ホーム
男「はぁ……」
少女「……」
男「次の電車は……」
少女「特急と急行が通った後に来るから、15分後ですね」
男「え?ああ、そうか。ありがとう」
少女「隣、座りませんか?」
男「いいけど?」
少女「どうぞ」
男「ありがとう……」
少女「ふふ」
元スレ
男「あー、電車に乗り遅れた」少女「あらら」
http://hibari.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1319714707/
男「君は?」
少女「地元の中学に通っています」
男「へえ……学校は?」
少女「今日はお休みです」
男「平日なのに?」
少女「はい」
男「さぼりか?」
少女「そうなんですか?」
男「いや、そうだろ」
少女「あ、そうですね」
男(なんだ、この子……?)
少女「ふふっ」
少女「少し、お話しませんか?」
男「いいけど……なんで?」
少女「電車が来るまで暇ですし」
男「まあ、な」
少女「いいですか?」
男「ああ」
少女「じゃあ、何から話しましょうか?」
男「そうだな……」
少女「あ、最近楽しいことってありました?」
男「楽しいこと……どうだろうな」
少女「無いんですか?」
男「よくわからない。仕事場と家を往復する毎日だしな」
少女「ふうん」
男「休日も家にいることが多いし」
少女「家ではどんなことを?」
男「え……まあ、ネットとかゲームとか」
少女「オタク?」
男「いや……そう言われると……そうかも」
少女「じゃあ、ネットとかゲームしているときが楽しいんですか?」
男「まあ、楽しいかも」
少女「そうですか」
男「そう言う君は?」
少女「え?」
男「君はこうして平日に駅にいるけど、いいのか?」
少女「はい」
男「どうして?」
少女「これが楽しいから」
男「楽しい?」
少女「はい」
男「どうして?」
少女「んー……さあ?」
男「意味が分からないな」
少女「少なくとも学校よりは楽しいですよ?こうしているの」
男「そうか?友達と喋るほうが楽しいと思うけど」
少女「人生の楽しみ方は人それぞれだと思いません?」
男「そうだけど」
少女「ふふ」
男(変な子だな……)
少女「ネットするんですよね?」
男「ああ」
少女「どんなサイトみてます?」
男「どんなって……それは……あの……」
少女「エッチ?」
男「う、うん……いや、あの……」
少女「もしかして……童貞?」
男「こら、大人をからかうな」
少女「てことは、童貞?」
男「うるさいな」
少女「私で卒業します?」
男「な……!?」
少女「勿論、無料でいいですよ?」
男「おい」
少女「あはは、顔赤い。かわいー」
男「……」
少女「ふふ」
男「君、いつもここにいるのか?」
少女「今日はたまたまです。いつもはいませんよ。学校にも行かないといけませんし」
男「そ、そうだよな」
少女「はい」
男「ここにいるときは話し相手を探してるのか?」
少女「はい。知らない人と話すの楽しいです」
男「危なくないか?」
少女「駅だとそうでもないです。特に朝だと急いでいる人が殆どですから」
男「そんなもんか」
少女「たまにアドレス教えてっていってくる男性もいますけどね」
男「だろうな」
少女「知りたいですか?」
男「いや、いい」
少女「よかった」
男「……」
少女「私のアドレスなんて知らない方がいいですからね」
男「そうなのか?」
少女「はい。不幸になります」
男「なんか怖いな」
少女「えへへ。あ、ちょっとすいません。今のうちにメール打っときます」
男「誰に?」
少女「ないしょ♪」
男(彼氏かな……?)
少女「えーっと……」
男(可愛いし……彼氏ぐらいいるよな)
少女「はい。できた。すいません、お待たせして」
男「いや、いいけど」
少女「じゃあ、お話の続きでもしましょうか。まだまだ電車は来ませんし」
男「そうだな」
少女「楽しいことはあまりないんですよね?」
男「思いつかないだけだな」
少女「じゃあ、私と一緒ですね」
男「こうしてるのが楽しいんじゃないのか?」
少女「んーそうじゃなくて、嬉しい出来事とかってあんまりないじゃないですか」
男「ああ、そういうことか」
少女「なんか毎日辛いことばっかりな気がしません?」
男「まあな」
少女「ですよね?」
男「でも、それを中学生から思うか?」
少女「学生だって大変なんですよ?」
男「大人になればわかるよ。学生のときが一番楽しかったってな」
少女「そうでしょうか?」
男「そうだよ」
少女「なら、早く大人になりたいなぁ」
男「どうして?」
少女「今が幸せだったって感じることができるなら、早く大人になりたいです」
男「不思議な考え方だな」
少女「そうですかね?現在が辛く思えるだけだったって早く実感したいです」
男「そりゃ勉強は大変だろうけど……」
少女「ええ……本当に」
男「……勉強、嫌なのか?」
少女「ふふっ。いえ、別に?」
男「なんだよ」
少女「勉強を私に教えようとしました?」
男「そ、そんなこと……」
少女「残念でした。私の取り柄は勉強だけなんです」
男「な、なんだよ……それ」
少女「家庭教師は間に合ってます」
男「……」
少女「貴方は辛いことってあります?」
男「ああ、いっぱいあるよ」
少女「例えば?」
男「仕事のことだな……」
少女「そうなんですか?」
男「ああ。毎日、他人に頭下げて、上司に怒鳴られて、家に変えるのは日付が変わってから……そんな感じだ」
少女「ほへー」
男「な?学生の方が幸せだろ?」
少女「確かにそうですね」
男「何も考えなくてもいいし、明日への不安もないからな」
少女「でも、将来への不安はあります」
男「……夢とかあるのか?」
少女「夢……ですか?」
男「将来が不安な奴ってのは、漠然とした夢ももってないから」
少女「なるほど。なら、ありません」
男「小学校のときに将来の夢とか作文で無かったか?」
少女「あー、ありましたね」
男「そこにはなんて書いたんだ?」
少女「えっと……」
男「ん?」
少女「可愛いお嫁さん、とかだった気がしますね」
男「ふふ」
少女「あー、わらったー」
男「あ、ごめんごめん。でも、それなら叶いそうだな。君、可愛いから」
少女「いえ……叶いません」
男「どうして?」
少女「どうしてもです」
男「好きな男とかいないのか?」
少女「いませんねー」
男「そうか……もったいないな」
少女「そういうアナタこそ、いない……んですよね、すいません」
男「おい!!」
少女「だって……童貞じゃあ……」
男「う、うるさいな……」
少女「じゃあ、私を恋人にしてみます?」
男「な!?」
少女「ふふっ」
男「大人をからかうなって言ってんだろ!?」
少女「私も今まで彼氏とかできたことないんで。いいですよ?」
男「え……」
少女「貴方、優しそうですし」
男「や、やめろよ……もう」
少女「あーあ、残念」
男「……すぐにできるだろ。君なら」
少女「すぐにできるなら、こんなところに居ませんて」
男「そう……か?」
少女「はい。バラ色の学園生活を送っていることでしょうし」
男「そうだよな……俺も学生のころに彼女の一人もいれば今とはだいぶ違ってたのかもしれないな」
少女「そうなんですか?」
男「もっと色んなことに挑戦できてたかもしれない」
少女「彼女がいるだけで?」
男「彼女がいないと自信がなくなるもんだ」
少女「そうですか。なら、私もそうかもしれませんね」
男「ああ、今のうちに制服デートぐらいしとけ」
少女「……」
男「……?」
『間もなく電車が通過致します。白線の内側にお下がりください』
少女「あ、電車来ましたよ?」
男「え……?」
少女「乗ります?」
男「いや、通過電車じゃないか……君が乗るのはまだ……」
少女「……」
男「お、おい……?」
少女「彼氏を作っていれば……こんなことにはならなかったのかもしれませんね」
男「おい、それ以上は危ないって、下がれ」
少女「……」
男「君……まさか……」
少女「最後に貴方と話せてよかった……」
男「まて!!!」
少女「さよなら―――」
少女「―――なんちゃって♪びっくりしました?」
男「ああ。笑えない」
少女「すいません♪」
男「まあ、いい」
少女「えへへ」
男「えへへじゃないよ」
少女「でも、駅のホームって不意に飛びこみたくなりますよね?」
男「それは……否定しないけど」
少女「世の中、辛いことばっかりですもんねー」
男「そうだな。消えたくなるときはあるな」
少女「ええ」
男「でも、君はまだ早いだろ」
少女「ですかね?」
男「若すぎるよ。知らないことがおおいだろ」
少女「んー……生きていて知って得することってあります?」
男「それは……」
少女「ほら、すぐに思いつかないじゃないですか」
男「ほら……新しい技術とかに触れられるかもしれないだろ?」
少女「それ、嬉しいことですか?」
男「自分の好きなものが広がったり」
少女「好きなものかぁ……」
男「君の好きな物ってなんだ?」
少女「勉強以外にないかもしれませんね、今のところは」
男「それは悲しいな」
少女「ですよね」
男「読書とかいいんじゃないか?」
少女「おススメとかあります?」
男「ん……いや、俺は読書家じゃないから」
少女「なんだー、期待外れ」
男「うるさいな」
少女「でも、自分の好きなものがあれば、多少は毎日が楽しくなるんですかね?」
男「そうだと思う」
少女「それ……毎日が死ぬほど辛くても、見つかりますかね?」
男「努力すればな」
少女「努力か……今更、したくないかなぁ」
男「今更って、まだまだこれからだろうが」
少女「いえ……もう努力するのは疲れました」
男「今からそんなことを言っててどうするんだよ?」
少女「貴方もそうじゃないですか?」
男「……俺は努力なんてしてないな」
少女「そうなんですか?」
男「毎日、与えられた目標をこなすだけの日々だ。自分から何かをしようなんて思ったことはないな」
少女「なら、私もです。勉強も親や先生がやれっていうからしてきただけですし」
男「そうか……」
少女「それに頑張ってもいいことなんてなにもないですしね」
男「どうして?」
少女「知ってます?今時の中学校って大変なんですよ?」
男「どういうところが?」
少女「出る杭は打たれるっていうのかな……とにかく、がんばった人は辛い目に合います」
男「よくわからないな」
少女「例えば、少し成績が良いってだけで周りを見下してるとか陰で言われたり、その所為で仲間外れにされることも」
男「酷いな、それは」
少女「はい」
男「俺のときは頭のいい奴は英雄だったけどな。テスト前とか特に」
少女「それは今でもですよ。陰で悪口言ってる癖にテスト前だけ媚を売ってきたりするのは」
男「はは、それは変わらないんだな」
少女「そういう態度って腹立つんですよね」
男「それは分からなくもないな」
少女「で、教えるのは嫌だっていったら、周囲の態度は悪化しますし」
男「それは……」
少女「自分で努力したほうがいいよって言うだけで、陰口が酷くなり、ついには行動に出る人もいますし」
男「行動って?」
少女「いじめですよ」
男「ああ……」
少女「私物を隠したり、お弁当が捨てられてたり、身に覚えのないことで殴られたり……散々です」
男「……」
少女「だから……努力なんてするだけ無駄っていうか……」
男「君……いじめられてるのか?」
少女「……いえ?」
男「途中から自分のことのように言ってたから……」
少女「そうですか?」
男「ああ……大丈夫か?」
少女「どういう意味です?」
男「変なことを考えてるんじゃないかって……」
少女「……」
男「……もしかして、さっきのは半分本気だったとかじゃないよな?」
少女「そうだって言ったら、どうします?」
男「君……」
少女「私のこと、救ってくれます?」
男「……」
少女「あ……すいません、いきなりこんなこと言われても……困りますよね」
男「ここに居る理由も学校に行きたくないからか?」
少女「さあ……どうですかね」
男「はぁ……」
少女「そんな目で見ないでください。照れます」
男「何言ってんだよ」
少女「こうして知らない人と話すのが楽しいって思えるのは、相手は私のことを知らないって知っているからなんです」
男「え?」
少女「私のことを知らない人だから、本音を出さなくてもいい。ただ壁に向かって話すように、自分を偽れる」
男「……」
少女「長い時間一緒の場所に居ると、どうしても油断しちゃうじゃないですか。そのときにポロっと本音が出て、他人から疎まれる」
男「ああ……」
少女「それが私、大嫌いなんですよ」
男「逃げてるんだ」
少女「はい」
男「じゃあ、こうして話してきたことは全部嘘なのか?」
少女「本当のこともありますし、嘘もあります」
男「そうなのか」
少女「だって、どんなこといっても大袈裟じゃない限りは相手に嘘だってばれませんから」
男「確かめる術もないもんな」
少女「はい。―――だから、貴方も楽でしょう?」
男「え……」
少女「嘘がつけて、楽じゃありませんでした?」
男「嘘なんて……」
少女「嘘じゃなくても誇張とかはあったんじゃないですか?」
男「それは……」
少女「いいですよね。こういう関係って」
男「どういうことだ?」
少女「だって自分を美化しても相手は信用してくれるんですよ?なんか理想の自分を認めてくれる人を相手にしているみたいで気持ちいいです」
男「なるほど……確かにな」
少女「いいことばっかりを言っても相手は気にしない。悪いところなんて聞いても来ません」
男「そうだな」
少女「だから、初対面の人と一度限りの会話をするのが楽しいんですよ」
男「ああ……そう考えたら、そうだな」
少女「でしょ?」
男「それも嘘か?」
少女「これは本音です」
男「安心した」
少女「どうも」
男「どこまでが嘘なんだ?」
少女「聞いちゃいます?」
男「もうすぐ電車も来ちゃうし、いいだろ?」
少女「貴方には最後まで綺麗な私を見てほしかったんですけど」
男「いいじゃないか。そういう相手がいても」
少女「まあ、新鮮ではありますね」
男「それに本音を言っても疎むはずがない」
少女「どうしてですか?」
男「もう二度と、会うことはないんだからな」
少女「あ、それもそうですね」
男「だろ?」
少女「勉強はできません」
男「そうか」
少女「私、要領悪くて」
男「っぽいよな」
少女「もう……」
男「悪い。続けて」
少女「テスト前に寄ってくる人すらいません」
男「……」
少女「もっと勉強ができればよかったんですけどね」
男「そう思うなら今からでもがんばれば?」
少女「もう遅いですね」
男「そんなことないだろ?」
少女「あと、もうひとつ嘘があります」
男「なに?」
少女「私、いじめられます」
男「……」
少女「中学に入ってからすぐでした。ある男の子の告白を断ってから始まりましたね」
男「よく聞くな」
少女「女の子たちから無視されるだけならよかったんですけど、その男の子のグループからも色々と嫌がらせを受けてました」
男「嫌がらせ?」
少女「ふふっ……少し、恥ずかしいですけど……」
男「ちょ……なに脱いで!?」
少女「背中……見てください……」
男「……」
少女「酷い痣と傷ですよね?……殴られたり、画びょうを刺されたり……カッターナイフで抉られたときもありました」
男「……」
少女「すいません……気持ち悪いですよね……」
男「いや……ごめん」
少女「何が楽しくて生きてるのか……ホントにわかりません」
男「そのことは親や教師は?」
少女「知ってますよ?でも、いじめはなくなりませんでした」
男「……」
少女「で、あるときニュースで見たんですよ。いじめられていた生徒が自殺したって」
男「それで?」
少女「その生徒が通っていた学校、今ではいじめが一切ないらしいんですよ?すごいと思いません?」
男「なにが……?」
少女「人が死ぬほどまでに陰湿ないじめがあったのに、その子が死んでからクリーンになったんですよ?」
男「そうだな……」
少女「私の学校、いじめられてるの私だけじゃないんですよ。結構、います。でも、なくなることはありません」
男「……」
少女「いじめを受けないようにするには転校か、引き籠るしかないんです」
男「そんなことないだろ」
少女「いえ、それしか逃げる方法はありません。でも、戦う方法はあります」
男「我慢か?」
少女「それは辛いだけです」
男「訴える?」
少女「いいえ……それでは根絶なんて不可能です」
男「じゃあ……」
少女「死ぬことです。怨みを残して」
男「君……」
少女「そうすれば学校からいじめはなくなる。少なくとも、十年くらいは教師たちも親たちも注意してくれるはずです」
男「死ぬのは誰が?」
少女「勇気ある子がするんじゃないですかね?」
男「まて、死ぬ勇気があるなら……!!」
少女「立ち向かうよりも駅のホームから飛び降りるほうが勇気は少なくて済みます」
男「本気か……?」
少女「ないしょ♪」
男「……やめろ」
少女「……」
男「君は若い。まだやり直せる」
少女「やり直す?私は何も間違った生き方なんてしてません。世界が歪んでたんです」
男「……」
少女「私の周囲に救いなんてなかったんです」
男「もう少し生きてみろ……」
少女「でも……もう決めましたし」
男「俺みたいになるな」
少女「え……?」
男「俺も嘘をついていた……」
少女「う、そ?」
男「仕事場と家を往復する毎日だって言ったな?」
少女「ええ」
男「嘘だ。仕事場なんて俺には二年前からないんだ」
少女「……」
男「俺は本当に何もできない屑なんだ……」
少女「今日はどうして……ここに?」
男「少し、遠くに行こうかなって……」
少女「そうだったんですか」
男「遠くで死のうかなって……思ってた」
少女「……」
男「でも、君と話せて少しだけ楽になれた……だから俺はもう少し……」
少女「そう思えたのなら、初めから死ぬ気なんてなかったんですよ。良かったですね?」
男「え……」
少女「死ぬことってそんな簡単に曲げられないです。一度死ぬって決めたら、容易く心変わりなんてしませんから」
男「あ……えと……」
少女「アドレス……教えてくれませんか?」
男「え?」
少女「携帯電話ぐらい、まだありますよね?」
男「あ、ああ……」
少女「貴方のアドレス、教えてください」
男「こ、これだけど……」
少女「はい。―――ありがとうございます」
男「どうするんだ?」
少女「最後に貴方と話せてよかった」
男「え……」
少女「貴方みたいに自分の不幸に酔えるだけの幸せ者に……」
男「何を言っているんだ……?」
少女「もう喋らないでください」
男「……!?」
少女「私は、あなたのような中途半端な人が大嫌いです」
男「そ、れは……」
少女「そのままどこにも行きつく事無く、下らない人生に幕を引いてくだいね?」
男「待て……」
少女「私は死ぬことで救われる人がいます。でも貴方が死んでも誰も救われない。生きていても誰も喜ばないですけど」
男「……」
『間もなく電車が通過します。白線の内側にお下がりください』
少女「さてと……打ったメールを全員に送信しなきゃ」
男「え?」
少女「さっき打ってたの、私の遺書なんですよ」
男「あ……」
少女「全員に私が死んだことを伝えるんです」
男「お、い……」
少女「親にも私をいじめていた奴らにも、私を犯した奴らにも、あなたのような人にも」
男「……」
少女「丹精込めて作ったんで、熟読してください。でも、遺書なんて初めて書いたんで乱文でしょうけど、それは御愛嬌ってことで」
男「まってくれ……」
少女「……では、送信♪」
男「やめろ……」
少女「あ、ちゃんと送れたみたい……。よかった」
男「やめろって……」
少女「……」
男「……いくな」
ピリリリ♪
男「ひっ!?」
少女「メール、来たみたいですよ?」
男「……あ」
少女「ちゃんと読んでくれなきゃ……怨みますから」
男「まて―――」
少女「さよなら―――」
男「―――うわぁぁぁぁぁあ!!!!!!」
―――――
駅員「ここです」
警察「ちっ……酷いな……」
男「…………」
警察「―――すいません」
男「……」
警察「少しお話を……もしもし?」
男「あ、はい……?」
警察「ここで飛びこみ自殺があったんですが……見ていましたか?」
男「……あ、はい……全部……」
警察「その時の様子を聞きたいんですが……」
男「……あ、えと……これ……彼女の……遺書、です」
警察「遺書……?携帯電話に?」
男「メールで……彼女から……」
警察「中を見ても?」
男「ええ……いいですよ?」
警察「………」
男「………」
警察「どうも……」
『貴方が私を殺したのです』
『無意識的にしろ意識的にしろ、貴方が私を殺したのです』
『貴方はこれから殺人犯として毎日を送ってください』
『いじめのことを話したのに仕事ばかりにかまけて相談すらしてくれなかった両親』
『勇気を出して話したのにまともな解決策を練ろうとしなかった教師』
『私を散々おもちゃにして自分のストレスを発散させていたクラスの女子』
『数人で取り囲み、一晩中私を凌辱したクラスの男子、及びその関係者』
『そして、最後のひと押しをくれた名も知らない男性』
『みんなが私を殺したんです』
『この事実を死ぬまで持ち続けることを私は切に願います』
『では、最後に心をこめて。みんな地獄に落ちろ。首を長くして待ってるから』
警察「詳しくお話を聞きたいのですが、署まで来てもらえますか?」
男「……はい」
警察「では、こちらへ」
END