1 : ◆lKvaWxCEcw - 2016/06/17 18:14:08.88 AIY3A5VD0 1/31



※このお話は以下のものと繋がっています。


男「キミの抜け殻を食べたい」蛇少女「えっ」
http://ayamevip.com/archives/47244246.html

蜘蛛幼女「きすしてあげよっかー?」男「いらん」
http://ayamevip.com/archives/47299846.html

魔女「できたわ! ゴーレム娘よ!」
http://ayamevip.com/archives/47348900.html

魔女「できたわ! ゾンビ娘よ!」
http://ayamevip.com/archives/47406135.html

密猟者「おーい! そこのお嬢さん!」三首犬娘「ん?」
http://ayamevip.com/archives/47413556.html

狼少女「…………食べちゃいたい……」
http://ayamevip.com/archives/47811353.html





元スレ
学者「ひとと」魔女「けもののひと」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1466154848/

2 : ◆lKvaWxCEcw - 2016/06/17 18:14:43.18 AIY3A5VD0 2/31




蜘蛛女「…………ぅ」

蜘蛛女「こ、コ……は」


ギッ ミシッ

蜘蛛女(……鎖で、縛られてる。……けど、こんなものっ)


ミシミシッ


「無駄ですよ」

蜘蛛女「! 誰……?」

学者「……私は、あなた方を研究する者です」

蜘蛛女「お前……私をどうする気?」

学者「どうもしませんよ。ただ、治療中や、ケガが治るまでは、暴れられると困るので拘束させていただいたまで」

蜘蛛女「治療……」

学者「脚を何本か、それと……片腕。ヒトにやられたのですか? それとも、けものがみ同士の争いで」

蜘蛛女「我々は争わない、ニンゲンとは違うわ」

学者「……そうですか。では、水と食事を置いておきます。……なにかあれば呼んでください」

蜘蛛女「…………」




3 : ◆lKvaWxCEcw - 2016/06/17 18:15:28.01 AIY3A5VD0 3/31



………


学者「どうですか、調子は」

蜘蛛女「……」

学者「……食べていない、みたいですね。……困りますよ、いくら治療を施しても、栄養を摂取しなければ回復しない」

蜘蛛女「……栄養と言うなら、ニンゲンを喰うのが一番早いわ」

学者「……」


ザシュッ

蜘蛛女「!? なにをっ」

学者「っ……私の、血です。……死ぬわけにはいかない、けれど……分け与えられるものはある」

ドク……ドク

蜘蛛女「…………なぜ。私は、たくさんのニンゲンを喰らってきた」

学者「でしょうね」

蜘蛛女「ならっ」

学者「だからこそ…………あなたには、生きてもらいたい」

蜘蛛女「なに……」

学者「私はね、…………けもののひとと、人間が、共存できる世界を目指しているんです」

蜘蛛女「はっ……馬鹿じゃないの。ニンゲン同士ですら争い続けているというのに!! どうしてこんなにも違う私達が共存できるというの!? 見なさい!!」


ミシミシッ ギギッ

蜘蛛女「この、背中から長く伸びた、何本もの脚を。下半身の、太い尾を。……そして」


シュルッ

学者「ぐっ……!」

蜘蛛女「この、強靭な糸を。…………こうして縛られていてなお、私はお前を絞め殺すことができる。……こんな不気味で…………恐ろしい存在と、どうやって」

学者「ぅ…………っ、わた、しをころ、しては……くさりを、とく、ものがいない」



4 : ◆lKvaWxCEcw - 2016/06/17 18:15:57.56 AIY3A5VD0 4/31



パッ

学者「がはっ……はぁ、はぁ……」

蜘蛛女「…………こうして、けものびとを縛り、奴隷のように飼うことが共存とでも?」

学者「……いいえ。それは違います」

蜘蛛女「……」

学者「確かに……人間とけもののひと、その力の差は大きい。…………けれど、容姿や力の差がなんだと言うのか」

蜘蛛女「違いがあるということは、同じには扱えないということよ」

学者「そんなことはない……違いがあるということは、互いに補いあって生きていけるというこ」

ギシィッ

蜘蛛女「黙れ!!!! それはニンゲンが、我々を都合よく利用したいだけだ!!!」

学者「……けもののひとは、その気になれば、人間の姿でいることも可能なはず」

蜘蛛女「……それが、なに?」

学者「しかしあなたはそうしていない。そしてヒトを嫌い、ヒトを喰ってきた。…………だからこそ」


学者「そんなあなたと、共存できれば……きっと、ニンゲンと、けもののひとが……姿をあかし共存する未来も……」

蜘蛛女「…………くだらない。……本当に、そんなくだらないことに、私を巻き込むなんて」

学者「……私の血を、飲めば……少しは治りも早くなる。…………まずは傷を癒してください」




5 : ◆lKvaWxCEcw - 2016/06/17 18:16:59.00 AIY3A5VD0 5/31




蜘蛛女「傷を……癒す?」

蜘蛛女「ふっ……あはは」

蜘蛛女「ははっ、ははははははは! 傷なんて」

蜘蛛女「…………二度と、治るわけ…………ないじゃない」






6 : ◆lKvaWxCEcw - 2016/06/17 18:17:43.48 AIY3A5VD0 6/31




………


蜘蛛女「……」

学者「……血は飲んでくれたようですね。……食事は、口に合いませんか」

蜘蛛女「……いらないわ」

学者「……?」

蜘蛛女「私は、お前と仲良くなる気なんてない。時間の無駄。殺すなら、早く殺して。私はニンゲンの敵よ」

学者「…………私は、あなたの味方です」

蜘蛛女「うるさいっ……私をこれ以上苛立たせるなっ……!」

学者「……次は、肉料理でなく、魚料理にしましょうか」




7 : ◆lKvaWxCEcw - 2016/06/17 18:19:32.33 AIY3A5VD0 7/31



………


蜘蛛女(…………縛られているのは、蜘蛛の脚や、尾だけ)

蜘蛛女(……それをしまえば簡単に抜け出せる。けど)


蜘蛛女(それは、ニンゲンの姿になるということ…………)



蜘蛛女「ぅ、く…………はっ、はぁ」

蜘蛛女「ずっと、この姿だったせい……? きつ……っあ」

蜘蛛女「はっ、ぐ……! …………やっと、しまえた」



8 : ◆lKvaWxCEcw - 2016/06/17 18:20:17.29 AIY3A5VD0 8/31



………


タタタッ

蜘蛛女「はぁっ、はぁ」


蜘蛛女(町を出て、森に入ればっ)


ガクッ

蜘蛛女「あっ!」

ドサッ

蜘蛛女「いっ……たぃ…………ヒトの足で走るの、久々で……感覚が」



ごろつき1「……! おい、誰か倒れてるぞ」

ごろつき2「あん? 女じゃねぇか。なんだ布きれ一枚だぞ」

ごろつき3「誘ってんのかぁ? なぁ! お嬢さんよぉ」

蜘蛛女「っ……!」


サスッ

ごろつき1「きれーな足じゃん。なんで裸足なわけ?」

蜘蛛女「ひっ……さわらないでっ!」

ごろつき2「それ言うなら、まずなんで裸なのかでしょ。ほら」

モミュッ

蜘蛛女「いっ!? いやっ、やめて!!」

ごろつき3「ははは、ほんとどーしたの。なんかあったの? 俺らが匿ってやるよ。悪いようにはしないって、なぁ」

グイッ

蜘蛛女「ぐ、ぅ……!」



9 : ◆lKvaWxCEcw - 2016/06/17 18:20:52.60 AIY3A5VD0 9/31



蜘蛛女(こんなやつら……!)

ググッ

蜘蛛女(……!? だ、め……脚、……糸も……出せない……)

ごろつき2「おっぱいでけー。ほら触ってみ」

ごろつき1「まずどっか運ぼうぜ。ここじゃまずいだろ」

蜘蛛女(……これも、ずっと化物の姿でいたせい……? ちゃんと、ヒトと生きて、姿を変える練習をしなかったから…………?)

ごろつき3「よいっしょ。おらいくぞ!」

蜘蛛女(私……こんなやつらに…………やだ……やだよ……)


蜘蛛女「たす、けて……」



ザシュッ!

ごろつき1「ぐげぇっ!?」

ドサッ

蜘蛛女「!?」

ごろつき2「なんっ……ぐがっ」

ごろつき3「てめっうぼぁ」


ドサドサッ



10 : ◆lKvaWxCEcw - 2016/06/17 18:21:18.76 AIY3A5VD0 10/31



蜘蛛女「今……なにが」

学者「無事ですか?」

蜘蛛女「っ!? お、お前、……お前が?」

学者「…………無茶をしましたね。嫌いな、人間の姿になってまで」

蜘蛛女「っ……」

学者「……確かに、あなたの言う通り、こうして人間にはクズも多い。ヒトがヒトを襲い、争い、傷つける」

蜘蛛女「……あなたも、ヒトが嫌いなの?」

学者「……嫌いな面もあります。……けれど自分が人間であるという事実は変わらない。だから…………人間の方を変えたい」

蜘蛛女「それって、……」

学者「力を、貸していただけませんか。……人間を、この世界を変えるために」

蜘蛛女「…………ヒトを裏切る気?」

学者「あなた方と共存する、未来のためならば」

蜘蛛女「……くだらない。…………馬鹿々々しすぎるわ………………」

学者「戻って、傷が治るまでは安静に。……今度は、拘束しませんから」

蜘蛛女「…………」




11 : ◆lKvaWxCEcw - 2016/06/17 18:21:50.16 AIY3A5VD0 11/31



………


魔女「あの娘は?」

学者「随分、おとなしくなりました。血も飲んで、食事も」

魔女「戦力になりそう?」


魔女「ニンゲンに戦を仕掛けるための、戦力に」

学者「……どうでしょう。そのままでは難しいかもしれません」

魔女「……ヒトと私たちが共存する世界を創るために……一度、全て壊さなければならない。……そのためなら、あの娘に術をかけてもいいわ」

学者「意志を縛り、操り人形にしてもいい、と? 確かに今の状態なら、治療のためと言って契約の儀式を行うことも可能でしょうけれど……」

魔女「……いざってとき、使えない可能性があるよりは、従順になってもらったほうがいい」

学者「分かりました……では、そちらも、そちらの準備を」

魔女「えぇ、ぬかりなく」




12 : ◆lKvaWxCEcw - 2016/06/17 18:22:18.08 AIY3A5VD0 12/31



魔女「……あなたは、どうするの?」


蛇少女「……」

魔女「一緒に、新しい世界を創らない?」

蛇少女「…………私は、一緒には行けない」

魔女「ならせめて、彼の治療を受けていきなさいな。……その大火傷で、よく追手から逃げのびれたものだけど、そのままじゃ」

蛇少女「逃げのびたわけじゃない」

魔女「……?」

蛇少女「とにかく、治療はいらない。自分で脱皮して治すから」

魔女「脱いだ皮は、燃やそうと、匂いが残って痕跡になる」

蛇少女「…………ニンゲンに食べてもらう」

魔女「ニンゲンに……? 確かに、ヒトの体内に入れてしまえば、幻子は体に貯蔵され、痕跡は残らないけれど……そんなことをするニンゲンが……」

蛇少女「……さよなら」


蛇少女「本当に、ヒトと共存できる世界を創れるのなら」

蛇少女「その新世界で、また会いましょ」


魔女「……そうね。また」



13 : ◆lKvaWxCEcw - 2016/06/17 18:22:46.65 AIY3A5VD0 13/31



………



ゾンビ娘「あああ……ああああ」

キョンシー娘「……」


魔女「二人とも、ご苦労様。……充分増やしてくれたみたいね」



ゾンビたち「あああ……「……ああ「あああああ……あああ……ああ」あああ」……ああ……」

魔女「これだけの数がいれば、町一つは一晩で制圧できるでしょうね」

ゾンビ娘「あああ……」

魔女「……なに?」

ゾンビ娘「…………」

キョンシー娘「……無理、しないで」

魔女「無理なんて」

ゾンビ娘「ああ、ぁ……うしろ、いれば……いい、から」

魔女「…………分かった。前線には出ない。全部あなた達に任せる」


ゾンビ娘「ああああああ」

キョンシー娘「……」



14 : ◆lKvaWxCEcw - 2016/06/17 18:23:33.62 AIY3A5VD0 14/31



…………


ゴォオオッ


ドガァッ



キャー! ワー! グォオッ

ウワー! ギャァア!!



ボォオオオオッ……




魔女「…………町が燃えてる」

魔女「私が……私たちが、やってるんだ」


魔女「これも…………未来のため。あの娘たち、の」



ガタッ


魔女「! ……ここまで来るなんて、たいしたニンゲンがいたものね」



15 : ◆lKvaWxCEcw - 2016/06/17 18:24:09.79 AIY3A5VD0 15/31




ゴーレム幼女「……」

魔女「!? あなたはっ……!!」

ゴーレム幼女「おひさしぶり、です」

魔女「なんで、ここ、に……いえ、それよりその姿は」

ゴーレム幼女「ニンゲンに拾われました」

魔女「ニンゲンに……? っ……! そう、か…………」

魔女「……私と、主従があったせいで、体が肥大化していた……? なら原因は幻子の供給過多…………だからニンゲンとの主従ならば、そのままでいられる……そういうことなの?」

ゴーレム幼女「りくつは、ふめいです。けれど」


ゴーレム幼女「ボクは今、ヒトと生きている」

魔女「!!」

ゴーレム幼女「……こんなこと、するひつよう、ないです」

魔女「…………かも、しれないわね」

ゴーレム幼女「なら」

魔女「でも!!」


魔女「私は、この国を……世界を、…………ヒトを変えると、決めたの」

ゴーレム幼女「……今、ともに生きているひとを、犠牲にしてもですか」

魔女「……そう、…………そうよ」

ゴーレム幼女「…………」

魔女「私を、止める?」

ゴーレム幼女「……ボクにはその権利がない」

魔女「…………私を見逃すと? ヒトとの主従を結びながら、ヒトに害を成す私を、逃がすの?」

ゴーレム幼女「あなたを止めるのは……ボクじゃない。友達同士の、二人」


ゴーレム幼女「ヒトと……けもののひと」

魔女「…………なら、それを見せてもらうわ」

ゴーレム幼女「……」

魔女「あなたが見た、その二人の絆。ヒトと、けもののひと。……その共存の可能性を」




16 : ◆lKvaWxCEcw - 2016/06/17 18:24:48.04 AIY3A5VD0 16/31




……


狼少女「ガぁアアアっ!!」ザシュッ!


ゾンビ兵1「あぁアあ」バタッ

ゾンビ兵2「ああア」グオッ

ゾンビ兵3「ぁあアアあ」ズリズリ


狼少女「くっ……これじゃきりが……!」


学者「そこまでです!」ビュオッ!


ビシィッ!!

狼少女「うぐァああっ!!?」ドタッ

ゾンビ兵4「あぁああッ」

狼少女(しまっ……やられる……!!)




人の少女「やぁあああっ!!」

ブオンッ


ドグシャァッ


ゾンビ兵4「ぁ……あ」ドサッ



17 : ◆lKvaWxCEcw - 2016/06/17 18:25:35.80 AIY3A5VD0 17/31



人の少女「はぁ、はぁ……だいじょぶ? 狼少女ちゃん」

狼少女「え……えっ、なんで、ここに」

ギュッ

人の少女「ごめんね……一人にしちゃって」

狼少女「……あやまらないで」

人の少女「私、狼少女ちゃんのこと、傷つけちゃったから」

狼少女「……こわくないの。わたしのこと」

人の少女「こわいよ! そりゃこわかったよ!! だっていきなり、すっごい爪出して! そんでなんかすっごい! すっごいあれするし! すっごい!」

狼少女「……なに言ってるの」

人の少女「でもさ、友達だもん。……こわくてもいいよ」



学者「…………素晴らしい……あなた方は本当に素晴らしい! そうです。そうやってけものびととヒトは分かり合えるのですよ。だから我々は」

人の少女「ふざけるな!!!」



18 : ◆lKvaWxCEcw - 2016/06/17 18:26:06.03 AIY3A5VD0 18/31



人の少女「狼少女ちゃんに、ひどいことしておいてっ……なにがっ」

学者「それは、仕方のないことでしたから。私の考えに賛同して頂ければ、自由を奪うような真似をせずに済んだのですが。……しかしこうなっては、再度問いましょう。お二人に」

学者「半幻獣と人の共存を望むのなら、共に行きませんか。……誰もが素性を隠すことなく、本当の姿で向き合える世界を、作りましょう。その理想を、あなた方は体現しているのですから」

人の少女「あなたの理想を、押しつけないで!」

学者「……なぜ。半幻獣との共存を選びながら」

人の少女「違う」


人の少女「私は、半幻獣との共存なんてどうでもいい」

学者「なにを」

人の少女「私はただ、狼少女ちゃんと友達でいたい。それだけ。だから」


人の少女「こうして狼少女ちゃんを傷つけた人の言葉なんて、例えどんな素晴らしい理想でも……聞くわけないでしょ、この頭でっかち!」

学者「っ……あなた、は、あなた方はっ」


学者「自分たちさえ良ければ、それでいいとっ……!? 自分の友人さえ傷つかなければ、今傷ついているものたちはっ、今後理想に救われるものたちは、どうでもいいと言うのか!?」

人の少女「うん。そうだよ」

学者「ぉ、な、っ……あなたのようなっ身勝手な人間がぁあっ!!!」


ビュオッ!!



19 : ◆lKvaWxCEcw - 2016/06/17 18:26:48.35 AIY3A5VD0 19/31



パシッ!


ゴーレム幼女「二人にふれるな。うすぎたない人間が」

学者「……! このようなものまでっ、……ではまとめて、あなた方は研究素材にしましょうか。……行け! 死体どもよ!」



学者「反応がないっ……!? なぜっ」


スタッ

密猟者「ここいらのゴミは、この俺がぜぇーんぶ片付けちまったってわけ。臭くてしょーがなかったからよぉ」

学者「獣狩りっ……だと」

密猟者「つーかマジでゴミしかねーじゃねぇかコラぁ! こんな粗悪品のクズ、売り物にならねーぞ!!」

学者「くっ……!」

密猟者「しゃぁあああっ!!」ヒュオンッ!



ガキィイッ


魔女「……」ギギギッ

密猟者「……へぇ、いるじゃねぇか。とっておきの上玉がよぉ」

魔女「ふんっ……」ヒュッ


バキィッ

密猟者「ぐぁっ……!! が、ぐっぅ」



20 : ◆lKvaWxCEcw - 2016/06/17 18:27:14.01 AIY3A5VD0 20/31



狼少女「っ……!」

人の少女「狼少女ちゃん!」

狼少女「下がってて……!」


魔女「……けなげなお嬢さんだことね。けどもう、限界のはずよ」

狼少女「……っ」

魔女「…………安心なさいな。ここで事を構える気は、こっちもないの」

狼少女「なにっ」

魔女「あなたたちのせいなのでしょうね。人間の兵力が動くのが、思ったよりもずっと早かった。ここでこれ以上損耗するのは割に合わないわ。……引くわよ」

学者「そう……ですか。いえ、そうですね」

魔女「いずれまた逢いましょう? ヒトとけもののひとが分かり合い、手を取り合う……理想の世界で」

シュォオ……



密猟者「待ちやがれこのっ…………くそが!」




21 : ◆lKvaWxCEcw - 2016/06/17 18:27:57.47 AIY3A5VD0 21/31



狼少女「無茶……して」

人の少女「えへへ……ごめん」

狼少女「…………ありがと」

人の少女「狼少女ちゃん……」

狼少女「うん……だいじょうぶ。だいじょうぶ、だから」

人の少女「帰ろっか。おうちに」

狼少女「………………うんっ」




22 : ◆lKvaWxCEcw - 2016/06/17 18:28:25.51 AIY3A5VD0 22/31




…………



人の少女「おかえり」

狼少女「……ただいま」



人の少女「それじゃあ、ご飯にする? お風呂にする? それとも」

狼少女「?」


人の少女「乱暴する? エロ小説みたいに!」

狼少女「」ブフッ



23 : ◆lKvaWxCEcw - 2016/06/17 18:28:52.85 AIY3A5VD0 23/31



狼少女「……しない」

人の少女「そう?」

狼少女「というか、なに言ってるの」

人の少女「今、都会ではこのお出迎えが流行ってるんだって!」

狼少女(……そんなことないと思う)


狼少女「……とにかく、他の人にしちゃだめ」

人の少女「そりゃそうだよ。狼少女ちゃんだけ」

狼少女「!?」

人の少女「他のお客さんをからかったりなんてしないよ~失礼だし」

狼少女「!?!?」

人の少女「どしたの?」


狼少女(……からかわれてたんだ)



24 : ◆lKvaWxCEcw - 2016/06/17 18:29:27.20 AIY3A5VD0 24/31



人の少女「実際どうする? ご飯? お風呂?」

狼少女「今日はもう休みたいから」

人の少女「じゃあお部屋にごあんなーい」

トタトタ


人の少女「でも、もう自分の家みたいだよね。だいぶ長く泊まってるし」

狼少女「そう? 30日くらい……?」

人の少女「こんな峠の宿には長い方だよ。まだしばらくはいるんだよね?」

狼少女「うん。……たぶん」

人の少女「……そっか」


ガチャッ

ボフ


人の少女「さ! おいで」

狼少女「……なんで先にベッドに」



25 : ◆lKvaWxCEcw - 2016/06/17 18:29:56.45 AIY3A5VD0 25/31



人の少女「いいから。かもん!」

狼少女「うぅ……」

人の少女「ほらはやく!」グイッ

狼少女「わわっ」ボフッ



人の少女「えへへ」ギュー

狼少女「ぅー」

人の少女「ね、ね、あのさ」

狼少女「?」

人の少女「……けも耳、出してよ」

狼少女「えー……」

人の少女「しっぽも、ね?」

狼少女「……いいけど」


フサァ

狼少女「わぅ」フサフサ

人の少女「おぉ……」



26 : ◆lKvaWxCEcw - 2016/06/17 18:30:31.30 AIY3A5VD0 26/31



人の少女「やわらかい」モミュモミュ

狼少女「耳もまないで」

人の少女「けっこう太い」ニギニギ

狼少女「尻尾にぎらないで」


人の少女「……」ワシャワシャ

狼少女「……」

人の少女「……」クンクン

狼少女「かっ、かがないで!」

人の少女「……」

狼少女「?」

人の少女「やっぱり、濡れタオルで拭くぐらいしとこうか」ドッコラセ

狼少女「えっ」


狼少女(え……わたし、におうの……?)

狼少女「……」クンクン

狼少女(……自分じゃわからない)



27 : ◆lKvaWxCEcw - 2016/06/17 18:31:00.51 AIY3A5VD0 27/31



人の少女「おまたせーお湯で濡らしたタオルで、っと」

人の少女「はい、しっぽこっちに向けて」ペシペシ

狼少女「わ、わかった、から」


ギュッ

狼少女「ぅ……わぅ」

人の少女「じっとしててねー」ゴシゴシ

狼少女「う、んっ……ぅ」

人の少女「先っぽもきれいにしましょうねー」ゴシッゴシキュッキュ

狼少女「ぁうっ……ん、そ、それ」

人の少女「きもちいい?」

狼少女「ぅ…………ん」

人の少女「付け根もね」ゴシゴシグリグリ

狼少女「ぁっ、あ!」

人の少女「でもほんと不思議……ほんとにはえてるんだもんね」グリッ…コリコリ

狼少女「えっ、や、やめ、つけねこりこりだ、めっん」

人の少女「……」コリコリコリコリ

狼少女「ぁはっん! ぁっなんっ、や! だめって、あっ! あ!」


人の少女「むらむらしてきた」

狼少女「や、やめて……」



28 : ◆lKvaWxCEcw - 2016/06/17 18:31:53.18 AIY3A5VD0 28/31



人の少女「はいじゃあ、けも耳ね。ひざに頭のっけて」ポンポン

狼少女「ぅう……へんなことは」

人の少女「しないしない」

狼少女「ぅー……」ゴロン


人の少女「外側からー」モミュモミュ

狼少女「ん……」

人の少女「うちがわへ!!」ズボォッ

狼少女「!!??」ビクゥッ


狼少女「な、なにし」

人の少女「きれいにするだけだよー」ズポズポ

狼少女「あっ! あっだめ! あっあ! それやっぁ! めっ、ぁ」

人の少女「この耳穴を征服してる感がたまらんね」ズッポズッポズッポ

狼少女「やぁあ!! あっほんっ! ほんとにやぁ!! あっあっああああ!! あっ……」ビクンッ



人の少女「……」

狼少女「はぁ……はぁ」

人の少女「……ごめんね」

狼少女「……」

人の少女「つい……」

狼少女「……いいけど」


人の少女「じゃあ反対側もね」ズポッ

狼少女「やぁああああ!!!」



29 : ◆lKvaWxCEcw - 2016/06/17 18:32:20.96 AIY3A5VD0 29/31



狼少女「はっ、ぁ……あ…………ぁ」

人の少女「はぁーきれいになった」

狼少女(……けっきょく…………ぜんぶ)


人の少女「今日はさ」

狼少女「……え?」

人の少女「一緒に寝よ? ね」

狼少女「…………ぅん」

人の少女「ん、よかった」ギュッ

狼少女「んっ」ギュー


人の少女「狼少女ちゃんてさ」

狼少女「?」

人の少女「ねこだよね。おおかみのくせに」

狼少女「」



30 : ◆lKvaWxCEcw - 2016/06/17 18:32:57.11 AIY3A5VD0 30/31



狼少女「なんの、はなし」

人の少女「誘い受けだよね」

狼少女「やめて」


人の少女「だって、ね」

狼少女「ぅうー……がう」

人の少女「あれ?」

狼少女「えいっ」ドサッ

人の少女「きゃっ」


狼少女「…………たべちゃうぞ」

人の少女「……やん」

狼少女「……」

人の少女「……? どったの?」


狼少女「また、聞いてもいい?」

人の少女「なにを?」

狼少女「……こわく、ないの」

人の少女「……」



31 : ◆lKvaWxCEcw - 2016/06/17 18:33:25.68 AIY3A5VD0 31/31



人の少女「こわいよ」

狼少女「……」

人の少女「けど、一緒にいられなくなる方が、もっとこわい」

狼少女「……そう」

人の少女「もしも、これから……ううん、なにがあってもさ」

狼少女「…………うん」

人の少女「……ずっと」


狼少女「………………うん」






けもののひと、狼の少女、完。



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