―コンビニ―
チャラ男「ったく、あのクソ野郎がよぉ~!」
DQN「マジかよ! んなもんブン殴れや!」
不良「ハハハ……」
上司「最近のコンビニって、ああいうスペース増えたよねえ」
上司「買ったものを店内で食べていいですよ、みたいな」
部下「ええ、イートインっていうらしいですけど」
地味娘「……」
元スレ
地味娘「コンビニのイートインスペースで食事するのに憧れる」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1476717122/
ギャハハハハ… アハハハハ…
部下「ですけど、大抵ああいう不良や浮浪者の溜まり場になってるんですよね」
部下「夕方コンビニ寄ったらいた客が、夜になってもまだいたりしますし」
上司「その手の連中にとって、都合のいい場所なんだろうねえ」
上司「明るいし、空調もきいてるし、24時間やってるし……」
地味娘「……」
DQN「ところでさ、オレの先輩の知り合いに超ヤバイ人がいるらしいのよ!」
チャラ男「え、マジマジ? 紹介してくれよ!」
不良「ヤバイ人……?」
地味娘(イートインスペースで食事するのって、なんだか憧れちゃう)
地味娘(今買ったものをすぐそこで食べるって楽しそうだし……)
地味娘(だけど……ああいう人たちって怖いし……)
地味娘(あと私なんかがやったら、周囲から寂しい女の子って思われちゃうだろうし……)
地味娘(やっぱりやめとこう)コソコソ…
不良「……」
DQN「おい、どうしたよ? どこ見てんだ?」
チャラ男「ノリわりーぞ!」
不良「いや……なんでもねえよ」
また別の日――
―コンビニ―
店員「いらっしゃいませー!」
地味娘(今日はおやつ買おうかな……)
不良「……」ズゾゾゾッ
地味娘(あ、不良君がイートインスペースでカップメン食べてる)
不良「……」ズゾゾッ
不良「……」ズズッズズッ
地味娘(いい食べっぷりだなぁ……)
地味娘(私もあそこで食べてみたい)
地味娘(だけど、いつもいる二人の友だちはどうしたんだろう……?)
店員「298円になりまーっす!」
地味娘「え、と……」モタモタ
地味娘「お願いします」チャリチャリン
店員「ちょうどいただきまーっす!」
店員「ありがとうございましたー!」
地味娘「こちらこそありがとうございました」ペコッ
地味娘「……」スタスタ
不良「……」ズゾゾゾッ
地味娘「……」チラッ
不良「……」
地味娘(やっぱりあそこで食べるのはやめとこう。不良君怖いし……)スタスタ
不良「待てよ」
地味娘「!」ビクッ
不良「オメー……いつもチラチラこっち見てただろ」
地味娘「!」ギクッ
地味娘(バレてたんだ……! いつも不良君たちの方、見てたの……)
地味娘(もしかして私、殺されちゃう!?)
地味娘(逃げちゃう!? でも、もし追いかけてきたら……)
不良「お前……この席で食べたいんだろ?」
地味娘「え……」
不良「食べろよ」
不良「別に話しかけたりしねーからよ」
地味娘「う、うん……」ストンッ
地味娘(はじめてのイートイン……)ドキドキ
地味娘「いただきます」モグッ
地味娘「……」モグモグ
地味娘(今すぐそこのレジで買ったものを、店内で食べるって不思議な気分……)
地味娘(でも……)
地味娘(ちょっと楽しいかも)モグモグ
不良(食い終わったみたいだな)ガタッ
地味娘「あ、待って」
不良「あ?」
地味娘「私が一人きりになっちゃうから待っててくれたんだよね。どうも……ありがとう」
不良「いいってことよ。じゃあな」
地味娘「……」
次の日――
―学校―
不良「……」
地味娘(不良君最近一人だな……どうしたんだろ?)
地味娘(あの二人とはケンカしちゃったのかな……?)
―コンビニ―
不良「……」モグモグ
地味娘(あ、不良君だ)
地味娘「こんにちは、不良君」
不良「おう」
地味娘「隣いい?」
不良「別にいいけど……」
地味娘「……」モグモグ
不良「……」モグモグ
不良「お前、俺が怖くねえのかよ?」
地味娘「うん、平気」
地味娘「だっていい人だって分かったもの」
不良「……ふん。おめでたい奴」
不良「ところでオメー、なんで今までここを使わなかったんだ?」
不良「俺らがいたから怖かったってことか?」
地味娘「ううん、そうじゃなくて」
地味娘「なんていうか……買った物を店内で食べるってことに抵抗があって……」
地味娘「でも憧れもあって……」
地味娘「店員さんに聞くのも恥ずかしいから、モジモジしてたの」
不良「ハハッ、おもしれー奴」
地味娘「むう……」
地味娘「じゃあ聞くけど、不良君はどうしてここをよく使ってるの?」
不良「え? だって手軽じゃん」
不良「買ってすぐ食えるってのがさ」
不良「あとカフェとかだとコーヒー300円ぐらいするけど、コンビニなら100円だしな」
地味娘「意外としっかりしてるんだね、不良君」
不良「しっかりしてるっていうのか? こういうの」
地味娘「今日は楽しかったよ」
不良「……俺もまあまあ楽しかった」
地味娘「またお話ししようね」
不良「おう」
店員「あの二人……なんだか微笑ましいですね、店長」
店長「うむ」
また別の日――
―コンビニ―
地味娘「ところでさ」
不良「んー?」
地味娘「前まで一緒にいた二人はどうしたの?」
不良「ああ、あいつら?」
不良「なんかヤベー奴とつるむようになってさ……最近会ってねえんだ」
地味娘「そうなんだ……」
不良「色々ヤベー遊びを教えてくれるとかいってんだが、きな臭くてしょうがねえんだ」
不良「もしかして、そのうち犯罪でもやらされるんじゃって気すらしてるぜ」
地味娘「……大丈夫だよ!」
不良「ありがとよ」
―コンビニ―
地味娘「これ食べる?」
不良「ありがとよ」
不良「じゃあ……交換だ。これ食えよ」
地味娘「いただきまーす」モグッ
地味娘「うわっ、からっ! 辛いよ、これ!」
不良「ハハハ、引っかかった!」
地味娘「んもう……不良君ってば……」
不良「ところでよ」
地味娘「ん?」
不良「いつも俺ら、ここで食ったりしゃべったりしてるけどいいのか?」
不良「もっとちゃんとしたカフェに行きたいとか思わねえのか?」
地味娘「んーん、ここのが落ち着くし」
不良「そっか」
地味娘「それに……ここで不良君と出会えたし」
不良「……バッカ」
不良「じゃ、そろそろ出ようぜ」
地味娘「うんっ」
店員「青春ですねえ」
店長「青春だねえ」
店長「しかし、あの二人、なかなか進展しないねえ」
店員「女の子は見るからに奥手そうですが、あっちの不良も奥手みたいですね」
店長「というわけで、私が二人の後押しをしてやろうと思うのだが」
店員「ええっ! そんな余計なことしない方がいいと思いますけど……」
店長「大丈夫、私に任せておきたまえ」
店員「心配だなぁ……」
そんなある日――
―コンビニ―
不良「今日はこのチョコレート半分こしようぜ」
地味娘「うんっ」
店員(店長、マジでやるつもりかなぁ……)
店員(まあこの時間帯は客が少ないから大丈夫だろうけど……)
店員「ってあれ!? 店長じゃない!? なんだ君たちは!?」
DQN「早くレジから金出せや!」
チャラ男「出さねえと、ぶっ飛ばすぞ!」
不良「え……!? お前ら、なにやってんだ!?」
DQN「う……!」
チャラ男「ぐ……!」
不良「コンビニ強盗なんてやってどうすんだよ! マジで人生終わんぞ!」
不良「とっとと謝って、とっとと消えろ!」
DQN「ダメなんだ……」
不良「は……?」
DQN「オレらが知り合った人……最初は優しかったんだけど、マジでヤバイ人でさ」
チャラ男「オレのいうとおり強盗やらねえと、コンクリに詰めて海に沈めるって……」
不良「なにぃ!?」
不良(こいつらに悪事やらせて、金稼ごうってことなのか……!?)
不良「落ち着けよ……そんな奴は俺がブッ倒してやるから――」
DQN「うるせえっ!」
チャラ男「邪魔すんならテメェからだ!」
DQN「だらぁっ!」ブンッ
不良「このっ!」
ドカッ!
チャラ男「うおおっ!」バッ
不良「でやっ!」
バキッ!
不良「ハァ……ハァ……」
地味娘「不良君……強い……。あっという間に二人を倒しちゃった……」
巨漢「おいお~い」
不良「!?」ギョッ
不良(なんだこいつ!? 2メートルぐらいあんじゃねえのか!?)
巨漢「せっかくそいつらがオレの手足になって強盗してくれるってのに、なにしてんの?」
不良「オメーが“超ヤバイ人”って奴か……」
不良「い、いいのかよ? 高校生に強盗をやらせようとした奴が、堂々とツラ出して」
巨漢「オレはサツなんか怖くねえからな。いくらでも逃げられる」
不良「う……」
巨漢「とりあえず、テメェはここで処刑してやるよ」
不良「……ナメんじゃねえぞ!」
不良「オラァッ!」
ドカッ!
巨漢「ふん、効かねえな」
巨漢「ぬうんっ!」
ドゴォッ!
不良「ぐはぁっ!」ドガシャァン
地味娘「不良君っ!」
巨漢「蹴り飛ばしてやるよぉっ!」ブオッ
不良「だっ!」シュッ
ガツッ!
巨漢「つっ……! こいつ……オレのスネにパンチを……!」
巨漢「このガキ……ブッ殺してやるゥ!」
バキッ! ドカッ! グシャッ!
不良「が、がはっ……!」
不良(強すぎ、る……)ガクッ
地味娘「不良君、しっかりして!」
不良「バカ……逃げろ!」
地味娘「やだ!」
不良「あいつはマジでやべぇ奴だ……一緒にいたらブッ殺されるぞ!」
地味娘「いいよ! 不良君と一緒なら!」
不良「お前……!」
巨漢「おいおい、お熱いじゃねーの! ゲハハハッ!」
巨漢「だったら、この酒瓶で二人仲良く殴り殺してやる!」サッ
巨漢「死ねやぁっ!」
ブオッ!
不良「こいつだけは……俺が守る!」ガシッ
地味娘「不良君っ……!」
店長「破ァッ!!!」
ボゴォッ!!!
巨漢「ぐべっ!?」
ドゴォォォォォン!
巨漢「……」ピク…ピク…
店長「――大丈夫かね!?」
不良「あ、ああ……なんとか」
地味娘「よかった……不良君が死んじゃったらどうしようかと……」
不良「へへ……俺だって、まだまだやりたいことたくさんあるからな……」
店員「いやぁ~、店長が強盗のフリするって話だったのに、本当に強盗が来てビックリしましたよ」
店長「うむ……ウソから出たマコト、というやつだな」
店長「あのデカイ男は警察に突き出したが、君たちはとりあえず見逃してやる」
店長「だが、もう次はないぞ!」
DQN「す、すみませんでした……!」
チャラ男「ありがとうございます……!」
地味娘「不良君のお友達も……助かってよかったね」
不良「ああ、もう二度とあんなことさせねーよ」
地味娘「え、と……じゃあチョコレート食べてる途中だったし、また食べようか」
不良「お、おう」
地味娘「おいしいね!」
不良「ん……まあまあだな」
店員「あれだけのことがあったのに、結局いつも通り、か」
店長「しかし、あれでいいのだろう……」
店長「イートインでゆっくりくつろぐように、二人の仲もゆっくり進展するにちがいないさ」
<終わり>