《1つ前》
第14話<アリスの館>
《最初から》
第1話<呪い>
《全話リンク》
少女勇者「エッチな事をしないとレベルがあがらない呪い…?」
第15話<山脈温泉紀行>
勇者「やー大変な目にあったなぁ。まさか人形の中に入っちゃうなんて」
僧侶「そうですね。世にも奇妙な…といったところでしょうか」
勇者「死んじゃったらあんな感じなのかな」
傭兵「どんな感じだったんだ?」
勇者「…うーん、あんまりおぼえてないや」
傭兵「なんだよ」
勇者「でもマナが一生懸命たすけようとしてくれたことはちゃんと覚えてるよ」
僧侶「そうですね。魂だけでも人の意思や魔力を感じ取れるものなのですね」
傭兵「不思議なもんだなぁ」
勇者「あんなのは二度とごめんだよ」
勇者「そういえばマナはさ、あの能力を奪った…ことになるんだよね?」
魔女「うん。あの女に返した覚えはない」
勇者「…だよね。ふとしたはずみで発動しちゃったりしたらおっかないなぁって…思うんだけど」
魔女「安心して。使えないから」
傭兵「使えないとは? あの時使ったのを目の前で見たが」
魔女「ただしくは発動の」
僧侶「条件が満たせないから再現できない! ですよね!」ドヤ
魔女「…私が言おうとしたのに」
僧侶「うふふ」
勇者「どゆこと?」
僧侶「ユッカ様ぁ。魔法のお勉強はしましたよね?」
勇者「ある程度…」
傭兵「おい俺にわかるように教えてくれよ」
魔女「魔法の発動には、条件がある」
傭兵「条件なぁ……レベルとか?」
魔女「そう。色々。ちょっと待ってね。紙があれば」
魔女「…書くから」ゴリゴリ
傭兵「なんだ?」
魔女「書くから待ってて」
傭兵「お、おう」
傭兵「マナの奴、なんだかうれしそうな顔してるな」ヒソヒソ
僧侶「そうですか? いつもと変わりませんよ」
勇者「ボク勉強やだ」
魔女「書けた。これを見て」
-------------------
[魔法習得/発動フローチャート・簡易版]
①<発動に必要な魔力が有る>-No→[習得失敗…]
↓Yes
②<習得レベルを満たしている>-No→[習得失敗…]
↓Yes
③<属性の素質(適正)が有る>-No→[習得失敗…]
↓Yes 習得成功!
④<術式を正確に再現した>-No→[発動失敗…]
↓Yes
⑤<発動に必要な媒介が有る>-No→[発動失敗…or発動成功!(精度・低)]
↓Yes
⑥<技の経験を十分に積んだ>-No→[発動成功!(精度・低~中)]
↓Yes
⑦[発動成功!(精度・高)](=^ ^=)
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勇者「ねぇ、この(=^^=)は何」
魔女「……ねこ」
勇者「ふーん」
傭兵(お前その反応はひどいと思うぞ)
僧侶「か、かわいいですねぇ! 上手ですよ!」
魔女「そう」
傭兵「落ち込むなよ。とりあえず説明してくれ」
魔女「この図の条件を上からきちんと満たして行くことで、魔法は正しく発動する」
魔女「私があの女から奪った【ワンダーランド】を使えない理由は、⑤にある」
傭兵「ええと…媒介ってのか。それが無いんだな?」
魔女「そう。この術の場合は人の魂を移す先である人形」
魔女「人形と言っても、術をかける相手を想い、姿をかたどって手作りした人形じゃないとダメ」
魔女「私にはそれを用意することが不可能」
魔女「よって【ワンダーランド】はもう発動できない」
魔女「さらに⑥の条件」
魔女「圧倒的に経験不足。だから人から技を盗んでも必ずしもうまく扱えるとは限らない」
傭兵「現に発動に成功してユッカ達の魂を戻せたじゃないか」
勇者「そうだよ!」
魔女「あの時は媒介があったから発動はできても、精度自体に不安があった」
魔女「下手をすればユッカたちの魂は行き場を失い永遠に館の中をさまよい続ける…」
勇者「ひっ、脅かさないでよ」
傭兵「危ない賭けだったんだな」
僧侶「ほっ…」
魔女「ひとえに私が魔法の天才だから。うまくいった」
傭兵「ん?」
傭兵「覚えたらすぐにポンと発動できるわけでもないんだな」
魔女「そう。簡単に100%のパフォーマンスを引き出せるわけではない」
魔女「できる人とできない人がいる。魔法の才覚次第と言える」
傭兵「才能か…」
魔女「あなたは考えるだけ無駄よ。フローチャート以前の問題だから…」
魔女「魔力すらもってないなんて論外」
傭兵「お、おう」
僧侶「私の結界がすぐにパリンと割れてしまうのは、経験がたりないからなんです」
僧侶「ほんとはもっと頑強なはずなのですが…お父様には遠く及びませんね」
魔女「もっとたくさん訓練すればいい」
魔女「それと、発動媒介になる杖もちゃんと自分にあった物を吟味した方がいい」
僧侶「杖の問題もあるんですか…」
傭兵「もっぱら人を殴るのにつかってるもんな」
僧侶「つ、つかってません!」
勇者「…へぇ~。ためになるなぁ」
傭兵「へーってお前…。お前だって魔法使えるんだろうに」
勇者「ねぇねぇ。ボクがマナの攻撃魔法をおぼえることはできないの?」
勇者「あの氷の弾をビュンビュンビュン!って飛ばすやつとか!」
傭兵「あぁあれいいな。遠距離攻撃はみんな覚えて損はないぞ」
僧侶「ですね! マナちゃん、教えてください!」
魔女「アイスビュレットはレベル15で習得できる簡単な技」
勇者「おお! じゃあボク覚えられる!?」
傭兵「簡単な技なのか?」
魔女「あの技は空気中の水分を凝結させて弾丸のように飛ばしているだけ」
勇者「うんうん! それでボクは」
魔女「ユッカとヒーラにアイスビュレットを習得させようとしても③の適正段階でつまづいてしまう。」
勇者「③っていうと…うっ、属性の素質か」
魔女「寒いのは好き?」
勇者「嫌い」
僧侶「苦手です」
魔女「なら無理」
勇者(ひどいや…)
僧侶(ひどいですね)
傭兵「おいおいたったそれだけで不可能なもんなのか? ユッカは仮にも勇者だぞ」
魔女「どちらかというと、ユッカは火の魔法のほうが適正がある…気がする」
勇者「うう…」
魔女「ヒーラは聖魔法。人には向き不向きがある。諦めてそっちを磨いたほうが有益」
勇者「でもマナは火も氷もなんだってつかえるじゃん…」
魔女「私は天才だから」
傭兵「は?」
魔女「私は天才であるがゆえ高度な魔法でなければ、ほとんど①~⑥のチャートをすっ飛ばして発動することができる」
傭兵「…すげぇ」
魔女「天才だから」
傭兵(なんだその顔)
勇者「いいな~、ボクも魔法の才能ほしかったよ」
傭兵「イヤミか?」
勇者「あ、ううんそういうわけじゃないよ…ごめんね」
僧侶「人には生まれ持ったものがありますからね。こればっかりはしかたないですね」なでなで
傭兵「…あのなぁ」
魔女「だけど、可能性が0というわけではない」
僧侶「というのは?」
魔女「魔法の発動は本当はもっと複雑。このような単純な演算手順ではない」
魔女「時には想いの力が、魔法の精度を高めることもある」
魔女「だから適正段階では習得不可能なはずの魔法がある日突然発動することもある…と私の師であるおじいちゃんは言っていた」
傭兵「…ああ」
勇者「ねぇ。アリスさんの秘術もそうだったのかな」
勇者「純粋にボクたちのことをお人形にしたいがためだけに…あの恐ろしい魔法を覚えたのかなって思うんだ」
僧侶「どうしてそう思うんですか?」
勇者「あのね。ボク、魔覚を使ってもアリスさんからあまり害意を感じなかったんだ」
傭兵「俺もだ。あの女の腹のうちはわからなかったが、少なくとも敵対するほどの殺意は感じ取れなかった」
傭兵「ゆえの失態だ…ああいう人間もいるんだな」
魔女「あの女がこれほど高度な黒魔術を扱えたのは、おそらくは彼女の狂気が原因」
魔女「狂気も強い想いの力」
魔女「くわえて彼女は100年以上生きた魔女。魔法の扱いは、一流だった」
傭兵「力の矛先が私利私欲だったのはまだ救いかもな」
傭兵「魔物に加担でもされてりゃ…被害は甚大なものになっていたかもしれない」
勇者「でも、アリスさんは悪いことをしたんだから。誰かが懲らしめなきゃいけなかったんだ」
勇者「そうだよね?」
傭兵「あぁ。そうだな…間違ったことはしていない」
魔女「…」
僧侶「さて、お昼ご飯もすみましたし」パンッ
傭兵「そろそろ行くか…山の麓は目の前だ」
勇者「山はいいよねぇ…。自然にあふれててとっても気分が落ち着くんだ」
僧侶「それに、天然温泉もありますし!」
傭兵「あれ? 俺それ言ったっけ?」
勇者「ソルのもってる地図に書いてあるもん」
勇者「はやく温泉はいりたいなぁ」
傭兵「わかってる。ちゃんと寄ってやるから」
魔女「温泉…」
傭兵「マナは初めてか? そうだな、バザで入ったみたいなでっかい風呂だ」
魔女「…そう。楽しみ」
傭兵(お?)
傭兵「よっし、散らかした荷物かたづけろー」
勇者「はーい!」
魔女「…」イソイソ
僧侶「しゅっぱーつ♪」
第15話<山脈温泉紀行>つづく
第15話<山脈温泉紀行>つづき
<山に入って2日>
勇者「うう…もうへとへとだよ」
僧侶「はい勇者様お水」
勇者「ありがと…んく、んく」
傭兵「ほら、休んでないでちゃんと押せよ」グググ
勇者「うううう…」グググ
魔女「…がんばって。ファイト」
勇者「はぁ…」
港へと抜けるやまあいの道に入って数日、俺達は窮地に陥っていた。
山の天気は変わりやすい。
幾度となく降った雨で道はずいぶんとぬかるんでいた。
ふと気づいた時には荷馬車の右前輪が泥に深く沈んでいて、バランスを失った車体は軋みをあげて脱輪した。
俺とユッカは膝から下を泥だらけにしながらなんとか車体を泥から引き上げようと奮闘している。
勇者「ソルのせいだよ! ソルがちゃんと前みてなかったから!」
傭兵「うるせーお前がべたべたくっついてくるからだろ」
僧侶「もうっ! こんなときに喧嘩しないでください」
勇者「はぁもうだめ…疲れちゃったよ」
勇者「ボクとソルでこんだけやっても持ち上がらないなんて、ちょっと荷物積み過ぎ!重すぎ!」
僧侶「ユッカ様怒らないで」なでなで
傭兵「足元を取られてうまく力が入らないな…」
勇者「山を越えるのにあと何日もかかるのにこんなところで体力つかっちゃうなんてさ…」
傭兵「やっぱだめだな」
僧侶「どうしましょう。足元がすこし乾くまで待ちますか?」
傭兵「それこそ何日かかるか。また雨は降るだろうしな…ここは日の照りも悪い」
僧侶「そうですね…」
勇者「ああ泥んこだよ…くすん」
僧侶「泥遊び好きじゃありませんでしたか?」
勇者「そんなの子供の頃だもん」
傭兵「まさかこんなところで立ち往生するとは…」
勇者「マオにゃんもこんな絶望的な気持ちで誰か助けを待ってたのかな…」
傭兵「あの道は商業ルートだが…。こんな舗装もされてない獣道、誰も通りゃしねーぞ…」
魔女「………あ」
傭兵「ど、どうしたマナ! なにか良いこと思いついたのか!? お前の魔法に全てがかかっている!!」
傭兵「こう、あるだろ? 物体を浮かせる魔法とか! 泥を一瞬で蒸発させる魔法とか!」
魔女「お腹すいた。って思っただけ」
傭兵「……。あ、とか言うなよ紛らわしい」
傭兵「そういや腹へったな…備蓄の食料にも限界があるし…参った」
魔女「でも食べ物なら見つけた」ジー
傭兵「ん?」
ぼけーっとした目つきをしたマナの視線の先を追ってみる。
そこには草むらの陰でひょこひょこと揺れる大きなふさふさした尻尾があった。
傭兵「野生動物か?」
魔女「捕まえて」
勇者「ご飯にしよう!!」
傭兵「お前ら…さばくのは人任せだからって…」
僧侶「ですが…このまま何日ここで過ごすことになるかわからないので」
傭兵「…わかった。ちょっくら狩ってくる」
俺は腰の剣に手をかけ、獲物へとにじり寄る。
傭兵「悪く思うな」チャキ
???「っ!?」
傭兵「はァッ!」
???「なっ…ちょっと待てい!」ガサッ
きりかかろうとした途端、その獲物は自ら草むらから飛び出し俺の眼前へと姿を現した。
見慣れぬ白い衣装を来たその少女(?)はおそらくマオのような獣人種だろう、大きな獣耳と尻尾をたくわえ、
くりっとした目で俺を睨みつける。
そして間髪入れずに俺に向かって腕を大きく前に突き出す。
???「ワシは食べ物じゃない! 無礼者」
その言い切った途端、俺は直接触れられてもいないのにまるで見えない巨大なハンマーでぶん殴られたかのように
勢い良く後方へと弾き飛ばされ、荷台の壁面へとたたきつけられた。
傭兵「うがっ!」
勇者「ソル!」
傭兵「いってぇ…なんだ」
???「ふん。少しは頑丈なようじゃな」
傭兵(…こいつ、人間だったのか)
勇者「うわー! ごめんねぇ急に襲い掛かっちゃって」
僧侶「ご、ごめんなさい! お怪我はございませんか!?」
???「まだ斬られとらん。平気じゃ」
傭兵(だれか俺の心配をしてくれ…)
痛む背中をおさえながら。今度はゆっくり俺を謎の力で突き飛ばした相手を観察する。
尻尾や耳に狐のような面影がある。間違いなく獣人だ。
傭兵(狐…? だよな?)
???「いかにも。ワシは狐の獣人じゃ。正確には妖狐と呼ぶ。なにか文句あるか」
傭兵「なっ!? お、おい俺は何も言ってないぞ」
妖狐「ふふ。小童の心を読むくらいたやすいことよ」
傭兵(嘘だろ!?)
妖狐「本当じゃ」
妖狐「さて」
妖狐「ワシに斬りかかった罪、どう落とし前つけてくれようか」
傭兵「ま、まて…争う気はない。非礼を詫びる」
妖狐「ならばその命で――――」
勇者「かわいいー」ギュ
妖狐「ぎゃうっ! なっ、なんじゃこいつは」
勇者「すごいよぉふさふさだよ! マオにゃんよりふかふか」
妖狐「やめんかっ。無礼な」ペシペシ
僧侶「もうしわけありません。ほらユッカ様。失礼でしょ…」うずうず
僧侶(触りたい触りたい触りたい触りたいあぁぁあすごいですこんなふかふかな子がいるなんて)
妖狐「…」
僧侶「ほら。離れなきゃ…」うずうず
僧侶(あああユッカ様ずるいですよぉおぉぉ代わってください代わってください私もさわってみたいです!!)
妖狐「さ、さわってみるか…?」
僧侶「えっ!? いいんですか。やったぁありがとうございます」サワサワ
妖狐「ふ、ふん…」
さわさわ なでなで
妖狐「……」
なでなで ふにふに
妖狐「……」
妖狐「…まだ離してくれんのか?」
勇者「はっ! ごめんね! あんまりにも気持ちよくて」
僧侶「そうですね。ブラシ作りたい…」
妖狐(なんじゃあこいつらは…)
傭兵「めんどくさいやつらだろ」
妖狐「ひっ! おぬしもまさか読心術を!?」
傭兵「って顔してたぜ」
妖狐「ぐぬぬ…」
傭兵「なぁ許してくれないか…? ほんとに悪気も敵意もないんだ。この通り」
妖狐「…そ、そうじゃな。うむ確かに。ならば今回はワシの広い心で許してやろう、特別にな」
傭兵「サンキュ。ほんと悪かったごめんな」
妖狐「ワシのほうこそすまんな。おぬしを妖力波で突き飛ばすようなマネをして」
傭兵「いや。にしても不思議な感触だった」
妖狐「どうやらこの辺りでは法力ではなく魔力と呼ぶようじゃな」
傭兵「見慣れない姿だが。どこから来たんだ」
勇者「この辺りの子じゃないんだよね?」
妖狐「子て…。おぬしのようなちんちくりんに言われとうない」
勇者「ボクはユッカ! こっちがヒーラで、こっちがソル。それとー…あれマナは?」
魔女「……」ぐつぐつ
傭兵「おーいマナ。何やってんだ。こっち来いよ」
魔女「鍋、お湯沸かしてる」
傭兵「あん?」
魔女「食べないの? 狐ってどんな味がするか楽しみ…食べたこと無いから」
妖狐「やっぱりワシのことを食べようとしてたのか!?」
傭兵「あー…食べないぞ。人間を食うのはさすがに無理だ」
魔女「そう。食べないんだ…」
妖狐(この小娘本気か…?)
妖狐「…」ジィ
魔女「…」
妖狐(わ、わからん…まったく心が読めん。何を考えとるんじゃあ…)
魔女「あなた。おいしそうな魔力してる」
妖狐(やっぱり食べる気まんまんなんじゃ…)
・ ・ ・
妖狐「なるほどのぅ。荷馬車が泥んこにはまってしもうたのか」
勇者「そうなんだ。それでボクたち食べ物を探してて…」
妖狐「ウソではないようじゃな」
妖狐「どれ、ワシにまかせてみぃ」
僧侶「なんとかなるのですか?」
妖狐「ワシの妖力にかかればこの程度、お茶の子さいさい…」
ググッ…ふわっ
傭兵「…おお!! あんだけ重かった荷馬車がいともかんたんに!」
妖狐「……と言いたいところじゃが」へなっ
ベチャッ! ずぶずぶ…
勇者「あーあーあー…」
傭兵「おいふざけんな。ますます沈んじまったじゃねーか」
妖狐「術を安定させるための妖力が足らんのじゃ…」
妖狐「ワシはこれでも地元では名のある妖怪でな」
勇者「ヨーカイ? ヨウリキ?」
妖狐「そうじゃな。妖怪というのは、この地方でいうと魔物じゃ」
勇者「ま、魔物!?」
妖狐「そう身構えるな。なんじゃこの地方では魔物はいかんのか?」
傭兵「んでその何しにこっちへ来たんだよ。だいたいどこから来たんだ」
妖狐「あっち」
傭兵「…海の向こうか? 俺達の向かう方角だな」
妖狐「そうじゃ。遠い故郷より海をわたり、この大陸の港へとたどり着いた」
妖狐「というのもワシは霊泉を求めて世界各地をまわっておってな」
勇者「レイセン??」
僧侶「一般的に、強い魔力を帯びた自然温泉のことです」
僧侶「しばらく浸かるだけで立ちどころに傷が癒え、体力と魔力が回復するとか…」
妖狐「その通り。このあたりにも霊泉があると見て、立ち寄ったのじゃ」
傭兵「つまりは…湯治か?」
妖狐「……うむ。しかしこの広い山で霊泉を見つけ出すというのは困難を極めた…まことに参ったのぅ」
勇者「じゃあボクたちと目的は一緒だね!」
妖狐「なんと! おぬしらも霊泉を求めて山へ入ったか」
傭兵「おーい目的かわってるぞ。温泉はついでだついで」
妖狐「そ、それで」そわそわ
妖狐「湯の場所はわかるのか…?」
勇者「え?」
妖狐「検討はついとるんじゃろう? ほらいま思い浮かべてる地図の場所に案内せい!」
傭兵「…わかった教えてやる」
妖狐「本当か! 地獄に仏とはこのことか!」
傭兵「ただし」
妖狐「なんじゃ」
傭兵「お前の妖力とやらが回復したら、この荷台をもちあげてくれないか」
妖狐「うむ。ならばそれで交渉成立じゃ」
僧侶「やったぁ。ありがとうございます」ペコ
勇者「ありがとう!」
傭兵(まぁ温泉の場所を聞いてあるってだけで、それが霊泉とは限らないんだけどな)
妖狐「は?」
傭兵「…ぃ、行ってみないとわかんないだろ!? なっ!?」ポンッ
妖狐「…そうじゃの」
妖狐「では短い間じゃがよろしくの」
勇者「ねぇ、キミの名前はなんていうの! 教えて!」
妖狐「ワシに名前なんてないが」
勇者「えーそんなわけないでしょ! 名前だよ名前! みんなもってるよ!」
妖狐「ふむ…。人々には九尾の狐と呼ばれて恐れられておったの」
傭兵「九尾? 2本くらいしかねーぞ」ぎゅむっ
妖狐「ぎゃうっ! 無礼者! 勝手にさわるな!」
傭兵「あっ、悪い…」
妖狐「いまは妖力を失い見る陰もないが、ほんとのワシはでかくて強いんじゃぞ!」
傭兵「へー…」
傭兵(へー…)
妖狐「心の底からどうでもいいんじゃな…」シュン
勇者「キュービ……じゃあキュウちゃんでいいよね。よろしくねキュウちゃん」
妖狐「…まぁおぬしらがそう呼びたいなら、ワシとしてはなんでもいいんじゃが」
僧侶「よろしくおねがいしますキュウさん」
傭兵「よろしくな。キュウ」
妖狐「う、うむ。アダ名というのは悪くないものじゃな」
魔女「よろしく…」ジーー
妖狐(この娘だけはどうも解せん)
・ ・ ・
<夜>
妖狐「なるほど、おぬしたちは魔王とやらの復活を阻止する旅をしとるのか」むしゃむしゃ
勇者「そうなんだよ。キュウちゃんの国は魔王の脅威にさらされてないの?」
妖狐「閉鎖的な島国じゃからのう。大陸の事情はようわからん」
妖狐「まぁ言ってみればワシが島国の魔王みたいなもんじゃ! 敬って良いぞ!」むしゃむしゃ
勇者「えー…絶対ウソだ」
傭兵「なら念のため斬っておいたほうがいいか」
妖狐「や、やめんか! 楽しい食事中じゃぞ!」
傭兵「ひとんちの食いもんガツガツ食いやがって」
傭兵「…にしてもこっちの魔王がお前みたいに少しは話のわかるやつなら良かったんだけどな」
妖狐「どんなやつなんじゃ」
傭兵「しらねーな。だが数百年前に大陸を滅ぼそうとしたとんでもない悪魔だと伝え聞いている」
妖狐「ワシよりやばいのか?」
傭兵「少なくともあの荷馬車くらい小指の先でもちあげるだろうぜ」
妖狐「むぅ…」
傭兵「そして魔王を討伐した勇者の子孫達はそのバケモンの復活を阻止するための旅を続けている」
勇者「はーいそれがボクだよ!」
傭兵「に付き合ってるのが俺とヒーラちゃんとマナ」
僧侶「です!」
魔女「…」もぐもぐ
妖狐「こんなちんちくりんどもで大丈夫か…」
傭兵「なんとかな」
妖狐「まぁ大陸のことなんて知らん。そっちはそっちで勝手にやっとれい」
妖狐「ワシはこの地の霊泉に浸かることができればそれで満足なのじゃ」
妖狐「これ以上厄介事に巻き込まれるのはごめんじゃ」
傭兵「まぁな。これは俺たちの問題だからお前にどうこうは言わねーよ」
傭兵「あれをなんとかしてくれるだけで十分ありがたい」チラ
妖狐「…にしてもずっぽりハマっとるのう。うくく。あんなまぬけな荷馬車初めて見たぞ」
僧侶「ソル様がよそ見をしてて」
魔女「ユッカとイチャイチャしている間に」
傭兵「そういうことになってるんだな…」
勇者「ったくソルったらぁ」
傭兵「…」
妖狐「…ほほう。おぬしら存外、ただの仲間同士というわけでもなさそうじゃな」
妖狐「どれ、これまでの旅の情事をワシに話してみよ」
僧侶「えっ!?」
僧侶「は、話すわけないじゃないですか」
妖狐「といいつつ、思い浮かべるだけでワシには手に取るようにわかるのじゃ」
僧侶「いやぁぁぁそういうのってプライバシーの侵害ですよっ!」
妖狐「なるほどのう。ヒーラはもう少し踏み込みが足りんようじゃな」
妖狐「あぁ、あともうひと押しあればこんなちょろい男なぞいとも簡単に落とせるものを」
僧侶「な、ななっ、にゃにを」
妖狐「それに比べてユッカのういことよ。人間は素直が一番じゃな」
勇者「う…うう、恥ずかしいよ…」
傭兵「おおお、おいやめろぉ! よそのパーティをむやみにかき回すんじゃない!」
妖狐「なんじゃ…おぬしものぞいてやろうか?」
傭兵「やめてください。本当に…やめろ」
妖狐「…うくく。どれ、ワシにこの娘たちとのめくるめく夜伽について語ってみよ」
妖狐「語らずとも思い浮かべるだけでよいのだぞ…」
傭兵「マナ。俺の上にこい! はやくっ!」パンパン
魔女「?」
妖狐「なんじゃ」
傭兵「盾」ぐいっ
魔女「…」
傭兵「俺をまもれっ」
魔女「なに。離して」
妖狐「やれやれ…つまらん男じゃなぁ。秘密主義は嫌われるというに」
妖狐「よほど覗かれたくない思い出があると見た」
傭兵「人間にはあってあたりまえなんだよ」
勇者「そうだよぉ!! もうっ」
妖狐「そういうものか」
妖狐「あいわかった。すまんかったの」
妖狐「おぬしらの心をのぞくのはこれで最後としよう」
傭兵「ほっ…。ほんとにやめてくれよな…読心なんてたち悪いにもほどがあるぜ」
妖狐「では最後に」
妖狐「ソルよ。おぬしはこの娘っ子たちの中で誰を一番好いておるのか正直に言うてみよ」
傭兵「!!」
妖狐「この中におるんじゃろ…?」
傭兵「や…その質問は」
勇者「えっ、だ、だれなの!?」
僧侶「ちょ、ちょっとそんな質問だめですってば!」
魔女「…」
妖狐「ほほう……ほー、ふーん」
傭兵「やっ、やめろっ! 見たのか!? よせぇぇええ言ったら叩っ斬るぞ」
妖狐「あぁ…うむ。これは言えんな…うふ、うくく」
傭兵「クソ狐ぇ……」ガクッ
妖狐(おぬしも存外、ういやつよの)
第15話<山脈温泉紀行>つづく
第15話<山脈温泉紀行>つづき
傭兵「地図によるとこの辺りだが…何もねぇな」
妖狐「…いや、肌身を刺すような荘厳な霊気を感じる」
傭兵「…うーん俺にはわからないな」
妖狐「おぬしはそうじゃろうな」
傭兵「…ん。おいあの先、すこし開けた場所があるみたいだ」
妖狐「おお! 行ってみようぞ」ぴょんぴょん
・ ・ ・
傭兵「これは…」
妖狐「こ、これじゃ!! まさしくワシの求めておった湯じゃ!」
傭兵「本当にこんな山に自然温泉なんてあったんだな…」
妖狐「見よ! この辺り一体すべて霊泉のようじゃぞー!」ピチャ
傭兵「見つかってよかったな」
妖狐「おおう、おぬしらのおかげじゃ!」
傭兵「さて、俺はユッカたちを呼びに戻る。お前は先に浸かっててくれ」
妖狐「そうさせてもらう」スルスル
傭兵「あっ、こら…人前で脱ぐんじゃないっ!」
妖狐「くふ。なにを焦っておるんじゃ。小童ごときに肌をみられようとワシはどうとも思わん」
妖狐「どうもいらぬ心配ばかりで気苦労の絶えない旅をしておるようじゃの?」
傭兵「年頃の女の子に囲まれてりゃな…」
妖狐「おぬしもゆっくり浸かって、そのすり減った精神を癒やして行くと良い」
傭兵「…そいつはどーも。馬車に戻るついでにお前の分のタオルもとってきてやる」
妖狐「すまんの」
傭兵(獣人ってあそこも毛むくじゃらかと思ったが、そうでもないんだな…)
妖狐「くふ。やっぱりオスなんじゃな」
傭兵「だから覗くなって」
妖狐「そんなに毛がみたいなら後でいくらでもみせてやろう…くふふ」
【キャンプ地】
傭兵「おーい! 見つかったぞ!」
勇者「ほんと!?」
傭兵「あぁ。本当に霊泉だそうだ。さっそくみんなで行こうぜ」
僧侶「やったぁ。お風呂♪」
傭兵「不確かな地図片手に半日さまよった甲斐があったぜ」
傭兵「荷物もてるな。今晩の食料と、寝袋と、あとタオルや必要な物」
傭兵「泊まりは向こうだぞ」
勇者「うん、準備万端だよ!」
僧侶「では荷馬車には結界を張っておきますね」
勇者「ほんとにそれだけで、放っておいて大丈夫かな」
勇者「野生の動物に荒らされたりしないかな?」
僧侶「私の結界にお任せください! 杖を突き立ておけば大丈夫ですよ」
勇者「ごめんねスレイプニル。ちゃんと戻ってくるからご飯たべておとなしくしててね」なでなで
馬「ヒヒン…」
傭兵「その馬名前あったのか…」
僧侶「大層な名前ですね…」
魔女「はやく行こ。暗くなっちゃう」
勇者「うん!」
・ ・ ・
【霊泉】
傭兵「どうだ! いい見晴らしだろ!」
勇者「すごーい! これ全部温泉?」
僧侶「麓の方まで見えますね。ずーっとあっちのほうから来たんですよ」
魔女「…お湯から強い魔力を感じる」
魔女「昔おじいちゃんに聞いた、命の水かもしれない」
勇者「ねぇ。キュウちゃんは? 先に入ってるんでしょ?」
傭兵「あれ、どこいった…動物しか入ってねぇな」
僧侶「動物?」
勇者「あ、ほんとだ。動物たちが結構入ってるね」
傭兵「ここは山の動物にとっての憩いの場になってるんだろうな」
傭兵「俺達がずけずけと立ち入っていいものかどうか…おとなしく入ろうな」
勇者「うん!」
僧侶「ところでキュウさんは本当にどこにいったのでしょうか」キョロキョロ
子狐「コン」
魔女「…いるけど」
勇者「マナそれはただの狐…。あれ? この感覚」
子狐『ワシじゃよ』
僧侶「いまキュウさんの声が…」
傭兵「まさかこの狐…」
子狐「コン」
子狐『毛むくじゃらが好みなんじゃろ?』
傭兵「あのなぁ…」
子狐『というのは冗談じゃ。これが本当のワシの姿なのじゃ』
勇者「キュウちゃんは獣人じゃなくて、動物なの?」
子狐『ワシは妖狐。人の姿に化けるくらいたやすいことよ』
傭兵「それならそれでいいんだけどな」
子狐『すまんがこの姿でいさせてもらう。すこしでも早く回復したいのでな』
勇者「あぁかわいいなぁ…あとでぎゅってしていい?」
僧侶(私もっ!)
子狐『ダメじゃ』
子狐『ところで、いつまで眺めておる。入らんのか? 生き返るぞ』
傭兵「そうだな。入ろうか」
魔女「…」コクッ
傭兵「じゃあ俺むこうの岩場の湯で猿とでも楽しんでくるわ。あとで合流しようぜ」
僧侶「はい。では後ほど。これソル様のタオルです」
傭兵「サンキュ」
子狐『……。なーにを言っておる!』
子狐『みんなでここに入ったらええじゃろうが!』
傭兵「いや、でもな…」
子狐『よもやこの雄大な自然を前にしてやましい考えなど湧いてこんじゃろう』
傭兵「…」
僧侶「…」
勇者「…ぅ」
子狐『心も体も裸になって、自然と向き合い、恵みを享受すると良い』
子狐『さすればおぬしらの体にも霊泉の力宿すことじゃろうて』
子狐『それにいまさら裸の付き合いなど、たいしたことないじゃろう?』
子狐『なんせおぬしたちはすでに』
傭兵「だーもうわかったわかったから! ここで!入ればいいんだろ!」
僧侶「…!」
勇者「…そ、ソルと一緒にお風呂…」
魔女「…裸で」
僧侶「混浴…ですか」
子狐『大自然の中に男女の仕切りなどあるものか』
子狐『くだらんことを考えよって』
子狐『さぁ、衣服を脱いでつかるのじゃ』
子狐『その手にもつ布は湯につけちゃならんぞ』
僧侶「…うっ、タオルもだめですか」
子狐『装飾品も全てはずすとよい』
子狐『自然のままに…向き合うのじゃ…』ぷくぷく
僧侶「…ど、どうしましょう」ヒソヒソ
勇者「どうするって、もう入るしかないよっ」ヒソヒソ
僧侶「恥ずかしいですよぉ…」
魔女「裸なの?」
それから俺たちは背中を向け合って装備品を全て外し、肌着を脱いだ。
背後で衣擦れの音がする。
先に脱ぎ終わった俺は振り返ることをせず、先に湯気の濃い霊泉に足先を浸した。
そして座り込み腰まで浸かる。
そこまで深さがないため、体を伸ばさなければ肩まで浸かることは出来なかった。
傭兵(熱くもなくぬるくもなく…うん、ちょうどいい温度だな…)
傭兵(だけど普通の湯と何がちがうんだろうか…魔力の無い俺にはさっぱりだな)
傭兵(…でも本当に、生き返るようだ)
子狐「コン」
傭兵「あぁ。いい湯だ」
そしてしばらくして、ぺたぺたと裸足で岩場をあるく足音が3つ。
見てはいけないものとわかりつつも、泳ぐ視線はつい音のする方向を捉えてしまう。
湯けむりの向こうには白くて若々しい肌を晒した3人の少女の姿があった。
3人の肌を覆い隠すものはここには何もない。
各々少し恥ずかしそうにおずおずとしながら、俺の方へと歩みを進める。
チャプ…
勇者「や、やっほー…来ちゃった」
僧侶「あ、あはは…入っちゃいましたね…うわぁほんとに入っちゃいましたっ」
魔女「あったかい…」
ようやく湯に浸かった少女たちの美しい裸を目前に、それを観察したいという好奇心こそはあったものの、
不思議と彼女たちをいやらしい目で見ることはなかった。
木々の隙間から差し込む月明かりが水面に反射し、艶のある肌をキラキラと照らす。
傭兵(みんな本当に綺麗だ…)
子狐「コン」
僧侶「そ、ソル様! あんまり見ちゃ…はずかしいです」
傭兵「あぁ、ごめん」
僧侶「うう…」
子狐『なんじゃまだ恥ずかしがっておるのか』
子狐『どれ、もっとこっちへ来い』
勇者「いい…?」
傭兵「いいけど。ほら、来い」
勇者「…ヒーラ行こ」
魔女「…」ちゃぷちゃぷちゃぷ
勇者「わっ、マナ早いよ」
マナは特に物怖じすることなく湯をかき分け歩み寄ってくる。
下着に手を入れて恥部をさわらされたことはあるが、裸をみるのはこれが初めてだった。
ヒーラちゃんよりさらに白く、透き通るような肌がまるで人形のようだった。
マナはそのまま何も言わず空いている俺の右隣に座り込む。
傭兵「お、おい?」
魔女「隣がいい」
勇者「あっ! う~…ボクも…」
ユッカもマナに続いてこちらへ近づいてくる。
そしてあっというまに左腕に触れるような位置に陣取った。
勇者「こうやって近くにいると、逆にあんまり見えないよね!」
傭兵「それもそうだな…」
勇者「ほらヒーラもおいでよ!」
勇者「恥ずかしがってないで~」
僧侶「わ、わかってますよ! べつに恥ずかしいとかおもってませんからっ」
ちゃぷちゃぷ…
ヒーラちゃんはそれでもやっぱり恥ずかしかったのか、大きな胸をかるく腕でおさえて隠すような格好でゆっくりと近よってきた。
そして真正面で膝を折り、じゃぷんと座り込む。
僧侶「って、真正面しか空いてないじゃないですか!」
勇者「ヒーラが遅いからだよ」
魔女「そう」
僧侶「そ、ソル様…。み、見えちゃってます…ね。お互いに」
傭兵「あぁ…そうだな」
この霊泉の湯は透明度が高く、湯につかってもほとんど姿を隠すことはできなかった。
真正面に構えるヒーラちゃんの素肌は上から下まで丸見えだ。
目の前でたゆんと揺れるふっくらとした胸と、それをおさえる腕の隙間からときどきこぼれる桃色の乳首が気になってしかたなかった。
傭兵(これはまずいかもしれない…)
傭兵(いやらしい目で見ないと誓ったはずが…)
俺は右も左も正面も艶やかな肌色に囲まれて目線のやり場に困り、
苦し紛れに狐の方へと視線を泳がせた。
あいつは先ほどユッカに場所をゆずり今はヒーラちゃんの斜め後ろあたりでくつろいでいるはずだ。
がしかし
妖狐「くふ」
傭兵「うおあっ」
勇者「どしたの?」
毛むくじゃらのあいつは何故かキュウの姿に?化しており、若い少女の素肌をこれでもかと魅せつけるように晒している。
その目は明らかに俺のことをからかっているようだった。
傭兵(すり減った精神をここで癒やせって!? どうやって!?)
勇者「あーキュウちゃんになってる! キュウちゃんもこっちへおいでよ」
妖狐「いんや。おぬしらの家族団らんに水を差すようなことはせん」
妖狐「ゆっくり楽しむと良い。くふふ」
妖狐「ワシはしばらくその辺の湯を順にまわってみるとする」
妖狐「わずかながらに効能の違いがあるかもしれんでな」
妖狐「ではな」
傭兵(このやろう…)
妖狐「月明かりだけでは不便じゃろう」
妖狐「灯り代わりに狐火をおいていってやる」
キュウの手の平からいくつもの赤い火の玉が飛び出し、あたりをふよふよと漂う。
妖狐「ゆけ」
命令と共にそいつらは俺達の入る湯をぐるりと囲うように宙にとどまった。
傭兵「なっ、誰が明るくしてくれなんて言った!」
僧侶「うっ…うあ」
くすりと笑ったキュウはまた元の狐の姿にもどり岩場を駆けて行った。
傭兵「…」
その後俺たちの間では珍しく、しばらくの無言が続いた。
遠くで滝の流れ落ちる音だけが聞こえてくる。
傭兵(動くに動けないし…ほんとどうすっかな)
傭兵(あぁヒーラちゃんがもじもじしている…やっぱこんだけ照らされると恥ずかしいよな)
傭兵(こんなことになってほんとごめん)
勇者「ね、ねぇ…」
最初に口を開いたのはユッカだった。
傭兵「…?」
勇者「あったかいねぇ…」
きゅっと俺の左腕をつかみながら、しみじみとつぶやく。
傭兵「…あぁ」
僧侶「そうですね…」
しかしそこで俺たちの会話はまた途切れてしまう。
おそらくユッカはいつもみたいに過ごしたいのだろう。
明るいユッカですらこうも黙ってしまうのは、俺とヒーラちゃんの緊張が伝わってしまっているせいだろう。
ユッカの気遣いを無駄にしてしまい非常に申し訳なく思った。
マナはこちらから話しかけないとあまり口を聞くことはない。
それどころかぴくりとすら動かなくて少し不安になる。
真正面のヒーラちゃんがじっと俺の目を覗きこんでくる。
その目はなにか話題を提供しろといいたげにも思えた。
傭兵「…」
傭兵「あ、あのさ」
僧侶「はい!」
しかし言葉を紡ぐことができない。
ついうっかりと出てきた言葉は、俺のいま現在の率直な心のうち。
傭兵「何食べたら…そんなにおっきくなるんだろうな。浮いてるし」
僧侶「……はい?」
傭兵「あ、いや…悪いっ! 忘れてくれ!」
僧侶「ど、どこ見て言ってるんですか!! バカっ」
勇者「ソル…それはダメだよ」
魔女「最低」ぷくぷく
それはユッカたちにすらたしなめられるくらい最悪な話題だった。
その後一発手痛い平手打ちをもらい、俺達はようやくいつもの調子に戻ることが出来た。
第15話<山脈温泉紀行>つづく
第15話<山脈温泉紀行>つづき
勇者「ねぇねぇ、港についたらさ船乗れる?」
傭兵「あぁ。数日乗ることになるな」
勇者「ほんと? ボク船のるのはじめてなんだぁ」
僧侶「私もです!」
魔女「…」コク
傭兵「そうか、船酔いに気をつけなきゃな。馬車とはまた違った揺れだと思う」
勇者「海にでるんだよね…えへへ楽しみだなぁ」
俺達は次の旅の予定などを話し合いながら霊泉を楽しんでいた。
先ほどまで張り詰めていた緊張はほぐれ去り、視界が肌色でうめつくされようといまやほとんど気にならなくなっていた。
ヒーラちゃんはすっかり胸を隠すのをやめて、手足を放り出して深く湯に浸かっている。
それでも大きな胸がふるんと揺れるのをみると一瞬ドキリとしてしまう。
勇者「そろそろお腹すいたねぇ。ねーソル」
ユッカは俺の左腕に抱きついたり、かとおもえば背中側に回って傷跡を突っついたりと楽しそうにしていた。
マナは顔色をうかがってもよくわからなかったが、裸同士でいることにそこまで抵抗はないようだ。
傍らでじっとおとなしくしている。
勇者「やっぱりいいねこういうの」
傭兵「ん?」
勇者「お風呂! ソルも一緒に、みんなで入るの」
傭兵「…あぁ」
僧侶「うふふ。ユッカ様ったらバザの浴場でソル様と一緒に入れたらなぁなんてずっと言ってたんですよ」
傭兵「そうなのか」
勇者「だっていっつもお風呂の入り口で別れてたでしょ。ソル寂しいんじゃないかなって思ったんだ」
傭兵「そんなことはない…」
勇者「一緒に入れてよかった…」キュ
傭兵「お、おいユッカ…あんまりくっつくんじゃない。む、胸が」
僧侶「あらあら。ほらユッカ様、ソル様が照れちゃってますよ」
勇者「いいじゃんめったにない機会なんだからぁ」
勇者「そうだ、身体洗ってあげようか?」
勇者「石鹸もってきてるでしょ?」
傭兵「タオルと一緒にそこに置いてる」
僧侶「わ、私もお背中お流ししますっ!」
傭兵「そんなにサービスしてもらわなくていいって…」
魔女「…」ぷくぷく
その後俺は平たく削れた大きな岩肌の上に上がり、背中を流してもらった。
僧侶「間近でみると、傷跡結構たくさんあるんですね」
僧侶「これなんてすっごくおっきい…痛かったでしょう」
傭兵「んーまぁな。気持ち悪かったらあんまり見ない方がいい」
僧侶「そんなことありません!」ごしごし
勇者「そうだよかっこいいよ。男の勲章だよ」ごしごし
傭兵「勲章なぁ…」
勇者「タオルでこすると痛いかな? ここは手でしてあげるね」
僧侶「そうしましょうか。うふふ」
傭兵「おい…触りたいだけだろ」
左右から2人に素手で体中をぬめぬめと撫でられどんどん泡だってゆく。
傭兵(あっ、やばい…気持ちいい)
僧侶(これが男の人の素肌…ユッカ様と違って…固くて、すごい…)
勇者(ヒーラなんだか楽しそう…)
にゅるにゅるにゅるにゅる…
ぺたぺた…
にゅるにゅる…
勇者「はい、背中と腕おしまい! つ・ぎ・は…」
僧侶「ちょ、ちょっとユッカ様…もしかして」
勇者「前! 洗おっか!」
傭兵「いやもうあとは自分でできるから…」
魔女「ダメ」
傭兵「!」
いつのまにか正面にマナがつったっていた。
目線の先には白い足とその間にくっきりと縦に割れた恥裂があり、思わずぎょっとする。
傭兵「な、なんだ…?」
魔女「…身体、私も洗いたい。見てるだけだと退屈」
傭兵「そうか…じゃなくて。座ってくれないか」
魔女「うん」ペタン
そして目の前に陣取られる。
両斜め後ろにはユッカとヒーラちゃん。肩越しにマナの様子を伺っているようだ。
同時に腕をぎゅっと掴まれて動くに動けない。
こうしてまた俺は逃げ場を失ってしまった。
魔女「石鹸は」
勇者「はいこれ」
魔女「…」コク
傭兵「マナ…気持ちは嬉しいがさすがに前は自分で洗えるから…」
魔女「…」ジー
傭兵(まずいぞ…)
魔女「ユッカとヒーラに出遅れるわけにはいかない」
勇者「マナもしたいよねー?」
魔女「そう」
傭兵(こんな状態で前を洗われたら…いくらなんでも勃たないわけがない)
傭兵(まずい…まずいですよ)
傭兵(なにか穏便にことを逃れるすべを……そうだ!)
傭兵「マナ、お前丸見えだぞ。恥ずかしくないのか」
魔女「……」
傭兵「い、いろいろ…見えちゃってるぞ。はっきりと」
魔女「あなたも見えてるから別に気にしない。おあいこ」
傭兵「はぁ…」
背後から腕をつかまれる力が強まる。
傭兵「いたっ、なんだなんだ」
勇者「…逃げちゃダメだよ。みんな平等に!」
傭兵「は、はい…」
俺は覚悟を決めた。
両腕にふんわりと小さな胸と大きな胸を押し付けられる感触。
目の前には全裸で手に石鹸をとり泡立てる美しい少女。
傭兵(これが赤の他人なら泣いて喜んでおっ勃てるシチュエーションなんだがなぁ)
普段から勝手に保護者感覚で彼女達と接している俺にとっては試練となっていた。
傭兵(とにかく、勃起だけはしないように努めないとな)
傭兵(こんなことで勃つようじゃ会わせる顔がない)
泡立ておわったマナがそーっと腕をつきだして伸ばしてくる。
傭兵「ひっ…」
傭兵(どこからくる…肩か? 胸元か?)
魔女「…」
傭兵(読めない…。というかニコリともしなくて怖い!)
傭兵(このまま肩だよな…?)
傭兵(上半身だけ洗って満足してもうらおう。よし…来い)
しかしマナは俺の予想を大きく裏切り、目の前までつきだした腕をすっと下し、いきなり股間を掴んできた。
魔女「ここからにしよ」
傭兵「ぎゃあ」
勇者「あー…」
僧侶「ま、マナちゃん…」
傭兵「やめろーそこはさわらないでくれぇ」
魔女「ずっと興味があった」ぐにぐに
魔女「これが…男性器」むにむに
魔女「変な形。柔らかい」
マナは小さい泡だらけの手で俺の睾丸と陰茎に遠慮なく触れた。
そしてなにか確かめるように小さく頷いている。
魔女「文献には硬いと書いてあったのに…おかしい」むにむに
傭兵「もういいだろ…」
傭兵「そこは大事なところなので」
魔女「そう。大切な場所だから、丁寧にあらってあげる」
傭兵「なんでそうなる…っ」
勇者「…」ハラハラ
僧侶「…」ゴクッ
魔女「…」ごしごし
傭兵「あっ…やめろ」
魔女「…」ごしごし
傭兵「やめろぉ…」
勇者「ソル。我慢しなきゃだめだよ」ボソリ
僧侶「まさかこれしきのことでソル様が参るわけありませんよね?」ヒソヒソ
傭兵「く、くそうお前ら…止めてくれよ!」
勇者「マナは満足するまでうるさいよ」ボソボソ
僧侶「ですよ。私もしょっちゅう詰め寄られてるんですから」
傭兵「…くっ」
魔女「…不思議な手触り」ごしごし
魔女「…………あ」
勇者「ど、どしたの」
傭兵「…」ガク
気づいたときには手遅れになってしまっていた。
断続的にぬめぬめと気持ち良い刺激を与えられた俺のペニスは、マナの手の中であたりまえのように立ち上がり脈打っている。
魔女「おっきくなった」
傭兵「…そりゃなるわ」
勇者「あーあ…ソル…」
僧侶「ソル様。情けないです」
左右から咎めるような2人の声。
しかしその声色はどこか楽しそうに聞こえる。
傭兵(この状況を楽しんでやがる)
傭兵(年長者の俺が10も年下の女の子達にこんなにいじられるとは…)
裸で取り囲まれているだけなく、ペニスまで握られているこの異常な状況に更に俺の愚息は大きく反り返る。
もう到底言い訳などできないくらいに大きくなってしまった。
勇者「ぷ」
傭兵「笑うなお前あとで覚えてろよ」
勇者「こわーい」
僧侶(ソル様の…やっぱりおっきいな…)ゴク
魔女「…これ、どうしておっきくなったの。なぜ。芋虫みたい。熱くなってる」
勇者「それはねーソルがー」
傭兵「ああぁぁあ! はやく洗い終えてくれ!」
魔女「! わ、わかった」
勇者「…む。大声だして恥ずかしくないの?」ボソボソ
傭兵「お前はさっきからなんなんだ…」
勇者「だってソルが慌ててるとこみるの楽しいもん」
傭兵(こんな情けない姿を…誰かに見られたらと思うと…)
傭兵(例えばマオだったら)
獣の商人『ソルはん羨ましいわぁ』
獣の商人『お金払わんと若い女の子3人とそんなお遊び出来る人なんてめったにおらんでぇ?』ニヤニヤ
傭兵「…って感じか」ゾクリ
傭兵「あぁ良かった…一生いびられるとこだった」
勇者「?」
魔女(手の中でびくびくしてる。おもしろい)わしゃわしゃ
傭兵(そういえばあの狐はどこいった…いま戻ってこられたらまずい)
妖狐「呼んだかの?」
傭兵「う、うわぁああっ!」
妖狐「何をそんなに驚いて――――ほう」
妖狐「これはこれは…お楽しみのところを邪魔してしまったようじゃのぅ」
傭兵「ち、ちがうー!」
魔女(びくびくしてる)
妖狐「てっきり気概のない漢かとおもいきや……こんな小娘どもを侍らして、ずいぶんと好事家なのじゃな」
妖狐「いや好事家というのもおかしいの。こんなもの世の男性みなの夢」
妖狐「よかったの」
傭兵「うるせー! 生皮剥いでやるっ」
勇者「動いちゃだめ」ぎゅ
僧侶「そうですよ」むにゅ
魔女「うごかないで」にぎっ
傭兵「ひんっ」
妖狐「…なんじゃ遊ばれとるだけじゃったか」
妖狐「しかし、霊泉の効能はたいしたものじゃな。そんなに立派に反り返って、別人かと思うたぞ」
傭兵「効能だと…な、なんのこった」
妖狐「言わなんだか? ここは命の湯」
傭兵「傷が癒える…だろ?」
妖狐「まぁそれもあるが…言い換えれば命とは新たな生命、つまり子宝のこと」
傭兵「……は?」
妖狐「子宝の湯じゃ! おぬしの情けない息子も元気になってよかったのう」
僧侶「子宝…」ゴク
妖狐「ここでは人であることを忘れて気にせず盛るとよいぞ」
妖狐「森の動物たちもこの湯に入り身体を温め、あとはそこいら中で行為に及んでおる」
妖狐「ほれそこの野兎なども」
兎「…」カクカク
勇者「ふぁ…兎が…」
僧侶「こ、交尾…してますね」
妖狐「くっく。どうじゃ。ここは森にとって癒しの場、外敵などおらぬ」
妖狐「おぬしらも安心して事に及ぶが良――」
傭兵「うるせーあっちいけ!」
妖狐「…」
キュウはやれやれといった仕草で俺を見下したあと近くに腰掛けた。
魔女「交尾…兎はああやってする?」
勇者(うわぁ…前にボクあんな風にされちゃったよぉ…)
傭兵「お前らは見なくていい」
妖狐「どれ、水をさして悪かったが、手土産じゃ」
妖狐「そこそこ腹もへったであろう」
そう言ってキュウは包の中から何かを取り出す。
中から出てきたのは葉に包まれたおにぎり、そして数本の竹筒。
傭兵「これは…」
妖狐「酒じゃ」
傭兵「お、おお…!」
蓋をあけると澄み切った酒の芳醇な香りがただよう。
それは俺の知らない匂いだった。
妖狐「こちらではぶどうや果実をつかった酒が多いようじゃな」
妖狐「おぬしはこんな清酒飲んだことなかろう」
傭兵「これほんとうに酒なのか? 綺麗な色だ…水にしか見えねぇ」
妖狐「うむ。このおにぎりと同じく、米でできておる」
勇者「わぁおいしそう…」
妖狐「食べてよいぞ。あまり量はないがしっかり噛んで味わうのじゃぞ」
傭兵「悪いな…ありがたくいただく」
僧侶「いただきます」
魔女「…」
傭兵「お前はそろそろ離してくれ」
魔女「…」コク
そして俺は身体についた泡をざっと洗いながす。
傭兵「…ふぅ」
夜空も酒と同じく雲ひとつなくすっきりと澄み切っており、すこし欠け始めた大きな月がこちらをのぞいていた。
実に爽快な気分だった。俺は立ち上がっておおきく伸びをする。
ここのところ立て続けのトラブルが起きていて、知らずのうちにつかれていたのかもしれない。
それと、みなと共にこうしてのんびりと過ごせて少し舞い上がっているのかも。
勇者「おいし~」はむはむ
勇者「あっ中になにか入ってる!」
妖狐「それは当たりじゃ。塩昆布じゃぞ」
勇者「塩気があっておいしい!」
魔女「私のはなにも入ってない…ユッカの半分頂戴」
勇者「いいよ~。はい」
僧侶「…ソル様、いらっしゃらないのですか」
僧侶「ユッカ様に全部たべられちゃいますよ!」
ヒーラちゃんがくいくいと俺の手を引く。
これから始まるちょっとした宴会に俺は心を踊らせた。
第15話<山脈温泉紀行>つづく
第15話<山脈温泉紀行>つづき
僧侶「さぁこちらにおかけになってください」
傭兵「あぁ。あれ、いつの間に全員バスタオル巻いたんだ」
僧侶「…なっ! ぃ、いいじゃないですか!」
勇者「ダメなの?」
妖狐「すっぽんぽんでおってほしかったようじゃの」
僧侶「そうなんですか…? ソル様のエッチ…」
傭兵「そんなこと言ってねぇ」
勇者「お湯の中じゃないとやっぱり恥ずかしいよね…? あはは…」
魔女「…」ジー
傭兵「な、なんだよ見るなよそんなに」
魔女「洗ってた時より小さくなってる…」
傭兵「うるさいっ。ヒーラちゃん俺にもタオルとって」
僧侶「はい。どうぞ」
妖狐「なんじゃあみんなして隠しよって。これだから人間は…つまらんのう」
傭兵「お前も曲がりなりにも人の姿をとるなら隠してくれねーかな」スッ
妖狐「ワシのカラダが気になって飯も喉を通らんか?くす」
傭兵「ほとんどぺったんこじゃねーか! うぬぼれんなよ」
魔女「!」
傭兵「せめてヒーラちゃんくらいになってから口を聞くこった」
僧侶「もう、ソル様ったらぁ」
魔女「…」
ゲシッ
傭兵「ってぇ、誰だいま蹴ったの。ユッカか! お前だな」
勇者「え~ボクじゃないよぉ! 濡れ衣だよ」
魔女「…」そそくさ
僧侶「マナちゃんどうしました?」
魔女「…」ジー
僧侶「……? どうしました?」
魔女「あなたの隣に座りたくない、それだけ」
僧侶「ふぇ…」
魔女「ユッカとキュウの間がいい」ペタン
勇者「…? どこに座ってもいいけど…」
僧侶「私なにかしましたか…? ぐすっ」
妖狐「気を取り直してはよう飲もうぞ」
妖狐「ほれ、ぐいっと行かんか」トクトク
僧侶「えっ、わたしは…」
妖狐「なんじゃ下戸か?」
僧侶「ゲコ?」
勇者「ヒーラは人間だよ」
妖狐「下戸の建てたる倉も無し。飲まずとも何か得るわけではあるまい。酒はほどほどに楽しむがよい」
妖狐「ほれ飲まんか」
僧侶「えぇ…でも」チラ
傭兵「いいんじゃないか? すっきりしてて飲みやすいぞ」ゴクゴク
勇者「じゃあボクも飲ーもうっと! 綺麗でおいしそー…」
傭兵「あ、お前はダメ」パシッ ゴクゴク
勇者「え~~! ちょっとくらい良いじゃん!」
傭兵「お酒は大人になってから」
勇者「大人だから!!」
魔女「…」クンクン
魔女「薬のような匂いがする」
妖狐「百薬の長じゃぞ。ワシの長生きの秘訣じゃ」
勇者「キュウちゃん何歳なの?」
妖狐「……」
妖狐「聞きたいか?」ゴゴゴ
勇者「ききたーい! 聞かせて聞かせて!」
妖狐「…」
傭兵(そこは、いえ結構ですって断るもんじゃないのか…)
勇者「何歳なのー? ボクたちより年上?」
妖狐「おぬしの歳に十を掛けても足りんくらいじゃ…といっておけば良いか?」
勇者「えーウソはつかなくていいよ。それじゃおばあちゃんじゃん。キュウちゃん小さくて可愛いのに」
妖狐「なんじゃ、少し頭の足りなさそうな娘じゃのう…」ヒソヒソ
傭兵「適当にあしらっといていいぞ」ゴクゴク
魔女「飲まないの?」
僧侶「…う」
魔女「お酒、おじいちゃんよく飲んでた。私にはくれなかった」
魔女「こっそり飲んだことがある。今後飲みたいとはあまりおもわなかった」
魔女「これを飲むと脳みそが緩やかに死んでいく気がする」
魔女「バザでマオと飲んだときは一時的に記憶を失った。恐ろしい飲み物」
僧侶「ですよね。体にわるいです」
傭兵「こんなにうまいのに体によくないわけあるか!」
妖狐「そうじゃぞそうじゃぞ!」
勇者「飲みたいなぁ…ふたりともすごくおいしそうに飲むんだもん」
僧侶「ソル様、私はともかくせめてユッカ様に一口で良いのでわけてあげてくれませんか?」
勇者「そうだよそうだよ!」
傭兵「あーでもなぁ…監督者として子供に飲酒させるわけには…」
僧侶「私だってユッカ様とひとつしかかわりませんよ!」むすっ
妖狐「飲ませてやればええじゃろ。ワシの酒を飲む機会なぞもう来んかもしれんぞ」
妖狐「な?」
勇者「…」コクコク
傭兵「わかった。じゃあちょびっとな。飲めるかしらねーぞ」
勇者「やったーありがとう!!」
勇者「村の儀式のとき以来だよ!」
勇者「いただきまーす」くいっ
傭兵「…あ、こらっ一気にいくな! 舐めるだけに…って遅かったか」
勇者「……ひぐっ!? …か、辛っ」
勇者「のどが…あひゅいっ、たすけて」
傭兵「あーあ。ほらな」
僧侶「はいユッカ様お水」
勇者「うん…ボク水でいい…」
妖狐「慣れるまで飲むんじゃぞ」
傭兵「やめろ」
勇者「村で飲んだお酒はあまかったのに…」
傭兵「そりゃユッカの儀式だったんだからお前が飲めるように作ったんだろうな」
勇者「聞いてないよ!! ヒーラも飲んでみてよ! ほらっ」
僧侶(うわぁ…飛び火しちゃいました)
僧侶「ヤですよ…苦手ですし」
勇者「ボクの酒が飲めないっていうの!? ほら飲むんだよ!」
傭兵「お前、もうまわってるのか?」
僧侶「助けてください」
僧侶「じゃあ一口だけ…」ペロッ
僧侶「……」
勇者「どう?」
僧侶「あれ? おもったより…口当たりがすっきりしてて後味もわるくないですね」
勇者「えー」
僧侶「私のお酒の記憶って、苦くて辛くて飲みづらくて最悪だったのですが…」
僧侶「これなら…飲みやすいです」コク
僧侶「おいしいかも」
妖狐「じゃろ?」
傭兵「お、意外とイケる口だったか!」
僧侶「ご飯とよく合いますね」
傭兵「だろ?」
勇者「ずるい…」
魔女「ユッカは飲まなくていい。私とこれを食べよう」
勇者「このつつみは何?」
妖狐「あっ、それは…」
勇者「なにかななにかな~」ガサガサ
妖狐「大トカゲの姿焼きじゃな」
勇者「あ゛ー! もうやだーっ」
妖狐「うまいぞ」もぐもぐ
・ ・ ・
勇者「…zzz」
魔女「…zzz」
妖狐「ふむ。そろそろお開きじゃな」
妖狐「いつのまにか月があんなに高いとこに登っておる」
傭兵「ヒーラちゃんもうつらうつらしてるしな…寝る準備するか」
僧侶「…眠たくはないんですけど…なんだか頭がぼーっとします」
妖狐「すこし飲み過ぎたようじゃな。水をたくさん飲むとええぞ」
僧侶「そうします…」コクン
妖狐「さて、おぬしらどうするんじゃ」
傭兵「荷は多少もってきている。ユッカとマナはとりあえず寝袋につつんで寝かせるとするよ」
傭兵「じゃあひとりずつ行ってくる」
僧侶「お願いします…」
妖狐「大丈夫かのぅ。明日には抜けとるとええが」
妖狐「間違っても湯に入って溺れたりするんじゃないぞ? ワシは責任とれんからの」
俺はタオル一枚体にまきつけたユッカとマナを小脇にかかえて、荷を置いていた目印代わりの大木の根本に移動した。
レジャーに使える大きめのシートを予め辺りの柔らかい土の上に敷いていたのでそこに2人を寝かせた。
傭兵「着替えさせるか…?」
さすがに濡れたタオルのまま寝袋に押しこむことはできない。
かといってこのタオルをひっぺがして下着をはかせてパジャマを着せて…といった工程を考えると、どうにも後ろめたい気分になる。
傭兵「ヒーラちゃんに飲ませたの失敗だったな…」
傭兵「俺がやるしかないか」
意を決して、張り付いたタオルを剥がす。
当然ふたりの艷やかな幼い肢体が目に飛び込んでくる。
勇者「…zzz」
魔女「…zzz」
傭兵「こんな無防備な姿を…」
とっさに湧いた全身を撫で回したくなる衝動を抑えて、俺はユッカとマナの下着を探した。
勇者「へくちっ…zzz」
傭兵「…びっくりした」
傭兵「ひとりずつ、まずはユッカから。すぐに着せてやるからな」
傭兵「えっと、この綺麗にたたまれているのが…ヒーラちゃんのだよな」
シートの上には彼女たちが脱ぎ置いた下着と肌着があった。
上着をセットで側に置いてくれているなら簡単に判別がついて助かったのだが、
それらは枝木にひっかけてあるので並んだ下着だけパッと見ただけではどれが誰のものだかわからない。
傭兵「こっちがユッカか…? 雑にクシャっと丸めて置いてるしなぁ…」
傭兵「マナはこれか?」
傭兵「日頃からちゃんと観察しておくんだったな」
何を思ったか俺はおもむろに下着を握りしめ、顔に近づけて匂いを嗅いだ。
ここ最近で嗅ぎ慣れた匂いがする。
傭兵「あ、これユッカのか」
傭兵「……あれ」
傭兵(俺は一体何をしているんだ! 酔っているのか恐ろしい)
傭兵「とにかくこれはユッカ確定だから履かせよう」
どうやらうまく頭がまわっていないようだ。
だいぶ酔いがまわっている。
俺はユッカの下半身をすこし持ち上げ、足先を下着の穴に通した。
傭兵「よし…」
苦心して履かせてやったのに、その御礼なのか何なのか、顔面に2発も蹴りをもらってしまう。
傭兵「はぁ…」
傭兵「こんなやつ起こして自分で履かせればよかった…」
傭兵「それでマナのはこれか…?」クン
別の下着を握りしめ、匂いを確かめる。
傭兵(にしてもユッカとくらべてほとんど匂いしないな…)
傭兵(マナは見るからに無味無臭って感じするしな…)
魔女「……zzz」
傭兵「じゃあ残ったコレがヒーラちゃんの…」
傭兵「…」ゴク
傭兵「…案外子供パンツだな。地味だ。大人パンツじゃないのか」
傭兵「ヒーラちゃんいつもどこに下着ほしてるんだろうって思ってたが、これならユッカのと一緒に干しても混ざってわからないな」
傭兵「それで気づかなかったのか。あぁ納得だ」
傭兵「へぇ…なんだか甘い匂いするな」
傭兵「これがヒーラちゃんの…」
傭兵「…ん?」
傭兵「う、うわああぁ」
傭兵「自分が信じられないっ」
傭兵「こんなことしてバカなのか!? すまんマナ、ヒーラちゃん!! とユッカ!」
傭兵「傍から見たらただの変質者じゃねーか」
傭兵「急いで履かせないと…」
そのあと俺は2人を寝袋につつんでシートの上に転がし、ヒーラちゃんの元へと戻った。
・ ・ ・
傭兵「もどったぞー」
妖狐「おう。顔の色すこしはもどっとるな」
傭兵「急に冷めてな…」
妖狐「ちゃんと寝かせてきたのか?」
傭兵「あぁ。ぐっすり寝てるよ」
妖狐「でもこっちはだめそうじゃぞ」
傭兵「?」
僧侶「ふぁ…ソル様…もどってきてくれたんですねぇ」
僧侶「ユッカさまたち…ちゃんとねましたか」
僧侶「えへへ…こっち来てください」チョイチョイ
そこには四つん這いになったヒーラちゃんがいた。
朱に染まった顔でこちらを見上げ艶っぽい声とともに手招きしている。
その度に大きな胸がふるふる弾み、胸元で巻いたタオルがいまにもずり落ちそうになっていた。
傭兵「…ヒーラちゃんなんでこんなことに」
妖狐「水をのませるはずが酒と間違えてな」
傭兵「お、お前っ! わざとだろ!」
妖狐「そんなことない。その娘が勝手に間違えたんじゃ!」
妖狐「おぬしが戻ってくるまでの間さんざんべたべた絡まれてうっとうしかったからもう寝るぞ!」
妖狐「また明日の!」
傭兵「お、おい待て!」
妖狐「ワシはもうしらんっ! 今日の子守は終わりじゃ!」
キュウは狐の姿に戻り、振り返りもせず俺たちの元から駆け足で去っていった。
目の前には飲み食いの後と、ふにゃふにゃになったヒーラちゃんだけが残されている。
傭兵(これ全部俺が後始末するのか…)
僧侶「そるさまぁ…こっちですよぉ。となり、となりに」ポスポス
傭兵「…」
警戒しつつも言われるがままに側に腰を下ろすと、ヒーラちゃんは突然抱きついてきた。
その拍子にタオルがずりおち、やわらかい素肌が直接俺の体に触れる。
傭兵(あぁ…最初にすすめたのが失敗だった)
僧侶「ねぇーもう少し飲みましょ? ソル様に注いであげたいです…」
傭兵「わかった、わかったから…」
どうやらすこし長い夜になりそうだ。
第15話<山脈温泉紀行>つづく
第15話<山脈温泉紀行>つづき
僧侶「はい、どうぞ」
傭兵「…」クイッ
また一献、さらに一献と笑顔でヒーラちゃんがお酒をついでくれる。
それも一糸まとわぬ姿で、生白い素肌を晒しながら。
当然上も下も見ようと思えば丸見えだ。
ヒーラちゃんはトロンとした目つきで酒の入った陶器を手に俺がこの一杯を飲み終わるのをじっと待っている。
僧侶「いい飲みっぷり…おいしいですね」
僧侶「さぁさぁ。まだありますよ」
お酌をしてもらって悪い気はしないしむしろ嬉しいが、やや酔いのさめはじめている俺にとっては目の毒だ。
傭兵(こうなったらまた酔うまで飲むしか無いのか…?)
しかしそうなってしまうと、後が怖い。
俺にはおそらくこの先潰れるであるヒーラちゃんを介抱するという役目が残っている。
それに、理性を抑えられるかどうか。
僧侶「もう一献♪ うふふ」
また並々と注がれる。
傭兵(天使のような悪魔だ…)
僧侶「私もすこしだけ」
傭兵「もうやめたほうが」
僧侶「ダメです。ソル様とせっかくふたりきりなんですから」
僧侶「大人の付き合いがしたいです…はい、乾杯」
コツン
僧侶「んく…んく」
僧侶「ふぅー…おいしい」
アルコールで紅潮した顔が妙になまめかしく見えた。
顔つきにはまだまだ昔の幼さが残っているなと思っていたが、やはりユッカたちと比べると大人っぽさがある。
体つきは言わずもがな。
あまり観察していると自身を抑えることができなくなってくるので、俺はとっさに視線を外した。
僧侶「? どうしました」
僧侶「あっ、もしかして空っぽ? すいませんすぐに」
傭兵「いやっ、もういいんだ。飲み過ぎは良くない」
僧侶「…」
器を置き酒を断るとヒーラちゃんは唇を尖らせてあからさまに不機嫌そうな顔をした。
僧侶「飲んでくれないんですか」
傭兵「え…」
次は肩を落とし泣きそうな顔。
僧侶「せっかくふたりっきりなのに…もうおしまいですか」
僧侶「私のことぉ…嫌いですか…くすん」
僧侶「私はこんなにソルさまのことが大しゅきなのに…ひどいれす」
傭兵(だいぶ酔ってるな)
僧侶「ソルさまはいつもいつもゆっかさまのことばっかりで」
僧侶「あさもひるもよるもユッカさまユッカさまーってべたべたペロペロしあって」
傭兵(してない…)
僧侶「わたしのことなんてあんまりみてないですよねぇ…らめれすよそんなのかなしいですよ」
呂律が回っていない。
おそらく自分が何を発しているかもはっきりとわかっていないだろう。
俺は適当に相槌をうちながら聞き流すことにした。
僧侶「ちょっときいれるんれすか!」
傭兵「聞いてる」
僧侶「まったくぅ…わたしはソルさまにもっとぎゅーーーってしてほしいのに」
傭兵「ぎゅー…?」
僧侶「そうですよユッカさまみたいに…ぎゅーって、なでなでーって」
傭兵「あ、あぁ…」
僧侶「してくれますか? それとも私のことなんてきらいなんですか」
傭兵「その二択しかないのか?」
僧侶「えらんでください。好きならぎゅーですよ。きらいなら私お湯にでもしずんでますのでさようなら」
傭兵(確かに、キュウが逃げ出すわけだ)
僧侶「はやく! ごーぉ、よーん、さーん…」
傭兵「…わ、わかった」
俺はヒーラちゃんを抱き寄せ、膝の上に座らせてきつく抱きしめる。
そのままいつもユッカにするように、背中をさすったり頭をなでてやった。
僧侶「えへへ…ソルさまぁ…♥」
傭兵「だいぶ溜まってたんだな。ごめんないつも」
僧侶「こうしてほしかったんです」
僧侶「もっとなでていいですよ」
傭兵「…おう」
ヒーラちゃんが心の底から甘えてくれて嬉しく思った。
傭兵(見た目で勝手に大人扱いするのもよくないな…)
傭兵「俺が悪かった」
すっかり汗がひいてさらさらした背中を何度も何度もさする。
ヒーラちゃんは嬉しそうに目を細め、俺に強く抱きついた。
やわらかい豊かな胸が俺の胸板におしつけられてむにゅりと形を変える。
傭兵「…」
僧侶「どうしたんですか? やめないでください…」ギュ
傭兵(これがあるからまずいんだよなぁ)
俺はユッカたちでは味わえないその感触に戦々恐々としていた。
僧侶「…?」
僧侶「そうだ。お酒」
傭兵「いやっ、それはほんとにいいから」
僧侶「どうして」
傭兵「もう堪能した。だからやめとこう?」
僧侶「……。嫌です。私はまだ飲みたいです」むすっ
傭兵「やめといたほうが」
僧侶「飲みます」
ヒーラちゃんは陶器を手に取り、ついには器に注ぐことすらやめ、直接口をつけて飲み始めた。
傭兵「うわっ、こら! そんなに飲んだらぶっ倒れる!」
僧侶「…」
制止とともにヒーラちゃんは口を離した。
そして頬を少しふくらませたまま俺の目をのぞきこんでくる。
どうやら飲んではおらず、まだ口の中に含ませているだけのようだ。
その量が一度に喉を通るとさすがにまずい。
傭兵「ほら、呑まずに吐き出して」
僧侶「…」フルフル
傭兵「…ほんとにダメだぞ」
僧侶「…」ニコ
傭兵「ま、まさか…」
ヒーラちゃんはニコリと笑い、目を閉じて顔を寄せてくる。
俺は逃げることも許されず、あっという間に唇を奪われてしまった。
僧侶「んっ…ん♥」
ヒーラちゃんの舌を伝って熱い液体が俺の口内に流れ込んでくる。
唾液もたくさん混じっているだろうその甘美な液体に、俺は一瞬酔いしれた。
そして何度も大きく喉を鳴らす。
喉だけでなく脳まで焼けてしまいそうな濃厚な口移しだった。
傭兵「ぁ…ぁ…飲んでしまった…またこんなに」
僧侶「えへへ…」
僧侶「キスしちゃいましたね。バザ以来ですね」
傭兵「何考えてるんだ」
僧侶「おいしーですか? おかわりありますよ」
傭兵「やめてくれ…」
傭兵(誰か助けて。神様でもなんでもいいから)
祈りも虚しく、その後俺は何度も無理やり彼女に酒を注がれてしまった。
傭兵「…う、あ」
傭兵(さすがにクラクラしてきた。なんてことをするんだこの子は)
僧侶「ソル様…それ」
傭兵「え…」
ヒーラちゃんの視線をたどってみるとそこには立派に反り返った俺自身がいた。
当たり前だ。裸の美少女にあんなキスを何度もされて勃たないわけがなかった。
それも相手はただの女ではなく、ヒーラちゃんだ。
僧侶「おっきい…さっきマナちゃんにゴシゴシされた時みたいになってますよ」
傭兵「…」
僧侶「うふふ」
許可もしてないのにぎゅっと両手でつかまれる。
とっさにぴくんと体が反応してしまい、それがますますヒーラちゃんのいたずらごころに火をつけてしまったようだ。
ヒーラちゃんは俺の目を見て少しいじわるく笑った後、首を小さく横に傾けた。
僧侶「どうしたいですか?」
傭兵「…ごめん。我慢できそうにない」
僧侶「ですよね? いいんですよ。健康な証拠なんですから」
僧侶「手でしてあげますね」
ヒーラちゃんは俺の顔色を伺いながら手でペニスをこすり始めた。
しかしこのままでは摩擦が強すぎるのか滑りが悪く、思うようにいかない。
僧侶「…どうしましょう」
傭兵「無理なら無理で…」
僧侶「ダメです。うーん…と」
僧侶「…あっ、そうだ」
ヒーラちゃんはもごもごと口を動かした後、唇を開きトロリと唾液を垂らしてきた。
ペニスにねっとりとした熱い粘液がぬりつけられる。
傭兵「うわっ」
僧侶「これしか思いつかなくて。嫌だったらごめんなさい」
傭兵「嫌じゃないけどびっくりした」
僧侶「でも、これで少しは」
ぬちゅ…ぬちゅ
僧侶「♪」
僧侶「私のツバと手できもちよくなってくださいね」
ぬちゅ ぬちゅ…
ぬちゅ ぬちゅ ぬちゅ
傭兵「くっ、あ」
僧侶「ここらへんですか?」
ヒーラちゃんは俺の気持ち良いポイントを探りながら丁寧にこすり続けた。
僧侶「きもちいいですか?」
ぬちゅ ぬちゅぬちゅぬちゅ
ぬちゅぬちゅ ぬちゅぬちゅ
僧侶「手のなかでどくんどくんって跳ねてますよ」
僧侶「かわいい」
僧侶「ソル様もそんな顔するんですね」
僧侶「おち○ちんの後ろ側がきもちいいですか?」
僧侶「きもちいい場所があったら全部おしえてくださいね。我慢しなくっていいですよ」
僧侶「ね?」
ぬちゅぬちゅ ぬちゅぬちゅぬちゅぬちゅ
ヒーラちゃんの手は休むこと無く卑猥を音を立てながら上下に動き続けた。
あたえ続けられる刺激に俺のペニスは手の中でさらに張り詰め、硬さと太さを増していく。
彼女はそれを喜びますます手の動きを早くした。
僧侶「おち○ちんのさきっちょから、なにか出てきてますよ」
僧侶「ソル様のきもちいいお汁ですよね?」
僧侶「なめちゃっていいですか…?」
僧侶「いいですよね? はむっ」
有無をいわさずヒーラちゃんは俺の陰茎を口に含み舐め始めた。
ちいさな舌で亀頭の先をちろちろと舐めまわしたあと、
またたっぷりと唾液を塗りつけられて、じゅばじゅばと音をたてて吸ったり舐めたりを繰り返した。
傭兵「こ、こら」
僧侶「むぐぅ…んちゅっ、ちゅうう、ちゅる」
僧侶「んれ…れろぉ…♥ んじゅ、じゅぷ…ちゅるっ」
傭兵(前にしてもらった時より…うまい)
傭兵(酔ってるはずなのによくこんなことできるな)
俺は年頃の少女の性技の上達に感心していた。
しかし喉の奥にいれすぎたのか、ときどきケホケホと咳き込む姿に不安になる。
僧侶「だいじょうぶです」
僧侶「んむっ、じゅぷ…じゅぷ…じゅるっ、ちゅむ…れろぉ♥」
僧侶「ソル様のおち○ちんおいしいです…ちょっと石鹸の味がします」
傭兵「そりゃあなぁ」
僧侶「ほんとはあの時私があらってあげたかったんですよ?」
僧侶「でもマナちゃんが最近積極的で困っちゃいます」
僧侶「あの子ボケーッとしたフリして意外と強かですよね?」
傭兵「そ、そうか?」
僧侶「私がすっきり綺麗にしてあげますね。あむ、ちゅぷ…じゅ、じゅむじゅるっ」
傭兵「…くっ、ぅ」
傭兵(コレは果たして綺麗になるのだろうか)
ヒーラちゃんは卑猥な音をたてて吸い続ける。
なんとなく目についた頭をなでてやると、舌をチロチロと動かして返事をしてくれた。
僧侶「おひんひん…ソル様の…♥」
じゅぷ じゅぷ じゅるっ
ずずずっ じゅる じゅぷ
僧侶「好き…♥」
傭兵(こんなかわいくて献身的な子が俺のことを好いてくれるなんてなぁ)
傭兵(俺ヒーラちゃんに何かしてあげたっけな)
ヒーラちゃんに激しくペニスを吸われながら王宮時代の過去に思いを馳せる。
しかし記憶はやや曖昧となっており、思い返しても俺のほうから特別何かしてあげたような心当たりがない。
最初の出会いはどうだったか。
ヒーラちゃんはいつごろから俺に好意を寄せていたのだろうか。
さっぱり検討がつかなかった。
傭兵(旅に出てからも特別何かしたわけでは無いと思うけど)
バザのデートは連日続いた騒動と、淫魔の出現も相まって散々なものだった。
ヒーラちゃんをまともにエスコート出来た自信がない。
淫気にあてられ、情事の一歩手前までは行ったのだが、それ以来やや距離を置いてしまっていた。
それが彼女を寂しくさせていたのかもしれない。
裸を見てキスまでしておいて、その後ずっとユッカやマナに構いきりではやきもきもするだろう。
そして大量のアルコールがついに彼女の日頃押し殺していた感情を爆発させてしまった。
そんなところだろう。
傭兵(悪かった…)
また頭を撫でる。
僧侶「?」
ヒーラちゃんは上目遣いでこちらを見上げ、ニッコリと微笑んだ。
傭兵(こんなにいい子を放っていた俺は罪深いやつだな)
僧侶「あむ…♪」
傭兵「ヒーラちゃん、おいで」
僧侶「…? はい」
フェラを中断させてもう一度ヒーラちゃんを抱き寄せた。
またぴたりと胸をあわせる。
乾き始めた長い髪の毛が肩をくすぐった。
傭兵「なぁ。聞いてくれ」
僧侶「な、なんですか」
傭兵「あのな。もしヒーラちゃんが良ければ」
傭兵「もしヒーラちゃんが俺のことを本当に大好きなら」
一言一言紡ぐ度に、彼女の心臓が高鳴るのが伝わってくる。
その先何を言われるのか薄々感じ取っているのか、頬と耳がアルコールに加えてさらに赤く染まっていた。
しっかりを目を捉えて大切な言葉を告げる。
傭兵「君のことを抱いてもいいか」
傭兵「俺もヒーラちゃんのことが好きだ」
僧侶「!」
傭兵「だから、したいと思う」
傭兵「ヒーラちゃんの初めてが欲しい」
僧侶「…ぅ、あ」
ヒーラちゃんは目をぱちくりさせたあと、小さく何度か頷いて顔を隠すように俺に強く抱きついた。
そして耳元でかすれそうな声でつぶやく。
僧侶「お願いします…」
僧侶「もらってください…」
傭兵「良かった。拒まれたらどうしようかとおもった」
僧侶「こ、拒みません! ソル様のことなら私なんでも受け入れ…」
僧侶「…はっ」
傭兵「どうした?」
僧侶「い、いえ…ちょっと、ある人というか淫魔の言葉を思い出しただけです」
傭兵「?」
傭兵「ほんとうに大丈夫?」
僧侶「大丈夫です…覚悟はあります」
僧侶「それに…どんな困難な道であろうとも、私はソル様のことが大好きです」
傭兵「困難?」
僧侶「い、いえ。こちらの話です」
僧侶(だってユッカ様に注がれる寵愛をうばってしまうのですから…)
僧侶(許されるわけ、無いですよね…)
傭兵「ヒーラちゃん」
なにか考えるとこがあるのだろう、不安げな瞳をした彼女にそっと口付ける。
僧侶「んっ、う…」
傭兵「大丈夫だよ。ヒーラちゃんのことをずっと好きでいるから」
傭兵「だから今は俺に素直に抱かれてほしい」
傭兵「ヒーラちゃんの全てが欲しい。いいよな?」
僧侶「…はい♥」
傭兵「どうするかはわかるよな?」
僧侶「わかります…」
僧侶「このあいだの…続き、みたいなものですよね」
傭兵「うん」
僧侶「ソル様のここを…私の…あそこに」
傭兵「できそう?」
僧侶「…」コク
僧侶「ソル様のおち○ちんをなめながら、ずっと考えてました」
僧侶「これをあそこにいれてもらったらどんな感じなのかなって」
僧侶「きもちいいのかなって…わたしエッチですよね」
傭兵「今日は痛いかもしれない」
僧侶「そうですか…でもその痛みもソル様が与えてくれるものなら…」
僧侶「なんだって受け入れます!」
傭兵「じゃあ先に触っていい?」
僧侶「は、はい…♥」
ヒーラちゃんを膝にのせたまましばらく見つめ合い、俺は彼女の下半身に手を伸ばした。
本当はひっくり返して足を開いてまじまじと観察したかったが、岩肌の上に乙女を裸で寝かせるわけにはいかない。
その楽しみは次へと取っておこう。
傭兵「ちょっとしっとりしてる」
傭兵「お湯…じゃないよな? もう温泉に入ったのは随分前だもんな」
僧侶「…はい」
ヒーラちゃんは恥ずかしそうに頷いた。
膣のまわりを指先でぬちぬちといじくりまわしていると、粘っこい液体が次々と溢れてくる。
僧侶「ここに…挿れてほしいです」
傭兵「うん。もうすこしほぐしてからな」
粘膜を傷つけないように気をつけながら指を膣内に滑りこませ、腹でひっかくように内側に刺激を与えていく。
十分に濡れたアソコからちゅくりちゅくりと水音が漏れ、すでに男性器受け入れるための準備ができているように思えた。
僧侶「はぅ…んっ、んっ」
傭兵「熱くなってるな。指が溶けそうだ」
僧侶「ソル様の…が、ほしくて、ほしくて」
傭兵「ひくひくしてる」
僧侶「…んっ♥ あっ♥」
傭兵「いれてみようか?」
僧侶「はい…おまたせしてすみませんでした」
傭兵「え?」
僧侶「だって、おち○ちんずっと待ってましたよね? ぺろぺろしたのに、射精までいかなくって」
傭兵「あぁなんだそんなこと」
頭を数度撫でたあと、ペニスで陰唇をかきわけ奥にある膣口にあてがった。
ちゅく…
僧侶「んっ」
傭兵「いま入り口に当たってるのわかる?」
僧侶「は、はいっ」
傭兵「緊張しないで、そのまま力抜いて。ゆっくり腰をおろして」
僧侶「…っ、腰を…!? えっと、えっと」
傭兵「怖い?」
僧侶「失敗しちゃったらどうしましょうっ…よくわからなくてっ」
傭兵「わかった。俺が手で腰をおさえてあげるから。ゆっくりな」
腰を下ろすように促してもヒーラちゃんは焦ったままなかなか踏み切れずにいた。
傭兵(やっぱりこの体勢じゃ厳しいか?)
僧侶「腰をおろしたら…ソル様と…ううう」
僧侶「決心したはずなのに…ど、どうしたらっ」
僧侶「神様…私は乙女じゃなくなってしまいます」
傭兵(あぁ、そうもなるよな)
いまヒーラちゃんは聖職者にとってのタブーを侵そうとしている。
彼女たちは結婚するまで肉体的交渉をもつことは許されていない。
それによって神の加護がなくなるといったことはありえないのだが、長年信仰してきた教えを破るのはとても重大なことである。
傭兵(となると自分からは無理だよな)
傭兵「ヒーラちゃん。キスして」
僧侶「えっ? あ、はい…」
言われるがままにヒーラちゃんは俺に口付ける。
俺は舌を無理やりねじ込み、彼女の舌を捉え先に口内を犯した。
僧侶「んっ!? んんぅ…!?」
傭兵(そしてこのまま…)
腰をもつ手に少し力をこめ、ゆっくりと下げていく。
膣口がぬちゅりと広がり、ゆるやかに俺のカリを飲み込んでいった。
僧侶「~~っ!?」
温かいヒダが亀頭を包み込む。
あとすこし進めれば、教えに逆らう事となる。
だが俺もうヒーラちゃんの全てをもらうときめた、いまさら後戻りなどしない。
舌を絡ませて粘っこいキスを続けたまま、俺はペニスを深く突き入れヒーラちゃんの純潔を奪った。
僧侶「っ! んんぅ~~!?!?」
僧侶「あっ、いっ、やぁ…痛っ…ひぅ、んっ」
僧侶「あぁぁソル様…おち○ちんがっ…おち○ちんがっ中にっ」
傭兵「あぁ、入ってるよ」
傭兵「これでヒーラちゃんは俺のものだ」
僧侶「んっ…♥ 痛っ…いっ、あんっ」
痛がるヒーラちゃんとは裏腹に、俺はとてつもない快楽に浸っていた。
柔らかい無数のヒダがぞわぞわとペニス全体を撫で付け、膣圧できゅうきゅうと締め付ける。
どろっどろに熱くなった膣内で俺の息子はあっというまに溶けてしまいそうだった。
傭兵「すごいな…どんどんエッチな汁が出てくる」
傭兵「ヒーラちゃん、別に淫魔の呪いになんてかかってないよな?」
僧侶「…」コクッ コクッ
傭兵「痛い? ごめんな…こればっかりはどうにも」
傭兵「でも俺はきもちいいよ。ヒーラちゃんのあそこ、おま○この中すごく温かい」
あえて卑猥な言葉を口に出すと、きゅっとまた膣が締まる。
傭兵「かわいい」
僧侶「うう…」
傭兵「このまましばらくこうしてようか」
僧侶「ソル…さまが…きもちよくなってください」
僧侶「うごいて…きもちよくなって」
傭兵「いいの? まだ痛いだろ?」
僧侶「へいきです。我慢できる痛みです…」
僧侶「私と…セッ○ス…しましょ?」
痛みをこらえて作った彼女のぎこちない笑顔を見て俺の理性ははじけ飛んだ。
つかんだ腰をゆさゆさと揺さぶり、膣内にペニスを擦りつけていく。
僧侶「うぁぁぁっ、あっ…うっ、んんぅっ」
何度も何度も突き入れる。
ぐちゅぐちゅと2人の粘液が膣内で混じりあい、出し入れする度に結合部から溢れだした。
僧侶「あっ、あっ、あっ…あぅっ、あぁっ」
僧侶「ソルさ…まっ、あっ、ひぅっ、んんぅっ」
目の前で大きな胸が上下に弾む。
つんと上向きに尖った乳首を指でこねてもてあそぶとヒーラちゃんはより一層声を荒らげた。
僧侶「はっ、はぁう…んっく、う…」
僧侶「乳首は…だめっ、です」
傭兵「自分でも触ったことあるだろ? こりこりしてるな」
僧侶「だめ…です…よぉ」
傭兵「ほら、あそこのほうにも集中して」
じゅぷ じゅぷ じゅぷ じゅぷ
カリで膣襞をかきまわすようにひっかくうちにだんだんとヒーラちゃんの声に色がついてきた。
顔にかかる吐息は熱く、目元はトロンとしていて目尻には涙が浮き出ている。
僧侶「ううっ、んぅ、あっ、あっ、そこ…はっ、あっ♥」
じゅぷ じゅぷ じゅぷ
じゅぷ じゅぷ じゅぷ じゅぷ
小気味良く腰を付き上げピストン運動を繰り返すうちに、ヒーラちゃんはだんだんと自分でも腰を押し付けるように動き始めていた。
2人の動作が重なり、より一層激しく膣奥を突く。
ぱちゅんぱちゅんぱちゅんっ
ぱちゅんぱちゅん ぱちゅんぱちゅん
僧侶「ああぁあっ♥ そこっ…です」
僧侶「奥にあたって…おち○ちんがおま○この奥に」
傭兵「どう?」
僧侶「すごく…ぞくぞくします」
僧侶「射精…しちゃうんですよね?? 私のおま○この奥で」
僧侶「あぁぁっ♥ んっ、あっ、ああぁっ♥」
傭兵「出していいのか?」
僧侶「…はい♥」
僧侶「んっ、あっ、あっ、だしてっ」
僧侶「でもまだだめですっ、もっときもちよくなれるはずですからっ…」
傭兵「痛くないのか?」
僧侶「…」フルフル
僧侶「ソル様の与えてくれるものならなんだって嬉しいです」
ヒーラちゃんはそっと俺の頬に両手を伸ばす。
以前俺が送った少々野暮ったい金属質のブレスレットが細い手首できらりと光った。
傭兵「嬉しいな。そんなに俺のことを好きでいてくれるんだな」
僧侶「はいっ、好きですっ」
僧侶「好きですからもっときもちよくなってほしいですっ」
僧侶「私のおま○こできもちよくなって、いっぱい射精してください」
ぱちゅんぱちゅんぱちゅんぱちゅん
ぱちゅんぱちゅんぱちゅんぱちゅんぱちゅんぱちゅんっ♥
俺達は一心不乱に腰を打ち付けあった。
さきほどまで聞こえていた虫の音が止んでいる。
辺りには俺達のまぐわり合う水音だけが響く。
僧侶「ああっ♥ ううあっ、あんっ、あんっ」
恥部をからませながら、何度も口づけを交わし、何度も唾液を交換しあい俺達は快楽を高めていった。
流れ出ていた純潔の証である真っ赤な血は大量の陰液で薄まり、もはや姿を潜めてしまっている。
傭兵「はっ、はっ、はっ」
僧侶「あぁっ、あぁっ…んぁっ、あああっんっ♥」
ペニスを突き入れる度にヒーラちゃんは甘い声色で鳴いた。
さらにカリで膣壁を激しくひっかくと嬉しそうに大きく身をよがらせる。
もしかしたら多少のMっ気があるかもしれない。
僧侶「ソルさま…もうっ、わたしっ…」
僧侶「あんっ、あっ、あっ♥ い、イキ…イキそ…」
僧侶「ソルさまも…いっしょ…にっ、ああぁん♥」
ぱちゅん!ぱちゅん!ぱちゅん!
ぱちゅん!ぱちゅんぱちゅん!
僧侶「あっ…あーっ…♥」
傭兵(そろそろ限界だな)
ぱちゅんぱちゅんぱちゅんぱちゅん
ぱちゅんぱちゅんぱちゅんぱちゅんぱちゅんぱちゅんっ♥
僧侶「…い、イクっ、イッちゃいますっ♥」
傭兵「いいよ。かわいくイッて」
僧侶「は、はひ…はぅっ…あああっ♥」
最後に思い切り深く付き入れて子宮口に亀頭の先を叩きつけた。
僧侶「~~~っっ! あぁぁぁ~~っ♥!?!」
僧侶「だめぇ~♥ あああ~~~っ!?!?」
僧侶「イッて…イクっ、イッてま…ああぁぁ♥ くぅぅ、ああっ♥」
僧侶「~~っあああっ♥ あぁあっ♥♥」
膣内がぎゅうぎゅうと収縮し、俺のペニスに射精を促すように襞が絡みついてくる。
俺はその快楽に耐え切れず、彼女の産道をうめつくすように大量の精液を吐き出した。
僧侶「あぁ…出てます…熱いのが」
僧侶「これ…ソル様の精液…?」
傭兵「ごめん。我慢しきれなかった」
僧侶「えへへ…いいんですよ」
僧侶「ソル様の…えへへ。私もいただいちゃいました」
僧侶「よかった。出したってことはとってもきもちよくなれたんですね」
傭兵「俺もヒーラちゃんが満足出来たみたいでよかった」
僧侶「ねぇソル様ぁ。もうすこしこうしてましょ?」
傭兵「入れたまま?」
僧侶「だって…抜くのもったいないなって…私がずっと欲しかったものですから」
傭兵「なにいってるんだこの子は」
僧侶「くしゅんっ」
傭兵「激しくした後とはいえ、さすがに冷え込んできたな」
傭兵「ちょっと俺に抱きついてくれるか?」
僧侶「え? はい……うわっ」
俺はヒーラちゃんの温かいふとももを抱えて身体をもちあげて立ち上がった。
僧侶「ソ、ソル様…? なんだか恥ずかしいですよ? コレは一体…」
傭兵「少し温まり治そう」
そして彼女を抱きかかえたまま温泉へと足を進める。
ちゃぷ…
僧侶「…♥」
傭兵「やっぱりいいお湯だ。いつでもこれに入れたらいいのにな」
僧侶「こ、子宝のお湯…らしいです」
傭兵「とか言ってたな。本当にそうなのか眉唾ものだけどな」
僧侶「子宝…」
傭兵「案外狐に化かされているだけかもしれない」
僧侶「…えへへ」
傭兵「?」
僧侶「効き目は本当っぽいですよ?」
僧侶「だってほら…♥」
傭兵「……あ」
あっという間に下半身に血がもどり、彼女の膣内でまた息子が大きく膨れ上がっているのがわかった。
また彼女の膣内がみちみちと刺激を求めて蠢き始める。
傭兵「やらしい子だな」
僧侶「…はい。エッチなんです」
僧侶「幻滅しましたか?」
傭兵「…いいや、ますます好きになったよ」
僧侶「ありがとうございます。これからも私のことかわいがってくれますか…?」
傭兵「今すぐにでも」
僧侶「…♥」
大自然の中で俺達はただのオスとメスだった。
口づけを交わすやいやな、水面がじゃぷじゃぷと波を立てて激しく揺れ始める。
その後動物のような俺たちの交尾はヒーラちゃんがのぼせて倒れてしまうまで続いた。
第15話<山脈温泉紀行>つづく
第15話<山脈温泉紀行>つづき
勇者「おっはよー!」
魔女「おはよう」
傭兵「お、おう。朝からテンション高いな」
僧侶「…おはようございます」
勇者「昨日は楽しかったね!」
僧侶「っ!? き、昨日…?!」ビクッ
僧侶「あ、あはは…そそ、ソ、そうですねっ!」
傭兵「き、昨日な! あぁ楽しかったなっ…うん」
勇者「どしたの」
勇者「ボク朝ごはん食べたらもう一回入って来ようかな~」
傭兵「午前中には荷馬車に戻るぞ。キュウの魔力がもどってるみたいだからな」
妖狐「うむ。約束通りまぬけな目にあった荷馬車をなんとかしてやろうぞ」
勇者「え~もう? マナももう少し入りたくない?」
魔女「べつに」
勇者「ねぇねぇ、またみんなで一緒にお風呂…ってあれ」
勇者「ヒーラ、ソル。なんでそんなに離れて座ってるの」
傭兵「い、いやべつに」
僧侶「なんでもないですよ…ね、ねぇ?」
勇者「?」
魔女「…」もぐもぐ
傭兵(ヒーラちゃんとまともに顔あわせられねーよ…あぁやっちまった…)
僧侶(お酒の勢いとはいえ、ソル様と…あんなことを…それも何度も…ううう。神よ私をお許し下さい)
妖狐(ほほー…若くてええの)
勇者「??? まぁいいや、いただきまーす」
妖狐「こっちの国の飯もうまいのぉ。これを毎日たべられる奴はさぞや幸せ者じゃな」チラ
傭兵「あ?」
妖狐「どれヒーラよ、ワシの召使にならんか。毎朝味噌汁をつくってくれ」
僧侶「ええっと、ミソ…汁?」
妖狐「スープじゃスープ!」
妖狐「あぁワシとしたことが! もうおぬしには作る相手がおったか! しまったなぁ」
僧侶「…ぅ」
傭兵「黙って食え」ガシッ
妖狐「な、なんじゃ無礼な!」
勇者「スープ?」
勇者「あっ! ボクがつくってあげようか?」
妖狐「言っておくがおぬしは旅のお供にはせんぞ」
勇者「わかってるよ!」
傭兵「お前飯つくれるのか」
勇者「うん! ちょっとだけね! ヒーラのほうが上手だから任せっきりだけど…えへへ」
僧侶「ユッカ様のお料理…うーん…」
魔女「まずそう」
傭兵「何入ってるかわかりゃしねぇな」
勇者「失礼な! 今度つくるから! 見返してあげるよ」
勇者「きっとソルもヒーラもマナも毎朝つくってつくって~ってボクに頭を下げるようになるから」
傭兵「ふーんじゃあ期待してるわ」
僧侶「楽しみにしてますね。なんでもお手伝いしますからね」
魔女「私はヒーラので良い」
勇者「マナぁ~~!」グニニ
魔女「うぎ…やめふぇ、いまふぁしょくじちゅう」
勇者「絶対たべさせてやるから!」
僧侶「まぁまぁ…」
妖狐「…いつもこんな感じなのか?」
傭兵「…俺の監督不十分だ」
妖狐「小童がなにを大人ヅラしておる。くっく」
・ ・ ・
勇者「というわけで。みんなお風呂いかないの? ボクだけ?」
傭兵「あぁ」
僧侶「ごめんなさいユッカ様。私は結構です…」
僧侶(昨日はのぼせるまで入りましたし…)
勇者「え~つまんないなぁ。マナは? 行こ?」
魔女「…いいけど」
傭兵「すぐそこのに入ればいいだろ」
勇者「エッチ! 自分だけここからのぞく気でしょ」
傭兵「…」シッシッ
勇者「お湯によっていろいろ違いがあるんだよ! ねっキュウちゃん?」
妖狐「うむ。昨日いろいろまわってみたが、確かに効能は様々であった」
妖狐「ワシはここが一番霊力が高まって良いとは思うがの」
勇者「霊力って魔力のことだよね?」
妖狐「そうじゃな、呼び方は地方や文化、宗教によってさまざまじゃ」
妖狐「ワシらの国では妖力や霊力と呼んだりもするぞ」
僧侶「更にその中でも属性の区分があるんですけどね、例えば私の場合は――」
勇者「いってきまーす!」ダッ
魔女「…」ズルズル
僧侶「あっ」
妖狐「元気な奴じゃな」
傭兵「あいつの場合それしかとりえがない」
妖狐「…くふ。そんなこと毛ほども思ってもおらんくせに」
傭兵「なっ、また覗きやがったなこの化け狐」
妖狐「乙女に囲まれすぎて煩悩に支配されんようにな」
僧侶「キュウさん…あの、ユッカ様に昨夜のことは内緒にしていただけませんか?」
妖狐「はて、なんのことかのー? ワシにはわからんのー」
妖狐「おぬしの口から具体的に事の顛末を教えてくれたら考えてやってもええんじゃがのぅ」
僧侶「え、ええっと…じ、じつはあのあと……ぐすっ、恥ずかしいですよぉ」
傭兵「いやいや言わなくていいぞ。ダマされるな」
妖狐「ちっ」
傭兵「こんな純情な子になんてことしやがる」
傭兵「こいつが何か言いそうになったら、皮剥いで鍋にぶちこんでやればいいだけだからな」よしよし
僧侶「はい…」
妖狐「言っておくが、今日のワシを昨日のか弱い子狐とあなどってはならんぞ」
・ ・ ・
【滝の近くの霊泉】
勇者「ずっと聞こえてたのはここの滝の音だったんだね」
魔女「お風呂いっぱいある」
勇者「すごい! 全部ボクたちの貸し切りだ!」
魔女「そう…」
勇者「ヒーラとソルも来たら良かったのに」
魔女「あなたはのんきね」
勇者「えっ、何が?」
魔女「私達がここに来ているということは、あっちは2人きり…と1匹」
サキュバス「そのとおり~♪」バサッ バサッ
勇者「!」
魔女「!」
サキュバス「はぁーいおチビちゃん達。グッモーニン」
サキュバス「朝から2人でデートぉ?」
勇者「なっ、お前は…!」
魔女「…」
サキュバス「久しぶりに会ったのにそんなに怖い顔しないで?」
勇者「降りてこい! ボクが成敗…あっ、しまった、剣おいてきちゃった」
サキュバス「ぷ」
魔女「…術式…」
サキュバス「ちょっとストップストップ! こんなとこで戦いなんてしたくないわよ」
サキュバス「それよりあなた、あたしが売ってあげたアレつかってる。毎日入れちゃってる?」
魔女「…黙って」
サキュバス「使ってないんだぁ…そんなんだから出遅れちゃうのよ」
魔女「術式…アイスビュレット」
▼魔女は無数の氷の弾丸を放った。
サキュバス「ぎゃあぅ! 危ないってば! やめなさい!」
サキュバス「あなたがそんなことするならあたしにだって考えがあるわよ」
魔女「…」
サキュバス「例えば~この指をぱっちんしたら、どうなるかしらねぇ」
勇者「!! だだ、だめだめだめぇ! それだけはやめてくださいボク朝からなんてヤだよ」
サキュバス「というわけ。おわかり? さ、杖を置きなさい」
魔女「…わかった」
サキュバス「一緒にお風呂はいろっか?」
勇者「やだ」
魔女「お断り」
サキュバス「ちぇっ。たまにはあたしだってパーティ団らんに混ぜてよ」
勇者「きー誰がパーティだ!」
魔女「ところであなた。どうしてこの前は姿を現さなかったの」
勇者「この前って」
魔女「ユッカが人形にされた日」
勇者「あぁそうだ! サキュ! どうしてあの時呼んでも応えてくれなかったの」
サキュバス「あたしにだって都合があるの!」
サキュバス「いいじゃない生きてたんだから。銀髪のおチビに感謝ね」
魔女「あの日は満月だった。魔力の高まる夜」
魔女「あなた、もしかして満月の夜は…」
サキュバス「ぎくっ。ば、バイバイ!」パタパタ
魔女「逃げた」
勇者「くそぅ。聞きそびれた」
サキュバス「だーからあの子は苦手なのっ!」
サキュバス「ふんっ、でもお楽しみはこれからよ」
サキュバス「淫魔は闇夜にうごめく生き物…」
サキュバス「新月の夜を楽しみにしてなさい…くす」
勇者「はぁ…いつになったらこの呪い解けるんだろう」
魔女「アレを倒すか、魔法で解呪するしかない」
魔女「私にまかせて。いま高等魔法を研究中」
勇者(やな予感しかしないなぁ)
勇者「ま、気を取り直してお風呂はいろ!」ぬぎぬぎ
魔女「…コク」ぬぎぬぎ
勇者「それっ」 じゃぷん
魔女「…」 ぴちゃ
勇者「湯気濃いねぇ。ここならソルと一緒に入っても全然見られないかも。一緒にきたらよかったのに」
魔女「そうだね。2人きりは良くない。とても良くない」
<ぎゅるるる…
勇者「あははマナお腹鳴ってるよ。さっきご飯たべたばっかりなのに」
魔女「そんなわけない。ユッカみたいに食いしん坊じゃない」
<ぎゅるるる…ぎゅるぅ…
勇者「でもたしかに鳴ってるよ」
勇者「どこからだろう…ちょっとマナ静かにしてね」
魔女「…」コク
<ぎゅるるるる…
勇者「ぎゅる? あれ…この音どこかで」
魔女「…」キョロキョロ
魔女「!」
魔女「い、いますぐ逃げた方がいい」
幼竜「ぎゅるるるる…」
勇者「…? う、うあっ!? ど、ドラゴン!」
魔女「あのときのマントルドラゴン」
勇者「う、うあっ、やばいよっ!? ソルに伝えなきゃっ」
【キャンプ地近くの霊泉】
傭兵「とはいえもうひとっ風呂くらい浴びても罰はあたらねーよな」
傭兵「どーせユッカたちははしゃいで帰ってこないだろうし」
傭兵「それにここに入ってりゃ俺の身体にも魔力の恩恵を…なんつって」
ちゃぷ
闇剣士「…」
傭兵「…」
闇剣士「…む」
傭兵「ぬわっ! て、てめぇ」
闇剣士「ほぅ…こんなところで貴様と出会うとはな」
傭兵「なにしてやがる!」
闇剣士「見てわからんのか」
傭兵「…わからねぇ」
闇剣士「湯を嗜んでいるにきまっているだろうが!」
闇剣士「ここは私の見つけた霊泉だ。貴様はおとなしく立ち去れ」
傭兵「バカ言え! 俺たちはここに昨日から入ってるんだよ!」
闇剣士「なに?」
闇剣士「……なるほど、霊気がそこら中に漂っているためか」
闇剣士「私の魔覚もまともに働いていないようだな」
闇剣士「あの小娘がいればお互いのことなど簡単に察知しあうものを…道理で」
傭兵「ひとりで納得してんじゃねぇ!」
傭兵「てめぇはともかく、あのマントルドラゴンはどこにいやがる」
闇剣士「奴ならもっと広い湯で魔力を補給している。私はいま単身だ」
傭兵「ぬけぬけと、叩き斬ってやる」
闇剣士「ふん、剣も持たずに丸腰ではないか。貴様ともあろうものが油断したな」
闇剣士「それともその小刀で私の相手をするか」ザバッ
傭兵「!」
傭兵「…う、うーん、いや俺のほうがデカイぞ」
闇剣士「人間ごときが私を愚弄するか」
傭兵「それよりお前、風呂で仮面はとったほうがいいとおもうぞ…蒸れるだろ」
闇剣士「これは私にとっての戒めなのでな。では丸腰同士、拳で決着をつけよう!」
傭兵「くそ、やっぱりこうなるのか!」
闇剣士「征くぞ」
傭兵「俺の体術を舐めるんじゃ――――」
妖狐「ええいやめんか馬鹿者共!」 ボカッ
傭兵「ぐあっ」
闇剣士「…」
妖狐「危うい気配がしたから来てみれば…一体なにをしておる!」
闇剣士「なんだこの獣人は」
妖狐「…お前こそなんじゃ。変態か?」
闇剣士「…」
傭兵「見ての通りだぜ」
妖狐「この霊泉を争いの場にするなど言語道断!」
傭兵「わ、わるい…」
妖狐「そこの仮面の漢! 貴様もじゃ!全身から禍々しい妖気を放ちよって!」
闇剣士「…貴様何者だ」
妖狐「ワシはおぬしらの世界でいう魔物に属するが、物の分別はつく」
妖狐「先も言うたがここは霊泉。森に住む生き物たちが命を育む地じゃ」
妖狐「殺生や争い事は許さん」
妖狐「この地を荒らすものは、山の神にかわってワシが成敗してくれる」
闇剣士「…ふ」
闇剣士「だそうだ」
傭兵「でもなぁキュウ、こいつ俺にとって最悪の敵なんだよ」
妖狐「ああん!?」
傭兵「あ、おう…」
妖狐「わかればよい。喧嘩せず仲良く入るのじゃぞ」
妖狐「ワシはユッカたちを見に行くからの。ではの」
傭兵「仲良くってもなぁ…」
闇剣士「ここいらの獣は小煩いようだな」
傭兵「あいつ俺たちよりよっぽどよそもんだぜ」
闇剣士「私達の間に入るあの獣の度胸に免じて、この場は剣を引こう」
傭兵(丸腰じゃねぇか…)
闇剣士「次はないと思え」
傭兵「あぁ。今度あったらその時は」
闇剣士「というわけだ。早く出てゆけ」
傭兵「お前が出て行けよ。俺が先に見つけた湯だぞ」
闇剣士「…」
傭兵「…」ギリッ
僧侶「ソル様ー! キュウさーん」タッタッ
傭兵「あ、ヒーラちゃん」
僧侶「移動の前にお昼ごはんの準備をしますので、そろそろユッカ様たちを呼びに…」
僧侶「って…きゃああああヘンタイが2人!!」
傭兵「それはねぇだろ…風呂だってば」
傭兵「ん?2人? 2人って俺も入ってるのか!?」
闇剣士「誠に心外だな」
僧侶「な、なな、なにやってるんですかソル様! その人って…う、ううなんで裸なんですかぁ」チラッ
傭兵「つーわけだ、これ以上てめぇとのんびり湯なんて入ってられるか。おぼえてろよ」
闇剣士「負け犬にふさわしいセリフだな」
【滝の近くの霊泉】
幼竜「ぎゅるる」
勇者「こ、こっちこないで」
魔女「気をつけて」
幼竜「…」クンクン
勇者「どうやらボクの魔力をほしがってるみたいだね」
魔女「あなたが餌付けしたせい」
幼竜「ぎゅるるる…」
勇者「だ、だめだよ! あげないから!」
魔女「このままでは食べられるかもしれないから逃げた方がいい」
勇者「そ、そうだね…ばいばい」
幼竜「…ぎゅる」
勇者(なんだかかわいそうだな)
妖狐「おお、ここにおったか」
勇者「あーキュウちゃんっ」
妖狐「…む? なんじゃその龍は」
勇者「この子、悪いやつに服従させられてるんだ」
妖狐「さきの漢か…なるほどのぅ」
勇者「ボクの前ではおとなしいんだけど」
幼竜「ぎゅるるるる…」
妖狐「どれ子龍よ。ワシに話してみい」
幼竜「ぎゅるる…」
妖狐「ふむふむ…ふむふむ」
勇者「なんて言ってる?」
妖狐「全然わからん」
勇者「え゛っ。心が読めるんじゃなかったの」
妖狐「どうやらまだ赤子同然じゃからの。餌と母親のことしか考えておらん」
勇者「母親…でもこの子のママはもう」
妖狐「いまはおぬしのことじゃぞ。どうやら母乳がわりに魔力を与えてしまったようじゃな」
勇者「あ…」
魔女「…だから言ったのに」
妖狐「ユッカよ。魔力を少しわけてやってくれんか」
妖狐「そうすれば腹も満たされるじゃろう」
妖狐「そしておぬしに似て優しい子に育つはず」
勇者「う、うん…わかった」
幼竜「ぎゅるるる!」
勇者「えへへ。いまあげるからね。いくよ…【魔力貸与】」
闇剣士「待て」
勇者「!」
魔女「!」
闇剣士「余計なことはしないでもらおう」
妖狐「…貴様。おとなしく湯につかっておればええものを」
闇剣士「諍いは無しと言ったが、こうなれば話は別」
闇剣士「その竜と娘は私の野望に必要不可欠でな」
闇剣士「関係のない獣風情は首を突っ込まないでもらおう」
闇剣士「さぁ、ドラゴンよ私に従え…隷属せよ」ズズ
幼竜「ぎゅ…ぎゅる…!」
勇者「あっ!」
魔女「ユッカ、逃げて」
闇剣士「まずはその邪魔な茶髪の小娘を喰らえ。貴様もそいつで腹を満たしたいだろう」
幼竜「ぎゅうう…!!」
妖狐(いかんな目つきがかわった。束縛の術からは逃れられんか)
妖狐「ユッカさがっておれ」
勇者「キュウちゃん、どうするの!?」
魔女「私が時間を稼ぐ術式――」
妖狐「おぬしもじゃ。この地を争いと血で汚すことは許さん」
魔女「でも」
妖狐「なぁに。まかせておけ」
傭兵「ユッカ! マナ! 無事か!」
傭兵「!」
木々をかき分けユッカたちの元へたどり着いた俺の目に飛び込んできたのは、
凶暴な様相で翼を広げバスタオル姿の少女らに牙を向くドラゴンと、その背に立つ完全装備の仮面の魔剣士。
そしてユッカをマナを後ろ手にかばうキュウの小さな姿だった。
傭兵「くっ、間に合わねぇ!」
幼竜「ギュルル…」
闇剣士「さらばだ忌まわしい娘よ。ついでに獣の娘も喰らってしまえ」
勇者「う、うあ…」
魔女「逃げ…なきゃ…」
妖狐「九尾 開放」
翼竜の牙がいままさにユッカたちを切り裂こうとする。
神にも祈ったその瞬間、何かを小さく唱えていたキュウを中心に辺りが禍々しい気に包まれはじめた。
それは魔力のない俺でも感じ取れ、身震いするほどの圧倒的な霊気。
そして一瞬の閃光の後、
大木をも越える背丈をした超大な獣が目の前に現れたのだった。
第15話<山脈温泉紀行>つづく
第15話<山脈温泉紀行>つづき
闇剣士「これは…なんだ」
幼竜「ギュルル…!」
九尾「…」
その巨獣の腕は丸太のように太く頑強で、鋼のような爪は深く大地をえぐる。
そして飢えた狼のような鋭い顔つき。
それは昨夜見た子狐の柔和な表情とはうってかわって、身の毛もよだつおぞましい風体だった。
おびただしい量のドス黒い魔力が周囲をただよい、痛いくらいに肌に突き刺さった。
たったひと睨みで翼竜は怯み、大空へと舞い戻って体勢を整えながら様子を伺っている。
傭兵「こっちだ!」
勇者「う、うん…」
俺はユッカ達の手をとり、急いで足元から退避させた。
握ったユッカの手はひどく汗ばんでいた。
勇者「これが…キュウちゃん…?」
魔女「なに…これは…」
2人の少女は大きく目を見開いてことの成り行きを見守っている。
九尾「グルルル…」
地獄から響いてくるような重音。
もはやその神獣にあのいたずらな笑みを浮かべるキュウの面影は無かった。
闇剣士「これは…この圧倒的な魔力は! これが世に伝わる古の災厄の一つか」
闇剣士「私が…震えているだと」
闇剣士「まさかこんなところでお目にかかるとは」
闇剣士「私もいずれ…これに並ぶ力を…」
闇剣士「魔王様、必ずやあなたを現世に…!」
九尾「グルル…!」
幼竜「ギュルルぅ…」
闇剣士「まずい、すこし距離を取れ。奴は飛べん」
闇剣士「だがあの巨体で跳躍すれば…山の1つや2つ…簡単に飛び越えて噛み付いてくるかもしれんな」
幼竜「ギュル、ギュル」
闇剣士「わかっている。無理はしない」
闇剣士「古の神獣よ。巡り会えたことを光栄に思う」
闇剣士「私は魔王の眷属の末裔」
闇剣士「私は貴殿に刃を向ける気はない。二度とこの地を踏まぬことを誓おう」
九尾「グルルル…」
闇剣士「勇者よ。次の大陸で貴様たちを待つ。その時まで勝負は預けるぞ」
闇剣士「あの海を…無事越えられたらの話だがな」
闇剣士「ゆくぞ」
幼竜「ぎゅるる…」バサッ バサッ
傭兵「待ちやがれ! …行ったか」
九尾「…ググ」
傭兵「キュ、キュウ…もういいぞ」
勇者「助けてくれてありがとう」
九尾「グググ、グルルル…」
傭兵「どうしたんだ…」
魔女「だめ。離れた方がいい」
魔女「おそらく正気を保っていない」
勇者「キュウちゃん! 元に戻ってよ!」
九尾「グググ…」
真っ赤に染まったおそろしい眼光が俺たちを射止めた。
神獣はゆったりと向きを変え、ギラリと輝く巨大な豪爪を俺たちの方へと向ける。
魔女「こちらに敵意を…? 誰が誰だかわかっていない」
傭兵「来る…! くそっ俺につかまれ」
魔女「もう遅い戦うしかない」
傭兵「勝てる相手か!」
勇者「逃げなきゃ!」
魔女「術式…アイスプリズン」
▼魔女は氷の堅牢を生成した。
傭兵「ダメだ、足元までしか届いてねぇ」
魔女「…なんとかあなたたちが逃げる時間を稼ぐ」
傭兵「やめろっ、お前も来い」
魔女「…」
魔女(あの子は…もしかしたら)
サキュバス「ちょっと何よこれ!」ギリ
サキュバス「まずいわね…こんな奴がここにいるなんて聞いてないわよ」
傭兵「お前は」
サキュバス「はいこっち! 早く逃げる! 魔隠しの陣を敷いてるからそこでじっとしてたら気づかれないわよ!」
傭兵「なんだそれ」
サキュバス「あたしがいっつもあんたらにこっそりついてく時に使ってるの!!」
勇者「それで気配がしなかったんだね」
サキュバス「ってそんなのどうでもいいから走って走って!」
勇者「でもマナがっ。置いてきぼりはダメ!」
サキュバス「あんな無謀なおチビほっときなさいよ! あんたの身体が私にとっては大事なんだから!」ガシッ
勇者「やだぁー! 離してよ!」
傭兵「ユッカを頼む」
サキュバス「ふんっ」
勇者「ソル! マナを助けて!! お願いだよ!!」
傭兵「わかってる!!」
九尾「グググ…グルルル」
魔女「あなたも私と同じ忌み子なのね」
魔女「力のコントロールがうまくできない…かわいそうな子」
九尾「グググ…」
パキ…パキ…パリン
▼魔氷の堅牢は砕け散った。
魔女「こんな簡単に! う、次を…」
九尾「グルルル…」
魔女「ダメ。瘴気でうまく魔力を練られない…」
傭兵「マナ! つかまれ!」
俺は詠唱に入ろうとしていたマナを拾い上げ、間一髪で巨大な爪による斬撃から逃れた。
そのまま木々の枝を伝いながら全速力で陣へと向かう。
魔女「逃げてはダメ!」
傭兵「どうしてだ」
魔女「あの子は、苦しんでいる」
傭兵「あいつが自分で使った力なんじゃないのか! 同情の余地はない」
傭兵「あんな化け物みたのはマントルドラゴンの成体以来だ。いやそれよりもまずい」
傭兵「ここで死ぬわけにはいかないんだぞ」
魔女「…」
魔女「あなたはわかっていない」
魔女「あの子をこのまま野放しにすると、この地は滅びる」
傭兵「…!」
傭兵「災厄とか言ってたな。一体それはなんなんだ」
魔女「移動しながらで良いから聞いて。おじいちゃんの本に書いてあった」
魔女「昔、世界各地に災厄と呼ばれる魔を司る神々がいた」
魔女「その者達は大陸に破壊をまき散らしながら、時に争い、やがて世界を荒廃させていった」
魔女「しかし人類はその迫る災厄に抗い続け、やがて打ち倒すことに成功した」
魔女「勇者とは彼らを打ち倒した者。ユッカはその末裔」
傭兵「あんなのに…勝てるわけがない」
魔女「各地に残る伝説の数だけ勇者はいた」
魔女「あの九尾の獣もきっとどこかの国で災厄として恐れられた存在」
傭兵「そうだろうな。霊泉を守るどころか…滅ぼしちまう勢いだ」
傭兵「あんなやつらに立ち向かうって…? ユッカが…?」
魔女「ユッカの先祖が何を倒したのかはわからない。けど、あの子は潜在的な力を秘めているはず」
魔女「そしてあなたも」
傭兵「俺が…? 俺は魔法すら使えないただの剣士だ」
傭兵「あんなドス黒い魔力にまみれた化け物とまともに組み合うことすらできねぇよ」
魔女「そんなことはない。あなたがユッカの側に居続けるのはどうして」
傭兵「…ユッカの」
魔女「逃げてはダメ。たしかにあなたは魔法がつかえない、けどあなたにはあなたにしか出来ないことがある」
魔女「恐れずに戦って。あなたが護りたいもののために」
魔女「それと、あなた自身の約束のために」
傭兵「マナ…お前は」
魔女「少しだけ、あなたの過去を知っているわ」
傭兵「…!」
魔女「大丈夫。あなたは誰よりも強い人よ」
傭兵「俺は…どうしたら」
魔女「すこしだけでもあれに取り付ければいい。私の身体能力ではそれができない」
魔女「私をあれの背中に」
傭兵「危険すぎる…」
魔女「大丈夫。私だって死ぬ気はない」
俺はマナを抱えたまま身を翻した。
傭兵「何か策があるのか」
魔女「すこしでも楽にしてあげる方法なら有る」
傭兵「本当だな…? まかせていいのか」
魔女「大丈夫」
魔女「もっと接近さえできれば」
傭兵「わかった。なんとか攻撃をかいくぐってみる。目閉じるなよ」
魔女「うん」
傭兵「来たぞ!」
巨獣は木々を蹴散らしながら轟音とともにこちらへ距離を詰める。
傭兵「これで…射程範囲だ」
魔女「…」ゴク
そして俺たちに向かってまっすぐに巨大な腕が振り下ろされる。
しかし巨大すぎるがゆえに、指の間に十分くぐりぬけられるほどの隙間があった。
傭兵(直撃したら即死だな。だがここしかない)
俺は空中で半身を捻って鋼鉄のような鉤爪を剣の先で受け流した。
激しい火花を散らしながらなんとか巨獣の手の甲へと躍り出て長い真っ白な毛をつかむ。
そして振り下ろされた爪は深々と大地へ突き刺さった。
傭兵「ぐあっ、マナ大丈夫か」
魔女「…平気。早く」
傭兵「いくぞ。つかまってろ」
そのまま手の甲から一気に腕を駆け登った。
魔女「できれば背中に回って!」
傭兵「わかった」
二度三度と跳躍し、ようやく九尾の肩口へと辿り着いた。
魔女「ありがとう。ここでいい。あなたはもう降りて」
傭兵「バカ言え! 置いていけるか!」
魔女「邪魔」
傭兵「…っ! まずい攻撃がくる!」
魔女「飛んで」
傭兵「…絶対無茶すんなよ!」
再びおそいかかってきた剛爪をマナを守るように正面から剣で受け流し、俺は弾き飛ばされるように離脱した。
そのまま草むらへと打ち付けられる。
傭兵「ぐあああっ…マナ…」
魔女「揺れる…」
魔女「なんて瘴気。ここにずっといたら普通の人間ならあっという間に死に絶えてしまう」
魔女「これが…あなたが背負わされた運命なのね」
九尾「グルルル…」
魔女「大丈夫。すぐ楽にしてあげる」
魔女「きっとこの瘴気が収まれば、元に戻れるから」
傭兵「痛つつ……あいつ、一体何をする気だ…」
傭兵「なにか有効な魔法でも…?」
傭兵「…まさか」
魔女「術式はいらない。これは私に生来備わった能力だから」
魔女「あなたの魔力。少しもらうね」
遠目にマナが手の平を九尾の首にかざすのが見えた。
俺には漂う魔力の流れはわからない。はっきりと見ることができない。
ただこの場を支配する殺気の元、邪気とも言える禍々しい気配が次第に収まっていくのを本能的に感じていた。
魔女「…私は、ユッカとは違う」
魔女「誰かに何かを与えてあげることはできない」
魔女「私にはこれしか出来ない」
魔女「ごめんなさい」
巨獣が小さく唸りをあげる。
凶悪な顔つきながらほんのわずかに微笑んだように俺には見えた。
そして再び一瞬の閃光の後、巨獣は姿を消した。
傭兵「マナ…」
魔女「…げぷ」
魔女「よかった。元に戻って」
傭兵「お前、何をした」
魔女「悪い気を吸った。もう変化は出来ないはず」
傭兵「吸ったって…大丈夫なのか?」
魔女「平気」
子狐「…」
傭兵「キュウ…ぐったりしてるな」
魔女「命に別状はない…。けど、あまり状態はよくない」
勇者「おーいソル! マナー!」
サキュバス「やったじゃない!」
勇者「あっ、キュウちゃん…」
サキュバス「なぁに? あの化け狐の正体はこんなちっちゃい狐?」
傭兵「霊泉につけてみようか」
サキュバス「助けるの?」
勇者「キュウちゃんはボクたちの友達だよ!」
サキュバス「また化け狐になってもしらないわよ」
サキュバス「はぁ。にしてもあんたたち結構やるじゃない! あんな化け物を退けるなんてさ!」
勇者「ふたりとも怪我してない? ボク心配で心配で…」
傭兵「大丈夫だ。いやちょっと背中擦りむいたくらいだな」
魔女「私は平気…」
サキュバス「…」ジー
魔女「な、なに」
サキュバス「おチビ。あんた、何者?」
魔女「……わからない」
魔女(だけど私はおそらく…)チラ
子狐「…キュウゥ」
魔女(答えの出る日はいずれやって来る)
魔女(その時がきたら私は…)
勇者「マナほんとに平気?」ペタッ
魔女「…」
勇者「熱あるんじゃない? ほんとのほんとに怪我してないよね!?」オロオロ
魔女「平気だから。確認したければあとでどうぞ」
勇者「ボ、ボクにもっと勇者としての力があれば…マナにこんな危険なことさせずにすんだのに」
魔女「じゃあ早くレベルあげたら」
サキュバス「そうそう!それが一番!」
勇者「うう…」
傭兵「とにかくキャンプ地に戻るぞ。ヒーラちゃんきっと心配してる」
勇者「うん!」
【キャンプ地】
僧侶「うわあああん」ギュッ
僧侶「心配したんですよぉー」ギュウウ
僧侶「あっちのほうで…ぐすっ、とっても怖い気配がして」
僧侶「ユッカ様の気配も消えちゃうし…ぐすっ」
サキュバス「あ、それは魔隠しの陣に入ってたから」
僧侶「あっ、あなた! どうしてここに!」
サキュバス「あたしだって今回は難を逃れるのに協力してあげたんだからいいじゃない!」
勇者「ボクとキミ何もしてないよ…」
傭兵「キュウ…お湯だぞ」
チャプ…
子狐「…キュウゥ」
ポンッ
妖狐「ん…なんじゃ。ワシはいままで一体」
傭兵「効果抜群だな」
妖狐「おう、おぬしら。はて、あの子龍と剣使いはどこへ行ったのじゃ」
傭兵「覚えてないのか…」
魔女「あなたが撃退した。ありがとう」
妖狐「そ、そうじゃったか! ふはは」
妖狐「なんての…うすうすわかっておるんじゃ」
妖狐「霊泉で高まった力をワシは扱いきれんかった…じゃろ?」
妖狐「うぐぅ…またやってしもうた」
魔女「…」
妖狐「すまん。おぬしらを助けようとしたはずが、迷惑をかけた」
妖狐「本当にすまん!」ガツン
傭兵「頭をあげろ。もう終わったんだ。気にしちゃいない」
妖狐「知っての通り、ワシは化け物に変化できる」
妖狐「まぁいまの姿も変化の一つなんじゃが、まさかアレになってしまうとは」
妖狐「面目ない…ほんのすこし大きく化けて子龍を脅かすだけにするつもりだったのじゃ」
僧侶「なんです? なにがあったんです??」
魔女「…」なでなで
妖狐「!」
魔女「あなたのおかげで助かったことにはかわりない。御礼のなでなで」
妖狐「おぬし…まさかワシの妖気を…?」
魔女「討伐報酬としてもらっておく。あのおぞましい術も私が全て吸い取った」
魔女「だからもうあなたは大丈夫」
妖狐「な、ならぬ! あんなもの人間の小娘が耐え切れるものではないぞ!」
妖狐「よいか、あれは超変化術! 発動したものを破壊の神獣へと変貌させる禁術じゃ」
魔女「私はあなたほどの魔力をもってないから使おうにも使えない」
魔女「発動の条件を満たしていない。詠唱も知らない」
妖狐「…じゃが」
魔女「…」
妖狐「…昨日からおもっておったが、おぬしは何者なのじゃ」
魔女「あなたが言ったとおりただの人間の小娘」
魔女「お風呂入ろ」ぬぎぬぎ
傭兵「おわぁこら! 急に脱ぐのやめろ」
勇者「ボクも!」
傭兵「…っ」
サキュバス「わーいあたしも」
僧侶「…」ジロリ
サキュバス「ふ、ふん! べー、だ! ケチ!」
サキュバス「あんたたち次からは気をつけなさいよ! 死んだらだめよ!」
僧侶「余計なお世話です! ユッカ様の呪いを解いて早く消えてください!」
サキュバス「あ! あとあんたはムカつくけど一応祝福しとくね。おめでと!」
僧侶「なっ!?」
サキュバス「これで神に見放されて聖魔法が使えなくなってたらな~…なんて?」
僧侶「ちょっ!」
サキュバス「そういうわけでもないのね? くすくす」
僧侶「も、もー!! あっちいってください!」
傭兵「すっかりいつも通りだな」
傭兵「今回もまたマナに助けられちまった…」
傭兵「俺ってかっこ悪い。なんのための剣だ」
傭兵「なぁ、ありがとなマナ」ぽんっ ぽにゅ
傭兵「…ぽにゅ?」
魔女「……」
傭兵「…あ」
魔女「…女子のそこをなでるのは良くない」
勇者「そ、ソル…マナにまで…うううエッチ」
傭兵「おわっ! す、すまん…そうだ、裸だったんだ…ばかっお前らもっとあっちの方で入ってこい!」
魔女「背中の傷、みてあげるから一緒に入ろう。薬がある」グイッ
勇者「服脱がせてあげる~!」
傭兵「やーめーろー!」
僧侶「…! わ、私も…! ずっとひとり蚊帳の外は寂しいので! あぁでもこんなお日様の高いうちからなんて…」
妖狐「気にせんでええ。ここは風呂じゃぞ」
傭兵「ちょっと休憩したら今日こそ馬車を戻すからな! わかったな!」
妖狐「あ、すまんすっかり妖力切れじゃ。回復するまでもう一日まってくれ」
傭兵「なにぃ~!?」
勇者「わーい今日もみんなで一緒にお風呂だー」
魔女「…」ギュ
傭兵「か、勘弁してくれ…」ガク
第15話<山脈温泉紀行>おわり
《次話》
第16話<強くなりたい!>