ある無人島にて――
教師「今日は皆さんに、ちょっと生かし合いをしてもらいます」
ザワザワ…… ドヨドヨ……
元スレ
教師「今日は皆さんに、ちょっと生かし合いをしてもらいます」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1465391386/
茶髪「生かし合いって、どういうことだよ! 先生!」
委員長「私たち、中学3年最後の修学旅行中だったのに……」
教師「ククク……全てはゲームのプログラムだったのだよ」
教師「君たち30名の生徒は、全員ゲームに参加してもらう」
マッチョ「ゲームだと!?」
メガネ「つまり、この修学旅行はボクたちをゲームに導くための罠だったんですね?」
教師「さすがメガネ君、理解が早くて助かるよ」
無口「…………」
茶髪「こんなクソゲーム、いったい誰が考えたっていうんだ!」
教師「それはもちろん……おそらく政府だ」
茶髪「政府だと!? 政府がどうしてこんなことを!?」
教師「たとえば……若者がどれぐらい無人島で頑張れるか知りたい、とか」
茶髪「そんなことで……ッ!」ギリッ…
弱虫「ち、ちなみに……いつまでなんですか?」
教師「ククク……未定だ」
弱虫「ひいいっ、そんなぁぁっ!」
教師「だが、永久というわけではない……ということだけは保証しておこう」
教師「他になにか質問はあるかね?」
委員長「はいっ!」
教師「どうぞ」
委員長「先生はこの後、一人だけ帰宅しちゃうわけですか?」
教師「いや……先生も参加する」
教師「こんな楽しいゲームに……参加しない道理はないからね」
茶髪「くっ、あんた狂ってる! いい先生だと思ってたのに!」
教師「ククク……いくらでもほざくがいい」
教師「おしゃべりはここまで! ゲーム・スタートだ!」
ザワザワ…… ガヤガヤ……
茶髪「本当に始まっちまった……どうする、委員長!?」
委員長「とりあえず、水と食料を確保しなきゃダメね」
メガネ「この島は砂浜と森で構成されているようだね」
メガネ「ボクは食べられる野草やキノコに詳しいから、森で採取してくるよ」
茶髪「俺も手伝うよ! 体力には自信あるから!」
マッチョ「オレも行くぜ!」
委員長「女子は……水を確保しましょう!」
ツインテール「そうですわね。お水がないと、死んでしまいますもの」
地味娘「は、はい……!」
デブ女「がんばろぉ~!」ブフッ
弱虫「怖いよぉ……イヤだよぉ……誰か助けてよぉ……」ガタガタ…
チャラ男「おめーwwwww相変わらず情けねーなwwwwwwww」
無口「…………」ピンッ
チャラ男「なにやってんのwwwwwwwwww」
無口「ゲームに乗るかどうかコイントスした」
チャラ男「結果はwwwwwwwwww」
無口「乗る」
チャラ男「乗っちゃうんだwwwwwwwwwww」
不良「ケッ、こんなクソみたいなゲーム、やってられっかよ!」
不良「スケ番、行こうぜ!」
スケ番「うん、アタイらはアタイらで脱出の方法を考えようよ!」
不良「おう!」
森の中――
茶髪「メガネ、この草は食べられるか?」
メガネ「それは食べられないね、毒があるよ」
マッチョ「こいつはどうだ!?」
メガネ「それは……食べられる」
マッチョ「よっしゃ!」
茶髪「よぉし、この調子で食べられる植物を探すんだ!」
委員長「ダメ! どこ探しても海水ばかりで、真水なんかどこにもないわ!」
ツインテール「どうすればよろしいのかしら……」
地味娘「あの……」
委員長「地味娘さん、どうしたの?」
地味娘「私……泥水をろ過してキレイな水にする方法、知ってます」
委員長「ホント!?」
地味娘「うろ覚え……ですけど」
デブ女「ものは試しよぉ! やってみましょぉん!」
弱虫「誰か助けて……こんなとこで死にたくないよぉ……」
チャラ男「おめー少しは働けよwwwwwww俺もなんもしてねーけどwwwwwwww」
無口「…………」ズルズル…
チャラ男「無口wwwwwwなに引きずってんのwwwwwwww」
無口「イノシシを倒してきた」
チャラ男「この島イノシシいんのかwwwwつかどうやって倒したwwwwwwwwwww」
無口「素手」
チャラ男「素手てwwwwwwパネェwwwwwwwwwww」
弱虫(無口君すごいなぁ……ぼくも頑張らなきゃ!)
夜――
ワイワイ…… ガヤガヤ……
茶髪「ふう、だいぶ食料が集まったな!」ドサッ
委員長「こっちも地味娘ちゃんのおかげで、水を確保できたわ!」チャプン
地味娘「私のおかげだなんて……」
ツインテール「あなたのこと地味な子だと思っていたけど、見直しましたわ!」
メガネ「しかし、さすがに生で食べるのは危険すぎる。火が欲しいところだね」
教師「ククク……火なら任せろ」ゴシゴシゴシ
教師「こうして木と木をこすり合わせれば……」ゴシゴシゴシ
教師「…………」ゴシゴシゴシ
教師「おかしいな……つかない……」ゴシゴシゴシ
マッチョ「なにやってんだよ、先生! オレに貸してくれ!」
マッチョ「オラァァァァァッ!」ギャルギャルギャル
ボワァァァァァッ
マッチョ「よっしゃあ! 火がついた!」
教師「ククク……さすがだ。このゲームに選ばれただけのことはある」
マッチョ「こんなクソゲームで死にたくねえからな!」
マッチョ「必ず生かし合いを達成して、全員で優勝してやるぜ!」
茶髪「よし、火ができたから、さっそく調理を始めよう!」
ワイワイ…… ガヤガヤ……
茶髪「おお、イケる! うん、ウマイ!」
委員長「煮たり焼いたりすれば、案外食べられる味になるものね」
地味娘「そうですね!」
デブ女「おかわりぃ!」
ツインテール「デブ女さん、食べすぎですわよ」
マッチョ「イノシシ肉うめえ!」
無口「…………」
チャラ男「この草ゲロマズwwwwwww生煮えwwwwwwwww」オエッ
弱虫「ぼくも明日からはきっと役に立ってやる……!」
ワイワイ…… ガヤガヤ……
少し離れた地点にて――
不良「うう……あいつらメシ食ってやがる……」グゥゥ…
スケ番「ねえ、アタイらもあいつらに入れてもらおうよ」
不良「バカいえ! 今さらそんなこと……!」
スケ番「でもアタイらだけじゃ、生きていけないよ!」
不良「……んなことねえって!」
教師「ククク……強がるのはもうやめたらどうだい?」
不良「せ、先公!」
教師「もう分かっただろう? このゲームで勝ち残るには協力するしかないと」
教師「二人だけでこの島でやっていくのはあまりにも無謀すぎる」
不良「ぐっ……!」
スケ番「アンタ……なんでそんな助言してくれるのさ!」
教師「当然だろう? 私は君たちの担任で、君たちと同じゲーム参加者なのだからね」
不良「だけどさ……今さらあいつらが俺らを受け入れてくれるのかよ?」
不良「俺らは自分からグループを抜け出したってのに……」
教師「ククク……受け入れてくれるさ」
教師「他の全員、特に茶髪君は君らのことを心配していたよ」
教師「それに彼らだって、君たちの力を欲しているのは間違いないのだから」
不良「……分かったよ。戻るよ」
スケ番「うん、一緒に戻ろう」
不良「みんな……すまねえ」
スケ番「アタイらも仲間に入れてくれよ」
茶髪「よかった、戻ってきてくれたのか! 心配したよ!」
委員長「もちろん大歓迎よ! 仲間は多い方が心強いもの!」
茶髪「これで全員が一致団結した!」
茶髪「幸い、この島は食料も豊富にあるし、生きていけない環境じゃない!」
茶髪「みんなでこの生かし合いのクソったれゲームを生き残るんだ!」
オーッ!!!
教師「ククク……とりあえず初日は無事終了、だな」
二日目――
茶髪「今日も男子は食料を探しに行こう!」
マッチョ「そうだな!」
メガネ「今日は昨日よりも探索範囲を広げてみようか」
弱虫「今日はぼくも手伝うよ!」
茶髪「ありがとう! だけど無理するなよ!」
不良(昨日はなにも活躍できなかったからな……なにかデカイことしねーと!)
スケ番「あ」
委員長「どうしたの? スケ番さん」
スケ番「委員長の服、ちょっとほつれてるね。縫ってあげる」
委員長「わぁっ、ありがとう!」
地味娘「スケ番さん、裁縫上手なんですね」
ツインテール「やりますわねえ」
デブ女「アンタって案外家庭的な女なのかもねぇん」
スケ番「ほ、褒めたってなにも出やしないよ!」
森の中――
不良「うおおおおおおおおおおおお!」ザクッザクッザクッ
茶髪「不良、なにやってるんだ?」
不良「決めたんだ……俺、みんなのために温泉掘るって!」
茶髪「そうか……頑張れよ!」
不良「おう!」
教師「このキノコ食べられる?」
メガネ「食べられません、猛毒です。先生、もっとしっかりして下さい」
教師「すまん……」シュン
無口「アナコンダ仕留めてきた」ズルズル…
チャラ男「ちょwwwwwwwwwなんなのお前wwwwwwwwwww」
その夜――
茶髪「今日もいっぱいメシを持ってきたぞ!」
委員長「私たちも水をいっぱい確保できたわ!」
弱虫「ぼくも虫には詳しいから、食べられる虫をいっぱい取ってきたよ!」ワサワサ
チャラ男「弱虫だけに虫に詳しいってかwwwwwやかましいわwwwww」
弱虫「食べてみてよ、おいしいよ」ワサワサ
チャラ男「どれどれwwwwwww嘘だったら泣かすからwwwwwwwww」パクッ
チャラ男「案外うめえwwwwwwwww見直したぜwwwwwwww」
弱虫「でしょ!」
五日目――
不良「よっしゃああああああああ!!!」
ブッシャァァァァァァァァァァ
不良「ついに温泉を掘り当てられたぜ!」
茶髪「すげえ! ホントに掘り当てたのかよ!」
メガネ「これでやっと、本格的に体を洗うことができるね」
マッチョ「よっしゃ、みんなに知らせてくる!」
不良(へっ、これで初日の借りを返上できたぜ!)
委員長「あ~温泉、気持ちいいわ」チャプン…
地味娘「気持ちいいです……」
ツインテール「生き返りますわぁ~、不良さんには感謝ですわぁ~」
スケ番「なんたってアイツはアタイの男だからね!」
デブ女「あたしが入ると一気にあふれちゃうわねぇん」ザバァァァァァ
マッチョ「ぐへへ、目の保養になるぜ……」
チャラ男「だなwwwwwwwwwデブが余計だけどwwwwwwwwww」
茶髪「覗きなんてよせよ……バレたら殺されるぞ」
マッチョ「とかなんとかいってお前もちゃっかり見てるじゃねーか!」
茶髪「これは……女子になにかあった時のためにだな……」
委員長「あーっ! あいつら覗いてるわ!」
地味娘「ええっ……!」
ツインテール「乙女の入浴を覗くなんて最低ですわ!」
委員長「なにしてんのよ、あんたら!」
チャラ男「これはそのwwwwwwwwwww」
マッチョ「つい出来心で……」
茶髪「俺はマジでお前らのことが心配で……!」
デブ女「まとめてあたしのボディプレスで押し潰してやるわぁん!」バッ
ズシンッ!!!
十日目――
地味娘「皆さんの服がボロボロになってきたので、葉っぱでお洋服を作りました!」
地味娘「スケ番さんも手伝ってくれたんですよ!」
スケ番「ふ、ふん……アタイは何もしちゃいないさ」
茶髪「おお、すごいな! 本当に服みたいだ! よく作ったな!」
委員長「すっごーい!」
メガネ「これはなかなか動きやすい服ですね」
教師「ククク……君たちはファッションデザイナーなんかに向いてるのかもしれないな」
地味娘「ありがとうございます、先生……」
スケ番「アタイがデザイナー……!?」
不良「目指せよ! 応援してやっから!」
無口「…………」ザバァッ
チャラ男「うわwwwwwwwお前どこいたのwwwwwwwwwww」
無口「海でサメを狩ってきた、フカヒレにする」
チャラ男「お前本当に中学生かよwwwwwwwてか人間かよwwwwwwwwwwww」
二十日目――
弱虫「ハァ、ハァ、ハァ……うう……」
茶髪「しっかりしろォ!」
チャラ男「死ぬなよ! また虫を食わせてくれよ!」
マッチョ「今日でもう20日だ……体を壊す奴が増えてきたな……」
教師「みんな、大丈夫か!?」ガサガサ
茶髪「先生!?」
教師「森の中で、薬になりそうな植物をいっぱい取ってきた! メガネ君、鑑定を頼む!」
メガネ「分かりました、お任せ下さい」クイッ
弱虫「さっき食べた草のおかげで……だいぶラクになったよ……」
チャラ男「よかったなwwwwwwwwww」
メガネ「だけどしばらくは安静にしていた方がいいだろうね」
茶髪「先生……あんたは俺たちをハメた張本人だけど、今は感謝してやるよ」
教師「ククク……どういたしまして」
委員長「一人の犠牲者も出さず、みんなで生かし合いましょう!」
三十日目――
茶髪「よーし、今日もみんなで食料を獲りに行こう!」
マッチョ「おうっ!」
弱虫「ぼくもだいぶよくなったから、参加するよ!」
チャラ男「無理すんなよwwwwwwwwwwwww」
委員長「――あら? なにか音が聞こえない?」
バババババ……!
バババババ……!
ツインテール「この音は……ヘリコプターですわ!」
地味娘「本当ですね、あれはヘリコプターです!」
不良「船も来てるぜ! ありゃ救助船だ!」
スケ番「ってことはやっとゲーム終了なんだね!?」
メガネ「ええ、ボクたちはゲームをクリアしたんですよ!」
無口「…………」
茶髪「やったぁーっ! 俺たちは生かし合いを達成したぞぉーっ!!!」
教師(た、助かった……)
こうして31名は全員、島から脱出することになった。
ワイワイ…… ガヤガヤ……
茶髪「ゲームが始まった時はどうなることかと思ったけど、なんとかなったな!」
委員長「そうね、最初はこのまま死んじゃうんじゃ、って思ったし」
マッチョ「終わってみれば悪くない経験だったぜ!」
メガネ「勉強が多少遅れてしまいましたが……得がたい体験ができましたね」
弱虫「ぼくはもう、こんなの二度とゴメンだよ……」
ツインテール「全くですわ!」
地味娘「だけど私も……少し楽しかったです。みんなと仲良くなれましたし……」
美女「さ、みんな、家に帰りましょぉん!」
マッチョ「わっ、すっげえ美人! 誰だよお前!」
美女「あらひどい、あたしはデブ女よぉん!」
マッチョ「お前、痩せるとそんなに美人だったのかよ!」
スケ番「このゲームで、ますますアンタのこと好きになっちゃったよ」
不良「へへへ……俺もだよ。愛してるぜ……」
チャラ男「ところでさwwwwww聞きたかったんだけどwwwwwwwww」
無口「…………」
チャラ男「お前ゲームに乗らなかったらどうするつもりだったんwwwwww」
無口「一人で泳いで家に帰るつもりだった」
チャラ男「お前ならやれそうだから困るwwwwwwwwwww」
生徒たちは無事、非日常から日常へと帰還を果たした――
――
――
記者「このたびは災難でしたね」
記者「旅行会社の手違いで、1クラス丸々無人島に置き去りにされてしまうなんて」
教師「ええ、まったくです」
記者「ですが、あんな極限状況の中、よく生徒たちを統率することができましたね?」
教師「私自身、正直パニックになりそうだったのですが……」
教師「これはきっとゲーム……ゲームか何かなんだ、と自分を奮い立たせました」
教師「生徒達にもこれはゲームなんだ、生かし合え、と呼びかけて……」
教師「それが結果的に犠牲者を一人も出さなかったことに繋がったのかな、と思ってます」
― 終 ―