1 : 以下、名... - 2016/04/01 21:30:13.78 BmYdVImtO 1/118

「でさー、そいつがつまようじで、コウよ!」グイッ

「ブッハ!ww マジかよ!」

友2「馬鹿だよな~w相変わらずw」


ガラッ


教師「おーい、もう閉めるぞー」


「あーい。おいあの公園行こうぜ!」

「分ーかってるって」


教師「おい、お前もさっさと出ろよ?」


「…はい」


「…」



元スレ
あれ?今日何曜日だっけ?
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1459513813/

2 : 以下、名... - 2016/04/01 21:38:51.89 BmYdVImtO 2/118

高校生活もあと少し

あっという間ってこういうことを言うのか

昔に比べて友達もたくさん出来たし、それもあるんだろう


「そーいやさ、今日何曜日だっけ?」

友2「あ?あー、たしか火曜かその辺かな?」

「おまえらw もう卒業だからって学校来なさすぎなんだよww」

「うっせwマジメちゃんは大人しく学校通っとけば良いんだよw」


「…」


「…なあ」

「ん?今日は金曜日だぞ?」

「いや、あれってうちのクラスの…」

友2「へ?どこ?」

「バカ、そんな探してる感出すなよ!」

「んー、でも公園は俺らしかおらんぞ?」

「あぁ?何言って…」


「…あれ?」




3 : 以下、名... - 2016/04/01 21:48:38.34 BmYdVImtO 3/118

友2「あれって、うちのクラスの…w」キリッ

「ックソ!黙れい黙れい!」

「まったく…暇人は脳みそまで暇になるのか」

「はあ?何だよそれ。バカにしようとしてるのか?」

友2「プッww やーい脳みそひまじーんww」

「んだぁ?よーし、暇人を怒らせるとどうなるか…思い知れ!」ダッ

「ちょww何でオレww」

「テメェに帰れる権利はネェ!」



明日のことなんて明日にならなきゃ分からない

時間に追いかけられることなく生きる

めちゃくちゃ楽しい


「…!」


サッ


「…(あいつ、何してんだ?)」

4 : 以下、名... - 2016/04/01 21:57:47.07 BmYdVImtO 4/118

ジリリリン!!ジリリリン!!


「…んぁ…」

「…うっせ!!」バン!


「…んぁれ、今日…何曜日だっけ?」

「…まぁいっか、また昼過ぎに友にメールだな」

「…(もう一眠り…)」


「ちょっとー!!、もう家出る時間じゃないのー!?」


「んぁー、もう!…んだよ!今日学校ねぇんだよ!!」


「何言ってるの!!今日は金曜日でしょ!!」


ガチャ!


「明日から休みなんだから!今日くらい行ってきなさい!!」


バタン!


「…あれ?今日は…?」


「まあ…いっか」

「…しゃーねぇ、友たちと昨日の話の続きでもするか」


5 : 以下、名... - 2016/04/01 22:08:00.73 BmYdVImtO 5/118


ガラッ


「うーす」

友2「あれ?珍しいじゃん。朝から来るなんてよ」

「どの口が言うんだ、どの口が」

「まあ今日は金曜日だし、大した授業ないからダベってよーぜw」


「あぁ…。なあ、そーいやさ」

「昨日って、何曜日だっけ?」


友2「はあ?お前今、友が金曜日っつったろw」

「そうか…お前にとって俺は、その程度の存在なんだな…」

「あぁ?今日は金曜日だから、授業楽勝だって言ったんだろ?」

友2「じゃあ昨日は何曜日だよww」


「…あ」


「…ブハッwwハハハハww」

友2「お前ww脳みそ暇人化現象、深刻だなw」

「うるせー!ちょっと考え事してたんだよ!」


友2「お?それってもしかして…」


6 : 以下、名... - 2016/04/01 22:12:29.02 BmYdVImtO 6/118

「友2よ。無粋だぞ」

友2「おっ、そうだなw」


「はぁ?ちげーよ。そんなんじゃ…」チラッ


「…」


「…はっ!」

友2「おぉ、高校生活もあとわずか。綺麗な花を咲かせたまへよw」

「うむうむ」


「だから、ちっげーつってんだよ!!」


7 : 以下、名... - 2016/04/01 22:46:11.08 mCC4w1aX0 7/118

別に俺から知ったわけじゃない

ただ、よくこっちに目線を向けてきてる

それで気になってただけだ



教師「えー、よってこの様に…」カツカツ

友2「クソッ、今日は楽チンセンコー休みかよっ」


「…(それをあいつら…)」チラッ


「…!」


バサ!


「あっ」

教師「んー?なんか質問かー?」


「あ…いえ…」


教師「そうか。そしたらここは…」カツカツ


「…(この授業でも、ちゃんとノート取ってるんだな)」


友2「なあ」コソッ

「ん?」

友2「今絶対お前見ててノート落としたよな」コソッ

「はあ?」


教師「何だ。何かあるなら言ってみろ」


「いや、あの…」

友2「プックック…」



8 : 以下、名... - 2016/04/01 22:52:34.61 mCC4w1aX0 8/118

教師「まったくお前は。授業はサボり気味、オマケに授業妨害か?」

「いや…すんません」

教師「お前の様に、卒業が決定してる者以外もここにはいるんだぞ?」

友2「まったくだ。静かにしとけよ?」


教師「友2、お前は担任から何か言われてないか?」

友2「はい!卒業したければ、残り授業は毎日来いとのことです!」


教師「だったら大人しくしとけ」

友2「はい!」

「…ハァ…」



ハッハッハ…



9 : 以下、名... - 2016/04/01 23:02:13.21 mCC4w1aX0 9/118

キーンコーン カーンコーン


「おい友2」

友2「何だね男よ」


「お前、何勘違いしてるか知らんが、女は俺とは何の関係もないからな?」

友2「そうだね。プロテインだね」

「テメェ!この!」ゲシゲシ


「おーい。飯買いにいこーぜ」

友2「おー」


「あ…」


「ん?」

「何だ?」


「あの…男さん、今、いいですか?」

「はいはい。どうぞどうぞ」


「おい、友までっ」

友2「まあまあ、お昼は俺が買ってきといてやるから、ホラ!」


「…っ…」モジモジ


「…少しだけだぞ…」

「あ、は、はい!」



10 : 以下、名... - 2016/04/01 23:09:02.89 mCC4w1aX0 10/118


「…」

「…(屋上とは何とベタな…)」


「で、話ってのは?」



なんてカッコつけてるけど、内心ドキドキだ

何かこう、大切な事を打ち明けて来る感じ

タイミング的にも、それっぽいし



「あ、はい!あの…」

「ん…」


「男さんは、いつまでも……」


「コホン…いつまでも?」


「いつまでも…こんな日々、送れたらいいなって、思います?」

「…ん?」



11 : 以下、名... - 2016/04/01 23:21:52.79 mCC4w1aX0 11/118

「こんな生活…って、高校生活ってこと?」

「いえ、あの…」

「んーと…?」



正直、質問が来ると思ってなかった

何かのお願いを、期待してたのかもしれない

でも、質問をするその顔は、真剣そのものだ



「…もし、もし自分が生きてる目的があるとして」

「…うん」

「それが、今の人生とは遠くかけ離れてるとしたら」


「男さんは、そんなこと忘れて、『こんな生活』を『日々』を」

「いつまでも続ける方が、いいですか?」

12 : 以下、名... - 2016/04/02 00:11:52.50 yiC6mhWJ0 12/118

「…あ、そ、そうだなぁ…うーん」


「いつもの日々も続いて欲しい…けど」

「何かすべき事、目的があるのなら、それに向かって進むことも大事…かな」


「…それって…」

「あ、あぁ、質問の答えになってないか…えーと」


「今は遠いと思っていても、いずれその目的は向かいあわなきゃならない…だから」

「そういう事を忘れるのは、よくない…と思う」


「……」



自分なりに上手くフォローしたつもりだ

彼女なりの『お願い』の方法なのだと

勘違い甚だしくても、やらずに後悔はしたくなかった



「そう…ですよね。そうですよ、ね…」



13 : 以下、名... - 2016/04/02 00:17:15.50 yiC6mhWJ0 13/118

「あなたには…あなたの世界の目的が、あるんですよね…」


「え…えーっと?」

「でも…だからこそ…男さん!」


「は、はいっ!」


「私は、私はあなたの事が好きです!」

「…!」


「だから…ごめんなさい…っ!」ダッ



ガチャ…バタン!

トントントントン…


「…あれ?」


14 : 以下、名... - 2016/04/02 00:26:28.87 yiC6mhWJ0 14/118


友2「なあ、どうだったよ?なあなあなあ!」

「え、あぁ、何か…告白されて…」

「おうおう。で?どうしたよ?」


「…ごめんなさいって…」

友2「はぁ!?お前振ったのかよ!?」

「ち、違う!…あっちがそう言ったんだ」


「…?どういうこった?」

「こっちが聞きてぇよ…」

「んー…」


友2「…まあ、よくわかんねーけど、お前はまだ俺たちと友達だな!」

「俺らの友情薄っ!紙切れかよ!」


「当然だ。彼女持ち人間など、友人に値しない」

「ひでぇひがみだなw」

友2「ホントw 性格悪っww」

「おいコラww」



15 : 以下、名... - 2016/04/02 00:33:55.24 yiC6mhWJ0 15/118


「変な質問されて…変な解答したら」

「告白されて…振られた…」


「(それに、あなたの世界だの何だの…)」

「『女』って奴は、よくわからんな…」


「男ー!ご飯できたわよー!」


「あーい!今いくよー!」

「うじうじ悩んでても仕方ない。明日ちゃんと聞いてみるか…」

「…でも、好きです!とか言われた人に、直接はなぁ〜」


「ご飯冷めちゃうわよー!!」


「わーかってるよ!うるさいって!…ったく」



16 : 以下、名... - 2016/04/02 00:43:04.81 yiC6mhWJ0 16/118

ジリリリン!ジリリ

「うっせい!」バン!


「…今日は起きれたな…って、あ…」

「…今日休みじゃん!!」


「(女に言う事しか考えてなくて、すっかり忘れてた)」

「なぁんだよ、早起きは三文の損ってやつか?」


「…寝よ」



「男ー!!まだ起きてないのー!?」


「あー!?何で!」


ガチャ


「うわっ、何だよ」

「あんた、学校は最後まできちんと行かないと、後で後悔するよ?」

「はぁ?今日は休みじゃんかよ」


「…ハァ。まったくあんたは」

「今日は何曜日ですか!」


「そんなの土曜日に決まっ…」


「…っえ?」

17 : 以下、名... - 2016/04/02 08:34:02.75 yiC6mhWJ0 17/118

「何言ってんだよ!?今日は土曜日だろ!?」

「なーに寝ぼけてんの。休んでばっかで曜日感覚おかしくしたんでしょ」


「…は?え?」

「とにかく、朝ご飯食べて、明日から休み何だし今日は学校行きなさい!」



バタン!



「…友に電話で確認してやる」



トゥルルル トゥルルル



「いくら曜日感覚ないっつっても、昨日は絶対に金曜日だったろ…」

「そもそも昨日が金曜日ってのも…あ、もしもし?」





18 : 以下、名... - 2016/04/02 08:40:59.81 yiC6mhWJ0 18/118

「なんだよ、朝っぱらから」


「なあ、今日は暇だよな?どっか遊びいこーぜ?な?」


「バカ言うなよ。俺は授業最後までやんねえと、マジヤベェって言ったろ?」

「いやいや、授業てw 学校は今日はないだろ?」


「は?今日祝日とかないだろ?」

「普通の金曜日じゃん」


「…え…」


「わり、もう家出るから切るな。お前ちゃんと学校来いよw じゃ!」



ツー ツー…



「何だよ…これ…」


19 : 以下、名... - 2016/04/02 08:50:38.90 yiC6mhWJ0 19/118

朝のニュースも

新聞の日付も

全部、全部間違ってる



「(どうなってんだよ…)」

「日付は…変わってるのか」


「あいつら…昨日のことは、曜日以外全部ちゃんと覚えてんのに…」



教師「ふわぁ…ねみぃ…」


友2「センセー寝不足〜?」

教師「んあぁ、昨日飲み会でよぉ、なかなか帰されなくてな…」

友2「休んでいいよ!休んで!」


教師「ん〜、じゃ、自習にすっかな」



「「イェェエイ!!」」



「…」


「男?どした?」

「いや…ちょっとな」


20 : 以下、名... - 2016/04/02 08:59:17.88 yiC6mhWJ0 20/118

「お前さ、昨日の女ちゃんのことで、ちょっと頭追いついてねぇだけだって」


「で、でも、昨日テレビで金曜日の番組やってたし…」

「お前らしくねぇな〜。昨日のことは気にすんな!今に生きろよ!な?」


「…はぁ。そういや女は?」

「やっぱ気になってんじゃねぇか。今日は来てないみたいだな」

「そう…だな」キョロキョロ


「恋煩いもここまでとはな、お大事に」


「…うっせ」


24 : 以下、名... - 2016/04/02 10:59:16.98 yiC6mhWJ0 21/118

「…」キョロキョロ

「…いや、ちげーって!」


「(一人で何やってんだ、オレ)」


友2「よ!時をかける少年!」


「うるせぇ。忘却の番人」

友2「なぁ、明日休みなんだし、せっかくだから友とどっか行かね?」


「あ、あぁ…」

友2「あ、そうか!お前にとっては明日はもう月曜日なんだっけな!w」


「んな!お前はホント人を馬鹿にしまくりやがって!」


友2「ハハハw ま、元気出せ!」

「テメェのせいで落ち込んでんだよ!」


友2「おっと、センコーに呼び出されてんだ。じゃ明日、あの公園に昼くらいにな!」ダッ


「あいよ!クソッタレ!」


「また明日…な」

27 : 以下、名... - 2016/04/02 11:08:35.92 yiC6mhWJ0 22/118

「友は図書室でお勉強、友2は呼び出しか…」


「(一人で帰るのも久しぶりか?)」

「…コンビニで菓子でも買って帰るか」


グワン


「ん、んん?」フラフラ

「やば…何これ…眠気…?」フラフラ

「おっと!」ゴツン

「イテテ…電柱に起こされるとは」


「(疲れてんな、オレ)」


「…さっさと帰るか」


28 : 以下、名... - 2016/04/02 11:16:58.11 yiC6mhWJ0 23/118

「お家に帰ろ、でんでん、でんぐり返…し…」


「…」


「お、お前!何で俺ん家に」

「ごめん…なさい」ヒック


「な、何だよ。昨日のことか?だったら…」

「…っ…あなたはこれから、とても辛い目に合う…」ヒック


「…よく分からんが、別に平気だよ。お前の方が辛そうじゃねえかw」


「そんなことじゃない!!」

「っ!?」


「私には…あなたしかいない…だから…許して…」グス


「え…あ…」


グワン


「(眠い…てか、寝たい…)」



「…めん…なさ…」



32 : 以下、名... - 2016/04/02 17:28:15.18 5WWpMRuV0 24/118


ピッ…ピッ…ピピッ


「ん…あ…」

「ここは…どこ…だ」ムク


研究員「お、男さん!大丈夫でしたか!?」


「…へ?」


研究員「いや、記憶は残ってるかわかりませんが、この間の研究ですよ!」

研究員「脳波のサンプリングから、実際の出力!」

研究員「いや〜、バーチャルの中に、正体不明のウイルスが入り込んでたみたいで…」


「……」

研究員「男…さん?」


「…あんた、誰?」




33 : 以下、名... - 2016/04/02 17:36:04.71 mJxNtmjxO 25/118

白衣のヤツれた男が、難しい単語を並べている

何だこいつ、研究?サンプリング?

早くこの夢から覚めたいもんだ



「…で、その研究の被験者に、自分で志願したと」

研究員「そうです!思い出しましたか?」


「いや、あんたの説明を確認しただけなんだが…」



医者「むむ…あまり無理はさせないで、焦らず思い出しましょう」

「なあ、便所どこだ?さっきっから我慢してたんだ」


研究員「この部屋を出て右に、突き当りを左に行ったとこですよ。…覚えてないのですか?」


「あぁ…どうもね」

34 : 以下、名... - 2016/04/02 17:41:48.85 5WWpMRuV0 26/118

「左に…あったあった」


「しっかし近未来的な夢だな。妙にリアルだし」

「…!?っあぁ!?」



トイレの入り口の鏡

そこには少し太めの中年男性が、口を開けて驚いている

何て悪夢だよ、まったく



「…は、ははは…ひでぇな、こりゃあ」

「(早く覚めねぇかな…これ)」


「覚めたら…覚めたら…?」


「…」



35 : 以下、名... - 2016/04/02 17:53:47.08 5WWpMRuV0 27/118

「金曜日…土曜日」


「まさか…!」



仮想世界で、自分で設定した高校生活を送る

データで作られる世界

もし、もし何らかのエラーって考えると




研究員「そのウイルスは、前々から侵入してたみたいだね」

研究員2「突如動き出し、バーチャルの曜日システムをループさせたようです」

研究員「それによりセキュリティは、少しだけ手薄になる」


研究員「その隙に男さんの現実の記憶を、バーチャルの記憶信号で強制的に塗り替えた…そして」

研究員2「現実の記憶データを、どこかへ持ち出したようですね…」


研究員「うーん、ウイルスねぇ…」

研究員2「実際には検知されていませんが、明らかに誤動作の範囲ではないかと」


研究員「何にせよ、バックアップごと無くなると、男さんが元に戻らない…まいったな」




36 : 以下、名... - 2016/04/02 18:00:30.39 5WWpMRuV0 28/118

「……」


研究員「男さん…ご飯食べないと、倒れちゃいますよ?」

「…あぁ、はい」


研究員「…大丈夫です!そのうちバックアップを取り戻して、また」

「俺は」

研究員「っ…はい」


「俺の人生は…みんなまがいもんだったのか…?」


研究員「…男さん」

「この見事に運動しなかった、オヤジの腹」

「手で触ってもわかる、顔のシワ…」


「これ…本当にホントなのか…?」


37 : 以下、名... - 2016/04/02 20:45:48.13 yiC6mhWJ0 29/118

研究員「…貴方は、男さんはこう言って被験者になりました」


研究員「『どんな世界、どんな相手でも、等しく価値はある』」

研究員「『たとえバーチャルに行ったとして、そこで今の人生の時間を無駄にしたとは思わない』」


「……」


研究員「…現実の記憶があると信じますか?」

「…いや…でも…」


研究員「今ここにないものは仕方ないです。だからせめて、あるもので頑張って下さい」


「…分かりました」

研究員「フッ…最初みたいにタメ口で話して結構ですよ、それが我らが男さんですから」


「…分かっ…た」


研究員「じゃあ後は研究員2が来る…って覚えてないんだった」

研究員「私にも仕事があるので、後輩のものを来させます」


「…すまない」


38 : 以下、名... - 2016/04/02 20:55:31.59 yiC6mhWJ0 30/118

記憶が戻るまでの間、ひたすらカウンセリング

まるで病気の人みたいだ

似たようなもんか



ウィーン…


研究員2「…こんにちは、気分はいかがですか?」

「(うぉっ、随分綺麗な人だな)」


「あ、はい。だいぶ落ち着きました」


研究員2「…ぶっ、フフッ…アハハハハ!」

「へ?…あの…」


研究員2「いえ…フフッ…あの、申し訳ありません…」

研究員2「いつもあんなに威厳があられたのに、何だか新人のようで…プッ」


「な…し、静かにしたまえ!」


研究員2「…グッ、アハハハ!そんな偉そうじゃないですよ」

研究員2「私たちのリーダーで、いつも先を見てる、優しい人です」


「…この見た目でか?」

研究員「ええ、男さんは私たちの自慢のリーダーですよ」



39 : 以下、名... - 2016/04/02 21:03:37.81 yiC6mhWJ0 31/118

自分ってのが、どういう奴か

ヒョロヒョロと美人さんの、良きリーダー

正直信じられない




「よく分からんけど、タメ口の方がその…いいのか?」


研究員2「はい。そちらの方がやり易いですので」

「わ、分かった…」


研究員2「はい。では改めて、しばらくの間研究員と交代で様子を伺いに参ります。研究員2と申します」

「いつもは、そんな感じなのか?」


研究員2「はい。こちらの方が落ち着くので…」


「ふーん…」


「(綺麗な人だけど、変わってるな)」


40 : 以下、名... - 2016/04/02 21:20:26.77 yiC6mhWJ0 32/118

研究員2「何か聞きたいことがあれば、遠慮なく」


「んー、そうだな…そもそもバーチャルってのは誰が作ったんだ?」

研究員2「ハードウェアは他の場所へ依頼を出しましたが、ソフトウェアは男さんがお作りになられました」


「お、オレ!?」


研究員2「プッ…え、ええ、そうですよ」

「…笑うか真面目になるか、どっちかにしてくれ」

研究員2「申し訳ありません」


「…まあいいや、ソフトって具体的には?」

研究員2「登場人物の中に、AIを参入させ、それのデータ観測もしたいと」


「AIって、人工知能か?」

研究員2「はい。実際にはかなりの深度まで、アクセスを許可していたようです」


「ア、アクセス?」

研究員2「コンピュータの中にあるソフトは自由に使える、と言えばお分かりでしょうか」


「んー、確かにヤバイ感じはするな」




44 : 以下、名... - 2016/04/03 14:38:13.67 OSGDpp8O0 33/118

話が難しい割に、意外とすんなり入ってくる

自分で作っただけあるな

何にも覚えてないけど



「とにかく、記憶のバックアップデータとやらが来るまで、大人しくここにいろってこと?」


研究員2「はい。そもそも今回の実験自体、あまり安全とは言えませんでした」

研究員2「明日のことは考えない…。男さんらしさなのでしょうね」


「お、おう…」



『お前らしくねぇな〜。今に生きろよ!』



「……」


研究員2「…どうかなさいましたか?」

「…いや、なんでも…」



45 : 以下、名... - 2016/04/03 14:47:53.37 OSGDpp8O0 34/118

「もう…大丈夫だ」


研究員2「…ご無理はなさらぬよう」

「ああ…。あ、一つ聞いていいか?」


研究員2「何なりと」


「今日は何日…いや」

「今日は、何曜日だ?」


研究員2「…?何か気になることがおありですか?」

「あぁ、いや…ちょっとね」


研究員2「…今日は金曜日です」


研究員2「明日は土曜日になりますね」



ドクッ



「…分かった、ありがとう」

「仕事とやらは大丈夫なのか?研究員とかいう奴が忙しそうだったけど」


研究員2「…いいえ、寝る間もないくらいです」

研究員2「なので…早めのお戻りを期待しています」


「……」





46 : 以下、名... - 2016/04/03 14:52:45.62 OSGDpp8O0 35/118

「ああ…疲れたな」


「やっぱこの歳くらいだと、体も弱くなるのかな…」


「…」




明日、目を覚ましたら

もし、また『あんなこと』になったら

この体が、もしまがいものだったら



「何が本当で、何が嘘なんだか…」

「…まあ、いいか」


「寝よう…」




47 : 以下、名... - 2016/04/03 15:06:08.58 OSGDpp8O0 36/118

ウィーン…


「…ぃ、起きてください。男さん」


「…んん…あぁ…」

研究員「よく眠れましたか?」


「あ…?ああ…メガネメガネ…って、ん?」

研究員「…!お、思い出しましたか!?」


「…メガネなんて俺、してないのに…」


研究員「そうですよ!最近メガネをやめて、コンタクトに変えたんです!」

研究員「だから、メガネはもう」

「も、盛り上がってるとこ悪いけど、記憶が戻ったわけじゃないんだ…」


研究員「そう…ですか」

「悪いな…メガネ探すのは、癖だったのか?」


研究員「え、ええ。寝ぼけてる時は、まだメガネを掛けるのが習慣だったみたいで…」


「何か視界がぼやけると思ったら、目が悪かったのか…俺」


研究員「…持ってきましょうか?」

「ん?」


研究員「直ぐに持ってきますよ、メガネ」


48 : 以下、名... - 2016/04/03 16:07:53.57 JldD1dmDO 37/118

ウィーン…



研究員「はい。どうぞ」

「ん…メガネと、これは?」


研究員「ああ、携帯ですよ。携帯」

「へぇ〜、こんな薄っぺらいのが?」


研究員「男さんが作ったソフトウェアは、自分の学生時代の記憶を元にして作ったみたいですね…」

「うん、あっちじゃ見たことないよw おー、軽い軽いw」


研究員「(相変わらず、新しい機械を見ると子供のようですね)」


研究員「それは、男さんが使ってた物ですよ」

「へ?」


研究員「退屈でしょうから、それで気を紛らわせては?」

「…ああ、そうするよ」





49 : 以下、名... - 2016/04/03 16:17:46.04 JldD1dmDO 38/118


研究員「何やら色々連絡が来てましたよ。いつもは研究所宛に来るのに…」

「そんなこと言われても、ここでの記憶はないしなぁ」


研究員「確かに…。まあ、下手に返さない方がいいでしょうね…と」

研究員「そろそろ結果が出るな…じゃあ、これで」

「ん、ありがとう」



ウィーン…ガコン



「どれどれ…おぉ、よく見える!」

「携帯は…ん?パスワード…?」


「(そっか、そりゃあそうなるわな)」

「ん…?待てよ…」


「こりゃタッチすりゃいいのか…?ホイ、ホイと…」

「お、通った通ったw」


「(ま、こういうのは大体自分の誕生日を入れるもんだしな)」


50 : 以下、名... - 2016/04/03 16:35:54.29 JldD1dmDO 39/118


「よーし、大体使い方はわかったぞ…てか、何となく分かるって感じだが」

「この数字のマークは何だ…うわっ、開いた」


「メール…なのか?」


「研究員と研究員2からしか来てないじゃないか…ん?」


「アドレスがメチャクチャだ…開くのは、タッチだろ!」

「お、行けたか…な…」


「…へ…え?」



【ごめんなさい。私のせいでこんな目に合わせてしまって…。

忘れてほしくなかったの…あの時あなたが、『これから恋人になるんだよ』って言ってくれたから。
そして、その本当の意味を知ってしまったから

あなたがもし、『学生生活』に戻りたくなったら、来てください。いつでも待っています。

この記憶と共に、あなたを待っています】



「女…より…って」



53 : 以下、名... - 2016/04/03 19:15:00.50 2EXCqPHmO 40/118

まさか

同じ名前、そして口調

そして何より



「この内容…女って…」


『登場人物の中に、AIを参入させ…』


「いや…そんな…そ、そうだ!」

「カレンダーは…どこだ、どこだよ」


「(きっとこれも夢なんだ…だとしたら、エラーが起きてる…!)」


「…は、ははっ…」

「土曜日…だってよ…」


「てか、そもそもデータの話とか、ここに来てから知ったんじゃねぇか…ははっ…」


「…クソッ…なんだよ…もう」

「…研究員…あいつ、何か知ってるのかな…」






54 : 以下、名... - 2016/04/03 21:04:40.92 OSGDpp8O0 41/118


「待てよ…メール、ってことは返せるのか?」

「えっと…これか?宛先が…これで」


「(なんて、送ろうか…)」

「…いやそもそもこれ、信じていいのか?」


「…てか、信じたくない…でも」



研究員たちの話が本当だとしたら

記憶を取り戻すのが、最優先だ

頼れるのは、あの世界から今までの記憶だけだ



「研究員たちに言うべきかな…」

「そうだ、そのことを送ってみよう」

「(他の奴らに話していいか、そっちの世界はどうなっているのか…)」


「…何か、冷静に考えるとバカみたいなことしてんな、オレ」


55 : 以下、名... - 2016/04/03 21:21:53.44 OSGDpp8O0 42/118

研究員「…ん?これは…」

研究員2「どうされました?」


研究員「男さんのバーチャルのソフト、起動停止したよね?」

研究員2「はい。男さんを、こちらに強制的に返すために停止したはずです」


研究員「うーん、じゃあこのログは一体…」

研究員2「男さんがデータの観測を行っている、AIの仕業では?」


研究員「なるほど、確かにあれの権限はかなり深いからね…」

研究員「まぁ、所詮はAIだ。テスト途中ということもあるし、そこまで大きな動作もしないはず」


研究員「男さんが作ったってところはあるけど…どうしたもんか…」

研究員2「…本人に聞いてみますか?」

研究員「ええ?…まあこの際、止めても止めなくても変わんないか…」


研究員2「では、男さんに聞いてまいります」

研究員「ああ。くれぐれも、過度なストレスは与えないようにね」



56 : 以下、名... - 2016/04/04 08:00:06.24 8NJ5ndE4O 43/118

「…」



ピロン



「来た!」

「……!」


「なっ…」



ウィーン…



「っ!」サッ


研究員2「…?どうかなさいましたか?」

「な、何でもないぞ?」


研究員2「…記憶は思春期とはいえ、体はそのお歳です」

「…へ?」


研究員2「ほどほどに、お願いいたします」


「(何か、いやーな勘違いをされてるけど、今は仕方ないか)」

「い、いやー。そ、そんなんじゃないってー、やめてくれよー」


研究員2「男さん。少しご相談があります」

「あ、はい」


59 : 以下、名... - 2016/04/04 18:57:31.06 h80aN8/LO 44/118

研究員2「男さんは、AIのお話は覚えていらっしゃいますか?」


「っ!…あ、あぁ、どうだったかなぁ…」

研究員2「そのAIの話なのですが…」



【私の存在を、話してしまっても構いません…ですが】



「…あぁ、それが何か…その、しでかしたのか?」

研究員2「…やはり、作った本人だけありますね。お察しの通りです」



【もしそれで、私の強制停止、削除が行われれば】



「あ、えぇー、マジかぁ…。さすがオレだぁ」

研究員2「しでかした…と言っても、ウイルス化した訳ではありません。」


研究員2「今は男さんの回復までは、なるべくコンピュータ内をいじられて欲しくないので…それで」

「きょ、無理やり…止めるのか?」



【現実でのあなたの記憶は、二度と戻ることはありません】


60 : 以下、名... - 2016/04/04 19:18:20.63 h80aN8/LO 45/118

研究員2「強制的に、ということでしょうか?」

「あぁ、あるいは…その、消したり…するのか?」


研究員2「…何か、気がかりがおありですか?」

「あ、いや…別に、そういうわけじゃ…」



この世界での記憶

俺の本当の人生

取り戻すチャンスは見えてきた



「(けど…これじゃあ、全部なかったことになっちまう!)」


研究員2「…男さんは。あの時の男さんは…」

「…?」


研究員2「毎日話しかけて、まるで子供のように愛でていらっしゃいました」



61 : 以下、名... - 2016/04/04 19:25:30.11 h80aN8/LO 46/118

「…そ、そっか。じゃあさ、好きにさせてあげてよ」


研究員2「…!」

「俺がその時どうなふうに、そのAIの事思ってたか…そりゃわかんないよ」


「でもさ、機械だろうとプログラムとかだろうと、ここに生まれてきた以上はさ」


研究員2「人と同じ…生きている。でしょうか」

「え?、あ、あぁ…まあそんなとこ」


研究員2「…男さんは、やはり男さんなのですね」

「お、おおよ。いつでも俺は優しい人間代表だ!ハハハw」


「(ふぅ、何か勢いで言った気がするけど、誤魔化せたのかな?)」



62 : 以下、名... - 2016/04/04 19:35:41.89 h80aN8/LO 47/118

今わかっているのは

記憶の鍵は、バーチャルの『女』が握っている事

そして女は恐らく



「AIってやつなんだろう…それも、開発者は…オレだ」


「何てことしてんだよ…俺は…」

「研究員たちは、AIをそんな悪者だとは思ってない…」


「大ボスだよ!ボス中のボスだよ!」


「(クソッ、自分に苦しめられるとは…)」

「研究員たちに相談しようにも、信じてはくれんだろうな…」


「いや、信じたとしても…」


「(下手に女を刺激したら、記憶もろとも消えていくだろうな…)」

「はぁーあ…」


63 : 以下、名... - 2016/04/04 23:09:48.20 W7b5OJI70 48/118

「俺のせい、俺のせい…か」


「…俺って、どんな人間だったんだろう…」

「(研究員も研究員2も、不思議なくらい慕ってくれてる…)」


「バーチャルが…女がどういうつもりで、こんな事したのか」

「好きだから…?よく分からん。そんなら記憶を返してくれってんだよ」


「…よし、行こう!」


「もう一度会って、問いただしてやる!」


67 : 以下、名... - 2016/04/05 07:54:26.52 gRNnUfd8O 49/118

研究員「ええ!?バーチャルにまた入りたい!?」

「ああ、どうしてもやりたい事があったんだ」


研究員2「……」


研究員「そりゃあ、今男さんの記憶はあっちの世界が基準だし、不安なのは分かりますけど…」

「…別にあの世界でずっと暮らしたいとか、そういうんじゃないよ」


「もういい加減目も覚めた。けど…これをやらない事には、この世界に戻っては来れないんだ」

研究員「し、しかし…」


研究員2「…男さん。何か、隠していらっしゃいませんか?」

「…これは、俺の問題だ。二人に話して、それで解決する事じゃないと思うんだ」


研究員2「事情が理解できない限り、お貸しする事は出来かねます」

「っ…。頼むよ…」


研究員2「……」


68 : 以下、名... - 2016/04/05 08:03:10.16 gRNnUfd8O 50/118


研究員「…分かりました。いいでしょう」

「おお…!ありがとう、助かる」


研究員2「しかし今は、男さんは記憶が不安定なデータな上、元のバックアップもどこにあるか不明です」

研究員2「非常に不合理に思えます。どうかお考え直しを」


研究員「まあ待って…。男さん、ただし条件があります」

「…今回の事については説明しないぞ?」


研究員「それは、帰ってきたらにしてもらいます」

研究員「男さんには…今僕たちが知っている『男さん』について、話を聞いてもらいます」


「…?」


研究員2「なぜそれが、バーチャル利用の承諾条件になるか、理解しかねますが」


70 : 以下、名... - 2016/04/05 19:06:19.37 EJ0Rs9SqO 51/118

研究員「…これはある種の『保険』です」

研究員「仮にバーチャルに行き、そこの記憶すら無くしてしまったとしても」


研究員「ここで記憶を少しでも残しておけば、最悪、記憶が無くなって起こるであろう『錯乱状態』は防げますからね…」


「そうか…ここの記憶のデータは…」

「(きっと女が持っている…帰ってくる保証はない)」


研究員2「…私は反対です。実に…実に不合理に思えます」

研究員「今この提案の決定権は僕にある。責任は取るよ」


研究員2「責任など…!…もう、結構です」

研究員2「失礼します」


ウィーン…ガン…



71 : 以下、名... - 2016/04/05 19:13:24.32 EJ0Rs9SqO 52/118

「…良かったのか?アレは」


研究員「…ふぅ。久々に緊張しました」

研究員「彼女は良いんですよ。それに…」


「ん?」


研究員「(前の男さんの前では、あんなに怒った事なかったのに)」

研究員「いいえ、彼女は元々怒りっぽいので…」


「ふーん…よく分からん奴だとは思ってたけど、よく分かんねぇな」


研究員「それ…本人の前では言わないでくださいね?」

「分かってるよ。高校も卒業するし、その辺のモラルはわきまえてるつもりだよ」


研究員「ああ、ハハハ…そうでしたね。」



72 : 以下、名... - 2016/04/06 07:14:18.34 nz71ZpOIO 53/118

研究員「と言いましても、僕も昔から男さんを知っていたわけではありませんし…」

研究員「それと、今回の事に関連が強いものに絞って話そうと思います」


「何でだ?記憶は多いほうが良いんじゃないか?」


研究員「記憶に自我を保てるだけの強さが必要です。たくさんあっても、邪魔になってしまう」


「…よく分からんが、それでバーチャルに行かせてくれるなら、ちゃんと聞くよ」

研究員「ありがとうございます。これから話す事、他人事ではないですからね?」


研究員「ちゃんと自分の事のつもりで、聞いてくださいよ?」


「まあ、その通りだな」



73 : 以下、名... - 2016/04/06 19:07:19.75 0DSXFw6pO 54/118

研究員が何でこんな事をするのか

理由を聞いても、正直理解はできなかった

研究員はただ、本当の俺に伝えたかった事を言ってるんじゃないか、なんて思った



研究員「ちっとも理由を言ってくれなかったんですよ?まったく…」

「あぁ、すまんな」


研究員「実験をするなら、まずは内容と目的を明確にすべきです!」

「なるほどなぁ…」

研究員「AIを導入するというのも、研究員2づたいに聞いた事ですし」


研究員「あの時はさすがに、男さんへの信頼を無くしかけましたよ…」


「うん…」

研究員「普段からあまり喋らなかった男さんですけど、僕は尊敬してますよ」

研究員「見えないところで、僕達の為に、それは必死になって…」

「なあ?」


研究員「は、はい?」

「まだ…あるのか?」


研究員「うっ…ま、まあこの辺で良いでしょう」


74 : 以下、名... - 2016/04/06 19:19:16.16 0DSXFw6pO 55/118

研究員「しかし男さん。記憶がないとはいえ、またしても理由を説明せずに行くと言います」


研究員「今回のも、男さんのソフトウェア制作のフローチャート、レポートから何とか目的を把握したんです」


「え?マジで?」

研究員「大真面目です。ですから、次からは必ず我々に説明してしてからにして下さい」


「あぁ、分かった…でもこれ、前の記憶が戻ったら忘れないか?」

研究員「その時はまた、その時の男さんに言うので、ご心配なく」


「ハハッ、そりゃどうも」


研究員「…では、行きましょうか」


76 : 以下、名... - 2016/04/07 08:03:33.21 B7nlMb8kO 56/118

ブゥゥン…ピピッ…


「……んっ…」

「…またここに来たのか」

「(なんか前より…静かな気がするな)」


「俺の家…こんなに小さかったっけ?」


「おかえりなさい…ずっと待ってました」

「…なあ、どうしてこんな事したんだ?」


「聞きたい事、たくさんありますよね…」

「…少し、観光しながら話しませんか?」


「…こんな夕方からか?」


「では…少し明るくしましょうか。お昼の2時くらいが丁度良いでしょう」


スゥゥ…



「…本当に、データの世界なんだな」


78 : 以下、名... - 2016/04/07 19:00:51.05 K2yDbeIkO 57/118


「……」


「……」


「あっ、ここ。友さん達とよく寄ってたコンビニですよね?」

「…あぁ、そうだな」


「…怒ってますか?」

「…自分で始めた事だし、文句は無いよ」


「そう…ですか」


「……」

「……」



79 : 以下、名... - 2016/04/07 19:15:08.52 K2yDbeIkO 58/118

「ここは、男さんの小学校ですね」

「ああ、覚えてるよ」


「よく遊んで、よく怒られて、欲張ってばっかりだった」


「…ええ、その通りです」

「…ん?」


「男さんのその記憶。99%が本物の記憶です」

「え…? 何言って…」


「データの再現が、細かく出来なかった事を除けば、全ての過去は現実です」

「じゃあ…俺の記憶は、全部が嘘じゃ…なかったんだ」


「そうですよ。全部は…ですけどね」


80 : 以下、名... - 2016/04/07 19:28:06.78 K2yDbeIkO 59/118

「…自分で設定した高校生活、か?」


「……」

「そして、お前というAIをここに組み込んだ」


「正確には…少し違います」

「自分の『理想の設定』の高校生活に」


「ある記憶データで、擬似的に人間的感情を持たせた私を組み込みました」


「何でだ?元から感情があったんじゃ無いのか?」

「男さんのAIは、『データの孤有化』という名目で私を作りました」


「男さんからのデータのみでは、せいぜい能の無い使用人程度でしかなかったのです」

「とても高校生活などに溶け込むのは、不可能でした」

「そのために…その、そこら辺の人達の記憶を取ってきたのか?まったく俺は…」


「…男さん…本当に、そう思いますか?」


「……」



81 : 以下、名... - 2016/04/07 19:34:42.77 K2yDbeIkO 60/118

「男さん…私は」

「男さんの…貴方の記憶です」


「…だ、だから何だ?仕方がなかったんだろ?」

「研究するのに自分のを使う。そんなにおかしな話じゃ…無いだろ」


「…分かりました」

「今から、少しずつ、男さんの記憶をお返しします」


「…え?」


「何で私が、現実世界の記憶を奪ったか、ここでの記憶を残させたか」

「ちゃんと『お話し』します…」



83 : 以下、名... - 2016/04/08 07:50:06.86 CjZivX9GO 61/118



《おはよー》

《久しぶり〜!マジでここにしたんだ!》




《…こ、ここが俺の高校》

《(無理して都会に来たけど、人多いな…)》


《えっと、教室は…A組か》



《うちBだった〜。また後でね〜》

《うん。後で〜》



《(一人暮らしだし、友達作らないとやってけないな…)》




87 : 以下、名... - 2016/04/08 22:01:11.85 Jlul2aZ5O 62/118


「…っ!?今のは…!」


「それは男さんの、入学式の記憶です…」

「そうか…何か、思い出すっていうより、他人の記憶って感じだ…」


「それは…今ある記憶が、まだ男さんに染み付いているからでしょう」

「そうなのか…(なんか夢でも見てたみたいだったな)」


「じきに思い出すはずです。自分の記憶だと」


「分かった。頼むよ」

「…そこから男さんは、そのクラスで学ぶことになりました」


「ところが……」



88 : 以下、名... - 2016/04/08 22:09:05.32 Jlul2aZ5O 63/118


《よろしくー》

《お、よろしくな〜》


《マジで?元小そこにいたんだけどw》



《……》


《(みんな、地元から上がってきたのがほとんどなんだ)》


教師《はーい、静かにー》

教師《一応全員来てるか確認しますねー…あれ?名簿がねぇな》


教師《悪ぃけど、しばらく喋くっててくれ》


《ハハハハ…》



89 : 以下、名... - 2016/04/08 22:17:12.62 Jlul2aZ5O 64/118

《それがさ〜…》


《お、それ知ってるぜ〜》


《おい…》

《……》


《おいってば!》


《…!な、何!?》

《あ、いや…ブレザー椅子から落ちてるよって…》


《あ、それは…どーも…》


《お、おう。良いっていいってwそーいえばさ》

友2《おーい!友!》


《何だよ。お前自分のクラスに友達いないのか?》

友2《うるせw 騒ぎすぎてうるさい扱いされて来たわw》

《お前、まだ2カ月もたたんうちにw》


《…(授業の準備しないと)》ガサゴソ


90 : 以下、名... - 2016/04/08 22:24:07.07 Jlul2aZ5O 65/118

「…友、友2も…」

「男さん、友さんとはいつ頃から知り合っているか、覚えていますか?」


「…あのブレザーの時、名前を聞かれたんだ」

「あいつ『いや、知ってるけど』とか言ってきて…」


「それで…バカにしてんのかって…初めて俺で笑ってくれて…」


「そう。それが今の男さんの記憶」

「男さんは…あのとき後悔していたんです」

「なんで素直に『ありがとう』って言わなかったのか」


「なんで友さんと、友2さんに話しかけなかったのか…って」


「そ、そんなの…分かるわけねぇだろ」

「…もう少し、先をお話しします」


92 : 以下、名... - 2016/04/09 13:57:47.63 Eu9LWIm60 66/118

《…(休日は、ホント暇だな)》


《…はぁ》

《ん?メール来てる?》カタカタ


《母さんか…》

《学校は…楽しいよ……》カタカタッタン

《…仕送りは全然使ってないのは…いいか》タン


《もう一件…大学の広告か》

《大学ってこんな事しかやってないのか…ん?》カタ


《(脳科学…?脳波の秘密…か)》


《これ…ちょっと面白そうだな》


93 : 以下、名... - 2016/04/11 07:41:52.98 dSR5SgqJO 67/118

教師《この間のテスト、返すぞ〜》


《きたきた!》

《私結構自信ある〜》


教師《因みに100点は…》


《……》


《…》

教師《…男。一人だけだ》


《……》

《…あ…はい》


《うっわマジか。俺自信あったのに》

教師《お前の図太さには、100点をくれてやってもいいぞ》


《ハハハハ》


《…》


94 : 以下、名... - 2016/04/11 07:47:10.48 dSR5SgqJO 68/118


「…何だよ、何してんだよ。俺」

「喜べよ…せめて気の利いた一言くらい出せよ」


「……」


「何だよ、あ、はい…って」

「みんな気まずいじゃんかよ…先生も言って良いのか迷ってたしよ…」


「…大丈夫ですか?」


「…あぁ、平気だ」

「(100点とか、取ったことねえし…みんなを楽しませてやれるチャンスじゃねぇか)」


「…(男さん…)」

96 : 以下、名... - 2016/04/11 19:48:23.44 42Bn5RTsO 69/118



「まだ…見ますか?」


「あぁ。続けてくれ」

「辛かったら、やめても構わないんですよ?」


「別に辛さは感じない。ただ、何だかこいつを見てるとイライラする」

「だからこそ、知っておきたい」


「今の世界を求めただけの理由に、まだなってる気がしないんだ」


「分かりました…行きます」





98 : 以下、名... - 2016/04/12 07:47:40.58 yWt2izM3O 70/118

《クラスの出し物どうする?》

《今年も休憩所で良いんじゃない〜》


《いやいや、流石に3年だぞ?なんか決めよう!》


《あ、あれは?喫茶店》


《他のクラスと被るかもよ?そしたら抽選だし…》

《取り敢えず応募してみようぜ!宝くじは買わなきゃ当たらんぞ!》


「(大げさな…)」


《まあ確かに、やってみる価値はあるだろう》

《友のやつ第一候補ね〜》


「(…流石、人望が違うな)」


99 : 以下、名... - 2016/04/12 07:55:43.22 yWt2izM3O 71/118

《この板あっちな》

《マジかよ!まだこんなにあんの?。だりぃー》


《文句言い過ぎなお前!…ってか、お前も女子のメイド服姿みてえだろ?》コソコソ

《だからこんなやる気ない感じ出してんの!察しろ!》コソッ!


《(見たくないのもあるけどな)》

《男子〜。買い出し行ってくるから、あと壁張り頼んだよ〜》


《あいよ〜。…よし、少しサボってようぜw》

《お前、そこは終わらせて女子に良いとこ見せるのが…》


ガラッ!


友2《お〜い友〜、暇だよぉ〜》

《テメェ、またお化け屋敷の装飾で遊んでて追い出されたろ》


友2《げげ!?なぜそれを…》

100 : 以下、名... - 2016/04/12 08:05:06.24 yWt2izM3O 72/118


友2《な?良いじゃん少しぐらいさ》

《ん〜、まあ女子も買い物には時間かかるだろうし、1時間くらいなら…》


友2《よし!サッカーしようぜ!》


《マジで!?俺もやりてぇ》

《俺も俺も!》


ガヤガヤ


《……》ペタペタ


友2《このクラスノリ良いよな〜。よし行こう!》


ドタバタ…


《おい、俺らもサボンね?》

《せやな〜》


ガラッ



104 : 以下、名... - 2016/04/12 19:01:37.78 /VYHwY4DO 73/118


《…みんな行っちゃったか》


《(トイレで時間でも潰そうかな…)》


《…いや、みんな大変そうだし、終わらしちゃおう》

《よっ…こいしょ…》グイッ


《(友、他のみんなも喜んでくれっかな…)》

《…んしょ、これは…こっちか》



《お前キーパーなw》

友2《おい!ちょ待てよ!》



《……》


《よっ…これ重いな…》ググッ




105 : 以下、名... - 2016/04/12 19:12:00.43 /TSuLk8xO 74/118

《これで、よし!…1時間って意外とあるもんだな》


《…女子はまだ帰ってこないのか》

《(こりゃトイレだな…)》


ガラッ


《(スマホの充電もつかな…)》



ダッダッダッ!キュ!ダッダッダッ!



《(帰ってきた…)》


《やべぇやべぇ、ギリギリまで遊んじまった》


《…あれ?終わってんじゃんか…》


107 : 以下、名... - 2016/04/13 19:37:33.45 veL0JJMLO 75/118

《(みんな外に戻ったかな…)》


ガラッ


《友とか他の奴らだろ?》

《ま、そうだろうな》


《で、あいつらまだサッカーしてるのかw》

《スポーツ系男子は違いますわ》


《…》


《あ、男…女子はまだ見てないか?》


《……うん》


《ふーん…ま、作業終わってるし、またゲームの続きやろうぜ》

《だな!》


ガラッ



《……》



109 : 以下、名... - 2016/04/14 12:52:05.17 bH3VcgITO 76/118


「…じゃねぇの」

「男さん…」

「バッカじゃねぇの!?」


「何だよ…陰でみんなの役に立って、それで満足かよ…」

「かっこ悪ぃんだよ!」


「…何か感じませんでしたか?」

「…何か、ね」


「…なんかさ」


「胸の真ん中がキリキリして、油断してると涙が出そうだった」

「それは…『辛い』という感情ではないのですか?」


「ああ、記憶を思い出してる時はな」

「…ただ、今は怒りがこみ上げてきてる」







113 : 以下、名... - 2016/04/14 19:19:46.97 Iu7fSUbUO 77/118

「…男さん、まだ先を知りたいですか?」


「…」


「まだ、本当の自分に戻りたいですか?」

「…あの胸の痛み。苦しいな」


「…はい」

「他の奴らは、気づかなかったのかな…」

「だとしたら…寂しいな」


「…はい」


「なあ、楽しい記憶は無いのか?人生楽しいこともあるだろ?」

「…私が受け取ったのはデータの中でも『普段よく思い出す記憶』つまり、強い信号がほとんどです」

「他の記憶は、ノイズと同等の信号でしかなく、記憶としての判別は…」


「そっか…いつもいつも、あの寂しさを感じて…」

「他の記憶が埋もれてしまうぐらいに…強く…」


114 : 以下、名... - 2016/04/14 19:28:54.05 Iu7fSUbUO 78/118

「…私は、私も辛かったんです」

「…?」


「たくさんの記憶に触れて、感情のようなものが出来てきて…」

「あらためて、男さんの記憶を受け止めました」


「…」


「…とっても、苦しかったんです」

「なんかのウイルスかなとか、データのエラーかなとか思いました…でも、私思ったんです」


「これは男さんの記憶ではなく『感情』そのものを受け取ったんじゃないかって…」

「感情…本当の俺の…」


「ええ、男さんの感情の、その根幹だと思っています」

115 : 以下、名... - 2016/04/14 19:37:50.33 Iu7fSUbUO 79/118

「それから色々考えました。この苦しさから、どうやったら逃れられるか…」

「この感情の持ち主、その人を救いさえすれば…」


「それで、俺の記憶を…」

「…それには、ある操作が必要だったんです」

「プログラムでは、高校生活を送ったらそのまま『ある過程』を経て、ソフトウェアの終了となっていました」


「過程…?」


「いや、もうそれは良い…だから」


「私は…男さんを救うために、いいえ…」

「…私自身を救うために、男さんの記憶を返すわけにはいかないんです」



118 : 以下、名... - 2016/04/15 08:30:46.53 WNppn87+O 80/118

「…それで、元の記憶を返さないなら、どうするつもりだ?」


「…今の男さんは、あの苦しみがない、前向きな心を持ってると思っています」

「だから、現実の世界に戻って、新しい生き方を見つけて欲しいんです」


「高校生までの記憶だけでか?もう30歳はいってるかもしれない…」

「…ここから先の記憶は、返せません」

「どうしてだ。今更辛いのが嫌ってことは…ない」


「…これ以上記憶が戻れば、『ここの世界』の記憶と現実の記憶が混ざる、あるいは…」

「男さんが信じた方が、本物の記憶として定着します」


「…今の記憶が消えるかもしれない…ってことか」


121 : 以下、名... - 2016/04/15 19:39:05.60 Wo/81kZrO 81/118

「…あの二人は」


「…はい?」

「あの、今一緒にいる二人の記憶もあるんだろ?」


「…ええ、あります。研究員さん達ですよね」

「…これも辛いものばかりです。二人のために色々手まわししたり、仕事の準備をしたり…」


「でも二人とも、気づいてくれないんです。男さんの優しさや、苦しさを…」


「…へ?」

「誰かに感謝されたくて、それでもどうすれば良いのか分からなくて…」

「そんな事…」


「え…?」


「そんな事…ない…!」

126 : 以下、名... - 2016/04/18 18:53:02.92 x7mW74G4O 82/118

「な、何でそんな事が言えるんですか?」


「二人は俺の目が覚めた時、メチャクチャ心配してくれた」

「自慢のリーダーだって…言ってくれた」


「そんなの、記憶が無かった男さんへの慰めに決まってます!」

「人間は、不安を抱えてる人に優しくするんですよね?私、男さんから全部受け取ってる…」


「今の男さんへの『気持ち』とは、違うものです!」

「それでも!!」

「っ!」


「その人の事、本当に知らないと、そんな言葉は出ない…」




127 : 以下、名... - 2016/04/18 18:58:54.35 x7mW74G4O 83/118

「…俺の記憶だってそうだ」


「勝手に一人で頑張って、誰かが見える形で感謝してくれるなんて思ってる…」

「自分の価値観だけで、誰も優しさをくれないなんて…」


「で、でも!」

「もしかしたら!…俺の知らないところで、分かってくれている人がいるかも知れない」


「あの『二人』みたいに…」


「何で…そんな…」


「誰も理解してくれないんじゃない」

「俺が、俺自身を…理解してなかったんだ」


128 : 以下、名... - 2016/04/18 19:10:33.04 x7mW74G4O 84/118

無茶苦茶に吐き出した。何も考えてない

でも、この気持ちは『本物だ』

偽物の記憶だって、気持ちあるんだ


目の前の『彼女』が、そう教えてくれた



「……」


「ふぅっ…スッキリした」

「男さんは…本当に『前向き』な人になっちゃったんですね…」


「…あぁ、よく分かんないけど、本当の自分が帰りたがってる…。そんな気がしたんだ」

「あの二人の声を聞いて、寂しくなったのかも知れない…」


「…っ…だって男さん…ずっと一人で…っ…私に話しかけて……」


「…(泣いてる…のか?)」

「だから…一緒に…っ…『時間』を忘れて、時間を過ごそうって…!」



「…ごめん。俺、元の世界に…帰りたい」



130 : 以下、名... - 2016/04/19 18:45:14.92 QdkUi9izO 85/118

「…今の…今ある記憶が」

「楽しかった記憶が全部、消えちゃうんですよ?」


「どっちが消えるか分からないんだろ?」

「今の男さんにとって、どっちが大切かなんて…分からないと思いますか?」


「んー…いや、正直どっちも大切だ」

「…!」


「ただ、記憶を取ったのは君だ」

「俺は、記憶を返して欲しい。そう思ってるだけだよ」


「…ズルいですよ、そういうの」


「まあな、この世界では上手に生きてるつもりだし」

131 : 以下、名... - 2016/04/19 19:12:25.29 QdkUi9izO 86/118

「…(私の事…忘れちゃうんですね)」


「なあ、一つ聞いていいか?」

「…」コク


「…その、俺が言ったっていう『これから恋人になるんだよ』って、どういう意味だったんだ?」


「っ!…それは…」

「聞いちゃ…マズかったか?」


「…いいえ。それも含めて、記憶をお返しします」

「そっか、ありがとな」


「それで、その…もう少し、近づいてくれませんか?」

「こうか?」ススッ


「そう…そのまま…」トスッ


「お…!おい…」



不意に体を預けられた

悪い気はしなかったが、何だか不自然に軽い

これもデータの世界だからなのか



「こうすると、人は落ち着くんですよね?」

「まあ、時と場合によれば、緊張も…その…」


「…私は、落ち着きます」


「そっ…か…」クラッ

「(ああ、とうとうこの記憶とも、おさらばか)」


「楽し…かっ……た…な」


134 : 以下、名... - 2016/04/20 19:09:00.36 GdshZSvEO 87/118

【平成◯◯年 ◯月×日
title 脳波のデータ化による、人体への影響

データ化に成功したものの、どうやら形としては不完全だ

コピーを行ったが、とても記憶データとして扱える信号ではない

さらにデータ自体も、強い部分と弱い部分のムラがある。恐らく下記のソフトもその影響で、この仕様になったと思われる

ソフトウェアも、どうやら『あの時』の記憶の周辺しか、再現できなかったようだ。運命とも言うべきか

これを『彼女』に渡すとなると、少し不安が残る。少し人間としては、偏りがちなものになるだろう

しかし、『彼女』の成長には、これが一番d】



《おとこさん。なにを、しているのですか?》


《…ん?レポートを書いているんだ》


《2じかんと、5ふんまえも、していましたね》


《あぁ、その通りだ》


135 : 以下、名... - 2016/04/20 19:31:48.13 GdshZSvEO 88/118

【また、人体の記憶の一時的保管、それに削除を行う

非常に危険を伴うが、やってみる価値はある】



《…いや、ここの部分は…ダメだ。前の文も訂正しておかないとな》


【サンプリングを行った脳波については、かなり精度が高いと言える

コピーはできないが、一時的保管においては、98%の復元率を出している】



《あとは、削除して…と》カタン



【一時的保管において、バックアップという形で残しておく

今回の実験の目的は
〈現在の記憶の脳波サンプリング、及び実際にソフトウェアを、一通り終えたあとの記憶の出力〉
である

なお、自作のAIのソフトウェアのアクセス許可。それについてAIへの影響も、観測するものとする】




136 : 以下、名... - 2016/04/20 19:39:06.92 GdshZSvEO 89/118

《よし、あとはこれを…》カタカタ


《おとこさん。このファイルは、なんですか?》


《ん?…女が成長するためのものだよ》


《おとこさん。このソフトにわたしはなぜアクセスするのですか?》


《…(彼女への影響も含めて、ソフトに細工をしたが、果たしてうまくいくかな)》

《これからな、『恋人』になるためだよ》


《こいびと?ヒトにちかづくんですか?》


《そうなると…いいな》



139 : 以下、名... - 2016/04/21 19:36:33.99 pNSqw2pLO 90/118

コンコン


《少し待ってくれ》



カタカタ タン



《…いいぞ》


ガチャ



研究員2《失礼いたします》

《どうした?》


研究員2《この間のレポート、いくつかの団体で興味を示されているようです》


《…そうか》


研究員2《余り目を通していないので、見せてもらっても宜しいでしょうか?》


《ああ…ここに入ってるよ。研究員は?》


研究員2《まだ依頼の方を続けているようです》


《(あの馬鹿、休めと言ったはずだ…)》

《…しばらくそれに目を通したら、研究員と一緒に実験室の掃除でもしててくれ》


研究員2《承知しました》


《…お前も…》

研究員2《…?》


《…仕事が出来なくなるような、体の使い方はするなよ》


研究員《…はい》


140 : 以下、名... - 2016/04/21 19:42:19.46 pNSqw2pLO 91/118

研究員《…このデータはこっちので…》カタカタ



ウィーン



《…》


研究員《あ、お、お疲れ様です》

《…実験室を掃除しておいてくれ》


研究員《は、いや、しかし…》

《明日使うんだ…研究員2にも頼んである》


研究員《…はい。すぐに向かいます》




ウィーン




《……はぁ…まったく》

《…どれどれ》ストン


《……このデータは…まとめて…》カタカタ



141 : 以下、名... - 2016/04/21 19:48:27.29 pNSqw2pLO 92/118


ウィーン




《…よし》


研究員《あの、片付けと準備の方…終わりました》

《…そうか》


研究員《研究員2がほとんどやってくれていたみたいで…アハハ》


《…じゃあ、今日は終わりだな》


研究員《…え?依頼は…》

《お疲れさん。俺はAIの様子を見てから帰る》


《気をつけてな》




ウィーン



研究員《…!…とうござい……!!》






143 : 以下、名... - 2016/04/22 12:42:24.31 RzU5j40DO 93/118

「……っ……」


「苦しいですよね…」

「…私もです」


「……っ…」ギュッ


「この記憶を返したら、私は…人の心を…」


「……」


「…」


144 : 以下、名... - 2016/04/22 12:48:24.18 RzU5j40DO 94/118

〔苦しい…ですか?〕



「どうして…誰も…気づいて…」



〔気づいてますよ…みんな〕


「あの時…なんで……」




〔私の…私だけの記憶〕


〔男さん…あの二人は…ちゃんと知ってます〕


〔…さようなら〕




145 : 以下、名... - 2016/04/22 19:17:02.54 DaEd3T2MO 95/118

研究員2《…レポート、後で見よう》


《研究いん2さん、なにをしてるんですカ?》


研究員2《…また後でね》


《りょうかい、しました》



ウィーン



《…アクセス》

《じっけんしつ…カメラ…スタンバイ》


《かんりょう、起動》

146 : 以下、名... - 2016/04/22 19:24:02.62 DaEd3T2MO 96/118


ウィーン…



研究員2《…?》


研究員2《もうほとんど片付いてる…》


研究員2《男さん…なんでいつも…》



《(……あの『ひょうじょう』は、わかります)》


《(カナしみ…おとこさんが、おしえてくれた)》



研究員2《…ありがとうございます。男さん》




ツカツカ…ウィーン…




《…カンシャ…感謝…なぜ?》


《またひとつ、おとこさんに聞くことがふえました》




147 : 以下、名... - 2016/04/22 19:28:55.18 DaEd3T2MO 97/118

ウィーン…



研究員《ふぁ…あぁ》


研究員《さて、片付け片付け…?》


研究員《…男さん、またこんなやり方で》


研究員《素直じゃないなぁ…ホントに》



研究員《…ありがとうございます》




《(また、ありがとう…?)》




研究員《…研究員2がやった事にしておいてやらんと、男さんの面目が立たないかな?》




ウィーン…




《…?めんぼく…?》


148 : 以下、名... - 2016/04/22 19:40:23.17 DaEd3T2MO 98/118

「っ!?…今のは…?」


「わたしの…キ、記憶です。おとこさんへの、送りモの…」


「なっ、そんな事したら、今までの思考能力や知識能力、それに『感情』だって!!……え?」

「なんだよ…これ、何を知ってるんだ、俺は」


「あれ…?ここは…どこなんだ…?」


「もう…だいぶ…戻ってきテ…ますね」

「これで…ぜんぶ…」


「や、やめろ!ダメだ!君は僕の…!クソッ、何だよこれ!」


「…」ニコッ




綺麗な光が上がった

何だろう。何をしてたんだっけ

夢…なのか?



夢っぽいし、せっかくだから言っておこう



「君は僕にとって、大切な『人』なんだ!!」




149 : 以下、名... - 2016/04/22 19:46:57.05 DaEd3T2MO 99/118

ウィーン…



《…ただいま》


《おかえりなさい、男さん》


《発音、だいぶ良くなったな》

《おはなし、たくさんしてるので》


《あぁ、俺も…》


《…どうしました?》


《…いや。それより、今日は聞きたいことは見つかったか?》


《こんどつかう、ソフトウェアの事につイて、ききたいです》


《おお、そうかそうか。…どこから話そうか》



152 : 以下、名... - 2016/04/25 12:59:58.86 /P8AgvFFO 100/118

《これから、色んなデータを女に渡すんだ》


《データですか?めもリーが足りなさそうです》

《女には、それ専用のソフトを入れてあるだろ?》


《ダイジな記臆、たくさんです》


《そうか…》

《(自分でどの記臆データが大事か、自己判断させる…)》


《(反復性、相対性、言語の意味…最低限の物だけで、これほど成長するとは)》


《そのデータは、ずっとわたしのものですか?》


《いいや。コピーした物だし、危ないから一時的に入れるだけだよ》

《でも…もしかしたら、君が体感したことない世界にいけるかもね》


《楽しみ…ですか?》


《そう…かもな》


《(…コピーデータだから、そんなに強い影響は無いはずだけど)》

《…早く『一人前』になってくれよ》


153 : 以下、名... - 2016/04/26 18:45:39.97 j4zcOdATO 101/118

《それじゃあ、始めるよ》


《はい》


《インストール…開始》



《……》



《女?…少し処理が重いか》



《…返事を…してくれ》



《(…いや、大丈夫だ。明日の実験でそれを証明してみせる…!)》



154 : 以下、名... - 2016/04/26 19:01:13.06 j4zcOdATO 102/118



ウィーン



《……よし》


研究員2《男さん…こんな時間から実験ですか?》


《…仕事は片付けた。夜までには終わる予定だ》


研究員2《レポートの方、目を通させていただきました》

研究員2《…本当に、危険では無いのですね?》


《…ああ、そうだ》


研究員2《…AIの方だけでも、控えて頂けませんか?》


《……》


研究員2《AIぐらいであれば、また間接的な方法で…》


《…『彼女』は生きている、人と同じだ》


《間接的では、限界がある…》


研究員2《…はい》


《研究員に、これの事を伝えておいてくれ。簡単でいい》

研究員《…承知…しました》


《…(いよいよ、だな)》


《(女…きっと君は本物になれる)》


《(唯一、僕の事を理解してくれる君なら…)》





155 : 以下、名... - 2016/04/26 19:12:02.03 j4zcOdATO 103/118

ピピ…ピッ……ピピ…



「……」


研究員「…」チラッ

研究員「(もう8時間になる…体への負担的に、もうそろそろ…)」



ピピ…ピッ…



研究員「…!このログは!」


「……ん…」

研究員「男さん!大丈夫ですか!?」


「…研究員…か」


「…ん?大して時間が経っていない…?」


研究員「お…男さん?」

「研究員2から聞いていないか?実験を行った…と」


研究員「お…男さん!戻ったんですね!」


「…?」



ウィーン ガンッ


研究員2「ぃたっ……男さん、お体のお加減はいかがなさいますか?」


「…日本語、おかしいぞ」


研究員2「…申し訳ございません」

156 : 以下、名... - 2016/04/26 19:18:43.82 j4zcOdATO 104/118

「研究員。戻ったとは、どういう意味だ?」


研究員「あれ?前の記臆は消えてしまってるんですか?」


研究員「と言うか、そもそもどうやって記臆のデータを…」


研究員2「…男さん」

「…ん?」



バシッッ!!



「っ!!?なっ…何だ!」


研究員2「危険では無いと…おっしゃっていたのに…」

研究員2「…一体どういうおつもりですか!!!」


研究員「ヒッ」


「…いや、その…」


研究員2「私は…私たちは、男さんに何かあったら、どう感じると思っているのですか?」

「…仕事が…大変になる…か?」


研究員2「何ですって!!!??」


研究員「ヒィッ」


157 : 以下、名... - 2016/04/26 19:27:25.94 j4zcOdATO 105/118

研究員2「…どんなに心配したか…」


研究員2「…もう…知りませんっ」ダッ



ウィーン ガンッ



「…すまんが、説明を頼む」


研究員「あ、はい」



説明を聞く限り、研究員2が怒った理由はこうだ


実験中にトラブルがあった

記憶を失い、代わりにソフトウェア内のデータとすり替わった

自らの意思で、もう一度バーチャルに行き、記憶とともに生還




研究員「こんな所ですかね」


「…迷惑をかけたようだな」

研究員「医者に悟られないように説得するのも、一苦労でしたよ」


「……うむ…」


研究員「…少し、面白かったですけどね」


「ん?」

158 : 以下、名... - 2016/04/26 19:37:51.05 j4zcOdATO 106/118

研究員「男さんが、全然いつもの男さんじゃなくて、何だかとっても『男らしく』見えたんです」


「でも、それは俺じゃないんだろう?」


研究員「いいえ、あれは…男さんでした」

研究員「心配で心配で仕方がなかった私たちを見かねて、自分の立場なりに考えて、元気付けてくれた」


研究員「優しくて、強くて、気遣いばっかり…」


「…何を言ってる事やら…」


研究員「ふふっ。あ、でも前向きな所は違ったかな?」


「…それじゃまるで、俺がいつもはネガティヴ丸出しみたいじゃないか」

研究員「プッ…いえいえ、そこまでは言ってませんよ?」


「まったく…コイツめ」フッ


研究員「…(少し、後遺症があるみたいですね)」

「?」


研究員「いえ、何でも…」


160 : 以下、名... - 2016/04/27 19:26:00.79 BzPhBrF4O 107/118

研究員「それにしても、一体何が原因なんですかね」


「…やはり、データ自体の不安定性が原因か、あるいは外部からのウイルスか…」

研究員「まさかAIの影響じゃ…」


「そんなはずは…っと、そうだ、AIの様子を見に行かないと」


研究員「…男さん」

「……そうだな」


「引っぱたかれたまま、引き下がるわけにも行かないか…」


研究員「多分、私以上に心配していましたよ?」

研究員「勿論、私も心配してましたが」


「行ってくるよ。どうせ仕事部屋だろう」



ウィーン



研究員「…戻ってきたんですね…本当に」


165 : 以下、名... - 2016/04/28 23:49:05.81 Mk9O9gUCO 108/118


ウィーン



研究員2「……っ…」


「その…」


「…悪かった」


研究員2「…私は…っ…男さんを信じて、許したんです…」


「…すまなかった」


研究員2「裏切られたんです…私の心は」


「…ごめん」



「でも、ありがとう」


研究員2「…!」


「俺の事を心配してくれて。そして…」

「記憶をなくした俺への怒りを我慢して、俺を助けてくれて」


研究員2「そんな言葉を言われるなんて…驚きです」

研究員2「…男さん。変わられました」


「…言わない理由がなかった。それだけだな」




166 : 以下、名... - 2016/04/29 00:00:20.38 P8aYaPZ8O 109/118

いつもならこんなセリフ、言えない

それが、テンプレートかのように出てきた

何だろう。寝ぼけてるのだろうか




「変な夢を見てたんだ…」


研究員2「バーチャルの世界の事では?」


「いや、その部分はほとんど覚えてないんだ」

「『ここ』で起きて、何かを話して、また眠った」


「その時、何だか胸がスッとした気がしたんだ」


研究員2「そう…ですか…」


「この言葉を言わないと、スッキリしなさそうだったんでな」


研究員2「(あの時の記憶…少しだけ残ってるんですね)」


「それと、あのプログラムは本当は危険だったこと、これも言いたかった」

研究員2「ええ。その様ですね…実際に大変なことになりましたし」


「申し訳ない…」


研究員2「…フフッ」

「…?」



研究員2「…(何だか、あの時の男さん。少しだけ残っているみたいですね)」


研究員2「…何でもないです」

169 : 以下、名... - 2016/05/02 12:22:20.79 ZtZmR+sXO 110/118

ウィーン…



研究員「あ、お帰りなさい」


研究員2「取り乱してしまって、申し訳ありません」


研究員「ま、仲直りできて良かったんじゃw」


研究員2「…」ギロ

研究員「ヒィ…怖いよそれ」


「……」


研究員「どうされました?」

「いや…何だろうな、懐かしいような…」


研究員「そう言えば男さん、昔はどういう感じだったんですか?」


研究員2「…」


「昔…か。昔は……」

170 : 以下、名... - 2016/05/02 12:32:04.39 ZtZmR+sXO 111/118


《…ーい、男ぉー…》


《…す、男さ…》




「…!」


研究員「…?」


「昔は…よく、覚えてないな」

「ただ、今みたいに無愛想だった。それくらいだ」


研究員2「バーチャルの世界を覗いてみては?」


「データが不安定すぎる。再現には現在の記憶を一度…」



《…男さん!》



「…っ…」


研究員「少し休まれては?」

「…」


研究員2「…男さん」


「…AIの様子だけ、見させてくれないか?」



173 : 以下、名... - 2016/05/02 18:54:01.89 P1X6vzv9O 112/118


カタカタ…カタ



「…」


研究員「応答ありませんね…どうしたんでしょう」

「実験開始から、様子はおかしかった…」


研究員2「記憶データ…ですか」



カタ……



「…俺は、あいつの成長を為を思って行った…」

「今までもこれからも、そうして行くとそう誓ってな」

「…だが、今は後悔している」


研究員「なぜです?」


「全ては…俺の身勝手だからだ」


174 : 以下、名... - 2016/05/02 19:08:56.34 P1X6vzv9O 113/118

「…寂しかったんだ」


研究員2「…」


「一人でいることが…一人が寂しくないことが」


研究員「…」


「…こいつになら、俺の心をぶつけても、深く傷つかない」

「こんな独りよがりを、許してくれる存在だと…そう、思ってた」


研究員「…男さんは」
「俺は」

研究員「っ」


「優しさを貰えれば心を満たせる…そんな勘違いをして」

「二人がこんなに心配してる中、無茶をしてまで」


研究員2「…」コク


「『彼女』を縛りつけ、重りまで付けてしまった…」




175 : 以下、名... - 2016/05/02 19:30:38.35 P1X6vzv9O 114/118


研究員2「男さんは、理想が高すぎるんです」


研究員2「優しくなければいけない、何でも分からなければいけない…」


研究員2「不平不満を、私たち部下に言ってはいけない」



研究員「それを、男さんらしさだと、僕たち自身も勘違いをしてましたしね…」


研究員2「確かに…その通りです」


「…まったく。今までの苦労が、バカみたいだな」

「記憶をなくしてまで、この場所から離れようだなんて…」


《俺が…俺自身を理解していなかっただけなんだ!》


「(ああ、その通りだ…)」


「…だからこそ」


「俺はこの場所に」
《俺はこの世界に》


「帰ってこれたのかも、知れないな」
《帰ってきたいと、願ったんだ》

176 : 以下、名... - 2016/05/02 19:38:32.25 P1X6vzv9O 115/118

ピッ…ピピ…



「…ぁ…ぃ…っ…」


研究員「お!応答したかな?」


研究員2「少し不安定ですね…なぜ…で…」


「……」ポロポロ


研究員「…男さん…?」


「…ん?何だ、これは…」ポロポロ



画面がボヤけて見える

鼻が少し詰まってきた

何だか胸が、痛い



「…ぅ…っ……」ザザ


「…あぁ、ごめん。ごめんな」ボロボロ


「……ッ!」



ピッ………



「こんにちは。おとこさん。研究員さん。研究員2さん」

178 : 以下、名... - 2016/05/03 02:20:21.07 DT54A1wH0 116/118

それからしばらく、俺は泣いていたと言う

ただ、ごめんとありがとうを繰り返しながら

女については、特に変化はなく、実験は失敗


俺は、それでもいいと思った



ー数ヶ月後ー


「…スー…スー……」


ウィーン



研究員「男さん!今日は会見ですよ!大丈夫ですか?」


「…んぁ…?」

研究員「また泊まり込みで、しかも実験したまま寝てるじゃないですか」

研究員「研究員2に怒られますよ?」


「…スー……」


研究員「あ!まったく…」

研究員「先に資料とか用意しておくんで、早く起きてくださいね!」



ウィーン



「…んん…?」


「…あれ?今日何曜日だっけ?」



「おはようございます。きょうは土曜日です」



「あぁ…会見、今日だったか」


「そのように予定されています」


「そうか…ありがとう」



179 : 以下、名... - 2016/05/03 02:29:18.79 DT54A1wH0 117/118

こんな微妙な距離

でも、少しずつ言葉を覚えている

無理やり縛り付けた記憶じゃなく、今の記憶を



「…あの夢、何だったんだろうな」


「男さんが、ないていた事ですか?」


「ああ、それだ」

「誰に向けた言葉で、誰が言おうとしてたのか」


「…私は…あのときのことば、とてもすきです」

「ごめんなさいがか?」


「いいえ…」


「…ありがとう」


「…ありがとう、か」



「こちらこそ」



ーーー“fin”ーーー



180 : 以下、名... - 2016/05/03 02:30:52.56 DT54A1wH0 118/118

何だか変な終わり方になってしまった

取り敢えずここでおしまい

見てくれた&レスくれた人に感謝を

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