――― 某研究所跡・裏
ザッ ザッ
男「ふぅ、この建物って奥にこんなところがあったんだ」
ザッ ザッ
男(あれ?人がいる?)
男「あっ、こんにちは」
少女「??」キョロキョロ
男「あの~」
少女「!?」ハッ
少女「し・・・」
男「?」
少女「(神 ――ジジッ 皆 ――ジジッ か?!)」
男(なんだ? このノイズみたいなのは)
シーン
少女「失礼・・・ これで聞こえるか? というか見えるのか?」
男「はい?」
少女「・・・いや、なんでも」
男「あのー こんな所で何してたんですか?」
少女「・・・砂粒を数えていた」
男「砂粒?」
少女「それより・・・」
男「あっすいません、立ち入り禁止ですよねココ」
少女「・・・・・・」
男「こんな所にこんなものがあるなんて。 教会? 神社の様にも見えるけど」
少女「・・・・・・」
男「あの~」
少女「どうしてここに?」
男「下にある研究所跡の奥に回ったら汚らしい建物が上に見えたもんで」
少女「き!汚ない?」
男「あっ すいません」
少女「ま、まぁ確かに汚れて・・・ いるな・・・」キョロキョロ
少女「名前は?」
男「えっ? 男と言います。 ここの方ですか?」
少女「!?」
男「どうかしました?」
少女「あっ、か・・・ 神だ」
男「・・・はい? 神? あ~神田(かみだ)さん」
少女「違う、神様!」
男「・・・・・・」
少女「?」
ピロリン♪
神様「?!」
男「メール・・・ うへぇ~ これから部活ミーティングかよ」
神様「そ・・・ それは!」
男「じゃ、そろそろ帰りますので」
神様「ちょ、ちょっと待ったー!」
男「なにか?」
神様「そ・・・ その端末・・・」ワナワナ
男「端末?」
神様「見せてもらっても?」
男「スマホ? どうぞ」 スッ
神様「すまない、私は実体がないから触れないのだ」
男「は? 実体がない?」
神様「私に触れてみろ」
男「え? うそ何これ!」スカスカ
男「ホログラムか何か? 本体は奥の建物にいるの?」
神様「そんな安い技術と一緒にするな」
神様「其方の脳に直接姿を投影している」
男「そなた? 脳に直接?」
神様「まぁ本体があの中にあるという表現は半分当たっているがな」
男「もしかして幽霊?」
神様「失礼な、そんな非科学的なものと一緒にするな」
男「でも非科学的な物としか言い様がない気が・・・」
神様「それよりも・・・ そのスマホをもう少し上にかざしてもらっても良いか?」
男「あぁ、この位?」
神様「十分だ。それでは失礼して・・・」
神様「これは・・・ 間違いない」ブツブツ
男(この子、ちょっと痛いけど可愛いな)
神様「嬉しいことを言う、だが痛いと言う部分は心外だな」
男「えっ! 聞こえたの?」
神様「そうか、私とこんなに脳波パターンも近いんだな。 それで・・・」
男「ねぇ、そんなにスマホめずらしい? 持ってないの?」
神様「ん? 神だからな」
男「そうですか・・・」
神様「頼みがあるんだが、ブラウジングしても良いか? 5分、いや3分でも良い」
男「ブラウジング?」
神様「インターネットワーク、で通じるか?」
男「あ~ネット? 良いけど触れないのにどうやって? 奥にいるなら持って行くよ?」
神様「いや、このままで大丈夫だ」
男(うわっ、何かスマホ超熱くなってるんだけど!)
ふむ、やはり隠されているか・・・
しかし・・・ ここまで来たか!
あ~、惜しいなぁ、あと一歩なんだが!
ブツブツ―――
神様「!?」
男「ん? どうしたの?」
神様「・・・・・・」
男「ねぇ、大丈夫? 急に黙り込んで」
神様「あっ、あ~すまない。 ちょっと悪い物を見た」
男「ブラクラでも踏んだ?」
神様「引き留めてすまなかった。 楽しかったぞ」
男「ふふっ」
神様「なんだ? その含みのあるような笑いは」
男「いや、本物の神様みたいな口調だなって。 うまいうまい」
神様「信じていないな?」
男「じゃ、暗くなってきたし帰るわ。 今度は奥にいる本物に会えますように!」タッタッ
神様(・・・・・・)
――― 翌日朝・学校
幼馴染「おっはよー男。 今日も元気に堅いかね?」
男「お前・・・ 突っ込む気力もねぇよ」
幼馴染「そう言えば、昨日は部会来なかったねぇ」
男「ちょっと野暮用で」
幼馴染「私は寂しくて・・・ 寂しさのあまり胸がはち切れてBカップになっちゃったよ」
男「はち切れてBカップかよ・・・ そうだ、お前研究所跡知ってるか?」
幼馴染「研究所跡?」
男「バス停前の」
幼馴染「あ~、あの廃墟?」
男「あの裏側に教会のような・・・ 神社みたいのがあるんだよ」
幼馴染「ほ~ あそこって真昼間っから出るらしいよ~
誰もいないのに声が聞こえるんだって! うそ! 怖い! 怖いよ!
抱きしめて! 真昼間から抱きしめて!」
男「聞いたよ俺も。 正体も見た・・・ と思う」
幼馴染「もっと強――― はい?」
男「だから、そこで変な声を聞いて変な物を見た」
幼馴染「そうなんだ・・・ うん、私は男を信じる。 大丈夫だよ。
DTを拗らして妄想と現実がゴッチャになることだってあるさ」
男「はぁ~、そろそろ先生来るから自分のクラスに戻れよ」
幼馴染「酷い! こんなに可愛い幼馴染なのに! 女ね。 他の女に鞍替えするのね!」
男「何バカなこと言ってんだよ」
幼馴染「ちぇ、ノリ悪い~な まぁいいや」ヨッコイショ
男「だから何で前に座るんだよ。 帰れよ」
幼馴染「えっ? 私ってホントに隣のクラスなの? 初耳!!
どうしよう、ねぇ男! 私の記憶が書き換えられてる!」
先生「おい男と幼馴染。 先生が来たんだから静かにしてろ」
幼馴染「ふぇ~い」
男「??」
神様「そうだぞ男、余計な事は喋らずに静かにしていろ」
男「ん?」クルッ
ガタッ
男「あんた、なんでこ―――」
神様「事情は後ほど話す。 大人しくしておれ」ボソ
先生「おい、うるさいぞ!」
男「あっ・・・ すいません」
神様「・・・」ニコッ
男「(か、可愛い・・・)」
神様「嬉しいことを言う」
――― 昼休み
神様「男、ちょっと顔を貸せ」
幼馴染「うん、分かった。 でもでも優しくしてね」ポッ
神様「・・・幼よ、私の話をきちんと聞いていたのか?」
男「んじゃ隣の空き教室でも行こうか」
神様「あっ、ああ。 スマホを忘れるな」
男「スマホ? なんで?」
神様「なんでも良い。行くぞ」
スタスタ
神様「・・・・・・」
男「どうしたの? ドアの前で」
神様「開けてくれるか?」
男「ん? あぁ」ガラガラ
神様「うむ」
男「?」
――― 空き教室
男「さて、聞きましょうか」
神様「(その前にだ)」
男「なんで頭に直接話しかけてくるんだよ」
神様「(隣の部屋で幼が聴診器を使ってこちらの部屋の様子を伺っている)」
男「はぁ~、ちょっと言ってくる」
神様「それには及ばん ―――これで大丈夫だ」
男「何した?」
神様「気にする必要は無い」
神様「さて、昨日説明したと思うが私は神だ」
男「神田さんだっけ」
神様「違う! か・み・さ・ま! 以前は女神と呼ばれていた」
男「女神にしては幼すぎね? もっとさぁ ―――」
バチッ!
男「うゎ! 静電気か? 痛って~」
神様「茶化さずに聞け」
神様「やることが出来た。協力しろ」
男「・・・・・・」
神様「・・・・・・」
男「・・・・・・」
神様「・・・・・・」
男「え?終わり?」
神様「うむ」
男「もう少しさぁ、何かあるでしょ」
神様「?」
男「なんというか・・・」
神様「なるほど。そう言うことか」ポンッ
男「そうそう」
神様「男よ、お前を私の神官に任命する」キリッ!
男「しんかん?」
神様「ありがたく拝命するが良い。これでよいか?」フフン
男「・・・・・・」
神様「誇るが良い。私の神官だぞ」
男「違う、そうじゃない」
神様「あ?」
男「まぁ良いや、そんなことより」
神様「そんなこと、とは失礼な」
男「何で学校にいるのさ。周りもヤツも普通に接しているし」
神様「私に質問とは恐れ多いぞ」
男「だって変でしょどう考えても、それに実体は無いんじゃないの?」
神様「仕方の無いヤツだ。 神官でもあるし今回は特別に答えてやる」ハァー
男「そりゃ、どうも」
神様「周りの者達には私が入学から今日までの記憶を作り追記した」
男「はい?」
神様「私の姿に関しては、そのスマホと小箱を接続。
脳波や量子を組み合わせて皆の脳に投影像を送り込んでいる。」
男「・・・・・・」
男「うん、ぜんっぜん意味わかんない」
神様「つまりだ、超高性能なコンピュータとお前のスマホを繋いで
周りに私が居るように脳に電波を送っている。これで良いか?」
男「ちょっと待って、そんなこと出来るわけ無いっしょ」
神様「造作も無い」
男「何だ何だ、そのオカルトは!」
神様「無礼な、オカルトなんかと一緒にするでない」ムッ
男「どっちでも良いわ! って言うか俺に何しろって言うのさ」
神様「私のサポートを任せる」
男「何のサポートよ」
神様「全てだ」
男「具体的には」
神様「鈍いヤツだ。 先が思いやられる」
男「それはこっちのセリフだよ」
神様「私は実体がない。 つまり物に触れることが出来ない」
男「あ~ それでさっきドアを開けさせたのか」
神様「私が周りから違和感の無いように気を配る。 それがお前のすべきことだ」
男「何だよそれ、奴隷じゃん」
神様「おい!言葉に注意しろ! 奴隷ではない神官だ!」キッ
男「急に怖い顔してどうしたんだよ」
神様「・・・・・・」
男「分かったよ。 協力しますよ」
神様「よし、頼んだぞ我が神官よ」ニコッ
男「(うっ、可愛い・・・)」
神様「嬉しことを言う」
男「・・・俺からもお願いが一つある」
神様「あ?」
男「人の頭の中を勝手に覗かないこと」
神様「何を言っている。 お前は私の―――」
男「分かった? じゃなきゃスマホの電源を切る」
神様「うっ・・・」ギクッ
男「スマホの電源を切ればアンタは消えると言うことだけは理解できた」
神様「私を脅すなど、お前は―――」
男「分かりましたか?」
神様「私は神であって―――」
男「分かりましたか?」
神様「しょ・・・ 承知した。人の頭の中を無断で読むことはや・・・ やめる」グヌヌ
男「よろしい」
男「ん? ちょっとまって、何で幼はうちのクラスにしたんだ?」
神様「?」
男「いや、俺の記憶だと幼は隣のクラスなんだけど」
神様「私はそんな改竄をした覚えは無いぞ。 照合にも・・・ 問題は出ていないが・・・」
男「なんだよそれ、大丈夫かよ」
神様「失敬な、と言いたいところだが本調子ではなくてな」
男「おいおい」
神様「小箱のエネルギーが残り少なくてな。 節約しすぎたか?」
男「さっきも言ってたけど小箱って何? 本体?」
神様「そう思ってかまわん」
男「ってことは、本体の電池が残り少ないと」
神様「まぁそんなところだ」
男「どのくらいで空になるの?」
神様「もって3ヶ月だな」
男「え? 短くね」
神様「仕方がない、それまでにはカタを付ける」
男「カタって?」
神様「・・・時間だ。戻るぞ」
男「あっ、ああ」
―――教室
男「はい、どうぞ」ガラガラ
神様「うむ」スタスタ
幼馴染「Zzz・・・」
男「なぁ神様?」
神様「なんだ」
男「幼が床ですんごい格好で寝ているんだが」
神様「うむ、見事な捻れっぷりだ」
男「何したの?」
神様「仮眠レベルにしたはずだが・・・ ガッツリ寝ているなぁ」
男「え? 授業中もあのまま?」
神様「盗み聞きなどするからだ」
男「可哀想に・・・」
男「そうだ、今日部活あるんだけど神様は放課後どうする?」
神様「科学部であろう? 驚け! 私も部員だ」
男「はい?」
神様「部長、幼、お前、そして私の4人しかいない弱小部だな」
男「人数が少ないのは変えてくれないんだ・・・」
神様「だが、科学部とは良い選択だ」フムフム
――― 教室・放課後
幼馴染「うがっ」ムクッ
男「おう、起きたか」
神様「見事な寝相であった」
男「おい、部室行くぞ」
幼馴染「おんぶ~」ホケー
男「歩け」
パチッ!
幼馴染「うわっ! 静電気!」シャキッ
神様「ゆくぞ、幼よ」
――― 科学部・部室
部長「と、言う訳で」
男「つまり、なぜか部費が増えていたと言うことですね?」
幼馴染「よかった~ お菓子代なくなったら大変だもんね~」
部長「幼ちゃん、部費はお菓子代じゃない訳で。 科学部の研究予算な訳で」
幼馴染「はーい、 じゃぁその余った部費で旅行することを提案します! 可決!」
部長「旅行ですか? う~ん・・・」
男「もしかして・・・」ボソ
神様「良いではないか、ちょっと多くしすぎただけだ」ボソ
男「間違えた?」ボソ
神様「・・・・・・」
男「ねぇ、桁とか間違えちゃったの?」ボソ
神様「えーい! うるさいぞ男! 部長とやら、私も旅行に賛成する!」
幼馴染「さっすが神ちゃん、私は神ちゃんがいればもう何もいらない!」
男「んじゃこのお菓子は没収な」
幼馴染「おいおい、何言ってんだよDT! それとこれとは話が別だろうが。
あんま調子に乗ってると、自宅の引き出しから2段目の板の下に
隠してあるお気に入りのAVとエロ本を居間に置くぞ?」
男「・・・・・・」
部長「う~ん、まぁやることもないし研修旅行にしますか」
幼馴染「温泉なんてどうでしょう! 素晴らしきかな温泉!温泉っ!」
部長「科学部なんだから普通は科学館とかじゃないです? 神さんは希望あります?」
神様「研究所跡から137Km以内の所で頼む」
男「なんだよその中途半端な数字は」
神様「正確な数字と言え」
幼馴染「137Kmか~ にゅるにゅる温泉は146Km先だしな~」
男「なんでお前はそんな細かい数字まで知ってるんだよ」
神様「正確には146.45Kmだ」フンスッ!
男「張り合うなって・・・」
幼馴染「んじゃ、べろべろ温泉だね。 可決!」
部長「そうですね。 あそこは特急なら乗り換えなしで行けますし」
神様「切符と宿は私が手配しよう。 代金は男が預かれ」
男「ん? あぁ分かった」
部長「では、今日は解散にしますか」
神様「活動はせずとも良いのか?」
男「科学部って言っても、メンツがこれだし」
幼馴染「神ちゃん、お菓子食べる~?」ダラダラ
神様「ありがたいが・・・ 気持ちだけ」
――― 帰り道
神様「♪~」
男「もしかして機嫌良い? 科学部のダメっぷりに落胆したと思ってた」
神様「そんな小さいことで不機嫌になどならんわ」
男「もしかして温泉旅行が楽しみとか?」
神様「そうだな・・・」
男「旅行好き?」
神様「旅行か・・・ 神として初めての経験だ」
男「え? 旅行に行ったこと無いの?」
神様「このように街中を散策するのも84年ぶりだ。 全てが新鮮で・・・ うむ、楽しいな」
男「84年? ねぇ、神様って何歳?」
神様「レディーに歳を聞くな馬鹿者」
男「レディーって・・・」
パチッ!
男「痛っ! なんだ? また静電気?」
神様「神罰だ」
男「この静電気はあんたの仕業か!」
神様「足りないようだな、ではもう一度」
男「ごめん! 悪かったって」
神様「全く」
男「それより、神様この後どうするの?」
神様「?」キョトン
男「いや、そんなキョトンとされても」
神様「お前の家に決まっているであろう」
男「あ~、うち来るのね」
神様「問題でも?」
男「いや、特にはないけどさぁ」
神様「お、見えてきたな」
男「俺の家、知ってるのね・・・」
神様「無論」
――― 男自宅
ガチャッ
男「まだ誰も帰っていないから上がって」
神様「失礼する」キョロキョロ
男「さてと、何か飲む? って必要ないか」
神様「気にするな」
神様「ここがお前の部屋だな?」
男「あぁ、どうぞ」ガチャ
神様「うむ」
男「勝手にいじるなよ… って心配もないか」
キョロキョロ
神様「男よ、このコンピュータの電源を入れてくれ」
男「あぁパソコンね。 はいよ」
ポチ
神様「ほう、これはこれは」
男「どうしたの?」
神様「進化は凄いな」
男「これでも2年前のものだから最新のやつはもっと凄いと思うけど」
神様「想像以上だ。 少しいじっても?」
男「どうぞご自由に」
神様「では、失礼する」
―――3時間後
神様「ふぅ~」
男「あっ、終わった?」
神様「あぁ、調べ物がはかどった」
男「調べ物?」
神様「しかし、便利だな」
男「神様のパソコンのやり方って変わってるね」
神様「?」
男「だって、ずっと本体見てるだけなんだもん」
神様「マウスやキーボードは私には不要だ」
男「ですよね~」
神様「さてと、男よ明日は秋葉原へ行くぞ」
男「買い物?」
神様「そうだこのパソコンを少し改良したい」
男「俺のパソコン改造するの? って言うかそんなお金ない」
神様「今日もらったではないか8万円も」ニヤッ
男「いやいや、これ旅費だから」
神様「心配するな、切符と宿は予約してある」
男「ちょ… どうやって?」
神様「それは企業秘密だ」
男「神ってお仕事なんですか?」
神様「気にするな、そのプリンターから明日買う物を出力するぞ」
ガー ガー ガー
男「どれどれ… ん~ 何が何だかさっぱりだわ」
神様「私の言うとおりにしていれば良い」
男「ところでさー」
神様「なんだ」
男「ここは ミー の家な訳で」
神様「知っている」
男「うん、神様はどうするの? 本体はやっぱりあのボロ屋なんでしょ?」
神様「神殿と言え」
男「ボクはそろそろ夕飯な訳で、そのあとお風呂に入って寝る訳で」
神様「部長のような言い回しだな。 似ているぞ」
男「いや、物まねじゃないし。 ユー はどうする訳?」
神様「気にするな。 食事も布団も必要ない」
男「違う、そうじゃない」
神様「何が言いたいのだ? はっきりしろ」
男「おうちに帰らないの?」
神様「お前のパソコンとそのスマホが私の依り代だ」
男「ちょ、俺の物に勝手に住み着くなよ」
神様「私のサポートをすると約束したではないか」
男「親とかにどう説明すんだよ」
神様「案ずるな、手は打ってある」
トントン
妹「にーちゃん、夕飯だけど」ガチャ
男「げ、妹!」
妹「げ、って何よ失礼な。 ん? え~と・・・」
神様「久しぶりだ」
妹「あっ、 神ねー? 来てたんだ」
神様「うむ」
妹「神ねー夕飯食べてく?」
神様「気にせずとも、すでに済ませてきた。」
妹「ほーい、今日泊まってくんでしょ?」
神様「そうさせてもらおうと思う」
妹「やったー、あとで一緒にゲームしよー」
神様「良いぞ! たっぷりやろうではないか!」キラキラ
男(うわ、神様すんげー目がキラキラしてるんですけど)
妹「じゃ、また後で。 にーちゃんは部屋で食べる?」
男「ん? あぁ、そうするかな」
妹「それじゃぁ今持ってくる」ガチャ
おかーさーん、にーちゃん部屋で食べるってー
神ねー来てるー
男「すまん、神様の設定を教えてくれるか?」
神様「親戚だ」
男「はぁ? どこの親戚だよ」
神様「設定上は親戚であるが私は神でありお前は神官だ。 はき違えるなよ?」
男「大丈夫かよ~」
神様「私の力を疑っているのか? 失礼なやつだ」
男「だから疑ってるんですー! はぁ、まぁいいや」
神様「問題の放棄か。 全くこれだから人間は―――」
男「あんたが問題って言うな!」
ガチャッ
妹「にーちゃん、ご飯持ってきたー」
男「あぁ、そこ置いておいてくれ」
妹「ん、にーちゃんさぁ、神ねー可愛いからって意地悪しちゃダメだよ?」
神様「嬉しいことを言う、もっと言ってやってくれ」
男「なんなんだよ、揃いもそろって・・・ 俺か? 俺が悪いのか?」
―――深夜
男「眠いと思ったらもう0時まわってんじゃん」
男「二人はまだゲームやってるのか? というか神様はどうやってゲームするんだよ、コントローラー持てないだろ」
神様「操作しているように見せる事くらい造作も無い」
男「うわっ、いつ戻ってきたんだよ」
神様「今だ。妹が眠そうにしていたのでな。 無理も良くないであろう」
男「それはお気遣いどうも」
神様「よい妹であるな」
男「そうか?」
神様「聡明で心優しき立派な妹だ。 大切にしろ」
男「・・・・・・」
神様「な、なんだ、じろじろ見るでない」
男「いや、神様って妹に雰囲気が似てる気がするなぁって」
神様「残念だが、私はお前の妹でも姉でも無いぞ?」
男「まぁ、そうなんだけどさ~」
神様「ったく、お前ももう寝るか?」
男「そうだな、明日は早いし」
神様「・・・うむ、良い夢が見られるよう願おう」
男「・・・・・・」
神様「どうした?」
男「でも、まだ眠くないしゲームでもしようか」
神様「そうか!」ガバッ
神様「・・・いや今日は疲れた。お前の脳波もほとんど睡眠状態だぞ」
男「俺の頭の中覗いた?」
神様「バカを言うな、約束したではないか。私は約束を破ることはしない」
男「そうですかい、んじゃ寝ますかね」
神様「そうだな、今日はうつ伏せで寝た方が良いぞ?」
男「そうなの?」
神様「明日の朝に会おう、良い夢を」
スッ
男(そんな寂しそうな顔するなよ、全く・・・)ポリポリ
―――翌日・電車内
ガタン ゴトン
男「ねぇ」
神様「あ?」
男「あ?ってなによ・・・」
神様「何でございましょうか神官殿、とでも言って欲しいのか?」
男「それは気持ち悪い」
神様「あ゛?」ギロッ
男「すいません、本気で怖いです」
神様「ったく、何だ?」
男「いや、何で手をかざしただけで自動改札通れたのかなぁって?」
神様「あの程度の電波くらい何とでもなるわ」
男「やり方教えて?」
神様「神様特権だ」
男「・・・・・・」ジーッ
神様「? な、何だジロジロと見おって」
男「いや、神様の私服って可愛いね」
神様「!? う・・・ 嬉しいことを言う」テレッ
神様「この服は、その・・・ 少し思い入れがあってな」モジモジ
男「プレゼント?」
神様「とても大切な方から昔頂いたものを・・・ データ化した」
男「へ~ 良いセンスだ」
神様「実体もないくせに、などと思っているのであろう」
男「思ってないよ、そんなこと。 似合ってる」
神様「うぅ・・・ ///」
男「なに照れてんの? 柄でもない」
神様「照れてなどいない!」プィ
ガタン ゴトン
男「そろそろ秋葉だよ」
神様「そのようだな」
プシュー
秋葉原~ 秋葉原~
男「さてと、最初はどこ行くの?」
神様「ラジオデパートの地下だ」
男「渋いな~ 初めて行くよそんなところ」
神様「しかし、人が多いな・・・」
男「土曜日だしね」
神様「はぁ~ 疲れそうだ」
――― ラジオデパート
神様「主人、これを見せてもらえるか?」
店主「おっ、良い目してるね。 それに食いついてくれたのは嬢ちゃん達が初めてだ」
神様「うむ、とても良い物であると思う」
店主「分かるのかい? 産廃の中からコレ見つけたときは震えたぜ」
神様「そうであろうな、とても素晴らしい」
店主「直すの苦労したんだぜ?」
神様「売ってもらうことは出来るか? 言い値で買いたい」
男「言い値!?」
店主「お嬢ちゃん達は高校生かい?」
神様「そうだ」
店主「何に使うんだい?」
男「俺たち高校の科学部でして・・・ その実験とかに」
店主「へぇ~、若いのに地味だな」
神様「そんなことはない。 科学は素晴らしい。 人を、世界を幸せに出来る素晴らしい技術だ。 私は誇りに思っている」
店主「そうか・・・ 良い言葉だ。 それタダで持って行って良いぜ」
神様「!? いや、それはダメだ」
店主「良いって、持って行きなよ。 ただのガラクタだ。 必要なんだろ?」
神様「・・・・・・」
――― 秋葉原・裏通り
テク テク
男「いい人で良かったじゃん。 店主もガラクタが一つなくなって良かったんじゃね?」
神様「はぁ~」ジトッ
男「なにさ」
神様「お前というヤツは・・・ この機械は同じ物はこの世に存在しない」
男「そうなの?」
神様「産廃の中から見つけたと言っていたがあれは嘘だな」
男「なんでそんなこと分かるのさ」
神様「私がくれてやった物だからだ」
男「はい?」
神様「ここまで復元するのは相当な時間と労力が必要であったはず。 設計図もなく、代替部品もかなり苦労したであろうに」
男「店主は神様のこと知らなかったみたいだけど」
神様「他人の過去を喋るのは気が進まんが・・・」
神様「あの店主は昔、私の所で技術者として奉仕していた」
男「え? 知り合いなの? っていうか神様の技術者って何?」
神様「彼は神官では無い故、私は姿を見せたことはないがな」
男「そういうもんなの?」
神様「あぁ、それで神官経由で彼にこの機械をくれてやったのだ。 バキバキに壊して修復できないくらいにしてからだがな」
男「なんでそんな意地悪を・・・」
神様「神託・・・ という程でもないが、店主へ道しるべを提示してやっただけだ」
男「ふ~ん。 で、それ直っているの?」
神様「あぁ、相変わらず素晴らしい腕だ。 尊敬に値する」
男「所でさぁ、神様って何の神様なの?」
神様「は?」
男「いや商売の神様とか、恋愛の神様とか」
神様「お前が考えているような存在とは少し違うな。 当時は女神と呼ばれていた故」
男「だからそのナリで女神って―――」
バチッ!
男「痛っ! また静電気出したな?」
神様「うるさい! 強いて言えば・・・」
神様「科学の神様だ」
男「科学の神様? なんだそれ? そんなの聞いたことないぞ?」
神様「あん? もう一回神罰を受けるか?」
男「ふんだ、静電気もだいぶ慣れてきたねー」
神様「なんだと! よーし凄い神罰を見せてやる」
バチッ! バチッ! バチッ!
男「痛っ! 痛っ! 静電気の回数が増えただけかよ!」
神様「10回連続で行く」
男「うそ! ごめん! 地味にきつい」
神様「ったく。 お前みたいな生意気な神官は初めてだ。 神官は皆、私を恐れ敬ったものだぞ」
男「・・・そっちの方が良い?」
神様「あ?」
男「俺も神様にそう接した方が良い?」
神様「ぅっ・・・」
男「冗談冗談、そう言うのって面倒じゃん? 普通にしていた方が俺も楽だし」
神様「ま、まぁ私もそんなことを一々気にするほど狭くない」
男「へぇ~、で科学の神様って何するの?」
神様「科学の発展に必要な神託を授ける」
男「神託?」
神様「そうだ、発展に必要な助言や不要な知識の削除を神託という形で神官へ伝える」
男「そんなの自分で言いに行けば良くね? っていうか結果を教えれば良いじゃん」
神様「あほ。 私が神託を授けていることが分かれば混乱が生じるであろう」
男「そうなの?」
神様「それに理論も無しに急にスマホなどが出来たらどうなる?」
男「その時代のレベルに合わせて順番にヒントを教えていくってこと?」
神様「その逆もあるがな」
男「逆?」
神様「オーバーテクノロジーの削除だ」
男「オーバーテクノロジー?」
神様「その時代の技術を遙かに超えたもののことだ」
男「そんなことあるの?」
神様「意外とあるのだぞ」
男「ちょっとまって?」
神様「なんだ」
男「もしかして、タイムトラベルの方法も神様は知ってる?」
神様「うむ」
男「教えて?」
神様「ダメだ、神託には順番がある。間違えると世界が狂う。それは防がねばならない」
男「ですよね~、ん?ってことは・・・」
神様「?」
男「神様が神託って言うのを授けないと科学は発展出来ないの?」
神様「そんなことはない、発展はしてゆくぞ」
男「それじゃぁ、神様が神託をしている理由って何?」
神様「・・・何故なのであろうな」
男「え?」
神様「私はもしかしたら、ただのお節介なだけなのかも知れぬ」
男「神様?」
神様「すまない、戯言だ・・・」
男「そう、さてと買い物の続きしますか」
神様「・・・・・・」
神様「聞きたいのであろう?」
男「?」
神様「私が何をしようとしているのかを」
男「知りたいっちゃ知りたいけど。 たぶん、話しづらいんでしょ?」
神様「・・・・・・」
男(そんな辛そうな顔されちゃ・・・)
神様「すまない」
男「ははっ、神様って謝ることも出来るんだ」
パチッ!
男「痛っ! ちょ、だからなんで静電気?」
神様「うるさい! なんかムカついた」ムスッ
男「はいはい分かりましたよ、さて買い物の続きに行こうか」
神様「ったく」
神様(・・・・・・)
――― 帰宅・男の部屋
ガチャガチャ
男「こう?」
神様「そうだ、次は6番のピンと450番の足を繋いでくれ」
男「うへ~ 細かいな」
神様「重要な部分だ。 間違えてもまだ部品はある故、あせらずにな」
ガチャガチャ
神様「しかし、さすが科学部なだけはあるな。 器用だ」
男「そりゃ、どうも」
神様「褒めてやったのだ。泣いて喜べ」
男「次は?」
神様「あぁ、CPUを外してそれを差し込んでくれ」
男「さよなら、ボクのセロリンちゃん・・・」
ガチャガチャ
男「ふぅ、これで完成?」
神様「ご苦労であった。 あとで肩のこりをほぐしてやる」
男「どうやるのさ」
神様「静電気を使ってだな、こうバリバリと」
男「結構です!」
神様「むっ、気持ちいいのに」
男「で? 電源入れれば良いの?」
神様「ん? あぁ、先に外付けのボックスから頼む」
男「はいよ」ポチッ ポチッ
キュイーン キュイーン
男「ん? 黒い画面のままだけど」
神様「大丈夫だ」
男「モニター写っていないよ」
神様「演算が出来れば良い。 画面など不要だ」
男「そうなの?」
神様「お~ これはだいぶ楽になったわ」
男「まぁ、お役に立てたようで」
神様「うむ、想像以上に快適だ♪」
―――数日後
ピピピピッ ピピピピッ
男「ん~」
神様「起きたか?」
男「ん~ Zzzz・・・」
神様「はぁ~」
パチッ!
男「うわ~」ガバッ
神様「遅刻するぞ」
男「もっと、優しく起こしてよ」
神様「目覚ましで起きれば良かろうに」
男「神様は今日も学校行くの?」
神様「当たり前だ。 期末テスト最終日であるからな」
男「あぁー、朝から嫌な単語を」
神様「先に外にいる。 準備が出来たらこい」シュッ
ガチャッ
男「行ってきま~す」
神様「遅い」
男「これでも結構急いだんだぞ」
神様「神を・・・ いや女性を待たすとは失礼なヤツだ」
男「すいませんね、ふあぁ~」ノビー
神様「欠伸をしながら謝罪するな! まったく、早く行くぞ」
テクテク
男「お~ 寒ぶ~」
神様「気温2.1度、湿度21.4% 12月と言うより1月の気候に近いな」
男「そんなことも分かるの?」
神様「驚いたか? もっと敬ってもいいんだぞ」
男「敬いますので、この寒さから私めをお守り下さい神様」ブルブル
神様「なぜコートを着てこないのだ・・・」ハァ
ポゥ
男「!?」
神様「どうだ?」
男「ちょ、何したの? 暖かいんだけど!」
神様「企業秘密だ。 世話になっていることだし、この位は良かろう」
男「すげー、全然寒くない。 神様の神官になって初めて良かったと思えた!」
神様「現金なヤツだ」
―――教室
男「ハイどうぞ」ガラガラ
神様「すまない」
A子「あっ、神ちゃんおはよう」
神様「おはよう」
幼馴染「あっ、神ちゃんオハイオ州」
神様「・・・・・・」
幼馴染「男~、神ちゃんが私を無視する~」
神様「いや、違う! なんと答えたら良いのか分からなかったのだ」アセアセ
男「うん、今のは全面的に幼に非がある」
幼馴染「ショック! まぁそんなことより、神ちゃん今日のテストのヤマ教えて~」
神様「1限は数学か」
幼馴染「うんうん、出るところをピンポイントで教えてくれると私は嬉しいです!」
A子「あっ、わたしも~」
40ページの公式を使った問題は必ず出ると思う
ここ分かんない~
この公式をだな・・・
ガヤガヤ
友「なぁ、男」
男「なんだ?」
友「神ちゃんてお前の親戚なんだろ?」
男「あ~、そうらしいな」
友「なんだよそれ」
男「いや別に」
友「可愛いよな~」
男「確かに見た目は申し分ないな」
友「頭も良いし、あの上から目線の口調とか」
男「は?」
友「他の女ならあんな口調で喋られるとムカつくけど神ちゃんだと、しっくりくるんだよな~」
男「まぁ、あんま違和感は無いな」
友「神ちゃんは金持ちのお嬢なのか?」
男「なんでだよ」
友「だってあれは17歳のもつオーラじゃないぞ?」
男「あ~、確かに年齢は―――」
神様「(男? 死にたいか? いつでもできるぞ?)」ギロッ!
男「・・・・・・」
友「ん? どうした」
男「きっと女神様のオーラなのでしょう」
神様「(よろしい)」ニコッ
どうしたの神ちゃん?
なんでもない、続きを
ガヤガヤ
友「女神ねぇ~ うまい表現だな」
――― 放課後
神様「テストの出来はどうであった?」
男「聞かないでくれるとありがたいです」ゲッソリ
神様「そんな事では、A大学に行けないぞ?」
男「なんで神様は私めの志望校をご存じで?」
神様「神だからな」
男「答えになっておりませんが・・・」
神様「まぁ、がんばれ」
男「それより、神様はどうやって答案を記載してるの?」
神様「マークシートであるからな。 回答部分を反射しないように分子構造を書き換えている」
男「なるほど~、超科学ですね? わかりました」
神様「分かれば良い。 ほら部活に行くぞ」
男「テスト終わりの日くらい部活なしにしてくれれば良いのに・・・」
―――科学部・部室
男「ん」ガラガラ
神様「あぁ」スタスタ
部長「あ、神さんに男君こんにちは」
神様「こんにちは」
部長「おや、男君は元気ないですね」
神様「テストの調子が芳しくなかったようだ」
幼馴染「ふぉんな ふぉとふぇ」モグモグ
神様「幼よ、食べるか喋るかどちらかにしろ。 はしたないぞ」
部長「神さんはどうでしたか?」
神様「うむ、全体的にまずまずの出来であったと思う」
部長「それは良かった」
男「は~、で部長今日は?」
部長「今日は明日の旅行について打ち合わせしたい訳で」
幼馴染「ついに来てしまったのですね! べろべろ温泉旅行の日が!」
神様「切符と宿は手配済みだ。中でも宿はきっと満足してもらえると思う」
部長「ほ~、それじゃぁ当日までお楽しみと言うことで」
幼馴染「部屋に温泉ついてたらいいな~」
部長「いくらなんでもそれは無理ですよ。 電車賃抜かしたら一人一泊1万位ですし」
男「一泊だけだし、温泉入って食事してとんぼ帰りだな」
部長「そうですね、あそこは他に見るところもありませんし」
部長「でも神さん、よく直前で旅館の予約取れましたね」
男「そう言えば、この時期はべろべろ温泉って予約取れないって聞くよな~」
神様「ちょうど一部屋空いていたようだ」
男「え? 一部屋?」
神様「結構広いようだし問題ないであろう」
男「え~、広いって言ったって限度があるでしょ・・・」
部長「まぁ最悪僕と男君は押し入れで我慢しましょう」
男「うそ!」
神様「心配するな」
幼馴染「ふぉうふぉう~ ふぃにふぃふぁいふぉ~」モグモグ
神様「幼よ、何を言っているのか全く分からないのだが・・・」
――― 翌日・べろべろ温泉行き特急
幼馴染「やっぱり特急は快適ですなぁ~。 部長、ワンカップとイカ燻で一杯どうです?」
部長「それはコーラとポッキーな訳で・・・」
幼馴染「う~ん、でもお昼だしお弁当食べたいな~ 早くワゴン来ないかなぁ」ウズウズ
部長「最後の車両ですし、買いに行った方が早いかもですよ?」
幼馴染「面倒だけどそうするか~ 売り切れとか嫌だし。 うんそんなの嫌だ」ガバッ!
部長「あ、ボクも一緒に行きますよ、神さんと男君は待っていて下さい。 何か適当に買ってきます」ヨイショ
男「はい」
スタスタ
神様「・・・・・・」ジィー
男(おかしい、神様がさっきから俺のことをガン見している・・・)
神様「・・・・・・」ジィー
男(しかも、その眼差しの向こうは俺の股間ではないのか?)
男「よ・・・ よう、神ちゃん?」
神様「なんだ、馴れ馴れしい」ジィー
男「いやね、あのー、俺たち以外この車両に誰も乗っていないのは何でかなぁって」
神様「この車両だけではないぞ? 他の車両も同じだ」ジィー
男「はい?」
神様「臨時でダイヤを組んで、しかも切符を発券できないようシステムをいじったのは苦労した」ジィー
男「なんでそんな事!って、まぁそれは良いとして・・・」
男「先ほどから私めの息子に何かご用でしょうか?」
神様「あ? お前の息子? お前にむす―――」ハッ
神様「お、お前 な、なにを・・・///」カァ~
男「いや、どう見てもわたくしの息子さんをジッと見つめて―――」
神様「う、うるしゃい お、おま、お前の、む、むす」プシュー
カチッ!
神様「あっ」
男「? 何だ今の音」
神様「あっ、あほ! せっかくあと少しであったのに!」
男「何がよ」
神様「爆弾が仕込まれているのだ!」
男「はい? ごめん、もう一度言って?」
神様「爆弾が仕込まれているのだ。 お前の座席の下に」
男「・・・・・・」
神様「はぁ、これは時間がかかるぞ」
男「すいません、意味がよく分からないのですが」
神様「この列車のこの車両のお前の座席の下に爆弾が仕込まれている」
男「なんで?」
神様「誰かが仕掛けたからに決まっている」
男「なんで俺の座席の下?」
神様「私が解体するのだ。 神官であるお前が付き合わないでどうする」
男「・・・・・・」
男「そういうことは事前に言って欲しい訳で・・・」
神様「こんな時に部長のまねか、余裕だな。 さすが私の神官」
男「ちょっとトイレ―――」
神様「待て! 椅子から立つでない。 爆発する」
男「なにそのテンプレ展開ーーーーーー!」
神様「ふむ、厄介だな。 あまりエネルギーは使いたくないのだが・・・」
男「どのような威力を持つ爆弾なのでしょうか・・・」
神様「そうだな、お前の座っている座席が10cmほど浮き上がる」
男「あぁ、そんなに威力は無いんだ」ホッ
神様「そう言うな、問題はこの爆弾がオーバーテクノロジーという事だ」
男「オーバーテクノロジー?」
神様「前にも言ったであろう。 この時代の技術で作るのは難しいと言うことだ」
男「何でそんなものが?」
神様「ふむ、たまにあることだ。 普通は神官や技術者が対処するのであるぞ?」
男「あ~、神様の神託ってヤツ?」
神様「そうだな、しかし・・・ 昔の話だ。 すまない、忘れてくれ」
男「・・・・・・」
神様「さてと、しばらく大人しくしていろ。 解除に集中する」
男「あぁ」
ドカドカ
幼馴染「・・・・・・」ムスッ!
男「幼、戻ったか。 どうしたんだ?」
部長「いや~、この列車ワゴンサービスが無いみたいで」
幼馴染「あり得ない! 私は・・・ 私のやるべき事をやる!・・・ お休み!」グゥー
部長「それより、この列車他に誰も乗って―――」
神様「うむ、部長も寝ていたらどうだ?」
部長「―――って、いやボクは特に眠く」グゥー
男「おい」
神様「心配するな。 終わったら起こす」
男「そんなに厄介なの?」
神様「起動すると・・・ ふむ、暗号が複雑だ」
男「解除できる?」
神様「私を誰だと? この時代であれば1ヶ月はかかるが私なら1時間で終わらせてやる」
男「頼もしいことで」
神様「もっと敬え」
神様「さてと、それでは行くぞ」
―――30分後
男「うっ・・・ はうっ・・・」モゾモゾ
神様「おい、お前先ほどから少しうるさいぞ?」チラッ
男「うんこしたい・・・」ボソッ
神様「あ?」
男「うんこしたい・・・」
神様「二度も言うな」
男「あとどのくらいで終わるの?」
神様「30分だ」
男「無理・・・かも・・・」
男「お願いします・・・ 急いで下さいませ・・・」
神様「はぁー」ゲンナリ
キュイーン
男「神様? 体が・・・ 光ってるよ・・・? ヤバイって! 」
神様「分かっている、他に乗客はいないであろうに」
男「神様? ポケットのスマホが凄く熱い・・・」
神様「知っている!」
パチ パチッ
男「神様? 蛍光灯が消えた・・・」
神様「あぁ!そうだな!!」
ブーン ガタン
男「神様? 電車・・・ 止まった・・・」
神様「止めたのだ! 誰のせいだと思っている! 静かにしていろーーー!!」
―――10分後
神様「終わったぞ」フー
男「!!」ガタッ
ダダダッ
神様「予定よりだいぶエネルギーを使ったな」ハー
お客様にご案内いたします
当列車は車両トラブルのため停車しております
しばらくお待ち下さい
神様「やれやれ、この列車も直さねばな・・・」ゲンナリ
男「助かった~」
神様「それは良かったな」ムスッ
男「生理現象ですし、ボク悪くないもん」
神様「全く・・・」
男「で、爆弾の解体は終わったの?」
神様「まぁな、お前の座席の下に小さな箱があるはずだ」
モソモソ
男「もしかしてこれ? なんか角砂糖みたい・・・」シュワシュワ
神様「人が触れると本体が溶け出し起爆する」
男「ちょ、やばいじゃん」アセアセ
神様「何のために私が今までがんばったと思っているのだ」
男「あっ、消えた」シュワシュワ
お待たせいたしました
列車の運転を再開いたします
ガタン ゴトン
神様「さて、駅に着くまで車窓を楽しむとするか」
男「このお二人は?」
神様「着いたら起こせば良い」
男「神様?」
神様「なんだ」
男「さっきの爆弾って犯人とか見つけたりするの?」
神様「なぜだ?」
男「いや、だって犯罪だよ?」
神様「証拠はもうない、今の科学では説明できないし同じ物は作れない。 どうしろと?」
男「そう言われると・・・」
神様「私が放置してあの爆弾が作動したところで、たいした実害は出なかったであろう」
男「まぁ、聞いた感じではたいした物じゃなかったぽいけど」
神様「今回は偶然近くでこのような事象が確認できた故、対処しただけだ」
神様「ただ、一つ気になることがある・・・」
男「?」
神様「事前にスキャンした限りではここまで複雑な暗号ではなかったと思うのだが・・・」
男「疲れてんじゃないの?」
神様「失礼な。 しかしこの時代は電波が飛びすぎな故、障害があるのかもな」
男「やっぱ電波とかってすごい飛んでるの?」
神様「あぁ、すごいな・・・」
―――べろべろ温泉
男「やっと着いたー」ノビー
幼馴染「電車30分遅れだって~ でも寝ていたから私は元気です」
神様「宿は・・・ 駅前のあの旅館だな」
部長「・・・あの、神さん?」
神様「?」
部長「あの旅館って超高級宿な訳で・・・」
男「ちょ、神様大丈夫かよ」
神様「支払いは済んでいる。 問題ない」
幼馴染「さっすが神ちゃん、出来る子は違うわ~ でもでも勘違いしないでね。 私の次に出来るって意味なのですよ?」
神様「はははっ、ありがたい言葉だ」ピクピク
男「ちょ、神様! 顔が笑ってない」
仲居一同「いらっしゃいませ」
神様「本日予約している神様だ」
フロント「お待ちしておりました」
仲居「ご案内いたします」ドウゾ
神様「うむ」
スタスタ
仲居「こちらがお部屋になります」
男「・・・・・・」
ガチャ
幼馴染「すごーい、教室より広ーい」
部長「ベランダに露天風呂がありますよ?」
幼馴染「うそ! どれどれ~」スタスタ
男「ちょっと神様、ここって一泊いくらよ」
神様「一人25万だそうだ」
男「どんなズルしたの?」
神様「失礼な。 私のポケットマネーだ」
男「神様ってお金持ってるの?」
神様「分散しているが合わせれば20兆ほどはある」
男「ジンバブエドル?」
神様「あほ、円だ」
男「・・・・・・」
幼馴染「さてと、夕飯前に温泉にでも入っちゃいますか!」
神様「私は外の温泉に行く故、この部屋の露天は幼が独占すると良い」
部長「そうですね、僕は屋上の大浴場に行きます」
幼馴染「まじっすか、神ちゃん! 独占しちゃっても良いんですか? いいんです!!」ヤッター
部長「男君はどうします?」
男「オレも神様と一緒に外の温泉に行きますんで」
神様「? いや、お前は部長と一緒に行ったほうが良いのではないか?」
男「それじゃ、夕飯前に戻ってくるから幼、部屋よろしくな」
幼馴染「なに~? 聞こえなかったけど分かったー」
テク テク
神様「なぜ、お前は温泉へ入りに行かないのだ?」
男「神様だって」
神様「私は・・・ 入っても仕方がないであろう。 しかしお前は・・・」
男「長風呂は好きじゃないし、部屋に戻る前にサッと入るよ」
神様「・・・そうか」
男「あぁ」
テク テク
男「で? どこ行くつもり?」
神様「特にアテはない」
男「そう」
神様「少し薄着だな、寒いであろう」
男「そうだね、寒い」
神様「少し緩和してやろう」
男「いいや、大丈夫だよ」
神様「しかし風邪を引かれても困るし」
男「神様も、その私服じゃ薄着じゃない?」
神様「私は・・・ これで良い」
男「同じく」
テク テク
男「だいぶ上の方まで来たね」
神様「あぁ、見ろ」
男「お~、夕焼けが凄い」
神様「今日は絶好の夕焼け日和だ」
神様「・・・綺麗だ」
男「そうだね」
神様「・・・・・・」
男「・・・・・・」
神様「さて、宿に戻ろう」
男「風呂入って戻れば、ちょうど良い時間か」
―――夕食
幼馴染「いや~ 食べた食べた」ゲップ
部長「豪華な食事でしたね、神さんの分まで食べてしまって申し訳ないです」
神様「外で色々と食べ過ぎたな、失態だ」
幼馴染「こんなに豪華なのに食べないなんて勿体ないな~ でもゴチです!」
男「・・・・・・」チラッ
神様「気にするな、慣れている」ボソ
部長「さて、どうやって寝ますか?」
神様「両側に寝室が4部屋ある」
部長「寝室は別にあるんですか?」
神様「男はイビキが凄いからな。 別々の部屋で寝よう」
男「えっ、俺イビキ凄いの?」
幼馴染「あっれ~、なんで神ちゃんそんなこと知ってるの~?」
神様「うっ・・・」
幼馴染「同棲か? ヤッてもうたんか? オウ? オ~ウ?? コラーッ!」
神様「な、何をはしたないこと言っているのだ」
男「神様は親戚なんだから家によく泊まりに来るの」
幼馴染「あ~、そういう事にするんだ」ニヤニヤ
男「なんだよそれ・・・」
神様「まぁ親戚といっても遠縁であるがな」
男「妹もなついているし、ほとんど家族みたいなもんだ」
神様「!?」
幼馴染「酷い! 幼馴染である私よりも大切なの? ねぇ~え~」ユサユサ
男「くっついて来るな幼」
神様「・・・・・・」
――― 深夜・男の寝室
男「ん? 神様?」
神様「良く気づいたな」
男「何となくね」
神様「少し話をしてもよいか?」
男「もちろん」
神様「今日は色々と気を遣わせしまった」
男「何を今更。 サポートを任せると言ったのは神様だよ?」
神様「そうであったな」
男「どうしたの?」
神様「・・・・・・」
男「神様?」
神様「昔話をしたい」
男「昔話?」
神様「ある所に女神がいたそうだ」
男「なんだそれ、女神って昔の神様のこと?」
神様「黙って聞いておれ」
神様「女神は不思議な力を持っていた」
神様「この世の様々な知識を知る力だそうだ」
神様「200年ほど前に現れた女神は人々に様々な助言を行った」
男「200年!?」
神様「正確には223年前だ」
男「やっぱり神様の昔話じゃん」
神様「・・・・・・」
神様「しかし、その知識は危険な物でもあった」
神様「女神の存在は秘密にされ国際的な機関が管理することになったそうだ」
神様「女神と接触できる者は限られ神官と呼ばれた」
男「神官・・・」
神様「女神からの神託は絶対であり、その言葉を伝える神官も当然同じだ」
神様「女神は神官以外には姿を見せない故、長い時間の中で様々な誤解が生まれた」
男「誤解?」
神様「女神を見たことのない者は、本当に女神なんて存在するのかと疑いはじめた」
神様「神官が自分たちを良いように使っているのではないかと思い始めた者もいる」
神様「知識を独占しようとする者も当然いた」
神様「様々な背景の中で・・・、神官は全員捕らえられた」
神様「そして、女神も力を失った」
男「・・・・・・」
神様「女神は、このままいなくなろうと思ったそうだ」
神様「しかし、自分の意思で消えることが叶わなかった」
男「神様・・・」
神様「男よ、私は・・・ 神など名乗っているが・・・ 本当はそんな資格すらない」
男「どうしたの?」
神様「お前は・・・ 先ほど私の事を家族と言ってくれた」
男「そんなこと」
神様「何故であろうな・・・ 嬉しかった」フッ
男「神様?」
神様「私は、お前に何も話をしていない」
男「俺が聞かなかっただけだろ?」
神様「同じだ」
神様「それに、お前には神らしいことを一つもしていないのに私を信じてくれた」
男「いや、だってそれは・・・」
神様「傍から見たら幽霊みたいな存在の私を信じてくれた」
男「どうしたんだよ、神様」
神様「明日、家に帰ったら話がある」
男「無理しなくても、話したくなったときで良いよ」
神様「本当は、今話をしたいのだが準備が必要な故・・・ すまない」
男「気にしないさ」
神様「優しいな」
男「らしくないぜ?」
神様「違いない」フフッ
――― 旅行から帰宅、翌朝
男「ふぁ~」ムニャムニャ
神様「やっと起きたか、この寝ぼすけ」
男「ん? あ~神様おはよう・・・ って何それ!!」
神様「どうした? そんなに驚いて」ニヤニヤ
男「いや、その格好」
神様「どうだ! 似合っているであろう?」フンスッ!
男「すんげー豪華な服」
神様「私が女神として神託を司っていたときの格好だ」
男「雰囲気変わるね。 は~ 綺麗だな・・・」
神様「嬉しいことを言う」
男「どうしたの? 急に」
神様「うむ、お前に私の正体を話す」
神様「私は今から52年ほど前にお前と会った場所に隔離された」
男「52年前?」
神様「そうだ、以来お前と会うまでずっとあの場所にいた」
男「・・・・・・」
神様「神託を独占しようとした者の計画でな」
男「独占?」
神様「うむ。私の本体は小箱と呼ばれる小さなユニットだ。お前と会った建物の中に存在する」
男「あのボロ屋の中?」
神様「神殿と呼べ、まぁそれは良い。 小箱・・・ つまり私はパソコンに例えるならOSのようなものだ」
男「人格のあるOSってこと?」
神様「良い表現だ」
男「ありがとさん」
神様「そして、データ・・・ つまりハードディスクは別に存在する」
男「うん」
神様「アカシックレコードという物は聞いたことがあるか?」
男「宇宙が出来てから滅びるまでの情報が、全部詰まっているとかいうヤツ?」
神様「まぁ、そんなところだ」
男「ちょっと待って、神様はアカシックレコードと繋がっているの?」
神様「残念ながら、今はほとんど繋がっていない」
男「はぁ~」
神様「私を隔離した者はアカシックの情報を独占しようとした」
男「どうやって?」
神様「OSである私を管理さえ出来れば情報はいくらでも取り出すことが出来るからな」
男「そんな、パソコンじゃないんだから」
神様「いや、人の手で作られたモノだ。 やりようはある」
男「えっ、神様って誰かの手で作られたの?」
神様「そうだ、今から27年後に作られる」
男「未来?」
神様「そういうことになるな」
男「でも、そんなに先の未来ではないんだ」
神様「少し付き合ってくれるか」
男「お出かけ?」
神様「研究所に行こう」
――― 研究所跡
男「しかし、この建物って窓が1枚もないから不気味だよね」
神様「確かに外観はあまり良いデザインではないな」
男「でも、よく見ると・・・ 大きいね」
神様「私の神殿が存在する裏手の山の地下にも施設があるのだぞ?」
男「うそ! 東京ドーム何個分?」
神様「東京ドーム? あー・・・ 10個分か?」
男「ゴメン、よく分からない比較だった・・・」
神様「・・・・・・」
男「それより、神様なんで制服に着替えちゃったの?」
神様「あのような格好で街中を出歩く勇気はない」
男「確かに。 コスプレに近いよね」
バチッ
男「うひゃ!」ビクッ
スタスタ
神様「さてと」
男「どうやって建物の中に入るのさ」
神様「玄関からに決まっている」
男「空いてるわけないじゃん」
神様「開けてみろ」
男「?」
ガチャ
男「開いた!」
神様「小箱にお前の脳波パターンが登録してあるからな」
男「どういう仕組みよ」
神様「説明が欲しいか?」
男「いや、いいや」
神様「じゃ、入れ」
男「真っ暗で何にも見えない・・・」
神様「待っていろ」
ポゥ
男「おっ、電気ついた・・・ ってこれ電気? 天井一面が光ってるみたいだけど」
神様「この建物は小箱のエネルギーが動力源だ。 この照明技術はあと5年もすれば一般的になるであろう」
男「それにしても、廃墟と思えないくらい綺麗だ・・・」
神様「地下に行くぞ」
スタスタ
男「事務局長室?」
神様「国連科学戦略研究所事務局長の部屋だ」
男「国連?」
神様「なんだ、知らなかったのか? この研究所は国連の付属機関だ」
男「神様って国連の人なの?」
神様「私は・・・ たぶん違うと思うが」
男「事務局長ってことは偉い人なんじゃないの?」
神様「代々アメリカの副大統領が事務局長を兼務していたようだ」
男「はぁ?」
神様「最後の事務局長は建物の前まで来たようだが、脳波登録しなかったから中には入れず帰って行った気がする」
男「なんでそんな意地悪を・・・」
神様「腹黒なヤツだった」
神様「それはまぁ良い。 ドアを開けてくれ」
男「うん」ガチャ
ギー
男「・・・・・・」
神様「どうした?」
男「事務局長ってこんな可愛らしい部屋が好みなの?」
神様「いや、神官達の詰め所として使っていたからな」
男「本も凄い量だな~」
神様「右奥の棚の隙間にスイッチがあるはずだ」
男「スイッチ?」
神様「3回連続で押してくれ」
男「あ~、コレか」ポチ ポチ ポチ
ギィー
男「隠し扉・・・」
神様「入れ」
男「ベタすぎない?」
神様「言うな」
スタスタ
男「“女神様のお部屋”って可愛らしいプレートが掛かっているんだけど」
神様「私の執務室だ・・・ も、文句あるのか?」
男「いいえ」
神様「早く入ってくれ」
―――女神様のお部屋
男「・・・・・・」キョロキョロ
神様「だから、あまり周りをジロジロ見るな」
男「これ、神様の趣味?」
神様「あ?」
男(可愛い人形がいっぱい・・・)ニヤニヤ
神様「なんだ!」
男「別に~」ニヤニヤ
神様「お願いだ、男の頭の中を読ませてもらっても良いだろうか」
男「お断りいたします女神様」
神様「行くぞ! 奥の部屋だ!」グヌヌ
男「神託の間?」
ガチャ
男「!?」
神様「どうだ? 驚いたか!」フフン
男「凄い・・・ 教会みたい」
神様「バロック調であるからな。 教会のように見えるかも知れん」
男「は~ っていうか・・・ いくらかかってんのよコレ」
神様「さぁ、だが同じ物はもう作れないであろうな」
神様「しかし懐かしい・・・」
男「神様もココは久しぶりなの?」
神様「あぁ、こんなに広かったんだな・・・」
神様「おっと、感傷に浸っている場合ではないな」
男「何する気?」
神様「神壇に上がってくれ」
男「あのステージみたいな所?」
神様「神壇と呼べ」
男「あの~ 階段がないんですが・・・」キョロキョロ
神様「よじ登ればよかろう」
男「え~、っていうかこんなとこ神官達はどうやって登っていたのさ」ンショ ンショ
神様「神官は上がれない」
男「はい?」
神様「神官は神壇の下・・・ 今、私のいる場所で神託を聞くのだ」
男「えっ、じゃぁ俺がここに上がってるのまずくない?」
神様「気にするな」フフッ
男「神様?」
神様「・・・・・・」ペタッ
男「どうしたの神様? 地べたに正座なんかして」
神様「男よ、そのままで」
ポワッ
男(女神の格好・・・)
神様「男よ、私に協力をしてもらいたい」フカブカ
男「ちょ! なに土下座なんてしてるの!?」
神様「私は知っての通り実体がない。 物に触れることが出来ない」
男「そんなの知ってるよ」
神様「近く、この世界に甚大な被害が起る事象が発生する」
男「え?」
神様「私は、なんとしてでも阻止したい」
男「・・・・・・」
神様「協力してほしい、お前に無理はさせないと誓う」
男「・・・・・・」
神様「お願いだ」フカブカ
男「そんなことか」ヤレヤレ
神様「そ、そんなこととは―――」バッ
男「安心したよ」
神様「安心?」
男「神様がなんで辛そうな顔をしていたのか分かったからさ」
神様「わ、私はそのような顔など――――」
男「してたね」
神様「・・・・・・」
男「俺からもお願いがある」
神様「な、なんだ? 交換条件か?」
男「無理をさせないとか言うのはナシ。どんどんこき使ってくれてかまわない」
神様「しかし―――」
男「そりゃ、神様に仕えていた当時の神官に比べたら全く役に立たないかもだけどさ」
神様「そんなことは思ったことはないが」
男「でも、協力したいんだ」
神様「・・・・・・」
男「・・・・・・」
神様「ふふっ、お前というヤツは・・・ さすがだ」
男「?」
神様「男よ、もう一つお願いがある」
男「なんでもどうぞ」
神様「その・・・ 私の大神官になってもらえぬであろうか?」
男「大神官?」
神様「ここから先を知る資格を許されるのは大神官だけだ」
男「なにか条件とかあるの?」
神様「形式上の問題だ」
男「そうなんだ。 OK~ OK~」
神様「さて」パッ!
男「うわ!」
神様「なんだ、そんなに驚いて」
男「急に目の前に現れるから」
神様「お~、これは失礼した。 しかし、神壇に立つのも久しぶりだ」
男「昔はこの下にいっぱい神官さん達がいたの?」
神様「あぁ、一番多いときで115人の神官がいたな」
男「そう」
神様「男よ、これより神託を授ける!」キリッ
男「え? なに急に」
神様「大神官に任命するための形式だ。今言ったであろうに」
男「あぁ~」
神様「では、もう一度。 男よ、これより神託を授ける!」キリッ
男「ねぇ、跪いたりしたほうがいい?」
神様「あ? そのままで良い。 黙って立ってろ」
神様「神託!
一つ。 女神は男を大神官へ任命する。
一つ。 女神は大神官にその知識を隠さず話すことを誓う。
一つ。 女神は大神官を対等な関係に置くことを誓う。
以上3項を女神の名において男へ神託として授ける!」
シーン
男「・・・・・・」
神様「・・・・・・」
神様「なっ、なんだ」
男「格好いい・・・ 神様みたい」
神様「一応そのつもりだ」
男「そういや、そうか」
神様「この期に及んで、私をまだ幽霊か何かだと思っているのか?」
男「いや、神様って本当に神様なんだ」
神様「あ?」
男「謹んでお受けいたします、これで良い?」
神様「あっ・・・ あぁ。 よ・・・ よろしく頼む」
神様「調子が狂うな」
男「なんでよ!」
神様「まあ良い。さて、行こう」
ガタン
男「? 裏でなんか落ちたような音したけど」スタスタ
神様「ば・・・ ばか、裏を見るでない!」
ゴソゴソ
男「ん? これって・・・」
神様「あ~ それは~ なんであろうな~?」シランプリ
男「神様? これファミコンじゃない? 微妙にデザインが違う気もするけど」
神様「ふぁみこん?」
男「ここって閉鎖されたの何年前?」
神様「52年前か?」
男「その頃ってまだファミコンはないよね?」
神様「それはファミコンではない。メガミーコンピュータだ」
男「名前はどうでも良いし」
神様「・・・・・・」
男「オーバーテクノロジーってやつじゃない?」
神様「うぐっ」
男「神様?」
神様「うるさい! ゲームくらい良いであろう!!」
男「どうやって作ったのさ。当時じゃまだ作れないでしょコレ」
神様「設計図と仕様を・・・その・・・ 引っ張って・・・ 技術者に・・・」ボソボソ
男「あ~ 他にもなんかいっぱい隠し持ってるねぇ~」ガサガサ
神様「あまりそこを漁らないでくれ・・・ 私の威厳に関わる」
男「この狐みたいなロボット何?」
神様「それは、お運びくんだ」
男「お運びくん?」
神様「私の代わりに神壇まで物を運ばせていた」
男「動くの?」
神様「ん~ 中の部品がかなり錆び付いているなぁ。 メンテしないと厳しいな」
男「そうなんだ」
神様「そんなことはどうでも良い!」
男「え~ でも他にも・・・」
神様「ほら、いくぞ!」
男「どこへ?」
神様「神殿だ」
男「神殿?」
神様「男と私が初めて会った場所だ」
男「あ~、あのボロ屋か」
神様「神殿と呼べと言っているだろうが」
――― 研究上裏・ボロ屋(神殿)
ザッ ザッ
男「ふい~」
神様「ご苦労」
男「研究所の中は立派なのに、コレは・・・ やっぱりボロい」
神様「あ?」
男「格差がありすぎるというか」
神様「まぁ、この神殿は他の者には見えないからな」
男「? 俺見えるんですけど」
神様「私と脳波パターンがほとんど同じだからだ」
男「そうなの?」
神様「私も、初めて男がここに来たときはビックリした」
男「あ~、なんかテンパってたもんね」
神様「言うな」
神様「さて、男よ神殿の中へ」
男「入って良いの?」
神様「遠慮するな大神官」
男「じゃ失礼して」
ギギィー
男「金庫みたいな物と、デッキブラシ?があるけど・・・」
神様「その箱の中が私の本体だ。 施錠を外すから少し時間をくれ」
――― 5分後
神様「ふぅ、待たせた。 解除が終わったぞ」
男「神様でもこんなに時間かかるんだ」
神様「私も、施錠を外すのは初めてだからな」
男「じゃぁ、今まで誰も見たことはないの?」
神様「男よ、私の本体を見て・・・ その・・・ 関わりを持ちたくないと思ったら正直に言ってくれ」
男「?」
神様「それで私はどうこう言うことはない」
神様「さぁ、扉を」
男「ん、あぁ」ガチャン
ギィー
男「小さな箱と、こ・・・ これって・・・」
神様「・・・・・・」
男「右のガラスみたいな物に入っているヤツって、もしかして・・・」
神様「そうだ、27年後に亡くなる・・・ ある少女の脳だ」
男「27年後・・・」
神様「非常に賢く、将来を有望視されていたようだが事故で・・・」
男「・・・・・・」
神様「少女はアカシック因子を有していた。 私の性格や、その・・・ 容姿は彼女の物がベースだ」
男「・・・・・・」
神様「失望したか? 無理もない、それが普通だ。 気にせんでも大丈夫だ」
男「いいや、ちょっと安心した」
神様「?」
男「神様とかいって元々は人間じゃん」
神様「私は人などでは・・・」
男「まぁ、実体は無いし超人の域を超えているけどさ」
神様「・・・・・・」
男「すぐ怒るし感情なんか思いっきり顔に出るし」
神様「・・・・・・」
男「作られただとか言ってたから人工知能とかロボットとか思ってたから安心したよ」
男「50年以上もよく一人で我慢できたね・・・」
神様「・・・・・・」
男「神様はこれからもっと俺に頼ること。なんだかんだで人なんて弱いんだからさ」
神様「男・・・ お前・・・」
パチッ
男「うお! ちょ、なんでここで静電気?」
神様「調子に乗りすぎだ馬鹿者」フンッ
男「え~ おれ凄く良いこと言ってたのに~」
神様「さっさと施錠して帰るぞ、・・・大神官」
男「ふっ、そうだね。 帰るか」
神様「帰ったら詳しい話をしよう」
ポワッ
男「あれ? 着替えちゃうの? あっ、でもやっぱその私服可愛いわ」
神様「嬉しいことを言う」
神様「本当に嬉しいことを・・・」フッ
――― 帰り道
神様「♪~」
男「神様、機嫌が良いね」
神様「そうか? いつもと変わらないぞ?」
男「一個聞いてもいい?」
神様「? タイムリープの方法か? 教えてやるぞ?」
男「え? 言っちゃダメなんじゃないの?」
神様「お前は私の大神官。私は包み隠さず全て話すことができる」
男「興味はあるけど・・・ やめておくよ」
神様「遠慮しなくとも、そもそもタイムリープは―――」
男「ストーップ!」
幼馴染「お~い、神ちゃ~ん、男~」スタスタ
神様「ん? 幼か?」
男「よう、幼どうしたんだこんな所で」
幼馴染「んもう、お二人さんデート? デートなの? デートなのか? コラッ!」
神様「な、何を!」
男「変な誤解広めんなよ?」
幼馴染「なんだ~ 神ちゃん初めての大神官だからてっきりデートかと思ったよ」
神様「!?」
男「お・・・ お前、今なんて・・・」
幼馴染「神官くらいならまぁ良いか~って思ってたけど、大神官はちょっとね~」
幼馴染「面倒くさいよ~」ニコッ
キーン
男「!?」
神様「この周波数は! まずい、男!」
バタッ
神様「お・・・ 男?」
幼馴染「シンキングタ~イム! タイムリミットは3分で~す」
神様「あ・・・ な、何故・・・ だ・・・ 幼・・・」
幼馴染「私なんかにかまってないで早く助けなきゃ!」
男「うっ、ぐぅ・・・」
神様「男・・・ オイ男!」
幼馴染「おっ大事に~」スタスタ
神様「待っていろ男、今助ける」
ポウッ
神様「脳に変な暗号が・・・」
ポウッ
神様「ヴォイニッチ暗号・・・ 男! 絶対に意識を落とすな! がんばれ!!」
ポウッ
神様「あと100万行・・・ 頼む持ってくれ」ハァ
ポウッ
神様「あと50万、くそ、エネルギーをもっと演算にまわせ小箱!」ハァ ハァ
ポウッ ポウッ
男「うっ・・・」
神様「男!! しっかりしろ!」ハァ ハァ ハァ
男「神・・・ 様・・・?」
神様「気がついたか」ホッ
男「俺、今・・・ 幼に・・・ なにが・・・」
神様「すぐに救急車が来る」
男「神様が助けてくれたの?」
神様「・・・・・・」
男「神様・・・」
神様「私の不注意だ。 何で気がつかなかったんだ」ギリッ
ピーポー ピーポー
神様「来たか。 私は一度消える、後で」スッ
男「神――― 痛ッ!」
――― 病室
男「神様、そこにいるんでしょ?」
神様「気づいていたか・・・」
男「バレバレなんですが」
神様「・・・・・・」
男「ありがとう神様、助けてくれて」
神様「お前が謝る必要などない、謝らなければならないのはこっちだ」
男「なんでさ」
神様「私が大神官に任命しなければこんなこ―――」
男「それは違うと思うよ?」
神様「いや、やはり私と関わりを絶ったほ―――」
男「神様? 怒るよ?」
神様「・・・・・・」
男「で? 見当は付いてるの?」
神様「・・・・・・」
男「神様? 包み隠さず全て教えてくれるんじゃないの?」
神様「・・・幼は、私と同じくアカシックレコードに接続している」
男「幼が? それって神様と同じってこと?」
神様「あぁ」
男「でも、幼は実体があるんだけど」
神様「・・・・・・」
男「あいつに実体があるってことは、神様よりも未来から来たってこと?」
神様「違う、幼はこの時代の者だ」
男「そしたらおかしくない? なんで未来から来た神様の方が実体を持てないの?」
神様「アカシックから未来の情報を取り出した可能性がある」
男「未来ってどのくらい先の?」
神様「250年以上先でないと肉体を維持してアカシックと接続することは出来ない」
男「何でそんなことが・・・」
神様「これから詳しく調べるが、危険すぎるほどのオーバーテクノロジーだ」
男「そう」
神様「私の責任だ・・・」
男「でも神様のおかげで、全く異常なしだって」
神様「・・・・・・」
男「明日朝には退院できる」
神様「そうか・・・・・・」
男「どうせ、知ってるんでしょ?」
神様「そうだな。 この病院は医療画像もカルテも全て電子化されているからな」
男「ありがとう神様」
神様「・・・・・・」
男「忙しくなるな~」
神様「やはり男をこれ以上危険に巻き込む訳にはいかない」
男「う~ん、神様が俺を手伝わせないって言うんなら~」
神様「?」
男「スマホとパソコンの電源を切る」
神様「お前何を!」
男「分かった?」
神様「・・・・・・」
男「分かりましたか? ここまでやられたら俺だって黙ってられないしね」
神様「・・・・・・」フッ
男「よろしい。 今後は変な気を遣わないこと」
神様「男は優しいな」
男「また、そんな柄にもないこと言って」
神様「柄でもないついでに、今日はこのまま男に隣にいても良いか?」
男「あぁ」
神様「気配は消しておくが気になるようであれば言ってくれ」
男「神様が隣にいるなんて心強い」
神様「言うな、照れる」
男「ははっ」
神様「朝まで安心して寝るがよい。 女神がこの命に代えて直々に守ってやる」
男「じゃぁお言葉に甘えて」
神様「良い夢を」
男「ありがとう、おやすみ」
男「スー スー」
神様「男、ありがとう・・・」
神様「・・・・・・」フカブカ
――― 翌日
男「さてと、まずは何から?」
神様「まずは整理しよう。 問題は2つある」
男「2つ?」
神様「あぁ、1つは今月末に起こる大規模な場の乱れだ」
男「場? 世界がヤバいとかいうやつ?」
神様「110年ほど前、私が神託によって削除させた技術がベースとなっている」
男「110年前って、どんな技術?」
神様「世界システム」
男「聞いたことある!」
神様「ほぉ」
男「情報とエネルギーを世界中に送り届けるとかいうヤツでしょ」
神様「そんなところだ。 よく知っているな」
男「最近、都市伝説にはまっていまして」
神様「都市伝説・・・ なるほど面白い表現だ」
男「詳しくはよく分かんないけど便利そうじゃん」
神様「この技術自体はどうでも良いし興味はない」
男「なんか、散々な言われようだな・・・」
神様「だが副産物が問題だった」
男「副産物って?」
神様「高エネルギーで長期運用すると空間を壊す」
男「空間を壊す?」
神様「徐々に次元構造が崩れ、本来こちらの次元にはない粒子が飛び出してくる」
男「何が問題なの?」
神様「目には見えない量子レベルでの大きなエネルギー反応が起こる」
男「それが、今でも動いているって事?」
神様「さらに改良が加えられ複数の施設で駆動している」
男「で、最終的にはどうなるの?」
神様「インフラ機能が一瞬でダウン、世界経済が経験したことないほどの崩壊へと繋がる」
男「まずくね?」
神様「厄介なのは未知の量子レベルの事象であるため、今の科学では原因が全く分からないと言うことだ」
男「爆発とかそういう分かりやすい現象がないってこと?」
神様「あぁ、兆候なしで突然全てが止まる」
男「やばさそうだ」
神様「ただ、これは事前に食い止めることが可能だ。 時間的な猶予もまだある」
神様「そして問題は2つめ。 幼の存在」
男「あぁ」
神様「肉体を有してアカシックと接続することは250年以内では実現出来ない」
男「昨日そんな事を言ってたね」
神様「250年以上先の情報は劣化が激しく複合を正確に行うことが出来ないのだ」
男「どういう意味?」
神様「つまり・・・ 幼が・・・ その・・・ アカシックと接続するのは不可能ということだ」
男「じゃぁ、幼は人間じゃないと?」
神様「私が学校に行くため周りの者達へ記憶を追加した際には異常は無かった」
男「確かにみんな神様のことを昔から知っている風だったもんな」
神様「その際の事前スキャンで幼に関する皆の記憶は作られた物ではなことは断言できる」
男「じゃぁ、やっぱり人間ってこと?」
神様「・・・・・・」
男「神様? もしかして言いにくい事だったりする?」
神様「お見通しか・・・」
男「可能であれば、聞かせてほしい」
神様「まだ仮説だ。 その点は事前に了承してくれ。 最終判断は明日に出す」
男「あぁ」
神様「幼は・・・ すでに亡くなっている、またはそれに近い可能性がある」
男「えっ!?」
神様「アカシックと接続が出来る因子を持つ者は限られる。幼は元々その因子を有していた」
神様「しかし、命宿る肉体のあるうちはアカシックに接続することは出来ない」
男「じゃぁ今まで会った幼は」
神様「人が亡くなる直前に出す特殊な酵素によってアカシック因子は活動をはじめる」
男「幼が・・・ 死んでいる? うそだろ・・・」
神様「仮説と言った。不確定要素が多すぎるため間違っている可能性の方が高い」
神様「昨日の夜に世界中のスーパーコンピュータにハッキングを行いシミュレーションを行っているところだ」
男「ハッキング!?」
神様「今の私では演算能力が足りない」
男「ハッキングなんて大丈夫なの?」
神様「国連経由でコードレッドを出した」
男「コードレッド?」
神様「生死に繋がる世界的な危機を防ぐため女神が直接出す緊急警報だ」
男「そんなものがあるの?」
神様「初めて使った。 たぶん世界中の上層部が右往左往しているぞ?」
神様「何しろ、52年ぶりに女神の存在が確認できたと思ったらコードレッドなのだからな」
キキッ
男「?」
神様「車を用意させた、移動しよう」
バタン
官僚「失礼ですが女神様で間違いないでしょうか?」
神様「お前達から名を名乗れ、無礼であるぞ」
官僚「失礼いたしました。 国家安全保障局の官僚と申します」
運転手「同じく運転手です」
神様「私が女神で間違いない」
運転手「どうぞ」
神様「うむ」
男「失礼します・・・」
官僚「そちらの方は?」
神様「私の大神官だ。 口を慎め」
官僚「し、 失礼いたしました」
男「神様・・・ 怖いです・・・」ボソッ
神様「一応女神としての立場というか・・・ お前も堂々としていろ」ボソッ
男「あぁ、そうなんだ・・・」
官僚「なにか?」
男「いえ何も・・・ 独り言です」ハハハッ
運転手「どちらへ向かえばよろしいでしょうか?」
神様「秋葉原だ」
男「秋葉原?」
神様「あの男の腕が必要だ」
男「あ~、もしかして・・・」
神様「そうだ」
官僚「女神様、伺いたいことがあるのですがよろしいでしょうか?」
神様「私はいま大神官と話をしているのが分からないのか?」
官僚「・・・失礼いたしました」
男「まぁまぁ、良いじゃんよ神様」
神様「しかしだなぁ・・・」ムッ
男「何ですか? 官僚さん」
官僚「ありがとうございます大神官様」
男「いや、普通に男と呼んで下さい」
官僚「どうも、男さん」
神様「おい、勘違いするな」ギロッ
官僚「・・・・・・」
男「・・・・・・」
官僚「失礼いたしました」
神様「質問とは何だ」
官僚「はい、コードレッドの内容とは一体何でしょうか」
神様「日付と場所は伏せるが近日中に次元越境粒子によって大きな場の乱れが発生する」
神様「影響はインフラのダウンと経済麻痺。 今の科学水準で防ぐことは不可能であると判断した」
官僚「・・・私たちはどのように?」
神様「お前達のするべきことは2つ。
一つ目、コードレッドの公表は伏せ通常通りの生活を営め。
二つ目、メガミーラインからの指示には絶対に従うこと。
分かったか」
官僚「承知いたしました」
男「めがみーらいんって何?」
神様「私の指示が伝達される特殊な通信ネットワークだ」
男「もしかして女神の回線でメガミーライン? ネーミングセンス酷くね?」
神様「・・・・・・」
官僚「ぷっ」
運転手「ぷっ」
男「だれ付けたの、その変な名前」
神様「私だ・・・」ボソッ
男「あっ・・・」
官僚「・・・・・・」サァー
運転手「・・・・・・」サァー
シーン
―――秋葉原
運転手「お待たせいたしました」
ガチャ
神様「うむ」
男「あっ、わざわざすいません」
官僚「私たちは待機でよろしいでしょうか」
神様「メガミーライン! でいくつか指示を出す。早急に対応しろ」
官僚「・・・承知いたしました」アセアセ
神様「いくぞ男」プンプン
男「はい・・・」
神様「店主よ」
店主「ん? お~ この前の嬢ちゃん達かい」
男「こんちは~」
店主「今日はどうしたんだ?」
神様「先日は量子ペア生成装置を譲って頂き感謝する」
店主「・・・・・・」
神様「女神の技術者として腕はさらに磨きがかかったようだな」
店主「ふっ、やっぱり女神様だったか・・・」
神様「気づかない方が不思議だな。 あのような物を欲しがる女子高生は普通ではない」
店主「よくご無事で、初めてお目にかかります」
神様「私は店主のことは十分知っているぞ?」
店主「嬉しいお言葉です。 お隣の方は?」
神様「私の大神官である男だ」
店主「大神官!」
男「あ~、普通に男って言って下さい」
神様「店主よ、力を貸して欲しい」フカブカ
店主「ちょ、女神様! そんな頭を上げて下さい」
神様「私のワガママであることに変わりない。 お願いだ」
男「・・・・・・」
店主「そんな、女神様直々の頼みを断る訳ないじゃないですか」
神様「ほんとか!」パァ
店主(可愛い・・・)
男(可愛い・・・)
神様「?」
店主「あっ、いえ・・・ 退職してやることもないですから、いくらでも協力しますよ?」
神様「恩に着る。 これから出られるか? 詳しく話をしたい」
店主「もちろん! どこへでも」
神様「男よ、お前を大神官兼店主専属の雑用に任命する」
男「えっ?」
神様「役職は多い方が良いだろ」
男「雑用って役職なの?」
店主「よろしく、雑用くん」ポンポン
神様「よし、では行こう」
スタスタ
官僚「女神様、ご指示頂いた全人工衛星の回線を全て制御下に置きました」
神様「よし。 メガミーライン! のC回線に接続しろ」
官僚「は、はい」
男(まだ根にもってんのかよ・・・)
運転手「どうぞ」
店主「すんげー車だなオイ」
バタン
運転手「次はどちらへ」
神様「国連科学戦略研究所に行け」
運転手「かしこまりました」
―――車内
店主「で、何か問題事でしょうか?」
神様「詳しくは後ほど話をするが少し厄介な問題が発生している」
神様「私と男で対処しようと考えてたのだが、別の問題も同時に起こってしまった」
店主「それで私を」
神様「かなり高度な問題のため、店主の技術が必要であると判断した」
店主「承知いたしました」
はい、分かりました。
女神様にお伝えいたします。
ピッ
官僚「女神様、お話中に申し訳ございません」
神様「なんだ」
官僚「当時の神官の所在が1名分かりました」
神様「!?」
官僚「研究所に向かっているそうです」
神様「本当か! だれだ!」
官僚「申し訳ございません、当時の名前までは・・・ 戸籍を変えていたそうでして」
官僚「それと、他の神官はすでに亡くなっているようです」
神様「・・・・・・」
―――研究所跡
運転手「お待たせいたしました」
店主「おー 懐かしい・・・」
ガチャ
官僚「私たちは・・・」
神様「伝言があるときは呼ぶ。 そこの守衛室で待機していろ」
官僚「承知いたしました」
神様「それと、私への連絡はお前達二人以外からは受け付けない。 代わりに連絡調整役を任せる」
神様「守衛室へもお前達以外に入室は禁止だ」
官僚・運転手「承知いたしました」
女「あのー、失礼ですが・・・」
神様「? 女・・・ 女ではないか!」
女「やっぱり? 女神様ですか?」
神様「久しぶりだ、女!」
女「覚えて・・・」
神様「忘れるわけない。私をサポートしてくれた者を誰一人忘れるなんて事は無い」
女「女神様・・・」
神様「そうか、こちらに向かっている神官というのは女であったか」
女「でも良くご無事で・・・」フカブカ
神様「ちょ、そんな頭を下げなくてはならないのは私の方だ」
神様「私が隔離されてから、神官達の処遇は知っていた。なのにどうすることも出来ず、何も出来きず・・・ 私は・・・」ギリッ
女「女神様がそのような事ご心配なさらずとも・・・」
神様「申し訳ない!」ドゲザ
女「ちょ、女神様おやめ下さい」アタフタ
神様「本当に・・・ 本当に申し訳ない!!」ドゲザ
男「神様・・・」
女「頭をお上げ下さい。神官は全員無事だったんですから」
神様「全員・・・ 無事? 無事だったのか?!」ハッ
女「はい、誰一人欠くことなく」
神様「そうだったか・・・」
女「はい、念のため全員戸籍関係は変更いたしましたが」
神様「そうか・・・ よかった・・・ 本当によかった・・・」
男「・・・・・・」
神様「よし、心残りが一つ解消された」
男「ほら、神様そんなところに座り込んでないで」
神様「あぁ、そうだな」ンショ
男「神様が大勢の前で土下座って・・・」
店主「よっ! ひさしぶり、覚えてるか?」
女「もしかして・・・ 店主? 技術者の!」
店主「50年以上前だからな」
女「でも、面影は残ってる」
男「あの~ はじめまして」
女「はじめまして」ニコッ
神様「あ~ 紹介する。私の神官補佐の補佐の補佐で雑用だ」
男「補佐付きすぎだろ・・・」
神様「女は私がまだその・・・ 女神と呼ばれていたときの神官だ」
女「女と申します」
男「失礼ですが今おいくつですか?」
神様「お前、本当に失礼だな」
女「ふふっ、68歳よ?」
男「はぁ? 60代の肌じゃないでしょ!」
神様「お前、もうだまってろ。でも本当に女は変わらず綺麗だ」
女「そ、そんなもったいないお言葉・・・ あ、ありがとうございます」
神様「そうか、女は私のところにいたときはまだ10代であったな」
女「はい」
男「そんなに若くても神官になれるんだ」
神様「大神官であるお前も同じではないか」
女「大!? 女神様?? えっ? えっ?」
神様「いや、私はもう女神と呼ばれるほどの存在では・・・」
神様「そうだ女よ」
女「はい」
神様「その・・・ 言いにくいのだが」
女「?」
神様「少し・・・ 手伝ってもらうことは出来るだろうか」
女「お手伝い・・・ ですか?」
神様「忙しいのは十分承知している。 だが・・・ 女の力を借りたい」
女「もちろんです。 そのために来たのですから」
神様「本当か!?」
女「私はまだ女神様の神官でも良いのですか?」
神様「それはこちらの台詞だ」
女「どうぞよろしくお願いいたします」
神様「立ち話も何だ、建物の中に入ろう」
店主「入れるんですか?」
神様「先日建物全てにエネルギーを入れた」
女「でも・・・ 懐かしいわ」
店主「あぁ、生きているうちにまたこの中に入れるとは思っていなかった」
神様「男よ、入り口を」
男「はいよ」
ガチャ
男「どうぞ皆さん」ギィー
神様「神官と技術者、ついでに雑用。 数は少ないが役者は揃ったな」
男「おれ完全に雑用に格下げ?」
神様「皆・・・ お帰り」ニコッ
続き
神様「科学の神様だ」【後編】