161 : VIPに... - 2010/07/19 15:59:45.01 1IWYsnoo 1/37

何レスかお借りします

殺人事件により既存のキャラの死亡表現及びグロ注意。
前篇です。

元スレ
【禁書目録】「とあるシリーズSS総合スレ」-10冊目-【超電磁砲】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1279299041/
▽ 【禁書目録】「とあるシリーズSS総合スレ」-11冊目-【超電磁砲】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1280324048/

162 : VIPに... - 2010/07/19 16:00:26.95 1IWYsnoo 2/37

やぁ。
先に言っておく。
これは単なる戯言だ。そして全部が嘘、なんだ。

偽善者「みーくん」と、限りなく青色のサヴァンにも似た「いーちゃん」のお話。
この物語に、髪の毛から服まで真っ赤の、人類最終とも言われる、俺の同類「まーちゃん」は出てこない。
これは小さな小さな学園都市の人間どもの騙し合いのお話なんだ。

さて、そろそろ始めようか。

これは昔々、俺上条当麻ことみーくんと、いーちゃんことインデックスが巻き込まれた、とある殺人事件の話だ。

そう、あれは確か超能力者の御坂美琴とその妹とさらに妹が、「戯れ事」で豪華客船を一隻まるまる借りて行ったんだよな――



   とある船上の首無事件<クビキリサイクル>  幻想殺しと銀色ライブラリー


163 : VIPに... - 2010/07/19 16:01:15.11 1IWYsnoo 3/37

その日、俺とインデックスは御坂に誘われて(というか一方的に「ああああんた、き、来なさいよね!」とか言われたんだが)そのパーティに参加する事になった。

メンバーは俺ら以外にももちろん(というか俺らはサブに決まってる、)いて、超能力者全員(ただし第五位と第六位は都合がつかなかったらしい)と、常盤台のおえらいさんの孫と、御坂自身の近しい人々、だ。
俺は超能力者ではないしおえらいさんの孫ではない。となると消去法で「御坂自身の近しい人々」として迎えられた訳だ。

ちなみにインデックスは例外中の例外で、俺的に一人にするのはアレだったから連れてきた。
妹という事で通したが、「あんたにこんな銀髪の妹なんていたっけ……?」と御坂にかなーり怪しまれた。いかん、危ない危ない……。

で、本来ならば楽しい楽しいパーリィの始まりのはずだった。
実際そういう娯楽目的で俺らは来た訳だし。



……御坂美琴の妹が、首無し死体で倉庫から見つかるまでは。



「まったく、これは不幸というか不運というか。 誰か嘘だと言ってくれよな……」

俺達は今回の依頼人……もとい今回の船上パーティ主催者、御坂美琴に頼まれて動いていた。
被害者は美琴の妹で、打ち止めの姉。
俺は名前を知らないから、以降は御坂妹と呼ばせてもらう事にする。
……そもそも、俺はその御坂妹の顔も知らない訳ですが。
今回初めて会う訳だったのに、まさか首無しでご対面とは……さすがです。
……そんな冗談を言ってないとやってられないぐらいひどかったって事ですよ?
ちなみに当時の状況を言っておくと。

船はすでに出港していて、入ろうにもけっこうすごい警備があるから、新規の潜入はそれこそ魔法使いじゃないと無理で。
俺達ゲストが船内で一番でかそうな大広間で豪勢にパーティをしていて。
御坂と妹の妹、打ち止めは俺と一方通行にそれぞれつっかかって(?)いて。
御坂妹はパーティに出るためのお色直しを、船内にある自分の部屋でしていて。

あんまりにも妹が来るのが遅いから、御坂が迎えに行くと言いだして。

世間話していた俺とインデックスも、ついでに行く事になって。

部屋の前まで来て、鍵のかかったドアをノックしても返事がなくて。

何かあったのかと気になったので、そこら辺をナンパでうろついてた第二位を捕まえて。

第二位と俺と二人掛かりでドアを体当たりで開けて。

そして俺達の目の前に広がっていた光景は。


首が無残にも奪われた、御坂妹の服を着た死体だった。

164 : VIPに... - 2010/07/19 16:02:29.64 1IWYsnoo 4/37

血が首から噴き出したと思われるような、壁や床の汚れ。
ぐったりと、壁にもたれかかるようにして肉塊となっている『それ』。

御坂は思わずそこで吐いていた。そりゃそうだ、身内の惨殺死体なんて見たくねぇし。


で、今。

人が死んだ……いや、殺されたという話は一瞬にして広まり、今この船はちょっとしたパニック状態。




ちなみに、容疑者と思われる(というか人を殺せる程度の能力を持った人間)は船内に何人かいる。
一応船の中だから並の人間は逃げ出せない……。ので、とりあえず大広間に固まってもらってる。


俺は、一通り現場を見た所で、その情報を整理する為に、前部へと歩きながら『有用な探偵助手』のインデックスと話していた。


「……インデックス、じゃなかった。 いーちゃん。」

「何? とう……じゃなくて、みーくん。」

俺とインデックスは現在、とある「戯れ事」として、二人きり……いや三人きりの時はあだ名で呼び合う事にしている。よく忘れるけど。
インデックスはいーちゃん。 俺はみーくん。 もう一人のあいつがまーちゃん。
ちなみにいーちゃんというのは『戯言シリーズ』とやらの主人公の名前でもあるらしい。
後でインデックスにそこから取ったのか?と聞いてみたけど、『もし私が短髪だったらみーちゃんだよ?』と言っていた。なるほど、偶然のようだ。




                                                         ・・・・・・・・・・・
……ちなみに、残りの三分の二のあだ名が嘘つきみーくんと壊れたまーちゃんと同じのは、偶然ではない。



まぁ、それはいつか話すとして。

165 : VIPに... - 2010/07/19 16:03:19.80 1IWYsnoo 5/37


……ま、そもそものこれの発端は。

あの、正真正銘俺にとっての人類最悪の遊び人『嘘つきみーくん』が大量のライトノベルを俺の家に持ってきた事なのだが。



ちなみにその『嘘つきみーくん』の方は正真正銘の義妹の、ある意味嗜好が『壊れたまーちゃん』に肩もみしてもらったり(自主規制)したりしてるらしい。


……いや、嘘ですよ?嘘ですからね? いくらあのみーくんことシスコン軍曹でもそこまで落ちてないし手を出してないと信じてるよ上条さんもッ!!
これが例え幻想だったとしてもぶち殺さないでね!俺の右手は光って唸らないからね!


「これが終わったら、どっかいきたい所あるか?」

「!? い、イタリアでオルソラの料理を食べたいかも!」

ガバッ!と思い切り首を回転させて向き直るインデックス。
喰いつきはええよ。 後オルソラはもうロンドンへ引っ越してるよ。
何となく元気を出させるためについた戯言(冗談)なんだぞ。 行かないからね!?

「……それはさておき、どうしたものか。」


迷宮入りしそうな思考の途中、突如目の前が開けた。外に出たようだ。
船内の陰惨な事件とは正反対に、空は気持ちいいほど晴れていた。


166 : VIPに... - 2010/07/19 16:04:53.59 1IWYsnoo 6/37

外へ出ると爽やかな向かい風が吹いてきた。うーん、気分がいい。
そう思いながらさらに甲板へ出ると、舳先の方から声がかけられる。

「やぁ。名探偵さん。」

そう言いながら突然俺に話しかけてきた好青年。茶髪で笑顔がまぶしい爽やかな野郎だ。

「……誰だっけ?」

「やだなぁ上条さん。 もう忘れたんですか? さっき会いましたよね?」

「……すまん、本気で覚えてないッ!」

失礼極まりない事をしてんじゃねぇよ、俺。
こればかりは殴られても仕方ない。 俺は覚悟して五体投地した。

「……とうま、この人パーティで紹介されてた人だよ。 確か偉い人の孫だって」

何でも覚えているインデックスが助け舟を出してくれた。

「そうです。 僕は海原光貴と言います。 以後お見知りおきを……」

何とも物腰が丁寧な人間だ。しかも終始さわやかな笑顔ときてる。惚れちゃいそうだぜェ海原光貴ィイイイ!!


そんな冗談はともかく。


「……何で俺が名探偵って知ってる訳?」

「だって、事件について調べてるじゃないですか。 それに助手がついています。 これは探偵でしょう?」

「いやそうだけどさ……」

ホームズだが何だかの見過ぎじゃねーのか。 というか俺が調べてるのを知っているってお前……。

「そんなあなたに飛びきりおもしろいニュースを教えてあげますよ。」

「おもしろいニュース……?」

「えぇ。 これは捜査に役立つと思います。」

海原はそう言って、それを告げる。



「連続殺人鬼――火野神作がこの船に侵入してるようです。」

167 : VIPに... - 2010/07/19 16:05:41.81 1IWYsnoo 7/37


「……ひの、じんさくって……あの、28人殺しの?」

連続殺人鬼。 火野神作。 侵入。 首無しの御坂妹の死体。 犯人は。

まさか。

「……どうです? 素晴らしく推理に使えそうな情報でしょう?」

にやにやと。自分が全てを知ってるかのような笑顔。
……はぁ。
何だかこいつの笑顔に裏がありそうな気がしてきたぞ。


「……情報提供ありがとうゥ! と言いたい所だが、何で知ってる訳?」

「いやぁ、僕の立場を使って、です。 緊急事態ですし、ね。」

本当はこうやって権力を振りかざすのは嫌いなんですけど、と付け加えて。
何のフォローにもなってねぇのは気のせいか。

「まぁ、がんばりましょう。 お互い、ね」

そう言ってその爽やか野郎は爽やかな海と空と爽やかな風の中、爽やかスマイルを浮かべて爽やかに手を振って爽やかに分かれを告げた。
……って俺何爽やかを連呼してるんだ。

隣のインデックスに「とうま、爽やか6回ぐらい言った?」と聞かれた。口に出てたみたいだ。恥ずかしい。




とりあえず甲板を後にする。どうせ誰もいないし、気分転換は終了だ。推理推理。
行く所もないし、パーティ会場だった大広間へ向かう。

「やっぱり上条さん的にはその火野神作ってのがやったのかなぁと思うんですが、インデックスさん的にはどうですか?」

「んー。私としてはやっぱりその線は薄いと思うよ。 何よりそんな人が侵入するって事はけっこう騒ぎになると思うし。」

「あー…… そりゃそうだよなー。」

この船の警備はけっこうすごい。
何てったって世界最強のセコム(そう、例えるなら大天使ウリエル)レベルだ。 敵意を持つと天罰術式でバッタバタ倒れるよ!(ヴェント的な意味で)
……ってのは冗談だが、とにかくすごい。 それでその火野がひっかかったって事はまぁありえるとして……。

168 : VIPに... - 2010/07/19 16:06:52.14 1IWYsnoo 8/37

「何で海原は知ってんのに、他の奴らは知らないんだ? というか公表しないんだ?」

俺としては、やはり船内に犯人が元々潜入していた説を推したい所なんだが。

「……惑わすための嘘、なのかも?」

なるほどー。つまり俺らは見事に海原の術中に嵌まってる訳だ。
……でもそんな事する理由はあるんだろうか?

「でもさ、何の為だよ? あいつが犯人な訳?」

「んー…… どうだろ? だって短髪の妹が部屋にこもってる時に殺されたとしてもさ、その時みつきはいたんだよ?」

大広間で、レベル5と同様に客として、そこにいた。

「アリバイはある、って訳か。」

何これマジ迷宮入り。いや、あんな爽やか野郎は犯人だと言いたい訳じゃないけどさ。
やはり容疑者のレベル5勢が……? いや、決めるのはまだ早い。

「……はぁ、それにしても。」

「? どうしたのみーくん。」

「いや、別に……何というか、泣きたくなってきただけですよ上条さんも……あんな友達を持ってると苦労しますぞ」

「泣いても、いいんだよ? 私の胸を貸してあげるよ?」

「うわー、本当に泣いちゃうぞ? そんな風に胸を張られると、本当に飛び込むぞ? 黒子並にスリスリしちゃいますぞ?」

「……、前言撤回するんだよ」

ちょっぴりひかれたようだ。そりゃそうだ。
でも本当に「胸を貸してくれ」って言ったら貸してくれるんだろうな。
インデックスは何だかんだ俺に噛みついていても結局本質は「人を救いたい」というのがある訳だし。
……という事は、あわよくば胸にすりすり出来るのか?インデックスの、つつましそうな胸に……

……ってそんな変態な事を考えてる場合ではない。とにかく、とにかくだ。

「御坂の妹……つっても今は死体か……。 あれに何かヒントは残ってたか?」

事件だ事件。事件解決を上位に、性欲を下位に。

「ヒントというか、気になった事はあるんだけど。」

そう言って、一旦言葉を区切る。

169 : VIPに... - 2010/07/19 16:08:19.61 1IWYsnoo 9/37






「……まるで、『死後何日かたっていた』みたい」




「……何だそりゃ?」

思わず首をひねる。おかしい。だって御坂の妹が殺されたのは今日のはず。
……初対面だから、生きている姿は、見た事はないけど。

「……もしかして、あれ御坂妹の死体じゃないとか?」

俺の単なる思い付きの提案に、インデックスは割と真面目に考えてから返す。

「……その可能性もなきにあらず、って所だね。 首が無いから、パッと見じゃあわからない」

DNA鑑定できる奴なんてそうそういないだろうし、あれが御坂妹の死体とは限らない……という訳か。
死体なんてあんまり見たがらないだろうし、服さえあってればとりあえずごまかせるし。
そういえば、ここは今絶海の孤島状態だったけ。
それに、世の中には肉体変化やら魔術で変化する奴がいるらしいし。

「それなら、さっきの説明がつくけどさ、いーちゃん。」

「うん……やっぱりおかしいよね。 みーくん」


「「……本物の御坂妹はいずこへ?」」


あれが別人の死体でした。御坂妹は生きています。
だからといって、御坂妹が行方不明なのはそれはそれで困る。


……というかそもそも、萌え燃え殺人鬼火野たん☆(今即興で名づけた)は連続殺人鬼だ。
これ以上犠牲者が増えない、という保障はない。

170 : VIPに... - 2010/07/19 16:11:23.82 1IWYsnoo 10/37


「おい」

歩いていると突然声をかけられた。

「あ、お前は……、えっと、第七位……だったけ?」

「よく覚えてたな。 よっ。」

廊下の壁にもたれるように、白い学ランに旭日旗のTシャツに、鋭い目つきの少年がいた。
彼とは少しばかり、公園の自販機を巡るめく因縁が(中略)あったのだ。 いや、それは嘘です。
単にどっかの路地裏で吹っ飛ばしているのを見かけただけですって。
こうして船であうのは初めてだけど、あんまりにも見た目が色々とアレというか不良と言うか、とにかく強烈だったのでさすがの俺も覚えていた。

「お前も大変だな。」

「あぁ、迷宮入りしそうだよこっちは。」

「まぁ、根性出して頑張れよ。」

「おうー」

何となく笑ってそのまま通り過ぎた。

……どうやら俺が探偵として活動してるという事は割と知られているらしい。
なるほど、だから海原も………。 恥ずかしい。不幸だ。





次に、メルヘンウィングこと、垣根帝督に出会った。
そんな事を本人に言うとメルヘンチョップが飛んできたが。本人曰く、気にしてはいるらしい。

「どうだ? 犯人捕まりそうか?」

「いやー、それが迷宮入りしそうで……」

「おいおいそれは困るんだよ。 俺そのせいで動けねーんだよ」

「? ていとく、今動き回ってるよ?」

「あー、これぐらいは自由許されてるの。 甲板とかそういう脱出できそうな場所に行くのはダメ」

大変だなぁ、容疑者。 でも正直レベル5ならここにいながらも能力で脱出できそうだけど。

「ちなみに、お前が解決するまでこの船は陸に戻らねぇらしいぜ」

………えっ?

171 : VIPに... - 2010/07/19 16:13:01.88 1IWYsnoo 11/37

「……うぉおおええぇえ!? 初耳だぞそれ!? 俺はあくまで海上にいる間の繋ぎだって……!」

「そそそうだよ!? 外部のすごーい根性で解決しちゃうすごい人呼ぶっ、て言われたんだよ!?」

「ははは。てめぇら騙されたんだな、あの嬢ちゃんに。」

そんな俺らの必死の言葉を笑い飛ばす第二位。
ぐぅの音も出ない。 くやしいのうくやしいのう……。


「ま、精々俺らの為にも自分の為にもがんばれよ、上条♪」

そう言いながらメルヘンダッシュ(後で股間蹴られた)でどっか行く垣根。

……何か大分疲れた。寄り道せずに大広間に戻ろう。そうしよう。




船はかなり広いため移動にかなり時間がかかる。
どうやら人が死んだという事で、周りはちょっとした……いや、かなりの騒ぎだった。


……俺はもう人がそうやって不幸になるのは慣れてるけど、他人は慣れてないんだよな……。


大広間につくと、美琴がいきなり抱きついてきた。……いや、そういうハグ的な意味じゃないですよ?
あんまりにも異常事態だったので、何が会ったのかと顔を覗きこんでみると、恐怖によって顔が思い切り歪んでいた。
普段ならこういうラッキースケベ(命名土御門)があると噛みついてくるインデックスも、今はそうすべき事態ではないと分かっているようだ。

御坂の後ろ……大広間の中に視線を移すと、くやしそうな顔をした垣根や、泣きじゃくる打ち止めをあやす一方通行など、異常事態という事をそれとなく伝えてくる光景が広がっている。


犠牲者が増えたのかもしれない。……それは俺としては最悪の状況な訳で。
とりあえず御坂を落ちつかせて、近くの椅子に座らせて事情を聞いてみる事にする。

嗚咽で聞き取りづらかったが、やはりというか何と言うか。「人がまた死んだ」、という事だった。

「……30人目の犠牲者か。」

「……殺人鬼が、船にいるって本当なのかもね……」

犯人の心当たり……とは違うが、火野神作とかいう連続殺人鬼ならこう短時間で人を殺せるような気もする。

「な、何よ……? 犯人、み、みつかった、わ、け……?」

ヒック、と時折身体を震わせながら、俺を見上げる御坂。
顔には涙はつたってない。 見上げる前に急いで顔を拭いたのだろう。

「……いや、まだ確定じゃないし、そいつが犯人だと俺的に捕まえるのめんどくさいなーって。」

172 : VIPに... - 2010/07/19 16:15:49.11 1IWYsnoo 12/37

「……ところで短髪、その、二人目の犠牲者って誰なの?」

インデックスが視線を会わせるために膝を曲げる。

「……だ、だ」

御坂は、そう言いながらとある方向へ指をさす。



「……だ、第七号室でが…… ひ、ひとが、死んでたの……」


「……えっ?」



ドタドタと、急いでその削板の部屋へ駆ける。
ドアを思い切り開くと、そこには。




先程まで、俺達と会話をしていたはずの少年の、首無しの死体があった。




その少年の首から上はもぎとられたような断面で、

その少年の服はまるで一昔の日本を彷彿させるような旭日旗で、

その少年の白かったであろう学ランは首からの血で真っ赤に染め上げられていて、

その少年も壁にもたれるように死んでいた。


その少年の名前は。





「そ、削板……!?」




173 : VIPに... - 2010/07/19 16:16:25.81 1IWYsnoo 13/37


「……とうま、これ、どういう事なんだろう……」

口火を切ったのはインデックスだった。

「…俺にも分からん。 というか、さっきまで、ちゃんと生きてた……よな?」

「な、なんで、さ、こ、みんな、し、じゃう、わ……」

先程から嗚咽が止まらないのか、言葉を詰まらせ、下を向いて顔を覆う御坂。
俺には理解できないが、今日妹を失い、そして今、自分が招待した客まで殺されたのだ。


「……短髪、さ、戻っていいよ。 こっから先は私たちがやるから、ね?」

まるで保母さんのように(修道女だからか)同年代の御坂をあやすインデックス。
そう、インデックスはそういう奴なのだ。普段は俺に噛みついたりするけど。

「……お願い、犯人を捕まえて、ね?」

涙を拭きとったのか、それともインデックスのその態度に安堵したのか。
御坂は取り繕ったような、偽物の笑顔をして、その場を後にした。


「……さてと、インデックス、この船の全員の為に、犯人を見つけるぞ。」

「うん。」


幻想殺しでも、戯言遣いでも、今はどちらでもいい。
むしろ、誰かがこれは嘘だといってくれた方がいい。
そうしたら、俺はこれは戯言だ、ただの幻想だと言えるのに。



   前半戦   終了。

174 : VIPに... - 2010/07/19 16:19:35.91 1IWYsnoo 14/37

主な登場人物


上条当麻    幻想殺し
インデックス  禁書目録の少女

御坂美琴    主催者
御坂(妹)     妹
打ち止め     妹

一方通行    ≪超能力者≫序列第一位
垣根帝督    ≪超能力者≫序列第二位

麦野沈利    ≪超能力者≫序列第四位

削板軍覇    ≪超能力者≫序列第七位

海原光貴    理事長の孫

火野神作    殺人鬼

175 : VIPに... - 2010/07/19 16:20:41.87 1IWYsnoo 15/37

という訳で 前半戦 終了です。
タイトルでバレてるかもしれませんが、出来たらそこは触れないでほしいな……。
続きは今夜~来週までには投下したいと思ってます。




216 : とある船上の首無事件<クビキリサイクル> - 2010/07/30 20:59:31.91 FGTcHfYo 17/37

前スレ、162の続きです。

殺人事件 グロ描写? 注意。


あらすじ~

御坂姉妹が船上パーティ開催して、呼ばれる。(超能力者勢と、理事長の孫、そして上条と禁書)

だが、御坂妹が部屋で首をもがれて死んでいたッ!

色々と探る。海原が火野が侵入したかも?という情報をくれる。

大広間へ戻る。 と、削板が殺されていたッ!←イマココ

217 : VIPに... - 2010/07/30 21:01:59.77 FGTcHfYo 18/37



      後半戦      息する者≪遺棄する物≫


甲板にて、俺は一人風を浴びていた。

「とうとう二人目ですね。」
海原がそう言いながらこちらに来た。
相変わらず、爽やかな笑顔をひっさげて。

「皮肉ですかぁ? 上条さんだって今回の事は止められなかったのはつらいんですよ」

はぁ、とため息を吐く。 ため息を吐くたびに幸せは逃げていくというが、今不幸のどん底だから逃げる者もない。

「インデックスさんはどうしたんです?」

「ん? 今容疑者に話聞いてる。 あいつほど適任はいないからな」

あいつはどんな些細な事でも見逃さない。歩く監視カメラだよな……。

「そうですか……。 死体、見とかなくていいんですか?」

「……はっ?」

「だから、死体。」

「は? 見たけどさ、 お前、何言って……」

海原は相変わらずの笑顔だ。
何となく、その爽やかフェイスに何かがあるように感じられたのだが。

「それに、インデックスさんから離れていいんですか?」

「おい、何が言いたいんだよ……?」

「多分、インデックスさんは犯人とまではいかなくても、トリックぐらいは分かってるんじゃないんですか?」

「そりゃあいつならそうだろうけど、それとお前の言う事と何の関係があるんだよ?」

「インデックスさんが危ないですよ?」

「あぁそうかもな……って、はぁ!?」

さり気に何か重要そうな事混ぜるなよ爽やか三組。

「冗談です。」

相変わらずの爽やかフェイスだ。つかこいつ爽やかの仮面をかぶってんじゃね?そうじゃね?

218 : VIPに... - 2010/07/30 21:03:15.51 FGTcHfYo 19/37

「………お前犯人じゃねーの? ポーカーフェイスで殺してそう。」

いや、ポーカーっていうか爽やかフェイスだけど。

「僕じゃありませんよ。 ……ああ、火野神作の情報提供で疑われてるんですかね。」ウムゥ

うっ。 何か悩ましそうな表情するな。 気持ち悪い。

「まぁそれはいいんですが、推理がんばってくださいね。」

そう言って海原は船内へ戻る。
言いたい事だけ言いやがってェ……。

でもインデックスが火野やら犯人サマやらに襲われる事はないと思うんだがなぁ。
レベル5という軍事兵器がいる訳だし。あいつらが手を出す理由はないはず。助手が殺されたら容疑者の疑いはふかくなる訳で。
……以上の理由からあいつらの所にいる限りは大丈夫だろう、と上条当麻は考えますゥ!。

………ま、これ。 前提条件が、【レベル5は犯人ではない】が必要なんだけどな。

……アレー? 何だか疑わしくなってきたぞー? 上条さん的に疑わしいぞー?
第一位から第四位までもれなくついカッとなってカカッと人殺しそうだぞー?

……やっぱり戻ろう。 何かインデックス失礼な事(ないとは思うが)を起こして、カッとなっているかもしれん。

急ごう。



――この時の悪寒が、まさかあんな事になるとは思ってなかった。

219 : VIPに... - 2010/07/30 21:04:44.61 FGTcHfYo 20/37

===
「あら、上条じゃない?」

そう言って茶髪のウェーブかかった美しいオバ……じゃない、美人のお姉さんと廊下ですれ違った。

「あ、どうも…… ってうげぇ!?」

そのお姉さんはよく見ると(というかよく見なくても)手にサランラップを持っていて、それで足で踏みつけている垣根の顔をラップでぐるぐる巻きにしていた。 
何だろう、何のプレイだろう。 垣根×麦野ではないのは確かだが。

「垣根……お前さ、何やってんの?」

「……! ……!」(しゃべれない)

「私がちょっとした制裁加えてるだけよ。」

美人のおねえさん――じゃない、麦野サマはそう言ってぐいぐいとさらに垣根を締めつける。

「は、はぁそうなんでせうか?」

「そうよ。」

さらっと答えられても。これがレベル5か……。

「何か変な勘違いしてない?」

「し、ししししてませんよ!?」

「ふぅーん?」

疑いの目が痛い。 麦野さんは原子崩しでレベル5! ただし視線で人も殺せちゃうっ!みたいなっ!?

「……ところで、」

「はいぃ!?」

麦野さンマジ真面目! な顔をして俺を見据えてくる。垣根?垣根はラッピングされてるよハハハ

「……ちょーっと気になったから調べたんだけどさ……。さっき殺されたのって、誰?」

「えっ? 削板は削板だろ? ナンバーセブン、削板軍覇。」

「いや……そういう意味じゃないけど。 何て言えばいいんだろう……」

人差し指をこめかみに当て、いかにも悩んでますポーズ。いいな、使えそう。オレも今度から使おう。

「あー…… こいつも何だけど、私は見てないのよ。 その削板って奴を。」

「生前の姿……って意味? でも俺は見たんだけどな。」

220 : VIPに... - 2010/07/30 21:05:33.82 FGTcHfYo 21/37

「そう? そうなのねーふーん」

「……何ですか麦野さん、その言い方はまるで「実は削板は前から死んでました☆ 俺が見たのは幽霊です☆」みたいじゃないすか。」

「いやいや、別にそこまで言ってないわよ。 というか一方通行も海原も見たーって言ってたし、偶然でしょうね。」

一人で納得する麦野。

「……というか、普通にあの時見たんじゃ?」

あの時、というのは大広間でスピーチとかしていたアレだ。

「いやー 私ちょっと考え事してたのよ。 ふーん、いたんだ。 という事はこのバカキネの使えなさがさらに強調された訳ね」

バカキネと呼ばれる第二位は、さらにサランラップの妖怪に進化していた。おお、こわいこわい。

「ま、このバカキネはいいんだけどさ、 火野神作が侵入したって本当?」

もうレベル5の耳に入ってたか……。

「あぁ、海原が言ってただけだけどな……。」

「なーるほど。 ふーん、おもしろくなってきたじゃない。」

指をコキコキと慣らす。 
……俺はこの時、第四位に狙われてるであろう犯人(=火野神作(仮))を同情した。

バカキネはモガモガと何か言いたそうにしていた。
麦野はそのたびに足でげしげしと踏む。

しかしこの状況……第二位が第四位に負けてるってお前……。
俺の不幸センサー(命名、俺)がここから逃げろと轟き叫ぶゥ!
ここにいたら自分も巻き込まれると轟き唸るゥ!

「垣根、がんばれよ」(キリッ

第二位がすごい未練がましい目で見つめてきたが、俺は残念ながら≪偽善使い(フォックスワード)≫なんだ。
助ける義理はない。俺は垣根を切り捨てて、そげぶダッシュ(この事件終了後、垣根が名付けた)で大広間へ向かう。


「………御坂の妹、か」

ちょうど第一の犯行現場となった場所で立ち止まる。
今更だけど、見ておくか。何かのヒントになる可能性はある。
「KEEP OUT」と書かれたテープをまたぎ、中へ入る。

「……失礼しまーす…… ってあれ?」

御坂妹の服(らしい)を着ていた死体が、消えていた。

221 : VIPに... - 2010/07/30 21:06:13.55 FGTcHfYo 22/37

「……誰かが動かしたのかな?」

死体って腐乱臭きつそうだし、誰かが耐えられなくなって収めた(我ながら物扱いとはひどい)のかもしれない。
普通警察が来るまでは事件現場をいじっちゃダメ!って教わらなかったのか。ドラマとかで。
……普通に考えて、「学園都市のドラマに常識は通用しねェ!(キリッ」という事なのかもしれないが。

証拠品ひとつもなかったので、現場を後にする。





大広間に入ろうとすると、一方通行が抱きついてきた。……っておい。
野郎に抱きつかれて欲情しませんからね!? という冗談はさておき……いや、冗談じゃないけど。
一方通行は俺に抱きついてきた、というか突進してきたのだ。
続いて、打ち止めがその後ろからさらに俺に体当たりをしかけてきた。ぐぇえ。

これだけなら俺はふざけんなと怒ってやったんだが。
二人の表情がそんなふざけたモノではなかったので怒らない事にする。

一方通行は何だか怒りやら何やらな表情で、打ち止めは今にも泣きそう……っていうか泣いていた。


「三下ァ、 覚悟しろォ」

おいおいいきなり上条さん死亡フラグですかッ!?

「……ミサカはミサカは、哀しくて涙が止まらないよ、って現状報、告、してみたr……グスン」

ああ何で泣くんだよ!? 一方通行に殺されるゥ!?


とりあえず二人を引きはがす。いや、俺からだよ? 二人の仲を引き裂く訳じゃあないからね。
別に俺『通行止め』が嫌いな訳じゃないから。……推してる訳じゃないけど。

「で、何があったんだよ」

俺未だに広間に入らせてもらってない。廊下でタックルですよ? どういう状況なんだよ……。

「……三下、あの修道女だがよォ」

修道女……、まぁ普通に考えてインデックスだよな。
うん、で?



   「……死ンだ。 首が斬られた状態でなァ。」


222 : VIPに... - 2010/07/30 21:07:06.65 FGTcHfYo 23/37

「………はっ?」

頭が一瞬白紙になった。

インデックス、人が死ぬ。 このワードは俺にとってもかなり身近なモノでもある。

何で、結びつかない? 何故、拒む、俺の  ――

全部がゆっくり動いているように見えた。全部が幻想的に見えた。


御坂が叫んだ。どうやら俺の名前を呼んだらしい。

垣根がサランラップを巻かれた状態でやってきた。麦野は垣根にサランラップを巻きながら、やってきた。

一方通行はそこにいる。打ち止めも。

だけど。

御坂の妹は来ない。もう、     来ない。

削板軍覇は来ない。もう、首は戻って来ない。


インデックスは、戻ってこない。

もう、二度と――?


「おい、しっかりしろォ!」

一方通行が俺の肩を突然掴む。
違う、俺が倒れそうになったのを支えてくれたんだ。
どうやら、あまりの『事実』に俺は気を失いそうになったようだ。

「……我ながら、馬鹿らしいよな…… さっさと犯人捕まえとけばさ、こうならなかったのに」

他にも言いたい事はあった。山ほど。
だけど、とにかく。
あいつらの為に、事件を解決してやろう。

解決するまで、死んでやらねぇよ。

「おい、一方通行」

「何だよォ、三下」

「俺を、現場まで、連れてけ。」

恥ずかしながら、俺の足はガクガクとひどく痙攣を起こしていた。歩けないのだ。

223 : VIPに... - 2010/07/30 21:08:06.50 FGTcHfYo 24/37

「……おーけーェ。 おい、クソメルヘン。 右肩持てよ」

「ん、あ、あぁ。」

垣根は一瞬とまどったか、何かすぐ理解すると(さすが第二位のメルヘン(笑)頭脳だ)俺に肩を貸してくれた。


「うっ……」

誰が言ったかその呻き声。もしかしたら俺かもしれない。

インデックスであっただろうモノは、食堂のテーブルの上で、仰向けになるように倒れていた。
修道服(歩く教会)が見事に血に染まっていた。
首から上は前の二例通り、なかった。

インデックスが死んだのに、こんな冷静に見てるなんて、感覚がマヒしてるのかもしれない。

「………こりゃ、ひでぇな。」

垣根はそう言って目を細める。人の死に慣れた目だ。

「……誰が初めに発見した?」

「……私よ」

御坂が名乗り上げる。
……そういえば、削板の時も妹の時もこいつだったっけ。


「皆さんどうしたんですか?」

いきなり爽やかな声が後方から聞こえた。
あぁ、海原か。振り向かなくても分かるぐらいだよこいつの爽やかっぷりは。

「あァ オマエか海原。 見ての通りだよォ」

一方通行の知り合いだったらしい。 世界不思議発見。

「へぇ、また首がないんですか?」

「犯人狂ってるよなぁ。 ……ま、暗部の俺が言えた事じゃねぇけど。」

今度は垣根(※ ただしラップを巻いている)。 アンブ? 何の事だろうか?
「しかし、犯人はどうしてこんな事したんでしょうね?」

相変わらずの爽やかフェイスだが、すごくイラつく。

まるで、俺を嗤ってるみたいで。

「……まるで、人形みたいに首をもいで。」

224 : VIPに... - 2010/07/30 21:08:43.63 FGTcHfYo 25/37


――人形?何が……――



あ。

そういえば、 

何で、皆首がもがれてるんだ? 普通に殺せばいいのに。
首を持っていく必要なんて、ないはずなのに。

犯人が猟奇的殺人鬼だったから?

違う。

チェス台を ひっくりかえせ。

リスクを犯すようなことは 普通しない。
必要だったんだ。

   首をもぐ必要があったんだ。


人形は、頭部を変えてしまえばキャラクターも変わってしまうのがほとんどだ。
人の形をしてる以上は。 それは人にも当てはまるのではないのだろうか?
死人に口なし。見た目さえ誤魔化せば、どうにかなる。

だからもいだ。

再利用する為に。

それこそ、着せ替え人形みたいに。



       ≪クビキリサイクル≫ か……――。


……そうか、だから。だから、か。




「……犯人が分かった。」

そういうと、皆が一斉に振り向く。

225 : VIPに... - 2010/07/30 21:09:42.97 FGTcHfYo 26/37

「……犯人が分かった。」

そういうと、皆が一斉に振り向く。

「誰だよ一体?」

相変わらず肩を持ってくれる垣根がそう問いただす。(※ ただしラップを巻いている)

「……それにはまず、死体を確認しないとな。」

垣根と一方通行から腕をはなし、一人でインデックスの死体の所へ向かう。

「おい、もう大丈夫なのかよォ?」

「大丈夫だ……。」

だって。俺の読みが正しければ。
これはインデックスの死体ではないから。

俺は食堂の、インデックスの死体に近づいた。
後ろの麦野が「顔色悪そうだけど、本当に大丈夫なのか?」と心配してた。
見えないが、海原は相変わらず爽やかフェイスだろう。
御坂は、     。

ぐいっ、と脇の下に手をつっこみ。
倒れこんでいた死体を持ち上げてみる。

――やはり、これはインデックスではない。

ポーズのせいで分からなかったが、完全記憶能力がなくても分かった。

「身長が違う」のだ。
インデックスよりも10cm程高い。

そして。
削板。 御坂の妹。 

御坂妹の死体の紛失。 数日経過。

  全ての死体の共通点は。 首無し。

何となく、繋がった。
完全ではないけれど。

いや。これで十分だ。


「犯人が分かった。」

俺は死体を再び戻し、後ろを――一方通行達の方を向く。

226 : VIPに... - 2010/07/30 21:10:25.22 FGTcHfYo 27/37

「犯人は


         御坂美琴と海原光貴 お前たちだ。」


「………えっ?」

あっけにとられたような顔をする御坂。

海原は相変わらず、ただ笑っていた。

垣根が「……第三位が?」という意外そうな眼で御坂を見る。
麦野は嘲笑うように。一方は睨みつけていた。




「……簡単な事だよ。 動機はしらないけどさ。」

誰も何も言わないので、とりあえず推理の過程でも言っておこう。

「御坂が妹を事前に殺した。 ――打ち止めが知らないうちだから、このパーティが始まる前かもな?」

御坂は何も言わない。否、言えない。
仕方ないので、続けることにする。

「とにかく、自分が疑われる可能性を減らすために別の犯人がほしかったんだろうな……」

「そこで。 海原も利用して俺に嘘を吹き込んだ。他の人間にもな。」

まぁ俺が海原を疑う理由は、あの爽やかフェイスとインデックスが危ない、と甲板で言った事が三割ぐらいあるのだが。
その海原も相変わらず爽やかフェイスのままだ。本当に犯人な気がするぞ。

「…火野神作っていうのは、連続殺人鬼だ。 だから、連続殺人を行ったようにすればさらに疑いがそっちに強まる。」


「……だから、削板軍覇を殺した、っていうの?」

そう疑問を投げかけたのは麦野だ。

「そうだが、殺してはないと思う。」

「はっ?」

意味不明よ?とでも言いたそうな顔をする麦野。

「……言ったろ、「連続殺人を行ったようにすれば」と。 実際は殺してないと思う。」

このだだ広い船の中に監禁しているか…、もしくは元々いなくて、パーティの時は誰かの変装かも……と付け加えておく。

227 : VIPに... - 2010/07/30 21:12:22.09 FGTcHfYo 28/37

「なるほどねぇ…… 確かに変装なら、「肉体変化」があるから……」

うんうんと納得する超能力者24。……というか垣根はいつまでサランラップ身体にまいてるつもりなんだろう。

「……ねぇ、カミジョウ。」

いつの間にか、俺と死体の近くにいた打ち止めが言う。
その視線は定まらず、これが夢だと信じたいような、そういう恐れを抱いた表情だった。

「お姉さまが犯人って、 ソギイタが殺されてないって、 どういう事なの?」

「……まずは、二つ目の質問から答えるか。」

説明を始める。

「簡単な事だ。 そもそも、ただの殺人鬼ごときにあいつは負けないだろ。」

「えっ? ただの殺人鬼って、え? 」

はてなマークを大量に浮かべる。 姉が犯人と言われた事と、もう一人の姉が殺された事などで混乱を極めていた打ち止めの頭はもう限界のようだ。

「あいつは囲まれてアイスピックやら拳銃やらを受けても「痛い」で済ますような奴だぜ?」
つまり、
「少なくとも―― 能力者でも聖人でもエリート軍人でもない、ただの一般人を殺す殺人鬼とは、格が違う」
つまり、
「あいつはたった一人の殺人鬼ごときには負けるはずがない。」
つまり。
「だから削板軍覇は死んでない。」

結果。
「少なくとも、ここにある死体と、削板の死体は偽物だ。」

……本当は単なるはったりだけどさ。

「だ、だったら、ソギイタは、ソギイタは、生きてるんだね!? ミサカは、ミサカは……」

犠牲者が減っていた事がうれしかったのか、そのまま泣き崩れる打ち止め。一方通行が持ち上げて背負う。てめーら親子か。

まぁそれより、・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
一方通行の、「てめー何嘘ついてンだよ、子供に嘘吹き込むな」な視線が痛い。視線で死にそう。


さて、削板がうんぬんのはったりの説明終了。
お次は強敵ミサカさんのご登場です!という事で。
視線を御坂に移す。 すごい挙動不審だった。

どうやら。 本当に犯人だったようだ。 
個人的には、削板の推理すら怪しかったのだが……。

228 : VIPに... - 2010/07/30 21:13:55.45 FGTcHfYo 29/37

「……なんで、」

御坂は右手を顔にあて、感情を押し殺した声で問う。

「……何でバレちゃったのかなぁ?」

その質問は、御坂自身へと向けていた。
顔をあげ、俺を見つめる。

その目はとても、「         」だった。

死んだ魚の目のような。
打ち止めがひっ、と言ってズボンを掴む。
垣根が憎たらしげに見る。麦野は舌打ちをした。

追いつめてるはずのこちらが気圧されそうだ。




「……せっかく、あの子を殺せたのにねぇ……?」

その言葉からにじみ出るのは、狂喜か、狂気か。


一方通行が、口を重たげに開く。

「どういうつもりだ、第三位。」

「どういうつもりも、何もないわよ。」

相変わらず、目に光はなく。

「……あの子が羨ましかったのよ。」

「……」

御坂は、続ける。
首をかしげ、笑うような顔のまま。

「私は第三位。 あの子はレベル3。」

「あの子は私と違って、輪の中に入る事ができるから、羨ましかったのよ」

「私と同じ中学校で、私と同じ名前を背負っていて、それでも私と違った。」

「私は、あの子みたいになりたかったのよ!」

演技じみた顔を貼りつけて。 御坂はそう言った。
と、あいつは何気なく、まるで目の前の物を掴もうとするように――腕を俺へと伸ばした。

229 : VIPに... - 2010/07/30 21:15:22.09 FGTcHfYo 30/37

「っ!?」

反射的に右腕を伸ばす。
目に焼きついた残像から、どうやら御坂は雷撃の槍を放ったようだった。

「……おとなしく、いもしない殺人鬼のせいにしとけばよかったのよ……」

どうやら、俺を殺す気のようだ。

「馬鹿っ、やめなさい第三位!」

麦野がそう言って御坂に蹴りを入れようとした瞬間、(女子の顔を殴ると定評のある俺だが、さすがにあの蹴りは殺しにかかってると思う)突然横合いから雷撃の槍が走った。


「お姉さまをフルボッコにするのはおやめになってください、とミサカは懇願してみます。」

230 : VIPに... - 2010/07/30 21:15:58.70 FGTcHfYo 31/37

「!?」

そちらへ一斉に振り返る。
そこには。


御坂美琴そっくりの少女がいた。

………って、はぁ?


「……第三位の、妹……?」

麦野が蹴りのモーションを解き、目の前の光景を信じられないという目で見ている。
垣根は常識が通用しねぇっとほざいてた割に、けっこう「ハァ?」という目で見ている。
一方通行は眉間にしわをよせており、何か今にも眉間からクレッセントビームが出そうだった。嘘だけど。
打ち止めは死んだはずの姉の姿に嬉しいのか哀しいのか、何も言えない表情だった。

彼らの反応を見た御坂の妹は、はっとしたように口に手をあてる。

「あ、あわ、失敗しました、ついお姉さまが蹴られそうだったので出てきてしまいました!」

「……はぁ?」

……ゾンビか? 確かに御坂の妹の死体はなくなっていたが……
でも、俺の推理だと……この後ろの、インデックスの歩く教会を着た死体が御坂妹のはずなんだが……。

と、俺が悩んでいると、御坂が妹の方へ近寄る。
ごそごそと御坂妹が後ろから何かボードのようなものを取り出して……。


そのボードにかかれてた文字は――。



「じゃーん、 ドッキリ大成功~! とミサカは今更ながら宣言しますッ!」



………。

…………。

………はっ?

……何だ、この耐えがたい沈黙。

231 : VIPに... - 2010/07/30 21:18:08.93 FGTcHfYo 32/37

「……何、だと……?」

律儀につっこんであげる第一位。

海原以外「ハァ?」な表情をしてる中、御坂が「いつもの顔」で説明する。

「……言ったでしょう、遊びだって。」

………。

………あー……。

……何だよそういう事か。

まさしく、俺が最初に言った通り。

「戯れ事」たった訳かよ。


急に力が抜けて、ひざから地面に崩れ落ちちまった。

「なかなかいい線いってましたよ、上条さん。」

いつの間にか爽やかイケメン海原が、俺の目の前にいて肩に手を置いていた。ホモかこいつ。

「確かに、僕と御坂さん、そしてその妹さんでこの殺人事件を起こしました。」

そして、大体はあなたが言った通りのトリックで三人殺してみせましたし、削板さんの変装も貴方が言った通りです、とも。

「今褒められても嬉しくねぇよ……。 結局俺は掌の上で踊らされてたんだろ?」

「えぇそうです。ですけど、」

そう言って一旦区切り、泣き崩れてたり憤慨してたり何が会ったのかメルヘンウィングを展開してたりする彼らを一瞥する。

「楽しそうじゃないですか。 たまにはこういうスリルもあってもいいじゃないですか?」

「俺はそのせいで結構ひやひやしたし、 ガチで死のうかと思いましたよ……ったく」

「ふふ、 平和すぎるよりも、少しぐらい死線をくぐるのもいいじゃないですか、たまには。」

「そんな事はどうでもいいんです。 インデックスも大方協力させたんだろうけど、さっさと解放しろよ。」

「はぁ。 いいですけど、今彼女御坂さんの服着てますけど?」

「………いや、別にいいけど?」

「そうですか。」

では呼んできますね、と言って食堂を出る。

232 : VIPに... - 2010/07/30 21:18:46.36 FGTcHfYo 33/37

この後、常盤台中学の服を着たインデックスと再開(といっても一日もたってない)したり、垣根のラップを解いてやったり、打ち止めが二人の姉にしかるというか八つ当たりというか……やりきれない思いを吐いてたり。

色々あった。
……確かに、あいつの言うとおり。たまにはいいのかもしれない、スリルも。
単に相対的によく見えるだけだし、日常がいい事には変わりないけど。けど。

久々に、楽しんだ気がする。

船内のボーリングで騒いだり、垣根のメルヘンウィングをどっちが早くもげるかという謎の遊びをしたり。
麦野先生のスーパーおしおきタイムもあったり。御坂も妹も打ち止めも楽しんでたし。
船内の人間まとめてリアル鬼ごっこ(麦野的な意味で)をしたり、スキューバダイビングとやらをしたり。

あぁ。 たまには悪くないな。



問題は、その旅行が終わってからだった。

ある日、削板に呼び出された。
場所は、とある廃ビルの屋上。

「オレがいない間に随分楽しんだな、根性無し。」

ついた早々そんな事を言われる。

「……いやいや、仕方なかったじゃないか。」

「何がだ、つか何だよ御坂も御坂だ………」

ブツブツ、と何か言ってる。
常人なら嫉妬などだろうが、彼の場合は根性が足りねぇだの何だのだ。

「……というかさ、」

「ん?」

「隣の人……だけど。」

俺は削板の隣の何だか見覚えのあるマジ巨乳の結婚適齢期すぎた……ゲフンゲフン、お姉さんを見る。

「ん。 お前に会う途中だっつったらついてきた。」

「……はぁ。 そうかよ」

相変わらず胸やら足やらを見せつけるようなエロい格好をしている魔術師、神裂火織が申し訳なさそうに口を開く。

「すいません…… 本当はちゃんと土産を持って出なおすべきだったのですが、」

「いいよ別に。」

233 : VIPに... - 2010/07/30 21:19:19.32 FGTcHfYo 34/37

「……すいません。」

削板が俺と神裂が知り合いだという事が分かると、何だか「うわぁ」という目で見てくる。
大方神裂が風俗関係者に見えたのだろう。人を外見で判断しちゃいけません。俺が言うのも何だけど。

「……オレは後でいいから、そこのねーちゃんから先に用済ませてくれ。」

「あ、はい……。 まずですね、上条当麻。」

「はいぃ!」

「力まなくていいです。……この書類を見てください。」

神裂はA4サイズの書類を一枚、俺に渡す。
何かしらの手配者なのか、一枚の証明写真のようなものが貼られていた。

「……誰だこいつ?」

褐色の肌に黒髪の少年なんて、俺知らないぞ?

「……学園都市に侵入したアステカ系の魔術師です。」

イギリス清教が出張る。 魔術師。 侵入。
これから引き出せる答えは一つ。 

「またかよ。」

どうせインデックス絡みだろう。

「またかよ、じゃありませんよ。 ……問題は実はそこではないのですけど。」

「はぁ?」

「どう説明すればいいのでしょう。 ……えっと、化けているんです。」

「化ける? あれか、肉体変化みたいな?」

「……えー、そうですね。 そういう事です。」

「で? もしかして変装されてて見つからないのか? 俺に分かる訳がないだろ……。」

「いやいや、別にあなた達に捜してほしいとは言いません。」

「何だそりゃ?」

「だから、もう見当はついてます。」

……じゃあ倒せばいいんじゃないのか? 俺いらないじゃん。
というかさっきから削板があくびしながら「話まだ終わらないのかよ?」という風に待ってる。

234 : VIPに... - 2010/07/30 21:20:15.67 FGTcHfYo 35/37

「……恐らく、一週間前から海原光貴、という少年に化けてるはずなのですが」

「………海原?」

待てよ。 一週間前といえばちょうど船でパーリィしていた時期じゃないか。
あの時、アステカの魔術師が侵入していたというのか!?

「くそっ、何で俺気付かなかった!?」

「……あなたが気が病む事じゃありません。 それに、もういいのです。」

「……は?」

「もう「誰でもない彼」から、学園都市に離れるというメッセージを受け取ったので。」

「はぁ?」

「気にしなくてもよいのです。ただ……」

そこで神裂は言葉をきる。

「ただ、もし一週間前に、殺人事件があれば自分のせいだと。そう言ってました。」

「………。」

あの死体。

そうか。  海原……いや、『誰でもない彼』が処分する為に、か。
魔術師は、人も殺す。 仕事だからという事もあるし、俺らみたいにカッとなって……かもしれない。
その死体の処分に困ったのだろう。
そこで、あいつは海原に成り、御坂にあの「戯れ事」を持ちかけたという訳か。
……死体は自分が用意します、妹さんとあなたが協力してくだされば、おもしろいエンターテイメントになります、とか言って。




「どういう事だよ? 殺人事件だの何だの物騒な事いいやがって。」

削板がいい加減しびれを切らして話に入ってくる。

「すいません。 話は終わりましたので、失礼します。」

ペコリ、とお辞儀をするとすぐさま屋上から飛び降りる神裂。
「なかなか根性あるな、飛び降りるなんて」とか削板が言ってたが俺は何もみてない。

「……で、お前何言おうとしてたんだよ。」

「ん? あぁそうそう…… コレだよコレ。」

235 : VIPに... - 2010/07/30 21:20:53.30 FGTcHfYo 36/37

削板は領収書をつきだしてきたのだ。

「?」

「? じゃねーよ。 俺の服代らしいぜ。」

「……えっ?」

「海原がさ、持って来たんだよ。 お前宛てだってさ。」

「………あぁ!?」

やられた。 海原め。最後の最後でッ!
死体に着せる為に用意した服代を、よりによって俺に請求しやがったァ!


誰か嘘だと言ってくれ。

俺はもぎとるように奪い、値段を確認する。一万以内だったのはよかったが、かなり家計に痛手を受けた。


「不幸だああああああああああ!!」

この行き場のない怒りを解消するためには、いつもの口癖を屋上で叫ぶしかなかった。

「ちなみに、土御門っつー奴が何か「事件巻き込まれおめでとう!」とか言ってたぞ」

「うわああああああああああああ!! ちくしょおおおおおおおおお!土御門ォ!殺してやるゥ!」

相変わらず、俺は不幸だった。


戯言終了。

236 : VIPに... - 2010/07/30 21:22:45.44 FGTcHfYo 37/37

という訳でsagaするの忘れまくりでした。全部殺すが入ります。
殺人事件は結局、前編の最初に書いたとおり殺人事件は「戯言で嘘」だった訳……でした。
失礼しました。

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