1 : 以下、名... - 2016/03/14 18:47:02 v0sjS8x. 1/57
元スレ
魔王「震えろ人間!! 地上はこの魔王の物となる!!」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1457948822/
2 : 以下、名... - 2016/03/14 18:49:03 v0sjS8x. 2/57取り敢えずスレは立てましたが、書き始めるのはもうちょい掛かりますm(__)m
最近書いたの
おとこ「はい、ボクは幼馴染みさんの下僕です」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1457400097/
http://ayamevip.com/archives/47064846.html
魔王城 玉座の魔
白騎士「魔王様、『天空のホルン』の修復が完了致しました。どうぞ、お受け取りくださいませ」
魔王「うむ……」ガシッ
魔王「それで、どのぐらい保てるのだ?」チラッ
黒騎士「はっ!! 魔王様の魔力で有れば、50秒程かと」
魔王「50秒? 短いな……しかし、そろそろ動かねばなるまい」
白騎士「はい。魔王様のお言葉こそ、人間達へ恐怖を与える最大のダメ押しとなるでしょう」コクリ
黒騎士「魔力をホルンへ込めれば、すぐに50秒のカウントダウンが始まり」
黒騎士「その間、ホルンを通して魔王様が発した声は、地上に居る全ての者へと響き渡ります」
魔王「……」
魔王「そうか」
魔王(魔力を、天空のホルンへ込めるっ)ピカァァッ
魔王「ふぅっ……」
魔王「では、始めるとしようか?」ニヤリ
魔王「……」
魔王「グハハハハハハハッ!!!」
魔王「聞けよ人間!! 我が名は魔王!!!」
魔王「どうだ? 地上に散らばっている、黄泉の国より呼び寄せた我が軍勢は、目にして頂けたかな?」
魔王「既にッ、最大の城壁都市エジンベアは落ちた!! 貴様らに逃げ場は無いと知れ!!」
魔王「人間も、亜人も、獣人も、下等生物も!! エルフも、ドワーフも、リザードマンも、精霊も!!」
魔王「皆殺しだッ!!! 地上に住まう生物全てを、この手で葬り去ってくれる!! さぁ……」
魔王「震えろ人間!! 地上はこの魔王の物となる!!」
魔王「勇者を返り討ちにしたら、即座に本格的な進行を始めるぞ?」
魔王「それまでは精々身を寄せ合い、抵抗してみせろ。我を楽しませられれば……気が変わるかも知れんからなぁ?」ニヤリ
魔王「フッ、フハハハハハハハハハハハッ!!!」
魔王「ハハハハハハッ」バリーーン
黒騎士(ホルンが壊れた。時間ギリギリだったな……)
魔王「ゲホッゲホッ!! うぅっ、ノド痛い……大声だし過ぎたかな?」
白騎士「魔王様、うがい薬です。どうぞ」スッ
魔王「うん、ありがとシロ」ニコリ
白騎士「いえ。それに、素晴らしいお言葉だったと思いますよ?」
魔王「そうかな? 上手くやれた?」
黒騎士「ああ、最高の魔王だったぜ?」ニヤリ
魔王「……」
魔王「そっか。そうだと、嬉しいな……」クスッ
魔王「……」
魔王「……」
魔王「モシャス」シュン
少年「っと。魔王に変身すると弱くなっちゃうからね」スタッ
少年「これから先はこの姿で居るよ。どんな姿をしてたって、魔王はボクだし」
少年「それに、ここへはもう……三人しか居ないんだからさ」
── 最終局面 ──
地上に住まう全ての生命対魔王軍。
最早、対立の構図はハッキリと浮き彫りになった。
人間同士で、果ては他種族同士で、争っている暇など有りはしないのだ。
今や孤高にして神位の存在だった竜や精霊までも、人々の前へ姿を現して協力し、魔王軍と戦っている。
そして皆が皆、一人の勇者に希望を託すのだった……
魔王対勇者。闘いは、最終局面へ。
第九話
魔王「震えろ人間!! 地上はこの魔王の物となる!!」
最西の地 廬山の大滝
ザザァーッ
女騎士「……」
女騎士(勝機は、有る)
女騎士(例え相手がアイツだとしても、勇者の魔法を使えたとしても)
女騎士(ただ一つ。私が使えてアイツが使えない、勇者の究極奥義)
女騎士(その奥義ならば、アイツにも勝つ事が出来る!!)ギリッ
女騎士(だが……その奥義を、アイツに放てるのか?)
女騎士(私はアイツを、殺せるのか!?)
女騎士「……」
女騎士(こうして滝に打たれても答えは出ず)バシャバシャバシャッ
女騎士(つまりは……)
女騎士(出来ないって事なんだな。結局はアイツを、殺すなんて出来ない。私では、殺せない)
女騎士(しかし、地上に響いたアイツの言葉……止めるんだ、この私がッ!!)
女騎士(弟は、私が止めるッ!!!)カッ
女騎士「……」バシャバシャバシャッ
女騎士「くしゅん!!」
武闘家「魚が焼けたぞ!! そろそろ上がって来い!!」
大滝の側 川沿い
武闘家「ほらよタオルだ、さっさと体を拭いて服を着ろ」
女騎士「すまんな……」ゴシゴシ
武闘家「……」
女騎士「ふむ」フキフキ
女騎士「セッ○スするか?」チラッ
武闘家「しねぇよバカ!!」
女騎士「せっかく裸なんだぞ?」
武闘家「だから服を着ろっつってんだろが!!」
女騎士「何をそんなに怖がっている?」
武闘家「チッ」
女騎士「いつまで待っても、私の気持ちはお前の方へ向かないぞ?」
武闘家「……」
女騎士「どうしてもな、昔お前にイジメられていた頃を思い出すんだ」
女騎士「だから、一人の男としては愛せない」
武闘家「わぁーってるよ……」
女騎士「……」
女騎士「でもだぞ?」
女騎士「それよりもずっと、ずっと……人として、仲間として、尊敬もしてるし、感謝もしてる」
武闘家「……」
女騎士「武闘家、体で繋がるだけじゃダメなのか? お前が望むなら、お前の子を身籠っても良い」
武闘家「ばか、言うなよ……」プイッ
女騎士「そんなに、私とはシたくないか? それとも、他に好きな奴が出来たのか?」
武闘家「っ……」ギリッ
武闘家「んな訳ねぇだろっ!! 俺はずっとテメェが好きだったし、これからだってずっと好きだ!!」
女騎士「だったら……」
武闘家「いいんだよコレで!!」
女騎士「……」
武闘家「安心しな。魔王の野郎をブッ殺すまで、テメェの事は俺が命懸けで守ってやっから」
女騎士「ふふっ」クスッ
女騎士「惜しいな武闘家? そのセリフ……もっと昔に言われてたら、間違いなく私は落ちていたぞ?」ニコリ
武闘家「チッ」
女騎士「ありがとう武闘家。今ので私も決心が着いた……」
女騎士「例え誰だろうと……魔王を倒すッ!!」
武闘家「はぁ? ったりめぇだろ?」
女騎士「それでな武闘家?」
武闘家「どうした?」
女騎士「ケジメと決意だ。私はこれから、自らを勇者と名乗る!!」
武闘家「好きにしろよ」
女騎士「仲間もだ。これからは私を勇者と呼べ!!」
武闘家「僧侶も賢者も、既に呼んでんだろ?」
女騎士「お前もだよ」
武闘家「あん?」
女騎士「お前やテメェでは無く、勇者……きちんとそう呼べ」
武闘家「……」
武闘家「分かった……勇者、必ず魔王を倒すぜ!!」
女騎士「うむ。無論だ!!」
女騎士「そしてもう一つ……近くに寄れ」クイックイッ
武闘家「なんだよ?」スッ
女騎士「よし、掴まえた」ガシッ
武闘家「おい、一体なにを……」
女騎士「んっ」チュッ
武闘家「っ!!?」ビクッ
女騎士「……」ギュッ
武闘家「……」
女騎士「っ、はぁぁっ……許せ武闘家。私の、人間としての最後のキスだ」
勇者「これで心置き無く、私は魔王を倒す為だけの勇者になれる」ニコリ
勇者(そう。勇者としての役割を果たす……)
勇者(それだけだっ!!)
勇者「……」
武闘家「……」
勇者「それはそうと、ムラムラして来たのだが?」
武闘家「おい……」
勇者「頼む武闘家!! 後生だ!!」ペコリ
武闘家「知らねぇよ!! 自分で何とかしろや淫乱ビッチ!!」
勇者「あぁっ……罵られても感じるぞ私は?」ブルッ
武闘家「相変わらず終わってんな?」
勇者「前にも言ったが、お前の股ぐらで口を開けて待ってるから、自分で扱いて……」
武闘家「だから俺も、前にやらねぇって言ったろうが!!」
勇者「しかしな……これではベストコンディションで戦えない」
武闘家「チッ」プイッ
武闘家「本当にダメだって時は考えてたやっから、それまでは我慢して僧侶達を待ってろ」
勇者「ふむ……むっ? それで、その僧侶と賢者はまだ戻らないのか?」キョロキョロ
武闘家「賢者はさっき戻って来て……」チラッ
武闘家「あっちの木陰で休んでるぜ?」
賢者「くー。くー」
勇者「僧侶は?」
武闘家「まだ戻らねぇ所を見ると、どうやら僧侶がヒットだったらしいな」
勇者「ふぅっ……天空城へ向かう虹の橋」
勇者「その虹の橋を架ける為の重要なアイテムを、管理人がどこへ隠したか忘れるとは」
武闘家「まぁ、定期的に隠し場所を変えてたって言うし、最近はモンスターが彷徨いてゴタゴタしてっしな」
勇者「……」
勇者(管理人が定期的に隠し場所を変えていたと言うのは)
勇者(私が調べた、滝の裏の洞窟……)
勇者(武闘家が調べた、離れ小島の社)
勇者(賢者が調べた、地下火山の内部)
勇者(そして僧侶が調べている、沼地の洞窟)
勇者「……」
勇者「僧侶……」ボソッ
武闘家「なんだ? 僧侶が心配か?」
勇者「あ、いや……そうだな。そんな所だ」
武闘家「この辺りのモンスターは倒しちまったんだ、危険はねぇよ」
勇者「ああ、分かっているよ……」コクリ
僧侶「はぁ、はぁ、はぁ!! みなさーーん!!」タタッ
武闘家「おっ? ちょうど戻って来たじゃねぇか?」
武闘家「何か手に持ってるな? 杖か? もしかするとアレが……」
勇者「……」
勇者「……」
僧侶「お待たせ致しましたっ!! これが虹の橋を架ける……」ニコリ
勇者「止まれ僧侶ッ!!!」ギロッ
僧侶「っ!?」ビクッ
賢者「ん?」パチッ
武闘家「勇者?」
僧侶「ど、どうしたのでしょうか勇者さま? 突然大声を……」アセアセ
勇者「僧侶、どこへ行っていた?」
僧侶「どこへ、とは? わたくしには申している意味が……」
勇者「そのままの意味だよ。どこへ、行っていたんだ?」
僧侶「……」
武闘家「……」
僧侶「勇者さまも知っているでは有りませんか? わたくしは洞窟に……」
勇者「僧侶も知っている筈だ。私は、鼻が利くんだよ」
勇者「なぁ僧侶? お前から、ドロの匂いは一切しないぞ?」
僧侶「っ……」
勇者「それにだ。洞窟には、何も無かったよ」
僧侶「……」
勇者「僧侶から少し遅れて、実は私も洞窟へ向かったんだ」
勇者「けど、何も無かったし、お前とも会わなかった」
勇者「ぬかるんだ地面には、私の足跡しか無かった……」
勇者「なぁ、なぁ、僧侶? そのアイテムを、どこから持って来たんだ?」
賢者「ん? ん? どうしたんだ二人とも?」キョロキョロ
武闘家「いいから、黙って見とけ」
僧侶「……」
勇者「……」
勇者「気にするな。残念では有るが、この展開を考えていなかった訳では無い」
勇者「いつだったか……私が新しく勇者に選ばれ、その翌日には私のもとへ訪ねて来た」
勇者「前勇者の仲間で、今度こそ魔王を倒したいと言い……」
勇者「何をすべきかも、どこへ向かうべきかも、全てをナビゲートしてくれたな?」
僧侶「……」
勇者「話が出来過ぎなんだよ。上手く行き過ぎだ」
勇者「夜な夜などこかへ抜け出し、翌日にどうしたのかと聞けばシラを切る」
勇者「しかしそれでも、僧侶を信じていたかった」
僧侶「……」
勇者「疑いを向ける決定打になったのは、ダークエルフの森だな」
勇者「ただ立っているだけでも息苦しくなる程の邪悪が、すぐ傍らに居たんだ」
勇者「共に長年暮らしていた賢者はまだしも、その凄まじい邪気を、私と武闘家が感じていたのに」
勇者「僧侶、お前が感じない筈は無いだろ?」
僧侶「……」
勇者「しかしお前は、プレッシャーで緊張するどころか、綺麗な音色の歌まで奏でてみせた」
勇者「その時に悟ったよ……」
勇者「僧侶? お前があの程度の悪では何も感じないほど」
勇者「もっと巨大な悪の近くに居て、悪に……慣れているんだとな!!」
賢者「……」
武闘家「……」
勇者「ならば誰か!? あれほど悪を上回る悪となれば、それはもう……」
勇者「魔王しか居ない!!」キッ
僧侶「……」
勇者「どうだ、間違ってるか? 間違っているなら謝罪するが」
僧侶「……」
僧侶「その必要は、ございません」ニコリ
賢者「えっ、僧侶!?」ビクッ
僧侶「お見事です勇者さま」
僧侶「確かにわたくしは、使命を受けて皆さんをここまでご案内いたしました」
勇者「やはりか……」
僧侶「そしてこの『虹の杖』は、天空城……いえ、魔王城に安置していた物」
僧侶「万が一にも、誰かに取られては大変ですからね」クスッ
武闘家「そんで? それを使って魔王のとこへ行く。そこまではいいさ」
武闘家「そしたらよ? 僧侶? オメェは、こっちと、あっち。どっちの方へ着くんだ?」
僧侶「……」
僧侶「勇者さまと……」
僧侶「共闘し、魔王を討ちます!!」
武闘家「だってよ? どうすんだ勇者?」チラッ
勇者「一緒に行こう。それに僧侶を置いて行ったとしても、自由に魔王城へ行き来するんだったら意味が無い」
僧侶「はい……」ニコリ
僧侶「手順を踏んで虹の杖を用意しましたが、わたくしのルーラでも飛べますから」
勇者「だと思ったよ……」ニコリ
賢者「うぅっ……僧侶は、仲間って事で良いんだよね?」
武闘家「ああそうだ。取り敢えずは、今まで通りでいいってよ」コクリ
賢者「えへへっ。そっか……友達とは戦いたくないもんなっ」
僧侶「賢者……」
僧侶「……」
僧侶(わたくしはっ!!)ギリッ
僧侶「勇者さま!! 今こそ全てをお話……」
勇者「いや、いい」
僧侶「へっ?」
勇者「誰が相手だろうと、勇者のすべき事は一つ!! 魔王を倒す……それだけだ。だろ?」チラッ
僧侶「勇者、さま?」
勇者「よし!! 今から町へ戻ってぐっすり寝るぞ!!」
賢者「おーっ!!」ピョン
勇者「美味い物もたくさん喰おう!!」
賢者「おーっ!! おーっ!!」ピョンピョン
武闘家「もう、体を絞る必要もねぇ……久々に脂身たっぷりの肉でも喰うか」ニヤリ
勇者「そうだそうだ、たくさん喰え。僧侶と私は後から合流する」
僧侶「えっ?」
勇者「私も、おいしーい肉体を、味見してから行くよ♪」ペロリ
僧侶「ひぃぃっ!?」ビクッ
その夜 町の肉料理店
賢者「あぐあぐっ」パクパク ガツガツ
武闘家「逃げねぇから、もっとゆっくり喰え。ノドに詰まらせるぜ?」
賢者「うむっ!!? み、みじゅぅ……」ピクピク
武闘家「ああ、言わんこっちゃねぇ!! ほら飲めっ」スッ
賢者「んぐっ、んぐっ、んぐっ……ぷはぁぁっ、助かったぞ。ありがとね武闘家っ」ニコリ
武闘家「あいよ」
勇者「おっ、なんだ……仲良くやっているじゃないか?」タッ
武闘家「チッ、遅いっつんだよ。僧侶はとっくに来てんぜ? ご覧の通り、テーブルに突っ伏して寝てるがな」
勇者「なんだ、一口しか食べてないじゃないか。勿体ないから私が食べよう」
勇者「こら僧侶、フォークとナイフを放せ。私が食べられないだろっ」グイッ
武闘家「……」
武闘家「そんで?」
勇者「私か? 私は骨董品の買い物だ」
武闘家「買ったブツは部屋に置いて来たのかよ?」
勇者「ふっ。私の左手を見ろ」キラキラ
武闘家「あ? なんだそりゃ? 指輪?」ジィーッ
勇者「素晴らしいセンスだろ?」
武闘家「んなもん買いに行ってたのかよ……」
勇者「おい、引くな」
勇者「無論これは、普通の指輪じゃない」
勇者「……」
勇者「魔王の声が、世界中に響き渡った時が有るだろ?」
勇者「それはどうやら、天空の城に存在する『天空のホルン』と言う秘宝の力らしい」
勇者「そして天空のホルンは、一度使うと砕けるんだ」
賢者「あぐあぐっ♪」パクパク モグモグ
僧侶「すぅーっ。すぅーっ……」
武闘家「……」
勇者「つまり、次に使う時は、修復してからでないと使えないと言う訳だな」
勇者「そして……」
勇者「勇者ロトとの戦いで、前魔王は天空のホルンを使用している」
勇者「だから今の魔王は、修復してからホルンを使ったのだ」
武闘家「悪りぃ、長話は嫌いでよ……で、なんなんだ? 結論だけ教えてくれ」
勇者「結論か?」
勇者「ふむ……」
勇者「……」
武闘家「……」
勇者「今の魔王が使った天空のホルンは欠陥品だ」
勇者「何故なら、以前に砕けた時、その破片の一部が地上に落ちたからだ」
武闘家「ほぉ……するってぇと、その指輪は?」チラッ
勇者「うむ。破片を加工して作られた物だ。天空のホルンと同じ力を有しているぞ?」ニヤリ
勇者「フフッ」
武闘家「……」
武闘家「で?」
勇者「で、とは?」
武闘家「天空のホルンと同じ能力を使えるとして、それを勇者はどうすんだ?」
勇者「どうすんだ? 秘密だ」
武闘家「……」
勇者「もしかすると使わないかも知れない。そんなに気にするな」
勇者「それよりも肉を喰え肉を!! さっきから手が止まってるじゃないか?」
勇者「それとも……」
勇者「私が、『あーん』でもしてやろうか?」ニヤニヤ
武闘家「ああ?」ジロッ
武闘家「……」
武闘家「いや、頼むよ」
勇者「は? ホントにするぞ?」ピクッ
武闘家「しろよ」
勇者「ふっ、この甘ったれめ」クスッ
勇者「ほらっ、口を開けろ……あーーん」
武闘家「あ、あーーーっ……」
武闘家「んっ」パクッ
勇者「……」
勇者「どうだ? 美味いか?」
武闘家「ああ、ぐすっ。死ぬほどうめぇ……」ポロポロッ
勇者「ふふっ、泣くな泣くな。もう一回……あーーん」スッ
一時間後 町の中央広場 噴水近く
賢者「それで、話ってなんだ? 食後の散歩をした訳じゃないよね?」
勇者「ああ。明日の作戦について話をして置こうと思ってな」
賢者「作戦? 魔王との戦いのか?」
勇者「そうだ……」コクリ
賢者「おおっ!! それで自分は何をすればいいんだ勇者ぁ?」ワクワク
勇者「簡単だ。魔王とは私が戦うから、賢者はその配下を押さえていてくれればいい」
賢者「うんっ、わかったぞ!! 自分に任せてくれ!!」
勇者「……」
勇者「ただ……」
賢者「ん?」
勇者「マホカンタ、マホターン。その他、魔法防御に関わる類の魔法は、使わないで欲しいんだ」
勇者「もちろん、ここを出発する時に、前以て掛けて行くのも無しだぞ?」
賢者「……」
賢者「それは、いいけど……」コクリ
勇者「すまんな。今は言えないが、スゴい作戦を思い付いたんだ」ナデナデ
賢者「うん。信じる……信じるしかないもんねっ!! 明日は勝とうね勇者!?」グッ
深夜 町の宿 勇者の部屋
勇者「……」
勇者「……」
勇者(寝て、目覚めれば、後は魔王との戦いか)
勇者(出来る事は全てやったと思うが……どうだろうな?)
勇者「なぁ、どう思う?」ボソッ
勇者(『アイツ』も、魔王と戦う前夜は、こうして体が震えたんだろうか?)ブルッ
勇者(武者震いだと強がりたいが……怖い、辞めたいっ、逃げ出したいッ!!)ブルブルッ
勇者「くっ……」
勇者(だが……)
勇者(僅かな間とは言え、ロトと一体化したからだろうな)
勇者(ロトの記憶。そのほんの一部が、私の中に残されていた)
勇者(だから天空のホルンの情報も知っていたし、だから……あんな作戦も思い付けた)
勇者(そう。私に流れる勇者の血が、私に逃げるなと、戦えと言っているのだ!!)
勇者(人々を救い、必ず世界を平和にせよと、それが勇者の使命だと、言っているのだ!!!)
勇者(負けはしない。負けは、許されない……必ず、勝つ!!)
勇者(例え、この命と引き換えになろうとも)
翌日 魔王城 玉座の間
少年「……」
少年「……」ピクッ
少年「来た?」チラッ
僧侶「いえ、わたくし一人です」タッ
白騎士「勇者と一緒に来るのではないのですか?」
僧侶「その、つもりだったのですが……破門されてしまいまして」
黒騎士「破門だぁ!? 何でまた?」
僧侶「魔王を相手に、本気で戦えないんだろ……と」
黒騎士「あちゃー、何もかもバレちまったって訳か?」
白騎士「それなら、どうするんですの? 私たち側で?」
僧侶「……」
僧侶「卑怯だと思いますが、わたくしは戦わないで居ようかと」
僧侶「誰とも戦いません。どちらにも加担致しません」
僧侶「戦いの成り行きを、皆さんの戦いを、ただ、ただ。最後まで見守ります……」
僧侶「それでは、駄目でしょうか? で有れば出て行きますが?」
少年「……」
黒騎士「俺は構わないが……」チラッ
白騎士「私は、どちらでも……」チラッ
少年「……」
少年「うん。いいんじゃないかな?」ニコッ
僧侶「あ、ありがとうございます!!」ペコリ
少年「長旅お疲れ様。こっちこそ、今までありがとね僧侶っ」
少年「勇者達はすぐに来るの? まだ時間が掛かるようなら、部屋で休ん……」
少年「……」ピクッ
黒騎士「……」
白騎士「……」
少年「……」
少年「来た、ね……」チラッ
勇者「なんだ、この城は出迎えも無しか?」スタッ
賢者「観念しろまおー!!」ビシッ
武闘家「っ……」
武闘家「よぉ、久し振りじゃねぇか?」ギロッ
少年「……」
少年「ああ、誰かと思ったら」
少年「ふふっ、少しは……強くなりました?」クスッ
武闘家「ぐっ!? テメェ!!!」
勇者「よせっ!! アイツとは私が戦う!!」ガシッ
武闘家「ぐっ、ぐうっ……」プルプル
武闘家「チッ」
武闘家「そんじゃあ俺は、黒騎士って奴にしてやっか」
勇者「賢者は、白い鎧の騎士を……」
賢者「うんっ!!」コクリ
勇者「……」
勇者(そして私は……)
勇者「……」ザッ
少年「……」
勇者「お前が魔王か?」
少年「貴女が、勇者ですか?」
勇者「弱そうだな?」
少年「弱そうですね?」
勇者「何か喋るか?」
少年「喋る事なんて、何も無いです」
勇者「そうか……」
勇者「ならば、もはや語るまい!!」ジャキッ
勇者「魔王、お前も剣を抜け!!」
少年「必要だと思ったら、抜きますよ」クスッ
勇者「……」
少年「……」
勇者「あ」
少年「あ」
勇者「先に言って置く」
少年「言い忘れてました」
勇者「私は、強いぞ?」
少年「ボク、強いんで」
勇者「ふっ、あははははははっ!!」
少年「なんですか?」
勇者「いやいや。いいぞ、弟くん……」
少年「っ……」ピクッ
勇者「お姉ちゃんが胸を貸してやろう。さぁ、遠慮せずに掛かって来い」ニヤリ
少年「くっ、今さらっ……」ギリッ
少年「ボクを」
少年「弟って言うなッ!!」
僧侶「……」
僧侶(ついに……勇者と魔王、その戦いが始まってしまいました)
僧侶(ですが、どっちつかずの半端なわたくしには、戦いの行く末を見守る事しか出来ません)
僧侶(どちらとも関わっているのに、どちらの考えも深くは知らない……)
僧侶(そんなわたくしが、戦って良い訳が無いのです!!)
僧侶(ただ、願わくば……皆が無事でありますように)
僧侶(ああ、神よ。神よどうか……)
僧侶(哀れな姉弟を、お救いくださいませ)
71 : ◆uC4PiS7dQ6 - 2016/03/20 21:06:52 Tepfdjfw 57/57おしまい
短いですが、今回はこれで終わりです。
続きは、このスレが残ってればここに、もし落ちてたら別スレ立てます
次で一応最後になる予定です。今まで読んでくれた人は、もう少しだけ付き合ってね