グギュルルルル
ダル「おいオカリンまた下痢かお?」
岡部「ついに貴様は俺が空腹で腹を鳴らせているのか、下痢で大腸が唸っているのかを判別できるようになったか。さすが我が頼れる右腕< マイフェイバリットライトアーム>だな」
ダル「ほ、褒めても何も出ないんだからね!って、オカリンはとっとと出してくるべきだろjk」
岡部「うんむ、今しがたそうしようと思い至ったところだ」
ダル「全く、まゆ氏も牧瀬氏もいなくてよかったお。オカリンがゲリリンになったなんて情けなくて涙出ちゃう」
岡部「ゲリリン言うな!うっ、やばい」ギュルルル
ダル「ちょっと出た?」
岡部「出とらんわ!」
元スレ
岡部「潰瘍性大腸炎だと……」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1402376583/
ダル「いいから早くトイレ行けよ。オカリンのせいでピッカピカに掃除したんだから」
岡部「未来ガジェット10号『超臭力』と、11号『サイクロンジェットファン』の設置によって、この残暑厳しい九月でも熱気と臭気でいたたまれなくなることは回避できたな」トボトボ
ダル「はぁ~、オカリン夏バテか……。この糞暑いラボが糞臭くなったらたまんないお」
バタン
岡部(くっ、個室内に入った途端に急激な便意が……!)グルルル
岡部(ベ、ベルト!早く、早くパージするんだ!ふんっ!)ガチャガチャ
岡部(白衣を個室に入る前に脱ぐべきであった……!)
岡部(だ、だいじょうぶだ、落ち着け鳳凰院凶真。お前は幾度も死線を乗り越えてきたではないくぁっ!)ギュルルルル
岡部(便座に、早く、腰を、おろs)ブリュウウウウウウウ
岡部(……)
岡部「チラッ」
岡部(ほっ、なんとか間に合ったみたいだ)
岡部(とにかく出すもの出してしまえばなんとかなるのだ、うむ)
岡部「ふぅ、スッキリし……」
岡部(ていない?)
岡部(どういうことだ、すべて下痢便を出し切ったというのに、腹の調子が……!?)
岡部「ハウッ!」グムムムムム
岡部(きゅ、急激な便意……!なんだこれは、もう腸内にはなにも入っていないであろうに、なぜこんなにも便意が……)
岡部(痛い、あぁ脱腸してしまいそうだ。いや、したことないからわからないけれども)
岡部(例えるならあれだ、射精を連続で何度もするような、もう出ないのに出そうとする激痛……!)
岡部(だめだ、下らぬことを考えても痛みから気を逸らせない!)スッ
岡部「お、俺だ。あぁ、機関の奴らがついに直接攻撃を仕掛けてきた。方法はわからないが、生物兵器か毒薬か……ともかく一刻も早く優秀なメディックの派遣を要請する!エル・プサイ・コn」グルルルルルルルルルル
岡部「ふぉぁっ!!!!」
ダル『どうしたオカリン!』
岡部「ダル……か。俺はもう、だめかも知れない……」
ダル『オカリン……?』
岡部「母国で暮らす両親に、愛していると伝えておいてくれないか……」
ダル『いつ池袋が独立したんだぜ?』
岡部「さらばだ、戦友。ヴァルハラで待っている……ぞ……」ガクッ
ダル『オーカーリーン!!』
ダル『いいから早く出ろよもう』
岡部「すまん」
岡部(ダルとのやりとりのおかげでなんとか激痛から気を逸らすことができた。難局を乗り越えたみたいだな)
岡部「チラッ」
岡部「……ん?なんだ、これは」
岡部(全体的に赤い。昼に赤いものなど食べたか?)
岡部(それに、なんだこの臭いは。アンモニアというか、う○この臭いではなくて、これは嗅いだ事のある生臭さ)
岡部「この臭い……紅莉栖……ハッ!」
―過去回想―
中鉢「殺してやるぅ!」グサッ
岡部「う、うわぁぁぁぁぁ」
・・・
岡部「まだ、血液が足りないな。これじゃ、過去の俺を騙せない!」グチュグチュ
岡部「うわあああ!」
―――――
岡部「そうか、これは、俺の血の臭いだ。ということは、俺は……」
岡部「痔、なのかな?」
東京電気大学キャンパス内
岡部(あれからダルと一緒に痔についてググったが、どうも痔ではなさそうだ)
岡部(下痢の慢性化によって血便が出ることは稀によくあるそうだ)
岡部(しかし、あの激痛は二度と御免被りたいな)
ダル「しっかしオカリンが痔リリンじゃなくてホントよかったお」
岡部「ちょっと無理やりすぎるだろ!」
ダル「まぁでも?秋期始まる前に下痢が治まって安心したお。必修の実験中にう○こで早退なんかして退学になったら目も当てられないお」
岡部「う○こ言うな」
ダル「結局、原因はなんだったんだお?夏バテ?もしかして、やっぱりあの入院の時の傷が……」
岡部「さぁ、どうだろうな。傷は大腸まで到達していたわけではないから、関係ないとは思うが」
岡部(そう、結局下痢になった原因も、治った原因もよくわからなかった)
岡部(だがまぁ、こうして普通に生活できているのだから、特に気にすることもなかった)
岡部(三ヵ月後の、あの日までは)
十二月
まゆり「とぅっとぅるぅ……寒くなったねー」ガチャ
ダル「おぅ!まゆ氏いらっしゃいなんだぜ。ゆっくりしていってね!」
岡部「まゆりか。相変わらず励んでいるな」
まゆり「うん!新しいコスプレがねー、ようやくひとつ完成しそうなんだよー」
ダル「もしかして阿万音氏とオソロの例のアレですか?」
まゆり「そうだよーえへへ」
岡部「ん?その紙袋はなんだ?」
まゆり「あ、これはね、ちょっと早いけどオカリンにプレゼントなのです」
岡部「プレゼント?」
ダル「もしもし?爆発代行はここですか?」
まゆり「あ、でもクリスマスにはちゃんとしたのをプレゼントするから! 最近気温が下がって、寒くなってきたからすぐに渡そうと思って」
岡部「そ、そうか」
ダル「」
まゆり「余った毛糸で作ってみたんだけど」ゴソゴソ
まゆり「はい、オカリン!」
岡部「おぉ。ん?これは……腹巻き?」
まゆり「オカリンお腹下り気味なんだよね?外もラボも寒いから、冷えないようにーって」
岡部「狂気のマッドサイエンティストが毛糸の腹巻きなど……」
まゆり「オカリンの体のためなんだから、ちゃんと着けてよね」
岡部「くっ……もしもし、俺だ。あぁ、そうだ。きっとまゆりは機関の奴らに洗脳されてしまったに違いない」
まゆり「オーカーリーン!」
岡部「だぁ!わーかったわかったって!仕方ない、まゆりの頼みとあってはな」
まゆり「それでいいのです」ンフー
岡部(あれから二週間に一度のペースで体調が優れなくなり、脂っこいものを食べると下痢になるようになった)
岡部(サンボに行く回数は半減してしまった)
岡部(と言っても血は出なかったし、激痛というほどでもない、ただの下痢だ)
岡部(あんまり下痢が続いたのでダルにはからかわれるし、まゆりには心配されるしで踏んだり蹴ったりだ)
岡部「ふっ、しかしこの鳳凰院凶真にとっては知的飲料水ドクターペッパーこそが全ての原動力なのだ! これがあれば機関の生物兵器攻撃などたちどころに収まる!フゥーハハハ!」
ダル「むしろそれが原因なんじゃね」
天王寺「おい、岡部のやつぁいるか?」ゴンゴン
岡部「ん?機関め、ついにヒューマノイドインターフェイスを投入してきおったか……」
まゆり「はーい、オカリンならいるのです」
天王寺「おう岡部。それから橋田。悪ぃんだがちょっくら手伝ってくれねぇか? 男手が必要なんだ」
岡部「Mr.ブラウンよ。人に物を頼むときは頼み方というものがあr」
天王寺「手伝わなかったら賃上げするからな」
岡部「はい、手伝います」
檜山ビル前
天王寺「悪いな、年末商戦ってわけじゃねえんだが、だいたいこの時期に棚の整理しておくとな。色々都合がいいんだよ」
岡部「ん、閃光n<シャイニn>、いや、桐生萌郁はどうしたのだ?」
天王寺「勿論手伝ってくれてるが、いかんせんこの量のモノを動かすとなると……」
まゆり「うわー、すごい量だねー」
ダル「まゆ氏。今のセリフをもっと楽しそうに言ってもらっていい?」
まゆり「?うわー、すごい量だねー!」
岡部「なにをやっているのだ貴様は!」ムニュ
ダル「ちょwwwお腹つかむのは反則だってwwwおほwww」
萌郁「……」
天王寺「じゃーとりあえずそこに並べてあるの一式をそこの軽トラに積み込んでくれ」
岡部「まったく人使いの荒い筋肉モリモリマッチョマンの変態だ!」
ダル「一番気に入っているのは?」
岡部「値段だ」
ダル「牧瀬氏は?」
岡部「無論だ」
ダル&岡部「フゥーハハハハ!」
天王寺「つべこべ言わずに詰め込め!」ボカッ
萌郁「……」
岡部「いていて……さ、運ぶか」
まゆり「まゆしぃも手伝うよ。大きいのはダル君お願いね」
ダル「お任せあれー。まったく、デブは冬でも汗かくんだから勘弁してほしいお」
岡部「そうだ、な。ふん。ふんっ!ふんぬぉぉぉぉっ!!」
ダル「オカリーン。オカリンが24インチなんて持てるわけねーだろjk。それは僕が後で手伝うお」
岡部「う、うむ。さすがは我が頼れる右腕< マイフェイバリットライトアーム>だな。ではこちらを……ふんっ!」ヨロッ
まゆり「だ、だいじょうぶオカリン……?」
岡部「なんのこれし、き……うおっ!?」バタッ
ダル「おいおい、オカリンそれ14インチだぜ?そんなに体力落ちてたのかよ、引くわー」
まゆり「オカリン、怪我はない?」
岡部「ぐっ……。あぁ、心配させてすまないな、まゆり。ダル、あのさ」
ダル「なんだお?」
岡部「後は任せた」バタッ
岡部(結局あの後の肉体労働は全部まゆりとダルに任せてしまった)
岡部(俺はというと、ラボに戻ってソファーで横になっていた)
岡部(無理に体を動かしたからか、一気に体調が悪くなってしまったのだ)
岡部「そういえば、前回の下痢からちょうど二週間だったな……」
岡部(二人には申し訳なかったが、どうやら熱も出てきたようで、体を休める他なかった)
岡部「風邪だったら困るな、移しても困るし、何より必修が……」
岡部「少し、寝るか……冷えピタあったかな……」
岡部「うーん……」zzz
ピィィーーーーーーーーーーーー
岡部「うーん……?」
まゆり「あ、ごめんねオカリン。起こしちゃったね」
ダル「まったく、風邪ひいてるならそう言えっての」
岡部「あぁ、あぁ。そうか、そうだよな。すまない」
ダル「いいっていいって。つらい時はお互い様だって」
岡部「ところで、やかんで湯が沸く音がしたということは……」
まゆり「今ねー、オカリンのためにおかゆを作ってるのです」
岡部「!!」
ダル(安心しろよオカリン。お湯を入れるだけのインスタントだから流石に問題ないっしょ)ヒソヒソ
岡部(お、おう)
まゆり「はい、できたよー。オカリン、起きれる?」
ダル「
岡部『すまないが、ちょっと起きれそうにないな。まゆり、俺の口元までおかゆを運んでくれないか』
まゆり『うん、無理しなくていいよー。はい、あーん』
岡部『あーん……ん』
まゆり『どお?おいしい?』
岡部『ああ、おいしいよ、まゆり』
みたいな展開になるわけですねわかります」
岡部「まゆりの声真似をするな」
ダル「うほっ」
岡部「まったく。それに、熱も微熱だし、起き上がれるぞ。よっこいしょっ……と!?」ズキッ
まゆり「オ、オカリン?」
岡部「おぉ……おおおおおぉぉぉぉおおおおおあああああああっっっっっっ!!!!!!!」
まゆり「どうしたのオカリン!?」
ダル「お、おぃ、オカリン……?」
岡部「ふんぐっ……うあぁ、はあぁっ!!!」ズキッズキッ
ダル「汗がすごいんだお……」
まゆり「タオル持って来るね!」ダッ
岡部「うっ……はぁ、はぁ。ふぅーーーーーーーーっ」ハァハァ
ダル「だ、だいじょうぶかオカリン?って、大丈夫じゃないよな。どうしたんだぜ?救急車呼ぼうか?」
岡部「い、いや、その必要はない。おそらく、我が体内に封印されし魍魎があばれたのだろう」フゥフゥ
ダル「それだけ言えるならとりあえずは大丈夫なの、か? あんまり無理するなよオカリン」
まゆり「タオル持ってきたよー。オカリーン、病院行った方がいいよぅ」
岡部「あぁ、すまない。そうだな、これ以上まゆりに心配かけさせるわけにもいかない。どこか良い病院を探してみよう」
岡部「とりあえず、一汗かいたら腹が減った。まゆり、おかゆ食べてもいいか?」
まゆり「う、うん。無理しないでね?残してもいいからね」
岡部「あぁ、ありがとう」
・・・
岡部(二人のいる手前平静を装ったが、正直かなり混乱しているぞ……)
岡部(なんだあの痛みは?まるで内側からナイフで腹を貫かれたような……)
岡部(二度と経験したくはなかったが、これは比ゆではないな。まさしく"あの"痛みだった)
岡部(今になって古傷が開いたのか?いや、でもなんで今になって?)
岡部(あるいは、下痢か?たしか九月に一度血便を伴った下痢があったような……)
岡部「ごちそうさま。おいしかったぞまゆり」
まゆり「うん……」
ダル「コロっと普通に戻ったなオカリン。なんてゆーか、嵐の前の静けさみたいで怖いんだぜ」
岡部「大丈夫だ、きっとなまった体を酷使したせいでヒューズが飛んだんだろう。少し休めば大丈夫だ」
ダル「冬休みまではがんばれよオカリン、今まで下痢のせいで出席がやばい授業が結構あるんだろ?」
岡部「そうなんだよなぁ。病院探しは冬休み入ってからだな」
まゆり「だ、だめだよオカリン!冬休みって、たしか病院はお休みのところも多いし、人も多いだろうし……」
ダル「てかさ、そもそもどこの病院いけばいいわけ?内科?外科?」
まゆり「あっ、そういえばフェリスちゃんがね、お父さんのおともだちで病院の先生がいるって言ってた!」
岡部「ほぅ、あの秋葉社長のかかりつけ医だったら、この上なく信用できるだろう」
ダル「(秋葉社長?)そうと決まればフェイリスたんに会いに行くんだぜー!」
岡部「あぁ。だが、すまないが明日にしよう。今日は少し疲れた」
まゆり「ホントに大丈夫?まゆしぃも泊まってもいいんだよ?」
岡部「大丈夫だまゆり。ダルも、今日は色々迷惑かけて済まなかったな」
ダル「水臭いぞオカリン。なんかあったら電話plz」
岡部「あぁ、じゃぁな」バタン
岡部(そう言って自分はラボに泊まることにして、二人を家に帰させた)
岡部(本当は早く二人に出て行ってほしかった、の……だっ!くそっ!)ダッ
岡部(トイレ……トイレ……うっ!)ガチャ バタン
岡部(ま、間に合った……くっ、やはり来たか、激痛め!)ギュルルルルルルル
岡部(おかゆを半分食べたところで内臓のやばさには気づいていた)グルルルルル
岡部(もちろん、こんなに早くおかゆが出てくるとは思えないが)ゴロロロロロ
岡部(吐き気がする……気持ち悪い……)ブフゥーーーーーーー
岡部(ん?なんだ今の屁か?おならか?長いな)
岡部(おそらく腸内の便は出し切ったのだが、やはりというか相変わらず便意がある)
岡部「チラッ」
岡部「!!」
岡部「なんだ……これは……!!」
岡部「なんなんだよおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
岡部(そこでようやく先ほどの寝起きの激痛の原因がわかった)
岡部(腸が割け、内側で出血していたのだ)
岡部(便器の中で糞尿にまぎれ浮かんでいたのは)
岡部(例えるならそう、鼻血を止めようとしてティッシュを丸め鼻の穴に突っ込み)
岡部(まだ血が固まりきってない時にティッシュを抜いた時に付いてくるドロドロの赤黒い物体)
岡部(それが、グラス一杯分は浮いていたのだ)
翌日、メイクイーン+ニャン2
フェイリス「キョーマが最近来てくれる回数が減ったと思ったら、ず~っとおなかの調子が悪かったってダルニャンから聞いたニャン。もー、ずっと心配してたのニャ!」
岡部「すまなかった、フェイリス」
ダル「フェイリスたん、ちょっと頼みがあるんだけどさ」
岡部(それはシフト上がりに聞こう)
ダル(そうだったお。ごめんお、ちょっと気がせいちゃったお)
フェイリス「なんだニャン?」
ダル「あー、オカリンがちょっと体調悪いみたいだからさ、なにかあったかいお茶とかあればと思うんだけど」
フェイリス「メニューにはないけど、キョーマのためニャ!ちょっと待っててニャン!」タッタッタッ
ダル「で、昨日はあれから大丈夫だったのぜ?」
岡部「無論だ」
ダル「そういえばそろそろ牧瀬氏がこっちに戻ってくるんじゃね?連絡取ってるんだお?」
岡部「クリスマス休暇らしいな。年明けまではこちらにいるそうだ」
ダル「それまでに体力つけておかないとセイなる夜を越せないぜオカリン」
岡部「どういう意味だまったく。お前こそ冬コミという非リアの祭典の中イチャコラする準備はできてるのか」
ダル「いやぁ、それほどでもー」
岡部「褒めてないっ!」
フェイリス「はいニャ!お待たせしましたニャン!」トン
店外
フェイリス「遅くなってごめんニャ!それで、相談ってなんの話ニャ?」
ダル「それが、オカリンを病院に連れて行こうと思うんだけどさ、どこかいいところをフェイリスたんなら知ってるってまゆ氏が」
岡部「お前は俺のおふくろか!」
フェイリス「たしかおなかの調子が悪いニャン?だったら私のパ、父のご友人に内科医の先生がいます///」
岡部(ん?)
ダル(お?)
フェイリス「ちょっとその先生に電話してみるニャン!」
48 : 以下、\... - 2014/06/10 17:06:28.98 R0ct3y9S0.net 24/201やべ、フェイリスのパパ死んでたんだったっけ
49 : 以下、\... - 2014/06/10 17:10:23.51 tf5lEIGr0.net 25/201死んでない世界線なんだろ?
フェイリス「……来週の水曜日になっちゃうけど、都合大丈夫か?だってニャン」
ダル「えー、今すぐはだめなのかよー」
岡部「忙しいドクターならばそれだけ優秀なのであろう。なに、2、3日の辛抱だ。そのくらいなら安静にしていれば問題あるまい」
フェイリス「ごめんニャ、もしつらそうだったら近くの診療所で外来診察を」
岡部「いや、少しくらいなら我慢できる。それにフェイリスの知り合いなら安心だ。ところでどこの病院なんだ?」
フェイリス「慶應大学病院だニャ」
ダル「あー、たしか総武線の信濃町だっけ」
十二月二十日 水曜日
医師「慢性下痢に血便、発熱ですか……」
岡部「はい」
医師「採血の結果、CRPの数値がかなり上昇しているので、大腸の炎症はほぼ間違いないでしょう」
岡部「CRP……?」
医師「あぁ、タンパクのことね。それで、一回内視鏡検査をさせてもらいたいんだけど、いいかな?」
岡部「内視鏡?というと、胃カメラみたいなアレですか」
医師「そうだね。胃カメラとは違ってお尻の穴からカメラを入れるんだけど」
岡部(!)
医師「後で必要書類を出しておくから、外で受け取ってよく読んでおいてね」
岡部「は、はい。それで、私の病気は結局なんなんですか?」
医師「まだ検査しないとはっきり言えないんだけど、うーん……。ちょっと一回横になってもらえるかな」
岡部「は、はい」
医師「お腹見せてね。ここ押すと痛いかな?」
岡部「いえ……」
医師「じゃぁここは?」
岡部「いえ、痛くありません」
医師「そうか。じゃぁ次は横を向いて、お尻を出してもらえるかな」
岡部(!)
岡部(そう言うと医師は右手に薄い半透明のゴム手袋を装着し、親指にローションを塗りたくった)
医師「はい、ちょっと深呼吸して。力抜いてね」
岡部「は、はい……」
岡部(ぐっ……!まさかこんなところで俺の菊門が突破されようとは……!)
医師「ふむ、血は付いていないようだね」
岡部「はぁ」フゥ
医師「まだ決まったわけじゃないけど、コレの疑いがあるんだよね」スッ
岡部(そう言って左手でなにかのパンフレットを俺に渡した)
岡部「潰瘍性大腸炎だと……」
医師「結構若い人に多くてね、まだそうと決まったわけじゃないけど。症状からするとこれに近いかな」
岡部「これって、一体どんな病気なんですか……」
医師「今の医学でも原因不明でね、それが理由で国の難病に指定されているんだよ。あ、だから保健所さんに書類提出すれば医療費免除になるからね」
岡部「難病……」
医師「決定的な治療方法がまだなくてね。といっても、かなりの確率で投薬治療で症状を抑えることができるんだ。薬さえ飲んでいれば社会生活はできるようになることが多いよ。今の首相も患ってる」
岡部「そう、なんですか」
医師「まぁ、まだそうと決まったわけじゃない。それに、潰瘍性大腸炎だとしても、一回の活動期、つまり激しい下痢だけで治まっちゃう場合もあるし、数回だけの場合もある」
岡部「検査次第、というわけですね」
※2010年12月のはずなのに安部内閣が続投している模様
医師「それで、いつがいいかな。内視鏡検査」
岡部「え、今すぐじゃないんですか」
医師「あれは一日がかりになってしまうから日を改めた方がいい。そうだな、僕としては……急だけど明日か、来週の水曜日がいいかな」
岡部(来週、ということは紅莉栖は既に日本か。だが、明日また大学の授業をさぼったらかなりヤバイが……)
岡部「わかりました、明日でお願いします」
秋葉原駅前
岡部「明日、か……さすがに実験は代返頼めないからな……」
ダル「おっ。オカリンちょうどいいところにー。今ちょうど雷ネットの試合が終ってさー」
フェイリス「軽く敵を蹴散らしてきたニャン☆」
ダル「んほー!かわいくも強者の発言ktkrー!」
フェイリス「それで、お医者様はどうだったニャン?」
岡部「あぁ、いい人だったよ。すごい混んでて、忙しい中色々説明してくれて」
(アナルバージンを奪われたとはいえない)
ダル「もー、そうじゃないだろオカリン。一体なんの病気だったのかって話だお!」
岡部「あぁ、そうだったな。それが明日また検査することになって、それからじゃないとわからないそうだ」
フェイリス「そうだったニャン……早く良くなるといいニャン!」
ダル「ってオカリン、大学は大丈夫なのかお?」
岡部「一応担当の先生に連絡はしておいたが、単位をくれるかどうか……」
ダル「大変だ!オカリンがこのままだとダブリンになってしまう!」
岡部「アイルランドか!」
フェイリス「大学生は大変だニャン。金糸雀学園はもう冬休みだニャン」
岡部「そうは言ってもそろそろ進路を考える時期だろう」
ダル「オカリン、フェイリスたんのプライベートトークはその辺にしておくんだぜ……。ってかどうして秋葉原に戻ってきたん?信濃町からだったら池袋帰った方が近いんじゃね?」
岡部「一応お前たちに連絡しておこうと思ってな。世話になっているのだ、直接顔を合わせないとと思った次第だ」
フェイリス「キョーマ……!」
ダル「で、ほんとは?」
岡部「財布忘れた」
十二月二十一日 木曜日 午前九時
岡部(内視鏡検査の同意書にサインをした)
岡部(万が一の可能性だが、なにかしら病気を併発してしまうかも、最悪腸壁を破ってしまうかもとのことだった)
岡部(まぁ、病気といってもまだ20歳なのだ。そういうのは大丈夫だろう)
岡部(ちなみにまゆりはクリスマスと同時に俺の誕生日プレゼントをくれるそうだ)
岡部(間に合わなかったのと、腹巻を誕生日プレゼントにはしたくなかったとか)
岡部(全く、世間はクリスマスシーズンで浮き足立っているというのに)
岡部(足が、重いな)
慶応大学病院 内視鏡検査休憩室
看護師「それじゃぁ岡部さん、この容器の中に入った溶液をよく振って、1時間かけてゆっくり飲んでください」
岡部「は、はぁ(なんだこの黄色い液体は!スポーツドリンクにも見えなくはないが……)
看護師「この紙コップの中に目盛りが書いてありますので、それを参考にしながら飲んでいってください」
岡部「はい」
看護師「そうすると次第に便意を催しますので、どんどん排便していってください」
岡部「……」
看護師「最終的に便が透明になったら呼んでください。では」
岡部「……」
岡部「なんでこの液体、まだ固形物が溶けきっていないのだ……」
岡部「ふんっ!」ジャバジャバジャバ
岡部「なんだこれ……全然溶解しないではないか。もう飽和しているのか」
岡部「まぁいい。試しに飲んでみるとするか」
岡部「くく……果たして、この狂気のメァッドサイエンティスト、鳳凰院凶真の舌を満たすことができるかぬぁ?」
岡部「いくぞっ!!」ゴクゴクゴク
岡部「……」
岡部「び、微妙だ……」
岡部「たしかに飲めなくはない。かと言って日常的に飲みたくなる味ではないが……。どこかしらルートビア的な薬品の雰囲気もあるというか……」
岡部「ふふふ……くくく……フゥーハハハハ!こんなところで出会えるとはなぁ! 黄金溶液(ゴールデンソリューション)よ!!」
コンコン
岡部「あ、はい」
看護師「あのー、さっきから大丈夫ですか」
岡部「」
岡部(あれから1時間経ち、指定された1Lを飲み干したが……)
岡部「一向に便意が来ない」
岡部(何故だっ!!来て欲しくない時にはくるくせに、来て欲しい時にはこないとか!)
岡部「ツンデレかっ!!」
コンコン
看護師「岡部さーん、調子どうですか」
岡部「それが、まだ(便意が来て)ないんです」
看護師「あら、まだ透明になりませんか。ではもう1L追加しておきますね」
岡部「」
看護師「検査は午後一ですが、一応順番をずらすこともできますので、ゆっくり自分のペースで大丈夫ですよ」
岡部「はい……」
岡部(なにやら休憩室内に初老の方が増え始めたな)
岡部(皆本日の内視鏡仲間ということか)
岡部(内視鏡が複数台あるのかどうかは知らないが、おそらくこやつらとは穴兄弟になるのであろうな)
岡部(ほぅ……あの御仁などすごいな。1時間かけて、と言われたのにものの10分で飲み干してしまった)
岡部(熟練の雰囲気をかもしだしている)
岡部(それよりも気がかりなのは、俺が"あの"急激な便意に襲われたとして、誰かに個室を占有されていないかどうかだ)
岡部(これが気になっておちおち便意も催せない)
岡部(逆もまた然りだ、つまり俺が長時間占有してしまうがために他の御仁のドーハの悲劇が繰り広げられてしまうのではないかという)
岡部(というか……)
岡部「ヒマだな……」
岡部(とりあえず、がんばってみるか)ガチャ
岡部(結局1.5Lは飲んだので、さっきから腹の中がパンパンで苦しいのだ)スッ
岡部「ウォシュレットは……さすがにあるか。よかった。温風感想まで付いてる」
岡部「ふんっ……ふんっ!!」グッ
岡部「はぁはぁ……」
岡部「も、もう一度……ふんっ!!」ギュッ
岡部「く、くそっ!!くそっ!!」
岡部「出ろよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」ブリュリュリュリュリュリュリュリュリュ
岡部「!?」ブリュリュリュリュリュリュリュリュ
岡部「うわっ、うわっ」ブリュリュリュリュリュリュ
岡部(このままでは便が便器からあふれ出してしまうのではないか!?)ブリュリュリュリュリュ
岡部「い、今のうちに一回流しておこう」ブリュリュリュ ガチャ ジャー ブリュリュリュ
岡部「……」ブリュリュリュリュリュリュ
岡部「……」ブリュリュリュリュリュ
岡部「……」ブッ
岡部「ふ……やっと止まったk」ブリュリュリュリュリュリュ!!
岡部「ふ、ふぅ。今度こそ本当に止まった……」
岡部「さて、便の様子を確認しなければ」
岡部「チラッ」
岡部「うーん、まだうす茶色と言ったところか。黄色ではないな」
岡部「なんとなく要領がつかめてきたぞ。よし、残りの500mLを飲み干してしまうか」
ガチャ
岡部(あ、あれ、便意が抜け切らない……?)
岡部(くそっ、今度はこの絶妙な便意と戦いながら500mLもの黄金溶液<ゴールデンソリューション>を飲まなければならないのか)
看護師「岡部さーん、どうですか」
岡部「あ、はい。まだ少しうす茶色なんですよね」
看護師「そうですか。では、次一回見せてもらっていいですか?」
岡部「(!)あ、はい」
看護師「便が終りましたら流さずにナースコールを押してください」ガチャ
岡部「……」
岡部「今更女性にう○こ見せるくらいなんだ!こうなったら完璧な我が黄金溶液<ゴールデンソリューション>を見せ付けてやろうではないかッ!」
ナースコール「ビーーーーーー」
岡部(いよいよだな。ついに人生で始めて自分の糞尿を女性に見せ付ける……)
岡部(よく考えたらお袋には世話になってたんだよな、赤ん坊の時に)
岡部(赤ん坊か……成人仕立ての俺が赤ん坊と同じか……)
コンコン
看護師『どーされましたー?』
岡部(む?先ほどの女性とは違う声?)
看護師『お体だいじょうぶですかー?』
岡部(まさかシフト交代時間だったのか!?そういえば今お昼か……)
岡部(いささかあの女性の母性をかんがみれば大丈夫だろうと決心していたのに)
岡部(さっきより声がロリっぽい!)
岡部「あ、いえ、あの、えーっと……」
岡部(くそっ!こんな時なんて言えばいいんだ!『う○こしたから見てください』と言えばいいのか!?)
看護師『排泄便の色の確認ですかー?』
岡部「(助かった!)はい!そうです!」
看護師『では失礼しまーす』
岡部(……ん?待てよ、う○こは見せるとして、俺はパンツを下げている必要はあるのか)
岡部(いや、だってう○こを流してからウォシュレットして紙で拭く、この流れがまだだ)
岡部(それなのにパンツを上げたらう○こがパンツにくっ付いてしまう)
岡部(しかし、ケツを拭いてしまったら、その紙はどうすればいい?便器には入れられないのだ)
岡部(手で持っておくのか?手で持っておくのか?)
岡部(……そうか、これがシュタインズ・ゲートの選択か)
岡部「あ、すいません、ちょっと待ってください」
岡部(結局俺はその少し若い看護師さんになんとかバレないようにう○こがついたままのトイレットペーパーを後ろ手に隠しながら便の色を確かめてもらった)
岡部(どうやら検査可能な状態になったらしい)
岡部(看護師さんが個室を出て行った後に、その隠した紙をそっと便器に投げ入れた)
岡部(そしてレバーを下げ、水を流す)
岡部(……何をやっているんだ俺は)
看護師「はい、それではこちらに着替えてください」
岡部「これは……(紙で出来た甚平みたいな感じだな)」
看護師「あちらにロッカーがありますので、貴重品はそちらにしまってください。貴金属や装飾品、ヘアピンなどありましたら外しておいてください。あと靴下も脱いで裸足でこちらのスリッパを使ってください」
岡部「はぁ」
岡部(ん……よく見るとこれ、短パンの方、ケツの穴のところに穴が空いているな)
岡部(そうか、着ながらカメラを挿入するのか)
看護師「岡部さーん」
岡部「(ついに来たか……)は、はい!」
看護師「検査室の方へどうぞ」
岡部(緊張してしまうな……ただ注射をするとか、レントゲンを取るとかではなく、やはり肛門に挿入となると)
岡部(いや、だめだ。気にしたら負けだ)
医師「やぁ岡部くん。調子はどうかな」
岡部「あ、先生。今日はよろしくお願いします」
医師「……」
看護師「……」
岡部「……?」
医師「岡部くん、パンツを脱いできてくれるかな」
岡部「えっ……ハッ!」
岡部(パンツ脱ぐの忘れた!そりゃそうだよな!あんな甚平着るのになんでパンツ脱がなかったんだ!)
岡部(鳳凰院凶真、一生の不覚ッ!)トボトボ
医師「それじゃ改めて始めようか。まずは麻酔を打つね」
岡部「はい」
看護師「それじゃ右肩を出してください。はい、少しチクっとします」プスッ
岡部「……」
医師「それじゃ、その台に横になってくれるかな」
岡部「はい」
医師「そのまま壁を向いて、少しひざを抱えるような感じで」
岡部(こうか……ん?なにかと思ったら、あのでかい画面は、あっちの黒いヒモみたいな、たぶんカメラだろう。アレの視線の先を映しているのか。ということは、あの画面に俺の腸内が映し出されるのか)
医師「じゃーローション塗るよ。少し冷たいからね」ヌチャァ
岡部「ふぉっ」
医師「力抜いてー。リラックスしてー」スーッ
岡部(くるっ……!くるっ……!)
岡部(……ん?入ったのか)
岡部(おぉ、画面を見ると、テレビで見たあれだ。ピンク色のひだひだチューブが)
岡部(麻酔のせいか、緊張のせいか、いつ挿入されたのかよくわからなかったな……)
岡部(そして今もそんなに遺物感がない)
医師「ふむ……直腸周辺は炎症していないね。ちょっと奥の方を見てみよう」スーッ
岡部(うおっ!なんか、コンってあたった!第一コーナーで接触か!)
医師「……あっ」
岡部「」ビクッ
岡部(なんだなんだやめてくれ先生!今の俺は文字通りまな板の上の鯉なのだぞ!)
医師「……結構綺麗なままだね。ちょっと仰向きになって」
岡部「(!)は、はい」
岡部(な、なんだびびらせるなまったく)
医師「あーでも小腸周辺が少し炎症しているね。ちょっとこれから小腸に入るよ。看護師くん、ココを押さえていてください」
看護師「はい、先生」ギュッ
岡部(そういって看護師さんは俺の腹のど真ん中を両手で圧迫したのだが)
岡部(痛い!今まであまり痛みを感じなかったがこれは痛い!とにかく痛い!)
岡部(が、我慢だ岡部倫太郎……検査中だそ、ごねてしまっては子供のようではないか)
岡部(画面を見るとカメラはくねくねを繰り返し、ラビリンスへの侵入に手をこまねいているかのようだ)
岡部(だめだっ……もう耐えられない!このやろう!)
岡部「す、すいません、痛いです……」
看護師「少し我慢してくださいね」
岡部(……!)
岡部「あの、すいません、ホントに」スッ
岡部(そう言うと俺は無意識のうちに両手でその看護師の手をどけていた)
医師「それじゃ細胞採取するね」スーッ
岡部(細胞採取?カメラの中に鉄線のようなものを挿し込んだぞ?)
岡部(画面からロボットアームのようなものが出てきた……まさか)
医師「ちょっと痛いかも」
岡部(!ロボットアームが俺の腸壁をつまんで……!)
ブチッ
岡部(ヒィィッ!……あ、あれ?痛くない)
岡部(映像を凝視してしまったため、脳内で痛みをイメージしてしまったが)
岡部(実際のところはそんなに痛くなかった)
医師「あと8回くらいやるね」
岡部「は、はい……」
ブチッ ブチッ ブチッ ブチッ……
医師「はい終了です」
岡部「ありがとうございました……」
看護師「ではこちらの車椅子に乗ってください」
岡部「……ん?」
看護師「中には休憩室へ行く間に転倒してしまう患者様もいらっしゃいますので、皆様必ず車椅子に乗っていただくことになっております」
岡部「あぁ、そうなんですか。わかりました」
岡部(と言っても、ケツの周りがローションまみれなんだが……)
岡部(さすがにきれいに毎回イスの座部を拭いているんだろう)
岡部「よいしょっと」ヌチャァ
看護師「それでは動かしますねー」
岡部「あれ、結局私の病状は……」
看護師「検査の結果は後日の診察でお教えします」
岡部「後日……すいません、あの、先生」
医師「なにかな?」
岡部「できるだけ早く検査結果を教えていただけないでしょうか」
医師「そうだね……次は来週の水曜日か」
岡部「……!」
医師「これより早いのは厳しいんだ、ごめんね。ただ、病気に関して言えば潰瘍性大腸炎ということで問題ないよ」
岡部「……えっ」
医師「この状態なら、潰瘍性大腸炎と診断しても問題ないと言う事だね。前言っていた保健所へ提出する用の書類も今度渡すよ」
岡部「ってことは、俺は、難病……」
医師「よりよく状態を確かめるはやっぱり来週の水曜日になってからだけどね」
岡部「そう、ですか。わかりました……」
ガタンゴトン ガタンゴトン
岡部(今日はこのまま実家へ帰ろう)
岡部「ただいま」
岡部父「おう、おかえり。おーいかーさん、せがれが帰ってきたぞー」
岡部「なんだよそれ」ハハッ
岡部母「あら、おかえり。それで、病院どうだったの」
岡部「それが、どうやら俺は……」
まゆり「あれー?オカリン今日はこっち帰ってたの?」
岡部(まゆりっ!?)
岡部母「あらーまゆりちゃんじゃない」
まゆり「とぅっとぅるー☆」
岡部母「そうだ、今この人病院から帰ってきたらしいんだけど」
まゆり「そうそう!オカリン、それで、どうだったの?」
岡部「あ、いや、それがだな……」
岡部「あまりにもメァッドな研究に執心したためか、ついに自らを被験体にした人体実験まで手を染めてしまい……」
まゆり「オカリン」
岡部「……いやなに、薬飲んでれば治るってさ」
岡部母「なぁんだ、そうだったの。それならまぁ、よかったわね」
まゆり「そっか……でも痛がってるオカリン見るのは嫌だからね。少しでも健康的な生活をしなきゃだめだからね!オカリン!」
岡部母「そうねぇ。まゆりちゃんみたいなしっかりした娘が彼女になってくれたら、この人ももっとしっかりするんでしょうけどねぇ」
岡部「お、おふくろ!」
まゆり「決めた!これからオカリンに生活指導します!」
岡部「ま、まゆり!?」
十二月二十二日 金曜日
まゆり「とぅっとぅるー☆オカリン、朝だよ!起きて!」
岡部「んむむ……なんだまだ眠いってどうおぁっ!ままままゆり!?」
まゆり「そんなにビックリしなくてもいいと思うのです……」
岡部「いや、その、なんだ。すまん……って、まだ朝の6時にもなっていないではないかッ!」
まゆり「早起きは三文の得なんだよ、オカリン」
岡部「今日は二限からなんだから、勘弁してくれ……」
まゆり「だめだよ、ほら、朝ご飯もう用意してあるから」
岡部「な、なに!?」
岡部「なんだ、おふくろが用意してくれたのか。朝早くから悪いな」
岡部母「なに言ってんのよ。お母さんいつもこの時間に朝ごはん食べてるんだからね」
岡部「そうだったのか、知らなかった。親父は?」
岡部母「もうとっくに出てるわよ」
岡部「そうか。それで、飯は?」
岡部母「まゆりちゃんがね、消化にいいものがいいだろうって」コトン
岡部(またおかゆか……)
岡部母「あとお店で余ったリンゴね」
まゆり「まゆしぃはリンゴ大好きなのです」
岡部「賞味期限大丈夫か?」
・・・
まゆり「それじゃ、まゆしぃは学校行くけど、お昼食べ過ぎちゃダメだからねオカリン!」タッタッタッ
岡部「わかってるよ、じゃぁな」
岡部(……結局言えなかったな)
岡部(もうちょっと自分で整理してからにしよう)
岡部(さて、ちょっと早いが大学へ向かうとするか)
岡部(大学か。無事進学できるのだろうか。残すところあと二回の実験か。レポートも早々にとりかからねばな)
岡部(どっちかさぼったら即留年だろう。なんとしても避けなければ……)
岡部(ん、というか、難病なのに俺は大学を卒業した後、就職できるのか)
岡部(面接で不利になったりしないのか。研究職など、どうしたって下痢人間には向いてない)
岡部(……また、再発するのかな)
十二月二十三日 土曜日
ダル「で、結局昨日一日大学でショボーンなオカリンを心配してラボで夜を明かす男二人であった」
岡部「何故に説明口調……」
ダル「ってかさ、病気についてはまーよかったんじゃね?薬でなんとかなるなら時間も取らないし」
岡部「月1くらいで診察は受けるがな」
ダル「それよりもでっかい問題が目の前に迫っているんだぜオカリーン?」
岡部「あぁ、わかっている。明日は」
ダル「クリスマス・イヴぅ!!いやぁ僕の人生でクリスマスという日が輝いて見えるとは思ってもなかったんだぜ」
岡部「童貞こじらせると大変ですね、とどこかの助手からメールが来ていたぞ」
ダル「えっ、どゆこと?今この瞬間にメールを送ってメールが来たん?」
岡部「いや、ダルが未だに阿万音さんと進展がないという話をしていてだな……」
ダル「……」
岡部「あっ……いや、なんだ。その」
岡部「……すまん」
ダル「もうっ!僕はそういうのはもっと大事にしておきたい派なんだよ! ってかそーゆーオカリンこそどうなんだよ!明日大人の階段を上る勇気あるのかお?」ニタァ
岡部「うっ……うるさいぞダル!こっちはそもそも遠距離なんだから、貴様らとは違って色々物理的にだな!」
ダル「はいはい言い訳、乙!」
岡部「ぐぬぬ……」
ダル「……」
岡部「……」
ダル「朝飯何食べる?」
岡部「マックで」
ダル「うぃー」
ダル「てなわけで、明日ラボメンのみんなにプレゼントするものを買わないとってことで」
岡部「アキバの街を練り歩いてるわけだが……」
岡部「すまん、ダル!ちょっと気分が悪い」
ダル「まったくー、そんなんで明日大丈夫かお?電気店でも入って休憩しようず」
岡部「ん?なぜ電気店なのだ?」
ダル「いやぁ、デブ用のマッサージチェアーが結構気持ちいいんだお」
岡部「……仕方ない、乗ってやろう」
ダル「おう!そうこなくっちゃ」
岡部「ついでにそこでプレゼントをまとめて買ってしまおう。今時の電気店は何でもあるらしいからな」
十二月二十四日 日曜日
まゆり「とぅっとぅるー☆オカリン!オカリン!」
岡部「ふおっ!?ま、まゆり?あれ、鍵はどうした?」
ダル「僕が開けて上げたんだお。ふぁー、まゆ氏、まだ6時だぜ? さすがにちょっとエロゲコンプしてたのでもうちょっと寝てたい気分」
岡部「俺が寝た後になにをやっていたんだまったく。というか、そうかもう朝か」
岡部(昨日は一日アキバを歩き回って、といっても大して動いてないが、それで疲れてしまって、気づいたら寝ていたのだな)
まゆり「そんなことはどうでもいいのです!オカリン、これなに?」
ダル「んー?それはマックのゴミだお。ハッ!まさか、まゆ氏にヤンデレ属性が!?」
岡部「昨日の朝食ったんだが……」
まゆり「あのねぇオカリン。朝ごはんは特におなかにいいもの食べないとだめでしょ!」
岡部「いや、そのくらい大丈夫だって!」アセアセ
まゆり「……先生が言ってたの?」
岡部「あ、あぁ。そうだ。だから、大丈夫だ。ほら、この通り元気だぞまゆりフハハハ」
まゆり「なら、いいんだけど。もー、心配かけさせないでよねーオカリン」
ダル「それで、今日はラボメンガールズ+阿万音氏がここでクリスマスパーティーの準備をするんだって」
岡部「なに?そうだったのか」
ダル「え、オカリン知らなかったの?マジで?」
岡部「いや、まぁ別に構わないが。というか俺たちは手伝わなくていいのか?」
まゆり「オカリンにまた無理させて倒れちゃったら、まゆしぃ嫌なんだよ」
岡部「そ、そっか。でもダルは?」
ダル「僕はでっかいから邪魔なんだって」
岡部「うわぁ……」
ダル「やめろよオカリン……」
まゆり「ダルくんはオカリンを見張っててね」
ダル「いえすまむ!ばっちりオカリンを視姦しておくお!」
岡部「やめろォ!」
ダル「ラボを追い出されてしまったわけだが」
岡部「こんな朝早くじゃどこも店が開いていない」
ダル「どする?」
岡部「……そうだなぁ」
岡部「成田、行くか」
ダル「まぁ、大通りをずっとトボトボ上野方面に歩いてたからうすうす感づいてたんだぜ」
岡部「ふっ、さすが我が頼れる右腕< マイフェイバリットライトアーム>……」
成田国際空港
ダル「僕、居ない方がよかったんじゃね?」
岡部「ふん、阿万音さんと抜け駆けデートを計画していないような奴には居場所などあるまい」
ダル「オカリン、さすがにキレちまったぜ……」
岡部「というか、いてくれるとかなり助かる」
ダル「まぁ、久しぶりの牧瀬氏に会って動揺を隠せないのは目に見えてるからね、フォローするお」
岡部「そろそろのはずなんだが……」
ダル(お?もしかして、あれ……)
|
|*゚д゚) ジー
|⊂)
| /
|´
|
| ミ
| ピャッ
ダル「……なにやってるんだお牧瀬氏」
紅莉栖「どぅぇえっ!?は、は、は、橋田!?」
ダル「動揺しすぎだろjk……」
紅莉栖「ちょ、ま、岡部は!?」
ダル「まだ気づいてないみたい。ちょっと呼んでくるお」
紅莉栖「!?え、あの、いや、ちょっと待ってぇぇぇっ!!」
ダル「もう、なんなんだお」
紅莉栖「なんていうか、そう!心の準備がまだ……」
岡部「そんなに空港で騒ぐな、助手よ」
紅莉栖「」
紅莉栖「あ、あ、あの、」
岡部「久しぶりだな、紅莉栖」
紅莉栖「ふぃ、ふぃさしぶりぃ///」
岡部「なんだ、英語訛りか?」
紅莉栖「な、バカ!違うわよ!もう……」
ダル「まーとにかくさ」
岡部&ダル「おかえり」
紅莉栖「……うん。ただいま」
京成線車内
ダル(で、病気のことは牧瀬氏には黙っておくん?)ヒソヒソ
岡部(明日、言う。いつかバレるからな、早い方がいい)ヒソヒソ
ダル(まー、今日はケーキとかケンタッキーとかあるかもわからんね)ヒソヒソ
岡部(そういうことだ、そんな席で下痢の話などできまい)ヒソヒソ
紅莉栖「うーっ、眠い。向こうじゃもう夜なのよね」
紅莉栖(飛行機の中じゃドキドキして眠れなかったし……)
岡部「いるよなー時差ぼけアピールする女」
ダル「きっと自分がした貴重な体験をアッピルしたいんだぜ」
紅莉栖(こいつら……)
ダル「牧瀬氏がものすごく睨んでくるんだけどオカリンが全部悪いから」
岡部「ふっ、助手ぅ。電車の中では手も足も出せまぁい?」
ダル「なんかいつもより元気だなオカリン」
秋葉原
ダル「電車から降りた後、愛の一撃を喰らうオカリンであった」
岡部「ごべんなさい……」ヒリヒリ
紅莉栖「まったく。私はこれからまゆりたちと合流して、パーティーの準備を手伝うことになってるから、ちょっと買い物してくるわね」
岡部「ん?助手よ、まさかとは思うが、お前の担当は?」
紅莉栖「もう内装はほとんど終ったらしいから、後は料理ね」
岡部&ダル「!!!」
岡部(いや、万が一、いや、億が一、アメリカで料理のスキルを磨いたとか)ヒソヒソ
ダル(あの味オンチ大国で?)ヒソヒソ
岡部(……)
ダル(しかも大学のラボに缶詰だったのに?)ヒソヒソ
岡部(……)
紅莉栖「料理なんて久しぶりねー、腕が鳴るわ!」
岡部「くくくく紅莉栖!?なぁせっかくのクリスマス・イヴだし、二人でどこかぶらつかないか!?」
紅莉栖「ふぇっ!?///そそそそそれって、デデデデデー……///」
紅莉栖「ううん、岡部。橋田と阿万音さんに悪いもん。みんなで楽しみましょ」ニコッ
岡部「紅莉栖……」
ダル(天使のような悪魔の笑顔だお……)
岡部「結局、紅莉栖がスーパーへ向かうのを阻止できなかったわけだが」
ダル「ちょっとマツキヨで正露丸買ってくるお……」
岡部「俺もそうしよう……」
ダル「そういやラボにあった正露丸が全部なくなってたっけ」
岡部「あぁ、俺が下痢してる時に飲んでたんだ。そうだったな、買い足しておこう」
ダル「あれ、正露丸でもオカリンのしつこい下痢には効かなかったん?」
岡部「俺も驚いたんだが。今まで人生で正露丸を飲んでおけば間違いなかったのに、今回は全然だめだった」
ダル「まー医者にかかるような病気だったからねー、仕方ないかもわからんね」
221 : 以下、\... - 2014/06/10 22:40:27.15 R0ct3y9S0.net 76/201今日はここまで。早く寝ないと生活リズムくるうからね
話の大筋はできてるよ
明日の夜から再開するよ
明日は朝から一日病院だから遅くなるかもわからんね
228 : 以下、\... - 2014/06/10 22:47:59.94 cts/JdG30.net 77/201病気の描写が生々しすぎる
これ>>1の実体験だろ
231 : 以下、\... - 2014/06/10 22:50:21.52 8oDwPsAD0.net 78/201>>228
だろうね
>>1は朝からなにするんかな、白血球除去かな
高圧酸素かな
300 : 以下、\... - 2014/06/11 05:12:48.67 y6431Dfh0.net 79/201>>1です
保守支援thx
朝少し時間ができたのでちょっとだけ書くよ
思ったより共感してくれて嬉しい
オカリン原作で18歳だったね、なぜか19だと勘違いしてた
きっとこのオカリンは『数え』で考えてるんだと思ってくだされば(汗
岡部「まゆりからメールだ、もう来ていいってさ」
ダル「おk、楽しみだお!」
岡部(思えばSG世界線にたどり着いてからというもの、阿万音さんを含め全員で集まるという機会は一度もなかったからな)
岡部(勿論、鈴羽に会えるのは7年後なわけだが)
岡部(さて、どうなるものやら)
・・・・・・
ガチャ
みんな「メリークリスマース!」パーンパーンパーン
岡部「うおっ!?クラッカーか」
ダル「って!阿万音氏そのコスは!王道中の王道!」
由季「まゆりちゃんがね、どうしてもっていうから……///」
ダル「うほぉ!フェイリスたんもわざわざスペシャルコスチューム投入かお!この空間ヤバイ!」
フェイリス「はいはいダルニャンは向こうでお着替えしましょうねー」
ダル「え、僕もコスプレすんの?mjd?」
岡部(ダルサンタか……)
まゆり「オカリンはこれね!」
岡部「鹿、いやトナカイのツノカチューシャと、赤鼻か」スッ
紅莉栖「ブフォwww似合ってるじゃないwww」
岡部「ええい、草を生やすな草を!」
ルカ「おか、凶真さん、あの、僕とおそろいですね!」
岡部「おぉ、ルカ子もトナカイカチューシャか。というか、コスプレはいやだったのではなかったのか?」
ルカ「このくらいなら……せっかくのパーティですし」
萌郁「……」ピロリロリン
岡部「閃光の指圧師<シャイニング・フィンガー>よ、今日くらいしゃべったらどうなのだ」
萌郁「……メリー、クリスマス」
ダル「メリークリスマス!デブが輝ける瞬間到来ー」ヌッ
岡部「うわっサンタだ!」
まゆり「ダルくんすごい似合ってるよー!」
ダル「いやぁ照れるぜ」
紅莉栖「はい、それじゃ色々用意したものを並べましょうか」
岡部「鳥のから揚げに、エビフライ、ハムに野菜?を巻いた奴に、ウィンナー、骨付きの豚リブに、焼き鳥、かわいらしい生春巻きに、サラダとフルーツの盛り合わせ、そして……これは、なんだ?」
紅莉栖「ポテトサラダよ?」
岡部「ポテトサラダだと……!?」
ダル「うわーおいしそうなポテトサラダだお(棒」
岡部「まず臭いだが、どうしてすっぱそうな臭いがするのだ」
紅莉栖「酢漬けのキュウリを使ったのよ、マヨネーズと合うって書いてあったから」
岡部「……色が芋の色ではないのだが」
紅莉栖「少しカレー粉を混ぜてみました」
岡部「……わかった、あとで食べよう」
紅莉栖「そうね、まずは乾杯しないと。シャンメリーを用意してあるから、みんなにグラスまわして」
ダル「がんがれオカリン」
岡部(そんな感じで第一回ラボメンクリスマスパーティー(※命名まゆり)が始まって)
岡部(今までにないくらい俺は楽しんだんだと思う)
岡部(この光景を手に入れるための世界線漂流だったと思えば安いものだ)
まゆり「はい!次はオカリンにプレゼントだよー」
岡部「手編みのマフラーと、手袋か。ありがとな、まゆり。大事に使わせてもらおう」
まゆり「うん!」
紅莉栖「私からもほら、あんたにプレゼントよ」
フェイリス「ニャニャ!クリスちゃんから愛の贈り物だニャ!」
紅莉栖「るみちゃん!///」
岡部「これは……腕時計か。高かったんじゃないか?」
紅莉栖「いいのよ、無駄にお金もらってるし。あんたに似合いそうだったから」
ダル「束縛したい深層心理が見えますなぁ」
由季「紅莉栖ちゃん大胆」
紅莉栖「そこぉっ!」
紅莉栖「それじゃ最後にケーキ食べましょう」
ダル「ケーキktkr!そのためのサンタです」
フェイリス「メイクイーン+ニャン²がお届けする、マユシィ・ ニャンニャンとフェイリス・ニャンニャンの愛情たっぷりケーキだニャ!」
ルカ「デコレーションは僕も手伝いました」
岡部「ふっ……この日のために用意しておいたのさ。サイエンスが未来を切り開く時! 未来ガジェット12号『正確に切りワケール』!」
ダル「アニポケ見てんのかおオカリン」
岡部「いや、まとめサイトだけだ」
紅莉栖(ネタがわかってしまった私は突っ込んだら負けな気がする)
ゴンゴン
岡部「ん?こんな時間に誰だ?」
まゆり「サンタさんかなー」
天王寺「よう岡部!やってるかー!おいおいなんだにぎやかじゃねーか」ガチャ
紅莉栖「あ、天王寺さん。お久しぶりですって酒臭っ!」
岡部「飲みに来たのですかMr.ブラウン……」
天王寺「いやいや、そうじゃねぇ。またお前らに頼みがあってな。今しがた綯を寝かしつけたところだ」
ルカ「小学生でも少し早い時間ですね……」
天王寺「そーだ。いい子にしてねーとサンタさんこねーぞ、ってな。今頃サンタが来るのにドキドキして寝たフリしてるだろうな。そこでだ……」チラッ
ダル「ん?」モグモグ
ダル「はぁ!?今から御徒町の自宅へ行ってプレゼントドッキリ!?」
天王寺「頼むぜ橋田!俺ぁ娘のためならなんだってするぜ」
岡部(そう言えばそうだったな……)
まゆり「ダルくん。綯ちゃんのためにもやってあげようよ。私もついていってあげるから」
由季「なんだかおもしろそうですね。私も行ってもいいですか」
天王寺「ああ!もちろんだ。タクシーまだ停めてあるから、そうと決まったら行くぞ。悪ぃな岡部、ちょっと借りてくぜ」
岡部「小ど……娘さんのためなら仕方あるまい。ダル、デブの有効活用をしてくるがいい」
ダル「ちょ、勝手に話進めるとかヒドス」
ブロロロロ……
フェイリス「嵐のようだったニャ」
岡部「まぁ30分もあれば帰ってくるだろう」
紅莉栖「それより天王寺さんが手土産に持ってきてくださったこのビニール袋の中身だけど……」
萌郁「……ビールとチューハイ、飲んでもいい?」
紅莉栖「あ、桐生さんのために持ってきてくれたわけね」
萌郁「岡部くんも、飲む?」
岡部「俺はいい。高校生もいるしな」
フェイリス「どーぞ気にせずお飲みください大学生様」ニヤニヤ
紅莉栖(酔いの勢いに任せて私のジングルベルを岡部のクリスマスツリーが……)///
岡部「まー、せっかくだ。少しだけならいただこう。Mr.ブラウンには恩義があるからな」
ガチャ
ダル「ただいま戻ったおー……って酒臭っ!」
紅莉栖「ぅおー!サンタが戻ったどー!あひゃひゃwww」
岡部(こいつ酒飲んでないのに雰囲気に酔ってるな……)
まゆり「とぅっとぅr……って、オカリン!お酒飲んだの!?」
岡部「あ、あぁ。いやでもほんのちょっとだけだ」
萌郁「まゆりちゃん……私が飲ませたから、ごめんなさい……」
まゆり「え、えっと。もぅ、そういうのよくないと思うのです」
由季「紅莉栖ちゃん、紅莉栖ちゃんの好きな人は?」
紅莉栖「岡部に決まってんだろー!りんたろー!私を抱けー!!」
岡部「ブッフォ!」
岡部(そんなこんなでにぎやかな夜はあっという間に過ぎて行った)
岡部(時差ボケのせいで爆睡してる紅莉栖と、昨日ほとんど寝ていないダルはこのままラボに泊まることにした)
岡部(俺も今日はラボに泊まる。紅莉栖が心配なのもあるが、いかんせん最近早起きしていたのでもう眠くて仕方ないのだ)
まゆり「オカリン、ホントに帰らなくて大丈夫?」
岡部「あぁ、大丈夫だ。それよりも睡魔が俺の喉元にしがみついていてな……」
フェイリス「じゃーまたニャー!今日はとっても楽しかったニャー!」
由季「あの、また明日お邪魔しますね」
岡部「はい、それまでにはダルのやつを叩き起こしておきますよ」
・・・
ダル「ングオー ングガー ング…………ングオー グガー」
岡部「気持ちいいイビキかきやがって。俺ももう寝よう。んん、ふぁぁ……」
十二月二十五日 月曜日
岡部「ん……朝か。と思ったらまだ日が昇ってないな。酒のせいか、早く目覚めてしまったな」
紅莉栖「おかべぇ……ふふ」
岡部「何を夢見ているのだこいつめ」
ん?
岡部「あぁ、さすがに昨日は食べ過ぎたな。たまにはこんな日があってもいいだろうが、いかんせん内臓に来ているな。ちょっとトイレ……」ヨイショ
ん?なんだ?
岡部「体が重いな。二日酔いか?まさかな。下痢か?まぁ、下痢も多少は覚悟の上だったからな」
あ……あれ……
岡部「おかしいな、また風邪でも引いたか。これはどうしたんd」
あっ
岡部(その時の俺はゆっくりと思考する暇などなかった。おそらく神経反射で動いていたのだと思う)
岡部(冷静になってから思い出すと、いや正直記憶は曖昧なのだが……。俺はまず強烈な吐き気と便意、寒気と頭痛に襲われた)
岡部(目玉が飛び出しそうな激痛……実際、視界はぼやけていた)
岡部(トイレに駆け込んで胃の中にあるものをぶちまけると、そのまま脱ぐか脱がぬかわからぬまま便座に座って脱糞した)
岡部(なぜかトイレの天井を凝視していたのは覚えている。もう痛覚が体の内側にあるのか外側にあるのかもわからなくなっていた)
岡部(幾多の世界線移動のたびにめまいを経験してきた俺だったが、その時は上か下かもわからなくなった)
岡部(一言でいうと、世界がやばかった)
岡部(何分間意識が漂っていたのだろう。気がつくと扉の向こうから紅莉栖の声が聞こえてきたのだ)
岡部(そこで感覚が鮮明に戻った)
岡部「……ぅぬあああああぁああぁあああああああああああああ!!!!!!!」
紅莉栖『岡部!?おかべぇ!!』ドンドン
岡部「ふぐぉっ……ぐうぅぅぅぅぅぅあああああああああああああああ!!!!!!」
紅莉栖『ちょっと!!……鍵はかかってない。もう、勝手に開けるわよ!!』キィ
紅莉栖「!!!」
ダル「ど、どしたん?さすがに寝起きのデスメタルはヤバイんだが……ってクッサ!!なんだこれなんの臭いだお」
紅莉栖「橋田!!救急車!!」
ダル「えぇ?お、おう」
岡部「ハァ……ハァ……そ、その必要はない」
紅莉栖「岡部!アンタ大丈夫なの!?ってか何言ってんのよ、どう考えたって」
岡部「いや、大丈夫なんだ……痛みも引いてきている……」
紅莉栖「バカ!大丈夫なわけないでしょ!ちょっと、え、どうしよう。どうしよう!」
ダル「救急車呼んだお!どうしてこうなった……」
岡部「俺は、大丈夫だ。掃除は、自分でやるから、お前らは外に、出てろ」バタン ガチャ
紅莉栖「え……」
ダル「オカリン……」
岡部(その後、適当に散乱した汚物を片付けた俺は、やってきた救急隊員たちに大丈夫だと説明した)
岡部(年末の休日の早朝の緊急出動、無理やり連れて行こうとするので断固拒否すると、隊員の一人にこっぴどく怒られてしまった)
岡部(確かに痛みはあった。気持ち悪さもあった。だが、引いてしまえば一気に冷静さを取り戻す)
岡部(入院したらどうなる。まゆりに、おふくろに、みんなに心配かける)
岡部(明日の実験課題は、進級は、紅莉栖との時間は)
岡部(何より、今ここにいる二人に、ゆっくりと弁明と謝罪をしたかった)
岡部「すまん、ちょっと横にならせてくれ」
ダル「お、おう。ほら、毛布」
紅莉栖「ねぇ橋田……アンタは知ってたんでしょ?」
ダル「え?あ、うん。でもオカリンが薬飲めば治るって」
紅莉栖「治ってると思うの?なんでもっと心配してあげなかったの?岡部のそばにいて……」
ダル「ちょ、マジ一旦落ち着こうぜ牧瀬氏」
岡部「そうだ紅莉栖、悪いのは全部俺だ。ホントは今日打ち明けようと思っていたのだが、とんだ醜態を晒してしまったな」ハハ
紅莉栖「岡部……」
紅莉栖「潰瘍性大腸炎……」
岡部「そうだ。そしてこれは不治の病だ、一生治らない」
ダル「ハァ!?それマジで言ってんのかおオカリン!」
紅莉栖「でも、去年アサコールが日本で認可されてから、投薬での症状抑制はより簡単になったはず」
岡部「なんだ紅莉栖、知ってるのか」
紅莉栖「常識の範囲でね。アメリカでは結構ポピュラーな病気だし、首相のアピールがネットで話題になってたし」
ダル「薬飲んでれば症状でないんだろ?なんでオカリンぶったおれたん?」
紅莉栖「バカ!あんなに腸内に負担がかかる食べ物を摂取しておいて薬でもなんとかならないわよ!」
岡部「その通りだった……。俺は無知だったし、あさはかだった」
紅莉栖「そんなアンタに私の手料理を食べさせたと思うと……」
ダル「いやそれはオカリンが悪い」
岡部「そうだ、言わなかった俺が悪い」
紅莉栖「その通りよ!岡部が全面的に悪い! だけど……私のポテトサラダが、岡部にとって毒だったのも……事実よ」グスッ
ダル「……」
岡部「すまない。本当にすまない」グルルルル
ダル「ハァ。ほらオカリン、肩貸すからトイレいこうず」
岡部「……うむ」トボトボ ガチャ バタン
紅莉栖「……机の下のこれ、病気のパンフレット?」
紅莉栖「『避けたい食品』、『食べていいもの』……」
岡部「あんまり出なかったな……」
ダル「オカリンちょっと熱っぽいお。冷えピタ持ってくるお」
紅莉栖「ねぇ、岡部。これ読んだ?」
岡部「ん?なんだそのプリントは」
紅莉栖「潰瘍性大腸炎のパンフに挟まってたんだけど」
岡部「ん、そんなものあったのか。気づかなかった。そう言えばもらった日にラボに財布を取りに戻ったが」
紅莉栖「……ハァ。ここにはアンタが食えるものと食えないものが書いてあるのよ」
岡部「……」
ダル「はいオカリン冷えピタ。あと体温計もあったお。ん、牧瀬氏そのプリントは」
紅莉栖「橋田もしっかり聞いて。岡部が食べちゃいけないものについて」
紅莉栖「バカなアンタたちでも簡単に覚えられるように3つだけ教えるわ。人間の記憶は4つ以上のものになると忘れやすいから」
岡部(ぐうのねもでない)
紅莉栖「脂、繊維、刺激物。この3つよ。勿論色々例外はあるけど、とりあえずこれ。ほら、Repeat after me!」
岡部&ダル「あ、脂。繊維。刺激物」
紅莉栖「OK. まず脂。つまり脂肪が多く含まれる食べ物はダメ。肉とか揚げ物とかね。白身魚や鳥のささみとかは調理次第で大丈夫だけど、うなぎとかはダメ」
ダル「え、オカリン一生肉食えないってこと?そんなのあんまりだお!」
紅莉栖「だぁ!そんなこと言っとらんだろーが!調理であぶらを抜けば食べれなくはないのよ。ってか次いくわよ」
ダル「脂身のない豚はただの豚だお……いや、豚ですらないお……」
紅莉栖「次に繊維。つまり野菜とか果物ね。あと芋、海藻、豆とか根菜もそうよ」
ダル「食物繊維っておなかにいいんじゃなかったのかお?」
紅莉栖「便秘とか、腸をきれいに洗い流すって意味ではいいかもしれないけど」
ダル「あそっか」
紅莉栖「例外はりんごとじゃがいも、大豆の加工食品ね。豆腐とか納豆とか。あと、繊維を砕いたり刻んだりやわらかく調理すれば、にんじんとかなら大丈夫よ」
岡部(実家に帰った時は気をつけないといけないな……)
紅莉栖「最後に、刺激物」
ダル「ドクペですねわかりますん」
岡部「ぐっ……」
紅莉栖「そこで悔しそうな顔をするな。ドクペが好きなのはわかってるけど」
岡部「……すまない、続けてくれ」
紅莉栖「うん。つまり、炭酸、香辛料、アルコール、コーヒーやチョコレートのカフェイン。にんにくもそうみたい」
ダル「うわぁ、オカリンもうお茶しか飲めねーぜ」
紅莉栖「薄い紅茶なら大丈夫ね。ウーロン茶はちょっと避けた方がいいみたい」
ダル「ミルクは入れておk?」
紅莉栖「ダメ。さっき脂がダメだって言ったでしょ?乳製品は基本ダメよ。マーガリンもダメ」
岡部「目玉焼きやトーストは大丈夫なのか?」
紅莉栖「そうね、卵やパン、ご飯は大丈夫だけど、パンはバターがほとんど入ってないようなのがいいわね」
ダル「ん?でも油無しでどうやって目玉焼き作るん?」
紅莉栖「一応油をフライパンに敷かなくてもできなくはないけど。使うならサラダ油よりもゴマ油、ゴマ油よりもオリーブオイルがいいみたい。勿論、量は少なめね」
岡部「オリーブオイルとはリッチだな」
紅莉栖「あとは細かいけれど、ゴマとか海苔とかは、腸にくっつくからダメらしいわ。イチゴも、外皮についた種子がゴマと同じ理由でダメ」
ダル「昨日のパーティにはオカリンが食べていいものが何一つなかったわけですねわかりますん」
岡部(まゆりの選択した朝食が正しかったのか……)
ピンポーン
ダル「お?由季たんキt……あ、いや。阿万音氏と約束があるんだけど、どうしよう」
岡部「俺のことなら大丈夫だ。俺を気にせず、というのも申し訳ない話だが、是非外で遊んで来い」
ダル「うん。ごめんなオカリン」
岡部「何を言う。俺が悪いんだ。俺の分まで存分にイチャイチャしてこい。それが俺の望みでもある。だから、頼む」
ダル「……うん、わかったお。阿万音氏にはオカリンのこといわないでおくお」
岡部「あぁ、あとで俺の口から説明する。ほら、早く行って来い」
紅莉栖「それで、『俺の分まで』について詳細キボン」
岡部「ぐっ……紅莉栖、本当に申し訳ない」
紅莉栖「ええ」
岡部「貴重な休暇を使ってわざわざ日本に来て」
紅莉栖「そうね」
岡部「醜態を晒し心配をかけ」
紅莉栖「……」
岡部「あげくお前とのクリスマスデートを台無しにしてしまった」
紅莉栖「……」
岡部「この埋め合わせはいつかするから」
紅莉栖「できるの?」
岡部「えっ?」
紅莉栖「今の体の岡部にそれができるのかって聞いてる」
岡部「」
紅莉栖「決めた」
岡部「な、なにをだ」
紅莉栖「岡部の体がよくなるまで看病する」
岡部「は、はぁ!?いや、折角日本に来たんだ、病人にかまわず遊んでくれば……」
紅莉栖「……あのさ、私が日本に帰ってきた理由わかってる?」
岡部「そ、そりゃ……」
紅莉栖「岡部と一緒に居たかったからだろ。言わせんな恥ずかしい」
岡部「それはさすがに申し訳なさすぎる」
紅莉栖「私がしたいからするのよ」
岡部「うむ……」
紅莉栖「私じゃ不安?それとも不満?」
岡部「そういうわけではないが、しかしだな」
紅莉栖「いいじゃない。こういうのもほら……らしいでしょ///」
岡部「この脳内ラブコメ星人め」
紅莉栖「っ!う、うるさい!病人は黙って寝てろ!」
紅莉栖「まだ熱っぽいけど、少し落ち着いた?」
岡部「ああ、そうだな」
紅莉栖「じゃぁ、とりあえず診察いきましょ」
岡部「帰国子女よ、今日が何の日かわかっているか」
紅莉栖「ハァ?クリスマスだけど日本の病院がそんなことで休むわけ」
岡部「振り替え休日だ」
紅莉栖「……あっ。じゃ、じゃぁ、明日」
岡部「それなんだが、明日はどうしても大学へ行かなくてはならない」
紅莉栖「そんなのサボれば」
岡部「即・留・年・だ! それに水曜日には予約も入れてあるから、そこで病院には行く」
岡部「……ちょっとトイレ」
紅莉栖「うん。気をつけて(だいたい30分周期……)」
・・・
紅莉栖「はい、とりあえずインスタントのおかゆ」
岡部(またこれか)
紅莉栖「それから薬。毎食一回三錠って書いてあるけど、ちゃんと飲んでたの?数がおかしいんだけど」
岡部「(ギクッ)いや、ほらどうしてってタイミングが悪くて飲めない時とかあるではないか!」
紅莉栖「忘れてたのね……」
・・・
紅莉栖「ここの詳しい住所教えて。密林で潰瘍性大腸炎やクローン病の人でも食べられる料理のレシピ本があったのよ」
岡部(作るのか……)
・・・
岡部「……zzz」
紅莉栖「寝ちゃった、か。んー、まだ熱っぽいわね。さて、早速作ってみるか」
岡部(ん……なんだこれは)
岡部(x軸にy軸、原点。二次の座標平面か)
岡部(なぜ二次元平面に俺は存在しているのだ?)
岡部(足元には……これは、負の二次関数と、台車?)
岡部(つまり小高い山の上でこのどちらに転ぶともわからない不安定な台車の上に立っているのか)
岡部(そう考えたら緊張してきたな、バランスを崩してはならない)
岡部(安定こそしているが、少しでも外力が摩擦力を上回れば一気に谷底だ)
岡部(位置エネルギーは運動エネルギーに変化し、運動量を放出する出口を求めて……)
岡部「ぬはぁっ!!」ブリュ
紅莉栖「お、岡部!?どうしたの?」
岡部「……あぁ、すまない。変な夢を見ていた。ちょっとトイレ」トボトボ
紅莉栖「うん……気をつけて」
ガチャ バタン
岡部「……」
岡部「……」
岡部「……」ブリッ
紅莉栖「本が届くのは明日だけど、とりあえずネットに書いてあるレシピでやってみよう」
紅莉栖「なになに。豆腐クリームパスタ、かれいの煮付け、茶碗蒸し……」
紅莉栖「うん、茶碗蒸しなら今の岡部でも大丈夫かな」
紅莉栖「具は……。具は……。現状を鑑みると、具無しが一番ね」
紅莉栖「昨日余った卵はっと……」
岡部『……』ジャーー
紅莉栖(岡部がシャワールームで何かしてる。パンツよごしちゃったのかな)
紅莉栖(後でコインランドリー行こっと)
紅莉栖「さて、こっちもそろそろかな」カチャ
紅莉栖「見た目も香りもバッチリ。まぁ、こんなの科学実験に比べればなんでもないわね」
紅莉栖「岡部ー!夕飯できたわよー!」
岡部『あ、ああ。今いく』
岡部「……さすがに余計なものは突っ込んでないみたいだな」
紅莉栖「ホントは個性を出すようなアレンジをしたいところだけど、さすがにそんなことしないわよ」
岡部「そうか。では、いただきます」スッ
岡部「!」トロォ
紅莉栖「あっ」
岡部「ほとんど液体なんだが……」
紅莉栖「あ、あれ?熱伝導率の計算間違えた?それともたんぱく質の熱変性が……」
岡部「まぁ、この方が確かに食べやすいし、おなかにいいだろう。ありがとう、おいしいよ」
紅莉栖「……う、うん。ならいいけど///」
紅莉栖「ほら、ちゃんと薬飲んで」
岡部「わかってるって」
紅莉栖「まだ熱下がらないけど、ホントに明日学校いくの?」
岡部「明日と一月最初のを乗り切れば、なんとかなるんだ。般教は半分以上ダメになったが、実験だけは二回目の欠席はどんな理由でも許されないらしい」
紅莉栖「融通利かないの。まぁ、確かに実験課題は、内容にもよるけど」
岡部「なに、こっちには強い味方が付いているからな」
紅莉栖「そんな///」
岡部「ダルほど大学で頼れる奴はいない」
紅莉栖「」
十二月二十六日 火曜日
紅莉栖「じゃぁ、いってらっしゃい。ホントに、ホントに気をつけてね。何かあったらすぐ電話して」
岡部「ふっ、俺も丸くなったものだ。心配するな、あの太陽が沈むまでには必ずここへ戻る」
紅莉栖「変なフラグを立てるんじゃない!」
天王寺「おー、なんだなんだ。朝から新婚カップルごっこか?」
岡部&紅莉栖「誰が新婚カップルか!」
岡部(さて、大見得切って大学へ向かうが、相当に体調がネックだ)
岡部(この寒空の下、カイロ挿入腹巻完備、手袋マフラーフルアーマーの状態でさえ、不安のせいか肝が冷えるのを感じる)
岡部(やはり意識的にトイレを探してしまうな。あそこにコンビニ、あそこに公園)
岡部(普段の下痢の時もそうだったが、今回は本格的にやばいからな。早く薬が効いてくれればいいが)
岡部(……一回、あのコンビニへ立ち寄ろう)
ダル「オカリン、大丈夫かお?明らかに顔色が悪いんだが」
岡部「あぁ、確かに状態は芳しくないが、ここを乗り切れば明日は病院、そして冬期休暇だ」
ダル「オカリン、お前って奴は……」
岡部「お前こそ昨日はどうだったのだ、ちゅっちゅしたのか」
ダル「ちょ!大学でその話はやめろって!一応活動的なキモオタDTとして名が通ってるんだからさ」
岡部「……その通り名にお前は誇りを持っているのか」
ダル「ちなみにまだDTだお」
岡部「だと思った」
東京電気大学 実験棟
教授「では、前回に引き続き―――の実験を行う。各自必要な器材と薬品をそれぞれの棚から取り出し、教科書通りに実験を行うこと」
岡部(きたか。取りあえずトイレにはいっておいた。ほとんどガスしか出なかったが)
教授「岡部、ホントは一回欠席しただけでも留年なんだが、今回はお前の病状を鑑みて特別措置となったわけだ。無理して体を壊すなよ?留年することにはなってしまうが……」
岡部「ありがとうございます教授。大丈夫です、体の方は長期休暇でなんとかしますので」
教授「そうか、わかった」
岡部(さて、5分おきに発生した気体の体積をメモしていかねばならないパターンの奴か)
岡部(5分おき……)
班員「いいよ岡部、体調悪いんだろ?数値のメモは俺たちでやっておくから、岡部は計器が安定してるかとか、反応進行による物理変化とか、そういうの観察しといてくれ」
岡部「うむ……すまない」グルルルル
岡部(くそっ。わかってはいたが、情けないものだな……)
岡部「早速ですまないが、ちょっと席を外す」
班員「あぁ、いってこい。今日が退室厳禁パターンの実験じゃなくてよかったな」
岡部(くそっ、くそっ、くそっ!)
岡部(だめだ、どうしても、行動が制限されているとか、閉塞感があるとか)
岡部(そういうものを感じ取ってしまう)
岡部(発熱によるフラフラ感は気合で持ちこたえられるが、便意とこの気分の悪さは)
岡部(……そうか、怖いのか。俺は恐怖を感じているのか)
岡部(しかし、一刻も早く実験室へ戻らなければ)グルルルル
岡部(……くそっ)
岡部「……遅くなった、すまない」
班員「ああ、お帰り。ほとんど終っちまったがな」
岡部「す、すまん」
班員「仕方ないさ。ほら、俺の実験ノート写させてやるから、即レポ提出してとっとと上がろうぜ」
岡部「ありがたい。今度なにかおごろう」
班員「今の言葉忘れるなよ?」
班員2「……おい岡部、試験管洗うのくらいできるよな」
岡部「あ、あぁ。先に帰ってくれ、後片付けは全部俺がやっておくから」
岡部「やはり、惨めなものだな。気を使われるというのは」
ダル「もう諦めろってオカリン。なんとかなったんだから喜べよ」
岡部「あぁ。だが、なんとかなったと思ったら緊張が解けてしまってな」
ダル「ほぅ」
岡部「全力で気持ち悪い」オエー
ダル「ちょ!おまっ、いい加減に汁ー! しゃべってる暇あったら洗面所いけよもう!」プンスコ
岡部「うんむ、今しがたそう思い至ったところだ」
ダル「あれ、出かかったオカリンのゲロリンはどしたん?」
岡部「再度胃袋へ押し込んだ」
ダル「それ食道荒れるお」
岡部(結局午後の般教は出ずに早退してラボで寝ることにした)トボトボ
岡部(変な達成感のせいで、もう気合ももたなかったのだ)グルルル
岡部(ぐっ、ここで便意か。またあの朝のコンビニに)ギュルルルルル
岡部(!)ゴロロロロロロ
岡部(……)グルルルルル
岡部(滝汗)キュゴオオオオオオ
岡部(……全力で括約筋!ダッシュだっ!歩幅が狭い!)ピョンコピョンコ
岡部(ケツを抑えながら脂汗びっしょりでピョンコピョンコ入店し即効トイレへ向かった客に対して平然と『いらっしゃいませー』と言えるコンビニ店員レベル高いな……)
岡部(しかしこれは、きつい。物理的にも勿論だが、社会的にどうなんだこれ)
岡部(電車は。そりゃ総武各駅なら駅で降りてトイレにいけなくはないが、ライナーなどには乗れんな)
岡部(車は。下の道はどこにコンビニが把握していれば問題ないだろうが、高速、特に首都高はSAほとんど無いから厳しいな)
岡部(俺は、社会生活できるのか……)
未来ガジェット研究所
紅莉栖「またくだらないことで悩んでたのね」
岡部「そうは言ってもだな」
紅莉栖「オムツつければいいじゃない」
岡部「お、お前、そういう性癖が」
紅莉栖「赤ちゃんプレイ違うわっ!」
岡部「まぁ、実際装着した安心感によって、便意そのものが押さえられるだろうからな」
紅莉栖「つまりね、もっとも敵視すべきは便意よりも脳内の不安感なわけ」
岡部「一理あるな。たとえ0.1パーセントの確率だろうと、失敗の可能性があるというだけで、通常の行動を取れなくなることがある」
岡部「しかしオムツはな……」
紅莉栖「若い女性だってオムツしてる人いるんだから、男でしょ、それくらい辛抱しなさい」
(*˘д˘) 。o(オムツ一丁の岡部……うん、大丈夫。愛せる)
岡部「っと、すまん。トイレだ」
紅莉栖「はいはい行っといれ」
岡部「……(※真顔)」
紅莉栖「はよ行け!///」
・・・
岡部(また便に血が混じっているな)
岡部(それに、元々下痢気味で体力が無かったが、今日一日の体力の消耗がヘァンパ無い)
岡部(めまいもちらほらしていたが、やはり貧血なのだろうか)
岡部(まぁでも徐々に快復しているのは確かだな)
岡部(クリスのおかげか、クスリのおかげか)ブリッ
岡部(……いかんいかん、何を言ってるんだ俺は)ジャー
岡部「……zzz」
紅莉栖「さて、岡部も寝たし、例のレシピ本も届いたし、試してみましょうか」
紅莉栖「んー、なになに。『寛解期におすすめの毎日のラクラク献立』『寛解期のおかずとデザートの安心レシピ』『寛解期におすすめの主食の安心レシピ』……」
紅莉栖「まだ寛解期は早いわよね。そうなると『症状が悪いときの食事』これだ!」
紅莉栖「はんぺんのふわふわ煮、蒸し魚のあんかけ、炒り豆腐……。結構色々あるわね」
紅莉栖「あれ、まだ後ろにページが。『活動期の補いに』? りんごのくず湯、みぞれ汁、にんじんスープ……」
紅莉栖「さすがにもうちょっと食べさせてあげたいわね」
紅莉栖「とりあえず、はんぺん試してみるか!よしっ!」
紅莉栖「はんぺん80g、煮汁が出汁カップ1/2 薄口しょうゆ小さじ1……。ん、グリンピース(冷凍)少々、か。冷凍ものなら豆の皮が無いってことかしら」
紅莉栖「少々、とか書いてあると創意工夫のし甲斐があるのよね」
紅莉栖「はんぺんは1cm角に切る、か。新品の定規があったら調理用定規として使えるわね!」
紅莉栖「それじゃ文房具屋とスーパー行って冷凍食品探してくるか」
紅莉栖「あ、そうだついでにオムツ買ってくるか。成人男性用とかのってあるのかしら」
紅莉栖「ちょっとの間だけど、目を離して大丈夫よね……」
紅莉栖「早くよくなってね……」ガチャ
岡部「……zzz」
岡部「ん……あれ、紅莉栖?出かけたのか?」
岡部「……自分で言っておいてなんだが、完全に同棲中のセリフだな」
ダル「まったくだぜオカリン。おかげで入りづらいったらありゃしない」
岡部「ってぇ!!おどかすな貴様!!一体いつからそこに」
ダル「ふっ、デブの隠密能力をなめんなよ。ほら、一応午後の授業の板書とプリントのコピーだお」
岡部「おぉ、すまんな。あれは試験の点数で単位がくるからな」
ダル「まぁなんだかんだ?災い転じて福と成してるオカリンには敬服の念を抱かずにはいられないんだぜ」
岡部「役得ではある」
ダル「床か… フンッ!」ドン
岡部「やめろ!Mr.ブラウンが来てしまうではないか!」
紅莉栖「ただいまーっ。って、橋田、来てたの」
岡部「こいつを止めてくれ!このままでは家賃が上がってしまう!」グッ
ダル「マグマが!出るまで!殴るのを!やめない!」グッ
紅莉栖「こら!ただでさえ体力なくなってるんだからやめなさい!」
岡部&ダル「すいません」
ダル「ん?牧瀬氏、その右手に持ってるものは……」
紅莉栖「あぁ、これ?オムツこれしかおいてなかったのよね」
岡部「思いっきりおじいさんとおばあさんの絵が描いてあるな……」
ダル「オカリン、事後の感想聞かせてね」
紅莉栖「プレイではないと言っとろーが!」
十二月二十七日 水曜日
紅莉栖「ここが慶應義塾大学病院ねぇ……」
岡部「紅莉栖まで着いてくることは無かったんだが」
紅莉栖「でも実際私のおかげでタクシー移動楽だったでしょ」
岡部「うむ、いざやばくなった時でもタクシーの運転手へしっかりフォローしてくれるだろうなどと考えただけでかなり気持ちが楽になった」
紅莉栖「それでいいの。岡部もなんだかんだ、普通の人間の脳みそしてるのよね」
岡部「なんだと!?俺は狂気のメァッドサイエンティスト、ほーおーいn」
紅莉栖「冬には白衣脱いでるくせに」
岡部「こ、これはっ!医学生と間違われてしまわないために仕方なくだな!」
紅莉栖「言い訳乙。じゃぁ私はあそこのスタバで待ってるから」
岡部「あぁ、わかった。また後で」
医師「ふむ……まだCRP高いね。少し発熱もある、か。しっかり薬飲んでいるのかな」
岡部「は、はい!(少し飲んでいないとは言えない……) ただ、この間のクリスマスで少しハメを外してしまって」
医師「それで、か。遊びたい盛りだから無理もないが、くれぐれも安静にね。では追加で処方箋出しておくね」
岡部「ありがとうございます。それでは失礼します」
・・・
岡部「待たせたな。お、スタバの中に薬待ち番号一覧の電光掲示板があったとは」
紅莉栖「待ってる間この辺ぶらぶらしてたけど、あっちにローソンあったからなにか買って帰りましょ。牛乳、卵、バターを使っていないクッキーとか普通に売っていたからびっくりしちゃった」
岡部「さすが病院のコンビニだな」
帰りのタクシー内
岡部「ん、このクッキー存外いけるではないか!」
紅莉栖「ドクペ禁止にして舌がよくなったのかしら」
岡部「やめろォ!今その名を口にしてはならん!封印されし悪霊がぁっ!」ガタガタ
紅莉栖「(そんなにきついか禁ドクペ……)それで、次の予約は?」
岡部「ん。あぁ、4日の木曜だ」
紅莉栖「そっか……私、3日の飛行機で研究室に戻る予定なのよね」
岡部「そうであったな。なに、それまでには心配させぬほど快復しているだろう」
紅莉栖「そうだといいけど……」
ポッヒンヒャララン ピンパッホッ↑ピン ポッピンポッピン ランタッタッタ
岡部「ん?まゆりから電話か。ちょっと電話出るぞ」
紅莉栖「どうぞ」
岡部「まゆりか、どうした?俺か、今病院帰りで……あぁ、大丈夫だ。心配するな。それよりコスプレ制作は順調か?……そうか、がんばってるな。え、明日?ラボをか?まぁ、構わないが……阿万音さんも? あぁ、わかった。また明日」ピッ
紅莉栖「まゆりなんて?」
岡部「明日ラボに泊まらせてほしいとのことだ。コミマ用の荷物もどっさり持ってくると」
紅莉栖「あー。今回はまゆりもコスプレするって言ってたわね」
岡部「現在阿万音宅にてラストスパート中、だそうだ」
紅莉栖「病気のことは岡部から説明するんだっけ」
岡部「無論だ」
紅莉栖「気丈に振舞って無理しないでよね」
十二月二十八日 木曜日
まゆり「ふ、不治の病って、オカリン!!」
由季「そうだったのですか……何と申し上げてよいか……」
岡部「誤魔化していて申し訳なかった。だが薬が効いてくればなんとかなるらしいから、安心してくれ」
まゆり「オカリン……」
岡部「こんなタイミングで暴露してしまってすまない。だが、明日は俺もコミマに行こうと思っている。だから、元気よく楽しんでいる姿を見せて欲しい」
由季「コミマに来られるのですか、お体大丈夫でしょうか」
紅莉栖「一応私が監視しておくから。なにかあっても大丈夫なようにね」
まゆり「うん……」
紅莉栖「ほーら、まゆり。岡部を元気付けてやるんでしょ?」
まゆり「!……うん、まゆしぃ、がんばるね!」
由季「それでは、私たちは最終調整といきましょうか」ニコ
十二月二十九日 金曜日
まゆり「では、行ってきます!」ガチャ
由季「また後ほどお会いしましょう」
岡部「ああ、いってらっしゃい」
・・・
岡部「行ったか。そしてついにこの時がやってきた……。どんな厨二ワードをもってしても表現できなかったコレ、『オムツ』」
岡部「思えば色々してきたものだ。これはひとつの到達点かもしれない。よし、履くぞっ……ん?オムツは履くものなのか、それとも着けるものなのか?一体どっちだァッ!」
紅莉栖「はよ履け!」
岡部「うむ……いざ」スッ パッ
岡部「……ホントにこの状態で用を足せと?」
紅莉栖「横漏れガードで安心よ」
東京ビッグサイト エントランスプラザ
岡部「お、いたいた」
――――――
ダル「ユキたん!最高だおー!」パシャパシャ
カメ小「たまらん!ムッハー」パシャパシャ
カメ小2「キタ-------!」パシャパシャ
カメ小3「ハァ、ハァ」パシャパシャ
――――――
岡部「ダルはいつから影分身の術を覚えたのだ」
紅莉栖「よく見なさい、本体は半袖よこのクソ寒い中」
岡部「というか阿万音さんはさすがだな」
紅莉栖「プロの貫禄がにじみ出ているわね」
岡部「まゆりは……え、隣の、まゆりだよな?」
紅莉栖「すごい!まゆりかわいいじゃない」
まゆり「あ、オカリーン!紅莉栖ちゃーん!」タッタッ
岡部「撮影中にいいのか?って、その格好は……」
まゆり「魅杏ちゃんって言うんだよー。由季さんとおそろいいいでしょー」
岡部「やっぱり金髪は似合うな。ポニテじゃなくてツインテなのも……良い」
まゆり「えへへー、ありがとオカリン!そう言ってもらえて、コスプレして良かったなーって!」
カメ小「す、すいません。『このヘンタイ!』って感じで視線いただけませんか」
まゆり「?このヘンタイ?」
カメ小「うおおーーー!!これはこれでうおおーーー!!」パシャパシャパシャパシャ
・・・
岡部「それじゃ、俺たちは少しぶらぶらしてくるよ。まゆり、がんばれよ」
まゆり「うん!また後でねー」バイバイ
紅莉栖「私もしてみようかしら……」ボソッ
岡部「ん?何か言ったか?」
紅莉栖「ふぇ!?い、いやなにも!?」
岡部「ところで紅莉栖、すまないがちょっとトイレに行ってくる」
紅莉栖「あ、うん。じゃートイレの前あたりで待ってるわね」
岡部「うんむ」
岡部(やはりどうしたって見栄を張ってしまうものだ……実は第一波はまゆりのツインテに見とれてた辺りだった)
岡部(なんとかクールにトイレに向かえたと思う。とりあえずは助かったな)
岡部(ん……洋式が全部埋まっているか。仕方ない、和式で……あれ?)
岡部(まさか、嘘だろ、そんな馬鹿な。全て埋まっている、だと……!?)
岡部(他のトイレを当たるか?この人ごみの中を掻き分けて?だめだ間に合わない!)ギュルル
岡部(うっ!これは、かなり不味い。寒気と脂汗まで出てきた……どうする、どうする岡部倫太郎!)ギュルル
岡部「す……すいません、急いで、いただけません、か……」
岡部(くそっ、小便の奴らの視線が痛いが、致し方ない。一刻も早く出てもらうしか)ギュルル
岡部(ふんぬぉ!!こ、これは、もう、あと数十秒しか、もたな)ビュヒュゥ--------------ブリブリブリッ
岡部「あ」
男「……!」
男2「……!?」
男3「……?」
男4「……!?!?」
岡部「……だ、だいじょうぶに、なりましたぁ。失礼しましたぁハハハ」フラフラ
岡部(―――――――――――――――!!!!!)グッ
岡部(orz)
岡部(ハハ……笑えよベジータ)トボトボ
岡部(ハハ……)トボトボ
岡部(……)トボトボ
岡部「く、紅莉栖っ……!」グスッ
紅莉栖「どうしたの岡部……?」
岡部「いや、トイレがだな、その、満室で……」
紅莉栖「……わかった。そういうことね」
岡部「ホント、情けない限りだ……」
紅莉栖「たしかに、情けない男ね」
岡部「……う、うむ」
紅莉栖「私が岡部のことを情けない男だと思う理由は次の一点において。『岡部がオムツに排便したことで私が岡部を情けない男だと思う』と岡部が思い込んでいる点、よ」
岡部「!」
紅莉栖「ほら、さっきの個室にいたおっさん達がなんだか……慌てて?出てきたわよ。私の手提げ持ってトイレ行きなさい。中にポリ袋と替えのオムツ入ってるから」
岡部「紅莉栖、お前……」
紅莉栖「また個室が埋まっても知らんぞ?ほれほれ」シッシッ
岡部(おかしい、天使が紅莉栖に見える)フキフキ
岡部(しかし、たしかにオムツのおかげで助かったな。なるほどこうやってキャッチしてくれるわけだ)
岡部(しかも今回は、運がいいのかわるいのか、いやウンはわるいんだが。ガスが多くて実が少なかった)
岡部(ポリ袋に入れたゴミはトイレに捨てていいのか?これを紅莉栖の手提げに入れるわけにもいかんしな……)
岡部(きっとそのためのくず箱なのだろう。えい、捨ててしまえ)
岡部(そして新たなるもう一枚を……)スッ パッ
岡部(ふむ……悪くない)パンッパンッ
岡部(しかし、先ほど『我慢』をしてしまったせいか、いかんせん体調が悪くなってきたな……。レイヤー2人を見届けるという目的は達成したし、みんなには悪いが紅莉栖と先にラボに戻ろう)
十二月三十一日 日曜日
岡部(その後も変わらず紅莉栖の看病は続いた。ルカ子やフェイリス、萌郁やMr.ブラウンまで見舞いに来てくれて、そして事情を説明した)
岡部(一応親にも伝えておいた。実家に戻ってくるよう勧められたが、紅莉栖の話をしたら喜んで帰宅禁止令を出しやがった)
岡部(ダルは阿万音さんの提案で俺と同じように脂肪摂取の食事制限をしているようだ)
岡部(なにもそこまで付き合ってくれなくても、とは思うが。みんなの支えてくれる気持ちがうれしい)
岡部(しかし、その分だけ自分の情けなさに目が行ってしまう。まったく、面倒くさい生き物だな俺は)
岡部(それから、そろそろドクペの禁断症状が現れた。症状は、『ドクペが飲みたくなる』、それ以上でも以下でもない)
岡部(これが思っていたよりつらかった。ふと気付けばドクペのことを考えている。たとえるなら、そうだな。脳のCPU利用率の90パーセント台をキープしているのだ)
岡部(それを引き金に、牛丼が食べたい、オムライスが食べたい、雑草が……いや、公園の草と虫はさすがに要らないか)
岡部(この渇望を埋めるものは紅莉栖の料理だけだった)
紅莉栖「おかべー、年越しうどんできたわよー」
岡部「おお、鼻腔をくすぐるいい香りだ。ホントここ数日で上達したな」
紅莉栖「試行回数を積み重ねれば精度が上がるのは当然でしょ」
岡部「そうだな。お、具にさつま揚げを入れたのか。これはおいしそうだ」
紅莉栖「みんなは打ち上げのまま年越しして柳林神社に初詣に行くって」
岡部「そうか、ならば俺たちもあとで合流するとするか。では、いただきます」
紅莉栖「なんかさ、なんだかんだでようやく2人っきりでゆっくりできるね……」スーッ
岡部「そういえば、そうだな。ここずっと出入りが激しかったからな」ズズーッ
岡部「ふぅ、ごちそうさま。いつもありがとな、紅莉栖」
紅莉栖「いいえ、どういたしまして。ねぇ岡部、体調、どう?」
岡部「どうとは?まだ少し平熱より高いが、気持ち悪さは少ないかな」
紅莉栖「じゃぁさ、あとでさ、その……」モジモジ
岡部「……色んな意味で自信はないんだが、大丈夫か」
紅莉栖「うん、いいよ……」
岡部「う、うむ……」
紅莉栖「……」ドキドキ
岡部「……」ドキドキ
紅莉栖&岡部「で、どこからはじめればいいんだ?」
紅莉栖&岡部「中学生かっ!!!」
岡部「ええい、ままよ!」ガバッ
紅莉栖「ほぅあぁっ///」バタン
岡部「とりあえず押し倒してみたわけだが……」ハァハァ
紅莉栖「顔がっ、近い……///」
岡部「紅莉栖……」
紅莉栖「ふぁ!?ちょ、えーっと///」
岡部「目をつぶってくれ……」
紅莉栖「ん、うん。む……ん……///」
岡部「い、いくぞ……」
チュギュルルルルルルルルゴポッゴポッゴポットットットットットッキュ--------ギュッ、ギュルッ
岡部「……///」
紅莉栖「……」
岡部「ごめん」
紅莉栖「いいよ、バカ」スッ
岡部(紅莉栖の右手に頬を撫ぜられる。お返しに俺の左手で包み返してやる)
岡部「ちょっと、トイレ」ククッ
紅莉栖「はよ行け」フフッ
岡部(不思議と笑いがこぼれた……なんだこれ。まぁ、いいか)ガチャ バタン
紅莉栖「あーぁ、バカ岡部。岡部のバーカ」
岡部『聞こえてるぞー』
紅莉栖「聞こえるように言ってるのよ、言わせんなバカ」
岡部(こうして2010年が終わろうとは、誰が想像できたであろうか)ブリッ
岡部(ホント、俺にとっては激動の一年であった。そしてようやく、本当にようやく、年が変わるのだ)ブリッ
岡部(大切な仲間ができた。大切な仲間を守れた。それがどれだけすばらしいことか)ブリッ
岡部(ふっ、もうこの年で涙腺がゆるくなってしまったらしい)ブリッ
岡部(未来ガジェット研究所に、まもなく未来がやってくるぞ……)ブリッ
岡部(あ、やばい。早く脱糞しなくては排便中に年を越えてしまうではないか!)ブリッ
テレビの声『3、2、1、ハッピーニューイヤー!!』
岡部(あぁ、またやってしまったな。ふふ)ビャッブリービューブリャー
岡部(まぁいい。ダル達への笑い話にでもするか)ジャー ガチャ バタン
紅莉栖「新年一発目のう○こはどうだったかしら」ニヤニヤ
岡部「さすがに下品だぞ天才HENTAI少女」
岡部(その後、一応オムツを履き、神社のみんなと合流した。ちなみに今回はオムツにお世話にならずに済んだ)
岡部(日が昇るまでつるんでいたいところだったが、紅莉栖の指導の下、『良い子の岡部はもうおねんねの時間だからね』、という命令に従い、2人でラボに帰って寝た。寝たといっても普通にだ、普通に)
岡部(2011年の元旦を、気持ちよくとはいかないが、紅莉栖やまゆり達と共に迎えられたことは大変意味のあることだと思う)
岡部(これでこの病気がなければ。などと泣き言は言っていられない。神が咎人に与えた代償なのだと思う他ないだろう)
岡部(そうだ。それほどまでに俺は罪深いことをしてきたのだ。なかったことにしてはいけない)
岡部(しっかりとこの代償と向き合って生きていこうと気持ちを新たにした。これを2011年の抱負とする)
岡部「結局一日ラボで寝正月をしてしまったな」
紅莉栖「しょうがないでしょ、ちょっと熱あがっちゃったんだから」
岡部「まぁ、なんだ。これもひとつの贅沢だな」
紅莉栖「体調良くなったら外出た方が体にいいのよ?」
岡部「わかってるとも。そしたら、一緒に色々なところに行こうか」
紅莉栖「岡部……///」
岡部「ん、すまん。ちょっとトイレだ」
紅莉栖「はいはい。いってら」
ガチャ
岡部(さて、代償と向き合うにあたって気がかりなことがある)
岡部(俺と、そして紅莉栖の将来だ)
岡部(おそらくこのままでは天才脳科学者牧瀬紅莉栖のヒモ、岡なんとか太郎としてブラブラ生きていくのではないか)
岡部(ホントにそれでいいのか……どうなんだ、俺……)
岡部(やっぱり不安なのだ。ただでさえ誰もが将来を不安に思うだろうに、未だ自分でもどう付き合っていいかわかっていない病気を抱えている)ブッ
岡部(勿論、俺なんかより複雑な問題を抱え、悩み日々闘っている人間もいるだろう)ブリッ
岡部(ただ、彼らと唯一違う点がある)プゥ---
岡部(それは、俺は一度"未来の俺"と接した経験がある、ということだ)ブッ
岡部(イメージができることと実際に体験することでは、その後の選択に大きな意識の差がでる)ブッ
岡部(つまるところ、俺はてっとりばやく未来を知ることで不安を解消したいのだ)ブリュリュ
岡部(当然、そんなことなど、してはならな、いのだ……)ブリュリュリュリュリュ
ブリュリュリュリュリュリュ……
岡部(……ハッ。少しめまいが。ん、どこか懐かしいような感覚だな)
岡部(さて、ケツ吹いて出るか)ジャー ガチャ バタン
鈴羽「あ、オカリンおじさーん。明けましておめでとう」
岡部「おぉ、鈴羽か。明けましておめでとう」
鈴羽「あっは!あんまり今と昔と変わんないんだねー。老け顔だったってホントだったんだ! それで、お年玉はどのくらいくれるの?」
岡部「ハァ?どうして俺がお前にお年玉をくれてやらねばならんのだ」
鈴羽「えーっ、だって毎年くれてたじゃん」
岡部「それは未来の俺が、だろう。まったく、ここにいるのは2011年の岡部倫太郎……」
鈴羽「紅莉栖おb……牧瀬さんはお年玉くれないー?」
紅莉栖「え、だってあなたと同い年くらいでしょう?」
鈴羽「あたし今18歳!そっか、牧瀬さんも今18歳だね」
岡部「うおぉおおおおい!!!!!なぜだ!!!!!一体、なにが、どうして!!!!!」
鈴羽「ちょ、ちょっと!いきなり大声出さないでよ!」
岡部「どうしてお前がここにいるのだバイト戦士ィィィ!!!}
鈴羽「あー、それ懐かしいあだ名だ!」
紅莉栖「やっぱり岡部とは知り合いだったの?突然、橋田の親類だって言ってきたから上げちゃったんだけど」
岡部「質問に答えろ橋田鈴羽!……いや、阿万音か?ともかく!未来は!どうなって、一体、なにが、どうなって……」
鈴羽「お、落ち着いてよオカリンおじさん!てゆーか、オカリンおじさんが言ったんじゃん、未来がどうなってるのか教えろって」
岡部「俺が……言った……だと?答えろ鈴羽!西暦何年の、ダイバージェンスいくつの俺が!そう言ったんだ!」
鈴羽「もー!今あたしの目の前にいる岡部倫太郎が!そう言ったんでしょ!」
紅莉栖「岡部……?大丈夫?」
岡部「な、なにを言っているんだお前は……一体なにを言っているんだお前はぁっ!!」ダッ
鈴羽「待てこらぁっ!」ガシッ
岡部「ひでぶっ!」ダァン
鈴羽「はぁはぁ……あのね、オカリンおじさん。あたしは、オカリンおじさんがこの時代のオカリンおじさんが……ええい、ややこしいなあ!」
鈴羽「君のことは岡部倫太郎って呼んでいいかな?」
岡部「くっ、好きにしろ」グッ
鈴羽「オッケー。つまり、あたしはオカリンおじさんに命じられてここにきたの! 岡部倫太郎が未来について不安に思っているから、思いっきり今の俺たちを自慢してこい、ってね」
岡部「……なんだよそれ」
紅莉栖「おかべ……?」
岡部「なんだよそれぇぇぇぇぇ!!!!!!」
岡部「そんなことのためにッ!世界を危険に晒しッ!ディストピアはどうなった、第三次世界大戦はッ!SERNはッ!IBM5100はぁッ!!」
鈴羽「そんなこと……?今君、"そんなこと"って言ったの?」
岡部「そうだ。タイムマシンなんて存在してはならない、この世にあってはならないんだッ!」
鈴羽「ッ!」バチン
岡部「ぐはぁっ!」
鈴羽「今!オカリンおじさんたちは、一生懸命タイムマシンの平和利用を模索してるんじゃないか!」
岡部「……平和利用だと?そんなの無理だ、不可能だ」
鈴羽「不可能じゃない!現にあたしは父さんの作ったβ版でここまで来れたし、紅莉栖おばさんの理論でそれが可能になったし、何よりも今世界に先駆けて航時法の整備を進めてるのは、岡部倫太郎じゃないか!」
岡部「!」
岡部「鈴羽、その話、詳しく聞こう。屋上にあがるぞ」
鈴羽「望むところ!」
岡部「紅莉栖!お前はここでじっとしていろ!一歩も外に出てはならない」
紅莉栖「えぇっ?うん、わかった……?」
・・・
岡部「それで、お前は俺に未来を教えに来たんだな」
鈴羽「そうだってば」
岡部「なぜだ」
鈴羽「えっとね、たしか、この時代の岡部倫太郎に今の未来を教えてやる必要がある、らしいんだ」
岡部「……わかった。できる限り教えてくれ。その、未来を」
鈴羽「オッケー。つまり、今の君はバリバリの政治家として活躍してるってことさ!」
岡部「……俺が、政治家ァ?」
鈴羽「まぁ大事なのはそこじゃないんだ。君は去年、潰瘍性大腸炎を患った。それは今でも投薬治療によって症状を抑えている状態だよ」
岡部「……!」
鈴羽「何度か合併症も起こした。入退院を繰り返し、臨死体験をしたこともあった。だけど、それを乗り越えてなお!オカリンおじさんは今自分の信念のために世界を変えようとしている!」
岡部「!」
鈴羽「おじさんが伝えたかったのは、多分こういうことだと思う。病気なんか気にせず前を見て突っ走れ、ってね」
岡部「……ふっ。それはだいぶ鈴羽流のアレンジが加わった見解だな」
鈴羽「それ今でも言われるよーアハハ」
岡部「なるほどな、たしかに。それを聞いてしまうと、将来についてあれこれ心配していたのが馬鹿らしくなってしまった」
鈴羽「でしょー!だから言ったじゃん!オカリンおじさんはさ、たとえどんなに逆境でも、必ず支えてくれる仲間がいる。だからどこまででも走っていけるんだよ!そんなオカリンおじさんがかっこよくて、あたしは好きなんだ!」
岡部「鈴羽……」
鈴羽「どう?未来と、つまり岡部倫太郎の将来と、そして君の代償との、不安はなくなったかな」
岡部「ああ。もう不安に思わない。そうだ、たとえ一人では不安でも、支えてくれるものがあるから安心できるんじゃないか」
岡部(まるでオムツのように、な)
鈴羽「……もう、大丈夫みたいだね」
岡部「あぁ、おかげさまでな」
鈴羽「実はね、岡部倫太郎が未来への不安を払拭したら、もう一つ伝えて欲しいことがあるって言われているんだ」
岡部「なんだ、それは」
鈴羽「"この先はシュタインズ・ゲートじゃない。今ならまだ引き返せる"」
岡部「!!!」
鈴羽「もう意味、わかったかな」
岡部「ふふふ、くくく、フゥーッハハハ!!!」
鈴羽「ちょ、新年早々近所迷惑だよ!もう夜も遅いんだよ!」
岡部「なるほどな。全く、ついに俺の左腕にでもなったのか、"俺"は」
鈴羽「さぁ、岡部倫太郎」
岡部「あぁ、わかった」
"俺は絶対にタイムマシンを作らない"
ビュオォォォォォォォォ…………
岡部「ぐっ!!!めまいが!!!鈴羽!!」
鈴羽「よかった、岡部倫太郎が元気になってくれて」
岡部「お前も!未来から俺を!見ていてくれたのか!」
鈴羽「そうだよ、岡部倫太郎。いや、オカリンおじさん!」
岡部「くっ!すまないな、いつも迷惑ばかりっ!」
鈴羽「もう……バカだな、おじさんは」
鈴羽「そろそろだね……それじゃ!」
岡部「うむっ!」
岡部&鈴羽「6年後にまた会おう!!」
・・・
岡部「……ハッ!!」ブリッ
岡部「ラボのトイレ、か」ブリッ
紅莉栖『おかべー!まだトイレ入ってるのー!さすがに長すぎないー!』
岡部「あ、あぁ、すまない。ちょっと夢を見ていたようだ」
紅莉栖『初夢までう○こしながらになってしまったか……』
岡部「う、うるさい!今出るから少し待っていろ!」ジャー ガチャ バタン
紅莉栖「それで、どんな初夢の内容だったの?」
岡部「うむ……なかなか、いい夢だったぞ。俺の、いや、俺たちの将来についての夢だ」
紅莉栖「ふぇっ!?/////」
岡部(結局タイムマシンに関するところは隠して、あの"夢"の中の未来の俺たちについて話してやった)
紅莉栖「うーん、ちょっとその夢の内容には納得できないかな」
岡部「どうしてだ。俺も病気と闘いながらも現役でがんばっているのだぞ」
紅莉栖「だっておかしいじゃない。どうして潰瘍性大腸炎が根治していないの?」
岡部「は?それは原因不明の難病だからだろう」
紅莉栖「だーかーら、それは現代医学での話でしょ!」
岡部「……あっ」
紅莉栖「2036年になっても根治できる医療がないなんて、そんなの医学の敗北、ひいては人類の敗北だわ」
岡部「お、おぅ」
紅莉栖「それに、合併症や死線をくぐった、っていうのも気に入らないわね。そんなの無い方がいいに決まってる」
岡部「そうは言ってもだな……」
岡部(それから俺たちは久しぶりに激論を交わした。当然、すべて紅莉栖が論破したわけだが)
岡部(そうこうしているうちに時計の針がてっぺんを回ってしまったので、俺は強制的に寝かしつけられることとなった)
岡部(夢を見ていたにしては、ぐっすり眠れたわけだが)
一月二日 火曜日 朝
紅莉栖「おかしい」
岡部「なにがだ」
紅莉栖「いくらなんでもこれだけ毎日連続服用して岡部の熱が下がらないのはおかしい」
岡部「それは、俺の今までの不摂生がたたったからで……」
紅莉栖「一旦飲むのやめましょう」
岡部「なんだと?というかそれは医師の先生が決めることではないのか」
紅莉栖「勿論主治医が判断すべきだけど、ここは試しに実験すべきよ」
岡部「この実験大好きっ子め」
紅莉栖「誰が実験大好きっ子よ! それより岡部、最初にアサコールを処方されてからクリスマスの日までまじめに薬飲んでなかったわよね?」
岡部「ん、あぁ、そうだが」
紅莉栖「その時の体調はどうだったの。成田で会ってからは私も知っているけれど」
岡部「つまり、十二月二十一日の木曜日からの容態か。ふむ、あの日は池袋の実家でまゆりに会って、次の日まゆりに起こされて、大学とラボでダルに励まされ、二十三の朝は、そうそう朝マックだったな。そのあとアキバを歩き回ってプレゼントを買って、それで二十四の朝、まゆりに起こされて怒られて、それから成田だったな」
紅莉栖「やっぱり」
岡部「なにが」
紅莉栖「ずいぶん元気じゃない」
岡部「……た、たしかに。そういえば熱はほぼなかった、と思う。だが熱が出たのはそもそもクリスマスパーティーで暴飲暴食したのがきっかけだったのでは」
紅莉栖「それは違うと思うわ。確かにあの後ぶっ倒れたのはそれが原因だろうけど、未だに熱が下がらないほどの影響力があるとはちょっと考えられないわ」
岡部「そういうものか」
紅莉栖「とにかく、それを実験するために今日はアサコール飲まないで」
岡部「う、うんむ」
一月三日 水曜日
岡部「びっくりするほど体調が良くなった……熱も平熱だし、体もこころなしか軽い。気持ちも悪くならないし、下痢の回数が目に見えて減ったぞ!?」
紅莉栖「やっぱり……これはアレルギーの可能性が高いわね」
岡部「アサコールが俺のアレルギー物質だと言うことか?」
紅莉栖「正確にはアサコールの有効成分をコーティングしている物質がアレルギーの原因物質になっている可能性があるみたい」
岡部「なんだよそれ……この薬を飲んでいなければよかったというのか」
紅莉栖「結果論に過ぎないわ。とにかく、明日の診察の時に先生に伝えて、血液検査でアレルギー反応を調べてもらう必要があるわね」
岡部「そうか、わかった。結果はメールで連絡する。それで、今日は何時発の便なのだ?」
紅莉栖「あ、休暇延長したから。今週いっぱいはこっちにいるわよ」
岡部「……なにっ!?」
岡部「そんな、大丈夫なのかその、延期してしまって」
紅莉栖「『ボーイフレンドの看病のためなら仕方アリマセーン』だって」
岡部(それでいいのかヴィクコン……)
紅莉栖「あとで先輩にはかなり絞られそうだけど……。ともかく、これで光明が見えてきたわね。今日のお昼はちょっと奮発してみるわよ!」
岡部「奮発、というと?」
紅莉栖「いよいよ肉料理に挑戦するわけだが」
岡部「おおっ!!すんばらすぃーぞクリスティーンナッ!!!」
紅莉栖「ティーナ禁止!」
紅莉栖「さて、はじめましょうか。ここに取り出したるは鳥のモモ肉!」ドン!
紅莉栖「まずは皮を剥ぎます」ニュニュルッ
紅莉栖「ちょっともったいない気もするけど、そのまま捨てます」ポイー
紅莉栖「次に肉の間に挟まっている白い部分、これ脂肪なんだけど、それを包丁で取り除きます」スッスッ
紅莉栖「そして包丁で削ぎ切りして肉の繊維を切っていきます」シュッシュッ
紅莉栖「その後、棒でたたいて肉全体をやわらかくします」コンコン
紅莉栖「最後に手ごろなサイズに分けて、これで肉の下準備はOKね!」
岡部(一体誰に向けて話しているのだ……)
紅莉栖「次は付け合せの準備ね。玉ねぎ、にんじん、ブロッコリー、じゃがいもを用意しました」
紅莉栖「玉ねぎとじゃがいもは普通でいいけど、にんじんは普段より少ししっかり皮を剥きます」シュッシュッ
紅莉栖「植物の繊維に垂直になるように包丁を入れ、一口サイズより少し小さいくらいまで細かく切ります」トントン
紅莉栖「これをお皿にいれて電子レンジで2~3分で付け合せの温野菜の完成ね」チッチッチッチッチッ……
紅莉栖「そしてお肉を焼きましょう。お肉に塩コショウをかけ、オリーブオイルを敷いたフライパンで焼きます」ジュー
紅莉栖「いい焼き色になったら完成です」テテーン
紅莉栖「ソースの代わりに、しょうがにしょうゆを少し垂らしたものをお皿の隅にちょこんと乗せます」チョコン
紅莉栖「はい、少しご飯やわらかいけれど、鳥のモモ肉のソテーの完成よ」
岡部「おぉ……!食べられぬと聞いてからは高嶺の花であった肉が、ついに我が口腔を満たすのだな!」フンゥー
紅莉栖(岡部嬉しそう、よかった)ニコ
岡部「それでは、っと。いかんいかん、俺としたことが、涎が垂れてしまったではないかフフフ……」ジュル
岡部「んではぁっ!いただきんむあああっs」
バーン!
まゆり「もうジューシーからあげNo.1のない生活は耐えられないよオカリンッ!!!」ドタン
ダル「ポテチポテチポテチポテチポテチィィィッ!!!」バタン
岡部「ん?」
紅莉栖「えっ……」
まゆり「オオオオカリンがお肉を!?しかも鶏肉をぉぉーーっ!?」
ダル「肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉に~~~く~~~~!!!!!!」バッ
岡部「や、やめろダル!これは俺の肉だぁっ!!」スッ
ドンガラガッシャーン
紅莉栖「ケホッ、こら、やめんか!」
ダル「に、にく。にく、に、にく。にぃーーくぅーー!!!」
岡部「なんとか死守したか……しかし、完全にダークサイドに落ちたあのおっきな熊さん相手に俺がどこまで立ち向かえるか……くっ」
まゆり「ジューシーカラアゲナンバワンッワン ジューシーカラアゲナンバワンッワン ジューシーカラアゲナンバワンッワン ジュ(ry」
紅莉栖「ま、まゆり!?ちょ、え、ま、まゆり!?」
岡部&ダル「すいませんでした」
まゆり「ごめんね紅莉栖ちゃん……」
紅莉栖「まったく。橋田とまゆりの2人は我慢せず食べてもいいのに」
ダル「だってオカリンが!」
まゆり「あんなに色々食べられないなんて!」
ダル「かわいそうだから!」
まゆり「私たちも同じ気持ちになろうって!」
ダル「なのに……裏切り者……」ギロッ
まゆり「ジューシーカラアゲナンバワンッワン ジュ(ry」
岡部「だぁっ!これは紅莉栖がしっかりと俺のことを考えて作った、肉料理の最高傑作なのだぞ! そんじょそこらのものと一緒にしてもらっては困るな」フッ
紅莉栖(嬉しいけど絶対そんじょそこらの方がおいしいんですが!!///)
紅莉栖「まぁ、少しならお肉余ってるから、2人も食べてみる?」
まゆり「え、いいの!?まゆしぃ鳥肉食べてもいいの!?」キラキラ
ダル「ダルしぃも食べてもいいのん!?」キラキラ
岡部「なら、みんなで一斉にいただきますをしようではないっかぁっ!せーんのっ!!」
いただきます!パクッ
まゆり「……」
ダル「……」
岡部「……」
紅莉栖「ど、どうかな?その、味の方は……///」
まゆり「お、おいしいよ紅莉栖ちゃん!和風な味付けで、ご飯によく合うよ!」モグモグ
ダル「……」モグモグ
岡部「……」モグモグ
紅莉栖「おい、男共」
ダル「ソースは?」
紅莉栖「」イラッ
岡部「なんというか、あれだな。いかに俺たち日本人が欧米の食文化に浸りきってしまっていたかを痛感させられたというか……」
紅莉栖「……」グスッ
まゆり「オ、オカリン!それにダル君も!おいしいよね、ねっ!」
ダル「まずくはないんだぜ?むしろ今まで禁断症状が出てた僕にとっては救世主だってのもわかる。けど、はっきり言って」
岡部「肉というか、肉風味のなにか、だな」
紅莉栖「……」
まゆり「ダル君!オカリン!」アセッ
紅莉栖「まぁ、わかってたけどね。でも、潰瘍性大腸炎でも食べられる肉料理っていうのはそういうものよ」
岡部「紅莉栖、俺だってよくわかっている。実際、クリスマス振りの肉だということもあって、モリモリ食が進んでいるのだ」モグモグ
紅莉栖「あ、岡部はおかわり禁止だから」
岡部「んぐっ!」
まゆり「でもオカリン随分痩せちゃったから、しっかり食べて元気になってほしいのです」
ダル「あんまりガリリンなのもよくないんじゃね?」
紅莉栖「過ぎたるは及ばざるが如し、それに腹八分目よ。そもそも痛い思いをするのは岡部なんだからね」
岡部「わかっているさ、すぐにじゃなくていい。ゆっくり体重と体力を取り戻していこう」
紅莉栖「うむ、合格だ!」
一月四日 木曜日 慶應義塾大学病院消化器内科診察室
医師「なるほど、アサコールの服用を止めたところ症状が軽減したと」
岡部「そうなんです」
医師「CRPも下がっている。そうだね、もう一回採血してもらって、アサコールでのアレルギー反応を検査しましょう」
岡部「あ、ありがとうございます!」
医師「ただ、これがアレルギーだとすると少し厄介だね」
岡部「えっ……」
医師「ペンタサはアサコールに近いから、サラゾピリンを試してみようか。この薬は本来副作用が多いんだけど、これが君にピッタリくればそれで大丈夫だからね」
岡部「は、はい」
医師「結果はすぐ知りたい?」
岡部「そうですね、できれば」
医師「じゃぁ明日のこの時間に来てもらえるかな。
僕はいないから別の消化器の先生が担当するけど、処方は僕の方から相談しておくから」
岡部「ありがとうございます」
医師「うん、じゃぁとりあえず今日は処方なしで。アサコールは一旦止めよう」
岡部「はい」
・・・
紅莉栖「お疲れ。はい、紅茶」
岡部「悪いな。結果は明日出してもらうことになった」
紅莉栖「それはよかった」
未来ガジェット研究所
紅莉栖「ただいまーっと」
岡部「ん、まゆりいるのか?」
まゆり「オ、オカリンオカリン!」
岡部「どうした、まゆり。そんなに慌てて」
まゆり「まゆしぃね、本屋さんで立ち読みしてたら、潰瘍性大腸炎を治したお医者さんの本を見つけたのです!!」
岡部「ホントか、治せるのか?」
紅莉栖「治したって……どうせ症状が何年も継続して出てないだけでしょ」
まゆり「まゆしぃ難しいことわからなかったので、紅莉栖ちゃんにも読んでみて欲しいのです!」
紅莉栖「O.K.任せて」
岡部「しかし、それが本当だったらどうして未だに難病指定されているのか……」
まゆり「でも、もしかしたらオカリンの病気がきれいさっぱり治っちゃうかもしれないと思うと、まゆしぃはうれしいのです!」
岡部「そうだな。俺もだよまゆり」
紅莉栖「……」
岡部(あれから30分黙々と読んでいるな)
紅莉栖「はぁーっ、なるほどねー」
岡部「それで、種明かしは?」
紅莉栖「まぁ、簡潔に言うと」
まゆり「ゴクリ」
紅莉栖「東洋医学なんて非科学的ね」
岡部「ちょ、それはちょっと色んな人を敵に回す発言だぞ!」
まゆり「つまり、治らないのです……?」
紅莉栖「漢方なんてトライ&エラーの無限回廊みたいなものよ。確かに正確な知識の積み重ねで個人を治癒できるかもしれないけど、普遍的じゃないわ」
岡部「ほぅ」
紅莉栖「とゆーかそもそも原因がわかっていないことが最大の問題なのよね。ここを一足飛びに駆け上がったら再現性が失われてしまう」
まゆり「紅莉栖ちゃん、まゆしぃにもわかるように説明してほしいのです……」
紅莉栖「あぁ、ごめんねまゆり。そうね、確かにオカリンを"治った"(仮)状態にはできるかもしれないわ」
まゆり「!」パァァ
紅莉栖「だけど、実際に根治してたかどうかはオカリンが死ぬまで、いや死んでもわからないかもしれない」
まゆり「えっ……」
紅莉栖「もちろん、サポート的な意味では岡部の痛みをやわらげてくれたり、生活の助けにはなるでしょうけど」
まゆり「……」
岡部「さすが科学の申し子だ、クリスティーナよ」
紅莉栖「ティーナをつけるな!」
岡部「実際問題、大学生には漢方に手を出せるほどの資金などないからな。国が負担してくれる方が助かる」
紅莉栖「まゆり、でもこの本は私にいいヒントを与えてくれたかも知れない。ありがと」
まゆり「えっと、えっと、どういたしまして?」
紅莉栖「料理研究は一旦おいて、私も色々潰瘍性大腸炎について調べてみようかしら」
岡部「既に俺よりも知識があると思うが」
紅莉栖「ちょっとこれから図書館行ってくるわ。まゆり、岡部をよろしくね」ガチャ
まゆり「う、うん」
岡部(思い立ったが即行動か)
一月五日 金曜日
別の医師「それじゃあね、担当の先生からお話はうかがってるからね、今日はサラゾピリンの処方だね」
岡部「はい、ありがとうございます。ということは、先生、アサコールに対してのアレルギー反応は……」
別の医師「あああれね、どうなってるかね。助手君、データ出してね」
助手「はい……はい、プラスです」
別の医師「うん、陽性だね。つまり反応ありだね」
岡部「なるほど、わかりました。では、サラゾピリンで試してみます」
別の医師「うんうんがんばってね。それじゃお大事にどうぞね」
・・・
岡部「さて、この薬に対しアレルギーがなければいいが」
紅莉栖「……」ブツブツ
岡部「ん?どうした紅莉栖?」
紅莉栖「セロトニンの脳内活性化が……いやでも……」ブツブツ
岡部(昨日図書館から帰って来てからずっとこの調子だ)
※注意※
以下、SF医学でストーリーが展開します
本気にしないでね
紅莉栖「まだ仮説段階なんだけれど」
岡部「……天才HENTAI少女よ、まさかとは思うが、既にお前の頭の中には医学論文ワンセット完成されているのではあるまいな」
紅莉栖「HENTAIゆーなっ!それにまさか、まだデータが少なすぎるわ。ただ、理論仮説は少し見えてきたかな」
岡部(ナ、ナンダッテー!)
岡部「ゴホン。それで、仮説がどうしたのだ」
紅莉栖「岡部の症状は重症とまではいかない、中等症って言ったところなのね」
岡部(これよりひどい症状の患者さんもいるわけか……)
紅莉栖「これなら投薬で根治する可能性は0パーセントではない。これが今のところの仮説」
岡部「マジか……」
紅莉栖「それから岡部、夏になにか大量にストレスを抱えるようなこと、あった?」
岡部「……なぜそんなことを聞く?」
紅莉栖「質問に質問で返す奴は」
岡部「だぁーっ!もうっ!……これは正確に答えた方がいいのか?」
紅莉栖「?当たり前でしょ。それとも、私に言えないようなこと?」
岡部「……」
紅莉栖「あっ……そ、そっか、ごめんね(汗」
岡部「あ、いや、違うぞ!今はまだ言えぬ、というだけで、言えないわけではないからな」
紅莉栖「う、うん……ってことは、あったんだね、大量にストレス溜めるようなこと」
岡部「う、うむ……まあ、あったことはあった」
紅莉栖「……深くは聞かないわ。次の質問ね」
岡部「すまん……さて、まだ質問するのか」
紅莉栖「岡部、今不安なこと、ある?」
岡部「そりゃ、いくらでもあるぞ。紅莉栖が男にうつつを抜かしていたせいで研究所を追い出されないかとか。紅莉栖が大きなミスをやらかしてしまわないかとか紅莉栖が」
紅莉栖「だぁーっ!///わ、私のこと以外で!///」
岡部「ふむ、そうだな。この病気のために進級が危ぶまれないかとか、就職面接で不利になったりしないかとか。……結婚後の生活とか、な」
紅莉栖「……///」
岡部「だが、それらすべてちっぽけな悩みだ。なぜなら俺にはラボメンを始め、多くの仲間が支えてくれているからな。不安に押しつぶされることなど無い。たとえ成功の可能性が0パーセントでも、0から1を生み出す力をみんなが与えてくれるからな」
紅莉栖「……なるほどね、うん。岡部ならきっと治るよ」
岡部「そうか。ふん、医学の進歩にかけてみようじゃないか」ニヤ
紅莉栖「うん、決めた」
岡部「なにをだ」
紅莉栖「私、医者になる」
岡部「ブフォ!!」
岡部「そ、それはマジで言っているのか助手よ!」
紅莉栖「助手ってゆーな!それに本気と書いて『ガチ』よ『ガチ』」
岡部「さすがに性急すぎるだろう……今までの脳科学者としての地位と名声はどうする?」
紅莉栖「後輩に譲るわ。それよりも、今の医学の進歩スピードを少しでも上げたいと思うわけよ」
岡部「いいのか紅莉栖、不安とかないのか」
紅莉栖「その答えはさっき岡部がくれたじゃない」
岡部「む?」
紅莉栖「私にもね、どんな大きな不安でも、全部ちっぽけな悩みに変換してくれる、かけがえのない仲間がいるのよ。どこかの研究所所長のおかげでね。知らなかった?ラボメンナンバー001さん」
岡部「ふっ。そうだったな。その所長もきっと鼻が高いことだろう」
紅莉栖「それに、腸は第二の脳って言うでしょ?脳科学者なら移籍しやすんじゃない」
岡部「いや、それとこれとは別だと思うが」
紅莉栖「それにね、まぁ、その、言わなくてもわかってると思うが」
岡部「なんだ」
紅莉栖「岡部の病気を治してあげたいっていうのが、最も大きい原動力だから」
岡部「う、うむ」
紅莉栖「私が岡部の側に居れば、私が研究頑張れる。研究の成果が出れば、岡部の病気が治っていく。ね、すごいよね」
岡部「う、うむ///」
紅莉栖「ねぇ……岡部」ピトッ
岡部(俺の胸板に右の頬をあて、両手をそえて、体重を預けてきただと!?)
岡部「……待て、待ってくれ紅莉栖」
紅莉栖「なに?」
岡部「お前が俺に全身全霊の愛を注いでくれていることは骨身に染みてわかっている」
紅莉栖「は、はずかしいこというな///」
岡部「だが、俺というのは面倒くさい生き物でな。一応、言葉にして確認しておかなければならないことがある」
紅莉栖「……」
岡部「こんな病気持ちで本当にいいのか」
岡部「クリスマスにトイレでゲロとう○こを爆発させるような男で本当にいいのか」
岡部「コンビニにケツの穴押さえてダッシュで駆け込むような男で本当にいいのか」
岡部「一緒に居てくれないと不安で怖くて外も歩けないような男で本当にいいのか」
岡部「旅行先でスポーツやおいしい料理を共感できないような男で本当にいいのか」
岡部「オムツにう○こを漏らして涙ぐんで助けを求めるような男で本当にいいのか」
岡部「キスをした瞬間に下痢腹の音でムードをぶち壊すような男で本当にいいのか」
岡部「年越も初夢も年中行事の殆どでう○こをしているような男で本当にいいのか」
岡部「お前の手料理を、下痢便にしてしまうような男で、本当に、いいのか」
紅莉栖「……ククッ」
岡部「……」
紅莉栖「んwwだめww堪えられないwwふふww」
岡部「……」
紅莉栖「……ふーっ。アンタってホント、バカよね」
岡部「あぁ、そうだな」
紅莉栖「あのね、岡部」
岡部「うむ」
紅莉栖「私は岡部が大好きなんだけど」
岡部「知っている」
紅莉栖「岡部は、どう、かな」
岡部「……正直に言うと、東京ビッグサイトの天使と見間違えたことがある」
紅莉栖「なにそれ、ふふ」
岡部「それで、結局どうなんだ」
紅莉栖「つまりさ、論破してほしいの?」
岡部「……まぁ、そうだ」
紅莉栖「じゃぁ既に答えは出てるわ」
岡部「ん?」
紅莉栖「岡部は私を論破できない。私は岡部を論破できる。故に今回も論破可能。はいQ.E.D.」
岡部「……ど、どういうことだ」
紅莉栖「岡部はなにを言っても私に勝てないんだから、私に愛される理由に意見しても無駄、ってこと」
紅莉栖「だからさ、私があなたを救っても、文句は言わないでよね」
紅莉栖「今度は私が岡部を救う番なんだから」
紅莉栖「あれ、私なんで"今度"なんて言ったのかしら」
岡部(リーディングシュタイナーは誰もが持っている、か)
紅莉栖「さぁ、今日から忙しくなるわよ。私はこれから受験生になるから、よろしくね」
岡部「年相応ではないか天才HENTAI少女よ。これからお前が東京で生活すると知ったらみんな喜ぶぞ」
紅莉栖「そうかな、うん。そうだね。みんなにも知らせなきゃね」
きっと誰しもがタイムマシンを持っているのだ
未来を切り開くための、タイムマシンを、だ
だが、俺が身を持って体験したように、未来に進めず閉じ込められてしまうこともある
もっともらしい理由があるならばなおさらだ
痛い、つらい、苦しい、他人に理解されない、恥ずかしい、みっともない、どうしようもない
だが、大事なことなので二回言おう。必ずどこかに"タイムマシン"はある
――――俺にとってはきっと、この腕時計なのかも、知れないな――――
2010.7.28
R & C
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わざとらしくも古めかしい70'sスタイルの喫茶店の中で、壮年の男女が来るべき旧友の英姿を待っていた。
店内BGMにはペギー葉山の学生時代が流れている。時折音に乗せてコーヒーの香りが宙を彷徨う。
そんな計算尽くめで構築された完璧なバランスへ、一人の大男がのっしのっしと闖入し、破壊する。
その様に男女は微笑んだ。そこに確かに旧友の旧友たる証を見つけたからであった。
静謐に身を負かせ怠惰を貪っていた完璧な"時"は、三人の談笑によってついに動き出した。
古今東西、旧友との話は弾むものだ。
俺たちは、同じ歴史を同じ感情で同じ視線から世界を感じていたのだと再確認する。
そうして、時の流れを話の俎上で現出させ悠久の思い出に浸ることができる。
話は弾む。そして、話は弾む。
何人もこの楽しいひと時を奪うことは許されない。
出てくる言葉は易く、話す吐息は軽く、とりとめのない文字列が宙を舞う。
それを構成する地味な色の中に溶け込むとうに、その文はあった。
決して特別ではない、なにげない言の葉がひらひらと遊んでいた。
―――――
「いいか!ダルが痩せたのは100㌫純粋に俺のおかげなのだ!」
「そんなわけあるか!そんなわけあるか!大事なことなので二回言いましたー(鼻声)」
「い、今のは物真似か。く、くくく、似て無さ過ぎる、くく」
「誰の物真似だったのかしらぁ」
「「すいません」」
「そうだ、鈴羽の名づけ親なのだぞ!これでどうだ!」
「鈴羽最近オカリンおじさんが付き合い悪いって拗ねてたお」
「ぐっ……」
「何を競っているのだまったく」
「鈴羽と言えば、この間病気になっちまってさー……」
「……へー。あら、その病気なら」
「薬飲んでれば治るから」
おしまいうんこ
772 : 以下、\... - 2014/06/12 16:33:55.76 UFZrPWah0.net 201/201>>1です マジ読了乙糞丸
みんな気づいてると思うけどほとんど体験談だよ
今は一旦過激になったのをステロイドで抑えて、来週からサラゾピリン試すよ
初vipで初ssなのにミンナノリ良すぎくそ楽しかった
―――――すべての腸に平和のあらんことを―――――