1 : 以下、名... - 2016/06/13 19:46:17.94 zKmHimi0o 1/277

大洗女子学園 生徒会室

柚子「それでは、前回とは違い簡易的ではありますが、ここで第二回大洗女子学園オールスターVS黒森峰女学園オールスタードラフト会議を開催します」

まほ「今回はみほが大洗女子学園の監督か」

みほ「い、一応、企画の立案者ってことになってて……それで監督に……」

「一応ではない。第二回の草案を作ったのはお前だ、西住。立派な立案者だろう」

みほ「そ、そうなんですけど……」

「監督兼選手なんだから、しっかりね。西住ちゃん」

みほ「は、はい」

「んじゃ、前置きはこれぐらいにして、選んでくれる? 今度は私たちも込みでね」

まほ「そう聞いて、選抜メンバーを多少変更させてもらった」

「我々をチームに入れてくれるということか!?」

柚子「ドキドキするね、桃ちゃん」

「桃ちゃんって言うな!!」

「一位指名がいいけどねぇ」

みほ「それじゃあ大洗女子学園、一位指名の戦車は――」

元スレ
西住みほ「これが本当のドラフト・ウォーです!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1465814777/

2 : 以下、名... - 2016/06/13 19:47:28.22 zKmHimi0o 2/277
3 : 以下、名... - 2016/06/13 19:54:52.60 zKmHimi0o 3/277

翌日 大洗女子学園 廊下

桂利奈「あっれー? どうしてだろー?」

あや「私、はいってなーい」

あゆみ「少しだけ変わってるんだ」

優季「ほんとだぁ。会長の名前があるぅ」

「というかいつの間に第二回があったんだろう」

おりょう「なにをしているぜよ」

左衛門佐「号外でもでているのか」

紗希「これ」

カエサル「ほう……。第二回ドラフト会議があったのか」

エルヴィン「まさにドリームチームと言った感じだな。とはいえ、前回と変更点に乏しいが」

おりょう「一回目と変わらないのでは意味がないぜよ。なんのために張り出しているのか」

カエサル「いや、まて。もっと大きな違いがあるぞ」

左衛門佐「どこだ?」

カエサル「今度はこのチームで試合をするようだ」

4 : 以下、名... - 2016/06/13 19:58:31.84 zKmHimi0o 4/277

教室

典子「西住さん!!」ガラッ!!!

沙織「のりリン、おっはよー」

典子「おはようございます!! あの、西住さんは!?」

沙織「みぽりんはまだ来てないけど?」

典子「そうですか……」

「何かありましたか?」

典子「まだ掲示板を見ていないんですか?」

沙織「掲示板って?」

典子「実は……」

優花里「西住殿!!!」

沙織「ゆかりんまで、どうしちゃったの?」

優花里「こ、これですよぉ!! これが貼り出されていたんですぅ!!」

典子「秋山さん、それ持ってきちゃったんですか!?」

優花里「つ、つい、勢いで。あとで戻しておきます。それより、武部殿も五十鈴殿も見てください!!」

5 : 以下、名... - 2016/06/13 20:02:57.13 zKmHimi0o 5/277

第二回大洗女子学園オールスターVS黒森峰女学園オールスタードラフト会議 結果発表


大洗女子学園オールスター

使用車輌 Ⅳ号戦車H型(隊長車)

車長  西住みほ
通信手 アリサ
装填手 カルパッチョ
砲手  ノンナ
操縦手 河西忍


黒森峰女学園オールスター

使用車輌 VI号戦車ティーガーI(隊長車)

車長  逸見エリカ
通信手 武部沙織
装填手 オレンジペコ
砲手  角谷杏
操縦手 ミッコ


沙織「おぉ、あれの二回目ってあったんだ」

「会長が隊長車の砲手に選ばれていますね」

優花里「細かい変更はありますが、一番下を見てください!!」

6 : 以下、名... - 2016/06/13 20:11:41.74 zKmHimi0o 6/277

沙織「最後って……」


※このチームによる試合を以下の日程で執り行うことに決定した。
 選抜された選手は本日の放課後に生徒会室に集合すること。


沙織「えぇぇ!? し、試合するの!?」

優花里「今度は試合をすると明言していますからね」

「丁度一ヶ月後ですね。予算や会場は大丈夫なのでしょうか」

典子「西住さんから真実を知りたかったんですが……」

沙織「全然、知らなかった……。ここまで話が進んでたんだ……」

「優花里さんはお手伝いしていたのでは?」

優花里「西住殿がオールスター戦の準備を進めているのは知っていましたが、まさか詳細が決まっていたなんて聞かされていませんでした」

沙織「ぶー。みぽりん、黙ってたんだ」

典子「けど、あの西住さんが秋山さんや武部さんにまで黙っていたのは変じゃないですか?」

優花里「私も多少、各校の日程調整等でアドバイスをさせていただいたのですが……」

「優花里さんが知らなかったとなると、考えられるのは……」

沙織「会長が口止めしてたんじゃない?」

7 : 以下、名... - 2016/06/13 20:21:10.35 zKmHimi0o 7/277

生徒会室

「今頃、みんな大騒ぎしてるかな」

みほ「えっと、やっぱり優花里さんには伝えておいてもよかったんじゃないですか? 色々と私に助言もしてくれてたのに……」

「まぁまぁ。こういうのは隠しておいたほうが盛り上がるから」

みほ「ずっとみんなを騙していたみたいで……申し訳ないような……」

「問い詰められたら私の所為にしていいよ。そしたらみんなも納得するだろうし」

みほ「それはそれで問題があるような……」

「で、他校の選手から返答はあった?」

柚子「はい。聖グロリアーナのダージリンさんからは『もう実現するとは嬉しいかぎりですわ。参加します』とのことです」

柚子「サンダースのケイさんからは『オールオッケー』と」

みほ「けど、カチューシャさんは『絶対に参加しない』って……」

柚子「大丈夫。そのあとすぐにノンナさんから『必ず同志と共に参加します』って返答があったから」

みほ「そうなんですか? よかったぁ」

柚子「そのほか、アンツィオ、継続、知波単も参加する意志を見せています」

「んじゃ、問題ないな。ただ一つだけを除いては」

8 : 以下、名... - 2016/06/13 20:26:37.86 zKmHimi0o 8/277

倉庫

「……」

ナカジマ「あー……」

ツチヤ「あれ、どうする?」

スズキ「どうするって言われても」

ホシノ「どうしようもないって」

ももがー「なにがあったなり?」

ぴよたん「河嶋さんが膝抱えてるっちゃ」

ねこにゃー「あの第二回ドラフト会議の結果、見た?」

ぴよたん「見たけど?」

ねこにゃー「そこに、河嶋さんの名前が……その……なくて……」

ももがー「あ、ああ……」

ぴよたん「そういえば、会長と副会長の名前はあったような……」

ねこにゃー「だから、今はこうして見守っておくしかないかなって、ナカジマさんたちと話してて……」

「うぅぅ……」

11 : 以下、名... - 2016/06/13 20:37:00.36 zKmHimi0o 9/277

放課後 生徒会室

優季「どんなこと話すんだろう?」

麻子「眠い……」

みどり子「冷泉さん、もう放課後なんだからシャキッとしなさいよね」

麻子「早起きしたから眠いんだ、そどこぉ」

みどり子「知らないわよ! あとそど子はやめて!」

「やぁやぁ、みんな。集まってくれてあんがと。んじゃ、西住ちゃん、よろしくっ」

みほ「は、はい。え、えーと、もう掲示板にあったドラフト会議の結果は見てもらえていると思います」

カエサル「試合をするというのはまことなのか」

みほ「はい。そのため、練習もしなければならないんですが、各学園艦が寄港日程を合わせる必要が出てきます」

妙子「なんだか、大変そう」

「集まれるものなんですか」

「そっちは秋山ちゃんや私が日程を色々考えてみたけど、まともに練習をできるのは今度の土日ぐらいしかないんだよねぇ」

みどり子「二日だけですか!?」

みほ「試合会場を押さえられる日が決まっている以上、練習する日は他になさそうでした。すみません」

12 : 以下、名... - 2016/06/13 20:44:53.99 zKmHimi0o 10/277

ナカジマ「戦車の整備とかは各校でやる感じですか?」

みほ「はい。選抜車輌を保有している学校で整備等を行います」

ツチヤ「ってことは、大洗からはⅣ号とレオポンか」

スズキ「島田さんとの約束もあるし、ボコで車内を埋め尽くしておかないと」

ホシノ「忘れてた。西住さん、ボコのぬいぐるみ、貸してもらえない?」

みほ「え? あ、はい」

ナカジマ「ダメだって、ホシノ」

ホシノ「なんで?」

ナカジマ「戦車の中に置いたら、鉄や油の臭いが染み込んじゃうから」

ホシノ「それがダメなの?」

ナカジマ「ホシノは相変わらず男らしいなぁ。とにかく、ぬいぐるみは私たちで集めますんで、西住さんは気にしないでください」

みほ「そ、そうですか?」

ホシノ「どうしてなんだ?」

スズキ「それはまたあとで話すよ」

ホシノ「……?」

13 : 以下、名... - 2016/06/13 20:53:02.75 zKmHimi0o 11/277

優花里「二日の間にチームワークを育み、試合のための戦術も練るんですね」

「忙しくなりそうですね……」

あゆみ「ついて行けるかなぁ」

みほ「ハードスケジュールになるけど、どうしても成功させたいんです」

沙織「みぽりん……」

みほ「最初で最後の我儘にします。だから、皆さん、私に力を貸してください」

「この手でよければいつでもお貸ししますわ」

優花里「右に同じです!! この体、西住殿の好きなようにしてください!!」

優季「わぁ、秋山先輩、だいたぁん」

優花里「え? そう?」

みほ「ごめんなさい。今回の試合のこと、ずっと黙ってたのに……」

沙織「ううん。どーせ、会長が口止めしてたんでしょ?」

「そだよっ」

沙織「だったら、気にしないで。一緒にかんばろ、みぽりん。そして、全国の男子を虜にしちゃおーよ! これぞ、モテ道!!」

みほ「あはは……」

14 : 以下、名... - 2016/06/13 21:04:25.42 zKmHimi0o 12/277

黒森峰女学園 ミーティングルーム

まほ「揃ったな」

小梅「はい」

エリカ「はっ」

愛里寿「……はい」

まほ「黒森峰からはお前たちが参加することになった。エキシビジョンではあるが、黒森峰の名に相応しい活躍を期待している」

愛里寿「隊長車は私が撃破してもいい?」

まほ「私はあくまでもチームのまとめ役に過ぎない。試合の戦術に関してはエリカに一任している。隊長とよく話し合ってくれ」

愛里寿「逸見さん、私がみほさんの車輌を――」

エリカ「欠陥戦車でみほのⅣ号を捉えることはできないでしょ。島田さんの役回りはあとで考えておくわ」

愛里寿「それは、みほさんの撃破は私に任せられないということか」

エリカ「そういうことね」

愛里寿「納得できない」

エリカ「私は隊長よ。従えないなら、チームから外れてもらってもいいけど」

まほ「……」

15 : 以下、名... - 2016/06/13 21:14:37.14 zKmHimi0o 13/277

数日後 練習会場

「遅い!! 他校は何をしているんだ!!」

柚子「すぐにはこれないよ。寄港する場所だって離れているところもあるんだから」

「だとしたら移動時間を考慮して時間を調整するものだろう!」

「おちつけぇ、かわしまぁ」

優花里「この練習場って蝶野教官が紹介してくれたんですよね」

みほ「うん。会長が提案書を出したら――」


亜美『グッドアイディア! ベリーナイス!! そういうことなら練習会場を貸してあげるわ!!』


みほ「――って言ってくれて」

麻子「太っ腹だな」

「蝶野さんのような女性になりたいです」

沙織「華はもう完成されてるし、今のままでいいんじゃない?」

「いえ、わたくしはまだまだ成長しなければなりませんわ」

麻子「それ以上、大きくなるのか」

16 : 以下、名... - 2016/06/13 21:22:50.75 zKmHimi0o 14/277

バババババ……!!!

優季「なんだろう?」

桂利奈「鳥だ!!」

あゆみ「飛行機だ!!」

「ヘリコプターでしょ」

カエサル「サンダースのものだな」

ケイ「――グッモーニン!!」

みほ「ケイさん、おはようございます」

ケイ「やっと心の底から戦車道を楽しめそうね」

みほ「え?」

ケイ「今まで、みほもアンジーもヘビィなもの背負ってたでしょ」

みほ「いえ、そんな」

ケイ「いっぱいエンジョイしましょ!」

アリサ「隊長とは敵同士ですね」

ナオミ「ああ。私たちは大洗のほうへ行こうか」

17 : 以下、名... - 2016/06/13 21:30:15.60 zKmHimi0o 15/277

ケイ「アリサ、ナオミ。手加減はナッシングよ! 正々堂々、正面から戦うのよ! オッケー!?」

アリサナオミ「「イエス、マム」」

「各チームごとに集まって整列するように」

アリサ「どこに行けばいいの?」

「お前は、西住のチームだな。あそこだ」

アリサ「はいはい」

みほ「よろしくお願いします、アリサさん」

アリサ「やるからには勝つわよ。どんな手を使ってもね」

みほ「は、はい。がんばります」

アリサ「まぁ、実力に関しては文句もないけど」

ナオミ「待たせた?」

カエサル「いいや。我々も先ほど到着したばかりだ」

ツチヤ「それに肝心の車長が着てないしね」

ナオミ「キヌヨ……。ふふ、面白くなりそうだ」

カエサル「悪い顔になっているぞ」

18 : 以下、名... - 2016/06/13 21:36:45.74 zKmHimi0o 16/277

ケイ「さぁ! 私のチームメイツは集合して! ハリーアップ!!」

桂利奈「わー」テテテッ

優季「よろしくおねがいしまぁす」

紗希「……」

ケイ「チーム・ラビットが中心みたいになっちゃったわね」

優季「がんばりまぁす」

ケイ「ま、いいわ! みんなでウィナーになるわよー!!」

桂利奈「おー!!!」

ミカ「楽しそうだね」ポロロン

ケイ「お、ミカ! 来たのね」

ミカ「呼ばれた気がしてね」

アキ「気がしたんじゃなくて、呼ばれたんだって」

柚子「アキさーん、こっちにきてくださーい」

アキ「はーい!! それじゃミカ、またあとで!!」

ミカ「ああ。アキもこの貴重な時間を満喫するといい」

19 : 以下、名... - 2016/06/13 21:42:23.44 zKmHimi0o 17/277

ミッコ「私は……」

沙織「こっちだよー」

「ミッコぉ」

ミッコ「よろしく」

「最初のメンバーとは違うけど、よろしくっ」

ミッコ「こちらこそ」

「あとは車長と装填手を待つだけだな」

ミカ「さて、このまま風の吹くほうへ歩いていくのもいいかもしれないね」

「それでは困るんだ」

ミカ「どうしてかな」

「参加する以上は、規律を守ってもらうぞ。誰かが余計なことをするだけでこのイベントが失敗するかもしれないからな」

ミカ「なるほど。それは困るかな」

「だったら、指定された場所へ移動してもらう」

ミカ「貴方は自分が思う以上に、自分に期待してもいいんじゃないかな」

「何を言っているんだ。さっさと移動しろ」

20 : 以下、名... - 2016/06/13 21:51:40.84 zKmHimi0o 18/277

「ミカさん、不束者ですがよろしくお願いします」

典子「気合と根性でがんばります!!」

ホシノ「できることはするつもりだ」

ミカ「車長としてみんなに言うことは、一言だけ」

ミカ「――全ては戦車道という旋律のままに」ポロロン

「良い音色ですね」

典子「私たちはフロントセンターってことですか!?」

ホシノ「音楽を聞きながら運転すると、リラックスできる」

ミカ「流石は大洗のメンバーだね。安心できる」

アキ(ミカのチーム、大丈夫なのかな)

柚子「ミカさんが気になる?」

アキ「え? ああ、ううん。私はみなさんと仲良くなりたいですから!!」

妙子「私もアキさんと仲良くなりたいです」

あゆみ「だったら、ケータイの番号とかLINEの交換とかしませんか?」

アキ「いいの!? やったぁ!! 是非お願いします!!」

21 : 以下、名... - 2016/06/13 22:10:37.72 zKmHimi0o 19/277

ゴゴゴゴ……!!

アンチョビ「たーのもー!!!」

「おー、チョビ子。P40の修理、間に合ったんだ」

アンチョビ「前回のドラフト会議のときに修理は殆ど終わっていた、じゃなかった、完璧に終わっていた。あと、アンチョビ!」

ペパロニ「どーでした、姉さん!! 私の操縦!!」

アンチョビ「それでいい。本番も頼むぞ」

ペパロニ「おぉぉ!! ヴァ・ベーネ!!」

カルパッチョ「ペパロニさんが舞い上がってしまいましたけど?」

アンチョビ「あいつはアホだけど、バカじゃない。この程度で調子に乗ってミスはしないだろう」

カルパッチョ「そうですね」

ペパロニ「よっしゃー!! くぅー!! 燃えてきたー!! 姉さん、私、がんばりまーす!!」

みどり子「本当に任せていいのね」

アンチョビ「お前たちの隊長であるミホが選んだんだ。文句はないだろう」

「そういえば西住先輩って桂利奈を選んでいたような……」

みどり子「抽選に負けたんだって。相手には会長がいるから、くじ運で負けるのは仕方のないことなのよ」

23 : 以下、名... - 2016/06/13 22:30:16.59 zKmHimi0o 20/277

カチューシャ「もういっぱいいるわね」

ダージリン「遅れてしまったかしら」

みほ「カチューシャさん、ダージリンさん。わざわざ遠いところからすみません」

ダージリン「気にしなくてもよろしくてよ。それにみほさんが気にするのは、これからのことででしょう」

みほ「そうですね。戦術も練らないと……」

ダージリン「そちらではないけれど」

みほ「えっと、それはどういう……」

ダージリン「こんな言葉を知っているかしら。最善のものを希望せよ。しかし最悪のものに備えよ」

みほ「は、はぁ……」

カチューシャ「ちょっとミホーシャ。敵と仲良くおしゃべりしてていいわけ?」

ダージリン「敵ではあるけれど、友人であることに変わりはなくてよ」

カチューシャ「ふん。ダージリンのことだから、試合前に相手を揺さぶることぐらいしそうだもの」

ダージリン「そんなことしないわ。そもそもみほさんに揺さぶりなど通用しないでしょうし」

みほ「カチューシャさん、いつも以上に張り切ってる……?」

ノンナ「楽しみで仕方なかったようです」

24 : 以下、名... - 2016/06/13 22:37:58.40 zKmHimi0o 21/277

絹代「申し訳ありません!!!」ダダダッ

みほ「わわ!? 西さん!?」

絹代「はぁ……はぁ……! か、会場が分からず、このような時間になってしまいました!!」

みほ「大丈夫、大丈夫。時間には間に合ってるから」

絹代「ですが、皆さんをお待たせしてしまったのは事実です!!」

ナオミ「確かにね」

絹代「ナオミ殿!! 大変失礼しました!! お待たせしてしまい、面目ありません!!」

ナオミ「ペナルティとして、ガムを噛むように」

絹代「が、がむでありますか……」

みどり子「ナオミさん!! 西さんを不良の道に誘わないで!!」

ナオミ「まるで私が不良みたいな言い方だな」

みどり子「西さんはこのままでいいの! 西住さんもそう思うでしょ!?」

みほ「は、はい」

ナオミ「ほら、フーセンガムの膨らませかたを教えてあげる」

絹代「ふ、ふーせんがむをでありますか!!」

25 : 以下、名... - 2016/06/13 22:42:14.31 zKmHimi0o 22/277

まほ「なんとか間に合ったようね」

みほ「お姉ちゃん」

「うちらの監督がきたぞー」

優季「わーい、監督かっこいぃ」

桂利奈「ボスだー!!」

まほ「ボス……」

エリカ「馴れ馴れしいわよ!! 下がって!!」

愛里寿「……」

みほ「愛里寿ちゃんも、来てくれてありがとう」

愛里寿「構わない。私も望んでいたいことだから」

みほ「そっか」

愛里寿「けど……」

みほ「ん? なにかあったの?」

愛里寿「なんでもない。これは私たちのことだから」

みほ「そ、そうなの?」

26 : 以下、名... - 2016/06/13 22:51:21.66 zKmHimi0o 23/277

「全チーム揃ったところで、まずは礼を述べたい。急な申し出にもかかわらず、ここまでの選手が集まったのは高校戦車道史においても異例のことである」

「立案者である西住みほや全ての段取りをつけてくれた会長はもちろんのこと、他校の全面協力なくしては実現はしなかったと――」

柚子「桃ちゃん、長いよ」

「……では、会長、一言」

「たった二日の練習だけど、たのしむぞー!」

「「おぉぉー!!!」」

「西住ちゃんからはなんかある?」

みほ「えっと、改めまして、集まってくれてありがとうございます。いい試合にしましょう」

ダージリン「ふふっ。悪い試合になることはないでしょうね」

カチューシャ「ダージリンだろうが、ミカだろうか、捻りつぶしてあげるわ。そうでしょ、クラーラ?」

クラーラ「Ураааааааа」

ねこにゃー「や、やるにゃー」

ノンナ「猫田さん?」

ねこにゃー「な、なんですか?」

ノンナ「あの約束、覚えていますね?」

28 : 以下、名... - 2016/06/13 23:00:56.10 zKmHimi0o 24/277

「これより、各チームで最初のミーティングを行う。自己紹介などをし、親睦を少しでも深めてほしい」

「時間は20分だ。それでは開始!!」


大洗女子学園オールスター

使用車輌 Ⅳ号戦車H型(隊長車)

車長  西住みほ
通信手 アリサ
装填手 カルパッチョ
砲手  ノンナ
操縦手 河西忍


カルパッチョ「アンツィオ高校のカルパッチョです」

アリサ「今更自己紹介なんて必要ないでしょ。さっさと作戦会議や搭乗して練習したほうがいいわね」

「でも、チームワークを高めるためにはこうしたことも必要だと思います」

ノンナ「アリサさんはこういいたいのでは? 貴方達のことはよく知っている。身長も体重もスリーサイズも趣味も、何もかもを。だから何も知るものはない、と」

カルパッチョ「私たちのこと、よく調べてくれているのですね」

みほ「わぁ、そうなんですか? 私はまだみんなの誕生日ぐらいしか覚えてなくて……」

アリサ「ち、ちがうわよ!! ちょっと!! 余計なことを言わないでもらえますか!?」

29 : 以下、名... - 2016/06/13 23:12:15.69 zKmHimi0o 25/277

使用車輌 クルセイダーMk.III

車長兼装填手 秋山優花里
砲手兼通信手 アッサム
操縦手     冷泉麻子


優花里「大洗女子学園あんこうチーム所属、秋山優花里です!!」

麻子「知ってる」

優花里「い、いえ、冷泉殿に言ったのではなくてアッサム殿に自己紹介をしたのですが」

アッサム「ご丁寧にどうも。わたくしも貴方達のことはよく知っているから、大丈夫ですわ、優花里さん」

優花里「おぉ、光栄です。あのアッサム殿にまで名前を憶えてもらっているなんて」

アッサム「けれど、お互いに名前ぐらいしか知りませんわね。では、こういうのはどうでしょう?」

アッサム「禁煙なんて簡単だよ。私はもう100回はやったね」

麻子「……」

優花里「えっと、えっと……えー……?」

麻子「100回も禁煙したということは、何度も途中で煙草を吸ってしまっているということだ」

優花里「いや、それはわかりますけど」

アッサム「あら、つまらなかったかしら? では、もう一つ。生まれてからの2年間、親は子供に歩き方と話し方を教える。その後の16年間は、座っておとなしくしてなさいと説教する」

30 : 以下、名... - 2016/06/13 23:20:12.77 zKmHimi0o 26/277

使用車輌 KV-2

車長  カチューシャ
通信手 ニーナ
砲手  ぴよたん
装填手 ねこにゃー
装填手 ももがー
操縦手 ルクリリ


カチューシャ「いい? このKV-2はカチューシャが一番好きな戦車なの。それが白旗を挙げるなんてこと、絶対にあってはならないのよ」

ニーナ「は、はい。わがってます」

ルクリリ「最後まで生き残れってことか」

ぴよたん「これがKV-2の砲弾だっちゃ」

ももがー「すごいぃ」

ニーナ「砲弾、重いですから、きぃづけてくださいねぇ」

ルクリリ「砲塔も手回ししなければいけないしな」

ニーナ「どっぢもすんげぇおもいんですよねぇ」

ぴよたん「これを回す……」

ねこにゃー「この砲弾を装填する……」

32 : 以下、名... - 2016/06/13 23:30:09.88 zKmHimi0o 27/277

使用車輌 ファイアフライ

車長兼通信手 西絹代
砲手       ナオミ
装填手     カエサル
操縦手     ツチヤ


絹代「僭越ながら、このチームの車長を務めることになりました、知波単学園、西絹代です!!」

カエサル「勇ましいな。西さんのソウルネームはハンニバルでどうだ」

ツチヤ「怖いものなしって感じならジョン・サーティースじゃない?」

ナオミ「ジョージ・パットンは?」

カエサルツチヤ「「それだ!!」」

絹代「あ、あの……」

カエサル「ジョージ、さぁ、私たちはどうしたらいい?」

ツチヤ「ジョージ、なにする?」

絹代「ジョージはその、あまり、できるなら、岩本徹三のほうが」

ナオミ「そうきたか」

カエサル「ジョージがそういうなら、徹三に改めるか」

33 : 以下、名... - 2016/06/13 23:39:54.57 zKmHimi0o 28/277

使用車輌 カルロ・アルマート P40

車長兼砲手 アンチョビ
装填手    園みどり子
通信手    澤梓
操縦手    ペパロニ


アンチョビ「よく聞け!! きっと我々はこう思われていることだろう!! 五位指名のチームはどーせ弱いと!! 放っておいても問題はないと!!」

ペパロニ「なんすかそれ!! そんなことでいいんすか、姉さん!!」

「誰も思ってないと思いますけど」

みどり子「五位指名のチームと言えども、数多くの中から選ばれたんだから自信を持ったほうがいいわ」

ペパロニ「あ、そっすね。姉さん、何言ってんすか。そんなこと誰も思っちゃいないっすよー。だって、私らは選ばれた選手なんですから!!」

アンチョビ「その通り。だが、周りを見てみろ!! 相手は黒森峰の副隊長に、大学リーグの元隊長に、サンダース、聖グロリアーナ、継続と実力者がそろい踏みだ」

ペパロニ「言われてみれば……私たちって実は最弱なんじゃ……」

「そんことないと思いますけど」

みどり子「安斎さんはそんなに弱い人って感じはしないけど?」

ペパロニ「そーっすよね!! 姉さん、弱気になっちゃだめっすよ!!」

アンチョビ「おい!! 黙っていろ!! 話がすすまないだろうが!! あと、そど子!! アンチョビと呼べ!!」

34 : 以下、名... - 2016/06/13 23:48:50.60 zKmHimi0o 29/277

黒森峰女学園オールスター

使用車輌 VI号戦車ティーガーI(隊長車)

車長  逸見エリカ
通信手 武部沙織
装填手 オレンジペコ
砲手  角谷杏
操縦手 ミッコ


「いやぁ、これだけの選手が固まっていれば楽できそうだねぇ」

沙織「何言ってるんですか」

ミッコ「あの黒森峰の隊長が一位指名した砲手ってことは、多少暴れても当ててくれるか」

「そんな期待しないでね」

オレンジペコ「装填も忙しくなりそうです」

エリカ「……」

「逸見ちゃん、どうかしたぁ?」

エリカ「別に。自己紹介は不要ね。このまま戦車に搭乗して練習をするわよ」

沙織「エリりん、悩んでるのかな? 恋の悩みだったりするのかなぁ」

「とりあえず視線の方向は西住ちゃんじゃなかったな」

35 : 以下、名... - 2016/06/13 23:58:15.65 zKmHimi0o 30/277

使用車輌 ヤークトパンター

車長  ダージリン
通信手 近藤妙子
砲手  山郷あゆみ
装填手 アキ
操縦手 小山柚子


ダージリン「親睦を深めるのなら、やはりお茶会に限りますわね」

アキ「そうなんですか」

ダージリン「そうよ。紅茶の香りを共に楽しむことで、輪ができあがるもの」

ダージリン「そして、こんな格言もあるわ。愛するか愛さないかは、我々の自由にはならない」

アキ「あいするかあいさなかいは……」メモメモ

あゆみ「今の格言って関係あるんですか?」

柚子「あ、あるんじゃないかな?」

妙子「バレーボールに関する格言はありませんか?」

ダージリン「え、えーと……な、なにか、あったかしら……」

妙子「ないんですか……」

柚子(あのダージリンさんを追い込むなんて……。近藤さんって、実はすごい人なんじゃ……)

36 : 以下、名... - 2016/06/14 00:02:36.98 /715p2sVo 31/277

使用車輌 T-34/85

車長  ケイ
装填手 丸山紗希
通信手 宇津木優季   
砲手  クラーラ
操縦手 阪口桂利奈


ケイ「私たちがライドする戦車も、ちょっと変わったわね」

クラーラ「みたいですね」

桂利奈「クラーラさんって、留学生なんですよね!?」

クラーラ「はい」

桂利奈「私、留学生って初めてみました!! 握手してください!!」

クラーラ「いいですよ」ギュッ

桂利奈「わーい、ありがとうございます!!」

優季「私もおねがいしまぁす」

クラーラ「喜んで」ギュッ

ケイ「クラーラって、日本語上手いわよね。どうして普段はロシア語で喋ってるわけ?」

クラーラ「ロシア語で話すとカチューシャが怒るから、です」

37 : 以下、名... - 2016/06/14 00:07:11.41 /715p2sVo 32/277

使用車輌 マチルダⅡ歩兵戦車

車長兼通信手 ミカ
砲手       五十鈴華
装填手     磯辺典子
操縦手     ホシノ


ミカ「……」ポロロン

「ミカさんの演奏は心が洗われるようです」

典子「自己紹介はいいんですか?」

ミカ「ん? 必要かな。このチームにまだ何かがいるとすれば、それは……」

ホシノ「それは?」

ミカ「もう一つの色、かもしれないね」

「お花のことでしょうか」

典子「バレーボールの白とか?」

ホシノ「塗装するなら、黒とかもいいんだけどな」

ミカ「そういうことだね」

「そうですね」

38 : 以下、名... - 2016/06/14 00:13:15.74 /715p2sVo 33/277

使用車輌 ポルシェティーガー

車長  島田愛里寿
装填手 ナカジマ
通信手 スズキ
操縦手 ローズヒップ
砲手  赤星小梅


ローズヒップ「ついに、ついにきましたですわー!! 今日はこのポルシェティーガーで戦場を疾走しますわー!!」

ナカジマ「そこまで速度はでないですけどねぇ」

ローズヒップ「そんなことありませんわ。試合のとき、あんなにも駆けていたのに」

小梅「あの操縦技術って、やはり自動車部であることが関係しているんでしょうか」

ナカジマ「ツチヤの操縦がうますぎるっていうのもあるかもしれませんね」

ローズヒップ「ならば、ツチヤ様に劣らぬ走りをみなさんに見せてあげますわ」

ナカジマ「よろしくお願いします。レオポンが愚図ったらなんとかするんで、ローズヒップさんは気にせず爆走してください」

ローズヒップ「かしこまりましたわ」

愛里寿「……」

小梅「あの、島田さん? なにか……」

愛里寿「なんでもない。自己紹介、しておく。島田愛里寿。よろしく」

42 : 以下、名... - 2016/06/14 21:27:10.74 /715p2sVo 34/277

「こら!! 勝手に戦車に乗るな!!」

エリカ「なんですって?」

典子「まだ練習はしないんですか?」

妙子「時間も限られていますし、練習したほうが」

「まだだ。練習よりも先に決めてもらうことがある」

アンチョビ「何を決めるんだ」

「チーム名に決まっているだろう」

エリカ「そんなの必要なの?」

まほ「呼称しやすい部隊名は必須だ。作戦を伝えるときに手間取ることになる」

カチューシャ「そんなのカチューシャ隊とかでいいじゃない」

まほ「それを決めるのは監督の役目だ」

カチューシャ「う……」

ダージリン「ふふっ。では、わたくしたちはオレンジペコ隊にしようかしら」

オレンジペコ「紛らわしいんでやめてください」

「いいから、さっさと決めてくれ。こちらも管理する上でチーム名が決まっているほうが都合がいいんだ」

43 : 以下、名... - 2016/06/14 21:40:43.59 /715p2sVo 35/277

アリサ「で、監督兼隊長さんは考えてあるの?」

みほ「あ、はい。一応、第二回ドラフト会議前から考えていました」

優花里「流石です、西住殿。二手、三手先を読んでいたのですね」

絹代「尊敬いたします!! 西住隊長!!」

ペパロニ「すっげー!! にしずみ流って、隙がないって感じだな!!」

麻子「そこまで感心するほどのことか」

ナオミ「では、ボス。各チーム名を発表してもらえる?」

みほ「分かりました。ええと、私のチームは、あんこうチームとします」

アリサ「そのまま引継ぐの? 私は大洗のメンバーでもなんでもないんだけど」

「まさかこの私があんこうチームに入れるだなんて!! 嬉しいです!!」

ノンナ「私はカチューシャ隊でもよかったのですが」

カチューシャ「よくわかんなくなるでしょ」

みほ「優花里さんのチームは、ねずみさんで」

優花里「ねずみですか!! わかりました!!」

アッサム「あまりイメージがよろしくないような気も……」

44 : 以下、名... - 2016/06/14 21:46:26.85 /715p2sVo 36/277

みほ「カチューシャさんのチームは、ぞうさんで」

カチューシャ「ゾウですって? なんでよ」

みほ「KV-2はどっしりしていて、大きいから、象かなって……」

カチューシャ「ふぅん。ミホーシャが決めたんだから、別に反対はしないわ。それで行きましょう」

みどり子「(もしかして喜んでます?)」

ノンナ「(とても喜んでいますね)」

カチューシャ「なによ?」

みほ「西さんのチームは、ほたるさんチームで」

絹代「はっ!!」

カエサル「まさに名は体を表す、だな」

ナオミ「獰猛な名前だ」

ツチヤ「そうなの?」

みほ「アンチョビさんのチームは、ワニさんでいきます」

アンチョビ「ワニだと……?」

みほ「え? あ、ダ、ダメですか?」

45 : 以下、名... - 2016/06/14 22:00:03.45 /715p2sVo 37/277

アンチョビ「ワニと言えば一度食らいついたら離さない、凶悪な生物だ。自身の体を回転させ、獲物の肉を捩じりきるという……」

「うわぁ……」

ペパロニ「凶暴すぎるっすね……」

みほ「嫌だったら、別のチーム名でも……」

アッサム「でしたら、ねずみさんではなくゴクラクチョウさんでも――」

アンチョビ「はーっはっはっはっは!!! 実にいいじゃないか!! ワニさん!! 我がアンチョビ隊に相応しい名だ!!」

ペパロニ「サイコーっすよ、西住姉さん!! こんなかっこいい名前、頂いちゃっていいんすか!?」

みほ「えっと、ペパロニさんは、私と同じ歳だから、姉さんはちょっと」

ペパロニ「いやいや。もう滲み出るオーラは姉さんっすよ!! 姉さんって呼ばせてください!! 姉さん!!」

麻子「聞く前から何度も呼んでる」

アンチョビ「しかし、ワニさんではいまひとつ私たちの凄みが表現できていない気がする。そうだ! アリゲーターさんというのはどうだ!?」

ペパロニ「くぅー!! ドゥーチェ、それいいっすよ!! マジで!! アリゲーターとか、ちょーこわそーじゃないっすか!! 名前だけで相手がビビるっすね!!」

アンチョビ「だろう! よし!! ワニさん改め、アリゲーターさんでいくぞ!!」

ねこにゃー「アリゲーターってワニの中では大人しいほうだった気が……」

みほ「あの! やっぱりワニさんでお願いします!!」

46 : 以下、名... - 2016/06/14 22:14:20.84 /715p2sVo 38/277

エリカ「チーム名を決めろと言われても……」

まほ「既に決めている。エリカたちが悩む必要はない」

エリカ「隊長! 本当ですか!?」

ダージリン「まほさんのネーミングセンスはどれほどなのか、見物ですわね」

ケイ「ミホと同じなら、キュートでいいんだけどね」

小梅(すごくシンプルな気がする)

「楽しみですわ」

ミカ「名前は形あるモノの骨格と言える。その骨格が歪んでいれば、自然と中身も歪んでしまう」

ミッコ「不吉なこと言わないでほしいんだけど」

まほ「まず逸見エリカ率いるチームの呼称は……」

沙織「なにかな、なにかなー」

まほ「チーム・虎、とする」

小梅(あ、やっぱり)

ケイ「タイガーとかティーガーじゃダメなの?」

まほ「チーム・虎だ」

48 : 以下、名... - 2016/06/14 22:22:59.15 /715p2sVo 39/277

沙織「あんまりかわいくないぃ……」

「いいじゃん。強そうで」

桂利奈「虎だって、かっこいい!! がおー!!」

優季「きゃあ、こわ~い」

ナカジマ「これは私たちのチーム名が期待できる感じだ」

スズキ「うん。きっとレオポンが日本名になるね」

ローズヒップ「なるほど。チーム・女豹ですわね」

クラーラ「女狐ではダメですか?」

オレンジペコ「ダメです」

まほ「続いてダージリン率いるチームの呼称は、チーム・豹とする」

ダージリン「まぁ、強そう」

愛里寿「棒読みだ」

エリカ「あ、の、隊長、もう少しチーム名を練ったほうが……」

まほ「一週間考えたんだが……ダメだろうか……」

エリカ「い、いえ!! シンプルでいいと思います!!」

49 : 以下、名... - 2016/06/14 22:35:28.51 /715p2sVo 40/277

まほ「ケイのチームは、チーム・熊」

ケイ「ベアーね。迫力あっていいじゃない!!」

桂利奈「ウサギから熊かぁ」

優季「大出世したみたぁい」

クラーラ「てっきり、チーム・シベリアジャコウジカかと」

あゆみ「どこの動物ですか?」

まほ「ミカのチームは、チーム・狼」

アキ「なんかカッコいいんだけど!!」

ミッコ「そっちがいい……」

ミカ「これも運命だ。受け止めるべきだと思うけれど?」ポロロン

ローズヒップ「そのチーム名、欲しかったですわ」

ミカ「隣の芝はいつでも青くみえてしまうだけさ」

典子「狼でも心にあるのはバレーボールだ!!」

「狼のようにアグレッシブなチームを目指しましょう」

ホシノ「アルピナみたいな感じでいきたいな」

50 : 以下、名... - 2016/06/14 22:41:21.02 /715p2sVo 41/277

まほ「最後に島田愛里寿率いるチーム名は……」

ナカジマ「獅子かな」

スズキ「獅子でしょ」

ローズヒップ「女豹ですわね」

まほ「チーム・ボコだ」

ナカジマ「……ん?」

ダージリン「ボコ……?」

沙織「ボコってあのボコですか?」

まほ「ああ。ボコられグマのボコだ」

愛里寿「……」

小梅「いいんですか、島田さん?」

愛里寿「まほさん……」

まほ「なんだ?」

愛里寿「最高のチーム名だっ。ありがとう!」

まほ「そう言ってもらえると考えた甲斐がある」

51 : 以下、名... - 2016/06/14 22:51:30.40 /715p2sVo 42/277

愛里寿「やってやるやってやる、やーってやるぜ」

桂利奈「ぼーこぼこにー!」

エリカ「隊長!! それは流石にどうかと思うのですが!!」

まほ「何故だ」

エリカ「島田だけを特別扱いしていませんか」

まほ「そう思う?」

エリカ「こればかりは……」

ダージリン「チーム名など必要なのか、と問うていた人の発言とは思えませんわね」

エリカ「それとこれとは……!!」

ケイ「いいじゃない、エリカ。マホだって呼びやすいほうがいいって言ってたんだし」

エリカ「しかし……」

ミカ「何か心の中に引っかかることでもあるのかい?」

エリカ「……」

まほ「何か意見があるのなら何でも言ってほしい」

エリカ「いえ、特にありません。そのチーム名で構いません」

52 : 以下、名... - 2016/06/14 23:09:14.70 /715p2sVo 43/277

みほ「いいな、愛里寿ちゃんたち……。私もボコチームにしておけばよかった……」

アリサ「そんなチーム名だったら敵側に寝返ってたわね」

「ボコではなく、バボとかどうでしょう?」

ノンナ「あまり変わりませんね」

カルパッチョ「西住さんはボコの熱烈なファンなのですね」

優花里「ボコへの愛は海よりも深いですからね」

麻子「ボコミュージアムでの西住さんは正直、見ていられなかったぐらいだ」

カルパッチョ「そこまでなのですか」

絹代「分かります。私もウラヌスには戦車と同等の愛情を捧げていますから」

カエサル「馬のことか?」

絹代「いえ、愛車のバイクです」

カエサル「人以外にソウルネームをつけるという発想はなかったな。三突にもソウルネームをつけたくなってきた」

アンチョビ「……大変そうだな」

「はい?」

アンチョビ「気にするな。独り言だ」

54 : 以下、名... - 2016/06/16 09:35:27.23 GYd2x1mCo 44/277

「最後がチーム・ボコ、と」カキカキ

愛里寿「チーム標章は初代ボコでいきたい」

ナカジマ「いいですよ。どんなデザインかあとで教えてください。こちらで作っておきます」

愛里寿「すまない。恩に着る」

「チーム名も決まったところで午前の練習を開始する。練習内容は各チームで決めてほしい」

「全体練習をするもよし、個別で練習するもよし、ポジションごとで練習するもよし。とにかく自由だ」

「その分、各車長、隊長の指導力が如実に表れる時間となることだろう。それから――」

みほ「まずは戦車に慣れるために練習会場をみんなで隊列を維持しながら周ってみましょう。その際、丁度いい目標物があれば練習弾で発砲してもらっても構いません」

カルパッチョ「装填の感じも掴めそう」

ルクリリ「隊列を維持するのであれば操縦手、通信手共に仕事が多くなるわね」

ナオミ「目標物というのは岩や木を狙うの?」

みほ「それも自由です。ただ隊列の維持を最優先にしてください」

アンチョビ「つまり動きながら撃て。それができないなら、全隊止まれで撃て、か」

みほ「みなさん、よろしくお願いします。それでは、パンツァー・フォー!!」

「「おぉー!」」

55 : 以下、名... - 2016/06/16 09:46:58.37 GYd2x1mCo 45/277

ケイ「どんなプラクティスをするの?」

エリカ「午前の練習は3時間、ね……。1時間、各チームに分かれて自由に練習。その間に戦車に慣れてください」

ダージリン「了解ですわ」

あゆみ「あの、西住先輩みたいにみんなで固まって練習は……」

エリカ「残りの2時間をそれに充てるわ」

優季「そうなんですかぁ」

ローズヒップ「では、走り回ってもいいんですの!?」

エリカ「車長がそれを許可するならね」

ローズヒップ「島田さまっ!」

愛里寿「やめてほしい」

ローズヒップ「……!?」

沙織「エリりんってみぽりんとは真逆って感じがする」

ミカ「まさに鏡だね」

沙織「鏡なら全く一緒なんじゃないんですか?」

ミカ「鏡に映る自分は左右が反転しているじゃないか」ポロロン

56 : 以下、名... - 2016/06/16 09:56:03.17 GYd2x1mCo 46/277

Ⅳ号戦車内

みほ「このままA8地点へ進みます。みなさん、ついてきてください。何か異常はありませんか」

『こちらウサギ、じゃなかった、ワニさん、問題は――』

ペパロニ『まっかせてください!! 西住姉さん!!』

『あの、勝手に割り込まないでください!!』

みどり子『西住姉さんってまほさんのことを言ってるみたいで、勘違いしそうね』

ペパロニ『それもそっすね。んじゃ、これからはみほ姉さんで!!』

アンチョビ『ワニさん、聞いての通り、問題はない!!』

『私の仕事とらないでくださーい!!』

みほ「あはは……」

アリサ「ふぅん。A8からB33地点までは見通しが良さそうね。ここは丘になってるけど」カキカキ

ノンナ「……」

絹代『こちらほたるさん。視野良好。問題ありません』

ニーナ『ぞうさんもだいじょうぶです』

優花里『ねずみさん、異常ありません!! どこまでもついていきます!!』

57 : 以下、名... - 2016/06/16 10:05:16.77 GYd2x1mCo 47/277

ファイアフライ 車内

ナオミ「ん? あの岩、ちょうどいい」

絹代「何かありましたか?」

ナオミ「11時の方向にちょっとした岩が転がっている」

カエサル「あれか? ちょっとした岩って、かなり遠いぞ」

ナオミ「この車輌に乗っていたのは誰だと思っている?」

ツチヤ「じゃあ、走りながら撃つ?」

ナオミ「ああ、この速度なら狂うこともない。キヌヨ、ゴーサインが欲しい」

絹代「ま、待ってください。西住隊長!!」

みほ『はい、なんでしょう?』

絹代「砲撃許可を願いたいのですが」

みほ『はい。いいですよ』

絹代「ナオミ殿、許可がでまし――」

ドォォォォン!!!

ナオミ「ヒット。次だ」

58 : 以下、名... - 2016/06/16 10:18:49.64 GYd2x1mCo 48/277

絹代「む。ツチヤ殿、少し隊列に乱れ――」

ツチヤ「ありゃ、ちょっと遅れちゃったか。よっと」グイッ

絹代「あ。ナオミ殿――」

カエサル「ナオミさん、あの木はどうだ? 1時の方向にある」ガコンッ

ナオミ「ベリーイージー。それともカエサルは私の腕を見くびっているのか」

カエサル「そんなつもりで言ったわけじゃない」

ナオミ「当ててみせる」ドォォン!!

ツチヤ「命中だ。さっすが、名スナイパー」

カエサル「まさにアルコンだ」

ナオミ「センキュー」クッチャクッチャ

絹代「……」

みほ『みなさん、良い調子です。このままを維持しましょう』

『『はいっ!!』』

ツチヤ「やっぱり、あんこうとねずみさんはすっごいなぁ。全然、乱れる様子がない」

カエサル「謙遜するな。貴殿はアウクシリアでも活躍できるほどの技量がある」

59 : 以下、名... - 2016/06/16 10:35:12.79 GYd2x1mCo 49/277

会場

エリカ「……」

沙織「エリりーん。のらないのー?」

エリカ「貴方達だけで動かしておいて。私は次の練習で乗り込むから」

オレンジペコ「よろしいのですか?」

エリカ「貴方達よりはその戦車に触れているもの」

「それもそっか。んじゃ、ミッコ、しゅっぱーつ」

ミッコ「セルヴァ!!」

エリカ「……」

ポルシェティーガー『いきますですわー!!』ズゴゴゴゴ!!!!

ナカジマ『ローズヒップさん!! ちょっと待って!!』

ローズヒップ『なんですの!?』

スズキ『もうダメだ』

ナカジマ『あーあ、やっちゃったぁ。履帯直さないと』

ローズヒップ『わたくしの所為ですの?』

61 : 以下、名... - 2016/06/16 10:49:17.72 GYd2x1mCo 50/277

マチルダⅡ車内

ミカ「……」ポロロン

「右から来るようです」

ホシノ「そうは行くか!!」

ドォォォン!!!

典子「回避できました!!」

ケイ『やるじゃない! でも、次はわからないわよ!! カリナ! しっかりついていって!! サキ!! 装填早めにね!! ユウキ!! チーム・パンサーと連携を密にね!! クラーラはフリーダムに!!』

優季桂利奈『『おっけーでーす』』

クラーラ『Уразуметно』

ダージリン『ミカさんは一筋縄ではいきませんわね。各員、なんとかしなさい』

妙子『はい!! なんとかします!!』

あゆみ『指示がテキトーすぎませんか!?』

アキ『ダージリンさんってもっとちゃんとしてる人かと思ったのに』

ダージリン『この練習は車輌に慣れるためのもの。大変なのは貴方達のほうですわ』ズズッ

柚子『答えになってないような……』

62 : 以下、名... - 2016/06/16 11:02:14.01 GYd2x1mCo 51/277

会場

あけび「すごいですぅ」

エルヴィン「壮観だな」

あや「混ざりたかったなぁ」

おりょう「次があるぜよ。多分」

左衛門佐「練習風景を見るのもいいが、我々の役目を果たすでござる」

希美「ですね」

モヨ子「これを運んでもらえますか?」

玉田「了解であります!!」

福田「カモ殿!! 私は何をすればいいでありますか!!」

細見「私は何をしましょう!?」

寺本「写真とってもいいですか!?」

希美「あの、少し落ち着いてください、えっと……福田さんは……えーと……」

「何をしている!! この紙にそれぞれの係が書かれているだろう!! これを見て行動しろ!!」

福田「も、申し訳ありません!!」

63 : 以下、名... - 2016/06/16 11:21:42.54 GYd2x1mCo 52/277

ポルシェティーガー 車内

ナカジマ「強化しているとはいえ足回りの弱さは隠せないんですよ」

ローズヒップ「だから地面にめり込んでしまったのですわね」

スズキ「そうそう」

ローズヒップ「気を付けますわ」

小梅「次はどうしましょう。ケイさんたちと一緒に……」

愛里寿「このまま走って」

ローズヒップ「いいんですの!?」

愛里寿「うん。知っておきたいこともあるから」

ナカジマ「レオポンのことなら何でも答えられる自信がありますけど」

愛里寿「戦車のスペックは記憶している。見るべきところは別」

スズキ「教えてくれる?」

愛里寿「この戦車とチームでみほさんを撃破できるかどうか」

ローズヒップ「五位指名チームが一位指名チームを倒すということですわね。わたくし、紅茶にそそぐお湯のように熱くなってきましたわー!!」

ナカジマ「沸騰直前ってことですか」

64 : 以下、名... - 2016/06/16 11:34:21.60 GYd2x1mCo 53/277

会場

みほ『撃て!!』

Ⅳ号戦車『Да』ドォォォン!!!!

クルセイダー『うわぁ!?』

アッサム『的確に当ててくるとは恐ろしいですわね。ブリザードのノンナ、伊達ではありませんのね』

麻子『やるな』

優花里『こちらも負けてはいられません! 冷泉殿、もっと鋭く動きましょう!!』

麻子『別にいいが、秋山さんの装填は大丈夫か』

優花里『私のことは気にしないでください。冷泉殿の操縦で装填ができなかった、なんて言いたくもありませんから』

麻子『そういうことなら、遠慮はしない』

アッサム『この自信と信頼関係……。なるほど』

アンチョビ『我々も続けー!!』

P40『おらおらおらー!!! ワニさんのお通りだー!!』ゴゴゴゴッ!!!!

絹代『ほ、砲撃準備を!!』

ナオミ『イエス、マム』

65 : 以下、名... - 2016/06/16 11:43:15.68 GYd2x1mCo 54/277

KV-2 車内

ニーナ「みなざん、やっぱりうんめえなぁ」

カチューシャ「感心してないで、こっちもやるのよ!! ここからKV-2の実力をミホーシャたちに見せてやるのよ!!」

ルクリリ「とはいっても、威力はあっても速さで負けている気が」

ねこにゃー「ももがー」ポイッ

カチューシャ「ん?」

ももがー「はい! ぴよたん、いけるなり!!」ガコンッ

ぴよたん「発射ずらぁ!!」

ドォォォォン!!!!

アンチョビ『相変わらずの反則級の威力だな!!』

ペパロニ『ふんっ。けど、装填するのに時間がかかるのはわかってること! 一発撃てば、あとはただのでっかい的っすよ!!』

ねこにゃー「二射目!!」ポイッ

ももがー「いくなり!!」ガコンッ

ぴよたん「ほい!!」ドォォォォン!!!!!

ペパロニ『うわぁぁぁぁ!!!』

66 : 以下、名... - 2016/06/16 11:50:27.54 GYd2x1mCo 55/277

カチューシャ「……」

ニーナ「はえー……」

優花里『KV-2って連射できましたっけ!?』

絹代『そこまでいくと、鉄の物の怪にしか見えないであります!!』

みほ『ワニさん、怪我はありませんか?』

アンチョビ『訓練弾でこの威力とは……』

みどり子『反則よ!! 校則違反よ!!』

『いたた……』

ペパロニ『くっそぉ。私の反応があと3秒早ければ避けれてたのに』

『惨敗ってことですね』

『P40がひっくりかえった……』

カルパッチョ『訓練弾でもああなるとは、味方でよかったです』

ペパロニ『アンチョビ姉さん、早く戦車を起こしてリベンジっすよ!!』

アンチョビ『できるわけないだろ!!!』

『横転した戦車はこちらでなんとかする。しばらく待っていろ』

67 : 以下、名... - 2016/06/16 11:59:20.24 GYd2x1mCo 56/277

ノンナ『カチューシャ?』

カチューシャ「な、なによ」ビクッ

ノンナ『装填手のお二人はどのようにして装填をされたのですか』

カチューシャ「え、あ、べ、別にフツーよ、フツー! 頼れる同志として認めてあげてもいいぐらいではあるけど、フツーよ」

ノンナ『普通の装填であのような速射ができるでしょうか』

カチューシャ「で、できるのよ!! カチューシャの教え方が上手いから!!」

ノンナ『そうですか』

ニーナ「すげえ!! ふだりとも、ホーダンでお手玉しでたみてぇだぁ!!」

カチューシャ「こ、こら!! 黙ってなさい!!」

ニーナ「へ?」

ノンナ『聞こえましたよ』

カチューシャ「物のたとえよ!」

ノンナ『みほさん。あんこう踊りの衣装なのですが――』ブツッ

カチューシャ「ノンナ!? ノンナー!!! 応答しなさい!! ノンナー!!!」

ルクリリ「あの約束、生きてたんだ」

68 : 以下、名... - 2016/06/16 12:09:19.10 GYd2x1mCo 57/277

会場

まほ「エリカ、まだ練習に参加しないのか」

エリカ「私には私の考えがありますので」

まほ「他人のことを言えないが、気持ちは言葉にしなければ伝わらない」

エリカ「分かっています」

まほ「そう。では、安心だ」

エリカ「あの、隊長」

まほ「なに?」

エリカ「何故、隊長は参加されないのですか」

まほ「これでも参加しているつもりだが」

エリカ「いえ、選手として、その……」

『逸見ちゃーん、そろそろ隊長の指示が欲しいんだけど、合流してくれない?』

沙織『車長の席が寂しいなー、なんてねっ』

エリカ「……今から行くわ。隊長、この話はまた、後ほど」

まほ「ああ」

69 : 以下、名... - 2016/06/16 12:21:12.31 GYd2x1mCo 58/277

休憩所

ローズヒップ「つかれましたわー」

ナカジマ「あれだけ派手に暴れたらねー」

愛里寿「……」

小梅(結局、チーム・ボコだけ一緒に練習しなかったけど、いいのかな……)

「島田ちゃん、そっちはどうだった?」

愛里寿「いい感じだ。車内はボコでいっぱいだし、チームも悪くない」

ローズヒップ「おぉ!! わたくし、今、褒められた気がしますわ」

愛里寿「貴方はもう少し丁寧な操縦を心掛けてほしい」

ローズヒップ「紅茶が零れないような運転をしろということですわね。簡単ですわ」キリッ

ダージリン「既に袖が濡れているわよ、ローズヒップ」

「楽しそうでよかったよ」

エリカ「……」

沙織「あーうー……おなかすいたぁ……」

「これより昼食をとる。午後からの練習に備えてしっかりと英気を養ってくれ」

70 : 以下、名... - 2016/06/16 13:01:09.53 GYd2x1mCo 59/277

ペパロニ「もちろん、パスタだよな」

福田「えっ」

ペパロニ「どうした?」

福田「あ、あの、食事は知波単と大洗のみなさんで用意させてもらったでありますが……」

あけび「カレーライスです」

ペパロニ「なにぃ!?」

福田「も、も、も、申し訳ありません!! 要望を事前に聞いておけばこんなことには!!」

ペパロニ「サイコーじゃん!! 外でカレーって!! いやぁー、わかってるねー!!」バンバンッ

福田「よ、よかったでありますぅ」

ペパロニ「んで、誰がカレーに決めたんだ? シェフを呼んでくれ」

あや「はーい。シェフー、ペパロニさんが呼んでますよー」

まほ「なんだろうか」

ペパロニ「ぶふっ!?」

エリカ「た、隊長!?」

みほ「あ、お姉ちゃんが作ったんだ」

72 : 以下、名... - 2016/06/16 13:08:03.93 GYd2x1mCo 60/277

まほ「私は具材などを集めてレシピを渡しただけだ。大部分は知波単高校と大洗の選手が作った」

「うん、うまいっ。星、みっつぅ」

柚子「もう食べてる!?」

「しっかりと味わうようにな。午後の練習は13時30分からだ」

「「はーい」」

優季「あやはなにしたのぉ?」

あや「ニンジンを切ったよ」

優季「そうなんだぁ。ありがと」

桂利奈「おかわりー!」

あゆみ「はやくない!?」

「わたくしもおかわりを。もう少し多めでお願いします」

典子「えぇぇ!?」

ミカ「健啖は健康の証。いいと思う」ギュッ

アキ「これでよし。私もおかわりもらおっと」

「おい!! タッパーに詰めるな!! お前たち、カレーをどうするつもりだ!!」

73 : 以下、名... - 2016/06/16 13:13:50.81 GYd2x1mCo 61/277

アンチョビ「普段はピザやパスタが中心だが、たまには悪くないな」

カルパッチョ「ですね」

みほ「ふふ。やっぱりお姉ちゃんの味がする」

優花里「これが西住家の味なのですね。まさか西住殿の故郷の味をこうして知ることができるなんて思いませんでした」

沙織「あとで作り方とか聞いてもいいかなぁ?」

みほ「いいと思うよ」

カチューシャ「カレーなんて辛いだけじゃないの。何がいいのかしら」

まほ「カチューシャ」

カチューシャ「な、なによ。た、たべるわよ」ビクッ

まほ「これを」

カチューシャ「なに、これ?」

ノンナ「甘口カレーですね」

クラーラ(あ、コーンが入ってる)

カチューシャ「甘口ですって!? カチューシャを子ども扱いしないで!!」

まほ「好きにしてくれ。カチューシャの前には両方置いておく」

74 : 以下、名... - 2016/06/16 13:22:17.06 GYd2x1mCo 62/277

エリカ「隊長、わざわざこんなことをしなくても」

まほ「させてくれ」

エリカ「ですが……」

ケイ「マホー、サンキュー! デリシャスカレー、サイコーね!」

ダージリン「カレーに合う紅茶を用意しないと」

オレンジペコ「でしたら、アールグレイなんていかがでしょう」

ダージリン「それがいいわね。アッサム」

アッサム「はい。こちらに」サッ

ダージリン「ありがとう。あとでみなさんに出しましょうか」

アッサム「はい」

絹代「……」

福田「西隊長、味はいかがでしょうか?」

絹代「あ、ああ。最高だ。私には勿体ないぐらいだ」

福田「そ、そんなことは! 光栄の極みであります!!」

みほ「……?」

75 : 以下、名... - 2016/06/16 13:32:29.63 GYd2x1mCo 63/277

エリカ「はぁ……」

アンチョビ「エリカ! おかわりはいるか!?」

エリカ「な、なによ、いきなり」

アンチョビ「ん。どうした、箸が止まっているじゃないか。いや、カレーの場合はスプーンか」

エリカ「考え事をしていただけよ。全部食べるわ」

アンチョビ「では、水を入れてやろう」

エリカ「……なにか用?」

アンチョビ「エリカとか喋る機会が殆どなかったからな。こうして時間を使うのも悪くはないはずだろう」

エリカ「そうね」

アンチョビ「午前の練習はどうだった? 私たちは充実していたぞ。P40が横転したときは焦ったがな。大破したらまた修理費で予算が……」

エリカ「試合になれば、嫌でも壊れると思うけど」

アンチョビ「はっはっはっは。確かにそうだな。一本取られた」

エリカ「ごちそうさま。では、お先に失礼します。午後の練習内容を決めなければならないので」

アンチョビ「わかった。またあとでな」

エリカ「ふんっ」

76 : 以下、名... - 2016/06/16 14:33:19.16 GYd2x1mCo 64/277

愛里寿「はむっ……」

ミカ「君も隅が好きなのかな」

愛里寿「え……。別に、ここしか空いて無かっただけだ」

ミカ「私もここから見る景色が好きなんだ」

愛里寿「どうして?」

ミカ「近づきすぎると見えないものもあるからね」

愛里寿「よくわからない」

ミカ「君はいつも近くでみていたんじゃないかな。誰にも邪魔されない最前列の特等席で」

愛里寿「……」

ミカ「だから、きっと後ろの席にどんな観客がいるのは知らないんだと思うよ」

愛里寿「どういう意味――」

みほ「愛里寿ちゃん、こっちで食べない?」

愛里寿「あ……みほさん……。うんっ」

沙織「ミカさんもどう?」

ミカ「嬉しい誘いだけど、今回は遠慮しておくよ」

78 : 以下、名... - 2016/06/16 14:51:42.96 GYd2x1mCo 65/277

愛里寿「邪魔する」

優花里「どーぞ、どーぞ」

沙織「私たちもね、愛里寿とお話ししたかったんだー」

「以前、大洗に来ていただいたときはゆっくりとお話しできなかったので」

愛里寿「そ、そうか。急に帰ってしまい、申し訳ない」

みほ「気にしないで。愛里寿ちゃんの私と試合がしたいって気持ち、とっても嬉しいから」

愛里寿「嬉しい、のか。みほさんも」

みほ「もちろんだよ。チームメイトとして一緒に戦車道をするのも良いけど、やっぱり私も愛里寿ちゃんと試合がしたいなって思ったの」

愛里寿「では、みほさん」

みほ「なにかな?」

愛里寿「私以外の人に落とされないようにしてほしい」

沙織「おぉー!! これってプロポーズ!?」

麻子「全然違うだろ」

みほ「が、頑張ってみる」

愛里寿「うんっ」

79 : 以下、名... - 2016/06/16 15:02:15.21 GYd2x1mCo 66/277

あけび「キャプテン、調子はどうですか?」

典子「まずまずってところかな」

あけび「今日と明日である程度はチームワークをよくしないと試合に響きそうですよね」

典子「なぁ、佐々木」

あけび「はい?」

典子「ううん。しっかりと応援しててほしい!!」

あけび「はいっ。勿論です! 気合と根性です!! キャプテン!!」

典子「おーし!! いつものやるぞー!! バレー部ぅ……」

妙子あけび「「ファイトー!!!」」

ローズヒップ「ファイトですわー!!」

典子「なんでローズヒップさんが入ってくるんですか!?」

ローズヒップ「わたくしもこういうの好きなのですわ!」

ダージリン「……」ズズッ

「いつも元気だね。いやぁ、ローズヒップちゃんが同じ隊でよかったよ」

ダージリン「そうね。時々、あの子の強さが羨ましくもあるわ」

80 : 以下、名... - 2016/06/16 15:10:26.58 GYd2x1mCo 67/277

まほ「みほ、午後からの打ち合わせをする。来てくれ」

みほ「あ、うん。それじゃあ」

愛里寿「うん」

優花里「西住殿、忙しそうですね」

沙織「立案者となると、色んな雑用もあるもんね」

麻子「面倒だな」

柚子「そうでもないんじゃないかな?」

「小山先輩、それはどうしてでしょうか」

柚子「今回、桃ちゃんが雑用の殆どをやってくれてるみたいで」

沙織「へぇ、そうなんですか」

柚子「私も西住さんも手伝うって言ったんだけど、桃ちゃんは……」


『試合に出る者は練習と試合にだけ集中していればいいんだ!!』


柚子「って、誰にも雑用をさせてくれないの。料理だけはまほさんからの要望もあって、みんなで用意したみたいだけど」

麻子「……」

81 : 以下、名... - 2016/06/16 15:17:20.90 GYd2x1mCo 68/277

「んじゃ、昼からはどんな練習する?」

「西住は既に実戦的な練習をしていたようだが」

みほ「みんなもそれを望んでいたので」

まほ「こちらはそれぞれが戦車性能の確認と、簡単な戦術の打ち合わせに終始していた」

「チーム・ボコだけはずっと違うところを走ってたけどね」

まほ「そうだな」

みほ「あの、お姉ちゃん。もしかしてエリカさんと愛里寿ちゃん……」

まほ「みほが気にすることはない」

みほ「けど……」

まほ「相手側の選手を心配する前に、自軍の心配をしろ」

みほ「うん……」

「双方ともに問題があるのか」

みほ「問題ってほどではないと思うんですけど……」

まほ「こちらも支障はない。イベントは必ず成功させる」

「成功してもらわなきゃ困るんだよねぇ。このイベントにサンダースや聖グロ、黒森峰だって出資してくれたんだから」

82 : 以下、名... - 2016/06/16 15:34:52.31 GYd2x1mCo 69/277

「何かあるのならすぐに言ってくれ。できる限るのことならなんでもする」

みほ「ありがとうございます」

「河嶋もこう言ってるし、あとの事務はぜぇーんぶやってもらおっかなぁ」

「お任せください!!」

まほ「河嶋さん。私も手が空いてる時間のほうが長いので、手伝えるが」

「監督は選手のことを常に見ておくべきだ。これぐらいの書類ならば、いつもこなしている」

まほ「そうか……」

「お姉さんもやりたいっていってるんだし、いいんじゃない?」

「本当に困ったときには手伝ってもらいます」

「そう? 好きにしてくれていいけど」

まほ「午後からはチーム・ボコにも入ってもらい、実戦形式の練習をするか。A10地点からC3地点で行う」

みほ「分かりました。こちらはB74エリアで引き続き同じ練習をしようと思います」

「この地点と……ここで……練習っと……」カキカキ

「へえ、そうやって朝もきちんと書いてたのか」

「当然です。P40のように車輌が横転したとき、あるいは怪我人が出てしまったとき、迅速に動くためには選手たちの位置をある程度は把握しておかなければなりません」

83 : 以下、名... - 2016/06/16 15:53:12.64 GYd2x1mCo 70/277

練習会場

みほ「準備はいいですか?」

絹代『はい、いつでも構いません!』

優花里『こちらもです!』

『ウサ、じゃなくて、ワニさんもオッケーです』

みほ「では、開始してください」

優花里『パンツァー・フォー!!』

クルセイダー『……』ゴゴゴゴッ

アンチョビ『出てきたな、ねずみさん。ここはワニの出るポー川と思え!!』

P40『ファルファーレ作戦で行くぜぇ!!』ゴゴゴゴッ

アリサ「そんな作戦あるの?」

カルパッチョ「初耳です」

絹代『こちらも動きます!! 前進開始!!』

ツチヤ『腕の見せどころ!』

ファイアフライ『……』ゴゴゴゴッ

84 : 以下、名... - 2016/06/16 16:09:34.07 GYd2x1mCo 71/277

クルセイダー 車内

優花里「後ろからぴったりとP40がきています」

麻子「応戦するか」

優花里「いえ、ファイアフライの位置を確認してからでも遅くないかと」

アッサム「後ろの一輌と応戦を始めた瞬間に後ろから撃たれる可能性もありますわね」

優花里「はい。なので、もうしばらくはこの状態を維持します」

麻子「了解」


P40 車内

アンチョビ「なんて速さだ。これでは追いつけないぞ」

ペパロニ「舐められっぱなしでいいんすか、姉さん!!」

アンチョビ「それがいいんだ」

ペパロニ「マジっすか!?」

アンチョビ「追いかけているように見せかけて、実は誘導する。こうしてたまに撃ってみたいしてな!!」ドォォォン!!!!

「ねずみさん、方向を変えます!!」

アンチョビ「狙い通りの道を進んでいる。ほたるさん!! もうすぐ見えてくるぞ!!」

85 : 以下、名... - 2016/06/16 16:22:46.24 GYd2x1mCo 72/277

ファイアフライ 車内

絹代「は、はっ! 了解であります!!」

アンチョビ『このファルファーレ作戦は息があっていなければ成功しない!!』

絹代「尽力いたします!!」

ナオミ「ガム、いる?」

絹代「い、いえ。大丈夫であります!」

『ほたるさん、敵車輌がポイント01に到達するまで残り500』

絹代「ナオミ殿、お願いします!」

ナオミ「オーケー」クッチャクッチャ

カエサル「装填は完了している」

『400……300……200……』

絹代「見えた! 撃てー!!」

ナオミ「……」

絹代「……ナオミ殿?」

ナオミ「ここだ」カチッ

86 : 以下、名... - 2016/06/16 16:40:26.33 GYd2x1mCo 73/277

練習会場

ドォォォォォン!!!!

優花里『ぐっ……!!』

アッサム『どうなりました?』

麻子『当たってはいない』

優花里『アッサム殿、どうですか?』

アッサム『2時の方角、あの高台にいますわね』

優花里『では、そこへ行きましょう』

クルセイダー『了解』ゴゴゴゴッ

「もうファイアフライを見つけた?」

アリサ「あれだけ派手な音が聞こえればね」

ノンナ「ナオミさんの狙いは完璧でしたね。戦車の機動力と操縦手の技能が僅かでも低ければ当たっていたと思います」

カルパッチョ「冷泉さんとクルセイダーの組み合わせだからこそ、回避できたのですね」

カチューシャ『冬眠からゾウが覚めちゃったわよ。ぜん、しんっ!!』

ルクリリ『了解!』

87 : 以下、名... - 2016/06/16 16:46:43.67 GYd2x1mCo 74/277

ファイアフライ 車内

ナオミ「チッ。ソーリー、ボス。ミスファイアになった」

絹代「い、いえ。私のほうこそナオミ殿が砲撃の瞬間を見計らっていたのに……」

カエサル「徹三。それよりどうする。敵に居場所が知られてしまったぞ」

ツチヤ「動いたほうがよくない?」

絹代「そ、そうですね。では、ここから――」

ドォォォン!!!

絹代「なっ……!?」

カエサル「この激しい砲撃は……」

KV-2『……』ゴゴゴッ

ツチヤ「来ちゃったか。逃げるが勝ちだ!」

カエサル「ナオミさん! 次弾いけるぞ!!」ガコンッ

ナオミ「サンクス、カエサル」

絹代「……っ」

ナオミ「ファイア!」カチッ

89 : 以下、名... - 2016/06/16 17:05:25.69 GYd2x1mCo 75/277

別地点

エリカ『撃て!!』

『はいよぉ!』

VI号戦車『……』ドォォォン!!!!

T-34『おっとっと。良い狙いね、アンジー!!』

ケイ『んじゃ、こっちからもアタックかけるよ!』

桂利奈『あいぃ!!』

ケイ『ファイアー!!』

T-34『……』ドォォォン!!!

ローズヒップ『こちらからもいきますわよー!!!』

ポルシェティーガー『……』ギュルルルル!!!!

ローズヒップ『あ、あら?』

ナカジマ『また地面にめり込んじゃったみたいだね』

ローズヒップ『困りましたですわ』

愛里寿『……』

90 : 以下、名... - 2016/06/16 17:11:32.82 GYd2x1mCo 76/277

ミカ『……』ポロロロン

ホシノ『回り込む!』

ミカ『……』ポロロン

『発射します』カチッ

マチルダⅡ『……』ドォォォン!!!!

ヤークト『やりますわね』

ダージリン『けれど、当たらなければ意味はないわ。小山さん、その調子よ』

柚子『あわわ……』

アキ『一発どうぞ!!』ガコンッ

あゆみ『ぶっとべー!!』カチッ

ミカ『……』ポロロロロン

ホシノ『急停止か!!』

マチルダⅡ『……』ギギッ!!!

ヤークト『……』ドォォォォン!!!!

ダージリン『洗練された動き……。ミカさんは車内でどのような指示をされているのか……』

91 : 以下、名... - 2016/06/16 17:19:02.91 GYd2x1mCo 77/277

練習会場

ナカジマ「あー、また修理しないとー。おーい、手伝ってー」

スズキ「はーい」

ローズヒップ「中々、難しいですわ」

エリカ「ちょっと」

ローズヒップ「はい。なんでございましょう」

エリカ「午前中にこの戦車の性能は確かめたんじゃなかったの」

ローズヒップ「確かめましたわ」

エリカ「だったら、どうして何度も何度も自滅してるのよ」

ローズヒップ「まだ加減ができないだけですわ」

エリカ「このままじゃ困るのよ!! 練習ができないじゃない!!」

ローズヒップ「うぅ……」

エリカ「島田さん。貴方もどうして彼女を抑えつけないの? 車長としての自覚はあるの?」

愛里寿「……」

エリカ「何か言ったらどうなの?」

92 : 以下、名... - 2016/06/16 17:28:02.43 GYd2x1mCo 78/277

愛里寿「ローズヒップさんも考え無しに操縦しているわけじゃない。だから、私から言うことは何もない」

エリカ「それで何度も走行不能になっているのに?」

愛里寿「そうだ」

エリカ「……このまま改めないのなら、貴方を戦力としては考えない」

愛里寿「試合には出さないということか」

エリカ「そう思ってくれてもいいわね」

愛里寿「逸見さんは、隊長に向いていないかもしれない」

エリカ「……っ」

ローズヒップ「お、お待ちになってください!! ほ、ほら、ローズマリーティーをどうぞ!! 落ち着きますですわ!!」

ナカジマ「仲良くしましょうよ」

小梅「逸見さん、抑えてください。島田さんも今の発言は取り消してください」

まほ「どうした?」

エリカ「なんでも、ありません。修理が完了次第、次の練習に移るわよ」

ナカジマ「りょ、りょうかいでーす」

まほ「エリカ……」

93 : 以下、名... - 2016/06/16 17:41:00.28 GYd2x1mCo 79/277

休憩所

エリカ「はぁ……」

エリカ(隊長に向いていないですって……。はっきりと言ってくれるわね……)

カチューシャ「ふっふーん。今のカーベーは無敵ね! 貴方、プラウダに来なさいよ。今なら専属装填手に任命してあげてもいいわよ」

ねこにゃー「え、ええ……? いや、でも、ボクは大洗が好きだから……」

カチューシャ「そう? なら、仕方ないわね」

ねこにゃー「あっさり引き下がられて、少し複雑だにゃー」

カチューシャ「あら? 誰かと思えば、エリカじゃない」

エリカ「貴方達も休憩?」

カチューシャ「ええ。それにしても今度の試合、カチューシャたちの勝ちは確定よ。今の内に謝っておいたほうがいいんじゃないかしら」

エリカ「……そうね」

カチューシャ「へ?」

エリカ「負けるかも、しれないわね」

カチューシャ「ちょ、ちょっと」

エリカ「戻るわ」

94 : 以下、名... - 2016/06/16 17:48:15.72 GYd2x1mCo 80/277

カチューシャ「待ちなさいってば!!」

エリカ「何よ」

カチューシャ「そんな気分で試合をするなら、もう学園艦に帰りなさい」

ねこにゃー「えぇぇ! カっちゃん、それはちょっと言い過ぎなような……」

カチューシャ「言い過ぎですって? 優しいぐらいよ。戦車道を止めてって言わないだけ、カチューシャは天使のようよ」

ねこにゃー「確かにカっちゃんは可愛いけど」

カチューシャ「どうなの、エリカ? ここで学園艦に逃げるなら、今の発言は聞かなかったことにしてあげるわ」

エリカ「放っておいてよ」

ねこにゃー「あの、何が……?」

エリカ「それじゃ」

カチューシャ「島田愛里寿の扱いに困ってる、なんて一粒の雪にすら劣るぐらい小さなことで悩んでる」

エリカ「……!」

カチューシャ「なーんて、言わないでね。笑っちゃうから」

ねこにゃー「カっちゃん、やめて、やめて……」

エリカ「そんな……! そんな簡単なことじゃないのよ!!」

95 : 以下、名... - 2016/06/16 17:55:35.65 GYd2x1mCo 81/277

ねこにゃー「あぁ……逸見さん……」

カチューシャ「放っておけばいいわよ。本人もそれを望んでたみたいだし」

ねこにゃー「いくらなんでも、言っていいことと悪いことがあるような」

カチューシャ「隊長ってのは下に見られたら終わりなのよ」

ねこにゃー「……」ジーッ

カチューシャ「今、見下ろしたわね?」

ねこにゃー「め、滅相もない」

カチューシャ「ま、いいわ。ねこにゃーはもう頼れる同志だから、多少の無礼は見逃してあげる」

ねこにゃー「うれしいにゃー。あぁ、でも、逸見さんには謝ったほうが……」

カチューシャ「私だって……どれだけ言われてきたか……」

ねこにゃー「あの、今、何か……」

カチューシャ「戻るわよ!!!」

ねこにゃー「は、はい!」

カチューシャ「絶対に負けるもんですか。あんな隊長に負けるなんて、ありえないんだから」

ねこにゃー「こ、こわいにゃー……」

96 : 以下、名... - 2016/06/16 18:04:41.53 GYd2x1mCo 82/277

夕方 練習会場

「全員、整列!!」

沙織「もうヘトヘトぉ」

優花里「違う戦車もやっぱりいいですね!!」

「はい。とても充実した一日でした」

麻子「ねむい」

エリカ「……」

愛里寿「やってやーる、やってやーる」

優季「それ一番お気に入りなのぉ?」

愛里寿「ああ」

絹代「はぁ……」

「色々、あった一日だったね」

みほ「はい」

「あとは夕食を取り、明日の練習に備えろ。以上、解散!!」

「「ありがとうございました!!」」

97 : 以下、名... - 2016/06/16 18:15:42.19 GYd2x1mCo 83/277

食事会場

柚子「夕食はアンツィオ高校とサンダース大付属高校のご厚意で、様々な料理を用意していただきましたー」

「「おぉぉぉ!!!」」

ケイ「みんなー! 遠慮なんてしないでガンガン食べてねー!!」

ペパロニ「いいんすか、姉さん!! ここまでの食材を使っても!!」

アンチョビ「ああ。何せ、今回はサンダースが食費を奢ってくれた、じゃない、譲ってくれたのだ」

ケイ「私とチョビの仲だもん。これぐらいはしてあげるわ」

アンチョビ「グラーツィエ!! ケイよ、どんなイタリア料理もその場で作ってやる! なんでも言ってくれ!!」

ケイ「いいのー? 私だけの特製パスタでも作ってもらおうかしら!」

ペパロニ「お!! いいっすねぇ! どんな感じにします?」

ケイ「カルボナーラにハンバークとチーズをトッピングして! あとはエビフライとポテトもつけちゃって!! 勿論、パスタは大盛ね!!」

ペパロニ「了解っす!! 腕がなるぜ!!」

アンチョビ「軽く一日の摂取カロリーぐらいはいきそうだな」

「あの、わたくしもケイさんと同じものを!」

沙織「ちょ!? 華、その両手にあるピザも食べるんでしょ!?」

99 : 以下、名... - 2016/06/16 18:21:35.60 GYd2x1mCo 84/277

オレンジペコ「あら……?」

クラーラ「誰かを捜しているのですか」

オレンジペコ「はい。ローズヒップ様が好きそうな料理がありましたので」

クラーラ「ローズヒップさんなら、まだこちらには見えていませんが」

オレンジペコ「え?」

クラーラ「どこにいるのでしょうね」

オレンジペコ「ありがとうございます」

アッサム「どうされますか」

ダージリン「別に。好きにさせておきなさい」

アッサム「けれど、ご迷惑に……」

ダージリン「迷惑だと感じる人がここにいれば、なんとしても止めなければいけないわね」

アッサム「わかりましたわ」

ダージリン「ふふっ」ズズッ

アキ「わーい、いっぱいあるー」

ミッコ「詰めろ、詰めろー」ギュッギュッ

100 : 以下、名... - 2016/06/16 18:30:17.97 GYd2x1mCo 85/277

福田「西隊長!! お寿司があったであります!!」

絹代「……」

福田「西、隊長……。ご気分でも優れないでありますか?」

絹代「あ、いや、すまない。お、おぉ。実に美味そうだな。ありがとう、福田」

福田「い、いえ」

みほ「西さん」

絹代「あ!! これは、西住隊長!! 教練では不甲斐ないところばかりを晒してしまい申し訳ありませんでした!!!」

みほ「自分で何かを決めて、この練習に参加したんですか?」

絹代「……」

みほ「あ、私の勘違いだったら、いいんだけど。なんだか西さんらしくないというか」

絹代「本日の練習に参加させていただき、痛感しております」

みほ「何をですか」

絹代「私は果たして、車長に相応しいのかどうか……」

みほ「西さん……」

絹代「西住隊長に選ばれたことは本当に、本当に嬉しく思います。ですが、車長である私よりもナオミ殿、ツチヤ殿、カエサル殿はとても素晴らしく優秀であります」

101 : 以下、名... - 2016/06/16 18:38:25.70 GYd2x1mCo 86/277

絹代「他のチームを見ても、私よりも優れた車長ばかりです。このような大役、私では……」

福田「西隊長!! そんなことはないであります!!!」

絹代「分かっている。こんな風に思ってはいけないと。知波単で培ったものは、無駄ではない。だが、こうして目の当たりにされると……」

みほ「西さん」

絹代「は、はい」

みほ「第二回目のドラフト会議のとき、私はミカさんを選択することもできました」

絹代「は、はぁ」

みほ「はっきりいいます。西さんとミカさんを比べた場合、ミカさんのほうが優秀です」

絹代「わ、わかっております」

みほ「でも、私は西さんを選びました」

絹代「それは、何故でありますか」

みほ「練度はミカさん、カチューシャさん、ダージリンさん、ケイさん、そして私なんかよりも西さんはずっと上なんです」

絹代「そんなことはありません!!」

みほ「あります」

絹代「に、西住隊長……どうしてそこまでを仰るのですか……」

102 : 以下、名... - 2016/06/16 18:47:49.84 GYd2x1mCo 87/277

みほ「あとは足りない部分を埋めるだけで、もっと優れた選手になれるはずなんです」

絹代「それは努力で、埋まるものでしょうか」

みほ「分かりません」

絹代「な……」

みほ「でも、西さんなら埋められるって信じています」

絹代「こんな私でも……突撃以外、何もできない私が……」

みほ「私も至らない部分は多いです。だから、そんな西さんと一緒に試合ができれば、私も西さんももっと自分を磨けるんじゃないかって」

みほ「一緒に悩んでくれるかもしれないって思いました。だから、西さんを選びました」

絹代「……」

みほ「私から言えるのは以上です」

絹代「はい……」

みほ「それでは」

絹代「……」

福田「西隊長ぉ……」

絹代「すまない、福田。今は一人にしてくれないか」

103 : 以下、名... - 2016/06/16 18:58:06.66 GYd2x1mCo 88/277

ナオミ「すまない。ミホ。つまらない役を押し付けて」

みほ「いえ。西さんのことは、気になっていましたから。それに私の気持ちも伝えたかったので」

カエサル「元気になってくれたらいいが」

ツチヤ「悪いことしちゃってたのかな」

ナオミ「深刻になることはないんじゃない? 私たちができることは一つだ」

カエサル「そうだな。車長を信じることだ」

ツチヤ「そうだなぁ」

みほ「みなさんは西さんのこと、好きですか?」

ナオミ「愚問ね。ボスを愛せないチームに強さなんてない」

カエサル「いいことを言う」

ツチヤ「弄りたいだけなんじゃなくて?」

ナオミ「それもあるがな」

みほ「私も西さんのこと、大好きです。だから、試合では思い切り戦って欲しいな」

ナオミ「そのためにも明日をどう過ごすかにかかってるな」

みほ「明日一日か……。上手くいくかな……」

104 : 以下、名... - 2016/06/16 19:05:26.22 GYd2x1mCo 89/277

愛里寿「……」

愛里寿(みほさんのところに行きたいけど……なんだか行きにくい……)

まほ「島田」

愛里寿「は、はい」ビクッ

まほ「ついてきてくれ」

愛里寿「どこへだ」

まほ「お前にどうしても見せておきたいものがある」

愛里寿「ボコか?」

まほ「いや。だが、ボコよりも大事なものだ」

愛里寿「……わかった」

ミカ「導かれたようだね」

ケイ「ミッカ! とってきたわよ!」

ミカ「揚げたモノばかりは口が受け付けなくてね」

ケイ「はい、アーン」ググッ

ミカ「もご……」

105 : 以下、名... - 2016/06/16 19:11:12.92 GYd2x1mCo 90/277

練習会場

まほ「あれだ」

愛里寿「……」


ポルシェティーガー『……』スゴゴゴゴゴゴ!!!!!!

ナカジマ「ローズヒップさーん、その調子、その調子ー」

ローズヒップ『いきますわよ!!!』

ボンッ!!!

スズキ「消火器、消火器!!」

ナカジマ「おーい、ホシノー!!」

ホシノ「今、もってく!」

ローズヒップ「申し訳ありませんわ……。これで10度目になりますわね……」

ナカジマ「いやぁ、でも、いい感じになってきてるけどなぁ」

スズキ「ここまで来たらとことん付き合うよ」

ローズヒップ「感謝しますわ」

ホシノ「けど、どうしてローズヒップさんはここまでするんだ? 努力家って話はちらっと聞いたけど、実力でいえば抜擢されるぐらいのものはあるんだし、練習の必要ってあるの?」

106 : 以下、名... - 2016/06/16 19:17:09.10 GYd2x1mCo 91/277

ローズヒップ「とんでもありませんわ!!!」

ホシノ「おぉ、ごめん」ビクッ

ローズヒップ「見ての通り、わたくしはまだこの子を満足に扱えてはいませんもの」

ナカジマ「言われちゃったもんねぇ。西住さんをこのチームで撃破したいって」

ローズヒップ「そうですわ。島田様がそこまで期待してくれているのであれば、わたくしはなんとしてもそれにお応えしなければなりませんもの」

スズキ「うん。まぁね」

ホシノ「意地になってるところもあるっぽいけどね」

ナカジマ「逸見さんと張り合ってるのはねー」

ローズヒップ「だからですわ!!」

ホシノ「おぉ、な、なにが?」

ローズヒップ「きっと島田様は悔しいはずですわ!! 撃破するだけの実力があるにも関わらず、その役目をもらえないですから!!」

ローズヒップ「島田様に無念の試合をさせないよう、今は練習あるのみですわ!!」

ナカジマ「いいよー、ローズヒップー、かっこいー」

ローズヒップ「おーっほっほっほ!! 当たり前のことをしているだけですわー!!!」

スズキ「調子に乗りやすいけどね」

107 : 以下、名... - 2016/06/16 19:26:26.96 GYd2x1mCo 92/277

愛里寿「あれを見せたかったのか」

まほ「もう一つある。こっちだ」

愛里寿「まほさん。なんのつもりで……」

まほ「お前は見てこなかっただろうと思ってな」

愛里寿「何を……?」

まほ「お前を支える者たちの努力を」

愛里寿「……」

まほ「私も同じだった。西住流を徹底的に叩き込まれ、常に勝ち続けなければならなかった」

まほ「勝つことが当然だった。私の乗る車輌は最後まで残っていなければならなかった」

まほ「私と同じ車輌に乗る者たちも同様に、最後まで立っていなければならない」

まほ「これぐらいの道を走れて当たりまえ、これぐらいの的に当てて当たりまえ、最適のルートを即座に判断して当たりまえ」

まほ「私と同じ車輌に乗る者はそれらを当然のようにこなさくてはいけない。だが、それらは普通に練習しただけではできない」

まほ「選ばれた以上は、誰よりも苦しまなくてはならない。私は、そんなことにしばらくの間、気が付けなかった」

愛里寿「どうやって、気が付いたんだ?」

まほ「みほが教えてくれた」

108 : 以下、名... - 2016/06/16 19:30:38.99 GYd2x1mCo 93/277

戦車倉庫

「はぁ……はぁ……」ゴシゴシ

柚子「桃ちゃん、手伝うよ?」

「いい!! 休んでいろ!!」

柚子「けど、一人で戦車の洗車なんてできなよぉ」

「朝までやればできる!!!」

柚子「桃ちゃん……」

「やらせてくれ。頼む」

柚子「……」

「河嶋」

「会長……。会長が止めろといっても、私はこの手をどけません」

「ありがとな」

「……」

「でも、やけっぱちになるのはどうかと思うけどなぁ」

「べ、別に自棄になっているわけでは……!!」

109 : 以下、名... - 2016/06/16 19:36:30.25 GYd2x1mCo 94/277

「一人で全部やれば、誰かに褒められる。そう思ってるなら大間違いだぞ」

「ぐっ……」

「河嶋一人が悔しいわけじゃないんだからな」

「あ……ぅ……」

「言いたいことがあるなら言え」

「……」

「どうしたのさ」

「でたい……です……」

「何に?」

「しあい……に……でたい……です……」

「そっか」

「わたしだって……戦車にのって……かいちょうと同じ戦車で……しあいに……で、たいです……」

「……」

「かいちょぉぉ!! くやしいです!! くやしいよぉぉ……!!」

「学園を守るためだけに始めた戦車道だけど、すっかりはまっちゃったもんなぁ。出たいよな。試合、したいよな」

110 : 以下、名... - 2016/06/16 19:41:31.95 GYd2x1mCo 95/277

「うぅぅぅ……」

「だからさ、その悔しさ、分け合ったらどうだ?」

「うっ……うん……?」

「な! みんなー!!」

あけび「河嶋先輩!! 私たちも手伝いたいんです!! 何かしたいんです!!」

モヨ子「仕事、ください」

希美「みなさんの役に立ちたいです」

「お前ら……」

「知波単のみんなも、アンツィオのみんなもどんな形でもいいから参加したいんだ」

「す、すみません……」

「分かればいい。んじゃ、みんな、あとのことは任せるぞー」

あけび「明日の朝には全部ピカピカにしておきますね!!」

あや「やってやるぅー!!」

「いいか!! これはお前たちが自分の意志でやると決めたことだからな!!! 途中で投げ出すなよ!!!」

「にひぃ。がんばってねぇ」

111 : 以下、名... - 2016/06/16 19:48:44.72 GYd2x1mCo 96/277

愛里寿「……」

まほ「自分が戦車に乗れるのは、陰で支えている人がいるから。みほはいつもそういっては、どんな者にも気をかけていた」

まほ「去年の試合で負けたとき、みほならば仕方ないと思った。それはみほの良さであり、弱さでもあったが」

愛里寿「……」

まほ「そして、私たちを支えるのは陰の人間だけではない」

愛里寿「え……」

まほ「隊長しか知らないお前や私では中々分からないことだが」

愛里寿「誰のことを言っている」

まほ「それは島田自身が考えてくれ」

愛里寿「わからない……」

まほ「信頼出来る者がいなくなり、全ての責任を背負わされる重圧。期待を下からも押し付けられる」

まほ「なんとかしてまとめなくてはいけない。なんとしてもチームとしての形を整えないといけない」

まほ「島田。あいつにとっては普通のことではない」

愛里寿「……」

まほ「以上だ。では食事に戻ってくれ」

112 : 以下、名... - 2016/06/16 19:56:42.52 GYd2x1mCo 97/277

練習会場

エリカ「……」

アンチョビ「何をしている。折角、ペパロニが大量のカルボナーラを作ったというのに」

エリカ「食べたくないわね」

アンチョビ「同じ釜の飯を食うのは最も理解を深めることだと思うがな」

エリカ「はっきり言ってください。私に言いたいことがあるのなら」

アンチョビ「チームをまとめる、というのはとても難しいだろう」

エリカ「……」

アンチョビ「特に自分よりも才能がある者がいると、どうしていいのかわからなくなる」

アンチョビ「舐められるわけにもいかないから、厳しく接するときもある。そして陰ではこう言われる。嫉妬しているから八つ当たりしているんだってな」

エリカ「私は……」

アンチョビ「冗談じゃない!!!」

エリカ「な……!?」

アンチョビ「嫉妬だと!? そんな理由で厳しくする奴に隊長が務まるものか!!! エリカもそう思うだろ?」

エリカ「そ、その通りよ」

113 : 以下、名... - 2016/06/16 20:10:38.20 GYd2x1mCo 98/277

アンチョビ「隊長というのは、嫌われる。それが常識だ」

エリカ「……」

アンチョビ「私だっていつも怖いさ。全員の前に立ち、何かを発することがな」

アンチョビ「みんなに好かれたいと、誰からも信頼されたいという欲がある以上はどうしても怖さはある」

アンチョビ「言葉にしたって伝わらないこともあるからな」

エリカ「……」

アンチョビ「別に嫉妬しているわけでも、憎いとも思ってはいないのだろう?」

エリカ「島田さんのことをそういう風に思ったことはないわ。ただ、チームを勝利に導くためには呑んでもらわないといけないこともあるだけで」

アンチョビ「ああ。だからって、感情で抑えつけるな。島田愛里寿はペパロニのようにアホではない。説明すれば分かってくれる」

エリカ「……」

アンチョビ「ああ! 勘違いするな! ペパロニはアホだが、バカではないんだ。あいつは誰からも愛される素質もある。隊長になるだけの器もある。もう少しだけ落ち着いてくれたら完璧なんだがな」

エリカ「あんなのに未来のアンツィオを任せる気なの」

アンチョビ「恐ろしいだろう。黒森峰の背中が見えたな」

エリカ「本当ね。こんなことで悩んでいる隊長がいるんじゃ、背中も見えてくるわね」

アンチョビ「仲間を率いるのは怖いし、できればやりたくもない。隊長の悪口を陰で言うほうが何倍も楽だ。だが、それでも私は隊長でいたいと思う」

115 : 以下、名... - 2016/06/16 20:19:24.56 GYd2x1mCo 99/277

エリカ「何故?」

アンチョビ「面白いからだな」

エリカ「辛いことも怖いこともあるのに」

アンチョビ「自分の考えた通りにみんなが動き、そして結果が出たときは私はとてもうれしいんだ」

アンチョビ「ペパロニもカルパッチョも、アンツィオのみんなも本当に嬉しそうに笑う」

アンチョビ「それを見たい。私が考えた作戦でな」

エリカ「そう……」

アンチョビ「常勝の黒森峰では縁のない話だったか」

エリカ「いいえ。勉強になったわ」

アンチョビ「そうか。ならばいい。モールトベネ!!」

エリカ「――安斎先輩。ありがとうございます」

アンチョビ「気にするな。私は世話を焼きたくなる性格なだけだ」

エリカ「人によっては嫌われるかもしれませんね」

アンチョビ「かもな。だから、エリカに声をかけるのも怖かった。無駄に嫌われたくもないからな」

エリカ「私は心から感謝しています」

116 : 以下、名... - 2016/06/16 20:28:32.16 GYd2x1mCo 100/277

食事会場

優花里「なんだか、全員いない気がしますね」

みほ「そうだね」

優花里「西住殿は気になりませんか?」

みほ「見られたくないことをしているのかもしれないし」

優花里「見られたくないこと……」

沙織「なんか、あの、ちょっと……」

みほ「い、いや、変な意味じゃないから!!」

「そういえばアンチョビさんがいないような」

ペパロニ「あっれー、トイレかなぁ」

みどり子「そのうち、戻ってくるんじゃない?」

ペパロニ「そーっすね。はーい、今ならどんなリクエストにもこたえるよー!!」

ケイ「ハンバーガー!!!」

ダージリン「わたくしのオムライスはいかがかしら?」

オレンジペコ「結構です」

117 : 以下、名... - 2016/06/16 20:34:02.70 GYd2x1mCo 101/277

「やぁやぁ、それじゃあ宴もたけなわだけど、そろそろ宿舎に戻ってやすもっかぁ」

柚子「部屋は各チーム同部屋でおねがいしまーす」

アリサ「この五人で同じ部屋ってこと……」

カルパッチョ「嫌ですか?」

ノンナ「私は構いませんが」

アリサ「い、嫌とはいってないでしょ」

「けど、嫌がってるようにも……」

ノンナ「アリサさんは自分のイビキや歯ぎしりを聞かれることを恐れているのでしょう」

アリサ「はぁ!?」

みほ「あ……あぁ……」

「なるほど……」

カルパッチョ「心配しないでください。私たち、そんなことでアリサさんを嫌いになりませんから」

アリサ「いびきも歯ぎしりもしないわよ!!! 勝手なことをいわないでください!!」

ノンナ「すみません。勘繰ってしまいました」

みほ(ノンナさん、楽しそう……)

118 : 以下、名... - 2016/06/16 20:39:45.14 GYd2x1mCo 102/277

宿舎

優花里「寝る前にちょっとしたミーティングとかどうですか?」

アッサム「いいですね」

みほ「私たちもしようかなぁ」

みどり子「もう……」

麻子「どうした、そど子ぉ」

みどり子「園、みどり子! 人数が全然足りないのよね。もう消灯時間だっていうのに」

みほ「そうなんですか?」

みどり子「チーム・ボコは全員いないし、チーム・虎も逸見さんがいないし」

みどり子「風紀の崩壊よ。全く!」

みほ「……ちょっと様子をみてきます」

みどり子「いいです」

みほ「でも、園さんが困るんじゃあ……」

みどり子「今日は特別。どうせ、明日までだし」

麻子「明日は雨が降るな」

119 : 以下、名... - 2016/06/16 20:43:49.10 GYd2x1mCo 103/277

部屋

沙織「エリりん、どこにいるんだろう」

「さぁねぇ」

沙織「心配じゃないんですか?」

「うん」

オレンジペコ「断言するんですね」

ミッコ「朝には練習場にいそうだけど」

沙織「そうだけどさぁ」

「そっとしておいてあげたら?」

沙織「私たちはチームなんだし、一人で抱え込んでほしくないんだけどなぁ」

オレンジペコ「武部様は優しいんですね」

沙織「友達だからねっ」

ミッコ「アキが聞いたら飛び跳ねて喜ぶなぁ」

「そういうわけで今日は寝よう。おやすみー」

沙織「えぇぇ……うーん……お、おやすみなさーい……」

120 : 以下、名... - 2016/06/16 20:50:35.37 GYd2x1mCo 104/277

練習会場

ポルシェティーガー『……』ゴゴゴゴゴゴッ!!!!!

愛里寿「おぉ……」

小梅「この走りを維持できれば、なんとかなりそうですね!!」

ナカジマ「ローズヒップー、オッケーだよー」

ローズヒップ「どうでした、今の走り!!」

スズキ「完璧に近いんじゃないかな」

ホシノ「ツチヤもびっくりしそうなぐらいだ」

ローズヒップ「島田様!! これなら戦えますわ!! みほ様をギャッフンと言わせることができますわよー!!」

愛里寿「そうだな」

ローズヒップ「共に戦いましょう!!」

愛里寿「うん」

ナカジマ「んー。そろそろねよっかぁ。もう限界だってー」

愛里寿「私も……もう……ねむい……」


エリカ(深夜まで練習なんて……。こっちのことも考えてほしいわね……)

132 : 以下、名... - 2016/06/17 20:36:07.29 xO3BTrmCo 105/277

ミカ「練習は終わったようだね。星も祝福してくれているようだ」

ダージリン「この時期は冷えますわね」

ケイ「なんだかんだ言って、ローズヒップのこと心配してたのね?」

ダージリン「わたくしが心配していたのは、ローズヒップに付き合わされている方々のほうですわ」

ケイ「そーいうふうには見えなかったけど?」

ダージリン「良い眼科を紹介してあげましょうか?」

カチューシャ「すぅ……すぅ……」

ノンナ「最後まで見れませんでしたね、カチューシャ」

みほ「お姉ちゃん、ありがとう」

まほ「私は、まとめ役だ。気にするな」

アンチョビ「エリカの奴が素直になってくれていれば解決なんだけどなぁ」

ケイ「で、ミホ。キヌヨは大丈夫なの?」

みほ「え……」

ダージリン「西さんのこと、手に負えないというのなら知識の一つぐらいは分けることもできるけれど、どうされます?」

みほ「ケイさんもダージリンさんも気が付いていたんですか……」

133 : 以下、名... - 2016/06/17 20:48:19.91 xO3BTrmCo 106/277

ケイ「普段から見る人数が多いから、どうしてもそういう子が目に飛び込んできちゃうのよ」

ダージリン「かと言って、すぐに手を差し伸べてもその方のためにはならない」

ケイ「そこが難しいわよねぇ。私は声をかけるようにしてるけど」

ダージリン「わたくしもよ」

ミカ「けれど、今回は見て見ぬふりをした」

ケイ「ノンノン。キヌヨの隊長はミホでしょ。それならまずはミホから声をかけないと」

アンチョビ「そういうものなのか。うむむ、私はエリカに声をかけてしまったが……。やはり、直属の上官から励まされたほうがよかったのか……」

まほ「いや。安斎さんの行動はむしろ感謝したい。エリカはもう私から離れて欲しかったからな」

アンチョビ「だから、アンチョビと呼べ」

みほ「それは、次期隊長として……?」

まほ「それもあるが、いつまでも私のことを隊長と呼ぶのはやめてほしくて」

みほ「ふふ……」

ケイ「それはインポッシブルじゃない?」

まほ「何故だ」

ダージリン「それはまほさんがご自分の胸に手を当てて考えてみればいいのではありませんこと?」

134 : 以下、名... - 2016/06/17 20:56:35.03 xO3BTrmCo 107/277

まほ「……」

みほ(本当に手を当ててる……)

ノンナ「そろそろ戻りましょうか」

ミカ「世界が今、閉じようとしている」

ダージリン「瞼が重たくなっていますのね」

アンチョビ「もう2時じゃないか。明日の起床時間は?」

みほ「ええと、7時起床ですね」

ケイ「なーんだ、5時間も眠れるじゃない。ラッキー」

アンチョビ「いや!! 6時間はいるだろう!!」

ダージリン「わたくし、3時間で十分ですわ」

ミカ「寝不足を自慢するなんて、無価値だね」

ノンナ「私は1時間でも熟睡できます」

まほ「……すまない、いくら手を当ててみても分からない」

ダージリン「あら、残念ですわね。では、また明日。おやすみなさい」

まほ「待ってほしい。ダージリン、何故私は隊長と呼ばれ続けることになるの? どうしても知りたい」

135 : 以下、名... - 2016/06/17 21:03:11.66 xO3BTrmCo 108/277

翌日 練習会場

「全員、集合しているか!?」

柚子「点呼をとってくださーい」

おりょう「ねむいぜよ……」

エルヴィン「だ、だが、我々は洗車しただけだ……一晩で五輌もレストアした自動車部のことを思えば……」

左衛門佐「わたしたちは……専門家ではないんだが……」

カエサル「……」

カルパッチョ「たーかちゃん」

カエサル「ひなちゃん。おはよう」

カルパッチョ「おはよう。どうしたの?」

カエサル「いや、エルヴィンたちの顔色が悪いように見えて」

カルパッチョ「ホントだぁ」

カエサル「何かしてたのかな?」

カルパッチョ「佐々木さんもなんだか辛そうにしてるけど……」

あけび「うぅ……頭の中で何度もスパイクをうたれてるみたい……」フラフラ

136 : 以下、名... - 2016/06/17 21:09:32.51 xO3BTrmCo 109/277

「お前たち、まだ寝ていてもいいと言っただろう」

あや「でも、練習みたいですし……」

エルヴィン「昼食の用意も、ある……からな……」

あけび「はいぃ……なにより……河嶋先輩だって……おなじだしぃ……」

「倒れるなよ」

おりょう「善処するぜよ」

左衛門佐「拙者の屍をこえてゆけぇ」

優花里「おぉー!! みてください!! 戦車が綺麗になっていますよ!!」

ペパロニ「昨日、雨でも降ったのか?」

みどり子「戦車は倉庫に仕舞ったでしょ」

ナカジマ「レオポンまで綺麗になってる」

愛里寿「……」

エリカ「誰かが勝手に洗車したんでしょ」

カエサル「そういうことか」

典子「戦車の妖精でもいるんですか?」

137 : 以下、名... - 2016/06/17 21:33:35.68 xO3BTrmCo 110/277

「これって、やっぱり……」

アリサ「いい心がけじゃない。練習も気持ちよくできるわね」

「あけびにお礼しなきゃ」

妙子「あけびちゃ――」

アリサ「フリーズ!!」

妙子「凍っちゃう!?」

「ど、どうして止めるんですか」

アリサ「あの子、褒められたくて、お礼を言われたくて朝まで洗車してたわけじゃないでしょ」

「だからってお礼を言わなくてもいいっていうのは違うと思います」

アリサ「言うなとは言ってないでしょ。そういうのは最後でいいのよ。気づいていないように振る舞って、試合が終わった直後に「実は知っていたの。貴方のおかげで勝てたわ」と言うほうがクールに――」

ケイ「サンキュー!! みんなー!! がんばってくれたみたいね!! 戦車もキレイになってプレジャーしてるわ!!」

あけび「いえ、そんなぁ」

優季「ありがと、あやぁ」

あや「いいって、いいって。これぐらいはしたかったし」

アリサ「隊長ぉ……」

138 : 以下、名... - 2016/06/17 21:46:37.19 xO3BTrmCo 111/277

「本日15時にはここから出なければいけない。撤収の時間を考えると、練習は午前中のみとなる。悔いのないように練習に励んでくれ」

みほ「それでは戦車に乗り込んでください」

カルパッチョ「はぁい」

エリカ「総員、搭乗」

沙織「エリりん、昨日はちゃんと寝れたの?」

エリカ「沙織、私は搭乗と言ったのよ?」

沙織「ぶぅー。心配してるのにぃ」

「まぁまぁ、早くのっちゃおう」

エリカ「全く。余計なお世話なのよ」

愛里寿「逸見さん」

エリカ「……」

愛里寿「今日はポルシェティーガーの走りをよく見ていてほしい」

ローズヒップ「度肝ぬいちゃいますわよ。おーっほっほっほ」

エリカ「……早く乗る」

ローズヒップ「はい」

139 : 以下、名... - 2016/06/17 21:55:38.26 xO3BTrmCo 112/277

Ⅳ号戦車内

みほ「みなさん、準備はいいですか」

アッサム『よろしくてよ』

ニーナ『今日はどんな訓練さするべな』

みほ「昨日と変わりません。反復練習になります」

『基本は大事ですよね!』

みほ「退屈と感じてしまうかもしれませんが……」

絹代『いえ。今の自分には必要なことだと感じております』

みほ「西さん……」

アンチョビ『昨日と同じということは、訓練弾で模擬戦か』

みほ「はい。今日はあんこう、ほたるさんチーム。ねずみさん、ぞうさん、ワニさんチームで行います」

優花里『了解でぇす!!』

みほ「移動を開始します。アリサさん、指定ポイントまでの案内をお願いできますか」

アリサ「イエス、マム。忍、そのまま直進して川が見えたら左折よ」

「分かりました!」

140 : 以下、名... - 2016/06/17 22:10:27.72 xO3BTrmCo 113/277

VI号戦車ティーガーI 車内

エリカ「……」

ローズヒップ『この走り!! どうです!? 昨日までとはもはや別戦車のようですわよー!!!』

ミッコ「おぉ。とんでもないなぁ。あのポルシェティーガーで暴走できるなんて」

ローズヒップ『さぁ!! この島田様が操るポルシェティーガーを仕留められるものなら仕留めて――』

エリカ「発射」

「はいよぉ」カチッ

ドォォォォォン!!!

ローズヒップ『ごらんなっは!?』

エリカ「次よ」

優季『手加減とかないんですかぁ?』

妙子『容赦がなさすぎますよぉ』

スズキ『あっさりやられたね』

ダージリン『ローズヒップが隙だらけであったことは認めますわ』ズズッ

ミカ『テンポが速すぎたのか、それとも遅かったのか。どちらかな』ポロロロン

142 : 以下、名... - 2016/06/17 22:25:38.44 xO3BTrmCo 114/277

練習会場

エリカ「あれでは被弾率を上げるだけじゃなく、足回りへの負担も尋常ではないわ。すぐに改めるように」

ローズヒップ「しかし!! あれぐらいのスピードでなければみほ様のⅣ号戦車は捉えられませんわ!!」

エリカ「誰がⅣ号を狙えといったのよ」

ローズヒップ「そ、それは……」

愛里寿「どうしてだ」

エリカ「……」

愛里寿「どうして、認めてくれない」

エリカ「何を認めろっていうのよ」

愛里寿「ここまで、ローズヒップさんは頑張ったのに……」

ローズヒップ「島田様……」

エリカ「頑張った? それで負けてちゃ、意味がないでしょ」

愛里寿「……!」

小梅「逸見さん!!」

エリカ「事実よ。島田さんだけでは、Ⅳ号戦車を倒すことはできない」

143 : 以下、名... - 2016/06/17 22:38:36.38 xO3BTrmCo 115/277

ダージリン「ふふっ」

オレンジペコ「ダージリン様、流石に割って入ったほうが……」

ダージリン「紅茶でも飲みながら観戦よ」

オレンジペコ「な、何故ですか!?」

ダージリン「こんな格言を知ってる? 何かを手放す必要がある時に、それを手放せるだけの明晰さと強さを持つこと。それを勇気という」

ミカ「ドイツの詩人、だったかな」

優季「ケイさん、とめてくださぁい」

桂利奈「ケンカとか、見たくないですぅ」

ケイ「ケンカ、ね。トラブルはバッドだけど、ケンカならいいんじゃない? ぶつかり合わないといけない不器用な子もいるしね」

優季「いいんですかぁ……」

桂利奈「あいぃ……」

クラーラ「心配することはないかと」

典子「ここはバレーボールで結束をかためてみては!?」

「結束は既に固く結ばれていると思いますよ」

「島田ちゃんだけじゃ、そりゃ西住ちゃんには勝てないだろうからねぇ」

144 : 以下、名... - 2016/06/17 22:51:13.85 xO3BTrmCo 116/277

カチューシャ「また揉めてるわね。ホント、エリカって隊長の器じゃないんじゃない? カチューシャみたいに大きくないとね」

ノンナ「そうですね」

ねこにゃー「ま、またカっちゃんが逸見さんの悪口を……」

ももがー「何かあったなり?」

ぴよたん「いつも以上に辛辣だっちゃ」

みほ「エリカさんは隊長としての技量は十分にあると思います」

カチューシャ「ふぅん。そんな風にはぜーんぜん、見えないけど」

みほ「自分に足りないものを探している最中なんです」

絹代「足りないもの、か……。あの逸見殿でも欠けているところがあるのか……」


沙織「エリりん、もういいから」

柚子「つ、次の練習を始めませんか?」

エリカ「そうね」

愛里寿「待て、まだ話は終わっていない」

エリカ「隊長命令よ。Ⅳ号だけを狙う練習は無意味だから、止めるように」

愛里寿「……」

148 : 以下、名... - 2016/06/18 20:30:25.81 p4rHryico 117/277

ナカジマ「愛里寿、気にしちゃだめだって」

スズキ「そうそう」

愛里寿「……大丈夫だ。逸見さんが苦言を呈する理由はわかる」

ローズヒップ「わたくしは分かりませんわ。ただの意地悪のようにしか思えませんもの」

愛里寿「逸見さんの中でチームを勝たせるための戦術が出来上がっているはず。私たちの行為はそれを狂わしてしまうのだろう」

小梅(島田さん、大人……)

愛里寿「だが、あんな言い方をしなくてもいいと思う」

小梅(あ、怒ってる)

桂利奈「どうして戦術ができあがってるって思うの!?」

あゆみ「私も聞きたい!!」

愛里寿「私だけでは倒せないと言ったから」

ローズヒップ「つまり、わたくしやナカジマ様の力も必要ということですわね!!」

愛里寿「そうだ。全員の力が必要になる」

「それは、みなさんが分かっていることですわ。愛里寿さん」

愛里寿「私だけが、分からなかったことだ。いや、分かろうともしていなかった」

149 : 以下、名... - 2016/06/18 20:37:46.38 p4rHryico 118/277

Ⅳ号戦車内

みほ「ほたるさん、フェイントを入れながら走りますが、なんとかついてきてください」

絹代『了解!! ツチヤ殿!! お願いいたします!!』

ツチヤ『オッケー!』

アリサ「C07地点。敵車輌が身を隠すには絶好のポイントになります」

みほ「わかりました。十分に警戒しましょう。特にねずみさんは振り切るのに苦労するはずです」

ノンナ「どうやら、遅かったようですね」

「前方から来ます!!」

みほ「あれは……」

クルセイダー『……』ゴゴゴゴッ

P40『……』ゴゴゴゴッ

カルパッチョ「アリサさんが選んだルートは見破られていたのですね」

アリサ「なんか文句でもあるわけ!?」

みほ「交戦します。西さん、P40をお願いします」

絹代『は、はい!!』

150 : 以下、名... - 2016/06/18 20:51:11.79 p4rHryico 119/277

練習会場

Ⅳ号戦車『……』ゴゴゴゴッ

クルセイダー『……』ゴゴゴゴッ


優花里『Ⅳ号がこちらに向かってきます!!』

アッサム『優花里さんの狙い通りではありますね』

優花里『西住殿に小細工は通用しません。冷泉殿、絶対に振り切られないようにしてください。正面から戦います』

麻子『任せろ』


アリサ『フェイントいれて移動してたのに真っ直ぐにこっちへ来るなんて……』

みほ『アリサさんが選択したルートは最善で、私は撹乱させるためにフェイントまで入れた。でも、優花里さんはそれを看破した。それだけのことです』

アリサ『それだけで済ますのね』

カルパッチョ『みほさんの技術を最も間近で見ていた人ですからね』

みほ『そうかもしれないけど、優花里さんは私とは違うから』

『なるほど!! 秋山先輩も西住先輩もすごいってことですね!!』

ノンナ『初撃はいただきます』カチッ

151 : 以下、名... - 2016/06/18 20:59:52.63 p4rHryico 120/277

P40『……』ゴゴゴゴッ

ファイアフライ『……』ゴゴゴッ


アンチョビ『前方、ほたるさん発見!!』

ペパロニ『いくっすよぉ!! 姉さん!!』

アンチョビ『構わず走れ!! 相手の懐に飛び込んでやれ!!!』

ペパロニ『ノリと勢いで押し切ってやるぜぇぇ!!!』

アンチョビ『いや、少しは考えろ!!』

みどり子『装填する身にもなって走りなさいよね!!』

『ぞうさん!! こちらでほたるさんを足止めします!!』


絹代『敵車輌と距離をとります!!』

ツチヤ『突撃は?』

絹代『封印しております!!』

カエサル『封印したのか。ならば仕方ない』

ナオミ『距離をとったところで狙撃すればいいのね。了解した』

152 : 以下、名... - 2016/06/18 21:22:12.77 p4rHryico 121/277

ペパロニ『あれ? ほたるさん逃げてくぞ、なんでだ?』

アンチョビ『昨日も遠くから狙撃するだけだったな。結果、ぞうさんに粉砕されていたが』

みどり子『西さんも突撃一辺倒ではダメだって思ったんじゃない?』

ペパロニ『だったら、私らの勝ちっすよねぇ!! 姉さん!!』

アンチョビ『残念ながらな』

『どうしてですか?』


絹代『よし、このまま距離を取れれば……』

ツチヤ『おっと。まずいなぁ』グッ

絹代『どうしたでありますか!?』

ツチヤ『前から、ぞうさんが来ちゃったよ』

絹代『な……』


KV-2『……』ゴゴゴゴッ


カチューシャ『さぁ、お尻に火をつけて飛んでいきなさい!! 蛍らしくね!! ねこにゃー!! ももがー!! ぴよたん!! 全力でやっちゃって!!』

ねこにゃーももがーぴよたん『『ウラー!!』』

153 : 以下、名... - 2016/06/18 21:30:58.20 p4rHryico 122/277

Ⅳ号戦車内

ノンナ「……」カチッ

ドォォォン!!!

クルセイダー『……』ゴゴゴッ

ノンナ「申し訳ありません。中々、当てることができません」

みほ「いえ、問題ありません。引き続き、丁寧に隙を狙っていきましょう」

絹代『こちら、ほたるさん!! 西住隊長!! 敵に包囲されてしまいました!!』

みほ「もうぞうさんチームが……」

アリサ「なんでほたるさんがあんな位置まで移動してるのよ」

カルパッチョ「ファイアフライなら危険を冒してまで接戦する必要はありませんから、距離をとったのでは?」

アリサ「ったく、それじゃ勝てないじゃない」

「西住隊長、どうしますか!?」

みほ「右転回。ほたるさんの支援に向かいます。ねずみさんをどうにか振り切ってください」

「了解です!!」

みほ「西さん、できる限り逃げ回って、砲撃をやり過ごしてください」

154 : 以下、名... - 2016/06/18 21:48:01.38 p4rHryico 123/277

ファイアフライ 車内

絹代「ツチヤ殿!! このまま逃げ回ります!!」

ツチヤ「オッケー」

P40『……』ゴゴゴゴッ

ペパロニ『おらおらおらー!!! 逃げられるもんなら逃げてみやがれってんだ!!』

ナオミ「勢いだけはある操縦だ」

カエサル「感心している場合じゃないぞ」ガコンッ

ナオミ「分かっている。――ここだ」カチッ

ドォォォォン!!!

ペパロニ『うわぁぁぁぁ!?』

アンチョビ『アホかぁ!! 真正面から突っ込む奴があるかぁ!!!』

絹代「さ、流石であります!! ナオミ殿!!』

ナオミ「この程度、なんでもない」

絹代(本当にすごいであります。それに比べ私は……)


ドォォォン!!!

155 : 以下、名... - 2016/06/18 21:57:52.17 p4rHryico 124/277

練習会場

絹代「申し訳ございません!! 西住隊長!!」

みほ「謝らないで。私もすぐに援護できなかったから」

絹代「いえ!! 私がもっと周囲を警戒していれば……」

カチューシャ「警戒していたところで、撃破はされていたでしょうけどね」

絹代「カチューシャ殿……」

カチューシャ「敵に背中を見せたら、その時点で負けよ」

絹代「面目ありません……」

カチューシャ「あんな無様な動きをするぐらいなら、最初から物陰に隠れて狙撃だけしてればいいじゃない。どうしてミホーシャと一緒に走ってるのよ」

みほ「あの、それは私が指示したからで……」

カチューシャ「ミホーシャは黙ってて」

優花里「カチューシャ殿、何もそんなことを言わなくても」

カチューシャ「オールスターチームに足手まといはいらないわよ」

絹代「す、みません……」

アンチョビ「カチューシャ。それは指導の域を越えている。口を慎め」

156 : 以下、名... - 2016/06/18 22:05:14.33 p4rHryico 125/277

カチューシャ「ミホーシャが言わないから、カチューシャが代弁してあげてるんじゃない」

アンチョビ「その強い言葉で潰れていく者もいるんだぞ」

カチューシャ「そんな雪山のウサギにも劣る戦車乗りはオールスターチームに相応しくないわね」

アンチョビ「おい!!」

みほ「やめてください!」

優花里「カチューシャ殿!! どうしてそこまでいうのですか!!」

カチューシャ「どうしてですって? 今の絹代が全く使えないからでしょ」

絹代「も……も……も……!!」

麻子「西さん?」

絹代「もうしわけありませぇぇぇん!!!」ダダダダッ

みほ「西さん!? 待って!!」

ノンナ「素晴らしいスピードですね」

カチューシャ「逃げ足だけは一流ね。認めてあげるわ」

アンチョビ「おい。そこまでにしてもらおうか」

カチューシャ「なによ?」

157 : 以下、名... - 2016/06/18 22:29:57.36 p4rHryico 126/277

アンチョビ「全員がお前のように強くはないんだぞ」

カチューシャ「強いですって……?」

アンチョビ「プラウダ高校の噂ぐらいは知っている。戦術の考案力は飛び抜けているが、性格に難があり体格に恵まれない選手がいた」

カチューシャ「……」

アンチョビ「持ち前の戦術だけでのし上がるも、その陰ではちびっ子隊長などと言われる始末」

カチューシャ「……」

アンチョビ「それでもお前は隊長の座につき、去年はプラウダを優勝へと導いた。陰口も暴言も全てその耳に届いていたはずなのに」

カチューシャ「……」

アンチョビ「お前は強い。それは誰もが認める。だが、それを他人に押し付けるな」

アンチョビ「皆が逆風に立ち向かえるわけではないんだ」

カチューシャ「話は終わり?」

アンチョビ「なんだと?」

カチューシャ「お説教なんて聞きたくないわ。あーあ、しらけちゃったわ。カチューシャは休憩するから。ノンナ!」

ノンナ「はい。お供します」

みほ「えぇぇ!! ノンナさんまで!?」

158 : 以下、名... - 2016/06/18 22:49:56.59 p4rHryico 127/277

アンチョビ「ま、まて!!」

優花里「ど、どうしましょうか……?」

みほ「……」

麻子「練習、続けるのか」

みほ「休憩にしましょう。とりあえず西さんとカチューシャさんが戻ってくるまで」

ペパロニ「なんすか、あのやろー。姉さんのことバカにしてんすかねぇ」

アンチョビ「小さな暴君と呼ばれるだけのことはあるな」

ねこにゃー(逸見さんとの一件からカッちゃんの様子がおかしいような……)

カエサル「車長を捜すか?」

ナオミ「かける言葉が見つかっているなら、構わないけど?」

ツチヤ「いや、ないね」

ナオミ「だったら、捜さないほうがマシだ」

アリサ「ミホ。隊長のあなたから注意したほうがいいんじゃない?」

みほ「……お姉ちゃんから聞いたことがあるんだ。プラウダ高校に体格には恵まれていないけど、優秀な選手がいるって」

アリサ「それって……」

159 : 以下、名... - 2016/06/18 23:13:20.03 p4rHryico 128/277

絹代(逃げてしまった……か……)

絹代「やはり、私には荷が勝ちすぎていた……」

絹代「私は……辞退したほうが……」

カチューシャ「絹代」

絹代「カ、カチューシャ殿……」

カチューシャ「逃げるなら止めないわ。逃げかえってカチューシャの活躍を遠くから見ていればいいのよ」

絹代「……」

カチューシャ「悔しいって思わないわけ?」

絹代「悔しさよりも、自分自身の無能さに腹が立つばかりで……」

カチューシャ「良い話をしてあげるわ。プラウダ高校に態度ばっかり大きくて、我儘で、でも弱虫で、戦車道が好きなくせに小さな砲弾も一人じゃ持てなくて、戦車にも土台がなきゃ乗れない選手がいたわ」

絹代「……」

カチューシャ「誰もがそんな選手に期待はしなかったし、試合にだって出る機会は全くなかったわ」

カチューシャ「戦車にどうしても乗りたかった。けど、装填手にも砲手にも操縦手にもなれはしない。その選手に残されたのは通信手か車長ぐらいしかなかったの」

カチューシャ「だから、どんな相手にでも勝てる戦術を何度も何度も考案した。ま、見向きはされなかったけどね」

カチューシャ「当然よね。エラソーにしている生意気な一年生が戦術だけで評価してもらえるほど、プラウダ高校の層は薄くないんだから」

160 : 以下、名... - 2016/06/18 23:28:30.07 p4rHryico 129/277

絹代「それは誰のことをいって……」

カチューシャ「もう戦車道はやめようって思ったこともあったみたいよ。でもね、たった一人だけその選手のことを高く評価してくれたお人よしがいたのよ」

カチューシャ「そのお人よしはこう言ったわ」


――貴方は誰よりも大きいですよ。


カチューシャ「それからはそのお人よしと一緒に練習するようになって、一年後には隊長にまでなっていた」

絹代「その隊長はとても強い心を持っていたのですね」

カチューシャ「違うわ。その子は強くなんてない。いつだって怖がっていて、傍に誰かがいなきゃ歩くことだって、立つことだってできない」

絹代「しかし、現にこうして……」

カチューシャ「持っていたのは強い心なんかじゃない。頼れる同志がいてくれたからなの」

絹代「……」

カチューシャ「だからでしょうね。絹代やエリカみたいにウジウジと悩む奴を見ると、本当に腹が立つわ」

カチューシャ「カチューシャより頼れる同志がたくさんいるのに、どうして悩むのよ。どうして泣き言をいうのよ。どうして逃げるのよ」

絹代「う……」

カチューシャ「そんな奴、大っ嫌い!」

161 : 以下、名... - 2016/06/18 23:38:00.13 p4rHryico 130/277

絹代「カチューシャ殿……」

カチューシャ「いい? 今日で練習は終わりだし、試合まで時間はあまりないけど、ちゃんと考えておくのよ」

絹代「な、なにをでしょうか」

カチューシャ「自分は何ができるのか。自分はどうしたいのか」

絹代「私が……?」

カチューシャ「背伸びしたって届かないものは届かない。だったら、肩車でもなんでもしてもらって取ればいいじゃない」

絹代「肩車でありますか……」

カチューシャ「恥ずかしいことじゃないわ。二人がかりで相手を見下ろしちゃいけないなんてルールはないんだしね」

絹代「……」

カチューシャ「それだけ」

絹代「ありがとうございます……カチューシャ殿……」

カチューシャ「それじゃあね、ピロシキ~」

絹代「自分は何ができる……? 自分はどうしたいのだ……?」


ノンナ「休憩は終わりですか?」

カチューシャ「ええ。戻るわよ」

163 : 以下、名... - 2016/06/18 23:56:25.15 p4rHryico 131/277

カチューシャ「さぁ、練習を再開するわよ」

みほ「おかえりなさい、カチューシャさん」

カエサル「徹三を見なかったか?」

カチューシャ「誰のことよ?」

ナオミ「キヌヨのソウルネームよ」

カチューシャ「あんな弱虫、カチューシャは知らないわ」

アンチョビ「……」

カチューシャ「言いたいことでもあるの?」

アンチョビ「特にない。カチューシャは痛みの分かる人間だと、私は思っているからな」

カチューシャ「よくわかんないけど?」

ルクリリ「カチューシャさん。早く乗ってください」

ねこにゃー「カッちゃん、ボク、カッちゃんのためにがんばるにゃー」

カチューシャ「そんなこといちいち言わなくてもいいわよ」

カルパッチョ「みなさんのカチューシャさんを見る目が少しだけ変わりましたね」

みほ「私はお姉ちゃんからカチューシャさんの話を聞いただけだから、どこまで本当かは分からない。けど、カチューシャさんは無闇に人を傷つけることはないと思うな」

167 : 以下、名... - 2016/06/22 07:56:12.40 CHXI0E+4o 132/277

「練習はこれで終了となる。初めて者とチームを組くことで技量を高めることになったことだろう。それでも短い練習時間だったために、悔いの残る結果に――」

柚子「桃ちゃん、長くなる?」

「おほん。では、黒森峰女学園オールスターチーム監督、西住まほさん。一言、どうぞ」

まほ「試合までは二週間ほど期間が空いてしまうが、昨日今日で学んだことを反復しておくように。そして、戦車道に恥じない試合にしようと思う」

ローズヒップ「レオポン様をお借りしてもよろしいの?」

ナカジマ「整備するために聖グロリアーナまで行かないといけなくなるから、持っていくのはやめてね」

アキ「私たちも戦車借りちゃう?」

ミカ「いいかもしれないね」

カチューシャ「自分のものにしちゃうつもりでしょ」

クラーラ「借りパク?」

優花里「そんな日本語をどこで……」

「静かに! 続いて、会長からなにか」

「うん。みんなー、楽しかったかー!?」

「「おぉぉー!!!」」

「おっしゃー!! んじゃ、かいさーん!! 次は試合だー!!」

168 : 以下、名... - 2016/06/22 08:04:41.85 CHXI0E+4o 133/277

カルパッチョ「たかちゃん、またしばらく会えなくなるね」

カエサル「すぐに会えるよ」

カルパッチョ「待ち遠しいなぁ……」

カエサル「うん。私もひなちゃんとまた一緒に戦えるのが楽しみだ」

おりょう「エルヴィン、テーブルを運ぶぜよ」

エルヴィン「了解した」

左衛門佐「おもいぃ……」

カエサル「……」

カルパッチョ「ふふ。いってきてあげたら?」

カエサル「え?」

カルパッチョ「手伝いたいんでしょ、カエサルは」

カエサル「それじゃ、また試合でな、カルパッチョ」

カルパッチョ「ええ」

カエサル「おーい!! 私も加勢するぞー!!」

カルパッチョ「さてと……。ドゥーチェ、私たちは何をしましょうかー?」

169 : 以下、名... - 2016/06/22 08:15:54.25 CHXI0E+4o 134/277

柚子「その資材は向こうのトラックに積み込んでくださーい」

「「はーい」」

福田「突撃であります!!!」

みほ「ああ、福田さん。危ないから二人で運びましょう」

「はやくしないと撤収時間に間に合わないぞー」

カチューシャ「キリキリ働きないさいよね」

柚子「会長もカチューシャさんも手伝ってくださいよぉ」

ダージリン「全く。お二人は協調性の欠片もありませんわね」ズズッ

ミカ「乱れたリズムは矯正するのに時間がかかる。矯正できたころには一曲が終わるだろうね」ポロロロン

オレンジペコ「お二人とも手伝ってください」

ミッコ「この二人に何言っても無駄じゃない?」

ケイ「これをキャリーすればいいのね!! よっと。それじゃいくわよー!! ゴーアヘーッド!!!」

アンチョビ「全員でやればすぐに終わる量だ!! 片付け後はランチが待っているぞー!! もちろん、食材はサンダースが用意してくれた!!!」

沙織「こういうところでも隊長の個性って出るんだね」

「みなさん、素敵ですわ」

170 : 以下、名... - 2016/06/22 08:30:25.48 CHXI0E+4o 135/277

ペパロニ「おめーら!! しっかり動け! 戦車道で負けても気合で他のところで負けるわけにはいかねえからな!!」

「「了解っす、ペパロニ姉さん!!」」

エリカ「バカね。試合で負けたら何も残らないじゃない」

アンチョビ「心にもないことを言うな」

エリカ「ふんっ……。本心よ」

アンチョビ「わかった、わかった。では、エリカにも無駄なことをしてもらうぞ。このダンボールを運んでくれ。結構、重いんだ」

エリカ「了解です」

まほ「……」

みほ「あ、お姉ちゃん。会長が試合のことで話したいことがあるみたいなんだけど」

まほ「そうか。すぐに行こう」

みほ「何見てたの?」

まほ「私は隊長としてどうだったのかと思っていた」

みほ「みんなが憧れるぐらい、理想的な隊長だと思うよ?」

まほ「エリカにとっては、分からないわ」

みほ「エリカさんに……?」

171 : 以下、名... - 2016/06/22 08:42:08.23 CHXI0E+4o 136/277

絹代(結局、最後まで歯車が合わなかった……)

絹代(カチューシャ殿に言われたことも、西住殿に言われたことも、私は……)

ナオミ「キヌヨ、どうした?」

アリサ「サボってないで、アンタも運びなさいよ。これが終わらないと食事もできないんだから」

絹代「す、すみません!! これを運べばよろしいのでしょうか!!」

ナオミ「そうだ。頼んだぞ」

絹代「はっ!!」

アリサ「立ち直ると思いますか」

ナオミ「本人次第。そして隊長次第だな」

アリサ「隊長ね……。ま、ミホならなんとかしてくれるかもしれませんね」

みほ「きゃぁ!?」

まほ「みほ、大丈夫?」

みほ「う、うん。ちょっと躓いただけだから」

優花里「西住殿ー! お怪我はありませんかー!?」

みほ「優花里さん、ありがとー! 平気だよー!」

172 : 以下、名... - 2016/06/22 09:21:12.00 CHXI0E+4o 137/277

「そういうわけで、オールスター戦の試合会場は予定通り、ここでやるから」

まほ「それについて知っている者は?」

「ここにいる我々以外は知らないはずだ」

まほ「そうか。では、各車長と通信手がこの二日間で何をしてきたのかが問われることになるか」

「どういう意味だ?」

みほ「きちんと地形や地図を見ていたかどうか……」

「手を抜くような子はいなかったと思うけどなぁ」

まほ「私も角谷さんと同意見だ。そこを怠る者を選出しない」

「だよねぇ」

みほ「二週間後……」

「大変だよね、西住ちゃん。色々とさ」

みほ「別に、そんなこと」

まほ「みんなはみほに応えてくれるはず。自分の信じる道をいけばいい」

みほ「ありがとう、お姉ちゃん」

まほ「だが、勝つのは我々だ」

173 : 以下、名... - 2016/06/22 09:29:35.29 CHXI0E+4o 138/277

アリサ「隊長。ヘリの準備が整いました」

ケイ「オーケー。それじゃ、みんな。バーイ」

桂利奈「バーイ!!」

優季「ケイ隊長、また色々とおしえてくださぁい。夜のあれ、すごくよかったですぅ」

ケイ「いいわよー! いくらでもテクニックをおしえちゃうわー!!」

沙織「なにそれ!! 夜になんかあったの!?」

クラーラ「過激な夜でした」

沙織「なになに!? なによー!! 私にも教えてー!!」

麻子「落ち着け、沙織。私たちも帰るぞ」

沙織「でもでも!! 宇津木ちゃんはともかく、阪口ちゃんや丸山ちゃんまで何かに染まっちゃってる気がー!!」

紗希「……」ポッ

あや「紗希ちゃん、なんで赤くなってるの?」

あゆみ「梓!! 私たちもケイさんに教えてもらったほうがよかったかも!!」

「うん。西住先輩もケイ先輩のことをとても尊敬してるって言ってたし、学ぶことが多いのかも」

沙織「あぁー!! 私と考えてることが違うっぽい!! 穢れてるのって私なのかなぁ!? やだもー!!」

174 : 以下、名... - 2016/06/22 09:36:20.16 CHXI0E+4o 139/277

「沙織さん、行きましょう」

優花里「西住殿ー」

みほ「今行くー」

カチューシャ「ミホーシャ!!」

みほ「あ、はい」

カチューシャ「絹代のことちゃんと考えておかないと、恥をかくわよ」

みほ「……」

カチューシャ「それじゃ、ピロシキー」

ノンナ「До свидания」

優花里「西住殿……」

みほ「……」

福田「帰船するであります!!」

絹代「戻ろう。私もなすべきことが多いからな」

優花里「声をかけなくてもいいのですか? 西殿、帰っていきますが」

みほ「うん。今は何を言っても西さんには響かない気がするから」

175 : 以下、名... - 2016/06/22 09:51:22.00 CHXI0E+4o 140/277

妙子「試合ではよろしくお願いします!!」

ダージリン「ええ。こちらこそ、近藤さん。あと、この紅茶をどうぞ」

妙子「いいんですか!?」

ダージリン「アヒルさんチームの方々と楽しんでもらえれば幸いですわ」

妙子「みんな喜ぶと思います!! では、失礼します!!」

アッサム「私たちも行きましょうか」

ダージリン「……」

ミカ「憂いを残していきたくない、か」

ダージリン「そうね」

ミカ「貴方は誰よりも後ろから舞台を見ている気がする」

ダージリン「こんな格言を知ってる? 経験とは、人々が自分の愚行と悲哀に与える名前である」

オレンジペコ「ミュッセですね」

ダージリン「わたくしも最前列しか知らなかった。だからこそ、その列にはいつも一人しかいないことを知った。後ろに様々な人がいて、みんなが前にこようとしていることも知った」

ダージリン「ですから、今は後ろにいるのですわ。舞台も客席も見えるように」

ミカ「貴方ほどになると観客が多くて、見るだけでも疲れそうだね。疲れを表情に出すことは一切しないのだろうけど」

176 : 以下、名... - 2016/06/22 09:58:20.30 CHXI0E+4o 141/277

アンチョビ「エリカ!!」

エリカ「はい?」

アンチョビ「正々堂々、試合をするぞ」

エリカ「そんなことを言うためにわざわざ引き留めたの?」

アンチョビ「ああ!」

エリカ「どうしようもないわね。ええ、こちらこそ。負けないわよ」

アンチョビ「当然だ。お前は負けてはいけない。我々にも、島田にも、そして隊長にもだ」

エリカ「……」

アンチョビ「ではな」

エリカ「は、はい」

まほ「言われてしまったな」

エリカ「安斎先輩は、勝つ気がないのでしょうか」

まほ「誰しも負けたいとは思わない。だが、誰かを応援することはまた別だ。相手を称えてこその戦車道なのだから」

エリカ「そうですね……」

まほ「帰ろう。私たちもヘリを待たせている」

177 : 以下、名... - 2016/06/22 10:04:16.24 CHXI0E+4o 142/277

まほ「島田。こちらにこい」

愛里寿「は、はい」

ローズヒップ「ごきげんようですわー!!」

ナカジマ「整備は任せておいてよー、ありすー」

愛里寿「うんっ。任せる」

まほ「距離が近づいたようだな」

愛里寿「みんないい人だ。逸見さんとは違って」

エリカ「何か言った?」

愛里寿「別に」

エリカ「隊長、学園艦に戻ったらオールスター戦に向けての練習を行いますか」

まほ「そのような予定は組んでいない。オフシーズンのメニューをこなす」

愛里寿「いいのか?」

まほ「学園艦に戻れば私たちは黒森峰女学園の選手だ。間違えるな」

愛里寿「わ、わかった……」

エリカ(この切り替え、私も見習わないと……)

178 : 以下、名... - 2016/06/22 10:12:02.22 CHXI0E+4o 143/277

学園艦 大洗女子学園

沙織「ついたー!! やっぱりこの船のうえだよねー!!」

「この学園艦にこうして立てることに感謝しないといけませんね」

優花里「確かに。あの試合がなければ、今回のオールスター戦も実現しなかったかもしれませんし」

麻子「どうでもいいが、早く寝たい」

沙織「もー、どうでもいいとかいわないでよー」

麻子「西住さんもゆっくりと考えたいことがあるようだしな」

沙織「え……?」

みほ「……」

沙織「ゆかりん!」

優花里「はい、なんでしょう?」

沙織「ほら、ゆかりんは車長なんだし、みぽりんと戦術とか色々話し合わなきゃ」

優花里「ですが、私では邪魔してしまうだけのような……」

沙織「そんなことないってばー。ほら、行って。私たちはここで帰るから」

優花里「ああ、はい。わかりました。では、お気をつけて」

179 : 以下、名... - 2016/06/22 10:22:15.46 CHXI0E+4o 144/277

みほ「はぁ……」

優花里「西住殿。お茶を買ってきました」

みほ「え? あれ? みんなは?」

優花里「もう帰ってしまいましたよ」

みほ「一言声をかけてくれたらよかったのに」

優花里「西住殿が真剣に考えごとをしていたので、武部殿が気を遣ってくれたようです」

みほ「そうなんだ……。そんな気を遣われるほどのことでもなかったんだけど」

優花里「けど、戦術を考えていたのでは?」

みほ「うん……」

優花里「やっぱり。武部殿もそれが分かっていたので、声をかけなかったんだと思います。一応、別のチームなので」

みほ「優花里さん」

優花里「はい」

みほ「次の試合でどうしても試してみたいことがあるんだ」

優花里「それは西住殿がご自由に決めていただければよろしいかと。私たちは西住殿の指示通りに動きます!!」

みほ「ううん。優花里さんの協力が必要になってくるから、意見を聞きたいの」

180 : 以下、名... - 2016/06/22 10:33:08.59 CHXI0E+4o 145/277

優花里「――なるほど」

みほ「どうかな?」

優花里「私は賛成です。けど、試合には負けてしまう可能性がありますね」

みほ「お姉ちゃんやケイさんには怒られるかな、やっぱり」

優花里「勝てば問題はありません」

みほ「勝つ……」

優花里「その戦術で勝ちましょう。西住殿」

みほ「優花里さん……」

優花里「廃校はもう関係ありませんし、正直なことを言えば私はこのオールスター戦に参加できるだけで満足して、勝敗は気にしていませんでした」

優花里「でも、今の話を聞いて勝たなくてはいけないと思い直しました」

優花里「だって、勝たないと間違っていなかったということを証明できません」

みほ「……そうだね。勝とう」

優花里「西住殿……!!」

みほ「優花里さん、力を貸してください。勝つために」

優花里「はい!!」

181 : 以下、名... - 2016/06/22 10:39:00.44 CHXI0E+4o 146/277

学園艦 黒森峰女学園

まほ「これがエリカの考えた戦術か」

エリカ「はい」

まほ「分かった。頑張ってくれ」

エリカ「え?」

まほ「ん? どうした」

エリカ「いつものように隊長と綿密に話し合いをして……」

まほ「この戦術は黒森峰を勝たせるためのものだったのか」

エリカ「いえ、オールスター戦のためですが」

まほ「ならば、私は隊長ではない」

エリカ「監督ではありますが」

まほ「言ったはずだ。私はまとめ役だと」

エリカ「……」

まほ「不安か?」

エリカ「はい……。私だけでは……その……まだ……」

182 : 以下、名... - 2016/06/22 10:46:27.89 CHXI0E+4o 147/277

まほ「困るな」

エリカ「は、はい?」

まほ「やはり来年度の隊長は島田に任命したほうがいいかもしれない」

エリカ「な……!? あ、あの!! それだけは!!!」

まほ「では、この戦術で勝て」

エリカ「あ……ぅ……」

まほ「できないか」

エリカ「……」

まほ「みほは一度逃げ出し、エリカに重い物を背負わせた」

エリカ「いえ、私はこの肩書を重たいなどと思ったことは……」

まほ「辛かっただろう」

エリカ「……!」

まほ「今まで、エリカには厳しくしてきた。求めることも多く、高かった。だが、お前はその全てに応えてくれた」

まほ「私が知る中で、お前は最も強い選手だ。自分を誇れ」

エリカ「そ、そんな……もったい……ない……お、こと、ば……で、す……」

183 : 以下、名... - 2016/06/22 10:57:10.03 CHXI0E+4o 148/277

まほ「これで顔を拭け」

エリカ「すみません……ありがとうございます……」

まほ「本当ならばみほとエリカを同じチームにしたかったが、こうなってしまった以上はお前の力がみほよりも上であることを証明する機会だと思い、戦って欲しい」

エリカ「何故、私とみほを……?」

まほ「見てみたかっただけだ。かつての副隊長候補が肩を並べて意見を交換しあうところを」

エリカ「……」

まほ「私の小さな夢だった。入学当初、どちらも自分に自信が持てずにいた所為か、私に意見することもなかったからな」

エリカ「それはだって、隊長という大きな存在がいたからで……!」

まほ「そうか」

エリカ「そもそも隊長の言うことに間違いはありませんし……。隊長は、最高の隊長です」

まほ「そこまで評価してくれていたか」

エリカ「当然です」

まほ「だが、もう隊長はエリカだ。もう私のことを隊長と呼ばなくていい。できればそうだな……先輩と……」

エリカ「いえ!! 隊長は、いつまでも隊長です!!」

まほ「……そうか」


続き
西住みほ「これが本当のドラフト・ウォーです!」【後編】

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