さやか「パンはパンでも食べられないパンはな~んだ?」
杏子「フライパンだろ?」
さやか「………………」
杏子「?」
さやか「……本当にそう思う?」
杏子「あぁ?」
さやか「試してみてよ。本当に食べられないか……好きでしょ?食べるの。」
杏子「何言ってんだ、てめぇ……?そんなもん無理に決まってんだろ?」
さやか「……………付き合ってあげる。」
杏子「なに?」
さやか「もしアンタがフライパンを食べられたら、付き合ってあげる。私が……アンタと……。」
杏子「なん………だと……?」
さやか「……どうする?やる?……それとも」
杏子「まっ、待てよ!何言ってんだよ、いきなりっ!!」
杏子「フライパンだぞ!?大体、なんでお前と付き合うことになんだっ!?」
さやか「だってこのナゾナゾってさ昔から定番みたいになってるけど………誰か試したの?」
杏子「そ、それは……試したことないだろ、普通」
さやか「でしょ?誰も試してないのにどうして答えがフライパンになんの?」
杏子「……試さなくても分かるだろ、食えないことくらい。」
さやか「そうかもね。だからこれは実験。」
杏子「……実験、だと?」
さやか「そう……ただの実験。」
さやか「だから協力したくないなら断っていいわ。」
杏子「ハッ、誰がそんなくだらないことに――」
さやか「ただし――」
杏子「あん?」
さやか「ただし、ここで断れば私はアンタに二度とこの話はしない……。」
さやか「……この意味分かるでしょ?」
杏子「…………」
杏子「……あんだよ……まるでアタシがお前と付き合いと思ってるみたいじゃんか。」
さやか「…………」
杏子「ぐっ……」
さやか「…………ちなみに私はレズじゃないから。」
杏子「なにっ!?」
杏子(そりゃそうか……あのボウヤがいるもんな。……つまり)
杏子(さやかをモノにするチャンスは今しかないってことか!)
さやか「…………」
杏子「……………………るよ」
杏子「食ってやるよ!フライパンをよぉ!!!」
さやか「そっか」
杏子「クソッたれ!!」
さやか「そうだなぁ……うん!期日は1週間!」
杏子「期日……?あんだよ、それ……」
さやか「いつまでもダラダラやってもしょうがないでしょ?だから1週間」
さやか「フライパンはどの物でもいいわ。どんな手を使っても構わない。」
さやか「ただし、実験は必ず私の目の前で行うこと。判定は私が下す。あっ、ズルはなしね」
さやか「分かった?」
杏子「……」こく
さやか「じゃあ明日からさっそく始めようか……」
杏子「ああ」
さやか「私は学校あるし、魔女退治もあるから……アンタは準備でもしておいて。」
さやか「時間ができたらテレパシーで呼ぶから……」
杏子「………分かった。」
さやか「あ~、楽しみだなぁ!食べられるといいねっ?」にこ
杏子「…………そうだな」
次の日―昼―
杏子「はぁ、今になって後悔してきた……」
杏子「フライパンだぞ?いくらなんでも食えるかよ……」
杏子「はぁ」
杏子「ま、一応フライパン用意してみたがよ……」ちら
フライパン「」
杏子「………無理だろ」
杏子「っああもうっ!大体なんでアタシがっ…………!」
―― さやか『付き合ってあげる』
杏子「………くそっ!」
杏子「…………とりあえず昼飯抜くか」
放課後―公園―
さやか「おっ、きたわね!」
杏子「……なんでそいつがいんだよ?」
まどか「杏子ちゃん……」
さやか「いやぁ、まどかにこの話したらさ是非見たいって言うんだよ。いいでしょ?」
まどか「ち、違うよ!止めにきたんだよ!ね、ねえ杏子ちゃん、無理しなくていいんだよ?やめなよ……?」
杏子「ちっ、てめぇには分かんねーよ……。やんなきゃなんねーんだよ。」
まどか「そんなっ……杏子ちゃん」
さやか「ま、いいじゃん。やる気あるんだからさ……それでフライパンは?」
杏子「………」すっ
さやか「へぇ、ゴツイの持ってきたわねぇ。」
まどか「杏子ちゃん……」
杏子「……」
さやか「それにしても予想外だわ。私てっきりもっと小さくて可愛いやつにすると思った。」
杏子「あ!?そ、そんなのあんのか!?っていうか小さくていいのかよ!?」
さやか「いいよ、サイズの決まりはないから。ま、その黒くて大きいものを食べれたら問題ないでしょ?」
杏子「ちっ!」
さやか「それで?一体、どう食べるの?」
杏子「……塩をつけて食う。」
さやか「ぶふぅっ!し、塩って、くく、あんた、あははっ!」
まどか「……塩だけで食べるの?」
杏子「ああ、塩は結構あうからな。醤油と迷ったんだ……。」
まどか「………そ、そうなんだ」
さやか「じゃ、ぷっ、準備はいい?始めるわよ?」
杏子「……っふぅ、ああ、始めてくれ。」がし
まどか(えっ、あのまま食べるの?)
さやか「それじゃあ……始め!!」
杏子「ごくっ」塩ぱっぱ
杏子「いくぜ……うぉおおおおおおおっ!!」ぐわぁ
杏子「がぶっ!!」ガキィィイイン
杏子「ってぇえ!!は、歯がっ!!うっ」ぼろっ
さやか(……普通いきなり噛みつかないでしょ。ぷっ)
まどか「きょ、杏子ちゃん!!」
杏子「くそぉ!いてぇ!ぐすっ、歯、折れ、くぅ」うるうる
さやか「……………えっ?終わり?」
杏子「えっ?」
さやか「いや、もういかないの?」
杏子「だ、だって。もう、痛い……ぐすっ」
さやか「……あ、そう。いいわよ、別に。」
まどか「ちょ、さやかちゃん!そんな言い方っ、ないよ……。」
さやか「だから別にいいって。貴重な一日目をあっけなく終わらせても……」
さやか「私との契約を諦めても……ね。」
杏子「!!」びく
まどか「さっ、さやかちゃん!!」
杏子「……黙ってろまどかっ!!」
まどか「えっ!?」びくっ
杏子「黙ってろよ……これはアタシの勝負だ。口だすな……!」
まどか「だ、ダメだよ杏子ちゃん!そんな、もう歯がボロボロなんだよっ!?」
杏子「………」ぐっ
まどか「杏子ちゃん!!」
さやか「……ふーん。続けるんだぁ!頑張れ!ナゾナゾの謎解きのために!!」
杏子(…………くそっ!歯が痛い……やっぱ変身してないとこうも違うのか……。)
杏子「……見てろよ、さやか?」
さやか「うん」
杏子(まどかの言う通りだ……もうやめてぇ……)
杏子(歯も痛いし、血も出てる…………大体フライパンなんて食えるか!)
杏子(―――けど)
杏子(諦められるかっ!!さやかはアタシのモンなんだ!!誰にも渡さない!!!)
杏子「うぉおおおおおおおおっ!!!」ぐわぁあ
―――――
――――
さやか「………やっぱりダメか」
まどか「きょ、杏子ちゃん!しっかりして!!杏子ちゃん!」
杏子「………」ぐったり
まどか「杏子ちゃん!!」
さやか「歯が四本折れて、他はぐらぐら……おまけに気絶しちゃったし。」
さやか「よっぽど必死だったのか……うんうん。」
まどか「もう!杏子ちゃんの心配してよ!!」
さやか「わ、分かってるって!そんなに怒んないでよ、ははっ」
さやか「私の魔法で回復させる。……けど、残っている歯は治るけど、折れたのは無理かな。」
まどか「そんな……」
さやか「とにかく……回復させるね?」パァアアア
まどか「う、うん」
さやか「………」シュゥウウウウウ
杏子「……うっ」パァアアアア
まどか「………ごくっ」
さやか「…………」シュゥウウウ
さやか「……………ふぅ。もう大丈夫。」シュゥウウ
まどか「ほっ」
杏子「……うっ、……あれ?アタシ……。」
まどか「大丈夫!?」
杏子「っつぅ、歯が……。」
さやか「1日目は失敗ね……フライパンに歯形すらついてない。」
まどか「さやかちゃん!今はそれどころじゃ……」
杏子「くそっ!」ドコッ
まどか「杏子ちゃん!?」
杏子「さやか……明日は、明日はまかせてくれ。」
さやか「期待してるよ。……じゃ、私帰るから。また明日」すたすた
杏子「っ、さやかぁ!!」
さやか「ん?」くる
杏子「歯……治してくれて、アリガトな」にっ
さやか「………いいよ」
まどか「行っちゃった……さやかちゃん」
杏子「………まどか!頼みがあるっ!!」
まどか「ひっ!?な、なにかな杏子ちゃん?」
杏子「あ、アタシにフライパンを食べる方法を一緒に考えてくれっ!!」
まどか「な、何言ってるの杏子ちゃん……?」
杏子「アタシは頭あんま良くないしな……知恵を貸してくんないか?」
まどか「そうじゃないよ!!まだやるの!?」
杏子「…………」
杏子「当たり前だろ?」
杏子「アタシは必ずフライパンを食べる!!」
杏子(さやかと付き合うために……!!!)ぐっ
まどか「…………」
杏子「…………」じっ
まどか「………」
まどか「……………食べやすいように細かくしたら、どうかな?」
杏子「ま、まどかぁ」ぱぁ
杏子「アリガトな、へへっ」
まどか「む、無理はダメだからね!?約束!」
杏子「ああ、約束だ!」にっ
まどか「うん!」にこ
杏子「それで!?細かくするってどーすんだ!?」
次の日―公園―
さやか「おまたせー!」たたっ
まどか「遅れてごめんね!」たたっ
杏子「おう、待ってたぜ!」にっ
さやか「おっ、自信満々のようだねぇ!楽しみだ!」
さやか「じゃ、さっそくやってもらうよ?」
杏子「ああ。」ちらっ
まどか「……」こく
杏子「……ん」こく
杏子「……アタシが今日、用意したフライパンはこれだぁ!!」ばっ
さやか「……………これは?」
杏子「これはなぁ、フライパンを食べやすく粉々に砕いたものだ!!」
杏子(へへっ、まどかの指摘通りアタシはフライパンの形にこだわりすぎだったみたいだ)
杏子(けど、粉々にすれば食べやすくなる!……今回はもらったぜ!!)
杏子(サンキュー、まどか!!)ちら
まどか(うん!)にこっ
杏子「それじゃあ……いくぜぇええええええ!!!」ぐぅああああああ
さやか「……待って!」
杏子「ん?あんだよ?いきなり……」ぴたっ
まどか「どうしたの?」
さやか「………………ルール違反だよ」
杏子「………あ?何、言ってんだ?……ルール違反?」
まどか「そ、そんな杏子ちゃんは何も……」あせっ
まどか「だ、だってどんな手を使ってもいいはずでしょ?フライパンを粉々にするくらい……」おど
杏子「違反して、ないだろ?さや……か。」
さやか「そのフライパン」すっ
杏子「……」びくっ
さやか「本当にまるまる一つ分……ある?」
杏子「へっ?」
杏子「当たり前だろ?ズルなんてしねーよ!」
さやか「………確かにそうかもね」
さやか「けど」
さやか「それを確かめる方法は……どこにもない。」
杏子「あっ」
さやか「大体、それがフライパンだったかも分からないじゃない。」
まどか「そんな……」
さやか「でしょ?せめて私の目の前で粉々にしてよ」
さやか「………で、どうする?他にフライパンある?」
杏子「……ぃや。きょ、今日はそれしか。」
さやか「じゃ、今日は終わりね?……はぁ、なんか興ざめ」
杏子「くそっ、くそっ!」がんがん
まどか「そんな……あんまりだよ」
「それには及ばないわ」
まどか「その声は………ほむらちゃん!?」
さやか「……転校生?」
杏子「………なんのようだよ?」
ほむら「遅くなったわね、まどか」すたすた
さやか「まどか、あんた転校生にも話してたの?」
まどか「う、うん。私だけじゃ杏子ちゃんの力になれないかもしれないから……」
さやか「ふーん。で……何のよう?もう帰るんだけど……。」
ほむら「帰る必要はないわ。………佐倉杏子、これを……。」すっ
杏子「……こ、これは」
杏子「フライパン!!」
杏子「お前……これっ!……くれる、のか?」
ほむら「かまわないわ。私はまどかの話を聞いて念のために用意しただけ……」
ほむら「あなたのものよ……。いいわね?美樹さやか。」
さやか「……いいよ、今度はちゃんとフライパンみたいだしね!」
まどか「ほむらちゃん……ぐすっ、ありがとう!」うる
ほむら「礼には及ばないわ。私は私のしたいようにしただけ……。」
杏子「へっ、ありがたくもらうぜ!さて、……さやか!!」
さやか「おっ、やる気だねぇ!……じゃあ、見せてもらおうじゃない!」
杏子「おお!いくぜ!!」
杏子「まずは変身して、このフライパンを粉々にするっ!!」パァアアア
杏子「うらぁああああああっっ!!!」ズバズバッ
まどか「すっ、すごい!フライパンが一瞬で粉々に!」
杏子「へっ、こんなモンか……!」
さやか「へぇ、やるじゃない!」
ほむら「…………」
ほむら(……何を考えているの、彼女たちは?)
ほむら(まどかから話を聞いたときは半信半疑だったけれど……)
ほむら(まさかこんなことのために魔力を使うなんて……。)
ほむら(大体、フライパンなんて食べられるわけないじゃない……。)
ほむら(でも………)
杏子「よしっ!さやか、見てろぉおおおおお!!!」ぐぁああああ
さやか「いけっ!!」
ほむら(………本気、みたいね)
杏子「がぶっ!!」ばきぅ
杏子「………っがぁあああああ!!!いてぇえええええ!!!!」ぼたぼた
まどか「ひっ!きょ、杏子ちゃんの口の中が血だらけに!」びく
ほむら「どうやら、小さく砕いたせいで逆に危険なモノにしてしまったみたいね……」
まどか「そんな……!」
杏子「ぐぅっ……くそっ、あー、がぶっ!ってぇ、いてぇえええ!!」ぼたぼた
さやか「…………」
杏子「うあああああっっ!!痛いぃ!!」ぼたぼた
さやか「……………はぁ」ぽりぽり
さやか「…………はい、終わり」ぱんぱん
杏子「!?」
まどか「えっ?さやかちゃん、なんで?」
ほむら「………」
杏子「ま、待てよ!ってぇ!まだ、まだアタシはいけるっ!!まだ食える!」ぼたぼた
さやか「はぁ……アンタさ。そんなことよく言えるね?」
杏子「えっ……?」
さやか「たった一回噛んだだけで泣きわめいてさ……血流して、よくまだ食えるなんて言えるね。」
杏子「そ、それは……痛くて」
さやか「なに、言い訳?はぁ……すこし口閉じる努力しなさいよ。」
杏子「うぅうう」うる
さやか「あとさぁ、もう少し美味しそうに食べられない?私このあと夕飯なんだけど……」
まどか「言い過ぎだよっ!!」
杏子「……いやっ、いいんだまどか。アタシのせいだ。」
まどか「そんなっ、杏子ちゃんは悪くないよ!」
杏子「いや、私が弱いせいだ……。口の中切った程度で泣きわめいてよ。そりゃ食欲も失せるわ……」
杏子「さやか……ゴメンな」
まどか「杏子ちゃん……」
さやか「………じゃあ私帰るわ。また明日。」
まどか「さやかちゃ――」ぐい
杏子「……」ぐいぃ
杏子「……じゃあ、また明日。」
さやか「ふっ。……転校生、杏子の口の中診てあげて。じゃ」すたすた
まどか「ヒドイよ、さやかちゃん……!」
杏子「いいさ。……ってて!口の中鉄の味いっぱいだ……うえ。」
ほむら「診せなさい佐倉杏子……。」ぐい
杏子「あ、おまっ、んぐ、うあ」パカ
ほむら「大分切れてるわね。まどか、水をとって。」ぐぐ
まどか「う、うん!」がさごそ
ほむら「……歯が、何本か見当たらないわね。」じっ
杏子「ああ、んぐ、ころまえ……おれた」パカ
ほむら「……………」
ほむら「……そう。それは災難だったわね。」
まどか「はいっ、ほむらちゃん!お水!!」
ほむら「ありがとう、まどか」ぱし
ほむら「とりあえず、血とフライパンのくずを洗い流すわ………しみるわよ?」ぐい
杏子「や、やっれくえ!」パカ
ほむら「………」とくとくとく
杏子「んぐっ!?んっ!げほっげほっ!」びちゃ
まどか「杏子ちゃん!!」
杏子「らいじょうぶ……つづけれ、くえ!」
ほむら「行くわよ……。」とくとくとく
杏子「うっ!ん~!んぐっ!」びちゃびちゃ
杏子(いてぇ、いてぇけど我慢しねぇと……)ずきずき
杏子(………もう、泣いたり、叫んだりしねぇ!!!)ずきずき
ほむら「とりあえず口の中のモノは流せたわ……。」
杏子「あっ、アリガトよ……。」
ほむら「あとは私の魔法で治すわ。美樹さやかには劣るでしょうけど……。」パァアアア
杏子「悪いな……。」シュゥウウウ
まどか「ありがとう、ほむらちゃん!!」にこっ
ほむら「…………」シュゥウウウ
ほむら「佐倉杏子。あなたはまだ諦めないの……?」
杏子「ああ、諦められねーよ。アタシは必ずやる!」
ほむら「……そう。」シュゥウウウ
ほむら「もういいわ。」シュゥウ
杏子「悪ぃな、へへっ。」
ほむら「…………あなたに協力するわ、佐倉杏子。」
杏子「あ?」
ほむら「フライパンを食べるなんて、馬鹿げた話だけど……」
ほむら「あなたに協力したくなったわ。」
杏子「へっ、アリガトよ!ヨロシク頼む!」すっ
ほむら「………ほむら。私の名前は暁美ほむらよ。」がしっ
杏子「ああ!」ぎゅ
まどか「わぁ!やったね!やったね杏子ちゃん!!」きらきら
ほむら「さっそくだけど提案があるわ、佐倉杏子。」
杏子「………杏子でいいよ。アタシもほむらって呼ぶからさ。」
ほむら「えっ?……あの……その」
まどか「ふふ、呼んであげなよほむらちゃん!」
ほむら「あっ…………ええ。」こく
杏子「へっ……で、なんだい?ほむら。」
ほむら「………提案があるわ、杏子。」
杏子「へへっ」
まどか「やったぁ!」にこにこ
ほむら「…………///」もじ
ほむら「んん!杏子……あなた、野菜炒めは好きかしら?」
次の日―ほむらの家―
さやか「……今日は転校生の家か。一体、何をするのやら。」
杏子「待たせたな、さやか!」
さやか「杏子。それで?………今日はどーすんの?」
杏子「今日はまどかとほむらにも手伝ってもらう!」
さやか「…………へぇ」
さやか(ほむら、ねぇ)
杏子「準備はいいか、お前ら!」
まどか「うん!」
ほむら「いいわ。」
まどか「あっ、ごめんねほむらちゃん家借りちゃって……。」
まどか「家でもいいんだけど、パパがいるからさ……。」
ほむら「気にしないで、私は一人暮らしだから。それに……」
ほむら「提案したのは私だから………。」
さやか「じゃ、準備はいいみたいだし……始めて?」
杏子「おお!まずは変身して、フライパンを!」パァアアア
杏子「一気にっ!!らぁあああああっっ!!」ズバズバズバズバズバッ
杏子(今度はこの前よりさらに細かく刻んだ!!これで我慢すれば痛くないハズ……!)
さやか「ふーん」
さやか(ここが転校生の家の中って分かってんのかな?)
杏子「まどかっ、ほむらっ!!」
まどか「はいっ!」
ほむら「………」こく
さやか「ん~?」
さやか「刻んだフライパンをまどか達に渡して……なに、料理でもさせる気?」
杏子「そのまさかさっ!!」
杏子「気づいたんだよ……。いくら細かく刻んだり、調味料ぶっかけてもフライパンは食えねぇ!」
杏子「だからっ!」
杏子「本物の美味い料理と一緒に食うことにしたんだよっ!!」
杏子「これならフライパンも美味しく食えるってわけさ!」
杏子「ま、全部ほむらの考えだけどな……へへっ!」
さやか「へぇ、よく考えたわね……。」
さやか「んー、これで私も杏子のモノになるのかぁ!」のびー
杏子「………///」どきっ
さやか「…………期待してるよ、杏子。」
―30分後―
まどか「野菜炒め(フライパン入り)出来たよぉ、杏子ちゃん!」
杏子「おっ、きたか!!」
まどか「ほむらちゃんすごいんだよぉ!料理すごい上手いんだぁ!!私、感心しちゃった!」
ほむら「ま、まどか。そんなこと言わなくていいのよ?///」
杏子「へぇ、そいつは楽しみだ!」
杏子「……一応確認するけど、今回は反則はなかったよな?」
さやか「そうだねぇ……フライパンも私が確認したし、料理の行程も見た。」
さやか「……うん、オッケー!」ぐー
杏子「っうし!!」
杏子「………アリガトな、まどか、ほむら。」
まどか「うん!頑張って杏子ちゃん!!」
ほむら「……」こく
杏子「よしっ!!」
杏子(今度こそ、今度こそ決めてみせる!!)
杏子「うぁああああああ!!!!」ぐぅあああああ
杏子「ぱくっ!!」じゅう~
杏子「!?っ熱ーー!!!な、なんだよこれ!?」
まどか「えっ!?どうして?普通に調理したよね!?」
ほむら「………」
ほむら「!………まさかっ」
まどか「なに!?どうしたのほむらちゃん!!」
ほむら「……刻んだフライパンが熱を吸収しすぎたのよ。」
まどか「えっ!?」
ほむら「フライパンは本来は調理道具。熱を吸収しやすい造りのハズ。」
ほむら「私たちはフライパンを具材として考えてしまった。そのせいで炒める時間を誤ったのよ……。」
ほむら「もっと、最後のほうで炒めるべきだった……」ぎり
まどか「そ、そんな………」がく
まどか「きょ、杏子ちゃんゴメン!!わ、私、私!」
ほむら「杏子……」
杏子「……」
杏子「へっ、なんて顔してんだよ」にっ
杏子「この位、大したことないよ。安心しな……。」
まどか「杏子ちゃん……」うる
杏子「それに……」
杏子「それにアタシは食い物を粗末にしたことないからな!!」にっ
さやか「…………続行ってわけ?」
杏子「ったりめーだ!!」
杏子「ふー、ふー」
杏子「ごくり…………うらぁああああっっ!!!」
杏子「ぱくっ」じゅう~~
杏子「んぐぅうう!!!」
杏子(の、喉と口の中が焼けてるみてーだ)じゅう
杏子「ん!かてっ!あつっ!」ばきばきむしゃむしゃ
杏子「くり、の中が、っ、いれぇ」ばきばき
まどか「きょ、杏子ちゃん!!」
ほむら「杏子、水よ!!」ぱし
杏子「!!」ぱし
杏子「んぐっ、んぐっ、んぐっ」ごくごくごくごく
杏子「ぷはぁあ!さ、サンキューほむら……」
ほむら「大丈夫?杏子……。」
杏子「ああ、大丈夫だ」
杏子「少し熱いけど、食えなくはないよ……。」
杏子「ほむらとまどかの料理が美味いのが救いだよ。」
ほむら「フッ、そう……。」
杏子「へっ、へへ」
さやか「……………………………………」
杏子(実際、料理が美味いのは本当だ。)
杏子(………これなら熱さえ我慢すれば完食できる!!)
杏子(待ってろよ、さやかっ!!!)
―5分後―
杏子「ううっ、うえっ!はぁはぁ、ぐぅう!」
まどか「きょ、杏子ちゃん!しっかりして!!」
ほむら「杏子!」
さやか「………」
さやか「…………どうしたの?まだ半分以上残っているけど。」
ほむら「………」ピク
ほむら「美樹さやか………」すくっ
杏子「やめろっ、ほむら!」
ほむら「……止めないで」ぐっ
杏子「やめろって言ってんだ!!」くわっ
ほむら「くっ………!」ぴたっ
杏子「やめてくれ、ほむら。さやかに手ぇだすな……はぁはぁ」
ほむら「でもっ!」
杏子「頼むよ……アタシなら、まだやれるから」
杏子「さ、最後までやらせてくれ!」
まどか「杏子ちゃん………うぅうう」うる
まどか「もう、やだよぉ……ぐすっ、うえぇえん」
ほむら「………っ」ぎり
ほむら「………くっ、好きにしなさい……」
杏子「へっ、サンキュー……」
さやか「……………」
杏子「へっ、まだまだ……うっぷ、はぁはぁ」
杏子(って言ってみたものの、実際相当キツイ……)
杏子(さっきは熱すぎて気にならなかったけど、フライパンがマジで不味い……)
杏子(フライパンのなんとも言えない味のせいで段々気持ち悪くなってきた……)
杏子「……くっそー!!」
杏子(野菜炒めの油と臭いもキツくなってきた)
杏子(ダメだ、フライパンを意識すればするほど気持ち、悪くっ)
杏子「うぐぅう」
まどか「ああ!」
ほむら「杏子!」
さやか「……………」
さやか「…………終わりか」
ほむら・まどか「!?」
杏子「はぁ、はぁ……はぁはぁ」
さやか「もう無理でしょ?杏子、もう3日目終了だけど大丈夫なの?」
さやか「全然成果が見られないけど………はぁ、こりゃ無理かな?」
まどか「…………」ぷるぷる
まどか「………さやかちゃんは」
さやか「ん、なにまどか?」
まどか「さやかちゃんは、何とも思わないの?杏子ちゃんをみて……苦しんでる姿を見て」
まどか「助けたいと、思わないの!?」
さやか「…………」
さやか「……ん~」
まどか「ぐすっ……うぅ」うる
さやか「だってこれ実験でしょ?心配しすぎるのもどうなのって話だよ。」
まどか「へ?」
さやか「大体、これは杏子も同意してやってんだよ?」
さやか「私は杏子がフライパンを食べるということ以外は興味がない。だから食べ方は自由でしょ?」
さやか「杏子が勝手に苦しんでるんだって。だってやりたくなければやめればいいんだし。」
さやか「そうでしょ、杏子?」
杏子「…………………」こく
まどか「そ、そんなのって……ないよ」
ほむら「美樹、さやか……」ぎり
さやか「それに私は杏子を助けたんだよ?あのままやってたら危険だったかも」
さやか「それとも、もうやめる?実験。」
杏子「……」ふるふる
さやか「そっか!まぁ、明日また頑張んなさい!それじゃ私は帰るわ!バイバイ!」
まどか「……」きゅ
ほむら「………」ぎろっ
さやか「あらら、嫌われたか……。じゃあね、杏子」
杏子「………」
―――バタン
ほむら「……杏子、美樹さやかに関わるのはもうやめなさい」
まどか「そ、そうだよ杏子ちゃん。こんなのおかしいよ……」
杏子「嫌だ」
ほむら「……っ」ぎり
ほむら「もう、やめなさい……」
杏子「……」
杏子「嫌だ」
ほむら「佐倉杏子っっ!!!!」
まどか「ひっ!」ちょろ
杏子「へっ、ほむらが心配してくれんのは嬉しいけどさ……」
杏子「やっぱさ、さやかには誰かがそばにいないとダメなんだよ……。」
杏子「あいつには好きなやつがいる……。けどさ、片想いは辛いだろ?」
杏子「せめて、アタシくらいはさやかを一番に考えてやらねーと。」にっ
ほむら「……あなたはそれでいいの?」
杏子「アタシにはお前らがいるさ……それにアタシはさやかが好きなんだよ」
ほむら「……そう。なら、もう何も言わないわ。好きになさい。」
杏子「アリガトな、ほむら」
ほむら「ふんっ」
杏子「まどかも心配させて悪いな………」ちら
まどか「ふぇ?////」もじもじ
杏子「?」
杏子「……そうだ。ほむら」
ほむら「…………なにかしら?」
杏子「最後の……頼みだ」
――――
次の日―公園―
さやか「今日は食べられるといいわねぇ、杏子」
杏子「そうだな……」
さやか「それで?今日もいるわけ、アンタたちは?」
まどか・ほむら「………」
杏子「今日はほむらがいないと成功しないんだよ……。」
さやか「ふーん。………じゃあ始めよっか。」
杏子「ああ」パァアアアア
さやか「さっそく変身か」
杏子「だぁああああああっっっっ」ずばずばずばずばずばずばずばずばずばっっっ
さやか「おお!お見事、お見事!」
杏子(なんとかフライパンを出来る限り小さくできた……)
杏子「あとは……」
杏子「ほむらっ!!」
ほむら「……」こく
ほむら「……」パァアアア
さやか「転校生も変身して、なんのつもり?」
杏子「これからはさやかにも手伝ってもらう……。」
さやか「はぁ?」
杏子「これはアタシにとっての切り札だ……失敗すれば、後はない。」
さやか「覚悟ありってわけ。それで、なにをするの?」
杏子「………スー、ハー………よし」
杏子「ほむらに時を止めてもらい、その中でさやかがアタシの胃に無理矢理砕いたフライパンを押し込むんだ!」
さやか「はぁ?なに言ってんのよ、アンタ。」
杏子「ほむらが教えてくれたんだ、ほむらの能力には時を止める力がある。」
さやか「…………それで?」
ほむら「ここからは私が説明するわ。」
ほむら「説明通り私は時を止められる。そして私はその中を自由に動ける。」
さやか「………」
ほむら「私以外の、私が触れていない全てのモノが停止する。今回はそれを利用する。」
ほむら「今回、杏子には変身した状態でいてもらう。極限まで肉体を調整してね。」
ほむら「そして私は時の止まった世界で美樹さやかに触れる。そうすれば私と同じように動ける。」
ほむら「そしてあなた自身の手で杏子の口の中にフライパンを押し込むのよ。」
ほむら「いくら時を止めた世界と言っても、あなたが関われば不正ではないでしょ?」
さやか「……うん!まぁいいでしょ!今回は特例だ!」
杏子「やった!アリガト、さやか!」
さやか「いいって!私も見てるばっかはつまらないしね!!」
まどか「………」
ほむら「それじゃあ準備してくれるかしら?」
さやか「あっ、そうだソウルジェムの穢れはどうすんの?魔力使えば穢れるでしょ?」
ほむら「心配いらないわ、多少なら蓄えがあるから……」
さやか「ふーん」
ほむら「杏子。準備はいいかしら?」
杏子「おお、大丈夫だ!」
ほむら「……いくわよ。」
―――カチッ
――――
杏子「」
まどか「」
さやか「」
ほむら「………」
ほむら「………」ちらっ
さやか「」
ほむら「美樹さやか……どの世界でも一番厄介な人間。」
ほむら「こいつさえ……こいつさえ消えれば。杏子も苦しまずに……。」
ほむら「………」チャキ
さやか「」
ほむら「消えなさい、美樹さやか……」ぐっ
―― 杏子「アタシはさやかが好きなんだ」
ほむら「…………」ぴたっ
杏子「」
ほむら「………くっ」ぐっ
さやか「」
ほむら「………ふぅ」すっ
ほむら「………起きなさい、美樹さやか」ぱし
さやか「うぁああ!ん?…………なんだ、アンタか。」びくっ
ほむら「………」
さやか「へぇ、これが時の止まった世界か……」
ほむら「いいわね?この手を離してはダメよ、あなたまで止まってしまうから。」
さやか「ふーん……」ちらっ
さやか「………」まじまじ
ほむら「?」
ほむら「……自分の体ばかり見て、そんなに不思議?」
さやか「……」
さやか「いやぁ、傷が一つもないなんて……ちょっと、意外。」
ほむら「え?」
さやか「あんたのことだから私を殺すのかと思った。杏子を助けるために。」
ほむら「……」
さやか「まぁ、いいわ。それじゃ、やろうか!」
ほむら「………」
ほむら「……待って」
さやか「……なによ、転校生?」
ほむら「……杏子を」
ほむら「………杏子を止めてほしい。」
さやか「………」
ほむら「あの子はもうボロボロよ。つまらない意地で闘っている。誰かが止めないと……」
ほむら「私やまどかじゃ止められない……。あなたしかいないのよ、美樹さやか。」
ほむら「杏子はあなたのために無謀な闘いをしている。」
ほむら「あなたさえ杏子を認めてくれれば、あの子は助かる。」
ほむら「フライパンなんか食べなくても、あなたと付き合うことができる。」
ほむら「そうでしょ、美樹さやか?」
さやか「………」
ほむら「………」
さやか「………」ぽりぽり
ほむら「……」ぎり
ほむら「断れば、手を離し。あなたをここで……」ちゃき
ほむら「殺す」ぐっ
ほむら「………どうするの?」ぐっ
さやか「……」
さやか「はぁ……」
さやか「やんなよ」
ほむら「!」
さやか「殺しなよ、私を……」
ほむら「くっ、どうして、あなたは……」ぎり
さやか「……あんた、さっきから偉そうにいろいろ述べたけどさ」
さやか「……………分かってんのよ、そのくらい。」
ほむら「………分かっている、ですって?」
さやか「好きな人に認めてもらえれば、幸せになるって決まってる」
ほむら「………それなら」
さやか「けどさ」
さやか「無理なんだよ、そんなこと。」
さやか「特に……魔法少女の私たちは、さ」
ほむら「……」
さやか「杏子はそれを知っている」
さやか「………だから、挑戦すんのよ」
さやか「幸せは与えられるものじゃない……奪うものだから」
さやか「たとえ私が今、なんの結果も出さない杏子と付き合うって言っても」
さやか「アイツは絶対、素直に受け取らない。」
さやか「アイツは逆に恐くなって、私から離れるかもね……。」
ほむら「くっ……」
さやか「だからこれは杏子のための実験なのかもね……アイツが幸せを勝ち取るための。」
さやか「あぁ、私を殺すなら………いつでもどうぞ。」
ほむら「……」ぎり
ほむら「……っ」すぅ
さやか「なんだ、やんないのか……」
ほむら「………」
さやか「……それじゃ、始めますか。」
ほむら「美樹さやか」
さやか「ん?」
ほむら「忘れないで……。」
ほむら「例え幸せになれないと知っていても、絶望しかないと分かっていても……」
ほむら「ほんの一欠片の希望を探し、闘い続けている少女がいることを……。」
さやか「……………いいよ。」
さやか「あっ、因みにその少女………………それって、アンタ?」
ほむら「……さぁ、知らないわ」
さやか「そっか」
さやか「……じゃ、今度こそ始めるわよ」
ほむら「……」こく
――――
―――
ほむら「やりながら聞いてちょうだい。」
さやか「ちょ、ちょっとなにさ今、いい、とこ、ろぉ」ずぶっ
ほむら「私の時を止められる時間は無限ではない」
さやか「はぁ!?」ずぶずぶ
ほむら「時を止める時間は限界がある。そして、今それを使い切るわけにはいかない……。」
ほむら「穢れはグリーフシードで抑える。でも……」
さやか「止められる時間がどんどん減っていくわけか……つまり!」
さやか「急いで杏子の胃にフライパンを押し込めってわけね!!!」ずぶり
ほむら「……」こく
ほむら「杏子は今魔法少女に変身している。少しのダメージなら問題ないわ!」
さやか「ふんっ!うりゃ!入、れぇ!」ズブズブ
ほむら「杏子も覚悟をしている……。フライパンを食べきる覚悟を……。」
杏子「」
ほむら「……」
ほむら(頑張って、杏子)ぐっ
―――――
―――
さやか「ふぅ」
さやか「なんとか……全部入ったわね」
ほむら「ええ。」
さやか「杏子がフライパンを粉々にしてくれたお陰かな」
ほむら「そうね……」
さやか「けど……」
ほむら「ええ……」
さやか「入ったはいいけど……やばくない?これ……。」
ほむら「………」
杏子「」
さやか「喉が異様に歪んでるし、胸の辺りが膨らんでる……。口の中からフライパン見えてるし。」
ほむら「どうやら……押し込む形では胃まで到達しなかったみたいね。」
さやか「ええ!?」
ほむら「………時を動かしたとき、杏子が耐えてくれることを願うしかないわ。」
さやか「………うん」
ほむら「ん!……どうやら、限界みたい」ぴく
さやか「転校生!!」
ほむら「……時を動かすわ、いいわね?」
さやか「………」こく
ほむら「………」こく
ほむら(どうか……耐えて!!)
―――カチッ
―――――カチカチカチカチ
―――
ほむら「……杏子は?」ちらっ
ほむら「ひっ!?」びくっ
まどか「あっ、ほむらちゃん、さやかちゃん!どうだった!?」
さやか「………うわぁ」ぞくぞく
ほむら「……」ぞくぞく
まどか「どう、したの?……成功、したんだ、よね?」
まどか「杏子ちゃん、どう、したのかな?」
さやか「………見てみなよ、まどか。アレ。絶対ヒクから。」スッ
まどか「えっ?」くるっ
まどか「きゃっ、きゃああああああ!?」びくびく
杏子「!?!?……うっ、おぇ!……ぇえ……がっ、ああ」ぶるぶるぶるぶる
まどか「きょ、杏子ちゃん!?」びくっ
ほむら「……呼吸が出来ないみたいね」
杏子「うぐぅう!?……うぇ!……がぼっ、うげえ……んんんんー!!」じょわー
さやか「あまりの苦しさに失禁したみたいね………」
さやか「まるで全ての穴から、液体という液体が出てるみたい。ははっ」
まどか「わ、笑い事じゃないよ!!早く助けないと!!」
ほむら「……まずいわね。」
まどか「えっ!?」
ほむら「チアノーゼを起こしてる。早く呼吸させないと!」
杏子「……………」ぴくぴく
杏子「………」ぐったり
ほむら「まずいわ……急がないと!!」ぐいっ
ほむら「………これは!………くっ!」
まどか「ど、どうしたのほむらちゃん!?」
ほむら「……喉に異物があるとき、それを取り出せない場合は喉を切って呼吸させる方法があるのよ。」
まどか「あっ、それ知ってる仁で観たよ!!」
ほむら「……けど、今回は杏子の口から胃までフライパンがぎっしり詰まってる」
ほむら「これじゃあ切開しても、呼吸できないわ。……どっちにしろ道具がないから無理ね。」
まどか「そ、そんなぁ」がく
まどか「そ、それじゃあ病院に行こう!病院なら大丈夫だよ!」
ほむら「それは、だめよ。」
まどか「どうして!?」
ほむら「見たところ杏子は保険証を持っていない。」
まどか「ほ、保険証くらい……」
ほむら「いいえ、だめよ。おそらく病院に行けば杏子は手術をして、入院する。」
ほむら「そうなれば多額の入院費がかかる。私たちではとても……」
まどか「そんな……」
ほむら「杏子が保険証を持っていても、私たちにはそのありかが分からない。」
ほむら「杏子は今話せないし、時間もない……」
ほむら「八方塞がりよ………」ぎり
まどか「そんなぁ……いやだよ、そんなの……うわぁああん」ぽろ
ほむら「くっ」ぎりぎり
まどか「………うぅうう、ぐすっ」
まどか「うぅ……ん?ぐすっ、ね、ねぇほむらちゃん?」きょろきょろ
ほむら「……なにかしら?」
まどか「………さやかちゃんがいない」
ほむら「!!」
ほむら「……くっ」きょろきょろ
ほむら「………いない」
ほむら「………あの女!!!」
まどか「ま、まさか………帰っちゃったの?さやかちゃん……」
ほむら「……」ぎりり
まどか「ひ、ひどいよぉ。さやか、ちゃん」うる
まどか「杏子ちゃんがこんなに……苦しんでいるのに」
まどか「ひどいよぉ!」
ほむら「………」
ほむら「………」すくっ
まどか「……ほ、ほむらちゃん?どこ、いくの?」
ほむら「病院よ……。」
まどか「えっ!?で、でもさっき!」
ほむら「もう時間がない……早く病院に行かないと、杏子の命が。」
まどか「お、お金はどうするの?」
ほむら「…………」
ほむら「私が出すわ」
まどか「ほむらちゃんが……?」
ほむら「私には多少の備えがある。……少しくらいなら。」
ほむら「あとは……杏子の回復力次第ね……。」
まどか「ほむらちゃん…………よしっ!!」
まどか「私もお金だすよ!!」
ほむら「まどかが?」
まどか「ほむらちゃんほどじゃないかも知れないけど……貯金全部だすよ!」
ほむら「いいの……?」
まどか「うん!だって杏子ちゃんもほむらちゃんも私の大切な友達だもん!!」
ほむら「まどか……」
まどか「それじゃあ私急いで家に行ってお金用意してくる!!」
ほむら「………」こくっ
ほむら「今は一刻を争うわ……。私は変身してできる限り急いで病院に向かう。」
ほむら「……病院でおちあいましょう」パァアアアア
杏子「…………ぅ」
まどか「うん!分かった!!」
さやか「待って!!!」
まどか「えっ!?」
ほむら「………」ぎろっ
まどか「さ、さやかちゃん!?」
さやか「はぁはぁはぁはぁはぁ」ぜーぜー
ほむら「………今さらなんの用かしら、美樹さやか」
さやか「はぁはぁ、ちょっ、待って」ふーふー
ほむら「あなたと話すことは何もない。……消えなさい。」
さやか「ふぅーーー」
まどか「さやか、ちゃん?」
さやか「待ってよ。……必要でしょ?これ……」すっ
ほむら「こ、これは!!」
ほむら「佐倉杏子の、保険証……?」
ほむら「どうして、あなたが?」
さやか「んー、前さアイツの住みかに遊びに行ったときにさ、見せてくれたんだ。」
さやか「アイツの想い出の品を。……その中あったんだよ、それ。」
さやか「杏子が倒れたとき、必要になるって思ってさ……」
さやか「ガラにもなく焦っちゃって……変身して、すっ飛んでいったわけ。」
さやか「はは、笑えるでしょ?」ぽりぽり
まどか「さやかちゃん!!」ぱぁ
ほむら「………礼は、言わないわよ?」ぱしっ
さやか「いいって……」
さやか「それより急がないと……杏子限界みたいよ?」
杏子「‥‥」ぴく、ぴく
ほむら「!」
ほむら「まどか!私は今から全力で病院へ行く!!後から来なさい!!」
ほむら「……………美樹、さやかと。」
さやか「………へっ」
まどか「うん!!」
ほむら「………ふっ」にっ
ほむら「………はぁ!!」どんっっっ
期日最終日―病室―
杏子「ん………うぅ」
杏子「………ここ、は?」パチ
まどか「杏子、ちゃん………?」どき
杏子「……まど、か」
まどか「杏子ちゃぁあああん!!!」がしっ
杏子「お、おい……あんま、引っ付くなよ、苦しいだ、ろ?」ぎゅぅう
まどか「杏子ちゃん、杏子ちゃん、杏子ちゃん!うぅう、良かった!本当に良かった!!」ぎゅぅうう
杏子「まどか……へへっ」
ほむら「………まどかに感謝なさい、杏子。」
杏子「………ほむら!」
ほむら「あなたが倒れたあと病院に向かい、手術後付きっきりであなたを看病していたのよ」
杏子「そう、だったのか……サンキュー、まどか」
まどか「わ、私は何もしてないよぉ!それに、頑張ったのはほむらちゃんだよ!」
ほむら「ちょ、ちょっとまどか、余計なことは///」
まどか「杏子ちゃんが倒れたあと、ほむらちゃん変身までして杏子ちゃんを病院まで担いで行ったんだよぉ!」
杏子「……ほう」
まどか「すっごい必死でね!それに杏子ちゃんに障害が残らないように魔法で治療もしたんだよ!!」
杏子「……ほーう」にやにや
ほむら「………んぐ////」もじ
杏子「ははっ」
ほむら「もう、まどか///」
まどか「ふふ、ごめん、ごめん。」にこっ
杏子「………」
杏子「それでさ……」
まどか「……」
ほむら「……」
杏子「さやかは、どこだい?」
病院―階段―
杏子「はぁ、よっと、ふぅ」のぼりのぼり
杏子「……待ってろよ、さやか。はぁはぁ」のぼりのぼり
―――――
ほむら「美樹さやかなら、屋上にいるわ」
杏子「屋上?」
ほむら「ええ。彼女はお見舞いに必ず来ているの。……けど」
杏子「……けど?」
ほむら「入らないのよ、病室に……。病室の目の前まで来てこう言うの」
さやか『あと、頼んだ』
ほむら「って。」
杏子「…………なんだよ、それ。」
まどか「さやかちゃん、会いづらいんだよ、きっと。」
杏子「………ちっ」
杏子「……」がばっ
まどか「きょ、杏子ちゃん!?どこ行くつもりなの!?」
杏子「屋上に決まってんだろ………!」よろ
まどか「そんな、ダメだよ動いちゃ!ほむらちゃん、止めて!!」
ほむら「………」すっ
杏子「………」
ほむら「………」
杏子「………どけよ、ほむら」
ほむら「………なぜそうまでして行くの?」
杏子「……ハッ、決まってんだろ?」
杏子「……独りぼっちは……寂しいだろ。」
ほむら「………」
杏子「アイツは今独りなんだよ……。寂しくて、寂しくて。誰かにそばにいてほしいんだよ」
杏子「ずっと、支えだった。……さやかはあのボウヤにそばにいてほしかった。けど、それが叶わなくて……。」
杏子「アイツは、さやかは!……くぅ」
杏子「……」
杏子「……アイツもアタシも不器用なんだ。素直になれない……。」
杏子「だからっ、だからっアタシだけでもアイツを理解してぇ。そばにいてぇんだよ。」
杏子「……好きなんだ、さやかが。愛してんだ……。」
まどか「杏子ちゃんっ、ぐすっ、うぅ」うる
ほむら「……」じぃ
杏子「……へっ」にっ
ほむら「……」
ほむら「……はぁ。」
ほむら「いいわ、行きなさい。……いいわね、まどか?」
まどか「……ぐすっ」こく
杏子「悪いな、二人とも。……アリガトよ。」ふらうら
ほむら「杏子………」
杏子「あ?」くるっ
ほむら「……必ず、必ず二人で戻ってきなさい。いいわね?」
杏子「ったりめーだ!!」
――――
杏子「もう少しだ……」ふらふら
杏子「はぁはぁ」ふらふら
杏子(さやか……)
杏子(さやか……)
杏子(もう、独りにはさせねー)
杏子(アタシが一生そばにいてやる。)
杏子(だから!)
――――
杏子「………ここか」
―――がちゃ
―屋上―
杏子「……いい天気だな。」
杏子「……さやかは、どこだ?」きょろきょろ
杏子「………あっ」
さやか「…………………」
杏子「……へっ」すたすた
杏子「………久しぶりだな、さやか。」
さやか「!」びくっ
さやか「…………杏、子?」くるっ
杏子「へっ、ずいぶん疲れた顔してんなぁ?クマもできてるぜ?」
さやか「……アンタには関係ないでしょ?」
さやか「それで?………なにしに来たのよ?」
杏子「……最終日だろ?」
さやか「………なんの?」
杏子「実験のさ、期日だよ……」にこ
さやか「……はぁ!?」
さやか「なに、アンタ……まだ、やるつもり、なの?」
杏子「ったりめーだろ!今日こそはやるぜ!!」
さやか「はは、何言ってんのよ……なんで?」
杏子「丁度フライパンがあるしな!でも変身できないから、このままか……。」
さやか「……」
杏子「まっ、いっか!かじりついてやんよ!」
さやか「…………めてよ。」
杏子「おしっ、いくぜぇえええええ」ぐぅああああ
さやか「……っ」ぎり
さやか「やめなさいって言ってんのよぉおおおおお!!!!」
杏子「……」ぴた
さやか「はぁはぁ……はぁはぁ」
杏子「……」
さやか「……なに考えてんのよ、アンタ?馬鹿じゃない?」
杏子「……」
さやか「実験なんて、もう、終わりでしょ?」
さやか「アンタどんな目にあったのよ。死ぬところだったのよ?なに、マゾヒスト?」
さやか「………ねぇ、なんでまだ続けるの?」
杏子「………」
杏子「さやかを………愛してるから」
さやか「………」
さやか「…………はぁ?」
杏子「……死んでもいい。いや、死なないけど。」
杏子「さやかと付き合えるなら……なんでもする。」
杏子「さやかと一緒にいられるのなら……アタシは。」
さやか「………」
杏子「だから……フライパンだって食える!」
さやか「……」
さやか「……」
杏子「んじゃあ、続けるぞー!んぁあああああ」ぐぅああああ
さやか「………待って」ぼそ
杏子「んあ?あんだよ、さやか……?」ぴた
さやか「……この、実験さ。私が、やるよ。」
杏子「あん?」
さやか「だってさ、私と二人で始めた実験でしょ?……だから、私がやってもいいでしょ?」
杏子「そりゃ、そうかもしれないけど……」
さやか「………それでさ、もし私がフライパン食べれたらさ」
杏子「?」
さやか「アタシと付き合ってよ」
杏子「………えっ?」
杏子「そ、それって……。」
さやか「はは、アタシなんかでいい?」ぽりぽり
杏子「……へ?」
さやか「素直じゃないし……」
さやか「嫉妬深いし……」
さやか「わがままだよ……?」うる
さやか「それでも………いい?」ぽろ
杏子「……」
杏子「……うん、……うん」うるうる
杏子「愛してるよぉ!!!」ぽろぽろ
エピローグ
学校―帰り道―
まどか「ほむらちゃーん!」たたっ
ほむら「まどか」
まどか「一緒に帰ろ?」にこ
ほむら「ええ。」こく
ほむら「……」きょろきょろ
ほむら「……美樹さやかがいないわね?」
まどか「………さやかちゃんなら、あそこだよ。……はぁ」
ほむら「……ああ、分かったわ。また会いに行ってるのね……。」
あれから美樹さやかと佐倉杏子は付き合うようになった。
誰もが望んだ結末、みなが幸せになるハッピーエンド……。
のはずなのに。
まどか「もういい加減にしてほしいよねあの二人!!」
まどか「いっつもいっつもイチャチャしてさぁ!」ぷんぷん
ほむら「そうね。あそこまで見せつけられると……。」
まどか「はぁ……二人を見てると太っちゃうよ。」
ほむら「…………協力したの、失敗だったかしら」
――幸せになったのは、二人だけだった。
―――
まどか「あっ、ここでお別れだね……」
ほむら「そうね………」
まどか「……」じぃ
ほむら「……」じぃ
ほむら「……」ごくり
まどか「あっ、そ、それじゃあ、もう遅いし行くね?バイバイほむらちゃん!」ばいばい
ほむら「ま、まどか!………行っちゃった………ばいばい。」ふりふり
ほむら「………進展なしか」
ほむら「………はぁ」
―――「なに、悩んでんのよ転校生!!」
「好きなやつがいんならいい方法があんぜ?」
ほむら「誰っ!?」
ほむら「誰なのっ!?姿を見せなさい!」
「フライパンを食えばいい……。」
「そうすれば落ちない女はいないよ!」
ほむら「あ、あななたたち………」
「どうする?」
ほむら「………」ごくり
「さぁ!」
あんこ「くうかい?」
終わり
283 : 以下、名... - 2011/04/16(土) 17:00:08.94 QCRwjBkj0 102/102終わりました!!
ここまでこれたのは皆さんのおかげです!!
ありがとうございました!!
保守してくれた方、支援してくれた方、みんなみんなありがとうございました!
変なところやツッコミ所があるとおもいますが許してください!
本当にありがとうございました!!