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あかり「わぁ、喋る猫さんだぁ」 QB「僕は猫じゃないよ」【1章】


101 : 以下、名... - 2015/11/10 00:40:23.00 qIUwVeiX0 73/395

2章 1話


あかりの部屋


京子と結衣はあかりを部屋に連れていき、あかりを泣き止ませようとしたが一向に泣き止まず困惑していた。

結衣「なぁ、あかり、本当にどうしちゃったの?」

あかり「ひっく… 二人がぁ… ひっく… 生きててぇ… えぐっ…」

京子「だ、駄目だこりゃ。あかりー、ほんとに遅刻しちゃうぞー、そろそろ泣き止めって」

あかり「えぐっ… 京子ちゃぁん… ごめんねぇ… ひっく… ごめんねぇ… うわぁぁぁん!!」

京子「結衣、こりゃマジで駄目だわ。なんかよくわからんけどあかりは泣き止みそうにないぞ」

結衣「うん、私達の服を握って離してくれないし、とりあえず落ち着くまでこうしてようか」

京子「あははー、夏休み継続だー! あかり、何があったかはわからんが、お前が泣き止むまでずっとこうしていてやるぞ!」

結衣「お前は授業をサボる口実が出来て喜んでるだけだろ…」

あかり「ひっく… えっぐ…」

その後、あかりがある程度落ち着くまで二人は待ち、途中あかねが話し声の聞こえるあかりの部屋をのぞきあかりの泣き顔を見て二人を問い詰めるハプニングもあったが、二人は必死の説得の末何とかあかねに納得してもらった。

京子「…あかりのねーちゃん怖かった………」

結衣「ああ… あかりが私達の傍を離れようとしなかったらどうなってたことか…」

京子「ま、まあ、私達も含めて休みの連絡を学校に入れてくれるって言ってたし、とりあえずこのままあかりの様子を見てようか」

結衣「うん、一応ちなつちゃんにも連絡しておこうか、今日は休むって…」

結衣がちなつの名前を声に出したとき、あかりは勢い良く顔を上げ結衣に詰め寄った。

102 : 以下、名... - 2015/11/10 00:41:25.73 qIUwVeiX0 74/395

あかり「ぢ、ぢなづちゃん! ぢなつぢゃんはどこにっ!?」

結衣「うわっ!? あかり、お前顔すごいことになってるぞ!?」

あかり「ぢなつちゃんはぁぁ!?」

京子「ほい、あかり」

京子は自分のスマホをあかりに渡し、液晶の画面を見せた。
通話マークにちなつちゃんと表示された画面から音声が漏れていた。

ちなつ『京子先輩? 朝からどうしたんですか? 京子せんぱーい?』

あかり「!?」

ちなつ『聞いてます? おーい… いたずらなら切りま…『ぢなつちゃん!!!!』』キーーン

ちなつ『うるさっ!? って、あかりちゃん?』

あかり『ちなづちゃん!? 生ぎてるのっ!? どこにいるのぉっ!?』

ちなつ『ど、怒鳴らないで。…あかりちゃん、どうしちゃったの、なんかすごい焦ってるみたいだけど…』

あかり『どこっ!? どこなのぉ!? ちなつちゃぁあん… うわぁぁぁぁん!!』

ちなつ『ちょ、あかりちゃん!? どうしちゃったの!?』

あかりが京子のスマホに、どこ?どこ?と叫び続け、京子は埒が明かないと思いあかりからスマホを取り上げちなつと会話をし始めた。

京子「あかりー、ちょいとごめんねー」ヒョイッ

あかり「あぁっ!? いやぁっ!」

京子『あー、ちなつちゃん? 私だけど』

ちなつ『き、京子先輩? さっきのあかりちゃんですよね? あかりちゃん、どうしちゃったんですか?』

あかり「ぢなつちゃん!! どこぉぉぉぉ!?」

京子『なんかね、すんごく泣いてる。とりあえずちなつちゃんもあかりん家に来てよ』

ちなつ『はぁ? もう学校に着くんですけど? というか今日始業式の日ですよ…?』

あかり「いやぁぁぁぁ!! どこなのぉぉぉ!!」

京子『だってさー、聞こえるでしょ? このままだとあかり泣きすぎておかしくなっちゃうよ?』

あかり「わぁぁぁぁぁぁん!! うわぁぁぁぁぁん!! ちなづちゃぁぁぁぁぁん!!」

ちなつ『………わかりました、ほんとにあかりちゃんどうしちゃったんですか…?』

京子『それが私達にもさっぱり、とりあえず急いで来てねー』

ちなつ『あっ! 私達って、もしかして結衣先輩もいるんですか!?』

京子『そだよー、んじゃ切るね』プチッ

103 : 以下、名... - 2015/11/10 00:42:56.10 qIUwVeiX0 75/395

京子「というわけで、もうすぐちなつちゃんが来るから落ち着けあかり!」

あかり「………ほんと?」

京子「おう!」

あかり「えぐっ… よかった… ぐすっ…」

結衣「ちなつちゃんもか… 本当にどうしちゃったんだろうね?」

京子「わからん!! まあ、今日はあかりの家がごらく部ということでここで部活動だー!」

結衣「お前… あかりがこんな状態なのに…」

京子「あかりもみんなと遊びたいよなー?」

あかり「ぐすっ… うん… うんっ!」

京子「ほら、あかりも遊びたいって言ってるよ? …それに遊んでればあかりも泣き止んでくれるかもしれないし」

結衣「…それもそうだね」

結衣はあかりの背中を擦りながらあかりを落ち着かせ、数十分経ったところでチャイムがなりあかりが立ち上がった。
あかりは二人を引っ張り玄関に向かい、ドアを開けちなつの姿を見つけると勢い良く飛び掛り抱きついた。

ちなつ「おはようございます~、って、ギャーーーー!?」

あかり「ちなつちゃん!! ちなつちゃん!!!!」ギュウウウウ

ちなつ「痛い、痛い! あかりちゃん痛いって!!」

あかり「みんな生きてる… みんなぁ… よかったぁ… よかったよぉ…」ジワァ

104 : 以下、名... - 2015/11/10 00:43:31.20 qIUwVeiX0 76/395

京子「ちなつちゃん確保ー! んじゃ、また部屋にもどろっか」

結衣「また泣き始めちゃったしね、そうしよっか」

ちなつ「ちょ、ちょっと待ってくださいよ! これ、一体どういう状況なんですかっ!?」

京子「さぁ?」

ちなつ「さぁ? じゃないでしょ!! 学校はどうするんですか!?」

結衣「あかりがこんな状態だし今日は休むことにしたんだよ、ちなつちゃんも多分あかりが離してくれなそうだし休みになっちゃいそうだね」

ちなつ「………結衣先輩も一緒なら仕方ないですよね! 今日はお休みですねっ!」

あかり「ぐすっ… ひっく…」

ちなつ「というか、ほんとにあかりちゃんどうしちゃったんですか… さっきも物凄く取り乱してましたし、こんなあかりちゃん見たことないですよ」

結衣「あかりとの付き合いは長いけど、ここまで泣いてるあかりを見るのは私も始めてだよ。何があったかはわからないけどとりあえずは一緒に居てやらないとって思ってね」

京子「…うん、あかりがここまで泣くって何かあったんだと思うし」

ちなつ「京子先輩… 急に真面目な顔にならないでくださいよ… わかりました、とりあえず家にはいります?」

京子「ほい、一名様ごあんな~~い!」

ちなつ「…………」

結衣「入ろっか…」

ちなつも連れ再びあかりの部屋に戻った4人はあかりが落ち着くまで待った。
1時間くらい経過したところで漸くあかりは平静を取り戻し、3人の質問を受け答えできるくらいまで持ち直した。

105 : 以下、名... - 2015/11/10 00:44:46.19 qIUwVeiX0 77/395

あかり「…みんな、ごめんねぇ、あかりすごくこわい夢を見ちゃって………」

結衣「ゆ、夢? それであんなに泣いてたの?」

あかり「…………」コクン

京子「はぁ、よかった…」

結衣「ふふ、なんだかんだで京子が一番心配してたもんな」

京子「!? ち、ちげーし」

結衣「はいはい」

ちなつ「むむっ… ………ちなみにどんな夢だったの?」

あかり「…………………みんなが死んじゃう夢」

ちなつ「あー… あかりちゃんならそんな夢見ちゃったら泣いちゃうかもね」

結衣「だから私達が生きてるって言ってたのか…」

京子「大丈夫だぞあかり~、この無敵の京子ちゃんが死ぬことなんてありえないからな!」

結衣「京子じゃないけど私達が死ぬなんてありえないからね、夢は夢だよ。怖い夢は早く忘れちゃおう」

ちなつ「結衣先輩の言うとおりだよ、怖い夢は早く忘れて楽しいことを考えようよ」

あかり「みんな… ありがとう…」

あかり「えへへ… みんなに慰めてもらってたらなんだかすっごく恥ずかしくなって来ちゃったよぉ」

京子「あんなに泣きまくって今さらだろ~、恥ずかしいあかりの姿をいっぱい撮ってやったぜ!」ニシシ

あかり「あぁ~~~!? け、消してっ! 消してよ、京子ちゃ~~ん!!」

京子「やだよー! 私達を心配させた罰としてこの画像はプリントアウトしてアルバムに閉じてやるんだ!」

あかり「も、もぉ~~! 京子ちゃ~~ん!!」

あかりと京子がドタバタと追いかけっこを始めると、結衣はやっと一息ついた。

結衣「はぁ、あかりも元気になってくれて安心したよ…」

ちなつ「そうですね、ほんとに最初の電話なんかなにがあったのかと…」

結衣「あの電話もすごかったね、だけど私達が最初に見たあかりの顔なんか今にも死にそうな顔をしてたから本当にどうなることかと思ったよ」

ちなつ「そんなに酷かったんですか?」

結衣「うん、真っ青を通り越して真っ白な顔をしてたからね」

ちなつ「怖い夢を見てそんな状態になっちゃうって、さすがはあかりちゃん…」

結衣「あはは、あかりらしいって言えばあかりらしいね」

106 : 以下、名... - 2015/11/10 00:45:35.89 qIUwVeiX0 78/395

結衣がちなつと話していると、ベットの隅に転がっていた紫色のソウルジェムが目に入った。
結衣はソウルジェムを拾い上げ、あかりにソウルジェムのことを聞き始める。

結衣「これ、宝石? って、こんなでかい宝石、本物のわけないか」

あかり「あ………」

結衣「これあかりの? おもちゃにしてはすごく良く出来てるね?」

今の今までソウルジェムのことをすっかり忘れていたあかりは、再び顔を青くし始める。

結衣「あ、あかり? 大切なものだった?」

あかり「う、ううん。違うの… なんであかりの手にソウルジェムがあったのかがわからなくて…」

京子「ソウルジェム? そのおもちゃのこと?」

あかり「えっ?」

ちなつ「ソウルジェムっていうんだ、すごく綺麗だねー」

あかり「あ、あれ? みんななんで…?」

結衣「? どうしたの?」

あかりは3人がソウルジェムのことを知らない事に疑問を浮かべる。
疑問を浮かべると共に先ほどから違和感が合ったことに気が付く。

あかり「ね、ねぇ、みんな今日は土曜日だよね? 何で制服であかりの家に来てるの?」

京子「? まだ寝ぼけてんの? 今日は新学期初日じゃん、それとも夏休みが抜け切ってないのかー?」

あかり「あれっ? あれっ? だって今日は10月終わりの週の土曜日…」

結衣「? 今日は9月1日だよ?」

あかり「えっ…?」


あかりの体感時間ではワルプルギスの夜が来た日の朝が今だったが、無意識のうちに時を遡ったためあかりは現状を理解できなかった。

あかりは2ヶ月間の時間遡行を行っていた。

あかりは呆然と自分のソウルジェムを見つめる、紫色のソウルジェムはあかりの心に連動するかのように少しだけ穢れを溜めていた。

107 : 以下、名... - 2015/11/10 00:46:52.40 qIUwVeiX0 79/395

1話終わり。

113 : 以下、名... - 2015/11/13 12:45:27.48 1Sm3RGti0 80/395

2話


あかり「あれぇ…? だって… あれぇ?」

ちなつ「ほら、今日の日付だよ」

あかり「あ、ほんとだ。9月1日だ… それじゃあ、あれって全部夢だったの…?」

あかり「…でもなんでだろ、夢だったら何であかりがソウルジェムを持ってるんだろ」

結衣「はい、あかり。床に置いたままじゃ踏んで壊しちゃうかもしれないぞ」

あかり「あ… ありがとう」

結衣はあかりにソウルジェムを手渡した。
あかりはソウルジェムを見つめながら考え始めた。

あかり(ほんとに何であかりの手の中にあったのかなぁ?)

あかり(今日が9月1日だったらあれは全部夢だよね… でもそれじゃあ、なんでソウルジェムがあるのぉ? う~~、わかんないよぉ…)

あかり(………これもあかりが忘れてるだけでどこかで貰ったおもちゃだったかなぁ?)

あかり(う~ん… ………あれ? なんだろう? この感覚?)

あかりはソウルジェムを見ながら考え続けていると、ソウルジェムから何かを感じて意識を向けた。

あかり(変な感じ……… もうちょっと集中したら何かが…)

あかりが不思議な感覚の正体を知ろうとソウルジェムに集中してしばらくすると、ソウルジェムが輝きソウルジェムから放たれた光があかりの身体を包み込んだ。

あかり「きゃぁっ!?」

京子「は…?」

ちなつ「へ?」

結衣「…えっ?」

114 : 以下、名... - 2015/11/13 12:46:21.60 1Sm3RGti0 81/395

光が消えた後、あかりの姿は七森中の制服と良く似たワンピース状のコスチュームとなり、持っていたソウルジェムはダイヤの形となり左手の甲に埋め込まれていた。

あかり「あ、あれっ? なんで…?」

京子「」パクパク

結衣「な、なにそれあかり? い、今どうやったの?」

ちなつ「は、早着替え?」

あかり「あかり、変身しちゃった…? それじゃあ、あれって夢じゃないの…? わかんないよぉ… どうなってるのぉ…?」

京子「す、す、す…」

結衣「京子?」

京子「すっげーーーー!! あかりが変身したよ!? ねえ、あかり! 今どうやったの!? もっかいやってよ!!」

結衣「お、おい、京子…」

京子「結衣も見たっしょ!? あかりがミラクるんみたいに変身しちゃったんだよ!?  ってゆーかなんで黙ってたんだよあかり! こんなすごいこと秘密にしてるなんて水臭いだろーー!!」ガクンガクン

あかり「き、京子ちゃん~~、ゆすらないでぇ~~」ガクンガクン

しばらく京子に揺さぶられ、質問攻めを受けたあかりは京子の勢いに呑まれ、自分が何故魔法少女になっているかという疑問は頭の隅に追いやられてしまった。
揺さぶられ続けたあかりは目を回しながら、自分が魔法少女になったのかもしれないと3人に伝えた。

結衣ちなつ「魔法少女?」

あかり「う、うん、たぶん…」

京子「うおおおおお! すっげぇ!! あかり、マジすげぇ!!」

結衣「お前、そろそろ落ち着けよ…」

ちなつ「あかりちゃんを見る目がすごいことになってますよ…」

京子「あかり! 魔法使ってよ! 変身だけじゃなくて本物の魔法も見たいよ!!」

あかり「そ、そんなこと言われても、魔法なんて使えないよぉ…」

京子「何言ってんだよ!? あかりは魔法少女に変身したじゃん! 使えないわけないって! 頼むよあかりぃ~~」スリスリ

あかり「やめてぇ~~、頬ずりしないでぇ~~」

ちなつ「京子先輩… あかりちゃん困ってますよ…」

結衣「いい加減にしろって」ポカッ

京子「ふっ、いくら結衣でも今の私を止めることは出来ないぞ!! 魔法を使うまで私はあかりを離さんぞーーー!!」グリグリグリ

あかり「やぁ~めぇ~てぇ~」

115 : 以下、名... - 2015/11/13 12:47:16.19 1Sm3RGti0 82/395

しばらく京子のされるがままになっていたあかりだったが、結衣とちなつの手によって京子は拘束されあかりは開放された。

京子「離せーーーーー!! あかりーーー!! 魔法を見せろーーー!!」ジタバタ

あかり「ひぇぇぇ!?」

結衣「馬鹿! 暴れるなって!! ちなつちゃん足持って! こいつをあかりから引き離すよ!」

ちなつ「はいっ! …きゃぁ、痛いっ! 京子先輩蹴らないでくださいよ!!」

京子「はーなーせーーー!!」ジタバタ

結衣「だから暴れるなって!! …あっ」ツルッ

結衣とちなつが京子をあかりから引き離すために宙ずりにして運んでいたとき、京子が暴れて結衣の手がすべり頭から床に落ちた。

京子「ぐはっ」ゴン

ちなつ「あっ」

あかり「あっ」

京子「きゅ~~~~」ガクッ

ちなつ「………うわ、モロにいっちゃいましたね」

結衣「気絶してる…」

京子「」

結衣「ま、まあいいか。この馬鹿はこのまま寝かせておこう」

ちなつ「そ、そうですね」

あかり「あはは… 一応ベットまで運んであげようよ」

気絶した京子を3人でベットまで運び、落ち着いたところで再び話はあかりの魔法少女の話しに戻った。

結衣「ところで、その魔法少女だっけ? あかりはどうやって魔法少女になったの?」

あかり「…あかりもわかんないんだよぉ、夢の中ではキュゥべえと契約したら魔法少女になれたんだけど…」

ちなつ「キュゥべえ? なにそれ?」

あかり「なんて言えばいいのかなぁ? 魔法の精霊さん? 猫さんみたいなかわいい子だよ」

ちなつ「ふ~ん、じゃああかりちゃんもそのキュゥべえと契約して魔法少女になったんじゃないの?」

あかり「………ち、違うよ、あかりは契約なんてしてないもん! あれは夢なんだもん!」

ちなつ(あー、あかりちゃんが見てた怖い夢にでも出てきたのかな?)

結衣「大丈夫だよあかり、もう怖い夢は終わったんだから落ち着きなって」ナデナデ

あかり「………うん」

116 : 以下、名... - 2015/11/13 12:48:04.68 1Sm3RGti0 83/395

結衣は再び怯え始めたあかりを包み込むように抱きしめて落ち着かせた、ちなつは羨ましそうな顔をしながらその様子を見ていたが、先ほどのあかりの酷い泣き顔を見ていたせいか二人の邪魔をせず見守っていた。
しばらくするとあかりは結衣の胸の中で寝息を立て始め眠ってしまった。

結衣「寝ちゃったか、あれだけ泣いてたんだし泣き疲れちゃったんだな」

ちなつ「そうですね、二人とも寝ちゃいましたけど、私達はどうしましょうか?」

結衣「…とりあえず京子を連れて帰ろうかな、こいつが起きたらまたさっきみたいなことになりそうだし」

ちなつ「ですね…」

結衣「ちなつちゃんは少しあかりの様子を見ててもらってもいいかな? あかりが起きてみんないなかったらまた泣き出してしまうかもしれないから… 頼めるかな?」

ちなつ「結衣先輩のお願いならなんでも聞きますよっ! それに他ならぬあかりちゃんの為ですからね、あかりちゃんが起きるまでは一緒にいますね」

結衣「助かるよ、それじゃああかりのお父さんかお母さんに頼んで車を出してもらえるか聞いてくるね」

ちなつ「は~い」

その後、あかりの両親に車を出してもらい結衣は京子を連れて家に帰った。
結衣の家について、京子を家に運び入れようとしたところで京子が意識を取り戻し、再びあかりの元へ行こうとしたため、結衣が無理やり部屋にいれ説教を行い、暴走する京子を何とかなだめることに成功した。

結衣『そういうわけで、私は京子を外に出さないように見張っておくよ。こいつ反省してるように見えて隙を見てあかりのところに行こうとしてるから』

ちなつ『本当にどうしようもない人ですね… わかりました、まだあかりちゃんは起きてないんで私もこのままあかりちゃんと一緒にいますね』

結衣『うん、あかりがまた泣くようなら連絡してよ、すぐ駆けつけるから』

ちなつ『わかりました』

結衣『それじゃあ、ちなつちゃんお願いするね』

ちなつ『任せてください!』

結衣との通話を切りベッドで眠っているあかりの手を握ってちなつは呟き始めた。

ちなつ「あ~あ、あんなに結衣先輩に心配してもらえて、羨ましいな…」

ちなつ「まあ、あかりちゃんだったら仕方ないか。これが京子先輩だったら有無を言わさず邪魔してやるんだけど…」

ちなつ「…京子先輩か、流石にさっきのは酷かったし明日あったら文句を言ってやらないといけないわね、あかりちゃんは大丈夫って言うと思うから私が言ってやらないと!」

ちなつ「日ごろからの文句も含めて言ってやらないと… ………あら?」

ちなつが京子に対しての文句を考えていると、握っていた手から握られる感覚を感じあかりの顔を見るとうっすらと目を開け始めていた。

117 : 以下、名... - 2015/11/13 12:48:35.12 1Sm3RGti0 84/395

あかり「うぅん…」

ちなつ「あ、起きた?」

あかり「あ… ちなつちゃん? あ、そっか、眠ってちゃったのかな?」

ちなつ「そうだよー、あれだけ泣き喚いてたんだし疲れたんでしょ」

あかり「あぅ…」カァァ

あかり「あれ…? 京子ちゃんと結衣ちゃんは…?」キョロキョロ

ちなつ「結衣先輩が京子先輩を連れて帰ったよ」

あかり「そう…なんだ…」

ちなつ「残念そうな顔しないでよ、あかりちゃんもあんな目にあうのはこりごりでしょ?」

あかり「そ、そうだね、さすがにあれはちょっと勘弁してほしいかなぁ…」

ちなつ「今は結衣先輩が見張ってくれてるから京子先輩がここに来る事はないし、眠いならまだ寝ても大丈夫だよ? 私もあかりちゃんが大丈夫そうだってわかったから、寝るんだったら帰るし」

あかり「あっ、もう眠くないよ。もしかしてちなつちゃん、あかりが起きるまで待っててくれたの?」

ちなつ「そうだよ、結衣先輩にも頼まれたし、何より大事な友達のあかりちゃんがこんな状態なのにほっとけるわけないじゃない!」

あかり「ちなつちゃん…」

ちなつ「あかりちゃんにはいつも相談にも乗ってもらってるし、お世話になってるし、こんなときこそ恩返ししないとねっ!」

あかり「ちなつちゃぁん! あかり、うれしいよぉ…」

ちなつ「えへへ。あ、そうだ、あかりちゃん何かしてほしいことある? 看病してあげるよ?」

あかり「え゛っ?」

ちなつ「そうだっ、目元が真っ赤になってるし、顔のマッサージをしてあげるよっ! マッサージなら自身があるし、あかりちゃんも前に褒めてくれたもんね!」

あかり「ま、ま、ま、まってぇ~~!! 大丈夫! 大丈夫だからっ!」

ちなつ「遠慮しなくていいのよ? ほら、顔出して!」ガシッ

あかり「ひぃぃぃぃぃ!? ホントに勘弁、勘弁してください!?」ピクピク

ちなつ「じっとしててね~、動くと危ないからね~」ジリジリ

あかり「い、い、いやあああああああ!?」

その後、ちなつのマッサージフルコースを受けたあかりは死んだ魚の目となってぐったりと倒れこみしばらく体を動かすことが出来なかった。

118 : 以下、名... - 2015/11/13 12:49:13.97 1Sm3RGti0 85/395

2話終わり。

127 : 以下、名... - 2015/11/14 19:59:41.25 PZj+87JT0 86/395

3話


あかり「…………」グッタリ

ちなつ「どうだった? この前から練習してお姉ちゃんにも好評なんだよ?」

あかり「………うん。…すごすぎて動けそうにないよ」グッタリ

ちなつ「そんなに気持ちよかった? えへへ、もうちょっと練習したら結衣先輩にもやってあげるんだ~」

あかり(結衣ちゃん、逃げて………)

少しして、あかりはマッサージの傷が癒え動けるようになり、ちなつの看病から逃げる為に会話をし続けた。
しばらく取り留めない話をしていた二人だったが、ちなつがふと漏らした言葉から再び魔法関係の話題に戻っていった。

ちなつ「そういえば、あかりちゃんの服元に戻ってるね?」

あかり「あ、ほんとだ」

あかり「…ほんとにあかり変身しちゃったんだよねぇ、なんでなんだろ…」

ちなつ「あかりちゃんもどうやって変身できたかもわからないんだよね?」

あかり「…うん」コクン

あかり「このソウルジェムから変な感じがしたんだけど、それに集中したら変身しちゃったみたい」

ちなつ「ソウルジェムねぇ、すごい綺麗な宝石だけど、これが変身する為に必要な道具なのかな?」

あかり「わかんないよぉ…」

ちなつ「そっか~」

ちなつは少し考えふと思いつき手を叩いた。

ちなつ「あっ、そうだ」ポン

あかり「?」

ちなつ「さっき言ってたキュゥべえって言う魔法の精霊を呼んでみればいいんじゃない?」

あかり「キュゥべえを? でも、キュゥべえはあかりの夢に出てきただけなんだよぉ?」

ちなつ「でもさ、あかりちゃんは夢の中に出てきたソウルジェムを使って変身しちゃったじゃない、もしかしたらそのキュゥべえもいるかもしれないよ?」

あかり「う、うん…」

あかり(キュゥべえもいるんだったら、あの夢で契約したのはほんとのことになっちゃうの…?)

あかり(ううん、違うもん! ちなつちゃんもこうやってあかりの前にいるし、京子ちゃんも結衣ちゃんもちゃんといるからあれは絶対に違うんだから!)

128 : 以下、名... - 2015/11/14 20:00:43.30 PZj+87JT0 87/395

ちなつ「あかりちゃん? どうしたの?」

あかり「ううん! なんでもないよっ!」

ちなつ「そう? それでどうする? 呼んでみる?」

あかり「…そうだねぇ」

あかり(よくわかんないけど、あかりは変身しちゃったしキュゥべえがいるなら何か知ってるかもしれないよね)

あかり(なんであかりが魔法少女に変身できちゃったのか聞いてみようかなぁ)

あかり「あかりもなんで変身できたのか気になるし呼んでみようかな」

ちなつ「わぁ、じゃあ、魔法の精霊がここに来てくれるの? どんなのなんだろ? 楽しみ~」ワクワク

ちなつは今から来るかもしれない魔法の精霊を期待し目を輝かせていた、あかりはそんなちなつを見ながらどうやったらQBが来てくれるのかを考えていた。
ちなつはあかりの視線を少し勘違いしあたふたしながら言った。

ちなつ「あっ… べ、別に魔法の精霊が気になるって訳じゃないんだよ? 私ももしかしたらあかりちゃんみたいに変身して魔法を使えたらな~ってなんか全然思ってないんだよ? 確かにミラクるんの映画を京子先輩に見せられてから魔女っ娘に憧れてたりもするけど、実際になりたいなんて思ってないんだからね?」アタフタ

あかり「ち、ちなつちゃん? もしかして魔法少女になりたかったりするの?」」

ちなつ「だ、だから違うって! も~、私の事はいいから早く呼んでよっ!」

あかり「う、うん。…キュゥべえ~、あかりはここだよぉ~、聞こえたらここにきてほしいなぁ~」

ちなつ「…………」キョロキョロ

あかりはしばらくQBを呼ぶ為に声を出したりしていたがQBの姿は一向に現れず、色々な方法を試すことにした。
方法を試す中、ソウルジェムを持って呼びかけていると、あかりの頭の中に直接声が聞こえてきた。

QB『………もしかして僕を呼んでいるのかな?』

あかり「あっ!! キュゥべえ? どこにいるの?」

ちなつ「どうしたのあかりちゃん?」

あかり「キュゥべえの声が聞こえたんだよ、でも、あれぇ? どこにいるんだろ?」キョロキョロ

ちなつ「声が? 私には聞こえなかったけど…」キョロキョロ

QB『………どうやら本当に僕のことを探しているようだね、君は一体何者なんだい?』

あかり「? あかりはあかりだよぉ?」

QB『………まあ、いいや。少し待っていてくれないかな? 君の位置を確認してそちらに向かうから』

あかり「うん、わかったよぉ、待ってるねぇ」

ちなつ「あかりちゃん? あかりちゃんには声が聞こえるの?」

あかり「うん、キュゥべえがここに来るって言ってるけど… あれぇ? なんであかりにしか聞こえなかったのかなぁ?」

ちなつ「やっぱり、あかりちゃんが魔法少女だからなのかな?」

あかり「う~ん… そうなのかなぁ?」

しばらくすると、窓の外から白い生物があかりの部屋を覗き込んでいた。
白い生物は警戒するような態勢で窓の外からあかりとちなつを見ているようだった。
部屋にいたあかりは窓の外にQBがいることに気が付き窓を開けQBを部屋に招き入れた。

129 : 以下、名... - 2015/11/14 20:01:47.75 PZj+87JT0 88/395

QB「こんなことがありえるのか…? しかし、これは…」

あかり「キュゥべえ… やっぱりキュゥべえなんだよね? 夢と一緒だよぉ…」

ちなつ「ほ、ほんとに魔法の精霊なんだね…」

QB「…………」

QBはあかりの部屋に入ってから、ずっとちなつを見続けて何かを考えているようだった。

ちなつ「あっ、あかりちゃん。ほら、あかりちゃんが何で魔法少女に変身できたか聞いてみないと」

あかり「そ、そうだね。ねぇ、キュゥべえ、どうしてあかりが魔法少女になっているのかなぁ?」

QB「…………」

あかり「キュゥべえ?」

QB「…ああ、すまないね。ええと、君たちは一体何者なのかな? 君はあかりといったね、そっちの君は何ていうのかな?」

ちなつ「私は吉川ちなつだけど」

QB「ちなつだね、僕はキュゥべえ、突然だけど君にお願いしたいことがあるんだけど聞いてくれないかな?」

ちなつ「お願い?」

QB「そうだよ、お願いというのは、僕と契約して魔法少女になって欲しいんだ」

ちなつ「!?」

あかり「ちょ、ちょっとぉ! なんであかりをスルーするのぉ!?」

QB「………ああ、すまなかったね。でも少し待ってくれないかな、今はちなつと話をしたくてね」

あかり「えぇっ!?」ガーン

ちなつ(魔法の精霊にまで… あかりちゃん… 不憫な子…)

ちなつ「あのさ、あかりちゃんの話を聞いてあげてくれないかな? その後であなたの話を詳しく聞くからさ」

QB「…わかったよ」

QB「それで、あかりだったかな? 君は一体何者なんだい? 僕は君と契約した記憶はないんだけど、何故君は魔法少女になっているのかな?」

あかり「えっ?」

QB「どうしたんだい?」

あかり「…キュゥべえにもわからないの? あかりが何で魔法少女になっているのか」

QB「そうだね、何故君が魔法少女なのかは僕にはわからないよ。魔法少女になるには僕と契約しなければならないのだけど、僕は君と契約した記憶が無いんだ」

QB「…因みに君は僕と契約した記憶や、魔法少女について知っていることは無いのかな?」

あかり「…契約してないよっ! だって… 違うもん…」

QB「………なら僕がわかることは何も無いね、これ以上話してもしょうがないと思うよ」

あかり「そんなぁ………」

ちなつ(あらら… まさか、魔法の精霊に契約したことを忘れられちゃったなんてことはないよね…)

あかりが落ち込みながらなんでだろ?なんでだろ?と考え込む中、QBはちなつに再び『お願い』を始めた。

130 : 以下、名... - 2015/11/14 20:02:44.75 PZj+87JT0 89/395

QB「さて、それじゃあちなつ。お願いだよ、僕と契約してくれないかな?」

ちなつ「ま、まってよ! 契約って言っても何をすればいいのよ?」

QB「そうだったね、まずは説明をしようか」

QB「僕は僕と契約して魔法少女になってくれる子を探しているんだ。それで契約というのはね、魔法少女になってもらう変わりにどんな願いでもなんでも叶えてあげることができるんだよ」

ちなつ「な、なんでも!?」グィッ

あかり(!? お、同じだよぉ…)

QB「そうだよ、だけどその代わりに魔女と戦ってもらうことになるんだよ。それが魔法少女としての契約さ」

ちなつ「なんでも… なんでもっていうことは…」ブツブツ

あかり(これも… 魔女さんと戦わなきゃいけないのも同じ…)

QB「魔女というのも呪いから産まれた存在で、人間に害を及ぼす存在なんだけど、君が魔法少女になりさえすればほとんどの魔女は君に敵うことはないよ」

ちなつ「待つのよチーナ… いくらなんでも願い事で結衣先輩が振り向いてくれるなんてそんな事はありえないわ… でも、魔法なんだからもしかしたら…」ブツブツ

あかり(あれ? ちなつちゃんが…? こんなこと言ってなかったよね?)

QB「そして、契約と引き換えに君にはソウルジェムという石を手にすることになるよ。そのソウルジェムを使って魔女との戦いを行っていくことになるのさ」

ちなつ「もし願いが叶ったら… 結衣先輩にあんなことやこんなことまで…」グフフ

QB「聞いているのかな? …まあ、いいや。説明は済んだけど、魔法少女になってくれるのかな?」

あかり(ほとんど一緒… あかりの夢で見たのと一緒だよぉ… それだと魔女さんは…)

ちなつ「ハッ!? いけない、いけない… えーっと、あなたと契約すれば結衣先輩と両思いになってあんなことやこんなことができるのよねっ!?」

QB「君が何を言っているのかわからないけれど、君が何かを願うのならどんな願いでも叶うと思うよ。君にはものすごい資質が備わっているんだ」

ちなつ「なるわっ! 私、魔法少女になるっ!」

QB「本当かい? それなら君の願いを…」

しばらく考え込んでいたあかりはちなつが魔法少女になると宣言したときに驚き止めに入った。

131 : 以下、名... - 2015/11/14 20:03:37.07 PZj+87JT0 90/395

あかり「ち、ちなつちゃん!? だめだよぉ! 魔法少女になったらこわいお化けさんをやっつけなきゃいけなくなるんだよ!?」

ちなつ「へ? そうなの?」

あかり「そうだよぉ! ねぇ、キュゥべえ。魔女さんってすごいこわいお化けさんだよね?」

QB「…魔女は君の言っている幽霊などには分類されないね」

あかり「あれぇ…? で、でも、すごいこわいんだよ?」

QB「…さっきも言ったけど魔女といってもちなつが魔法少女になればほとんどの魔女がちなつに敵うことは無いよ。ちなつはね僕が今まで見たこともないくらいのものすごい資質を持っているんだ」

QB「その資質はね、一国の女王や救世主と呼ばれる存在を遥かに凌ぐほどの資質なんだ、まさに選ばれた存在としか思えないくらいのね」

あかり「えぇ~~!?」

ちなつ「ちょっとぉ~、私ってそんなにすごいの?」テレテレ

QB「そうだよ、君はこの世界でも一番といえるくらいの資質を持っているね」

ちなつ「あかりちゃん! 聞いた? 私、世界で一番だって!」

あかり「う、うん」

QB「話がそれたね、魔女はあかりが言うように君たちが見れば怖いといえる姿をしているかもしれないけど、ちなつの力なら姿が見えない様な距離から倒すことも可能だと思うよ、魔法少女になりさえすればちなつの好きなように戦い方を作り出せばいいんだからね」

ちなつ「もぅ! こんなに褒められると困っちゃうよ!」

QB「だから、戦いを怖がる必要はないと思うよ」

ちなつ「そうねっ! あかりちゃん、私決めたよ! 魔法少女になるよ!」

あかり「うぅ~… 大丈夫かなぁ…」

ちなつ「大丈夫だよ、それにあかりちゃんも魔法少女なんだから、あかりちゃんを助けてあげるよ! あかりちゃんは戦いなんて出来ないでしょ?」

あかり「あっ! そ、そうだったよぉ… あかりも魔法少女だったんだよね…」

ちなつ「それじゃあ、決定! もう願い事を言ってもいいの?」

QB「いいよ、君の祈りを言ってごらん」

ちなつは少し息を吸い込んで、QBに言い放った。

ちなつ「私の願いは結衣先輩が私の事を好きになってくれること!! いつも私が結衣先輩のことを考えているように結衣先輩も私の事をいつも考えてくれて私の事を見てくれて私の事を愛してくれるようにしてほしいのっ! 私が困っていたら結衣先輩がどこからともなく現れて私を助けてくれたり、私が悲しんでいたら結衣先輩が優しく私の事をなぐさめてくれて、私が嬉しいときは結衣先輩も隣で微笑んでくれるようにしてほしいわっ! それに朝起きたらおはようのキスを、毎日一緒にご飯を食べて、お風呂に入るときも一緒に… そして寝るときは一緒の布団で… って、キャーー何を言わすのよ!!」

あかり「ちょ!? ち、ちなつちゃん!?」

QB「願い事はひとつなんだけど…」

ちなつ「もぅ! だから今言ったように結衣先輩が私の事を愛してくれるようにしてほしいの!」

あかり「ま、待っ…」

QB「………わかったよ、契約は成立だ。君の祈りはエントロピーを凌駕した」

次の瞬間、ちなつの全身から水色の光が漏れ出し部屋全体を照らした。
目を開けていられないくらいの光が漏れ続け、数分後ようやく光は収まりちなつの手には水色のソウルジェムが乗っていた。

132 : 以下、名... - 2015/11/14 20:04:25.73 PZj+87JT0 91/395

QB「おめでとう、これで君は魔法少女だ。君の願いも正しく叶ったことだろう」

ちなつ「ほんとにっ!? ということは、結衣先輩が…」グフフフフ

あかり「うぅ~~、目が痛いよぉ~~」

ちなつ「あっ、あかりちゃん、大丈夫?」

あかり「光を直視しちゃって目がチカチカするよぉ~~」

ちなつ「あはは、あかりちゃんドジなんだから~」

ちなつ「それよりもあかりちゃん! これからどうしたらいいと思う!? 結衣先輩に連絡をしてみようかしら? それとも結衣先輩の家にいったほうがいいのかしら?」

あかり「えっと… ちなつちゃん、あの願い事はどうかと思うよ………」

ちなつ「えっ… で、でも結衣先輩が私の事を好きになってくれるチャンスだったんだし…」

あかり「ちなつちゃんが結衣ちゃんのことを好きなのは知ってるけど、さすがに願い事で振り向かせるのは違うんじゃないかなって…」

ちなつ「うぅっ… そうだよね、私卑怯なことしちゃったよね…」ズーン

ちなつ「少しでも結衣先輩が私に気を向けてくれたらなって思ったんだけど… そうだよね、こんなの結衣先輩の気持ちを無視しちゃうようなやり方だよね…」ズーン

あかり「あぁっ!? ご、ごめんね、そこまで言うつもりは無かったの!」アタフタ

ちなつが暗い顔をしながら落ち込み始めて、あかりがあたふたとフォローを入れようとしているとちなつのスマホが震えた。
ちなつはのそのそとスマホを確認すると、液晶に映った名前を見てすごいスピードで通話ボタンを押した。
あかりは少しちなつの様子を見ていると、ちなつは途中で固まり、呆然とした顔で会話を続けていた。
しばらくすると通話が終わり、ちなつはあかりのほうを振り向き真っ赤な顔で話し始めた。

あかり「ちなつちゃん?」

ちなつ「結衣先輩が… 私の事を愛してるって… 結婚を前提に付き合ってほしいって…」

あかり「えぇぇぇぇ!? け、結婚って!?」

ちなつ「あ、あかりちゃん… どうしよう、本当に願い事が叶っちゃった…」

あかり「ど、どうしようもなにも…」

ちなつ「今日もこれから家に来てほしいって… 想いを自分の口からもう一度言いたいって…」

あかり「あわわわわ」

ちなつ「あ、あかりちゃん。わ、私どうすればいいの?」

あかり「ど、どうしよう?」

暫くあかりとちなつは真っ赤な顔をしながらどうしよう、どうしようと言い続けた。
話し合った結果、ちなつは結衣の家に行くといいあかりの家を出て、あかりはちなつを見送った。






ちなつは魔法少女となり、願いは叶ってしまった。

133 : 以下、名... - 2015/11/14 20:04:59.85 PZj+87JT0 92/395

3話終わり。

138 : 以下、名... - 2015/11/15 19:05:29.12 OcMaLTHh0 93/395

4話


夜 あかりの部屋


あかり(ちなつちゃんが結衣ちゃんの家に行った後、キュゥべえと少し話をして結衣ちゃんと京子ちゃんのことを話したらキュゥべえはどこかにいっちゃった)

あかり(あかりが魔法少女になっていたことはうやむやになっちゃったなぁ)

あかり(そ、それよりも、結衣ちゃんがちなつちゃんのことを好きになっちゃった… いくら願い事で好きになっちゃったっていっても、今までのちなつちゃんの気持ちが伝わったっていうことだもんね、おめでとうって言ってあげた方が良かったかな?)

あかり(…今頃何をしてるのかなぁ? デ、デートでもしちゃってるのかなぁ!? 明日ちなつちゃんにお話を聞いてみないとっ!)

あかりが結衣とちなつのことを考えていると、スマホが振るえあかりは画面を見る。

あかり「あ、京子ちゃんだ」

あかり『もしもし、京子ちゃん?』

京子『よぉ、あかり! さっきは悪かったなー! 今一人?』

あかり『大丈夫だよぉ。うん、一人だよ』

京子『聞いてくれよー、結衣の奴、私をいきなり部屋から追い出してさ、何度も呼び出し押したり電話したのにずっと無視しやがってさー』

あかり『あー、そうなんだ…』

あかり(たぶんちなつちゃんを呼んだときかな?)

京子『でさー、しかたなく家に帰ったらさ、むふふふふ…』

あかり『何かあったの?』

京子『秘密ー!』

あかり『えぇ!?』

京子『明日教えてやるよ! みんなの前で見せたいものがあるからね! 朝早めにあかりん家にいくからさ!』

あかり『なんだろぉ? 何かおもしろいもの見つけたの?』

京子『見てのお楽しみだよ! それだけ言いたかったんだ、そんじゃーねー!』プチッ

あかり『あっ、京子ちゃん? 切れてる…』ツーツー

あかり「見せたいものってなんだろう? それも明日になればわかるよね」

あかりは怒涛の一日を乗り越え、布団に潜り込んだ。
このときには朝見た悪夢のことはあかりの中で大分薄れて、自分が魔法少女になっていることも不思議なことがあるんだなと割り切っていた。
その夜、あかりの夢は夏休みにキャンプに行ったときの夢だった、あかりも皆も楽しく笑っている夢をあかりは見て、翌日には完全に悪夢を忘れあかりは立ち直っていた。

139 : 以下、名... - 2015/11/15 19:06:35.67 OcMaLTHh0 94/395

翌日


京子「おーっす!」

あかり「おはよう、京子ちゃん。あれ? 結衣ちゃんは?」

京子「それがさー、あいつ電話に出ないんだよ。昨日からずーっと電話してんのにさ」

あかり「そうなんだ、どうしたんだろ?」

京子「風邪でもひいたかな? まだ時間もあるし結衣ん家にいってみる?」

あかり「そうだね、昨日はあかりがあんなにお世話になっちゃったから、結衣ちゃんが風邪をひいてたらあかりが看病しなきゃ!」

京子「あかりは真面目だなー、んじゃ、結衣ん家にレッツゴー!」

そのまま二人は結衣の家に行く為に歩き始めた。

あかり「そういえば、昨日見せたいものがあるって言ってたよね?」

京子「むふふふふー、まだ秘密だよ! 結衣とちなつちゃんがいる前で見せようと思ってるからね!」

あかり「気になるよぉ~、あっ、その鞄何か入ってるみたいだけどそれかな?」

京子「ふっふっふ、お楽しみさ!」

京子は終始にやにやしながらあかりの質問をはぐらかし続けた。
全員がそろったら見せると言い、あかりはそれに納得した。
そして、二人は結衣の家に着き、チャイムを鳴らし結衣が出てくるのを待った。

京子「おーい、結衣ー、もうそろそろ起きないと遅刻しちゃうぞー」ピポピポピポピポ

あかり「き、京子ちゃん、近所迷惑じゃ…」

京子「あれー? なんで出てこないんだ?」ピピピピピピピピピピピンポーン

しばらく京子がチャイムを鳴らし続けていると、インターホンから結衣の声が聞こえてきた。

結衣『………何?』

京子「お、やっと起きたか! 遅刻するぞー! 早く準備しろー!」

結衣『今日は調子が悪いから休む』ガチャッ

京子「…………」

あかり「あ、あれぇ?」

京子「開けろーーー!!」ピポピポピポピポピポ

結衣『うるさい、休むって言ってるだろ』

京子「全然調子悪そうな声して無いじゃん! ずる休みでもする気か!? 見せたいものがあるから学校にいこーぜ!!」

結衣『黙れ』ガチャ

京子「えっ?」

あかり「えっ?」

その後、何度かチャイムを鳴らすも完全に無視をされ、二人は暫く待っていたが結衣が出てくる気配すらなく遅刻寸前になったところで待つのは諦め学校へ向かい始めた。

140 : 以下、名... - 2015/11/15 19:07:31.59 OcMaLTHh0 95/395

京子「なんだよ… あんなに冷たい声で言わなくてもいいじゃんかよ…」

あかり「どうしちゃったんだろう… やっぱり風邪をひいちゃったのかなぁ?」

京子「そうかも、帰りに何か買って持って行ってあげよっか…」

あかり「うん、それがいいよね! あっ、昨日のお礼もこめてあかりが買っていくよぉ! 果物とかでいいよね?」

京子「そだね。んじゃ、お願いするよ」

京子「キュゥべえのお披露目会もそれまで我慢するかー、せっかく朝一で驚かせようと思ったのになー」ブツブツ

あかり「? どうかしたの、京子ちゃん?」

京子「いんや、なんでもないよー」

二人は学校に着き、それぞれの教室に向かった。

あかり「おはよぉー」

櫻子「あ! あかりちゃん、おはよーー!! 何、何? 昨日休んじゃってどっか旅行でもいってたの!?」

向日葵「おはようございます赤座さん。昨日はどうされたんですの?」

あかり「あはは、えっと、ちょっと風邪をひいちゃって」

櫻子「えー? そんな事言っちゃって、実は夏休みが終わって学校に行きたくないー! って家から出られなくなって休んだんじゃないの?」

向日葵「あなたじゃあるまいし… 赤座さんがそんな事するわけないでしょう?」

櫻子「あんだとー!? 私がいつそんな事をした!? 言ってみろこのおっぱい!!」

向日葵「例えですわ、あなたなら来年そういって休んでもおかしくないですわね」

櫻子「なにぃ~~~!?」グヌヌヌヌ

あかり「あはは、二人とも元気だねぇ… あれ? ちなつちゃんはまだ来てないの?」

向日葵「あら? 昨日もお休みでしたし、今日もお休みかと思ってましたわ」

あかり「あれぇ? どうしちゃったんだろ、ちなつちゃん…」

櫻子「ちなつちゃんはまだ夏休みだと思ってるんじゃない? 教えてあげないとずっと学校に来ないかもしれないよ?」

向日葵「だからあなたと一緒にするのは赤座さんや吉川さんに失礼ですわ…」

櫻子「んだとーー!?」

あかり「あはは…」

あかり(でも、どうしちゃったんだろ? あの後、結衣ちゃんの家に行って… あっ、結衣ちゃんも調子悪そうだったしちなつちゃんも風邪ひいちゃったのかな? それならちなつちゃんのお見舞いも行かないといけないよね)

そして、ちなつが来ないまま授業が始まり、あっという間に放課後になった。

141 : 以下、名... - 2015/11/15 19:09:25.68 OcMaLTHh0 96/395

帰り道


京子「しかし、ちなつちゃんも休んでるって風邪がはやってるのかな?」

あかり「そうだねぇ、昨日二人は一緒にいたみたいだし、風邪をひいちゃったのかもしれないね」

京子「ん? どういうこと?」

あかり「あっ!」

あかり(流石に願い事は秘密にしておいたほうがいいよね)

あかり「え、え~っと、あの後ちなつちゃんは結衣ちゃんの家に行ったみたいなんだよ」

京子「えー? 結衣のやつ、私に黙ってちなつちゃんと会うなんて… 羨ましい!」

あかり「だから、その時に二人とも風邪をどこかでもらっちゃったのかな~って」

京子「ふーん、そういうことね」

京子「二人とも連絡しても返事が出来ないみたいだし、インフルエンザとかかな? 朝の結衣もすごく変な感じだったし心配だな…」

あかり「そうだねぇ。あ、そろそろちなつちゃんの家だね」

二人は連絡が付かないちなつの家にお見舞いの為にやってきたが、いつもと少し様子が違うことに気付いた。

京子「あれ? 何かあったのかな?」

あかり「なんだろう? あっ、あれってちなつちゃんのお姉ちゃんかな?」

ちなつの家ではあわただしく大人が駆け回っており、そんな中あかりはともこの姿を見つけ、ともこもあかり達に気付き走ってきた。

ともこ「あの、あなた達ちなつのお友達よね? ちなつは今どこにいるのか分からないかしら?」

あかり「えっ? ちなつちゃんがどうしたんですか?」

京子「?」

ともこ「ちなつが昨日から帰ってきていないのよ… 連絡も通じなくて、どこにいるか見当もつかないの…」

あかり「えっ?」

京子「え…」

142 : 以下、名... - 2015/11/15 19:11:12.63 OcMaLTHh0 97/395

ともこ「朝から心当たりがある場所は全て探したんだけどどこにもいなくて…」

あかり「帰ってないって… 昨日ちなつちゃんは結衣ちゃんの家に行くって…」

ともこ「結衣さん? ちなつが良く話してる子の事? その子の家にちなつは行ったの!?」

あかり「は、はい。昨日、わたしの看病をしてくれてたんですけど、帰る時に結衣ちゃんの家に行くって帰ったんです」

ともこ「わかったわ、どうもありがとう。ところでその結衣さんは今どこにいるのかしら?」

あかり「えっと、結衣ちゃんは今日風邪で学校を休んでいて、今からお見舞いに行こうと思っていたんです」

ともこ「そうなのね…」

ともこ「あの… 私も一緒に結衣さんの家に行ってもいいかしら? もしかしたらちなつがどこにいるか知ってるかもしれないし、直接聞きたいのよ」

あかり「は、はい、わたし達は大丈夫です。ね、京子ちゃん」

あかりは先ほどから何かしている京子に向かってたずねた。
京子は結衣に連絡を取ろうとしていたみたいだったが、何度かけても電話が通じず諦めてあかりに向き直った。

京子「結衣のやつ電話に出ない… わかりました、一緒に行きましょう。結衣の家はこっちです!」

そのまま3人は結衣の家まで急ぎ、結衣の家に到着するとチャイムを鳴らし結衣が出てくるのを待った。
しかし、一向に反応が無く京子が実力行使に出始めた。

京子「おい! 結衣! いるんだろ!! 開けろって!!」ドンドンドン

京子「ちなつちゃんが大変なんだよ! おい! ゆ…」ドンドン

京子がちなつという言葉を口にした途端、ドアが半開きとなり中から手が出てきて京子の首がつかまれた。
京子はそのまま扉の隙間に引っ張られ引っかかったかと思うと、扉の隙間から見えた結衣の目を見て硬直した。
結衣の目は憎しみを通り越して完全な殺意を宿した目で京子を睨みつけていた。

結衣「ちなつちゃんの名前を口にしていいのは私だけだ、次に軽々しくちなつちゃんの名前を呼んだら殺すぞ」

京子「え… えぁ… ゆ、ゆぃ…?」

結衣は京子にそう言い放つと掴んでいた首を放し、京子の身体を腕だけの力で吹き飛ばした。
京子はそのままたたらを踏み、あかりとともこに受け止められ呆然としたあと震え始めた。

143 : 以下、名... - 2015/11/15 19:12:33.01 OcMaLTHh0 98/395

あかり「京子ちゃん!? だ、大丈夫!?」

ともこ「い、今の何?」

京子「…な、何? 結衣…? どうしちゃったの? あ、あんな目で私を………」

あかり「い、今の結衣ちゃんだよね?」

ともこ「………あの、ここを開けてもらえるかしら! 私はちな…」モガッ

ともこが再び結衣の部屋に向かって話しはじめ、ちなつという単語がでる直前で京子によって口をふさがれる。

あかり「京子ちゃん!? 何を!?」

京子「ま、まってください」ハァーッハァーッ

ともこ「」モガモガ

京子はそのままともこを結衣の部屋から遠ざけて廊下の端に辿り着いたところで口を塞いでいた手を放した。

ともこ「な、なにをするの!?」プハッ

京子「だ、駄目です。ちなつちゃんの名前を呼ぶのは駄目です」

ともこ「?」

京子「とんでもないことになるような気がして… あんな結衣、絶対におかしいよ…」

あかり「京子ちゃん…?」

京子は見たこともない結衣の目を思い出し身震いする。
そして、結衣が京子に言った殺すという言葉。冗談でもなんでもなく、次に誰かがちなつの名前を呼んだら結衣は本当に呼んだ人を殺すんじゃないかと思わせるくらいの目をしていた。

京子は必死にともこを説得し、ちなつの情報を必ず聞き出すと約束してともこを結衣の部屋に近づかせないようにした。
そして、ともこは再びちなつを探すと言い二人と別れ、京子とあかりは結衣の家の近くにある公園に来ていた。

144 : 以下、名... - 2015/11/15 19:13:36.69 OcMaLTHh0 99/395

京子「…………」

あかり「あ、あの、さっきは一体何があったの?」

京子「わかんない… だけど結衣が変だった…」

あかり「変?」

京子「私に向かって殺すって… 冗談でもない、凄く怖い目をしてた…」

あかり「き、聞き間違いじゃ…」

京子「聞き間違えるわけ無いよ… 一体何があったんだよ… 結衣ぃ…」

京子がベンチで項垂れていると、京子の隣に座っていたあかりがすすり泣く声が聞こえてきて京子はあかりの方を見る。

あかり「何かおかしいよぉ… 結衣ちゃんがそんな事言うのもそうだし、ちなつちゃんも家に帰ってないなんて… 一体なんなのぉ…」ヒックヒック

京子「あかり…」

あかり「京子ちゃん… あかり怖いよ… 不安だよぉ…」クスン

京子(…あかり、昨日もあんなに泣いてたんだし、情緒不安定になってるのかもしれない)

京子(私までこんな状態じゃ、あかりがどんどん不安になっていっちゃうな…)

京子「………あかり、大丈夫だって! 結衣はなんか機嫌が悪かっただけだし、ちなつちゃんももう家に帰ってる頃だよ! どこか寄り道してたんだと思うよ!」

京子「私達までこんなに気を落としてたら明日二人に会ったときにからかわれてしまうって!」

あかり「………からかうのはいつも京子ちゃんだよぉ」

京子「うっ、なかなか痛いところ突きますなぁ… まあ、こんなに心配しなくても大丈夫だって! 明日には二人とも元気に学校に来てるって!」

あかり「うん…」

その後、京子はあかりを慰めながら家まで送っていき、明日は二人も連れて学校に行こうと約束し別れた。
あかりと京子は不安を隠しながら明日は皆そろって学校に行けると信じ眠りに落ちた。



あかりと京子が眠りに落ちた頃、暗闇の部屋で生々しい音が鳴り響いていた。
雲の隙間から月の光が部屋に差し込み、一瞬だけ部屋の中を照らした。
そこには赤く染まった結衣の姿が照らし出されていた。

145 : 以下、名... - 2015/11/15 19:14:10.68 OcMaLTHh0 100/395

4話終わり。

152 : 以下、名... - 2015/11/21 18:10:30.23 0VuLQBUg0 101/395

5話


翌日 朝 あかりの部屋


あかりは朝一から結衣とちなつに連絡をするが二人とも連絡が通じず、あかりは京子に連絡をとった。

あかり『京子ちゃん… どうしよう… 結衣ちゃんもちなつちゃんも電話が通じないよ…』

京子『…………』

あかり『どうしよう… 京子ちゃん、どうしよう…』

京子『…あかり、今から部室にいける?』

あかり『え? うん… いけるけど…』

京子『思いついたことがあるから部室で話をしよう』

あかり『わ、わかったよぉ…』

京子との電話を切り、あかりは学校に行く準備をしてすぐ家を出た。
部室に着くと既に京子は着いており、あかりと同様暗い顔をして座っていた。

京子「おはよ…」

あかり「うん、おはよう…」

京子「悪いねこんなに早い時間に呼び出しちゃって」

あかり「ううん、それで思いついたことって…?」

京子「うん、ちょっと待って… ………キュゥべえ、来てくれないかな?」

あかり「えっ? 京子ちゃん、今キュゥべえって… キュゥべえの事知ってるの?」

京子「やっぱあかりも知ってるよね。2日前に出会ったんだけど、昨日はあんなことになって話が出来なかったんだ。あかりもキュゥべえと契約して魔法少女になったんでしょ?」

あかり「えっ… う~ん… わかんない…」

京子「? あかりも魔法少女だよね?」

あかり「うん… だけどあかりはキュゥべえと契約なんてしてないんだよ? キュゥべえも契約した記憶は無いって言っていたし」

京子「?? とりあえずそれは置いといて、私が思いついたことってキュゥべえにお願いしてちなつちゃんの居場所を探してもらおうと思ったんだよ」

あかり「キュゥべえを?」

京子「うん。ほら、キュゥべえって魔法のマスコットキャラクターってやつじゃん。魔法の力ならちなつちゃんが今どこにいるかなんてすぐ分かるんじゃないかって思ってね」

あかり「あ、そっか… ちなつちゃんも魔法少女なんだしキュゥべえならどこにいるか知ってるかもしれないよね…」

京子「!? ちょっと待った! あかり、今ちなつちゃんも魔法少女って言った?」

あかり「う、うん。2日前に京子ちゃんと結衣ちゃんが帰った後、キュウべえがやってきてちなつちゃんは契約して魔法少女になったんだよ」

京子「………せっかく結衣とちなつちゃんを驚かせる為に、契約もしないでたのに…」

二人が話していると、二人の死角から声が聞こえ、二人とも視線を向けるとテーブルの上にQBが居た。

153 : 以下、名... - 2015/11/21 18:11:34.33 0VuLQBUg0 102/395

QB「呼んだかい? …おや、君はあかりじゃないか。君のおかげで京子と結衣にも会えたし礼を言っておかないといけないね」

あかり「? お礼?」

京子「やー、キュゥべえ。ちょっとお願いがあるんだけどいいかな?」

QB「なんだい? 願い事なら君が魔法少女になればなんでも叶うと思うよ」

京子「魔法少女になるのはまた後でね。今はちなつちゃんがどこに居るのかが知りたくてさ、キュゥべえはちなつちゃんがどこにいるか知らない?」

QB「ちなつかい? ちなつなら結衣と共にいるよ」

京子「へ? そうなの?」

あかり「えっ?」

QB「そうだよ」

京子「はぁ~~~、なんだよもう… あかりの時といい心配して損することばっかりじゃん…」

あかり「………よ、よかったぁ」

京子「でもなんで結衣と一緒に居るなら連絡もしないんだろ? というか結衣のやつちなつちゃんと一緒に居るならそう言えよな…」

あかり「ふ、二人とも病気で家の中で倒れているとかじゃ!?」

京子「…その可能性もあるね。キュゥべえ、二人の様子はどんな感じだった?」

QB「様子かい? そうだね、結衣は病気ではなかったよ。だけど僕には理解できない行為をしたね」

京子「? どういうこと?」

QB「結衣とちなつは一つになったんだよ、結衣が言うにはちなつを愛するが故の行為らしいよ」

京子「はぁ!?」

あかり「愛する行為?」

QB「そうだよ、具体的に言うとだね…」

京子「ちょ、待った! 待った!」

あかり「京子ちゃん? どうしたの?」

QB「?」

154 : 以下、名... - 2015/11/21 18:12:29.29 0VuLQBUg0 103/395

京子(一つになるとか、愛する行為って… たぶんアレだよね… っていうかあの二人いつの間にそんな関係に!?)カァァ

京子(あかりは…)チラッ

あかり「?」

京子(やっぱ理解してないよね)

京子(うわぁぁぁ、それだったら昨日の結衣の態度も頷ける。あの時ちなつちゃんとシてたって事だよね… うわぁぁぁぁぁ!?)カァァ

あかり「京子ちゃん? 顔赤いけど、大丈夫?」

京子「だ、大丈夫! 大丈夫だよ!」

あかり「よかったぁ」

あかり「それでキュゥべえ、さっきの話ってどういうことなの?」

京子「だから待ったーー!! あかりは聞かなくても大丈夫だから! キュゥべえももう話さないで大丈夫だからね!」

QB「? わかったよ」

あかり「えぇっ!? なんであかりは聞いちゃ駄目なのぉ!?」

京子「あかりにはまだ早いんだ。その内あかりにも知る日が来るだろう。その日まであかりは知らなくてもいいことなんだ」

あかり「そ、そんなぁ…」

京子「これでよくわかったよ、二人とも大丈夫、連絡つかないのも無理ないよ。たぶん少ししたらまた電話が来ると思うよ」

あかり「そうなの…?」

京子「そうだよ! だからあかりも二人に連絡するのは控えるんだぞ!」

あかり「うん…」

あかり「…やっぱり二人が何をしているのか気になるよぉ、京子ちゃん教えてよ!」

京子「ダメ」

あかり「京子ちゃんのケチ~~」プクー

QB「…………」

その後、あかりは何度も京子に質問したが、のらりくらりと京子は質問を回避し続けて、あかりは聞くのを諦めた。
QBも京子に魔法少女の契約を勧め続けたが、京子は全員そろってから魔法少女になると言い、QBもその言葉を聞き引き下がった。

そして、2日が経過した。

155 : 以下、名... - 2015/11/21 18:13:53.23 0VuLQBUg0 104/395

2日後 放課後 ごらく部


京子「流石にこれ以上は見過ごせない」

あかり「もう4日もだもんね…」

京子「私が二人の家族を誤魔化すのにどれだけ苦労したか… 誤魔化すのももう無理だし、何より私達に連絡もせず部屋に引きこもってるのは許せん!」

京子「というわけで、結衣の家に行くぞ! 二人を引っ張り出してやる!」

あかり「合鍵も結衣ちゃんもお母さんに預かったもんね」

二人は部室を出て、結衣の家に向かって歩き始める。

京子(ったく、何日も何やってんだよ…)

京子(結衣とちなつちゃんがそんな関係になってるって冷静に考えたら、なんか胸の奥のほうがモヤモヤするし、イライラしっぱなしだ)

京子(絶対に結衣に文句を言ってやる! そうだよ、結衣は昔から私の事を守ってくれてたんだし、これからも私を守ってくれないと駄目なんだから)

京子(たとえちなつちゃんでも結衣を独り占めするなんて許さないんだからな。そこんところはっきり言ってやらないと)

京子は考え事をしながら、あかりとの会話を適当に流し結衣の家まで辿り着いた。
京子は合鍵を使って扉を開けようとしたが、あかりを見て少し思いとどまった。

京子(勢いに任せてあかりも連れて来ちゃったけど、このまま入ってもし二人が… し、してたらまずいよね…)カァァ

あかり「京子ちゃん? どうしたの?」

京子「あかり、お前はここで待機だ!」

あかり「えぇっ!? な、なんでぇ!?」

京子「なんででもだ、私が先に入って二人の様子を見てくる、それまではここで待機してるんだ」

あかり「んもぉ~~、この間からあかりの扱い酷くない!?」

京子「なんとでも言え! 何を言われようが私はあかりを連れて行くことはないと宣言しておこう!」

あかり「そんな事宣言しないでよぉ~~」


あかりはしぶしぶ京子の言うことを聞き、その場で待つことにした。
それを見てほっとした京子は、扉に向き直り合鍵を使って結衣の部屋の扉を開ける。
トビラはギィィと軋むような音を上げ開き、薄暗い室内を夕暮れの光が差し込み内部を照らす。
京子は良く知った結衣の部屋から纏わりつくような寒気に襲われ一瞬戸惑うが、頭を振り部屋の中に足を踏み入れた。
部屋の扉を閉める直前に、あかりに念を押すように目配せし、そのまま扉を閉めた。

156 : 以下、名... - 2015/11/21 18:14:54.50 0VuLQBUg0 105/395

5話終わり。

161 : 以下、名... - 2015/11/22 19:42:23.32 JY0hRryb0 106/395

6話


結衣の部屋


京子は結衣の部屋に入り、一旦奥の様子を伺った。
するとリビングのほうから声がするのに京子は気がついた。

京子(結衣の声… すごいボソボソと何か言ってる…)

京子(こりゃ、ほんとにちなつちゃんと… うぅぅぅぅ、もーー! なんかムカムカする!!)

京子(いかん、いかん… とりあえず二人に気付かれないように様子を…)

京子は物音を立てないように薄暗い部屋を進み、リビングのドアを少し空けて中を覗く、するとすぐ結衣の姿を見つけることが出来た。
京子が目にしたのは、後姿しか見えなかったが四つんばいで一心不乱に何かをしながら呟き続ける結衣の姿だった。

京子(? 何をやってるんだろ?)

結衣が何をしているか良く確認する為に京子はさらにドアを開いた。
すると部屋から異様な生臭さが漂ってきて京子は顔をしかめる。

京子(な、何? この匂い…)

京子(結衣のやつほんとに何を………)

その時、京子の耳にようやく結衣の声が聞き取れた。

結衣「ちなつちゃん、本当に綺麗だ… ずっとこうして眺めていたい位だよ」

結衣「だけど駄目だよね。ちなつちゃんがせっかく残してくれた身体なんだ、ちなつちゃんと一つになれたんだから、残してくれた身体とも一つにならないといけないよね」

結衣「あぁ… 本当にもったいない、もうこれだけしか残っていないなんて… ゆっくりと食べていたのにあっという間になくなっちゃう」

京子(??? 結衣…?)

結衣「食べきる前にもう一度見ておかないとな」

京子「ッッッーーーーーーーーーーーーーーーーー!?」

162 : 以下、名... - 2015/11/22 19:43:42.59 JY0hRryb0 107/395

結衣が体勢を変え、座りなおし四つんばいの状態からずっと持っていた何かを持ち上げ目線の位置まで持ってきた。
その位置まで持ってきたことにより、京子の視界にも結衣が持っていたものが入った。

京子も良く知っているピンクの髪。
よく京子をジト目で見ていた目は見開かれたままで、京子はその見開かれた目と視線が合った。


それはちなつの生首だった。


京子はその光景を見て自分でも気がつかないうちに座り込んでいた、腰を抜かして立てなくなってしまっているようだった。
半開きだったドアも離して廊下で座り込み、自分の見ている光景はいったい何なのかと、結衣は何をしているのかと、結衣のもっているソレはいったい何なのかと、様々な何故が止め処なく浮かんでくる。
京子が混乱の境地に達していると、物音に反応した結衣が首だけを動かし京子のほうを向いた。

京子「ゆ、ゆ、ゆ、ゆ、ゆ…」

結衣「お前か、邪魔をするな、さっさと消えろ」

京子「ひっ」

結衣の京子を見る目は何の感情もこもってなく京子に言い捨てた後、ちなつの首を見る結衣の顔は恍惚とした表情で頬を赤らめていた。

そのまま結衣はちなつの頬に口を近づけたかと思うとそのまま噛み付き肉を喰らい咀嚼し始めた。

京子はそこまでが限界だった。
結衣が恍惚とした顔で、ちなつを食べていく様子をまじまじと見てしまった京子は白目をむきその場に倒れた。
結衣は京子を気にすることもなく、ちなつを食べ続けた。

163 : 以下、名... - 2015/11/22 19:45:11.68 JY0hRryb0 108/395

結衣の家の前


あかり「もう夜になっちゃったよぉ…」

あかり「京子ちゃんが家に入ってからもう1時間かなぁ?」

あかり「………もしかして、あかり忘れられてる?」

あかり「う~、京子ちゃんにはああ言われたけど、もう待ってられないよぉ」

あかり「結衣ちゃん、おじゃましま~す」ガチャ

あかりは結衣の家に入り、すぐ京子が倒れているのを見つけた。

あかり「京子ちゃん!?」

あかり「京子ちゃん! 大丈夫!?」ユサユサ

京子「んぁ…? あれ? あかり? 私、どうしてたんだっけ…?」

あかり「よかった… 京子ちゃんが倒れてたからびっくりしちゃったよぉ」

京子「倒れて? あれ…? ここって結衣のい………え………?」サァァァァ

京子は気絶する前の記憶が蘇ってきて急激に顔色を悪くし始めた。
あかりはそんな京子を見て不思議な顔をするが、リビングに結衣の後ろ姿を見つけ顔を綻ばせ結衣に話しかけた。

あかり「あっ、結衣ちゃん! もぉ~、あかり心配しちゃったよ? 4日もどうしちゃったの?」

結衣はあかりの問いかけに反応せずに一心不乱に何かをしていた。

あかり「あれ? 結衣ちゃ~ん? …何してるのぉ?」

あかりは結衣が何をしているのか気になり結衣の元に歩き始める。
京子は目を見開きあかりを止めるため、あかりの服を掴もうとするがその手は空を切った。

京子「あ、ああっ、あかっ… まっ…」

あかり「結衣ちゃん? やっぱり調子悪いの? 大丈夫?」

京子の静止の声も空しくあかりは結衣の肩をさわり安否を気遣った。
結衣はあかりが触れても気にせず無我夢中で何かを続けていた。

あかり「何か食べてるの? あっ、もしかして抹茶………………」

あかり「……………ふぇ?」

164 : 以下、名... - 2015/11/22 19:46:47.19 JY0hRryb0 109/395

あかりは結衣が何を食べているか見る為に、肩越しから結衣の顔を覗き込んだ。
そして、あかりの目に飛び込んできたのはちなつの顔を貪り喰っている結衣の顔だった。
結衣は目だけが血走り、息を荒げてちなつを食べ続けている。
あかりは結衣の肩に手をかけたまま全ての動作を止め、結衣がちなつを食べ続ける光景を瞬きもせずに見続けていた。

数分結衣の部屋に咀嚼音だけが鳴り響いていたが、腰が抜けて立ち上がれなかった京子が部屋を這いずってあかりの元に辿り着き、あかりを引っ張り自分の下に引き寄せた。

京子「あかりっ、あかりっ!!」

あかり「…………きょうこちゃん?」

京子「あかり!! しっかりしてっ!!」

あかり「…あ、あははっ、また夢かぁ、ほんとに最近こわい夢ばっかり見ちゃう」

京子「あ…」

あかり「もぅ… なんであかりはこんな夢ばっかり見ちゃうんだろう、いやだなぁ…」

京子「あかりぃ…」

あかりは先ほど見た光景を脳裏に焼き付けてしまった。
そしてあかりの脳が導き出した答えは、先日の悪夢と同じくこれは夢、性質の悪い悪夢と結論付け意識を飛ばした。

京子の腕の中で意識を飛ばしたあかりを見た後、京子は再び結衣がちなつを食べている姿を見てしまった。

結衣「…………」クチャクチャ

京子「うぁ…」

結衣「…………」クチャクチャ

京子「あああぁぁ…」

結衣「…………」クチャクチャ

京子「うああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁああぁぁぁぁ!!!!!」

京子は叫び声を上げ、目の前が真っ白になった。
そして京子はその場から逃げ出した。

それからどうしたのかは京子の記憶から抜け落ちていたが、次に京子が気がついたときには自分の部屋のベットの上で布団に包まり震え続けていた。

165 : 以下、名... - 2015/11/22 19:47:51.50 JY0hRryb0 110/395

京子の部屋


京子「違う、違う、違う、違う」

京子「あんなの現実なわけない、これは夢、夢なんだ」

京子はあかりと同じように悪夢だと結論付けようとするが、先ほどの光景が生々しく京子の脳裏に蘇ってきて、吐き気を催す。
京子はトイレに駆け込み胃の中のものを全て吐き出してえずいた。

京子「うげぇっ、げほっ、げほっ」

京子「うぇっ… 違う、あんなの現実のわけないって… うっ…」

京子「はぁっ、はぁっ… そうだよ、あんなこと起こる分けないって… 結衣がちなつちゃんを… うぇぇぇっ」

しばらく吐き続けていた京子だったが、出るものも無くなりふらふらと自分の部屋に戻り、ベットに身体を投げ出すように倒れこんだ。

京子「誰か、助けて…」

京子「嫌だよ… こんなの嫌だよ… 誰か助けて… お願い…」

京子がベットの上で朦朧とする意識の中、助けてと呟き続けた。
するとその言葉を聞き届けたのか、どこからとも無く声が聞こえてきた。

QB「助けが必要なら、僕が相談に乗るよ?」

京子「あ……… キュゥべえ………」

QB「随分と憔悴しきっているけど何があったのかな?」

京子「結衣が… 結衣がちなつちゃんを… なんで… 違う、あれは夢…」

QB「ああ、結衣とちなつを見たのかい? 僕には理解できなかったけど、人間は愛というものを表現するのに他人を捕食するものなのかな?」

京子「ちがっ! あれは夢…」

QB「夢じゃないよ、現実に結衣はちなつの身体を食べきったんだよ?」

京子「嘘、嘘嘘嘘! そんなの嘘!」

QB「嘘じゃないって、今はちなつの血が染み付いた布を舐め続けているよ?」

京子「うぁぁ… なにそれ… なんでそんな事を…」

166 : 以下、名... - 2015/11/22 19:49:34.03 JY0hRryb0 111/395

QB「結衣がなぜそんな事をしたのかという回答は出来ないけど予想は出来るよ?」

京子「…どういうこと?」

QB「そうだね、恐らく結衣はちなつの願いによって精神を歪められてしまったと推測できるね」

京子「ちなつちゃんの…?」

QB「そうだよ、ちなつの願いは『結衣がちなつのことを愛する』というものだったのだけど、ちなつのとてつもない才能による願いのおかげで、結衣はちなつの事しか考えられない状態になってしまったと推測できるね」

京子「なに… それ…」

QB「実際僕が結衣と話そうとしても彼女は耳を貸してはくれなかったし、一緒にいたちなつが口を利いてくれたおかげで何とか結衣と話をして魔法少女になってもらうことが出来たんだ」

京子「は? 結衣も魔法少女…?」

QB「そうだよ、僕が契約の話をして願い事を聞いたら、結衣は何のためらいも無く『ちなつと一つになりたいと』言って、正しくその願いは叶って結衣とちなつの魂は一つになったよ」

京子「わかんない… 何を言ってるの? 一つになるとか、魂とか…」

QB「言葉の通りさ、前例は無かったけど実際に願いは叶った。これには僕達にも驚いたさ、なんせ人間の魂が混ざり合うなんて通常はありえないことだからね」

QB「おっと話がそれたね、ええと結衣とちなつの魂が一つになって、結衣は抜け殻となったちなつの身体を見続けたんだ、その時に色々と説明はしてあげたけど結衣が聴いていたかは分からないし、本能で理解をしていたのかもしれないけど結衣は目の前にあるちなつの身体は抜け殻だと理解したよ」

京子「わかんない… わかんない… 抜け殻とか、なにそれ…」

QB「言葉の通りだよ、魂が無い身体は抜け殻じゃないか。そのちなつの抜け殻を結衣は何を思ったのか食べ始めたんだ。ずっとちなつのことを愛しているとかちなつは自分のものとかちなつの残したものは誰にも渡さないとか言い続けていたよ。まったく人間の感情は理解できないね」

京子「もう… やめて…」

QB「わかったよ」

京子「うぅ……… なんで、なんでそんなことを…」

QB「それはちなつの願い事のことかな? それとも結衣の行動のことかな?」

京子「うぅぅぅぅ…」

QB「どちらにせよ、君はどうするんだい? 君の才能ならばどんな願い事もかなえることは可能なんだよ?」

京子「…………」

QB「その為に助けを呼んだんじゃないのかい?」

京子「願い事…」

QB「そうだよ、君は何を望むのかな?」

京子「…………」

京子はうまく働かない頭で結衣のことを思い浮かべていた。
幼い頃から見てきた結衣、困った顔もしていた、嫌そうな顔もされたこともある、だけどいつも最後は笑顔だった。
いつも見てきた結衣はあんな狂いきった顔をしてはいなかった。
そしてただ一言ぽつりと呟いた。
それは京子が無意識に呟いた言葉だった、だがそれは京子が望んでいることでもあった。


京子「あんな結衣見たくない… 元の結衣に戻ってほしい…」


その言葉でQBとの契約は成立してしまった。

京子の願いは叶う。

ちなつの願いによって変わってしまった結衣は京子の願いによって元の結衣に戻る。

友達思いで少し恥ずかしがりやな心の優しい少女に、

戻った。

167 : 以下、名... - 2015/11/22 19:50:38.36 JY0hRryb0 112/395

6話終わり。

178 : 以下、名... - 2015/11/24 02:08:41.93 y81nSKis0 113/395

7話


結衣の部屋


結衣「あれ?」

結衣はどす黒いシーツから顔を離し辺りを見渡す。
するとすぐ隣にあかりが倒れているのを見つけ、慌ててあかりを抱き起こした。

結衣「ちょ、あかり!?」

あかり「うぅ…ん…… あ… ゆ…いちゃん………」

結衣「大丈夫!? 何かあったの!?」

あかり「あぁ……… よかった、やっぱり夢だったんだぁ…」

結衣「え?」

あかり「あかりね、またすごくこわい夢を見ちゃって…」

結衣「夢って… おいおい、いつの間に私の家に来て寝てたんだよ」

あかり「………結衣ちゃんの家?」

結衣「そうだよ? そういえばさっき京子がいたよね? 京子と一緒に来たの?」

あかり「京子ちゃん? 京子ちゃんはあかりと一緒に結衣ちゃんの家に来て… それで…」

結衣「やっぱりあいつと一緒に来たのか、どうやって私の家に… もしかしてあいつ私の知らない間に合鍵でも作ったのか? 本当にしょうがないやつだな…」

結衣「はぁ… それはまたあいつに問い詰めないとな。って、外真っ暗だね、あかりは京子と一緒に泊まりに来たの?」

あかり「あれ…? 違うの… あれは夢なのに… あれ? 結衣ちゃんの家に来たのは…」

あかりは混乱しながら結衣に言った。

破滅への一言を。




あかり「ちなつちゃんを探しに」



179 : 以下、名... - 2015/11/24 02:10:19.42 y81nSKis0 114/395

あかりの口から出た言葉は結衣の耳を通り、脳の記憶を司る部分に到達し結衣の頭の中で記憶が蘇る。

ちなつの姿。

ちなつとの思い出。

そして、この数日間の記憶。

自分が一体何をしたのかということを。

ちなつに何をしてしまったということを。

結衣「あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ」

あかり「結衣ちゃん…?」

結衣「うぁぁあああ… あぁぁああぁぁあああ………」

鮮明に浮かび上がる記憶。

ちなつを呼び出した後、自分の部屋に来たちなつを見た瞬間にちなつの全てを自分のものにしたいという感情に突き動かされ、ちなつの身体を貪った。
ちなつを抱き、ちなつの身体を味わい、何度も何度も絶頂に達し、達するたびにちなつをさらに自分のものにしたいという気持ちが湧き出て、ある思いが結衣の中で芽生えたときに白い生物が結衣たちの前に現れた。

どんな願いも叶える事が出来る。
その言葉に結衣は、芽生えた思いを吐き出した。
ちなつと一つになりたいという願い、愛しいちなつを本当の意味で自分のものにしたいという思い。
そしてその願いは、ちなつのソウルジェムと結衣のソウルジェムが一つになるという形で叶った。

その時、結衣はちなつと一つになれたと理解した。
結衣は歓喜する、ちなつと自分は一つになり愛しいちなつを永遠に自分のものに出来たと。

だが、結衣の目の前にちなつの身体だけが残されていた。
結衣は残された身体を見て狂喜する。
この身体も自分のものに出来る、今度は願いなんかではなく自分の手でちなつと一つになれるのだと。

狂った思いを現実に、結衣はちなつの身体を食べ始める。
ちなつの身体を飲み込むたびに結衣に絶頂が訪れた。
結衣がちなつを食べている間、結衣は楽園に居る気分だった、ちなつの身体を食べきった後はちなつの血が染み付いたシーツを舐めまわしていたがそれでも結衣は天にも上る気分で舐めまわしていた。

それは唐突に終わりを告げる。

そして、地獄が始まった。

180 : 以下、名... - 2015/11/24 02:11:14.78 y81nSKis0 115/395

結衣「あああああああああああああああああ!!!!」

あかり「ゆ、結衣ちゃん!?」

結衣「あがぁっ!! う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」

結衣は頭を掻き毟りながら転げまわった。
あかりは今までに聞いた事も無い叫び声をあげる結衣をどうにか助けようと手を伸ばす。

あかり「結衣ちゃん! どうしちゃったの!?」

結衣「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!! あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!」

あかりは暴れまわる結衣を抱きかかえ、結衣を落ち着かせようとするが、結衣の身体の違和感に気がついた。
結衣の腹は尋常じゃないほど膨れ上がり、はち切れる寸前まで膨らみ切っている。
結衣は暴れ続けるうちに腹を圧迫される体勢になってしまい、あかりに向かってその腹に収まっていたモノを吐き出した。

結衣「ぐはぁぁっ、うげぇぇぇぇっ」

あかり「!? きゃぁぁぁぁぁ!?」

結衣が吐き出した内容物は、真っ赤な液体から始まり、肉片、骨の欠片を止め処なく吐き出し続け、数分間吐き出し続けていた。
あかりはなにが起きているかも分からなかったが、それでも結衣を放すことなく抱きとめ続けた。
やがて結衣の嘔吐が止まり、結衣が力尽きてあかりにもたれかかり、あかりも結衣を支えきれずに倒れこむ。

結衣「うぁぁぁ……… ぁぁぁぁぁぁぁぁ………」

あかり「ゆい… ちゃん… へいき…?」

あかりは結衣の嘔吐物にまみれ目も開けられないでいたが、自分にもたれ掛かり呻き声をあげつづける結衣を純粋に心配し声をかけた。

あかりは少し顔を拭って、目を開けてしまった。

181 : 以下、名... - 2015/11/24 02:13:26.87 y81nSKis0 116/395

そこには、おびただしい量の血と肉片と骨が散らばっており、この惨場を見たあかりは叫び声をあげた。

あかり「ひっ!? ひぃぁぁぁぁぁぁぁ!?」

あかり「なに!? なんなの!? これってなんなのぉぉ!?」

結衣「げほっ…」

あかり「ゆ、ゆいちゃん!? ゆいちゃん!! たすけてっ、こわいっ、こわいよぉぉぉぉ」

結衣「ごほっ」ポトリ

あかり「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」

あかりは結衣に助けを求めるが、結衣は絶望しきった顔でどこかを向いていた。
少し咳き込んだ結衣は口から何かを吐き出した。
結衣が吐き出したものをあかりは見て再び叫び声をあげる、あかりが見たものは水色の瞳の目玉であった。
あかりは先ほどの悪夢がフラッシュバックし、パニックに陥った。

あかり「ひぃぃぃ!! やぁぁぁっ!! いやぁぁぁぁっ!!」

結衣「…………」

あかり「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! やだぁぁぁぁぁぁ!!」

結衣「…………」

あかりは血の海でもがき続けた。
結衣が覆いかぶさっているため満足に動けずにジタバタと手と足を動かし続ける。
パニック状態と陥ったあかりは結衣を退かそうともせずにただ叫びもがき続けていた。

あかりの悪夢は永遠に続くかと思われたが、一時間が経過する頃に唐突に終わりを告げた。

あかりと結衣の近くにあったダークイエローと水色が螺旋状に混ざったソウルジェムが黒く濁りきり、濁りきったソウルジェムの中から巨大なグリーフシードが出現した。

グリーフシードが鈍く輝いたかと思うと、グリーフシードを中心に嵐が巻き起こる。
あかりと結衣は嵐に巻き込まれ吹き飛ばされた。
結衣の部屋の窓を突き破って二人は空に放り出されてしまった。

結衣の部屋は嵐の衝撃で崩れ、そこに残ったグリーフシードから巨大な魔女が顕現した。
その魔女は、下半身は蛇のような胴体で繋がり、上半身は二つに分かれた魔女だった。

片方の上半身は騎士のような姿をしており、片方の上半身は中世の姫のような姿で、その魔女は産声を上げるように叫び、その叫び声で周囲のものが全て吹き飛んだ。

魔女は動き始める、何かを探すように動き始めた。

182 : 以下、名... - 2015/11/24 02:14:07.72 y81nSKis0 117/395

7話終わり。

186 : 以下、名... - 2015/11/26 01:50:34.69 n26z0vus0 118/395

8話


京子の部屋


京子は呆然と自分のソウルジェムを見ていた。

京子「えっ…? 私…」

QB「おめでとう、これで君も魔法少女だ、君の願いも叶ったことだろう」

京子「願いって… 私願いなんてしてないよ…?」

QB「何を言っているんだい? 確かに君は願ったじゃないか、「元の結衣に戻してくれ」ってね」

京子「そんな… 何言ってるの? 私そんなこと…」

QB「言ったよ」

京子は呆然としながらソウルジェムを見続ける。
しばらく固まっていた京子だったが、猛烈に嫌な予感を感じ取り、顔を上げふらつきながらどこかに行こうと動き始めた。

京子「………結衣、結衣のところに行かないと…」

QB「結衣の元にかい?」

京子「そうだよ… 結衣の所に行って… 何とかしないと…」

QB「何とかって何をするんだい?」

京子「………うるさい! 結衣が… 結衣が…」

京子がふらふらと部屋を出ようとしたところで、QBが京子を呼び止めた。

QB「………少し待ってくれないかな?」

京子「…何? 私は結衣の所に…」

QB「その結衣の様子を見せてあげるよ」

京子「え………」

QBの言葉に京子は振り向きQBの目と視線があってしまった、京子にひどい倦怠感が押し寄せると共に、京子の脳裏に結衣の部屋を上から覗き込んだような光景が映し出された。

187 : 以下、名... - 2015/11/26 01:51:22.60 n26z0vus0 119/395

京子「あ……… これって………」

結衣はあかりを抱きかかえて話をしていた。
声もはっきりと聞こえ京子は少し表情を和らげる

京子「結衣… いつもの結衣だ…」

京子「あ、あはは……… そうだよ、あかりと一緒に泊まりに行ったことにして結衣に小言を言われよう。それで、今日は…」

京子はあかりと普通に話している結衣を見て、半泣きな笑顔を見せ安堵する。
しかし、あかりと話していた結衣は突然動きをピタリと止め、身体全体を振るわせ始め、絞り出すような声が徐々に大きくなっていった。
その時に京子は結衣の身体の異変に気付く。
結衣の着ている服はどす黒い色で染まりきっており、上から見た結衣の姿はその腹部のみが異様に膨らみ、他の部分とのアンバランスさが浮き出ていた。

京子「な、何? 結衣が… どういう…」

そして、結衣の表情が徐々に崩れ、京子の見たことのないような顔に変化して、結衣は絶望の叫びをあげた。

京子「!?」

京子「ゆ、結衣!? 何!? 結衣!! 結衣ぃぃぃっ!!」

京子は結衣がもだえ苦しむ姿を目の当たりにし、脳裏に映る光景に手を伸ばし結衣に触れようとする。
しかし、京子の手は空を切り続け、京子が結衣に触れることは無かった。
そして、脳裏の結衣が暴れまわっていたかと思うと、結衣はあかりにおびただしい量の血と肉と骨片をぶちまけた。

京子「ひぅっ!?」

京子「ち、血? う、嘘!? 嘘ぉぉぉ!? ち、違うっ! こんなの嘘っっ!!」

QB「嘘じゃないよ、これは紛れも無い現在の結衣の姿だよ」

京子「やめてぇっ!! 違うっっ!! こんなの信じないっっっ!!」

QB「でもこれは現実だよ」

京子「うぁぁぁぁぁぁぁ!! 違う、違うのぉぉぉぉ!!」

京子が目を閉じ耳を塞いでも、脳裏に鮮明に映し出される光景は京子の精神を削っていく。
京子は布団に包まり叫び声を上げ続けるが、結衣が吐き出し続ける光景は途切れることはなく京子の脳裏に映し出され続けた。

やがて結衣の嘔吐がとまり、あかりと共に血の海に倒れこみ一旦静寂が訪れる。

京子「いやぁぁぁぁぁ!! 結衣ぃ、やだぁぁ!! やだよぉぉぉ」

京子は血を吐き続けた無残な結衣の姿を見て号泣する。
泣き続ける京子は頭の中の結衣に手を伸ばし続けるが京子の手は届くわけもなく、ただ滑稽に手を振っているようにしか見えなかった。

188 : 以下、名... - 2015/11/26 01:53:17.97 n26z0vus0 120/395

結衣を見続けていた京子は別の方から聞こえてきた叫びに意識を向けた。
今度はあかりが恐怖に引きつった顔をしながら叫び、血の海でもがき続けていた。

京子「あ、あかりっ!?」

京子が見たあかりの姿は既に血で染まっていない箇所はなく、ただひたすらに叫びもがき続け、結衣の悲惨な姿を見ていた京子はあかりの姿も同じように死に逝く前の断末魔の様に見えた。

京子「あかりぃぃぃ!! なんでっ!? もうやだっ、やだぁぁぁぁ!!!!」

あかりはそのままもがき続け、ただひたすらに助けを求めて叫ぶ。
そして京子はあかりの叫びを聞いた。

あかり『いやぁぁぁぁぁぁぁ!! 京子ちゃん!! たすけてぇぇぇぇぇ!! あぁぁぁぁぁぁぁ!!』

京子「!?」

あかりが自分に助けを求める叫びを聞いた。

京子「うぁぁぁ… あかりぃ…」

あかり『やだぁぁぁ!! だれかぁぁぁぁ!! 京子ちゃん!! 結衣ちゃん!! ちなつちゃん!! たすけてっ!! たすけてぇぇぇっ!!』

結衣『…………』ビクンッ

あかりが叫んでいると何かの言葉に反応した結衣が身体を大きく震わせ、全てに絶望した顔で口を動かした。
声は出ていなかったが京子は結衣が何を言ったのか理解した。

結衣は、

『た・す・け・て・き・ょ・う・こ』

と言っていた。

京子「あぁぁ… 結衣ぃ………」

あかり『うぁぁぁぁぁぁん!! あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』

京子「あかりぃ………」

あかり『たすけてぇぇぇぇぇぇ!! 京子ちゃぁぁぁぁん!!』

結衣『…………』パクパク

京子の脳裏に過去の記憶が呼び起こされる。
二人に守られていた自分、いつも助けを求めるのは自分だった。
そんな京子を二人はいつも守ってくれていた、助けてくれていた、だが今は違う。

二人は京子に助けを求め続けている。
あかりの悲痛な自分に助けを求める声、そして結衣が絶望した顔で声も無く自分に助けを求める姿を見て、京子は拳を握りこみ叫んだ。

京子「うわあああああああああああああああああああああああああ!!!!」

京子の目は涙に濡れていたが、先ほどまでの絶望に浸った目ではなく、強い意志を宿した目に変わっていた。

189 : 以下、名... - 2015/11/26 01:54:10.49 n26z0vus0 121/395

QB「…どうしたんだい?」

京子「………行かないと」

QB「行くって結衣とあかりの元に行くのかい?」

京子「…そうだよ、私が二人を助けないと」

QB「もう無理なんじゃないかな?」

京子「うるさいっ!! 無理なんかじゃない!! 私が助けるんだっ!!」

QBの言葉は京子を精神をさらに燃え上がらせた。
二人を助けたいという京子の想いに反応し、ソウルジェムは青色の輝きを放つ。
その輝きは止まることを知らず、闇夜を切り裂くように強烈な光を放った後、一瞬のうちに京子を包み込み魔法少女の姿へと変えていた。

魔法少女と変身した時に、京子はQBから受けていた影響を全て無効化した。
京子は自分の力を正しく理解した。

QB「これは… そんな馬鹿な…」

京子「これが私の…」

QB「………なんて力なんだ」

京子「二人とも待ってて、今行くから!」

QB「…………」

京子はそのまま家を飛び出し、結衣の家に向かう。
二人を助けるため、新たな力を持って京子は夜の町を駆けだした。

京子の部屋にはQBが残っていた。

QB「まさか、魔力支配を強制解除するなんて… 彼女の願いによる特性から来る魔法か… 前例が無いわけではないけど、ここまで強力な力とはね」

QB「まあ、時間は稼げたし問題ないか」

QB「しかし、確かに絶望に落ちかけていたのに、何故彼女は再び希望を宿したんだろう?」

QB「やはり人間の感情は理解できない…」

QB「だけど、彼女の希望の源はあの二人に関係がありそうだな、それならば…」

QB「次は別の方法で試してみるか」

QBは京子の部屋から姿を消す、その瞳の奥で3人の姿を捉えながらどこかに消えていった。


結衣の家に向かい全力で走っていた京子は、ものの数分で結衣の家まで辿り着いた。
夜の町を駆け抜け、空を飛び、最短距離で結衣の家まで到達した…が、


京子は間に合わなかった。


京子が遅かったわけではない、QBが京子に結衣の様子を見せる際に体感時間を狂わせていた。
映像を見ている間に、時は過ぎ京子に助けを求めていた結衣は絶望しきってしまった。

京子が結衣の家の前に辿り着いた時に見た光景は、二人が窓を突き破り吹き飛ばされ、空を舞う瞬間であった。

190 : 以下、名... - 2015/11/26 01:54:43.32 n26z0vus0 122/395

8話終わり。

199 : 以下、名... - 2015/11/28 20:36:28.90 /jgxlXe+0 123/395

9話


京子「結衣っ!? あかりっ!?」

結衣とあかりは木の葉のように宙に舞っていた。
京子は二人を助けるため空を駆けようとするが、京子が飛び上がろうとした瞬間にあたり一面を覆う衝撃波が発生した。
だが京子に衝撃波が到達する直前に京子の身体が淡く光り、衝撃は京子に到達することは無かった。

京子「今度は何!? いや、それよりも二人は!?」

二人は今の衝撃波に吹き飛ばされたようで、二人の姿を見失ってしまっていた。
京子は二人がどこに飛ばされてしまったのか確認しようと周囲を見渡したときに巨大な異形の姿を発見する。

京子「な、何? あの化け物…」

京子が今まで見たこともないような大きさで、さらに禍々しい気配を発しているそれは京子の姿を見つけると、騎士側の頭が叫び声を上げ、再び京子に衝撃波が襲う。

京子(また魔力の塊!? さっきの衝撃波もあいつの仕業かっ!!)

だが、その衝撃波は再び京子に到達する前にかき消された。

京子(っ!? やっぱり私の力って… さっきもキュゥべえからの魔力を消したみたいに、魔力を打ち消すことが出来るみたい)

京子(いけない、こんなことを考えてる前に二人をっ!)

京子が頭を振り、双頭の魔女を無視して二人を探そうとしたが、騎士側の魔女の手が京子に掴みかかろうと伸びてきた。
京子はそれに気付き咄嗟に身をかわしたが、息つく暇も無く姫側の手も伸びてきて京子はそれを回避する為に飛び上がった。

京子「っ~~ 邪魔しないでっ! 私は結衣とあかりを助けないとっ!」

騎士魔女「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」

京子「くっそぉ!! 邪魔… すんなぁっ!!」

200 : 以下、名... - 2015/11/28 20:37:51.37 /jgxlXe+0 124/395

京子が二人を助けると叫んだ瞬間、騎士魔女は唸るような叫びをあげ再び京子に向かって手を伸ばしてくる。
京子は今度は伸びて来た手を、右手に持っていたステッキを巨大なハンマーに変化させ叩きつけた。

騎士魔女「AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」

姫魔女「AAAAAAAAAAAAAAAAA!!」

京子「な、なんなの? 化け物同士が絡み合ってる?」

京子に手を潰された騎士魔女は聞き様には悲痛な叫びをあげ、それを見た姫魔女は騎士魔女の潰された手に触れる為に騎士魔女に纏わりつく。
京子は魔女同士が絡み合っている隙に、逃げ出そうとするが、逃げようとする京子を見た姫魔女が今度は胴体も伸ばし襲い掛かってくる。

京子「いっ!?」

姫魔女「UAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」

京子「こんなことしてる暇ないってのにっ!!」

姫魔女「AAAAAAAAAAAA!!!!」

京子「邪魔っ! 私に近寄るなっ!!」

姫魔女「AAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!」

京子が姫魔女の攻撃を避けながら、ハンマーで牽制していたときに頭の中にQBの声が聞こえてきた。

QB『苦戦しているようだね』

京子「!? キュゥべえ!? ちょっと、今、話しかけ、ないでっ!!」

QB『おっと、それはすまなかったね。だけどあかりが危険だからこうやって連絡をしてあげているんだけどな』

京子「!? なにっ、それっ!?」

QB『さっき吹き飛ばされたときに怪我をしたんだよ、このまま放っておくと危険だよ』

京子「なっ!?」

QB『早くその魔女を倒してあかりを助けてあげないといけないんじゃないかな? 君はあかりを助けるんじゃなかったのかな?』

京子「こいつっ! 魔女だったの!?」

QB『そうだよ、僕から伝えることは以上だよ』

京子はQBに出会ったときに魔女の説明を受けていた。
初めて目の当たりにする魔女を見て、QBの説明以上にとんでもない存在と京子は認識した。
そして今、あかりの危機もQBから伝えられ、目の前で行く手を阻んでいる魔女に向かって叫ぶ。

201 : 以下、名... - 2015/11/28 20:38:37.65 /jgxlXe+0 125/395

京子「邪魔しないでよっ!! あかりが危ないんだよっ!! 私に構わないでっ!!」

姫魔女「UAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」

京子「くっそぉ!! お前達のせいであかりや結衣が吹き飛ばされて…」

辺り一体の惨状や先ほどあかりと結衣が衝撃波で吹き飛ばされたことを思い出し、京子は怒りの篭った目で魔女を睨む。

姫魔女「AAAAAAAAAAAAAAAAA!!」

姫魔女は変わらず京子を捕まえようと京子に襲い掛かり続ける。
魔女の顔は何かに怒っているようにも見えた。

京子「どうしても、私を、通さないって、言うなら」

京子「やってやるっ!!!!」

京子がハンマーを構え、姫魔女に向かい直った。
姫魔女は立ち止まった京子を見て、胴体を伸ばし京子の真正面から襲い掛かってきた。

そして京子との距離が数メートルにまで近づいたその時、姫魔女の瞳が怪しく煌き京子に何かを行う、しかし京子には何の影響も与えず京子のそばまで近づいた頭は無防備な状態を晒していた。

京子は姫魔女から何かの魔力を打ち消したことに気がつく、だがそれに特に気にすることもなく無防備な頭に向かってハンマーを振り上げ、

京子「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

振り落とした。

姫魔女「AAA… AAAAAAAA…」

京子「………えっ?」

京子がハンマーを振り下ろして姫魔女の頭を砕く瞬間に魔女は呻き声を上げた。

京子「い、今の一体…」

騎士魔女「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!」

京子「!?」

一瞬呆けていた京子だったが、騎士魔女の叫びによって意識が引き戻される。

202 : 以下、名... - 2015/11/28 20:39:17.51 /jgxlXe+0 126/395

騎士魔女は姫魔女が京子によって潰されたことに気づき叫び声を上げると共に体を振るわせ始めた。

次の瞬間、その体から無数の触手が出てきて、姫魔女の体を包み込んだ。

京子「っ!? 今度は何!?」

触手で包まれた姫魔女はそのまま騎士魔女の体に合わさり、騎士魔女の体が波打ったかと思うと姫魔女は取り込まれそこには一回り大きくなった騎士魔女のみが存在していた。

京子「う、嘘でしょ… 食べちゃったの…?」

騎士魔女「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」

京子「ひっ!?」

騎士魔女は京子に向かって姫魔女を取り込んだ触手を伸ばしてきた。
先ほどの光景を見ていた京子は、小さな悲鳴を上げ触手から逃げようと身を動かす。

京子「わ、私まで食べるつもり!?」

騎士魔女「AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」

京子「ふざけんな! やられてたまるかっ!!」

騎士魔女の触手を京子は避け続ける、一瞬の隙で京子は触手にからめとられ先ほどの姫魔女のように取り込まれてしまうと予想できていた。
だが、京子はあかりの危機、そして結衣もどうなっているか分からない状況にあせっていた。

京子(早くあいつをなんとかしないと、あかりが… 結衣が…)

京子(でも、あの触手に捕まったら… くっそぉ! どうすれば!?)

京子(まてよ… あいつって確か魔女… それならあの触手も…)

京子(試してみる価値は……… あるよね)

何かを思いついた京子は立ち止まり騎士魔女にあえて隙を見せた。
騎士魔女は隙を見せた京子に大量の触手を伸ばす。
その触手に捕まる寸前に、京子はまさに紙一重で触手を避けきった。

そして京子は触手を避けきる寸前で魔力無効化能力の範囲内に入った部分が消滅したことに気がついた。

京子(やっぱり! あの触手は魔力で作られているものなんだ!)

京子(あの魔女は… 触手を使い続けてる! 今、消滅したことには気付いていない…?)

京子(少し不安だけど、隙を見て触手を無効化して一撃であの魔女を仕留める!)

京子(仕留め損なったら、また何かしてくるかもしれないから、確実に一撃でやれるタイミングを見つけないと…)

京子(結衣… あかり… まってて、すぐこいつをやっつけてそっちに行くからね)

203 : 以下、名... - 2015/11/28 20:40:01.51 /jgxlXe+0 127/395

京子は魔女の隙を見ながら触手を避け続けた。
そして京子が上空に飛び上がり、魔女が触手を伸ばすタイミングが遅れた瞬間、京子は覚悟を決め集中する。

京子(ここだっ! 魔女も触手を伸ばしてくるだけ… いけるっ!!)

魔女の触手が京子に到達する直前に消滅していく。
それを見た京子はハンマーを振りかぶり、魔力を集中し始めた。
京子はハンマーに魔力を注ぎこみ、5メートル近い大きさのハンマーを作りだす。

そして、落ちる勢いそのまま魔女に向かいハンマーを振り下ろした。
ズンッという音と共に魔女の周囲が大きく陥没する。
騎士魔女はハンマーを受け止め抵抗していた。

騎士魔女「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!」

京子「ぐううううっ!!」

魔女の抵抗は強く、拮抗した状態となっていたが、京子はさらに魔力を使いハンマーの裏面から魔力を放出し推進力を上げた。

京子「どりゃああああああああああああ!!」

騎士魔女「AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!」

それにより拮抗状態は崩れ、

ズウゥンという鈍い音と共に地面が数メートル沈み込み、

魔女は潰れた。

京子「よっしゃ…………… えっ?」

京子が勝利を確信したその時、魔女が潰れた瞬間に京子の脳裏に結衣とちなつの姿が映った。

二人はとても悲しい顔をしていた、

二人とも泣いていた。

一瞬で通り過ぎたイメージだったが、京子の頭に二人の姿は残り続けていた。

京子「な、なんなの今のは…」

暫く呆けていた京子だったが、あかりと結衣を探さなければならないと思いだしてQBに二人の居場所を聞き出した。
二人の居場所を聞いた京子は、ハンマーを消して駆け出そうとしたが、先ほどまで魔女のいた場所に巨大な黒い宝石が残っていることに気がついた。

京子は引きこまれるようにその黒い宝石を手にし、あかりと結衣の元へと向かった。

204 : 以下、名... - 2015/11/28 20:41:56.90 /jgxlXe+0 128/395

9話終わり。
このQBさんはちょっと効率厨になってます。
この先もいろいろオリジナル設定がでてきますがあまり突っ込まないでください。

207 : 以下、名... - 2015/11/29 02:59:02.44 dzQ4uASn0 129/395

10話


京子はQBからのテレパシーであかりと結衣の位置を聞き向かう。
そして、京子はあかりの元に辿り着いた。

京子「あかりぃぃぃっ!!」

あかりは林の中にいた。
遠目から見て、あかりの頭が見えて京子は急いで駆け寄る。

京子「あかりっ!! 大丈夫!? あか………」

京子が見たあかりの姿は悲惨なものだった。
あかりは全身がどす黒い色で染まっていて、上空から落ちてきたときに木に引っかかったのか身体中擦り傷だらけになっていた。

そして、手足の骨は砕けているのか関節とは逆の方向に曲がり、腰の骨も砕けたようで上半身と下半身がねじれて、壊れて打ち捨てられた人形のようになっていた。
ボロボロのあかりを見て息を呑み立ち尽くす京子だったが、あかりが痛みを訴えずっと痛いと呟き続けていることに気がつく。

あかり「いたい、いたい、いたい…」

あかりは押し寄せる痛みに気絶することも出来ず、生き地獄を味わっていた。

京子「あぁ、あぁぁっ… ど、どうしよう、あかりっ、こんな、ひどい…」

あかり「うぁ、いたいぃぃ…」

京子「きゅ、救急車を呼ばないとっ… っ!? 何で電話が無いのっ!?」

京子はパニック寸前になっていたが、白い生物に声をかけられ後ろを振り向きすがる思いで話し始めた。

QB「やぁ、京子、間に合ったみたいだね」

京子「キュゥべえ!? あかりが、あかりが大変なの!!」

QB「そうだね、かなりひどい状態だね、目には見えないけど内臓も何箇所か破裂しているよ、このままじゃまずいね」

京子「そ、そんな事言ってないで助けてっ! お願い、魔法の力で何とかしてよっ!!」

QB「いやいや、僕には無理だよ」

京子「そんな… お願い、このままじゃあかりが…」

QB「君が魔法少女になる前なら願い事で怪我を治すことなんて簡単に出来たんだけどね、今となってはどうしようもないよ」

京子「うぅぅぅぅ… そ、それなら私が回復魔法を使う!! だから回復魔法を教えてよっ!!」

QB「魔法は魔法少女それぞれだから僕が教えることなんて出来ないよ、君が作り出すしかないと思うよ。でも、君の願いから生み出た特性は恐らく魔法や魔力の無効化だろう? 回復魔法なんて使えないと思うけど」

QBからあかりを助ける方法を聞くことは無理と悟った京子は、あかりに近づき魔力をあかりに放出し祈る。

京子「お願い… 良くなって…」

あかり「いた… あぅぅ… ぅぅぅ…」

京子の祈りが通じたのか、京子の放出していた魔力があかりに吸い込まれ始めあかりの擦り傷が徐々に治っていった。

208 : 以下、名... - 2015/11/29 02:59:38.37 dzQ4uASn0 130/395

QB「これは… まさかただ祈るだけで癒しの力を発動させているのか…」

QB「京子、君は凄いよ、誰に教わることも無く自分の望む結果を引き出すなんて、まさに天才というやつだね」

京子「…………」

あかり「うぅぅっ… きょうこ、ちゃん…」

京子はQBの言葉に反応することも無く、あかりに向かい癒しの魔法を使い続けた。
その様子を眺めていたQBだったが、再び京子に語り始める。

QB「本当に凄いね、このまま行けばあかりの怪我を癒すことも出来るかもしれない」

京子「…………」

QB「だけど、もう無理だよ」

京子「…………」

QB「あかりはもう間もなく魔女になる」

京子「…………」

京子「…は?」

QB「結衣と同じようにね」

京子「………な、に?」

QBの言葉に京子は呆然とした顔でQBを見る。
QBの言っている意味が理解できないのか、もう一度QBに聞き返す。

京子「な、なに言ってるの? 魔女になるってなにを…」

QB「だからあかりは魔女になるんだよ、結衣や結衣と同化したちなつと同じようにね」

京子「結衣が魔女って…? ちなつちゃんも? 意味わかんないよ… 意味、わかんないよ!!」

QB「説明は省略していたけど、君たちが魔法少女になった際に手に入れたソウルジェムは、穢れを溜め込み黒く濁りきったときにグリーフシードに変化し、魔法少女は魔女に変化するんだ」

京子「うそ…」

QB「嘘じゃないさ、君のソウルジェムを見てごらん、君も大分魔力を消費したし、穢れを溜めているはずだよ」

京子は自分のソウルジェムを震える手で取り出してまじまじとその色を見た。
京子のソウルジェムは7割近く色を黒く濁らせていた。

京子はハッと気付き、あかりの身体を触れ、ソウルジェムを見つけその色を確認した。
あかりのソウルジェムは既に真っ黒に近く濁りきる寸前の状態だった。

209 : 以下、名... - 2015/11/29 03:01:02.79 dzQ4uASn0 131/395

京子は混乱してうまく働かない頭でQBに叫んでいた。

京子「駄目!! あかりを助けてっ!! 色をきれいにしてよっ!! はやくっ!!」

QB「無理だよ、ソウルジェムの穢れを取るためにはグリーフシードを使うほか手は無いんだ。あかりはもう魔女になるよ」

京子がその言葉を聞いた瞬間、先ほどの黒い宝石の存在を思い出す。
すぐさま黒い宝石を取り出してあかりのソウルジェムに近づけた。
するとあかりのソウルジェムの穢れは黒い宝石に吸い込まれていき、暫くするとあかりのソウルジェムは穢れの無い紫色に戻っていた。

QB「………何故君がグリーフシードを」

京子「よかった… 黒くなくなった…」

QB「…結衣とちなつのグリーフシードを回収していたのか、説明もしていなかったのに回収してくるなんて予定外だな」

QBの言葉に再び京子は反応する。

京子「………なに? これが結衣とちなつちゃんのってどういうことなの…?」

QB「さっきも言ったじゃないか、結衣とちなつは魔女になったんだ、そして君が彼女達を倒してグリーフシードを回収してきたんじゃないか」

京子「………あの魔女が結衣とちなつちゃん?」

QB「そうだよ、正直驚いたよ、君一人で君と同等の力を持った二人が同化した魔女を倒してしまうなんてね。しかもかなりの余力を残してだから、本当に驚いているよ」

京子「………わ、私が結衣とちなつちゃんを?」

QB「先ほどの癒しの魔法といい、君は魔法の天才だね。恐らく君ならワルプルギスの夜さえ相手にならないだろうね」

京子「………結衣を ………ちなつちゃんを ………殺した?」

QB「そうだね。君が二人を殺したんだよ」

QBの言葉は京子の心を貫いた。
それと同時に、京子のソウルジェムの色が急速に濁り始める。
それを見たQBは再び話し始めた。

QB「おや、君のソウルジェムもかなり濁り始めているよ。グリーフシードで穢れを取らないのかい?」

京子「………なんで、なんでこんなことに」

QB「こんなこと? ああ、説明不足だったのは謝るよ、遅くなったけど詳しく説明をしてあげよう、そもそもこれは全て宇宙の寿命を延ばすためなんだ。京子、君はエントロピーって言葉を知っているかい?」

京子「………ちがう、あれは結衣じゃない… ちなつちゃんじゃない… あんな化け物が二人のわけないよ…」

QB「おや? 話を聞いてくれないみたいだね。せっかく説明をしようと思ったんだけどな、ちなみに君が言っている化け物は間違いなく結衣とちなつだよ」

京子「ちがう、ちがうっ! そんなわけない!! 早く結衣を探さないと、ちなつちゃんも探さないと!!!」

QB「それじゃあ、あそこにある結衣の抜け殻が君の探しているものなのかな? 結衣の腹の中にはまだ少しならちなつの抜け殻も残っているかもしれないよ」

QBが見上げる方向に京子も視線を向ける。
その先には、結衣が木に深々と刺さりモズの早贄のような状態となり、結衣の身体から血が流れ続け木を赤色に染め上げていた。

210 : 以下、名... - 2015/11/29 03:01:36.36 dzQ4uASn0 132/395

京子「う、うあああああああああああ!? 結衣、結衣ぃぃぃ!!」

京子は一瞬で飛び上がり、結衣の身体を木から開放し抱きかえた。
そして、あかりの横に横たわらせ二人を対象に回復魔法を使い始めた。

京子「お、おねがいっ、治って、はやく、治って」

QB「あかりには効果はあると思うけど、結衣の抜け殻に回復魔法を使っても意味が無いと思うんだけどな」

京子「おねがい… おねがいだから… もうわがままも言わない… 結衣に迷惑をかけるようなこともしない… だからおねがい… 治って…」

QB「だからもう結衣は死んでるって、無駄なことはやめておいたほうがいいと思うよ」

京子は癒しの祈りを続けた。
だが、結衣の身体は胸に穴が開いたまま塞がらず、京子は結衣が死んでしまっていると理解した瞬間膝から崩れ落ちた。

京子「ひどいよ… こんなのひどすぎるよ…」

QB「酷いなんてとんでもないよ、君たちは素晴らしい行いをしたんだよ。結衣もちなつもこの宇宙の寿命を延ばすために死んでくれた。彼女達はこれからの宇宙の礎となったんだ。彼女達のおかげでこの宇宙は救われたんだよ」

京子「結衣ぃ… ちなつちゃん… いやだよ… 戻ってきてよ…」

QB「そして京子、君が魔女になることで僕達が想定したエネルギーを回収することが出来る。数万年にもわたる計画でやっと折り返しというところだったんだけど、まさかこの数日で残りの数万年分のエネルギーを確保できるなんて考えてもいなかったよ」

QB「さあ、そろそろ魔女になってくれないかな? 君のソウルジェムは既に限界を迎えるはずだよ」

京子が結衣の死体を絶望した目で見ている。
京子の手から零れ落ちたソウルジェムは既に真っ黒に濁りきっており、最後に残った光が今消え去ろうとしていた。

そして、京子のソウルジェムは…


黒く濁りきった。


京子の身体は崩れ落ち、京子のソウルジェムから産み落とされたグリーフシードは嵐を巻き起こして木々をなぎ倒す。

3人の身体は嵐に巻き込まれ吹き飛ばされる。

3人のうち、京子と結衣の目は閉じられ絶望した顔だった。

だが、あかりの目は限界まで見開かれ、京子のグリーフシードと白い生物を見続けていた。

再び空を舞いながら、あかりは新たな魔女が誕生する瞬間を見る。

それと同時に白い生物が掻き消える様子を見た。

あかりの顔は歪んでいた、酷い悲しみと、言いようの無い悔しさ、それと同じくらいの怒りで歪んでいた。

そして、あかりの感情に呼応するようにソウルジェムが輝きあかりは魔法少女へと変身した。

あかりの瞳が紫色に輝き瞳の中に時計の針が現れ回転を始める。

空中を舞いながらあかりの身体は光に包まれ掻き消えた。

211 : 以下、名... - 2015/11/29 03:02:19.94 dzQ4uASn0 133/395

エピローグ


あかりの部屋。


あかりは自分の部屋のベッドで跳ね起きた。

あかり「はあっ… はあっ… はあっ…」

あかりはカレンダーをみて今日の日付が9月1日だということを確認する。

あかり「夢……… なんかじゃない…」

手の中にあるソウルジェムを見てあかりは呟く。

あかり「あぁぁぁぁ… 京子ちゃん… 結衣ちゃん… ちなつちゃん…」

あかりは林の中で動くことも考えることすら出来ない状態から京子の力によって、思考が出来る程度まで回復していた。
そして、あかりは全てを見ていた、聞いていた。
QBが京子に言ったこと。
魔法少女が魔女となること。
結衣とちなつと京子が全員魔女となってしまったこと。

あかり「あぁぁ… なんで… なんであのことを夢だって思い込んじゃったのぉ…」

あかり「あかりは最初にみんなを助るって… そう願って魔法少女になったのに…」

あかり「ただ守ってもらって… それでみんなは… みんな… うぅぅぅぅ…」

あかりは最初の世界の出来事を漸く現実だと理解した。
そして前の世界で起こったことも全て起こってしまった事と理解した。

あかり「ごめん… ごめん… あかりが馬鹿だったからみんなが…」

あかりはそのまま布団に顔を埋め謝り続けた、全て前の世界の皆への謝罪だった。
助けられなくて、救えなくて、魔女にしてしまって、そして自分だけ逃げてきてしまってごめんなさいと謝っていた。

あかりは泣きながら謝罪と続けていた。だが、あかりの思考は家のチャイムの音により現実に引き戻された。

212 : 以下、名... - 2015/11/29 03:03:33.38 dzQ4uASn0 134/395

あかり「あ………」

そして外から聞こえてくる元気な声。

あかり「うぅぅぅぅぅぅぅ…」

あかりはそのままの姿で動き出し、玄関まで歩き扉を開けた。

京子「おっす~! おいおい、新学期から寝坊か~? って、あかり目ぇ真っ赤じゃん! どしたの?」

結衣「おはよう、あかり。ほんとだ。どうしたのあかり?」

あかり「…………」ガバッ

あかりは二人に抱きつきポツリと呟いた。

あかり「………絶対に守るから、今度は本当に守るから…」

京子「うぉぅ!? なんだなんだ~、朝から強烈なハグだな! そんなにこの京子ちゃんが恋しかったのか~~?」ニシシ

結衣「わっ!? ど、どうしたのあかり? それに今何か言った?」

あかり「うぅん… なんでもないの…」

あかりは二人から離れ、二人の顔をもう一度見る。
最後に見た二人の顔は絶望しきった表情だった、今の二人からは微塵も感じられないが近い未来そうなってしまう可能性があると考えただけであかりの胸は締め付けられる。

顔を見続けるあかりを見て二人は不思議な顔をする。

京子「あかり~? どしたの? そんな真面目な顔しちゃって?」

結衣「私の顔に何かついてる?」

あかり「ううん、なんでもないよ」

あかり「京子ちゃん、結衣ちゃん… ちなつちゃんも呼んであかりのお話を聞いてほしいんだけど、いいかな?」

京子「? 何さあらたまっちゃって?」

結衣「話って、何か真面目な話みたいだね。みんなで聞かないといけないの?」

あかり「うん、みんないないとだめなんだ…」

あかりはその後ちなつにも連絡をしてあかりの家に来てもらうよう説得し3人を部屋に集めた。
3人とも不思議な顔をしていたが、あかりは3人の元気な姿を見て再び泣きそうになる。
そして今度はあんな未来にならないようにと心に誓った。



あかりの心の中で一つの変化があった。

あかりが最後に聞いた白い生物の言葉、

京子に向かって魔女になってくれといった言葉、

その言葉の後、京子は魔女となってしまった、

その光景を見た時、あかりの心に一つの感情が宿った、

それは今まであかりが持ったことの無い感情だった、

あかりは初めて憎悪という感情を抱く。

その感情が今後あかりにどういった影響を与えるのかはまだわからない。

213 : 以下、名... - 2015/11/29 03:04:51.91 dzQ4uASn0 135/395

10話 エピローグ 終わり。
2章 終わらない悪夢 終わり。
3章に続く。


続き
あかり「わぁ、喋る猫さんだぁ」 QB「僕は猫じゃないよ」【3章】

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