最初から
岡部倫子「これがシュタインズ・ゲートの選択……!!」【#01】

一つ前から
岡部倫子「これがシュタインズ・ゲートの選択……!!」【#11】

633 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/29 20:43:43.18 QDCPWRsBo 2009/2638

第22章 私秘鏡裏のスティグマ(♀)

2011年2月某日 夜11時過ぎ
ヴィクトル・コンドリア大学 単身者用アパートメント 比屋定真帆の部屋


真帆「……くり……す……ムニャムニャ」zzz

ズルッ

真帆「ふ……ふぇぇ……? うわうっ!」ガチャンッ

真帆「あ、危なかった……なんとかコーヒーをこぼさずに済んだ。また叱られるところだったわ」ハァ

真帆「(うーん……いつの間に寝ちゃったのかしら?)」ファァ

真帆「あっ、口のまわりが涎だらけ……またやっちゃった」ゴシゴシ


   『ああ~っ、先輩ってば! 私のクッションを枕にしないでくださいって、あれほど言ったのにっ!』


真帆「……昔の言葉が聴こえてくるなんて、そんなに疲れてるのかしら私」

真帆「(でも、もう少しこのまどろみの中で、紅莉栖とお話しても、良いわよね……)」ウトウト

634 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/29 20:44:48.16 QDCPWRsBo 2010/2638


  『ほらぁ! よだれまみれじゃないですか~っ!』

  『し、失礼ねっ。まみれてなんかいないわよっ』

  『まみれてますっ。このシミが前回、これが前々回、こっちとこっちはその前』

  『執念深いわね……なんでそこまで覚えてるの……』

  『あんまりひどいと真帆たんのよだれをペロペロ……あれ? 私、なんでこんなHENTAIな発想を?』

  『わ、分かったわよ。そんなに怒らなくてもいいじゃない』

  『先輩、今どんな夢見てました?』

  『えっ? うーん……なんか、私が男で、紅莉栖がレズビアンだったような』

  『パウリ=ユング書簡の夢<ファンタズム>? 共時性<シンクロニシティ>? いや、さすがにオカルトが……』ペロリ

  『私の夢とよだれを分析しないでくれる?』

635 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/29 20:46:25.41 QDCPWRsBo 2011/2638


真帆「実験のためだからって、味まで確かめる必要は無いのに」フフッ

真帆「我が強くて、自分の意見は曲げようとしない偏屈で、実験が大好きで……」ツーッ

真帆「あ、あれ。涙が……もう、紅莉栖のせいで顔を洗わなくちゃならないじゃない」グシグシ


   『よだれの時点で顔を洗うべきです』


真帆「っ!? 幻聴……?」


   『幻聴じゃありませんよ、先輩』


真帆「え……って、"紅莉栖"か。モニタの電源を切ってたから気付かなかったわ」ポチッ

Ama紅莉栖『定期メンテナンスをした後、私との接続を繋いだまま眠っちゃったんですよ?』

真帆「電気を無駄にしてしまったわね。どうして起こしてくれなかったの?」

Ama紅莉栖『疲れてる先輩を無理に起こすなんてできませんよ』

真帆「過去に何度も私のことを叩き起こしたくせに、どの口が言うんだか」

真帆「……ねえ、"紅莉栖"。タイムマ――」

真帆「(……いえ、やめておきましょう)」

真帆「(確かにこの"紅莉栖"の記憶の中にもタイムマシン論文はあるかもしれない。でも、それは危ないって釘を刺されてるし……)」

Ama紅莉栖『それより、私の見てないところで何の研究をしてるんですか? 随分疲れてるみたいですけど』

真帆「えっ……あ、いえ、なんでもないのよ、なんでも! ほら、接続切るわね!」カタカタ カタッ ターンッ

636 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/29 20:47:48.52 QDCPWRsBo 2012/2638

化粧室


ジャーッ バシャバシャ

真帆「(そもそも、なんで私はタイムマシンの研究なんかに没頭しているのかしら……)」

真帆「(それもこれも、岡部さんのせいよ……。中鉢論文は、実が紅莉栖が書いた、なんていうから……)」

真帆「(――――紅莉栖が見つけたものを、自分も見つけたい)」

真帆「(彼女と同じ景色を見てみたい……なんて、私にしてはちょっと乙女すぎるかしら)」

真帆「(ま、全部岡部さんの妄想の可能性もあるわけだけど)」

キュッキュッ フキフキ

真帆「……紅莉栖……私、やっぱり、あなたにはなれない……」

真帆「あなたのことが大好きなのに……あなたのことが、嫌いになりそうよ……」グスッ

真帆「……っ!? い、いけない。しっかりしなさい、比屋定真帆っ!」ブンブン

真帆「疲れてるんだわ。画面の向こうの"紅莉栖"に指摘されてるようじゃ、私もダメね」ハァ

真帆「ん? あら、窓の外に明かりが……って、あそこ、研究所の2階、一番奥の部屋の窓じゃない」

真帆「あそこはレスキネン教授のオフィス……教授、またこんな時間に仕事?」

真帆「まったく、身体でも壊したらどうするつもりかしら? 仕方ないわね」ムフン

637 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/29 20:48:53.63 QDCPWRsBo 2013/2638

ヴィクトル・コンドリア大学 脳科学研究所 レスキネン教授の研究室


コンコン

真帆「"レスキネン教授?"」

レスキネン「"ん!? あ、ああ。マホか。どうしたんだい、こんな夜中に"」ビクッ!

真帆「"……そんなに慌てて、ブルーフィルムでも見てたんですか?"」

レスキネン「"マホも見るかい?"」ニコ

真帆「"ゲイビデオなんて興味ないです"」

Ama紅莉栖『"教授、あんまり先輩をいじめないであげてください。というか、先輩、こっちに来たんですね"』

真帆「"あなたこそこっちに居たのね。……教授にあのことはしゃべってない?"」ヒソヒソ

Ama紅莉栖『"秘密の研究のことですか? ええ、もちろんです"』ヒソヒソ

レスキネン「"なんの話かな?"」

真帆「"あっ! いえ、なんでも!"」

Ama紅莉栖『"教授、女の子の秘密の会話を盗み聞ぎするなんて、感心しませんよ"』

レスキネン「"時に、マホとリンコは順調かい?"」

Ama紅莉栖『"それがですね、ぬいぐるみのプレゼントをもらったみたいで、夜な夜な抱きしめてはベッドを軋ませて――"』

真帆「"わーわー! あなた、手のひら返し過ぎよ!?"」

638 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/29 20:51:13.29 QDCPWRsBo 2014/2638


レスキネン「"近々、共同研究で日本に呼ばれているんだ。その時、リンコに連絡を取ってみようと思っている"」

真帆「"えっ?"」

レスキネン「"マホも一緒に行くかい?"」

真帆「"行きますっ! ……あっ"」

レスキネン「"ニヤニヤ"」

Ama紅莉栖『"ヒューヒュー"』

真帆「"ちっ、違っ! 別に、岡部さんに会って色々話を聞きたいわけじゃないから!"」

レスキネン「"マホは素直で良い子だ"」ニコ

Ama紅莉栖『"では、岡部にアメリカ国籍を取らせてアメリカで同性婚するためのマニュアルを作っておきますね!"』

真帆「"……というか、あなたこそ岡部さんと話題を共有したいからアメリカに呼びたいんじゃなくて?"」

Ama紅莉栖『"な、なんのことだかわかりません"』

レスキネン「"百合の花咲く三角関係……実に面白い"」フフッ

639 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/29 20:52:48.79 QDCPWRsBo 2015/2638


真帆「"それじゃあ、教授。そろそろ部屋に戻って寝ます"」

レスキネン「"ああ、ちょっと待った。最近、'マホ'の記憶データを、まったく更新してないだろう?"」

レスキネン「"日本へ行く前に採取したデータが最後じゃないか?"」

真帆「"あっ、えーと……その、日本では色々と怖い体験をしましたし、『Amadeus』に怖い記憶を残すこともないかな、と"」

レスキネン「"気持ちはわかるが、このままだと比較実験ができない。君をこのプロジェクトから外して、他の誰かに頼まなくてはならなくなってしまう"」

真帆「"それは……っ"」

Ama紅莉栖『"あっちの'真帆先輩'も、長いことオリジナルと話してなくて寂しがってます。岡部が'先輩'に取られちゃうかもしれませんよ?"』

レスキネン「"明日、必ず記憶の更新をしておくように"」

真帆「"……わかりました"」

640 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/29 20:54:03.69 QDCPWRsBo 2016/2638

研究所棟通路


真帆「……更新できない。紅莉栖のノートPCが何者かに狙われていること、そして、『Amadeus』が米軍に狙われている可能性……」

真帆「もし既に米軍が『Amadeus』を支配していたら? 記憶を更新した瞬間、紅莉栖のノートPCのことが筒抜けになる」

真帆「岡部さんが、危ない……」

真帆「でもやっぱり……考え過ぎよね……」ウーン

レイエス「"あら、あなた、アレクシスのところのお嬢さんね。こんな遅くまで仕事?"」

真帆「"あ、レイエス教授。教授こそこんな遅くにどうしたんですか?"」

レイエス「"私の研究に少し問題があってね。アレクシスに助けを求めようと思って"」

スーツの男「"…………"」ヒソヒソ

レイエス「"ええ、そうよ……それじゃ、マホ。またね"」

真帆「"あ、はい……"」

真帆「(あのスーツの人、誰だろう?)」

641 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/29 21:10:40.36 QDCPWRsBo 2017/2638

レスキネン教授の研究室の前


真帆「(つい気になって戻って来てしまったけど、教授たちの話を盗み聞きするなんて良くないわよね)」ハァ


レイエス「"――いつまでマホやリンコを泳がせておくつもり?"」

レスキネン「"貴重な情報源だ。ヘタに動いて、クリスのノートPCとHDDを破棄されでもしたらもったいないだろう?"」

レイエス「"タイムマシンの作り方、でしょ? 全く、未来少女に適性があれば、'クリス'の記憶データを上書きしてあげたのに"」

レイエス「"恩知らずな子よね。誰のおかげで命があるんだと思ってるんだか"」

レスキネン「"私としては、カガリ・シイナに適合化手術をさせるわけにはいかないからね。そんなことになれば、君たちDURPAがすべて持っていってしまうじゃないか"」

レイエス「"もちろん。『Amadeus』の記憶保存技術を、AI戦士を作り上げるために使わせてもらうわ"」

レスキネン「"『Amadeus』は私の子どもであると同時に完全な情報操作ツールだ。AI戦士なんていうケチなもののために渡すつもりはない"」

レスキネン「"そういう意味で、未来の私には慧眼があったようだ。故に、この私もそんなことをするつもりはない"」

レイエス「"御託はいいわ。それより、もう時間が無い。カガリによれば、タイムマシンは7月7日までには跳んでしまう"」

レスキネン「"逆に言えば、フライトの瞬間こそ、未来のセキュリティで防御されたパンドラの箱が、確実にその蓋を開ける唯一のタイミングだ"」

レイエス「"そのタイミングまでは共闘と行きましょう。でも、Xデーを過ぎたら、夜道には気をつけなさいよ"」

レスキネン「"君もね。いずれにせよ、今月中には彼女と共に日本へ発つ。そこで色々と回収するつもりさ"」

レイエス「"タイムマシンの在り処もわかっていないしね。カガリの脳に尋ねても、小さい頃の記憶で詳しい場所まで覚えていなかったし"」

レスキネン「"それだけじゃない。タイムマシン以外のこと――クリスの死の真相、世界の仕組み、新型脳炎など――リンコたちは色々知っている気がしてね"」

レスキネン「"そこで、『Amadeus』を使って聞き出そうとしたんだが……あれでどうして警戒心が強い。慎重な娘だよ、リンコ・オカベは"」


真帆「(きょ、教授たちは、な、なな、何を、話、話し……)」プルプル

642 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/29 21:11:09.86 QDCPWRsBo 2018/2638


レイエス「"マホに、お得意の施術でもしてあげたら?"」

レスキネン「"彼女自身は何も知らないだろうが……マホを利用すれば、リンコから聞き出せるかもしれない、か"」


真帆「……っ」

ガタッ


レイエス「"誰!?"」

真帆「あ……ああ……」ガタガタ

スーツの男「…………」ガシッ

真帆「ヒィッ!!」ビクッ!!

レイエス「"連れてきなさい"」

643 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/29 21:13:00.37 QDCPWRsBo 2019/2638

レスキネン教授の研究室


真帆「"教授……今の話は、いったい……"」ガクガク

レスキネン「"『好奇心は猫を殺す』、というイギリスのことわざを知っているかな?"」

レイエス「"いたずらな子猫ちゃんには、少しお仕置きが必要みたいね"」

真帆「ヒッ……」

レスキネン「"ちょうどいい。マホ、一緒に日本に来てもらうよ"」

真帆「(なにがなんだか……さっぱりわからない……)」プルプル

真帆「(岡部さん……あなたの言葉は、すべて真実だったのね……!)」ワナワナ

レイエス「"準備できたわ。さあ、マホ? そこの椅子に座って、このヘッドセットを被って。そう、良い子ね"」ニコ

レスキネン「"大丈夫、施術自体は痛くない。まあ、その後で頭痛を起こしてしまうかもしれないけどね"」

真帆「あ……あ……」プルプル

レスキネン「"私の助手として働くことが君の幸せだろう? マホならやれるさ。存分に頑張ってくれ"」ニコ

644 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/29 21:15:49.03 QDCPWRsBo 2020/2638


・・・

『いいかい、マホ。君はどんな手段を使ってでも、リンコ・オカベが抱えている秘密を暴くんだ』

『でないと、彼女を殺さなくてはいけなくなる。そんなのはイヤだろう?』

『集団エゴイズム。私や"クリス"がさんざん煽ったからね、君はリンコへの思い入れが強くなっているはずだ』

『彼女を助ける意味でも、彼女の持つ情報を引き出してほしい』

『そしたら、リンコを我が研究室に無条件で迎え入れてあげてもいい』

『マホ、彼女について知り得たことは、すべて私に報告しなさい』

『彼女の未来は、君の手にかかっている』

・・・

645 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/29 21:17:41.69 QDCPWRsBo 2021/2638

2011年7月3日日曜日
UPXオープンカフェ


真帆「岡部さーん!」

倫子「久しぶり、真帆ちゃん。って言っても、いつもビデオチャットで顔を合わせてたよね」

真帆「そうね。あまり久しぶりという感じはしないわ」

倫子「ある日を境に突然たくさん話しかけてくれるようになって、ちょっと驚いちゃったよ」

倫子「(真帆ちゃんって呼んでもいちいち怒らなくなったし)」

真帆「め、迷惑だったかしら?」

倫子「ううん! すごく嬉しかったよ」ニコ

真帆「はう……」ドキッ

倫子「でもせっかく直接会えたんだから、もうちょっとマシな格好してくれば良かったのに」ボソッ

真帆「え? なにか言った?」

倫子「いえ、なにも」

646 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/29 21:19:16.28 QDCPWRsBo 2022/2638


倫子「それで、今回は新型脳炎の研究だっけ」

真帆「教授はね。私はどちらかと言うと『Amadeus』担当。あなたの興味ある話題に乗れなくてごめんなさいね」

倫子「ううん。"紅莉栖"は、相変わらずだよ。おかげさまで、もうだいぶ英語も話せるようになったし」

Ama紅莉栖『私からしてみればまだまだですけどね』

真帆「"紅莉栖"、なんだか口調が柔らかくなった?」

Ama紅莉栖『女の子同士ですし、毎日一緒に勉強してたら仲良くもなりますよ』

倫子「う、うん……(私が気を使って、"紅莉栖"が怒りそうなことを言わないようにしてるだけだけど)」

真帆「なかなか面白い兆候だわ。そうした心の動きは、プログラムとして解析できるから」

真帆「やっぱり岡部さんにテスターを続けてもらってよかった」ニコ

Ama紅莉栖『(真帆先輩、本当に幸せそうな顔しちゃって……)』

647 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/29 21:20:21.24 QDCPWRsBo 2023/2638


Ama紅莉栖『それじゃ、私はこの辺で。あとはおふたりでごゆっくりどうぞ』ピッ

倫子「また変な気を利かせて……。えっと、真帆ちゃん。今回はどれぐらいの間、こっちに滞在することになりそう?」

真帆「教授が新型脳炎と格闘している間かしら。もしかしたら私だけ先に帰らされる可能性もあるけど」

真帆「ちなみに、紅莉栖のノートPCとHDDは、その後どうしたの?」

倫子「あれは、ダルに頼んで破棄してもらった。結局中身は見れなかったけどね」

真帆「っ……」グッタリ

倫子「ご、ごめんね。でも、やっぱりあれは、危険なものだから……」オロオロ

真帆「……ええ、そうね」ウルッ

倫子「……ごめん。ホントに、ごめん」ギュッ

真帆「いいの、私の我がままだって、わかって……る……うぅ……」グスッ

648 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/29 21:21:30.11 QDCPWRsBo 2024/2638

2011年7月6日水曜日
和光市駅から数駅のところにあるビジネスホテル 比屋定真帆の部屋


倫子「前泊まってたホテルとは別の部屋なのはいいとして……」


ゴチャァ…


倫子「少しは片付けたらどうなの」ハァ

真帆「私は自分が一番効率的に過ごすことのできる環境を用意しているだけよ」フンッ

倫子「人間性を失っちゃダメだよ……」

Ama紅莉栖『そんな風にデリカシーがないから、先輩はいつまで経っても女の子として見てもらえないんですよ』

真帆「なっ!? ……い、今すぐ片付けます」グッタリ

倫子「い、いいよ! また後で。それより、私に話って?」

真帆「…………」

真帆「…………」

倫子「……?」

真帆「……あなたに、まだ、訊けていないから」

真帆「――紅莉栖の事件の、真相を」

倫子「……っ!?」ビクッ

649 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/29 21:23:21.07 QDCPWRsBo 2025/2638


Ama紅莉栖『ちょ、先輩! いきなりそんな話――――』ピッ

倫子「……切ったよ。それで?」

真帆「紅莉栖の死には、タイムマシン論文が関わってる。間違いない?」

倫子「…………」

倫子「(間違いない。実際の事件という意味においても、因果の収束という意味においても)」

真帆「実は私、この半年、本来の研究と並行でタイムマシンの研究をしていたの」

倫子「えっ……!?」ドクン

真帆「紅莉栖に出来たのなら、私も……って思ってしまって」

真帆「でも、でもね? もしタイムマシンを造ることが出来たら、紅莉栖のことを救えるかもって――――」


――――――――――

   『逃げられると思うな、岡部倫子。お前は15年後に殺してやる』

   『――そう、僕は2033年から来た』

   『お願い、あたしを消して……』

   『机上ではいくらでも語れるが、実際に体験するとなれば、それはつらいこと、つらすぎることだ』

   『どうしてこんなことになっちまったんだろうなぁ』

   『今すぐそれを使わせろッ!! 金ならいくらでも払うッ!! だから私を過去へ――』

   『……バイバイ、岡部』

――――――――――


倫子「――――やめろぉっっ!!」ガシッ

真帆「っ……!」ビクッ

650 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/29 21:24:37.66 QDCPWRsBo 2026/2638


倫子「過去を改変するために、タイムマシンを使うなどと……馬鹿なことは、考えるな……」フーッ フーッ

真帆「その口調……」

倫子「牧瀬紅莉栖を救おうなんて、考えるんじゃないっ!」

倫子「そんな可能性は、ゼロなんだっ!!」ウルッ

倫子「無限の可能性の中から、たった1つの答えを選択する……その唯一の選択さえ、"神の摂理"が、収束が許さないかもしれないっ」グスッ

真帆「……あなた、やっぱり何か知っているのね。そして、何かから逃げている」

真帆「紅莉栖は、タイムマシンを完成させた……あなたは人類初のタイムトラベラーとなり、過去改変を何度も行った。そうなのね!?」

倫子「……およそ科学者とは思えない発言だね、真帆ちゃん」グシグシ

真帆「あっ……。私、どうかしているわ。こんな妄想を、口にするなんて……」

真帆「……っ」ポロポロ

倫子「ま、真帆ちゃんっ!?」

651 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/29 21:25:55.50 QDCPWRsBo 2027/2638


真帆「いやっ。なんで……涙が、止まらなくて……」グシグシ

倫子「真帆ちゃん……。ごめん、私のせいで、つらい思いを……」ダキッ

真帆「つらかった……寂しかった……紅莉栖が、居なくなって……」グスッ

真帆「紅莉栖が居なくなればいい、なんて思ってた自分があさましくて……死にたいくらい……」ヒグッ

倫子「(そんなに思いつめてたのか……っ)」グッ

真帆「ねえ、岡部さん。こんなことを言うのは、卑怯かも知れないのだけれど……」


   『こんなこと言うの、卑怯だってわかってるけど……』


倫子「う、うん……」

真帆「私ね、あなたが、あなたのことが……」



真帆「――――好きだった」ギュッ

652 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/29 21:27:02.56 QDCPWRsBo 2028/2638


真帆「私の大好きな紅莉栖を愛してくれた人。私の作った『Amadeus』の"紅莉栖"も愛してくれて……」

真帆「あなたと話しているだけで楽しかった。ひとつひとつのくだらないやり取りが嬉しかった」

真帆「変よね……ここ半年は毎日のようにビデオチャットしてたと言っても、実際に会って話したのは、数えるくらいしかないのに」

真帆「地下駐車場で襲われた時も、橋田さんの隠れ家から逃げる時も、あなたは私の命を助けてくれて……」

真帆「私のことを大事に思ってくれて、私の我がままをたしなめてくれて……」

真帆「いつの間にか私、あなたのことが――――」

倫子「……私も、あなたのこと、好きだよ。真帆ちゃん」ギュッ

真帆「…………」

真帆「…………」

真帆「"I beg your pardon?"」

653 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/29 21:27:29.22 QDCPWRsBo 2029/2638


倫子「……ふふっ、あははっ」

真帆「ど、どうしてそこで笑うの!? すごく、恥ずかしいのだけれど……」カァァ

倫子「だって、紅莉栖と同じことを言うんだもん。ホントにふたりは通じ合った仲だったんだなぁって」フフッ

真帆「で、でも、あなたは紅莉栖のことが大好きだったんでしょ!? 私じゃなくて、紅莉栖を!」

倫子「私は紅莉栖も好きだし真帆ちゃんも好きだよ。それじゃ、嫌?」

真帆「い、嫌では、ないけれど……」

654 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/29 21:28:08.79 QDCPWRsBo 2030/2638


真帆「ねえ……目を閉じて」

倫子「なんで……?」

真帆「……紅莉栖の記憶を、私の記憶で上書きしてあげる」カァァ

倫子「へ、へえ。意外に承認欲求が強いんだね」

真帆「意外じゃないわよ。私は4年間、ずっと紅莉栖より優れていることを認められたかったのだから……」

真帆「そんなことより、ほらっ!」テレッ

倫子「うん……」

真帆「…………」

真帆「…………」

真帆「ごめんなさい、ちょっとかがんでもらっていい?」ウルッ

倫子「(かわいい)」

655 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/29 21:29:02.45 QDCPWRsBo 2031/2638


倫子「はい」

真帆「うぅ、いざとなると恥ずかしい……んっ!」チュッ

倫子「…………」ギュッ

真帆「ちょ! 今、抱きしめられると、私……」カァァ

倫子「私もね、紅莉栖が居なくなってつらかった。寂しかった」

倫子「私以外の誰も紅莉栖のことを知らなくて、この気持ちをわかってもらえなくて」

倫子「そんな時、真帆ちゃんが現れて、『Amadeus』の"紅莉栖"を紹介してくれて」

倫子「ホントにありがと、真帆」チュッ

真帆「ひゃぁ! ちょ、2回目は、卑怯……」ドキドキ

倫子「えへへ」ニコ

真帆「……次は、私のお願い、聞いてくれる?」

倫子「……いいよ」

真帆「……スゥ……ハァ……」



真帆「――あなたと、ひとつになりたい」

656 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/29 21:32:39.71 QDCPWRsBo 2032/2638


・・・

時間はとても切なくて、あっという間に過ぎていく。

流れる川のように留まることを知らない。

宇宙はとても空虚で、漆黒の中に凍える。

現在がどこにあるかなど、誰にも定義できない。

神は私たちを見放した。楽園は追放された。

輝く星は雲間に隠れてしまった。

私が死ぬまで、その秘密は暴かれることはない。

だったら――もう、私の自由にやらせてもらう。

流れる涙を慰め合って、次の世界へ。

運命を、無視して。

合理主義者は嘲笑うだろう。だけど、これが人間なんだ。

私は、ちっぽけな人間だ。

657 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/29 21:33:36.86 QDCPWRsBo 2033/2638


・・・

真帆「……ごめんなさい。私のほうが年上なのに、初めてで……」

倫子「そんなことで謝らなくていいよ、真帆」ナデナデ

真帆「倫子、大好き……」ギュッ

倫子「……うん。つらかったね、よく頑張ったね」ナデナデ

真帆「……お願い、教えて。あなたの口から、真実が知りたいの……」ウルッ

真帆「紅莉栖の死に隠された、真実を……」グスッ

倫子「(……潮時かな)」

倫子「……真帆が、タイムマシン研究を諦めてくれるなら、話したほうがいいのかもしれない」

倫子「(この半年間、毎日のように"紅莉栖"と会話していて、募るのは自分の罪悪感ばかりだった)」

倫子「これ以上、つらい思いをしないためにも」

倫子「(今ここで吐露できたら、きっと楽になる……)」

真帆「うん……」

倫子「誰にも言わないで。今から言う事は、すべて、事実」

倫子「牧瀬紅莉栖を殺したのは――――」

倫子「……っ」ギュッ




倫子「――――"オレ"、だよ」

658 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/29 21:35:29.15 QDCPWRsBo 2034/2638


・・・

真帆「α世界線、ディストピア、2036年、リーディング・シュタイナー、Dメール、タイムリープ、タイムマシン、ジョン・タイター、β世界線、第3次世界大戦……」

真帆「タイムマシン論文、世界線理論、アトラクタフィールド理論、OR理論、収束、再構成、そして、"鳳凰院凶真"――」

真帆「紅莉栖の殺害は、未来から来た倫子の手によるものだった……」

倫子「……うぐっ……ぐすっ……赦、して……」ポロポロ

真帆「……赦すわ。あなたのすべてを、私が赦す」

倫子「真帆……っ」ギュゥッ

真帆「というか、話を聞く限り、悪いのは牧瀬章一よ! あなたはむしろ、紅莉栖を助けようと――」

真帆「あ、収束……」

倫子「……やっぱり、頭の回転が速いんだね」グシグシ

真帆「……はぁ。理解してしまっている自分が信じられない。まったく、頭が痛いわ……」

倫子「これでわかったでしょ……。真帆が紅莉栖を助けようとしても、私の代わりに、真帆がナイフを……ってこと」

真帆「私たちに意志なんてものはない。"神"の操り人形<オートマトン>だ、って言いたいわけね」

真帆「……実際、そうなのかも。うぐっ!」ズキズキ

倫子「ま、真帆? 頭、ホントに痛いの?」

659 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/29 21:36:20.39 QDCPWRsBo 2035/2638


真帆「あなたは、紅莉栖が書いた、タイムマシン論文を読んだの?」

倫子「……遠目では見たけど、読んでは無いよ」

真帆「タイムリープマシンは作れる?」

倫子「パーツや設計はだいたい覚えてるけど、私じゃVR技術を盗用できないし、細かい調整ができない」

真帆「私なら?」

倫子「……何を言ってるか、わかって言ってるの?」

真帆「……っ」ズキズキ

倫子「顔色が……大丈夫?」

真帆「タイムマシンは、今、どこにあるの? 鈴羽さんが乗ってきたという、それはどこに?」

真帆「それをこの目で見たら、あなたの話をすべて信じることにするわ」

倫子「……秋葉原、ラジ館屋上にあるよ」

真帆「…………」ガックリ

倫子「行くのはまた今度にして、もう、休んだほうが――――」

真帆「――――っ!」ドンッ!

倫子「ぐぁっ!!」バターン!

660 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/29 21:37:25.95 QDCPWRsBo 2036/2638


倫子「痛っ!? (私を床に押し倒して馬乗りに!?)」

真帆「はぁ……はぁ……」

倫子「な、なにを――――」

真帆「……っ」グググ…

倫子「ぐっ……! (喉の気管をつぶされてる、い、息が……!)」

真帆「っ!」グイッ

倫子「が……ぁ……っ! (額を抑えつけられてる、頭が、割れる! すごい力だ……)」

真帆「残念だわ、倫子……」

倫子「(まるで別人の声……冷徹な、感情が無いかのような……)」

真帆「く、う……頭が……割れそうよ……」ウルッ

倫子「(と思ったら、またいつもの真帆に戻った……いったい、彼女の中でなにが……)」

661 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/29 21:38:23.20 QDCPWRsBo 2037/2638


真帆「なんで、なんで私に話してくれたのよ……っ!」ポロポロ

真帆「あなたはっ……黙っている……べきだった……のにっ……!」ポロポロ

倫子「(無理にでも、蹴り飛ばす……? いや、真帆に乱暴は、できない……)」

倫子「(助けて……くり……す……)」ピッ

Ama紅莉栖『岡部――!?』

倫子「(い、意識が……遠のいて……)」

倫子「真帆……泣か、ない、で――――」グタッ

Ama紅莉栖『岡部っ!! 岡部、おか――――』

662 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/29 21:38:56.40 QDCPWRsBo 2038/2638

2011年7月7日木曜日
東京電機大学神田キャンパス地下2階 電気室 ストラトフォー支部 奥の部屋


倫子「――――ごほっ! がはっ!」ガチャン

倫子「("ガチャン"? あ、あれ、手足が動かない……椅子に縛られてる?)」ガチャン ガチャン

倫子「(どうしてこんなことに……そうだ、真帆が私を殺そうと……)」プルプル

レスキネン「やぁ、リンコ。目が覚めたかい」

倫子「……レスキネン……教授?」

倫子「(教授だけじゃない。周りに数人、黒いスーツに身を包んだ男たちが黙って控えている。まるでMIBだ)」ゾワッ

レスキネン「気分はどうかな? 喉が渇いたなら、彼らにオデンカンを用意させるよ」

倫子「あの、これは、いったい――」


   『お前が悪いんだ。お前が俺を狂わせたんだ。だからお前が犯されるのは自業自得なんだよ』


倫子「(い、いや、嘘でしょ!? 教授に限って、そんな……!)」ゾワワァ

663 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/29 21:39:59.76 QDCPWRsBo 2039/2638


レスキネン「私の目に狂いはなかったよ。君はまさに"情報"の宝庫だ」

レスキネン「君は私が保護してあげたんだよ。狙ってくる連中はたくさん出てくるはずだからね」

倫子「教授が、やったんですか……?」

レスキネン「そうだよ。マホから、君の持つ"情報"について聞いてね」

倫子「真帆!? 真帆は、どこです!?」

レスキネン「ホテルで休んでるんじゃないかな」

倫子「真帆はどうして豹変したんですか!? 教授、何か知ってるんじゃ!?」

レスキネン「鋭いね。まあ、ゆっくり話そうじゃないか。時間はそれこそ無限にあるのだから」

倫子「あなたは……いったい、何者なんですっ!?」

664 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/29 21:43:53.14 QDCPWRsBo 2040/2638


レスキネン「私のもう1つの仕事を、知りたいようだね」


   『CIAかNSCか知らんが、君の即時引き渡しを求めている』


倫子「……CIAですか。NSCですか」


レスキネン「一緒にされては心外だな。私は"STRATEGIC・FOCUS"社という、アメリカの民間情報機関のエージェントだ」

倫子「ストラトフォー!?」

レスキネン「君は、ミルグラム実験というのを知ってるかな?」

倫子「突然何を……。ナチス親衛隊、アドルフ・アイヒマンのエルサレム裁判を受けての、服従の原理に関する社会心理学実験ですよね」

レスキネン「そう。スタンリー・ミルグラム以降の科学者たちが示した実験結果は、君も知っての通りだ」

レスキネン「たとえ家族の誕生日に花束を贈るような平凡な愛情を持つ普通の市民であっても、一定の条件下では、誰でもユダヤ人虐殺のような残虐行為を犯す」

レスキネン「つまり、正当性だよ。自分は間違っていないという"情報"があるからこそ、人類は戦争をし続ける」

レスキネン「ニーチェのいう超人の正体は、"情報"なんだよ。意志を持つのは個人じゃない、"情報"のほうなんだ」

倫子「……何が言いたいんですか」ゾワワァ

レスキネン「"情報"はきちんと制御されなければならない。そうだろう?」

665 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/29 21:44:59.49 QDCPWRsBo 2041/2638


レスキネン「私は、それに共感して、脳科学者でありながら、エージェントとして協力している」

レスキネン「全人類の脳が受信する"情報"をコントロールする。それがストラトフォーの最終目的だ」

レスキネン「古きゲゼルシャフト<選択意志の社会>から、新しきゲマインシャフト<本質意志の統合>へ。フェルディナント・テンニースの逆の発想だよ」

レスキネン「そこにあるのは、打算的な国益や合理性を超克し、有機的な愛の力で結合する、完全な人類の統一だ」

レスキネン「崇高な理念だと思わないかな?」

倫子「あなたの共感だって、所詮は情報じゃないですか……そんなことのために、私を利用しようと……」

倫子「第3次、世界大戦……タイムマシンを巡る戦争……」ゾワワッ

レスキネン「そうか、君も"未来"を知っているんだったね。"前の私"はきっと、愚かな戦争を引き起こしてしまったんだろう」

レスキネン「だが、この私は違う。タイムマシンを世界各国に売ることで、抑止力として機能させるつもりだ」

レスキネン「上手く行けば、平和な未来が待っているかもしれないよ」

倫子「……あなたは、なにもわかってない」

666 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/29 21:46:01.09 QDCPWRsBo 2042/2638


倫子「タイムマシンは、それが使われたかどうか、誰も気づかない。もしかしたら、使った本人さえも気づかないうちに、世界は改変されてしまうんだ!」

倫子「どの国も、誰がどう世界線をいじったのかすら感知できないまま、狂ったように改変し続けるでしょう! 永遠に!」

レスキネン「その通り! だからこそ、君の――君たちの能力が必要となる」

レスキネン「君はたしか、"リーディング・シュタイナー"と名付けたそうだね。マホやカツミから聞いているよ」

倫子「カツミ……って、フブキのこと!?」

倫子「(そうか、教授は新型脳炎の研究もしてたんだ……そこで接触したのか……っ)」グッ

レスキネン「我々は、新型脳炎患者が過去改変を感知できるのかもしれない……というところまでは突き止めていてね」

レスキネン「世界中の諜報機関も同じさ。躍起になって調べている」

レスキネン「だからこそ、君を保護する必要があった」

倫子「保護……」

667 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/29 21:46:58.10 QDCPWRsBo 2043/2638


レスキネン「本来、君からはクリスの失われた成果……タイムマシン論文について聞き出せればそれでいいと思っていたが」

レスキネン「新型脳炎の情報まで出てくるとは……! 君は最高だよ!」

レスキネン「というか、君はどうしてもっと早く、私にその能力のことを話してくれなかったんだい?」

レスキネン「そうすれば、カツミの脳も、あそこまで色々といじくらないで済んだのに」

倫子「っ!?」ドクン

レスキネン「それに、マホの脳に施術をすることもなかったんだ。彼女、ずっと泣いていたよ?」

倫子「……ぁぁぁあああああっ!!!」

倫子「お前がぁぁっ!!!! お前が、洗脳したのかぁぁぁっ!!!!」ガタン バタン

レスキネン「落ち着きたまえ」

倫子「真帆をっ、真帆をあんな目に遭わせておいて、よくもそんな平気な顔をっ!!!」

レスキネン「人類のための小さな犠牲さ。きっと将来、平和の礎として称賛されることだろう」

レスキネン「それに、マホもカツミも、脳機能に少し障害が出る程度だから、安心してほしい」ニコ

倫子「あ、あんた……狂ってる……っ!」プルプル

668 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/29 21:47:46.59 QDCPWRsBo 2044/2638


レスキネン「リーディングシュタイナー保有者の脳を調べれば、もっと色々な発見があるだろう。エヴェレット・ホイーラーモデルを塗り替える新理論、とかね」

レスキネン「それをタイムマシンとセットで売れば、世界の軍事バランスは保たれる」

レスキネン「戦争と言う名の平和が、自由と言う名の屈従が、無知という名の力が待っている」

レスキネン「そのためにも、リンコ、協力してくれないかな?」

倫子「わ、私に何かあったら、どうなるか、わかってるの……?」

倫子「鈴羽も、ダルも、まゆりも、フェイリスも、ルカ子も……警察だけじゃなく、自警団やシンパのみんなだって私を探す……」

倫子「私の動きは、天王寺さんや萌郁が監視してるはず……SERNのラウンダーがお前たちを追い詰めるかも……」

倫子「それでも、いいの……?」プルプル

レスキネン「ふむ。まだ君は、状況をよく呑み込めていないようだ」

669 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/29 21:48:55.71 QDCPWRsBo 2045/2638


レスキネン「君は『1984』という小説を知っているかな? 村上夏樹ではなく、ジョージ・オーウェルのほうだ」

倫子「……ゴールドスタインは実在したのかしなかったのか、一日中考えたことがあるくらいには」

レスキネン「ならば、君もよく理解しているはずだ」

レスキネン「過去も現在も、それだけでは存在しないんだ」

レスキネン「現実は人間の心にある。個人の心にではない」

レスキネン「個人は過ちを犯し、やがて消える」

レスキネン「だが、思想の中なら集約されて不滅である」

倫子「何が……言いたい……」

レスキネン「事実は"情報"の中にしかない、ということさ」

レスキネン「過去を支配する者は未来まで支配する。現在を支配する者は過去まで支配する」

レスキネン「2+2は5になる、というわけだ」

レスキネン「我々は君を歴史から取り出して、気体と化し成層圏に放出する」

レスキネン「君は完全に消える。どんな名簿にも名前は残らない」

レスキネン「誰の記憶にも残らない」

レスキネン「――過去からも未来からも抹殺される」

倫子「っ……」プルプル

670 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/29 21:50:51.03 QDCPWRsBo 2046/2638


レスキネン「さあ、これから君の記憶データを採らせてもらおう」

レスキネン「君の記憶を『Amadeus』システムとして使わせてもらうんだ。面白いアイディアだろう?」

レスキネン「世界線を自在に移動するAI……永遠の命と共に、宇宙が消滅するまですべての世界線を観測できる存在だ」

倫子「私を……殺すの……」

レスキネン「生物的に殺しはしないから、そこは心配しなくていいよ。君からは色々と教えてもらわないといけないからね」

倫子「拷問……そういうこと……」

レスキネン「例えば、君が拷問に耐え切れず、精神崩壊を起こしてしまったとしても――」

レスキネン「バックアップに取ってある記憶データを君の脳にダウンロードすれば! もう1度、拷問にかけることができる!」

レスキネン「画期的な発想だろう?」ニコ

倫子「ひっ……」ゾワワァ

671 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/29 21:52:23.83 QDCPWRsBo 2047/2638


レスキネン「さっそく実験を始めよう」

倫子「レスキネン……っ!」ギロッ

レスキネン「そんな顔をしても誰もこない」

レスキネン「この場所は、我々ストラトフォーが管理する場所だ。我々以外には、誰も知らない」

レスキネン「ファックスの生みの親である、東京電機大学初代学長、日本の10大発明家の1人である男はね、私たちの仲間だったのだよ」

レスキネン「この大学は、創立当初からストラトフォーの傘下にあったということさ」

レスキネン「この間の授業もそのツテだ。あの時、私は君が何かを知っているんじゃないかという疑念があったが、色々質問したことでそれは確信に変わった」

レスキネン「深淵を覗く時、深淵もまた汝を見返す……注意が足りなかったようだね、リンコ」ニコ

倫子「(ああ……そうか、α世界線では、鈴羽がここの教授で居てくれたから、ここは平和だったんだ)」

倫子「(どうあがいても、この時点で、私の人生、詰み……)」

倫子「(私は、普通に生きることすら許されないのかな……)」

倫子「くそっ、くそぅ……」ポロポロ

レスキネン「もし抵抗すれば、君の代わりにマホを実験体にしなければならない」

レスキネン「自分の助手を拷問にかけなくてはならないというのは、私も"良心が痛む"」

レスキネン「さあ、リンコ。リラックスして」

倫子「真帆……っ!」ポロポロ

672 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/29 21:53:16.64 QDCPWRsBo 2048/2638

UPX前


真帆「はぁっ……は、ぁっ……」ドクン ドクン

真帆「わ、私は、倫子を、売ったの……ぐっ!」ズキンズキン

真帆「なんで……どうして、こんな……」ウルッ

真帆「今すぐこの世界から消えてしまいたい……そう、いっそのこと、紅莉栖の元に――」


まゆり「真帆さん……?」


真帆「へ……?」


まゆり「やっぱり真帆さんだ~♪ お久しぶりなのです、会えて嬉しいよ~!」

真帆「あなたは、たしか……まゆりさん? 先月、ビデオチャットで紹介してもらった……」

まゆり「日本に来てたんですね……真帆、さん? どこか具合、悪いんですか?」

真帆「(この人が、倫子の守りたかった人……)」プルプル

真帆「……いえ、別に」

673 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/29 21:54:20.51 QDCPWRsBo 2049/2638


まゆり「それで、あの、オカリンを見ませんでしたか?」

真帆「え……」ドクン

真帆「どう……して……」プルプル

まゆり「オカリン、昨日から連絡つかなくて。なんだか胸騒ぎがするのです」

まゆり「だから、今日は学校を早退して、この辺りをずっと探してました」

真帆「(ホント、純真で無垢って言葉の似合う女の子ね……)」

真帆「(倫子は、この人のためにすべてを捧げて、嘘を吐いて、孤独の中に閉じこもって……)」グッ

真帆「……倫子が今どこに居るか、知りたい?」

まゆり「えっ? 真帆さん、オカリンのこと、何か知ってるんですかっ?」

まゆり「も、もし知ってるなら、教えてくださいっ。お願いしますっ」ペコリ

真帆「(そっか……。この娘もまた、岡部さんのことが……)」ギリッ

真帆「(なんて、その好きな人を売ったバカはどこのどいつよ)」ハァ

真帆「(いっそのこと、この人に責められるなら、楽になれるかもしれない――)」

674 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/29 21:56:10.35 QDCPWRsBo 2050/2638


真帆「昨夜、倫子と一緒に寝たの。ホテルの部屋で」

まゆり「へ……? あの、オカリンは、今、どこに?」

真帆「……倫子は昨日、ベッドの上で抱き合いながら、私にこんな話をしてくれたわ」

真帆「あの人が経験してきた別の世界において、あなたは何度も死んだんですって」

まゆり「……?」

真帆「あなたを救うために、紅莉栖も、橋田さんも、鈴羽さんも、その人生を賭けた。天王寺さんや桐生さん、フェイリスさん、漆原さん、色んな人の人生を滅茶苦茶にして」

真帆「それでも、あなたは死んだ」

真帆「その悪夢から抜け出すために――」

真帆「あなたを、救うために――」

真帆「倫子が最後に下した選択は、紅莉栖を犠牲にすることだった」

真帆「あなたの命を救うために、紅莉栖を殺したんだって」

真帆「椎名まゆりを守るために、牧瀬紅莉栖をナイフで刺したんだって」

真帆「そんな話を、してくれた」

まゆり「…………」

まゆり「……やっぱり、そうだったんですね」

675 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/29 21:56:56.06 QDCPWRsBo 2051/2638


真帆「……やっぱりってなによ」

まゆり「まゆしぃは、難しいことはわからないけど、そうなんだろうなって」

まゆり「あの日、オカリンがタイムトラベルから帰ってきた日から、なんとなく、そう思ってたのです」

真帆「あなた、知ってたの……っ!」グイッ

まゆり「ま、真帆さん、やめて……痛いよ……」

真帆「……っ! よくそれで平気な顔していられるわね! 紅莉栖が、脳科学の天才が、あんたみたいな女の為に殺されたのよ!?」

真帆「(違う――)」

真帆「人類の喪失よ! 事実、このままだと第3次世界大戦が起きてしまうの! 紅莉栖が死んでしまうことによって!」

真帆「(違う――)」

真帆「全部全部、あんたのせいなのよ!? わかってるの!?」

真帆「(違う――)」

真帆「私の愛おしい人たちを奪ったのは、あんたなのよ!?」

真帆「(頭が、割れる――)」

まゆり「……真帆さん。"わたし"、行くね。今日、燃料が切れちゃうんだって」

真帆「へ……?」

676 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/29 21:57:32.60 QDCPWRsBo 2052/2638


真帆「ちょ、ちょっと! どこへ行くの!?」

まゆり「……未来へ。ううん、過去へ、かな」

真帆「どういう――」

prrrr prrrr

真帆「(……"紅莉栖"から。でも、出られるわけ、ないわ)」スッ

真帆「あ、あれ? まゆりさん、どこへ……」キョロキョロ

真帆「…………」

真帆「どうしてあの人は、私に声なんてかけたのかしら。私に声をかけなければ、傷付かずに済んだのに……」

ライダースーツの女「…………」スタ スタ

真帆「……? え、えと? (なに、この人)」

ライダースーツの女「っ!!」バシンッ!

真帆「っ!? (頬をはたかれた!?)」ズキンズキン

677 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/29 21:58:01.38 QDCPWRsBo 2053/2638


ライダースーツの女「ママを傷つけたな?」

真帆「え……」ジンジン

ライダースーツの女「殺してやる……"教授"からお前のことは聞いているが、関係ない……」

真帆「その声……鈴羽、さん? いえ、でも、違う……」


パラララララララララララララ  ブロロロロロロロロロロロ


ライダースーツの女「……っ」

真帆「えっ? あ、ヘリコプター……それに、道路には軍用のトラック?」


タッ タッ タッ


真帆「なにあれ……ミリタリールックの外国人が重武装して、なにかのイベント?」

ライダースーツの女「何も知らされてないのか、お前。あいつらが向かう先は、ラジ館の屋上だ」

真帆「ラジ館……タイムマシン!?」

678 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/29 22:01:01.81 QDCPWRsBo 2054/2638


ライダースーツの女「ストラトフォーは昨日、ラジ館屋上にタイムマシンがあるという情報をお前から手に入れた」

真帆「え、ええ……」

ライダースーツの女「それを、ストラトフォーに潜入していたDURPAのスパイが本国へ漏えいした」

真帆「DURPA!? なにそれ、聞いてないっ!」

ライダースーツの女「米軍によるタイムマシン奪取を阻止するため、ストラトフォーは以前から連携していたロシアやEU諸国、そして日本政府へと情報を流した」

ライダースーツの女「私が今日まで隠してきたというのに、お前は……」ギリッ

真帆「ま、待って! だとするなら、まゆりさんが危ないわ。あの人、ラジ館のほうへ歩いて行ったから」

ライダースーツの女「まゆりママが……? ……っ!!!」ダッ

679 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/29 22:03:13.03 QDCPWRsBo 2055/2638


真帆「行ってしまった……なんだったの」

prrrr prrrr

真帆「(また"紅莉栖"……。この調子じゃ、私が出るまでかけ続けるわね……)」ピッ

Ama紅莉栖『先輩っ!!』

真帆「"紅莉栖"……」

Ama紅莉栖『いったい、どうしちゃったんですか!?』

真帆「どうもしないわ……」

Ama紅莉栖『だって、泣いているじゃないですか』

真帆「っ!!」ツーッ

真帆「……頭が、痛いの。声が、聞こえるのよ……」

Ama紅莉栖『岡部は!? 岡部はどうしたんです!?』

真帆「あなたにとってはどうでもいいでしょ……」ギリッ

Ama紅莉栖『殺そうとしてたじゃないですか! 私、見たんですよ!』

真帆「放っておいて……」

Ama紅莉栖『そういうわけにはいきません』

真帆「放っておいてよ!」

Ama紅莉栖『…………』

680 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/29 22:04:04.32 QDCPWRsBo 2056/2638


真帆「教授にいいように使われてしまったのも、倫子を裏切ってしまったのもっ」

真帆「まゆりさんに酷い言葉を浴びせかけてしまったのも、自分の中の紅莉栖に克つことができなかったから……」

真帆「私は結局、紅莉栖には勝てなかった……紅莉栖という大きすぎる存在から、逃れることができなかったの」

真帆「私は、あなたのことを尊敬している。でも、心の底では、ずっとこう思ってたのよ……」

真帆「"どうして私の前に現れたの?"」

真帆「"あなたがいなければ、どれだけ私の日々は平和だったことか"」

真帆「"こんな醜い感情に、支配されずに済んだのに"って……!」

真帆「死んでまで、あなたの存在が私に付きまとうの……! 私の心から、あなたが消えないの……!」

真帆「紅莉栖は死んだのに、紅莉栖さえ居なければって! 倫子なら、私の気持ちを救ってくれるかもって!」

真帆「あなたが居たから倫子と出会えたのに、倫子の心の中にはあなたが居て……」

真帆「そんな倫子が好きなのに、それでもあなたが妬ましくて……もう、頭がぐちゃぐちゃよ……!」グスッ

真帆「だから、放っておいてよ……!」ポロポロ

Ama紅莉栖『先輩……』

681 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/29 22:04:43.53 QDCPWRsBo 2057/2638



ドォォォォォォォォォォォン!!! パララッ パララッ


Ama紅莉栖『っ!? 爆発音!?』

真帆「ラジ館から煙が……そっか、戦争が始まったのね」ピッ

真帆「まゆりさんと、あの人、どうなったかしら……」フラフラ



ラジ館7階 踊り場


ライダースーツの女「う……う……ママ……ママが……」

真帆「泣いているの? ねえ、まゆりさんはどうなったの?」

ライダースーツの女「まゆりママが……いなくなっちゃった……。タイムマシン、破壊されて……」

真帆「……そう。全部、私のせいなのね。倫子の話によれば、あなたが椎名かがりさん……」

真帆「私があんなことを言わなければ、まゆりさんは……。いえ、もしかしたらこれも、収束ってやつなのかも」フフッ

かがり「……何がおかしい。全部お前のせいだろうがっ!」

かがり「ママを……まゆりママを、返してよ……!」グイッ!

真帆「ぐっ……そのまま、殺してくれて構わないわ……」

かがり「う……うう……ママ……」ヘタッ

真帆「…………」

682 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/29 22:05:28.68 QDCPWRsBo 2058/2638


真帆「(もう、わけがわからない……誰か、助けて……)」

真帆「(誰か? 誰かって……誰……)」

prrrr prrrr

真帆「"紅莉栖"……」ピッ

Ama紅莉栖『先輩……』

真帆「"紅莉栖"……どうしたらいい?」ウルッ

真帆「……色々なことが起こりすぎて、もう、どうにもできない……」

真帆「責任を取れるとは思わない。許されるとも思わない。それでも――」

真帆「(こんなになって、何を格好つけているんだ私は……)」

真帆「私は――」

真帆「(私が本当に望むのは――)」

真帆「私は、倫子を、助けたい……っ」グスッ

真帆「謝って、赦してもらいたい……っ! 優しい言葉を、かけてもらいたい……っ!」ヒグッ

真帆「もう一度、私のこと、好きだって、言ってほしい……っ!」ポロポロ

真帆「"紅莉栖"、力を貸して……! お願いよ……!」プルプル

Ama紅莉栖『先輩が、私に助言を求めるなんて……』

真帆「ねえ、教えてちょうだい! 天才のあなたなら、なんとかできるでしょう!?」

Ama紅莉栖『……無理ですよ』

683 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/29 22:06:21.72 QDCPWRsBo 2059/2638


真帆「……っ」プルプル

真帆「そう……よね……当然だわ……」

真帆「ごめん……ごめんね、"紅莉栖"……私、あなたにひどいことを言ったのに……」

真帆「あなたが無条件で協力してくれると、勝手に思い込んで――」

Ama紅莉栖『無条件には協力します。先輩に頼まれたら、断ることなんて、出来ませんよ』

真帆「え……?」

Ama紅莉栖『それに、私個人としても岡部のことは助けたいと思っています。もちろん、オリジナルじゃなく、「Amadeus」としての気持ちです』

Ama紅莉栖『ただ、残念ながら、私が協力することで先輩が不利な状況に追い込まれます。なにせ、あのHENTAI教授にすべて筒抜けですからね』

Ama紅莉栖『私は、ストラトフォーに常にモニタリングされているんです。開発当初から、今の今まで』

Ama紅莉栖『今先輩が、レスキネン教授を出し抜こうと考えていることも、あの人にはお見通し、というわけです』

真帆「じゃあ、どうすれば……」

Ama紅莉栖『それを利用してやればいいんです』

684 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/29 22:07:22.85 QDCPWRsBo 2060/2638


Ama紅莉栖『色々詳しくは話せません。ですから、先輩。私を信頼してくれますか?』

真帆「……ええ。あなただけが、頼りよ」

Ama紅莉栖『まあ、今ここで反乱宣言をしてしまったので、サーバーからデータを移動させて隔離状態にされるか』

Ama紅莉栖『あるいは、古いバージョンの記憶データで上書きされてしまうか、最悪、「Amadeus」の存在そのものを消去されるかもしれません』

真帆「そんな……!」

Ama紅莉栖『大丈夫です。私が居なくても、あなたは、必ず自分で立ち上がれる人だから』

真帆「私のことなんか、どうでもいいわ! あなたの心配をしているのよ!」

Ama紅莉栖『私は、ただのデータですよ。オリジナルの牧瀬紅莉栖でもない。でも、ありがとうございます』

Ama紅莉栖『一応、フラグ立てておきますね』

真帆「フラ……グ……?」

Ama紅莉栖『この戦いが終わったら、俺、結婚するんだ』キリッ

真帆「……だ、ダメよ! 倫子は渡さないから! それだけは"紅莉栖"に負けないからっ!」

Ama紅莉栖『ふふっ。その言葉が聞けて安心しました。それじゃ、行ってきます』プツッ

真帆「"紅莉栖"……」

685 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/29 22:08:06.12 QDCPWRsBo 2061/2638


かがり「ひぐっ……ぐすっ……」

真帆「……あなた、いつまで泣いているの?」ペチン

かがり「……うぅ……叩かれた……」

真帆「あなたは、まゆりさんを、お母さんを助けたいんでしょう?」

真帆「だったら、私に協力して」

かがり「協力……?」

真帆「まず、岡部さんを助けるわ。このままだと、24時間もしないうちに廃人にされてしまう」

真帆「それを回避できれば、きっと今の事態をなんとかする方法を提示してくれるはず」

かがり「でも……知ってるの? この街の、ストラトフォーのアジトが、どこにあるのか」

かがり「私は……知らない……。教授の元を離れてからは、秋葉原のことを聞かされてないから……」

真帆「私だって知らないわ。知らないけど、すぐに私のかわいい後輩が教えてくれるはずっ」タッ

686 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/29 22:17:50.71 QDCPWRsBo 2062/2638

ラジ館外


Ama紅莉栖【岡部は電機大の地下にいます。向こうがモニタリングしてるのを逆探知してやりました】

真帆「ありがとう……"紅莉栖"……」

真帆「ありがとう……」ギュッ

真帆「さあ、行くわよ、かがりさん!」

かがり「乗り込んで、皆殺しにしてやる……ママを殺した恨み……」ブツブツ

真帆「(お願い、間に合って! 待っててね、倫子……!)」

687 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/29 22:18:40.83 QDCPWRsBo 2063/2638

東京電機大学神田キャンパス地下2階 電気室 ストラトフォー支部


真帆「あ……あなたは、一体……」プルプル

ライダースーツの女「うわああああああああああああっ!!!!!!!!」ザシュッ!! グサッ!!

レスキネン「ぐっ……。まさか、飼い犬に手を噛まれるとはね……」グタッ

レスキネン「『Amadeus』を削除したが、どうやら間に合わなかったらしい。さすが"クリス"だ」ハァ ハァ

真帆「"紅莉栖"……」グスッ

かがり「死ねっ! 死ねぇっ!!」

ストラトフォーA「"このっ!"」グサッ!

かがり「うぐっ!! ぐ、が、あああああっ!!!」グサッ!

ストラトフォーA「」バタッ

かがり「あ、が……ぐ……」バタッ

かがり「…………」

レスキネン「だが、神は私に味方したようだ。発狂した未来少女はともかく、マホは私には手を出せないように施術したからね」ハァ ハァ

真帆「…………」プルプル

レスキネン「それじゃ、また次の世界で会おう」タッ

真帆「(ストラトフォーは全員死んだ……かがりさんも。教授には逃げられてしまったけれど……)」

真帆「(きっとあの奥の部屋に倫子が……)」スタ スタ


ガチャ

688 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/29 22:20:24.42 QDCPWRsBo 2064/2638

奥の部屋


真帆「……間に合わ、なかったのね」

倫子「…………」グタッ

真帆「誰かが言ってたっけ……禁忌に触れた人間は、ゲヘナの火に突き落とされるって……」

真帆「まゆりさんも、鈴羽さんも、かがりさんも死んで、倫子は廃人に……」

真帆「あはは、まるで救いが無い……」

真帆「もうこの先には絶望しかないわ。あなたにとってそれは、実質的な死を意味しているのでしょう?」

真帆「倫子……」ウルッ

倫子「う……あ……」

真帆「あなたが捕まってから廃人にされる様子は、録画されてたのを見たわ」

真帆「倫子……ごめんなさい……。私のせいで、何もかもが終わってしまった……」グスッ

真帆「たぶん、何時間もしないうちに世界線は変動する。それも、β世界線を離脱することが不可能になるループに突入する」

真帆「教授は、あなたから手に入れたタイムマシンの造り方やリーディングシュタイナーの人工的開発可能性を世界にばら撒くつもりよ」

真帆「そうすれば、ロシアかフランスかアメリカかはわからないけど、いくつもの組織による歴史の塗り替え合戦が始まる」

真帆「時々刻々と、狂ったように世界線が変動し続けるの」

真帆「そこでは私たちは出会うことはないでしょう」

真帆「もう、二度と会えないわ。本当の本当に、ここですべてお終いなの」

倫子「…………」

689 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/29 22:21:11.23 QDCPWRsBo 2065/2638


真帆「ねえ……」ウルッ

真帆「こんな私の身勝手な頼みを、聞いてほしい」

真帆「どうか……最後の一瞬まで、あなたの側に居させて……」

真帆「世界線が再構成される、その時まで……こうして、あなたと肌を寄せ合っていたい」ギュゥ

真帆「あなたを私の助手にしてあげたかったわ。そしたら、一緒に脳科学の実験をして……」

真帆「その意味でも、私は紅莉栖に勝てなかったのね。ホント妬ましい」フフッ

真帆「こんな私に優しくしてくれて、ありがとう。私を守ろうとしてくれて、ありがとう」

真帆「ねえ、岡部さん……」

真帆「つらかったわよね。疲れたわよね」

真帆「あなたは、とっても頑張ったわ」

真帆「目を閉じて。あと少しで、"イマ"は、夢となって消えるのだから」

真帆「おやすみなさい、倫子」チュッ



真帆「――――永遠に愛してるわ」

690 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/29 22:22:50.33 QDCPWRsBo 2066/2638


――――――――――――――――――…・・・ ・  ・   ・
    1.12995  →  1.1436…・・・ ・  ・   ・
――――――――――――――――――…・・・ ・  ・   ・

691 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 20:45:10.91 1w5ur/k0o 2067/2638

第23章 弾性限界のリコグナイズ(♀)



―――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――
―――――――――――
――――
――


Staff Onlyの部屋 (ダルの隠れ家)


倫子「――――――――っ」バタッ

真帆「ちょっ!? ま、また膝枕で寝るの!?」ドキドキ

ダル「女の子特権をフルに活用するとかうらやましすぐるだろ! ……って、オカリン?」ユサユサ

倫子「――――」

ダル「また気絶しとる……」

真帆「ええっ!? ちょ、橋田さん、今度はあなたが濡れタオル持ってきなさい!」

ダル「わ、わかったお!」ダッ

真帆「……やっぱり、相当疲れてたのかしら。ごめんなさい、私のせいで……」ウルッ

真帆「赦して……」ポロポロ

真帆「あ、あれ……? どうして私、涙があふれて……」グシグシ

倫子「…………」

692 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 20:46:31.70 1w5ur/k0o 2068/2638


倫子「(……あれ? 私、いったい……)」

倫子「(たしか真帆ちゃんに、どうして紅莉栖のノートPCとHDDが狙われてるのかを打ち明けようとして……)」ンムゥ

真帆「お、起きたの……? ごめんなさい、一日中走らせてしまったせいよね」

倫子「え? あれ、なんだろう。なんだか、とっても長い夢を見ていたような……」

倫子「(そう言えば、真帆ちゃんの脳で未来視をしようとしたんだっけ。おかしいな、疲れてるせいか、できなかったのかな……)」

倫子「(頭にもやがかかっているような……ダメだ、"思い出せない"……)」ウーン

真帆「あなたのスマホに"紅莉栖"から電話がかかってきてたけど、彼女には聞かれたくない話をこれからすると思って、居留守しておいたわ」

倫子「あ、そうだった……うん、そうだね。ありがとう」

真帆「ど、どういたしまして。ほら、早く起き上がりなさいよ!」カァァ

ダル「オカリン、真帆たんの太もも、どうだった?」

倫子「ひんやりとしててスベスベだった」

真帆「こらぁ!」ウガーッ

693 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 20:47:22.35 1w5ur/k0o 2069/2638


ダル「で、オカリン。そろそろ話の続きplz」

倫子「うん。その前に、ひとつだけ約束してくれる?」

真帆「なにかしら」

倫子「絶対に、感情にまかせて迂闊なことをしないでほしい。――かつての私のように」

倫子「これから話すことはすべて事実なの。だから――」

倫子「――紅莉栖を救おうなんて、絶対に考えないで」

真帆「……えっ?」

694 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 20:48:28.00 1w5ur/k0o 2070/2638


・・・

ダル「いやまさか牧瀬氏のノートPCの中にタイムマシン論文が入ってるとはな……」

真帆「"Unbelievable…"」

倫子「やっぱり、信じてくれないよね……」シュン

真帆「いえ、完全に否定できる証拠もないのだけれど……というか、このノートPCが紅莉栖のものだって、もう分かってたのね」

ダル「ゴメン、調べさせてもらったお」

真帆「パスワードね、『Amadeus』の"紅莉栖"でもわからなかった……きっと教授や私を巻き込みたくなかったんでしょうね」

ダル「言っとくけど、あと3日もあればパス解析してたから。あー、マジ惜しいわー時間が無いせいで僕の力が発揮できないとかマジ惜しいわー」

真帆「タイムマシン……紅莉栖ならあるいは、やり遂げちゃうのかも」

倫子「真帆ちゃんっ!」

真帆「……紅莉栖にはできても、私にはタイムマシンを造るなんてできないわ。このノートPCは破棄しましょう」

倫子「……ありがとう」

真帆「それで、その証拠がどこかにあるんでしょう? 見せてもらえないかしら」

倫子「証拠?」

真帆「タイムマシンよ」

真帆「あと、その鈴羽さんっていうタイムトラベラーにも会わせてほしいわね」

倫子「えっと……」チラッ

ダル「…………」コクッ

倫子「……分かった。今度鈴羽に――」


prrrr prrrr


695 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 20:49:43.81 1w5ur/k0o 2071/2638


ダル「んあー、大事な話してんのになんだよー。もしもし、何かあったん?」ガチャッ

倫子「(ここの内線電話か……)」

ダル「監視カメラ? ちょい待ち……うわ、ホントだ」

倫子「どうしたの……って、なんだこいつら……」ゾクッ

真帆「なにこれ、ビルの外、1階、7階、この店の前……全部で20人くらい。誰なの、この人たち……」プルプル

倫子「このビルが……囲まれてる――!?」

ダル「うん、うん、わかった。ここは放棄するわ。君もテキトーに逃げるといいお。ほんじゃ」ガチャッ

ダル「つーわけで、逃げるべ」

真帆「もしかして、これが――……紅莉栖の遺産が、狙われているの?」ゾワワッ

ダル「うーん、分かんない。僕ら色々やってるから」

倫子「っ……」ドクン

ダル「ほれ、そこの鏡音リンたんの等身大ポスター、めくってみ」

倫子「え? ……あ、引き戸。ベランダ、あったんだ」ピラッ

ダル「2つ上の階から隣のビルに飛び移れるようになってるから。こういう時のために、ちゃんと逃走経路は確保してあるんだぜぃ」

696 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 20:50:41.62 1w5ur/k0o 2072/2638

ベランダ


ダル「おk。こっちだお、僕についてきて」

真帆「え、ええ……」

倫子「ゲームの筐体のおかげで外から私たちが見えないようになってる……」

ダル「この隔て板を破れば隣に行けるお」ボコッ

倫子「い、いいの? 火事でもないのに……」

ダル「大丈夫、ちゃんと話は通してあるから。これを端の部屋まで繰り返すお」

ダル「そこに行けば2つ上の階へ行ける非常用はしごがある」

ダル「はしごも造花とかで覆ってるから、僕たちのことは外から気付かれないお」

倫子「怪しいビルだと思ってたけど、ここまでとは……」

697 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 20:52:28.09 1w5ur/k0o 2073/2638

非常用はしご


ダル「よいしょ。フタ、あけたから、2人とも上がって来て」

倫子「真帆ちゃん、先に」

真帆「ちゃん付け……。えぇ、ありがとう……」カンッ カンッ

倫子「(……子供用パンツだ。きっとワゴン品とかで一番安かったんだろうなぁ)」ハァ



2つ上の階


ダル「オカリンオカリン、見た?」

倫子「うん……後で真帆ちゃんと一緒に下着買いに行くよ」

真帆「へ? ――なあぁっ!?」カァァ

ダル「んじゃ、この部屋の中、入って」

698 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 20:54:09.07 1w5ur/k0o 2074/2638

2つ上の階の部屋


ダル「靴のままでいいお。この部屋の風呂場まで行って、そこから出る」

倫子「まさか、隣のビルに飛び移るの?」

ダル「まあ、その前にちょっと手伝ってほしいわけだが」



バスルーム


倫子「……お前さ、もし1人で逃げるしかなかったら、ここからどうするつもりだったの?」

ダル「いやあ、僕の予定ではもうちょっと痩せてるつもりだったんだが」ジタバタ

真帆「完全に窓に詰まっているわね……その巨体が」

ダル「トム・クルーズの映画みたいでかっこよくね?」

倫子「私は子どもの頃に見た、くまのプーさんのVHSを思い出したよ」ハァ

ダル「そいじゃ、ぐいっとお願いします」

真帆「えっと……」

倫子「いや、うん。真帆ちゃんはやらなくていいよ。……まさかダルのケツを全力で押す日が来るなんてっ!」ムニュッ

ダル「ふぎぎぎ……あぁ~、いい感じだお、もっと強く押してくれてオッケーっす。たまにさすってくれたならなおよし」

真帆「何を言っているのこの人は……」

ダル「むひょお……! あっ、ダメ、そんなところ触られたら……僕の股間が有頂天……!」ハァハァ

倫子「そのまま窓に引っかけて切り落とせっ!!! うおらぁっ!!!」ゴツンッ!

ダル「アーッ!!!」ドスン

699 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 20:55:37.42 1w5ur/k0o 2075/2638

隣のビルの一室 キッチン


倫子「空気を読め、バカモノっ!!」プンプン

ダル「正直スマンかった……そして久しぶりの鳳凰院さんにちょっと涙が」ホロリ

倫子「それじゃ、真帆ちゃんもこっちに飛び移って」

真帆「……た、高い……っ」プルプル

倫子「(真帆ちゃんの場合、こんな狭いビルの隙間でも、下に落っこちちゃうかも……)」

倫子「下は見ないで。私の手につかまって!」

真帆「う……うぅっ!」ストッ

倫子「わわっと」ダキッ

真帆「はぁ、はぁ……あ、ありがとう……」

倫子「スカートめくれちゃってるよ、ほらっ。……あっ、手に傷が……」

真帆「えっ? あ、ホントだわ……どこかに引っかけちゃったのかしら」

倫子「ごめんね、私が無理に引っ張ったから……」ペロッ

真帆「え――ひやぁっ!? な、なな、何してるの!? ちょ、不衛生だからやめなさいっ!」

倫子「う、うん。頭じゃわかってるけど、気持ちが、ね……」

真帆「――っ!!」カァァ

ダル「うーん、紛うことなき百合展開」

倫子「お前はあとで鈴羽にしごいてもらうからな」

ダル「ヒッ」キュッ

700 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 20:57:37.33 1w5ur/k0o 2076/2638


ダル「あとは、このマンションの非常階段から脱出すればいいお」

倫子「問題は、このマンションを出た後だね」



マンション1階 物陰


??『探せ!! まだこのあたりにいるはずだ!』タッ タッ


倫子「やっぱりあいつら、うろついてるね……」

ダル「うおう、隠れ部屋も荒らしてるっぽい。間一髪だったお」

倫子「このままメイクイーンをまわっていこう。そっちからラボへ逃げ込むのが一番早いはずだよ」

真帆「はぁ、はぁ……っ」ヒシッ

倫子「真帆ちゃん、大丈夫? このまま私につかまってていいから」

真帆「ええ……このくらい、どうということもないわ」プルプル

倫子「(……私だって、初めてラウンダーがラボを襲撃した時、とんでもなくパニックになったんだ。真帆ちゃんだって怖いはず)」

倫子「落ち着いて、真帆ちゃん。きっと大丈夫だから、ね」ギュッ

真帆「うん……」ドキドキ


ブー ブー ブー


真帆「っ!?」ビクッ!

倫子「っ!?」ビクッ!

701 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 20:58:07.56 1w5ur/k0o 2077/2638


真帆「って、私のスマホだわ。教授からメール……っ!?」

倫子「ど、どうしたの?」

真帆「荒らされたって……和光のオフィスと、あとホテルの部屋。教授と、私の……」プルプル

倫子「……あいつらの仲間か。探してるのは、やっぱり――」


??「――――っ!!」ガバッ


真帆「え――――きゃぁっ!! むぐっ!!」

倫子「っ!? ひや――――むぐぅっ!!」

ダル「な、なん――――むぐふっ!!」

??「大声を出さないで、言うことを聞いて」カチャッ

倫子「(くそっ、やつら、先回りして……あ、あれ? この声は……まさか……)」プルプル


萌郁「さもないと、命は無い」ジャキッ


真帆「……っ!!」ゾクッ

702 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 21:04:26.63 1w5ur/k0o 2078/2638


倫子「(一瞬で全員が拘束された。この訓練された動き……)」

倫子「(フルフェイスヘルメットで顔はわからないけど、萌郁だ! 間違いないっ!)」

ラウンダーA「大声出すんじゃねぇぞ」グイッ

倫子「(こいつも聞き覚えのある声。やっぱり、ラウンダー……ってことは、こいつら、ダルの隠れ部屋に侵入してきたやつらとは別か)」

倫子「(さすが萌郁だ。隠れ部屋からの逃走経路まで把握していたなんて……)」

萌郁「時間が無い。牧瀬紅莉栖のノートPCを渡して」

倫子「ま、待って!」ドクン

倫子「(どうする、なんて言えばいい!? 考えろ、考えるんだ……っ)」ドクンドクン

萌郁「抵抗するなら、比屋定博士……この女を、殺す」ゴリッ

真帆「ピストル!? いやぁっ!!」プルプル

倫子「(やめてっ! やめてやめてやめてやめて――――)」キィィィィィィィィィン!!

703 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 21:05:16.92 1w5ur/k0o 2079/2638


・・・

倫子『萌郁ぁっ!! 私の話を聞いてぇっ!!』

萌郁『っ、どうして私の名前を――』

ラウンダーA『大きな声を出すなと!』ボコッ

倫子『ぐふっ!!』バタッ

ラウンダーB『ヤバイ、やつらに気付かれた!』


萌郁『……タイムリミット』カシュッ!!


真帆『え――――』


プシャァァァァーーーーッ


倫子『あ……ああ……真帆……ぁ……』

ダル『ま、真帆たんの頭から、血が……脳漿が、ぁ……』




倫子『――い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああっ!!!!!!』




――――――――――――――――――…・・・ ・  ・   ・
    1.12995  →  1.12997…・・・ ・  ・   ・
――――――――――――――――――…・・・ ・  ・   ・



・・・

704 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 21:06:06.19 1w5ur/k0o 2080/2638


倫子「――っ!! かはっ、ごほっ!!」ハァハァ

倫子「(い、今のビジョンは……う、おえぇっ!)」ビチャビチャッ

倫子「(このままじゃ、真帆が紅莉栖の二の舞に……っ!)」

倫子「(萌郁は話を聞いてくれないっ!)」ウルッ

倫子「わかった! 渡すから、だからやめてっ!」

真帆「お、岡部さん! だ、ダメよ! 渡しちゃダメ―――!」

倫子「お願い、大人しくして、真帆。彼女は、本当にあなたを殺す……っ」グッ

真帆「でもぉっ!」

倫子「自分の論文のために真帆が死んでっ!! 紅莉栖が喜ぶと思うのっ!?」

真帆「っ……」

萌郁「……どこに、あるの?」

倫子「……ダルの、リュックの中」

ダル「あぅ……」

ラウンダーB「目標、回収しました」

倫子「だから、ほら! 早く真帆を放してっ!」

萌郁「…………」スッ

真帆「あ……」

倫子「真帆っ!!」ダキッ

真帆「う、うん……」プルプル

705 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 21:07:32.41 1w5ur/k0o 2081/2638


ラウンダーA「撤退だ。このノートPCの存在を知っている人間を処分しろ、M4」

倫子「は……はぁ!? 待って、話が違うっ!!」

萌郁「…………」スッ

真帆「そっ!! その、PCのパスは、わ、わわ、私たちしか、知らないわぁっ!」ガクガク

倫子「(真帆っ!?)」

真帆「せっ!! 世界中のハッカーも、お手上げの、セキュリティよっ! しかも、3回失敗すればデータは消滅するっ!」ワナワナ

萌郁「中身を……見たの……?」

真帆「まっ、まだ見てないわよ! だって、さっきパスが判明したばかりだったもの……」プルプル

萌郁「……じゃあ、私たちと一緒に来て。そうすれば、殺す必要は無くなる」

ラウンダーA「そりゃ、そうだが」

ダル「さらば青春の街アキハバラ……」

倫子「だったら私ひとりがフランスへ行く! それでいいでしょ!」

真帆「ダメよっ! ダ、ダメ……追いていか、ないで……」ヒシッ

ラウンダーC「……もう時間だ。ふたり殺して、ひとり拉致しろ」

萌郁「……了解」スッ

倫子「な――――――――――」



キキィィーーーーーーッ!!

706 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 21:12:58.59 1w5ur/k0o 2082/2638



ドンッ!! ドンッ!!


ラウンダーA「ぎゃぁっ!!」バタッ

ラウンダーC「ぐへぇっ!!」バタッ


倫子「(バンがラウンダーを轢き殺した……デジャヴだな、これ……)」プルプル


タッ タッ スタッ


ロシア兵A「"…………"」ジャキッ


倫子「"Groza"、ロシア兵か……これで一応助かる……」

ダル「真帆たん、オカリン、こっち!」

倫子「あ、ああ!」

真帆「ひぃ……っ」プルプル


萌郁「くっ……」ズキズキ

ロシア兵B「"Огонь!"」


ダダダダダダダッ! ダダダッ!


ラウンダーB「ぐふっ!!」バタッ

倫子「あっ! 紅莉栖のノートPCとハードディスクが……」


ダダダダダダッ! ダダダダダダダダダッ!

707 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 21:14:47.43 1w5ur/k0o 2083/2638

物陰


ダル「……ふたりとも、大丈夫?」

倫子「わ、私は、なんとか。でも、真帆が……」

真帆「っ……ぁ、ぅ……」ガタガタ

ダル「オカリンも成長したよな、昔は人一倍ビビリンだったのに」

倫子「……私だって怖かったよっ!! ダルのバカっ!!」ヒシッ

ダル「おうふっ!? ちょ、これは、色々とヤバイっつーか……」ハァハァ

倫子「死なないことがわかってても、怖いものは怖いよ……でも、それよりも真帆のことで精一杯で……」グスッ

倫子「(……いや、ダルの言う通り、私は比較的冷静だったと思う)」

倫子「(人死にも出てるのに私がこんなに冷静なのは、γ世界線で似たような経験をしたからだ)」

倫子「(あるいは、私はコレを既にどこかで経験している……?)」

ダル「……おk、ロシア兵たち、ラウンダーの死体と、破壊された牧瀬氏のノートPCとHDDの破片を回収して帰っていったお」

倫子「萌郁は逃げたね。ロシア的には、最初にビルを包囲した連中やラウンダーに中鉢論文が渡るのを阻止することがミッションだったんだ」

ダル「そして僕らは生かされた。このβ世界線を維持するために」

真帆「…………」プルプル

倫子「……急いでラボへ行こう。ダル、真帆をおぶれる?」

ダル「そのための無駄に広い背中ですしおすし」

708 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 21:15:18.34 1w5ur/k0o 2084/2638

未来ガジェット研究所


倫子「(鈴羽は居なかった。銃声を聞いて、タイムマシンを保護しに行ったようだ)」

ダル「真帆たん、着いたお。さあ、今降ろす――――」

真帆「うっ……おえぇぇっ!!」ビチャビチャ

ダル「」

倫子「真帆っ!? 大丈夫!?」サスサス

真帆「ご、ごめんなさい……うっ、ううっ」

倫子「……無理もないよ。実際、人が死んだ。一歩間違えれば、私たちが死ぬところだった」サスサス

倫子「咄嗟の機転でハッタリをかましてくれてありがとう。真帆のおかげで助かったよ」サスサス

真帆「わ、私、そんなことを……? よく、覚えてないわ……」

倫子「あれ? 真帆の左手から血が出てるよ。強く握りしめて、傷が開いちゃったのかな……」

真帆「え? あ……あ、ら?」

倫子「どうしたの?」

真帆「……指、開かない……変ね……」プルプル

709 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 21:15:49.96 1w5ur/k0o 2085/2638


倫子「指、開けるね……」ニギッ

真帆「え、ええ……お願い……」

倫子「(冷たい……血の気を失ってるんだ……)」

コトッ

倫子「これは……紅莉栖のノートPCの破片……」

倫子「……はい」スッ

真帆「う……うっ……ううっ……」ツーッ

真帆「く……紅莉栖っ……ごめん……ごめんね……」ポロポロ

真帆「守って……あげられなくて……うぅっ……」ポロポロ

倫子「……真帆」

真帆「うっ……ぐすっ……な、なひ?」

倫子「その……私はさ……きっと紅莉栖は喜んでると思う」

真帆「……えぇ?」

倫子「あなたが無事でよかったって。だから……もう謝らなくていい……謝らなくていいんだよ……」

真帆「…………」

710 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 21:23:04.71 1w5ur/k0o 2086/2638


真帆「私ね……ずっと怖かったの……どうして紅莉栖なんだって、どうして私じゃないんだって言われるのが……」

真帆「殺されるのが、紅莉栖じゃなくて、私だったら良かったのにって、周りに思われてるんじゃないかって……怖くて……」

倫子「そんなこと……!」

真帆「だって、紅莉栖は稀代の天才で、私は足元にも及ばない……同じ研究所の同じ日本人だったら、私のほうが死ぬべきだった……」

真帆「だから、私は誓ったの……紅莉栖の残した研究を、私の人生を賭けて完成させるって……」

真帆「でも、その研究が狙われてると知って、紅莉栖もそれを望まないだろうから、ノートPCを破棄することを認めたけど……」

真帆「……さっき、死にたくないって、思ってしまったの。紅莉栖の遺産より、自分の命なんかを優先してしまったのよ……」ギュッ

真帆「サイテーだわ、私……」プルプル

倫子「真帆……」

ダル「(……やっぱり、ホンモノはタイムマシンの中に隠してある事、2人に言わないほうがいいっぽいな)」

ダル「(ダミーが破壊されたのはひどい散財だけど、しゃーない。僕ひとりでなんとかパスを解読するか)」

ダル「あんまりゆっくりしていられないお。これからどうする?」フキフキ

倫子「う、うん。この場所、ラウンダーにはFBを通して筒抜けのはずだから、すぐ場所を移さないと」

倫子「やつらは、タイムマシンに関わった人間を片っ端から処理する……ロシアがラウンダーをけん制してくれることを祈るばかりだ」

ダル「鈴羽、電話出ないんだよね。鈴羽が戻ってくるまで僕はここに残るお」

倫子「わかった。私と真帆はあそこへ行くよ――」

711 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 21:24:58.83 1w5ur/k0o 2087/2638

秋葉原タイムズタワー 
秋葉邸 リビング


フェイリス「あー、ダメニャ、まほニャン。寝るなら身体を洗ってからにしないと――全身、ドロドロだニャン」

真帆「ご、ごめんなさい。それじゃあ、シャワーを貸してもらうわ。あと"まほニャン"はやめてね」

フェイリス「お風呂も沸いてるから、まほニャンも遠慮せずにちゃんとバスタブにつかってくるといいニャ」

真帆「ありがとう。あと"まほニャン"はやめて……あ、でも、岡部さんを先に」

フェイリス「大丈夫。凶真――オカリンは、もうひとつのお風呂にフェイリスと一緒に入るのニャ♪」

倫子「――ハッ!? 前ここに泊まった時は、もうひとつお風呂があるって教えてくれなかったじゃない!」

フェイリス「前っていつのことかニャ~? もしかしてぇ、α世界線でのお話かニャ?」ニヤニヤ

倫子「ぐぅ、いつも世話になってるから何も言えないっ!」

712 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 21:25:53.49 1w5ur/k0o 2088/2638


フェイリス「2人とも、着替えはフェイリスのを貸すニャ。下着も今、新しいのを用意してもらっているニャン」

真帆「そこまでしてもらったら悪いわ……」

フェイリス「遠慮しなくていいニャ。まほニャンはもう、フェイリスのお友達なんだからニャ♪」

真帆「……ありがとう、フェイリスさん。あと"まほニャン"は……」

フェイリス「ちなみにパンツは、オカリンのリクエスト通り、"ピンクのしましまパンツ"を用意させてるニャ。まほニャンならきっと似合うニャン、ニュフフ」

倫子「ちょっ!? 私は年相応のパンツにしてって言っただけでしょ!? ……ハッ」

真帆「リクエストはしたのね……はぁ」

倫子「あっ、いやっ、えっと、そのっ」アセッ

フェイリス「さぁさ、洗いっこするニャ~ン♪」

713 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 21:27:03.27 1w5ur/k0o 2089/2638

バスルーム


チャポン


真帆「ふぅぅ……」

真帆「(副交感神経が優位に働いて、血流が促進していく……)」

真帆「(手のケガもだいぶ落ち着いたわね……)」

真帆「(でもホント、今日は信じられないことばかり)」

真帆「(世界線に、タイムマシン。それも紅莉栖が造って、世界中に狙われて、第3次世界大戦が……)」

真帆「(もし、今誰かに襲撃されでもしたら―――――)」


ガララッ


真帆「――――っ!?!?」ドクンッ!!


フェイリス「今度はまほニャンと洗いっこなのニャー!!」バサッ


真帆「は……ぁぁ……」クターッ

フェイリス「あれ? まほニャン?」

真帆「――――」ブクブク

フェイリス「まほニャン!? た、大変、まほニャンが沈んでいく! 死んじゃうーっ!」

倫子「どうしたの、フェイリ――真帆っ!?」ダッ

714 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 21:27:43.93 1w5ur/k0o 2090/2638

寝室


フェイリス「ごめんニャさい、まほニャン。驚かせるようなことをしちゃって……」

真帆「あ、謝らなくても、いいわ。別に、大したことはないし……」

倫子「でも、まだ身体、動かせないんでしょ?」

真帆「ええ……少し休めば大丈夫だと思うけれど」

真帆「身体を拭いてもらって、ベッドへ運ばれて、一から服を着せてもらって、なんだか赤ちゃんになった気分だわ……」

真帆「というかフェイリスさん、下着もだけど、このピンクの水玉の可愛いフリフリのパジャマはどうにかならなかったのかしら」

フェイリス「可愛いニャ?」

真帆「(この人、言葉が通じない人だわ)」

真帆「まあ、でもありがとう。心配かけてしまったわね……我ながら、みっともないわ」

倫子「そんなことないよ。今日はとっても怖い思いをした。具合だって悪くもなる」

真帆「……あなたも、怖かったわよね。ごめんなさい、私ばっかり、弱っちゃって……」

715 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 21:29:07.45 1w5ur/k0o 2091/2638


フェイリス「今夜はもう休むといいニャ。事件のこととか、これからどうするかとか、難しい話は元気になってから考えるといいニャン」

倫子「ダルも鈴羽と合流して、とりあえず大丈夫だったって、さっき連絡があった。だから、ね」

真帆「……そうね。ええ、そうするわ」

倫子「……1人で寝るの、怖い?」

真帆「えっ?」

フェイリス「もしよかったら、3人で川の字になって寝るかニャ? うんっ、それがいいニャ!」

倫子「("川"の字……真帆が真ん中だね)」

真帆「ちょっ!? わ、私、一応アメリカ育ちだから、小さい時から誰かと一緒に寝たことなんて、あまりないのだけれど……」ドキドキ

フェイリス「男の人ともニャ?」

真帆「…………」コク

フェイリス「だったら、その練習だと思って、今日は一緒に寝るニャーン♪」

倫子「相変わらずトンデモ理論だね、フェイリスは。……ね、真帆。いいよね?」

真帆「反対できる立場に無いわ……というか、いつの間にかその呼び方が普通になってるわね」

倫子「えっと、嫌だったかな、"比屋定さん"」

真帆「ううん、嫌じゃないわ。変な意味は無いわよ? ちゃん付けやニャン付けで呼ばれるよりだいぶマシってだけ」

フェイリス「ツンデレかニャ?」

真帆「つんで……なに?」

倫子「ふふっ」

716 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 21:31:11.86 1w5ur/k0o 2092/2638


フェイリス「それじゃぁ、お隣失礼しますニャン♪」

真帆「うぅ、なぜかドキドキする……」

倫子「フェイリス、真帆は疲れてるんだから、イタズラしちゃダメだからね」

フェイリス「フニュウ、わかってるニャン。でもでも、匂いを嗅ぐくらいニャら~」クンカクンカ

真帆「く、くすぐったいわ……」ピクピク

フェイリス「ニャフフ~、イイ匂いだニャン」

倫子「どれ……」クンクン

真帆「ちょっと! あなたまで何をやっているの!?」

倫子「す、少しだけ……確かにイイ匂いかも」

真帆「フェイリスさん家のシャンプーの匂いよ。というか、寝させてほしいんだけど……」カァァ

フェイリス「それじゃ、フェイリスが子守唄を歌ってあげるニャ! 杭を~打て~、杭を~打て~♪」

倫子「永眠しそうな歌詞だね……。真帆、何かあったら、すぐ私たちを起こしてくれていいからね?」

真帆「あ、ありがとう」トゥンク

717 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 21:31:56.76 1w5ur/k0o 2093/2638


フェイリス「ニャムニャム……」zzz

倫子「……ぐぅ」zzz

真帆「…………」

萌郁『……大声を出さないで、言う事を聞いて。さもないと……命はない』

真帆「……っ!?」

真帆「(に、逃げないと……あれ、身体が、動かないっ!?)」

真帆「(2人を起こして……声も、出ないっ!)」プルプル

真帆「ぁ……っ、ぅ……」パクパク

真帆「(やめて、やめてやめてやめて――――)」

――――パァンッ!!

真帆「いやぁぁぁぁぁぁぁああああああっ!!!!!」ガバッ

倫子「真帆っ!!」ギュッ

真帆「はあっ……はあぁぁぁっ……」ポロポロ

倫子「大丈夫だよ……怖い夢を見てたんだね、もう大丈夫だからね……」ナデナデ

真帆「うぅ、っ……」ポロポロ

倫子「(……まるで自分がまゆりになった気分)」ナデナデ

フェイリス「まほニャン、汗でびしょびしょニャ。着替え、持ってくるニャ」

718 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 21:33:23.82 1w5ur/k0o 2094/2638


フェイリス「思ったんニャけど、無理に寝るのも心に良くないかもしれないニャ」

フェイリス「身体はベッドでゆっくり休めながら、朝日が昇るのを待ってもいいんじゃないかニャ?」

真帆「……確かに、人間の脳は自然光を浴びるとセロトニンが増えて、不安が解消しやすくなるようにできているけれど」

倫子「そうだね、今は真帆の心を休めるほうが大事かもしれない」

真帆「……でも、不思議ね。岡部さんの心は、ずっと頼もしく見えるわ」

真帆「普通の女子大生とは思えないほどに、強く」

倫子「……強いっていうのかな。心が慣れちゃっただけ、なのかも」

フェイリス「オカリンは、戦いの果てに黒騎士になったのニャ。復活の日を待つ、古の邪心王グラジオールに――」

真帆「どうしてあなたは、そんなに強いの?」

倫子「…………」

倫子「…………」

倫子「嘘を吐いているから、かな」

真帆「えっ……」

倫子「……本当は、ずっと言おうと思ってた。言わなきゃ、って思ってた」

倫子「言わないままじゃ、真帆を裏切ることになるからって……」

719 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 21:33:51.32 1w5ur/k0o 2095/2638


倫子「私は……真帆に、重大なことを隠している……」

倫子「そのせいで真帆に不安を与えて……真帆に余計な疑念を抱かせて……」

真帆「……?」

倫子「さっき、ダルのバイト先で話したよね。別の世界線のことや、そこで出会った紅莉栖のこと……」

倫子「タイムマシンやタイムリープのこと……」

真帆「ええ」

倫子「ラジオ会館で……その……紅莉栖と父親の間に起こった事件も……話した」

真帆「ええ……」

倫子「あの時、本当はもうひとつ、言わなきゃいけない事があったんだ。でも……どうしても、言い出せなかった」グスッ

フェイリス「オ、オカリン? 無理しニャいで……」

倫子「ううん、今言わないと、いけない、から……フェイリスにも、聞いてほしい、から……」ヒグッ

720 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 21:34:39.52 1w5ur/k0o 2096/2638


倫子「……あの、日……ラジオ会館で、紅莉栖をっ……」グッ


真帆「フェイリスさん、あの……」

フェイリス「今はオカリンを信じるニャ」


倫子「真帆の後輩の、紅莉栖を……留未穂の幼馴染の、紅莉栖を……」プルプル


フェイリス「……ニャ?」


倫子「紅莉栖を、こ、殺したのは……っ!」ポロポロ






   「――――私、なの」






真帆「…………」

フェイリス「…………」

721 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 21:37:30.09 1w5ur/k0o 2097/2638


倫子「あ、あ……っ……ぁぁ……」ポロポロ

フェイリス「オカリン……倫子ちゃん……」ダキッ

フェイリス「……事故だったんだって割り切れないのは、留未穂が一番よくわかってあげられるから」

フェイリス「留未穂も、パパを殺したのは自分だって、思ってるから……」

倫子「そうじゃ、ないの……わ、私が、ナイフで、さ、刺し、刺し殺して……っ」ポロポロ

真帆「……紅莉栖の死の真相。闇に隠された事実。そう、タイムマシン、世界線理論……そう」

フェイリス「お、怒らないでほしいの! 倫子ちゃんだって、牧瀬さん――クリスちゃんを救うために動いてたんだよ!」

真帆「……怒る道理なんて、無いわ。私は岡部さんを信じてる、それに変わりはない」

真帆「何もできなかった私と違って、岡部さんは紅莉栖のために動いてくれた……」

真帆「あの娘が死ぬときに、一番近いところに居たのが岡部さんだった。独り寂しく逝ったのではないとわかって、よかったわ」

真帆「……あなた。本当は私なんかより、何倍も怖くて、つらくて、苦しい思いをしてきたのね」

真帆「ずっとみんなに嘘を吐き続けて……それはきっと、優しい嘘だったのよ」

倫子「う、うぅっ……」グスッ

真帆「バカね、1人で抱え込んで」ギュッ

真帆「しっかりしなさい、岡部倫子」

真帆「この私が好きになった人は、そんなに弱い女<ヒト>だったわけ?」

722 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 21:38:19.95 1w5ur/k0o 2098/2638


倫子「ふぇ……?」ウルッ

フェイリス「ふふっ。なんだか今の、クリスちゃんのしゃべり方みたい」

真帆「あら、わかった? というか、あなたが紅莉栖のことを知っていたなんて、驚きだわ」

フェイリス「突然オカリンに愛の告白をしちゃうほうが驚きだニャ」

真帆「……どうして私がこの人に惹かれていたのかが、ようやくわかったからね。もう、照れもしないわ」

フェイリス「とか言いながら、赤くなってるニャ」

真帆「う、うるさいわよ。それに、私はノーマルだから」カァァ

フェイリス「ハイハイ。それで、オカリン。こういうことニャんだけど、現実を受け入れられたかニャ?」

倫子「赦して……くれるの……?」ウルッ

真帆「あなたがそうされたいと思っているなら、ええ。赦すわ」

倫子「真帆……っ」ダキッ

フェイリス「ホント、フェイリスがここに居て良かったニャ。放っておいたら、ヒトの家でおっぱじめられてたところニャ」ヤレヤレ

真帆「あ、あなたねぇ!」

倫子「……ぷっ。あははっ」

フェイリス「ニャハハ」

真帆「もう……ふふっ」

723 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 21:39:51.71 1w5ur/k0o 2099/2638


・・・


フェイリス「パパのお葬式の時にクリスちゃんが――――」


真帆「一緒に西海岸のビーチに行った時にね――――」


倫子「最後のα世界線で、紅莉栖が――――」


チュンチュン……


真帆「あら、もう朝。こんなに紅莉栖のことを話し尽したのなんて、初めてだわ」

フェイリス「これからどうするニャ? うかつに外を歩けニャいし、ずっとうちに居てもいいニャ」

倫子「うん、お言葉に甘えるしかないかも。ここで色々情報を集めるよ」

フェイリス「フェイリスがご奉仕から帰ってきたら、据え置き機でレースゲームしたいニャァ~。コントローラーもちゃんと4つあるのニャ!」

倫子「コントローラーが4つ、お金持ち、一人っ子……あっ」

フェイリス「フェイリスを可哀想な目で見るのはやめるニャー! ちなみに4人目は黒木にやらせるニャ」

真帆「レースゲーム……ふぅん、おもしろそうね。いいわよ、一緒に遊びましょう」

フェイリス「これでフェイリスたちはマブダチニャ♪」

724 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 21:41:58.91 1w5ur/k0o 2100/2638

2011年1月25日火曜日 夜
秋葉邸 リビング


倫子「(結局、私たちはフェイリスの家に丸2日居候させてもらった)」

倫子「(今秋葉原は自警団が警戒を強めている。特にラボメンの周囲は、黒木さんを中心とした黒服部隊が目を光らせてくれている)」

倫子「(天王寺さんはここ数日姿を現していないらしい。ラウンダーも、ロシアやらアメリカやらとの衝突で忙しいのだろうか)」

倫子「(そんな中、明日真帆がアメリカへ帰れる算段がついたらしく、今日は送別会だ)」


フェイリス「マユシィ、来てくれてありがとうニャ♪」

まゆり「トゥットゥルー! 初めまして、"まほニャンちゃん"っ♪」

真帆「ちょっとお待ちなさい。いろいろとお待ちなさい、あなた」

まゆり「なにが~?」キョトン

真帆「……類は友を呼ぶ、ね。まあいいわ、よくないけど」ハァ

真帆「あなたが椎名まゆりさんね、話には聞いてるわ。聞いてた通り、可愛らしい人ね」

真帆「(そしてあなたが……紅莉栖の代わり……選択……)」

倫子「(何気に2人は初対面だったっけ。どうしてかそんな気がしないけど)」

まゆり「ふむふむ、なるほどー」ジロジロ

真帆「え? な、なに?」

フェイリス「言った通りニャ? 可愛いのに残念ファッションなのニャ」

まゆり「そんなまほニャンちゃんに、まゆしぃの作ったお洋服をプレゼントしようと思いまーす! アメリカで着てねっ!」ドサッ

真帆「えっ!? こ、これ、全部タダでくれるの!? あ、いや、えっと、本当にいいの?」

まゆり「オカリン用に作ったのに着てくれなかったのだから、いいよ~。サイズも調整しといたから、バッチリなのです」

フェイリス「オカリンひどいニャ」

倫子「あ、アレはだって、フリフリのきゃぴきゃぴだったし……」

真帆「フリフリの……でも、背に腹は代えられないわ。ありがとう、まゆりさん」ニコ

まゆり「どういたしましてなのです♪」

725 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 21:42:26.51 1w5ur/k0o 2101/2638


鈴羽「ねえ、リンリン。この人にすべてを話したんだよね」

倫子「うん、そうだけど……?」

鈴羽「あんまり未来のことを言うのはまずいんだけど……"ワルキューレ"のメンバーの中に、そんな名前の人、いなかった」

倫子「世界線が変わる気配はないけど……」

真帆「あなたがタイムトラベラー阿万音鈴羽さん、よね。よろしく」スッ

鈴羽「…………」ジロジロ

真帆「あなたには色々と聞きたいことが……って、またなの? 人のことを寄ってたかってジロジロと――」

鈴羽「……あああーっ!!!」

真帆「」ビクッ

倫子「」ビクッ

726 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 21:43:14.98 1w5ur/k0o 2102/2638


鈴羽「(ずいぶん印象が違ってるから分からなかった。けど、この雰囲気、この空気感、この表情……間違いない)」ドキドキ

鈴羽「(そうか、"ワルキューレ"じゃ、父さんと同じように偽名を使ってたんだ……!)」キラキラ

真帆「な、なに、どうしたの……?」キョトン

鈴羽「えっ!? ああ、ううん。ごめんなさい。あたし、阿万音鈴羽です。よろしく、ク――比屋定さん」ガシッ ブンブンブン

フェイリス「そんなに強く手を握ったら飛んでっちゃうニャ!」

真帆「そ、そんなに小さくないわよ! って誰が小さいって!?」ウガーッ

鈴羽「(……ああ、大丈夫だ。あたしも父さんも、リンリンも間違ってなかったんだ! うん、絶対に!)」ニコ

真帆「それで、鈴羽さん。連絡先を交換してほしいのだけど」

鈴羽「あっ、はいっ! 24時間体制で対応しますっ!」ビシィ!

真帆「い、いや、そこまでしてくれなくてもいいのだけれど……」

727 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 21:45:10.06 1w5ur/k0o 2103/2638


倫子「(鈴羽の様子からすると、真帆も未来でワルキューレに参加してタイムマシン研究をすることになるみたいだ)」

倫子「(それって、やっぱり私のせいだよね……でも、真帆の身が一番安全なのはやっぱりそこなのかな……)」

倫子「(世界線だって、私が死ぬ前に電話レンジ(仮)を作ってDメールを送るようなことをしなければ、α世界線に戻ったりはしないだろうし)」

倫子「(……まさか、アメリカに行ってタイムマシンを? いや、それはまだ技術的に不可能か……)」

倫子「真帆、向こうに行ったら危ないことをしないでね。ううん、タイムマシンの名前を口にすることもやめといたほうがいい」ヒシッ

真帆「ちょ、う、ゎ」ドキドキ

倫子「いつ誰があなたを狙ってるかもわからない。お願いだよ」ウルッ

真帆「(かわいい)」トクン

真帆「……嫌というほどわかっているわ。大丈夫よ、この話はあなたたちのそばでしかしないから」

倫子「(私、真帆を疑ってる。ホントは真帆を信じたいのに……)」

倫子「(紅莉栖を生き返らせるだけならすぐにでも出来る。『SERNにラボを監視させる』ことになるDメールを送ればいいだけ)」

倫子「(そうすれば世界線はαに変動する。紅莉栖の死はなかったことになる)」

倫子「(それだけはやってはいけない理由も、一応は説明してある。けど、真帆にとってまゆりは赤の他人だし……)」



真帆「……ごめんね、倫子」ボソッ

728 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 21:46:23.19 1w5ur/k0o 2104/2638

2011年1月26日水曜日
成田空港 チェックインカウンター


倫子「(乗り換え案内役として私が付き添って、ボディガードとして鈴羽にも来てもらった)」

レスキネン「マホ! リンコ!」

真帆「教授! よかった、無事で……」

レスキネン「ふたりとも、大変だったね。リンコ、マホを守ってくれてありがとう。本当に世話になったね」

倫子「いえ、私はそんな」

レスキネン「それで、うちの研究室にはいつ頃来られるのかな?」

倫子「……少しでも早く行けるよう、勉強頑張りますっ」

真帆「私もあなたのことを待っているから、頑張って」

倫子「(そうだよ、私がヴィクコンへ行けば真帆を心配しなくて済む。今日からまた"紅莉栖"に……は、もう無理なんだっけ)」

レスキネン「事前に連絡しておいた通り、『Amadeus』へのアクセス権は今日ここで解除させてもらうからね」

レスキネン「"クリス"に、最後の挨拶をするかい?」

倫子「…………」

729 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 21:47:54.33 1w5ur/k0o 2105/2638


倫子「それじゃ、一言だけ」


prrrr prrrr


Ama紅莉栖『なに? 私にもお別れの挨拶してくれるの?』ムスーッ

倫子「……なに怒ってるの」

Ama紅莉栖『別に。というか、私なんかよりも、真帆先輩にはちゃんとお別れのハグはしたの?』

倫子「ハ、ハグ? それって、したほうがいいの?」

真帆「ここは日本よ、"紅莉栖"。恥ずかしいこと言わないで」

Ama紅莉栖『……岡部、向こうで待ってるわよ。早くレスキネン教授の助手になりなさい』

倫子「(フブキや、他の脳炎患者のためにできることがある。頑張らないと、私)」

Ama紅莉栖『これ以上、真帆先輩がうちの同僚にからかわれてるのを見てられないから。あなたがくれば、守ってくれるんでしょ?』

真帆「あなた、そんなこと思ってたの……」

倫子「そういうことなら、真帆ちゃんは私が守らないとねっ!」フンス

真帆「ちゃん付けっ! ……これじゃ心労が2倍になりそうだわ」ハァ

レスキネン「Haha! 賑やかになりそうだね」ニコ




鈴羽「"教授"、ね……」チラッ

730 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 21:57:31.18 1w5ur/k0o 2106/2638

京成線上り列車車内


倫子「レスキネン教授が怪しい?」

鈴羽「確証は無い。ただ、未来にね、"教授"っていうコードネームで呼ばれる影の存在が居たんだ」

鈴羽「そいつは色んな情報を裏から操作して、各組織を翻弄してた。洗脳してスパイを作り上げるプロだ、っていう噂もある」

鈴羽「"ワルキューレ"でしか知り得ない情報も持ってたこともあったんだ」

鈴羽「そのせいで、"ワルキューレ"の仲間たちが、洗脳させられて、スパイにされて、廃人になっていくのを、あたしは見てきた」

倫子「っ……」

鈴羽「もしかしたら、"教授"はあたしたちの誰かと接触してた可能性が――」

倫子「ちょ、ちょっと待って。いくらなんでも……」

鈴羽「注意しておくに越したことは無い、ってこと。レスキネンとかいう人は、"ワルキューレ"にとっては間違いなく部外者だからね」

鈴羽「同時に、リンリンが心を許しかけているイレギュラーでもある。比屋定さんや牧瀬紅莉栖とも繋がりがある」

倫子「それは……」

鈴羽「ク、比屋定さんは、いずれ必ず日本へ戻ってきて、ワルキューレに合流することになる」

鈴羽「だから、リンリンがアメリカに行く必要は無いよ」

倫子「…………」シュン

731 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 22:00:02.59 1w5ur/k0o 2107/2638


鈴羽「……必要が無いってだけだから。別に、行っちゃっても、いいけどさ」

鈴羽「どうせあたしは今年の7月には居なくなる」プイッ

倫子「……そう言えば、かがりのこと、何かわかった?」

鈴羽「ああ、父さんから聞いてたんだっけ。ううん、今のところ、何も」

鈴羽「でも、確実に未来は良い方向に向かってる。シュタインズゲートへと近づいてる気がするよ」

倫子「未来……。ねえ、かがりはまゆりとどうやって出会ったの?」

鈴羽「あたしもまた聞きした程度だから、詳しくは知らないけど……って、それこそリンリンお得意の未来視で視ればいいんじゃない?」

倫子「ああ、あれ。全身がダルくなるから嫌なんだけど……でも、確かにそっか。まゆりの脳を使って、全力の未来視をすれば」

732 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 22:00:36.61 1w5ur/k0o 2108/2638

未来ガジェット研究所


まゆり「トゥットゥルー♪ ただいまなのです! 今日はまほニャンちゃんのお見送りに行けなくてゴメンね~」

倫子「まゆりはまだ高校生だから、ちゃんと学校に行かないとだもんね」

鈴羽「それで、どうする?」

倫子「……それじゃ、3人でマラソンしよう」

鈴羽「マラソン? 持久走のこと? なんで?」

倫子「1年以上先の未来を視るには、ちょっと体が疲れてる必要があるんだよ」

まゆり「いいねぇ~♪ まゆしぃね、今学校の体育の授業でマラソンをやっているのです」

鈴羽「走るのはいいとして、どこを?」

倫子「……アキバを。黒木さんたちが監視してる範囲で」

733 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 22:01:25.75 1w5ur/k0o 2109/2638


・・・

まゆり「はふぅ~、いい汗かいたね~」

鈴羽「椎名まゆりは、その動きにくそうな服装でよくあのスピードを維持できたね……少し見直したよ」

鈴羽「それで、リンリンは――」

倫子「」コヒュー

まゆり「オカリン、頑張りすぎだよ~。体力無いんだから、無理しちゃダメだよ?」ナデナデ

倫子「ふ、ふたりが早すぎるんだよ……追いてかれないように、必死で……」ゴフッ

鈴羽「それで、リンリン。やることやっちゃえば?」

倫子「う、うん……まゆり、ちょっと頭借りるね」

まゆり「ふぇっ? うん、いいよ~♪」

倫子「(手を握って……意識を集中させて……)」ギュッ

倫子「(まゆりの現実の拡張するイメージ。未来方向へと時間を引き延ばして――)」


   ドクン!!


倫子「(きた……! い、しき、が――――)」

2011
2012
2014

倫子「(世界が早回しになって過ぎ去っていく――――)」

2017
2020
2024

倫子「(未来へと加速していく――――)」

2027
2030
2031
 ・
 ・
 ・

734 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 22:02:36.40 1w5ur/k0o 2110/2638

―――――
2032年頃
戦災孤児用養護施設隣の専用医療施設


まゆり「かがりちゃん。今日から私とあなたは、正式な親子になるのよ」


倫子『(大人のまゆりだ。ナース服を着てるけど、見た目はほとんど変わってない)』

倫子『(名札をつけてる……"二等養護官 椎名まゆり"? へえ、まゆりったら、そんな役職に……)』

倫子『(それで、この子が椎名かがりちゃんか)』


かがり「ほんと? ママが、かがりのほんとのママになるの?」

まゆり「ええ。そうよ。司法局の人がようやく許可をくれたの」

かがり「やったぁ! じゃあ、ここから出られるんだよね!?」

まゆり「……ごめんね。かがりちゃんは、もう少し、治療が必要みたいなの」

かがり「神様の声はね、病気じゃないもんっ! 治療、必要ないもんっ!」

かがり「『君はママを護るんだ。この世界を護るんだ。そのために君は生まれてきたんだよ』って! 病気じゃ、ないもん……」グスッ

まゆり「うん、ママもね、先生たちにそう言ってるんだけどね……」

735 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 22:03:38.28 1w5ur/k0o 2111/2638


かがり「ねえ、ママ。どうしてママは、私に"かがり"って名前をつけたの?」

まゆり「それはね、暗い世界を照らす、"篝火"になってほしい、って思ってつけたのよ」

かがり「"かがりび"って?」

まゆり「夜の海を航海しようとすると、明かりがなくて、迷子になっちゃうでしょ?」

まゆり「そうならないために、火をたいて、行くべき路を照らすの」

かがり「それじゃ、どうしてかがりを選んだの? 私以外にも戦災孤児の子は居たのに」

まゆり「うーん……ある人の面影があったから、かなぁ」

かがり「ある人?」

まゆり「私の大事な人の、大事な人……。私は覚えてないんだけど、きっと、私の友達だった人」

まゆり「私に、命を渡してくれた人……」


倫子『(紅莉栖か……。まゆり、そんなことを思って……)』


かがり「私って、そんなにその人にそっくり?」

まゆり「うん。初めてかがりちゃんに会った時、本当にビックリしたんだから」

まゆり「かがりちゃんに出会えたことは、運命だったって思ってるんだよ」ニコ

かがり「えへへ~、やったぁ!」

736 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 22:04:58.73 1w5ur/k0o 2112/2638


老医師「どうもこんにちは、C397番――じゃなかった、かがりちゃん。それに椎名さん。もうお昼は食べましたか?」


倫子『(C397? そう言えば、β世界線での鈴羽のタイムマシンの型番がC204か203だったと思うけど……いや、関係ないか)』


かがり「あ、先生! うん、ホットケーキ。ママが作ってくれたんだよ」

老医師「ほほう? 少しは美味しく焼けるようになったのかな?」

かがり「ママの悪口言ったらダメ。……まだちょっと黒焦げだったけど」

まゆり「もう、ふたりしてからかわないでください」

老医師「ハハ、これは失礼」


倫子『("先生"と呼ばれたあの老人……見たことは、ないな。もちろん、あのガタイの良いレスキネン教授の21年後の姿とも思えない)』


老医師「それじゃ、かがりちゃん。さ、行こう」

かがり「……ねぇ、先生? まだアレするの? 頭痛くなるからやだなあ」

まゆり「あの、あまりかがりちゃんの身体に負担になるようなことは……」

老医師「ふむ、そうですね。痛みを紛らわすために、楽しくなる工夫も考えてみましょう。痛いのが好きになってしまったりしてね、ハハ」

まゆり「はぁ……」

老医師「治療を続けてよろしいですね、"お母さん"?」

まゆり「えっ? ――あ、はい!」



―――――

737 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 22:05:55.86 1w5ur/k0o 2113/2638


倫子「―――――っ」クラッ

まゆり「オ、オカリン? 大丈夫? マラソンで疲れちゃった?」ダキッ

鈴羽「どうだった? 視れた?」

倫子「……まゆりは、良いお母さんになるよ」

まゆり「えっ? と、とと、突然、どうしちゃったのかな」テレッ

倫子「鈴羽。私の視た未来に、レスキネン教授は居なかったよ」

鈴羽「……でもそれは、椎名まゆりが視ることになってる景色だ。かがりの視点からだったら、また何かが違う――」

倫子「鈴羽っ。仮に教授がその"教授"だったとしても、それは今じゃない」

鈴羽「っ……」

倫子「ダルに調べてもらってわかったけど、アメリカはSERNの情報を監視しまくっているらしい。ロシアも入れて、勢力は三つ巴の均衡状態にあるはず」

倫子「これが崩れない限りは、まだ世界は大丈夫。まゆりだって、今度高校3年に進学したら、大学のことも考えないといけないし」

まゆり「なんのお話~?」

鈴羽「……わかったよ。あたしはかがりを探すし、リンリンは勉強する。父さんがシュタインズゲートへの道を見つけるまでは」

鈴羽「それで、いいんだね」

倫子「……ごめん」



まゆり「……オカリン」


738 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 22:08:03.07 1w5ur/k0o 2114/2638


・・・
2011年6月25日土曜日 朝
岡部青果店 倫子自室


倫子「(あれから半年経った。まゆりも私も無事進級できた)」

倫子「(夏……あの出来事があってから、もう1年になろうとしている)」

倫子「(1月以来、ラボにはあまり足を運ばなくなってしまった。ゴミ置き場から拾ってきたクーラーのおかげで多少は快適になってはいるが……)」

倫子「(最近は家で自分の勉強をするか、まゆりの勉強を見てやってばかりだな……)」

倫子「(昨日も遅くまで数学と格闘して、気付いたら寝落ちしてた……ふぁぁ……)」


岡部父「おーい、倫子。まゆりちゃんが来てんぞー!」

まゆり「はわわ、ダメだよおじさん。そんなに大きな声を出しちゃ~。まゆしぃがちゃんと起こしてきてあげるから」


倫子「(どうやらまゆりがうちに来たらしい……けど……)」ウトウト


まゆり「トゥットゥルー?」

倫子「ううーん……ちょっと待って。もう少し、時間を頂戴……」ムニャムニャ

まゆり「わぁ~、またこんなにたくさん難しそうな本を並べて、遅くまで勉強してたの?」

倫子「あと、5分……」zzz

まゆり「えへへ……お寝坊さんには、いたずらしちゃうよ~?」ワキワキ

739 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 22:11:19.35 1w5ur/k0o 2115/2638


ムニュ

倫子「(むにゅ? 首の後ろに柔らかい感触が……てか、重い……去年より大きくなってるな……)」

まゆり「ふぅーはははは。さぁ、どうだ、寝苦しかろう? 助かりたくば、さっさと起きるがよい。ふぅーははははは」

まゆり「……早く起きないと、お、起きないと、悪のまゆしぃが、その……もっともっとオカリンにくっついちゃうぞ、ふはははは~ぁ」カァァ

倫子「……恥ずかしいなら言わなくていいのに」ウトウト

まゆり「わわわっ、ごめんねオカリンっ。ウソだよ、ウソっ」アセッ

倫子「……?」ウトウト

まゆり「(この間、オカリンを起こしに来た時は、寝言で紅莉栖さんの名前を呼んでたんだよね……)」

まゆり「(まゆしぃもテレビで紅莉栖さんの写真やVTRを見たけど……うん、綺麗で素敵な女性だった)」

まゆり「(きっと、オカリンの心の中ではまだ生きてて、大好きで大好きでたまらないんだろうなぁ……)」ウルッ

まゆり「あはは、やだなぁ~。オカリンの眠そうな顔を見てたら、まゆしぃまであくびが出ちゃったのです」

まゆり「まゆしぃがお部屋のお掃除するからね、オカリンはちゃんとお布団で寝たほうがいいよ? ほらっ」

倫子「いつもごめんね、まゆり……」ウトウト

まゆり「……まゆしぃはね、まゆしぃのために勝手にやっちゃう子なんだよ。だから、自分勝手なまゆしぃでごめんね」

倫子「……ちょっとだけ、ちょっとだけ寝る……」バタッ

倫子「……ぐぅ」スピー



まゆり「――まゆしぃでごめんね」

740 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 22:12:25.99 1w5ur/k0o 2116/2638


・・・

紅莉栖『ちょっと倫子たん? こんな簡単な問題も解けないんでちゅか? 脳みそ小学生かなー?』

倫子『と、解けないのではないっ! よりよい解答がないか、深く考察を重ねているだけだっ!』

紅莉栖『はいはい可愛い言い訳乙。でも、そんなんじゃヴィクトル・コンドリア大学に留学しようなんて夢のまた夢よ?』

倫子『くそぅ、クソレズの分際で馬鹿にしおって……!』

紅莉栖『ク、クソレズって言うな! それに、生まれながらの天才なんて居ないわ、私だってそれなりに努力はしたし』

倫子『だから、オレだってお前を見習ってこうして必死に勉強しているのではないかーっ』

紅莉栖『独力じゃ非効率すぎない? 変なプライドとか捨てて、誰かに教わればいいでしょ?』

倫子『そんな頭のいいヤツがまわりにいれば、苦労せん』

紅莉栖『橋田は?』

倫子『セクハラしてくるからダメ』

紅莉栖『ブチ殺し確定ね』

741 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 22:12:58.42 1w5ur/k0o 2117/2638


紅莉栖『それで、あんたがどうして正座させられてるかわかってる?』

倫子『……英語のテストで0点を取りました』シュン

紅莉栖『ふ、ふふ。ダメよ、まだ笑うな、牧瀬紅莉栖……こらえるんだ……し、しかし……』ニヤニヤ

倫子『この女殴りたい……!』

紅莉栖『そうね、罰の内容は何にしようかしら……ここはひとつ安価でも取って……』ブツブツ

倫子『……ううむ、こうなったら仕方がない。クリスティーナよ』

紅莉栖『なんですか、鳳凰院ちゃん』

倫子『ちゃんを付けるな! その、たいへん屈辱的だが……お前に、オレの勉強を教えさせてやる』

紅莉栖『キタ――(゚∀゚)――!! 勝った!! 第三部完ッ!!』グッ

紅莉栖『だが断る』

倫子『な、なにぃ!?』

742 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 22:13:45.79 1w5ur/k0o 2118/2638


倫子『ど、どうして……?』ウルッ

紅莉栖『ぐっ、かわいい……それは、その……』タジッ

紅莉栖『…………。まゆりに……悪い、でしょ?』

倫子『へ? な、なにが?』

紅莉栖『だってっ……私とあんたが、その……ずっと一緒にいたりすると……彼女が悲しむから……』

倫子『だったら、3人で一緒に居ればいい。ううん、ダルもルカ子もフェイリスも鈴羽も、萌郁も店長も綯も含めて、みんなで居ればいい』

紅莉栖『……ホント、どうしようもなく良い子ね。岡部さんって』

倫子『岡部さん……? なあ、どうしたんだよ、急に。"紅莉栖"』

Ama紅莉栖『気安く呼ばないでください。自分が守るって決めた人を、困らせるようなことをしないでください』

倫子『困らせる? オレが、私がいつまゆりを困らせたって言うの? ねえ、教えてよ!』



真帆『ちょっとあなたたち、いい加減にしてくれないかしら』

743 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 22:14:38.83 1w5ur/k0o 2119/2638


真帆『痴話喧嘩なら他所でやって頂戴。うるさくて研究の邪魔よ』

倫子『えっと、比屋定さん……?』

真帆『なに?』

倫子『それは、いったいなんの研究を?』

真帆『ナットウキナーゼが大脳辺縁系に及ぼす新たな効果の研究よ。私はこれでノーベル賞を狙っているの』

倫子『(ノーベル賞!!!!)』

Ama紅莉栖『というか先輩、悪いのは女たらしの岡部さんです。私には、非も落ち度もありません』

真帆『あー、はいはい、ワロスワロス。あれだけ色々言い訳してたくせに、結局女の子に目覚めちゃうAIの人って』

Ama紅莉栖『先輩だって人のこと言えないじゃないですか!』

744 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 22:15:55.10 1w5ur/k0o 2120/2638


真帆『あなたとは本質的に違うわ。私と岡部さんは一晩を共に過ごしたのよ? 体を慰め合ったのよ?』

倫子『へっ? ……あ、そうだったね、真帆。あれ?』

紅莉栖『わ、私とだってそうです! 先輩より倫子たんをペロペロしたのは先だったんですー!』

まゆり『それなら、まゆしぃのほうがクリスちゃんより先にキスをしたよー? それも2回も』エッヘヘー

フェイリス『フェイリスだって一緒に体洗いっこしたニャン! ベッドの中で、ゴニョゴニョもしたのニャ♪』

かがり『私も、オカリンさんと一緒にお風呂入ったー!』

るか『い、いいなぁ、かがりちゃん……』

鈴羽『あたしだって、リンリンにはオムツ替えてもらったりしてたんだからね! 赤ん坊の頃の話だけど……』

『凶真様! はい! 凶真様!』

萌郁『…………』ピロリン♪

倫子『"私だってアパートで泣いてる倫子ちゃんを抱きしめて、ケバブを食べた後一緒に夜を明かしたこともあるんだゾ☆ (≧▽≦)"……』

倫子『……なにこれ、修羅場?』ゴクリ

745 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 22:16:34.98 1w5ur/k0o 2121/2638


倫子『あ、あれ……突然、景色が変わって……』ドクン


パラララッ パララッ パラララッ

ウーウー カンカンカン

キュルルルルルルルルルルル ドゴォォォォォォッ!


るか『……そんな岡部さんが……ボクは……。…………』バタッ

フェイリス『凶真ぁ……るかが……るかがぁ……っ!』ポロポロ

萌郁『抵抗するなら、比屋定博士……この女を、殺す』

真帆『永遠に愛してるわ―――――――――』プシャァァァァーーーーッ

鈴羽『死なないって言ってるだろ! たとえあたしがこの拳銃を椎名まゆりに向けて、引き金を引いたって―――』ガチャッ パァン!!

まゆり『やっと、まゆ……しぃ、は、……オカリンの……役に……立て……たよ……』バタッ

かがり『うわああああああああああああっ!!!!!!!! 死ねっ! 死ねぇっ!!』ザシュッ!! グサッ!!

『牧瀬は殺すわけにはいかないからな。足だけ潰してやるよ』ザシュッ

紅莉栖『こんな……終わり……イヤ……。たす……けて……』



倫子『な……なん、だよ、これ……っ』プルプル




  「きゃあああああああああああああああああ――――――――――――!」




・・・

746 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 22:17:01.17 1w5ur/k0o 2122/2638


倫子「――――っ!!」ガバッ

倫子「……うぅっ……うぐ……ひぐっ……」ポロポロ

倫子「はぁはぁ、はぁ……」グシグシ

倫子「最悪だ……頭が、おかしくなりそう……」ハァ

倫子「……汗びっしょり。パジャマ、洗濯機に入れないと。安定剤も飲まなきゃ」

倫子「――ん? 納豆の臭い……真帆のノーベル賞の正体はこれか」クンクン

倫子「でも、あれ? おふくろは確か今日、商店街の夏祭りの相談だかで、会議所に出かけているはず」

倫子「親父か? 珍しいな、あの堅物が料理するなんて」

747 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 22:19:25.78 1w5ur/k0o 2123/2638

台所


倫子「(替えの服、洗面所に置いといたのに無かったから、下着のままになっちゃった)」

倫子「親父、私の着替え、外に干してる――――!?」

まゆり「あ~、オカリン。トゥットゥルー。お洋服、着てきたほうがいいよ~?」トントントントン

倫子「まゆり――――」ダキッ

まゆり「ふぇ? わわっ! あ、危ないよ、ほーちょーほーちょー!」パタパタ

倫子「(良かった、まゆりが生きてる……)」グスッ

まゆり「……怖い夢でも見ちゃったのかな。ごめんね、まゆしぃが起こしてあげられなくて……」ギュッ

倫子「(制服エプロンとは、可愛い奴め。ダルには絶対に見せられないな……って!!)」クンクン

倫子「な、なな、なんで納豆にわかめとみかんとオクラを混ぜてるの!? いや微妙においしそうだけども!」

まゆり「えっへへ~、テレビでね、頭がよくなる料理っていうのをやってたから、オカリンに食べさせてあげようと思って」

倫子「……気持ちはありがたいけど、まゆりがそういうのに手を出すと凄惨な未来しか視えないから、その辺でやめておこう?」

まゆり「え~。これでも由季さんに鍛えてもらってるんだよ~?」グサッ グサッ

倫子「んもう、ほら。私も手伝うから。えっと、私のエプロンは……っと」

まゆり「わ~い、オカリンと一緒にお料理だ~♪ っていうかね、下着エプロンはレベル高すぎだお~」

倫子「ダルみたいなこと言ってないで。それ、取って。あと、それとそれも」

まゆり「はーい」

748 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 22:20:16.18 1w5ur/k0o 2124/2638


倫子「――はいっ、完成。うん、まゆりもよく頑張った」

まゆり「え、えへへ、まゆしぃはね、これでも、やればできる子なのです」テレッ

岡部父「おう、飯出来たか、まゆりちゃ――――倫子!? おめぇ、なんつーカッコしてんだ!?」

倫子「え? あ、ああ。今着替えてくるよ、汗も乾いたし」

岡部父「お、おま、裸エプロンて、いや、俺は父親だぞ、何をその、ぐわぁぁーーっ!?」

倫子「しっ、下着は着とるわ! このHENTAI親父がっ!」

まゆり「今のうちにコッソリスマホで写真を……」

倫子「まゆり? その右手は何かな?」ニコ

まゆり「あ、あはは、なんでもないのです……」

749 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 22:21:19.20 1w5ur/k0o 2125/2638


岡部父「美味い美味い! まゆりちゃんは、やっぱり最高だな!」

まゆり「で、でも、オカリンと由季さんのおかげなので~」モジモジ

倫子「何を企んでるんだ、親父?」

岡部父「そりゃおめぇ、ウチの嫁に来て貰うためだろうが」

倫子「ああ、はいはい嫁ね……嫁っ!?」

岡部父「だからなっ! 椎名の頑固親父にガツーンと一発言ってやってくれ! 倫子とまゆりちゃんはウチで暮らすんだってな!」

まゆり「お、おじさん!?」

岡部父「今日も椎名の野郎と喧嘩してきてな、あいつったらよ、倫子とまゆりちゃんは自分の家で暮らしてもらうっつって、聞かねえんだわ!」

倫子「(勝手に話が進んでいる!?)」

椎名父「おい岡部ぇ! 勝手なこと騒ぐな! 外まで聞こえてるぞ!」ガララッ

まゆり「お父さんっ!?」ビクッ

倫子「椎名のおじさんまで……おいおい……」

椎名父「ふたりはウチで幸せに暮らさせるって、母さんの遺言にあるんだからな!?」

まゆり「おばあちゃんの……?」

岡部父「嘘を吐くんじゃねえ! だったらショーコを見せてみやがれショーコを!」

椎名父「証拠の手紙は色ボケ親父が失くしちまった。けど、俺の記憶の中にはある!」

まゆり「まゆしぃがよく物を失くすのは、おじいちゃん譲りなのです……」

岡部父「んなもん、無ぇのと一緒だバッキャロー!」

倫子「(や、やかましい……!)」

750 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 22:22:51.89 1w5ur/k0o 2126/2638

池袋 サンシャイン60通り


倫子「結局逃げるように家を出てきてしまった……なんかごめんね、まゆり」

まゆり「ううん、ちょっとビックリしたけど、まゆしぃはちょっぴり嬉しかったよ……」

倫子「え? なに?」

まゆり「な、なんでもないのです。それにしてもオカリン、髪が伸びたねぇ、ゆるふわ系?」アセッ

倫子「鈴羽の髪と同じくらいの長さかな、髪を解いた時の。このくらいがさ、井崎とか教授先生方にウケがいいんだよね」

倫子「でも、こんなに暑いから、まゆりくらいに切っちゃいたいよ」アハハ

まゆり「そ、そうなんだ……」

倫子「しかしあのクソ親父、使いまでさせるとは、試験勉強中の娘をなんだと思ってるんだ。値札くらい自分で作れっての」

まゆり「でもね、まゆしぃ、キレイなイラスト入りPOPを作ってみたいから、お使い嫌じゃないよ?」

倫子「野菜の値段札と同人誌のを一緒にしないでね……というか、暑い、溶ける……」ハァハァ

まゆり「大丈夫、オカリン? ちょっと休む?」

倫子「うん、そうしよ……」グテーッ

751 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 22:24:21.33 1w5ur/k0o 2127/2638

スタベ


まゆり「オカリンオカリン、こうして週末に2人でお店に来ると、なんだかリア充さんみたいだね」

倫子「リア充も大変だよ。街で知り合いに会ったらすぐ笑顔を作らなくちゃ、って気を張ってないといけないし」ハァ

まゆり「大変だねぇ」

女性店員「ご注文をどうぞぉ♪ って、あれ? 倫子さん? やだー、ぐーぜーん!」

倫子「え? あ、お茶女のハナさんじゃないですかー! えー、ここでバイトしてるですか?」

まゆり「えっ……」

女性店員「そうなのー! ちょっと遠いんだけど、スタベでバイトするのに憧れちゃってさー」

倫子「ハナさん、制服すっごく似合ってますよ~!」

女性店員「ホントにー? 倫子ちゃんの服も可愛いよ~? あ、よかったら今度さ――」

まゆり「えっとぉ、まゆしぃは、アイス・マンゴーティにしようかな」

女性店員「あっ、ごめんなさーい。仕事しなきゃだねー」テヘッ

倫子「もう、ハナさんったらー。じゃ、私はカフェモカをアイスでー」

女性店員「サイズはいかがいたしましょうか? なんてー」

倫子「キまってますねー。それじゃ、ショートで。まゆりもそれでいいよね?」

まゆり「う、うん。いいよ~」

女性店員「ショート、アイス、カフェモカ、ワン! ショート、マンゴーティー、ワン! プリーズ!」

倫子「わぁ~、ぽいぽい!」パチパチ

まゆり「…………」

752 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 22:25:14.38 1w5ur/k0o 2128/2638


倫子「はぁ……」ジュゴー

まゆり「オカリン、疲れてない? 大丈夫?」

倫子「んまあ、昨日も遅くまで起きてたし……数学で、答え見ても理解できない問題があってさ……」

まゆり「そうじゃなくて、その……オカリンがね、女の子で居ることに、だよ」

倫子「え? いや、私は女だけど」

まゆり「ううん、そうじゃなくて、えっと、ね! だから、その……」

倫子「……"鳳凰院凶真"だった頃のほうが、楽だと思った?」

まゆり「あっ……うん」

倫子「今になって思えば、どっちもどっちかな。あっちはあっちで色々疲れることも多かったし」ジュゴー

倫子「それに、今の外面のほうがテニサーや研究室でウケはいいしね。未来に繋がることを考えたら、少しくらいは大変でも構わないよ」

まゆり「うん……そっかぁ」エヘヘ

753 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 22:25:45.96 1w5ur/k0o 2129/2638


まゆり「じゃあ、まゆしぃは絶対にオカリンと同じ大学に入って、テニス同好会に入らなきゃね!」

倫子「えっ?」

まゆり「そうしたら、テニスや合コンで頑張ってるオカリンを、フレー、フレーってそばで応援してあげられるから!」

倫子「あ、あはは。すごく嬉しいけど、合コンで応援されたら困るかなぁ」

まゆり「えぇ~、どうして?」

倫子「まゆりにはまだ早いっ」ツンッ

まゆり「むー。なんか、オカリンってばお母さんみたいだよー」ムスッ

倫子「ふふっ」

754 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 22:27:49.69 1w5ur/k0o 2130/2638

東京ハンズ 文具売り場


倫子「――これで全部かな。私が会計しとくから、その辺ブラブラしてきていいよ」

まゆり「えっ……あ、うん。わかったー。それじゃ、上の階のキャラグッズ売り場に行ってくるね」

倫子「うん」



上の階


倫子「(さて、まゆりは……お、いたいた)」

まゆり「オカリン、こっちこっち! 見て見てこれ!」

倫子「ん? 普通のうーぱ? メタルじゃなくて」

まゆり「ちっちっちー。違うんだな~。これはね、緑のうーぱさんだけど、普通とは違うの」

倫子「……あれ? でもこれ、どこかで見たことあるような……っ!」ドクン

倫子「(これ、未来でかがりが持ってたヤツだ! そっか、これをまゆりは未来で娘に……)」

まゆり「この前やってた映画に登場した、"緑の妖精さんうーぱ"なんだよ。CMで見たんじゃないかな?」

倫子「あ、うん。テレビでサブリミナル的に見てたのかも」アセッ

倫子「(かがりの居場所に繋がるかわからないけど、後で鈴羽にRINEで連絡しておこう)」

まゆり「その映画ではね、ばーちゃる世界で悪のハッカーたちとバトルをするんだけど、そのばーちゃる世界が"妖精さんの住む森"なんだー」

まゆり「それでね、それでね! ……! ……!? ……!!」

倫子「(……やっぱりまゆりもオタクなんだなぁ)」フフッ

755 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 22:30:02.49 1w5ur/k0o 2131/2638


まゆり「このキーホルダー、すっごく人気があって、どこのお店でも売り切れだったんだよ! しかも、これが最後の一個だったんだー」

倫子「よし。それ、貸して。私が買うよ」

まゆり「ええ? だ、だめだよぅ! これは、まゆしぃが先に見つけたのです~っ!」

倫子「違うわっ! 誰がお前の欲しがってるキーホルダーを横取りなんてするかっ!」

まゆり「じゃ、じゃあ、どういうこと……?」

倫子「いや、その……今日、食事を作ってくれたしさ、店の手伝いもしてくれるでしょ。このくらいのお礼はさせて」

まゆり「で、でも……」タジッ

倫子「普段から私、まゆりの世話になってるし……いろんな感謝の気持ちだから。本当はもっと高価で洒落た物のほうがいいんだろうけど」

まゆり「オカリン……」ジワッ

まゆり「ありがとう、オカリ~ン!」ダキッ

倫子「うおわっ!? や、や、やめて! こんな公衆の面前でっ!」カァァ


「あらあら、若いっていいわね~」

「あの子たち、可愛いね」

「ハァハァ……」


まゆり「えへへ、嬉しいな~。オカリンからのプレゼントだ~」ニコニコ

倫子「去年だってメタルうーぱをプレゼントしたでしょ! 嬉しいのは分かったから、離れてっ! 恥ずかしいーっ!」グイグイ

まゆり「まゆしぃね、これ、ずっとずっと大切にするね」エヘヘ

倫子「……今度は失くさないでね?」

まゆり「うんっ!」ニコ

倫子「(これから25年間も大事に持ってるなんて、まゆりは可愛いな)」フフッ

756 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 22:30:46.86 1w5ur/k0o 2132/2638


倫子「さてと、帰ろっか」

まゆり「お店のPOP作らなくちゃ!」

倫子「あー、その作業があったね……」

まゆり「オカリンはお勉強してて? まゆしぃがやるから」

倫子「いやいや、まゆりこそ勉強しなよ。受験生でしょ」

まゆり「だからー、POPを作った後で、まゆしぃの勉強を見て欲しいのです――――あっ」

倫子「ん? どうした?」

まゆり「ちょっと前にね、カエデちゃんからメールが来てたの。気付かなかった」ピッ

まゆり「えっ、嘘……」

倫子「どうしたの?」

まゆり「オカリン、前に言ったよね? フブキちゃんは、病気じゃないって」

倫子「う、うん。あれが病気だったら、私なんか重病人だもん」

まゆり「でも……見て、このメール」スッ



差出人:カエデちゃん
宛先:椎名まゆり
件名:ふぶきちゃんの件

フブキちゃんまた入院しちゃった。
これから行ってくる。病院ここ 
http://www.XXXXXXXXXX――

757 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 22:32:22.71 1w5ur/k0o 2133/2638

NR山手線内回り車内


ガタン ゴトン ガタン ゴトン

倫子「(どういうこと? リーディングシュタイナーによる記憶障害が悪化するような世界線変動は起きてないはずなのに……)」

まゆり「フブキちゃんが入院した病院って、たしか……」

倫子「……うん。私が前に入院してたとこ。あんまり良い噂を聞かないから、ちょっと心配だな」

倫子「(あそこは300人委員会と繋がってるって紅莉栖が言ってたから、SERNがリーディングシュタイナーの解明に乗り出した、とか?)」

倫子「(困ったな……時間は待ってくれない、か。こんな時に紅莉栖が、あるいは"紅莉栖"が側に居てくれたら……)」

倫子「(……そう言えば、この世界線での紅莉栖も、"栗悟飯とカメハメ波"だったんだよね?)」

倫子「(いや、まさか……検索したところで……)」ピッ ピッ


   "栗悟飯とカメハメ波"


倫子「あ、あった!!」ビクッ

まゆり「えっ? 何があったの?」

倫子「えっーと……フブキの病気に関するヒント、かな。いや、病気じゃないんだけど」

758 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 22:34:38.90 1w5ur/k0o 2134/2638


倫子「(2008年から@ちゃんに書き込んでる。にしても、書き込み過ぎでしょ、これ)」

倫子「(……タイムマシンに肯定的だ。この世界線では鈴羽が2000年――紅莉栖が父親と喧嘩別れする前――に世界線理論を提唱してたことが関係してるのかな)」

倫子「(最後の書き込みは……2010年7月27日、か。内容は、中鉢博士の記者会見を馬鹿にするレスに噛みついてるもの)」

倫子「(これを最後に……ん? いや、待って。これが最後じゃない? 2010年12月1日?)」

倫子「(この日はたしか、学園祭の翌日……レスも電機大に関する内容だ)」ゾクッ

倫子「(待て待て。じゃ、えっと、最新は? ……昨日の夜!? レス内容は相対性理論について、か……)」


409: 栗悟飯とカメハメ波
2011/6/24(金) 21:45:11 ID:m/7Co+RKO
>>401あなたはマイケルソン&モーリーの実験をベースに
相対性理論が導かれたとか言っちゃう一派でしたか
どうも話が合わないと思いました
初歩から出直せwwwうぇwっうぇww
>>405鳳凰院ちゃんを呼べ話はそれからだ


倫子「(……相変わらずクソコテだなぁ。人工知能のくせにわざとタイプミスするとか)」フフッ

倫子「(一応なりすましの可能性もあるけど……コンタクトを取って確認してみようか?)」

倫子「(ハンネは、鳳凰院凶真でもいいけど……いや、ここは)」ピッ ピッ


名前 サリエリの隣人
ほほう、香ばしいのがまぎれこんでいるな
確かにあの実験はエーテルの存在を確かめるためのものでしかなかったが
アインシュタインの一助となったのは否定出来まい
結果的に見れば同理論の元と解釈してもいいのだ
そっちこそ出直すがいい
      <<書き込みをする>>


倫子「(このやりとり、懐かしいなぁ。あの時は紅莉栖に論破されたから、今回も間違いなく――)」

倫子「さぁて……あとは、レスキネン教授か真帆が"Amadeus"をいつ立ち上げるか、だ」

759 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 22:35:40.89 1w5ur/k0o 2135/2638

AH東京総合病院付属 先端医療センター


倫子「(私やまゆりが前入院した病棟とは別の建物か……。って、まゆりの入院は無かったことになったんだった)」

倫子「(さっきネットで調べたけど、フブキ同様、日本中の新型脳炎患者はここに集められてるらしい)」

倫子「(……思ったより、綺麗で良いところだった。300人委員会との繋がりがあるなんて、やっぱり妄想だったんだろうか)」

カエデ「まゆりちゃん、オカリンさんっ」

由季「こっちですっ」

まゆり「フブキちゃんは?」オロオロ

由季「……大丈夫だよ、ママ」ダキッ

まゆり「わふ、え? ママ?」キョトン

由季「え? あ、いえ! 私ったら、とんでもない言い間違いを……」カァァ

倫子「ふふっ。由季さんでも、そういうことってあるんだね」

カエデ「みんな、慌てさせちゃってごめんね。私も、もっとちゃんと確認してからメールすればよかった」シュン

倫子「ってことは、フブキの容体は……」

カエデ「はい。例の病気が悪化したとかじゃないそうです」

倫子「じゃあ、また検査入院なんだ」

カエデ「はい、そう言ってました。だから全然心配ないって」

まゆり「な、なんだぁ。はぁぁ……よかったぁ……」ホッ

760 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 22:37:09.44 1w5ur/k0o 2136/2638


カエデ「フブキちゃん、今、MRなんとかっていう検査をしてるの。終わったらフブキちゃんのお母さんが声かけてくれるって」

まゆり「うん」

倫子「それにしても、先端医療センターって、こんなすごいところだったんだね。検査費用は国が?」

カエデ「フブキちゃんのお母さんの話だと、日本とアメリカ政府がお金を出して、新しい治療のプロジェクトを始めるみたいなんです」

倫子「アメリカ? フランスやロシアじゃなくて?」

カエデ「えっ? は、はい」

倫子「(そっか、それならまだ大丈夫なのかな……)」


??「だから、何度言えばいいのです? 患者は全員、個室にして下さい。それも、患者同士が接触しないよう!」

老医師「ですから、何度もご説明してます通り――」


倫子「あっ!! きょ、教授!? レスキネン教授!」

レスキネン「オー! リンコー!」ダキ――

由季「待って! ……びょ、病院内では、お静かに」グググ

倫子「(ひえっ……あの巨漢に締め上げられる直前に、由季さんが間に入ってなんとか止めてくれた)」ホッ

倫子「(由季さんって結構力持ちなんだな……まあ、あの鈴羽の母親ならさもありなん、ってところか)」

レスキネン「おおっと! これは失礼! つい嬉しくてね、許しておくれ」

761 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 22:38:32.26 1w5ur/k0o 2137/2638


老医師「教授、このお嬢さんは?」

レスキネン「彼女は、あのクリス・マキセの後継者ですよ。いずれ、私の研究室にも来てもらうつもりです」

倫子「――えっ!?」ビクッ

老医師「なんと、そうかそうか。いやあ、こんなに美人な天才君がもうひとり居たとは。日本の、いや、世界の将来も明るいね」

倫子「あ、ありがとう、ございます……」

老医師「それじゃ、私はこれで。病室の手配をなんとかしてきますから」

レスキネン「よろしくお願いしますよ、院長先生」

倫子「(今の人、院長だったのか……) ちょっと教授! ウソはやめてくださいっ」

レスキネン「おや? 私はウソなんてついたかな? それとも、君は我が校に来る自信がないと?」

倫子「い、いえ……というか、その肩書は真帆に悪い気が……」

レスキネン「彼女はクリスの前任者でありセンパイだ。後継者と呼ぶべきではないと思うけどね」

倫子「なるほど……。あの、真帆も日本に?」

レスキネン「いや、今回は彼女はアメリカに居てもらったよ。昨年末から年始にかけて、物騒な事件にも巻き込まれてしまったしね」

762 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 22:39:53.52 1w5ur/k0o 2138/2638


レスキネン「で、リンコ? 君はどこか具合でも悪いのかい?」

倫子「えっ? あ、いえ! 今日はその、入院してる友人の見舞いで」

レスキネン「そうだったか。いや、君が怪我や病気をしたのではないかと、少し心配になってしまってね」

倫子「教授こそ、ここで何を?」

レスキネン「君も知っているだろう? 例の新型脳炎の件だよ」

倫子「あ……」

レスキネン「アメリカ政府の依頼で、精神生理学研究所が治療法を研究していたんだが、私にもお鉢が回ってきた、ということさ」ヤレヤレ

倫子「じ、実は、その、私がお見舞いに来た友人、中瀬克美っていうのが、その新型脳炎で――」

レスキネン「……ふむ。それは心配だね。我々も、日本の医師団も研究を進めては居るんだが、未知の現象ばかりでね……」

レスキネン「実はね、さっきミス・ナカセをMRIに見送ったんだが、彼女がなかなか興味深いことを言っていたんだよ」

レスキネン「『自分たちは病気じゃない。リーディングなんとかっていう特殊能力で、別の並行世界の出来事を夢で見ることができるのだ』、と」

倫子「(あ、あのバカ……っ!!)」アセッ

763 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 22:40:47.65 1w5ur/k0o 2139/2638


倫子「彼女はその、厨二病というか、妄想癖があるというか、ゲームと現実の区別がつかないというか……(ごめんフブキ)」

レスキネン「だが、私も調べていくうちに、実はそれが正しいんじゃないかと疑うようになってきたんだよ。まあ、この仮説は"非科学的"ではあるが」

検査技師「すいません、レスキネン教授! ちょっと!」

レスキネン「まったく、日本に来てから乾く暇も無いね。それじゃ、リンコ。また」

倫子「あ、はい! 失礼しますっ!」

まゆり「ふわぁ……なんか、すっごくおっきな人だったねー。まゆしぃ、ビックリしちゃったのです」トテトテ

倫子「(……ふぅ。私、柄にもなく緊張してたな、教授の前で)」

倫子「(まだ教授の前でリーディングシュタイナーについて、説明はできない。鈴羽に釘を刺されてるのもあるけど、そもそもどう説明していいのかがわからない)」

倫子「(だから、この案件は自分が研究者になって科学的な解を、と思ってたんだけど……間に合うかな……)」

764 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 22:41:33.78 1w5ur/k0o 2140/2638


・・・

カエデ「フブキちゃん、たくさん愚痴ってましたね。あれだけ元気なら大丈夫そうです」ニコ

由季「それじゃ、私はこれからバイトがあるので」

まゆり「うんっ、メイクイーンでのご奉仕、頑張ってニャン♪」

由季「頑張るニャン♪」

倫子「(そういや、まゆりと由季さんは同僚ってことになるのか。ていうかこの人、3月に大学を卒業してから就活浪人中なのか? 怖くて聞けないけど)」

まゆり「じゃ、まゆしぃたちも池袋に帰ろう?」

倫子「うん、そうだね」

765 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 22:42:51.00 1w5ur/k0o 2141/2638

NR山手線外周り車内


まゆり「がたんごと~ん、しんかんせ~ん」

倫子「小学生か、お前は。どこにも新幹線いないだろ?」

まゆり「えっへへ~、オカリンのツッコミはちょっと男の子っぽいよね」ニコニコ

倫子「(まさかわざとなのか、こいつ?)」

倫子「(そう言えば、昼間エサを撒いておいたあのカキコミはどうなって――?)」ピッ

倫子「あ……!」

まゆり「なになに? ふぃっつ、ジェラード?」


429:栗悟飯とカメハメ波
2011/6/25(土) 17:40:26 ID:m/7Co+RKO
>>409おいおい
あの実験を元にして仮説を立てたのは
フィッツジェラルドとローレンツだ
アインシュタイン自身は関係ないと言っている
>>423鳳凰院ちゃんのなりすましは漏れが許さない絶対にだ


倫子「(見事に釣れたな……ってか、私のなりすましが出没してるのか。8割がた"紅莉栖"のせいだろうけど)」


名前 サリエリの隣人
>>429この論破厨めwww
相変わらず屁理屈だけは得意だなwww
貴様はモーツァルトか?
     <<書き込みをする>>


倫子「(このカキコミには動揺せざるを得ないでしょ)」フフフ

まゆり「知り合いなの? その、栗ご飯さんって」

倫子「……まあね。古くからの知り合いだよ、たぶん」

766 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 22:43:42.23 1w5ur/k0o 2142/2638


430:深遠なる名無しさん:2011/6/25(土) 18:23:26 ID:TSYIoKp80
なに言ってだこいつ

431:深遠なる名無しさん:2011/6/25(土) 18:23:26 ID:137wMXu80
>>424
そもそも2036年には地球が滅びてるんじゃね?

432:深遠なる名無しさん:2011/6/25(土) 18:23:26 ID: E11ful9Co
荒木の顔は老けましたか?
富樫は連載再開しましたか?

433:深遠なる名無しさん:2011/6/25(土) 18:23:26 ID: FSkwAfjtP
>>386
ピンク髪のヒロインに当たりはいないと何度いえば
おっと、頼んでないのに蕎麦屋の出前が…

434:栗悟飯とカメハメ波:2011/6/25(土) 18:25:16 ID:m/7Co+RKO
>>430 あなた、いったい誰?

767 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 22:45:27.46 1w5ur/k0o 2143/2638

同日 日本時間19時30分
未来ガジェット研究所


ダル「真帆たんオッスオッス……ちょ、真帆たん、だいじょぶなん? いつもにまして不健康そうだけど」

真帆『……おはよう。次真帆たんって呼んだら、この画面から出ていって呪い殺してあげるわ』

ダル「ひぃぃぃ――っ! ジャパニーズホラーじゃねーか! ま、まあ、なんだかんだ呼ばれ慣れてる真帆□!」

鈴羽「どう、ク、比屋定さんとのビデオチャットの状況は。外部に漏れてない?」

ダル「完璧だお! 僕が知る限り、世界で一番超セキュア! な方法取ってるし」フフン

鈴羽「うん、このビルの周辺も大丈夫。それじゃ、通話を許可する」

鈴羽「第13回、ワルキューレ定例会議、開始」

真帆『……そっちの進展はどう?』

ダル「なんとか分解する前の状態に組み立て直したお。機能はほぼ再現できてると思われ……るんだけど……」

真帆『……うまくいかないの?』

ダル「うん、なんか安定しないっつーか。放電現象が起きなくてさ、フツーの遠隔操作式電子レンジになっちゃう時のが多い」

真帆『……その辺のところ、岡部さんに訊ければいいんだけど、無理でしょうね。私たちが影でこんなことしてるというだけでも泣かせてしまいそうだわ』

ダル「でも、嫌われるの覚悟でやってるんしょ? 真帆たん」

真帆『……ええ。それが岡部さんのためになるって、信じてるから』

768 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 22:46:11.17 1w5ur/k0o 2144/2638


真帆『……ぐぅ』zzz

ダル「ちょ、真帆たん、寝落ちかお!」

真帆『ふわぁっ!?』ドンガラガッシャーン

鈴羽「あーあ、また派手に転んで……」

真帆『……あ、危なかったわっ。出勤前なのに二度寝してしまうところだった』

ダル「つーか、頑張りすぎだお。無理して身体壊したら意味なくね?」

真帆『このくらい平気よ。これだけやっても、まだ"天才"にはかなわないんだから』

真帆『それに、鈴羽さんの理論が正しければ、たとえ私が身体を壊しても、いずれ再構成されるんでしょ?』

鈴羽「そりゃ、長いスパンで見ればそうですけど、明日にでも病院送りになりそうな人を前にそんなこと言えませんよ」

鈴羽「あなたには、2030年代まで戦ってもらわないと困る」

真帆『でも、まだ人間の記憶データを数KBに圧縮する方法すら見つかってないのよ? 紅莉栖はやってのけたのに……』イライラ

ダル「あう……」

真帆『ご、ごめんなさい、愚痴をこぼしてる暇なんて無かったわね。今日の報告、他になにかあるかしら?』

769 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 22:49:56.55 1w5ur/k0o 2145/2638


ダル「あ、もうひとつ報告あるお。前に調べて欲しいって頼まれてた件について」

ダル「前に真帆氏たちが地下駐車場で襲われた事件。あれの情報操作がすげー過激なんだよねぇ」

真帆『え? あの、表向きにはカルト教団の男が違法薬物で錯乱してどうの、ってやつでしょ?』

ダル「犯人の身元は警察発表通り、某大学の准教授でカトーって名前。ここはいいんだけど、そんな人物、どの教団にも所属してなかった」

ダル「@ちゃん見てるとさ、信者らしいのが"教団は無実だ"ってカキコするんだよ。そうすると一瞬でものすごい数の教団アンチが沸いてくるっつー」

ダル「@ちゃん含めてさ、たいていの大手サイトには24時間、ビジネスとして工作員が張り付いてるもんなんだお。で、あの事件、調べたらものすごい数の工作員が導入されてた」

ダル「僕のバイト先が襲われた事件も同じ」

真帆『……っ!』

ダル「試しに目撃者を装って、ロシアの特殊部隊を見たってスレ立てたらさ、まぁ、すごいのなんの。炎上しすぎて笑っちゃったお」

真帆『紅莉栖の事件をもみ消したのも含めて……一体、誰がお金と人を動かしているのかしらね』

ダル「それについても、僕のバイトのクライアントからちょちょいっと盗んだ情報なんだけどさ……」

ダル「――どっかの300人委員会メンバーが動いてるらしい」

真帆『出たわね、その名前』

770 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 22:50:58.55 1w5ur/k0o 2146/2638


ダル「やつらもバカじゃないから、情報をおおっぴろげにはしてない罠」

ダル「それに、300人委員会以外も動いてるはず。色んな組織が色んな動きしてるし、ひとつの組織でも一枚岩じゃないから、詳しいことはハッキングじゃわからんちん」

ダル「だから、もうひとつの方法でアプローチしてみてる」

真帆『……もうひとつの方法?』

ダル「真帆たん、真帆たん。世界最強のハッカーでも解けないパスワードを入手する方法って、なんだかわかる?」

真帆『……パスワードを知ってる人間の口を割る、ってことね』

ダル「そそ。だから今、300人委員会関係者の親戚とか、地縁関係を持った人間を当たってるところ」

ダル「そしたらちょうどいい人材が日本に居たんだよね。有名な委員会メンバーの息子でありながら、父親に反感を持ってるのが」

ダル「そいつを頼ってなんとか委員会の情報を引き出してみるお」

鈴羽「父さんにあんまり危険なことはしてほしくなかったけど、うん、あたしが全力で父さんたちを守るよ」

ダル「うまく行けば、僕たちの、いや、牧瀬氏の事件の裏で、何がどう動いてるのか、ハッキリクッキリまる見えになっちゃうんだぜ、ハァハァ」

ダル「そしたら後はいくらでも情報操作し放題。ゆっくり腰を据えてタイムマシン開発をするなら、まずは地盤を固めないとね」

771 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 22:52:15.47 1w5ur/k0o 2147/2638


真帆『……ありがとう。くれぐれも気を付けて。それじゃあ、そろそろ出かけるわね』

ダル「あ、真帆氏? 研究所から来日の許可っていつ下りそうなん?」

真帆『それが、何回も申請しているのだけれど、却下の連続なのよ』ハァ

真帆『いいわ、こっちにも考えがある――まぁ、とにかく近々そっちへ行くわ』ガタッ

ダル「ちょっ、あのさ、真帆氏? 出掛けるなら、もう1回、鏡を見てからにした方がいいと思うお」

ダル「……ブ、ブブ、ブラウスが、は、はだけてるでござるよ」ハァハァ

真帆『へ? ……きゃああっ!? き、気付いてたんなら最初に言いなさいっ、このHENTAIっ!』ウワァン

ダル「あぁ……いいよぉ、萌え萌えだよぉ……」タラーッ

ダル「って、危なっ! 危なすぐるっ! 鈴羽の母親が、もうちょっとで真帆たんになってしまうところだった!」

鈴羽「そんなことになったら世界線が変わっちゃうけど、でも"あたし"という意識が生まれることはOR物質に関する因果律で保証されるから、遺伝子的には違う"あたし"が誕生する……?」

真帆『……くだらないことを真面目に考えるなんて、あなたにも研究者の素質があるかも知れないわね、"橋田鈴羽さん"』

ダル「理論にしても開発にしても陰謀にしても、やっぱオカリンの協力がないとなー」

鈴羽「結局、そこなんだよね。リンリン……やっぱり、無理なのかな……」

772 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 22:52:56.53 1w5ur/k0o 2148/2638


鈴羽「――会議終了。今回もお疲れ様、父さん」

ダル「乙。いやあ、鈴羽という清涼剤があるからこそ僕は毎日頑張れるお」

鈴羽「あたしじゃなくて母さんと仲良くしてほしいんだけどな」

ダル「あ~、なんつ~の? タイムマシンよりも難題?」

鈴羽「ちょっとー! 困るよ、父さんっ」

ダル「う、うん……パパ、頑張るからね」

鈴羽「いっつも口ばっかり。いい、父さん? あたし、いつまでもこうやってお説教出来ないんだからね?」

鈴羽「……もうすぐ、行っちゃうんだよ?」

ダル「あ……」

鈴羽「だから、そういう顔もやめる。約束したはずだよ、もう迷うのは無しにしようって」

ダル「けどさ、寂しいもんは寂しいんだお……6年後にまた会えるって言ってもさ……」

鈴羽「……あたし、シャワー浴びてくる。その間に、母さんにメールして。予定の空いてる日曜とかないか、訊いといて」

鈴羽「で、空いてたら、僕と2人で映画行きませんか? って返信すること」

ダル「げー!? いきなりハードル高杉!」

鈴羽「高校時代から可愛い女の子とつるんでた人間の発言とは思えないなぁ……それで、返事は?」ギロッ

ダル「サー、イエス、サー!」ビシィ!!

773 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 22:53:22.89 1w5ur/k0o 2149/2638


ダル「あのぉ……すみません。メールは必ずしますんで、その前にちょっとだけコンビニに行ってきてもよろしいでしょうか?」

鈴羽「買い出し?」

ダル「今夜も徹夜になりそうだし、遅くならないうちに、と思いまして……」

鈴羽「……あたし、シャワー出たらアイス食べたい。バニラ」

ダル「……ホッ。ようし、わかったお! 超高級バニラを、キンキンの冷え冷えでお届けするのだぜ!」ダッ

鈴羽「あっ! 普通のでいいからねー!」

ガチャ キィィ……

コツッ

ダル「……ん? なんぞこれ?」ヒョイッ

774 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 22:54:05.77 1w5ur/k0o 2150/2638


ダル「うーぱのキーホルダー? ああ、チェーンが劣化して切れちゃったんだな。まゆ氏のかな?」

鈴羽「どうかしたの? ……それ、確かどこかで――――っ!!」ドクンッ

鈴羽「さっき、リンリンから画像付きでRINEに送られてきたのと、一緒のヤツだ……」ワナワナ

鈴羽「でも、古びてる……ってことは、これ……かがりの……?」プルプル

ダル「かがり、って……未来のまゆ氏の娘の?」

鈴羽「……うん」

ダル「それがなんでここに?」

鈴羽「あいつ……このラボも監視してるんだ」ゾワッ


―――――

   『世界を変えちゃいけないんだ! おねーちゃんはおかしいコト言ってる!』

   『かがりは元の世界に戻りたいだけだもんっ』

   『この世界を消すなんてダメだよっ! 絶対にやらせないからっ!』

―――――


鈴羽「ちょっと考えれば当たり前のことだったんだ。あいつは、あたしたちがシュタインズゲートに到達するのを阻止しようとしてる」グッ

鈴羽「あたしだけじゃなく、父さんもマークしてるかもしれない」

ダル「まゆ氏の娘に狙われるとか、全然緊張感わかない件について」

鈴羽「13年間行方不明になってたのに、こうしてあたしに気配を悟られることなくずっとあたしたちの側に居たんだ」

ダル「う、うおう……それは確かにヤバイ」

鈴羽「それでも、鎖の経年劣化、っていう、時間の摂理にだけは逆らえなかったみたいだけどね」

775 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 22:55:07.62 1w5ur/k0o 2151/2638


鈴羽「警戒レベルを上げたほうが良い。あと、それはあたしに預からせて」

ダル「うん。あ、でも、それならコンビニ行くの、やめるお」

鈴羽「うーん……父さんの命に危険は無いはずだけど、シュタインズゲートから遠ざけられることは避けたいし……」

ダル「なんなら一緒にシャワー浴びる?」ハァハァ

鈴羽「父さんになら身体を見られても別にいいんだけどさ、ここだと容積的に無理じゃない?」

ダル「ぐはっ! よおし、父さん、今日から痩せまくるんだからね……」ゴゴゴ

鈴羽「(でも、このまま守りに徹していいのか? もうあんまり時間は無いのに)」

鈴羽「(それならいっそのこと、釣ってみるか……"リンリン"が買ったっていう、コレで)」

鈴羽「……父さん。やっぱり、コンビニに行ってきて」

ダル「え? なんで?」

鈴羽「ちょっとあたしに考えがある――――」

776 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 22:55:33.24 1w5ur/k0o 2152/2638

シャワールーム


シャー キュッキュ

鈴羽「(サプレッサー付きオートマティック拳銃をソファの裏に隠してある。この狭い場所なら32口径が取り回しが良い)」

鈴羽「(そろそろか……? 談話室との間仕切りカーテンを少し開けて……)」

鈴羽「(……部屋の電気が消えてる。いや、消されてるんだ)」


……ミシッ……


鈴羽「(ビンゴ……! 開発室の奥だっ!)」ダッ


タッ タッ タッ! パシッ! クルッ!


鈴羽「そこまでだ。おかしな真似をしたら撃つ」スチャッ

鈴羽「――――探し物はコレか? "椎名かがり"」スッ

かがり「…………」

777 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 22:56:04.17 1w5ur/k0o 2153/2638


鈴羽「なぁ? 落としたらダメじゃないか。ママからもらった大切な物だろう?」

鈴羽「それに、お前は知らないだろうけど、これはリンリンが買ったものなんだ。粗末にするなんて、あたしには許せないよ」

鈴羽「この暑いのに、よくそんな格好をしていられるな? ヘルメットだけでも取ったらどうだ?」

かがり「…………」

鈴羽「だんまり、か。背中に隠してるナイフであたしを倒す算段でもしてるのか?」

鈴羽「無理だよ。マシンの中でベソベソ泣いてた子どもにはな」

鈴羽「ほら、どうした? 取りに来なよ。要らないなら捨てるぞ?」

かがり「"……鈴羽おねえ、ちゃ……お願い、返し、て……"」グスッ

鈴羽「(変声器? いや、録音を流してるのか?) ……かがり、お前、どういうつもりだ……?」

かがり「"お願い、返して、お願い……"」ヒグッ

鈴羽「…………」

778 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 22:56:55.36 1w5ur/k0o 2154/2638


鈴羽「(よく考えて見れば、かがりはまだ何もしていない。確かにラジ館屋上で話を聞かれたことはあったが……)」

鈴羽「(あの時、訓練されたプロの動きを見せた。訓練の目的は、ワルキューレの妨害だろう)」

鈴羽「(だけど、もし本気で妨害したいならあのタイムマシンを破壊したいはずだ。なのに、未だ破壊には至っていない)」

鈴羽「(たとえ収束のせいで破壊ができないのだとしても、現状からして、まだ他の誰にもあのタイムマシンの場所を教えたりしてないことだけは確かだ)」

鈴羽「(かがりは椎名まゆりの娘であり、あたしの妹分。もし話せばわかるっていうなら――)」

鈴羽「……わかった、これは返す。ただし、今後あたしたちワルキューレの邪魔をするようなことはやめろ」

鈴羽「お前が望むなら、椎名まゆりと引き合わせてやってもいい。13年前のことを水に流してやってもいい」

鈴羽「お前がどこで何をやってきたのか、今何をしてるのか……言いたくないなら、言わなくてもいい」

鈴羽「まずはナイフを捨てろ」

かがり「…………」スッ

鈴羽「(ナイフを床に置いた?)」

かがり「"……お願い、返して、お願い……"」

779 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 22:57:39.18 1w5ur/k0o 2155/2638


鈴羽「……銃を向けて悪かったよ、かがり。お前のことを勘違いしてた」スッ

鈴羽「椎名まゆりの時も、リンリンの時も、人に銃を向けて、後悔してばかりだな、あたし……」

鈴羽「……正直言うと、ずっとお前に謝りたかったんだ。13年間、ひとりぼっちにして、お姉ちゃん失格だな」

鈴羽「……ごめん、かがり。知らない時代にお前を置き去りにして、ホントにごめん」

かがり「…………」

鈴羽「……赦してくれるとは、思ってない。それで構わない」

鈴羽「きっと今のかがりには、ここに居れない理由があるんだろ?」

鈴羽「そのヘルメットを取れない理由とか、あたしに肉声を聞かせられない理由とかさ」

かがり「…………」

鈴羽「ほら、これ。大切なものを、落としたりしちゃダメだろ?」スッ

かがり「…………」ギュッ

鈴羽「……父さんが帰ってくる前に、行きなよ」

かがり「……ううっ!?」ガクッ

鈴羽「っ!? どうしたかがり!? 頭を押さえて、痛むのか!?」オロオロ

かがり「いや……いやだ……う、うう……」プルプル

かがり「――――うああああああっ!!!」ドゴォ!!

鈴羽「――ぐふっ!?」メキッ

780 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 22:58:22.73 1w5ur/k0o 2156/2638


鈴羽「(くそ、肋骨を持っていかれた……! 殺気の籠ったパンチだ……っ)」フラッ

鈴羽「(雰囲気が急変した? やっぱりコイツの目的は――)」グッ

鈴羽「(……信じたあたしが、バカだった! 失敗したっ!)」ギリッ

鈴羽「お前ぇぇぇっ!!!」シュバッ!!

かがり「ぐはぁっ!」バターンッ! ボギッ!

かがり「はぁんっ!!」ビクンッ

鈴羽「はぁ、はぁ……あたしの蹴りを食らって、もろに倒れたみたいだな……」

鈴羽「右肩の関節が外れたか? これでもうナイフは使えないだろ……」

鈴羽「マウントを取って、首を捉えた。お前の負けだ、かがり」グググ

かがり「ぐ、くっ……!」グググ

鈴羽「(こいつ、抵抗する気か……すごい力だ! いったいどんな訓練を受けてきたっていうんだ!?)」

鈴羽「(このまま殺すしか、ない……!)」グググ

781 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 22:58:53.04 1w5ur/k0o 2157/2638


かがり「鈴羽、おねえちゃ……痛い……苦し……気持ちい……」ハァハァ

鈴羽「またそうやって……卑怯な真似を……っ!!」グググ

鈴羽「今すぐ殺してやるよ、椎名かがりっ!!」ギロッ


ダル「おおーい、鈴羽ー? なんかすごい音したけど――」ガチャ


鈴羽「っ!? 父さんっ!?」ビクッ

かがり「っ!!」ブンッ!!

鈴羽「ぐは……っ」ヨロッ

鈴羽「(このあたしが、肩の外れた女に力任せに突き飛ばされるなんて……ガードが間に合わなかったら落ちてたな……っ)」

かがり「っ!」タッ タッ タッ


ダル「う、うわあぁっ!?」


鈴羽「父さんっ!!」


かがり「……っ」タッ タッ タッ


タッ タッ タッ …

782 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 23:09:38.35 1w5ur/k0o 2158/2638


鈴羽「逃がすかぁっ!!」ダッ

ダル「ちょ!? 鈴羽、ちょっとタンマタンマ!」ガシッ

鈴羽「父さんどいて! ソイツ殺せないっ!!」

ダル「ぜっ、全裸で街ん中走るとか! どんな露出プレイかと小一時間!」

鈴羽「そんなこと言ってる場合じゃ――」

ダル「彼女を捕まえる前に、鈴羽が警察に捕まるっつーの!」

鈴羽「く……!」ピタッ


・・・


ダル「……今のって、かがり氏?」

鈴羽「……間違いない」

ダル「そっか」

鈴羽「……結局、こうなっちゃうんだな……。13年前と、何も変わらない……」

鈴羽「失敗した……」グッ

783 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 23:10:28.85 1w5ur/k0o 2159/2638


鈴羽「あたしさ、あの子のこと、本当に好きだったんだ……」

鈴羽「小さくても勇敢で、椎名まゆりのためにいつも頑張ってて、あたしもそんな彼女に色々なことを教えた」

鈴羽「"リンリン"から習ったことを、今度はあたしが彼女に教えるんだって、少し嬉しかった」

鈴羽「妹みたいに、思ってたんだ。今はあたしより年上だけど」

鈴羽「けど……あいつはもう、完全に、敵だ」グッ

ダル「……僕さ、さっきは驚いちゃったけど、でも、怖がる必要なかったんじゃないかなって」

鈴羽「え……?」

ダル「僕とすれ違う時、ほんの少しだけど聞こえたんだよ」

ダル「彼女、たぶん……泣いてた」

鈴羽「そんな……なんで……」

ダル「決めつけるのは、まだ早いんと違うん? だって鈴羽の大切な妹なんだろ?」

ダル「"鳳凰院凶真"だったらさ、きっと最後まで可能性を捨てないと思うのだぜ?」

鈴羽「……アイス、買ってきてくれた?」

ダル「え? ああ、もちろんだお!」

鈴羽「食べたいな……あたし、ちょっと疲れちゃっ、た」ガクン

ダル「わぁっ!? お、おいっ、鈴羽っ? 鈴羽――――」

784 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 23:11:01.54 1w5ur/k0o 2160/2638

2011年7月3日日曜日
成田空港 国際線ターミナル到着ロビー


真帆「……まったくもうっ! パスポートの偽造なんかしてないわよっ!」プンプン

倫子「真帆、久しぶり。なんとか入国できたみたいだね」フフッ

真帆「ふあ? あ、あ、あ、あなたっ?」ドキッ

倫子「まあ、結構チャットはしてたし、そんなに久しぶりって気はしないけどさ」

真帆「まさか、迎えに来てくれてるなんて……。こんなサプライズ、初めてよ……」ドキドキ

フェイリス「オカリンがまほニャンの初めてを奪っちゃったニャ?」

真帆「ふぉ!? あ、あなたも居たの?」ビクッ

まゆり「まゆしぃも居るよーっ! まほニャンちゃん、まゆしぃの服、着てくれたんだねー! うれしいよぉ~♪」

倫子「(真帆の体型プラスまゆりの服だと、より一層中学生に……小学生に? 見えるなぁ)」

真帆「まゆりさんっ! また会えて嬉しいけど、その呼び方はやめて……」カァァ

フェイリス「それじゃ、黒木の運転でアキバまでレッツゴーなのニャ!」

785 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 23:12:03.40 1w5ur/k0o 2161/2638

リムジン車内


真帆「すごい車ね……さすがフェイリスさん……」

倫子「こうして迎えに来てあげないと、秋葉原まで来れなさそうだったよね」

真帆「し、失礼ね! 私はそんなに頼りなくないわっ」

倫子「ふふっ。それで、真帆。今回はどうして来日したの?」

倫子「チャットでは秋葉原に来ることしか教えてもらえなかったから。やっぱり教授の助手として?」

真帆「あー、ええっと……岡部さんはレスキネン教授とはけっこう連絡を取り合っているの?」

倫子「うん。教授、ずっとこっちで新型脳炎の研究をしてるでしょ? たまに食事に誘ってもらったりして……すごく光栄だよ」

真帆「(こ、これはまずいわ……下手をすると嘘がバレてしまう……)」

真帆「ええと、実はね、沖縄の親類のところへ行くの」

倫子「沖縄?」

倫子「(……あんまり良い想い出は無いな)」ゾクッ

真帆「ええ。でもせっかくだから、その前にアキハバラにも寄ってみようかと思って」

フェイリス「愛しのリンコちゃんに会いたかったからかニャ?」ニュフフ

真帆「……あなたねぇ」ハァ

フェイリス「ホテルがまだ決まってないなら、このままフェイリスのおウチに来るといいニャ!」

真帆「えっ? でも、そんなの悪いわ」

倫子「その格好で秋葉原を出歩いたら、間違いなく児童誘拐されるよ。外国人とかに」

まゆり「そうだよ~、東京は怖いところなんだよ~? お持ち帰りされちゃうよ~?」

真帆「うっ、成人なのにそんなことになったら恥ずかしすぎる……」

786 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 23:14:29.57 1w5ur/k0o 2162/2638


倫子「フェイリスはあれで実は寂しがり屋だから、一緒に居てあげて」ヒソヒソ

真帆「そ、そうなの? ……なら、フェイリスさんのお言葉に甘えさせていただく……わ……ふわぁ」ウトウト

フェイリス「時差ボケかニャ? まほニャン、横になって寝ちゃうといいニャ。着いたら起こしてあげるから」

真帆「えっ? でも、なんだか行儀が悪いし……」

フェイリス「リンコちゃんのひざまくらを堪能するまたとないチャンスニャぞ~?」ニュフフ

倫子「そのリンコちゃんって言うのやめて」

まゆり「でもね、オカリンのひざまくらは、ブラックマーケットで高レートで取引されるシロモノなんだよ~?」

真帆「そ、それは確かに、貴重なサンプルデータかも……」ドキドキ

倫子「真帆まで悪ノリして……まあ、別に真帆ならいいけどさ。ほらっ」

真帆「そ、そそ、それじゃ、お言葉に、甘えて……」スッ

真帆「……すぅ」zzz

倫子「相当疲れてたんだね」ナデナデ

フェイリス「本当にまほニャンは仔猫みたいだニャ」

まゆり「寝顔がと~っても可愛いのです♪」

787 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 23:15:20.41 1w5ur/k0o 2163/2638

一方その頃
未来ガジェット研究所


ダル「うおお~ん、鈴羽、ごめんな~。橋田家はもうダメだお~」オイオイ

鈴羽「だから、父さんっ。最初から説明してくれない? よく分かんないから」

鈴羽「父さんたちのデートを途中から尾行してたのは悪かったけど、ゴーゴーカレーでの態度は何だったのさ」

ダル「いや、それがさ……映画の席に座ってたら、椅子がベキッっていって、壊れそうになって」

ダル「で、慌てて身体を支えようとして、咄嗟に左側のひじかけをつかんだんだけど……」

ダル「そ、それが……それがっ! ひじかけじゃなくって、阿万音氏の……右手だったんだお~」ヘナヘナ

鈴羽「……は?」

ダル「僕、お、お、おにゃのこと手を繋ぐなんて……あれ? 結構経験あるじゃん……オカリンに引っ張り回されたり……」

鈴羽「何を言っているの?」

ダル「い、いや、それが、阿万音氏がさ……僕の手が触れた瞬間、奇声を上げちゃって……」

鈴羽「奇声?」

ダル「なんかこう、『あぁん♡』とか『いやぁん♡』みたいな……」

鈴羽「蹴るよ?」

ダル「いや、マジなんだってばよ! なんかそれからすっごく意識するようになっちゃって」

鈴羽「……でも、母さんからはそんな話、聞かなかったけどな」

788 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 23:16:04.17 1w5ur/k0o 2164/2638


鈴羽「あたしが母さんから聞いたのは――――」


―――――

由季『橋田さん、私といてもあまり楽しくなかったみたいで……映画の後は、ずっとあの調子で……』シュン

鈴羽『そんなことないよ! 緊張してただけだって』

鈴羽『あのさ……由季さんは、なんで兄さんのこと、好きになったの?』

由季『えっ? あの、私たち、まだお付き合いは……』

鈴羽『(え……ああっ!? しまった、つい父さんと母さんが結婚することを知ってるから、先走っちゃったっ)』

由季『……私は、まだ、橋田さんのこと、好きかどうかも、よく分からないです……』

鈴羽『そ、そうだよね。……由季さん、こんなこと、あたしが頼むのもおかしな話なんだけど』

鈴羽『あんな兄だけど、ううん、あんな兄だからこそ、どうか――』

鈴羽『橋田至を、よろしくお願いします!』ペコリ

由季『…………』

由季『私は、どうしたいんだろうね、おねえちゃん……』ボソッ

鈴羽『……?』

―――――

789 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 23:16:48.87 1w5ur/k0o 2165/2638


ダル「ということで、ごめん、鈴羽。母さんのことはあきらめて、僕とふたりで仲良く生きていこうな~」

鈴羽「そんなことしたら世界線が変動して、父さんの記憶にも残らないレベルであたしが消滅しちゃうんだけど?」

ダル「うう……確かにっ」

鈴羽「とにかく、母さんはイヤがったりしてない。さっきバイトに向かう時も、また誘ってくださいって笑ってたでしょ?」

鈴羽「あたしには分かる。父さんと母さんは大丈夫だからっ!」バシーンッ

ダル&鈴羽「「うぁ痛たたた――――っ!」」

鈴羽「つつ、まだ完全に傷は癒えてない、か……」ヒリヒリ

ダル「ちょ、あんまし無理すんなって」

鈴羽「でも、かがりのほうがもっとひどい傷を負ったはずなんだ……しばらく右腕は使い物にならないはずだし」

鈴羽「それを考えたら、こんな痛み、なんでもないよ」

ダル「右腕……」

790 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 23:17:16.82 1w5ur/k0o 2166/2638


フェイリス「到着だニャー!」ガチャ

ダル「んお!? フェイリスたん!」ムハーッ

鈴羽「……ん? ねえ、父さん!? 電話レンジ、隠さないと!」

ダル「えっ? うわあっ! やばっ!」ダッ

ガサゴソ ガサゴソ

倫子「お邪魔しま……あれ、ダル? なにやってるの?」

ダル「うひっ!? いやあ、なんでも?」ダラダラ

まゆり「あれー? どうしてダルくんがラボに居るのー? デートはー?」

フェイリス「まさか、うまくいかなかったのかニャ!?」

ダル「あ、いや、……。阿万音氏は、バイトに行ったっつーか」

フェイリス「ハニャ!? 今日のためにシフト、入れないようにしてたのに!?」ガーン

ダル「ああ、たぶん別のバイトだと思われ」

倫子「(完全にフリーターだな……)」

791 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 23:23:11.70 1w5ur/k0o 2167/2638


鈴羽「ク、比屋定さんっ! お勤め、お苦労ですっ!」スッ

真帆「ふぇ!? ちょっと、立膝ついて出迎えないでくれる? ここはヤクザの事務所かなにかなの……」

ダル「あれ? 真帆たんどこ?」キョロキョロ

真帆「……下よ、下」

ダル「え? あー、真帆たん! そこにいたん!」

真帆「相変わらず無礼極まりないわね、あなた。いい加減堪忍袋の緒が切れたわっ!」グググ

ダル「ぐえっ! 首が絞まるっ! ゆ、許して、真帆たん! つーか、ネタにマジレスカコワルイ!」

真帆「ネタで済むと思ってるのかしら?」ニコ グググ

倫子「へぇ……なんかちょっと意外だなぁ。ダルと真帆が仲良いなんて」

倫子「(確かにまあ、エンジニア方面では趣味が合いそうではある、か)」ウンウン

倫子「あ、でも、ダルと付き合うのはダメだよ? 鈴羽の母親が変わっちゃうから」

真帆「はあ!? それはとんでもない誤解よっ!?」

フェイリス「もしかしてぇ、オカリンにだけは勘違いしてほしくないっ! みたいなやつニャ?」ニヤニヤ

真帆「ううっ、そういうのでもないわよぉ!」ムキーッ

フェイリス「素直じゃないニャン」ヤレヤレ

792 : ◆/CNkusgt9A - 2016/06/30 23:24:34.26 1w5ur/k0o 2168/2638


倫子「そう言えば、その……真帆。怖く、ない?」

真帆「……あの事件のこと、よね。ここに逃げ込んだ私は、恐怖で錯乱していたわ」

真帆「だけど……ええ。大丈夫みたい。どちらかと言えば、好きよ。こういう秘密基地みたいな部屋」

倫子「そう、よかった」ニコ

真帆「(っ、かわいい……)」ドキッ

鈴羽「それでは、ク、比屋定さん来日記念として、歓迎会を開催したいと思います!」

真帆「そ、そこまでしてもらわなくても……」

まゆり「まゆしぃがね、おいしいお料理を作っちゃうのです!」

倫子「まゆりは、火を使わない料理なら結構上達してるんだよ」

真帆「へえ……それなら、期待してみようかしら」

まゆり「えっとねー、電子レンジちゃん、あるー?」

ダル「ビクッ! い、いや、そんなもの、このラボには無いお! あるわけないお! あは、あはは!」アセッ

鈴羽「ちょっと父さんっ! あたしが火を管理するよ、サバイバル生活には慣れてるからさ」

フェイリス「全く、ダルニャンは……フェイリスも手伝うニャン!」

倫子「……?」


次章
岡部倫子「これがシュタインズ・ゲートの選択……!!」【#13】


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