1 : 以下、名... - 2011/01/23(日) 19:59:01.91 OERl7/8r0 1/37

「なあ梓ー、お前ソロやってみない?」

「えっ、急にどうしたんですか?」

「いやー、ギターソロかっこよくってさー」

「話が見えないんですが」

「ああ、うちのバンドにも取り入れたいって律さわいでたなぁ」

「そうそう。昨日澪と一緒に色んなバンドのDVD観てね?」

「ギターソロ……私がやっていいんですか?」

「というか梓にやって欲しいんだよ」

「は、はぁ」

「良かったね、あずにゃん!」

元スレ
梓「もう平気です。本当だもん」
http://raicho.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1295780341/

2 : 以下、名... - 2011/01/23(日) 20:04:23.14 OERl7/8r0 2/37

「私も梓のソロ聴いてみたいかも」

「梓ちゃん凄く上手だから大丈夫よ」

「……別にいいですけど、ソロって普通リードギターがやるもんじゃ」

「へっ、そうなの?」

「あーあ、言わなきゃ分かんないのに」

「ぶう! りっちゃんしどい!」

「テヘヘッ! 冗談、冗談ですわよう!」

「こうしてやる! ホアー!」

「ア、アタシの書いたドラゴンがオカマっぽくッ!?」

「えっ、カバじゃないの?」

3 : 以下、名... - 2011/01/23(日) 20:08:11.33 OERl7/8r0 3/37

さわ子「まあまあ、梓ちゃんは唯ちゃんに遠慮してるだけでしょ」

「いえ、そんな事は……」

さわ子「ダブルリードってのもあるんだし、固く考えなくてもいいんじゃない」

「さすがさわちゃん! 緩々だぜ!」

さわ子「あぁん? 私まだキツキツなんだから!」

「なにがキツキツなの~?」

「とにかくそういう訳だ。梓は気にせずやればいい」

「澪先輩がそういうなら」

「何だそれ! ここは部長の面目を立てろよ!」

「ね~、キツキツって?」

4 : 以下、名... - 2011/01/23(日) 20:14:22.98 OERl7/8r0 4/37

「ありがとうございます、律先輩。私頑張ります」

「お、おう?」

「あ、あずにゃんが珍しく素直だ」

「私はいつも素直です!」

「ムギ、梓のあの顔」

「よっぽど嬉しいのね。うふふっ」

「いつもそう素直なら、私の妹にしてやってもいいぞ」

「何言ってるんですか律先輩? クモ膜下出血ですか?」

「はい先生! 梓さんが笑えないジョークを言いましたー!」

さわ子「ブッ! ブフフフッ!」

5 : 以下、名... - 2011/01/23(日) 20:21:02.91 OERl7/8r0 5/37

「壷だったみたいだぞ……」

「それでも教師か」

「ブラックジョークも大概だよ、あずにゃん」

「それは分かるんだ」

「でもあずにゃんなら、私だって妹にしたいよ」

「お前には憂ちゃんいるじゃん」

「あずにゃんは別腹だから何人いても大歓迎!」

「いいな! 私にもお一人!」

「ムギちゃんならいいよ! 安心して任せるよ!」

「唯ちゃん!」

「私は一人しかいませんけどね」

7 : 以下、名... - 2011/01/23(日) 20:28:22.01 OERl7/8r0 6/37

 その夜。ギターソロを任された梓は嬉しくて、帰ってからロクにご飯も食べず練習ばかりしていました。

 そんな時、ふいに一本の電話がかかって来たのです。

『あっ、梓! ロンハー観た? 超ウケるんですけど』

 電話の主は、梓の同級生である鈴木純からでした。彼女は早口で、梓にとってどうでもいい話を捲くし立てます。

「純? 生憎TV観てないよ。それどころじゃなくって」

『えー、ウッソー? マジでおもしろかったのに』

「だからそれどころじゃないんだって」

『……何か梓、声弾んでるね』

「そ、そう?」

8 : 以下、名... - 2011/01/23(日) 20:34:31.85 OERl7/8r0 7/37

『うん。何かあった?』

「えっへっへー、教えて欲しい?」

『いや、別に』

「えっ」

『忙しいようだから、もう切るね』

「ちょちょちょぉ~っと待ったぁ! 聞いて! 私の話を聞いて!」

『何よもう……』

「純! 純ちゃん! 純さん! 純金!」

『仕方ないなぁ』

9 : 以下、名... - 2011/01/23(日) 20:39:47.24 OERl7/8r0 8/37

「ありがと! 実はね私、ギターソロ任されちゃったんだ!」

『えっ、ソロ!? 一年なのに凄いね!』

「そっ、そうかなー? ぶ、部員が少ないからだと思うけど」

『まあまあ、謙遜しなさんな。信頼されてる証拠じゃん』

「えへへっ、あんまり褒めないで。調子乗っちゃう」

『でもいいなー、私何てジャズ研じゃペーペーなのに』

「あそこ部員多いもんね」

『そりゃ梓の腕ならさ、一年でも――』

「純も軽音部入れば良かったのに」

『お、大きなお世話。ジャズ研にだってジャズ研のいい所があるんですぅ』

12 : 以下、名... - 2011/01/23(日) 20:45:22.81 OERl7/8r0 9/37

「ううん、純もいたらもっと楽しかったかなって」

『は、恥ずかしい事いわない!』

「そ、そうだね……」

『もう切るよ、ソロの練習で忙しいんでしょ?』

「うん。おやすみ純」

『――が、頑張って梓!』

「あ、うん」

 電話が切れた後、梓は一人ガッツポーズをして、もうしばらくギターの練習を続けました。この分なら、納得のいくソロが出来そうですね。

13 : 以下、名... - 2011/01/23(日) 20:49:25.31 OERl7/8r0 10/37

 翌日、唯と憂の仲良し姉妹が揃って登校しています。そして憂が幼馴染の和に気がついて、彼女に向かって手を振りながら呼びかけた所です。

「和さ~ん!」

「あら、奇遇ね。珍しく早いんだ」

「の、和ちゃん肩を貸して……」

「どうしたの唯? ストッキング被っちゃって」

「眠いんだよぉ! 被ってる訳ないじゃん!」

「実はお姉ちゃん昨日ずっと起きてて。ギターの練習してたみたいで」

「和ちゃん、たまにグサっとくる事いうよね」

「そうなんだ。ダメじゃない、しっかり睡眠はとらないと」

「だって私もソロやりたいんだもん」

15 : 以下、名... - 2011/01/23(日) 21:07:43.27 OERl7/8r0 11/37

「ソロ?」

「ギターソロの事です。梓ちゃんがやるならお姉ちゃんも負けられないって」

「ふ~ん、唯がそんな対抗心を燃やすなんてね」

「だって私へたっぴだし、もっと練習しないとあずにゃんに追いつかない」

「でもお姉ちゃんムチャしすぎ。体壊しちゃうよ」

「昔から夢中になると周りが見えなくなる、変わってないわね」

「へへへ……やってみるとこれが楽しくて」

「うふふ、頑張っている唯を見るのは好きよ」

「和ちゃん……おぶ……って……」

「おっ、お姉ちゃん寝ちゃダメーッ!」

「重いわ唯……成長したわね……」

16 : 以下、名... - 2011/01/23(日) 21:13:19.99 OERl7/8r0 12/37

 結局、二人がかりで唯を担ぐ事になり、遅刻は免れたものの、朝から重労働を課せられてしまった憂と和。

「そんな訳で、大変だったんだよっ!」

 ここは一年二組の教室。遅刻ギリギリ登校を純に冷やかされた憂は休み時間、それを余儀なくされた理由を説明したのです。

「へぇ~、やっぱ憂のお姉ちゃんっておもしろい」

「そういう問題?」

「えへへっ、そうなんだぁ~」

「憂もこのケースでその反応はおかしい」

「でも徹夜で練習なんてハンパないね」

「唯先輩らしい。その極端な所」

17 : 以下、名... - 2011/01/23(日) 21:21:00.52 OERl7/8r0 13/37

「でも梓ぁ、唯先輩がそんだけ必死に練習したっていうなら」

「何? 唯先輩がやる気になったのはいい事だよ」

「いやもしかして、ソロ危ないんじゃないのぉ~?」

「純!」

「ひゃ、ひゃいっ!」

「お昼になったら部室まで付き合って」

「う、嘘です梓様――へっ?」

「合わせてみたいの! 言わせないで!」

「ひゃい!」

「燃えてる梓ちゃん、かわいいっ!」

19 : 以下、名... - 2011/01/23(日) 21:26:18.66 OERl7/8r0 14/37

 そしてお昼休み、昼食も早々に切り上げて、梓と純は軽音部の部室までやって来ました。梓のソロの練習をする為です。

「適当でいいからリズムとって。出来る?」

「じ、自信ない」

「いいからやって」

「考えてみたら何で私が、梓の練習に付き合わなければならないのだろう?」

「ブツクサ言わない。時間もったいない」

「は、はーい……あ、この立ち位置、もしかして澪先輩?」

「そうだよ」

「そっか! 何だか俄然テンション上がって来たかも!」

「……ちょっとムカつくから、律先輩の位置でやってくれる?」

「何で!? ドラムあってやり辛いし!」

21 : 以下、名... - 2011/01/23(日) 21:32:18.67 OERl7/8r0 15/37

 なんやかんやありましたが準備が終わり、練習が始まりました。

 純のぎこちないベースから、やがて梓の滑らかなギターが入っていく。その正確で熟練されたギター捌きは、さらに磨きがかけられており、梓のギターの上手さをとっくにご存知の純でさえ、驚きました。

 これほど上手い人がうちの部に、いや高校生にいるのだろうかと。それ位の衝撃だったのです。

「――ふぅ」

「す、凄いよ梓、プロみたいだった」

「褒めすぎ。まだまだだよ、ちょっとミスっちゃったし」

「ううん、こんなに上手くなってるとは思わなかった」

「あ、ありがと」

「そりゃ唯先輩でも敵わないよ」

22 : 以下、名... - 2011/01/23(日) 21:36:30.40 OERl7/8r0 16/37

「唯先輩は、まだ一年ちょっとしかキャリアがないんだよ」

「まあ……」

「練習もロクにしてないし、私の方が上手くて当たり前」

「そ、そうだよねー」

「でも凄いスピードで進歩してる。その内私なんて追い抜かしちゃうよ」

「まさか。梓もっと自分に自信もちなよ」

「そうじゃない。唯先輩、本当は凄いんだから」

「あははっ、梓ってば何だか憂みたいだねー。唯先輩大好きですってか?」

「なっ、ち、違うもん! 私はただ客観的にね!」

「はいはい、照れない照れない」

「もっ、もうー! 純ーっ!」

23 : 以下、名... - 2011/01/23(日) 21:42:04.85 OERl7/8r0 17/37

 そんなこんなで放課後になり、軽音部は珍しく練習モード。今日張り切っているのは、梓だけではないようです。

「じゃあ梓、ふわふわのサビの後ソロだから。頼むぞ!」

「はい」

「ちょっと待っておくんなせえ、りっちゃん!」

「何だ唯? 今日はお茶なら後だぞ?」

「違うよぉ~、りっちゃんじゃあるまいし」

「失礼ね! ていうかお前にだけは言われたくねぇッ!」

「所で律ちゃんって言い難いけど、りっちゃんでも一応つが小さくなっただけで何一つ省略されてないよね。でも言い易い不思議!」

「お前は一体、何の話をしとるんだ?」

24 : 以下、名... - 2011/01/23(日) 21:47:19.77 OERl7/8r0 18/37

「あっ、違いました! 私もソロをやりたいです!」

「唯~、あのな? それは梓に決まったろ?」

「あずにゃんと一緒がいいの!」

「……」

「唯、残念だがそれは曲の構成上無理なんだ」

「唯ちゃんは歌もあるんだからそれに集中して……ねっ?」

「そうだぞ唯~、お前そんな器用じゃないんだからぁー」

「りっちゃんだけには言われたくありません!」

「あ、あの、私と唯先輩が順番にやればいいんじゃないでしょうか?」

26 : 以下、名... - 2011/01/23(日) 21:52:10.71 OERl7/8r0 19/37

「でへへぇ~、あずにゃ~ん」

「梓、あんま唯を甘やかすなよ。メンドクサイ」

「でも私、唯先輩のソロも聴いてみたいですし……」

「あずにゃんよ~しよしよしよし~」

「やめて下さい! ソロ譲るなんて言ってませんから!」

「わ、分かってるでごじゃいまするよぉ」

「う~んでも、そういう対決みたいな事する必要あるのかなァ?」

「私は梓に同感だぞ。唯がどんなソロ作ったのか興味あるし」

「澪ちゃん! やっぱり優しい!」

27 : 以下、名... - 2011/01/23(日) 21:57:09.86 OERl7/8r0 20/37

「あ、当たり前だろ……仲間じゃないか」

「澪ちゃん……」

「ほら、タイがほどけてる」

「わざとなの……澪ちゃんに直して貰いたいから」

「バカ……」

「そこそこー、臭いドラマしないー」

「てへっ」

「どうせ練習なんだし自由にやりましょ」

「うわ~い!」

「そだな。んじゃまず梓から行くぞ」

「はいっ!」

30 : 以下、名... - 2011/01/23(日) 22:04:37.84 OERl7/8r0 21/37

 一曲目、梓のソロ。下手すれば浮いてしまうような自己主張がありながら、見事に曲とマッチしており、キャッチーでかっこいい感じ。

 評判は上々のようです。

「梓、凄いじゃないか!」

「おまぁー、本当に高校生か!?」

「梓ちゃん、かっこよかったわ」

「ありがとうございます」

「あははっ、やっぱあずにゃんには敵わないかなぁ~」

「弱気な事いわないで下さい。唯先輩の番ですよ」

「あいよっ! 頑張るよー!」

32 : 以下、名... - 2011/01/23(日) 22:10:44.47 OERl7/8r0 22/37

 次は唯の番です。正直梓は、自分の方がまだまだ唯先輩より上だと、高を括っていました。しかし、予想外の事が起きます。

 唯のソロが始まると、梓は、いえ部員全員が驚愕したのです。

 独創的、かつ初めから用意されていたかのような一体感。聴いているだけで踊りだしたくなるようなメロディ。

 曲自体が唯のソロによって、何段階もスケールアップしたかのよう。これを聴いて、鳥肌の立たない者はその場にいませんでした。

「――あっ、ごめ」

「あっ、りっちゃんミスった。ダメだよー、せっかくノってたのに」

「……」

「こ、これ、本当に唯が作ったのか?」

「うん。アドリブで申し訳ないけど……てへへ」

33 : 以下、名... - 2011/01/23(日) 22:15:38.26 OERl7/8r0 23/37

「アドリブだって」

「はは……」

 唯のソロを聴いた後では、梓のソロは悪くはないもののどこかありきたりな、使い回しのようにしか感じず、妙な空気が漂いました。


「唯先輩の方が、良かったですね」


 その空気を破ったのは、梓本人でした。それを聞いて能天気に唯は喜びます。

「本当? 頑張った甲斐があったよぉ!」

「い、いやね? 梓も良かったんだ、ホント」

「でも、ふわふわに合うのは唯かな……」

「わ、私は梓ちゃんでもいいと思うけど」

34 : 以下、名... - 2011/01/23(日) 22:20:40.45 OERl7/8r0 24/37

「いいんです、ムギ先輩。私がやっても私自身が納得しませんから」

「……」

「しかし唯は、本当に私達を驚かせるな……」

「お茶にしない? アタシつかれちった!」

「あはは! ナイスな提案だね、りっちゃん!」

「私も今日は疲れちゃいました」

「そ、そうね! 今すぐ準備するね!」

「あ、少しトイレ行って来ていいですか?」

「おっ、いってら」

「あー、私も行くー!」

36 : 以下、名... - 2011/01/23(日) 22:27:14.62 OERl7/8r0 25/37

「お前は残れ!」

「うわーん! どうして!?」

 そそくさと部室を出て行く梓を見守った後、律は唯に言いました。

「一人にしてやろうよ。ああ言ってたけど、やっぱりショックはあるんだよ」

「ショックゥ? なにそれ?」

「ああ~、もうお前ニブいな! なんザマスか!」

「唯に負けた事が、私達の期待に応えられなかったって思ってるんだよ」

「へっ?」

「梓ちゃん、責任感の強い子だから……」

37 : 以下、名... - 2011/01/23(日) 22:32:58.05 OERl7/8r0 26/37

「そんな! あずにゃんは」

「分かってる! 梓の演奏は完璧だったさ!」

「ただ、唯が凄すぎた」

「わ、わた……私、そんなつもりじゃ……あずにゃんと一緒に……」

「唯ちゃんは悪くない。ううん、誰かが悪いって訳じゃないの」

「こんな事なら私やめ――」

「やめる? その方が梓を傷つけるんじゃないのか?」

「ふえぇん! じゃあどうすればいいのぉ!?」

「泣くな! 私が悪かった! ごめん!」

38 : 以下、名... - 2011/01/23(日) 22:38:13.27 OERl7/8r0 27/37

「梓ちゃんは強いわ。きっと――いいえ、必ず立ち直る」

「でも少し心配だな……」

「私、ちょっと見てくる!」

「ムギ!」

「ムギちゃん! お供します!」

「お前は残れ! 刺激が強すぎる!」

「唯、ムギに任せよう!」

「あうっ、離して! 漏れちゃうよ!」

「が、我慢しろい」

「待ってて唯ちゃん! すぐ梓ちゃん呼んで来るからね!」

39 : 以下、名... - 2011/01/23(日) 22:43:17.17 OERl7/8r0 28/37

 紬が梓を探しに部室を出ると、梓がそう遠くない所で一人佇むのが見えました。紬は忍び足でゆっくりと、慎重に梓に近付いていきます。

 わざとらしい、無駄のある動きなので、梓がそれに気がついてない筈はないですが、梓は気付かないフリをして紬を迎えました。

「……」

「泣いていたの?」

「泣いてなんかいません! あれ位で泣く訳ないです!」

「そっか」

「何しに来たんですかムギ先輩」

「トイレだけど……ダメかしら?」

「申し訳ありません。少しだけ一人にしてもらえますか」

41 : 以下、名... - 2011/01/23(日) 22:51:27.29 OERl7/8r0 29/37

「どうしても?」

「私は唯先輩に嫉妬しているのかも知れません」

「そんなの……」

「そういう悪い気持ちを唯先輩に持つ、自分が許せないんです」

「しょうがないわよ。誰だって弱いもの」

「私はムギ先輩のように寛大じゃない。小さい人間なんです」

「私だって別にね?」

「理屈じゃ分かっていても割り切れない」

「――ねえ、梓ちゃん。昔話だけど聞いてくれる?」

42 : 以下、名... - 2011/01/23(日) 22:57:17.39 OERl7/8r0 30/37

「何ですか急に?」

「私は小さい頃、しつけが厳しかったせいかあまり遊ばない子どもだったわ」

「そうなんですか?」

「ええ、良く遊ぶ子は、悪い子だと思っていた位でね」

「今のムギ先輩はその反動なんですね」

「うふふっ、そうよ。ブランコ乗ったりだとか、そういう事もしてみたい」

「高校生なのに?」

「まだ、高校生だもん」

「ぷっ、くく……」

「笑った」

44 : 以下、名... - 2011/01/23(日) 23:05:07.47 OERl7/8r0 31/37

「だってムギ先輩、おかしいです」

「でも一人じゃ勇気がなくて出来ないんだけどね」

「私で良かったら付き合いますよ」

「高校生なのに?」

「自慢じゃありませんが、まだ小学生にも間違えられます」

「やだっ、うふふっ! でもいいのかな?」

「卵を割らなければオムレツは作れないと言いますし」

「あら? つまり?」

「ドイツ軍人の言葉らしいんですけど、何故か気に入ってて座右の銘です。何事も行動しなければ始まらない、分からないって意味らしいです」

46 : 以下、名... - 2011/01/23(日) 23:11:57.29 OERl7/8r0 32/37

「行動力抜群の梓ちゃんにピッタリね」

「あはは……何だか照れ臭いですね」

「梓ちゃんは強いよ。何でも行動に移せる勇気があるもの」

「ありがとうございますムギ先輩。いつも励ましていただいて私……」

「梓ちゃん……でもね、私だけじゃなくてみんな心配してる」


「もう平気です。本当だもん」


「……唯ちゃんも梓ちゃんの事、心配してたよ」

「む! 唯先輩が甘えた事いってたら叱ってやります!」

47 : 以下、名... - 2011/01/23(日) 23:17:44.30 OERl7/8r0 33/37

「あらあら」

「行きますよ! ムギ先輩!」

「ふふ……」


(唯ちゃん……私ちょっと妬けちゃうかも……)


 梓が戻った軽音部。彼女が戻ればいつも通り、みんな和やかお茶を楽しみます。

「あずにゃん! 会いたかったよぉ!」

「何言ってるんですか! お茶が済んだらまたやりますよ!」

「えぇ~、今日はもう無理無理ぃ~」

「無理無理ぃ~」

「そんなんじゃダメです!」

「梓、こいつらはもうダメだ」

48 : 以下、名... - 2011/01/23(日) 23:23:08.55 OERl7/8r0 34/37

 その翌日。梓は今日も元気に登校、教室で憂と純に挨拶をします。ついでに昨日の出来事も話しました。

「そういう訳で、唯先輩はやっぱり凄かった」

「でしょっ、でしょっ? えへへ~」

「ふ~ん。何かにわかには信じられない話ねえ」

「お姉ちゃんやる時はやるんだよ! 純ちゃんっ!」

「普段の唯先輩を見ていると信じられないけど、本当なのよ」

「う~ん……やっぱりにわかには信じられないわ」

「良かったら純、部活見学する? 自分の目で確かめれば」

「やっ、私も部活あるんですが」

「私行こうかなぁ」

49 : 以下、名... - 2011/01/23(日) 23:29:09.50 OERl7/8r0 35/37

「本当?」

「うーんでも、お夕飯のお買い物しなきゃいけないの」

「残念。憂も軽音部入ってくれたら楽しかったけど、それがあるんだよね」

「ごめんね付き合えなくて。でも梓ちゃんがそう言ってくれて嬉しいよ」

「あはは、憂ったら~」

「……梓、憂にも私と同じ事いってるんだ」

「えっ」

「軽音部に入れば誰でもいいのねっ! この女ったらしっ!」

「何その小芝居」

「梓ちゃんと純ちゃん、もうすっかり仲良しだねぇ~」

50 : 以下、名... - 2011/01/23(日) 23:34:40.34 OERl7/8r0 36/37

 そして放課後。軽音部はまたもや練習モード。雪でも降るんでしょうかね?

「よっし、ふわふわ行くぞぉ。唯~、ソロ頼むな」

「唯先輩! しっかり決めて下さいね!」

「あっ、あのぅ~、誠に言い難いのですが……」

「どうしたんです?」

「トイレか?」


「わ、忘れちゃった!」


「なっ、なにィーッ!?」

「えへへ……だってぇ、アドリブって言ったじゃ~ん」

「……」

51 : 以下、名... - 2011/01/23(日) 23:41:18.05 OERl7/8r0 37/37

「あの凄いソロが幻……究極の一夜漬けだな……」

「録音すれば良かったね」

「もう一回やれ! 責任取れ!」

「む、むりゃぁ――あずにゃ~ん!」

「し、信じられません! 真面目にやって下さい!」

「しょ、しょんなぁ~」

「あーあ、やっぱりソロは梓に決定だな」

「良かったね、あずにゃん!」

「全然良くありません!」

(うふふ、唯ちゃんは嘘が上手ね)

 多少の本気も何のその、今日も軽音部は平常運転止まりのようです。
おしまい。

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