1 : ◆0NaiNtVZPPaZ - 2014/08/03 22:18:48.46 PBXTznL70 1/305過去作
小町「は、八幡!」
http://ayamevip.com/archives/44973251.html
相模「それでは文化祭の定例ミーティングを始めます」
http://ayamevip.com/archives/44973365.html
八幡「よう雪乃」雪乃「こんにちは、八幡」結衣「えっ」
http://ayamevip.com/archives/44973373.html
元スレ
雪乃「LINE?」結衣「そう!みんなでやろうよ!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1407071918/
4 : ◆0NaiNtVZPPaZ - 2014/08/03 22:43:04.59 PBXTznL70 2/305今回の話は前回みたいに軽い話じゃなく、地の文ありの真面目な話にする予定です。
今までのと違って書き溜めが途中までしかないせいで更新遅くなりそう。
多分僕の最後の作品になりそうだから完結までゆっくりとお付き合いよろしく。
7 : ◆0NaiNtVZPPaZ - 2014/08/03 22:52:05.68 PBXTznL70 3/305あ、忘れてた。
たまに短編集も投下していきたいんだけど、がっつり本編に絡んできたり本編に関係ない上に時系列無視してたり色々とありますー
リクエストあったらそれも書きたいと思う。
じゃあ少しだけ投下。
人との繋がりとは空虚なものである。
本音を隠して言葉を交わし、表情を隠してLINEを使う。
本当の気持ちだけを言い続ければ人との関係などすぐに壊れてしまうだろう。だが、それを乗り越えてこその友情ではないのだろうか。
俺の周りの会話は一切の本音が感じられないものばかりだ。本音を語っているものなどほんの一握りすらいない。
それでも人は繋がりを求める。たとえ空虚なものだとしても、人と繋がることで自分が世界に参加しているのだと、必要とされているのだと思いこんで自分の存在を認めるために。
だから自宅で、駅のホームで、そして学校でLINEの通知が来るのを今か今かと待ちわびるのだ。
ならば、LINEなどせず学校でもおしゃべりなんてしないぼっこそが、自らの力だけで自己を確立できる強者ではないだろうか。
結論を言おう。
学校でくらいLINEの通知切りやがれ。うるせえんだよ。
いつもの通り暇な奉仕部。
ただでさえやることのない部活動にも関わらず、依頼者の来るわけもない冬休みにまで真面目に活動をしているのだから恐れ入る。
それにちゃんと出席する俺も大概だがな。
俺はこの暇な時間を有効活用して、冬休みの国語の課題である作文を書いている。
俺の作文の題名は『最近の携帯電話の利用状況について』だ。
ホントなんなの、あのLINEの通知。授業の度に一々切るなら最初から切っとけばいいのに。ピコンピコン鳴らしてウルトラマンかよ。
と、そんな風にLINEについて思考を巡らせていたまさにその時に、由比ヶ浜がLINEの話題を持ち出してきた。
俺は驚きのあまり、視線を雪ノ下と由比ヶ浜に向けてしまう。
由比ヶ浜は俺が視線を向けたのを会話に興味を持ったとでも勘違いしたのか、声をさきほどよりも大きくしながら俺たちに話しかけてきた。
結衣「ヒッキーもゆきのんもやろうよ!メールよりも手軽だし、楽しいよ!」
八幡「……けどLINEってあれだろ?個人情報だったり電話帳に登録してる番号立だったりが流出するんだろ?」
結衣「そ、それは前の話だし!ちゃんと何かをオフにすれば大丈夫ってネットで見たもん!」
雪乃「あなたは流出して困るほど電話番号を登録していないでしょう。なにせ登録させてくれる相手がいないのだから」
由比ヶ浜の安心できない説明のフォローかは分からないが、雪ノ下がさも俺の携帯電話が誰の電話番号も入っていないかのような口調で毒舌を浴びせてくる。
ばっかお前、この中にはあの小町と戸塚の電話番号が入ってるんだぞ!それだけでもう国宝級だろうが!
そんな思いを視線に込めてぶつけてみるが、雪ノ下はもはやこちらを見てすらいなかった。
由比ヶ浜の話を吟味しているのか白く細い指を顎に当て何かを考えている。
すげえな、こんなよくあるポーズでさえ雪ノ下がすると絵画みたいになるのか……。
雪乃「比企谷君、その気持ちの悪い視線を私に向けるのはやめてくれないかしら。セクハラよ」
八幡「見てるだけでセクハラとか自意識過剰すぎんだろ」
結衣「見てたことは否定しないんだ……」
由比ヶ浜が俺の言葉の揚げ足を取りに来る。なんだよお前、そんな頭の良いことできるのか。びっくりだよ。
雪乃「……その男の処遇についてはこの後話し合うとして」
八幡「ねえ、なんで見てただけで刑に処されなきゃならないの?この部室じゃお前が法律なの?」
雪乃「LINEを始めるというのはいいかもしれないわね」
八幡「俺の言葉は無視か……って、は?お前今LINEやるって言った?」
雪乃「正確には始めるのはいいかもしれない、よ。やるとは一言も言っていないわ。あなたは国語が唯一の取り柄なのだから、ちゃんとセリフから正しい意味を読み取りなさい」
八幡「国語だけが取り柄とか悲しすぎんだろ」
俺にだって他にもいいとこあるよ?例えばプリキュア全員言えるとか。あれ、これいいとこなの?
結衣「どうせならやろうよ!ゆきのん!」
雪ノ下がLINEを始めることに対して前向きな態度を見せたことで、由比ヶ浜がこれでもかというほど雪ノ下に迫っている。
物理的にも精神的にも圧され始めた雪ノ下を見かねて、俺は軽く助け船を出すことにした。
八幡「お前がLINEをやってみたがるなんて意外だな。なんか理由でもあるのか?」
雪乃「別に大した理由ではないわ。業務連絡をするのが簡単になるからというだけよ」
ああ……こいつなら考えそうなことだ。
俺は雪ノ下の電話番号とメアドを知らない。同じように雪ノ下も俺の電話番号とメアドを知らない。
必然的に俺が部活を私用で休んだり、逆に部活が中止になった時なんかは由比ヶ浜との連絡が命綱だ。だからここが上手くいかないと面倒なことになる。
休むことを伝えるタイミングを逃し雪ノ下にボロクソに言われたり、中止になったことを知らず部活があると思い込んで部室前で待ちぼうけをくらったりしてしまうのだ。
待ちぼうけは辛かった……。辛すぎて帰りに平塚先生をラーメンに誘っちゃったレベル。
誘われて喜んでる平塚先生可愛かったけどね。
13 : ◆0NaiNtVZPPaZ - 2014/08/03 23:36:32.35 PBXTznL70 8/305今日はここまで
おやすみなさいー
17 : ◆0NaiNtVZPPaZ - 2014/08/04 20:55:12.47 0m+TA8nn0 9/305やっはろー!1です
投下していくよー
八幡「なるほどな……確かに業務連絡としてならいいかもしれん」
俺の言葉を聞いていよいよ由比ヶ浜のテンションがMAXを迎える。
ぴょんぴょんと跳ねて喜ぶ由比ヶ浜。そんな彼女のとある部位に目が吸い込まれてしまい気付いたら俺の心もぴょんぴょんしている。
雪乃「…………」
あ、やばい。ゴミを見るような目で見られてる。
俺は咳払いをしてから、ケータイを取り出して早速アプリをインストールする。
どうやら俺の心がぴょんぴょんしていたことを由比ヶ浜は気付いていなかったらしい。LINEを始めようとしている俺を見て純粋に喜んでいた。
なんだろうこの罪悪感……。
八幡「インストール終わったぞ。これからなにすんの?アンインストール?」
結衣「早いよ!えっと……あ、あたしガラケーだからよく分かんない……」
えー、なにこのグダグダ感。出だしから躓くとかもう不安しかないんだけど。アンインストールしちゃだめなの?
八幡「ま、聞かなくても大体分かるけどな」
結衣「ならなんで聞いたし!ヒッキーキモい!」
八幡「キモくはないだろ……」
キモくないよね?あんまりキモいキモい言われると本気で不安になってくるだが……俺はイケメンなはず。よし。
心のバランスを取りながら適当に登録を終わらせていく。登録が終わって『ホーム画面』とやらにくると熊みたいな生き物が一人で座り込んでいた。
友だちがまだいないことを表すためにこのイラストを使用してるのは分かるが、まるで将来の自分を見ているようで複雑な気持ちになる。
結衣「ゆきのんはどんな感じ?」
由比ヶ浜が視線を向けると、雪ノ下はすでにケータイをしまうところだった。
雪乃「終わったわ」
結衣「早っ!」
なんで登録ですらそんな高速でできるんだよ。お前だけ常時精神と時の部屋状態なの?クロックアップしてるの?
俺も少し急いで、『知り合いかも?』の欄から由比ヶ浜のアカウントを探す。
探すまでもなく、星やら丸やらで名前を装飾している由比ヶ浜のアカウントを見つけた。一瞬の躊躇ののち、俺は友だちに追加する。
ふう、任務終了だ。これで業務連絡も楽になる。
八幡「友だち申請しといたぞ。あとはお前のケータイでやるんだろ?」
結衣「うん!ゆきのんもあたしに申請してくれた?」
雪乃「してあるわよ」
結衣「やったー!じゃあ早速……?」
あれ、ケータイの画面を見た途端フリーズしちゃったけど大丈夫なのこの人。
彼女が何を考え込んでいるのかさっぱり分からないため、雪ノ下に視線を送る。が、こちらを一度見ただけで何のリアクションも起こさずまた由比ヶ浜へと視線を戻した。
あいつが何も言わないってことは、心当たりがないか俺と目を合わせたくないかのどちらかだな。ちなみに確率としては後者の方が圧倒的に高い。
結衣「あのさ……この『HH』と『YY』っていうのがヒッキーとゆきのん?」
八幡「ああ」
雪乃「そうよ」
結衣「なんでイニシャルなの!?名前入れようよ!」
八幡「ネットに本名入れるとかあり得ないだろ」
今やどこから個人情報が漏れるか分からない時代なのだ。ならばどこにも個人情報など入れないのがもっとも手っ取り早い対策だろう。
雪ノ下も似たような理由でイニシャルにしたのだろうが、俺と同じことをしてしまったのがよほど悔しかったのか、先ほどからこちらをチラチラと睨みつけている。
まあ女の子にチラチラ見られて恐怖するのは慣れている。見られる度に俺のことを笑っているんじゃないかとよく恐怖したものだ。今でもするけど。
結衣「本名じゃなくていいからさ、せめて友達が見てすぐ分かるような名前にしようよ!」
八幡「俺友達いないから無理だわ」
雪乃「わ、私は……いないことはないけれど、その、と……友達は私のことだと分かってくれているから問題ないわ」
結衣「ゆきのん……」
はい、始まりました。奉仕部恒例ガチユリ。こうなるともう俺は背景に徹するしかない。
おい誰だ、お前はいつでも背景だろって言ったのは。あんまり本当のこと言うなよ。
結衣「って、そうじゃない!」
俺が背景と心を一つにしようとした瞬間、ガチユリからギリギリのところで逃げ出した由比ヶ浜が再び抗議の声を上げた。
結衣「ゆきのんが可愛くて忘れそうになったけど、そうじゃないよ!名前もっとまともなのにしようよ!」
雪乃「そう言われても……」
結衣「あ、じゃあ『ヒッキー』と『ゆきのん』で登録しよう!」
八幡「仕方ない、本名で入れるか……」
雪乃「そうするしかないわね」
結衣「あ、あれ?」
困惑する由比ヶ浜を放置して、設定画面に移る。名前の変え方を教わったわけではないが、適当にポチポチしていくだけでなんとか変えることができた。
『HH』結構気に入ってたんだけどな……。ジャンプで長期間休載してそうな名前じゃん?
八幡「ほら。これでもういいだろ」
由比ヶ浜はケータイを見ながら満足げに頷き、幸せそうな笑顔を浮かべていた。
どうしてこいつはこんな小さなことでここまで笑顔になれるのだろうか。
彼女の純粋さをこうやって近くで見ると、自分が何者よりも汚れているのではないかという焦りに襲われる。
ケータイを乱暴にカバンに突っ込むことで気持ちを紛らわせる。どうやら二人とも俺の異変には気づいていないようだ。なんせいつも変だからな。
八幡「よし、これで部活も休みやすくなったな。帰るか」
結衣「まだ帰らないし!LINEって面白いゲームとかあったりするし、もっといろいろ教えたいの!」
八幡「……お前ガラケーだろうが」
結衣「うっ……」
痛いところを突かれてなにも言葉が出なくなっている由比ヶ浜を見てため息をつきながら、雪ノ下がゆっくりと口を開く。
雪乃「比企谷君の思い通りになってしまうのはとても癪ではあるけれど、もういい時間になっているし、今日はここで終わりにしましょうか」
外を見れば朱色の光が空を彩っている。日没の早い時期とはいえ冬休みの活動ということを鑑みればちょうどいいはずだ。
八幡「なんでそんなことで癪に思っちゃうんだよ……まあ終わりなら先行くわ」
結衣「バイバーイ!帰ったらLINE見てね!」
雪乃「また明日」
二人からの別れの挨拶を背中で受けながらゆっくりとドアを閉めた。
廊下を歩き校舎を出る。季節は完全に冬。鮮やかな色に染め上げられた空を見ながら、白い息を吐き出してみる。
今まで誰とも関わらなかった俺が、奉仕部に入ってから随分と変わったと思う。今日LINEなんてものを始めたのがいい例だ。
昔の俺ならたとえ業務連絡のためだろうとこんなものを使うことを認めなかっただろう。理由なんてない、生理的に無理だと感じたはずだ。
けれど俺は今回それを許容した。これはいい変化なんだろうか。
きっとそれが分かるのはもっと色んなものを失って、色んなものを手に入れてからだと思う。
それならば、答えの出ない問題に頭を悩ますのはやめよう。
せめて今だけはこの時を。
29 : ◆0NaiNtVZPPaZ - 2014/08/04 22:29:39.31 0m+TA8nn0 16/3051こうして彼と彼女らは繋がっていく 終
次からようやくLINEが始まります。
LINEの会話は【】で示します。
今日はとりあえず短編(少し本編に関係する)を投下して終わり。
ちなみに短編の方は地の文ないです。
「へたれ」
八幡(あれから悩みを抱えながら俺は家まで帰宅した)
八幡(え?俺の変化について?ああ、そんなの別にどうでもいい。もっと重要なことがある)
八幡(『知り合いかも』の欄に戸塚と小町がいるんだがどうしよう……)
八幡(いやね?さっき奉仕部で見たときにそりゃ見つけてましたよ。すぐさま友だち登録しようと思いましたよ?)
八幡(しかし、申請して迷惑に思われたらと思うと……)
八幡(そんなことあるはずがないとは分かってる。だが俺の人間関係に対するトラウマがその不安を拭い去ることを許してくれない)
八幡(そんなこんなでもう数時間悩み続けている)
八幡「……腹減った」
八幡(もうそろそろ晩ご飯……悩むのは食べ終わってからでいいか。じやあそろそろ一階に……)
ピコン
八幡(……ああ、俺のケータイから鳴ったのか。初めてだから一瞬気づかなかったわ)
八幡(まあどうせ由比ヶ浜だろ。由比ヶ浜しか登録してないんだから……!?)
八幡(と、戸塚……だと……!?)
to:戸塚彩加
戸塚【やっはろー!】
戸塚【八幡もLINE始めたんだね!】
戸塚【嬉しくて友だちに追加しちゃったけど迷惑じゃなかったかな?】
八幡(……これが天使か)
八幡【そんなわけないだろ】
戸塚【良かった(´▽`)】
戸塚【LINEでもよろしくね!】
八幡【ああ、末永くよろしく】
32 : ◆0NaiNtVZPPaZ - 2014/08/04 22:49:40.35 0m+TA8nn0 18/305今日はここまで。
おやすみー
翌朝。
凍てつくような寒さが俺とあいつとの絆を強くする。
オフにし忘れた目覚まし時計が俺からあいつを引きはがそうとするが、俺の強靭な意志の前では鳴り響く騒音ですらひれ伏すしかない。
俺とお前はずっと一緒だ……。
絶対に離さないぜ……布団。
小町「お兄ちゃん目覚まし時計早く止めて!うるさい!」
八幡「……はい」
相思相愛な俺と布団の絆は妹によっていともたやすく引き裂かれてしまった。
まあ俺は布団より小町を愛してるから特に問題はないんだが。
八幡「さみぃ……」
部活は午後からだから別に寝ててもいいのだが、俺は布団を少し押しのけなんとなくケータイへと手を伸ばした。
俺の初LINE、つまり戸塚とのLINEは戸塚が早く寝るタイプだったため十時前には終わってしまった。
一瞬、寝たふりされてメールを返してもらえなかったトラウマが脳裏をよぎったりもしたが、戸塚が早く寝るのはテニスの練習のためらしい。あまり遅くまで起きていると翌日の練習が辛いんだとか。
戸塚とのLINEが終わったのをきっかけに寝てしまったので、今日は睡眠時間がかなり長い。毎日悩まされている眠気も今日は影を見せない。
いつもより冴えた頭で戸塚がテニスをしている妄想をしようと思ったが、その前にケータイの画面に視線を写す。ロック画面にはLINEの通知が来ていた。
そこに表記されているのは由比ヶ浜のアカウント名。
おおー、これアイコンをスライドさせると直接アプリに行くのか。便利だな。
to:由比ヶ浜
由比ヶ浜【やっはろー!】
由比ヶ浜【LINEどう?楽しい?(≧∇≦)b】
由比ヶ浜【あれ?もしかして寝ちゃってる?(゜ロ゜;ノ)ノ】
由比ヶ浜【ヒッキー?】
由比ヶ浜【ホントは起きてるんでしょ?】
由比ヶ浜【ねえ】
由比ヶ浜【返してよ】
八幡「おおう……」
こえぇよ。あと怖い。
あいつ、なんでLINEだとこんなにヤンデレっぽくなってるの?
送られてきた時刻は大体10時半頃。こんなのリアルタイムで見てたら寝れなくなるわ!
まあこんなにヤンデレっぽくなったのは、あいつが絵文字を使ってないからだろう。
メールの時に俺が絵文字について文句ばっかり言ってたから、LINEじゃ自重したんだと思われる。
……それが原因だよね?素とかじゃないよね?
とりあえず【悪い、寝てた】とだけ返しておき、ケータイをベッドに置いた。
そのまま重い体を無理矢理動かして一階へと進んでゆく。ヤンデレヶ浜のせいで二度寝する気にもなれない。
長い一日になりそうだ……。
42 : ◆0NaiNtVZPPaZ - 2014/08/05 23:13:23.31 C89s8Gfo0 22/305今日はここまでです。
fromとtoを間違えた気がしますがそこは目を瞑っておいてください。恥ずかしいから。
気になるようなら次から変えます。
あと短編の地の文が無い理由は、短編は軽い雰囲気でやりたいからです。
軽いのは台本形式の方が個人的にやりやすい。
43 : ◆0NaiNtVZPPaZ - 2014/08/05 23:15:03.43 C89s8Gfo0 23/305本編と短編一緒に書くとごちゃごちゃするかもだけどそこはご愛嬌ってことで!
それじゃ、おやすみなさい!
48 : VIPに... - 2014/08/06 05:24:43.57 rVOWL0UyO 24/305to fromは別に
受けるのと送るの同じ画面だしな
ちなみにガラケーでもLINEは一応出来る、不便そうだけど
結衣「…………おはよ」
八幡「おう……」
学校に着くやいなや、下駄箱で急にローテンションな挨拶をされた。誰かと思い振り向けば、そこにいたのはヤンデレヶ浜こと由比ヶ浜結衣だった。
どんだけテンション低いんだよ。俺かよ。
ここで『どうした?』とでも聞けば由比ヶ浜が俺に不満をぶつけるのは確実だ。ならば平和的に済ませる方法は一つ。話をずらすことだけ。
八幡「そういえば──」
結衣「昨日!なんで返してくれなかったのさ!」
俺の華麗なる争い回避術はいともたやすく破られてしまう。
そうやって避けられる争いにぶつかっていくから戦争はなくならないんだよ。ちゃんと逃げようぜ、争いからも現実からも。
八幡「だから寝てたって返しただろ」
結衣「あのヒッキーがあんなに早く寝るはずないし!」
八幡「俺は意外と早寝するタイプなんだぞ」
俺のカミングアウトにポカンとした表情をする由比ヶ浜。そこまで驚くほどでもないだろ。
結衣「早く寝てるのにそんなに目が腐ってるの……?」
八幡「お前本当は俺のこと嫌いだろ……」
確かにこの腐った目は寝不足だと説明するのが一番しっくりくるとは思うが、だからってそこまで驚くなよ。傷ついちゃうだろうが。
結衣「べ、別に嫌いじゃないし……うー」
八幡「なに唸ってんだよ。でもまあ、昨日は確かにいつもよりは寝る時間が早かったな」
結衣「じゃ、じゃあ今日は……してくれる?」
……一瞬脳内がピンク色になりました。
こいつなんなの?上目遣いしながら男にそんなこと言うとかビッチなの?うっかり好きになっちゃったらどうするんだよ。
八幡「ね、寝てなかったらな」
なんとか動揺を隠して答える。目が泳いでしまっているが、割といつものことなので不審がられたりはしないだろう。
結衣「ちゃんと起きててね!……でもなんで昨日は早く寝ちゃったの?」
八幡「LINEしてたら向こうが寝たから俺も寝たんだよ。やっぱ慣れないことすると疲れるな」
昨日戸塚とずっとしてたおかげでだいぶ慣れることはできた。多分今日由比ヶ浜からLINEが来ても疲れることなくできるだろう。
え?相手が戸塚なのに疲れるなんて俺らしくない?
ばっかお前、文字だけで意志疎通しようとすると誤解されたり嫌な気持ちにさせることが多いんだ。ソースは俺。
だからこそ戸塚みたいな天使とLINEをするときは、『本当にこの言葉を使っていいのか』とか『変な誤解されて嫌われないか』って不安を抱えながらやるからかなり疲れるんだよ!
相手が戸塚だからこそ疲れる……それがLINEの運命。
……あれ、俺今けっこう長い間考え事してたぞ?なのになんで由比ヶ浜に声をかけられたりしないんだ?
疑問に思い意識を思考から現実へと引き戻す。
目の前にいる由比ヶ浜は、戸惑いとショックの入り混じったような目で俺のことを見ていた。
八幡「ど、どうした?」
思わず心配してしまった。それほどまでに由比ヶ浜の表情はいつもと違うものへとなっていたのだ。
俺の言葉を聞くやいなや、由比ヶ浜は俺から視線を逸らした。
結衣「あー、その……あ、あはは。ちょっと意外だったから」
八幡「? 何がだ?」
結衣「二人がそんなすぐにLINEし始めるなんて……」
八幡「別にそこまでじゃないと思うが」
戸塚と俺がLINEするのはそんなに変だろうか?しっくりくるとまではいかないが、さっきみたいな目をするほど意外とは思えない。
ん?俺こいつにLINEの相手が戸塚だって言ったっけ?
八幡「由比ヶ浜、お前もしかして──」
結衣「べ、別に気にしたりしてないから!二人が仲良くしてくれるのはあたしも嬉しいし?」
なんで疑問系なんだよ。つーか目を見て話せ。
なにか勘違いをされている気がしてならなったが、俺から逃げるように由比ヶ浜が部室へ行ってしまったためそれを確認することはできなかった。
また面倒なことになってる気が……。
61 : ◆0NaiNtVZPPaZ - 2014/08/07 06:24:07.55 PQldT76G0 28/305短編一個だけ投下しますー
今日はもう更新しないかも
「ヘタレ2」
八幡(戸塚と友だちか……なんかもうそれだけで飯三杯くらいいけそうだ)
八幡(じゃあ残るは小町だけか)
八幡(……他にも何人か表示されてるのいるんだけど気にしない方がいいのか、これ)
八幡(これが電話番号の使い回しによる全く知らない人間だったならまだいいが)
八幡(なんで電話番号教えてない知り合いがいるんだよ……ストーカーかよ……)
八幡(……こいつらのことは一旦置いておこう)
八幡(小町どうするかな……)
八幡(別に申請したところで何もないだろ)
八幡(……いや待て)
八幡(小町くらいの年代の女子は普通なら反抗期真っ盛りだよな……?)
八幡(もし心の中で気持ち悪がられてたら……)
八幡(そそそそんなことないよな!小町的にポイント高いんだから大丈夫だよな!)
八幡(いや……でも……もしかしたら……きっと……)
ブツブツブツブツブツブツブツブツ……
ドアガチャッ
小町「お兄ちゃん、さっきLINEの友だち申請したから見といてねー」
八幡「こ゛ま゛ち゛いいいいいい!!!」
小町「え!?なに!なんで泣きながら迫ってくるの!?気持ち悪い!!お兄ちゃんが気持ち悪いよぉぉぉおおお!!」
66 : ◆0NaiNtVZPPaZ - 2014/08/07 22:15:24.17 sp6im/Td0 30/305やっはろー!1です
本編の書き溜めが少なくて投下できないので、お詫びに短編一個投下しますー。
短編はこれからも書いていきたいのでリクエスト書いてもらえると嬉しいです。
「画面の向こう」
平塚【久しぶりですね。冬休みなので会う機会がありませんでしたがお元気でしたか?常々不安だったので、あなたがこのように安否を確認できるツールを使い始めてくれてとても安心しています(笑)】
八幡【先生】
八幡【長いです】
平塚【そうですね(笑)】
平塚【メールのように一度に全てを送らなくていいんですから、長くする必要はないですよね(笑)】
平塚【それにしても、比企谷くんがLINEを始めるとは思いませんでした】
八幡【由比ヶ浜に誘われたんですよ】
平塚【なるほど】
平塚【比企谷くんは彼女に弱いですね(笑)】
八幡【そんなんじゃないです】
八幡【俺としては先生がLINEやってる方が意外でしたよ】
平塚【そうですか?】
八幡【だって先生がLINEやっても友だちになってくれる人いなさそうですから(笑)】
平塚【私の目の前にいなくて良かったですね】
八幡【そうですね、目の前にいたら確実にファーストブリット打ち込まれてるはずですし】
平塚【そうではなくて】
平塚【アラサーの泣き顔なんて見るはめにならず良かったですねという意味ですよ(笑)】
八幡【ごめんなさい!!】
八幡(それだけ打ち込んでから、俺は平塚先生をそっと友だちに追加しておいた)
八幡(早く!早く誰か貰ってあげて!じゃないと俺が友だちから夫にランクアップしちゃいそうだから!)
82 : ◆0NaiNtVZPPaZ - 2014/08/09 21:07:34.13 a4vWzAoY0 32/305言うの忘れた
本編投下しますー
鼻腔をくすぐる紅茶の香りを楽しみながら、いつも通り各々がやりたいことをやっていた。
俺と雪ノ下は読書。由比ヶ浜はケータイをポチポチとしながら俺や雪ノ下をチラチラ見てくる。
だから人のことをチラチラ見るなよ。過去のトラウマが蘇っちゃうだろ。
八幡「はあ……どうした由比ヶ浜」
視線が気になって話しかけたのであって、別に不安そうにしてる由比ヶ浜が気になっちゃったからとかじゃないから。本当だから。
結衣「べ、別になんでもないし……」
八幡「…………」
問い詰めるべきか引くべきか。
俺と由比ヶ浜の距離感を掴めていないため、どちらを選択するべきか分からない。
適当に納得したようなことを言って引いてしまおうと決意したその矢先、雪ノ下が口を開いた。
雪乃「なにか言いたいことがあるのなら言いなさい。でないとその男はセクハラをやめないわよ」
八幡「なんで俺がセクハラしてるの前提なんだよ」
雪乃「いつも由比ヶ浜さんのことをジロジロ見ているじゃない」
結衣「ヒッキーマジきもい!」
なんで由比ヶ浜に質問しただけでここまで言われなきゃならないんだ。口開いただけで罵倒されるとかもはや人権侵害だろ。
八幡「俺の話は置いておくとして、今は由比ヶ浜の視線がうざったいって話だろ」
雪乃「うざったいとまでは言っていないけれど……」
雪ノ下の遠慮がちなフォローは逆効果だったのだろう。由比ヶ浜は髪をわしゃわしゃとさせて悩んでいた。
しばらくそのままで放置しておくと、覚悟を決めたように大きく深呼吸をしてから小さい声で言った。
結衣「だってさ……あたしとのLINEには二人とも全然返してくれないのに……二人は仲良くLINEしてるんだもん。それがなんか……」
八幡「気に入らないのか?」
結衣「気に入らないっていうか……寂しい?みたいな」
つまり仲間外れにしないで、ってことか。気持ちは分かる。数年前までは俺もよく同じことを考えていた。
一人ぼっちは寂しいもんな……。
事態が飲み込めず困惑してる雪ノ下に代わり、俺が由比ヶ浜にフォローを入れる。
いやフォローっつうか、この早とちりさんの勘違いを解くだけなんだが。
八幡「由比ヶ浜、言っとくが俺は雪ノ下とLINEなんてしてないぞ」
結衣「……へ?」
八幡「俺がLINEしてたの戸塚だ。そもそも雪ノ下は友だちの中にすらいねえよ」
結衣「え……えぇ!?」
突然の大声に俺と雪ノ下の肩がびくりと震える。俺にその場面を見られたのが恥ずかしいのか、咳払いをしてから雪ノ下が由比ヶ浜に向けて話し始める。
雪乃「なぜ私がこの男とLINEなんてしなければならないのよ。どうしたらそんな勘違いをするのかしら」
結衣「だ、だってヒッキーの友だちってあたしとゆきのんだけだと思ってたから……それよりまだ友だちじゃないってどういうこと!?昨日申請したんじゃないの!?」
無事誤解は解けたが由比ヶ浜はまた違うところに食いついてきた。
少し顔が赤いところを見ると、もしかしたら自分が変な妄想をしてしまっていたことを誤魔化すために話題をすり替えたのかもしれない。
俺が言葉足らずだったのがこの状況を作り上げた一因であるっぽいし……俺もその話題に乗ってやるか。
八幡「よく考えろ由比ヶ浜。LINEで友だちの欄に表示されるのはどんなやつだ?」
結衣「えーっと……電話番号を知ってる人?」
八幡「そうだ。ならお互いの電話番号を知らない俺達が友だちになってるわけないだろ」
俺達が電話番号を交換していないというのは全員が知っていることだと思っていたが、どうやら由比ヶ浜にとってこの常識は常識ではなかったらしい。呆然とした表情をしてからまた大声を出した。
結衣「ちょ、ちょっと!それLINE始めた意味ないじゃん!」
雪乃「それはそうなのだけれど……」
珍しく雪ノ下の歯切れが悪い。いつもは必要以上にスパッと言い切ってしまうというのに。むしろ俺に関しては言い斬られてるまである。
結衣「電話番号交換とまでは言わないけど……せめてLINEくらいはちゃんとしようよー」
ただでさえ劣勢っぽかった雪ノ下に追い討ちをかけるかのように由比ヶ浜が抱きつき攻撃を開始する。
もうこうなれば雪ノ下に勝ち目はない。
雪乃「分かったわ。分かったから抱きつかないでちょうだい」
結衣「やったー!」
喜びを体全体で表現する由比ヶ浜に対し、雪ノ下は背筋の凍るような視線を俺に向けていた。
八幡「な、なんだよ……」
雪乃「……なんでもないわ。ほら、早くケータイを出しなさい」
命令口調で指示を出されるとやる気なくなるよね。だからもうケータイ出さなくていいんじゃね。
と思ったりもしたが、雪ノ下の放つ冬の北海道以上の冷気がそれを許さない。北海道行ったことないけど。
八幡「はあ……分かったよ」
カバンからケータイを取り出す。アプリを起動してなんかそれっぽいことを適当にやっているとQRコードを取る画面まで来た。
そこからまた適当に操作していくこと数分。慣れないことをしたせいで予想よりも時間をくったが、無事俺は雪ノ下と友だちになった。
雪ノ下と友だち……か。変な感じだな。
雪乃「これでいいかしら?」
結衣「うん!これで三人とも友だちだね!」
八幡「そうだな」
俺の友だちは雪ノ下、由比ヶ浜、戸塚、小町……あ、あと平塚先生の五人だ。多分現実の友達より多い気がする。
由比ヶ浜は俺とは比べものにならないほど多いのだろう。
そして雪ノ下はおそらく俺と由比ヶ浜の二人だけ。
だがしかし友だちの数が一体なんだというのだろう。
LINEでの繋がりなどただの偽りだ。そんなものの数で何が分かる。例えLINEでの友だちが100人を超えていたとしても、それが本物だとは──
おっと、これ以上考えるのはよそう。俺の黒歴史を掘り返してしまいそうだ。
今の俺にとって『本物』というのはNGワードだ。その単語を聞く度にあのシーンを思い出してしまい、無性に叫びたくなってしまう。
俺の思考が黒歴史の渦に飲み込まれるその直前、由比ヶ浜の元気すぎる声が響いた。
結衣「これでみんなでおしゃべりできるね!」
八幡「業務連絡で使うんだろ」
結衣「す、少しくらいならいいじゃん!」
八幡「……まあ、少しだけならな」
こうして俺たちは三人ともにLINEの友だちになった。
正直、どうせすぐ飽きてアプリを開くことすらしなくなるのだろうと思っていた。
けれどケータイの画面を見る雪ノ下の表情は、あまりにも儚げで。
それだけが俺の心に漠然とした予感を残していた。
91 : ◆0NaiNtVZPPaZ - 2014/08/09 23:03:31.43 +LqTPPeL0 37/3052今日も由比ヶ浜結衣はアホっている 終
正直少し寝てた。
今日は眠気がやばいからもう少し投下したら寝る……。
先に言っておく、おやすみなさい。
八幡「んー……」
翌日の夜。俺は真っ暗なケータイの画面を見ながら一人でうなっていた。
俺は明日、部活を休まなければならない。
一応言っておくがサボタージュではなくちゃんとした用事である。具体的には冬期講習に行くためだ。
さて、たかだか冬休みの部活を休むだけでなぜこんなに悩んでいるのかといえば……それはずばり誰に業務連絡をすればいいか分からないからだ。
普通なら由比ヶ浜にすればいいのだが、俺の中に微かに眠っていた好奇心という名の悪魔がひそひそと囁きかけてくる。
もう一人の方にしろ、と。
どちらにしたところで結果は大して変わりはしない。結果が変わらないのならどちらでもいいが……うーむ。
こんな時奉仕部のグループでもあれば楽なんだろうが、雪ノ下も由比ヶ浜も忘れているようだし俺から言うのはなんとなく嫌だ。
八幡「……よし」
悩んでも答えが出ないなら運に任せればいい。
部屋の片隅に投げ捨てられていた通学用のカバンから財布を見つけ、その中にあるピカピカの十円玉を取り出す。
ポケモンで言っていた。迷ったときにはコイントスだと。
表が出たら雪ノ下、裏なら由比ヶ浜。
ちなみに知ってるやつも多いと思うが、十円玉の表は平等院鳳凰堂がある方だ。10の字がある方ではない。
八幡「よっと」
某超電磁砲を意識しながら親指で十円玉を弾く。くるくると回転しながら落ちてくる十円玉に向かって右手を出した。
ガッ。
八幡「痛っ」
タイミングが少し早かったせいで人差し指の付け根の骨にぶつかってから十円玉はあっけなく床に落下してしまった。
痛いよう……地味に痛い……あとダサい……。
憎しみを込めて十円玉を睨みつける。床に落ちている十円玉が出した結果は……。
八幡「表……」
つまり雪ノ下だ。
もう一回やり直そうかとも思ったが、それをするといよいよ答えを出せなくなる気がする。
俺はもはや半ばヤケになりながらアプリを呼び出し、雪ノ下とのトーク画面に移動した。
つい先日友だち登録したばかりのあいつとは、もちろん一度もLINEを使った会話などしていない。今もトーク画面には空の背景しか映し出されていない。
空って言っても敗北の二文字が存在しない方じゃなくてスカイの方な。
今からその空の背景に会話を打ち込んでいかなきゃならんわけだが……。
なんて打てばいい?
あえてフレンドリーに『よう雪乃』とでも打つか?いやそんなことしたら別の物語が始まってしまいそうだ。
なら『やっはろー』か?いやそれもない。それを使ったら負けだ。何と勝負してるのかは知らん。
……普通にいくか。
to:雪ノ下
八幡【よう】 既読10:40
雪乃【なにかしら】 10:41
思ってたより返信早いな……。どうせ由比ヶ浜とLINEしてたからケータイが手元にあっただけなんだろうが。
それでもこいつのことだし、既読スルーとか普通にしてくると思ってたわ。
なんにせよ、早く反応してくれる分には文句はない。俺はできるだけ簡潔に明日部活を休む旨を書き込んだ。
雪乃【そう】
雪乃【分かったわ】
八幡【やけにあっさり了承してくれるんだな】
八幡【少し意外だ】
雪乃【引き留めてもらいたかったのかしら、ナル谷君】
八幡【お前のことだから文句の一つでも言うんじゃないかと思っただけだ】
八幡【あとナル谷はやめろ】
八幡【トラウマが蘇る】
返事を打ち込んでから気づく。あれ、話ずれてきてないか?
俺としては休むことを伝えたら即寝る予定だったため、普通に会話している自分に少し驚いてしまう。
上手く会話を終わらせる方法を模索しようとするが、ちょうどそのタイミングで雪ノ下から返答が来てしまった。
雪乃【安心なさい】
雪乃【文句なら明後日言うわ】
雪乃【それとあなたの数え切れないトラウマなんて一々気にして会話なんてしていたら】
雪乃【何も言えなくなってしまうわよ】
八幡【なんで明後日言っちゃうんだよ】
八幡【そのまま忘れて言わないままでいいだろ】
八幡【あと俺のトラウマは会話を禁止しなきゃいけないほど大量には無い】
八幡【無いよな?】
……あー、やばい。これやばいフラグだ。
由比ヶ浜とメールをしている時にたまにある現象が今も起きている。
それは会話の分裂だ。
一つの話題が二つに、二つの話題が三つへと増えていく。その結果、どれか一つの会話を終わらせても他の会話が残っているせいで、会話そのものを終わらせることができなくなってしまう。
最悪、残った会話がまた分裂し始めるしな。
終わりの見えない会話は『ちょっと親に呼ばれたわー』とか『もう寝るー』とか適当な理由をつけて強制終了してしまうのが得策だ。
しかしそれは逆に言えば、理由を見つけなければ終わらせられないということになる。
俺の場合はメールを無視して返信しないという、リア充どもには真似できない方法で終わらしているわけだが。
次の日由比ヶ浜が凄く不機嫌になるからあんまり乱用はできないけどな。
雪乃【あなたに言いたいことなんて忘れてもまた出てきてしまうのよ】
雪乃【そんなものを我慢していたら体に悪影響を及ぼしてしまうわ】
雪乃【あなたのトラウマの数なんて知らないわ】
……この会話終わらせられるのか……?
不安で目が覚めてしまった俺は、そのままもう少しだけ雪ノ下との会話を続けることにした。
もう少し、あとちょっとだけ、キリのいいところまで。
やめようと思えばいつでもやめられたと思う。だが俺は様々な理由を見つけて誤魔化し、気づけば時間を忘れてLINEに没頭してしまっていた。
八幡「ふああ……今何時だ……」
誰に話しかけているわけでもないのに、つい思考がそのまま口から出てしまう。この癖そろそろどうにかしなければなるまい。
俺は時間を確認するために雪ノ下からの返答に目を向ける。
雪乃【そうね、あなたと同等に扱うなんてマントヒヒに失礼だったわ】3:56
……我ながらなんの話をしてるんだとは思う。だがそれ以上に気にしなければならないことを発見した。
3時?いやあと少ししたら4時じゃねえか。通りで眠いわけだ。
八幡【おい雪ノ下】
八幡【時間見てみろ】
今までポンポンとリズム良く来ていた返答が少しの間来なくなる。
いつもより数テンポ遅れて来た返答はとてもシンプルでかつ分かりやすいものだった。
雪乃【おやすみなさい】
それを合図に雪ノ下とのLINE、別名未知との遭遇は終わりを告げた。
計約五時間。お互いにその間一度も時間を見ずに没頭してしまっていた。
すごいな、まるでラブラブのカップルみたいだ。
八幡「……はっ」
自分の考えをつい鼻で笑ってしまう。こんなことを考えてしまうあたり、よっぽど眠いんだろうな俺。
寝るか。
電気を消してベッドの上に横になる。途端にすさまじい眠気に襲われるが、その前に一つやるべきことを忘れていた。
八幡【おやすみ】
既読がつかないことを確認してから、俺は睡魔に従って深い眠りに落ちていった。
105 : ◆0NaiNtVZPPaZ - 2014/08/10 09:37:41.56 qV20A/sP0 44/3053このように雪ノ下雪乃は変わりつつある 終
キリがいいのでここで終わりー
お盆に免許取りに行かなきゃならないから、その勉強のために更新できなくなるかもしれないです。
本編は更新一切できないかもしれないんで、頑張って短編は書くつもりです。
小町「あ、お兄ちゃんおはよー。昼食はテーブルに置いてあるよー」
目が覚めたときにはすでに正午を過ぎていた。小町の用意してくれた昼食を少し急いで胃に入れていく。ゆっくり食べてると予備校に遅刻してしまいそうだ。
受験生である小町に料理させて俺は昼まで寝てるとか、そろそろ救いようがない気もする。
今日の夜ご飯は俺が作らないとな。
八幡「ふああ……」
小町「お兄ちゃん、冬休みだからって夜更かしするのは健康によくないよ。目も腐るし」
八幡「それ長期休暇の度に言われるんだが……」
今年の夏休みにも全く同じことを何度も言われた記憶がある。そして必ず目のことを言及される。
だから睡眠不足と目の腐敗は関係ないんだよ。多分。
小町「それだけお兄ちゃんの生活リズムがボロボロなの。そんな生活して体調壊してほしくないんだよ。あ、今の小町的にポイント高いっ!」
八幡「はいはい」
最後のだけなかったら本当に可愛いんだが……。まああっても可愛いがな!
小町「それで昨日はなにして夜更かししてたの?読書?ゲーム?本棚の後ろにある壁の中に上手く隠されたDVDの鑑賞?」
八幡「……おい、ちょっと待て」
小町「ん?」
怖いよこの子!なんで当たり前みたいに俺のプライバシー知り尽くしてるの?ストーカーなの?
八幡「な、なんでもない。それのどれでもねえよ。っていうかDVDとか知らねえし」
小町「ふーん……まあいいけど。どれでもないなら……あ!LINEとか!」
八幡「…………」
いきなり図星を言い当てられて思わず黙ってしまう。その反応から何かを察したのか、小町の目がキュピーン!と光った。
小町「ほうほう……お兄ちゃんがLINEで夜更かし……」
八幡「何を勘ぐってんだか知らないが、相手は戸塚だからな」
最もあり得る答えを提示してこの話題を終わらせようとしたのだが、なぜか小町の瞳に宿る光がさらに強くなったように見えた。
小町「……本当に戸塚さん?」
八幡「ああ、他に誰がいるんだよ」
小町「ふーん、へえー、ほおー」
八幡「うぜえ……」
小町はニヤニヤとした表情をしながら、しかし何かを言うでもなくずっと俺のことを生暖かい目で見ている。
だがそのことについて聞く時間は俺にはなさそうだ。時計を見れば意外と時間が過ぎている。急いで予備校に行く準備をしなければならない。
皿に乗っていた食べ物を大急ぎで口の中にかきこみ、そのままコーヒーで押し流す。ごちそうさまと小町に言ってから部屋に戻り、俺は支度をものの一分程度で終わらせた。
このまま自転車で飛ばせば間に合うな。
……寒い。家から出たくないな……はあ……。
八幡「じゃあ行ってくる……」
部屋から玄関までの短い距離を、足を引きずりながら歩き靴を履く。
ドアに手をかけようとしたその時、いつもはリビングから手を振るくらいしかしない小町がわざわざ玄関まで見送りに来てくれた。
なんだ、デレ期か?
不思議に思わなくもなかったが、別に悪い気はしないしむしろ嬉しい。
少し上機嫌で扉を開ける俺に、さらに上機嫌な小町の声が届いた。
小町「戸塚さんは部活がある日もない日も早寝するタイプだから、夜遅くまでLINEなんてしないんだよー。それじゃあ行ってらっしゃい!」
俺の心臓が一際大きく脈打つのと、扉の閉まる音が聞こえたのはほぼ同時だった。
八幡「お、俺の妹がこんなに怖いわけがない……」
意識したわけでもなく口からそんな言葉がでてきてしまう。すれ違った主婦に気持ち悪そうに見られたが、もはやそんなことはどうでもいい。
きっと今頃小町は俺のLINEの相手を楽しそうに探しているのだろう。あいつのことだし、相手が雪ノ下だなんてすぐに分かってしまうはずだ。
そして帰ってから質問責めにあい、明日は奉仕部で雪ノ下に散々に言われる、と。
こんな嫌な未来を正確に予知できる能力なんていらねえ……。どうせなら宝くじの当選番号予知してくれよ。
そんな気持ちを振り切るために俺は自転車を漕ぎ始めた。
風に立ち向かいながら自転車を漕ぐこと十数分。なんとか時間までに予備校に着くことができた。
こういう建物に入るとき、つい学校の癖で下駄箱探しちゃうんだよな……。
周りを見渡せば俺と同じような行動を取っているような人間がもう一人いた。
ポニーテールを揺らしながら周囲を見回し、何かに気づいたように動きを止める。
まさに俺と同じ動きだ。案外あいつとは気が合うのかもな。いやないか。
俺と気が合うということは、逆に言えば世界と合わないということだ。そんな奴は間違いなくぼっちである。
……そういえば、あの後ろ姿どっかで見たことあるな……。
誰だっけ……か、川……川越……?
八幡「あ、川崎か」
川崎「ふぇっ!?」
目の前で俺と同じ動きをしていた女子がこちらを勢いよく振り向いた。
誰かと思ったら川崎本人じゃねえか。
……え?じゃあ今の『ふぇっ!?』ってこいつが言ったの?なにそれ可愛い。
川崎「な、なんであんたがここに……!」
八幡「こんなとこに勉強以外でなんの用があるんだよ」
俺の冷静な返しを受けて川崎もいつもの調子に戻る。若干の気まずさを残したままつかず離れずの微妙な距離感を保って、同じ部屋に向かって歩いていった。
八幡「……そういや、生徒会選挙の時ありがとな」
言いそびれていた礼を言っておいた。ただそれだけだというのに、川崎は頬を赤く染めて視線を逸らしてしまう。
そういう反応やめてくれない?勘違いしそうになるだろ。
川崎「別にあんたのためにやったわけじゃないし……」
典型的なツンデレセリフもこいつが言うと、すんなりと本心だと思えてしまう。
ならなんで手伝ってくれたのかとは思うが、そこまでぐいぐい聞くのは失礼だよな。
だから失礼じゃない礼をしよう。
八幡「それでも本当に助かった。この礼は今度何かで返す」
川崎「何かって?」
八幡「……決めてない」
女子への礼をそんなにすぐ思いつけるほど俺の男子力は高くないんだよ。
いや男子力ってなんだ。
川崎「……その礼って、あたしが決めてもいいの?」
八幡「ああ、むしろそっちの方が俺としてはありがたい……あ、痛みを伴うのはやめてくれよ?」
川崎「あんたはあたしをどう見てるのさ……」
不良もどきですけど?とは口が裂けても言えない。その瞬間俺の体まで裂けてしまいそうだ。
だとすると不良もどき以外でのこいつへの印象……。
八幡「ブラコンだな」
川崎「あ?」
八幡「あ、いえなんでもないです」
何今の声!どこから声出したらそうなるの!?
ドスの利いた声を出した川崎だったが、なぜかその直後に視線を泳がせてしまう。
その行動の意味が分からず首を傾げていると、川崎はいつもより小さめな声で言った。
川崎「あたしへの礼はいいからさ……大志の勉強見てやって欲しいんだ」
明後日の方向を向きながら言われた言葉は実にブラコンチックなお願いだった。
……そら目を逸らすわな。ブラコンって言われたすぐ後に弟のこと話し出すんだから。
重症すぎるだろ、俺ですらそこまでじゃ……ないはず。
八幡「そんくらいなら別に構わんが、それじゃあお前への礼は……」
川崎「あたしはいいよ。スカラシップの時のでおあいこでしょ」
八幡「ま、まあそうだが……」
川崎「……あんたって意外と律儀だよね」
やっと視線を戻した川崎は優しい笑顔を浮かべている。
その表情は、俺の視線を釘付けにするには充分すぎるほど魅力的だった。
川崎「……なに?」
八幡「……へ?あ、ああ、なんでもない。そうだぞ、俺はこう見えて律儀なんだ。借りはだいたい返すし貸しは絶対返してもらう」
川崎「それ律儀って言わないから」
その表情からはすでにさきほどの笑顔消えており、代わりに呆れた表情をされていた。
まさかさっきの笑顔をもう一度見せてくれなどと言えるはずもなく、少し残念に思いながらも俺は会話を続ける。
八幡「俺が教えるのはいいんだが……言っとくが国語以外は人に教えられるほどできないぞ?数学なんてむしろ教えてほしいレベル」
川崎「そういうのは期待してないよ。ただほら、この前みたいにモチベーションを上げてほしいっていうか……」
八幡「ああ……いやそれでも俺でいいのか?俺よりそういうのが得意なやつなんていくらでも……」
そこまで言って気づく。そうだ、この子も俺と同じぼっちだった。
俺に頼りたいのではなく、俺くらいしか頼れるやつがいない。
俺を選んだのではなく、俺しか選択肢が与えられていないのだ。
ぼっちは人間関係が狭い。むしろ人間関係なんてものが存在してないことすらある。だからこそ、選べる選択肢は限られている。
俺のように。
そう俺は予測し、こいつからの要望を飲もうとしたのだが、俺の考えは少し違っていたようだ。
川崎「あたしは他のやつよりあんたがいいと思ったから頼んでるだけ。大志はあんたのこと凄く気に入ってるし、あたしも……あんたになら大志のこと任せられると思ってる。……少し不安だけど」
八幡「任せられても困るんだが……まあその、そこまで言ってもらって断ることはできないな」
川崎「じゃあ頼める?」
八幡「ああ、引き受けた」
そこでちょうど俺たちの行くべき教室が見えてきた。一人で行くのに比べ随分と時間がかかったのは、それだけ会話に集中してしまっていたからだろう。
川崎「あ、そうだ。これLINEのID」
八幡「は?」
そう言って彼女が差し出したのは、英数字の書かれたメモ紙だった。
川崎「あんたも始めたんでしょ?ならこれの方が簡単に連絡できるし」
八幡「え、お、おう……」
女の子からLINEのIDもらった!八幡はリア充度が2上がった!
おっと、いかん。あまりの驚きで脳内がポケットなモンスターのようになってしまった。
ニヤニヤしそうになる顔を全力で引き締め、メモに手を伸ばす。だがその手はプルプルと震えていて我ながら無様だった。
川崎「あっ……」
受け取った時、俺と川崎の手が触れてしまった。俺が紙を掴んだと見るやいなや、ものすごい勢いで手を引いてしまう。
女の子から気持ち悪がられた!八幡はリア充度が5下がった!
八幡「わ、悪い」
何が悪いのかよく分からないまま謝ってしまう。だって川崎の顔真っ赤なんだもの、すごく申し訳ないんだもの。
川崎「いやっ、べ、別に……」
川崎は裏返った声でそういうと、スタスタと教室の中に進んでしまった。
残された俺は少しだけメモ帳を見つめてから、ゆっくりと教室の中へと入っていった。
八幡「たでーまー」
小町「おっかえりー!」
予備校から帰ってきた俺を、リビングから聞こえる小町の声と暖気が迎えてくれた。
寒かった……こんな時期に家から進んで出ようとするとか理解できない……。
小町「お兄ちゃーん、朝のことゆっくりお話しよー」
八幡「うわあ……」
家から進んで出ようとするやつの気持ち理解できちゃった。
家に居場所がないのか……。
八幡「はあ……」
小町に聞こえるようわざと大きいため息を吐いてから、リビングへのドアを開ける。
ソファーにぐてーとしながらも満面の笑みでこちらを見る小町の姿は、なんかこう……将来が不安だ。
小町「ふっふっふ……お兄ちゃん、謎は全て解けたよ!」
八幡「その謎解いたとこでどうすんだよ」
小町「えー、そりゃ……ふふふ」
俺の質問を怪しい笑い方で誤魔化す。その笑いにはどんな意味が含まれているのか聞きたいような聞きたくないような……。
小町「しかし雪乃さんと夜遅くまでLINEとはねえ……小町嬉しいよ」
八幡「なんで嬉しいんだよ……つうかLINEしてたとは言うが、正確には二人ともがLINEに不慣れなせいで、やめ方が分からなかっただけだ。最後の方マントヒヒの話してたからな」
小町「マントヒヒ……」
さすがにそれには引いたようで、小町は額に手を当てる。
小町「あと少しでお姉ちゃんが出来ると思うんだけどな……なにが足りないんだろ」
八幡「俺のやる気だろ」
小町「もう!お兄ちゃんは彼女欲しいとか思わないの?」
彼女……ねえ。
ぶっちゃければ欲しい。喉から手が出るほど欲しい。だが俺の性格から考えて一人の女性と長期間……あるいは一生を共にするというのは難しい。
一応専業主夫を目指している身としてはこんなとこで諦めるわけにはいかないが、それは大学で頑張るから。
大学行ったら本気出すから。
八幡「今は欲しいとは思わねえな。それに俺には小町がいてくれるし」
なんだかんだといって俺の世話を焼いてくれる可愛い妹がいてくれるだけでも、俺はかなり幸せだ。
そう思い、なんとなく小町の頭によって手を乗せ優しく撫でる。
小町「うぅ、これだからごみいちゃんは……ずるい」
八幡「ずるいって……頭を撫でるって反則行為だったりすんの?俺退場でもさせられんの?」
小町「ある意味超反則行為だね」
八幡「そうだったのか……」
小町の頭からパッと手を離す。俺の手を小町が名残惜しそうに見ていたのはきっと勘違いだろう。
八幡「じゃあ俺部屋行くから」
小町「んー」
勉強頑張れよ、とでも言ってやりたいがそれが逆効果なのはよく知っている。
ならせめて、こんな時くらいは兄らしく見守ってやろうじゃないか。
八幡「あ、そうだ」
本当なら小町にLINEのことを尋問される前にとっとと立ち去って誤魔化したかったのだが、一つ聞き忘れたことがあった。
八幡「なあ小町、俺がLINE始めたこと誰かに言ったか?」
俺がLINE始めたこと。それを川崎が知っていた理由があるとすればこいつが誰かに言ったから以外には考えられない。
一応小町は常識を備えている……と信じているが、念のために誰に言ったのか確認しておいても損ではないはずだ。
小町「言ったよー。たった二人だけどね。お兄ちゃんの知り合いで小町の知ってる人そんなに多くないし、そもそもお兄ちゃんの知り合い多くないし」
八幡「最後の一文いらないよね?改めて現実突きつけるのやめてくれない?」
小町「はいはい。それで教えたのは大志君と……」
大志……なるほど、川崎は大志経由で知ったのか。それなら納得……?
え?なんであいつら姉弟間で俺の話してんの?怖いんだけど。
川崎家の会話に俺の中で警鐘が鳴り始めている。だがそんなものは次の小町の発言で消し飛んでしまった。
小町「あと陽乃さん」
八幡「え?」
小町「だから陽乃さんだって。雪乃さんのお姉さんの」
今なんかとんでもない魔王の名前が聞こえた気がするんですけど……嘘だよね?嘘だって言ってよ!
小町「さっきコンビニに行ったら偶然会ったから言っちゃった。そういえば陽乃さんってなんでこっち居たんだろ?」
言っちゃったじゃねえよ!この子常識全くなかった!あと陽乃さんと会ったの多分偶然じゃなくて必然だ!
八幡「まじか……陽乃さんに言っちゃったか……」
小町「うん!頑張ってね!」
頑張っている人間に頑張れと言ってはいけない。
それは受験生にも魔王に目を付けられた哀れな村人Aにも同じことが言える。
陽乃さんのことを何も知らないのか知った上でなのかは分からないが、小町は妙な笑顔を浮かべている。
それに見送られながら、村人Aは静かに自室へ引きこもりに行った。
八幡「あー……晩飯作らねえと……」
引きこもるとは言ったものの、俺は自分と小町の晩飯を作るために部屋から出なければならない。
やっぱり働くとか俺の肌に合わないな。養ってもらおう。
パパっと着替えてから冷蔵庫にある食材で作れる料理を作り、小町と一緒に食べる。
すっかり慣れてしまった二人だけの食事風景。いつもならマイラブリーシスター小町とのきゃっきゃうふふなディナータイムなのだが……。
小町「それでそれで?雪乃さんと結衣さんとのLINEは楽しい?」
ふぇぇ……妹がうざいよぉ……。
八幡「そんなに会話してるわけじゃねえよ。由比ヶ浜とは適当なとこで会話終わらせるし、雪ノ下とは昨日の一回だけだ。もしかするとあれが最初で最後かもな」
小町「いやいやそんなこと言ってー……あ、でもお兄ちゃんならあり得る……」
八幡「だろ?現実ですらそこまで話すわけでもないのに、画面越しとか余計話さねえよ」
実際あいつとは業務連絡以外でLINEすることはないだろうし、その業務連絡だって由比ヶ浜としたところで問題はない。
だから本当にあれが最後かもしれない。まあマントヒヒの話しかしないLINEなんて別にしなくてもいい気がするが。
マントヒヒ愛好家のみんな、ごめんね。
小町「もったいないなー。今がお兄ちゃんのピークなのに」
八幡「これから俺の人生下がるだけかよ」
小町「……本当にそうかもよ?」
笑っているはずの小町はしかし全く笑ってなどいなかった。急な雰囲気の変化で戸惑う俺を小町の視線は逃さない。
小町「決めるのはお兄ちゃんだけど、捻くれすぎて女の子泣かしたりしたらダメだからね」
八幡「分かってるよ」
本当は分かってなどいない。けれど今の小町にそれを言えるはずもない。
だからせめて、お返しに俺らしく皮肉と嫌みで返してやる。
八幡「人の心配してる暇があったら自分の心配しとけよ受験生」
小町「あー!小町に言っちゃいけない言葉ランキングトップ10の言葉言った!」
八幡「意外と低いんだな」
てっきりトップ3くらいには入ってると思ってた。これでトップ10なら一位はなんなのか気になる。
小町「ふん!明日の朝ご飯お兄ちゃんの嫌いなトマトだけで料理作っちゃうもん!」
八幡「おいおい俺を殺す気かよ。冬休みなのに朝ご飯の時間に起こすとか酷すぎるだろ」
小町「そっちなんだ……」
小町が俺を残念な子でも見るような目で見てくる。辛いです。
八幡「まあそういうわけだから、お姉ちゃんとか期待すんのはやめろ」
小町「うん……お姉ちゃんが無理ならいっそお兄ちゃんができることに賭けるよ」
八幡「もっとやめろ」
最近海老名さんの視線が妙に気になるのだ。俺と葉山の一挙手一投足を見逃さないようにしているそれは、まさに野獣の目。超怖い。
晩飯の最後の一口を、鼻血を出して倒れる海老名さんのことを思い出しながら食べる。なぜか食事を汚された気分になったが、お茶を一気飲みして気を紛らわせた。
八幡「じゃ、今度こそ引きこもるかから。……なんか分からないとこあったら聞きに来い。ただし」
小町「数学以外でしょ?頼りにしてるからね、お兄ちゃん」
八幡「ん」
理由の分からない気恥ずかしさを感じながら自室へ向かう。
今は無性にベッドが恋しかった。
八幡「むむっ……」
ベッドに寝転んで、某楽天カードマンの真似をしてみる。だがそんなことをしたところでID検索をする勇気は出てこない。
何で俺、検索するだけでこんなに緊張してるんだ……?
あ、そうか。さっきから検索したら友だち申請しなきゃいけない、とか思っていたから検索できなかったんだ。
検索したって嫌なら申請しなけりゃいい。それだけの話じゃないか。
よし、オーケーオーケー。それなら大丈夫。
さあ、検索を始めよう。
八幡「えーと……K……A」
ローマ字のみの入力は、パソコンでもiPhoneでも慣れない。しかもこいつの妙に長ったらしいから余計面倒だ。
イライラしながらもなんとか入力を終える。そして震える指で検索ボタンを押した。
友だち申請をするかどうかは別にするとして、考えてみたら俺が自分から友だち探しをしに行くって初めてじゃないか?
うわ、そう思ったら緊張してきた。そうか、俺の初めては川崎か……。
ともかく長かった苦悩もこれでようやく終わりに──
【川崎大志】
八幡「お前かよっ!!!」
俺の苦悩なんだったんだよ!確かにこれなら連絡簡単だけれども!!
八幡「ふぅ……ふぅ……!」
溢れ出る怒りの矛先が見つからずムシャクシャする。大志に八つ当たりしようにもこいつ悪くねえしな……。
つうか悪いの早とちりした俺だし……。自分が加害者であり被害者ってのが辛い。誰を責めればいいのか分からなくなる。
後が怖いので大志を友だちに登録しておいたが、だからといって気が晴れるわけでもない。
こういう時は本でも読んで落ち着こう。
そう思い、手近なところにあった本に手を伸ばそうとした瞬間だった。
ピコン、とケータイから音が鳴る。この音はLINEの通知音だ。一体誰から?
自動で明るくなったケータイ画面を見る。もちろん表示されている通知はLINEのものだ。しっかりとアカウント名もある。
その名前は、もう二度とLINEをすることはないだろうと考えていた彼女の名前だった。
165 : ◆0NaiNtVZPPaZ - 2014/08/24 10:35:06.24 ZvW6dg1z0 64/3054思っていたより川崎沙希は合理的である 終
「二人で一人の」
to:川崎大志
大志【お久しぶりっす!お兄さん!】
八幡【誰】
大志【川崎大志っす!フルネームで書いてあるっすよね!?】
八幡【テンション高すぎ。夜なんだからテンション下げろ。で、誰?】
大志【比企谷さんの同級生の川崎大志っす】
八幡【よし、それくらいのテンションならちょうどいい。それで誰だっけ?】
大志【川崎大志っす!!!あ、話変わるんすけど姉ちゃんのIDいります?】
八幡【いらん、めんどい】
大志【あたしと話すの嫌なの?】
八幡【お前らなんでメールもLINEも二人で一つなんだよ】
大志【すいませんっす!姉ちゃんがこのLINE見た瞬間急にケータイ奪い取ったんす】
大志【別に奪い取ったわけじゃないから。ちょっと気になっただけ。そんなに気にしてるわけじゃない】
大志【こうは言ってるんすけど、いつもよりテンション低いんで友だち申請してあげてもらえないっすか】
八幡【するから、申請するから。だから二人で一つのLINE使うな】
大志【ありがとうございますっす!姉ちゃんの機嫌もよくなりました!】
八幡【そういうこと一々言わんでいい】
八幡【じゃあな】
大志【はい!おやすみなさいっすお兄さん!】
八幡【お兄さんって言うな殺すぞ】
八幡【おやすみ】
大志【おやすみ】
八幡【お、おう】
八幡(だから二人で使うなよ!この姉弟めんどくせえよ!)
170 : ◆0NaiNtVZPPaZ - 2014/08/24 17:13:22.13 ZvW6dg1z0 66/305今日はここまでっす!もう書きためがないっす!
本編は溜まり次第投下する予定です。
ネタを出していただいた短編については、もうちょっと話が進んでから使わせて頂きたいと思っています。
それじゃ!おやすみなさいっす!
【雪ノ下雪乃】
そう表示された画面を何度も見てしまう。
あいつから俺に何の用だ……?今日の部活で何かあったのだろうか。
そんな自信のない予想をしてからLINEのアプリを開く。
八幡「ああ……」
そこにあったのは俺に対する不満。主に小町にLINEのことを言ってしまったことについてだ。
確かにこれならあいつからLINEを送ってきたことも納得できる。
小町ェ……。
八幡「ふむ……返さなくてもいいか?いやそれは怖いな……」
独り言は頭を整理するのにぴったりだ。話しているわけではないから気を使う必要もない。会話するよりずっと楽である。
独り言ホント万能。文科省は会話の大切さより独り言の利便さをもっと広めていくべきだ。
そして、そんな独り言が出した結論は。
八幡「適当なとこで切り上げて寝よう」
しっかりと昨日の反省を生かす。ちゃんと時間を見ながらやれば問題はないはずだ。
じゃあ既読もつけちまったし、とっとと返すか。
to:雪ノ下雪乃
八幡【悪いな】
八幡【小町ってこういうことには異常に敏感だから】
雪乃【あなたが鈍感なだけでしょう】
八幡【何を言う、俺は肌が荒れるレベルで敏感だ】
雪乃【あなたの肌なんてどうでもいわよ】
雪乃【それより、今後は小町さんに気づかれないようにしなさい】
八幡【俺の肌どうでもよくないから】
八幡【男だって少しは気にしてるんだぞ】
八幡【なんで小町に隠すんだ?】
雪乃【あなたの肌を見てくれる人なんていないでしょう?】
雪乃【男だって、とは言うけれど女の私は大して気にしたことはないのだけれど?】
雪乃【小町さんに隠すのは今日みたいな事がないようにするためよ】
八幡【いるから、戸塚とか超見てくれてるはずだから】
八幡【そうなの?女子って全員肌のことばっかり考えてると思ってたんだけど】
八幡【小町そんなにしつこく聞いてきたのか?】
と、ここまで打って気付く。
話題がすでに三つに分かれてる……!
前回の反省どこに活きてるんだよ。むしろ悪化してるじゃねえか。これ終わるの?俺はちゃんと寝れるの?
そんなことを考えている間にも雪ノ下からのLINEは来てしまう。
雪乃【本当に手遅れね。そろそろ戸塚君にも愛想を尽かされるんじゃないかしら】
雪乃【何も考えていないわけではないけれど、あなたが思うほど真剣に考えたことはあまりないわ】
雪乃【私の場合、特になにもしなくても問題ないもの】
雪乃【小町さんの質問はそれほどしつこくなかったのだけれど……】
雪乃【明日部活に来れば分かるわ】
八幡【戸塚に愛想尽かされるとかもう生きてる理由ないんだけど】
八幡【お前、それ由比ヶ浜に言ったら多分キレられるぞ】
八幡【部活で思い出したけど、年末年始も部活やんの?】
俺たちはクリスマスパーティーの翌日から毎日部活をしている。
そのせいで『明日も部活があって当たり前』という考えが生まれ始めていた。
俺は年末年始だろうといつだろうと、暇を持て余すという予定しか入っていないから問題はない。本を家で読むか学校で読むかの違いだ。
だが、家族でいろいろとしてそうな雪ノ下や友達と遊んでそうな由比ヶ浜は年末年始まで部活に出ているわけにはいかないだろう。
雪乃【明後日から五日まで部活は休みよ】
俺の疑問に雪ノ下は妥当な答えを出してくる。どうやら明日が今年最後の奉仕部らしい。
できればもうちょっと早く教えて欲しかったなーとか思わなくもないが、そんなことは言葉にしないし文字にもしない。
八幡【思ってたより休みあるんだな】
八幡【お前のことだし毎日やるとか言い出すかと思ってた】
雪乃【そんなわけないでしょう】
雪乃【そんなことより】
八幡【なんだ?】
雪乃【由比ヶ浜さんがキレるという件についてだけれど】
雪乃【もしかして私は知らないうちに酷いことをしてしまったのかしら?】
……由比ヶ浜のこと好きすぎるだろ。こんな不安げに他人の好感度気にするとか、いつものお前のキャラどこ行ったんだよ。
八幡【そういうわけじゃねえよ】
八幡【あいつも化粧やらなんやら気を使ってそうだし、何もしてないのにそんなに可愛いって知ったら怒るんじゃねえの?って意味だ】
あ、やば。会話の流れで可愛いとか言っちゃった。
死すら覚悟した俺だったが、あいつはそのことについてなにか反応するわけでもなく普通に返してきた。
雪乃【そういうことね】
雪乃【彼女がそんなことで怒るわけないじゃない】
八幡【ま、そうかもな】
もちろん俺だって本気であいつがキレるとは思っていない。ただの冗談……ん?
気づいたら会話が一つだけに戻ってるぞ?
そうか、雪ノ下が由比ヶ浜を好き過ぎて他の話題を全てぶったぎったからか。
ならあとはこの会話さえ終わらせてしまえば、前回のようなことにはならずに済むはず!
今日は早く寝れる!
そして時は経ち。
【別にホラー映画は苦手ではないわ、好かないだけよ】5:37
……あれれー、おかしいなー?これ時計壊れてるんじゃないの?
いやいやそうじゃない。現実逃避してる場合じゃねえよ。
どうしてこうなった……。まあ原因は、また時間を忘れて没頭してしまったからなのだが。
いやうん、正直さっきからまぶたが重いとは感じてたよ?けどほら、会話を一つに出来たこととか、マントヒヒみたいな訳の分からん会話をしなかったことで油断してしまった……!
一回でも時間を見ていればこんな事態には陥らなかったというのに、なぜこうも会話に集中してしまったのか。自分を小一時間ほど問いつめたい衝動に駆られるが、それよりもまずしなければならないことがある。
八幡【おい雪ノ下】
八幡【時間見てみろ】
前回と同じように雪ノ下にそれとなく終わりを促す。これでまた雪ノ下が会話をぶったぎってくれれば何の問題もない。
だが、雪ノ下の反応は予想と違っていた。
雪乃【あなたと話していると時間が早く過ぎてしまうわ】
雪乃【どうしてかしら】
八幡【俺に聞かれても困る】
八幡【俺も同じ事で悩んでるからな】
雪乃【どういう意味かしら?】
もやのかかった頭でそれに答えを返そうとして……すんでのところで思いとどまった。
眠気とはかくも恐ろしいものだ。いつもの俺なら絶対に言わないことを簡単に言おうとしてしまう。
顔を合わせず文字だけでやりとりするせいで、言おうと思ってなかったことまで言ってしまいそうになるLINEとは最高の相性だ。
俺の目線から見れば最悪の組み合わせだがな。
この組み合わせは隠している本心をあっさりと見せようとしてしまう。本心などたとえ相手が小町であっても絶対に見せるわけにはいかないというのに。
八幡【なんでもねえよ】
八幡【さすがに寝るぞ】
八幡【おやすみ】
雪ノ下が会話を切ってくれないのなら俺が切るだけのこと。
電池がだいぶ減ったケータイの電源を切ってベッドの上の方に置いておく。
ピコン、と一度だけ音がする。その音になぜか苦笑しながら、俺はベッドに倒れ込んだ。
190 : ◆0NaiNtVZPPaZ - 2014/09/04 21:46:08.04 7SAshPR00 74/305これっぽっちだけど書きためはここで終わりですー
これから先の話、普通に爽やかな感じで終わらせようとしてたんだけどなんかどんどんドロドロになってきてます。
それでも大丈夫?
199 : ◆0NaiNtVZPPaZ - 2014/09/15 16:51:00.78 o+zbOz/c0 75/305やっはろー!1です
ドロドロにしようとしたら全然プロット作れない……爽やかに路線戻すかも。
ドロドロでも爽やかでも、完結はさせるから安心してください。
あと、あんまり更新しないと申し訳ないんで短編一個投下します。LINE関係ない短編ですけどよろしく。
「カンスト」
小町「……zzz」
八幡「小町、寝てるのか?」
小町「zzz」
八幡(この季節にリビングで寝るなよ……風邪引いたらどうすんだ)
八幡(勉強で疲れてるのは分かるが、それで体調崩したら元も子もないだろ……ったく)
八幡「おーい小町、寝るなら自分の部屋で寝ろー」
小町「……んぅ……」
八幡「小町ー」
小町「んー……ふぁぁ……」
八幡「やっと起きたか……ほら風邪引くから──」
小町「八幡抱っこしてー」
八幡「……は?」
小町「ぎゅーしてよ八幡……」
八幡「こ、小町……?」
小町「んん……んぅ?お兄ちゃん…………!?」
八幡「こ、今度こそ起きたか?」
小町「え、あ、あ……///」カァァ
八幡「えっと……今のは……」
小町「いっ、今のは、わわわざとだよ!ここここみゃっ!小町的にポ、ポイントっ、たか、た、たかっ、高いよね!!!」
八幡「お、おう……可愛すぎてポイントカンストしそうだったぞ。でも何で俺のこと名前で……」
小町「き、気にしちゃダメ!もう寝る!!」
八幡「あぁ……ちゃんと部屋で寝ろよ」
小町「お、おやしゅみ!」
八幡「おやすみ」
八幡(小町天使すぎんだろ。俺もうこのまま小町ルートでいいんじゃないかな)
202 : ◆0NaiNtVZPPaZ - 2014/09/15 17:07:39.50 o+zbOz/c0 77/305こんな妹が欲しかった……!
というわけで今日はこれだけです。
本編は来週中には更新できると思います。
208 : ◆0NaiNtVZPPaZ - 2014/09/17 21:15:41.74 z3VvRDq40 78/305やっはろー
本編が進まないお詫びにハイキュー見てたら思いついた短編投下しますー
「SS」
TV<オレニトスモッテコーイ!
八幡(今やってるハイキューってアニメのタイトル、似たようなのどっかで見たことあると思ったらあれだ)
八幡(ロウきゅーぶだ)
八幡(……いやよく見たら全然似てねえ)
八幡(けどタイトルの付け方的なものが似てるような気がする)
八幡(あれ、籠球部だからロウきゅーぶだって気づいたの最終話あたりだったな……)
八幡(そういや二期の『SS』って何かの略だったはず。確か──)
ピコン
to:由比ヶ浜結衣
結衣【ねえヒッキー!】
結衣【姫菜がたまに言ってる『SS』ってなんのことか知ってる(´・ω・`)?】
八幡【小学生は最高だぜ】
八幡【あ、間違えた】
八幡【今のは違うんだ】
結衣【そうだね、留美ちゃん可愛いもんね】
八幡【なんでそこであいつが出てくるんだ】
八幡【今のはちょっと間違えたんだよ】
八幡【おい】
八幡【既読スルーするなよ】
八幡【おい!】
210 : ◆0NaiNtVZPPaZ - 2014/09/17 21:19:42.96 z3VvRDq40 80/305本編は週末に投下します
おやすみなさい!
翌日の部活。俺が部室に入って最初に目にしたものはムッスーとした由比ヶ浜の顔だった。
結衣「むー!」
俺の顔を見るなり唸り声を出された。なんだ、サブレの物まねか?似てるじゃねえか。
八幡「よう」
そんな由比ヶ浜はひとまずスルーし、普通に挨拶をしてから席につく。そしてカバンから読みかけだったラノベを取り出した。
さて、読むか。
結衣「ちょっとヒッキー!ここまでアピールして無視!?」
本を開こうとしたとたん由比ヶ浜がサブレの物まねをやめて何かを叫んできた。
八幡「急になんだよ、サブレの物まねスルーされたのがそんなにいやだったか?ちゃんと似てたぞ」
結衣「サブレの真似なんかしてないし!っていうか似てるって言われても嬉しくないから!」
八幡「じゃあなんの物まねしてたんだ?」
結衣「物まねじゃないし!本当は分かってるでしょ!」
由比ヶ浜は俺が何も知らないフリをしていると思い込み憤慨している。だが先ほどの由比ヶ浜の奇行の理由に心当たりなどない。
結衣「……え?本当に分からないの?」
八幡「ああ」
俺の困惑から由比ヶ浜も俺が何も分かっていないことを察したらしい。落ち着いた声でこう言ってきた。
結衣「……LINE」
八幡「?」
結衣「一昨日、ゆきのんと夜遅くまでLINEしたんでしょ?あたしの勘違いとかじゃなくて」
八幡「……確かにしたな」
夜遅くまでつっーか若干朝みたいなもんだったが。あれ夏だったら太陽見えてたかもしれないぞ。
結衣「……それに昨日も寝る前までしてたってゆきのん言ってた」
八幡「まあそうだが……それでどうしたんだ?また寂しいのか?」
こいつが前回挙動不審だった理由は寂しいというのがあったからだ。なら今度もそうなのではと思うが……俺の第六感はどうやら絶不調らしい。予想はまたも外れてしまった。
結衣「あたしも昨日LINE送ったのに……」
いやまさかそんな、と思いながらポケットに突っ込んであったケータイを取り出し確認する。
そこには確かに、由比ヶ浜からのLINEが。
八幡「お前……30回も送って来たのかよ……」
結衣「だってヒッキーが返してくれないんだもん……でもちょっと送りすぎかなとは思った」
八幡「自覚してるならいいけどよ……」
前々から思ってたが、こいつってもしかしてヤンデレ化するんじゃないの?今のうちに距離取っておこうかな。
八幡「まあ気付かなかったのは俺だからな、悪かったよ。今日またLINEするっていうなら面倒だけどちゃんと返すから」
結衣「面倒とか言わないの!でも、うん……分かった」
そう言った由比ヶ浜は、しかし唇をとがらせて、プイッと視線を逸らしてしまう。
おいなんだよその仕草、明らかに納得してない上にちょっとキュンとしちゃっただろ。どう責任取ってくれる。
八幡「はあ……まだ何かあんのかよ」
結衣「も、もうないし!」
八幡「そう言うならもうちょっと表情なんとかしろよ」
結衣「え……顔に出てた?」
八幡「隠せてると思ってたのかよ……」
どれだけアホの子なんだこいつは。アホの神にでも愛されてるんじゃねえの?
結衣「と、とにかく!あたしのことはいいから昨日送ったのちゃんと読んでね!」
八幡「昨日?今日送るやつじゃなくて? 」
結衣「それもだけど昨日のも読んで!」
意味が分からず首を傾げてしまう。なんで昨日のに限定するんだ?
まあここで聞いたらまた話がこんがらがりそうだし、一応納得してるフリをしておくか。
八幡「分かったよ。昨日の読んで、ちゃんと返せばいいんだろ?」
結衣「うん!」
由比ヶ浜からはさっきまでの不満げな表情は消え、いつものように無駄に明るい笑顔が戻ってきた。
やっぱこいつには笑顔が似合う。
そういえば今年はこれで二人の顔も見納めだな。
二人の顔を見るため、バレないように視線を巡らす。
俺たちの会話に一切入らず真剣な表情で本を読んでいた雪ノ下。
俺の顔を不思議そうな表情で見つめ返す由比ヶ浜。
二人を見ていると色々なことを思い出してしまう。
今年はいろいろなことがあった。ありすぎた。奉仕部に入ってからが大変すぎてその前のことなんか忘れてきてるレベル。
だが俺が困ったとき、この二人はいつもそばにいた。
……困った原因って意味も含まれてるんだけどね?むしろこいつらいなけりゃ何も困らなかったかもしれない。
それでもいなければ良かったとは思えないあたり、俺はこのたった三人しかいない奉仕部という空間を意外と大切に思っているのかもしれないな。
雪乃「……私たちの顔を見ながら気持ち悪い笑顔を浮かべないでもらえるかしら」
結衣「あたしたちのこと見てにやけてたの!?ヒッキーマジキモい!」
……前言撤回。
やっぱり俺は一人でいる方が好きだ。
223 : ◆0NaiNtVZPPaZ - 2014/09/21 22:55:00.01 ZZs1TTFy0 86/305やっはろー!1です
いきなり始めた上に少なくてごめんなさい。
続きは明日か明後日かには書きます(予定)
短編に少し慣れてきたので、以前出していただいたアイデアなどを短編にしていく回数を増やしていこうと思います。
本編と短編で微妙に時系列的矛盾等が出るかもしれないですが、そこには目を瞑ってください!
それでは明日も仕事あるので寝ます。
おやすみなさい!
227 : ◆0NaiNtVZPPaZ - 2014/09/23 18:05:11.84 IXKsyCIh0 87/305やっはろー!
本編投下していくよー!
『冬の怪談スペシャル、〈リング〉今夜9時放送!』
夜、ソファーに寝転がってだらだらといじっていたケータイから視線を外し、季節はずれのCMに注目する。
ほう、この冬真っ只中にリングか。世界に逆らうその感じ、嫌いじゃないわ!
八幡「つってもなあ……」
リングは確かに面白いし、なにより怖かった。初めて見たときは俺も小町も完全にビビって、数日間一緒に寝ていたほどだ。
今にして思えば親父に殺されたかもしれないのによくそんなことが出来たと思う。貞子よりそっちの方がよっぽど恐怖だろ。
そんなリングはホラー映画の中ではかなりメジャーなこともあって、もう何回も放送されている。
そのせいで最初に感じたあの恐怖感、ドキドキ感を味わうことはなくなってしまった。それに貞子はネタにされてる感じがして恐怖の対象でなくなってしまっているように思える。
だから今日のリングは──
ピコン。
to:戸塚彩加
戸塚【今日リングやるね!(*´∀`*)】
戸塚【八幡はリング好き?】
八幡【大好きだ】
八幡【もちろん今日のも見る】
戸塚【やったー!】
戸塚【見終わったらリングの感想話し合おうね!】
八幡【ああ】
だから今日のリングは──見る。見る以外に選択肢などない。
戸塚が見るなら俺も見なければいけない。これ自然の摂理なり。
それにほら……何時間話しても飽きない奴がいるように、何回見たって飽きないお気に入りの映画っていうのもあるからな。
ちなみに何時間話しても飽きないのが誰か、なんてのは言うまでもないだろうが戸塚だ。
会話とLINEを同じにしてはいけない。だからあいつは含まれないはず。
そのはず、なんだ。
ピコンと再び通知音が鳴る。戸塚かと思い光速でケータイ画面を見るが、LINEは由比ヶ浜からだった。
LINE……由比ヶ浜……。
あっ、昨日のLINE見てねえ。
若干の焦りを感じながらLINEを開く。今来たLINEは、昨日のを見たかどうかの確認だった。
画面をスクロールさせ、急いで昨日のLINEを確認する。
to:由比ヶ浜結衣
結衣【ヒッキー】
結衣【明後日って空いてる?】
結衣【二人で買い物に行きたいんだけど……】
結衣【だめかな?】
結衣【前に言ってたゆきのんの誕生日プレゼントとか、色々買いたいの】
結衣【ヒッキー?】
結衣【見てる?】
結衣【またゆきのんとLINEしてるの?】
結衣【(`Д´)】
……と、こんな感じだった。
多分これ、かなり勇気出して打ったのだろう。そりゃ機嫌悪くなるわな……。
いっそのこと逃げてしまいたいような気になるが、そうすればさらに厄介なことになるのは目に見えている。
仕方ないか……。
八幡【明日なら空いてるぞ】
結衣【じゃあ明日行ってくれるの!?】
八幡【ああ】
結衣【やったー!】
結衣【でもヒッキーがこんなにあっさり行ってくれるなんて意外かも】
俺もまさか女子からの誘いをこんな簡単に受ける日が来るとは思っていなかった。
一応、ちゃんとした理由はあるけどな。
八幡【プレゼント買いに行くって約束したからな】
結衣【(*´▽`*)】
八幡【おやすみ】
結衣【このタイミングで寝ちゃうの!?】
由比ヶ浜からのブーイングにしかたなく返事をしてやる。
まったく、人が話を切ろうとしてるのにどんどん会話を続けていくとか中学時代の俺かよ。
八幡【いや寝ないけど】
八幡【戸塚と語るためにリング見なきゃいけないから】
結衣【彩ちゃん好きすぎるでしょ!】
結衣【ホントにここで終わり?】
八幡【明日会うだろ】
結衣【そうだけど……】
…………はあ。
八幡【リング始まるまでな】
結衣【うん!】
雪ノ下との長すぎるLINEは、時間を気にするという癖を俺につけてくれたらしい。
時計を見ればリングの始まる時間まであと5分を切っていた。
八幡【リング始まるからそろそろ切るぞ】
結衣【うー】
八幡【また明日な】
結衣【あ】
八幡【あ?】
結衣【明日の待ち合わせとか何も決めてなかった!!!】
……そういやそうだ。待ち合わせどころかどこ行くのかすら決めてねえじゃん。
八幡【場所とか時間とか好きに決めて良いから、あとでまとめてメールくれ】
結衣【メール!】
八幡【どうした】
結衣【LINE使い始めてからメール全然使ってなかったからさ】
結衣【なんだか懐かしくて(*^^*)】
八幡【そうだな】
LINEを使うとメールを使う意味はほとんどなくなる。
別に意志疎通をするだけならメールでもLINEでも構わない。ただメールにしかない緊張感というものもある。
俺の場合は緊張感より恐怖心の方が強かったし、中学卒業のあたりにはもう諦めに変わっていたが。
八幡【じゃあメールでよろしく】
結衣【うん!(・∀・)】
八幡【今度こそおやすみ】
結衣【おやすみ!】
結衣【またあとで!】
矛盾のある挨拶をしてからLINEを閉じる。ちょうどケータイを閉じたところで小町がリビングに入ってきた。
どうでもいいことだけど、ガラケー使ってた時の名残でケータイの画面を消灯することを『ケータイを閉じる』って言っちゃうんだが、スマホだとなんていうのが正解なんだろうか。
小町「お兄ちゃんがこの時間にリビングにいるなんて珍しいね。リング見るの?」
八幡「ああ、久々に見たくなってな。お前も?」
小町「うん、勉強の息抜きにね。もう何時間も勉強してたから」
八幡「ご苦労さん。コーヒーでも飲むか?」
小町「もちろん!お兄ちゃんの入れてくれるコーヒーは美味しいからね!あ、今の小町的にポイント高い!」
八幡「はいはい」
適当に受け流しながら来たる受験に向け努力している愛すべき妹のため、労いのコーヒーを入れる。ついでに自分のも入れておく。
テレビではすでにリングが始まっていた。まあ最初の数分を見逃したところで問題はないし、俺もコーヒー飲みながら見たい。
小町のには少し、俺のにはたっぷりと砂糖を入れてコーヒーは完成した。本当は千葉ッシュしたいがさすがにそこまでこだわっている時間はなさそうだ。
小町「もう始まっちゃってるよー」
八幡「今行く」
コーヒーを机の上に置き小町の横に座る。
久々に見るせいで少しだけ新鮮さを感じられるリングと、その中で活躍する貞子に期待しながら俺はようやく視聴を始める事ができたのだった。
236 : ◆0NaiNtVZPPaZ - 2014/09/23 20:09:39.44 enPnw3rf0 94/305今日はここまで。
ドロドロ難しいっす。話が思いつかないっす!
投下ペース遅れるけど許してほしいっす。
おやすみなさい!
241 : ◆0NaiNtVZPPaZ - 2014/09/28 22:45:19.26 NduKKgAQ0 95/305鎧武終わっちゃいましたね……。
ということで鎧武見たときに思いついたネタ投下します。
前回と似てるとか言わないでね。
「一年間ありがとう」
TV<ハナミチ、オンステージ!
TV<ナイトオブスーピアー!
八幡(鎧武も終わりか……)
八幡(最初こそ見た目とフルーツと脚本に不安しか感じなかったが)
八幡(振り返ってみると、一つでも欠けていたらこの感動は得られなかったように思える)
八幡(ただ一つ、不満があるとすれば)
八幡(紘太さんに金髪は似合わないな……)
八幡(演出上仕方ないことなんだろうが、俺としては今までの──)
ピコン
結衣【ねえヒッキー!】
結衣【ヒッキーは何色が好き?】
八幡【黒髪がいい】
八幡【間違えた、黒が好きだ】
結衣【そうだね、留美ちゃん黒髪だもんね】
八幡【なんでここでまたあいつが出てくるんだよ】
八幡【他にも黒髪のやついっぱいいるだろ】
八幡【おい】
八幡【せめて好きな色聞いてきた理由くらい説明していけよ!】
八幡【おい!】
八幡「うわあ……やべえ……どうしよう」
TV<ダマッテロヨクズ
244 : ◆itPh.0zEvU - 2014/09/28 23:01:06.36 NduKKgAQ0 97/305今日はこれだけです。
鎧武が終わって寂しいですが、来週から始まる仮面ライダーにもすぐに慣れることを信じます。
それではおやすみなさい。
252 : ◆itPh.0zEvU - 2014/10/04 22:03:23.20 ogNP3ubG0 98/305やっはろー!1です
ID合ってるかな?
本編に関してですが、ドロドロとか関係なく普通に進まない!更新できない!
でもあんまり間隔空けるとスレの事忘れられそうなんでまた短編投下します!
253 : ◆itPh.0zEvU - 2014/10/04 22:10:14.86 ogNP3ubG0 99/305どうやら僕の酉は戻らないようです……
「後に悔いると書いて」
ピコン
to:由比ヶ浜結衣
結衣【由比ヶ浜結衣が画像を送信しました】
八幡(由比ヶ浜から画像?サブレの写真かなにかか?)
『黒いブラジャーとパンティ』
八幡(!?)
結衣【優美子ー】
結衣【新しい下着買うときの参考になったかな(。・∀・。)ノ?】
結衣【あ、ちゃんと新品だからね!\(^o^)/】
八幡(俺と三浦のアカウント間違えてんのかよ、アホだろ。これもしかしたら俺が三浦みたいな返事すればこのまま騙せる気が……)
八幡(…………)
八幡【あーしはもっと明るいのが好きかも】
八幡【つか結衣が黒とか珍しくない?】
結衣【えへへ、他の人の意見を参考に(〃▽〃)】
八幡【ヒキオとか?】
結衣【なんで分かったの!?ヽ(゜ロ゜;)ノ】
八幡【俺がヒキオだからな】
結衣【え?】
八幡(なんでこれで騙されるんだろうかこいつは……将来が本当に不安)
結衣【写真消して】
八幡【急に顔文字なくすなよ】
八幡【怖いだろ】
結衣【消して】
八幡【っていうかそっちから消せるんじゃねえの?】
結衣【消せ】
八幡【はい】
八幡(ついに自分のキャラ壊してまで消させるようにしてきたぞあいつ……)
八幡(で、でも消す前に一回だけちゃんと見ても……いいよね?答えは聞いてない!)ポチッ
八幡(………………………………ふぅ)
八幡【消したぞ】
結衣【うん】
結衣【ごめんね、今日のことは忘れて】
八幡【ああ】
結衣【おやすみ】
八幡【おやすみ】
八幡(……………………)
八幡(うわぁぁぁぁあああ!!なんで写真見ちまったんだ俺!明日からどんな顔して由比ヶ浜に会えばいいんだよぉぉおおお!!)
──その日、俺は罪悪感から一睡も出来なかった……。
275 : ◆itPh.0zEvU - 2014/10/12 09:45:22.68 Nsy2zxs70 101/305やっはろー!
今日の夜に本編投下します!
日にち開けた割には量少ないけど許してね!
八幡「ひさびさだと怖えな……」
小町「う、うん……」
リングを見終わって最初に発した言葉はこれだった。
テレビでは来週の映画のCMが流れているが、俺たちは来週の映画より今やっていた映画についてしか頭が回らない。
リングなめてた、超怖い。
最初こそ俺も小町も談笑混じりに見ていたが、徐々にその余裕はなくなっていった。最後にはお互いの手を思いっきり握っていた。
というか今も握ってる。小町の手は汗ばんで湿っぽい。おそらく俺の手はもっとひどいことになっているだろう。
八幡「……お前これ見た後に、一人で勉強とかできんの?」
小町「今日はもう寝るつもりだったからいいけど……」
八幡「明日になれば恐怖は和らいでるだろ、きっと」
正直今の精神状態のまま一人になれとか言われたらそれこそ寝るしかできない。
小さな物音でも反応しちゃうし、視界の端にあるものが人に見えてびくついてしまう。
笑い声が聞こえると自分のことを笑われているように思うし、自分への視線が気になってしまう……あ、途中からぼっちの習性になってる。
小町「もし明日もまだ怖がってたら一緒にいてね!あ、今の小町的にポイント高い!」
八幡「すまん、明日は無理だ」
小町「え?」
八幡「実は由比ヶ浜と──」
小町「デート!?」
俺の言葉を遮って勝手に結論を出されてしまった。
違うからね?断じてデートではないからね?
小町「まだかまだかと思ってたけど……ようやくこの日が来たんだね……」
八幡「喜んでるとこ悪いが違うぞ」
小町「やっぱり?」
『知ってましたけど?』みたいな顔を小町がしていてイラッとする。でもそんな顔も可愛いなちくしょう。
小町「雪乃さんの誕生日プレゼント買いに行くんでしょ。さっき結衣さんからLINEで教えてもらったよ」
八幡「知ってんなら先に言ってくれ……まあいいや、その方が話早いし」
小町「?」
きょとんとしながら首を傾げる小町。一色あたりが同じ動作をしたらあざといだけなのだろうが、小町がやると可愛い。さすが俺の妹。
八幡「雪ノ下の誕生日プレゼントなんて何買えばいいか分からないし、明日の買い物に小町もついてきてくれないか?」
小町「はぁぁぁぁぁぁ…………」
小町わざわざ息を思いっきり吸い込んでから、肺の中の空気を全て吐き出す勢いでため息をついた。
なんでため息にそこまで全力だしちゃうんだよ。ちょっと疲れてるじゃんお前。
小町「お兄ちゃん」
八幡「なんだ?」
小町「……小町の言いたいこと、分かるよね?」
トーンが明らかに下がっている。超不機嫌。
たとえその声を聞いていなかったとしても小町から発せられるオーラを見ただけでその不機嫌度合いは分かってしまう。
どんだけオーラ出してんだよ。なに、そのままゴンさんにでもなっちゃうの?髪の毛超伸びちゃうの?
小町「今関係ないこと考えてるよね」
八幡「ソンナコトナイヨ」
なんで俺がゴンさんについて真剣に考えようとしたことがバレたんだ……!
小町「……で、どうなの」
八幡「……まあお前の言いたいことは分かる」
小町「分かってるならいいけど。それじゃあ小町の答えも分かるよね?」
ニコッと笑顔を向けてくる小町。その笑顔は天使のようにも見えるが実際は悪魔の微笑みだ。
悪魔は悪魔でも小悪魔だけどな。
八幡「でも来てくれよ。女子と二人で買い物とかアレだし」
小町「なんでこういう時だけヘタレちゃうかな……」
それは自分でも思う。それだけ今までのトラウマが心に深く刻まれているということなのだろう。なんせ俺が一番共感できるキャラってドロロ君だからね。
小町「こういう時に緊張しちゃうのってさ、何かを期待してるからじゃない?」
八幡「期待?はっ、このフられ選手権優勝者の俺が女子にそんなことを期待するわけないだろ」
小町「今すごく悲しいこと言われた気がするけど……」
これは悲しいことなんかじゃない。ただの事実だ。まあ高校に入ってからはそもそも告白もしなくなったから選手権引退……いや修学旅行でフられてたな俺。なんだよまだまだ現役じゃねえか。まったく嬉しくない。
小町「とにかく小町は行けないよ。結衣さんの邪魔したくないし、勉強もしなきゃいけないし」
八幡「それ言われたら何も言えねえな……」
忘れていたが小町は受験生だった。その小町に勉強のためと言われてしまえばもう何も頼めない。むしろ頼みごとされまくるまである。プリン買ってきてねみたいな感じで。
八幡「はあ……分かった、一人で行ってくる」
小町「なんでそんなにテンション低いかなぁ。心の底から嫌なわけでもないでしょ?」
八幡「いやまあ……嫌ってわけじゃねえよ」
小町「なら楽しんできちゃいなよ。お兄ちゃんが女の子と遊ぶことを素直に楽しめるようになれば小町は嬉しいんだから。あ、今の小町的にポイント高い!」
その言葉をきっかけにしたように小町は立ち上がった。会話はもう終わりということだろう。
小町「じゃあもう寝るね。明日遅れたりしたらだめだよ!遅れたら一週間口きいてあげないからね!」
八幡「分かった、神に誓って遅刻しない」
小町「よろしい!おやすみー」
八幡「ああ、おやすみ」
俺も寝よう。このままここにいても怖いだけだ。
通る道の電気を片っ端からつけて部屋へと帰還する。無駄に研ぎ澄まされた五感のせいで視界の端の物やちょっとした音に異常に反応してしまう。
懐かしいな、この感覚。もう二度と味わいたくねえ……。
八幡「やっと着いた……」
リビングからここまで、急いで歩けば十秒とかからない。だが今日はその十秒がとても長く感じる。
部屋の扉を開けようとした時、ポケットに入れていたケータイから変な歌が流れてくる。何事かと思ったがなんのことはない、ただメールが届いただけだった。
差出人など見なくても分かる。このタイミングで送ってきたということはあいつもリングを見ていたのかもしれない。
送り返す文面は「了解」の二文字でいいだろうか。
どんな返信なら久しぶりのメールで緊張していることを隠せるかを真剣に検討しながらドアノブを捻る。
ピコンと音がしたのは、ちょうどその時だった。
八幡「……まさか」
扉を開けて即座に電気をつける。そのままベッドに腰掛け、ケータイの画面を見る。
【雪ノ下雪乃】
頭の中が疑問で覆われる。イメージとしては俺の頭の上にいくつも?マークが出ている感じだ。
今日はなんだ?小町か?小町が理由なのか?
由比ヶ浜からのメール確認だけ先に済ましてからLINEを開く。返信は結局『了解』だけで終わらせた。
to:雪ノ下雪乃
雪乃【比企谷君】
雪乃【起きているかしら?】
八幡【ああ】
八幡【まだギリギリ起きてる】
八幡【どうかしたか?】
雪乃【特に何かあったわけではないわ】
何かあったわけでもないのに雪ノ下が俺にLINE?なにそれ超怖い。
簡単に訳せば「あなたの声が聞きたくて電話したの」的なやつだろ。そんなもの雪ノ下がやっても違和感と恐怖心しか生まれない。
戸塚にやってもらえれば……いや、それも充分怖いな。俺が戸塚のご両親にご挨拶をしに行ってしまいそうで怖い。
八幡【用もないのにLINEしてくるとか俺のこと好きなの?】
雪乃【気持ち悪い】
八幡【一言で終わらせるな】
八幡【冗談に決まってるだろ】
あらゆる言葉を使い尽くして表現した言葉よりも、気持ちを込めたありきたりな一言の方が相手によく伝わることがある。
まさに今みたいにな。だいぶ心削られたわ。
八幡【じゃあなんでLINEしてきたんだよ】
雪乃【あなたがきちんとした生活を送っているか心配してLINEしてあげたのよ】
……不気味だ。雪ノ下らしくない。
確かに以前、周りの人間に幻想を押し付けるのはやめようと決めた。ただそれにだって流石に限度はある。
例えるなら仮面ライダーがプリキュアに変身するような感覚。違和感がすごすぎて不気味に感じる。でもBlu-ray買っちゃいそう。
ふと、俺の中で一つの仮説が出来上がる。雪ノ下と以前話したことと今の謎のLINEを照らし合わせれば、自ずと導き出される答えだ。可能性は低くない。
八幡【なあ】
雪乃【なにかしら】
八幡【もしかしてリングが怖くて寝れないのか?】
一分二分と間を空け、雪ノ下からの返答がきた。
雪乃【根拠のない妄言はやめてくれないかしら確かにリングは有名なだけあってそこそこのスリル感は得られたけれどそれによってなぜ私が寝られなくなるほど怖がったという結論に至るのかしらあまり適当なことを言っていると名誉毀損とセクハラで檻の中に入れられるわよ】
八幡【分かったから句読点くらい付けろ】
絶対怖かったんだな……。仕方ない、今回はあえて言及せず、少しくらいなら会話にも付き合ってやろう。
……べ、別に今のまま寝たら悪夢見そうで怖いとかじゃねえし。お、怯えてなんかねえし!
316 : ◆itPh.0zEvU - 2014/11/02 20:12:32.08 ExE2Y0YK0 111/305やっはろー!1です
かなりの間、更新出来ませんでしたがモンハンに夢中になって書き溜めとか全然ないです。ごめんなさい。
ですが更新しなさすぎるのもアレなんで今日投下します!
八幡【で?】
雪乃【で?とはどういう意味かしら】
雪乃【主語どころか述語すらないなんてさすがは万年国語三位ね】
八幡【お前俺より国語の成績下の奴全員敵に回したぞ】
雪乃【特に問題はないわ】
雪乃【勝とうとするならともかく、私のことを引きずりおろすことでしか勝負しようと思えない人間なんて恐れるに足らないもの】
八幡【言い切ったな】
八幡【別に相手を引きずりおろすなんて普通だろ】
八幡【世の中の大半のやつは足を引っ張りあいながら生きてんだから】
雪乃【その点あなたはいいわね】
雪乃【大半の中から当たり前のように省かれているもの】
八幡【ああ全くだ】
八幡【つまり誰にも足を引っ張られることなく我が道を行けるぼっちこそもっとも優れているということだ】
雪乃【なぜ間違いだらけの理論をそこまで堂々と展開できるのかしら……】
八幡【俺はこの理論を正しいと思ってるからな】
八幡【っていうかお前だって似たようなもんだろ】
雪乃【私は普通にしているだけで周りが敵になっていくのよ】
八幡【だろうな】
八幡【俺達最初は何の話してたっけ?】
本当は最初に何の話をしてたかなんてすぐに分かる。会話を遡ればいいだけだ。
だが脱線しながら進み続ける暴走列車のような会話を終わらせるために、わざと雪ノ下に問いかける。
俺の意図を汲み取ったのか、雪ノ下はもう脱線するようなことはなく、ちゃんと話を最初に戻した。
雪乃【あなたが私に主語述語の抜けた質問をしてきたのでしょう?】
八幡【そっから脱線させたのお前だろ】
八幡【まあいいや、また脱線しちまう】
八幡【で?の意味はお前が俺の生活を心配したのは分かったけどそれで何話すんだ?を略してで?ってことだ】
雪乃【それはもう略したとは言わないでしょう】
雪乃【何を話すかについてだけれど】
雪乃【その】
雪乃【最近由比ヶ浜さんとはどうなのかしら】
八幡【は?】
雪乃【やっぱり今の質問はなかったことにしてもらえるかしら】
雪乃【違う会話をしましょう】
八幡【別にいいけどよ……】
雪乃【けどなにかしら】
八幡【なんでもない】
八幡【それで、他に何の話するんだ?】
当たり前のように会話の続きを求める自分に少し驚く。まあリングが怖くて寝たくないだけなんだけど……お、俺じゃなくて雪ノ下がな!
それでも、映画が怖かったからなんて理由で人と会話を続けようだなんて俺も随分変わった気がする。
まあいい。俺が今頭を使うべきは俺の変化についてじゃない。
雪乃【あなたのトイザらスへのこだわりはどうでもいいのよ】
雪乃【ところで小町さんの勉強はどんな具合なのかしら?】
……また会話が分裂し始めたLINEをどう終わらせるかが、俺が悩まなければならない最優先事項だ。
これ絶対また終わらねえよ……。
『へいジョニー、今何時だい?』
『おいおいマイケル、そこに時計があるじゃないか。どうしてわざわざ僕に聞くんだい?』
『本当の時間を知りたくないからに決まってるじゃないか』
『なるほどな』
『ハッハッハ!!』
……俺の頭の中で第四の人格マイケルと第五の人格ジョニーが現実から目を背けるためにアメリカンジョークもどきを繰り広げている。二人ともセンスねえな。
え?第二、第三の人格?あいつらなら中学校卒業と一緒に心の檻に閉じ込めた。
八幡「今は……四時か」
今、『え、まだ四時?』って思った自分がいるのが怖い。
今までと比べればそんなに突出して遅いわけでもないが、実は今日が一番やばかったりする。
俺の場合、明日由比ヶ浜と約束があるからという意味でやばいのもある。だがもっとやばいのは眠気だ。
俺も雪ノ下もここ最近ずっと夜遅く……というかほぼ朝まで起きている。そんな生活が数日続けば眠気はひどくなっていく一方だ。そのせいで俺も雪ノ下も誤字が多くなってきているし。
仕方ない。人との繋がりを切ることにおいては他の追随を許さない俺が、いつもの通りスパッとLINEを終わらせてやろう。超眠いし。
八幡【雪ノ下、時間見てみろ】
華麗な話術で会話をぶった斬る。トイザらスの話を終えてしまうのは惜しいが、どうせこいつとトイザらスのことで盛り上がるとは思えない。
もうここで終わると思うと途端に今まで以上に眠気が襲ってくる。
まぶたが重い……気を抜いたら寝そう……。
雪乃【前にも言ったけれど】
雪乃【あなたと話していると本当に時間が早く過ぎるわね】
八幡【確かに前にも言ってたな】
雪乃【なぜなのかしら】
八幡【知らん】
雪ノ下への返事も若干適当になってきている。それほどまでに眠い。
雪乃【推測だけれど】
なんか……また返事来てる……。眠いけど返すか……。
雪乃【あなたが今まで話してきた男子とは違って自然体で話してくれるからでしょうね】
既読スルー……してもいいよな……いや……一応返しとくか……。
雪乃【私に話しかけてくる男の人は、私のことを好きだったり特別視していたから】
雪乃【普通に接してくれるあなたとの会話は新鮮で楽しく感じるのよ】
雪乃【眠気で変なことを言ってしまったわ】
雪乃【今のは忘れてもらえるかしら】
雪乃【おやすみなさい】
雪ノ下からの連続投稿に対して、俺はスルーをして寝てしまえば良かったと思う。
だが眠気が限界を越えると体どころか頭まで思った通りに動いてくれなくなるらしい。
俺は返さなくてもいいLINEにほぼ無意識のまま返事をしてしまった。
残念なことにどんな文面を送ったかは……覚えていない。
325 : ◆itPh.0zEvU - 2014/11/03 00:11:10.56 Pm09dw8n0 118/305今日はここまでです。
モンハンはまだ上位だしそろそろポケモンも発売される上、これから仕事も忙しくなりそうなので年内の完結は難しいと思います……。
それでもストーリーはちゃんと完結させます。
おやすみなさい!
328 : ◆itPh.0zEvU - 2014/11/03 22:05:41.21 iB6ldOOb0 119/305やっはろー
ほんのちょっぴり投下します
小町「お兄ちゃん起きて」
小町が俺を呼ぶ声がする。俺の意識がまだ夢の中にあるせいかその声はとても遠く感じる。
小町「お兄ちゃん!起きて!」
小町の声が大きくなった。いつもならこの段階で渋々起きるところだが、今日はまだ布団から出たくない。もう少しこの微睡みの天国を……。
小町「起きなさいお兄ちゃん!!」
八幡「がはっ!?」
腹部に突然の衝撃!いてぇ!
八幡「げほっ……こ、小町……?」
どうやら今の衝撃は小町の拳が俺の腹にジャストミートしたのが原因のようだ。鳩尾に入らなくてよかった。
しかし珍しい。小町はどんなにキレても直接暴力に訴えかけたりはしないのに……そこまでして俺を起こさなきゃいけなかったのか?
小町「……お兄ちゃん、小町昨日言ったよね?遅れたらダメだよって」
小町からまた不機嫌オーラが見える。だがそれはもう昨日の比ではなく、小町ポイントがどんどん下がっていくのが手に取るように分かってしまう。
……いや待て。小町のことも大切だが今は……というか今日はそれよりも大切な事があったはずだ。
八幡「……今何時だ?」
小町は顎をくいっとして、ベッド脇に置いてある時計を俺自身で見るよう促した。
時計を見ると時間は遅刻するかしないかの瀬戸際。まだ遅刻と決まったわけではないが……それでもかなり危うい。
八幡「小町、謝罪とか土下座は帰ってきてからお前の気の済むまでするから、とりあえず今は俺の着替えを用意してくれ」
小町が服の用意、その間に俺が歯を磨いたり顔を洗ったりする。そうすれば俺が一人でやるよりは数分か時間を短縮できるだろう。
小町もそれは分かったらしく、俺の服を引っ張り出しながら組み合わせを色々と考えてくれ始めた。
返事すらなく、終始無言でだがな。
……口すら聞きたくないってことか、マジでキレてるな。生徒会選挙の時よりもかなりひどいキレ方な気がする。
だが、言い方は悪くなるが『由比ヶ浜との待ち合わせに寝坊した』程度でキレるか?
もちろんこの件に関しては怒って当然なのは分かる。俺が全面的に悪いのだから、さっき殴られたことだってどうこう言うつもりはない。
それでも小町がここまでキレるには理由が少し小さい気もする。
つまり、今回の由比ヶ浜との買い物には何か他にあるのか……?
いや今はそんなことを考えている場合じゃなかった。とっとと身なりを整えないと。
小町の助けもあり、驚くべき速さで身支度を終えた俺は当然朝飯など食べさせてもらえる訳もなくせっせと靴を履いていた。
小町「ねえお兄ちゃん」
小町がやっと口を開いてくれた。嬉しさのあまり靴を放り投げそうになったが、声からして機嫌が良くなったわけでもなさそうなので自重しておく。
小町「昨日、雪乃さんに何かした?」
八幡「雪ノ下に?別に何も……あっ」
一つだけ心当たりがあった。昨日……まあほとんど今日みたいなもんだが、その時にしたLINEで俺は最後何かを返したはずだ。
さっきケータイを確認したが、画面を付けっぱなしで寝落ちしたため電池は0になっていて内容を確認することは出来なかった。
八幡「昨日LINEで寝ぼけて訳の分からない返信をした可能性がなくもない」
小町「訳の分からない……?まあ酷いこと言ったとかじゃないなら別にどうでもいいけど」
言葉の節々からトゲを感じる……。やっぱりまだまだ機嫌は良くなりそうにない。
八幡「酷いこととかねぇ……寝ぼけて思ったままのことを返したと思うし、もしかしたら……」
小町「…………」
八幡「い、いや冗談だ。どうしても気になるなら雪ノ下に聞いといてくれ」
小町「うん」
小町のぶっきらぼうな返事は、俺のHPゲージをどんどん削っていくぜ……。こりゃ、絶対に由比ヶ浜との約束に遅れるわけにはいかないな。
八幡「行ってきます」
小町「……行ってらっしゃい。間に合わなかったら本当に口利かないからね」
八幡「安心しろ。死んでも間に合わせる」
かっこよく決めながら扉を開ける。顔に吹き付ける風がかなり辛いが今はそんなこと言っていられない。
マフラーを口元まで引き上げ足を一歩踏み出す。
そのまま駅に向かって全力で走る。いつもより体が軽く感じるのは、由比ヶ浜との買い物を楽しみにしている自分がいるからかもしれない。
──たまにはこういうラブコメみたいなことがあってもいいかもしれない。
そんな想いが心のどこかで生まれていた。
俺にラブコメなど似合わないというのに。
俺の青春ラブコメが間違っていないなど……有り得ないというのに。
332 : ◆itPh.0zEvU - 2014/11/03 22:17:39.14 iB6ldOOb0 123/305今日はここまでです。
このあと本当どういう展開にしようかしら……。
それはさておきおやすみなさい。
371 : ◆itPh.0zEvU - 2014/11/17 21:41:33.32 vkbJfAeG0 124/305生存報告ついでに短編投下します!
「小町、オンステージ!」
小町(お兄ちゃんが最近モテるようになって小町としては嬉しいんだけど……)
小町(うーん……なんだろう、胸がモヤモヤするなぁ……)
小町(寂しい……のかな。休日に遊びに行くことも増えたし、家にいても誰かとLINEして構ってくれないし……)
小町(もしお兄ちゃんが誰かと結婚して家から出て行ったりしたらもっと……)
小町(結婚かぁ……)
小町(お兄ちゃんは専業主夫希望だし、将来は誰かと結婚するんだよね)
小町(お姉ちゃん候補はいっぱいいるけど……お兄ちゃん捻くれすぎてるし)
小町(も、もし。もしお兄ちゃんが捻くれすぎて誰とも結婚できなかったら……)
小町(その時は小町が……///)
小町「んんっ……こほん」
小町「おかえりなさい八幡。ご飯にする?お風呂にする?それとも……」
八幡「…………」
小町「こ・ま……」
八幡「…………」
小町「ち……違うの!こ、これは……そう!シュミレーションだよ!未来のシュミレー……この言い訳じゃ逆効果だ!?」
八幡「ナニモ、ミテナイ、カラ」
小町「お兄ちゃん!?宇宙人みたいな話し方になってるよ!……ってどこ行くのお兄ちゃん!お兄ちゃーん!!」
翌日、小町の送った【お兄ちゃんに恥ずかしいとこ見られちゃいました///】というLINEのせいで、第1回奉仕部会議(会議するとは言ってない)が行われたことは言うまでもない。
「相模・オブ・フューチャー」
八幡(放課後の教室)
八幡(由比ヶ浜と葉山達男子勢が部活に行き、今教室にいるトップカースト集団は三浦と海老名さんしかいない)
八幡(え?俺がいる理由?授業中にアレなこと考えてたから前屈みで時間を潰さなきゃいけないんだよ言わせんな恥ずかしい)
八幡(俺のことはともかく。てっきりトップカースト二人で話すのかと思いきや、そこに意外な人物が入ってきていた)
相模「ウチもそう思うかなー。三浦さんはどう?」
八幡(体育祭後に何があったのか知らないが、なんと相模がトップカーストに混じって会話していた)
八幡(だが意見を同調させてる上に三浦にも意見を求めるあたり、まだ馴染んでるとは言えなさそうだ……)
三浦「…………」チラッチラッ
八幡(……?)
八幡(三浦が俺をチラチラ見てる?俺についての会話でもしてるのか?)
八幡(それはないか。相模がいる前で俺の話をするわけがないし、そもそも俺について話すことなんて──)
海老名「やっぱり私ははち×はやだと思うの!優美子はどう!?」
相模「三浦さんははや×はちだよね!」
三浦(ヒキオ助けろぉぉおおお!!)ギロッ!!
八幡(なんつー話してんの!?つーか相模と海老名さんいつの間にか腐女子仲間になってんだ!)
相模「まあどっちにしても二人は未来で結ばれるよね!」
海老名「ぐ腐腐……。見えた!はち×はやの終着駅!」
八幡「……ぶ、部活行カナキャー」
三浦「この二人をあーしに任せるなし!ちょ、待っ、ヒキオぉぉおおお!!」
ちなみに翌日、三浦は謎の体調不良で学校を休んだ。
全員、三浦に合掌。
375 : ◆itPh.0zEvU - 2014/11/17 21:54:56.43 vkbJfAeG0 127/305今日はここまでです
みなさんに質問なんですがエロいことを書くときの文章力って、どこで養ったらいいですかね?
前回の陽乃メインのやつとか続き書きたいとたまに思うんですけど、未経験なんで表現出来る気がしないんです……
というわけでおやすみなさい!
423 : ◆itPh.0zEvU - 2014/11/24 23:02:16.63 nCMkrd890 128/305やっはろー!1です
みなさんのおかげでG級行けました!次はポケモンにはまる予定です!
なので更新は遅くなる予定ですが、放置するとすごいことになるのでせめて週一で短編くらいは投下できるようにしていきたいです。多分出来ないです。
というわけで短編投下します。
「いないいないばあ」
八幡(とある休日、外で偶然にも由比ヶ浜と出会った俺は少しだけ買い物に付き合わされていた)
結衣「見て見て!前の人が抱っこしてる赤ちゃん超可愛いくない?」
八幡「あ?ああそうだな。つーか赤ちゃんお前のことガン見してるぞ」
結衣「ホントだ……や、やっはろー」
赤ちゃん「キャッキャッ」
結衣「可愛い……!いないいないばあ!」
赤ちゃん「キャッキャッ」
結衣「ばあ!べろべろー!ばあー!」
赤ちゃん「キャッキャッ」
結衣「いいなー、赤ちゃん可愛いなー……」
八幡「由比ヶ浜、友達と遊んでるときに今の顔しない方がいいぞ」
結衣「へ?なんで?」
八幡「いや……あの変顔、本気出し過ぎてその……かなり凄いことになってたから」
結衣「……っ!!!い、今の顔忘れて!全部!!」
八幡「ど、努力する」
結衣「うぅ……ヒッキーにあんな顔見られるなんて……」ショボン
八幡「えーと、まああれだ。別に今みたいな変顔で多少マイナスがあったとしても、いつもはプラスなんだから気にすることないんじゃねえの?」
結衣「それって……遠回しにいつもは可愛いって言ってくれてる?」
八幡「……解釈の方法は任せる」
結衣「……///」
八幡「……///」
赤ちゃん「……ペッ」
426 : ◆itPh.0zEvU - 2014/11/24 23:05:37.25 nCMkrd890 130/305働きたくない……。
おやすみなさい……。
489 : ◆itPh.0zEvU - 2014/12/09 22:31:47.65 zEOi7xEI0 131/305やっはろー!1です
生存報告と予告です。
思ったより書けてないけど流石にそろそろ本編を進めたいので今週末にちょびっと本編を投下します。
あと全然話進められてないお詫びに短編投下します。
「残酷な現実」
八幡(なんで俺はせっかくの休日に奉仕部メンバーで服買いに来てるんだ……)
結衣「見て見てゆきのん!このカーディガン可愛くない?」
雪乃「そうね」
八幡(店の外で待ってるが……あいつら入口近くで話してるから、騒がしい声が聞こえて退屈はしないで済むか)
八幡(ってあれ?あの二人の近くにあるのってもしかして……)
結衣「あ!これ見てゆきのん!Twitterで人気のタートルネック!」
雪乃「……なぜ胸元に隙間があるのかしら」
結衣「そういえばそうだね。こんなとこに穴があっても胸が見えちゃうだけなのに……」
八幡(由比ヶ浜、お願いだから気づいてあげて。お前と自分の胸元を交互に見てる雪ノ下に気づいてあげて)
結衣「そうだ、折角だし試着してみようよ!」
雪乃「……え?」
結衣「ほらあそこの試着室開いたし着てみようよ!」
八幡(由比ヶ浜ァ!お前には優しさがないのかよォ!)
雪乃「……いいわ、行きましょう。そして……あなたはその目で、しっかりと見届けなさい。この間違った世界の現実を」
結衣「へ?」
八幡「雪ノ下」
雪乃「なにかしら比企谷君。わざわざここまで来るなんて」
八幡「俺にできることは何もないが……それでも頑張ってくれ」
雪乃「ええ……そのつもりよ」
結衣「な、なんで急にいい雰囲気になってるの?それに服を着てみるだけなのに空気が重いっていうか……」
雪乃「気にしないでいいわ。……行きましょうか、由比ヶ浜さん」
八幡「行ってこい由比ヶ浜。雪ノ下の犠牲を……無駄にしないようにな」
結衣「だから空気が重いって!あ、待ってよゆきのん!なんでそんなに怖い顔して試着室向かうの!?」
八幡「…………」
八幡(俺はきっと忘れない。残酷な現実と戦った、雪ノ下雪乃という勇敢な戦士の姿を)
八幡(そして……)
八幡(俺はきっと忘れられない。あのタートルネックを着た、由比ヶ浜結衣という一種の兵器の姿を)
491 : ◆itPh.0zEvU - 2014/12/09 22:45:06.05 zEOi7xEI0 133/305おやすみなさい
499 : ◆itPh.0zEvU - 2014/12/14 14:10:25.79 u8DZgtzl0 134/305やっはろー!1です。
これから久々に本編投下します。
あ、ちなみに>>331までで
5こうして彼らは知らない内に踏み外す 終
となります。
続き
雪乃「LINE?」結衣「そう!みんなでやろうよ!」【後編】