《1つ前》
第31話<因縁>

《最初から》

第1話<呪い>

《全話リンク》
少女勇者「エッチな事をしないとレベルがあがらない呪い…?」


187 : ◆PPpHYmcfWQaa - 2015/08/31 22:08:18.19 NaYHXLrQo 2252/3213




第32話<目醒め>


【大闘技場】

<午後5時>



勇者「……はじまる」ゴクゴク

僧侶「ソル様…」もぐもぐ

勇者「ついに…ソルとあいつの決戦なんだよね」ゴクゴク

僧侶「え、ええ……ゴクッ」もぐもぐ

女剣士「…あなたたちを見てると、いまいち緊張感がわかないな」

勇者「サマンサさんも食べるならいまのうちだよ!」

女剣士「えぇ!?」

勇者「…きっと、試合がはじまると目を離す暇もないから…」

サキュバス「そうねぇ。あたしももらっとこ」ひょいっ もぐもぐ

僧侶「あっ」

女剣士「それよりユッカ、傷は大丈夫?」

勇者「うん。まだすこし頭がくらくらするけど、怪我は平気」

188 : ◆PPpHYmcfWQaa - 2015/08/31 22:13:15.48 NaYHXLrQo 2253/3213



実況「さぁいよいよ決戦の時がやってきました」

実況「引き続き解説席にはグリモワ騎士団のエース騎士様にお越しいただいています」

騎士A「よろしくお願いします」

実況「いやぁついにですね」

騎士A「好カードですね。気分が高揚してきました」

実況「しかし前試合で剣士レヴァン選手にはユッカ選手相手に相当なダメージが残っていると思いますが」

騎士A「えぇその点を鑑みると、ほとんど負傷なく2試合を突破してきたソル選手のほうが優位です」

実況「なんにせよ見ものですね」

騎士A「彼らが私の仲間となり、陛下を共に護ってくれるならどれだけ頼もしいことでしょうか」

実況「しかし聖剣は1本! 勝者は1人!」

実況「東西のゲートが開かれ、いま入場です!」


勇者「きた!」

僧侶「ソルさまーーー!」

189 : ◆PPpHYmcfWQaa - 2015/08/31 22:17:56.56 NaYHXLrQo 2254/3213



審判「両者、礼。構え」

傭兵「……」

闇剣士「……」


実況「両者向かいあって…いま、世紀の決勝戦!」

実況「試合開始ぃーーー!!ああああっと!!」

実況「どうしたことか両者剣を足元に突き刺してしまった!!」

実況「そしてなんと…降参! 降参の合図です!!」

騎士A「これは…一体どういうことでしょうね」

実況「なぜ戦意をみせない!!」


 ざわざわ

観客A「なにやってんだあいつら…」

観客B「あれだよ、どっちも聖剣じゃなくて2位ねらいの少女性愛者なんだろ」

観客A「うえーまじかよ…しかも相手は魔物だぜ…けしからんな」

観客C「おい戦えよ! なんのためにチケットとったと思ってんだ!!」

実況「場内から激しいブーイングが沸き起こります…」

190 : ◆PPpHYmcfWQaa - 2015/08/31 22:21:11.03 NaYHXLrQo 2255/3213


勇者「…やっぱり、あいつも降参しちゃったね」

女剣士「レヴァンさんもマナが目的なの? どうして…」

僧侶「自らマナちゃんを助けだしたいのでしょうか…」

サキュバス(やっぱりさ、そう簡単には行かないわよねぇ)



傭兵「いまてめぇは何を考えてる」

闇剣士「…貴様と同じだ」

傭兵「仲間でもないてめぇがそこまでマナに執着する意味は何だ?」

闇剣士「仲間か…たしかに私はマナの仲間でも親友でも、恋人でもない」

傭兵「てめぇほどの野郎がなりふり構わず武道を捨ててまでこんなことを……もはやただの同族のよしみとも思えねぇな」


実況「聞き取れませんがなにやら話し合いをしています」

実況「このまま話し合いで勝者をきめてしまうのでしょうか!」

191 : ◆PPpHYmcfWQaa - 2015/08/31 22:25:11.96 NaYHXLrQo 2256/3213


闇剣士「……」

傭兵(この反応。まさか、ローレや陰気呪術師の言っていた…)

傭兵「……ッ…"器"ってやつか!」

闇剣士「…気付いていたか」

傭兵「バカでもここまで露骨にされると薄々はな。もう隠す必要もないってことかよ!」

傭兵「だが、だとしたら俺はてめぇを許せない」

闇剣士「許しを請うた覚えはない」

傭兵「マナを利用しようっていうんだろうが! 俺の怒りに触れるには十分だ!!」

闇剣士「あぁ。私は野心のためならもはや恥も外聞も無い」

傭兵「…子供だぞッ!」

闇剣士「誰のおかげとはいわんが、いまや立派な大人だ。大きくなった」

傭兵「器となってしまったら、マナは…どうなる」

闇剣士「……少女の魂は上書きされて、消えてなくなる……ッ失われるのだ!」

傭兵「……!」


勇者「なに…? 2人はなにを口論してるの」

僧侶「ソル様…」

192 : ◆PPpHYmcfWQaa - 2015/08/31 22:30:54.65 NaYHXLrQo 2257/3213


傭兵「させるかよ…」

闇剣士「私とて、貴様に邪魔立てはさせん」

闇剣士「ここまで、長い…………時を待ったのだ!!」

傭兵「……ッ」

闇剣士「ソル。貴様との戯れも今日で終わりだ!!」ガコン

傭兵「レヴァン!!!」ジャキン


魔法国王「そう、ぼくたちが見たいのはその闘志さ」

実況「へ、陛下。なぜこちらに」

魔法国王「席をかわりたまえ」

実況「はいっ」

魔法国王「あー、ゴホン」

魔法国王「聞こえているかい。きみたちは報酬と引き換えに、よりよい死合をここのみなに見せる義務がある」

魔法国王「ぼくは無償で賞品を提供しているわけではない。これは興行なんだよ」

魔法国王「憎しみ、殺し合え。大会の規程はかわった」

魔法国王「生き残った勝者のみが、聖剣とマナの支配権両方を手に入れることができる!」

193 : ◆PPpHYmcfWQaa - 2015/08/31 22:34:17.62 NaYHXLrQo 2258/3213


観客「うおおおおお!! やっちまええええ!!」 

実況「陛下のお言葉により場内はヒートアップ! やはり戦うことでしか勝負はつきません!!」

実況「それが戦士の宿命なのでしょう!!」


勇者「…戦うしかないんだね」

サキュバス「運命よ」

僧侶「ソル様…負けないで」

勇者(信じてるよ…ボクに代わってマナをお願い)


傭兵「…マナは俺の仲間だ」

闇剣士「来い」


周囲360度からの地鳴りのような大歓声。
戦いが避けられないだろうことは予期していた。
こいつやグリモワ王を相手にそう簡単に事が運ぶわけがない。

審判の試合再開の合図も聞かず、俺達は瞬く間に刃を交えた。

194 : ◆PPpHYmcfWQaa - 2015/08/31 22:38:00.07 NaYHXLrQo 2259/3213


重撃が腕に伝わる。
このびりびりとした、血沸き立つ興奮にも似た感情。

傭兵(間違いない、お前は俺の生涯の好敵手)

闇剣士(ソル…! 貴様は私のッ!!!)


長年しのぎを削り、殺しあうことでお互い高め合い、数多の血を流してきた。


横薙ぎに襲い来る大剣をこするようにうけとめる。
重い金属音が響いて激しい火花が散る。

奴は次々と攻撃を繰りだし、俺もそれを受けつつ隙を突いて対抗した。


時間にしてはわずか一瞬でしかない一進一退の攻防が、無限に引き伸ばされていくような感覚。


傭兵(レヴァン…)

この満たされていく気持ちは何だ。

今俺たちは、なんのために戦っている。マナか、世界の未来か、己の命か。

何もわからない。ただあの時から変わらずやることは同じ、目の前の敵を全力で倒すだけだ。

それだけでいい。何も考えなくていい。
俺達は、生まれながらに戦士だからだ。

195 : ◆PPpHYmcfWQaa - 2015/08/31 22:42:41.64 NaYHXLrQo 2260/3213



実況「……」

騎士A「……はっ、実況は」

実況「! も、もうしわけありません、つい…いえしかしですね」

実況(こんな戦い、どうやって実況したらいいんだ…)

観客「……ゴクリ」


勇者「いま一発入った」

僧侶「嘘!? どっちにですか」

勇者「ソルに…たぶん今のでどこか負傷したとおもう…」

勇者「でもソルも着実にあいつにダメージを与えてる」

女剣士「ユッカ目で追えるのか?」

勇者「うん…あいつの魔力の流れもたどってなんとかね」

勇者「ソルはすごいや…剣士としての経験値がボクとは比べ物にならないよ」

女剣士「決勝がこんな静かな戦いになるなんて…」

勇者「……ゴクッ」

勇者(どうして…ボクはあそこにいないんだッ! ソル…ッ! がんばって!!)

196 : ◆PPpHYmcfWQaa - 2015/08/31 22:47:47.63 NaYHXLrQo 2261/3213




闇剣士「…ぬ」

傭兵「…クッ」

一時お互いに距離を取った。

会場はしんと静まりかえっている。
この場にいる全ての人間が、俺達の戦いを片時も目を離すことなく静観していた。
野次や拍手ひとつ聞こえてこない。
心臓の鼓動だけが体を伝わってクリアに聞こえた。


闇剣士「私は…バザで貴様が弱くなったと謗ったが、今この話で訂正しておく」

闇剣士「ソル。貴様、どこまで強くなる気だ」

傭兵「こっちのセリフだぜ。てめぇを谷に突き落としてかれこれ数年…」

傭兵「剣の道を極めて魔王にでもなる気かよ…」

闇剣士「魔王になるのは私ではない」

傭兵「そりゃ残念だな! てめぇが魔王なら遠慮なくぶっ殺せるんだがよ!!」

闇剣士「魔王になるのは彼女だ!!」

傭兵「マナだけは譲れねぇんだよ!!」

闇剣士「私とて、貴様にマナを奪われるわけにはいかんのだ!」

197 : ◆PPpHYmcfWQaa - 2015/08/31 22:52:56.31 NaYHXLrQo 2262/3213


影が交錯する。
遅れて聞こえてくる金属のぶつかりあう重音。
瞬く間にお互いの血飛沫が飛びちって、赤黒く大地を染めていく。


鋭い痛みが全身を走った。

傭兵(なぜだ…追いつけない)

傭兵(レヴァンッ)


実況「これは…どちらの血が飛び散っているのでしょうか」

騎士A「2人ともダメージは相当なものです。レヴァン選手は前試合の傷もふさがっていませんからね」

騎士A「ですが…」

魔法国王「魔力の差でソルのほうが不利か。それでもよく対抗できているけどね」


ギィンッ

傭兵「かはっ…―――」

実況「ああっとここでソル選手、ついに剣を手放して天を仰いだ!!」

闇剣士「…がはっ…ッ、一閃!!」

▼闇の魔剣士は勢いよく薙ぎ払った。

傭兵「が、ああああああっ!!!」

198 : ◆PPpHYmcfWQaa - 2015/08/31 22:58:02.69 NaYHXLrQo 2263/3213


勇者「!! ああああっ!!」

僧侶「ソル様ああああああああっ!!」

女剣士「あああ…そんな」

勇者「魔力の差だ…」

サキュバス(……)

勇者「ボクのせいだ…」

勇者「こんなことになる前に、試合前にソルに魔力を貸すべきだったんだ」

勇者「なのにボクが自分のちからに自惚れて…勝手にあいつと戦いつづけたせいで……」

勇者「ううっ、ごめんソルっ! いまいくよ!!」

女剣士「だめだユッカ。客席とフィールドとの間に魔法障壁がある」

勇者「うぎゅっ、痛っ」バチバチ

勇者「じゃあ1階から回りこむ! 行くよヒーラ」

僧侶「は、はいっ!」



傭兵「――」


なんだ…この血の量は…。
血…俺のかよ。

全身が痺れて言うことを聞かねぇ…。

199 : ◆PPpHYmcfWQaa - 2015/08/31 23:01:12.21 NaYHXLrQo 2264/3213


傭兵「がは…」

傭兵「れ、れ…ヴァ」

闇剣士「…渓谷での借りは返したぞ」

闇剣士「ソル、貴様と最後に差がでた」


霞む視界に映るレヴァンは、一瞬スタンドの方向を顧みた。

傭兵(……そう…か…淫魔にちからをかりたのか…)

傭兵(そこまでするとは…お前)

傭兵(マナを…そこまで…――)


ゆらりと目の前で大剣が振りかざされる。


―ギィン!


闇剣士「…」

勇者「フーッ!フーッ! やらせるもんか…ッ!」

闇剣士「邪魔を」

傭兵(ユッカ……――)

200 : ◆PPpHYmcfWQaa - 2015/08/31 23:06:36.54 NaYHXLrQo 2265/3213


勇者「ソルはボクが護る!」

勇者「これ以上手は出させない!!」

僧侶「…!」キッ

闇剣士「…ならばいい」ガキン


実況「ああっと決着がついたかに見えたが、おもわぬ乱入者です」

騎士A「……しかし、これでよいのでしょう」

観客A「…よかった。あの赤髪死なずに済んだぜ」

観客B「あ、ああ…あんないい試合するやつ、また来年もみたいもんな」

観客C「もしかしたら騎士団の次世代エースになるかもしれねぇぜ!」


審判「×」

実況「ここでソル選手戦闘不能を確認! 試合終了!!!」

実況「栄えある聖剣争奪杯優勝者は、仮面の剣士レヴァン選手となりました!!」

201 : ◆PPpHYmcfWQaa - 2015/08/31 23:13:26.42 NaYHXLrQo 2266/3213


魔法国王「……ふぅ」

魔法国王「ま、こうなる予感はしてたけどね…クク、ククク、はははは」


実況「戦いぬいた両者に地鳴りのような歓声と大喝采が鳴り響きます!!」

実況「レヴァン選手本当に優勝おめでとうございます!!」


闇剣士「…マナ」

サキュバス(…やるじゃん)ヒラヒラ

闇剣士(サキュ、貴様には手を焼かせたな。助かった)


実況「それではしばし休憩の後、授賞式と閉会式にプログラムを移行します」

騎士A「陛下。ご準備をおねがいします」

魔法国王「あぁ。アレと聖剣をもってこなきゃねぇ」



勇者「うわあああああん、あああああっ」

僧侶「ソル様ぁ…マナちゃん…」

傭兵(負けた……俺は…負けた、のか…)

傭兵(マ、ナ…すまない――――お前を助け―――)



第32話<目醒め>つづく



 
 

216 : ◆PPpHYmcfWQaa - 2015/09/01 22:12:36.46 CQfUDOu8o 2267/3213

第32話<目醒め>つづき



実況「フィールドでは授賞式が執り行われております」

実況「賞品の魔物を封じた檻が騎士団の手によって運びこまれました!」

観客A「ほんきでアレが賞品かよ…」

観客B「かー俺もほしかったなぁ。あの白い肌にイタズラしてぇ」



魔法国王「まずは、優勝おめでとうといっておこうか」

闇剣士「…」

魔法国王「きみには新しい大会規程の通り、1位と2位の賞品を2つ共にあたえよう」

魔法国王「準優勝でありながら何も手に入らない彼はいささか不憫だが、元はと言えばきみたちのせいだ」


傭兵「――」

勇者「ソルっ、おきてっ! ううう…」

僧侶「マナちゃんが奪われちゃいます…私たちどうしたら!」

217 : ◆PPpHYmcfWQaa - 2015/09/01 22:17:10.96 CQfUDOu8o 2268/3213



闇剣士「さきに檻の魔法障壁を解除してもらおう」

魔法国王「あぁ、そうだね」パチン

魔法国王「外に出してやれ」

騎士B「はっ」

魔女「……命令を…――」


勇者「マナっ! マナ!!」

衛兵「敗者が賞品に近づくことは許さん」

勇者「くぅ…」


魔法国王「さぁこの鍵で魔物の少女の首輪をはずしてやるといい、それでぼくの施した洗脳術は解ける」

魔法国王「そしてきみが魔力をこめて、もう一度首輪をつけ直す」

魔法国王「すると彼女はきみの思うがままさ。うけとれ」ピンッ

闇剣士「…」パシ

218 : ◆PPpHYmcfWQaa - 2015/09/01 22:24:49.15 CQfUDOu8o 2269/3213


魔法国王「そして…優勝賞品の聖剣だ!! おおい、持ってきたまえ」

騎士C「こちらの包みの中に」

魔法国王「どうだいこの細部までこだわられた美匠、まばゆいほどに輝く直刃」ジャキン

魔法国王「遥か遠方にある太陽の国の王家の紋章が刻んであるまごうことなき本物さ」

魔法国王「武器としての性能だけじゃなく、コレクションとしても一級品だ」

闇剣士「これが…」

闇剣士(我が主を闇へと葬った忌まわしき聖剣か)

魔法国王「今この瞬間からきみの物だ」


魔法国王(ククク…さぁ触れるがいい。魔物である貴様が、聖剣の秘めた聖力に耐えられるかな?)

魔法国王(いまはぼくが押さえつけてあるが、ぼくの手を離れた瞬間に聖力は解放される)

魔法国王(掴んだ指先から貴様は弾け飛び、跡形もなく消え去る…のさ)

魔法国王(残念だったね。魔物ごときがこれを手に入れることは、決して叶わないんだよ)

魔法国王(もちろんマナもね…ククク)

魔法国王(全てはぼくのシナリオ通り…)

魔法国王(災厄を管理するのは、貴様ら魔物ではなく…ぼくなのさ!!)

闇剣士「……」

219 : ◆PPpHYmcfWQaa - 2015/09/01 22:30:54.17 CQfUDOu8o 2270/3213


勇者「聖剣までとられちゃうなんて……くそっ、くそ!!」


魔法国王「おめでとう。きみが誰であれぼくは強者に対してわけ隔てはない。人のできた国王だからね」

魔法国王「さあ、その手で優勝賞品をつかみ取り給え!」

魔法国王「きみが…グリモワ…いや、世界最強の剣士だ!!」

魔法国王(握れ…低俗な魔物め)

闇剣士「…」ガシッ 

魔法国王(やった…!弾け飛―――)


▼闇の魔剣士は聖剣で魔法国王を切りつけた。


魔法国王「べ――……?」

闇剣士「私にとっては少々切れ味のよいただの剣でしかないな」

魔法国王「なっ…――ぜ――」

闇剣士「だが、目の前の邪悪を斬るには十分な働きをした」

220 : ◆PPpHYmcfWQaa - 2015/09/01 22:36:44.47 CQfUDOu8o 2271/3213



魔法国王(ぼくは…あれ…斬られた?? なぜお前は弾け飛ばない?)

魔法国王(わからない…聖力はどうした…間違いなく発動している…)

闇剣士「…」

バチッ バチチッ…

闇剣士「この体も捨てたものではないな」

魔法国王「がふっ、がはっ…」

魔法国王(そうか…才能なき貴様は…半魔だったか…)



実況「えっと…目の前の状況は幻でしょうか…」

実況「陛下が血をながして…倒れ…――?」

観客A「うわあああああああっ!」

観客B「陛下が斬られたぞ!!!」

勇者「!!」

傭兵「ぅ……く」

勇者「ソルっ!」

傭兵「ユッ…カ…ここから、離れる準備を…しろ…」

222 : ◆PPpHYmcfWQaa - 2015/09/01 22:41:47.74 CQfUDOu8o 2272/3213


騎士A「陛下!!」

騎士B「貴様ァ!!」

闇剣士「それでも我が手には馴染まんか!!!」

▼闇の魔剣士は聖剣を放り投げて騎士Aの胸元に突き刺した。

騎士A「がはっ」

▼闇の魔剣士は大剣で騎士B騎士Cを斬り伏せた。

騎士B「がぁっ!?」

騎士C「ぐお!」

闇剣士「…邪魔者は全て排除した」

コツコツ


闇剣士「……マナ」

魔女「マスター…命令を…――」

闇剣士「お前を解き放ってやろう」カチャカチャ 

カチャン…


魔法国王「よ…よせ…グフッ…それに触るな」

224 : ◆PPpHYmcfWQaa - 2015/09/01 22:47:15.98 CQfUDOu8o 2273/3213


魔女「…う、あ…」フルフル

魔女「あなたは…。ユッカは…? ソル…ヒーラ…」

闇剣士「……使命を思いだせ」

魔女「わた、し…――使、命…」

魔女(なに…?)

闇剣士「記憶の封印の檻を破り、目醒めよ」

▼闇の魔剣士はマナの額に触れて魔力を注ぎ込んだ。

魔女「う、あああっああああああ!!」

勇者「マナ!!!」


魔女「あ、ああ…あ゙っ」

魔女「…わ、わたし――は……器の巫女」

闇剣士「そうです。我が身の肉親でありながら、あなた様は誉れ高き、魔王様の器」

魔女「……! 頭が、いっ、痛…ああッ」

闇剣士「マナ…」

闇剣士「恐れることはない。解放せよ!!」

魔女「!!!! あああああああああっ」

魔女(私は…わたしは…ッ…助けて)


マナの体から真っ黒な闇の炎が吹き出し、天に立ち昇った。

225 : ◆PPpHYmcfWQaa - 2015/09/01 22:51:54.46 CQfUDOu8o 2274/3213


魔法国王「まずい…まずいぞ」

勇者「なに…この真っ黒な魔力」

僧侶「これがマナちゃんから…?」

傭兵「ユッカ、ヒーラちゃん…逃げろ」

勇者「なにをいってるのマナを取り戻さなきゃ!」

傭兵「…ぐ、あ…いますぐ逃げろッ!」


闇剣士「マナ、ここから脱出する。私の命令が聞けるな?」

魔女「……わかった」

魔女「…障害は取り除く」

勇者「…!」

傭兵「やっ…やめろぉぉおーーーーー!!」

魔女「災厄:生命吸収【マナドレイン】」

▼魔女は腕をふりあげた。

▼魔女の手のひらから暗黒の渦が現れた。

▼渦は周囲のあらゆる魔力を飲み込み奪い尽くしていく。

226 : ◆PPpHYmcfWQaa - 2015/09/01 22:58:43.43 CQfUDOu8o 2275/3213


勇者「こ、これ…うぐあああっ、魔力がッ」

僧侶「いやああああっ、なんですかこれは!」

傭兵「くそっ…止められなかった」


実況「いったいどうなっているのでしょう! 陛下のご容態は!?」

実況「騎士様おきあがってください!!」

観客A「なんだあの黒い渦……う、何故か気分悪くなってきた」

観客B「お、おい…俺たちの目の前の空間が歪んでいるような…なんだこりゃ」

女剣士「…これは…ヒビ!? みんな逃げろ!! 客席を護る魔法障壁が壊れる!!」


僧侶「聖守護結界! 私達を護って!」

僧侶「ユッカ様、私の後ろに!! ここは危険すぎます!!」

僧侶「みなさんもいますぐこの闘技場から退避を!! 」

取り巻きの男達「アネさーん! そっちは大丈夫ですかい」

僧侶「あなたたちは客席のお客さん達を逃してください!! 急いで!! そこはもう持ちません!」

取り巻きの男達「了解しました!!」

僧侶「こ、こんなことって…」

勇者「マナ…やめてよ…そんなことしちゃだめ…みんな死んじゃうよ…」

勇者「やめ…てよ」

僧侶(ユッカ様とソル様は私が守らないと!!)

227 : ◆PPpHYmcfWQaa - 2015/09/01 23:03:41.26 CQfUDOu8o 2276/3213


魔法国王「っ…せ、聖剣を…」

魔法国王「勇者くん…きみがつかえ…そこの悪魔を斬り殺せ!!」

勇者「王様!!?」

魔法国王「倒れた騎士にささっている。さぁ急げッ、このままでは死者数万人じゃすまないぞ」

勇者「…くっ」

客席ではつぎつぎに人がたおれていった。
あの渦に魔力という生命の源を吸われて…。
ボクはヒーラの結界を抜けだしてフィールドを走った。

その間も魔力はすさまじい速度で吸われていく。
この距離がありながらも、普段マナに抱きついた時とは比べ物にならない吸収力だ。

勇者(こんなの、普通の人だと一瞬で吸われつくして即死だ!!)

勇者(これが王様の言っていた災厄…)

勇者「…借ります」

騎士の男の人にささった剣を引き抜いた。
胸を貫かれ、魔力を吸われ続けた彼はもう息をしていなかった。

聖剣がボクの手の中で輝きを放つ。
力尽きかけていたボクの体は炎に包まれて、マナドレインの脅威から護られた。

勇者「すごい…これが聖剣」

228 : ◆PPpHYmcfWQaa - 2015/09/01 23:09:16.69 CQfUDOu8o 2277/3213


マナは表情一つかえることなく吸い続ける。
どんどんと魔力がふくれあがっていく。

勇者(…羽?)

一瞬、マナの背後に黒い翼のようなものが見えた気がした。


勇者「マナ! もうやめるんだ! 渦を閉じて!!」

魔女「……ユッカ」

勇者「ボクのことがわかるんだね! だったらどうしてそんなことをするの」

魔女「ごめんなさい。でも、これが私の使命だから」

勇者「何を言ってるのかわからない…わからないよ」

魔女「魔力がたくさん必要…私は、器の巫女だから」

勇者「そんなの知らない!」

魔女「あなたと一緒…わたし、うまれながらにそうあるだけ。あなたもうまれながらにしての勇者」

勇者「なにを…言ってるんだよ」

229 : ◆PPpHYmcfWQaa - 2015/09/01 23:14:17.90 CQfUDOu8o 2278/3213


闇剣士「これくらいで十分だろう」

魔女「……」コク

闇剣士「マナ、準備は出来たか」

魔女「うん。いつでもいい」

闇剣士「帰るぞ」

闇剣士「サキュ。貴様はどうする」

サキュバス「……あなたについて行くわ」

闇剣士「ならば来い。貴様の力もこの先必要になるかもしれん」

僧侶「サキュさん…!!」

勇者「サキュ!!!」

サキュバス(じゃあね…せいぜい生き延びるのよ)

サキュバス(ばいばいユッカ…ばいばい…)


マナは魔剣士の手を引いて、大きな黒い翼で羽ばたいた。

230 : ◆PPpHYmcfWQaa - 2015/09/01 23:18:09.68 CQfUDOu8o 2279/3213


勇者「やだ…行かないで…行っちゃだめ!!」

傭兵「…ッ」

魔女「…みんなさようなら」バサッ バサッ

魔法国王「グ…魔物どもめ。だが…無駄だよ…ぼくらは先祖代々、この国を半球状に囲うようにグリモワプリズンを施してある」

魔法国王「そんな場所から貴様たちが脱出することなど不可能なのさ…ッ」


魔女「術式:ダークブラスター」

▼魔女は闇の波動を放った。

▼放たれた闇の波動は、上空で見えない壁にぶつかり拡散していく。

魔法国王「は、はははっ、不可能だと言ったろ…! どんな攻撃をも通すことはない」

魔女「……。災厄:マナドレイン」ズズッ

▼魔女の手のひらから闇の渦が現れた。


魔法国王「1000年の時をかけて増強されてきた世界一堅牢な魔法障壁だぞ」

魔法国王「災厄として覚醒しきっていないきみひとりの力で吸えるはずが…」


 ピシッ

魔法国王「あ……」

231 : ◆PPpHYmcfWQaa - 2015/09/01 23:24:12.42 CQfUDOu8o 2280/3213



みんなが天を見上げる中、とても静かに、夜空に巨大な亀裂が走った。
そしてその直後、まるで巨大なガラスの欠片がばらまかれるように、世界一堅牢で巨大な結界はあっけなく崩壊した。

砕け散った魔法障壁の輝きが空を満たす。
しかしそれらはすべて、暗黒の渦にむかって吸い寄せられていった。


観客A「な、なんだあれ…」

観客B「空が…割れてる?」

観客C「うそ…だろ…」

魔法国王「……終焉…だというのか」



マナは吸い続ける。
渦は消えること無くすべての魔力を飲み込んでいく。

232 : ◆PPpHYmcfWQaa - 2015/09/01 23:29:05.63 CQfUDOu8o 2281/3213


勇者「もう…やめて…」

勇者(命の輝きが消えていく…)

そしてゾワリとした悪寒がボクをおそった。
それと同時に街中にたくさんの激しいサイレンが鳴り響いた。

勇者「!」

騎士D「陛下、大変です!! グリモワプリズンの消失とともに、魔物の群れがあらゆる方角から国土へと侵軍を開始しました!!」

騎士D「街ではすでに住民に被害が…」

騎士D「へ、陛下…このお姿はッ!? いかがなさいましたか!」

魔法国王「ぐ…がは、ぼくは大丈夫だ。万民へ知らせよ、至急武器を手に取り立ち向かえ」

魔法国王「魔物の侵入など…がはっ、許せるものか!」

魔法国王「あいつめぇぇ…この時をまっていたのか」ギロッ


闇剣士(オーグの派遣した後発隊が壁外に控えていたか)

闇剣士(これで街は混沌へ堕ちる…)

<ギュルルル

闇剣士「来たか」

核竜「ギュルルル…」ばさっ ばさっ

勇者「ぎゅるちゃん…だよね…。なんておっきい…」

233 : ◆PPpHYmcfWQaa - 2015/09/01 23:34:30.31 CQfUDOu8o 2282/3213


騎士C「竜…っ!? うわああああっ」

騎士D「バケモンだ!!」

観客A「食われるぞ逃げろー!!」


闇剣士「マントルドラゴンは成長しコアドラゴンへと進化した。もはや貴様のしってる幼竜ではない」

傭兵「…コア、ドラゴン…」

傭兵(成体になってしまったのか…まずい、いますぐ逃げないと…)

闇剣士「マナ。背に乗れ」

魔女「うん」

闇剣士「奴らにもう未練はないな」

魔女「……ない」

闇剣士「焼き払え」

核竜「グルルルっ」

▼核竜は激しい灼熱の熱線を勇者たちにむかって放射した。


勇者「……!!」


その日、およそ1000年続く魔法大国グリモワは一夜にして崩壊した。



第32話<目醒め>つづく



 

259 : ◆PPpHYmcfWQaa - 2015/09/02 22:18:31.16 tLDaGKGco 2283/3213

第32話<目醒め>つづき



<2日後>

【グリモワ城・謁見の間】


魔法国王「ご覧の有り様だ」

魔法国王「きみたちの尽力に感謝する」

魔法国王「侵入した魔物はおおかた撃退できた。街の火の手も収まった」

魔法国王「…だが、この2日間であまりにたくさんのものをうしなった」

勇者「……うん」


魔法国王「依然国境では交戦状態が続いている」

魔法国王「窓の外の景色は…もうぼくの知っているグリモワじゃない」

大臣「陛下、お疲れでしょう。お怪我も癒えておりません。どうかご静養を」

魔法国王「さがっていろ。ぼくが用あって勇者くんたちを呼んだんだ」

260 : ◆PPpHYmcfWQaa - 2015/09/02 22:24:35.55 tLDaGKGco 2284/3213


魔法国王「アレが危険な存在だということは重々承知していた…」

魔法国王「それでもただの魔族の少女だ。制御できる自信があった」

魔法国王「だが、最後で詰めを誤った」

魔法国王「あの銀髪の魔人が唯一、ぼくにとってのイレギュラーだった……」


傭兵「俺たちを呼んだ理由はなんだ」

傭兵「捕らえて縛り首にでもしようっていうのか」

魔法国王「広場での捕り物を知っている者達からは、きみたちが災厄をこの街に運んできたと囁かれている」

勇者「…そんなっ」

僧侶「あんまりです!」

傭兵「ユッカは魔物の掃討に力を貸したし、ヒーラちゃんは人々を護って街の鎮火までした。なのに…貴様はッ!」

魔法国王「だから、いますぐ国をでるんだ」

勇者「え…」

261 : ◆PPpHYmcfWQaa - 2015/09/02 22:30:43.25 tLDaGKGco 2285/3213


魔法国王「きみたちに…いや、人間にもはや時間は残されていないぞ」

魔法国王「言っただろう。あの能力が真価を発揮すれば、地平の果てからでもあらゆる命を吸い付くせると」

魔法国王「決して誇張した話ではないと、体感したはずだ」

傭兵「…」

魔法国王「魔族領に近いグリモワは、一瞬で死地となるだろうな」

僧侶「…そんなの、ダメです…」

魔法国王「どの口が言うんだと思うかもしれない、あつかましい願いかもしれない…けど」

魔法国王「グリモワには罪のない民が大勢いる!」

魔法国王「彼らを…救ってほしい。一縷の望みがあるとしたら、もはやきみたちしかいない」


傭兵「…ユッカ」

勇者「どんな人であっても、困っている人を助けるのがボクの使命だよ」

勇者「でもボクがいま一番助けたいのは、マナなんだ」

262 : ◆PPpHYmcfWQaa - 2015/09/02 22:35:35.49 tLDaGKGco 2286/3213


勇者「マナを…助けることが、みんなの平和につながると思う」

魔法国王「アレを助けるだと。無駄だよ。彼女は自らの意思であの場を去った」

傭兵「どうみてもレヴァンに命令されているように見えたが…」

魔法国王「いや、違う。2位の賞品に彼女の支配権を与えただろう」

魔法国王「一度解除した首輪をつけなおすことで、再び洗脳することが可能だったんだ」

魔法国王「だがあの剣士はそれをしなかった」

魔法国王「つまりマナは彼の命令で動いているわけではない」

傭兵(…マナ。なぜだ)


勇者「マナのあの顔…」

勇者「マナはボクたちの助けを求めてる」

魔法国王「…ぼくには世にもおぞましいものバケモノとしか思えなかった…」

魔法国王「それでも勇者くんの魔覚は…彼女の心の内に触れることができたんだね」

勇者「魔覚じゃないよ! ボクはマナのことならなんだってわかる!!」

263 : ◆PPpHYmcfWQaa - 2015/09/02 22:40:25.68 tLDaGKGco 2287/3213


魔法国王「な、なぜ…。しかし、それはきみの魔覚が極めて優秀だからで――」

勇者「そんなのっボクとマナが友達だからに決まってるじゃないか!」

魔法国王「…!」

勇者「マナのことを信じてる! マナもボクのことを信じてる!!」

傭兵「…ユッカ」

勇者「マナは小さい頃から自分の力に怯えてた…」

勇者「一度は引き離されちゃったけど…また出会うことができた」

勇者「マナは、いつも幸せそうに笑っていたんだ!」

勇者「そのマナが…自分の意思であんなことするわけないんだ!」

勇者「マナを化け物になんてさせないよ」

勇者「不幸をふりまくなら、ボクが絶対に止める」

僧侶「私もです」

傭兵「俺もだ。まだあいつとやり残したことはたくさんある」

傭兵「一度敵対したからって、簡単に諦められるか」

265 : ◆PPpHYmcfWQaa - 2015/09/02 22:46:18.14 tLDaGKGco 2288/3213


魔法国王「あの残虐で絶望的な魔力を肌で感じて…まだ仲間だと思えるのか」

魔法国王「恐れを…抱かないのか」

傭兵「あいにく、てめぇのような壁の中で暮らす温室育ちとは違うんでな」

勇者「怖いといえば嘘になるよ。…けど、みんなが勇気を与えてくれるから、ボクは戦える」

僧侶「どこまでもユッカ様のお供をします」

魔法国王「……」

魔法国王(きみたちは…折れない剣だ)

魔法国王(ぼくの先祖もきみたちのような強い心で、魔王という災厄に立ち向かったのだろうか…)


魔法国王「倒すのではなく、取り戻しにいくんだね」

魔法国王「ならば、この先は本当の意味での魔境だぞ」

魔法国王「正しき道があるとも限らない…それでもかい」

勇者「行くよ」

勇者「マナが待ってるから。どんなに怖くても行かなきゃいけない」

267 : ◆PPpHYmcfWQaa - 2015/09/02 22:54:00.58 tLDaGKGco 2289/3213


魔法国王「…ぼくは…魔物という存在を侮っていたのかな」

魔法国王「きみたちはどうしてそこまで信用できる…」

魔法国王「どうやって…彼女と仲良くなれたんだい」

勇者「魔物だとか、人間だとか関係ない」

勇者「マナと一緒に過ごせばわかることだよ」

勇者「マナは無表情だけど、ホントはいろんな事考えてて」

勇者「いたずらもするし、やり返すと怒るし、変な事ばっかり言うし…でも一緒に居ると時々笑ってて、ぐすっ」

僧侶「ユッカ様…」ぎゅ

勇者「ボクたちの中で一番頭がよくて…魔法の研究が大好きで…」

勇者「だから…マナは……」

勇者「この国に…グリモワに来るのを、ずっと楽しみにしてたんだ…」

魔法国王「……!!」

268 : ◆PPpHYmcfWQaa - 2015/09/02 22:58:38.34 tLDaGKGco 2290/3213


勇者「ボクたちまた来るよ」

勇者「世界が平和になって、みんなで笑えるようになったら必ずここにマナを連れてくるから」

勇者「だからその時は…マナを…魔物じゃなくて、ボクたちの仲間として迎えてほしいな…」

魔法国王「……だ、だが」

勇者「この国のいろんな楽しいものを、もっとマナに…見せてあげたかったんだ!!」

勇者「一緒にって…約束したんだよ…」


魔法国王(……ぁ…ッ…そう…か)

魔法国王(ぼくは…なんてことを…)

魔法国王(人間じゃないのは…ぼくのほうだった…)

魔法国王「…あぁ」

269 : ◆PPpHYmcfWQaa - 2015/09/02 23:05:42.38 tLDaGKGco 2291/3213



グリモワ王は泣き崩れるように顔を伏した。
失った物を嘆いているのか、犯した罪に苛まれているのか。肩を震わせながら嗚咽を漏らしていた。

だが、決してユッカの魔力が彼に入りこんで、心を直接浄化したわけではなかった。

ユッカは、優しい子だから。
自然と彼のほうからユッカの心に触れたのだろう。

魔法国王(すまなかった…)


勇者「王様…?」


魔法国王「…最大限の旅の支援をしよう」

魔法国王「聖剣も持って行くといい。きみたちの物だ」

傭兵「グリモワ王…」

僧侶(ユッカ様のお気持ちをわかってくださったのですね)

271 : ◆PPpHYmcfWQaa - 2015/09/02 23:12:15.75 tLDaGKGco 2292/3213




   ・   ・   ・



魔法国王「この先の道はわかるかい」

傭兵「あぁ。魔王の場所を指し示す闇のコンパスが…ってあれはマナが持ってるんだったか」

勇者「ボクのも似たような方向を指してたはずだよね」

僧侶「そうですね。北西です」

魔法国王「なるほど。魔族領へまっしぐらというわけだ」

魔法国王「だが魔族領と人間界を隔てる巨大な山脈は、知性無き化け物の巣窟だ」

魔法国王「ま、決して山から出ることもないんだけどね」

魔法国王「ゆえに彼らを番人と呼ぶ」

魔法国王「魔人族ですら彼らを支配できず、もはやだれも近づこうとしない」

魔法国王「そもそも標高5000m級の山脈を徒歩で越えるのは現実的ではない」


僧侶「海を回りこむとか?」

魔法国王「海もダメだ。常に嵐が吹き荒れ、大波で船舶なんてあっという間に沈められる」

272 : ◆PPpHYmcfWQaa - 2015/09/02 23:17:46.70 tLDaGKGco 2293/3213



傭兵「陸も海もダメとなると、古の勇者達はどうやって魔族領に入ったんだ」

魔法国王「…」

傭兵「なんか知ってんだろ」

魔法国王「選ばれし勇者達は巨大な鳥の背にのって空を飛んだらしい」

傭兵「空を……」

勇者「でも人が3人乗れるような大きな鳥いないよ」

勇者「それってぎゅるちゃんみたいな魔物じゃないの?」

傭兵「ドラゴンの背中は夢があるが…乗り心地は悪そうだ」

魔法国王「いや、手持ちの文献ではたしかに紅蓮の火の鳥だと…」

魔法国王「待っていてくれ。取ってこよう」



大臣「その本を持ちだして良いのですか」

大臣「大魔導師の一族に伝わる機密事項ですぞ」

魔法国王「彼らは勇者だ。問題はない」

273 : ◆PPpHYmcfWQaa - 2015/09/02 23:23:51.43 tLDaGKGco 2294/3213


魔法国王「げほっ…くそ、少し手を貸せ」

大臣「陛下、やはりご気分が優れないようで」ガシッ

魔法国王「ぼくにできることはもうこれくらいしかない。すでに崩壊した国の機密など知った事か」

魔法国王「あとは利用するだけさ。彼らをうまく誘導すれば…グリモワの生き残る未来がわずかでも生まれるだろ」

魔法国王「あいにく、仲間の奪還という修羅の道を行くようだがね…」

魔法国王「だったらもう伝承でも神話でもなんだっていい、なりふり構っていられないじゃないか!」



   ・   ・   ・



魔法国王「待たせたね」

傭兵「血でてるぞ」

魔法国王「気にしないでいい」

274 : ◆PPpHYmcfWQaa - 2015/09/02 23:27:36.73 tLDaGKGco 2295/3213


魔法国王「文献に描かれたこの絵をみたまえ」

勇者「この鳥、燃えてるの?」

魔法国王「紅蓮の炎を纏う鳥と古い言葉で書かれている」

魔法国王「背に3人の人間が乗っているだろう」

勇者「ほんとだ…」

魔法国王「おそらく古の勇者たちはこの鳥にのって魔族領へと侵入した」

傭兵「火の鳥か…何がいたっておかしくねぇが」

傭兵「燃えてたら乗れないだろうがよ」

勇者「あ、そっか。じゃあ嘘だ」

僧侶「そうですよ。ではこの大きな鳥さんを見つけたら私が消火すればいいんですね」

勇者「そういう話?」

傭兵(火の鳥…熱くない炎…)

傭兵(…いや、まて。そんなはずは…)

275 : ◆PPpHYmcfWQaa - 2015/09/02 23:36:08.34 tLDaGKGco 2296/3213



傭兵「他にはなんて書いてある」

魔法国王「不死なる炎鳥は悠久の時の中で浄化と再生を繰り返し、また眠りにつく」

魔法国王「その炎あらゆる邪悪を焼き払い、焼け跡にはこころ清き者のみが立ち尽くすだろう」

傭兵(浄化の炎と同じだ)

傭兵(この鳥がいまでも存在するなら…俺のルーツがわかるかもしれないな)


勇者「いこう。どこにいるの」

魔法国王「…あいにくだが、聖なる火山としか書いていない」

魔法国王「正確な場所はわからないな。近くに魔力を帯びた火山帯があるから、そこが有力だけどね」

勇者「……」

魔法国王「きみたちならきっと出会うことができる」

魔法国王「鳥を探して、彼女を迎えに行くといい」

魔法国王「信じているよ」

勇者「……いってきます」

277 : ◆PPpHYmcfWQaa - 2015/09/02 23:44:20.22 tLDaGKGco 2297/3213




【魔族領・神殿】


闇武将「……作戦は成功したようだな」

闇剣士「あぁ。問題はない。万事順調に進んでいる」

闇武将「おう、さすがにてめぇもお疲れか。だったら詳しい話は明日にするか」

闇武将「んで、持ち帰ったそれが器のガキか」

魔女「…」

闇武将「はーっはは、予想はしてたが、まさかこんなちんちくりんだとはなぁ」

魔女「…」

闇剣士「マナ、行くぞ。部屋に戻る」

闇武将「おう! ここからが正念場だ。魔王復活にむけてしっかり英気を養えや!」

 
  ・   ・   ・
 

蟲魔人「オーグ様…では計画どおり、あの娘の暗殺ヲ」

闇武将「…ぐふ、いやぶっ壊すのはやめだ」

蟲魔人「ム?」

闇武将「オレはあのメスガキを嫁に迎え入れるぞ!! ここに連れて来られて怯みもしねぇ、ありゃたいしたタマだぜ」

闇武将「ぶっ殺すのはレヴァンの方だ!!」




第32話<目醒め>おわり


  



《次話》
第33話<求道者達>


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