関連
さやか「西木野先生」【前編】

210 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/02/16 03:21:39.15 5Sjd1O9H0 160/477

ーーーーーーーー

「もし」

「もし、西木野先生?」

真姫「ヴェェ?」パチッ

真姫(っと………廊下の長椅子?)

織莉子「大丈夫ですか?」

真姫「美国、織莉子さん?」

織莉子「はい」

真姫「ヨイショ」

織莉子「大丈夫ですか?
    先生の方こそ少し、お疲れなのでは?」

真姫「んー? まあ、確かに?
   (明らかに変だなぁ)」

211 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/02/16 03:27:02.86 5Sjd1O9H0 161/477


ーー児童公園ーー

真姫(なんとなく)

織莉子(ここまで一緒に歩いて来てしまった)

織莉子「西木野先生はあそこで、お仕事でしたか?」

真姫「そうね。美国さんは?」

織莉子「少し、関心がありまして。
    関わり合いになってもおかしくない身の上ですので」

真姫(ヴェェ………重い、さらっと言うのが重い)

ベンチ着席

織莉子「先日は色々有難うございました」

真姫「どういたしまして。
   それで、あれから休めた? 体調は?」

織莉子「お陰様で」ニッコリ

真姫「………ガチお嬢様ね」ボソッ

織莉子「?」

真姫(ほんの僅かに、眉が不快気に)

真姫「ごめんなさい。只、私もそういう感覚を多少は知ってると思うから。
   あなたがどう思おうと、
   あなた自身の物腰、雰囲気は本当にいい意味でお嬢様そのもの」

織莉子「そう、ですか。
    あなたがそう言うのならそうなのでしょうね。
    先生自身も、今の私への評価をそっくりそのままお返ししたい人ですし」

真姫「………知ってた?」

織莉子「………」ニッコリ

212 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/02/16 03:32:37.31 5Sjd1O9H0 162/477


真姫(ヴェェ)

織莉子「大病院の跡取り娘で元μ‘sのアイドル兼作曲担当。
    そう、言われる事も慣れるのでしょうね。
    あなたの名前を知って、少し関心を持てばすぐ分かる事ですから。
    私も、恩人に欠片の関心も持たない程に薄情な人間ではないつもりです。
    (あの娘程ではありませんが)」クショウ

真姫「まあ、そうね………」

織莉子「その意味では私達はお互い様。
    但し、そこにマイナスの意味があるなしと言う点では
    比べものにならないですけど」

真姫(先手必勝、攻撃は最大の防御、か)

真姫「美国さん………」

織莉子「そういう次第もありまして、
    出来る事なら名前で呼んでもらえましたら」

真姫「織莉子さん、学校は?」

織莉子「今は、白女に」

真姫「ああー、本当にお嬢様学校か」

織莉子「………」

真姫「厳しい? 現状」

織莉子「否定したら嘘以外の何物でもないでしょうね」

真姫「そっか………
   私の勝手な願望だけど、私は行きたかったな」

織莉子「?」

213 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/02/16 03:37:50.58 5Sjd1O9H0 163/477


真姫「私の場合、小学校、中学校は、区立の一貫校に通ってた。
   まあ、普通の区立よりは若干進学率とブランド力がある、って所ね。

   面倒だから飾り気無しの事実言っちゃうけど、そこで私は若干浮いてた。
   私自身のスペックが高過ぎたのよ。

   結構なお嬢様育ちで能力的にもトップランナー。
   ハブられはしなかったけど、敬意をもって若干距離を置かれてた。

   だから、高校は私立のお嬢様学校に行く。
   私も、中学の先生も友達も、みんなそう信じて、少なくとも私はそう望んでた」

織莉子「でも、実際にはその評価とはちょっと合わない
    音ノ木坂学院のスクールアイドルでしたよね」

真姫「親の意向。将来、病院を継いだ時のために、
   地元の音ノ木坂学院に進学するって決められてた」

織莉子「地盤作りですか、地盤看板鞄」

真姫「はい正解。
   両親は東京に大手と言ってもいい病院を築き上げた。
   だからこそ、後を継ぐ私は、
   最も重要な十代の一時期には
   しっかり地元と顔を繋いでおく必要がある、って所」

織莉子「………」

真姫「ああ、やっぱり余り愉快な話題じゃなかった?」

織莉子「いえ………ご両親は自ら大きな病院を築き上げて、
    その娘として、その下であっても自らの意志で懸命に逞しく。
    眩い、青春時代なんでしょうね」

真姫「………なんか、私とあなた、
   絶対に年齢設定と台詞が引っ繰り返っている様なんだけどイミワカンナイ」

織莉子「そうですか?」ニッコリ

214 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/02/16 03:42:01.75 5Sjd1O9H0 164/477


真姫「そう。言われたくないだろうけど、建前通りの事を言わせてもらう。
   あなたは、あなたの青春は終わってなんかいない、って。
   自分で言ってて残酷だと思う。
   それでも、みすみす諦めるのは余りにも勿体ないから」

織莉子「そう、なんでしょうね。
    自分の手でそれを勝ち取った先生がそう言うのは分かります」

真姫「そして、あなたは頭がいい。
   大人の言う正論を正論であると理解して反抗をやめてしまう。
   次の言葉を思い浮かべても、その次に返って来る言葉を先に理解してしまう」

織莉子「それは、先生の経験則ですか」

真姫「そういう事になるわね。
   だけど、私の勘では、多分あなたもそういうタイプ」

織莉子「否定はしません」

真姫「親が理性的で子がその素質を受け継ぐと、
   子どもとしてもなかなか厳しいものがあるわね。

   理屈では大人であり庇護者である親にはかなわない。
   その事を先んじて理解出来てしまう。

   そして、条件を設定して分析した最適解を指針にしてしまう。
   その行き着く先は袋小路」

織莉子(ああ、そうか………)

織莉子(だから、私はあの娘に、
    あの娘がいてくれる事に、あんなにも救われた)

真姫(天を仰いで、何を考えてる?)

織莉子「似てるんですかね? 私達って?」

真姫「そういう所はあるかも知れない」

215 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/02/16 03:45:20.96 5Sjd1O9H0 165/477


真姫(そういう所………)

真姫 肉眼で全身スキャン、いったん戻って部分的に………

真姫「………」

織莉子「どうしました?」ニッコリ

真姫「ヴェェ? いや、なんでもない」クククッ

織莉子「? なんですか?」

真姫「あ、ごめんね。ちょっと昔の事思い出して」

織莉子「昔? μ‘sの事を?」

真姫「ううん、その前。中学の頃の友達をちょっと、ね」

織莉子「そうですか」ニッコリ

織莉子「先生は、その袋小路からは脱出出来たんですか?」

真姫「んー、多分ね」

織莉子「後学のために、その方法を聞かせていただけますか?」

真姫「………当たり前だけど、
   私とあなたでは似ている所もあれば大きく違う所もある。
   あなたにとっては辛い話になるかも知れないけど」

織莉子「………」ニコニコ

真姫(ヴェェ………)

真姫「ここ一番で、本当に大切な事、自分がやりたい事やるべき事を見極める。
   石橋を叩いてもいいけど、音色がGoなら腹をくくって突き進む、
   って所かしらね」

織莉子「度胸、胆力が求められる方法ですね」

216 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/02/16 03:49:04.20 5Sjd1O9H0 166/477


真姫「実際、試したらいわゆる脚がガクブル震える、ってのも本当だから。
   あなたは私とは違う。悲しいけど遅過ぎる事もある、
   と言うのも厳然たる事実だけど。
   そして、私にはその一歩のために後押しして、助けてくれた仲間もいた」

織莉子「μ‘sの仲間ですか」

真姫「………」コクッ

真姫「私の両親にとって、ピアノはお嬢様らしい習い事の一つに過ぎなかった。
   親の望みは何よりも私が医者として病院を継ぐ事。
   私は、小さい頃は結構本気でピアニストに憧れて、
   そして、親の思いを察してその限度の中で諦めていた。

   そんな私がμ‘sに出会って、私の音楽が求められて、
   廃校問題で追い詰められて厳しく真剣だからこそ、
   嬉しくて、楽しかった」

織莉子「なんとなく、ですけど想像はつきます。
    ネット上にも色々残っていますから。その時の先生を見たら」

真姫「なのよねぇ………
   そのμ‘sでも、やり始めた頃に油断してちょっと成績落としてね。
   その時に親からアイドル活動も禁止されて、もう終わりだって思った。

   だから自分から身を引いたんだけど、その時に、
   本当の私の望みを理解して、私の親にも頭を下げて、
   強引なぐらいに引っ張り戻してくれた。それがμ‘sのみんなだった。

   私も本気でお願いして、………両親も、理解してくれた」

織莉子「いい、お話しですね」

217 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/02/16 03:52:08.93 5Sjd1O9H0 167/477


真姫「そう。出来過ぎてるぐらいにいいお話。
   あの時は勝算なんて見えなくても、それでも打って出た。
   今考えると、それでも勝てる、思いが通じる、って信じてたのかも知れないけど。

   あの当時から、両親は私を見栄えのいい跡継ぎにする事しか考えていない俗物、
   だけど私の事は愛してくれてる、って思ってた。
   実際、跡継ぎの義務以外では存分に甘やかされて可愛がられて愛されてたのも本当だから。

   でも、今考えると、もう少し多面的で豊かな愛情、感情を注いでくれてたんだとも思う。
   ………私も、母親にでもなれば、もう少し実感出来るのかも知れないけど、
   こればっかりは今の所当てが無いからねぇ」タハハ

織莉子「いいお友達に、いいご両親ですか」

真姫「うん。そんな人達に支えられて、努力して、
   あなたが言った最高の輝きを手にする事が出来た。それは事実」

織莉子「………」

真姫(絶対、きついよね。
   織莉子さんにこれ言った私の方がきついヴェェ………
   だけど、彼女の聡明さだと、ごまかすよりはマシって考えるしかない)

織莉子「泣けるのかも知れない、そう思いました」

真姫「え?」

織莉子「先生と会った時、あそこで、もしかしたら泣けるのかも知れないと。
    はっきり理屈でそう思ったかは分かりませんが、
    そんな事を考えていた、そうじゃないかと思います」

真姫「そう」

織莉子「私の両親は、あの病院で亡くなりました。
    母は、朗らかでそれでいて思慮深くて、父をよく支えて、
    何よりも私の事を愛し父の事を愛して、
    今、どう思い出しても素晴らしい母でした。

    その、母は父の政界進出に反対して、最後まで懸念していた。
    インテリでお人好しな父は政治家には向かないと、
    やはり、母は聡明で、誰よりも父の事を理解していました」

218 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/02/16 03:55:59.81 5Sjd1O9H0 168/477


真姫「交通事故だったそうですね、それも相手が一方的に悪い。
   お悔みします」

織莉子「有難うございます。
    父の事は、私には分からない。
    本当は正しいのか間違っていたのか、そんな事はもう分からない。

    只、母を喪った時の父の慟哭は耳から離れません。
    その母が言っていた通り、それも、最悪の終わり方をしてしまった。

    私の思い上がりでもなんでも、私は、父の支えにも助けにもなれなかった。
    そして、心の何処かで父に裏切られ置き去りにされたと思ってる」

真姫「娘から見たら、掛け値なしに父親からひどい仕打ちを受けた。
   そう思っても当然だと思うけど」

織莉子「有難うございます。
    そんな思いで、私の心の芯は、どこかシンと冷えて、壊れてるのが自分でも分かる。
    だから、泣く事も出来ない、
    あの場に立って思い出しても、結局泣き方は思い出せませんでした」

真姫「治る、って言葉は仕事柄無責任には使えない。
   まして、全くの専門外の所で。
   でも、壊れたなら、壊れたって分かってるんなら、
   今は分からなくても治す見込みはある、かも知れない。
   それが昔通りなのかは分からないけど」

織莉子「先生が発言を躊躇した様に、
    今の私には居場所はありません。家にも、学校にも。
    元々が政治家一族の美国の家で、あの父の娘として親族との折り合いもよくありません。

    学校もしかり、白い器の中は、ご想像通りにドロドロしています。
    その家柄を過剰に意識して、成り上がりの資産家を公然と侮蔑する名家の集団。
    それを鼻で笑って正面から怒って跳ね返す様な強い娘もいる。

    そんな価値観の中では、私はとっくに終わった存在。
    まあ、今となってはそれはそれで楽だったり、慣れたりもしましたけど。

    分かった事は、少なくとも今までの私は、
    美国久臣の娘、それだけの存在でしかなかった、
    少なくとも、他人からの評価はそうだった、そういう事です」

219 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/02/16 03:59:51.21 5Sjd1O9H0 169/477


真姫「………あなたがそう言うのなら、
   低く見て六割方以上は当たってるんでしょうね」

織莉子「本当に探り合いですね。
    安易な気休めや励ましは作り笑顔に簡単に飲み込まれる。
    先生はそれを分かった上で的確に打ち込んで来る」

真姫「なのよねぇ。
   本当なら、ここで理屈以前の何かで引っ繰り返す力が欲しいんだけど、
   あいにく私にそんな持ち合わせはない。
   これじゃあ千日手だわ」ハアッ

織莉子「結局、似た者同士ですね」クスクス

真姫「そうかもね。
   ………問題は、あのお屋敷ね」ンーッ

織莉子「えっ?」

真姫「私は外科医。ハード面から治すのがお仕事。
   だから、わざわざソフトにアプローチするよりは、
   ハードの側から発想してみる」

織莉子「はあ………」

真姫「そちらの事情は一方的に推測するわよ。
   私には、家に付随した思い出とかそういう事は分からない。
   お屋敷以外の現金資産がどれぐらいあるかも分からないけど、
   税金の事もあるし、中学生一人で相続して維持するのは並大抵じゃない」スマホスッスッ

手帳ビリリッ

真姫「親族に相談するのが難しいなら、出来れば弁護士通して家庭裁判所に相談する事ね。
   それで、第三者の後見人を選任してもらうと言う方法もあるわ。
   正直、プラスマイナスがどうであろうと、子ども一人で手に負える資産だとも思えないし。
   それに、学校の事だってある。もし白女が難しくても、ずるずると全放棄は勿体なさ過ぎる。
   ここか、それが難しければまずは法テラスに行って、それで家裁に相談してみるの」

織莉子(弁護士会の子どもの人権窓口………)

織莉子「そう、来ましたか。私へのアプローチ」

220 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/02/16 04:03:30.49 5Sjd1O9H0 170/477


真姫「んー、まあ、必要な事ではあるからね。
   腹が減っては戦は出来ぬ。
   現代社会で生きていく以上、
   肉体と精神とお金を分けて考える事は難しいから。
   どれかが駄目だと当然他にも響いて全部おかしくなる、逆も又真なり」

織莉子「一つが上手くいけば、他も上手くいくと?」

真姫「だといいんだけど、少なくともいい影響は出るでしょうね。
   これは、勝手な私の勘だけど、もし、織莉子さんにその気があるなら、
   現実的、リアリズムで目の前のやるべき事に打ち込んでいれば案外気が休まる。
   そういう事になるかも知れないって」

織莉子「その時だけでも忘れられるかも知れない、と言う事ですか?」

真姫「逆効果かも知れないから、選ぶのはあなたに任せるけどね。
   時期的に早すぎる気もするけど、
   そこは織莉子さんの聡明さと強靭さにちょっと甘えて。
   手遅れになる方が元も子もないって割り切っても構わないかなと」

織莉子「騙されて身ぐるみ剥がれて、ありそうな話ですね」

真姫「それが解ってるなら上々。うっかり流れに任せたら、
   親族でも弁護士、司法書士でも、後見人の金銭トラブルは少なくない。
   資格を停止剥奪されたり刑事事件になるケースも続出してる。

   だから、親族であれ法律職であれ、
   大きなお金に関する約束や説明は録音しておいた方がいいわね。
   じゃないと、子ども一人、簡単に転がされるわ」

織莉子「詳しいんですね」

真姫「私自身が資産家の一人娘だから。
   仕事柄、病室の枕元や控室で色々耳にして鬱になったりもする訳」

織莉子「………」

真姫「怒った?」

織莉子「え?」

222 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/02/16 04:07:18.95 5Sjd1O9H0 171/477


真姫「ストレートに子ども扱いしたけど、あなたは子どもよ。
   頭の中も、社会的にも。

   今、身近な大人を信じろ、と言うのは難しいかも知れないけど。
   それでも、関わった大人として取っ掛かりぐらいは用意しておく。

   黙って滑り落ちるのを見過ごすだけで終わるのは寝覚めが悪い。
   あなたが人並み以上に聡明で、独りで出来る事が人より多い。
   だから、余計に危うく見える」

織莉子「承りました」

真姫「そう。今まで期待に応えて来たみたいだから私もお願いしておこうかしら。
   私に、最低限の自己満足ぐらいはさせてちょうだい、って。

   私は赤の他人で只の大人で只の医者だから、
   せめて、手遅れにならないで欲しい、医者的な意味で。

   先の事が見えないなら、せめて明日明後日、
   食べたいもの美味しいものだけでも考えて望んでみて欲しい。
   その程度の事よ」

織莉子「………簡単に言わないで下さい、
    それが本音ですけど、大人として当然の発言、承ります」

真姫「そう。じゃあ、私はぼちぼち本業に戻るから」スクッ

織莉子「………ご親切に、有難うございました」ペコリ

真姫(営業スマイル)

スタスタ

織莉子「………」イチレイ

226 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/02/21 12:53:32.93 8z5PCWGx0 172/477

ーー見滝原市立病院外科医局ーー

真姫「戻りました」

先輩医師「お疲れ。どうだった?」

真姫「カクカクシカジカ」

先輩医師「そんなトコだな。子どもは熱を出もんだ」

真姫「はい」コーヒーブレイク

先輩医師「その子、
    西木野先生が見つけるまで児相に繋がってなかったのか?」

真姫「いえ、近所からの情報で児童委員も動いていたそうです。
   児童委員が訪問しても親から子どもへの接触を拒否されて、
   児童委員から通告を受けた児相も警戒しつつ緊急事案を優先していた。

   その間に、事件の疑いの強い外傷のある児童がいる、
   と言う医師からの通告が警察経由で入って、
   それで既に警察の保護下にあった千歳ゆまさんを一時保護したと言う流れです」

先輩医師「まあー、聞いてる限り、
     不幸中の幸いって程度には運が良かったって事だわな」

真姫「はい」

227 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/02/21 12:59:28.43 8z5PCWGx0 173/477


先輩医師「児相と病院、お互いに市の施設で、
     ちょっとしたパイプがあってタイミングも良かったから
     西木野先生に行ってもらったけど、
     あっち、児相は医療的にも厳しい所があるんだろうな」

真姫「そうですね。記録を読む限り嘱託医の先生は熱心な人ですが、
   熱意で済む事と済まない事があります」

先輩医師「うちでも通告は何度か経験しているが、
     どっちかって言うと顔繋いでるのは小児科と救命だな。
     マニュアルはあるし、事務方でも色々考えてはいるみたいだが、
     今ん所は現場の後追いがやっとって所か」

真姫「後の事はある程度組織立ってやってもらえますけど、
   それでもトラブルは覚悟ですからね」

先輩医師「ある程度はしゃーない、それも大人の仕事の内って奴だからな。
     こっちも大概だが、あちらさん、児相の忙しさは洒落にならないからな。
     どっちもこっちも税金の使い所間違えっぱなしだ」

プルルルル

真姫「はい、外科医局西木野………」

ーー救命病棟集中治療室ーー

にこ「ママ、ママあっ!! うううっ………」

にこママ「……シュー……シュー……」ナデナデ

スタスタ

真姫「………」

真姫「………意識、戻ったんですね」

にこ「ん、んんっ」ポロポロ

看護師「そろそろ」

にこ「はい」ススッ

228 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/02/21 13:04:37.91 8z5PCWGx0 174/477


救命部長「意識が戻って一山超えたのは確かですが、
     外傷によるダメージとその後の衰弱で
     体力、特に免疫力が大幅に低下しているのは確かです」

にこ「はい」

救命部長「気力と体力のバランスが追いついていない状態です。
     意識が戻った勢いで行動した場合、
     免疫の低下で微弱な感染症から重態に陥りかねない状態です。
     ですので、もう少し観察、治療の上で病棟の移動を検討する事になります」

にこ「分かりました。有難うございます」

真姫「………」

ーー病院廊下ーー

真姫「もしもし、私………ええ、そろそろ………」

ーー恭介病室ーー

仁美「それでは」ニッコリ

恭介「うん、有難う」ニコッ

スタスタ

ーー病棟フロア自販機周辺ーー

仁美「………」

テクテク

真姫「お見舞いだった?」

仁美「あ、はい」フウッ

真姫(なんかあった? いや、なかったなこりゃ。
   男子たるもの今は一応諦めて、安定して、その裏側を簡単には見せない。
   恋する乙女には丸わかり。
   まして、その弱さも知っていそう、
   ってライバルの心当たりがあった日には………)

229 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/02/21 13:09:54.53 8z5PCWGx0 175/477


ーー夜・廃ビル周辺ーー

マミ「………」

ソウルジェムボウッ

マミ「そろそろ、危ないわね」スマホ

マミ(これから…………で結界に入ります、と、鹿目さんに………
   美樹さんとは予定が合わなかったけど………)メルメル

ーー上条邸周辺ーー

さやか「………」

杏子「ふうん、ここが例の坊やの家」

さやか「!?」

杏子「魔法ってのはなぁ、自分だけの望みを叶えるためのもんだ。
   他人の為に使ったってロクな事にならないのさ。
   巴マミはその程度の事も教えてくれなかったのかい?」

さやか「………」

杏子「馬鹿は馬鹿なりに、その坊やの腕でも治してやりゃあ
   一生恩に着せてやる事も出来たかも知れないのにな。
   それが結局一文の得にもならないお友達のためって、
   たった一度の奇跡のチャンスをとことんくだらねぇ事に使いやがって」

ブチッ

230 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/02/21 13:13:14.15 8z5PCWGx0 176/477


ーー見滝原市内歩道橋上ーー

杏子「ここなら遠慮はいらないねぇ。
   いっちょ派手にやろうじゃん」

タタタタッ

まどか「待って、さやかちゃん!」

さやか「………」

まどか「駄目だよそんなの!
    絶対おかしいよ!!」

まどか「さやかちゃんごめん!」ヒュウンッ

タタッ

ほむら「まずい…っ」

さやか「まどか! あんた何てことを!!」

まどか「だって、こうしないと…!」

さやか「………」クラッ

ーーーーーーーー

シンデルジャネーカヨゾンビニヒドスギルヨ

キュゥべえ「どうして人間はそんなに
      魂の在処にこだわるんだい?
      訳が分からないよ」

コッコッ


ほむら「………」スッ

さやか「………?
    ………どうしたの?」

231 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/02/21 13:16:50.57 8z5PCWGx0 177/477


カクカクシカジカ

さやか「」セイシンテキニ

ほむら「………とにかく………」ユビコメカミ

ほむら「この事は巴マミには少しの間伏せておきましょう」

さやか「何よ、それ?」

さやか「あなたのその様が物語っている。
    巴マミも魔法少女、その心は決して強いばかりではない」

杏子「(こっち見んな)んー、ああ、こいつの言う事も分からないじゃねーよ。
   あたしらだってこうだ、マミ先輩だっていきなりはまずいだろ」

さやか「………分かった………
    もう、帰る」

杏子「………ああ」

まどか「ひどすぎるよ………」

ほむら「分かったでしょう、
    あなたの憧れている魔法少女がどういうものか」

まどか「………」

杏子「知ってやがった、のか?」

ほむら跡地「」コツゼン

234 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/02/29 03:52:09.77 asefqVl50 178/477

 ×     ×

ーー朝 教室ーー

和子「はーい、席着いてー。
   HR始めまーす」

まどか「………」

さやか席「」

ーー廃教会ーー

さやか「………あたし、あんたのこと色々と誤解してた。
    その事はごめん、謝るよ」

さやか「………でもね、あたしは人の為に祈ったことを後悔してない。
    高過ぎるものを支払ったとも思ってない。
    この力、使い方次第でいくらでも素晴らしいものにできるはずだから

杏子「! …なんで、アンタは………」

さやか「人を救う、って、簡単じゃないんだよね。
    なんか大きな力でぱーっと、とかそんな」

杏子「………」

さやか「傷つけるのは簡単なのに、
    一度壊れたものを治すのは凄く、難しい。
    取返しのつかない事も一杯ある。
    でも、あの時は、絶対にあきらめたくなかった」

235 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/02/29 03:57:24.10 asefqVl50 179/477


杏子「そんなに、大事なのかよ?」

さやか「うん、大事な友達。
    でも、それだけじゃなかったかも知れない。
    目の前で、出来る事があって、って、
    赤の他人じゃ無理だったかも知れないけど、
    案外単純な事だったかも知れない」

杏子「そんな事のためにゾンビにされたんだぞ、馬鹿かよ?」

さやか「まあ、知らなかったからね。
    それでも、あたしは後悔なんてしない。
    やっぱり、自分の出来る事で、仁美に死なれるのは無理。
    それに、あんな化け物が身近をうろついて
    身近な人を襲うかも知れない、って知っちゃったし」

さやか「なんだかんだ言って、みんな大事な事で、
    それで、本当だったら凄く難しい大変な事だから。
    普通の人、大人が一生懸命やって、それでも出来ないぐらい難しい事を、
    一度だけでも絶対欲しい所で手に入れた。
    だから、それが高すぎる、なんて思ってない」

杏子「………」ギリッ

さやか「それからさ、そのリンゴ、
    どうやって手に入れたの?」

ーーテレビ局 スタジオーー

ニッコニッコニー
ニッコニッコニー
ニッコニッコニー

「お疲れさまでしたー」

にこ「お疲れ様でした」

にこ「お疲れ様でーす」

にこ「乙ニコー」

236 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/02/29 04:02:47.44 asefqVl50 180/477


ーーテレビ局廊下ーー

にこ「ふうっ………」

コッコッ

にこ「!? お久しぶりですっ」フカブカト

大御所「………」

大御所「嫁さんの実家で、年取って患って、
    施設に入るまで、まあちょっとやそっとは壮絶だったな」

にこ「………」

大御所「それぞれ事情はあるだろうが、
    人間、歳をとるしケガをする事もある。
    それは芸能人の身内だって例外じゃない。
    パイセンなんて、案外身近にいたりするもんだ」

にこ「はい」

大御所「確かに見栄張ってナンボの商売。
    だからこそ、これだけは覚えておけ。
    一人で抱えたら終わるぞ」

コッコッコッ

にこ「………」フカブカト

237 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/02/29 04:08:37.27 asefqVl50 181/477


ーー見滝原市立病院廊下ーー

恭介「お世話になりました」

真姫「ん。まあ、この早さで松葉杖だけでもよく頑張った。
   もうしばらくは通院になるけど」

恭介「はい」

コッコッコッ

真姫「………」

先輩医師「退院か」

真姫「はい」

先輩医師「後はリハビリでどれだけ戻るか。
     細かい事はとにかく、大元の治療って意味では、
     これ以上出来る事はないって事だからな」

真姫「はい」

先輩医師「………」ポン

240 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/01 01:11:46.07 4yaJXI8r0 182/477

ーー夜 都内台湾レストラン大型個室ーー

ここあ「今晩は」

こころ「今晩は、絵里さん」

絵里「今晩は」

こころ「今夜は有難うございます」

虎太郎「有難うございます」

にこ「本当に、悪いわね絵里」

絵里「………」フルフル

真姫「今晩は」

海未「お招きに預かりました」

絵里「揃ったみたいね」ジュワキ

241 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/01 01:17:00.16 4yaJXI8r0 183/477


ーーーーーーーー

真姫「それじゃあ、お祝い、には早いけど回復への大きな一歩。
   今すぐの生命の危機は脱しました。
   今日明日の骨休めぐらいは保障してもらったと言う事で。
   乾杯」

一同「乾杯」

給仕「小籠包お待たせしました」

虎太郎「あっ、つっ」

にこ「ほらぁ、ここのたっぷたぷのモノホンなんだから。
   慌てたら火傷するって知ってるでしょ」

虎太郎「分かってるよっ」

真姫「だから、この台湾のラガー美味しい」

海未(我が国が誇るかの創業者の名を冠した………)チビチビ

にこ(ここで水割り、変化球だけどいいかも)ビールウメー

真姫「相変わらずいい店ね」

絵里「有難う」

にこ「ホントにねぇ、いっぱしの実業家じゃない。
   実は、ある意味一番情熱的だったんじゃない?
   あの氷の女王が」

真姫「それは、言えてるかも」

絵里「情熱的、そうだったかも。
   駆け足で駆け抜けた実感はある」

242 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/01 01:22:19.10 4yaJXI8r0 184/477


真姫「アメリカ留学中に電撃結婚。
   旦那さんの実家が料理店でお姑さんが台湾の人で。
   そこの経理と雑用から始まって、
   今や押しも押されぬ有名店の仲間入り」

絵里「義兄さんの技術が素晴らしいものだったから。
   私達はそれを支えてちょうどいい環境を作らせてもらったわ」

海未「ことりの事も、本当に感謝します」

絵里「あくまでビジネスよ」キリッ

絵里「もちろん、全然コネじゃないって言えば嘘になるけど」ペロッ

真姫「もうっ。ことり、こないだも一度こっちに来てたって」

にこ「そ、お見舞いにね。
   それで陰に隠れて携帯に謝りまくってるの。
   なんか、大仕事の準備中に帰国して来たって言うから、
   尻蹴っ飛ばして追い返したわよ」

海未「ええ、それは帰りに空港で会った時に聞きました」

こころ「でも、ことりさんのデザインすっごく可愛くて格好良くて、
    みんなの憧れでしたよ」

絵里「ちょうど、リニューアルで一勝負しよう、って時だったから」

にこ「それで導入した制服、伝統的な中華と斬新さの組み合わせ。
   何より見た目が可愛くて格好いいのにあざとくない。
   店もユニフォームも、アッと言う間の大評判で、
   コスプレのブームまで席巻しちゃって」

真姫「それで絵里もことりも一躍時の人。
   そうなったら昔の名前だった出て来るし、
   正直やってくれたわね、ってあの時は乾いた笑いだったわよ」

にこ「そ、最初は、もちろん自分からはμ‘sの名前は出さなかった。
   評判になってからマスコミが勝手に取り上げただけ」

243 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/01 01:27:26.51 4yaJXI8r0 185/477


絵里「私も、家族も、楽じゃない時もあったけど、
   そういう売り出し方はやりたくない、ってのは一致してたから。
   勝負する時は勝負するけど、売るものはあくまで堅実にひたむきに、
   それって、結局あの時学んだ事だから」

海未(μ‘sの衣装担当、留学した欧州での評価。
   ことりはなまじ力量があり、そして、優し過ぎた。
   スカウトで就職した有名所で、巻き込まれた派閥抗争人間関係に疲れ果てて)

真姫(あの時、私の耳にも入って駆け付けたけど、思い出してもゾッとする。
   ギリギリの所で退職に踏み切っただけでも、本当に生きてて良かった、って)

海未(幸い、真姫に紹介されたクリニックでの予後も良好で、
   理事長が紹介した法人の事務職で静かに暮らしていましたが………)

海未「ああやってことりが再び羽ばたく事が出来たのは、絵里のお蔭です。
   恐れはあっても、それでも、ことりが大好きな道に戻りたかったのも真実。
   本当に感謝しています」

絵里「………」ニコッ

にこ「若かったわね絵里も。
   なんだかんだ言ってあのリニューアルの頃とか」トオイメ

真姫「そうそう」クスッ

ここあ「結局の所、
    絵里さんがいっちばん看板娘だったじゃないですか」

絵里「全く、人妻のおばさん捕まえて、ね」フフッ

こころ「あれでおばさんとか言われたら、
    嫌味ってレベルじゃないですから」

244 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/01 01:30:55.16 4yaJXI8r0 186/477


絵里「それも、まあ昔の話ね」

真姫「二人目を期に、今まで専務として仕切ってた接客を亜里沙ちゃん、
   経営を大番頭の人に任せて、今は監査役だったっけ?」

絵里「上の子の時は、もう仕事に育児に我武者羅そのものだったから。
   流石にね、色々手こずった事もあったし、
   少し、余裕を持って専念したいなって」

真姫「そう。ウラヤマシイ」

にこ「バクハツシロ」

絵里「希や海未、色んな人達の助けに恵まれなかったら、
   今頃潰れてるか思いっ切り縮小してたでしょうね」

真姫「………でも、その忙しい中一生懸命育てて、
   いい子に育ったわね。
   まだ、海未の所に通ってるのね」

絵里「ええ。元々、見た目とかでからかわれ易い、
   ってのもあったから。
   それを逆にとっちめたりもしてたから精神修養も兼ねてね」

海未「はい。少し気難しい所もありますが、
   根は礼儀正しく真っ直ぐな気性です」

絵里「有難う」

245 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/01 01:34:40.02 4yaJXI8r0 187/477


にこ「その超絶ハイスペックなイケメンルックスと出し惜しみで、
   今や宇宙ナンバーワンカリスマキッズモデル、だもんね」

絵里「今は学業優先。
   元々、ことりに頼まれたから
   ちょっとモデルを引き受けた、ってだけだし」

真姫「でも、あれじゃあ業界が放っておかないのも当然よ。
   海未からも聞いたけど、もう学校でもどこでも
   行く先々がお子様ハーレムで一歩歩けば修羅場が起こる、って」

絵里「もっとも、あの子本人としては、
   最初っから本命は一人しかいないみたいだけど」フフッ

にこ「なーに、あいつまだ
   ノンちゃんに少女漫画的ツンデレドSとかやってる訳?」

絵里「先方の器が大きすぎて空回りばっかり、みたいだけど」クスクス

真姫「それに、あれ、絶対シスコンお兄ちゃんになるわよ。
   ちょっと見ツンツンして見せてるのなんてもう」

海未「ええ、根は優しい子ですから。
   いいお兄さんになりますよ」

絵里「そう願いたいわね」

ここあ(海鮮スープに牡蠣の炒め物ウマー)

受話器ガチャッ

絵里「ウーロン茶人数分」

246 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/01 01:38:09.04 4yaJXI8r0 188/477


ーーーーーーーー

真姫「メインの前に、そろそろ始めましょうか」

にこ「………そうね。絵里と海未。
   この布陣の意味、あんたが一番よく分かってるわよね」

海未「………」ペコリ

にこ「まず、マッキーに確かめたい事がある。
   これから聞く話はオフレコでお願い」

海未「分かりました」

一同「………」コクッ

にこ「ママの後遺症、厳しいんでしょ?
   市立病院の西木野先生が勝手に説明した、って言うのは色々厳しいから、
   腹割った所教えてくれる?」

真姫「ええ。これは病院としての公式見解じゃないから。
   何故か事情を知ってる一人の医者として、そのつもりで聞いて欲しい」

絵里「分かった」

にこ「それで、どうなの?」

真姫「厳しいわね。
   脳にダメージを受けた上に少し長い寝たきりがあった。
   内蔵も切ってるから循環や栄養補給にも難しい所が出て来る。
   命は引き戻したけど、それひっくるめて回復させて生活に復帰するってなると、
   現実問題として出来るかどうかはこれから次第………」

虎太郎「………」

こころ「私達も、先生から伺っては、います」

247 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/01 01:41:53.51 4yaJXI8r0 189/477


真姫「うん。今の病状だと、遠からず救命から後方病棟に移動して
   根治に向けた治療に入れると思う。
   只、何かの拍子で一挙に悪化する目も消えてはいない。
   そこは押さえておいて」

にこ「うん」

真姫「でも、元の傷が大きかったから、
   医者が治せるのも限度がある。
   長期間の治療や更にその後の長いリハビリ。
   悪くすると見込みの立たない入院、と言う事になると、
   元々旅先の事故で家族の負担や福祉行政との関係もあるから、
   可能な限り地元の病院や施設に移って、と言う方向になると思う」

にこ「実際、見滝原だと私達も厳しいから」

真姫「治療メインなら西木野も選択肢に入る。
   治療面での技術、設備は十分。だけど、今回は医療の後の事もあるし、
   個人的に親しい関係と言うのも善し悪しだからそれは状況次第ね」

ここあ「それで………それで、母は、母はどうなるんですか?
    治るんですか?」

真姫「生命の危機はひとまず脱した。
   まだ確定は出来ないけど、ひとまず死ぬ事は無い状態。
   だけど、社会復帰のための機能回復は別。
   こちらは逆に現段階で絶望的と確定はしないけど、
   脳を初めとした元の傷と今までの意識喪失期間を考えると、
   十分あり得る、と言うレベルで悪い想定をする必要があるのが現実」

ここあ「じゃあ………ママは………」ストッ

にこ「まだ、分からない、って言ってるでしょう」

真姫「実際そう。主治医やスタッフ、何よりお母さまの闘いはここから始まる事だから。
   只、こちらでは支えるからには過剰な楽観も悲観も抑えなければならない。
   難しい事だけどね」

にこ「うん」

248 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/01 01:45:24.17 4yaJXI8r0 190/477


真姫「だから基本は当事者に任せるしかないんだけど、
   当面押さえておくべきは食事、栄養補給ね」

こころ「食事、食べる食事ですか?」

真姫「ええ、今はまず無理だけど、
   将来的には自分で食べて栄養を摂る事が望ましい。
   だからそうなる様に進めるんだけど、
   弱ったままの状態で誤嚥を起こしたらストレートに命に関わる」

にこ「ごえん?」

絵里「食道を通るべき食べ物や唾液が気管に入る事ね」

真姫「そう。悪くするとそれが肺に届いて肺炎を起こす。
   食べる事も運動だから、外傷と意識喪失の後遺症で
   関係する部位に麻痺や衰えがあると正常な流れでの食事が難しくなる。
   特に体力、抵抗力が低下している状態での誤嚥性肺炎は
   致命的な結果にも繋がり易い」

こころ「………」ゴクッ

真姫「機能回復のためにはリハビリが必要だけど、
   訓練中の食事が致命傷になったら元も子もない。
   だから、状態によっては胃瘻と言う事になる」

海未「胃袋に外科的にチューブを差し込んで、
   そこから食事を流し込む方法、ですね」

真姫「そう………
   それで、取り敢えず誤嚥による死亡を避けて栄養を補給する事は出来る」

にこ「歯切れ、良くないわね」

真姫「うん。一時的に取り付ける事もあるし、
   長く続いても、それはそれで制約を受け入れている人もいる」

絵里「そうじゃない人もいる、って言う事ね」

249 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/01 01:48:45.92 4yaJXI8r0 191/477


真姫「私は医者だから、あくまで命を助けるのが基本だから
   その価値観に踏み込むのは難しいけどね。
   直接食事が出来ず、それ以外の事もほとんど回復の見込みがない。
   それで直接栄養補給して生き続けるのが、
   人として尊厳のある生き方だろうか。
   これはもう寿命そのものだと考える国もある、って事で」

にこ「………そういう段階なの?」

真姫「その見極めが難しい事も大きな問題。
   専門的なリハビリで食事が再開できるケースもある。

   逆に言うと、神経系のダメージや筋力の衰え等で食べられなくなった場合、
   機能の回復や適切な食べ方等のリハビリ訓練無しには口からの食事に復帰できない。
   運動機能だから衰えたままだとより回復も難しくなる。

   もちろん、症状によってはそもそも無理、と言うケースもある。
   その上で問題なのは、今後治療に当たる主治医が、
   本当に適切なリハビリにまで誘導できるか、って言う事になるとちょっと心許ない」

海未「そういう、ものなのですか?」

真姫「もちろん、主治医も患者のために最善を尽くす、尽くそうとする。
   それを前提にしても、今も言った通り、医者はまず生命維持に心を向ける。
   不確定なやり方での致命的なリスクを恐れるマインドもある」

絵里「………つまり、安全策に傾くって事」

250 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/01 01:52:28.94 4yaJXI8r0 192/477


真姫「簡単に言ってしまえば。
   それに、今の医学は、高度になればなる程
   一つの分野の専門に傾きがち。

   状態から言って治療のメインが脳外科か消化器外科か、
   食事に関わるリハビリは口腔外科がメイン。
   今は制度上の事もあって、病院でのリハビリ自体にも制約がある。

   結論として、他の専門との連携が上手くいくか、
   一般論として保障しかねる、って事。
   だから、自衛が必要になる」

にこ「自衛って、どうするのよ?」

真姫「勉強するしかないわね。
   私は立場上、直接扱う事じゃなければ表立った口出しは難しい。
   技術の基本的な事、その分野に於ける医療機関の評判。
   その上で、患者側からも礼儀と筋目を通して口を出す。

   医者もスタッフも、それぞれの立場で患者のために懸命に仕事をしている。
   それでも、家族として、お母さんの今後の生活、人生のために最善を求めてね。

   医者の立場としては余り的外れな事をうるさく言われるのは困るけど、
   現実問題として、この分野をお任せで進めるのは分が良くない」

にこ「………分かった。色々有難う」

真姫「うん。今は直接の担当じゃないし
   流動的な要素も多いから、後は進行次第としか言い様がないわね。
   後、オフレコで確認したい事とかは?」

にこ「………」フルフル

真姫「そう」

254 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/03 03:23:27.29 d+nTncqQ0 193/477

にこ「………」

真姫「で、ニコちゃん、アイドルやめるつもり?」

にこ「………考えては、いる」

虎太郎「!?」ガタッ

真姫「………(右手)」スッ

にこ「今聞いただけでも色々やる事ありそうだし、
   やっぱり、私がママの事、側で支えなきゃいけない。
   今、アイドルを続けるために必死に業界にしがみついてる。
   何もかも、なんて出来る筈がない」

虎太郎「それは、家の、母さんの事は俺たちが、
    にこにーはアイドルを………」

ここあこころ「………」グッ

にこ「そんなに簡単な事じゃないのっ!」

弟妹「………」ビクッ

にこ「大体、正規で仕事してるのここあだけでしょ」

こころ「………ごめんなさい、お姉さま」

255 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/03 03:28:31.82 d+nTncqQ0 194/477


にこ「あんたが厳しい中でも進学して、
   どれだけ頑張って来たかなんて分かり過ぎる程分かってるわよ。
   どっちかって言うと、もちろんここあだって頑張ったけど、
   ここあの要領とタイミングがはまった、そういう事もあるって事」

海未(あの頃は鬱みたいになりかけて、
   大変でしたねこころさん)

にこ「こころの仕事だって、評判も聞いてるし十分胸を張れる。
   虎太郎だって、今頑張らないで何時頑張るのっ。
   今どうするかで後後全然違って来るって、
   それが結局家族のためでもあるの」

虎太郎「でも、にこにーは………」

にこ「私だって同じ。今までギリギリ一杯一杯でやって来たんだから、
   ここでそれが出来なくなったら真っ逆さまよ。
   あんた達だけだと、自分達で一杯一杯。

   せめて私の収入だけでも安定してたらいいけど、
   ママの事と両輪でそれ続けるのは厳し過ぎる。
   だったら、地元で少しでも安定した仕事探してあんた達と分担するわよ。
   ネタ作り兼ねて資格もいくつか取ってるし」

絵里「………」

絵里「ニコは、それでいいの?」

にこ「それでいいのって?」

絵里「アイドル辞めてもいいのかって聞いてるの?」

にこ「いいのか、って、そんな事。
   家族なんだから、ママなんだから、
   こんな事になった以上いいも悪いもないでしょ」

絵里「そう」

256 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/03 03:33:43.48 d+nTncqQ0 195/477


にこ「真姫にも言ったけど、生活とかきょうだいの進学とか、
   そんな時にも私は不安定なアイドルを続けて、
   仕送りも申し訳程度なんて事も何度もあった。

   それで、今は少しはプロのアイドルらしい事も出来た。
   宇宙一、とまではいかないけどね。

   そんな私を、ママは、ずっと応援して家族の大黒柱で支えてくれた。
   この子達もそう。色々あっても助け合っていい子にしていてくれた。
   私に出来たのは、前よりちょっとはいい家を用意した事ぐらい」

絵里「………」

にこ「だから………
   だから、今度は私が、私がママに恩返し、
   親孝行、しなきゃいけないの、私が………」

絵里「死亡フラグ」

にこ「は?」ポカン

絵里「介護の絡む事でそんな事言われても、
   死亡フラグしか見えないって言ってるの」

にこ「何、言ってる訳?」

真姫「同感ね」

海未「………」コクッ

にこ「ちょっ………」

絵里「あのね、家事、家族の事って言っても、
   実際に小さくないお金と労力が動く以上、
   これはトータルマネージメントなの。

   仕事の事と家庭の事、私の経験だけじゃない、
   色々と情報交換して、少しは知ってるつもり。

   独りよがりの浪花節と根性を抜かしたら何も残らない。
   そんなプレゼンに大事な仲間を任せられる訳がないでしょう」

257 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/03 03:38:46.37 d+nTncqQ0 196/477


にこ「だって、私のママの事なんだから………」

絵里「この先、後悔してお母さんに手を上げて又後悔して。
   絶対そうなるとは言わないけど、
   1%だって見たくない。
   そんなリスクすら無視できないぐらい高過ぎるの」

にこ「そんな、事………」チラッ

真姫「………」

絵里「分かってるんでしょ、傍で見てる私達にだって分かるもの。
   ニコのあの頃の情熱は、
   円熟こそすれ決して枯れてなんていないって」

にこ「………残酷」

真姫「ごめんなさい」

にこ「やっぱり最強の人選。まさかここで、
   氷の生徒会長にシメられるなんて思わなかった」フウッ

絵里「………」フウッ

絵里「この大変な時に、口出しした以上は
   自己満足出来るぐらいの事は、とも思ってる」

にこ「それは嬉しいニコー、
   って言える内容なの?」

海未「先に申し上げておきますが、
   知らない人間にまでニコの事として吹聴したりはしていません。
   只、信頼のおける相手に聞かれた時には、
   許される範囲で誠実にお話しをしました。
   それでも、真姫は別です、立場上口外出来ない事は守っています」

にこ「じゃないと、おちおち入院も出来やしないわよ。
   これでも芸能人ニコ」

真姫「………」コクッ

258 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/03 03:42:15.77 d+nTncqQ0 197/477


絵里「………」スッ

にこ「? ICレコーダー?」

絵里「ここからは本当に大事な話だから。
   二台あるから一台はここでニコに貸す、
   録音データは持って帰っていい」

真姫「ニコちゃんが全部消去する、って言うならその通りにするわ。
   だから、録音して話、続けるけど」

にこ「なんだか知らないけど好きにして頂戴」

絵里「分かったわ」ロクオン

クリアファイルスッ

にこ「何、これ?」

ここあ「色んなプリントが………」

こころ「………人の名前と、数字のリスト。
    この名前って………」

絵里「債権者リストよ。
   ニコ、あなたにお金を貸してもいいって言うね」

にこ「は?」

絵里「このリストの人達が、
   ニコに当座の資金を貸し付ける事に同意したって事。
   代表代理人は私」

海未「私達は借金の債務保証は出来ませんが、
   絵里が契約に従い誠実に代理人を務める事に就いては
   保証人としてサインをしています」

絵里「メンバー初め本当に信頼の出来る相手だけに
   無理のない範囲で、って念を押してもこれだけ集まった。
   低金利で弁済期限は先の先、ちょっとしたニコニー・ファンドね。
   借用証に委任状もあるわ」

259 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/03 03:45:34.35 d+nTncqQ0 198/477


こころ「えーっと、メンバーの皆さんにその家族も何人も。
    この人達は? ………」

海未「ああ、この三人は私達の元同級生ですね」

真姫「私は、家族も含めて立場上この融資に関わる事は出来ない。
   正直、断腸の思いだけど」

ここあ「………これってA-RISEのっ!?」

真姫「A-RISEのみんなは、聞き付けて押しかけて来た口ね。
   あの事故があってから、テレビの報道関係にも網張ってたみたい。
   私達はかなり慎重にやってたんだけど」

にこ「な、っ、何を勝手な………」

絵里「ええ、勝手よ。それはみんな百も承知。
   だから、要らないと言って断るのもこれから頭を下げて借金するのも
   決めるのはニコ次第」

真姫「見るからにヤバイ状況だから、
   間に合う様にムンテラ抜きで輸血用の血液を用意だけした、
   勝手に注入するとは言っていない。そういう状況ね」

絵里「あなたは、私達の仲間としてμ‘sとしてアイドルとして、
   これだけの事をして来たの。
   だから、アイドルを続ける辞めるとこのお金は一切関係ない。
   それも確認済みよ」

真姫「そして、これ以上の現金は、ニコちゃんのためには一文も出せない出さない。
   その上で聞いて。
   凄く簡単な現実なの。これからまだまだ、目先の出費でどんどん諭吉が飛んでいく。
   仮に将来的なプラマイがプラスになる計算だとしても、
   今、燃料切れになったら、その先のお金の回収する前に
   動けなくなって沈んで浮かび上がれなくなる」

絵里「そして、一番厄介なのは、その状況はドツボにはまるまで当事者には分かり難い。
   他人を気遣う頑張り屋であれば尚の事。今回は本当の非常事態。
   だから、ニコのプライドは百も承知、
   友人関係にお金が絡むリスクを押してでも、破綻回避優先で先回りさせてもらった」

にこ「………」

260 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/03 03:48:56.45 d+nTncqQ0 199/477


真姫「一緒に入れておいたこれ、名刺のコピー。
   弁護士社労士行政書士税理士FP他。
   信頼のおける弁護士を雇って、現実的な賠償請求をする事。
   ナメられて足元見られない様に。
   見滝原に出入りしてる時、交通費の領収書とかは?」

にこ「一応、とってある。
   家計簿つけてるし経費とか使ってる習慣で」

真姫「オーケー、それはこれからもきっちりやる事。
   お役所なんかもね、書類一つで馬鹿にならない金額が浮いたり入ったり、
   知らないだけでもらえなかったり、
   福祉とか行政とか、そういう場所だから馬鹿にならないわよ」

にこ「まさにお役所仕事ね」

絵里「そういう事。そして、法律は知っている者の味方。
   建前で動くお役所は特にそう。
   そして、今のこの状況は、人一人、
   それも身内の事で疲労している頭での分析力をオーバーしてる。
   手続きの事、家計の事、専門家の助けなしに進めるのは凄く難しい」

にこ「でしょうね。
   お金のやりくりなんて、只でさえ頭の痛い事しかないんだし」

真姫「病状から見ても、用心のために任意後見の手続きは進めた方がいいわね。
   状況が悪化した時、ニコちゃんがお母さんの後見人として
   病院や施設と契約したり資産を動かす事が出来る様に」

にこ「………なんか、そのまま遺言書まで書かせそうね。
   ごめん、ちょっと言ってみたかっただけ」

真姫「分かってる。外から理屈で考えるのは必要だけど、
   当事者の心理、人情とのバランスが難しい」

にこ「それって、医者の日常業務?」

真姫「それもある」

261 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/03 03:52:07.06 d+nTncqQ0 200/477


海未「私や雪穂、他にも動ける者は地元で動いています」

真姫「………」コクッ

海未「私等の拙い人脈ですが、それでも、
   お母上が地元に戻られた時のために、
   真姫の助けも借りて病院や施設の情報を収集したり、
   福祉や行政、法律、地元の議員関係、その時に相談出来る様に、
   出来る限り顔を繋いで関係する話を聞いたりもしています」

にこ「そう、なんだ」

こころ「そうです」

にこ「こころ?」

ここあ「こんな大きな借金の事は知らなかったけど、
    海未さんと、他のメンバーの方とも、時々お話ししてたから」

にこ「いつの間にっ!?」

海未「今のニコは、
   とても中途半端に約束を取り付けられる状況ではありませんでしたから」

にこ「グヌヌ………」

海未「きょうだいの方々も忙しい中でしたが、
   それでも、関係者に直接相談したりお茶を飲んだりする機会を
   少しずつ設ける事が出来た所です」

こころ「………」コクッ

虎太郎「………」コクッ

にこ「そう、なんだ。やってくれるじゃない。
   うん、有難う。お礼を言っておくわ。それは必要な事だもんね」

こころ「お願いします!」ガバッ

にこ「!?」

262 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/03 03:55:20.34 d+nTncqQ0 201/477


こころ「お願いしますっ、アイドルを続けて下さいお姉さま。
    私達、私達だけでは無理でも、
    皆さんにもご協力をしていただいて、
    きっと、きっと宇宙一アイドルのお姉さまとお母さまと、
    家族でいられる様に私達で力を尽くしますから」

にこ「ご協力、って、そんな事、
   そんな事みんなに………
   私の家族の事、みんなに、頼める………」

真姫「あら、私がこの布陣を選んだ理由、
   忘れたのかしら?」ファサァ

にこ「う、ぐっ」

絵里「ええ、その通り、私達は他人。
   だから、お節介には限度はある。
   多分、当事者から見たら本当に大した事は出来ない。
   だけど、本当に余程の事が無い限り、
   口に出した事ぐらいは忘れないつもりだから」

ここあ「お願いおねえちゃん」

虎太郎「にこにーっ」

にこ「………厳しいわよ………」

にこ「やるってなったらね、
   本当によっぽどの事が無い限り、決まった仕事から降りるなんてできない。
   最後に物を言うのは信頼。私の仕事は、いや、仕事ってそういうものなんだからね。
   最悪でも、ニコニーがきちんと芸能界フィニッシュ出来るまで保たせる事が出来る?」グッ

ここあ「ゴクッ………」コクッ

こころ「ゴクッ………」コクッ

虎太郎「ゴクッ………」コクッ

264 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/03 03:58:43.76 d+nTncqQ0 202/477


にこ「………分かった。前向きに考える」

真姫「それ、役人言葉に翻訳したらどうなるか知ってて言ってる?」

にこ「っさいわねっ、ニコニーが役人な訳ないでしょっ、
   宇宙一アイドルがそんなふざけた言葉使ったら一発炎上ドボンよ」

絵里「そう。じゃあ、額面通りに受け取るわ」

にこ「そうして頂戴。只、お金の事は、少し考えさせて。
   少しなら貯金もあるし」

絵里「そう。でも、これだけは受け取って」

封筒小分けスッ

絵里「お見舞いと、緊急融資の線引き預金小切手と契約書ね。
   こっちの債権者はコアメンバーだけよ。
   無利子期間あるからその間に突っ返すか考えて。
   でも、色々話も聞いてるけど、
   本当に目先の事だけでも色々大変だと思うから」

にこ「………分かった。有難う。
   それに、正直言って、ちょっと強がったけど
   残りの借金も甘える事になる、と思う。
   実際問題厳しかったのは本当だから。
   私だけの事ならとにかく、ママと、この子達の為なら、
   下らないプライドなんていつでも捨ててやるわよ」

絵里「後は、預金口座ね。既にあるものを使ってもいいんだけど、
   出来れば債権者の代表代理人である私と、
   お互いに同じ銀行に専門の口座があった方がいい。明日、時間は?」

にこ「少しなら。いいわ、その時間でいいなら明日付き合っても」

265 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/03 04:02:11.99 d+nTncqQ0 203/477


絵里「…ハラショー…フーッ…
   じゃあ、ここにサインと拇印を。
   質問があったら今言ってね。
   何れ、メインの方の借金って事になったら
   実印で公正証書作ってもらう事になるから。
   もちろん、各債権者への常識的な挨拶も」

にこ「分かった………」

にこ「………有難う、本当に有難う。
   緊急融資だけでもこれだけのお金をいい条件で借りたんだから、
   まして、用意してくれた金額考えると、他人なら土下座で当たり前のレベルよ。
   本当に有難う、感謝する」ガバッ

海未「こちらこそ、かつて輝いた道で成功した自分の仲間を失いたくない、
   と言うだけで、如何にも傲慢な行動ではないかと………」

にこ「私がややこしい性格してるから、
   今度の事でどれだけ余計に悩ませて心配させたか、
   それはよく分かってるつもりだから。
   ニッコニッコニーのヒャクパー感謝、って事で受け取っておいて」

にこグラス(ウーロン茶)スッ

一同グラススッ

真姫「乾杯」ポソッ

一同「乾杯」コクッ

絵里「後、何か真面目な話はあるかしら?」

にこ「ニコニーの頭の中はお腹いっぱいニコ」

絵里「そうね。いい頃合いだわ。
   この人数だから丁度いい取り分で豚の全身が食べられそうね」

海未「恐らく、μ‘sの現役時代よりもエネルギー消耗しました………」

真姫「言えてる」クスッ

にこ「ニコー」

266 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/03 04:06:10.21 d+nTncqQ0 204/477


絵里「そういう時は甘いもの。
   美味しいデザートもあるわよ」

にこ「ヴェェ、家庭の事情の前にウエスト崩壊で引退危機ニコー」ニヤニヤ

真姫(真似すんな)プクッ

絵里「大丈夫、漢方薬って言ってもいい自慢の薬膳デザートなんだから。
   飲み物は?」

こころ「じゃあ、私達はこのビールを瓶とグラスで」

海未「折角ですから甕入り紹興酒をいただきましょうか」

にこ「それでいいわ」

真姫「スペシャル・アンプル、ナンバー8」※

絵里「ハラショー」

※「ナイチンゲールの沈黙」(上)75ページ
海堂尊 宝島文庫 08年

267 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/06 12:53:38.64 jFT/WcAU0 205/477


 ×     ×

ーー朝 見滝原中学校敷地内ーー


仁美「さやかさん、昨日はどうしたんですの?」

さやか「んー、ちょっと風邪っぽくてねー」

まどか「さやかちゃん………」

さやか(大丈夫、もう平気、心配いらないから)テレパス

さやか「さぁて、今日も………」

ーー同 職員室ーー

和子「え? お休みですか?
   はい、分かりました。お大事に………」

268 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/06 12:59:09.23 jFT/WcAU0 206/477


ーー午前終了近く マキルームーー

ベッドゴソゴソ

真姫「ヴェェ………」

真姫「やっぱりナンバー8は効くなぁ………」

ーーーーーーーー

浴室ドアガチャ

真姫「………」ギュウニュウパック

シリアルボウル「………」ダバダバダバ

ーー昼 見滝原中学校屋上ーー

さやか「美味しいっ!」

マミ「あらあら美樹さん」

さやか「マミさんのこの肉団子、美味しいですねぇ」

マミ「そう? もう一ついかが?」

さやか「悪いっすねぇっ」

まどか「ウェヒヒヒ」

マミ「美樹さん、なんかご機嫌ね。何かいい事でもあったのかしら?」

269 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/06 13:04:37.42 jFT/WcAU0 207/477


まどか「ウェヒッ?」

さやか「へ? やだなーマミさん。
   あたしはいつでも元気ですよーっ」

マミ「ええ、それは分かってるけど」

さやか「昨日ちょっと風邪引いて体鈍ってるんスよーっ。
    今日辺り、一つ頼みますよマミさん」ウデビュウンッ

マミ「あらあら、そんなに都合よく魔女が出たりするかしら?」

さやか「まあ、出ないならそれはそれで平和でいい事ですけどねー」

まどか「ウェヒヒヒ」

マミ「まあ、そういう事ね」クスクス

ーー夕方過ぎ 見滝原市立病院救命医局ーー

看護師「はい、見滝原市立病院救命救急センター………
    西木野先生」

真姫「ん?」ジブンユビサシ

看護師「救急隊です、先生の患者さんだと」

真姫「お電話代わりました」

ーー救命病棟搬入通路ーー

ガラガラガラガラ

恭介「うううううう………」

真姫「お腹痛い?」

恭介「………」コクコクコク

真姫(脂汗、どう見ても尋常じゃない)

270 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/06 13:13:39.21 jFT/WcAU0 208/477


ーー初療室ーー

真姫「いつからですか?」

恭介母「今朝から余り具合が良くないと。
    それで、近所の病院にかかったんですけど、
    その時は風邪と急性胃炎だと。

    退院して、家のご飯を少々食べ過ぎた事もありましたし
    その時は環境が変わったからかと。

    今日からの予定だった学校を延期して休んでいたんですけど、
    救急車を呼ぶ三十分か一時間ぐらい前から急にこんな風に」

真姫(アッペ? イレウス?
   精巣捻転、はこないだのテレビアトマワシアトマワシ)

恭介「ギギギ………」

真姫「やっぱり腸、かなぁ」グッグッ

真姫「検査は一通り………」

看護師「先生」

真姫「ん(母親の問診票)」

真姫「昨日の夕食、ご飯に味噌汁、鯵のフライにマリネ?」

恭介母「はい。報せていた知人が
    お祝いに新鮮な鯵を届けて下さったもので」

真姫「それを、お家で?」

恭介母「はい」

真姫「ご家族で他に症状は?」

恭介母「いえ、恭介だけです」

真姫(………まさか………)

271 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/06 13:17:33.71 jFT/WcAU0 209/477


ーー救命医局ーー

救命医「あー、腸に入っちまったか」

真姫「はい。術前の検査では腸壁の腫れ等は見られたもののホシの発見には至らず、
   症状の進行から試験開腹に踏み切りました」

救命医「腸の方は出ない時は出ないからなぁ。
    胃なら内視鏡で見つけ次第ちょんと捕れたんだけどな」

真姫「はい。開腹で処置を行い、術後の検査で確定しました。
   本来は消化器外科にお願いしたいんですけど、
   通院治療に切り替えた矢先に七転八倒やらかしたもので」

救命医「あー、悪化してるねぇ」

真姫「はい………
   うちの病棟に逆戻りで、
   消化器外科の治療もそちらで同時にお願いしたいと。
   長くはかからないと思います」

救命医「ああ、悪化と言ってもこの程度なら。
    虫の方は、明日から観察して残ってるなら飢え死に待ちだな」

プルルルルル

看護師「はい、見滝原市立病院救命救急センター」

ーー手術室その1ーー

真姫「はい、終了」

看護師「お疲れ様でした」

ーー手術室その2ーー

看護師「西木野先生、終わったそうです」ジュワキ

救命医「こっちは大丈夫だ、待機に回ってくれと伝えろ」

看護師「分かりました」

272 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/06 13:20:44.42 jFT/WcAU0 210/477


ーー救命病棟通路ーー

コッコッコッコッ
ガラガラガラガラ

真姫「どうしました?」

当直医「検査中に急変、心タンポナーゼ。
    これから緊急手術です」

真姫「私は………」

当直医「こちらで対処できます。
    西木野先生は戻って下さい」

ーー救命医局ーー

真姫「ふうっ」ギシッ

看護師「お疲れさまです」

主任看護師「戻りましたー」

真姫「お疲れ様です」

主任看護師「一段落ですね」

真姫「なんとか………」

飴玉タワークルクル

真姫「お一つ」ハムッ

主任看護師「いただきます」

真姫「多重衝突CPAあり、
   今夜はこの辺にしといてもらいたいものです。
   世の中の為にも私達のためにも」モゴモゴ

主任看護師「当然、そう願いたいものです」チュプッ

273 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/06 13:24:07.20 jFT/WcAU0 211/477


看護師「はい、見滝原市立病院救命救急センター………」

主任看護師「はい、ホットラインですね」フフッ

真姫「ヴェェ」フフッ

看護師「西木野先生」

真姫「ん?」ジブンユビサシ

看護師「救急隊から、先生の患者さんだと」

真姫「お電話代わりました、西木野です………
   看護師さん? 腹痛?
   あ、いえ、状況を説明して下さい。どう言った………いつから………」

真姫(落ち着いて、救急車使用を過剰に委縮させない様に)

「見るからに物を言えない程の激痛です。
把握されている限り、急変です。
つい先ほどまでごく普通に生活していたと言う事です。
尋常ではないのは明らかです。それから………」

真姫(………よくある腸重積とも何かが違う。
   他に、ありそうな理由にしては情報が噛みあわない………)

真姫「………」

「もしもし、他を当たった方が………」

真姫「いえ、こちらに運んで下さい」

「分かりました、お願いします」

ガチャッ

真姫「カクカクシカジカよろしくお願いします」ガバッ

看護師s「よろしくお願いします!」ダダダッ

274 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/06 13:27:33.62 jFT/WcAU0 212/477


主任看護師「子ども、ですか」

真姫「救命の鬼門ですね。
   後期研修でも随分泣かせて、それで私が泣かされました」

主任看護師「東京のERでしたか」

真姫「ええ。子どもは扱い難い分かり難い。
   本当なら小児科医や熟練した救命医にお願いしたい所ですが
   ………よろしくお願いします」

主任看護師「よろしくお願いします」

主任看護師(技量は確かで仕事は堅実。
      それでいて、事あらば思い切りよく腹が座ってる。
      若さの勢いもあるでしょうが、これが舞台度胸かしらね)

277 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/07 03:51:19.17 jEnosG4M0 213/477

ーー救急搬入通路ーー

ゆま「ウーウー」

真姫「ゆまちゃん、分かる?
   病院、真姫先生」

ゆま「ウー」

ダダダッ

看護師「先生っ」メモ

真姫「………何これ? 病棟の廊下で倒れてた?」

看護師「詳しくは分かりません。
    恐らくトイレに行こうとして動けなくなったのではないかと。
    …………先生が対応していますが、
    手術適応になる可能性が高いと」

真姫「分かった(嫌な不意打ちだなぁ、バッティングしなきゃいいけど)」

ーー初療室ーー

真姫「状況は?」

施設看護師「準待機中にオンコールがありました、
      異常な腹痛を訴えていると」

真姫「便秘の可能性は?」

施設看護師「問診は出来ていませんが腹部の張りはありません。
      聞き取りの結果、食事は普通、
      下痢嘔吐、他児童の症状も現時点では確認されていません」

278 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/07 03:56:38.63 jEnosG4M0 214/477


真姫「子どもだと、何かに夢中になって排便を忘れてしまう事もあるけど。
   でも、この痛み方って………」

職員A「夜間外来に直接運ぶか診察開始を待つ事も考えたのですが、
    痛がり方が普通ではなかったもので」

施設看護師「私も救急搬送するべきだと」

真姫「それで正解みたいね」

真姫(この顔色、唇………)

真姫「ちょっと、お目目見るわよ」

ゆま「ウー」

真姫(聴診、腸の顕著な異音は無し………)

真姫「ちょっと、触るわね」

ゆま「ウ、ウー」

真姫「血液検査、クロスマッチ」

看護師「はい。ちょっと、ちくっとするから」

真姫(潰瘍穿孔? ストレス性潰瘍? 私が、見落とした?)サアーッ

真姫(いや、不十分な設備とは言え、私も警戒していた。
   嘱託医の診察も丁寧なものだった。
   あの熱の高さから言っても、むしろ普通の風邪………)

真姫「こういう症状は過去には?」

職員A「いえ、ありません。今夜が初めてです」

真姫「最近、具合が悪かった事等は?」

施設看護師「先生もご存じの様に、風邪を引いていましたが、
      昨日にはおよそ治って、今朝からは通常通りの生活をしていました。
      少なくとも昨日今日で嘔吐や下痢があった形跡はありません」

279 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/07 04:03:07.89 jEnosG4M0 215/477


職員A「そうした事はこちらも確認をしていません」

真姫「(と、すると………)FASTを」

主任看護師「はい」

真姫(超音波は技量が出る。見つかりますように………打診開始………)トトットッ

ゆま「………ンーンー………」

真姫「ゆまちゃん、痛かったら痛いって言ってね」トトッ、トッ

ゆま「………イヨー………」

真姫「ん?」

ゆま「イタイヨーイタイヨーイタイヨーイタイーイタイーイタイヨーエエッエッ………」

真姫「ん、分かった。先生が治してあげるから。
   ね、もうちょっとだけ、待っててね」


ーー読影室ーー

真姫「………」

受話器ガチャ

通信指令員「はい、警察です。事件ですか? 事故ですか?」

真姫「見滝原市立病院救命救急センター当直医西木野真姫と申します。
   暴行被害を強く疑わせる幼児が搬送されて来ました。
   患者氏名千歳ゆま。
   患者と私の名前を本部少年課、見滝原警察署刑事一課に確認して下さい」

通信指令員「分かりました、警察官を向かわせます」

真姫「お願いします。治療に入りますので事務方との折衝を願います」

280 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/07 04:08:30.32 jEnosG4M0 216/477


ガチャッ、ピッピッ

事務長「はい、事務室」

真姫「事務長でしたか。救命センター当直西木野です。
   暴行の疑いの強い重傷を負った幼児が搬送されてきました。
   通告案件になります」

事務長「分かりました。そちらに向かいます」

真姫「はい、過去の経緯もあって既に警察にも連絡済みです。
   対応願います」

事務長「分かりました、対応はこちらで行います。
    先生は治療に専念して下さい」

ーー救命病棟通路ーー

コッコッコッ

真姫「………」スッ

メモビッ

職員A「………」

真姫「見滝原市立病院医師西木野真姫。
   児童福祉法及び児童虐待防止法に基づき
   見滝原市児童相談所に通告します」

職員A「………承りました」

事務長「………内臓損傷、
    鈍体の打撃による暴行が強く疑われる、ですか」ヒョコッ

真姫「明日一番に専門の放射線医に確認をお願いしますが、
   私はこれが妥当と判断します」

警察官「見滝原署の者です。先生ですか?………」

281 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/07 04:12:03.36 jEnosG4M0 217/477


事務長「あーはいはい」パンパン

事務長「先生は治療に」

真姫「分かりました、お願いします」

事務長「私が当病院の事務長です。児童相談所と警察の方はこちらに。
    遠からず、当病院の委員会を経てそちらの所長に通告書が届く事になりますが、
    担当医からの正式な通告は受け取られた、と言う事でよろしいですね?」

看護師「先生っ」

真姫「ん」

コッコッコッコッ

ーー初療室ーー

主任看護師「オペ室、空きませんね」ジュワキ

真姫「応急処置だけでも、まずはここで実行します」

主任看護師「分かりました」

ーー院内廊下ーー

アサヤケ

職員A「別の幼児への暴力をゆまちゃんが庇ったところ、
    思い切り腹部を蹴られたと言う事です」

真姫(ヴェェ………)

職員A「自供したのは高学年の児童で、虐待で措置されていました。
    暴力的なトラブルも今回が初めてではありません。
    何とか手を尽くしてはいたのですが、
    今回は児童自立支援施設送致を避ける事は難しいと」

282 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/07 04:15:57.06 jEnosG4M0 218/477


真姫「方針は家庭的でも隔離施設でもある、ですか」

職員A「もちろんゆまちゃんにもあの子にも、
    何を言っても言い訳です。
    我々への処分も検討されるでしょう。やむをえません。
    最悪だけでも回避していただき、有難うございました」フカブカ

真姫「………」イチレイ

 ×     ×

ーー朝 外科病棟廊下ーー

真姫「ホヘー」ナガイス

先輩医師「お疲れ」

真姫「あー、どうも」

先輩医師「引き継ぎ、は終わったな」

真姫「お陰様で………」

先輩医師「ネーベンがリークやらかして、
     未明の病棟でぶっ倒れてたって?」

真姫「みたいですね」

先輩医師「ああー、もうぼちぼちいけるって任せたらしいな。
     結果がこれだ、オーベン共々平謝りだ」

真姫「あの頃の事思い出すと、全っ然笑えませんアハハハハ」

先輩医師「と、言いつつ変な笑いが漏れてる自覚は?」

真姫「それでは、帰って寝ます」ヨイショ

先輩医師「ああ、お休み」

283 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/07 04:19:37.55 jEnosG4M0 219/477


ーーマキルームーー

ピピッピピッピピッ
ベッドモゾモゾ

真姫「ヴェェ………いい時間かぁ………」ンーッ

ーーーーーーーー

浴室ドアガチャッ

真姫「さぁて、と………」

真姫(ちょっと手間かけバケットサンド)

真姫(軽く焼いて切れ目にレタスベーコンゆで卵)

冷蔵庫ガチャッ

真姫「トマトトマトトマト♪」

ーーーーーーーー

真姫「ふーっ」ショクゴコーチャ

真姫「満足満足」ヨイショ

シンクジャー

ヴーッヴーッヴーッ

真姫「ん?」

284 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/07 04:22:54.50 jEnosG4M0 220/477


ーー見滝原市立病院カンファレンス・ルームーー

バタバタッ

救命部長「悪いな、当直明けに」

真姫「意識が戻らない、って?」

救命医「ああ、眠りっぱなしだ」

真姫「まさか、麻酔ミス?」

救命部長「いや、記録、再検査の結果を見ても、結論を言えば全く分からない。
     西木野先生初めスタッフは医療者として当たり前の事しかしていない。
     検査結果を見ても、昏睡を続ける様な異常は見当たらない」

ドアガチャ

施設看護師「…………先生です、資料を持って来ました」

児童相談所嘱託医「ああ、どうも。西木野先生ですか。
         先日の事と言い、ゆまちゃんがお世話になっています

真姫「いえ」

嘱託医「私も、カンファレンスに加わって」

救命部長「お願いします」

ーーーーーーーー

救命部長(書式こそ簡易、粗雑だが、診察は丁寧らしい。
     手控えのメモの内容も想像以上に充実している)

救命部長(だが、これと言った原因は見当たらない)

285 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/07 04:26:09.17 jEnosG4M0 221/477


ドアガチャ

真姫「戻りました」

救命医「どうだ?」

真姫「………」フルフル

真姫「眠りっぱなしですね。それ以上言い様がありません。
   診察でも特に異常はありません」

救命医「オペも、成功。数値も正常だよなぁ。
    どの検査でも、はっきり言って変なものは何も出て来ていない」

真姫「どう、でしょうか?」

嘱託医「分からんなぁ………」

真姫「そうですか………」

嘱託医「子どもは分からんよ。この歳まで小児科やってても。
    次に何が起こるか分からない、未来そのものだ」

救命医「全くですなぁ。
    特にあくせくやってる我々救命とは水と油、泣かされますよ」

嘱託医「お疲れ様かな」

真姫「?」

嘱託医「子どもがあれだけ痛め付けられて、
    その上こんなにあっちにこっちに引っ張り回されて。
    お疲れ様のお休みなさいですかな」

救命医「………戻って、来るんでしょうね?」ゴクッ

嘱託医「………せめて、保健室だけでも、
    非常勤の私がいる時だけでも子どもが安心して居られる様に、
    そんな居場所を作ろうと、私は心を砕いて来た。
    本来であれば、最後の砦として子ども達はあの施設にやって来る」

286 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/07 04:29:30.94 jEnosG4M0 222/477


救命部長「………やめだ」ンーッ

救命医「先生?」

救命部長「取り敢えず今日は、いじくり回すのはもうやめだ。
     静かに休ませておく。それだけだ」

真姫「実際問題、やる事が無いですからね」

救命医「そりゃそうですが………」

救命部長「これまでの不手際はいくらでも詫びよう。
     その上で、大人の仕事をしよう。
     担当はこのまま、当面は経過観察。異変を見落とすな」ガタッ

一同「はいっ」

ーー市立病院受付ーー

受付「お釣りと領収書です」

織莉子「すいません、遅くなりまして」

テクテク

織莉子(先生にもご挨拶を)

ピイイインッ

織莉子「!?」ダッ

ーー救命病棟病室ーー

ゆま「ZZZZZ」

ゆま「………」パチッ

ゆま「………」ムクッ

287 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/07 04:32:53.08 jEnosG4M0 223/477


ーー救命病棟廊下ーー

真姫「それでは、このまま病棟に出ますので」

救命部長「ああ」

\ウァアァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!/

真姫救命部長「!?」

ーー救命病棟病室ーー

\ァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!/

ゆま「うああっ、うああああっ、
   うえっ、うあっ、うえええっ、うええっうあっうああああっ
   うあああうええっうああぁああああああああああっっっっっっっっっ!!!!!」

ゆま「ああああああっうああああ……………」

ダダダッガバッ

織莉子「………」ギュッ

ゆま「あああああ………」

織莉子「………大丈夫、大丈夫だから大丈夫。
    大丈夫、大丈夫だから、もう大丈夫だから………」

ゆま「………おねーちゃん?………」

織莉子「大丈夫だからもう大丈夫だから怖い事はないから………」ポロポロポロポロ

看護師長「後は私が」ポン

織莉子「ああ、すいません。大きな声が聞こえて」ヨイショ

織莉子「………」ペコリ

師長「はいはい元気なお目覚めですね。
   病院ですよゆまちゃん」

288 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/07 04:37:08.50 jEnosG4M0 224/477


救命部長「ICU症候群、とも言える訳だが」

真姫「えーと、取り敢えず」

救命部長「頼めるか? 元々先生の患者だ。
     診察してから引き継ぎで」

真姫「分かりました。おはよう、ゆまちゃん」

ゆま「おはよー? まきせんせー」

真姫「はい。真姫先生ですよ」

292 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/10 02:56:07.61 GGeR8xx70 225/477

真姫「………」チョウシンキ

ゆま「………」

真姫「あー、ごめんね。急いでたから傷になってるわね。
   大丈夫、退院までには綺麗になってるから」

ゆま「………」コクン

真姫「でも………頑張った。
   こんな傷作って、この傷の奥を治さないといけなかった。
   それでも、私達の所に戻って来てくれた。
   よく頑張った、有難う」

ゆま「なおった?」

真姫「うん。体の中の痛い痛いはちゃんと治しておいたから、ね」

ゆま「ありがとー」

真姫「どういたしまして。
   今はもう少し、ゆっくり休んでいいから」

ゆま「うん」

293 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/10 03:01:50.85 GGeR8xx70 226/477


ーー病院ロビー ーー

織莉子「あら、キリカ」

キリカ「あらじゃないよ織莉子っ!」

織莉子「え?」

キリカ「すぐ戻るって言ってたのに戻ってこないからさあっ!!」

織莉子「こほん、ここは病院」

キリカ「うー………」

ヒソヒソヒソヒソ
ウオッホン

キリカ「でも、本当にどうしたんだい織莉子。
    ちょっと時間かかったみたいだけど」

織莉子「ええ、ちょっとガールフレンドに会いに」

ザザーン
ビュウウウウウ
ゴォォォォォォォォォ

キリカ「…………………………
    …………………………
    が、
    あ、
    る、
    ふ、
    れ、
    ん、
    ど、
    ?
    …………………………
    …………………………」ピキッピキピキピキッ

織莉子「冗談よ」ツラッ

294 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/10 03:07:02.44 GGeR8xx70 227/477


キリカ「おーりぃーこぉーっ」

織莉子「気を揉ませた後だから、
    美味しいパフェでも食べに行きましょうか」

キリカ「よぅし、今日は織莉子と
    宇宙一美味しいパフェを食べるぞー!」

「それで、大丈夫なのかね?」

「ええ、手術は成功、もう目を覚ましたと」

「お役人さんの手を煩わせて本当に申し訳ない」

「とんでもない。こちらこそお預かりしておきながらこの様な事になって、
お詫びの仕様もありません」

「全く、こんな事になってるなんて」

「ああ! あんなバカ息子夫婦に任せておけるか!」

織莉子「………ふふっ、楽しみね」

 ×     ×

ーー美国邸 薔薇の庭園ーー

織莉子「………」ティータイム

キリカ「………」ティータイム

ピイイイインッ

織莉子「………」フフッ

キリカ「織莉子?」

織莉子「えいっ」

ケーキスプーンオクチニストライク

キリカ「んんんー」カアアアッ

295 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/10 03:12:30.98 GGeR8xx70 228/477


ーー病院ロビー ーー

真姫「やっと、退院ね」

恭介「はい、お世話になりました………」

真姫「うん。これからも色々大変だと思うけど。
   今回も大変だったけどね」

恭介「ええ、死ぬかと思いました………」

真姫「やっぱり、そんなに痛い」

恭介「思い出したくもないです」

真姫「胃でも死ぬ程痛いんだけど、腸のは治療面で厄介だからね。
   胃に刺さってたんなら摘出して標本にしてプレゼント出来たんだけど」

恭介「全力でお断りします」

真姫「クスクス」

恭介「クスクス」

恭介「それでは」

真姫「お大事に」

「そら、ちゃんと歩けるか?」

真姫(ん?)

ゆま祖母「大丈夫? 好き嫌いない?」

ゆま「うん、何でも大好きだよ!」

ゆま祖母「あらまぁえらいねぇ」

296 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/10 03:17:28.34 GGeR8xx70 229/477


ゆま「まきせんせー」

真姫「こんにちはゆまちゃん。
   元気になって、良かった」

ゆま「うん」

ゆま祖父「どうも。西木野先生には、
     ゆまの事でどれだけお世話になったか」

真姫「いえいえ。ゆまちゃん、お爺ちゃんお婆ちゃんのお家に?」

ゆま「うん。おじーちゃんのお野菜なの」

真姫「そう。お野菜は体にいいのよ。
   美容にもいいから美人さんになるわね」

ゆまニコッ

真姫「それでは、私からもゆまちゃんの事をどうぞ」

ゆま祖父「ええ。警察からも随分絞られてると聞きましたが、
     我が子ながら本当に情けない。
     目を離したばかりにこんな小さな子を辛い目に遭わせてしまって」

ゆま祖母「ええ、ええ、もう怖い目には遭わせないからねぇ」

ゆま祖母「ゆまはウチの子だよ」

真姫「それじゃあ」ペコリ

ゆま祖父母「どうも、お世話になりました」ペコリ

テクテク
クルッ

ゆまニコッ

真姫ニコッ

297 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/10 03:20:52.43 GGeR8xx70 230/477


 ×     ×

ーー見滝原中学校 教室ーー

まどか「さやかちゃんも行って来なよ。
    まだ声かけてないんでしょ?」

さやか「あたしは…いいよ」

ーーフードコートーー

仁美「それまで後悔なさらないよう決めてください。
   上条くんに気持ちを伝えるべきかどうか」

さやか「………」

ーーコンサート会場ーー

にこ(サングラス下ろし髪真知子巻)「………」

黒服「………」

黒服「矢澤にこさんですね?」

ーー車内ーー

ダンシンダンシン
ノンストッダンシン
ダンシンダンシン
レッミー

ツバサ「一杯いかが?」

にこ「いただくわ」

あんじゅニコッ

トクトクトク

にこ(出たよドンペリ)

298 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/10 03:24:19.26 GGeR8xx70 231/477


あんじゅ「流石に、今夜は奮発したのよ」

にこ「心の声とか読まないでよ」ニュータイプカ

英玲奈「では、再会を祝して」

ツバサ「乾杯」

一同「乾杯」

にこ「まあー、仕事で全然会ってないって訳でもないけどね」

英玲奈「物理的に空間を共有している、と言う意味ではな」

あんじゅ「そうよぉ、挨拶はしてくれるけどちょっと冷たいわぁ」

にこ「会う事自体珍しい方だけど、正直、何話していいか分からないわよ。
   どっちが上とか下とかじゃないけど、芸能人同士って言っても正直畑違い過ぎて。
   私は、歌も出してるけど何とかかんとか業界にしがみついてる何でも屋。
   ダンスミュージックの一線で、指の数から落ちないぐらいには勝ち続けているあなた達」

英玲奈「んー、業界的にも、
    なんとなく変な気を使っている部分はある、と言うからな」

にこ「みたいね」

ツバサ「意識は、してるわ」

にこ「………」

ツバサ「新興勢力であるスクールアイドル出身。
    その時点で好意的な見方だけじゃない。
    所詮は部活動上がりとも見られてる。
    しかも、プロになった時点では二位スタート。
    嫌でも付き纏うわ、伝説の幻影は」

299 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/10 03:27:44.11 GGeR8xx70 232/477


にこ「μ‘sの影、って訳?」

ツバサ「ええ。もし、ここにいるのがμ‘sだったら。
    その事は嫌でも連想される」

あんじゅ「ほんの一時の青春の輝き。
     それだけを残して頂点から消えた伝説のスクールアイドル」

英玲奈「こちらこそ、現実としてしがみついていると言う訳さ」

にこ「それであの結果なら、凄く、立派な事じゃない」

ツバサ「ええ、それだけの自負はあるわ」

にこ「………」

にこ(プロデビューから何年もしない内に、あのARスウジ事件、
   アイドル史の汚点とも言われるあの問題があった)

にこ(ネット中心に水面下で人気が熟成されていた
   スウジプロダクションのアイドルグループがプロジェクトに打って出た。

にこ(正統派のアイドルながら、業界的には注目の薄いダークホースだった事もあって、
   まともにぶつかったのがA-RISEだった)

にこ(想像を超える急成長に調整が追いつかず、
   CD、コンサート、映画迄、喧嘩上等のスケジュールが連発。
   双方の事務所、FCの懸命の呼びかけにも関わらず、
   電波な書き込みやガチの武力衝突で逮捕されるフーリガンが続出する社会問題に)

にこ(その一因に、スクールアイドル出身への蔑視があったのは間違いない。
   狂乱の年の後、A-RISEはカワイイ路線から実質撤退した)

あんじゅ「まあ、年齢的にもそろそろ、って話し合ってたしねぇ」

にこ「だから、心の声とか読まないでよ」ニュータイプカ

300 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/10 03:30:59.48 GGeR8xx70 233/477


英玲奈「ところで………」

ツバサ「お母さんのお加減は? 本当は最初に伺うべき事だったけど」

にこ「うん。安定してる」

ツバサ「まだ見滝原の病院に?」

にこ「ええ、まだ、動かせる状態じゃないって」

ツバサ「マッキーがいるんだっけ?」

にこ「ええ。非常時の事だったから主治医ではないけど、
   母の手術を執刀したのもマッキー」

あんじゅ「思い出すわぁ」

にこ「?」

あんじゅ「音ノ木坂学院の音楽室、マッキーと作曲してると
     ツインテールのお化けが張り付いているって都市伝説が」

にこ「な゛な゛な゛な゛な゛
   なに゛をいっでるに゛こにっごにっごに゛wwwwwwww」

英玲奈「しかし、遠方だと大変だな」

にこ「何れ、退院を勧められた時のために、うちのチビ達、ああ、もういい歳だけどね。
   うちのきょうだいが地元で病院や福祉関係の情報集めて、
   海未とか雪穂とか、他にも手伝ってくれてる。簡単な事じゃないけどね」

英玲奈「簡単じゃ、ないな」

301 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/10 03:34:25.98 GGeR8xx70 234/477


にこ「………」

にこ「有難う。融資の件では本当に有難う」ガバッ

にこ「本当は、もっと早く
   こうやってお礼を言わないといけなかったんだけど」

英玲奈「お互い、忙しい身だ」

あんじゅ「エリーチカから心のこもったお礼状、いただいたわ」

にこ「良かった。何度でも言うけど、今回の件では本当に感謝する」

英玲奈「まあ、礼を言うのはこちらでもあるからな」

あんじゅ「ええ。利率と期間こそ分が悪くても、
     矢澤ニコニーへの投資が出来るんならいいお話しよ」

ツバサ「………」

ツバサ「一つ、約束して欲しい事があるんだけど」

にこ「何? アイドルを続けろ、とかそういう………」

ツバサ「真っ当な生き方をしなさい」

にこ「は?」

ツバサ「アイドルを続ける、やめる、そんな事に口は出さないし出せないわ。
    それはあなたが決める事」

英玲奈「ああ。そんな事は、私達も何度も経験して来た。
    他人がどうこう言える事じゃない」

ツバサ「あなたには掛け替えのない財産がある。
    あなたが積み重ねて作り上げて来た財産が」

あんじゅ「羨ましい。あなたと私達、仕事の事は色々あるけど、
     この事だけは心から言えるわ」

302 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/10 03:37:53.10 GGeR8xx70 235/477


ツバサ「今回それが見えたでしょう? 私達が言う迄もないぐらいにね」

にこ「当たり前でしょう。だって、あなた達だってそう、
   あの時があって、ニコニーの意外と側にいてくれたんだから」

あんじゅ「光栄だわぁ」

ツバサ「この輝かしい世界で挫折した人、身を退いた人、
    少しは見て来たつもり。
    だから、ここでどういう結論になっても真っ当に生きなさい。
    大事な人達の誠意を裏切らない様に。
    それが、私達からの債権者としての命令よ」

にこ「ええ」

英玲奈「そうだ。そういう矢澤にこだからこそ、
    私達は大事な資金を投じたんだ」

ツバサ「私達を動かし、生かしているCD、グッズ、チケット、
    その一円一円は血と汗と涙の結晶」

あんじゅ「それって、あなたが一番よく分かってるわよねぇ」

にこ「当然よ」

ツバサ「それをあなたに投じたの。
    である以上、踏み倒そうなんて事になったら鬼の追い込み掛けるわよ。
    遠慮も甘えもなし、あの時と一緒、
    私達とあなたの、社会人としての真剣勝負よ」

にこ「分かった、分かってる。
   そう言われたら、μ‘sを名乗った者として全力で応じざるを得ないじゃない」

英玲奈「その意気だ」

あんじゅ「あの時みたいに私達を超える事が出来るか、
     楽しみにさせてもらうわぁ」

にこ「期待してていいわよ」

303 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/10 03:41:28.40 GGeR8xx70 236/477


ツバサ「フッ、そう、μ‘sを名乗りし者。
    それは本当に手ごわいわね。
    その事を忘れないで、あなたは決して一人じゃない」ビッ

ビッ
ビッ

にこ「………」ビッ

「「「「私達は一つ!!!!」」」」

ーー見滝原市内ーー

………は………あはは………あはははっ………

本当だぁ。その気になれば、

痛みなんて、完全に消しちゃえるんだぁ………

307 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/14 01:58:04.30 pJwKSzIh0 237/477

 ×     ×

ーー見滝原市立病院売店周辺ーー

テクテクテク

真姫「ん?」

まどか「………」キョロキョロ

真姫「やっ、まどかちゃん」

まどか「西木野先生っ」

真姫「ん?(なんか、ちょっと様子が)」

まどか「あのっ、さやかちゃん見ませんでしたか?」

真姫「さやかちゃん? いや、見てないけど。
   一緒じゃなかったの?」

まどか「はい。すいません、失礼します」

真姫「あ、ちょっと………」ヴーヴー

真姫(院内PHS)

真姫「はい? ええ、分かりました。すぐに向かいます」

308 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/14 02:03:21.26 pJwKSzIh0 238/477


ーーリハビリテーション病棟長椅子ーー

恭介「ふうっ」

真姫「お疲れ様」

恭介「どうも、って言いますか、先生の方が………」

真姫「ああ、ちょっと大きな事故で救命の応援」

恭介「そうですか」

真姫「アハハ………まあ、順調かな?」

恭介「そう、ですね。
   前よりは大分良くなったと思います」

真姫「そう………ちょっと、聞いていいかな?」

恭介「なんですか?」

真姫「さっき、まどかちゃんと会ったんだけど」

恭介「鹿目さんと?」

真姫「うん、なんか、さやかちゃんの事探してたんだけど」

恭介「そう、ですか」シタムキ

真姫「んー」ウエムキ

310 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/14 02:13:22.04 pJwKSzIh0 239/477


真姫「なんか、あった?」

恭介「それが、家に帰ってないとかで、
   学校にも来てなくて、先生からも何か知らないかって聞かれたんですけど」

真姫「そう………君には黙秘権がある。
   私達の関係上、無関係なプライベートに関する供述を君に強制するつもりは一切ない。
   さやかちゃんと何かあった?」

恭介「いえ。正直、思い当たる事がなくて」

真姫(嘘は言って無さそうだけど………)

真姫「何か話したりとかは?
   まあ、退院して何日も経ってない訳だけど」

恭介「そうなんですよね。
   僕もちょっと、最近覚えたボカロが意外と面白くて。
   出来れば自分で作りたくて色々勉強してるんですけど。
   この手ですから、どうしても時間かかるけどその分入れ込んじゃって」

真姫「なーる………
   ………仁美ちゃんと、何かあった?」

恭介「志筑さん、ですか?」

真姫「ん」

恭介「………」

真姫「言いたくないならいいけど」

恭介「………」ガバッ

恭介「お慕いしています、って言われました」

真姫(そりゃ又古風なアノコラシイ)

真姫「それで、返事は?」

恭介「少し、考えさせて欲しいって。
   正直色々あって、よく分からなくて」

311 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/14 02:19:00.95 pJwKSzIh0 240/477


真姫「そう、分かった」

真姫(って、こいつ因果関係分かって無い訳?
   本当に分かってないっぽくもあるけど、
   流石にこれ以上は踏み込めない)

真姫「心配?」

恭介「ええ。色々やんちゃで怒られる様な事もありましたけど、
   こんな事は今までなかったですから」

真姫「なら、自分に出来る事をするのね」

恭介「出来る事?」

真姫「真面目にリハビリをして、ボカロでもなんでもいい、
   君自身の人生を取り戻す事」

恭介「………はい………」

ーー夜、見滝原市内路上ーー

真姫(来てしまった訳だけど………)

真姫(志筑邸まであと百メートル、いや、もっと、って所かな)

真姫(ま、ここは身の程弁えて一杯引っ掛けて………)

クルッ

真姫「ヴェェ………(はい、回避不能強制イベントフラグ発動しました)」

仁美「西木野先生?」

真姫「えーと、仁美ちゃん?
   こんな遅くに夜遊び、じゃないよね」

仁美「はい、薙刀のお稽古が遅くなりまして」

真姫(ヴェェ………)

312 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/14 02:22:12.85 pJwKSzIh0 241/477


仁美「それで、先生は?」

真姫「いや、ちょっと用事があって、これから帰る所」

仁美「そうでしたか」

真姫「それじゃ」

仁美「はい」

コッコッコッ
スレチガイ

真姫「………ん?」クン

仁美「っ、つっ………」カクッ

真姫「ん?」

真姫「仁美ちゃん? どうした?」

仁美「いえ、なんでも、ありませんわ………」ヘタッ

真姫「ちょっとごめんね」シャガンデ

真姫「………」クンクン

313 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/14 02:26:01.01 pJwKSzIh0 242/477


テクテク

織莉子「西木野先生」

真姫「織莉子さん?」オデコピタッ

キリカ「おーい、織莉子ーっ」タッタッ

真姫「ちょっと、手伝ってくれるかしら?」

織莉子「はい」

真姫(一旦歩道の端に移動、鞄を枕に)

真姫「ちょっと、この姿勢で代わってもらっていい?」

織莉子「キリカ、お願い」

キリカ「織莉子の頼みなら」

織莉子(仰向けで寝てる意識の怪しい女の子の
    両方のふくらはぎをキリカの両肩に)

真姫「あなた、携帯持ってるなら貸して欲しいんだけど」

織莉子「キリカ」

キリカ「はい」

真姫(なんか、忠犬ね)119

真姫「救急車お願いします。中学生ぐらいの女の子が倒れています。
   ………丁目周辺の住宅街の路上。通りすがりで介抱している子に代わります。
   はい、後お願い」

キリカ「あ、ちょ、ちょっとっ」

314 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/14 02:29:37.97 pJwKSzIh0 243/477


ーー民家玄関先ーー

ピンポーンピンポーン

インターホン「はい」

真姫「夜分遅くすいません、近くで人が倒れています。
   119番通報お願いします。
   それから、ここの正確な住所を教えて下さい」

インターホン「分かりました………」

真姫「携帯持ってる?」

織莉子「はい」

真姫「救急車呼んで。ここの住所の××さんの家の前からだと。
   私の知り合いとして市立病院に問い合わせる様に伝えて、
   救急車が来たら誘導して」

織莉子「分かりました」

タタッ

真姫スマホススッ

真姫「もしもし………」

ーー緑+数字系コンビニエンスストアーー

真姫(水1.5リットルスポーツドリンクカチワリ………)

318 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/18 13:20:59.45 rxum++X60 244/477

ーー見滝原市立病院救命医局ーー

プルルルル

看護師「先生、外来からです。西木野先生から電話が来て、
    ………丁目周辺路上で急病人を発見した、中学生女子、
    恐らく熱疲労、熱射病に移行の危険あり、消防からの問い合わせに備えて欲しいと」

救命医「分かった。聞いての通りだ、Ⅲ度熱中症前提で準備。
    消防には受けると伝えろ」

看護師s「はいっ!」

受話器ガチャッ

救命医「もしもし」

真姫「はい、西木野です」

救命医「状況は?」

真姫「通報を通行人に任せて、コンビニから現場に戻る途中です」

救命医「買い物の内容は?」

真姫「ミネラルウォーター2リットル、スポーツドリンク500ミリリットル二本、
   タオル、クラッシュアイスのパックと小分け用のビニール袋」

救命医「上出来だ」

真姫「居合わせた男性ナースに半分持ってもらっています」

救命医「ますます上出来だ。空きはある、うちで受けるぞ」

真姫「ありがとうございます」

319 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/18 13:26:14.06 rxum++X60 245/477


ーー見滝原市内路上ーー

男性看護師「こっちですか?」

真姫「ええ、助かります。
   あなたの買い物もあったでしょうに」

男性看護師「いえ、今日はこれだけですから」

真姫(小さいお菓子二つにおまけのクリアファイル)

ーーーーーーーー

ピーポーピーポーピーポー

ーー見滝原市立病院救命救急センター観察室ベッド脇ーー

救命医「数値的には色々問題はあるけど、集中治療の成功で峠は越えました」

真姫「そうですか」

救命医「いや、本当に西木野先生がいたのが不幸中の幸い。
    迅速な応急処置が無かったら内臓にダメージが来てもおかしくない状態だったから。
    室内でも危ないんだから、あんまり無理しないできちんと水分補給しないと」

仁美「すいません………有難うございました」

救命医「今、親御さんがこちらに向かってるって言うから、
    親御さんとお話ししてから念のため点滴もう一本入れて。
    明日もう一度の受診をお勧めします」

仁美「分かりました」

救命医「それじゃあ、少し待ってて下さい」

320 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/18 13:31:25.86 rxum++X60 246/477


コッコッコッ

仁美「すいません、ご迷惑をおかけして」

真姫「無理したわね。
   薙刀ってあれ、遠心力つくから体持ってかれるでしょ。
   挙句、柄でチンにアッパーカット自爆したり。
   慣れてないと思い切り体力使うわよね」

仁美「ご存じでしたか?」

真姫「ちょっとね、試しに友達の奴何回か振った、って程度だけど。
   に、しても、今回は仁美ちゃん完っ全にオーバーワーク。
   本気で危なかったわよ」

仁美「すいません………お稽古の後に、
   自主練習で根を詰め過ぎた様です」

真姫「そう」

仁美「さすがはお医者さんですね。手際が良くって………」

真姫「んー、まあ、オーバーワークは苦い経験とかもあるからねぇ。
   身近に鬼プリマとかウルトラスーパーデラックス体力クイーンとかもいたから
   自分で勉強して警戒してたとかもあるけどタハハ」

仁美「………ちが………ったのかも………」

真姫「ん?」

仁美「くしが………んな事………ったりしたから………」

真姫「どうしたの? 言いたくないなら無理には聞かないけど、
   なんか溜まってるものでもあった?」

仁美「さやかさんが………いなくなってしまいました」

真姫「うん。知ってる。まどかちゃんが病院に迄探しに来てたから」

321 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/18 13:36:29.72 rxum++X60 247/477


仁美「そう、でしたか。病院に………
   やっぱりまどかさん、心配して傍から見ても心痛ですもの」

真姫「うん」

仁美「もちろん、わたくしだって。
   でも、わたくしにはそんな事を言う資格………」

真姫「喧嘩でもしたの?」

仁美「わたくし、上条君の事を、お慕い申し上げておりますの」

真姫「そう」

仁美「はい。先生はお見通しでしたわね」

真姫「んー、あれで気付かないのって、無理」

仁美「そう、ですか。
   それでは、気が付いていましたよね、さやかさんの気持ちも」

真姫「そうね」

仁美「わたくしもです。
   やんちゃなさやかさんが、あんな眼差しをなさるんですもの。
   さやかさんは掛け替えのない大切なお友達。
   それでも、諦める事は出来ませんでした」

真姫「それはつまり、親友との三角関係と解釈していいのかしら?」

仁美「はい。ですから、さやかさんに申し上げました。
   上条君の事をお慕い申し上げております。
   つきましては、わたくしがその事を告白するのに一日だけお待ちします。
   自分の気持ちに正直になって下さい、と」

真姫(ヴェェ………こういう娘だよね………)

仁美「その後です、さやかさんがいなくなってしまったのは。
   わたくしが、あんな事を言ったから………」

322 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/18 13:40:14.61 rxum++X60 248/477


真姫「んー、気休めかも知れないけど、
   体が弱ってるからかも知れないけど、
   その決めつけは短絡的に見えない事も………」

仁美「気づいて、いました」

真姫「ん?」

仁美「さやかさんは、大切な、本当に大切なお友達です。
   お嬢様と見られて、みんなと少し距離のあったわたくしの手を引いて、
   あんなに明るく、優しい世界を教えてくれた。

   まどかさんの事もそう。転校生で引っ込み事案なまどかさんをわたくしたちに引き合わせて、
   あの愛すべき女の子と出会う事が出来たのもさやかさんのおかげです。

   そんな元気なさやかさんが、あんなに可憐な、誰よりも女の子の表情を見せる事を知っていた。
   そして、上条君も、さやかさんにだけはあれ程に心を許して、
   事故でヴァイオリンが演奏出来なくなった後も、さやかさんは決して上条君の事を諦めなかった。

   わたくしは、愛しい人を傷付けない様に、遠巻きに自分を守るので精いっぱいで。
   本当は、わたくし等が入り込む余地等なかった。

   それでも、そんなさやかさんに形ばかりのお断りをして、
   思いを告げて、振られてしまいました」

真姫「ん? 振られたの?」

仁美「はい。返事を待って欲しいと言われて、
   その後、上条君をお誘いして少しお散歩を共に様な事もありました。
   二人きりで、心浮き立つ時間ではありましたが、
   結局、わたくしの想いは遂げられませんでした」

真姫(だから、どういう対応したんだあのヴァイオリン馬鹿?
   それとも男のお子ちゃまってそういうもの? コレダカラジョシコウハイミワカンナイ)

仁美「思えば、その前から、少し前からさやかさんと、それからまどかさんも。
   わたくしによそよそしかった様な気もします。
   さやかさん、わたくしに、何も言わずにいなくなってしまいました」

真姫「………」

323 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/18 13:43:34.47 rxum++X60 249/477


仁美「わたくしは習い事で忙しかったから、と、思い込もうとしていたのかも知れません。
   でも、本当は、わたくしの邪な想いを察していたからかも知れません。
   わたくしは、大切な友達の想いを知りながら、追い詰めて、
   そんな、そんなわたくしだからわたくし、っ、うっ、ううううう……………」ホロホロホロ

真姫「………いや、イミワカンナイんだけど」

仁美「え?」

真姫「つまり、だから、仁美ちゃんは上条君に恋をした。
   たまたまそれが友達とバッティングしたから、
   正々堂々宣戦布告して、それから、
   誰の彼女でもない相手に告白して玉砕した。
   頑張ったよ、仁美ちゃんは」

仁美「でも………」

真姫「上条君を見るさやかちゃんが誰よりも女の子だって、知ってるよ。
   でもさ、やっぱりさやかちゃんなのよ。
   仁美ちゃんが惚れた、あの元気で優しいね。

   こんな事、って言ったら今はお互い大変かも知れないけど、
   ちょっとダメージ背負ったかも知れないけど、
   そういうの、十年後には甘酸っぱい青春の思い出よ」

仁美「大人の、女性の方から見たらそうなのかも知れませんね」

真姫「んー、私の場合女子校だからあんまり偉そうな事は言えないんだけどね」ヴェェ

仁美「でも、お嬢様で、その上大活躍されたそうですもの、
   それでこんなに素敵な方で、女子校でもおモテになったのでは?」

真姫「あー、知ってた?」

仁美「大切な、上条君の主治医の方ですから」

真姫「そう。まあー、女子校のその辺の事は、知りたい?」

仁美「何かあるのですか?」

324 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/18 13:46:48.38 rxum++X60 250/477


真姫「その内、気が向いたらね」

仁美「………フフッ」

真姫「ん。真っ直ぐ過ぎるのよ、さやかちゃんも仁美ちゃんも。
   そして、青春まっしぐら。
   今の本人らは大変かも知れないけど、好きよ、そういうの」

仁美「有難う、ございます」ウッ、ウウウ

真姫「それでも、好きになっちゃったんだよね。
   大切な友達と、両想いかも知れない。それでも」

仁美「………」コクッ

真姫「それで、その気持ち、
   彼が好きな気持ちと友達を愛する気持ち、
   その両方と精いっぱい誠実に向き合った。
   頑張ったよ、仁美ちゃんは。

   それを、笑う事なんて誰にもできない、そんなの許さない。
   次は、さやかちゃんの番ね」

仁美「さやか、さんの………わたくしは………」

真姫「だから、信じて待とう。
   あんまり自分を傷付けたりしたら、
   誰よりも大切な友達が、仁美ちゃんの事をそう思ってくれて、
   仁美ちゃんが大切に思ってる娘が悲しむから」

仁美「………はい………」

325 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/18 13:49:55.45 rxum++X60 251/477


パタパタパタ

仁美母「仁美!」

仁美父「仁美っ!」

仁美「ごめんなさい、お父様、お母様」

仁美父「大丈夫だったか仁美っ?
    西木野先生っ、先日の件と言い、
    うちの仁美が度々、一方ならぬお世話をいただき、
    本当になんとお礼を申し上げて良かったか」

仁美母「本当に、有難うございました」

真姫「ご丁寧に」ペコリ

ーー病棟廊下ーー

仁美父「本当に、一度ならず何とお礼を申し上げていいものか」

真姫「本当にご丁寧に………」

仁美父「………確かに、厳しく育ててきました」

真姫「はい」

仁美父「志筑家の者として、一人の淑女として恥ずかしくない娘にと、
    様々に厳しく、子どもにとって、
    年頃の娘にとっては窮屈な事も多かったかも知れない。
    それに勝るだけの愛情は注いで来た、そのつもりではいましたが………」

仁美母「仁美は、そんな私達の娘として、本当にいい娘に育ってくれました」

仁美父「ええ、それはもう。
    私達のそんな期待にも応えて、そして可愛い、いい娘に育ってくれました。
    しかし、この様な事が度々あると言う事は、やはり何か………」

真姫「その通りです」

仁美父母「!?」

326 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/18 13:53:01.98 rxum++X60 252/477


真姫「仁美さんは、素晴らしいお嬢さんです。
   恐らくはご両親の事もとても愛して、大事に思っている筈、
   拙い若造の私ですが、愛されて育ったお嬢さんだと、お見受けしました」

仁美父「ありがとう、ございます」

真姫「お嬢さんは、一人の女性として羽ばたきを始めている所です。
   親への反発も、甘えも、その諸々を抱えて表現の術を探して、
   それが思春期と言うものですから。
   私も、多少の経験はあります」クスッ

仁美父「そう、ですな」

真姫「はい。そうですね、お父様はそろそろ
   もう少し先に拳と涙の準備もしていただくのも」

仁美父「ん?」

仁美母クスッ

真姫「………本当に、いい娘です。ご両親から愛されている事も理解している筈です。
   だからこそ、ご懸念でしたら体にだけは気を付けて下さい。

   そういう娘さんだからこそ、無理をしてしまうものですから、
   本当に辛い時に、それを察して受け止められる心づもりして下さい。

   そして、多少なりとも、ご両親からも表現してあげて下さい。
   かつての娘として、些かの生意気を申し上げます」ペコリ

仁美父「まことに、感謝します」イチレイ

仁美母イチレイ

327 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/18 13:56:32.09 rxum++X60 253/477


仁美父「只………」

真姫「はい」

仁美父「恐らくは、かつて、ではなく、
    娘と言うものはいつまでも娘、事、父親にとっては。
    そうではありませんかな」

真姫「その通りですね」クスッ

仁美母「まして、こんな立派なお嬢さんなら尚の事ですよ」

真姫「不肖の娘です」

ガラガラガラ

真姫「それでは、治療も始まる様ですので私はこれで」

仁美父「本当に有難うございました」フカブカ

仁美母フカブカ

真姫イチレイ

コッコッコッ

真姫「………許さないから………」

真姫「こんなに、一杯の人心配させて愛されて。
   それで、それ全部悲しませるとか、
   そんな真似したら、そんなの私が許さない………」

332 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/26 03:31:30.02 y8HcH9+80 254/477

ーー電車内ーー

「ねえ、この世界って守る価値あるの?」

「あたし何の為に戦ってたの?」

「教えてよ」

「今すぐあんたが教えてよ」

「でないとあたし」

「どうにかなっちゃうよ? ………」

「いたっ!!!」

「!?」

真姫「………」ハアッ、ハアッ

さやか「………」クルーリ

真姫「いちかばちか、交通機関回ってたら………」

真姫(ホームで、チラッと視界に入ってダッシュで駆け込んで………)

真姫「何、やってた訳?」

ショウさん「いや、どっちかっつーと俺らが一方的に絡まれてた感じで」

真姫「そう」

333 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/26 03:37:15.67 y8HcH9+80 255/477


さやか「邪魔、しないでくれる?」

真姫(なんか、めっちゃ淀んでるけど………)

真姫「邪魔って何っ?」グッ

さやか「………」

さやかストン

真姫「!?」

さやか「………」ハア、ハア

真姫「ちょっと、大丈夫っ?」

さやか「………るさいなぁ………」ウデブウン

真姫ガシッ

真姫(なんか、ちょっとした酔っ払いっぽいと言うか………
   でも、お酒や、薬物って感じでもないけど)

ショウさん「そっちに任せていい訳?」

真姫「そうして下さい。
   この娘まだ中学生だから、揉めてもそちらが困るでしょう」

ホストB「つーか、あれっ?」

ショウさん「ん?」

ホストB「もしかしてマッキー?」

ショウさん「今はお医者さん、だっけ?」

真姫「まあ、そういう事ね」

334 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/26 03:42:43.31 y8HcH9+80 256/477


さやか「先生、駄目だよ、こいつら」ブツブツブツブツ

真姫「ありがと、私の心配してくれて。
   でも、どっちかって言うとあなたの心配の方が先だから」

ショウさん「そんじゃ、この娘なんかこじらせてるからひっかかれない様に気を付けてよ。
      今度遊びに来てよ、あの青春の日々、大歓迎よ」メイシ

さやか「うう………」ウデノバシ

真姫「お生憎、今時勤務医なんて貧乏暇なし。
   それとも、どっかいい沈め先とか知ってる訳?」ピッ

ショウさん「やだなぁ、誠心誠意明朗会計がモットーよ」

真姫「なんて言って、引っかかれるのはそっちじゃないの?」

ショウさん「引っかかれたら先生治してくれる?
      こいつなんて三日に一度はボッコボコにされてんの」

真姫「限りなく自業自得にしか見えないわね」

ホストB「ひっでぇーなぁ、
     癒しの一時のために体張ってんすよジュリエット」

真姫「それ、今時マジでやってる訳?」ギャルソンシキイチレイ

ショウさん「ねぇー、ズレてんでしょ。
      この辺がまだまだなのよ」

ホストB「さっすがショウさん、
     なんだかんだ言ってマッキーとトーク伸ばしてる」

真姫「じゃあ、この辺にしとく。
   お互いトークも有料の商売でしょ。タダ(無料)で漫才有難う」

ショウさん「じゃ、気が変わったらお店に来てよ。ばーい」

ホストB「ばーい」

真姫「はいはい、三分ぐらいは考えてみるから」

335 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/26 03:48:21.36 y8HcH9+80 257/477


スタスタスタ
ガタンゴトン

真姫「………で、君は一体何やってる訳?」

さやか「………分かんない」

真姫「そう。取り敢えず降りましょう。
   ここに座り込んでても仕方がないから」

さやか「………うん………」

ーー駅ホームーー

自販機ゴトン

さやか(ベンチ)「………」

真姫「はい」ミネラルウォーター

さやか「………」

真姫「渇き過ぎ(主に心が)、飲んだ方がいい」

さやか「………」キュッ、ゴクッ

真姫(手に取ってキャップを取って口から喉を通るまで支障なし。
   ふらついてはいたけど、変な偏りはなかった。
   見た通りだと極度の疲労。
   単純な疲労か、それともたちの悪い内臓疾患?
   とにかく、ちょっと尋常には見えない。
   感覚的な疲労感と外見が釣り合わないのも気になる)

真姫(ベンチ)ストッ

さやか「何やってんの先生?」ボソッ

真姫「自分でも何やってんだかイミワカンナイ」

さやか「ククッ」

真姫「?」

336 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/26 03:51:24.92 y8HcH9+80 258/477


さやか「結局あたしは一体何が大切で何を守ろうとしてたのか、
    なにもかも、わけ分かんなくなっちゃった」

真姫「そう」

さやか「うん」

真姫「まどかちゃん、病院に来たわよ」

さやか「そう」

真姫「さやかちゃんの事、探してた。
   だから、私も気になってね。
   気が付いたらこうやって追いかけてた。
   分かる、分からないの問題じゃないわよこういうの」

さやか「そう」

真姫「疲れてる?」

さやか「別に………もう、どうでもよくなっちゃったから」フラッ

真姫「ちょっ、大丈夫っ?」ヴェェ

さやか「いいよ、もう」ブウン

真姫(何? なんか、本格的に電波な事言い出したけど?
   本当に薬? まさかメタンフェタミンでも切れた?)

さやか「………あたしは用済みさ………この世界には、要らないよ………」ストン

真姫「要るわよ」ボソッ

さやか「………」

真姫「何、ふざけた事言ってんのよ」

さやか「何? 何も分からないのに………」

真姫「分からないのはそっちでしょっ!?」ガシッ

337 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/26 03:54:41.22 y8HcH9+80 259/477


さやか「分かるよ、お説教なんて、言いたい事なんて………
    でも分からないんだよ、分からない、
    あたしって、ほんとバカだからぁ………」ツツーッ

真姫「だから………いい女が、無駄に自分を卑下しないで」

さやか「いい女、なんかじゃないよ。
    人間ですらないんだから。
    抱きしめてなんて、キスしてなんて言えないよ………」

真姫(なんか、繋がる様で繋がらない。
   話の基礎理論は通るけど周辺の変なワードがノイジー過ぎる。
   この内容で薬じゃないとすると………)

真姫「あぁーっ、そうっ。結局それが本音。
   要はさやかちゃんは失恋してこうやってうじうじしてると」

さやか「挑発してるつもり?」

真姫「生憎女子校出身だからね、
   その辺りの話題の思春期女子の沸点は難しいんだわイミワカンナイ」

さやか「………」ククッ

真姫「フッ………だから、いい女って言ったでしょ?
   その分、女を見る目は多少はあるつもりなんだけど。
   真っ直ぐな娘こそこじれるって所とか、
   こんな可愛い娘、ここで壊れて終わる、なんて勿体なさ過ぎるってぐらいには」

さやか「………先生、なんでそんなにお節介なの?」

真姫「だから言ったでしょ、イミワカンナイって、
   そんなの私が教えて欲しい」

さやか「無茶苦茶だよ」

真姫「ええ。プロとして仕事をしている以上、患者は次から次へと来る。
   まして、その周辺人物にまでいちいち入れ込んでたら身が保たない。
   分かっては、いるんだけどなぁ」ハアッ

さやか「………」

338 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/26 03:58:10.64 y8HcH9+80 260/477


真姫「もちろん、きっぱり割り切って仕事とプライベートに専念する、
   って言うのも一つの生き方だし、そうしている人もいる。
   特に私達みたいな仕事だと、中途半端な事をして抜き差しならなくなって
   双方ひどい目に遭う、って、良かれと思ってが通用しないケースも嫌って程注意されてる」

さやか「………今回がそうだって、思わない訳?」

真姫「割り切って割り切れない、そんな私の距離感にはまったってだけ。
   そんなムカつくおばさんの自己満足、少し付き合ってみる気ある?」

さやか「付き合うって?」

真姫「普通に考えるなら、このままお家に送り届ける事になるんだけど、
   その場合、最後まで見届けないと今のさやかちゃんの状態は不安過ぎる。
   それとも、お茶の一杯ぐらい私と付き合うか。
   色々本格的にまずいし、その時点で逸脱してるから、
   長くても一晩限り、って事になるけど」

341 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/30 01:30:21.10 9aEwf/400 261/477

ーーマキルームーー

さやか(体育座りティータイム)「………」ズズッ

真姫「魔法、か」

さやか「魔法?」ゴクッ

真姫「うん、さやかちゃんがさっき言ってた。
   よく分からなかったけど」

さやか「………そっか………」

真姫「おばさんの知らない流行か何か?
   それとも、恋の魔法とか、そういう類の話かしらね?」

さやか「そんな、ロマンチックなものじゃないよ。
    まあ、ちょっとだけ当たってるかも。
    人の心を呪いで縛ろうとか考えちゃう辺りなんて」

真姫(実態のある話? 何かの例え?)

ーーーーーーーー

真姫「………」スクッ

さやか(あーあ、呆れちゃった)

真姫「疲れてる所悪いけど、最初から順序立てて聞かせてくれるかな?」コピーヨウシドサッ

さやか「へっ?」

真姫「取り敢えず、魔法少女さやかちゃんが魔女を退治する、
   ってお話しなのよね?」ペントントン

343 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/30 01:35:23.26 9aEwf/400 262/477


さやか「信じて、くれる訳?」

真姫「さやかちゃんのメンタルが最悪だから一見取り止めのない話に聞こえるけど、
   何か基になった情報があって、その筋は通っていそうにも聞こえる。
   物理的に実在するか否かはおいておいて、その話自体には何らかの意義がある。
   私にはそう聞こえた」

さやか「うん、いいよ。こんな話、それだけ真面目に聞いてくれるんだったら
    あたしも話す甲斐があるから」

真姫(狂人は、正常に狂っているとも言うけどね。
   意図的な嘘や一過性のものにしては色々おかしい。
   何等かの確固とした妄想が実在している可能性はかなり高い)

真姫(内容的に言って、ありそうなのはアブダクション系の記憶障害。
   心的外傷によってその時の記憶があり得ない形に変質している状態)

真姫(この異常な疲労とのセットだと、アップ系ドラッグの禁断症状。
   典型的なのがメタンフェタミンヴェェ。或は統合失調症を発症した)

真姫(どれをとっても、とてもじゃないけど私一人の手に負えない。
   既に転移されるリスクがバリバリ増加してる)

真姫(病的だと心証とれたら、
   精神保健福祉センターに繋げてスクールカウンセラーにも。
   本人の同意が得られればいいんだけど。
   ドラッグだったら、最終的には警察が絡むかなぁ………
   親を説得出来れば専門医の紹介を考えるんだけど)

真姫(考えられる分野の専門医は日本では絶望的に少ない。
   今は、マシな対応をするしかない。
   ………それが現実でも、又、手は尽くしましたけど、
   で終わったら、嫌だなぁ………)

344 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/30 01:40:57.69 9aEwf/400 263/477


ーーーーーーーー

真姫「………成程ねぇ………」

さやか「………」

真姫「つまり、

実は普通の人には見ることの出来ないモンスターに殺されそうになった友達を助けるためにマスコットにお願いした代償にモンスターと戦う戦士になったけどその正体はゾンビだったんだ

   こういう事でおk?」

さやか「うん、大体合ってる。
    そう、ゾンビ、ゾンビだったんだ、ダキシメテナンテ、キスシテナンテイエナイオオオオオ」

真姫「あーごめんね」ヨシヨシ

真姫(………イミワカンナイ………)

真姫(………けど、取っ掛かりは………)

真姫「その、魔法少女の変身グッズ?
   ソウルジェムって見せてくれるかな?」

さやか「うん、いいよ」スッ

真姫「………」

真姫(………おもちゃ、にしてはちょっと宝石っぽさがよく出来てるわね。
   それに、何と言うか、輝きの感じが何となく………
   肉体とか生命? そう言われてるからか、私まで感化されてるとか?)

真姫(さっきの話だと、なんかこれ持って距離取ったら死ぬ、
   とか言ってたけど………)

真姫(さやかちゃん、感情的ではあっても、内容的には真顔で話してたわよね。
   だとすると、本人がそう信じていたら、迂闊に試したら危険ね………)

345 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/30 01:46:35.86 9aEwf/400 264/477


真姫「確かに、黒い淀みがあるわね。
   何か、液体を溶かし込んだ様にも見える」

さやか「でしょう………」

真姫「それでその………」カミガサガサ

真姫「グリーフシード?
   淀みをとるものとかって持ってるの?」

さやか「いやー、ないね。
    色々意地張っちゃったからさぁ………
    だからすっごく、だるくて気持ち悪い………」

真姫(だからそれ、S系の新手の隠語じゃないでしょうね………
   宝石が濁ると疲労感、魂の宝石………)

真姫「それで、どこで手に入るのそれ?
   確か、魔女が………」

さやか「うん、魔女が持ってる。持ってない時もあるけどね」

真姫「その魔女って、
   やっぱり折れた帽子被って箒にまたがったお婆さんとかそういう………」

346 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/30 01:49:55.46 9aEwf/400 265/477


さやか「全然違う」

真姫「ん?」

さやか「何て言ったらいいのかなー。
    あれって完全に怪物って言うか………」

真姫「絵とか描ける?」

さやか「んー………」カキカキ

さやか「………正直、全然似てないって言うか、
    絵で表現するの無理って言うか」スッ

真姫(………イミワカンナイ………)

真姫(そもそも何を表しているのかすらよく分からないレベルだけど、
   サイケデリックなモンスターが見えているんだとしたら、
   これはいよいよ典型的にやばいレベルのが見えてるのか)ヴェェ

真姫(………ちょっと待って、サイケなモンスター? ………)

真姫「それで、その、魔女を退治しないとグリーフシードは手に入らない」

さやか「うん………マミさんなら、持ってるかな………」

真姫「マミさん?」

さやか「うん。ああ、言ったらまずかったかな?」

真姫「教えて欲しくはあるけど、無理はしなくていい」

さやか「うん。マミさんね。魔法少女の先輩。
    すっごく格好いいんだー。
    マミさんなら、ストックあるかな………」

347 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/30 01:54:00.01 9aEwf/400 266/477


真姫(マミさん、魔法少女の先輩………)

真姫(共有している仲間がいる、と言う事は、
   単独の精神疾患の可能性は低くなる)

真姫(それなりに筋の通った設定、魔法少女と言うメルヘンな言葉。
   それでいてグロテスクな造形と裏設定………)

真姫(それで、尊敬する先輩がいる、と言う事は………
   悪く考えるならお薬仲間)

真姫(でも、どっちかって言うと台所方面の病名?
   ゴールドのカラコンとか右手とか俺達とやる気らしいとかそういう、
   年齢的特徴も合致してる………)

真姫(もちろん、特に思春期に於いては、
   心の傷から逃れるためにそうした世界を求めるのはままある事。
   安易に馬鹿には出来ない。)

真姫(その方面の先輩と言う事は………
   やっぱり、マジカルマジカルな魔法少女で、
   初めと終わりのポーズはバッチリ決めるラブアローシュートとかそういう方面の………
   それで、下級生から見て結構いい線行ってて実際美人でも、
   残念が積み重なって色々こじらせた三十路突入ってパターンで………)

真姫(当面の問題は、「マミさん」が物理的な存在であるかを………)

真姫「マミさんとは連絡とれるの?」

さやか「え? はい、携帯で」

真姫(それを信じるなら、一応実在はしてるのか。
   それとも、そう信じ込んでるのか)

真姫「契約して魔法少女になった、って言ったわよね」

さやか「うん、キュゥべえと契約して」

真姫「キュゥべえってなんなの?」

さやか「………そう言えばなんなんだろ?」

348 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/03/30 01:57:52.58 9aEwf/400 267/477


真姫「契約で魔法、ってなると、
   普通にメフィストフェレスとか、その悪魔方面を連想するんだけど」

さやか「ああ、悪魔には違いないね。
    だって、知らない内にゾンビにされて
    ゾンビなんだ、ゾンビなんだぁダキシメテナンテ、キスシテナンテイエナイオオオオオ」

真姫「よしよし」ナデナデ

真姫「で、悪魔って言うと、
   やっぱり蠅とかヤギの角生やしてとか、
   そういうタイプの悪魔な訳?」

さやか「全然。見た目だけは可愛い」

真姫「………」

さやか「素質がある女の子にしか見えない、って言うけど、
    何て言うのかなあれ? 猫? 狐?」カキカキ

真姫(………取り敢えず、魔女よりはまともな絵になってる。
   何か、小動物みたいな?)

真姫(只、お絵かきのスムーズさから言って、
   小動物と言うよりは線画的。
   類型は魔女っ子アニメのマスコット?
   小児科では話題として重宝するって言うけど、こういうのあったっけ?)

真姫(素質がある者にしか見えないキリッ
   うん、ありがちに都合のいい設定)

351 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/04/01 02:58:31.79 krq7Zjsb0 268/477

真姫「キュゥべえ、ねぇ………。
   精霊、或は悪魔の使い魔………」

さやか「ああ、使い魔ってのはいる。
    魔女とセットで出て来る奴。そいつも人を襲うんだけどね」

真姫「それを、さやかちゃんは退治してる訳?」

さやか「んー、まあ、そういう事」

真姫「?」

さやか「あたしとしては退治したいんだけど、正直数もいるし
    いちいち狩ってたら効率悪いんだよね。
    それでもいちいち相手してたらあたしなんてこの様だし。
    大元の魔女を倒せばその魔女から出て来る使い魔も消えるんだけどさ」

真姫(設定はそれなりに作り込まれてる)

真姫「じゃあ、話を戻して、
   このキュゥべえと契約して魔法少女になったのよねさやかちゃん?」

さやか「そう、キュゥべえと契約して魔法少女になって、
    それでゾンビになっちゃったダキシメテナンテイカリャクオオオオオ」

真姫「よしよし」ナデナデ

真姫「そのキュゥべえ、ってどこにいるのかな?
   やっぱり何処かの森に………」

さやか「えーと………キュゥべえ、いるんでしょ?
    ちょっと出て来てよ」

352 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/04/01 03:03:53.60 krq7Zjsb0 269/477


真姫(あー、やっぱり見えないお友達)

さやか「ふうん、随分距離取ってるね、一応自覚はあるんだ。
    無駄に数を減らしたくない? 何それ?」

真姫(独り遊び? それとも本当に「視えてる」?)

さやか「正直くたびれて叩っ斬るのもめんどいし、
    先生に姿見せてあげてよ」

真姫(この場合、フリをしてあげた方がいいんだろうか?)

真姫「………」

真姫「………」

真姫「………」オメメゴシゴシ

\ヴェエェェェッッッッッ!?!?!?/

ーーーーーーーー

真姫「………もう一回確認したいんだけど」コピーヨウシガサガサ

さやか「うん」

真姫「つまり、

実は普通の人には見ることの出来ないモンスターに殺されそうになった友達を助けるためにマスコットにお願いした代償にモンスターと戦う戦士になったけどその正体はゾンビだったんだ

   こういう事でおk?」

さやか「うん、大体合ってる。信じてくれた?」

真姫「確か、私の記憶だと今夜は素面な筈だし
   夜勤も辛うじてデッド・ゾーンに達してない筈だから。
   それで、こんなのが見えてるとか」

こんなの「うん、僕は感情が無いんだけど、
     その言い方のパターンから言って僕の事を余り歓迎していない様だね」

353 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/04/01 03:09:26.63 krq7Zjsb0 270/477


真姫「………ヴ………」

真姫(\ヴェエェェェッッッッッ!?!?!?/)

真姫「………さやかちゃん、一つ聞いていいかしら?」

さやか「何?」

真姫「これ、って触る事が出来る物体な訳?」

さやか「うん、まあ、今はムカつくってレベルじゃないけど、
    マミさんなんかは普通に猫みたいに飼ってるし」

真姫(動物だとしたら、感染症とか持ってないでしょうね?)

真姫「ちょっと、確認いいかしら?」

さやか「何?」

真姫「これに触った事がある人って?」

さやか「あたしとかマミさんとかまどかもあるかな?」

真姫「まどかちゃんも?
   それで、マミさんが何か病気になったって話は聞いた事は?」

さやか「いえ、ないですけど」

真姫「そう………」

真姫「………毛並みはなかなかね」ナデナデ

これ「今度は褒めてくれているのかな?」

真姫「毛並みだけはね。ちょっと待って。
   それじゃあさやかちゃん」

さやか「うん」

真姫(落ち着いて、落ち着いて………
   これで、実はトリックでからかわれていました、
   とか言ったらかなり恥ずかしいから)ゴクッ

355 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/04/01 03:15:13.29 krq7Zjsb0 271/477


真姫「さやかちゃん、魔法少女に変身って、出来るって事?」

さやか「だから、さっきからそう言ってると思うんだけど」

真姫スゥーッハァーッ

真姫「それ、変身、なんならやって見てくれる?
   正体とかって、もう説明しちゃった訳だし」

さやか「まあ、それもそうか。
    魔力の残り少ないからあんまりやりたくないんだけど」

真姫「無理は、しなくていいわよ」

真姫(どっちにしても、余りいいコンディションじゃないのは間違いない)

ソウルジェムボウッ

真姫「………」

真姫(\ヴェエェェェッッッッッ!?!?!?/)

真姫「」

さやか「先生、大丈夫?」サッサッ

真姫「うん、大丈夫。そう、それが変身、魔法少女ね」キリッ

さやか「どう?」クルッ

真姫「うん、似合ってる。
   ファンタジーの剣士みたいだけど、
   女の子っぽさとのバランスが絶妙ね(ね、ことり)」

さやか「えへへー」アタマノウシロデテヲクンデ

真姫(だけど、その事は、
   元気なさやかちゃんだからこそ、
   思春期そのものの不安定の象徴にも見える………)

356 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/04/01 03:18:32.23 krq7Zjsb0 272/477


さやか「とっ、ととっ」

真姫「とっ!」ヴェェ

真姫「大丈夫っ?」

さやか「大丈夫。ごめん、やっぱり疲れてるみたい」シュウッ

真姫(元に戻った)

さやか「………」ハァ、ハァ

真姫「はい、お水」

さやか「有難う」ゴクッ

360 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/04/11 04:00:30.47 xuEL3qtS0 273/477

真姫(で、実は魔法少女が実在していました、
   とかどうすんのよこれ?
   人体実験でもやれって言う訳?)

真姫(知ってる奴に聞くしかない、か)

真姫「キュゥべえ、って言ったわね」

QB「そうだよ」

真姫「世の中では、私達が知らない間に
   こんなのがうろついて女の子を魔法少女にしてるって言うの?」

QB「そういう事になるね。今は頼まれたから敢えて君に姿を見せているけど、
   本来であれば、素質が無ければ僕の事は見る事も聞く事も出来ない。
   多少のブレはあっても、その素質は少女の思春期の一時期に集中している」

真姫「………そう。
   まずは、さやかちゃんがゾンビにされた、って言ってる、
   その詳細を少し聞かせてもらおうかしら」

QB「魔法少女との契約を取り結ぶ僕の役目はね、
   契約者の魂を抜き取ってソウルジェムに変えることなのさ」

真姫「ソウルジェムが、魂?」

さやか「そういう話だったね。
    あたしの魂を、こんな石ころに変えた、って」ギロッ

真姫(そもそも魂とは何か、と言う点を小一時間問い詰めたい所だけど………)

361 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/04/11 04:05:57.03 xuEL3qtS0 274/477


真姫「オカルトは専門外、と言うか、立場上はまったらヤバイんだけど、
   さっき聞き取ったイメージから言えば、幽体離脱に近いわね」カミガサガサ

真姫「いわゆる霊魂、頭とへそで肉体と霊魂、霊体が繋がっていて、
   人が死ぬ時はその魂の緒を死神が例の大鎌で切断して魂だけ連れて行くって。
   その霊魂がソウルジェムに詰められた、
   ケーブル接続が無線接続になって、距離を取ったら肉体が維持できない。
   そういうイメージ」

QB「僕には感情と言うものが無いからね。
   人間の精神世界が作り出した信仰とかそういうものには疎いと思うんだけど、
   それでも、過去の歴史の知識も踏まえて言えば
   否定する程間違っていないと思うよ」

真姫「そう。で、何で魔法少女になる、って言う事が
   魂がソウルジェムになる、って話になる訳?」

QB「人間は生命が維持できなくなると、精神まで消滅してしまう。
   そうならないよう、僕は魔法少女になる者の魂を実体化し、
   手にとって護れるようにしてあげたんだ。少しでも安全に魔女と戦えるようにね」

真姫「………イミワカンナイ」

QB「彼女は理解してくれたよ。
   身を以て教えてあげたからね」

真姫「!? あんた、さやかちゃんに一体何したのよっ!?」

QB「お腹に槍が刺さった時の本来の痛みを教えてあげたんだ。
   魂を分離しているからこそ、魔女との戦闘を継続できる程度に緩和できる。
   本来なら一撃で動けなくなる痛みだって。
   意識と肉体が連結していないからこそ可能なことなんだ」

さやか「………」ハアッ、ハアッ

真姫「まさか、今それをっ?」ガバッ

QB「いや、今のさやかは消耗しているからね。
   僕は何もしていない」

362 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/04/11 04:11:50.21 xuEL3qtS0 275/477


真姫「………手近に鈍器が無くて良かったのか悪かったのか、
   バットがあったら間違いなくあんたの事ぶっ潰してるわよ」

QB「君たちはいつもそうだね。
   事実をありのまま伝えると、決まって同じ反応をする。
   どうして人間はそんなに魂の在処にこだわるんだい?
   訳が分からないよ」

真姫「ええ、私は肉体を修復する専門家、
   だから、あなたのロジックの一端は理解は出来る。
   だからこそ、やってはいけない事も理解してる。
   他人の肉体をいじる以上、
   こちら側の良かれ、だけで手を付ける事はやってはいけないってね。
   説明不足のメンタル軽視な肉体改造とか、何時の時代の話よ」

QB「訳が分からないよ」

真姫「イミワカンナイ」

QB「さやかは契約の力で治す事の出来た上条恭介の左手も敢えて治さなかった。
   その事には君も関わっていたと聞いている。
   君が治そうとして出来なかったから治さなかったって。
   あれ程望んでいた結果が得られた筈なのに、訳が分からないよ」

真姫「あー、それ考えたんださやかちゃん」

さやか「………最初は、恭介の左手を治そうとした。
    でも、出来なかった。
    先生があんなに一生懸命なのに出来ない事、
    魔法の奇跡で治すってのが納得出来なかった。
    でも、もう、それで良かったのかどうかも分からない」

真姫「そんなの、さやかちゃんが背負い込む様な事じゃない。
   まして、後から分かったのがそんなからくりだった、なんて事ならね。
   一億円の宝くじなんて滅多に当たらないから価値がある。
   そんな日常の中で、私はベストを尽くして、
   さやかちゃんはその事に価値を感じてくれた。有難う」

さやか「………うん………」

363 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/04/11 04:18:04.80 xuEL3qtS0 276/477


真姫「で、さっきからの話で気になってたんだけど」

さやか「うん」

真姫「もしかして私、魔女に遭遇してる?」ズイッ

さやか「………」コクッ

真姫「まどかちゃんや仁美ちゃんも巻き込まれた廃工場で、
   多分、魔女っぽい体験してるんだけど、心当たりは?」

さやか「それ、多分魔女だと思う。
    あたしが間一髪で魔女の結界から先生の事助け出したから。
    先生気絶してたから覚えてるか分からないけど」

真姫「さやかちゃんに助けられた事は分からないけど、
   説明出来ない様なイミワカンナイものを見た記憶はなんとなく、ある。
   それに、さやかちゃんが現場にいた事は
   警察でも仁美ちゃんの証言でも確認されてる」

さやか「あたしの所に警察が来た時には正直ちょっと焦った」

真姫「あの事件、色々と辻褄が合わない事が多すぎた。
   むしろ魔法少女、って言った方がしっくり来るぐらい」

さやか「うん。そうだと思う。
    先生が怪しまないか、マミさんもかなり心配してたから」

真姫「そう。事件の規模の割には、
   警察の捜査が深入りしないでむしろ助かったわねお互いに。
   一歩間違えたら、科学的におかし過ぎて証言してる私の精神状態疑われてたわよ」ヴェェ

さやか「………」フウッ

真姫「………仁美ちゃんのケガ、治したのはあなた?」

さやか「………」コクン

364 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/04/11 04:23:17.39 xuEL3qtS0 277/477


さやか「仁美、あたしが見つけた時には頭痛そうで意識も朦朧としてて、
    あたしにもヤバイって分かるぐらい。
    だから、キュゥべえに願ったんだ。
    あたしが契約するから仁美のケガを治して欲しい、って」

真姫「そう。発見された時にはケガがなくなってたから断言はできないけど、
   外傷性の蜘蛛膜下出血起こしてた可能性が高い。
   その場合、既に症状が進行していたから、
   生き死にとか植物人間とかもあり得るぐらいまずい状況だった。
   漫画じゃないから、あんな状況で素手の外科医一人いてもどうにもならない。
   ………辛い代償と引き換えになったけど、それでも、有難う」

さやか「………」ポロポロポロ

さやか「………ないよ………
    そんな事、言われる資格、あたしになんて、ないよ………」ポロポロ

真姫「………」

さやか「希望と絶望のバランスは差引きゼロだって話、今ならよく解る。
    確かにあたしは何人か救いもしたけど、その分心には恨みや妬みが溜まって、
    一番大切な友達さえ傷つけて、
    誰かの幸せを祈ったぶん他の誰かを呪わずにはいられない………」

さやか「ねえ、この世界って守る価値あるの?」

さやか「あたし何の為に戦ってたの?」

真姫「答え難い質問ね」

さやか「こんな石ころにされて、それでも、魔法少女になったんだ。
    だから、だからあたしは………
    誰かを見捨てたり利用もしない、見返りだっていらない。
    それでもし魔女が殺せなくなった時は………あたしは用済みさ。
    魔女に勝てないあたしなんて、この世界には要らないよ」ブツブツブツ

382 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/04/11 22:09:39.51 xuEL3qtS0 278/477

真姫「………」フゥーッ

真姫「まあ、色々言いたい事はあるけど、
   最初に言っておこうか」

383 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/04/11 22:20:21.95 xuEL3qtS0 279/477
















1444061299-383


















384 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/04/11 22:23:28.31 xuEL3qtS0 280/477


さやか「」

真姫「黙れ小童でも良かったんだけど、
   一から作るのが面倒だったみたいね」

真姫「知らないわよ、そんな事」

真姫「さやかちゃん、今まで何年生きて来た?

   永遠の16歳にプラスアルファーいくつか色つけて、
   その内の何割かを医者として生きて来て、
   その私が言うんだけど、そんな事分からないわよ。

   で、さやかちゃんは一体何年生きて来て
   その内何か月人の生き死にに直面して物言ってる訳?」

さやか「………」プルプル

真姫「………」ギュッ

真姫「だから、頑張ったよ。そんな脆い心で、狭い料簡で、
   それでも譲れないもののために我武者羅に頑張って、
   目の前の命のために自分投げ出して、それがずっと続いて、
   そんなの燃え尽きて当たり前よ。

   私達みたいな努力した凡人が何十年百年二百年頭絞って集団で色々リスクヘッジして、
   それでもバタバタ倒れてる死屍累々、
   それが人を助ける、人の生き死にを扱うってもんなんだから」

さやか「………やっぱり、
    あたしみたいなバカなのがやっちゃいけない事だったんだ」

真姫「正しかったのかも知れないし間違ってたのかも知れない。
   それでも、命を助けた結果には胸張っていいよ。
   それを否定できる価値なんて、私は知らない。
   色々小難しい事もあるけど、私は、そこだけは忘れないつもりで滅茶苦茶努力して来た」

さやか「………有難う」グスッ

385 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/04/11 22:28:51.87 xuEL3qtS0 281/477


真姫「瀉血、って知ってる?」

さやか「瀉血?」

真姫「体に傷をつけて、悪い血を抜く治療法。
   日本でも幕末の偉人でやってた人がいたみたいね。
   だけど、なんでもかんでも血抜きして、
   只でさえ弱っている患者から大量に血液を抜いたらどうなるか?」

さやか「死ぬと思う」

真姫「実際、それで死んだ人もいたみたい。
   完全に医学的効果があるのかないのか、そこの所は私の専門外、と言っておくけど、
   昔の西洋では明らかに濫用されてたわね。
   なんでもかんでも、むしろ重病だからこそ、
   消毒の概念も不十分な時代でもやたらと血を抜き取る、
   それがスタンダードに医学的な治療だと思われていた」

さやか「………こわっ」

真姫「多分日本の医者の標準辺りにいそうな私から見て、
   テレビを見てもネットを見ても、なんかイミワカンナイ情報は氾濫してる。
   それも、命や一生に関わりそうなレベルでもね、

   身近にいたら絶対に止めるとか、ガチで通報を考えるとか。
   だけど、百年経ったら、実は人殺しなのは私の方かも知れない。

   もちろん、今の私は、人の命を扱うだけの研鑽と自信、
   そして恐れを持って仕事をしているつもり。
   だからそれを信じるしかない、って言うのが、
   今ここでリアルタイムでイミワカンナイものに遭遇してる私の立場」

さやか「………」コクッ

真姫「メスを握る、薬をオーダーする看護する介護する、
   ラーメンを作る蕎麦を打つ田植えをして畑を耕して、
   曲を作る歌詞をつける歌を歌うダンスを踊る衣装を作る
   ピアノを弾くヴァイオリンを弾くボカロを作る足場を組む舞台を照らす。
   絶対的な難易度や実際どこまでペイしてるかはとにかく、
   対価を得て、それに見合う仕事を志して、そして、誰かにとっては毒になってるかも知れない」

さやか「毒に」

386 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/04/11 22:34:15.78 xuEL3qtS0 282/477


真姫「極端な話、今日命を助けた子どもが、
   明日毒入りキャンディーバラ撒いて大量殺人をしているかも知れない。

   食べ過ぎたら毒になるし体質に合わない人もいる。
   敢えて聞かれたら一般論としては偏見以外の何物でもない、って事になるけど、
   それでも、昔の私達が誰かの人生を狂わせた、って事も絶対無いとは言えない。

   関与の重い軽いを無視したら、人を殺すのは拳銃ではなく人間だ、
   じゃなくて包丁があったから人が殺された、と言う理屈はどんな仕事にもついて回る」

さやか「なんとなく、分かる。
    あたし、そんな風に滅茶苦茶考えて、それで、どうでも良くなって………」

真姫「仕事でしている以上、善意だから、では済まない事もある。
   自分の仕事には責任持たないといけない。
   それでも、特に人の生死を扱っているからこそ、
   自分が神様でもなんでもない、人間であり他人である事を忘れない。

   出来る事を真面目にやって、それで、幾ばくかの効果を上げる。
   まあ、大昔の神様の漫画でも言われてた事ね。
   世界一有名な無免許医の師匠が言ってたっけ」

さやか「何それ」アハハ

真姫「みんな失敗しながら積み重ねて、
   他人の仕事を補って形にして最悪にならない様にリスクヘッジして、
   そんな大勢の人達の仕事、仕事をしている人達がこの社会を作ってる。

   私は医者だから、直接命に関わって素人よりは出来ると思われてる、国からも認められてる。
   さやかちゃんは、技術だけならもっともっと凄い事が出来るのかも知れない。

   だけど、幾ら技術が凄くても、扱うのは人間なんだわ。
   迷いもすればムカつく事もうじゃうじゃある。

   そんなの、只の人間に、ましてや中学生のお子ちゃまに簡単に悟り開いてもらったら、
   私は、大概の人間は一体なんなの、って事になるから怒るわよ本当に、
   思い上がるのもいい加減にしろ、って」

さやか「うん」

387 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/04/11 22:37:44.23 xuEL3qtS0 283/477


真姫「それでも、さやかちゃんは大事な人の無事を祈って、
   助けられる人を助けて、ヒーローになろうと精一杯頑張った。
   思い通りにならない事もあったかも知れないけど、
   それでも、力一杯頑張って命を助けた、その事は誇ってもいい。
   今、その価値のために生きてる私はそう思う」

さやか「………」ポロポロ

さやか「………まどかに、ひどい事言っちゃった………」

真姫「だったら尚の事、
   このまま勝手に終わるなんて無責任な真似は出来ないでしょう」

さやか「うん………後悔、しちゃった………」

真姫「ん?」

さやか「………後悔しそうになっちゃった。
    あの時仁美を助けなければって、ほんの一瞬だけ思っちゃった………
    最低だよ………正義の味方失格………」

真姫(やっぱりそこか………)

さやか「仁美に恭介取られちゃうよ………
    でもあたし、何も出来ない。だってあたし、もう死んでるもん。
    こんな身体で、抱き締めてなんて、キスしてなんて言えないよ………」ポロポロ

真姫「と、言ってる時点で、恋する乙女にしか見えないんだけど。
   どこから見ても、人間臭い人間以外の何物でもないわね」

さやか「………」

真姫「まあー、難しい事は山ほどあって、
   メンタル的に非常に重い問題なのも理解はするけど、納得は出来ない。
   だって、生きてるんだから」

さやか「………」

388 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/04/11 22:41:14.42 xuEL3qtS0 284/477


真姫「さやかちゃんは私の目の前で生きてる。
   私が一日一日全力を尽くして、
   それでもすくい切れずにボロボロとこの掌から零れ落ちてる。
   今では泣く事も少なくなったけど、それでも苦しい。
   そんな命をさやかちゃんは持ってる。
   それを勝手に否定するとか、そんなの私が許さない」

さやか「………」コクッ

真姫「大丈夫」

さやか「………」

真姫「例え、順番が逆でも、多分事情が分かってても、
   さやかちゃんは仁美ちゃんを助けてた、私はそう思う。
   必ずしも褒めるべき事かどうか、正直分からないけど、
   でも、さやかちゃんはそういう娘だと思う」

さやか「そう、かな………」

真姫「ん。例え仕事でも、余計な雑念が入る事はある。
   それでも全うするから仕事なの。

   迷いが無い、なんて断言できる方が怖い。
   もし、運よく順序が逆だったんだとしても、
   その迷いと怖さを知った事は糧になる。

   仕事柄、特に若い頃なんてね、
   あの時運が良くて、それで患者殺さなくて本当に良かったーって、
   今だから言えるレベルのそんな経験だって無い訳じゃない。
   人の命を扱うんなら、これ以上の勉強は無いわ。
   私が、とうとう若さ否定して説教してるって理解してる?」

さやか「うん、言いたい事は分かる」アハハ

389 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/04/11 22:45:08.25 xuEL3qtS0 285/477


真姫「疲れる事も逃げたい事も、
   正直こいつどうしてやろうか、って頭をよぎる様な綺麗事じゃない事も、
   身内や親しい人が関わったらブレそうになる事も。

   さやかちゃんよりちょい年上で日常的に他人の身体、生命に関わっててもまあ、
   人が仕事をしてたらそれなり以上にある事よ。
   それでも、なんとかかんとか合格点に漕ぎ着けて見せるから仕事なの。

   まして、人を好きになる、その事で嫉妬する。
   そんな感情、簡単にコントロール出来たら苦労しないわよ。
   それが出来るなら、世の中の殺人事件の三分の一は無くなってる。
   そうやって、押し潰されそうに苦しんで、
   その事自体がさやかちゃんの誠実さなの」

さやか「そうやって褒められても、苦しい、自信、無い。
    本当にあたし、正義の味方が出来るのか、出来たのか」

真姫「もう一杯、入れるわね」

さやか「………」コクッ

真姫「………」コポコポ

真姫「さやかちゃん」

さやか「………」コクッ

真姫

   こんな格言を知ってる?

」スッ

さやか「?」

390 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/04/11 22:50:44.34 xuEL3qtS0 286/477


真姫

   イギリス人は恋愛と戦争では手段を選ばない。

   淑女の嗜みよ。

   人を好きになるのはそれぐらい必死で、愚かで、
   だからこそ大切で愛おしいものだって、それは歴史的事実なの。

   ………例え、私が直接知らなくてもね。



さやか「………なんか、あたしには無理っぽい」ズズッ

真姫「そうね。さやかちゃんには余り似合わないか」

さやか「うん。生まれ変わったら考えてみる」

真姫「来世はすっごい腹黒お嬢様だったりして」

さやか「アハハ」

真姫「じゃあさ、生まれ変わる前の現世では、
   元気よく突撃吶喊で当たって砕けて思いっ切り泣いてみるのも青春の思い出よ。
   振られたら、の、話だけど。

   結果がどうなるか、なんて私には分からない。
   だけど、さやかちゃんはそれに値する魅力的な女の子。
   そこん所は女子校出身西木野真姫が認めてあげる」

さやか「………それ、当てになるんですか?」

真姫「さあ」

さやか「ククッ」

392 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/04/11 22:54:37.54 xuEL3qtS0 287/477


真姫「………だからさ、大丈夫」

さやか「………」

真姫「そうやって迷って、苦しんで、恐れを知って、自分の弱さ小ささを知って。
   それでもこうやって生きて、ギリギリでも未来を繋いで、乗り越えたんだから。
   大事なものが分かってるんだから。

   今は気付かないかも知れないけど、夢も、願いも明日も、なくなってなんかいない。
   だからみっともなくあがいて、それがとっても人間臭くて魅力的。
   魔法少女とか、誰も知らない事かも知れない。
   それでも、地図なんかなくても、少しずつでも道は見えるから」

真姫(結構プラセボ、ハッタリだと思うけどね。
   でも、魔法少女とか、今まで話す相手もいなかったんだろうに、
   さやかちゃんの性格なら、ここまで吐き出せたら随分楽になったでしょ。
   表情も笑顔もそれを物語ってる)

417 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/04/27 03:06:34.20 O4HcIc3g0 288/477

ーーーーーーーー

真姫(考えてみれば色々イミワカンナイ事があったけど、
   本当にオカルトな出来事が起きてたなんてね)カミクルクルクルクル

真姫(廃工場のイミワカンナイ事の説明がついた。
   あれは魔女の仕業で魔法少女が魔女を退治していた
   確か、イミワカンナイって………)

真姫「………暁美ほむら、って娘知ってる?」

さやか「転校生? 先生知ってるの?」

真姫「転校生?」

さやか「うん。最近あたしのクラスに転校して来た。
    先生の知り合いなの?」

真姫「昔ちょっとね。
   それで、もしかして彼女魔法少女?」

さやか「………」コクッ

真姫(ビンゴ)

真姫「良かったら、さやかちゃんが知ってる事を教えて欲しいんだけど」

さやか「分からないんだ、あたしにも。
    あいつ、自分の事とか全然喋らないし」

真姫「一緒に行動してるんじゃないの?」

さやか「違う。転校生は別行動とってる。
    それなのにしょっちゅうあたし達の前に現れてるからイミワカンナイ。
    だけど、それでもあたし達の事助けてくれた事もあるから、
    完全に敵、って言う見方もしてないけど」

418 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/04/27 03:11:51.30 O4HcIc3g0 289/477


真姫「そう………彼女、暁美さんもあんたと契約した訳?」

QB「そうとも言えるし違うとも言える」

さやか「何、それ?」

QB「僕にもよく分からない。
   あの子は極めつけのイレギュラーだ。
   どういう行動に出るか僕にも予想しきれない」

真姫(何よ、それ?
   魔法少女ってだけでもイミワカンナイのに、
   その大元ですら分からない話って、
   ほむらちゃん、あなた一体何があったの?)

真姫(ほむらちゃんの事も分からないけど、
   当面の問題はこっち)

真姫(精神状態は大分落ち着いた、んだけど、
   どうも引っかかるなぁ………
   本当だったらカウンセラーか児童精神科医にフォローして欲しい所だけど、
   説明するのに勇気が要る、ってレベルじゃないわよこれヴェェ)

真姫(外科医は外科医、医者は医者って事か………)

真姫「体の調子は?」

さやか「うん、少し、楽になったかな?」

真姫「ちょっと、もう一回ソウルジェムを見せてくれる?」

さやか「うん」スッ

真姫(………)

真姫(これが、魂の宝石………確かに、黒い淀みが自然に溶け込んでる。
   そう言われたからか、只の宝石の模様には見えないかも)

真姫「グリーフシードを使えば、この黒い濁りは取れるの?」

さやか「うん。そうだね、これと比べたらすっごく綺麗になる。
    グリーフシードは真っ黒になるけど」アハハ

419 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/04/27 03:16:58.28 O4HcIc3g0 290/477


真姫「………キュゥべえ」

QB「なんだい?」

真姫「これを綺麗にしておくのって、
   そんなにも大切なの?」

QB「魔力を使えば使うほど、ソウルジェムには穢れが溜まる。
   最大限の力を発揮する為には、その穢れを取り除いて
   コンディションを最良に保つ必要があるんだ」

真姫「逆に言うと、これってかなりコンディションが悪いって事?」

さやか「だと思う。ここまで浄化さぼった事ないから真っ黒でしょ」

真姫「………さやかちゃんが疲れてるのって、
   この、ソウルジェムに穢れが溜まっているから、そういう事なの?」

QB「ソウルジェムは魂そのものだから、それが穢れたら影響は出るね。
   只、彼女の固有の事情がどの程度関わっているか、
   それに就いては僕の理解の埒外だ。
   それを判断する重要な要素らしい感情と言うものに就いて
   僕らは理解できないらしいからね」

さやか「………そう、だと思う。
    自分で経験して、
    ソウルジェムの濁りが進むとあたし自身がすっごくだるくて気持ち悪くて」

真姫「だから、ソウルジェムの穢れをグリーフシードに移すのよね?」

さやか「うん。でも、一つのグリーフシードが穢れを吸い過ぎると魔女が孵化するから、
    その前にキュゥべえに食べさせて、
    又、新しいグリーフシードを調達しないといけない」

真姫「まるで、流し雛………」

さやか「えっ?」

420 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/04/27 03:22:07.46 O4HcIc3g0 291/477


真姫「雛祭りの原形よ。
   今でもやっている所はあるけど、昔は、紙で作った人形に持ち主の穢れを移して、
   それを川に流す事で人についた穢れを取り払う、そういう事を行っていたの」

さやか「ふうん、そう言われると似てるかも」

真姫(魔法少女の場合、川に流しておしまい、って事ではない。
   魔法少女の体から生じた穢れは、サイクルの中で処理しない限り、
   何れ魔女と言う形で孵化して返って来る)

真姫(魔法少女として消耗すれば穢れが溜まり、穢れが溜まったら疲労する、
   それって、完全に悪循環じゃない。何のシャブ中よ?)

真姫(ソウルジェムは魂の宝石、肉体から切り離された魂を凝縮したもの。
   その魂に穢れが溜まると肉体も、或は精神も疲労する。
   つまり魂は肉体の根源であり、精神的なエネルギー………
   あーイミワカンナイって言うか解ったら医者として終わるって)

真姫(とにかく、現実に分かっている事から理解すると、
   霊魂、霊体、そう考えた方が分かり易いかも。
   とうとう魂とか霊魂とか手ぇ出してるし、
   絶対医者の領分じゃないノゾミタスケテー
   それでも、人間の肉体を動かしている霊魂みたいなものを凝縮して、
   ケーブル接続を無線接続に切り替えたものがソウルジェム)

真姫(霊体が穢れる事によって肉体にも悪影響を及ぼす。
   魔法少女が魔法少女として活動する程に穢れが溜まるから、
   それを排出しなければならない)

真姫(イメージは、それこそ、瀉血に近いわね。
   瀉血の理屈では、
   血液中の毒素や老廃物、悪い脂、色々と偏った成分が淀んで
   循環を阻害して肉体を蝕み全身に悪影響を及ぼす。

   だから、その淀んだ部分に傷を付けて溜まった悪い血を排出する瀉血を行ってやれば、
   一時的に症状は改善してすっきりする。
   但し、偏った淀みが発生する根本を治さなければ一時しのぎ、
   下手をするとその一時の効果に依存し過ぎる事になる。

   瀉血依存で死にかけた人を救命で診察した事あるし、
   私は西洋医学専門だから、
   瀉血自体医学理論としてはストレートに理解し難いんだけど)

421 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/04/27 03:25:30.27 O4HcIc3g0 292/477


真姫(そして、その排出した穢れを養分にして
   魔女として成長するのが、グリーフシード)

真姫「グリーフシードがあれば症状は改善するの?」

さやか「うん、グリーフシードに穢れを吸わせる事が出来たら」

真姫「確か………退治された魔女が落とすグリーフシードだったわね。
   それがソウルジェムの穢れを吸収する。そういう仕組みでいい?」

さやか「うん」

真姫「グリーフシードの事、魔女の卵、って言ってたわね?」

さやか「うん」

真姫「卵、って言う事は、そこから魔女が生まれるって事?」

さやか「うん。実際、グリーフシードが孵化して魔女になったのに巻き込まれた事もある。
    一つのグリーフシードが穢れを吸い過ぎると魔女が生まれる。
    だから、その前にキュゥべえに食べさせなければいけない」

真姫(穢れを養分として成長する?
   それを卵が孵化する前にキュゥべえに食べさせる、ね………
   何、これ?)ゾクッ

さやか「先生?」

真姫「グリーフシードは魔女が持ってるのよね?」

さやか「絶対持ってるとは限らない。
    だけど、グリーフシードのために使い魔を放置する魔法少女もいる」

真姫「どういう事?」

さやか「使い魔が何人か人を食べたら魔女になってグリーフシードを孕む。
    それから狩った方がいいって。
    卵産む前の鶏絞めてどうすんの、とか言ってたったけ?」アハハ

422 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/04/27 03:28:47.37 O4HcIc3g0 293/477


真姫(シビアね。確かに、アップ効果があるのかは分からないけど、
   これじゃあナチュラルなシャブ中一歩手前。
   まして魔女退治自体が義務、労働として破綻している以上、
   理屈ではわざわざ利益を捨てて他人を助ける助けないで文句を言う筋合いもない)

真姫(………卵を産む前の鶏………いよいよ、卵って事よね)

真姫(魔女が卵を孕む、か。言葉通りなら生殖機能って事になるけど、
   何しろ正体不明のモンスターだからなぁヴェェ………)

真姫(生殖機能、ね。何しろ魔女ってぐらいだから本当に………)

真姫(………何、これ? ………)

さやか「先生? (なんか、新しいコピー用紙出して)」

真姫「………」カキカキカキカキ

真姫(魔女、卵、生殖機能、穢れを吸収させる)

真姫(グリーフシードから魔女が生まれる条件。
   卵に養分を与えて、卵を成長させて。
   つまり、本来の生物学であれば、グリーフシードの中では
   魔女の精子と卵子が結合していて、そこに穢れと言う養分を与える事で
   成長を促し孵化させる………
   まあ、正体不明のモンスターの事だから………正体不明?)

真姫「キュゥべえ」

QB「何かな?」

真姫「魔法少女が退治しているのは魔女なのよね?」

QB「そうだよ」

423 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/04/27 03:32:43.29 O4HcIc3g0 294/477


真姫「それって………
   魔法少女が退治するモンスターを魔女と呼んでいる。
   その語源は、一般には折れ曲がった防止を被って箒に跨って空を飛んでる魔術を使う老婆、

   或は、中世ヨーロッパ、時にはアメリカで、
   馬鹿げた宗教ヒステリー或はそれを利用した政治的茶番劇で
   冤罪とも言えない理由で大量に虐殺された女性達に下された審判。

   それを示す言葉を、この得体の知れないモンスターを示す名称としても用いている。
   それで間違いないのかしら?」

QB「否定するほど間違っていないね」

真姫(まず、こいつは信用出来ない。
   嘘は言わないかも知れないけど、ゾンビの件でそれは確定済み。
   そう、嘘は言わないかも知れないけど、コミュニケーションに於いての齟齬が絶望的過ぎる)

真姫(魔法少女は魔法少女、
   そのままの名称で日曜日の朝にテレビの中で活躍していても取り立てて違和感はない。
   じゃあ、魔女って何?)

真姫(卵から産まれる魔女、孵化する前にキュゥべえに食べさせる。
   魔女は、魔女の卵であるグリーフシードに穢れを吸収させる事で成長し発生する。
   ソウルジェムは魂の宝石、恐らく、人の精神エネルギーと密接に関わっている。
   そのソウルジェムが淀み、濁って穢れが蓄積されていく。
   魂、人間、魔法少女と言う女の子そのものにドロドロと穢れが蓄積されていく。
   その穢れは、魔女を育てる栄養、分)ゾクッ

真姫(魔法少女、思春期だから少女、思春期そのものの不安定な存在。
   そんな不安定な精神が安定している訳が………
   まして、その歳でアリエナイ願いのために命懸けの戦いを強いられて)

真姫「………」カミガサガサ

真姫(魔女が産み落とした卵から産まれるから魔女、
   魔女の子は魔女、これだとトートロジーに近い話だけど)

真姫(魔女、生殖機能? 卵、養分、孵化、キュゥべえ)

真姫(卵、養分、孵化、キュゥべえ)

424 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/04/27 03:35:58.38 O4HcIc3g0 295/477


真姫「キュゥべえ………」ボソッ

真姫「でも、キュゥべえって、随分渋い名前ね」

さやか「そうですか?」

真姫「時代劇で八兵衛とか十兵衛、ってのは聞くけど、
   キュゥべえってのは聞かないわね。
   キュゥべえって名前を付けたのって、どこかの時代劇マニアか、
   それとも時代劇になるぐらい由緒正しい名前なのか」

QB「どうだろうね?
   日本では僕を表現するために割とよく使われている名前だと思うよ。
   君たちが僕を呼ぶ呼称は、呼びやすいものを使っているみたいだね」

真姫(と、言う事は、キュゥべえ自体に意味はなく、発音………)

真姫「………」ダラダラダラダラ

さやか「? 西木野先生?」

真姫「そもそも、さやかちゃんは魔法少女とか魔女の事、
   どういう経緯で知ったの?」

さやか「ああ、まどかと一緒に魔女に襲われて、だったよね。
    確か、その前に転校生がキュゥべえの事を襲撃してて、
   結局マミさんに助けてもらって魔法少女の事教えてもらって」

真姫「転校生? 暁美さんが?」

さやか「うん」

真姫「彼女はなんでそんな事を?」

さやか「あいつの考える事ってよく分からないから。
    マミさんはこれ以上魔法少女を増やしたくないからじゃないか、
    って言ってたけど」

425 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/04/27 03:39:19.50 O4HcIc3g0 296/477


真姫「増やしたらまずい事でもあるの?」

さやか「同じ地域に魔法少女が何人もいると見返りが減る、
    って言ってたかな。
    見返りってグリーフシードの事なんだけど」

真姫「理屈は通るわね。
   さっきの話だと、
   暁美さんはあなた達の行く先々に現れてるみたいに聞こえるけど」

さやか「うん。マミさんやあたし達が魔法少女や魔女に関わる所で何回も会ってる」

真姫「一緒に行動してる訳じゃないのね?」

さやか「うん。つまり、あいつってストーカーかよ」

真姫「そういう事になるわね。一体何を考えるてるのかしら?」

さやか「さっきも言ったけど、あいつ、自分の事とか喋らないからね。
    とにかく、お高く止まって上からあたし達に関わるなって言ってるだけで。
    マミさんやまどかと一緒に助けてもらった事は感謝してるけど」

真姫「関わるな、って、つまり魔法少女にはなるなと。
   それで、助けてもらった事もある」

さやか「うん。あたしもそうだけど………やっぱり、まどかかな」

真姫「まどかちゃん?」

さやか「そう。まどかが魔法少女になる事は絶対止めたいみたい。
    だって、転校初日からまどかにアヤつけてたって言うから」

真姫「初日から?」

さやか「うん。転校初日に二人で会った時になんか色々言われた、って。
    その時は電波な話だって笑い話にしてたんだけど、
    今考えると、あれって魔法少女になるな、って意味だったんじゃ」

426 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/04/27 03:42:35.44 O4HcIc3g0 297/477


真姫「………助けてもらった、って言うのは、
   魔女から助けてもらったって事?」

さやか「うん。マミさんがちょっとやられそうになって、
    それで、転校生が割って入って魔女の事ほとんどボコボコにして」

真姫「その時のグリーフシードは?」

さやか「グリーフシード? 魔女の?
    それは、確かマミさんが………」

真姫「マミさんが獲得したの?」

さやか「そう、転校生がマミさんに渡して………
    あれ? じゃあ、どうして転校生………」

真姫「それで、そのマミさんは、
   グリーフシードの事をどんな風に説明してた?」

さやか「だから、魔女を退治した時に出て来る見返り、魔女の卵、
    ソウルジェムの穢れを吸収するもの、って話で………」

真姫「キュゥべえ?」

QB「何かな?」

真姫「魔力を使えば使うほど、ソウルジェムには穢れが溜まる。
   最大限の力を発揮する為には、その穢れを取り除いて
   コンディションを最良に保つ必要がある。
   だからグリーフシードが必要だ、君はそう説明してたわよね」

QB「そうだよ」

真姫「………」コピーヨウシガサガサ

真姫「………」ダラダラダラダラ

さやか「先生?」

真姫(ほむらちゃんは、まどかちゃんが魔法少女になるのを妨害してる、
   コミュニケーションを拒否してる、理由を言わないからさやかちゃんにも分からない。
   マミさんの説明、こいつの説明)

427 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/04/27 03:46:37.29 O4HcIc3g0 298/477


コピー用紙(チャートの一角でペン先グルグルグルグル)

真姫(この空白が埋まる、
   欠けている言葉が見つかる、としたら………)

真姫「さやかちゃん」

さやか「はい」

真姫「マミさんと連絡とって、そのグリーフシード用意してもらえるかしら?」

さやか「余ってるかなぁ、マミさんだって自分で戦って手に入れてるものだし」

真姫「私に魔法少女の事は全然分からない。
   だけど、医者として言わせてもらえば今のさやかちゃんはまだ危ない。
   魔法少女が実在する以上、対処出来る方法があるなら急いだ方がいい」

さやか「分かった」

真姫「それから、もう一つお願いしたい事がある」

さやか「なんですか?」

真姫「暁美ほむらさんと、一度話をしたい」


続き
さやか「西木野先生」【後編】

記事をツイートする 記事をはてブする