 192/458

一方通行は焦っていた。神化は、その巨大な力に比例して制限時間も極端に短い。
今の一方通行では、せいぜい1分くらいが限度だろう。先の戦いも含めて、もう20秒は経っている。

加えて、天使と言うものはやはり強い。
ガブリエルとの戦いのときは、紫電を纏ったような天使と共闘しても倒すことは出来なかった。
そのクラスの化け物が2体。正直言って戦局は悪かった。

それでも、一方通行は諦めず何度も天使とぶつかる。

一方通行「負けられるかよォ!」

一方通行が2体の天使を相手に、多少押し始めた。
どんどん病院から遠ざかるように天使達を押し退ける。能力はあと20秒ほどか。

一方通行(これで決める!)

一方通行の後方にある大きい歯車が激しく回転し始めた。
すると2体の天使の真下から、白く大きな陣のようなものが現れた。

一方通行「終わりだァ!」

その陣から、莫大な光が飛び出した。2体の天使は為す術なく光の柱に飲み込まれた。

226 : VIPに... - 2011/08/09 23:40:45.30 baUWBQyL0 193/458

一方通行の神化は、まだ10秒ほどあったはずだが、力を使い切ったため
その力は解け、その場に倒れた。

一方通行「やったのか……?」

一方通行は淡い希望を抱くが、現実はそうは甘くなかった。

2体の天使は、ダメージを受けているようではあるものの、まだまだ戦えると言った感じだった。

一方通行「く……そが」

一方通行は戦うどころか、立ち上がることすらできない。
それでも、護りたいものがある。護らなければいけないものがある。
藁にもすがる思いで、一方通行はこう願った。

一方通行(起きろよ幻想(ラッキー)……手柄ならくれてやる……俺を踏みにじって……
     馬鹿笑いしても構わねェ)

一方通行(だから……誰でもいいから……これ以上あのクソガキと……それを取り巻く環境を……)

2体の天使達は、力の切れた一方通行など最早眼中にもないようだった。
ただ病院を見据えて、突撃する。その直前で――

紫電が2体の天使を穿った。

一方通行は、この紫色の電撃に見覚えがあった。それはロシアで見たものだ。
一方通行は力を振り絞って、空を見上げた。そこには

カザキリ「これ以上私の『友達』と、その大切な方々が住んでいるこの学園都市を
     傷つけはさせません!」

227 : VIPに... - 2011/08/09 23:42:17.64 baUWBQyL0 194/458

第7学区 病院へと向かう道

上条「くそ……!どうなってんだ……!?」

先程まで、銀色の光と、緑色と黄色の光がぶつかり合っていて、銀色の光が
病院から離すように、緑と黄色の光を押し、光の柱が出たと思ったら、銀色の光が途絶えた。
と思ったら、今度は紫色の光とぶつかりあっている。

削板「まあ、行けば分かるんだろう」

上条「それ、大丈夫なんですかね?」

削板「根性で何とかなる!」

上条「はあ……」

走りながら、上条はやっぱり不安が増していった。
そんな不安を拭おうとした訳ではないが、なんとなく横に目線を持っていくと

上条「あ、あれは!?」

路地の奥で五和が倒れているのを見つけた。

上条「ちょ、削板!こっちきてくれ!」

先頭を走っている削板にそう声をかけ、自身は路地の奥へと走っていく。

削板「お、おい!」

削板は仕方なく上条の後を追いかける。

上条「大丈夫か五和!?」

倒れている五和に寄り、抱え込む。その体はボロボロだ。

五和「う……上条……さん……?」

上条「一体何があったんだ!?」

削板「どうしたと言うんだ!」

五和「私の事は……良いですから……早く……ここから……逃げて下さい……」

上条「何を言って」

「ほう。まさかターゲットが自ら出向いてきてくれるとは、探す手間が省けたのである」

228 : VIPに... - 2011/08/09 23:44:51.72 baUWBQyL0 195/458

突然、後方から渋い声。その声の主は

上条「アックア!」

振り返ると、青いゴルフシャツのようなものを着た男が立っていた。

彼はアックア。元『神の右席』の1人で『聖人』でもあった。
今はその力は無く、イギリスで騎士を務めている。
アックアと言うのは、ローマ正教に居た時の名前で、本名はウィリアム=オルウェル。

その振り返った先に、更に驚くべき光景を目にした。

天草式全員が、倒れている。
大多数は気絶などで済んでいるようだが、何人かは死んでいるように見える。

上条「アックア、これはテメェの仕業か!?」

アックア「私の仕業と言うよりは、私『達』がやったことである」

アックアがそう言うと、フルンティングを携えた騎士団長(ナイトリーダー)と
カーテナ=セカンドを携えた英国女王エリザードが、物陰から現れた。

アックア「本来なら、これに20余名ほどの騎士達も居たのであるが
     思ったよりそこに倒れている奴らが強くてな。
     こちらもわずか3人しか残らなかったのである」

上条「何で……こんな事をした!?」

アックア「簡単なことである。上条当麻、貴公を殺すためである」

上条「なら俺だけを狙えば良かっただろ!何でこいつらを傷つけた!」

上条の問いに、何故か騎士団長、その名の通りイギリスの騎士派の長が答える。

騎士団長「そいつらがまるで『上条当麻』を匿っているような言い方をしたからだ」

上条「お前には聞いてねぇ!」

騎士団長は構わず無視し

騎士団長「で、そいつらを倒して、周りを探していたら、お前が出てきたという訳だ。
     どうやら匿っていると言うのは嘘だったらしい」

上条「ふざけ」

エリザード「下らん会話はここまでだ」

エリザードの言葉が上条の言葉を遮った。そして次の瞬間には――

エリザード「死ね」

エリザードは上条の目の前に出現し、上条の首を取ろうと
カーテナ=セカンドを水平に振るっていたところだった。

上条「っ!」

轟!と
カーテナ=セカンドの一振りは空を切った。

229 : VIPに... - 2011/08/09 23:46:25.08 baUWBQyL0 196/458

エリザード「よく避けたな」

エリザードは目線を少し上げてそう言った。その目線の先には

削板「3対1とは根性無しにも程がある。喧嘩をするなら、1対1だろう!」

近くにあったアパートの屋根の上に立ちながら、五和を抱えている上条ごと抱え込んだ削板がいた。

エリザード「これは喧嘩ではなく、戦いだ」

削板「屁理屈はよせ」

削板は上条を降ろす。

エリザード「生意気なガキだ」

次の瞬間、エリザードは一瞬で削板達の居る屋根の上に飛び乗り
カーテナ=セカンドを削板に振り下ろしていた。
その一撃で確実に仕留められると、エリザードは思っていた。

だが削板はエリザードの予想に反して、カーテナ=セカンドを白刃取りでキャッチした。
エリザードはさらに力を込めるが、押しきれない。

削板「ったくよぉ。あんた、ばあさんなのに、なんでこんなに速くて力があるんだ?」

エリザード「そんな事はどうでもいいだろう。ウィリアム!騎士団長!こいつは私がやる!
      お前らは上条当麻を殺れ!」

アックア騎士団長「「はっ!!」」

ドン!と2人は地面を蹴って、上条の元へ。

230 : VIPに... - 2011/08/09 23:47:49.45 baUWBQyL0 197/458

2人は1秒もかからずに、上条の目の前へと現れた。

削板「させるか!」

削板は白刃取りしていたカーテナ=セカンドごとエリザードを横に投げ飛ばし
その後即座に、騎士団長のフルンティングを素手で受け止めた。

しかし、アックアが止めきれない。

削板「上条!」

削板は上条の方を見た。
上条は五和を抱え、アパートの屋根から飛び降りようとしているところだった。
アパートの高さは3階。飛び降りたって死にはしないだろうが
足を痛めるぐらいは間違いないだろう。

上条が五和を抱えて飛び降りるのと、アックアが持っている剣を振り下ろすのは同時だった。
アックアの一撃はアパートを崩壊させた。

上条は何とか着地に成功して、五和をゆっくりと地面に降ろした。

上条「五和、ここで」

アックア「会話している暇があると思うのであるか?」

アックアの踏みつけが、上条を狙い定めて襲い掛かってくる。

ドゴォ!とアックアが地面を踏みつけただけで、地面にヒビが入った。
上条は何とか避けたが、踏みつけの余波だけで数m地面を転がった。

231 : VIPに... - 2011/08/09 23:48:54.37 baUWBQyL0 198/458

上条「っは!」

上条は急いで起き上がり、目の前のアックアを見据えようとするが
既にアックアは上条の視界に居なかった。

上条(どこへ!?)

アックア「遅すぎるのである」

その声は左斜め後方から。アックアが剣を水平に振っているところだった。

上条は一瞬の判断でしゃがみ、肘を放った。
しかし、その時には既にアックアは上条の右側へと移動していて、剣を振り下ろしていた。

上条は体を捻り、紙一重でその一撃を避けたが、その後もアックアの攻撃は続いた。
縦に横にと、連続で繰り出されるアックアの攻撃を、上条は全て紙一重で避ける。

上条(反撃する暇どころか、呼吸すら、瞬きさえする間もねぇ!)

上条がそんな事を感じていると、アックアの攻撃の手が一瞬だが緩んだ。

上条(――今だ!)

上条は、アックアへ殴りかかろうとする。
アックアは今まで右手だけで持っていた剣を、両手で持ち
振り上げ“その状態のまま”上条の左側にスライドした。

上条(やば――)

アックアの凶悪な一撃が、振り下ろされた。

232 : VIPに... - 2011/08/09 23:51:38.54 baUWBQyL0 199/458

上条は両手持ちの一撃を何とか避けていたが、余波だけで数m地面を転がった。
そして後方にはビルの壁。もう後退して避ける事は出来ない。

アックア「終いである」

アックアは剣の切っ先を上条に向け、そのまま突っ込む。
上条はそれをしゃがむことで避ける。ドゴォン!と剣がビルに突き刺さり
その状態から、ビルの壁を抉りながら剣を右側に薙いだ。

上条(めちゃくちゃだ……!)

上条は右側に転がりながらそう思った。アックアの攻撃は終わらない。
水の魔術を使って地面を滑るようにして動く。

それでもアックアの攻撃を全て避ける上条。埒があかないと考えたアックアは、一旦距離を取る。

アックア「ならば、これはどうであるか」

アックアの周囲から、水が湧き出た。それは津波となって上条に襲い掛かる。

上条(異能の力ならば、恐れる事はねぇ!)

上条は臆せず津波に挑みかかり、キュイーン!と甲高い音と共に、津波を消し去る。
その津波の先に、アックアは両手で剣を持ち、上条の真正面で剣を振り上げていた。

上条(ようやく隙を見せたか!真正面からそんな大振り殴って下さいって言ってるようなもん――)

とそこで、上条は思った事を一瞬で反芻する。

アックアは、わざわざ一旦距離を取り、消されると分かっていながら津波を繰り出した。
それは多分、視界を一時シャットダウンする為だろう。

では何故視界を塞いだにもかかわらず、わざわざ真正面から
それも大振りで目の前に現れたのだろうか。まるでわざと隙を見せているような……
すると目の前のアックアが溶け始め――

上条(――違う!これは罠!――)

瞬時にそう考えを改め、バックステップをすると
そこに本物のアックアが、剣を地面に突き刺すように落下してきた。
その威力の余波で吹き飛ばされることは無かったが
代わりに地面から飛び散った、砂利の雨が上条の体を叩いた。

上条「ぐ……おお!」

上条は砂利に叩かれ悶えながらも、距離を取るために数歩後退するが

アックア「無駄である」

アックアは突き刺した剣を軸にして、回し蹴りを繰り出した。
上条は両腕をクロスしてガードはしたが、ノーバウンドで数十m先のビルの壁にぶつかった。
そのあまりの威力に、壁にはヒビが入り、上条の体内の空気はすべて吐き出された。

アックア「今度こそ終いである」

ビルの壁にもたれかかっている上条に向かって、アックアは剣を持って突っ込む。
そして――

ゴシャア!と肉を潰す音と、ビルにヒビが入る音が辺りに木霊した。

233 : VIPに... - 2011/08/09 23:53:22.88 baUWBQyL0 200/458

上条は何とか致命傷は避けていた。
と言っても、左脇腹には剣がしっかり貫通していた。

上条(けど……これで……剣は掴んだ……!)

上条は今、しっかりと剣を左手で抑えている。あとは右手を添えれば剣を打ち砕けるはず。

上条「これで……剣はもう使えねぇぞ!」

上条は右手で勢いよく剣に触れたが――

何も、起きない。

上条「な……んで……」

アックア「何か勘違いしているようであるが、この剣は何の変哲もない“ただの剣”である」

上条「嘘……だろ……」

上条はこの剣のおかげで、超人的な動きが出来るのかと思っていた。
そう思うのも無理はなかった。彼は世界大戦後に、土御門から
色々な人の状況を教えてもらったのだ。その時に、アックアに関してはこう聞いていた。

土御門『アックアは「聖人」の力を失った。今ではただのマッチョなおじさんって訳だぜい』

だから、きっと武器のせいで体が強化されていると思ったのだ。
いや、そんな事全く関係なかったとしても、武器はどうせ魔術的要素が絡んでいると思ったのだ。

しかし、これがただの武器だとするのなら
アックアは何故こんなにも超人的な動きが出来るのか。

アックア「……不思議そうな顔をしているのであるな。何かおかしいところがあるのであるか?」

上条「おか……しい……だろ……その動き……普通の人間……じゃない……」

アックア「そうか。私が『聖人』の力などを失ったにも関わらず
     この動きが出来ることに疑問を抱いたのであるか」

アックア「答えは簡単なのである。カーテナ=セカンドの欠片から
     力の一部を借りているだけなのである」

上条「そんな……裏技が……あったのかよ……」

アックア「武器が普通の剣である理由は、貴様の右手に対抗するためである」

そんなアックアの言葉も、剣を突き刺された状態で、最早意識すら朦朧として
思考も出来ない上条には聞こえていなかった。

234 : VIPに... - 2011/08/09 23:55:03.81 baUWBQyL0 201/458

アックア「さて、そろそろ終いにするであるか」

そう言って、アックアは剣を引き抜いた。
その事により崩れ落ちる上条に、剣を振り下ろそうと構えるアックア。
削板は騎士団長とエリザードを相手にしているため、当然助けには来れない。
その場に居る五和や天草式のメンバーも、未だに動けない。

アックア「さらばである」

そして、容赦なく剣が振り下ろされた。
一部始終を見ていた、五和や天草式のメンバーは思わず目を瞑った。

グシャ!と肉を潰す音が響き、辺りには鮮血が舞った。

ただし、それは上条の血ではなく、腹を殴られた、アックアの口から吐き出されたものだった。

アックア「な……にが……起こったのであるか……?」

五和や天草式メンバーは、アックアの動揺する声で、瞑っていた目を開いた。

フィアンマ「堕ちたものだな。後方のアックア」

そこには真っ赤で、異様な右手を持つ男が立っていた。

235 : VIPに... - 2011/08/09 23:56:05.11 baUWBQyL0 202/458

騎士団長「『射程距離』!」

削板との激しい攻防の中で、騎士団長はそう叫んだ。
剣の破片を発射し、それは見事に削板の顔面に直撃した。
ように見えたが、削板は破片を歯でキャッチしていた。

削板「ほほへいほへはほへほはほふほほはへひはひ!(その程度では俺を倒す事は出来ない!)」

破片を吐きだし、間髪入れず騎士団長に突っ込む。その速度は実に音速の2倍以上。

削板「どおおらあああああ!」

騎士団長「『耐久硬度』!」

その速度に騎士団長は反応し、叫ぶ。
フルンティングは、絶対破壊されない硬度になり、削板の渾身の拳の一撃を受け止めた。

騎士団長「ぐお!」

だが剣は破壊されなくとも、運動量までは打ち消せない。
運動量を受け取った騎士団長は、いくつかのビルを突き抜けながら、数百mは吹き飛ばされた。

236 : VIPに... - 2011/08/09 23:57:41.10 baUWBQyL0 203/458

エリザード「ほう。やるじゃないか」

削板の後方に居たエリザードが、カーテナ=セカンドを振り下ろしながらそう言った。
削板はそれを間一髪で避け、距離を取る。

削板「どうなってる?」

削板が先程まで居た場所が白くなっている。より正確に言えば空間が。

エリザード「次元を切断しただけだ」

切断した次元から、白い物質がいくつか零れ落ちた。
エリザードはその物質全てを、削板に向かって蹴りだした。

削板「すごいパーンチ!」

削板は『敢えて不安定な念動力の壁を作り、それを殴る事で壊して遠距離まで衝撃を飛ばす』
必殺技を繰り出した。

それだけで白い物質は砕け散り、逆にエリザードにまで衝撃は向かって行った。

エリザード「やるな。だが」

カーテナ=セカンドを水平に振るう。それだけで、衝撃波はあっさりと振り払われた。

削板「なかなか根性あるじゃねぇか!」

削板は、音速の2倍以上の速度でまっすぐ突っ込み
エリザードの顔を掴み、そのままビルの壁に向かって叩きつけた。
はずだったのだが、何の手応えもない。

削板「あれ?」

思わず顔面を掴んだはずの右手を見る。その時だった。

エリザード「何をやっている?遅すぎるぞ」

またしても後方に居たエリザード。カーテナ=セカンドを振り下ろそうとしている。

削板「っ!」

叩きつけるつもりで、ビルの壁まで行ってしまったので後退は出来ない。
だから削板は、背中から7色の煙を出しながら、空中へと避難した。

237 : VIPに... - 2011/08/09 23:59:24.04 baUWBQyL0 204/458

削板は、空中からすごいパンチを連続で繰り出し
衝撃波の雨を降らせようと考え、拳をエリザードに向けて突き出そうとした。
しかしその時、赤く鋭い何かが横目に見えた。それは頭に向かって飛んできていた。
削板は何とか頭を動かし、そのまま喰らっていれば、脳味噌が吹き飛んでいたであろう一撃を
額を掠る程度に留めた。その影響で鉢巻は外れ、額からは一筋の血が流れた。

削板(あの紳士みたいな奴が、さっきみたいに遠距離から攻撃してきたのか。
   だがしばらくは戻って来れないはず。ここはまず、あの婆さんの根性を
   叩き直すのが先だな!)

そう思い、今度こそ拳をエリザードに向けて突き出そうとするが、既にエリザードの姿は無かった。

削板「な!?どこ行った!?隠れてないで正々堂々勝負しろ!」

叫ぶ削板だったが、当然返事は無い。
その時、上から空気を切るような音が、わずかに聞こえた。

エリザードが降ってくる音だと、直感で判断し、上も見ずに前方へと飛ぶ。
その直感は正しかった。1秒後には、次元を切り裂きながら地面へと激突したエリザードがいた。
もし前方に飛んでいなければ、今頃は次元の藻屑となっていた事だろう。

238 : VIPに... - 2011/08/10 00:01:48.46 25u0vCuc0 205/458

削板(油断も隙もねぇな!)

削板は改めて根性を入れ直す。しかし、削板にはそんな時間はなかった。
ビルを突き抜けながら吹き飛ばされたにもかかわらず、服が多少汚れ破け
額から血を流す程度の傷しか負っていない騎士団長が、削板の後方に居たからだ。

騎士団長「『武具重量』!」

フルンティングが縦に振るわれた。削板はそれを何とか白刃取りで受け止めるが
その剣は、その大きさからは考えられないほどに、圧倒的に重かった。

削板(ぐ……おお……!)

頭の真上で白刃取りしていた削板は、このままだと頭が剣で切り裂かれてしまうと
考え、せめて被害を最小限に留めようと、剣ごと白刃取りしている手を徐々に左へずらしていく。
その間に重さに耐えられなくなって、ついにフルンティングが左肩に触れた瞬間――

騎士団長「『切断威力』!」

スパッ!と、浅いながらも、削板の左肩が切り裂かれた。

削板「ぐあ!」

削板には多少の悶絶と、多大な困惑があった。
削板は心臓をはじめ、体中に銃弾を撃ち込まれようが、アイスピックで刺されようが
『痛い』程度で大したダメージを受けない。オッレルスの『北欧王座』ですら2度耐えた。
そんな自分が、切り裂かれた。とりあえず削板は、音速で距離を取る。

騎士団長「『移動速度!』」

しかし騎士団長は、その速度に追いついてきた。

削板「く!」

騎士団長「『切断威力』!」

そして再び、万物を切り裂く一撃が、今度は首目がけ水平に振るわれた。

削板「おお!」

削板はそれをしゃがむことで回避。そして反撃のアッパー。
騎士団長はそれを『武具重量』で迎え撃つ。

ゴドン!と削板は地面に叩きつけられた。騎士団長も吹き飛ばされはしたが
障害物が何もない真上に吹っ飛んだだけなので特にダメージは無し。

削板「ごほっ!ごほっ!」

地面に叩きつけられて、血を吐きながら咳き込んでいる削板に
騎士団長は、またしても『武具重量』で隕石のように落下してくる。

削板「おおっ!」

削板は即座に前方に転がり、騎士団長の一撃を避けた。
騎士団長の一撃は、騎士団長を中心に、半径100mほどの地面にヒビを入れ
辺りには莫大な煙を立ちこませた。

239 : VIPに... - 2011/08/10 00:03:54.55 25u0vCuc0 206/458

削板(ちっ!姿が見えねぇけど……!)

削板はおそらく騎士団長がいるであろう方向に、すごいパンチを3回ほど放った。
しかし手応えは無かった。
仕方なくもう3発ほど放とうと拳を突き出す前に、何か固いものが、肩に直撃した。

削板「がっ!」

拳銃ですら『痛い』程度には丈夫なはずなのに、激痛だった。
続いてその固いものは、流星群の如く次々と削板目がけて降り注いだ。

削板「ご……っは……!」

あまりにも突然の出来事に、防御する事も避ける事も出来ずに
為す術もなく、固いものの雨に打たれた。
その固いものの正体は、先程次元を切断しながら落下していたエリザードの
カーテナ=セカンドによって生み出された物質を、エリザードが連続で蹴ったものだった。

その物質のラッシュの後に、容赦なく騎士団長の『切断威力』の一閃が
削板の右脇腹を切り裂いた。

削板「ごふぁ!」

口からは血が溢れた。さすがの削板も倒れそうになり

とどめの、カーテナ=セカンドの次元をも切断する一撃が、次元もろとも削板を切り裂いた。

その直後にゴガァ!と壮絶な音が辺りに響いた。
削板が800m先のビルに激突した音だった。だがそれはおかしいことだった。

エリザード「……次元ごと切断したはずだが……?」

そう。つまり削板は吹き飛ばされるのではなく、本来なら次元の藻屑になっていなければおかしい。
削板との戦いで、常に余裕を見せていたエリザードは初めて困惑した。

エリザード(能力が本当に一瞬だが覚醒して、私の次元切断の一撃を
      あの程度の被害で留めたのか……?)

騎士団長「私がとどめを刺してきましょう」

騎士団長はそう言うと『移動速度』により削板のもとへ。

240 : VIPに... - 2011/08/10 00:06:04.78 25u0vCuc0 207/458

一方で削板は、ビルの壁にもたれかかっていた。
さすがの削板も、戦うどころか、立ち上がる気力さえなかった。

削板(俺は……とんだ根性無しだ……)

自責の念に駆られる削板だったが、体は動かない。動いてくれない。そんな時だった。

ポケットの中に入った携帯電話が鳴り響いた。
そんな中削板は、あの激戦の中でよく壊れなかったなぁ。さすが学園都市製。
とか、よくポケットから落ちなかったなぁ。とか考えていた。携帯に出る気力すらなかった。

すると携帯は、通話ボタンを押していないにもかかわらず、勝手に通話状態になった。
しかも、勝手にスピーカーモードにもなった。そこから聞こえた声は

雲川『何をしているの?早く立ちあがって敵を倒しなさい』

幼馴染みの雲川からだった。

削板「芹亜か……」

削板はボソッと、普通の通話状態でも聞こえないような声で呟いた。
当然、ポケットの中に入っていて、なおかつ折り畳まれている携帯に声が聞こえる訳などないのだが

雲川『何を情けない声を出しているんだか。根性無しにもほどがあるけど』

しっかり返事があった。

削板「そうだ……俺は根性無しだ……あまりにも情けねぇよな……」

削板「でもよ……もう体が動かねぇんだ……俺は……ここまでみたいだ……」

雲川『お前はその程度の男だったの?』

いつも冷静な、雲川の声が若干熱を帯びたようだった。

雲川『私はそんな男に惚れていたのか……全く、私も見る目がないな』

削板「は?」

削板は突然の告白に、情けない声をあげた。

削板「お前……何言って……」

雲川『言葉の通りだけど?』

削板「いや……いろいろおかしいだろ……このタイミングで告白とか……
   そもそもお前……上条の事が好きなんじゃ……ねぇのか……?」

雲川『そうだ。私は上条当麻も好きだけど。でもお前も好きなんだ。
   こんな尻軽女だけど、どうしようもないくらいお前も好きなんだ。だから勝て』

削板「だから勝て。って意味不明だぞ……俺以外の男も好きな女の為に……
   俺以外の好きな男を守る為に……この勝負勝てってか……理不尽すぎるだろ……」

雲川『そうだ。全部私の我儘だけど。でも好きな人には死んでほしくないんだ。
   お前も、上条も。至極当然の感情でしょ?死なない為には勝つしかない』

雲川『限界を超えてでも勝て。ただし絶対に死ぬな。
   上条当麻を護る者として、私の愛する人として、恰好ぐらいつけてみせろ』

そこで通話は終わった。

241 : VIPに... - 2011/08/10 00:07:53.31 25u0vCuc0 208/458

削板(無茶苦茶な事ばっか言いやがって……でも……なんか元気でたっつうか)

削板(確かに、こいつらぐらいはどうにかしないと、いくらなんでも恰好つかねぇよなぁ!)

体は動く。動いてくれる。ヨロヨロとした動きで、削板は立ちあがった。

騎士団長「何か言い残す事はあるか?」

既に削板の前に立ち塞がっていた騎士団長はそう言った。

削板「……絶対勝つ!」

騎士団長「そうか。ならば死ね。『切断威力』」

フルンティングの、万物を切り裂く一撃が振り下ろされた。
と同時に、騎士団長の体は顎に激痛を伴って、100mほど宙を舞った。

騎士団長「が……あ?」

騎士団長は痛みと共に、困惑があった。
何故自分は宙を舞っている?答えは簡単だった。

削板が音速を超えた速度で、アッパーを繰り出したからだった。攻撃はそれだけでは終わらない。

削板は空中で、騎士団長に音速を超えた蹴りを叩きこんだ。
当然、騎士団長は数百m程ぶっ飛ばされる訳なのだが

ぶっ飛んだ先には、削板がいた。再び強烈な蹴りが、騎士団長を襲った。
またしてもぶっ飛んだ騎士団長。そしてまたしてもその先に居た削板。
そしてまた蹴りの一撃。ぶっ飛んで再び蹴りの一撃。
その様は、騎士団長をサッカーボールにみたてた、1人サッカーのような状態だった。

この連続技で、さすがに意識が朦朧としてきた騎士団長。
無抵抗に仰向けで宙を舞っていると、正面に削板が現れた。
その両拳には、とんでもないエネルギーが集まっていた。その内の左拳が飛んでくる。

騎士団長「『耐久……硬度……』」

フルンティングを絶対破壊されないようにしてから、ガードする。
確かにフルンティングは破壊されなかった。だが構わず削板は

削板「うおおおおおおおおおおおおお!」

騎士団長を、拳ごと隕石の如く地面に叩きつけた。
その威力は騎士団長を中心に半径300mの地面にヒビを入れ
『耐久硬度』のフルンティングを砕くほどだった。

242 : VIPに... - 2011/08/10 00:10:03.61 25u0vCuc0 209/458

エリザード「やるじゃないか。しかし、そのボロボロの体で私に勝てるかな?」

莫大な煙が立ち込める中で、立ち上がる1つの影に向かってエリザードはそう言った。

削板「関係ねぇよ婆さん。どうせ次の一撃で全て決まるんだから」

削板は、右拳にエネルギーの全てを集結させた。

エリザード「私の一撃を受けると言うことは即ち、イギリスという一国を受け止めると言う事!
      それが貴様に出来るかぁ!」

エリザードは削板に向かって突っ込む。

削板「俺の根性に、不可能なことはねぇーッ!」

削板は突っ込んでくるエリザードに対して、右拳のカウンターを繰り出す。
次元を切り裂く一撃と『耐久硬度』のフルンティングをも砕いた一撃が激突した。

削板エリザード「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」

両者の一撃は拮抗した。

エリザード「くくく、本当にこの一撃と拮抗するとはなぁ!
      だが、カーテナ=セカンドの力はこんなもんじゃないぞぉー!」

カーテナ=セカンドが若干押し始める。

削板「そんな事、俺も同じだあああああああああ!」

腕から血を噴き出しながら、強引に押し返す。

削板「たとえ、この右腕が潰れようとも!
   この勝負だけは、負けるわけにはいかねぇぇぇんだよぉぉぉ!」

削板の右拳が、さらに力強くなって、カーテナ=セカンドを押し返していく。。

エリザード「馬鹿な!?まだ力が出せると言うのか!?」

今度はカーテナ=セカンドが押され始めた。
動揺するエリザードに追い討ちをかけるように、ピシッ!と、カーテナ=セカンドにヒビが入った。

エリザード「なに!?」

削板「終わりだぁぁぁあああああ!!!」

バキャア!と、ついにカーテナ=セカンドは砕け散り
突き抜けた削板の右拳は、そのままエリザードの顔面に突き刺さった。
殴られたエリザードは、数kmにも亘って吹き飛び、いくつものビルを突き抜けた。

削板「なんとか……勝ったぜ……」

削板(だが……お前を……助けには……行けねぇや……上条……)

削板の意識はそこで途切れた。

243 : VIPに... - 2011/08/10 00:11:08.47 25u0vCuc0 210/458

アックア「カーテナ=セカンドの力が……消えた……!?」

フィアンマ「どうやら、あの騎士団長とエリザードを倒したみたいだな」

アックア「馬鹿な……そんなことが……有り得るのであるか……!?」

フィアンマ「現にカーテナ=セカンドの力は消えているだろう?現実を見ろ。アックア」

アックア「だが、私は弱くなった訳ではないのである。調子に乗らないので欲しいのである」

フィアンマ「お前こそ、カーテナ=セカンドの欠片を持っていて、天使級の
      力を振るえるからと言って、調子に乗ってもらっては困るな」

アックア「相変わらず口が減らないのであるな!」

アックアは自身が作った水流に乗り、フィアンマへと突っ込む。
対してフィアンマは

スッと右手を前方に突き出しただけだった。

アックア「嘗めているのであるか!」

アックアの容赦ない突きが、フィアンマを襲うが
ガキィィィン!と、その突きは右手であっさりと受け止められていた。
それだけではなかった。フィアンマが少し握る力を強めただけで、剣は粉々に砕けた。

アックア「馬鹿な!?」

アックアは一旦後退する。

244 : VIPに... - 2011/08/10 00:13:50.57 25u0vCuc0 211/458

フィアンマ「何も驚く事は無いだろう。そんな霊装でも何でもないただの剣が
      俺様の右腕で砕けないわけがない」

アックア「そう言えばおかしいのである。噂では、貴様は右腕を失ったと聞いた。
     何故右腕が存在しているのであるか?そしてその右腕は
     何故そこまで強力なのであるか?」

フィアンマ「右腕を失ったという噂は知っていたくせに、オッレルスと言う
      魔術師に保護されたと言うのは聞いていなかったのか?」

アックア「オッレルス?」

フィアンマ「知らんのならそれでいい。説明も面倒なんでな。ま、俺様は確かに右腕を一度失った」

フィアンマ「が、オッレルスが俺様の第3の腕を、魔術を巧みに使い、俺の右肩に移植した。
      そうして第3の腕は、今となっては、俺様の本当の右腕となっている訳だ」

アックア「そんなことが可能なのであるか!?」

フィアンマ「現にその俺様が、今貴様の目の前に立っているだろ。もう一度言おうか?現実を見ろ」

アックア「つまり、その右腕は、第3の腕の力を持った右腕と言うことであるか?」

フィアンマ「まあ大分弱体化はしたがな。武器もないお前に負けるほどではない」

アックア(成程。厄介であるな。だが弱体化したと言うのなら、勝機は十分にあるのである)

アックアは細いワイヤーを取りだす。厳密に言えば、それはミクロサイズのチューブだった。
その内側から、樹脂のような液体が噴出した。
それは空気に触れると、固体化し四方八方に杭を飛び出させた。
原始的なメイスへと生まれ変わった。

アックア「勝負はここからである。Flere210(その涙の理由を変える者)!」

フィアンマ「格の違いを教えてやるか」

245 : VIPに... - 2011/08/10 00:15:34.92 25u0vCuc0 212/458

ドンッ!と壮絶な音と共に、アックアが地面を蹴る。
一瞬でフィアンマではなく、既に意識不明で倒れている上条のもとへ肉迫し
そのメイスを振り下ろした。

バゴォォォ!とフィアンマの右手がメイスを掴んでいた。

フィアンマ「俺様ではなく、上条当麻を直接狙うなんてな。
      せめて俺様を倒してからにしてくれんか?」

アックア「任務達成の条件は上条当麻の抹殺。貴様と直接戦う必要はないのである」

フィアンマ「ふ~ん。どうでもいいけど、メイスから手を離した方が良いぞ」

アックア「何を言って――」

アックアが言いかけた瞬間、メイスが突如燃えだした。

アックア「っ!」

メイスから手を離し、後退する。轟々と燃え盛るメイスを、フィアンマは上へ投げ飛ばした。
メイスは空中で灰となった。

246 : VIPに... - 2011/08/10 00:16:41.57 25u0vCuc0 213/458

フィアンマ「これで再び武器を失った訳だが……まだやるか?」

アックア「当たり前なのである。まだ終わりではないのである!」

再びワイヤー、厳密に言うとミクロサイズのチューブを取りだした。
そのチューブは膨らみ、弾けた。そこからは、アスカロンが出てきた。

フィアンマ「その程度の武器で、どうにかなると思っているのか?」

アックアは、フィアンマの問いかけを無視して、津波を繰り出す。
津波がフィアンマに襲い掛かるが

フィアンマ「ふん」

津波を振り払うように、右腕を軽く振っただけで、津波は蒸発した。

アックア「これならどうであるか!」

間髪入れずに、数千もの氷柱が生み出され、フィアンマと上条へ飛んでいく。

フィアンマ「無駄だ」

フィアンマが地に手をかざす。
それだけで上条とフィアンマの周囲の地面から炎が噴き出し
ドーム状となって2人を包み、氷柱の攻撃を全て防いだ。

フィアンマ「終わりか?」

ドームの炎が消えて、視界が戻るが、アックアは既に、フィアンマの視界から消えていた。

フィアンマ「……上か」

そう判断したフィアンマは右手から炎を噴き出し、左手で上条を抱え飛んだ。
その1秒後に、先程まで上条が横たわっていた場所に、アックアが落下してきた。

フィアンマ「さすが傭兵。デダラメな戦い方だ」

そう言いながら、フィアンマは上条を抱えさらに飛んでいく。

アックア「逃げるのであるか!」

フィアンマ「こちらの勝利条件は、お前を倒す事ではなく、上条当麻を守り切る事だからな」

アックア「逃がさないのである!」

247 : VIPに... - 2011/08/10 00:18:22.17 25u0vCuc0 214/458

フィアンマは上条を抱えながら、1km程飛んだところで地面に降り立った。

フィアンマ「お前……こいつを頼めるか?」

少女「はい!それはもう、私の愛する人の為なので!」

フィアンマ「そうか。じゃあ頼むぞ。一応腹の傷は焼いて塞いだが回復魔術を頼む。
      『幻想殺し』を避けて、部分ごとに回復させれば、右手以外は回復できるはずだ」

少女「はい!分かりました!そちらも頑張って下さいね!」

フィアンマ「お前のようなチビに、とやかく言われる筋合いはない」

少女「ただ応援しただけなのに!」

フィアンマ「いいから、早く行け」

少女「はい!」

少女はその小さい体で上条を抱え、鋼の手袋(トール)に乗り
それを操り、虫のように走って行った。丁度そこへアックアがやってきた。

アックア「あの少女は、我々の味方であった筈なのであるが……」

フィアンマ「あの少女はお前らの為ではなく、自分の“意思”で行動している。
      それだけだろう。お前と違って」

アックア「黙るのである!」

フィアンマの一言に激昂したアックアは、1mの太さはある水の鞭を、10本生み出した。
その鞭は一斉にフィアンマに襲い掛かる。

フィアンマ「ほう。先程よりは強力な魔術だな」

フィアンマは右腕を振るう。すると虚空から数十の炎の拳が現れ、鞭を蒸発させた。
その間にアックア自身が、フィアンマのもとへ突っ込む。

フィアンマ「攻撃が単調すぎる……クロスカウンターしてくださいと言っているようなものだぞ」

フィアンマは、アックアの顔面を狙って拳を繰り出す。
それは見事に直撃した。ただし、それは単なる水で出来た分身でしかなかった。

フィアンマ「だから攻撃が単調すぎると言っているだろう」

特に焦る事もなく、フィアンマは数歩後退する。
すると先程までフィアンマがいた地点に、アックアが落下してきた。

アックア「……読まれていたのであるか」

フィアンマ「元同僚だしな」

そう言うながら、右拳を繰り出す。

アックア「ふん!」

対してアックアも、アスカロンを振るう。右拳とアスカロンが激突した。

248 : VIPに... - 2011/08/10 00:19:51.04 25u0vCuc0 215/458

ズザザ!と靴が地面に擦れる音。アックアだけが一方的に弾かれた。

フィアンマ「さすがに丈夫だな。俺様の一撃を耐えるとは。だが、次で壊れるぞ」

アックア「調子に……乗らないでほしいのである!」

フィアンマの真上に、総重量2tはある水のハンマーが生み出された。

アックア「喝!」

掛け声と共に、水のハンマーが振り下ろされたが

フィアンマ「ふん」

フィアンマが右拳を上に突き出す。それだけで水のハンマーは一瞬で蒸発した。

アックア「これならどうであるかーっ!」

アックアがアスカロンを振るう。
その軌道から、とんでもない量の水が激流となってフィアンマに向かう。

フィアンマ「これは……強力だな。仕方ない、少しだけ力を出すか」

フィアンマは至って冷静に右拳を前に突き出す。
そこから超巨大な炎の拳が発射され、激流を一瞬で蒸発させた。
そして炎の拳は消えずにアックアへ向かう。

アックア「く!」

アックアはアスカロンと、即席で作りだした水の盾を展開してガードするが
それらを簡単に突き破って、炎の拳はアックアへ直撃した。

アックア「ぐおあああああああ!」

アックアは身を焦がすような痛みに襲われた。全身に重度の火傷を負ったのだ。
そこへ追撃を加えようと、フィアンマはアックアへ肉迫する。
アックアは、アスカロンを正面に構え、ガードを試みる。

フィアンマ「無駄だ」

フィアンマの右拳の一撃は、アスカロンを打ち砕き、そのままアックアの腹へと直撃した。
その一撃により、アックアは数kmほど吹き飛ばされ、ビルを幾つも突き抜けた。

フィアンマ「さて、俺様も急ぐか」

249 : VIPに... - 2011/08/10 00:21:19.23 25u0vCuc0 216/458

カザキリは2本の紫電の剣を生み出し、2体の天使に投げつける。
2体の天使は、それらを易々と避け、同時にカザキリへと突っ込む。
カザキリは冷静にその攻撃を避ける。

結果、ゴシャア!と2体の天使は激突した。
その隙にカザキリは、紫電の翼で2体の天使を包み込み
御坂以上の電撃(正確にはようなもの)を放った。しかし

ウリエル「hqhfqgbh殺glw」

ウリエルが暴風を巻き起こし、翼から強引に抜け出す。
続いて、尻尾のようなものを、カザキリに叩きつけようとする。
カザキリは、それを紫電の剣で受けて立つが、バリィィン!と紫電の剣は砕け
尻尾の一撃をまともに喰らい、幾つものビルを突き抜けながら、数十kmは吹き飛ばされた。
ウリエルの方もノーダメージと言う訳ではなく、尻尾はちぎれかかっていた。

今度こそ2体の天使は、病院へ突っ込もうとするが
カザキリが一瞬で舞い戻りウリエルにタックルをぶちかました。

今度はウリエルが吹き飛ばされる。それに黙っていなかったのはラファエル。
目にあたる部分から、極太のレーザー光線をカザキリに向けて放つ。
カザキリは翼で自身の体を包み込み、レーザーのダメージを最小限に防ぐ。
そうこうしている間にウリエルが再び舞い戻る。

250 : VIPに... - 2011/08/10 00:22:48.88 25u0vCuc0 217/458

カザキリ「さすがに、2体はきついですね……」

ガブリエルと戦った時は、真っ白な少年と共闘しても、倒すまでには至らなかった。
それなのに、目の前には、そのクラスの化け物が2体も居る。
状況は絶望的と言っても過言ではなかった。

カザキリ「それでも……『友達』とこの街を守るために負けられない!」

ウリエル「hdhhgh殺fjgwlr」

ウリエルから、風の刃が連続で繰り出された。

カザキリ「はああああああああ!」

カザキリはその攻撃を時には避け、時には翼で切り裂き、徐々に『神の火』に迫る。
そうしてある程度近付いたところで

カザキリ「ここだ!」

即席で紫電の槍を生み出しウリエルへ刺そうとする。
しかしその前に、瓦礫とコンクリートの雨がカザキリの体を叩いた。

カザキリ「が……ああ……」

正確に言うと、ビル群の雨。
カザキリの避けた風の刃が、カザキリの後方のビル群を切り裂き
そのビル群をラファエルがサイコキネシスで操ったのだ。
それでもカザキリは、なんとか耐えきる。
しかし、槍は消え満身創痍で、反撃は愚か、浮いているのがやっとの状態だった。

そんなカザキリに、容赦なくウリエルの風のブレスが放たれた。

カザキリは自身の翼でガードを試みたが、それも虚しく、ひらひらと地上へ堕ちた。
そこへ止めと言わんばかりにラファエルの極太レーザーが叩きこまれた。

カザキリ「う……あ……」

最早悲鳴を上げることすらできずに、倒れてしまった。

251 : VIPに... - 2011/08/10 00:23:54.55 25u0vCuc0 218/458

一方通行「あの天使でも……駄目だってのか……!」

思わず地面を拳に叩きつける。

一方通行「クソが……何とか……ならねェのかよォ!」

一方通行が咆哮したその時、カザキリがゆっくりと立ち上がった。

カザキリ「まだ……です……!」

既に満身創痍であるが、その眼光に諦めの色は見られない。

カザキリ(……もう私の力では、2体を狩ることは出来ない……でもせめて……道連れにしてでも
     1体は倒す!)

カザキリ「うあああああああああああ!」

カザキリが叫ぶと同時に、その体から数万の紫電が放たれた。それは2体の天使に襲い掛かった。
強力な攻撃だが、致命傷にはならない。だが動きを止める事は出来た。

ギャン!と、カザキリはその隙にラファエルの懐に突っ込み
そして自分ごとラファエルを遥か上空へ押し上げる。

カザキリ「これで終わりです!」

次の瞬間、上空4000mで、半径2kmにわたる爆発が起こった。

カザキリが執った手段――――自爆だった。

252 : VIPに... - 2011/08/10 00:24:50.95 25u0vCuc0 219/458

結果としてラファエルは消滅したがウリエルは残ってしまった。

一方通行「あの天使が……ここまでやってくれたンだ……
     いつまでも……倒れている訳にはいかねェ……」

一方通行はヨロヨロと立ちあがる。
ただでさえ天使化などで力を使い果たしている上、代理演算を行っている妹達の数も少ない。
今の一方通行の能力は、せいぜいレベル2程度だった。それでも諦めない。

一方通行「うあああァァァ!」

神化をしても倒せなかったのだ。通常状態、ましてやレベル2程度で敵うわけなどない。
それでも、わずかなベクトルの力を足に集約し、突っ込んでいく。

そんな一方通行に対して、容赦ない風のブレスが放たれた。

一方通行「うがあああァァァ!」

一方通行は、消失した。

253 : VIPに... - 2011/08/10 00:27:30.00 25u0vCuc0 220/458

上条「う……」

暗い路地裏で、上条は目を覚ました。

少女「あ、目覚めたみたいですね」

上条「お前……レッサーか……?」

レッサー「そうです。あなたの恋人、レッサーです」

上条「恋人ではねーだろ。つーかお前、俺の味方という事でいいのか?」

レッサー「はい、もちろんです!私はイギリスの為なら、敵であろうと助けますよ」

上条「イギリスの為?お前ら魔術サイドは、俺を消したがってたみたいだけど……は!
   もしや、これは罠!?」

飛び起き、構える上条。

レッサー「ち、違いますって!ああもう、本当の事を言います!私はあなたの事が好きなんです!
     だから、イギシス清教裏切ってあなたの事助けました!これでどうですか!」

上条「いや、それも罠なんじゃ……っ痛!」

レッサー「まだ安静にしていないと」

上条に寄り、介抱するレッサー。

上条「どうやら、本当に敵ではないみたいだな。でも安静にはしていられない。
   つーかここどこだ?早く病院へ行かないと!」

レッサー「ここはその辺の路地裏です。本当はトールに乗って移動しながら
     治療したかったんですけど、ガチャガチャ揺れるので
     こうしてトールから降りて治療したんです」

レッサー「フィアンマって人が焼いて傷を塞いだところに、私が回復魔術を施しました。
     少しは楽になったはずです。ですが、まだまだ重症です。
     急ぐ気持ちは分かりますが、もう少しだけ安静にしておいた方がいいと思います」

上条「そっか。とりあえずありがとう。でも病院へ急がないと」

レッサー「……仕方ありません。トールに乗って移動しましょう。
     右手は触れないように注意してください。(もう少し2人きりを楽しみたかったのに)」

上条「ああ」

254 : VIPに... - 2011/08/10 00:28:35.23 25u0vCuc0 221/458

まずレッサーがトールに乗り、その後に上条が乗る。

レッサー「飛ばしますんで、ちゃんと私に掴まっててくださいよ」

上条「おう」

返事をして、何の意識もせず、ただ丁度いい高さで、腕をレッサーへ回し
ムニュっと、何か柔らかいものを掴んだ。

上条「あれ?」

レッサー「あん♡」

同時に、トールが暴れ出した。レッサーが突然の事で操作を誤ってしまったのだ。
グラングランと、トールは右往左往に激しく揺れ動く。

上条「ご、ご、ごめん!だ、だか、ら、この、揺れを、とめ、て!」

上条はトールから落ちまいと、掴む力をさらに上げる。

レッサー「ああ♡そんな♡激しすぎます♡」

さらに暴走するトール。

上条「うわあああああ!もう駄目だああああ!」

レッサー「わ、私もですうううううう!」

瞬間、スパーン!と2人は地面から5mの高さのところまで放り出された。
このままだと頭から落ちる軌道だ。

レッサー「このまま落ちたら死にます――――!」

上条「んな事分かってる!」

上条(こんなところで死んでたまるかよ!)

上条は空中で姿勢を入れ替え、レッサーをお姫様だっこし、見事に地面に着地した。

255 : VIPに... - 2011/08/10 00:29:51.80 25u0vCuc0 222/458

上条「ふぅ、何とか助かったか」

レッサー「あ、ありがとうございました///私の操作ミスで放り出されたと言うのに。
     足、大丈夫ですか?」

完璧な着地とは言え、5mという高さから落ちて
足が痛まなかったわけはなかったが、上条は取り繕って

上条「大丈夫だよ。まあ元はと言えば俺のせいだし。今度は気をつけるよ」

レッサー「軽くなら……揉んでも大丈夫ですよ」

上条「その下ネタに持っていく思考は相変わらずかよ。てか駄目だろ。また操作ミスるだろ」

レッサー「さっきは心の準備が出来ていなかっただけです。来ると分かっていれば大丈夫です。
     なんなら下の方もいいで」

上条「馬鹿なこと言ってないで、早く行くぞ」

レッサー「ちぇ。仕方ありませんね」

そうして2人がトールに乗ろうとした時

ローラ「レッサー?何をやっているのかしら?」

上条「誰だ!?」

レッサー「ちっ!先手必勝!」

レッサーはトールを掴み、ローラへと突っ込んでいく。

レッサー「詠唱も、何らかのアクションもさせません!」

トールがローラを掴もうとする。

上条「駄目だ!一旦引っ込め!」

レッサー「え?」

上条の叫び声と同時に、ボガァァァン!とローラが爆発した。
その爆風でトールは粉々に砕け、レッサーは上条の手前まで吹き飛ばされた。

256 : VIPに... - 2011/08/10 00:31:01.50 25u0vCuc0 223/458

上条「レッサー!」

上条はレッサーに駆け寄ろうとする。

ローラ「巨人に苦痛の贈り物を♪」

ローラの炎がレッサー目がけて襲い掛かる。

上条(これはステイルの魔術!しかもステイルより何倍もでけぇ!けど、臆することはねぇ!)

上条の『幻想殺し』は異能の力であるならば、どれだけ強大な力であっても
ステイルの『魔女狩りの王』やインデックスの『竜王の殺息』(ドラゴンブレス)などの
持続系でなければ、基本的に打ち消せる。

上条はレッサーを狙う炎に迷わず右手を突き出し、打ち消した。

上条「大丈夫かレッサー!」

レッサー「……」

レッサーを抱え込み叫んだが、返事がない。そこへ容赦なく

ローラ「七閃♪」

7本のワイヤーが襲いかかってきた。

上条(今後は神裂の……!)

七閃はただのワイヤー攻撃。上条の右手では打ち消せない。
だから上条はレッサーを抱えて、逃げるために走り出した。

ローラ「逃げ切れると思いて?」

上条(くっ!)

シュルルル!と7本のワイヤーが高速で上条の背中に食い込んだ。

上条「が……あ……」

上条は思わず転んでしまう。レッサーは地面に投げだされた。

257 : VIPに... - 2011/08/10 00:32:49.90 25u0vCuc0 224/458

ローラ「あらあら、もう終わりなのかしら?」

上条「お前、一体何者なんだ?」

ローラ「イギリス清教の最大主教、ローラ=スチュアート」

上条「何でステイルの魔術や神裂の技が使える?」

ローラ「私は、イギリスにある三大宗派のうちの1つ、清教派のトップなる者。
    これぐらいは当然なのよ」

上条「答えになってねぇんだよぉ!」

上条は駆け出し、ローラに殴りかかるが、シュボ!と拳はローラをすり抜けた。

上条(蜃気楼か!?)

ローラ「どこを見ているのかしら?」

声は後方から。本物のローラは、投げ出されたレッサーを踏みつけていた。

上条(抱えながら戦うのは無理だから、敢えて放っておいたのが仇になったか!)

上条「その足をどけやがれ!」

ローラ「そう。良いけど」

言われた通り、ローラはレッサーから足をどけた。

上条「えっ(そんなあっさり!?)」

直後、レッサーは目覚め起き上がった。

レッサー「ふぇ……あ!助けて下さ~い!」

起き上がったすぐ近くにローラが立っていたためか、レッサーは助けを求めて
上条に駆け寄り抱きついた。

レッサー「こ、怖かったですぅ~」

上条「無事でよかった。でもこれからあいつと戦わなきゃいけないから
   お前はその辺に隠れていてくれ」

レッサー「いえ、その必要はないですよ。だって――」

グサ!と氷のナイフが上条の背中に突き刺された。

上条「レッサー……お前……」

為す術もなく、上条は地面にうつ伏せに倒れた。

レッサー「――だってあなたは、ここで死ぬんですから」

261 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) - 2011/08/10 03:04:44.84 kY7SBxA/0 225/458

>>1乙
・アックアの一人称は「俺」じゃなかった?
・カーテナはイギリスでしか使えないから日本では武器としてもアックア強化も無理

262 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京西部) - 2011/08/10 10:07:55.31 atcetRMv0 226/458

フィアンマとレッサーって面識無かったか?
この時点でレッサーが本物か疑ってはいたがやはり偽者か?

264 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) - 2011/08/10 12:40:32.07 MxpPBk1x0 227/458

カーテナは日本で使えない
もう話がめちゃくちゃだけどこのまま突っ走れ

268 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) - 2011/08/13 22:05:58.35 ZAnTVKq80 228/458

どうでもいいけどエリザードとか何で来たの?

269 : VIPに... - 2011/08/15 01:11:05.14 itpxcIft0 229/458

>>261>>264
カーテナ使えないとは思ってたが
アックアを強くするためには仕方なかった。すまない

>>262
レッサーは本物。単純にミスった

>>268
禁書キャラを出せるだけ出したかった
それだけ


続き
アレイスター「さあ、最後の晩餐(ショータイム)だ」【3】

記事をツイートする 記事をはてブする