その視線はテレビに釘付けだ
心ここにあらず状態で口端からは食べこぼしたパンクズがポロポロと零れているが本人はそれに気付いてさえいない
「ねーぇ、誰か音量上げて頂戴」
「かしこまりました、女王様」
取り巻きの女生徒が言われた通りにテレビの音量を上げた
テレビ画面はやたらキラキラとした背景に可愛らしいキャラクターが笑顔で『今日の占い』を読み上げている
それは学園都市の女子中学生なら知らぬ者は居ないといわれる大人気コーナー
恋愛方面に特化した内容で、お嬢様学校の常盤台ですら学校には遅刻してもこの占いを見る!!と豪語する強者すら現れた人気ぶりだ、ちなみに豪語した生徒は寮監により折檻された、合掌
『今日の占いはレベル別占いだよ!!』
ピクリと少女が耳をそばだてた
テレビにデカデカと表示されているのは恋愛運絶好調を表すハートマーク5つ
『レベル5の女の子は運命の出会いがあるかも、とびきりのおしゃれをして街に出掛けてみよう!!きっとステキな男の子に出会えるはず!!』
そんなやたら人数の限定された占い結果
「うっうううう運命の出会い!?いっ今の聞いたぁ?ねぇ!!運命の出会いですって!!」
「じょ、女王様…痛い、痛いです…」ガクガク
大興奮で女生徒の肩を揺さぶる彼女こそ
食蜂操祈、常盤台中学における最大派閥を率いる超能力者、精神感応系最高位の心理掌握(メンタルアウト)である
「さっそくぅ担任の記憶を改竄して街に出掛けましょーっと、運命の出会い…んふふ~…」ニマニマ
ただの夢見る乙女である
------
(喜び勇んで街に出たのはいいんだけどぉ…)
キョロキョロと見慣れた街並みを見渡す
閑散、その言葉がぴったり当て嵌ってしまうこの商店街
別に寂れているわけではない、ここは学園都市なのだ
現在時刻は午前10時やや過ぎ、つまり真っ当な学生は真面目に授業を受けている真っ最中
「もぉ~私ったらウッカリさんなんだからぁ、むぅ…どーしよっかなぁ、運命を探すのって難しいわぁ」テクテク
結局人も疎らな大通りを一人歩く
と、曲がり角を曲がった丁度その時
「きゃあっ」ドンッ
「うおっ」
反対側から歩いてきた人物に正面からぶつかってしまった
どうやら大柄な男のようでぶつかった衝撃で転びそうになった食蜂を片手で支え
「わ、悪い、ケガとかしてねぇか?」
男が慌てて声を掛けたが食蜂の耳には届かない、硬直していた
曲がり角で丁度異性とぶつかるなんて、なんともロマンチック……でもない、が今の食蜂操祈女王サマは
(これって運命の人ってことよねぇ……!!)キラキラ
なんだかもの凄い勢いで惚れっぽくなっていた
元スレ
【禁書目録】「とあるシリーズSS総合スレ」-31冊目-【超電磁砲】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1309616825/
固まったまま返事をしない食蜂を抱えたまま茶髪の男は困り果てて頭を掻く
「えーっと…だいじょーぶですかー?」
(顔は…イマイチ冴えないしお金も無さそうだけどぉ、占いでは今日運命の人に出会うって言ってたしぃ…)
ジャージにジーパンという何ともアレな格好な男をジロジロと値踏みして
食蜂は腕を組んで考え込み、ポンと手を叩いた
「まぁいいわぁ、今日一日付き合ってみてぇそれから決めればいいのよねぇ」
「はぁ?」
「ってな訳でぇ、私のこと『好きになっちゃえ~☆』」シャランラ~
まるでアイドルのようにスカートを翻してクルリと回った食蜂からキラキラとした光がほとばしると
彼女の手から生み出された特大のハートが男に打ち込まれた(イメージ映像でお送りしています)
「ちょ、えぇぇぇえええ!?」キラキラ~☆
訳も分からぬままそのハートに激突された男は混乱しながら一度フラつくと
何とか持ち直してガッチリと食蜂の手を握りしめた
「お、俺と付き合って下さいっ!!」
なんとも呆気無く、完全に簡単にあっさりと心理掌握の手に落ちたのだった
それもそのはず
男の名は浜面仕上、アイテム使いっ走りのレベル0
今日も麦野の命令で仕事用の車を調達しようと監視カメラから見えない位置に留めてある車を求めて街をうろついていた、元スキルアウトの少年である
------
「へぇ~仕上君っていうのぉ、変わった名前ねぇ」
「操祈ちゃんも変わってると思うけど…」
「そーかしらぁ?私、この名前気に入ってるのにぃ…仕上君は嫌いなのぉ?操祈、悲しいなぁ」
「そ、そんなことないよ!!とっても可愛いし操祈ちゃんにピッタリだと思います、はい!!」
「ふふふ、ありがとぉ」
腕をしっかり絡ませ浜面に寄り添うように歩く、道行く男達が『爆発しろ』『もげろ』と視線で浜面を殺そうと試みるが当の本人は幸せの絶頂である
何せ今、浜面は心の底から食蜂操祈が好きで好きで堪らないのだ
彼の目に映る彼女は完璧な女性、至高の存在、食蜂以上の女などこの世には居ない
(何か大事なこと忘れてる気がするけど…まぁ操祈ちゃんより大事なことなんて無いだろ)
しかも浜面と腕を組んで歩いている食蜂、浜面の肘に丁度良く狙ったように当たるのは
かの電撃使いをもって『本当に中学生?』と言わしめたそのたわわに実った豊かな胸
それが何の遠慮も無くむにゅっと、むぎゅっと、もにゅっと押し付けられているのだ
これで鼻息荒く興奮しない男が居るなら前に出ろ、そげぶ
(いいか浜面仕上!!ここが正念場だ、ここで鼻血を垂れ流して嫌われるか、爽やかスマイルを貫き通して操祈ちゃんに相応しい男であることをアピールするか!!)ダラダラ
耐えすぎて血涙を流しているのはスルーして頂きたい
「ねーぇ、仕上くぅん、私お腹空いちゃったぁ」
「そうだなぁ、何か食べたいものとかある?何でも奢るよ」
「ふふ、ありがとぉ、えっとぉ…美味しいフレンチのお店知ってるんだぁ、そこでもいーい?」
「もちろん、操祈ちゃんのオススメのお店かー、楽しみだなー」テクテク
食蜂に連れられニヤけ面の浜面が向かった先
「とぉちゃくー、早く入りましょぉ」
「うん、予想通り☆」
当然のように超が付きそうな高級レストランである
「仕上君だいじょーぶぅ?ちょっと人間とは思えない顔色してるよぉ?」
浜面は思索した
そーいえばレベル5である麦野も洋服や靴に関しては値段を見ずに買い物をするような人間だったと
普段はファミレスでシャケ弁を食べている姿が印象的過ぎてうっかり忘れていたがレベル5ってそーゆう人種だ、悲しいけどこれ、現実なのよね
クルリと食蜂に背を向けて壁に向かって座り込むと音速の3倍以上のスピードで財布を確認
残金2690円也
「……必要なのはプライドじゃない、現金だ」
覚悟を決めて立ち上がり食蜂に向き直る、男にはやらなくはいけない時というのがある
「あのさ…非常に言いにくいんだけど…今、持ち合わせが無くって」
「えー?そんな心配いらないわよぉ、このお店とってもリーズナブルなんだからぁ」
「そ、そうなの?」
「そぉそぉ、だからぁ早く入りましょぉ、ね?」
食蜂に手を引かれるままホイホイと店構えからして高級そうなフランス料理店に入っていく二人
お分かりかと思うが敢えて言おう
結局、レベル5の言うリーズナブルなんてアテにならないってな訳よ
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食蜂は深々と溜め息をついた
浜面が運命の人かなどと考える余地も無い、完全にアウトだ
あの後足りなかった分の金を食蜂から土下座して借りた浜面は銀行へと駆け込み、返済
茫然自失の抜け殻と化した
(予想以上のダメダメさんねぇ、とりあえずぅお財布代わりに使ってから捨てちゃおうかなぁ?)
そんな不穏な考えをしつつ公園のベンチで休憩する
「操祈ちゃん…ごめんな、カッコ悪いとこ見せて」
「うーん…そーねぇ、可愛いアクセサリー買ってくれたら許しちゃうかもぉ」
「ゆ、許してくれんの!?ならデパート行こうか、気が変わらない内にすぐ行こう!!」
と、食蜂の手を取り立ち上がろうとした浜面に人影が掛かった
その影は3人分
「私の命令無視して女と遊んでるなんて随分と偉くなったのね、そんなにブチ殺されてぇのか!?はーまづらぁぁぁああ!!」
「超キモいです、キモ過ぎて腹立たしいので超殴らせて下さい、もちろん能力有りで」
麦野と絹旗、そして若干の距離をおいて浜面を見つめるピンク色のジャージ姿
「大丈夫だよ、私はその女の子が精神感応系の能力者だって分かってる、だから鼻の下を伸ばしてるはまづらを…応援…ぐすっ…」
涙声で震える滝壺だった
「浜面の分際で滝壺さんを泣かせるなんて超不届きです!!信じられませんっ」
「ごめんね、はまづら…応援、できないかもしれない」
だがしかし、悲しいかな今の浜面の精神は食蜂の掌握下にある
「聞いてくれ、俺は操祈ちゃんに惚れちまったんだ!!だからもうお前らとは一緒に行動出来なベヒんもスっ!?」ゴスッ
「あれー?何言ってんのかちょーっと聞こえなかったにゃーん?もう一回言ってみろや、コラ」
麦野の蹴りが男の勲章を正確に潰した
「ちょっ!?麦野、ストップ!!あふっ!?勘弁して、死ぬ死んじゃうごはぁっ!?メシ食ったばっかりなんで腹止めてくだしぁ」
「聞こえねぇっつってんだよ、無能力者が、こちとらシャケ弁食わねぇでテメェの帰りを待ってたってのによぉ?いい身分よねぇ、浜面ぁぁ」ガッガッ
「あー思い出したぁ、第四位の原子崩しだぁ」
地面をゴロゴロ転がる浜面を特に助けるわけでもなく観察していた食蜂が場違いな声を上げる
「あぁ?どこのクソガキよ、アンタ」
「やだぁ、怖い顔ねぇ、あんまり怒ると小ジワが目立っちゃうからぁもっと落ち着いてお話しましょうよぉ、うふふ」
「あは、そのクソみてぇな余裕顔をぐっちゃぐちゃの泣きっツラに変えてあ・げ・る」
「きゃー、仕上くーん、怖いよぉ守ってぇ」ギュー
「俺の後ろに隠れて、操祈ちゃん!!来い、麦野!!今度こそ引導を渡してやぎゃーすいません嘘ですごめんなさいっ」
ひと通り浜面を蹴りまくった麦野は一度大きく溜め息をついて食蜂を睨んだ
「で、アンタ誰よ」
「むぅ、私のこと知らないのぉ?常盤台の食蜂操祈ちゃんでーす、心理掌握っていった方が分かりやすいかしらぁ」
「あー…第五位のクソガキちゃんね」
「っていうかぁ、仕上君って原子崩しの彼氏さんだったのぉ?」
「んな訳ないでしょ、私の所でコキ使ってる下っ端だっつーの」
「ふーん…じゃあ返すね、第四位のおさがりの男なんてぜーったいに私の運命の人じゃないものぉ」
「運命?よく分かんないけどそんな雑魚でも居ないと仕事に差し支えるの、さっさと返しなさい」
「はーい、えっとぉ…解除っと」ピピッ
食蜂が何やらカバンから取り出したリモコンを操作、小さなと電子音がして浜面がビクッと揺れた
「ハッ!?お、俺は一体何を…」
精神操作を解かれ正気に返ったらしい
浜面は自身の置かれている状況を確かめるように麦野を見上げた、とても凶悪なお顔をしていらっしゃった
「滝壺さん、どうやら浜面が超正気に戻ったみたいですよ」
「はまづら…」
声のする方に目をやれば麦野顔負けの恐ろしい形相の絹旗と何だか眉を下げた悲しげな滝壺
「もしかして…俺、ヤバいんでしょうか?」
そんな見れば分かる問いを食蜂に投げかける
残念なことに自分が何をしていたかは覚えているのだ、精神を多少操っただけで記憶等を消したわけではない
「そーねぇ、デート中にぃエッチなことばっかり考えてたのがマズいんじゃないかなぁ」
「か、考えて…ないことは無いけど!!ばっかりじゃないだろっていうか人の頭に何してくれてんだよ、アンタはぁぁあ!!」
「えぇー?操祈分かんなぁい」
「ちくしょー可愛い顔してトボケやがって!!」
バシバシ地面を叩いて八つ当たりしても時既に遅し、過去は戻せないのだ
「これから第一回超浜面をボコる会を開催しまーす」
「いえーい」パチパチ
「そんなはまづらは応援できない…」ショボーン
アイテム唯一の良心である滝壺までショックを受けているのかしょぼくれてしまっている、助けてくれそうにない…
「いや、あのね皆さん…俺は能力者のこの子に操られてただけであって…」
「超問答無用です!!吹き飛べ浜面ァっ!!」ブンッ
窒素で硬められた拳が振り下ろされ
「さんにーいちドバーン!!」ドバーン
乱された原子が光の束となって向かってくる、っていうか死ぬ
「ぎゃぁぁあああっ!?くっ黒蜜堂で何でも好きなもん奢りますからそれで勘弁して下さいぃぃいいっ!!」
「許す」
「超許す」
「応援する」
死んだのは浜面の貯金残高であった
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「運命の人を探すのって難しいわぁ」テクテク
賑やかな公園を後にした食蜂は再び街を探索し始めた
「でもぉ午後になって人も増えてきたし、きっと見つかるわよねぇ」
呑気に街を行く
そこで視界にキラリと輝くものが写り込んだ
食蜂が思わず目で追ってしまうほど異質な存在、キラキラと光の残滓を残しているかのように錯覚する
「綺麗な髪ねぇ……真っ白だわぁ」
つられるように食蜂はその白髪の男を追いかけた
------
真っ白な男は見たことの無い妙な形状の杖を突いている、……はずなのに歩くのは早かった
「ちょっ…な、何でそんなに歩くの早いのぉ…?」ゼーハー
いくら目立つ容姿をしていようと見失ってしまえば流石に追えない
食蜂は必死の早歩きで男に着いていく
と、そんな食蜂の行き先を遮るように見るからにガラの悪そうなスキルアウトが現れた
スキルアウトは3人、リーダー格らしい不良男がニヤついた顔で食蜂の前に立つ
「そんなに急いで何してんの?俺らも手伝ってあげようか?」ニヤニヤ
ナンパのつもりだろうか、こんな昼間っからお盛んなことである
食蜂は苛立ちのまま男をビシッと指差した
「あーもー!!邪魔しないでよぉ、『猿は猿らしく山にでも帰ってなさい!!』」キュピーン
「………ウキッ、ウキキ、ウキーッ」オサル
「りっ、リーダー!?どうしたんですかー!!どこ行くんですかー!?」
いつもなら迷惑料として有り金没収だが今はとても忙しい、洗脳一撃、文字通りボス猿になったスキルアウトは楽しげに跳び回りながら路地へと姿を消した
「誰かー!!バナナ買って来いっ、リーダー!!いくら歯が丈夫でも街灯は食えないッスよぉぉ!?」
それを慌てて追いかける残りのスキルアウトを鼻で笑って食蜂は小さなリモコンのダイヤルを回す
「とりあえずぅ、30分は遊んでなさい…っと、お仕置き完了ね」カチカチ
邪魔者を排除し急いで前方辺りを見渡せば
例の白髪の男はやや離れた交差点の赤信号で足止めを食らっていた、なんとタイミングの良いことだろう、これはまるで…
「……やっぱり、これって…」ドキドキ
緊張に高鳴る胸をぎゅっと押さえて食蜂はストーキングを再開した
------
男がたどり着いた先は大きな病院の前にある休憩スペース
公園と呼べるほど遊具があるわけでもなくちょっとしたベンチと自動販売機が置いてあるだけの場所だ
男が自販機で飲み物を購入し、ベンチに腰掛けたのを見届けると
一度深呼吸、そして行動を開始
あくまで偶然にも通り掛かった且つ偶然にも喉が乾いていた且つ丁度良い所にベンチがあるじゃないという風を装い、さらに自分が一番可愛らしく見える角度を保ちつつ颯爽と男の前に登場
自販機で紅茶を買って、自然な動作でベンチに座る
「……ふー」ドキドキ
とりあえずここまで作戦通り
食蜂はそーっと横目で男を見た、まず目立つのはその白髪
(これって…地毛、かしら?雪みたいに真っ白ねぇ、それに杖ってことは歩行が不自由…でもすっごく歩くの早かったわよねぇ、よく分かんなぁい)
バレないように気をつけつつ観察を続行、どうやら男が飲んでいるのはブラックのコーヒーらしい
(よくそんな苦いの飲めるわねぇ、なんだって甘い方が美味しいに決まってるのに…)
そして超重要事項、顔に目線を移す
(近くで見ると…肌も真っ白、もしかして病気なのかしらぁ?顔は………目が、赤い?)
あれ?と食蜂は思わず首を傾げた
なんだかそんな特徴を持つ人物の話を聞いたことがある
確か、それは学園都市の…
「…………オイ」
「みゃっ!?」ビクッ
物思いに耽ったのも一瞬、赤くやたら鋭い双眸が食蜂に向けられている
しかもやたら近い、眼前20cm、どうやら観察に熱中する余り無意識にグイグイ近付いていっていたらしい
「オマエ、さっきから俺を尾行して…」
「あのっ、もしかしてぇ、あなたって第一位の人ぉ!?」キラキラ
男の言葉を勢い良く遮った
食蜂は『ある情報』を思い出していた
『第一位は何らかの事件に巻き込まれ、その能力が不完全になってしまっている』
御坂美琴がハッキングを駆使して違法に極秘の情報を手にしたように食蜂も気になった情報を確実に手にする手を持っている
怪しい研究施設に出入りしている人間を洗脳し情報を外部に流させることも、隙を見て記憶を根こそぎ読み取ってしまうことも造作も無い
「えっとぉ…確か能力名は…あう、あく、あー……まぁ忘れちゃったけどぉ、あなたにも私の心理掌握、効いちゃうかもしれないのよねぇ?」クスクス
「心理掌握…第五位か…」
「第一位にもなると心に壁を作れるぐらい精神力があるのねぇ、読心も上手くいかないけど…焦り、不安、それぐらいなら感じ取れるんだからぁ」
あの第一位の心に焦りが存在している、それは心理掌握の能力が通用するということの証明に他ならない
まぁそんなことはともかく…
ガッシリと、食蜂は第一位の手を握った
「はァ……?」
あまりに突拍子も無い食蜂の行動に男がフリーズしているがそんなことは知らない、第一位つまり最強であり超金持ち、こんな優良な物件を逃す手は無い!!
(第一位…つまり強いしお金持ちなのは確実!!顔は…ちょーっと怖いけど充分カッコいい部類だし、真っ白な髪なんてとっても珍しいし目立つでしょ、あ、私より肌が白いのは少しマイナスだけどぉ…)
なんという人物だろう、これぞ第五位の食蜂操祈に相応しい!!浜面仕上?誰だっけ?
「大四喜・字一色・四暗刻単騎で五倍役満!!運命の人に大決定間違い無しよね!!」ビシッ
「流石レベル5…マトモじゃねェな…」ハァ
食蜂の謎テンションに第一位が大きく溜め息をついて、乱暴に手を引き剥がした
「さっさとヤるぜ、格下、あのガキが戻ってくる前に終わらせてやる」
「ふふふ…強がっちゃってもぉ私には焦ってるのバレバレなんだってば」ニマニマ
「ハッ、確かめてみろよ、俺が弱くなった所で別にオマエが強くなった訳じゃねェってなァ」カチッ
「最大出力でいっくわよぉ、私のこと『好きになっちゃえ~☆☆』」シャランラ~
手を高々を挙げ、まるでダンスの振り付けのように食蜂がクルリと回るとキラキラとした光が迸る
パチリと可愛らしいウィンクをした目元から生み出された超特大のハート(イメージ映像で(ry)が第一位にブチ当たり食蜂は勝利を確信する
だが、『能力が不完全な』第一位は
「反射ァ」キュピーン
避けるとかそーゆう次元の人間じゃないのだった、ぴゅーんと放った時と同じ速度で特大ハートが返ってくる
「ちょ、ちょちょちょっとぉ!?なんなのよそれぇっ!?うみゃぁぁぁあっ!!」ズドォォン!!
「ェ?爆発?」
特大ハートは食蜂に当たった後、謎の大爆発を起こしたのだった、予想外過ぎて第一位までもがキョトン顔である
ハジけた中からは小さいハートが大量にポポポポ…と噴き出ては食蜂に当たって消えてゆく、見た目通りに解釈するならあのハート一つ一つに『惚れ薬』的な効力が含まれているようだ
「ま、まさか…」
そんな危険物質を大量に食らえば当然のことながら、と思ったのだが食蜂は地面に座り込んでしまって動く気配は無い
自らの能力が通用しなかったことが堪えたのだろうか俯いてしまってその表情は窺い知れない
……おかしな挙動、無し
第一位、一方通行は心から、ガチで、もう心底、安堵の息を深ーくついた
「能力者本人には効かねェのか…」ホッ
もしかして能力で惚れられてしまうという非常に面倒な展開が待ち受けているのではと危惧していた一方通行の安堵といったら、そりゃ凄まじいものだった
座り込んで俯いたままの食蜂に近付く
「よォ、無事だろォなァ?これに懲りたら俺にケンカなンざ売ってくンじゃ…」
と、丁度病院から出てきた小さな影がこちらに向かって走ってくる
「おまたせーってミサカはミサカはお迎えのあなたに調整バッチリアピールも兼ねて元気いっぱいに駆け寄ってみたり!!」
両手を広げて走り寄ってくる打ち止めの姿に一方通行は肩の力を抜いた、彼の焦りの原因が打ち止めであったのだ
自分には心理掌握には効かずとも打ち止めになら?いつ病院から戻ってくるかと懸念していたのだった
その安堵もつかの間
スルリと一方通行の首の二本の腕が回された
「ン?」
見れば、何やらうっとりと目を細めて熱っぽい視線を送ってくる食蜂
うん、もうある意味予想通りといえよう、この展開
「んふふ~、第一位さまぁ…」ウットリ
ググッと食蜂の顔が近づき
一方通行が顔を引こうにも腕がガッチリ回っている、逃げられない
「……心理掌握さァン?ちょっと落ち着いて話を……ンむっ!?」
そしてとうとう、唇が重なった、そりゃもうしっかりと、バッチリと、打ち止めの目の前でキスが交わされた
「みぎゃぁぁぁぁああ!?何が何でどうなってっていうかあなたは誰っ!?ってミサカはミサカはぁぁ!?」
一方通行の肩を掴んで必死になって引っ張るも当の本人は絶好調大混乱中、キョトンとした顔のまま大人しくされるがままである
「あーなーたー!!しっかりしてぇ、っていやぁぁぁあ!?角度を変えて濃厚っぽいキスするのやめてぇぇ!!ミサカだって寝てる隙にほっぺたにちゅーしたことしか無いのにぃ、う、うわぁぁん!?舌入ってない?コレ、大人のキスじゃない!?ずーるーいー!!ミサカもするぅぅ!!」ギャーギャー
打ち止めの猛烈な抗議もどこ吹く風
食蜂は僅かなリップノイズを残して唇と離すとオマケと言わんばかりにペロリと一方通行の唇を舐めた
「第一位様はぁ、運命って信じるぅ?」
「はーなーれーてーよーってミサカはミサカは訴えてみたりぃ!!」
「あのね、私、今ね、すっごくドキドキしてるのぉ…これってきっと第一位様が私の運命の人だってことだと思うのよぉ
ねーぇ、触って確かめてぇ…」
「聞いてるのーってミサカはミサカはご立腹!!というか誰?この人誰?浮気?浮気なのってミサカはミサカは問い詰めてみるー!!」
正面からは食蜂、背面からは打ち止め
修羅場の2.1chステレオサラウンドに一方通行は口元をヒクつかせた、ヤッベェ学園都市最高の頭脳がまったく機能しやがらねェ
挙句、食蜂は一方通行の手をそっと持ち上げ自分の胸へと押し付けた
「分かるぅ?とーってもドキドキしてるの、こんなの初めてなんだからぁ…責任、取ってよねぇ」
「せ、責任…?」
「そーよぉ、こうやって私のことぎゅーって抱き締めて…」
胸に置いた手をそのままに食蜂が身体を擦り付けるように一方通行に密着させた、一方通行の薄い胸板に食蜂の豊満な乳房が押し付けられる
「こっちも熱くって堪んないよぅ…第一位様ぁ…」
さらにもう片手を先程と同じように持ち上げられるとヤケに短いスカートに隠れた太ももへと誘導された、胸同様に発達の良いその足は極上の肉付きと肌触り
ブツン、と
何かが切れた
これが普通の男であれば切れたのは理性だっただろう、天下の公道でR18、アンチスキルの大盤振る舞いになる
だが一方通行は生憎と普通とは無縁の存在である
「」カチッ
「ひゃんっ!?」
チョーカーを操作、食蜂を引き離すとスックと立ち上がり背中に張り付いてわんわん泣いていた打ち止めを小脇に抱えた
素早く携帯電話を取り出してどこかへ電話
そして
『もしもしー?みんなのアイドル、上条さんですよー?』
「三下ァァァ!!今から行くから右腕を取り外し式にして準備しやがれェ!!」
『ちょ!?いやいや、上条さんの右手は便利なアタッチメントタイプではございませんことよ!?』
電話相手の悲痛な叫び声が聞こえ、同時に一方通行が足元のベクトルを操作
弾丸めいた速度で逃げ出した
いや、正確には食蜂に掛かっている能力を解くために上条の元に向かった、が正しい
だが食蜂の洗脳は完璧、掛かったのが本人であれ完璧、食蜂から見れば運命の相手が自分から逃げ出したという認識にしかならないわけで
「ちょっとぉ!?第一位様はそんな子供がいいわけぇ!?いいもん!!あなたがロリコンだったとしても私の改竄力とこのナイスバディでぜーったいに正しい道に戻してあげるんだからぁ!!」
とんでもない誤解を受けたが食蜂の元に戻って正している時間は無い、幻想殺しでサクっと一撃だ、それでこのフザケタ展開とはさよなら出来る
一方通行は自身の出せる全速力で上条の居る学生寮へと向かった
ちなみに小脇に抱えられた打ち止めは食蜂のキスに上書きすべく一方通行の唇をどうやって奪うかとミサカネットワークで相談し、大炎上を起こしていた
------
【掌握】セロリが唇を奪われた!?緊急ミサカ会議第7回【通行?】
1 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします ID:Misaka10980
ちょ、6スレが一瞬で埋まった…だと…!?
隠れセロリ派多過ぎだろjk
2 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします ID:Misaka18791
みさきち…
絶対に許さない
3 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします ID:Misaka20001
前スレ>>1000
既成事実?それをつくればあの人はもうミサカだけのものってことになるの?
どうやって作ればいいのー?教えてよー
4 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします ID:Misaka20000
☆とっても簡単!!既成事実の作り方☆
まず、セロリたんを全裸にします、演算能力をボッシュートしちゃうのがベスト♪
次に運営様も産まれたままの姿になくぁwせdrftgyふじこlp;
5 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします ID:Misaka17600
見敵必殺
サーチアンドデストロイ
6 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします ID:Misaka12677
スネークかっけぇぇぇぇぇ
7 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします ID:Misaka19501
既成事実については後ほど手取り足取りお教えしますので運営は心理掌握の動向に注意して下さい
8 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします ID:Misaka12999
>>7
>>7
>>7
9 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りします ID:Misaka20001
>>7
了解!!
しっかり見張ってるからみんなも落ち着いてね?鯖がまた危ないっぽい
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一方その頃、食蜂操祈本日の犠牲者1号は
黒蜜堂本店
「……ひひひひ、俺は明日からどうやって生活すればいいんだ…」
「いやぁ黒蜜堂でお腹いっぱい食べられる日が来るなんて、今日は超吉日です」プハー
「あ、すいませーん、プリンを…3つ追加でー」
「むぎの、私もプリン食べたい」
「おっけー、んじゃ4つ下さーい」
「ううん、私も3つ食べたい」
「た、た、たたたた滝壺ぉぉぉお!?お怒りは分かりますが勘弁して頂けないでしょ…あがががが!?」
「超うるせー、浜面は黙って金を出してりゃいいんですよ」
「わ、分かったから俺の足を能力付きで踏みつけるのはやめろぉぉぉお!!」
「はまづら、特大フルーツパフェ追加してもいいかな?」ニコッ
「(目が全然笑ってねぇよ、滝壺ぉ)……ど、どうぞ」
「ありがと」
「あれー?プリンってこんなにちっちゃかったっけ?あれー?もう一個下さーい」
着実に浜面仕上は死に向かって追いやられていた、主に滝壺に
「あれー?プリンってこんなにちっちゃかったっけ?あれー?もう一個下さーい」
「そういえば超私としたことがプリンを食べていませんでした、えっと…小さいから3つはいけるでしょうかね…」
やっぱりアイテム全員に
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「」ゼーハー
「いやぁ…まさか一方通行にお姫様抱っこされる日が来るとは…今日は厄日だな」ゼーハー
「そりゃ俺のセリフだ、クソったれ…」
あの後、上条当麻を連れて普通に戻ろうにも時間が掛り過ぎると判断、いっその事食蜂を背負って上条の所へ行けば良かったと気付いたが後の祭りだった
結局打ち止めを抱えたまま上条をお姫様抱っこで運んだ、無論人の目に触れないような道(というか空やら屋上)を通ったのだが精神的な被害により凄まじい自己嫌悪に陥っているのであった
そして戻って来た先の食蜂は一方通行が飲みっ放しにしていた缶コーヒーを大事そうに握り締め、ベンチにちょこんと座っていた
一方通行の姿を見や否や嬉しそうに駆け寄って来る
「戻って来てくれたのぉ?やっぱり、私達って運命の赤い糸で繋がってるのねぇ!!」キラキラ
「今すぐその赤い糸とやらをブチ切ってやらァ、行け三下ァ!!」
「上条さんをポケ○ンみたいに戦闘に出すのはやめてもらえませんか!?」
上条が右手を食蜂に向けて構える、別に殴るわけではない、能力が付加されてしまっている頭部に触れれば幻想殺しは発動する
「んー?あなただぁれ?第一位様のお友達かしらぁ?」
「ぐっ!?な、なんという無垢な瞳…!!なぁ一方通行、この子に好かれるってだけなら別に害は無いだろ?」
「いいわけねェだろ!!つーか心理掌握だってこンなもン本意じゃねェンだ、さっさと治してやれ、あと後ろで野獣みてェな
目をしたクソガキがこっち見てンだ、俺の貞操がヤバい」ガクブル
「ミサ、ミサカは…ミサ、ミ、み…」コフーコフー
「ら、打ち止めがダース・ベイダーみたいな呼吸音になってる!?そ、それはヤバいな…」
「何するのぉ?右手がどうかしたの?」
「ちょーっと失礼しますよー、痛くないですからねー」
上条の幻想殺しが食蜂の頭を撫でる、パキーンとまるでガラスが砕けるような音
「手応え有り!!これで能力の効果も消えたはずだ」
「な、なんだったのよぉ?なんだか頭がスッキリしたみたいな…」
何が起こったのか分からず食蜂は自分の頭にポンポンと触れながら首を傾げた
その様子に一方通行は本日何度目かの溜め息をついて食蜂の前に立つ
「ったく、手間掛けさせやがって、まァこれでようやくマトモに…」
「第一位様ぁ、せっかく戻ってきたんだし、このままデートに行かなーい?私、お揃いのリングが欲しいなーなんて、きゃー恥ずかしいー!!」ギュー
あっさりと、まるで何も無かったかのように食蜂は一方通行に抱き着き、甘えるように擦り寄ってきた
「……三下ァァァ…」ギギギ…
「なんでそこで俺を見るんだよ!?ちゃんと幻想はぶち殺しましたよー?パキーンっていってたろ、聞いたろ?」
「じゃあ何で心理掌握はそのままなンだよ!?オマエ、右手しか役に立たねェくせに、今度は右手まで本体同様にバカになっちまったンじゃねェのか!!あァ!?」
「ば、バカって言うなー!!バカだってバカって言われたら傷付くバカだっているんでせうよ!?」ウワーン
「自分でもバカって認めてるじゃねェか!!どンな自虐だ!!」
「あ、分かったぁ、さっき自分に掛かった能力が消えたのね」
「だから消えてねェからオマエは……ン?消えた?」
「どんな力かは知らないけどぉ、私の心理掌握の効果が消えてるみたい、それでそんなにケンカしてるのぉ?怒っちゃだめよぉ、せっかくの綺麗な顔が台無しだぞ☆」
硬直、幻想殺しは正常に機能し心理掌握の効果は消えた
つまりそれは
「オイ…それって…」
「もう第一位様ったら能力のせいで私がアピールしてると思ってたの?あれは最初から好意を持ってる人には効かないの、だから私は最初からずーっと能力なんて効いて無いのよぉ?」
「え?何?上条さんはついていけないんでせうが…」
「そ、それって…それって、この女の人は本気であなたのことが好きってこと!?ってミサカはミサカは驚愕の事実に身を乗り出してみる!!」
「んふふ~、証明して見せよっかぁ」
食蜂は放心している一方通行の腕をグイと引っ張り、その頬にキスをした
「み、みぎゃぁぁあ!!み、ミサカもする!!ミサカもあなたにちゅーするぅぅ!!」グイグイ
「うわっ!?な、何しやがるクソガキィ!!ちょ、ま……」
杖だけではバランスを取りきれず一方通行が後ろのベンチに引っ繰り返り、その隙に打ち止めが『既成事実』とやらを作るべく一方通行の服を捲り上げた
「えっと…20000号が言ってたのは、まずあなたを脱がして…」
「わぁー!!ほんとに肌も真っ白なのねぇ、思わずぅキスマークだらけにしたくなっちゃうぐらい綺麗な肌ね☆」ペロリ
「ひっ!?上条!!ボケーッっと見て無いで助けやがれェェェ!!」
「あ、これ助ける場面なの?てっきりそーゆうプレイなのかと…」
若干距離を取って既に帰るつもりだったらしい上条
ここで上条に帰られるととても危険だ、悲しいことに打ち止めが敵に回った場合の一方通行はほぼ無力、打ち止めの意思一つで演算は取り上げられ抵抗すら出来なくなる
しかも能力が使用不可になった時は食蜂の心理掌握を跳ね返す術が無くなるわけで、正にやりたい放題、無双にも程がある
最強の彼にとって、ある意味一番恐ろしい組み合わせがそこに存在していた
「不幸だァァァあああ!!」
思わず出た叫び声は奇しくも、今の一方通行の状態を示すのに最も適した言葉だった
820 : VIPに... - 2011/07/24 22:51:44.96 KLOFmowY0 15/17以上です
お目汚し失礼しましたー
あと上条さんの扱いが悪くてすいませんでした
821 : VIPに... - 2011/07/24 22:58:14.60 oimdrrLDO 16/17あれ続きは?
824 : VIPに... - 2011/07/24 23:09:57.64 KLOFmowY0 17/17え?続き?
ど、どなたか書いて下さい
私も読みたいです