1 : 以下、名... - 2016/06/17 17:26:21.87 koNidqkx0 1/45



……昼
-農村・村長の家



チュンチュン

ピヨピヨピヨ



狼少女「……」ムクリ



狼少女「くぁあ……」ファサッ


狼少女「……?」フサフサ



狼少女(…………尻尾と、獣耳……出てる)

ギュッ ギュッ


グイグイ


シュポン

狼少女「……」

狼少女「……」クルクル


狼少女(よし…………しまえた)


狼少女(…………いちおう、出ちゃってもバレないように、ロングコートと帽子を……)



元スレ
狼少女「…………食べちゃいたい……」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1466151981/

2 : 以下、名... - 2016/06/17 17:28:27.03 koNidqkx0 2/45



……


狼少女「おはようござ……くぁ」トテトテ

村長「おぉ、目が覚めたかね。朝食……というよりはもう昼食の時間か。食べるだろう? ご飯、味噌汁、焼き魚。それと新鮮な卵があるからオムレツかスクランブルエッグか」

狼少女「……」ジュルリ

村長「好きな卵料理は?」

狼少女「…………生で……かけてください」///

村長「卵かけご飯ね。はいはい」

狼少女「……」ハッハッハ パタパタ


狼少女(い、いけない……尻尾が)ムギュ ムギュ



……


モシャモシャ

狼少女「……娘さんは?」モグモグモグ

村長「あれなら、畑の方に行ってるよ。まだこの村に滞在する予定なら、仲良くしてやってくれ」

狼少女「しばらくは……。でも、宿代」

村長「なぁにを言うかね。厄介な獣どもを狩ってくれたのだ。しばらくと言わず、あれと一緒に、うちの子になってもよいのだぞ?」

狼少女「……考えて、おきます」モシャモシャ

村長「隣村でも、獣害が深刻化していたからなぁ……なんでも人死にまで出ていたらしい。ここら一帯を掃除してくれたおかげで、どこの村も助かっている」

狼少女「……」モグモグモグ

村長「本当なら、こっちがお金を払う側なのだからね。遠慮は無用だよ」

狼少女「なら……」

村長「ん?」

狼少女「おかわり」ハッハッハ

村長「はいはい」




3 : 以下、名... - 2016/06/17 17:32:43.55 koNidqkx0 3/45



……
-村の中



狼少女「んーっ…………」ノビーッ

狼少女「くぁ……いい天気」


狩人「あら、あんた」

狼少女「……どうも」

狩人「どう? これから一緒に、獣狩りに出ない? ……と言っても、大型の肉食獣はだいぶ散らしちゃったから、兎とか鹿くらいだけど」

狼少女「今日は……いい」

狩人「そう? 残念。あんたと一緒だと楽なんだけどな。ここらを掃除するのだって、あたしだけじゃーかなり骨だったし」

狼少女「こっちも……あなたがいたから、うまくやれた。でも今日は……くぁあ」

狩人「あはは、尖っててかわいい犬歯だね」

狼少女「……!」///

狩人「あんたもしばらくはいるんでしょ? また誘うから、よろしくね」

狼少女「うん……」

狩人「ほんと、手伝ってもらえると助かるからさ。特に最近、弓が撃ちづらくって。なんでだろ……」ボインボイン

狼少女「……」ペターン



狼少女「グルルゥ……」

狩人「なに唸ってんの? おなかいたいの?」



4 : 以下、名... - 2016/06/17 17:33:28.55 koNidqkx0 4/45



……


狼少女(……わたしはまだまだ成長期……わたしはまだまだ成長期)


クソガキ「あ! おっぱいない方の狩人のねーちゃんだ!」

狼少女(このクソガキ……)ゴゴゴ


ファサッ


狼少女(!? い、いけない……興奮するとまた尻尾が)

クソガキ「いえーい! いただき!」サワッ

狼少女「い゛っ!?」


モミュモミュ

狼少女「え、ちょっ……こら!!」バッ

クソガキ「……」

狼少女「な、なんでお尻……揉んだの」

クソガキ「おっぱいがないから」

狼少女(このクソガキ……!)

クソガキ「それよりねーちゃんさぁ……」



クソガキ「ケツ毛すごくね?」

狼少女「」



クソガキ「これからはケツ毛ぼーぼーのねーちゃんって呼んでやるよ!」

狼少女(違う……違う、それは、尻尾……)

クソガキ「またな!! ケツ毛のねーちゃん!!」タタタッ

狼少女「違う…………のに」ガクッ



5 : 以下、名... - 2016/06/17 17:34:28.57 koNidqkx0 5/45



……
-畑


狼少女(尻尾……しまえてる。よし)


狼少女「……あの」

農夫「ん? あぁーあんたか。えれー世話んなったな。礼をしたいとっきゃけど」

狼少女「いえ、別に……」

農夫「今朝とれた、妙にセクシーなダイコンいるか? ほれ」

狼少女(確かに……なんかえっちなかたち……)///


狼少女(けど……野菜はあんまり)

農夫「食うと色気がつくかもしれんよ?」

狼少女「もらいます」スッ



狼少女「あの、ところで、村長の娘さんは」

農夫「家畜小屋だよ。うちの嫁と一緒に」

狼少女「……どうも」ペコ



6 : 以下、名... - 2016/06/17 17:35:57.86 koNidqkx0 6/45



……
-家畜小屋



狼少女(……うーん、くさい)


ブモッ ブモォオオオ!!!


狼少女「!?」



村娘「あ、狩りの人! 来てくれたのですわ?」ギュッギュッギュッ

「ブモッ!! ブモッ! モモモォオオオオ!!!!!」ジョバジョバ

狼少女「そ、そう……だけど…………すごく痛がってるよ、その子……」

村娘「このぐらいしないとビュッビュ出ないのですわよ」ギュッギュッ

狼少女「そう……なんだ」


「ブモォオオォオォオォ!!!!」ジョバジョバジョバ

狼少女「…………いつもやってるの?」

村娘「そうわよ! 一緒にやりますわ?」ギュッギュッ

狼少女「……い、いい」

村娘「楽しいですのに……じゃあ搾りたてのミルク飲みますのん?」

狼少女「う、うーん……牛乳は、あんまり」



村娘「そんなことだから胸が育ちませんことよ!!!」ギュッギュッ

狼少女「いたいいたい!!!!」



7 : 以下、名... - 2016/06/17 17:36:36.36 koNidqkx0 7/45



農夫嫁「なぁにしとるんけ?」

村娘「あ、おばさん、ごきげんよー」

狼少女「はぁ、はぁ……お、お邪魔、してます」

農夫嫁「おばさんて……まだ二十代なんよ? ……ま、お乳搾りなんて私がやっとくけ、二人で遊んでこんね」

村娘「ほんと!? じゃあ、お言葉に甘えちゃいますわ! 行こうわよ!」グイグイ

狼少女「う、うん……」ズリズリ

農夫嫁「獣がおらんいうても、物騒だかんね。気ぃつけぇよー」



8 : 以下、名... - 2016/06/17 17:37:41.79 koNidqkx0 8/45



……


村娘「ほらあそこ! 行商人が来てますわ。これも周辺の獣を狩って、道の安全を確保したおかげ。ほんと感謝ですわよ、……ありがとう」

狼少女「そ、そう……」



商人「またあんたか! 今朝から何度目だ!」

のんだくれ「あぁん? 金はあるんだ、文句ねーだろ……イック」

商人「真っ昼間から酒ばかり飲んで、早死にしても知らんぞ」

のんだくれ「うっせーな……いいからくれよ。ここの地酒には飽きたんだ。上等なのを頼むぜ……イーヒック」


狼少女(うわぁ……酔っ払い)



商人「おい! こいつをどっかへ追い払え! 聞いてるのか!」

鍛冶屋「頼まれていたものだ」

傭兵「サンキューっす。おぉーサビサビだった剣がぴっかぴか! いやー悪いっすねわざわざこっちまで」

鍛冶屋「いや、構わない。こちらこそ、品物を融通してもらって助かった。……では、俺は鍛冶場に戻る」

傭兵「うっす!」

商人「うっす! じゃない!! 勝手に品物をやるな!」

傭兵「金がねーんすよ。この依頼が、報酬後払いなもんで」

商人「う、それは」

傭兵「それに護衛のための必要経費っしょ? 剣の手入れは」

商人「うぅむ……」

のんだくれ「うーむ……これでいいか。金は置いとくぜ」ジャラッ

商人「あ! こら!! ……まったく……どいつもこいつも」



9 : 以下、名... - 2016/06/17 17:38:53.69 koNidqkx0 9/45



村娘「ごきげんよー!」

商人「っと、はいどーもごきげんようお嬢さんがた。髪飾りかい? それとも都会の本? あーっと、字は読める?」

村娘「だいたいは。けど、今日はアクセサリーを見せてくださいましな」

商人「はいよ」


村娘「わぁー……!」

狼少女「おぉ……」

狼少女(きれい…………けど、高い)


村娘「あ、見てこの指輪!」

狼少女「?」

村娘「二つセットですって! お揃いにしませんこと?」

狼少女「え、あ、それっ」

村娘「これちょうだいませ!!」

商人「まいど」

狼少女(…………アベック用……)


村娘「片方は、あなたに」

狼少女「……でもわたし、お金」

村娘「いいの。感謝のしるしに送らせて? ほら、手を」

狼少女「…………ん」


スポッ

狼少女「……きれい。かわいい」

村娘「うん! とっても似合ってますですわ~。それに、こうして手をつなぐと」ギュッ

狼少女「……ひとつのかたちに」

村娘「いっぱい、……手を繋ぎたくなりますわね」ギュウッ

狼少女「ぅ、うん……そう、だね」

村娘「どうかしましたのん?」

狼少女「いや、……」


狼少女(近いし……恋人繋ぎだし……)///




10 : 以下、名... - 2016/06/17 17:39:44.72 koNidqkx0 10/45



……


村娘「~♪」

狼少女(恋人繋ぎのままだし……)


絵かき「お、そこのラブラブなお二人さん! 一枚描いてやろうか?」

狼少女「なっ……」///

村娘「素敵な提案ですわね。けれど、さっきお金を使ったばかりなの」

絵かき「金はとらんさね」

村娘「まぁ、よろしいのですわ?」

絵かき「百合少女の価値は、金になど換えられん……」

村娘「??」

狼少女「ち、違う……違う、違う」アワワワ



11 : 以下、名... - 2016/06/17 17:40:32.30 koNidqkx0 11/45



……


狼少女(結局、描いてもらっちゃった……なんか、抱き合ってるポーズを指定された上、できた絵はなぜか半裸だったけど……)

村娘「額縁に入れて居間に飾りますわ!」

狼少女「やめて。やめて」


占い師「そこのジョーチャンたち、相性占ってく?」

村娘「相性?」

占い師「そう、相性は大事ヨ。体の相性、夜の生活にかかせな」

狼少女「けけけ結構です!! 失礼しましたっ!」ダッ

村娘「きゃっ! 引っ張らないでよ~」



12 : 以下、名... - 2016/06/17 17:41:07.87 koNidqkx0 12/45



……夕方
-村長の家



狼少女「……」モグモグ

村娘「……」ジー

狼少女「な、なに」

村娘「じっとして」ズイッ


狼少女(え、え? 顔ちか、ぁ)



ペロッ

村娘「はい、とれた」

狼少女「っ……!?」///

村長「こらこら、行儀が悪いぞ」

村娘「はぁい」

狼少女「………………」




13 : 以下、名... - 2016/06/17 17:42:06.60 koNidqkx0 13/45





狼少女(ムラムラする)


狼少女(わたしはノンケ。これはガチ。……けど)

狼少女(すっごい…………あの子の、こと)


狼少女(食べちゃいたくなる…………)ハッ ハッ



狼少女(だめ……だめ、そんな……こと)

狼少女(わたし、はっ)



14 : 以下、名... - 2016/06/17 17:42:52.75 koNidqkx0 14/45



……夜


狼少女「んっ……んっ、ん」クシ クシ

狼少女「はっ、ぁ……ん、ぁ」ギュッ ゴシ ゴシゴシ

狼少女(自分が女の子と抱き合ってる絵を見ながら……ダイコンに擦りつけて興奮するなんて、ヘンタイ……わたし、ヘンタイ、だっ)ゴシゴシゴシゴシ

狼少女「はぁあっ、ぁ、あんっあ! ぁ、あっあ」ゴシゴシ クチュ ピチャ

狼少女「んんっ! んぅうぁああ! だめっぁあっでちゃ、ぁ、でちゃ、ぅ、んぅ!!」ビクンッ ビクッビクッ



ファサッ

狼少女(…………獣耳と尻尾、出ちゃった)フサフサ


狼少女「はぁ……はぁ……あつい…………からだ、あつい……おさまんない……」クチュ クチュ

狼少女(そろそろ……満月、だから……? 本能、が……だめ、たべたい、ちがう……だめ、たべ、や、たべたいったべたい、たべたいっ)ハッ ハッ ハッ



プツン





15 : 以下、名... - 2016/06/17 17:44:00.84 koNidqkx0 15/45




……朝


チュンチュン

ピヨピヨピヨ


狼少女「ん…………くぁ」

狼少女「……」



狼少女「なんで裸」ガーン


狼少女「っていうか、また耳と尻尾が……」ファサッ フサフサ

狼少女「んっ……ふ、ぁ」ググ


狼少女「しまえた……」

狼少女「あとは、やっぱり帽子とコートで、なんとか」

狼少女「? ……なにか、外が騒がしい?」

タタタッ



16 : 以下、名... - 2016/06/17 17:44:58.55 koNidqkx0 16/45



……
-村の中



狼少女(……みんな集まってる。なに……?)


村長「……村から出すわけにはいかない」

商人「なんだと!? いつ殺されるか知れないんだぞ!!」

村長「今、出入りを許せば、それを逃がす可能性がある」

商人「そんなことっ……」

鍛冶屋「村で起きたことは、……村で終わらせる。それが、俺たちのケジメだ」

商人「ぐ……こ、こいつら」


狼少女「……なにが、あったの?」

狩人「あぁ、あんたか。……人死にさ。それも、他殺」

狼少女「……!」

のんだくれ「だけじゃ、ねーだろうが」

狩人「……」

狼少女「どういう、こと」

狩人「殺し方がね」

のんだくれ「ヒック……腹を裂かれ、臓腑を引きずり出されて……あげく、心臓を、喰われてやがったのよ」

狩人「獣の爪で裂いたかのような傷。そして遺体に付着した獣の体毛」

狼少女「っ……! 獣が、入ったの?」

狩人「……村を囲んだ獣よけの罠は、全て無事。うまく掻い潜った痕跡もなし。つまり……」

のんだくれ「獣は、中にいる。…………オレらの中に、なぁ……イーヒック」

狼少女「な……!? そん、な」

狼少女(うそ……うそだ、そんなの……まさかっ、でも……)



17 : 以下、名... - 2016/06/17 17:46:24.75 koNidqkx0 17/45



狼少女「殺されたのは…………だ、誰…………」


狩人「旅の、絵かきさん」

のんだくれ「金がねーのか、村の中での野宿だったらしい。まぁ……外で寝るよりゃ安全……のはずだったろうになぁ……南無三。ヒック」

狼少女「あの……絵かき」


狼少女(正直、ほっとした……ひどいようだけど、殺されたのが、あの子でなくて、よかった……と……思ってしまった)

狼少女(けど…………まだだ。……まだ、分からない)


狼少女「……その、犯人の目星は」

狩人「それは、これからさ」


商人「無理矢理にでも出ていくぞ! おい、お前!」

傭兵「……いやぁ~、さすがに、ただの村民たちと争うのは、ねぇ」

商人「なんだとっ」

傭兵「それに、うっかり殺しでもしたら、マジに殺人犯っすよ。依頼は護衛。やるのは正当防衛のみ、っしょ?」

商人「うぐ……」

のんだくれ「それによぉ、あんたら、一番の容疑者でもあるんだぜ」

商人「なにっ……!?」

村長「以前よりこの村にいる者より、よそ者が疑われるのは当然のこと。……増して、人に化ける獣などと……もし以前からこの村にいたならば、なぜ今、急に人を喰ったのか、という点が妙になる」

傭兵「マジっすか。んじゃ自分ら監禁されんの?」

鍛冶屋「いや……飽くまで、村の住人より、疑いが強いというだけだ。……まだ、誰と決めつけることはできない」

狩人「そーいうこと。……昼間はあたしが見回るから」

鍛冶屋「夜は、俺とお前で見張る。燃料も限られているため……広くは監視しきれないが」

傭兵「ピンポイントで押さえるしかない、ってことっすね。了解っす」

狼少女(よそ者……つまり、疑いを強くもたれているのは……商人、傭兵、占い師、それと…………わたし)


18 : 以下、名... - 2016/06/17 17:47:10.48 koNidqkx0 18/45


商人「待て!! ……現場には、殺された絵かきが描いたと思われる、描きかけの絵があったそうじゃないか。その絵は、どうやら女性を描いたものだと……」

傭兵「それが犯人っすか? となると、自分らは違うっすね。一応、男なんで」

狼少女(……!)

狩人「女性は、あたしと、この子、村長の娘さん、農夫の嫁さん、だね」

鍛冶屋「だが、殺される間際で、絵など残せるものか……?」

村長「かなり雑な、下書き程度のものだが、どうだろうな。すぐに心臓を喰われたのなら、その暇はなかったろう。……しかもその絵は、胸がほとんど真っ平らで、髪が長いだけで女性かどうかすらあやしい」

狼少女「……」ペターン


狩人「じゃあ、そこらへんも含めて、見回りながら村の中を調べるよ。みんなは、互いに見張って、村の外に誰も出さないように。ここにいない連中にも、伝えてくれる?」

鍛冶屋「あぁ、分かった」



19 : 以下、名... - 2016/06/17 17:47:44.21 koNidqkx0 19/45



狩人「それと……あんた」

狼少女「っ……!」

狩人「……正直に言うよ」

狼少女「…………なに……?」


狩人「あたしは、あんたを疑ってない。むしろ、一番信用してると言ってもいい」

狼少女「……!」

狩人「一緒に、戦ったから、かな。あんたは違う、そんなやつじゃないって。……ただの感覚、勘だけど」

狼少女「……ありがとう」

狩人「だから、調べるの、手伝ってほしいんだ。……聞き込みで、なにか聞き出せたらいいんだけど」

狼少女「…………やってみる」

狩人「よろしくね。一緒に、また獣狩りだ」

狼少女「……」コクン



20 : 以下、名... - 2016/06/17 17:48:45.88 koNidqkx0 20/45



……
-畑


農夫「昨晩……?」

狼少女「はい。なにか変わったこととか……」

農夫嫁「うーん……特には、分からんね」

狼少女「二人はどこに?」

農夫「ずっと家におったよ」

狼少女「……寝ている間に、どちらかが、抜け出した可能性とかは」

農夫嫁「ぁ、いや……」

農夫「それはなかろて」

狼少女「どうして……?」



農夫「昨日は、夜寝とらせんよ」

狼少女「え……?」

農夫「あれよ。一晩中、二人であれをしとったから」

狼少女「あれ……って」

農夫「そりゃ、男と女が夜二人きりでする、あれと言ったら」

農夫嫁「ちょっ! なっ、なに言うとんの……!」

狼少女「え…………ぁ、えっ!?」///

農夫嫁「ごめんねぇ、こん人が変なこつを」

農夫「なにが変かね、おめーがさんざ求めてきよったから」

農夫嫁「ほんとごめんねこん人の話は聞かんでええよ」

狼少女「ぁ、う」///

農夫「なんね、ぜんぜん放してくれんで、もっと、もっとて、しがみつきよったくせに。何発あれしたと思とんの。もうしなしなよ」

狼少女「……ぁ、ああの、あの」///



狼少女「しっ……しつれいしみゃっ……しましひゃ!!!」ダダッ



21 : 以下、名... - 2016/06/17 17:49:27.36 koNidqkx0 21/45



……
-鍛冶場


狼少女「あの……」

クソガキ「でりゃあ!!」ブンッ



ベシッ

狼少女「あだっ」

クソガキ「あ……ご、ごめん。ケツ毛のねーちゃん」

狼少女「……いいけど。いや、そのあだ名は、よくないけど……」

クソガキ「ばけもんが出たんだろ? ここにばけもんが来たら、オレがやっつけてやるから安心しろって」

狼少女「うん。……鍛冶屋さんは?」

クソガキ「夜、どこを守るかって村長や傭兵と話しに行ってる」

狼少女「……分かった。気をつけて」

クソガキ「ケツ毛のねーちゃんも、強いからって油断すんなよな!」

狼少女「それ……やめて」



22 : 以下、名... - 2016/06/17 17:50:07.22 koNidqkx0 22/45



……


占い師「ジョーチャン!」

狼少女「……?」

占い師「犯人探し、手伝うヨ」

狼少女「手伝う……? けど……」

占い師「占い、その人、獣かどうか見れるネ」

狼少女「……!!」

占い師「ただし、体力とても使う。一日一回、それが限界」

狼少女「……」ゴクリ

占い師「けどそれには、まずジョーチャンが人であることを確かめなきゃいけない」

狼少女「……そ、それは」

占い師「占い、テントの中行う。どーする?」


狼少女(……獣をあばく占いを拒否したとなれば……疑いが強まってしまう)

狼少女(でも占いで獣と知れたら、疑いどころか、確実に犯人だと思われて……)

狼少女(……)


占い師「……んー? 不安? ダイジョーブ、優しくするヨ」

狼少女「分かった。……わたしを、占って」



23 : 以下、名... - 2016/06/17 17:51:21.39 koNidqkx0 23/45



……
-テント



占い師「まず、服預かるヨ」

狼少女「……」パサッ

占い師「もう一枚脱いで。下着だけで、うつぶせなる」

狼少女「え」

占い師「ハヨ!!」

狼少女「えぇー……」


狼少女(……占いが本当なら、わたしは獣とバレる。けど……「もう一匹仲間がいる」とでも言えば、それを占いで探して、犯人を見つけられるかも)

狼少女(占いがインチキなら、わたしは疑われず、調べを続けられ)


ビチャビチャッ

狼少女「ぁびゃぁあ!!??」ビクッ

占い師「おーちょと冷たかった? オイル塗る、占いで人の中身見るに、必要なこと」

ヌチャッ……ヌチャ

狼少女「ぅ……く、ふ…………んっ」ピクピク

狼少女(せ、せなか……ぁし……ぬりこまれっぁ…………が、がま、ん)

ヌリュヌリュ

狼少女「んっ、んんっ……! はっ、ふーっ……ぁ」

ズリッ

狼少女「!!?!? ちょっ!? 下着っ!」

占い師「ダイジョーブ、みんなやってる。恥ずかしくないヨ」ヌチャヌチャ モミュモミュ

狼少女「へっ? ぁ! んっ……は、ぁ、や! ぁぅうっ!」

占い師「体の中身知る。棒入れる、必要なこと。コワクナーイ。ダイジョーブ」カチャカチャ

狼少女「ぇ……は…………?」



占い師「リンパヨ。リンパで全部分かる。棒必要。お互いの体で占う。これは八千年の歴史あ」ズッ


狼少女「わぁあああああああああ!?!? ヘンタイだぁあ―――ッ!!!!!!」




ドガッ バキッ


狼少女「ふーっ……ふーっ」

狼少女「……」



狼少女「……」

占い師「」



狼少女「死んでない。ダイジョーブ」



24 : 以下、名... - 2016/06/17 17:51:47.89 koNidqkx0 24/45



……
-村長の家



狼少女「部屋……入るよ。いい……?」


ガチャッ


村娘「……」ガタガタ

狼少女「……あの」

村娘「ぅ、うう……こわい。こわいよ」

狼少女「うん……」ギュッ

村娘「ぅわぁあん! やだっ……しにたくない……しにたくっ」ギュゥウ

狼少女「ぜったい……捕まえるから。……ぜったい」ナデナデ



25 : 以下、名... - 2016/06/17 17:53:51.59 koNidqkx0 25/45



……


狩人「どうだった? なにか手がかりは」

狼少女「……」フルフル

狩人「こっちも収穫なし。……じゃあ、現段階で、誰があやしいと思う?」

狼少女「それは…………」



……夕方


村長「……犯人が分からんまま、夜になるか」

鍛冶屋「疑わしいものを、一人拘束しよう。それでなお獣が出れば、そいつは無実だ」

商人「全員を縛っておけばいいだろうが!」

狩人「それだと犯人の特定には繋がらないよ。……一人拘束した上で、襲われそうな人物の周囲を警戒する。そうすれば被害を防いだ上で、犯人を絞り込んでいける」

村長「では、誰を拘束するか」

狩人「占い師」

村長「理由は?」

狩人「女の勘が、敵だと言ってる」

商人「わしはあの、のんだくれを縛っておいて欲しい。堕落し、目先の欲で生きるさまは、まるで獣ではないか?」

村長「うむ……確かにやつは、数年前、ここに居ついた流れ者……」

鍛冶屋「それで言えば、農夫の嫁も数年前に来た、元はよそ者だ」

村長「絵かきの最後の絵は女性のようだが、犯人と関連があるかは不明……ふぅむ…………」

狩人「農夫と、農夫の嫁は、二人で一晩起きていたってさ」

鍛冶屋「なら、その二人は候補から除外されるか」

商人「犯人が一人と決まっているのか!? 共犯の可能性は!? 口裏を合わせているだけかもしれんぞ!」

村長「……あまり、考えたくない可能性だな。この村に、人に化ける獣が複数いる。もしくは、それをかばう人間がいるなど……」

鍛冶屋「単独犯という前提で、まずは絞り込むしかない。……それで解決できなければ、共犯者の存在を疑おう」

狩人「じゃあ、縛るのは占い師かのんだくれ?」

商人「占い師は、人に化けた獣の正体を探れると言っていたぞ! むしろ獣に狙われる可能性が高いんじゃないのか?」

村長「…………では、のんだくれを拘束。占い師周辺を重点的に警戒させよう」

狩人「……分かったよ」

鍛冶屋「あぁ、傭兵に伝えておく」

商人「も、もちろんわしのことも守るのだぞ!? あいつを雇っているのはわしなのだからな!!」

鍛冶屋「そう伝える」




26 : 以下、名... - 2016/06/17 17:54:42.79 koNidqkx0 26/45



……夜


狼少女(……わたしも、よそ者の一人。しかも……女。一応。胸はないけど……)

狼少女(…………そして、獣であることは、事実…………)


狼少女(わたしじゃない……そう信じたい。わたし自身も……)

狼少女「……? ダイコンに、歯型……」

狼少女「もしかして…………わたしが?」


狼少女(これで、気を紛らわせた……? よく覚えてないけど)カプッ

狼少女「!!!」ビクッ



狼少女「」キュウ

パタリ



27 : 以下、名... - 2016/06/17 17:55:37.15 koNidqkx0 27/45



……朝


チュンチュン

ピヨピヨピヨ



狼少女「からい!!!」ガバッ


狼少女「あれ……? 朝…………」

狼少女(だ、ダイコンをかじって気絶してた……? かっこわる……)

狼少女(……けど、なら、わたしじゃないって思える……かも)




28 : 以下、名... - 2016/06/17 17:56:32.84 koNidqkx0 28/45



……


村長「…………」

鍛冶屋「……」

商人「あぁ……なんなんだ! くそっ! くそっ! あぁああ! こんな村寄るんじゃなかった!!」


狼少女「……どうしたの? あの……獣狩りの人は」



村長「死んだよ」

狼少女「っ!?」

村長「絵かきと同じ…………いや、いっそうむごたらしい死にざまだった。まず喉を潰され声を出せなくし、手足を潰され、……一晩かけて、なぶり殺された。全身ズタズタにして、最後に……心臓を」

狼少女「そんな…………そんなっ」ガクッ

鍛冶屋「自分を始末できる人間から潰す。……順当ではある。ただ、反撃のリスクを負ってまで、仕留めたということは」

狼少女「犯人は…………全員、喰い殺す気でいる……」

鍛冶屋「戦える者がいなくなれば、あとは一気に……ということだろうな」

商人「騎士団を派遣してもらおう! 近くの町から兵士でもっ」

村長「村が手薄になるぞ。女子供では道中が危険で、無事に応援を呼べるとは限らないからな。男を行かせるしかない」

鍛冶屋「疑いのない者……農夫と農夫嫁、二人に行かせては」

村長「……そうだな。頼んでおこう」



29 : 以下、名... - 2016/06/17 17:57:32.43 koNidqkx0 29/45



のんだくれ「また人死にが出たってこたぁ……オレは無実……で、いーんだよなぁ」

村長「……」

鍛冶屋「そうだ」

のんだくれ「あっそう。……んじゃあ、そこの。ちょっといいか?」

狼少女「……? わたし?」

のんだくれ「あぁ、少し話がある。二人きりでな……」

狼少女「…………」



30 : 以下、名... - 2016/06/17 17:58:40.65 koNidqkx0 30/45



……


狼少女「なに……?」

のんだくれ「…………お前さぁ」



のんだくれ「獣、いや………………化物だろ」

狼少女「っ!?」

のんだくれ「人の姿に化ける、化物の獣……っといや、身構えるなよ……べつに、誰にも言いやしねぇさ」

狼少女「……どういう、こと。なんで……」

のんだくれ「昔とった杵柄でね。……そいつの毛でも一本あれば、そっから化物かどうか、判別できる」

狼少女「うそっ……」

のんだくれ「ははは、まぁ酔っ払いのたわごと、と思って聞いてくれ。……オレは、お前は化物だが……いい化物だと思ってる」

狼少女「昔の杵柄って、なに」

のんだくれ「……っとと、かえって不審がらせちまったか。……んー……いわゆる、神官職についてたことがあってな」

狼少女「神官……! ……って、化物を見抜けるの?」

のんだくれ「いんや。オレは、独自に化物ども、そして化物を信仰する者どもとの、融和の道を探っていた。……それが原因で追放されたんだが。とにかく化物信仰、邪神崇拝なんてのと関わる中で、身に着けた術ってわけ」

狼少女「じゃあ……その方法で、村の全員を」

のんだくれ「無理」

狼少女「えっ」

のんだくれ「…………一回やんのに、相当量の酒を飲まなきゃならんのよ。……連続でやったら、死んじまう」

狼少女「……」

のんだくれ「だから、一人だけだ。……一人だけ、正体を確かめてやる」

狼少女「…………どうして、わたしが獣と知って、信用を」

のんだくれ「一番は、……狩人が死んだと知ったときの、反応だ。……演技ではないと思った」

狼少女「……けど」

のんだくれ「元々、いい化物がいると信じて、融和を目指してたんだ。…………また、信じさせてくれよ」

狼少女「………………分かった。……お願い」

のんだくれ「……で、どいつをあばく?」

狼少女「……」



31 : 以下、名... - 2016/06/17 17:59:36.17 koNidqkx0 31/45



……



狼少女「……はぁ…………あと、可能性があるのは」


タタタッ

ガバッ

狼少女「わっ……!?」

村娘「……」ギュッ

狼少女「……どうしたの」

村娘「ねぇ……もう、やめよ」

狼少女「やめる、って」

村娘「こんなこと続けても危ないだけだよ……! 二人で、ここから逃げようよ……」

狼少女「わたしたちだけ逃げて……村長さんは、どうするの」

村娘「…………私は、……あの人が、こわいの」

狼少女「? どういう、こと」

村娘「……あの人は、私のほんとうのお父さんじゃない。……血の繋がりがない。だから……」

狼少女「……」

村娘「誰も村から出さないように、って言いだしたのは、あの人なんだよ!? どうしてそんなことするの? こうやって、みんな死んでくだけじゃない! なんで…………こわい。こわいよ……もし、あの人が……」

狼少女「……大丈夫」ギュッ

村娘「……っ」

狼少女「すぐに、……捕まえるから。すぐ、いつも通りになるから………気をしっかり持って。元気……出して」

村娘「…………」

狼少女「そしたらわたしも、頑張れるから」

村娘「そう……そうわよね。ぜったい、ぜったい無事でいてちょーだいまし……!」

狼少女「うんっ……」



32 : 以下、名... - 2016/06/17 18:00:51.80 koNidqkx0 32/45



……


狼少女(……犯人……人に化ける獣は)


クソガキ「……っ……ぅ、」グスッグス


狼少女「あれは……」ピタッ



狼少女「どうしたの……?」

クソガキ「ぅ、ぐっ……ねー、ちゃん」

狼少女「……よしよし。なにがあったの」

クソガキ「ぅ、ぅああ……ぅ……おれ……獣じゃ、ないって、確かめるって言うから、だか、ら」

狼少女「えっ…………」

クソガキ「ぅ、うらなう、って……おれ、ちがうから、だから……ぅうう、うぁああああっ……!」

狼少女「っ……!!」ギリッ




33 : 以下、名... - 2016/06/17 18:01:24.86 koNidqkx0 33/45



……
-テント



狼少女「お前ぇえっ……!!!」バッ

占い師「なっ、なにヨ!? また暴力!?」

狼少女「あんな小さな子にっ……!!」

占い師「はぁん? ワタシ占っただけヨ。アナタ逃げ出した。あの子最後まで耐えた。偉いもんヨ」

狼少女「き……さまぁ…………!!」ダッ


占い師「ぎゃああああ!! 殺される!! ヤッパリ襲ってきたヨ!!!!」

狼少女「っ!?」

鍛冶屋「動くな」スッ

傭兵「いやぁ、信じたくなかったんすけどねぇ」チャキッ

狼少女「なっ……!?」

占い師「言った通りネ! 占い逃げた、獣だからヨ! 占いできるワタシ、殺しに来た!!」

狼少女「ちがっ……わたしは……んぐ!」

鍛冶屋「しゃべるな。弁明は全員の前で聞く。……手足を縛れ」

傭兵「へいへい、っと」


狼少女「んーっ! んんっ……!!」



34 : 以下、名... - 2016/06/17 18:02:55.47 koNidqkx0 34/45



……
-村の中




狼少女「…………」


村長「まさかな……」

村娘「……」

占い師「……」

傭兵「ふぅ……」

鍛冶屋「……」

商人「あぁ……これで一安心。おい! はやくこいつを処刑して、この村からわしらを出せ!」

鍛冶屋「……なにか、言い分があるなら聞こう」

狼少女「…………」

傭兵「さっきは、なにか言おうとしてたじゃないっすか」


狼少女(……みんなの前で、……彼が暴行を受けたことを言う……? そんなこと…………)

村長「……狩人が殺された現場にあったのは、この弓と矢。そして……この、何かのかけら」コロン……

狼少女「……!!」

鍛冶屋「……こいつの指にある装飾具と、ぴったりはまるな」

村長「狩人に抵抗にあったとき割れた、か。……証拠はあるわけだ。…………あとは、獣か否か確かめる」

占い師「……」ニヤ

商人「そんなことはいい! とにかく早く処刑してわしを解放しろ!」

占い師「占い、すぐ済むヨ。だから」

鍛冶屋「その必要はない」

占い師「へ……?」

鍛冶屋「ここで拷問して、すぐにでも吐かせる」

占い師「そんなっ」



35 : 以下、名... - 2016/06/17 18:03:37.64 koNidqkx0 35/45



ビシィッ!!

狼少女「ぃ……!!? ぁ、がっ……!?」

鍛冶屋「獣の本性を見せろ。……さもなくば、延々と苦しむことになるぞ」

狼少女「っ……!」


ヒュオッ


ビシュッ! バシィイッ!!!

狼少女「ぁぐぅうっ!? ぁ、……ぅがぁあっ!!!!」

ビシィッ ビシィッ ビシィイッ

狼少女「ぃぎっ!? ゃ……あがあぁっ!! ぅぁああああっ!!!!」

鍛冶屋「……」

狼少女「はっ……ぁ、は……ぅ、ぅ、あ」

鍛冶屋「情けなく涙と鼻水たらしながら、よく耐える。……指でも折るか。それとも爪をはがすか。一枚一枚……」ギッ

狼少女「ひ……! ぃ、や……ぁ……ゃめ」



36 : 以下、名... - 2016/06/17 18:04:13.17 koNidqkx0 36/45



ベリッ


狼少女「っ…………!!!?!?! っ……は…………!!! ぁ…………!!!!」ガクッ ガク

鍛冶屋「指のほうがいいか……?」

グイッ

ミシミシ……

狼少女「ゃ……ぁ…………!! やっ……ぃ、い……や」

鍛冶屋「これ以上耐えるなら、焼いた鉄でも押しつけねばならん。……焼いて、水に沈めて、息のできなくなる限界まで沈めて…………また焼く。……鍛冶場で鉄を打つように、また鞭を打ち、水に沈め……焼く。……そうしてほしいか?」

狼少女「ぁ…………ぁ、」


ボギィッ


狼少女「っ…………!!!?!? ぅ、がぁあぁああぁああああああああああっ……!!!!!」


ミシッ


ファサァッ……


狼少女「ぁ……ぐ……ぅ…………はっ……ぁ、はぁ……」フサフサ



37 : 以下、名... - 2016/06/17 18:05:00.81 koNidqkx0 37/45



村長「……やはりか」

村娘「ぅっ……う…………」

傭兵「おぉ……ケモミミ、ケモシッポ」

商人「……しつけられれば、高値で売れるか……?」


鍛冶屋「決まりだな。……楽に死なせてやる。縛り首だ」シュルッ

ググッ

狼少女「ぅぐっ!!!? が、ぁ」

鍛冶屋「台に乗れ。……木に吊るす」


狼少女(し、しぬ…………しぬの……? わたし…………)

狼少女(やだ……やだっ…………やだぁあ……)





クソガキ「待てよ!!!! お前ら!!!」


村長「! なんだ?」

占い師「っ……」

クソガキ「ねーちゃんはオレを守ってくれようとしただけだ!! 悪いのはそいつだ!!」

占い師「な、なにをデタラメをっ!! ガキのザレゴトネ!!! 聞く必要ないヨ!!」

鍛冶屋「……理由はどうあれ、こいつが獣であることは、見ての通り。……既に二人殺している獣を、許す道理はない」



38 : 以下、名... - 2016/06/17 18:05:53.92 koNidqkx0 38/45



のんだくれ「殺して、いなかったとすれば?」

鍛冶屋「……!」

傭兵「え? でも、絵かきと狩人をやったのは、獣なんすよね? で、こいつも獣」

のんだくれ「もう一匹いる」

村長「なに……」

商人「お前なんぞの言葉を誰が真に受けるか!! いーからもう終わらしてくれ!!!」

鍛冶屋「だとしても、こいつは獣だ。そして人間である占い師が、こいつがやったと言っている。もし犯人でなくとも、獣が人を殺したせいだ。同族を恨め」

のんだくれ「じゃあ、あんた。……女から「強姦魔だ」と指さされ、ろくすっぽ調べもせず処刑されるとして、「男が強姦事件を起こすせいだ」「だから同じ男を憎め」……そう言われて、納得できるのかぁ?」

鍛冶屋「……」

傭兵「ぇえ……? 人間と獣じゃー、前提が違うっしょ」

のんだくれ「違わねぇよ。なにも違わねぇ……だから、俺たちは気付けなかった。もう一匹の存在に」

村長「……」

のんだくれ「…………この絵を見ろ」パラッ

鍛冶屋「これは……」

傭兵「ちょ! 半裸! 半裸の女の子が抱き合って……って……この二人って」

のんだくれ「二人の指をよく見ろ」

商人「ん……?」

鍛冶屋「証拠品の……割れていた、指輪」

のんだくれ「割れてなどいない。最初から、二つが合わさるかたちだった。……輪の部分だけを壊して、現場に、あえて残したんだろうよ」


のんだくれ「……犯人が、罪をなすりつけるために」

傭兵「え……!?」

商人「じゃ、じゃあ、ほんとうの、人殺し……人喰いは」

のんだくれ「頼まれていた調べが終了した。その娘は」



のんだくれ「化物だ」





村娘「ちがうわ」




40 : 以下、名... - 2016/06/17 18:07:09.61 koNidqkx0 39/45




村娘「私は、その子を処刑させようとなんてしてない」


村娘「ただ気付いて欲しかっただけ。…………獣だと、化物だというだけで、犯人と決めつける人間どもを見せて、分かって欲しかっただけ」

村娘「人間なんかに味方したって、しょーがない、って」


村長「なにをっ」

ドシュッ

村長「が…………ぁ」ドサッ



メキメキメキッ


魔獣「だってそうでしょう……化物は、化物らしく…………愚かな人間を喰えばいい」

グシャッ バリッ バリッ


鍛冶屋「村長……!!」

クソガキ「ぅ、うぁああああああ!!! ばけもんだぁああ!! 怪物だぁあああ!!!!」

商人「ひぃいいいいい!!!」

占い師「ワタシだけは助けるて約束ヨ!? 少女と子供はくれるて約束ヨ!?」

魔獣「ここを含めた近隣の村々は私の牧場だった……人間を飼育する、獣の牧場。……けど、外の獣を排除されたら……獣害に見せかけれないじゃない? もう台無し。だから……みんな食べちゃうことにしたの」


狼少女「なわ、をっ……とぃ」

クソガキ「っ!! ねーちゃん……」

グイッ グイッ

クソガキ「くっ……この」


魔獣「あなたと二人で……仲良く、みんなを喰い殺したかったのに」



ブチブチブチッ

クソガキ「やった……!!」


シュタッ


狼少女「お断り」

魔獣「そう……残念」


41 : 以下、名... - 2016/06/17 18:08:18.01 koNidqkx0 40/45



狼少女「ゥがぁあアアあああああッ!!!!」ビュオッ

魔獣「グヲォオオオオオオオオッ!!!」ズガァアッ


傭兵「ど、どうしたら……」

鍛冶屋「獣同士が殺し合うのなら、生き残った方を狩ればいい」

のんだくれ「てめぇ!! まだそんなことをっ」

鍛冶屋「獣が、化物がいるから起きたことだ。どのような化物にしろ。殺しておくに越したことはない」


狼少女「グッ……! ぅガぁあアッ!!!」

ザシュッ!!

魔獣「ギィイイッ……ググォオオオッ!!!!」


ドガッ バキギィイッ

狼少女「グぁ、あああっ……!!!」

魔獣「ホント……ザンネン……デスワ…………」

ズシ……ズシ




42 : 以下、名... - 2016/06/17 18:09:16.69 koNidqkx0 41/45




傭兵「ぅ、うわぁああああああ!!!」ヒュオッ

ドシュッ

魔獣「……フン。ニンゲン、イッピキテイド」グォオオッ


狼少女「やぁああああっ……!!!」ギリギリギリッ


ヒュンッ!!


ブシュッ

魔獣「ぎぃッ!!? 弓矢……ダト……人間ノドウグナドヲっ」

狼少女「……ただの弓矢じゃない」

魔獣「!?」

グラッ


狼少女「狩人が使っていた…………獣殺しの、猛毒の矢」

魔獣「な……がッ…………ァ」



ドサァアッ


魔獣「ゥ…………ぐ……き、サ……ま」


狼少女「わたしは……人間にひどいことされても、騙されても、裏切られても、痛めつけられても…………今更、失望したりなんかしない。……とっくに、知ってるから」

魔獣「……ッ…………」

狼少女「でも…………それはわたしたちもそう」

魔獣「ナニ…………」

狼少女「いっぱい間違えるし……いっぱい、誰かを傷つけてしまう。…………けど誰かに優しくすることも、誰かを守って、助けることも、できる、はず……だから」


狼少女「……おんなじだよ」



狼少女「人は、化物になるし、…………化物だって、人になれる」


傭兵「へへ……」

クソガキ「……ねーちゃん」

のんだくれ「……ヒック」


魔獣「…………イツカ……クイルゾ…………ヒトニ、ミカタシタ、コ、と」



ガクッ……



43 : 以下、名... - 2016/06/17 18:10:09.43 koNidqkx0 42/45




鍛冶屋「…………終わったのか」

商人「は、はやく! はやくそいつも殺せ!!」

傭兵「……」

鍛冶屋「…………それは、……できないな。こうなっては」

狼少女「いいの? わたしを逃がして」

鍛冶屋「お前こそ、俺を殺しても構わんのだぞ」

狼少女「……いい。あなたは、みんなを守るためにやっただけ」

鍛冶屋「…………占い師は、農夫が呼んでくる兵士に引き渡す」

狼少女「分かった」

占い師「ち、チガウヨ! 脅されてただけネ!! なにも知らない!!」

バキッ

占い師「うげっ」バタッ

傭兵「縛っとくっすよ」



44 : 以下、名... - 2016/06/17 18:10:44.44 koNidqkx0 43/45



狼少女「……じゃあ、わたしはそろそろ」

クソガキ「行っちゃうのか……?」

狼少女「…………正体を明かした以上、留まれない」

のんだくれ「商人は、うまく口封じしとくぜ」

狼少女「べつに……構わないから。殺さないで」

のんだくれ「殺しゃしねぇよ。まぁ、いい呪術があるのさ。……脳みそをちょちょいと」

狼少女「気持ち悪い話はやめて」


クソガキ「またな……尻尾のねーちゃん」サワッ

狼少女「うん……」ファサッ

クソガキ「オレ…………ねーちゃんの尻尾、………………好きだ」

狼少女「え……?」

クソガキ「なんでもねーよ!!! このまな板!!」

狼少女「なっ…………まな……」ガーン



45 : 以下、名... - 2016/06/17 18:11:25.49 koNidqkx0 44/45



のんだくれ「……気をつけろよ。お前、……化物にも、人間にも、狙われるぜ」

狼少女「分かってる」



狼少女「けどこれが、わたしの選んだ道だから」




狼少女「わたし自身の意思で、…………共存の道を、探すから」








おわり。


46 : ◆lKvaWxCEcw - 2016/06/17 18:35:28.34 koNidqkx0 45/45


ここまで読んで下さった方は、本当に有難うございました。


学者「ひとと」魔女「けもののひと」
http://ayamevip.com/archives/47811359.html

もよろしく。

では。


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