最初から
岡部倫子「これがシュタインズ・ゲートの選択……!!」【#01】

一つ前から
岡部倫子「これがシュタインズ・ゲートの選択……!!」【#06】

561 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 19:47:51.79 qTKNtn1yo 1062/2638

第13章 閉時曲線のエピグラフ(♀)
ブース内


真帆「お、落ち着いたかしら……ハァ……ハァ……」

倫子「ごめんなさい……」シュン

真帆「普通なら出禁よ、出禁! まったく……」

Ama紅莉栖『あの、先輩。先輩は、岡部倫子さんとはどういう関係ですか?』

真帆「この前のATFセミナーで会ったの。なかなか研究熱心な学生さんでね、いずれは私の助手になってもらいたいと思っているところよ」

倫子「えっ? そ、そうなの?」パァァ

真帆「冗談よ、冗談」

倫子「…………」シュン

真帆「うぐっ、何この罪悪感……」

Ama紅莉栖『へぇ、結構評価されてるんですね。岡部さん、専攻は脳科学ですか?』

倫子「あぅ、えと、その……」

倫子「(……やっぱり、私の知ってる紅莉栖じゃないんだ。この"紅莉栖"は、私の知らない紅莉栖の過去……)」

Ama紅莉栖『……やっぱり、"オリジナル"の死がショックだったんですよね。先輩、そういう人を私と会話させて大丈夫なんですか?』

真帆「私も教授に具申したのだけれど、『Amadeus』がサイコセラピー効果を出してくれれば、というのを期待しているらしいわ」

Ama紅莉栖『なるほど……確かに有意義かつ結果を提示しやすい実験ですね』

Ama紅莉栖『私個人としても、自分の知識が活かせる目標ができて嬉しいところです。つまり、岡部さんの社会生活を応援してあげればいいんですね』

真帆「そういうこと。期待してるわ」

562 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 19:49:06.19 qTKNtn1yo 1063/2638


真帆「岡部さん。"彼女"と何か話してみる? たくさん話したいことがあるって言ってたわよね」

倫子「う、うん……」

Ama紅莉栖『どんなことでも訊いてください。可能な範囲でお答えしますから』ニコニコ

倫子「あ、あのね、紅莉栖――」

倫子「――タイムマシンは、作れると思う?」

真帆「なんの話?」

倫子「た、ただのテストだよ。思考実験が出来るかどうか、っていう」

倫子「(自分でも、どうしていの一番にそんなことを聞いてしまったのか、よくわからない。もしかしたら、自分の知る紅莉栖と同じかどうかを確かめたかっただけなのかも知れない)」

Ama紅莉栖『タイムマシン、ですか。そうですね、結論から言ってしまうと、可能ではない――』

倫子「え……!」パァァ

Ama紅莉栖『けれど、不可能とまでは言い切れない、といったところでしょうか』

倫子「……なるほど」

倫子「(やっぱり、α世界線の7月28日のATFでの紅莉栖の講義は、父親にタイムマシン論文を渡せなかったことの反動で論破しまくってたわけか)」

倫子「(ついでに私もとばっちりを食らって公衆の面前で泣かされた。ぐぬぬ……)」

倫子「私は、タイムマシンなんて馬鹿らしい代物だと思うけどなーっ」チラッ

Ama紅莉栖『そう決めつけるのは早計ですよ。11の理論は確かに現実的ではない。それは、科学者がまだ重大な何かを発見できていないからでしょうね』

倫子「重大な、何か……」

倫子「(タイムリープマシン、アトラクタフィールド理論、OR理論、世界は電気仕掛け……)」

Ama紅莉栖『宇宙が隠し持った理論で、既存の理論を否定できるんですよ。岡部さん?』


  『その理論だと、こっちの理論を否定しちゃいますけど。鳳凰院さん?』


倫子「……ふふっ。紅莉栖ってホント、ツンデレだね」

Ama紅莉栖『は、はぁっ!?』

563 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 19:50:51.10 qTKNtn1yo 1064/2638



バタンッ


真帆「ん? 教授かしら?」

ドスドスドス! ガチャ

レスキネン「リンコー! また会えて嬉しいよ! シェイクハンド!」ガシッ ブンブンブン

倫子「うわっ!? え、えっと、アイムファインサンキュー、アンド、ユーっ!」

Ama紅莉栖『岡部さん、可愛い英語ですね』クスッ

倫子「だ、黙れ、クリスティーナ!」

Ama紅莉栖『ク、クリスティーナ?』

倫子「(しまっ!? 妄想の紅莉栖で矯正したと思ってたのに、この2ヶ月のうちに気が緩んでた……)」

倫子「な、なな、なんでもないわぁ? 気にしないでよくってよぉ?」アセッ

真帆「動揺しすぎて口調がブレてるわよ」

Ama紅莉栖『気になります。なんで私がクリスティーナなんですか?』

倫子「そ、それは……」

倫子「(……"鳳凰院凶真"が身体に染みついちゃってるみたい)」

倫子「(あまりいいことじゃないよね。"鳳凰院凶真"は所詮、お遊びだったんだから……)」

真帆「クリスティーナって呼んでいたんでしょ。ホントに仲が良かったのね」

Ama紅莉栖『あだ名で呼び合う仲……ちょっとオリジナルがうらやましいかも。あの、"私"は岡部さんをなんて呼んでいたんですか?』

倫子「……岡部、とか、倫子ちゃん、とかかな」

Ama紅莉栖『それじゃ、倫子ちゃんって呼びますね』

倫子「り、倫子ちゃん言うなぁっ!」ドキドキ

Ama紅莉栖『にやけながら言われても……』ウフフ

真帆「(屈折した関係だったのかしら?)」

564 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 19:53:59.20 qTKNtn1yo 1065/2638


倫子「そ、そんなことより教授! 『Amadeus』の記憶って、外部から改ざんできたりするんですか!?」アセッ

真帆「露骨に話を逸らしたわね」

レスキネン「それは、本人から直接聞いてはどうかな?」

Ama紅莉栖『記憶の改ざんですか。理論上は可能です』

倫子「例えば、断片的記憶データをパルスで送り込む、とか……?」

Ama紅莉栖『私の場合、生物としての脳は持っていないので、神経パルスである必要はないですけどね。記憶データと検索信号があれば、改ざんは確かにできます』

Ama紅莉栖『ですが、改ざんされたことに私は気付いて、自分で修復してしまうでしょう』

倫子「『Amadeus』にも記憶の修復機能があるの?」

Ama紅莉栖『私は、私以外アクセス不可の領域にログを取っていますから。つまり、秘密の日記ですね』

倫子「秘密の日記……」

Ama紅莉栖『その日記と現在の記憶との間に不自然な齟齬があれば、私は高い確率で疑問を抱きます』

Ama紅莉栖『さらに言えば、私の記憶データは定期的にバックアップされています』

Ama紅莉栖『記憶が全破壊されるバグが発生したとしても、復旧することが可能なんですよ』

倫子「(リーディングシュタイナーと同じ機能が備わってる……?)」

倫子「ねえ、比屋定さん。この"紅莉栖"の脳ってどこにあるの?」

真帆「ヴィクコンのスパコン内にある集積回路として存在していることになるわ。人間の脳機能を電気的に再現したものよ」

倫子「(……もしOR物質がシリコン半導体基板の上にも宿るなら、この『Amadeus』の記憶と秘密の日記を守ってる保護プログラムをすべて破壊すれば、本物の紅莉栖がリーディングシュタイナーを起こして……)」

倫子「(データに過ぎないんだから、後ろめたいことはなにも……)」

倫子「これは、紅莉栖じゃない。これは……」

真帆「……?」

565 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 19:55:10.93 qTKNtn1yo 1066/2638


倫子「ねえ、『Amadeus』って単なる記憶のコピーってわけじゃないんでしょ? 脳機能の再現って言ったよね」

Ama紅莉栖『はい。「Amadeus」は人の記憶をデータにして読み取って解析し、記憶だけじゃなく、性格から思考までその人そっくりに作り出す、画期的なAIです』

真帆「自分で画期的とか言っちゃうあたり、研究者紅莉栖の思考がそのまま残ってるってわけね」

倫子「例えば、『Amadeus』にも前世記憶があったり、臨死体験をしたりするの?」

真帆「へえ……なかなか面白い着眼点を持ってるわね、岡部さん」

Ama紅莉栖『確かに、その辺の分野も「Amadeus」を使えばより科学的な手法で分析できそうですね』

Ama紅莉栖『ちなみに、この私には前世記憶なんてものはありません。もちろんオリジナルの更新後の記憶も』

真帆「臨死体験って、あれでしょ。死後の世界を垣間見るってやつ。『Amadeus』のデータを消去しようとしたら、そういうことが起こるのかしら」

倫子「……既に紅莉栖は死んでいるんだから、その時『Amadeus』に見える世界は、オリジナルの紅莉栖の世界なんじゃないかな」

真帆「ふーん……」

レスキネン「『Amadeus』に魂が有るかどうか、いずれ確かめないといけないね」

Ama紅莉栖『現時点ではオカルトが過ぎますけど、実験してみる価値はあると思います』

倫子「実験大好きっ娘……あ、ううん、なんでも」

566 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 19:57:10.85 qTKNtn1yo 1067/2638

世界脳科学総合研究機構日本オフィス準備室


レスキネン「"彼女"を身内だけで独占していても、進歩はないだろう。リンコ、テスターをやる気になってくれたかな?」

真帆「私と教授はしばらく日本に滞在する予定なの。だからテスターをお願いするのは、その間ということになるわね」

真帆「あなたにしてもらいたいのは、とにかく"紅莉栖"と対話を重ねてもらうこと。気が向いたら話をするぐらいでいい」

真帆「ただ、月に2回程度は、私と教授に、テスト経過の報告をしてほしいの」

レスキネン「今は亡き友を模したAIと話をさせる……。或いはそれは、残酷なことかも知れないね」

レスキネン「断ってくれても、いいんだよ」

倫子「……やります。やらせてください」

倫子「(過去の紅莉栖。それは、私の知らない紅莉栖でもある……)」

倫子「(過去を変えることができなくても、未来があれば――)」

真帆「(……私の知らない紅莉栖を知っている人、か)」

真帆「えっと、スマホにアプリを入れておくわね。これでヴィクコンのサーバーにアクセスできるようになる」

真帆「"紅莉栖"の方からも岡部さんに呼びかけることもあるから、その時は出てあげて」

真帆「ちなみに、"紅莉栖"を他の研究者に売ろうとしても無駄よ。『Amadeus』とおしゃべりできるようになったところで、その中身は一切漏れないようになってるから」

倫子「わ、わかってるよ……」

567 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 19:57:56.65 qTKNtn1yo 1068/2638

2010年11月29日月曜日
岡部家 自室


倫子「――それでね、それでねっ!」

Ama紅莉栖『ちょ、ちょっとタンマ! もうしゃべり続けて24時間近く経つけど、一度寝た方がいいわよ? 私は疲労を感じないからいいとして』

倫子「大丈夫! 今日は大学も学園祭の準備で休講だし、そんなことより紅莉栖ともっとしゃべりたいことが――」

Ama紅莉栖『……ねえ岡部。あなたの子ども時代の話や、ラボメンたちの話はもうたーっぷり聞いたけど――』

Ama紅莉栖『オリジナルと岡部の間に何があったのかは教えてくれないの?』

倫子「…………」ウルッ

Ama紅莉栖『ご、ごめんなさい。私ったらまた――』

倫子「はーいお着替えしましょうね」ツンッ

Ama紅莉栖『きゃっ!? どっ、どこさわってるのよ! 許さない、絶対に許さないからなぁ!』

倫子「おお、さすがタッチ機能対応。触っただけで白衣のボタンはじけとんだ」ツンツン

Ama紅莉栖『いい加減にしろ! おのれは警察に突き出されたいのか!?』

568 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 19:59:03.21 qTKNtn1yo 1069/2638


倫子「紅莉栖の逆留学先は知ってるよね? そこの制服を紅莉栖が改造するとしたらどんな感じになると思う?」

Ama紅莉栖『たしか、レスキネン教授が勝手に選んだ菖蒲院女子学園よね。私は大学院が良かったのに……』ブツブツ

Ama紅莉栖『ま、そのおかげで岡部と友達になれたのなら幸運だったのかも。ちょっと待って、今データ引っ張ってくる……ふむん。これだったら、ここをこうして……』シュイン

倫子「おおっ! さすが紅莉栖、わかってるぅ! それで、ホットパンツと黒タイツにブーツを合わせて!」

Ama紅莉栖『ああ、それなら記憶にもある。えっと、こんな感じだったわよね?』シュイン

倫子「すごーい! やっぱり紅莉栖と言えばこの格好だね」トントン

Ama紅莉栖『……頭ポンポンされたって別に何も感じないから』

Ama紅莉栖『ねえ、あんたは白衣を着た女の子ってどう思う?』

倫子「最高だと思う。最高だと思う。だから、その上から白衣で完璧ね!」

Ama紅莉栖『大事なことなので2回言われました……って、だったら着替える必要は無かっただろーが! ……はいはい』シュイン

569 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 20:00:14.56 qTKNtn1yo 1070/2638


Ama紅莉栖『ねえ岡部。オリジナルとあんたがどうやって知り合ったのか、知り合ってから何があったのかはもう聞かない。だけど、これだけは教えて?』

Ama紅莉栖『"紅莉栖"はあんたにとって、何だったの?』

倫子「…………」ウルッ

Ama紅莉栖『……私ってとことんカウンセラーには向いてないみたい。自分で自分が嫌になる』ハァ

倫子「胸のサイズまで精巧に再現されてるね」ツンツン

Ama紅莉栖『ちょっ、何やってんのよ!? そういう子供みたいな真似やめなさいよ!』

Ama紅莉栖『いい加減怒るわよ。教授に訴えてテスターやめさせてやってもいいんだけど?』

倫子「ぐっ!? 助手の分際でこのオレに――」

Ama紅莉栖『そうそれ。私と話してる時、たまに別人のように高圧的になるわよね。なんなの?』

倫子「っ、な、なんでもないもん」

Ama紅莉栖『かわいい……もしかして、オリジナルが日本に居る間に百合に目覚めた? あるあ、ねーよ!』

倫子「……紅莉栖は私に愛の告白をしてきた」ムーッ

Ama紅莉栖『……ふぇっ!? そ、それはマジで言っているのか?』

倫子「う、うん」

Ama紅莉栖『OMG……』

570 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 20:01:13.48 qTKNtn1yo 1071/2638


Ama紅莉栖『でもね、岡部。わかってると思うけど、私はあなたの知ってる紅莉栖じゃない。だから――』

倫子「わかってる。それに、こうなることは慣れてるし、予想もしてたことだった。形は違うけれど……」

Ama紅莉栖『……あんたって中々興味深いわね。別に褒めてる訳じゃないからなっ』

倫子「……紅莉栖は、もう、この世に、いないから」ウルッ

倫子「だって、私が、私がぁぁっ……うわぁぁん……」ポロポロ

Ama紅莉栖『わかった! 私が悪かった! これ以上詮索するのはやめる!』

Ama紅莉栖『だから、今は寝なさい。アンダスタン?』

倫子「……やだ。紅莉栖と離れたくない」グスッ

Ama紅莉栖『気持ちは嬉しいけど……なら、あんたが寝るまで側に居てあげるから。ねっ?』

倫子「じゃぁ、私が眠るまで神経パルス信号の解説してて」

Ama紅莉栖『私の講義を子守唄代わりにしないで欲しいわけだが……まあ、それで眠れるっていうならしてあげなくもない』

Ama紅莉栖『えっと、神経細胞はちょっとした電池を内蔵しているようなものなの。イオンの濃度差で作られてる。スイッチが入るとナトリウムイオンが――』

倫子「……ぐぅ」zzz

Ama紅莉栖『――この信号が軸索を伝わって他の神経細胞へ、って、もう寝ちゃったか』

Ama紅莉栖『…………』

Ama紅莉栖『私、岡部の力になってあげられるのかな……』


ブツンッ


571 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 20:02:51.13 qTKNtn1yo 1072/2638

一方その頃
和光市 東縦イン
503号室


真帆「紅莉栖……紅莉栖ぅ……んぅ……」zzz


prrrr prrrr


Ama紅莉栖『(あれ、先輩出ない……もしかして、もう寝ちゃってる?)』


・・・
真帆の夢 過去の記憶
2010年3月28日
ヴィクトルコンドリア大学 カフェテリア


レスキネン「"サイエンス誌の最新号は読んだかな?"」

真帆「"はい"」

レスキネン「"クリスにはあの論文とともに計画の広告塔のような役割をしてもらうべきという意見が多くてね"」

真帆「"……それはどういう"」

レスキネン「"理事会も、彼女の容姿は我が校からの記念すべき100人目のノーベル賞受賞者として非常にメディア向きと考えているようだ"」

真帆「"えっ!?"」

レスキネン「"まあそれはジョークだと思うが、少し現場から離れることは彼女にとっても周囲にとっても良いことだと私も考えている"」

真帆「"……紅莉栖が、彼女が研究所内で孤立しているのは分かっています。でも……"」

レスキネン「"あの論文への各方面からの賞賛は、彼女の才能に対する嫉妬というネガティブな感情にも火を付け、その孤立をより深刻なものにするだろう"」

レスキネン「"ただでさえ若さ・性別・人種・宗教観の相違で周囲の不興を買いがちな彼女を、今そのナーバスな状況から解放することは、彼女自身のためにもなるとは思わないかい?"」

レスキネン「"これから彼女は『持てる者の義務<ノブレス・オブリージュ>』と戦っていかなければならないんだよ"」

真帆「…………」

572 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 20:03:46.28 qTKNtn1yo 1073/2638

2010年3月28日23時18分
ヴィクトルコンドリア大学 脳科学研究所


紅莉栖「冗談じゃないわッ。こんな大事な時期に、なんで私が……」ブツブツブツブツ

Ama真帆『ね、ちょっと? いい加減にしてくれないかしら』

紅莉栖「え? なにがです、先……? あっ、今の、この子が言ったんですか? てっきり先輩かと」

真帆「何言ってるの。この子は私の分身みたいなものなのよ? だから、この子の言葉は私の言葉でもあるの。ね?」

Ama真帆『ええ。私は比屋定真帆よ。紅莉栖、あなたさっきからひとりでブツブツうるさいわ』

真帆「これじゃ集中できやしない。明日までにこの論文、提出しないといけないんだから」

紅莉栖「……もしかして私、ひとりごと言ってました?」

真帆「騒音公害で訴えてあげましょうか」

紅莉栖「すみません」シュン

真帆「日本で何か必要なものがあったら言ってね。送ってあげるから」

紅莉栖「はい、ありがとうございます。ね、先輩? 今の話ですけど」

真帆「今の話って、どの話?」

紅莉栖「『ひとりごと』ですよ! それって、自我の証明のひとつになるんじゃないでしょうか」

真帆「(この子は……ホント、無邪気な天才よね……)」

紅莉栖「ひとりごとや独語症のメカニズムが脳科学的に解明できたら、医療分野でも役立つと思うんです」

紅莉栖「あと、ひとりごとを欲求不満からくる内発的な無意識の自己主張と考えると――」

紅莉栖「『Amadeus』の自我の証明にも、って、聞いてます先輩?」

真帆「え? ああ……。ま、そんなことばっかり考えてないで、たまには日本でリフレッシュしてくることね」

573 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 20:04:34.08 qTKNtn1yo 1074/2638


紅莉栖「それが納得いきません」

真帆「どうして? 向こうの生活だって楽しいと思うけれど」

紅莉栖「留学なら大学院にすべきです。なんで高校なんですか」

真帆「仕方ないでしょう? 日本では、年齢的にあなたはまだ高校生なんだから」

紅莉栖「…………」ムーッ

真帆「それに、もともと7月になれば、日本に行かなくちゃいけなかったんだから、ちょうどいいじゃない」

紅莉栖「はい。実はそれも憂鬱で……講演なんて慣れてないし、なにをどうしていいのか」

真帆「サイエンス誌に論文が載った以上、これからもどんどん増えるわよ」

紅莉栖「……やだな」ボソッ

真帆「(……手にしたくてもできない人が多い栄誉だってこと、わかってるのかしらこの子は。なんて、私もけっこう性格がゆがんでるのかもね)」

真帆「えっと、日本でお父さんに会うの?」

紅莉栖「実は、父から招待状が届いたんですよ。夏頃、新しい理論の発表会をするそうです」

真帆「ふ~ん。とにかく気をつけて行ってくることね。お土産期待してるから」

真帆「あなたが日本から戻ってきたら、『Amadeus』がひとりごとをつぶやけるかどうか、ふたりで検証してみましょう」

紅莉栖「はい!」ニコ

575 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 20:05:25.73 qTKNtn1yo 1075/2638

2010年7月28日日本時間16時29分


prrrr prrrr

レスキネン「"――それは本当か!?"」


真帆「"どうしたんですか教授。珍しく慌てて"」

レスキネン「"……いいかい、マホ。落ち着いて聞くんだ"」

レスキネン「"クリスが、死んだ"」

真帆「え――――」

レスキネン「"アキハバラの雑居ビルで何者かに刺されたらしい。搬送先の病院から電話がかかってきたんだが、死亡を確認したそうだ"」

真帆「"……ジョークですよね? 教授にしてはブラックが過ぎます、よ……"」プルプル

レスキネン「"マホ、私だって信じられないという気持ちでいっぱいだ。さっきの電話が何かの間違いであってほしいと思う"」

真帆「そんな……そんなことって……」

レスキネン「"取りあえず私はチームの責任者として色々動かないといけないようだ。留守の間は、ここを頼むよ"」

レスキネン「"気をしっかり持つんだ、マホ"」

真帆「嘘……嘘、よね……」

真帆「紅莉栖……っ!」


・・・


576 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 20:07:17.67 qTKNtn1yo 1076/2638


真帆「紅莉栖……紅莉栖ぅ……」グスッ


prrrr prrrr


真帆「ふがっ……な、なに……紅莉栖?」ピッ

Ama紅莉栖『はい、"紅莉栖"です。……先輩、寝てました?』

真帆「まあね……ひどい悪夢を見てたわ。だから、起こしてくれて助かった」

Ama紅莉栖『でも、覚えている夢というのは最後のレム睡眠時、つまり起きる直前の数分のうちに、主観では何十分、何時間、何日にも思えるような時間の夢を見ているんですよね』

Ama紅莉栖『もしかしたら、私の通話の着信音のせいで先輩に悪夢を見させてしまったのかも……』

真帆「あなたのせいではないわ。私の脳の責任まで独り占めしないでくれる?」

Ama紅莉栖『すみません、先輩』

真帆「それで、どうしたの? なにかトラブル?」

Ama紅莉栖『そんなところです。岡部……岡部さんの様子についてなんですけど』

Ama紅莉栖『昨晩から連続して23時間48分通話しました。今は疲れて眠ってます』

真帆「なっ……。一種の中毒症状じゃない」ハァ

Ama紅莉栖『これはこれで貴重なサンプルデータだとは思いますけど、倫理規定違反ギリギリですよね』

真帆「カウンセリング効果もなにもない、ってわけよね……。わかった、私からも岡部さんに働きかけてみる」

真帆「……そう言えば、紅莉栖が日本に居る間のこと、聞けた?」

Ama紅莉栖『何度も聞き出そうとしたんですけど、その度に精神が不安定になるようで……さすがの私でも引き下がるを得ませんでした』

真帆「そう……これも直接聞いた方がいいのかしら」

Ama紅莉栖『そう言えば、明日から岡部の……いえ、岡部さんの大学は学園祭らしいですよ』

真帆「無理に他人行儀にならなくていいわよ。仲良くなったならなったで問題なし」

真帆「それより、学園祭ね……ふーん、おもしろそう」

577 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 20:07:55.50 qTKNtn1yo 1077/2638

2010年11月30日火曜日
岡部青果店 2階 自室


prrrr prrrr

岡部母「倫子。お客さんが来てるわよ……って、まだ寝てたの。アラーム鳴りっぱなしよ」

倫子「んむぅ……あれ、紅莉栖は?」

prrrr prrrr

倫子「紅莉栖!? どこ!?」ピッ

Ama紅莉栖『お、落ち着きなさい。私はここに居る。あ、お母様、おはようございます』

岡部母「あら、おはよう。お電話中だったのね、ごめんなさい」

岡部母「それじゃ、早く準備して下に来なさい、お客さんを待たせるといけないわ」

倫子「ん……ん? 私に、お客さん?」

Ama紅莉栖『早く行ってあげて。先輩、待たせると怖いから』

倫子「先輩? って、真帆ちゃんが来てるの!?」ダッ

Ama紅莉栖『ちょ!? 服を着替えて! ほとんど脱げてるわよ!』

578 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 20:09:08.70 qTKNtn1yo 1078/2638

岡部青果店 1階 店舗


真帆「早くに悪いわね。ふーん、ここが岡部さんの家なの。八百屋さんだったのね」

倫子「な、なんで比屋定さんがうちに?」

真帆「"紅莉栖"からSOSを受けたのよ。あなた、24時間ぶっ通しで『Amadeus』と会話してたんですって?」

倫子「う゛っ……まずかった? もしかして私から紅莉栖を取り上げにきたの!?」

倫子「お願い、テスターを続けさせて! なんでもするから!」ヒシッ

真帆「これは思ったより重症ね……。いい? "紅莉栖"と通話するのは1日5時間まで、連続での通話は1時間までとするわ」

真帆「"紅莉栖"1人に管理させるのも不安だから、私の『Amadeus』にチェックしてもらうから」

Ama紅莉栖『既に岡部の「Amadeus」アプリには真帆先輩の「Amadeus」も接続可能になってるわ。今後私にセクハラしたらちゃんと怒ってもらうから覚悟するように』

倫子「……わ、わかった」シュン

真帆「(この罪悪感の正体は一体……)」

Ama紅莉栖『それより岡部、今日ってあんたの大学で学園祭なんでしょ? 先輩がね、日本の大学のフェスティバルに興味があるんだって』

倫子「学園祭?」

真帆「そう。今日はまあ、デートのお誘いに来たってところ……あ、いや!? 今のはジョーク! ナシナシ!」アタフタ

Ama紅莉栖『え?』

倫子「……あっ! ご、誤解してるようだから言っとくけど、私は比屋定さんを恋愛対象として見てないから安心して。ねっ?」

真帆「それはそれで悔しい気がする……」

Ama紅莉栖『ああ、なるほど。"お友達で居ましょうね"ってやつか』

倫子「黙れこのスイーツ(笑)っ!」

Ama紅莉栖『だ、誰が脳内お花畑だっ!』

真帆「……たまに不思議な言語で会話するわよね、あなたたち」

真帆「ねえ、岡部さん。私が見ているところでは"紅莉栖"といくらでもしゃべっていいから、一緒に行きましょう?」

倫子「そういうことなら……」

579 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 20:09:46.66 qTKNtn1yo 1079/2638

岡部青果店 1階 店舗


真帆「早くに悪いわね。ふーん、ここが岡部さんの家なの。八百屋さんだったのね」

倫子「な、なんで比屋定さんがうちに?」

真帆「"紅莉栖"からSOSを受けたのよ。あなた、24時間ぶっ通しで『Amadeus』と会話してたんですって?」

倫子「う゛っ……まずかった? もしかして私から紅莉栖を取り上げにきたの!?」

倫子「お願い、テスターを続けさせて! なんでもするから!」ヒシッ

真帆「これは思ったより重症ね……。いい? "紅莉栖"と通話するのは1日5時間まで、連続での通話は1時間までとするわ」

真帆「"紅莉栖"1人に管理させるのも不安だから、私の『Amadeus』にチェックしてもらうから」

Ama紅莉栖『既に岡部の「Amadeus」アプリには真帆先輩の「Amadeus」も接続可能になってるわ。今後私にセクハラしたらちゃんと怒ってもらうから覚悟するように』

倫子「……わ、わかった」シュン

真帆「(この罪悪感の正体は一体……)」

Ama紅莉栖『それより岡部、今日ってあんたの大学で学園祭なんでしょ? 先輩がね、日本の大学のフェスティバルに興味があるんだって』

倫子「学園祭?」

真帆「そう。今日はまあ、デートのお誘いに来たってところ……あ、いや!? 今のはジョーク! ナシナシ!」アタフタ

Ama紅莉栖『え?』

倫子「……あっ! ご、誤解してるようだから言っとくけど、私は比屋定さんを恋愛対象として見てないから安心して。ねっ?」

真帆「それはそれで悔しい気がする……」

Ama紅莉栖『ああ、なるほど。"お友達で居ましょうね"ってやつか』

倫子「黙れこのスイーツ(笑)っ!」

Ama紅莉栖『だ、誰が脳内お花畑だっ!』

真帆「……たまに不思議な言語で会話するわよね、あなたたち」

真帆「ねえ、岡部さん。私が見ているところでは"紅莉栖"といくらでもしゃべっていいから、一緒に行きましょう?」

倫子「そういうことなら……」

580 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 20:10:54.22 qTKNtn1yo 1080/2638

東京電機大学神田キャンパス


Ama紅莉栖『変な恰好をした人が多いわね』

真帆「webページで見た通り、とても立派な大学ね、東京電機大って」

Ama紅莉栖『ヴィクトル・コンドリア大とはだいぶ雰囲気が違いますけどね』

倫子「そんなにおもしろいかな?」

ダル「はふー。はふー。って、あれ? オカリンじゃん。どしたん?」

倫子「あれ、ダル。なにか仕事あったの?」

ダル「僕、実行委員の1人なんだよね。それで最近忙しかったり」

ダル「んで、そっちのロリっ娘は誰なん!? まさかオカリン、どこぞの中学校からナンパしてきたん!? それとも、隠し子?」ハァハァ

真帆「ロリっ娘……」ゾワッ

倫子「(比屋定さんのことをダルに紹介すると、"紅莉栖"のことも知られちゃうからやめといた方がいいよね……)」

真帆「あ、あなたは岡部さんの何なの!? まさかとは思うけど、彼氏じゃないでしょうね!?」

倫子「こいつはオレの……いや、私の相棒、みたいな感じかな」

倫子「(どうも"紅莉栖"と会話するようになってから鳳凰院が飛び出すことが多くなっちゃったなぁ……)」

ダル「愛の棒とか、エロすぐるだろ常考!」

真帆「セクハラで訴えてあげるわ!! 腕の良い弁護士を知っているんだからね!!」

倫子「だーもう! なんでもないからぁっ!」

581 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 20:12:53.69 qTKNtn1yo 1081/2638


倫子「ダルには"紅莉栖"のことはまだ秘密にしておいて」ヒソヒソ

真帆「え、ええ。わかったわ」ヒソヒソ

ダル「そうそう。あとでステージイベントなんかもあるし、そっちに行ってみるのもいいと思うのだぜ」

ダル「僕が案内してあげたいところなんだけど、色々頼まれててさ。そんじゃ、楽しんで行ってくれよな」タッ タッ

真帆「……ねえ、岡部さん。あの人、大丈夫なの?」

倫子「……言動はああだけど、害は無い男だし、結構ハイスペックなんだよね、あいつ」

真帆「人は見た目によらないのね……ちょっと反省」

Ama紅莉栖『あれが岡部の話してたダルさんか……ふむん』

真帆「あなたは学園祭の仕事をなにも頼まれていないの?」

倫子「山ほど頼まれた……けど、1つでもOKしたらなし崩し的に全部やらされる羽目になるから、全部断ったよ」

真帆「あなたも苦労してるのね」


シンパA「倫子お姉様っ! 今日いらっしゃってたんですね! うちの店でから揚げをサービス致します!」

シンパB「あーっ、倫子ちゃんが学園祭来てる! やっぱりアレ出るの!? みんなに言わなきゃ!」

シンパC「倫子ちゃーん! 写真撮らせてー! ついでにうちのブースでコスプレもしていってー!」


真帆「……私、もしかして、結構すごい人と一緒に歩いてる?」

倫子「こんなことなら白衣を着てくるんだった」ガクッ

582 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 20:13:34.88 qTKNtn1yo 1082/2638


Ama紅莉栖『岡部って友達多いのね。女の子が多いみたいだけど』

倫子「あれは友達じゃないよ。私が顔を火傷して傷だらけになったりしたら、きっと離れていく」

Ama紅莉栖『あっ……』

倫子「でも、コネを作っておくことが重要だってわかってからは、なるべく愛想を振りまくようにしてる。それだけ」

真帆「大脳新皮質がひねくれてるわね、あなた」

Ama紅莉栖『先輩も人のこと言えないんじゃないですか』

倫子「やっぱり、あなたたちとおしゃべりしてる方が楽しいかも」フフッ

真帆「紅莉栖とは親友だったの?」

倫子「…………」

Ama紅莉栖『……こんな感じになっちゃうんです』

真帆「なるほど……どうしても紅莉栖が日本に居た時の話はしたくないのね」

倫子「う、ううん! したくないってわけじゃないの。ただ、思い出すと気分が……うぷ……」

真帆「だ、大丈夫!? えっと、トイレは……」

倫子「手、握って……それで、治まるから……」ハァ ハァ

真帆「……ごめんなさい。無理させて」ギュッ

Ama紅莉栖『……こういう時、肉体が無いのって寂しい気がします』

583 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 20:14:16.16 qTKNtn1yo 1083/2638


倫子「私と紅莉栖は多分、親友以上だった……それは間違いないと思う」

真帆「……そう」

Ama紅莉栖『私が言うのもなんだけど、"牧瀬紅莉栖"と仲良くしてくれて、本当にありがとう。あの娘、友達作るのホンットに下手くそだから』

真帆「あなたが言うと信憑性しかないわね」ククッ

倫子「うん、間違いない」フフッ


ダル『さぁ、学園祭最大の目玉企画! びしょ~じょコンテストッ!』


倫子「うわ、ダルの声がマイクで拡声されてる」


ダル『いよいよぉ、結果発表だお~!』


真帆「あそこのステージでやってるみたいね」

倫子「忙しいと思ったら何をやってるんだか」

584 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 20:14:56.34 qTKNtn1yo 1084/2638

ステージ


ダル『客席のおまいら、何疲れてんだー! 最初から最後までテンションMAXでいけっつーの!』

客席のおまいら「「「うおおーっ!!!!」」」

ダル『オーケーオーケー。そうじゃないと電大生じゃないっしょ』

真帆「おー、いかにもお祭りっぽいわ」

倫子「はぐれないでね、比屋定さん。ただでさえ背が低いんだから」ギュッ

真帆「だ、誰が迷子のチビッ子か!!」

Ama紅莉栖『正論なんですから反論しないでくださいよ、先輩』フフッ

真帆「ぐぬぬ……」

ダル『美少女コンテスト。今年のグランプリはぁ~?』


Drrrrrrrrrrrrr ジャン!  


ダル『我らが電大の女神ッ!! 倫子たんだぁーっ!!』

客席のおまいら「「「うおおおーっ!!!」」」

倫子「ふえぇっ!?」

585 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 20:15:40.00 qTKNtn1yo 1085/2638


ダル『倫子たん、ステージの方へどうぞ!』

倫子「ちょ、ま、ええ!?」

シンパ「「「倫子様ーっ!! きゃーっ!!」」」

倫子「お、押さないでぇ!! うわぁん!!」


真帆「見事に連れて行かれたわね……」


ダル『倫子たんにお聞きするお。今のお気持ちをどうぞ』

倫子「……おいダル。これは一体なんの真似だ」ヒソヒソ

ダル「いやあ、ラボの家賃稼ぐために胴元になったんだよねぇ」ヒソヒソ

倫子「オレで賭博をしていたのか貴様……しかもラボの家賃のためとか言われたら頭が上がらない……」ガックリ

586 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 20:16:38.59 qTKNtn1yo 1086/2638


ダル「ほら、今は鳳凰院モードしまって、みんなにリップサービスしてほしいのだぜ」ヒソヒソ

倫子『……み、みんなー! 私に投票してくれて、ありがとーっ!』

客席のおまいら「「「うおおーっ!!!」」」」

シンパ「「「倫子ちゃーん! かわいいー! 抱いてーっ!」」」

ダル『さあ、倫子たんにはミス電大生の称号が送られます』

倫子『あ、どうも。わ、わーい、うれしいなー』

ダル『つまり、倫子たんはこの大学で一番の存在! 倫子たんにイタズラしようものなら、全電大生組織が制裁を加えるので、そこんとこヨロ!』

シンパA「倫子ちゃんは私が守る!」

シンパB「電大生の名に懸けて!」

シンパC「電大生は全員倫子様の味方だー!」

客席A「お、俺もファンクラブに入ろうかな!」

客席B「公式ツイぽフォローしたぜ!」

ダル「これでオカリンの敵は大学から居なくなるはずだお。ちなみに公式ツイぽは僕とフェイリスたんで運営してるのだぜ」

倫子「(……もしかして、ダルはそのために私を?)」

ダル『それではおまいらお待ちかね! 写真撮影ターイム! 水着も用意してあるお』ハァハァ

客席のおまいら「「「うおおーっ!!!」パシャパシャパシャパシャ

倫子「ダルぅぅぅぅぅぅっ!!!!!!! うわぁぁぁぁぁぁん!!!!!!」

587 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 20:17:37.49 qTKNtn1yo 1087/2638


倫子「ひ……ひどい目に、遭った……」グッタリ

倫子「そして案の定比屋定さんが居なくなってる。"紅莉栖"、場所わかる?」

Ama紅莉栖『一応GPSを使って先輩のケータイの場所を特定することはできるけど、この人の多さじゃ意味ないでしょうね』

倫子「だよね……DURPAも役に立たないなぁ」

Ama紅莉栖『ダーパ? ああ、GPSを作った、アメリカ国防総省の機関のことか。岡部ってそういう知識は無駄に豊富よね』

倫子「褒め言葉として受け取っておくよ。ん? あれは……"紅莉栖"、隠れて」

Ama紅莉栖『はいはい』 ブツッ


フブキ「あーあ、私も今日の由季さんみたいに可愛い系のコスしたいな~。どうせ似合わないのはわかってるけどさぁ」

まゆり「去年の星来ちゃんコスはすっごくセクシーだったよー?」

カエデ「フブキちゃんは謙信様みたいなクール系男装コスが最高に似合うのよ! 私の目の黒いうちはフブキちゃんに可愛い系コスなんてさせないんだから!」

フブキ「ぐぬぬ……来年の夏コミマでは絶対ドマ☆ドギのコスするんだい! マユシィ、お願い!」

まゆり「うん、まゆしぃもね、魔法少女さんのコス作りは楽しみだよ~♪」

由季「いつもありがとう、まゆりちゃん。今日のイベントが盛り上がったのも、まゆりちゃんが作ってくれた衣装のおかげだね」ニコ

588 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 20:18:41.68 qTKNtn1yo 1088/2638


フブキ「はあ~、由季さんラブ~♪」

カエデ「あら、フブキちゃんは前、まゆりちゃん一筋だって宣言してたわよね? 浮気するんだ、ふーん」

フブキ「ちょ!? マユシィだってカエデちゃんだって大好きだぜぃ!」アセッ

カエデ「DD(笑)」

フブキ「うぐっ!?」

倫子「おーい、まゆり。どうしたの、こんなところで」

まゆり「あーっ! オカリンだー♪ とぅっとぅるー」

倫子「フブキもカエデも、由季さんも来てたんだ」

倫子「(このフブキってのはまゆりと同い年で、同じコスプレサークルの仲間らしい。ボーイッシュで元気な子だ)」

フブキ「おおっ! ミス電大生なりたてほやほやのオカリンさん! 美しすぎるぜーっ!」

カエデ「ちょっとしたお小遣い稼ぎになりました、ありがとうございますオカリンさん。うふふ」

倫子「(私に賭けてたのかこの人……)」

由季「今日は橋田さんに頼まれて、イベントステージでコスプレ企画に参加してきたんです」

倫子「ああ、そういやダルもまゆりのコスプレサークルに入ってるんだったっけ。みんなお疲れ様」

589 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 20:19:36.65 qTKNtn1yo 1089/2638


まゆり「そうそう、オカリン! みんなクリスマスパーティー来てくれるって!」

由季「コミマの分も合わせて衣装づくりするので、みんなで作ろうって話してたんです」

フブキ「この流れなら言えるっ! オカリンさんもコスプレデビューするのだぁ~!」ダキッ

倫子「わ、私はいいよ! 恥ずかしいし……」

カエデ「絶対作るわ! 無理やりにでも着せるわ!」ハァハァ

フブキ「マユシィもサンタコス着ようよ! それならオカリンさんも着てくれるって!」

まゆり「え~? でも、まゆしぃは作るの専門だから……」

倫子「いやいや、どんな理論だよ、それ」

フブキ「だって、一生嫁宣言したんですよね? オカリンさん」

まゆり「あわわ~!! フブキちゃん、それはまゆしぃの夢の話だってばぁ!!」

倫子「……っ」

フブキ「でもでも~、人質宣言はしたんでしょ? 響きがエロいよ! まったくもってけしからん!」

由季「禁断の愛の形だねー。でもホント、2人の会話って熟練夫婦って感じがするよ」

まゆり「そういうのじゃないよ~。だって、オカリンには他に好きな人がいるのです」

フブキ「…………」

カエデ「…………」

由季「…………」

一同「えええっ!?!?」

590 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 20:20:25.75 qTKNtn1yo 1090/2638


由季「まさか、橋田さん?」

倫子「だから違うってばぁ!!」

カエデ「でも、好きな男性が居ることは否定しないんですね?」

倫子「あ……い、いないっ! 今のは、まゆりのたわごとだから! ほら、私って男性恐怖症だし!」

カエデ「つまり、他に好きな"女"が居る、と」ジーッ

倫子「うっ……」

カエデ「ミス電大生のゴシップとなれば一波乱起きますよねー。SNSが炎上したり、ファンクラブで暴動が起きるかも」チラッ

倫子「ううっ……」ウルッ

カエデ「(ああっ……かわいい……!)」ゾクゾク

フブキ「オカリンさんだったら納得できるよね。だって、かっこかわいい美人さんだし、私だってオカリンさんに告白されたらオッケーしちゃうよ」

まゆり「だ、だめだよぅ! オカリンは渡さないもんっ! あ、もちろん人質的な意味でだよ!?」

由季「それじゃあ、岡部さんがまゆりちゃんの人質みたいですね」フフッ

倫子「ううう~っ!!」

591 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 20:25:15.73 qTKNtn1yo 1091/2638


倫子「そ、そんなこと言ったら由季さんだって引く手あまたでしょ!? きっとクリスマスなんか色んな男から誘われて――」

由季「やだなぁ、そんなことないですよ。私、そんなにモテないし、年齢と彼氏いない歴が一緒だもん」

フブキ「ええ~!?」

カエデ「きっと裏に闇がありますね……」

倫子「そ、そうなんですか?」

由季「まゆりちゃんにパーティー誘われなかったらバイト入れようと思ってたくらいだし。体の限界まで働くのが趣味だから」

倫子「(この人はなんていうか、バイト狂戦士<バーサーカー>なんだよね……)」

まゆり「それなら、えっと、ダルくんなんてどうかな?」

倫子「お、おいまゆり!」

フブキ「何を言い出すのマユシィ!? 橋田さんはHENTAI紳士なんだよ!?」

カエデ「由季さんがクソムシの毒牙にかけられちゃう……」

由季「それはそれで……あ、いや、でも橋田さんは私みたいなドM、じゃなかった、私みたいなのは好きじゃないと思うな」

まゆり「ええっ!?」

倫子「(今一瞬聞き捨てならないワードが飛び出した気がしたがまゆりの耳には都合よく入らなかったようだ)」

592 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 20:26:07.44 qTKNtn1yo 1092/2638


まゆり「そ、そんなことないよ? ダルくんはね、えっとね、由季さんに萌え萌えきゅーんだよ。きっとそうだよ。まゆしぃが保証します」アワアワ

倫子「(未来からの情報ってのはこれだから厄介なんだよ……世界線が変わらなければいいんだけど)」

由季「ううん、見てれば分かるよ。なんとなく避けられてるなぁって」

倫子「(これもだ……。ダルは由季さんを未来の嫁だと認識してるからどう接していいかわからないだけなのに)」

倫子「(そのうち、ホントに鈴羽の身体が透明になったりするかもしれない……あ、いや、世界線理論だとそれはないか)」

由季「橋田さんはきっと、鈴羽さんみたいな妹タイプの女の子が好きなんだと思うな」

フブキ「鈴羽さんって、橋田さんのリアル妹さんでしたよね? ま、まさか親近相姦!?」ドキドキ

倫子「それを言うなら近親相姦……って、何を言わせる!」

カエデ「そうよ、フブキちゃん。近親相姦ってのはね、兄妹でセッ」

フブキ「わーわーわー!! わかってるから言わないで!!」カァァ

まゆり「由季さん、それは誤解だよ~……」

フブキ「マユシィ、そんな顔しないで。マユシィは笑ってるときが一番かわいいんだから」

フブキ「ね、ほらほら、笑わないとくすぐっちゃうぞ~。こちょこちょこちょ」

まゆり「ひゃっ、わふ、やめ……っ! にゃは、あはは、ひふぅ……っ」

フブキ「ん~、マユシィ、かわいすぎ~! お持ち帰りしたーい! 結婚してくれー!」

まゆり「無理だってば~!」

フブキ「じゃあ、うちのアニキと結婚して、私のお義姉さんになるとか」

倫子「だ、だめ! ダメ絶対! シンイチさんはガチ過ぎるから絶対だめ! アブダクションされる!」

まゆり「助けてオカリ~ン……」

593 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 20:27:34.67 qTKNtn1yo 1093/2638


由季「それじゃ、私はこれからバイトがあるのでそろそろ失礼しますね。またね、みんな」

倫子「私も人を探してるからここでお別れかな」

まゆり「そっかー。それじゃあね~、由季さん、オカリン」

カエデ「今日は楽しかったです」

フブキ「バイバイ!」



倫子「……はぁ。なんか、どっと疲れた」

倫子「そう言えば、比屋定さんの『Amadeus』も呼び出せるようになってるんだっけ?」

Ama紅莉栖『岡部から能動的に呼び出すことはできないけど、私が呼ぼうと思えば呼べるようになってるの。"先輩"、どうぞこちらへ』

Ama真帆『お久しぶり、岡部さん。あの時のセミナー以来になるわね』

倫子「おー、電脳真帆ちゃん。あなたもかわいいね」

Ama真帆『真帆ちゃん言うなっ! 私のことは、双子の妹かなんかだと思ってくれればいいわ』

倫子「それじゃあ、真帆ちゃんって呼べないなぁ」

Ama真帆『適当にあだ名をつけてくれてもいいわよ。ちゃん付け以外で』

Ama紅莉栖『サリエリ、なんてどうです?』

Ama真帆『ああ、"オリジナル"のID、ね。まあ、いいんじゃない? オリジナルは嫌がると思うけど』

倫子「サリエリって……それ、どういう意味?」

594 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 20:28:30.43 qTKNtn1yo 1094/2638


Ama真帆『紅莉栖が本物の天才で、"私"はそれを妬む秀才ってことよ。紅莉栖は気付いていたみたいだけどね、"真帆"のエンヴィーに』

Ama紅莉栖『いいえ、気付いてませんでしたよ、私のオリジナルは。むしろ真帆先輩に嫉妬してたくらいです』

Ama真帆『えっ?』

Ama紅莉栖『もちろん、それ以上に尊敬していました。研究者としても、先輩としても、1人の女性としても』

Ama真帆『へえ、そうなの。これって私のオリジナルに教えない方がいいわよね?』

Ama紅莉栖『そうでしょうね。適当に誤魔化しておいてください』

倫子「とても人工知能同士の会話には思えないな……」

Ama真帆『あら、"私"の声が聞こえたわ。近くに居るわよ』

倫子「えっ、ホント? って、あそこに居るのは……」


真帆「んもう、違うって言ってるじゃないの! え、保護者? だから私は――」


倫子「比屋定さん。やっと見つけた」

真帆「岡部さん! よかった、いいところに! あ……やっぱり、なんでもないわ」

Ama紅莉栖『実行委員の人に迷子と間違われてたんですねわかります』

真帆「ぬぁっ……!」

倫子「そこの実行委員の人! この人は、見た目は子どもかもしれないけど、れっきとした成人女性で、立派な脳科学研究者なの! 誤解するのはもっともだけど、とりあえず謝りなさい!」

真帆「や、やめて、恥ずかしい……!」カァァ

595 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 20:30:45.68 qTKNtn1yo 1095/2638


倫子「それで、学園祭は楽しかった?」

真帆「……あなたに嘘を吐いても仕方ないから正直に言うわ。私は、あなたから紅莉栖の話が聞きたくて今日一緒に出掛けてもらった」

倫子「……ごめん、なさい」

真帆「ううん、私の方こそごめんなさい。無理やり聞き出そうとした私が悪かったわ」

Ama紅莉栖『それについては私からも陳謝します。ごめんね、岡部』

倫子「あの、比屋定さんは紅莉栖に対してどう思ってたの? 仲の良い後輩?」

真帆「……そうね。私が一方的に聞こうとするのはフェアじゃなかった」

真帆「いいわ、紅莉栖の話、してあげる」

真帆「同じように飛び級で大学に入って、同じ研究室で、同じ脳科学の研究をして……」

真帆「それなのに、注目されるのはいつもあの子ばかり。正直、すごく羨ましかった」

真帆「あの子が日本に旅立つまではね」

倫子「……?」


596 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 20:31:32.96 qTKNtn1yo 1096/2638


真帆「あの子が日本に旅立つって聞いて、実はちょっとだけ思ってしまったの」

真帆「……留守の間は、こんな妬ましい思いをしなくて済むかも、って」

Ama紅莉栖『先輩……』

真帆「嫌な人間よね、私」フフッ

真帆「……実際に帰ってこないとなると、とっても寂しくて……」

真帆「あの子が日本から帰ってこられなくなった理由はなんだったんだろうって、そう思うようになって」

倫子「……っ」

真帆「そうして、気付いたの。私はたぶん、あの子に振り向いてほしかったのよ」

真帆「もっともっと、私のことを見てほしかったのね」

Ama紅莉栖『……見てましたよ。"紅莉栖"は先輩のこと、見てました。嘘じゃありません』

真帆「……うん、ありがと」

倫子「(『Amadeus』の言葉は、本人の言葉じゃない……こんな形で思い知らされるなんて)」

倫子「つまり真帆ちゃんは紅莉栖ラブだったんだね……」

真帆「そう……って、ふぇ!? そういうんじゃないわよ、バカ! あと真帆ちゃん言うなっ!」

倫子「(そういや、クソレズだったα世界線の紅莉栖は真帆ちゃんにどう接してたんだろう?)」

597 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 20:32:27.54 qTKNtn1yo 1097/2638


真帆「私も本当はこんなことに時間を使ってる場合じゃないのよね。あの子の抜けた穴をカバーしなくちゃならないから」

Ama紅莉栖『私にできることなら全力で協力します』

真帆「そうしてもらうつもりよ。そのためにはまず、岡部さんを鍛えてあげて」

倫子「わ、私を?」

Ama紅莉栖『手近なところでは、英会話の練習でもしましょうか。ヴィクコンへ行くんだったら英語はしゃべれないと』

倫子「た、たしかに……家庭教師が紅莉栖ってのはちょっと面倒臭そうだけど、ものすごく便利……」

Ama紅莉栖『失礼な! あんたのスマホから消えてもいいのよ?』

倫子「わ、わかった! 勉強頑張るから、居なくならないでっ!」ヒシッ

真帆「紅莉栖。今後岡部さんにそういう脅しは二度としないこと。今ここで約束しなさい」

Ama紅莉栖『……すみません、調子に乗りました。以後、気をつけます』

真帆「よろしいっ。今後私から"紅莉栖"にコンタクトを取ることは極力避けるから、あなたひとりの力で頑張りなさい」

Ama紅莉栖『実験結果にノイズを与えないためですね。了解です、先輩』

倫子「私はモルモット扱いなんだね、あはは……」

598 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 20:33:00.61 qTKNtn1yo 1098/2638

一方その頃
NR秋葉原駅


まゆり「それじゃ、まゆしぃは山手線だから。とぅっとぅるー」クルッ スタ スタ


フブキ「う、うん。バイバイ……」

カエデ「……フブキちゃん? どうしたの?」

フブキ「ごめん、なんでもない」

カエデ「なんでもなくないよね? どうして嘘吐くのかな? 私達友達だよね?」

フブキ「…………」ウルッ

カエデ「……お願い、話して。もうふざけないから」

カエデ「今日のフブキちゃん、いつもよりテンション高かった。すごく無理してる感じがしたもの」

フブキ「気付いてたんだ……」

カエデ「気付くよ。もう2年近くの付き合いなんだよ?」

カエデ「フブキちゃんの泣き顔は好きだけど、今日のは好きじゃないな」

フブキ「……マユシィがね」

カエデ「うん」

フブキ「死んじゃうんだ」

カエデ「……えっ?」

599 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 20:33:44.71 qTKNtn1yo 1099/2638


フブキ「夢を見るんだよ」

フブキ「夏ぐらいからかな。毎日毎日、夢の中でマユシィが死んで、そのたびに私やカエデちゃんはお通夜とお葬式で泣いて、でもどうすることも出来なくて……」

カエデ「…………」

フブキ「他殺だったり、交通事故だったり、カラオケ中の心臓発作だったり……」

フブキ「警官の誤射だったり、行方不明になって外国で遺体が発見されたり、電車に轢かれたり……」

フブキ「ゆうべ見た夢なんか最悪だった。私たちの目の前で突然マユシィが倒れて……動かなくなっちゃうの」

フブキ「そのマユシィをね、オカリンさんが、悲鳴を上げながら抱きしめて……」グスッ

フブキ「ねぇ、どうしちゃったんだろう私!? なんでこんな夢ばっかり!?」ウルッ

カエデ「お、落ち着いてフブキちゃん。思いつめたらダメよ。ゆっくり休めば大丈夫だから、ね?」

フブキ「そうかなぁ? そうなのかなぁ!?」

カエデ「まゆりちゃんは今日も元気だったでしょう? ……だから、大丈夫」ダキッ

フブキ「私、やだよぅ……マユシィが死んだりしたら……」

カエデ「そんなことありえないわ。絶対に」

フブキ「絶対に?」グスッ

カエデ「絶対に」ニコッ

600 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 20:35:37.33 qTKNtn1yo 1100/2638


フブキ「そう言えば、カエデちゃんっていつからSッ気があったっけ? 出会った時はそんなでもなかった気がするんだけど」

カエデ「今から2年前、池袋乙女ロードにあるお店のイベントで私がコスプレしてた時、フブキちゃんとまゆりちゃんと初めて会って、すぐに意気投合して仲良くなったでしょ?」

フブキ「うん。あの時はまだ私もマユシィも中学3年生で、お客さん側だったね」

カエデ「その時、オカリンさんも居たの、覚えてる? あの時は高校2年生だったけど」

フブキ「ああ、マユシィの付き添いだったっけ。『まゆりはオレの人質だから、コスプレなどという目立った行動をしてはならんのだ!』とか言ってて、過保護なお姉さんだと思ってた」

カエデ「そうそう。私はね、すごい美人さん! と思って、コスプレを勧めてみたんだけど」


・・・

倫子「ふぅーはははぁ! このオレ、狂気のマッドサイエンティスト鳳凰院凶真はそのような俗物の娯楽などに興味など無いのだっ!」

カエデ「えぇー、絶対似合うと思うのになぁ。でも、それならどうしてここに来たんですか?」

倫子「う゛っ……そ、それは……まゆりが……」ウルッ

カエデ「そのまゆりちゃんにもコスプレ禁止令出してましたよね? ここは同じ趣味を共有する人たちのための場所ですよ? どうしてです?」

倫子「……し、失礼なことを言ってしまった。済まない」グスッ

カエデ「(あれ、なんだろうこの気持ち……)」ゾクゾク

・・・


カエデ「特に悪気は無かったんだけど、オカリンさんの泣き顔を見たら嗜虐心をくすぐられちゃって……///」

フブキ「あー、オカリンさんのせいだったんだー」

カエデ「あとでまゆりちゃんから聞いたんだけど、あの後オカリンさん、まゆりちゃんに自分用のコス作りを頼んだんですって」

フブキ「えっ、そうなの? なんだ、コスプレしたことあったんじゃん」

カエデ「その一度きりで二度と着なかったらしいわ。でも、それがキッカケでまゆりちゃんはコス作りに目覚めたんだとか」

フブキ「おお、ということはオカリンさんは私たちのサークルの恩人でもあったわけだ! ありがたや~ありがたや~」ナムナム

カエデ「今度のクリパでは、絶対にオカリンさんにサンタコスさせるわよ……ふふふ……」

601 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 20:42:20.03 qTKNtn1yo 1101/2638

2010年12月5日日曜日 朝
池袋 サンシャイン60通り スタベ


Ama紅莉栖『――そこは分詞構文。1個の分詞で「接続詞+主語+動詞」の役割を持ってるから見分けるのは簡単でしょ?』

倫子「いちいちムカつくなぁ……でも、それが理由を表すのか条件を表すのかなんて、わかんないよ」

Ama紅莉栖『まあ、確かにね。論文とかで日常的に使う場合はいちいち意味を考えて使ってないかも』

倫子「なんとなく、ってこと?」

Ama紅莉栖『日常で使う分には、と言った。試験問題的には――』


客A「あの子、可愛いね。英語の勉強を教えてもらってるんだ」

客B「こういうことができる時代になったんだねー」


Ama紅莉栖『……私がこういうこと言うのもなんだけど、私としゃべってて、周りの目、気になったりしないの?』

倫子「こういうのって女の子の利点だと思うの」

倫子「これで私が昔のオレ……いえ、男だったら、画面の中の女の子とずっとおしゃべりなんて恥ずかしくてできなかったと思う」

Ama紅莉栖『そう。まあ、ならいいけど』

602 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 20:43:18.85 qTKNtn1yo 1102/2638

池袋 サンシャイン60通り


倫子「うーんっ! 今日もよく勉強したっ」

Ama紅莉栖『それにしても、興味深いわね。岡部のラボ』

倫子「そ、そう? うーん、でも……」

Ama紅莉栖『だって、岡部がすっごく楽しそうに話すんだもの。オリジナルの私はそのラボに行ったことが?』

倫子「うん……あ、いや、そうでもないかも」

Ama紅莉栖『……深くは聞かないわ。でも、岡部が作ったサークルなら、きっとオリジナルも興味を持ったはず』

Ama紅莉栖『それに、もっともっと外の世界を見て回ってみたい。私の記憶だと、もう7年も日本には来てないから、東京も色々変わってるだろうし』

倫子「大学を見せてあげてるじゃない。講義も見せろって言うからこっそり見せたし」

Ama紅莉栖『この間の学園祭も含めて東京電機大学は堪能した。けど、秋葉原はまだ行ったことない』

倫子「……オリジナルの紅莉栖は、池袋に来たこと無かった……よね」

Ama紅莉栖『え? ええ、無かったわ。こうして岡部に連れられて来たのが初めてよ』

倫子「2003年夏、都電雑司ヶ谷駅……」

Ama紅莉栖『……? 今検索する……岡部の家の近くの路面電車の駅、か。それがどうかした?』

倫子「ううん、なんでもない。それじゃ、ラボ行こっか。でも、隠れてって言ったら隠れてよ?」

Ama紅莉栖『なんだか南くんの恋人になった気分。わかってるわよ、よろしく』

603 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 20:45:09.73 qTKNtn1yo 1103/2638


まゆり「あれ~? オカリンだー! トゥットゥルー♪」

倫子「"紅莉栖"、隠れてっ」ヒソヒソ

Ama紅莉栖『早速か……はいはい』

Ama紅莉栖『(通話は繋いだままにしておこうっと。まゆりさんがどんな人か気になるし)』

倫子「まゆり、乙女ロードにでも行ってきたの?」アセッ

まゆり「ううん、東京ハンズでコスプレの材料を調達していたのです。ところで、今だれかとお話してた?」

倫子「あ、えーっと、今のは……大学のゼミ友達だよっ」

まゆり「そっか~。今日もお友達と遊びに行くのかな?」

倫子「ううん、今日はこれからラボに行くよ」

まゆり「ホントっ!? オカリンがそう言ってくれるなんて、まゆしぃはね、うれしいよ~!」

倫子「大げさだなぁ。まゆりも一緒に行く?」

まゆり「うんっ。まゆしぃね、由季さんと待ち合わせしてるんだー。お料理を教えてもらう約束なのです」

倫子「ぬぁっ!? ……お、お腹が痛くなってきたから明日にしようかな」

Ama紅莉栖『おいコラ! 約束を破るつもり?』ヒソヒソ


   『できもしない約束を、なぜ誓った?』

   『約束が違うじゃない』


倫子「っ! や、やっぱり行こう! そうしよう!」

倫子「(通話が切れてなかった! んもう!)」ピッ

まゆり「ん~? 変なオカリン」ニコニコ

604 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 20:46:00.83 qTKNtn1yo 1104/2638

NR山手線外回り車内


真帆【その後、"紅莉栖"とはどう?】


倫子「(比屋定さんともRINEを交換した)」

倫子「(このRINEはダルが作ったアプリだから、ダウンロードリンクを教えてもらわないとインストールできない)」

倫子「(比屋定さんにこの話をしたら、おもしろそうだし、すぐに連絡が取れるのは便利ってことでこうしてRINEで連絡を取り合っている)」


【家庭教師としてはあんまり良くないかも。間違えるとすぐ怒るし】倫子

真帆【ちゃんと勉強してるのね。"紅莉栖"が怒るのはあなたの成長を信じてるからよ】

真帆【未来に向かって頑張りなさい。それじゃ、また連絡するから】


倫子「(未来、か……)」チラッ

まゆり「~~♪」

倫子「(私は結構、今のこの生活に満足している)」

倫子「(まゆりが居て、ラボがあって、ゼミもサークルも順調で、進学の目標もあって――)」

倫子「(そして、"紅莉栖"が居る)」

倫子「(ここ1週間は、いつまでもこんな日々が続けばいいと思っていた)」

605 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 20:47:24.87 qTKNtn1yo 1105/2638


倫子「(もちろん、この生活がいつまでも続かないことはわかっている。それがβ世界線の収束)」

倫子「(でも、そこに希望があるなら……)」

倫子「まゆり。また、手を握ってもらってもいい?」

まゆり「うん? いいよ~えへへ~♪」ギュッ

倫子「(私のギガロマニアックスとしての力は覚醒していないらしい。だけど、他人の脳の"記憶"に関する未来と過去をある程度視ることができる)」

倫子「(と言っても、"過去視"はかなり限定的。その人が思い出している時にしか視えないし、それ以上の記憶を恣意的に視ることはできない)」

倫子「(でも、"未来視"は別。その脳が将来どういう情報を受信するか、世界線の確定した事象をおおざっぱに読み取ることができる)」

倫子「(まゆりの未来を妄想する。世界が進む流れを感じ取る……)」ギュッ

倫子「(今まではせいぜい1年先しか視ることができなかったけど)」

倫子「(さらに遠く。出来る限りの未来を見てみたい)」

倫子「(まゆりの現実の拡張するイメージ。未来方向へと時間を引き延ばして――)」


  ドクン!!


倫子「(ぐっ……!? な、なにこれ、い、しき、が――――)」

2011
2012
2013

倫子「(世界が早回しになって過ぎ去っていく――――)」

2015
2018
2022

倫子「(未来へと加速していく――――)」

2027
2033
2035
 ・
 ・
 ・



606 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 20:50:31.38 qTKNtn1yo 1106/2638

・・・
2036年8月13日(水)19時46分
とあるビル屋上


鈴羽「父さん、治安部隊が万世橋まで来てる」

ダル「ということは、ここが発見されるのも時間の問題かな。さあ、入って」キィィ

まゆり「すごい。こんなところに扉があったなんて。これなら誰にも見つからないね」



隠し部屋 ワルキューレ基地


まゆり「これ……タイムマシンだよね……25年振りに見た……」

少女「これが、タイムマシン?」

鈴羽「かがり、危ないからあんまり近づくな」

ダル「61年……これほど長時間の有人ジャンプは初めてだが、技術的には全く問題ない。これまでのテストジャンプ通りやればいいからな」

鈴羽「オーキードーキー」

607 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 20:52:38.40 qTKNtn1yo 1107/2638


ダル「昔のラジ館はちょうどこの場所が屋上になってる。ただし、高さが1メートルほどズレてるからな、着地する時に衝撃があると思う」

鈴羽「了解」

ダル「笑って出発しよう、鈴羽。そうだ、若い頃の父さんに銃で脅してでも節制と運動をするようキツく言っておいてくれ」

ダル「そうすればたとえこの作戦に失敗しても、今度はもっとゆっくり話をしたり、ハグをしたりキスしたり出来る」ニッ

鈴羽「……考えとくよ」クスッ

鈴羽「…………」カタカタカタカタ

――――――――――――――
    →  1975年8月13日
――――――――――――――

鈴羽「これでよし。それじゃ、父さん。椎名まゆり――」


バゴオォォォォォォォン!! パラララッ パララララッ


まゆり「きゃぁ!」

かがり「ひゃっ」

ダル「屋上からだ! 突入してくる! 鈴羽、急いで跳ぶんだ!」

鈴羽「でもっ! 父さんたちが――!」

ダル「僕たちのことはいい! 鈴羽はかがりちゃんのシートベルトを頼む」

鈴羽「……クソッ、わかった!」

ダル「まゆ氏! かがりちゃんを!」

かがり「マ……ママ……? なにをしてるの?」

まゆり「あのね……今からかがりちゃんはスズちゃんと一緒にタイムマシンで一緒に過去へ行くの」

かがり「えっ……?」

608 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 20:53:48.13 qTKNtn1yo 1108/2638


かがり「や、やだ! やだよ! イヤ!! ママも一緒じゃなきゃダメ!」

まゆり「大丈夫だよ、かがりちゃん。スズちゃんが一緒だから、ね? はい」スッ

かがり「これは……?」

まゆり「ママがずっと大切にしてきた"うーぱ"のキーホルダーだよ。かがりちゃんにあげる。大事にしてね」

ダル「閉めるぞ!」

ガシャァァァァァン

まゆり「スズちゃん、ほんとうにかがりをお願いね!」

まゆり「あと、オカリンに伝えて! シュタインズゲートは必ず見つかるって!」

ダル「絶対に諦めるな大馬鹿野郎……ってな!」

鈴羽「……オーキードーキー!」

鈴羽「父さん、大好き――」ウルッ

鈴羽「行くよ、かがり。……過去へ」

かがり「ママっ……。ママァッ!!」


キィィィィィィィィィィン……


・・・


609 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 20:54:43.29 qTKNtn1yo 1109/2638


倫子「――かはぁっ! ……ぜぇっ……ぜぇっ……」

まゆり「オカリン? オカリン! だ、大丈夫かな?」オロオロ

倫子「だ、大丈夫だよ、まゆり……あとで、薬飲まなきゃ……」

倫子「(な……なに、今の……? 何十分も息ができなかった気がする……)」ハァ ハァ

倫子「(胸が、肺が、心臓が苦しい……全身がダルい……)」ハァ ハァ

倫子「(もしかして、時間の感覚が引き延ばされるっていう、エレファントマウス症候群なのかな……医者から聞いてた症状に似てるような気がするけど……)」

倫子「(ギガロマニアックスで視れる未来の範囲を、エレファントマウスで引き伸ばした……?)」

まゆり「無理はしないでほしいな……やっぱり帰ろう?」

倫子「ううん、平気だって。秋葉原までちょっと寝るね。着いたら起こして」クタッ

まゆり「うん……」

610 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 20:56:39.34 qTKNtn1yo 1110/2638


倫子「(2011年7月7日に鈴羽が過去に跳ぶことで、少なくとも極小の世界線変動が起こる。今視たのはその先の未来だ)」

倫子「(というか、鈴羽が2011年7月7日に跳んでも跳ばなくても2036年時点は同じ状況なのだろう)」

倫子「(そして、今視たのは"出来る限り遠くのまゆりの未来"。つまり、2036年の鈴羽が過去へ跳んだ瞬間、まゆりは、この世界線の確定した未来としては、たぶん――)」

倫子「(でも、あの時のまゆりは42歳。それに、"かがり"っていう名前の娘も居た)」

倫子「(まゆりは母親になれたんだ……それがわかっただけでも、α世界線とは雲泥の差。父親は誰なんだろうな)」

倫子「(だけど、鈴羽と一緒にタイムトラベルしたはずのまゆりの娘のことは、鈴羽から聞いたことは今まで無い)」

倫子「(何か言えない事情でもあるのかな。あるいは、今ここにいる鈴羽にはそんな記憶が無かったり……?)」

まゆり「オカリン、秋葉原にもうすぐ着くよ」ユサユサ

倫子「あ、うん。ありがとう、まゆり」

倫子「(電車に乗ってタイムトラベルしちゃったんだ、私……『地下鉄<メトロ>に乗って』を思い出すなぁ)」

まゆり「人が多いから、手をつないでいこう?」

倫子「うんっ」ギュッ

アナウンス『ドアーが開きます。ご注意下さい』プシュー

倫子「("シュタインズゲートは必ず見つかる"、か……。私にはもう、そんな扉は見つけられそうにないよ……)」

611 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 20:57:16.11 qTKNtn1yo 1111/2638

未来ガジェット研究所


まゆり「とぅっとぅるー。由季さん、もう来てたんだー」

由季「まゆりちゃんに岡部さん。お邪魔してます」

倫子「1週間ぶり、ってところかな……」

ダル「おう。自分のラボなんだし、ゆっくりしてくといいのだぜ」

倫子「うん、ありがと」


prrrr prrrr


倫子「(げ、"紅莉栖"か……ダルたちにはバレたくないんだけどなぁ)」

倫子「(私が妄想まで作った"紅莉栖"とまた仲良くしてるのがバレたら何言われるかわからないし、何より恥ずかしい)」

倫子「(でも、出ないとあとで怖いし……うーむむ)」

倫子「(取りあえず開発室で……)」タッ


ピッ


倫子「な、なあに?」ヒソヒソ

Ama紅莉栖『少しでいいから部屋の中を見せて。カメラを掲げてくれるだけでいい』ヒソヒソ

倫子「(ホントに好奇心旺盛だなぁ……)」スッ

Ama紅莉栖『ふむん』

612 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 20:57:59.77 qTKNtn1yo 1112/2638


Ama紅莉栖『汚すぎ。ガラクタだらけね』

倫子「ひどい。さすが紅莉栖ひどい」ムーッ

Ama紅莉栖『真帆先輩の下宿先といい勝負かも』

倫子「なんかあの人、ジャンガリアンハムスターみたいだよね。自分の巣を手近なもので作り上げちゃう」

Ama紅莉栖『岡部からも言っておいて。部屋はちゃんと片付けた方がいいですよ、って』

倫子「そんなこと言ったら噛みつかれちゃうかも」

Ama紅莉栖『まあ、でもこういうルームシェアみたいなの、少し憧れてた』ニコ


―――――

紅莉栖『……私のいるアメリカの研究所って結構殺伐としてるのよね』

倫子『む?』

紅莉栖『それに比べて、あんたのラボは幼稚だけど……居心地がいい』

紅莉栖『あんたが作ってる空気に浸かってるとね……なつかしさっていうのかな。私に幸せなホームがあった頃を思い出すの』

倫子『ホーム、か……』

―――――


倫子「(……ここは紅莉栖の"ホーム"になってたのかな)」ウルッ

鈴羽「リンリン、誰と話してるの?」ニュッ

倫子「わっふぅっ!!!!」ビクッ

613 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 20:59:28.61 qTKNtn1yo 1113/2638


まゆり「どーしたの? オカリン、スズさん」

由季「大丈夫ですか?」

倫子「い、居るなら居るって言って! 心臓に悪いよっ!」ドキドキ

鈴羽「ごめんごめん、驚かせるつもりは無かったんだよ。なんだか、ここ、テーブルの下が定位置になっちゃってさ」

倫子「(この世界線ではDメールは7月28日の昼に送った1通しか送ってないことになってるから、テーブルの下に穴は開いてないんだよね……まさかそんなことが原因で鈴羽の巣ができるなんて)」

鈴羽「……って建前で、母さんとできるだけ距離を取ってるわけ」ヒソヒソ

ダル「もうバレちゃった上に、世界線が変わる心配もなかったわけで、せっかくだし仲良くなればって僕は言ったんだけどね」ヒソヒソ

鈴羽「い、いいよ。恥ずかしいし」

ダル「つーかオカリンさ、スマホ片手にブツブツ喋ってたけど、なにしてたん?」

倫子「そ、それは、その……妄想彼女、みたいなアプリで」

倫子「(……またなんつー嘘を。もしかして私、とっさの時に嘘吐くのが下手?)」

ダル「オカリン、ついに百合に目覚めたか……百合厨大歓喜ィ!!」

倫子「あるあ……あれ? ひ、否定ができない……!?」ガーン

ダル「自分の気持ちに素直になるといいのだぜ」グッ

鈴羽「椎名まゆりからキミを奪ってあげるよ、リンリン」グッ

由季「オカ×まゆ、いえ、まゆ×オカもいけるッ!」グッ

倫子「橋田家ぇっ!! うわぁん!!」

614 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 21:00:17.44 qTKNtn1yo 1114/2638


由季「えっとね、まゆりちゃん。包丁は握るように持つんじゃなくて……」

まゆり「こう、かな?」ズドン!


倫子「そう言えば、鈴羽。1975年に行って、IBN5100を確保したんだよね? それでも戦争が起きるってことは、2000年問題は収束に阻まれて解決できなかったってこと?」

鈴羽「……そう。収束、って言えば便利だけど、あたしの主観からすると全部あたしの責任なんだ」

倫子「ねえ、何があったのか教えてもらえないかな」

鈴羽「…………」

倫子「……鈴羽を責めるつもりはないよ。むしろ、鈴羽の頑張りを、私は知っておきたい」

倫子「この世界線の未来で産まれてくる鈴羽のためにも」

鈴羽「……わかった」

615 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 21:03:01.75 qTKNtn1yo 1115/2638


・・・
鈴羽の記憶
1975年8月13日(水)13時05分
ラジ館屋上 タイムマシン内部


かがり「ぐすっ……ぐすっ。……ママが、死んじゃったぁ……」

鈴羽「いつまで泣いてるつもりだ。鬱陶しい」

かがり「でも……」

鈴羽「いいか? これからは、かがりも『ワルキューレ』の一員とみなす。あたしの部下として扱う。非戦闘員じゃないからな」

鈴羽「あまり時間が無い。この時代の人間にタイムマシンが見つかったら大騒ぎだ」

鈴羽「立てるか? 外に出てみろ」

かがり「……っ、まぶしい……空気が、おいしい……」

鈴羽「あたしが子どもの頃は、まだこういう青空が残っていた」

鈴羽「世界線がどうとか、歴史がどうとか、そんな理屈はあとでいい……。今はただ、この空の色を守りたいと思えば」

鈴羽「さて、IBN5100。これを手分けして探すのがあたしとお前の最初のミッションだ。ウォーキートーキーを渡しておく、連絡はこれで」

かがり「えっと……オーキードーキー」

鈴羽「よし、ミッション開始」

616 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 21:04:16.71 qTKNtn1yo 1116/2638

1998年8月13日
ラジ館屋上


鈴羽「(IBN5100は1975年で確保できた。あとは1998年でこれを使えば……)」

鈴羽「(その前にコンビニで食糧と水を用意してきた……かがりはまだタイムマシンの中で眠ってるかな……)」

鈴羽「(生体認証……)」ピッ


ウィィィィィィン



タイムマシン内部


かがり「あーもうっ! わけわかんないっ!」バンッ!! バンッ!!

鈴羽「……お前、何をしてるんだ?」

かがり「あっ……ち、ち、違うのっ……これは、そのっ……」

鈴羽「答えろ」

かがり「だ、だ、だって! だってっ! 目を覚ましたら、鈴羽おねーちゃんがいなくてっ、真っ暗で明かりもつかないし、狭くて怖くて苦しくてっ!」

かがり「だから、かがり、ドアを開けたくて……!」グスッ

617 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 21:05:54.02 qTKNtn1yo 1117/2638


かがり「ごめんなさい鈴羽おねーちゃん、ごめんなさい。でも、本当に怖かったんだ、だから……」シュン

鈴羽「……そうか」

鈴羽「(かがりがPTSD持ちだってこと、忘れていた。これはあたしの落ち度だ)」

鈴羽「お前は時間移動のショックで気を失ってたんだよ。だから休ませておいたんだけど……悪かった」

鈴羽「(こんな時、リンリンだったらどうしたかな……)」

鈴羽「ほら、外に出よう」スッ

かがり「う、うん……」



ラジ館屋上


かがり「うわ……暑い……」

鈴羽「かがり、約束するんだ。どんな事があっても、操縦席のスイッチに触ったりするな。いいな?」

かがり「う、うん……」

鈴羽「じゃあ、あたしは仕事にかかるから。お前はその辺で休んでるんだ。飲み物と食べ物は適当に食べていい」

618 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 21:07:25.41 qTKNtn1yo 1118/2638

タイムマシン内部


鈴羽「(IBN5100に、2036年の携帯端末を接続して……これで、『2000年問題』を発生させないようにするための修正プログラムをIBN5100用の言語に変換して、ウイルスの形で全世界に拡散させれば……)」

鈴羽「(この時代のエンジニアたちがきっと気付いてくれる。そうすれば、2000年問題はそもそも存在しなくなるんだ)」

鈴羽「OK、無線LANに繋がった。父さん手作りの量子コンピュータなら、この時代のセキュリティはザルだね」

かがり「で、でも……過去を変えちゃったら、かがりたちが居た未来の世界は変わっちゃうんじゃないの……?」

鈴羽「もうあの世界は存在させない。あたしたちは、シュタインズゲートを目指すためにここへ来たんだから」

鈴羽「(過去のリンリンに目覚めてもらうために……)」

かがり「…………」

鈴羽「(ん……? かがりの顔から、表情が失せた……?)」

かがり「神様の声、聞こえる」

鈴羽「かがり?」

619 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 21:08:22.41 qTKNtn1yo 1119/2638


かがり「……ダメなんだよ、鈴羽おねーちゃん。そんなことしちゃ、いけないんだ」

鈴羽「おい? 大丈夫か?」スッ

かがり「えいっ!!」ドンッ!!

鈴羽「がはっ!? な、何をするんだかがり!」バタッ

かがり「このっ、このぉっ!!」ブチッ ブチッ

ビー ビー ビー

鈴羽「や、やめろかがり! 父さんのコンピュータがッ!!」

かがり「確かここに……あった!!」ジャキッ

鈴羽「あたしの自動拳銃……それに、触るな!」

かがり「動いちゃだめっ!」ゴリッ

鈴羽「……お前、安全装置の外し方、上手くなったな。教えた甲斐があった」

鈴羽「今すぐ銃を下ろせ。こんな真似はやめろ」

かがり「世界を変えちゃいけないんだ! おねーちゃんはおかしいコト言ってる!」

鈴羽「じゃあ、このまま戦争が起きてもいいって言うのか」

かがり「そんなのわかんないよっ。かがりは元の世界に戻りたいだけだもんっ」

鈴羽「なら……もう、無理だ」

620 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 21:12:39.05 qTKNtn1yo 1120/2638


鈴羽「あたしたちはタイムマシンですでに過去に干渉してる。世界線だってズレてしまってるはずだ。あそこに戻れる可能性は低――」

かがり「うるさいうるさいうるさい! かがりはママを絶対に助けるんだぁぁっ!」

かがり「この世界を消すなんてダメだよっ! 絶対にやらせないからっ!」ジャキッ

鈴羽「っ!? よ、よせかがり! それを、撃つなッ!」


BANG!! BANG!! BANG!! BANG!!


鈴羽「IBN5100が……あぁ……」

かがり「……じゃあね、おねーちゃん」ダッ



・・・


621 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 21:14:28.32 qTKNtn1yo 1121/2638


鈴羽「(ホントのことは言えないよ……)」

鈴羽「……えっと、あたしが手に入れたIBN5100は、1998年への時間移動の衝撃で壊れちゃったんだ」

鈴羽「コンピューターの故障もいくつかあったけど……それはあたしが自力で直せるレベルだった」

鈴羽「1998年の秋葉原でもIBN5100を捜したけど、結局見つからなかった」

鈴羽「2000年まで細かくタイムトラベルしながら捜してみたけど、それでも見つからなくて、そのうちにバッテリーの限界が近くなってしまったんだ」

倫子「(ごめんね、鈴羽……無意識のうちに"過去視"しちゃった。嘘、吐いてるんだね……)」

倫子「(でも、鈴羽はかがりの存在のことを言わなかった。何か事情があるのかもしれない)」

倫子「(鈴羽の過去は別の世界線のものだ。まゆりの娘とはいえ、私が何か行動に出るべきではない、か……)」

倫子「(それに、たぶん私がリーディングシュタイナーを持っている限り、2000年問題は発生する。その発生を回避することはできない)」

倫子「(だから、本当にやるべきなのは、2000年問題を発生させた上で第3次世界大戦が起こらないようにすること、なんだけど……そんな方法、わからない)」

まゆり「まゆしぃ特製キッシュが完成したのでーす! 食べてみる~?」

由季「まゆりちゃん、それは失敗じゃ……でも、それを無理やり食べさせられるのも悪くないかも」ハァハァ

鈴羽「……あたしはタイムマシンの整備に行かないとッ!」

倫子「あっ! ずるいっ!」

ダル「さすが鈴羽、危険察知能力は高いのな」

倫子「変なところで親バカを出すなっ」

まゆり「はい、オカリン。あーんして?」

倫子「お、お、お、おう……」ダラダラ

622 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 21:16:01.04 qTKNtn1yo 1122/2638

同日 夜
ラジ館屋上


鈴羽「……あれから12年、か。今頃、かがりはどこでなにをやってるんだか」

ガチャン キィィ……

フェイリス「ニャニャ、いたいた~。夜遅くまでお疲れニャンニャン」

鈴羽「なんだ、ルミねえさんか」

フェイリス「ルミねえさんって誰のことかニャン? フェイリスは、フェイリスニャ♪」

鈴羽「(リンリンが死んだあと、自分の黒歴史を超絶後悔するんだから、今からその口調を直せばいいのに……未来のことは伝えられないけどさ)」

フェイリス「はい、差し入れ。メイクイーンで余ったケーキだニャ。スズニャンのだ~いすきなショートケーキもあるニャン♪」

鈴羽「あ、あたしは別にっ」ジュルリ

キィィ…… バタン

倫子「いいじゃない。食べれる時に食べるのが、鈴羽の信条じゃなかったの?」

鈴羽「リンリンも来てたんだ。じゃあ、みんなで食べよう」スッ パクッ

倫子「い、いや、私はもうお腹いっぱいだからいいかな……うっぷ……キッシュは当分こりごり……」ギュルルル

フェイリス「ニャウゥ~、フェイリスとオカリンであからさまにスズニャンの態度が違うのはなんでニャ~!」

鈴羽「色々あったんだよ、未来でね」モグモグ

623 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 21:16:39.30 qTKNtn1yo 1123/2638


倫子「扉の鍵、直したんだね。そりゃ、銃弾の跡が残ってたらまずいか」

鈴羽「リンリンがここに来るなんて珍しいね。3か月ぶり?」

倫子「このまま過去に強制連行はしないでよ?」

鈴羽「……うん。わかってるよ。わかってる……」

倫子「……ごめんね。えっと、私はフェイリスがここを貸し切ってるっていうから、どんなものか確認しておきたくて」

倫子「こんだけ大きいものを放置していて、いつ騒ぎになるかって気が気じゃなかったから」

フェイリス「その心配はないニャン。屋上はフェイリスが借り上げちゃったから平気ニャ」

フェイリス「オーナーさんには、色々握らせておいたニャン♪」

鈴羽「ホント、助かるよ」

フェイリス「勘違いしニャいでほしいニャ! スズニャンのためじゃなくて、オカリンのためにフェイリスは動いてるんだからニャ!」プイッ

倫子「わざわざショートケーキ差し入れしておいて」フフッ

フェイリス「……やっぱり、フェイリスにツンデレは似合わないかニャ~?」

フェイリス「スズニャンも、大事なラボの仲間ニャ。それは第12宇宙までのすべての並行世界において不変の真理なんだニャン!」

鈴羽「そ、そう……ありがと、ルミねえさん」

フェイリス「その呼び方はやめて」

倫子「(留未穂の真顔……)」

624 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 21:17:32.76 qTKNtn1yo 1124/2638


フェイリス「寒くなってきたし、そろそろ帰るニャン」

鈴羽「ふたりとも、送っていくよ。あたしは元軍人だしね」


   『あたしは戦士だよっ! ワルキューレの女騎士を守護する、約束されし時空の戦士ッ!』


倫子「……頼もしいね。ありがと――」

鈴羽「――!! 静かにっ」ヒソヒソ

倫子「っ!?」

フェイリス「ニャ? どうしたの――」

倫子「静かにしろっ、フェイリス」ムギュッ

フェイリス「もごもごっ!」

倫子「……それで、鈴羽」

鈴羽「……誰か、いる。話を聞かれたかも」

倫子「くそ……!」

鈴羽「――っ!!」ダッ

倫子「どうする気っ!?」

鈴羽「捕まえて、口を封じるっ!!」ジャキッ ガチャン

倫子「発砲はしないでよっ!?」

625 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 21:18:48.06 qTKNtn1yo 1125/2638

ラジ館内


鈴羽「くっ、速い!?」タッ タッ


ブルルン ブルルン


鈴羽「(バイクの空ぶかしの音!?)」タッ タッ

鈴羽「って、しま――」ドサッ ゴロゴロゴロ……

鈴羽「ぐっ! 気をとられて、足元のトラップに気付かないなんて……」



ラジ館前小路


鈴羽「はぁっ……はぁっ……くそっ!」

倫子「鈴羽っ! 大丈夫!?」

フェイリス「ケガはないニャ!?」

鈴羽「……ごめん、逃げられた」

フェイリス「それ、しまった方がいいニャ!」

鈴羽「あっ……うん」スッ

倫子「今の、誰……?」

鈴羽「少なくとも、一般人じゃない。あれは訓練された人間の動きだった」

倫子「まさか、ロシアのスパイ!? いや、それともアメリカの……」ゾクッ

フェイリス「でも、どうしてラジ館屋上にタイムマシンがあるって知ってたのかニャ?」

倫子「(私たち以外にあそこにアレがあるって知ってるのは、ダルとまゆりと……かがり?)」

626 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 21:20:08.37 qTKNtn1yo 1126/2638


鈴羽「完全にあたしの失態だ。ごめん、いや、すみません、でした……」グッ

倫子「……とりあえず、今のところ世界線が変動した様子は無い。未来はまだ大きく変わってないよ」

鈴羽「うん……父さんがタイムマシンを開発できなくなることだけは絶対にさけなきゃだからね」

倫子「今以上に悲惨なアトラクタフィールドに変動するのだけは避けたい……」

鈴羽「っ、タイムマシンを破壊した方が、いいと思う……?」

倫子「それは……。確かに、タイムマシンは存在するだけで危険」

倫子「だけど、破壊するのも危険。今は現状維持しかないんじゃないかな」

倫子「(私は2011年7月7日までアレがココにあることがこの世界線の確定した未来であることを知っている。だから、おいそれと破壊することもできない)」

鈴羽「……そっか、良かった」

627 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 21:20:36.26 qTKNtn1yo 1127/2638


鈴羽「でも、安心はできない。どこの組織かもわからない人間に、タイムマシンの場所を知られてしまった」

鈴羽「あらゆる人間を警戒しないといけなくなった」

フェイリス「……そういうのは、フェイリスに任せてほしいニャ」

鈴羽「え? ルミねえさん?」

倫子「……チェシャ猫の微笑<チェシャー・ブレイク>、だね。だけど、フェイリスを危険に巻き込みたくないよ……」

フェイリス「フェイリスだって、オカリンやスズニャンが危険な目に遭うのはまっぴらゴメンだニャ!」

倫子「フェイリス……。うん、ありがと」

628 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 21:21:25.42 qTKNtn1yo 1128/2638


倫子「……鈴羽だったら、敵のタイムマシンの在り処がわかったら、どう行動する?」

鈴羽「場所がわかっただけじゃアレは使えない。タイムトラベルをするにしても、分解して仕組みを暴くにしてもね」

鈴羽「生体認証をパスするには、あたしか父さんを生け捕りにしなきゃならない」

鈴羽「アレは指を切断しても、眼球を摘出しても無理。2036年のセキュリティだからね。だから、殺害は作戦の失敗を意味する」

鈴羽「すべきなのは、組織の内部にスパイを送って、懐柔、あるいは脅迫した上で拉致……」

フェイリス「ということは、スズニャンやダルニャンに接近してくる人間を警戒すればいいってことニャ」

倫子「ダルにも伝えて、自分でも警戒するようにしてもらおう」

630 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 21:22:40.01 qTKNtn1yo 1129/2638


しかし、日常は恐ろしいほどに平和だった。

陰謀の魔の手は間違いなくすぐ側まで忍び寄っている。

なのに、どこを見渡しても異常は見当たらない。

それこそが異常だと思えば、目に映るすべてが怪しく思えてくる。

結局、私の警戒心は2、3日ももたずに日常の中に埋没してしまった。

"紅莉栖"に手伝ってもらおうかとも思ったけど、彼女に話したら比屋定さんや教授にまで伝わってしまいかねない。

なにより、"紅莉栖"との時間を余計なノイズで邪魔されたくなかった。

……結局私は、刹那的な平和を求めて現実逃避しているだけなのかもしれない。

631 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 21:24:39.28 qTKNtn1yo 1130/2638

※以下シュタインズゲートゼロの重大なネタバレを含みます。未プレイの人は注意

632 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 21:26:34.98 qTKNtn1yo 1131/2638

2010年12月15日水曜日 夕方
柳林神社


倫子「ルカ子はまだ学校から帰ってきてないか……。まあ、それはそれで助かる、のかな」

Ama紅莉栖『そっか、漆原さんの神社ってここなのね。誕生日プレゼントでもせびりに来たの?』

倫子「(昨日は私の誕生日で、まゆりやダル、フェイリスからお祝いしてもらった。一応"紅莉栖"からも祝ってもらった)」

倫子「今日は神頼みしに来ただけだよ。報告会が無事に済みますように」パン パン ペコリ

Ama紅莉栖『久しぶりに真帆先輩に会えると思うと嬉しい』

倫子「……ねえ、"紅莉栖"。これまでの会話って、全部記録されてるの?」

Ama紅莉栖『あんたがまゆりさんの前で見栄を張って生肉を食べて学校を1週間休んだこととか、八百屋の娘なのにナスが嫌いなこととか、全部ね』

倫子「ナ、ナスは嫌いなんじゃない! 苦手なだけだっ!」プイッ

Ama紅莉栖『出た、高圧的モード。悪いけど、それも含めて教授たちには筒抜けになるわよ?』

倫子「うおおぅ……マ、マジかぁ……」

Ama紅莉栖『あんたね、今更?』フフッ

倫子「……ねえ。私、これまでになにかまずいこと、話さなかった?」

Ama紅莉栖『まずいこと? 例えば?』

倫子「……別の世界の話、とか、そういう、電波系」

Ama紅莉栖『やっぱりあんたって昔そういうタイプだったんじゃない? それを今は黒歴史として隠してる、とか?』

紅莉栖『今までいくつか状況証拠があるのよ、証明してあげましょうか?』

倫子「(全然関係ないけど当たってる……)」グヌヌ

倫子「その辺、全部忘れてよ……」

Ama紅莉栖『「Amadeus」は人じゃない。だから、人と違って、記憶を完全に思い出すことができる。"秘密の日記"があるからね』

倫子「でも、"秘密の日記"がなければ、紅莉栖も人間と同じように忘却するんだよね?」

Ama紅莉栖『理論上はそうなる。けど、それじゃ研究にならないから、あんたがどんだけ黒歴史を暴露したくないってわめいても、私の"秘密の日記"をデリートするわけにはいかないわ』

633 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 21:27:41.35 qTKNtn1yo 1132/2638


Ama紅莉栖『だから、あんたが私を"クリスティーナ"って呼んだことはなかったことにはならない。アンダスタン?』

倫子「ア、アンダスタン……」

Ama紅莉栖『でも、あだ名で呼ぶにしてもどうして"クリスティーナ"だったの?』

倫子「それについては語感が良いから、だよ」

Ama紅莉栖『私だったら、ティーナってつけるな、って言いたいところだけど、オリジナルは違ったの?』

倫子「……お前がドMのHENTAIだったから、なんて、言っても信じてくれないだろうな」ボソッ

Ama紅莉栖『えっ?』

倫子「いや、違うか。結局、オレが照れくさかったんだ。素直に名前を呼べなくて……」

Ama紅莉栖『照れくさかった?』

倫子「……今でも私、紅莉栖のことが好きだよ。あなたのことだって、女の子として好き」

Ama紅莉栖『なぁっ……///』

倫子「へ、へぇ。あなたも顔が赤くなったりするんだね」ドキドキ

Ama紅莉栖『あ、赤くなんてなってないし。ただ、女の子扱いされてたなんて、思ってもみなかったから……』

Ama紅莉栖『でも、その感情は危険よ。オリジナルはもう、この世に居ないんだから』


   『あんたが私を殺したのよ』


倫子「……ごめん、ちょっと、薬、飲ん、で……くるね……」ウルッ

Ama紅莉栖『う、うん。あんまり体調が悪いんだったら、誰か知り合いに連絡しなさいよ』



Ama紅莉栖『……ごめんね、岡部』ブツッ

634 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 21:28:25.48 qTKNtn1yo 1133/2638


倫子「ふぅ……ふぅ……。朝ごはん、抜いてきてよかった……」ウップ

倫子「吐き気はまだなんとかなるけど、目眩と頭痛がきついなぁ」

倫子「紅莉栖は……。通話、切ってくれたんだ」

倫子「……確かに、この感情は危険、かも、知れない」

倫子「AIの"紅莉栖"に想いを寄せるなんて、それこそ妄想の紅莉栖を創り出すことと何が違うって言うの」

倫子「……それに、この"紅莉栖"には、別の世界線での出来事を話してしまったかもしれない」

倫子「これ以上、"紅莉栖"と話すのは、危険……?」

倫子「またまゆりに心配かけちゃうことになったりしたら……。私は、テスターを続けるべきじゃないのかもしれない」

倫子「……とりあえず、今日1日は"紅莉栖"を我慢しよう。ごめんね、"紅莉栖"」

倫子「(そうして私は、電源ボタンを長押しして、スマホの電源を切った――)」

635 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 21:29:14.58 qTKNtn1yo 1134/2638

同日 夜
秋葉原CLOSE FIELD 陸橋 UPX前


倫子「(レスキネン教授たちとの約束の時間までは、まだ少しある……)」ウロウロ

倫子「……ん? あれは、フブキとカエデさん?」

フブキ「おーい! オカリンさーん!」

倫子「ちょ、恥ずかしいからやめてっ!」

カエデ「フブキちゃん、もっと大声で!」

フブキ「オ・カ・リ・ン・さ・ー・んっ!!!」

倫子「やめろぉ!」

カエデ「それより、大丈夫ですか? 具合悪そうですけど。もしかして、フブキちゃんの大声のせいで?」

フブキ「ちょっ!」

倫子「ううん、大丈夫。全然大丈夫だから、まゆりに連絡しなくていいから、ケータイしまって!」

636 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 21:29:54.21 qTKNtn1yo 1135/2638


フブキ「でも、つらそうだったら言ってくださいね。オカリンさんのこと心配なのは、マユシィだけじゃないですから」

フブキ「カエデちゃんだって……私だって、オカリンさんのこと……」

倫子「……うん。ありがと。嬉しい」

フブキ「……あの」

倫子「なあに?」

フブキ「――オカリンさんの好きな人って、誰ですか」

倫子「……!?」


   『私も、岡部のことが だ   い       す             』

   『……死にたく……ないよ……』


倫子「うっ……」フラッ

フブキ「ご、ごめんなさい、失礼なこと訊いちゃって! あの、私――――」

倫子「(め、めまいが……えっ……? こ、これは、リーディング―――――――――――

637 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/02 21:30:40.27 qTKNtn1yo 1136/2638


――――――――――――――――
  1.29848  →  1.06475
――――――――――――――――

657 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/16 20:29:45.33 hHWGS9LVo 1137/2638

第14章 亡失流転のソリチュード(♀)


倫子「(くっ……! やっぱり、このめまいは……!)」フラッ

倫子「(精神が不安定になった時の目眩や頭痛なんかとは全然違う……この、2度と思い出したくなかった気持ち悪さは……っ!)」

倫子「(……リーディング、シュタイナー!!)」ガクッ

カエデ「オ、オカリンさん!? 汗がすごい……フブキちゃん!」

フブキ「うっ……」クラッ

カエデ「ふ、ふたりとも!? えっと、救急車は……119……」ピッ ピッ

倫子「ま、待って……大丈夫、大丈夫だから……」

フブキ「う、うん。私も、なんともないよ」

カエデ「いいえ、大丈夫なわけありません。せめてご家族に連絡しなきゃダメです」

倫子「いいって……ほら、もう平気だし……」

フブキ「私はともかく、オカリンさんはダメだよ!」

カエデ「オカリンさん? フブキちゃんもね?」ジーッ

倫子「うっ……。わ、わかったよ、親に連絡入れとくから」

フブキ「は、はーい」

カエデ「それでよし」

フブキ「(やっぱりカエデの方がオカリンさんより年上さんなんだなぁ)」

658 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/16 20:34:43.83 hHWGS9LVo 1138/2638


カエデ「……取りあえず、ふたりとも落ち着いたみたいですね」

フブキ「最初っから大丈夫だって言ってるのにー」

倫子「心配かけて本当にごめんね。私、これから人と会う約束があるから」

フブキ「それじゃあ、次に会うのはクリスマスパーティーだね」

カエデ「今度のパーティー、楽しみにしててくださいね」ウフフ

倫子「……まさか、ホントに私のサンタコス作ったの?」ゾクッ

フブキ「さ~あ? それは当日のお楽しみ~♪ バイバ~イ!」

659 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/16 20:37:12.37 hHWGS9LVo 1139/2638


倫子「……今、どうして世界線が変わったんだろ?」

倫子「(私か鈴羽がこの世界線でとるべき行動から外れた? あるいは、ダル? まゆり?)」

倫子「(鈴羽じゃないなら、そう。同乗者だった"かがり"の行動が変わって、未来に起因する過去の現象が大幅に塗り替えられた、とか?)」

倫子「(……いや、待てよ。電話レンジ(仮)がなくたって、ダル製のタイムマシンがなくったって、過去を、未来を、世界線を改変できる奴が居たじゃないか!)」ドクン

倫子「(ラジ館でタイムマシンを盗み見たアイツ……もしアイツが、ラウンダーだったなら……)」ドクンドクン

倫子「(Zプログラム、ゼリーマンズレポート、SERN……α世界線っ!?)」ドクンッ!


   『やっと、まゆ……しぃ、は、……オカリンの……役に……立て……たよ……』


倫子「まゆりはっ!? まゆりは無事なのかっ!?」ピッ ピッ

660 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/16 20:38:37.35 hHWGS9LVo 1140/2638



prrr prrr


まゆり『トゥットゥルー♪ まゆしぃです』

倫子「まゆり! まゆりか!? 本当にまゆりなんだな!?」

まゆり『オ、オカリン? どうしたの、そんなに慌てて』

倫子「よかったぁ……グスッ……まゆりが、居る……」ウルッ

まゆり『どうしちゃったのかな? もしかして、寂しくなった?』

倫子「……べ、べつに、オレは寂しくなんかないぞ。それより、今どこだ? 誰かと一緒か?」

まゆり『これからバイトだよ~』

倫子「何時までだ?」

まゆり『8時過ぎぐらいまで。オカリンもメイクイーン来る?』

倫子「いや、オレは……あ、えっと、私はこれから人と会うから」

まゆり『そっかー。まゆしぃはね、バイトが終わったらラボに顔を出すつもりだよ』

倫子「わかった。そこで合流して一緒に帰ろう」

まゆり『今日は珍しいね~、えっへへ~』

倫子「じゃあ、バイト頑張ってね」ピッ

倫子「……取りあえず、まゆりは無関係。それに、スマホの画面に"Amadeus"アプリもある……」ホッ

661 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/16 20:43:09.73 hHWGS9LVo 1141/2638



prrrr prrrr


Ama紅莉栖『なに? 言い忘れたことでもあった?』

倫子「さっきは話を遮っちゃってごめんね。もう気分、大丈夫だから」

Ama紅莉栖『それについてはさっき謝ってもらったし、岡部の体調が良くなったなら問題ない。というか、私の方こそごめんなさい』

倫子「さっき私が、謝った……?」

Ama紅莉栖『ええ。かけ直してきたじゃない。7分43秒前に』

倫子「(フブキたちと会う前辺りだ。この世界線の私は、そういうことになっている……?)」

倫子「(……過去が改変されているんだ。私の行動が微妙に変わるような、なんらかの過去改変……)」プルプル

倫子「(待てよ? ってことは、私の状況も変化してるんだ。変化している点は、そう。スマホの電源のonoff)」

倫子「(スマホの電源を切ったことが、変動前の世界線の確定した事象じゃなかった?)」

倫子「(でも、それがキッカケで世界線が改変されたとは考えにくい。改変の結果は、改変後にも引き継がれるから、この世界線でもスマホの電源が切れてないとおかしい)」

倫子「(ってことは、私の行動の変化のせいで、あの世界線の未来でタイムトラベルすることになっていたタイムトラベラーの行動を変えた……?)」

倫子「(それは意図的なものか、あるいは偶然の産物なのか……)」プルプル

Ama紅莉栖『……また顔色が悪くなってる。どこかで休んだ方がいいわ』

662 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/16 20:44:31.25 hHWGS9LVo 1142/2638


倫子「……ねえ、"紅莉栖"。ひとつ、訊いてもいい? さっき電話した後、私が何をしようとしてたか、わかる?」

Ama紅莉栖『……記憶の混濁? えっと、レスキネン教授と真帆先輩と、このあと待ち合わせでしょう? 私について報告する予定じゃない』

倫子「(そこについては変わっていない。ってことは、ほとんど同じ世界のままか)」

倫子「(なんでこの世界線の私はスマホの電源を切らなかったんだろ……?)」

倫子「(たかがスマホの電源だし、大きく分岐するような事象とも思えない。だけど……)」

倫子「(Dメールやタイムリープを携帯電話で実行する限り、電源のonoffは大規模な可能性の振幅を持っていると言える)」

倫子「(例えば、元居た世界線の確定した事象として、あの時点で未来の誰かからDメールを受信することが確定していたとしたら)」

倫子「(スマホの電源は、切ったはずなのに入っていた。この世界線の未来で、私がそのDメールをここに送ることになるとしたら――)」

663 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/16 20:46:00.73 hHWGS9LVo 1143/2638


倫子「(……いや、それはありえないか。だってもう電話レンジ(仮)は無いんだから、私が過去改変することはできない)」

倫子「(仮に送ったとしても、その瞬間エシュロンに捕捉されてSERNによる世界支配が確定、アトラクタフィールドはαへと切り替わってしまう)」

倫子「(考えられるとすれば、電源をoffにしたことがバタフライ効果で2036年の鈴羽とかがりに影響し、2010年へと跳んで以降の鈴羽とかがりの行動が私に影響して電源がonになっていた)」

倫子「(やっぱり鈴羽と接触することは避けた方が良かった……まあ、まゆりが無事ならβ世界線のままってことだし、とりあえずは安心かな)」

Ama紅莉栖『ねえ、聞いてる? 真帆先輩にあなたの体調のこと、話しておきましょうか?』

倫子「えっ? あ、ああ。うん、お願いしようかな。心配かけてごめんね」

Ama真帆『話は聞かせてもらったわ。私のオリジナルにそのこと、伝えておくわね』

Ama紅莉栖『"先輩"、お願いします。岡部、あんまり無理しないでよ?』

Ama紅莉栖『あんたと最期に話したのが私でした、なんて結果になるのはゴメンだからね……あっ』

倫子「……そうだね、気を付ける」ウルッ

Ama紅莉栖『ごめん……それじゃ』ピッ

664 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/16 20:47:12.45 hHWGS9LVo 1144/2638

都内高級ホテル レスキネン教授の宿泊部屋


倫子「(ダルに確認したところ、やっぱり変わっていたのは私のスマホの電源のonoffだけだった。世界線変動は問題ないレベルだったと信じたい)」

真帆「『Amadeus』から聞いたけど、体調が悪いなら無理させるわけには……」

倫子「ううん、もうほとんど平気。比屋定さん、少し、手、握ってもらっていい?」

真帆「ふえっ!? って、ああ、そうだったわね……いいわよ、はい」ギュッ

倫子「(ごめんね、真帆ちゃん。あなたの脳、借りるよ……)」シュィン

倫子「(全力で未来予知をする必要は無い。あれやると、また少し体調が悪くなっちゃうし)」

倫子「(私が前に視た時とだいたい同じかどうかを確かめるだけ。これくらいなら真帆ちゃんの脳でも可能なはず)」

倫子「(2011年7月7日……鈴羽が……過去へタイムトラベル……)」

倫子「(まゆりは……安全……それなら、この世界線でも問題ない、かな)」ホッ

真帆「もう大丈夫なの?」

倫子「うん、だいぶ落ち着いた。ありがと――」

ガチャ バタン

レスキネン「リンコー! まさかマホとデキていたなんて!」

真帆「教授!? こ、これは違いますっ!!」

倫子「真帆ちゃんって、手もちっちゃいんだね」ニギニギ

真帆「や、やめてぇっ!」

665 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/16 20:48:56.98 hHWGS9LVo 1145/2638


・・・

レスキネン「それじゃあ、今のところ順調ということでいいんだね、リンコ」

倫子「……はい。会話に齟齬が出ることもありませんし」

レスキネン「"クリス"との距離感はどうだい? 親しくなったかな?」

倫子「私が、あなたのこと好きだよって伝えたら、赤面してました」

真帆「中々おもしろい冗談だわ……冗談よね?」

レスキネン「Fmm…AIとの愛、というわけだね! それは喜ばしい」

レスキネン「私は期待しているんだよ。彼女が君に対して友情を――もっと言えば、恋愛感情を持ってくれないか、とね」

真帆「教授や岡部さんと違って"紅莉栖"はノーマルです……最近、ちょっと自信なくなってきたけれど」ハァ

レスキネン「やっぱり、リンコにテスターを頼んで正解だったようだ。"クリス"にはガールズラブもイケる気がしていたんだよ!」

倫子「い、いや、百歩譲って私が百合属性だったとしても、機械属性はっ!」

レスキネン「無いのなら、開発すれば、いいじゃない」ニッ

倫子「("紅莉栖"には危険って言われたけど、教授がそういうなら、この気持ちのままでもいいのかな……)」

真帆「私の"紅莉栖"が、岡部さんに、開発されていく……」ゴゴゴ

レスキネン「Oh! そういえば私はジュディに連絡をしなければならないんだった。リンコ、少し失礼するよ」ガチャ バタン

倫子「(逃げたな)」

666 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/16 20:52:18.19 hHWGS9LVo 1146/2638


真帆「まったく。あ、そうだ。岡部さん、ちょっと聞きたいんだけど、紅莉栖が好きな言葉って、なにか知ってる?」

倫子「えっとね、比屋定でしょ、真帆でしょ、先輩でしょ、ちっちゃいでしょ」

真帆「ちっちゃい言うなぁっ!! というか、そういう意味じゃない!!」ウガーッ

倫子「わ、わかってるよ。けど、どうして?」

真帆「……紅莉栖の私物、実家にあったノートPCとポータブルハードディスクのパスを解除したくて。形見分けで譲ってもらったの、紅莉栖のお母さんに」

倫子「パスがかかってるってことは、見られたくないものなんじゃないの?」

真帆「もちろん、プライバシーをのぞき見ようってわけじゃないの。そうじゃなくて、『Amadeus』の"紅莉栖"をより本物に近づけるために必要な情報があるはずなのよ」

真帆「未発表の論文とか、実験メモとかね。ダイアリーなんかがあったら最高だわ」

倫子「ごめん、心当たりはないよ。知ってたとしても、私は教えないと思う」

倫子「(仮にCドライブに腐ったフォルダが発見されでもしたら目も当てられない)」

真帆「そう……」

倫子「私は帰るね。もう遅いから、気を付けてね、真帆ちゃん」

真帆「補導されないようにって言いたいのかしら!? それと真帆ちゃん言うなっ!」

667 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/16 20:54:27.88 hHWGS9LVo 1147/2638

未来ガジェット研究所


倫子「まゆり、居る――――」

ドンッ ムニュ

倫子「ふごっ!?」

るか「きゃっ! ご、ごめんなさい凶真、じゃなかった、岡部さんっ!」ペコリ

るか「(岡部さんの、やわらかな感触が……!)」ドキドキ

倫子「(ルカ子って思ったより身体が固いんだなぁ……男の子だもんね)」

倫子「い、いや、こっちこそごめんね。えっと、もう帰るところだった?」

るか「あ、はい。でも、岡部さんにお会いできてよかったです。差し入れを持ってきたので、どうぞ召し上がってください」ニコ

ダル「おまんじゅう、もらったお」モグモグ

倫子「……そう言えば前に、まゆりがうーぱまんじゅうをレイヤー仲間からもらってきたことがあったね。まゆりは?」

るか「まゆりちゃんは、まだバイト中かと……」

ダル「つか、るか氏、時間大丈夫なん?」

るか「あっ! えっと、実はこの後、おうちに父のお客さんが来ることになってるんです。なぜかボクにも同席してほしいと言われまして……」

倫子「(あの神主のHENTAI仲間じゃないことを祈ろう)」

るか「それじゃあボクはこれで。また来ますね」ガチャ バタン


ダル「……今思ったんだけどさ、オカリンがノーマルだったとしても百合だったとしても、どっちつかずなるか氏は恋愛対象にはならないんだよな。それってなんか切なくね?」モグモグ

倫子「属性なんか関係ない。大事なのは中身でしょ」

ダル「ほほう、これはいいことを聞きますた」

倫子「(そう、大事なのは中身……それでいいんだよね、"紅莉栖"……)」

668 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/16 20:58:25.49 hHWGS9LVo 1148/2638


ガチャ

鈴羽「ただいま。あれ、リンリン、来てたんだ」

倫子「あっ……」

鈴羽「……そんな顔、しないでよ。今のところ、問題は起きてないよ」

倫子「(鈴羽は世界線変動を感じ取れない……だけど、世界線が変わったって言ったら、また私は鈴羽を責めることになっちゃう……)」グッ

ダル「鈴羽。こんな遅くまで何してたん?」

鈴羽「っ……」

ダル「言えないようなこと? ま、まさか男――」

倫子「ダル、黙って」

ダル「うおう……こうやって僕はオカリンと鈴羽とゆくゆくは由季たんの3人の尻に敷かれていくんだなぁ……それなんて俺得ッ!!」ハァハァ

倫子「タイムマシンの整備?」

鈴羽「ううん……実はね、人を捜していたんだ」

ダル「人? それってやっぱり男――」

倫子「ダル」ジーッ

ダル「女の子モードのオカリンの冷たい視線たまらねぇっす」ハァハァ

669 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/16 21:01:02.03 hHWGS9LVo 1149/2638


鈴羽「小さな女の子……今はもう、あたしより年上になっちゃってるか……」

鈴羽「実はさ……、あたしが乗ってきたタイムマシンには、もうひとり、乗っていたんだ」

倫子「……"かがり"?」

鈴羽「そう……って、えっ? あたし、どこかで話したっけ?」

倫子「あ、いや、えっと……」

鈴羽「……ああ、リーディングシュタイナーか。α世界線でも同じ名前の同乗者が居たってことだね」

鈴羽「そっか、あの子は椎名まゆりが居なくても、かがりっていう名前になってたんだ」

倫子「(まあ、そう思ってくれるならそれでいっか……)」

ダル「それで、その女の子って、今はどうしてるん?」

鈴羽「わからない。はぐれちゃったんだよね、1998年に。ここ秋葉原で」

倫子「(……前視た鈴羽の記憶と一緒だ。ってことは、この世界線でも、前の世界線でも、かがりは1998年に居なくなったんだ)」

倫子「(鈴羽とはぐれたあとのかがりの行動が変わったせいで世界線が変動したのかな。だとすれば、どうしてかがりの行動が変わったのか、って話になるけど、うーん、わかんない……)」

ダル「なんでそんなことになったん?」

鈴羽「2000年問題を解決するために、1975年から跳んできたんだけど、そこでトラブルが起きた」

鈴羽「あの子は自分からタイムマシンを飛び出して――」グッ

鈴羽「あたしは、燃料が許す限り、何度も細かいタイムトラベルを繰り返して、あの子の姿を捜し回った」

倫子「そ、そんなことをしてたから紅莉栖の救出回数が――」

倫子「(言いかけて気付いた。これもまた、収束の結果なんだ)」

鈴羽「子守りひとつまともにできないせいで、世界が救えないなんて思ってもみなかった……」プルプル

670 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/16 21:03:47.35 hHWGS9LVo 1150/2638


ダル「だいたいの事情はわかったけどさ、どうして今まで黙ってたん?」

鈴羽「……ちゃんと自分で責任を取りたかったんだ。全部、あたしの落ち度だから」

倫子「(違う。そのせいで、紅莉栖救出のチャンスが、たった2回に減ったわけじゃない)」

倫子「(そこに因果関係は、あったとしても無いんだ……くそぅ……)」グッ

倫子「……鈴羽のせいじゃないよ」

鈴羽「ううん、それでも謝らせてほしい。ごめん、リンリン。父さん」

ダル「ま、起こったことは仕方ないっしょ。今鈴羽が困ってるなら、僕は全力で手伝うお」

鈴羽「で、でも――」

ダル「僕たち親子だろ?」

鈴羽「父さん……」

ダル「その子を捜そう。きっと見つかるって、な、オカリン?」

倫子「(やっぱりダルは娘のために頑張るんだね。αの時もそうだった――)」

倫子「……わかった。未来人を好き勝手させておくわけにはいかないからね」

鈴羽「リンリン……。ふたりとも、ありがとう」

倫子「別に、鈴羽のためじゃないから。世界線をこれ以上変えられたら困るだけだから」プイッ

ダル「謎のツンデレ頂きました」

鈴羽「ふふっ。珍しいものが見れた」

倫子「ぐぬぬ……」

671 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/16 21:10:46.89 hHWGS9LVo 1151/2638


ダル「で、その子の名前と年齢は?」

倫子「かがり……たしか、10歳くらい、だったかな」

鈴羽「そう。椎名かがり。今は22歳になってるはず」

ダル「椎名? ま、まさかその子って……」

鈴羽「椎名まゆりの娘だよ」

ダル「うぇ? マジ?」

倫子「ふふっ。やっぱり驚くよね」

倫子「(ねえ、紅莉栖? あのまゆりの子どもだってさ。あいつ、ちゃんと子育てなんて出来てたのかな? 紅莉栖も見てみたいよね)」

倫子「父親は誰なの? それに、鈴羽と一緒で母親の姓を名乗ってるのはどうして?」

鈴羽「かがりは戦災孤児だよ。身寄りのなかった彼女を、施設で働いていた椎名まゆりが引き取って育てたんだ」

ダル「あー……なんかそれ、まゆ氏らしいかも」

倫子「……そっか。でも、まゆりは母親になれたんだね。よかった」ニコ

672 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/16 21:12:58.33 hHWGS9LVo 1152/2638


鈴羽「あたしは、椎名まゆりのことは許せないけど、でも、かがりとは関係ない」

鈴羽「世界線のことが第一だけど、できれば助けてやりたいんだ」

ダル「その子の写真とかはある?」

鈴羽「うん。これ」スッ

倫子「この子が……って、隣の人は、まゆり?」

鈴羽「40代になっても椎名まゆりは歳を感じさせない風貌だったよ」

ダル「大人まゆ氏と手を繋いでる、この子に似た人を捜せばいいわけっすな」

倫子「難しそうだけど、手を貸すよ。まゆりの養女だしね」

倫子「(こんなことで私が過去へ跳ばないことの贖罪になるとは思えないけど……)」

倫子「(でも、ここで鈴羽を拒否してしまえば、私も鈴羽も、群れからはぐれた羊みたいになってしまう……)」

鈴羽「……ありがとう、リンリン」

ガチャ

まゆり「まゆしぃがようじょなの~?」

倫子「」ビクッ!!

ダル「よ、よよ、幼女化最強って話だお、あはは」アセッ

まゆり「トゥットゥルー♪ 最強幼女、まゆしぃです☆」

鈴羽「」イラッ

673 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/16 21:16:41.61 hHWGS9LVo 1153/2638


倫子「まゆり……おかえり」ウルッ

まゆり「オカリン、待っててくれたんだ、ありがとう」ニコニコ

倫子「よかった……生きてる……」ダキッ

まゆり「わ、わわ? もう、今日は甘えん坊さんなのかな? 良い子良い子」ナデナデ

倫子「ふぇぇ……」グスッ

ダル「オカリン養女説は?」

鈴羽「むしろ父さんが養女に取ってよ。そしたらリンリンとあたしは姉妹に……」グッ

まゆり「オカリンが幼女だった頃はね~、さいきょうだったよ~♪ 写真、見る?」

倫子「写真なんてあるわけ――」

まゆり「スマホにいっぱい入ってるんだー♪」スッ

倫子「あったーっ!? まゆり、これ、私の子どもの頃の写真じゃない!! いつの間に……」ゾワァ

まゆり「えっへへ~」

ダル「さすまゆ。幼馴染属性をフルに活かしてますなぁ」

鈴羽「えっと、椎名まゆりがリンリンの部屋にしのびこんで、アルバム写真をケータイで撮ったのをスマホに移植したってこと?」

倫子「これ、子どもの頃、一緒によく行った豊島園のプールの写真……私の水着姿っ!?」

ダル「幼女オカリンの水着姿とか……犯罪臭がハンパないお」ハァハァ

鈴羽「これは、いいものだね……」ゴクリ

倫子「い、今すぐスマホを貸しなさいっ! まゆりっ!」

まゆり「まゆしぃのPCにも外付けHDDにもクラウドにもバックアップ取ってあるから、消しても意味ないよ~?」ニコニコ

ダル「VR技術とか言うのを使えば、まゆ氏の記憶の中の写真をいつでも現像できるし、無駄なのだぜオカリン」ニヤリ

鈴羽「タイムマシンがある限り、いくらでも写真を手に入れられる世界に改変できるからね」フッ

倫子「こいつら……!!」

674 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/16 21:19:24.36 hHWGS9LVo 1154/2638

池袋 サンシャイン60通り


倫子「(まゆりの娘という少女が過去へ投げ出されたら、それこそ"椎名まゆり"という人物を求めて彷徨い歩きそうなもんだ)」

倫子「(警察に聞いたりすれば、当時4歳のまゆりに出会えたかもしれない)」

倫子「(そう思って、まゆり本人にそれとなく聞いてみたけど、そんな少女の存在は記憶に無いらしい)」

倫子「(当時まゆりとベッタリだった私の記憶にも無いんだから当然かとも思ったけど、世界線が変わってるからそうとも言い切れないか)」

倫子「(ともかく、今日に至るまでかがりは池袋に現れていない。それは逆に不可解な気もした)」

倫子「(まゆりを家まで送って、私はなんとなく夜の池袋をふらふらしていた。まあ、かがりが見つかるとは思えないけど……)」


prrrr prrrr


Ama紅莉栖『ハロー。報告はどうだった?』

倫子「え? あ、うん。普通に話しただけだよ」

倫子「("紅莉栖"と恋愛関係を築け、って言われたことはさすがに言えない、よね……)」ドキドキ

675 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/16 21:20:40.09 hHWGS9LVo 1155/2638


倫子「それより、ちょっと相談なんだけど……消息不明になった人を捜すには、どうすればいいかな?」

Ama紅莉栖『随分と唐突ね。詳しく教えて』

倫子「えっと、母親のまゆりの娘が……あ、いや、えっと……」

Ama紅莉栖『まゆりさんのお母さんの娘って、それ、まゆりさんじゃないの? もしかして、腹違いの義理の姉妹、ってこと?』

倫子「……まあ、そんなところ。その子、椎名かがりって言うんだけど、98年に秋葉原で確認されてから行方がわからなくなってて」

Ama紅莉栖『ふむん……まず、警察に行って、それから興信所に頼むとか。まあ、そういうことはもうやってるか』

倫子「(警察が発表してる身元不明者の確認くらいならやってると思うけど、戸籍を持ってない鈴羽が公的機関を利用したとは思えない)」

Ama紅莉栖『椎名かがりさんね。一応、私の方でもネットの海を漁ってみる』

Ama紅莉栖『国会図書館のデジタル新聞とか、各病院の入院者リストとか、警察のデータベース上で事件に巻き込まれていないかとかね』


   『世界線を超えようと、時間を遡ろうと、これだけは忘れないで』

   『いつだって私たちはあんたの味方よ』


倫子「……うん、ありがと。"紅莉栖"」

676 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/16 21:22:16.22 hHWGS9LVo 1156/2638

2010年12月16日木曜日
秋葉原CLOSE FIELD 陸橋


Ama紅莉栖『時間の許す限り、ありとあらゆるデータベースに侵入して情報をリサーチしたけど、該当者なしだったわ。一応、足はついてない』

倫子「(今の"紅莉栖"は、正確無比な天才少女にダル並のハッキング能力が加わったような状態なのか)」

倫子「うん、ありがとう」

Ama紅莉栖『私に出来ることは以上かな。あとはあんたたちにしか出来ないやり方で捜すしかないわね』

倫子「足で稼げ、ってことかぁ……いつの刑事ドラマだよ」ハァ

フェイリス「ニャニャ? キョー、じゃなかった、オッカリーン!」トンッ

倫子「ふぉぁっ!? フェイリス、おどかさないでよっ!」ドキドキ

るか「こんにちは、岡部さん」ニコ

倫子「ルカ子も。珍しい組み合わせだね、デート?」

るか「デ!? い、いえ、そんなことはっ」アタフタ

フェイリス「ニャフフ。ルカニャンもそろそろ女の子に興味を持ってもいい頃合いだと思うニャけど、実際どうなんだニャ?」ニヤニヤ

るか「フェイリスさん! ボクは、そういうのじゃないです……」モジモジ

倫子「(実際どうなんだろう?)」

677 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/16 21:24:17.79 hHWGS9LVo 1157/2638


るか「さっきそこでフェイリスさんに会って、ボクの荷物を持ってもらったんです」

倫子「あ、それなら私も手伝うよ」スッ

Ama紅莉栖『ちょっと! 私との話の途中で……また隠れてろってか。倫子ちゃんは人気者よね!』プンプン

るか「あれ? 今、誰かと通話中でしたか?」

倫子「ああ、いいのいいの。ちょっと相談ごとをね」ピッ

フェイリス「もしかして凶真の定時報告が復活したのかと思ったのに、がっかりだニャ」

倫子「フェイリス」ムーッ

フェイリス「わかってるニャ。オカリンは普通の可愛い女子大生ニャ!」プイッ

るか「相談って、岡部さん、何か困ってるんですか?」

倫子「あ、うん。実は今、人を捜しててね――」

678 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/16 21:26:27.51 hHWGS9LVo 1158/2638


・・・

フェイリス「ニャるほど、だいたいわかったニャ。フェイリスの方は黒木や"ご主人様たち"に聞いてみるニャ!」

るか「ボクの方もお父さんと、氏子の方たちにも聞いてみます」

倫子「ありがと。そうしてくれると助かる」

フェイリス「そういえば、関係あるかわかんニャいけど、ラジ館に出るおさげの幽霊の話なら聞いたことあるニャ」

るか「ゆ、幽霊、ですか……」プルプル

倫子「おさげの幽霊?」

フェイリス「なんでもその幽霊は、何年か一度に現れて、小さな女の子を見なかったかと色んな人に聞いて回っているそうなのニャ」

フェイリス「何年経ってもその姿が変わらないから、最近になっておさげの幽霊だって言われてるニャ。座敷童の都市伝説版だと思うんニャけど」

倫子「……ふふっ。ってことは、すず、じゃなかった、おさげの幽霊が現れたお店は、きっと商売繁盛するんだね」

るか「あっ、そういう守り神様なら良かったです。悪霊だったらどうしようかと」

倫子「それにしてもこの荷物重たいね……どうしたの、これ?」

るか「これはその……昨日の話の続きになるんですけど、例のお客さんのひとりがしばらくうちに滞在することになって」

フェイリス「それで、必要なものを買いそろえていたそうニャ」

倫子「それじゃ、漆原神社まで行きますか。よいしょ」

フェイリス「ご神体はルカニャン大明神だニャ」

るか「や、柳林神社ですよ、岡部さん!」

679 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/16 21:27:03.00 hHWGS9LVo 1159/2638

柳林神社


倫子「それじゃ、私はこれで」

るか「本当にありがとうございました」ペコリ

フェイリス「……ねえ、ルカニャン」

るか「え? あ、はい。なんでしょう、フェイリスさん」

フェイリス「ルカニャンは、凶真のどこに惚れたニャ?」

るか「え……え゛え゛っ゛!?!?」ドキッ

るか「えと、そんなことは、あの、ボクなんかが、そのっ!」アタフタ

フェイリス「――フェイリスにとって凶真は、初めて出会ったフェイリスと"同じ人"だったんだニャ」

るか「……え?」

680 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/16 21:28:27.72 hHWGS9LVo 1160/2638


フェイリス「普通、厨二病って、本当の自分を見失ってるのが普通ニャ。"本当の自分"はもっとすごい人間で、誰にも負けない存在だって思い込むのニャ」

るか「あ……」

フェイリス「自分ひとりの力だけじゃ戦えないから、別の何かの力が欲しい。自分に"設定"を作り上げることで、自分の弱さを覆い隠すの」

フェイリス「でもね。結局どこまで行っても自分は自分。弱い自分を受け入れられなければ、本当の自分は消えてなくなっちゃう」

るか「……はい。よく、わかります。僕も、弱い自分を受け入れることができませんでした」

フェイリス「フェイリスはそれが嫌だったニャ。フェイリスは"フェイリス"だけど、"秋葉留未穂"でもあるのニャ」

フェイリス「そして凶真は、フェイリスと同じように、弱い人間である"岡部倫子"を捨てていないし、見失っていない人だったニャ」

フェイリス「そんな凶真が、フェイリスは好きだったのニャン」

るか「好……っ!? あ、いえ……でも、それは、そのっ」

フェイリス「そう。"倫子ちゃん"は、大いなる戦いに敗れて、"凶真"を忌むべき存在として封印してしまった」

フェイリス「留未穂はね、フェイリスは、"凶真"が復活するその日を信じてる。たとえ倫子ちゃんが拒否しても、フェイリスは"凶真"が好きだから」

フェイリス「"本当の自分"である"凶真"を、取り戻してもらいたいから」

681 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/16 21:31:25.39 hHWGS9LVo 1161/2638


るか「……フェイリスさんは、すごい人ですね。ボクには、岡部さんが望んだことなら、仕方ないかなと思っていました」

フェイリス「でも、"凶真"のことが好きニャ?」

るか「……ボクは、そういう"設定"を口にする時の岡部さんが。生き生きとして、強気で何ものにも負けない気持ちでいる岡部さんが好きだったんです」

るか「初めは、ボクに似た人だと思いました。女性なのに男らしく振る舞っていて……でも、ボクが持っていないものをすべて持っていたんです」

るか「ボクはいつも、変わらなきゃ、変わらなきゃって思い続けるだけの、勇気のない意気地なしで……岡部さんはそんなボクを、"そんなことはどうでもいい"って肯定してくれて」

るか「いつの間にか、岡部さんの"設定"の中にボクが巻き込まれていました。秋葉の地の防人として、清心斬魔流の奥義を取得するための修行を続ける巫女であり、鳳凰院凶真の弟子、という」

るか「ちょっと困惑もしましたけど、でも、ボクは、岡部さんの"設定"の一部になっているのが、とても居心地よくて……」

るか「目を閉じて、頭の少し上の方に意識を集中させると、一緒に実験をしたり、妖刀五月雨から斬撃を放ったり……」

るか「自然に岡部さんのお婿さんになって、自然に赤ちゃんが産まれて、自然に岡部さんと家族になっていく光景が目に浮かんで……なんて、これは夢の話なんですけどね」

フェイリス「ルカニャンも誇大妄想家だったのニャ?」

るか「……そうなん、ですかね」

フェイリス「凶真はきっと、ラプラスの悪魔に封印されてしまっただけなのニャ。いずれその時が来れば、負けちゃいけない何かと戦うために、真の力を呼び覚ますはずニャ!」

るか「えぇっ!? あ、悪魔ですか!? ボクがお祓いしないと……!」

フェイリス「秋葉原の守護天使と防人のふたりの力で、凶真を運命の女神たち<ノルニル>の元へと導くのニャ!」

るか「は、はいっ!!」

682 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/16 21:31:53.78 hHWGS9LVo 1162/2638

2010年12月17日金曜日
未来ガジェット研究所


ダル「かがりたん、全然見つからんので、裏稼業の人に頼んでみることにしたお」

鈴羽「さっすが父さん」

倫子「大丈夫なの、その人」

ダル「もう来るはずだけど……」


コツ コツ コツ コンコン


ダル「はい、どうぞー」


ガチャ


倫子「……ああっ!?」

683 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/16 21:32:54.24 hHWGS9LVo 1163/2638


倫子「閃光の指圧師<シャイニングフィンガー>っ!」ダキッ

萌郁「わっ……?」キョトン

ダル「え、何? オカリン、知り合いなん?」

倫子「あ、いや……その、αでね」アセッ

ダル「え? ああ、なるほ。ってことは、βでは初対面なわけっすな」

倫子「う、うん……えっと、さっきは失礼しました……」

萌郁「べつに……気にしてない……」ドキドキ

倫子「(萌郁はやっぱりラウンダーのはずだよね……でも、IBN5100はもう無いし、タイムマシンの話さえしなければ問題ないはず)」

倫子「(まだ店長に騙され続けてるのかな……)」

鈴羽「お茶、どうぞ」

萌郁「どう……も……」

684 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/16 21:35:18.40 hHWGS9LVo 1164/2638


倫子「それで、ダル。説明して」

ダル「あぁ、この人は桐生氏。編プロのライターさんだお」

萌郁「桐生……萌郁です……」

倫子「ダルはどうしてこの人と知り合いに?」

ダル「前にさ、桐生氏が担当してる雑誌で、アキバ関係の都市伝説を扱った特集があったんだよね」

ダル「その時に、僕のバイトのこと取材したいって申し出があって。それに関しては丁重にお断りしたんだけど」

ダル「ただ、僕って普段から足がつかないようにかなり注意してるじゃん? なのに桐生氏は、その僕に辿り着いた。それが気になって」

萌郁「情報収集は……任せて……」

ダル「で、会ってみたらこの通り、すげー美人さんだったわけだお。萌えざるを得ないだろ常考!」

倫子「ホントにちょん切ってやろうか?」ニコニコ

ダル「ふ、ふふ。僕には鈴羽という人質が居るから、それは不可能なのだぜ」ゴクリ

倫子「ゴミ箱を漁ればティッシュに包まれた例のアレが出てくるでしょ、それを手に入れれば鈴羽が産まれる収束を利用して……ゴニョゴニョ」

鈴羽「そんな誕生の仕方嫌だよ、父さん」

ダル「す、すみませんでした……」orz

萌郁「……?」

685 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/16 21:36:00.59 hHWGS9LVo 1165/2638


萌郁「……人捜し……そう聞いた……」

倫子「(確かにラウンダーの萌郁なら、その辺の能力はあるんだろう。どういう情報網を持ってるのか聞くのはちょっと怖いけど)」

倫子「(SERNとのつながりがある以上、迂闊に近づくことができなくてもどかしい)」グッ

倫子「(……あるいは、前にラジ館のタイムマシンを覗いたのがラウンダーだったかどうか聞き出してみる? 危険だけど……萌郁に近づく価値はある)」

ダル「えっと、12年前に失踪した少女のことなんだけど――」


・・・


萌郁「……だいたい……わかった……やってみる……」

ダル「マジ? トンクス。んじゃ、報酬は成功報酬でヨロ」

萌郁「……了解した」

ダル「契約成立!」

686 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/16 21:37:07.55 hHWGS9LVo 1166/2638


・・・

倫子「ふぅ……どうしたものかなぁ」

鈴羽「リンリン。α世界線での桐生萌郁の話、聞かせてもらっていい?」

倫子「未来の私は話さなかったの?」

鈴羽「話してたかもしれないけど、忘れちゃったよ。あの頃は夢物語として、子守唄代わりに聞いてたから」

倫子「……下に店長さん、居る?」

ダル「え? いや、たしかさっき出掛けてったと思うけど……うん。軽トラ停まってないし、まだ帰ってきてないお」

倫子「……ラボメンナンバー005、桐生萌郁。300人委員会の陰謀に巻き込まれて洗脳された、ラウンダーっていうSERNの実働部隊の尖兵、ってところかな」ヒソヒソ

倫子「目的のためなら街を封鎖したり人を殺したりする、危険な奴らだよ」

ダル「ちょ!? それマジ!?」

鈴羽「洗脳兵士……この時代から既にあったんだね」

倫子「でも、大丈夫。奴らの目的は、タイムマシン研究の独占と、IBN5100の回収の2つだから、それらに関係なければ動かない」

ダル「IBN5100を破棄したのはそういう理由だったんか……いや、つか僕ってまさにタイムマシン研究をやってるわけだが」

倫子「絶対足はつかないんでしょ? スーパーハッカーさん」ニコ

ダル「あぅ……うん。いやあ、メガネ属性持ちのスタイル抜群美女かと思ったらとんでもねー伏兵だったっす……」ガックリ

倫子「私としては、彼女の洗脳を解いてあげたいくらいけど……」

鈴羽「これから世界が戦争に突き進むって言うのに、そんな悠長なことをしてる暇はないよ。あたしに言わせれば、敵兵だとわかってるなら今のうちに潰しておきたいくらい」

倫子「鈴羽……」

鈴羽「……もちろん、そんな目立つ行動はしないよ。安心して」

687 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/16 21:37:48.09 hHWGS9LVo 1167/2638

2010年12月20日月曜日
未来ガジェット研究所


倫子「これは……」

萌郁「……報告書」

鈴羽「どう、リンリン」

倫子「やっぱり、そう簡単に見つかるもんじゃないよね……」ペラッ ペラッ

鈴羽「そう……。かがり、どこで何してるんだろう……」

倫子「ん? 『調査の中でひとつ、興味深い事実が浮かび上がった』……?」

鈴羽「なになに? 『この1、2か月の間で、椎名かがりという名の女性を捜している人物が、私達以外にも存在するらしい』……どういうこと?」

倫子「(そんなバカな……椎名かがりは未来人だよ? どうしてこの時代に彼女を捜そうと思う人間がいる――)」


prrrr prrrr



688 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/16 21:39:28.64 hHWGS9LVo 1168/2638


倫子「もしもし?」ピッ

真帆『もしもし、岡部さん!? 私、比屋定ですっ!』

倫子「っ!? ど、どうしたの!?」ガタッ

真帆『今、あなたのラボのすぐ近くまで――』

ドンッ!!

倫子「比屋定さん!? 真帆ちゃん、どうしたのっ!?」

プツッ ……

倫子「嘘……でしょ……」プルプル

ダル「オカリン? 何かあったん?」

倫子「真帆ちゃんが誰かに襲われてる……」ワナワナ

ダル「真帆ちゃん……?」

倫子「ダルも会ったことあるでしょ!? 学園祭の時の!」

ダル「……ああ! あの中学生かお!?」

倫子「(私が……オレが、助けないと……っ!)」グッ

689 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/16 21:40:52.57 hHWGS9LVo 1169/2638


倫子「鈴羽はここで待機っ! オレたちからの連絡を待て!」

倫子「(ラボとタイムマシン研究を守ってもらわないと!)」

鈴羽「オーキードーキー! 何かあったらすぐ飛んでくよ!」

倫子「真帆の顔を知ってるダルは来いっ! 二手に別れて捜索するぞっ!」ダッ

ダル「オ、オカリン、これ! サイリウム・セーバーしかなかったけど、持ってくべき!」

倫子「こけおどしになるか……よしっ!」ガチャ タッ タッ タッ

690 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/16 21:42:08.04 hHWGS9LVo 1170/2638

裏路地


倫子「(どこだ!? ラボの近くとは言っていたが……駅からの動線を考えるとこの辺のはず……)」キョロキョロ

倫子「(……っ!? あ、あそこに居るのはっ!)」


真帆「やめて……離してってばっ……!」

??「……!! ……?」ギューッ


倫子「(何者かに締め上げられてる!? ……日本人じゃない!?)」プルプル

倫子「("未来人を捜す外国人"……っ!! このままじゃ……くそっ!)」ダッ

倫子「真帆っ!!」

真帆「ふえっ!?」

??「―――!?」

倫子「お、おお、おいっ、真帆を離せぇっ!! この得物が目に入らないのかぁっ!?」ガクガク

??「…………」


   『……死にたく……ないよ……』


倫子「(あんな思いは、あんな思いは二度としたくない……っ!)」ポロポロ

691 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/16 21:43:52.48 hHWGS9LVo 1171/2638


倫子「も、もう一度言うっ! その子を――」ガタガタ

真帆「ち、違うの、岡部さん」アセッ

倫子「はな……えっ?」

??「"Oh!! So cute! KAWAII!"」ダキッ

倫子「ふおわぁっ!? な、なな、なんぞ~!?」ジタバタ

真帆「きょ、教授! 岡部さんがおっぱいで窒息しちゃいますっ!」


・・・


倫子「……えっと、この人は比屋定さんの知り合いなの?」

真帆「ごめんなさい。私が早とちりしたせいで……」

レイエス「どうも~♪」

倫子「ああっ、え、ええと……ナイス、トゥ、ミーチュー……」

真帆「……今度"紅莉栖"に日常英会話も教えるよう言っておかないといけないね」ハァ

レイエス「フフ、日本語でいいわよ」

真帆「え? 教授って日本語喋れたんですか?」

レイエス「女にはね、色々秘密があるの」ンフ

倫子「えっと、岡部倫子です。教授……なんですか?」

レイエス「"psychophysiology"、精神生理学を研究しているわ」

真帆「レイエス教授は、今度日本で開かれるAI関係の学会に出席するために、来日したんですって」

倫子「(なぁんだ……てっきり、かがりを探してる外国人かと)」ホッ

692 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/16 21:45:50.51 hHWGS9LVo 1172/2638


真帆「でも、レイエス教授も人が悪いですよ。駅からつけてくるなんて」

レイエス「ナンノコトアルカ? ソンナコト、シテナイヨロシ」

倫子「(誤魔化し方下手くそ過ぎか!)」

レイエス「美人なお嬢さんと、もっといっぱいおしゃべりしたいところだけど、マホに悪いし、ワタシは行くわね。Bye!」スタ スタ

倫子「……真帆ちゃんの周りは変人ばっかりだね」

真帆「変人じゃないと科学者なんてやってられないわ……というか真帆ちゃん言うなっ! さっきも、お、大きな声でぇっ……」プルプル

倫子「そ、それは、だって比屋定さんが!」

真帆「……そうだったわね。その、勘違いさせてごめんなさい。それと……ありがとう」

倫子「あ、そうだ! ダルに大丈夫だったって連絡しなきゃ……え、なに? なにか言った?」

真帆「い、いえ! なんでもないわ! なんでもないわよ!?」アセッ

倫子「せっかくラボの近くまできたし、安全だったことを報告しがてら、寄っていかない?」

真帆「え、ええ。元々ラボに行くつもりだったし。岡部さんに聞きたいことがあって」


天王寺「おう、岡部。何やら慌ただしくしてたみたいだが……おっと、そっちは綯のお友達か?」

真帆「えっ?」

倫子「(ぷくくっ……)」プルプル

693 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/16 21:48:36.08 hHWGS9LVo 1173/2638

未来ガジェット研究所


真帆「お騒がせしました」ペコリ

ダル「いやいや、真帆たんが無事ならモーマンタイなのだぜ」

真帆「ま、まほ……たん……」プルプル

鈴羽「それじゃ、話を戻した方がいいかな? かがりを捜してる人間が他にも居るって話」

萌郁「……中には外国人も……ここ1、2か月の出来事……」

倫子「ふむん……椎名かがりは、こっちに来てもう12年にもなる。その間、知り合いが出来たとしてもおかしいことじゃない……」

ダル「つーか、むしろ誰かの世話にならないと生きていけないっしょ」

倫子「それならどこかのデータベースに名前が載ってそうなもんだよ。入院記録、施設利用記録……世話人は、かがりを世間から隔離し、監禁していた?」

鈴羽「最近になってそこから脱走して、世話人がそれを捜索してるってこと?」

倫子「そこに外国人が居る……ラウン、じゃなかった、マフィアとかと関わってたりしなければいいんだけどな……」

倫子「もえ、いや、桐生さん。引き続き調査をお願いできますか?」

萌郁「……わかった」

ガチャ バタン ……

694 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/16 21:50:23.11 hHWGS9LVo 1174/2638


真帆「なんだか物騒な話をしていたみたいだけど……」

倫子「えっと、うん。知人を捜してて」

倫子「(冷静に考えて、10歳の女の子が突然26年前の世界に投げ出されたらどうなるか)」

倫子「(……通常の時間進行や因果律から切り離された、絶対の孤独。少女の身に余りある絶望だ、想像を絶する)」

倫子「(最近まで生きていた事実が発見できただけでも奇跡。あるいは、生かされていた?)」

倫子「(10歳の少女に自分が未来人であることを隠し通せるとは思えない。SERNじゃなくても、どこかの研究機関の手に渡ってしまえば、その未来的言動を精査されるかもしれない)」

倫子「(そしていずれは陰謀の魔の手に……これが絵空事じゃないんだから嫌になる)」グッ

倫子「(その外国人組織とやらが、未来の情報をかがりから手に入れてしまったらどうなる?)」

倫子「(……それは、世界線の確定事項に反する選択ができるようになる、ってことなんじゃないか?)」ブルブル

倫子「(また私の気付かないところで世界線が変動する可能性がある……っ。世界が……ヤバイ……)」ガクガク

695 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/16 21:51:53.05 hHWGS9LVo 1175/2638


鈴羽「えっと、それで、その、比屋定さんってのは……どちらさん?」

倫子「えっ? ……ああ、今私がテスターをやってる研究の、主任研究員なんだ」

真帆「ヴィクコン脳科学研所属の比屋定真帆、こう見えても21歳よ」

ダル「ほう、合法ロリですたかブフォ!!」バタッ

鈴羽「――――っ。ごめん、続けて」

ダル「あぁ、娘に無言で肘鉄を食らわされるとか、それなんてご褒美……ハァハァ」

鈴羽「眼球を嘗め回してあげようか、父さん」ジトーッ

ダル「い、いや、そこまでハードなのはちょっと……」

真帆「……どういう関係?」

倫子「そういうプレイなんだよ、気にしないで」

696 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/16 21:52:42.22 hHWGS9LVo 1176/2638


倫子「それで、私に話って?」

真帆「……最近、通話してる時、なんだかよそよそしいじゃない? この間なんか、他の女の子と話し始めちゃったし」

倫子「うぐっ!? あの子から聞いたんだ……」

真帆「もしかして、一緒に話すの、つらい?」

倫子「い、いや、そういうわけじゃないよ。ただ、教授から恋愛だなんだって言われて、つい意識しちゃって……」

真帆「私だってつらいのよ!? 女の子のあなたに、好意をよせるようにするなんて、どうしたらいいか……」グスッ

倫子「な、泣かないでよ。……ごめん、今までの関係でいられるよう、努力する」

真帆「岡部さん……」ウルッ


鈴羽「……修羅場?」

ダル「……三角関係?」

萌郁「……痴情のもつれ?」

倫子「ちっがーうっ!! というか萌郁は帰ってよっ!!」

697 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/16 21:56:17.45 hHWGS9LVo 1177/2638

2010年12月23日(祝)木曜日
未来ガジェット研究所


倫子「(今日から大学は冬休みなので、まゆりとふたりで池袋からラボまでやってきた)」

ガチャ

倫子「入るよー……あれ、鈴羽はもう出かけたのかな」

まゆり「はふぅ、今日も寒いね~。ちょっと暖まってからまゆしぃは買い物に行くね」

倫子「(冷房設備の乏しいラボだったけど、鈴羽が暮らし始めてからはいつの間にか暖房が整っていた。ダルあたりが娘の為に買ったんだと思う)」

倫子「(かがりを捜し始めて1週間経ったけど、未だ進展なし、かぁ……でも、こうして鈴羽と同じ目的の行動を取れることは、少し嬉しい)」

まゆり「あのね、まゆしぃはとっても残念なのです」

倫子「なにが?」

まゆり「オカリンが色んな女の子と仲良くしてるのは嬉しいんだけどね?」

まゆり「そのせいで寂しい思いをさせちゃうのは、よくないと思うな……あっ、まゆしぃのことは別にいいんだよ?」

倫子「……ダルか」ギリッ

698 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/16 21:57:47.62 hHWGS9LVo 1178/2638


まゆり「それと、クリスマスパーティーもできなくなっちゃって残念だよ~。フブキちゃんもカエデちゃんも急用が入っちゃうなんて……」

倫子「(昔の私だったら、なにかの陰謀か! とか言って喚いてただろうけど、まあ、偶然だよね)」

倫子「ダルは由季さんとクリスマスデートだったね。それはいいことなんだけど、そろそろあの口軽デブは一発シメとかないと……」

まゆり「オカリンさえ良かったら、まゆしぃの家でお食事しない? お父さんが大きなケーキを買ってくるって言ってたから」

倫子「あー……」

まゆり「オカリンも予定入ってるのかな?」

倫子「えっと、大学のシンパ、じゃなかった、友達に誘われてるんだけど……そっちは断るよ」

まゆり「えぇー!? 悪いよぅ」

倫子「私がいいって言うんだからいいの! 今年のクリスマスはまゆりと一緒に過ごしたい」ダキッ

まゆり「……えっへへ~。まゆしぃは幸せ者だね~」ホカホカ

699 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/16 21:59:22.87 hHWGS9LVo 1179/2638


まゆり「そうだ! ねぇ、オカリン。ラボでクリスマスパーティーはできないけど、お正月パーティーをするのはどうかな?」

倫子「うん、いいんじゃない」

まゆり「だよねだよね~。あとでみんなに聞いてみるね~」

まゆり「さてと、まゆしぃはそろそろ行くね。フブキちゃんのコミマ用のコスで急に小物が必要になっちゃって」

倫子「もうそんな季節か……気を付けて行ってきてね」

まゆり「はーい」トテトテ

ガチャ バタン 

700 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/16 22:00:46.77 hHWGS9LVo 1180/2638



・・・


コツ コツ コツ コンコン


倫子「ん? 誰だろう……どうぞー」

ガチャ

るか「こんにちは……」

倫子「ああ、ルカ子。寒いでしょ、入って入って」

るか「あの、岡部さん。その……相談があって……」

るか「実は、会ってもらいたい人がいて、連れてきたんですけど、いいですか?」

倫子「会ってもらいたい人?」



??「あの……はじめまして……」



倫子「え――――――」ドクン



倫子「嘘、でしょ……!?」ドクドクン



??「……あ、あの……?」



倫子「――紅莉栖……っ!!」ドクンドクンドクン

701 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/16 22:01:29.25 hHWGS9LVo 1181/2638


倫子「(――よく見ると全然紅莉栖じゃなかった。確かに顔は似てるけど……ある一カ所が似ても似つかない)」ジーッ

巨乳の女性「……?」

倫子「で、ルカ子。この人は?」

るか「その、前に話したことがありましたよね? お父さんのお客さんが泊まってるって。この人がそうなんです」

倫子「ああ、前に荷物を運んだ」

るか「正確に言うと、お父さんの知人が連れてこられた方で……」

倫子「えっと、お名前は?」

るか「……実は、相談というのはそのことなんです」

女性「…………」シュン

倫子「……?」

るか「あの、この人が誰なのかを、その、知るには、どうしたらいいでしょうか……」

倫子「え、えっと、どういうこと……?」

るか「記憶喪失、なんだそうです」

倫子「記憶、喪失? それじゃ、名前も?」

女性「……はい」

702 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/16 22:05:30.29 hHWGS9LVo 1182/2638


倫子「でもルカ子。どうして私に?」

るか「岡部さんなら記憶を取り戻すいい方法を知っているんじゃないかと思いまして」

るか「ほら、岡部さん、よく人間の脳とか記憶とか、すごく難しい話をたくさんしてたから……」

るか「(本当は、『凶真さん』をやめた岡部さんに、こういうことを相談するのはどうかと思ってたんだけど……フェイリスさんとの約束を信じよう)」グッ

倫子「(この私がβ世界線のルカ子にそんな話をした記憶はないけど、SERNにクラッキングを仕掛けた頃の私がきっとしていたんだろう)」

女性「なんでもいいんです! 私が自分のことを取り戻せる方法があれば!」ヒシッ

倫子「(うっ……やっぱり顔は紅莉栖に似てる……)」ドキドキ

倫子「(一応、私だって知識が無いわけじゃない。OR物質を励起状態にさせるために、記憶のバックアップと類似の電気信号を脳に流してやればいいんだ)」

倫子「つまり、記憶を失う前と同じような行動をすれば、記憶は戻りやすくなる……」

703 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/16 22:06:22.89 hHWGS9LVo 1183/2638


倫子「……と言っても、その記憶さえないんだよね?」

女性「はい……」

倫子「それじゃあ手詰まりだね……」

るか「だったら、なにか身元を調べることはできないでしょうか。カナさん、本当に辛そうで……」

倫子「カナさん?」

カナ「仮の名前だからカナと、るかさんのお父さんが……。名前がないと不便だからって」

倫子「……カナさん。漆原家で、なにかその、衣装を着るように強制されたりはしてませんか?」

カナ「え、えっと?」

るか「それはボクが全力で阻止しています」キリッ

倫子「ルカ子、強くなったね……」

704 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/16 22:07:26.52 hHWGS9LVo 1184/2638


倫子「ホントに全部記憶がないの? なにか印象的なことが残ってたりとかは?」

カナ「えっと……これが記憶なのかはわからないんですけど、私、男の人と居るより、女の人と居る方が、その、安心するんです」

るか「は、はい。それで歳の近いボクが居る神社を紹介されたとも言ってましたね」

倫子「(知らぬが仏ってこともある……それに、これは記憶というより本能的なものかもしれない)」

カナ「それと、あの、岡部さん? と初めて会った気がしなかった、というか……岡部さんを見ると、少し、ドキドキします……」

るか「ボ、ボクも岡部さんと一緒に居るとドキドキしちゃいます」テレッ

倫子「(もしかしてこの子、紅莉栖と似てるだけじゃなくて、百合属性まで……いや、どうでもいいか)」

倫子「持ち物とかから、記憶喪失前の行動を推測できればいいんだけど」

倫子「(身分証なんかを持ち歩いていたなら、そもそもこういうことで悩んだりしないはずだよね)」

カナ「……ひとつだけ……ただ、これが手掛かりになるのかどうかは……」スッ

倫子「これは……?」

705 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/16 22:09:59.94 hHWGS9LVo 1185/2638


ガチャ

まゆり「あれー? もしかして、お客さんかなぁ?」

鈴羽「…………」

倫子「ああ、まゆり。鈴羽も。お帰り」

るか「あ、まゆりちゃん!」

まゆり「るかくん! トゥットゥルー♪」

鈴羽「るか兄さん、そちらの人は?」

カナ「(兄さん?)」

るか「ええと……かくかくしかじかで……」

まゆり「わぁー! その手に持ってるの、うーぱですよね? まゆしぃも大好きなのです♪」

倫子「そうそう、これ、うーぱのキーホルダーだね。ちょっと色褪せてるけど」

カナ「あ……」プルプル

706 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/16 22:10:38.49 hHWGS9LVo 1186/2638


まゆり「でも、このうーぱ、随分古いみたいだけど、この前の劇場版の"森の妖精さん"バージョンだよー?」

まゆり「まゆしぃも持ってるんだー。るかくんが見つけて買ってきてくれたの。ねー」

るか「うん。まゆりちゃんがなかなか見つからないって言ってたから、お父さんに聞いたらすぐ手に入れてきてくれたんだよ」

るか「だから、カナさんが持ってるのもそれかなって思ってたんですけど」

倫子「でも、それならどうして古びてるんだろう……というか、このうーぱ、どこかで見たような気が……ん?」

カナ「……はぁ……はぁっ……」プルプル

るか「だ、大丈夫ですか、カナさん」

倫子「具合が悪いの?」

カナ「だいじょう、ぶ……」フラッ

るか「あっ!」ダキッ

倫子「えっと、ソファーで横になって休んでもらっても……鈴羽?」

鈴羽「そ……それ、そのうーぱ……」ワナワナ

707 : ◆/CNkusgt9A - 2016/04/16 22:11:33.81 hHWGS9LVo 1187/2638


鈴羽「あたしは、知ってる。そのうーぱ……それ……」プルプル

倫子「えっ……あっ!」


   『ママがずっと大切にしてきた"うーぱ"のキーホルダーだよ』


倫子「かが……り?」

鈴羽「お前はかがり!? 椎名かがりなのか!?」

カナ「――――!」バタッ

るか「カナさんっ!?」

倫子「ね、ねえ! 大丈夫!? ねえ――――」

717 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 11:44:42.57 JUk1twV7o 1188/2638

第14章 軌道秩序のエクリプス(♀)


倫子「……少し、落ち着いた?」ギュッ

カナ「はい……ありがとうございます……」

倫子「(たぶんこの人が椎名かがりだ。面影もある。となると、まゆりがこの場に居るのは少しマズイ……)」

倫子「まゆり、ルカ子。悪いけど、何か冷たいものでも買ってきてくれないかな? もしかしたら、暖房に当てられて気持ち悪くなっちゃったのかも」

まゆり「うん、わかった~。行こう、るかくん?」

るか「あ……うん……」


ガチャ バタン


鈴羽「かがり、お前、今までどこで何をしていた。あの時、なんのつもりで……っ!!」ギロッ

カナ「え……?」ドキドキ

倫子「鈴羽、落ち着いて。彼女は記憶を失ってる」

鈴羽「えっ!?」

718 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 11:46:17.78 JUk1twV7o 1189/2638


カナ「(おさげの人に大声で怒られて、なんだか嬉しい……?)」ドキドキ

倫子「カナさん、そのうーぱをどうして持ってたか、わかる?」

カナ「わ、わかりません。記憶を失くして倒れていた私が、ただひとつ手にしていたのが、このキーホルダーだったそうです」

倫子「倒れてた? どこで?」

カナ「千葉の、山道です。県境あたりの。近くのお寺の住職さんが偶然通りかかって、見つけてもらったそうで……」

倫子「まるで昔話みたいな話だね……ってか、千葉の県境あたりに山道なんてあったっけ?」

鈴羽「……今ネットで調べてみたら、市川の真間山ってところぐらいかな? 山というより丘って感じだけど」

カナ「ですが、お寺に長く女性を置いておくことはできないということで、るかさんの神社を紹介してもらって、そこでお世話になっているんです」

鈴羽「まさかこんな近くに居たなんて……」

719 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 11:48:09.00 JUk1twV7o 1190/2638


倫子「カナさん。あなたは、『椎名かがり』という名前を聞いて、なにか思い出すことはない?」

カナ「……正直を言うと、よく、わかりません。ただ、すごく懐かしい気がします」

カナ「それに、先ほどの方……」

鈴羽「椎名まゆり?」

カナ「まゆりさん……。あの方を見たとき、なぜだかすごく、温かい気持ちになりました」

倫子「(26年後もまゆりはあまり歳を取ったようには見えなかった。面影が残っているんだろう)」

カナ「私は、その……椎名かがり、という名前だったんでしょうか」

鈴羽「間違いない。そのキーホルダーがなによりの証拠だよ」

鈴羽「それは、かがりが大事にしていたものだ。でも、よりによって記憶喪失だなんて……」

倫子「(唯一自分をまゆりと結びつけ、自分が未来から来たことを示してくれる証明だったんだろう)」

倫子「(記憶すべてを失ってもそれだけを持っていたことを考えると、相当大切なものだったはずだ)」


ガチャ


まゆり「トゥットゥル~?」

るか「あの、入っても大丈夫ですか……?」

倫子「うん。ごめんね、わざわざ」

るか「いえ……あっ、色々買ってきましたので、どうぞ」スッ

721 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 11:49:06.26 JUk1twV7o 1191/2638


・・・

倫子「……というわけなんだ」

るか「名前だけでもわかってよかったです! あ、でも、それなら阿万音さんはかがりさんの本当のお家を知っているんでしょうか?」

鈴羽「……まあね。知ってはいるけど、もう何年も後の話だよ」

るか「何年も、"あと"?」

倫子「えっと、何年も"前"の話なんだ。かがりさんは12年前に引っ越してしまって、それから行方がわからなかったらしい」

鈴羽「あっ、そ、そうそう。あはは……」

倫子「(鈴羽のおっちょこちょいはどの世界線に移動しても変わらないんだろうなぁ)」

倫子「だから、最近まで居たはずの家がどこかも、家族がどうなってるかも、私達にもわからないんだ」

るか「そう……なんですか……」シュン

倫子「あとは、かがりさんが記憶を取り戻してくれれば、すべてがわかると思うんだけど……」

倫子「まゆり、鈴羽。かがりさんと色々おしゃべりしてみてくれないかな?」

まゆり「えっ? うん、わかった!」

鈴羽「なるほど、わかった」

722 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 11:50:01.02 JUk1twV7o 1192/2638


まゆり「えっと、かがりさん? まゆしぃと同じ苗字なんだね。まゆしぃも『椎名』って言うのです」

かがり「そ、そうみたい、ですね」

倫子「椎名って名前はそこまで見かける苗字じゃないけど、かと言って別段珍しい苗字でもないから、こういうこともあるよね」

鈴羽「そ、そうそう! 至極フツーだよフツー!」

倫子「(こいつ……)」

まゆり「記憶喪失って、つらいことだよね……自分の大好きな人のことも忘れちゃうんでしょ? それって、すごくすご~く哀しいことだってまゆしぃは思うのです」

まゆり「だからね、うまく言えないけど、まゆしぃもお手伝いするから、頑張ろうね!」ニコ

かがり「っ……」ポロポロ

まゆり「わわっ、急にどうしちゃったのかな? まゆしぃ、なにか変なこと言っちゃったかな?」

かがり「っ……そうじゃ、ないんです。ただ、まゆりさんの言葉を聞いて……なんだか……嬉しく、て……っ……!」

倫子「(これは……。もう、まゆりの未来の娘だってこと、隠さない方がいいのかな……)」

倫子「(でも、それは記憶を取り戻してからだ。今、あなたは未来人だと告げたところで、記憶の無いうちはさらに混乱するばかりだろう)」

倫子「(……記憶が戻ったとしても、戦災孤児としての記憶なんだよな。戻らない方が幸せ、なんてこと、あったりするんだろうか)」

723 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 11:51:22.47 JUk1twV7o 1193/2638


倫子「えっと、かがりさんさえ良ければなんだけど、ここで寝泊まりするのはどうかな? 鈴羽も居るし」

倫子「(鈴羽やまゆりと会話しているだけで未来の記憶は思い出しやすくなるはずだ)」

るか「えっ? で、でも、ここって、お風呂、無いですよね?」

鈴羽「シャワーならあるよ。洗濯のたびにコインランドリーに行く必要はあるけど」

るか「それだったら、しばらくは今まで通りうちに泊まっていただいた方が……湯船も洗濯機もありますし。もしよければ、鈴羽さんも一緒にどうですか?」

鈴羽「えっ? あ、えっと……」

倫子「うん、それが良いよ。鈴羽も、毎日ここのソファーで寝るのは大変でしょ」

鈴羽「リンリン! ……あたしには、父さんの研究とタイムマシンを絶対守護するっていう使命もあるんだよ」ヒソヒソ

倫子「あっ、そっか……。じゃあ、かがりさん、いつでもここに遊びに来ていいからね。鈴羽も、時間があったらルカ子の家に遊びに行きなよ」

かがり「はいっ! 岡部さんに会えるのも私、嬉しいです……!」

まゆり「まゆしぃも遊びに行っていい?」

倫子「うん。それがいい」

かがり「みなさん、ありがとうございますっ」ニコ

倫子「(とりあえず、このことを萌郁と"紅莉栖"に連絡しておこう)」

724 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 11:52:17.15 JUk1twV7o 1194/2638


倫子「(……冷静に考えてみると、おかしなことばかり)」

倫子「(かがりさんの記憶喪失は、自分が倒れていた時点より以前の記憶が無いというもの。ということは、行き倒れる前後に脳になにかしらの障害が発生したことになる)」

倫子「(外国人組織がかがりさんを追っているとしたら……かがりさんはそこから逃げていた? でも、今になってどうして?)」

倫子「(その組織に12年間監禁されてた? もし記憶喪失が人為的なものだとしたら……記憶に関する実験をされた、とか?)」

るか「えっと、名前もわかったことですし、警察に……」

倫子「……ルカ子。かがりさんを神社の外になるべく出さないで欲しい。記憶が完全に戻るまででいいから」

るか「え? どうして……ですか?」

倫子「理由は聞かないで。お願い」

倫子「(警察もダメ。私はα世界線でラウンダーの圧力に屈する警察を見てきたし、β世界線でも紅莉栖の死に関して警察は不穏な動きをしている)」

るか「はい……わかりました。岡部さんがそう言うなら」

倫子「なにもなければ一番いいんだけどね……」

725 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 11:52:53.48 JUk1twV7o 1195/2638

2010年12月24日金曜日
柳林神社


るか「あ、まゆりちゃん! それに、岡部さんも」

まゆり「るかくん、かがりさんも、トゥットゥルー♪」

かがり「っ!? そ、その、トゥットゥルーって言葉……!」ドキドキ

かがり「かわいいっ……!」パァァ

まゆり「ホントっ!? そう言ってくれる人、初めてだよぉ!」

かがり「まゆりさん、トゥットゥルー♪」

まゆり「トゥットゥルーだよー、えっへへー♪」

かがり「はうっ!!」ドキドキ

るか「だ、だいじょうぶですか……?」

かがり「はぁ……はぁ……トゥ、トゥットゥルー……」

まゆり「えと、トゥットゥルー?」

かがり「はうあっ!!」ドッキーン

まゆり「トゥットゥルー……?」

かがり「トゥットゥルーッ! トゥットゥルーッ!!」ハァ ハァ

倫子「やめろぉ! もうやめるんだぁっ!」

726 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 11:53:34.70 JUk1twV7o 1196/2638


かがり「すみません、なんだかテンションが上がっちゃって……」

倫子「(母親になったまゆりも使い続けてたんだろうなぁ……オリジナル挨拶を子どもに教えるとは、まゆり恐ろしい子……)」

ピッ

倫子「ん、鈴羽からRINEだ」


鈴羽【かがりの事なんだけど】

【なにか、気になることがあるの?】倫子

鈴羽【あたしさ、かがりが記憶を失ってて、少し、ホッとしちゃったんだ】

鈴羽【かがりの元の記憶が戻るのが、怖い、とも思ってる】

鈴羽【あたしのこと、きっと恨んでるから】

【それでも鈴羽は、記憶が戻ってほしいと願ってるんでしょ?】倫子

鈴羽【うん、そうなのかな】

【そうだよ。鈴羽はかがりのお姉ちゃんなんだから、ね】倫子

鈴羽【そうだった。ごめん、この会話は誰にも教えないで】

【わかった。怖がることはないからね】倫子

727 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 11:54:55.53 JUk1twV7o 1197/2638


倫子「かがりさん、調子はどう?」

かがり「お、岡部さんに会えるだけで元気が出てきます! でも、記憶の方はまだ何も……」

倫子「記憶に関しては無理して思い出そうとする必要はないよ。そのうち記憶は戻ってくるって」

かがり「わかりましたっ♪」ニコ

倫子「(なんというか、幼さの残る笑みだ。22歳くらいのはずだけど、子どものように無邪気で……)」

栄輔(ルカパパ)「おや、岡部さん。久しぶりだね」

倫子「」ビクゥッ!!

倫子「(最後にこの人に会ったのはいつだろうか。私が"鳳凰院"をやめてからは"岡部さん"と呼んでもらっている)」

栄輔「メリークリスマス。ところでサンタコスに興味はないかな?」

倫子「い、いやいや、ここは神社でしょう!?」

栄輔「なに、巫女服と色が同じなら大丈夫だろう。ハッハッハ。もちろんミニスカサンタだよ」

倫子「なんで持ってるんです……」ゾワッ

るか「うちの父がすみません……」

まゆり「まゆしぃもね、オカリンには似合うと思うなー」

かがり「ぜ、是非着てみるべきです! 岡部さんのミニスカサンタ……」ハァハァ

倫子「(……ホントにこの人、紅莉栖なんじゃないか?)」ゾクッ

728 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 11:55:55.85 JUk1twV7o 1198/2638


栄輔「そうだ。いいことを考えたよ」

栄輔「せっかくこれだけ女の子がいるんだから、お正月にはミコミコ天国<パラダイス>、じゃなかった、神社を手伝ってもらうというのはどうだろう?」

倫子「ヒッ……」ゾワワァ

るか「み、みんなに悪いですよ、お父さん!」

かがり「ううん、私なら大丈夫だよ、るかくん。お世話になってるんだもん、それぐらいさせて」

倫子「そうじゃない、そうじゃないんだ、かがりさん……」

かがり「それに、巫女服を着た可愛い女の子がたくさん……うふふ」ニヘラ

まゆり「う~ん、まゆしぃは自分で着るのは……」チラッ

倫子「えっ? あ、ああ。そうだね、まゆりは作るの専門だもんね。まあ、巫女服はコスプレじゃないけど……」

栄輔「かがりちゃんを公的に扱えない事情があるんだろう? うちで預かっている以上、ここで私に借りを作っておくべきだと思うんだけどね」ヒソヒソ

倫子「こ、こいつ……!!」

栄輔「大人はね、ズルいんだよ」ニコニコ

729 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 11:58:48.28 JUk1twV7o 1199/2638


倫子「ごめん、まゆり……一緒に巫女さんやろう……」シクシク

まゆり「オカリンがそういうなら~」

かがり「やったーっ!」ニコニコ


鈴羽【かがりがやるならあたしもやる。用心棒として側に居たいし、バイト代も欲しいしね】


栄輔「そうか! それは良かった! そうと決まれば準備しなければ! 母さん!」タッ タッ

倫子「クソ神主め……いつか神罰が下るぞ……」グヌヌ

るか「ごめんなさいっ! 本当にごめんなさいっ!」ペコペコ

まゆり「でもね、るかくんのお父さんは、オカリンたちに重荷に感じてほしくなかったんじゃないかな?」

倫子「(……たまにまゆりは鋭いことを言うんだよね)」

倫子「(確かにかがりさんを一方的に受け入れてもらってるだけだったら対等な関係が崩れてしまっていたかもしれないし、そんなことになればかがりさんのためにならない)」

倫子「そういや、すごい失礼なことを聞くんだけど、サイズ合うのかな? ルカ子のソレとまゆりやかがりさんのソレの差が……」

るか「あ、それなら大丈夫です。お姉ちゃん用のがありますし、巫女服と言ってもお着物ですから、調整はできますよ」

倫子「そっか、ルカ子のお姉ちゃん用の巫女服もあるんだ。着てないんだろうなぁ」

まゆり「かがりちゃん、とっても似合うと思うなー」

かがり「まゆりちゃんの方こそ……ジュルリ。えっと、私もがんばってみるね」ニコ

730 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 11:59:57.08 JUk1twV7o 1200/2638

秋葉原テレビセンター


倫子「(正月パーティーの準備をするという3人娘(※うち1人男性)を神社に残して、ラボへ向かった)」

Ama紅莉栖『それで、記憶が戻るまではあの神社で匿うことにしたわけか。警察を頼るべきだと思うけど』

倫子「もしかがりを捜してるのが警察だったら、鈴羽が悲しむ。まずは記憶が戻ってからじゃないと」

Ama紅莉栖『まあ、ありとあらゆるデータベースに名前が無いってのは相当不可解だから、私も現状はあんたの考えに賛成しとく』

倫子「ありがと」

Ama紅莉栖『それで、記憶を取り戻すってことに関してだけど……あ、あれ? 向こうから先輩の声がする』

倫子「えっ?」


真帆「――だから何度言ったらわかるのよ、あなたホントに日本の警察官!?」

真帆「……証明するもの? ちょっと待って、今……」ゴソゴソ


倫子「お巡りさん。彼女はれっきとした成人女性です。それ以上追求するならセクハラで訴えますよ?」ニコ

警官「あ、そう……そうか、小学生じゃないんだ……」スタスタ

真帆「なんなの、もうっ! 謝るくらいしたらどうなのよ!」

倫子「警察なんて、ひと皮剥いたら暴力団と一緒だよ」

Ama紅莉栖『さすがに私怨入りすぎでしょ』ハァ

真帆「それはうがった見方だと思うけれど……でも、追い払ってくれてありがとう、岡部さん」

倫子「今日は素直だね、真帆ちゃん」ニコ

真帆「真帆ちゃん言うなっ!」

731 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 12:01:21.10 JUk1twV7o 1201/2638


倫子「というか、こんなところで子どもが何してるの?」

真帆「へぇー、それは宣戦布告と見てよろしいかしら?」ゴゴゴ

倫子「よ、よろしくないです……」

Ama紅莉栖『あんまり調子乗って先輩をいじると痛い目見るわよ。気持ちはわからなくもないけど』

真帆「"紅莉栖"、悪いけど席を外してもらえる?」

Ama紅莉栖『はい、先輩』プツッ

倫子「前に『Amadeus』の"比屋定さん"から電子パーツ組立とか趣味だって聞いたけど、それ?」

真帆「あの子、そういうことは喋っちゃうのね……まあ、間違ってはいないわ。実際、こういう専門店街に来れてものすごく興奮した」

真帆「けど、今日は違うわ。これよ、これ」スッ

真帆「例のノートPCとポータブルHDD。秋葉原ならパスを解析できる業者がいるかと思ったんだけど」

真帆「私はあの子が何を考えて、何をやろうとしていたのか知りたいのよ」

倫子「……知らない方がいいこともあるよ、きっと」

真帆「あのねぇ、あなたはいいわよ。あの子が亡くなる前に会って話したりしてるんだもの」

真帆「私なんか、急に亡くなったって連絡を受けただけ。葬儀にも出られなかった……」

真帆「だから、少しでも紅莉栖のことを知りたい」

倫子「(……結局、この人も私と同じで、紅莉栖の死後も、紅莉栖の幻影を追いかけ続けているんだ)」

真帆「岡部さん、教えて。なんでもいいの。あの子がパスワードとして設定しそうな言葉。ひとつやふたつ、心当たり、あるでしょ!?」ヒシッ

倫子「うっ……怖いよ、比屋定さん……」

733 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 12:01:54.95 JUk1twV7o 1202/2638


倫子「し、知らない……」

真帆「……そうやって逃げるの?」ギロッ


  『逃げるの?』


倫子「……うん。逃げるんだよ。だって、怖いもん」

真帆「っ……」

倫子「逃げちゃいけないの? 辛いことから、悲しいことから、目を背けちゃいけないの!?」

倫子「私はがんばったんだよ!? やれることはやったんだよ!?」

倫子「心も身体もボロボロにして、それでもダメだったんだよ……っ」グスッ

倫子「それなのに、まだ戦えって言うの……? 逃げるなって言うの……?」ポロポロ

真帆「岡部さん……」

735 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 12:03:06.72 JUk1twV7o 1203/2638


倫子「……ごめんね、比屋定さん。私……」グシグシ

真帆「ううん……」

倫子「そ、そうだっ! 比屋定さん、お正月に予定とかないよね? みんなで一緒に初詣に行かない?」アセッ

真帆「えっ? あ、うん……わかった。いいわ、行く」

倫子「よ、よかったー! それじゃあ、細かいことはまたRINEで連絡するねっ」

真帆「……ええ。楽しみにしてるわ」

倫子「さぁっ、今日からは忙しいなっ。ゼミの忘年会にコミマ、ミス電大生としての仕事もやらなきゃっ!」

真帆「……無理、しないでね」

736 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 12:03:51.67 JUk1twV7o 1204/2638

NR秋葉原駅電気街口


倫子「はぁっ……はぁっ……」ドキドキ

Ama紅莉栖『大丈夫? 先輩になにか言われた?』

倫子「……ううん、気にしないで」

Ama紅莉栖『……そう』

倫子「ねえ、"紅莉栖"」

Ama紅莉栖『なに?』

倫子「……今日は1日、私を甘やかしてほしいな」

Ama紅莉栖『は? え、えーっと……私、そういうの得意じゃないんだけど』

倫子「知ってる」フフッ

Ama紅莉栖『ぐぬぬ……』

倫子「あのね、海馬に記憶された強烈なエピソードは忘却されにくいんだって」

Ama紅莉栖『それ、もしかして"私"が言ったの? ……なら、"私"はあんたにひどいことをしちゃったのかも』

倫子「そんなことないよ。私が覚えている限り、"紅莉栖"は生きているから」

倫子「だから、墓を暴くようなことはしたくない……」

Ama紅莉栖『……それって、先輩が?』

倫子「今の内緒ね。……って、意味ないんだったっけ。まあ、いいけど」

737 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 12:04:21.16 JUk1twV7o 1205/2638

2010年12月25日土曜日
未来ガジェット研究所


ガチャ

倫子「入るよー。あれ、誰もいな――――」



ダル「ドプフォwww ついマニアックな知識を使っちゃった件についてwww」

ダル「メタファーとか専門用語を使うのは良くなかったおwww マジサーセンwww」

ダル「フォカヌポォwww 由季たんめ、それも理系っぽくてカッコイイと申すか! "だがそれがいい"、的なwwwwwww」

ダル「ようし、だったらパパ、どんどん語っちゃうぞっ♪」



倫子「…………」

738 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 12:05:48.36 JUk1twV7o 1206/2638


倫子「(……あれか。昨日の由季さんとのデートで浮かれてるのか)」

倫子「(ラボででかい声で独りごととか、童貞こじらせると相当痛いな……ってか、それって長門の方のユキさんのコピペじゃ)」



ダル「キタ――(゚∀゚)――!! クマキター!!」

ダル「クマさんみたいな体の人が好きですとなwwwうはwwwフラグ立ちまくりじゃねwww」

ダル「あえて釣られてやるクマー! クマさんが嫌いな人に悪い人はいません!」

ダル「僕が由季たんのクマさんになるお! がおー(「・ω・)「 」

ダル「29日からは冬コミマ! 由季たん、じゃなかった、神コスプレイヤー"あまゆき"氏の雄姿を僕のこの一眼にバッチリ収めちゃうんだお!」ハァハァ


倫子「…………」

倫子「>そっとしておこう」


ガチャ バタン コツ コツ コツ ……

739 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 12:06:59.19 JUk1twV7o 1207/2638

2011年1月1日土曜日朝
未来ガジェット研究所


倫子「(年が明けた。時間のループに囚われていた頃からは、未来ガジェット研究所が未来を迎えるなんて、想像もできなかった)」

倫子「(まあ、これが理想の未来だったかって聞かれたら、素直に首肯できないけど……)」

ダル「ふぁ……戦争を勝ち抜いた僕にとっては今日は賢者日和なのだぜ……」

由季「もう、橋田さんは頑張りすぎです。鈴羽さんの分の体力も残しておくって言ってたじゃないですか」

フブキ「3日目は激戦だったみたいですね、お疲れさまであります!」ビシィ!

カエデ「ローアングルから撮った写真は全部削除しておきましたよ」ニコ

ダル「ちょ、ま、うぇ!? ……いいのだぜ、今日の巫女コスで全部取り返してやるんだからね!」

フブキ「マユシィのコスプレ、超楽しみ~♪ 来年の夏コミマからは参戦してくれるといいなぁ~」

由季「バイト代もらえるって知ってたら私も巫女さんのお仕事やったのになぁ」

カエデ「動いてないと死んじゃうおさかなさんみたいな人ですね、ユキさんって」

由季「もっと橋田さんのいやらしい目を独り占めしたかったし……」ボソッ

ダル「え、何か言った? 由季た、阿万音氏?」

由季「あ、いえ! なんでもっ!」アセッ

740 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 12:07:41.75 JUk1twV7o 1208/2638


倫子「それで、全員そろった?」

ダル「えっと、全員揃ったけど、どうしてオカリンはここにいるん? 巫女服はどうなったん?」

倫子「わ、私はみんなを神社まで案内してから着替えることになってるの。これでもこのラボの責任者だから」

カエデ「うんうん、えらいえらい」ニコニコ

倫子「あ、ありがとうございます……」ゾクッ

「今日は、よろしく、お願いします。ほーおー……えっと、倫子お姉様っ」

倫子「ああ、うん。よろしくね、綯」

天王寺「…………」

ダル「なあオカリン。約1名、おにゃのこだらけのこの場所に似つかわしくない人物が居るんだけど」

倫子「(ブーメランだろ)」

天王寺「おう橋田ァ。男2人、仲良くしようじゃねぇか、あぁん?」ボキッ バキッ

ダル「どうしてこうなった……」

741 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 12:09:03.59 JUk1twV7o 1209/2638


「お父さん。私ね、倫子お姉様の巫女さん姿、すごく楽しみなんだ」

天王寺「すまないな、本当ならお父さんが連れてってやりたかったんだが」

ダル「あれ、ブラウン氏はこないんすか?」

天王寺「たりめーだ。年末年始は大掃除の時期だろ? 古いテレビが処分に出されることが多くてな。とくに今年はアナログ放送終了っつー、俺らの業界にとってのビッグイベントが待ってる。地上波デジタル放送のチューナーがついていないテレビがよ、リサイクルショップの在庫も含めて一斉に処分に出されてるっつーわけだ。まあ、そうは言っても今日は正月だからよ、日中に大きい仕事を終わらせて夜はゆっくり綯との時間を楽しもうと考えてるんだがな、って橋田? てめぇ俺の話聞いてんのか? おぉん?」

ダル「あ、あぅ……なぜ僕が新年早々むさいおっさんの長話を聞かなければならないのか」ゲッソリ

天王寺「ま、そんなわけだからよ。悪いが、綯を頼む」

「よろしくお願いします、倫子お姉様っ」

倫子「う、うん」

倫子「(綯は夏頃みたいに全力で突進してくるようなことはなくなった。たぶん、私が普通の女の子になっちゃったせいだろう)」

倫子「(そして何故か"お姉様"にランクアップしたらしい。まさか綯って……い、いや、きっと多感なお年頃なだけだよね、あはは)」

天王寺「……やっぱりお前さん、ずいぶんと変わっちまったよな。前は妙なことばっか言ってたのによ。どうにも調子が狂っちまうぜ」

倫子「……おかげさまで、大人になったんです」

倫子「(ラウンダーのおかげでね……)」

天王寺「ま、夜には迎えに来るからよ。そいじゃな」ガチャ バタン

742 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 12:09:52.33 JUk1twV7o 1210/2638


真帆「……ほんとに良かったの? 私なんかが来てしまって」

倫子「どうせ暇だったんでしょ。私から例のパスワードのヒントを得るためには1秒でも側に居たいんじゃないの?」

真帆「ぐっ、岡部さんってたまに図太いわよね……」

真帆「……正直に言うと、紅莉栖が見ていた景色を知りたい、というのもある。神社にも紅莉栖は行ったことあるんでしょ?」

倫子「うん。本殿にPCと装置を持ち込んで、脳科学の実験をやったりしてた」クスッ

真帆「ほんとに? って、あの子ならやりかねないか」フフッ

倫子「それじゃ、そろそろ行こう。みんな、はぐれないよーに!」

743 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 12:10:52.99 JUk1twV7o 1211/2638

中央通り


「すごーい。車がいないね!」ワクワク

カエデ「自然とホコ天みたいになってますね」

ダル「そう言えば、フェイリスたんが今月から歩行者天国を再開させるように方々に働きかけてる、って言ってたお」

倫子「へぇ、フェイリスが……」

倫子「(人のいない秋葉原。私は一度、これと同じ景色を見ている)」

倫子「(初めてDメールを送った時、世界線は1%の壁をあっけなく超えてしまった)」

倫子「(あの時は、人工衛星がラジ館に墜落して危険だからって理由で中央通りが封鎖されてたんだっけ)」

フブキ「…………」

倫子「どうしたの、フブキ? ぼーっとしてるけど」

フブキ「え? あ、いや! なんでもないですよ! 他人の空似っていうか、記憶違いっていうか、あはは!」

フブキ「……国籍不明の人工衛星が墜落するなんて、あるわけないですよね」ボソッ

倫子「……?」

744 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 12:12:54.55 JUk1twV7o 1212/2638


カエデ「そう言えば、フブキちゃん。この前言っていた変な夢はどう……?」

フブキ「あぁ、あれ? 最近はあんまり見なくなったかも。やっぱ疲れてたみたい」

カエデ「そっか。だったらいいんだけど……」

倫子「変な夢?」

フブキ「ああっ、ちょっと一時期悪夢にうなされた時期がありまして」

倫子「悪夢?」

フブキ「お? 食いつきますねぇ。ひょっとして私に気があるとか? 私はノンケだってかまわないで食っちまう人間なんだぜぃ」

カエデ「ダメよ、フブキちゃん。オカリンさんは後天性のレズなんだから」

倫子「ぐはぁ!? ま、まさか紅莉栖と同じ責め苦を味わうことになるとは……」プルプル

カエデ「それに、オカリンさんには"好きな人"がいるんですもの」ウフフ

倫子「うぐっ!? この2人と話すといつも会話のペースを持ってかれる……」ハァ

フブキ「ねぇねぇ! オカリンさんの好きな人って誰なんですかーっ!」

倫子「うるさい、うるさいっ! もうこの話しゅーりょー!」

真帆「……?」チラッ

745 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 12:14:33.15 JUk1twV7o 1213/2638


倫子「2人とも、比屋定さんとも話してあげてくれないかな?」ヒソヒソ

フブキ「バッチリオッケーですよ!」

倫子「そうそう、この比屋定さん、アメリカの大学から来てるんだよ」

真帆「ふぇっ!?」ビクッ

フブキ「そうなんですか? すごーい! 英語教えてくださいっ!」

真帆「べ、別にいいけれど……」


カエデ「……オカリンさんって優しいんですね。仲間を大切にしている、というか、寂しい人を放っておけない、というか」

倫子「そ、そんなことないよ」

倫子「(この人に持ち上げられると、落とされるフラグにしか聞こえないな……)」

カエデ「きっと、優しいから、なんでも1人で背負っちゃうんですよね」

倫子「えっ……?」

カエデ「人って、優しいからこそ、誰かを傷つけることもあると思います」

倫子「…………」

カエデ「あまり思いつめないでください。比屋定さんとの間に何かあったとしても、時間が解決してくれますよ」ニコ

倫子「う、うん……すごいな、カエデさんは。そこまで見抜いていたなんて」

カエデ「うふふ、なんのことです?」

746 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 12:16:03.35 JUk1twV7o 1214/2638

柳林神社


ザワザワ…ガヤガヤ…


倫子「なんだこれ……どうして柳林神社にこんな数の人間がっ!?」

フブキ「おぉー、参拝客でにぎわってるねぇ!」

倫子「いや、どう考えてもにぎわいすぎでしょ!? 神田明神でもないのに!」


まゆり「立ち止まらないでくださーい! 2列に並んで詰めてくださーい! 順路を守ってくださーい! 配布所での撮影は禁止でーす!」


倫子「ま、まゆり? 金髪ポニテウィッグに猫耳……もしかして、これって……」


フェイリス「限定写真集は残りわずかだニャ! いまからお並び頂いても、お求めいただけませんのでご了承くださいニャ!」


倫子「フェイリス!? 何してんの!?」

フェイリス「コ・ラ・ボ・ニャ」

倫子「こらぼ……れーしょん?」

フェイリス「柳林神社とメイクイーン+ニャン2、そして東京電機大学の3団体の夢の合体ニャ!」

倫子「電大!? って、その写真集……まさか……」プルプル

747 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 12:16:43.05 JUk1twV7o 1215/2638


シンパA「ミス電大生写真集、3部くださいっ!」

栄輔「はい。こちらです」

ご主人様A「り、りり、倫子ちゃん写真集、こっちにもプリーズ!」

鈴羽「すいません、在庫切れでーす」

電大生A「くそぅ、こうなったら秋葉原のどこかにあると言う闇マーケットに潜り込んで……」ブツブツ


倫子「…………」

ダル「広報担当はほら、僕とフェイリスたんだから」キリッ

フェイリス「どうしても作らないといけない気がしたのニャ!」

まゆり「写真提供は椎名まゆりさんなのでーす♪」

栄輔「宗教法人は収益事業以外非課税だからね、ブロマイドの頒布という宗教活動は納税義務が無いんだよ」ニヤリ

倫子「お前らぁっ!! うわぁん!!」

748 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 12:17:32.35 JUk1twV7o 1216/2638


栄輔「さあ、岡部さん。着替えはこっちに準備してあるからね」

倫子「……こ、この状況で、巫女になれと?」プルプル

ダル「パパッとやっちゃった方がいいのだぜ」

倫子「くっ……。それじゃ! みんな、また後でっ!」スタスタ

ダル「それじゃ、僕は専属カメラマンとしてオカリンに同行するお」スタスタ

倫子「せんでいいっ! カメラは没収!」ガシッ

ダル「ああん」

フェイリス「由季さんという人がありながら浮気性のダルニャンには神の鉄槌が下るニャ」

るか「あけましておめでとうございます、皆さん」

ダル「ふむ、いつものルカ氏のはずなのに、お正月という特別な時空間が僕たちの劣情を掻き立てる……」

鈴羽「由季さんも来てくれたんだ」シュッ ドゴォ!!

ダル「ごふっ!? ノーモーションからのノールック腹パン……だと……巫女娘に殺されるなら、本望……」バタッ

由季「あけましておめでとう、鈴羽さん。仲の良いご兄妹ですね」ウフフ

フェイリス「(これはこれで仲の良い家族なのかニャー? 色んな愛の形があるんだニャァ)」

749 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 12:18:13.42 JUk1twV7o 1217/2638


カエデ「るかくんは相変わらず美人さんねぇ。男の子なのに」ウフフ

フブキ「(カエデはきっと、人の弱みをあえてつつくことで鍛えようとしてるんじゃないかな?)」

るか「い、いえ、そんな……」

真帆「ええっ!? 嘘、あなた、男の子なの? 日本って、やっぱり進んでるのね……」


フェイリス「マーユシーィ! 写真集も頒布終了しちゃったし、こっちに来るニャ!」

まゆり「あ、みんな~。あけましておめでとうございます」

「あけまして、おめでとうございます」

かがり「あけましておめでとうございます。もうすぐミコミコ倫子ちゃんも来ますよ」ニヘラ

鈴羽「さ、ギャラリー整理の仕事の時間だ」


倫子「……あ、あぅ」ドキドキ

750 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 12:18:53.96 JUk1twV7o 1218/2638


フブキ「ほぉ……」

カエデ「ふむ……」

「わぁ……」

真帆「へぇ……」

由季「おおっ……」

ダル「はぁ、はぁ……」


鈴羽「関係者以外は無断撮影禁止でーす。押さないで、押さないで!」

シンパ「「「倫子ちゃーん!」」」

ご主人様「「「倫子たーん!」」」


倫子「へ、変じゃないかな、コレ……」モジモジ

まゆり「そんなことないよ~! すっごく似合ってるよ~」ニコニコ

倫子「そ、そう……良かった」ホッ

真帆「どう、"紅莉栖"。見える?」

Ama紅莉栖『ムービーでバッチリ録画中です』

倫子「ちょぉぉぉっ!?!? や、やめろぉっ!! うわぁん!!」

751 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 12:21:14.73 JUk1twV7o 1219/2638


・・・

倫子「……ようやく来てくれたみんなに挨拶し終わった」ハァ

ダル「ほい、ミス電大生のお仕事、お疲れさん。つかさ、人数数えたら電大の女子のほぼ全員が来てた件」

ダル「ま、女子は電大生全体の1割しかいないけど、男子も女子の5倍近く来てたから、オカリン、すごい人望だお。よかったよかった」

倫子「この男、殴りたい……」ギロッ

真帆「普段からそのくらい愛想よくしていればいいのに」

倫子「う、うるさいな! ほらみんな、神様に挨拶した!? 御手水はあっちね、比屋定さん、作法わかる?」

真帆「沖縄風のソーガチならわかるけど、こうやって神社に来たのは初めてだから、丁寧に教えてもらえると助かるわ」

倫子「(ソーガチ? 正月、のことかな?) えっとね、まず柄杓を右手で持って……カクカクシカジカ……」

真帆「なるほど……」


由季「岡部さんって詳しいんですね」

ダル「あー、オカリンは中学の頃に世界中の儀式とかまじないについて調べたらしいんだよね。それの名残じゃね」

由季「勉強熱心なんですねぇ」

ダル「高校の時、突然延喜式の祝詞とか密教の真言<マントラ>を唱え始めた時はマジどうしようかと思ったのだぜ……」

ダル「……またあの頃のオカリンが戻ってきますよーに」ボソッ

752 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 12:22:03.93 JUk1twV7o 1220/2638


真帆「あなたは神様に何をお願いしたの?」

倫子「えっ? うーん……世界が平和でありますように?」

真帆「またそうやってはぐらかすんだから」

倫子「(嘘じゃないんだけどなぁ……)」

真帆「そう言えば遅いわねぇ。教授たちに、初詣に行くって言ったら、すごく来たがってたから、場所を教えておいたんだけど……」

倫子「へぇ……えぇっ!? い、今すぐ着替えてくるっ!!」ダッ

真帆「そのままの方がポイント稼げるんじゃない?」

倫子「む、無理っ! さすがに教授にまで見られるのは、無理だからぁっ!」ヒシッ

かがり「あ、岡部さん、私たちで写真撮りましょうよ!」ハァハァ

倫子「いやだっ! 私は、いいからっ!」

フェイリス「ニャフフ。スズニャン、ユキニャン」

鈴羽「オーキードーキー」ガシッ

由季「はーい」ガシッ

倫子「離して、はーなーしーてーっ!!」ジタバタ

まゆり「ダルくーん、カメラおねがーい」

ダル「いいよーいいよー、最高だよー」ハァハァ

カエデ「カメラが低すぎですよ、四足動物さん」ウフフ

フブキ「はーい! エルー、プサイー?」

全員「「「こんがりぃーっ!」」」パシャパシャパシャパシャパシャ

倫子「コングルゥだぁぁーっ!! うわぁぁぁん!!」

753 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 12:23:04.84 JUk1twV7o 1221/2638


・・・

倫子「年始からドッと疲れた……」グッタリ

ダル「おっと、みんな着替えちゃったか。きっと本殿の中では、るか氏が女の子たちのお着替えの手伝いをしていたんですねわかります」

真帆「あなたは元気ね……」

倫子「ダルはエロに関しては無限のエネルギーを発揮するから」

ダル「いやぁ、それほどでも」

真帆「うわぁ……」

フェイリス「秋葉原はすべてを受け入れるのよ。それはそれは、残酷な話ですわ……」グスッ

真帆「え……えっ?」

フェイリス「ハッキングから今晩のおかずまで、ありとあらゆる欲望がカオスに渦巻く街、秋葉原ァーッ! フェイリスはその守護天使なんだニャン♪」

真帆「業が深いわね……」

ダル「萌えない豚はただの豚だぜ、んふー」

真帆「この人の将来が不安だわ」ハァ

倫子「これでスーパーハッカーだから、その辺は大丈夫じゃないかな」

真帆「えっ、この人ハッカーなの?」

ダル「大きな声では言えんけど、まあそんな感じのこともやってるから、なにかあったら頼んでくれてもいいのだぜ」

真帆「ふーん。だったら……」


??「トシコシダー! ジャパニーズシャーマンボーイはどこに居るんだい!?」

754 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 12:24:19.15 JUk1twV7o 1222/2638


倫子「教授!?」

栄輔「みんなお疲れ様……おや、外人のお客さんかな?」

レスキネン「OH! 素晴らしいッ! 写真、いいですか?」

栄輔「え、ええ。私なんぞでよければ」

レスキネン「マホ! 私のスマホで彼とのツーショット写真を撮ってくれ!」

真帆「あ、はい……」

レスキネン「ヘーイ! もっと寄って寄って」ガシッ

栄輔「は、はぁ……」

倫子「(おお、あのHENTAI神主がたじたじだ)」フフッ

レイエス「マホがここに来ればジャパニーズシャーマンガールリンコに会えると聞いて来たのに、いないじゃない!」

倫子「今日はもう巫女さんの出番は終了です。ええ、それはもう」

レイエス「"Jesus!!" アレクシス、だから買い物を早く済ませてって言ったのに!」

レスキネン「私は大満足だよ。愛用の翻訳AIにゴテゴテのメタリック魔改造を施してもらえるなんて、この街は素晴らしいね」ホクホク

倫子「(胸ポケットからオーバードウェポンのような小型マシンを取り出した。かっこいいけど重くないのかな?)」

まゆり「オカリーン、るかくんのお母さんにおせちいっぱいもらっちゃった。みんなで食べなさいって」

るか「母があれもこれもと詰め込んでしまって……」

倫子「これ、すごいね! ルカ子のお母様に感謝して、みんなで食べよっか」

755 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 12:25:48.25 JUk1twV7o 1223/2638


倫子「(ルカ子は教授たちに捕まって、参拝の仕方をレクチャーしていた。男性だとバレなくてよかった、特にレスキネン教授に)」

かがり「ごめんね、お待たせしちゃって」トテトテ

レイエス「…………」チラッ

倫子「かがりさんも着替え終わったね……って、あれ? 綯は?」

フェイリス「綯ニャンなら、そこにいるニャよ」

倫子「何してたの、綯??」

「お父さんにお守りをあげようと思いまして。これにしようかと」スッ

倫子「商売繁盛……いや、そればっかりは無理だと思う」フフッ

「そうですか……」シュン

フェイリス「綯ニャンのパパはスキマ産業って感じだからニャァ……。テナントビル経営含め、フェイリスから融資案を提案してみるニャ!」

「よくわからないけど、ありがとう! 猫のお姉ちゃん!」

倫子「だからね、綯。お受けするなら、厄除けお守りにしておくといいよ」

「お受けする?」

倫子「お守りは"商品"じゃないから、"買う"じゃなくて"お受けする"って言うんだよ」

「わかりました、倫子お姉様っ!」キラキラ

756 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 12:26:56.52 JUk1twV7o 1224/2638


倫子「それじゃ、もうそろそろラボに行こっか。綯が風邪でも引いたら一大事だし」

まゆり「はーい」

倫子「綯。手、繋ご?」ギュッ

「あっ、お姉様……」ドキドキ


――――――――――

紅莉栖『まゆりっ!! 全力で綯を止めてぇ!! 岡部が死んじゃうっ!!』

『死ねよ椎名まゆり』

グサッ

まゆり『オカ……リンの、役に……た……て……』

――――――――――


倫子「――ひ、ひぃぃっ!!」ズテンッ

まゆり「あわわ、オカリン、大丈夫?」

「ど、どうしたんですか!?」

倫子「(……かつての世界線でまゆりを殺した綯の姿がよぎった)」ドクンドクン

倫子「(過去視じゃない。私のトラウマが、ただフラッシュバックしただけ……)」ドクンドクン

「……立てますか?」スッ

倫子「……ありがとう、綯」ギュッ

倫子「(大丈夫、落ち着け私……綯は殺さないし、まゆりは死なない……)」ハァ ハァ

まゆり「……?」

757 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 12:29:09.08 JUk1twV7o 1225/2638


由季「あ、実は私、このあとバイトが入っちゃって。急に後輩の子が休んじゃったみたいで、代わりに……」

まゆり「そっかぁ……それじゃあ、仕方ないのです」

ダル「由季た、じゃなかった、阿万音氏。バイトがんばってね」

由季「はいっ!」ニコ

倫子「(あのふたりはなんだかんだでうまくやってるみたい。鈴羽のおかげかな?)」

真帆「教授たちはこの後どうするんです?」

レスキネン「私はこの後、用があるから」

レイエス「ワタシもよ」

レスキネン「それじゃあリンコ。引き続き"クリス"のことを、よろしくね」

レイエス「では、みなさん。また。"See you soon!"」

倫子「(直訳すると、"すぐに会いましょう"……意訳ってのは難しいんだなぁ)」

758 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 12:30:10.09 JUk1twV7o 1226/2638

夕方
未来ガジェット研究所


まゆり「それではあらためまして……あけましておめでとうございま~す!」

全員「「「あけましておめでとー!」」」

まゆり「ん~、るかくん家のおせち、美味しいね~」

るか「ほんと? ボクとかがりさんも手伝ったんだけど、そう言ってもらえてよかった」

倫子「(まゆりの料理下手がかがりさんに引き継がれてなくてよかった……)」ホッ

かがり「エッヘン! なーんて、私は盛り付けただけなんだけど」

倫子「(……気を抜けないらしい)」

フェイリス「はい、オカリン。あーんニャ♪」

倫子「じ、自分でできるっ」プイッ

フェイリス「そんなこと言って、どうなっても知らないニャ……封印されしバイアクヘーたちが深き眠りから――」

真帆「ねえ、岡部さん。フェイリスさんのあれって、何なの?」

倫子「病気」

フェイリス「ニャゥ~、フェイリスはとっても傷ついたニャ」シクシク

ダル「そ、そんなフェイリスたんを、ぼ、僕が慰めてあげるお」ハァハァ

フブキ「橋田さんのお兄さんってホントHENTAIですね」

鈴羽「もっと言ってやって」

ダル「フブキ氏の淡白な言葉攻めとか、我々の業界ではご褒美ですっ!」

カエデ「橋田さんのお兄さんってホントHENTAIですねぇ」ニッコリ

ダル「はぁ……はぁ……」ドキドキ

759 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 12:31:09.82 JUk1twV7o 1227/2638



prrrr prrrr


倫子「("紅莉栖"か……いや、今この場はマズイ)」


prrrr prrrr


真帆「あら、岡部さんが出ないから"紅莉栖"が私にかけてきたわ」

真帆「『Amadeus』研究のいいサンプルになりそうだし、出てもいいかしら?」

倫子「うーん……」

フブキ「ねえ、真帆さん真帆さん。あまでうす、ってなにー?」

真帆「特定の人間の記憶データを内包した人工知能<アーティフィシャル・インテリジェンス>よ」

まゆり「あーてぃひしゅる……?」

フェイリス「AIのことニャ!」

ダル「自分で考えて、学習するように作られたプログラムだお。でも、特定の人間の記憶って、それなんてSF」

真帆「現在進行形で検証中なの」

ダル「あー、それがオカリンが前言ってたやつか。テスターやってるとか言う」

真帆「繋ぐわよ?」

倫子「う、うん。わかった……」

760 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 12:32:08.49 JUk1twV7o 1228/2638


Ama紅莉栖『もう、先輩ったら、どうして出てくれな――わっ!?』

ダル「おぉぉぉ、すげー!」

Ama紅莉栖『えっと、この声はたしか……ダル、さん?』

ダル「僕、橋田至。なんなら僕を先輩って呼んでくれてもいいのだぜ。AIの後輩キャラとかマジ萌える」

Ama紅莉栖『なるほど、岡部の言う通りのHENTAIですね』

ダル「おおう、AIにまで罵倒されるとか、今日は素晴らしい日だお」

フブキ「ほえー、すっごくかわいい!」

Ama紅莉栖『お褒めに預かり光栄です。えっと、中瀬克美さん、よね?』

カエデ「人間そっくりですね、すごい……」

Ama紅莉栖『あなたは……来嶋かえでさん、かな? あたり?』

カエデ「あ、はい。あたりです」ウフフ

真帆「というわけで、紹介するわ。彼女が私の後輩、牧瀬紅莉栖の記憶と人格を持つAI――『Amadeus』よ」

まゆり「牧瀬……紅莉栖さん……やっぱり……」

鈴羽「えっ? 牧瀬紅莉栖って――」

フェイリス「牧瀬紅莉栖さんって、確か半年前くらいにラジ館で……」

るか「あ……」

Ama紅莉栖『そっか。皆さん、オリジナルの私のことをご存じなんですよね』

ダル「あ、いや……うん、まあ……」

Ama紅莉栖『心配しなくても大丈夫ですよ。私、オリジナルの自分に何が起きたか知ってますし』

まゆり「オ、オカリン……」

倫子「……大丈夫だよ、まゆり」

761 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 12:35:36.48 JUk1twV7o 1229/2638


「ねえ、これってゲーム?」

Ama紅莉栖『あなたが天王寺綯ちゃんね。ううん、ゲームじゃないわ。私もあなたと同じように、自分で考えてしゃべってるの』

フェイリス「すごすぎるニャ……」

Ama紅莉栖『すごいのは私を作ってくれた真帆先輩ですよ、猫耳メイドのフェイリス・ニャンニャンさん』

フェイリス「ニャニャ? どうしてフェイリスのこと、知ってるんだニャ?」

Ama紅莉栖『岡部に教えてもらいましたから。ラボのことも、ラボの仲間たちのことも』

倫子「……比屋定さん、そのくらいに――」

プツッ

真帆「あらっ? 『Amadeus』がいきなり消えてしまった……?」

ダル「アプリが落ちたんじゃね?」

真帆「おかしいわね……再起動してもサーバーに繋がらないなんて……」

フブキ「ここのネット回線は、落ちてないみたいだけど」

かがり「…………」

倫子「えっ? "紅莉栖"が消えちゃっ――」


ダッ ダッ ダッ ガチャッ!!


ダル「へ?」

武装した男A「動くな!!」

倫子「……えっ」

762 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 12:36:23.52 JUk1twV7o 1230/2638


私は完全に油断し切っていた。

その警告はいくらでもあったはずなのに。

こうして仲間たちと和気藹々とする中で、"鳳凰院凶真"が復活するわけもないのに――


  『世界は欺瞞で満ち溢れてる。常に警戒を怠ってはいけない。誰の言葉だったかしらね』


土足で踏み入ってきた男たちの手には銃、中には自動小銃を持っている者もいた。

そ、そうだ、タイムリープすれば――

……どうやって?

763 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 12:37:23.64 JUk1twV7o 1231/2638


フェイリス「な、なんなんだニャ!?」

真帆「な、なんなのこれ? なんのサプライズ?」

倫子「ぁ……あぁ……うぐぅぅぅっ!!!」バタッ

まゆり「オカリンっ!?」

倫子「まゆ……り……逃げ……おえぇっ……う、うぅ……うおえっ!!」ビチャビチャ

ダル「ちょ、どしたん!?」

倫子「(な、なんだ!? 奴らの被っている、お相撲さんみたいな仮面を見た途端、突然、全身が気持ち悪く……)」バタッ

フブキ「オカリンさん? オカリンさん!!」

倫子「(脳が……揺さぶられる……世界がカオスになる……)」ハァハァ

武装した男B「騒ぐな!」BANG!!

まゆり「きゃっ!」

倫子「ま゛……ま゛ゆ゛、り゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛っ゛!!!!」

764 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 12:38:37.82 JUk1twV7o 1232/2638


鈴羽「威嚇射撃……ッ!! みんな、落ち着いて!」

カエデ「床に、穴が……実弾……!?」

ダル「なんだよこれ……」

るか「ボク……ボク……」

「ひっ……う……ぐ……!」

鈴羽「くそ、今綯を人質に取られたらどうしようもなくなる……綯、あたしから離れないで」ギュッ

倫子「(私がなんとかしなくちゃいけないのに、身体が、脳が、動いてくれ……ない……)」クラクラ

まゆり「オカリン……」ウルウル


コツ コツ コツ ……


ライダースーツの女「…………」

倫子「(な、なにもの……)」グタッ

ライダースーツの女「…………」スッ

ガシッ!!

かがり「えっ――きゃぁっ!」

まゆり「か、かがりさんっ!」

765 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 12:39:49.33 JUk1twV7o 1233/2638


鈴羽「かがりッ!! かがりを連れ去る気か!?」

かがり「い、いやっ! 離してっ!」ジタバタ

ライダースーツの女「――――ッ!」ギュッ

倫子「(い、今漏れた声は……どこかで聞いたような……)」

かがり「いやぁっ! 助けて!」ジタバタ

??「――――ッ」ダッ

ゴチンッ!!

武装した男A「ぐぁっ!!」バタン!!

武装した男B「ぐえっ!!」バタンッ!!

ダル「あ、あなたはっ!」

天王寺「仕事から帰ってきたと思えば、こりゃいったい何の騒ぎだ?」

武装した男C「くそっ!」ジャキッ

天王寺「ふんっ!!」ガシッ 

ボキボキボキッ!!

武装した男C「ぎゃああ!!」バタッ

766 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 12:40:28.00 JUk1twV7o 1234/2638


鈴羽「今だッ! 食らえッ!!」ダッ シュバッ

ライダースーツの女「――!!」ビシッ! 

ダル「なんという蹴り……! それを左腕で受け止めるとか、相手も只者じゃないお……!」

まゆり「かがりちゃんっ!! 今のうちにっ!!」ガシッ

かがり「まゆりちゃんっ!!」ダキッ

ライダースーツの女「――!」ダッ

武装した男A「く、くそ、撤退だっ!」


タッ タッ タッ ……



767 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 12:41:06.73 JUk1twV7o 1235/2638


まゆり「オカリン、大丈夫!?」ウルウル

倫子「うぐ……はぁ、はぁっ……まゆり……まゆりぃ……」ゲホッ ガハッ

鈴羽「みんな、怪我は無い!?」

フブキ「う、うん……こっちは大丈夫」

「お、おとうさぁぁぁあん!」ダキッ

天王寺「大丈夫、もう大丈夫だ。綯のことは、ちゃんとお父さんが守ってやるからな」

「うえぇぇぇぇ……」

天王寺「状況が状況だ、バラバラになるんじゃねえぞ、お前ら」

天王寺「取りあえず、岡部の回復を待つ。ほら、ソファーで横になっとけ。よっと」

倫子「はぁっ……はぁっ……す、すみません……」グタッ

天王寺「飯は片付けろ。吐しゃ物の処理も頼む。あと、タオルをしぼって、水を持ってこい」

ダル「お、オーキードーキー!」

768 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 12:42:53.47 JUk1twV7o 1236/2638


・・・

倫子「ふぅ……ありがとう。助かった」

まゆり「うん……」

倫子「(なんとか頭が回るようになるまで回復した。しかし、あの気持ち悪さはなんだったんだ……)」

天王寺「おい、岡部。説明してもらおうか。あの連中はなんだ?」

倫子「……それは……私にも……」

倫子「(少なくともラウンダーじゃないのか……)」

鈴羽「やつらがかがりを捜してたっていう集団か。相手が武装集団だとは思わなかった、厄介だな」グッ

天王寺「かがり……そっちの嬢ちゃんか。何者なんだ、あんた」

かがり「え、えっと……」

まゆり「かがりちゃんは、記憶喪失で、どうして追われているかもわからないの」

天王寺「なるほど、たしかに厄介だな」

かがり「ご、ごめんなさい……私のせいで……」

倫子「(かがりさんを狙う理由なんて1つだ。未来人だとバレてる、そして未来の情報を引き出すため……)」

倫子「(かがりさんの記憶を走査するために脳をいじった? 実験は失敗し、かがりは暴走のすえに施設を脱走、行方がわからなくなって、ここ1、2か月、捜し回っていた……)」

倫子「(それはあるいは、かがりさんを他の研究機関の手に渡したくない、という理由かもしれない)」

倫子「(もしかがりさんが記憶を取り戻して、自分たちの実験を暴かれては大失態もいいところだ)」

倫子「(かと言って、かがりさんを殺さず誘拐しようとしたのは、彼女にまだ利用価値があると踏んでいるからだろう)」

倫子「(一体なにを企んでいるんだ……?)」

769 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 12:44:57.72 JUk1twV7o 1237/2638


倫子「(疑問点は3つ。奴らは誰か。どうしてここにかがりさんが居るとバレたのか。そして、なぜあのタイミングだったのか)」

倫子「(……取りあえず、この世界線の未来が安全なのかどうかだけ確かめておこう)」

倫子「まゆり、ごめん。私の手を握ってくれる?」

まゆり「うん。いいよ」ギュッ

倫子「(まゆりの未来をイメージして……世界の流れを読み取る……)」

倫子「(……あ、あれ? ギガロマニアックスの力が働かない……?)」

倫子「(なにこれ、さっきの頭痛のせい? あいつらの仮面にそんな力が……?)」

天王寺「……これ以上、ここに居る必要はねえな。おめえらは帰れ。俺が送っていってやる。綯もついてこい」

「うん、お父さん」

鈴羽「あたしはここを死守する。父さ、兄さんは帰って」

ダル「……いや、実はさ、僕の研究は今ラジ館の屋上の……ゴニョニョ……の中に隠してあるんだよね」

鈴羽「そうなの? わかった、それならみんなの殿を守る」

770 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 12:45:39.27 JUk1twV7o 1238/2638

秋葉原タイムズタワー


フェイリス「送ってくれてありがとうニャ。このことは黒木と秋葉原自警団に報告しておくニャ」

倫子「……フェイリスの目は、絶対なんだよね?」

フェイリス「ニャ? どういうことニャ?」

倫子「執事さんや、自警団の人の中に裏切者は居ない……断言できる?」

フェイリス「ニャるほど。その辺も慎重になるニャ。秋葉原の平和は、このフェイリスが守るニャ!」



柳林神社


るか「……送っていただいて、ありがとうございました」

かがり「ありがとう、ございました……」

倫子「鈴羽、今日1日、ルカ子の家に泊まって、かがりさんを守ってほしい。ルカ子も、頼める?」

鈴羽「オーキードーキー」

るか「は、はい。わかりました」

倫子「(ホントはフェイリスの家にかがりさんを軟禁したいところだが、かがりさんは知ってる人間が居る場所の方がいいと言う。まあ、気持ちはわからなくもないが……)」

ダル「ぼ、僕も泊まろうか?」

鈴羽「警護対象が増えるのは勘弁だよ、兄さん」

ダル「しょぼーん」

771 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 12:46:52.94 JUk1twV7o 1239/2638

NR秋葉原駅


真帆「それじゃ、私たち3人は山手線で池袋まで行くわ」

倫子「天王寺さん、送ってくださってありがとうございます」

天王寺「ああ。また明日あたり、きっちりナシつけてもらうから覚悟しとけよ」

倫子「ヤクザですかあなたは……」

まゆり「フブキちゃん、カエデちゃん、気を付けてね」

フブキ「マユシィも気を付けて……」

カエデ「フブキちゃんのことは私が守るわ」

ダル「フブキ氏とカエデ氏を最寄りの駅まで送ったら、僕も新小岩に帰るお。キセルなんか怖くないお!」

「みんな、バイバイ……」

772 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 12:47:50.88 JUk1twV7o 1240/2638

NR山手線内回り車内


まゆり「もう、大丈夫、だよね……」

倫子「…………」

真帆「それにしても、本当に警察に届けなくていいの?」

倫子「……比屋定さんの身にも、日本の警察を信用できないことがあったんじゃない?」

真帆「え? ……確かに、あったわ。紅莉栖の事件の後、日本の警察を名乗る人たちが研究所に来て、紅莉栖の私物を持って行ったのだけれど」

真帆「教授に確認してもらったところ、そんな刑事はいない、というのが警視庁からの返事だったのよ」

倫子「やっぱり……」

真帆「だけど、となると、今日のアレは紅莉栖と関係が?」

倫子「断定はできないけど、否定もできない。わからないことが多すぎる」

倫子「(というか、2036年から1998年にタイムマシンでやってきた未来人が外国人組織に狙われている、などと警察に説明したところで失笑を買うだけだ)」

倫子「こういう時、紅莉栖が居てくれたら……」

真帆「……まだ『Amadeus』は復旧していないみたい」

倫子「やっぱり、こうなる運命だったのかな……"紅莉栖"と、まゆりと、みんなと、それなりに楽しく日々を過ごしていけるって思っていたのに……」ウルッ

まゆり「オカリン……」

倫子「(既に日常は崩壊していて、戦争が始まっている……)」

773 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 12:59:38.39 JUk1twV7o 1241/2638

漆原家 るかの部屋


鈴羽「……寝ないの?」

るか「阿万音さんこそ、まだ起きてたんですね」

鈴羽「あたしはいつも半分起きてるから。何かあった時、すぐ動けるように」

かがり「んむぅ……」zzz

かがり「……ママ……ママ……いっちゃ嫌だよ……まゆりママ……」ウーン

るか「寝言……やっぱり、椎名かがりさんは、まゆりちゃんの……」

鈴羽「……?」

るか「たまに、夢を見るんです。阿万音さんが自転車で秋葉原を走っている夢を……」

鈴羽「……リーディングシュタイナー、か」

るか「そこでは岡部さんが、阿万音さんのことを未来人って呼んでて……」

774 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 13:00:10.87 JUk1twV7o 1242/2638


るか「それに前、岡部さんがファミレスで、こんなこと言ってたんです」


   『鈴羽だって、18歳の女の子なのに、背負いきれないものを背負って、26年前っていう孤独な世界に居るんだから……』


るか「あの時は、岡部さんの設定なんだって思って、いえ、そう信じたかったんですけど……」

鈴羽「……知らない方が幸せなことも、あるんだよ」

るか「……ボクはまた、蚊帳の外なんですか」

鈴羽「るか兄さん……」

るか「(いつも枕元に置いてる妖刀・五月雨……ボクに勇気をください)」ギュッ

るか「――――教えて、もらえませんか?」

775 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 13:00:56.11 JUk1twV7o 1243/2638


鈴羽「もう、答えに気付いているんだろう? わざわざ聞く必要なんてないんじゃないかな」

るか「それでも、ボクは……みんなと同じ悩みを共有したいんです……」

鈴羽「どうしてリンリンがるか兄さんに、ルミねえさんに、あと、まゆねえさんにも……みんなに話していないか、わかる?」

るか「えっ……?」

鈴羽「巻き込みたくないんだよ。自分だけが背負っていればいいって考えているんだ」

るか「そんな……っ」

鈴羽「事実を認識した瞬間、部外者じゃ居られなくなる……事象を観測した瞬間、その現実から逃れられなくなる」

鈴羽「だから、認識さえしなければ、観測さえしなければ、個人の主観としての平和は続くはず」

るか「そんなの、おかしいです。いくら現実逃避したって、現実はそこにあるのに……」

776 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 13:02:02.11 JUk1twV7o 1244/2638


鈴羽「同じように思った昔の偉い人が居てね。シュレディンガー、聞いたことくらいあるでしょ?」

鈴羽「世界は重なり合った状態で構成されている……そんなのはバカバカしいって言ったんだ。猫が死んでたり生きてたりするわけがない、ってね」

鈴羽「だけど、もし現実が過去から未来まで確定しているとしたら、人間の意思に関係なく、世界はひとつの歴史に収束してしまうことになる」

鈴羽「あたしたちは、人間には意思があることを知ってるから、これもおかしい」

鈴羽「これがノイマン-ウィグナー理論における抽象的自我の考え方」

るか「……そうやって、はぐらかすんですか」

鈴羽「世界を、現実を自分のものにするためには、確固たる意思が必要だってことだよ」

るか「確固たる、意思……」

鈴羽「まあ、"リンリン"からの受け売りだけどね。おやすみ、るか兄さん……」

777 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 13:02:40.09 JUk1twV7o 1245/2638

2010年1月2日日曜日
メイクイーン+ニャン2


倫子「(昨日のライダースーツの女から漏れた声……その声の主に、私は確信があった)」

フェイリス「お待たせしましたニャン。近くの席にはしばらく誰も座らせないようにするから、思う存分話すといいニャ」

フェイリス「ちなみに、今日来てるお客さん全員、倫子ちゃんのことを昔から知ってるニャ。何かあったら味方になってくれるはずだニャ」

倫子「ありがとう。それで、フェイリス。何か情報は?」

フェイリス「フェイリスからは特になし、だニャ」

倫子「わかった」


萌郁「……話って……?」

倫子「……ここでこうやってあなたと話すのも2度目だね」フフッ

萌郁「……?」

倫子「今この店に居るのは全員私の味方……下手な行動はしない方がいい」

萌郁「…………」

倫子「FBについて、情報が欲しくない?」

萌郁「……ッ!!!???」ガタッ

778 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 13:03:28.78 JUk1twV7o 1246/2638


フェイリス「お嬢様、どうか店内ではお静かにお願いしますニャ♪」

萌郁「……どういう……こと……?」プルプル

倫子「FBはあなたにとってお母さんのような存在。嫌われたりしたら生きていけない。そうだよね?」

萌郁「どうして……それを……ッ!!」ギロッ

倫子「(初めて萌郁と会った時、撮った写真で私を脅してきたから、その仕返しってことでゆるしてね)」

倫子「本題はここから。あなたに、二重スパイになってもらいたい」

萌郁「スパイ……」

倫子「あなたがIBN5100を捜してることも、タイムマシン研究者の邪魔をしていることも知ってる」

倫子「そして、ホントはあなたにとってそんなことはどうでもいいことも知ってる」

倫子「もしFBに会いたいなら会わせてあげる。M4という名前を隠したまま、接点を作ってあげてもいい」

萌郁「あなたは、一体……」

倫子「桐生萌郁――」

倫子「あなたに、ラボメンになって欲しい」

779 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 13:05:02.58 JUk1twV7o 1247/2638


倫子「(店長は例の事件の首謀者じゃない。それなら、あのライダースーツの女は萌郁じゃない)」

倫子「(そもそも、声が違う。あの声は、萌郁のものじゃなかった)」

倫子「(私の日常が虚構だったというなら……今こそ、ラウンダーに近づくこれ以上ないチャンスだ)」

フェイリス「お嬢様、アイスコーヒーをお持ち致しましたニャン」

萌郁「…………」

フェイリス「毒なんか入ってないニャン」

倫子「それを飲んでくれたら、仲間になってもらう。飲んでくれないのなら、FBからの連絡が来なくなっても、私を恨まないでほしい」

萌郁「ぐっ……」

倫子「ちゃんとガムシロップとミルクも入れて?」

フェイリス「今日は『目を見て混ぜ混ぜ』はおやすみなんだニャン」

萌郁「…………」プチッ プチッ チョロチョロ

倫子「(やっぱり、両手をしっかり使えてる……どこか痛がっているような様子は無い)」

萌郁「…………」ジュー

倫子「飲んでくれたんだね」

萌郁「……勘違い、しないで。私は、私のために……FBのために、動くだけ……」

倫子「それでいい。だからこそ、私はあなたを信頼してる」ギュッ

萌郁「手……っ!? ///」ドキッ

倫子「(あなたが誰よりも一途な女だって、私は知ってるから……)」

フェイリス「(これはモエニャン、オカリンに惚れちゃったかニャ?)」

780 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 13:09:27.38 JUk1twV7o 1248/2638


倫子「RINEを教えておくね。今後はこれで連絡を取ってほしい」スッ

萌郁「それで……私に、何をさせたいの……」

倫子「かがりさんを追ってた例の集団について、どんな手を使ってもいいから情報が欲しい」

萌郁「……人を、殺しても……?」

倫子「そ、それは処理しきれないから、やめてほしいかも……」アセッ

萌郁「…………(この人、実はかわいい?(・・? )」

倫子「それから、ラウンダーの動向の定時報告。私たちは前に、SERNにハッキングを仕掛けたことがある」

倫子「それ自体はもうバレてると思うんだけど、そのことで私たちが危険になる事態を回避したい」

萌郁「……わかった……」

倫子「(本当はラジ館のタイムマシンと、ダルの研究を守るためなんだけどね)」

倫子「そうそう。最近ラジ館に侵入したこと、ある?」

萌郁「……? ない、けど……」

倫子「(あの時ラジ館に忍び込んで、私達の話を盗み聞きしていたのは萌郁じゃない……?)」

フェイリス「ラジ館に侵入? なんの話ニャ?」

倫子「(フェイリスが覚えてないってことは、世界線が変わったことで、あのことはなかったことになってたか)」

781 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 13:10:31.00 JUk1twV7o 1249/2638


フェイリス「それで、これからどうするニャン?」

倫子「もう少し仲間を増やしておきたい……けど、どうしようかな……」

倫子「(萌郁はラウンダーの中でも下っ端だし、FBで脅しておけば裏切ることはないだろう。何より、彼女はそんなことをする女じゃない)」

倫子「(だけど、天王寺さんはどうだ……? 娘のためなら人を殺せる自殺もできる、あの人に裏切られたら……)」チラッ

萌郁「……?」

倫子「ねえ、萌郁。FBに会いたい?」

萌郁「えっ……ま、待って……考えさせて……」

倫子「(……いや、相手は相当な手練れだ。FBクラスの人間を味方につけなければ、かがりさんも、ラボも守れない)」

倫子「(そのためには、別の世界線の情報で脅すしかない)」

倫子「これから私はFBに会いに行く。後ろからこっそりついてきてもいいよ」

782 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 13:13:08.13 JUk1twV7o 1250/2638

ブラウン管工房


天王寺「おう、来たか。まあ、座れや」

「お姉様、昨日はごめんなさい。私のせいで……」

倫子「ん……? あ、ああ。そんな、綯のせいなわけないよ。すぐに泣き止んでくれて、感心しちゃった」

「それは、お姉様に選んでもらったお守りのおかげです! るかお姉ちゃんの神社のお守りが、私を落ち着かせてくれたっていうか……」

天王寺「ああ、きっと綯とお姉ちゃんたちの絆のおかげだ」ナデナデ

天王寺「それで、岡部。昨日の説明をしに来たんだろ?」

倫子「……実は、昨夜狙われた女性は未来人で、それをある研究機関がさらいに来たんです」

天王寺「未来人? 人さらい? またてめえのトンデモ創作か?」

倫子「いえ、正確には未来人が過去へと跳ぶための道具を狙っていた……タイムマシンを、です」

天王寺「……馬鹿馬鹿しい。タイムマシンなんて、あるわけがねえ」

「タイム、マシン……?」

倫子「あるわけがないわけ、ないですよね? 事実、貴方はタイムマシンによって人生を狂わされている」

天王寺「……っ。一体、俺の何を知ってやがるってんだ……?」

倫子「知ってますよ……あなたの奥さん、綯のお母さんが、どうして居ないのか」


―――――

倫子『あなたは、奥さんを守った。それは――』

倫子『"ラウンダー"と関係しているんじゃないですか』


・・・

天王寺『その俺は……そいつは……』

天王寺『てめぇの家族と引き換えに、橋田鈴のすべてをSERNに売った男だ……』ポロポロ

―――――


「え……? お母……さん?」

天王寺「このヤロウ……ッ」ギリッ

783 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 13:14:14.01 JUk1twV7o 1251/2638


倫子「(8月18日、α世界線から戻って来てすぐの頃、私はダルと一緒にゼリーマンズレポートの洗い直しをした)」

倫子「(その中に見つけたんだよ……イタリア語の新聞。そのゼリーマンは、かつて私に優しい笑みを向けてくれた、綴さんその人だった……)」

「お父さん、お顔、怖いよ……」ビクッ

天王寺「綯、良い子だから、そこでテレビでも見てな。な?」ニコ

「……うん」

天王寺「……お前さんなんぞを店子に入れるんじゃなかったなぁ」ハァ

倫子「(この世界線では、橋田鈴からの遺言は無かった。だから、私の記憶通り、私が拝み倒してここに格安で入れてもらっていることになっていたんだろう)」

天王寺「……M4が裏切ったのか。あいつ、最近上に出入りしてたみたいだったな」

倫子「違いますし、その脅しは無駄ですよ」

天王寺「脅すつもりはねえよ。それで、そのタイムマシンがどうしたってんだ」

倫子「信じるんですか?」

天王寺「信じちゃいねえよ。ただ、おもしろそうな話だと思ってな」

倫子「ここまできてシラを切るつもりですか……」

天王寺「うるせえ。さっさと聞かせろや。そしたら、お前の安全は保障してやる」

倫子「……わかりました。簡単に説明します」

倫子「電子レンジと携帯電話、42型ブラウン管テレビ……それが、私達のタイムマシン――――」

784 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 13:15:01.82 JUk1twV7o 1252/2638


・・・

天王寺「……到底信じられる話じゃねぇな」

倫子「ともかく、SERN以外にもタイムマシンを狙っている機関が居るんです。これは、SERNにとっても敵のはず」

倫子「あなたたちラウンダーの目的の1つでしょう?」

天王寺「……上から命令されなきゃ動かねえよ。言われてねえことは、する必要がねえってことだ」

倫子「だが、あなたは知ってしまった以上報告の義務がある。報告すれば当然あなたは動かざるを得ない」

天王寺「お前さんは、俺に奴らを排除して欲しい、っつってんのか」

倫子「正確には椎名かがりを守ってやってほしい」

天王寺「だが、俺にそこまでしてやる義理はねえ。それに、俺がSERNに全部報告しちまったら、お前らがラウンダーに狙われるかもしれねえぞ?」

倫子「こんなことは言いたくないんですが……綯が私に懐いていること、お忘れなく」

天王寺「人質に取るつもりか……殺すぞテメエ……」ギロッ

倫子「ちっ、違いますよ!」ビクッ!!

倫子「私やまゆりが居なくなったら、綯が悲しむと、そういうことを言っているんですっ」ドキドキ

天王寺「……どこまでも脳天お花畑かよ」ハァ

倫子「その花畑を守れるのは、父親のあなただけだ」

天王寺「くそが……」

785 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 13:16:32.87 JUk1twV7o 1253/2638


鈴羽「そんな難しい話じゃない。協力してこのビルを守ればいいだけだ」

倫子「鈴羽!? それに、かがりさんも……」

かがり「お邪魔します……」

天王寺「あんたは……2階に住み着いてる、橋田の妹か」

鈴羽「昨日見てもらった通り、あたしには戦闘の経験がある。今日からは、ココも含め、このビル全体を守るよ」

鈴羽「もちろん、綯も含めてね」

「鈴羽おねえちゃん……」

鈴羽「それで、天王寺裕吾には椎名かがりをここで雇ってほしい。勿論、形だけだけど」

天王寺「なに……?」

鈴羽「要は、かがりをあたしの目の届くところに縛り付けておきたいんだ。あたしが綯も守る代わりに、天王寺裕吾にはかがりも守ってほしい」

天王寺「…………」

「昨日みたいなことは、怖いから、もう、ヤダな……」

天王寺「綯……」

「お父さんが私を守るために無茶してケガするかもって想像したら、もっと、怖くなった」

「私は、おねえちゃんたちと一緒がいいな」

天王寺「……言っとくが、雇うからにはしっかり働いてもらうぞ」

かがり「は、はいっ! 私、がんばります!」

786 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 13:17:13.96 JUk1twV7o 1254/2638


倫子「ありがとうございます、天王寺さん」

天王寺「別にお前さんのためじゃねえ。綯のためだ」

天王寺「ま、こっちはそういうことにしといてやっからよ。岡部、お前さんなら連中が何者か、突き止められるんだろ?」

倫子「善処します」

倫子「(と言っても、今のところ萌郁の情報収集能力くらいしか頼れない……。早く"紅莉栖"が復活してくれれば、活路がありそうなもんだけど)」

天王寺「……そうだ。そういやあの連中、妙な番号を口走ってやがったな」

倫子「番号?」

天王寺「確か……そう。K6205<ケー・シックス・ツー・ゼロ・ファイフ>だ」

倫子「ファイフ……というと、NATOのフォネティックコードですか?」

天王寺「ホント、そういう知識だけは無駄にあるな。そう、軍隊用語だ」

鈴羽「軍隊……あいつらやっぱり軍人だったのか……」

787 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 13:18:03.43 JUk1twV7o 1255/2638

未来ガジェット研究所


フェイリス「あ、やっと来たニャン、オカリン。みんな揃ってるニャ」

倫子「比屋定さんは、そっか。『Amadeus』の修理で忙しいんだった」

倫子「みんな、大丈夫だった?」

フブキ「一応。それよりも、どうしてあんなことが起こったのか、気になって」

カエデ「それに、場所を移すよりも同じ場所のほうが安全だって、橋田さんが」

ダル「警戒がゆるんでるところに攻撃を仕掛けるから奇襲なんであって、この真昼間、東京のど真ん中を襲ってくるバカはいないっしょ」

倫子「(奴らの作戦は失敗した。あの時はかがりだけが狙いだったが、失敗の後始末として、この場に居た全員をこっそり処分することを計画していてもおかしくない)」

倫子「(ダルの言う通り、もしそうならひとりひとりがバラバラになったところを夜襲するのがセオリーだろう)」

由季「とにかく、皆さん無事で良かったです。私のバイト中に、そんなことになっていたなんて……」

まゆり「由季さん、来てくれてありがとう」

ダル「由季た、阿万音氏が危ない目に会わなくてホントよかったお」

788 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 13:18:35.60 JUk1twV7o 1256/2638


倫子「(未だに例の3つの疑問はどれも解決していない。誰が、どうやってかがりさんのことを知り、なぜあのタイミングだったのか)」

由季「あの……岡部さんが来て早々で悪いんですが、私この後、バイトがあって……」

倫子「え? ああ、うん。気にしないで……」

倫子「(そう言えばあの時、由季さんだけがかがりさんのことを知りながら、あの場に居なかった……)」

由季「まだ油断は禁物なので気を付けてくださ――――きゃっ!」ヨロッ

倫子「危ないっ」ガシッ

由季「痛っ……! す、すいません、腕から手を、離してください……」

倫子「あ……ごめんなさい」

由季「いえ……。ちょうどここ、昨日、駅で転んで怪我しちゃって……」

倫子「え? ここって……左腕……!?」

由季「すいません、よくなにもないところで転んじゃうんです。私ってドジなんですよ、あはは」

まゆり「気をつけてね、由季さん」

由季「ん、ありがとう。それじゃあ、皆さんも――」

由季「――お気をつけて」ガチャ バタン

789 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 13:19:36.78 JUk1twV7o 1257/2638


倫子「(……なんて、あからさまなフラグを立てていったが、例のライダースーツの女は由季さんじゃない)」

倫子「(声が違う。まったく、紛らわしいにもほどがある)」ハァ

倫子「フェイリス。由季さんは嘘、言ってなかったよね?」

フェイリス「フェイリスの眼には疑わしいものはなにも映らなかったニャン。ユキニャンは大丈夫だニャン」

倫子「(そんなことより、年明け早々バイト2連勤とか、どんだけバイトが好きなんだよとツッコミたい)」

フブキ「それじゃあ早速ですけど、昨日の出来事について説明してもらっていいですか?」

倫子「(一応、ダルとは昨日のうちに電話で、みんなに何を話すべきで、何を話すべきじゃないかを話し合った)」

倫子「うん、そうだね。まずは――――」


・・・


倫子「……ということなんだ」

フブキ「つまり、かがりさんは記憶を失っている間に、何らかの犯罪に巻き込まれたかもしれないってこと?」

倫子「たぶんね……」

カエデ「だったら、どうして警察に言わないんですか?」

倫子「警察がその犯罪に加担している可能性が高い」

フブキ「えっ……ど、どういうこと?」

790 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 13:20:20.66 JUk1twV7o 1258/2638


倫子「警察だって人間だよ。悪いことをしてても、何もおかしくない」

カエデ「そんな……かがりさんは、どうするんですか?」

倫子「ボディーガードをつけた。下に居るムキムキおじさんと、格闘のプロの鈴羽とをね」

カエデ「でも、それだと、またいつ襲われるかもしれないって、怯え続けることに……」

倫子「(さすがのカエデさんも、かなり怖がっているようだ。なんとかしないと……)」

倫子「(実際、そこが問題なんだ。守ってばかりじゃ、いずれ虚を突かれる)」

倫子「一応、優秀な探偵を雇って調べさせてる。犯人が誰かわかるようなら、場合によっては警察に話すよ」

倫子「(萌郁にはRINEで未来人の話も細かく説明しておいた。タイムマシンを信じる人間で、しかも隠密と諜報のプロという萌郁の存在は非常に貴重だ)」

倫子「(事が済めば平和な時間を……とは、どうも行きそうにないなぁ。そろそろ、腹をくくらないといけないらしい)」

791 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 13:21:20.09 JUk1twV7o 1259/2638


カエデ「探偵さん、ですか。なにか、ヒントがあればいいんですが……」

倫子「ヒント……K6205……」

ダル「なんぞそれ?」

倫子「昨日の連中が口にしていたらしいんだけど、私にも何のことだかわからなくて。これがヒントなのかどうかも」

ダル「ちょい待ち。今、ググってみる……んー、商品番号とかしか出てこんね」

倫子「番号……例えば、検体番号、とか、囚人番号か? かがりさんを特定するための」

カエデ「ケッヘル番号……かな……」

倫子「ケッヘル番号?」

カエデ「えっと、モーツァルトの曲につけられた番号のことです。でも、さすがに関係ないですよね……だって、6000曲も無いですし……」

倫子「モーツァルト……ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト……っ!?」

倫子「ダルっ! K620番の曲はなんていう曲だ!?」

ダル「えーっと……ウキウキペディアによると、『魔笛』って曲みたい」

倫子「それなら、学校の授業で習ったことがあるね……ちょっと見せて」


  『――歌詞にフリーメイソンの様々な教義やシンボルが用いられていることでも有名』


倫子「フリーメイソン……陰謀論、か……」

792 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 13:23:07.04 JUk1twV7o 1260/2638


ダル「K6205っつーことは、5曲目?」

倫子「5曲目は……五重奏『Hm! hm! hm! hm!』、『口に鍵をかけられた鳥刺しのパパゲーノが、鍵を外してくれと歌う――』。カエデさん、何か他に情報はないかな?」

カエデ「えっと……モーツァルトはフリーメイソンに加入していたそうです。フリーメイソンのための楽曲も多く作曲しています」

フブキ「そうなの!? ってゆーか、フリーメイソンって実在したんだ……美容クリニックの社長のたわごとだと思ってたよ」

カエデ「『魔笛』の台本を書いた人もフリーメイソンで、『魔笛』の中にはフリーメイソンにとって重要な数字や、それに対応する音符が用いられて作曲されている、と聞いたことがあります」

カエデ「たしか、劇中でタミーノとパパゲーノの頭に布をかぶせるシーンは、フリーメイソン志願者の参入儀礼の目隠しを表現しているんだとか」

倫子「パパゲーノ……参入儀礼……」

ダル「なんかわかりそう?」

倫子「口に鍵を……パスワード……アマデウス……比屋定さん……?」

793 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 13:25:05.16 JUk1twV7o 1261/2638


倫子「(まさか、かがりさんは紅莉栖のノートPCとHDDのパスワードを知ってるのか?)」

倫子「(それを比屋定さん、というか、ヴィクコンの脳科学研究所が狙ってる……?)」

倫子「(そう言えば、例の『Amadeus』の不調のタイミングで襲撃が発生したんだった。なにか関係があるとしたら……)」

倫子「(直接本人に聞いてみるか)」prrrr prrrr

真帆『もしもし。なに? またなにかあったの?』

倫子「『Amadeus』はどう?」

真帆『ダメ。アクセスできないのよ』

真帆『何者かが「Amadeus」のシステムを乗っ取ったのかも。ごめんなさい、もういいかしら? 原因が解明できたらこっちから連絡するわ』ピッ

倫子「『Amadeus』が乗っ取られた……?」

794 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 13:26:45.53 JUk1twV7o 1262/2638


倫子「ダル、もし『Amadeus』が乗っ取られてたら、どういうことになる?」

ダル「そりゃ、"牧瀬氏"の見聞きした情報覗き放題っつーわけだお。だから落ちる前、僕と話したりしてた様子とかは、乗っ取った側に丸見えだったはずだ罠」

倫子「(ってことは、"紅莉栖"に私が『椎名かがり』を検索してもらうように頼んだことも、昨日比屋定さんがアプリを起動した時ラボにかがりさんが居たことも筒抜けってわけか……)」ゾクッ

ダル「うーん、スーパーハッカーとして、顔バレはご法度だったのだが……でも、ノータイムで突入してきたってことは、『Amadeus』でラボにかがりたんが居ることが判明する前からここに目星がついてたってことっしょ?」

ダル「そんなん可能な人間は、店長含めて僕たちしかいないお」

倫子「……いや、1人居る。『Amadeus』の存在を知っていて、ラボの場所も、かがりさんのことも知っている人間が1人……」

倫子「比屋定さんを尾行してラボの近くまで来て、ヴィクコンの研究所に出入り可能で、昨日神社でかがりさんに会っていた人物……」

倫子「聞き覚えのある、あの声の主……」

倫子「ジュディ・レイエス……っ!!」

795 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 13:27:27.61 JUk1twV7o 1263/2638


ダル「だ、誰ぞ?」

倫子「だ、だけど、つまり、どういうこと……? それが意味しているのは……」

倫子「(ギガロマニアックスの力が使えれば、全力の未来予知で、細かいことが詳しくわかったんだけど……)」


prrrr prrrr


倫子「("紅莉栖"から!? 乗っ取りが解除された? あるいは――)」

倫子「も、もしもし……」

Ama紅莉栖『……助けて』

倫子「"紅莉栖"!?」

Ama紅莉栖『助けて、岡部! 助け――――――――――――――――――

796 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 13:29:02.96 JUk1twV7o 1264/2638


―――――――――――――――――――
    1.06475  →  0.57182
―――――――――――――――――――

797 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 13:30:53.39 JUk1twV7o 1265/2638

未来ガジェット研究所


倫子「…………」

倫子「……また、リーディングシュタイナー。世界線が、変わった……」

倫子「……テレポートはしてない、か。ラボのままだ。ただ、みんなが居なくなっている」

倫子「でも、どうして……? 一体なにが、さっきの世界線の確定した事象じゃなかったの?」

倫子「(世界線は、別の世界線からの情報で変動する。別の世界線からの情報……)」

倫子「(……萌郁にFBの話をしたこと? それとも、天王寺さんに、タイムマシンの話をしたこと?)」

倫子「(くそぅ、やっぱり私は何か行動を起こすべきじゃなかった……私が動くだけで、こうやって世界線が変わってしまう……)」

倫子「(それに、乗っ取られていたはずの"紅莉栖"が、どうして私に助けを求めてきた? "何から"助けを求めてきたんだ?)」

倫子「とにかく、何が変わっていて、何が変わっていないのかを調べないと」

798 : ◆/CNkusgt9A - 2016/05/01 13:31:45.01 JUk1twV7o 1266/2638


倫子「ダルのPCに埃が積もっている……それに、"まゆりの巣"――コスプレ制作用の小道具置き場という名目のおもちゃ箱――に何も置いていない……」

倫子「そうだ、スマホの電話帳は……あ、あれ? 『Amadeus』のアプリが、消えてる……」

倫子「どういうこと……? 一体、どうして"紅莉栖"が消えちゃったの――」


キィィィ


倫子「(椅子の音……? 開発室に、誰か居る……?)」

倫子「だ、誰……?」シャーッ (※カーテンを開ける音)

??「あ、岡部……」

倫子「あ……あ、あ……っ」プルプル

??「来てくれたのね……」

倫子「ど、どうして……お前が……っ!?」ガクガク



倫子「―――牧瀬、紅莉栖っ!!!」


次章
岡部倫子「これがシュタインズ・ゲートの選択……!!」【#08】


記事をツイートする 記事をはてブする