1 : 暗黒史作者 ◆FPyFXa6O.Q - 2015/10/06 01:08:19.36 1c7ihP9u0 1/477

………現行スレ持ってるのに何やってるんだ自分?

スレタイ通りのクロスオーバー作品。
少なくとも「魔法少女まどか☆マギカ」本編抜きだと分からない状態になりそうです。

プロットほぼ完成
書き溜め短期決戦で行く、予定です。

考証に就いては、気合で押し通る
………まあ、その辺はそれなりに折り合いがつけば、と言う感じで。

誰だこいつとかなんとかかんとかな感想に就いては………投石はご勘弁………

元スレ
さやか「西木野先生」(まど☆マギ×ラブライブ!)
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1444061299/




※管理人より、お知らせ

当作品は改行位置が独特であるため閲覧される環境(主に画面横幅の関係)によっては読みづらい可能性があります。
当ブログでは従来であれば改行位置を調整して公開しておりましたが、当作品においては一部調整が困難な部分があるため、改行位置を調整せず公開いたします。
もし著しく読みづらいということがありましたら、コメントにてご意見いただければ、改めて改行位置を調整することを検討いたします。(確約はできません)




2 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/06 01:13:32.14 1c7ihP9u0 3/477

 ×     ×

ー見滝原市立病院救命救急病棟読影室ー
(以下、特に断りの無い限り病院関係は同病院)

真姫「とにもかくにもこの左腕ね」

研修医「切断面がヤバ過ぎですね。
厳しいですけど他の処置も考えると………」

真姫「繋ぐわよ、腕は私が繋ぐ。
幸い頭は無事、肋骨折れてるけど内臓のダメージも比較的軽微。
君はそちらを済ませて脚をメインにお願い、
脚の方も結構キテるけど、出来るわね」

研修医「分かりました」

バタバタバタバタ

真姫「(頬を張る)………」パンッ
真姫「………ファイトだよっ………」ボソッ

3 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/06 01:18:58.17 1c7ihP9u0 4/477


ー処置室ー

真姫「………馬鹿な車が突っ込んで来たって………」

真姫(………まだ中学生ぐらいか、綺麗な顔………
それに、綺麗な手………多分この子………)

真姫「きついわね」ボソッ

研修医「難しい、ですよねその腕………」

真姫「…フッ…泣き言はここまで」

看護師「西木野先生っ」

真姫「うん。それでは………」

6 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/06 13:07:04.13 1c7ihP9u0 5/477

 ×     ×

ーー集中治療室ーー

真姫「目が覚めたみたいね」

恭介N「両親に次いで現れたのは、三十歳前かも知れないし若く見えるのかも知れない。
セミロングヘアでいかにも白衣を着慣れた感じの、
勝ち気で頭の良さそうな女医さん、と言うイメージそのままの女性だった」

真姫「名前、言えるかしら?」

恭介「上条、恭介です」

真姫「私は西木野真姫、あなたの担当医。
ここは見滝原市立病院。
何故ここにいるか、分かる?」

恭介「はっきり、とは。車が、突っ込んで来て、」

真姫「そう。それで、救急車でここに運ばれてきて、
緊急オペを実行して麻酔から覚めた所よ。
そういう事だからよろしく」

恭介「………」ペコリ

7 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/06 13:12:09.44 1c7ihP9u0 6/477


恭介N「意識や考えがはっきりして来ると共に、
   段々と、段々ととても恐ろしい事に」

恭介「あの………」

真姫「何かしら?」

恭介「あの………左腕が、左腕が動かないんですけど」

真姫「うん、運ばれて来た時君の左腕はひどいケガで、
  今はようやく繋ぎ止めた所」

恭介「あ、あのっ!」

真姫「ん?(ポーカーフェイス………)」

恭介「あのっ、治るんですよねっ?
  僕、ヴァイオリンを習ってて、これじゃ、弾けなっ、
  元通り動く様になるんですよねっ!?」

真姫「………今はそこまでの答えは出せない。
  リハビリもあるし、繋げるものは繋いだけど、
  元の損傷が大きかったからどれだけの影響が出るか、
  これから検査もして………」

恭介「じゃあ、じゃあリハビリをしたら、ちゃんとリハビリを………」

恭介父「恭介、ひどいケガだったんだ。
   生死に関わる大ケガを治してもらったばかりなんだ。
   余り先生を困らせるんじゃない」

恭介「うん………」

真姫「命の危機は脱しました。じきに一般病棟に移る事も出来るでしょう。
  今は検査を、リハビリの事を含めて今後の事は近い内に」

恭介両親「お願いします」

真姫(その顔………もう、分かっちゃってるよね?)

8 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/06 13:17:25.77 1c7ihP9u0 7/477


ーー外科医局ーー

先輩医師「ヴァイオリニストの卵、か。
     告知はして来たのか?」

真姫「まだ、何かを言える状況じゃない、
   って言うのは本当ですから」フルフル

先輩医師「だけど、あれじゃあ楽器どころか日常生活だって何パーセントも、って状況だろ」

真姫「ええ。何れカウンセラー、ソーシャルワーカーにも助力をあおいで
   きちんとしないといけません。近い内にきちんと………」

先輩医師「辛いかぁ」

真姫「きついです」

先輩医師「だよなぁ………解っちまうんだもんなぁ………」

9 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/06 13:22:47.30 1c7ihP9u0 8/477


 ×     ×

ーー病棟廊下ーー

「もう少し、もう少し」

ーー恭介病室ーー

さやか「もう少し、クリアッ!」

ベッドを横切る卓上に積み木

真姫「お見舞いかしら?」

さやか「あ、どうも(うわぁ、美人女医とかホントにいるんだ)」ペコリ

恭介「先生」

真姫「うん」

恭介、左手で卓上の積み木に悪戦苦闘。

恭介(痛々しい笑み)「少しずつ、動く様になってます」ニコッ

真姫「うん。それじゃあ、検査があるから」

恭介「はい」

さやか(西木野、先生)ペコリ

真姫(あー、何かライバルって目だねぇ…タハハ…)

10 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/06 13:28:16.69 1c7ihP9u0 9/477


 ×     ×

ーー恭介病室ーー

恭介(イヤホンを耳に差し)「………」

さやか(イヤホンを耳に差し)「………」

入口近く
真姫「………」

ーー外科医局ーー

先輩医師「検査結果もあの通りだし、そろそろ潮時か」

真姫「そうですね………」

先輩医師「あんまり、抱え過ぎるなよ」

真姫「はい」

真姫(………私は、医者だから………)

ーー夕方 外科病棟ーー

真姫「お先」

看護師「お疲れ様です」

11 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/06 13:31:59.89 1c7ihP9u0 10/477


ーービストロ店内ーー

真姫「お子さん達は?」

「エリちの所で預かってくれてる」

真姫「そう」

給仕「お待たせしました」

真姫「調べて見たけど、
   信頼できる先生だからそのまま進めていいと思う」

「ありがとうな。
   告知を受けた時にはほんま、目の前が真っ暗になったん」

真姫「うん、お子さんもまだ小さいからね。
   大丈夫、特に腹腔鏡では十分な実績があるし、それで無理なら無理だって言う先生だから。
   聞いた限りでも行ける内容だし」

「うん。あの人には、あの子の嫁入り見て泣いてもらわんと。前に言うてたん」

真姫「…タハハ…まあねぇ、
   僅かに自覚症状あったとは言え、タロットの導きで精密検査したら初期の膵臓癌とか、
   医者としては乾いた笑いしか出て来ないわ」

「スピリチュアルやね………真姫ちゃんもお疲れさん?」

真姫「まあー、疲れてるわ。色々とね、体もきついし」

「んー、真姫ちゃん」

真姫「ん?」

「あんまり、一人で抱え込んだらあかんよ」

真姫「ん、分かってる。有り難う」

12 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/06 13:35:25.06 1c7ihP9u0 11/477


ーー夜、石畳の歩道ーー

コッコッコッコッ

(すっかり遅くなったわ。
 真姫ちゃんが知ってた隠れ家居酒屋で、久々の一杯が植○等の歌そのまんま。
 真姫ちゃんも、ちょっと煮詰まってたけど、まああれなら………)

(制服? 塾帰りか何か?)

コッコッコッコッ

「二人とも、何か願い事は見つかった?」
「んー、まどかは?」
「んー………」

コッコッコッコッコッ

「………………………………………………………………………………………………………………
 ……………………………………………………………………………………………………………………
 ……………………………………………………………………………………………………………………」

コッコッコッコッコッコッ

14 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/07 12:40:09.71 n1VKdVQN0 12/477

 ×     ×

ーー朝 路上自販機前ーー

真姫「ありゃっ」

コロコロコロ

女の子「はい」

真姫「ありがとう」ナデナデ

女の子「つっ」

真姫「?」シャガミコミ

真姫「ちょっとごめん」

女の子の髪の毛を掻き上げ、右手を取る。

真姫「えーっと、どこかにぶつけちゃったかな?」エイギョウスマイル

女の子「う、うん。ゆま、お家で転んだの」タジッ

真姫「そう。転んじゃったんだ。ちょっと待ってね」

15 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/07 12:46:53.54 n1VKdVQN0 13/477


カチャッ、ゴトン

真姫「はい、さっきのお礼」

ゆま「………ありがとう………」

真姫「美味しいお水だけど、早く飲まないと温くなるわよ」プシュッ

ゆま「うん」ゴキュゴキュ

真姫「………」スイッスイッ

 # 9 1 1 0

真姫「見滝原市立病院医師西木野と申します。
  少年課の方をお願いします」

ーー夕方 外科医局ーー

医師A「あー、終わったぁ。西木野先生は?」

医師B「ああ、今朝の通告の件で児相から協力要請があった。
   聞き取りが難航してるらしい。親を庇ってるみたいだな」

医師A「あー」

16 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/07 12:52:42.13 n1VKdVQN0 14/477

ーー病院周辺歩道ーー

真姫(あの診断書で家庭裁判所の承認は出るだろうけど、
   さっきので上手く取っ掛かりになればいいんだけどな………)

真姫「ん?」

タタタッ

真姫「ほむらちゃん?」

ほむら「え?」

真姫「やっぱりほむ………暁美さんだ。
   あ、覚えてないかな、私、西木野真姫」

ほむら「西木野先生?
    (確か、東京の………何番目の………)」

真姫「うん。やっぱりほむらちゃんだった。
   なんか、すっごい美人さんになっちゃって。
   あー、あの時まだ私研修医だったね。
   今、そこの見滝原市立病院に勤めてるんだけど、
   ほむら………暁美さんはもう中学生か」

ほむら「(前のループであそこにいたっけ?)
    え、ええ。すいませんがちょっと急ぎますので」ペコッ

ダッ

真姫「え?」

17 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/07 13:00:22.07 n1VKdVQN0 15/477


ー見滝原市立病院敷地内ー

ほむら(こっち………急がないと………)

ガシッ

ほむら「な、何っ?(先回りっ!?)」

真姫「それはこっちの台詞よっ!」ダキツキッ

真姫「いきなり全力疾走とか何考えてるのよっ!?
   今ここにいるって事はずっと走ってるわよね。
   えーと、呼吸と脈は、走ったにしては普通。心音聴くわよ」

ほむら「え、あ、あのっ」

真姫「 心 音 聴 く わ よ 」

ほむら「………はい………」

21 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/09 03:29:40.18 PoXrSiHi0 16/477

ーーお菓子の魔女の結界ーー

さやか「いやったぁーっ!!!」

マミ「ティロ・フィナーレッ!!!」

ぬいぐるみ魔女「………ブクゥゥゥゥゥ………」ニュルン

ハッ、ハッ、ハッ

MK-11「SHOOT!!」

シャルロッテ「メガ、メガァァァァァァァァァ」

パンツァーファースト「FIRE!!!」

ドォォォォォォンンンンンンンンン

シャル「」ダッピ

さやか「マミさんっ!!」

マミ「はっ!?」

巨大マスケットを逆さに持ち、腰を入れて、

シャル「(葬むらんっ!!!!!!!!!)」

22 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/09 03:35:04.47 PoXrSiHi0 17/477


ダッピダッピダッピダッピダッピ
マスケットマスケットマスケットマスケットマスケットダンマクウスイ

マミ「ティロフィナーレティロフィナーレ
  ティロ・フィナァァーーーーレェェェェェェェッッッッッッッッッ!!!!!」

ズガアァァァァァンンンンンンンンン

マミ「………やった………」ヘタッ

コッ コッ コッ

ほむら「………」

マミ「ハァ、ハァ………暁美さん………
  助けてくれたの?」

ほむら「………」ギリッ

パアン

まどかさやか「あっ」

マミ「………」ヒリヒリ

ほむら「(視線・まどさや)
   私が来なかったら何が起きていたか、分かってるわよね?」

マミ「…コクン…」シュン

ほむら「………」グリーフシード

ほむら「使い魔を片付けて九割方攻撃してトドメ刺したのはあなた。
   このまままじ………動けなくなられたら迷惑だし」

マミ「………甘え、させてもらう………」

ほむら「そう。じゃあ、他に言う事もないわね」ファサァ

クルッ

マミ「あ………ありがとう」

23 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/09 03:40:21.76 PoXrSiHi0 18/477


ツカツカ

まどか「ほむらちゃん」

ほむら「………」ツカツカ

まどか「あの………ありがとうほむらちゃん」

ほむら(わずかに)コクッ

さやか「ふうん、転校生ってあんな風に怒る事あるんだ」

ほむら「何?」

さやか「いや、なんかいっつもスカしてるって言うかさ」

ほむら「ちょっと、今は虫の居所が悪いだけよ」

さやか「そ。うん。いや、有難う。
   命の恩人だからお礼は言うよ」

ほむら「なら、馬鹿な真似はやめるのね。
   身を以て理解したでしょう、魔法少女に関わるのがどういう事か。
   ここで死んだら死体も残らない」

さやか「うん」

24 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/09 03:45:47.60 PoXrSiHi0 19/477


ツカツカツカ

ほむら(………何か、ペースがおかしい調子が狂ってる………)

マミ「………私達も出ましょう。
  あなた達には謝らなければいけない、本当にごめんなさい」

まどか「そんな、マミさん」

さやか「そうですよ。あたし達も危険だって分かってて」

マミ「危険な魔女の結界に案内して、命の危険に晒した。
  魔法少女として言い訳の出来ない事だわ。
  魔法少女見学ツアー、これで終わりにしましょう。
  魔法少女に誘った事も無かった事に………」

さやか「………」

まどか「あのっ」

マミ「何かしら?」

まどか「あのっ、やっぱり、その魔法少女になるのは、怖いです」

マミ「当然よ」

まどか「でも、マミさんの、マミさんの入れてくれた紅茶、
   とても美味しかった。又、ご一緒していいですか?」

さやか「う、うん。マミさんのケーキ、すっごく美味しいし」

マミ「…グスッ…え、ええ。大歓迎」

25 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/09 03:51:35.62 PoXrSiHi0 20/477


ーー夜 真姫自宅(マンション)ーー

メガ真姫「………」カタカタカタ

PC「英字論文」

ヴーヴーヴー

真姫「もしもし、メールで連絡致しました………
  はい、小児科で研修医を………直接の連絡、恐縮です。
  それで、はい、そうです。ええ………転院ですか………」

「後で話を聞く機会もありましたが、
 多少なりともQOLを上げるのが限度だった様ですね
 ええ、それが当時の技術の限界でしたから」

真姫「そうですね。今でしたら………」

「年齢と技術から多少の選択肢は広がりますが………」

真姫「根治した可能性は?」

「移植を別にするなら、大幅な改善を含めてそれは正直無理ですね。
 理論上考えられる術式はありますが、あの状態ではリスクが高過ぎる。
 実行すれば、俗に言う神の手の類でも六、七割は命を落とす。
 基礎疾患があの状態では、日常生活で無理をしなければ、と言う程度の
 QOLを維持するのが現実的な選択であると言わざるを得ません」

26 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/09 03:55:53.82 PoXrSiHi0 21/477


真姫「もし、あの症例を大幅に改善する事が出来ていれば」

「学会で発表すべき内容ですね」

真姫「………ええ、はい………はい………
  ………ええ、ちょっとこちらで………有難うございました失礼いたします」

プツッ

真姫「………」クルクルクルクル

………ダイジョウブ、ミタイネ
ゴメンナサイ、ゴシンパイヲオカケシテ
アマリムチャシナイデヨ………

真姫「意味、分かんない………」

27 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/10 03:49:08.24 W/tiBLiu0 22/477

 ×     ×

ーー病院内廊下ーー

真姫(壁に背を預けて)「ふぅーっ………」

真姫(頬を叩く)「………」パンッ

真姫「ファイトだよ………」ボソッ

ーー病院 応接室ーー

真姫「先にご両親に来ていただいた訳ですが」

ーー説明中ーー

真姫「………事故当時の腱、神経の損傷が激しく、
  恭介君自身も我々スタッフも懸命の努力を続けて来ましたが、
  その経過も捗々しくありません。

  今後の将来に渡る話としても、この内容では、
  日常生活の不自由を可能な限り減らす、と言う回復が限度です。

  繊細な楽器の演奏、を前提とした回復は、
  医師の立場として不可能、を前提に話をせざるを得ません」

28 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/10 03:54:27.68 W/tiBLiu0 23/477


恭介母「………あんなに………恭介は、あんなに、ヴァイオリンを………」

真姫「………」

恭介母「何とか………何とか、ならないんですか先生?
   あの子は、あの子は今まで、あんなに、先生………」

真姫「………」フルフル

恭介父「………西木野、先生が仰るのなら………」

真姫「………」ペコリ

ーー恭介入室、着席、説明ーー

恭介「詰まり、この腕はもう動かないからヴァイオリンは諦めろ、と」

真姫「大体、その理解で合ってる。
  日常生活のための回復はまだ先が見込めるけど、
  今までの様に楽器を弾く繊細な動き、と言う所まで回復するのは難しい。
  いえ、私の立場では不可能であると言わざるを得ません」

恭介「不可能、ですか」

真姫「ええ。一般論として、
  確かに世の中にはとんでもない天才と言うべき障害者の人もいる。

  でも、もちろん努力を当然の前提としても、
  今の私の立場で言えば、それは最早、奇跡か魔法の領域に入っている天才や超人。

  医者として、若い君のこれからに、
  君の時間と労力、そして希望を費やして、その道を勧める事はとても出来ない」

恭介「凡人………秀才には、もう無理だ、と、このケガでは」

真姫「………」コクン

29 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/10 03:59:52.00 W/tiBLiu0 24/477


恭介「ソウデスカ、ワカリマシタ」

真姫「………」コクン

恭介「そうですか、そうですよね。エエ、ワカッテマシタ、この腕デスカラ。
  命が助かっただけ、命が助かって、こうして暮らせるだけ良かった、って」

真姫「今は、いや、もうずっと、辛いだけかも知れない。
  それならそれでもいい。

  だけど、例えば作詞や作曲、
  障害を受け容れて出来る範囲で演奏を楽しんでいる人もいる。
  もちろん、昔通りじゃないのが辛いだけ、そう思うのも仕方がない。それは君次第。

  これからの長い人生、出来る限りの音楽を楽しむ、音楽を諦める、それ以外の事も、
  ご両親も、私達も、出来る限りの支えになります」

恭介「エエ、ソウデスネ、ダイジョウブデス、アリガトウゴザイマシタ」

ーー病棟廊下ーー

真姫(どう見ても絶対無理してるわよね。
  まだまだこれからか。
  やっぱりこういうのはカウンセラーと………)

イジメテルノカイイヤガラセノ

真姫(ん? 何? ちょっと、まずい? ………)

「聴きたくないんだよっ!!!」

ガシャーンッ

真姫「!?」ダッ

30 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/10 04:04:56.42 W/tiBLiu0 25/477


ーー恭介病室ーー

恭介「………弾けもしない………」

真姫「やめなさいっ!!」ガシッ

恭介「ハァ、ハァ………」

真姫「ハァ、ハァ………」ナースコーール

ーーーーーーーー

真姫「じゃあ、後はやっておくから」

看護師「はい」ガラガラ

恭介「う、あ、ああ………
  もう、弾けない、ヴァイオリン、弾け、な………」

真姫「そう、そうね」ホウタイマキマキ

真姫「泣いても、泣いてもいいの。だから………」

恭介「ほら、力も入らない、痛みすら、感じない。
  こんな、こんな腕………」

真姫「確かに、今の時代、いっそ無くして高性能な義手にした方がすっきりする、
  そういうケースも少なくないわね。
  だけど、今回はそれには及ばない、医師として私はそう判断して繋ぎ直した。

  この腕は、私が繋いだ。
  仕事として恩着せがましく言う事でもない、医学の限界と言われても納得できないと思う。

  だけど、自分の何かを誇るなら、人の仕事に少しぐらい敬意を表しても罰は当たらないと思う。
  それは大人として一言説教させてもらうわ」

恭介「………」

31 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/10 04:08:25.69 W/tiBLiu0 26/477


真姫「それから、女として一つ説教しとく。
  ………、………、………限定版」

さやか「………」ボーゼン

恭介「………分かる、んですか?」パチクリ

真姫「ネットで調べたのよ。仕事柄ドイツ語は勉強してる。
  中学生の坊やが女の子にこれ貢がせてDVかますとか、随分いい度胸してるわね」

さやか「あ、あの、それは、
   あたしが、恭介の気持分からなくて、ホント馬鹿で、無神経で………」

真姫「いい女が無駄に自分を卑下しないっ」

さやか「………」パチクリ

恭介「ごめん、なさい………」

真姫「謝る相手が違う」

恭介「ごめん、さやか」

さやか「う、うん。あたしの方こそ」

真姫「恭介君が一番辛い時に、私も随分厳しい事言ったわね」

恭介「いえ………きついのはその通りですけど、有難うございました」

真姫「そう言ってくれると。
  私には………他人にはとても分からないぐらい辛い事だと思う。
  だから、泣きたいなら泣けばいい。それを笑う人間を私は軽蔑する」

恭介「………」コクン

真姫「だけど………他人を、そうやって自分を、傷付ける事だけは、
  それだけは少し、頭を冷やして考えて欲しい。
  ご両親も、私達病院も、お友達、で、いいのかしら?」

32 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/10 04:12:22.41 W/tiBLiu0 27/477


さやか「………」コクン

真姫「君を大事に思って、支えになりたいと思ってるから。
  それが重いなら重いって言ってもいいから」

恭介「はい………本当に、有難うございました。すいませんでした」

真姫「それじゃあ………ここまで言っておいてなんだけど、
  基本、私はケガを治す事しか出来ない立場だから。
  出来れば愚痴や泣き言はカウンセラーに。
  その辺、時間が無ければ普通に断るからね私は」

恭介「はい。有り難うございました」

さやか「………」ペコリ

ーー外科医局ーー

先輩医師「なんか、派手にゲンコロかましたって?」

真姫「………すいません…タハハ…」ペコリ

先輩医師「まあー、ナースの話なんか聞いてても、
     あの患者ならいつかああなっただろ」

真姫「………」コクン

先輩医師「それでも、なんか、届くものはあっただろうな」

真姫「そう、願います」

先輩医師「ああ。届いただろうさ、西木野先生なら。
     ここからは改めて長丁場のチーム対応だ。
     結果がどこまで届くか難しい所だが、
     一人の患者に対して自分で出来る事は見極めないとな」

真姫「はい」

真姫(私は、医者として………)

33 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/10 04:15:55.03 W/tiBLiu0 28/477


ーーマミ自宅ーー

三角テーブルで遅いティータイム

マミ「そう。それで、やっぱり魔法少女には」

さやか「………」コクン

さやか「恭介の担当の先生が凄く一生懸命で。
    それでも恭介の事をそこまでしか治せなかったって。

    こないだ転校生に助けられたのもあるし、

    それで、なんかズルって言うのか、冒涜って言うのかな?
    恭介には悪いかも知れないけど、契約して腕を治す気が萎えた、って言うか」

マミ「………」

さやか「あ………ごめんなさい。
    その、マミさんが助かりたいって願ったのは当たり前で、
    マミさんが生きててこうやって出会えたのは嬉しい、
    って言うかワタシッテホントバカ」

マミ「分かってる。ありがとう。
  うん。分かる、そういう風に感じるの。
  だから、気に病まないで」

QB「医学で出来なくても魔法なら出来るんだよ。
  わざわざ不便な事を選ぶのかい?」

さやか「分からないかなぁ?」クショウ

さやか「うん。それってホント馬鹿なのかも知れない。
    だけど、なんかそんな馬鹿な効率悪い事に付き合いたいって言うか、
    それが、もしかしたら人間臭い、って奴かな?」

QB「わけが分からないよ」

マミ「難しいわね」クショウ

34 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/10 04:19:03.28 W/tiBLiu0 29/477


マミ「その先生ってどんな先生なの?」

さやか「西木野先生って綺麗な女医さん、まだ若くていかにも頭良さそうな。
    それで、仕事はビシッとやるって感じかな」

まどか「うん、ちょっと格好いいって言うか」

さやか「その辺、まどかのママにもちょっと似てるかな」

マミ「へぇー。にしきの先生」

さやか「はい。あ、にしきのって、漢字がちょっと珍しいかも」

マミ「珍しい?」

さやか(テーブルに指)「はい、あんまり見ない名字ですよね」スイッスイッ

マミ「………西木野………綺麗な女のお医者さん………」

まどか「マミさん?」

マミ「ううん、なんでもないわ。
  ロールケーキがあるんだけど、食べていくかしら?」

まどかさやか「「いただきます」」

35 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/10 04:22:39.82 W/tiBLiu0 30/477


ーーーーーーーーーー

マミ「はい、お待たせ」

まどかさやか「「美味しい」」

マミ「ありがとう」

さやか「でも、お医者さんも大変ですよね。

    頭良くないと当然出来ないし、
    西木野先生とか、救急車で運ばれて来た恭介の腕繋いで他にも色々ケガしてて。

    それで、命が助かってからもあんな傷ついて我儘になってる患者の担当。
    ミスったら患者の命に直結する。
    そんな仕事毎日やってるって」

マミ「大変なお仕事、尊敬するわ」

まどか「うん。テレビとかでもやってますよね。
    忙しくてなり手がいないとかお医者さんが倒れちゃうとか」

さやか「…アハハ…笑い事じゃないけど本末転倒って言うか」

マミ「そうね。確かに、そんなニュースも聞くわね………」

さやか「なんか、自分が倒れちゃったら結局誰も助けられないですよねー」

マミ「ええ、本当にそう」

まどか「ご馳走様でした」

さやか「ご馳走様でした」

マミ「お粗末様でした」

39 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/18 03:31:23.06 Ao1gyrkb0 31/477

 ×     ×

ーー恭介病室ーー

仁美「上条君」

恭介「志筑さん」

仁美「ご無沙汰いたしております。
   もっとお見舞いに伺いたかったのですが」

恭介「有り難う」ニコッ

仁美「あの、これを」スッ

小箱をベッドのテーブルに

恭介「これは」ヨイショ

仁美「あ、すいません」カパッ

恭介「クッキー、これって志筑さんが?」

仁美「はい。特別な制限はないものと伺いましたもので」

恭介「うん。有難う」ニコッ

仁美「…パァァ…」

41 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/18 03:36:27.70 Ao1gyrkb0 32/477


恭介「んっ」ヒダリウデ

仁美「あっ」

恭介「つっ」ミギテデセイスル


恭介「つっ、あれっ、ん、昨日は、ちゃんと出来た………
   ちょっと待って………今………」

ポロッ

恭介「………」

仁美「………」

恭介「………」ミギテツマミ

恭介「………有難う、美味しいよ」

仁美「有難うございます」

恭介「う、うん、今日は、ちょっと疲れてる、みたいで」ニコッ

仁美「あ、ごめんなさい、気づきませんで」

恭介「うん。お見舞い有難う。
   クッキー、ご馳走様」

仁美「それでは、失礼いたします」パタタ

恭介「………」

42 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/18 03:42:09.52 Ao1gyrkb0 33/477


スルッ

恭介「………うっ………」ウツムク

真姫「カッコ悪いとこ、見せたくないか」ハアッ

恭介「うっ、くっ………」シタムク

真姫「あの娘、さやかちゃんには派手にぶちまけちゃったけどねぇ」

恭介「そう、ですね」ウウッ

真姫「ま、今の自分にゆっくりチューニングしたらいいよ。
   体も、心もね」

恭介「………」コクン

ーー廊下ーー

仁美「………」

 ×     ×

ーーとある病室ーー

女の子(ベッドの上)「ダンスの練習ね、すっごく大変で疲れて、でもとっても楽しくて、
    だからご飯が美味しいの」

真姫「そうなんだ」

女の子「いつか、お姫様になりたいな」

真姫「お姫様?」

女の子「うん。先輩のお姉さんみたいに、
    綺麗なドレスを着て歌ってお芝居するの」

真姫「そう」

43 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/18 03:47:16.24 Ao1gyrkb0 34/477


ーー病院応接室ーー

患児母「癌、と言う事ですか」

真姫「そのご理解で、結構です」

患児母「ああ………」クラッ

真姫「少し、休まれますか?」

患児母「いえ、お話しを」

真姫「はい。多くの場合、このタイプの病巣は子どもの内に脚の骨に発生します。
   癌の様なものですので、
   早期に治療しなければ全身に転移して生命を脅かすものになります。

   手足に発生したものであれば、生命予後、生命を優先するために
   患部のみ、或いは手足ごと切断する、
   と言う選択肢もあるのですが、今回は場所が場所です。

   稀なケースであり迅速かつ慎重に確認したのですが、
   残念ながらここに、悪性の病巣があると言う事実は動かせません」

真姫、頭蓋骨の図を赤ペンでこつこつ叩き、ぐるっと丸を描く。

真姫「敢えて言います。非常に珍しい、タチの悪いケースです。

   まだ幼い命だけを最優先に、なりふり構わず命を取るか、
   或いは、短い余生を、と言う段階です。

   そのためには、この範囲の骨を切除して、
   それでようやく生存へのスタートと言う事になります」

患児母「顔の、骨をこんなに………
    そうしたら、どう、なるんでしょうか?」

44 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/18 03:51:02.43 Ao1gyrkb0 35/477


真姫「悪性の組織のブラック、グレーの部分は絶対確実に、
   それを包み込んで漏らさないためには、健全なホワイトの部分も少なからず一緒に削って、
   悪い組織を包み込んで確実に封じ込めた状態で切り取らなければいけません。

   そうしないと、再発から転移、生命の危機に直結します。
   この範囲では、切除の後、代わりの人工物を接続、埋め込んで、
   薬剤と放射線で確実に叩いて根治します」

患児母「そんな………こんなに、顔の骨を削ってしまったら………
    先生っ!!」ガシッ

患児母「なんとか、なんとかならないんですかもっとなんとかっ!………
    あの娘、あの娘は劇団で、最初は大変だったのに、
    やっと、泣き言も言わなくなって、舞台にも出られるって喜んで、
    これから、これからなんですあの娘はこれから役も貰って、先生っ!!!」

真姫「………女の子の顔の事です。可能な限りの検討を行いましたが、
   余りに場所と規模が悪すぎました。

   現状では、この状態から生命予後を優先するためには、
   確かにこの分野の技術の進歩は目覚ましいものではありますが、

   それでも、回復への長く辛い時間と、
   小さくない違和感、後遺症は避けられないのが現実であると」

患児母「あああ………そんな………ああ………」

患児父「行こうっ。こんな、若い先生じゃあっ」ガタッ

真姫「無理からぬ事だと思います。
   セカンドオピニオンを否定はしません、紹介状も書きます。
   しかし、時間は限られています。

   脅しでもなんでもなく、私の診断結果を申し上げます。
   今後生き延びるためのギリギリの時間が今です。

   脳脊髄、肺臓に、手が付けられない程の転移が起こる現実的な危険が迫っています。
   どうか、それを踏まえての行動をお願いします」イチレイ

患児父「言葉が過ぎた、大変失礼しました」

45 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/18 03:54:55.70 Ao1gyrkb0 36/477


 ×     ×

ーー院長室ーー

院長「どうかね?」

真姫「よろしいでしょうか?」

院長「ああ」

真姫「今のお話し、主治医として申し上げますならば、
   少なくとも現時点では反対です」

院長「うむ」

真姫「その術式の使用は、既にカンファレンスに於いても検討されましたが、
   私も含めた総意として採用されませんでした。
   どう見てもリスクが高過ぎるからです。

   確かに、前例とされる教授の論文も拝読しましたが、
   部位が、それによるリスクの大きさが違い過ぎて、
   類似例と言えるかすら怪しいものであると………」

部長「基本的には、同意見です。
   カンファレンスの結果も今の説明の通り。

   一般的以上の技術水準であっても、今回の症例にこの術式を採用し小規模切除を狙う事は、
   患者の生存を考えるならば無謀に他ならない。
   少なくともうちの病院にそれが出来る医師はいません」

院長「うむ」

部長「………しかしながら、教授の手技、過去の実績を考え合わせますと、
   最初から一蹴する、と言う事も早計と考えます」

院長「うむ。もちろん、正式な決定は検査、カンファレンスの後になるが、
   これは患者の親御さんからのたっての希望と言う事で」

46 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/18 03:58:13.75 Ao1gyrkb0 37/477


 ×     ×

ーー外科医局ーー

真姫、入室着席

真姫「…フウッ…」ウツムク

先輩医師「教授、どうだった?」

真姫「なんか自信満々、私も言うべき事は言いましたが」

先輩医師「それでもやる事になりそうか?」

真姫「ええ。既にご両親が直接教授と会って、
   そちらで半ば方針が決定している状況です。
   もちろん、手術前には私も同席しての説明の場を設けますが。
   あの様子では、教授がご両親に一体どういう説明をしたのか、正直不安です」

先輩医師「西木野先生は外様だが、うちの病院自体全体に××大学の学閥だからなぁ。
     助手につくのか?」

真姫「そういう事になりそうです。私もそれを望みました。
   執刀はとにかく、ここでは私の患者ですから」

先輩医師「………××教授は確かにメスは切れる、実績もある。
     だが、古いタイプの外科の撃墜王だ。
     古い大学だから生き残ってるが、事務方辺りは正直冷や冷やものらしい。
     気を付けろ、色々とな」

真姫「…フウッ…」

48 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/19 03:12:12.27 B2l0tNx20 38/477

 ×     ×

ーー手術室ーー

「麻酔、入ります」

女の子「ドレスを着て、お姫様みたいに、楽しみ………」

真姫「ん」

教授「それでは………」

ーーーーーーーー

教授「………」

真姫「………」

看護師「………」タタタッ

真姫(迅速生検結果)バッ

教授「播種か」

真姫「一度閉じましょう」

教授「続ける」

真姫「待って下さい。ここまで前提が変わると今の準備では危険過ぎます。
   ご家族に告知した内容からも大きく逸脱しています」

教授「現場の判断だ。
   あくまで患者の生存のため、このまま病巣を切除し根治に繋げる」

49 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/19 03:17:40.16 B2l0tNx20 39/477


真姫「無謀です。只でさえリスクの高い部位、術式でした。
   これで、播種でここまで拡大した病巣と周辺部位をこの術式で切除するのは、
   その周辺にある致命的な………」

教授「私なら出来る」

真姫「それは、そう、であっても、せめて一度仕切り直しを。
   改めてご家族の同意を得た上で、脳外科の協力も仰ぎこの範囲に則した準備で。
   幸い、まだその程度の猶予はある筈です。
   このまま強行したら、予見し得るエラーに対処出来ません、その時は致命的な事態になります」

教授「私を誰だと思っているっ!?
   それに、私は、今回のオペのために
   差し迫ったヨーロッパでの学会発表のための準備時間を大きく割いているんだ。
   私以外の誰がこの術式で成功させると言うのだねっ?」

真姫(こんなやり方、普通ならヤバ過ぎて最初からやらないだけ、っ………)

教授「オペを再開する」

―――パックツイカ―――ブイエフ―――モドリマセン―――

ーー院長室ーー

院長「………」

部長「………」

事務長「………」

真姫「………」

部長「元々、進行していて危険な状態ではあった。
   不可抗力として説明しようと思えば説明出来る状況では、ありますが」

真姫「何をおっしゃっているんですか?。
   そもそも、何故執刀医はこの場にいないんですか?」

事務長「こちらで事情を伺った後、学会の準備のために既に発たれています。
    世界的にも価値のある決して外せない学会発表の時間を割いての手術と言う事で、
    術後の事はこちらに任せると言うのは事前に取り決めていた事でもありまして」

50 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/19 03:22:43.68 B2l0tNx20 40/477


ーーーーーーーーーーーー

真姫(………両手を上げて、デスクに向けて………)

バアンッッッッッッ

ーーーーーー妄想終わりーーーーーー

事務長「元々、当初の方針通り大きく切除しても、
    生き残る事が出来るかは難しい状態であったと」

真姫「確かに、生存率が高い、と言える程の確率ではありませんでした。
   あの播種があれば尚の事です。
   だからと言って、難民キャンプで今すぐの救命医療をやっている訳ではないんです。

   まだ選択肢の余地はありました。術式によって救命率と後遺症のどちらをとるか、
   或いは、痛みと進行を緩和しながら舞台に立つ思い出を作り、短い生を全うするか。
   それは私達が一方的に決めていい事ではなかった筈です」

事務長「いや、それは西木野先生でしたら………
   それは子ども相手には非現実的でしょう。
    やはり、救命を第一に考えなくては」

真姫「それでしたら、あんな無茶を続ける事が許される筈がありませんっ」

部長「元々、リスクはある術式だった。
   それを、実績のある教授が親御さんのたっての望みで敢えて行うと言う事で」

事務長「その通り、その旨同意を得ている事ですし」

真姫「同意を得た前提が別物です。同意した状態とはリスクが違い過ぎます」

部長「現場の状況により事前の同意に追い付かない事もままあるのが………」

真姫「一般論ではなく、今回がそうであったとおっしゃるんですか?」

部長「生検自体が拡散を引き起こす危険があるため、範囲確定が難しいケースだった。
   あのレベルの拡大は予測出来ていなかった事は………」

真姫「それは、その通りですが、現実にあの状況を把握した以上は………」

51 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/19 03:28:21.99 B2l0tNx20 41/477


事務長「それは、今、先生を問い詰めても仕方がないでしょう西木野先生」

真姫「ええ。そうです。実際にオペを行ったのは私達ですから。
   ですから、この結果に就いて、この病院で私達はどう対応すべきか、そういう話の筈です」

事務長「結果が出る迄、
    ご家族への対応はこちらで行いますので西木野先生はそれまで………」

真姫「私は主治医ですよ。医者としてご家族に説明を行う責任があります」

事務長「ええ、もちろん、それは行っていただきます。
    しかし、今ではない」

真姫「ご家族は説明を待っています」

事務長「ええ、ええ。しかしですね、保険会社や市役所との調整もあります。
    病院の責任に属する見解に齟齬が生ずると、
    こちらとしても非常にやり難い事になりますので、それは厄介なトラブルにもですね」

真姫「あれは、あの状況では、一度引くべきでした。
   続行の判断は、すべきではなかった」

事務長「ミスかどうかと言う事は、検証の結果を待ってですね」

真姫「まともな医者ならそう判断する、と言う話をしているんですっ!
   違いますか部長、院長っ!?」

事務長「しかし、教授は非常に高い技術、実績を持つ方で、
    元々リスクの高い手術をご家族が敢えて同意したと言う事情もあり、
    不幸な結果にはなりましたが、必ずしも一般的な水準で………」

真姫(あああああ………言いたい、素人は黙ってろと言いたいイミワカンナイ………
   ………向こうも仕事向こうも仕事………)

52 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/19 03:34:56.08 B2l0tNx20 42/477


真姫「これから、死亡診断書を作成してご遺体をお返ししなければなりません。
   その前に、詳細なAiと病理解剖を進言します」

院長「記録を残す、と言う事ですか」

真姫「はい。私もご家族への説明に同席しましたが、
   書面上の同意があったとしても、
   術死を納得できる内容の説明ではありません」

事務長「それは、あの年齢のお子さんを亡くされて納得すると言うのは」

真姫「病気の進行による死亡ではありません、突然の術死です。
   もちろん、やむを得ない術死もあります。
   しかし、責任問題をおいても、あの説明の内容で、しかも事前告知との乖離で、
   それでご遺族に術死を受け容れろ、と言うのは医師の立場でも厳しい内容です」

事務長「そこはなんとか、説明のつく様に………」

真姫「今回の経緯について、私が医師として事実に基づき必要な事を記録に残して、
   ご遺族が所定の手続きによりそれを目にして然るべき意見を求めたならば、
   紛争に発展する事も十分考えられる内容にならざるを得ません」

部長「言う迄もない事だが、オペに立ち会った君のキャリアにも関わる事であっても、
   決して事実を曲げた記録を行うつもりはない、と言う事を確認していいんだな?」

真姫「はい」

事務長「病理解剖と言う事になればご遺族の同意が必要となります。
    特に小さなお子さんですと親御さんの心情的な問題がですね」

真姫「最終的に病理解剖は行われるべき、と、考えますが、
   せめてご遺体が傷付かないAiだけでも。
   いっそ、このまま無断で撮影する事も選択肢としては」

事務長「いや、やはり事務局として把握している以上、
    私の責任として無断と言う訳には」

真姫「それでは同意を得て。
   ご遺体を損傷しないAiであれば説得も比較的容易と思われます」

53 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/19 03:38:20.76 B2l0tNx20 43/477


事務長「しかし、敢えてそこまで行う必要性が、ですね。
    ご遺族に混乱を与えると言う意味でも。
    先生には、今判明している状態から死亡診断書を書いていただいて、
    ご遺族への対応はこちらに任せていただけましたら。
    説明を行うに当たっては、整合性のある文書を作る必要もありますし」

真姫「本来そちら、事務局の扱いの話ですが、
   この病院の電カルには不正防止プログラムが導入されています。

   記述の追加ならとにかく、原本をいじる事が出来るのは限られた上位のアクセス権限が必要。
   それを実行した場合、少なくともアクセスログは長期間抹消出来ない仕組みになっています。

   説明用の文書をまとめる事が必要でも、その基となる医療上の記録はそのまま残ります。
   もし、そこに変に手を付けたら上位の責任者が後で痛くもない腹を探られる事になる。
   無論、私の作成する死亡診断書も、その様な条件の下で作成される事になります」

事務長「死亡診断書は今ある材料から、
    分からないものは分からない、それは不詳でも推定でも」

真姫「この病院での究明が無理だと言うのでしたら、警察への連絡も考えています。
   異状死の疑いがあると連絡して、Aiと解剖の実施を要請する事も」

事務長「それは、一存で行われては非常に困ります。
    異状死と言いますか異状死体と言いますか、
    その扱いは判例も通達もややこしい事になっておりますので、
    特に術死の様な事に就いては早急に弁護士の先生とも相談の上でですね」

部長「私も、警察はどうかと思う
   色々齟齬はあったかも知れないが、
   元々が高リスクのオペ、症例で、
   少なくとも現時点で刑事事件にすべき事例とは考えられない」

真姫「確かに、直ちに犯罪と言えるかどうかは、ですが………」

54 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/19 03:41:31.76 B2l0tNx20 44/477


部長「私は、前にいた病院で、マスコミと共に昂っていた時期の警察の捜査を受けた事がある。
   司法解剖になると、ご遺体をバラバラにされた挙句に、
   その結果得られた資料は裁判まで検察官の扱いとなって、病院自身による検証は困難となる。

   そして、治療現場とは距離のある法医学者のこちらが読めない意見を基に、
   警察検察での取調べが行われる。

   後知恵で万全を求めがちな司法の匙加減は、臨床医として納得し難い面も少なくない。
   幸い私は任意捜査による不起訴で終結したが、それでも現場は非常に疲弊した。

   ここに来て、西木野先生は本当によくやってくれている。
   この様な案件、この様な微妙な案件で西木野先生やスタッフが逮捕される様な事になれば、
   それはこの地域の医療、引いては医療界全体の問題になる」

事務長「その通りです。結果がどうあれ、
    警察が本腰を入れて介入して来る事によるダメージは極めて大きい。

    特に、術死を医師法による届出と言う事になれば、
    それが実務上の前例として、ここだけでなく後々に響く恐れもあります。

    事務局としては、そうした事で我が病院、先生方に負担を掛ける事の無い様に
    対処しなければなりません」

真姫「それではこちらで病理解剖、せめて詳細なAiを」

事務長「裁判を考慮した病理解剖となると、別の病院にお願いする、
    更にその事をご遺族に同意していただく必要があります。

    裁判になった場合、訴えられた病院が行った病理解剖は
    証拠として採用されない恐れがありますから。

    Aiも含めて、同意を得る作業自体が
    ご遺族の疑念を呼び心情を乱す恐れがありますが、それでも必要であると」

55 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/19 03:45:01.22 B2l0tNx20 45/477


真姫「必要です。病理解剖は同意の面で難しい部分もありますが、
   せめて遺体破壊の無い、客観的なAi画像だけでも保全する必要が。

   手術内容自体が、既に事前告知から相当に逸脱しています。

   確かに、事前の確定が難しい中、
   生命を脅かす予想以上の拡大に医師として現場の判断で懸命の対処した、
   そういう弁明が通る余地はあります」

事務長「でしたら………」

真姫「しかし、もし裁判になって、こちらが勝訴したとしても、
   元々が前のめりの手術で勝訴の理由が証拠が無いから勝訴、
   だけではまずい事になります。

   このネット社会です。この病院のネット検索にこの件で悪評が定着しても、
   証拠が無いだけにそれを覆す事が難しくなります」

部長「全く、只でさえあれには振り回されるからな」

真姫「それは、事務長の扱う経営上も
   この病院で患者さんの診察に当たる我々医師にも
   不利益にしかならないと考えます。
   結果はどうあれ、残せる根拠は残すべきです」

事務長「結果はどうあれ、ですか」

真姫「今の時代、ネットを含めてどこから入れ知恵があるか分からない時代です。
   私がやらなくてもご遺族が大人しくしていると言い切れますか?
   事件を中途半端な引っ張り方をされたら現場にも響くんですっ!」

事務長「事件とは又、先生の立場でそういう言葉を軽々にですね、
    我々が、先生方に余計な負担を掛けない様にですね………」

真姫「軽々しく口に出しているとお考えですか?
   私は、あのオペで最期の時まで医師としてそこにいたんですよ」

事務長「落ち着いて下さい先生。
    ですからこそ、一度落ち着いてから改めて見解をまとめていただきたいと」

真姫「私が感情的になっていると………
   失礼しました。しかし………」

56 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/19 03:48:15.92 B2l0tNx20 46/477


院長「………そうしよう………」

事務長「院長」

院長「現段階で確かな事を説明する事は難しいかも知れません。
   しかし、まずはAiと、それから病理解剖の承諾を得る方向で説得して下さい」

真姫「それは、私が」

事務長「いや、こちらで行います。
    先生が今ご家族と対面したら手術の内容に話が及びます。

    現時点で断片的な事を話される事も困りますし、
    主治医である先生の立場で言葉を濁されますと感情を大きく害される懸念があります。
    ワンクッション置く事も我々の仕事ですから」

部長「私も同席しよう。
   事務方だけで理解を得る事は無理だろう」

院長「お願いします。
   可能な限りご遺族の承諾を得てAiと病理解剖。

   警察への届け出に就いては事務長、
   市当局、弁護士の先生にも連絡をとって早急に必要性の有無を早急に報告して下さい。
   先生方も協力をお願いします」

57 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/19 03:52:24.36 B2l0tNx20 47/477


部長「全面的に」

真姫「分かりました」

院長「まずこちらでAiを行います。
   警察への届出の有無次第で解剖に関する扱いも変わって来る。
   或いはご遺族が直接届け出る可能性もありますから」

事務長「分かりました」

院長「以上の方針で、これは院長決定です。
   西木野先生。今は私に預けて下さい。
   私も医者です。悪い様にはしない」

真姫「若輩者が色々と出過ぎた事を、失礼いたしました」イチレイ

院長「………事故の疑いを前提とした委員会は避けられません、か………」

事務長「………」コクッ

59 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/21 01:54:49.45 AsveSdJ+0 48/477

 ×     ×

ーー外科医局ーー

真姫「………フウッ………」ギシッ

先輩医師「どうだったヒアリング?」

真姫「裁判を前提とした準備ですから、
   司法と医者の現場、意思疎通からして難しいです」

先輩医師「なんだよなぁ。
     今までも、同業者が色々と泣かされてるからなぁ。
     まあ、逆のケースもあるから難しい所なんだが」

真姫「………隠蔽による泣き寝入り、ですか」

先輩医師「まあ、西木野先生は帰る所があるからまだな。
     うちの院長以下も事務方も市役所もこの件じゃ必死だ」

真姫「上の責任問題と言う事ですか」

先輩医師「しかも面子も絡んでる。
     この件は美国マターだからな」

真姫「私も小耳には挟んでいますが………」

60 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/21 02:00:45.77 AsveSdJ+0 49/477


先輩医師「美国の方で、有力な後援者に改めて恩を売ろうと、
     孫の手術のために凄腕で評判の教授を紹介してこっちにゴリ押しして来た。

     美国の本家は例の件で地盤固めを仕切り直している。
     美国代議士のラインで県議会議員や市役所の上の方まで絡めて、
     ここで一つ顔を利かせようとしてこの結果だ」

真姫(ヴェェ………)


先輩医師「無論、西木野先生や教授もそうだ、
     只全力で目の前の命に向き合っている事とは何の関係もない話さ。
     それでも、あそこの大学との関係がこじれるとうちの病院は非常にまずい」

真姫「学閥、それに医師派遣の事もですか」

先輩医師「昔みたいに大学が強権的に出来る時代じゃないがな。
     だからこそ、細い伝手でも手放せない。
     うちはマシな方だが、公立病院なんてどこも一杯一杯だ。
     救命やら産科やら抱えてたら特にな」

真姫「ええ」

先輩医師「西木野先生だって、何時跡継ぎに引っ張り戻されるか寿退社するか産休入るか。
     そんな事がバタバタッて続いた上に大学の細いつっかえ棒までなくして見ろ。
     この辺の地域医療そのものがやばくなる」

真姫「………」

先輩医師「まあ、今時隠して隠し通せる、なんて考える方がおかしい、
     よっぽど先が見えちゃいない。

     ここで小細工しても、隠せおおせるかは分の悪い賭け。
     逆の目に出たら、もっともっと縺れて患部が癒着して
     収拾つかない事になってただろう。

     外様なら外様らしく、いいご身分でもなんでも精々使い倒してやるんだな。
     それが患者のためになる、って言うんなら」

真姫「………はい………」

61 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/21 02:08:05.82 AsveSdJ+0 50/477


 ×     ×

ーー夜 真姫自宅ーー

真姫「只今………」

冷凍庫「ガチャッ」

真姫(ボンベイ・サファイア。
   自分でも分かるぐらいメンタルやばいから、最初に決めておく
   1ショットだけ)

真姫「くうっ………」

プルルルルルルル

真姫「?………もしもし………」

真姫パパ「もしもし」

真姫「パパ」

真姫パパ「元気だったか?」

真姫「うん」

真姫パパ「最近、ある人が私の所に頼み事をして来た。
     真姫の事を説得して欲しいとな。
     それは、私が口を出す事ではない、
     と答えたら聞かなかった事にして欲しい、と言っていた」

真姫「………ごめん、パパ………」

真姫パパ「何か、謝る様な事をしたのか?」

真姫「ううん」

62 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/21 02:14:02.05 AsveSdJ+0 51/477


真姫パパ「無論、医師免許は必要だ。
     だが、お医者様と安穏としていられるご時世じゃあない。
     私の本音を言うなら、真姫には婿を貰い、
     低リスクな診療科で経営に主軸を置いて欲しかった」

真姫「うん。正直、身に染みて分かる」

真姫パパ「敢えて一線で、他人の下でもっと仕事を覚えたいと、
     普通の就職活動を行い、地方の重要な基幹病院に就職した医者の雛鳥を、
     私は医師として敬意を以て送り出した」

真姫「うん」

真姫パパ「まだまだ若造だが、それでも、
     相応の働きを積んで来た、と、聞いている。
     西木野先生が当病院に勤めると言うのであれば、大いに歓迎する」

真姫「有難う。
   でも、こっちで患者さんが待ってるから」

真姫パパ「そうか」

真姫「有難う、パパ」

真姫パパ「うん。だが、これだけは覚えておいて欲しい」

真姫「何?」

真姫パパ「うむ。これは非常に重要な事だ。
     私が孫を抱くために、
     母子ともに健康なリスクの低い年齢と言うものを頭の片隅に………」

真姫「明日早いんだけど」

真姫パパ「ああ、お休み、真姫」

真姫「お休み、パパ」チュッ

ツーツー

真姫「お休み………有難う、パパ………
   うん、もう一杯だけ」

63 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/21 02:17:32.87 AsveSdJ+0 52/477


 ×     ×

ーー朝 美国本家ダイニングーー

織莉子祖父「………」シンブンガサガサ

美国公秀「………」

織莉子祖父「出所は市役所辺りか」

公秀「十中八九。そもそも病院側に口外するメリットはありませんし、
   あちらの両親親族もわざわざリークする段階ではありません」

織莉子祖父「糸を引いているのは?」

公秀「市役所の中の古狸のシンパ、後釜選びへの牽制程度の事かと」

織莉子祖父「面倒な事には?」

公秀「ご懸念無く。無論、目は配っています。
   元々が難しい病気、手術と言う理解はあります。
   今はむしろ、変に騒ぎ立てる方が地域医療を破綻させる
   モンスター・ペイシェントと言う見方をされがちですので」

織莉子祖父「医療ミスの疑い、か………」

 ×     ×

ーー記者会見場ーー

真姫「以上が、手術の経緯になります」

記者A「執刀医である教授は、何故出席していないのでしょうか?」

事務長「その分野に於ける第一人者として、
    海外に於ける研究、学会発表のために多忙を極めていた中でのオペでもありまして。

    無論、海外の教授とも連絡を取って、先方も気に掛けてはおられますが、
    どうしても外せない前々からの諸々の用件もあり、
    まずは、患者様をお預かりした病院としてこうした発表をさせていただいている次第であります」

64 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/21 02:21:38.62 AsveSdJ+0 53/477


記者B「今回の手術に就いて、病院としては医療ミスがあった、と言う認識なのでしょうか?」

事務長「患者様、お子様をお返しする事が出来ず、真に遺憾な結果となった次第ではありますが、
    今回の病状及びオペの元々の難しさに鑑みますと、

    子どもが座して死を待たざるを得ない、と言う状況に対しての数少ない選択肢として、
    その結論を出す事は現時点では容易なものではなく、
    現在、専門医、弁護士を含む検証委員会に調査を求めている次第であります」

記者A「………この様に、事前の検査結果に照らしても非常に危険な術式を選択した上に、
    直接取り除くには余りに拡大し過ぎた部位、状況での病巣の切除を強行した、と、
    何人もの専門家のコメントが出ている事に就いて、
    西木野先生はどう考えておられるんですか?」

真姫「………」スッ

事務長「あー、確かにリスクのある手術ではありました」バッ

事務長「しかしながら、元々が難しい病気の治療のための難しい手術であると言う事を
    説明した上での手術であり………」

記者A「本当に、それだけのリスクを説明したのですか?」

弁護士「当然、同意書は頂いております。
    只、このケース、病気は、検査自体に病巣拡大の危険を伴うため
    手術前に説明しきれない事もままあるのも確かであります。

    確かにリスクのある手術であり、
    現に市立病院独自に於いては見送られた術式を採用した訳ではありますが、
    一方でそれは、必ずしも標準では収まらない実績を持つ
    教授による執刀を前提をしたものであります。

    その上で、元々が致死率の高い病状に対して
    危険を冒してでも治癒の可能性を見出す説明と同意を得た上で実行された手術でありまして、
    その高度に専門的な判断の是非に就いて外部、標準医療から一概に結論を出す事は
    委縮医療の問題もあり難しいものであると言うのが現状であります」


事務長「現在、中立の弁護士、専門医も含めた委員会による調査を求めている段階でありまして、
    専門性の高い微妙な判断に就いて、現時点での結論は差し控えさせていただきたいと」

65 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/21 02:25:44.46 AsveSdJ+0 54/477


 ×     ×

ーー見滝原市内交差点 街頭ビジョン周辺ーー

街頭ビジョン「見滝原市立病院で手術を受けた………
      亡くなった事に関し、医療事故の疑いを指摘する一部報道を受け、
      今日、同病院が記者会見を開き………」

さやか「………」

 ×     ×

67 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/25 02:06:24.19 zbPKqJ7Y0 55/477

 ×     ×

ーー見滝原警察署廊下ーー

事務長「ああ、西木野先生」

真姫「事務長」

ーー車内ーー

事務長「後で詳しく伺いますが、如何でしたか?」

真姫「一通りの説明を求められた、と言った所です。
   特に乱暴な事もありませんでした」

事務長「そうですか。こちらもその様なものでした」

真姫「警察も動き出しましたね」

事務長「記者会見まで開かれた、となりますと、
    警察としても放置は出来ないと言った所でしょうか」

真姫「何処まで踏み込んで来るつもりなのか?」

事務長「警察、検察も難しい立場ですからね。
    昔は医者の裁量、専門性を絶対視し過ぎていると言われ、
    最近では過剰な摘発で医療崩壊の引き金を引いたとも言われています。
    ですから、今は慎重な扱いになるとは思いますが」

68 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/25 02:11:59.87 zbPKqJ7Y0 56/477


真姫「Aiと病理解剖の資料はこちらの手元にあります。
   警察が余り無茶な事を言って来るなら、
   医学的に反論する事も出来ます」

事務長「検察も、その資料を基に外部の専門医の賛成が得られなければ、
    それ以上のゴリ押しは出来ない筈です」

真姫「されたら困ります」

事務長「その通りです。
    こちらでも、外部の専門医を含めた検証を進めています。
    実際に警察が介入して来た以上、
    Aiはそちらの無理押しを抑制する歯止めにはなる、と言う事ですか」

真姫「………終わりで始まり、希望の光………」ポツリ

事務長「あの映画を?」

真姫「原作も一通り」コクリ

事務長「希望の光、そうあって欲しい、そうあるべきなのでしょうね。
    先生達が最善を尽くした証として」

真姫「光を浴びたら灰になるドラキュラにならない様に力を尽くします」

69 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/25 02:17:19.63 zbPKqJ7Y0 57/477


事務長「時が経つのは早いものです。医学の技術もそうなのでしょう」

真姫「はい」

事務長「医学、病院を取り巻く社会、経済もしかりです。
    Aiも、そうですね。
    少し前迄は、今程の扱いはとても考えられなかった。

    良くも悪くも、正直、胃の痛い事の方が多いですが、
    病院に対する外的な要素は余りに目まぐるしく変化しています。
    西木野先生は東京の跡取り娘、でしたか?」

真姫「否定する程間違ってはいない、と思います」ムッ

事務長「失礼。何れ経営に携わる事になるのか、
    と、少々興味を覚えまして」

真姫「今は病院経営、引いては医者の仕事の場を維持する事は大変だと、
   多少なりとも聞かされて来ました」

事務長「そうですか。
    先生方は日々直接命に向き合い切った張ったの仕事をしている。
    私がその重みを本当に知る事は、生涯出来ないかも知れません」

真姫「………」

事務長「その重い仕事を、分からないなら分からないなりに敬意を以て、
    それでも距離を置いて病院、引いては先生方の仕事を
    それ以外の面で守り、バックアップするのが私どもの仕事です。

    今回の事も、なんとか病院が、先生方が乗り切るための準備をします。
    先生にも改めてご協力願います」

真姫「こちらこそ、よろしくお願いします」

70 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/25 02:23:01.03 zbPKqJ7Y0 58/477


ーー夜 見滝原市内路上ーー

ヴーヴー

真姫「もしもし?」

真姫パパ「もしもし。警察の捜査が始まってるな」

真姫「うん」

真姫パパ「知り合いの記者から聞いた。
     既に県警の捜査一課でも担当が決まってるらしい」

真姫「そう」

真姫パパ「感触はどうだ?」

真姫「うん。今の所、警察の方は大丈夫、だと思う」

真姫パパ「そうか。
     病院には病院の、行政には行政の利害がある。
     補償交渉絡みの不用意な扱いから現場の医師に面倒が及ぶと言う事も有り得る」

真姫「うん」

真姫パパ「もし、何か気になる事があるならすぐにこちらに知らせなさい。
     真姫個人に対して、信頼のおける弁護士が付く様に手配する。

     死者が出て警察が調べを始めている以上、
     それが不可抗力でも対処を誤ったら取り返しのつかない事になる恐れもある。
     率直に言う、真姫一人の問題ではない」

真姫「うん。今の所大丈夫、だと思うけど、覚えておく。
   有難うパパ」

71 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/25 03:54:03.15 zbPKqJ7Y0 59/477

ーーBARーー

カラン

バーテンダー「いらっしゃいませ」

真姫「ジン・リッキー」キイッ

バーテンダー「かしこまりました」

真姫、喉を潤し左手で右手を掴む。

真姫(………大丈夫、術式の選択、手術の継続、手技、
   仮に過失があったとしてもそれは執刀医、流石に私に迄は及ばない………)

真姫(………我が身の心配が先に来る様になった、か。
   もう、仕事の一頁として、過剰に感傷的になるキャリアじゃない。とは言え、
   これも成長、なのかな? ………)フッ

真姫「マティーニ。ヘミングウェイで」

バーテンダー「お待たせいたしました」

真姫「………」ツイッ

72 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/25 03:59:04.53 zbPKqJ7Y0 60/477


「渋いのやってるねお姉さん」

真姫「………」ペコリ

「あたしもマティーニもらおうか。
タンカレーにベルモットリンスで」

「じゃあ………私はエッグノッグを………
タマゴナンテタマゴナンテオ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙………」

真姫(ヴェェ………ヤバイ、絶対ヤバイ、
   あの眼鏡の方、負のオーラがヤバ過ぎる………)

ーー魔女の結界内ーー

マミ「ティロ・フィナーレッ!!」

ズガアアアンンンンンンン

ーーとある公園ーー

まどか「マミさん、大丈夫かな?」

さやか「うん。大丈夫、大丈夫………」

スッ………

マミ「只今」

さやか「いやったっ!」

まどか「良かったぁ………」

73 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/25 04:04:14.18 zbPKqJ7Y0 61/477


ーーマミルームーー

マミ「お待たせ」

まどかさやか「いただきます」

マミ「なんか、本当にごめんなさい。
   只、結界の外で待たせてこうやってお茶に付き合ってもらって」

まどか「………」フルフル

さやか「いやー、こんな美味しいお茶ご馳走になって、
    ごめんなさい、も無いでしょう」

まどか「時間内に出て来なかったら、って、
    それで少しでもお役に立てるんでしたら」

マミ「うん。その時は二人に悲しい思いをさせるエゴだって分かってる。
   それでも、せめて二人には覚えておいて欲しいから」

ーー路上ーー

コッコッコッ

真姫(あそこからボンドマティーニでシメるって、
   何者だあのオバサン………ヴェェ………)

真姫「ん?」

さやか「?」

真姫「やっぱり、さやかちゃんに、まどかちゃん?」

さやか「西木野先生?」

まどか「こんばんは」ペコリ

真姫「何? こんな時間に二人で夜遊びですかー?」

さやか「ええと、先輩の所で勉強会を」

まどか「コクコク」

74 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/25 04:09:33.94 zbPKqJ7Y0 62/477


真姫「んー、ま、そういう事にしといてあげる」

さやか「まどかー」ダキッ

まどか「ウェヒッ?」

さやか「ちょっと、先帰っててくれる? お願い」ボソボソ

まどか「………」コクッ

まどか「それじゃあさやかちゃん」

さやか「ばーい」

さやか「………西木野先生」

真姫「何かしら?」

さやか「恭介の具合、どうですか?」

真姫「患者の個人情報、勝手に教える訳にはいかないでしょう。
   特別な事が無い限り例え家族、奥さんでもね。
   まして幼馴染のお友達、に教える事は無いわ」

さやか「そうですか、そうですよね。
    ………先生、知ってましたよね」

真姫「?」

さやか「恭介のCD、あれがどんなものかとか」

真姫「フゥーッ」

75 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/25 04:12:42.24 zbPKqJ7Y0 63/477


ーー真姫自宅ーー

真姫「ま、適当に座って。こんなのしかないけど」オイシイミズグラス

さやか「いただきます」キョロキョロ

真姫「珍しい? ま、こんな時間に中学生相手にどうか、
   って言うかかなり本格的にイミワカンナイんだけどね」

さやか「あはは、そうですね………あれって………」

真姫「見たい?」

さやか「いいですか?」

真姫「………」コクッ

さやか(………写真立て………)

さやか「………これって先生?
    わっかぁぁぁぁぁぁぁぁいっっっっっっっっっ」

真姫「ピキッ、ピキピキピキッ」ニコニコ

さやか「これってニコニー?
    うわー、綺羅ツバサ小さくてかわいーっ、
    でも、A-RISE、この時から格好良くって素敵で、
    知り合い、なんですよね。スクールアイドルの時の」

真姫「ええ。あの時の、最高のスクールアイドルで
   乗り越えるべき目標で最強のライバルでとても頼りになる仲間」

さやか「みんな、凄く可愛くって、綺麗で」

真姫「そうね………みんな、若かった」

76 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/25 04:16:11.00 zbPKqJ7Y0 64/477


さやか「………これが、μ'sなんですよね」

真姫「うん」

さやか「学校を一つ廃校から救って大会で優勝して
    海外のとかこんなトンデモ路上コンサートまで成功に導いて、
    それで、すっぱり解散した伝説のスクールアイドルグループ。
    あたしも、ネットとかで見ました。凄く可愛くて、綺麗で格好良かったです」

真姫「有り難う」ニコッ

さやか「………えーっと、その、
    最近先生ちょっとニュースとか出て、
    そしたら、ネットとか見たら、関係する情報がみんなくっついて出て来たから」

真姫「インターネットには振り回されるわ、本当に。
   あの時もねぇ………」ハアッ

さやか「え?」

真姫「まあ、色々あったのよ。帰国した時とか」ハァッ

さやか「まあ、これだけ人気だったら、そうですよね」

真姫「まあね」

さやか「プロになろうとか、思わなかったんですか?
    ニコニーやA-RISEみたいに。
    優勝したんですよね」

真姫「それはちょっと、ないわね。
   甲子園やインターハイから別の道に行く人はいっぱいいる。それと同じ。
   あれは、私にとって大切な青春の一ページ」

さやか「やっぱり、お医者さんになるために?」

真姫「うん。それはずっと決まってた。もう生まれた時から、かな。
   親の考えもそうだし、もちろん最終的には自分の意思で。
   決して甘い考えで出来る仕事じゃないから」

77 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/25 04:19:38.75 zbPKqJ7Y0 65/477


さやか「はい………ピアノ………」チラッ

真姫「うん。本当はこっちに勤めてる間は独立するつもりだったんだけどね。
   でも、これだけはやっぱりね。防音室も含めて、
   ちょっと、いや、かなりパ………実家に甘えたりしちゃったわ」

さやか「実は大病院のお嬢様で、
    グループではクラシック出身の作曲担当、なんて」

真姫「はいはい、その通り」

さやか「だから………知って、ましたよね」

真姫「ネットで調べたって言うのは本当。
   そこまで細かく詳しくないし、興味が湧いたから。

   だから、流石にキレたわよ。あんなレア物粗末にするわ、
   それ持って来たさやかちゃん粗末にするわ、

   中学生の分際で………まあ、あの時の状況考えると
   ちょっと大人げなかったけどね」

さやか「アハハ………有難うございます、と言いますか」

真姫「………あれは、凄くいい思い出………
   だから、分かるのよ………」

さやか「はい」

真姫「大学では昔の事もあってスポーツ医学に関心を持って、
   そのまま専門医の道を考えた事もあった。
   だけど、色々考えて、結局街の一線の医者として、
   上条君やさやかちゃんと出会った」

さやか「有難うございます」

78 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/25 04:22:49.34 zbPKqJ7Y0 66/477


真姫「厳しい結果になったけどね。

   亡くなった患者さんも、医学の限界も治らない傷も、
   患者さんやご家族から理不尽な感情をぶつけられた事も、
   まあ、一通りぐらいは経験したかな。

   だから、いい意味で慣れなきゃいけないし少しは出来る様になった、
   と、思うんだけど。ニュース、見たって言ったよね」

さやか「ええ、もしかしたら医療ミスじゃないかとか」

真姫「公表されてる事だけど、あの娘、子役の卵でね。
   舞台に立つ日を凄く、楽しみにしてた。

   でも、本当に珍しい、不運な事に顔の骨に悪性腫瘍が出来て、
   私も手術をした先生も力の限り助けようとしたけど、
   ………駄目だった………」

さやか「………」

真姫「もちろん上条君の事もね。
   医者は神様じゃない、医学の限界。
   その中で、自他ともに認めるぐらいには恥ずかしくない仕事をした。
   それはそれとして、やっぱり、西木野真姫としては、痛いものがある」クルクルッ

さやか「………恭介も、感謝してる、と思います。
    でも、今は辛くて痛い」

真姫「さやかちゃんも、痛い」

さやか「あたしなんかがそんな………」

真姫「………」ジッ

さやか「………」コクッ

79 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/25 04:26:04.37 zbPKqJ7Y0 67/477


真姫「私も、一時期奪われて氷漬けにされそうになった。
   そこから、みんなに救ってもらって、羽ばたく事が出来た。

   だからね………どれだけ苦しいか辛いか………

   一生懸命取り組んで来たからこそ、その高見を知って諦めた娘も知ってる。
   私なんかは、その道では所詮憧れで終わって、
   青春のほんの一時、輝いて羽ばたく事が出来た」

さやか「はい」

真姫「まして、本気でヴァイオリニストになろうって言うなら、
   小さい頃から徹底的に弾き込んで弾き込んで、
   そのために子どもとしての時間を費やして」

さやか「ずっと、恭介、小さい時からずっとそうでした」

真姫「それが、一瞬で理不尽に、一生の事を失ってしまった。
   私みたいなその道のニワカにどれだけ大きいかは分からない。
   だけど、どういう痛みなのかは、分かってしまう。

   だけど、私がそれを言う事は出来ない。
   私は、医者として、科学的に彼の肉体的な損傷と向き合う立場として
   彼と向き合わなければいけないから」

さやか「そう、ですよね………」

真姫「さやかちゃんは、どう思ってるの?」

さやか「どう、って?」

真姫「彼、上条君の事」

さやか「どうって、恭介は幼馴染で………
    凄く、ヴァイオリンが上手で、
    あたしみたいに何も分からなくても感動しちゃうぐらい、それで………」クルクルクルクル

80 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/25 04:29:11.45 zbPKqJ7Y0 68/477


真姫「そう」フッ

真姫「彼の事を支えて欲しい、って言いたい所だけど、
   これも言ったらまずいんだよねー」

さやか「どうしてですか?」グッ

真姫「だって、子どもだもの。
   上条君の抱えている大変なもの、
   そこに、まだ他人の子どもを縛り付けるなんて事、
   医者として大人として出来る訳がない」

さやか「それは………」

真姫「ちょっと、意地悪だったわね。
   でも、そういうもの、それが正論、大人の責任なの。

   だから、色々思う事も、ぶつかる事もあるかも知れない。
   それでも、一人で背負い込もうなんて決して思わないで。
   それは私にも、大人にとっても重すぎる事だから、

   それでも、手分けして協力して助けになろう、
   そういう性質の、それだけ重くて、大事な事だから。

   彼の事を大事に思うなら、あなた自身の事を大事に思って。
   彼もそう、あんな事があっても、
   大事な幼馴染の事を思ってる筈だから」

さやか「………分かりました、有難うございます」ペコリ

真姫「………」フラリ

さやか「先生?」

ピアノ蓋「カタッ」

真姫「一曲、聴いていく?」

81 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/25 04:33:41.24 zbPKqJ7Y0 69/477


ーー路上ーー

さやか(………さっきの、ジャズだよね………
    歌も綺麗だったし、大人って感じだったなぁ。
    やっぱ、恭介の奴鼻の下伸ばして………)

ーー動画サイトーー

小さなライブハウス

選曲は先程真姫が弾き語った一曲

ーー真姫自宅ーー

PC「~♪~♪」

真姫「………」カンハイボール

真姫「………ホントはね、ちょーっと手強そうなのが近づいてるんだけど、
   個人情報だからねぇ………」コクッ

真姫「ま、それも青春の味、って奴だから。
   女子校が言っても説得力ないかなー………タハハ………
   ………だからさ………」クルクルッ

真姫「時が経っても、苦いのも甘酸っぱいのも大切な青春の思い出。
   だからさ。大丈夫。元気なさやかちゃんだから思い切って。
   翔べるよ、若人よ。翔べる」

84 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/29 01:48:45.93 LAogJPVa0 70/477

 ×     ×

ーー土曜日昼 病院廊下ーー

先輩医師「今上がりか?」

真姫「はい、お疲れ様です」

ーー病院内コンビニエンスストア周辺ーー

アハハハハ

オホホホホ

ウェヒヒヒヒ

真姫「あれっ」

さやか「あ、どうも」

まどか「こんにちは」

仁美「こんにちは先生」

真姫「こんにちは。
   いつかすれ違ったわね、上条君のお友達?」

仁美「はい。志筑仁美と申します」ペコリ

真姫「それはご丁寧に。
   改めまして西木野真姫、上条恭介君の主治医です」ペコリ

真姫「あなた達もお見舞いに?」

まどかさやか「はい」

仁美「それでは、わたくしはこれで」ペコリ

86 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/29 01:54:05.22 LAogJPVa0 71/477


スタスタ

真姫「お友達?」

さやか「はい。時間の都合で仁美が先に来てたんです。
    本当はもっと一緒にお見舞い来たがってたんですけど、
    お稽古事が忙しくてなかなか来られなくて」

真姫「そう、なんだ。お稽古事が。
   志筑さんって、もしかしてあの志筑さん」

さやか「うん。その志筑さんだと思う。
    お嬢様だから家が色々厳しいみたいで」

真姫「そう。やっぱりみんな同じ学校の?」

まどか「はい。私は途中から転校して来ましたけど、
    みんな小学校から同級生でお友達で」

真姫「そうなんだ。いい友達を持ったわね」

さやか「はい。仁美、凄くいい子なんです。
    まどかもねヨメニナルノダー」

まどか「ひゃっ、ウェヒヒヒ」

真姫「………」クショウ

真姫(気取らずに、それでいて解ってる。
   この年頃の特権のいいお友達、なのは最高にいいんだけど………
   だけど、これ、多分気づいてないなぁさやかちゃん。
   女の友情に男は鬼門だよ…タハハ…)

87 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/29 01:59:15.56 LAogJPVa0 72/477


ピンポンパンポーン

館内放送「第一病棟清掃手順
     ワックスがけは一方に圧縮圧縮でお願いします」

真姫「………」スマホスッスッ

さやか「じゃ、そろそろ………」

真姫「ごめん、さやかちゃんまどかちゃん」

さやか「えっ?」

真姫「ちょっと、病棟の方で予定入ったみたい。
   お見舞い又にしてくれるかな?」

ーー医局ーー

先輩医師「西木野先生、戻ったのか?」

テレビ「臨時ニュースをお送りします………」

真姫「何、このソドムとゴモラ………」ストン

先輩医師「コンビナートにヘリが落ちた。取り敢えず大爆発だな。
     周辺の幹線道路で大事故が続発してる。
     今、分かっている事は以上だ」

真姫「ヴェェ………
   だからあのコンビナートの立地おかしいってイミワカンナイ………」

部長「………ベッドを空けて………
   ………以上の者は入院患者を、
   他の者は救命部の指揮下に入れっ!!」

「「「はいっ!!!」」」

88 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/29 02:05:22.42 LAogJPVa0 73/477


ーー病院廊下ーー

カッカッカッカッ

先輩医師「まずいぞ」

真姫「はい」

先輩医師「あのエリア、××病院が一斉退職で九割方ダウン。
     しかも今日は土曜日、あそこが渋滞で埋まればあの辺は緊急出勤も難しい。
     ルートから言ってもここが主戦場。と言うか独壇場になるぞ」

真姫「独り舞台、ですか」

先輩医師「独り舞台、か」ニヤッ

真姫「………」

先輩医師「うちの救命もしばらくガタガタしてたからな。
     今は落ち着いてるが、まだ職人の寄せ集めに近い。
     こっからの修羅場にどれだけ機能出来るか。
     西木野先生は救命のヘルプも多い、腹くくれよ」

真姫「はいっ」

先輩医師「ソドムとゴモラ、か………
     真っ赤なルージュでも用意するか」

真姫「患者さんショック死させるつもりですか?」

ーーほむホームーー

テレビ「引き続き、臨時ニュースをお伝えします」

ほむら「………」ギリッ

ほむら「これは………一から組み直し………
    設置前だったのがせめてもの………」ホムッ

89 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/29 02:09:10.71 LAogJPVa0 74/477


ーー病院外来ロビーーー

イチニッサンイタイーハヤクーウウウーアアアー

「あだっ、あたたたたっ」

真姫「続きは後で」

「ちょっと先生痛いってこれっ」

「まだ死にそうにない、って事………」クテッ

「?………おいっ?」

真姫「失礼………
   意識レベル200清明期ありCT頭部優先!」

脳外科医「私がつこう、運んでくれ」

真姫「お願いします」

看護師「はいっ」

真姫「TO(トリアージ・オフィサー)どこっ? 追いついてないみたいだけど」

救命医「副部長、救護テントに行ったきりか?
    第二陣であっちにもこっちにも一挙に押し寄せて連絡が錯綜してやがる」

真姫「ヴェェ」

救命医「TOはうちからすぐ出させる。
    西木野先生はそれまで現場の判断で頼む。
    研修医っ、赤、黄色に当たる患者の応急処置。
    ガチガチに教科書通りの三十秒厳守、ばっさりやれっ!」

真姫「了解」クルクルクルクル

研修医「は、はいっ」

ヴェテラン救命医「私がここのTOにつこう」

救命看護師長「………さん、ここのTOを」

90 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/10/29 02:13:37.87 LAogJPVa0 75/477


ヴェテラン・師長「「ちょっと待って下さいっ!」」

ヴェテラン救命医「この中では私が、
         過去の大規模災害も経験している」

救命看護師長「だからこそ、先生には処置に専念していただいて」

ヴェテラン・師長「「部長はどこっ!?」」

看護師「緊急オペです。脳外の手が足りないと」

救命医「元はあっちのエースだからなぁ」

真姫「気道熱傷挿管入った、全身二度40%超」

看護師「運びますっ」

「先生、先生待って下さいっ!!」

「お願いします先生っ!」

真姫「お気の毒ですが」バッ

「先生っ!!」

真姫「多発外傷、気胸だけ緊急措置、頭蓋内出血の疑い」

救命医「分かった」

「お母さんっ、しっかりしてお母さんっ!!」

「お母様っ!!」

「母さんっ、母さん返事して母さんっ!!!」

96 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/11/27 22:31:51.19 ofBoYF8F0 76/477

ーー病院廊下長椅子ーーー

真姫「どいてっ! 矢澤さん、聞こえますか矢澤さんっ!」

にこママ「」

真姫「救急車でここにっ?」

こころ「ここあがケガをして、それで脇道に移動して
    親切な人の車でこの近くまで送ってもらったんです」

ここあ「私は応急処置で済んだんだけど、
    母が、先生を呼んで来るって言ったまま戻って来なくて………」

真姫「(記録メモ、左肩が外れて額の皮が切れただけ、処置済み、か。)
   お母さん、ずっとこんなだった?」

ここあ「どこか痛そうだったけど、病院まで来て話してたのに、
    ここで見つけて少ししたら返事もしなくなって………」

真姫「ニコちゃんはっ?」

こころ「お姉さま、地方のお仕事で、携帯も留守電で」

真姫「事務所は?」

虎太郎「事務所の事は、にこにーか母さんが………」

真姫「×××プロダクションに直接連絡して、
   危篤だからすぐに報せろってねっ!」

こころ「はいっ!」

97 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/11/27 22:37:14.12 ofBoYF8F0 77/477


虎太郎「あああ………俺が、調子乗って、
    温泉のプレゼントなんてそんな余計な事………」

真姫「な訳ないでしょっ! あんたらが信じないでどうするのっ!?
   矢澤さん、聞こえますか矢澤さんっ!
   ストレッチャーこっちにっ、
   多発外傷腹腔内、頭蓋内出血意識レベル300CT突っ込んで!」

看護師「はいっ!」

真姫(………私情じゃない私情じゃない
   正しい診断正しい診断間に合え間に合え………)

ーー処置室ーー

真姫「目一杯押し込んでっ!」

麻酔科医「やってるよっ」

ピーッ

真姫「開胸心マッ!」

研修医「はいっ!!」

真姫(間に合え間に合え間に合え)

研修医(戻れ戻れ戻れ)

ピッピッピッ

研修医「ふうっ」

真姫「オッケー………それで………」

看護師「カクカクシカジカ」

真姫「………オペ室運んで、頭は私がやる、お腹お願い」

研修医「ち、ちょっと待って下さいっ」

98 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/11/27 22:43:04.99 ofBoYF8F0 78/477


真姫「急性硬膜下血腫。
   恐らく現場でのダメージがごく最近破綻したわね、もちろん急を要する。
   お腹は一時的に大出血を止めただけ。
   出血も内蔵も即死級の爆弾が埋まってる」

研修医「西木野先生が脳外を? それに、僕も………」

真姫「このレベルならギリギリ知らないじゃないわ。
   それに、何度もやってるでしょ、ちょっとグレード上がってるけど」

研修医「ちょっとじゃないですよっ!」

真姫「人手も時間も圧倒的に足りない。
   秒速で死神が迫ってて、この症例にベスト、ベターな医師は手が離せない。
   動けるのは、普段なら無理って言いたいボーダーライン上の私達だけ………
   仰りたい事があるなら。もちろん責任は私が取ります。
   しかし、先生はオペの事も、私達のオペもずっと見て来た」

麻酔科医「お二人さんだとひっじょーに厳しいね。
     だけど、自分の見て来た限り無理、と断言はしないよ」

真姫「私は君も含めて見込みがある、と思うから言ってるけど、
   特に今の医者の常識なら手を引いても決して恥じゃない、蛮勇スレスレなのも認める。
   ここでやるか黒タグ置くか今すぐ決めて」

ーー手術室ーー

真姫「汗を」

看護師「はい」

真姫(止血、開頭、脳圧下げて………)

研修医(血みどろ)「止ま、ってない。まだある………」

真姫(進行が早い、傷を付けたら元も子もない。
   やっぱり私の手技は、焦るな急げ焦るな焦るな焦るな急げ………)

99 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/11/27 22:48:36.01 ofBoYF8F0 79/477


ガー

救命部長「代わろう。西木野先生は助手を」

真姫「はい」

ーーーーーーーーーー

救命部長「今はこれで保たせる。後は俺が」

真姫「はい。ちょっとどけて」

研修医「はい」

真姫「止血は間に合った。この条件で丁寧な仕事GJ。
   これ、迷ってたみたいだけど、切るしかないわね」

研修医「しかし、まだ駄目とは、
    ここまでの体力低下の上に大幅な機能低下、
   QOLから言っても………」

真姫「気持ちは分かるけど、残りの体力、頭の方も厳しい、
   残存部分が綺麗に機能したら万々歳だけど、私の勘では分の悪い賭け、
   回復過程で戦争が始まったら耐えるのは難しい、一挙に悪化すると思った方がいい。
   生存優先、ゆっくり確実にやるしかない、選択肢は限られてる」

研修医「分かりました」

ーー病院廊下ーー

事務長「西木野先生っ!
    専門外で無茶な事を………」

救命部長「あの条件での救命のために、
     先生の判断、措置共に十分及第点のものだったが」

100 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/11/27 22:52:35.96 ofBoYF8F0 80/477


 ×     ×

ーー病院廊下ーー

ハアッハアッ

にこ「真姫ちゃんっ、ママは?」

真姫「………ベストは尽くした。
   だけど厳しい」

にこ「………そう………」

真姫「………」

にこ「あんたがそう言うんならそうなんでしょ。
   ………大丈夫よ、こんなの、慣れ、てるから……
   ………にっ…こ………にっ、………にっ、くっ、こ………」

真姫「………」ポン

ガタッ

マスゴミ「矢澤さんっ!」

マスゴミ「矢澤さんっ、お母さんが事故に巻き込まれたって」

マスゴミ「お母さん、お加減いかがですかっ!?」

真姫「関係者以外立入禁止です、出て下さい」

マスゴミ「矢澤さんっ!」

マスゴミ「一言お願いします!!」

真姫「………さい………」

真姫「………ルサイ………
   出てけっつってんのっ! 空気読め意味分かんないっ!!!」ダッダッダッ

101 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/11/27 22:56:23.80 ofBoYF8F0 81/477


スイッ

事務長「あー、すいませんねー」

真姫「………トトッ」

事務長「何せ、事故発生以来不眠不休の対応で、
    先生方も気が立っておりましてはい。
    報道の方々はどうぞあちらに」

マスゴミ「すいません、せめて一言だけでも………」

事務長「………この非常時に治療妨害したって晒すぞゴラ………」ボソッ

事務長「はい、どうぞあちらでお願いしまーすっ」

救命部長「ご家族の方ですね。後程お話が………」

ーー応接室ーー

救命部長「お母様は、緊急手術を終えて集中治療室に入ってもらっています。
     率直に言って辛うじて即死を免れた、
     様々なダメージ、機能低下が発生している状態です。
     無論、全力を尽くしますが、ここ数日は、何時、何が起きても、と、
     ご家族の方にはそう理解していただきたいと」

にこ「………」

救命部長「生命の危機を脱した時、
     内臓の機能低下に加えて、硬膜下血腫という病気は………
     脳本体への圧迫もどれだけの影響を及ぼすかと言う状態です」

にこ「障害、って事ですか?」

救命部長「手は尽くしますが、心づもりはしていて下さい」

真姫「………」

にこ「はい………ありがとう、ございました」ガバッ

救命部長「全力を尽くします」

103 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/11/27 22:59:36.65 ofBoYF8F0 82/477


ーー病院廊下ーー

カッカッカッカッ

真姫「すいません、私の力不足で」

救命部長「医者は神ではない。
     俺はさっきの先生への評価を変えるつもりは毛頭無い。
     それとも、俺の事を侮辱するつもりか?」

真姫「すいません、決してそんなつもりは………」

救命部長「………フッ………」ポンッ

ーー外科医局ーー

先輩医師「おお、お帰り」

真姫「戻りました」

山積みの臨時カルテ確認

台車を押す看護師を従え、

外科病棟に運ばれた主に骨折患者の対応

 ×     ×

ーー集中治療室周辺ーー

真姫「………」フラッ

パラララッパラララッパラララッ

バタバタバタッ

真姫「急変っ!?」

看護師「はいっ」

真姫「………」バッ

104 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/11/27 23:02:57.68 ofBoYF8F0 83/477


ガシッ

救命部長「あの患者はうちで受けて病棟に引き渡す。
     西木野先生はもう帰れ、上からもそう指示されてる筈だ」

真姫「あの………しかし………」

救命部長「明日も明後日もその後も患者は待っている。
     自己メンテナンスは義務だ。医者なら使命を果たせ」

真姫「分かりました、お願いします」ペコリ

救命部長「ああ」

クルッ、カッカッカッ

救命部長(とは言え………合併症対策………
     この弱り方で特効薬なんか打ったら紙一重で即死、
     結局、本人の気力体力、紙一重の上で踊るしかないって事かっ)

ーー駐車場ーー

真姫「………」ウデドケイ

105 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/11/27 23:06:20.67 ofBoYF8F0 84/477


 ×     ×

ーー境内ーー

海未「もう一度………」

花陽「もう十分伝わったよっ!!」

海未「もう一度ですっ!!」

「これ以上かぶったら海未ちゃんが倒れちゃうよっ!!」

ーー木陰ーー

真姫「………」

「………」ポンッ

「凛ちゃんがね、ニコっちの仕事先に顔出してて、
  そこで一緒に報せを受けたって」

真姫「そう、だったんだ」

「うん。それで、病院でも一緒に待ってたんだけど、
  途中で抜けられない仕事が入ったとかで、
  それで凛ちゃんだけこっちに戻って来て。
  ニコっちがそうさせたみたいやね」

真姫「そう………」

「今日は帰り。今、あの娘達に捕まったら大変や」

真姫「そう、ね」

106 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/11/27 23:09:27.60 ofBoYF8F0 85/477


絵里「車の鍵」テノヒラ

真姫「え?」

絵里「凄い顔してるわよ、
   よくここまで生きて辿り着いたわね」

スタスタ

「さぁあ、甘酒作ったから」

ーー車内ーー

絵里「………」ヴォォォォォ

真姫「ZZZ………」

絵里「お疲れ様」

108 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/12/04 00:30:35.63 2fHY1nrc0 86/477


 ×     ×

ーー病院廊下ーー

看護師「おはようございます」

真姫「おはよう」

ーー恭介病室ーー

真姫「昨日はバタバタしてたでしょう。ここのスペースも借りたけど」

恭介「大事故だったって聞いています。
   怪我人が大勢運ばれて来たって」

真姫「そうね。まだ色々大変だけど、
   ここは大体今まで通りになるから」

恭介「そうですか。リハビリも再開したいですし」

真姫「そうね。只、そういう状況だから、
   そちらは当分込み合う事が増えるかも知れないわね」

恭介「そうですか………」

真姫「ん?」

恭介「いえ、昨日の事なんか聞いても亡くなった人もいたって」

真姫「ええ、何人も」

恭介「そうですか………少し、休みます」

真姫「ん」

109 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/12/04 00:36:25.21 2fHY1nrc0 87/477


ーー診察室ーー

真姫「骨折ですね」

真姫「骨折ですね」

真姫「骨折ですね」

真姫「骨折ですね」

真姫「骨折ですね」

真姫「骨折ですね」

真姫「骨折ですね」

真姫「骨折ですね」

ーー病院内食堂ーー

真姫「ええ、千客万来ですけどそれ程ひどいケースは」

先輩医師「それは、昨日の内に対処したからな。
     昨日、命に別状はないって言われた患者が改めて来てるんだな」

真姫「はい。当然昨日今日の処置は行っていますが、
   本格的な通院治療はここからの人達が………」

先輩医師「ん?」

真姫「(院内PHS………)
   もしもし? ええ、はい、大丈夫です。分かりました」

先輩医師「ヘルプか?」

真姫「はい」

110 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/12/04 00:41:57.13 2fHY1nrc0 88/477


ーー救命部医局ーー

真姫「みんな、出払ってるって事ね」

看護師A「はい。現場から自己判断で帰宅して重症化した人が今朝から何人も」

真姫(ヴェェ………)

看護師B「来ました」

真姫「オッケー」

ーー救命病棟廊下ーー

ガラガラガラガラ

看護師「分かりますかー? 病院ですよー」

患者「………」

真姫「(この人って………)こちらの患者さん、昨日の事故に?」

詢子「(この人って………)ええ、昨日営業中にバスで事故に巻き込まれたって。
   潰れたバスからやっと脱出してそのまま営業先に向かったって言うから
   病院行けって言っておいたんですが、今日聞いたらまだだと」

真姫「それから倒れて?」

詢子「ええ、それまでは大丈夫だって言ってたんですけど、
   色々急ぎの仕事もあったから………申し訳ない」

真姫「(検査結果)………
   硬膜外とクラッシュの併発。やっぱり………
   脳外と泌尿器科に話通して」

看護師「分かりました」

真姫「人工透析の準備。
   処置室に運んで、小開頭と薬剤で時間稼ぐしかないわね」

看護師「はい」

111 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/12/04 00:48:14.09 2fHY1nrc0 89/477


ーー病院内廊下ーー

真姫「後は専門医による対応になります。
   入院治療は必要ですが、今の所命に別状はありません」

詢子「そうですか」

真姫「脳の硬膜外血腫は深刻化する前に除去に成功しました。
   人工透析も間に合いましたので、
   幾つか発生したダメージの治療は進めますが、十分回復が見込める範囲です」

詢子「本当に、有難うございました」ペコリ

スタスタスタ

真姫「………ふぅーっ………」ドサッ

真姫「………」

ーー集中治療室ーー

にこママ「………」

真姫「………」

看護師「今は落ち着いています。夜の内に一つ二つ山はありましたが」

真姫「今は、ね」

看護師「はい。まだ先が見えない状況には変わりありません」

112 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/12/04 00:53:29.00 2fHY1nrc0 90/477


ーー救命病棟一室ーー

救命医「なんとか、最初の合併症をギリギリ乗り切った、って所かな。
    検査結果はこの通りだが………」

真姫「厳しいですね」

救命医「ああ。内蔵機能があれだけ低下して、それに合わせて免疫力も落ちてる。
    感染症と薬剤、どちらも致命的に危険な状態の綱渡りだ。
    その上、硬膜下血腫の併発も痛い」

真姫「やはり、後遺症が………」

救命医「総合的にな………
    手術自体は成功の内に入る内容だったが、
    元々が予後の良くない疾患。全身状態が厳しい。
    脳本体のダメージの上に、身動き取れない状態の衰弱、機能低下。
    この状態が続いたら」

真姫「………」

救命医「悪循環になる。そうなったらな………」

真姫「その事をニ………ご家族には」

救命医「上の娘さんに話したところだ。
    ニコニー、か………」

真姫「彼女はこちらに?」

救命医「西木野先生と入れ違いぐらいだったかな?」

ーー病院廊下ーー

真姫「あ、ニ………」

にこ(廊下の隅、携帯使用)
   「はい、すいません。
   お返事はすぐに。
   はい、それはきちんとお話しを、はい………」

真姫「………」スタスタ

113 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/12/04 00:56:50.12 2fHY1nrc0 91/477


 ×     ×

ーーBARーー

バーテンダー「いらっしゃいませ」

真姫「一杯、貰おうかしら。んー………」

バーテンダー「………」

真姫「それじゃあ………
   ………ラム、こあんとろお、
   レモンジュースを少しょお、シェイクするんです………」

バーテンダー「かしこまりました」

ーー夜の歩道ーー

真姫「ふーっ………」

トトッ、トッ、

真姫「とっ、ととっ。
   やっぱ、鈍ってるなぁ………
   最初は一曲踊るのも一杯いっぱいで………ん? ………」

ゾロゾロゾロゾロ

真姫「(ちょっと遠いけど)何かの行列?
   ………あのふわふわって………仁美ちゃん?………」

115 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/12/09 01:45:54.26 n+E6XPMX0 92/477

ーー夜・集中治療室ーー

ピピーンピピーンピピーン

救命部長「………」グッグッ

にこママ「………」

救命部長「………戻って来い………」グッグッ

ーー同日夕方・救命病棟廊下ーー

コッコッコッ

真姫「………」

事務長「西木野先生」

ーー救命病棟一室ーー

事務長「矢澤さんの事ですが」

真姫「はい」

事務長「先生と矢澤にこさんの関係は今更ですが、
    そのにこさんのお母さんとはどの程度のお知り合いでしたか?」

真姫「そうですね………直接の関係は親しい、と言うほどでは。
   友人の母親として知らない事もない、
   言葉を交わした事はある、と言う程度で」

事務長「そう、ですか。
    あの様な状況で、知人の治療を行ったと言う事になりますと、
    特に知名度もある事ですから、その状況を………」

116 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/12/09 01:51:17.04 n+E6XPMX0 93/477


ガチャッ
ザッザッザッ

救命部長(赤い彩り)「事務長、あの時現場の医師は救命部の指揮下にあった。
     つまり、救命部の業務であり俺の部下だった。
     その事をお忘れでしたか?」

事務長「いえ、只、先生はオペ続きですぐに時間が取れませんでしたので、
    先に伺える所を優先しただけの事でして」

救命部長「あの時、西木野先生の力量を信じて現場裁量を認めたのは救命部の責任だ。
     そして、現場の混乱でTOに空白が生じた。
     その結果、西木野先生含め本来処置に専念すべきだった応援医師が、
     その前段階の診断に貴重な時間と神経を費やす事となった。
     これも、救命部の責任であり落ち度だ」

真姫「………」

救命部長「その中で、西木野先生の対処は十分なものだった。
     何度でも言う、あの時の西木野先生の判断、対応は
     あの時点に於ける一人の医師として十分に妥当なものだったと。
     何かあると言うのなら、俺が救命医のプライドに懸けてどこででも証言する」

事務長「分かりました。それではこちらも腹をくくりましょう。
    救命部として医学的に妥当だったと言うのであれば、
    事務方としては当然それを支持します」

ガタッ

真姫「………」イチレイ

ーー夜・集中治療室ーー

ピピーンピピーンピピーン

救命部長「………戻って来い………」グッグッ

にこママ「………」

救命部長「………戻って来い、あんたには待っている人がいる、
     只、目の前の命に渾身の誠意を注いだ………」グッグッ

117 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/12/09 01:56:41.02 n+E6XPMX0 94/477


ピピッピピッピピッ

看護師「戻りましたっ」

救命部長「………矢澤にこさんに連絡を、出来れば至急こちらに。
    ………投与する………」

看護師「踏み切る、んですね」

救命部長「ああ、ここまで炎症が進んだ以上、
     ここで投与しなければ多少時間がかかっても結論は一つだ。
     ………時までに連絡が取れないなら、俺の判断で実行する。
     西木野先生にも一報入れておけ、事によっては説得を頼む」

看護師「分かりました」

 ×     ×

ーー夜・廃工場ーー

社長「俺は駄目なんだ…
   こんな小さな町工場一つ、満足に切り盛りできなかった。
   今の時代に俺の居場所なんて、あるわけねぇんだ…」

ゴトッ

まどか「だめえぇーっ!!!」

バッシャーンッ

まどか「はぁ、はぁ………」

仁美「なんという事を………」

コロセコロセコロセ
ワラワラワラワラ

まどか「ひっ!?」

118 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/12/09 02:01:58.25 n+E6XPMX0 95/477


ドガシャーンッ

「まどかちゃんこっちっ!!」

まどか「は、はいっ!!」

タタタッ

集団「オオオオオオオ」ワラワラワラワラ

防犯スプレー「ブシュウウウッ」

集団「ぐああっ!!!」

真姫「まどかちゃんこっちにっ!!」

まどか「はいっ!!」

ワラワラワラワラ

真姫「まどかちゃんでかしたっ!!
   (塩素臭にあのラベル、ガチで集団自殺?
   目がイッちゃってるし集団催眠か何か? あるいは薬物………)」

まどか「はぁ、はぁ………」コクッ

真姫「なんなのよ、これ………」

まどか「………」フルフル

真姫「ちょっと、仁美ちゃんこんな所で何………
   だから来るなっ! イミワカンナイッ!!」カバンブンブンッ

119 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/12/09 02:05:10.49 n+E6XPMX0 96/477


防犯スプレー「ブシュッ」

真姫「走ってっ!」

まどか「はあ、はあっ」

集団「(しかし、回り込んでしまった)」

真姫「くっ」

スマホ「圏外」

真姫「ヴェェッ、なんなのよ、もおっ………」

仁美「まどかさん、先生、いけませんわ邪魔をしては。
   さあ、みなさんで神聖な儀式を………」グイッ

真姫「………」キッ

真姫「しっかりしなさいっ!!!」パンパァーンッ

真姫(つぅーっ、自分に響くわ海未)

まどか「きゃあっ」

真姫「ちょっと、離しなさい、つっ!?」

集団「………」ガシッ

集団「………」グイッグイッ

集団「!?………」ドッゴォーンッ

まどか真姫「!?」

120 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/12/09 02:08:23.30 n+E6XPMX0 97/477


仁美「あなたたち………」ドオッ

真姫(交わして回転して当身)

仁美「わたくしの………」ヒュウッ

真姫(交わして掌底で一撃)

仁美「大切なお友達と………」スパーンッ

真姫(合気道一本)

仁美「大切な先生に………」ババンッ

真姫(ローからハイ)

仁美「一体何を………」ドゴオッ

真姫(突っ込んでそのまま鳩尾に肘)

仁美「なさっておいでですの?」ズガァーンッ

真姫(あー、昔みんなでやったなス○リー○○ァイ○ーⅡ)

122 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/12/09 02:11:58.60 n+E6XPMX0 98/477


仁美「はあ、はあっ、ご無事でしたか?」

まどか「仁美ちゃんっ」

真姫「まあねっ、って言うか、何なのよこれっ!?」

仁美「………そういえば、わたくしどうしてこんな所に?」

真姫「だからそれを聞いて!? ………ヤバイ?」

ワラワラワラワラ

真姫「ヴェェ(なんか、痛覚も鈍ってそうね)………
   走ってっ!!」

まどか仁美「「はいっ!」」

ダッダッダッ

真姫(まずい………又回り込まれる………
   出入り口のルートが………)

真姫「仁美ちゃん」

仁美「はい」

真姫「お嬢様にお願いするの悪いんだけど、三分ほど稼げるかな?」

仁美「淑女の嗜みですわ。
   それに、大切なお友達と先生のためなら」コオオオオオオオオ

123 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/12/09 02:15:06.88 n+E6XPMX0 99/477


真姫「オッケーッ! まどかちゃんっ」

まどか「は、はいっ!」

真姫「私の肩に乗ってあの窓から逃げて」

まどか「えっ、えっ?」

真姫「あの高さじゃ全員は無理。
   まどかちゃんだけでも脱出して、えーっと、110番っ!!」

まどか「け、警察?」

真姫「そう。廃工場で大勢の人が暴れててケガ人が出てる、
   見滝原市立病院の西木野真姫先生と志筑のお屋敷の志筑仁美さんが襲われてるって!!
   携帯でも繋がればいいけど、出来ればどこかの家とかお店とか事務所とか、
   固定電話の方が場所とかすぐに分かるから、
   灯かりが見えたらなりふり構わず助けてもらってっ!!」

まどか「先生はっ!?」

真姫「こっちはこっちでなんとかする。
   全員でバタバタするよりこれが一番助かる率が高いの。
   さあ、乗ってっ!!」

127 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/12/13 01:26:52.97 vJIXyETm0 100/477

ーーーーーーーー

ドコッバキッボコッガスッ
ザザッガタッ

仁美「ふぅーっ………」

真姫「まどかちゃんは多分脱出成功。逃げるわよっ」

仁美「はいっ」

集団「………」ワラワラワラワラ

ーー廃工場中二階行き階段ーー

真姫「はあ、はあっ、ヴェェ………(体、鈍ってるなぁ)………」

仁美「はあ、はあっ………!?」バキッ

真姫「!?(階段上り切る寸前で、掴んだ鉄柵が腐ってっ!?)」

仁美「きゃあああっ!!!」ガシャーンッ

真姫「仁美ちゃんっ!!(反対側の鉄柵に激突やばっ!)」

仁美「うっ、くっ………」

真姫「下から来るっ!!」

仁美「は、はいっ」クラッ

128 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/12/13 01:32:37.94 vJIXyETm0 101/477


ーー路上ーー

さやか「?」

まどか「はぁ、はあっ」タッタッタッ

さやか「おーいっ!」

まどか「さやかちゃん?」タタッ

さやか「どうしたの? 何かヤバそう?」

まどか「うんっ! 魔女の口づけが………」

さやか「!?」

まどか「大勢の、魔女の口づけが、仁美ちゃんと、
    それに助けに来た西木野先生がっ!!」

さやか「な、っ………とにかく、マミさんにっ!」

まどか「携帯、つながる?」

さやか「え? うん大丈夫」スッスッ

ーーマミルーム浴室ーー

マミ「ー♪ー♪ー」

ーーマミルームリビングーー

スマホ「チャーチャララーチャーチャチャチャー♪」

マミ「もしもし?」

まどか「もしもしっ!!」

マミ「もしもし………うん、ちょっと落ち着いて説明してくれる?」

まどか「は、はい、カクカクシカジカ」

129 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/12/13 01:37:45.88 vJIXyETm0 102/477


マミ「分かった。ちょっと、厄介ね。
   私もそっちに向かうけど、
   鹿目さん達は、言われた通りそのまま警察に連絡して」

さやか「いいんですか?」

マミ「正気の大人が絡んでるんじゃごまかし様がないわ、
   むしろ鹿目さんが怪しまれる。
   鹿目さん、聞いてる?」

まどか「はい」

マミ「鹿目さんは、西木野先生の言う通り、
   110番して警察が来るのを待ってて。
   警察には、お友達の志筑さんに付いて行ったらおかしな事件に巻き込まれたって、
   本当の事を話せばいいから。
   鹿目さんは嘘はつけないし嘘をつく必要もないわ、
   魔法少女や魔女の事を話さなければいいだけ、向こうだって聞いて来ないでしょうし」

QB「………」

さやか「それで、大丈夫なんですか?」

マミ「鹿目さんが逃げた時点で死者は出てない。
   警官隊が大挙したら、大抵の魔女はその場からは逃げ出すと思う。
   間に合う事を祈って人命優先で行くしかないわ」

まどか「分かりました」ツーツー

マミ「………」パチン
クルクルッ

130 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/12/13 01:43:15.34 vJIXyETm0 103/477


ーー路上ーー

さやか「まどか、じゃあ、ここから警察に電話して待ってて」

まどか「さやかちゃんは?」

さやか「様子見て来る、出来れば二人だけでも逃がして」

まどか「!? 危ないよっ!!
    魔女の口づけをつけた大人の人が一杯襲い掛かって来て、
    それに魔女が………」

さやか「だーいじょうぶ、危ない事はしないよ。
    警察とか魔法少女とか鉢合わせする前になんとかしないと色々ヤバイじゃん。
    様子だけでも見とかないとさ。
    それだけだって、そんな、魔女とかあたしじゃどうにもできないもん」

まどか「じゃあ、私も」

さやか「まどかは警察来るの待ってて。
    西木野先生の話と、色々ややこしい事になるし」

まどか「うん………気を付けてさやかちゃんっ」

さやか「うんっ」

131 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/12/13 01:46:19.48 vJIXyETm0 104/477


ーー廃工場中二階ーー

仁美「うっ、つっ………」

真姫「大丈夫っ!?」

仁美「ええ、だいじょう、ぶですわ」

真姫(って、間違いなく頭打ってる)

スマホ「圏外」

真姫「ああもうっ!」

仁美「来ますわっ!」

真姫「うんっ!」ガラガラッ

真姫(上に追い込まれてオイル缶のゴミ箱階段に転がして、焼石に水にも程がある。
   せめて非常階段探したかったけど………)

ーー廃工場中二階一室ーー

真姫「事務室かなんかかな?
   仁美ちゃん、ケガ診せて………」

仁美「ん、っ………」

真姫「仁美ちゃん?」

仁美「た、まが………」

真姫「ちょっと、っ」

仁美「頭、が」アタマカカエ

真姫「仁美ちゃん? 頭痛いのっ?
   どんな風? 割れそうに痛いっ!?」

仁美「だい、じょ、ううっ、じゃない、ですわねハァハァ。
   はい、痛い、割れそうに、あいたいっ!!!」

132 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/12/13 01:49:36.02 vJIXyETm0 105/477


真姫(多分、我慢強いお嬢様。ひどい脂汗。
   まさか、外傷性蜘蛛膜下?)

スマホ「圏外」

真姫「少し、ここに隠れてて
   (ごめんね、私じゃ守れない。せめて海未なら………)」

仁美「はい………懐かしい、ですわ………」

真姫「はっ?」

仁美「昔………子どもの頃………お稽古事ばかりで………
   僅かな時間、さやかさんとまどかさんと………
   さやかさん、こうやって、街の中を冒険したりかくれんぼしたり………
   お洋服を汚したりいつの間にかとんでもない所まで来てて叱られて、でも………
   本当に、楽しい………お友達………」

真姫「うん、うん。分かったからさ、
   後で、その厚い友情の物語はゆぅーっくり聞かせてもらうから
   変な旗立ちそうな発言はその辺にしてね。
   大体、かくれんぼなら見つかったら意味ないし」

仁美「………」クスッ

仁美「そう………ですわ、ね………ウウッ」

真姫「それに………」

仁美「はい」

真姫「そろそろ、友情の他に、もう一つ大事な青春、
   狙ってんじゃないの?」

仁美「………うふふふっ………」

真姫「気をしっかり持って、休みたかったら休んでいいから、
   助けが来るまで、静かに待ってて。すぐに助けが来るから」

仁美「分かり、ましたわ。
   今度は、負けません、わよ………」

133 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/12/13 01:53:05.07 vJIXyETm0 106/477


ロッカー「ギィィ、カチッ」

バリケードドア「オオオオオ………」ガタガタッ

真姫「さて、どうするか………」

真姫「………」スマホスッスッ

真姫(窓から身を乗り出して、目一杯、ここで通話タッチ………)

真姫(三十秒待った)

真姫「駄目、かぁ………繋がった形跡なし」

真姫(せめて一度でも110番が繋がったら、
   基地局と契約者から捜索してくれると思ったけど)

真姫「街中なのに、妨害電波でも流してんのここ?」

真姫(もういっぺん窓から外………)

真姫「もしかして、ここから………」

ーー廃工場中二階一室その2ーー

「よっ、とおおっ」

ドタアンッ

真姫「つーっ、辛うじて(壁伝いに隣の部屋に)移動できたけど、
   二度は無理だわこれ」

真姫「に、しても、真っ暗ね」キョロキョロ

スマホ「微光」

真姫「只の空き部屋、か。
   古いテレビはあるけど、ネットとかは全然、
   スマホは圏外イミワカンナイ………」

134 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/12/13 01:56:16.54 vJIXyETm0 107/477


真姫「に、しても………
   流石に、疲れた。あー、これニサンチ筋肉痛きついなぁ………
   歳だわぁ………」ペタン

真姫「って、やってる場合じゃないん、だけど………
   おとなしくまどかちゃんの通報を待つ、か………
   でも、くも膜下出血なら一刻を、争う………」ヨイショ

真姫「とととっ………はっ?」

真姫(何、これ? 壁じゃないの?
   壁の筈がなんか私の体が落ちてるって言うかイミワカンナイ………)

ーー廃工場周辺ーー

さやか(なんか、正面から行ったらヤバそうなんだよね)

さやか(あの、二階の窓開いてるんだけど………)

さやか(………いい感じに色々あって、あそこまで登れそう)ヨット

ーー廃工場中二階一室ーー

ストン

さやか「よっと、無事とうちゃーっくっ………」

さやか「何これ? ドアに中からバリケード?」

さやか「………って事は、ここに誰かいる?
    それとも窓から脱出済み? だったらいいんだけど………」

さやか「………」

ロッカー「ガチャッ」

さやか「!?」

135 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/12/13 01:59:48.91 vJIXyETm0 108/477


ーーハコの魔女結界内ーー

真姫「何、これ? イミワカンナイッ!!」

真姫「落ち着いて、これってもしかして今回の騒動の?」

真姫(どこかで、知らない間に薬でも飲まされたか嗅がされたか)

真姫「ここ、は? 落ち着、いて………何、これ? ………」

………ほの………

真姫「………ん………なさい………」

………か………き………

真姫「ごめんなさい………
   私がもっと………強く反対していれば………
   専門医の道を徹底していれば………」

………ほし………はな………に………こ………

真姫「………ニコ、ちゃん………あんなに………ボロボロになって………
   ………夢も諦めて………」

真姫「………第三者の医師のTOなら、違ってたのかな………
   ………もしかしたら、何人も急患飛ばしたかも知れない………
   ………医者の………私の、エゴだった? ………」

真姫「………ちゃん……ごめん………
   ………助けて………あげられない………」

136 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/12/13 02:03:05.46 vJIXyETm0 109/477


ーー廃工場中二階一室ーー

ゴトンッ

さやか「ひっ!? 仁美っ!?」

仁美「………」

さやか「(とにかく、倒れない様に支えて)
    仁美? どうしたの仁美っ?
    ………これって………」

さやか(腕にメモ、テープでぐるぐる巻き)

さやか「患者氏名志筑仁美シヅキヒトミ
    衝突事故後に強い頭痛の訴え
    くも膜下出血、低髄液圧症候群等の疑い
    至急救急搬送の上精密検査
    見滝原市立病院 Dr.西木野真姫っ!?」

さやか「!!」バッ

スマホ「圏外」

さやか「仁美? しっかりして仁美っ?
    ねぇ仁美、目、開けてっ………」

仁美「………あら………」

さやか「ホッ………仁美………」

仁美「さやかさん、ですわね………」

さやか「うん。良かった。大丈夫?」

仁美「見つかって、しまいましたわね………」

さやか「え?」

仁美「さやかさん、いつも、簡単に見つけて、しまいますわね………
   わたくしが、鬼になると、
   いつもとんでもない所に隠れてしまいますのに………」

137 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/12/13 02:06:22.34 vJIXyETm0 110/477


さやか「え? 仁美? 仁美?」

仁美「うふふふふっ、今度は、負けません、わよ………!?」

さやか「仁美っ!? どうしたの仁美っ!?」

仁美「頭、がっ、頭っ………」

さやか「痛むの? 頭痛いの仁美っ!?」

仁美「ウウウウウウウウウ………」

ーーハコの魔女結界内ーー

真姫「うん、そうだよ、そうだったんだ………
   そうなの、見てくれなかったのどうでもよかったの
   お勉強以外どうでも良かったの………」ウツラウツラ

………ことり………うみ………

オネガイシマスオネガイシマス

真姫「ありがとう………海未………みんな………」

ニッコニッコニー
ノゾミ
ミュゥゥゥゥゥゥゥゥゥズ………

真姫「………」クスクスッ

真姫「………摩天楼………綺麗………」スクッ

タンタカタッタッタンタカタッタッ

真姫「………hello………」タンタカタンタカタンタカ

ストンッ

真姫「………」ニコオッ

138 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/12/13 02:09:33.41 vJIXyETm0 111/477


ワタシタチハヒトツワタシタチハヒトツ

真姫「ああ、凄かったなぁ………楽しかった………」

ピーピーワーワーキャッキャッウフフフッアハハハハッ

真姫「そうだった………すっごく、楽しくて………
   辛い事も苦しい事も、
   もちろん楽しい事もキラキラ輝いて………
   ………最高の………
   もう、とっくに………終わってたんだ………」

ーー廃工場中二階一室ーー

仁美「………」クテッ

さやか「あ、ああ………仁美? ねえ仁美?
    やだなー、ちょっとサプライズとかってさぁ………
    さっすがお嬢様、ジョークのポイントがズレてるって言うか………
    仁美っ! 目、開けてよ仁美っ!!」

バリケードドア「ガンッ、ガアンッ」

さやか「仁美………仁美いっ!!
    キュゥべえええぇぇぇぇぇぇっっっっっっっっっ!!!!!!!」

140 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/12/26 22:31:43.68 RodqbJEJ0 112/477

ーーハコの魔女結界内ーー

マキモドシテ

真姫「………!?」バッ

スマホ「圏外 着信 希」

ーー絵里自宅リビングーー

「………」スッスッ

絵里「どうしたの?」

「んー、ちょっと念を送ってただけ」

絵里「スマホに?」

(大丈夫やね)

タロット「悪魔・逆位置」

ーーハコの魔女結界内ーー

真姫「やる事は、一杯ある」

真姫「友達として、仲間として、
   ニコちゃんの側に、私が、そうしたいから」

真姫「あの子のご両親に、最期の主治医として、伝えなければいけない事がある」

真姫「上条君にも、まだ、やるべき事伝えるべき事が、残ってる。
   あの周辺、ちょっとばかし、女の先輩気取った方が、いいかも
   明日も、明後日も、患者さんが、みんなが………」

142 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/12/26 22:39:00.10 RodqbJEJ0 113/477


真姫「私一人じゃ、何もできない。
   いるべき者が欠けたら、舞台は成り立たない。
   そんな一人一人が………」

真姫「翔び立たせてくれた、大切な思い出。
   だから、溺れてる暇、なんてないっ!!」

真姫(改めて、この、サイケな状況。
   私は正気? 意識は確か? 明晰夢? 視覚効果? ………)

キイイイイインンンンンッッッッッ

真姫「つ、っ………」

真姫(何、これ? 超音波? やば………ヴェェ………)

真姫「意味、ワカンナ………」クテッ

さやか☆マギカ「だらっしゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっっ!!!!!」

ーー会社・小会議室ーー

役員「受診の指示は出していたんだね」

詢子「はい」

役員「労災申請は避けられない。
   労基署も関わる事だ、弁護士の先生とも相談して準備を進めてくれ」

詢子「分かりました」

役員「診断結果が不幸中の幸いのレベルで済んだのは良かったよ」

143 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/12/26 22:44:08.00 RodqbJEJ0 114/477


ーー会社・廊下ーー

コッコッコッ

詢子「………」

ヴーヴー

詢子(メール?)

詢子「………!?」キョロキョロ

詢子「もしもし、事故、警察ってどういう事だっ!?」

ーー病室ーー

真姫「つっ………」

先輩医師「気が付いたか?」

真姫「ここ、は?」

先輩医師「西木野先生の仕事場」

真姫「ああ、病院、患者は私」

先輩医師「そういう事だ。廃工場で意識を失っている所を発見されて救急搬送されて来た。
     まあ、患者の身元が身元って事でうちの病棟で引き取らせてもらったがな。
     救急搬送の前に、警察の方から先生の事を名指しで問い合わせてきた。
     ぼちぼち夜勤上がりってタイミングで一仕事だ」

真姫「すいません。それで、状況は?」

先輩医師「廃工場で訳の分からない事件が起きてるって警察と消防に連絡が入って、
     西木野先生含め十数人が意識を失った状態で発見されたって事で、
     主にうちの病院に救急搬送されてきた」

144 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/12/26 22:50:34.86 RodqbJEJ0 115/477


真姫「診断結果は?」

先輩医師「それが………全員、それと言った異常は見つからない」

真姫「薬物は?」

先輩医師「西木野先生から運転禁止程度のアルコールが出たぐらいで、
     分かっている限り尿検査や血液検査の結果はネガティブだ。
     一体何があった?」

真姫「それは………仁美ちゃんはっ!? 異常なしって!?」

先輩医師「志筑仁美か。確かに現場で発見された。
     先生のメモがあったからな、
     救命でも精密検査を行ったが一通りの所見は異常なしだ」

真姫「異常なし、って………」

先輩医師「蜘蛛膜下出血初め思い当たる検査は一通り行ったが該当する所見は出なかった。
     脳脊髄液減少症を前提とした検査もネガティブ、
     搬送後は患者自身も頭痛を否定していて起立性の頭痛も出ていない」

真姫「良かった………」

先輩医師「工場で強い頭痛を覚えた事は本人も証言している。
    心因性か急激か運動か何かによる一過性の頭痛と言うのが
     現時点では一番筋が通るという見方だ。
     セカンドインパクトの恐れもあるから検査入院と当分の安静は必要って事になるだろうが」

真姫「そうして下さい」

タタタッ

看護師「先生」ミミウチ

先輩医師「分かった。警察が来ているが、いいか?」

真姫「はい」

145 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/12/26 22:56:05.34 RodqbJEJ0 116/477


ーー刑事入場ーー

真姫「はい、集団の中に志筑仁美さんを見つけて、
   不審に思って後を追ったんです。
   一度見失ったんですけど、あの廃工場の中にいるのを見つけて、
   中で志筑さんを含めた集団と鹿目まどかさんがトラブルになる、
   鹿目さんが襲われているのを見て助けに入りました」

刑事「それから?」

真姫「集団は正気を失っていました。

   私を捕まえようとした志筑さんに私が平手を張って、
   それで志筑さんは正気に戻ったんですけど、
   とても他の人までは手が回らなくて、
   鹿目さんだけ工場の外に逃がして、私達は工場の中を逃げ回っていました。

   二階の部屋に隠れていたんですけど、志筑さんがひどい頭痛を訴えて、
   志筑さんをその部屋のロッカーに隠して私は窓伝いに別の部屋に移動して………
   そこまでは覚えているんですが………」

刑事「先生は意識を失って倒れている所を発見されています。
   志筑仁美、鹿目まどかとは知り合いだったんですか?」

真姫「はい。この病院に入院している上条恭介君が私の受け持ち患者で、
   二人は上条君の同級生です。
   お見舞いに来た時に話しをした事がありました」

刑事「なるほど。しかし、集団が正気を失っていたと言いますが、
   西木野先生はお医者さんですよね? その状況をどう見ました?」

真姫「パッと見は集団催眠、何らかの集団ヒステリー、
   異常な効果でしたから薬物パーティーか何かを疑いましたが………」

刑事「なんだよなぁ………
   鹿目まどか、志筑仁美の供述もおおむね一致している。
   但し、志筑仁美に関しては、ビンタ張られる前の記憶が飛んでる。
   他の面々は揃ってあの工場に行った事すら忘れてる有様だ。

   異常な状況です。こちらも真っ先にドラッグを疑いましたが、
   現場の捜索でも関係者の尿や血液からも、その線はむしろ否定的。
   有毒ガスの痕跡も探したんですけどね」

146 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/12/26 22:59:18.44 RodqbJEJ0 117/477


真姫「音とか、光とか」

刑事「あー………(黄色っぽいネズミのアニメ)………」

真姫「医師として、あれだけの集団に薬物の助けもなしに
   視聴覚だけで一方向の効果、と言うのは少々信じ難いですけど、
   私も片鱗に触れた気がします」

刑事「片鱗に?」

真姫「ええ、確かに音と言うか光と言うか、
   記憶が曖昧なのですが、何か嫌な夢でも見せられた様な、
   もちろん経験はありませんが、
   いわゆるバッドトリップと言うのがああ言うものかと言うか………」

刑事「大量殺人未遂事件ですからね。こちらとしても曖昧にはしておけない。
   只、最近多いんだよなぁ」

真姫「?」

刑事「いや、なんと言うか、
   今回も、中心人物には、自分らだけでも自殺しようって程度の動機はある。
   だが、大量殺人ってなると話は別だ。

   自殺とか突発的な殺人、失踪。
   ありふれて見えるが何かかみ合わない、そんな事件がな………
   まさか、なぁ………どっかのマッドサイエンティストが
   怪しい催眠装置の実験でもやってる………」

真姫「正直言って、一笑に付すことが出来ません。
   医師として、他の可能性を考える方が難しい状況ですので」

刑事「そう、ですか。
   それから、現場で倒れていた集団の中に、
   暴力による外傷を負った者が複数見つかっています。
   これに就いては?」

真姫「集団から襲われた時に色々と抵抗はしました」

147 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/12/26 23:02:35.24 RodqbJEJ0 118/477


刑事「主に志筑仁美ですか?」

真姫「ええ。あれは正当防衛です」

刑事「やられた側は覚えていないと言っています。
   志筑仁美や鹿目まどかの供述からも、
   現時点では正当防衛の可能性が高い、のですが、
   何しろ襲うのも襲われるのも訳が分からない、と言うのがこの事件でして」

真姫「その通りだと思います」

刑事「志筑仁美がケガをした、と言うのは?」

真姫「はい」

刑事「先生が診断を?」

真姫「診断と言っても、ちょっとした問診程度ですけど」

刑事「衝突事故と言うのは?」

真姫「逃げる途中に階段の柵が腐っていたのか、
   志筑さんが掴んだ途端に壊れて、反対側の柵まで体が投げ出されました」

刑事「なるほど。しかし、無いんですよね」

真姫「無い?」

刑事「こちらの病院でも、先生のメモを見て詳細な検査を行っています。
   しかし、骨折はもちろん、軽微なものを除いては
   強い衝突を伺わせる外傷、皮下出血は見つからなかったと。

   こちらでも、双方の暴力沙汰の違法性にも関わる事ですから
   薬物検査を兼ねて入念に調べましたが、
   それらの外傷も、目立たない血管を含む注射痕その他の痕跡も発見されませんでした」

148 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/12/26 23:05:43.72 RodqbJEJ0 119/477


真姫「………にわかには信じられません。
   かなり大きな音を立てて衝突していましたから」

刑事「志筑仁美もそう供述していますし、
鑑識が毛髪や衣服の繊維、何より柵自体の破損を確認しています。
   よほど打ちどころが良かったのか音だけが派手に聞こえたのか………」

真姫「………」

刑事「正直、参っていますよ。
   現場の状況や先生初め関係者の供述から言って、これは大量殺人未遂事件だ。
   ですが、それを実行した者含めその場にいた多くの人間が何も覚えていないと言い
   どうもそれが嘘にも聞こえない。うちも検察も扱いに困る事件ですよ。
   又、伺うかと思いますが、何か気が付いた事があったら報せて下さい」

真姫「分かりました」

ーー病院廊下ーー

真姫(とにかくおかしな事件………)

「先生」

真姫「ん? ああ、まどかちゃん」

まどか「先生、無事だったんですね。良かったぁ」

真姫「まどかちゃんも。お父様?」

まどか「うん。パパ、西木野先生」

知久「どうも、まどかの父です。
   この度は娘がお世話になりまして、本当にありがとうございました」ペコリ

真姫「こちらこそ………こちらは、弟さん?」

まどか「はい、タツヤって言います。タツヤ、西木野先生」

タツヤ「にしいの? こんりちはー」ペコリ

真姫「こんばんはタツヤ君、西木野真姫です」

149 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/12/26 23:09:23.06 RodqbJEJ0 120/477


タタタッ

詢子「まどかっ!」

まどか「ママッ」

詢子「まどか、大丈夫だったか?」

まどか「うん、大丈夫」

詢子「さっき、電話で大体の事は聞いたけど………」

知久「うん。現場の状況が異常だから、
   ここで検査と事情聴取を一緒にやったんだけど、異常は見つからなかったって」

詢子「そうか………ああ、先生?」

真姫「あの、まどかさんのお母さんでしたか?」

詢子「ああ、先生まどかの知り合いでしたか?」

まどか「西木野先生が私達の事助けに来てくれたの。
    それと、上条君の担当医」

詢子「そうでしたか、先生には本当に色々とお世話になりっぱなしで。
   今日は本当にもう、危ない所を」ペコリ

真姫「勇敢な娘さんですね」

詢子「ん?」

真姫「あの時、まどかさんが飛び込んでいなければ
   本当に死者が出ていたかも知れません」

詢子「ああ、こいつ、普段鈍くさいのに変な所で度胸座ってやがるからな」

真姫(多分あなたの娘だから。
   それに、お父様も一見大人しそうでも芯が強くて懐が深そう)

まどか「ティヒヒヒ」

詢子「って、心配かけやがって先生にも迷惑かけて反省しろっ」

150 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/12/26 23:12:38.34 RodqbJEJ0 121/477


まどか「はい、ママ」ペコリ

詢子「………よくやった。まどかが無事で何よりだ」

まどか「うん」

真姫「本当に、良かったです」

詢子「………先生もいい度胸だよ」

真姫「大人として、当然の事です」

詢子「暇が出来たら又あそこで」ツイッ

真姫「はい」クスッ

ーーーーーーーー

真姫「(この分だと明日の検査で退院)
   そろそろ戻って寝るか………」

タタタッ

にこ「真姫ちゃんっ」

真姫「にこちゃん?」

にこ「何? なんか事件に巻き込まれたとかって、大丈夫なのっ!?」

真姫「うん、私は大丈夫。
   それよりにこちゃんこそ、大変な時にわざわざ? ………」

にこ「………」ツツー

真姫「!?」

にこ「ママの、ママの病状が進んでて、強い薬を打たないといけないって。
   でも、弱った体が保つかどうか、分からない、って………」

151 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/12/26 23:16:25.14 RodqbJEJ0 122/477


真姫「それで、同意したの?」

にこ「助けて………」コクン

にこ「ママを、助けて………
   家が苦しくて、弟妹の進学もさせなきゃいけないのに、
   なのに、私、自分がやりたい事、
   ママが大変なの分かってて、それでも不安定なアイドルやってきた。
   もちろん、売れて楽をさせて、それまでの辛抱だからって誓って、だから………」

真姫「うん」

にこ「ママ、大変なのに、そんな私の事ずっと応援してくれて、
   私も、一生懸命、ギリギリの時も必死にしがみついてやって来た」

真姫「そうよ、にこちゃん。
   あれから、ラブライブのアドバンテージもあって上がり下がりはあったけど、
   やっとニコにーブライドそのものが定着してきた。
   これから、じゃない」

にこ「有難う。でも、今は、今はママが………」ガシッ

にこ「これからなのこれから何がなんでも親孝行しなきゃいけないの
   まだまだたくさんあるのっ」グイグイッ

にこ「だから………だから、助けてお願い助けてママを、
   ママを助けてお願いだからぁ………」ボロボロ

152 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/12/26 23:20:17.68 RodqbJEJ0 123/477


真姫「………」ナデナデ

にこ「………なっ、後輩の癖に何やってるのよっ」

真姫「先輩禁止、でしょ」フフッ

にこ「うー」

真姫「私は引き継いでメインじゃないけど、
   今はICUで先生達が一生懸命やってくれてる。
   お母さんを力の限りこっち側に引っ張って引きずり戻す。
   だから、にこちゃんも信じて」

にこ「うん、うん………
   悪かったわね、なんか、アンタもそんな病人な時に」

真姫「いいわよ、只の検査入院なんだから」クルクルッ

真姫「厳しいのは段違いでそっち。
   仲間を頼って………今は、休んだ方がいい」

にこ「そうする。あっちの先生達もそう言ってくれたから。
   じゃあ、お休み」

真姫「お休みなさい」

155 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/12/30 21:19:38.77 fwzK1fc10 124/477

 ×     ×

ーー朝・見滝原中学校教室ーー

オハヨー
オハヨー

和子「美樹さん、ちょっと」
さやか「?」

ーー見滝原中学校一室ーー

刑事「昨日の夜の事を伺いたいのですが」

さやか「仁美の事ですか?」

刑事「はい」

さやか「………の辺りでまどかに会って、
    廃工場で仁美や西木野先生が襲われてるって言うから、
    まどかに通報を任せて様子を見に行きました」

刑事「様子を見に、ですか。
   危険だとは思わなかったのですか?」

さやか「ちょっとは思いましたけど、
    二人とも大事な人だから様子だけでもって」

刑事「なるほど。それで、工場には入ったんですか?」

さやか「はい。窓から覗いたら何か異様な雰囲気で、
    仁美も先生も一階の広い所に見当たらなかったから、
    壁を登って二階の窓から中に入りました」

156 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/12/30 21:24:58.49 fwzK1fc10 125/477


刑事「………」

さやか「あー、不法侵入とかだったらすいませんけど、
    そしたら、入った部屋のロッカーで変な気配がして、
    中に仁美がいたんです」

刑事「その時、志筑さんはどんな様子でしたか?」

さやか「えーっと、なんか、意識が朦朧としていたと思います」

刑事「何か言っていましたか?」

さやか「言ってた、とは思うんですけど、
    何と言うかよく分からなくて覚えられないって言うか」

刑事「それからどうしたんですか?」

さやか「嫌な感じがしたんで、来たルートから外に出ました。
    通報しようかとも思ったんですけど、
    サイレンがこっちに来そうだったんで、そのまま帰りました。
    あー、まどかが通報したんなら残ってれば良かったですね、
    お手間をかけてすいません」

ーー見滝原中学校廊下ーー

刑事1「行動的な娘、なのかね」

刑事2「一応鑑識に確認させますか」

刑事1「………筋は通っているな」

刑事2「ええ」

刑事1「鹿目まどかの供述とも合致している。
    すらすら淀みなく話してくれたもんだ」

157 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/12/30 21:30:11.22 fwzK1fc10 126/477


ーー病室その1ーー

刑事「美樹さやか、と言う娘をご存知ですか?」

真姫「ええ、上条君の同級生ですけど」

刑事「彼女も鹿目まどか、志筑仁美と同じグループ、と見ていいんですか?」

真姫「私の知る限り。彼女がどうかしましたか?」

刑事「いや、現場に彼女がいたと言う供述が出ているんです」

真姫「なんですって?」

刑事「関係者の供述を総合すると、
   現場を逃げ出した鹿目まどかは、通報する前に路上で美樹さやかと遭遇して、
   事情を聞いた美樹さやかは様子を見に現場に入っています。
   二階の部屋に侵入して、そこでロッカーに隠れていた志筑仁美を見つけた、
   こういう話なんですよ」

真姫「あの現場に、さやかさんが………。
   確かに、ちょっとやりかねない娘ではあるけど………」

刑事「先生はあの夜、美樹さやかとは?」

真姫「いえ、私は会っていません。
   確かに、その流れだと私が会っていなくても辻褄は合いますけど………」

刑事「ええ。志筑仁美を見つけた後、美樹さやかは工場を脱出して真っ直ぐ帰宅したそうです。
   その頃には鹿目まどかの通報を受けて警察が現場に向かっていましたから、
   敢えて通報する必要はないと」

真姫「………その時の、さやかさんが見た仁美さんの様子は?」

刑事「意識朦朧として、何を言っているのか分からない状態だった、と。
   鹿目まどかとの供述とも一致していますし、
   志筑仁美も先生と別れた後に美樹さやかと話した覚えがあると」

158 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/12/30 21:36:09.44 fwzK1fc10 127/477


ーー病室その2ーー

真姫「おはよう」ニコッ

仁美「お早うございます」ペコリ

真姫「時間、いいかしら?」

仁美「ええ。今は大丈夫みたいです」

真姫「(椅子借りて)なんか、大事になったわね。
   私も今日一日は検査入院って事で」

仁美「そうでしたか」

真姫「具合、どう? 頭痛は?」

仁美「お陰様で、気が付いた時には治まっていました」

真姫「そう。立ち上がったら痛むとか、そういう事は?」

仁美「それもありません。もうすっかり。
   只、一度衝突して頭痛を訴えたと言う事で、
   脳の血管が脆くなっているかも知れないから
   何日かは運動を控える様にと」

真姫「そうした方がいい。
   一応確認するけど、あの時、階段を上がって部屋に入ってから、
   強烈な頭痛に襲われた、それは間違いないのよね」

仁美「ええ、ひどい頭痛で、お騒がせしました」ペコリ

真姫「いや、無事に越した事はないから謝る事じゃないんだけど。
   それが、病院に運ばれた時には頭痛は治っていた?」

仁美「そう、だと思います。
   多分救急車に乗って病院に運ばれたんだと思うんですけど、
   気が付いたらあのひどい頭痛がなくなっていました」

159 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/12/30 21:39:32.30 fwzK1fc10 128/477


真姫「そう………
   私があの部屋を出てから、美樹さやかさんと会った?」

仁美「ええ、多分、そうだと思います」

真姫「覚えてない?」

仁美「いえ、確かにさやかさんとは会っています。
   西木野先生と別れた後だと思います。
   そうじゃないと色々辻褄が合いませんもの」

真姫「うん。それで、どんな話をしたか覚えてる?」

仁美「いえ………何か、昔話をした様な気もするんですけど、
   あの時どんな話をしたのか、よく覚えていなくて………」

真姫「うん、分かった、無理しなくていいから。
   じゃあ、先生から一応許可が出るまでは安静にしてて。
   衝突の後、特に頭痛があった様な状態だと、
   その時大丈夫そうでも後が怖いから、
   その辺は担当の先生の言う事を聞いて」

仁美「分かりました」

ーー病院廊下ーー

コツコツコツ

真姫「………」

真姫(志筑仁美が私と別れた後に美樹さやかと会っていた事は確定。
   その段階で、やっぱり志筑仁美の意識レベルは低下していた。
   衝突から頭痛、意識混濁。
   その直後の精密検査では脳脊髄その他の外傷や病変、それ等の痕跡は発見されず………)

真姫「何、これ?」

160 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/12/30 21:42:55.91 fwzK1fc10 129/477


ーー病室その1ーー

ドサッ

真姫(ベッドに着席)「さやかちゃんは仁美ちゃんと会った後、そのまま帰った?」

真姫(そんな病人、それも友達がいて、
   例え警察が来るって分かってても黙って帰るってあの娘の性格と繋がらない。
   その場で通報するか、警察と合流するのが自然)

真姫(何か、あの娘、或はあの娘達が想像以上に事件の核心に関わってる?
   なんて、事が?
   でも、悪く考えても薬物でもないとすると、一体何?)

真姫「………」クルクルッ

真姫「………意味、分かんない」

ーー昼休み、見滝原中学校屋上ーー

マミ「志筑さんはお休み?」

さやか「はい、今日一日は検査入院だって」

マミ「そう………契約、したのね」

さやか「はい。目の前で仁美が、って言うのは流石に………」

まどか「わたしも、本当はさやかちゃんを手助けしたいけど………」

さやか「分かってるって、気持ちだけ受け取っとくよ。
    魔法少女ってあんなに怖い、危ない事なんだから、
    そんな簡単にならないのが当たり前。
    あたしは、それでも命懸けでかなえたい願いがあった、
    なるべくしてなったんだから引け目なんて感じる必要ないの」

まどか「うん」

マミ「………」ニコッ

161 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/12/30 21:46:19.57 fwzK1fc10 130/477


さやか「これからの見滝原の平和は、
    マミさんとこの魔法少女さやかちゃんが
    ガンガン護りまくっちゃいますよー!
    なんてね」

マミ「鍛えがいがあるわね」アンコクビショウ

さやか「………お手柔らかにお願いします」

マミ「ふふっ。でも、やるからには真剣に鍛えないとケガじゃ済まないって、
   それは理解してるわよね」

さやか「はい」

マミ「………後は………西木野先生………
   現場にいたの?」

さやか「はい、魔女の結界で食べられる寸前に助け出しました」

マミ「そう。だとするとちょっと、どころじゃなくまずいかも………
   正気のまま魔女の結界に入って生還したってなると、簡単に納得してくれるか。
   聞いてる限り、お医者さんだけあって頭のいい人みたいだし」

まどか「はい、頭が良くって格好いい先生です」

マミ「そう。美樹さん、あなたは何か見られた?」

さやか「あたしが駆け付けた時には気を失ってたから
    あたしの事は見られなかったと思うんですけど」

マミ「不幸中の幸いね。鹿目さん、警察の方は?」

まどか「マミさんに言われた通りに、
    色々聞かれましたけど大丈夫、だと思います」

さやか「んー、まどかは仁美について行っただけ、大体合ってる。
    あたしも今朝警察から事情聴かれて打ち合わせ通りに答えておいたけど、
    基本、嘘は言っていない。全部話してないだけで」

QB「………………」

162 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2015/12/30 21:50:02.67 fwzK1fc10 131/477


マミ「志筑さんは、途中で意識を取り戻すまでは多分何も覚えていない。
   他の人達も、魔女の口づけはそういうもの。
   普段だったら原因不明の集団ヒステリーか何かで
   警察も無理やり片づけるしかない所、だけど………」

さやか「西木野先生、ですか」

マミ「お医者さん、なのよね………。
   場合によっては………」

さやか「あ、あの、マミさん?
    何か、ヤバイ事考えてません?」

マミ「え? あ、まさか。
   いよいよとなったら直接話し合う、って事よ」

さやか「ですよねーアハハ………」

まどか(笑いが乾いてるよさやかちゃん)

マミ「聞いている限り、良心的な大人で頭のいいお医者さん。
   いよいよとなったらこちらの事情もある程度話して理解してもらうしかないわ。
   現実問題として、私達が魔女に対応するしかないんだから」

さやか「そう、ですね」

166 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/01/09 03:34:13.79 cLxH9zZ30 132/477

 ×     ×

ーー夕方・診察室ーー

先輩医師「つまり、異常なしだな」

真姫「そうですか。じゃあ、明日から」

先輩医師「ああ、そうしてくれ」

ーー病院ロビーーー

ツカツカ

真姫(………やっぱ、不意に抜けると厳しいわよね。
   警察の事情聴取もあって、結局昨日一日検査入院で。
   明日から仕事………にこちゃん………)

167 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/01/09 03:39:27.96 cLxH9zZ30 133/477


「真姫っ」

真姫「?」

海未「真姫っ」

真姫「海未」

海未「事件に巻き込まれたと聞きましたが、元気そうで何よりです」

真姫「お陰様でね………
   にこちゃん所のお見舞い?」

海未「はい」

真姫「そう………時間ある?」

海未「ええ」

真姫「じゃあ、夕食付き合う?」スマホスッスッ

ーー風見野市内・ラーメン屋ーー

大将「らっしゃーいっ」

海未(いい匂いです)

真姫「ここでいいかな?」テーブルセキ

海未「ええ」

真姫「ラーメンを」

海未「では、私も」

大将「はいよっ!」

海未「よく来るんですか?」

真姫「ううん。穴場だって小耳に挟んだから、
   時間もあるし一度来てみたいって」

168 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/01/09 03:45:11.02 cLxH9zZ30 134/477


おかみさん「お待たせっ」

ズズッ、ズーッ
オイシイデスネ、ソウネ

海未「実際の所、病状はどうなんですか?」

真姫「立場上、本当は言っていいのかアレなんだけど、
   率直に言って厳しいわ」

海未「それは、命が………」

真姫「それもある。厳しい半分はそれ。
   もう半分は、命が助かった時。
   命が助かっても、今回の事故での肉体的損傷は非常に大きい」

海未「そういう、事ですか」

真姫「だから………卒業してから機会も少なくなっちゃったけど、
   それでも、あの時間を共有した仲間として、
   出来る限りでも孤立させたらいけないの。

   お節介過ぎるのがまずい場合もあるけど、にこちゃんああ言う性格でしょ。
   手遅れにならない様に、海未にも念頭に置いて欲しい」

海未「心に留めおきます。
   地元でしたら、多少の心当たりもありますので」コクッ

真姫「お願い。あの道場続けて、
   公民館の子ども講座市民講座もやってるんだっけか?」

海未「ええ、あの時お世話になった地域への恩返しもかねて。
   時間の捻出が厳しい時もありますけど、
   これはこれで楽しさもあり、勉強にもなります」

真姫「そう」

169 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/01/09 03:50:23.34 cLxH9zZ30 135/477


海未「今回、何か妙な事件に巻き込まれた様ですね」

真姫「そうなの。率直に言ってイミワカンナイ」

海未「警察の方もそうみたいですね」

真姫「んー、そんな感触。
   何か知ってるの?」

海未「今回は他ならぬ真姫の事ですのであえて調べましたが、
   園田は武道の家でもあります。多少の伝手もあります」

真姫「何か聞いてる?」

海未「志筑家が動きました」

真姫「仁美ちゃんの家が?」

海未「当初、薬物事案を疑って相当強い対応をしたみたいですね。
   元検事総長を含む弁護団から県警本部長に要望書が出されました。
   志筑氏自身は弁えた人物の様ですが、
   国会議員や警察庁からの忖度した動きが県警にも伝わっています」

真姫「圧力、って奴」

海未「客観的にはその評価もやむを得ないと。
   県警の刑事部も、余りの訳の分からなさに逃げ腰になっているのも本当です。

   ストレートに立件しようとするなら
   大量殺人未遂で当然公判請求を前提に捜査しなければならない。
   ですが、それだけの事件で関係者の供述が知らない分からないの空白だらけ、
   県警刑事部と検察は相当苦慮している様です」

真姫「だろうね。実際問題現場にいた私だってイミワカンナイとしか言い様がない事件だから。
   多分、他の人達も事件の事をまともに覚えていない。
   それを刑事裁判にするって、書類で生きてるお役人なら胃に穴開くレベルだわ」

海未「加えて、本部の捜査一課では、ホオズキの捜査本部の増員をかける予定です」

真姫「あー、やっぱ手こずってるの?」

170 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/01/09 03:54:06.65 cLxH9zZ30 136/477


海未「はい。本来、本部設置後の逐次投入は悪手なのですがやらざるを得ないと。
   こちらの方が凄惨な被害を出しながら後手に回っている状況です。

   加えて、詳しい事まではよく分からないのですが、
   あすなろでも捜査班を本部に昇格しようかと言う動きがある様です。
   その上面倒な事件を抱えていられないと。

   結果論とは言え、大きな被害も出ない、被害感情も低い事件ですから、
   関係者に文句がないなら適当に口実をつけて事件を閉じてしまいたい、
   県警はその方針に傾いている様ですね」

真姫「そう………これ以上警察に付き纏われる事考えると、
   そっちの方が正直助かるって気持ちもあるけど………」

海未「………医療上の死亡事故で警察の捜査が入ってましたか」

真姫「………」コクッ

海未「大丈夫、ですか?」

真姫「うん、大丈夫。それは病院の方で対処してくれてるし、
   医者やってたらそういう事もある、って事」

海未「そうですか。
   そうですね。あれだけ色々抱えても、
   それでもブレずに医者の道を貫いた真姫ですから」

真姫「ありがとう………」

171 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/01/09 03:57:15.88 cLxH9zZ30 137/477


ーーラーメン店外ーー

アリアトアシター

海未「美味しかったです」

真姫「うん………にこちゃんの事、お願い」

海未「はい。真姫も」

真姫「うん………お互いのパートで力の限り」

海未「はいっ」

真姫「海未はこれから? なんなら久しぶりに」ツイッ

海未「明日の予定がありますので、それは又の機会に」

真姫「そう。じゃあ」

ーー路上ーー

スタスタ

真姫「………」

ふと、天を仰ぐ。
そこに見えたものは。

172 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/01/09 04:00:39.69 cLxH9zZ30 138/477


ーー廃教会ーー

「何やってんだい?」

真姫「なんとなく、見かけたから」

「こんな所で、気紛れにお祈り?」

真姫「そう、かもね。
   本当は、この手で救わなくちゃいけないんだから」

「ふうん、自信あるんだな」

真姫「ま、無いとは言えないわね。
   そうでなくちゃいけないんだから」

「仕事、何やってんの?」

真姫「医者。だから、この手で人の手人の技術で
   目の前の人を救わなければいけない。
   だけど………だからこそ、祈りたくなる事もある」

173 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/01/09 04:04:06.89 cLxH9zZ30 139/477


「へぇー、人でも殺した?」

真姫「微妙に違う。手が届かなかっただけ。
   保身で言っているのかも知れない。
   だけど、私のせいだと言うのはむしろ傲慢。
   ………分からないか」

「………分かるよ」ボソッ

真姫「んー」スクッ

真姫「結局、祈る先から一杯引っ掛けて、
   切り替えて明日を迎える、そんな所」

「どうせなら、次はまともな所で祈るんだな。
見ての通りだ、妙な奴が入り込んでない今夜は運がいいだけだ」

真姫「そうね。夜遊びは程々に」

「あんたもな」

コッコッコッ

真姫(………無理しちゃって。口調の割に声が全然子ども)

181 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/01/31 13:46:29.85 JM4lkHsl0 140/477

 ×     ×

ーー夕方 見滝原市内路地裏ーー

マミ「他人の縄張りに踏み入るなんて」

マミ「行儀がなってないんじゃなくて?」

まどか「間に合ったぁ………」

杏子「へぇ、くたばったんじゃなかったんだマミ先輩。
   なんか、最近魔女退治で死ぬ目に遭ってから
   ぱったりだって聞いたから来てみたんだけど」

マミ「少し、お休みいただいてただけよ」

杏子「休みぃ?」

マミ「ええ、お友達と買い物してお菓子を作ったり
   お休みに昼まで寝てたり。
   もちろん、魔女退治も続けてるわよ」

杏子「おいおい、本格的にどうしちまったんだ?
   あんだけ毎日魔女退治に、本当に生きがいみたいにしてたのにさ」

マミ「この辺りの魔法少女は実質私一人、
   美樹さんも契約したばかり。
   確かに、短期的な効率は下がるかも知れないけど、
   私がダウンしたら元も子もないって事」

182 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/01/31 13:51:40.05 JM4lkHsl0 141/477


さやか「すいません、あたしが早く一人前に」

杏子「だーから、あんたみたいのはやめた方がいいって。
   この先輩に何吹き込まれたか知らねーけどさ」

マミ「佐倉さんこそ、
   私の後輩に変な事を吹き込むのはやめてくれないかしら?」

杏子「ふうん………理に適ってんじゃねーの?
    それで、お休み中に何が起きても知らない顔出来れば、だけどさ」

さやか「このっ………」

マミ「………」スッ(腕で制する)

マミ「そうね………確かに、お休みでも魔女発見の連絡があれば駆け付ける、
   それも気休めかもしれない。
   でも、魔法少女も無限の存在じゃない、お腹も空けば死ぬ事もある。
   出来る事と出来ない事がある。それだけよ」

杏子「ふうん………
   本当に、お利口になったんだな」

マミ「そうね。一度、限界を覗いたからかしらね?
   だから………」チャキッ

杏子(うっ………)

マミ「他人の縄張りをかき回す、って言うなら、
   そうそう甘い顔もしてられない」

183 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/01/31 13:56:42.85 JM4lkHsl0 142/477


杏子「………へぇへぇ。
   こんな雑魚にかまって、マジなマミ先輩と喧嘩してケガさせられるとか、
   それこそ勘定が合わないからね」

マミ「そう、賢明ね」

杏子「………」ダッ

さやか「このっ………」

まどか「さやかちゃんっ!」

チュイーン

さやか「………(い、かく射撃、って奴?)」

まどか(地面に穴………)

マミ「お互い、本物のサーベルに槍に鉄砲、
   魔女相手でもないのに、余計な争いは愚の骨頂よ」ニコッ

さやか「は、はい………」

マミ「それから、暁美さん、いるんでしょ?」チャキッ

ほむら「………」スッ

マミ「この間の恩は忘れていないわ。
   だけど、佐倉さんと組んで何かこちらを妨害しようと言うなら、
   その時はそうそう甘い顔もしてはいられないから覚えておいて」

ほむら「………」クルッ

スタスタ

まどか「ほむらちゃん………」

さやか「なんだあいつ? ………」

184 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/01/31 14:01:59.49 JM4lkHsl0 143/477


ーーマミルームーー

マミ「さあ、いただきましょう」

さやかまどか「いただきます」

さやか「すいません、結局マミさんに頼る事になって」

マミ「うん………」

さやか「でも、あいつって一体なんなんですか?
    使い魔を狩ろうとしたあたしを邪魔して、
    それに、あたしの願い迄馬鹿にして………」ギリッ

マミ「昔、ね。ちょっと色々あったのよ。
   昔はあんな娘じゃなかったんだけど」

さやか「そうですか。でも、すいませんがあたしは絶対許せない。
    あんな奴とだけは馴れ合いたくない」

マミ「でも、揉め事は避けて頂戴。
   彼女は魔法少女としての経験を積んでる、その上であんな風に荒んでる。
   少なくとも今の美樹さんがかなう相手じゃないわ」

さやか「うー………」

マミ「今の佐倉さんの縄張りは風見野、
   今の見滝原は私達の縄張りだと改めて宣言した。
   これで引いてくれたらいいんだけど。

   とにかく、あの娘は刹那的な分、
   嫌な事は言っても得にならない争いは避ける筈よ。

   悔しいかも知れないけど、今後何かあったら、
   最悪でも一目散に逃げるぐらいでお願い。
   これ以上何かあるなら、私の方で決着つけるから」

185 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/01/31 14:05:18.63 JM4lkHsl0 144/477


さやか「分かり、ました………
    あの転校生も、佐倉杏子とつるんでる、って事なのかな………」

マミ「正直、分からないわね。
   決して甘くはない条件で私達の事を助けてくれた事を考えても、
   完全に損得だけで動いてるとも言い切れないし」

さやか「いちお、命の恩人なんですよね………」

マミ「………」コクッ

まどか「仲良く、出来ないのかな………」

マミ「難しいわね。佐倉さんと繋がっているのか、
   向こうの目的も分からない以上。
   魔法少女の活動は命懸け、
   信頼出来ない相手とこちらから深く関わる事は出来ないわ」

さやか「うん。魔法少女同士のガチバトルやったばっかだからね。
    悪いけどそういう事だよまどか」

まどか「うん………」

さやか「食べよ、美味しいケーキの前でする話じゃないもんね」

クンレンハーガッコウノカダイガー
ウギャー

186 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/01/31 14:08:33.05 JM4lkHsl0 145/477


ーー見滝原市立病院廊下ーー

看護師「お疲れ様でーす」

真姫「お疲れー」

ーー見滝原市立病院周辺ーー

コツコツコツ

真姫(ちょっと、遅くなったわね。
   あの災害と私が休んだ後処理が色々と………)

真姫「?」

真姫(佇んで、病院を見てる?)

真姫(サイドポニー、って奴かしら?
   高校生ぐらい? 綺麗な娘。
   それに、多分雰囲気が結構いい所の………)

クラッ

真姫「ヴエェッ!?」ダッ


「」クテッ

真姫「ちょっと、大丈夫っ!?」スマホスマホ

スッスッスッ

真姫「もしもし? 私です。ええ、問い合わせを………」

187 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/01/31 14:11:41.68 JM4lkHsl0 146/477


ーー見滝原市立病院救命医局ーー

救命医「特別な異常はないな、強いて言えば過労、心労だ。
    今はぐっすり眠ってるよ」

真姫「そうですか………」

救命医「まあ、無理もないなぁ」

真姫「え?」

救命師長「美国織莉子」ポツッ

真姫「美国?」

救命医「そ、あの美国の一人娘。
    心労にもなるだろうさ」

救命師長「私は過去に二度、ここで彼女に会っています」

真姫「二度?」

救命師長「はい。
     一度目は母親の、二度目は父親の時です」

真姫「時、って………」

救命師長「………」コクッ

救命師長「彼女の母親は暴走車に跳ねられて、
     この病院で死亡を確認しました。
     その時、あの娘はまだほんの子どもだった」

真姫「そう………」

188 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/01/31 14:15:08.50 JM4lkHsl0 147/477


救命師長「美国議員は、奥さんの事を本当に愛してらしたんでしょうね。
     その慟哭は尋常じゃない程でした」

救命医「地元の雑誌なんかで時々読んだが、
    実際、出来た奥さんだったってな」

救命師長「そして、それを織莉子さんは見ていました。
     元々しっかりした娘が、自分が泣き出すよりも前に、です」

真姫「!?」

救命師長「それからはより一層ですね。美国議員の政治活動に寄り添って。
     地元では有名でしたよ。
     あの娘が幼い時から、母親が亡くなった直後からもう、
     美国議員の地元の活動では、可愛い、健気な女の子が側にいるって。
     あんな綺麗な娘さんになってもずっとそうでしたから」

真姫「………」ギリッ

救命医「そして、その父親の時は、自分で発見して一緒に救急車に乗って来たよ」

真姫「最っ悪………」ボソッ

看護師「先生」

ーー救命病棟ベッド横ーー

織莉子「ここは?」

真姫「見滝原市立病院の救命センター。表で倒れてたから」

織莉子「ああ、そうですか………」ヨイショ

真姫「ああ、無理しなくていいから」

織莉子「ご面倒、おかけします」ペコリ

真姫「ご丁寧にどうも」ペコリ

189 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/01/31 14:18:48.52 JM4lkHsl0 148/477


救命医「気が付きましたか」

織莉子「………」ペコリ

救命医「じゃあ、診察しますね」

真姫「それでは」ペコリ

救命医「ええ」

織莉子「もしかして、あなたもお医者さん?」

真姫「うん。担当外だけど、帰宅途中であなたの事を見つけたから」

織莉子「そうでしたか………………………
    私は………………………美国織莉子と言います。
    本当に有難うございました」

真姫「ご丁寧に有難う。
   私は西木野真姫。ちょっと簡単に言えないかも知れないけど、
   通りがかりの医者としては疲れてるみたいだから少し休みなさい、
   って無責任な事言っておくわ」

織莉子「………」ペコリ

スタスタ

救命医「それでは、診察を」

織莉子「………」

ーー病院廊下ーー

真姫「………」スマホ

191 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/01/31 14:32:20.73 JM4lkHsl0 149/477


ーー救命病棟病室ーー

救命医「やはり、検査結果も異常はありませんね。
    西木野先生も言っていましたが、
    医者としては過労の様ですから休んで下さい、
    としか言えない状態です。
    何か、異常があったら又来て下さい」

織莉子「そうですか………有難うございました。
    今、治療費の持ち合わせが、後日必ず。
    本当にすいません」

救命医「………分かりました」

ーー美国邸周辺ーー

真姫「野次馬なんて、
   してみるモンじゃないわ………ヴェェ………」

「おいっ!」

「何してるんだオマエっ!?」

真姫「えっ?」

キリカ「お前も野次馬かっ!? 何かしに来たのかっ!?」

真姫「お家の人? ああ、ごめんなさい。
   ちょっと、目についたんだけど失礼だったわね。
   本当にごめんなさい」フカブカ

キリカ「ああ、うん。去ね去ね」シッシッ

真姫「ええ、失礼させてもらう。本当にごめんなさいね」

192 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/01/31 14:36:07.51 JM4lkHsl0 150/477


キリカ「に、しても………織莉子の奴どこ行ったんだ………」ボソッ

真姫「もしかして、美国織莉子さんの知り合い?
   姉妹とかお友達とか………」

キリカ「………織莉子はこの辺じゃ結構有名だけど、
    なんか、直接知ってる、って感じだな。
    知ってるなら教えてくれるかな? 私の無限にして(略)織莉子の事を」

真姫「(ヴェェ)お名前、いいかしら?」

キリカ「名前? 呉キリカだけど」

真姫「くれきりかさん。少しだけ、待ってくれるかしら?」

キリカ「何を知ってる何を隠してる?
    織莉子の事で隠し立てすると言うなら………」

真姫「手順があるのよ。
   私が怪しいと言うなら警察でお話ししても一向に構わないけど、
   取り敢えず私に任せてくれる?」

キリカ「チッああ、任せるよ」

真姫「………」スマホ

ヴーヴー

真姫「もしもし………ええ、すいません。
   ええ、はい、分かりました」プツッ

真姫「彼女は見滝原市立病院にいるわ」

キリカ「病院っ!?」

194 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/01/31 14:40:40.40 JM4lkHsl0 151/477


真姫「ええ。私がたまたま倒れている彼女を見つけて担ぎ込んだの。
   大した事はなかったからもうじき帰って来る筈。
   本人の了承が得られたからあなたにも伝えておく。
   心配かけてごめんなさい、ですって」

キリカ「お、お………」

真姫「?」

キリカ「おおおおおおおお恩人っ!!!
    有難う! これで愛が死なずに済んだっ!!
    私の無限に有限な(略)織莉子を、本当に心から感謝するっ!!!」

真姫「ヴェェ(そ、そう)」クショウ

真姫「それじゃあ、私は明日早いから」サササッ

キリカ「おんじいぃーーーーーんっっっ!!!感謝するよぉぉぉーーーーーっっっっっ!!!!!」

真姫(………大丈夫かしら、色々と………)

197 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/02/10 03:33:13.74 XiNOdwJE0 152/477

 ×     ×

ーーマキルームーー

PCキーボード「カタカタカタ」

メガ真姫「………美国織莉子、本人も結構有名人じゃない」

真姫「こっち来てからバタバタ生きてたからなぁ………」

真姫「どっちにしろ、通りすがりの医者がどうこう出来る事じゃないか………」

 ×     ×

ーー見滝原市児童相談所一時保護所保健室ーー

真姫「はい、終わり」チョウシンキ

ゆま「ありがとー………」フーフー

ーー同・面談室ーー

真姫「前の診断は風邪ですね」

職員A「ええ。少し具合が悪くて診てもらっていたんですが、
    今朝から熱と嘔吐がひどくなりまして」

真姫「今の所、その診断でいいと思います。
   一応検体は検査に出しますが、
   それだけの症状が広がっている気配もありませんし便も固い、
   感染が広がる類のものとは考えにくいですね」

職員A「そうですか」ホッ

198 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/02/10 03:38:42.05 XiNOdwJE0 153/477


真姫「それでも、これ以上長引く様であれば、
   一度本格的な検査、診察が必要です。
   嘱託の医師ですか」

職員A「ええ。こちらの施設の都合で、記録もこの通り簡易なものですが。
    元々非常勤の先生なんですけど、今日はこちらの事情で………」

真姫「事情?」

職員A「報道もされるでしょうからお話ししますが、
    重度のネグレクト事案があって、そちらに行ってもらっています。
    元々、上の子の不審な外傷が通告されていたんですが、
    こちらで調べると、まだ幼い下の子の情報が全く出てこない」

真姫「検診も………」

職員A「………」コクッ

職員A「保健師が接触した所、
    子どもとの接触を拒否されて失踪の恐れがありました。
    上の子の方はある程度情報が集まっていたので、危険な状態と判断して、
    こちらの職員と医師が待機して警察に傷害容疑でガサをかけてもらいました。
    そこで子どもを発見、一目でそれと分かる状態で救急車が呼ばれましたよ」

真姫「そんなにひどい状態だったんですか」

職員A「栄養失調その他、今は入院して命に別状はないと言う事ですが、
    もう少し遅れたら危なかった。
    同行した先生がその場で応急処置を行って、
    後は搬送先に任せて警察からの事情聴取や書類の作成をお願いしています」

真姫(ヴェェ………)

199 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/02/10 03:43:57.24 XiNOdwJE0 154/477


真姫「それで、ゆまちゃんは風邪、或は自家中毒。
   その診断でもいいと思いますが」

職員A「ええ」

真姫「今、明確に区別は出来ませんので心証に近いものですが、
   環境の変化、或は甘え病によるストレス性の嘔吐発熱。
   そうだとすると、むしろ健康な反応とも言えます」

職員A「私も、心証ですが経験上その可能性が高いと。
    ですから、関わりのあった先生に往診をお願いしました。
    ご協力感謝します」

真姫「いえ、ちょうど受けられるタイミングで良かったです」

職員A「ええ。あの子は本当にいい子です。
    我々にも嘱託医の先生にも、
    何の問題もなく接している。問題が無さ過ぎます」

真姫「………そうですか………
   私は本来ハードを担当する外科医。
   今回は飛び入りですし、その辺りの事はそちらの………」

職員A「ええ、分かっています。
    我々も、ようやく助け出したあの子になんとか報いたいのですが」

ワーワーギャーギャー

真姫職員A「!?」

200 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/02/10 03:49:13.00 XiNOdwJE0 155/477


ーー同・室内遊戯場ーー

ワーワーギャーギャーキャーキャー

職員ズ「やめろっやめなさいっ!!」

児童A「!?!?!?!?!!!!!」フーッフーッ

児童B「うわあああああうわあああああんっっっっ」

職員A「先生、どうですかっ!?」

真姫「見た目だけだと、額の皮切れてるだけですね。
   ちょっと一杯血出てるけど、大丈夫だからね。
   只、前後見てないですから詳しい事までは」

看護師「先生、後は私が。B君、大丈夫?
    ちょっと保健室行こうね」

真姫「お願いします。
   ちょっと派手にぶつけています。
   場所がちょっとまずい。検査をした方が」

看護師「はい」

ーー同・廊下ーー

真姫「たたたっ」

職員A「お怪我を?」

真姫「いえ、ちょっと強く引っ張られただけでヴェェ………
   嘱託医、ですか。
   修羅場に突っ込むかはとにかく、大変でしょうね」

職員A「ええ、色々無理をお願いしています。
    児相の一時保護は野戦病院ですから」

真姫「色々、耳にしないではないですが」

202 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/02/10 03:55:42.91 XiNOdwJE0 156/477


職員A「社会的な言葉として児童虐待と言う言葉が一般化した、
    それが我々児童相談所とセットで認知されたのが
    ほんの十年、せいぜい二十年ぐらいですか」

真姫「ええ」

職員A「その時点で何周遅れか、と言う状況でしたからね。
    そして、あたかも新発見の様に一挙にこちらに雪崩れ込んで来た。
    元々児童相談所、一時保護所は虐待だけに対応している訳でもない。
    随分マシになりましたが、それでも、
    その当時からハードもソフトもなかなか追いつかない事もあります」

真姫「専門的な対応も、むしろ一番必要な場所ですよね」

職員A「その通りです。言い訳じみた事を言えば
    我々も保健室も、現場の労働実態としては一杯いっぱいの事はやっています。
    それでも、現状を言えば、元々大きな被害、
    ストレスを抱えている子をやむなく集団で預かって、
    そのケアのためのマンパワーも、まして専門性となるとなかなか難しい」

真姫「こちらに来る前も含めて、
   仕事で何度か児相に連絡した事もありましたが」

職員A「通告ですか」

真姫「………」コクン

職員A「この事に関わっていると、もちろん希望もありますが、
    深淵を覗き込む様な事もままあります」

真姫「どちらにしても、余りいいものではないですね」ハアッ

203 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/02/10 03:59:15.67 XiNOdwJE0 157/477


職員A「ご協力感謝します。法律の規定とは言え、
    率直に言って負担ばかり大きい事を一方的にお願いしている、
    現場のお医者さんの協力は本当に貴重な事ですから」

真姫「児相が引き取るまでなんとか入院を伸ばそうとする病院と
   強硬に退院を要求する保護者の修羅場に関わった事もあります。
   児相はなぜこの状態で子どもを引き取らないのかと
   上の先生やスタッフも怒り狂っていました」

職員A「ええ、目に浮かびます。本当に申し訳ない」

真姫「………実際の所は、
   色々悪いタイミングな事もあって物理的なレベルで足りなかったから、
   と言う事もある程度は分かっていましたから。
   あの時は、結局弁護士会の方で一時預かってもらいました」

職員A「それも、現状では主要都市の弁護士会がギリギリ、ですね。
    ハードもソフトも、数学通りの意味で120%。
    色々助けを借りながらも、目の前の身の安全、これを守れるか守れないか、
    その最低限のラインを死守しようとしている。これが実情です」

真姫「私は本来外科医、基本、ハードを治す事が出来ない。
   そちらもそこで手一杯、ですか」

職員A「今の実情では言い訳は難しいです」

真姫「本当に大変だと思いますが、よろしくお願いします」イチレイ

真姫「イレギュラーで僅かな関わりとは言え私の患者です。
   肉体に修理に近い対応しか出来ない私の後に、
   今、根っこに関わる事が出来るのは先生たちだけですから」

職員A「確かに、お預かりします」

真姫「それでは」

204 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/02/10 04:02:28.08 XiNOdwJE0 158/477


ーー見滝原市児童相談所廊下ーー

コツコツコツ
ピタッ

真姫「?」

サイドポニー(………)フワッ

真姫(あっちの方に、あれって?………)タタタッ

真姫(こっちに曲がって………)

ドスッ

真姫「つっ………」クテッ

(ちょっと、休んでてよ恩人)ナガイス

織莉子「どう、キリカ?」ヒョコッ

キリカ「なんとか、上手くいったよ」

織莉子「ごまかせるかしらねこれで?」

キリカ「さあ。この恩人が西木野先生?」

織莉子「ええ」

キリカ「妙に縁があるね」

織莉子「運命なのかしらね?」

キリカ「うーっ、織莉子の運命の相手になろうなんて………」

205 : MAKISEN ◆Nzl0dmnJKk - 2016/02/10 04:06:20.24 XiNOdwJE0 159/477


織莉子「あの子の事、どう利用するか考えている内に
    この先生が助け出してしまった」

キリカ「織莉子の邪魔をしてくれたのかい?」キザムカイ

織莉子「道を照らしてくれたわ」アセ・クショウ

織莉子「お蔭で吹っ切れた。
    結局、一人を救えない救世の価値なんてそんなものだと。
    ひどく月並みで、それでいて凄く難しい事だけど、
    それでも決して疎かにしてはいけない」

キリカ「ふうん。まあいいや。
    私は、織莉子について行くだけだよ」

織莉子「………」ニッコリ

織莉子(掌にソウルジェム)ボウッ

結界「………」ウネウネウネ

キリカ「手遅れ一歩手前?」

織莉子「確かに、マイナスの想念が集まり易い場所ではあるけど」

キリカ「ま、ささっと刻んで終わらせよう」

織莉子「そして、お茶にしましょう。
    ただの人間が積み重ねる一人一人を救う事。
    それがいかに不完全でも、人に非ざる者が妨げるなんて。
    (人に非ざる者として、それは私が許さない)」


続き
さやか「西木野先生」【中編】

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