1 : 以下、名... - 2016/07/24 01:42:15.22 vaNuVgR90 1/25

あかりちゃんお誕生日おめでとう、という趣旨のSSがなぜか2つ出来てしまったので、今回はそれらをまとめて投稿します

そんなワケでまず『京子「プレゼントは奇跡の魔法」』を次レスから

元スレ
京子「プレゼントは奇跡の魔法」 / 結衣「ほんのり甘い、ブラックコーヒー」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1469292134/

2 : 以下、名... - 2016/07/24 01:42:34.39 vaNuVgR90 2/25


もうすぐ日付が変わる。
1年間、どれだけこの日を待ちわびていたことか。

私の大切な幼馴染にとって、記念すべき1日。
それが、今年もやってくる。







「あかり、誕生日おめでとー!!!!!」

「えへへ。ありがとう、京子ちゃん」




3 : 以下、名... - 2016/07/24 01:43:00.35 vaNuVgR90 3/25


「まさかこうやって、日付を跨いですぐにあかりの誕生日をお祝いできる日がくるなんてなー」



電波時計が刻む針の音が告げる、午前0時。

私の部屋でテーブルを挟んで向き合う私たちは、満面の笑みを浮かべた。
あかりもすっかり夜更かしに慣れてしまったものだ。
というのも、一緒に遅くまで遊ぶことが増えたからなんだけど。
詰まるところ、私のせいなんだけど。



最初は母親や、結衣やちなつちゃんにもかなり怒られた。
あかりの早寝は健康でいる上で大切なことだから……とか何とか。
事実、私だって罪悪感の1つや2つないワケじゃない。
あかりとこうして2人で会うようになってからも、早寝なのは変わらずにいてほしかったところだった――。
そのことは、否定しない。




4 : 以下、名... - 2016/07/24 01:43:28.85 vaNuVgR90 4/25


とは言ったものの。



「えへへ。あかりだってもう子供じゃないんだよ」



実はあかりだって満更でもなさそうな心中を口にしてくれるのだ。
あかりも、大人への仲間入りが……なんて言いながら、私と一緒に夜中まで過ごすようになった。
それを繰り返すうち、9時を過ぎても半眼を向いたあの怖くて可愛らしい顔をすることがなくなっていった。
今では、私が先に寝落ちして布団をかけてもらうなんてことも少なくないのだった。


5 : 以下、名... - 2016/07/24 01:44:01.00 vaNuVgR90 5/25


「京子ちゃん」

「ん?」

「この1年間も、またよろしくお願いします」



「ふふっ。あかり、それ年明けの挨拶みたいだよ」

「あっ」



照れくさそうに微笑むあかり。

……早いけど、前言撤回。
やっぱりまだまだ子供っぽいところもたくさんあるかも。




6 : 以下、名... - 2016/07/24 01:44:39.94 vaNuVgR90 6/25




ま、そういう話はおいおいするとして……。



「それじゃあかり、お待ちかねのプレゼントタイムだ!!」

「今年もプレゼント、あるんだねぇ」

「そりゃあモチのロンよー!」

「わぁい、何だろう……?」


7 : 以下、名... - 2016/07/24 01:45:06.65 vaNuVgR90 7/25


「じゃじゃーん!!今年のプレゼントは、これだー!!」



私は部屋の箪笥を開き、隠していたそれを取り出して、テーブルの上に置く。
その正体に、あかりは少し呆気に取られているようだった。







「これって、話題boxじゃ……」

「見た目はね。今日のこの箱は、あかりに奇跡の魔法をかける箱だ!」

「奇跡の……魔法……??」

「……」

「……」



……あかりの半開きにした口は動かない。
できる限りツッコミやすくしたボケだというのに。
どんだけ良い子なんだか……。




8 : 以下、名... - 2016/07/24 01:45:36.07 vaNuVgR90 8/25




いかん、ちょっと顔が熱くなってきたっ……!



「お、おいあかり!!何か喋ってよ、私が恥ずかしいじゃん!!」

「ご、ごめんね、京子ちゃん。嬉しいんだけど、どう喜んだらいいか分からなくって……」



ああー、失敗してしまった!!
天使あかりにこんな日までツッコミなんて野暮なことをさせようとしたのが間違いだったか……!!!!







ヘコむなあー……。
この手は来年から使っちゃいけないなあー……。


9 : 以下、名... - 2016/07/24 01:46:08.01 vaNuVgR90 9/25


「とりあえず、引いてもいいかなぁ?」

「う、うん、引いていいよ!」

「よーし……京子ちゃんの魔法のステージ、開演だねっ」

「うぐっ、そ、そんなに気使わなくていいから!」



ヘコむなあー……!
その上刺さっちゃうなあーっ……!!



何が出るかなあー……。
おかしくなったテンションで変なものも書いた気がするし……。
しょっぱなであかりをイジるようなものが出なきゃいいけど……。




10 : 以下、名... - 2016/07/24 01:46:48.43 vaNuVgR90 10/25




「うーんと……『奇跡の絵を描く』?」



お。

「そ、それが出たか」



絵は私の十八番だ。
これが真っ先に来てくれたのはまだ運が良かった。

ふー、と大きく息を吐いて説明し始める。



「私が今から即興で絵を描くから、あかりはそれを受け取って」

「ほんと!?」

「うん、ちょっと待っててね。あと、できれば何を描いてるかは見てからのお楽しみにしてほしいな」

「はーい」



楽しみだよぉ、とワクワクを隠さないあかりを横目に見つつ、私はペンを取り出した。
そして、スケッチブックの上でペンを走らせ始める。




11 : 以下、名... - 2016/07/24 01:47:23.96 vaNuVgR90 11/25






思えば小さい頃から、私にとって絵は大切な取り柄であり、そして武器だった。



勇気が出なくて口に出せないもの。
怖がりなせいで得られないもの。
意気地のない私が願うもの。
全てを何もないところから思うままに作りあげられる、それは夢のような空間。




12 : 以下、名... - 2016/07/24 01:47:51.46 vaNuVgR90 12/25




それを私に勧めてくれたのはあかりだった。
私の描いた絵を初めて、上手だと言ってくれたのもあかりだ。
いつだったか、そうやって私が描いたものを、魔法と形容してくれたこともあった。
私にとってそれは何よりの誇りだ。



そんなあかりの前で、予め構図だけを思い浮かべてぶっつけ本番で描く絵。
言うまでもなく、あかりが私を褒めちぎって調子づかせてくれている、とも言えるかもしれない。
言うまでもなく、私の手は内心の張り切りを隠せてないんだ、とも言えるかもしれない。
ま、きっとどっちもなんだろうな。



そんなことを頭の片隅に置きながら滑らせるペン先はいつだって、スラスラと心地の良い音を立てるものだ。




13 : 以下、名... - 2016/07/24 01:48:23.89 vaNuVgR90 13/25




「できた!」

「わぁあ……あかりとミラクるんだぁ……!!」

「どう?」

「とっても――とーっても可愛い!!」



答えなんて、そのさっきよりも更に輝いた目を見れば一目瞭然だった。
それでもつい、感想をあかり自身の言葉で聞きたくなってしまう。


14 : 以下、名... - 2016/07/24 01:48:51.89 vaNuVgR90 14/25


そのキラキラした表情にこちらもニコニコしつつ安堵した。
すると、あかりが突然何かに気づいたように声を張り上げる。



「あっ!京子ちゃん、ひょっとして……」

「ん、どうかした?」



「『奇跡の魔法』って、これのこと?」



「えっ」

「『奇跡』がミラクるんのことで、『魔法』は京子ちゃんが絵を描いてるのが魔法みたいって言ったことが関係してるんじゃないかなって」



「……お、おう!確かにそういう意味もあるぞ、よく気づいたなあかり!」

「えへへ……。やっぱりスゴいね、京子ちゃん」







ふふっ。
スゴいのは私のボケに意味を持たせちゃったあかりのほうだよ、全く。




15 : 以下、名... - 2016/07/24 01:49:22.38 vaNuVgR90 15/25




「ねぇねぇ、次、引いてもいい?」

「うん、いいよ」



「じゃあ……えーい!――って、ちょっと京子ちゃん!『魔法で存在感を上げる』って何!?」

「あははは、次はそれかあ」

「んもーっ!」





16 : 以下、名... - 2016/07/24 01:49:55.73 vaNuVgR90 16/25






「はー……、流石にそろそろ眠くなってきちゃったなあ」

「うん……そうだねぇ……」



笑顔の咲き乱れる楽しい時間はあっと言う間に過ぎていく。
気づけばもう、1時間以上プレゼントタイムを続けていた。




17 : 以下、名... - 2016/07/24 01:50:25.00 vaNuVgR90 17/25




「おトイレ行ってくるねぇ……」

そう呟いて、目を擦りながら部屋を出ていくあかり。



そろそろ布団を出してあげようかと思って立ち上がった瞬間、私の携帯電話が震え出す。
こんな時間に、誰からだろうか。
手に取って表示されている名前を確認すると、考えられる選択肢の中では妥当な人物のものだった。




18 : 以下、名... - 2016/07/24 01:51:11.74 vaNuVgR90 18/25




『あかり、ちゃんと喜んでくれるといいな』

「おう、上手くいったぜ!」

『えっお前、もうプレゼント渡したの!?』

「そりゃあ早いうちに渡したほうがいいかなーと思ってさ、日付を跨いですぐに」

『――お前、またあかりと一緒にずっと起きてたのか……』

「こんな時間まで起きてて電話してきた結衣に言われたくないんだけど」

『目が覚めて気になったから電話したんだよ。あかりのためにも、そのクセは早めにやめてやれよ?』


19 : 以下、名... - 2016/07/24 01:51:54.64 vaNuVgR90 19/25


「はいはい、分かってるよ。あかりも流石に眠そうになってきたし、もう少ししたら寝るから」

『うん。――ところで京子、プレゼントは何にしたんだ?』

「あかりとミラクるんの絵を描いて、あかりに存在感を上げて、それから――」

『おいおい、もっとちゃんとしたプレゼントやれよ!何だよ存在感って!?!』

「それはギャグだよ!ってか、絵はちゃんとしてるだろー!」

『ったく、私が何も手伝わないとすぐこれだ」

「何が欲しいかなんて、直で聞くなんて流石に……!」



恥ずかしい、というのを口にするのさえまた恥ずかしい。
ああ、ダメだ。
また身体が火照ってきた。


20 : 以下、名... - 2016/07/24 01:52:32.19 vaNuVgR90 20/25


『しょうがないな。じゃあ一応教えとくけどこの間、そろそろ新しい靴が欲しいってあかりが言ってたっけかな」

「ほんと!?」

『ああ。上手くやれよ、それじゃ私はまた寝るから』







そんなアドバイスを残して、電話は一方的に切られてしまった。
ああ、どうしよう……。




21 : 以下、名... - 2016/07/24 01:53:05.38 vaNuVgR90 21/25




「京子ちゃん……?」

「あかり……」

「お布団、ありがとうねぇ……」

「あ、ああ。どうしたしまして」



「『奇跡の魔法』、もう少しやりたいなぁ……」

「えっ、まだやるの?もう眠いでしょ……?」

「大丈夫……あかり……平気だから……。えい……」


22 : 以下、名... - 2016/07/24 01:54:07.68 vaNuVgR90 22/25


そんな私の戸惑いを解消してくれたのは、眠気眼のあかりが手に取ったお題だった。
今にも眠りに就きそうなその口が、なおも疑問をぼやく。



「……『魔法のような素敵なお出かけ』……?」

お出かけ……そうだ、よし!



「あかり、新しい靴が欲しいんだっけ?明日買いに行こうぜ!」

「えっ、なんで知ってるの……?」

「京子ちゃんに分からないことなんてないのだ!」

「えへへ、あかりとっても嬉しいなぁ――」



これなら、あかりの願いを叶えられる。
そう思っていると……。


23 : 以下、名... - 2016/07/24 01:55:10.92 vaNuVgR90 23/25


ぽてっ



音を立てて、あかりはすぐ横の布団に倒れ込んでしまった。

やっぱり流石に無理があったか。
私のワガママとあかりの願望が重なってこんなことになっちゃったけど、日付を越えてまで一緒に遊ぶのは、まだしばらくお祝いごとの日だけにしておこうかな。




24 : 以下、名... - 2016/07/24 01:55:41.46 vaNuVgR90 24/25




私は電気を消した。
魔法のステージの第一部は、とりあえず終幕ってところだろうか。
寝て起きたら、続きをまた頑張らなきゃ。



あかり、私が祝いたいっていう勝手なワガママに付き合わせちゃってごめんな。
いつも一緒にいてくれてありがとう。
それじゃ、おやすみ。






25 : 以下、名... - 2016/07/24 01:56:31.83 vaNuVgR90 25/25


おしまい



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