2 : 以下、名... - 2016/12/12 01:04:03.92 VTn7jCkN0 1/9


「……なんで部室に山盛りのゴーヤがあるんだ?」

「ゴーヤじゃないよ、ゴーヤーだよ」

「わたしたちもわからないんだ。入ってきたら、大量のゴーヤがあって」

「ゴーヤじゃないよ、ゴーヤーだよ~?」

「ムギも梓も知らないんだよな?」

「えぇ、わたしたちは澪ちゃんたちの後に来たから」

「となると、一体誰がこのゴーヤを……?」

「ゴーヤじゃないよ、ゴーヤーだよぉーーー!!」

「ツルレイシ」

3 : 以下、名... - 2016/12/12 01:04:42.11 VTn7jCkN0 2/9



 *


「で、どうすんですか、この大量のツルレイシ。捨てるにしても勿体ないですよ」

「だよなあ、腐ってるわけでもなさそうだし」

「五人でそれぞれ持って帰っても余る量だぞ」

「うーん、とりあえず袋にまとめておくか」

「うわぁ……ゴミ袋が一杯いっぱいになりましたよ」

「改めて見ると凄い量ね。仕掛け人の本気を感じるわ」

「仕掛け人はツルレイシに恨みでもあったのか?」

「むしろ愛していたのでは?」

「でもこうして愛の込められたゴーヤーがゴミ袋に詰められている姿を見てると……まったく食べる気が起きてこないね!」

「もう生ごみにしか見えないな」

「おいなんでゴミ袋に入れちゃったんだ」

「それは三十秒前の自分に言ってるんですか?」

4 : 以下、名... - 2016/12/12 01:06:28.59 VTn7jCkN0 3/9



 *


「レジ袋に分けてみたわ」

「かなりマシになったな」

「マシとかいうな、マシとか。このうち五袋をわたしたちで分けるとして、残り十袋か……」

「配れない量ではありませんけど、なんでツルレイシって思われそうで辛いですね」

「間違いなく不審者ね」

「憂ちゃんなら使い切れない?」

「できるかもわからないけど、食卓がゴーヤーまみれになるのはお断りだよ」

「朝昼晩、おはようからおやすみまでツルレイシ」

「良かったじゃないですか唯先輩、まるで沖縄旅行ですよ」

「あずにゃんの中の沖縄にはゴーヤー畑しかないのかな」

5 : 以下、名... - 2016/12/12 01:07:10.20 VTn7jCkN0 4/9



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「よし、誰がこのツルレイシを配るかを決めるか。誰かやりたいひとー?」


 「…………」


「さっき不審者扱いを免れないと言った手前、誰もやりたがりませんね」

「そりゃそうだよなあ」

「律、部長だろ。部室で起きたトラブルは部長が片づけるべきだと思うんだ」

「おっ、さっそく部長を切り捨ててくるゥ!」

「信頼の裏返しですよ」

「裏返してくれなくていいんだけどな?」

「りっちゃんならやってくれるって信じてる!」

「まっすぐな信頼も辛かった」

6 : 以下、名... - 2016/12/12 01:07:55.36 VTn7jCkN0 5/9



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「もう諦めるしかないと思うよ、りっちゃん」

「いいやまだだ。わたしにはとっておきのワイルドカードがある」

「この期に及んでまだあがきますか」

「唯、お前に言っておきたいことがある……」

「うん?」

「……誕生日、おめでとう」

「えっ」

「このツルレイシが誕生日プレゼントだ。本当におめでとう、唯」

「……あの、りっちゃん……わたしの誕生日は二週間ぐらい前なんだけど……」

「あぁわかってる。遅くなってごめんな」

「遅くなったにしても微妙な時期だよ!」

「そうか、誕生日プレゼントって内容はどうあれ断りにくいもんな。律にしてはいい作戦を考えたもんだ」

「なに澪ちゃんは納得してるの!?」

「唯先輩、おめでとうございます」

「心がカケラもこもってないよ!!」

「……唯ちゃん、遅れちゃったけど本当に誕生日おめでとう!」

「……まっすぐな言葉も辛かった」

7 : 以下、名... - 2016/12/12 01:08:49.68 VTn7jCkN0 6/9



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 その日、

 「おいゴーヤー食わねぇか?」

 と言って回る不審者が確認されたが、

 この一件とは無関係であると

 平沢唯は強く心に刻んだという。

8 : 以下、名... - 2016/12/12 01:09:35.24 VTn7jCkN0 7/9



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「ただいま~……」

「おかえり、お姉ちゃん。あれ、どうしたの? すごい疲れてるみたいだけど?」

「うん、詳しくは言えないんだけど、色々あったんだよ。色々とね……」

「そ、そうなんだ……。あ、そういえば今日学校でゴーヤを」

「ゴーヤじゃなくてゴーヤー……、いやもう今日はいいかな……」

「? あのね、ゴーヤをたくさんもらって」

「……えっ? 憂にはあげてないはずなんだけど……?」

「それってどういうこと? わたしが貰ったのは和ちゃんからだよ?」

「えぇ?」

「お姉ちゃんたちにも~って部室に置いておいた、って言ってたけど」

「……ちょっと憂。憂のもらったゴーヤーを見せてもらってもいい?」

「うん。これ全部だよ」

「うわぁ」

「すごくたくさん貰っちゃって」

「和ちゃん……一人ぶんが多すぎるんだよぉ……!」

9 : 以下、名... - 2016/12/12 01:10:26.12 VTn7jCkN0 8/9



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 それから一週間ほど、

 平沢家の食卓にゴーヤーが並ばない日はなかった。

 平沢唯は後日「これが沖縄の気持ちだよ」と語り、

 ある曲を書き上げた。

 そうして生まれた曲が『ごーやーはしゅしょく』であり、

 そこから派生した曲が『ごはんはおかず』なのである。



 ちなみに派生前の曲はツルレイシ派の梓によって握りつぶされた。 ‐おしまい‐

10 : 以下、名... - 2016/12/12 01:11:08.86 VTn7jCkN0 9/9

以上です、ありがとうございました

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