1 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします - 2014/08/23 18:02:39.13 y3keaH0R0 1/22


青葉「そうです! 取材です!」

鳳翔「どうして、私に?」

青葉「読んで下さっているかわからないのですが、私、新聞を発行してまして」

青葉「その人気コーナーの一つに、『艦娘の一日』というのがあってですね……」

鳳翔「もしかして、『鎮守府新聞』ですか?」

青葉「そうです! それです!」

鳳翔「ああ、それなら毎週読んでます。あれ、青葉さんが作ってたんですね」

鳳翔「『艦娘の一日』は、皆さんの意外な一面がみれたりして、大変興味深いですよね」

青葉「あはは、ども、恐縮です」


3 : VIPに... - 2014/08/23 18:05:13.57 y3keaH0R0 2/22


青葉「あれ、皆さんからの投票で、誰を取材対象にするか決めてるんです」

鳳翔「そうだったんですね。それで、今回は、私に白羽の矢が立った、と」

青葉「そういうことです。なので、ぜひとも鳳翔さんに一日、密着取材させていただきたく……」

鳳翔「でも、私なんて、取材しても面白いことなんて無いと思いますけど」

青葉「大丈夫です! そこのところは、この青葉に任せていただければ」

鳳翔「そう、ですか?」

鳳翔「……」

鳳翔「なら、いつも楽しませてもらっているお礼に、お受けしようかしら」

青葉「本当ですか!? ありがとうございます!」

青葉「では、明日、改めてお伺いします!」

鳳翔「はい、お待ちしておりますね」

4 : VIPに... - 2014/08/23 18:06:52.55 y3keaH0R0 3/22






翌日


青葉「では、今日はよろしくお願いします!」ペコリ

鳳翔「朝も早いのに、元気いっぱいですね」

青葉「『取材には、いつも全力で!』がモットーですので」

鳳翔「真剣に取り組んでいるのですね」

青葉「はい!」

鳳翔「ふふふ、あなたになら良い記事を書いてもらえそうですね。じゃあ、参りましょうか」

青葉「はい! お供します!」


5 : VIPに... - 2014/08/23 18:09:36.47 y3keaH0R0 4/22






青葉「ここは……弓道場、ですか?」

鳳翔「ええ、毎朝、必ず鍛錬をするようにしています」

青葉「鍛錬、というと、発着艦訓練ですか?」

鳳翔「いえ、機体を使うのは資源を使いますので、普段は、ただの矢を使います」

青葉「純粋に弓道を行う、というわけですね」

鳳翔「ええ。狙った場所に矢を射るということは、空母としての技量に直接関わりますので」

青葉「なるほど……」

8 : VIPに... - 2014/08/23 18:10:35.73 y3keaH0R0 5/22


加賀「おはよう、鳳翔さんと……青葉さん?」

鳳翔「あら、加賀さん。早いのね」

加賀「ええ、まあ」

鳳翔「青葉さんは、今日一日、私を取材するので、同行してもらってます」

青葉「ども、恐縮です」

加賀「取材?」

青葉「『鎮守府新聞』の『艦娘の一日』というコーナーのために、一日密着取材させていただいています」

加賀「そう、なの」

鳳翔「迷惑をかけないように気をつけるけれど、気に障るようだったら言って下さいね」

青葉「よろしくお願いします」

加賀「……わかったわ」

9 : VIPに... - 2014/08/23 18:11:59.19 y3keaH0R0 6/22


鳳翔「じゃあ、始めましょうか。青葉さんは、静かに見ていて下さいね」

青葉「わかりました」



鳳翔「……」キリキリ

鳳翔「……っ」ヒュン

ストン

加賀「……」キリキリ

加賀「……っ」ヒュン

ストン

青葉「……」

青葉(これは、静かにしろと言われなくても、自然と黙ってしまいますね……)

青葉(お二人とも、すごい集中力です)

青葉(特に、鳳翔さんのいつも見せる温和な表情とは、またひと味違った真剣な表情……うぅ……撮りたい)

青葉(後で頼んで、射る姿だけでも撮らせてもらおう……)


10 : VIPに... - 2014/08/23 18:13:28.37 y3keaH0R0 7/22




加賀「……ふぅ」

青葉「!」

青葉(加賀さんが、緊張を解きました。休憩でしょうか)

加賀「……」

青葉(タオルで汗を拭くその姿……撮りたい)

青葉(はっ! いけない、今日は、鳳翔さんの取材です)

青葉(……次の取材は、加賀さんにしましょうか)

加賀「……」

青葉「!」

加賀「青葉さん」

青葉「す、すいません、お邪魔するつもりは……」

加賀「いいえ、そんなことないわ。隣、良いかしら」

青葉「あ、どうぞ」

11 : VIPに... - 2014/08/23 18:15:19.76 y3keaH0R0 8/22


加賀「……どう? 空母の鍛錬をみた感想は」

青葉「すごい集中力ですね。写真に撮りたいぐらいに」

加賀「一部の空母の娘たち以外は、こういう鍛錬が実戦でものいうから」

加賀「とくに、この鎮守府は、資源の関係から、私達正規空母より、軽空母が多用される傾向にあるわ」

加賀「鳳翔さんが鍛錬を欠かさないのも、そのため」

青葉「へぇ、そうなんですね」

加賀「……」

加賀「あなたは、鳳翔さんの本当の強さが何かわかるかしら」

青葉「うーん……練度の高さ、とか?」

加賀「確かに、それもあるわ。でも、本当の強さはそこじゃない」

青葉「空母のことは、よく分からなくて……すいません」

加賀「いいのよ」

12 : VIPに... - 2014/08/23 18:17:35.10 y3keaH0R0 9/22


加賀「鳳翔さんの本当の強さ、それは、集中力、そしてスタミナよ」

青葉「集中力と、スタミナ……?」

加賀「空母は、射る順番によって発現できる艦載機の数が異なるの」

加賀「いわば、慣れのようなものかしら。私でいえば、三射目が一番本気をだせる」

加賀「それまでの、一射、二射目は、少し数が減ってしまうの」

青葉「ほぇー、そんなことが……」

加賀「でも、鳳翔さんは違う。彼女には、慣れが無い。必要ないのよ」

加賀「全体の数が少ないのは、認めるわ。でも、それは軽空母である以上仕方の無いこと」

青葉「うーん……」

加賀「……口で言うよりも、実際に見てもらったほうがわかりやすいかしら」

青葉「! ……すいません」

加賀「いいのよ」

13 : VIPに... - 2014/08/23 18:19:09.87 y3keaH0R0 10/22


加賀「鳳翔さん」

鳳翔「ふぅ……はい?」

加賀「せっかくの取材なのだから、あれを見せてあげたらどう?」

青葉「? ……あれ、ですか?」

鳳翔「しかし、それでは、矢が無駄になってしまいます」

加賀「気にしなくていいわ。本当の鳳翔さんを見てもらえる良い機会なのだから」

鳳翔「本当って……少し、大げさではないかしら」

加賀「良いから。ほら、青葉さん」

青葉「は、はい! よろしくお願いします」

鳳翔「もう……致し方ありませんね」

青葉「あ、そ、その前に!」

鳳翔「はい?」

青葉「射る時の姿、一枚だけ撮ってもよろしいでしょうか……?」

鳳翔「ふふ、構いませんよ」

青葉「ありがとうございます!」


14 : VIPに... - 2014/08/23 18:20:22.40 y3keaH0R0 11/22




鳳翔「……」キリキリ

鳳翔「……っ」ヒュン

ストン

青葉「……」

青葉(容易く的のど真ん中に……すごいです)

加賀「まだ、驚くのは早いわ」

青葉「え?」

鳳翔「……」キリキリ

鳳翔「……っ」ヒュン

パキン

青葉「!」

青葉(あわわ……まったく同じ場所に……)

青葉(先に射られた矢が綺麗に裂けちゃってます)

加賀「……ふふ」

15 : VIPに... - 2014/08/23 18:24:12.99 y3keaH0R0 12/22


鳳翔「……」キリキリ

鳳翔「……っ」ヒュン

パキパキン

青葉「うわっ」

青葉(さ、三発目も……すごい精度です)

鳳翔「……ふぅ」

加賀「どう? これでわかったかしら」

青葉「え、ええ、とても」

加賀「それは、良かったわ」

青葉「鳳翔さん、ありがとうございました」

鳳翔「いえいえ」

鳳翔「そろそろ行きましょうか」

青葉「はい!」

鳳翔「加賀さん、ごきげんよう」

加賀「はい、鳳翔さんも」

青葉「加賀さん、色々とありがとうございました!」ペコリ

加賀「当然のことをしただけよ。……一ファンとしてね」

青葉「え……?」

鳳翔「先に行ってしまいますよ?」

青葉「あ、ま、待って下さい!」タッ


加賀「……ふふ」


16 : VIPに... - 2014/08/23 18:26:21.28 y3keaH0R0 13/22






青葉「次は、何を?」

鳳翔「買い出しに行こうかと思っています」

青葉「買い出し……夜のために、ですか?」

鳳翔「そうですね。ありがたいことに、常連さんも出来ました」

青葉「居酒屋『鳳翔』……。いつ頃から、やっているんでしたっけ」

鳳翔「いつ頃からかしら。提督の晩酌にお付き合いして、簡単な食事を作るようになってからだから……」

青葉「ば、晩酌……」

青葉(こ、これは、ものすごいスクープなのでわ……!)

鳳翔「? どうかしました?」

青葉「い、いえ! 何でもありません」

鳳翔「そうですか? ……だから、えっと一年、ぐらいかしら」

青葉「もう、そんなになるんですね」

鳳翔「時間が経つのは、本当に早いですね」

青葉「そうですね」

17 : VIPに... - 2014/08/23 18:28:23.81 y3keaH0R0 14/22





鳳翔「さ、ここです」

青葉「……普通のスーパーですね」

鳳翔「そうですよ」

青葉「何か、こう…勝手なイメージですけど……もっとこだわっているのかと思ってました」

鳳翔「ふふ、そう見えますか? もちろんあるものの中では、こだわりますけれど、料理のおいしさは、食材だけでは決まりませんから」

青葉「そうなんですか?」

鳳翔「ええ、焼いたり、煮たりする時間、調味料の量、食べてもらう人を想う気持ち。そういったものも、料理の善し悪しを充分左右します」

青葉「なるほど」

鳳翔「さあ、早く買い物を済まして、鎮守府に帰りましょう」

青葉「はい! 青葉もお手伝いします!」



18 : VIPに... - 2014/08/23 18:30:42.19 y3keaH0R0 15/22


青葉「次は……の前に、この荷物をどうにかしないと、ですね」

鳳翔「ごめんなさいね。いつも一人で行っていたから、つい買い過ぎちゃったみたい」

青葉「いえいえ! これくらい、何てことありません」

鳳翔「今日は、出撃も無いし、このまま、お店のほうに行ってしまいましょうか」

鳳翔「そこで、何かごちそうするわ」

青葉「そんな、悪いですよ」

鳳翔「良いの。手伝ってくれたお礼をさせて」

青葉「き、恐縮です」


19 : VIPに... - 2014/08/23 18:32:44.02 y3keaH0R0 16/22







青葉「ふー……ごちそうさまでした」

鳳翔「ふふ、お粗末さまでした」

青葉「思わず、食べ過ぎちゃいました……」

青葉「すいません、今日の夜のための食材だったのに」

鳳翔「良いの。どうせ買い過ぎだったくらいなんだから」

青葉「ありがとうございました」

鳳翔「いえいえ、こちらこそ」

鳳翔「じゃあ……どうしましょうか。今日することといえば、このくらいなのだけれど」

青葉「あ、そうなんですか」

鳳翔「強いて言えば、そうね、下ごしらえはするつもりだけれど、それは、取材できないものね」

青葉「じゃあ、その姿を二、三枚撮らせていただけますか?」

鳳翔「そんなことで良いなら、いくらでも」

青葉「ありがとうございます!」



20 : VIPに... - 2014/08/23 18:33:17.17 y3keaH0R0 17/22






鳳翔「ああ、そろそろかしら」

青葉「あ、じゃあ、私は、これでお暇します」

鳳翔「良いのよ、いてくれても」

青葉「いえ、お忙しい中、お邪魔するわけにもいかないですし」

青葉「記事にするには、充分取材できましたから」

鳳翔「そう? なら、良いけれど」

青葉「ええ、今日はどうもありがとうございました」

鳳翔「こちらこそ」





21 : VIPに... - 2014/08/23 18:34:38.49 y3keaH0R0 18/22






鳳翔「気をつけて帰るのよ」

鳳翔「……ふぅ」



シャ―

鳳翔「……」カチャカチャ

鳳翔「……これでよし、と」

鳳翔(こんな時間……今日は、皆、遅くまで飲んでいたのね)

鳳翔(さて、私も、寮に帰りましょう)




22 : VIPに... - 2014/08/23 18:35:33.28 y3keaH0R0 19/22








鳳翔(今日も一日、疲れました)

鳳翔「……ふふ」

鳳翔(でも、皆の、そしてあの人の笑顔を見ていると)

鳳翔(この疲れも悪くないかな、と思えるのです)

鳳翔「おやすみなさい……提督」チュ

パシャ


青葉「ふふふ……」

青葉(この青葉、見くびってもらっては困ります)

青葉(人をあっと驚かせてこそ、スクープです)

青葉(そのためなら、この程度のこと雑作もありませんよ)

青葉「ふふふ……」

青葉(どこで撮ったのやら、提督とのツーショット写真に、頬を赤らめながらお休みのキスをする鳳翔さん……これは、大スクープです)



23 : VIPに... - 2014/08/23 18:36:29.02 y3keaH0R0 20/22






青葉「と、いうわけで、どうです、提督」

青葉「お望みの品、撮ってきましたよ」

提督「……」

青葉「提督?」

提督「で……」

青葉「?」

提督「でかしたあぁぁあぁあぁぁ!!」バッ

青葉「おっと」

提督「うおぉぉぉぉ!?」ドンガラガッシャ―ン

青葉「ただでは、あげられませんねぇ?」

提督「何だ、望みは! 言え! 早く言え!」

青葉「ま、まあまあ、そうがっつかないで下さいよ」

青葉「んーと、そうですねぇ……」

青葉「じゃあ、写真を一枚、撮らせてもらいましょうかね」

提督「……毎度毎度、思うんだが、そんなことで良いのか」

青葉「ご不満ですか?」

提督「いやいやいや、そんなことはない!」

青葉「今の気持ちを、満面の笑みで表して下さいね」

提督「! わかった、まかせろ」

青葉「じゃあ、いきますよ。はい、チーズ!」




24 : VIPに... - 2014/08/23 18:37:14.22 y3keaH0R0 21/22






青葉「ふう……」

青葉(あの二人にも困ったものですね)

青葉(素直になれば良いのに、規律がどうたら、風紀がどうたら……)

青葉(まったく、馬鹿げてますね)

青葉「ふふふ……」

青葉(でもそのおかげで、私は、甘い蜜を吸わせてもらってるんですけどね)

青葉(この写真、今回はいくらで売れるでしょうかね)

青葉(間宮アイス十個? いやいや、この写真には、それ以上の価値があります)

青葉(今夜の『オークション』が楽しみです)

青葉(っとその前に、今週の新聞を書き上げてしまいますか)






そうして出来上がった『鎮守府新聞』は、今回も多くの読者の支持を集めた。

しかし、提督以下、何人かの艦娘は、その裏で起こる『オークション』なるものを知ることはないのであった。


25 : VIPに... - 2014/08/23 18:38:52.15 y3keaH0R0 22/22

鳳翔さんは、可愛いだけじゃなく、本気を出せば強いんだよ、ということを書きたかった。

正直、それだけなので、後はグダグダ。お許し下さい

依頼出してきます

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