前作

魔王「震えろ人間!! 地上はこの魔王の物となる!!」
http://ayamevip.com/archives/47142609.html

の続き

元スレ
魔王「震えろ人間!! 地上はこの魔王の物となる!!」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1457948822/

83 : 以下、名... - 2016/03/23 16:32:07 OJfZyuU2 2/83





 ── 魔王と勇者 ──



 魔王が誰よりも上に立ち見下すのなら、勇者は誰しもと同じ目線に立って共に空を見上げる。

 魔王が絶望を与えるのなら勇者は希望を与え、魔王が世界を破壊するのなら勇者は世界の平和を守る。

 魔王が破れれば新たな魔王が現れ、勇者が破れれば新たな勇者が現れ、それを何度も繰り返して世界は歴史を築く。


 つまりは、魔王と、勇者の歴史。


 その歴史を終わらせる事が出来るとするのなら、それは……魔王か、勇者、どちらかが、自らの役割を変えた時。

84 : 以下、名... - 2016/03/23 16:34:01 OJfZyuU2 3/83



最終話

勇者「世界を救うのは、この私だ!!」

85 : 以下、名... - 2016/03/23 16:49:50 OJfZyuU2 4/83




 魔王城 玉座の間



黒騎士「っ!?」チラッ

黒騎士(アイツがあんなにも感情を剥き出しにするなんて……どうしたんだ!?)


武闘家「カッ、よそ見すんじゃねぇぜ? まっくろくろすけの大将さんよぉ!!」ダッ

武闘家「風陣脚ッ!!」ブォン



黒騎士「ぐっ……」ジャキッ

黒騎士「フンッ!!」ガキィィン


武闘家「……」

武闘家「チッ。首を狙ったんだが……流石に弾き返すか」

87 : 以下、名... - 2016/03/23 23:50:23 OJfZyuU2 5/83



武闘家(だが、受けには回れねぇ。攻め込むんだ!! 零距離まで詰めて、奴の剣を封じる!!)

武闘家「であぁァッ!!!」ダンッ


黒騎士「ほぉ、飛び込んで来るか?」ニヤリ

黒騎士「しかし、勢いだけではなッ!!」



武闘家(剣の攻撃は主に三種類。縦への斬撃か、横への凪ぎ払いか、突きか……)

武闘家(それさえ見切れれば!!)


黒騎士「遅いッ!!」ブォン

武闘家(縦への降り下ろし!?)

88 : 以下、名... - 2016/03/24 00:11:08 UtBoNO2w 6/83



武闘家(狙うのは、降り下ろされる剣の側面。横へ弾き跳ばすように、そこへ拳を……叩き込む!!)

武闘家「ハァッ!!!」ガキィッ


黒騎士「ぐっ……」グラッ

武闘家(バランスを崩した!? 今ならどうやったって、俺の攻撃の方が早い!!)



武闘家「今度こそ、その首を貰うぜ大将!!」

武闘家「風陣脚ッ!!」バッ


黒騎士「……」

黒騎士「ハヤブサ斬り!!」ブォン

89 : 以下、名... - 2016/03/24 00:28:14 UtBoNO2w 7/83



武闘家「あ」

武闘家「ヤベっ……」


賢者「イオッ!!」バッ

武闘家「っ!? ぐああァッ!?」ドゴォォン



賢者「ごめんな武闘家? 何となく危なそうだったから、吹っ飛ばしちゃったぞ」

武闘家「いや、助かった……あんがとよ」フラフラッ


武闘家(ハヤブサ斬り。確か、一瞬の間に二度の斬撃を繰り出す技だったな?)

武闘家(ヘタしたら、一撃目で風陣脚が弾かれ、二撃目でお陀仏だったか……危ねぇ危ねぇ)

90 : 以下、名... - 2016/03/24 00:32:15 UtBoNO2w 8/83



黒騎士「……」

黒騎士「白騎士」チラッ


白騎士「……」コクリ

白騎士「では、私は魔法対決にしましょう」



白騎士「賢者さんも、そちらの方がよろしいですよね?」ニコリ

賢者「ん?」


賢者「……」

賢者「そうだな。そうしてくれた方が、こっちも嬉しいぞ」ニコリ

91 : 以下、名... - 2016/03/24 00:48:12 UtBoNO2w 9/83



白騎士「とは、言いましたが……」

白騎士「小技で競い合って、戦いを長引かせるつもりは有りません」ダッ


白騎士「すぐに貴女を倒し、仲間の援護に回らせて貰いますわ!!」

賢者「それはこっちのセリフだからねっ!!」キッ



白騎士(どうやら、防御魔法は掛けていないみたいですわね)

白騎士(ならば、有言実行っ!!)


白騎士「フィンガー、フレアボムズ!!!」バッ

賢者「ッ!?」

92 : 以下、名... - 2016/03/24 01:08:08 UtBoNO2w 10/83



賢者(マホカンタは使うなって言ってたよね? だったらっ!!)

白騎士「このメラゾーマの連続投擲!! 避け切れるものなら避け切ってみなさ……」


賢者「レミーラッ!!」ピカァァッ

白騎士「きゃぁぁぁぁぁぁっ!!?」ビクッ



白騎士「ぐっ、うぅっ、目がっ……こんな、目眩ましの魔法なんかにっ」フラフラッ

賢者「幾ら頑丈な兜を被ってたって、視界は遮れないでしょ?」ニヤリ


黒騎士「なにやってんだ!? 相手を見くびるな!!」

白騎士「問題、ありませんわ……マホターン!!」

93 : 以下、名... - 2016/03/24 01:17:32 UtBoNO2w 11/83



白騎士「ふぅっ、ふぅっ……」

賢者(動かない? 視力が戻るまで待つつもり?)


賢者「いいよ。そっちの防御魔法が切れた瞬間に、自分の最強魔法をお見舞いしてやるぞ!!」

賢者(みんなっ、にぃにぃ……力を貸してくれぇ!!)ギリッ



武闘家「……」チラッ

武闘家(んだよ、思ったよりよっぽどやるじゃねぇか)


武闘家(俺の方が、数段ヤバいか……)

黒騎士「……」ギロッ

94 : 以下、名... - 2016/03/24 01:22:18 UtBoNO2w 12/83



勇者「……」

少年「……」


勇者「行くぞ?」

少年「どうぞ」



勇者「……」ジリッ

少年「……」


勇者「イオラッ!!」バッ

少年「イオラッ!!」バッ

97 : 以下、名... - 2016/03/24 09:47:31 UtBoNO2w 13/83




 ドゴォォン!!


勇者(相殺ッ!! 同じ魔法なら、威力負けしていない!!)

勇者(大丈夫だ、私は……強くなってる!!)


勇者「ピオリムッ!!」

勇者「そしてっ、剣の腕は更に強くなっているんだっ!!」ダッ



少年「っ……」ジャキッ

勇者「剣を抜いたな? それでいい!!」


勇者「でぇぇぇぇぇい!!」ブォン

少年「はっ!!」ガキィィン

98 : 以下、名... - 2016/03/24 10:01:17 UtBoNO2w 14/83



少年「確かに、強くなったね……」

勇者「ああ。お前がバラ撒いてくれたモンスターを、倒しまくったからな?」


勇者「だいぶ、レベルアップしたよ!!」ブォン

少年「フッ!!」ガキィィン



勇者(それでも、ピオリムも使ってようやく互角……)

少年「ボクの予想以上だよ、勇者ぁっ!!」ニヤリ


少年「ギガッ、スラァァァッシュ!!」

勇者「くっ、ギガスラッシュ!!」

99 : 以下、名... - 2016/03/24 10:51:35 UtBoNO2w 15/83



僧侶「ああっ……」ブルブルッ

僧侶(背を向けたい、目を覆いたい、耳を塞ぎたいっ)


僧侶(どちらかを応援すると言う事は、どちらかの敗北を祈ると言う事)

僧侶「弱いのです、わたくしは……弱いのですっ!!」フルフル



僧侶(戦ってすらいないのに、安全な所で眺めているだけなのに)

僧侶(わたくしの体は誰よりも震え……歯を噛み締めて耐えなければ、恐らく真っ先に逃げ出してしまうでしょう)


僧侶(神よ、おお神よ、わたくしにこの戦いを見届ける勇気をっ!!)

僧侶「勇気を、くださいませっ!!」ギリッ

100 : 以下、名... - 2016/03/24 11:02:19 UtBoNO2w 16/83



勇者「イオ、イオ、イオッ、イオッ、イオッ!! そらそらそらそらそらぁっ!!!」ドドドドドドドドッ

少年「何発うったって、ふぅぅっ……当たらないよそんなの!!」ダッ


勇者「そうか? その割りには、息が上がって来てるように見えるがな!!」

勇者「イオラッ!!」バッ



少年「っ!?」

少年「うあああああああああぁッ!!?」ドゴォォン


勇者「……」

少年「うぅっ……」ガクンッ

101 : 以下、名... - 2016/03/24 11:10:16 UtBoNO2w 17/83



勇者「……」

勇者「くっ……」プルプル


少年「はぁっ、はぁっ、はぁっ」フラフラッ

勇者「フザケるな!! 私は何重にも補助魔法を掛けているんだぞ? 何故お前は使わない!?」



勇者「それに、どうして低級魔法をわざわざ避ける!?」

勇者「マホカンタは? マホターンは!? 最初のイオラ以外、どうして魔法を使わない!?」


少年「……」

少年「別に、意味なんて無いんで……」

102 : 以下、名... - 2016/03/24 14:56:57 UtBoNO2w 18/83



白騎士「あはははははっ、先ほどまでの勢いはどうしましたの!!」ブォン

賢者「ひぃっ、剣を使うなんてズルいぞ!?」サッ


白騎士「これが街の武術大会のようなものでしたら、幾らでも男らしく……いいえ、女らしく、潔くもなりましょう!!」

白騎士「敗けを認め、貴女を讃えもしましょう!! ですがっ!!!」キッ



白騎士「この戦いは私の全て!! 絶対に負けられません!!」

白騎士「フィンガーフレアボムズ!!」バッ


賢者「っ!? マホ……」

賢者「だめだっ、メラゾーマ!!」バッ

103 : 以下、名... - 2016/03/24 15:07:04 UtBoNO2w 19/83



武闘家「っ、賢者!?」チラッ

武闘家(早くッ、加勢に行かなぇとマズイ!!)


黒騎士「イオラッ!!」バッ

武闘家「イオラッ!!」バッ




 ドゴォォン

武闘家「チィィィィィィィッ!!」ギリッ

黒騎士「ふっ……」ニヤリ


黒騎士「……」

黒騎士「ん?」ピクッ

104 : 以下、名... - 2016/03/24 15:15:30 UtBoNO2w 20/83



少年「魔人斬りっ!!」ブォン

勇者「……」


勇者「みかわしきゃく!! ハァッ!!」シュッ

少年「ぐあぁっ!!?」ズドォッ



少年「う、ぐぅ、うぅっ……」フラフラッ

勇者(もう、明らかじゃないか!!)


勇者(私が強くなり過ぎたんじゃない……)

勇者(コイツが、弱くなったんだ……)ギリッ

105 : 以下、名... - 2016/03/24 15:23:24 UtBoNO2w 21/83



黒騎士「……」

白騎士「……」


黒騎士「もう、見てらんねぇよな?」

白騎士「そう、ですわね……」



黒騎士「武闘家よ、リベンジマッチに最後まで付き合ってやれなくてスマンな」

武闘家「あ?」


白騎士「賢者さん、どっちみち……この勝負は私の負けでしたわ」

賢者「はぁっ、はぁっ、はぁっ」フラフラッ

106 : 以下、名... - 2016/03/24 15:35:34 UtBoNO2w 22/83



白騎士「この鎧も……」

黒騎士「お役ゴメンだな」


白騎士「オープン!!」バリバリッ

黒騎士「オープン!!」バリバリッ



勇者「なんだ? 鎧が、砕けて、剥がれ落ちて行く?」チラッ

少年「あっ、だ、駄目だよっ!!」ビクッ




 バリィィィン!!

剣士「駄目だよ、じゃないだろ勇者?」

「そうですわ勇者様。全ては、貴方と同じ夢の為」

107 : 以下、名... - 2016/03/24 16:14:02 UtBoNO2w 23/83



賢者「……」

武闘家「どう、言うこった?」


剣士「簡単さ……」

剣士「俺たちは、一度死んでいる」



「そして、世界樹の力で甦った……」

賢者「世界樹で!?」


剣士「しかし、その世界樹は……知ってるだろ賢者よ?」

「ですから、何もしなければ、三日と保たずに体は消えていたでしょう」

108 : 以下、名... - 2016/03/24 16:26:14 UtBoNO2w 24/83



武闘家「じゃあ、なんで生きてやがる?」

剣士「……」


剣士「俺たちの体を現世に繋ぎ止めているのは、勇者の魔力だ」

「日々失われて行く生命力を、勇者様の魔力を流して貰う事で補い生き永らえているのです……」



勇者「お前は、だからそんなに弱く」チラッ

少年「うぅっ……」


剣士「だが、どうやらここまでのようだな」

「ええ。後は、頼みますわ勇者様」コクリ

109 : 以下、名... - 2016/03/24 16:43:39 UtBoNO2w 25/83



剣士「安心しな。姫さんは、俺が代わりに守ってやるさ」ニコリ

「ふふっ、ナイトには少し、頼りないですわね」クスッ


剣士「それと、お前の仲間になれて幸せだったぜ勇者? 好きだって言っとくよ」

「私も、こんなに外の世界を見て歩けるなんて、思いもしませんでした。愛しています、勇者様」



少年「ダメっ、だよ……」フラフラッ

少年「二人はボクの、とも、だち……」


剣士「……」

「……」

110 : 以下、名... - 2016/03/24 17:01:37 UtBoNO2w 26/83



「我ら、住まう地は違えども……」

剣士「その魂は、常に一つ!!」


剣士「行くぜ姫さん?」スッ

「私も、行きますわよ?」スッ




剣士「ニフラムッ!!」

「ニフラムッ!!」




少年「だめっ!!」ビクッ

少年「だめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」

112 : 以下、名... - 2016/03/24 21:08:13 UtBoNO2w 27/83



武闘家「体が……」

賢者「消えてってる……」




剣士「またな勇者っ」シュゥゥッ

「産まれ変わったら、また会えますわ勇者様」シュゥゥッ




少年「うぅっ……」ガクッ

少年「二人に、勇者の加護がっ、ありますようにぃっ」



僧侶「っ……」

僧侶「汝らの魂に、救済を……ヒカリアレ」

113 : 以下、名... - 2016/03/24 21:18:29 UtBoNO2w 28/83



少年「……」

少年「あはっ、涙も出ないや。もう、渇れちゃった」


勇者「……」

勇者「そうか」



少年「でも……」ゴソゴソ

勇者「ん?」


武闘家「アイツ、服の中から何か出しやがったぞ?」

賢者「あっ、アレは!?」ピクッ

114 : 以下、名... - 2016/03/24 21:25:50 UtBoNO2w 29/83



少年「んくっ、んくっ……」ゴクゴクッ

賢者「『エルフの飲み薬』!!」


少年「っ、ぷはぁぁっ」

少年「ふふっ、あはははははははははははッ!!!」




少年「本気、出すよ?」

少年「はああああああああああああ!!!」ゴゴゴゴゴゴッ



勇者「ぐっ!?」ビクッ

武闘家「なんだよ、この地鳴りみてぇな音はっ!?」

115 : 以下、名... - 2016/03/24 21:40:44 UtBoNO2w 30/83



賢者「おっ、音だけじゃないぞ!! 実際に城が揺れてるんだ!!」

僧侶「今、全ての力が戻られたのですね……」ボソッ


勇者「……」

勇者(やっぱり、私一人じゃどうしようも無いぐらい、強いんだなお前は?)クスッ



勇者「お陰でこっちも……」

勇者「決心が着いたよ」ギロッ



勇者「武闘家!! 賢者!! 僧侶も!!」

勇者「私の近くへ来い!! 集合だっ!!」

116 : 以下、名... - 2016/03/24 21:49:17 UtBoNO2w 31/83



少年「……」

少年「待っててあげるよ。何するか分からないけど」


勇者「助かる」

勇者「ほらっ、早くしろ!! 勇者チーム集合だ集合!!」



賢者「来たぞっ」タタッ

武闘家「作戦でもあんのかよ?」


僧侶「わたくしまで呼ばれた理由は……」

勇者「まぁ、取り敢えず」

117 : 以下、名... - 2016/03/24 21:55:30 UtBoNO2w 32/83



勇者「耳を塞げ」

賢者「耳を? なんでだ?」


勇者「理由はすぐに分かる」

武闘家「チッ。手で塞いだぞ。何かすんだろ? 早くしやがれ」



僧侶「わたくしも、塞ぎました」ペタッ

賢者「自分もっ」ペタッ



勇者「ふむ」

勇者「マホトラ……」ボソッ

118 : 以下、名... - 2016/03/24 22:21:17 UtBoNO2w 33/83



勇者「マホトラ、マホトラ、マホトラ、マホトラマホトラマホトラ」ボソボソッ

武闘家「っ!? テメェ、何やってやがる!!」ガシッ


勇者「わっ、バカ!! 耳は塞いでろと言ったろ!!」

勇者「マホトラマホトラマホトラマホトラマホトラ!!」



武闘家「ぐっ、ソイツをヤメろっつってんだよ!!」キッ

僧侶「武闘家、さん?」


賢者「へっ? どうしたんだ?」

勇者「マホトラ、マホトラ、マホ……」ピタッ

120 : 以下、名... - 2016/03/24 23:02:36 UtBoNO2w 34/83



僧侶「おや? おやおやっ!?」

僧侶「この感覚……もしや、わたくしの魔力は!?」ビクッ


賢者「じっ、自分の魔力もすっからかんになっちゃったぞ!!」ビクッ

武闘家「俺もだよチクショウ。さて……納得の行く説明をして貰おうか?」




勇者「そんなの、一つしか無いだろう? 安心して、私に任せろ」

武闘家「あん?」




勇者「みんなありがとう……そして、さよならだっ」ニコリ


勇者「バシルーラッ!!」バッ

121 : 以下、名... - 2016/03/24 23:12:37 UtBoNO2w 35/83



少年「っ……」ピクッ

少年「……」


少年「一人で、戦うの?」

勇者「私しか、居ないよ……」チラッ



勇者(ふぅ。マホカンタは使ってなかったようだな。賢者に念押しして置いて良かった)

勇者(それに、魔力が尽きては……ここへ瞬時に復帰も不可能だろう)



勇者(安心しろ。安心しろ。武闘家、賢者、僧侶)

勇者「私が、私が弟を止めるッ!!」キッ

122 : 以下、名... - 2016/03/24 23:33:37 UtBoNO2w 36/83



少年「止める? ボクを? どうやって?」クスッ

勇者「すぐに、分かるさっ!!」ジャキッ


少年「昔から変わらないね? 考えが、甘いよ?」

勇者「お前だって、甘いだろうに……」



少年「……」

勇者「……」


少年「聖なる雷ギガデインと、魔界の雷ジゴスパーク」

少年「勇者の最強魔法と魔王の最強魔法!! その両方を扱うボクに、一体どうやって勝つって言うの!!?」バチバチィィッ

124 : 以下、名... - 2016/03/25 11:02:02 uDoFnTs. 37/83



少年「そしてっ!! この二つを掛け合わせたボクの究極魔法……ジゴデインは」

少年「マホカンタなんかじゃ防げないよっ!?」バチバチッ バチバチバチッ


勇者「……」

勇者「茶番だな。もう、終わりにしよう……」



勇者「確かにお前は強い。私一人では、まず勝てない」

少年「仲間が居たって勝てないよ。その仲間も……遠ざけた、ううん。逃がしたのかな?」クスッ


勇者「ああ、そうだ」

勇者「これで、お前と同じく、独りぼっちだ……」

125 : 以下、名... - 2016/03/25 11:15:48 uDoFnTs. 38/83



勇者「……」

少年「……」


勇者「この場ではな?」

少年「は?」



勇者「お前は魔王。配下は数多く居ようが、友と呼べる者はどれだけ居た?」

少年「っ……」ギリッ


少年「そんなのっ、そんなのっ!! お姉ちゃんだって同じでしょ!!?」

少年「武闘家に、賢者に、僧侶を入れたって、三人しか居ないじゃないか!!?」

126 : 以下、名... - 2016/03/25 11:33:10 uDoFnTs. 39/83



少年「だいたいっ、ボクに勝とうとしたら、それはもうメガンテしか無いんだ!!」ギロッ

少年「至近距離まで近付いて、自爆するしか無いんだよ!! アンタにはぁぁぁぁぁぁっ!!!」バチバチバチィッ


勇者「っ……」

勇者「メガンテは、使う……」



勇者「だがその前に、やれる事をやってからな?」ニヤリ

少年「ふふっ」クスッ


少年「だからないよ、そんなの……」

勇者(頼むホルンの指輪……今こそ、私の声を世界中に届けてくれっ!!)ピカァァッ

128 : 以下、名... - 2016/03/25 15:51:18 uDoFnTs. 40/83



勇者「……」ジャキッ

少年(剣を頭上に掲げた?)


勇者「すぅーっ……」

勇者「……」



勇者「地上に住まう、全ての生命達よ!! 我が名は勇者!! どうか、私の言葉を聞いて欲しい」

少年「うそっ……」ビクッ


勇者「戦いの終結はもうそこまで来ている!! 後は魔王に正義の鉄槌を下すのみだ!!」

勇者「だが、それでは足りない。私だけの力では、魔王に勝てない!!」

129 : 以下、名... - 2016/03/25 16:39:06 uDoFnTs. 41/83



勇者「しかし!! 皆の力を一つに合わせれば、必ずや魔王を倒す事が出来る!!」

勇者「私は勇者だが……誰かを守りたい、何かを守りたい、平和を守りたい」


勇者「友を、家族を、自分を、愛する者を、プライドを、未来を、夢を、何でもいい!!」

勇者「魔王に支配されれば世界は閉じる。閉じた世界に将来は無いんだ!!」



勇者「だから、だからっ!! 誰かを、何かを、自分を、平和を!! 守りたいと想う全ての勇気有る者達よ!!」

勇者「お前達も勇者だ!! 私は、その代弁者に過ぎない!!!」


勇者「だから、だから、だからっ!! 皆の力を私に貸してくれっ!! 私の名を呼べ、私の名を叫べっ!!」

勇者「その声援こそが力になる!! 皆の力で、魔王を倒すぞッ!!!」

130 : 以下、名... - 2016/03/25 16:48:39 uDoFnTs. 42/83



勇者「頭に浮かんでいる筈だ、魔王を倒す力の名が!! 私に続け勇者達よ!!」

勇者「魔王を倒す、その力の名こそッ!!」


勇者「勇者最大の奥義……」

勇者「ミナデインッ!!!」バキィィン



勇者(くっ、指輪が壊れたか)

少年「……」


少年「なに? だからどうしたの?」

少年「剣を掲げたまま立ってるだけ。どこも変わってないよ?」クスッ

131 : 以下、名... - 2016/03/25 17:42:20 uDoFnTs. 43/83



勇者「……」

少年「諦めれば?」


少年「さっきも言ったけど、ボクを倒すならメガンテしか無いんだ」

少年「早く、メガンテを使う準備しなよ……」



勇者「……」

勇者「感じるんだ」


少年「えっ?」

勇者「聞こえるんだ……」

132 : 以下、名... - 2016/03/25 17:51:17 uDoFnTs. 44/83



勇者「皆の声が、皆の願いが、皆の想いがっ……」

少年「っ!?」ピクッ


勇者「その、一つ一つがッ!! 私の力になるッ!!!」

勇者「はあああああああああああアアァッ!!!」ズドォォォォッ




少年「この力はっ!?」

少年(凄く強い魔力の波動が、お姉ちゃんを中心に渦巻いてる)


少年(確かにこれなら、メガンテは必要ないね)

少年(これなら……)クスッ

133 : 以下、名... - 2016/03/25 17:57:40 uDoFnTs. 45/83



少年(きっと、門が開くッ!!)

少年「はああああああああああアアァッ!!!」ズドォォォォッ


勇者「ぐっ……」

勇者(どこまで力を上げるんだコイツは!?)



少年「さぁ!!」

少年「最終決戦だよお姉ちゃん!!」バチバチィィッ


勇者「そうだな弟……私が勝つか」

少年「ボクが勝つか……」

137 : 以下、名... - 2016/03/26 11:21:03 l.xTSzdE 46/83



勇者「……」

少年「……」


勇者「いい加減にしたらどうだ? 茶番だと言ったぞ? 何を企んでいる?」

少年「たくらむ?」




 グラグラグラッ!!!!


勇者「くっ、なんだこの激しい揺れは!? お前の力か弟!!」フラッ

少年「ぐっ、違うよっ……ううん、違うくもないね」フラッ


少年「ボクと、お姉ちゃんの力だよ」

少年「ここに、『門』が開くんだ」ニヤリ

138 : 以下、名... - 2016/03/26 11:34:20 l.xTSzdE 47/83



勇者「門?」

少年「そうだよ」


少年「この世界と」

少年「魔界を繋ぐ、巨大な転送ゲート……それが開くんだ」



勇者「開くと、どうなる?」

少年「言わなくても、分かるでしょ?」


少年「魔界のモンスターがゲートを通って現れ、世界を荒らし回るだろうね」

勇者「っ……そうか」ギリッ

139 : 以下、名... - 2016/03/26 14:33:55 l.xTSzdE 48/83



勇者「しかし、今の地上に住まう者達は強い。そう易々と……」

少年「駄目だよ」


少年「これまで地上にバラ撒いたモンスターは、この城に在った特殊な宝石を媒介にして」

少年「魔王の力を持つ、ボクが造ったモンスターだからね」



少年「命令を聞くだけの、お人形さんだよ……」

少年「建物は壊しても、出来るだけ人々を殺さないように戦わせてたし」


少年「強襲したエジンベアだってそう。壁や城は破壊したけど、逃げ出した人を追う事はしなかった」

少年「今だって、力を合わせれば撃退できる……そんなレベルで襲わせているんだ」

140 : 以下、名... - 2016/03/26 16:00:03 l.xTSzdE 49/83



少年「だけど、門を通って出てくるモンスターは『本物』だよ?」

少年「まだ、魔王で在るボクの命令を聞く奴も居るかも知れないけど……」


少年「こんな魔王じゃ、不信感を募らせて大半は出て行くだろうね」

少年「そして幾らボクでも、何千、何万とモンスターに出て来られたら捌き切れない」



少年「結局、地上はモンスターで溢れ返るよ」

勇者「……」


勇者「ふむ。なるほどな……」

勇者「茶番の正体はそれか?」

141 : 以下、名... - 2016/03/26 16:07:23 l.xTSzdE 50/83



少年「……」

少年「魔界との門が開くって、知ってたの?」


勇者「いや、知らなかった」フルフル

勇者「お前に聞かされて驚いてるよ。内心はガクブルだ」



勇者「しかし、何故お前が魔王になったのかは理解している」

少年「……」


勇者「お前の行動を見て、お前の過去を覗いて、お前の考えを知りたくて、お前の思いを知りたくて、ずっと、ずっと……」

勇者「お前の真似ばかりしていたんだからな」クスッ

142 : 以下、名... - 2016/03/26 16:12:06 l.xTSzdE 51/83



少年「……」

少年「どうして?」


勇者「どうして?」

勇者「そんなの、一つしか無いだろ?」




勇者「お前の事が、好きだからだよっ!!」

少年「っ……」ピクッ


少年「嘘だ」ボソッ

勇者「嘘じゃない。と言うかな? 惚れさせたのはお前だろ!? 責任を取れバカっ」

143 : 以下、名... - 2016/03/26 16:20:28 l.xTSzdE 52/83



少年「じゃあ!!」

少年「じゃあ、なんであの時、弟だって認めてくれなかったの!!?」キッ


勇者「私は……な?」

勇者「ウェディングドレスを着て!! お前と結婚して!! その先のラブラブ新婚生活まで想像しちゃってたんだぞ!?」



勇者「それなのになんだ!! 相手は弟だって!? そんなの認められる訳ないだろ!!」

勇者「お前を弟だと認めてしまったら……結婚、できないじゃないかっ!!」キッ



少年「っ!? だったらそう言ってよバカバカバカっ!!」

勇者「うるさいバカバカバカバカバカっ!! 乙女心は複雑なんだ!!!」

144 : 以下、名... - 2016/03/26 16:27:45 l.xTSzdE 53/83




 グラグラグラグラッ!!!!


勇者「くっ、揺れが一層に強く!?」フラッ

少年「……」


少年「うん」

少年「うんうんっ」



少年「あはっ」

少年「あはははははははははっ♪」クスクスッ


少年「うん。これで、未練なし、かな……」ニコリ

勇者「は?」

145 : 以下、名... - 2016/03/26 16:48:43 l.xTSzdE 54/83



少年「もう、地上に戻って? ここからはボクの仕事だから」

少年「お姉ちゃんは、魔王を倒した勇者として……王様に報告すればいいよ」


勇者「えっ……」

少年「大丈夫。憎い憎い魔王は死ぬんだ。その為に、皆が力を合わせて協力したんだ」



少年「きっと、これからの世界はみんな仲良く……みんな平和に、続いて行くんだろうなぁ」クスッ

勇者「だっ、だから待て!! 何を言ってるんだ!?」アセアセ


少年「……」

少年「正真正銘、最後の仕事……ボクが、魔界へのゲートを閉じるッ!!!」

147 : 以下、名... - 2016/03/26 21:40:59 l.xTSzdE 55/83



勇者「……」

勇者「二人でやろう。そして、お前も地上へ帰るんだ」


少年「駄目なんだ……」フルフル

勇者「そうやって、すぐに諦めるなっ!!」キッ



勇者「お前が魔王を演じていたとしても、それを知る者は居ないんだろ?」

勇者「だったら問題ない!! これを片付けたら、今度こそ二人で暮らすぞ!!」


少年「だから、駄目なんだってばっ!!!」キッ

勇者「何が駄目なんだっ!!?」

148 : 以下、名... - 2016/03/26 22:09:36 l.xTSzdE 56/83



勇者「お前は、誰よりも人間を信用しているんだろ?」

勇者「誰よりも人間を、信用したかったんだ……」


少年「……」

勇者「裏切られそうだと分かっていても信じて、実際に裏切られても、それでも人間を信じたかった!!」



少年「勝手に、決め付けないでよ……」

勇者「真実だろ? お前は誰よりも人間を愛していたから、その人間が誰かを、何かを傷付ける事を許せなかったのさ」


勇者「愛を知らずに育てられたから、余計に愛情や友情を嬉しく感じてしまう」

勇者「そして、愛情や友情を与えてくれるのは、同じ人間だけだからな。だからお前は、誰よりも人間を愛し、信用したがっているんだ」

149 : 以下、名... - 2016/03/26 22:20:14 l.xTSzdE 57/83



少年「……」

少年「そう、だとしても……」


勇者「私が愛してやるっ!!」

少年「っ!?」ピクッ



勇者「私が一生!! お前を幸せにしてやるっ!!」

少年「結婚、できないよ?」


勇者「構うものか……世間に後ろ指を差されようと、知ったこっちゃない!!」

勇者「私が孕むまで、毎日子作りセッ○スするぞ!!」

150 : 以下、名... - 2016/03/26 22:40:26 l.xTSzdE 58/83



少年「……」

少年「あはっ」ポロポロッ


勇者「ん?」

少年「うぅっ。涙、渇れたと思ったのに、さっきだって、流れなかったのにぃ……なんでぇ」ポロポロポロポロッ



勇者「ふふっ。それはもしかして……嬉し泣きか?」クスッ

勇者「嬉しいから、泣いてくれてるのか?」ニヤニヤ


勇者「悲しい涙は渇れても、まだ泣けるじゃないか弟……」ニコリ

少年「ぐすっ。うんっ、うんっ」ポロポロッ

151 : 以下、名... - 2016/03/26 22:47:38 l.xTSzdE 59/83



勇者「だから、なっ?」

勇者「二人で帰ろ?」


少年「……」

少年「ありがとう、お姉ちゃん。好きだよ」ニコリ




 グラグラグラッ!!!!


勇者「っ!? 揺れがどんどん大きくなってる!? ゲートを閉じるぞっ、どうすればいいんだ!!!」

少年「けどね、やっぱり駄目……」


少年「何人も人を殺してるんだよ? ボクの両手は、見えない血で真っ赤なんだ」

勇者「それはっ、そうしなければ、もっと被害者が出ていたからだろっ!?」

152 : 以下、名... - 2016/03/26 22:58:34 l.xTSzdE 60/83



少年「……」

少年「そうかな? 他に方法が有ったかも知れないし」


少年「それに、魔王になってからだって、ボクの造ったモンスターが人を殺してる」

少年「数こそ少ないけど、戦って死んだ兵士や冒険者は居るんだよ?」



勇者「くっ……」

勇者「それならっ、これからの地上で、誰かの為になる事をして償えばいい!! 私も手伝う!!」


少年「強情だねお姉ちゃん」クスッ

少年「でも、やっぱり。やっぱり駄目……」

153 : 以下、名... - 2016/03/26 23:05:09 l.xTSzdE 61/83



勇者「これ以上、何が必要だ!? 言ってみろ!!」

少年「もっと根本的な事だよ……」


少年「もうすぐ現れる魔界のゲートは、魔界側からでないと破壊できないんだ」

勇者「っ……」ビクッ



少年「だから、これがボクの償い。これがボクの、最後の仕事」ニコリ

少年「開いたらすぐにゲートへ飛び込んで、魔界側から……ゲートを破壊する!!」


勇者「そっ、そうしたら、お前はどうなるんだ!?」

少年「さぁ? 戻って来れるかも知れないし、戻って来れないかも知れない」

157 : 以下、名... - 2016/03/27 14:25:16 9hFTpeek 62/83



勇者「駄目だ駄目だ駄目だっ!!」フルフルッ

勇者「だいたい、ゲート? それはどうして現れる!?」


少年「うーーん……現れるって言うより、見えるようになる。かな?」

少年「ゲートはずっと存在していて、魔王と同等かそれ以上の力を持つ者……つまり、勇者がここへ現れた時」



少年「ゲートは大きく拡がり、そして見えるようになるんだ」

少年「次の魔王が、出て来れるように……」


勇者「私にメガンテを使わせようとしていたのは?」

少年「メガンテは前準備として、自らの命を削って魔力に換えるでしょ? だからそうすれば、ボクと同じぐらいの強さになると思ったんだ」

158 : 以下、名... - 2016/03/27 14:39:01 9hFTpeek 63/83



少年「そこから実際に、メガンテを使うかどうかは別としてね……」

勇者「……」


少年「ボクが前魔王と戦っている時も、たくさんの魔物が出て来た」

少年「知らなくて殆ど逃がしちゃったけど、それでも魔王候補になりそうな奴はみんな倒したよ?」



勇者「だったら、また倒せばいい!! お前と私の二人なら出来る!! そうだろ!?」

少年「お姉ちゃん……」


少年「何ヵ月?」

勇者「は?」

159 : 以下、名... - 2016/03/27 14:51:45 9hFTpeek 64/83



少年「ううん。何年……戦い続けるつもりなの?」クスッ

勇者「っ!?」ビクッ


少年「前魔王は、何十年も何百年もこの城に留まって、人間同士で潰し合うのを高見してたみたいだけど」

少年「次に出て来る魔王もそうとは限らない。それに、ボクもお姉ちゃんも、これから現れるどんな奴よりも強いよきっと?」



少年「と、言う事は……ゲートはずっと開きっぱなしって事」

少年「ボク達が、やがて力尽きるまでね」


少年「これで分かったでしょ? 破壊する以外に、道は無いって」

勇者「いや、だがっ、二人で考えれば他に道が……」

160 : 以下、名... - 2016/03/27 15:03:03 9hFTpeek 65/83




 ゴゴゴゴゴゴゴッ!!!!


勇者「これはっ!?」フラフラッ

少年「残念だけど、それも無し。時間切れだよ……魔界への門が、実体化する!!」ギリッ




 グオオオオオオオオッ!!!!


勇者「なっ、なんだ!? 床に穴のようなモノが開いたぞ!?」サッ

少年「……」チラッ


少年「この、底の見えない真っ暗で巨大な穴……これが、魔界へと通じる門」

少年「らしいよ? 前魔王の話ではね」

163 : 以下、名... - 2016/03/27 15:29:10 9hFTpeek 66/83



勇者「っ……」ゴクリ

勇者「ここを落ちれば、魔界? ははっ、まるで地獄だ」


少年「うん。この先はきっと地獄だよ……」

少年「だからっ!! そんな地獄と、この世界はっ、繋げちゃイケないんだ!!」キッ



勇者「弟くん……」

少年「お姉ちゃん。早く、地上へ帰って」


勇者「それは」

少年「お願いだからっ!! 本当に、お願いだから……」

164 : 以下、名... - 2016/03/27 16:24:01 9hFTpeek 67/83



勇者「……」

少年「……」


勇者「わかった。それがお前の望みなら」コクリ

少年「ありがとう。大好きだよっ」ニコリ



勇者「最後に……お前を、抱き締めてもいいか?」

少年「うん……」


勇者「ありがとう」ギュムッ

勇者「私も、愛しているぞ?」ギュウゥッ

165 : 以下、名... - 2016/03/27 16:35:47 9hFTpeek 68/83



少年「……」ギュウッ

勇者「……」


少年「お姉ちゃん、そろそろ」

勇者「ああ、そうだな」



勇者「お前は、身を隠しながら機を伺っていて。現勇者と協力して魔王を倒した」

少年「へっ?」


勇者「しかし、現勇者は魔王との戦いで惜しくも命を落とした……」ギュウッ

少年「なに、言ってるの?」

166 : 以下、名... - 2016/03/27 16:48:33 9hFTpeek 69/83



勇者「なにって?」

少年「うん」コクリ


勇者「……」

少年「……」




勇者「ラリホー」

少年「んんっ!?」ビクッ


勇者「お前の人生は、これから始まるんだ……」

勇者「勇者として、さっきは償えなんて言ったが、姉としてはどうでもいいと思ってる」

167 : 以下、名... - 2016/03/27 16:55:49 9hFTpeek 70/83



勇者「お前が、幸せな人生を送れるのなら、それでいい」ニコリ

少年「うぅっ、おねぇ、ちゃ……」フラフラッ


勇者「それと、探していた両親の日記なら僧侶に預けてある」

勇者「目が覚めたら会うと良い……」



少年「っ、う……」ドサァァッ

勇者「さよなら、私の弟。後は、お姉ちゃんに任せろ!!」


勇者「……」チラッ

勇者「さて……」

168 : 以下、名... - 2016/03/27 17:25:37 9hFTpeek 71/83



勇者(ミナデインを放つ為に集まった力は、まだ私の中に溜まっている)

勇者(果たして……この一発で、壊せるのか?)


勇者(いや、壊せる!! 壊すんだっ!! 魔王の力すら越えるこの奥義。これで壊せなかったら、それこそ嘘だ!!)

勇者「武闘家、僧侶、賢者……」




 グオオオオオオオオッ!!!!


勇者「くっ……」ブルブルッ

勇者(震えているのか、私が? 今さらっ!?)


勇者(無事にゲートを壊せたとして、その後はどうなる? 力尽きるまで暴れたらモンスターに殺されるか?)

勇者(それとも……捕まって、死ぬまで化け物どもの慰み者にされてしまうのか?)ガクガクッ

171 : 以下、名... - 2016/03/27 20:41:13 9hFTpeek 72/83



勇者「どちらにせよ、退却は無い」

勇者「私は勇者だ!!」


勇者「世界を救うのは……」

勇者「この私だ!!」キッ




 グオオオオオオオオッ!!!!


勇者「……」

勇者「行くぞ……」ゴクリ


勇者「ゲートへ」

勇者「飛び込むッ!!!」ダッ

172 : 以下、名... - 2016/03/27 20:58:00 9hFTpeek 73/83




 アレフガルド 学園の校庭



賢者「痛たっ、自分たち……どこまで飛ばされちゃったんだ?」

僧侶「ここは?」キョロキョロ


武闘家「……」

武闘家「アレフガルド。勇者の、産まれ故郷だよ」



賢者「んー、ゴメン。しばらく待たないと、魔法は使えそうにないぞ」

武闘家(俺たちだけここへ送ってどうするよ? 王には、何て説明すりゃいいんだバカヤロウ!!)ギリッ


僧侶「武闘家、さん?」

武闘家「鍛えたこの拳も、ここ一番で……役立たずだったか。帰って、来いよ勇者?」

173 : 以下、名... - 2016/03/27 21:11:48 9hFTpeek 74/83




 魔界へと通じる大穴




 グオオオオオオオオッ!!!!


勇者「……」

勇者(落ちている……)


勇者(何秒も、何十秒も、ただただ、下へ、下へ、落下している)

勇者(暗い穴の中を、ずっと、ずっと……)



勇者(だからだろうな、余りにも穴が長いから、悟れてしまった。きっと地上へは、戻れない)

勇者(でも良い。この穴を抜けたら、すぐに門を壊す)


勇者(それで、終わりだ……)

勇者(何もかも、それで終わり)

174 : 以下、名... - 2016/03/27 21:23:42 9hFTpeek 75/83



少年「おねえちゃぁぁぁぁぁぁぁん!!!」

勇者「っッ!!?」ビクッ


勇者「うそっ……」

勇者「この、声、は」



少年「えへへっ、追い付いた」ニコリ

勇者「どっ、どうやって!? 私の方が早く……」


少年「気を抜いてたから魔法を食らっちゃったけど、元々ボクに状態異常は効かないんだ。すぐに目覚めたよ」

少年「そして、穴の中はアストロンを唱えて落ちて来たからね」

175 : 以下、名... - 2016/03/27 21:30:44 9hFTpeek 76/83



勇者「くっ……」

勇者「なぜ追って来たんだバカ者!! 私はな、お前を想って!!」


少年「……」

少年「寂しいよ……」



少年「ボク達は家族なんだよ? 姉弟なんだよっ!?」

勇者「だからと言って、お前まで地獄に落ちる事は……」


少年「一緒だよ、お姉ちゃん」ギュウッ

少年「二人で落ちる地獄なら、きっと怖くない」ニコリ

176 : 以下、名... - 2016/03/27 21:35:42 9hFTpeek 77/83



少年「二人なら……」

少年「どこに落ちたって、きっと楽しいよ」ギュウゥッ


勇者「っ、あ、そのっ、だな」ドキドキ

勇者「ぐぅっ……」ドキドキドキドキッ



少年「お姉ちゃんの胸の鼓動、おっきいね?」クスッ

勇者「うるさいバカっ」プイッ


勇者「……」

勇者「私も、弟くんが一緒だと、凄く心強いよ」ニコリ

177 : 以下、名... - 2016/03/27 21:43:32 9hFTpeek 78/83



勇者「行き着く先が地獄なら」

勇者「姉と弟が愛し合ったって、誰にも非難されない。誰にも文句を言われない」


勇者「だって、地獄だからな?」クスッ

少年「ふふっ。そうだねっ」クスッ



勇者「……」

少年「ん……」ピクッ


少年「聞こえる?」

勇者「ああ、そろそろ穴の出口……どこへ出るかは知れないが、魔界のどこかだろう」コクリ

178 : 以下、名... - 2016/03/27 21:48:13 9hFTpeek 79/83



少年「そして……」

勇者「大量のモンスター達が、ゲートの前へ集まって来ているな」


少年「穴の中が少し明るくなって来たし」

勇者「それに、モンスターの鳴き声が聞こえ始めている!!」



少年「……」

少年「どうするの、お姉ちゃん?」


勇者「ふっ、決まっているだろう?」

勇者「度肝を抜いてやるっ!!」ニヤリ

179 : 以下、名... - 2016/03/27 21:55:01 9hFTpeek 80/83



勇者「まぁ……」

勇者「門を破壊する時に邪魔になりそうだしな。すでに集まっているモンスーンに限っては一掃して置きたい」


少年「なら、二人の勇者の登場を……」

少年「派手にアピールしちゃおっか?」バチバチバチィッ



勇者「そうだな……」

勇者「やるかっ!!」バチバチバチィッ


勇者「よし、出口が見えて来たぞっ!!」

少年「タイミングを合わせてねっ!!」

180 : 以下、名... - 2016/03/27 21:57:28 9hFTpeek 81/83




少年「あ」

勇者「せーーーのっ!!」



少年「ダブルッ!!」バッ

勇者「ギガデインッ!!!」バッ






おわり

181 : ◆uC4PiS7dQ6 - 2016/03/27 22:03:40 9hFTpeek 82/83

取り敢えずこれで本編は終了です。ひとまずお疲れ様でした。

後は後日談と、更にその後日談のオマケ。もうちょっと付き合ってね


本当は、ダークエルフの森から魔王の城へ向かう前にもう一話有って、城へ向かう時に賢者は死ぬ予定だったけど、間延びしちゃいそうなんで止めた。

おやすみなさい

182 : 以下、名... - 2016/03/27 22:04:37 9hFTpeek 83/83


後日談と、更にその後日談のオマケは、スレが残ってればここに書きますm(__)m

記事をツイートする 記事をはてブする