最初から
岡部倫子「これがシュタインズ・ゲートの選択……!!」【#01】

一つ前から
岡部倫子「これがシュタインズ・ゲートの選択……!!」【#03】

897 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 11:21:26.98 XQu17636o 524/2638

第7章 虚偽歪曲のコンプレックス♀


2010年8月13日(金)19時43分
未来ガジェット研究所


倫子「―――――――シュタイナーッ!!!!!」

ダル「おうっ!? いきなりどしたん?」

紅莉栖「あ、あんまり大きな声出すと、せっかくの美声が傷付いちゃうわよ……」ビクビク

倫子「……いや、なんでもない。ここは、ラボか」

倫子「(ラボがある……。明らかにオレの記憶の中の、元のラボだ……)」

倫子「よかった……オレは戻ってきたんだ……」ウルッ

紅莉栖「どうしたの? 突然目を潤ませちゃって……(かわいい)」

倫子「(この様子だと、どうやら紅莉栖はタイムリープしてきていないようだな)」

倫子「(宴会はやっていないのか……この世界線のオレ、グッジョブだ)」

倫子「まゆりは……っ、生きているっ」ダキッ

まゆり「ふわぁ!? オ、オカリン、だいじょうぶ?」アワアワ

ダル「ハァハァ」

紅莉栖「ハァハァ」

倫子「(生きている。確かに生きているが、今はもう時間がない……っ)」

倫子「ダル、山手線は止まっているか?」

ダル「は? えーっと、Taboo!のトップ見る限りだと止まってないっぽい」

倫子「ありがとう……」

ダル「うお、素直に感謝されるとか、マジで大丈夫かおオカリン……」

倫子「(ラウンダーの工作が止まった? 未来の紅莉栖の指示か?)」

倫子「(ならば、次はIBN5100の在り処についてだが……)」ゴソゴソ

倫子「ラボには無い……か。何故だ、鈴羽は失敗したのか……?」

倫子「いや、今はとにかくラウンダーの襲撃があるかないかだ……」

898 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 11:22:46.64 XQu17636o 525/2638


倫子「(……午後9時を過ぎて。窓の下に人影はない)」チラッ

ダル「オカリン、さっきから外を気にして、誰か待ってんの? もしかして彼氏?」

紅莉栖「ぬぁっ!? マ、ママ、マママ、マジで言ってんの橋田ァ!?」ギュゥッ!!

ダル「ちょ!? 首絞めは我々の業界でも拷問……ぐぇっ」チーン

まゆり「ダ、ダルくん! 死んじゃダメだよぅ!」

倫子「(襲撃は無かった……無かったんだ。これは、鈴羽のおかげだ)」フゥ

倫子「まゆり。それに紅莉栖」

紅莉栖「……え、今岡部、私の名前、普通に呼んでくれた……フラグktkr……?」

倫子「2人とも、もう帰るんだ。まゆりは家まで一緒に帰ろう」

まゆり「うん、一緒に帰ろー♪」

倫子「紅莉栖は、夜も遅いからダルに送らせる」

ダル「へ? ボク?」

紅莉栖「橋田に送ってもらう方が身の危険を感じる件について……」

ダル「それはこっちのセリフだお……」

899 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 11:24:08.73 XQu17636o 526/2638

NR山手線内回り車内


倫子「(8月13日の夜8時を越えて、まゆりは生きている……)」

まゆり「んー? どうしたのかな、そんなに見つめられると、まゆしぃはそわそわしちゃうのです……」

倫子「(だが、これはオレが1%の壁を越えたことを意味していない)」

まゆり「今日のオカリン、なんだかいつもと違うような気がするよー?」

倫子「(すべてのDメールを取り消し、IBN5100を手に入れ、SERNをハッキング……。これが、まゆりの死亡収束を消滅させる唯一の方法だ)」

まゆり「どうかしたのー?」

倫子「……ククク、オレはなにも変わっていない。変わったのは、まゆりの方ではないか?」

倫子「(だが、なぜか今まゆりは生きている……)」

まゆり「そうなの、かなー」

倫子「(理由なんてどうでもいい。今までオレが放浪した世界線の、色んな時空の仲間たちによって、この結果を得られた)」

まゆり「ねえ、オカリン。無理してない?」

倫子「この狂気のマッドサイエンティストに、無理なことなど1つもないっ」

倫子「(54歳になった鈴羽はどこかに居るかもしれない。明日、天王寺に聞いてみよう)」

倫子「(そして綯のことも……。天王寺は、綴さんを守ることができたのだろうか)」

まゆり「……そっかー」

900 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 11:24:45.03 XQu17636o 527/2638


まゆり「ねえ、オカリン?」

倫子「ん?」

まゆり「あのね……えっ、えへ、えっとね……」

まゆり「まゆしぃ、これからもずっと、まゆしぃたちがおばあちゃんになっても、オカリンの人質でいられたらいいなぁ」

倫子「もちろんではないか。これまでもそうだったし、これからもずっとそうに決まっている」

まゆり「うん……」

倫子「……?」

901 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 11:25:16.56 XQu17636o 528/2638


・・・

2010年8月14日土曜日
未来ガジェット研究所


倫子「ふわぁ……ん、良く寝た」

倫子「あれ? オレ、なんでラボに居るんだ? 池袋の実家に帰ったはずじゃ……」

まゆり「オカリン、どうしたの?」

倫子「ああ、いや。ちょっと寝ぼけているみたいだ」

まゆり「んー? 変なオカリ――」バタッ

倫子「……まゆり? お、おい。どうし――」

ラウンダーA「動くな。動くと次はお前を撃つ」カチャ

倫子「は……?」

紅莉栖「ダメ、よ、岡部……このままじゃ、あんたも、殺される……」

天王寺「まさかM4が裏切るとはなぁ……」バァン!!

萌郁「っ――――」バタッ

倫子「やめろ……やめろぉぉぉぉぉおおおおおおおお!!!!!!」

902 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 11:25:57.28 XQu17636o 529/2638

UPX歩道橋


まゆり「ど、どうしたのオカリン? 急に大きな声出して……」

倫子「なっ……、なんだこの人ごみは」

まゆり「なんかね、電車が止まっちゃって、駅前が人でいっぱいなんだって」

倫子「電車が……?」ゾワワァ

ラウンダーD「岡部倫子だな?」

倫子「っ!?」ビクッ

ラウンダーD「一緒に来てもらおう。抵抗するなら殺す」

倫子「ま、まゆり、逃げるぞっ!!」ギュッ

まゆり「あ、オカリンっ!!」


キキーーーッ!!


倫子「な――」


ドンッ!!


倫子「が……は……。オレたちは、轢かれた、のか……? 白い、バンに……」

倫子「ま……ゆり……?」

まゆり「…………」

ガチャ バタン

萌郁「そん……な……、椎名、さん……っ! そんなつもりじゃ……っ!」

倫子「……なんでだよ、なんでまゆりが……っ!!」

903 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 11:26:56.54 XQu17636o 530/2638

柳林神社


倫子「なんでだよぉぉぉっ!!!!!」

るか「おか、凶真さんっ! 大丈夫ですか?」

倫子「へ……?」ヨロッ

まゆり「ね、オカリン。るかちゃんを説得するいい方法、なにかないかなー?」

るか「ボク、ホントに無理なんです……。なのに、まゆりちゃん、ちっとも諦めてくれなくて……」

倫子「それより、まゆりっ! 荷物を置け! これから遠出するっ!」ダッ

まゆり「オカリンっ、遠出って、どこ行くのー?」タッ タッ

倫子「はぁっ……はぁっ……。とにかく靖国通りに出れば……っ!?」タッ タッ

ラウンダーたち「……………」

倫子「あいつら……っ!!」ギリリッ

倫子「あ、あれ? まゆり? どこに行った? まゆり……」ゾワワァ


prrrr prrrr


from 閃光の指圧師
sub 岡部さんに話がある
これから、行くね。私はど
うしたらいいかわからなく
て。 萌郁
▼添付ファイル有


倫子「これ……は……」

倫子「外国の新聞記事……。1961年、2月28日……。ゼリーマン……」ガクガク

倫子「まゆ……り……」プルプル



  あああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――っ!




904 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 11:29:29.13 XQu17636o 531/2638

新御茶ノ水駅


倫子「――――あああああぁぁぁぁぁぁっ!!」

まゆり「オ、オカリン、周りの人に迷惑だよぅ」アセッ

倫子「っ!? ここは、どこだっ!?」

まゆり「えっと、千代田線のホームだよ? どうしたの、オカリン……?」

まゆり「あのね、オカリン。今は聞きたいこといっぱいあるけど、我慢しておくね」

… ガタンゴトン ガタンゴトン

倫子「……次の電車で小田原まで行こう」

まゆり「今日のパーティー。中止になったけど、絶対にいつか――」

「まゆりおねえちゃーん♪」


ドンッ


まゆり「――――」フワッ


ファーーーーーーーーーーーーン


グチャァ ビチュ ベキッ メキメキッ キキーーーッ


倫子「え……?」

「……ぁ……っ……」

倫子「お……お前……何して……」

「わざとじゃ……わざと……」

905 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 11:29:58.74 XQu17636o 532/2638

中央通り


倫子「何してんだよぉぉぉぉっ!!!!!」

運転手「ちょ、ちょっとお客さん。あんまりイライラしないでくださいよ!」

まゆり「そ、そうだよオカリン。だいじょうぶ? 目が怖いよ……」

倫子「……今度は、タクシーか」


ゴンゴン ガチャ


ラウンダーE「岡部倫子だな」

倫子「っ!? 逃げろ、まゆり――」


グサッ


まゆり「……うっ」

倫子「あ、あ……」

倫子「なんでよ……」

倫子「なんでなの……」

倫子「どうして否定するの――」

906 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 11:31:16.28 XQu17636o 533/2638

万世橋警察署


倫子「だからっ! まゆりはもうすぐ死ぬんだっ! どうして守ってやれないっ!!」

警察官「あのね、君。言ってることが支離滅裂だよ?」

倫子「この無能どもめ……っ!」ギリッ

まゆり「オカリン……」



ヨドダシカメラ


倫子「はぁっ……はぁっ……。こ、ここなら……」

警察官「駅前で爆発が起きました! 急いでここから避難してくださいっ!」

倫子「避難なんて……できるわけがない……」

警察官「ひ、避難しろと言ってるのが聞こえないのかっ!!」パァン!!

まゆり「っ――――」バタン

倫子「……もう嫌だ」

907 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 11:32:51.41 XQu17636o 534/2638


もう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だ

もう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だ

もう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だ

もう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だ

もう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だもう嫌だ




もう……イヤだぁぁぁぁぁぁああああああああああっ!!!!!!



908 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 11:33:28.94 XQu17636o 535/2638


・・・


??「オ、オカリン? ねぇ、オカリン?」

??「オカリンってば、起きてー」ユサユサ

倫子「……ん? ……お?」

倫子「(ここは……オレの部屋か?)」

まゆり「だいじょうぶオカリン?」

倫子「まゆりっ!!」ダキッ

まゆり「うわほぉっ!? ///」

倫子「い、いますぐ逃げるぞ! ここに居たら危ないっ!」

まゆり「えっ? 逃げるって、どこへ?」

倫子「どこへって、秋葉原じゃなければどこでも――」

倫子「あ、あれ? ここって、池袋の実家だよな……?」

まゆり「まだ寝ぼけてるのー?」

倫子「あれは……夢……?」

倫子「それとも……こっちが、夢……?」プルプル

909 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 11:34:52.27 XQu17636o 536/2638


まゆり「はぁ~。びっくりしちゃった。オカリンが布団から飛び出て、床の上でウンウンうなってるんだもん」

倫子「……恐るべき精神攻撃を受けてな。おそらく、機関がついに悪夢を操る"死の第13番兵器<デス・サーティーン>"を完成させたのだろう」

倫子「でも、もう大丈夫だよ。まゆり」ニコ

まゆり「う、うん」ドキドキ

倫子「それよりまゆり。どうしてオレの部屋に居る?」

まゆり「バナナを買いに来たらね、オカリンがまだ起きてこないってオカリンのおとーさんが言うから」

倫子「あのクソ親父の使いッパだったか……」

まゆり「オカリンのお部屋に入るのは久しぶりだけど、前とあんまり変わってないね」

倫子「(オレが中学くらいまでは、まゆりとこの部屋で遊んだ記憶がある)」

倫子「(でも高校に入った頃からは駅前のファーストフードやカラオケ店で過ごすことが多くなった)」

倫子「(実を言うとまゆりをオレの部屋にはあまり入れたくない。なぜなら……)」

まゆり「んふ~。オカリンのお布団、イイ匂い~♪」ゴロゴロ

倫子「……また昔みたいに、オレの私物を外に持ち出すのはやめてくれな?」

まゆり「え~、なんのことかな~♪」

910 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 11:35:52.87 XQu17636o 537/2638

大檜山ビル前


倫子「(MTBは無い……か。この世界線の鈴羽は、どうなった……?)」

天王寺「おう岡部。ずいぶんヒマそうだな。うちでバイトでもするか?」

倫子「ヒィッ」

天王寺「お、おいおい。今更そんなビビるこたぁねえだろ」

倫子「(こいつはラウンダーだ……い、いや、この世界線でもラウンダーだと決まったわけではないが……)」

倫子「……鈴羽は、いつ頃辞めたんでしたっけ?」

天王寺「鈴羽ぁ? 誰だそいつは」

倫子「なっ……そ、そんな!? まさか、鈴羽が2010年へ立ち寄る因果が消滅してしまったとでもいうのか……!?」

天王寺「わけのわからん妄想垂れ流してんじゃねーよ。たった10日で辞めたバイトの名前なんか忘れちまったってこった」

倫子「おのれ、紛らわしい言い方を……まあいい」

倫子「橋田鈴、という人物を、知っていますか」

天王寺「前に話した、このビルの元オーナーの名前だが、どうしてそれを?」

倫子「その人は、今は……?」

天王寺「もうかれこれ10年になるか」

倫子「えっ……」

911 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 11:37:21.67 XQu17636o 538/2638


天王寺「俺が見舞いに行ったその日に死んだらしくてな。それが良かったんだか悪かったんだか」

倫子「2000年、5月、18日……」プルプル

天王寺「命日まで知ってるとはな……」

倫子「あ、アイビーエヌはっ!?」

天王寺「……お前さん、もしかして、鈴さんの"娘"の知り合いか?」

倫子「IBN5100はどうしたと聞いているっ!」

天王寺「……受け取れなかったよ。恩を讐で返すことはできなかった」

倫子「そ、そうか……」

倫子「(IBN5100を回収しなかったということは、天王寺はラウンダーじゃない?)」

天王寺「あの人が住んでた家は、今俺が使ってんだ。位牌もある。手を合わせに来るか?」

倫子「あ、ああ」

912 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 11:38:08.57 XQu17636o 539/2638

ラジ館前


天王寺「うちの最寄りまではTXで1駅だ」

倫子「……人工衛星は、消えたのですね」

天王寺「5日前ぐらいじゃなかったか? 世の中奇妙なことが起こるもんだな」

倫子「(この世界線の鈴羽は8月9日に1975年へと跳び立ったのか)」

倫子「(そして、オレが昨日まで居たダイバージェンス0.00312%の世界線から跳んだ鈴羽が、2000年で過去改変を行い、さらに1975年へ跳び……)」

倫子「(今、天王寺家の仏壇に祀られている……)」



From 助手
Sub 鍵が(ノД`)
うわ、ラボに誰もいない
じゃない。鍵がないから
中に入れないんですけど
。これなんて放置プレイ
?いや、別に私は一向に
構わんとか思ってないか
らな!(*´Д`)ハァハァ


To 助手
Sub Re:鍵が(ノД`)
配電盤に隠してある鍵を
使え
栗悟飯自重しろ

913 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 11:39:31.82 XQu17636o 540/2638

天王寺家


倫子「(昨日来た時は無かったはずだが、玄関の外に鈴羽のMTBが置いてあった)」

倫子「(いや、そうは言ってもこれはかなり年季が入っているな……)」

天王寺「その自転車は、鈴さんがすっげえ大事にしてたんだよ」

倫子「(これがここにあるということは……、鈴羽の痕跡は、SERNによって抹消されることはなかった、ということだろう)」

天王寺「まあ、上がれや」

倫子「そう言えば、綯はいないのですね」

天王寺「ああ、今頃友達の家に遊びに行っているだろうよ」

倫子「結も一緒に、ですかね。2人はいつも一緒だと綴さんは言っていましたから」

天王寺「お前さん、綴とも知り合ってたのか。まあ、鈴さんのことを知ってるなら知っててもおかしくないか」

天王寺「……だけどよ、岡部」

天王寺「ユウって、誰だ?」

914 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 11:40:36.56 XQu17636o 541/2638


倫子「え……。だ、誰って、アンタ、自分の娘の名前を忘れたんですか!?」

天王寺「忘れるわけねえだろ! 綯は俺の命より大切な宝物だぞ!?」

倫子「なら、どうしてそんなことを言う! 結だってアンタの大切な娘だろっ!?」

天王寺「はぁ? 綯は一人っ子だぞ? どこかの家の子どもと勘違いしてないか?」

倫子「綯が、一人っ子……だと……?」

倫子「そ、それってつまり……!! 綴さんは、今どこにっ!?」

天王寺「なんだ、知らなかったのか……。あいつは綯を産んだ時に死んだよ」

倫子「なっ……。そ、そうでしたね……」

天王寺「今じゃこうして、鈴さんの隣に並んでる」

倫子「(冷静になってみれば、世界線を戻ってきたのだから当然だ)」

倫子「(なぜなら、この世界線では、綯は綴さんを蘇らせることを祈るのだから……)」

倫子「(死んでいて当然……妹もこの世に生まれることはない……)」

倫子「(済まない、綯……)」ポロポロ

天王寺「……あいつが岡部とどんな関係だったかは知らねえが、あいつのために泣いてくれて俺は嬉しいよ」

天王寺「……済まねえなあ」


・・・


915 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 11:42:27.48 XQu17636o 542/2638


・・・

2001年10月22日月曜日
新御徒町 天王寺家


黒木「これで遺品はすべてです。それでは失礼致します」

天王寺「42型ブラウン管と、鈴さんのNPC……」

天王寺「(IBN5100は、ナシ、か……)」

天王寺「(だが、おそらくこのNPCの中には、鈴さんが3年前までハッキングしていたというSERNの重要機密が……)」カチッ


カタンッ


ラウンダーF「"On ne bouge plus!"(動くな!)」

「えっ」

天王寺「なっ……なんだお前ら!?」

ラウンダーF「懐かしい顔だな。お前をあのドブで拾ってやってから何年経った?」

天王寺「なに……?」

ラウンダーF「たった今SERNに対してこの部屋からハッキングが行われたと連絡が入った。使用されたPCは去年死んだ要観察者のものと同一であるという」

ラウンダーF「貴様だな?」

天王寺「…………」

ラウンダーG「娘を確保しました」

「……スヤスヤ」

天王寺「っ! 子どもには手を出すな!!」

「綯っ!!」

916 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 11:43:13.99 XQu17636o 543/2638


ラウンダーF「いいか? お前のしたこと、これは重大な服務規程違反……裏切りだ」

ラウンダーF「だがこの任務に関して君以上の適任者が見つからないのも事実でね」

ラウンダーF「そこで考えたんだが、君にはペナルティを課した上で任務を続行してもらうことにする」

ラウンダーF「妻か娘……どちらかに我々と一緒に来てもらう」

「……私が行きます」

天王寺「な……!? おい……!」

「綯を……娘を、返してください」

ラウンダーF「いいだろう」スッ

「よく分からないけれど、すぐに戻れるようにお願いしてみるから」

「私が戻るまでに、綯の弟か妹の名前を考えておいて」

ラウンダーG「行くぞ」

「…………」


バタン


天王寺「…………」

ラウンダーF「心配することはない。またすぐに会える」

天王寺「……?」

917 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 11:43:49.57 XQu17636o 544/2638


ラウンダーH「データが来ました」

ラウンダーF「よし、見せてやれ」

天王寺「これは……イタリア語の新聞? 日付は、数十年前……」

天王寺「"DONNA GELATINA"、ゲル状の貴婦人……」

天王寺「あ……なっ……?」

天王寺「そんな……っ、綴……っ!!」

ラウンダーF「どうだ? ハッキングなどよりも我々がなにができるかよく理解できただろう」

ラウンダーF「君がこれからすべきことを言うぞ?」

ラウンダーF「まず妻の痕跡をすべて消せ。持ち物を1つ残らず廃棄するんだ」

ラウンダーF「存在を知る者には死んだと伝えろ」

ラウンダーF「そしてなんとしてもIBN5100を確保しろ。それで終わりだ」

ラウンダーF「くれぐれも行動に気を付けるように」

ラウンダーF「我々は常に、君を……『君たち』を見ているからな」


バタン


「……んんぅ」

天王寺「……うっ……くっ……うぅっ……」ポロポロ

「……おとうさん? 泣いてるの?」

天王寺「綯……! ごめんな……! ごめん……」

天王寺「お前だけは、絶対に……!!」


・・・


918 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 11:46:03.59 XQu17636o 545/2638


・・・


天王寺「あれからもう9年か……。時が経つのはあっという間だ」

天王寺「時間は一定に流れてるっていうけどよ、ありゃ嘘だよなぁ」

倫子「(……そう言えば)」


―――――

  ラウンダーB「これがSERNの力か……間近で見るのは初めてだ」

  ラウンダーC「えげつねえことしやがる……」

  ラウンダーA「俺は2回目だ。あれはたしか9年前……現場には居られなかったが、身籠った女がゼリーマンとして処分されたと聞く」

―――――


倫子「(かつての世界線でクールカットの男がそんなことを言っていたが、もしかして綴さんは……っ)」

倫子「(待てよ? 1%の壁を越えれば、SERNのディストピアは崩壊するのだから……)」

倫子「(いや、違う。これはディストピアとは関係ない)」

倫子「(SERNは1954年には既に設立されていて、Zプログラム自体は1973年から始まり、第四段階の人体実験は2001年に始まった物だったのだから……)」

倫子「(ならば、鈴羽に頼んで、2001年、綴さんの死を阻止してもらうのはどうだ……?)」

倫子「(いや、この世界線の2010年8月9日に1975年へと跳んだ鈴羽にたった18文字で情報を送るのは無理だ。タイムリープも48時間制限のせいでできない)」

倫子「(それに、鈴羽に頼めたとしても、鈴羽はおそらく2000年5月18日を超えて生きられない……)」

倫子「(無理、なのか……)」

倫子「(どうあがいたとしても……)」

倫子「(綯の祈りが叶うことは、世界が許さないとでも言うのか……っ)」グッ

919 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 11:46:59.38 XQu17636o 546/2638


天王寺「そうだ、ちょっと待ってろ……よっと」スッ

倫子「あ……! それはっ!」


【 0.40942 】


倫子「(前の世界線では鈴羽はダイバージェンスメーターをオレにくれることはなかったのだった)」

倫子「(それでこれが今ここに……)」

倫子「(そして……。ダイバージェンスは変動している……)」

倫子「(確実に1%へと近づいている……っ!)」

天王寺「鈴さんは、病床からいつも、このメーターを眺めてた」

倫子「え……」

天王寺「うわごとのようにつぶやいてたよ。この数字は、変わる前なのかな、変わった後なのかな、あたしは変えられたのかな――ってな」

倫子「(……ああ、間違いなく変わったよ。リーディングシュタイナーが無いお前の代わりに、オレがちゃんと観測したからな……)」ウルウル

倫子「(だからオレが、お前の意志を継ぐよ。きっとオレが――)」ポロポロ

天王寺「……泣き虫だなぁ。綺麗なツラが台無しだぞ、バカ野郎」ナデナデ

920 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 11:47:56.92 XQu17636o 547/2638

UPXスタベ


倫子「済まない、待たせたな」

まゆり「ううん。あ、るかちゃんから連絡があったけど、古いパソコンは神社で預かってないって」

倫子「やはりというべきか……。うむ、報告ご苦労」

倫子「さあ、ラボまで行こう。今頃助手が1人でふてくされている頃だろう」

まゆり「えへへー、今日はまゆしぃ、愛されちゃってるねぇ」

まゆり「オカリンの家からずっと一緒で、ちょっとここで待ったけど、その後も一緒だなんて……」

倫子「べ、別にお前のことが心配だ、とかじゃないからな! 勘違いするなよ!」

まゆり「ツンデレウマーだよー、オカリーン♪」

まゆり「……なんだか懐かしいなぁ」

倫子「なにがだ?」

まゆり「昔は、よく一緒にお祭りを見に行ったよね。えっとあれは、鬼子母神さまのお祭りだったかなぁ」

まゆり「オカリンが射的で取ってくれたお人形、実はね、まだ持ってるんだぁ」

倫子「そうなの、か?」

まゆり「えへ……まゆしぃの宝物なのです☆」

まゆり「だけど、お祭りには人がいっぱいいて、まゆしぃはいっつも迷子になっちゃって……」

まゆり「それで、ひとりで泣いてると……必ずオカリンが見つけてくれたよね……」

まゆり「泣いてるまゆしぃの手を引いて、もう泣くなよって、いっつも言ってくれたの……」

まゆり「そのとき、思ったんだぁ。オカリンがいればもう大丈夫だって……」

まゆり「もうなんにも怖くないんだって……」

まゆり「オカリンがいれば、なんにも……」ウルッ

倫子「……なにをノスタルジーに浸っているのだ。ほら、行くぞ」ギュッ

まゆり「……うんっ♪」

921 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 11:48:39.84 XQu17636o 548/2638

未来ガジェット研究所


紅莉栖「岡部って、尽くすタイプなのね」ダラダラ

倫子「血涙を止めろ……」

紅莉栖「私も倫子ちゃんにお姫さま扱いされたいぃ……」ギリリッ

まゆり「まゆしぃ大勝利なのです☆」

紅莉栖「ってか、お昼ご飯の毒味はさすがにやり過ぎでしょう?」

倫子「まゆり、しゃべったのか……」

紅莉栖「前から謎だったんだけど、あんたたちって付き合ってるの?」

倫子「黙れこのクソレズ(笑)め。まゆりもオレもノーマルだと何度言えば」

まゆり「あおふぇ、いふぁはふぁゆひぃはひふぉひひ」

倫子「たこ焼きを食べてからしゃべりなさい。はしたないぞ、まゆり」

紅莉栖「どちらかというと保護者か」ハァ

紅莉栖「そしてまゆりがかわいいので許す」ニヘラ

倫子「お前の思考回路が一番謎めいているぞ……」

922 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 11:50:16.14 XQu17636o 549/2638


倫子「(さて……ここはα世界線。まゆりは、死へと収束する……)」

倫子「(同時に、オレと紅莉栖とダルの3人はSERNに拉致される)」

倫子「(いずれにせよ、今はラボもあるし、ブラウン管工房もあり、タイムリープマシンも正常に動く)」

倫子「(ダルには42型ブラウン管テレビのリモコンをジャンクショップで買ってきてもらった)」

倫子「(そしてタイムリープマシンの真下にある穴をしっかりとくりぬいた。これでいつでも階下の42型を点灯できる)」

倫子「(準備は万全、保険はある……が、まゆりが死ぬのはもうこりごりだ……)」

紅莉栖「タイムリープマシンの実験はしないんじゃなかったの?」

倫子「もしもの時のためだ」

紅莉栖「もしもって……あれ、電話だ。ママからかな……ちょっとゴメン」タッ

倫子「……やはり、そうか。結局、そうなるんだよな……」

紅莉栖「……ただいま。それじゃ、タイムリープする?」

倫子「まだオレはお前に、まゆりが死ぬようなことがあったらその時刻より前にタイムリープしてくるよう頼んでいなかったのだが」

紅莉栖「私の記憶では頼まれたことになってる」

紅莉栖「世界はまゆりの死へと収束した。襲撃も、死も、24時間ずれただけだった」

紅莉栖「えっと、あんたの主観からすると48時間ずれたことになるわね」

倫子「襲撃に関してはもっとずらせなかったのか?」

紅莉栖「ごめん……。これもたぶん、まゆりの死に付随して移動する収束だと思う」

紅莉栖「私も努力はしたのだけど……」

倫子「……いや、変なことを言って済まなかった。紅莉栖が謝る必要はないよ」

紅莉栖「本当はね、2010年レベルの技術力で作ったタイムリープマシンには不安な要素があるから、あんまり使ってほしくないんだけど……」

倫子「記憶がフラクタル化する懸念、だったか。それはオレのリーディングシュタイナーでカバーできるのだろう?」

紅莉栖「……お願い。岡部はこれから、過去へ戻ってDメールを取り消して」

紅莉栖「この世界線における1周目へと……時間はやっぱり、タイムリープマシンが完成する直前」

倫子「ああ、わかった。それじゃ、さっそく――」

紅莉栖「待って!」

923 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 11:51:19.61 XQu17636o 550/2638


倫子「……まさか、また何かイレギュラーが!?」ゾワワァ

紅莉栖「ううん、そうじゃない。……ただ、私の話を聞いてほしい」

倫子「……ゴクリ」

紅莉栖「すぅ……はぁ……」

紅莉栖「……っ!」

紅莉栖「ほかべえええええええええええええええええええええ!!!!!!!!」ダキッ

倫子「ぅぐほぁ!!」

紅莉栖「つらかったよぉぉぉぉぉぉこわかったよぉぉぉぉぉぉぉさみしかったよぉぉぉぉぉっ!!!」スリスリスリスリ

倫子「なにこれ、毎回やるの!? いや、紅莉栖には感謝してもしきれないけどさぁ! うわぁん!」


ガララッ


まゆり「お、大きな声がしたけど、だいじょうぶ?」

紅莉栖「おかべ! おかべ! おかべ! おかべぇぇえええうわぁああああああああああああああああああああああん!!! あぁああああ……ああ……あっあっー! あぁああああああ!!! おかべおかべおかべぇぇええうわぁああああ!!! あぁクンカクンカ! クンカクンカ! スーハースーハー! スーハースーハー! いい匂いだなぁ……ま、まゆりっ!?」

倫子「あっ、いや、あの、これはだな……」ダラダラ

まゆり「クリスちゃんとハァハァ? いいなー。うらやましいなー(´・ω・`)」

倫子「待てっ! まゆりっ! オレとクリスティーナは『博士と助手』であって、それ以上でも以下でもない……っ!」

まゆり「そっかー。なんだかほっとしちゃった。今まではこんな気持ちにならなかったのにね……」

倫子「紅莉栖のHENTAIと……まゆりのフラグが……カオスになって……」プルプル



倫子「とべよおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!!!!!!」

924 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 11:51:51.68 XQu17636o 551/2638


――――――――――――――――――――――

2010年8月14日15時47分 → 2010年8月13日13時47分

――――――――――――――――――――――

925 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 11:52:48.60 XQu17636o 552/2638

2010年8月13日(金) 13時47分
未来ガジェット研究所


倫子「……っ。(この生理的嫌悪感にももう慣れたものだな……)」ヨロッ

まゆり「ふんふんふ~ん♪」

紅莉栖「…………」カチャカチャ

倫子「(まゆりはコス作り、紅莉栖はタイムリープマシン作り。よし、戻ってきている)」

倫子「そう言えば萌郁はどうなった……?」ピッピッ

倫子「よかった、アドレス帳に『閃光の指圧師』が登録されている」ホッ

倫子「(……もし萌郁がラウンダーを裏切れず、まゆりを殺すようなことがあったら?)」ゾワワァ

倫子「(どういうわけか、そのビジョンは簡単に妄想することができた)」ウップ

まゆり「だ、だいじょうぶオカリン? 気分悪いの?」

倫子「……くっ、機関め。オレの脳内に直接ビジョンを送り届ける沈黙の兵器の開発に成功したらしい」

倫子「しかぁし!! 狂気のマッドサイエンティストである鳳凰院凶真は、この程度の妄想攻撃でくたばるほどやわではないのだぁっ!」バッ

紅莉栖「岡部うるさい」

倫子「ぐっ!? 助手の分際で生意気だぞぉっ!」グヌヌ

倫子「……(こんなやりとりも、もうずいぶん昔のことのように思えてしまう)」

倫子「……ちょっと出てくる」

ダル「んお? 行ってら~」

まゆり「……無理しないでね」

926 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 11:53:48.81 XQu17636o 553/2638

大檜山ビル前ベンチ


倫子「(次にやることはフェイリスのDメールを取り消すこと、だが……)」

倫子「(それが意味しているのは、フェイリスパパ、秋葉幸高さんをもう一度殺すということ……)」

―――――

  『綴さんは、元からそうだったと諦めるしかない』

  『死者を蘇らせるってのは、そういうことなのよ、きっと』

―――――

倫子「(またオレは、ボタン1つで他人の命を奪うのか……家族の絆を壊すのか……)」

倫子「…………」グッ

倫子「とりあえず、あいつと会って話そう。話はそれからだ」


ドスン ドスン ドスン


ダル「フェイリス! ニャンニャン! フェイリ、おうオカリン。こんなとこにいたん?」

倫子「……そういや、大会があるとか言ってたか」

ダル「そうそう。雷ネットABグラチャン。タイムリープマシンが完成したから、フェイリスたんの応援に行こうと思うわけだが」

倫子「なあ、オレも連れてってくれ」

ダル「おう! オカリンなら大歓迎だお! フェイリスたんもきっと喜――あ」

ダル「オカリン、チケット持ってないよね? うーん、どうすっかなーこれ」

倫子「だったら終わるまで外で待っている。オレは別にフェイリスの雄姿が見たいわけではなく、緊急の話があるだけだ」

ダル「そうなん? んー、まあオカリンがそれでいいなら別にいいけどさ」

927 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 11:54:50.04 XQu17636o 554/2638

UPX1階外


倫子「お、ぞろぞろと客が出てきたな……試合が終わったか」

倫子「しかし、フェイリスに電話しても、ダルに電話しても出ない……」イライラ


ドンッ!!


倫子「きゃっ!」ズテンッ

??「あぁ?」

倫子「(しまった! オレとしたことが、人波に押され尻もちをついてしまうなどと……///)」カァァ

??「……大丈夫か、俺の白衣の天使様」スッ

倫子「あ、ああ。どうも、ありがとう……(なんだこいつ)」

倫子「そうだっ! チャンピオンのフェイリスについて、何か知らないか?」

??「……そうか。ブラックピーコックである俺は貴女に導かれ、天上を目指していた、ということか。クックックッ」

倫子「は?」

??「奴は既に俺の邪悪なる能力<ちから>によって堕天してしまった……翼をもがれたメス猫は、地獄の釜をみっともなくかけまわってるぜ」

??「そんなことよりも、勝利を貴女に捧げよう。俺の全宇宙<コスモ>の愛だ……受け取ってくれ」


Chu☆(※投げキッス)


倫子「…………」

倫子「…………」

倫子「おえええええっぇっぇっ!!!!」ビチャビチャ

928 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 11:55:38.67 XQu17636o 555/2638


ガイアにもっと輝けとささやかれているっぽい男「だ、大丈夫か!? 我らヴァイラルアタッカーズの勝利の女神、そして俺の白衣の天使<ミーハイール>」ダキッ

倫子「(ぐっ、久しぶりの男性恐怖症と他人の厨二病を受け付けられない病が同時発症してしまった……)」ウェッ

ファサッ

倫子「(……オレを抱き留めた時に帽子を落としたらしい男の頭には10円ハゲがあった)」

ガイアにもっと輝けとささやかれているっぽい10円ハゲの男「すべては貴女のために……ストリートシーンにおりた"黒の絶対零度"、4℃の勝利を捧げる……」

倫子「つ、つまり、お前、決勝戦でフェイリスに勝ったのだな? というか、そろそろ離せ」ウェッ

4℃「おっと、俺の能力<ちから>が暴走するところだった。乾いた氷は、肌をも火傷させる……」

倫子「あ、ああ。話はわかった。今頃フェイリスは自宅で泣き寝入りしているのだろう。それじゃ、さようなら」

4℃「女神が天に還る刻が来たか……。だが、その愛<‐eye‐>は俺だけのゾーン……いずれ2人は巡り合う……」

倫子「おろろろろろろろろっ!!!!!!」ビチャビチャ

929 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 11:56:28.02 XQu17636o 556/2638

秋葉原タイムスタワー
秋葉邸


フェイリス「…………」シュン

倫子「案の定、か。そんなに悔しかったのか?」

フェイリス「フェイリスは負けたニャ。あいつらが汚い妨害を仕掛けてきたせいニャけど、それを含めて勝てなかった自分が恥ずかしくて、悔しいニャ……」

倫子「あー、あの10円ハゲならやりそうだな」

フェイリス「パパ、きっとガッカリしてるニャン……合わせる顔がないニャ……」

倫子「(パパ……か。オレは今からそのパパさんを……)」グッ

フェイリス「ニャ? どうして凶真がつらそうな顔をするのニャ?」

倫子「そ、それは……」

倫子「(このフェイリスには父親を生き返らせたという記憶は無いんだよな……なんと切り出すべきか……)」

フェイリス「……ニャニャーッ!! フェイリスはひらめいちゃったのニャ!!」ガタッ

倫子「ひっ」ビクッ

フェイリス「凶真のラボでタイムマシンを作ったニャ!? フェイリスもラボメンになって実験に参加したけど不発だったアレニャ!」

倫子「(この世界線ではそんなことがあったのか)」

倫子「あ、ああ。今オレもそれについて話そうと……」

フェイリス「凶真にお願いがあるニャ! 今こそタイムマシンを使って、過去を変えて結果を変える時なのニャ!」

倫子「お、おう……?」

930 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 11:58:47.15 XQu17636o 557/2638


フェイリス「お願いニャ、凶真ァ……」ヒシッ

倫子「ひぇっ!? (そうだった、この世界線のフェイリスはなぜかオレに躊躇なく抱き着いて来るのだった!)」ドキドキ

倫子「(……パパさんが居る世界線では、フェイリスはオレにわりと距離を置いて接するんだよな。物理的な意味で)」

倫子「……なあ、フェイリス。裏マーケットという言葉に心当たりはあるか? あるいは、血の盟約でも守護天使団でもいいんだが」

フェイリス「凶真ッ!? ついにその存在を知ってしまったのニャ!?」ビクッ

倫子「なんだ、この世界線にもあるのか……」ゲンナリ

フェイリス「アキバの女神であるフェイリスには守護天使団が常に側仕えしていて、生命の天地、事象の地平へと導いてくれているんだニャ!」

倫子「……は?」

フェイリス「それこそがフェイリスと天使たちの間に結ばれた血の盟約……っ! 刻を司る十二の監視は、たとえ悪の秘密結社であっても騙すことができニャい!!」

倫子「…………」

フェイリス「それを打ち破るために結成されたギルドこそ通称"裏マーケット"! フェイリスという止められぬ収束に抗う、力無き者たちの唯一の手段なのニャ!!」

倫子「(やはり、この世界線ではフェイリスは10年前からオレをストーカーしていないのか。それはパパさん生存のおかげだろう)」

フェイリス「ニャフフ……なんだかフェイリス、調子が戻ってきたニャ♪」

倫子「それはよかったな。それで、お願いってなんだ」

フェイリス「それニャんだけどぉ~……。フェイリスを、今日の決勝、ヴァイラルアタッカーズ戦で勝たせてほしいのニャ~ン……」ヒソヒソ

倫子「って、耳元で囁くなぁ、っ!」ガクガク

フェイリス「かぷっ」

倫子「ひぃぃぃっ!!!」ビクビク

931 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 12:03:14.03 XQu17636o 558/2638


倫子「(危なかった、今、本気でイってしまいそうになったぞ……)」

フェイリス「凶真って、意外に押しに弱いのニャン」

倫子「ふーっ、ふーっ……。そう言えば、女の子にここまで積極的に攻め寄られたことは今までなかったかもしれない……」

フェイリス「それで、使わせてくれるかニャ? タイムマシン」

倫子「……ああ。お前にはいつも世話になってるし、なによりラボメンだからな」

フェイリス「わーい♪ 凶真、大好きニャーン♪」ダキッ

倫子「くっ!」スッ

フェイリス「フニャ。どうして避けるニャァ……ひどいニャァ……」ウルウル

倫子「これからオレは、今日の朝へ跳んでお前に助言を与える。そうすればお前は勝てるはずだ」

フェイリス「フェイリスがメールを送るんじゃないのかニャ?」

倫子「これはタイムリープと言って……ごにょごにょ……なのだ」

フェイリス「だったらフェイリスを今朝に跳ばしてくれればバッチリニャ」

倫子「ダメだっ」

フェイリス「ニャッ?」

倫子「タイムリープマシンは、できれば使うべきではないのだ」

倫子「助手も言ってたが、2010年レベルの技術力ではどんなエラーが出るかもわからない」

倫子「完璧なる能力、魔眼リーディングシュタイナーを持つオレ以外が使用すると、記憶が浸食される危険がある……」

フェイリス「ブーッ。そうやって誤魔化すの、凶真のよくないところだニャン」

倫子「なっ! 鳳凰院凶真の言葉は常に真実をだなっ!」プンプン

フェイリス「でも、フェイリスを心配してくれてるのは本当みたいで嬉しいニャン♪ 凶真に任せるニャ!」

932 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 12:03:43.89 XQu17636o 559/2638


――――――――――――――――――――――

2010年8月13日18時38分 → 2010年8月13日10時38分

――――――――――――――――――――――

933 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 12:06:08.59 XQu17636o 560/2638

UPX前


フェイリス「ふんふふ~ん♪」

倫子「(そう言えばこの世界線にはメイクイーンは存在しないはずなのに、制服だけはあるんだな……)」

フェイリス「凶真? ここでなにしてるニャ?」

倫子「お前に会いたくて待っていたのだ」

フェイリス「ニ゛ャ゛ッ゛!? ///」

フェイリス「ちょ、ちょっと不意打ちはやめるニャ……今のはマジでヤバかったニャ……」ハァハァ

倫子「か、勘違いするな! オレはお前を決勝で勝たせるために未来からやってきたんだ」

フェイリス「ふぅ、元の凶真に戻ってくれて助かったニャ」

倫子「それも違うっ! 本当なんだ、信じろっ!」

フェイリス「信じるニャ♪ ちなみにフェイリスはチンチラ星から来たのニャ!」

倫子「うっ……こいつ、またダビング10を使ったな……」

倫子「とにかく、これを受け取ってくれ。どうしてこれが必要なのかオレにはわからないが、お前に頼まれたブツだ」スッ

フェイリス「サングラスに耳栓……? あの、もしかして凶真、フェイリスのことバカにしてるニャ?」

倫子「は、はぁ!?」

フェイリス「冬のディフェンディングチャンピオンであるフェイリスが、負けると思ってるニャ?」

倫子「だからっ! オレは実際にお前が決勝で負けた未来からタイムリープしてきたのだと言っているっ!」

フェイリス「……ウニャアアアアアア!!!!」

倫子「ひぃっ!」ビクッ

934 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 12:07:09.81 XQu17636o 561/2638


フェイリス「凶真がそんな人だと思わなかったニャ!」プンスコ

倫子「(……このパターン、なんだかデジャヴだ。紅莉栖にルカ子のことでビンタされた時のような……)」

フェイリス「今日は大事な試合ニャのに、よくも負けるとか言ったニャ! 凶真なんて大っ嫌いだニャ!」

倫子「(やっぱり、この世界線のフェイリスはオレに対する態度が厳しい……)」

倫子「どうしてもお前に勝ってもらわねばならんのだっ! これにはまゆりの命がかかっていて――」

フェイリス「――――っ!!」


バチンッ!!


倫子「ぅぐほぁっ!? な、なにを……」ヒリヒリ

フェイリス「凶真なんてサイテーだニャ! マユシィの命を軽々しく扱うような人間は、死んじゃえばいいのニャッ!」

倫子「――――ッ!!!!」ズキンッ

倫子「(ああ、そうか……今、ようやくわかった……)」

倫子「(これが、観測者の孤独、ってやつなんだな……)」ウルウル

倫子「(時間移動した人間は、もう元の人間の理へは戻れないのか……)」ポロポロ

フェイリス「あっ……えっと、ゴメン、ニャさい……今のは、嘘ニャ……」シュン

倫子「謝るなら最初からビンタをするな……」シクシク

フェイリス「……でも、もう行くニャ。絶対優勝してくるニャ」クルッ

倫子「ま、待て……行くな……っ! このまま行ってしまったら、オレが戻ってきた意味が……っ!」





??「ずいぶん余裕かましてるじゃねーか、チャンピオン」



935 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 12:07:46.02 XQu17636o 562/2638


4℃「ストリートに舞い降りた雷ネッター界の黒い孔雀、見参」

倫子「お、お前は4℃……っ!」

フェイリス「ヴァイラルアタッカーズ……」

4℃「マジでガッカリだぜチャンピオン。テメェが体制に媚びた格好してるだけでも俺の心はざわめくのによ」

4℃「そのくせ俺の白衣の天使<ミーハイール>と歪んだ愛を確かめ合ってるなんてな……」

倫子「(こいつの目にはさっきの状況がどういう風に映っていたのだっ!?)」

フェイリス「もう邪魔しないでほしいニャ」クルッ

倫子「おい待てっ!」

4℃「おっと、待ちな」ガシッ

倫子「ヒィィィッ!」ゾワワァ

4℃「奴が憎いなら俺が仇をとってやる……奴が愛おしいなら俺がすべてを奪ってやる……」

4℃「だから今は、ヴァイラルの勝利の美酒にふさわしい杯を顕現させてくれ。マイスウィートエンジェル」

倫子「……お前に1つ真言を送ろう」

4℃「その託宣、罪と罰を含めて全身で受け取るぜ」

936 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 12:08:54.41 XQu17636o 563/2638


  「ポエムなら
         チラシの裏に
                 書いていろ        倫子」

4℃「――――ッ!」

倫子「オレは貴様の勝利の女神などではないわ、この10円ハゲ! オレこそは、世に混沌をもたらす狂気のマッドサイエンティスト、鳳凰院凶真だッ!」

4℃「そ、そんな、この俺が騙されていたというのか……っ! くそ、ここは一旦退却だ……っ!」

倫子「……ふぅーははは、はぁ」グテーッ

フェイリス「……凶真、今、どうやって4℃の弱点を見抜いたニャン?」

倫子「言っただろう、オレは未来から来たのだと」

フェイリス「あ……」

倫子「それより、頼むフェイリス。これを受け取ってほしい。持っているだけでいいんだ」

フェイリス「……ホントに持つだけニャン。それでいいかニャ?」

倫子「ああ。決勝戦で絶対に必要になるからな、手放すなよ!」

937 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 12:09:48.80 XQu17636o 564/2638

UPX雷ネットABGC会場


倫子「(今回は当日チケットを難なく入手し、会場に入ることができた)」

ダル「オカリンもフェイリスたんを応援してくれよ!」

倫子「あ、ああ……」

倫子「(ここでフェイリスに優勝してもらうことが、Dメールを取り消す贖罪になるとは思わないが……)」グッ

倫子「(そもそも、あいつがどんなDメールを送ったか、詳しくは知らないんだよな。取り消すための文面は冷静に考えるしかない)」

倫子「(父親を殺せと、オレがフェイリスに命令するようなものか……何か他に方法は無いのか……)」ウルッ

ダル「ちょっ、どしたん? 突然涙目になるとか」

倫子「い、いや、これはだな……ヴァイラルアタッカーズを見ていると目が腐る」

ダル「激同」

倫子「(そして、実況の掛け声と共に決勝戦が始まった)」

938 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 12:10:40.23 XQu17636o 565/2638


倫子「(試合展開はフェイリスが劣勢のようだが……む? なんだ、あれ……っ!!)」

倫子「……レーザー攻撃だっ! フェイリスの眼のあたりに、レーザー光線が当たっている!」

ダル「は? ……って、マジかよ! 客席にヴァイラルの仲間が居て、フェイリスたんを妨害するとか、マジ許すまじ!」

倫子「くそっ、オレが直接締め上げてやるっ!」ガタッ

ダル「うおう、オカリン!?」

倫子「やいっ! ダテ悪だか伊達巻だか知らないがなっ! 卑怯な真似をするなこの卑劣漢めっ!」


「なになに?」

「あの子どうしたの?」

「白衣?」

「伊達巻?」

「よく見ると美人じゃない?」

「くっ……」


倫子「見つけた……っ!」ダッ

手下A「しまっ……、あんたは4℃さんの白衣の天使<ミーハイール>!?」

倫子「その名で呼ぶなぁ!! うわぁん!!」ボコォ

手下A「ぐほぁ!!」

939 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 12:32:38.63 XQu17636o 566/2638


実況「おーっと、あまりのヒートアップに客席での場外乱闘が勃発だぁーっ!!」

倫子「ち、違うのっ! この男の人が私に痴漢をしてきて……」ウルッ

手下A「は、はぁっ!?」

倫子「(フハハハ……貴様は社会的に死ぬがよいッ!)」ニヤリ

警備員「キミ、ちょっと来てくれるかな?」

手下A「お、覚えてろぉ……っ!!」ズルズル

倫子「フッ、どこまでも三下だな」

倫子「フェイリスの方は……、さっきから4℃に口撃をされているが、すべて無視か。耳栓をしてくれているようだな」フゥ

倫子「頑張れフェイリス、あとはお前の実力次第だ……!」

940 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 12:33:39.06 XQu17636o 567/2638


・・・

実況「大! 逆! 転! だぁーーーーーっ!!!!」


「うぉぉぉぉぉぉ!!」

「うぉぉぉぉぉぉ!!」

「うぉぉぉぉぉぉ!!」

「フェイリス!! ニャンニャン!!」


倫子「か……勝ったのか……?」

ダル「フェイリス!! ニャンニャン!! オカリンのおかげで勝ったお!! 大会二連覇だおっ!!」

倫子「あ、ああ……よかった……戻って来て、よかった……」グスッ

ダル「フェイリスたんの勝利にオカリンが涙……こんな日が来ることを僕は夢見てたんだなぁ……」グスッ

倫子「オレはこれからフェイリスに会ってくる。ダルは先に帰ってろ」

ダル「おお、なんと麗しき百合展開……ラボで感動と妄想に浸っておくお……」ハァハァ

941 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 12:34:17.66 XQu17636o 568/2638

UPX1階外


フェイリス「凶真ァーーー!」ダキッ

倫子「ふごっ!? く、苦しい……」

フェイリス「凶真を信じてあげられなくて本当にゴメンニャ……。凶真は、やっぱりフェイリスの味方だったんだニャ!」

倫子「あ、当たり前だっ! ラボメンとして、そして友として、オレはフェイリスの味方だっ!」

フェイリス「フェイリスにそっちの気は無いはずなのに、今日は凶真に抱かれてもいいニャン……」チラッ

倫子「あ、いや、遠慮しておきます」

フェイリス「でも、そうまでしてタイムリープしてきたのはどうしてニャ?」

倫子「もちろん2時間後のフェイリスに頼まれたから、ということもあるが……実は、オレもフェイリスに頼みがあってな」

フェイリス「なんでも聞いちゃうニャーン♪ エッチなことでもOKニャン」

倫子「助手が憤死するからやめろ?」

942 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 12:35:18.88 XQu17636o 569/2638


倫子「……首のうらがちりちりする。何者かに見られている?」

フェイリス「……ヴァイラルアタッカーズニャ。フェイリスたち、今囲まれてる」

倫子「な、なんだと!?」ガバッ

4℃「よお」

倫子「お前はっ! 10円ハゲ!」

フェイリス「なんの用ニャ」

4℃「ガイアに愛されし黒の貴公子こと4℃様は悪魔と契約したのさ……。穢れた白きシャム猫から堕天使を取り戻す、ってなぁ!!」グイッ

倫子「きゃっ! ちょ、やめ、やめてぇ! いやぁぁっ!」ゾワワァ

4℃「クレイジーな舞でエレガントに惚れさせてやるぜ……だが、その前に漆黒に堕ちるのは、テメェだ」

フェイリス「凶真からその汚い手を放すニャ」ギロッ

倫子「た、助けて……」ガクガク

倫子「(クソ、こんなやつに、オレは心の底からビビッてしまっている……)」プルプル

4℃「聞いたぜメス猫。テメェの父親は秋葉原界隈じゃ知らねえ者はいないほどの男なんだってな」

4℃「その権力で会場を抱き込んだ……最初から出来レースだったんだろう?」

4℃「この資本家のピッグがぁ!」


「なんだって?」

「出来レース?」

「フェイリスが?」

ざわざわ……


フェイリス「…………」


「なんだあの巨漢……」

「ひぇっ」

「ムキムキマッチョだ……」

ざわざわ……

943 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 12:36:13.98 XQu17636o 570/2638


天王寺「てめぇら、うちの店子に手ぇ出してんじゃねぇぞ」

4℃「あん? 誰――」クルッ

天王寺「寄ってたかって女をいじめて楽しいか? ジャリガキ」ゴキッ バキッ(※腕慣らしする音)

4℃「ひっ!?」

天王寺「空き缶みてぇにペッタンコに踏みつぶしてやろうか……」ゴゴゴ

4℃「ひ、ひぃぃぃっ!!」ダッ

手下B「あ、4℃さん待ってくださいっ!」

手下C「置いていかないでぇっ!」

倫子「(こ、こええええええっ!!! ミスターブラウンの今までに見たことの無い鬼の形相だ……っ!!!)」

天王寺「大丈夫か?」ニコ

倫子「は、はい……助けていただき、あ、ありがとうございます……」ガクガク

倫子「(店長はラウンダーじゃない……?)」

944 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 12:36:42.79 XQu17636o 571/2638


フェイリス「ブラウンニャンがどうしてここに?」

天王寺「俺が秋葉原をぶらぶらしてちゃおかしいか?」

倫子「(……待てよ、おかしいぞ。明日ラウンダーがラボを襲撃すると紅莉栖は言っていたのだから、今日はフランスから特殊部隊がやってくる日)」

倫子「(もしかして、オレを尾行していたのか……?)」ブルブル

幸高「はぁっ……はぁっ……。留未穂っ! 大丈夫か!」タッ タッ

フェイリス「パパ!」

幸高「留未穂が優勝したと聞いて会社から駆け付けたんだが、チャンピオンが柄の悪い連中に囲まれていると聞いてね……」

フェイリス「それならブラウンニャンが追い払ってくれたのニャン♪」

幸高「ブラウンニャン?」

天王寺「へ、へんな呼び方するんじゃねえ!」

945 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 12:41:52.19 XQu17636o 572/2638

秋葉原タイムスタワー
秋葉邸


幸高「いやー、娘と岡部くんの危ないところを助けていただき、本当にありがとうございました」

天王寺「そんな、俺ぁ別に何も」

倫子「(何故フェイリスのパパさんがオレが助かったことまでも感謝しているのだろう……)」

倫子「2人は知り合いなのですか?」

幸高「ああ。昔、橋田さんという人に頼まれてね、彼女の遺品を渡したことがある」

倫子「(鈴羽か……)」

天王寺「あとはトメさんから話を聞くくらいだったな。秋葉原の名士だとは知らなかったが」

幸高「今回の活躍を鑑みて、自警団に入っていただければと思っているのですが」

天王寺「よしてくれ。俺ぁ自警団なんてタマじゃねえよ」

幸高「それは失礼しました。それから、お礼として、天王寺さんのビル運営に出資をさせていただけませんか?」

天王寺「えっ、出資?」

幸高「あの辺りは今後人通りが増すエリアです。増改築の話があるなら、準備はできていますよ」

天王寺「なん……だと……!!」

946 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 12:42:34.11 XQu17636o 573/2638


フェイリス「パパたちは都市計画の話で盛り上がってるみたいニャ」

倫子「仕事が好きなんだろう。娘のためを思えば、なおのことな」

フェイリス「それで、凶真のお願いってなんだったのニャ?」

倫子「そ、それがだな……」

フェイリス「言いにくいこと?」

倫子「……順を追って話そう。どうか信じてほしい」

倫子「このままだと、間違いなく――」

倫子「…………」ゴクン

倫子「まゆりが、死ぬ……」ウルッ

フェイリス「…………」

947 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 12:43:36.24 XQu17636o 574/2638


・・・

フェイリス「話はわかったニャ。つまり、Dメールをすべて打ち消せばIBN5100が手に入ってマユシィは助かる」

フェイリス「でもその中には、フェイリスのパパを10年前の飛行機事故から救うメールがあった……フェイリスの記憶にはニャいけど」

倫子「(その事故で幸高さんが死亡してしまったことは言い出せなかった。まあ、1人だけ死亡する、という説明の方が信じられない話ではあるが)」

フェイリス「それで凶真はパパを取るかマユシィを取るかで悩んでた、ってことかニャ?」

倫子「うっ……。お前はなんでもまっすぐに言うんだな」

フェイリス「でもでも~、もしかしたらパパがIBN5100について何か知ってるかも知れないニャ」

倫子「そ、そうだった! たしか、フェイリスのパパはレトロPCの収集家だったな!?」

フェイリス「ねえパパ。IBN5100について、何か知らないかニャ?」

天王寺「」ピクッ

幸高「ああ、確かに持っていたよ。今はもう手放してしまったけどね」

948 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 12:44:19.77 XQu17636o 575/2638


倫子「手放した……? 柳林神社に奉納したのですか?」

幸高「奉納……? いや、違うよ」

幸高「私にIBN5100を託してくれた橋田教授には、申し訳ないことをしてしまったと思っている……」

天王寺「ごふっ! げほっ、がほっ」

黒木「今ハンドタオルと替えのお紅茶をご用意致します」

倫子「(……鈴羽はそこまでは成功していたのだな。店長がむせたのも何か関係があるのだろう)」

幸高「昔の話になってしまうけどね、まだ私の会社が今ほど大きくない頃の話だ」

幸高「留未穂が誘拐されたんだ。犯人はとんでもない額の身代金を要求してきてね」

幸高「あるいは、会社を抵当に入れればなんとかなったかもしれない」

幸高「そんなとき、渡りに船とばかりに、IBN5100を高額で買い取りたいというフランスの実業家が現れてね」

天王寺「フランス、ねぇ……」

倫子「(……今頃SERNの手の中、ということか)」グッ

949 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 12:46:57.60 XQu17636o 576/2638

秋葉邸
寝室


倫子「(なんだかんだで日が暮れてしまったところでフェイリスが突然、)」

フェイリス『今日は凶真もヤバイ男たちに囲まれて怖い思いをしたから、外に出ない方がいいと思うニャ』

倫子「(と言い出したので泊めてもらうことにした。Dメールの話もしなければならないからこちらとしては助かるが……)」

フェイリス「お風呂一緒に入るニャン♪」

倫子「1人で入らせてくれよ……」

フェイリス「ここはフェイリスの家ニャ! フェイリスの言う事は、ぜった~いなのニャ!」

フェイリス「凶真と一緒に体洗いっこしたいのニャン♪」

倫子「……別に構わんが」


・・・(省略)・・・


倫子「ああ、最高だ……。やっぱり広い風呂ってのはいいなぁ」ポカポカ

フェイリス「喜んでもらえて何よりニャ。お風呂上がりの凶真って、と~ってもキュートだニャン♪」

倫子「シャンプーもボディソープも高級で……い、いやいや、オレはマッドサイエンティストであってだな……」ブツブツ

フェイリス「はい、パジャマ」スッ

950 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 12:47:46.71 XQu17636o 577/2638


倫子「……これは?」

フェイリス「だから、パジャマニャ」

倫子「い、いやいや! どうみてもパンダの着ぐるみではないかぁ! これをオレに着ろと!?」

フェイリス「だってぇ~、そのほうが可愛いニャ♪」

フェイリス「フェイリスの言う事は~?」

倫子「……ぜったい」グスッ


イソイソ


倫子「これは、想像以上に恥ずかしい……///」

フェイリス「ニャウウ~♪ パンダリンコちゃん可愛すぎなのニャ~♪」ダキッ

倫子「倫子ちゃん言うなぁ! うわぁん!」

倫子「それに、あ、あんまりオレの体に触わるな……まゆり以外から抱き着かれるのは慣れていない……」

フェイリス「前はそんなに嫌がって無かったニャ? 急にどうしちゃったのニャ?」

倫子「メイクイーンに居た時はそんなにボディタッチしてこなかっただろうに」

フェイリス「ニャニャ? なんで凶真は、開く予定だったメイド喫茶の名前を知ってるニャ?」

倫子「予定だった……?」

951 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 12:48:20.47 XQu17636o 578/2638


フェイリス「あ、そっか。凶真が元居た世界線ではフェイリスはメイド喫茶のメイドさんだった、って話ニャ?」

倫子「そうなんだが、この世界線でもメイクイーンを開こうとしたんだな?」

フェイリス「そうニャ。ホームページに少しの間だけオープン告知とメイドさん募集要項を載せたことあったニャン」

フェイリス「フェイリスが企画して、会議にも通して、ほとんど決まりかけてた話なのニャン」

フェイリス「でも最終的に、パパにダメって言われて、企画がなくなっちゃったニャ」

倫子「(そうか、パパさんが生きていることでフェイリスは秋葉原の都市開発計画会議での発言力が無くなっていた、ということか……)」

フェイリス「という事は、フェイリスが送ったっていうDメールを取り消せば、フェイリスはアキバNo.1メイドになってしまうのニャ!? ハニャニャ……」

952 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 12:49:21.46 XQu17636o 579/2638


フェイリス「……今わかったんだけど、凶真。フェイリスに嘘吐いてるニャ」

倫子「な、なんのことだ」

フェイリス「多分なんだけど、飛行機事故に遭ったパパは、とんでもない大ケガ……ううん、もしかして、死んじゃったんじゃないのかニャ?」

倫子「っ……」

フェイリス「やっぱり」

倫子「やっぱりって、どういうことだ」

フェイリス「なんとなくだけど、そんな気がしたのニャ」

フェイリス「フェイリスがパパの反対を押し切ってまで秋葉原に萌え文化を導入するとは思えなくて……」

フェイリス「それに、メイド喫茶で一生懸命働いてるフェイリスを想像したら、実業家のパパの面影を追いかけている気がしたのニャン」

倫子「……嘘を吐いて済まなかった」

フェイリス「ううん、でも、そっかぁ……」

フェイリス「…………」ウルッ

フェイリス「ご、ごめんね。ちょっと私……グスッ……部屋に、戻るね……ヒグッ……」


バタン


倫子「あっ……」

953 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 12:50:42.22 XQu17636o 580/2638


倫子「……ここでぐずぐずしているわけにもいかない。明日の20時にはまゆりは死んでしまう」タッ


リビング


倫子「パパさん。少し聞きたいことがあります」

幸高「おや、どうしたのかな岡部くん。可愛いパジャマだね」

倫子「あっ、いや、これはあなたの娘さんがですね!!」アセッ

幸高「今紅茶を淹れよう……。それで、聞きたいことってなにかな」コトッ

倫子「……2000年4月2日、未来から変なメールが来ませんでしたか」ズズーッ

幸高「未来から? 未来からかどうかはわからないが、その日付は留未穂が誘拐された日だね」

倫子「フェイリスの8歳の誕生日……」

幸高「多分、一生忘れることの無い日付さ」

幸高「娘との約束を二度と破らないと誓った日でもあるんだ」

幸高「私の元に届けられた差出人不明のメールの内容は……」


  『娘預かった。身代金1億。新幹線に乗れ』


倫子「っ!! な、なるほど、そういうことだったのか……」

幸高「結局、犯人は現金を受け取りに来なかったんだ。あの時の留未穂は自分が誘拐されたなんて気づかずに元気に帰ってきたよ」

幸高「まさに神様からのプレゼントだと思った……。同時に、自分の父親としての有り方を見つめ直すこととなったけどね」

倫子「(多分、その日フェイリスは自分の意志で家出でもしていたのだろう。それを知った上であのDメールを送った、と……)」

幸高「この時、私は君の父親でもあろうと決心したんだ。岡部倫子さんのね」

倫子「――――え?」

954 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 12:51:33.95 XQu17636o 581/2638


幸高「長い間話さなかったけど、今日がきっとその日なんだろう」

倫子「な、何を言って……?」

幸高「橋田教授からね、頼まれていたんだよ。『岡部倫子という少女を、2010年まで守ってほしい』ってね」

倫子「鈴羽が……!?」

幸高「さすがに私も訝しんだんだけどね、教授があんまり必死に頼むもんだからOKしては居たんだが……」

幸高「もしその、岡部倫子さんが娘と同じ目に遭ったらと思ったら、気が気じゃなくなってしまってね」

倫子「……10年、前、から、私を……?」

黒木「左様にございます。貴女を狙う不届き者は、秋葉家に仕えること数十年になる私を初めとした黒服部隊が追っ払ってきた次第であります」

黒木「本日のことも、天王寺様が居なければ、私ども黒服部隊が彼らを物陰へと連れ込んで処分するつもりでした」

倫子「ナ、ナンダッテー!」

倫子「……だ、だが、忘れもしないあれは2005年の秋! オレは警官に襲われたはずなんだが……」

黒木「飼い犬に悪さをしようとしていた、××××氏のことでしょうか」

倫子「ま、ま、ま、まさか、この世界線ではあの事件は起きていないのか……!?!?」

955 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 12:52:20.15 XQu17636o 582/2638


倫子「もしもし、親父か!? なあ、うちで飼ってた柴犬のこと覚えてるか? なに? 今日も散歩に行った?」

電話『ワンワンッ!』

倫子「そう……わかった……」ピッ

倫子「(そう言えば、まゆりと一緒に池袋に帰った時、犬小屋が昔のままあったような気がする……)」

倫子「(気になってケータイでネット検索してみたが、どれだけ調べても例の警官による女子中学生暴行事件は出てこなかった)」

倫子「は、はは……この世界線のオレは、鈴羽に、そして幸高さんに守られていたんだな……」

幸高「黙っていて済まなかった」

倫子「い、いえ! とんでもない! むしろどれだけ感謝してもしきれないです御父上っ!」

幸高「君が健やかに育ってくれて、そして留未穂の友達になってくれて、本当に嬉しいよ」

倫子「(ある意味、鈴羽の陰謀だな……ふふっ)」

956 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 12:52:53.45 XQu17636o 583/2638


倫子「(……幸高さんが死亡した世界線ではどうなっていたんだ?)」

倫子「(凶真守護天使団、裏マーケット、血の盟約……もしかして、当時8歳のフェイリスがオレを見守っていたのか?)」


ガチャ


フェイリス「パパ……」

倫子「フェイリス……」

倫子「(猫耳カチューシャは外したのか……)」

幸高「どうした留未穂? 泣いているのかい?」

フェイリス「私ね……どうしたらいいか、わからないの……」

フェイリス「友達が、私の大切な友達が、死んじゃうかもしれないの……」

フェイリス「私のせいで……グスッ……」

倫子「そんなっ!? フェイリスのせいなんかじゃないっ!!」

幸高「……さっき、未来から来たメール、って言ってたね。少し詳しく聞かせてくれないかな」

957 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 12:53:28.91 XQu17636o 584/2638


・・・

幸高「本当にタイムマシンを開発したなんて……さすが章一の娘だ」

フェイリス「パパ、私どうしたらいい……?」

幸高「……岡部くんに聞きたいことがある」

倫子「は、はい」

幸高「タイムリープではアトラクタフィールドの収束事項を回避することは絶対に不可能、これは間違いないんだね?」

倫子「た、たぶんそうです。今までもそうだったので……」

幸高「私は100%か、と聞いているんだ」

倫子「あ、いえ、その……わかりません」シュン

幸高「……いや、済まない。つい学生の頃の気分で話してしまった」

幸高「もし可能性がコンマ数%でもあるのなら試してみることはできないかな?」

倫子「そ、それって、つまり……」

幸高「この世界線でも本当に椎名まゆりちゃんは、命を落としてしまうのかどうか」

倫子「…………」

958 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 12:54:06.97 XQu17636o 585/2638


幸高「無論、仮に失敗した場合、岡部くんがそれを見届けた後タイムリープしなければならないだろう」

幸高「机上ではいくらでも語れるが、実際に体験するとなれば、それはつらいこと、つらすぎることだ」

幸高「もし難しいなら――」

倫子「いえ、やります。やらせてください」

倫子「今まで守ってもらって、その恩を捨て置くわけにはいかない」

フェイリス「凶真……」

幸高「……思った以上に君に過酷なことを強いてしまったかもしれないな」

幸高「私は歳を取りすぎて、人が死ぬことに慣れてしまった……」

フェイリス「私が……絶対にマユシィを守る!」

幸高「もちろん、私も全力で警護しよう。ラウンダーに秋葉原を滅茶苦茶にされるわけにはいかない」

959 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 12:55:03.19 XQu17636o 586/2638


幸高「今の時間は……午前0時ちょうど、か。仮に失敗した場合、この時点に戻って来てもらっていいかな?」

倫子「はい。それなら同じ話を繰り返さなくて良くなりますね」

幸高「それから、仮に失敗してしまった後の話だが、『誘拐Dメールを打ち消す』以外の方法は無いだろうか」

倫子「それについてはオレも考えてました。例えば2000年4月2日に追加のDメールを送る……『IBN5100を岡部倫子に渡すまで絶対に手放すな』、とか」

幸高「なるほど。誘拐事件の後、教授からの遺言にあった人物の名前があれば、私は絶対に約束を守るだろう」

幸高「その場合、当時の私の会社はつぶれているだろうね。もしかしたら家族が路頭に迷っているかもしれない」

フェイリス「……でも、パパの命には代えられないよ」

倫子「IBN5100さえあればα世界線から脱出できるんです。まゆりは……死ぬことはなくなる」

幸高「……確かにそうかもしれない。だが、君が元居た世界線では私は死んでいた。そうだね?」

倫子「そうなります……」

幸高「ふむ……やはりギャンブルか……」

倫子「というと……?」

960 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 12:56:22.10 XQu17636o 587/2638


幸高「保険の話だよ。Dメールを打ち消すのと、Dメールを新たに送るのではわけが違う」

幸高「打ち消すということは君が元居た世界線へ戻れるということ。そこならば、仮に問題があったとしても、また"イマの世界線"へ戻ってくることも理論上は可能だ」

幸高「だが、新たに送る場合は違う。世界線が回帰不可能なまでに分岐してしまう危険性がある」

幸高「私の生存を優先したために、君はもっと大切な何かを失う羽目になるかもしれない」

倫子「(またラボが無くなってしまったり……あるいは、秋葉原が消滅したり……)」

倫子「バタフライ、エフェクト……」

幸高「そうなったら最後、君は二度と"イマの世界線"へ戻ってこれなくなる」

倫子「……さすが、橋田教授のゼミ生だっただけありますね」

幸高「その橋田教授は誰に理論を教えてもらったんだろうね」ニコ

幸高「ゆえに、リスクを考えるとDメール打消しの方が勝る」

フェイリス「パパ……!」

幸高「だが、まずは私に運命と戦わせてくれないか。α世界線の収束とやらに、どこまで太刀打ちできるか試さずにはいられないのでね」

幸高「君たち2人の親友の命を、私に預けて欲しい」

倫子「……わかりました」

961 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 12:57:32.50 XQu17636o 588/2638

2010年8月14日(土)19:45
カラ館


倫子「(ラジ館から駅入り口側へ、ゲーセンのある角をまわって警察署方面に行ったところにあるカラオケ店の一室にオレたちは居た)」

まゆり「えっへへー、フェリスちゃんとオカリンとカラオケに来れて嬉しいなー」

フェイリス「コミマの前夜祭だニャ! さぁ、次はマユシィの番だニャーン♪」

倫子「そろそろアニソン縛りはキツイぞ……オレはそこまでアニメには詳しくないのだ……」

倫子「(タイムリーパーである紅莉栖には会っていない。会ったところで、どんな顔をしてこの話をすればいいかわからなかった)」

倫子「(一応メールで"心配するな"とだけ送っておいたが……)」チラッ

まゆり「オカリン、誰かから連絡待ってるの? ずっとケータイを気にしてるけど……」

倫子「あ、いや、これは時間が気になっているだけでな」アセッ

まゆり「なんの時間~?」

倫子「えっと、その、だな……」

まゆり「あれれ~? まゆしぃのカイちゅ~、止まっちゃってる~」

倫子「なっ……」ゾワッ

まゆり「…………」クタッ

フェイリス「マ、マユシィ? どうしたんだニャ? ほら、もう前奏終わっちゃうニャ!」ユサユサ

まゆり「…………」

フェイリス「……マユシィ?」

倫子「……死んだ」




  「まゆりが、死んだ」




962 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 12:58:20.12 XQu17636o 589/2638


音がした。

オレの心の中で、何かが消える音。

壊れる音。

今まで感じたことも想像したことも無い、得も言われぬ恐怖がオレを襲った。

まゆりが死ぬことに対する恐怖ではない。

まゆりの死を無感情に受け入れている自分に対する恐怖、だ。

まるでモルモットを殺すサイエンティストのように。

そこにあったのは、愛苦しい幼馴染との不条理な死別なんかではなく、

無味乾燥な情報。

試験管の中の反応。

原因に対する結果。

オレは、まゆりの死を観測した。

世界は、再構成される――――――


963 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 12:59:10.73 XQu17636o 590/2638


――――――――――――――――――――――

2010年8月14日22時00分 → 2010年8月14日0時00分

――――――――――――――――――――――

964 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 13:00:54.71 XQu17636o 591/2638

2010年8月14日(土)0時00分
秋葉邸


倫子「……っ」ポロポロ

フェイリス「凶真ッ!? 電話に出たと思ったら、突然どうしたのかな……」オロオロ

幸高「……なるほど、それがタイムリープというわけだね。おそらく結果は芳しいものではなかったんだろう」

倫子「……ごめんなさい。ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさい……」プルプル

フェイリス「……私こそごめんなさい。留未穂のせいで、凶真につらい思いをさせてるんだよね……」ダキッ

幸高「となると、Dメールを送るしかなさそうだね」

倫子「……ゴメンナサイ……」

幸高「……『誘拐Dメールを打ち消す』以外の方法は無いだろうか」

倫子「……例えば、追加のDメールを送る……『IBN5100を岡部倫子に渡すまで絶対に手放すな』……」

幸高「なるほど。誘拐事件の後、教授からの遺言にあった人物の名前があれば、私は絶対に約束を守るだろう」

幸高「その場合、当時の私の会社はつぶれているだろうね。もしかしたら家族が路頭に迷っているかもしれない」

フェイリス「……でも、パパの命には代えられないよ」

倫子「……IBN5100さえあればα世界線から脱出できる……まゆりは死なない……」

幸高「……確かにそうかもしれない。だが、君が元居た世界線、改変前の世界線では私は死んでいた。そうだね?」

倫子「はい……」

幸高「ふむ……やはりギャンブルか……」

倫子「…………」

フェイリス「ギャンブル?」

965 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 13:02:03.07 XQu17636o 592/2638


幸高「保険の話だよ。Dメールを打ち消すのと、Dメールを新たに送るのではわけが違う」

幸高「打ち消すということは君が元居た世界線へ戻れるということ。そこならば、仮に問題があったとしても、また"イマの世界線"へ戻ってくることも可能だ」

幸高「だが、新たに送る場合は違う。世界線は回帰不可能なまでに分岐してしまう可能性がある」

幸高「私の生存を優先したために、君はもっと大切な何かを失う羽目になるかもしれない」

倫子「(……繰り返す時空改変でオレは、人としての感情を失ってしまったのかも知れない……)」

幸高「そうなったら最後、君は二度と"イマの世界線"へ戻ってこれなくなる」

幸高「ゆえに、リスクを考えるとDメール打消しの方が勝る」

フェイリス「パパ……!」

幸高「……実を言うとね、岡部くんに話を聞いてからというもの、不思議な景色が目に浮かぶんだよ」

倫子「……え?」

幸高「私が空を漂って留未穂の成長していく様を見守っているんだ……。そして、秋葉原も随分変わってしまったと、雲の上からつぶやいている自分が居る」

倫子「それって……リーディングシュタイナー、なのか……?」

倫子「い、いや、脳が存在していないのにそんなわけないか……」

フェイリス「パパの幽霊……?」

幸高「もし私が生きていることで世界がディストピアになってしまうと言うなら、私は迷うことなくこの命を投げ出そう」

幸高「留未穂は、信頼できる友人たちが居ればきっと大丈夫だ」

幸高「私の自慢の娘なんだから」

フェイリス「パパ……」

966 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 13:03:02.49 XQu17636o 593/2638

寝室


倫子「…………」

フェイリス「……ねえ、凶真」

倫子「……なんだ、フェイリス」

フェイリス「……今は留未穂、って呼んでほしいな」

倫子「……留未穂」

フェイリス「聞かせてほしいの。パパの居ない世界がどんな世界だったか」

倫子「……お前はメイクイーン+ニャン2の人気No.1メイドであり、みんなの人気者だった」

倫子「まゆりもそこでバイトしていたんだ。マユシィ・ニャンニャンとして」

倫子「ダルがお前に心酔していてな。って、それはこっちの世界線でも同じか」

倫子「何を隠そう、秋葉原を萌えの街にした張本人だ」

倫子「仕事が忙しいせいで公式大会には出れてないが、雷ネットの腕は変わらずだぞ」

倫子「それから、留未穂はオレのストーカーだったんだ。それも10年間」

フェイリス「わ、私が凶真のストーカー?」

倫子「今思えば、オレを守ってくれ、っていう鈴羽の……橋田さんの遺言を守ってくれてたんだろう」

倫子「凶真守護天使団だの、裏マーケットだのを作って管理していた。お前には頭が上がらないよ」

フェイリス「……10年間、私は、凶真を、見守ってた……うぅっ!」

倫子「ど、どうした?」

フェイリス「頭が……痛い……っ。なにか、思い出しそう……」

倫子「まさか、リーディングシュタイナーがっ!?」

967 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 13:04:49.60 XQu17636o 594/2638


フェイリス「……思い出した。留未穂はね、小さい頃、黒木と一緒にとっても綺麗な女の子を見つめてた」

フェイリス「髪が長くて、お人形さんみたい、って思って、憧れてたの」

倫子「……一言声をかけてくれればよかったのに」

フェイリス「ううん、私にはできなかった。あなたに触れることで私の現実が、私の理想が壊れてしまうことを恐れてた」

フェイリス「あなたを見つめているだけで、私は幸せだったんだよ?」

フェイリス「どうしてこんな大切なことを忘れていたんだろう……。10年間、あなたを忘れた日は一日も無かった」

フェイリス「だから、初めてあなたがメイクイーンに来た時……あれは今年の5月だったね。もう、とっても驚いたよ」

倫子「ダルのやつには感謝しておかないとな」ククッ

フェイリス「最初はあなたと接することが怖かったけど、いつの間にか友達になってて……顔を思い浮かべるだけで心が温かくなるの」

フェイリス「凶真はね、私のお姫様だったんだよ……?」

倫子「…………」

968 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 13:05:20.35 XQu17636o 595/2638


フェイリス「全部思い出した……。凶真との絆のおかげだね」

倫子「そうか……」

フェイリス「私の8歳の誕生日の時、パパにね、一緒に遊びにいこうってお願いしてたんだ」

フェイリス「パパは約束してくれたよ。その日はなにがあっても一緒に過ごそうって」

フェイリス「でも、急な仕事の予定が入っちゃって、前日になって約束は破られちゃったの」

フェイリス「『ひょっとしてパパは私のこと愛してくれてないんじゃないか?』って思って、誕生日に家出した」

フェイリス「その頃、パパは飛行機で――」

フェイリス「私が最後にパパに言った言葉、なんだと思う?」

倫子「…………」

フェイリス「『パパなんかもう知らない! 死んじゃえばいいんだ!』って」グスッ

フェイリス「大好きだったのに……それが、ずっと、罪悪感として残っていて……」ウルッ

倫子「…………」ダキッ

フェイリス「凶真ァ……」ヒシッ

969 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 13:05:54.64 XQu17636o 596/2638


フェイリス「私はもう満足したから。パパが私のこと、とっても大切に思ってくれてるってわかったから」

フェイリス「……本当は最初からわかってたんだけどね」

フェイリス「これは私にとっての夢のご褒美だったんだよ。ありがとう、凶真」

倫子「夢……」

フェイリス「変えた過去は戻さなくちゃね。マユシィのためにも、凶真のためにも」

倫子「……それで、いいんだな」

フェイリス「……ホントは、ちっともよくないよ……」グスッ

フェイリス「でも、これ以上凶真のつらそうな顔は見たくない。それだけで十分でしょう?」

フェイリス「だって留未穂は、凶真を守る天使なんだもん」

倫子「……すまない」

フェイリス「……今日は一緒に寝ていいかな。涙が止まるまで、抱きしめていて欲しい……」

倫子「……ああ」

970 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 13:06:45.33 XQu17636o 597/2638

2010年8月14日(土)11時58分
秋葉邸


倫子「(紅莉栖がタイムリープしてくる前に、ダルにDメール送信準備をしてもらった)」


future-gadget8@hardbank.ne.jp
Sub
誘拐は冗談パパ愛してる
また会おうね


フェイリス「パパに最後の挨拶してきたニャン」

倫子「猫耳を装備するとニャンニャン語が戻るのか」

フェイリス「ニャフフ。凶真も猫耳つけてみるかニャ?」

倫子「だっ、だが断るっ!」

フェイリス「つれないニャ~」

倫子「(軽口を言ってくれて、オレを気遣っているのか。さすがNo.1メイドだ)」

971 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 13:07:56.15 XQu17636o 598/2638


フェイリス「世界が元に戻ったら、フェイリスの今の記憶も全部なくなっちゃうのかニャ?」

倫子「……きっと覚えているさ」

フェイリス「嘘ニャー!!」キシャー

倫子「ヒッ!? い、いや、嘘ではないぞっ! 現に今、お前は"思い出している"ではないかっ!」

フェイリス「でもすぐには全部思い出せなかったニャ」

倫子「それでも、きっと夢やデジャヴ、白昼夢としてだな……」

倫子「(ええっと、紅莉栖はなんと言っていたんだったか……)」

フェイリス「ま、別にどっちだって大丈夫ニャン。向こうのフェイリスにもヨロシクニャ♪」

倫子「……たとえ世界を違えようとも、オレたちは仲間だ。友達だ」

フェイリス「うニュ~、もうこっちのフェイリスは凶真のチャームに溺れてしまったのニャァ~。今ならクーニャンの気持ちがよくわかるニャ」スリスリ

倫子「百合スティーナ2号になられてはたまったものじゃないがなっ! って、言ってるそばからすり寄るな猫娘っ!」グイグイ

フェイリス「ほーら、準備ができたならさっさとボタンを押すのニャ」

倫子「……絶対に1%の壁を超えてみせる」

倫子「まゆりを救ってみせる。世界の支配構造を変えてみせる」

倫子「オレはッ! いかなる体制にも屈しないッ! 狂気のマッドサイエンティストッ!」

倫子「鳳凰院、凶真だッ!!!」ガバッ



フェイリス「……頑張ってニャ、凶真」チュッ



ピッ



972 : ◆/CNkusgt9A - 2015/12/29 13:09:42.65 XQu17636o 599/2638


―――――――――――――――――――
    0.40942  →  0.46914
―――――――――――――――――――

2 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 21:49:39.98 VBBZKhMUo 600/2638

2010年8月14日(土)12時07分
未来ガジェット研究所 開発室


倫子「……ラボ、か。まるで瞬間移動だな」

倫子「(頬に残るやわらかい温もりは消えていない……もちろん、記憶としてではあるが……)」

倫子「済まない、フェイリス……」ウルッ

フェイリス「フェイリスがどうかしたニャン?」

倫子「ああ、フェイリスか……って、ほぁっ!? ど、どど、どうしてフェイリスがここにっ!?」

フェイリス「ニャッフッフー。それは、フェイリスが凶真を守護する天使だからニャン♪」

倫子「…………」

倫子「…………」ウルッ

  ダキッ

フェイリス「……ニ゛ャァァァァァァァァァアアアアアアアアアア!?」ドッキン ドッキン


ガララッ


まゆり「フェ、フェリスちゃん!? 突然大声出してどうし……」

紅莉栖「フェイリス!? 何があっ……」

倫子「…………」ギュゥ

フェイリス「あっ!? こ、これは違うニャ!? 凶真が突然――」

紅莉栖「血の盟約第360条。鳳凰院凶真の意志に関わらず、過度なスキンシップを取ってはならない……っ」ギリリッ

倫子「……お前がオレをずっと守ってくれていたんだよな。ありがとう……」グスッ

フェイリス「―――――」

まゆり「フェリスちゃん? 気を失ってる……」

3 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 21:50:56.73 VBBZKhMUo 601/2638

未来ガジェット研究所 談話室


紅莉栖「ちょ、ちょっとさっきのアレなんなの!? 愛のあるハグだったし! 羨ましすぎだろマジで……あ、いや、岡部にハグされるのも羨ましいけど、愛のあるハグができる同性がいるっていうのが羨ましいんだからな! 勘違いするなよ! というかなんなのどういうことなの? 証明して説明!」

倫子「お、落ち着けー……」

フェイリス「フェイリスだってわけわかんニャいニャ。で、でも、一生記憶に残る出来事だったニャ……」ポワポワ

まゆり「フェリスちゃんいいなぁ」

倫子「そう妬くなまゆりよ。お前もぎゅってしてやろう」ギュッ

まゆり「はわわ……えへへ……」ニコニコ

倫子「(温かい……まゆりは、生きている……)」ウルッ

紅莉栖「え、えっと、この順番で行くと次は私も……」エヘエヘ

倫子「だが断る」

??「皆さん、落ち着いてください。コーヒー淹れましたよ。あ、所長にはドクペです」

倫子「気が利くな。ご苦労――ん?」

倫子「あ、あなたは誰だ? 見たところ、高校生か? まゆりの友達?」

??「はい? 何を言ってるんです?」

まゆり「ケイさんありがとー♪」

4 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 21:52:50.67 VBBZKhMUo 602/2638


倫子「紅莉栖。オレは世界線を移動してきた。この意味がわかるか?」

紅莉栖「ふぇっ!? い、いま私の名前を普通に呼んだ……? フラグktkr……?」

倫子「同じことを何度も言うな……」ハァ

紅莉栖「……つまり、またDメールを送ったのね? それでこの世界線の記憶がない、と」

倫子「その通りだ。だから、オレの主観としてはその人と初対面なのだ」

??「本当にタイムマシンを使って世界線移動を? やっぱり牧瀬博士は天才ですね……」

紅莉栖「それじゃ、改めて紹介するわ。この子は久野里澪ちゃん。結構大人っぽいけど、今年で13歳よ」

久野里「不思議な感じがしますが……。初めまして、鳳凰院凶真所長。久野里です」

倫子「中学生なのか!? それにしては非常に発育がいいな……」

倫子「背も高いし、胸も助手くらいは育っている……」ムムム

紅莉栖「ちょ、乳比べすんなっ!」

久野里「ふふっ。昨日と同じ反応ですね」

倫子「なにより、声がとても優しい。ラジオパーソナリティーでも目指したらどうだ?」

紅莉栖「3月に小学校を卒業して、今年の秋からアメリカの全寮制スクールに進学するんだって」

久野里「いつかは牧瀬博士の元で研究したいと考えています」

倫子「ほう、天才少女2号だったか」

久野里「い、いえ、私は天才では……」

フェイリス「マユシィはケイさんって呼んでるニャ」

久野里「私のバッグについてる、久野里のイニシャル"K"の刺繍を見たんですよね」

まゆり「なんかね~、"ケイさん"って感じがしたのです」

倫子「確かに、見た目も声も雰囲気も、まゆりより年上に見えておかしくないな」

倫子「それで、どうして天才少女2号が我がラボに? もしかしてラボメンなのか?」

久野里「あ、いえ、その……」

フェイリス「ミオニャンはクーニャンの大ファンだったのニャ!」

5 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 21:53:50.79 VBBZKhMUo 603/2638

※ドラマCD「間に合わぬ愚者の微睡-FOOLS」によると
(SG世界線では)久野里澪が牧瀬紅莉栖論文に興味を持つのは飛び級でハイスクールへ進学した後のこと。

7 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 21:54:52.64 VBBZKhMUo 604/2638


倫子「(話を整理すると、この世界線の昨日、8月13日には次のようなことがあったらしい)」


・・・

2010年8月13日(金)14時32分
未来ガジェット研究所


紅莉栖「突然実験は中止だ、なんて言って急に出て行っちゃうし……。私はちょっとここで眠らせて……」

ダル「僕はフェイリスたん成分を補充しにメイクイーンに行ってくるお」

まゆり「まゆしぃはるかちゃんを説得しないとなぁ。ねぇねぇダルくん、コスプレは恥ずかしくないよーって、どうすれば伝わるかなぁ?」

ダル「パンツじゃないから恥ずかしくないもん! と同じ精神ですねわかります」

紅莉栖「まるで意味がわからんぞ。でも、まゆりだって恥ずかしくてコスプレしないんでしょ?」

まゆり「うーん、それもあるけど、まゆしぃは作る方が楽しいのです」

紅莉栖「でも不思議よね。そんなまゆりが猫耳つけてバイトしてるんだから」

まゆり「あれはコスプレじゃなくて制服だもん」

まゆり「……あぁーーーっ! まゆしぃはひらめいちゃったのです☆」

8 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 21:55:40.07 VBBZKhMUo 605/2638

柳林神社


るか「え、ええーっ!? ボクがメイド喫茶でメイドさんを!?」

まゆり「そしたらね、コスプレも悪くないかもーって思ってくれるかなぁって」

るか「で、でも、やっぱり恥ずかしいよ、まゆりちゃん……」

まゆり「メイクイーンのお洋服はね、コスプレじゃなくて制服だから、恥ずかしくないよー」

るか「そんなぁ……」

栄輔「いいじゃないか、るか。メイドとして働くのも、バイトをするのも、きっとお前のためになる経験になるだろう」

栄輔「花嫁修行だと思って、まゆりちゃんの頼みを聞いてあげたらどうだい?」

るか「うぅ……そんなことならボク、男の子に生まれてくればよかった……」

フェイリス「もちろんお手当は出すニャ」

フェイリス「今日はマユシィにはチラシ配りをしてもらう予定ニャン。一緒に手伝ってくれるかニャ?」

るか「チラシ配りくらいなら……」

まゆり「わーい♪ まゆしぃ大勝利なのです☆」

9 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 21:56:21.60 VBBZKhMUo 606/2638

NR秋葉原駅電気街口前


フェイリス「メイクイーン+ニャン2ですニャ~! よろしくお願いしますニャ~!」

まゆり「みなさんで、遊びに来てくださいニャ~~ン♪」

フェイリス「とまあ、こんな感じニャ。それじゃ、フェイリスはお店の方に戻るニャン」

フェイリス「ルカニャン・ニャンニャン、がんばってニャ!」

るか「メ、メイクイーン+ニャン2です、にゃぁ~……」ウルウル

まゆり「るかちゃん、かわいいよぉ~えっへへ~」

るか「う、うぅ……。あ、あの、チラシもらってくださ~い……」スッ

久野里「…………」パシッ

るか「あ、ありがとうございます、にゃんにゃん……」ウルウル

まゆり「ぜひ来てね~♪ ニャンニャン♪」

久野里「あの、すいません。秋葉原に牧瀬紅莉栖が居る、ということについて、何か知りませんか?」

るか「え? ま、牧瀬さん、ですか?」

久野里「……っ! 知っているんですか!」

10 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 21:57:07.89 VBBZKhMUo 607/2638

未来ガジェット研究所


紅莉栖「うへへぇ……ほかべぇ……」zzz

まゆり「クリスちゃーん。お客さんだよー」

るか「気持ちよさそうに寝てますね……」

久野里「(いよいよあの天才牧瀬紅莉栖と会える……っ! 例の論文は何度も読み直してもう暗唱できるほど……!)」ドキドキ

久野里「(7月28日のUPXでの講演は、専門とは違ったけど大変有意義なものだった。途中で白衣の女性が泣いちゃってたけど……)」ワクワク

久野里「(あの時はあまりにも緊張して声を掛けることができなかった。だ、だが、あそこに居た教授っぽい人から聞いた情報通り、牧瀬紅莉栖は秋葉原に居た!)」ソワソワ

久野里「し、失礼します! あの、は、は、初めまして!」

紅莉栖「んごっ……。えっと、誰ぞ?」

まゆり「ケイさんだよ~」

るか「牧瀬さんのファン、みたいですよ」

紅莉栖「ふぇ……?」

13 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 22:00:12.53 VBBZKhMUo 608/2638


久野里「わ、私、ゆくゆくは牧瀬博士のいるヴィクトル・コンドリア大学脳科学研究所で研究したいと考えています!」

紅莉栖「……なんか久しぶりに天才少女牧瀬紅莉栖というキャラを思い出した件について」ポリポリ

久野里「すいません、お休み中のところ押しかけてしまって……」

紅莉栖「ううん、いいのよ! 私もあなたみたいな可愛い女の子とお話できて嬉しい。それに未来の後輩だっていうならなおさら」ネットリ

久野里「か、可愛いだなんて、そんな……」テレッ

まゆり「じゃあオカリンはまゆしぃがもらっていくね~」ニッコリ

紅莉栖「ちょ!? まゆりが橋田みたいなことを言い出した……って、ダメよ! 岡部はみんなのものなの!」

紅莉栖「ようやく裏マーケットに加入できたんだから……」ブツブツ

久野里「えっと、岡部さんというのは?」

紅莉栖「岡部倫子。またの名を鳳凰院凶真。このラボの所長であり象徴、私が心から愛しているカリスマ的存在よっ!」

るか「突然元気になりましたね、牧瀬さん」ニコ

紅莉栖「というか、漆原さんがメイド服! うん、とっても素敵……うふふ」

久野里「(あの牧瀬紅莉栖が崇敬している存在……鳳凰院凶真、一体どんな人物なんだ?)」

久野里「って、えっ? ここって、ラボだったんですか?」キョロキョロ

紅莉栖「……あぁ、そっか。それが普通の反応よね」

紅莉栖「いいわ、せっかくだし色々紹介してあげる」

久野里「ほ、本当ですかっ!?」パァァ

まゆり「それじゃ、まゆしぃたちはバイトに戻るね」

るか「失礼します」ペコリ

14 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 22:01:17.71 VBBZKhMUo 609/2638


久野里「タイムリープマシン……そ、そんな、すごすぎる……っ!」

紅莉栖「今話したタイムトラベル理論は未来人から教えてもらった眉唾なんだけどね。もっとちゃんとした施設で研究しないと仮説すら作れない」

久野里「あ、あのっ! 失礼を承知でお願いがあります!」

久野里「このラボの研究についてもっと教えてもらえませんか! 牧瀬博士とお話したいことがたくさんあります!」

紅莉栖「うーん……それをオーケーするのはやっぱり岡部よね……」

久野里「(なんとかして岡部所長に気に入られなければ……!)」

ガチャ バタン

倫子「ただいま帰ったぞ……む? どちら様だ?」

倫子「見たところ、高校生か? まゆりの友達?」

久野里「は、初めまして! 久野里澪と言い……あっ、UPXでの講演の時に居た白衣の女性!」

紅莉栖「ちょうどいいところに。岡部、この子がね、ラボメンになりたいって」

倫子「なん……だと……?」


・・・


15 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 22:03:22.55 VBBZKhMUo 610/2638

2010年8月14日(土)
未来ガジェット研究所


倫子「(それでこの子はラボに居ついて、オレたちの雑事を手伝う代わりに牧瀬博士(笑)から直々に量子脳論だの世界線理論だのをレクチャーしてもらっていたのだとか)」

紅莉栖「(笑)って何よ」

倫子「お前がクソレズで腐女子でファザコンで、誰も居ないラボで全力オ○ニーに勤しむネラーだということは隠しておいてやろう」ヒソヒソ

紅莉栖「」

フェイリス「フェイリスは昨日お店でルカニャンたちから話を聞いて、今日顔を見にきたってわけニャン」

倫子「それで、お前はラボメンなのか?」

久野里「いえ、歳が若いからということで辞退させていただきました」

倫子「(どう見ても綯の一個上には見えん……)」

久野里「でも、こうして遊びにくることは許可していただきました……本当にありがとうございます、所長」

倫子「わかっているとは思うが、ここでのことは全て部外秘、トップシークレットゥ!」

倫子「陰謀の魔の手は思った以上にずっと身近にあって、いつもオレたちを陥れようと手ぐすね引いているのだっ!」

久野里「それも昨日話してもらいましたね。警戒は怠りません!」

倫子「(きっとその忠告は厨二病で済まされるものだったんだろうが……あの時のオレに言ってやりたい。軽率なことをするなと。もっと注意を払えと)」

倫子「良かったな助手。可愛い後輩ができて」

紅莉栖「う、うん。結構、嬉しいものね。……えへへ」ニヘラ

倫子「そのだらしない顔は久野里さんに見せるなよ……?」

16 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 22:04:55.76 VBBZKhMUo 611/2638


倫子「(取りあえずこの世界線のIBN5100の状態を確認しにいかなければ)」

倫子「フェイリスよ、ルカ子は今日もバイトなのか?」

フェイリス「ルカニャンは昨日1日だけの体験バイトだったニャン」

まゆり「コミマでコスしてくれるといいなぁ~」

倫子「わかった。オレはこれから柳林神社まで行ってくる」

まゆり「いってらっしゃ~い、オカリーン」

久野里「いってらっしゃいませ、所長!」



柳林神社


栄輔「……古いパソコン。ふむ、確かにそんな記憶がありますね」

倫子「本当ですか! ぜひ見せてもらいたいのですが!」

栄輔「ちょっと探してきましょう」

倫子「(よし、確実に成功しているぞ! まだ全てのDメールを取り消せたわけではないが、オレは戻ってきている!)」

倫子「(ここで手に入ってしまえば、もうDメール取り消しをしなくて済む……)」

倫子「(ルカ子を女の子のままでいさせることができるかもしれない……!)」

るか「…………」ソワソワ

倫子「どうしてルカ子は申し訳なさそうな顔をしているのだ?」

るか「あ、いえ、その……」オドオド

倫子「……ああ、そういうことか」

17 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 22:06:23.62 VBBZKhMUo 612/2638


倫子「あの時は済まなかった。お前を、男だなんだと言ってしまって……」

るか「い、いえ、そのことについては牧瀬さんから丁寧にご説明していただきましたので」

倫子「……理解、できたのか?」

るか「いえ……ごめんなさい」シュン

倫子「ふっ。ルカ子は生真面目だな。さすが我が一番弟子。だがお――」

倫子「……お、おんなだ」アセッ

るか「……未だに自分が男だったなんて信じられません」

倫子「それは、そうだよな……」

るか「ボクが男の子でも、凶真さんはボクを弟子にしてくれたんですよね?」

倫子「ああ。正直に言えば、最初は女の子だと思った」

倫子「男だとわかってからも、ルカ子の本質を知って、オレが鍛えてやろうと思ったのだ」

倫子「オレは確かに男が嫌いだ。だが、ルカ子をそういう目で見るような男が嫌いなだけだ」

倫子「ルカ子が男であろうとも、ルカ子はルカ子だ」

るか「凶真さん……。ボク、その時の記憶はないですけど、たぶん嬉しかったんだと思います……」

倫子「(さて、どうやって話を切り出したものか……。まゆりはルカ子の親友でもあるからな……)」

栄輔「おかしいですねぇ、私の秘蔵コレクションしか見つかりませんでした。鳳凰院くん、ちょっと着てみませんか?」スッ

倫子「おのれは探す気があったのかぁっ!?」

18 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 22:07:57.96 VBBZKhMUo 613/2638


倫子「やっぱりIBN5100は手に入らない、か。この神社にはフェイリ……秋葉留未穂が奉納したんですよね?」

栄輔「おや、お知り合いでしたか。留未穂ちゃんは、とても立派な女性になられましたなぁ」

倫子「…………」ゾワワァ

栄輔「彼女が小学生の時でした。執事の黒木さんと一緒にこの神社を訪ねて来てくれましてね」

倫子「その手に持ったランドセルを地面に置いてからしゃべってください」

栄輔「しかし、パソコンはなぜ消えたのでしょう。宝物殿の鍵が壊されてもいなかったですし……」

るか「…………」キョドキョド

栄輔「るかはなにか知らないかな? 毎年年末の大掃除の日に宝物殿の掃除をしているだろう?」

るか「……なにも知りません」

倫子「(これは明らかに知っている風だな。なぜルカ子は嘘を吐いているのだ?)」

倫子「(まあ、実際そんなことはどうでもいいか。Dメールさえ取り消せば、IBN5100は嫌でも手許に戻ってくるのだから)」

倫子「……ちょっと考えさせてくれ」

19 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 22:09:23.78 VBBZKhMUo 614/2638

新御徒町 天王寺家


倫子「(天王寺は前にオレがここにきた時とほとんど同じ橋田鈴との想い出を語ってくれた。2度目だと言うのにオレはまた涙腺が緩んでしまった)」

【 0.46914 】

倫子「(世界線変動率は確実に1%へと近づいていた。これはオレにとって勇気になる)」

天王寺「そういや、鈴さんが毎日こつこつと書いてた手記があるんだが、俺にはさっぱりでな。お前さんにやるよ」

倫子「へ? いいのですか?」

天王寺「お前みたいなのが好きそうな内容なんだよな……まさか鈴さんにそんな趣味があったなんて、死ぬまで気づかなかったが。ほれ」スッ

倫子「"レジェンド・オブ・ワルキューレ"……だと……」ゾクッ

倫子「(タイトルだけで中身が容易に想像できてしまう……)」プルプル

倫子「せっかくなので頂いておきましょう! これはいずれ世界に災いをもたらす禁書ですからねっ! ……ではっ!」ダッ

20 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 22:10:39.71 VBBZKhMUo 615/2638

未来ガジェット研究所


まゆり「トゥットゥルー♪ オカリン、おかえりン♪」

久野里「お、お帰りなさいませ、ご、ご、ご主人様……」カァァ

倫子「なっ!? それって、確かドリームクラブの……」

まゆり「えっへへー、ケイさんにね、今度のコミマでカエデちゃんに来てもらうコスプレを試着してもらっていたのです☆」

倫子「い、いや、明らかに天才少女2号が恥ずかしそうにしているのだが……」

久野里「こうしたら所長に喜んでもらえるという事で……」プルプル

紅莉栖「所長に気に入られないと追い出されちゃうかもしれないものねっ!」ドヤァ

倫子「明らかにパワハラではないかぁっ!! 今すぐやめろぉ!! うわぁん!!」

21 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 22:11:29.67 VBBZKhMUo 616/2638

未来ガジェット研究所 開発室


倫子「さて、今日は14日の土曜日。今までの法則で行けば、まゆりが死ぬのは明日15日の日曜日ということになる」

倫子「……確認する気にはなれない」

倫子「無理矢理ルカ子から母親のポケベル番号を聞き出すこともできる。なかったことになるのだから」

倫子「……いや、絶対にダメだ。それだけはやっちゃいけない」

倫子「フェイリスとまゆりとカラオケに行った時、オレの心の中で越えてはいけない一線を越えてしまった気がするんだ……」

倫子「取りあえず、時間を稼ごう。話はそれからだ」スッ


バチバチバチバチッ


紅莉栖「岡部? なによ、なんで1人で勝手に実験を――」

22 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 22:12:52.98 VBBZKhMUo 617/2638


―――――――――――――――――――――――

2010年8月14日18時19分 → 2010年8月13日10時19分

―――――――――――――――――――――――

23 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 22:13:58.08 VBBZKhMUo 618/2638

2010年8月13日(金)10時19分
未来ガジェット研究所


倫子「……ふぅ」

紅莉栖「どうしたの? 賢者タイム?」

倫子「……クリスティーナよ、もしかして貴様、世界線変動率が1%に近づくごとに恥じらいを失っているのではないか?」

紅莉栖「へ?」

倫子「相談に乗ってほしい。下のベンチに行こう」

紅莉栖「……フラグktkr!!」ッシ

倫子「あーもう。それでいいから。紅莉栖のこと頼りにしてるから、うん」

24 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 22:15:34.56 VBBZKhMUo 619/2638


・・・

大檜山ビル前 ベンチ


紅莉栖「……だいたいわかった。だけど、1つだけ言わせて」

倫子「なんだ?」

紅莉栖「あんなに可愛い女の子が男の子のはずがない」

倫子「頭を叩きつけてオレに土下座したのはなんだったのだ……」

倫子「それに、見た目も仕草も女より女らしい男だったと説明しただろう」

紅莉栖「…………」

紅莉栖「なら許す」ニヘラ

倫子「簡単に言えば、股間にイチモツがあるかないか程度しか世界に影響は無い」

紅莉栖「そのせいでIBN5100が宝物殿から消滅した……。漆原さんの股間ってどうなってるのかしら」

倫子「いや、普通に考えて脳の仕組みとかも性別で違うからな? 股間だけのせいじゃないからな?」

25 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 22:16:58.40 VBBZKhMUo 620/2638


紅莉栖「で、あんたは彼女に男に戻ってほしい、と」

倫子「そうでなければまゆりは助からない」

紅莉栖「まゆりの命と、漆原さんの股間か……。実感が湧かないけど、あんたの中では解は出てるわけね?」

倫子「無論だ。ルカ子には男に戻ってもらう」

紅莉栖「ある意味、残酷な仕打ちね。自分に置き換えて考えてみたら?」

倫子「オレが男だったら……?」


  フゥーハハハ!


紅莉栖「……簡単に想像できてしまった」orz

倫子「う、うむ。オレの場合も、特殊だからな……」

紅莉栖「LGBTって言うくらいで、セクシャリティの有り方はいろいろあるわ。人間なんだから当たり前よね」

倫子「さすがアメリカ帰りの帰国子女、説得力が違う」

紅莉栖「アメリカでなら倫子ちゃんと夫婦に……ウフフ」ニヤニヤ

倫子「だが、ルカ子は女になりたくて女になり、男としての記憶を忘れたのだ」

倫子「だからこそこうして、なるべく傷付けないようにするにはどうすべきかと助手に相談しているわけだ」

倫子「無論、ルカ子を説得した上で行動したい。あいつの気持ちを無視して世界線を変えることは……」

倫子「たぶん、オレの心が、持たない……」ウルッ

紅莉栖「こいつはヘビーね……」

26 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 22:19:08.94 VBBZKhMUo 621/2638


紅莉栖「心優しい倫子ちゃんはマッドサイエンティストにはなれませんでした、以上」

倫子「ぐぬぬぅ……倫子ちゃん言うなぁ……」

紅莉栖「(かわいい)」

紅莉栖「でも、それもある意味で真よね。改変者の精神力が削られるなら、時間移動や世界線変動の保険なんて無意味になる」

倫子「タイムリープやDメールで"なかったことにする"と言うのは、言い換えればその世界をオレの脳内に収納することだ」

倫子「オレは、オレだけはどこへ行こうとも、その事実を事実として背負わなければならない」

紅莉栖「だったら私に相談する必要なんて無かっ――」

倫子「……一緒に来てほしい」ギュッ

紅莉栖「(袖掴みキタ――――(゚∀゚)――――!!!)」ドピュッ!!

倫子「きゃぁっ!? 鼻血っ!? 紅莉栖、大丈夫かぁっ!?」

紅莉栖「」ビクンビクン

倫子「白衣が紅莉栖の血で真っ赤に染まってしまった……」

27 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 22:20:21.21 VBBZKhMUo 622/2638

柳林神社


紅莉栖「鳳凰院ちゃんが私の白衣を着ている……ハァハァ」

倫子「徹底的に漂白洗浄してから返してやろう。あとちゃん付けをするなっ」

るか「あ、岡部さんと牧瀬さん……どうかしたんですか?」

倫子「い、いや、その……」

紅莉栖「ったく。私から言いましょうか?」

倫子「(こいつに任せたら開口一番、『男性と女性で脳の働きって違うって知ってた?』などと遠回りも遠回りなことを言いそうだ……)」

倫子「……ルカ子よ!」ガシッ

るか「は、はいっ!」ドキッ

倫子「お、おち、おちついて聞いてくれ……。実は、お前は、本当は……」

倫子「男だったんだよぉっ!!!」

るか「…………」

紅莉栖「…………」

るか「えっと……それは、も、もしかして……」

るか「凶真さんは、男の子のボクが好きだったんですか……?」

紅莉栖「は?」

倫子「へ?」

るか「あっ! えっと、そうじゃなくて、男の子だったら恋愛対象だったのかなって、あ、いや、そうでもなくてですね……」アタフタ

紅莉栖「どうなの?」

倫子「……ノーコメントで」

28 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 22:21:53.75 VBBZKhMUo 623/2638


紅莉栖「はっ! そういうこと! そういうことですか! とんだピエロね私っ!」

倫子「落ち着け助手ぅ! 何を勘違いしているっ! それは機関の洗脳攻撃だぁっ!」

紅莉栖「よくよく考えればおかしかったのよね! 男嫌いの倫子ちゃんが男の漆原さんを弟子にして仲良くしてるなんて!」

倫子「だから倫子ちゃん言うなぁ!」

紅莉栖「つまりそういうことなんでしょ! 中性的な見た目の漆原さんなら倫子ちゃんでも恋愛対象だったんでしょ!」

紅莉栖「好きだったんでしょ!! 男の子の漆原さんのことがっ!!」

るか「――っ!!!」

倫子「そんなわけあるか! そんなわけあるか! 大事なことなので2回言いました!」

紅莉栖「私の真似して茶化さないでよ! 百合っぽい素振りして私の事をもてあそんでたんでしょ!?」

倫子「だからオレはノーマルだと言っているだろぉ!」

紅莉栖「はい言いましたー言っちゃいましたー! つまり男の漆原さんが好きだったんじゃない! リア充爆発しろっ!」

倫子「地獄の果てまでも面倒くさい女だな貴様は……っ!」

るか「あ、あの、ボクっ!」

るか「男の子に戻りますっ!!」

倫子「……は?」

29 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 22:23:13.59 VBBZKhMUo 624/2638


るか「おか……凶真さんがそう望むなら、ボクは……凶真さんの、こ、恋人に……」カァァ

倫子「ま、待て待てぇ! 話は最後まで聞いてくれぇ!」

倫子「お前が男に戻らないとまゆりの命が危ないから戻ってほしいのであって、オレがお前を積極的に男にしたいわけではだなっ!」

るか「凶真さんにふさわしい男になれるかはわかりませんが、ボク、頑張りたいです……って、えっ? まゆりちゃんが?」

紅莉栖「それについては私から説明するわ」

・・・

るか「そんなの……全然信じられないですよ……」

紅莉栖「信じられなくても漆原さんは岡部のために男になるんでしょ? はい議論終了」

紅莉栖「ちなみに世界線が変わると漆原さんの今の記憶は無くなるので2人は恋人にはなれません。はい論破終了」

倫子「ちょっと待てって! ルカ子も混乱しているはずだ、話をゆっくり整理してだな……」

るか「だって、まゆりちゃんは、今、生きているじゃないですか……」

倫子「……オレは、何度もあいつの死の場面を見てきた」

倫子「時間を遡るたびに、あいつの温もりを確かめずにはいられなかった……」グッ

るか「凶真さん……」

30 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 22:23:59.18 VBBZKhMUo 625/2638


るか「わかりました、お母さんにポケベルの番号を聞いてきます」

倫子「済まない……」

るか「たぶん、男の子のボクは、物心ついた時から自分の見た目とか雰囲気が嫌いだったんだと思います」

るか「でも、キッカケは、牧瀬さんやまゆりちゃん、フェイリスさんたちに囲まれた岡部さんを見て、女の子になった方が凶真さんと仲良くなれると思ったことだったんじゃないでしょうか」

倫子「そうなの、か……?」

るか「今の凶真さんなら、両方のボクを知っていてくれるんですよね。それなら、ボクは喜んで男に戻ります」

るか「まゆりちゃんのためにも……」

るか「ちょっと恥ずかしいですけど、変わらず仲良くしてくださると嬉しいです」

倫子「……このやりとりをお前は忘れてしまうだろう。だが、オレは絶対に忘れたりはしないからな」

るか「……はい、師匠」グスッ

紅莉栖「スピード解決おめでとう。さ、早いうちに次の世界線へ移動しなさ――」



??「おっと、そうはいきませんよ」



31 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 22:25:34.61 VBBZKhMUo 626/2638


倫子「なにやつ!? ……って、ルカパパではないかっ!」

栄輔「私の娘を勝手に息子にされてはたまったものではありませんな」

るか「お、お父さん!? でも、これにはまゆりちゃんの命が……」

栄輔「人はいずれ死ぬ。生きるという事は、死へと向かうことだ」

るか「お父さん!?」

栄輔「鳳凰院くん。そんなに我が娘を息子にしたいと言うならば、まずは私を倒していきなさい」

倫子「はぁ!?」

るか「ちょ、ちょっと待ってお父さん! ボクは凶真さんの味方です!」

栄輔「よろしい。ならば2人して私にかかってくるといい」

紅莉栖「……もしかして、パパさんもそっち系の人?」

栄輔「家内には何があってもポケベル番号を言わないよう伝えておこう。私を倒したなら教えてあげよう」

栄輔「決闘の時刻は明後日15日でいいかな? それまでせいぜい準備しておくといいよ。ふっはっはっは……」スタスタ

倫子「…………」

紅莉栖「…………」

るか「…………」

まゆり「トゥットゥルー♪ るかちゃん、メイクイーンでメイドさんバイトしないー?」

倫子「(ああ、そういやそんなイベントがあったな……ラボに帰るついでに駅前に居る天才少女2号を回収してくるか……)」

32 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 22:26:36.76 VBBZKhMUo 627/2638

未来ガジェット研究所


倫子「どうしてこうなった……」ガックリ

るか「うちの父が御迷惑をおかけして、本当にすいません……。たぶん、阿万音さんがうちを出て行ってしまってから、寂しいんだと思います……」

倫子「(そう言えばこの世界線の鈴羽も巫女服のまま1975年に跳んだんだったな……)」

まゆり「けっとーがあるなら、コスプレは無理だねぇ……」

倫子「(一応ルカ子と紅莉栖には、まゆりの死について口外しないよう釘を刺しておいた)」

紅莉栖「岡部。15日のお昼過ぎに未来の私がタイムリープしてくるのよね?」

倫子「ああ。順調に行けばそういうことになってるはずだ」

紅莉栖「ねえ久野里さん。ちょっと手伝ってほしいことがあるんだけど……」

久野里「は、はい! 牧瀬博士のお手伝いができるなら光栄です!」

倫子「というか、決闘と言ったって、何をするんだ。宮本武蔵と佐々木小次郎でもあるまいし」

紅莉栖「それについて、私にいい考えがあるわ」

33 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 22:28:17.77 VBBZKhMUo 628/2638


紅莉栖「VR技術を応用した新作ガジェットを作ろうと考えているのだけど」

倫子「ん突然どうした助手ぅ。新作ガジェット、だとぉ?」ワクワク

紅莉栖「(かわいい)」

紅莉栖「今の私って、あと2日したら未来の私に上書きされちゃうんでしょ? それってなんか悔しい」

紅莉栖「だから、今の私にできることを形にして残しておきたいと思った。これでいい?」

倫子「ふむ、それで未来ガジェット9号機か。それを使って決闘を?」

紅莉栖「そう。えっと、漆原さんっていつも模擬刀の素振りを練習してたでしょ?」

倫子「妖刀・五月雨だっ」

紅莉栖「せっかくだから、斬撃バトル、とかできたら面白いんじゃないかと思って」

倫子「斬撃バトルぅ?」

紅莉栖「好きでしょ、そういうの」

倫子「い、いやいや、確かに嫌いではない、というかむしろ好きだが、何をどうやってどうするのだ?」

紅莉栖「それはこれから説明する」

34 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 22:30:40.81 VBBZKhMUo 629/2638


紅莉栖「簡単に言うと、脳内で想像した映像を他人の脳に投影する。妄想を送り込むの」

紅莉栖「脳が認識した映像をデータ化して、そのデータをまた他の脳に送ることで映像は共有される。後半はVR技術によって確立している」

倫子「つまり、妄想が、実現される……?」

久野里「VR技術は、映像データを神経パルス信号にコンバートする技術のことでしたよね。タイムリープマシンで使っているという」

紅莉栖「そう。ホントはうちの大学内でも極秘扱いの技術なんだけど、未来の後輩だし問題ないわよね」

紅莉栖「これを使えば、実際には目にしていない映像を、あたかも目の前で見ているかのように認識することが出来るわ」

倫子「だが、そもそも妄想をデータ化するなどできるのか?」

久野里「……そうか。そこで牧瀬博士の研究、神経パルスの解析が役に立つわけですね」

紅莉栖「私の仮説が正しければ、頭の中で描いた心象風景や思考なんかもデータとして取り出せる」

紅莉栖「それでね、決闘の場に居る人間が全員ヘッドセットをかぶって、妄想を共有した状態にしてね」

紅莉栖「例えば岡部が漆原さんの五月雨から斬撃が出る妄想をすれば、それはヘッドセットをかぶった人間全員に見えるってわけ」

るか「ボ、ボクの五月雨から、出ちゃうんですか……」

倫子「(きわどい発言……この場にダルがいなくて本当によかった)」

紅莉栖「もちろん実体は無いから実害は無い。まあ、ただの演出ってだけね」

倫子「ほう……これはまた、タイムリープマシンに続いてとんでもないものを作ろうというのだなぁ」ニヤニヤ

紅莉栖「期限は2日か。久野里さん、お手伝いよろしく」ニコ

久野里「はい! 牧瀬博士、任せてください!」

紅莉栖「まずはこの血まみれの白衣、洗っといて」

久野里「……は、はい!」

倫子「鬼か貴様は……」

35 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 22:32:15.51 VBBZKhMUo 630/2638

柳林神社


倫子「(それからオレは紅莉栖のガジェット開発のことをルカパパに説明し、了承をもらった)」

栄輔『なかなか粋な演出をしてくれますね。楽しみにしていますよ』フフフ

倫子「(なぜかノリノリだった)」

倫子「というか、イマイチなにをどうしたら勝ったことになるのかがわからんな……」

るか「でも、ボク、お父さんに勝つことなんてできるんでしょうか」

るか「今までずっとお父さんの言いつけを守ってきて、反抗期とかも無かったので。お父さんに逆らうなんて、ボク……」

倫子「……やりもしないことを最初から出来ないと諦めるのは簡単だ。だが、父を乗り越えてでも成し遂げたい心があるなら、やるしかない」

倫子「出来るかどうかは後々結果として付いてくる。だが、端から諦めたのでは、たとえできるものでもできなくなるぞ」

るか「岡部さんっ……!」パァァ

倫子「凶真だ」

るか「ボク、どれだけ通用するかわからないけど、自分に出来ることを精いっぱい頑張ろうと思いますっ!」

るか「となると、やっぱり修行ですよねっ!」

倫子「素振りはいつもやっているしな……」フム

るか「あの、おか、凶真さん。実はさっき宝物殿でこんなものを見つけてきたんです……」

倫子「これは……巻き物<スクロール>か? これは……っ!」

倫子「達筆すぎて読めない……っ!」ウルッ

るか「え、えっと、ですね……」アセッ

るか「300年以上前に秋葉原に竜が出たそうで、それを封印するための方法が書いてある、みたいです」

倫子「なんだそのトンデモは……。さすがにフィクションか妄想の類だろう」

倫子「妄想……? そ、そうか。仮にそれが妄想だとしても、オレたちはこれから妄想を武器にしなければならないっ!」キラキラ

36 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 22:33:13.72 VBBZKhMUo 631/2638


倫子「それで、その竜を封印する方法とはっ!?」

るか「は、はいっ! えっと、柳林神社の巫女の力を借りて……、剣を振るう事……」

倫子「なんだか今の状況に嵌りすぎてて怪しいが……まあいい。とにかく修行だっ! 五月雨を持てぃ!」

るか「えっと、素振りは今日、30回ほどやりましたっ!」

倫子「そ、そうか。オレの言いつけをちゃんと守っているようだなぁ。えらいぞぉ」アセッ

るか「はいっ! 師匠!」キラキラ

倫子「むむむ……となると、次は何をすべきか」

倫子「修行と言ったらやはり……滝行、だな」ニヤリ

るか「滝行、というと、水垢離ですか?」

るか「でもどうしましょう。この辺りに滝なんてありませんし……」

倫子「無いなら作ればいいじゃないと、偉大なる先人は言った……"知恵の泉"作戦<オペレーション・ミーミル>を発動するっ!」

るか「は、はいっ!」

倫子「体操着に着替えてこいっ!」

37 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 22:35:15.75 VBBZKhMUo 632/2638


るか「お待たせしましたっ!」

倫子「(しまった……てっきり男物の体操服を着てくるかと思っていたが、普通にブルマだ。この暑さで既に汗ばんでいるのだろう、上着にブラがうっすら浮かび上がって見える)」

倫子「(というかルカ子お前、ブラしてたのか……あ、いや、女の子なんだから当然なのか……?)」

るか「岡部さん?」

倫子「だぁはっ!! い、いかんいかんオレとしたことが、邪心に支配されていたようだ……」ドキドキ

るか「それで、このホースで水をかぶればいいんですよねっ!」

倫子「お、おう……そうだ。冷水に身をさらすことで己の精神を極限まで研ぎ澄まし、真実の力に開眼するの、だ……」

チョロチョロ……

るか「ひゃうっ」

倫子「(……あれ? これってもしかして犯罪係数高くないか?)」

倫子「(水に濡れたルカ子の肌色が体操着に浮かび上がって……)」

倫子「(だが、お、お、女だ……というか、誰よりも儚げな大和撫子の総天然色見本だ……)」ワナワナ

るか「あの、岡部さん?」

倫子「凶真だ……。いや、今日の修行はここまでとしよう。早く着替えてこい」ハァ

38 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 22:36:51.37 VBBZKhMUo 633/2638

2010年8月14日土曜日
未来ガジェット研究所


チュンチュン……

倫子「ふわぁ……完全に睡眠周期が狂ってしまった。まあ、身体の方はちゃんと毎日寝ていることになってはいるが……」

ガチャ

紅莉栖「お邪魔します。さあ、今日も開発頑張るわよ」

久野里「はい、牧瀬博士! 所長もよろしくお願いします!」

倫子「いよいよラボらしくなったな、感心感心……って、天才少女2号よ、その白衣は……っ!!」プルプル

久野里「あ、これですか? お二人を見習おうと思いまして、ここに来る途中で買って――」

倫子「素晴らしいっ!!」ガシッ

久野里「ふぉっ!?」ドキドキ

紅莉栖「キマシッ!」

倫子「ああ、まさにこれがオレの理想としたラボ……なんと完璧な世界線なのだ、ここは……」ウットリ

紅莉栖「ほら、あんたの白衣も久野里さんが綺麗にしてくれたわよ。そ、それじゃ、白衣を交換しましょ……」ウヘヘ

倫子「開発は順調か? 久野里研究員」キリッ

紅莉栖「」

久野里「はい、所長。予定通り、明日のお昼までには完成しそうです」

倫子「(『はい、所長』だって! なんと蠱惑的な響き……!)」ニヘラ

紅莉栖「橋田は呼ばなくていいわよ、むしろ要らない。久野里さんをオモチャにされたらたまったもんじゃないわ」

倫子「JCと2人きりの時間を邪魔されたくないだけだろうこの百合スティーナめ」

紅莉栖「ち、ちがうわよぉ?」(裏声)

久野里「橋田さん、ですか?」

紅莉栖「LHCにハッキングできちゃうレベルの天才ハッカーなんだけど、どうしようもないHENTAIなのよね……」ハァ

倫子「我が頼れる右腕<マイフェイバリットライトアーム>を愚弄するでない。奴は真性のキモオタだが、いざとなったら頼るといいぞ」

久野里「は、はい」

39 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 22:37:52.72 VBBZKhMUo 634/2638


倫子「さて、今日はどうするか……。やはり、ルカ子に修行をつけた方がいいのだろうか」

紅莉栖「漆原さんと仲良くなっておくに越したことは無いわ。意志疎通がどれだけできるか、ってのも未来ガジェット9号機の重要な要素になるから」

倫子「そもそもルカパパとの対決は、一体なにをどうしたら勝ちなのだ?」

紅莉栖「ノリじゃない?」

倫子「な、なるほど……納得できるオレが悲しい」ガックリ

紅莉栖「漆原さんのパパさん、本気でまゆりのことをないがしろにしてるはずはないのよ」

紅莉栖「だから、ポケベルの番号は何があっても教えてくれると思う」

紅莉栖「自分の趣味もあるんだろうけど、それ以上に私たちに精神的なキッカケを作ってくれてるんじゃないかしら」

倫子「キッカケ……?」

紅莉栖「性別が変わる、世界線が変わる。そういう節目に達成感のあるイベントを持ってくることで気持ちを切り替えさせようってこと」

紅莉栖「文化人類学で言うところのイニシエーションってやつね」

倫子「そこまで考えていたのか、あのコスプレ大好き神主は」

紅莉栖「大人ってずるいわ。いつまでも私たちの事を子ども扱いしてくる」フフッ

倫子「では、オレはルカ子に修行をつけてくる。くれぐれも機関に研究をリークされぬよう、気を付けるのだぞ」

久野里「はい。行ってらっしゃいませ、所長」

40 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 22:39:02.27 VBBZKhMUo 635/2638


ガチャ

天王寺「よお、岡部の奴は居るか?」

紅莉栖「店長さん。岡部ならちょうど今出て行ったところです」

天王寺「おっと、ニアミスだったか」

天王寺「まあいい。実は岡部に渡そうと思ってたものを思い出してな。ずっと忘れてたんだが、今朝夢に見てよ」スッ

久野里「これは……"レジェンド・オブ・ワルキューレ"?」

天王寺「このビルの元オーナーの手記なんだが、あいつならこういうの好きだろうと思ってな」

紅莉栖「(阿万音さんが言ってたアレか……。橋田が捏造した鳳凰院凶真の伝説集、ってところよね、コレ)」

紅莉栖「はい、岡部に渡しておきます。わざわざありがとうございます」

天王寺「おう、じゃあな」

久野里「あの、牧瀬博士。これは一体……?」

紅莉栖「んーと、未来人が過去に行って書いた、未来の岡部の伝記、みたいなところかしらね」

久野里「そんなレアアイテムなんですか、コレ! なになに……ふむふむ……おぉ、これは……っ!」ペラッ ペラッ

41 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 22:39:47.45 VBBZKhMUo 636/2638

柳林神社


るか「おか、凶真さん! 今日もよろしくお願いします」

倫子「うむ。しかして、今日はどのような修行をすべきだろうか……」

るか「あの、また宝物殿でこんなものを見つけちゃったんですけど」スッ

倫子「これは、桐箱か? どうやら中身は和綴じ本だな。内容は……っ!?」

倫子「例によって読めない……読んでくれルカ子……」ウルッ

るか「は、はいっ。えっと……書いてあるのは、特訓方法みたいです」

倫子「お、おおっ!! まさにオレたちが求めている書物ではないかぁっ!!」

るか「なんだか出来過ぎているような気がしますね……」

倫子「ククク……これこそが運命石<シュタインズ・ゲート>の扉の選択なのだぁ、ルカ子よ」

倫子「運命すら、偶然すら我が力に変えてしまう鳳凰院凶真の力っ! ふふ、自分の力が恐ろしいぞ……」ニヤリ

るか「さ、さすがです師匠!」

倫子「それで、何をやればいいのだ?」

るか「えっとですね……」

42 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 22:40:45.21 VBBZKhMUo 637/2638


・・・

倫子「っ……えっと、ここか?」

るか「あっ、やだ! ダメです、そんなところ……」

倫子「ええい、ならば……ここだっ!」

るか「あっ! ダメっ! そんな無理矢理っ、むぐっ……むうぅっ……」

倫子「はあっ! はぁっ、はぁっ……」

るか「……凶真、しゃん?」モグモグ

倫子「……これは、なんだ。オレたちは一体なにをやっているのだ……」

倫子「どう考えても二人羽織ではないかぁっ!!」クワッ

るか「……ちくわ、おいしかったです」ゴクン

倫子「真夏の炎天下、神社の境内で美少女巫女とくんずほぐれつ汗を絡めながらおでん缶のちくわを口に咥えさせるというプレイ……っ! 誰だこんなことを考えたバカモノはぁっ!!」

パシャ

倫子「(……今物陰からシャッター音が聞こえたような気がしたが、気のせいか?)」

倫子「……フェイリスっ! そこに居るのはわかっているぞ! 出てこいっ!」

シーン……

るか「えっ? フェイリスさんが居るんですか?」

倫子「……オレの勘違いか?」

43 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 22:42:16.26 VBBZKhMUo 638/2638


prrrr prrrr

フェイリス『ニャンニャーン♪ 凶真から電話かけてきてくれるなんて、フェイリスは幸せ者ニャ♪』

倫子「(そう言えばこいつに抱きついたことはなかったことになってしまったのか……なんだか寂しいな)」

倫子「あー、フェイリス。今お前はどこにいる?」

フェイリス『どこって、メイクイーンでお仕事中だニャ。今日を乗り切れば、明日から3日間は昼間のお客さんが減るのニャン』

フェイリス『だからぁ、デートのお誘いなら明日以降でお願いし』ピッ

倫子「となると、さっきのはフェイリスのカメラのシャッター音では無かったのか。ふーむ……」

るか「えっと、おか、凶真さん。次はどうしますか?」

倫子「誰かの陰謀に巻き込まれている気もするが……。ククク、この鳳凰院凶真を嵌めようと言うのだな、そうはいくかっ!」

倫子「良いだろう……貴様がそのつもりなら、全力で応えてやろう。ルカ子よ、続きだっ! 指南書の続きを行うっ!」

るか「は、はいっ!」

44 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 22:43:56.11 VBBZKhMUo 639/2638


・・・

倫子「あついっ! そ、そこじゃないぞルカ子!」

るか「す、すみません。じゃあ、この辺ですか?」ピトッ

倫子「あっつうううういっ!!」ジタバタ

るか「すみませんすみませんすみませーん!」

倫子「(指南書に書いてあったのは、今度はポジション逆でお願いしまーすというカメ小並の指示だった)」

倫子「(後ろ側だった時は別段何も感じなかったが……今はルカ子の身体が密着してきている)」

倫子「(うなじに吐息を感じる……背中に柔らかさを感じる……)」ドキドキ

るか「あれ? 凶真さんの心臓の音、急に激しくなりました……」

倫子「ち、違うぞルカ子っ! オレはノーマルだっ!!」アセッ

るか「え?」

倫子「あ、いや、何でもない……」ドキドキ

倫子「(ルカ子は純真可憐の権化と言ってもいい。まさか、オレの心の中の男性的な部分が、彼女にトキメキ始めているのか……!?)」ドキドキドキドキ

るか「それじゃ、次行きますね。はい、あーん」

倫子「あ、あー……///」







紅莉栖「へえ、所長様は女子高生と野外ハレンチプレイの真っ最中でしたかそうでしたかこっちが一生懸命クソ暑いラボでガジェット作ってるっていうのによくもまあそんなHENTAI行為が思いつくもんだと感心してしまいますすごいですねさすがレジェンドオブワルキューレ(笑)と言ったところでしょうかあーんまでしてもらってさぞやおいしいお昼ご飯になったんでしょうねえこちとらカップ麺ですよええ私が好きで食べてるんですからこれは別にいいですけどおでんみたいにアツアツカップルってか(爆)ふざけんなふざけんな大事なことなので2回言いましたってゆーか漆原さんには凶真守護天使団の掟について小一時間説かなければならないみたいですからゆっくり屋上でお話しましょう久々にキレちまったぜ……」ゴゴゴゴゴゴ

45 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 22:44:59.19 VBBZKhMUo 640/2638


・・・
一方その頃
未来ガジェット研究所


久野里「(今なら誰も居ない……やるなら今のうちっ!)」

久野里「レジェンドオブワルキューレ第一章第三節……暗黒微笑」ペラッ ペラッ

久野里「ふ……ふーはは、いや、違うな……こうか? ふぅーははぁ!」

久野里「ふぅーはははぁ! そう、こんな感じ……!」パァッ

久野里「それと、決めポーズは……こう?」ババッ

久野里「それからこうして……」ババッ

久野里「……フゥーハハハ! オレを誰だと思っている……!」バババッ

久野里「世界を混沌に陥れ、支配構造を変革する者……ッ!!」

久野里「我が名はッ! ほーおーいんっ!!」

ガチャ

久野里「キョッ……」

ダル「…………」

久野里「…………」

ダル「……あ、いや、どうぞ。続けて?」

久野里「…………」カァァ

・・・

46 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 22:45:36.03 VBBZKhMUo 641/2638


・・・
柳林神社


るか「す、すみませんでした……」

紅莉栖「悪気があってやってたわけじゃないってのがね……。でも本気で私への当てつけかと思ったわよ、さすがに」

倫子「う、うむ。すまん……」

紅莉栖「まあ、美少女2人に免じて許す。でも裏で動いてるアレは後でシメる」

倫子「ん? 何か言ったか?」

紅莉栖「それで、未来ガジェット9号機のβ版が仕上がったから実際使いながら訓練してもらおうと思って呼びに来たのだけど」

倫子「なるほど、そういうことだったか。ならばルカ子よ、ラボへ急ぐぞっ!」

るか「は、はい師匠!」

47 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 22:46:59.97 VBBZKhMUo 642/2638

未来ガジェット研究所


まゆり「ただいまゆしぃ☆ あれー、みんな集まってるー!」

倫子「バイトご苦労、まゆり」

るか「お邪魔してます、まゆりちゃん」

ダル「まゆ氏、乙ー。ちょうどBCI実験装置が完成したんだお」

久野里「こんな短時間で作るなんてすごい……さすがレジェンドの右腕……」

ダル「まあ、設計図自体は牧瀬氏の理論のおかげだから、パーツショップ行って買ってきて組み立てるだけだったわけですしおすし」

ダル「ラボに戻ってきたら貴重なシーンが御開帳だったし、役得っつーか?」

久野里「そ、その話はやめてください……」

紅莉栖「結果論だけど橋田が手伝ってくれて助かったわ」

ダル「こんなに可愛い3次元の、去年までランドセルおにゃのこを僕から遠ざけようとしたことは許さない絶対にだ」

紅莉栖「全部久野里さんのおかげね、ありがとう」ニコ

ダル「ちょ」

久野里「い、いえ、そんな……」テレッ

倫子「(天才が3人集まるとちょちょいとすごいものが出来上がってしまうのだな)」

るか「これ、オーディオセット、ですか?」

倫子「一見ヘッドセットがPCから伸びているだけに見えるが……。それで、BCI実験とはなんなのだ?」

紅莉栖「Brain-Computer Interfaceの略。脳とコンピュータを繋ぐ技術のこと」

るか「たしか、SF映画でありましたよね、そういうの」

倫子「ふむ、脳と脳を繋ぐ前段階として、まずはコンピュータと繋いでみよう、と言ったところか」

紅莉栖「入眠時催眠、って知ってる?」

まゆり「にゅうみん? なにかなー」

紅莉栖「眠りに入ろうとする直前、うとうとするでしょう? あの時の脳って、現実の認識と夢との境が曖昧になっててね」

紅莉栖「幻覚を見たり、幻聴を聞いたりしやすいの。いわゆる寝ぼけてる状態」

紅莉栖「幽霊を目撃したと言う人のほとんどが、入眠時催眠によるものなのよ」

るか「それじゃ、時々ラボの中をうろうろしてるアレもそうなのかな……」

倫子「……どさくさに紛れておっかないことを言うんじゃない」ビクビク

48 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 22:48:22.23 VBBZKhMUo 643/2638


ダル「で、寝ぼけてる状態の脳に、コンピュータのデータを送り込むってのがBCI実験ってわけ」

倫子「要は明日の決闘を仮想現実上でシュミレートしよう、ということか」

紅莉栖「そういうこと。これなら修行の効率化も図れるし、私は未来ガジェット9号機用のテストデータが取れるしで一石二鳥でしょ?」

るか「でも、なんだか怖いです……」

紅莉栖「大丈夫よ。脳波マッピングするようなものだし、全然痛くないから安心して?」

倫子「その言い方で安心できると本気で思っているのかこの助手は……まあいい。善は急げだ、今すぐ実験を開始せよっ!」

まゆり「そんなに意気込んでたらねー、うとうとできないと思うなー」

倫子「そ、そうだった。オレとルカ子は寝ればいいのか?」

紅莉栖「わ、わ、わ、私の膝で、膝枕、する……?」

倫子「だが断る」

久野里「(出た! レジェンドの秘奥義その参百参、『だが断る』ッ!)」キラキラ

紅莉栖「ウフフ……そうくると思ったわ……」ジュルリ

ダル「牧瀬□。ドMの鑑だお」

まゆり「それじゃーねー、まゆしぃがお歌を歌ってあげるのです☆」

倫子「や、やめろォ! この前カラオケ行った時もそうだったが、まゆりの"音程との握手<バックボーン・シェイクハンド>"の威力は、聞く者の三半規管を破壊する……っ!」

まゆり「オカリ~ン、恥ずかしいよぅ。アニソンはちょっと難しいけど、子守唄くらいは歌えるよー?」

倫子「(ホントか……!?)」

49 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 22:49:22.98 VBBZKhMUo 644/2638

???


倫子「(脳がガンガン揺さぶられている……ある意味でまゆりの歌は導眠効果があるな……)」ズキズキ

倫子「ん……ここは……?」パチクリ

るか「あ、おか、凶真さん。よかった、目が覚めたんですね」

倫子「あ、ああ、ルカ子か。ということは、ここはもしや仮想現実の中なのか?」

紅莉栖『そういうこと。声、聞こえてる?』

倫子「おおっ! オレのケータイから助手の声がっ! すごいぞ、まるでゲームの世界だなぁ!」パァァ

紅莉栖『倫子ちゃんが喜んでくれただけで頑張った甲斐がありますた……』ゴフッ

倫子「倫子ちゃん言うなぁ!」

まゆり『すごーい。ゲームの中にオカリンとるかちゃんが居るー』

久野里『これは代用の簡易アバターですけど、お2人の脳内モーションのトレースまでできるなんて、本当にすごいですね……』

倫子「それで、ここでオレたちは何をすればいい?」

ダル『安く売ってた格ゲーの練習プレイ用フィールドデータを送ったからさ、周り見てみ』

倫子「お……おおおっ! 突然闘技場が現れたぁ! そして、色んな武器が整列している……っ!」ドキドキ

るか「すごい……瞬きするうちに世界が変わりました……」

倫子「よし、ルカ子よ! 剣を持てぃ!」

るか「は、はい師匠!」

50 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 22:51:09.75 VBBZKhMUo 645/2638


ダル『ゲームデータをそのまま引用してるから、適当に刀を振り回すだけで技になるはずだお』

倫子「らしいので、早速振ってみるのだっ」ワクワク

るか「えっと……えいっ!」ブンッ

ズシャァァァァァァァッ!!!

るか「ひっ!?」

倫子「おおおおっ!! すごいすごいっ!! 剣から青白い斬撃がっ!!」ピョンピョン

倫子「かっこよすぎるだろ……なんだこの技術……」ワナワナ

倫子「よし、ルカ子よ。斬撃に慣れるためにも引き続き特訓だぁっ!」

るか「は、はい師匠!」

紅莉栖『倫子ちゃんが楽しそうでなによりです』

倫子「ふふふ、今だけは倫子ちゃん呼びを許してやろう……ふぅーはははぁ!」キラキラ

51 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 22:53:31.37 VBBZKhMUo 646/2638


るか「はぁ……はぁ……ようやく、斬撃にビックリすることもなくなってきました……」

倫子「よくやったぞ、ルカ子。おいダル! そろそろ敵キャラを出してくれっ!」

ダル『オーキードーキー。んーと、ほい』

シュン!!

紅莉栖「カイバニデンキョクブッササレタイカ」

倫子「って、クリスティーナではないか!?」

るか「あ、あれ? 周りの景色が……ここって、中央通りの、車道ですか? 歩行者天国なんでしょうか……」


  GET READY?


倫子「……は?」

ダル『あ、しまった』


    FIGHT


るか「えっ?」

紅莉栖「ハァッ!」

ビュン!!

倫子「のぉわぁっ!? 未来ガジェット1号機『ビット粒子砲』(希望価格1,098円)からビームが!?」

紅莉栖「エイッ! ヤアッ!」

ブォン!!

倫子「やめろぉ! 未来ガジェット6号機『サイリウム・セーバー』(希望価格1,480円)を振り回すんじゃないっ! というか、なぜオレを狙う!?」

るか「よ、避けてください、凶真さぁん!」

ダル『ごめんオカリン、普通に対戦モードになっちゃったお』

紅莉栖「ミライガジェットゴゴウ! モエロー!」

ブォォ!!

倫子「ひぃっ! 未来ガジェット5号機『またつまらぬ物を繋げてしまったby五右衛門』(希望価格7,800円)から何故火炎放射が出るのだぁっ!! うわぁん!!」ダッ

52 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 22:54:48.71 VBBZKhMUo 647/2638


倫子「おいダルぅ! 現実の紅莉栖ぅ! 今すぐここから出してくれぇ! クリスティーナに殺されるぅ!」タッ タッ

紅莉栖「コドモダマシダケドッ!」タッ タッ

るか「ま、待ってくださぁい」タッ タッ


紅莉栖『ちょっと橋田、何やってんのよ! えっと、脳を急に覚醒させるのは危険だから……』

まゆり『それなら、別のゲームに変えちゃえばいいんじゃないかなー?』

紅莉栖『あ、だめ、まゆりっ! そんなことしたら混線して――』


紅莉栖「…………」

倫子「はぁっ……はぁ……、と、止まった……?」

るか「えっと、終わったんでしょうか……?」

倫子「もしもし、ダル? 紅莉栖? 何がどうなったんだ? おいっ! もしも――」


紅莉栖「ねえ、誰と電話してるの?」ネットリ


倫子「……はっ!?」

紅莉栖「……わかった。相手は女の子ね、私よりも好きな娘いるんだ……」ゴゴゴ

倫子「……ヒェッ」プルプル

53 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 22:56:47.16 VBBZKhMUo 648/2638


紅莉栖「まゆり? それとも桐生さんかな。……阿万音さんかな、フェイリスさんかな」

紅莉栖「まさか、漆原さんってことは無いわよねぇ?」

るか「えっ……」ドキッ

倫子「ダルっ!!! ダアアアルウウウ!!!!」ピィィ

ダル『今オカリンが居るの、有名な修羅場ゲーの中だお。しかもBad Endのセーブデータ』

倫子「ふぉぉぉぉいっっっ!!!!!」

紅莉栖「嫌……岡部は誰にも渡さない……絶対に渡さない……」ブツブツ

倫子「なんでそんなゲームのデータがあるんだよぉっ!!」

ダル『僕の趣味wwwフヒヒwwwサーセンwww』

紅莉栖「こうなったら、岡部の前頭葉を切除して、私の奴隷にするしかないわ……。あるいは、海馬に電極ぶっ刺して、私以外の女の子の記憶を抹消するしかっ!」ピタッ

倫子「……ク、クリスティーナ?」

紅莉栖「ウフフフフ、サッソクジッケンヨ?」ニコッ


ギュィィィィィィィィン!!


倫子「ふわぁ!? 電ノコなんてどこから出したぁっ!?」

紅莉栖「アハハッ、だいじょうぶぅ、痛くしないわよぉ?」ギュィィィィィィィィン!!

紅莉栖「だってぇ、私は脳科学の天才ぃ、そしてぇ、狂気のマッドサイエンティストなんだからぁっ! フゥーハハハ!」ギュィィィィィィィィン!!

倫子「こ、腰が砕けて、動けん……っ!!」ポロポロ

紅莉栖『落ち着いて岡部! 今脳に送ったデータを消去してるから!』

るか「こ、ここはボクが食い止めますっ!」

倫子「ルカ子ぉ……!!」ウルウル

紅莉栖「フフフ、フワァーッハッハッハァー!!」ギュィィィィィィィィン!!

るか「えいやぁーっ!!」ズシャァァァァァァァッ!!


ガキィィィィィィン!!

54 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 22:57:37.07 VBBZKhMUo 649/2638

未来ガジェット研究所


紅莉栖「……かべ? おかべ?」

久野里「レジェンド! 大丈夫ですか!」

るか「岡部さん……っ!」

まゆり「しっかりして、オカリン! 目を覚ましてぇ!」

倫子「……ハッ」パチクリ

紅莉栖「岡部っ!」

久野里「レジェンド!」

まゆり「オカリン!」

るか「岡部さんっ!」

倫子「あ、ああ……帰ってきたのか」ホッ

倫子「ルカ子よ、助手の魔の手からオレを守ってくれてありがとう……本当に、ありがとう……」ウルウル

ダル「おお、貴重なオカリンのありがとうシーン頂きますた」

まゆり「いつもは『ご苦労』なのにねー」

るか「い、いえ、弟子として当然のことをしたまでです……」

紅莉栖「わ、私が岡部を襲ったわけじゃないからな! 悪いのはあんなデータを用意してた橋田だから!」

ダル「ちょ」

久野里「でも、無事実験が終了してよかったです。さすがレジェンド」

倫子「まあ、無事には違いないが……最悪だったぞ、ホント……」クタァ

55 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 22:58:36.78 VBBZKhMUo 650/2638

中央通り


倫子「(実験データを整理するために天才少女ペアはラボに残り、まゆりとダルは明日のコミマの準備のために家に帰った)」

倫子「(オレはまあ、弟子を神社まで送ることにした。明日が本番だしな)」

倫子「……なぁ、ルカ子。1つ訊いておきたかったんだが」

るか「はい、なんでしょうか」

倫子「お前、オレのこと、好きなのか?」

るか「え……ええっ!? えっと、いや、その、もちろん、お慕い申し上げていますけど、その……」アタフタ

倫子「男に戻って、恋人になりたいと考えているのか?」

るか「あうぅ……恥ずかしい、です……」

倫子「だが、それならなぜ男だったお前は女を選んだのか、と思うのだが」

るか「それは……。やっぱり、自分ではおか、凶真さんの恋人になんかなれないと諦めてしまったからだと思います。今でもそう思ってますから……」

倫子「そ、そうか……」

るか「……覚えて、いますか?」

るか「ボクと岡部さんが、初めて出会った時のこと」

倫子「……ああ。あれはたしか5月のゴールデンウィークのことだった」

56 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 22:59:44.69 VBBZKhMUo 651/2638


・・・


倫子「そこのカメラ小僧ども! 神聖なる巫女を撮影するなど、神を穢す行為っ! 断じて許せんっ!」プルプル

カメ小A「な、なんだよキミは……って、コスプレ仲間か」

倫子「この白衣はコスプレなどではないわっ! どたわけが!」

カメ小B「い、いまのって、ブラチューのエリンでは……」

倫子「オレの名は鳳凰院凶真。神が地上に具現せし灰色の脳細胞の持ち主にして、世界に混沌をもたらす狂気のマッドサイエンティストだ! ふぅーははは!」ドキドキ

カメ小C「ちょ、なんという厨二病。だがそれがいい」

カメ小B「オレっ娘はポイント高いすなぁ、フヒヒ」

倫子「というかだな。貴様らがオタクだかカメ小だか知らんが、女の子が嫌がっているのに囲んで撮影とか、普通に通報ものだぞっ」ガクガク

カメ小A「はぁ? レイヤーをローアングってなにが悪いんだよ。もしかしてキミも素人?」

カメ小C「素体は良いのに衣装が残念でござる。だがそれがいい」

カメ小B「残念美人の理系厨二女子とか、今どき萌えねーんだよ! それより巫女服美少女は王道、これは譲れない」

るか「あ、あの、ボクは……」

倫子「警察が許しても、このオレが許さんっ! 可憐な少女に変態写真を懇願するような変質者は恥を知れ!」ワナワナ

るか「ち、違うんです……ボクは、ボクは……っ」

るか「男です……!」

カメ小たち「「「えっ……」」」

57 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 23:00:15.16 VBBZKhMUo 652/2638


カメ小C「もしかして、下もついてるんですか?」

るか「…………」コクッ

カメ小B「な、なんだよぅ、紛らわしすぎだろふざくんな!」

カメ小A「男なのに巫女服着てるとか、マジキチだろ……帰ろ帰ろ」

倫子「……散ったか。下衆どもが」ホッ

倫子「大丈夫か?」

るか「……ありがとうございます。でも、男なのに、女の人に助けられるなんて、みっともないですよね……」

倫子「お前、名前は?」

るか「え? 漆原、るかです」

倫子「なぜみっともないと思った」

るか「だって……ボク、こんな顔なのに、男だし……」

倫子「そんなことはどうでもいい」

るか「……!?」

58 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 23:02:15.45 VBBZKhMUo 653/2638


倫子「お前が男だろうが女だろうが関係ない」

倫子「実際、オレも男だか女だかどうでもいい存在だしな」

るか「あっ……す、すいません……」

倫子「だがその僻んだ根性、気に入らないな」

るか「え? え……?」

倫子「ついてこい! お前に、いいものをやる! そのアイテムさえあれば、お前は勇気を得るだろう。お前の中に眠る真の力の存在にも気づくはずだ」

るか「えええ……」

倫子「どうした? 力が……欲しくないのか?」ククク


・・・


るか「その後、『武器屋本舗』に行って五月雨を買ってもらったんですよね」

倫子「(内心ビビりまくりだったのを厨二病で乗り切ろうとしたらブレーキが利かなくなっただけなんだがな……)」

るか「"そんなことはどうでもいい"……あの言葉があったから、ボクは岡部さんを好きになったんです」

倫子「だがそれは、お前が男だった時の記憶のはずだ。……ということは、男の世界線でもお前は……」

るか「えっ……あ、あれ? ど、どうしてでしょう? おかしいな……記憶が……」

倫子「(もしや、ルカ子にもリーディングシュタイナーが? フェイリスの時と同じように……)」

59 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 23:03:36.13 VBBZKhMUo 654/2638


るか「ボク、思い出しました……いえ、思い出したというか、なんて言ったらいいのか……」

るか「とても……儚い感じ」

るか「はっきり思い出したわけじゃなくて、記憶の海の底の方、というか……頭の、ええと……」

るか「この辺にあるような感じです」ピッ

倫子「(そこは頭の上、中空だな)」

倫子「だが、ある意味で真か。その記憶は本来お前の脳内にあるはずのない記憶なのだからな……」

るか「それで、思い出しちゃいました。お母さんの、ポケベル番号も……」

倫子「……な、なにっ!? ということは、ルカパパとの決闘をしなくてもDメールを送ることができるということか!?」

るか「は、はい。そうなると思います」

倫子「……いや、助手は言っていた。これは一種の通過儀礼<イニシエーション>なのだと」

倫子「何より我がラボの新作ガジェットのお披露目も兼ねているからな! 明日は共に父上殿を倒すぞっ!」

るか「は、はい師匠!」

60 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 23:04:55.04 VBBZKhMUo 655/2638

2010年8月15日日曜日
柳林神社


倫子「(そんなこんなで決戦の日を迎えてしまった)」

紅莉栖「それじゃ、このヘッドギアをかぶってください」

栄輔「ふむ。こうかな?」スチャ

久野里「レジェンド……じゃなかった、凶真所長と漆原さんも、どうぞ」

るか「は、はい」スチャ

倫子「天才少女ペアもかぶるのか?」スチャ

紅莉栖「私たちは受信機だけね。あんたたちがどんな世界を見ているのか、もちろんモニターに出力もしてるけど、生でも見たいから」

久野里「牧瀬博士、準備できました。いつでも大丈夫です」

倫子「(いまや柳林神社の本殿はNPCやらモニターやら配線やらでちょっとした秘密基地状態になっていた)」

栄輔「それじゃ、るか。刀を構えなさい」

倫子「あなたの武器は……その、えっと、白いふさふさですか? てっきり剣戟になるのかと」

栄輔「大幣(おおぬさ)と言うんだ。僕はどちらかというと魔法使いタイプが好きでね、剣士や格闘家タイプは苦手なんだよ」

倫子「なんの話だ……」

栄輔「例えば……こんな風にね!」


ブォン!!


るか「――っ!!」

61 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 23:05:53.92 VBBZKhMUo 656/2638


倫子「火炎弾っ!? ルカ子、避けろぉっ!」

るか「きゃぁぁっ!!」ズテーン

倫子「ルカ子ぉっ!! 大丈夫かっ!? 火傷は……して、ない?」

紅莉栖「その炎はニセモノよ! パパさんの妄想攻撃!」

久野里「熱さを感じたとしても錯覚です! 脳が混乱しているだけです!」

倫子「そ、そうだった。ルカ子、ほら、立て。反撃するぞ!」

るか「は、はい……」ビクビク

倫子「怯える必要はない。所詮は妄想の攻撃、大丈夫だ」

栄輔「果たしてそうでしょうかねぇ。るかの精神力がどこまで持つか……」

倫子「ルカ子は刀を振るうだけでいいっ! 妄想はオレに任せろっ!」ガシッ

るか「は、はい師匠!」

栄輔「次はもっと大きいですよっ!」ブォン!!

倫子「いけ、ルカ子っ! 今こそお前の力の全てを込めてっ! 五月雨を振り下ろせぇっ!」

倫子「清心斬魔流奥義、『参拾弐式・桜暴』ッ!!」

るか「いやああああああっ!」


ズシャァァァァァァァァァッ!!


栄輔「なに――――ぐわぁっ!!」ズテーン!!

倫子「よ、よしっ! 青白い斬撃が飛んでいった!」

紅莉栖「妄想同士が衝突して爆発した!? そっか、より強い妄想の方が認識に影響を上書きしているのね! さすが倫子ちゃんの妄想力!」

倫子「いちいち倫子ちゃん言うなっ!」

久野里「でもこれ、ヘッドギア外したらオーバーリアクションなチャンバラごっこなんですよね……」

62 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 23:10:42.69 VBBZKhMUo 657/2638


るか「凶真さんに仇をなす輩は、たとえお父さんだろうと、このボクが許しません!」キリッ

紅莉栖「漆原さんの雰囲気が変わった!?」

栄輔「良い目をするようになったな、我が娘、るかよ……」

倫子「おお。なんだかRPGのラストシーンっぽい雰囲気だ」

パァァァァァァァァッ

紅莉栖「って、あれ? 漆原さんの模擬刀が、青白く光ってる……?」

倫子「……妖刀・五月雨が目覚めたのだ」ククッ

紅莉栖「(おっとー、倫子ちゃんの厨二病舞台が始まるかな?)」

るか「ついに、ボク、会得したんですね。凶真さんのために……」

倫子「清心斬魔流が操るのは浄化の力だ。コスプレ欲という穢れたに塗れたルカパパの精神にとっては、まさに天敵ということだなっ!」ビシッ!!

栄輔「……なるほど、そういうことでしたか。ならば、"無の力"ならどうでしょう」スッ

倫子「無の力、だと……?」ゴクリ

栄輔「私はこれでも神に仕える者、精霊をも使役する……。いでよ、無の精王、ルカノーン!」

ヒュン! ヒュン! ヒュン!

倫子「左右と前方の三方向からの疾風攻撃!? ルカ子、避け――」

るか「てやぁぁっ!!」ビュン ビュン ビュン

倫子「全部受けきった!?」

紅莉栖「今までの漆原さんからは想像もできない俊敏な動き……っ!」

栄輔「なんだと!?」

倫子「よ、よし! 今だっ! オレたちの妄想をシンクロさせるぞっ!」

るか「はいっ! 修行の成果、出し切りますっ!」


倫子&るか「「清心斬魔流、蒼炎波ーッ!」」


ズオオオオオオオオオオオオオッ!!


紅莉栖「斬撃が完全燃焼の青白い炎を纏って飛んでいく!」

久野里「すごい力だ……!」

栄輔「し、しまっ――――」


ガキィィィィィィィイン!!


倫子「は?」

るか「え?」



??「お前達……一体、何をしているんだ……」



63 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 23:12:35.55 VBBZKhMUo 658/2638


倫子「(な、なんだあの黒髪ロング女……突然現れて、ルカ子の炎の斬撃をその手に持った巨大な剣で受けた、だと……?)」

??「何をしているのかと……聞いている……」ゴゴゴ

倫子「(しかもひどく怒ってらっしゃる!?)」ビクッ

紅莉栖「ちょ、ちょっと待って。あなた、この妄想が見えてたの!?」

倫子「(そ、そうだ! あの超リアルな立体映像は、ヘッドギアをかぶった人間にしか見えないはず!)」

??「貴様ら、希テクノロジーの人間か……?」

紅莉栖「のぞみ? 違います。あの、危ないから立ち入らないでほしいんですけど」

倫子「ん……って、ちょっと待てよ? あの顔、どこかで見た覚えが……?」

倫子「……あ、あああーーーっ!!! 貴様は、あの時の、渋谷で会ったガルガリ女ではないかっ!?」

ガルガリ女「お前は……ああ、白衣を着ているからわからなかったが、あの時の妄想垂れ流し女か」

倫子「誰が妄想垂れ流し女かっ! お前だってでっかい剣を持ち歩くとかおもっくそ恥ずかしいことをしているくせにっ!」プンスカ

セナ「私の名前は蒼井セナだ、ガルガリ女ではない」

倫子「やはり貴様は"機関"に属する戦士だったのだなぁっ!? そしてその剣は"妖刀・朧雪月花"……っ!」

セナ「これ以上妄想はするなと警告したはずだ」

るか「えっと、凶真さんのお知り合いの方、ですか?」

倫子「忘れもしない……。去年、まだ高校生だったオレは、この女に……この女に……っ!」プルプル

倫子「股間を、踏まれたのだ……」グスッ

紅莉栖「!?」

久野里「!?」

るか「!?」

栄輔「!?」

萌郁「!?」

64 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 23:14:45.64 VBBZKhMUo 659/2638


セナ「そんなことはどうでもいい。希の人間じゃないというなら、お前らは何者……ま、牧瀬紅莉栖っ!?」

紅莉栖「ふぇっ? えっと……?」

倫子「なにっ!? クリスティーナ、お前もこいつと知り合いだったのか!?」

セナ「(弱冠17歳にしてサイエンス誌に論文が載った天才……しかしそれはVR技術と組み合わせてはいけない危険なものだった……)」グッ

セナ「(だが、ここで偶然会えたのも何かの因果か? もしこいつに近づくことができたなら――)」キィィィィィィィン

紅莉栖「い、いえ、私はこんな人知らないから、初めまし……あら、セナじゃない。元気?」

セナ「っ、しまっ――」

るか「牧瀬さんの知り合いでもあるんですか?」

紅莉栖「知り合いも何も、セナはヴィクコンを目指して勉強中なのよね。1つ上だけど、私の未来の後輩」

久野里「ええっ? 蒼井さんもそうなんですか?」

セナ「(くそっ、無意識のうちに咲畑のような真似をしてしまうとは……。これが私の望んだ妄想か)」

紅莉栖「お父さんの研究を引き継いで、みんなを幸せにする道を探したいって言ってたっけ。それって、とっても素敵なことだと思うわ」

セナ「あ、ああ。来年の秋にはヴィクコンへ入学するつもりでいる」テレッ

紅莉栖「頑張ってね。応援してる」ニコ

セナ「(……心から私を応援してくれているのか。良いやつだな、牧瀬紅莉栖)」

65 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 23:16:14.89 VBBZKhMUo 660/2638


セナ「……食うか? 夏に食べるこれは、最高だぞ」スッ

紅莉栖「えっ? あ、ガルガリ君……」

セナ「ガルガリ君は、おいしさと可愛らしさを兼ね備えた貴重な存在だ」

セナ「疲れた脳細胞に栄養を与え、適度な冷たさと清涼感が脳細胞を活発にする」

セナ「ガールガーリー君♪ ガールガーリー君♪ ガールガーリー……」

セナ「……ハッ。"私はガルガリ君をかじっていたと思ったらいつの間にか歌っていた"」

久野里「す、好きなんですね、ガルガリ君」

セナ「かわいいだろ? あのイガグリ頭が最高だ」

セナ「ガルガリ君には色々な味があるが、ソーダ味が一番おいしい」

セナ「やはりソーダ味は最高だ。透き通るような甘みと、さわやかな酸味。シンプルにして奥深い味わい。すべての始まりにして究極のガルガリ」

セナ「それが、ソーダ味だ」キリッ

倫子「(溶けてそう)」

紅莉栖「あ、ありがとう。いただくわ」パクッ

セナ「お前たちにはこれをやろう」スッ

倫子「アタリ棒……」

久野里「あ、ありがとうございます。(レジェンドとお揃い……!)」

セナ「それで、牧瀬。ここで何をやっていたのだ?」

紅莉栖「ええっとね、今やってた実験は脳内データを映像化して……かくかく……しかじか……」

66 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 23:17:35.64 VBBZKhMUo 661/2638


セナ「(やはり牧瀬紅莉栖は天才だな……。あとはIr2の公式さえ当てはめてしまえば、それこそ野呂瀬の作り上げたノアⅡと寸分変わらないものが完成してしまう)」

セナ「(あの巫女が持っていた青白い剣はディソードでは無かったのか。現に今はただの模擬刀になっている。紛らわしい真似を)」

紅莉栖「でも、セナの持ってる剣って本物じゃないわよね? 見るからに現実のものとは思えない」

倫子「なんだと? ……ということは、これはヘッドギアが見せている妄想の剣?」

倫子「(確かに剣にしてはかなり独特な形だ。ダルあたりなら喜びそうな形状だが、リアルで使おうと思ったらまったく役に立たないだろう)」

セナ「そうなるな。だから、私が妄想を止めれば消える」フッ

栄輔「おお、一瞬にして大剣が消えた。まるで手品ですな」

セナ「(ほう、ディソードをディラックの海に戻したことを認識できるのか)」

セナ「(この珍妙なヘッドギアをかぶることで一時的にギガロマニアックスのような状態になっている。たしかに興味深い)」

紅莉栖「ってことは、セナの脳内映像がヘッドギアの発信機なしで未来ガジェット9号機に入って妄想を共通認識化してしまったってことなのかしら。機器の電磁波と脳波がシンクロしちゃったのかな……」

セナ「その実験は危険だ。人間の脳にどういう影響があるか、まだ必要数のサンプルを取ったわけじゃないだろう」

倫子「この実験大好きっ娘を止めようと言うのは無駄だぞ」

セナ「少なくとも動物実験を挟むべきだった。正直に言おう。今私は牧瀬紅莉栖を科学者として軽蔑している」

紅莉栖「う゛ぅ゛っ」グサッ

倫子「ふん。オレはマッドサイエンティストとして尊敬しているっ!」

紅莉栖「う、うれしくない……」

久野里「で、ですが、牧瀬博士の理論は完璧でした!」

セナ「完璧であればあるほど危険だと何故気付かない」

るか「あ、あの、喧嘩は、やめてくださぁい」ウルッ

67 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 23:20:16.85 VBBZKhMUo 662/2638


??「お、おーい、セナー。か、勝手にどっか、行くなよぅ……」ハァハァ

セナ「遅かったな西條。用事は済んだのか?」

拓巳「う、うん。星来フィギュアの新作、しかもこれまでなかった、1/4スケールの。わざわざアキバで予約した甲斐があったよ」

拓巳「コミマで人が減った時に買いに来てよかったぁぁぁ……DQNに絡まれて星来たんに何かあったらマジふざくんなって感じだからね」

拓巳「セナを用心棒として連れてきた意味は無くなったけど、それはそれで、よし」

セナ「そうか。用事が済んだならすぐ帰――」

拓巳「って、ふおおおっ!? リ、リアル巫女に、は、白衣の美少女が3人……!?」

倫子「なんだこいつ……」

拓巳「さ、3次元のくせに生意気だ。謎のハーレム神社ここに現る」

拓巳「し、し、しかも貧乳セナしゃんを筆頭にちっぱい天国である……ふひ、ひ、貧乳はステータスだっ! 希少価値だぁっ!」

倫子「オ、オレは貧乳じゃないっ! 一緒にするなっ!」

拓巳「オレっ娘ktkr!! テンプレなリアクションありがとうございますフヒヒwww」

栄輔「君、なかなか見る目があるようだね」

拓巳「か、神主公認とか、アキバ始まり杉ワロタ」

セナ「っ! ほら、とっとと帰るぞ西條!」グイッ

拓巳「ぐわぁっ! ぼ、暴力反対っ! ちょ、自分で歩けるから、引っ張るのやめれぇ!」ズルズル

セナ「いずれまた会おう。牧瀬紅莉栖」スタスタ



倫子「……一体なんだったんだ?」

紅莉栖「さぁ……?」

68 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 23:22:10.78 VBBZKhMUo 663/2638


るか「えっと、決闘はどうなったんでしょうか」

倫子「部外者の闖入で中断されてしまったな」

栄輔「いや、私の負けだよ。るかがまた1つ大人になったようで、親としてこれほどうれしいことはない」

るか「お父さん……」

栄輔「ポケベルの番号はここに。まさかあれが別の世界のるかから送られてきたメッセージだったとはねえ」

倫子「そう言えば、やっぱりルカ子の母上は野菜をたくさん食べたのですか?」

栄輔「たしか、『やさいくうとげんきなこをうめる』、だったかな。あれを読んだ当時の私たちは、野菜を食べないと元気な子が産まれないかもしれない、と心から心配してね」

るか「あっ……ご、ごめんなさい、そんなつもりは……」シュン

栄輔「もちろん、家内には野菜を多く食べてもらった。同時に私は、この神社で朝から晩まで毎日、『元気な娘が産まれますように』と祈祷をし続けたんだ」

るか「そう言えば、お姉ちゃんからそんな話を聞いた覚えがあります。お父さんが不眠不休で安産祈願をしていた、って」

倫子「その想いが神に通じて、ルカ子が娘として産まれたというわけか。なるほど、さすが本職……」

紅莉栖「神に願っただけで性別が変わったら科学の敗北ね」

久野里「あるいは、神主さんの妄想が現実を改変した……?」

69 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 23:23:44.39 VBBZKhMUo 664/2638


栄輔「そう言えば、るかが男の子の世界ではどんな子だったんですかな」

倫子「見た目はそのまま、女より女らしい立派な巫女でした」

栄輔「ふむ。男の娘か、悪くない」

久野里「え、男なのに巫女なんですか?」

倫子「……つまりあなたは、自分の息子に巫女服を着せるようなHENTAIだったんだよぉっ!」

栄輔「……はは、鳳凰院くんは冗談が上手いですね」

紅莉栖「HENTAIが冗談で済めば良かったんだけどね……。いい加減出てきなさいよ、桐生さん」

倫子「なに? 閃光の指圧師<シャイニングフィンガー>が居るのか?」


ガサガサッ


萌郁「…………」パシャ

倫子「……そうか! あの時のシャッター音は萌郁だったのか!」

萌郁「私は……凶真守護天使団の……撮影担当……(カメラは任せて!(≧▽≦) )」パシャ

倫子「お前も入団していたのか、アレに……」ハァ

萌郁「今日は……神主さんに、頼まれて……(バイト代もらっちゃった(/・ω・)/ )」パシャ

紅莉栖「で、漆原さんのお父さん。良い写真は撮れましたか?」ニコッ

栄輔「え、えっと、なんの話かな、あはは……」ダラダラ

70 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 23:24:51.24 VBBZKhMUo 665/2638


紅莉栖「このあからさまな巻き物と和綴じ本。見つかったタイミングが良すぎたと思わなかったの?」

るか「た、たしかに思いました……内容もおかしかったですし……」

紅莉栖「これ、全部漆原さんのお父さんのお手製よ」

倫子「ぬぁにぃっ!?」

るか「……そう言えば、筆跡がお父さんのものに似ていました」

栄輔「ちょ、ちょっとした若気の至りだよ、はは……」

倫子「秋葉ノ原の地に竜が顕現せり、は創作だったというのか……なんという厨二病……」

倫子「それに、あのイミフな二人羽織は……」チラッ

萌郁「ベストショット……(一番良く撮れてるよヾ(*´∀`*)ノ )」パシャ

倫子「消せぇっ!! 今すぐにっ!! うわぁん!!」

萌郁「美しい、師弟愛……(私も目覚めそうになっちゃったよー(≧▽≦) )」パシャ

倫子「こうなったら無理矢理にでも奪ってやるっ!」ガシッ

萌郁「っ!? ……い、や……っ!」ビクッ

倫子「そのっ! ケータイをっ! よこせぇっ!」グイッ

萌郁「い、いやああああああああっ!!!!!!!」ブンブン

倫子「きゃっ!?」

るか「き、桐生さん!?」

紅莉栖「ちょっと!? 大丈夫!?」

71 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 23:26:44.95 VBBZKhMUo 666/2638


倫子「す、済まなかった。いや、オレが謝るのは釈然としないんだが……」

久野里「ケータイ依存症、という奴ですよね。でも、ここまで極端な症例は初めて見ました」

紅莉栖「そうね……もしかしたら治療が必要かも」

桐生「はぁっ……はぁっ……」ウルウル

倫子「ま、まあ、悪用しないならいいんだ。ホントはよくないが……」

桐生「悪用は……しない……」グスッ

倫子「(……世界線が変われば写真もなかったことになるのだから、あまり気にすることはない、か)」

倫子「う、うむ。ならばよしっ! では、目的も達成したことだし、ラボに戻ってDメールを送るぞっ」アセッ

るか「……はい、凶真さん」

倫子「……ルカ子?」

るか「覚悟はできています。お父さん、行ってきます」

るか「……今まで、ありがとうございました」ペコリ

栄輔「……ああ。いってらっしゃい、るか」

72 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 23:28:39.46 VBBZKhMUo 667/2638

中央通り


倫子「(萌郁とは途中で別れた。大方フェイリスに写真を見せに行くのだろう……)」ハァ

紅莉栖「打消しDメールを送ればIBN5100が手許に戻ってくるとは言っても、この世界線のIBN5100は結局どこに行ったのかしらね」

るか「そ、それなんですが、実は……ボクが、壊しちゃったんです。去年のお正月に」ウルッ

倫子「な、なんだと!?」

るか「ボクのせいなんです。ボクが、神事のお手伝いで、宝物殿の倉庫をお掃除していた時に……」

るか「でも、男だったボクはパソコンを壊していません。倉庫掃除の代わりに、本殿のお掃除をしていたから……」

久野里「……なるほど。性別が変わったことでバタフライ効果が発生、漆原さんがIBN5100を壊してしまう世界線になってた、ということですね」

るか「お父さんに怒られると思って、大ビル横のコインロッカーの中に隠したんです。今頃はもう管理会社に回収されて捨てられているかと……」

倫子「ま、まあSERNの手に渡らなかっただけ良しとしよう」

るか「凶真さんが探してるって聞いたとき、ボク、すごくビックリして……」

るか「本当のこと、ずっと話そう話そうって思ってたんですけど、嫌われるかもしれないって考えたら、言い出せませんでした……」

倫子「バカだな。そんなことでお前を嫌うわけがないだろ。お前は、オレの弟子なのだからな」

るか「凶真さん……」トゥンク

紅莉栖「ごほんごほん!」

紅莉栖「一応言っておくけど、去年のお正月の漆原さんへ向けて"倉庫の掃除はするな"っていうDメールを送るのは最後の手段だからね」

倫子「それはフェイリスのパパさんから聞いた」

紅莉栖「くっ……」

73 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 23:29:30.11 VBBZKhMUo 668/2638

未来ガジェット研究所 開発室


るか「……まゆりちゃんのこと、助けてあげてください」

倫子「ああ。オレは必ず、まゆりを救ってみせる」

るか「こういうときは、例の合言葉ですよね……」

るか「ええと、エル・プサイ・コンガリィ……」

倫子「……コングルゥだ」フフッ

紅莉栖「『*2*2292983183129298318312929』、準備できたわ」

久野里「いよいよ世界線が変動するんですね……」ドキドキ

るか「これでお父さんとお母さんが、イタズラだと思ってくれれば、心配させることもないですよね……」

倫子「1通で変わらなかったらイタズラだと確信してくれるまで迷惑メールのごとく何通も送ればいいだけだ」

るか「でも、今日までの記憶がなくなっちゃうのは、やっぱり寂しいです……」

倫子「……オレが覚えているさ」

倫子「だが、ルカ子の女としての17年間を、オレは、無かったことにしてしまうんだよな……」プルプル

紅莉栖「……またこの子は」ハァ

74 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 23:34:33.86 VBBZKhMUo 669/2638


紅莉栖「ねえ、岡部。漆原さんの心配をするのもいいけど、私の心配もしてほしい」

倫子「え……?」

紅莉栖「多分、あと何分もしないうちに24年後から"私"がやってくる」

紅莉栖「その前に世界線を変えて」

紅莉栖「そうしないと……"私"の暗い24年間が確定してしまうから」

倫子「……それは既に確定しているのではないのか?」

紅莉栖「それは違うわ。まだ世界の現在はそれを観測していない。因果が成立していない」

久野里「未来は完全には確定していない、ということですか?」

紅莉栖「確かに、ある世界線においては過去から未来までが確定している。だけど、世界線は常に振幅を持っていて、分岐、変動する可能性を秘めている」

紅莉栖「だから、私の主観では未来は確定していないことになる。まあ、阿万音さんの理論が正しければ、だけど」

倫子「"オレが観測した世界線"がアクティブ化するのと同様に、オレが24年後から来た紅莉栖を観測した瞬間、紅莉栖の24年間がアクティブ化してしまう、と……」

紅莉栖「お願い。"私"がやってくる前に、早く」

倫子「……わかった」

るか「男の子のボクのことも、よろしくお願いします」スッ

倫子「(ルカ子の指が、ケータイを持つオレの指に重ねられる)」

倫子「……無論だ。たとえ世界が変わろうとも、お前はオレの弟子だ! ふぅーはっはっは!」

るか「ありがとう……岡部さん」ピッ

75 : ◆/CNkusgt9A - 2016/01/10 23:35:00.37 VBBZKhMUo 670/2638


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次章
岡部倫子「これがシュタインズ・ゲートの選択……!!」【#05】


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